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特表2024-536780ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するための無溶媒方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するための無溶媒方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/093 20060101AFI20241001BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20241001BHJP
【FI】
C01B21/093 Z
H01M10/0567
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516988
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022075389
(87)【国際公開番号】W WO2023041519
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】21306270.6
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, エティエンヌ
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
(57)【要約】
本開示は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法及び前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩からのビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩の調製方法に関する。より具体的には、本発明は、工業規模で実施可能であるビス(フルオロスルホニル)イミドのこれらの塩を製造するための及び高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を提供するための新規な方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、
- nは1であり、カチオンの原子価を表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法であって、
式(II):
[Cl-(SO)-N-(SO)-Cl] n+ (II)
のビス(クロロスルホニル)イミドを無水フッ化水素(III)でフッ素化することを含み、
溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の量の溶媒の存在下で式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩及び/又は式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩中で行われる、方法。
【請求項2】
大気圧で且つ/又は圧力解放手段を有する密閉反応器を使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フッ化水素(III)の化学量論量がビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり1~10当量である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(i)量Qのビス(フルオロスルホニル)イミドの塩(I)及び/又はビス(クロロスルホニル)イミドの塩(II)を温度Ta(℃)で加熱してビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)及び/又は式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩を製造する工程であって、前記温度Ta(℃)が:
(i1)前記塩(I)の融点Tm(I)より高い温度である、且つ/又は
(i2)50℃より高い温度である、
工程と、
(ii)無水フッ化水素(III)を、前記ビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)及び/又は前記式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩に添加する工程と、
(iii)場合によっては前記式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドを前記ビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)に添加する工程と、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)が、
(ii1)前記無水フッ化水素(III)を前記溶融塩に添加する工程と、
(ii2)場合によっては前記ビス(クロロスルホニル)イミド(II)を前記反応混合物に添加する工程と、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
全ての反応性材料が添加された時に前記量Qが前記反応混合物の総重量の20重量%以上である、請求項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
100℃未満の温度で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
n+がNH である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(Ic)
[F-(SO)-N-(SO)-F]NH (Ic)
のビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を調製するための請求項1~8のいずれか一項に記載の方法であって、(IIc):
[Cl-(SO)-N-(SO)-Cl]NH (IIc)
のビス(クロロスルホニル)イミドを無水フッ化水素(III)でフッ素化することを含み、
溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の溶媒の量の存在下で、アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(cI)及び/又は式(IIc)のアンモニウムビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩の中で行われる、方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法により得られる、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、
- nは1であり、カチオンの原子価を表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩であって、
前記溶媒の量が100ppm未満である、塩。
【請求項11】
前記溶媒の量が50ppm未満である、請求項10に記載の塩。
【請求項12】
式(V)
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の調製方法であって、
(a)請求項1~9のいずれか一項に記載の方法により式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を得る工程と、
(b)前記式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩をリチウム塩及び/又はセシウム塩を含むアルカリ試薬と反応させる工程と、
を含む方法。
【請求項13】
工程(b)が少なくとも1つの有機溶媒を含む有機反応媒体中で行われ、前記有機溶媒が、非プロトン性有機溶媒から、好ましくは酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
