(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】生物学的試料の捕捉および処理のためのデバイス、方法およびキット
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20241001BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20241001BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01N1/02 W
G01N1/22 X
G01N33/497 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516925
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022075868
(87)【国際公開番号】W WO2023041753
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522403789
【氏名又は名称】ヴォスビオ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】イェルデ,ダグラス・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ボリンジャー,ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045BA13
2G045BB03
2G045BB47
2G045CB22
2G045DA12
2G045DA13
2G045DA14
2G045FA13
2G045FA25
2G045FA36
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB06
2G045HA06
2G045JA07
2G052AA34
2G052AB18
2G052AB20
2G052AD02
2G052AD46
2G052EB13
(57)【要約】
呼吸気液体粒子および蒸気は、蒸気およびエアロゾル微粒子を凝縮または凍結させる表面とチャンバ空間とを提供するデバイス内で捕捉される。1回または複数回の呼吸気がデバイス内を通るように吐き出される。捕捉は、接触時に、水を固定化する凍結面上で行うことができる。デバイス内のチャンバ空間は、液体呼吸気粒子および蒸気を凍結してそれらを採集してもよい。採集後、液体は集められ、排出、押し出し、または遠心力のいずれかによってバイアルの中に採集される。液体は、採集され、ウイルス溶解試薬、内標準物質などの試料調整試薬と混ぜ合わされてよい。採集後、試料は分析される。分析は、PCR、qPCR、RT-PCR、RT-qPCR、LAMPまたは任意の核酸検出方法、質量分析法、吸光分光分析法、あるいは任意の分析ツールまたは方法によって行われてよい。核酸増幅試薬は、アセトニトリルなどの溶解試薬を含んでもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの呼吸気から取得された生物学的試料における標的を検出するための方法であって、
前記方法は、呼吸気から生物学的試料を採集するためのデバイスであって、前記ユーザが前記デバイス内に呼吸気を通すことを可能にするように適合された管と、前記管と流体連通し、捕捉面を有する採集チャンバであって、閉鎖端管である、またはバイアル内で終端する採集チャンバと、前記捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素と、前記捕捉面と前記ユーザの吐かれた呼吸気との間の接触を高めるために呼吸気の流れが乱流になるようにするように、前記管内またはその周りに配設された乱流誘発器と、を備える、デバイスを使用し、
前記方法は、
前記管の中に呼吸気を通すことによって、前記ユーザの前記呼吸気が前記採集チャンバの前記捕捉面上で凝縮または凍結する際に、生物学的試料を提供するステップと、
任意選択で、分析のために液体生物学的試料を形成するために凍結した生物学的試料が溶けることを可能にするステップと、
任意選択で、前記凍結した生物学的試料または液体生物学的試料を処理するステップと、
ある体積の前記生物学的試料を分析して前記標的の存在を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ユーザの呼吸気から生物学的試料を採集するためのデバイスであって、
前記ユーザが自分の呼吸気を前記デバイス内に吐き出すことを可能にするように適合された管と、
前記管と流体連通し、捕捉面を有する採集チャンバであって、閉鎖端管である、またはバイアル内で終端する採集チャンバと、
前記捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素と、
前記捕捉面と前記ユーザの吐かれた呼吸気との間の接触を高めるために呼吸気の流れが乱流になるようにするために前記管内またはその周りに配設された乱流誘発器と、を備え、
前記ユーザの前記呼吸気からの前記生物学的試料は、前記採集チャンバの前記捕捉面上で凝縮または凍結する、デバイス。
【請求項3】
前記管は、前記ユーザが前記デバイス内に息を吐き出すための第1の端部を有し、前記採集チャンバは、内部捕捉面を有するバイアルであり、前記バイアルは、前記管の第2の端部の上に配設され、呼吸気の前記流れは、前記バイアルの内壁の周りで逆向きになることで、前記生物学的試料は、前記捕捉面上で凝縮または凍結する、請求項1または請求項2に記載の方法またはデバイス。
【請求項4】
前記生物学的試料は、凍結試料、液体試料と凍結試料の組み合わせ、または液体試料である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項5】
前記採集チャンバは、0.5から50μLの容積を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項6】
前記管は、垂直構成で使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項7】
前記管は、水平構成で使用されることで、唾液またはよだれを捕捉しないで呼吸気の捕捉を可能にする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項8】
前記管は、水平と垂直の間の構成で使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項9】
前記乱流誘発器は、前記管内に配設されたインサートから選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項10】
前記採集チャンバは、注射筒であり、前記管は、前記注射器の前記筒に嵌合し、前記乱流誘発器は、前記管の外面の周りに嵌合する、請求項9に記載の方法またはデバイス。
【請求項11】
前記乱流誘発器は、前記管の内壁上に、その上を通過する呼吸気の乱流を誘発するのに十分な構造を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項12】
前記管は、第1の端部において開放することで、前記ユーザが前記デバイスの中に息を吹き込むことを可能にし、前記管は、第2の端部に向かう端部壁を備えることで、前記ユーザの呼吸気を前記捕捉面上に偏向させて、前記捕捉面と前記ユーザの前記呼吸気との間の接触を高める、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項13】
前記バイアルおよび/または前記管は、取り外し可能であることで、前記生物学的試料の処理を促進する、あるいは前記バイアルおよび/または前記管の交換を通して複数回使用のデバイスを提供する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項14】
方法またはデバイスは、前記ユーザが前記デバイス内に息を吹き込む5分、4分、3分、2分、1分、45秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒またはそれ未満のサンプリング時間を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項15】
生物学的試料は、6回以下の吐かれた呼吸気において、任意選択で1回または2回の吐かれた呼吸気において捕捉される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項16】
前記生物学的試料は、前記ユーザの前記呼吸気中の液体試料、微粒子試料または蒸気試料である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項17】
採集チャンバは、取り外し可能なバイアルである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項18】
前記冷却要素は、前記捕捉面を冷却するために熱電気冷却を使用する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項19】
前記冷却要素はペルティエデバイスである、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項20】
前記捕捉面は、-10℃以下まで冷却され、任意選択で前記捕捉面は、-20℃以下まで冷却され、任意選択で前記捕捉面は、-40℃以下まで冷却される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項21】
前記捕捉面は、50cm
2未満の表面積を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項22】
前記デバイスは、前記捕捉面を、呼吸気採集が開始されるまで周辺空気から保護するために取り外し可能遮蔽材を備える、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項23】
前記デバイスは、2μL/sまで、および任意選択で4μL/sまでの割合で試料を採集することが可能である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項24】
前記冷却要素は、凍結した生物学的試料が分析のために解凍されることを可能にするために切り替え可能である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項25】
前記生物学的試料は、核酸を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項26】
前記核酸は、RNAである、または前記核酸はDNAである、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項27】
前記生物学的試料は、ウイルス、バクテリア、酵母菌、組織細胞または有機分子を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項28】
前記生物学的試料は、ウイルスを含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項29】
前記ウイルスは、COVID-19(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる)、後天性免疫不全症候群(AIDS、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる)、ヘルペス、水疱瘡、はしか、インフルエンザ、単純ヘルペス、水疱瘡ウイルス(VZV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、コロナウイルス、ロータウイルス、肝炎、性器いぼ(ヒトパピローマウイルスまたはHPV)およびBKウイルスから成る群から選択される、請求項28に記載の方法またはデバイス。
【請求項30】
前記バクテリアは、結核菌(TB)またはブドウ球菌の群から選択される、請求項27に記載の方法またはデバイス。
【請求項31】
前記捕捉された生物学的試料の最終液体体積は、250μL、125μL、100μL、80μL、60μL、40μL、20μLまたはそれ未満の最終液体体積である、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項32】
LAMP、RT-PCR、LC、LC-MS、GC、GC-MS、MS、IR、UV、FTIRまたはNMRによって前記生物学的試料を分析するステップをさらに含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法またはデバイス。
【請求項33】
ユーザの呼吸気から生物学的試料を採集して生物学的試料中の標的を検出するための、請求項3から26のいずれか一項によるデバイスの使用。
【請求項34】
前記デバイスの複数の使い捨て要素および/または前記生物学的試料を処理するための試薬を備える、請求項1から33のいずれか一項によるデバイスを備えるキット。
【請求項35】
前記使い捨て要素は、前記採集管と、前記乱流誘発器と、前記採集チャンバと、任意選択でプラスチックマウスピースカバーとを備える、請求項34に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸気から生物学的試料を捕捉し処理するためのデバイス、方法およびキットに関し、とりわけ液体、微粒子または蒸気である生物学的試料を捕捉するためのデバイス、方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスおよび他のマーカーの検出のための試料採集は、とりわけ子供の場合に困難である場合がある。呼吸気試料は、わずらわしさが少なく、ウイルスに対してサンプリングするのに望ましい方法である。原則として、誰かがウイルスを放出し吐き出している場合、その人は、感染力を有し、ウイルス性の病気を拡散させる可能性がある。しかしながら呼吸気からの液体は、採集しにくい。現在の呼吸気液体採集は、個人の呼吸気を装置に入れるには時間と労力がかかる困難なプロセスである。加えて、呼吸気は一般に、唾液または鼻孔スワブ試料よりもより低いウイルス量しか含んでいない。
【0003】
現在の技法では、吐かれた呼吸気を迅速かつ効率よく捕捉するには限界がある。感染力について広く普及した迅速な検査を行う目的のために、呼吸気は、多数の人から迅速に採集される必要がある。多くの従来のシステムは、分析の前に5~10分の呼吸気が採集されることを推奨しており、これは典型的には1mLの液体の試料をもたらす。従来のシステムはまた、冷却を実現するために冷却スリーブを数回冷凍庫の中で冷却することを要求するため、そのようなシステムは大規模な使用にとって非実用的なものになる可能性がある。呼吸気採集のための他のデバイスは、同様の、またはより長いタイムラインを利用し、各々に少なくとも10分を必要とする。多くのそのようなデバイスは、1~2.4μL/sの液体しか呼吸気から採集することができず、これは多くの目的のための試料にとってあまりにも少なく、処理のために利用可能な液体生物学的試料を取り出し回収するためには、より大きな液体体積、例えば1mL以上が採集される必要がある。
