(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】回転する車輪からエネルギーを回収するための装置、方法、およびディスクローター
(51)【国際特許分類】
H02K 21/24 20060101AFI20241001BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H02K21/24 G
B60K7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516909
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 AU2022051112
(87)【国際公開番号】W WO2023039631
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524099681
【氏名又は名称】レバス コーポレーション ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ブルームフィールド,ピーター
【テーマコード(参考)】
3D235
5H621
【Fターム(参考)】
3D235BB32
3D235CC42
3D235GA59
3D235GB35
5H621BB01
5H621BB10
5H621GB01
(57)【要約】
回転する車輪からエネルギーを回収するための装置。装置は、車輪に結合され、間隔を置いて連結された外側ディスクと内側ディスクとからなる、その間に静磁場が生成されるハブアセンブリと、ハブアセンブリと同軸に配置され、外側ディスクと内側ディスクとの間のエアギャップ内に延在する固定子コイルと、を備え、固定子コイルはハブに対して固定されており、ハブの回転によってコイル内に電流が生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に結合され、間隔を置いて連結された外側ディスクおよび内側ディスクを有し、その間に静磁場が生成されるハブアセンブリと、
前記ハブアセンブリと同軸に配置され、前記外側ディスクと前記内側ディスクとの間のエアギャップ内に延在し、ハブに対して固定されており、前記ハブの回転によってコイル内に電流が生成される固定子コイルと、
を備える、回転する車輪からエネルギーを回収するための装置。
【請求項2】
前記外側ディスクおよび前記内側ディスクが、その対向面上に、ディスクの周囲に配置された複数の永久磁石を有し、各磁石の磁軸はほぼディスクの表面に対して垂直であり、
各ディスク上の隣接する磁石の磁軸の向きは交互になっており、離間したディスク上で互いに対向する磁石の向きは逆向きに配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各ディスクの永久磁石が、それぞれの環状磁気ヨーク上に取り付けられている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
各ディスクの永久磁石が、磁石とほぼ同一平面上に配置された外側リングおよび内側リングによって拘束されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記固定子コイルが、その周囲に配置された複数のほぼ螺旋形状の巻線を有する少なくとも1枚の環状ディスクから形成されており、各巻線が直列に接続されている、請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
それぞれ6枚のディスクからなる2つのグループに配置された12枚の環状ディスクを備え、各グループのディスクは電気的に直列に接続されており、2つのグループは互いに並列に接続されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
各ディスクの周囲に12組のコイルが配置され、個々のコイルは三相電力を生成するように3つのグループに接続されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
コイルは厚い部分と薄い部分とを備えて形成されており、磁石によって生成される磁束が薄い部分にのみ入射するように配置されている、請求項5乃至7のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
各環状ディスクが4枚のPCB層で形成されており、最上層にはコイルが形成され、残りの層は異なる位相のコイルを相互接続するために使用される請求項5乃至8のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記固定子コイルがその中で生成されたエネルギーの分配するための電気回路の一部を形成し、回路を選択的に開閉するためのスイッチを含み、回路を閉じると磁気抵抗トルクが前記ハブアセンブリに印加され、車両のブレーキングをする、請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