バッテリー電解質溶液中での、請求項12又は13に記載の方法から得られる式(IV)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の使用。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の方法から得られる式(IV)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を含む電池物品又は電池部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2021年9月15日に欧州で出願された第21306270.6号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法及び前記ビス(フルオロスルホニル)イミド塩からのビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩の調製方法に関する。より具体的には、本発明は、工業規模で実施可能であるビス(フルオロスルホニル)イミドのこれらの塩を製造するための及び高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を提供するための新規な方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びその塩、特にビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(LiFSI)は、様々な技術分野において有用な化合物である。
【0004】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びその塩の製造は文献に記載されている。記載された様々な技術のなかで、大部分は、溶媒中のフッ素化剤によるフッ素化反応を使用する。
【0005】
とりわけ、国際公開第2017/090877A1号パンフレット(CLS)には、(1)ビス(クロロスルホニル)イミドを溶媒中のフッ素化試薬と反応させ、その後に、アルカリ試薬で処理し、それによってアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造する工程と、(2)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と反応させる工程とを含む、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造するための方法が記載されている。工程(1)において使用される溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソプロピルケトンなどのアルキルケトン;メタノール、無水エタノール、1-プロパノール、及びイソプロパノールなどのアルコール;アセトニトリル、及びプロピオニトリルなどのアルキルニトリル;及びテトラヒドロフラン、及びジアルコキシアルカンなどのエーテルからなる群から選択される。その後、溶媒は減圧下の蒸留及び濃縮によって除去される。
【0006】
国際公開第2012/117961A1号パンフレット(日本曹達株式会社)には、フルオロスルホニルイミド塩の製造方法が記載されている。実施例1及び2によると、アンモニウムジ(フルオロスルホニル)イミドは、アセトニトリル中のジ(クロロスルホニル)イミドから調製される。その後、溶媒は減圧蒸留によって除去される。
【0007】
特開2016-145147号公報(株式会社日本触媒)は、式(2)で表される化合物と、化合物1モルに対して化学量論量で1~3当量の組成式(3)で表される化合物とを、化合物の0~4質量倍の溶媒の存在下で反応させて、式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物を得るための方法に関する。
【化1】
(式中、RはC1~6フルオロアルキル基であり、Rはハロゲン又はC1~6フルオロアルキル基であり、Cat1及びCat2は、一価基であり、pは1~10の整数である)。
【0008】
特開2014-201453号公報(株式会社日本触媒)には、カーボネート系溶媒、脂肪族エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトロ系溶媒、硫黄系溶媒及びニトリル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含有する反応溶媒の存在下でフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩を合成し、その後、反応溶媒と芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒及び芳香族エーテル系溶媒からなる群から選択されるフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩のための少なくとも1つの貧溶媒との共存下で反応溶媒を蒸留除去することによってフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩溶液を濃縮する工程を含む、フルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩を製造するための方法が記載されており、濃度工程は、上記の貧溶媒を反応溶媒とフルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩とを含有する反応溶液と混合する工程を含む。
【0009】
文献に記載されているように、フッ素化によるビス(フルオロスルホニル)イミドとその塩の製造は、反応性の物質を分散させてそれらを反応させておくために、溶媒、例えば有機溶媒中で行われる。しかしながら、このような溶媒は、バッテリー用途のために使用することができる可能な限り高純度の生成物を得るために反応後に除去される必要がある。溶媒を除去するためのステップは、工業プロセスの複雑性、並びにその全体コストを増大させる。加えて、水の残留量がppm量にある、無水溶媒のみが実際に使用されるので、そのようなプロセスにおいて行われる前に、溶媒は、典型的には、残留量の水を除去するために処理されなければならない。
【0010】
国際公開第2012/096371A1号パンフレット(住友電気工業)は、HN(SOCl)(液体形態)をKF(粉末形態)に無溶媒乾燥条件下で滴下して中間生成物を形成し、次に中間生成物とKFとを水性溶媒中で互いに反応させておくことによってKN(SOF)を製造するための方法に関する。より正確には、この文献に記載される方法によると、第1の工程において、HN(SOCl)の1つの塩素元素がフッ素で置換され、アルカリ金属塩KN(SOCl)(SOF)である中間生成物をもたらし、第2の工程において、他の塩素元素がフッ素で置換され、アルカリ金属塩KN(SOF)をもたらす。このような二段階工程に従って、HN(SOCl)はアルカリ金属塩KN(SOCl)(SOF)に変換されるので、結果として、水はアルカリ金属フッ化物を溶解するため、第2の工程において水を使用することができる。
【0011】
この文献によると、反応の最初の部分は、液体形態の反応物を粉末形態である第2の反応物上に落とすことによって無溶媒乾燥条件下で行われる。これは、工業的に取り扱うのが非常に難しいペースト状中間生成物をもたらす。更に、KN(SOF)へのHN(SOCl)の全変換は個別の中間生成物を有する2つの工程で行われるので、反応の収量、並びに最終生成物の不純物のレベルに悪影響を与える。
【0012】
欧州特許第2674395号(日本曹達株式会社)には、アンモニウムN-(クロロスルホニル)-N-(フルオロスルホニル)イミドなどの化合物[I]とフッ化水素とを反応させて、アンモニウムN,N-ジ(フルオロスルホニル)イミドなどの化合物[II]を得ることが開示されている。
【0013】
欧州特許第3489193号(株式会社日本触媒)には、以下の式(1)の化合物、その製造方法、及び電解質組成物におけるその使用が開示されている:
【化2】
【0014】
国際公開第2015/143866号パンフレット(Shenzhen Capchem Technology Co.,Ltd.)には、20℃未満の温度で過剰のフッ化水素にビスクロロスルホニルイミドを滴下することによってビスクロロスルホニルイミドを液体フッ化水素と反応させる工程を含む、ビスフルオロスルホニルイミドの調製方法が開示されている。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、工業規模で実施可能であり、高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を提供する、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩XN(SOF)(XはK、Na又はオニウムカチオン(例えばNH )である)の調製方法を提供することである。
