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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】バッテリー測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20241001BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20241001BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20241001BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20241001BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20241001BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/389
G01R31/392
H02J7/00 X
G01R31/396
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517053
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022075813
(87)【国際公開番号】W WO2023041727
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021210298.0
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.HDMI
(71)【出願人】
【識別番号】524101319
【氏名又は名称】ハイムダリティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HEIMDALYTICS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス ファン ツァイル
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA51
2G216CB11
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CC02
5G503EA05
5G503EA08
5G503GD04
(57)【要約】
本発明は、バッテリーのセルストリング(202、204)内のバッテリーセルユニット(223~228)の測定変数を検出するように構成されたバッテリーセル測定ユニット(213~218)に関する。測定ユニット(213~218)はさらに、バッテリーの動作中にバッテリーセルユニット(223~228)の状態を決定するための測定変数を検出し、決定された測定変数を測定データセットとしてバッテリー制御ユニット(104)に提供するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセル測定ユニット(213~218)であって、該バッテリーセル測定ユニット(213~218)は、バッテリーの複数のバッテリーセルユニットを有するセルストリング(202、204)内のバッテリーセルユニット(223~228)の測定変数を検出するように構成されており、
前記バッテリーセル測定ユニット(213~218)は、さらに、バッテリーの動作中にバッテリーセルユニット(223~228)の状態を決定するための測定変数を検出し、決定された測定変数を測定データセットとしてバッテリー制御ユニット(104)に提供するように構成され、
前記バッテリーセル測定ユニットは、測定されるセルストリングがバッテリーの動作中にバッテリーのその他のセルストリングと切り離されているときにのみ、前記バッテリーセルユニット(223~228)の状態を決定するために測定変数を検出し、決定された測定変数を測定データセットとして前記バッテリー制御ユニット(104)に提供する、
バッテリーセル測定ユニット(213~218)。
【請求項2】
前記バッテリーセル測定ユニット(213~218)は、さらに、
インピーダンススペクトルを決定するための励起としてのバッテリーセルユニット(223~228)に注入される異なる周波数の交流電流と、
インピーダンススペクトルを決定するための電圧応答としての注入される交流電流に対する電圧及び位相を含む測定変数とを検出するように構成されており、
前記バッテリーセル測定ユニット(213~218)は、さらに、測定変数の値及び/又はインピーダンススペクトルの値をタイムスタンプとともに提供し、それらを測定データセットとしてバッテリー制御ユニット(104)が利用できるようにするように構成される、請求項1に記載のバッテリーセル測定ユニット(213~218)。
【請求項3】
前記バッテリーセル測定ユニット(213~218)は、さらに、温度、バッテリーセルユニット(223~228)内の圧力、化学的及び物理的パラメータを含む測定変数のうち1つ以上の測定変数を追加的に検出するように構成される、請求項1又は2に記載のバッテリーセル測定ユニット(213~218)。
【請求項4】
バッテリー内の複数のバッテリーセルユニット(223~228)のために、請求項1~3のいずれか1つに記載のバッテリーセル測定ユニット(213~218)を複数の含む、測定ユニット装置(106)であって、
前記バッテリーは、並列に配置された複数のセルストリングを介してDCバス接続部(240)に接続されていて、当該セルストリングの各々は直列に接続された1つ以上のバッテリーセルユニット(223~228)を有し、
前記セルストリング(202、204)の少なくとも1つは、各々がバッテリーセルユニット(223~228)の測定変数を検出する1つ以上の測定ユニット(213~218)を有し、前記セルストリング(202、204)の前記1つ以上の測定ユニット(213~218)は、前記セルストリング(202、204)内のバッテリーセルユニット(223~228)の測定変数を同時に検出し、測定データセットとしてバッテリー制御ユニット(104)に提供するように検出された測定変数を整理するように構成される、測定ユニット装置(106)。
【請求項5】
バッテリー測定システム(100)であって、当該バッテリー測定システムは、
少なくとも1つのセルストリング(202、204)内に配置された複数の測定ユニット(213~218)を含む、請求項4に記載の測定ユニット装置(106)と、
バッテリー制御ユニット(104)と、
各バッテリーセル測定ユニット用の、シンクとしても機能しうる電流源と、
を含み、
前記バッテリーセル測定ユニット(213~218)の各々は、少なくとも1つのバッテリーセルユニット(223~228)と関連づけられており、前記バッテリーセル測定ユニット(213~218)の各々は、測定データセットをバッテリー制御ユニット(104)に送信するように構成されており、
前記バッテリー制御ユニット(104)は、少なくとも1つのセルストリングのバッテリーセル測定ユニット(213~218)から測定データセットを受信するように構成され、
前記電流源はそれぞれ、関連づけられたバッテリーセル測定ユニット(213~218)のバッテリーセルユニット(223~228)に、1つの周波数で電流を注入するように構成されている、バッテリー測定システム(100)。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリー測定システム(100)において、いずれかのセルストリング(202、204)は、当該いずれかのセルストリングを他のセルストリングから分離するためのスイッチ又は切替可能なコンバーターを有し、当該いずれかのセルストリングに関連づけられたバッテリーセル測定ユニット(213~218)のみが、当該いずれかのセルストリング(202、204)に割り当てられている測定変数及び測定データセットを提供するように構成されている、バッテリー測定システム(100)。
【請求項7】
