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  • 特表-ポリマー組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20241001BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20241001BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20241001BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20241001BHJP
   H01B 9/00 20060101ALI20241001BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C08L23/04
C08L53/00
C08K9/04
C08L23/10
H01B9/00 A
H01B7/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518245
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022076331
(87)【国際公開番号】W WO2023046821
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21198795.3
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】グクルピス,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハグストランド,ペル-オラ
(72)【発明者】
【氏名】ソロウディ,アザデ
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン,インウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,シャンドン
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,フリチョフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘデンクヴィスト,ミカエル
【テーマコード(参考)】
4J002
5G309
【Fターム(参考)】
4J002BB03W
4J002BB05W
4J002BB06W
4J002BB07W
4J002BB12X
4J002BB13X
4J002BB14X
4J002BB15W
4J002BP013
4J002DE066
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002FB096
4J002FD016
4J002GQ01
5G309RA04
5G309RA12
(57)【要約】
ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)4.95~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)(以下、成分(i)という);
(ii)4.95~95.0重量%のポリプロピレン(以下、成分(ii)という);及び、
(iii)0.00~30.0重量%のスチレンブロックコポリマー(以下、成分(iii)という);
(iv)0.05~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー(以下、成分(iv)という);
を含み、
ここで、前記重量パーセント(重量%)は、前記ポリマー組成物の総重量に対して表される、
前記ポリマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)4.95~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)(以下、成分(i)という);
(ii)4.95~95.0重量%のポリプロピレン(以下、成分(ii)という);及び、
(iii)0.00~30.0重量%のスチレンブロックコポリマー(以下、成分(iii)という);
(iv)0.05~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー(以下、成分(iv)という);
を含み、
ここで、前記重量パーセント(重量%)は、前記ポリマー組成物の総重量に対して表される、
前記ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子フィラー成分(iv)が、無機酸化物ナノ粒子を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子フィラー成分(iv)が、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化マグネシウムナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、又はそれらの組み合わせのナノ粒子である、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子フィラー成分(iv)が酸化アルミニウムナノ粒子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
成分(iv)の脂肪族基が、C1~20アルキル基、例えばC4~20アルキル基、特には直鎖状C1~20アルキル基、例えば直鎖状C4~20アルキル基、好ましくはC6~12アルキル、より特にはn-オクチル基、である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ナノ粒子フィラー成分(iv)が、アルキルシラン、例えばアルキル(トリアルコキシ)シラン又はジアルキル(ジアルコキシ)シラン、との反応によって官能化される、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記LDPE成分(i)が低密度ポリエチレンホモポリマーであり、及び/又は前記ポリプロピレン成分(ii)がプロピレンホモポリマー、好ましくはアイソタクチックポリプロピレンホモポリマー、であり、及び/又は前記スチレンブロックコポリマー成分(iii)が、ポリ[スチレン-b-(エチレン-コ-ブチレン)-b-スチレン](SEBS)、ポリ[スチレン-b-(エチレン-コ-プロピレン)-b-スチレン](SEPS)、ポリ[スチレン-b-(ブタジエン)-b-スチレン](SBS)及びポリ[スチレン-b-(イソプレン)-b-スチレン](SIS)、好ましくはSEBS、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
直流導電率測定方法に従って、30kV/mm、温度70℃で、18時間後に測定されたときに直流導電率0.5~10fS/m、好ましくは0.5~6.0fS/m、より好ましくは0.5~4fS/m、更により好ましくは0.5~3.5fS/m、を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
架橋されていない、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマー組成物であって、該ポリマー組成物が、
(i)35~75.0重量%のLDPEホモポリマー成分(i);
(ii)20.0~40.0重量%のポリプロピレンホモポリマー成分(ii);及び、
(iii)0.0~25.0重量%のスチレンブロックコポリマー成分(iii);及び、
(iv)1.0~8.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー成分(iv)
を含み、
ここで、前記重量パーセント(重量%)は、前記ポリマー組成物の総重量に対して表される、
前記ポリマー組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のポリマー組成物を調製する方法であって、該方法は、
(i)4.95~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)(以下、成分(i)という);
(ii)4.95~95.0重量%のポリプロピレン(以下、成分(ii)という);及び、
(iii)0.00~30.0重量%のスチレンブロックコポリマー(以下、成分(iii)という);
(iv)0.05~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー(以下、成分(iv)という)
をブレンドすることを含み、
ここで、前記重量パーセント(重量%)は、前記ポリマー組成物の総重量に対して表される、
前記方法。
【請求項12】
1以上の層によって囲まれている導体を備えているケーブルであって、前記層のうちの1以上が請求項1~10のいずれか1項に記載のポリマー組成物を含む、前記ケーブル。
【請求項13】
少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によってこの順に囲まれた導体を備えている電力ケーブル、好ましくは直流(DC)電力ケーブル、であって、少なくとも1つの層、例えば少なくとも絶縁層、が請求項1~10のいずれか1項に記載のポリマー組成物を含む、前記電力ケーブル。
【請求項14】
前記電力ケーブルが高電圧(HV)電力ケーブル又は超高電圧(UHV)電力ケーブルである、請求項13に記載の電力ケーブル。
【請求項15】
ケーブルの層、例えば電力ケーブルの絶縁層、の製造における請求項1~10に記載のポリマー組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利に低い直流(DC:direct current)導電率を有するポリマー組成物に関する。特には、本発明は、低密度ポリエチレン(LDPE:低密度 polyethylene)、ポリプロピレン、任意的にスチレンブロックコポリマー、及び脂肪族で官能基化された無機ナノ粒子フィラーのブレンドを含むポリマー組成物に関し、並びにケーブルの製造における、特には電力ケーブルの絶縁層の製造における、この組成物の使用に関する。理想的には、本発明の組成物及びケーブルは過酸化物を含まない。本発明はまた、そのようなケーブルを調製する為の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧(HP:high-pressure)プロセスにおいて製造されるポリオレフィンは、要求の厳しいポリマー用途、例えば電力ケーブル用途、において広く使用されており、ここで、該ポリマーは、高い機械的及び/又は電気的要件を満たさなければならない。典型的な電力ケーブルは、少なくとも内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層によって囲まれた導体を備えている。該ケーブルは通常、導体上に層を押し出すことによって製造される。次に、該層の1以上におけるポリマー材料が架橋されることが多い。
【0003】
特には中電圧(MV:medium voltage)、特には高電圧(HV:high-pressure)及び超高電圧(EHV:extra high voltage)のケーブル用途において、ポリマー組成物の電気的特性が重大な重要性を有する。その上、重要な電気特性は、交流(AC:alternating current)ケーブル及び直流(DC:direct current)ケーブルの用途のように、ケーブルの用途によって異なりうる。
【0004】
直流電気導電率は、例えば高圧直流(HVDC:high voltage direct current)ケーブルにおける絶縁材料の為に重要な材料特性である。第一に、この特性の強い温度依存性と電界依存性とが電界に影響するであろう。第二の問題は、内部半導電層と外部半導電層との間を流れる漏れ電流によって絶縁体内で発生される熱に関する。この漏れ電流は、電界と絶縁体の電気導電率とに依存する。
【0005】
従って、HVDCケーブルにおいて、絶縁体が漏れ電流によって部分的に加熱される。特定のケーブル設計の場合に、該加熱は絶縁導電率(insulation conductivity)×電圧2に比例する。
