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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】固体電池セルの電極を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241001BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M10/0565
H01M10/058
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517020
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2022075533
(87)【国際公開番号】W WO2023041584
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021124120.0
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ショップフ
(72)【発明者】
【氏名】カルティク ジョマダル
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AM03
5H029AM07
5H029AM16
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ08
5H029CJ22
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB12
5H050DA11
5H050DA13
5H050DA14
5H050EA23
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA23
(57)【要約】
電池セル(2)の第1の電極(1)を製造する方法であって、当該方法は、少なくとも次のステップ、すなわち、a)少なくとも第1の電極(1)の活性材料(4)とコポリマー(5)とを含む、第1の電極(1)の基体(3)を生成するステップと、b)基体(3)を液体電解質(6)で湿潤化し、コポリマー(5)と液体電解質(6)とを反応させることによりゲルポリマー電解質(7)を形成して、第1の電極(1)を形成するステップとを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル(2)の第1の電極(1)を製造する方法であって、
該方法は、少なくとも次のステップ、すなわち、
a)少なくとも前記第1の電極(1)の活性材料(4)とコポリマー(5)とを含む、前記第1の電極(1)の基体(3)を生成するステップと、
b)前記基体(3)を液体電解質(6)で湿潤化し、前記コポリマー(5)と前記液体電解質(6)とを反応させることによりゲルポリマー電解質(7)を形成して、前記第1の電極(1)を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップa)において前記コポリマー(5)を前記活性材料(4)と混合して材料混合物(8)を形成し、前記材料混合物(8)を支持体材料(9)上に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップa)の間に実行されるステップa1)において、前記コポリマー(5)をコーティング(10)として前記活性材料(4)上に堆積させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステップa)の間、さらにステップa1)の前にステップa0)において、前記活性材料(4)をカレンダ加工する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ステップa)の間、この場合にはステップa0)の前もしくはステップa0)中に、前記活性材料(4)をポーラス形成材料(11)で湿潤化する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ステップa)の間、前記コーティング(10)をポーラス形成材料(11)で湿潤化する、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ステップa)の間、前記材料混合物(8)をポーラス形成材料(11)で湿潤化する、請求項2記載の方法。
【請求項8】
ステップb)の前に、前記ポーラス形成材料(11)を前記基体(3)から少なくとも部分的に除去する、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ステップb)の前にステップa2)において、少なくとも前記活性材料(4)および前記コポリマー(5)から成る前記基体(3)をカレンダ加工する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記基体(3)は、ステップb)の直前にはゲルポリマー電解質を含まない、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ステップb)の前に、前記第1の電極(1)を、電池セル(2)内での動作のために予め定められた幾何学形状(12)へとカットする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電極(1)をステップa)とステップb)との間で乾燥させる、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ステップa)の後かつステップb)の前に、前記第1の電極(1)と少なくとも1つの第2の電極(13)とを重なり合うように積層配置し、各電極(1,13)によりスタック(14)を形成する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ステップb)の前に、前記スタック(14)を前記電池セル(2)のケーシング(15)内に配置する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記ゲルポリマー電解質(7)の形成を、少なくとも熱エネルギまたは機械的エネルギの供給により活性化する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池セルの電極を製造する方法に関する。「固体電池セル」なる概念は、以下では、「電池セル」なる概念にも含まれる。
【0002】
自動車の駆動のために、バッテリ、特にリチウムイオンバッテリがますます使用されるようになってきている。特に、例えば自動車は自身を駆動する電気機械を有しており、この電気機械は、電池セルに蓄積された電気エネルギによって駆動可能である。バッテリは通常、電池セルから成り、ここで、各電池セルは、アノードシート、カソードシートおよびセパレータシートのスタックを有する。アノードシートおよびカソードシートの少なくとも一部は、セルから供給された電流をセルの外側に配置された電気負荷へと導出する導電体として構成されている。液体電解質または固体電解質を有する電池セル(固体電池)が公知である。
【0003】
本明細書に記載する電極は、固体電池セル(全固体電池セルすなわちall-solid-state電池セル、およびポリマーゲル電池セル)において使用され、つまりこの固体電池セルは、専ら固体成分(半固体電解質を含む、例えばポリマー、すなわち固体電解質もしくはゲル状電解質、ひいてはまさに液体電解質ではない電解質)を含む。これらの固体電解質またはゲル状電解質は、電極間のイオン伝導性セパレータとして配置されるだけでなく、電極内部のイオン伝導のためにも配置される。これらのセパレータは、セラミック材料またはポリマー、ガラスまたはハイブリッド材料から成るものが一般的である。
【0004】
固体電池セルは特に気密に構成されたケーシングを含み、このケーシング内に、相互に重なり合うように配置された電極フィルムまたは電極層の少なくとも1つのスタックが配置されており、これは電極とも称される。ケーシングは、形状固定ケーシング(角型セル)として、または少なくとも部分的に弾性変形可能なフィルム材料(パウチセル)から成るものとして形成可能である。2つのタイプのケーシングを組み合わせることもできる。