前記バッテリー制御ユニット(104)は、前記バッテリーセル測定ユニット(213~218)の測定データセットからそれぞれの特性データセットを生成し、当該特性データセットにタイムスタンプを適用し、当該タイムスタンプを含む前記特性データセットを一時的に記憶するように構成されている、請求項5又は6の1つに記載のバッテリー測定システム(100)。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1つに記載のバッテリー測定システム(100)であって、演算ユニット(102)と通信インターフェースとをさらに含み、これらは一時的に記憶された特徴データ記録を前記演算ユニット(102)に送信するように構成され、前記演算ユニット(102)は、一時的に記憶された特徴データ記録を受信し、機械学習システムのモデルを周期的に計算するように構成され、当該モデルは、各バッテリーセル測定ユニット(213~218)に対して診断機能及び/又はバッテリー状態を提供し、前記演算ユニット(102)は、さらに、前記通信インターフェースを介して、前記モデルを前記バッテリー制御ユニット(104)に送信するように構成されている、バッテリー測定システム(100)。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1つに記載のバッテリー測定システム(100)において、当該バッテリー測定システムは、切断セルストリングを測定のために短時間切断する一方で、切断セルストリング以外のセルストリングはバッテリーの通常動作に従って動作を継続するように構成されている、バッテリー測定システム(100)。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか1つに記載のバッテリー測定システム(100)であって、当該バッテリー測定システム(100)は、さらに、
他の環境変数を検出するように構成されたセンサと、
特徴データ記録及び他の記録された測定環境変数を保存するように構成されたローカルメモリと
を含むバッテリー測定システム(100)。
【請求項11】
前記モデルは、タイムスタンプを用いている特徴データセットのそれぞれに基づいて診断モデルを生成するように構成された人工知能モデル(ニューラルネットワーク)である、請求項8~10のいずれか1つに記載のバッテリー測定システム(100)。
【請求項12】
前記モデルは、リカレントニューラルネットワーク法、強化学習法及び/又はActor/Critic法に従ったモデルであり、前記強化学習法では、環境モデル内で学習のための報酬が使用される、請求項8~11のいずれか1つに記載のバッテリー測定システム(100)。
【請求項13】
前記モデルは、充電状態(SoC)の状態値、健康状態(SoH)の状態値、温度、化学的特性及び/又は物理的特性に関する状態値を推定するようにさらに構成された人工知能(ニューラルネットワーク)モデルである、請求項8~12のいずれか1つに記載のバッテリー測定システム(100)。
【請求項14】
バッテリーセルユニット(223~228)の状態を決定するために、バッテリーのセルストリング(202、204)内のバッテリーセルユニット(223~228)の測定データセットを提供するための方法(800)であって、
測定対象のセルストリングを切り離すことと、
前記バッテリーの動作中に前記バッテリーセルユニット(223~228)の測定変数を取得することと、
事前に訓練された人工知能モデルによって前記バッテリーセルユニット(223~228)の状態を決定するために取得された測定変数を測定データとしてバッテリー制御ユニット(104)に提供することと、
を含み、
測定されるセルストリングがバッテリーの動作中にバッテリーのその他のセルストリングと切り離されているときにのみ、前記バッテリーセルユニット(223~228)の状態を決定するために測定変数が検出され、決定された測定変数が測定データセットとして前記バッテリー制御ユニット(104)に提供される、方法。
【請求項15】
電動式輸送手段又は定置型電気エネルギー蓄積装置における、請求項5~13のいずれか1つに記載のバッテリー測定システム(100)の使用。
【請求項16】
請求項5~13のいずれか1つに記載のバッテリー測定システム(100)を含む、電動式輸送手段又は定置型電気エネルギー蓄積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーセル測定ユニット、測定ユニット装置、バッテリー測定システム、バッテリー測定システムの使用、電動式輸送手段、定置型蓄電装置、例えばグリッド周波数調整用又はマイクログリッド蓄電装置、及びバッテリーセルユニットの状態を決定するためにバッテリーのセルストリング内のバッテリーセルユニットの測定データセットを提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー、例えば輸送手段や定置型蓄電装置のバッテリーの状態は、通常、セルの電圧、電流、及び温度を監視することによって決定される。この方法は、バッテリーの複雑な挙動を考慮していないため、しばしば不正確である。さらに、経年変化も考慮されていない。高精度の状態測定値を得るために、バッテリーを取り外して測定スタンドに置くことができる。その後、バッテリー全体のインピーダンススペクトルを求め、基準値と比較することができる。この方法は複雑で高価であるため、あまり頻繁に実施されない。また、このことは、例えば、現在の状態を常に見ることができるわけではないこと、予想される寿命が十分に分からないことを意味する。これは危険な状況につながる可能性があるため、バッテリーは定期的に交換する必要があり、交換用のバッテリーの在庫を持っておく必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の課題は、バッテリーの状態を判定するための改良されたシステムを提供することともいえる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、独立特許請求の範囲で特定される事項によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項、以下の記載、図によって特定される事項である。
【0005】
記載される実施形態は、同様に、バッテリーセル測定ユニット、測定ユニットアセンブリ、バッテリー測定システム、バッテリー測定システムの使用、電動式輸送手段、定置型蓄電装置、及びバッテリーセルユニットの状態を決定するためにバッテリーのセルストリング内のバッテリーセルユニットの測定データセットを提供する方法に関する。相乗効果は、詳細には説明されないかもしれないが、実施形態の様々な組み合わせから生じうる。
【0006】
さらに、本発明の方法に関する全ての実施形態は、記載されるステップ順序で実施されてもよいが、記載されるステップ順序だけが当該方法に関する唯一かつ必須なステップ順序であるとは限らないことに留意されたい。本明細書に開示された方法は、以下に明示的に別段の記載がない限り、特定の方法の実施形態から逸脱することなく、開示されたステップの順序を変えて実施することができる。
【0007】
第1の態様によれば、バッテリーセル測定ユニットが提供される。測定ユニットは、バッテリーのセルストリング内のバッテリーセルユニットの測定変数を検出するように構成される。測定ユニットはさらに、バッテリーの動作中にバッテリーセルユニットの状態を決定するための測定変数を検出し、決定された測定変数を測定データセットとしてバッテリー制御ユニットに提供するように構成される。
【0008】
これにより、例えば、バッテリーの状態又はバッテリーの環境状態を説明するのに適した物理的又は化学的測定変数を検出する測定ユニットが提供される。測定ユニットの本質的な特徴は、バッテリーの意図された動作中に測定された変数を記録するように構成されていることである。これは、例えば、運転中又は飛行中の輸送手段の場合でありうる。測定ユニットは、バッテリーシステム全体の状態を検出するのではなく、バッテリーセルユニットの状態のみを検出することに留意すべきである。また、複数のセルユニットの状態を同時に検出することも可能である。つまり、ここでの重要なポイントは、現在測定が行われていないセルユニットは依然として動作可能であり、測定中であってもこれらのセルユニットによってバッテリーシステムが使用されたままか、又は使用可能であるということである。一方、測定中のバッテリーセルユニットは、以下の実施態様でさらに詳しく説明するように、例えば測定電流の流出や干渉なしに正確な測定を行うことができるように、測定中に動作から短時間切り離される。
【0009】
