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特表2024-536797レーザパルスの生成方法及び生成装置
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  • 特表-レーザパルスの生成方法及び生成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】レーザパルスの生成方法及び生成装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/00 20060101AFI20241001BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20241001BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01S3/00 Z
H01S3/23
H01S3/00 A
H05G2/00 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517450
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2021075775
(87)【国際公開番号】W WO2023041180
(87)【国際公開日】2023-03-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515041332
【氏名又は名称】トルンプフ レーザーシステムズ フォー セミコンダクター マニュファクチャリング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Lasersystems for Semiconductor Manufacturing GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター クラウス
【テーマコード(参考)】
4C092
5F172
【Fターム(参考)】
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB14
5F172AD05
5F172DD01
5F172NN05
5F172NR13
5F172NR14
5F172ZZ20
(57)【要約】
本発明は、重畳レーザパルス(30a,b)の生成方法(12)に関し、その重畳レーザパルスは、それぞれ少なくとも第1のレーザパルス(16a,b)と第2のレーザパルス(18a,b)とから構成される。その第1及び第2のレーザパルス(16a,b,18a,b)を、異なる特性を有して増幅する。増幅後、第1のレーザパルス(16a,b)を、第2のレーザパルス(18a,b)に重畳するために、第2のレーザパルス(18a,b)に対して遅延させる。重畳レーザパルス(30a,b)は、好ましくは、極端紫外線(EUV)放射(38)の生成のために使用される。本発明は、更に、重畳レーザパルス(30a,b)の生成装置(10)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザパルス(30a,b)の生成方法(12)であって、
A)少なくとも1つのレーザ源(14)において、第1のレーザパルス(16a,b)と第2のレーザパルス(18a,b)とを生成するステップと、
B)増幅装置(20)において、前記第1のレーザパルス(16a,b)及び第2のレーザパルス(18a,b)を増幅するステップと、その際、前記第2のレーザパルス(18a,b)は、それぞれの前記第1のレーザパルス(16a,b)に対して、それぞれ時間的にずれて前記増幅装置(20)を通過し、
C)分離装置(22)において、前記第1のレーザパルスを前記第2のレーザパルス(18a,b)から区別する少なくとも1つのビーム特性に基づいて、前記第1のレーザパルス(16a,b)を前記第2のレーザパルス(18a,b)から分離するステップと、
D)前記第1のレーザパルス(16a,b)に遅延装置(24)を通過させるステップと、その際、前記第1のレーザパルス(16a,b)が遅延経路を通過するのにそれぞれ要する時間は、前記第2のレーザパルス(18a,b)に対する時間的ずれにそれぞれ対応し、前記第2のレーザパルス(18a,b)は前記遅延装置(24)を通過させず、
E)重畳レーザパルス(30a,b)を形成するために、重畳装置(28)において前記第1のレーザパルス(16a,b)と前記第2のレーザパルス(18a,b)とを重畳するステップと、を有する方法(12)。
【請求項2】
