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特表2024-536800薬剤化合物を送達するための再充填可能な埋め込み型デバイス
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  • 特表-薬剤化合物を送達するための再充填可能な埋め込み型デバイス 図1
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  • 特表-薬剤化合物を送達するための再充填可能な埋め込み型デバイス 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】薬剤化合物を送達するための再充填可能な埋め込み型デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20241001BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 31/663 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241001BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241001BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20241001BHJP
   A61M 31/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61P43/00 111
A61K31/713
A61K48/00
A61K31/7088
A61P25/00
A61K31/663
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/02
A61K31/573
A61M5/142 524
A61M31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517552
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 US2022044081
(87)【国際公開番号】W WO2023049095
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/246,844
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/305,772
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520433115
【氏名又は名称】セラニーズ・イーブイエイ・パフォーマンス・ポリマーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ギャナニ,ビジャイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイリー,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー,キース
(72)【発明者】
【氏名】ウェルシュ,ケビン
【テーマコード(参考)】
4C066
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066BB05
4C066CC01
4C066EE11
4C076AA95
4C076AA99
4C076BB30
4C076BB32
4C076CC18
4C076EE03
4C076EE06
4C076EE07
4C076EE09
4C076EE10
4C076EE11
4C076EE12
4C076EE15
4C076EE22
4C076EE27
4C076FF70
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA56
4C084MA67
4C084NA13
4C084ZA02
4C084ZC20
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA10
4C086DA10
4C086DA34
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA11
4C086MA56
4C086MA67
4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZC20
(57)【要約】
薬剤化合物を送達するための埋め込み型で再充填可能なデバイスが提供される。デバイスは、薬剤化合物をその中に保持することができるリザーバーを含み、リザーバーは、第1の表面および第1の表面に対向する第2の表面を画定する。疎水性ポリマーを含む放出構造が、リザーバーの少なくとも一部分を取り囲む。放出構造は、薬剤化合物がリザーバーから放出構造を通り抜けることができるようにリザーバーに連通している。セプタムが、リザーバーの第1の表面に隣接して配置されており、裏打ち層が、リザーバーの第2の表面に隣接して配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤化合物を送達するための埋め込み型で再充填可能なデバイスであって、
前記薬剤化合物をその中に保持することができるリザーバーであって、第1の表面および前記第1の表面に対向する第2の表面を画定する前記リザーバー、
疎水性ポリマーを含み、前記リザーバーの少なくとも一部分を取り囲む放出構造であって、前記薬剤化合物が前記リザーバーから前記放出構造を通り抜けることができるように前記リザーバーに連通している放出構造、
前記リザーバーの前記第1の表面に隣接して配置されたセプタム、ならびに
前記リザーバーの前記第2の表面に隣接して配置された裏打ち層
を含む埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、概して円形の断面を有する、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項3】
前記リザーバーが、約0.5~約5ミリリットルの体積を有する、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項4】
前記デバイスが円盤の形態をとる、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項5】
前記疎水性ポリマーが、半結晶質オレフィンコポリマーを含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項6】
前記半結晶質コポリマーが、少なくとも1つのオレフィンモノマーおよび少なくとも1つの極性モノマーに由来する、請求項5に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項7】
前記オレフィンモノマーがエチレンを含む、請求項6に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項8】
前記極性モノマーが、酢酸ビニル、ビニルアルコール、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、またはこれらの組合せを含む、請求項6に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項9】
前記極性モノマーが、前記コポリマーの約10wt%~約45wt%を構成する、請求項6に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項10】
前記オレフィンコポリマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項5に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項11】
前記疎水性ポリマーが、190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-13に従って決定すると、約0.2~約100グラム/10分のメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項12】
前記放出構造が、親水性化合物を更に含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項13】
前記親水性化合物が、親水性ポリマーを含む、請求項12に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項14】
前記親水性化合物が、前記放出構造内に分散されている複数の水溶性粒子を含む、請求項12に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項15】
前記セプタムが、約40以下のショアA硬さを示す物質を含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項16】
前記セプタムが、ニトリルゴム、スチレンブロックコポリマー、ポリウレタン、シリコーンエラストマー、またはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項17】
前記セプタムが、複数の層を含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項18】
前記裏打ち層が、ポリマー物質、金属、セラミック、またはこれらの組合せを含む耐穿刺性物質を含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項19】
前記裏打ち層が、生体適合性繊維を含む、請求項18に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項20】
前記薬剤化合物が、1つ以上のビスホスホネートを含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項21】
前記薬剤化合物が、1つ以上のコルチコステロイドを含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項22】
前記薬剤化合物が、1つ以上の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項23】
前記薬剤化合物が、1つ以上のアロマターゼ阻害剤を含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項24】
前記薬剤化合物が、1つ以上の抗精神病薬を含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項25】
前記薬剤化合物が、1つ以上の核酸を含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項26】
前記1つ以上の核酸が、DNA、RNA、TNA、GNA、PNA、またはこれらの組合せを含む、請求項25に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項27】
前記1つ以上の核酸が、mRNA、tRNA、siRNA、snRNA、またはこれらの組合せを含む、請求項26に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項28】
前記薬剤化合物が、1つ以上の化学療法剤を含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項29】
前記薬剤化合物が、1つ以上のモノクローナル抗体を含む、請求項1に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項30】
前記1つ以上のモノクローナル抗体が、抗-PD-1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-CLTA-4抗体、抗-HER2抗体、抗-VEGF抗体、および抗-cKIT抗体、抗-4-1BB抗体、またはこれらの組合せを含む、請求項29に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項31】
前記1つ以上の抗体が、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含む、請求項29に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項32】
前記1つ以上の抗体が、多重特異性抗体を含む、請求項29に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項33】
前記1つ以上の抗体が、抗体フラグメントを含む、請求項29に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項34】
前記1つ以上の抗体が、免疫サイトカインを含む、請求項29に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項35】
前記1つ以上の抗体が、抗体-低分子干渉RNA(siRNA)コンジュゲート(ARC)を含む、請求項29に記載の埋め込み型で再充填可能なデバイス。
【請求項36】
患者の状態、疾患、および/または美容状態を抑制および/または治療する方法であって、独立請求項1に記載のデバイスを患者に埋め込み、前記リザーバーを薬剤化合物で充填するステップを含む方法。
【請求項37】
前記リザーバーを充填する方法が、
前記セプタムから針を挿入するステップ、
前記薬剤化合物を前記リザーバーに前記針を通して注入するステップ、および
前記針を前記セプタムから引っ込めるステップ
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤化合物が前記放出構造を横断する期間の後に、前記リザーバーを再充填するステップを更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記デバイスが、子宮内埋入物または皮下埋入物として埋め込まれる、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
[0001]本出願は、米国特許仮出願第63/246,844号(出願日2021年9月22日)および米国特許仮出願第63/305,772号(出願日2022年2月2日)に基づき、これらの優先権を主張するものであり、これらが参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]埋め込み型医療デバイスが、かなりの間、薬剤化合物の長期放出を実現するために使用されてきた。残念なことに、多くの埋め込み型デバイスは、特に持続的な期間にわたって制御可能に送達することが従来から困難であった薬剤化合物では投薬過誤を含めて、リスクおよび合併症を伴うおそれがある。長期間にわたって制御される薬剤化合物送達のために再充填可能な埋め込み型送達デバイスを作製することが試みられてきた。これには、デバイスのリザーバーを再充填するのに使用されるポートシステムから生じる感染、および複数のデバイス再充填サイクルが必要であるために一貫していない薬剤送達速度を含めて様々な困難も伴った。したがって、薬剤化合物を持続的な期間にわたって送達することができる埋め込み型で再充填可能な送達デバイスが求められ続けている。
【発明の概要】
【0003】
[0003]本開示の1つの実施形態によると、埋め込み型で再充填可能なデバイスが開示される。デバイスは、薬剤化合物をその中に保持することができるリザーバーを含み、リザーバーは、第1の表面および第1の表面に対向する第2の表面を画定する。疎水性ポリマーを含む放出構造は、リザーバーの少なくとも一部分を取り囲む。放出構造は、薬剤化合物がリザーバーから放出構造を通り抜けることができるようにリザーバーに連通している。更に、セプタムが、リザーバーの第1の表面に隣接して配置されており、裏打ち層が、リザーバーの第2の表面に隣接して配置されている。
【0004】
[0004]本開示の他の特徴および態様は、より詳細に以下に記載される。
【0005】
[0005]当業者を対象とする、本開示の完全および可能な開示はその最適な様式を含めて、添付の図面を参照しながら本明細書の残りの部分により特定的に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0006]本開示の埋め込み型医療デバイスの1つの実施形態の斜視図である。
図2】[0007]図1の埋め込み型医療デバイスの断面図である。
図3】[0008]本開示の埋め込み型医療デバイスの別の実施形態の斜視図である。
図4】[0009]図3の埋め込み型医療デバイスの断面図である。
図5】[0010]本明細書に開示されるデバイスに含まれうる多層セプタムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0011]本明細書および図において繰り返し使用される参照符合は、本開示の同じまたは類似の特徴または要素を表すことが意図される。
【0008】
[0012]本考察は例示的な実施形態のみを記載しており、本開示のより広い態様を制限することを意図しないことが、当業者に理解されるべきである。
【0009】
[0013]一般的に言えば、本開示は、薬剤化合物を患者(例えば、ヒト、愛玩動物、家畜など)に持続的な期間にわたって送達して、患者の状態、疾患および/または美容状態の抑制および/または治療を助けることができる埋め込み型デバイスを対象にする。デバイスは、薬剤化合物がその中に保持されうるリザーバーおよび薬剤化合物がリザーバーから放出構造を通り抜けることができるようにリザーバーに連通している放出構造を含む。デバイスは、デバイスのリザーバーを再充填するのに使用することができるセプタム、およびセプタムに向かい合って、再充填の際に針がデバイスを貫通するのを抑制することができる裏打ち層も含む。