状態とは、例えば充電状態や「健康状態」、あるいはバッテリーの使用を通じて変化しうる、あるいは一般に経時的に変化しうる物理的又は化学的特性である。バッテリーセルユニットとは、電圧に関して「外側から」測定できる最小単位であり、すなわち共通のプラス極とマイナス極をアクセス可能にするセルからなるユニットであり、したがって、その単位の全体的な電位を表す。原則として、これらは並列又は直列に接続されたバッテリーセルである。したがって、バッテリーセルユニットは、1つのエネルギー蓄積要素、又は並列又は直列に配置された複数のエネルギー蓄積要素を有することができる。バッテリーセルユニットとセルストリングを持つバッテリーの構造を以下で説明する。
【0010】
測定データセットには、測定変数に加えて、測定ユニットが測定変数に基づいて計算する他の値、例えばインピーダンス値も含めることができる。測定データセットは、必ずしも全ての測定値を含むとは限らない。
【0011】
決定された測定変数は、測定データセットとしてバッテリー制御ユニットに提供される。バッテリー制御ユニットは、例えば測定を制御し、以下にさらに説明するように、測定データを評価することができる。
【0012】
一実施形態によれば、測定ユニットはさらに、次の測定変数、つまり、インピーダンススペクトルを決定するための励起としての、異なる周波数でバッテリーセルユニットに注入される交流電流と、インピーダンススペクトルを決定するための電圧応答としての、注入される交流電流に対する電圧及び位相、を検出するように構成される。測定ユニットはまた、測定変数の値及び/又はインピーダンススペクトルの値をタイムスタンプとともに提供し、それらを測定データセットとしてバッテリー制御ユニットに利用可能にするように構成される。
【0013】
インピーダンススペクトルは、測定ユニットによって決定することができ、測定ユニットは、決定された又は計算されたインピーダンススペクトルの値をバッテリー制御ユニットに送信するか、又は測定ユニットは、生データをバッテリー制御ユニットに送信し、バッテリー制御ユニットが受信した生データからインピーダンススペクトルの値を決定する。
【0014】
インピーダンススペクトルは、バッテリーセルユニットのインピーダンスを周波数の関数として示す。インピーダンスは、大きさと位相、又は実部と虚部として表示することができる。周波数の範囲は、例えば数ミリヘルツから数キロヘルツの間である。整数周期の正弦波(マルチ正弦波でも可)電流励起を各セルユニットに注入し、電圧応答を例えば4点測定で測定する。インピーダンスの複素周波数スペクトルは、大きさと位相(又は実数部分の値と虚数部分の値)に従ってフーリエ変換することで得られる。インピーダンススペクトロスコピーのための交流電流と電圧応答は、個々のバッテリーセルユニットの測定ユニットによって記録される。
【0015】
一実施形態によれば、測定ユニットは、次の測定変数、つまり、温度、バッテリーセルユニット内の圧力、化学的及び物理的パラメータ、うちの1つ以上を追加記録するようにも構成されている。
【0016】
したがって、バッテリーセルユニットの全体的な状態は、個々の物理的及び化学的状態から推測することができ、これらの状態は、例えば、充電状態、「健康」状態、及び/又はバッテリーの寿命に影響を与えうる。
【0017】
測定ユニットはまた、測定データセットを、例えば短距離無線規格に従って無線で、又は例えばイーサネット或いはCANバスを介して有線で、バッテリー制御ユニットに提供するように構成してもよい。
【0018】
さらなる態様によれば、バッテリー内の複数のバッテリーセルユニットのために本明細書で説明する複数の測定ユニットを含む測定ユニット装置が提供される。バッテリーは、DCバス接続部において並列に配置される複数のセルストリングとつなげられるDCバス接続部を有し、並列に配置された各セルストリングは、直列に接続された1つ又は複数のバッテリーセルユニットを有する。セルストリングの少なくともいくつかは、それぞれ、1つ以上の測定ユニットを有し、各測定ユニットはバッテリーセルユニットの測定変数を記録する。この1つ以上の測定ユニットは、セルストリングのバッテリーセルユニットの測定変数を同時に記録し、測定データセットとしてバッテリー制御ユニットに提供するために記録された測定変数を整理するように構成される。
【0019】
バッテリーセルユニットは、単一セルとすることも、セルモジュールを形成する直列及び/又は並列接続セルとして編成することもできる。
【0020】
測定ユニットの数は、例えば、各バッテリーセルユニットに1つの測定ユニットが割り当てられるように、バッテリーセルユニットの数に対応させることができる。しかし、セルストリングの複数のバッテリーセルユニットを1つの測定ユニットに割り当てることも可能である。好ましくは、セルストリングの全てのバッテリーセルユニットが同時に測定される。このことは、例えば、以下にさらに詳細に説明するように、セルストリングごとに切替可能に測定を実施することができ、これにより測定時間を短縮できるという点で重要である。ここで、本開示において、バッテリーセルユニットは、本明細書においてエネルギー蓄積要素とも呼ばれる複数のセルを含みうることに留意されたい。すなわち、測定ユニットは、複数の、例えば14個のセル又はエネルギー蓄積要素を有するバッテリーセルユニットに対して電流を注入し、値を測定する。エネルギー蓄積要素は、本開示ではそれ以上区別されない。
【0021】
セルストリングは、その端部の一方がDCバスバー接続で終端しており、これは、例えば、バスバー接続又はケーブル接続によって実現することができ、そこで、接続された全てのセルストリングからのバッテリー電圧又は電流が利用可能であるか、又は利用可能にされる。
【0022】
測定データは、例えば、測定データセットとして編成することができ、このデータセットは、例えば、測定ユニットがバッテリー制御ユニットに送信する複数の測定変数及び時間パラメータを含むことができる。
【0023】
さらなる態様によれば、バッテリー測定システムが提供され、このシステムは、少なくとも1つのセルストリングに配置された複数の測定ユニットと、バッテリー制御ユニットと、シンクとしても動作可能な各測定ユニット用の電流源とを備えた、本明細書に記載の測定ユニット装置を有する。測定ユニットの各々は、少なくとも1つのバッテリーセルユニットに割り当てられ、測定ユニットの各々は、測定データ記録をバッテリー制御ユニットに送信するように構成される。バッテリー制御ユニットは、少なくとも1つのセルストリングの測定ユニットから測定データ記録を受信するように構成される。電流源はそれぞれ、関連する測定ユニットのバッテリーセルユニットに周波数を有する電流を注入するように構成される。
【0024】
言い換えれば、各測定ユニットには、その測定ユニットに割り当てられているバッテリーセルユニットに電流を注入する電流源が割り当てられている。この電流は周波数を有する。ここで、電流が周波数を有するとは、少なくとも1つの周波数を持つこと、又は異なる周波数を有する電流の重ね合わせ又はシーケンスを表すことを意味すると理解されたい。異なる周波数は、同時に発生することもあれば、次々に発生することもある。電流源はソースとしてもシンクとしても動作する。このことから、電流は例えば正弦波状に、すなわち励起として正負の振幅で変調することができる。
【0025】
バッテリー制御ユニットには、診断機能を実行するためのロジックも備えられている。この診断機能は、機械学習プロセスのモデルに基づく。バッテリー制御ユニットは、以下により詳細に説明するように、モデル又はモデルパラメータの値を、無線インターフェースを介して、あるいは代替的にコンピューティングユニットからの有線インターフェースを介して受信する。ロジックは、ハードウェア要素及び/又はソフトウェア要素を含むことができる。バッテリー制御ユニットは、そのタスクに応じて、プロセッサ、ロジックモジュール、プログラムメモリ及びレジスタ、クロックモジュールなどのハードウェアを有してもよいことを理解されたい。診断機能は、特にバッテリー内部の特性、電流統計などに関するものである。診断機能の例としては、現在の充電状態(SoC)、健康状態(SoH)、セルコアの温度、あるいはバッテリーシステムを保護し寿命を延ばすためのバッテリーシステムの今後の最大出力/入力のデフォルト値(推奨値)などがある。このモデルは必ずしも全ての診断機能に関連したり提供したりする必要はない。例えば、セル温度を温度センサによって直接記録することもできる。