【0005】
固体電池セルの電極を製造する際には、いわゆる支持体材料、特に帯状の支持体材料、例えば支持体フィルムの一方側または両側が、少なくとも部分的に、活性材料(特に付加的に固体電解質を含み、ゲル状電解質は場合によっては後に提供される)でコーティングされる。電極に形成された導電体(導体リード)は、特に、支持体材料のコーティングされていない領域によって形成される。支持体材料は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。
【0006】
このようにして活性材料から形成されるコーティングは、最初、ポーラス性を有する。こうしたポーラス性は、この場合にはコーティングが圧縮されるので、カレンダ加工により低減される。ここでの圧縮は、(体積を基準とした)比容量および導電率を高めるために、または活性材料の相互に接触する材料を通した電荷輸送を保証するために必要とされている。
【0007】
固体電池セルの活性材料はカレンダ加工の際に1%未満のポーラス率まで圧縮され、ゲル状電解質では特により大きなポーラス率が保持される。この場合、カレンダ加工の結果として、ポーラス率は20%~50%低減される。カレンダ加工過程は圧延過程に類似している。活性材料には、変形ゾーンにおいてカレンダ加工力が印加され、圧縮される。カレンダ装置は、少なくとも1つの間隙を形成する複数のローラを含み、電極はこれらのローラを通して搬送方向に沿って搬送される。
【0008】
リチウムセルにおける適用のために設けられているポリマー電解質は、2つの主要カテゴリ、すなわち、
(1)リチウム塩を溶解させるための溶媒としても加工性を支援するための機械的マトリクスとしても用いられる純粋なハイポリマーをベースとするもの、および
(2)従来の電解質溶液によってゲル化されるポリマーをベースとするものであって、有機小分子が主溶媒として用いられる一方、これらの溶媒により完全に膨潤された低い割合のハイポリマーが形状安定性を保証するためのみに用いられるもの、
に区別することができる。
【0009】
最初に挙げたポリマー電解質は、通常、固体ポリマー電解質(SPE, Solid Polymer Electrolyte)と称され、2番目に挙げたポリマー電解質は、ゲルポリマー電解質(GPE,Gel Polymer Electrolyte)と称される。室温でのイオン伝導性は劣悪であるため、SPEの適用の見込みは僅かしかない。他方、GPEは実用に関して有意であることが実証されており、第2世代のリチウムイオンセル(例えば固体電池、すなわち全固体電池など)は、こうした新たな電解質を用いて既に製造されている。
【0010】
GPEは、主として固体電池のカソード内で使用され、したがってカソード液とも称される。このために、ポリマー(例えばポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)、すなわちPVdF-HFPをベースとするポリマー)から成る(約(摂氏)90℃の)高温ポリマー溶液が、対流電解質、例えばプロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)のようなリチウム塩またはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSi)のような新しいリチウム塩と混合されて使用される。
【0011】
GPEをカソードに導入するための従来の方法は、次のような欠点を有しうる。すなわち、
・一般に、GPEは、その粘度を低下させ、ポーラス電極構造体の湿潤化を高めるために、過剰量の従来の電解質を用いてカレンダ加工が行われた後に高温状態で堆積される。冷却後、GPEがコーティングされた電極は、そのゲル状の挙動により、カソードとアノードおよびセパレータとの積層が困難となる。ゲル状のコーティングが粘着性を有することから、カソードを別の作業のために取り扱うことも困難となる。
・GPEを製造する従来の方法では、ゲルを形成するために液体電解質をポリマーと共に加熱しなければならず、ここで、リチウム塩(LiPF6またはLiBF4)の熱不安定性と溶媒(DMC、EMCなど)の揮発性とにより、得られるGPEが所望の組成から逸脱し、またはそれどころか分解してしまう可能性がある。さらに、従来の電解質、例えばLiPF6/EC(エチレンカーボネート)/DMCは使用不能である。なぜなら、例えばリチウム塩LiPF6は55℃を上回る温度では安定でないからである。DMCも90℃で沸騰し始めるので、この温度で熱的に安定なリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSi)などの高価なリチウム塩を使用しなければならない。
・LiPF6は僅かな水分が存在するのみできわめて迅速にフッ酸(HF)を形成するため、カソードへのGPEの挿入後にはプロセス全体を乾燥空間内で実行しなければならず、このために製造コストが増大する。
・GPEを形成するには液体電解質がポリマーを膨潤させることが重要であるが、液体電解質によるPVdF-HFPの膨潤は、液体電解質による活性化後に微細相の形成および分離にいたる傾向を有するコポリマーの半結晶性のために完全には行われず、GPE(液体、ゲルおよび結晶固体)の多相性はカットおよび積層のような後続のプロセスにおける取り扱いを困難にしてしまう。
・カレンダ加工の間、電極の活性材料中のポーラスが減少する。GPEは現在のところカレンダ加工後にカソードに施与されているが、ポーラスサイズが小さいため、液体電解質およびGPEが活性材料のポーラス内に侵入することが困難であり、電解質およびGPEがポーラス内に侵入できるように粘度を低下させるには、高温が必要である。ここでの高温は、電解質のさらなる劣化をもたらす。
【0012】
まとめると、GPEをカソード内またはカソード表面に導入する現在の方法は効率的な方法ではないことが確認できる。
【0013】
GPEの従来の適用方法における上記の問題を回避するために、次のような措置を考慮することができる。すなわち、
・90℃前後の温度で熱的に安定であるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSi)のような高価なリチウム塩を使用する。
・電極または活性材料の湿潤性を改善するための過剰電解質としての低粘度溶媒の量(例えば液体電解質中のジメチルカーボネート(DMC)の量)を増大させる。ただし、このことは、付加的な乾燥ステップが必要となる(非効率的かつ時間がかかる)という欠点を有する。
・粘度を低下させるためにプロセス温度を上昇させる。この場合、例えば約90℃でのDMCの沸騰を回避するには他の溶媒または添加剤を使用する必要がある。なお、低い処理温度は安定したDMCに寄与しうるが、液体電解質の粘度が上昇して活性材料をポーラス内へ容易に侵入させることができなくなるので、やはり負の作用を有する。
・LiPF6は湿分に敏感であるので、GPEの製造のプロセス全体およびカソードへの施与を乾燥空間において行わなければならず、その際には後続の全てのプロセスも同様にそれぞれ乾燥空間において実行すべきこととなる。
・カットおよび積層などの後のプロセスにおける、GPEでコーティングされたカソードの取り扱いは、未解決の問題である。
【0014】
上記の措置の最も重要な欠点は、場合により次のようなものである。すなわち、
・高価なリチウム塩のためにGPEのコストがさらに高まる。
・乾燥空間が高い製造コストをもたらす。
・GPEに必要な高温(約90℃)により、液体電解質の他の成分、すなわちリチウム塩LiPF6およびジメチルカーボネート(DMC)が分解されてしまう。
・カソードのゲル状の表面により、電極のカットおよび積層などの後のプロセスにおける取り扱いにおいて問題が生じる。
【0015】
独国特許出願公開第10020031号明細書から、リチウムポリマーバッテリを製造する方法が公知である。ここでは、ポリマーゲル電解質が、アノード用の活性材料およびカソード用の活性材料と共に、連続して生じるコレクタフィルム上に積層される。