【0010】
[0014]埋め込み型デバイスは、様々な異なる幾何学的形状、例えば、円形または卵形円盤形、円筒形(ロッド)、リング、ドーナッツ形、螺旋形、楕円形、三角形、卵形などを有することができる。1つの実施形態において、例えば、デバイスは、構造全体が円盤またはロッドの形態になるように、概して円形の断面形状を有していてもよい。そのような実施形態において、デバイスは、典型的には、約0.5~約3センチメートル、例えば約0.75~約2センチメートル、いくつかの実施形態では約0.8~約1.5センチメートルの直径を有する。デバイスの高さは変動しうるが、典型的には、約0.25~約1.5センチメートルの範囲である。いくつかの実施形態では、デバイスのリザーバーは、約0.05~約5ミリリットル、例えば約1~約4ミリリットルの体積を画定することができる。特定のサイズまたは形状にかかわりなく、デバイスは、リザーバーに隣接しており、1つ以上の薬剤化合物が通過することができる放出構造を含む。
【0011】
[0015]例えば、図1および図2を参照すると、概して円形の断面形状を有するリザーバー40を含み、かつ本質的に概して円盤状である埋め込み型デバイス10の1つの実施形態が示されている。放出構造20も同様に、リザーバー40の少なくとも一部分、場合によってはリザーバー40全体を取り囲む。デバイスは、リザーバー40の第1の表面(例えば、上面)に隣接して配置されているセプタム21、およびリザーバー40の対向する第2の表面(例えば、下面)に隣接して配置されている裏打ち層22も含む。示されるように、放出構造20は、セプタム21の少なくとも一部分および/または裏打ち層22の少なくとも一部分も取り囲むことができる。デバイス10の使用の際に、薬剤化合物は、デバイスの外面23から出るようにリザーバー40から放出構造20を通過することによって放出されうる。デバイスを再充填することが望ましい場合、針41は、セプタムを貫通することができ、裏打ち層22によってリザーバーを完全に通って出ていく過貫通および通過が抑制されうる。したがって、薬剤化合物は、再充填のためにリザーバーに注入されうる。
【0012】
[0016]当然、他の実施形態において、放出構造は、複数の層を含有することができる。例えば、図1および図2のデバイスでは、1つ以上の追加の層(示されず)が層20の上に配置されて、薬剤化合物の放出を更に制御することを助けることができる。
【0013】
[0017]デバイスは、裏打ち層が放出構造内に保持され、あるいはデバイスの外側表面を形成するように構成されうる。例えば、図3および図4を参照すると、得られたデバイスが本質的に概して円盤状であるように概して円形の断面形状および高さを有するリザーバー140を含む埋め込み型デバイス100の1つの実施形態が示されている。リザーバー140は、セプタム121に付着している上縁161および裏打ち層122に付着している下縁163を有する放出構造120によって取り囲まれる。示されるように、セプタム121および裏打ち層122は、概して円形の断面形状を有し、デバイス100の上下面を形成することができる。望ましい場合、放出構造120の一部分が、セプタム121の下面の下方にも、裏打ち層122の上面に沿っても広がることができ、物質間のシールが改善され、リザーバー140の内容物の制御されないいかなる漏出も予防されうる。デバイス100の使用の際に、薬剤化合物は、デバイスから出るようにリザーバー140から放出構造120を通って放出されうる。当然、望ましい場合に、1つ以上の追加の層(示されず)が放出構造120上に配置されて、薬剤化合物の放出を更に制御することを助けることもできる。
【0014】
[0018]デバイスの放出構造、セプタムおよび/または裏打ち層、ならびに他の態様の特定の性質に及ぶ選択的制御によって、得られたデバイスが、1つ以上の薬剤化合物の長期間にわたる持続放出に有効でありうると思われる。例えば、リザーバーの一回充填後に、埋め込み型デバイスは、約5日以上、いくつかの実施形態では約10日以上、いくつかの実施形態では約20日~約60日、いくつかの実施形態では約25日~約50日(例えば、約30日)、またはいくつかの実施形態では更に長い期間、薬剤化合物を放出することができる。例えば、デバイスは、月の時間尺度で、例えば1か月に1回、2か月に1回、3か月に1回、4か月に1回、6か月に1回、またはそれ以上に1回再充填されるだけでよい。いくつかの実施形態では、デバイスは、1年に1回、またはそれ以上に1回再充填されるように設計されうる。
【0015】
[0019]リザーバーの再充填によって、埋め込み型デバイスは、いくつかの実施形態では薬剤化合物を数週間~数か月間放出することができる。例えば、使用の経過全体(すなわち、デバイスの再充填を含む)にわたって有効な薬剤送達期間は、約3か月~複数年、例えば約6か月~約6年;約6か月~約5年;または約1年~約4年の範囲、例えばいくつかの実施形態では約18か月とすることができる。更に、薬剤化合物は、放出期間にわたって制御的な方法(例えば、ゼロ次またはほぼゼロ次)でも放出されうる。更に、デバイスを形成する際に使用される放出構造、セプタム、および/またはバッキング物質の特定の性質に及ぶ選択的制御によって、デバイスは、望ましい放出特性の損失なしに複数回再充填されうる。
【0016】
[0020]ここで本開示の様々な実施形態をより詳細に記載する。
【0017】
I.放出構造
[0021]上記に示されたように、デバイスは、放出構造を含み、薬剤化合物が、それを通り抜けてリザーバーから周囲領域に、例えば放出構造を通り抜ける受動拡散を介して送達されうる。放出構造は、一般に哺乳動物の身体などの水性環境に設置された場合にある特定の期間にわたって構造整合性を保持できるように、および使用前に長期間にわたって保存するのに十分に安定でありうるように、一般に本質的に疎水性である少なくとも1つのポリマーから形成された高分子マトリックスを含む。この目的に適切な疎水性ポリマーの例には、例えば、シリコーンポリマー、ポリオレフィン、ポリビニルクロリド、ポリカーボネート、ポリスルホン、スチレンアクリロニトリルコポリマー、ポリウレタン、シリコーンポリエーテル-ウレタン、ポリカーボネート-ウレタン、シリコーンポリカーボネート-ウレタンなど、ならびにこれらの組合せが含まれてもよい。当然のことながら、疎水性ポリマーでコートされている、そうでなければカプセル化されている親水性ポリマーも、放出構造ポリマーマトリックスにおける使用に適している。典型的には、疎水性ポリマーのメルトフローインデックスは、190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-20に従って決定すると、約0.2~約100g/10分、いくつかの実施形態では約5~約90g/10分、いくつかの実施形態では約10~約80g/10分、いくつかの実施形態では約30~約70g/10分の範囲である。
【0018】
[0022]ある特定の実施形態において、放出構造は、半結晶オレフィンコポリマーを含有してもよい。そのようなオレフィンコポリマーの溶融温度は、ASTM D3418-15に従って決定すると、例えば、約40℃~約140℃、いくつかの実施形態では約50℃~約125℃、いくつかの実施形態では約60℃~約120℃の範囲でありうる。そのようなコポリマーは、一般に、少なくとも1つのオレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレンなど)、ならびにポリマー主鎖にグラフトされている、および/またはポリマーの構成成分として組み込まれている(例えば、ブロックもしくはランダムコポリマー)少なくとも1つの極性ポリマーに由来する。適切な極性モノマーには、例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸など)、(メタ)アクリレート(例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど)等々が含まれる。多種多様なそのようなコポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸ポリマー(例えば、エチレンアクリル酸コポリマーおよびこれらのコポリマーの部分中和イオノマー、エチレンメタクリル酸コポリマーおよびこれらのコポリマーの部分中和イオノマーなど)、エチレン(メタ)アクリレートポリマー(例えば、エチレンアクリル酸メチルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、エチレンアクリル酸ブチルコポリマーなど)等々を一般にポリマー組成物に用いることができる。選択される特定のモノマーにかかわらず、コポリマーのある特定の態様を選択的に制御して、望ましい放出特性の達成を助けることができる。例えば、コポリマーの極性モノマー含有量を、約10wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約20wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約25wt%~約50wt%の範囲内で選択的に制御することができる。逆に、コポリマーのオレフィンモノマー含有量も同様に、約40wt%~約90wt%、いくつかの実施形態では約40wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約75wt%の範囲内でありうる。
【0019】
[0023]1つの特定の実施形態において、例えば、放出構造は、少なくとも1つのエチレン酢酸ビニルポリマーを含有してもよく、これは、少なくとも1つのエチレンモノマーおよび少なくとも1つの酢酸ビニルモノマーに由来するコポリマーである。ある特定の場合に、本発明者たちは、コポリマーのある特定の態様を選択的に制御して、望ましい放出特性の達成を助けることができることを発見した。例えば、コポリマーの酢酸ビニル含有量を、コポリマーの約10wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約20wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約25wt%~約50wt%、いくつかの実施形態では約30wt%~約48wt%、いくつかの実施形態では約35wt%~約45wt%の範囲内で選択的に制御することができる。逆に、コポリマーのエチレン含有量も同様に、約40wt%~約90wt%、いくつかの実施形態では約40wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約75wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約52wt%~約70wt%、いくつかの実施形態では約55wt%~約65wt%の範囲内でありうる。またエチレン酢酸ビニルコポリマーおよび得られたポリマーマトリックスのメルトフローインデックスは、190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-20に従って決定すると、約0.2~約400g/10分、いくつかの実施形態では約1~約200g/10分、いくつかの実施形態では約5~約90g/10分、いくつかの実施形態では約10~約80g/10分、いくつかの実施形態では約30~約70g/10分の範囲でありうる。またエチレン酢酸ビニルコポリマーの密度は、ASTM D1505-18に従って決定すると、約0.900~約1.00グラム/立方センチメートル(g/cm)、いくつかの実施形態では約0.910~約0.980g/cm、いくつかの実施形態では約0.940~約0.970g/cmの範囲でありうる。用いてもよいエチレン酢酸ビニルコポリマーの特に適切な例には、名称ATEVA(登録商標)(例えば、ATEVA(登録商標)4030AC)でCelanese社から、名称ELVAX(登録商標) (例えば、ELVAX(登録商標)40W)でDow社から、および名称EVATANE(登録商標)(例えば、EVATANE 40-55)でArkema社から入手可能なものが含まれる。実施形態において、放出構造ポリマーマトリックスにおけるエチレン酢酸ビニルコポリマーは、約20wt%~約90wt%、例えば約30wt%~約80wt%、例えば約40wt%~約70wt%である。
【0020】
[0024]様々な技術のいずれかを一般に使用して、当該技術において公知であるように望ましい特性を有するエチレン酢酸ビニルコポリマーを形成することができる。1つの実施形態において、ポリマーは、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーを高圧反応で共重合させることにより生成される。酢酸ビニルは、ブタンを酸化して無水酢酸およびアセトアルデヒドを生じ、これらを一緒に反応させることができ、二酢酸エチリデンを形成することによって生成されうる。次いで、二酢酸エチリデンを酸触媒の存在下で熱分解して、酢酸ビニルモノマーを形成することができる。適切な酸触媒の例には、芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、およびナフタレンスルホン酸)、硫酸、ならびに米国特許第2,425,389号、Oxleyら;同第2,859,241号、Schnizer;および同第4,843,170号、Isshikiらに記載されたものなどのアルカンスルホン酸が含まれる。酢酸ビニルモノマーは、アセトアルデヒドの代わりに触媒の存在下で無水酢酸を水素と反応させることによっても生成されうる。この方法は、二酢酸エチリデンを生成する必要なく、無水酢酸および水素から酢酸ビニルを直接変換する。なお別の実施形態において、酢酸ビニルモノマーは、ペルフルオロスルホン酸樹脂またはゼオライトなどの適切な固体触媒の存在下で、アセトアルデヒドとケテンの反応によって生成されうる。
【0021】
[0025]ある特定の実施形態において、ブレンド全体および放出構造が以上に示された範囲内の融解温度および/またはメルトフローインデックスを有するように、エチレン酢酸ビニルコポリマーおよび別の疎水性ポリマーのブレンドを用いるのが望ましいこともある。例えば、放出構造は、第1のエチレン酢酸ビニルコポリマーおよび第1のコポリマーの融解温度より高い融解温度を有する第2のエチレン酢酸ビニルコポリマーを含有することができる。第2のコポリマーも同様に、第1のコポリマーの対応するメルトフローインデックスと同じ、それより低い、または高いメルトフローインデックスを有することができる。第1のコポリマーは、例えば、ASTM D3418-15に従って決定するなどして、約20℃~約60℃、いくつかの実施形態では約25℃~約55℃、いくつかの実施形態では約30℃~約50℃の融解温度、ならびに/または190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-20に従って決定すると、約40~約900g/10分、いくつかの実施形態では約50~約500g/10分、いくつかの実施形態では約55~約250g/10分のメルトフローインデックスを有することができる。第2のコポリマーは同様に、ASTM D3418-15に従って決定するなどして、約50℃~約100℃、いくつかの実施形態では約55℃~約90℃、いくつかの実施形態では約60℃~約80℃の融解温度、ならびに/または190℃の温度および2.16キログラムの荷重でASTM D1238-20に従って決定すると、約0.2~約55g/10分、いくつかの実施形態では約0.5~約50g/10分、いくつかの実施形態では約1~約40g/10分のメルトフローインデックスを有することができる。第1のコポリマーは、ポリマーマトリックスの約20wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約30wt%~約70wt%、いくつかの実施形態では約40wt%~約60wt%を構成してもよく、第2のコポリマーも同様に、放出構造の約20wt%~約80wt%、いくつかの実施形態では約30wt%~約70wt%、いくつかの実施形態では約40wt%~約60wt%を構成してもよい。
【0022】
[0026]ある特定の場合に、エチレン酢酸ビニルコポリマーが、放出構造の全疎水性ポリマー含有量を構成する。しかし、他の場合に、他の疎水性ポリマーなど他のポリマーを含むのが望ましいことがある。用いられる場合、そのような他の疎水性ポリマーは、放出構造ポリマーマトリックスの疎水性ポリマー含有量の約0.001wt%~約30wt%、いくつかの実施形態では約0.01wt%~約20wt%、いくつかの実施形態では約0.1wt%~約10wt%を構成することが一般に望ましい。そのような場合に、エチレン酢酸ビニルコポリマーは、放出構造の疎水性ポリマー含有量の約約70wt%~約99.999wt%、いくつかの実施形態では約80wt%~約99.99wt%、いくつかの実施形態では約90wt%~約99.9wt%を構成してもよい。
【0023】
[0027]多重放出構造層を用いる場合、各層は疎水性ポリマーを含むポリマーマトリックスを含有することが、典型的に望ましい。例えば、第1の放出構造層は、第1のポリマーマトリックスを含有することができ、第2の放出構造層は、第2のポリマーマトリックスを含有することができる。そのような実施形態において、第1および第2のポリマーマトリックスは、それぞれ同じでも異なってもよい疎水性ポリマーを含有する。1つの実施形態において、例えば、放出構造層のすべてが、同じ疎水性ポリマー(例えば、α-オレフィンコポリマー)を用いる。更に他の実施形態において、放出構造層は、異なる疎水性ポリマーを用いてもよく、例えば第1の放出構造層は、第2の放出構造層において用いられたポリマーより低いメルトフローインデックスを有する疎水性ポリマー(例えば、α-オレフィンコポリマー)を用いてもよい。とりわけ、このことは、デバイスからの薬剤化合物の放出の制御を更に助けることができる。