【0026】
一実施形態によれば、各セルストリングは、セルストリングを別のセルストリングと分離するためのスイッチ又は切替可能なトランスデューサーを有し、これにより、このセルストリングに割り当てられた測定ユニットだけが測定変数と測定データ記録を提供する。
【0027】
このようにして、測定が行われるセルストリングは、DCバス接続から切り離され、例えば、負荷、消費部位、エネルギー源、及び他のセルストリングから切り離される。この切り離しは、スイッチ、例えばリレーや半導体、例えばコンバーター内のトランジスタによって、又はコンバーターのインピーダンスを切り替えることによって、セルストリングが高インピーダンスでバスバーにのみ接続されるように、瞬時に行うことができる。
【0028】
「コンバーター」という用語は「コンバーター」という用語と同義である。コンバーターの例は、DC/DCコンバーター又はDC/ACコンバーター又はAC/DCコンバーターであり、ここで「DC」は直流を表し、「AC」は交流を表す。
【0029】
換言すれば、好ましくは、1つのセルストリングのバッテリーセルユニットのみ、又は複数の選択されたセルストリングのバッテリーセルユニットが、一度に測定される。他のセルストリングは、このセルストリングから高インピーダンスで、あるいは一瞬で、絶縁される。このようにして、ソース/シンクから注入された電流は、測定対象のストリングの測定ユニットに接続されたセルに完全に流れ込み、他のセルストリングからの干渉を避けることができる。例えば、セルストリングを測定のために順番に「起動」させたり、DCバス接続から切り離したりすることができる。
【0030】
コンバーターの高インピーダンスによる絶縁のため、セルストリングは互いに影響を与えることなく、並列に測定することができる。さらに、双方向コンバーターを使用することで、ストリングの充電状態に関係なく、分離されたストリングをいつでもDCバス接続部に再接続することができる。
【0031】
一実施形態によれば、バッテリー制御ユニットは、測定ユニットの測定データセットから特徴データセットを生成し、特徴データセットにタイムスタンプを適用し、タイムスタンプを含む特徴データセットを一時的に保存するように構成される。
【0032】
特徴データセットには、タイムスタンプに加えて、例えば、周波数サポートポイントにおけるインピーダンス値、電流値及び電圧値、測定された電流範囲及び電圧範囲に関する統計情報、最後の測定と現在の測定との間の時間間隔にわたって電流を積分することにより計算されたSoC、温度などを含めることができる。
【0033】
バッテリー測定システムは、特性データ記録を保存するためのローカルメモリを有する。さらに、バッテリー測定システムは、バッテリーセルユニットの温度を測定するためのセンサ、又は環境の温度、湿度、機械的ストレスなどの環境パラメータを記録する他のセンサを有することができる。
【0034】
さらなる実施形態によれば、バッテリー測定システムは、コンピューティングユニットと、例えば、イーサネットなどのローカル又は有線インターフェース、又はWiFi、ブルートゥース(登録商標)、LTE、5G、無線、クラウドなどの無線インターフェースでありうる通信インターフェースとを有し、これらは、キャッシュされた特徴データ記録をコンピューティングユニット、例えば、サーバに送信するように構成される。このような構成により、コンピューティングユニットは、一時的に保存された特徴データ記録を受信し、現在の特徴データ記録に基づいて機械学習システムのモデルを周期的又は動的に計算するように構成され、これにより、モデルは各測定ユニットの診断機能を提供し、また、コンピューティングユニットは、通信インターフェースを介してバッテリー制御ユニットにモデルを送信するように構成される。
【0035】
コンピューティングユニット、例えばクラウドコンピュータ、サーバ又はコントローラは、全ての特徴データ記録をタイムスタンプとともにデータベースに保存する。これにより、バッテリーシステムの最も重要な機能をシームレスに監視するために使用できるデジタル寿命/健康記録が作成される。この程度のデータ状況把握の段階でも、範囲限界の簡単なチェックを通じて、セルユニットレベルでバッテリーシステムの異常を検出することができる。また、クラウドコンピュータにより、最新の特徴データセット(例えば、過去6ヶ月間)を基に、機械学習手法を用いて更新されたモデルをトレーニングすることも可能である。
【0036】
つまり、計算ユニットが定期的にモデルをトレーニングし、そのトレーニング後のモデルをバッテリー制御ユニットに送り返す。その後、バッテリー制御ユニットは、現在の特性データ記録をモデルに入力する。これにより、バッテリー制御ユニットは、定期的に更新される重要な診断機能を提供することができる。診断機能の例としては、現在の充電状態(SoC)、健康状態(SoH)、セルコアの温度、あるいはバッテリーシステムを保護し寿命を延ばすためのバッテリーシステムの今後の最大出力/入力のデフォルト値(推奨値)などがある。このモデルは必ずしも全ての診断機能に関連したり提供したりする必要はない。
【0037】
特にバッテリーセルユニットの履歴を保存するために、バッテリー制御ユニットが十分な演算容量とメモリスペースを有している場合、演算ユニットの機能をバッテリー制御ユニットが代わりに行うことができる。この場合、通信インターフェースと通信ユニットは不要となる。
【0038】
一実施形態によれば、バッテリー測定システムは、切断セルストリングを測定のために短時間切断する一方で、切断セルストリング以外のセルストリングはバッテリーの通常動作に従って動作を継続するように構成される。
【0039】
このことは、測定されるセルストリングは測定のために短時間だけ切り離され、他のセルストリングは、長い緩和時間の後に測定を実行しなければならないということはなく、バッテリーの通常動作に従って動作を継続することができることを意味する。この文脈では、「通常動作」とは、測定動作とは対照的に、意図された目的に従ったバッテリーの動作を意味する。通常動作には、電流の供給停止や供給、あるいは休止フェーズが含まれうる。
【0040】
一実施形態によれば、バッテリー測定システムは、物理的及び化学的パラメータなどの他の環境パラメータを検出するように構成されたセンサと、特徴データ記録及び記録された他の測定環境変数を保存するように構成されたローカルメモリも有する。
【0041】
他の測定環境変数には、周囲温度、湿度などが含まれる。
【0042】
一実施形態によれば、モデルは、既知又は今後開発されるリカレント(エンコーダ/デコーダ)ニューラルネットワーク法、分散分布/深層決定的方策勾配(Distributed Distributional/Deep Deterministic Policy Grading、D4DPG/DDPG)法及び/又はActor/Critic法などの強化学習法に従ったモデルであり、強化学習法は、環境モデル内での学習に報酬を使用する。
【0043】
一実施形態によれば、モデルは、タイムスタンプを使用して特徴データセットから各タイムスタンプを生成するように構成される(例えばニューラルネットワークの)人工知能モデルである。
【0044】
本実施形態では、SoC診断モデルを学習するための報酬関数について説明される。ニューラルネットワークのエージェントは、将来の診断値SoCを0~100%の間で連続的に推定する。直接隣接するタイムスタンプ間の差分値ΔSoCも推定できる。したがって、ΔSoCは、-100%~100%の間の値を取ることができる。このΔSoC値は、バッテリー制御ユニットのクーロンカウンタ(電流値の積分)でも、非常に正確な測定変数として用いることができる。推定されたΔSoC値と測定されたΔSoC値の比較は、推定される「絶対SoC」診断変数を評価し/報酬を与える目的で、環境モデルで使用することができる。SoCは技術的に0~100%の間に制限されるため、学習手順はΔSoCの推定だけでなく、(間接的に)絶対SoCの推定も継続的に改善する。
【0045】
一実施形態によれば、モデルは、SoC状態値、SoH状態値、温度、化学的特性及び/又は物理的特性に関する状態値を推定するようにさらに構成された人工知能モデルである。
【0046】
人工知能は、ここではニューラルネットワーク又は機械学習としても理解される。
【0047】
