IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケアジェン カンパニー,リミテッドの特許一覧

特表2024-536813抗老化活性を有するペプチド及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】抗老化活性を有するペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20241001BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K8/64
A61K38/10
A61P43/00 107
A61P17/00
A61P17/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518232
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 KR2022014397
(87)【国際公開番号】W WO2023055011
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130422
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ヨンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ウンミ
(72)【発明者】
【氏名】リ・ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】カン・ハンア
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ボビョル
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AD411
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE17
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA89
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA34
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、抗老化活性を有するペプチド及び前記ペプチドを有効成分として含む皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物に関する。本発明による配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、抗老化活性を有するので、これを皮膚老化抑制又は皮膚再生を目的とする化粧品又は光老化の予防、改善、又は治療を目的とする医薬品の原料として使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、皮膚老化抑制活性又は皮膚再生活性を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、老化又は外部刺激による細胞損傷に対する抵抗性を増進させる、請求項3に記載の皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物。
【請求項5】
前記外部刺激は、紫外線又は赤外線である、請求項4に記載の皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物。
【請求項6】
前記細胞は、皮膚繊維芽細胞又は角質形成細胞である、請求項4に記載の皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物。
【請求項7】
前記組成物は、i)コラーゲン(Collagen)、フィブロネクチン(fibronectin)、又はエラスチン(elastin)の発現又は分泌を増加させ、ii)SIRT1又はAQP3の発現を増加させる、請求項3に記載の皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物。
【請求項8】
前記組成物は、i)紫外線による活性酸素(ROS)の生成を抑制し、ii)紫外線により減少したSIRT1又はAQP3の発現を増加させ、iii)紫外線により増加したCleaved PART-1又はCleaved Caspase-3の発現を抑制する、請求項3に記載の皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む、皮膚老化抑制又は皮膚再生用化粧料組成物。
【請求項10】
前記皮膚老化抑制又は皮膚再生は、皮膚シワの予防又は改善、皮膚弾力の増進、皮膚障壁の強化、色素沈着の予防、又は皮膚光老化の改善である、請求項9に記載の皮膚老化抑制又は皮膚再生用化粧料組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む、光老化予防又は治療用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗老化活性を有するペプチド及び前記ペプチドを有効成分として含む皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚細胞は、各種原因により老化現象が起こる可能性があり、皮膚細胞の老化によりシワが発生する可能性がある。生物学的過程により時間が経過しながら現れる自然的な老化である年代的老化(内因的老化)と、日光に露出される部位で発生する退行性変化と前記年代的老化とが複合的に現れる光老化(光因性老化)に区分され得る。細胞の成長に関する各種因子の発現又は活性が阻害する場合、自然的な細胞の老化が発生する可能性があり、日光に含まれた280nm~400nm波長の光により皮膚細胞の光老化が進行される可能性がある。その中でも、特に280nm~320nm範囲の波長を有するUVBのような紫外線の照射により皮膚や繊維の損傷が発生する可能性があり、皮膚が黒く焼けた煤現象が発生する可能性がある。UVBが照射されると、皮膚細胞内のROS及び自由ラジカルの蓄積が促進され、ラジカルにより細胞内の信号伝達体系を刺激して、DNA、タンパク質、脂質のような生体分子に酸化的ストレスを誘発する可能性があり、これにより皮膚組織の損傷が発生する可能性がある。
【0003】
皮膚細胞の酸化的ストレスが増加すると、表皮の角質細胞や真皮の繊維芽細胞に刺激が発生し、一連の細胞内の信号伝達過程を経てコラーゲン分解酵素であるMMP(matrix metalloproteinase)のような遺伝子の発現が増加する可能性があり、皮膚の主要構成成分として真皮の90%を占め、皮膚に強度、張力を付与して外部刺激や力から皮膚を保護する役割を果たすコラーゲン(collagen)の減少が誘発されることから、皮膚の老化やシワが形成される可能性がある。よって、前記コラーゲンのような繊維タンパク質の合成や分解に関する遺伝子の発現調節によって皮膚細胞の老化を防止し、シワの改善効果を期待することができる。