【0024】
[0028]放出構造は、任意選択で以上に記載された1つ以上の賦形剤、例えば、造影剤、増量剤、可塑剤、界面活性剤、架橋剤、フローエイド、着色剤(例えば、クロロフィル、メチレンブルーなど)、抗酸化剤、安定剤、滑沢剤、他の種類の抗微生物剤、防腐剤などを含有して、特性および加工性を向上させることもできる。用いられる場合、任意選択の賦形剤は、典型的には、放出構造層の約0.01wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約0.05wt%~約50wt%、いくつかの実施形態では約0.1wt%~約40wt%を構成する。
【0025】
[0029]埋め込み型医療デバイスからの放出速度を制御することを助けるために、水に可溶性および/または膨潤性である親水性化合物も、放出構造に組み込むことができる。放出構造内の疎水性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマーの親水性化合物に対する重量比は、約0.25~約200、いくつかの実施形態では約0.4~約80、いくつかの実施形態では約0.8~約20、いくつかの実施形態では約1~約16、いくつかの実施形態では約1.2~約10の範囲であってよい。そのような親水性化合物は、例えば、ポリマーマトリックスの約1wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約2wt%~約50wt%、いくつかの実施形態では約5wt%~約40wt%を構成してもよく、疎水性ポリマーは、典型的には、放出構造層の約40wt%~約99wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約98wt%、いくつかの実施形態では約60wt%~約95wt%を構成する。
【0026】
[0030]適切な親水性化合物として、例えば、ポリマー、非ポリマー物質(例えば、グリセリン、糖、糖アルコール、塩など)などを挙げることができる。適切な親水性ポリマーの例には、例えば、アルギン酸ナトリウム、カリウムおよびカルシウム、カルボキシメチルセルロース、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、コラーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、ポリ-1-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、多糖、親水性ポリウレタン、ポリヒドロキシアクリレート、デキストラン、キサンタン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、タンパク質、エチレンビニルアルコールコポリマー、水溶性ポリシランおよびシリコーン、水溶性ポリウレタンなど、ならびにこれらの組合せが含まれる。特に適切な親水性ポリマーは、ポリアルキレングリコール、例えば、1モル当たり約100~500,000グラム、いくつかの実施形態では1モル当たり約500~200,000グラム、いくつかの実施形態では1モル当たり約1,000~約100,000グラムの分子量を有するものである。そのようなポリアルキレングリコールの具体例には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエピクロロヒドリンなどが含まれる。
【0027】
[0031]任意選択で、放出構造は、ポリマーマトリックス内に分散されている複数の水溶性粒子を含むことができる。水溶性粒子の粒径は、望ましい送達速度の達成を助けるように制御されうる。例えば、粒子の中位径(D50)は、レーザー散乱粒径分布分析機器(例えば、Horiba社のLA-960)を使用して決定するなどして、約100マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約80マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約60マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約1~約40マイクロメートルでありうる。粒子は、粒子の90体積%(D90)以上が以上に示された範囲内の直径を有するような狭い粒径分布も有することができる。粒径を制御することに加えて、水溶性粒子を形成するために用いられる物質は、望ましい放出プロファイルも達成するように選択されうる。更に詳細には、水溶性粒子は、一般に、ポリマーでないヒドロキシ官能性化合物を含有する。用語「ヒドロキシ官能性」は一般に、化合物が少なくとも1個のヒドロキシル基、ある特定の場合には2個以上など複数のヒドロキシル基、いくつかの実施形態では3個以上、いくつかの実施形態では4~20個、いくつかの実施形態では5~16個のヒドロキシル基を含有することを意味する。用語「非ポリマー」も同様に、一般に、化合物が、かなりの数の繰り返し単位、例えば、10個以下の繰り返し単位、いくつかの実施形態では5個以下の繰り返し単位、いくつかの実施形態では3個以下の繰り返し単位、いくつかの実施形態では2個以下の繰り返し単位を含有しないことを意味する。場合によっては、そのような化合物には、いずれの繰り返し単位もない。したがって、そのような非ポリマー化合物は、1モル当たり約1~約650グラム、いくつかの実施形態では1モル当たり約5~約600グラム、いくつかの実施形態では1モル当たり約10~約550グラム、いくつかの実施形態では1モル当たり約50~約500グラム、いくつかの実施形態では1モル当たり約80~約450グラム、いくつかの実施形態では1モル当たり約100~約400グラムなど比較的低い分子量を有する。本開示において用いてもよい特に適切な非ポリマーヒドロキシ官能性化合物としては、例えば糖およびこれらの誘導体、例えば単糖(例えば、デキストロース、フルクトース、ガラクトース、リボース、デオキシリボースなど);二糖(例えば、スクロース、ラクトース、マルトースなど);糖アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、エリトリトール、ガラクチトール、イソマルト、イノシトール、ラクチトールなど)など、ならびにこれらの組合せなどが含まれる。水溶性粒子が利用される場合、それらは、典型的には、放出構造層の約1wt%~約50wt%、いくつかの実施形態では約2wt%~約45wt%、いくつかの実施形態では約4wt%~約40wt%、いくつかの実施形態では約5wt%~約30wt%を構成する。
【0028】
[0032]1つ以上の非イオン性、陰イオン性、および/または両性界面活性剤を用いて、放出構造において均一な物質の分散体を作り出すことを助けることもできる。用いられる場合、そのような界面活性剤は、典型的には、放出構造層の約0.05wt%~約8wt%、いくつかの実施形態では約0.1wt%~約6wt%、いくつかの実施形態では約0.5wt%~約3wt%を構成する。典型的には、疎水性基部(例えば、長鎖アルキル基またはアルキル化アリール基)および親水性鎖(例えば、エトキシおよび/またはプロポキシ部分を含む鎖)を有する非イオン界面活性剤が特に好適である。使用することができるいくつかの適切な非イオン界面活性剤には、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化およびプロポキシ化脂肪アルコール、メチルグルコースのポリエチレングリコールエーテル、ソルビトールのポリエチレングリコールエーテル、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、脂肪(C~C18)酸のエトキシ化エステル、エチレンオキシドと長鎖アミンまたはアミドとの縮合生成物、エチレンオキシドとアルコールとの縮合生成物、脂肪酸エステル、長鎖アルコールのモノグリセリドまたはジグリセリド、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特に適切な非イオン界面活性剤には、脂肪アルコールのエチレンオキシド縮合物、脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルなどが含まれうる。そのような乳化剤を形成するために使用される脂肪成分は、飽和でも不飽和でも、置換でも非置換でもよく、6~22個の炭素原子、いくつかの実施形態では8~18個の炭素原子、いくつかの実施形態では12~14個の炭素原子を含有することができる。ポリオキシエチレンで修飾されているソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノエステル、ジエステル、トリエステルなど)が、非イオン界面活性剤の特に有用な一群である。これらの物質は、典型的には、エチレンオキシドの1,4-ソルビタンエステルへの付加によって調製される。ポリオキシエチレンの付加によって、親油性ソルビタンエステル界面活性剤が、一般に水に可溶性または分散性である親水性界面活性剤に変換される。そのような物質は、名称TWEEN(登録商標)(例えば、TWEEN(登録商標)80、またはポリエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)で市販されている。
【0029】
[0033]用いられる特定の成分にかかわりなく、放出構造は、様々な既知の技術、例えば、ホットメルト押出、射出成形、溶液流延、ディップコーティング、スプレーコーティング、マイクロ押出成形、コアセルベーション、圧縮成形(例えば、真空圧縮成形)などを介して形成されうる。1つの実施形態において、ホットメルト押出技術を用いることができる。ホットメルト押出は一般に無溶媒法であり、高分子マトリックスの成分(例えば、疎水性ポリマー、親水性化合物、任意選択の賦形剤など)を溶融ブレンドし、連続製造過程で任意選択に造形して、高い処理率で一貫した出力品質を可能にすることができる。この技術は、オレフィンコポリマーなどの様々な種類の疎水性ポリマーに特に好適である。すなわち、そのようなコポリマーは、典型的には、広い分子量分布を伴って比較的高い程度の長鎖分枝を示す。この特質の組合せは、押出過程の際にコポリマーの剪断減粘をもたらして、ホットメルト押出の促進を助けることができる。更に、極性コモノマー単位(例えば、酢酸ビニル)は、オレフィン鎖セグメントの結晶化を抑制することによって「内部」可塑剤として機能することができる。このことが、オレフィンコポリマーの低い融点をもたらすことがあり、得られる物質の全体的な柔軟性を改善し、多種多様な形状およびサイズのデバイスに形成される能力を向上させる。
【0030】
[0034]ホットメルト押出法の際に、溶融ブレンドは、約20℃~約200℃、いくつかの実施形態では約30℃~約150℃、いくつかの実施形態では約40℃~約100℃、いくつかの実施形態では約100℃~約120℃の温度範囲で行われて、ポリマー組成物を形成することができる。様々な溶融ブレンド技術のいずれかを一般に用いることができる。例えば、成分を別々にまたは組み合わせて、バレル(例えば、円筒バレル)内に回転可能に装填および収容されている少なくとも1本のスクリューを含む押出機に供給することができる。押出機は、一軸スクリューまたは二軸スクリュー押出機でありうる。例えば、一軸スクリュー押出機の1つの実施形態は、ハウジングまたはバレル、ならびに適切な駆動機(典型的には、モーターおよびギアボックスを含む)により一端が回転的に駆動されるスクリューを含むことができる。望ましい場合、別々の2本のスクリューを含む二軸スクリュー押出機を用いてもよい。スクリューの構成は特に重要ではなく、任意の数および/または方向のねじ山および溝を含んでもよく、このことは当該技術において公知である。例えば、スクリューは、典型的には、スクリューのコアの周囲に遠心方向に伸びる概して螺旋状の溝を形成するねじ山を含む。供給セクションおよび溶融セクションが、スクリューの長さに沿って画定されうる。供給セクションはバレルの投入部分であり、そこにオレフィンコポリマーおよび/または薬剤化合物が添加される。溶融セクションは相変化セクションであり、そこではコポリマーが固体から液体様状態に変化する。押出機が製造されるときに、これらのセクションに正確に画定された線引きはないが、供給セクション、および固体から液体への相変化が発生する溶融セクションを確実に確認することは、十分に当業者の通常の技能の範囲内である。必ずしも必要ではないが、押出機は、バレルの押出端に隣接し、溶融セクションの下流に配置されている混合セクションを有することもできる。望ましい場合、1つ以上の分配および/または分散混合要素を、押出機の混合および/または溶融セクション内に用いてもよい。一軸スクリュー押出機に適した分配ミキサーには、例えば、Saxon、Dulmage、Cavity Transferミキサーなどが含まれうる。同様に、適切な分散ミキサーには、Blisterリング、Leroy/Maddock、CRDミキサーなどが含まれうる。当該技術において周知のように、混合は、ポリマー溶融物の折り畳みおよび再配向を作り出すバレル内のピンを使用することによって更に改善することができ、例えば、Buss Kneader押出機、Cavity TransferミキサーおよびVortex Intermeshing Pinミキサーに使用されているものである。
【0031】
[0035]望ましい場合、スクリューの長さ(「L」)と直径(「D」)の比を選択して、成分の処理量とブレンドの最適なバランスを達成することができる。L/D値は、例えば、約10~約50、いくつかの実施形態では約15~約45、いくつかの実施形態では約20~約40の範囲でありうる。スクリューの長さは、例えば、約0.1~約5メートル、いくつかの実施形態では約0.4~約4メートル、いくつかの実施形態では約0.5~約2メートルの範囲でありうる。同様にスクリューの直径は、約5~約150ミリメートル、いくつかの実施形態では約10~約120ミリメートル、いくつかの実施形態では約20~約80ミリメートルでありうる。長さおよび直径に加えて、押出機の他の態様を選択して、望ましい程度のブレンドを達成することを助けることもできる。例えば、スクリューの速度を選択して、望ましい滞留時間、剪断速度、溶融加工温度などを達成することができる。例えば、スクリュー速度は、約10~約800毎分回転数(「rpm」)、いくつかの実施形態では約20~約500rpm、いくつかの実施形態では約30~約400rpmの範囲でありうる。また溶融ブレンドの際の見掛け剪断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、いくつかの実施形態では約500秒-1~約5000秒-1、いくつかの実施形態では約800秒-1~約1200秒-1の範囲でありうる。見掛け剪断速度は、4Q/πRに等しく、ここで、Qはポリマー溶融物の体積流量(「m/s」)であり、Rは溶融ポリマーが流れるダイ(例えば、押出機ダイ)の半径(「m」)である。
【0032】
[0036]一緒に溶融ブレンドされると、得られたポリマー組成物は、ペレット、シート、ファイバー、フィラメントなどの形態であってもよく、これらを、様々な既知の技術、例えば、射出成形、圧縮成形、ナノモールディング、オーバーモールディング、ブロー成形、三次元印刷などを使用して望ましい形状(例えば、シリンダー、サックなど)に造形することができる。射出成形は、例えば、2つの主要な段階、すなわち、射出段階および保持段階を生じることがある。射出段階では、成形型キャビティを溶融ポリマー組成物で充填する。保持段階は、射出段階が終了した後に開始され、保持圧力を制御して、追加の物質をキャビティに詰め、冷却の際に生じる体積収縮を補う。ショットを造った後、次いでこれを冷却することができる。冷却が完了すると、成形型を開け、例えば成形型内の排出ピンの助けを借りながら、部品を排出させて、成形サイクルを完了させる。任意の適切な射出成形機器を一般に本開示に用いることができる。1つの実施形態において、リザーバーの形状を有する成形型キャビティを一緒に画定する第1の成形型ベースおよび第2の成形型ベースを含む、射出成形装置を用いることができる。成形装置は、第1の成形型の半分の外側外表面からスプルーを通って成形型キャビティまで伸びている樹脂流路を含む。ポリマー組成物を、様々な技術を使用して樹脂流路に供給することができる。例えば、組成物を、回転スクリュー(示されず)を含有する押出機バレルに取り付けられた供給ホッパーに(例えば、ペレットの形態で)供給することができる。スクリューが回転すると、ペレットは前進して、圧力および摩擦を受け、そのことが熱を発生してペレットを溶融させる。冷却機構を備えて、樹脂を成形型キャビティ内で望ましいコア形状(例えば、円盤形状、円筒形状など)に凝固させることもできる。例えば、成形型ベースは、1つ以上の冷却ラインを含んでもよく、冷却媒体がその中を流れて、溶融物質の凝固のために望ましい成形型温度を成形型ベースの表面に付与する。成形型温度(例えば、成形型の表面の温度)は、約30℃~約120℃、いくつかの実施形態では約60℃~約110℃、いくつかの実施形態では約30℃~約60℃の範囲でありうる。
【0033】
[0037]圧縮成形(例えば、真空圧縮成形)も用いることができる。そのような方法では、ポリマー組成物を加熱し、真空下で望ましい形状に圧縮することによって、デバイスの層を形成することができる。更に詳細には、方法は、ポリマー組成物を、圧縮成形型のチャンバ内に収まる前駆体に形成し、前駆体を加熱し、前駆体を加熱しながら前駆体を望ましい層に圧縮成形するステップを含むことができる。ポリマー組成物は、乾式粉体混合、押出などの様々な技術によって前駆体に形成されうる。圧縮の際の温度は、約50℃~約120℃、いくつかの実施形態では約60℃~約110℃、いくつかの実施形態では約70℃~約90℃の範囲でありうる。真空源は、成形の際に前駆体に陰圧も加えて、正確な形状の保持を確実にすることを助けることができる。そのような圧縮成形技術の例は、例えば、米国特許第10,625,444号、Trefferらに記載されている。