変形例では、学習はシミュレーションによってサポートされてもよい。ここでは、例えば、PC又はラップトップ上で動作するソフトウェアが、例えばフォークリフト又は他の輸送手段の、予め定められた典型的な性能プロファイルにより実行される。電源ユニットには、電源として示され充電電流を供給するドライバや、負荷として示されバッテリー電流を吸収するユニットを有する。すでに説明したように、測定データは、モデル又はモデルのパラメータの値を計算するためにコンピューティングユニットに送信される。学習フェーズの後、モデルはバッテリー制御ユニットに転送され、例えば輸送手段の実際の動作に使用され、したがって動作中のバッテリーの継続的な監視に使用される。
【0048】
更なる態様によれば、バッテリーセルユニットの状態を決定するために、バッテリーのセルストリングのバッテリーセルユニットの測定データセットを提供するための方法が提供され、この方法には
バッテリーの動作中にバッテリーセルユニットの測定変数を記録することと、
事前に訓練された人工知能モデルを使用してバッテリーセルユニットの状態を決定するために、記録された測定変数を測定データとしてバッテリー制御ユニットに提供すること
が含まれる。
【0049】
更なる態様によれば、本明細書で提示されるバッテリー測定システムは、電動式輸送手段、例えばグリッド周波数調整用の定置型蓄電装置、又はマイクログリッドにおいて使用される。
【0050】
輸送手段という用語は、ここでは、自動車、列車、ボート、船舶、飛行機、ヘリコプターなどを含むものと理解される。
【0051】
さらなる態様によれば、本明細書で説明するようなバッテリー測定システムを有する、電動式輸送手段又は定置型電気エネルギー蓄積装置が提供される。
【0052】
したがって、生成されたモデルは、バッテリーシステムの個々の動作とともに「生きて」いて、進化するということができる。それゆえ、モデル生成は動作中に実行され、セル内で利用される化学的状況及び設置状況に依存せず、配線特性にも依存しないので、接触抵抗にも依存しない。モデル及びバッテリー制御ユニットの診断機能により、迅速かつ確実に異常を検出することができる。例えば、セルユニットレベルでバッテリーシステムのレンジリミットを簡単にチェックすることができる。さらに、各バッテリーについて、個々のデジタル寿命及び/又は健康記録を作成し、維持することができ、これにより、バッテリーシステムの最も重要な特性を、例えば、特性データ記録をタイムスタンプとともに適宜データベースに格納するコンピュータユニットを使って、シームレスに監視することができる。
【0053】
本方法は、少なくとも部分的には、1つ又は複数のプロセッサで実行されるコンピュータプログラム要素によって実施することができる。このコンピュータプログラム要素は、コンピュータプログラムの一部であってもよいが、それ自体がプログラム全体であってもよい。例えば、コンピュータプログラム要素は、既存のコンピュータプログラムを更新して本発明に到達するために使用することができる。
【0054】
コンピュータ読み取り可能な媒体とは、USBスティック、CD、DVD、データ記憶装置、ハードディスク、又は上述したようなプログラム要素を記憶することができる他の媒体などの記憶媒体であると考えることができる。
【0055】
当業者であれば、請求項に係る発明を実施するにあたり、図面、開示内容、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、ここに開示された実施形態とは異なる他の変形例も理解し、実施することができる。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載された複数の項目又はステップの機能を実行する場合もある。特定の動作が相互に依存するように異なる請求項に記載されているという事実のみでは、それらの動作の組み合わせが有利に使用できないということを意味しない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに、又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体や半導体媒体などの適切な媒体に格納/頒布することができるが、例えばインターネットや他の有線又は無線の電気通信システムを介して、他の形態で頒布することもできる。特許請求の範囲における参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
以下では、概略図を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明する。全ての図において、対応する部分には同一の参照符号を付している。
図1】バッテリー測定システムの概要を示す。
図2】バッテリーシステムのブロック図を示す。
図3】バッテリーシステムの簡略化した回路図を示す。
図4】異なる時点におけるバッテリーセルユニットのインピーダンススペクトルの図を示す。
図5】異なる時点及び異なるバッテリーセルユニットにおけるインピーダンススペクトルの図を示す。
図6】測定ユニットにおける測定回路の図を示す。
図7】人工知能のブロック図を示す。
図8】バッテリーセルユニットの測定データセットを提供する方法のフローチャートを示す。
図9】特徴データセットの例の表を示す。
図10】選択された特徴データセットの「推定品質」を評価するための計算ルールの例と説明の表を示す。
図11】バッテリー測定システムの試験構成のブロック図を示す。
図12】SoHの直接測定について説明する構造図を示す。
図13】SoHの推定について説明する構造図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、バッテリー測定システム100の概要を示すブロック図であり、バッテリー制御ユニット104と、図1において例示的に参照符号213及び218が付されている測定ユニットを有する測定ユニット装置106と、演算ユニット102とを備える。前述の構成要素は、個々の装置とすることも、ハウジングにまとめることもできる。データ接続は、無線及び/又は有線とすることができる。
【0058】
図2に示すように、測定ユニット装置106のバッテリーセル測定ユニット213~218の各々は、バッテリーセルユニット223~228に接続されている。バッテリーセルユニット223~225及び226~228をそれぞれ備えたセルストリング202及び204は、その両端の一方がそれぞれDCバス接続部240に接続されており、このDCバス接続部は負荷又は消費部位又は発電機(図示せず)に接続されている。
【0059】
バッテリーセル測定ユニット213~218の各々は、動作中のバッテリーのセルストリング202、204の関連するバッテリーセルユニット223~228の電流や電圧などの測定変数を記録する。こうして、バッテリーセルユニットの状態を検出することができる。こうして、バッテリーシステム110の状態は、装置106全体によって推定することができる。測定ユニット213~218は、決定された測定変数を、タイムスタンプ付きの特性データセットとして、図1に示すバッテリー制御ユニット104に提供する。バッテリー制御ユニット104の記憶容量は十分に大きいので、得られた全ての測定データを数日間一時的に記憶することができる。バッテリー制御ユニット104は、測定値を制御し、評価し、それによって評価又は評価の一部のために測定データを演算ユニット102に送信する。測定ユニット装置106とバッテリー制御ユニット104の間、又はバッテリー制御ユニット104と演算ユニット102の間でデータ及び制御信号を送信するために、これらの関係する構成要素102、104、106は、無線又は有線の通信ユニット及びインターフェースを有する。例えば、バッテリー制御ユニット104は、WiFi、ブルートゥース(登録商標)、LTE、5Gなどの一般的な無線インターフェースを有する。
【0060】
演算ユニット102は、例えば、高い演算能力を有するクラウドコンピュータであり、1つ又は複数の処理ユニット112又はコントローラ112に加えて、現在の特徴データセット及び以前の特徴データセットの両方が記憶されるメモリ114を有する。処理ユニット102は、ニューラルネットワークのような人工知能をさらに有する。演算ユニットはニューラルネットワークを訓練して、各セルユニットの現在の診断モデルを得る。バッテリー制御ユニット104は、無線インターフェースを介してクラウドコンピュータ102から各セルユニットの現在の診断モデルを周期的に受信し、現在の充電状態(SoC)、健康状態、セルコアの温度などの重要な診断機能を提供することができ、また、現在の特徴データセットに基づいて、中央のバッテリー制御ユニット104で保護及び寿命延長のためのバッテリーシステムの今後の最大出力/入力のデフォルト値も提供することができる。