【0006】
直流(DC)電源ケーブルの電圧を上げる為の強い要求がある。HVDC電力ケーブルにおいて、電圧レベルを上げることにより送電容量を増やすこと及び/又は損失を減らすことが可能になる。しかしながら、電圧が上がる場合に、より多くの熱が発生するであろう。このことは、熱暴走をもたらし、続いて電気的破壊をもたらしうる。従って、HVDCケーブルの電圧レベルを更に増加させる為には、低い直流導電率を有する絶縁材料が必要になる。
【0007】
国際公開第WO2017/149086号パンフレット及び国際公開第WO2017/149087号パンフレットは、ポリマー組成物におけるナノ粒子フィラーの使用に関する。しかしながら、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン、及び任意的にスチレンブロックコポリマーのブレンドにおける該フィラーの使用は開示されておらず、例示された組成物の導電率は依然として相対的に高い。
【0008】
欧州特許第EP3261095号は、LDPEとHDPEとのブレンドを含むポリマー組成物を含むケーブルに関する。しかしながら、ナノ粒子フィラーの使用は開示されておらず、例示された組成物の導電率は依然として相対的に高い。
【0009】
従って、更に低下された直流導電率を有する新しいポリマー組成物についての必要性が残っている一方で、該ポリマー組成物はまた、要求の厳しい電力ケーブル用途の為に必要とされる十分に良好な機械的特性を有するべきである。加えて、過酸化物に関連付けられた欠点を回避し、しかしまた魅力的な特性を提供するところの新しいポリオレフィン組成物の必要性がある。
【0010】
多くの場合、半導電性層及び/又は絶縁層の一方におけるポリマー材料は、例えば、耐熱性及び耐変形性、クリープ特性、機械的強度、耐薬品性並びに耐摩耗性を向上させる為に架橋される。架橋は、例えばフリーラジカル発生化合物を用いて行われることができ、それは典型的には、導体上に1以上の層を押し出す前に層材料内に取り込まれる。層状化されたケーブルの形成後、次に、該ケーブルは架橋工程に付されて、ラジカルの生成とそれによる架橋反応が開始される。
【0011】
過酸化物はフリーラジカル発生化合物として非常に一般的に使用されている。しかしながら、過酸化物を用いた架橋は幾つかの欠点を有する。例えば、低分子の副生成物が架橋の間に生成され、それは不快な臭いを有する。過酸化物のこれらの分解生成物は、揮発性の副生成物が含まれる場合があり、それはケーブルの電気的特性に悪影響を及ぼしうる故に望ましくないことが多い。それ故に、揮発性分解生成物、例えばメタン、は、慣用的に、架橋及び冷却工程の後に、最小限に低減されるか又は除去される。そのような除去工程は、一般的に脱ガス工程として知られており、時間及びエネルギーを消費し、余分なコストの原因となる。
【0012】
熱可塑性絶縁材料には幾つかの利点を提供することができる。架橋と脱ガスの工程を省くことにより、より速く、より複雑でなく、及びよりコスト効率の高いケーブル製造をもたらすことができる。押出機の出力と洗浄の中断の減少の観点で、該プロセスはより速く且つよりクリーンである。しかしながら、架橋材料が存在しないことにより、高められた温度で、低下された寸法安定性をもたらす可能性がある。
【0013】
ケーブルの絶縁層における非架橋LDPE(non cross-linked LDPE)を使用する可能性は、新しいものでない。国際公開第WO2011/113685号パンフレットにおいて、密度922kg/m3及びMFR2 1.90g/10分のLDPEがケーブルの絶縁層における使用の為に提案されている。国際公開第WO2011/113685号パンフレットはまた、ケーブルの非架橋絶縁層に他のポリマーを個別に使用することを提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のことから、更に低下した直流伝導性を有する新規なポリマー組成物に対する必要性が残っており、それにより過酸化物に関連付けられた欠点が回避され、その一方で、該ポリマー組成物はまた十分に良好な機械的特性を有するべきである。
【0015】
本発明の概要
過酸化物を全く使用すること無しに、要求の厳しい電力ケーブル用途での使用の為に適したそのような特性を提供しつつ、低下した直流導電率を示す新規なポリオレフィン組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン、任意にスチレンブロックコポリマー、及び脂肪族で官能基化された無機ナノ粒子フィラーのブレンドを含むポリマー組成物が、驚くほど低い直流導電率を有し、それによって、高圧電力ケーブルの製造において特に適していることを見出した。
【0017】
ナノ粒子の凝集物(agglomerates)又は凝集体(aggregates)がケーブルの早期断線をもたらしうることが知られているが、本発明者等は、特許請求されている成分の組み合わせが極めて低い直流導電率をもたらし、有利なことには、架橋を開始する為に過酸化物を使用する必要がないことを見出した。
【0018】
従って、1つの観点において、本発明は、ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物が、
(i)4.95~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE);
(ii)4.95~95.0重量%のポリプロピレン;及び、
(iii)0.00~30.0重量%のスチレンブロックコポリマー;
(iv)0.05~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー
を含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記のポリマー組成物を提供する。
【0019】
別の観点から見ると、本発明は、本明細書において先に定義されているポリマー組成物を調製する方法であって、該方法は、
(i)4.95~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE);
(ii)4.95~95.0重量%のポリプロピレン;及び、
(iii)0.00~30.0重量%のスチレンブロックコポリマー;
(iv)0.05~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー
をブレンドすることを含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記の方法を提供する。
【0020】
更なる観点から見ると、本発明は、1以上の層によって囲まれている導体を備えているケーブルであって、該層のうちの1以上が、本明細書において先に定義されているポリマー組成物を含む上記のケーブルを提供する。なお更なる観点において、本発明は、少なくとも内側半導電性層、絶縁層及び外側半導電性層によってこの順に取り囲まれた導体を備えている電力ケーブル、例えば直流(DC)電力ケーブル、であって、少なくとも1つの層、例えば少なくとも絶縁層、が、本明細書において先に定義されているポリマー組成物を含む上記の電力ケーブルを提供する。
【0021】
なお更なる観点から見ると、本発明は、ケーブル中の層、好ましくは電力ケーブル中の層、より好ましくは電力ケーブルの絶縁層、の製造における本明細書において先に定義されているポリマー組成物の使用方法を提供する。
【0022】
別の観点から見ると、本発明は、ケーブル、好ましくは電力ケーブル、の再生された絶縁層の製造における本明細書において先に定義されているポリマー組成物の使用方法を提供する。
【0023】
定義
【0024】
語「分子量Mw」が本明細書において使用される場合に、重量平均分子量が意味される。
【0025】
語「ポリエチレン」は、エチレン系ポリマー、すなわち、ポリマー全体としての総重量に基づいて、少なくとも50重量%のエチレンを含むもの、を意味すると理解されるであろう。語「ポリエチレン」及び「エチレン系ポリマー」は、本明細書において互換的に使用され、(重合性モノマーの総重量に基づいて)過半数の重量パーセントの重合エチレンモノマーを含むポリマーを意味し、及び任意的に、少なくとも1つの重合コモノマーを含みうる。エチレン系ポリマーは、(該エチレン系ポリマーの総重量に基づいて)エチレンから誘導される単位を50重量パーセント超、又は60重量パーセント超、又は70重量パーセント超、又は80重量パーセント以上、又は90重量パーセント以上、含みうる。
【0026】
語「ポリプロピレン」は、プロピレン系ポリマー、すなわちポリマー全体の総重量に基づいて少なくとも50重量%のプロピレンを含むもの、を意味すると理解されるであろう。
【0027】
語「スチレンブロックコポリマー」は、各ブロックが同じ種類のモノマー(又はモノマーの混合物)で作られているが、ブロック間で1以上のモノマーの種類が異なるところの複数のブロックを含むブロックコポリマーを定義する。
【0028】
非架橋ポリマー組成物又はケーブル層は、熱可塑性とみなされる。
【0029】
本発明のポリマー組成物はまた、本明細書においてポリマーブレンドとして言及されうる。これらの語は互換的に使用される。
【0030】
本発明の低密度ポリエチレン(LDPE:低密度 polyethylene)は、高圧プロセスにおいて製造されるポリエチレンである。典型的には、高圧プロセスにおけるエチレンと任意的な更なるコモノマーとの重合は、1以上の開始剤の存在下で行われる。語「LDPE」の意味は周知であり、文献においても記載されている。語「LDPE」は、オレフィン重合触媒の存在下において製造される高圧ポリエチレンを低圧ポリエチレンと区別して説明するものである。LDPEは、或る典型的な特徴、例えば異なる分岐構造、を有する。LDPEについての典型的な密度範囲は、0.910~0.940g/cm3である。
【0031】
語「導体」は、本明細書において、1以上のワイヤを備えている導体を意味する。該ワイヤはどのような用途のものであってもよく、例えば光ワイヤ、電気通信ワイヤ又は電気ワイヤである。その上、該ケーブルは、1以上のそのような導体を備えていてもよい。好ましくは、該導体は電気導体であり、1以上の金属線を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[発明の詳細な説明]
本発明は、ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)4.95~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE);
(ii)4.95~95.0重量%のポリプロピレン;及び、
(iii)0.00~30.0重量%のスチレンブロックコポリマー;
(iv)0.05~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー
を含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記のポリマー組成物に関する。
【0033】
該組成物中の成分(i)~(iv)の量は、独立して変化されてもよいことが理解される。
【0034】
本発明はまた、その少なくとも1つの層がこのポリマー組成物を含むケーブルに関する。全ての実施態様において、該ポリマー組成物又は該ケーブルの層は、理想的には過酸化物を含まない。
【0035】
該ポリマー組成物は、任意に架橋されていてもよい。好ましい実施態様において、該ポリマー組成物は架橋されていない。「非架橋」ポリマー組成物は、最終形態において、例えばケーブルの層において、該ポリマー組成物が架橋されておらず、従って熱可塑性であることを意味する。
【0036】
下記のLDPE、ポリプロピレン及びスチレンブロックコポリマーの好ましい定義は、特に断らない限り、本発明の全ての観点に適用される。
【0037】
成分(i)-低密度ポリエチレン(LDPE)
【0038】
本発明に従うポリマー組成物の成分(i)は、低密度ポリエチレン(LDPE)である。
【0039】