【0004】
米国特許第7,118,537号は、採集の効率を改善するために、採集管を取り囲むスリーブが、例えば家庭用冷蔵庫で冷却され得る、呼吸気からの流体の試料を凝縮するためのデバイスを記載する。
【0005】
したがって、ウイルス分析、バクテリア分析、生物学的分析および化学的分析のために呼吸気試料から1分以下など迅速に液体粒子および蒸気を捕捉する必要性が存在する。呼吸気試料中に存在する液体の大部分(またはその全て)を迅速に捕捉し、検出のために処理するのに利用可能にする必要性がさらに存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
大まかに言えば、本発明は、ユーザがデバイスの中を通るように1回または複数回の呼吸気を吐き出す際、生物学的試料を凝縮または凍結させる表面とチャンバ空間とを備えるデバイス内で生物学的試料を捕捉することによって、例えば、液体粒子、エアロゾル粒子および/または蒸気の形態で生物学的試料を採集するための方法、デバイスおよびキットを提供する。捕捉は、接触すると水を固定化する凍結表面上で行うことができる。デバイス内のチャンバ空間は、液体呼吸気粒子および蒸気を凍結させてそれらを採集してもよい。採集された試料は、例えば、捕捉面の温度および採集と処理との間の時間に応じて、凍結試料、液体試料と凍結試料の組み合わせ、または液体試料であってよい。採集後、液体生物学的試料は例えば、排出、押し出し、スクレーピング、または遠心力によってバイアルの中に集められ採集される。液体は、採集され、ウイルス溶解試薬、内標準物質などの試料調整試薬と混合されてよい。採集後、試料は分析される。分析は、PCR、qPCR、RT-PCR、RT-qPCR、デジタルPCR、LAMPまたは任意の核酸検出方法、質量分析法、吸光分光分析法または任意の分析ツールまたは方法によって実行されてよい。核酸増幅試薬または関連する試薬は、アセトニトリルなどの溶解試薬を含んでもよい。
【0007】
第1の態様では、本発明は、ユーザの呼吸気から取得された生物学的試料内の標的を検出するための方法を提供し、方法は、ユーザがデバイス内に呼吸気を通すことを可能にするように適合された管と、管と流体連通し、捕捉面を有する採集チャンバであって、閉鎖端管である、またはバイアル内で終端する採集チャンバと、捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素と、捕捉面とユーザの吐かれた呼吸気との間の接触を高めるために呼吸気の流れが乱流になるようにするように、管内または管の周りに配設された乱流誘発器とを備える、呼吸気から生物学的試料を採集するためのデバイスを使用し、方法は、管の中に呼吸気を通すことによって、ユーザの呼吸気が採集チャンバの捕捉面上で凝縮または凍結する際に、生物学的試料を提供するステップと、任意選択で、分析のために液体生物学的試料を形成するために凍結した生物学的試料が溶けることを可能にするステップと、任意選択で、凍結した生物学的試料または液体生物学的試料を処理するステップと、ある体積の生物学的試料を分析して標的の存在を検出するステップとを含む。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、ユーザの呼吸気からの生物学的試料内の標的を検出するための方法を提供し、方法は、(a)被験者から少なくとも10秒の少なくとも1回の呼吸気を呼吸気採集デバイスに誘導するステップであって、呼吸気採集デバイスは、少なくとも1回の呼吸気の少なくとも一部を霜または氷として捕捉して、ある捕捉された体積を形成することが可能な採集チャンバを備える、ステップと、(b)捕捉された体積を処理して生物学的試料の1つまたは複数の成分を回収するステップと、(c)1つまたは複数の成分を分析して標的の存在を検出し、これにより被験者の呼吸気からの生物学的試料中の標的を検出するステップとを含む。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、ユーザの呼吸気からの生物学的試料内の標的を採集するためのデバイスを提供し、デバイスは、ユーザが自分の呼吸気をデバイス内に吐き出すことを可能にするように適合された管と、管と流体連通し、捕捉面を有する採集チャンバであって、任意選択で、閉鎖端管である、またはバイアル内で終端する採集チャンバと、捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素と、捕捉面とユーザ吐かれた呼吸気との間の接触を高めるために呼吸気の流れが乱流になるようにするために管内または管の周りに配設された乱流誘発器とを備え、ユーザの呼吸気からの生物学的試料は、採集チャンバの捕捉面上で凝縮または凍結する。
【0010】
場合によっては、管は、ユーザがデバイス内に息を吐き出すための第1の端部を有し、採集チャンバは、内部捕捉面を有するバイアルであり、バイアルは、管の第2の端部の上に配設され、呼吸気の流れは、バイアルの内壁の周りで逆向きになることで、生物学的試料は、捕捉面上で凝縮または凍結する。採集チャンバは、管の一端であってよい、または管は、バイアル(例えば、採集された試料の処理を促進するための取り外し可能なバイアル)を組み込んでもよい。
【0011】
追加で、または代替として、デバイスは、捕捉面とユーザの吐かれた呼吸気との間の接触を高めるために呼吸気の流れが乱流になるようにするために管内または管の周りに配設された乱流誘発器をさらに備える。これは、乱流誘発器を利用して達成されてよい。乱流誘発器は、例えば、インサートなどの、管または採集チャンバとは別個の構成要素であってもよい、あるいは、上を通る呼吸気の流れが乱流を誘発するように影響を与える構造(例えばでこぼこした表面または突起)を有する管または採集チャンバによって提供されてもよい。
【0012】
本明細書にさらに説明されるように、一部の例では、採集チャンバは、注射筒であり、管は、注射筒に嵌合し、乱流誘発器は、管の外面の周りに嵌合する。
【0013】
場合によっては、管は、第1の端部において開放することで、ユーザがデバイスの中に息を吹き込むことを可能にし、第2の端部に向かう壁を備えることで、ユーザの呼吸気を捕捉面の上に偏向させて、捕捉面とユーザの呼吸気との間の接触を高める。
【0014】
追加で、または代替として、バイアルおよび/または管は、取り外し可能であることで、生物学的試料の処理を促進する、あるいはバイアルおよび/または管の交換を通して複数回使用のデバイスを提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、ユーザの呼吸気から生物学的試料を採集するためのデバイスを提供し、デバイスは、ユーザが自分の呼吸気をデバイス内に吐き出すことを可能にするように適合された管と、管と流体連通し、捕捉面を有する採集チャンバであって、任意選択で、閉鎖端管である、またはバイアル内で終端する採集チャンバと、捕捉面とユーザの吐かれた呼吸気との間の接触を高めるために管内に配設された乱流誘発インサートと、捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素とを備え、ユーザの呼吸気からの生物学的試料は、採集チャンバの捕捉面上で凝縮または凍結する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、ユーザの呼吸気から生物学的試料を採集するためのデバイスを提供し、デバイスは、ユーザが自分の呼吸気をデバイス内に吐き出すことを可能にするように適合された管と、管と流体連通し、捕捉面を有する採集チャンバと、捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素とを備え、ユーザの呼吸気からの生物学的試料は、採集チャンバの捕捉面上で凝縮または凍結し、管は、第1の端部において開放することで、ユーザがデバイスの中に息を吹き込むことを可能にし、管は、第2の端部に向かう端部壁を備えることで、ユーザの呼吸気を捕捉面の上に方向を変えて捕捉面とユーザの吐かれた呼吸気との間の接触を高める。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、ユーザの呼吸気から凍結した生物学的試料を採集するためのデバイスを提供し、デバイスは、ユーザが呼吸気をデバイス内に吐き出すことを可能にするように適合された管と、管と流体連通し、50cm2未満の表面積を有する捕捉面を有する採集チャンバと、約-10℃(任意選択で約-20℃)から約-40℃の間の温度まで捕捉面を冷却することが可能な冷却要素とを備え、ユーザの呼吸気からの生物学的試料は、約10から120秒の間採集チャンバの捕捉面上で凝縮または凍結することで、約20μLから250μLの間、任意選択で180μLの体積を有する生物学的試料を提供する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、ユーザの呼吸気から凍結した生物学的試料を採集するためのデバイスを提供し、デバイスは、ユーザが呼吸気をデバイス内に吐き出すことを可能にするように適合された管と、管と流体連通する採集チャンバと、捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素とを備え、捕捉面は、約-10℃(任意選択で約-20℃)から約-40℃の間の温度まで冷却される、および/または採集チャンバは、50cm2未満の表面積を有する捕捉面を有する、および/またはユーザの呼吸気からの生物学的試料は、約10から120秒の間採集チャンバの捕捉面上で凝縮または凍結することで、約20μLから180μLの体積を有する生物学的試料を提供する。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、ユーザの呼吸気からの凍結した生物学的試料または凝縮した生物学的試料を採集して生物学的試料中の標的を検出するための、本明細書で定義されるようなデバイスの使用を提供する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるようなデバイスを備えるキットを提供し、キットは、生物学的試料を処理するためのデバイスの複数の使い捨て要素および/または試薬を備える。使い捨て要素は、採集管と、乱流誘発器と、採集チャンバと、任意選択でプラスチックのマウスピースカバーを備えてよい。
【0021】
本明細書で使用される「および/または」は、2つの指定された機構または構成要素の各々が、他方を伴う、または他方を伴わない、特定の開示としてみなすべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、ちょうど各々が本明細書で個別に並べられているように、(i)A、(ii)B、および(iii)AとB、のうちの各々の特定の開示としてみなすべきである。
【0022】
文脈がそうでないことを指定していなければ、上記に詳述される機構の記載および定義は、本発明の任意の特定の態様または実施形態に限定されるのではなく、記載される全ての態様および実施形態に等しく適用される。
【0023】
本明細書で言及される参考文献の全ては、その全体が参照として明白に組み込まれている。
【0024】
本発明を添付の例および図面を参照して、限定ではなく、一例として以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ストローによって呼吸気をバイアルの中に取り込むことによって、ペルティエ素子を使用してバイアル内の生物学的試料を凍結させ、水エアロゾル粒子および蒸気が捕捉される、本発明のデバイスの概略図である。
【
図2】生物学的試料が液体および/または氷としてバイアルの内側で捕捉された、呼吸気がストローの端部を通り抜けてバイアルの内側にどのように流れるかを示す、
図1に示されるデバイスの拡大部分の図である。
【
図3】呼吸気が、垂直ストローを通って、改変された注射筒から作り替えられたプラスチック、金属またはガラス製の管バイアル内に取り込まれる、本発明のデバイスの一実施形態の図である。空気流は、管バイアルの端部付近で逆向きになり、乱流誘発器の中を通過することで壁表面との接触を増大させる。
【
図4】
図3のデバイスの図であるが、呼吸気入口が垂直ではなく水平である。水平管は、液体トラップを含んでもよい。
図3および
図4の呼吸気入口は、マウスピースを包含してもよい。
【
図5a】余分な液体の方向を変えることによって、採集した液体の全体積を均一にするプランジャの図である。
【
図5b】余分な液体の方向を変えることによって、採集した液体の全体積を均一にするプランジャの図である。
【
図6】スタック式のペルティエ採集冷却器および反応ヒータの図である。
【
図7】従来の管と比較した、本発明の管バイアルからの液体の採集を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
水蒸気および水エアロゾル微粒子は呼吸気の中に存在し、管の温度が水の凍結点をかなり下回ったときに管またはバイアルの壁の上に液体および/または氷/霜として堆積され得る。本発明のデバイスでは、管またはバイアルの壁は、典型的には-10℃、-15℃、-20℃から-40℃まで、またはそれより低い範囲内である温度に維持されることが可能な採集面を含む。これは、呼吸気中の水蒸気、微粒子、および/またはエアロゾル粒子は、採集チャンバの捕捉面上に堆積され、そこで、それらは固体になり、本発明のデバイス内に氷の結晶を形成する可能性がある、あるいはそうでなければ、例えば液体の液滴として低温の捕捉面上で凝縮する場合もある。
【0027】
有利には、呼吸気凝縮液を迅速かつ効果的に採集するために、例えば、採集チャンバを、管またはストローと流体連通させ、その管またはストローを通してデバイスのユーザが息を吐き出すことができるように配置することによって、凍結面が吐き出された空気に対して接触可能である必要がある。好ましくは、デバイスは、捕捉面が極低温温度に維持されることで、霜が採集チャンバの捕捉面上で採集されるとき、その表面で霜の温度が上昇し、潜在的にさらなる水分の採集を妨げ、場合によっては一貫性のない採集につながる現象を最小限にすることができるように適合される。捕捉面が、採集が行われる前に、周辺空気と接触するのを回避することで、採集した霜状の試料の一部が、ユーザの呼吸気からではなく、周辺空気から入ってくるのを阻止することも有利であり得る。この目的のために、場合によっては、好ましくは凍結している捕捉面は、デバイスの試料が採集面に取り込まれるまで周辺空気から遮蔽されることで、捕捉面が、ユーザによって吐き出された呼吸気内以外の空気と接触しないように保護される。例えば、本発明のデバイスでは、管またはストローは、障壁または遮蔽材を超えてデバイスおよび採集バイアル内に挿入可能であることで、凍結している捕捉面への呼吸気試料の送達を可能にする。管またはストローの挿入の前に、捕捉面は、呼吸気試料がデバイス内に取り込まれるまで、周辺空気から効果的に遮蔽されている。一実施形態では、捕捉面は、例えば、200μL以下の体積を有する、あるいは250μL以下の体積を有する試料の採集および処理を可能にする、凍結源から取り外されたとき試料から液体を採集する手段を備えた管状バイアルである。
【0028】