前記第1のレーザパルス(16a,b)は、波長及び/又は偏光によって前記第2のレーザパルス(18a,b)と異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法ステップA)において、前記第2のレーザパルス(18a,b)の生成を、それぞれの前記第1のレーザパルス(16a,b)の生成からそれぞれ時間的にずれて行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のレーザパルス(16a,b)を第1のレーザ源において生成し、前記第2のレーザパルス(18a,b)を第2のレーザ源において生成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のレーザパルス(16a,b)及び/又は前記第2のレーザパルス(18a,b)は、10ns~200ns、好ましくは20ns~100nsのパルス持続時間を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
方法ステップA)において生成された前記第2のレーザパルス(18a,b)を、方法ステップA)において生成された前記第1のレーザパルス(16a,b)から、10ns~1500ns、特に50ns~1000ns、特に好ましくは80ns~500ns、離間させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法ステップB)における前記増幅装置(20)を、増幅器チェーンの形態に形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法ステップC)において実施される前記第1のレーザパルス(16a,b)と前記第2のレーザパルス(18a,b)との分離を、ダイクロイックミラー又は偏光ミラーによって行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
方法ステップD)において使用される前記遅延装置(24)は、遅延経路を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
方法ステップE)における前記第1のレーザパルス(16a,b)と前記第2のレーザパルス(18a,b)との結合を、ダイクロイックミラー又は偏光ミラーによって行う、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザパルス(30a,b)を、EUV放射(38)の生成のために使用する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
レーザパルス(30a,b)の生成装置(10)、特に、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法(12)を実施するための、以下の特徴を備える装置(10)であって、
a)第1及び第2のレーザパルス(16a,b,18a,b)を生成するための少なくとも1つのレーザ源(14)と、ここで、前記少なくとも1つのレーザ源(14)は、異なるビーム特性を有する第1及び第2のレーザパルス(16a,b,18a,b)を生成するように形成されており、又は、前記装置(10)は、前記第1のレーザパルス(16a,b)とは異なる、少なくとも1つのビーム特性を前記第2のレーザパルス(18a,b)に付与するように形成されており、
b)前記第1のレーザパルス(16a,b)と、少なくとも1つのビーム特性において前記第1のレーザパルス(16a,b)とは異なる前記第2のレーザパルス(18a,b)とを増幅するための光学上の増幅装置(20)と、ここで、前記増幅装置(20)は、それぞれの前記第1のレーザパルス(16a,b)に対して時間的にずれた前記第2のレーザパルス(18a,b)によって通過されるように構成されており、
c)前記第1のレーザパルス(16a,b)を前記第2のレーザパルス(18a,b)から分離するための分離装置(22)と、
d)前記第1のレーザパルス(16a,b)のための遅延装置(24)と、
e)前記第1のレーザパルス(16a,b)と前記第2のレーザパルス(18a,b)とを重畳して重畳レーザパルス(30a,b)を形成する重畳装置(28)と、を備える装置(10)。
【請求項13】
前記増幅装置(20)は、特に複数のCO2増幅器から成る増幅器チェーンの形態において形成されている、請求項12に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記分離装置(22)及び/又は前記重畳装置(28)は、ダイクロイックミラー又は偏光ミラーの形態において形成されている、請求項12又は13に記載の装置(10)。
【請求項15】
前記遅延装置(24)は遅延経路を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載のレーザパルス(30a,b)の生成装置を備えたEUV生成装置(34)であって、
ターゲット材料(36)をターゲット領域(44)に導入可能な真空チャンバ(48)と、
EUV放射(38)を生成するために、前記重畳レーザパルス(30a,b)を前記ターゲット領域(44)に集束させるための集束ユニット(42)と、