【0034】
II.セプタム
[0038]上記に示されたように、埋め込み型デバイスは、埋め込み後にデバイスを再充填するためのセプタムを含むことができる。セプタムは、そこで針によって穴が形成されると閉まることができるように充分な特性を有する「セルフシーリング」物質を含むことができる。例えば、セプタムを形成するために使用される物質は、弾力があってよく、いくらかの弾性を示すことができるが、一般に、触診によって皮膚の真下にあるデバイスの検出を可能にするのに十分なほど堅い。言い換えれば、物質は柔軟であってよく、約1ミリメートル以上の厚さでセルフシーリング性を示すように充分な程度の硬度を過度の剛性なしに有することができる。1つの実施形態において、セプタムは、医療用シリコーンポリマーを含むことができる。代替実施形態において、セプタムは、当該技術において公知であるように他の医療用エラストマーまたはゴム、ならびに物質の組合せを含むことができる。適切なセルフシーリング物質としては、ニトリルゴム、スチレンブロックコポリマー、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリウレタン、またはそれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、セルフシーリング物質は、ASTM D2240-15(2021)に従って決定すると、約40以下、いくつかの実施形態では約10~約30、いくつかの実施形態では約10~約20のショアA硬さなど比較的低い硬度を示すことができる。ジメチルまたはジメチル-ジフェニルシリコーンエラストマーなどのシリコーンエラストマーは、単層または多層セプタムを形成する際に使用することができる。
【0035】
[0039]図3および図4に示すある特定の実施形態において、セプタム121を、包囲するリテーナリング130の形態をした周辺クランプまたはファスナーに固定することができ、セプタム121に半径方向圧力をかけ、物質のセルフシーリング特性を向上させることができる。セプタム121の有効性は、リテーナリング130によってセプタム121に加えられる半径方向圧縮力によって改善することができる。一般に、セプタム121に加えられる半径方向圧縮力が大きいほど、セプタム121のセルフシーリング有効性が高くなる。リテーナリングは、望ましい圧縮強度をかけることができる生体適合性で埋め込み可能な任意の物質、例えば、ステンレス鋼、チタンなどで形成されうる。そのような実施形態では、セプタム121は、固定を可能にする特徴を含むことができる。そのような特徴としては、当該技術において公知であるタブ、凸部、凹部、または他の適切な任意の固定特徴を挙げることができる。いくつかの実施形態において、セプタム121とリテーナリング130の間の固定は、生体適合性接着剤、超音波溶接、または物質と固定方法の組合せの利用によって行うことができる。いくつかの実施形態では、放出構造ポリマー層120を、セプタム121にクランプまたはリテーナリング130と組み合わせて固定することができる。例として、クランプ(例えば、リテーナリング130)を使用して、放出構造ポリマー120をセプタム121に対して圧縮および固定し、ならびに半径方向圧力をセプタム121にかけることができる。
【0036】
[0040]セプタム121は、単一の物質層または互いに隣接して置かれた複数の物質層も含むことができる。図5は、複数の物質層を含むセプタム221の1つの実施形態の断面図を示す。例えば、セプタム221は、2つのセルフシーリングエラストマー層230、233の間に入っている中間体シリコーンゲル層などの内部層231を含むことができる。シリコーンゲル層231は、セプタム221が、貫通針によって形成された穴を封止し、流体のリザーバーからの制御不能の放出を妨げるのを援助することができる。
【0037】
[0041]セプタム121、221は、ポリマー層、例えば、エラストマー層230内に統合または包埋されうる、図5に示すようなメッシュ層235などの追加の層を任意選択で含むことができる。メッシュ層235は、ポリマー層のセルフシーリング特性を向上させることができ、セプタムに強度をかけることができ、操作、針の挿入、および周囲の環境の他の要素(例えば、患者の身体の内部の他の部分、または患者の身体の外から及ぼされた力)との接触の際にデバイスが望ましい形状を維持することが可能になる。いくつかの実施形態では、メッシュ層235は、ゲル層231と組み合わせて働いて、セプタム221のセルフシーリング特性を向上させることができる。例えば、針によってセプタム221に空隙が作り出された後、ゲル層231は、流体がセプタム221を横断する直接経路を得るのを妨げることができ、メッシュ層235は、ゲル層231のこの特性を、リザーバー内の流体によってかけられた圧力下におけるゲルの膨張を物理的に制約することによって向上させることができる。存在する場合、メッシュ層235を形成する際に使用される物質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、およびそれらの組合せ、ならびに同等の構造を生成することができる他の任意の物質を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
III.裏打ち層
[0042]以上で指摘したように、デバイスは、セプタム21、121に向かい合って、流体リザーバー40、140の部分を横切って広がる裏打ち層22、122も含むことができる。裏打ち層22、122は、放出構造ポリマー20(図1および図2に示す)の内側に配置することができ、またはデバイス(図3および図4に示す)の外面を形成することができる。裏打ち層22、122を、接着剤、超音波溶接などの利用によってポリマー放出構造20、120の一部分に接合させることができ、または取付け機構、例えば、フック、タブなど、もしくはそれらの何らかの組合せの利用によってポリマー放出構造20、120に取り付けることができる。裏打ち層22、122は、円盤形状を有することができ、例えば放出構造ポリマー20、120が柔軟である実施形態においてデバイスの一端に構造を与えることができる。
【0039】
[0043]典型的には、裏打ち層を「耐穿刺性」物質から形成して、リザーバーを再充填する場合に注射器用針の過貫通を回避する。耐穿刺性物質は、針によって接触された場合に変形することができるが、裏打ち層を通過するために必要とされるエネルギーは大きい可能性がある。針の使用によってリザーバーを再充填する人は、抵抗の増加に気づき、針の先端がセプタムに向かい合ってリザーバーの側面に接触したことを認識する。適切な耐穿刺性物質の例としては、例えば、ポリマー物質、金属、セラミックス、またはそれらの組合せを挙げることができる。適切なポリマー物質としては同様に、ポリオレフィン、ポリイミド、熱可塑性または熱硬化性ポリウレタン、シリコーン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、エポキシ、ゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイソプレン、ポリスルホン、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)などを挙げることができる。いくつかの実施形態では、裏打ち層22、122としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、石英繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維(例えば、KEVLAR(登録商標))などの繊維の形態であるポリマー物質を挙げることができる。繊維は、そのような繊維から形成されたテキスタイル物質(例えば、織布、メッシュ、マット、不織布ウェブなど)の形態をとってもよい。金属は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、または他の金属などの生体適合性で埋め込み可能な金属とすることができる。金属としては、針(例えば、24ゲージの針)が通過することができないほどに充分小さいメッシュ寸法を有する金属メッシュ物質を挙げることができる。
【0040】
[0044]ある特定の実施形態において、リザーバーの追加の部分(例えば、側壁)も、裏打ち層に関して記載されたものと同じ物質から形成することができる。例えば、リザーバーは、セプタムを除外して、本明細書の以上に開示された「耐穿刺性」物質のいずれからでも形成することができる。ある特定の実施形態において、リザーバーおよび裏打ち層は、記載された金属メッシュ物質など同じ金属物質から形成することができる。
【0041】
[0045]いくつかの実施形態では、デバイスの構成要素、例えば、裏打ち層は、デバイスの埋め込み後にその厳密な皮下部位を確認するために利用することができる造影剤、例えば、硫酸バリウムを含むことができる。
【0042】
IV.薬剤化合物
[0046]薬剤化合物は、いずれの活性剤でも含むことができ、患者の状態、疾患および/または美容状態を抑制および/または治療することができうる。薬剤化合物は、全身的にまたは局所的に、予防的、治療的および/または美容的に活性でありうる。送達される薬剤化合物の投与量レベルは、用いられる特定の化合物およびその放出が意図される期間に応じて変動する。投与量レベルは、望ましい治療結果をもたらす薬剤化合物の治療的に有効量を提供するため、例えば、薬剤化合物が投与される状態の症状を低減または緩和させるのに有効なレベルまたは量を提供するために、一般に十分に高いものである。必要とされる正確な量は、数ある要因の中で、治療される対象、薬剤化合物が送達される対象の年齢および全身状態、対象の免疫系の能力、望ましい効果の程度、治療される状態の重症度、選択される特定の化合物、ならびに組成物の投与様式に応じて変動する。適切な有効量は、当業者によって容易に決定することができる。例えば、有効量は、典型的には、約5μg~約200mg、いくつかの実施形態では1日当たり約5μg~約100mg、いくつかの実施形態では1日当たり送達される薬剤化合物の約10μg~約1mgの範囲である。
【0043】
[0047]薬剤化合物は、天然に生じうる、または当該技術に既知の任意の方法により人工的に製造されうる。典型的には、薬剤化合物は、形成、輸送、保存の際に、および送達より前にデバイスのリザーバーへの挿入後に、望ましい活性を保持することができるように、高温で安定していることも望ましい。例えば、薬剤化合物は、典型的には、約20℃~約100℃、いくつかの実施形態では約30℃~約80℃、いくつかの実施形態では約50℃~約70℃の温度で安定した状態を維持する。
【0044】
A.ビスホスホネート
[0048]ある特定の実施形態において、薬剤化合物は、1つ以上のビスホスホネートを含むことができる。ビスホスホネートは、一般に、骨量減少を減速または予防する、一クラスの薬剤化合物を指す。具体的には、ビスホスホネートは、骨吸収として知られているプロセスを介して骨からのカルシウムなどの鉱物を分解および再吸収する責任を負う破骨細胞を抑制する。ビスホスホネートは、一般に、骨芽細胞がより効果的に働くことを可能にし、それによって骨量が改善する。ビスホスホネートは、骨粗鬆症、骨パジェット病の治療において使用され、がん患者においてカルシウムレベルを低下させるためにも使用されうる。
【0045】
[0049]ビスホスホネート薬剤クラスは、ピロホスフェート(骨に対して強親和性を有する、広く分布している天然のヒト代謝物)のホスフェート-酸素-ホスフェート結合(P-O-P)に基づいている。構造上、ビスホスホネートは、2つのホスフェート基がエステル化によって連結している天然化合物である無機ピロホスフェート(PPi)の化学的に安定な誘導体である。酸素を炭素原子で置き換えると(P-C-P)、ピロホスフェートを分解する通常の酵素によって代謝することができない一群の骨選択的薬剤が生成される。ビスホスホネートのコア構造は、ビスホスホネートが、非加水分解性の中心炭素を含有する;この中心炭素をフランキングしているホスフェート基が維持されているという点で、PPiと若干だけ異なる。現在の臨床使用におけるほぼすべてのビスホスホネートは、中心炭素(R1位と呼ばれる)に結合しているヒドロキシル基も有する。フランキングしているホスフェート基は、ビスホスホネートに骨中のヒドロキシアパタイト結晶に対する強親和性をもたらす(PPiにおいても見られる)が、ヒドロキシルモチーフは、ビスホスホネートがカルシウムを結合する能力を更に増加させる。まとめると、ホスフェート基およびヒドロキシル基は、ビスホスホネートと骨基質の二体相互作用ではなく三体相互作用を生み出し、ビスホスホネートに、骨に対する特異性が与えられる。
【0046】
[0050]例示的なビスホスホネートとしては、ゾレドロン酸、リセドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、シマドロネート、クロドロネート、チルドロネート、ミノドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、1-フルオロ-2-(イミダゾ-[1,2-α]ピリジン-3-イル)-エチル-ビスホスホン酸、およびそれらの機能的類似体が挙げられるが、これらに限定されない。ビスホスホネート化合物としては、第1、第2、および第3世代ビスホスホネートを挙げることができる。例えば、エチドロネート、クロドロネート、およびチルドロネートを含めて初期の窒素不含ビスホスホネートは、第一世代ビスホスホネートと考えられる。第2および第3世代ビスホスホネートとしては、アレンドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、パミドロネート、およびゾレドロネート(すなわち、ゾレドロン酸)が挙げられる。そのような第2および第3世代ビスホスホネートは、窒素含有R側鎖を有する。窒素含有ビスホスホネートが破骨細胞アポトーシスを促進する機構は、窒素不含ビスホスホネートの機構とは異なる。例えば、窒素含有ビスホスホネートは、コレステロール、他のステロール、およびイソプレノイド脂質の産生に決定的なメバロン酸経路における主要な調節酵素であるファルネシルピロリン酸合成酵素に結合し、その活性を抑制する。したがって、(ストレスファイバーアセンブリ、メンブランラフリング、および生存を含めて破骨細胞の中心的な細胞活動の調節において中心的役割を果たす、小グアノシン三リン酸結合タンパク質Rab、Rac、およびRhoを含めて)タンパク質の翻訳後修飾(イソプレニル化)は抑制され、最終的に破骨細胞アポトーシスを引き起こす。
【0047】
[0051]ビスホスホネートの塩、エステルおよび/または異性体はすべて、本開示の範囲に包含されることを意図されており、用語「ビスホスホネート」に入ると理解されるものとする。
【0048】
B.コルチコステロイド
[0052]薬剤化合物としては、グルココルチコイドを含めて1つ以上のコルチコステロイドも挙げることができる。グルココルチコイドは、コルチコステロイドのサブグループと定義される。グルココルチコステロイドと呼ばれることもあるグルココルチコイドは、グルココルチコイド受容体に結合し、免疫活性(例えば、炎症)を下げる免疫系のフィードバック機構の一部分である、一クラスのステロイドホルモンである。医学において、それらを使用して、過活動性免疫系によって引き起こされる疾患、例えば、アレルギー、喘息、自己免疫疾患および敗血症を治療する。それらは、がん細胞における異常な機構の一部にも干渉し、したがってがんを治療するためにも使用される。グルココルチコイド受容体を結合する際に、活性化されたグルココルチコイド受容体複合体は、核における抗炎症性タンパク質の発現をトランス活性化として知られているプロセスによって上方制御し、遺伝子導入に対する作用を(NF-κB、AP1、jun-jun-ホモダイマーなどを介して)減弱することによってサイトゾルにおける炎症促進性タンパク質の発現を抑圧する。
【0049】
[0053]グルココルチコイドの適切な例としては、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、コルチゾン/コルチゾール、フルオロコルトロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、パラメタゾンが挙げられる。グルココルチコイド多形体、それらの異性体、水和物、溶媒和物、または誘導体はすべて、本開示の範囲に包含されることを意図されており、用語「グルココルチコイド」に入ると理解されるものとする。
【0050】
C.選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
[0054]薬剤化合物としては、SERMも挙げることができる。SERMは、エストロゲン受容体に結合するが、異なる組織においてアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する能力を有する作用剤である。例えば、ある特定のSERMは、骨および子宮エストロゲン受容体に対してアゴニストとして作用し、乳房エストロゲン受容体に対してアンタゴニストとして作用する。ある特定の形態のがん(例えば、乳がん)の増殖は、エストロゲンに依存している可能性がある。上記に鑑み、乳房組織に対してアンタゴニストとして作用する選択的SERMは、乳がんの治療において使用される。追加的に、SERMは、閉経後の骨粗鬆症およびある特定の転移性乳がんを予防する際に有用でありうる。SERMは、受容体において多種多様な立体構造変化を誘導し、それによって様々な異なる生物学的プロファイルを誘発することができる、エストロゲン受容体の小リガンドである。SERMは、乳がん組織の増殖に影響するだけでなく、他の生理的プロセスにも影響を及ぼす。
【0051】