加えて、従来技術では、通常の呼吸気装置サンプリングで極めて小さい試料体積を採集することは極めて困難であり、大きな試料体積は、下流処理を可能にするために何分にもわたって採集する必要があるという結果を伴う。本発明のデバイスおよび方法は、2μL/sまで、より好ましくは3~4μL/sまでの試料採集率が可能である。採集後、生物学的試料は、液体として回収され、その後の処理を受けることができる。
【0029】
本発明のデバイスの採集構造は、バイアル、または端部においてバイアルに接続された管の形態を取ることができる。「バイアル」または「管バイアル」という用語は、本明細書において相互に入れ替え可能に使用される。本発明のいくつかの実施形態において、デバイスの採集構造は、管である。あるいは、デバイスの採集構造は、プランジャ筒が取り外され、注射器の底部が蓋で覆われている、または密閉された状態の注射筒である。装置の管および/またはバイアルは、平坦な、または湾曲などした、平滑な、またはでこぼこした表面であり、液体の採集を促進するために溝およびくぼみを含む場合がある極低温表面である。管および/またはバイアルの外側は、呼吸気が呼吸気用インサート管で内側に取り込まれる間冷却される。本発明のいくつかの実施形態において、呼吸気用インサートは、(使い捨て)ストローである。試料は管内に誘導され、バイアルの底部内に採集される。バイアルの凍結面は、呼吸気が取り込まれるまで周辺空気から保護される。遮蔽材が取り除かれ、凍結した呼吸気凝縮液が採集される。呼吸気は、口から層流でデバイスに進入する。デバイスのいくつかの実施形態において、層流は、呼吸気が低温の表面を横切って流れるときに乱流を生成するように中断される。乱流の導入は、呼吸気が採集管バイアルの遠位端において逆向きに流れるときに行われてよい。場合によっては、採集構造はバイアルであり、例えば、取り外し可能なバイアルであるが、管の場合は採集バイアルを組み込む。
【0030】
記載される本発明は、わずか10秒から最大2分までの呼吸気で分析およびウイルス検出のための十分な呼吸気を採集する。
【0031】
液体および凍結した凝縮液中で採集された物質は潜在的に、呼吸気中に存在するウイルス、バクテリア、核酸、有機化合物、揮発性無機化合物、タンパク質または生物学的物質を含む可能性がある。呼吸気中に存在するこれらの物質は、本発明のデバイスおよび方法によって採集されることになる。
【0032】
採集後、試料は分析される。分析は、増幅および/または標識付けし、その後検出し、任意選択で定量化するデバイスを利用して、核酸を検出するために採集された物質に対して行われてよい。他の検出デバイスおよび方法は、質量分析法、LC/MS、分光測光法、UVおよびVIS分光測光法、IR分光測光法、ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、シークエンシング、次世代シークエンシング、培養、コロニー計数法、等温およびサーモサイクリング核酸増幅、標識付けおよび誘導、ハイブリッド化、CRISPR、呼吸器官パネルなどを含む。当技法の用途は、呼吸気によって広がるウイルス感染およびバクテリア感染の検出、ならびに吐き出された化学物質に基づいた他の病気の検出を含む。極めて重大なことは、感染体が、人の口から吐き出された、または出てきた場合、定義上、その人は感染しているということである。ウイルスまたはバクテリアが、空気中の浮遊物または飛沫になり、別の人を感染させる可能性がある。当デバイスはそれ故、研究および/または診断のためのツールとして使用されてよい。
【0033】
本発明のデバイスの呼吸気取り入れ口または試料入口構造は、垂直、水平または垂直と水平の間であってよい。垂直の呼吸気取り入れ口は、水平が器具に対して90度であるならば、デバイス内にまっすぐ下に配置されてよい。取り入れ口が接続される採集管は、任意の配向で配置されてよい。デバイスのいくつかの実施形態において、水平または幾分水平の試料入口が採用されてもよい。幾分水平とは、呼吸気取り込みが水平から45度以内であることを意味する。デバイスのいくつかの実施形態において、垂直の試料入口が採用されてもよい。このデバイスは、呼吸気、気体としての水および液体微粒子を捕捉する。水平の形態は、唾液またはよだれを捕捉しないで呼吸気の捕捉を可能にする。水平であることに加えて、呼吸気取り入れ口は、唾液または極めて大きい液体粒子を捕捉するためにくぼみまたはトラップを含んでもよい。
【0034】
デバイスのいくつかの実施形態において、垂直の試料入口が採用されてもよい。垂直の取り入れ口は、口からの呼吸気が、装置の真上に配置され、呼吸気が装置内に下がるように誘導されることを意味する。幾分垂直とは、管構造が垂直から45度以内にあることを意味する。垂直または幾分垂直の呼吸気進入配向が有利であり得る。気体である水および小さい空気中の浮遊微粒子を捕捉することに加えて、大きな液体粒子、唾液または液滴も捕捉され得る。一部の人は、呼吸するとき、話すとき、または歌うときに唾を吐いたり、よだれを垂らしたりする。これは、人によって様々である可能性があり、一部の人は、呼吸するとき、話すとき、または歌うときに極めて大きな液滴を生成するのに対して、他の人は、極めてたくさんの液滴を生成する。デバイスのいくつかの実施形態において、呼吸気入口マウスピースは、息を吐くとき、および、話すときまたは歌うときに呼吸気を捕捉するように構築されてよい。本発明のいくつかの実施形態において、マウスピースは、唇の一部を覆うことで、呼吸すること、話すこと、および/または歌うことの組み合わせによってサンプリングを促進する。垂直、または幾分垂直の捕捉呼吸気入口は、空気中の浮遊微粒子および唾液微粒子を含む呼吸気ガス/液体、小さい呼吸気微粒子および大きい呼吸気微粒子を誘導する。
【0035】
垂直またはほぼ垂直の呼吸気取り入れ捕捉デバイスは、呼吸気ガス/液体、小さい呼吸気微粒子および大きい呼吸気微粒子、唾液およびよだれを捕捉することができ、よって、個人からの異なる形態の病気の放出の潜在的な感染力を測定し、その一方で、水平またはほぼ水平の呼吸気取り入れ捕捉デバイスは、捕捉するのを、呼吸気ガス、および呼吸気の中に留まるのに十分大きな液体粒子に限定することになる。
【0036】
液体微粒子がどのように空気中に取り込まれるか、またはどんなタイプの液体微粒子がどのように捕捉されるかに関わらず、本発明のデバイスは、研究および/または診断のためのツールとして使用されてよい。例えば、特定の人のウイルスの感染力は、ウイルスの感染能力だけでなく、ウイルスを放出し、別の人にウイルスを運ぶその人の程度にもよる。公衆衛生の安全性は、人混みにおける感染した個人の存在よりも、人混みにおける感染力が高い個人の存在によってより大きく影響を受ける。水蒸気および粒子の捕捉および採集は、効率的かつ有効である。採集は、容易であり、これは処置が、最小限の労力で、かつ呼吸気試料を提供している人を不快にさせることなく、迅速に行われることを意味する。
【0037】
呼吸気からの液体採集に加えて、試料液体は、周辺空間から採集されてもよい。空気がデバイスを通るように汲み上げられて、部屋または建物の周辺空気、あるいはさらには建物の外の周辺空気中に存在する可能性のある物質を採集し検出してもよい。
【0038】
定義
効率的な捕捉または採集は、呼吸気試料中に存在する水蒸気および液体の大部分または全てが捕捉されることを意味する。
【0039】
効率的な捕捉または採集は、10分未満、5分未満、2分未満または1分未満で試料を処理するために試料の採集および準備で、採集処置を迅速に行うことができることを意味する。
【0040】
採集が容易とは、処置が、最小限の労力で、かつ呼吸気試料を提供している人を不快にさせることなく、迅速に行われることを意味する。
【0041】
本発明の装置内の採集バイアルは、液体を、採集された試料から直接採集することができる任意のタイプの閉鎖管または閉鎖構造である。本発明の管状バイアルは、試料から液体を採集するための手段を有する。呼吸気からの液体をバイアル中で合体させ採集するのに重力、スクレーピング、勢いまたは遠心力を含めた任意の方法が使用されてよい。
【0042】
本発明の装置/デバイスの採集管は、液体を、採集された試料から直接採集することができる任意のタイプの管または構造であってよい。場合によっては、採集管は、閉鎖端管であってよい、またはバイアル内で終端してもよい。
【0043】
霜状のまたは凍結した呼吸気は、本発明のデバイスおよび方法において吐かれた呼吸気から採集される任意の水蒸気または水のエアロゾルとして定義される。採集された水は、大部分が、または部分的に固体であり得るが、一部の部分は、液体の形態であってもよい、またはデバイスが低温源から取り外されたとき、または試料採集が進みデバイスが温まったとき、迅速に溶解してもよい。
【0044】
極低温温度は、-10℃以下として、または呼吸気蒸気または呼吸気液体粒子の少なくとも一部を氷または霜として捕捉するのに十分低温であるように、すなわち、凍結した、または幾分凍結した試料を提供するのに十分低温であるように定義されてよい。極低温温度は、約-10℃から-40℃の範囲であり得る。
【0045】
採集バイアルは、呼吸気試料からの液体が、採集、追加の処理または貯蔵のために誘導され得るチャンバまたはバイアルとして定義される。
【0046】
人間の目には見えないけれども、水蒸気および水の微粒子は常に呼吸気の中に存在する。露点は、液体が呼吸気から凝縮液を形成する温度である。温度が、露点を下回り、凍結点を下回るとき、霜が採集されることになる。呼吸気の霜は、固体になり、本発明のデバイス内で氷の結晶を形成した、または低温の捕捉表面上で凝縮した水蒸気および微粒子である。本発明のデバイスおよび方法において、霜は、デバイス内に取り込まれるとき、水と、周辺温度または体温である空気から形成され採集される。
【0047】
本発明のデバイスおよび方法は、ウイルス分析、バクテリア分析、生物学的分析および化学分析のために呼吸気試料からのエアロゾル粒子および蒸気から容易に、効率的かつ効果的に液体状の水を捕捉する。効率的捕捉とは、呼吸気試料中に存在する水液体の大部分(または全て)が捕捉され、検出のために処理するのに利用可能であることを意味する。ウイルス、バクテリアまたは化学物質が存在する可能性のある呼吸気試料液体の全てを採集することが重要である。例えば大きな液体粒子などの、試料の最も容易に採集可能な部分のみが採集された場合、代表的な試料が採集されない可能性がある。
【0048】
本発明は、極低温表面温度(例えば、試料捕捉面または区域において)であるデバイスを使用するので、採集は一般に、採集プロセスの開始時により効率的であり、採集の効率は、採集された呼吸気の体積が大きくなり、試料が採集されるのにつれて低下する。形成された表面の氷、霜または液体は、表面の温度が温められ、それほど冷却することができない、またはそれほど迅速に冷却することができないため、採集の効率を下げることになる。加えて、本発明のデバイスは、一般に小さいため、これは、デバイスによって捕捉された水が、処理のためにより容易に合体され、採集されることを可能にする。デバイスが小さいことから採集デバイスの質量は小さいため、これは、液体の捕捉にとって不利に作用する。デバイスのサイズが小さくなるにつれて、採集することができる液体の量も小さくなり得る。呼吸気中の液体状の水の全てまたは大部分の捕捉は、10、15、20、25または30秒の間、あるいは1、2または3分の間のみ効率的であり得、その後低下することになる。しかしながら、このときまでに、所望の物質の検出のために十分な呼吸気液体および蒸気が採集される。捕捉された液体の全てが検出のために処理されてよい。場合によっては、本発明の方法は、例えば試料中に存在する標的の検出を可能にするために、捕捉された液体生物学的試料の全てまたは一部を処理するさらなるステップを含む。場合によっては、捕捉した液体試料の少なくとも25%が、下流処理のために使用される。いくつかの実施形態において、例えば、試料中に存在する標的の検出の感度を高めるために、試料の少なくとも50%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超える割合が処理される。
【0049】
水蒸気および粒子の捕捉または採集は、本発明のデバイスおよび方法において効率的であり、このことは、呼吸気試料中に存在する水蒸気および液体の大部分または全てが捕捉されることを意味する。水蒸気および水のエアロゾル粒子の捕捉または採集は、効率的であり、このことは、採集処置を迅速に行うことができることを意味する。試料の採集は、5分未満、2分未満、1分未満、45秒未満、30秒未満、20秒未満、15秒未満または10秒未満で行われてよい。処理のための試料の採集および準備は、10分未満、5分未満、または2分未満で行うことができる。採集および処置を迅速に行うことができる効果的な手段および検出プロセスは、試料採集の開始後すぐに、多くは、数分で、開始されてよい。検出プロセスは、10分未満または5分未満で始められてよい。これは、有機溶剤での試料の溶解を含む。PCR検出またはLAMP検出は、20分の速さで行うことができるが、この技法は、急速に進歩しており、検出時間はさらに短縮する可能性がある。
【0050】
本発明のデバイスの低温表面積は、少量の液体を捕捉し処理したいという要望のために、小さい。本発明のいくつかの実施形態において、液体が中に採集されるバイアルの容積は、5mL、4mL、3mL、2mL、1mL、0.5mL、0.2mL、0.1mL、0.05mLまたはそれ未満である。本発明のいくつかの実施形態において、氷が上に形成する低温表面積は、100cm2、75cm2、50cm2、40cm2、30cm2、20cm2、10cm2またはそれ未満である。採集面の温度は、試料が採集されるにつれて高くなり得るが、本発明のいくつかの実施形態において、低温面の最初の温度は0℃を下回る。いくつかの実施形態において、低温面の最初の温度は、-10℃、-15℃、-20℃、-25℃、-30℃、-35℃、-40℃、-45℃、-50℃、-55℃、-60℃、-65℃、-70℃、-80℃またはそれより低い場合がある。採集チャンバの捕捉面は、0℃と-80℃の間、-15℃と-70℃の間、または-20℃と-40℃の間に維持することができる。
【0051】
呼吸気の霜を迅速かつ効果的に採集するために、凍結面に容易に接触することができる必要がある。しかしながら凍結面が露出された場合、霜および液体は、不注意に周辺空気から採集される可能性がある。これを防ぐために、表面は、試料が表面に取り込まれるまで、例えば、遮蔽材で遮蔽される場合がある。しかしながら、ひとたび氷の採集が開始すると、表面上の採集された氷は、採集温度を高め、これは、さらなる採集の効率を下げることになる。さらなる採集は可能であるが、低温の内面温度を維持することができず上昇した場合、採集は、よりゆっくりとした速さで行われる可能性がある。
【0052】
加えて、呼吸気から入手可能な液体の極めて小さい体積のサンプリングは、通常の呼吸用装置サンプリングでは困難である。表面上の霜の形成は、さらなる霜の採集を阻止する。本発明のデバイスでは、極めて小さい体積の液体が採集され手際よく処理される。採集される液体の体積は、200μL未満、100μL未満、50μL未満、25μL未満、20μL未満、15μL未満、10μL未満または5μL未満であり得る。本発明のデバイスおよび方法では、10回未満の吐き出す呼吸気、すなわち9回、8回、7回、6回、5回、4回、3回未満または2回未満の吐き出す呼吸気から十分な液体を採集することができる。本発明のデバイスおよび方法では、1回の吐かれた呼吸気からでも使用可能な液体を採集することができる。1回の成人の吐かれた呼吸気からの使用可能な液体は、100μLを超えることがあり、一般には、20~80μLの範囲である、かなりの部分を捕捉することができる。
