(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】細胞特異的免疫調節のためのアポリポタンパク質融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20241001BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241001BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20241001BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241001BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241001BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20241001BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20241001BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20241001BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20241001BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
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A61K 31/7088 20060101ALI20241001BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241001BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241001BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241001BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241001BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241001BHJP
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A61P 31/14 20060101ALI20241001BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241001BHJP
C07K 14/475 20060101ALN20241001BHJP
C07K 14/575 20060101ALN20241001BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20241001BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241001BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
A61K9/51
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
A61K47/24
A61P37/02
A61P43/00 121
A61K47/28
A61K47/14
A61K38/19
A61K38/22
A61K38/20
A61K38/21
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 G
A61K39/395 U
A61K38/02
A61K31/7088
A61P43/00 111
A61P43/00 117
A61K45/00
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A61P29/00
A61P31/00
A61P37/08
A61P37/06
A61P31/04
A61P9/10
A61P25/00
A61P31/14
A61K48/00
C07K14/475
C07K14/575
C07K14/54
C07K16/28
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518291
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2022076593
(87)【国際公開番号】W WO2023046931
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523480565
【氏名又は名称】バイオ-トリップ ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デア メール,ロイ
(72)【発明者】
【氏名】マルダー,ウィレム ジェイ.エム.
(72)【発明者】
【氏名】メルクス,マールテン
(72)【発明者】
【氏名】スヒレイヴル,デービッド ペピジン
(72)【発明者】
【氏名】デ ドレウ,アンネ
(72)【発明者】
【氏名】ホッケ,アイラ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】デ ブルーイン,コーエン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC07
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4H045AA10
4H045AA30
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4H045FA74
4H045GA15
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、アポリポタンパク質と免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子との融合タンパク質に関する。融合タンパク質は、免疫調節生体分子自体のための担体として使用することができ、または脂質ナノ粒子に組み込むことができる。融合タンパク質は、免疫関連障害の治療、またはペイロードを特定の標的部位に標的化する使用を見出している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質
を含み、
前記免疫調節生体分子が、免疫応答を増強または抑制するタンパク質である、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項2】
アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質
を含み、
前記リルーティング分子は、その融合タンパク質が、前記アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項3】
アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、免疫調節生体分子、およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質
を含み、
前記免疫調節生体分子が、免疫応答を増強または抑制するタンパク質であり、
前記リルーティング分子は、その融合タンパク質が、前記アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物。
【請求項4】
請求項1に定義される融合タンパク質、
請求項2に定義される融合タンパク質、および
リン脂質
を含む、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項5】
前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子がステロールをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項6】
前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子が、脂質、好ましくはトリグリセリドをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項7】
前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子が、球体、リボンまたはディスクである、請求項1から6のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項8】
前記融合タンパク質の少なくとも一部が、前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を取り囲む環境に曝露され、好ましくは前記免疫調節生体分子および/または前記リルーティング分子が、前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を取り囲む前記環境に曝露される、請求項1から7のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項9】
前記免疫調節生体分子が、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子、造血成長因子、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または3から8のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項10】
前記サイトカインが、IL-2サブファミリー、インターフェロンサブファミリー、IL-10サブファミリー、IL-1ファミリー、TGFβファミリーまたはIL-17ファミリーおよびそれらの組合せからなる群から選択され、より好ましくは、前記サイトカインが、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-38およびそれらの組合せからなる群から選択され、かつ/または
前記ケモカインが、CCケモカイン、CXCケモカイン、Cケモカイン、CX
3Cケモカイン、およびそれらの組合せからなる群から選択され、かつ/または
前記成長因子は、VEGF、EGF、CNTF、LIF、エフリン、FGF、GDNF、HDF、HDGF、IGF、KGF、MSF、NRG、BDNF、NGF、ニューロトロフィン、PGF、PDGF、RNLS、TCGF、TGF、TNF、およびWNT、ならびにそれらの組合せからなる群から選択され、かつ/または
前記造血成長因子が、IL-3、CSF-1(M-CSF)、GM-CSF、G-CSF、インターロイキンまたはエリスロポエチンのIL-12ファミリーのメンバー、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項11】
前記サイトカインがIL-4である、請求項9または10に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項12】
前記リルーティング分子が、抗体またはその抗原結合断片、リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質から選択され、好ましくは、前記リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質が、前記標的に存在する受容体のリガンドである、請求項2から11のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合断片が、Fab、Fab
2、scFv、scFv-Fc、dAb-Fc、遊離軽鎖抗体、半抗体、二重特異性Fab2、Fab
3、三重特異性Fab3ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、IgG、IgNAR、一価IgG、V
hH、および可変新規抗原受容体(VNAR)からなる群から選択される、請求項12に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項14】
前記リルーティング分子が、造血幹および前駆細胞(HSPC)、例えば造血幹細胞(HSC)、多分化能前駆(MPP)または共通骨髄前駆細胞(CMP)に結合することができる、請求項2から13のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項15】
前記リルーティング分子が、巨核球、好酸球、好塩基球、赤血球、単球、例えば樹状細胞またはマクロファージ、および好中球からなる群から選択される骨髄系細胞に結合することができる、請求項2から13のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項16】
前記リルーティングペプチドがSIRPαである、請求項15に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項17】
前記リルーティング分子が、非骨髄系細胞、例えば非骨髄性免疫細胞または内皮細胞に結合することができる、請求項2から13のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項18】
前記リルーティング分子が、リンパ球、好ましくはT細胞、より好ましくはCD8+T細胞に結合することができる、請求項17に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項19】
前記リルーティング分子が、CD8に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合断片であるか、または前記リルーティングペプチドがPD1、CD40LもしくはGP120である、請求項17に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項20】
前記アポリポタンパク質が、ApoA1、ApoA-1 Milano、ApoA4、ApoC3、ApoD、ApoE、ApoL1、ApoL3であるか、または前記アポリポタンパク質模倣物が、ApoA1、ApoA-1 Milano、ApoA4、ApoC3、ApoD、ApoE、ApoL1、ApoL3の模倣物である、請求項1から19のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項21】
前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子が、ペイロードを含み、好ましくは前記ペイロードが、核酸もしくは核酸類似体、治療薬、バイオロジックまたはそれらの組合せから選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に定義されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子を製造する方法であって、
a1)1つまたはそれ以上の単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質を得るために、1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質融合タンパク質を発現および単離する工程であって、
前記1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質融合タンパク質が、
免疫調節生体分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
リルーティング分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
免疫調節生体分子およびリルーティング分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、および
それらの組合せ
からなる群から選択される、工程、および/または
a2)1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物を化学的にコンジュゲートし、前記1つまたはそれ以上のコンジュゲートされたアポリポタンパク質を単離して、1つまたはそれ以上の単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を得る工程であって、
前記1つまたはそれ以上のコンジュゲートされたアポリポタンパク質が、
免疫調節生体分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
リルーティング分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
免疫調節生体分子およびリルーティング分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、および
それらの組合せ
からなる群から選択される、工程、および
b)工程a1で得られた前記1つまたはそれ以上の単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質および/または工程a2で得られた前記1つまたはそれ以上の単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を、リン脂質、ならびに任意選択でステロールおよび/または脂質と組み合わせて、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を得る工程
を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法によって得られる、または得ることができるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
【請求項24】
請求項1から21または23のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項25】
医薬品として使用するための、請求項1から21または23のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項1から21または23のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または免疫関連障害の治療に使用するための、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記免疫関連障害が、癌、炎症、感染症、自己免疫障害、アレルギー、臓器移植拒絶、および移植片対宿主病(GVH)からなる群から選択される、請求項26に記載の使用のためのアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または請求項26に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項28】
前記免疫調節生体分子がIL-4であり、前記免疫関連障害が、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは前記過剰炎症および/または前記免疫麻痺が、例えば、敗血症、心筋梗塞、脳卒中、癌、または多発性硬化症によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる、請求項26に記載の使用のためのアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または請求項26に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項29】
前記免疫調節生体分子を標的細胞に標的化する際に使用するための、請求項1、3から21もしくは23のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子または請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記免疫調節生体分子を骨髄系細胞に標的化する際に使用するための、請求項1、3から13、15、16、20、21もしくは23のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項31】
免疫調節生体分子を標的に送達するための、好ましくは前記標的が細胞、組織および/または器官である、請求項1、3から21または23のいずれか一項に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子の使用。
【請求項32】
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質であって、免疫調節生体分子は、前記免疫調節生体分子を骨髄系細胞に標的化する際に使用するための、免疫応答を増強または抑制するタンパク質である、融合タンパク質。
【請求項33】
前記融合タンパク質が、リルーティング分子をさらに含み、前記リルーティング分子が、その融合タンパク質が、前記アポリポタンパク質もしくはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子であり、好ましくは、前記リルーティング分子が、請求項15に定義されるリルーティング分子である、請求項32に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項34】
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質であって、リルーティング分子は、融合タンパク質が、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、融合タンパク質。
【請求項35】
前記リルーティング分子が、請求項12から19のいずれか一項に定義されるリルーティング分子である、請求項34に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
前記融合タンパク質が免疫調節生体分子をさらに含み、前記免疫調節生体分子が免疫応答を増強または抑制するタンパク質であり、好ましくは前記免疫調節生体分子が請求項9または10に定義される免疫調節生体分子である、請求項34または35に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
請求項34から36のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項38】
請求項34から36のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項37に記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項39】
医薬品として使用するための、請求項34から36のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項37に記載の核酸、または請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
免疫関連障害の治療に使用するための、好ましくは、前記免疫関連障害が、癌、炎症、感染症、自己免疫障害、アレルギー、臓器移植拒絶、および移植片対宿主病(GVH)からなる群から選択される免疫関連障害である、請求項34から36のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項37に記載の核酸、または請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記免疫調節生体分子を標的細胞に標的化する際に使用するための、請求項36に記載の融合タンパク質、請求項36に記載の融合タンパク質をコードする核酸、または請求項36に従属する場合、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項42】
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびインターロイキン-4(IL-4)を含む融合タンパク質。
【請求項43】
前記融合タンパク質がリルーティング分子をさらに含み、前記リルーティング分子が、その融合タンパク質が、前記アポリポタンパク質もしくはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子であり、好ましくは、前記リルーティング分子が、請求項12から19のいずれか一項に定義されるリルーティング分子である、請求項42に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
前記アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が請求項20に定義される、請求項42または43に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
請求項42から44のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項46】
請求項42から44のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項45に記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項47】
医薬品として使用するための、請求項42から44のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項45に記載の核酸、または請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
免疫関連障害の前記治療に使用するための、請求項42から44のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項45に記載の核酸、または請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記免疫関連障害が、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは、前記過剰炎症および/または前記免疫麻痺が、敗血症、心筋梗塞、脳卒中、癌、または多発性硬化症によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる、請求項48に記載の使用のための融合タンパク質、請求項48に記載の使用のための核酸、または請求項48に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項50】
IL-4を標的細胞に標的化する際に使用するための、請求項42から44のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項45に記載の核酸、または請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項51】
IL-4を骨髄系細胞に標的化する際に使用するための、請求項42から44のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項45に記載の核酸、または請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項52】
骨髄標的化分子およびIL-4を含む融合タンパク質であって、前記骨髄標的化分子が前記IL-4を骨髄系細胞に標的化することができる、融合タンパク質。
【請求項53】
前記IL-4が、配列番号43と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一のアミノ酸配列、またはその環状置換を含むポリペプチドである、請求項52に記載の融合タンパク質。
【請求項54】
前記骨髄標的化分子が、抗体もしくはその抗原結合断片、骨髄標的化ペプチドまたは骨髄標的化タンパク質から選択され、好ましくは前記骨髄標的化ペプチドまたは骨髄標的化タンパク質が、前記標的に存在する受容体のリガンドである、請求項52または53に記載の融合タンパク質。
【請求項55】
前記抗体またはその抗原結合断片が、Fab、Fab
2、scFv、scFv-Fc、dAb-Fc、遊離軽鎖抗体、半抗体、二重特異性Fab2、Fab
3、三重特異性Fab3ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、IgG、IgNAR、一価IgG、V
hHまたはVNARから選択される、請求項54に記載の融合タンパク質。
【請求項56】
請求項52から55のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項57】
配列番号44と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一の核酸配列を含むか、または、配列番号43と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一の配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含み、骨髄系細胞における標的化発現のための手段をさらに含む核酸であって、
前記手段が、
-前記核酸に作動可能に連結された前記骨髄系細胞における選択的または誘導的発現のためのプロモーター、または
-前記骨髄系細胞において前記核酸を安定的に発現することができる前記核酸を含むウイルス発現ベクター、または
-1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質、リン脂質、前記核酸、および任意選択でステロールを含む脂質ナノ粒子
から選択される、核酸。
【請求項58】
請求項52から55のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項56もしくは57に記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項59】
医薬品として使用するための、請求項52から55のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項56もしくは57に記載の核酸、または請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
免疫関連障害の前記治療に使用するための、請求項52から55のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項56もしくは57に記載の核酸、または請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記免疫関連障害が、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは、前記過剰炎症および/または前記免疫麻痺が、敗血症、心筋梗塞または脳卒中によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる、請求項60に記載の使用のための融合タンパク質、請求項60に記載の使用のための核酸、または請求項60に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項62】