【0016】
本発明の目的は、反応溶媒の蒸留を必要としない、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩のより簡単な製造プロセスを提供することである。
【0017】
特に、本発明の方法は、反応物を分散させるように作用する溶融反応物、例えば溶融NHN(SOCl)の存在下、又は溶融反応生成物、例えば溶融KN(SOF)又は溶融NHN(SOF)の存在下で、且つ溶媒の非存在下で(又は非常に限られた量の溶媒の存在下で)行われる。
【0018】
本発明は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、
- nは1であり、カチオンの原子価を表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法であって、
式(II):
[Cl-(SO)-N-(SO)-Cl] n+ (II)
のビス(クロロスルホニル)イミドを無水フッ化水素(III)でフッ素化することを含み、
溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の量の溶媒の存在下で式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩及び/又は式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩中で行われる、方法に関する。
【0019】
また、本発明は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、
- nは1であり、カチオンの原子価を表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩にも関し、
このような塩は本発明のプロセスによって得ることができ、これは、溶媒のその量が100ppm、例えば50ppm未満であることを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、式(V)
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法であって、
(a)上述した方法によって式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を得る工程と、
(b)ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩(I)をリチウム塩又はセシウム塩であるアルカリ試薬と反応させる工程と、
を含む方法にも関する。
【0021】
また、本発明は、式(IV):
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、
並びにバッテリー電解質溶液中でのこのような塩(IV)の使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本出願では、
- 表現「…~…の間(between…and…)」並びに「…~…の範囲の(from…to…)」等は、限界を含むとして理解されるべきであり;
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、及びそれらと交換可能であり;
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、及び/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に熟慮される関連実施形態では、要素又は成分は、個々の列挙された要素又は成分のいずれか1つであることができるか、又は明示的に列挙された要素又は成分の任意の2つ以上からなる群から選択することもでき;要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、そのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり;
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0023】
本発明の第1の目的は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、
- nは1であり、カチオンの原子価を表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法であって、
式(II):
[Cl-(SO)-N-(SO)-Cl] n+ (II)
のビス(クロロスルホニル)イミドを無水フッ化水素(III)でフッ素化することを含み、
溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の量の溶媒の存在下で式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩及び/又は式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩中で行われる、方法である。
【0024】
無水フッ化水素(III)は、好ましくは、例えば99.95モル%を超える高純度を有し、HOは1000ppm未満、SOは10ppm未満、HSOは100ppm未満、HSiFは20ppm未満、Asは25ppm未満である。
【0025】
本明細書に記載の塩(I)は、低い残留量の溶媒、有利には、塩(I)を多くの用途、とりわけバッテリー用途に適したものにする検出可能でない量の溶媒を特徴としている。実際、塩(I)はバッテリー製品に直接使用されることはないと考えられるものの、この中間体の純度は、Li塩がそのような中間体から得られる場合、バッテリー製品に使用されるLi塩の純度にプラスの影響を与える。
【0026】
本発明の方法は、溶媒及び希釈剤の非存在下で溶融物として行われる。より正確には、この方法は、反応物を分散させるように作用し且つ反応物(II)及び(III)を出会わせて反応させる、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩、例えば溶融KN(SOF)若しくは溶融NHN(SOF)、及び/又は式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩、例えば溶融NHN(SOCl)中で行われる。重要なことには、本発明の方法は無溶媒方法である。言い換えれば、反応中に反応混合物に、溶媒/希釈剤が全く添加されないか、或いはまた非常に少量の溶媒/希釈剤が添加される。第1に、溶媒を除去するための工程は、工業プロセスの複雑性、並びにその全体コストを増大させるので、これは有利である。第2に、無水溶媒(ppm量のオーダーである水の残留量を特徴とする)だけが実際に使用できるので、溶媒は典型的に、このようなプロセスにおいて使用される前に処理される必要がある。
【0027】
本発明の文脈において、用語「溶媒」は、以下の3つの累積特性1/反応の始めから終わりまで存在し、場合によりプロセス中に加えられる、2/プロセス中に変化していない、言い換えれば関与した反応物に対して非反応性であり、及び3/反応生成物がその高純度の形態でなければならない場合、プロセスの終わりに取り除かれなければならないという特性を示す化合物を意味することが意図される。この定義の範囲内に含まれる溶媒の例は以下に示される。明快にするために、本発明のプロセスにおいて使用される式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩は、上記の「溶媒」の定義には含まれない。同じことが、本発明のプロセスで使用される式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩にも当てはまる。
【0028】
本発明の一実施形態によると、本明細書に記載の方法は又は非常に少量の溶媒、すなわち反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の量の溶媒の存在下で行われる。好ましくは、この実施形態によれば、溶媒の量は、反応混合物の総重量に基づいて4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.01重量%未満又は0.001重量%未満の溶媒である。反応混合物の総重量は、反応物の重量、並びに溶融塩(I)及び/又は(II)の重量を合計することによって得られる。