【0053】
これらの試料体積の捕捉を達成するために、本発明のデバイスの採集チャンバの容積は一般に、呼吸気試料を採集する従来技術のデバイスで使用されたものよりも小さい。場合によっては、採集チャンバの容積は、0.5mLから50mLの間、または1mLから30mLの間の容積、および5mLから20mLの間の容積、または以下の表に記載される容積である。
【0054】
【0055】
一例では、採集チャンバは、8.3mmの内径、0.54cm2の断面積、19.56cm2の表面積およびおおよそ4.06mLの容積を有する3mLの注射筒から考案される。入口管は、0.4cmの内径、0.54cmの外径を有する。乱流誘発器は、0.72cmの幅まで入口管の外側に延びるフランジで構成される。
【0056】
別の例では、採集チャンバは、1.18cmの内径、1.09cm2の断面積を有する6.8mLの内部容積を伴う5mLの注射筒である。採集チャンバの内部表面積は、22.24cm2である。入口管、および採集チャンバ内に挿入された入口管を取り囲む乱流誘発器は、この容積のおおよそ半分を占める。中心気道の内部容積は、0.32cm2の断面積を伴って1.9mLである。入口管は、7.9mmの外径を有し、乱流誘発器フランジは、10.75mmまで突出する。乱流誘発器の外側の採集管の断面積はそれ故、乱流誘発器の中心空気通路の内部の断面積よりわずかに大きい。断面積のこの差は、呼吸気がひとたび中心空気通路を離れた後の空気流中の増大した乱流を補償し、呼吸気が背圧なしで容易に流れ低温面に接触することを可能にする。使用のしやすさおよび捕捉の速度のために、これは、本発明の実施例の多くにおいて使用される。
【0057】
別の例では、10mLの注射筒が、1.45cmの内径、1.65cm2の断面積、30.52cm2の表面積および11.06mLの実際の容積を備えた採集チャンバとして機能する。この例のための入口管は1.0cmの内径と、0.79cm2の断面積とを有する。乱流誘発器上のフランジは、乱流呼吸気流れを誘発するために、1.4cmまで延びている。
【0058】
別の例では、35mLの注射筒が採集チャンバとして機能する。この注射筒は、2.29cmの内径、4.12cm2の断面積、43.12mLの容積および75.32cm2の表面積を有する。この例では、入口管は、1.5cmの内径、1.77cm2の断面積、18.5mLの容積および49.34cm2の表面積を有する。このより大きな形式の選択肢は、より小さい形態よりも低い初期効率を有するが、呼吸気を採集する数分間は効率があまり低下しない。
【0059】
本発明のデバイスでは、凍結する捕捉面は、バイアルまたは管状の固定具またはストローによって呼吸気に提供される。管またはストロー入口は、呼吸気が取り込まれデバイス内に提供され得るまで、周辺空気から効果的に遮蔽される。これは、ストローの端部に障壁を有することによって、または周辺空気がデバイスに容易に進入しないように十分に長いストローを単に有することによって達成することができる。
【0060】
デバイスの一実施形態において、捕捉面は、凍結源から取り外されたとき試料から液体を採集する手段を備えた管状バイアルである。
【0061】
本発明の装置の凍結バイアル、管または表面は、平坦または湾曲などした、平滑であるか、またはでこぼこしており、液体の採集を促進するために溝、そらせ板またはくぼみを含む場合がある。場合によっては、管は、金属、ガラスまたはプラスチックであってよく、バイアルまたは管の壁の厚さは5、3、2、1、0.05mmまたはそれ未満であってよい。バイアルの外側は冷却され、呼吸気が管またはバイアルの内部に取り込まれる。使い捨てのストローまたは管入口が使用されて、吐かれた呼吸気をバイアルに取り込んでもよい。試料はバイアル内に採集される。バイアルの凍結面は、呼吸気が取り込まれるまで、周辺空気から保護される。遮蔽材が取り外され、呼吸気の凍結した凝縮液および液体凝縮液が採集される。
【0062】
呼吸気の凍結した凝縮液および/または液体凝縮液内で採集された物質は、ウイルス、バクテリア、胞子、有機化合物、揮発性無機化合物、タンパク質、および任意の他の生物学的化合物または物質を含んでよい。
【0063】
採集した呼吸気液体は、核酸を検出するために分析されてよい。これは、増幅および標識付けによって行われてよい。それらは、LAMP、PCR、qPCR、RT-qPCRおよび次世代シークエンシングを含めた任意の他の検出デバイスを含む種々の方法によって定量化されてよい。他の検出デバイスおよび方法は、質量分析法、LC/MS、UV、IRなどを含む。当技法の用途は、吐き出された病原体が呼吸気中に存在した場合、定義によって被験者に感染力があるとする、それらの病原体によって広がったウイルスまたはバクテリア感染の検出、あるいは有機分子の検出を含む。デバイスは、診断または研究のためのツールとして使用されてよい。核酸試料は、RNAまたはDNAであってよい。好ましくは、標的核酸は、ウイルスであり、例えば、ウイルスは、COVID-19(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる)、後天性免疫不全症候群(AIDS、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる)、ヘルペス、水疱瘡、はしか、インフルエンザ、何らかのタイプの癌およびその他から成る群から選択される。他の例は、単純ヘルペス、水疱瘡ウイルス(VZV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、コロナウイルス、ロータウイルス、肝炎、サル痘、マールブルグ病、性器いぼ(ヒトパピローマウイルス(HPV))およびBKウイルスを含む。本発明を利用して検出され得るバクテリアの例は、結核菌(TB)またはブドウ球菌を含む。
【0064】
呼吸気からの液体採集に加えて、液体は、周辺空間から採集されてもよい。空気がデバイスを通るように汲み上げられて、部屋または建物あるいはさらには建物の外の周辺空気中に存在する可能性のある物質を採集し検出してもよい。
【0065】
霜を採集する管またはバイアルの冷却は、いくつかの異なる方法を用いて達成されてよい。これらは、これに限定するものではないが、ペルティエ冷却器、水凍結温度を下回る温度で液体を包含する循環式冷却器、循環式蒸発冷却器、圧縮した二酸化炭素などのガスを放出するデバイスにより冷却するデバイス、液体窒素またはドライアイスを包含する、もしくはこれらで処理されているデバイスおよび他の方法の使用を含む、極温冷却されている低温面を含む。
【0066】
本発明のデバイスは、試料を投入するために人がデバイスにやって来るスタンドアローン表面であってよい。デバイスは、口の前方または室内に設置されてよい。デバイスは、1つのサンプリング投入口、または並行して作動される複数のサンプリング投入口を有してよい。
【0067】
採集の期間は、数分である場合があるが、かなり迅速であり得る。本発明の一部の方法では、採集時間は、使用可能な氷および液体を採集するのに5分以下、3分以下、2分以下、60秒以下、45秒以下、30秒以下、15秒以下、10秒以下、またはさらには5秒以下である。
【0068】
試料採取および検出プロセスは、凍結、スクレーピング、または溶剤による氷の溶解、ならびに任意選択で溶解試薬を加え、その後の分析による採集を利用する。バイアルまたは管内に採集された試料は、遠心分離機にかけられて液体を合体させてよく、ピペットで移動させるために取り上げられてよい。試料は、遠隔式に採集され郵送されてもよい、または治療の地点で採集されてもよい。1つの試料が採集されてよい、または複数の試料が、並行して採集され、96ウェルサンプリング機器または384ウェルサンプリング機器において処理されてもよい。
【0069】
溶解または試料調整なしで直接ウイルスを捕捉し検出することが可能である。凍結による呼吸気採集は、ウイルスを安定した状態に保ち得、全ての化学物質を捕捉することができ、迅速に行うことができる。捕捉および処理は、70%を超える、80%を超える、または90%を超えるウイルス、バクテリアまたは化学物質を採集することができることから、再現可能に行うことができる。試料の全てを処理し、検出することができる。ウイルスの一部分は、検出され得る核酸を放出する場合がある。しかしながら、例えば、アセトニトリルなどの有機溶剤を加えることで、ウイルスを死滅または不活性化することで、採集した液体は、取り扱うのに安全になる。とりわけ増幅技術による、貯蔵および分析のための核酸試料の処理に有益な方法、デバイスおよびキットが、本発明者の同時係属の国際特許公報第2021/209564号(2021年4月15日に提出されたPCT/EP2021/059815)に記載されており、その全内容が、全体的に参照により組み込まれている。
【0070】
核酸のためのカラム試料調整を使用することができる。ウイルスタンパク質の酵素分解を使用して、検出前に核酸を放出させることができる。他の手法では、検出方法は、基本的に試料調整を伴うことはなく、核酸は、ウイルスまたは核酸を含有する他の物質から直接検出されてよい。他の有機物を、質量分析法および他の方法を利用して直接検出することができる。
【0071】
呼吸気からの少量の液体体積を処理することは難しく新規である。効率的な捕捉および操作により、検出は、高感度で迅速になる。分光分析およびクロマトグラフィ分析のための試料の調整はほとんど、またはまったくない。本発明の採集チャンバまたはバイアルは、採集後96ウェル構成または384ウェル構成の中に配置されてよい。試料の分析は自動化されてよい。試料は、質量分析計またはLC-MS、微小体積UV分光計または他の光吸収分光計の中に直接取り込まれてよい。核酸検出は、アセトニトリルなどの有機液体でのウイルスおよびバクテリア検出の溶解のみを必要とする。検出は、LAMP、RT-PCR、LC、LC-MS、GC、GC-MS、MS、IR、UV、FTIR、NMRまたは任意の分析技法を伴ってもよい。検出は、ループ介在等温増幅、全ゲノム増幅と多重置換増幅、ストランド置換増幅と切断酵素増幅反応、ヘリカーゼ依存性増幅、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅およびSIBA核酸シーケンスベース増幅および転写介在増幅で行われてよい。
【0072】
最も有益であるように、かつ感染性の安全マージンを提供するために、本発明の方法およびデバイスは、所与の状況に関して感染を引き起こす可能性よりも、10倍低いウイルスの放出率を検出し得る。例えば、学校の教師または生徒は、彼らが1分当たりおよそ600のウイルス粒子を放出している場合、感染力を有することになる。この方法を使用して、各生徒から30秒の呼吸気を採集し、ウイルス量を評価することができる。ウイルス量が300を超えた場合、この被験者は、感染力を有するとみなされ、したがって本発明は、この試料から30を超えるウイルス粒子を報告することになる。飛行機または電車での旅行など最も影響を受けやすい状況の場合、本発明の方法は、丸々1分の呼吸気を検査し、わずかに5ウイルス粒子しか検出しない場合がある。
【0073】
多くのLAMP研究は、100ウイルス粒子の範囲内で検出の限界(LOD)を示してきたが、この感度を2~3ウイルス粒子を検出するレベルまで高めるために種々の技術が利用可能である。本発明は、蛍光検出を含む従来技術を取り入れることで、感度および特異性を高めることができる。アセトニトリルなど新規のウイルス溶解試薬は、ウイルス核酸の回収を高め、感度をさらに高めることになる。
【0074】
極めて少ない体積の場合、全試料が採集され処理されてよい。検出は、定量性であってよい、あるいは物質が、規定された検出限界を上回って存在する、または下回って存在することについての簡単な「はい」、または「いいえ」であってもよい。サンプリングは迅速であってよく、すなわち、サンプリングの時間は、4分、3分、2分、1分、45秒、30秒、20秒またはそれ未満であってよい。
【0075】
一部の例では、吐かれた呼吸気の数は、1回の吐かれた呼吸気の捕捉、2回の吐かれた呼吸気の捕捉、3回の吐かれた呼吸気の捕捉、または1~10回の吐かれた呼吸気の捕捉に制限されている。
【0076】
本発明では、少量の液体体積が呼吸気から採集され処理されてよく、すなわち500μL、400μL、300μL、200μL、100μL、80μL、50μL、40μL、30μL、20μLまたは10μLあるいは5~100、10~100、15~300または20~100μLの範囲内であってよい。
【0077】
呼吸気液体粒子および蒸気は、-10℃、-15℃、-20℃、-25℃、-30℃、-35℃、-40℃、-45℃、-50℃、-55℃、-60℃、-65℃、-70℃、-80℃またはそれより低い表面温度を利用する管バイアルで霜または氷および液体として捕捉される。捕捉は、試料が採集されるのと同時に冷却面から熱を取り去る能動的な冷却デバイスで行われてよい。
【0078】
捕捉デバイスの端部は、封鎖されてよく、空気は、バイアル、管または注射器を通過することはない。端部が封鎖されるため、呼吸気捕捉デバイスは、デバイスを通る流れを逆向きにする、または変化させる。逆向きの呼吸気の流れは、低温面までの拡散距離を小さくする。空気流は、層流または乱流であってよい。粒子および蒸気からの呼吸気液体は、バイアルドレイン内に直接堆積する、またはバイアル内に直接排出される。捕捉された液体を包含するバイアルは、処理および核酸検出を含む検出のために直接使用されてよい。バイアルは、溶解溶剤を包含してよい。バイアルは、増幅試薬を包含してもよい。
【0079】
ペルティエデバイスまたはバイアルの極冷却および凍結が
図1に示される。周辺空気は、遮蔽材10およびフリーザーカバー14によってデバイスから遮蔽されている。採集バイアル30は、ペルティエデバイス18によって直接冷却される。採集バイアル30は、金属またはプラスチックまたは別の材料あるいは材料の組み合わせであり得る。呼吸気が吐き出され、ストロー12によってデバイス内に取り込まれ、液体エアロゾル粒子および蒸気が採集バイアル30内で捕捉される。デバイスは、採集バイアル30の壁を極冷却することで、試料が迅速に採集される。しかしながら、デバイスの容量は限られている。ヒートシンク20が、ペルティエデバイスの高温側から熱を奪い、ファン22が空気を吹き出してヒートシンクを周辺温度まで冷却する。
【0080】
図2は、方向24に流れている呼吸気を採集バイアル30内に取り込むことができることを示している。空気流は、バイアルの底部で逆向きになり、その後、採集バイアル30の壁に沿って移動する。流れは層流であってよい。乱流空気流は、採集速度および採集量を増加させる。乱流誘発器26が、本明細書に示されるように入口管13の外側に配置されてよい、または採集バイアル30の内面上に配置されてもよい。乱流の方向は、矢印27によって示されており、直線であってよい、および/または不規則であってよい、あるいは異なる方向の旋回運動を取り入れる場合もある。氷および液体28が、壁のところで採集バイアル30の内側で採集される。
【0081】