細胞、器官、組織または生物における訓練された免疫の刺激または促進におけるIL-4のインビボ、インビトロまたはエクスビボでの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合タンパク質の分野に関し、より詳細には、免疫関連障害の治療に使用が見出される融合タンパク質に関する。本発明はさらに、融合タンパク質を含む脂質ナノ粒子およびその作製方法に関する。最後に、本発明は、融合タンパク質または脂質ナノ粒子を使用する治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの有望な治療薬は、身体からの治療薬の急速な除去に起因する循環時間の不足によって妨げられる。例えば、サイトカインは、多くの免疫学的用途において非常に有望な用途を保持し得ることが見出された。しかしながら、体内での非常に短い半減期のために、意図された標的に効果を及ぼすことができないか、または効果を達成するために毒の量が必要であるかのいずれかである。したがって、治療薬の循環半減期を安全に減少させるための改善された方法が必要とされている。
【0003】
さらに、多くの有望な治療薬は、意図された標的部位に到達しないか、または不十分であるか、または望ましくないオフターゲット効果を示すという事実に苛まされている。したがって、治療薬の標的化を改善することがさらに必要とされている。
【0004】
とりわけ、これらの問題は、添付の特許請求の範囲に定義される生成物および方法によって対処される。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、アポリポタンパク質が、治療薬の担体として使用することができ、アポリポタンパク質が特定の細胞、組織または器官を標的とするようにさらに修飾され得るという本発明者らの発見に基づく。本発明者らは、サイトカインなどの免疫調節生体分子とアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物との融合タンパク質が、血中での半減期の大幅な延長を示し、それにより、毒性濃度の投与を必要とせずに治療の方式でサイトカインなどの免疫調節生体分子を使用する可能性が開かれることを見出した。さらに、アポリポタンパク質またはその模倣物は、一緒に融合された場合、サイトカインなどの免疫調節生体分子の標的化を可能にすることが理解された。
【0006】
融合タンパク質またはアポリポタンパク質(またはその模倣物)を、それをリルーティング分子に連結することによって意図された標的に向けることが可能であることがさらに認識された。さらに、本発明者らは、予想外にも、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物への免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子の融合が、前記免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子を脂質ナノ粒子に容易に組み込み、前記免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子を前記脂質ナノ粒子を取り囲む環境に曝露することを可能にすることを見出した。このようにすると、アポリポタンパク質(またはその模倣物)または融合タンパク質が、さもなければ到達しないかまたは不十分な到達の細胞、組織または器官に標的化され得るか、またはオフターゲット効果を低減するために使用され得る。
【0007】
融合タンパク質は、そのまま使用され得る、つまりリポタンパク質または脂質ナノ粒子の一部としてではないことを意味する。このようにすると、融合タンパク質は、免疫調節生体分子を標的部位に送達するための担体として役立ち得る。あるいは、融合タンパク質は、脂質ナノ粒子を調製するために使用され得る。
【0008】
本発明の第1の態様は、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質、を含み、
免疫調節生体分子が、免疫応答を増強または抑制するタンパク質である、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を提供する。
【0009】
本発明のさらなる態様は、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質、を含み、
リルーティング分子は、その融合タンパク質が、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を提供する。
【0010】
本発明のさらなる態様は、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、免疫調節生体分子、およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質、を含み、
免疫調節生体分子が、免疫応答を増強または抑制するタンパク質であり、
リルーティング分子は、その融合タンパク質が、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を提供する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質であって、免疫調節生体分子が免疫応答を増強または抑制するタンパク質である、融合タンパク質、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、およびリルーティング分子を含む融合タンパク質であって、リルーティング分子が、その融合タンパク質が、アポリポタンパク質もしくはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、融合タンパク質、および
リン脂質、を含む、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を提供する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載されているアポリポタンパク質脂質ナノ粒子を製造する方法であって、
a1)1つまたはそれ以上の単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質を得るために、1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質融合タンパク質を発現および単離する工程であって、
1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質融合タンパク質が、
免疫調節生体分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
リルーティング分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
免疫調節生体分子およびリルーティング分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、および
それらの組合せ
からなる群から選択される、工程、および/または
a2)1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物を化学的にコンジュゲートし、1つまたはそれ以上のコンジュゲートされたアポリポタンパク質を単離して、1つまたはそれ以上の単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を得る工程であって、
1つまたはそれ以上のコンジュゲートされたアポリポタンパク質が、
免疫調節生体分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
リルーティング分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
免疫調節生体分子およびリルーティング分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、および
それらの組合せ
からなる群から選択される、工程、および
b)工程a1で得られた1つまたはそれ以上の単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質および/または工程a2で得られた1つまたはそれ以上の単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を、リン脂質、ならびに任意選択でステロールおよび/または脂質と組み合わせて、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を得る工程
を含む、方法を提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、本明細書に教示される方法によって得られる、またはそれによって得ることができるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子を提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様は、本明細書で教示されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、医薬品として使用するための、本明細書で教示されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子または本明細書で教示される医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、免疫関連障害の治療に使用するための、本明細書で教示されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子または本明細書で教示される医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、前記免疫調節生体分子を標的細胞、好ましくは骨髄系細胞に標的化する際に使用するための、本明細書において教示されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子または本明細書において教示される医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、免疫調節生体分子を標的に送達するための、好ましくは標的が細胞、組織および/または器官である、本明細書において教示されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子の使用を提供する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質であって、免疫調節生体分子は、前記免疫調節生体分子を骨髄系細胞に標的化する際に使用するための、免疫応答を増強または抑制するタンパク質である、融合タンパク質を提供する。
【0020】
本発明のさらなる態様は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質であって、リルーティング分子は、融合タンパク質が、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、融合タンパク質を提供する。
【0021】
本発明のさらなる態様は、本明細書において教示されるアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0022】
本発明のさらなる態様は、本明細書で教示される融合タンパク質、本明細書で教示される核酸、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明のさらなる態様は、医薬品として使用するための、本明細書で教示される融合タンパク質、本明細書で教示される核酸、または本明細書で教示される医薬組成物を提供する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、免疫関連障害の治療に使用するための本明細書に教示される融合タンパク質、本明細書に教示される核酸または本明細書に教示される医薬組成物を提供し、好ましくは、免疫関連障害は、癌、炎症、感染症、自己免疫障害、アレルギー、臓器移植拒絶および移植片対宿主病(GVH)からなる群から選択される免疫関連障害である。
【0025】
さらなる態様は、本明細書に教示される融合タンパク質、本明細書に教示される融合タンパク質をコードする核酸、または免疫調節生体分子を含む場合、本明細書に教示される医薬組成物を提供し、免疫調節生体分子は、前記免疫調節生体分子を標的細胞に標的化する際に使用するための、免疫応答を増強または抑制するタンパク質である。
【0026】
実施例の節によって支持されるように、本発明者らは、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、好ましくはApoA1とIL-4との融合タンパク質が、IL-4を骨髄区画に標的化することを可能にすることを見出した。彼らが驚いたことに、本発明者らは、IL-4が同時に炎症を軽減し、特に骨髄区画に標的化された場合に、訓練された免疫を誘導することができることを見出した。したがって、本発明者らは、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、好ましくはApoA1とIL-4との融合タンパク質を使用して、訓練された免疫を促進することによって免疫関連障害を予防することができると結論付けた。さらに、本発明者らは、前記融合タンパク質を骨髄系細胞親和性脂質ナノ粒子に組み込むことによって、自然免疫細胞に対するIL-4の薬物動態学的プロファイルおよびバイオアベイラビリティをさらに改善することができることを見出した。そのようなIL-4融合タンパク質の脂質ナノ粒子への組み込みは、骨髄区画を標的とするその能力を妨げない。
【0027】
したがって、本発明のさらなる態様は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびインターロイキン-4(IL-4)を含む融合タンパク質を提供する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、本明細書において教示されるアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびインターロイキン-4(IL-4)を含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0029】
本発明のさらなる態様は、本明細書において教示されるアポリポタンパク質もしくはアポリポタンパク質模倣物およびインターロイキン-4(IL-4)を含む融合タンパク質、または本明細書において教示される前記融合タンパク質をコードする核酸、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
本発明のさらなる態様は、本明細書において教示されるアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびインターロイキン-4(IL-4)を含む融合タンパク質、本明細書において教示されるそのような融合タンパク質をコードする核酸、または医薬品として使用するためのそのような融合タンパク質もしくは核酸を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、本明細書において教示されるアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびインターロイキン-4(IL-4)を含む融合タンパク質、本明細書において教示されるようなそのような融合タンパク質をコードする核酸、または免疫関連障害の治療において使用するためのそのような融合タンパク質もしくは核酸を含む医薬組成物を提供し、好ましくは、免疫関連障害は、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは、過剰炎症および/または免疫麻痺は、敗血症、心筋梗塞、脳卒中、癌、または多発性硬化症によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる。
【0032】
本発明のさらなる態様は、本明細書において教示されるアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびインターロイキン-4(IL-4)を含む融合タンパク質、本明細書において教示されるそのような融合タンパク質をコードする核酸、またはIL-4を標的細胞、好ましくは骨髄系細胞に標的化する際に使用するためのそのような融合タンパク質または核酸を含む医薬組成物を提供する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、骨髄標的化分子およびIL-4を含む融合タンパク質であって、骨髄標的化分子がIL-4を骨髄系細胞に標的化することができる融合タンパク質を提供する。
【0034】
本発明のさらなる態様は、本明細書中で教示されるような骨髄標的化分子およびIL-4を含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0035】
本発明のさらなる態様は、配列番号44と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の核酸配列を含むか、または、配列番号43と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含み、骨髄系細胞における標的化発現のための手段をさらに含む核酸であって、前記手段が、
-前記核酸に作動可能に連結された前記骨髄系細胞における選択的または誘導的発現のためのプロモーター、または
-前記骨髄系細胞において前記核酸を安定して発現することができる前記核酸を含むウイルス発現ベクター、または
-1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質、リン脂質、前記核酸および任意選択でステロールを含む脂質ナノ粒子から選択される核酸を提供する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、本明細書において教示される骨髄標的化分子およびIL-4を含む融合タンパク質、または本明細書において教示される前記融合タンパク質をコードする核酸、または本明細書において教示される骨髄系細胞における標的化発現のための手段を含む核酸、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0037】
本発明のさらなる態様では、本明細書において教示される骨髄標的化分子およびIL-4を含む融合タンパク質、または本明細書において教示される前記融合タンパク質をコードする核酸、または本明細書において教示される骨髄系細胞における標的化発現のための手段を含む核酸、または医薬品として使用するための本明細書において教示される前記融合タンパク質もしくは核酸を含む医薬組成物。
【0038】
本発明のさらなる態様は、本明細書において教示される骨髄標的化分子およびIL-4を含む融合タンパク質、または本明細書において教示される前記融合タンパク質をコードする核酸、または本明細書において教示される骨髄系細胞における標的化発現のための手段を含む核酸、または免疫関連障害の治療における使用のための、本明細書において教示される前記融合タンパク質もしくは核酸を含む医薬組成物を提供する。
【0039】
本発明のさらなる態様は、細胞、器官、組織または生物における訓練された免疫を刺激または促進する際のIL-4のインビボ、インビトロ、またはエクスビボでの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】脂質ナノ粒子(球体またはディスク)における例示的なアポリポタンパク質融合の任意選択の集合およびその後の標的細胞への結合の概略的概観を示す。
【0041】
【
図2】異なる想定されるアポリポタンパク質およびその後の脂質ナノ粒子における集合の概略的概観を示す。以下の融合タンパク質が示されている(模式的に):左上には、免疫調節生体分子に融合したアポリポタンパク質とリルーティング分子に融合したアポリポタンパク質の両方が示されている。左下は、免疫調節生体分子に融合したアポリポタンパク質を示す。右上は、リルーティング分子に融合したアポリポタンパク質を示す。右下は、免疫調節生体分子およびリルーティング分子に融合したアポリポタンパク質を示す。
【0042】
【
図3-1】異なるアポリポタンパク質融合構築物(ApoA1-IL1B、ApoA1-IL38、ApoA1-IL2)の発現および精製を実証するSDS-PAGEゲルを示す。矩形は、所望のタンパク質に対応するバンドを示す。(P:細胞の残屑を含むペレット、SN:可溶性タンパク質画分を含む上清、FT:Ni-NTAカラムに適用されたSNのフロースルー、A:10mMのイミダゾールを使用した1回目の洗浄、A50:50mMのイミダゾールを使用した2回目の洗浄、E1:溶出画分1、E2:溶出画分2、E3:溶出画分3、E4:溶出画分4、FW:500mMのイミダゾールを使用した最終洗浄。)
【
図3-2】異なるアポリポタンパク質融合構築物(ApoA1-IL1B、ApoA1-IL38、ApoA1-IL2)の発現および精製を実証するSDS-PAGEゲルを示す。矩形は、所望のタンパク質に対応するバンドを示す。(P:細胞の残屑を含むペレット、SN:可溶性タンパク質画分を含む上清、FT:Ni-NTAカラムに適用されたSNのフロースルー、A:10mMのイミダゾールを使用した1回目の洗浄、A50:50mMのイミダゾールを使用した2回目の洗浄、E1:溶出画分1、E2:溶出画分2、E3:溶出画分3、E4:溶出画分4、FW:500mMのイミダゾールを使用した最終洗浄。)
【0043】
【
図4】4つの脂質ナノ粒子についての動的光散乱測定の結果を示し、そのうちの3つはそれぞれ異なるアポリポタンパク質(ApoA1-IL1B、ApoA1-IL38、ApoA1-IL4)を含有し、1つは対照ナノ粒子としてapoA1を含有する。平均数直径(濃い灰色)および多分散性指数(PdI)(薄い灰色)を、11日間にわたって、これらのナノ粒子について判定した。
【0044】
【
図5】147または279のいずれかの位置にセリンからシステインへの変異が導入されたapoA1の発現および精製を示すSDS-PAGEゲルを示す。矩形は、変異したapoA1に対応するバンドを示す。
【0045】
【
図6-1】apoA1変異体の四重極飛行時間(Q-ToF)の結果を示す。両方のグラフにおいて、クロマトグラムは右上隅にプロットされており、この下にクロマトグラムからのメインピークのm/z値がある。デコンボリューションされた質量スペクトルは、所望の突然変異体apoA1タンパク質が存在することを示す。
【
図6-2】apoA1変異体の四重極飛行時間(Q-ToF)の結果を示す。両方のグラフにおいて、クロマトグラムは右上隅にプロットされており、この下にクロマトグラムからのメインピークのm/z値がある。デコンボリューションされた質量スペクトルは、所望の突然変異体apoA1タンパク質が存在することを示す。
【0046】
【
図7】1つのN末端アジドを含むように修飾されたインターロイキン(IL)-4のHPLC-MSクロマトグラムを示す。クロマトグラムのピークが示すタンパク質に対応する質量を示す。
【0047】
【
図8】使用したIL-4、N末端アジドで修飾されたIL-4(4°Cまたは20°Cでの反応)、PEG-リンカー含有DBCO基に連結されたapoA1、およびアジドを含むように修飾されたIL-4をリンカーおよびDBCO基を介してapoA1に連結した反応生成物(4°Cまたは20°Cでの反応)の純度を示すSDS-PAGEゲルを示す。矩形は、所望のコンジュゲーション生成物に対応するバンドを示す。
【0048】
【
図9】市販のIL-4(哺乳動物)、組換え発現されたIL-4(細菌)、組換え発現されたapoA1-IL4融合タンパク質および化学的にコンジュゲートされたapoA1-IL4融合タンパク質の結合を評価するHEK293 IL-4レポーター細胞アッセイの結果を示す。吸光度は、IL-4のその受容体への結合レベルに対応する。
【0049】
【
図10】化学的apoA1-IL2融合構築物(右パネル)および組換えapoA1-IL2融合構築物(左パネル)(apoA1-IL2野生型「ApoA1-IL2」またはapoA1-IL2変異体「ApoA1-IL2v4」)のSDS-PAGE分析を示す。長方形は、それぞれapoA1-IL2またはapoA1-IL2v4融合構築物に対応するバンドを示す。
【0050】
【
図11】極低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM)を用いたapoA1-IL2融合タンパク質を含む円盤状ナノ粒子の成功裏の製剤化(右パネル)、および動的光散乱(DLS)を用いた21日間のPBSでのナノ粒子サイズおよび安定性の分析(左パネル)を示す。
【0051】
【
図12】CD4+またはCD8+T細胞の増殖を刺激するapoA1-IL2融合タンパク質の能力を示す。略語:PHA、フィトヘマグルチニン。
【0052】
【
図13】化学的apoA1-IL1β融合構築物(右パネル)および組換えapoA1-IL1β融合構築物(左パネル)のSDS-PAGE分析を示す。矢印(左パネル)または長方形(右パネル)は、apoA1-IL1β融合構築物に対応するバンドを示す。
【0053】
【
図14】極低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM)を用いたapoA1-IL1β融合タンパク質を含む円盤状ナノ粒子の成功裏の製剤化(右パネル)、および動的光散乱(DLS)を用いた21日間のPBSでのナノ粒子サイズおよび安定性の分析(左パネル)を示す。
【0054】
【
図15】化学的apoA1-IL38融合構築物(下のパネル)および組換えapoA1-IL38融合構築物(上のパネル)のSDS-PAGE分析を示す。矢印(上のパネル)または長方形(下のパネル)は、apoA1-IL38融合構築物に対応するバンドを示す。
【0055】
【
図16】極低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM)を用いたapoA1-IL38融合タンパク質を含む円盤状ナノ粒子の成功裏の製剤化(右パネル)、および動的光散乱(DLS)を用いた21日間のPBSでのナノ粒子サイズおよび安定性の分析(左パネル)を示す。
【0056】
【
図17-1】IL4は急性炎症を阻害するが、訓練された免疫を誘導する。(A)インビトロ直接炎症実験の概略図。(B)ヒト初代単球の24時間の刺激後のTNF、IL6およびIL1Raレベル。(C)インビトロで訓練された免疫実験の概略図。(D)β-グルカンで訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(E)IL4で訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(F)IL4で訓練された細胞における解糖(左)およびミトコンドリア(右)代謝のSeahorse分析。データを平均±SDとして示す。
【
図17-2】IL4は急性炎症を阻害するが、訓練された免疫を誘導する。(A)インビトロ直接炎症実験の概略図。(B)ヒト初代単球の24時間の刺激後のTNF、IL6およびIL1Raレベル。(C)インビトロで訓練された免疫実験の概略図。(D)β-グルカンで訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(E)IL4で訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(F)IL4で訓練された細胞における解糖(左)およびミトコンドリア(右)代謝のSeahorse分析。データを平均±SDとして示す。
【0057】
【
図18-1】IL4誘導性の訓練された免疫を媒介する免疫およびエピジェネティック機構。(A)前述の第一級IL4シグナル伝達経路の概略的概観。(B)重要なIL4シグナル伝達経路を遮断しながら、単球の24時間の刺激後のTNFおよびIL6レベル。(C)重要なIL4シグナル伝達経路を遮断しながら、IL4で訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(D)再刺激の前後における、IL4で訓練された細胞のトランスクリプトームのヒートマップ。(E)IL4で訓練された免疫における転写因子モチーフ濃縮分析(ヒートマップはzスコアを示す)。(F)IL4で訓練された免疫トランスクリプトームの経路濃縮分析。(G)SET7メチルトランスフェラーゼインヒビターの存在下でIL4で訓練した細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(H)IL4で訓練された細胞におけるTNFのChIP-qPCR AUC分析。棒グラフのデータは平均±SDとして提示している。
【
図18-2】IL4誘導性の訓練された免疫を媒介する免疫およびエピジェネティック機構。(A)前述の第一級IL4シグナル伝達経路の概略的概観。(B)重要なIL4シグナル伝達経路を遮断しながら、単球の24時間の刺激後のTNFおよびIL6レベル。(C)重要なIL4シグナル伝達経路を遮断しながら、IL4で訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(D)再刺激の前後における、IL4で訓練された細胞のトランスクリプトームのヒートマップ。(E)IL4で訓練された免疫における転写因子モチーフ濃縮分析(ヒートマップはzスコアを示す)。(F)IL4で訓練された免疫トランスクリプトームの経路濃縮分析。(G)SET7メチルトランスフェラーゼインヒビターの存在下でIL4で訓練した細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(H)IL4で訓練された細胞におけるTNFのChIP-qPCR AUC分析。棒グラフのデータは平均±SDとして提示している。
【0058】
【
図19-1】エンジニアリングしたapoA1-IL4融合タンパク質。(A)apoA1ベースの融合タンパク質プラットフォームの概略的概観。(B)apoA1-IL4融合タンパク質構造の概略図。(C)組換え発現されたタンパク質のSDS-PAGE、および(D)組換え発現されたタンパク質のウエスタンブロット。内因性IL4およびapoA1に特異的な抗体。(E)apoA1-IL4のクロマトグラムおよびQ-TOF-MSスペクトル。(F)SPRを使用したIL4RαへのapoA1-IL4結合の動態。(G)apoA1-IL4による、IL4RαおよびIL13Rα1を発現するHEK-Blue細胞の活性化。データを平均±SDとして示す。
【
図19-2】エンジニアリングしたapoA1-IL4融合タンパク質。(A)apoA1ベースの融合タンパク質プラットフォームの概略的概観。(B)apoA1-IL4融合タンパク質構造の概略図。(C)組換え発現されたタンパク質のSDS-PAGE、および(D)組換え発現されたタンパク質のウエスタンブロット。内因性IL4およびapoA1に特異的な抗体。(E)apoA1-IL4のクロマトグラムおよびQ-TOF-MSスペクトル。(F)SPRを使用したIL4RαへのapoA1-IL4結合の動態。(G)apoA1-IL4による、IL4RαおよびIL13Rα1を発現するHEK-Blue細胞の活性化。データを平均±SDとして示す。