低密度ポリエチレン(LDPE)はエチレン系ポリマーである。本明細書において使用される場合に、語「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総重量に基づいて)過半数の重量パーセントの重合エチレンモノマーを含み、及び任意的に、少なくとも1つ重合コモノマーを含んでいてもよいところのポリマーである。該エチレン系ポリマーは、(該エチレン系ポリマーの総重量に基づいて)エチレンから誘導される単位を50重量パーセント超、又は60重量パーセント超、又は70重量パーセント超、又は80重量パーセント超、又は90重量パーセント超、含みうる。
【0040】
該LDPEは、エチレンの低密度ホモポリマー(本明細書においてLDPEホモポリマーとして言及される)であってもよく、又はエチレンと1以上のコモノマーとの低密度コポリマー(本明細書においてLDPEコポリマーと呼ぶ)であってもよい。該LDPEコポリマーの1以上のコモノマーは好ましくは、1以上の極性コモノマー、1以上の非極性コモノマー、又は1以上の極性コモノマーと1以上の非極性コモノマーとの組み合わせから選択される。その上、該LDPEホモポリマー又はLDPEコポリマーは任意的に、不飽和であってもよい。好ましくは、該LDPEはホモポリマーである。
【0041】
LDPEコポリマー用の極性コモノマーとして、1以上のヒドロキシル基、1以上のアルコキシ基、1以上のカルボニル基、1以上のカルボキシル基、1以上のエーテル基若しくは1以上のエステル基、又はそれらの組み合わせを含む1以上のコモノマーが使用されることができる。より好ましくは、1以上のカルボキシル基及び/又は1以上のエステル基を含む1以上のコモノマーが、該極性コモノマーとして使用される。なおより好ましくは、LDPEコポリマーの1以上の極性コモノマーは、1以上のアクリレート、1以上のメタクリレート若しくは1以上のアセテート(類)、又はそれらの組み合わせの群から選択される。
【0042】
該LDPEコポリマー中に存在する場合、1以上の極性コモノマーは好ましくは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート若しくは酢酸ビニル、又はそれらの組み合わせの群から選択される。更に好ましくは、該極性コモノマーは、C1~C6アルキルアクリレート、C1~C6アルキルメタクリレート又は酢酸ビニルから選択される。なおより好ましくは、該LDPEコポリマーは、エチレンと、C1~C4アルキルアクリレート、例えばメチル、エチル、プロピル若しくはブチルアクリレート、若しくは酢酸ビニル、又はそれらの組み合わせとのコポリマーである。
【0043】
LDPEコポリマーの為の1以上の非極性コモノマーは好ましくは、1以上のモノ不飽和(=1つの二重結合)コモノマー、(例えば、アルファ-オレフィン、より好ましくはC3~C10アルファ-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、1-オクテン、1-ノネン);1以上の多価不飽和(=1超の二重結合)コモノマー;1以上のシラン基含有コモノマー;又はそれらの任意の組み合わせから選択される。1以上の多価不飽和コモノマーは、以下において更に記載されている。
【0044】
LDPEがコポリマーである場合、好ましくは0.001~35重量%、なおより好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、の1以上のコモノマーを含む。好ましい範囲には、0.5~10重量%、例えば0.5~5重量%、のコモノマーが含まれる。
【0045】
LDPEポリマーは、任意に不飽和であってもよく、すなわち炭素-炭素二重結合(-C=C-)を含んでいてもよい。好ましい「不飽和」LDPEは、炭素-炭素二重結合/1000炭素原子を少なくとも0.4/1000炭素原子の総量で含む。非架橋LDPEが最終的なケーブルにおいて使用される場合に、該LDPEは典型的には、上記で定義されたように不飽和でない。「不飽和でない」とは、C=C含有量が好ましくは、0.2/1000炭素原子未満、例えば0.1/1000C原子以下、であることが意味される。
【0046】
周知であるように、不飽和は、コモノマー、低分子量(Mw)添加化合物、例えば連鎖移動剤(chain transfer agent)若しくはスコーチ遅延添加剤(scorch retarder additive)、又はそれらの任意の組み合わせによってLDPEポリマーに提供されることができる。本明細書において、二重結合の総量は、任意の手段によって付加された二重結合を意味する。不飽和を提供する為に2以上の上記の二重結合源が使用する為に選択される場合に、LDPEポリマー中の二重結合の総量は、存在する二重結合の合計を意味する。任意の二重結合の測定は、任意の架橋の前に行われる。
【0047】
語「炭素-炭素二重結合の総量」とは、ビニル基、ビニリデン基及びトランス-ビニレン基(存在する場合)に由来する二重結合の合計量を意味する。
【0048】
LDPEホモポリマーが不飽和である場合に、該不飽和は、連鎖移動剤(CTA:chain transfer agent)、例えばプロピレン、によって、及び/又は重合条件によって提供されることができる。LDPEコポリマーが不飽和である場合に、該不飽和は、下記の1以上の手段によって提供されることができる:連鎖移動剤(CTA)によって、1以上の多価不飽和コモノマーによって、又は重合条件の1つ以上によって。選択された重合条件、例えばピーク温度及び圧力、が不飽和度(unsaturation level)に影響を有する可能性があることは周知である。不飽和LDPEコポリマーの場合に、好ましくは、エチレンと少なくとも1の多価不飽和コモノマー、及び任意的に、他の1以上のコモノマー、例えば好ましくはアクリレート又は1以上のアセテートコモノマーから選択される1以上の極性コモノマー、との不飽和LDPEコポリマーである。より好ましくは、不飽和LDPEコポリマーは、エチレンと少なくとも、1以上の多価不飽和コモノマーとの不飽和LDPEコポリマーである。
【0049】
非極性コモノマーとして好適な多価不飽和コモノマーは好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を有し且つ非共役二重結合同士の間に少なくとも4個の炭素を有するところの直鎖炭素からなり、それらのうちの少なくとも1個は末端であり、より好ましくは、該多価不飽和コモノマーはジエンであり、好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を含むジエンであり、第1の炭素-炭素二重結合は末端であり、及び第2の炭素-炭素二重結合は第1の炭素-炭素二重結合に対して非共役である。好ましいジエンは、C8~C14非共役ジエン又はそれらの組み合わせから選択され、より好ましくは、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、9-メチル-1,8-デカジエン又はそれらの組み合わせから選択される。更に好ましくは、該ジエンは、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、1,11-ドデカジエン、1,13-テトラデカジエン、又はそれらの任意の組み合わせから選択されるが、上記のジエンに限定されるものではない。
【0050】
例えばプロピレンは、コモノマーとして、若しくは連鎖移動剤(CTA)として、又はそれらの両方として使用されることができ、それによって炭素-炭素二重結合の総量に、好ましくはビニル基の総量に、寄与することができることは周知である。本明細書において、コモノマーとしてまた作用することができる化合物、例えばプロピレン、が、二重結合を提供する為のCTAとして使用されるときに、該共重合可能なコモノマーは、コモノマー含量に計算されない。
【0051】
LDPEポリマーが不飽和である場合に、ビニル基、ビニリデン基及びトランス-ビニレン基に由来するところの炭素-炭素二重結合の総量は、存在する場合、好ましくは0.4/1000炭素原子超、好ましくは0.5/1000炭素原子超、である。LDPE中に存在する炭素-炭素二重結合の量の上限は特に限定されず、好ましくは5.0/1000炭素原子未満、より好ましくは3.0/1000炭素原子未満、であってもよい。
【0052】
LDPEが上記で定義された不飽和LDPEである場合に、それは好ましくは、少なくともビニル基を含み、ビニル基の総量は好ましくは、0.05/1000炭素原子よりも高く、更に好ましくは0.08/1000炭素原子よりも高く、最も好ましくは0.11/1000炭素原子よりも高い。好ましくは、ビニル基の総量は4.0/1000炭素原子よりも低く、より好ましくは2.0/1000炭素原子よりも低い。より好ましくは、LDPEは0.20/1000炭素原子よりも多い、更に好ましくは0.30/1000炭素原子よりも多い、ビニル基を含む。
【0053】
しかしながら、本発明のLDPEが不飽和でなく、0.2C=C/1000C原子未満、好ましくは0.1C=C/1000C原子未満、を有することが好ましい。該LDPEがホモポリマーである場合がまた好ましい。本発明のポリマー組成物は架橋の為に設計されていない故に、該LDPE内の不飽和の存在は要求されず又は望まれない。
【0054】
LDPEポリマーは高い融点を有していてもよく、それは、特に熱可塑性絶縁材料として重要でありうる。112℃以上、例えば114℃以上、特に116℃以上、例えば112~130℃、の融点が想定される。
【0055】
該LDPEは、915~940kg/m3、好ましくは918~935kg/m3、特には920~932kg/m3、例えば約922~約930kg/m3、の密度を有しうる。
【0056】
LDPEのMFR2(2.16kg,190℃)は好ましくは、0.05~30.0g/10分、より好ましくは0.1~20g/10分、最も好ましくは0.1~10g/10分、特には0.1~5.0g/10分、である。好ましい実施態様において、LDPEのMFR2は0.1~4.0g/10分、特には0.5~4.0g/10分、特には1.0~3.0g/10分、である。
【0057】
該LDPEは、80kg/モル~200kg/モル、例えば100~180kg/モル、の重量平均分子量(Mw)を有しうる。
【0058】
本発明のポリマー組成物中にLDPEの組み合わせを使用することは可能であるが、単一のLDPEが使用される場合に好ましい。LDPEの組み合わせが使用される場合に、重量%は、存在するLDPEの総含量を云う。
【0059】
該LDPEポリマーは、フリーラジカル開始重合(高圧(HP)ラジカル重合として言及される)によって高圧で製造される。HP反応器は、例えば周知の管状反応器若しくはオートクレーブ反応器、又はそれらの組み合わせであることができ、好ましくは管状反応器である。高圧(HP)重合と、所望の最終用途に応じてLDPEの他の特性を更に調整する為のプロセス条件の調整とは、文献で周知であり且つ記載されており、当業者によって容易に使用されることができる。好適な重合温度は約400℃まで、好ましくは80~350℃であり、圧力は70MPa、好ましくは100~400MPa、より好ましくは100~350MPa、である。圧力は、少なくとも圧縮段階の後に及び/又は管状反応器の後に測定されることができる。温度は、全ての工程の間に幾つかの時点で測定されることができる。
【0060】
分離後、得られたLDPEは典型的にはポリマー溶融物(polymer melt)の形態であり、それは通常、HP反応器系に接続して配置されたペレタイジングセクション(pelletising section)、例えばペレタイジング押出機(pelletising extruder)、において混合され、そしてペレタイジングされる。任意的に、1以上の添加剤、例えば酸化防止剤、がこのミキサー中で、既知の方法で添加されることができる。
【0061】
高圧ラジカル重合によるエチレン(コ)ポリマーの製造の更なる詳細は、なかんずく、Encyclopaedia of Polymer Science and Engineering,Vol.6 (1986),pp 383-410及びEncyclopaedia of Materials:Science and Technology,2001 Elsevier Science Ltd.:“Polyethylene:High-pressure,R.Klimesch,D.Littmann and F.-O.Mahling pp.7181-7184において見られることができる。