【0029】
そのようなプロセスにおいて典型的に使用される溶媒は、周知であり、文献に広範囲に記載されている。そのような溶媒は、非プロトン性、例えば極性の非プロトン性溶媒であり得、
- 環状及び非環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状エステル、例えばガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、及び
- シアノ、ニトロ、クロロ又はアルキル置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン
からなる群から選択され得る。
【0030】
典型的には、このようなプロセスを実施するために使用される有機溶媒は、例えば、背景のセクションに記載されている文献にあるように、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル及びアセトニトリルからなる群から選択され得る。
【0031】
本発明のプロセスの一実施形態によれば、溶融状態(液体状態とも呼ばれる)にするために、ある量の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、例えばNHN(SOF)を、反応物(又は反応性の物質)の添加前にその融解温度Tm(I)よりも高く加熱する。次に、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、例えばNHN(SOF)を製造するために、粉末形態、スラリー形態、又は液体形態であってよい反応物を反応混合物中に添加し、反応させる。目的の生成物は、溶融形態で製造することができ、その後、当業者に公知の任意の選択されたステップに従って固化させることができる。これは、このような反応生成物(すなわち式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩)の量が反応時間にわたって増加することを意味する。言い換えれば、本発明のこの実施形態によれば、溶融反応生成物は、反応物を分散させ、それらを出会わせて反応させることを可能にする媒体を提供するために使用される。したがって本発明によると溶媒は必要ではない。高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド塩を得るために、このような溶媒を反応後に除去する必要がないため、これは製造プロセス全体を著しく簡単にするので有利である。それは、溶媒の代わりに水を除去する追加の工程を必要としないというさらなる利点を示す。
【0032】
本発明のプロセスの別の実施形態によれば、フッ素化剤(III)、すなわちフッ化水素を添加する前に、ある量の式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの塩、例えばNHN(SOCl)を、50℃超、例えば60℃超、70℃超、80℃超、更には89℃超に加熱する。次いで、フッ素化剤を反応混合物に添加し、反応させて、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、例えばNHN(SOF)を生成する。
【0033】
本発明のプロセスの更に別の実施形態によれば、フッ素化工程中及びフッ素化工程後に反応混合物を溶融状態(液体状態とも呼ばれる)に維持するために、フッ素化剤(III)、すなわちフッ化水素を添加する前に、ある量の式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの塩、例えばNHN(SOCl)を、目的生成物、例えばNHN(SOF)の融解温度Tm(I)よりも高く加熱する。その後、反応物を反応させることで、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、例えばNHN(SOF)を生成する。
【0034】
本発明によれば、ビス(クロロスルホニル)イミドの塩(II):
[Cl-(SO)-NH-(SO)-Cl] n+ (II)
を、無水フッ化水素(III)と反応させる。
【0035】
本発明によると、X n+は、K、Na又はオニウムカチオンを表わし、ここでオニウムカチオンは当業者にとってその通常の意味を有する。
【0036】
オニウムカチオンの例としては、ホスホニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、フルオロニウムカチオン、クロロニウムカチオン、ブロモニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、セレノニウムカチオン、テルロニウムカチオン、アルソニウムカチオン、スチボニウムカチオン、ビスムトニウムカチオン;イミニウムカチオン、ジアゼニウムカチオン、ニトロニウムカチオン、ジアゾニウムカチオン、ニトロソニウムカチオン、ヒドラゾニウムカチオン、ジアゼニウムジカチオン、ジアゾニウムジカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第三級アンモニウムカチオン、第二級アンモニウムカチオン、第一級アンモニウムカチオン、アンモニウムNH カチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、グアニジニウムカチオン、イソウロニウムカチオン及びイソチウロニウムカチオンが挙げられる。
【0037】
これらの中で、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、第三級アンモニウムカチオン、第二級アンモニウムカチオン、第一級アンモニウムカチオン、アンモニウムNH カチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、グアニジニウムカチオン、及びイソウロニウムカチオンがより好ましい。
【0038】
これらのタイプのオニウムカチオンの例としては:
- イミダゾリウムカチオン、例えば1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘプチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-アリル-3-エチルイミダゾリウムカチオン、1-アリル-3-ブチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジアリルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-2,3-メチルイミダゾリウムカチオン、及び1-ヘキサデシル-2,3-メチルイミダゾリウムカチオンなど;
- ピリジニウムカチオン、例えば1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-ヘキシルピリジニウムカチオン、1-オクチルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン、及び1-ブチル-3,5-ジメチルピリジニウムカチオンなど;
- 第四級アンモニウムカチオン、例えばテトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、プロピルトリメチルアンモニウムカチオン、ジエチル-2-メトキシエチルメチルアンモニウムカチオン、メチルトリオクチルアンモニウムカチオン、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルフェニルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、ジメチルジステアリルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、2-メトキシエトキシメチルトリメチルアンモニウムカチオン、N-メトキシトリメチルアンモニウムカチオン、N-エトキシトリメチルアンモニウムカチオン、N-プロポキシトリメチルアンモニウムカチオン及びテトラキス(ペンタフルオロエチル)アンモニウムカチオンなど;
- 第三級アンモニウムカチオン、例えばトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルアンモニウムカチオン、ジブチルメチルアンモニウムカチオン、及び4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンカチオンなど;