図3は、注射筒34と、閉鎖端38を備えたバイアルから形成され、基本的に、注射筒全体を端部における液体の採集を伴うバイアルにしているデバイスを示す。銅管または金属管40がペルティエデバイス18の頂部に配置されて、注射筒34および閉鎖端バイアル38を冷却する。呼吸気が、垂直管32で取り込まれる。垂直管32の入口は、管の周りに唇を配置するために円形であってもよい、あるいは口がその中に、またはその上に配置され得るマウスピースであってもよい。管32内への空気呼吸流は、閉鎖端バイアル38の端部付近で逆向きになり、乱流誘発器26の中を通って、注射筒34の内壁面およびその空間ならびに閉鎖端バイアル38との接触を増大させる。霜および液体を重力排出、溶剤洗浄、遠心力によって採集することができ、またはプランジャが注射筒34に挿入されてよい。例えば、迅速なプランジャのスクレーピング運動を使用して、液体を閉鎖端バイアル38の中に押し込んでもよい。迅速なプランジャ運動が使用される場合、閉鎖端バイアル38が緩められて、液体を逃がすことなく、空気の通気を可能にし得る。ヒートシンク20およびファン22は
図1に示されるようなものである。
【0082】
図4のデバイスは、
図3に示されるものと全て同じ機構を有する。水平の呼吸気入口33が、垂直の呼吸気入口の代わりに使用される。水平管は、液体トラップ(図示せず)を含んでよい。水平呼吸気入口33の進入口は、管の周りに唇を配置するために円形であってもよい、あるいは口がその中に、またはその上に配置され得るマウスピースであってもよい。
図5aおよび
図5Bは、注射筒の中で採集された液体の体積を標準化するのに使用されるデバイスを示す。
図5aは、注射筒34から閉鎖端バイアル38内に液体47を採集する改変されたプランジャ41を示す。頂部逆止弁43を備えたリリーフ管45が、改変プランジャ41が挿入されたとき、空気が改変プランジャ41内に進むことを可能にする。採集された液体47は、スクレーパで擦られて閉鎖端バイアル38の中に排出される。
図5bは、改変プランジャ41の注射筒34および閉鎖端バイアル38内へのさらなる下方運動を示す。頂部逆止弁43を備えたリリーフ管45が今度は、改変プランジャ41が挿入されたとき、液体が反対方向に進むのを許さずに、プランジャ41内を通過することを可能にする。余分な液体44は、採集された液体49のうちの所定の量のみを閉鎖端バイアル38内に残して、プランジャの中を通って進む。閉鎖端バイアル38は、さらなる処理のために液体にアクセスするために取り外され得る。
【0083】
脚部60によって支持された採集冷却器54および反応ヒータ52を備えたスタック式のペルティエ58が
図6に示される。単一のペルティエウェハは、必要とされる極凍結温度を達成するであろう。しかしながら熱電気モジュールウェハを積み重ねることで、熱がモジュールの他方の側から効率的に除去されたならば、冷却能力を高めることができる。反応ヒータモジュール52の高温側を使用して、反応ブロックを加熱することができる。熱はヒートシンク20およびファン22によって取り除かれる。例えば、デバイスの加熱された側を使用して、検出LAMP混合物を65℃に維持することによってLAMP検出を実現してもよい。
【0084】
図7は、直線64で示される従来のEBC採集管と比較して、曲線62での本発明の注射器およびバイアルからの液体の採集を比較する。図面は、図面中で本発明のデバイスにおいてと、従来のデバイスにおいての液体エアロゾル微粒子および液体蒸気の採集の違いを示す。従来のデバイスは、液体として呼吸気を捕捉するための大きな容量を有するが、この容量は液体を採集し処理することが可能であるためにも必要である。本発明のデバイスおよび方法は、迅速に採集するが、デバイスが小型であるため、採集の速度を素早く下げる。図面は、本発明の指数的な採集62と、従来のデバイスの線形採集64とを示す。本発明のデバイスで採集することができる液体の総量は低いが、十分な液体を迅速に採集することができる。指数的採集は、最初は急速であり、次いで横ばい状態になる。急速な採集が可能であるが、採集は、氷および液体を、採集した呼吸気または低温表面領域から絶縁することによって、急速に速度を落とす。加えて、表面は、周辺液体蒸気が氷として採集されるのを阻止し、呼吸気液体および蒸気のさらなる捕捉を阻止するかその速度を落とすために遮蔽される必要がある。本発明のデバイスの容量は、従来技術のデバイス、R管および他のデバイスに対して小さいため、周辺空気からの液体の捕捉は、追加の呼吸気液体粒子および蒸気を捕捉する機能を低下させることになる。
【0085】
ウイルスおよびバクテリアを検出するための完全なプロセスへのワークフローステップは、霜凍結および/または液体捕捉、任意選択で有機溶剤による溶解および追加の試料クリーンアップなしでの直接検出を含む。有機溶剤は、ウイルスを殺し非活性化することで、感染する能力を持たなくする。本発明のワークフローは、RNA、DNA、化学物質、タンパク質、炭水化物、ウイルス、バクテリア、胞子および全ての生体分子を検出し得る。
【0086】
可視検出または蛍光検出が使用されてよい。高い感度のために、デジタルPCRが使用されてもよい。検出は一度に1つの試料であってよい、または複数の試料が並行してもよい。いくつかの実施形態において、グループが検査される。
【0087】
試料処理および報告は、器具を使用して、または携帯電話もしくはスマートフォンを使用して行われてもよい。
【0088】
検出および報告は、提示された試料に関連付けられたスマートデバイスで、および身元確認と共に被験者の電話で行われてもよい。被験者のスマートデバイスは、報告機構を使用して試料を特定の人に関連付けるためにスキャンバーコード、QRコード(登録商標)で試料を提示してもよい。「はい」または「いいえ」の報告を、安全であるような距離でガイダンスを与える報告と共に与えることができる。高度な感染力を有する個人が存在していた場合、最初の報告はLAMP報告で提供することができるが、LAMP分析は、低い感染力でも、「はい」と、「いいえ」の回答を提供し続けることができる。この技法は、室内、飛行機または何らかの内部空間におけるウイルス、DNA、RNA、バクテリアまたは有機化学物質の量を定量化することができる。
【0089】
能動的冷却は、試料が採集されている間に冷却を加えるプロセスとしてここでは定義されている。能動的冷却の例は、塩氷、ドライアイスの溶解またはペルティエ冷却器を含む。低温貯蔵庫は、それ自体の温度が上昇する間、別のものを冷却する低温物体である。例は、低温(凍結していない)飲料、または金属のブロックを冷蔵庫または冷凍庫の中に維持して保持することを含む。一部の例では、デバイスは、低温の貯蔵庫を-10℃、-20℃、-25℃、-30℃、-40℃、-50℃、-60℃、-70℃または-80℃で利用してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、エタノールまたは極めて低い凍結温度を有する別の液体が、バイアルと冷却デバイスとの間の熱伝導を促進し得る。他の実施形態では、冷却面は、バイアルに当接してぴったり嵌合してもよい。
【0091】
カメラ、インターネット接続を装備し、アプリケーションを稼働することが可能な任意のスマートフォンまたはスマートデバイスをデータ分析および報告に使用することができる。カメラは、陽性結果を示す色または蛍光の変化に対して反応管を継続してモニタする。アプリケーション(アプリ)は、カメラからのデータを処理し、関係者に報告する。
【0092】
携帯電話のカメラは、例えば96のバイアル位置を継続してモニタし、蛍光管、非蛍光性または空のウェルのいずれかとしてそれらを識別してよい。アプリは、新しい管がラックに加えられた時間を記録し、蛍光が検出するのに十分な明るさになった時間を記録する。処理能力に応じて、アプリは、個々のウェルから経時的に明るさを定量化し、蛍光の最大の増加の時間を計算してもよい。いずれの時間点も試料中のウイルス量を推定することができる。開始および終了時の両方をモニタリングすることによって、各管が加えられるとすぐにモニタリングが開始するような状態で、異なる試料が並行して独立して管理されてよい。所定の終わりの時点において、例えば1時間蛍光がない場合、試料は、陰性とみなされる。試料が蛍光を発した場合、それは陽性とみなされる。
【0093】
ひとたび陽性または陰性結果が判定されると、種々の事前定義されたグループに自動的に通知されてよい。検査被験者は典型的には、アプリを通して、またはアプリによって生成されたテキストメッセージを介してのいずれかでメッセージを受信する。メッセージを受信するために、検査被験者は、自分の連絡情報を入力し、検査に関してインフォームドコンセントを示す必要がある。所与の期間の間同じ場所で検査を受けた他の人もまた、自分が暴露されていることを警告されてよい。ウイルス量が定量化された場合、暴露のレベルを推定することができる。位置追跡の技術的能力に応じて、暴露は、より正確に推定される場合がある。例えば、検査を受けた人は、「あなたは、1分当たり10,000のウイルス粒子を放出している人の1メートル以内に30分滞在していたと思われます。あなたの感染リスクは50%です」というメッセージを受け取り得る。検査被験者は、マスクを装着するようにアドバイスされ得る。
【0094】
データはまた、検査を行っている組織ならびに地方の保健職員にも送信され得る。検査が映画館または空港で行われた場合、映画館または空港は、利用者を保護する行動を取り、衛生措置に従うことができるように通知され得る。とりわけ空港は、被験者が既に飛行機に搭乗しているかどうかに応じて行動を取るように特定のフライトを管理している人を含め、航空会社にさらに連絡してもよい。目的地の空港にも、飛行機が乗客を降ろす際、潜在的な暴露のための準備を行うように、予め連絡され得る。企業は、従業員の検査状況をアプリ上で公に入手できるようにすることを選択してもよい。例えば、「レジ係のスティーブが午前10時30分に検査の結果陰性であった」などである。
【0095】
データはまた、所望であれば地方の保健機構または研究者に報告されてもよい。検査が広く使用され記録された場合、それらは、無症状のモニタリングのために統計学的な試料の増大する集団に加えられてもよい。
【0096】
検査被験者は、検査のときに報告するために個人の連絡情報ならびに同意を提供してよい。一例では、電話番号は、独自の識別子であり、また接触を行うのに簡便な手段であるため、使用されてもよい。検査被験者はまた、より詳細な情報のためにアプリをダウンロードしてもよい。ユーザがアプリを使用しないことを選択した場合、このユーザは、自分の検査結果に関するテキスト通知ならびに暴露の可能性がある場合の通知を受け取ってもよい。ユーザがアプリを使用することを選択した場合、このユーザは、自分の検査の現在の状況ならびに公に入手可能な検査データにアクセスしてもよい。進行中の検査は、ウイルス量が低下する可能性があるという観点で表される場合がある。例えば、40,000という高いウイルス量は、10分後に陽性結果を示す可能性があるので、10分で陽性結果が出ない場合、アプリは、ウイルス量が40,000未満であることを報告することができる。時間が進むにつれて、この可能な最大のウイルス量は低下することになる。これらの数はまた、他の人と共に安全に過ごすことができる時間および距離の点で表すこともでき、例えば、「あなたは、誰かから約180cm(6フィート)離れて1時間話すには安全であり、あなたは、誰かから約90cm(3フィート)離れて1時間立っているには安全である」などである。
【0097】
時間は伝染の可能性およびウイルス量の両方の関数であるため、「安全な距離」が計算され得る。検査の開始から時間が進むにつれて、可能なウイルス量は、陽性結果が検出されなければ指数的に低下する。アプリは、可能な最大のウイルス量をリアルタイムで計算し、被験者がその時間期間の間安全に維持することができる最短距離を導き出してもよい。例えば、アプリは、「あなたは5フィートつまり1.5メートル他の人から離れて安全に立つことができる!」とリアルタイムで表示してもよい。
【0098】
専門家は、わずか300のウイルス粒子がSARS-CoV-2の感染を引き起こすのに十分であると考える。COVID患者は、1分当たり60~25,000のウイルス粒子を吐き出しており、伝染の広範囲の可能性につながると報告されている。1人の人から別の人への伝染の可能性は、ウイルスを放出している量、感染力を有する人と被験者との間の距離、接触していた時間、および彼らが一緒にいた可能性のある部屋の容積に左右される。これらの要因は、以下の式で表すことができる。
【数1】
(ウイルス暴露はウイルス粒子数、放出率はウイルス数/分、時間は分、距離はデシメートル、体積はリットル)
【0099】
この式を使用して、時間、距離、部屋の容積の所与の条件下で、別の人を感染させるのに必要とされるウイルス放出率を特定することができる。例えば、大型のスーパーマーケットにおいて1時間の間2メートルの距離を維持する人は、その人が、極めて高いレベルとみなされる1分当たり少なくとも40,000ウイルス粒子を放出していなければ、別の人に感染させることはない。対照的に、中規模サイズの教会の中で1時間の間別の人から50cmのところに座っている人は、その人が1分当たり300ウイルス粒子しか放出していない場合でも、感染させる可能性がある。長い電車または飛行機旅行をしている乗客は、1分当たりわずか52ウイルス粒子の放出率で、12時間の行路にわたって自分たちの感染を広げる可能性がある。
【0100】
ウイルス量の定量性の研究は、サンプリングが呼吸気、唾液または鼻咽頭スワブのいずれであっても、ウイルス量が感染の最初の数日間でピークとなる傾向があり、その後、数日にわたって先細りする前に、より低いレベルに降下することを指摘した。目下のところ、一般大衆は、自分の感染レベルを推定する手段を持たず、用心のために、10から14日間隔離されたままにすることが奨励される。迅速で、簡便で、手頃な定量性検査は、回復しつつある患者が自分自身の感染レベルを推定すること、または大きなグループにおける無症状の拡散に関してスクリーニングすることを可能にすることができる。
【0101】
一部の態様では、本発明は、感染原因物質が、ウイルス、バクテリアまたは菌類などのいずれであっても、その感染原因物質が吐き出された病気を検出することであってよい。あるいは、他の態様では、本発明は、診断を発展させるための研究ツールとして使用されてもよい。
【0102】
試料は、呼吸気液体粒子を霜または氷として捕捉するために、5分未満採集されてよい。捕捉は、呼吸気を採集し、その後液体を合体させるためにバイアルまたは管内で行われる。バイアルの使用は、液体を遠心分離機にかけ、合体させ、その後検出デバイスにピペットで移すのに簡便である。このプロセスは、自動化されてもよい。霜を採集するための注射器管の使用は、液体を合体させ、処理バイアルまたは検出デバイスの中に堆積させるのに簡便である。
【0103】
呼吸気は、使い捨てストローなどのデバイス内に誘導され、使い捨てバイアルまたは管内に採集されてよい。いくつかの異なる乱流誘発器が使用されて、呼吸気が低温面と最適に接触し得るように呼吸気を誘導してもよい。一部の例では、低温面は、3または5mL注射筒の内面である。これらの例では、注射器は、先端が密閉され、乱流誘発器を注射器に挿入することができる。一例では、3mLの注射器の内部筒は、長さ6.5cm、内径0.9cmである。乱流誘発器は、8cmの長さであり、その先端は、注射器の筒の底部に完全に挿入される。基部は、注射器から1.5cm外に突出し、その開口に紙のストローを嵌合させるように広がっている。呼吸気誘導デバイスの内部は中空管であり、4つの通気口を先端に備えている。管の外側は、凍結する外面との呼吸気の接触を最適化するために様々な表面構造を有してもよい。同様のデバイスの例が、