【0062】
LDPEがエチレンの低密度ホモポリマーであることが最も好ましい。
【0063】
本発明のポリマー組成物中のLDPEは好ましくは、該ポリマー組成物の総重量に対して4.95~95重量%の量で存在する。
【0064】
1つの実施態様において、本発明のポリマー組成物中のLDPEの重量パーセントは、該ポリマー組成物の総重量に対して、有利には5.0重量%以上、又は10.0重量%以上、又は15.0重量%以上、又は20.0重量%以上、又は25.0重量%以上、又は30.0重量%以上である。
【0065】
該ポリマー組成物の総重量に対する、該ポリマー組成物中のLDPEの重量パーセントの上限は、95.0重量%以下、又は92.5重量%以下、又は90.0重量%以下、又は87.5重量%以下、又は85.0重量%以下、又は82.5重量%以下であることが更に理解される。
【0066】
本発明に従うポリマー組成物の好ましい実施態様において、該ポリマー組成物の総重量に対して、該ポリマー組成物中のLDPEの重量パーセントは、10.0~90.0重量%、20.0~85.0重量%、又は25.0~80.0重量%、又は25.0~82.5重量%の範囲である。好ましくは、全体としての該ポリマー組成物総重量に対して、好ましくは80.0重量%以下、例えば25.0~80.0重量%、又は30.0~77.5重量%、特には35.0~75.0重量%、である。
【0067】
本発明のLDPEは、新しく商業的に入手可能でない。
【0068】
成分(ii)-ポリプロピレン(PP)
【0069】
本発明に従うポリマー組成物の成分(ii)は、ポリプロピレンである。
【0070】
ポリプロピレンはプロピレン系ポリマーである。本明細書において使用される場合に、語「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総重量に基づいて)過半数の重量パーセントの重合プロピレンモノマーを含むポリマーであり、及び任意的に、少なくとも1つの重合コモノマーを含んでいてもよい。プロピレン系ポリマーは、(該プロピレン系ポリマーの総重量に基づいて)プロピレンから誘導される単位を50重量パーセント超、又は60重量パーセント%超、又は70重量パーセント%超、又は80重量パーセント超、又は90重量パーセント超、含みうる。
【0071】
該ポリプロピレンはプロピレンホモポリマーであってもよく又はプロピレンコポリマーであってもよい。好ましくは、該プロピレンはホモポリマーである。
【0072】
大体の実施態様において、成分(ii)は、ヘテロ相ポリプロピレンコポリマー、好ましくはランダムヘテロ相ポリプロピレンコポリマー、を含む。本発明者等は、ポリプロピレン成分(ii)がヘテロ相ポリプロピレンコポリマーを含む場合に、成分(iii)の存在はそれほど重要でないことを見出した。
【0073】
ヘテロ相ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーと又はプロピレンと少なくとも1つのアルファーオレフィンコモノマーとのランダムコポリマーである半結晶性マトリックス相と、その中に分散したエラストマー相とを有するところのプロピレン系コポリマーである。該エラストマー相は、ポリマー鎖中にランダムに分布されているのでなく、コモノマーに富むブロック構造及びプロピレンに富むブロック構造に分布している大量のコモノマーを有するプロピレンコポリマーであることができる。
【0074】
ヘテロ相ポリプロピレンは通常、マトリックス相とエラストマー相に起因する2つの異なるガラス転移温度Tgを示す点で、一相性プロピレンコポリマー(one-phasic propylene copolymer)と異なる。
【0075】
コモノマーは、α-オレフィン、例えばエチレン、又はC4~20の直鎖状、分岐状、又は環状のα-オレフィンであってもよい。好適なC4~20のα-オレフィンの非限定的な例は、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、及び1-オクタデセンを包含する。α-オレフィンはまた、環状構造、例えばシクロヘキサン又はシクロペンタン、を含むことができ、その結果、α-オレフィン、例えば、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサン、を生じる。古典的な意味でのα-オレフィンでないが、本開示の目的上、或る環状オレフィン、例えば、ノルボルネン及び関連オレフィン、特には5-エチリデン-2-ノルボルネン、は、α-オレフィンであり、上述されたα-オレフィンの一部又は全部に代えて使用されることができる。同様に、スチレン及びその関連オレフィン(例えば、α-メチルスチレン等)は、本開示の目的上、α-オレフィンである。例示的なプロピレンポリマーは、エチレン/プロピレン、プロピレン/ブテン、プロピレン/1-ヘキセン、プロピレン/1-オクテン、プロピレン/スチレン等を包含する。例示的なターポリマーは、エチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、プロピレン/ブテン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)、及びプロピレン/ブテン/スチレンを包含する。該コポリマーは、ランダムコポリマーであることができる。
【0076】
特に好ましい実施態様において、ポリプロピレンは、ホモポリマー、例えば、シンジオタクチック(syndiotactic)プロピレンホモポリマー、最も好ましくはアイソタクチック(isotactic)プロピレンホモポリマー、である。使用されるアイソタクチックプロピレンホモポリマーは、キャパシターグレードのものであってもよい。
【0077】
典型的には、ポリプロピレンは、ISO 1133(230℃;2.16kg荷重で)に従って決定される0.1~100g/l0分、好ましくは0.5~50g/l0分、のMFR2を有する。最も好ましくは、MFR2は、1.0~5.0g/10分、例えば1.5~4.0g/10分、の範囲である。
【0078】
ポリプロピレンの密度は典型的には、ISO 1183に従って決定される場合に、890~940kg/m3、理想的には0.895~0.920g/cm3、好ましくは0.900~0.915g/cm3、より好ましくは0.905~0.915g/cm3、の範囲でありうる。
【0079】
プロピレンは、200kg/モル~600kg/モルの範囲のMwを有しうる。ポリプロピレンポリマーは好ましくは、4.5未満、例えば2.0~4.0、例えば3.0、の分子量分布Mw/Mnを有し、ここで、分子量分布Mw/Mnは、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比である。
【0080】
通常、ポリプロピレンの融解温度は、ISO 11357-3に従って示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)によって決定される場合に135から170℃の範囲、好ましくは140~168℃の範囲、より好ましくは142~166℃の範囲、である。理想的には、ポリプロピレンは140℃超、好ましくは150℃超、の融解温度(Tm)を有する。
【0081】
ポリプロピレンは、当技術分野において知られている任意の適切な方法によって調製されることができ、又は商業的に入手されることができる。
【0082】
本発明のポリマー組成物中にポリプロピレンの組み合わせを使用することは可能であるが、単一のポリプロピレンが使用されることが好ましい。ポリプロピレンの組み合わせが使用される場合に、引用されている重量%は存在するポリプロピレンの総含有量を云う。
【0083】
本発明のポリマー組成物中のポリプロピレンは好ましくは、該ポリマー組成物の総重量に対して4.95~95重量%の量で存在する。
【0084】
1つの実施態様において、本発明のポリマー組成物中のポリプロピレンの重量パーセントは、該ポリマー組成物の総重量に対して、有利には5.0重量%以上、又は7.5重量%以上、又は10.0重量%以上、又は12.5重量%以上、又は15.0重量%以上、又は17.5重量%以上、又は20.0重量%以上、である。
【0085】
該ポリマー組成物の総重量に対する、該ポリマー組成物中のポリプロピレンの重量パーセントの上限は、95.0重量%以下、又は90.0重量%以下、又は80.0重量%以下、又は70.0重量%以下、又は60.0重量%以下、又は50.0重量%以下、又は45.0重量%以下、又は40.0重量%以下である。
【0086】
本発明に従うポリマー組成物の好ましい実施態様において、該ポリマー組成物の総重量に対するポリマー組成物中のポリプロピレンの重量パーセントは、5.0~85.0重量%、又は10.0~80.0重量%、又は15.0~70.0重量%の範囲である。好ましくは、全体としての該ポリマー組成物総重量に対して、好ましくは60.0重量%以下、例えば15.0~50.0重量%、又は17.5~45.0重量%、特には20.0~40.0重量%、である。
【0087】
本発明のポリプロピレンは新しいものでない。これらのポリマーは、ポリマー供給業者から容易に入手可能である。例えば、ボレアリス(Borealis)グレードのBorclean商標HC300BFは、本発明における使用の為に適している。
【0088】
成分(iii)-スチレンブロックコポリマー
【0089】
本発明に従うポリマー組成物の成分(iii)は、スチレンブロックコポリマーである。
【0090】
スチレンブロックコポリマーは、スチレンモノマーと1以上の他のコモノマーとを含むブロックコポリマーである。語「ブロックコポリマー」は、当業者に周知であり、異なる重合モノマーのブロックを含むコポリマーを云う。ブロックコポリマーは複数のブロックを含み、ここで、各ブロックは同じ種類のモノマー(又はモノマーの混合物)で作られるが、1以上のモノマーの種類はブロック間で異なる。
【0091】
1以上のコモノマーは、一価不飽和(=1個の二重結合)の1以上のコモノマー、好ましくはオレフィン、より好ましくはアルファーオレフィン、更により好ましくはC2~C10アルファーオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン;多価不飽和(=1個以上の二重結合)の1以上コモノマー、好ましくは少なくとも4個の炭素原子と少なくとも1つの末端二重結合を有する直鎖若しくは分枝の炭素鎖からなり、より好ましくはジエン、例えばブタジエン若しくはイソプレン;又は、それらの組み合わせでありうる。
【0092】
1つの実施態様において、スチレンブロックコポリマーは、ターポリマー、すなわち3つの異なるモノマー(スチレンと2つの異なるコモノマー)、を含む。
【0093】
スチレンブロックコポリマーが、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)ブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマー、及びスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマー、又はそれらの組み合わせからなる群から選択されることが特に好ましい。最も好ましくは、スチレンブロックコポリマーは、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0094】
スチレンブロックコポリマーは、40重量%以下、より好ましくは35重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、のスチレン含量を有しうる。一方、スチレンブロックコポリマー中のスチレン含量は10重量%未満であってはならない。従って、好ましい範囲は10~40重量%、より好ましくは12~35重量%、更により好ましくは15~30重量%、である。
【0095】
更に、該スチレンブロックコポリマーは好ましくは、少なくとも0.1g/10分、より好ましくは少なくとも0.2g/10分、更により好ましくは少なくとも0.5g/10分、のメルトフローレートMFR5(230℃/5.0kg)を有することが理解される。一方、該スチレンブロックコポリマーのメルトフローレートMFR5(230℃/5.0kg)は、好ましくは30g/10分以下である。従って、好ましいメルトフローレートMFR5(230℃/5.0kg)は、0.1~30g/10分の範囲であり、より好ましくは0.2~25g/であり、更に好ましくは0.5~20g/10分、である。