- 第二級アンモニウムカチオン、例えばジメチルアンモニウムカチオン、ジエチルアンモニウムカチオン、及びジブチルアンモニウムカチオンなど;
- 第一級アンモニウムカチオン、例えばメチルアンモニウムカチオン、エチルアンモニウムカチオン、ブチルアンモニウムカチオン、ヘキシルアンモニウムカチオン、及びオクチルアンモニウムカチオンなど;
- アンモニウムカチオンNH
- ピペリジニウムカチオン、例えば1-プロピル-1-メチルピペリジニウムカチオン及び1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピペリジニウムカチオンなど;
- ピロリジニウムカチオン、例えば1-プロピル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウムカチオン、及び1-オクチル-1-メチルピロリジニウムカチオンなど;
- モルホリニウムカチオン、例えば4-プロピル-4-メチルモルホリニウムカチオン及び4-(2-メトキシエチル)-4-メチルモルホリニウムカチオンなど;
- ピラゾリウムカチオン、例えば2-エチル-1,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、2-プロピル-1,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、2-ブチル-1,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、及び2-ヘキシル-1,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオンなど;
- グアニジニウムカチオン、例えばグアニジニウムカチオン及び2-エチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムカチオンなと;並びに
- イソウロニウムカチオン、例えば2-エチル-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウムカチオンなど
が挙げられる。
【0039】
第四級アンモニウムカチオン、第三級アンモニウムカチオン、第二級アンモニウムカチオン、第一級アンモニウムカチオン、及びアンモニウムカチオンNH 、とりわけ上記のリストに具体的に列挙されたものがより好ましい。アンモニウムカチオンNH が最も好ましいオニウムカチオンである。
【0040】
式(II)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、好ましくは、以下の塩:
Cl-(SO)-NK-(SO)-Cl (IIa)、
Cl-(SO)-NNa-(SO)-Cl (IIb)、又は
Cl-(SO)-NNH-(SO)-Cl (IIc)
のうちの1つである。
【0041】
本発明のプロセスに関与する反応物(原料とも呼ばれることがある)のうちの1つは、無水フッ化水素(III)である。
【0042】
無水フッ化水素は、反応混合物中に任意の形態で導入することができる。これは、液体として導入することができ、或いは反応容器中に気体として導入することができる。これは、溶融塩(I)及び/又は(II)中に液体形態又は気体形態で導入することができる。これは、反応容器に気相中の気体として導入することもできる。無水フッ化水素は、当業者に公知の任意の手段によって溶融塩(I)及び/又は(II)中に分散させることができる。
【0043】
本発明によれば、フッ化水素(III)は無水である。水分率は、例えばグローブボックス内で行われるカールフィッシャー水滴定によって測定されるとき、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満又は更に10ppm未満であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、フッ素化剤(III)対ビス(クロロスルホニル)イミド(II)の化学量論量(モル量とも呼ばれる)は0.1:1~20:1、例えば1:1~10:1、又は2:1~8:1である。
【0045】
いくつかの実施形態では、フッ素化剤(III)の化学量論量は、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり2当量以上、例えばビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり2~10当量である。好ましくは、フッ素化剤(III)の化学量論量は、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり2~8当量、又はビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり3~6当量である。より好ましくは、フッ素化剤(III)の化学量論量は、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)1モル当たり4±0.8当量又は4±0.5当量に等しい。
【0046】
本発明のプロセスは、バッチ式、半バッチ式、又は連続方式で行なわれてもよい。
【0047】
一実施形態によれば、このプロセスは、連続方式又は半連続方式で行われ、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩(I)を反応混合物から連続的に又は半連続的に取り出す工程を含む。本発明によれば、各シーケンス間の残留HF/HCl成分の事前の除去を考慮して、反応混合物中に反応物を半連続的に添加し、反応生成物を半連続的に除去することが可能である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、
(i)量Qのビス(フルオロスルホニル)イミドの塩(I)及び/又はビス(クロロスルホニル)イミドの塩(II)を温度Ta(℃)で加熱してビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)及び/又は式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩を製造する工程であって、温度Ta(℃)が:
(i1)塩(I)の融点Tm(I)より高い温度である、且つ/又は
(i2)50℃より高い、例えば60℃より高い温度である、
工程と、
(ii)気体形態又は液体形態の無水フッ化水素(III)を、反応容器に、例えばビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)及び/又は式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩に添加する工程と、
(iii)場合によっては式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドをビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)に添加する工程と、
を含む。
【0049】
温度Ta(℃)は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩(I)の融点Tm(I)以上であり得る。例えば、Taは、Tm(I)+2℃以上であり得るか、又はTaは、Tm(I)+5℃以上であり得る。
【0050】
温度Ta(℃)は、50℃以上であってよい。
【0051】
第2の反応物、例えばビス(クロロスルホニル)イミド(II)を導入する前に反応混合物中に反応物の1つ、例えばフッ素化剤(III)を予備分散させることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、工程(ii)は、例えばそれ自体:
(ii1)フッ化水素(III)をビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)に添加する工程と、
(ii2)ビス(クロロスルホニル)イミド(II)を反応混合物に添加する工程と、
を含む。
【0053】
この実施形態によれば、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)は液体形態であってよく、例えば反応混合物中に滴下することができる。
【0054】