【0059】
【
図20-1】ナノ粒子プラットフォームにおけるapoA1-IL4の統合。(A)円盤状(上のパネル)および球状のIL4-aNP(下のパネル)および(B)低温TEM画像の概略的な表現。(C)IL4-aNPサイズの分布および(D)動的光散乱によって判定される経時的なIL4-aNPの安定性。IL4-aNPサイズを数平均として報告する。(E)蛍光標識されたapoA1(-IL4)、または(IL4-)aNPでインキュベートし、抗IL4Rα抗体で染色したヒト単球の超解像蛍光顕微鏡(dSTORM)画像。タンパク質とIL4Rαとの間の共局在は、矢印によって認識することができる。右側の後続の画像では、関心対象の白色領域が拡大されている。データを平均±SDとして示す。
【
図20-2】ナノ粒子プラットフォームにおけるapoA1-IL4の統合。(A)円盤状(上のパネル)および球状のIL4-aNP(下のパネル)および(B)低温TEM画像の概略的な表現。(C)IL4-aNPサイズの分布および(D)動的光散乱によって判定される経時的なIL4-aNPの安定性。IL4-aNPサイズを数平均として報告する。(E)蛍光標識されたapoA1(-IL4)、または(IL4-)aNPでインキュベートし、抗IL4Rα抗体で染色したヒト単球の超解像蛍光顕微鏡(dSTORM)画像。タンパク質とIL4Rαとの間の共局在は、矢印によって認識することができる。右側の後続の画像では、関心対象の白色領域が拡大されている。データを平均±SDとして示す。
【0060】
【
図21-1】IL4-aNPの免疫学的インビトロ、インビボおよびエクスビボでの治療評価。(A)インビトロでの直接炎症および訓練された免疫実験の概略的概観。(B)IL4-aNPの存在下で単球を24時間刺激した後のTNFおよびIL6レベル。(C)IL4(-aNP)で訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(D)IL4-ナノ療法を含むマウスのインビボ寛容モデルの概略的概観。(E)IL4m-aNPを処置したマウスのLPS再曝露後の血清TNFおよびIL6レベル。マン・ホイットニーU検定を統計的比較のために使用した。(F)エクスビボ寛容逆転を含むヒト実験内毒素血症モデルの概略的概観。(G)ヒト・インビボLPS寛容化細胞のエクスビボ再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(H)TNFおよびIL6は、ヒト・インビボLPS寛容化細胞のエクスビボ再刺激後に倍数増加する。データを平均±SDとして示す。
【
図21-2】IL4-aNPの免疫学的インビトロ、インビボおよびエクスビボでの治療評価。(A)インビトロでの直接炎症および訓練された免疫実験の概略的概観。(B)IL4-aNPの存在下で単球を24時間刺激した後のTNFおよびIL6レベル。(C)IL4(-aNP)で訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(D)IL4-ナノ療法を含むマウスのインビボ寛容モデルの概略的概観。(E)IL4m-aNPを処置したマウスのLPS再曝露後の血清TNFおよびIL6レベル。マン・ホイットニーU検定を統計的比較のために使用した。(F)エクスビボ寛容逆転を含むヒト実験内毒素血症モデルの概略的概観。(G)ヒト・インビボLPS寛容化細胞のエクスビボ再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(H)TNFおよびIL6は、ヒト・インビボLPS寛容化細胞のエクスビボ再刺激後に倍数増加する。データを平均±SDとして示す。
【
図21-3】IL4-aNPの免疫学的インビトロ、インビボおよびエクスビボでの治療評価。(A)インビトロでの直接炎症および訓練された免疫実験の概略的概観。(B)IL4-aNPの存在下で単球を24時間刺激した後のTNFおよびIL6レベル。(C)IL4(-aNP)で訓練された細胞の再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(D)IL4-ナノ療法を含むマウスのインビボ寛容モデルの概略的概観。(E)IL4m-aNPを処置したマウスのLPS再曝露後の血清TNFおよびIL6レベル。マン・ホイットニーU検定を統計的比較のために使用した。(F)エクスビボ寛容逆転を含むヒト実験内毒素血症モデルの概略的概観。(G)ヒト・インビボLPS寛容化細胞のエクスビボ再刺激後のTNFおよびIL6レベル。(H)TNFおよびIL6は、ヒト・インビボLPS寛容化細胞のエクスビボ再刺激後に倍数増加する。データを平均±SDとして示す。
【0061】
【
図22】脂質ナノ粒子(ディスク)にアポリポタンパク質とリルーティングタンパク質とを含む例示的なアポリポタンパク質融合物の任意選択の集合の概略的概観を示す。
【0062】
【
図23】Clearcoli細胞におけるVHHCD8-apoA1融合タンパク質の発現を示す。IMAC精製後にわずかなタンパク質夾雑物が存在する[レーンE1]。最も顕著なバンドは、43.3kDa(長方形)の分子量を有する融合タンパク質に対応する。
【0063】
【
図24】極低温透過型電子顕微鏡(cryo-TEM)を用いたVHHCD8-apoA1融合タンパク質を含む円盤状ナノ粒子の成功裏の製剤化(右パネル)、および動的光散乱(DLS)を用いた14日間のナノ粒子サイズおよび多分散性指数(PDI)の分析(左パネル)を示す。
【0064】
【
図25】マウス脾細胞(上のパネル:脾細胞由来のCD3+T細胞;下のパネル:脾臓からのすべての細胞)における蛍光標識されたVHHCD8-apoA1およびapoA1の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【0065】
【
図26】VHHCD8-apoA1およびapoA1と共に製剤化され、マウス脾細胞の粒子の脂質構造に蛍光色素を含む円盤状および球状aNPの平均蛍光強度(MFI)を示す。
【0066】
【
図27-1】静脈内注射後のインビボ薬物動態、生体内分布および安全性プロファイル。(A)PET/CT 2は、
89Zr標識された構築物の注入後24時間でレンダリングされる。(B)
89Zr標識された構築物の血中半減期(n=5、2相減衰関数でフィッティング)。(C)
89Zr標識構築物注射24時間後の組織のエクスビボのガンマ計数(n=5)、数は標的とクリアランス器官の比を表す。(D)フローサイトメトリーによって測定した、脾臓および骨髄におけるDiO標識円盤状IL4-aNPの細胞型特異的生体内分布。(E)非ヒト霊長類における
89Zr-IL4-aNP血中半減期。(F)非ヒト霊長類に注射した
89Zr-IL4-aNPにおける経時的な器官SUV平均(n=2)。(G)非ヒト霊長類(n=2)における
89Zr-IL4-aNP注射後48時間の臓器特異的SUV平均。(H)
89Zr-IL4-aNP注射の48時間後の非ヒト霊長類のPET/MRIスキャン。データは、必要に応じて、平均±SDとして提示される。
【
図27-2】静脈内注射後のインビボ薬物動態、生体内分布および安全性プロファイル。(A)PET/CT 2は、
89Zr標識された構築物の注入後24時間でレンダリングされる。(B)
89Zr標識された構築物の血中半減期(n=5、2相減衰関数でフィッティング)。(C)
89Zr標識構築物注射24時間後の組織のエクスビボのガンマ計数(n=5)、数は標的とクリアランス器官の比を表す。(D)フローサイトメトリーによって測定した、脾臓および骨髄におけるDiO標識円盤状IL4-aNPの細胞型特異的生体内分布。(E)非ヒト霊長類における
89Zr-IL4-aNP血中半減期。(F)非ヒト霊長類に注射した
89Zr-IL4-aNPにおける経時的な器官SUV平均(n=2)。(G)非ヒト霊長類(n=2)における
89Zr-IL4-aNP注射後48時間の臓器特異的SUV平均。(H)
89Zr-IL4-aNP注射の48時間後の非ヒト霊長類のPET/MRIスキャン。データは、必要に応じて、平均±SDとして提示される。
【
図27-3】静脈内注射後のインビボ薬物動態、生体内分布および安全性プロファイル。(A)PET/CT 2は、
89Zr標識された構築物の注入後24時間でレンダリングされる。(B)
89Zr標識された構築物の血中半減期(n=5、2相減衰関数でフィッティング)。(C)
89Zr標識構築物注射24時間後の組織のエクスビボのガンマ計数(n=5)、数は標的とクリアランス器官の比を表す。(D)フローサイトメトリーによって測定した、脾臓および骨髄におけるDiO標識円盤状IL4-aNPの細胞型特異的生体内分布。(E)非ヒト霊長類における
89Zr-IL4-aNP血中半減期。(F)非ヒト霊長類に注射した
89Zr-IL4-aNPにおける経時的な器官SUV平均(n=2)。(G)非ヒト霊長類(n=2)における
89Zr-IL4-aNP注射後48時間の臓器特異的SUV平均。(H)
89Zr-IL4-aNP注射の48時間後の非ヒト霊長類のPET/MRIスキャン。データは、必要に応じて、平均±SDとして提示される。
【発明を実施するための形態】
【0067】
端点による数値範囲の列挙は、全ての整数、および適切な場合にはそれぞれの範囲内に包含される分数、並びに列挙された端点を含む。これは、「~から~」という表現または「~から~の間」という表現または別の表現によって導入されるかどうかにかかわらず、数値範囲に適用される。本明細書に列挙された任意の数値範囲は、その中に包含される全ての部分範囲を含むことが意図されている。
【0068】
測定可能な値、例えばパラメータ、量、持続時間などを指す場合に本明細書で使用される「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、指定された値の変動および指定された値からの変動、例えば指定された値の+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下の変動を、そのような変動が開示された発明において実行するのに適切である限り包含することを意味する。修飾語「約(about)」または「およそ(approximately)」が指す値自体も具体的に、好ましくは開示されていることを理解されたい。
【0069】
さらに、明細書および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、特定されない限り、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的または時系列的な順序を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示されている以外の順序で動作することができることを理解されたい。
【0070】
本明細書における本発明の背景の議論は、本発明の文脈を説明するために含まれる。これは、言及された材料のいずれかが、特許請求の範囲のいずれかの優先日に、いずれかの国で公開された、公知の、または共通の一般知識の一部であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0071】
本開示を通して、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書は、特定の引用によって参照される。本明細書で引用される全ての文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、本明細書で具体的に言及されるそのような文書の教示またはセクションは、参照により組み込まれる。
【0072】
他に定義されない限り、技術用語および科学用語を含む、本明細書の開示で使用されている全ての用語は、本発明が属する当分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。更なる指針によって、本発明の教示をよりよく理解するために用語定義が含まれる。本発明の特定の態様または本発明の特定の実施形態に関連して特定の用語が定義される場合、そのような含意または意味は、他に定義されない限り、本明細書全体にわたって、すなわち本発明の他の態様または実施形態の文脈においても適用されることを意味する。
【0073】
以下の節では、本発明の異なる態様または実施形態がより詳細に定義される。そのように定義された各態様または実施形態は、そうでないことが明確に示されていない限り、任意の他の態様または実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された任意の他の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができる。
【0074】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一実施形態では」または「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたはそれ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内であり、当業者によって理解されるように、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれも、任意の組合せで使用することができる。
【0075】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化し、様々な本発明の態様の1つまたはそれ以上の理解を助ける目的で、単一の実施形態、図、またはその説明にまとめられることがあることを理解されたい。
【0076】
本明細書で使用される場合、単数形の言葉である「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、2つ以上の細胞の組合せなどを含む。
【0077】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、記載された事例の1つまたはそれ以上が、単独で、または記載された事例の少なくとも1つと組み合わせて、記載された事例のすべてまで発生し得る状況を指す。例えば、リストが群A、B、および/またはCを含むと記載されている場合、リストは、A単独、B単独、C単独、AとBの組合せ、AとCの組合せ、BとCの組合せ、またはA、B、およびCの組合せを含むことができる。
【0078】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、抗体の結合部分が結合し得る物質を指す。抗原内の特定の免疫反応性部位は、「エピトープ」(または抗原決定基)として公知である。抗体の標的またはその抗原結合部分は、本明細書で定義されるような抗原を含み得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、「少なくとも」特定の値、という用語は、その特定の値以上であることを意味する。例えば、「少なくとも2つ」は、「2つ以上」、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、...などと同じであると理解される。本明細書で使用される場合、「最大の」特定の値、という用語は、その特定の値以下であることを意味する。例えば、「最大5」は、「5以下」、すなわち、5、4、3、....-10、-11などと同じであると理解される。「1つまたはそれ以上」または「少なくとも1つ」という用語、例えば1またはそれ以上のメンバーまたはメンバーの群の少なくとも1のメンバーは、さらなる例示によってそれ自体明確であるが、この用語は、とりわけ、当該メンバーのいずれか1、または当該メンバーのいずれか2以上、例えば当該メンバーのいずれか3以上、4以上、5以上、6以上または7以上など、および全員までの当該メンバーへの言及を包含する。別の例では、「1つまたはそれ以上」または「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7またはそれ以上を指すことができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」という単語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのその変形は、記載された要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を含むが、任意の他の要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を排除するものではないと理解される。「含む」という動詞は、「から本質的になる」および「からなる」という動詞を含む。
【0081】
本明細書で使用される場合、「従来の技術」という用語は、本発明の方法で使用される従来の技術を実施する方法が当業者に明確である状況を指す。分子生物学、生化学、計算化学、細胞の培養、組換えDNA、バイオインフォマティクス、ゲノミクス、配列決定および関連分野における従来技術の実施は、当業者に周知であり、例えば、以下の文献参考文献:Sambrook et al.,Molecular Cloning.A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,1987 and periodic updates;および、the series Methods in Enzymology,Academic Press,San Diego。
【0082】
本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の同一性の尺度を指す。一般に、配列は、最高位の一致が得られるように整列される。「同一性」自体は、当分野で認識されている意味を有し、公開されている技術を使用して計算することができる。例えば:(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ED.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics And Genome Projects,Smith,D.W.,ED.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis Of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,And Griffin,H.G.,EDS.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis In Molecular Biology,Von Heinje,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer;Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991)を参照されたい。2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列間の同一性を測定するためのいくつかの方法が存在するが、「同一性」という用語は当業者に周知である(Carillo,H.,and Lipton,D.,SIAM J.Applied Math(1988)48:1073)。2つの配列の間における同一性または類似性を求めるために一般に用いられる方法には、Guide To Huge Computers,Martin J.Bishop,ed.,Academic Press,San Diego,1994,and Carillo,H.,and Lipton,D.,Siam J.Applied Math(1988)48:1073に開示される様々な方法が含まれるが、それらに限定されない。同一性および類似性を求めるための様々な方法がコンピュータープログラムにコード化されている。2つの配列の間における同一性および類似性を求めるための典型的なコンピュータープログラム法には、GCSプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research(1984)12(1):387),BLASTP,BLASTN,FASTA(Atschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.(1990)215:403)が含まれるが、それらに限定されない。
【0083】
例示として、特定の配列のポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも例えば95%「同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによって、ポリヌクレオチド配列が参照アミノ酸配列の各100ヌクレオチドにつき最大5つの点突然変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列の最大5%のヌクレオチドが欠失され得、および/または別のヌクレオチドで置換され得、および/または参照配列の全ヌクレオチドの最大5%の数のヌクレオチドが参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端の位置、またはそれらの末端の位置の間のどこにでも起こり得、参照配列のヌクレオチド間に個々に、または参照配列内の1つもしくはそれ以上の連続する群に散在する。
【0084】
同様に、配列番号Xの参照アミノ酸配列に対して少なくとも例えば95%「同一性」を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドは、そのアミノ酸配列が配列番号Xの参照アミノ酸の各100アミノ酸当たり最大5つのアミノ酸の変化を含み得ることを除いて、ポリペプチドのアミノ酸配列が参照配列と同一であることを意図する。換言すれば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、参照配列のアミノ酸残基の5%までが欠失もしくは別のアミノ酸で置換されていてもよく、または参照配列の全アミノ酸残基の5%までの数のアミノ酸が参照配列の中に挿入され得る。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置で、またはそれらの末端位置の間のいずれかの場所で起こり得、参照配列の残基の間に個別に、または参照配列内の1つもしくはそれ以上の連続する群に散在し得る。
【0085】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、それらの自然な状態から隔てられた生物の成分を使用して行われる実験または測定を指すことができる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「エクスビボ」という用語は、自然状態の変化を最小限に抑えながら、外部環境で生物の組織内または組織上で行われる実験または測定を指すことができる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「核酸」、「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」という用語は、DNA分子およびRNA分子を含むことを意図している。核酸(分子)は、一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0088】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチドを指す場合の「配列」、または「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」もしくは「ポリヌクレオチド配列」という用語は、核酸および/またはポリヌクレオチドの、または核酸および/またはポリヌクレオチド内のヌクレオチドの順序を指す。本発明の文脈の中で、第1の核酸配列は、さらなる核酸配列内に含まれ得るか、またはさらなる核酸配列と重複し得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」という用語は、交換可能に使用され、診断、予後診断、または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物の対象を指す。哺乳動物対象としては、ヒト、飼育動物、家畜、および動物園、競技用またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、ウシ、クマなどが挙げられる。本明細書で定義されるように、対象は生存していても死亡していてもよい。試料は、死後、すなわち死亡後の対象から採取することができ、および/または試料は、生きている対象から採取することができる。
【0090】
本明細書で使用される場合、交換可能に使用される「治療」、「処置」、「緩和」、「軽減」または「改善」という用語は、治療上の利益を含むがこれに限定されない有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療的利益とは、治療される基礎疾患の根絶または改善または進行の減少(または遅延)を意味する。また、患者が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、患者において減退の改善または減速または減少が観察されるように、基礎疾患に関連する生理学的症状のうちの1つまたはそれ以上の根絶または改善または進行の減少(または遅延)によって治療上の利益が達成される。
【0091】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、輸送することができる核酸分子が、連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子のことを指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す。「ベクター」という用語はまた、目的の核酸を含有するウイルス粒子(すなわちウイルスベクター)を指し得る。
【0092】
本発明の一部は、著作権保護の対象となる資料(例えば、これらに限定されるわけではないが、図表、機器の写真、または著作権保護が任意の管轄区域で利用可能であり、もしくは利用可能であり得る本提出物の任意の他の態様など)を含む。著作権者は、特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されているように、特許文書または特許発明の、いずれかの者によるファクシミリの複製に異議を唱えないが、それ以外の場合は、すべての著作権を留保する。
【0093】
本発明の方法、組成物、使用および他の態様に関する様々な用語は、本明細書および特許請求の範囲を通して使用される。そのような用語は、別段の指示がない限り、本発明が関連する当分野におけるそれらの通常の意味を与えられるべきである。他の具体的に定義された用語は、本明細書で提供される定義と一致する方法で解釈されるべきである。好ましい材料および方法が本明細書に記載されているが、本明細書に記載されているものと類似または等価ないずれかの方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができる。
【0094】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0095】
本発明は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が、治療薬の担体として使用することができ、アポリポタンパク質が特定の細胞、組織または器官を標的とするようにさらに修飾され得るという本発明者らの発見に基づく。本発明者らは、サイトカインとアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物との融合タンパク質が、血中での半減期の大幅な延長を示し、それにより、毒性濃度の投与を必要とせずに、治療の方式でサイトカインを使用する可能性を開くことを見出した。さらに、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物は、骨髄系細胞のような標的細胞、組織および/または器官などに融合された場合にサイトカインの標的化を可能にすることが理解された。本発明者らは、この概念がより広範に適用可能であり、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子などの広範囲の免疫調節生体分子にも使用できることを認識した。
【0096】
融合タンパク質またはアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物を、リルーティング分子に連結することによって、意図された標的に導くことが可能であることがさらに認識された。このようにすると、アポリポタンパク質(またはアポリポタンパク質模倣物)または融合タンパク質が、さもなければ到達しないかまたは不十分な到達の細胞、組織または器官に標的化され得るか、またはオフターゲット効果を低減するために使用され得る。
【0097】
したがって、第1の態様では、本発明は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる融合タンパク質であって、免疫調節生体分子が免疫応答を調節する(例えば、増強または抑制する)タンパク質である融合タンパク質に関する。
【0098】
第2の態様では、本発明は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる融合タンパク質に関し、リルーティング分子は、アポリポタンパク質に融合されたときに、アポリポタンパク質がリルーティング分子に融合されなかったときに結合するであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である。
【0099】
第3の態様では、本発明は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物ならびに免疫調節生体分子およびリルーティング分子を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる融合タンパク質に関する。
【0100】
融合タンパク質は、免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子とのアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の融合タンパク質であると好都合に表され得る。
融合タンパク質は、そのまま使用され得る、つまりリポタンパク質、脂質またはアポリポタンパク質脂質ナノ粒子の一部としてではないことを意味する。このようにすると、融合タンパク質は、免疫調節生体分子を標的部位に送達するための担体として役立ち得る。あるいは、リルーティング分子を使用して、融合タンパク質を細胞、組織、または器官などの特定の部位に標的化することができる。
【0101】
アポリポタンパク質は、トリグリセリドおよびコレステロールなどの脂質に結合してリポタンパク質を形成するタンパク質である。それらは、血液、脳脊髄液およびリンパで、脂質(および脂溶性ビタミン)を輸送する。リポタンパク質の脂質成分は水に不溶性である。しかしながら、それらの洗剤様(両親媒性)特性のために、アポリポタンパク質およびリン脂質などの他の両親媒性分子は、脂質を取り囲み、それ自体が水溶性であり、したがって水系循環(すなわち、血液、リンパ液)を介して運ばれ得るリポタンパク質粒子を作り出すことができる。リポタンパク質構造の安定化および脂質成分の可溶化に加えて、アポリポタンパク質はリポタンパク質受容体および脂質輸送タンパク質と相互作用し、それによってリポタンパク質の取り込みおよびクリアランスに関与する。