【0016】
国際公開第01/82403号からは、リチウムポリマーバッテリを製造する方法が公知である。
【0017】
国際公開第02/19450号からは、電池セルの積層部品を製造する方法が公知である。積層部品は、ゲルポリマー電解質の層と活性材料の層とを含む。
【0018】
本発明の課題は、先行技術に関連して述べた問題を少なくとも部分的に解決することである。個々の電極のカットおよび/または積層が特に簡単化される、固体電池セルの電極を製造する方法を特に提案する。
【0019】
こうした課題を解決するために、独立請求項の特徴を有する方法が寄与する。有利な発展形態は各従属請求項の対象となっている。特許請求の範囲に個々に記載する特徴は、技術的に有意な形式で相互に組み合わせ可能であり、明細書に述べた事実および/または図の詳細によって補足可能であり、本発明のさらなる変形実施形態が示される。
【0020】
固体電池セル(以下では電池セルと称する)の第1の電極を製造する方法が提案される。方法は、少なくとも次のステップ、すなわち、
a)少なくとも電極の活性材料とコポリマーとを含む、第1の電極の基体を生成するステップと、
b)基体を液体電解質で湿潤化し、コポリマーと液体電解質とを反応させることによりゲルポリマー電解質を形成して、第1の電極を形成するステップと
を含む。
【0021】
電極上に均一なGPEコーティングを製造するための公知の方法は効率的でなく、特には2段階の方法によって置換され、この方法では、まず最初に、ゲルポリマー電解質の出発材料としてコポリマーのみを有する1つの電極の基体が準備される。少なくとも、電極材料を固体電池セル内に存在する電極の幾何学形状へカットすることが、当該状態において行われる。その後にはじめて、好ましくは電極が相互に積層されてスタックが形成され、固体電池セルのケーシング内にスタックが配置された後にはじめて、電解質の添加およびゲルポリマー電解質の形成が行われる。
【0022】
ステップa)において特に活性材料が準備され、場合により支持体材料上に配置される。固体電池セルの電極を製造する際には、支持体材料、特に帯状の支持体材料、例えば支持体フィルムの一方側または両側が、少なくとも部分的に活性材料でコーティングされうる。電極の箇所に形成される導電体(導体リード)は、特に、支持体材料のコーティングされていない領域によって形成される。支持体材料は、例えばアノード用に銅または銅合金を含み、カソード用にアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。よって、基体は、活性材料、支持体材料およびコポリマーを有しうる。
【0023】
特に、ステップa)では、コポリマーが活性材料と混合されて材料混合物が形成され、この材料混合物が支持体材料上に配置される。特に、コポリマーは、材料混合物中に実質的に均一に分散配置されている。ステップb)の枠組みにおいてゲルポリマー電解質の形成が行われる場合、ゲルポリマー電解質も、その後に形成される第1の電極の材料混合物中に均一に分散配置されている。
【0024】
しかし、コポリマーのこうした混合は場合により欠点を有することがある。例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン;第1の電極の、活性材料を有するコーティング材料の製造のための溶媒)とコポリマーとの反応は、密度の上昇、ひいてはコーティング材料の粘度の上昇をもたらしうる。このことは、第1の電極の支持体材料(すなわち例えばアルミニウム基板および/または銅基板)をコーティング材料でコーティングする際に問題を生じさせ、または後のゲルポリマー電解質のコポリマーを不可逆的に損なう可能性がある。
【0025】
第1の電極の表面は、ゲルポリマー電解質によって完全に覆われていることが望ましい。このようにすれば、ゲルポリマー電解質が、電池セルにおいて使用される固体電解質セパレータと良好に接触する。これによりイオン移動が容易になる。第1の電極の表面のこうしたゲルポリマー電解質層は、コポリマーと活性材料とが混合されて材料混合物が形成される場合には、特に製造不能である。
【0026】
したがって、好ましくは、コポリマーは、ステップa)の間に実行されるステップa1)において、コーティングとして活性材料上に堆積される。特に、コポリマーは、付加的に材料混合物の形態で活性材料内に配置されている。代替的には、コポリマーは、専らコーティング内に配置される。
【0027】
固体電池では、通常、カソードのみがゲルポリマー電解質でコーティングされ、一方、アノードはリチウム金属から形成される。他のポリマーゲル電池セルまたは固体電池セルの場合、アノードおよびカソードの双方をゲルポリマー電解質でコーティングすることができる。支持体材料上のカソード化合物材料およびアノード化合物材料の双方が結合剤としての同じコポリマー(例えばPVdF-HFP)でコーティングされるので、電池セルの3つの要素(アノード、カソード、ゲルポリマー電解質セパレータ)が電解質活性化後のゲル化によって物理的な境界を示さずに集積多層ウェハへと効果的に融合され、これにより、アノードと電解質との界面またはカソードと電解質との界面がこれらの電極のポーラス構造内の奥深くまで到達し、このことは液体電解質が界面に到達する場合にきわめて類似する。このことから、ゲルポリマー電解質のイオン伝導率および寸法安定性も向上する。
【0028】
特にリチウム金属がアノードとして使用される場合、コポリマーと液体電解質との反応からゲルポリマー電解質を形成するために、カソードとして形成された基体のみに液体電解質を加えることができる。電池セルがリチウム金属なしで製造される場合には、同じ方法をアノードにも使用可能であり、アノードにも液体電解質を加えてゲルポリマー電解質を形成することができる。
【0029】
第1の電極は特にカソードである。第1の電極はアノードとしても構成可能である。
【0030】
方法の一構成では、マイクロポーラスコーティングとしての活性材料が(最初に)カレンダ加工された後に、コポリマー、例えばPVdF-HFPが活性材料上に堆積される。この場合、カレンダ加工は、コーティングが組み込まれた2段階のカレンダ加工プロセスとして実行することができる。
【0031】
コポリマー(例えばPVdF-HFP)は、様々な形式でコーティングとして堆積させることができる。例えば、コポリマーは、例えばベンチュリベースのノズルにより、基体の表面へと(すなわち活性材料のみへと)噴霧することができる(高速噴射もしくは高速ジェット法とも称される)。ノズルには特に、高圧(約6bar)の乾燥空気によって圧力が印加され、当該ノズルにコポリマー粒子が導入されると、高い空気圧が高い空気速度に変換され、空気が高速(最大0.3Ma~4Ma)でコポリマー粒子を連行して、基体の特に既にカレンダ加工された表面へと打ち込まれる。このようにすることで、数マイクロメートル厚さの薄いコーティングを形成することができる。
【0032】
代替的にもしくは付加的に、コポリマー粒子は、析出ローラにより取り込まれ、基体の特に既にカレンダ加工された表面へと圧着される。
【0033】
基体がコーティング、例えばPVdF-HFPから成る薄いマイクロポーラス層でコーティングされた後、少なくとも活性材料およびコポリマーから成る基体が、ステップb)の前にステップa2)において、特に(2回目として)カレンダ加工される。
【0034】
2回目のカレンダ加工プロセスでは、特に、コポリマーコーティングのみが、基体、特に活性材料へと圧着され、これにより、コポリマーコーティングは基体の表面に良好に付着する。(PVdF-HFP)コーティングの密度は著しくは上昇しない。2回目のカレンダ加工後、コポリマー(PVdF-HFP)は基体の表面に強く付着し、さらに十分なポーラス率を有する。当該ポーラス率は、ステップb)で行われるゲルポリマー電解質の形成にとって重要である。
【0035】
特に、活性材料は、ステップa)の間、ステップa1)の前にステップa0)においてカレンダ加工される。カレンダ加工については冒頭で既に説明した。カレンダ加工過程は圧延過程に類似している。活性材料(すなわち場合によりいまだコポリマーを含まない材料)には、変形ゾーンにおいてカレンダ加工力が印加され、圧縮される。