工程(ii2)によれば、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)は、反応混合物に添加される前に、30~120℃の範囲の温度Tb(℃)に加熱することができる。温度Tb(℃)は、例えば50℃~100℃、又は60℃~100℃の範囲であり得る。特定の実施形態によると、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)を温度Tb(℃)=Ta(℃)±10℃、例えばTa(℃)±5℃に加熱する。別の実施形態によると、ビス(クロロスルホニル)イミド(II)を温度Tb(℃)≦Ta(℃)+10℃、又はTb(℃)≦Ta(℃)に加熱する。
【0055】
いくつかの実施形態では、工程(ii)は、フッ化水素(III)及びビス(クロロスルホニル)イミド(II)を同時にビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)に添加することである。
【0056】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)中への反応物(II)及び(III)の添加は、通常、逐次的に、徐々に、又は連続的に行なうことができる。また、特にプロセスが回分式で行われる場合、各々の反応物の総量を反応器に例えば数回で、段階的に増量しながら添加することができる。
【0057】
例えば回分反応器、押出機及び混練機を本発明において用いることができる。酸による腐食に耐性を有する材料(例えばPTFEやPFAなど)が、選択された反応器内にコート(言い換えると内張り)されてもよい。
【0058】
工業化溶融ミキサー又は溶融ブレンダーを参考にすることができる。
【0059】
使用される混練機は、塩(I)の融点よりも高く加熱することができ且つガス生成物の放出を可能にする公知の適した混練機のいずれかを含むことができる。適した混練機は一般的に、軸に平行である1つ、又は好ましくは少なくとも2つの回転シャフトを有し、その主シャフトは、それらの外面上に配置された混練要素を有する領域を有することができる。混練機は、5~50回転/分、特に好ましくは7.5~40回転/分、特に10~30回転/分の範囲の回転速度で運転されるローターを有することができる。本発明において使用される混練機の利点は、滞留時間が押出機におけるよりも実質的に長くなることができることである。ガス抜きは更にいっそう実質的に容易であり、もっと大きい程度に実施され得、したがってガス生成物を容易に放出することができる。更に本発明の剪断速度は混練機内でいっそう容易に達せられ得る。反応物の様々な供給システムを連続運転式混練機内で使用することができる。溶融反応物が必要とされる場合、液体計量を使用することができる。
【0060】
本発明による方法の工程のいくつか又は全ての工程は、有利には、反応媒体の腐食に耐えることができる装置中で行われる。この目的のために、Hastelloy(登録商標)ブランドで販売される、モリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素及びタングステンに基づく合金又は名称Inconel(登録商標)若しくはMonel(商標)で販売される、銅及び/若しくはモリブデンが添加されているニッケル、クロム、鉄及びマンガンの合金、より特にHastelloy C276又はInconel 600、625若しくは718合金などの耐腐食性である材料は、反応媒体と接触する部品のために選択される。オーステナイト鋼、より特に304、304L、316又は316Lステンレス鋼などの、ステンレス鋼も選択され得る。最大22重量%、好ましくは6重量%~20重量%の、より優先的には8重量%~14重量%のニッケル含有量を有する鋼が使用される。304及び304L鋼は、8重量%~12重量%で変動するニッケル含有量を有し、316及び316L鋼は、10重量%~14重量%で変動するニッケル含有量を有する。より具体的には、316L鋼が選択される。反応媒体の腐食に対して耐性があるポリマー化合物からなるか、又はそれでコーティングされた装置も使用され得る。特に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレンつまりテフロン)又はPFA(パーフルオロアルキル樹脂)などの材料が挙げられ得る。ガラス装置も使用され得る。同等の材料を使用することは、本発明の範囲外ではないであろう。反応媒体と接触するのに好適であることができる他の材料として、黒鉛誘導体も挙げられ得る。濾過用の材料は、使用される媒体に適合していなければならない。フッ素化ポリマー(PTFE、PFA)、ロードされたフッ素化ポリマー(Viton(商標))、並びにポリエステル(PET)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、綿、及び他の適合性材料を使用することができる。
【0061】
本発明のプロセスは、大気圧で又は減圧下で行うことができる。好ましくは、本発明のプロセスは減圧下で行われる。減圧下で反応を行なうのが、プロセス中に式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドからの塩素原子の除去を容易にするので、好ましい。プロセスに加えることができる圧力に特定の制限はない。プロセスは、0.5バール~3バールで変動する圧力、例えば0.7~2.5バール、又は0.9~2バールで変動する圧力で行なうことができる。
【0062】
或いは、本発明のプロセスは、圧力開放手段を備えた密封反応器を使用して行うことができる。これは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0063】
本発明のプロセスは、有利には、水分の混入を避けるために不活性雰囲気下で行うことができる。本発明のプロセスは、例えば窒素又はアルゴン下で行うことができる。
【0064】
本発明のプロセスは、150℃未満、例えば125℃未満、又は100℃未満の温度で行うことができる。本発明のプロセスは、好ましくは、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩、例えばKN(SOF)及びNHN(SOF)の融解温度(Tm(I))から150℃の間で変動する温度で行うことができる。
【0065】
本発明のプロセスの反応時間は、例えば使用される反応器、必要とされる反応温度及び反応物の量に応じて自由に選択することができる。反応時間は1~12時間、特に1.5~10時間又は2~9時間であることが好ましい。
【0066】
このプロセスは、量Qの塩(I)及び/又は(II)を加熱してこれらを溶融状態又は実質的に溶融状態にあるようにすることである工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、この工程は、量Qのビス(フルオロスルホニル)イミドの塩(I)をその融点Tm(I)以上の温度Ta(℃)に加熱して、ビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩(I)を製造する工程である。いくつかの別の実施形態では、この工程は、量Qの塩(I)及び(II)の混合物を、その融点Tm(I)以上の温度Ta(℃)に加熱して、塩(I)及び(II)の溶融混合物を製造する工程である。溶融塩の量Qは、全ての反応性材料が添加された時に反応混合物の総重量の20重量%を下回ってはならない。例えば、このような量Qは、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%であり得る。このような量Qは95重量%未満、90重量%未満又は85重量%未満であり得る。全ての反応性材料が添加された時の反応混合物の総重量は、プロセスにおいて関与する全ての反応物の重量に溶融塩(I)及び又は(II)の重量を加えることによって計算することができる。一実施形態によると、量Qは、全ての反応性材料が添加された時に反応混合物の総重量の50±10重量%である。
【0067】
プロセスの終わりに変換Cが少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%、特に少なくとも99%であるように反応条件を選択することが本発明には有利である。本発明の目的のためには、変換Cは、反応した反応性基、すなわちビス(クロロスルホニル)イミド(II)及びフッ素化剤(III)のモル比率である。
【0068】
驚くべきことに、反応物(II)及び(III)の変換は、溶媒又は稀釈剤が全く存在しないにもかかわらず本明細書に記載のプロセス条件において非常に高いことが見出された。
【0069】