前記重畳レーザパルス(30a,b)を前記集束ユニット(42)に導くためのビームガイド装置(40)と、を備える、EUV生成装置(34)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザパルスの生成方法及び生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EUVリソグラフィ用の極端紫外線(EUV)放射の生成のためのプラズマを発生するためにレーザパルスを使用することが知られている。EUV放射は、特に、レーザパルスが照射された、好ましくは錫液滴の形態のターゲット材料内において発生させることができる。
【0003】
レーザパルスは、そのために、シード源において生成され、増幅装置の増幅器において増幅される。増幅装置において増幅されたレーザパルスは、ビームガイド装置を介して集束装置に導かれ、集束装置は、レーザパルスをターゲット材料が提供されるターゲット領域に集束させる。ターゲット材料は、通常、一定の時間間隔において液滴を放出する、液滴の形態の液滴源によって提供される。これらの液滴にレーザパルスが照射され、その結果として、(EUV)放射が放出される。その際、各液滴には少なくとも1つのレーザパルスが照射され、そのため、液滴源が動作する周波数は、シード源がレーザパルスを放出する周波数に対応する。
【0004】
ターゲット材料から放出される放射の出力は、その際、特に、ターゲット材料が照射されるレーザパルスのパルス持続時間とエネルギとに依存する。レーザパルスのパルスエネルギが高いほど、ターゲット材料から放出されるEUV放射の出力は高くなる。パルス持続時間もEUV生成量に影響する。その際、傾向的にパルス持続時間は短い方が有利である。
【0005】
シード源において生成されたレーザパルスは、増幅装置の増幅器に入り、そこにおいて増幅される。増幅器は、例えばCO2、又は固体の増幅媒質を含む。
【0006】
増幅器が飽和状態において動作している場合、誘導放出によって空になったエネルギ準位は、レーザ遷移に関与していない近隣のエネルギ準位によって補充され得る。これは、それぞれの増幅媒質に特徴的な時間スケールにおいて起こる。
【0007】
ここで、励起エネルギ準位を、誘導放出によって完全に空にするために十分な出力を有する入射パルスであって、且つ、このエネルギ準位がパルス持続時間中に近隣のエネルギ準位によって補充されないほど短い入射パルスを考える場合、次のことが観察される。パルスの時間的経過の最初の部分は強く上昇し、その後、最初に急速に下降し、その後ゆっくり下降する。パルスの最初の部分は増幅器を飽和させ、その結果、パルスの後方の(後の)部分には出力が残らない。
【0008】
一方、励起エネルギ準位を、誘導放出によって完全に空にするために十分な出力を有する増幅器に入るパルスであって、且つ、このエネルギ準位が、そのパルス持続時間中に近隣のエネルギ準位によって補充され得るほど長いパルスを考える場合、パルス出力は、上記の短いパルスと同様に、最初に急激に上昇し、その後、この場合においても下降する。しかしながら、エネルギ準位が隣接する準位から常に補充されるため、下降エッジはより長い時間にわたって継続する。パルスの最初の部分は増幅器を飽和させるが、その後、空になったエネルギ準位は近隣のエネルギ準位によって補充される。
【0009】
そのため、エネルギ量は、短いパルスにおいては制限される。なぜなら、短いパルスの場合、レーザパルスの最初の部分がすでに増幅器を飽和させ、その結果、レーザパルスの後の部分については、もはや出力が残らないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、それに対して、特に高エネルギの短いレーザパルスの生成を可能にする方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、請求項1による方法、及び請求項12による装置によって解決される。従属請求項は、好ましいさらなる形態を示す。
【0012】
そのため、この課題は、以下の方法ステップを有するレーザパルスの生成方法によって解決される。
A)少なくとも1つのレーザ源において、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとを生成するステップ、
B)第1及び第2のレーザパルスを増幅するステップ、その際、第2のレーザパルスは、第1のレーザパルスに対して、それぞれ時間的にずれて増幅器を通過し、第2のレーザパルスは、少なくとも1つのビーム特性によって第1のレーザパルスと異なり、
C)第2のレーザパルスを第1のレーザパルスから区別する少なくとも1つのビーム特性に基づいて、第1のレーザパルスを第2のレーザパルスから空間的に分離するステップ、
D)第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとの間の時間間隔だけ、第1のレーザパルスを第2のレーザパルスに対して遅延させるステップ、
E)時間的及び空間的に重畳されたレーザパルスを形成するために、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとを重畳するステップ。