【0102】
脂質の輸送において、アポリポタンパク質は、リポタンパク質粒子の構造成分、細胞表面受容体および脂質輸送タンパク質のリガンド、ならびに酵素の補因子として機能する。異なるリポタンパク質粒子は、異なるクラスのアポリポタンパク質を含み、それらの機能に影響を及ぼす。例えば、アポリポタンパク質A-I(apoA1)は、高比重リポタンパク質(HDL)の主要な構造タンパク質成分であるが、他のリポタンパク質に、より少量で存在し、HDLは他のアポリポタンパク質を含む。
【0103】
本発明は、特定のタイプのアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物(例えば、ApoA1、ApoBまたはApoE)に限定されないことが想定される。したがって、実施形態では、本発明の融合タンパク質のアポリポタンパク質、例えば本発明の第1、第2または第3の態様による融合タンパク質のアポリポタンパク質は、apoA1、ApoA-1 Milano、apoA2、apoA4、apoA5、apoB48、apoB100、apoC-I、apoC-II、apoC-III、apoC-IV、apoD、apoE、apoF、apoH、apoL1、apoL2、apoL3、apoL4、apoL5、apoL6、apoLD1、apoM、apoO、apoOL、もしくはそれらの組合せ、またはそれらの模倣物から選択される。例えば、アポリポタンパク質は、apoA1、ApoA-1 Milano、apoA2、apoA4、apoA5、apoB48、apoB100、apoC-I、apoC-II、apoC-III、apoC-IV、apoE、apoL1、apoL2、apoL3、apoL4、apoL5、apoL6、またはそれらの組合せもしくはそれらの模倣物から選択され得る。より好ましくは、アポリポタンパク質は、apoA1、apoA4、apoC3、apoD、apoE、apoL1、apoL3、もしくはそれらの組合せ、またはそれらの模倣物から選択され得る。換言すれば、特定の実施形態において、アポリポタンパク質は、ApoA1、ApoA-1 Milano、ApoA4、ApoC3、ApoD、ApoE、ApoL1、ApoL3であるか、またはアポリポタンパク質模倣物が、ApoA1、ApoA-1 Milano、ApoA4、ApoC3、ApoD、ApoE、ApoL1、ApoL3の模倣物である。さらにより好ましくは、アポリポタンパク質はApoA1である。
【0104】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質はまた、アポリポタンパク質の断片であってもよい。好ましくは、アポリポタンパク質の断片は、アポリポタンパク質の生物学的活性、例えばアポリポタンパク質が脂質ナノ粒子に組み込まれる能力、または免疫調節生体分子を標的、例えば骨髄区画に標的化する能力を保持する。特定の実施形態では、アポリポタンパク質の断片は、少なくとも全長のアポリポタンパク質のATP結合カセットサブファミリーAメンバー1(ABCA1)、ATP結合カセットサブファミリーGメンバー1(ABCG1)および/またはスカベンジャー受容体クラスBタイプ1(SR-BI)結合領域を含み、それによって骨髄系細胞への結合を可能にする。特定の実施形態では、アポリポタンパク質の断片は、全長のアポリポタンパク質の少なくともαヘリックスを含む。これらのヘリックスは、一方の側が親水性(水性環境と相互作用する)であり、他方の側が疎水性(粒子内の脂質と相互作用する)である。
【0105】
ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に関して本明細書を通して使用される「断片」という用語は、一般に、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の一部、例えば典型的にはペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のN末端および/またはC末端が切断された形態を表す。好ましくは、断片は、当該ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列長の少なくとも約30%、例えば少なくとも約50%または少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、およびさらにより好ましくは少なくとも約95%またはさらに約99%を含むことができる。例えば、全長ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の長さを超えない限り、断片は、対応する全長ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の5個以上の連続アミノ酸、または10個以上の連続アミノ酸、または20個以上の連続アミノ酸、または30個以上の連続アミノ酸、例えば40個以上の連続アミノ酸、例えば50個以上の連続アミノ酸、例えば60個以上、70個以上、80個以上、90個以上、100個以上または200個以上の連続アミノ酸の配列を含み得る。
【0106】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質の断片は、全長のアポリポタンパク質の骨髄結合部分を含む。
【0107】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質はまた、アポリポタンパク質の免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子への化学的コンジュゲーションを可能にする変異を含むアポリポタンパク質変異体であり得る。特定の実施形態において、アポリポタンパク質はまた、セリンからシステインへの置換を含むアポリポタンパク質変異体、例えば、本明細書の他の箇所に記載されるような配列番号1、7、9または11によって定められるようなApoA1変異体であり得る。
【0108】
本明細書に記載の異なるタンパク質のペプチド配列、または本明細書に記載の異なるタンパク質をコードする遺伝子の核酸配列は、例えばUCSC Genome Browser(http://genome.ucsc.edu/)、Ensembl genome browser(https://www.ensembl.org)およびNCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein)から、当業者にとって、容易に入手可能である。種々のタンパク質または遺伝子のコンセンサス配列は、これらの供給源に容易に由来するが、遺伝子変異および遺伝子の複数のスプライス変異体に起因して一定の変異が存在し得るが、これらに限定されないことが理解される。したがって、特定のタンパク質について言及する場合、これは、遺伝的変異およびスプライス変異体に起因する配列変異を包含すると解釈されるべきである。したがって、特定のタンパク質に言及するときに本明細書で使用される場合、これは、Ensemblゲノムブラウザから検索された対応するコンセンサスタンパク質配列、またはEnsemblゲノムブラウザから検索されたコンセンサス核酸(遺伝子)配列、またはEnsemblゲノムブラウザから検索された対応するコンセンサスタンパク質配列と80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一のタンパク質配列、またはEnsemblゲノムブラウザから検索された対応するコンセンサス遺伝子配列と70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一の遺伝子配列、またはEnsemblゲノムブラウザから検索された対応するコンセンサスタンパク質配列と80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一のタンパク質をコードする核酸配列として解釈されるべきである。
【0109】
アポリポタンパク質模倣物は、アポリポタンパク質の機能または構造を模倣する合成ペプチドまたはタンパク質である。いくつかのアポリポタンパク質模倣物が公知であり、例えばWolska et al.(Cells.2021 Mar;10(3):597があるが、その全体が参照により組み込まれる)文献に記載されている異なるapoA1、apoEおよびapoC-II模倣物を概説している。例えば、ApoA1模倣ペプチドは、大部分が、細胞からコレステロールを流出させるそれらの能力に基づいて設計されている。このプロセスは特定のタンパク質-タンパク質相互作用に依存することが示されていないので、ほとんどのapoA1模倣ペプチドは単に両親媒性ヘリックスであり、実際、多くはapoA1と一次アミノ酸相同性を有していない。例示的なApoA1模倣物は、ApoA1模倣物18A、ApoA1模倣物2FおよびApoA1模倣物37pAであり、これらは、配列番号51、配列番号52、および配列番号53に対応するペプチド配列によって表される。
【0110】
例えば、apoEは、いくつかの推定上のアテローム保護機能を有し、多くの異なるタイプのapoE系ペプチドが報告されている。これらのペプチドの設計における主な目的の1つは、apoB含有リポタンパク質の肝臓クリアランスを促進することである。apoEは脂質に結合した場合にのみその受容体に結合することができるので、これらのペプチドは通常、apoEのN末端ドメイン由来の受容体結合モチーフだけでなく、apoEのC末端ドメインまたは他の何らかの配列に基づく脂質結合領域も有する。
【0111】
例えば、apoC-II模倣物は、apoC-IIのLPL活性化ドメインに連結された短縮された第1のヘリックス(18A)に基づいて、または第1および第2のヘリックスの両方が、リポタンパク質への二重らせん結合を増強するためのアミノ酸置換を伴う天然のapoC-IIヘリックスに基づいている模倣物のいずれかで記載されている。
【0112】
したがって、本明細書で使用される場合、アポリポタンパク質模倣物は、それぞれのアポリポタンパク質と構造的および/または機能的特徴を共有する合成タンパク質またはペプチドを指す。例えば、共有される構造的特徴は、ペプチド配列などの一次、二次もしくは三次ペプチド構造、アルファヘリックスもしくはベータシートなどの構造の存在、またはペプチドの三次元構造であり得るか、または機能的特徴は、受容体などの特定の標的への結合における類似性であり得る。好ましくは、アポリポタンパク質は、対応するアポリポタンパク質と同様の様式で脂質に結合することができ、より好ましくは脂質粒子を形成することができる。
【0113】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質模倣物は、それぞれのアポリポタンパク質と同じまたは類似の程度で骨髄系細胞に結合することができる。例えば、ApoA1のアポリポタンパク質模倣物は、ApoA1と同じ程度または類似した程度、骨髄系細胞に結合することができる。
【0114】
実施形態において、融合タンパク質は、ApoA1(またはその変異体)、好ましくはヒトApoA1と、免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子との融合タンパク質である。
【0115】
例として、ヒトApoA1タンパク質配列は、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号NP_001304947.1(イソ型1プレプロタンパク質)およびUniprot(www.uniprot.org)アクセッション番号P02647.1の下でアノテーションされる。
【0116】
特定の実施形態において、ApoA1は、野生型ApoA1(例えば、配列番号1によって定義されるようなApoA1のヒト前駆体に由来し、その最初の18個のアミノ酸がシグナルペプチドを形成する)またはApoA1変異体(例えば、配列番号7、9または11によって定義される)である。特定の実施形態において、ApoA1は、配列番号78によって定義される野生型ヒトApoA1である。
【0117】
例えば、apoA1を免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子に化学的にコンジュゲートさせるためには、典型的には反応性ハンドルが必要である。したがって、147(例えば、配列番号9によって定義される)または279(例えば、配列番号11によって定義される)の位置に、セリンの代わりにシステインを含むapoA1変異体は、化学的にコンジュゲート化されたApoA1融合タンパク質を調製するために有用であり得る。
【0118】
実施形態において、ApoA1は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、もしくは配列番号11と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいはApoA1は、それを含む、から本質的になる、またはからなり、または、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、または配列番号12と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはからなる。
【0119】
配列番号3、配列番号7、配列番号9、または配列番号11によって定義されるApoA1配列は、トロンビン切断部位であるアミノ酸配列GLVPRGSIDD(配列番号79)をN末端に含むことに留意されたい。例えば、配列番号5によって定義されるようなApoA1配列は、N末端に6Hisタグを含み、その後にアミノ酸配列GLVPRGSIDD(配列番号79)が続く。ここで、トロンビン切断部位は、ペプチドからN末端Hisタグを除去するために使用することができる。
【0120】
実施形態において、ApoA1は、配列番号7と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいはApoA1は、それを含む、から本質的になる、またはからなり、配列番号7は、配列番号7の7位にシステインを含む。そのようなApoA1変異体は、本明細書中では「S14C」変異体と称される場合がある。
【0121】
実施形態において、ApoA1は、配列番号9と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいはApoA1はそれを含む、から本質的になる、またはからなり、配列番号7は、配列番号9の150位にシステインを含む。そのようなApoA1変異体は、本明細書では「S147C」または「S157C」変異体と称される場合がある。
【0122】
実施形態において、ApoA1は、配列番号11と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいはApoA1はそれを含む、から本質的になる、またはからなり、配列番号7は、配列番号11の239位にシステインを含む。そのようなApoA1変異体は、本明細書では「S279C」または「S239C」変異体と称される場合がある。
【0123】
実施形態において、融合タンパク質は、ApoA1模倣物と免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子との融合タンパク質である。実施形態において、ApoA1模倣物は、配列番号51、配列番号52、または配列番号53と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいはApoA1模倣物はそれを含む、から本質的になる、またはからなる。
【0124】
実施形態において、融合タンパク質は、ApoEと免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子との融合タンパク質である。実施形態において、ApoEは、配列番号13、配列番号15、配列番号17、もしくは配列番号19と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいはApoEは、それを含む、から本質的になる、またはからなり、または、配列番号14、配列番号16、配列番号18、もしくは配列番号20と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはからなる。
【0125】
本明細書の他の箇所に記載されているように、ApoA1の融合タンパク質は、ApoA1と、サイトカイン、例えば、IL-1β(IL-1B)、IL-2、IL-4、またはIL-38、好ましくはIL-4との融合タンパク質であり得る。
【0126】
したがって、実施形態において、融合タンパク質は、ApoA1(その変異体を含む)とインターロイキン(IL)-1B、好ましくはヒトIL-1Bとの融合タンパク質である。
【0127】
実施形態において、ApoA1-IL1B融合タンパク質は、配列番号21または82と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、から本質的になる、またはからなり、または、配列番号22または配列番号83と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
【0128】
実施形態において、融合タンパク質は、ApoA1(その変異体を含む)とIL-2、好ましくはヒトIL-2との融合タンパク質である。
【0129】
実施形態において、ApoA1-IL2融合タンパク質は、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号58もしくは配列番号60と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列有するポリペプチドを含むか、またはそれからなり、または配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号59または配列番号61と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、もしくはそれからなる。
【0130】
実施形態において、融合タンパク質は、ApoA1(その変異体を含む)とIL-4、好ましくはヒトIL-4との融合タンパク質である。
【0131】
実施形態において、ApoA1-IL4融合タンパク質は、配列番号35、配列番号37もしくは配列番号39と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、から本質的になる、またはからなり、または、配列番号36、配列番号38もしくは配列番号40と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
【0132】
実施形態において、融合タンパク質は、ApoA1(その変異体を含む)とIL-38(IL1F10としても知られる)、好ましくはヒトIL-38との融合タンパク質である。
【0133】
実施形態において、ApoA1-IL38融合タンパク質は、配列番号80または84と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、から本質的になる、またはからなり、または、配列番号81または配列番号85と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
【0134】
本明細書の他の箇所に記載されているように、ApoA1はまた、リルーティング分子、例えば、リンパ球、好ましくはT細胞、より好ましくはCD8+T細胞に結合することができるリルーティング分子などに融合される場合がある。例えば、リルーティング分子は、Woodham A.W.et al.,Nanobody-antigen conjugates elicit HPV-specific antitumor immune responses,Cancer Immunology Research,2018,Vol.6,issue 7に記載されているようなVHHCD8であってもよく、前記の参考文献の補足表1に示されているアミノ酸配列を含む。
【0135】
実施形態において、融合タンパク質は、ApoA1(その変異体を含む)とVHH8CD8との融合タンパク質である。
【0136】
実施形態において、VHHCD8-apoA1融合タンパク質は、配列番号54または56と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、から本質的になる、またはからなり、または、配列番号55または配列番号57と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
【0137】
本明細書で使用される場合、アポリポタンパク質融合タンパク質に言及する場合の融合タンパク質は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物として解釈されるべきであり、免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子がそれに共有結合している。共有結合は、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列によるペプチドまたはタンパク質配列のインフレーム符号化によるものであり得る。あるいは、共有結合は、アポリポタンパク質のシステイン残基に形成された、例えばチオエーテル結合などの硫黄結合を介した、アポリポタンパク質への免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子の共有結合によるものであり得る。免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子および/またはアポリポタンパク質(またはその模倣物)は、アルキン修飾試薬とのその後の(ひずみ促進型)「クリック」(コンジュゲーション)反応に使用することができる、パラ-アジドフェニルアラニンなどの非天然アミノ酸の部位特異的な組み込みを含み得ることが理解される。
【0138】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物と、前記免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子との間に、柔軟性リンカーなどのリンカーを含む。リンカーは、グリシン-セリンリンカー、例えば(GGS)n-リンカーであり得、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10、好ましくは(GGS)4-リンカーである。
【0139】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質のN末端および/またはC末端などに、1つまたはそれ以上のタグを含み得る。6Hisタグまたはstrepタグなどの1つまたはそれ以上のタグは、融合タンパク質の精製を可能にし得る。
【0140】
前記免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の任意の部分に共有結合していてもよい。柔軟性リンカーなどのリンカーを使用して、そのような共有結合を可能にすることができる。
【0141】
特定の実施形態では、前記免疫調節生体分子は、前記融合タンパク質の前記アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物のN末端またはC末端に位置する。
【0142】
特定の実施形態では、前記リルーティング分子は、前記融合タンパク質の前記アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物のN末端またはC末端に位置する。
【0143】
前記融合タンパク質が免疫調節生体分子およびリルーティング分子を含む特定の実施形態では、前記アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物は、前記免疫調節生体分子および前記リルーティング分子の両方のN末端またはC末端に位置してもよく、または前記免疫調節生体分子と前記リルーティング分子との間に位置してもよい(例えば、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物のN末端またはC末端の免疫調節生体分子を用いて)。
【0144】
本明細書で使用される場合、免疫応答は、免疫系によって生物の体内で起こる反応を指す。免疫応答は、先天性免疫応答、適応免疫応答、または補体免疫系であり得る。本明細書で言及される場合、免疫応答には、それだけに限定されないが、炎症促進性分子の分泌、抗炎症分子の分泌、食作用、抗体産生、提示または分泌、抗原提示、免疫細胞の活性化、増殖、抑制または分化、標的への免疫細胞の結合、免疫関連細胞シグナル伝達カスケードの開始、またはそれらの組合せが含まれる。
【0145】
本明細書で使用される場合、免疫調節生体分子は、免疫応答を増強または抑制する分子を指す。生体分子は、先天性免疫応答または適応免疫応答または補体免疫系を干渉、変化、刺激または抑制し得る。生体分子は、タンパク質、ペプチドまたは有機化合物であり得る。化合物は、天然供給源から単離または誘導されてもよく、クローン化または合成されてもよい。免疫調節生体分子の非限定的な例は、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子ならびに造血成長因子および抗体(またはそれらの抗原結合断片)であるが、当業者はさらなる免疫調節分子を認識し得る。
【0146】
したがって、実施形態では、免疫調節生体分子は、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子、造血成長因子、抗体もしくはその抗原結合断片、またはそれらの組合せから選択される。
【0147】
実施形態では、免疫調節生体分子はサイトカインであり得る。サイトカインは、約5から20kDaの小タンパク質であることが当業者に公知であり、細胞シグナル伝達において重要である。例えば、サイトカインは、インターロイキン(IL)-2サブファミリー、インターフェロン(IFN)サブファミリーまたはIL-10サブファミリーなどの4αヘリックスバンドルファミリーサイトカイン、IL-1ファミリー、システインノットサイトカイン、例えばトランスフォーミング成長因子(TGF)ベータファミリー、IL-17ファミリーを示すことができる。したがって、サイトカインは、好ましくは、IL18、インターロイキン18結合タンパク質(IL18BP)、インターロイキン1アルファ(IL1A)、インターロイキン1ベータ(IL1B)、インターロイキン1ファミリーメンバー10(IL1F10)、IL1F3/IL1RA、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、インターロイキン1受容体様2(IL1RL2)、IL1F9、IL33、B細胞活性化因子(BAFF)、4-1BBL、TNFスーパーファミリーメンバー8(TNFSF8)、分化クラスター40(CD40)リガンド(CD40LG)、CD70、CD95L/CD178、エクトディスパシン-A1(EDA-A1)、TNFSF14、リンホトキシンα(LTA)/TNFB、リンホトキシンβ(LTB)、TNFα、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF12、TNFSF13、TNFSF15、TNFSF4、インターフェロンアルファ(IFNA)1、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA2、IFNA4、IFNA7、インターフェロンベータ(IFNB)1、インターフェロンイプシロン(IFNE)、インターフェロンガンマ(IFNG)、インターフェロンゼータ(IFNZ)、IFNA8、IFNA5/IFNaG、IFNω/IFNW1、カーディオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、IL11、IL31、IL6、レプチン、白血病抑制因子(LIF)、オノコスタチンM(OSM)、IL10、IL19、IL20、IL22、IL24、IL28A、IL28B、IL29、TGFベータ1/TGFB1、TGF-β2/TGFB2、TGF-β3/TGFB3を称し得る。好ましい実施形態では、サイトカインは、IL-2サブファミリー、インターフェロンサブファミリー、IL-10サブファミリー、IL-1ファミリー、TGFβファミリー、またはIL-17ファミリー、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは、サイトカインは、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-38、またはそれらの組合せから選択される。より好ましくは、サイトカインはIL-4である。
【0148】
特定の実施形態では、サイトカインはヒトサイトカインである。
【0149】
実施形態では、融合タンパク質は、アポリポタンパク質またはその模倣物とIL-1Bとの融合タンパク質である。IL-1Bは、IL1B、IL-1β、IL1F2、またはインターロイキン1βとしても公知であり、ヒトにおいてIL1B遺伝子によってコードされるサイトカインタンパク質である。例として、ヒトIL-1Bタンパク質配列は、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号NP_000567.1(プロタンパク質)およびUniprot(www.uniprot.org)アクセッション番号P01584.2でアノテーションされている。
【0150】
実施形態では、IL-1Bは、配列番号45と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するか、それを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるペプチド、あるいは配列番号46と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、それからなるペプチドである。
【0151】
実施形態では、融合タンパク質は、アポリポタンパク質またはその模倣物とIL-2との融合タンパク質である。IL-2は、IL2 TCGF、リンホカインまたはインターロイキン2としても公知であり、免疫に関与する白血球の活性を調節するインターロイキンである。例として、ヒトIL-2タンパク質配列は、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号NP_000577.2およびUniprot(www.uniprot.org)アクセッション番号P60568.1でアノテーションされている。
【0152】
特定の実施形態では、IL-2は、野生型IL-2またはIL-2変異体であり得る。
【0153】