【0036】
カレンダ装置は少なくとも1つの間隙を形成する複数のローラを含み、これらのローラを通して、第1の電極の基体(ここでは特に活性材料のみ、および場合により付加的に活性材料でコーティングされた支持体材料)が搬送方向に沿って搬送される。
【0037】
特に、活性材料は、ステップa)の間、この場合にはステップa0)の前もしくはステップa0)中に、ポーラス形成材料で湿潤化される。
【0038】
特に、コーティングは、ステップa)の間、ポーラス形成材料によって湿潤化される。
【0039】
例えば、ポーラス形成材料は所定の温度で蒸発することができるので、基体を加熱することで、基体から、すなわちコーティングおよび/または活性材料もしくは材料混合物から、ポーラス形成材料を形成することができる。蒸発の際には特に基体内にポーラスが生じる。ここでのポーラス形成材料が基体内に占める空間は、特に低温で沸騰する当該ポーラス形成材料が蒸発した後、空となる。このようにして、ゲルポリマー電解質の形成に必要なポーラス率を維持することができる。
【0040】
ポーラス性を形成する別の手段として、例えばDMCに可溶であるポーラス形成材料を使用することが挙げられる。当該ポーラス形成材料は、基体の表面またはコーティングの表面においてDMC内へと(例えば、湿潤化ローラによって形成されたマイクロポーラス内へと)溶解する。表面のこうしたDMCは拭き取りローラを用いた基体の洗浄により除去することができ、これによりポーラス形成剤が除去されるが、ここで、基体上のコポリマーコーティング内にポーラスが形成されている。
【0041】
これは特に、コーティング内にポーラスを形成するために少なくとも2つの方法が存在することを意味する。一方は熱プロセスによって、他方は化学溶解プロセスによって行われる。ただし、こうしたポーラスの形成は、コポリマーコーティングのポーラス率が低い場合にのみ必要となる。
【0042】
基体は、ポーラス形成材料による湿潤化のために、特にポーラス形成材料が充填されたタンクを通して案内される。ポーラス形成材料は、例えば、DMC(ジメチルカーボネート)を含む。特に、DMCが充填されたタンクは、窒素ガスによる所定の圧力下に置かれるので、外気は侵入することができない。第1の電極がタンクを通走すると、ポーラス形成材料が活性材料のポーラス内に侵入する。
【0043】
基体に圧力を作用させる圧着ローラもしくは湿潤化ローラを設けることができ、機械的圧力によってより多くのDMCが基体の活性材料内へと達する。湿潤化ローラは、特に微細構造を基体の表面上に生じさせる。このようにすることで、より多くのDMCが基体表面のポーラス内またはマイクロポーラス内に付着する。
【0044】
さらに、過剰なポーラス形成材料を基体の表面から除去する拭き取りローラを設けることができる。過剰なポーラス形成材料は、特にタンクに戻すことができる。
【0045】
次いで、基体のポーラスが、特にポーラス形成材料で充填される。続いて、基体を、特にステップa2)においてカレンダ加工することができる。
【0046】
ステップa2)では、基体は、最終的な密度、例えば典型的なNMC材料(すなわちリチウム-ニッケル-コバルト-マンガン電池セルの材料)のための3.6g/cm(グラム/立方センチメートル)まで稠密化可能である。
【0047】
90℃の沸点を有するため、ポーラス形成材料として特にDMCが選択される。DMCは、方法の後の時点で特に蒸発によって基体から再び除去される。
【0048】
DMCは、基体の表面を離れるとき、表面に新たなポーラスを形成するかまたはポーラス直径を増大させる。これによりポーラス率が上昇する。このため、コーティングの形態で堆積されたコポリマーが、第1の電極もしくは基体のポーラス内に比較的容易に侵入することができる。
【0049】
湿潤化ローラによって形成された微細構造は、特に、後続のコポリマーコーティングが基体の表面に付着することに寄与する。
【0050】
ステップa2)でのカレンダ加工の際には、一方側または両側で、例えばポリウレタン保護フィルムを使用することができる。このようにすることで、DMCが基体の側面に拡がらなくなる。ポリウレタンフィルムは、カレンダローラへの導入前に基体上に載置され、カレンダ装置から導出された後に再び巻き戻すことができる。このようにして同じフィルムを再使用することができる。
【0051】
特に、材料混合物は、ステップa)の間、ポーラス形成材料で湿潤化される。
【0052】
特に、ポーラス形成材料は、ステップb)の前に、基体から少なくとも部分的に除去される。
【0053】
特に、少なくとも活性材料とコポリマーとから成る基体は、ステップb)の前にステップa2)においてカレンダ加工される。
【0054】
特に、基体は、ステップb)の直前にはゲルポリマー電解質を含まない。
【0055】
特に、第1の電極は、ステップb)の前に、電池セル内での動作のために予め定められた幾何学形状へとカットされる。
【0056】
特に連続材料として形成された基体のカットには、特にスリット形成(連続材料の延在方向すなわちx方向に沿って、基体の幅広の出発材料を複数の幅狭の連続材料ストリップへと分割するためのカット線を延在させる)、ノッチ加工(カット線によって連続材料から導体を切り出す;当該カット線は連続材料の延在方向に沿った長手方向とこの延在方向に対する横断方向とに延在する、すなわち例えばy方向とx方向とに沿って延在する)、および/または分離(カット線がy方向に沿った連続材料の延在方向に対する横断方向に延在する;ここでの分離により基体が連続材料からカットされて、スタックの個々の層または電極が形成される)が含まれる。
【0057】
ステップb)の前にはコポリマーのみが存在し、特にゲルポリマー電解質が存在せず、つまり特にはゲル化がいまだ起こっていないので、基体を特に容易に取り扱うことができる。
【0058】
特に、基体または第1の電極は、ステップa)とステップb)との間に乾燥される。
【0059】
特に、基体は約90℃の温度まで加熱され、その際に乾燥される。ポーラス形成材料が活性材料中および/または材料混合物中に配置されている場合、このポーラス形成材料は沸騰して蒸発する。ポーラス形成材料の気泡が基体の表面から放出されると、新たなポーラスが形成されるかまたは存在するポーラスの直径が増大される。これにより、活性材料中および場合により存在するコーティング中のポーラス率が上昇する。
【0060】
ポーラス形成材料がコーティング内に配置されている場合、ポーラス形成材料は加熱によって放出され、コーティングから除去される。これにより、コーティングのポーラス率が上昇する。
【0061】
乾燥の際に基体またはコーティングから放出されるポーラス形成材料は捕捉可能であり、場合により再利用のためにリサイクルすることができる。
【0062】
加熱後に依然としてポーラス形成材料が基体もしくはコーティングのポーラス中に残留することがある。このことは特に有害ではない。なぜなら、ポーラス形成材料、例えばDMCは、場合により、ステップb)において第1の電極の湿潤化のために使用される液体電解質の一部となるからである。
【0063】
よって、特にDMCまたは同等の適切なポーラス形成材料、すなわち、ポーラス形成に使用可能であって、同時に電解質成分ともなる材料が使用される。なお、DMCは健康面においても懸念がなく、VOC(volatile organic compoundsすなわち揮発性有機成分)を含まない。
【0064】
予め定められた幾何学形状へのカット後、第1の電極を特に別の電極と共に1つのスタックとして配置することができる。この時点では第1の電極上にゲル状材料は設けられていないので、積層の際にも第1の電極を容易に取り扱うことができる。
【0065】
特に、第1の電極は、ステップa)の後かつステップb)の前に、少なくとも1つの第2の電極と共に相互に積層されて配置され、これらの電極によって1つのスタックが形成される。
【0066】
特に、スタックは、ステップb)の前に、電池セルのケーシング内に配置される。
【0067】