【0004】
日光に含まれた紫外線の照射による細胞の老化作用は、単に皮膚の損傷により美容的な側面で問題を発生させることだけでなく、細胞のDNA損傷によりがんを誘発するか中枢及び末梢神経系の損傷、免疫システムの破壊、生殖器官の障害、嬰児及び乳児発達の障害、そして塩素ざ瘡などの皮膚疾患を起こす可能性があり、深刻な健康上の問題も発生する可能性があるため、それに対する解決策が至急な実情である。
【0005】
前記のような問題を解決するために、様々な種類の物質が開発されており、多様な種類の植物や微生物から得た抽出物を用いて前記のような問題を克服しようとする試みがあった。しかし、多くの場合、自然物から得た抽出物内で具体的にどのような物質が皮膚細胞の保護や老化現象からの回復効果を導き出すことができるか確認せず、正確な構成が分からないので、未知の物質もともに含有している抽出物組成物を用いる実情である。人体に直接接触させるか適用して使用しなければならない特性上、副作用を最小化し、人体に対する安全性が担保されなければならないため、前記のような問題を解決できる効果を有する単一物質を正確に究明して人体の皮膚細胞などに適用すべき必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S Edgar et al.,Effects of collagen-derived bioactive peptides and natural antioxidant compounds on proliferation and matrix protein synthesis by cultured normal human dermal fibroblasts、Scientific Reports、2018;8:10474
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、抗老化活性を保有したペプチドを提供することにある。
【0008】
本発明の他の一目的は、前述した活性を有するペプチドを有効成分として含む皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の一目的は、前述した活性を有するペプチドを有効成分として含む皮膚老化抑制又は皮膚再生用化粧料組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の一目的は、前述した活性を有するペプチドを有効成分として含む光老化予防又は治療用薬学的組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
【0012】
本発明の他の側面は、前記ペプチドを有効成分として含む皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物を提供する。
【0013】
本発明のさらに他の側面は、前記ペプチドを有効成分として含む皮膚老化抑制又は皮膚再生用化粧料組成物を提供する。
【0014】
本発明のさらに他の側面は、前記ペプチドを有効成分として含む光老化予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、抗老化活性を有するので、これを皮膚老化抑制又は皮膚再生を目的とする化粧品又は光老化の予防、改善、又は治療を目的とする医薬品の原料として使用することができる。
【0016】
本発明の効果は、前記で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】本発明のペプチドを繊維芽細胞に処理した時に、コラーゲン、フィブロネクチン及びエラスチンの発現を確認した図である:Conは無処理群、bFGFは陽性対照群。
図1b】本発明のペプチドを繊維芽細胞に処理した時に、コラーゲンの発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは無処理群、bFGFは陽性対照群。
図1c】本発明のペプチドを繊維芽細胞に処理した時に、フィブロネクチンの発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは無処理群、bFGFは陽性対照群。
図1d】本発明のペプチドを繊維芽細胞に処理した時に、エラスチンの発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは無処理群、bFGFは陽性対照群。
図2a】本発明のペプチドを繊維芽細胞に処理した時に、コラーゲン及びヒアルロン酸タンパク質の分泌に及ぼす影響を示すグラフである:Conは無処理群、TGF-b1は陽性対照群。
図2b】本発明のペプチドを角質形成細胞に処理した時に、コラーゲン及びヒアルロン酸タンパク質の分泌に及ぼす影響を示すグラフである:Conは無処理群、TGF-b1は陽性対照群。
図3a】本発明のペプチドを角質形成細胞に処理した時に、SIRT1及びAQP3の発現を確認した図である:Conは無処理群、EGFは陽性対照群。
図3b】本発明のペプチドを角質形成細胞に処理した時に、SIRT1の発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは無処理群、EGFは陽性対照群。
図3c】本発明のペプチドを角質形成細胞に処理した時に、AQP3の発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは無処理群、EGFは陽性対照群。
図4】本発明のペプチドが角質形成細胞で紫外線(UV)照射により増加した細胞内活性酸素(ROS)レベルに及ぼす影響を示すグラフである:Conは紫外線非照射群、NCは紫外線照射群、10μM、50μM、100μMは紫外線照射及び本発明のペプチドを濃度別に処理した群、Troloxは紫外線照射及びTroloxを処理した陽性対照群。
図5a】本発明のペプチドが角質形成細胞で紫外線(UV)照射により減少したSIRT1及びAQP3の発現に及ぼす影響を確認した図である:Conは紫外線非照射群、NCは紫外線照射群、10μM、50μM、100μMは紫外線照射及び本発明のペプチドを濃度別に処理した群、NaCは紫外線照射及びN-アセチルシステインを処理した陽性対照群。
図5b】本発明のペプチドが角質形成細胞で紫外線(UV)照射により減少したSIRT1の発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは紫外線非照射群、NCは紫外線照射群、10μM、50μM、100μMは紫外線照射及び本発明のペプチドを濃度別に処理した群、NaCは紫外線照射及びN-アセチルシステインを処理した陽性対照群。