いくつかの好ましい実施形態では、プロセスは、変換Cが少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%又は少なくとも99.99%であるようなものである。
【0070】
本発明のプロセスは、反応混合物を80℃未満、例えば60℃未満の温度Tc(℃)に冷却することを更に含むことができる。
【0071】
本発明のプロセスは、任意選択的には、反応混合物を濾過することを更に含む。濾過の工程は、反応副生成物及び/又は不純物を除去するためにある。反応副生成物及び/又は不純物は、例えば冷却された反応混合物に不溶性の加水分解副生成物、ハロゲン化オニウムである不溶性副生成物、又は当業者に公知の他の副生成物の場合がある。
【0072】
濾過製品(漏斗、膜、ヌッチェフィルター又はガラスフィルター、乾燥器…)が、好ましくは濾過のために使用される。
【0073】
本発明によると、高純度又は実質的に高純度の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、反応の終了時に溶融形態で得られる。
【0074】
式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドは、液体のままであるような温度に維持することができるが、それは、粉末形態、例えば結晶化形態又は析出形態になるように後処理されてもよい。本発明のプロセスから得られる式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドは、その溶融形態、結晶化形態、又は析出形態で使用することができる。例えば、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩をより低い温度の有機溶媒、例えばトリフルオロエタノールに添加することができ、更に使用する前に結晶化させることができる。
【0075】
更に別の実施形態によると、塩(I)を少なくとも部分的に溶融物中に結晶化させることができるが、次に抽出するか又は新しい反応サイクルにおいて再利用/再循環することができる。別の実施形態では、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩を、有機溶媒、例えばジオキサンに添加することができ、更に使用する前に析出させることができる。
【0076】
また、本発明のプロセスは、以下の反応パラメータ:
- 反応混合物中のビス(クロロスルホニル)イミド(II)対フッ素化剤(III)のモル比、
- 反応混合物中の反応物のモル数、とりわけビス(クロロスルホニル)イミド(II)のモル数、
- 反応混合物の温度(℃)、
- 圧力(atm)、
- 反応混合物の溶融粘度、又は
- 反応器、例えば混練機の充填レベル
の少なくとも1つを測定及び/又はモニタする追加の工程を含むこともできる。
【0077】
本発明の第2の目的は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、
- nは1であり、カチオンの原子価を表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩である。
【0078】
そのような塩(I)は、有利には、上記のプロセスによって得ることができる。
【0079】
本発明の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、例えば溶融状態、結晶化形態、又は析出形態であってよい。
【0080】
有利には、本発明のプロセスにおいて溶媒は使用されないという事実のために、このような塩は高純度であるか又は実質的に高純度であり、ごく微量の溶媒も有さないか又は非常に少量の残留溶媒を有する。塩(I)を調製するために通常に使用される溶媒はできる限り高純度の生成物を得るために反応後に除去される必要があるため、これは有利である。実際、非常に高純度の生成物のみバッテリー用途のために使用することができる。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩中の溶媒の量は100ppm未満であり、例えば90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、又は更に1未満である。これは、本発明のプロセスによって得られる塩の有利な特徴である。残りの溶媒含有量は、ヘッドスペースGCなどのGCによって決定することができる。
【0082】
本明細書に記載の式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、式(I):
[F-(SO)-N-(SO)-F] n+ (I)
(式中、
- X n+は、K、Na及びオニウムカチオンからなる群から選択されるカチオンであり、
- nは1であり、カチオンの原子価を表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の調製方法であって、
式(II):
[Cl-(SO)-NH-(SO)-Cl] n+ (II)
のビス(クロロスルホニル)イミドを無水フッ化水素(III)でフッ素化することを含み、
溶媒の非存在下で又は反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の量の溶媒の存在下で式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩及び/又は式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの溶融塩中で行われる方法、によって得られる。
【0083】
式(I)のこのような塩は、有利には、追加の精製工程又は分離工程なしに式(II)のビス(クロロスルホニル)イミドの塩のフッ素化から直接得ることができる。
【0084】
式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は好ましくは、以下の塩:
F-(SO)-NK-(SO)-F (Ia)、
F-(SO)-NNa-(SO)-F (Ib)、又は
F-(SO)-NNH-(SO)-F (Ic)
のうちの1つである。
【0085】
反応副生成物及び/又は不純物を除去するために、上記のプロセスに加えて濾過の工程を使用することができる。反応副生成物及び/又は不純物は、例えば冷却された反応混合物に不溶性の加水分解副生成物、ハロゲン化オニウムである不溶性副生成物、又は当業者に公知の他の副生成物の場合がある。
【0086】
本発明の好ましい実施形態は、式(Ic):
F-(SO)-NNH-(SO)-F (Ic)
のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドの塩に関する。
【0087】
この好ましい実施形態では、塩は、以下の不純物:
- NHCl、
- NHF、
- NHHF
- NHFSO
- NHSONH
- NH[N(SOH)(SOF)](OFSI)、及び/又は
- NH[N(SOH)](OSI)
のうちの少なくとも1つを含有し得る。
【0088】
NHCl及びNHHFなどの不純物は、例えば塩(Ic)中に1,000ppm未満、500ppm未満、200ppm未満又は100ppm未満、好ましくは90ppm未満の残留量で存在し得る。このような不純物は、1ppm超、例えば5ppm超又は10ppm超の量で塩(Ic)中に存在し得る。
【0089】
OFSI及びOSIなどの不純物は、例えば塩(Ic)中に1,000ppm未満、500ppm未満、400ppm未満又は300ppm未満、好ましくは250ppm未満又は更に200ppm未満の残留量で存在し得る。このような不純物は、塩(Ic)中に1ppm超、例えば5ppm超又は10ppm超の量で存在し得る。
【0090】
また、本発明の塩(I)は好ましくは、化学物質の以下の含有量:
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物(Cl)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物(F);及び/又は
- 30,000ppm未満、好ましくは10,000ppm未満、より好ましくは5,000ppm未満の硫酸塩(SO 2-)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のナトリウム(Na+)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K
のうちの少なくとも1つも示す。