特定の実施形態では、IL-2は、Wang A.et al.,Science,Site-specific mutagenesis of the human interleukin-2 gene:structure-function analysis of the cysteine residues.,1984,Vol.224,No.4656 or Klein C.et al.,Cergutuzumab amunaleukin(CEA-IL2v),a CEA-targeted IL-2 variant-based immunocytokine for combination cancer immunotherapy:Overcoming limitations of aldesleukin and conventional IL-2-based immunocytokines,OncoImmunology,2017,Volume 6,issue 3,e1277306に記載されているような1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み得る。
【0154】
特定の実施形態では、IL-2は、以下のアミノ酸置換:F42A、Y45A、L72Gおよび/またはC125Aの1つまたはそれ以上、例えば1つ、2つ、3つまたは4つすべてを含み得る(置換の位置は、成熟ヒトIL-2タンパク質の配列に対して示されている)。配列番号47によって定義されるヒトIL-2アミノ酸配列(ヒトIL-2前駆体)の最初の20個のアミノ酸はシグナルペプチドを表し、したがって、IL-2は、以下のアミノ酸置換、F62A、Y65A、L92Gおよび/またはC145Aのうちの1つまたはそれ以上、例えば1つ、2つ、3つまたは4つすべてを含んでいてもよく、これらの位置は配列番号47に対して示されることに留意されたい。
【0155】
実施形態では、IL-2は、配列番号47と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するか、それを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるペプチド、あるいは配列番号48と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、それからなるペプチドである。
【0156】
実施形態では、融合タンパク質は、アポリポタンパク質またはその模倣物とIL-4との融合タンパク質である。IL-4は、BSF-1、IL4またはインターロイキン4としても公知であり、ナイーブヘルパーT細胞の分化を誘導するサイトカインである。例として、ヒトIL-4タンパク質配列は、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号NP_000580.1(アイソフォーム1前駆体)およびUniprot(www.uniprot.org)アクセッション番号P05112.1として注釈が付けられている。
【0157】
実施形態では、IL-4は、配列番号43と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するか、それを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるペプチド、あるいは配列番号44と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、それからなるペプチドである。
【0158】
さらなる実施形態において、融合タンパク質は、ApoA1またはその模倣物とIL-4との融合タンパク質である。
【0159】
実施形態では、融合タンパク質は、アポリポタンパク質またはその模倣物とIL-38との融合タンパク質である。IL-38は、IL38、IL1F10インターロイキン38、インターロイキン1ファミリーメンバー10またはIL1-θとしても公知であり、ヒトではIL1F10遺伝子によってコードされるタンパク質である。一例として、ヒトIL-38タンパク質配列は、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号NP_775184.1およびUniprot(www.uniprot.org)アクセッション番号Q8WWZ1.1でアノテーションされている。実施形態では、IL-38は、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有するか、それを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるペプチド、あるいは配列番号50と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有する核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、それからなるペプチドである。
【0160】
実施形態では、免疫調節生体分子はケモカインであり得る。ケモカインは、好ましくは、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド1(CCL1)/TCA3、CCL11、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17/TARC、CCL18、CCL19、CCL2/MCP-1、CCL20、CCL21、CCL22/MDC、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、C-Cモチーフケモカインリガンド3様3(CCL3L3)、CCL4、CCL4L1/LAG-1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、C-X3-Cモチーフケモカインリガンド1(CX3CL1)、C-X-Cモチーフケモカインリガンド1(CXCL1)、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2/MIP-2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7/Ppbp、CXCL9、IL8/CXCL8、X-Cモチーフケモカインリガンド1(XCL1)、XCL2、FAM19A1、FAM19A2、FAM19A3、FAM19A4、およびFAM19A5から選択される。別の実施形態において、ケモカインは、CCケモカイン、CXCケモカイン、Cケモカイン、CX3Cケモカインまたはそれらの組合せから選択される。
【0161】
実施形態では、免疫調節生体分子はホルモンであり得る。ホルモンは、生理学および行動を調節するために遠隔器官に輸送される多細胞生物におけるシグナル伝達分子であることが、当業者に公知である。実施形態では、ホルモンは、アドレナリン(エピネフリンとしても公知である)、メラトニン、ノルアドレナリン(ノルエピネフリンとしても公知である)、トリヨードチロニン、チロキシン、ドーパミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、アミリン(膵島アミロイドポリペプチドとしても公知である)、抗ミュラー管ホルモン(ミュラー管阻害因子/ホルモンとしても公知である)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピンとしても公知である)、アンジオテンチノーゲン、アンジオテンシン、抗利尿ホルモン(バソプレシン、アルギニンバソプレシンとしても公知である)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(心房性レプチンとしても公知である)、脳性ナトリウム利尿ペプチド、カルシトニン、コレコストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、コルチスタチン、エンケファリン、エンドセリン、エリスロポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガラニン、胃抑制ポリペプチド、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヘプシジン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子(ソマトメジンとしても公知である)、レプチン、リポトロピン、黄体形成ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、モチリン、オレキシン、オステオカルシン、オキシトシン(ピトシンとしても公知である)、膵臓ポリペプチド、副甲状腺ホルモン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド、プロラクチン(ロイテトロピックホルモンとしても公知である)、プロラクチン放出ホルモン、リラキシン、レニン、セクレチン、ソマトスタチン(成長ホルモン阻害ホルモンまたは成長ホルモン放出阻害ホルモンまたはソマトトロピン放出阻害因子またはソマトトロピン放出阻害ホルモンとしても公知である)、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン(チロトロピンとしても公知である)、チロトロピン放出ホルモン、血管作動性腸ペプチド、グアニリンまたはウログアニリンから選択される。
【0162】
実施形態では、免疫調節生体分子は成長因子であり得る。成長因子は、細胞の増殖、創傷治癒、および場合によっては細胞の分化を刺激することができる、天然に存在する物質として、当業者に公知である。実施形態では、成長因子が、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌運動性因子、骨形成タンパク質(BMP)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、上皮成長因子(EGF)、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)、線維成長因子1(FGF1)、線維芽細胞成長因子2(FGF2)、線維芽細胞成長因子3(FGF3)、線維芽細胞成長因子4(FGF4)、線維芽細胞成長因子5(FGF5)、線維芽細胞成長因子6(FGF6)、線維芽細胞成長因子7(FGF7)、線維芽細胞成長因子8(FGF8)、線維芽細胞成長因子9(FGF9)、線維芽細胞成長因子10(FGF10)、線維芽細胞成長因子11(FGF11)、線維芽細胞成長因子12(FGF12)、線維芽細胞成長因子13(FGF13)、線維芽細胞成長因子14(FGF14)、線維芽細胞成長因子15(FGF15)、線維芽細胞成長因子16(FGF16)、線維芽細胞成長因子17(FGF17)、線維芽細胞成長因子18(FGF18)、線維芽細胞成長因子19(FGF19)、線維芽細胞成長因子20(FGF20)、線維芽細胞成長因子21(FGF21)、線維芽細胞成長因子22(FGF22)、線維芽細胞成長因子23(FGF23)、ウシ胎児成長因子(FBS)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロン、ペルセフィン、アルテミン、成長分化因子9(GDF9)、肝細胞成長因子(HGF)、肝細胞由来成長因子(HDGF)、インスリン、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、インスリン様成長因子-2(IGF-2)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、ケラチノサイト成長因子(KGF)、移動刺激因子(MSF)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)、また肝細胞成長因子様タンパク質(HGFLP)としても公知である、ミオスタチン(GDF-8)、ニューレグリン1(NRG1)、ニューレグリン2(NRG2)、ニューレグリン3(NRG3)、ニューレグリン4(NRG4)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、胎盤成長因子(PGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、レナラーゼ(RNLS)-抗アポトーシス生存因子、T細胞成長因子(TCGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング成長因子、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、血管内皮成長因子(VEGF)、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11およびWNT16から選択される。好ましい実施形態では、成長因子は、VEGF、EGF、CNTF、LIF、エフリン、FGF、GDNF、HDF、HDGF、IGF、KGF、MSF、NRG、BDNF、NGF、ニューロトロフィン、PGF、PDGF、RNLS、TCGF、TGF、TNF、WNTまたはそれらの組合せから選択される。
【0163】
実施形態では、免疫調節生体分子は造血成長因子である。実施形態では、造血成長因子は、IL-3、コロニー刺激因子1(CSF-1(M-CSF))、顆粒球-マクロファージ(GM)-CSF、顆粒球(G)-CSF、インターロイキンもしくはエリスロポエチンのIL-12ファミリーのメンバーまたはそれらの組合せから選択される。
【0164】
本明細書で使用される場合、標的という用語は、アポリポタンパク質(またはアポリポタンパク質模倣物)または融合タンパク質が優先的に結合する対象を指す。標的は、タンパク質もしくはプロテオグリカン、細胞、細胞型、組織もしくは組織型または器官などの受容体または細胞表面分子を指し得る。
【0165】
特定の実施形態では、前記融合タンパク質を含む融合タンパク質または脂質ナノ粒子は、骨髄系細胞に結合することができる。これは、例えば、骨髄系細胞を標的とするApoA1などのアポリポタンパク質の固有の性質の結果であり得る。本明細書で使用される場合、骨髄系細胞という用語は、顆粒球、単球、赤血球または血小板の前駆細胞に由来する血球を指す。骨髄系細胞は、単球、樹状細胞、組織マクロファージおよび顆粒球を含む免疫系の主要な細胞区画である。本明細書で使用される場合、骨髄区画という用語は、生物中の骨髄系細胞全体を指す。
【0166】
本明細書で使用される場合、リルーティング分子は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質-免疫調節生体分子融合タンパク質などのタンパク質に融合された場合に、タンパク質が、リルーティング分子に融合されなかった場合に結合するであろう異なる標的に(言い換えれば、それが生来的に結合しているであろう標的とは異なる標的に)結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子を指す。異なる標的への結合はまた、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質-免疫調節生体分子融合タンパク質によって通常結合されるであろう細胞セットの特定のサブセットへの結合を含む、標的細胞の特定のサブセットへの結合を包含し得る。リルーティング分子の非限定的な例は、抗体もしくはその抗原結合断片または抗体断片、リルーティングペプチドもしくはリルーティングタンパク質であり、好ましくは、リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質は、標的に存在する受容体のリガンドである。
【0167】
アポリポタンパク質は特定のリガンドに結合することが理解される。例えば、異なるリポタンパク質(例えば、HDL、LDL、VLDLなど)に見出される異なるアポリポタンパク質は、標的化および結合、したがってリポタンパク質の機能における差異の原因であると考えられる。理論に束縛されることを望むものではないが、アポリポタンパク質の一部は両親媒性の性質を有し、リン脂質および/またはステロールと一緒になって、水性環境において脂質に結合する役割を果たすが、分子の異なる部分は他の分子との相互作用、例えばタンパク質受容体への結合に関与すると考えられる。アポリポタンパク質は、リポタンパク質としてではなく、タンパク質としても循環し得るとさらに仮定される。したがって、(リルーティング分子への融合によって)アポリポタンパク質の結合親和性を改変する可能性は、アポリポタンパク質の標的化または結合を微調整することを可能にするので、興味深い機会を提供する。そのような融合タンパク質のいくつかの用途が想定される。
【0168】
まず、リルーティング分子は、アポリポタンパク質またはリポタンパク質をリルートするために、例えば脂質ホメオスタシスを変化させるために、単に使用され得る。例えば、リルーティング分子を有するアポリポタンパク質融合タンパク質を使用することによって、対象の血液中のLDLまたはHDL値を変化させることができることが想定され得る。これは、高血中コレステロールレベルなどの脂質障害の治療に利用される可能性がある。
【0169】
第2に、これは、ペイロードを有するリポタンパク質(脂質ナノ粒子)を所定の標的にリルートするために使用され得る。リポタンパク質または脂質ナノ粒子は、医薬化合物などのペイロードを担持する興味深い方法をもたらす。これは、化合物がリポタンパク質/脂質ナノ粒子の脂質コアに溶解され得るので、血液を介した親油性化合物の送達を可能にする。さらなる利点は、リポタンパク質が天然に存在する化合物からなり、したがって免疫系によって天然であると見なされ、医薬化合物による免疫応答の誘発を回避することである。
【0170】
第3に、それは免疫調節生体分子と(単一の融合タンパク質(リルーティング分子と免疫調節生体分子の両方に融合したアポリポタンパク質)として、または2つの異なる融合タンパク質の組合せとして)組み合わされてもよく、かように免疫調節生体分子のリルーティングを可能にする。上記のように、アポリポタンパク質は、本質的に免疫調節生体分子の担体として機能することができる。利点は、それが免疫調節生体分子の除去を大幅に減少させ、治療状況において血液から容易に除去される免疫調節生体分子(例えば、サイトカイン)を使用することを実行可能にすることである。生じ得る1つの問題は、免疫調節生体分子/アポリポタンパク質融合タンパク質が免疫調節生体分子の意図された標的(すなわち、その効果を発揮することが意図される部位、細胞、組織または器官)に到達しないことである。これは、リルーティング分子をさらに含むことによって解決され得る。
【0171】
第4に、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質は、脂質ナノ粒子を調製することを可能にし、リルーティング分子は、アポリポタンパク質へのその融合の結果として、前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を取り囲む環境(すなわち水性環境)に曝される。
【0172】
本発明者らによって生成されたデータは、リルーティング分子を使用して、アポリポタンパク質融合タンパク質を異なる標的にうまくリルートすることができることを示唆している。したがって、実施形態において、リルーティング分子は、抗体またはその抗原結合断片、リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質から選択され、好ましくは、リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質は、標的に存在する受容体のリガンドである。
【0173】
実施形態において、リルーティング分子は、抗体またはその抗原結合断片であり得る。任意のタイプの抗原結合分子が、原則として、本発明による融合タンパク質のリルーティング分子として使用され得ることが想定される。
【0174】
抗体は、任意の免疫学的結合剤、例えば、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、組換え抗体、トランスジェニック抗体、グラフトされた抗体、および一本鎖抗体などを含む全抗体、または目的の抗原に選択的に結合する1つまたはそれ以上のドメインを含むその任意の融合タンパク質、コンジュゲート、断片または誘導体であり得る。抗体は、全免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはこれらのいずれかの免疫学的に有効な断片であり得る。したがって、抗体は、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多価(例えば、2価、3価またはそれ以上)および/または多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体またはそれ以上の特異性抗体)、ならびに所望の生物学的活性(特に、目的の抗原に特異的に結合する能力)を示す限りにおける抗体断片、ならびにそのような断片の多価および/または多重特異性複合体を包含し得る。
【0175】
本明細書を通して使用される「特異的に結合する」または「特異的に相互作用する」という用語は、作用物質が、ランダムまたは無関係な他の分子を実質的に排除し、任意選択で構造的に関連する他の分子を実質的に排除するように、1つまたはそれ以上の所望の分子または分析物に結合するかまたはそれに影響を及ぼすことを意味する。これらの用語は、薬剤がその意図された標的に排他的に結合することを必ずしも必要としない。例えば、作用物質は、結合条件下でのそのような意図された標的に対するその親和性が、非標的分子に対するその親和性よりも少なくとも約2倍大きい、好ましくは少なくとも約5倍大きい、より好ましくは少なくとも約10倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約25倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約50倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約100倍以上大きい、例えば少なくとも約1000倍以上大きい、少なくとも約1×104倍以上大きい、または少なくとも約1×105倍以上大きい場合、目的の標的に特異的に結合すると言われ得る。
【0176】
したがって、実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、断片抗原結合領域(Fab)、Fab2、一本鎖可変断片(scFv)、scFv-Fc、dAb-Fc、遊離軽鎖抗体、半抗体、二重特異性Fab-2-、Fab3、三重特異性Fab3ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、IgG、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、一価IgG、VhHまたは新規抗原受容体の可変ドメイン(VNAR)から選択される。抗体または抗原結合断片はまた、アフィボディ、FN3ドメイン、DARPinまたはデノボデザインのタンパク質受容体などであるがこれらに限定されない、設計された抗原結合タンパク質であり得る。より低い分子量を有する抗体またはその抗原結合断片は、それらのサイズが小さいために好ましいことが認識され、したがって、好ましい実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、Fab、scFv、単一ドメイン抗体、VhHまたはVNARである。
【0177】
実施形態では、リルーティング分子はリルーティングペプチドであり得る。リルーティングペプチドの非限定的な例は、受容体結合ペプチド、リガンド模倣ペプチドである。
【0178】
したがって、実施形態では、リルーティングペプチドは、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)またはシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)から選択される。しかしながら、細胞表面受容体に対する結合特異性を有する任意のペプチドをリルーティング分子として使用することができることが理解される。
【0179】
実施形態では、リルーティング分子は、受容体リガンド、受容体、または相互作用タンパク質などのリルーティングタンパク質であり得る。したがって、実施形態では、リルーティングタンパク質は、CD40LまたはGP120から選択される。CD40Lは、CD40受容体を発現する細胞を標的化するために使用することができる。GP120は、CD4T細胞補助受容体に直接結合するために使用することができる。しかしながら、細胞表面受容体に対する結合特異性を有する任意のタンパク質をリルーティング分子として使用することができることが理解される。
【0180】
本明細書で使用される場合、リポタンパク質という用語は、水性環境に分散または溶解した少なくとも1つのアポリポタンパク質および脂質分子の粒子、一般にナノ粒子を指す。
【0181】
本明細書で使用される場合、リルーティングという用語は、融合タンパク質を通常結合する異なる標的に標的化すること、またはアポリポタンパク質の通常の標的の結合を防止すること、またはオフターゲット結合を防止することを指す。例えば、apoA1は、骨髄系細胞上の受容体に結合することが公知であり、したがって、リルーティング分子は、異なる細胞に結合するか、または骨髄系細胞の結合を防止するために使用され得る。換言すれば、リルーティング分子は、非骨髄系細胞に結合し得る、好ましくは特異的に結合し得る。
【0182】
したがって、特定の実施形態において、リルーティング分子は、骨髄系細胞ではないが、骨髄系細胞、例えば造血幹細胞(HSC)、多分化能前駆(MPP)または共通骨髄前駆細胞(CMP)のような造血幹および前駆細胞(HSPC)に分化し得る細胞に結合することができ、好ましくは特異的に結合することができる。
【0183】
特定の実施形態では、リルーティング分子は、非骨髄性免疫細胞または内皮細胞などの非骨髄系細胞に結合することができ、好ましくは特異的に結合することができる。内皮細胞は、内皮細胞の表面マーカーに結合することができるリルーティング分子の使用によって標的化され得る。例えば、内皮細胞は、第VIII因子などの第VIII因子関連抗原に結合することができるリルーティング分子、CD31などのCD31/PECAM-1に結合することができるリルーティング分子、アンジオテンシンなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE/CD143)に結合することができるリルーティング分子、L-セレクチンなどのCD34に結合することができるリルーティング分子、またはエンドグリン(CD105)に結合することができるリルーティング分子の使用によって標的化され得る。
【0184】
特定の実施形態では、非骨髄系細胞は、T細胞、B細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球である。好ましくは、リンパ球はT細胞、さらにより好ましくはCD8+T細胞である。
【0185】
特定の実施形態では、標的細胞がT細胞である場合、リルーティング分子は、CD8に結合する、好ましくは特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であり得る。例えば、リルーティング分子は、Woodham A.W.et al.,Nanobody-antigen conjugates elicit HPV-specific antitumor immune responses,Cancer Immunology Research,2018,Vol.6,issue 7に記載されているようなVHHCD8であってもよく、前記参考文献の補足表1に示されているようなアミノ酸配列を含む。
【0186】
特定の実施形態では、標的細胞がT細胞および/またはB細胞である場合、リルーティング分子またはリルーティングペプチドは、PD1、CD40LまたはGP120であり得る。
【0187】
リルーティングという用語はまた、特定の標的細胞などの特定の標的に対する融合タンパク質の特異性を増加させることを包含し得る。例えば、apoA1は、骨髄系細胞上の受容体に結合することが公知であり、したがって、リルーティング分子は、骨髄系細胞の特定のサブタイプに結合するために使用され得る。
【0188】
したがって、特定の実施形態では、リルーティング分子は、巨核球、好酸球、好塩基球、赤血球、樹状細胞またはマクロファージなどの単球、および好中球からなる群から選択される骨髄系細胞に結合することができ、好ましくは特異的に結合することができる。例えば、リルーティング分子としてのSIRPalphaは、免疫抑制性マクロファージを標的化することを可能にし得る。
【0189】
本明細書に記載のアポリポタンパク質融合タンパク質は、タンパク質または脂質ナノ粒子として使用され得ることが想定される。上記のように、アポリポタンパク質はそのまま循環し得る(リポタンパク質または脂質ナノ粒子に組み込まれていないことを意味する)。この適用は、免疫調節生体分子、例えばIL-4のようなサイトカインを標的部位に送達するのに適し得る。アポリポタンパク質はタンパク質として循環することができるが、インサイチュでリポタンパク質を形成することもできることが公知である。しかしながら、融合タンパク質を脂質ナノ粒子に含めることも有利であり得る。したがって、態様では、本発明は、本明細書の1つまたはそれ以上の融合タンパク質を含む脂質ナノ粒子に関し、脂質ナノ粒子は、リン脂質、および任意選択でステロールをさらに含む。脂質ナノ粒子は、本明細書では「アポリポタンパク質脂質ナノ粒子」と便宜的に表される。融合タンパク質は、免疫調節生体分子とのアポリポタンパク質の融合タンパク質、またはリルーティング分子とのアポリポタンパク質、または免疫調節生体分子およびリルーティング分子とのアポリポタンパク質の融合タンパク質、またはそれらの組合せであり得る。アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質模倣物であってもよい。いかなる仮説にも束縛されるものではないが、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物は、リン脂質および任意選択でステロールと共にナノ粒子の形成を助けるための足場として機能し得ると考えられる。
【0190】
本発明の態様では、脂質ナノ粒子は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質、およびリン脂質を含む。
【0191】
本発明の一態様では、脂質ナノ粒子は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、およびリン脂質を含む。
【0192】
アポリポタンパク質脂質ナノ粒子は、免疫調節生体分子とリルーティング分子の両方を含み得る。これは、免疫調節生体分子とリルーティング分子の両方を含む1つの融合タンパク質を組み込むことによって、または免疫調節生体分子を含むものとリルーティング分子を含むものとの2つの融合タンパク質をアポリポタンパク質脂質ナノ粒子に組み込むことによって達成され得る。
【0193】
したがって、本発明の一態様では、脂質ナノ粒子は、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、免疫調節生体分子、およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、およびリン脂質を含む。
【0194】
本発明の一態様では、脂質ナノ粒子は、(i)アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質、およびリン脂質、ならびに(ii)アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、およびリン脂質を含む。
【0195】