【0061】
バッテリー制御ユニット104は、少なくとも1つのセルストリング202、204の測定ユニット213~218から特性データセットを受信する。セルストリング202、204は、1つ以上のバッテリーセルユニットを含んでもよい。ここで、バッテリーセルユニットは、並列又は直列に接続された単一のセル又は複数のセルであってもよく、バッテリーセルユニットがモジュールを形成するようになっている。好ましくは、セルストリング202のバッテリーセルユニット223~225は第1の時間帯に同時に測定され、セルストリング204のバッテリーセルユニット226~228は第1の時間帯とは異なる第2の時間帯に同時に測定される。これによりセルストリング202、204の相互干渉が回避される。バッテリー制御ユニット104及び/又は演算ユニット102の容量、特にメモリと演算の容量に応じて、まずバッテリーセルユニット223~225の一部をストリング内で測定し、次に別の一部を測定することができる。
【0062】
図3は、それぞれが直列に接続された3つのエネルギー蓄積要素又はセル311、312、313又は321、322、323を含むバッテリーセルユニット223、226を有する2つのストリング202、204を含むバッテリーシステム110を示す簡略化された回路図である。
【0063】
この切り離しは、例えば単純なリレーなどのスイッチによって行うことができる。図3にはスイッチ331と332が示されており、各ラインに対してこのような切り離しを行うことができる。トランジスタのような電子的ソリューションをここで使用することもできる。図3には、測定中にセルストリング202、204から動作している負荷/発電機340を切り離すために使用できる主接触器333と、可変スタンバイ電流を表すために制御されている電圧源342も示されている。
【0064】
特定の実施形態では、セルストリング202、204はそれぞれ、例えばプラス端にそれぞれのDC/DCコンバーターを持つ。これは、例えば大規模な定置型蓄電システムの場合である。これらのDC/DCコンバーターは、ストリング間の電圧レベルが「制御された」方法でバランスされることを実際に保証する。これらは、「リレー」331及び332として機能するように使用され、スイッチングされ、測定されるストリングを他のストリングから高インピーダンスで分離することができる。例えば、これは、スイッチング周波数を介してインピーダンスを制御できるようにDC/DC共振コンバーターとすることができ、又はスイッチとして使用できるコンバーターとすることができる。
【0065】
ソース/シンクI1 314は、バッテリー測定ユニット213の一部であり、この例では、第1のストリング202の直列の3つのエネルギー蓄積要素311、312、313を同時に分光することができる。
【0066】
ストリングごとに必要なバッテリー測定ユニットの数は、(N DIV K)+1であり、ここでNはストリングあたりのエネルギー蓄積要素の数であり、DIVは商の整数部分を返す演算子であり、Kは測定ユニット213~218ごとに電圧、温度、及びI1 314からの電流、したがってインピーダンススペクトルを測定できるエネルギー蓄積要素の最大数である。
【0067】
例えば、N=30のエネルギー蓄積要素/ストリング、K=12の測定ユニットにおける測定入力数だとすると、(30 DIV 12)+1=3個の測定ユニットとなる。
【0068】
抵抗R2 326とキャパシタンスC1 327は、バッテリーの可能な負荷を表しており、ストリング202のインピーダンス測定中に、未測定のストリング204から電力供給されなければならない。インピーダンスは、被測定セルユニットが「静止」状態にあるときにのみ、すなわち被測定セルユニットに出入りする電流がほとんどないときにのみ、バッテリー測定ユニットによって意味ある測定をすることができる。このような「静止フェーズ」は、多くのバッテリーシステムにおいて、バッテリー全体に関する通常の動作中に、例えば、
1)電気自動車が駐車中又は信号待ちで停止しているとき、
2)ピッキング作業を行うことができるようにフォークリフトから運転手が一時的に離れているとき、
3)ストリングの切断/切断によってもバッテリーシステムの継続運転が確保される場合であって、定置型蓄電システムがその時点でほとんど電力を消費又は放出しないとき、
に生じる。
【0069】
周波数調整、マイクログリッドなど、定電流、場合によっては電流が一定で流れていることを維持しなければならない他の定置型システムでは、すでに説明したように、測定のために1つのストリングを分離することができ、測定中は電流の流入も流出もない。その後、他のセルストリングを使用して小電流を維持することができる。この場合、ストリングは順番に測定できる。閾値を超える突発的な大電力の要求があった場合、インピーダンススペクトルの測定は直ちに中断され、ストリングは、割り当てられたスイッチ(例えば331又は332)を介してバッテリーシステム全体に再接続される。これにより、測定後も全てのストリングがほぼ同じ充電状態を維持することを防ぐことができる。
【0070】
ソース/シンクI1 314は、例えば周波数10Hzの単一の正弦波励起、又は例えば25mHz~1.5kHzの範囲の異なる周波数を持つ同じ振幅の複数の正弦波電流で動作させることができる。複数の電流を同時に印加することで、測定時間を短縮することができる。例えば、f1=25mHz、f2=50mHz、f3=75mHz、f4=125mHz、f5=200mHzの内挿ポイントにおいて、周波数ディケードごとのインピーダンスを同時に測定する。正弦波励振は、次の直列関数に従って行われる。

excitation=Iampl[sin(ωt+φ)+sin(ωt+φ)+・・・+sin(ωt+φ)]

ここで、ω=2fπである。
【0071】
インピーダンススペクトルのための電流及び/又は電圧測定値について評価するために、フーリエ解析を実施することができる。フーリエ解析は、例えばバッテリー制御ユニットで実施することができ、又は既にそれぞれの測定ユニット213~218で実施されていてもよい。デジタルフーリエ解析のためには、ω~ω、それぞれの場合においてωの倍数であると有利である。φ~φをオフラインで最適化し、個々の電流成分を重ね合わせたときに、I励起の全体的な振幅が可能な限り小さくなるようにすることができる。これにより、測定中に小信号特性を確実に満たすことができる。例えば、φ~φを最適に選択した場合、合計最大振幅は2.3×Iamplを超えないことが数学的に証明できる。φ~φを最適に選択しなければ、総振幅は最悪の場合最大5×Iamplになる可能性がある。
【0072】
特定の周波数基準点を選択することで、デジタルパスにおける高速フーリエ変換(FFT)を使用して、インピーダンスを高精度で評価することができる。DC成分や「干渉周波数」は、電流とセル電圧の測定スペクトルから簡単にフィルタリングすることができる。
【0073】
図4は、測定ユニットによって記録された電流値と電圧値に従って、バッテリー制御ユニットで計算されたバッテリーセルユニットのインピーダンススペクトルの例を、インピーダンスZの実数部(x軸)と虚数部(y軸)(単位:オーム)で示した図である。各測定点(周波数サポートポイント)は、注入電流の周波数に対応する周波数のインピーダンスを表す。スペクトルは、3つの異なる時点「時間1」、「時間2」、「時間3」のインピーダンススペクトルを表し、図4では測定点の幾何学的形状の違いによって特徴づけられている。このスペクトルは、例えば基準曲線と比較することで、バッテリーセルユニットの健康状態や充電状態に関する結論を導き出すために使用することができる。健康状態及び充電状態を推定するための別の可能性は、本明細書で説明するように、例えばニューラルネットワークを使用した人工知能の使用である。
【0074】