【0013】
特に明記しない限り、本発明の文脈における列挙は網羅的なものではなく、「少なくとも」とみなされる。特に、第1のレーザパルス及び第2のレーザパルスに加えて、更なるレーザパルス(例えば、第3のレーザパルス、第3及び第4のレーザパルス等)を使用することができる。
【0014】
高出力の短いレーザパルスを生成するために、2つの短いパルスを、特に同一の長さのパルスを、レーザ遷移に関与する励起エネルギ準位が近隣のエネルギ準位から少なくとも部分的に補充される時間間隔において、同一の増幅器に導入する。増幅される前のレーザパルスは、同一の又は異なる最大出力を有し得る。時間間隔に応じて、レーザ遷移に関与する励起エネルギ準位は、第2のレーザパルスが増幅器に導入される際に、完全に又は部分的に補充される。
【0015】
励起エネルギ準位が既に完全に補充されている場合、第2のレーザパルスのために最大に可能な増幅が生じる。励起エネルギ準位がまだ完全に補充されていない場合、小さな増幅が生じる。最大出力が同一のレーザパルスが入射した場合、増幅後の第2のレーザパルスの最大出力は、第1のレーザパルスの最大出力よりも低くなる。
【0016】
増幅器を通過した2つのレーザパルスを、その後、時間的に重畳する。その結果、パルス形状と持続時間とが2つの短いレーザパルスのパルス形状と持続時間に本質的に対応する、レーザパルスが生じる。しかしながら、重畳されたレーザパルスの最大出力、或いはエネルギは、重畳される前の個々のレーザパルスの出力、或いはエネルギの最大2倍となる。レーザパルス列内の個々の短いレーザパルスの増幅、及びそれに続く重畳によって、高出力、或いは高エネルギ、及び短いパルス持続時間を有する重畳レーザパルスを得ることができる。
【0017】
短いレーザパルスのパルス持続時間、したがって第1及び第2のレーザパルスのパルス持続時間は、10ns~200ns、好ましくは20ns~100nsである。その際、長いレーザパルスのパルス持続時間は200ns以上である。増幅媒質は、好ましくはCO2である。
【0018】
重畳レーザパルスは、好ましくは10kHz~500kHz、特に好ましくは20kHz~200kHz、特に好ましくは30kHz~100kHzのサイクルにおいて出力される。その際、レーザパルスのサイクルは、好ましくは液滴源、すなわちターゲット領域内のターゲット材料のサイクルに従う。
【0019】
第1のレーザパルスは、好ましくは、その波長及び/又は偏光によって、生成された第2のレーザパルスと異なる。これは、第1のレーザパルスを第2のレーザパルスから分離することを可能にする。第2のレーザパルスから分離された第1のレーザパルスは、次に第2のレーザパルスが通過しない遅延経路を通過することができる。
【0020】
第1及び第2のレーザパルスは、それらが生成されるときにすでに異なる波長又は偏光を有し得る。特に、第1及び第2のレーザパルスは、2つの別々のビーム源によって生成することができ、それぞれのビーム源は、例えば波長又は偏光のような、ビーム特性の異なるレーザパルスを生成する。特に、異なる波長において動作する2つのCOレーザを使用することができる。
【0021】
波長又は偏光のような異なるビーム特性は、生成後に第1及び/又は第2のレーザパルスに付与することもできる。この場合、第1及び第2のレーザパルスは、好ましくは、最初に、単一のビーム源において同一のビーム特性を有して生成される。しかしながら、第1及び第2のレーザパルスは、同一のビーム特性を有する異なるビーム源において生成することもできる。異なるビーム特性は、第1及び第2のレーザパルスに(どちらの場合も)、その後の方法ステップにおいて付与される。その際、第1又は第2のレーザパルスの偏光は、位相差板(例えばλ/2板)又はポッケルスセルを用いて、特に電気光学変調器(EOM)を用いて回転させることができる。代替的には、周波数シフト装置、例えば音響光学変調器を用いて、第1又は第2のレーザパルスの周波数をシフトすることもできる。
【0022】
第2のレーザパルスの生成は、第1のレーザパルスの生成に対して時間的に遅れて行うことができる。その際、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとの間の時間間隔を設定するために、特に、制御ユニットを使用することができる。その際、第1及び第2のレーザパルスは、異なるレーザ源によって、又は単一のレーザ源によって生成することもできる。
【0023】
しかしながら、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとの時間間隔は、特に、第2のレーザパルスがその生成後に第1のレーザパルスよりも長い行程を通過することによって、設定することもできる。その際、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとは、異なるレーザ源において生成することができる。その際、方法ステップE)においてレーザパルスが一致して重畳レーザパルスを形成するようにレーザ源を制御する制御ユニットを使用できる。