回転する車輪からエネルギーを回収するために使用され、静磁場が生成される間隔をあけた外側ディスクおよび内側ディスクで形成されており、それに同軸で配置され、前記外側ディスクと前記内側ディスクとの間のエアギャップ内に延在する固定子コイルを受け入れるように構成されており、使用時には、車両に対して固定されるように構成され、ハブアセンブリの回転によってコイル内に電流が生成される、ハブアセンブリ。
【請求項12】
前記外側ディスクおよび前記内側ディスクが、その対向面上に、各ディスクの周囲に配置された複数の永久磁石を有し、各磁石の磁軸は、それが取り付けられるディスクの表面に対してほぼ垂直であり、
各ディスク上の隣接する磁石の磁軸の向きは交互に配置され、
間隔をあけて配置されたディスク上の互いに対向する磁石の向きは逆に配置されている、請求項11に記載のハブアセンブリ。
【請求項13】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の装置を提供するステップと、
回収されたエネルギーを使用して、車両の蓄電装置を再充電するステップと、
を含む、回転する車輪からエネルギーを回収する方法。
【請求項14】
前記装置が、前記装置の一部を形成する電気回路を開閉して、前記ハブアセンブリに印加される磁気抵抗トルクを変化させて車両の制動を支援するように動作可能である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
車両の前進または後退中に実行される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の装置を少なくとも1つ含む車両。
【請求項17】
前記または各装置が、車両の後輪または各後輪に取り付けられている、請求項16に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転する車輪からのエネルギー回収するための装置、方法、およびディスクローターに関する。
【背景技術】
【0002】
航続距離の制限は、現在利用可能な電気自動車の使用に対する心理的な障壁となっている。航続距離を増やす1つの選択肢は、バッテリーの蓄電量を増やすことであるが、これにより車両の重量が増加し、効率が低下する。したがって、同じ量のエネルギーでより遠くまで走行できるように電気自動車の効率を向上させることがより望ましく、一般的により費用対効果が高いとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電気自動車の効率を向上させる1つの方法は、機械エネルギーまたは位置エネルギーを電気エネルギーに変換し、それをバッテリーにフィードバックするエネルギー回収および/または変換システムを組み込むことである。回生ブレーキシステムはそのようなシステムの一例であるが、このようなシステムは通常電動モーターに実装され、ブレーキ作用に寄与するものの、他の方法で失われるであろうエネルギーを捕捉するのにはあまり効果的ではない。
【0004】
より高いレベルの電気エネルギーを回収するより効果的な回収システムを提供することが望ましい。
【0005】
電気自動車の航続距離を減少させる別の要因は、標準的な電気化学バッテリー内のエネルギーの散逸であり、その散逸率は約5%と推定されているが、バッテリーのサイズ、適用される負荷、熱損失による摩擦、音、またはあらゆる外部環境の影響など、いくつかの要因によって異なる。
【0006】
車両の使用中に比較的低レベルの再充電電源を提供することが望ましい。この再充電電源は、位置エネルギーを電気エネルギーに変換することによって提供されるのが理想的である。
【0007】
上述の問題に対処し、少なくとも有用な代替手段を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、回転する車輪からエネルギーを回収するための装置が提供される。この装置は:
車輪に結合され、間隔を置いて連結された外側ディスクおよび内側ディスクを有し、その間に静磁場が生成されるハブアセンブリと、
ハブアセンブリと同軸に配置され、外側ディスクと内側ディスクとの間のエアギャップ内に延在する固定子コイルと、を備える。固定子コイルはハブに対して固定されており、ハブの回転によってコイル内に電流が生成される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、外側ディスクおよび内側ディスクは、その対向面上に、ディスクの周囲に配置された複数の永久磁石を有し、各磁石の磁軸はほぼディスクの表面に対して垂直であり、各ディスク上の隣接する磁石の磁軸の向きは交互になっており、離間したディスク上で互いに対向する磁石の向きは逆向きに配置される。
【0010】
好ましくは、各ディスクの永久磁石は、それぞれの環状磁気ヨーク上に取り付けられる。好ましくは、各ディスクの永久磁石は、磁石とほぼ同一平面上に配置された外側リングおよび内側リングによって拘束される。
【0011】
好ましくは、固定子コイルは、その周囲に配置された複数のほぼ螺旋形状のコイルを有する少なくとも1枚の環状ディスクから形成されており、各巻線は直列に接続される。一実施形態では、それぞれ6枚のディスクからなる2つのグループに配置された12枚の環状ディスクを備え、各グループのディスクは電気的に直列に接続されており、2つのグループは互いに並列に接続される。
【0012】