図5は、複数のバッテリーセルユニット又はストリングのセルのインピーダンススペクトルの例を示す図であり、それらは複数の測定ユニットの測定に基づいている。ここでも、3つの異なる時間「時間1」、「時間2」、「時間3」におけるスペクトルが示されており、測定点の幾何学的形状の違いによって区別できる。異なるバッテリーセルユニットの「曲線」は、ある時点では同じような挙動を示すが、異なる時点では大きく異なることがわかる。
【0075】
図6は、測定ユニット213~218の測定回路600の簡略図である。測定はマイクロプロセッサ602によって制御される。マイクロプロセッサ602は、異なる周波数の重畳信号604を出力し、これらは606でアナログ変換され、重畳された正弦波電流としてマルチプレクサ608に送られる。マイクロプロセッサ602はチャネル信号610を使用して、測定対象のセル又はバッテリーセルユニットを選択する。それには重畳された正弦波電流が注入され、その電圧は612において4点測定で電流に応答して記録され、その電圧はデマルチプレクサ614に対して区別されて伝達される。マルチプレクサ608で注入される電流は電流センサ614で測定され、電流測定値もデマルチプレクサ614に伝達されるため、マイクロプロセッサは上記で選択されたチャネルについて測定された電流と、デマルチプレクサ614で測定された関連する電圧を収集することができる。この電圧は、注入された重畳正弦波電流から生じる個々の電圧の和である。両方の値は、アナログ・デジタルコンバーター616によってデジタル値に変換され、入力信号としてマイクロプロセッサ602の高速マイクロコントローラインターフェースに印加される。マイクロプロセッサ602は、この値をバッテリー制御ユニット104に送信し、及び/又は、十分な能力があれば、フーリエ解析を実行してインピーダンススペクトルを得ることができる。
【0076】
図7は、バッテリーセルユニットの充電状態及び/又は健康状態を推定するための人工知能の図である。機械学習法の1つの可能な実装は、いわゆるActor/Criticネットワークであり、これは、例えば、深層決定的方策勾配(Deep Deterministic Policy Grading(DDPG))法として実装される。ここでは、セルユニットの個々のSoCを生成するためのクラウドコンピュータ102における訓練プロセスを例として説明する。
【0077】
クラウドコンピュータ102は、過去(例えば過去6ヶ月から現在)の数千件の特性データ記録にアクセスする。クラウドコンピュータ102はこのためにいわゆる「リプレイバッファ」を作成する。特性データ記録は、タイムスタンプ、記録されたスペクトルの全ての測定インピーダンス値(通常、数mHzから数kHzの範囲内)、バッテリーセルユニットの平均温度、及び当該タイムスタンプ以前の過去1時間などにおけるバッテリーセルユニットの測定電流値及び電圧値のリストから構成される。さらに、サンプリングされた電流値を時間積分(クーロンカウント)することで、最後のタイムスタンプについてアンペア秒[As]単位で転送された電荷量を得ることができる。バッテリーセルユニットの公称容量に関連して、充電状態の差分値をパーセントとして計算することができる。
【0078】
ただし、多くのBMSでは、絶対SoCを決定するためにクーロンカウント法が使用される。しかしこれは、オフセットのような系統的な測定誤差を補正できない積分プロセスのため、時間が長くなるにつれて不正確さが増す。
【0079】
図9は、特徴的なデータセットの例を表にしたものである。ここで、表中の文字の意味は以下のとおりである。

t_meas(k):k番目に記録された特性データのタイムスタンプ
Z1:最初の測定周波数サポートポイントにおけるセルユニットの最初の複素インピーダンス値(大きさと位相、又は実部と虚部)
ZN:最後に測定された周波数グリッドポイントにおけるセルユニットの最後の複素インピーダンス値(大きさと位相、又は実部と虚部)
T:セルユニットの平均温度
I25%/U25%:t_meas(k)における直近の電流/電圧測定値の下位四分位値。
I75%/U75%:t_meas(k)における直近の電流/電圧測定値の上位四分位値。
ΔSoC[tmeans(k-1)->tmeans(k)]:以前に記録されたタイムスタンプに対するSoCの差。これは、経時的な電流積分(キーワード:クーロンカウント、全てのBMSに実装されている)の助けを借りて簡単に決定することができる。
【0080】
このような特徴的なデータ記録は、中央のバッテリー制御ユニットですでに作成されており、クラウドコンピュータとのワイヤレス接続時にデジタル寿命ファイルに転送される。
【0081】
エネルギー蓄積ユニットの学習プロセスにおいて、エージェント702は、推定用の特性データ記録を有するリプレイバッファから任意に選択されたk番目の特性データ記録を使用するだけでなく、選択されたタイムスタンプの直近の時間的過去に時系列的に存在する他の特性データ記録を使用することによって、目標変数(ここでは絶対SoCEst[tmeas(k)])を連続的に推定する。原則として、ここでの直近という場合の時間的「近さ」に対応する特徴データセットは、選択されたタイムスタンプに対して8~12時間過去にある多数の特徴データセット(例えばM個)を指す。これらの時間の範囲内で、非常に正確なSoC値がクーロンカウント法を用いた差分値として利用可能である。
【0082】
全てのタイムスタンプ(すなわち、選択されたk番目からと8~12時間の過去から)に対して、エージェント702は、現在のエージェントモデルSoCEst[tmeas(k)]、SoCEst[tmeas(k-1)]・・・SoCEst[tmeas(k-M)]に基づき絶対値としてSoCを推定する。
【0083】
これらの推定結果は、モデル環境704において、推定されたSoCEst[tmeas(k)]に対する総報酬値(図7の「報酬」を参照)を決定するために使用することができる。
【0084】
選択された特徴データセットの「推定品質」を報酬値として評価するために、ここでは、例えば図10に示すような計算ルールを用いることができる。
【0085】
このようにして決定される総前方値は、個々の絶対推定値SoCEst[tmeas(k)]、SoCEst[tmeas(k-1)]・・・SoCEst[tmeas(k-M)]は、ほとんどの場合、利用可能なタイムスタンプに対する実際の、絶対的ではあるが未知のSoC値と一致しなければならない。
【0086】
さらに、機械学習プロセスは、ここには示されていないが、エージェントネットワークの将来の累積報酬を推定するために使用される別のCriticネットワークも訓練する。このようにして、Criticネットワークはエージェントネットワークの「一般化された良さ」を評価するために使用できる推定値を提供する。
【0087】
図8は、バッテリーセルユニットの状態を決定するために、バッテリーのセルストリング内のバッテリーセルユニットの測定データセットを提供するための方法800のフロー図であり、
バッテリーの動作中にバッテリーセルユニットの測定変数を取得すること(802)と、
記録された測定変数を、バッテリー制御ユニットがバッテリーセルユニットの状態を決定するための測定データとして提供すること(804)と
を含む。
【0088】
人工知能の別の実施形態では、いわゆるリカレント(エンコーダ/デコーダ)ネットワークを使用することができる。リカレントニューラルネットワークでは、同じ層又は前の層のニューロン間のフィードバックも可能である。
【0089】
このようなソリューションでは、ニューラルネットワークの出力層を、例えば、現在の測定時間tmeas(k)と以前の測定時間tmeas(k-1)との推定差分値、つまり、

ΔSoCEst[tmeas(k)]=SoCEst[tmeas(k)]-SoCEst[tmeas(k-1)]

とすることができる。これは、tmeas(k-1)時点の実測変数として常に利用可能である。
【0090】
ネットワークのトポロジーは、SoCEst[tmeas(k)]、SoCEst[tmeas(k-1)]が先行ニューロン層(隠れニューロン)として存在するように選択することができる。
【0091】
既に述べたように、バッテリーセルユニットは直列及び/又は並列に接続されたセルでありえ、直列に接続された場合にはバッテリーモジュールを形成しうる。バッテリーは、直列に接続された複数のバッテリーモジュールから構成され、バッテリーストリングを形成する。複数のバッテリーストリングを並列に接続することで、バッテリーの総容量を増やすことができる。
【0092】