【0096】
該スチレンブロックコポリマーはまた、その密度によって定義されてもよく、その密度は、好ましくは0.950g/cm3以下、より好ましくは0.940g/cm3以下、である。典型的には、スチレンブロックコポリマーの密度は少なくとも0.900g/cm3、より好ましくは0.910g/cm3以下、である。
【0097】
該スチレンブロックコポリマーは、当技術分野において知られている任意の適切な方法によって調製されてもよく、又は商業的に得られることができる。
【0098】
本発明のポリマー組成物中にスチレンブロックコポリマーの混合物を使用することは可能であるが、単一のスチレンブロックコポリマーが使用されることが好ましい。スチレンブロックコポリマーの混合物が使用される場合に、引用された重量%は、存在するスチレンブロックコポリマーの総含有量を言及する。本発明の有利な実施態様において、該スチレンブロックコポリマーは存在し、主にLDPE及びポリプロピレン成分の混合を助ける相溶化剤(compatibilizer)として使用される。該スチレンブロックコポリマーは相分離を減少させ、そして、有利な熱機械特性を有するブレンドを結果としてもたらす。その上、該スチレンブロックコポリマーを含めることにより、低減した直流伝導率が与えられうる。減少した直流伝導率により、電力ケーブルの高い動作温度が可能であり得、それにより原理的に、高い送電容量が可能である。
【0099】
本発明の1つの実施態様において、該ポリマー組成物は、上記で定義されたスチレンブロックコポリマー(iii)を含まない。
【0100】
本発明の有利な実施態様において、スチレンブロックコポリマー(iii)は、該ポリマー組成物中に存在する。本発明者等は、必須ではないが、該スチレンブロックコポリマーが、LDPEとポリプロピレン成分との混合を助ける為の相溶化剤として作用しうることを見出した。該スチレンブロックコポリマーは相分離を減少させ、そして、有利な熱機械特性を有するブレンドを結果として生じる。その上、該スチレンブロックコポリマーを含めることにより、低減した直流伝導率がまた与えられうる。減少した直流伝導率により、電力ケーブルの高い動作温度が可能であり得、それにより原理的に、高い送電容量が可能である。
【0101】
本発明のポリマー組成物中のスチレンブロックコポリマー(iii)は好ましくは、該ポリマー組成物の総重量に対して0.0~30.0重量%の量で存在する。
【0102】
1つの実施態様において、本発明のポリマー組成物中のスチレンブロックコポリマー(iii)の重量パーセントは、該ポリマー組成物の総重量に対して、有利には0.5重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.5重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.5重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.5重量%以上、又は4.0重量%以上である。
【0103】
該ポリマー組成物の総重量に対する、該ポリマー組成物中のスチレンブロックコポリマー(iii)の重量パーセントの上限は、30.0重量%以下、又は25.0重量%以下、23.0重量%以下、22.0重量%以下、21.5重量%以下、21.0重量%以下、20.5重量%以下、20.0重量%以下である。
【0104】
本発明に従うポリマー組成物の好ましい実施態様において、該ポリマー組成物の総重量に対する、該ポリマー組成物中のスチレンブロックコポリマー(iii)の重量パーセントは、0.5~30.0重量%、又は1.0~25.0重量%、又は2.0~23重量%の範囲である。好ましくは、全体としての該ポリマー組成物総重量に対して、好ましくは22.5重量%以下、例えば3.0~22.0重量%、又は3.5~21.0重量%、特には4.0~20.0重量%、である。
【0105】
スチレンブロックコポリマーの混合物が使用される場合に、これらのパーセンテージは全てのスチレンブロックコポリマーの総量を言及する。
【0106】
これらのポリマーはポリマー供給会社から容易に入手可能である。例えば、Kraton Corporationから入手可能なKraton商標G1642 HUは、本発明における使用の為に適している。
【0107】
成分(iv)-ナノ粒子フィラー
【0108】
本発明に従うポリマー組成物の成分(iv)は、脂肪族で官能基化された無機ナノ粒子フィラー、好ましくはアルキルで官能基化された無機ナノ粒子フィラー、である。本明細書において使用する場合に、語「脂肪族で官能基化された無機ナノ粒子フィラー」は、ナノ粒子の表面に1以上の脂肪族官能基を組み込むようにナノ粒子が修飾されたところの無機ナノ粒子フィラーを云う。そのような修飾は当技術分野において周知であり、例えば国際公開第WO2006/081400号パンフレットにおいて議論されている。好ましい実施態様において、脂肪族官能基はアルキル基であり、従って、該ナノ粒子フィラーはアルキルで官能基化された無機ナノ粒子フィラーである。
【0109】
該ナノ粒子は、1000nm未満、好ましくは500nm未満、特には250nm未満、である。ナノ粒子は好ましくは、10nm以上、例えば25nm以上、の直径を有する。ナノ粒子は好ましくは、10~100nm、例えば25~75nm、の直径を有する。40~60nmの直径が最も好ましい。これらの直径は、TEM分析を用いて決定されることができる。
【0110】
成分(iv)は、ポリマー組成物全体の0.05~10重量%を形成する。
【0111】
1つの実施態様において、本発明のポリマー組成物中の成分(iv)の重量パーセントは、該ポリマー組成物の総重量に対して、有利には、0.1重量%以上、又は0.25重量%以上、又は0.5重量%以上、又は0.6重量%以上、又は0.7重量%以上、又は0.8重量%以上、又は0.9重量%以上、又は1.0重量%以上である。
【0112】
該ポリマー組成物の総重量に対する、該ポリマー組成物中の成分(iv)の重量パーセントの上限は、10.0重量%以下、又は9.5重量%以下、又は9.0重量%以下、又は8.5重量%以下、又は8.0重量%以下、又は7.5重量%以下、又は7.0重量%以下、又は6.5重量%以下、又は6.0重量%以下、又は5.5重量%以下、又は5.0重量%以下である。
【0113】
本発明に従うポリマー組成物の好ましい実施態様において、該ポリマー組成物の総重量に対する、該ポリマー組成物中の成分(iv)の重量パーセントは、0.05~9.5重量%、又は0.5~9.0重量%、又は0.75~8.5重量%の範囲である。好ましくは、全体としての該ポリマー組成物総重量に対して、好ましくは8.0重量%以下、例えば0.8~7.5重量%、又は0.9~6.5重量%、特には1.0~5.0重量%、である。
【0114】
1つの実施態様において、成分(iv)であるナノ粒子フィラーは、無機酸化物、水酸化物、炭酸塩、フラーレン、窒化物、炭化物、カオリンクレー、タルク、ホウ酸塩、アルミナ、チタニア若しくはチタン酸塩、シリカ、ケイ酸塩、ジルコニア、酸化亜鉛、ガラス繊維若しくはガラス粒子、又はそれらの任意の組み合わせから選択されるナノ粒子を含む。1つの実施態様において、該ナノ粒子フィラーは、無機酸化物ナノ粒子、例えば、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化マグネシウムナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、シリカナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、酸化バリウムナノ粒子、酸化カルシウムナノ粒子、酸化ストロンチウムナノ粒子、又はそれらの組み合わせを含む。
【0115】
1つの実施態様において、成分(iv)であるナノ粒子フィラーは、MgOナノ粒子、SiO2ナノ粒子、TiO2ナノ粒子、ZnOナノ粒子、Al2O3ナノ粒子、Fe3O4ナノ粒子、酸化バリウムナノ粒子、酸化カルシウムナノ粒子、酸化ストロンチウムナノ粒子、又はそれらの組み合わせのナノ粒子を含む。好ましくは、該ナノ粒子フィラーは、酸化アルミニウムナノ粒子、酸化マグネシウムナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、又はそれらの組み合わせを含む。最も好ましくは、該ナノ粒子フィラーは、酸化アルミニウムナノ粒子を含む。好ましい実施態様において、該ナノ粒子フィラーは、Al2O3ナノ粒子、MgOナノ粒子、ZnOナノ粒子又はそれらの組み合わせを含み、最も好ましくは、Al2O3ナノ粒子からなる。
【0116】
本発明に従う、成分(iv)であるナノ粒子フィラーは、1以上の脂肪族基、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、で官能化される。好ましい実施態様において、1以上の脂肪族基は1以上のアルキル基であり、従って、該ナノ粒子フィラーは、アルキルで官能基化された無機ナノ粒子フィラーである。該1以上のアルキル基は好ましくは、C1~20アルキル基、例えばC4~20アルキル基、好ましくはC6~C20アルキル基、である。好ましい実施態様において、該アルキル基は、C6~C12アルキル基、例えばC8アルキル基、である。
【0117】
該1以上の脂肪族基は、直鎖状であってもよく又は分枝状であってもよく、好ましくは直鎖状である。好ましい実施態様において、該1以上の脂肪族基は、直鎖アルキル基、例えば直鎖C1~20アルキル基、特には直鎖C4~20アルキル基、である。好ましい実施態様において、該アルキル基は、直鎖状C6~12アルキル基、例えばn-オクチル、である。
【0118】
該ナノ粒子フィラーを形成するナノ粒子は、任意の既知の方法によって官能基化されうる。1つの実施態様において、該ナノ粒子フィラーは、脂肪族で官能基化されたシラン、例えばアルキルシラン、との反応によって官能基化される。そのようなシラン上の脂肪族基は、官能基化されたナノ粒子について上述されたような脂肪族基である。好ましい実施態様において、該ナノ粒子フィラーは、アルキル(トリアルコキシ)シラン、ジアルキル(ジアルコキシ)シラン又はトリアルキル(アルコキシ)シラン、好ましくはアルキル(トリアルコキシ)シラン、との反応によって官能基化される。
【0119】
該シランのアルコキシ基のアルキル部分は、該シランのアルキル基と同じであってもよく又は異なっていてもよい。好ましい実施態様において、アルコキシ基はC1~10アルコキシ基、特には直鎖C1~10アルコキシ基、例えばメトキシ又はエトキシ、である。例えば、1つの実施態様において、該ナノ粒子フィラーは、n-オクチル(トリエトキシ)シラン、n-オクチル(トリメトキシ)シラン、ジ(n-オクチル)(ジエトキシ)シラン、又はジ(n-オクチル)(ジメトキシ)シランとの反応によって官能基化される。
【0120】
該ナノ粒子フィラーは典型的には、固体粉末の形態であるが、該フィラーと担体との混合物がコロイド分散物を形成するように、媒体、例えばミネラルスピリット(mineral spirits)、例えばヘプタン、中に運ばれることができる。
【0121】
1つの実施態様において、脂肪族で官能基化された無機ナノ粒子フィラーは、1000nm未満、好ましくは500nm未満、特には250nm未満、の直径を有する。脂肪族で官能基化された無機ナノ粒子フィラーは、好ましくは10nm以上、例えば25nm以上、の直径を有する。脂肪族で官能基化された無機ナノ粒子フィラーは、好ましくは10~100nm、例えば25~75nm、の直径を有する。40~60nmの直径が最も好ましい。
【0122】
ナノ粒子フィラーのナノ粒子と脂肪族で官能基化されたシランとの反応は、溶液中で実施されうる。適切な溶媒は当業者に知られており、極性溶媒及び非極性溶媒を包含する。1つの実施態様において、該反応は、溶液、例えば、水、プロパノール又はそれらの組み合わせを包含する上記の溶液、中で実施されうる。幾つかの実施態様において、シランの加水分解及び縮合を促進する為に、触媒、例えば水酸化アンモニウム、が使用されうる。
【0123】
任意的な更なる成分
【0124】