好ましくは、各ディスクの周囲に12組のコイルが配置され、個々のコイルは三相電力を生成するように3つのグループに接続される。好ましくは、コイルは厚い部分と薄い部分とを備えて形成されており、磁石によって生成される磁束が薄い部分にのみ入射するように配置される。好ましくは、各環状ディスクが4枚のプリント基板(PCB)層で形成されており、最上層にはコイルが形成され、残りの層は異なる位相のコイルを相互接続するために使用される。
【0013】
好ましくは、固定子コイルは、その中で生成されたエネルギーの分配するための電気回路の一部を形成し、装置はさらに、回路を選択的に開閉するためのスイッチを含み、回路を閉じると磁気抵抗トルクがハブアセンブリに印加され、車両のブレーキングを補助する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、回転する車輪からエネルギーを回収するために使用されるハブアセンブリが提供され、ハブアセンブリは、静磁場が生成される間隔をあけた外側ディスクおよび内側ディスクで形成されており、ハブアセンブリは、それに同軸で配置され、外側ディスクと内側ディスクとの間のエアギャップ内に延在する固定子コイルを受け入れるように構成され、使用時には、車両に対して固定されるように構成される。これにより、ハブアセンブリの回転によってコイル内に電流が生成される。
【0015】
好ましくは、外側ディスクおよび内側ディスクは、その対向面上に、各ディスクの周囲に配置された複数の永久磁石を有し、各磁石の磁軸は、それが取り付けられるディスクの表面に対してほぼ垂直である。各ディスク上の隣接する磁石の磁軸の向きは交互に配置され、間隔をあけて配置されたディスク上の互いに対向する磁石の向きは逆に配置されている。
【0016】
本発明の別の態様によれば、回転する車輪からエネルギーを回収する方法が提供される。この方法は:
上述のタイプの装置を提供するステップと、
生成されたエネルギーを使用して、車両の蓄電装置を再充電するステップと、を含む。
【0017】
好ましくは、装置は、装置の一部を形成する電気回路を開閉して、ハブアセンブリに加えられる磁気抵抗トルクを変化させて車両の制動を支援するように動作可能である。
【0018】
好ましくは、この方法は車両の前進または後退中に実行される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、上述のタイプの少なくとも1つの装置を含む車両が提供される。好ましくは、その装置または各装置は、車両の後輪または各後輪に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に基づく、回転する車輪からエネルギーを回収する装置の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態に基づく回転する車輪からのエネルギー回収装置の側面図である。
【
図7ab】
図7aおよび
図7bは、永久磁石が取り付けられたハブアセンブリの外側ディスクのそれぞれの側面および正面図である。
【
図8ab】
図8aおよび
図8bは、永久磁石が取り付けられたハブアセンブリの内側ディスクのそれぞれの側面および正面図である。
【
図9】
図9は、ハブアセンブリの断面上面図である。
【
図11ab】
図11aおよび
図11bは、第2の実施形態の固定子コイルを形成する上部および下部ロータコイルのそれぞれの側面図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態の一連の固定子コイルの側面斜視図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態の固定子コイル上の電気コイルの拡大側面図である。
【
図14】
図14は、固定子コイル、ロータ、磁場、およびエアギャップの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、例示のみを目的として、添付の図面を参照して説明する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態に基づく装置10は、
図1に示されている。装置10は、回転する車輪からエネルギーを回収するために構成されている。好ましい形態では、車両は4輪自動車であるが、本発明は、二輪車、六輪車、様々な車軸構成を有するトラックやトレーラー、または電車など、他の車輪数を備えた車両にも適用されることが理解される。
【0023】
説明および図示された実施形態はすべて電気自動車に関するものであり、回収されたエネルギーは電気自動車の蓄電装置の充電に使用されるための電気エネルギーに変換される。この電気蓄積装置は、バッテリー、スーパーキャパシタ、または他の蓄電装置であってもよい。
【0024】
本発明者は、従来の輸送用自動車(または任意の車輪)内での機械エネルギーから電気エネルギーへのエネルギー伝達の最大のポイントは、車輪との相互作用が含まれる可能性が最も高いと考えているため、装置10は車輪に近接して取り付けられる。代替の実施形態では、ディスクブレーキシステムへの組み込みが可能である場合がある。
【0025】
装置10は、ホイールスタッド18に取り付けられたハブアセンブリ12を含む。ハブ12は、車軸20に取り付けらる。
【0026】