以下では、このようなバッテリーモジュール内のバッテリーセルユニットの状態、ひいてはバッテリー全体の状態を推定する方法、試験中に機械学習のためのデータ基盤を作成する方法、1つ以上の弱ったセルを持つバッテリーモジュールを修復する方法について説明する。状態とは、例えば、セルの公称容量に対する使用可能容量の比率としての健康状態(SoH)であり、また、経年劣化に関連するパラメータ、例えば、使用可能電力の尺度である経年劣化関連インピーダンスである。
【0093】
データ基盤を作るために、学習は2つの段階に分けられる。初期の学習フェーズでは、バッテリーセルユニットの状態パラメータを直接測定する。例えば、各バッテリーセルユニットの容量(Ah)と経年インピーダンスは、最初の500~800個のバッテリーモジュールについて直接測定される。バッテリーモジュールの完全な充放電が必要なため、これらの測定には比較的時間がかかるが、機械学習のためのデータ基盤として役立つ。
【0094】
例えば、容量や経年劣化に関連するパラメータの限界値や範囲を定義し、状態を品質クラスに分類することができる。同時に、又は試験実行中に、インピーダンススペクトル、温度など、上述の様々なパラメータは、測定又は決定され、範囲に割り当てられ、学習入力変数及び目標変数として機械学習アルゴリズムに供給されうる。こうして機械学習アルゴリズムは、測定パラメータと静電容量及び経年劣化に関連するパラメータとの関係を学習するため、第2フェーズでは直接的なSoH決定を行う必要がない。
【0095】
第2フェーズでは、機械学習を用いて間接的に状態、例えばSoHを推定する。これにより、状態を迅速に決定することができる。
【0096】
つまり、バッテリー計測システムは、第1学習フェーズでも第2学習フェーズでも、接続されたバッテリーモジュールに対して動作しながら使用することができる。
【0097】
機械学習のためのデータ基盤を作成し、第1及び第2の学習フェーズにおけるセルの状態を評価するプロセスを、2つの例を用いて以下に説明する。第1の例では、各々が8個のバッテリーセルユニットを有する12個のバッテリーモジュールを有するバッテリーが、例えば中古電気自動車などの車両にエネルギーを供給するために使用される。バッテリーモジュールの健康状態SoHは不明である。中古電気自動車のバッテリー管理システムにおいて、バッテリー側には故障はない。バッテリーは、SoHの点で、全てのバッテリーモジュールにわたって等しく良好な特性を有し、電気自動車を動作させうるものと仮定することができる。最初に少なくとも2つのバッテリーモジュールが選択される。
【0098】
バッテリーセルタイプの測定パラメータとして十分に大きな学習データセットがまだ利用できない場合は、図12の構造図1200に示すように、SoHを直接記録する必要がある。この測定プロセスの間、関連する特性データ記録は、上述のように、パラメータセットとして中央データベース1214に格納される。例えば、そのバッテリーモジュールがバッテリー測定システムの開始以来の最初の500~800個のモジュールの中にない場合、2x8セルのSoHは、第1の学習フェーズに従って直接測定される。そのために、まずステップ1202でバッテリーモジュールを100%SoCまで充電する。その後、ステップ1204でバッテリーモジュールの放電プロセスが開始される。ステップ1206において最終放電電圧に達していない限り、ステップ1208において機械学習プロセスのための関連する特性/パラメータが選択された充電状態で測定され、ステップ1210において転送された充電量を記録するための電流が積分される。パラメータ、例えばインピーダンススペクトルを決定するためのパラメータや、本明細書で既に説明したような他のパラメータは、測定によって決定される。最終放電電圧に達した後、ステップ1212において、電流容量(単位:Ah)と関連インピーダンス(=SoH)が決定される。2つのバッテリーモジュールのSoHの直接測定は、等しく良好な特性を確認するためにここで使用される。例えば、全てのセルユニットのSoHは90%である。測定データと結果は、機械学習プログラムに提供される。したがって、状態を評価するために使用されるのは、直接的なSoH測定のみである。
【0099】
しかしながら、機械学習プログラムに、学習に必要な500~800個のモジュールからの測定データと測定結果が既に提供されている場合、機械学習プログラムは、図13の構造図1300に示すように、ステップ1306でSoHを推定するために使用される。この目的のために、SoHの直接測定はもはや必要ではなく、ステップ1302で短い測定時間を目指して次の適切な充電状態まで放電/充電した後、ステップ1304において、選択された動作点で記録されたインピーダンススペクトル及び他のパラメータを決定するための測定のみが必要となる。
【0100】
第1の例では、全てのバッテリーセルユニットについて十分なSoH値、例えば90%が推定又は決定された場合、品質証明書が発行され、それらのモジュールを車両に使用することができる。
【0101】
第2の例では、車両のバッテリーに欠陥がある。例えば、バッテリーモジュール内のバッテリーセルユニットに欠陥があるか、少なくとも健康状態が満足できる状態にない。健康状態は、第1の例と同じ方法で判定される。これにより、例えば、バッテリーセルユニットのSoH値が60%しかなく、残りのバッテリーセルユニットのSoH値が90%であることが示された場合、クラウドで要求がトリガーされ、モジュール又はバッテリーセルユニットの無傷のバッテリーセルと同じか、少なくとも同等の品質を持つ適切な中古交換モジュールを選択することでその要求に応答する。バッテリー測定システムは、測定された全てのバッテリーモジュールを中央データベースに記録するため、作成された在庫から適切な交換モジュールを特定することが可能である。
【0102】
バッテリーの全てのバッテリーセルユニットが同じ電圧値を持つように、使用済みの適切な交換モジュールは、欠陥のあるバッテリーに組み込まれる前にセルごとにバランスが取られる。これは、交換モジュールが取り付けられた後、修理されたバッテリーがバランスの取れた状態にあり、すぐに再使用できることを意味する。
【0103】
図11は、説明した学習段階において、これらの試験を実施することができる構成を備えたブロック図である。ブロック1102は、複数のバッテリーセルユニット1104を有するバッテリーモジュール1102を表す。ここでのセルユニット1104の数は8個であるが、より多くのセルであってもよい。ブロック1106は、例えば、3.5kWまで供給可能な一般的なAC電力グリッドに接続されたソース/シンクを表す。ソース/シンク1106は、例えば図3のソース/シンク331に対応し、AC主電源電圧を2Vから60V又はその逆に変換し、その結果、バッテリーモジュール1102全体又は個々のバッテリーセルユニット1104の選択的な充電/放電を可能にする。さらに、バッテリー測定システムの内部電圧供給用に、さらなる電圧源を利用することもできる。ブロック1108は、例えば、図2の測定ユニット213又は図6に示す測定ユニットを表し、この測定ユニットは、例えば、13本のライン-バッテリーセルユニット1104の数に対応する-を有するバスを介してバッテリーモジュール1102に接続される。ブロック1110は、例えば、図6に示すマイクロプロセッサ602を備えた処理ユニットを表す。処理ユニット1110は、LAN、WLAN、USB及びHDMIインターフェースも有する。試験対象となるバッテリー又は少なくともモジュール1102は、定められた異なる温度下で試験できるように、サーマルチャンバー内に配置することができる。インピーダンススペクトルは、本明細書ですでに詳述したように、この構成を用いて決定される。LAN又はWLAN接続は、例えば、測定されたパラメータをメモリや機械学習プログラムに転送するため、制御PCと通信するため、診断モデルを受信するため、交換モジュールを選択するために使用される。さらに、バッテリー測定システムを制御し、関連データを表示するためのユーザーインターフェースとして、WLAN/LAN接続を介したウェブサーバを提供することもできる。また、ディスプレイを接続するためのHDMIインターフェースも用意されている。USBインターフェースには、入力装置、外部メモリ、その他専門家に知られている装置を接続することができる。
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【国際調査報告】