【0091】
フッ化物及び塩化物含有量は、例えばイオン選択電極(又はISE)を使用して銀滴定によって滴定により測定することができる。硫酸塩含有量は代わりに、イオン性クロマトグラフィーによって又は比濁法によって測定することができる。
【0092】
元素不純物含有量は、例えばICP-AES(誘導結合プラズマ)によって測定することができ、より具体的には、Na含有量は、AAS(原子吸光法)によって測定することができる。
【0093】
本発明の第3の目的は、式(IV):
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩である。
【0094】
この方法は、
(a)上に記載されたような方法により式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を得る工程と、
(b)ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩(I)をリチウム塩又はセシウム塩であるアルカリ試薬と反応させる工程と、
を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(V):
F-(SO)-NLi-(SO)-F (V)
のビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩を調製するための方法であって、
(a)上述した方法によって式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を得る工程と、
(b)ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩(I)をリチウム塩と反応させる工程と、
を含む方法にも関する。
【0096】
本発明によると、上に記載されたように、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの高純度又は実質的に高純度の塩が得られる。
【0097】
一実施形態によると、工程(b)は、例えば追加の精製を全く行わずに、例えば溶融形態の塩(I)を直接用いて行うことができる。
【0098】
或いは、塩は、工程b)を実施する前に精製されてもよい。例えば、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの溶融塩を有機溶媒、例えば冷却剤であってよいトリフルオロエタノールに添加することができる。その場合、工程(b)を行なう前に塩(I)が結晶化することが予想される。
【0099】
更に別の実施形態によれば、式(I)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の少なくとも部分的な結晶化を可能にする温度を選択することにより、塩(I)を溶融物中で少なくとも部分的に結晶化させ、その後取り出すか、又は新たな反応サイクルで再使用/リサイクルすることができる。
【0100】
本発明の第4の目的は、式(IV):
F-(SO)-NX-(SO)-F (IV)
(式中、XはLi又はCs、好ましくはLiを表す)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩である。
【0101】
このような塩(IV)は好ましくは、上記のプロセスによって得ることができる。
【0102】
また、本発明の塩(IV)は好ましくは、化学物質の以下の含有量:
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物(Cl)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは1,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物(F);及び/又は
- 30,000ppm未満、好ましくは10,000ppm未満、より好ましくは5,000ppm未満の硫酸塩(SO 2-)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1,000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のナトリウム(Na+)含有量;及び/又は
- 10,000ppm未満、好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K
のうちの少なくとも1つも示す。
【0103】
本発明の第5の目的は、バッテリー電解質溶液中での式(IV)のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の使用に関する。
【0104】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0105】
ここで、本発明を以下の実施例に関連してより詳細に記載するが、それらの目的は、例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0106】
実施例1-溶融NHFSI中でのNHFSI塩の形成
撹拌シャフトと、4つのバッフルと、-5℃に冷却したコンデンサーとを備えた、予備乾燥されたハステロイオートクレーブに、窒素気流下で固体粉末添加装置を使用して50gのNHFSI(252mmol)を入れた。粉末を90℃で溶融し、撹拌を0.5時間維持した。50gの溶融NHCSI(216mmol)を、二重ジャケット付き滴下漏斗を使用して、1時間かけて反応混合物に添加した。90℃で0.5時間後、温度を100℃未満の温度に維持しながら、撹拌した状態で17.2gの液体の無水HF(860mmol)を容器に少しずつ入れ、撹拌を2.5時間継続した。過剰のHFを排出するために、窒素の流れを系に12時間流した。
【0107】
次いで、系を自然に冷却しながら200gのジオキサンを1.5時間かけて混合物に添加した。激しく撹拌しながら更に1時間後、不均一な反応媒体を25℃まで冷却し、PTFE濾過漏斗上に移した。固体ケーキを濾過(0.22μmのPTFE膜)により単離した。得られた固体のケーキを100gの新たな1,4-ジオキサンで洗浄した。得られた固体ケーキを真空下、室温で12時間乾燥した。
【0108】
固形生成物を19F NMRで分析したところ、NHFSI中92.3%の収率を示した(79.4重量%、H-NMRによる決定で20.4重量%の1,4-ジオキサンを含有)。
【0109】
実施例2-溶融NHCSI中でのNHFSI塩の形成
撹拌シャフトと、4つのバッフルと、-5℃に冷却したコンデンサーとを備えた、80℃に予熱され予備乾燥されたハステロイオートクレーブに、80℃に予熱された83.3g(360mmol)の溶融NHCSIを、二重ジャケット付き滴下漏斗を使用して約40g/hの速度で容器に入れた。反応混合物を90℃未満に維持しながら、21.6gの液体無水HF(1080mmol)を少しずつ入れた。撹拌を90℃で6時間継続した。反応混合物を窒素流で12時間ストリッピングした。
【0110】
次いで、250gの1,4-ジオキサンを、撹拌しながら反応混合物に添加した。1時間後、得られた懸濁液を窒素下で濾過装置に移し、得られた固体を濾過により単離した。次に、濾液を2時間で10℃に冷却した。結晶を25℃で濾過によって単離し、次に120gの新たな1,4-ジオキサンで洗浄した。固体を12時間の間室温の真空下で乾燥させた。
【0111】
NHFSI-S1として表される溶媒和した固体生成物を19F NMRで分析したところ、NHFSI(80.1重量%、H-NMRによる決定で19.8重量%の1,4-ジオキサンを含有)中で93.4%の収率を示した。
【0112】
実施例3-ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の形成
窒素雰囲気下で、実施例1から得られた8.8gのNHFSI-S1(0.352mmol)の溶液を60gのエチルメチルカーボネート(EMC)中に溶解した。14.8gの固体LiOH.HO(0.352mmol)を10分で室温の容器に添加した。1時間撹拌した後、NH イオンの変換率(NaOH滴定により測定)は90%超であった。媒体を減圧(P=20mbar、T=0℃)下で1回目濃縮した。120mLのEMCを添加し、同じ条件下で2回目濃縮した。
【0113】
濃縮溶液を24時間の間30℃の減圧下で乾燥させた。5gの粘稠な透明液体が得られた。19F NMR分析は、99重量%を超える純度を示した。他のフッ素化種は検出されなかった。
【国際調査報告】