図1から
図4に示される。
【0104】
1つの実施例において、乱流誘発器の外面は、ねじ様のらせん形であり、呼吸気を、注射器筒から戻る可能な限り長いルートに沿って呼吸気を誘導する。らせん形は、注射筒の内部にぴったり当接して嵌合はせず、一部の呼吸気が漏れることを可能にし、これは、この空気を凍結面と直接接触するようにする。この実施例は、呼吸気凝縮液を偶発的に除去することを最小限にするために取り外すときにねじられてもよい。別の実施例では、小さい通気口を備えた一連のそらせ板が呼吸気を凍結面に向けて誘導する、または鋭利な直角の曲がり角を形成し、乱流を増大させる。別の実施例では、そらせ板は、特定の角度で傾斜され杉綾パターンに似せている。このパターンもまた、呼吸気を凍結面に向けて誘導し、その一方で、高圧および低圧のポケットを生成し、これにより乱流を引き起こしている。この実施例では、乱流誘発器は、注射器が遠心分離機にかけられている間、その中に留まってもよく、凝縮した液体は、先端に向かって誘導されることになる。
【0105】
ワークフローステップは、以下を含めた、ウイルスおよびバクテリア試料を検出するためのプロセスを完了することを要求しており、すなわち、呼吸気からの液体の霜の凍結捕捉、液体の採集および合体、合体した液体または検出バイアルにおける溶解、その後の、追加の試料クリーンアップなしでの直接の検出である。呼吸気からの液体蒸気および粒子の効率的な捕捉のために、1回、2回、3回、4回または5回の吐かれた呼吸気などの規定された体積中のウイルス、バクテリアまたは有機化学物質の量を定量化することが可能である。
【0106】
基本的に、呼吸気からの液体の全てを捕捉し、全ての液体試料を処理し定量化することが可能である。
【0107】
バイアル中の試料の一部は、保持され貯蔵される、またはさらなる処理に備えて保管されてもよい。
【0108】
別の実施形態では、試料デバイスは、規定された量の周辺空気を汲み上げ、試料からの液体を凍結させて試料を採集して、規定された室内に取り込まれたウイルス、バクテリア、胞子、核酸、タンパク質、生体分子または有機化学物質を検出し得る。
【0109】
本発明の採集管の入口直径および管の長さは、採集容量に対する効果を有し、呼吸気入口の流れに対する抵抗力を有することになる。いくつかの実施形態において、管サイズは、1、3、5、10または20mL注射器またはさらにはそれより大きい注射筒容積に基づいてよい。注射器容積が増大するにつれて、市販の注射筒の本体は、より大きな直径を有する。このことは、呼吸気入口管の直径が増大することを可能にすることができる。このことは、管の中に息を吹き込む抵抗力を低下させるのに有利であり得る。いくつかの実施形態において、呼吸気入口管の直径が増大されて、入口管と採集管との間の空間を縮小することで、呼吸気が低温壁と相互作用して凝縮液を採集することができるようになる。
【0110】
典型的な注射器サイズは、3mLまたは5mLであってよい。5mLの注射器採集器は、3mLの注射器に対して、より高い採集表面積および呼吸気に対するより低い抵抗力を有する。-15℃、-20℃、-30℃または-40℃の冷却温度で50μLの呼吸気凝縮液を採集する時間は典型的には、50μLの呼吸気凝縮液を採集するのにおおよそ15秒、100μLの呼吸気凝縮液を採集するのにおおよそ30秒、150μLの呼吸気凝縮液を採集するのにおおよそ60秒であり得る。定量化するのは困難であるが、呼吸に対する抵抗力は、3mLの注射器採集器に基づく採集にとってはわずかなものであったが、5mLの閉鎖端注射器採集器に基づく採集の場合は、さほど注目に値するものではなかった。より大きな管採集器および直径および長さは、より大きな体積をより速く採集し得る。10mLの注射器管採集器は、より大きい表面積とより低い背圧を有し、より高い体積の呼吸気液体が採集されてよい。
【0111】
本発明の閉鎖端採集管の内部に配置された乱流誘発器は、採集管の内部低温壁に対する呼吸気の接触を高める。-15℃まで冷却された閉鎖端5mL注射筒に基づく採集器での1セットの実験において、らせん形乱流誘発器インサートが、直線ストローインサートと比較して検査された。乱流誘発器は、6mmの内径および8mmの外径および65mmの長さを備えた中空の管で構成される。口の入口が、設計に含まれ、3Dプリントによって作成された。外面は、2mm外に延び、管の基部から先端まで11のコイルを作成するらせん形のそらせ板であった。基部は、管は12mmの内径および14mmの外径ならびに40mmの長さを備えて、マウスピースに直接装着された。マウスピースと乱流誘発器との間の装着点は、楔形に成形されたバットレスを含み、これは、乱流誘発器を注射器内の所定の場所にしっかりと押し込むことを可能にする。先端は、4つの三角形の通気口を含むことで、呼吸気が注射器の端部を通って自由に分散することを可能にする。
【0112】
らせん形の設計の性能は、6mmの内径のまっすぐな壁付きの入口ストローと比較された。5mLの注射器採集器は、おおよそ-15℃で15秒の呼吸気で、3つの異なる乱流条件で検査された。十分に挿入されたらせん形の乱流誘発器での2つの試験は、おおよそ60μLの平均呼吸気凝縮液をもたらした。注射器筒に十分に挿入されたまっすぐな壁のストローの2つの試験は、平均30μLをもたらした。注射筒の開口をちょうど過ぎるまで挿入されたまっすぐな壁のストローの2つの試験は、15μLの平均呼吸気凝縮液をもたらした。よって、収率は、採集筒管の低温面を通過する空気の乱流の導入と共に増大した。
【0113】
いくつかの異なる乱流誘発器設計があるが、その全てが、まっすぐな壁付きのストローより性能が優れていることが分かった。これらは、チャネル分離器、開放シェブロン、互い違いの突起、および不規則な突起を有するらせん形を含む。1つの設計では、開放シェブロン乱流誘発器は、らせん形の設計と同じ全体の寸法を有するが、らせん形が外面から延びる代わりに、一連の破断したシェブロン形状が存在していた。これらの各々は、3mm長の一対の楔で構成される。これらの楔は、液体が注射器の先端に向かって容易に流れることを可能にしつつ、注射器の低温面に当接して乱流経路内に呼吸気を誘導する。乱流誘発器の基部から先端まで配置されたこのような4列の破断したシェブロンが存在しており、8つの破断したシェブロンが各列に存在する。
【0114】
乱流誘発器の各形態は、2つの主要な目的を達成し、そのバランスを取るように設計された。第1に、全体の寸法は、デバイス内を通るように息を吹き入れる際に生成される背圧を最小限にするべきである。第2に、種々のそらせ板およびフランジが、乱流を生み出し、呼吸気と低温外面との接触を最大にするのに十分な空気の流れを妨害すべきである。これらの実施形態では、背圧を最小限にするために、内部管の断面積は、注射器の全断面積のおおよそ半分であった。このことは、空気が、一貫した全体の幅を有するチャネルを通って進むことを可能にした。
【0115】
らせん形の設計は、注射器の表面に沿って可能な限り長い経路内に呼吸気を誘導し、これにより、凝縮のために機会を最大にする。乱流誘発器は、気密嵌合を形成しないため、呼吸気の一部は、らせん形のそらせ板を超えて進むことが可能であった。これは、空気が、冷却面と接触することをさらに促進させ、かつ呼吸気が凝縮するのをさらに促進させた。らせん形設計の一部の形態では、楔形の突起が、その平滑ならせん形の経路から空気流の一部の方向を変えた。このことにより空気流が互いと相互作用し、乱流を形成し、これもまた空気と低温面との間の接触を増大させた。
【0116】
別の設計では、垂直そらせ板および水平そらせ板が、管の外側から突出している。各場合で、空気が通過するための開放チャネルが存在し、この経路は、長く回り道であった。そらせ板は、空気のかなりの部分が、それらの周りを通過し、低温壁と直接接触するように傾斜された。
【0117】
捕捉後、閉鎖端におけるバイアルへの液体の採集は、スクレーピングプランジャで、または遠心分離機で行うことができる。先に記載したように、筒の端部におけるバイアルが密封されるプランジャによる採集において、プランジャは、筒内に押し下げられる、または筒内に挿入されるとき、空気を逃がす必要がある。遠心分離機を使用することは、特殊なプランジャ設計の必要性をなくす場合がある。採集した呼吸気凝縮液の挿入およびそれを遠心分離機で処理することは、液体を採集バイアルに移動させ、空気も追い出すことになる。プランジャによるスクレーピングは、遠心力を加える場合は必須ではない。いくつかの実施形態において、乱流誘発器は、取り外す必要がなく、管は、遠心分離機にかけられて、閉鎖端バイアルにおいて液体を直接採集し得る。
【0118】
乱流誘発器の設計は、遠心力による液体採集を向上し得る。破断したシェブロン設計は、それが、注射器の先端から開口までの乱流空気流と、開口から先端までの妨げられない水流の両方を可能にするため、捕捉した呼吸気液体を遠心分離機で合体および採集するのに適した1つの設計である。
【0119】
いくつかの特定用途向けの遠心分離ロータが、吐かれた呼吸気凝縮液を採集するために検査された。3つの異なる取り付け台が設計され、これらは、3つの異なるロータ上で回転された。これらの実験において検査されたロータにおいて、閉鎖端捕捉管は、同じ平面上にあった。他の実施形態において、捕捉管は、遠心分離機により容易に挿入するために斜めになっている場合がある。1つのバッテリ動力式ロータは、おおよそ500rpmで回転し、1つの手動クランク式ロータは、おおよそ1000rpmで回転することができ、1つのAC動力式ロータは4000rpmで回転する。注射器を遠心分離ロータ上の所定の場所に保持するための取り付け台は、少なくとも3つの基本配置を有することができる。1つの配置では、2つの注射器が各々、取り付け台の中心から75mmの所定の場所に、互いに真向かいに、互いに整列して保持された。別の配置では、注射器は、中心からずれて設置され、それらを、互いに干渉し合うことなく、より容易に装填することを可能にした。この配置では、注射器の基部は、注射器が向いている方向でロータの中心から5mmであり、15mm横方向にずらされた。第3の配置では、注射器は、反対方向を向いて垂直スタックに設置された。各注射器の基部は、回転の軸から5mmに設定された。
【0120】
各取り付け台は、バッテリ動力式500rpmロータで検査された。100μLの水が、乱流誘発器の長さに沿って、それを注射器に挿入する前に分配された。10回の試験はその後、直線配置、中心からずれた配置、および垂直に積み重ねられた配置の各様式の取り付け台で、10秒間に及んだ。その後、バイアル中に採集された水が測定された。垂直スタックは、平均で89.1μL採集され、中心からずれた配置は、平均で88.5μL採集され、直線配置は平均で94.7μL採集した。直線配置と他の2つの配置の差は、統計的に重要であるが、垂直スタックと中心からずれた配置との間の差は、統計的に重要ではない。
【0121】
その幾何学形状のために、注射器の基部における力は、他の2つよりも直線配置において15倍大きくなるが、先端では2倍の変化しかない。ベンチトップの簡便さのために、横並びの配置などよりコンパクトで装填しやすい設計が望ましい場合があるが、直線配置がより効果的な場合もある。
【0122】
水の液滴を手動で加えるのではなく吐かれた呼吸気凝縮液を使用する検査において、横並びの取り付け台を備えたバッテリ動力式モータは、より効率が低く、吐かれた呼吸気の半分未満しか捕捉しなかった。より強力なACモータを備えたロータが、速度が8倍である4000rpmで回転することができるように代用された。このことは、64倍の遠心力を可能にし、これは、吐かれた呼吸気凝縮液の99%を超えて採集するのに十分である。比較が表1に示される。
【0123】
【0124】
採集注射器筒のための冷却時間の効果
一部の例では、注射器は、マウスピースを通して呼吸する前に、一定の期間の間冷却装置の中に配置されてよい。5mLの注射器内で破断したシェブロン乱流誘発器で検査する際、挿入後すぐに管を通して息を吹き入れたとき、挿入後20秒待機した後吹き入れたとき、または挿入後1分待機した後吹き入れたときの比較が行われた。全ての場合において、呼吸気は、20秒間採集され、装置は、試験と試験の間に-20℃以下まで冷却することが許容された。注射器を挿入した直後に呼吸気が採集された試験は、平均で61.25μLをもたらした。注射器が、20秒間冷却された試験では、平均75.17μLをもたらし、これは、直後のサンプリングに対して統計的に大きな増大である。注射器を丸々1分間冷却することは、20秒待機することに対して収率を増大させなかった。
【0125】
注射器筒サイズの比較
本発明の一実施形態において、注射器筒が、閉鎖端管採集に使用されてよい。3mLの注射器および5mLの注射器から採集された吐かれた呼吸気の収率が、採集時間の種々の期間にわたって比較された。各場合で、らせん形の乱流誘発器が使用され、液体は、プランジャを使用して採集された。3mLの注射器で10秒間採集した際、収率は32μLから46μLの範囲であり、平均は40μLであった。3mLの注射器で15秒間採集した際、収率は30μLから65μLの範囲であり、平均は49.5μLであった。3mLの注射器で30秒間採集した際、収率は60μLから84μLの範囲であり、平均は67μLであった。5mLの注射器は、10秒で、42μLから55μLの範囲を有し、平均は52.6μLであった。5mLの注射器から15秒間の採集では、収率は61μLから75μLであり、平均は68μLであった。5mLの注射器で30秒間採集した際、収率は60μLから83μLであり、平均は64.5μLであった。
【0126】
注射器の寸法
2つのサイズの注射器、すなわち3mLと5mLの注射器が広範に検査された。1つの3mLの注射器は、9mmの内径と、70mmの長さを有する。これは、おおよそ19.8cm2の内部表面積を提供する。5mLの注射器は、13mmの内径と、65mmの長さを有し、内部面積は、26.5cm2である。より大きな注射器筒では、採集表面は、50、100、150cm2またはそれを超える面積まで増大させることができる。
【0127】
遠心分離プロセスおよび試薬の混合
管採集バイアルの端部に対して液体を合体させる遠心分離プロセスはまた、混合能力も提供する。1セットの実験において、食品着色ゲル染料の液滴が1滴、採集された液体の頂部および採集バイアルの底部に加えられた。遠心分離力は、15秒間にわたって加えられた。両方の場合において、染料は、液体と完全に混合され、全体にわたって均一な着色を提供した。加えて、全ての空気が取り除かれた。この混合方法は、溶剤、マスター混合物、または任意の保存緩衝剤または検出緩衝剤を混合するのに有益である。
【0128】
検出