図5c】本発明のペプチドが角質形成細胞で紫外線(UV)照射により減少したAQP3の発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは紫外線非照射群、NCは紫外線照射群、10μM、50μM、100μMは紫外線照射及び本発明のペプチドを濃度別に処理した群、NaCは紫外線照射及びN-アセチルシステインを処理した陽性対照群。
図6a】本発明のペプチドが角質形成細胞で紫外線(UV)照射により増加したCleaved PARP-1及びCleaved Caspase-3の発現に及ぼす影響を確認した図である:Conは紫外線非照射群、NCは紫外線照射群、10μM、50μM、100μMは紫外線照射及び本発明のペプチドを濃度別に処理した群、NaCは紫外線照射及びN-アセチルシステインを処理した陽性対照群。
図6b】本発明のペプチドが角質形成細胞で紫外線(UV)照射により増加したCleaved PARP-1の発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは紫外線非照射群、NCは紫外線照射群、10μM、50μM、100μMは紫外線照射及び本発明のペプチドを濃度別に処理した群、NaCは紫外線照射及びN-アセチルシステインを処理した陽性対照群。
図6c】本発明のペプチドが角質形成細胞で紫外線(UV)照射により増加したCleaved Caspase-3の発現に及ぼす影響を示すグラフである:Conは紫外線非照射群、NCは紫外線照射群、10μM、50μM、100μMは紫外線照射及び本発明のペプチドを濃度別に処理した群、NaCは紫外線照射及びN-アセチルシステインを処理した陽性対照群。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0019】
本発明の一側面は、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
【0020】
本明細書において、用語「ペプチド」とは、アミノ酸残基からなる線状の分子を意味し、具体的には、本発明のペプチドは、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含んでよい。
【0021】
前記「ペプチド」は、機能に影響を及ぼさない範囲内で、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換、又はこれらの組み合わせによって異なる配列を有するアミノ酸の変異体、又は断片であってよい。前記ペプチドの活性を全体的に変更させないアミノ酸交換は、本技術分野に公知されている。場合によって、ペプチドは、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などに変形されてよい。そこで、本発明のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチド及びその変異体又はその活性断片を含む。
【0022】
前記実質的に同一のタンパク質とは、前記配列番号1のアミノ酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、例えば、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を意味するが、これに限定されず、75%以上のアミノ酸配列の相同性を有し、同一の活性を有すると、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
また、本発明のペプチドは、標的化配列、タッグ(tag)、標識された残基、半減期、又はペプチド安定性を増加させるための特定の目的で製造されたアミノ酸配列をさらに含んでよい。
【0024】
また、より良い化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸水性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトラム)、減少した抗原性を獲得するために、本発明のペプチドのN-末端又はC-末端が変形されたものであってよい。前記「安定性」は、生体内タンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する生体内(in vivo)での安定性のみでなく、保存安定性(例えば、常温保存安定性)も含む意味として使用される。
【0025】
前記N-末端変形は、ペプチドのN-末端にアセチル基(acetyl group)、フルオレニルメトキシカルボニル基(fluoreonylmethoxycarbonyl group)、ホルミル基(formyl group)、パルミトイル基(palmitoyl group)、ミリスチル基(myristyl group)、ステアリル基(stearyl group)、及びポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)からなる群より選択された保護基が結合したものであってよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
前記C-末端変形は、ペプチドのC-末端にヒドロキシ基(hydroxyl group、-OH)、アミノ基(amino group、-NH)、アジド(azide、-NHNH)などが結合したものであってよいが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明のペプチドの合成は、例えば、機器を用いるか遺伝工学技法を用いて行ってよい。機器を用いて合成する場合、自動ペプチド合成器で所望のペプチドをFmoc固体相(Fmoc solid-phase)方法で合成してよい。
【0028】
本発明の具体的な実施形態において、本発明の配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、Fmoc固体相(Fmoc solid-phase)方法を用いて合成及び同定し、同定されたペプチドの効能を検証して選別された。
【0029】
本発明の具体的な実施形態において、同定されたペプチドの効能を検証するために、ECM構成成分と皮膚障壁強化因子の発現水準増加効果及び紫外線照射により増加した活性酸素レベル減少効能、紫外線により減少した皮膚障壁強化遺伝子の発現回復、紫外線により増加した細胞死滅誘導因子の発現抑制効果に対する有効性検証を介して本発明のペプチドを選別した。
【0030】
そこで、本発明の配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、皮膚老化抑制活性又は皮膚再生活性を有する。
【0031】