しかしながら、追加的に、本発明のポリマー組成物は、成分(i)~(iv)に加えて、ポリマー分野において知られている1以上の更なる成分、例えば、1以上のポリマー成分及び/又は1以上の添加剤、例えば、1以上の添加剤、例えば1以上の酸化防止剤、1以上のスコーチ遅延剤(SR:scorch retarder)、1以上の架橋ブースター(crosslinking booster)、1以上の誘電流体(dielectric fluid)、1以上の安定化剤、1以上の加工助剤、1以上の難燃添加剤(flame retardant additive)、1以上の水樹脂遅延添加剤(water tree retardant additive)、1以上の酸又はイオン捕捉剤及び1以上の電圧安定化剤、を包含しうる。該ポリマー組成物は、例えば、ワイヤ及びケーブル(W&C)用途の為に慣用的に使用されている1以上の添加剤、例えば、少なくとも1以上の酸化防止剤、及び任意的に、1以上のスコーチ遅延剤又は1以上の架橋ブースター、例えば少なくとも1以上の酸化防止剤、を含んでいてもよい。好適な添加剤及び添加量は、慣用的に当技術分野において周知である。
【0125】
典型的には、上記で定義されたような更なる成分の量は、存在する場合に、該ポリマー組成物の総重量に対して0.1重量%~20重量%、より好ましくは0.1重量%~15重量%、最も好ましくは0.1重量%~10重量%、である。
【0126】
ポリマー組成物
【0127】
該ポリマー組成物がLDPE、ポリプロピレン及びスチレンブロックコポリマーに加えて他のポリマー成分を含むことは本発明の範囲内であるが、該ポリマー組成物が、唯一のポリマー成分として、本質的にLDPE、ポリプロピレン及びスチレンブロックコポリマーからなる場合が好ましい。
【0128】
該ポリマー組成物は、ナノ粒子フィラー(iv)を更に含み、更なる成分、例えば、上記でより詳細に論じられているように標準的なポリマー添加剤、を更に含んでいてもよいことが理解されるであろう。
【0129】
語「本質的に~からなる」は、他のいかなるポリマー成分も排除することを意味するが、更なる成分、例えば添加剤(それはマスターバッチの一部であってもよい)、の存在を許容する。
【0130】
一般的に、成分(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の合計重量パーセントは、100重量%まで加算されることが理解される。しかしながら、これは、上述されているように、更なる成分の存在を排除するものでない。更なる成分が存在する場合、更なる成分と成分(i)、(ii)、(iii)及び(iv)との合計重量パーセントは100重量%になる。
【0131】
上述されたような全ての定義及び好ましいことは、以下に記載されている全ての更なる実施態様に等しく適用されることが更に理解される。
【0132】
好ましい実施態様において、本発明は、ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)4.5~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE);
(ii)4.5~95.0重量%のポリプロピレン;及び、
(iv)0.5~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー;
を含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記のポリマー組成物を提供する。
【0133】
好ましい実施態様において、本発明は、ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)4.0~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE);
(ii)4.0~95.0重量%のポリプロピレン;及び、
(iii)0.5~30.0重量%のスチレンブロックコポリマー;
(iv)0.5~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー
を含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記のポリマー組成物を提供する。
【0134】
好ましい実施態様において、本発明は、ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)35~75.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE);
(ii)20.0~40.0重量%のポリプロピレン;及び、
(iv)1.0~8.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー
を含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記のポリマー組成物を提供する。
【0135】
好ましい実施態様において、本発明は、ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)35~75.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE);
(ii)20.0~40.0重量%のポリプロピレン;及び、
(iii)4.0~25.0重量%のスチレンブロックコポリマー;及び、
(iv)1.0~8.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー
を含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記のポリマー組成物を提供する。
【0136】
好ましい実施態様において、本発明は、ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)35~75.0重量%のLDPEホモポリマー;
(ii)20.0~40.0重量%のポリプロピレンホモポリマー;及び、
(iii)0.0~25.0重量%のスチレンブロックコポリマー;及び、
(iv)1.0~8.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー;
を含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記のポリマー組成物を提供する。
【0137】
好ましい実施態様において、本発明は、ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
(i)35~75.0重量%のLDPEホモポリマー;
(ii)20.0~40.0重量%のポリプロピレンホモポリマー;並びに、
(iii)0.0~20.0重量%のポリ[スチレン-b-(エチレン-コ-ブチレン)-b-スチレン](SEBS)、ポリ[スチレン-b-(エチレン-コ-プロピレン)-b-スチレン](SEPS)、ポリ[スチレン-b-(ブタジエン)-b-スチレン](SBS)、及びポリ[スチレン-b-(イソプレン)-b-スチレン](SIS)、好ましくはSEBS;並びに、
(iv)1.0~8.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー
を含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される、
上記のポリマー組成物を提供する。
【0138】
1つの実施態様において、本発明は、成分(i)、(ii)及び(iii)の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、更により好ましくは少なくとも60重量%、の合計を含むポリマー組成物であって、ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される上記のポリマー組成物を提供する。
【0139】
上記実施態様のいずれにおいても、過酸化物の使用が著しく減らされることができるか、又は完全に避けられることができる。
【0140】
従って、本発明のポリマー組成物は好ましくは、実質的に過酸化物を含まない(例えば、該組成物の総重量に対して0.5重量%未満の過酸化物、好ましくは0.1重量%未満の過酸化物、例えば0.05重量%未満の過酸化物、を含む)。更により好ましくは、該ポリマー組成物はいかなる過酸化物も含まず(すなわち、該組成物の総重量に対して0重量%の過酸化物を含む)、最も好ましくはいかなるラジカル形成剤も含まない。
【0141】
1つの実施態様において、該組成物は熱可塑性である。従って、本発明の組成物は好ましくは、架橋されていない。
【0142】
本発明のポリマー組成物は好ましくは、30kV/mm、温度70℃で、18時間後に測定されたときの直流導電率0.5~10fS/m、好ましくは0.5~6.0fS/m、より好ましくは0.5~4fS/m、更により好ましくは0.5~3.5fS/m、を有する。
【0143】
直流導電率は、「決定方法」に記載の「DC導電率測定」に従って測定される。
【0144】
好ましい実施態様において、該ポリマー組成物は、「実験の部」の下に記載された方法に従って決定される、120℃で少なくとも5.0x106Pa、より好ましくは120℃で少なくとも1.0x107Pa、の貯蔵弾性率(storage modulus)(E')を有する。
【0145】
好ましい実施態様において、該ポリマー組成物は、「実験の部」の下に記載された方法に従って決定される、140℃で少なくとも1.0x106Pa、より好ましくは140℃で少なくとも5.0x106Pa、の貯蔵弾性率(E')を有する。
【0146】
方法
【0147】
1つの観点において、本発明は、本明細書において定義されているポリマー組成物の調製の為の方法を提供する。上述された全ての定義及び好ましいことは、以下に記載された全ての更なる実施態様に等しく適用されることが更に理解される。
【0148】
該方法は、
(i)4.95~95.0重量%の低密度ポリエチレン(LDPE);
(ii)4.95~95.0重量%のポリプロピレン;及び、
(iii)0.00~25.0重量%のスチレンブロックコポリマー;
(iv)0.05~10.0重量%の脂肪族、好ましくはアルキル、の官能基化された無機ナノ粒子フィラー
をブレンドすることを含み、
ここで、該重量パーセント(重量%)は、該ポリマー組成物の総重量に対して表される。
【0149】
該ポリマー組成物の製造の間、これら成分はブレンドされることができ、例えば押出機で溶融混合されることができる。
【0150】
典型的には、該工程は、コンパウンディングによって、例えば押出成形によるコンパウンディングによって、実施されるであろう。好ましくは、該工程は過酸化物の使用を伴わない。この結果として、本発明のポリマー組成物を調製する為の方法は典型的には、脱気工程を含まない。
【0151】
典型的には、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも160℃、例えば少なくとも170℃、の温度まで加熱することを含む。該方法は一般的には、300℃以下、例えば250℃以下、まで加熱することを含む。
【0152】
1つの実施態様において、該方法は、該ポリマー組成物を架橋する更なる工程を含む。架橋は、当技術分野において周知の任意の慣用的手段、例えば過酸化物架橋、より特には有機過酸化物架橋、例えば、ジクミルペルオキシドによる架橋、によって行われうる。好ましくは、該ポリマー組成物は架橋されない。
【0153】
ケーブル
【0154】
1つの観点において、本発明は、本明細書において定義されているポリマー組成物を含むケーブル、典型的には電力ケーブル、例えばACケーブル又はDCケーブル、を提供する。上述されたような全ての定義及び好ましいことは、以下に記載されている全ての更なる実施態様に等しく適用されることが更に理解される。
【0155】
電力ケーブルとは、任意の電圧レベルで操作する、典型的には1kV超の電圧で操作する、ところのエネルギーを伝達するケーブルであると定義される。電力ケーブルは、低電圧(LV:low voltage)、中電圧(MV:medium voltage)、高電圧(HV:high voltage)、又は超高電圧(EHV:extra high voltage)ケーブルであることができ、該語は、周知であるように、動作電圧(operating voltage)のレベルを示す。