[0055]SERMは、子宮組織の増殖、骨格骨密度、および血漿コレステロールレベルを含めて心血管系の健康をモジュレートする。一般に、エストロゲンは、乳房および子宮内膜組織増殖を刺激し、骨密度を向上させ、血漿コレステロールを低下させる。多くのSERMは、これらの機能のあるものには拮抗し、別のものには刺激するという点で二機能性である。例えば、エストロゲン受容体で部分アゴニスト/アンタゴニストであるタモキシフェンは、エストロゲン誘導乳がん細胞増殖を抑制するが、子宮内膜組織増殖を刺激し、骨量減少を予防する。
【0052】
[0056]適切なSERMとしては、オスペミフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、クエン酸クロミフェン、オルメロキシフェネム(ormeloxifenem)、チボロン、イドキシフェン、またはそれらの組合せが挙げられる。SERM多形体、それらの異性体、水和物、溶媒和物、または誘導体はすべて、本開示の範囲に包含されることを意図されており、用語「SERM」に入ると理解されるものとする。ラロキシフェンおよびタモキシフェンは、最もよく処方および利用されたSERMの一部である。
【0053】
[0057]ラロキシフェンは、ベンゾチオフェン化合物クラスに属するエストロゲンアゴニスト/アンタゴニストである。ラロキシフェンは、構造式(1)によって表される。
【化1】
【0054】
[0058]ラロキシフェン塩酸塩の化学名は、メタノン、[6-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)ベンゾ[b]チエン-3-イル]-[4-[2-(1-ピペリジニル)エトキシ]フェニル]-、塩酸塩である。ラロキシフェン塩酸塩は、510.05の分子量に相当する実験式C2827NOS.HClを有する。ラロキシフェン塩酸塩は、灰白色~淡黄色の固体であり、水には極めて溶けにくく、水溶解度は25℃で約0.3g/mlであり、37℃の人工胃液(SGF)USP(0.003mg/ml)および人工腸液(SIF)USP(0.002mg/ml)では著しく低くなる。抗エストロゲンまたは抗アンドロゲン化合物としてのラロキシフェンおよびその誘導体が、米国特許第4,418,068号に開示されている。
【0055】
[0059]タモキシフェンは、トリフェニルエチレン誘導体のtrans-異性体である。化学名は、(Z)2-[4-(1,2-ジフェニル-1-ブテニル)フェノキシ]-N,N-ジメチルエタンアミン2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボキシレート(1:1)である。構造式、実験式、および分子量は以下の通りである。
【化2】
【0056】
[0060]タモキシフェンの実験式は、C3237NOであり、563.62の分子量を有する。クエン酸タモキシフェンは、8.85のpKa’を有する。37℃で水に対する平衡溶解度は0.5mg/mLであり、37℃で0.02N HCl中0.2mg/mLである。
【0057】
D.アロマターゼ阻害剤
[0061]薬剤化合物としては、1つ以上のアロマターゼ阻害剤も挙げることができる。アロマターゼ阻害剤は、閉経後の女性においてエストロゲンの産生を止めることができる一クラスの作用剤を指す。アロマターゼ阻害剤の働きは、酵素アロマターゼをブロックすることによって、身体におけるテストステロンおよび/またはアンドロゲンのエストラジオールへの変換を抑制するように機能する。上記に鑑み、アロマターゼの作用の低減によって、身体におけるエストロゲンの量が低減し、したがってホルモン受容体陽性乳がん細胞の増殖を刺激するのに利用可能なエストロゲンが減少する。更に、アロマターゼ阻害剤は、卵巣がエストロゲンを生成するのを止めず、したがって、閉経後の女性を治療するために更によく使用される。アロマターゼ阻害剤は、心臓の不具合および骨量減少(例えば、骨粗鬆症)を引き起こすことが知られている。
【0058】
[0062]アロマターゼ阻害剤の適切な例としては、エキセメスタン、アタメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、レトロゾール、ペントロゾール、アナストロゾール、ボロゾール、またはそれらの組合せが挙げられる。別の実施形態において、アロマターゼ阻害剤としては、アミノグルテチミドやテストラクトン(Teslac)などの非選択的アロマターゼ阻害剤を挙げることができる。更に別の実施形態において、アロマターゼ阻害剤としては、酵素アロマターゼを抑制し、エストロゲンがその代謝前駆体から形成されるのを妨げることができる、当業者に公知の他の任意の選択的または非選択的化学物質を挙げることができる。アロマターゼ阻害剤多形体、それらの異性体、水和物、溶媒和物、または誘導体はすべて、本開示の範囲に包含されることを意図されており、用語「アロマターゼ阻害剤」に入ると理解されるものとする。
【0059】
E.抗精神病薬
[0063]薬剤化合物としては、1つ以上の抗精神病薬も挙げることができる。抗精神病薬は、一般に、統合失調症などの精神病を管理および治療するために主に使用される一クラスの薬剤化合物を指す。抗精神病薬は、双極性障害および大うつ病性障害を治療するためにも使用される。具体的には、定型抗精神病薬および若干の非定型抗精神病薬は、ドーパミンアンタゴニストであり、脳においてドーパミンを妨害するように作用する。更に、非定型抗精神病薬はセロトニンにも影響を及ぼす。
【0060】
[0064]例示的な抗精神病薬としては、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の両方が挙げられる。本明細書で使用することができる非定型抗精神病薬としては、アリピプラゾール、クロザピン、ジプラシドン、パリペリドン、リスペリドン、クエチアピン、オランザピン、アセナピン、イロペリドン、ルラシドン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、およびルマテペロンが挙げられるが、これらに限定されない。抗精神病薬の塩、エステルおよび/または異性体はすべて、本開示の範囲に包含されることを意図されており、用語「抗精神病薬」に入ると理解されるものとする。
【0061】
[0065]ある特定の実施形態において、薬剤化合物としては、リスペリドンが挙げられる。リスペリドンは、非定型抗精神病薬であり、統合失調症、自閉症性障害に伴う易怒性の治療に適応され、双極1型障害に伴う急性躁病または混合エピソードの治療のためのリチウムまたはバルプロエートを用いた単剤療法または補助的療法として示される。リスペリドンは、ベンゾイソオキサゾール誘導体の化学物質クラスに属する。リスペリドンは、410.49の分子量およびC2327FNの分子式を有する。リスペリドンの構造式を以下に示す。
【化3】
【0062】
[0066]リスペリドンは、セロトニン2型(5HT)、ドーパミン2型(D)、α1およびα2アドレナリン作動性、ならびにHヒスタミン作動性の受容体に対して高親和性を有するモノアミン作動性アンタゴニストである。リスペリドンはまた、セロトニン5HT1c、5HT1D、5HT1A受容体に対して低~中等度の親和性を示し、ドーパミンDおよびハロペリドール感受性シグマ部位に対して弱親和性を示す。リスペリドンは、一般に、コリン作動性ムスカリン受容体に対してもβおよびβアドレナリン受容体に対しても親和性を示さない。
【0063】
F.核酸
[0067]薬剤化合物としては、ネイキッド核酸またはカプセル化核酸などの核酸を挙げることができる。本明細書では、用語「核酸」は、一般に、核酸塩基および酸性部分を含む化合物、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの組合せを指す。「ヌクレオシド」は、一般に、糖分子(例えば、ペントースまたはリボース)またはそれらの誘導体を有機塩基(例えば、プリンまたはピリミジン)またはその誘導体(本明細書では「核酸塩基」とも呼ばれる)と組み合わせて含む化合物を指す。「ヌクレオチド」は、一般に、ホスフェート基を含むヌクレオシドを指す。修飾ヌクレオチドは、1つ以上の修飾または非天然ヌクレオシドを含むように、任意の有用な方法によって、例えば、化学的に、酵素的に、または組換えなどで合成することができる。ポリヌクレオチドは、連結されたヌクレオシドの領域を含むことができる。そのような領域は、可変の主鎖連結部を有することができる。連結部は、標準ホスホジエステル連結部とすることができ、その場合、ポリヌクレオチドはヌクレオチドの領域を含む。例えば、ポリヌクレオチドは、直鎖状分子である3つ以上のヌクレオチドを含有することができ、隣接しているヌクレオチドがホスホジエステル連結部を介して互いに連結している。用語「核酸」は、RNAならびに一本鎖および/または二本鎖DNAも包含する。更に詳細には、核酸は、例えば、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(β-D-リボ立体配置を有するLNA、α-L-リボ立体配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-LNA、および2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-c-LNAを含めて、LNA)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、またはそれらのキメラもしくは組合せとすることができ、あるいはそれらを含むことができる。
【0064】
[0068]核酸は、例えば、ゲノム、転写物、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、snRNA、プラスミド、コスミド、染色体、染色分体、または他の天然核酸分子の文脈の中で、天然に生じうる。一方、核酸分子は、非天然分子、例えば、組換えDNAもしくはRNA、人工染色体、改変ゲノム、またはそれらのフラグメント、あるいは合成DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドとすることができ、または非天然ヌクレオチドもしくはヌクレオシドを含む。核酸は、天然供給源から精製し、組換え発現系を使用して生成し、任意選択で精製することができ、化学的に合成することなどができる。核酸としては、ヌクレオシド類似体、例えば、化学的に修飾された塩基または糖、および主鎖修飾を有する類似体も挙げることができる。いくつかの実施形態では、核酸は、天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン);ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、および2-チオシチジン);化学的に修飾された塩基;生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基);インターカレートされた塩基;修飾された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース);および/または修飾されたホスフェート基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’-N-ホスホラミダイト連結部)である、またはそれらを含有する。
【0065】
[0069]修飾されたヌクレオチド塩基対合を用いることができ、それは、標準アデノシン-チミン、アデノシン-ウラシル、またはグアノシン-シトシン塩基対だけでなく、ヌクレオチドおよび/または非標準もしくは修飾塩基を含む修飾ヌクレオチド間で形成された塩基対も包含し、水素結合供与体および水素結合受容体の配置によって、非標準塩基と標準塩基の間にまたは2つの相補的非標準塩基構造間に水素結合が可能になる。そのような非標準塩基対合の一例は、修飾ヌクレオチドイノシンとアデニン、シトシンまたはウラシルの間の塩基対合である。塩基/糖またはリンカーの任意の組合せを本開示のポリヌクレオチドに組み込むことができる。
【0066】
[0070]ある特定の実施形態において、核酸は、1つ以上の核酸塩基が治療目的で修飾されているポリヌクレオチド(例えば、mRNAポリヌクレオチドなどのRNAポリヌクレオチド)とすることができる。実際に、ある特定の実施形態において、修飾核酸塩基の少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つまたはそれ以上)の組合せを含むポリヌクレオチド(例えば、mRNAポリヌクレオチドなどのRNAポリヌクレオチド)を用いることができる。例えば、ポリヌクレオチド中の適切な修飾核酸塩基は、修飾シトシン、例えば、5-メチルシトシン、5-メチル-シチジン(m5C)、N4-アセチル-シチジン(ac4C)、5-ハロ-シチジン(例えば、5-ヨード-シチジン)、5-ヒドロキシメチル-シチジン(hm5C)、1-メチル-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン(s2C)、2-チオ-5-メチル-シチジンなど;修飾ウリジン、例えば、5-シアノウリジン、4’-チオウリジン、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、N1-エチルプソイドウリジン、2-チオウリジン(s2U)、4’-チオウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、5-メチルウリジン(mo5U)、5-メトキシウリジン、2’-O-メチルウリジンなど;修飾グアノシン、例えば、α-チオ-グアノシン、イノシン(I)、1-メチル-イノシン(m1I)、ウイオシン(imG)、メチルウイオシン(mimG)、7-デアザ-グアノシン、7-シアノ-7-デアザ-グアノシン(preQO)、7-アミノメチル-7-デアザ-グアノシン(preQ1)、7-メチル-グアノシン(m7G)、1-メチル-グアノシン(m1G)、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシンなど;修飾アデニン、例えば、α-チオ-アデノシン、7-デアザ-アデニン、1-メチル-アデノシン(m1A)、2-メチル-アデニン(m2A)、N6-メチル-アデノシン(m6A)、2,6-ジアミノプリンなど;ならびにそれらの組合せとすることができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、mRNAポリヌクレオチドなどのRNAポリヌクレオチド)としては、上記の修飾核酸塩基の少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つまたはそれ以上)の組合せが挙げられる。
【0067】
[0071]いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、mRNAポリヌクレオチドなどのRNAポリヌクレオチド)は、特定の修飾について均一修飾(例えば、全配列にわたって修飾されている完全修飾)されていてもよい。例えば、ポリヌクレオチドを、5-メチル-シチジン(m5C)で均一修飾することができ、これは、mRNA配列中のすべてのシトシン残基が5-メチル-シチジン(m5C)で置き換えられていることを意味する。同様に、ポリヌクレオチドを、配列中に存在するいずれのタイプのヌクレオシド残基についても、修飾残基、例えば、以上に記載されたもののいずれかによる置き換えによって均一修飾することができる。
【0068】
[0072]いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、メッセンジャーRNA(mRNA)として機能する。「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、一般に、(少なくとも1つの)ポリペプチド(アミノ酸の天然、非天然、または修飾ポリマー)をコードし、コード化ポリペプチドをインビトロ、インビボ、インサイチューまたはエクスビボで産生するために翻訳することができる任意のポリヌクレオチドを指す。mRNA分子の基本成分は、典型的には、少なくとも1つのコード領域、5’非翻訳領域(UTR)、3’ UTR、5’キャップおよびポリ-Aテールを含む。ポリヌクレオチドは、mRNAとして機能することができるが、核酸酸ベースの治療薬を使用して、有効なポリペプチド発現の既存の問題を克服する働きをするそれらの機能および/または構造設計の特徴において野生型mRNAから区別することができる。mRNAは、目的の少なくとも1つのポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つ(1つ以上の)リボ核酸(RNA)ポリヌクレオチドを含有することができる。いくつかの実施形態では、mRNAのRNAポリヌクレオチドが、2-10、2-9、2-8、2-7、2-6、2-5、2-4、2-3、3-10、3-9、3-8、3-7、3-6、3-5、3-4、4-10、4-9、4-8、4-7、4-6、4-5、5-10、5-9、5-8、5-7、5-6、6-10、6-9、6-8、6-7、7-10、7-9、7-8、8-10、8-9または9-10のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、mRNAのRNAポリヌクレオチドが、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90または100のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、mRNAのRNAポリヌクレオチドが、少なくとも100または少なくとも200のポリペプチドをコードする。
【0069】