本発明の他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物を提供する。
【0032】
前記「皮膚老化」は、時間の流れに沿って細胞から自然的に発生する老化であってよく、日光により発生する光老化であってよい。また、前記老化は、多様な原因により発生可能な細胞内酸化的ストレス現象により誘導される可能性があり、これにより細胞成長抑制や細胞死滅が進行される可能性があり、皮膚細胞でこれを構成する各種繊維タンパク質の合成が阻害し、分解酵素の発現が増加する可能性がある。特に、紫外線照射により、皮膚細胞では、Col1a1、フィブロネクチン、エラスチンのような遺伝子の発現が抑制され、皮膚細胞の光老化及びシワ発生を誘発する可能性がある。
【0033】
前記「皮膚再生」は、皮膚細胞の成長を促進させ、生存力を強化して外部及び/又は内部の刺激から細胞損傷を防止し、皮膚のシワ改善、弾力の増進及び皮膚障壁を強化させるものであってよく、前記皮膚再生には、外部環境から誘発される皮膚損傷、例えば、色素沈着の予防又は皮膚光老化の改善及び/又は治療の意味を含む。
【0034】
一具現例において、前記皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物は、老化又は外部刺激による細胞損傷に対する抵抗性を増進させる。
【0035】
前記「外部刺激」は、物理的刺激、化粧品、又はその他外用剤の適用による化学的刺激、紫外線による刺激、又は赤外線による刺激であってよい。
【0036】
前記損傷される細胞は、皮膚繊維芽細胞又は角質形成細胞であってよい。
【0037】
本発明のペプチドは、皮膚細胞内で繊維タンパク質合成遺伝子の発現増加を誘導することができる。よって、前記ペプチドは、繊維タンパク質の合成を増加させることにより皮膚のシワ及び弾力を改善することができ、皮膚障壁を改善させることにより外部刺激から皮膚細胞の抵抗力と生存力を増加させ、外部刺激又は老化により損傷された皮膚の再生力を増進させることができる。皮膚の老化が進行されるにつれて、皮膚細胞内で発現量が変化する細胞増殖に関するタンパク質や抗老化遺伝子及び繊維タンパク質の発現量を確認することで、本発明の前記ペプチドの皮膚老化抑制及び皮膚再生効果を確認することができる。
【0038】
一具現例において、前記皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物は、皮膚細胞内でコラーゲン(Collagen)、フィブロネクチン(fibronectin)、又はエラスチン(elastin)の発現を増加させることができる。
【0039】
一具現例において、前記皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物は、皮膚障壁強化因子であるSIRT1又はAQP3の発現を増加させることができる。
【0040】
一具現例において、前記皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物は、紫外線による活性酸素(ROS)の生成を抑制することができる。
【0041】
一具現例において、前記皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物は、紫外線により減少したSIRT1又はAQP3の発現を増加させることができる。
【0042】
一具現例において、前記皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物は、紫外線により増加したCleaved PART-1又はCleaved Caspase-3の発現を抑制することができる。
【0043】
本発明の具体的な実施形態において、本発明の配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、繊維芽細胞及び角質形成細胞でCol1a1、フィブロネクチン(fibronectin)、及びエラスチン(elastin)の発現を増加させるものと示された。
【0044】
また、前記ペプチドは、角質形成細胞でSIRT1及びAQP3のような皮膚障壁強化遺伝子の発現を増加させるものと示された。
【0045】
また、前記ペプチドは、紫外線により損傷された角質形成細胞で細胞内活性酸素(ROS)レベルを減少させるものと示された。
【0046】
また、前記ペプチドは、紫外線により損傷された角質形成細胞でSIRT1及びAQP3のような皮膚障壁強化遺伝子の発現を増加させるものと示された。
【0047】
また、前記ペプチドは、紫外線により損傷された角質形成細胞でCleaved PARP-1、Bax、Cleaved Caspase-3のような細胞死滅誘導因子(apoptotic-inducing factor)の発現を減少させるものと示された。
【0048】
したがって、本発明の前記ペプチドは、皮膚細胞の老化現象に関する遺伝子の発現を調節することで、皮膚老化抑制又は皮膚再生活性を有することが明らかで、本発明の前記ペプチドは、皮膚老化抑制又は皮膚再生のための組成物の有効成分として有用に使用され得る。
【0049】
本発明の他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む、皮膚老化抑制又は皮膚再生用化粧料組成物を提供する。
【0050】
一具現例において、前記皮膚老化抑制又は皮膚再生は、皮膚シワの予防又は改善、皮膚弾力の増進、皮膚障壁の強化、色素沈着の予防、又は皮膚光老化の改善であってよい。
【0051】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、前記「皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物」項目で説明したペプチドと同一であるため、具体的な説明は前述した内容を援用し、以下では皮膚老化抑制又は皮膚再生用化粧料組成物に特有の構成についてのみ説明する。
【0052】
前記化粧料組成物は、本技術分野において通常製造される任意の剤形に製造されてよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤-含有クレンジング、オイル、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、ワックスファウンデーション、及びスプレーなどに剤形化されてよいが、これに制限されるものではない。
【0053】
前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、パウダー、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアーシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、ヘアーエアゾール、ポマード、ゲルなどのような溶液、ゾルゲル、エマルジョン、オイル、ワックス、エアゾールなどの様々な形態に製造されてよいが、これに制限されるものではない。