【0024】
本発明のさらに好ましい一実施形態においては、第2のレーザパルスは、一定の時間間隔において第1のレーザパルスに続く。
【0025】
第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとの間の時間間隔は、好ましくは10ns~1500ns、特に好ましくは50ns~1000ns、特に好ましくは80ns~500nsである。その際、第2のレーザパルスの最大に可能な増幅は、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとの間の時間間隔に依存する。第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとの間の時間間隔が大きいほど、レーザ遷移に関与する励起エネルギ準位が近隣のエネルギ準位によってより完全に補充され、第2のレーザパルスをより強く増幅することができる。
【0026】
一方、重畳レーザパルスが液滴に当たるサイクルは、液滴源のサイクルによって決まる。第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとからなる次のパルス列のために十分なエネルギが増幅器に存在しなければならないため、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとの間には最大の時間間隔が存在し、これを超えると(液滴源のサイクルレートに依存するが)、後続のパルス列を最適に増幅することができなくなる。
【0027】
上記の値によって、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとからなる後続のパルス列と、考察中のパルス列の第2のレーザパルスの両方が、10kHz~500kHz、好ましくは20kH~200kHz、特に好ましくは30kHz~100kHzの所定のサイクルレートにおいて増幅されることが保証される。
【0028】
上記値によって、第2のレーザパルスが通過しなければならない遅延距離の長さが技術的に妥当な値(例えば3m~450m)を取ることも考慮される。
【0029】
増幅装置は、好ましくは、増幅器チェーンの形態において形成される。これによって、レーザパルスの特に効率的な増幅が可能となる。
【0030】
レーザ源及び増幅装置は、好ましくは、COレーザ、或いはCO増幅器である。
【0031】
レーザパルスの分離を、好ましくはダイクロイックミラーを用いて行う。これは、好ましくは、レーザパルスの波長が異なる場合に行われる。代替的には、それに対して、その分離を、偏光ミラーを用いて行い得る。これは、好ましくは、レーザパルスの偏光が異なる場合に行われる。
【0032】
遅延装置は、好ましくは遅延経路の形態において形成される。その際、遅延経路は複数の反射光学素子を有し得る。それによって、構造的に単純な方法において遅延を行うことができる。
【0033】
遅延装置の後のレーザパルスの結合を、好ましくは、ダイクロイックミラーを使用して行う。これは、好ましくは、レーザパルスの波長が異なる場合に行われる。代替的には、それに対して、その結合を、偏光ミラーを使用して行い得る。
【0034】
更に、好ましくは、結合されたレーザパルスを、EUV放射の生成のために使用する。
【0035】
本発明による課題は、特に本明細書に記載の方法を実施するための、レーザパルスの生成装置によってさらに解決され、その装置は、以下の特徴、
a)第1及び第2のレーザパルスを生成するための少なくとも1つのレーザ源と、ここで、少なくとも1つのレーザ源は、異なるビーム特性を有する第1及び第2のレーザパルスを生成するように形成されており、又は、その装置は、第1のレーザパルスとは異なる、少なくとも1つのビーム特性を前記第2のレーザパルスに付与するように形成されており、
b)第1のレーザパルスと、少なくとも1つのビーム特性において第1のレーザパルスとは異なる第2のレーザパルスとを増幅するための光学上の増幅装置と、ここで、その増幅装置は、第1のレーザパルスに対して時間的にずれた第2のレーザパルスによって通過されるように構成されており、
c)少なくとも1つのビーム特性に基づいて、第1のレーザパルスを第2のレーザパルスから分離するための分離装置と、
d)第1のレーザパルスのための遅延装置と、ここで、遅延は第1のレーザパルスからの第2のレーザパルスの時間間隔に対応しており、
e)重畳レーザパルスを形成するために、第1のレーザパルスと第2のレーザパルスとを重畳する重畳装置と、を備える。
【0036】
第1のレーザパルス及び第2のレーザパルスは、異なるレーザ源において生成することができる。本装置は制御ユニットを含むことができ、その制御ユニットは、第1のレーザパルスが重畳装置において第2のレーザパルスと重畳して重畳レーザパルスを形成するようにレーザ源を制御するように形成されている。
【0037】