本明細書で使用される場合、脂質ナノ粒子(LNP)は、リン脂質と、水溶液に可溶性の1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質との集合体を指す。粒子は、ステロールおよび/または脂質(例えばトリグリセリド)をさらに含み得る。LNPがステロールおよび脂質の両方を含む場合、脂質はリン脂質およびステロールによってカプセル化される。したがって、脂質ナノ粒子は、かようにリポソームと構造が異なる。
【0196】
特定の実施形態では、リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルグリセロール、またはそれらの組合せから選択される。さらに特定の実施形態では、リン脂質が、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PHPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジラウロイルホスファチジルセリン(DLPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、またはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0197】
特定の実施形態では、モル重量百分率に基づくアポリポタンパク質(またはアポリポタンパク質模倣物)とリン脂質との比は、1:25~1:400、より好ましくは1:50~1:200、さらにより好ましくは1:75~1:150である。特定の実施形態では、モル重量百分率に基づく本明細書にて教示されている融合タンパク質とリン脂質との比は、1:25~1:400、より好ましくは1:50~1:200、さらにより好ましくは1:75~1:150である。
【0198】
特定の実施形態では、重量に基づくアポリポタンパク質(またはアポリポタンパク質模倣物)とリン脂質との比は、3:1~1:100である。特定の実施形態では、重量に基づくリン脂質に対する本明細書で教示される融合タンパク質の比は、3:1~1:100である。
【0199】
特定の実施形態では、ステロールが、コレステロール、デスモステロール、スチグマステロール、β-シトステロール、エルゴステロール、ホパノイド、ヒドロキシステロイド、植物ステロール、ステロイド、水素化コレステロール、カンペステロール、動物ステロール、またはそれらの組合せから選択される。
【0200】
ナノ粒子は、さらなるタンパク質またはペイロードなどのさらなる成分を含み得る。したがって、実施形態では、本明細書で定義される脂質ナノ粒子は、脂質をさらに含む。さらなる実施形態では、本明細書で定義される脂質ナノ粒子はペイロードをさらに含む。
【0201】
本明細書で使用される場合、ペイロードという用語は、アポリポタンパク質、リン脂質またはステロールではない、脂質ナノ粒子に含まれる化合物を指す。ペイロードは、例えば、医薬化合物であってもよい。脂質ナノ粒子は、親油性ペイロードに特に適しているが、両親媒性分子にも使用することができる。医薬化合物は、多くの場合、有機化合物、ペプチド、タンパク質、核酸または核酸類似体、バイオロジックまたは脂質である。したがって、実施形態では、脂質ナノ粒子はペイロードをさらに含み、好ましくはペイロードは、核酸または核酸類似体、治療薬、バイオロジックまたはそれらの組合せから選択される。
【0202】
例えば、ペイロードは、核酸または核酸類似体であり得る。例は、mRNA、siRNA、miRNA、piRNA、snRNA、snoRNA、srRNAまたはtsRNAであり得るが、これらに限定されない。核酸類似体は、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノおよびロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)およびヘキシトール核酸(HNA)、またはそれらの混合物または組合せであり得る。あるいは、ペイロードは、小分子薬物などの小さな有機化合物であってもよい。一般に、小さな有機化合物が合成される。治療薬は、例えば、化学療法などの抗癌療法薬であり得る。あるいは、ペイロードはバイオロジックであってもよい。本明細書で使用される場合、バイオロジックという用語は、生物学的医療製品としても公知である生物製剤を示すために使用され、生物学的な源で製造された、抽出された、または半合成された任意の薬学的薬物製品であり得る。バイオロジックは、糖、タンパク質、核酸、またはこれらの物質の複雑な組合せから構成され得るか、または生細胞もしくは組織であり得る。
【0203】
特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の融合タンパク質の一部を形成するアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物に加えて、天然(例えば未融合)アポリポタンパク質、アポリポタンパク質模倣物またはそれらの組合せを含む。
【0204】
特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、10から100nM、例えば30から100nMの平均サイズを有する。
【0205】
特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、球体、リボンまたはディスク、好ましくは球体またはディスク、より好ましくは球体である。
【0206】
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物は、脂質ナノ粒子構造の一部を形成する。特定の実施形態では、前記融合タンパク質の少なくとも一部は、前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を取り囲む環境(すなわち水性環境)に曝露される。典型的には、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の一部は、前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を取り囲む環境に曝露される(例えば、
図1、
図2、および
図22を参照されたい)。さらに、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物への免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子の融合は、典型的には、前記免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子が前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を取り囲む環境に完全に曝されることを可能にする(例えば、
図1、
図2、および
図22を参照されたい)。言い換えれば、免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子は、脂質ナノ粒子内に埋め込まれていない。その結果、前記免疫調節生体分子および/または前記リルーティング分子は、自由に動くことができ、その細胞標的化機能などのその天然の機能を発揮することができる。
【0207】
特定の実施形態では、脂質ナノ粒子はペイロードを含み、脂質ナノ粒子は、表面層によって囲まれたコアを含み、コアはペイロードを含み、表面層はアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、リン脂質、免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子、ならびに任意選択でステロールを含む。
【0208】
特定の実施形態では、脂質ナノ粒子はリン脂質二重層ではない。
本明細書では、このような脂質ナノ粒子を製造する方法も提供される。したがって、さらなる態様では、本発明は、脂質ナノ粒子を製造する方法、本明細書に教示されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子を製造する方法であって、
a1)1つまたはそれ以上の単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質を得るために、1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質融合タンパク質を発現および単離する工程であって、
1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質融合タンパク質が、IL-4などの免疫調節生体分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
リルーティング分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
IL-4などの免疫調節生体分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、およびリルーティング分子、およびそれらの組合せからなる群から選択される、工程および/または
a2)1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物を化学的にコンジュゲートし、1つまたはそれ以上のコンジュゲートされたアポリポタンパク質を単離して、1つまたはそれ以上の単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を得る工程であって、
1つまたはそれ以上のコンジュゲートされたアポリポタンパク質が、IL-4などの免疫調節生体分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
リルーティング分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
IL-4などの免疫調節生体分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、およびリルーティング分子、およびそれらの組合せからなる群から選択される工程、および
b)工程a1で得られた1つまたはそれ以上の単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質および/または工程a2で得られた1つまたはそれ以上の単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質をリン脂質ならびに任意選択でステロールおよび/または脂質と組み合わせて、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を得る工程を含む方法に関する。
【0209】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で定義される脂質ナノ粒子を製造する方法であって、
a1)単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質を得るためにアポリポタンパク質融合タンパク質を発現および単離する工程であって、アポリポタンパク質融合タンパク質が、サイトカインおよび標的化部分に融合したアポリポタンパク質であり、ならびに/またはアポリポタンパク質融合タンパク質が、サイトカインに融合したアポリポタンパク質および/もしくは標的化部分に融合したアポリポタンパク質である、工程、および/または
a2)アポリポタンパク質を化学的にコンジュゲートさせ、コンジュゲートされたアポリポタンパク質を単離して、単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を得る工程であって、コンジュゲートされたアポリポタンパク質が、サイトカインおよび標的化部分にコンジュゲートされたアポリポタンパク質であり、ならびに/またはコンジュゲートされたアポリポタンパク質が、サイトカインにコンジュゲートされたアポリポタンパク質および/もしくは標的化部分にコンジュゲートされたアポリポタンパク質である、工程、
b)工程a1で得られた単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質および/または工程a2で得られた単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質をリン脂質、ならびに任意選択でステロールおよび/または脂質と組み合わせて、脂質ナノ粒子を得る工程を含む方法に関する。
【0210】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で教示されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子を製造する方法によって得られる、またはそれによって得ることができるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子に関する。
【0211】
融合タンパク質は、アポリポタンパク質と免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子とのキメラ融合タンパク質として発現され得るか、または免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子に化学的にコンジュゲートされ得るか、またはこれらの組合せで産生され得ることが理解される。キメラタンパク質の発現は当業者に公知であり、免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子がペプチドまたはタンパク質である場合に使用することができる。例えば、アポリポタンパク質(または模倣物)をコードする配列とインフレームで、例えば、CまたはN末端配列をコードするヌクレオチドで、免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子コード配列をクローニングすることによって、そのようなタンパク質をコードする核酸を作製するために分子技術を使用することは、十分に当業者の知識の範囲内である。キメラタンパク質発現を使用する利点は、発現されるすべてのタンパク質が融合タンパク質であることである。
【0212】
あるいは、化学的コンジュゲーションを使用してもよい。免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子のアポリポタンパク質(またはその模倣物)への化学的コンジュゲーションに適した方法は、当業者に公知である。非限定的な例は、ひずみ促進付加環化、アミノリシスおよびマイケル型付加である。例えば、既存のまたは導入されたシステイン残基は、アポリポタンパク質または免疫調節生体分子および/またはリルーティング分子のいずれかに使用され得る。
例えば、本明細書の他の箇所に記載されるように、ApoA1タンパク質は、147または279の位置にセリンの代わりにシステインを含み得る。システイン残基の導入は、コードするヌクレオチド配列中のヌクレオチドの点突然変異によって、またはシステインをコードするコドンの導入によって達成され得る。化学的コンジュゲーションの利点は、ペプチドまたはタンパク質配列の使用に限定されず、任意の種類の有機分子に適用できることである。
【0213】
融合タンパク質、リン脂質、およびステロールおよび脂質などの任意の成分は、脂質ナノ粒子を得るために迅速に混合され得ることが理解される。任意選択で、本明細書で定義される脂質および/またはペイロードが添加され得る。
【0214】
本発明のさらなる態様は、本明細書で教示される融合タンパク質、本明細書で教示される核酸または本明細書で教示される脂質ナノ粒子、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0215】
さらなる態様では、本発明は、医薬品として使用するための、本明細書で定義される融合タンパク質もしくは本明細書で定義される脂質ナノ粒子、または本明細書に記載される方法によって得られるもしくは得ることができる脂質ナノ粒子、または本明細書で定義される核酸、または本明細書で定義される医薬組成物に関する。ナノ粒子に含まれる融合タンパク質(例えば、免疫調節生体分子の作用によって)またはペイロードのいずれかを使用して、対象の症状を治療、改善または緩和することができることが想定される。
【0216】
さらなる態様では、本発明は、免疫関連障害の治療に使用するための、本明細書で定義される融合タンパク質もしくは本明細書で定義される脂質ナノ粒子、または本明細書で定義される方法によって得られるもしくは得ることができる脂質ナノ粒子、または本明細書で定義される核酸、または本明細書で定義される医薬組成物に関する。換言すれば、本発明は、免疫関連障害を、それを必要とする対象において治療する方法であって、治療有効量の本明細書に定義される融合タンパク質もしくは本明細書に定義される脂質ナノ粒子、または本明細書に定義される方法によって得られるもしくは得ることができる脂質ナノ粒子、または本明細書に定義される核酸、または本明細書に定義される医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法に関する。対象の免疫関連障害の治療のための医薬品を製造するための、本明細書で定義される融合タンパク質もしくは本明細書で定義される脂質ナノ粒子、または本明細書で定義される方法によって得られるもしくは得ることができる脂質ナノ粒子、または本明細書で定義される核酸、または本明細書で定義される医薬組成物の使用も本明細書で提供される。
【0217】
本明細書で使用される免疫関連障害は、免疫系が疾患発症において役割を果たす任意の障害を含む。免疫関連障害は、免疫系が抑制されているか、または(過剰に)活性化されている障害を指し得る。免疫関連障害の例は、癌、感染、敗血症、自己免疫性疾患および心血管疾患である。自己免疫性疾患の例は、1型糖尿病、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性狼瘡(SLE)、炎症性腸疾患(IBD)、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性血管炎、悪性貧血、およびセリアック病である。
【0218】
したがって、実施形態では、免疫関連障害が、癌、感染、敗血症、1型糖尿病、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性狼瘡(SLE)、炎症性腸疾患(IBD)、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性血管炎、悪性貧血、およびセリアック病からなる群から選択される。
【0219】
さらなる特定の実施形態では、免疫関連障害は、癌、炎症、感染症、自己免疫障害、例えば、多発性硬化症、アレルギー、臓器移植拒絶、および移植片対宿主病(GVH)からなる群から選択される。
【0220】
予想外にも、本発明者らは、IL-4が逆説的に炎症を軽減し、特に骨髄区画に標的化された場合に、訓練された免疫を同時に誘導することができることを見出した。多くの炎症性の問題(敗血症、脳卒中および心筋梗塞など)では、過剰炎症と免疫抑制が同時に起こる。したがって、本発明者らは、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、好ましくはApoA1とIL-4との融合タンパク質を使用して、炎症を軽減し、訓練された免疫を促進することを同時に行うことによって免疫関連障害を予防することができると結論付けた。
【0221】
したがって、前記免疫調節生体分子がIL-4である特定の実施形態では、免疫関連障害は、炎症の軽減および/または訓練された免疫の促進から利益を得る疾患である。
【0222】
したがって、前記免疫調節生体分子がIL-4である特定の実施形態では、免疫関連障害は、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは、過剰炎症および/または免疫麻痺は、敗血症、心筋梗塞、脳卒中、癌、または多発性硬化症によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる。
【0223】
前記免疫調節生体分子がIL-4である特定の実施形態では、アポリポタンパク質ナノ粒子または融合タンパク質は、炎症を軽減し、同時に訓練された免疫を誘導する。
【0224】
前記免疫調節生体分子がIL-2である特定の実施形態では、アポリポタンパク質ナノ粒子または融合タンパク質は、T細胞増殖を刺激するために使用され得る。
【0225】
前記免疫調節生体分子がIL-1βである特定の実施形態では、アポリポタンパク質ナノ粒子または融合タンパク質を使用して、訓練された免疫を誘導することができる。
【0226】
前記免疫調節生体分子がIL-38である特定の実施形態では、アポリポタンパク質ナノ粒子または融合タンパク質を使用して、訓練された免疫を低下させることができる。
【0227】
さらなる態様では、本発明は、化合物または免疫調節分子を標的に送達する際の、好ましくは標的が細胞、組織および/または器官である、本明細書で定義される融合タンパク質または本明細書で定義される脂質ナノ粒子、または本明細書で定義される方法によって得られるもしくは得ることができる脂質ナノ粒子または本明細書で定義される核酸、または本明細書で定義される医薬組成物の使用に関する。実施形態では、本方法は、エクスビボまたはインビトロ方法である。代替の実施形態では、方法はインビボ方法である。典型的には、アポリポタンパク質またはリルーティング分子は、受容体などの細胞表面タンパク質に結合する。したがって、標的は、受容体、細胞または細胞型(前記タンパク質を発現する)、組織または組織型(前記タンパク質を発現する)または器官(前記タンパク質を発現する)などのタンパク質であり得る。リルーティング分子を選択または適合させることによって、融合タンパク質を異なるタンパク質に標的化することができることが理解される。例えば、リガンドの受容体結合ドメインを使用して、特定の受容体を標的化することができる。あるいは、細胞表面タンパク質の既知の結合パートナーを使用して、融合タンパク質をリルーティングすることができる。
【0228】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で定義される融合タンパク質をコードする核酸に関する。核酸は、細胞への安定した組み込みのためのウイルスベクターなどのベクター、または一過性発現を可能にする発現ベクターに含まれ得る。
【0229】
特定の実施形態では、ベクターは、骨髄特異的または増強されたプロモーターまたはプロモーターエレメントを含み、IL-4の骨髄特異的発現を駆動するためにベクターにおいて使用され得る。適切なプロモーターは当業者に公知であり、非限定的な例は:lysM、Csf1r、CD11c、CX3CR1、ランゲリン/CD207、MMLV LTR、ビスナウイルスLTR、DC-STAMP、ヒトMSR、MSR-A、huCD68、CD4、CD2およびIba-AIF-1(総説については、例えばHume.,Journal of leukocyte biology,Volume89,Issue4,April 2011,Pages 525-538を参照されたい)である。そのようなプロモーターまたはプロモーターエレメントは、細胞を安定してトランスフェクトし、骨髄系細胞における導入遺伝子の特異的発現を可能にするために、例えばレンチウイルスベクターなどのベクターに組み込むことができる。
【0230】
過剰炎症および免疫麻痺を同時に解決するという本発明者らの探求において、本発明者らは、訓練された免疫および寛容におけるインターロイキン(IL)-4の役割を広く研究した。インビトロで単球に対するその効果を調べると[Czimmerer,Z.et al.The Transcription Factor STAT6 Mediates Direct Repression of Inflammatory Enhancers and Limits Activation of Alternatively Polarized Macrophages.Immunity 48,75-90.e6(2018);Essner,R.,Rhoades,K.,McBride,W.H.,Morton,D.L.&Economou,J.S.IL-4 down-regulates IL-1 and TNF gene expression in human monocytes.J.Immunol.142,3857(1989);Woodward,E.A.,Prele,C.M.,Nicholson,S.E.,Kolesnik,T.B.&Hart,P.H.The anti-inflammatory effects of interleukin-4 are not mediated by suppressor of cytokine signalling-1(SOCS1).Immunology 131,118-127(2010)]、本発明者らは、IL-4が炎症性プログラムを同時に下方制御し、訓練された免疫を誘導することを発見した。本発明者らは、IL-4の固有の特性が単球におけるリポ多糖誘導性免疫透析を克服することを可能にすることを見出した。
【0231】
しかしながら、その非特異的な性質および好ましくない薬物動態学的特性のために、IL-4は骨髄系細胞調節治療薬としては不適切である。これらの制限を克服するために、本発明者らはここで、IL-4を骨髄区画に送ることが魅力的な治療手段であることを見出した。この概念を支持して、本明細書中の本発明者らは、本明細書中の他の箇所に記載されるように、IL-4を高比重リポタンパク質(HDL)の主要なタンパク質構成成分であるアポリポタンパク質A-1(apoA1)と結合させる融合タンパク質を記載し、開発した。得られたapoA1-IL-4融合タンパク質は、骨髄系細胞親和性脂質ナノ粒子(apoA1-IL4ナノ粒子)に容易に組み込まれ、自然免疫細胞に対するIL-4の薬物動態プロファイルおよびバイオアベイラビリティを有意に改善する。本発明者らは、定量的核イメージング技術および血液化学測定を使用して、マウスおよび非ヒト霊長類におけるapoA1-IL-4-ナノ粒子のインビボ挙動および安全性プロファイルを評価した。最後に、本発明者らは、多重翻訳炎症および敗血症モデルにおけるapoA1-IL-4-ナノ粒子の治療可能性を研究し、過剰炎症誘発性免疫麻痺の管理のための新しいパラダイムを制度化した。
【0232】
したがって、本発明者らは、IL-4が骨髄区画に標的化され得るならば、IL-4は、訓練された免疫を促進することによって免疫関連障害を予防するために使用され得る有望な新規治療薬であると結論付けた。本明細書の他の箇所に記載されるように、本発明者らは、アポリポタンパク質へのIL-4の共有結合によってこれを達成することができることを実証しているが、骨髄区画の標的化を達成するために少なくとも以下の方法が使用され得ることが想定される。
-本明細書の他の箇所に記載されるアポリポタンパク質へのIL-4の融合、
-骨髄標的化分子へのIL-4の融合、好ましくは骨髄マーカーに結合する抗体もしくはその抗原結合断片、または骨髄区画の標的化を可能にするリガンドもしくはペプチドである骨髄標的化分子へのIL-4の融合、
-骨髄区画内または骨髄区画付近におけるIL-4の標的化発現。
【0233】
したがって、さらなる態様において、本発明は、骨髄標的化分子とIL-4との融合タンパク質に関し、好ましくは、それにおいて骨髄標的化分子がIL-4を骨髄系細胞に標的化することができる。
【0234】
特定の実施形態では、骨髄標的化分子は、化学物質、例えば有機小分子であるか、または生物学的分子、例えば生物学的ポリマー、例えばタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド、核酸、糖類、多糖類である。好ましくは、前記分子は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドである。
【0235】
上記で詳述したように、本発明は、以下に提供される実験例によってさらに支持される、以下の
-IL-4は驚くべきことに、訓練された免疫を誘導することができ、IL-4を免疫関連障害、特に免疫麻痺のための興味深い治療薬にし、また
-注射されたIL-4の好ましくない薬理学的特性は、IL-4を骨髄区画に標的化することによって回避することができるという知見に基づいている。
【0236】
特定の実施形態では、IL-4は、配列番号43と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列、またはその環状置換を含むポリペプチドである。さらなる実施形態では、IL-4ポリペプチドは、配列番号44と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である配列を有する核酸がコードされる。
【0237】
同一の機能を有する融合はまた、環状順列を使用して構築され得ることが理解される。環状順列は、タンパク質間の関係であり、タンパク質は、ペプチド配列中のアミノ酸の順序が変更されている。その結果、異なる連結性を有するが、全体的に同様の三次元形状を有するタンパク質構造が得られる。例えば、第1のタンパク質は配列a-b-cを有し、順列の後、第2のタンパク質は同じ三次元形状を維持しながら配列c-a-bを有する。したがって、さらなる実施形態において、IL-4ポリペプチドは、共に配列番号43と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一である2つの配列を含む。
【0238】
本明細書で使用される場合、骨髄系細胞を標的化することまたは骨髄区画を標的化することを指す場合の「標的化する」という用語は、骨髄系細胞もしくは骨髄区画に近接させること、または骨髄系細胞もしくは骨髄区画の近傍を濃縮することを意味すると理解されるべきである。これは、平均して(骨髄標的化分子によって)標的化する場合、より多くのIL-4分子が骨髄系細胞または骨髄区画に近接していることを意味する。本明細書において近接とは、例えばその受容体の1つの結合によって、IL-4が骨髄系細胞と相互作用できるように位置することを意味する。
【0239】
本明細書で使用される場合、骨髄標的化分子は、IL-4に融合するとIL-4を骨髄系細胞に標的化することを可能にする任意の分子、ただし好ましくはペプチド、タンパク質、またはタンパク質ドメインなどのタンパク質の一部を示すことを意図している。以下でより詳細に説明するように、以下の選択肢、すなわちアポリポタンパク質、抗体またはその抗原結合断片、受容体または膜分子の骨髄系細胞特異的リガンドが骨髄標的化分子として機能することが実証または想定される。
【0240】
本明細書で使用される場合、骨髄系細胞という用語は、顆粒球、単球、赤血球または血小板の前駆細胞に由来する血球を指す。骨髄系細胞は、単球、樹状細胞、組織マクロファージおよび顆粒球を含む免疫系の主要な細胞区画である。本明細書で使用される場合、骨髄区画という用語は、生物中の骨髄系細胞全体を指す。
【0241】
特定の実施形態では、骨髄標的化分子は、抗体またはその抗原結合断片、骨髄標的化ペプチドまたは骨髄標的化タンパク質から選択され、好ましくは、骨髄標的化ペプチドまたは骨髄標的化タンパク質は、標的上に存在する受容体のリガンドである。
【0242】