[0073]いくつかの実施形態では、核酸は、治療用mRNAである。本明細書では、用語「治療用mRNA」は、治療用タンパク質をコードするmRNAを指す。治療用タンパク質は、疾患を治療し、または疾患の他覚的症状および自覚的症状を改善するために、宿主細胞または対象において様々な効果を媒介する。例えば、治療用タンパク質は、欠損しているまたは異常なタンパク質を置き換え、内在性タンパク質の機能を増大させ、新規機能を細胞にもたらすことができる(例えば、内在性細胞活性を抑制もしくは活性化し、または別の治療化合物の送達剤として作用することができる(例えば、抗体-薬物コンジュゲート)。治療用mRNAは、様々な疾患および状態、例えば、細菌感染症、ウイルス感染症、寄生虫感染症、細胞増殖障害、遺伝性障害、および自己免疫障害の治療にとって有用でありうる。mRNAは、いくつかの標的カテゴリーのいずれかから選択される目的のポリペプチドをコードするように設計することができ、それらのポリペプチドとしては、生物学的製剤、抗体、ワクチン、治療用タンパク質またはペプチド、細胞透過性ペプチド、分泌タンパク質、原形質膜タンパク質、細胞質または細胞骨格タンパク質、細胞内膜結合タンパク質、核タンパク質、ヒト疾患に関連するタンパク質、治療適応症が特定されていないが、それにもかかわらず研究および発見の領域において有用性がある、ヒトゲノムによってコードされる標的部分またはそれらのタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
[0074]特に適切な治療用mRNAは、少なくとも1つの抗原ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのリボ核酸(RNA)ポリヌクレオチドを含むものであり、RNAのRNAポリヌクレオチドが少なくとも1つの化学修飾を含む。化学修飾は、例えば、プソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、N1-エチルプソイドウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、および2’-O-メチルウリジンとすることができる。
【0071】
[0075]決して必要とはされていないが、核酸の特定の性質を選択して、それがポリマーマトリックス内に分散され、著しい分解なしに患者に送達される能力を改善することを助けることもできる。例えば、通常のRNA(例えば、mRNA)を自己増幅RNAと共送達することが望ましいことがある。例えば、通常のmRNAは、一般に、標的抗原のオープンリーディングフレームを含み、非翻訳領域によってフランキングされ、末端のポリ(A)テールを有する。トランスフェクション後、それらは、抗原の一過性発現を駆動する。一方、自己増幅mRNAは、それらの自己複製を、RNA依存性RNAポリメラーゼ複合体の合成を通して指示し、抗原をコードするmRNAの複数コピーを生成することができ、宿主細胞の細胞質に導入されると、高レベルの異種遺伝子を発現する。ヘッドトゥーテールで連結している一本鎖RNAである環状RNA(circRNA)も用いることができる。標的RNAは、例えば、非哺乳動物の外因性イントロンのバックスプライシングまたは直鎖状RNAの5’端および3’端のスプリントライゲーションによって環状化されうる。適切なcircRNAの例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0345503号に記載されている。アンチセンスRNAも用いることができ、一般に、モルホリノ主鎖基から構成された主鎖サブユニットに収容された塩基を有し、化合物中の塩基がワトソン-クリックの塩基対合によってRNA中の標的配列にハイブリダイズすることを可能にし、それによって標的配列内にRNA:オリゴヌクレオチドヘテロ二本鎖を形成するサブユニット間連結部(荷電性と非荷電性の両方)によって主鎖基が連結されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドを含めて、非荷電主鎖連結部を有するモルホリノオリゴヌクレオチドは、例えば、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号に詳述されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。他の例示的なアンチセンスオリゴヌクレオチドについては、米国特許第9,464,292号、同第10,131,910号、同第10,144,762号、および同第10,913,947号に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
[0076]ある特定の場合に、核酸は、RNAアプタマーなどのアプタマーとすることができる。RNAアプタマーは、適切な任意のRNA分子とすることができ、単独で独立型の分子として使用することができ、または複数の機能を有するより大きいRNA分子などの部分、例えば、RNA干渉分子として統合されてもよい。例えば、RNAアプタマーをshRNA分子の露出領域(例えば、shRNA分子のループ領域)に位置づけることができて、shRNAまたはmiRNA分子が標的細胞の表面受容体を結合することが可能になる。それを内部移行させた後、標的細胞のRNA干渉経路によって処理することができる。核酸アプタマーを形成する核酸としては、天然ヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、1つ以上のヌクレオシド間に挿入された炭化水素リンカー(例えば、アルキレン)および/またはポリエーテルリンカー(例えば、PEGリンカー)を有する天然ヌクレオシド、1つ以上のヌクレオシド間に挿入された炭化水素またはPEGリンカーを有する修飾ヌクレオシド、またはそれらの組合せを挙げることができる。いくつかの実施形態では、核酸アプタマーのヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを、炭化水素リンカーまたはポリエーテルリンカーで置き換えることができる。適切なアプタマーは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,464,293号に記載されうる。
【0073】
[0077]タンパク質融合核酸も、本発明における使用に適している可能性がある。例えば、タンパク質(例えば、抗体)が、RNA(例えば、mRNA)に共有結合していてもよい。そのようなRNA-タンパク質融合は、mRNAプールのインビトロまたはインサイチュー翻訳によって合成することができ、それらの3’端に結合しているペプチドアクセプタを含有する。1つの実施形態において、メッセージのオープンリーディングフレームを読み過ごした後、リボソームは設計された小休止部位に到達すると小休止し、アクセプタ部分は、リボソームA部位を占め、新生ペプチド鎖をP部位中のペプチジル-tRNAから受け入れて、RNA-タンパク質融合を生み出す。(mRNAの3’端とそれがコードするタンパク質のC末端との間のアミド結合の形態をした)タンパク質とRNAの間の共有結合によって、タンパク質中の遺伝子情報が回収され、RNAの逆転写による選択後に(例えば、PCRによって)増幅されることが可能になる。融合が起こると、mRNA-タンパク質融合の特性に基づいて、選択または濃縮が実施され、あるいは、一本鎖RNAの選択への影響を回避するために、mRNAテンプレートをタンパク質に結合させて使用して、逆転写を実施してもよい。そのようなタンパク質融合核酸の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,518,018号に記載されている。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,155,946号に記載されているように、RNAの触媒的開裂を行う配列を有する核酸にコンジュゲートするリボザイム(例えば、DNAザイムおよび/またはRNAザイム)も用いることができる。
【0074】
[0078]以上に記載されたものなどの一本鎖核酸のほかに、様々な特定のタイプの二本鎖核酸も用いて、安定性の改善を助けることができる。DNAの閉環状形態である環状DNA(cDNA)およびプラスミド核酸(例えば、pDNA)を、ある特定の実施形態において用いることができる。そのような核酸の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004/060277号に記載されている。長い二本鎖DNAも用いることができる。例えば、足場に相補的な配列のセグメントまたは領域を含むより短いオリゴヌクレオチド(「ステープル」)の存在下で、足場をアニーリングすることによって、長い一本鎖DNAがある特定の形状に折り畳まれる、足場付きDNA折り紙を用いることができる。そのような構造の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0142882号および同第2018/0171386号に記載されている。
【0075】
G.抗体
[0079]薬剤化合物としては、1つ以上の抗体を挙げることができる。本明細書では、用語「抗体」は、一般に、例として、天然Abと非天然Abの両方、モノクローナルおよびポリクローナルAb、キメラおよびヒト化Ab;ヒトまたは非ヒトAb、全合成Ab、単鎖Abなどを含む。非ヒトAbを、組換え法によってヒト化して、ヒトにおいてその疫原性を低減することができる。用語「抗体」は、上記免疫グロブリンのいずれかの抗原結合フラグメントまたは抗原結合部分も含み、1価および2価フラグメントまたは部分、ならびに単鎖Abを含む。特に適切な抗体としては、モノクローナル抗体(「MAb」)、多特異性(例えば、二重特異性)抗体、またはそれらの組合せを挙げることができる。用語「モノクローナル抗体」は、一般に、単一分子組成のAb分子の非天然調製物、すなわち一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示すAb分子を指す。一方、多重特異性抗体は、同時に異なる抗原(例えば、2つの抗原)を結合することができる。そのような抗体は、一般に当業者に公知のハイブリドーマ、組換え、トランスジェニックまたは他の技術によって産生される。「ヒト」抗体は、フレームワークとCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有するAbを指す。更に、Abが定常領域を含有する場合、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。ヒトAbは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、インビトロにおけるランダムもしくは部位特異的変異生成またはインビボにおける体細胞突然変異によって導入された変異)。しかし、本明細書では用語「ヒト抗体」は、マウスなど別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされたAbを含むことを意図するものではない。
【0076】
[0080]いくつかの実施形態では、抗体(そのフラグメントを含む)は、増殖細胞の1つ以上の生物活性(例えば、分裂促進性、血管新生および/または血管透過性)を中和、ブロック、抑制、抑止、低減、および/または干渉することができる。そのような抗体は、例えば、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラム細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌(B.anthracis)の防御抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブランド因子(vWF)、神経アポトーシス制御プロテイナーゼ1、β-アミロイド、レティキュロン4(RTN4)/神経突起伸長阻害剤(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン関連糖タンパク質など、ならびにそれらの組合せに結合することができる。
【0077】
[0081]特定の1つの実施形態において、例えば、抗体は、がんを治療するために免疫チェックポイント阻害剤として用いられるものなど抗PD-1および/または抗PD-L1抗体とすることができる。PD-1(またはプログラム死-1)は、CD28ファミリーに属する免疫抑制性受容体を指す。PD-1は、インビボで以前に活性化されたT細胞に優勢に発現され、PD-L1およびPD-L2という2つのリガンドに結合する。本明細書では用語「PD-1」は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、アイソフォーム、および種相同体、ならびにhPD-1と共通の少なくとも1つのエピトープを有する類似体を含む。完全なhPD-1配列は、GenBank Accession No.U64863で見ることができる。PD-L1(またはプログラム死リガンド-1)は、PD-1に結合する際にT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御する、PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの一方である(他方はPD-L2である)。本明細書では用語「PD-L1」は、ヒトPD-L1(hPD-Ll)、hPD-Llのバリアント、アイソフォーム、および種相同体、ならびにhPD-Llと共通の少なくとも1つのエピトープを有する類似体を含む。完全なhPD-Ll配列は、GenBank Accession No.Q9NZQ7で見ることができる。高親和性でPD-1に特異的に結合するHuMAbは、例えば米国特許第8,008,449号および同第8,779,105号に記載されている。他の抗PD-1 mAbは、例えば、米国特許第6,808,710号、同第7,488,802号、同第8,168,757号、同第8,354,509号、および国際公開第2012/145493号に記載されている。例えば、抗PD-1 MAbは、ニボルマブとすることができる。ニボルマブ(Opdivo(登録商標)とも呼ばれる;以前は5C4、BMS-936558、MDX-1106、またはONO-4538と命名される)は、PD-1リガンド(PD-LlおよびPD-L2)との相互作用を選択的に妨げ、それによって抗腫瘍性T-細胞機能の下方制御をブロックする完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤Abである(米国特許第8,008,449号)。別の実施形態において、抗PD-1 mAbは、ペンブロリズマブ、ならびにその抗原結合バリアントである。ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、ランブロリズマブ、およびMK-3475としても公知)は、ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム死-1またはプログラム細胞死-1)に対して作製されたヒト化モノクローナルIgG4抗体である。ペンブロリズマブは、例えば米国特許第8,354,509号および同第8,900,587号)に記載されている。他の実施形態において、抗PD-1 MAbは、例えば米国特許第8,609,089号に記載されているMEDI0608(以前はAMP-514)である。ヒト化モノクローナル抗体の更に他の例としては、ピディリズマブ(CT-011)、BGB-A317など、ならびにそれらの抗原結合バリアントが挙げられる。
【0078】
[0082]特定の別の実施形態において、例えば、抗体は、がんを治療するために免疫チェックポイント阻害剤として用いられるものなど抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質-4)抗体とすることができる。CLTA-4は、免疫系を下方制御するタンパク質受容体である。本明細書では用語「CTLA-4」は、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4のバリアント、アイソフォーム、および種相同体、ならびにhCTLA-4と共通の少なくとも1つのエピトープを有する類似体を含む。具体的には、CLTA-4は、免疫グロブリン細胞表面受容体およびT細胞活性化の阻害剤であり、活性化後にナイーブT細胞、およびFoxP3+制御性T細胞(Treg)を主に発現する。T細胞活性化は、T細胞受容体(TCR)が、腺腫性結腸ポリポーシス症(APC)を介して提示された抗原と結合することだけでなく、第2の共刺激シグナルの存在下で、典型的には、T細胞上で発現されたCD28が、APC上で見られたCD80/86に結合することにも依存している。この第2のシグナルの欠如によって、T細胞は、提示されたペプチドを「自己抗原」として認識し、または抗原に対して寛容を示すことができる。CTLA-4は、CD28の競合的相同体であり、CD28と比較して、CD80(B7-1)に対しては高い親和性を有し、CD68(B7-2)に対してはより少ない程度であり、T細胞刺激を抑制する。TCRシグナル伝達は、細胞表面CTLA-4発現を直ちに上方制御し、活性化後2~3日でピーク発現に到達し、T細胞活性化の際にネガティブフィードバックループを実現する。細胞内小胞内のCTLA-4も、T細胞活性化後に急速に免疫シナプスに輸送される。免疫シナプスでは、CTLA-4は、CD80/CD86結合によって安定化され、CD28結合を収集および抑制することができる。上記に鑑み、抗CTLA-4抗体を包含すると、CTLA-4の抑制機構を妨害することができる。CLTA-4と特異的に結合する抗体は、例えば、米国特許第6,984,720号および同第10,196,445号に記載されている。
【0079】
[0083]ある特定の実施形態において、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブとすることができる。イピリムマブ(Yervoy(登録商標)とも呼ばれる、MDX101と命名される)は、CTLA-4に対して作製された完全ヒト化IgG1 κ免疫グロブリンである。イピリムマブは、148kDaの近似分子量を有する。イピリムマブは、哺乳動物(チャイニーズハムスター卵巣)細胞培養液中で産生される。イピリムマブは、T細胞活性の負の制御因子である。イピリムマブは、CTLA-4に結合し、CTLA-4とそのリガンドCD80およびCD86との相互作用をブロックする。CTLA-4をイピリムマブでブロックすると、腫瘍浸潤性T-エフェクター細胞の活性化および増殖を含めてT-細胞活性化および増殖が増大するということが示された。CLTA-4シグナル伝達の抑制は、制御性T細胞機能を低減することもでき、抗腫瘍免疫応答を含めてT細胞応答性の全般的な増加に寄与することができる。