ハブアセンブリ12は、エアギャップ28によって分離された外側ディスク22および内側ディスク24を含む。以下でさらに説明するように、ディスク22、24の間には、エアギャップ28を通じて広がる静磁場が生成される。
【0027】
外側ディスク22および内側ディスク24は、従来のように鋳鉄で形成することができるが、システム内の磁気抵抗トルクを減らすために、強化カーボンカーボンまたはセラミックス基複合材料で形成されることが好ましい。
【0028】
エアギャップ28内には、固定子コイル30(個々のコイル30a、30bから形成と示されている)がハブアセンブリ12と同軸に配置されている。外側ディスク22と内側ディスク24との間のエアギャップ28内に延在することにより、固定子コイル30は、その中に電流を誘導する目的で磁場と直角に交差する。使用時には、固定子コイル30は軸20に対して固定されるため、ハブアセンブリ12の回転により磁場を介してコイル(固定子コイル30)が相対的に移動し、電気が発生する。
【0029】
装置10の構成要素は、内側部品11aと外側部品11bから形成されるカバーを備えて配置される。図から分かるように、また以下でさらに詳細に説明するが、固定子コイル30は2つのサブアセンブリ30a、30bとして形成されており、各々が支持体13に設置される。絶縁ディスク15は、コイル30a、30bの間に配置される。ベアリング23は、固定子コイル30を支持し、ハブアセンブリ12と固定子コイル30との間の回転を可能にするために設けられる。
【0030】
磁石36は磁場を生成するために設けられ、磁気ヨーク38に取り付けられ、内側支持体17aおよび外側支持体17bで定位置に固定される。
【0031】
図5および
図6は、本発明の第2の実施形態の装置110を示す。装置110は、わずかに異なる構成のハブアセンブリ112を含む。この実施形態では、外側ディスク122と内側ディスク124は、取り付けフランジ132a、132bを介して連結配置で互いに固定されているが、離間している。132a、132bは、向かい合った関係で一緒に固定され、ハブ部分134a、134bに取り付けられる。
【0032】
磁石の構成と動作に関する以下の説明は、装置10、110の両方の実施形態に適用されることを意図しているが、第1の実施形態10に関してのみ説明されている。
【0033】
エアギャップ28内に磁界を生成するために、外側ディスク22および内側ディスク24は、その対向面上に複数の永久磁石36を配置または埋め込んでいる。磁石36は、各ディスク22、24の周囲に配置され、環状磁気ヨーク38上に取り付けられる。磁石36は、各磁石36の磁軸がディスクの表面に対してほぼ垂直になるように配置される。
【0034】
永久磁石36は、残留磁気が1.43Tで比透磁率が1.05を有するNdFeB N52(ネオジム鉄ホウ素)などのより高い残留磁気を有する材料から形成されることが好ましい。
【0035】
ヨーク38は、磁気抵抗トルクおよび磁束漏洩を低減し、エアギャップ28内の磁束密度を改善するために設けられる。ヨーク38は、軟磁性材料で作られることが好ましい。ヨーク体積を小さくするための高い飽和磁束密度と、漏洩磁束を減少させるための高い透磁率を実現するために、パーマロイ1J85、パーマロイ1J50、電磁純鉄、フェロコバルト1J22が適切な材料の例として挙げられる。ハブアセンブリ12の使用中に発生する熱生成の潜在的な影響を考慮して、熱処理されたパーマロイ1J50が最も適している可能性がある。
【0036】
磁石36の向きは、隣接する磁石が交互に配置される、すなわち、各ディスク上の隣接する磁石の磁軸が交互に配置されるようになっている。
図7B、
図8A、および
図9を参照すると、N極が見える磁石が、その反対極、すなわちS極が見える磁石の隣に配置されていることが分かる。
【0037】
ハブアセンブリ12も、外側ディスク22と内側ディスク24が互いに固定されるとき、離間したディスク22、24上で互いに対向する磁石の向きが反対に配置されるように配置される。これは、
図9で見られ、外側ディスク22上で、外側にN極を有する永久磁石36が外側にS極を有する永久磁石36の反対側に配置されている。これにより、
図9に示す磁束線60が生じ、磁場がエアギャップ28を通過し、固定子コイル30が磁場を通過し、固定子コイル30の回転によって固定子コイル30内で電流が生成される。このような配置により、装置10は、動作中、回転から機械エネルギーから電気エネルギーを収集することになる。
【0038】
本発明者は、本書に開示されるように外側ディスク22および内側ディスク24を永久磁石で構成することにより、
図9に示すように、ディスク22、24間に静磁場、すなわちエアギャップ28を直接横断する静磁場を確立することが可能になると考えている。この静磁場は磁気抵抗トルクを低減し、車両の通常の前進または後進中に発電できるようにすることが期待される。この配置により、静磁場がヒステリシス損や渦電流損を低減させることも期待できるため、発電性能が大幅に向上する。別の動作形態では、装置10を再生ブレーキシステムとして使用することもできる。
【0039】
各コイル30、30bは、複数の環状ディスク42から形成される。好ましくは、固定子コイル30は、それぞれが6枚のディスクからなる2つのグループに配置された12枚の環状ディスクから形成される。各グループのディスク42は直列に電気的に接続されており、2つのグループは並列に接続される。