例えば、骨髄系細胞上に高度に発現されるかまたは排他的に存在する抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を使用することができる。適切な標的は当業者に公知であり、非限定的な例は、CD11b、CD11c、CD14、またはCD80、CD83、CD86、CD40もしくはHLA-DRなどの共刺激分子である。したがって、実施形態では、骨髄標的化ペプチドまたはタンパク質は、CD11b、CD11c、CD14、CD80、CD83、CD86、CD40またはHLA-DRに選択的に結合する抗体またはその抗原結合断片から選択される。
【0243】
特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、Fab、Fab2、scFv、scFv-Fc、dAb-Fc、遊離軽鎖抗体、半抗体、二重特異性Fab-2-、Fab3、三重特異性Fab-3-ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、IgG、IgNAR、一価IgG、VhHまたはVNARから選択される。
【0244】
あるいは、骨髄系細胞上に発現される受容体または因子に特異的または主に結合するリガンドまたは補因子を使用してもよく、非限定的な例はCD40L(CD154)およびFCドメインであるが、当業者は他の適切なリガンドまたは補因子を知っている。したがって、実施形態では、骨髄標的化分子が骨髄標的化ペプチドまたは骨髄標的化タンパク質であり、骨髄標的化タンパク質または骨髄標的化ペプチドがCD40L(CD154)およびFCドメインから選択される。
【0245】
さらなる態様において、本発明は、本明細書中で教示されるような骨髄標的化分子とIL-4との融合タンパク質をコードする核酸に関する。実施形態では、本発明は、配列番号44と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一の核酸配列を有する核酸、または配列番号43と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸に関する。
【0246】
核酸配列は、本発明による融合タンパク質を発現するために使用することができ、したがって、好ましい実施形態では、核酸は、タンパク質発現ベクターまたはウイルスベクターなどのベクターに含まれる。融合タンパク質は、エクスビボで発現させることができ、例えば、後に対象に投与することができる。あるいは、ベクターは、対象内の細胞を一過性または安定して形質転換するために使用され得る。例えば、肝細胞、線維芽細胞または筋細胞を形質転換して、その後に血液循環中に放出され得る融合タンパク質を発現させて骨髄区画の標的化を可能にすることが特に有益であり得る。本明細書で使用される場合、ベクターという用語は、細胞における遺伝子発現のために設計されたプラスミドまたはウイルスを指す。ベクターは、特定の遺伝子を標的細胞に導入するために使用され、遺伝子によってコードされるタンパク質を産生するためのタンパク質合成のための細胞の機構を操作することができる。ベクターは、エンハンサーおよびプロモーター領域として作用し、発現ベクター上に担持された遺伝子の効率的な転写をもたらす調節配列を含有するように操作される。当業者は、例えば遺伝子の細胞型特異的または誘導的発現(およびその後のタンパク質への翻訳)のためにエンハンサー領域およびプロモーター領域をどのように適合させるかを認識している。
【0247】
骨髄系細胞を標的とする骨髄標的化分子を用いてIL-4融合タンパク質を発現させる代わりに、IL-4を骨髄系細胞内またはその近くで発現させて、骨髄系細胞へのIL-4の標的化を確実にし得ることがさらに想定される。したがって、さらなる態様は、配列番号44と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の核酸配列を含むか、または配列番号43と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含み、骨髄系細胞における標的化発現のための手段をさらに含む核酸であって、前記手段が、
-前記核酸に作動可能に連結された前記骨髄系細胞における選択的または誘導的発現のためのプロモーター、または
-前記骨髄系細胞において前記核酸を安定して発現することができる前記核酸を含むウイルス発現ベクター、または
-1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質、リン脂質、前記核酸および任意選択でステロールを含む脂質ナノ粒子から選択される核酸を提供する。
【0248】
例えば、骨髄特異的または増強されたプロモーターまたはプロモーターエレメントをベクターにおいて使用して、IL-4の骨髄特異的発現を駆動することができる。適切なプロモーターは当業者に公知であり、非限定的なエクザンプケは:lysM、Csf1r、CD11c、CX3CR1、ランゲリン/CD207、MMLV LTR、ビスナウイルスLTR、DC-STAMP、ヒトMSR、MSR-A、huCD68、CD4、CD2およびIba-AIF-1(総説については、例えばHume.,Journal of leukocyte biology,Volume89,Issue4,April 2011,Pages 525-538を参照されたい)である。そのようなプロモーターまたはプローター要素は、例えばレンチウイルスベクターなどのベクターに組み込まれて、細胞を安定してトランスフェクトし、骨髄系細胞における導入遺伝子の特異的発現を可能にすることができる。
【0249】
例えば、改変レトロウイルスなどのウイルスは、骨髄系細胞においてIL-4に特異的に感染し、IL-4の発現を駆動するために使用され得る。
【0250】
例えば、アポリポタンパク質、コレステロール、およびIL-4をコードするmRNAを含むリン脂質を含む脂質ナノ粒子を使用して、骨髄系細胞を特異的に標的とし、骨髄系細胞においてmRNAをタンパク質に翻訳することができる。
【0251】
本発明者らは、特に骨髄区画に標的化された場合、IL-4が炎症を軽減し、訓練された免疫を誘導することができることを実証した。したがって、さらなる態様は、骨髄標的化分子とIL-4との融合タンパク質、または医薬品として使用するための前記融合タンパク質をコードする核酸を提供する。さらなる態様は、免疫関連障害の治療に使用するための、骨髄標的化ペプチドもしくはタンパク質とIL-4との融合タンパク質、または前記融合タンパク質をコードする核酸を提供し、好ましくは免疫関連障害が、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは過剰炎症および/または免疫麻痺が、敗血症、心筋梗塞または脳卒中によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる。
【0252】
換言すれば、さらなる態様は、骨髄標的化ペプチドまたはタンパク質とIL-4または前記融合タンパク質をコードする核酸との融合タンパク質を投与することを含む、それを必要とする対象を治療する方法を提供し、好ましくは、治療方法は、免疫関連障害を治療する方法である。
【0253】
本発明者らは、IL-4が訓練された免疫を誘導し得ることを初めて示した。さらに、本発明者らは、生物において骨髄系細胞を標的化することによって、IL-4(例えば、極端に短い半減期)の好ましくない薬理学的特性を回避することができることを実証している。以下に詳述する実験データは、敗血症、心筋梗塞または脳卒中によるCOVID-19などの感染症の場合のような、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の場合の標的治療薬としてのIL-4の使用を実証する。
【0254】
したがって、特定の実施形態では、本明細書で教示される使用のための融合タンパク質または核酸は、炎症を軽減すること、および/または訓練された免疫を刺激または促進することを含む。
【0255】
さらなる態様は、細胞、器官、組織または生物における訓練された免疫を刺激または促進する際のIL-4のインビボ、インビトロまたはエクスビボでの使用を提供する。
【0256】
本発明の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上述の態様および/または実施形態に対して多数の変形および/または修正を行うことができることが当業者には理解されよう。本態様および/または実施形態は、したがって、すべての点において単に例示的なものであり、制限的なものではないとみなされるべきである。本発明は、以下の非限定的な実施例を含む。
【0257】
本出願はまた、以下の記述*に記載されている態様および実施形態を提供する。
記述1*.アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物と免疫調節生体分子との融合タンパク質であって、免疫調節生体分子が免疫応答を増強または抑制するタンパク質である、融合タンパク質。
記述2*.アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物とリルーティング分子との融合タンパク質であって、リルーティング分子が、その融合タンパク質が、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合することを可能にする分子である、融合タンパク質(換言すれば、リルーティング分子は、アポリポタンパク質に融合されたときに、アポリポタンパク質がリルーティング分子に融合されなかったときに結合するであろう標的とは異なる標的に結合することを可能にする分子である)。
記述3*.アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物と免疫調節生体分子およびリルーティング分子との融合タンパク質。
記述4*.免疫調節生体分子が、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子、造血成長因子またはそれらの組合せから選択される、記述1*から3*のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
記述5*.サイトカインが、IL-2サブファミリー、インターフェロンサブファミリー、IL-10サブファミリー、IL-1ファミリー、TGFβファミリーもしくはIL-17ファミリーまたはそれらの組合せから選択され、より好ましくは、サイトカインが、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-38またはそれらの組合せから選択され、および/または
ケモカインが、CCケモカイン、CXCケモカイン、Cケモカイン、CX3Cケモカインまたはそれらの組合せから選択され、および/または
成長因子は、VEGF、EGF、CNTF、LIF、エフリン、FGF、GDNF、HDF、HDGF、IGF、KGF、MSF、NRG、BDNF、NGF、ニューロトロフィン、PGF、PDGF、RNLS、TCGF、TGF、TNFおよびWNTまたはそれらの組合せから選択され、および/または
造血成長因子が、IL-3、CSF-1(M-CSF)、GM-CSF、G-CSF、インターロイキンまたはエリスロポエチンのIL-12ファミリーのメンバー、またはそれらの組合せから選択される、記述4*に記載の融合タンパク質。
記述6*.リルーティング分子が、抗体またはその抗原結合断片、リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質から選択され、好ましくは、リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質が、標的に存在する受容体のリガンドである、記述1*から5*のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
記述7*.抗体またはその抗原結合断片が、Fab、Fab2、scFv、scFv-Fc、dAb-Fc、遊離軽鎖抗体、半抗体、二重特異性Fab2、Fab3、三重特異性Fab3ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、IgG、IgNAR、一価IgG、VhHまたはVNARから選択され、および/または
リルーティングペプチドがPD1またはSIRPαから選択され、および/または
リルーティングタンパク質が、CD40LまたはGP120から選択される、記述6*に記載の融合タンパク質。
記述8*.アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が、ApoA1、ApoA4、ApoC3、ApoD、ApoE、ApoL1、ApoL3またはそれらの模倣物である、記述*のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
記述9*.記述1*もしくは4*もしくは5*もしくは8*で定義される1つまたはそれ以上の融合タンパク質および/または記述2*もしくは6*もしくは7*もしくは8*で定義される1つまたはそれ以上の融合タンパク質および/または記述3*~8*で定義される1つまたはそれ以上の融合タンパク質を含む脂質ナノ粒子であって、リン脂質およびステロールをさらに含む脂質ナノ粒子。
記述10*.脂質ナノ粒子が脂質をさらに含む、記述9*で定義される脂質ナノ粒子。
記述11*.脂質ナノ粒子はペイロードをさらに含み、好ましくはペイロードは、核酸または核酸類似体、治療薬、バイオロジックまたはそれらの組合せから選択される、記述9*または10*に記載の脂質ナノ粒子。
記述12*.記述9*から11*のいずれか一項に定義される脂質ナノ粒子を製造する方法であって、
a1)単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質を得るためにアポリポタンパク質融合タンパク質を発現および単離する工程であって、アポリポタンパク質融合タンパク質が、サイトカインおよび標的化部分に融合したアポリポタンパク質であり、ならびに/またはアポリポタンパク質融合タンパク質が、サイトカインに融合したアポリポタンパク質および/もしくは標的化部分に融合したアポリポタンパク質である、工程、および/または
a2)アポリポタンパク質を化学的にコンジュゲートさせ、コンジュゲートされたアポリポタンパク質を単離して、単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を得る工程であって、コンジュゲートされたアポリポタンパク質が、サイトカインおよび標的化部分にコンジュゲートされたアポリポタンパク質であり、ならびに/またはコンジュゲートされたアポリポタンパク質が、サイトカインにコンジュゲートされたアポリポタンパク質および/もしくは標的化部分にコンジュゲートされたアポリポタンパク質である、工程、
b)工程a1で得られた単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質および/または工程a2で得られた単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質をリン脂質、ステロール、ならびに任意選択で脂質と組み合わせて、脂質ナノ粒子を得る工程を含む方法に関する。
記述13*.医薬品として使用するための、記述1*から8*のいずれか1つに記載の融合タンパク質もしくは記述9*から11*のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、または記述12*の方法によって得られるもしくは得ることができる脂質ナノ粒子。
記述14*.免疫関連障害の治療に使用するための、記述1*から8*のいずれか1つに記載の融合タンパク質、または記述9*から11*のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、または記述12*の方法によって得られるもしくは得ることができる脂質ナノ粒子。
記述15*.標的に化合物を送達する際の、好ましくは標的が細胞、組織、および/または器官である、記述1*から8*のいずれか1つに記載の融合タンパク質、または記述9*から11*のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、または記述12*の方法によって得られるもしくは得ることができる脂質ナノ粒子の使用。
記述16*.記述1*~8*のいずれか1つで定義される融合タンパク質をコードする核酸。
【0258】
本出願はまた、以下の記述に記載されている態様および実施形態を提供する。
記述1.アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質、を含み、
免疫調節生体分子が、免疫応答を増強または抑制するタンパク質である、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述2.アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質、を含み、
リルーティング分子は、その融合タンパク質が、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述3.アポリポタンパク質脂質ナノ粒子であって、
アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、免疫調節生体分子、およびリルーティング分子を含む融合タンパク質、および
リン脂質、を含み、
免疫調節生体分子が、免疫応答を増強または抑制するタンパク質であり、
リルーティング分子は、その融合タンパク質が、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述4*.記述1に定義される融合タンパク質、
記述2に定義される融合タンパク質、および
リン脂質を含む、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述5.アポリポタンパク質脂質ナノ粒子がステロールをさらに含む、記述1から4のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述6.アポリポタンパク質脂質ナノ粒子が、脂質、好ましくはトリグリセリドをさらに含む、記述1から5のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述7.前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子が、球体、リボンまたはディスクである、記述1から6のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述8.前記融合タンパク質の少なくとも一部が、前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を取り囲む環境に曝露され、好ましくは前記免疫調節生体分子および/または前記リルーティング分子が、前記アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を取り囲む前記環境に曝露される、記述1から7のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述9.免疫調節生体分子が、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子、造血成長因子、およびそれらの組合せからなる群から選択される、記述1または3から8のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述10.サイトカインが、IL-2サブファミリー、インターフェロンサブファミリー、IL-10サブファミリー、IL-1ファミリー、TGFβファミリーまたはIL-17ファミリーおよびそれらの組合せからなる群から選択され、より好ましくは、サイトカインが、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-38およびそれらの組合せからなる群から選択され、および/または
ケモカインが、CCケモカイン、CXCケモカイン、Cケモカイン、CX3Cケモカイン、およびそれらの組合せからなる群から選択され、および/または
成長因子は、VEGF、EGF、CNTF、LIF、エフリン、FGF、GDNF、HDF、HDGF、IGF、KGF、MSF、NRG、BDNF、NGF、ニューロトロフィン、PGF、PDGF、RNLS、TCGF、TGF、TNF、およびWNT、ならびにそれらの組合せからなる群から選択され、および/または
造血成長因子が、IL-3、CSF-1(M-CSF)、GM-CSF、G-CSF、インターロイキンまたはエリスロポエチンのIL-12ファミリーのメンバー、およびそれらの組合せからなる群から選択される、記述9に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述11.サイトカインがIL-4である、記述9または10に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述12.リルーティング分子が、抗体またはその抗原結合断片、リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質から選択され、好ましくは、リルーティングペプチドまたはリルーティングタンパク質が、標的に存在する受容体のリガンドである、記述2から11のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述13.抗体またはその抗原結合断片が、Fab、Fab2、scFv、scFv-Fc、dAb-Fc、遊離軽鎖抗体、半抗体、二重特異性Fab2、Fab3、三重特異性Fab3ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、IgG、IgNAR、一価IgG、VhH、および可変新規抗原受容体(VNAR)からなる群から選択される、記述12に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述14.リルーティング分子が、造血幹および前駆細胞(HSPC)、例えば造血幹細胞(HSC)、多分化能前駆(MPP)または共通骨髄前駆細胞(CMP)に結合することができる、記述2から13のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述15.リルーティング分子が、巨核球、好酸球、好塩基球、赤血球、単球、例えば樹状細胞またはマクロファージ、および好中球からなる群から選択される骨髄系細胞に結合することができる、記述2から13のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述16.リルーティングペプチドがSIRPαである、記述15に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述17.リルーティング分子が、非骨髄系細胞、例えば非骨髄性免疫細胞または内皮細胞に結合することができる、記述2から13のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述18.リルーティング分子が、リンパ球、好ましくはT細胞、より好ましくはCD8+T細胞に結合することができる、記述17に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述19.リルーティング分子が、CD8に特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはリルーティングペプチドがPD1、CD40LもしくはGP120である、記述17に記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述20.アポリポタンパク質が、ApoA1、ApoA-1 Milano、ApoA4、ApoC3、ApoD、ApoE、ApoL1、ApoL3であるか、またはアポリポタンパク質模倣物が、ApoA1、ApoA-1 Milano、ApoA4、ApoC3、ApoD、ApoE、ApoL1、ApoL3の模倣物である、記述1から19のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述21.アポリポタンパク質脂質ナノ粒子が、ペイロードを含み、好ましくはペイロードが、核酸もしくは核酸類似体、治療薬、生物学的製剤またはそれらの組合せから選択される、記述1から20のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述22.記述1から21のいずれか一項に定義されるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子を製造する方法であって、
a1)1つまたはそれ以上の単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質を得るために、1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質融合タンパク質を発現および単離する工程であって、
1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質融合タンパク質が、免疫調節生体分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
リルーティング分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
免疫調節生体分子およびリルーティング分子に融合したアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、およびそれらの組合せ、からなる群から選択される、工程、および/または
a2)1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物を化学的にコンジュゲートし、1つまたはそれ以上のコンジュゲートされたアポリポタンパク質を単離して、1つまたはそれ以上の単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を得る工程であって、
1つまたはそれ以上のコンジュゲートされたアポリポタンパク質が、免疫調節生体分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
リルーティング分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、
免疫調節生体分子およびリルーティング分子にコンジュゲートされたアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物、およびそれらの組合せからなる群から選択される、工程、および
b)工程a1で得られた1つまたはそれ以上の単離されたアポリポタンパク質融合タンパク質および/または工程a2で得られた1つまたはそれ以上の単離されたコンジュゲートされたアポリポタンパク質を、リン脂質、ならびに任意選択でステロールおよび/または脂質と組み合わせて、アポリポタンパク質脂質ナノ粒子を得る工程、を含む、方法。
記述23.記述22に記載の方法によって得られる、または得ることができるアポリポタンパク質脂質ナノ粒子。
記述24.記述1から21または23のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
記述25.医薬品として使用するための、記述1から21または23のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または記述24に記載の医薬組成物。
記述26.記述1から21または23のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または免疫関連障害の治療に使用するための、記述24に記載の医薬組成物。
記述27.免疫関連障害が、癌、炎症、感染症、自己免疫障害、アレルギー、臓器移植拒絶、および移植片対宿主病(GVH)からなる群から選択される、記述26に記載の使用のためのアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または記述26に記載の使用のための医薬組成物。
記述28.免疫調節生体分子がIL-4であり、免疫関連障害が、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは過剰炎症および/または免疫麻痺が、敗血症、心筋梗塞、脳卒中、癌、または多発性硬化症によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる、記述26に記載の使用のためのアポリポタンパク質脂質ナノ粒子または記述26に記載の使用のための医薬組成物。
記述29.前記免疫調節生体分子を標的細胞に標的化する際に使用するための、記述1、3から21もしくは23のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子または記述24に記載の医薬組成物。
記述30.前記免疫調節生体分子を骨髄系細胞に標的化する際に使用するための、記述1、3から13、15、16、20、21もしくは23のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子、または記述24に記載の医薬組成物。
記述31.免疫調節生体分子を標的に送達するための、好ましくは標的が細胞、組織および/または器官である、記述1、3から21または23のいずれか1つに記載のアポリポタンパク質脂質ナノ粒子の使用。
記述32.アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物および免疫調節生体分子を含む融合タンパク質であって、免疫調節生体分子は、前記免疫調節生体分子を骨髄系細胞に標的化する際に使用するための、免疫応答を増強または抑制するタンパク質である、融合タンパク質。
記述33.融合タンパク質が、リルーティング分子をさらに含み、リルーティング分子が、その融合タンパク質が、アポリポタンパク質もしくはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子であり、好ましくは、リルーティング分子が、記述15に定義されるリルーティング分子である、記述32に記載の使用のための融合タンパク質。
記述34.アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびリルーティング分子を含む融合タンパク質であって、リルーティング分子は、融合タンパク質が、アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子である、融合タンパク質。
記述35.リルーティング分子が、記述12から19のいずれか一項に定義されるリルーティング分子である、記述34に記載の融合タンパク質。
記述36.融合タンパク質が免疫調節生体分子をさらに含み、免疫調節生体分子が免疫応答を増強または抑制するタンパク質であり、好ましくは免疫調節生体分子が記述9または10に定義される免疫調節生体分子である、記述34または35に記載の融合タンパク質。
記述37.記述34から36のいずれか1つに記載の融合タンパク質をコードする核酸。
記述38.記述34から36のいずれか1つに記載の融合タンパク質または記述37に記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
記述39.医薬品として使用するための、記述34から36のいずれか1つに記載の融合タンパク質、記述37に記載の核酸、または記述38に記載の医薬組成物。