【0156】
該ポリマー組成物は、更により好ましくは、36kVよりも高い電圧で動作するDC電力ケーブル、例えばHVDCケーブル、の為の絶縁層において使用される。HVDCケーブルの場合、該動作電圧は、本明細書において、高圧ケーブルの接地と導体との間の電圧として定義される。
【0157】
好ましくは、本発明のHVDC電力ケーブルは、40kV以上の電圧、更には50kV以上の電圧、で動作するものである。より好ましくは、該HVDC電力ケーブルは60kV以上の電圧で動作する。本発明はまた、非常に要求の厳しいケーブル用途において実現可能性が高く、本発明の更なるケーブルは、70kV以上の電圧で動作するHVDC電力ケーブルである。100kV以上の電圧が目標とされ、例えば200kV以上、より好ましくは300kV以上、特に好ましくは400kV以上、より特に好ましくは500kV以上、である。640kV以上、例えば700kV、の電圧がまた想定される。上限は特に限定されない。実用的な上限は1500kVまで、例えば1100kVまで、とすることができる。それ故に、本発明のケーブルは、400~850kV、例えば650~850kV、で動作する要求の厳しいエクストラ(extra)HVDC電力ケーブル用途において良好に動作する。
【0158】
ケーブル、電力ケーブル(例えば、DC電力ケーブル)、は、少なくとも1つの層によって囲まれた1以上の導体を備えている。本発明のポリマー組成物は、その少なくとも1つの層において使用されうる。好ましくは、該ケーブルは、内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層のこの順に備えられている。
【0159】
本発明のポリマー組成物は好ましくは、ケーブルの絶縁層において使用される。理想的には、少なくとも1つの層、好ましくは絶縁層、は、全体として該層の総重量に対して少なくとも95重量%、例えば少なくとも98重量%、例えば少なくとも99重量%、の本発明のポリマー組成物を含む。理想的には、該層は該ポリマー組成物からなる。それ故に、本発明のポリマー組成物が、本発明のケーブルの絶縁層において使用される唯一の非添加成分であることが好ましい。語「~本質的に構成される」は、存在する唯一のポリマー組成物が本明細書において定義されているものであることを意味する為に本明細書において使用される。絶縁層は、標準的なポリマー添加剤、例えば、水樹遅延剤(water tree retarders)、酸化防止剤等、を包含しうることが理解されるであろう。これらは、語「本質的に~からなる」によって除外されるものでない。また、これらの添加剤はマスターバッチの一部として添加されてもよく、従って、ポリマー担体上に担持されうることにまた留意されたい。マスターバッチ添加剤の使用は、語「本質的に~からなる」によって除外されるものでない。そのような層は好ましくは、過酸化物を含まない。
【0160】
本発明のケーブル層は好ましくは、30kV/mm、温度70℃で、18時間後に測定されたときに直流導電率0.5~10fS/m、好ましくは0.5~6.0fS/m、より好ましくは0.5~4fS/m、更により好ましくは0.5~3.5fS/m、を有する。
【0161】
絶縁層が架橋剤を含まないことが好ましい。従って、該絶縁層は理想的には過酸化物を含まず、従って過酸化物の分解による副生成物を含まない。
【0162】
当然ながら、非架橋の実施態様がまた、ケーブル製造工程を簡略化する。また、一般的に、架橋後にこれらの薬剤の副生成物を除去する為に架橋されたケーブルを脱気する必要がある。これらがない場合、そのような脱気工程は必要ない。
【0163】
該絶縁層は、本発明のポリマー組成物に加えて、ポリマー分野のおいて知られているように、1以上の更なる成分、例えば添加剤、例えば、1以上の酸化防止剤、1以上のスコーチ遅延剤(SR)、1以上の架橋ブースター、1以上の安定化剤、1以上の加工助剤、1以上の難燃添加剤、1以上の水樹脂遅延添加剤、1以上の酸又はイオン捕捉剤、1以上の無機フィラー、1以上の誘電性液体及び電圧安定剤、を含みうる。しかしながら、典型的には、スコーチ遅延剤は存在しない。
【0164】
それ故に、従って、絶縁層は、W&C用途に慣用的に使用されている1以上の添加剤、例えば1以上の酸化防止剤、を含みうる。酸化防止剤の非限定的な例は、例えば、立体障害(sterically hindered)又は半障害(semi-hindered phenols)フェノール、芳香族アミン、脂肪族立体障害アミン、有機ホスファイト(organic phosphites)又はホスホナイト(phosphonites)、チオ化合物、及びそれらの組み合わせが挙げられることができる。
【0165】
好ましくは、該絶縁層はカーボンブラックを含まない。また好ましくは、該絶縁層は、1以上の難燃性添加剤、例えば、難燃化量の添加剤を含む金属水酸化物、を含まない。
【0166】
添加剤の使用量は、当業者には慣用的であり且つ周知であり、例えば0.1~1.0重量%である。
【0167】
本発明のケーブルは典型的には、内側半導電層と外側半導電層とをまた備えている。これらは、これらの層において使用する為に適した任意の慣用的な材料で作られることができる。該内側半導電層と該外側半導電層とは、異なっていてもよく又は同一であってもよく、好ましくはポリオレフィン又はポリオレフィンと導電性フィラー、好ましくはカーボンブラック、との混合物であるところの1以上のポリマーを含んでいてもよい。好適な1以上のポリオレフィンは、例えば、低圧プロセスにおいて製造されたポリエチレン(LLDPE、MDPE、HDPE)、HPプロセスにおいて製造されたポリエチレン(LDPE)又はポリプロピレンである。
【0168】
1つの実施態様において、本発明のポリマー組成物は、内側半導電性層及び/又は外側半導電性層の製造において使用されることができる。
【0169】
該内側半導電層及び外側半導電層は、カーボンブラックを備えていてもよい。該カーボンブラックは、電力ケーブルの半導電性層において、好ましくは電力ケーブルの半導電性層において、使用される任意の慣用的なカーボンブラックであることができる。好ましくは、該カーボンブラックは、以下の特性の1以上を有する:a)ASTM D3849-95a、分散手順D、に従って数平均粒子径として定義される少なくとも5nmの一次粒子径、b)ASTM D1510に従って少なくとも30mg/gのヨウ素価、c)ASTM D2414に従って測定される少なくとも30ml/100gの吸油量。カーボンブラックの非限定的な例は、例えばアセチレンカーボンブラック、ファーネス(furnace)カーボンブラック及びケッチェン(Ketjen)カーボンブラックであり、好ましくはファーネスカーボンブラック及びアセチレンカーボンブラックである。好ましくは、1以上の該半導電性層は、層の総重量に基づいて、10~50重量%のカーボンブラックを含む。
【0170】
1つの実施態様において、該外側半導電層は架橋されている。別の実施態様において、該内側半導電性層は好ましくは非架橋である。全体として、内側半導電性層及び外側半導電性層と絶縁層とが非架橋のままであることが好ましい。しかしながら、該外側半導電性層が架橋されている場合に、該内側半導電性層と該絶縁層とが非架橋のままであることが可能である。それ故に、過酸化物架橋剤は該外側半導電性層のみに設けられることができる。
【0171】
該導体は典型的には、1以上のワイヤを備えている。その上、該ケーブルは、1以上のそのような導体を備えている。好ましくは、該導体は導電体であり、1以上の金属ワイヤを備えている。Cuワイヤ又はAlワイヤが好ましい。
【0172】
周知であるように、該ケーブルは任意的に、更なる層、例えば、1以上のスクリーン、1以上のジャケット層、1以上の他の保護層、又はそれらの任意の組み合わせを備えていることができる。
【0173】
ケーブル製造
【0174】
本発明はまた、ケーブルを製造する方法であって、該方法は、好ましくは(共)押し出しにより、1以上の導体上に、内側半導電層、絶縁層及び外側半導電層をこの順に施与する工程を含み、ここで、該絶縁層が本発明の組成物を含む、上記の方法を提供する。上述されたような全ての定義及び好ましいことは、以下に記載されている全ての更なる実施態様に等しく適用されることが更に理解される。
【0175】
該方法は任意的に、絶縁層を架橋すること無しに、該内側半導電性層又は該外側半導電性層の一方又は両方を架橋する工程を含んでいてもよい。全体として、該内側半導電層と該外側半導電層、及び該絶縁層が非架橋のままであることが好ましい。
【0176】
より好ましくは、ケーブルが製造され、該方法は下記の工程を含む:
(a)ポリマー、カーボンブラック及び任意的に、内部半導電層用の1以上の更なる成分を含むところの任意的に架橋可能な第1の半導電性組成物を用意し、そして混合し、好ましくは押出機中で溶融混合すること、
本発明のポリマー組成物を用意し、そして混合し、好ましくは押出機中で溶融混合すること;並びに、
任意的に架橋可能であり且つポリマー、カーボンブラック及び任意的に、外側半導電性層の為の1以上の更なる成分を含むところの第2の半導電性組成物を用意し、そして混合し、好ましくは押出機中で溶融混合すること
(b)好ましくは共押出しにより、1以上の導体上に施与すること、
工程(a)から得られた該第1の半導電性組成物を溶融混合して、該内部半導電層を形成すること、
工程(a)から得られた本発明のポリマー組成物を溶融混合して、該絶縁層を形成すること、及び、
工程(a)から得られた該第2の半導電性組成物を溶融混合して、該外側半導電性層を形成すること、並びに、
(c)任意的に、該得られたケーブルの、該内側半導電性層の該第1の半導電性組成物及び該外側半導電性層の該第2の半導電性組成物のうちの一方又は両方、及び/又は該絶縁層を架橋条件で架橋すること。
【0177】
代替的には、工程(c)において、該得られたケーブルの、該内側半導電性層の該第1の半導電性組成物及び該外側半導電性層の該第2の半導電性組成物の両方、並びに絶縁層を架橋する。
【0178】
溶融混合することとは、該得られた混合物の少なくとも主要な1以上のポリマー成分の融点超で混合することを意味し、例えば、1以上のポリマー成分の融点又は軟化点よりも少なくとも15℃高い温度で行われるがこれらに限定されない。
【0179】
語「(共)押出」は、本明細書において、2以上の層の場合に、該層が別々の工程で押出されることができること、又は当技術分野において周知のように、少なくとも2つ又は全ての該層が同じ押出工程で共押出されることができることを意味する。語「(共)押出」は、本明細書において、1以上の押出ヘッドを用いて、1以上の層の全部又は一部が同時に形成されることも意味する。例えば、3つの層を形成する為にトリプル押出が使用されることができる。層が2以上の押出ヘッドを使用して形成される場合に、例えば、該層が2つの押出ヘッドを使用して押し出されることができ、ここで、該第1のヘッドは該内側半導電層と該絶縁層の内側部分とを形成する為のものであり、該第2のヘッドは該外側の絶縁層と該外側半導電層とを形成する為のものである。
【0180】
周知であるように、本発明のポリマー組成物及び任意の且つ好ましい第1の半導電性組成物及び第2の半導電性組成物は、ケーブル製造工程の前に又はケーブル製造工程の間に製造されることができる。
【0181】
好ましくは、本発明のケーブルを製造する為に必要とされるポリマーは、粉末、グレイン又はペレットの形態でケーブル製造プロセスに供給される。本明細書において、ペレットとは一般的に、反応器で製造されたポリマー(該反応器から直接的に得られる)から、固体ポリマー粒子への該反応器後の改質によって形成される任意のポリマー製品を意味する。
【0182】
従って、該成分は、混合する前に、予備混合、例えば一緒に溶融混合し、そしてペレット化されることができる。代替的には、好ましくは、これらの成分が別々のペレットにされて(溶融)混合工程(a)に供給されることができ、そこでは、該ペレットが一緒にブレンドされる。
【0183】
本発明の該提供されるポリマー組成物と好ましい第1の半導電性組成物及び第2の半導電性組成物との(溶融)混合工程(a)は好ましくは、ケーブル押出機中で行われる。ケーブル製造プロセスの工程a)は任意的に、別個の混合工程、例えば、ケーブル製造ラインのケーブル押出機に接続し、そして先行するように配置されたミキサーでの混合工程、含んでいてもよい。先行する別個のミキサーでの混合は、成分の外部加熱(外部供給源による加熱)を伴う又は伴わない混合によって行なわれることができる。