【0054】
本発明の化粧料組成物は、賦形剤、担体などその他添加剤を含んでよく、一般皮膚化粧料に配合される普通の成分を必要な分だけ適用配合することが可能である。
【0055】
前記化粧料組成物の剤形がペースト、クリーム、又はゲルの場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、又は酸化亜鉛などが用いられてよい。
【0056】
前記化粧料組成物の剤形がパウダー又はスプレーの場合は、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、又はポリアミドパウダーが使用されてよく、特にスプレーの場合は、追加的にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進体が含まれてよいが、これに制限されるものではない。
【0057】
前記化粧料組成物の剤形が溶液又は乳濁液の場合は、担体成分として溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤が用いられてよく、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、又はソルビタンの脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0058】
前記化粧料組成物の剤形が懸濁液の場合は、担体成分として水、エタノール、又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチルソルビトールエステル、及びポリオキシエチレンソルビタンエステルなどのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー、又はトラガカントなどが用いられてよい。
【0059】
前記化粧料組成物の剤形が界面-活性剤含有クレンジングの場合は、担体成分として脂肪族アルコールスルフェート、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオン酸、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0060】
前記化粧料組成物の剤形がヘアーシャンプーの場合は、本発明のペプチドに増粘剤、界面活性剤、粘度調節剤、保湿剤、pH調節剤、防腐剤、エッセンシャルオイルなどのようにシャンプーを組成するためのベース成分が混合されてよい。前記増粘剤としてはCDEが使用されてよく、前記界面活性剤としてはアニオン界面活性剤であるLESと、両方性界面活性剤であるココベタインが使用されてよく、前記粘度調節剤としてはポリクォーターが使用されてよく、前記保湿剤としてはグリセリンが使用されてよく、前記pH調節剤としてはクエン酸、水酸化ナトリウムが使用されてよい。前記防腐剤としてはグレープフルーツ抽出物などが使用されてよく、その外にもシダーウッド、ペパーミント、ローズマリーなどのエッセンシャルオイルとシルクアミノ酸、ペンタオール、又はビタミンEが添加されてよい。
【0061】
前記化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分として本発明のペプチドと担体成分以外に化粧料組成物に通常使用される成分、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料、及び香料のような通常的な補助剤などをさらに含んでよいが、これに制限されるものではない。
【0062】
本発明のさらに他の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む光老化予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0063】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、前記「皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物」項目で説明したペプチドと同一であるため、具体的な説明は前述した内容を援用し、以下では光老化予防又は治療用薬学的組成物に特有の構成についてのみ説明する。
【0064】
本明細書において、前記「光老化」は、太陽光線に繰り返し的かつ長期間露出する際に、皮膚損傷、色素沈着、シワ生成、又は皮膚の弾力が低下する現象を意味する。
【0065】
本明細書において、「予防」は、本発明のペプチド又はこれを含む組成物により光老化の発生、拡散、及び再発を抑制又は遅延させるすべての行為を意味する。
【0066】
本明細書において、「改善又は治療」は、本発明のペプチド又はこれを含む組成物により光老化の進行を遅延、中断又は逆転させるなど、光老化に関して良く変更するすべての行為を意味する。
【0067】
本発明の具体的な実施形態において、前記ペプチドは、紫外線により損傷された角質形成細胞で活性酸素の生成及び蓄積を抑制し、SIRT1及びAQP3のような皮膚障壁強化因子の発現を増加させ、Cleaved PARP-1及びCleaved Caspase-3のような細胞死滅誘導因子の発現を抑制することで、光老化を予防、改善、又は治療することができる。
【0068】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでよい。
【0069】
薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体をさらに含んでよい。経口投与用担体は、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸などを含んでよい。また、非経口投与用担体は、水、好適なオイル、食塩水、水性グルコース、及びグリコールなどを含んでよい。また、安定化剤及び保存剤をさらに含んでよい。好適な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。好適な保存剤としては、ベンザルコニウムクロライド、メチル-又はプロピル-パラベン、及びクロロブタノールがある。好適な薬学的に許容される担体としては、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,Mack Publishing Company、Easton、PA、1995)に記載されていることを参考にしてよい。
【0070】
本発明の薬学的組成物は、ヒトを含めた哺乳動物に何らかの方法でも投与することができる。例えば、経口又は非経口で投与してよく、非経口的な投与方法としてはこれに制限されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下、又は直腸内投与であってよい。