積層は特に公知の形式で行うことができる。ここで、積層は、Z字状の折り畳みとして、つまり交互に折り畳み縁を有する連続層を形成することによって、またはピックアンドドロップ法において、つまりそれぞれ別個の層を用いて、実行することができる。ピックアンドドロップ法では、カソード-セパレータ-アノードスタックが製造される。
【0068】
積層後、特にニッケルベースの接続素子を使用して、アノード側の導電体どうしが相互に接続されるかまたは相互に溶接される。同様に、カソード側では、アルミニウム導電体が特にアルミニウム接続素子によって相互に接続されるかまたは溶接される。
【0069】
次いで、特にそれぞれ接続された導電体を含むスタックが、バッテリセルのケーシング内に配置される。ケーシングは、パウチセルケーシングとして、または塑性変形可能なケーシング(角型バッテリセル)として形成可能である。ケーシングがパウチセルケーシングである場合、気密の封止を保証するために、パウチセルケーシングの縁部が公知の形式でシールされる。特に、ケーシングは、公知の形式で、電池セルの形成中に放出されるガスを収集することのできるガスポケットを有する。
【0070】
次いで、ケーシングの少なくとも部分的なシールの後に、液体電解質がケーシング内へ導入される。
【0071】
ステップb)では特に、液体電解質、例えば、溶解したリチウム塩(例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウムすなわちLiPF6、またはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドすなわちLiFSi)を含むPC(ポリプロピレンカーボネート)および/またはDMC(ジメチルカーボネート)が、少なくとも第1の電極、特にスタックに供給される。この場合、液体電解質の量はきわめて小さい。というのも、電解質の主機能は、コポリマーと共にゲルポリマー電解質を生成することにあるからである。
【0072】
電解質が充填された後、ケーシング、例えばパウチセルケーシングのいまだ開放されている縁部が閉鎖されるかまたは封止される。
【0073】
電解質の充填は、特に窒素雰囲気下でかつ/または真空下で行われ、これにより、電解質の充填中に空気を電池セルもしくはケーシングから逃がすことができる。
【0074】
特に、ゲルポリマー電解質の形成は、少なくとも熱エネルギまたは機械的エネルギの供給により活性化される。
【0075】
少なくとも第1の電極が湿潤化されたことにより、液体電解質が第1の電極もしくは基体もしくはコーティングのポーラス内へ侵入する。液体電解質はコポリマーと反応し、活性化される。活性化のために、特に、例えば熱または機械的な力によって提供可能なエネルギが必要である。活性化の後、液体電解質は、元のマイクロポーラスフィルム(基体および/またはコーティング)を膨潤させ、最終的にゲルポリマー電解質を形成する。
【0076】
湿潤および活性化は、特に、第1の電極またはスタックに機械的な力を印加することによって行われる。例えば、パウチセルケーシング内に配置されたスタックを、回転する2つのローラ間で圧着し、圧縮することができる。機械的な力により、液体電解質がポーラス内に侵入する。なお、当該方法は、ケーシングおよびセパレータの損傷の可能性が比較的小さいため、適切でありうる。
【0077】
湿潤化および活性化は(場合により付加的に)熱エネルギによって行ってもよい。このために、少なくとも第1の電極もしくはスタックおよび/またはスタックを備えたケーシングに対し、例えば炉内に配置することによって熱エネルギが供給される。少なくともこのために、第1の電極は約50℃まで加熱される。リチウム塩としてLiFSiが使用される場合、加熱は80℃まで行うこともできる。加熱により熱エネルギが電解質で利用されて、この電解質がポーラス内へ侵入し、コポリマーが活性化されてゲルポリマー電解質が製造される。
【0078】
湿潤化プロセスの後、固体電池またはポリマー電池は成形のための準備が完了した状態となる。コポリマーは特に、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは完全に、ゲルポリマー電解質に変換されている。
【0079】
特に、スタックは、(特にリチウム塩を含む)液体電解質により、電解質充填プロセスの間、従来のポリオレフィンセパレータが液体電解質によって活性化されるのと同様に活性化可能である。コーティングもしくは基体のポーラス性に基づいて、液体電解質をコーティング内または基体内へ侵入させることができる。活性化の後、液体電解質は、元のマイクロポーラスコーティングまたは基体を膨潤させ、最終的にコポリマーと共にゲルポリマー電解質を形成する。
【0080】
コポリマーの湿潤化プロセスを加速するために、液体電解質の一部を特にカレンダ加工前に添加することができる。
【0081】
提案の方法では、特に、湿分制御された環境において実行されなければならない唯一のステップは、スタックへの液体電解質の供給である。このため、提案の方法のまさに製造コストおよび装置コストに関する利点は明らかである。
【0082】
電池セルでは、通常、カソードのみがゲルポリマー電解質でコーティングされ、一方、アノードはリチウム金属から形成される。他のポリマーゲル電池の場合、アノードおよびカソードの双方をゲルポリマー電解質でコーティングすることができる。特に基板上もしくは支持体材料上のカソード化合物材料およびアノード化合物材料の双方が例えば結合剤としての同じPVdF-HFPコポリマーでコーティングされるので、電池セルの3つの要素は、電解活性化後のゲル化によって物理的な境界を示さずに集積多層ウェハへと効果的に融合され、これにより、アノードと電解質との界面またはカソードと電解質との界面がこれらの電極のポーラス構造内の奥深くまで到達し、このことは液体電解質が界面に到達する場合にきわめて類似する。これにより、ゲルポリマー電解質のイオン伝導率および寸法安定性も向上する。
【0083】
特に、当該方法は、固体電池にもポリマーゲル電池セルにも使用することができる。電池セルの場合、リチウム金属はアノードとして使用されるので、提案の方法は、特にカソードの製造にのみ使用される。ポリマーゲル電池セルの場合、カソードおよびアノードを製造する方法を利用することができる。したがって、電池セルがリチウム金属なしで製造される場合、当該方法は2つの電極のために使用することができる。
【0084】
液体電解質の施与および第1の電極の湿潤化は、金属アノードとしてリチウムを有するバッテリセルにおいては、特に電極の積層前に行われる。特に、液体電解質がアノードのリチウム金属、接着フィルム、ニッケルプレートおよび銅基板に接触すると問題が生じることがある。液体電解質がアノード上のリチウム金属に負の影響を及ぼさないのであれば、特に電極の湿潤化を積層後に行うこともできる。
【0085】
特に、提案の方法は、少なくとも次の点で、固体電池セルを製造する公知の方法と異なる。すなわち、
・本方法では、ゲルポリマー電解質がカレンダ加工の直後に形成されるのではなく、電解質の充填および活性化の後にはじめて形成される。
・公知の方法では、ケーシングへの液体電解質の充填は想定されていない。本方法では、ゲルポリマー電解質を形成するためにコポリマーを活性化する液体電解質を供給することが提案される。
・活性材料をコポリマーでコーティングすることのみが少なくとも電池セルを製造するための新たなプロセスであり、その他の方法ステップは特に既に知られているが、ここではじめて、別の組み合わせで提案される。コポリマーでのコーティングは、特に高速噴射によりまたは析出ローラでの圧着により実行することができる。
・特に、カソードとして構成された第1の電極は、電極のカット中、また電極と導電体素子との接続中、さらには積層プロセス中には、ゲル状の電解質コーティングを有さない。
・ゲルポリマー電解質を外部で製造し、次いでカソード上に堆積させる必要がない。ゲルポリマー電解質は電池セル内で製造される。
・基体またはコーティングのポーラス率をポーラス形成材料によって上昇させることができる。公知の方法では、ポーラス率は、カレンダ加工の間、比較的低い密度に維持される。本方法では、特に活性材料のカレンダ加工は変更されず、第1の電極は特には完全に所望の密度まで圧縮される。