増幅装置は、好ましくは、特に複数のCO増幅器から成る増幅器チェーンの形態に形成されている。
【0038】
分離装置及び/又は重畳装置は、ダイクロイックミラーの形態に形成され得る。代替的には、それに対して、重畳装置は偏光ミラーの形態に形成され得る。
【0039】
遅延装置は、遅延経路の形態に形成され得る。
【0040】
更に好ましくは、出力装置はEUV生成装置を有し得る。EUV生成装置は、その際、重畳レーザパルスの生成のための上記の特徴を有する。重畳レーザパルスは、好ましくは、EUV生成装置(「EUVシステム」)において生成され得るターゲット材料(特に錫液滴の形態にある)に向けられる。そのとき、ターゲット材料において、EUV放射を放出するプラズマを発生することができる。EUV生成装置は、ターゲット材料を、ターゲット源を用いてターゲット領域に導入可能な真空チャンバと、重畳レーザパルスをそのターゲット領域に集束させるための集束ユニットと、重畳レーザパルスをその集束ユニットに導くためのビームガイド装置とを、備え得る。
【0041】
本発明の更なる利点は、説明及び図面から明らかになる。同様に、上記した特徴、及び更に詳細に説明する特徴は、それぞれ、本発明に従って、個別に、又は任意の組み合わせによって使用することができる。図示され、及び説明された実施形態は、網羅的な列挙として解されるのではなく、むしろ、本発明の説明のための例示的な特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明によるレーザパルスの生成装置及び生成方法を概略的に示す図である。
図2a】本発明の物理的背景を概略的に示す図である。
図2b】本発明の物理的背景を概略的に示す図である。
図2c】本発明の物理的背景を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明による方法12を実施するための本発明による装置10を示す。
【0044】
その際、第1のレーザパルス16a,16b、及び第2のレーザパルス18a,18bは、本実施形態においては、シード源の形態のレーザ源14において生成される。第1のレーザパルス16a,bは、特にそのレーザ放射の波長及び/又は偏光において、第2のレーザパルス18a,bと異なる。
【0045】
レーザパルス16a,b、18a,bは、本実施形態においては増幅器チェーンの形態の光学上の増幅装置20によって増幅される。
【0046】
本発明によれば、異なったレーザパルス16a,b,18a,bが増幅装置20に導入され、それらレーザパルスは、特に隣接するエネルギ準位からのエネルギを使用することによって、すばやく連続して増幅可能である。レーザパルス16a,b,18a,bの区別は、第1のレーザパルス16a,bと第2のレーザパルス18a,bとの間の時間的な間隔がエネルギ準位の充填によって制限されないということに寄与する。
【0047】
第1のレーザパルス16a,bと第2のレーザパルス18a,bとの間の時間間隔Aは、特に同一である。時間間隔Aは、好ましくは10ns~1500nsである。
【0048】
増幅装置20の後、レーザパルス16a,b,18a,bは、本実施形態においてはダイクロイックミラー又は偏光ミラーの形態である分離装置22を通過し、そこにおいて、その波長又は偏光に基づいて互いに分離される。
【0049】
第1のレーザパルス16a,bは、その後、本実施形態においては遅延経路の形態である遅延装置24を通過する。第2のレーザパルス18a,bは遅延装置24を通過しない。第1のレーザパルス16a,bは、遅延装置24を通過することによって、第2のレーザパルス18a,bと時間的に重畳することができる。それぞれの第1のレーザパルス16a,bとそれぞれの第2のレーザパルス18a,bとの間の例示的な間隔Aが100nsである場合、空気中の遅延経路は約30mの長さを有する。コンパクトに形成するために、遅延装置24は、複数の偏向ミラー26a,26b,26c,26dを有し得る。
【0050】
装置10は、本実施形態においてはダイクロイックミラー又は偏光ミラーの形態の重畳装置28を有する。遅延装置24によって、それぞれの第1のレーザパルス16a,bは、重畳装置28においてそれぞれの第2のレーザパルス18a,bと組み合わされ、重畳レーザパルス30a,30bを形成する。
【0051】
重畳レーザパルス30a,30bは、出力装置32において出力される。本実施形態においては、出力装置32は、極端紫外線(EUV)光生成装置34を有する。EUV光生成装置34において、特に錫液滴の形態の、ターゲット材料36内において、EUV放射38の出力のためのプラズマが発生する。
【0052】
EUV光生成装置34は、本実施形態においては、ビームガイド装置40と集束装置42とを有する。集束装置42は、重畳レーザパルス30a,bをターゲット材料36が提供されたターゲット領域44に集束させるために用いられる。レーザパルス30a,bの照射によって、ターゲット材料36はプラズマ状態に遷移し、EUV放射38を放出し、このEUV放射はコレクタミラー46によって収集される。