【0040】
図10aおよび
図10bは、ディスク42の正面図および背面図を示す。好ましい形態では、各環状ディスク42は4つのPCB層で形成されており、最上層にはコイル40が形成され(
図10a参照)、残りの層は異なる位相のコイル40を相互接続するために使用される。
【0041】
各ディスク42には、ディスクの周囲に12組のコイルが配置され、個々のコイルはA、B、Cの3つのグループに接続されており(
図10a参照)、3相電力を生成する。
【0042】
図10cに見られるように、一実施形態では、コイル40はより厚い部分とより薄い部分とを備えて形成されており、磁石によって生成される磁束がより薄い部分のみに入射するように配置されている。この点において、コイルの薄い部分41は、ディスク42上でほぼ半径方向に延びる一方、厚い部分43は、ディスク42の周囲にはめ込まれているが、ほぼ円周方向に延びる。
【0043】
図11a、
図11bの実施形態では、コイル40(
図13に詳細に示す)は、より規則的で、やや円形の形状をしている。
【0044】
各環状ディスク42は、プリント基板(PCB)技術によって製造され、ワイヤに銅を使用した非磁性材料で作られている。基体は、6.3乃至9.3の比較的高い誘電率(誘電定数)を有するガラス結合マイカであることが好ましい。この材料の重要性は、磁場中を移動する際にコイル構造内で電流が生成されるときに生成される合成磁場を吸収することにある。この材料は、レンツの法則に従って決定される標準的なコイル巻線内で生成される磁気トルクを減少するために必要な静電容量を提供する。従来のフィラメントワインディング法で製造されたコイルと比較して、PCBベースの多層コイルは、一体化された薄い構造内にコイルと基板を統合しているため、エアギャップ28の厚さがより薄くなり、エアギャップ28の磁束密度がより高くなり、したがって出力性能が向上する。
【0045】
コイル構造の数、構成、および全体的な設計は、回転速度に対する磁束と出力電圧の効果を最大化するために重要であり、図示のものとは異なる場合がある。
【0046】
装置10は、固定子コイル30がその一部であると考えられる電子回路46(図示せず)を含む場合があり、装置10内で生成されたエネルギーを分配するように構成されている。
【0047】
電子回路には、フルブリッジ整流器に続いて平滑コンデンサが含まれる場合がある。電圧は、供給される電力が車輪の回転速度に基づいて増減するため、必要となるリニア電圧レギュレータによって調整できる。その後、信号はDC/DCコンバータに渡され、電圧が11.1V、3.3Aに降下され、バッテリを充電することができる。記載された電圧および電流は特定の車両向けであり、特定の用途に応じて変化し得ることが理解される。出力電力は、個々のセルの充電による電流分割器を備えたバッテリーまたは蓄電装置(例:スーパーキャパシタ)を充電するために使用されるか、または入力ラインに直接供給されてバッテリーの放電を軽減する。センサー流量調整器は、バッテリーまたは蓄電装置のセル充電へのゲートウェイに設けることができる。このセンサーは、個々のセルがいつ、どのセルに最大の出力電力の流れを必要とするかを判断し、正確な時点を特定するために調整される。センサー流量調整のこの要件により、エネルギーフローの効率が向上し、結果としてバッテリーまたは蓄電装置の量が最小限に抑えられる。
【0048】
装置10は、電子回路を開閉するためのスイッチをさらに含むことができる。開いた場合、磁気抵抗トルクは完全に除去され、必要に応じて回復される可能性がある。これにより、装置はデュアルモードで動作することが可能になる。第1モードでは車両の走行中に低レベルの電力が生成され、第2モードではブレーキング中に高レベルの電力が生成される。これを達成するために、磁気抵抗トルクを増加させ、装置が磁気トルクを利用して車両のブレーキシステムのブレーキングを補助し、車両を減速させながら電力を発生させ、それをバッテリーまたは蓄電装置に充電することができる。スイッチは、機械式や電気式など、さまざまな形態を取ることがある。
【0049】
本発明の範囲から逸脱することなく上述の実施形態に対してさまざまな修正がなされ得ることが当業者には明らかである。例えば、装置は車輪のすぐ近くに配置されていると示されているが、車両の他の場所に取り付けることもできる。
【0050】
本明細書および次に続く請求項の全体を通じて、文脈上別段の必要がない限り、「comprise(包含する)」という単語、およびその変形である「comprises(包含する)」や「comprising(包含している)」は、記載された整数、ステップ、または整数またはステップのグループを含むことを意味すると理解されるが、他の整数、ステップ、または整数またはステップのグループを除外するものではない。
【0051】
本明細書における先行公表文献(またはそこから得られた情報)、または既知の事項に関する言及は、その先行公表文献(またはそこから得られた情報)または既知の事項が、本明細書が関連する努力傾注分野における共通の一般知識の一部を形成することを肯定、承認、またはいかなる形式でも示唆するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【国際調査報告】