・ポーラス形成材料が特に乾燥プロセスの間に放出され、これを捕捉してリサイクルすることができる。
・ゲルポリマー電解質を高温(約90℃)で例えばカソード上に施与する必要がない。ゲルポリマー電解液は、少なくとも第1の電極の湿潤化後に適当な低温で均一に分配される。ここでの湿潤化は特に3時間から4時間持続するので、約50℃で充分となりうる。
・例えばLiFSiのような高価なリチウム塩に代えて「通常の」費用対効果の高いリチウム塩、例えばヘキサフルオロリン酸リチウムなどを使用することができる。
・特に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような他のコポリマーも使用可能である。本方法では特に、好ましい構成として、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と共にポリフッ化ビニリデン(PVdF)から成るコポリマーの使用が提案されている。
【0086】
公知の方法と比較して、特に次のような利点を実現することができる。すなわち、
・ゲルポリマー電解質の形成が後のフェーズで行われるため、本方法の様々なステップの間、第1の電極を容易に取り扱うことができる。
・電極製造用の乾燥雰囲気が不要となり、したがって、エネルギコストが大幅に節約される。
・過剰な熱エネルギを供給する必要なく、ゲルポリマー電解質および液体電解質を第1の電極もしくは基体もしくはコーティングのポーラス内へ(公知の方法におけるのと同様に)侵入させることができる。
・LiFSiなどの高価なリチウム塩が不要である。
・バッテリを製造する従来の方法の大部分を使用することができる。このため、提案の方法を実現するための手間は軽減される。
・特に、スタックが、液体電解質による従来のポリオレフィンセパレータと同様に、電解質充填プロセスの間、(特にリチウム塩を含む)液体電解質によって活性化可能である。
・本方法は、現時点で公知の方法よりも良好に固体電池セルの大量生産に適している。
・電池セルにおけるゲルポリマー電解質の製造に必要な温度が比較的低いため、電解質の劣化が全くもしくは僅かな程度しか生じない。
・リチウム塩の熱分解が行われない。
・ゲルポリマー電解質がリチウム金属における樹脂状結晶の形成を抑制するので、熱暴走のリスクを低減することができる。
・従来のカレンダ加工を用いて第1の電極を高い密度まで圧縮することができ、これにより高い体積エネルギ密度が得られる。
・第1の電極のより高いポーラス率により、高電流(高いCレート)ひいては高い出力を送出することができる。
【0087】
要するに、既に組み立てられた電池セル(すなわち第1の電極が既にスタック内に配置されており、このスタックが既に電池セルのケーシング内に存在する場合)においてゲルポリマー電解質を製造することで、固体電池またはポリマーゲル電池の製造を著しく簡単化することができる。
【0088】
本方法は、特に、データ処理システム、例えば制御装置により実行可能であり、当該システムは、方法の各ステップの実行に適するように構成されているかもしくはコンフィグレーションされているかもしくはプログラミングされている手段、または方法を実行する手段を有する。当該システムにより、少なくとも、方法に使用される装置の構成要素の閉ループ制御を行うことができる。
【0089】
ここでの手段は、例えば、プロセッサと、このプロセッサによって実行される命令を格納したメモリと、方法に使用される装置の構成要素のうちの列挙された構成要素間で命令、測定値、データなどを伝送することのできるデータ線路または伝送装置とを含んでいる。
【0090】
さらに、コンピュータによってプログラムが実行される際に当該コンピュータに上述した方法または上述した方法ステップを実行させるための命令を含む、コンピュータプログラムが提案される。
【0091】
さらに、コンピュータによって実行される際に当該コンピュータに上述した方法もしくは上述した方法ステップを実行させるための命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体が提案される。
【0092】
さらに、少なくとも、ケーシングと、当該ケーシング内に配置された、特に上述の方法により製造された少なくとも1つの電極を含む電極スタックとを含む、電池セルが提案される。
【0093】
電池セルは特に、容積部を取り囲むケーシングと、容積部内に配置された、第1の電極タイプの少なくとも1つの第1の電極と、第2の電極タイプの第2の電極と、これらの間に配置されたセパレータ材料または固体(ゲル状であってもよい)電解質とを含む。
【0094】
電池セルは、特に(パウチフィルムから成る変形可能なケーシングを有する)パウチセルまたは(形状固定のケーシングを有する)角型セルである。パウチフィルムは、いわゆるパウチセル用のケーシングとして使用される公知の変形可能なケーシング部材である。これは、例えばプラスチックとアルミニウムとを含むコンポジット材料である。
【0095】
電池セルは、特にリチウムイオン電池セルである。
【0096】
複数の電極の個々の層は重なり合うように配置されており、特にスタックを形成する。電極はそれぞれ異なるタイプの電極に対応付けられており、すなわちアノードまたはカソードとして構成されている。ここで、アノードおよびカソードは、交互に、それぞれセパレータ材料または電解質によって相互に分離されて配置されている。
【0097】
さらに、少なくとも、トラクション駆動装置と、少なくとも1つの記載の電池セルを備えたバッテリとを備え、少なくとも1つの電池セルによってトラクション駆動装置にエネルギを供給可能である、自動車が提案される。
【0098】
方法に関する説明は、特に、電池セル、自動車、データ処理システム、およびコンピュータ実装方法(すなわち、コンピュータまたはプロセッサ、コンピュータ可読記憶媒体)に適用可能であり、またその逆も当てはまる。
【0099】
特に特許請求の範囲およびこれを反映する説明における不定冠詞(「1つの」および「ある」)の使用自体は数詞として理解されるべきではない。したがって、こうした不定冠詞に対応して導入される概念または構成要素はこれらの概念もしくは構成要素が少なくとも1つ存在しており、特には複数存在してもよいと理解されるべきである。
【0100】
念のために付言しておくと、本明細書で使用する数詞(「第1の」、「第2の」、…)は、主に複数の同種の対象物、量またはプロセスを区別するため(のみ)に用いられるものであり、つまり、特にこれらの対象物、量またはプロセス相互の従属関係および/または順序を強制的に設定するものではない。従属関係および/または順序が必要とされる際には、これらにつき本明細書において明示しているか、または当業者が具体的に説明した構成を考察すれば明らかとなるようにしている。部品が複数回現れる場合(「少なくとも1つの」)、これらの部品のうちの1つについての説明は、これらの部品の全部もしくは一部に同様に当てはまるが、このことは必須ではない。
【0101】
本発明および技術的環境を、以下に添付の図面に即して詳細に説明する。本発明は記載の実施例により限定されるものではないことに留意されたい。特に、別段のことわりのない限り、図面に示されている事実の部分態様を抽出して、本明細書からの別の構成部分および知見と組み合わせることも可能である。特に付言しておくならば、図、特に図示の縮尺は概略的なものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】方法の第1の変形実施形態のフローを示す図である。
図2】方法の第2の変形実施形態のフローを示す図である。
図3】方法の第3の変形実施形態のフローを示す図である。
図4】コーティングを被着させる装置の第1の変形実施形態を示す側面図である。
図5】コーティングを被着させる装置の第2の変形実施形態を示す側面図である。
図6】電池セルを示す側断面図である。
図7】方法のステップb)中のバッテリセルを示す図である。
図8】ステップb)の後の図7のバッテリセルを示す図である。
図9】方法の一部を示す図である。