【0080】
[0084]適切な抗体の別の例は、抗VEGF抗体であり、具体的にはVEGF受容体に結合する抗体または抗体フラグメント(例えば、FabまたはscFVフラグメント)である。抗VEGF抗体は、例えば、VEGFの細胞受容体への結合に干渉することによって、細胞受容体へのVEGF結合後に血管内皮細胞活性化に干渉することによって、および/またはVEGFによって活性化された細胞を死滅させることによって作用する。抗VEGF抗体は、通常は、他のVEGF相同体(例えば、VEGF-BまたはVEGF-C)にも他の増殖因子(例えば、PlGF、PDGFまたはbFGF)にも結合しない。適切な抗VEGF抗体としては、モノクローナルおよび/または二重特異性抗VEGF抗体、例えば、A4.6.1、ベバシズマブ、ラニビズマブ、G6、B20、2C3、ならびに他の抗体、例えば、米国特許第6,582,959号、同第6,703,020号、同第7,060,269号、同第7,169,901号、同第7,691,977号、および同第10,590,193号;米国特許出願公開第2009/0169556号;国際公開第94/10202号;同第98/45332号;同第96/30046号、同第2019/154776号;同第2010/040508号;同第2011/117329号;同第2012/131078号;同第2015/083978号;同第2017/197199号;および同第2014/009465号(これらのすべては、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどを挙げることができる。例えば、抗VEGF抗体は、ラニビズマブ、ベバシズマブ、ならびにそれらの抗原結合バリアントとすることができる。ラニビズマブ(48kDの分子量)は、米国特許第7,060,269号の配列番号115および116に記載されているY0317の軽鎖および重鎖可変領域配列を有するVEGF-Aに対して作製されたヒト化モノクローナルFabフラグメントである。ラニビズマブは、内皮細胞増殖および新血管形成を抑制し、血管新生(ウエット型)加齢黄斑変性(AMD)の治療、糖尿病性黄斑浮腫(DME)が原因である視力障害の治療、網膜静脈閉塞症(分枝RVOまたは中心RVO)に付随する黄斑浮腫が原因である視力障害の治療、または病的近視に付随する脈絡膜新生血管(CNV)が原因である視力障害の治療に使用されうる。ベバシズマブ(149kDの分子量)は同様に、全長ヒト化マウスモノクローナル抗体であり、VEGFのすべてのアイソフォームを認識し、ラニビズマブの親抗体である。別の実施形態において、抗VEGF抗体も、ヒト血管内皮増殖因子(例えば、VEGF-A)に結合する第1の抗原結合部位およびヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体とすることができる。そのような抗VEGF抗体の一例は、ファリシマブ(150kDの分子量)であり、国際公開第2019/154776号および同第2014/009465号に記載されており、抗Ang-2抗原結合フラグメント(Fab)、抗VEGF-A Fab、および修飾フラグメント結晶性領域(Fc領域)から構成される。
【0081】
[0085]もう1つの適切な抗体は、抗HER2抗体である。そのような抗体は、全長抗HER2抗体;同じ生物活性を有する抗HER2抗体フラグメントとすることができ、そのような抗体または抗体フラグメントのアミノ酸配列バリアントおよび/またはグリコシル化バリアントを含む。ヒト化抗HER2抗体の例としては、トラスツズマブ、ペルツズマブ、およびマルゲツキシマブ、ならびにそれらの抗原結合バリアントが挙げられる。様々な特性を有する更に他の抗HER2抗体は、Tagliabueら、Int.J.Cancer,47:933-937(1991);McKenzieら、Oncogene,4:543-548(1989);Cancer Res.,51:5361-5369(1991);Bacusら、Molecular Carcinogenesis,3:350-362(1990);Stancovskiら、PNAS(USA),88:8691-8695(1991);Bacusら、Cancer Research,52:2580-2589(1992);Xuら、Int.J.Cancer,53:401-408(1993);国際公開第94/00136号;Kasprzykら、Cancer Research,52:2771-2776(1992);Hancockら、Cancer Res.,51:4575-4580(1991);Shawverら、Cancer Res.,54:1367-1373(1994);Arteagaら、Cancer Res.,54:3758-3765(1994);Harwerthら、J.Biol.Chem.,267:15160-15167(1992);米国特許第5,783,186号;およびKlapperら、Oncogene,14:2099-2109(1997)に記載されている。
【0082】
[0086]もう1つの適切な抗体は、抗cKIT抗体である。そのような抗体は、全長抗cKIT抗体;同じ生物活性を有する抗cKIT抗体フラグメントとすることができ、そのような抗体または抗体フラグメントのアミノ酸配列バリアントおよび/またはグリコシル化バリアントを含む。cKITは、リガンド幹細胞因子(SCF)を結合する1回膜貫通受容体型チロシンキナーゼ阻害剤である。Kindblomら、Am J.Path.1998 152(5):1259に記載されているように、SCFは、cKITのホモ二量化を誘導し、そのチロシンキナーゼ活性が活性化され、PI3-AKTとMAPKの両経路を通ってシグナルが送られる。様々な特性を有する抗cKIT抗体については、Gaddら、Leuk.Res.1985(9):1329,Broudyら、Blood 1992 79(2):338、米国特許第8,552,157号および同第9,540,443号に記載されている。
【0083】
[0087]別の適切な抗体は、抗4-1BB抗体(抗CD137)である。CD137(4-1BB)は、細胞増殖、分化、およびプログラム細胞死の制御に関与するタンパク質を含む、腫瘍壊死受容体(TNF-R)遺伝子ファミリーのメンバーである。適切な抗4-1BB抗体としては、完全ヒトIgG4モノクローナル抗体であるウレルマブ(BMS-663513)が挙げられる。他の適切な抗4-1BB抗体については、米国特許第7,288,638号、同第7,659,384号、同第8,137,667号、同第10,875,921号、同第11,242,395号に記載されている。
【0084】
[0088]典型的には、抗体は、製剤中にネイキッド抗体として存在する。しかし、望ましい場合、薬剤化合物としては、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を挙げることができる。ADCは、急速に増殖するクラスの標的治療薬であり、制がん薬(例えば、細胞傷害性物質)の選択性と細胞傷害活性の両方を改善する有望な新手法を表す。ADCは、3成分を有する:(1)モノクローナル抗体が(2)リンカーを通して(3)細胞毒にコンジュゲートされる。細胞毒は、抗体のリシンまたはシステイン側鎖にリンカーを介して結合され、リシンの第一級アミンまたはシステインのスルフヒドリル基と選択的に反応する。
【0085】
[0089]コンジュゲートすることができるリンカー/薬剤の最大数は、抗体に存在する反応性アミノまたはスルフヒドリル基の数に依存する。典型的な抗体は、潜在的なコンジュゲーション部位として最大で90のリシンを含む。しかし、大部分のADCについて1抗体当たりの細胞毒の典型的な数は、典型的には、ADCのより高い数の細胞毒との凝集のために2~4である。その結果、通常のリシン連結ADCは、抗体の異なるアミノ基にコンジュゲートしている1抗体当たり0~10の細胞毒を含む不均一な混合物である。抗体システインを使用して、マレイミドまたは他のチオール特異的官能基を含むリンカーを通して細胞毒にコンジュゲートすることができる。典型的な抗体は、重鎖および軽鎖を一緒に共有結合し、インビボにおける抗体の安定性に寄与する4つ、または時々5つの鎖間ジスルフィド結合(重鎖間に2つおよび重鎖と軽鎖の間に2つ)を含む。これらの鎖間ジスルフィドを、ジチオスレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、または他の温和な還元剤で選択的に還元して、コンジュゲーションのための8つの反応性スルフヒドリル基を得ることができる。システイン連結ADCは、リシン連結ADCより潜在的なコンジュゲーション部位がより少ないので、不均一でない。しかし、これらは、現在のシステインリンカーが1個の硫黄原子のみに結合するので、コンジュゲーションの際に鎖間ジスルフィド結合の部分的消失のために安定でない傾向もある。システイン連結ADCについて1抗体当たりの細胞毒の典型的な数も、2~4である。例えば、ADCETRISは、システインを通してコンジュゲートしている1抗体当たり0~8つのモノメチルアウリスタチンE残基を含む不均一な混合物である。
【0086】
[0090]ADCの成功において主要な因子は、モノクローナル抗体が、がん抗原特異的、非免疫原性、低毒性、およびがん細胞によって内部移行されること;細胞毒が、極めて強力であり、リンカー付着に適していること;リンカーが、システイン(S)またはリシン(N)結合に特異的であり、循環中に安定であり、プロテアーゼ切断可能および/またはpH感受性でありうること、細胞毒への付着に適していることを含む。例えば、がんを治療するために使用される場合、ADCおよび/または抗体が結合している抗原を、細胞によって内部移行させることができ、それが結合しているがん細胞を死滅させる際に、ADCの治療有効性が増加する。
【0087】
[0091]ADCは、本明細書の以上に記載されるモノクローナル抗体の少なくとも1つを少なくとも1つの細胞傷害性物質(例えば、本明細書の以下に記載される化学療法剤)と含むことができる。例えば、ADCは、1つ以上の化学療法剤に連結された抗CLTA-4抗体(例えば、イピリムマブ)を含むことができる。別の例では、ADCは、1つ以上の化学療法剤に連結している抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピディリズマブ)を含むことができる。別の例では、ADCは、1つ以上の化学療法剤に連結している抗VEGF抗体(例えば、ファリシマブ)を含むことができる。別の例では、ADCは、1つ以上の化学療法剤に連結している抗HER2抗体(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、およびマルゲツキシマブ)を含むことができる。更に別の例では、ADCは、1つ以上の化学療法剤に連結している抗cKIT抗体を含むことができる。抗cKIT抗体を含む適切なADCは、国際公開第2014/150937号に記載されている。
【0088】
[0092]1抗体当たりのコンジュゲートしている薬剤(例えば、化学療法剤)の分子数は、薬物抗体比(DAR)として知られている。DARは、ADCの効力および全毒性に影響することができる。例えば、DARが低すぎる場合、ACDは、治療上有効な結果をもたらすことができる可能性がなく、DARが高すぎる場合、患者は望ましくない副作用を経験するおそれがある。反応および処理条件を考慮すると、ADSのDARは、典型的には、約0~8など0~15の範囲のどこでもよい。上記に鑑み、開示されたADCは、0~15、例えば1~14、例えば2~13、例えば3~12、例えば4~11、例えば5~10、例えば6~9の範囲のDARを有することができる。ある特定の実施形態において、ADCは、2~4のDARを有する。
【0089】
[0093]ADCの製造バッチのDARは、分光測光法を使用して実験的に決定することができ、ADC治療組成物は、典型的には、薬物負荷が異なるADC種の混合物を含む。したがって、ADCバッチのDARは、バッチ内のADC種の平均DARを表す。1バッチ当たりのDARが変動すると、効力のばらつきを起こす要因になっている。効力のばらつきを低減するために、本医薬品製剤において利用されるバッチ内に入っているADCは、約2~約8、例えば約2~約6、例えば約2~4の平均DARを含むことができる。ある特定の例では、ADCの平均DARは、約3~約5、例えば約4である。
【0090】
[0094]本開示の医薬品製剤における使用のために適切なFDA承認済みADCとしては、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(商標))、ブレンツキシマブベドチン(Adetris(商標))、トラスツズマブエマタンシン(trastuzumab ematansine)(Kadcyla(商標))、イノツズマブオゾガマイシン(ベスポンサ(商標))、モキセツモマブパスードトクス(Lumoxiti(商標))、ポラツズマブベドチン-piiq(Polivy(商標))、エンホルツマブベドンチン(enfortumab vedontin)(Padcev(商標))、トラスツズマブデルクステカン(Enhertu(商標))、サシツズマブゴビテカン(Trodelvy(商標))、ベランタマブマホドチン-blmf(Blenrep(商標))、ロカスツキシマブテシリン-lpyl(locastuximab tesirine-lpyl)(Zylonta(商標))、チソツマブベドチン-tftv(Tivdak(商標))、およびそれらの組合せが挙げられる。他の適切なADCとしては、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、トランスツズマブデュオカルマジン(transtuzumab duocarmazine)(SYD985)、デパツキシズマブマホドチン(AGX-414)、ジシチマブベドチン(disitimab vedotin)(RC48-ADC)、およびそれらの組合せが挙げられる。他の適切なADCとしては、ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN853)、トランスツズマブデュオカルマジン(SYD985)、デパツキシズマブマホドチン(ABT-414)、ジシチマブベドチン(RC48-ADC)、およびそれらの組合せが挙げられる。他の実施形態において、ADCとしては、他の種類の分子、例えば、オリゴヌクレオチド、放射性核種、およびタンパク質毒素に連結している抗体を挙げることができる。
【0091】
[0095]本開示の抗体は、放射線標識抗体も含むことができる。そのような抗体は、がん細胞に放射能を直接与えるように構成された抗体にコンジュゲートしている放射性物質を含む。適切な放射線標識抗体は、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(商標))を含む。放射線標識抗体は、イットリウム-90などの放射性物質とコンジュゲートしている、本明細書に開示される抗体のいずれでも含む。他の放射線標識抗体については、国際特許出願第2009/0538203号および米国特許出願第7,402,385号に記載されている。
【0092】
[0096]本開示の抗体は、二重特異性抗体(BsAb)などの多重特異性抗体も含むことができる。多重特異性抗体は、同時に異なる2つ以上の抗原に結合することができる任意の抗体を指し、BsAbは、同時に異なる2つの抗原に結合することができる抗体を指す。一例のBsAbは、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)であって、一方のアームがT細胞のCD3を標的にし、他方のアームが腫瘍細胞の標的タンパク質を認識し、それによってT細胞を活性化させて、腫瘍細胞を死滅させる。T細胞との相互作用に加えて、BsABは、がん治療のためのナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージなど他のエフェクター細胞も関与させるように設計された。適切なBsAbとしては、CD19とCD3を両方標的にするブリナツモマブ(BLINCYTO(商標))、ならびにヒトEpCAMおよびヒトCD3受容体を標的にするカツマクソマブ(Removab(商標))が挙げられる。他の適切なBsAbとしては、AMG 330(抗-CD3/CD33)、AMG 427(抗-CD3/FLT3)、AMG 673(抗-CD3/CD33)、AMG 701(抗-CD3/BCMA)、AMG 160(抗-CD3/前立腺特異的膜抗原(PSMA))、AMG 596(抗-CD3/上皮増殖因子受容体(EGFR)およびAMG 757(抗-CD3/DLL-3)が挙げられ、すべてAmgen社によって開発されたものである。
【0093】