採集されたRNAおよびDNAは、CRISPR-Casベースの核酸検出、ローリングサークル増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅、ループ介在等温増幅、リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応、n-カウンタ(ナノストリング)、SMART-seq cDNA(Takara)、単一分子FISH(smFISH)、単一分子光流体チップ、増幅ありまたは増幅なしの質量分析法、および任意の他の好適な検出方法を含めた様々な方法によって検出され得る。開発中の多くの検出方法が存在し、これらのうちのいずれかは、核酸の検出および分析に適するであろう。装置からの液体は、バイアルまたは流管に移されて、検出および分析を促進させ得る。採集された液体からタンパク質、炭水化物、脂質および他の生体物質が検出され得る。
【0129】
試料採集、処理および検出プロセス
本発明のデバイスを使用する試料フロープロセスは、検体および目的に応じて異なる方法で進められてよい。全プロセスのステップがここに示される。
1.呼吸気試料を採集する
2.任意選択で直接分析する
3.任意選択で試料を処理する
a.加熱など物理的な処理
b.溶剤処理
c.酵素処理
d.標識付けなどの化学的処理
4.試料を分析する
a.直接分析する
b.任意選択で転写する
c.任意選択で増幅する
i.直接分析する
ii.選択式に標識付けおよび分析する
5.結果を報告する
a.個別に
b.会場で
【0130】
呼吸気凝縮液は、デバイスによって処理され採集される。採集された試料は直接分析されるか、または処理されその後分析される。分析後のデータは、「はい/いいえ」として、および/または数量として報告される。
【0131】
分析前の試料処理は、検体および検出プロセスに応じて異なる方法で行われる。有機溶剤または他の化学試薬による処理、あるいは熱による処理が、試料を放出または溶解させ、試料を保存するために使用されてよい。いくつかの実施形態において、試料は、核酸試料準備キットで処理されるか、または加工されてもよい。有機溶剤は、水混和性である。有機溶剤は、非プロトン性である。
【0132】
いくつかの実施形態において、核酸逆転写は、直接行われても、試料の処理後に行われてもよい。いくつかの実施形態において、核酸増幅は、増幅試薬の添加後に直接、試薬処理後に、および/または逆転写後に行われてもよい。増幅は、熱循環によって行われても等温式に行われてもよい。検出は2ステップの検出であってよく、例えば、CRISPRまたはイルミナ呼吸器パネルであってよい。いくつかの実施形態において、検体は、標識付けされ検出されてもよい。標識付けは、増幅プロセスの一部として行われてもよい。
【0133】
試料母材は、ほとんどの場合、水であり、検体は、水を採集するプロセスの一部として採集される。採集される有機物質は、可溶性であるか、または少なくとも水試料母材と適合可能である。
【0134】
検出され得る検体は、RNA、DNA、タンパク質、炭水化物、脂質、糖、無機分子または有機分子を含む。検査されている病気は、ウイルス、バクテリア、菌類、癌および他の生物学的な病気と関連付けられてよい。
【0135】
検査は、安全性を保証するために多くの異なるタイプの会場で行うことができる。本発明が使用され得る会場は、コンサート、テーマパーク、映画館などの娯楽関係、空港、フェリー、電車およびバスなどの交通機関、病院、老人ホーム、ICUおよび新生児医療施設などのハイリスク集団施設、ならびに学校、コミュニティセンター、教会、商店街、公開ミーティング、集会および会社などの他の会場を含む。
【0136】
本発明の1つの実施形態では、ドライアイスが、
図3に示されるデバイス内でペルティエ冷却器の頂部に加えられた。本発明の別の実施形態では、ドライアイスは、
図3に示されるデバイス内でペルティエ冷却器の代わりをした。ペルティエ冷却されたデバイスは典型的には、おおよそ2~5分で周辺温度から-20℃まで冷える可能性があるのに対して、ドライアイスは単独で、1分以内で-60℃またはそれより低くなるまで装置を冷却することになる。1つの実験において、20秒の呼吸気試料は、ペルティエ冷却されたデバイスの温度を4~12℃上昇させたのに対して、ドライアイスで冷却されたデバイスでは、この試料は温度を10~20℃上昇させたが、両方の場合において、デバイスは約30秒以内にその基本温度に戻った。両方とも、EBC収集器とデバイス冷却器との熱接触を促進するためにエタノールで検査され、ドライアイスで冷却されたデバイスは、20秒で平均95μLを採集したのに対して、ペルティエ冷却されたデバイスは、20秒で80μLを採集した。エタノールを使用した場合と、使用しない場合のドライアイス冷却の一部のデータが、以下で表2に示される。
【0137】
【実施例】
【0138】
【実施例1】
【0139】
40mmの正方形の熱電気冷却器、ペルティエモジュールTEC1-12706が、冷却ファンを備えた70mmの正方形のアルミニウムヒートシンクに高温側を下にして配置された。9.7mmの穴を備えたアルミニウムの20×20×15mmの凍結立方体が、ペルティエモジュールの低温側に配置された。内径7.5mmを有する中心孔を備えた9.5mmの外径の寸法を有する、長さ20mmの円形のアルミニウム管バイアルが、まっすぐに直立した位置で凍結立方体の中に配置された。6mmの外径を有する長さ約20cm(7.75インチ)のクラフトペーパのストローが、まっすぐな位置でバイアルの中に配置された。通気孔を有する3Dプリントされたプラスチックの取り付けがストローをまっすぐな位置に維持した。このデバイスでは、呼吸気は、ストローを通って吐き出され、冷却されたバイアルの内壁へと入ることができる。呼吸気蒸気および液体微粒子はバイアルの内壁上に集積し、不要物が取り除かれた呼吸気は、逆方向にバイアルの頂部へと逃げた。
図1は、この実験で使用された本発明の採集デバイスの構成を示す。
【0140】
1セットの実験において、12Vが60秒間ペルティエ冷却器に印加された。1回の呼吸気は、ストローを通して吐き出され、8~12秒かかった。バイアルは、取り外され、10秒間遠心分離機にかけられた。5μLの液体が合体され、20μLピペットの先端で採集された。一部の液体はバイアル中に残った。採集された液体は、15μLのマスター混合物、溶剤溶解液およびプライマーが所望のウイルスを検出するために誘導された状態で、0.2mLのPCR管の中に配置された。Chai Bio(カリフォルニア州サンタクララ)社の16ウェル器具を備えたRT-qPCRが、ウイルスの存在を検出するために40分間実行された。
【0141】
別の実験では、冷却は120秒間加えられ、1.5回の吐かれた呼吸気が採集された。この実験は、4回行われた。バイアルは、液体が合体され採集されるたびに遠心分離機にかけられた。実験の2つでは、15μLの呼吸気液体が採集された。別の2つの実験では、20μLの試料サイズの呼吸気が採集された。
【実施例2】
【0142】
2つの積み重ねられたペルティエモジュールが、11mmの内径を有する高さ8cmの銅管が、頂部にある銅製プレートに装着された状態で、底部に冷却ファンを備えたアルミニウムのヒートシンクに装着された。管は、発泡体で絶縁され、2mLのエタノールが管に加えられた。長さ7cm、直径1cmの3mLの使い捨てルアーロック注射器が、キャップで密閉され、管の中に置かれ、エタノールを、注射器の周りで管の縁まで上昇させた。
【0143】
ペルティエモジュールは、おおよそ-40℃まで管を冷却した。呼吸気を誘導する3Dプリントされたプラスチックデバイスおよび乱流誘発器が、注射器の中に挿入され、15、20、25および30秒間呼吸気が中を通るように誘導された。各試験の後、注射器は、管から取り外され、注意して乾燥された。プラスチック呼吸気誘導管は取り外され、プランジャが部分的に注射器の中に挿入された。次にキャップが取り外され、200μLのPCR管と置き換えられたが、これは、気密密封を形成しない。プランジャは十分に押し下げられ、注射器は、手動の遠心分離機内で回転させられて、全ての液体を溶出させた。これらの5つの実験において、40~90μLの範囲の液体が2.5μL/秒から3.6μL/秒にわたって回収された。
【実施例3】
【0144】
1cmの内径を有する直径2.2cm、長さ8.8cmのアルミニウム管が、-40℃までドライアイス上で冷却された。一端が塞がれ、熱接触を助けるために2mLのエタノールが管に加えられた。長さ7cm、直径1cmの3mLの使い捨てルアーロック注射器がキャップで密封され、管の中に配置され、エタノールを、注射器の周りで管の縁まで上昇させた。呼吸気を誘導し、乱流を誘導するための3Dプリントされたプラスチックデバイスが、注射器に挿入され、呼吸気は、10秒間その中を通るように誘導された。この実験は6回繰り返され、液体収率は、25~44μLまたは2.5~4.4μL/秒の範囲であった。
【実施例4】
【0145】
別のセットの実験では、2つの異なる金属製の管が比較された。長さ7cm、直径1cmの3mLの使い捨てルアーロック注射器筒がキャップで密封され、一方は銅管の中、もう一方はアルミニウム管の中に配置され、両方とも-30℃から-32℃まで冷却された。呼吸気を誘導し、乱流を誘導するための3Dプリントされたプラスチックデバイスが、注射器に挿入され、呼吸気は、1回の吐かれた呼吸気をずっと使用して15、20、25および30秒間その中を通るように誘導された。霜から採集された液体の体積が表3に示される。
【0146】
【0147】
結果はまた、本発明のデバイスにおける霜の回収が、最初は急速であり、その後、霜が採集されるにつれて次第に減ることを示す。この実験では、両方の場合において、分析するのに十分な液体が15秒で回収された。
【実施例5】
【0148】
VosCryoデバイスおよびプロセス
VosCryoは、吐かれた呼吸気液体粒子および蒸気の採集のための本発明の器具の一例である。サンプリングは、分析のために十分な吐かれた呼吸気凝縮液(EBC)を生成するのに、1分未満またはさらには30秒未満しかかからない場合が多い。検査被験者がマウスピースを通して息を吹き入れるとき、呼吸気は、注射器筒および採集管内部の冷却された表面に当たるように誘導される。呼吸気からの液滴および蒸気は、低温面上で凝縮する。採集後、凝縮液は、スクレーピング、排出または遠心分離機にかけることによって採集されてよく、遠心分離機は採集バイアル内への迅速な採集を可能にする。このプロセスは、PCR、RT-PCR、RT-LAMP、RPA微生物培養、質量分析法または他の分析ツールを用いて分析のために準備ができた50μLを超えるEBC試料を一貫してもたらす。RPA(リコンビナーゼポリメラーゼ増幅)は、LAMPに似ており等温増幅を使用するが、例えば30℃~40℃のより低い温度で行われる。
【0149】
採集のために、キャップまたはバイアルがルアーエンド取り付け具に装着された3mL注射器筒が、垂直の銅管の中に閉鎖された端部を下にして配置される。垂直の銅管は、24V熱電気ペルティエチップ(40×40×4.7mm、DigiKey3.5 A 2223-CP354047-ND)によって冷却された銅プレートに直交して固定された。銅管は、内径15.88mm(5/8インチ)、外径14.29mm(9/16インチ)および長さ8.89cm(3.5インチ)(銅ベースプレートより上の高さ)であった。管が嵌合するベースプレートは、厚さ3.1mm(1/8インチ)、一辺が3.81cm(1.5インチ)であった。ペルティエチップは、Artic Silver熱ペーストで銅ベースプレートの下面に装着された。低温が銅プレートに伝達されるように電圧が印加された。余分な熱は、ラジエータフィンおよびラジエータフィン全体に空気を吹き付けるための90CFMファンを有するアルミニウムヒートシンクによってペルティエチップの高温側から除去された。ペルティエは、3.8Aを使用し、ファンは、全体で4.1Aのために0.31Aを加えた。低温銅管と、管に挿入された注射器の熱接触は、閉鎖端注射器筒を挿入する前に、銅管の内部にアルコールを加えることによって高めることができる。
【0150】
採集後、いくつかの実施形態において、注射器プランジャが、注射器の中に配置されて、液体をスクレーパで擦り、液体を凝固させてもよい。この場合、管の閉鎖端は、空気を逃がすために開放される、またはプランジャは、プランジャが注射器内に配置されるとき、空気がプランジャに沿って逃げるように改良される。いくつかの実施形態において、管の端部でバイアル内に液体を採集するのに遠心分離機が使用される。
【0151】
この実施例では、50の呼吸気試料を採集するための装置およびキット構成要素は、以下のように供給された。
パッキングリスト:数量
装置 :(1)
1.冷却装置
電源および電源コード
2.低力2チャネル遠心分離機
側部に取り付けられたオン/オフスイッチ
試料管を嵌合するためのアダプタ
安全ヒンジ留めカバー
直接電源コード
動作は4000rpmおよび10秒であった
【0152】
使い捨てサンプリングパケット(50)
1.3.5mL注射器筒
2.注射器筒に挿入されたマウスピースを備える乱流誘発器
3.採集バイアル(注射器筒に装着された)
4.プラスチックマウスピースカバー(使用前に取り外される)
【0153】
装置の初期設定:
1.電源コードをコンセントおよび電源にプラグ接続する。
2.冷却装置を電源にプラグ接続すると、装置は、すぐに冷却を始める。
3.4mLのアルコール(エタノールまたはイソプロパノール)を装置の銅管に加える。これは、熱転写ならびに滅菌を助ける。
4.最初の試料を採集する前に、約6分間装置を最初に冷却する。
【0154】
試料採集:
1.密封されたサンプリングパケットを引き裂いて開け、プラスチックスリーブによって注射器を保持し、装置の銅管内に配置する。
2.マウスインサートを備えた注射器筒を、呼吸気試料を採取する前に10秒以上冷却する。
3.検査被験者にスリーブを取り外させ、20秒間マウスピースを通してしっかりと息を吹き入れさせる(約2回の深い呼吸)。
4.典型的には、20秒および2回の完全な呼吸が、50μLの試料を採集するのに適切である。
5.子供は、同じ時間フレームにおいてより多くの呼吸を必要とする場合がある。
6.複数の呼吸またはより長いサンプリング時間は、試料の収率を高めることになる。
7.蒸発を補償するために、5つの試料毎に0.5mLのアルコールを銅管に加える。
【0155】
試料を吹き入れるために重要なガイダンス:
1.呼吸気試料を提供する際、苦しくなるまでしっかりと息を吹く。
2.装置の中に吹き込むことは、風船を膨らますか、風車に息を吹きかけて回すのと同様にする。
3.各呼吸で肺を完全に空にするようにする。
4.息を吐き出すのはマウスピースを通してのみである。息を吸い込むには、唇をマウスピースから離すか、または鼻から吸い込むかのいずれかである。
5.穏やかな周期的な呼吸は、より低い体積の収率となる。
【0156】
呼吸気採集率に影響する要因:
温度-通常の20℃の周囲条件下で、VosCryo採集器は、6分以内に-20℃まで冷え、より速度を落として-40℃まで冷却を続ける。器具は、採集温度が下がるにつれて、理想的には、銅組立体の温度が-20℃を下回った場合に、より大きな試料体積を採集する。器具は、-20℃から-40℃の間で使用されることが推奨されている。霜は、この温度範囲内で銅ウェルのリップ上に形成することになる。より温かい周囲条件下では、採集温度は上昇し、採集時間を増加させる必要がある。VosCryo器具の別の構造では、冷却は、2分以内に-20℃を下回った。冷却は、10分後におよそ-30℃まで続き、結果的に15分後には-40℃になった。
【0157】