図10図9の湿潤化ローラを搬送方向に沿って示す図である。
図11図10の湿潤化ローラを示す側面図である。
図12図10および図11の湿潤化ローラの微細構造を示す図である。
【0103】
図1には、方法の第1の変形実施形態のフローが示されている。ステップa)27では、活性材料4が準備され、場合により支持体材料9上に配置される。基体3は、活性材料4と支持体材料9とを有している。活性材料4は、ステップa0)28の前にポーラス形成材料11で湿潤化される。活性材料4は、ステップa)27の間かつステップa1)29の前にステップa0)28においてカレンダ加工される。カレンダ加工については冒頭で既に説明した。カレンダ装置16は複数のカレンダローラ17を含む。活性材料4には、変形ゾーンにおいてカレンダローラ17を介してカレンダ加工力が印加され、圧縮される。
【0104】
後続のステップa1)29において、コポリマー5がコーティング10として活性材料4上に堆積される。コーティング10は、ステップa)27の間、ポーラス形成材料11で湿潤化される。材料11で湿潤化されたコーティング10は、ステップa2)30においてあらためてカレンダ加工される。
【0105】
第1の電極1は、ステップb)31の前に、ステップa3)32において、電池セル2内での動作のために予め定められた幾何学形状12へとカットされる。連続材料39として形成された基体3のカットには、スリット形成(連続材料39の延在方向すなわちx方向もしくは搬送方向46に沿って、基体3の幅広の出発材料を複数の幅狭の連続材料39のストリップへと分割するためのカット線を延在させる)、ノッチ加工(カット線によって連続材料39から導電体38を切り出す;当該カット線は、連続材料39の延在方向に沿った長手方向とこの延在方向に対する横断方向とに延在する、すなわち例えばy方向とx方向とに沿って延在する)、および/または分離(カット線がy方向に沿った連続材料39の延在方向に対する横断方向に延在する;ここでの分離により基体3が連続材料39からカットされて、スタック14の個々の層または電極1,13が形成される)が含まれる。
【0106】
次のステップa4)33では、カットされた第1の電極1または基体3が乾燥される。ここでポーラス形成材料11が蒸発し、活性材料4内およびコーティング10内にポーラスが形成される。
【0107】
次のステップa5)34では、電極1,13および場合によりセパレータ40が積層されてスタック14が形成される。
【0108】
次のステップa6)35では、ケーシング15内へのスタック14の配置が行われる。
【0109】
次のステップb)31は、液体電解質6を添加するステップb1)36と、コポリマー5と液体電解質6とを反応させることによってゲルポリマー電解質7を形成して第1の電極1を形成するステップb2)37とに分けられている。
【0110】
ここで言及しておくならば、ポーラス形成材料11の添加は、それぞれ任意選択手段として実行されてもよい。
【0111】
図2には、方法の第2の変形実施形態のフローが示されている。ここでは、第2の電極13は、液体電解質6によって加えられないリチウム金属アノードである。なお、図1についての説明も参照されたい。
【0112】
第1の変形実施形態とは異なり、ここでは、方法により、カソードのみが第1の電極1として製造される。したがって、ステップb)31は、ステップa3)32の後、すなわちカット後に行われる。ステップb)31では、液体電解質6の添加およびコポリマー5と液体電解質6とを反応させることによるゲルポリマー電解質7の形成が行われて、第1の電極1が形成される。
【0113】
次のステップa5)34では、電極1,13および場合によりセパレータ40が積層されてスタック14が形成される。
【0114】
次のステップa6)35では、ケーシング15内へのスタック14の配置が行われる。
【0115】
図3には、方法の第3の変形実施形態のフローが示されている。なお、図1および図2についての説明も参照されたい。
【0116】
他の変形実施形態とは異なり、ここでは、コポリマー5がステップa)27において活性材料4と混合されて材料混合物8が形成され、この材料混合物8が支持体材料9上に配置される。コポリマー5は、材料混合物8中に均一に分散配置される。次に、ステップb)31の枠組みにおいてゲルポリマー電解質7の形成が行われると、ゲルポリマー電解質7も、その後に形成された第1の電極1の材料混合物8内に均一に分散配置される。
【0117】
活性材料4は、ステップa0)28の前にポーラス形成材料11で湿潤化される。活性材料4は、ステップa)27の間かつステップa1)29の前にステップa0)28においてカレンダ加工される。第1の電極1は、ステップb)31の前にステップa3)32において、電池セル2内での動作のために予め定められた幾何学形状12へカットされる。
【0118】
次のステップa4)33では、カットされた第1の電極1または基体3が乾燥される。ここでポーラス形成材料11が蒸発し、材料混合物8内にポーラスが形成される。
【0119】
第1の変形実施形態とは異なり、ここでは、方法により、カソードのみが第1の電極1として製造される。したがって、ステップb)31は、ステップa3)32の後、すなわちカット後に行われる。ステップb)31では、液体電解質6の添加および液体電解質6とコポリマー5とを反応させることによるゲルポリマー電解質7の形成が行われて、第1の電極1が形成される。
【0120】
次のステップa5)34では、電極1,13および場合によりセパレータ40が積層されてスタック14が形成される。
【0121】
ステップa1)29、すなわちコーティング10としてコポリマー5を材料混合物8上に配置することは、ここでは必ずしも行われなくてよい。
【0122】
図4には、コーティング10を被着させる装置の第1の変形実施形態の側面図が示されている。
【0123】
コポリマー5は、ベンチュリベースのノズル21を用いて、基体3の表面に(すなわち活性材料4のみに)噴霧される(高速噴射もしくは高速ジェット法とも称される)。ノズル21には、高圧(約6bar)がかけられた乾燥空気24が供給される。このために、空気24が圧縮器22で圧縮される。弁23を介してコポリマー5の供給が制御される。コポリマー粒子がノズル21に流入する。高い空気圧は高い空気速度へと変換される。高速(最大0.3Ma~4Ma)の空気がコポリマー粒子を連行し、基体3の、特には既にカレンダ加工された表面へと打ち込まれる。このようにすることで、数マイクロメートル厚さの薄いコーティング10を形成することができる。
【0124】
図5には、コーティング10を被着させる装置の第2の変形実施形態の側面図が示されている。基体は、連続材料39として1対の圧着ローラ26に供給される。圧着ローラ26を介してそれぞれ1つの出口25から供給されたコポリマー5は、支持体材料9に結合される。搬送ローラ20を介して、カレンダ装置16およびステップa2)30への第1の電極1のさらなる搬送が行われる。材料11で湿潤化されたコーティング10は、ステップa2)30においてあらためてカレンダ加工される。
【0125】
図6には、電池セル2が側断面図で示されている。電池セル2は、容積部を取り囲むケーシング15を含んでおり、さらに、容積部内に配置される、第1の電極タイプの複数の第1の電極1、第2の電極タイプの複数の第2の電極13、およびこれらの間に配置されるセパレータ40、または固体(もしくはゲル状)電解質6を含んでいる。電極1,13の導電体38は、ケーシング15から外へ延在している。ケーシング15は気密に閉鎖されている。
【0126】
図7には、方法のステップb)31中の電池セル2が示されている。ケーシング15は、既に部分的にシールシーム41により閉鎖されている。導電体38は、ケーシング15を越えて外部へ延在している。
【0127】
ステップa6)35では、ケーシング15内へのスタック14の配置が行われる。ステップb1)36では、液体電解質6の添加が、ケーシング15のいまだ閉鎖されていない面を介して行われる。
【0128】