[0097]他の適切なBsABまたは多重特異性抗体としては、ブリナツモマブ/ビーリンサイト/MT103/MEDI-538/AMG103(臨床試験識別番号NCT01466179 NCT02013167)、AFM11(臨床試験識別番号NCT02848911)、AMG562(臨床試験識別番号NCT03571828)、REGN1979(臨床試験識別番号NCT03888105)、グロフィタマブ/RO7082859(臨床試験識別番号NCT03075696)、プラモタマブ/XmAb13676(臨床試験識別番号NCT02924402)、モスネツズマブ/RG7828/RO703081(臨床試験識別番号NCT04313608)、GEN3013(臨床試験識別番号NCT03625037)、AMG673(臨床試験識別番号NCT03224819)、AMV-564(臨床試験識別番号NCT03144245)、ISB 1342(臨床試験識別番号NCT03309111)、JNJ-63709178(臨床試験識別番号NCT02715011)、SAR440234(臨床試験識別番号NCT03594955)、ビベコタマブ/Xmab14045(臨床試験識別番号NCT02730312)、AMG420/BI 836909(臨床試験識別番号NCT03836053)、CC-93269/EM801(臨床試験識別番号NCT03486067)、テクリスタマブ/JNJ-64007957(臨床試験識別番号NCT04557098)、PF-06863135(臨床試験識別番号NCT04649359)、REGN5458(臨床試験識別番号NCT03761108)、カツマクソマブ/removab(臨床試験識別番号NCT03070392)、RG6194/BTRC4017A(臨床試験識別番号NCT03448042)、M802(臨床試験識別番号NCT04501770)、GBR1302(臨床試験識別番号NCT03983395)、シビサタマブ/RG7802/RO6958688(臨床試験識別番号NCT03866239)、AMG211(臨床試験識別番号NCT02291614)、AMG160(臨床試験識別番号NCT03792841)、MOR209/ES414(臨床試験識別番号NCT02262910)、パソツキシズマブ/BAY2010112(臨床試験識別番号NCT01723475)、REGN5678(臨床試験識別番号NCT03972657)、FS120(臨床試験識別番号NCT04648202)、PRS-343(臨床試験識別番号NCT03330561)、AFM13(臨床試験識別番号NCT03192202、NCT04101331)、AFM24(臨床試験識別番号NCT04259450)、GTB-3550、OXS-35504(臨床試験識別番号NCT03214666)、MEDI5752(臨床試験識別番号NCT04522323)、AK104(臨床試験識別番号NCT04172454)、XmAb20717(臨床試験識別番号NCT03517488)、MGD019(臨床試験識別番号NCT03761017)、MGD013(臨床試験識別番号NCT03219268)、RO7121661、RG7769(臨床試験識別番号NCT03708328)、KN046(臨床試験識別番号NCT03872791、NCT04474119、NCT04469725、NCT03733951)、FS118(臨床試験識別番号NCT03440437)、LY3415244(臨床試験識別番号NCT03752177)、IBI318/LY3434172(臨床試験識別番号NCT03875157)、IBI315 IBI318/LY3434172(臨床試験識別番号NCT04162327)、AK112(臨床試験識別番号NCT04047290)、IBI319(臨床試験識別番号NCT04708210)、FS222(臨床試験識別番号NCT04740424)、MCLA-145(臨床試験識別番号NCT03922204)、ATOR1015(臨床試験識別番号NCT03782467)、XmAb23104(臨床試験識別番号NCT03752398)、TG-1801/NI-1701(臨床試験識別番号NCT03804996)、IMM0306(臨床試験識別番号CTR20192612)、IBI322(臨床試験識別番号NCT04338659、NCT04328831)、HX009(臨床試験識別番号NCT04097769)、JNJ-61186372/アミバンタマブ(臨床試験識別番号NCT02609776)、MCLA-158(臨床試験識別番号NCT03526835)、MCLA-128/ゼノクツズマブ(臨床試験識別番号NCT03321981)、KN026(臨床試験識別番号NCT04521179)、MBS301(臨床試験識別番号NCT03842085)、ZW25(臨床試験識別番号NCT02892123)、ZW49(臨床試験識別番号NCT03821233)、MM-141(臨床試験識別番号NCT02399137)、BI836880(臨床試験識別番号NCT03972150、NCT03697304)、RO5520985/バヌシズマブ(臨床試験識別番号NCT02141295)、ABT-165/ジルパキマブ(臨床試験識別番号NCT01946074)、OMP-305B83/ナビシキシズマブ(臨床試験識別番号NCT03030287)、RG7386/RO6874813(臨床試験識別番号NCT02558140)、OXS-1550/DT2219ARL(臨床試験識別番号NCT02370160)、およびそれらの組合せを含めて、現在FDA承認済みおよび/または臨床試験中であるものを挙げることができる。
【0094】
[0098]以上で指摘したように、抗体は、抗体フラグメント(Fab)を含むことができる。そのようなFDA承認済みFabとしては、ラニビズマブ(Lucentis(商標))、アブシキシマブ(ReoPro(商標))、セルトリズマブペゴル(Cimzia(商標))、イダルシズマブ(Praxbind(商標))、ジゴキシン免疫Fab(DigiFab(商標))、crotalidae-多価免疫fab(CroFab(商標))、arotalidae-多価免疫fab(Anavip(商標))、centruroides免疫F(ab’)2(Anascorp(商標))、ブロルシズマブ(Beovu(商標))、カプラシズマブ(Cablivi(商標))、またはそれらの組合せが挙げられる。追加的に、本デバイスにおいて利用できるFabとしては、銅Cu 64-DOTA-B-Fab(臨床試験識別番号NCT02708511)、CSR02-Fab-TF(臨床試験識別番号NCT04601428)、ラニビズマブ(臨床試験識別番号NCT00540930)、ナプツモマブエスタフェナトクス(臨床試験識別番号NCT00420888)、IMCgp100(臨床試験識別番号NCT01209676)、L19-IL2(臨床試験識別番号NCT02086721)、rM28(臨床試験識別番号NCT00204594)、D2C7-IT(臨床試験識別番号NCT02303678)、NM21-1480(臨床試験識別番号NCT04442126)、ビシニウム(臨床試験識別番号NCT02449239)、[124 I]PSCA-Minibody(臨床試験識別番号NCT02092948)、6B11-OCIK(臨床試験識別番号NCT03542669)、T84.66(臨床試験識別番号NCT00647153)、BCMA VHH CAR-T細胞(臨床試験識別番号NCT03664661)、CD19/20二重特異性VHH由来CAR-T細胞(臨床試験識別番号NCT03881761)、ALX-0651(臨床試験識別番号NCT01374503)、αPD1-MSLN-CAR T細胞s(臨床試験識別番号NCT04489862、NCT04503980)、[131I]-SGMIB抗-HER2 VHH1(臨床試験識別番号NCT02683083)、68-Ga NOTA-抗-MMR-VHH2(臨床試験識別番号NCT04168528)、68-GaNOTA-抗-HER2 VHH1 VHH(臨床試験識別番号NCT03924466、NCT03331601)、99mTc-MIRC208(臨床試験識別番号NCT04591652)、TAS226(臨床試験識別番号NCT01529307)、およびそれらの組合せも挙げられる。
【0095】
[0099]実施形態において、抗体としては、免疫サイトカインと呼ばれる抗体サイトカイン融合タンパク質を挙げることができる。サイトカインは、免疫応答を制御する、幅広く緩く定義されたクラスの比較的小さいタンパク質を構成する。炎症性サイトカインの全身投与は、重度のオフターゲットな毒性、特に流感様症状を伴うことが多く、用量を制限し、治療有効なレジメンを開発するのに必要とされた投与量の増大を妨げることができる。ADCと同様に、サイトカインおよびビヒクルとしての抗体または抗体フラグメントの利用を、免疫調節性サイトカイン(インターロイキン(IL)-2、IL-12、ならびにTNFaおよびTNFbを含めて腫瘍壊死因子(TNF)など)の標的化送達のために使用して、局所的腫瘍微小環境(TME)に影響を及ぼし、抗がん免疫応答を活性化する。本開示に従って使用することができる適切な免疫サイトカインとしては、L19IL2(臨床試験識別番号NCT01058538)、L19TNFa(臨床試験識別番号NCT01253837)、F16IL2(臨床試験識別番号NCT01134250)、hu14.18-IL2(臨床試験識別番号NCT00003750)、huKS-IL2(EMD 273066)(臨床試験識別番号NCT00132522)、DI-Leu16-IL2(抗-CD20-IL2)(臨床試験識別番号NCT01374288)、NHS-IL12(臨床試験識別番号NCT04303117)、NHS-IL2-LT(EMD 521873)(臨床試験識別番号NCT00879866)、抗-CEA-IL2v(セルグツズマブアムナロイキン)(臨床試験識別番号NCT02350673)、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
[00100]本開示の抗体としては、抗体-低分子干渉RNA(siRNA)コンジュゲート(ARC)も挙げられる。抗体は、ある特定の細胞型または組織における抗原の過剰発現に対して高特異性を示すので、抗体を利用して、siRNA分子の送達を標的にすることができる。siRNA分子を、リシンまたはシステイン残基を有する共有連結部で抗体に連結することができる。上記に鑑み、本明細書で利用される抗体としては、がんを治療するために1つ以上のsiRNA分子で連結させた開示された抗体を挙げることができる。そのようなARCを使用して、様々ながんを治療することができる。ARCのがんを治療するための利用には、いくつかの欠点があった。すなわち、付随のsiRNAの負電荷のために、細胞膜によって提示される熱力学的な障害を克服するのが困難になり、ARCは細胞に容易に入ることができない。したがって、ARCを本開示のデバイスに組み込み、腫瘍細胞内でそれ自体で放出させ、細胞膜における熱力学的障害をなくすことができる。
【0097】
H.化学療法剤
[00101]薬剤化合物としては、化学療法剤も挙げることができる。適切な化学療法剤としては、アルキル化剤、白金薬、代謝拮抗物質、抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害薬、コルチコステロイド、および他の種々の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。アルキル化剤は、DNAを直接損傷して、がん細胞が再生するのを妨げる。それらの具体例としては、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、クロラムブシル、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)など)、イホスファミド、およびメルファラン)、ニトロソウレア(ストレプトゾシン、カルムスチン(BCNU)、およびロムスチンを含む)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、トリアジン(ダカルバジン(DTIC)およびテモゾロミド(テモダール(登録商標))など、およびエチレンイミン(例えば、チオテパおよびアルトレタミン(ヘキサメチルメラミン))が挙げられる。白金薬は、アルキル化剤と同じグループになることもある。というのは、細胞を同様にして死滅させるからである。白金薬の例としては、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサラプラチン(oxalaplatin)が挙げられる。代謝拮抗物質は、RNAおよびDNAの通常の建築ブロックと置き換わることによってDNAおよびRNA増殖に干渉する。代謝拮抗物質の例としては、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン(ARA-C(登録商標))、フォクスウリジン(foxuridine)、フルダラビン、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ヒドロキシ尿素、メトトレキセート、ペメトレキセド(Pemetrexed)(ALIMTA(登録商標))、ペントスタチン、およびチオグアニンが挙げられる。抗腫瘍抗生物質は、DNA鎖を分解し、またはDNA合成を減速もしくは中止し、それによってがん細胞の増殖を遅延させる。現在入手可能な抗腫瘍抗生物質としては、アントラサイクリン(ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、エピルビシン、およびイダルビシンなど)、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン-C、およびプリカマイシンが挙げられる。トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼに干渉し、細胞増殖の際にDNAの鎖を分離するのを助ける。トポイソメラーゼI阻害剤の例としては、カンプトテシン(CPT)、イリノテカン(CPT-11)、およびトポテカンが挙げられる。トポイソメラーゼII阻害剤の例としては、エトポシド(VP-16)、ミトキサントロン、およびテニポシドが挙げられる。有糸分裂阻害薬は、有糸分裂を中止し、または細胞再生に関与するタンパク質の合成を抑制することができる。有糸分裂阻害薬の例としては、タキサン(パクリタキセル(タキソール(登録商標))およびドセタキセル(タキソテール(登録商標))など)、エポチロン、(例えば、イキサベピロン(IXEMPRA(登録商標)))、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標)など)、およびビノレルビン(ナベルビン(登録商標)))、およびエストラムスチンが挙げられる。
【0098】
[00102]望ましい場合、薬剤化合物を、溶液、分散体、懸濁液、乳濁液などの組成物の形態で、ならびに送達より前に液体の形態に再構成することができる粉末の形態で提供することができる。そのような組成物における使用のために適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを挙げることができる。典型的には、薬剤化合物は、組成物の約5wt%~約60wt%、いくつかの実施形態では約10wt%~約50wt%、いくつかの実施形態では約15wt%~約45wt%を構成し、水および他の任意選択の成分は、組成物の約40wt%~約95wt%、いくつかの実施形態では約50wt%~約90wt%、いくつかの実施形態では約55wt%~約85wt%を構成することができる。組成物は、1つ以上の賦形剤を任意選択で含有することが望ましい場合、例えば、造影剤、放出改質剤、増量剤、可塑剤、界面活性剤、フローエイド、着色剤(例えば、クロロフィル、メチレンブルーなど)、抗酸化剤、安定剤、滑沢剤、他の種類の抗微生物剤、防腐剤など1つ以上の賦形剤を任意選択で含有して、特性および加工性を向上させることもできる。用いられる場合、任意選択の賦形剤は、典型的には、組成物の約0.01wt%~約20wt%、いくつかの実施形態では約0.05wt%~約15wt%、いくつかの実施形態では約0.1wt%~約10wt%を構成する。抗微生物剤および/または防腐剤、例えば、金属化合物(例えば、銀、銅、または亜鉛)、金属塩、第四級アンモニウム化合物などを用いて、例えば、細菌の表面増殖および付着を妨げるのを助けることができる。組成物は、活性成分の有効性を向上させることができる、少量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などを含有することができる。例えば、レシチンなどのコーティング物質の使用、分散体の場合に必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。組成物は、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含むのが望ましいこともある。
【0099】
V.デバイスの使用
[00103]埋め込み型デバイスを様々な形で使用して、患者における状態、疾患、または美容的状態を抑制および/または治療することができる。本明細書では、用語「埋め込み型デバイス」は、様々な使用方法を含むように意図される。例えば、埋め込み型デバイスを身体(例えば、皮下)に埋め込むことができ、または埋め込み型デバイスを身体(例えば、腟内)に挿入することができる。デバイスは、標準技術を使用して埋め込むことができる。送達経路は、肺内、経胃腸、皮下、筋肉内、腟内、子宮内、または他の任意の適切な送達経路とすることができる。デバイスは、送達の標的である身体の領域の中、その上、それに隣接して、またはその近くで患者の組織部位に配置されうる。デバイスを、現在の全身性活性成分と共に用いることもできる。デバイスを、治療後の症状または副作用を改善するために患者が療法で治療された後でも用いることができる。埋め込み型デバイスは、様々な形態、例えば埋入物(例えば、皮下埋入物)、子宮内システム(IUS)(例えば、子宮内デバイス)、螺旋状コイル、バネ、ロッド、シリンダー、および/または腟内リングをとることができる。例えば、放出構造、セプタムおよび裏打ち層を含む単一のデバイスは、リザーバーが同様にリングの形態であるようなリングの形態をとることができる。
【0100】
[00104]本開示の上記その他の修正および変形は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者が実施することができる。更に、様々な実施形態の態様は、全体としてでも、一部としてでも交換できることを理解すべきである。更に、当業者は、上記の説明が例示にすぎず、本開示を限定することを意図するものではなく、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されていることを理解する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】