時間-EBC採集される体積は、サンプリング時間と共に増大する。以下の体積は、-20℃から-28℃までの開始温度で獲得され、1回の完全な呼吸気を各10秒の間吐き出している。
サンプリング時間 最小予測体積
10秒 40μL
20秒 70μL
30秒 100μL
40秒 120μL
【0158】
呼吸の数-採集率は、サンプリングされた呼吸の数と対応付けられている。10秒毎に1回の完全な呼吸が、試料採集に推奨されている。採集体積は、一般に、呼吸の速度に関わらずより多くの呼吸によって増大するが、おおよそ50μLが採集された後は、線形ではなくなることに留意されたい。
【0159】
肺の容量-検査被験者間の生理学的な違いが、呼吸気の体積の変動につながる可能性があり、したがって採集されるEBCの体積の変動にもつながる可能性がある。所与の検査被験者から十分な試料が採集されない場合、より大きな試料を採集するために単にサンプリングプロセスを繰り返す。温かい呼吸気が装置に取り込まれると、冷却された銅の温度の小さな上昇を検出することができる。エネルギーの量は定量化することができ、取り込まれた呼吸気の量と相関させることができる。このやり方では、緑の光は、装置が呼吸気試料の取り込みを始めるのに十分冷えていることを示すことができる。その後、呼吸気の取り込みが進むと、装置の温度のわずかな上昇を示すために黄色の光が示される場合がある。赤の光は、試料取り込みを終了してよいことと、十分な指定された試料体積が採集されていることを知らせることができる。赤の光の出現は、時間、EBC体積、温度上昇の量および/または取り込まれた温かい呼吸気の体積による装置の加温に対抗するのに必要とされる電気エネルギーの量に相関させることができる。このように、個人間のサンプリングを標準化することができる。いずれにしても、明確な呼吸指示があれば、最小限のサンプル時間で十分な体積を生成するであろう。
【0160】
試料液体採集および処理:
1.注射器を装置から取り外し、遠心分離機の中に直接配置する。遠心分離機内の試料番号を識別してメモを取る。
2.遠心分離機が、2つの試料、または1つの試料と1つの未使用の注射器を装填することによって釣り合いがとれていることを確実にする。
3.蓋を閉め、緑の電源スイッチがONの位置にあることを確実にする。
4.黒いスイッチを前方に保持して遠心分離機を10秒間作動させる。
5.バイアルを注射器の先端からひねって外す。採集された液体は、ピペットを介して取り出されてよい、または含まれているキャップで保管されてもよい。
6.アセトニトリルおよび逆転写酵素を含む試薬、対照試薬、および増幅試薬が、遠心分離の前または後に管に加えられてよい。遠心分離は、試薬を統合し混合するであろう。
【0161】
アセトニトリル処理後のLAMP検出でのCOVID 2標準:
1.10~20%アセトニトリル溶解試料が、1~2%最終アセトニトリル検出濃度で準備される。
材料:NAT-rol COVID陽性対照(50cp/μL)、COVID LAMPプライマー(EおよびN)、アセトニトリル、2×ランプ混合物、ヌクレアーゼを含まない水、50×蛍光色素、50×塩酸グアニジン(ニューイングランドバイオラボ)。
2.バイアル試料中に50μLの10%アセトニトリルを準備する。5μLのアセトニトリルを45μLの試料に加え、ピペット操作によって完全に混合する。5μLのアセトニトリルを45μLの水に加えることによって10%のアセトニトリル対照を作成する。
3.マスター混合物、プライマーを加え、65℃でインキュベートし検出する。陽性は、明るいピンク色である。
【0162】
試料は、LAMP、PCRまたは他の分析ツールを用いて分析することができる。EBC処置された試料は、RT-PCRおよびRT-LAMPによって分析された。可能な方法は、PCR、RT-PCR、RT-LAMP、微生物培養、質量分析法またはデジタル化された核酸増幅方法を含む他の分析ツールを含む。増幅方法は、熱サイクリングまたは等温によって行われてよい。一部の等温増幅方法は、NASBA(核酸増幅シーケンスベース増幅。RNAを増幅するために使用される方法である)、LAMP(ループ介在等温増幅。DNAの増幅のための単一管技術である。4~6のプライマーを使用し、プライマーは、その後の増幅のラウンドを促進するためにループ構造を形成する)、HAD(ヘリカーゼ依存性増幅。一定温度でのインビトロDNA増幅のために、ヘリカーゼの二重鎖DNA巻き戻し活性を利用して鎖を分離する)、RCA(ローリングサイクル増幅。円形DNAテンプレートおよび短いDNAまたはRNAプライマーから始まり、長い単一の鎖分子を形成する)、MDA(多重置換増幅。複数のランダムプライマーがDNAテンプレートにアニーリングし、ポリメラーゼが一定の温度でDNAを増幅するときに開始する技術である)、RPA(リコンビナーゼポリメラーゼ増幅。低温DNAおよびRNA増幅技術である)を含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの呼吸気から取得された生物学的試料における標的を検出するための方法であって、
前記方法は、呼吸気から生物学的試料を採集するためのデバイスであって、前記ユーザが前記デバイス内に呼吸気を通すことを可能にするように適合された管(32)と、前記管と流体連通し、捕捉面を有する採集チャンバであって、閉鎖端管(34)である、またはバイアル(30)内で終端する採集チャンバと、前記捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素(40)と、前記捕捉面と前記ユーザの吐かれた呼吸気との間の接触を高めるために呼吸気の流れが乱流になるようにするように、前記管の外面内またはその周りに配設された構成を備える乱流誘発器(26)と、を備える、デバイスを使用し、
前記方法は、
前記管の中に呼吸気を通すことによって、前記ユーザの前記呼吸気が前記採集チャンバの前記捕捉面上で凝縮または凍結する際に、生物学的試料を提供するステップと、
任意選択で、分析のために液体生物学的試料を形成するために凍結した生物学的試料が溶けることを可能にするステップと、
任意選択で、前記凍結した生物学的試料または液体生物学的試料を処理するステップと、
ある体積の前記生物学的試料を分析して前記標的の存在を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ユーザの呼吸気から生物学的試料を採集するためのデバイスであって、
前記ユーザが自分の呼吸気を前記デバイス内に吐き出すことを可能にするように適合された管(32)と、
前記管と流体連通し、捕捉面を有する採集チャンバであって、閉鎖端管(34)である、またはバイアル(30)内で終端する採集チャンバと、
前記捕捉面を水の凍結点を下回る温度まで冷却することが可能な冷却要素(40)と、
前記捕捉面と前記ユーザの吐かれた呼吸気との間の接触を高めるために呼吸気の流れが乱流になるようにするために前記管の外面内またはその周りに配設された構成を備える乱流誘発器(26)と、を備え、
前記ユーザの前記呼吸気からの前記生物学的試料は、前記採集チャンバの前記捕捉面上で凝縮または凍結する、デバイス。
【請求項3】
前記管は、前記ユーザが前記デバイス内に息を吐き出すための第1の端部を有し、前記採集チャンバは、内部捕捉面を有するバイアルであり、前記バイアルは、前記管の第2の端部の上に配設され、呼吸気の前記流れは、前記バイアルの内壁の周りで逆向きになることで、前記生物学的試料は、前記捕捉面上で凝縮または凍結する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的試料は、凍結試料、液体試料と凍結試料の組み合わせ、または液体試料である、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記採集チャンバは、0.5から50μLの容積を有する、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記管は、垂直構成で使用される、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記管は、水平構成で使用されることで、唾液またはよだれを捕捉しないで呼吸気の捕捉を可能にする、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記管は、水平と垂直の間の構成で使用される、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記乱流誘発器は、前記管内に配設されたインサートから選択される、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記採集チャンバは、注射筒であり、前記管は、前記注射器の前記筒に嵌合し、前記乱流誘発器は、前記管の外面の周りに嵌合する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記乱流誘発器は、前記管の内壁上に、その上を通過する呼吸気の乱流を誘発するのに十分な構造を備える、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記管は、第1の端部において開放することで、前記ユーザが前記デバイスの中に息を吹き込むことを可能にし、前記管は、第2の端部に向かう端部壁を備えることで、前記ユーザの呼吸気を前記捕捉面上に偏向させて、前記捕捉面と前記ユーザの前記呼吸気との間の接触を高める、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記バイアルおよび/または前記管は、取り外し可能であることで、前記生物学的試料の処理を促進する、あるいは前記バイアルおよび/または前記管の交換を通して複数回使用のデバイスを提供する、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項14】
方法またはデバイスは、前記ユーザが前記デバイス内に息を吹き込む5分、4分、3分、2分、1分、45秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒またはそれ未満のサンプリング時間を有する、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項15】
生物学的試料は、6回以下の吐かれた呼吸気において、任意選択で1回または2回の吐かれた呼吸気において捕捉される、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的試料は、前記ユーザの前記呼吸気中の液体試料、微粒子試料または蒸気試料である、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項17】
採集チャンバは、取り外し可能なバイアルである、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記冷却要素は、前記捕捉面を冷却するために熱電気冷却を使用する、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項19】
前記冷却要素はペルティエデバイスである、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項20】
前記捕捉面は、-10℃以下まで冷却され、任意選択で前記捕捉面は、-20℃以下まで冷却され、任意選択で前記捕捉面は、-40℃以下まで冷却される、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項21】
前記捕捉面は、50cm
2未満の表面積を有する、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項22】
前記デバイスは、前記捕捉面を、呼吸気採集が開始されるまで周辺空気から保護するために取り外し可能遮蔽材を備える、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項23】
前記デバイスは、2μL/sまで、および任意選択で4μL/sまでの割合で試料を採集することが可能である、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項24】
前記冷却要素は、凍結した生物学的試料が分析のために解凍されることを可能にするために切り替え可能である、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項25】
前記生物学的試料は、核酸を含む、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸は、RNAである、または前記核酸はDNAである、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項27】
前記生物学的試料は、ウイルス、バクテリア、酵母菌、組織細胞または有機分子を含む、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項28】
前記生物学的試料は、ウイルスを含む、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項29】
前記ウイルスは、COVID-19(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる)、後天性免疫不全症候群(AIDS、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる)、ヘルペス、水疱瘡、はしか、インフルエンザ、単純ヘルペス、水疱瘡ウイルス(VZV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、コロナウイルス、ロータウイルス、肝炎、性器いぼ(ヒトパピローマウイルスまたはHPV)およびBKウイルスから成る群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記バクテリアは、結核菌(TB)またはブドウ球菌の群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記捕捉された生物学的試料の最終液体体積は、250μL、125μL、100μL、80μL、60μL、40μL、20μLまたはそれ未満の最終液体体積である、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項32】
LAMP、RT-PCR、LC、LC-MS、GC、GC-MS、MS、IR、UV、FTIRまたはNMRによって前記生物学的試料を分析するステップをさらに含む、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項33】
ユーザの呼吸気から生物学的試料を採集して生物学的試料中の標的を検出するための、請求項2によるデバイスの使用。
【請求項34】
前記デバイスの複数の使い捨て要素および/または前記生物学的試料を処理するための試薬を備える、請求項2によるデバイスを備えるキット。
【請求項35】
前記使い捨て要素は、前記採集管と、前記乱流誘発器と、前記採集チャンバと、任意選択でプラスチックマウスピースカバーとを備える、請求項34に記載のキット。
【国際調査報告】