図8には、ステップb)31後の図7の電池セル2が示されている。ステップb)31の枠組みにおいて、ケーシング15はここで最終的に閉鎖される。ステップb2)37では、コポリマー5と液体電解質6とを反応させることによるゲルポリマー電解質7の形成が行われて、第1の電極1が形成される。
【0129】
図9には、方法の一部が示されている。ここでは、ステップa0)28、すなわち(第1の)カレンダ加工と、ステップa0)28の前の、ポーラス形成材料11での活性材料4の湿潤化とが示されている。活性材料4は、ステップa)27の間、かつステップa1)29の前にステップa0)28においてカレンダ加工される。基体3は、ポーラス形成材料11での湿潤化のために、ポーラス形成材料11で満たされたタンク42を通して案内される。ポーラス形成材料11は、例えば、DMC(ジメチルカーボネート)を含む。DMCで満たされたタンク42は、窒素ガス43によって所定の圧力下に置かれるので、外気は侵入不能である。第1の電極1が連続材料39としてタンク42を通走する場合、ポーラス形成材料11が活性材料4のポーラス内に侵入する。基体3に圧力を作用させる湿潤化ローラ18が設けられており、この機械的圧力によって、ポーラス形成材料11がより多く基体3の活性材料4内へ到達する。湿潤化ローラ18は、基体3の表面上に微細構造44を生じさせる(図12を参照)。このようにして、より多くの材料11が基体3の表面のポーラス内もしくはマイクロポーラス内に付着することになる。
【0130】
さらに、過剰なポーラス形成材料を基体3の表面から除去する拭き取りローラ19が設けられている。過剰なポーラス形成材料11をタンク42内に戻すことができる。
【0131】
次いで、基体3のポーラスがポーラス形成材料で充填される。続いて、基体3がステップa2)30においてカレンダ加工される。
【0132】
ステップa2)30でのカレンダ加工では、両側で例えば(ポリウレタン)保護フィルム45が使用される。このようにすることで、材料11が基体3の側面に拡がらなくなる。ポリウレタン保護フィルム45は、カレンダローラ17内への導入前に基体3上に載置され、カレンダ装置16から導出された後、再び巻き戻される。このようにして同じ保護フィルム45を繰り返し使用することができる。
【0133】
図10には、図9の湿潤化ローラ18が搬送方向46に沿った図で示されている。図11には、図10の湿潤化ローラ18が側面図で示されている。図12には、図10および図11の湿潤化ローラ18の微細構造44が示されている。図10図12につき、以下において一緒に説明する。図9についての説明も参照されたい。
【0134】
湿潤化ローラ18は、付加的に励起装置47によって励起されて振動48を生じさせる。湿潤化ローラ18は基体3へと圧力を作用させるので、この機械的圧力により、より多くのポーラス形成材料11が基体3の活性材料4へと到達する。湿潤化ローラ18は微細構造44を有しており、これにより基体3の表面上に微細構造44が形成される(図12を参照)。微細構造44の個々の形状は、約20μmの深さおよび最大約5μmの幅を有する。このようにすることで、より多くの材料11が基体3の表面のポーラス内またはマイクロポーラス内に付着することになる。
【符号の説明】
【0135】
1 第1の電極
2 (固体)電池セル
3 基体
4 活性材料
5 コポリマー
6 電解質
7 ゲルポリマー電解質
8 材料混合物
9 支持体材料
10 コーティング
11 材料
12 幾何学形状
13 第2の電極
14 スタック
15 ケーシング
16 カレンダ装置
17 カレンダローラ
18 湿潤化ローラ
19 拭き取りローラ
20 搬送ローラ
21 ノズル
22 圧縮器
23 弁
24 空気
25 出口
26 圧着ローラ
27 ステップa)
28 ステップa0)
29 ステップa1)
30 ステップa2)
31 ステップb)
32 ステップa3)
33 ステップa4)
34 ステップa5)
35 ステップa6)
36 ステップb1)
37 ステップb2)
38 導電体
39 連続材料
40 セパレータ
41 シールシーム
42 タンク
43 窒素ガス
44 微細構造
45 ポリウレタン保護フィルム
46 搬送方向
47 励起装置
48 振動
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル(2)の第1の電極(1)を製造する方法であって、
該方法は、少なくとも次のステップ、すなわち、
a)少なくとも前記第1の電極(1)の活性材料(4)とコポリマー(5)とを含む、前記第1の電極(1)の基体(3)を生成するステップと、
b)前記基体(3)を液体電解質(6)で湿潤化し、前記コポリマー(5)と前記液体電解質(6)とを反応させることによりゲルポリマー電解質(7)を形成して、前記第1の電極(1)を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップa)において前記コポリマー(5)を前記活性材料(4)と混合して材料混合物(8)を形成し、前記材料混合物(8)を支持体材料(9)上に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップa)の間に実行されるステップa1)において、前記コポリマー(5)をコーティング(10)として前記活性材料(4)上に堆積させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステップa)の間、さらにステップa1)の前にステップa0)において、前記活性材料(4)をカレンダ加工する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ステップa)の間、この場合にはステップa0)の前もしくはステップa0)中に、前記活性材料(4)をポーラス形成材料(11)で湿潤化する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ステップa)の間、前記コーティング(10)をポーラス形成材料(11)で湿潤化する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
ステップa)の間、前記材料混合物(8)をポーラス形成材料(11)で湿潤化する、請求項2記載の方法。
【請求項8】
ステップb)の前に、前記ポーラス形成材料(11)を前記基体(3)から少なくとも部分的に除去する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
ステップb)の前にステップa2)において、少なくとも前記活性材料(4)および前記コポリマー(5)から成る前記基体(3)をカレンダ加工する、請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
前記基体(3)は、ステップb)の直前にはゲルポリマー電解質を含まない、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
ステップb)の前に、前記第1の電極(1)を、電池セル(2)内での動作のために予め定められた幾何学形状(12)へとカットする、請求項1または2記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電極(1)をステップa)とステップb)との間で乾燥させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項13】
ステップa)の後かつステップb)の前に、前記第1の電極(1)と少なくとも1つの第2の電極(13)とを重なり合うように積層配置し、各電極(1,13)によりスタック(14)を形成する、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
ステップb)の前に、前記スタック(14)を前記電池セル(2)のケーシング(15)内に配置する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記ゲルポリマー電解質(7)の形成を、少なくとも熱エネルギまたは機械的エネルギの供給により活性化する、請求項1または2記載の方法。
【国際調査報告】