【0184】
任意の架橋剤が、ケーブル製造工程の前で、又は(溶融)混合工程(a)の間に添加されることができる。例えば、好ましくは、架橋剤及びまた任意の更なる成分、例えば添加剤、が、使用されるポリマー中に既に存在することができる。該架橋剤は、固体ポリマー粒子上に、好ましくはペレット上に、添加され、好ましくは含浸される。
【0185】
(溶融)混合工程(a)から得られるポリマー組成物の溶融混合物は、単独ポリマー成分として、LDPE(i)、ポリプロピレン(ii)、及び任意的に、スチレンブロックコポリマー(iii)からなることが好ましい。成分(iv)及び任意的に、好ましい1以上の添加剤は、そのまま、又はキャリアポリマーとの混合物として、すなわちマスターバッチの形態で、該ポリマー組成物に添加されることができる。
【0186】
他の層の架橋は、周知であるように、架橋剤の種類に応じて選択される高められた温度で行われることができる。例えば、150℃超、例えば160~350℃、が典型的であるが、それらに限定されるものでない。
【0187】
処理温度及び装置は当技術分野において周知であり、例えば、慣用的なミキサー及び押出機、例えば単軸又は二軸のスクリュー押出機、が本発明の処理の為に適している。
【0188】
ケーブル、より好ましくは電力ケーブル、の絶縁層の厚さは、該ケーブルの絶縁層の断面から測定した場合に、典型的には2mm以上、好ましくは少なくとも3mm以上、好ましくは少なくとも5~100mm、より好ましくは5~50mm、慣用的には5~40mm、例えば5~35mm、である。
【0189】
該内側半導電層及び該外側半導電層の厚さは典型的には、該絶縁層の厚さよりも小さく、電力ケーブルにおいて、例えば0.1mm超、例えば0.3~20mm、例えば0.3~10mm、の内側半導電層及び外側半導電層であることができる。該内側半導電性層の厚さは好ましくは、0.3~5.0mm、好ましくは0.5~3.0mm、好ましくは0.8~2.0mm、である。該外側半導電性層の厚さは好ましくは、0.3~10mm、例えば0.3~5mm、好ましくは0.5~3.0mm、好ましくは0.8~3.0mm、である。電力ケーブルの層の厚さは、最終用途ケーブルの意図された電圧レベルに依存し、それに応じて選択できることが、当業者にとって明らかであり及び当業者の技術の範囲内である。
【0190】
本発明はここで、下記の非限定的な実施例及び添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0191】
図1図1は、表1に開示されたサンプルの導電率を温度の関数として示す。LDPE(i)、ポリプロピレン(ii)、及び任意的に、スチレンブロックコポリマー(iii)並びにナノ粒子フィラー(iv)を含む本発明の例が、LDPE(i)単独、又はLDPE+ナノ粒子フィラー単独からなる比較例よりも有意に低い導電率を有する。
図2図2は、表1において開示されたサンプルの貯蔵弾性率(E')を温度の関数として示す。
【0192】
実験の部
【0193】
発明の詳細な説明及び実験の部に特に記載されていない限り、下記の方法が物性決定の為に使用された:
(wt%=重量%)
【0194】
密度
ポリマーサンプルの密度は、ISO 1183-2に従って測定された。
【0195】
分子量(Mw)
分子量(重量平均分子量Mw)と多分散性指数、並びに分岐比が、Agilent PL-GPC 220システムを用いて、1,3,4-トリクロロベンゼン中、150 8でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC:size exclusion chromatography);ポリスチレン標準でのユニバーサル較正によって決定された。
【0196】
メルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)
メルトフローレイト(MFR)はISO 1133に従って決定され、単位はg/10分で示される。MFRはポリマーの流動性、従って該ポリマーの加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、該ポリマーの粘度は低くなる。特に指定のない限り、本明細書で使用される場合に、語「MFR」はMFR2を云う。ポリプロピレンのMFR2は、230℃の温度及び2.16kgの荷重で決定される。
【0197】
ポリエチレンのMFR2は、190℃の温度及び2.16kgの荷重で決定される。
【0198】
DC導電率測定
該測定の前に、厚さ0.3mmのフィルムサンプルが真空オーブンで70℃、24時間乾燥され、そして、乾燥とSC測定の間はデシケーター中で保管された。DC試験セルは、3電極セットアップ(φの測定エリア=60mm)で構成され、70℃でオーブンに入れられ、及び高電圧電源(Glassman FJ60R2)に接続された。所望の温度70℃が達成することを保証する為に、該サンプルは測定の1時間前に測定セルに入れられた。
【0199】
9kVのDC電圧(30kV/mm)が、厚さ0.3mmの標本フィルムに19時間印加された。直流導電率(σDC)は、18時間後に得られたリーク電流に基づいて計算された。体積リーク電流はKeithley 6517B電位計で記録され、そして、動的に平均化された。加えて、標本破壊時の電流制限と高周波ノイズ除去の為に、高電圧側の回路にローパスフィルターが追加された。
【0200】
貯蔵弾性率(E’)
動的機械分析(DMA:Dynamic mechanical analysis)が、厚さ1.9 mmのメルトプレスフィルム(melt-pressed films)から切り出された35mm×6mmの大片について、TA Q800 DMAを使用して引張モードで行われた。温度可変測定が、加熱速度3℃/分、最大ひずみ0.05%及び周波数0.5Hzで行われた。結果が、図2において示されている。
【0201】
材料
この作業において使用された材料は下記の通りである:
成分(i):MFR 約2g/10分(190℃/2.16kg)を有するLDPEホモポリマーが、Borealis AB(Mw 約117kg/モル,PDI 約9,長鎖分岐数 約1.9)から得られた。
成分(ii):MFR 約3.3g/10分(230℃/2.16kg)を有するiPP-アイソタクチックポリプロピレンが、Borealis AB(Mw 約411kg/モル,PDI 約8.5)から得られた。
成分(iii):MFI 約1g/10分未満を有するポリ[スチレン-b-(エチレン-コ-ブチレン)-b-スチレン](SEBS)。(230℃/2.16kg,ASTM D 1238に従って測定された)及び18.5~22.5%のポリスチレン含量がKraton Corporation(Kraton G1642 HU)から得られた。
成分(iv),C8-Al2O3:調整方法が下記に記載されている。
【0202】
成分(iv)の調製
【0203】
酸化アルミニウムナノ粒子(Nanophase IncのNanodur,CAS番号1344-28-01,密度3.97g/cm3)がn-オクチルトリエトキシシラン(Sigma-Aldrich,CAS番号3069-42-9)でコーティングされた。反応は2-プロパノールと水との混合媒体中で行われた。シランの加水分解と縮合とを促進する触媒として、水酸化アンモニア(水性25%)が使用された。表面修飾後、ナノ粒子が真空オーブン(Fisher Scientific Vacucell,MMTグループ)中、80℃で、20時間乾燥された。球状のAl2O3ナノ粒子の平均直径は、TEM画像分析に従って50nmであった。
【0204】
該ポリマー組成物の調製
本発明に従う成分(iv)及び本発明の実施例において使用されたオクチルでコーティングされた酸化アルミニウムナノ粒子(C8-Al2O3)がn-ヘプタン(0.3mlのn-ヘプタン/1gポリマー)中に分散され、そして、5分間超音波処理され、その後、0.02重量%の酸化防止剤Irganox 1076(Ciba Speciality Chemicals,CAS番号2082-79-3)が添加された。低密度ポリエチレン(LDPE)がナノ粒子懸濁物に添加され、結果として固形分3重量%のC8-Al2O 3ナノ粒子と97重量%のLDPEを生じた。LDPE:C8-Al2O3スラリーがVortex Genie 2シェーカー(Scientific Instruments Inc)で1時間振とうされ、そして、80℃で一晩乾燥された。乾燥後、粉末が更に30分間振とうされ、そして次に、150℃、100rpmで6分間コンパウンドされた(Micro 15 cc twin screw compounder,Xplore instruments)。押出物が2~3mmの長さのペレットに切断された。
【0205】
ペレット化されたLDPE:C8-Al2O3ナノコンポジットが、真空オーブン中80℃で17時間乾燥された。下記の表1において示されているように、SEBS、iPP、及び3重量%のC8-Al2O3含有LDPE:C8-Al2O3ナノコンポジットの異なる組み合わせを、窒素ガス下、Xplore Micro Compounder MC5を用いて200℃で4分間、スクリュー速度70rpmでコンパウンドし、引き続きダイ温度210℃で押出成形することによって、本発明に従うポリマー組成物が調製された。LabPro 200 Fontijneプレスを用いて、200℃で150kPaの圧力を1分間施与し、引き続き-10℃/分の速度で冷却することによって、押出物が、電気測定用に0.3mm厚のフィルムに溶融プレスされ、及び機械分析用に1.9mm厚のフィルムに溶融プレスされた。
【0206】
比較例のポリマー組成物が、下記の表1において示されているように、ニート(neat)LDPEが、iPP、SEBS、及び3重量%のC8-Al2O3含有LDPE:C8-Al2O3ナノコンポジットとコンパウンドされた本発明の実施例と同様の方法で調製された。
【0207】
結果
本発明に従うポリマー組成物のサンプル(IE1-3)及び比較組成物のサンプル(CE1-6)の組成及び特性が下記の表1において示されている。各サンプルの各温度でのDC導電率が図1においてグラフで示されている。
【0208】
【表1】
【0209】
本発明者等は、本発明の組成物が優れた(すなわち、低い)DC導電率を有することを立証した。表1及び図1におけるデータを参照すると、本発明の組成物IE1~3の直流導電率は、CE1のニートLDPE組成物よりも予想外に1桁以上低いことがわかる。
【0210】
驚くべきことに、本発明の実施例の導電率が、LDPE、iPP及びSEBSからなるブレンド(CE2-4)又はLDPEとナノ粒子フィラーからなるブレンド(CE5-6)単独の導電率に比べて有意に低下している。直流導電率における低下は相乗的でさえありうる。
【0211】
導通(conduction)のメカニズムがLDPE/iPP又はLDPE/iPP/SEBSブレンドとLDPE/Al2O3系とで異なることを考えると、本発明のポリマー組成物の導電率がこれほど低いことは驚くべきことである。それ故に、組み合わされたポリマー組成物の導電率が比較例よりも低くなることは期待できない。
【0212】
その上、直流伝導率におけるこの低下は、ポリマー組成物の熱機械特性(例えば貯蔵弾性率の観点で)を少なくとも維持しながら得られる。このことは、熱機械的性能を低下させると予想されるナノ粒子フィラーの存在にもかかわらずである。この理論に束縛されること無しに、本発明者等は、LDPEにPP及びSEBSを導入することにより、溶融混和性で且つ相分離するところの系が形成されると考えている。このことにより、PP及びSEBSのドメインが形成され、該系にはるかに優れた熱機械的特性が付与される。該ナノ粒子の導入により、この絶妙なバランスを乱すと予想されるが、驚くべきことにそうでない。該ブレンドの分析によい、本発明例の熱機械特性は、少なくとも比較例に対して維持されていることが示唆される(図2を参照)。
【0213】
本発明に従う組成物の低い導電率は、低い導電率が不可欠である用途、例えば電力ケーブルの絶縁層、における使用の為に特に適している。
図1
図2
【国際調査報告】