【0071】
本発明の薬学的組成物は、前述したような投与経路に応じて経口投与用又は非経口投与用製剤に剤形化してよく、非経口投与用製剤は、具体的には、注射用製剤又は外用剤の形態に剤形化して使用してよい。
【0072】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の割合に疾患の治療に十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素に応じて決定され得る。前記薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか他の治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは同時に、別途に、又は順次に投与されてよく、単一又は多重投与されてよい。前記要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者により容易に決定され得る。
【0073】
前記薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内に活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、疾病種類、併用される薬物に応じて変わってよく、投与経路、重症度、性別、体重、年齢などに応じて増減されてよく、例えば、前記薬学的組成物を1日当たり患者体重1kg当たり約0.0001μg~500mg、好ましくは0.01μg~100mg投与してよい。
【0074】
前述したように、本発明のペプチドは、皮膚老化抑制及び皮膚再生効果に優れているので、皮膚老化抑制又は皮膚再生を目的とする化粧品又は光老化の予防、改善、又は治療を目的とする医薬品の原料として使用することができる。
【0075】
本発明のさらに他の一側面は、治療的有効量の配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを対象体に投与することを含む皮膚老化抑制又は皮膚再生方法を提供する。
【0076】
本発明のさらに他の一側面は、治療的有効量の配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを対象体に投与することを含む光老化の予防又は治療方法を提供する。
【0077】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、前記「皮膚老化抑制又は皮膚再生用組成物」項目で説明したペプチドと同一であるため、具体的な説明は前述した内容を援用する。
【0078】
本明細書において、前記用語「治療的有効量」は、前記ペプチドの処置の間に疾患の発病頻度を改善させるための目的を達成し、通常他の治療法に関する有害な副作用は避けるペプチドの量を意味する。
【0079】
本発明のさらに他の一側面は、光老化の予防又は治療のための薬剤の製造に使用するための配列番号1のアミノ酸配列の用途を提供する。
【0080】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。
【0081】
ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の内容が下記実施例により限定されるものではない。
【0082】
[合成例1]
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド合成
自動ペプチド合成器(Liberty、CEM Corporation、米国)を用いて、下記[表1]に記載された配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドを合成し、C18逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)(U-3000、Thermo fisher scientific、米国)を用いて、これら合成されたペプチドを純粋分離した。カラムは、Pursuit XRs C18(250*4.65mm 100Å、Agilent、米国)を用いた。
【0083】
【表1】
【0084】
[実験例1]ペプチド処理による自然老化抑制の確認
1-1.細胞外基質(ECM、extracellular matrix)構成成分(コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン)の発現増加の確認
繊維芽細胞(fibroblast)を対象にして細胞で自然的に進行される細胞老化現象を本発明のペプチドが抑制させ得るか否かを確認するために、自然老化に関する遺伝子の発現水準を確認した。
【0085】
先ず、NIH3T3細胞(mouse fibroblast cell line)を5×10cell/wellの細胞密度で6-well plateにseeding後、24時間の間に10%Fetal bovine serum(FBS)を含むDMEM培地で培養した。培養した細胞を無血清DMEM培地(serum free DMEM media)で1回洗浄し、前記無血清DMEM培地1mLに本発明のペプチドをそれぞれ10、50、100μMの濃度で混合して前記細胞に分株した。PC(positive control)は、前記ペプチドの代りにbFGF 100nMを処理したものとした。細胞を24時間の間に37℃のCOインキュベーターで培養した。
【0086】
前記培養した細胞をPBSで2回洗浄し、easy blue(iNtRON、Cat.No.:17061、Korea)を用いて細胞からRNAを抽出した。抽出されたRNAは、RNAキット(enzynomics、Cat.No.:P581T、Korea)を用いてRT-PCRを進行した。RT-PCR時に使用したコラーゲン(Col1a1)、フィブロネクチン、エラスチンのプライマーと各処理群の全RNA量の比較のために使用されたGAPDHのプライマーの配列を[表2]に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
その結果、図1a~図1dに示されたように、前記ペプチドを処理した場合、ペプチドの濃度が増加するにつれて徐々にCol1a1、フィブロネクチン、エラスチン遺伝子の発現が増加することを確認した。このことから、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより繊維芽細胞の真皮を構成する細胞外基質タンパク質である、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチンの発現が増加するにつれて、皮膚シワなどのような自然老化が抑制又は改善する効果があることが分かる。