【0053】
図示の例において、コレクタミラー46は、レーザパルス30a,bの通過のための開口を有し、集束装置42は、ターゲット材料36が配置された真空チャンバ48をビームガイド装置40から分離する。
【0054】
本発明の物理的背景を、図2a~cを参照して以下に説明する。
【0055】
図2aは短い矩形パルス16aを例示的に示しており、この矩形パルス16aは増幅装置20における増幅のために供給される。矩形パルス16aの出力は、その際、増幅装置20の励起エネルギ準位を誘導放出によって完全に空にするために十分であり、すなわち増幅装置20は飽和状態において動作する。矩形パルス16aは非常に短く、その結果、これらのエネルギ準位は、レーザ遷移に関与しない近隣のエネルギ準位によって、パルス持続時間中に補充されない、又はほとんど補充されない。
【0056】
矩形パルス16aは増幅装置20において増幅され、増幅パルス16bが生じる。そのパルス出力はほぼ垂直に上昇し、次いで最初は急峻に下降し、その後ゆっくりと下降し、最後はほぼ垂直に下降する。そのため、パルス16aの最初の部分はすでに増幅装置20を飽和させ、パルスの後の部分にはほとんど出力が残らない。パルス出力のほぼ垂直な上昇及び下降は、その際、入力パルス16aの矩形に起因する。
【0057】
図2bはより長い矩形パルス16aを示しており、これは増幅装置20において増幅するために提供される。矩形パルス16aの出力は、レーザ遷移に関与する励起エネルギ準位を誘導放出によって完全に空にするために十分である。矩形パルス16aは長く、それによって、これらのエネルギ準位は、矩形パルス16aの持続時間中に近隣のエネルギ準位によって補充され得る。この場合、生成し、増幅された長いパルス16bのパルス出力は、入射する矩形パルス16aのパルス出力の同様の急峻な上昇によって、ほぼ垂直に上昇した後、最初は急峻に下降し、その後、図2aによるパルス16bの場合よりもかなり長い期間にわたってゆっくりと下降する。
【0058】
入射する矩形パルス16aのパルス出力の急峻な下降によって、パルス出力はほぼ垂直に下降する。パルス16aの最初の部分は増幅装置を飽和させるが、その後、空になったエネルギ準位は近隣のエネルギ準位によって補充される。
【0059】
図2cは、2つの短い矩形パルス16a,18aを、時間間隔を伴って示している。これらは時間間隔Aにおいて同一の増幅装置20に導入され、その時間間隔内において、レーザ遷移に関与する励起エネルギ準位は部分的に隣接するエネルギ準位から補充される。矩形パルス16a,18aは、増幅される前に、同一の最大出力を有する。第2の矩形パルス18aは、第1の矩形パルス16aほど増幅されない。2つの矩形パルス16a,18aが増幅装置(又は複数の増幅器)20を通過した後、それらは重畳装置28において重畳される。その結果、重畳パルス30aが得られ、そのパルス形状とパルス持続時間とが、2つの短い増幅パルス16b,18bのパルス形状とパルス持続時間とに本質的に対応する。しかしながら、重畳パルス30aの最大出力、或いはそのエネルギは、重畳される前の個々のパルス16b,18bの出力、或いはエネルギの最大2倍である。
【0060】
短い矩形パルス16a,16b,18a,18bのパルス持続時間は典型的には50nsであり、長い矩形パルス16a,16b,18a,18bのパルス持続時間は典型的には500nsである。2つの矩形パルス16a,16b,18a,18bの間の時間間隔は、典型的には100nsである。増幅されたパルス16b,18bのパルス持続時間は、まだ増幅されていないパルス16a,18aのパルス持続時間にほぼ対応する。
【0061】
図面の参照の下に、本発明は、要約すると、重畳レーザパルス30a,bの生成方法12に関し、その重畳レーザパルスを、それぞれ少なくとも第1のレーザパルス16a,bと第2のレーザパルス18a,bとから構成される。その第1及び第2のレーザパルス16a,b、18a,bを、異なる特性を有して増幅する。増幅後、第1のレーザパルス16a,bを、第2のレーザパルス18a,bに重畳するために、第2のレーザパルス18a,bに対して遅延させる。重畳レーザパルス30a,bは、好ましくは、極端紫外線(EUV)放射38の生成のために使用される。本発明は、更に、重畳レーザパルス30a,bの生成装置10に関する。
【符号の説明】
【0062】
10 装置
12 方法
14 レーザ源
16a,b 第1のレーザパルス
18a,b 第2のレーザパルス
20 光学上の増幅装置
22 分離装置
24 遅延装置
26a~d 偏向ミラー
28 重畳装置
30a,b 重畳レーザパルス(レーザパルス)
32 出力装置
34 極端紫外線(EUV)光生成装置
36 ターゲット材料
38 極端紫外線(EUV)放射
40 ビームガイド装置
42 集束装置
44 ターゲット領域
46 コレクタミラー
48 真空チャンバ
A 第1のレーザパルス16a,bと第2のレーザパルス18a,bとの間の間隔
図1
図2a
図2b
図2c
【国際調査報告】