【0089】
1-2.細胞外基質(ECM、extracellular matrix)構成成分(コラーゲン及びヒアルロン酸)のタンパク質量増加の確認
線維芽細胞(fibroblast)と角質形成細胞(keratinocyte)とを対象にして細胞で自然的に進行される細胞老化現象を本発明のペプチドが抑制させ得るか否かを確認するために、自然老化に関するタンパク質の量を確認した。
【0090】
先ず、NIH3T3細胞及びHaCaT細胞(Human keratinocyte cell line)を1×10cell/wellの細胞密度で24-well plateにseeding後、24時間の間に10%Fetal bovine serum(FBS)を含むDMEM培地で培養した。培養した細胞を無血清DMEM培地(serum free DMEM media)で1回洗浄した後、前記無血清DMEM培地2mLに本発明のペプチドをそれぞれ50、100μM、及び5ng/mlの濃度で混合して、1条件当たり500μLずつ3つのウェルに分株した。PC(positive control)は、NIH3T3細胞の場合、前記ペプチドの代わりにTGF-β1 5ng/mlを処理したものとした。HaCaT細胞の場合、前記ペプチドの代わりにIGF-1 100nMを処理したものをPCとした。細胞を72時間の間に37℃のCOインキュベーターで培養した。
【0091】
前記培養したNIH3T3及びHaCaT細胞の培地を遠心分離により浮遊物を沈めた後、上澄み液をe-tubeに移し、これを用いてそれぞれコラーゲンELISA(abcam、Cat No.:ab210579、UK)及びヒアルロン酸(Hyaluronic acid、HA)ELISA(ECHELON biosciences、Cat No.:K-1200、USA)を進行した。
【0092】
その結果、図2a及び図2bに示されたように、前記ペプチドを処理した場合、ペプチドの濃度が増加するにつれて徐々にコラーゲン及びヒアルロン酸のタンパク質量が増加することを確認した。
【0093】
このことから、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより線維芽細胞及び角質形成細胞の真皮を構成する細胞外基質タンパク質である、コラーゲン及びヒアルロン酸タンパク質の量が増加するにつれて、皮膚シワなどのような自然老化が抑制又は改善する効果があることが分かる。
【0094】
1-3.皮膚障壁機能関連遺伝子(SIRT1及びAQP3)の発現増加の確認
角質形成細胞(keratinocyte)を対象にして細胞で自然的に進行される細胞老化現象を本発明のペプチドが抑制させ得るか否かを確認するために、自然老化に関する遺伝子の発現水準を確認した。
【0095】
先ず、HaCaT細胞を3×10cell/wellの細胞密度で6-well plateにseeding後、24時間の間に10%Fetal bovine serum(FBS)を含むDMEM培地で培養した。培養した細胞を無血清DMEM培地(serum free DMEM media)で1回洗浄した後、前記無血清DMEM培地1mLに本発明のペプチドをそれぞれ10、50、100μMの濃度で混合して前記細胞に分株した。PC(positive control)は、前記ペプチドの代りにEGF 100nMを処理したものとした。細胞を24時間の間に37℃のCOインキュベーターで培養した。
【0096】
前記培養した細胞をPBSで2回洗浄した後、easy blue(iNtRON、Cat.No.:17061、Korea)を用いて細胞からRNAを抽出した。抽出されたRNAは、キット(enzynomics、Cat.No.:RT200、Korea)を用いてRT反応を進行した。その後、PCRキット(enzynomics、Cat.No.:R581T、Korea)を用いてRT-PCRを進行した。RT-PCR時に使用したSIRT1、AQP3プライマーの配列を[表3]に示した。各処理群の全RNA量の比較のために使用されたGAPDHのプライマーの配列は、前記[表2]に示した。
【0097】
【表3】
【0098】
その結果、図3a~図3cに示されたように、前記ペプチドを処理した場合、皮膚障壁強化因子であるSIRT1及びAQP3のmRNAレベルが増加することを確認した。このことから、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより角質形成細胞で皮膚障壁強化因子であるSIRT1及びAQP3の発現水準が増加するにつれて、自然老化が抑制又は改善する効果があることが分かる。
【0099】
[実験例2]
ペプチド処理による外因性老化抑制の確認
2-1.紫外線により増加した活性酸素抑制効果の確認
UVが照射されると、活性酸素のレベルが増加するので、本発明のペプチドを処理する場合、活性酸素レベルが再び減少して、細胞の酸化的ストレスによる老化現象を抑制できるか否かを確認した。
【0100】
先ず、HaCaT細胞を5×10cell/wellの細胞密度で6-well plateにseeding後、24時間の間に10%Fetal bovine serum(FBS)を含むDMEM培地で培養した。培養した細胞を無血清DMEM培地(serum free DMEM media)で1回洗浄した後、前記無血清DMEM培地1mLに本発明のペプチドをそれぞれ10、50、100μMの濃度で混合して前記細胞に分株した。PC(Positive control)は、前記ペプチドの代りにTrolox 25μMを処理したものとした。
【0101】
1時間の間に37℃、COインキュベーターで培養した。前記培養した細胞の培地をチューブに移し、1mlのPBSを加えた後、UV照射器(VILBER LOURMAT、Cat No.:3102-BSU、フランス)を用いて、15J/cmのUVBを照射した。PBSを除去した後、前記チューブに移された培地900μLを分株して24時間の間に37℃、COインキュベーターで培養した。DCFH-DA(dichloro-dihydro-fluorescein diacetate)を10μM処理した後、ホイルで包んで30分間37℃、COインキュベーターで培養した。PBSで2回洗浄した後、1XTE 500μL分株して細胞を分離した。遠心分離した後、PBSで細胞を洗浄した後、FACSを介して蛍光値を測定した。
【0102】
その結果、図4に示されたように、HaCaT細胞に本発明のペプチドを処理すると、UV照射により増加した細胞内活性酸素レベルが減少することを確認した。
【0103】
このことから、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより角質形成細胞でUV照射により増加した活性酸素レベルが再び減少し、酸化的ストレスが阻害することにより、細胞の光老化現象が防止される効果があることが分かる。
【0104】
2-2.紫外線により抑制された皮膚障壁機能関連遺伝子(SIRT1及びAQP3)の発現増加の確認
UVが照射されると、皮膚障壁機能関連遺伝子の発現が阻害するので、本発明のペプチドを処理する場合、SIRT1及びAQP3遺伝子の発現量が再び回復して増加するか否かを確認することで、細胞の光老化現象を抑制できるか否かを確認した。
【0105】
先ず、HaCaT細胞を3×10cell/wellの細胞密度で6-well plateにseeding後、24時間の間に10%Fetal bovine serum(FBS)を含むDMEM培地で培養した。培養した細胞を無血清DMEM培地(serum free DMEM media)で1回洗浄した後、前記無血清DMEM培地1mLに本発明のペプチドをそれぞれ10、50、100μMの濃度で混合して前記細胞に分株した。PC(positive control)は、前記ペプチドの代りにN-Acetylcystein(NaC)2.5mMを処理したものとした。細胞を1時間の間に37℃のCOインキュベーターで培養した。
【0106】
前記培養した細胞をPBSで2回洗浄した後、1mlのPBSを加え、UV照射器(VILBER LOURMAT、Cat No.:3102-BSU、フランス)を用いて15J/cmのUVBを照射した。PBSを除去した後、前記チューブに移された培地900μLを分株して24時間の間に37℃、COインキュベーターで培養した。PBSで2回洗浄した後、easy blue(iNtRON、Cat.No.:17061、Korea)を用いて細胞からRNAを抽出した。抽出されたRNAは、RNAキット(enzynomics、Cat.No.:P581T、Korea)を用いてRT反応を進行した。その後、PCRキット(enzynomics、Cat.No.:R581T、Korea)を用いてRT-PCRを進行した。RT-PCR時に使用したSIRT1、AQP3プライマーの配列と各処理群の全RNA量の比較のために使用されたGAPDHのプライマーの配列は、前記[表2]及び[表3]に示した。
【0107】
その結果、図5a~図5cに示されたように、HaCaT細胞に本発明のペプチドを処理すると、UV照射により減少した皮膚障壁関連因子のmRNAレベルが再び増加することを確認した。
【0108】
このことから、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドにより角質形成細胞でUV照射により減少した皮膚障壁関連因子の発現水準が再び回復するにつれて、細胞の光老化現象が抑制される効果があることが分かる。
【0109】
2-3.紫外線により増加した細胞死滅誘導因子(Cleaved PARP-1及びCleaved Caspase-3)の発現抑制の確認
UVが照射されると、細胞死滅誘導因子の発現が増加するため、本発明のペプチドを処理する場合、増加した細胞死滅誘導因子であるCleaved PARP-1及びCleaved Caspase-3の発現量が再び減少するか否かを確認することで、細胞の光老化現象を抑制し、損傷された細胞を再生できるか否かを確認した。
【0110】
先ず、HaCaT細胞を5×10cell/wellの細胞密度で6-well plateにseeding後、24時間の間に10%Fetal bovine serum(FBS)を含むDMEM培地で培養した。培養した細胞を無血清DMEM培地(serum free DMEM media)で1回洗浄した後、前記無血清DMEM培地1mLに本発明のペプチドをそれぞれ10、50、100μMの濃度で混合して前記細胞に分株した。PC(positive control)は、前記ペプチドの代りに2.5mMのN-Acetylcysteine(NaC)を処理したものとした。
【0111】
前記細胞を1時間の間に37℃、COインキュベーターで培養し、培養した細胞の培地をチューブに移し、1mlのPBSを加えた後、UV照射器(VILBER LOURMAT、Cat No.:3102-BSU、フランス)で15J/cmのUVBを照射した。PBSを除去した後、前記チューブに移した培地900μLを再び添加し、24時間の間に37℃、COインキュベーターで培養した。その後、細胞をPBSで2回洗浄した後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)で細胞を溶解(lysis)した。5X sample bufferを処理してサンプルを準備した後、10%SDS-PAGEゲルを用いてSDS-PAGEを進行し、これを介して分離したタンパク質をPVDF membraneに移した。5%skim milkを用いて1時間室温でブロッキング(blocking)させた後、抗-cleaved PARP-1抗体(CST、Cat.No.:9541S、USA)、抗-cleaved Caspase-3抗体(CST、Cat.No.:9661S、USA)、及び抗-β actin抗体(Santa cruz、Cat.No.:SC-47778、USA)を1:1000で5%skim milkに希釈してmembraneと2時間反応させた後、0.1%PBS-T(0.1%Tween-20 in PBS)で10分ずつ3回洗浄した。Goat anti-rabbit IgG(Jackson Immunoresearch、Cat.No.:111-035-033、USA)、goat anti-mouse IgG(Jackson Immunoresearch、Cat.No.:111-035-003、USA)を1:3000で5%skim milkに希釈してmembraneと2時間反応させ、ECL solution(GE Healthcare、Cat.No.:RPN2232、USA)を用いてfilmで検出した。
【0112】
その結果、図6a~図6cに示されたように、本発明のペプチドは、UV照射により損傷された細胞で発現が増加した細胞死滅誘導因子の発現を抑制させることを確認した。
【0113】
このことから、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドによりUV照射により増加した細胞死滅誘導因子の発現が再び減少し、細胞の光老化現象が抑制されるにつれて、皮膚再生が促進される効果があることが分かる。
【0114】
以上、本発明は、記載された実施形態についてのみ詳しく説明されたが、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは当業者にとって明らかなものであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することは当然である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
【配列表】
2024536813000001.xml
【国際調査報告】