記述40.免疫関連障害の治療に使用するための、好ましくは、免疫関連障害が、癌、炎症、感染症、自己免疫障害、アレルギー、臓器移植拒絶、および移植片対宿主病(GVH)からなる群から選択される免疫関連障害である、記述34から36のいずれか1つに記載の融合タンパク質、記述37に記載の核酸、または記述38に記載の医薬組成物。
記述41.前記免疫調節生体分子を標的細胞に標的化する際に使用するための、記述36に記載の融合タンパク質、記述36に記載の融合タンパク質をコードする核酸、または記述36に従属する場合、記述38に記載の医薬組成物。
記述42.アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物およびインターロイキン-4(IL-4)を含む融合タンパク質。
記述43.融合タンパク質が、リルーティング分子をさらに含み、リルーティング分子が、その融合タンパク質が、アポリポタンパク質もしくはアポリポタンパク質模倣物が結合したであろう標的とは異なる標的に結合すること、および/またはより高い親和性でその意図された標的に結合することを可能にする分子であり、好ましくは、リルーティング分子が、記述12から19のいずれか一項に定義されるリルーティング分子である、記述42に記載の融合タンパク質。
記述44.アポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物が、記述20に定義されるものである、記述42または43に記載の融合タンパク質。
記述45.記述42から44のいずれか1つに記載の融合タンパク質をコードする核酸。
記述46.記述42から44のいずれか1つに記載の融合タンパク質または記述45に記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
記述47.医薬品として使用するための、記述42から44のいずれか1つに記載の融合タンパク質、記述45に記載の核酸、または記述46に記載の医薬組成物。
記述48.免疫関連障害の治療に使用するための、記述42から44のいずれか1つに記載の融合タンパク質、記述45に記載の核酸、または記述46に記載の医薬組成物。
記述49.免疫関連障害が、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは、過剰炎症および/または免疫麻痺が、敗血症、心筋梗塞、脳卒中、癌、または多発性硬化症によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる、記述48に記載の使用のための融合タンパク質、記述48に記載の使用のための核酸、または記述48に記載の使用のための医薬組成物。
記述50.IL-4を標的細胞に標的化する際に使用するための、記述42から44のいずれか1つに記載の融合タンパク質、記述45に記載の核酸、または記述46に記載の医薬組成物。
記述51.IL-4を骨髄系細胞に標的化する際に使用するための、記述42から44のいずれか1つに記載の融合タンパク質、記述45に記載の核酸、または記述46に記載の医薬組成物。
記述52.骨髄標的化分子およびIL-4を含む融合タンパク質であって、骨髄標的化分子がIL-4を骨髄系細胞に標的化することができる、融合タンパク質。
記述53.IL-4は、配列番号43と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列、またはその環状置換を含むポリペプチドである、記述52に記載の融合タンパク質。
記述54.骨髄標的化分子が、抗体もしくはその抗原結合断片、骨髄標的化ペプチドまたは骨髄標的化タンパク質から選択され、好ましくは骨髄標的化ペプチドまたは骨髄標的化タンパク質が、標的に存在する受容体のリガンドである、記述52または53に記載の融合タンパク質。
記述55.抗体またはその抗原結合断片は、Fab、Fab2、scFv、scFv-Fc、dAb-Fc、遊離軽鎖抗体、半抗体、二重特異性Fab-2-、Fab3、三重特異性Fab-3-ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重特異性トリアボディ、ミニボディ、IgG、IgNAR、一価IgG、VhHまたはVNARから選択される、記述54に記載の融合タンパク質。
記述56.記述52から55のいずれか1つに記載の融合タンパク質をコードする核酸。
記述57.配列番号44と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の核酸配列を含むか、または配列番号43と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一の配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含み、骨髄系細胞における標的化発現のための手段をさらに含む核酸であって、前記手段が、
-前記核酸に作動可能に連結された前記骨髄系細胞における選択的または誘導的発現のためのプロモーター、または
-前記骨髄系細胞において前記核酸を安定して発現することができる前記核酸を含むウイルス発現ベクター、または
-1つまたはそれ以上のアポリポタンパク質、リン脂質、前記核酸および任意選択でステロールを含む脂質ナノ粒子から選択される核酸。
記述58.記述52から55のいずれか1つに記載の融合タンパク質または記述56もしくは57に記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
記述59.医薬品として使用するための、記述52から55のいずれか1つに記載の融合タンパク質、記述56または57に記載の核酸、または記述58に記載の医薬組成物。
記述60.免疫関連障害の治療に使用するための、記述52から55のいずれか1つに記載の融合タンパク質、記述56もしくは57に記載の核酸、または記述58に記載の医薬組成物。
記述61.免疫関連障害が、過剰炎症とそれに続く免疫麻痺の状態であり、好ましくは、過剰炎症および/または免疫麻痺が、敗血症、心筋梗塞または脳卒中によるCOVID-19などの感染症によって引き起こされる、記述60に記載の使用のための融合タンパク質、記述60に記載の使用のための核酸、または記述60に記載の使用のための医薬組成物。
記述62.細胞、器官、組織または生物における訓練された免疫の刺激または促進におけるIL-4のインビボ、インビトロまたはエクスビボでの使用。
【0259】
本発明をその特定の実施形態と共に説明してきたが、当業者にとって前述の記述に照らして多くの代替、変更および変形が明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広範な範囲において、以下のような全てのそのような代替物、変更物、および変形物を包含することが意図されている。
【0260】
本発明の本明細書に開示された態様および実施形態は、以下の非限定的な例によってさらに支持される。
【実施例】
【0261】
実施例1.免疫調節生体分子に融合したアポリポタンパク質の融合タンパク質の調製および脂質ナノ粒子への取り込み
材料および方法
ApoA1-S147C(例えば、配列番号9)およびApoA1-S279C(例えば、配列番号11)変異体、apoA1-IL4融合タンパク質(例えば、配列番号35)、apoA1-IL2(例えば、配列番号23)またはapoA1-IL2v4(例えば、配列番号31)融合タンパク質、apoA1-IL1β融合タンパク質(例えば、配列番号21)およびapoA1-IL38融合タンパク質(例えば、配列番号80)のタンパク質発現、精製および特性評価(
図1~
図9)
【0262】
所望のタンパク質をコードするpET-ベクターを含む細菌細胞を、追加のNaCl(10g/L)を添加した40mLの2YT培地で増殖させ、100μg/mLのアンピシリンに形質転換細菌を接種し、一晩増殖させた。翌日、10g/LのNaClおよび100μg/mLアンピシリンを含有する2YT培地に一晩培養物を接種し、OD600が0.6~0.8に達するまで150rpmで37°Cでインキュベートした。イソプロピルβ-d-チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.1mMになるように添加した。培養物を20°C、150rpmで一晩さらにインキュベートした。細菌を遠心分離を用いてペレット化し、製造業者のプロトコルに従って、Benzonase(登録商標)Nuclease(Merck)が供給された細胞ペレット1グラムにつきBugbuster(登録商標)タンパク質抽出試薬(Novagen)を用いて溶解した。溶解物を遠心分離し、次いで、目的のタンパク質を含有する得られた上清を、Ni-NTA HisBind(登録商標)Resin(Merck Millipore)を含むIMACカラムで処理した。
【0263】
得られた画分をSDS-PAGEを用いて分析した(試料を試料緩衝液(1:1)と合わせ、Mini-PROTEAN(登録商標)TGX(商標)Precast Gel(Bio-Rad)で泳動した。得られたゲルを、クーマシーG-250染色を使用して染色し、dH
2Oを使用して脱色した。
図3、
図5)。
【0264】
得られた目的の精製タンパク質を、Q-ToFを使用してさらに特徴付けた。試料をdH2O中0.1%ギ酸で0.01から0.1mg/mLの濃度に希釈した。PD Spintrap(商標)G-25カラム(0.5mL、Cytiva)を使用して濾過した後、試料を、Xevo G2四重極飛行時間型質量分析計を備えたWaters ACQUITY UPLC I-Classシステムを使用して測定した。タンパク質をC8A逆相カラムによって分離した。dH2O中0.1%ギ酸中15%~75%アセトニトリルの勾配を使用した。得られたデータを、MaxEntアルゴリズムを用いてMassLynx(Waters)を用いて分析した(
図6)。
ApoA1-S147C(例えば、配列番号9)およびApoA1-S279C(例えば、配列番号11)変異体、apoA1-IL4融合タンパク質(例えば、配列番号35)、apoA1-IL2(例えば、配列番号58)またはapoA1-IL2v4(例えば、配列番号60)融合タンパク質、apoA1-IL1β融合タンパク質(例えば、配列番号21または配列番号82)およびapoA1-IL38融合タンパク質(例えば、配列番号80または配列番号84)のタンパク質発現、精製および特性評価(
図10~
図16)
【0265】
細菌発現およびタンパク質精製):実施例2の「細菌発現およびタンパク質精製」の項に記載されるように実施した。
【0266】
細菌溶解およびタンパク質精製:実施例2に記載の「細菌溶解およびタンパク質精製」の項に記載されるように実施した。
【0267】
円盤状脂質ナノ粒子(LNP)製剤
HDLベースのLNPを製剤化するために、リン脂質、apoA1融合タンパク質およびコレステロールが使用される。円盤状LNPの場合、融合タンパク質(PBS中)を、千鳥型ヘリングボーン微小流体ミキサーを使用して、コレステロールと1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)との混合物(95%アセトニトリル/5%メタノール中)と1:10:100のモル比で混合する。サイズおよび不均一性を評価するために、ナノ生物製剤を含むZetasizer Nano ZSPで動的光散乱測定を行った。試料体積100μLを透明キュベット(Sarstedt)にピペットで入れ、これをMalvern Zetasizer Nano ZSPに挿入した。試料は、25°Cの温度で、1回の実行で10サイクルを、三連で測定した。
【0268】
免疫調節生体分子へのアジド導入およびapoA1またはそのシステイン変異体へのコンジュゲーション
ApoA1-IL4融合物(図1~図9に示されるデータについて):IL-4をDEA緩衝液(50mMジエタノールアミン、pH7.5)に緩衝液交換し、0.75mMまで濃縮した。イミダゾール-1-スルホニルアジド塩酸塩(Fluorochem)をdH2Oに溶解し、20mg/mLのストック溶液を得た。pHを7に調整した。次いで、これを227.5:1のモル比(IL-4中のアミンあたり17.5モル当量)でIL-4に添加した。反応混合物を4°Cで一晩インキュベートした。DBCO-PEG12-マレイミドリンカー(Sigma-Aldrich)をDMSOに溶解した。次いで、溶解したリンカーをapoA1 S279C(0.5mM)に最終濃度5mMまで添加した。この反応混合物も4°Cで一晩インキュベートした。次いで、得られた官能化IL-4-AzおよびapoA1-DBCOをPBS(pH7.9)に緩衝液交換して、過剰のアジド転移試薬およびDBCO-マレイミドリンカーを除去した。溶液を1:2のapoA1:IL-4モル比で一緒に添加し、4°Cで一晩インキュベートした。翌日、混合物を、Ni-NTA HisBind(登録商標)Resin(Merck Millipore)を用いたIMACカラムで精製した。画分を回収し、SDS-PAGEを用いて分析した。Q-ToF(上記と同じ方法)およびHEK293 IL-4レポーターアッセイを用いて分析を行った。
【0269】
ApoA1-サイトカイン融合(図10~図16に表されるデータについて):代替において、MQにおけるイミダゾール-1-スルホニルアジド(2mg/mL)のストック溶液を調製した。このストックのpHを7.5に設定した。PBS(pH=7.5)中の100μgのサイトカインに、一級アミンあたり17.5モル当量のイミダゾール-1-スルホニルアジドを添加した。反応物を4°Cで一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、過剰のイミダゾール-1-スルホニルアジドを、PDミニトラップG-25脱塩カラム(Cytiva)を使用することによって除去し、得られた生成物を、MS用MagTran V1.03を使用してQ-ToF LC-MS(WatersMassLynx v4.1)によって分析した。5倍モル過剰のマレイミド-PEG4-DBCOリンカーをApoA1またはそのシステイン変異体に添加し、一晩反応させて、apoA1-PEG4-DBCO複合体を形成した。過剰なリンカーを、MWCO 10kDaを備えたAmicon Ultra-0.5遠心フィルタユニット(Merck)を使用して除去した。次いで、ApoA1-PEG4-DBCOをアジド含有サイトカインと合わせ、室温で4時間または4°Cで一晩インキュベートした。得られた生成物をSDS-pageを用いて分析した。
【0270】
HEK293 IL-4レポーターアッセイ
HEK-Blue(商標)IL-4細胞(Invivogen)をT25培養フラスコに播種し、80%の細胞密集度に達するまで37°Cで増殖させた。顕微鏡を用いて細胞生存率を確認した。細胞を滅菌PBSで洗浄し、トリプシン処理を用いて37°Cで5分間採取した。次いで、各ウェルが50,000個の細胞(180μL DMEM、10%のFBS、1%のPen-Strep)を含むように、細胞を96ウェルプレートに播種した。各条件について、2倍希釈系列を調製した。希釈系列を、細胞を含むプレートに三重に加えた。次いで、細胞を37°Cで24時間インキュベートした。QUANTI-Blue(商標)(Invivogen)溶液を製造者の説明書に従って調製した。別の96ウェルプレートに、20μLの馴化細胞培地を180μLのQUANTI-Blue(商標)溶液と一緒に添加した。次いで、これを37°Cで3時間インキュベートした。Spark(登録商標)マルチモードマイクロプレートリーダー(Tekan)を使用して635nMで吸光度を分析した。
【0271】
T細胞増殖に対するIL2構築物の効果
ヒトCD3陽性T細胞を、製造業者のプロトコルに従ってCFSE(Thermofisher)で染色した。インキュベーション後、100,000個のT細胞を96ウェル丸底プレートに播種し、IL2またはIL2構築物で6日間刺激した。T細胞を採取し、洗浄し、CD3、CD4およびCD8について染色し、Cytoflex(Beckman Coulter Inc.)で測定した。FlowJoソフトウェア(BD)を使用して、フローサイトメトリーデータを分析した。市販のIL2は、Sinobiologicalから購入した。組換えIL2を以下のように調製した。
【0272】
組換えIL-2の細菌発現
SUMO-IL2構築物をShuffle T7コンピテント大腸菌に形質転換した。50μg/mLのカナマイシンを含有する40mLの2YT培地に細菌を接種し、250rpmおよび37°Cで一晩増殖させて小型培養物を形成した。翌日、50μg/mLカナマイシンを含む2YT培地に小型培養物を接種して大型培養物を形成した。0.6~0.8のOD600に達するまで、培養物を150rpmおよび37°Cでインキュベートした。次いで、タンパク質発現を誘導するために、IPTGを0.1mMの最終濃度まで添加した。培養物を20°C、150rpmで一晩さらにインキュベートした。次いで、4°Cで10分間、10,000xgで遠心分離することによって細菌ペレットを得た。得られた上清を廃棄した。得られたペレットを、細胞ペレット1グラム当たり10mLの溶解緩衝液(20mM Tris、500mM NaCl、pH7.9)に再懸濁した。次いで、25Uベンゾナーゼ(登録商標)ヌクレアーゼ(Merck)を添加した。cOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤を、50mLの抽出緩衝液につき1つ添加した。得られた溶液を、凝集塊が残存しなくなるまで4°Cで30分間撹拌した。次いで、氷上に保ったまま、15,000~20,000psiでAvestin Emulsiflex C3を使用して溶液を3回均質化した。次いで、細胞溶解物を4°Cで30分間、20,000xgで遠心分離した。得られた上清を4°CでIMACカラムに適用し、これに予め0.1MのNiSO4溶液を装入した。すべてのフロースルー画分を回収した。カラムを8カラム体積の緩衝液A(20mM Tris、500mM NaCl、10mMのイミダゾール、pH7.9)で洗浄し、次いで8カラム体積の緩衝液A50(20mM Tris、500mM NaCl、50mMのイミダゾール、pH7.9)で洗浄した。SUMO-IL2を溶出するために、8カラム体積の緩衝液A500(20mM Tris、500mM NaCl、500mMのイミダゾール、pH7.9)をカラムに添加した。得られた画分をSDS-PAGEを用いて分析した。SUMO-IL2を含有する溶出画分をプールした。SUMOヒドロラーゼを、1mgヒドロラーゼ/500mgタンパク質の比でSUMO-IL2のプール画分に添加した。次いで、溶液を、4°Cで一晩穏やかに撹拌しながらSnakeskin(商標)10kDaカットオフ透析バッグ(Thermo Scientific)を使用して保存緩衝液(20mM Tris、500mM NaCl、pH7.9)に透析した。次いで、得られたタンパク質溶液を4000xgで20分間遠心分離し、上清を0.2μMシリンジフィルターを用いて濾過して凝集したタンパク質を除去した。IMACカラムプロトコルを繰り返し、SDS-PAGEを使用して画分を再度分析した。IL2を含む画分が他のタンパク質で汚染されている場合、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて試料を精製した。そうでなければ、IL2を含有する画分をPBS(pH7.9)に緩衝液交換した。SECは、GE Hiload 16/60 Superdex 75pgカラムを備えたNGC 10 Medium-Pressure Chromatography System(Bio-Rad)で行った。まず、濾過したPBS(pH7.9)を用いてカラムを平衡化し、その後、試料を適用した。回収した画分をSDS-PAGEを用いて分析した。IL2を含有する画分をプールし、Nanodrop(商標)1000分光光度計を使用して最終濃度を決定した。次いで、タンパク質を液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。Q-tofおよびSPRを用いて分析を行った。
【0273】
低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM):実施例2に記載のように実施した。
【0274】
DLSによるaNPサイズおよび分散度の決定:実施例2に記載のように行った。
【0275】
SDS page:実施例2に記載のように実施
【0276】
結果
本発明者らの融合タンパク質は、組換え発現によって、または化学的コンジュゲーションによって作製することができる。これまで、本発明者らは、4つの異なる融合タンパク質を組換えで発現させることに成功した。これらは、apoA1-IL4、apoA1-IL1B、apoA1-IL38およびapoA1-IL2である。
図3に観察され得るように、すべての発現が成功し、純粋なタンパク質が得られた。黒色の長方形は、目的の融合タンパク質を含む溶出画分を示す。
【0277】
次いで、これらの組換え発現タンパク質を使用して、ナノ生物学的ディスクを製剤化した(
図4)。apoA1-IL4およびapoA1-IL38は11日間にわたって安定したままであり、apoA1と同様の直径およびPdIを示すことが理解され得る。ApoA1-IL1bもこれを示すが、11日後、これらのナノ生物製剤は凝集しているようである。
【0278】
apoA1をサイトカイン、ナノボディ、または他の生体分子に化学的にコンジュゲートさせるためには、反応性ハンドルが必要である。したがって、位置147のセリンの代わりにシステインを含有するapoA1変異体(本明細書では「S147C」または「S157C」変異体と呼ばれる)または279(本明細書では「S279C」または「S239C」変異体と呼ばれる)を作製した。例えば、apoA1変異体は、配列番号9または11に示されるペプチド配列によって定義され得る。
図5に見られるように、これらのタンパク質の発現および精製は成功し、野生型apoA1と同様の収率および純度をもたらした。得られたタンパク質は、四重極飛行時間(Q-ToF)を用いてさらに特徴付けられ、タンパク質が純粋であることが示され、正しい質量が見出された(
図6)。
【0279】
このapoA1変異体へのサイトカインのコンジュゲーションは、マレイミド-PEG-DBCOリンカーを使用して行うことができ、マレイミドはapoA1に結合し、DBCOは本発明者らがサイトカインに導入するアジドに結合する。生成物の±90%がIL-4-Az(単一アジドが組み込まれたIL-4)からなるまで、IL-4のN末端への単一アジドの導入を最適化した。これを、Q-ToF(
図7)およびSDS-PAGE(
図8)を使用して分析した。SDS-pageから、ApoA1S279CとIL4とのコンジュゲーションの際に、融合タンパク質の予想される分子量に対応して、バンドが約40kDaに現れることが分かる。これは、本発明者らがPEG-リンカーを使用してIL4をapoA1に化学的にコンジュゲートさせたことを認めさせる(
図8)。このコンジュゲーション反応は依然として最適化されているが、本発明者らは既に±20%の収率を得ている。
次いで、HEK293 IL-4レポーターアッセイを使用して、組換え生産された融合タンパク質ならびに化学的apoA1-IL4コンジュゲートの生物活性を分析した。この細胞株は、完全に活性なSTAT6経路を有し、STAT6誘導性分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を保有している。ここで、SEAPの産生は、IL4のその受容体への結合に関連する。HEK-Blue(商標)IL-4/IL-13細胞は、IL-4およびIL-13に応答してSEAPを産生する。IL-4結合は、QUANTI-Blue比色アッセイを用いてSEAPの酵素活性を調べることによって定量することができる。
【0280】
図9から分かるように、両方の融合タンパク質は用量依存的効果を発揮し、したがって、両方の融合タンパク質中のIL4は依然として機能的であると結論付けることができる。化学的にコンジュゲートされたapoA1-IL4は、市販の組換えIL-4よりもわずかに少ない予備形成を行い、これは、apoA1とIL-4との融合に起因し得る。これは、受容体へのIL-4の結合をわずかに妨げる可能性がある。しかしながら、化学的にコンジュゲートされたapoA1-IL4は、組換えapoA1-IL4タンパク質よりも良好に機能し、化学的にコンジュゲートされたapoA1-IL4の親和性が、組換え発現されたapoA1-IL4の親和性よりも高い可能性が高いことを示している。
【0281】
ApoA1-IL2融合タンパク質
apoA1-IL4化学的および組換え融合タンパク質の産生に加えて、本発明者らはapoA1-IL2融合タンパク質も産生した。ここで、本発明者らは、野生型IL2またはIL2変異体をapoA1に組換え融合した。発現タンパク質およびIMAC精製タンパク質のSDS-page分析は、正しいタンパク質が本発明者らの溶出画分に存在することを示した(
図10左パネル)。さらに、本発明者らは、野生型IL2をapoA1に化学的にコンジュゲートさせた。これは、SDS-page(
図10右パネル)によっても検証された。
【0282】
次に、本発明者らは、apoA1-IL2融合タンパク質を円盤状脂質ナノ粒子に組み込んで、IL2-aNPおよびIL2v4-aNPを得た(
図11)。円盤状ナノ粒子の成功裏の製剤化は、低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM)によって確認された(
図11右パネル)。本発明者らは、動的光散乱(DLS)(
図11左パネル)を使用して、21日間PBS中でナノ粒子サイズおよび安定性をさらに分析した。
【0283】
本発明者らは、apoA1-IL2融合タンパク質がT細胞増殖を刺激する能力を評価した。本発明者らの融合タンパク質はT細胞増殖を誘導することができることが分かる。特に、本発明者らのapoA1-IL2化学コンジュゲート(
図12中央底部)は、市販のIL2(
図12左上)と同様の程度までT細胞増殖を誘導することができる。
【0284】
ApoA1-IL1β融合タンパク質
本発明者らは、化学的にコンジュゲートされ、組換え発現されたapoA1-IL1β融合タンパク質を作製することによって、本発明者らのライブラリーをさらに拡大した。ここで、本発明者らは、IL1βをapoA1に組換え融合した。発現およびIMAC精製タンパク質のSDS-page分析は、約40kDaのバンドによって示されるように、正しいタンパク質が本発明者らの溶出画分に存在することを示した(
図13の上パネル)。さらに、本発明者らはまた、IL1βをapoA1に化学的にコンジュゲートさせた。これは、SDS-pageによっても検証された(
図13下パネル)。
【0285】
次に、本発明者らは、apoA1-IL1β融合タンパク質を円盤状脂質ナノ粒子に組み込み、IL1β-aNPを得た。円盤状ナノ粒子の成功裏の製剤化は、低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM)によって確認された(
図13下パネル)。本発明者らは、動的光散乱(DLS)(
図14上パネル)を使用して、21日間PBS中でナノ粒子サイズおよび安定性をさらに分析した。
【0286】
ApoA1-IL38融合タンパク質
さらに、本発明者らはまた、apoA1-IL38融合タンパク質を化学的にコンジュゲートさせ、組換え発現させた。ここで、本発明者らは、IL38をapoA1に組換え融合した。発現およびIMAC精製タンパク質のSDS-page分析は、約40kDaのバンドによって示されるように、正しいタンパク質が本発明者らの溶出画分に存在することを示した(
図15の上パネル)。さらに、本発明者らはまた、IL38をapoA1に化学的にコンジュゲートさせている。これは、SDS-pageによっても検証された(
図15下パネル)。
【0287】
次に、本発明者らは、apoA1-IL38融合タンパク質を円盤状脂質ナノ粒子に組み込み、IL38-aNPを得た。円盤状ナノ粒子の成功裏の製剤化は、低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM)によって確認された(
図16下パネル))。本発明者らは、動的光散乱(DLS)(
図16上パネル)を使用して、21日間PBS中でナノ粒子サイズおよび安定性をさらに分析した。
【0288】
実施例2.ApoA1-IL-4融合タンパク質およびその脂質ナノ粒子への組み込み
材料および方法
PBMCおよび単球の単離:健康なボランティアからのバフィーコート(Sanquin)またはEDTA全血を、書面によるインフォームドコンセントを得た後に取得した。この材料をカルシウム/マグネシウムを含まないPBS(Lonza)で少なくとも1:1に希釈し、Ficoll-Paque(GE Healthcare)の上に積層した。615×gで30分間の密度勾配遠心分離を使用して、末梢血単核細胞(PBMC)界面を分離した。冷PBSで3~5回洗浄した後、Sysmex血液分析装置(XN-450;Sysmex)を使用してPBMC収率および組成を評価した。
【0289】
陰性に選択した単球を、製造者の説明書(MACS Pan単球単離キット、ヒト;Miltenyi Biotec)に従って、MACSを使用して得た。単球の収率および純度をSysmex血液分析装置で評価した。
【0290】
いくつかの実験(本文に示す)では、単球を、パーコール(Sigma-Aldrich)での高浸透圧密度勾配遠心分離によってPBMCから代替的に濃縮した。150~200×106個のPBMCを高浸透圧パーコール溶液(滅菌水中48.5%のv/vパーコール、0.16M NaCl)の上に重層し、580×g、室温で15分間遠心分離した。界面を回収し、冷PBSで1回洗浄し、RPMIに再懸濁した。
【0291】
初代ヒト単球培養:すべての初代ヒト単球/マクロファージを、GlutaMAX(2mM;GIBCO)、ピルビン酸ナトリウム(1mM;GIBCO)およびゲンタマイシン(50μg/ml;Centrafarm)をさらに補充したDutch修飾(Invitrogen)を含むRPMI-1640中で培養した。この媒体は、RPMI+++とさらに呼ばれる。さらに、細胞培養中に10%(v/v)ヒトプール血清を培地に添加した(「細胞培養培地」とも呼ばれる)。
【0292】
初代ヒト単球における訓練された免疫のインビトロモデル:初代ヒト単球において訓練された免疫を誘導するために、以前に最適化され公開された方法を使用した(Dominguez-Andres,J.et al.In vitro induction of trained immunity in adherent human monocytes.STAR Protoc 2,100365,doi:10.1016/j.xpro.2021.100365(2021);van Lier,D.,Geven,C.,Leijte,G.P.&Pickkers,P.Experimental human endotoxemia as a model of systemic inflammation.Biochimie 159,99-106,doi:10.1016/j.biochi.2018.06.014(2019))。簡潔には、単球を平底細胞培養プレートに1時間接着させ、温PBSで洗浄して、いずれの非接着細胞および細胞残屑をも除去した。次いで、表1に詳述した刺激のいずれか、または培地のみ(「非訓練」対照)で24時間刺激した(「訓練」)。
表1.初代ヒト単球の刺激およびインビボ実験。
【表1】
【0293】
薬理学的阻害実験のために、単球を、訓練刺激を加える前に、表2に記載される阻害剤の1つと1時間プレインキュベートした。
表2.初代ヒト単球に対する阻害剤。
【表2】
【0294】
最初の24時間の刺激後、細胞を温PBSで洗浄し、温かい細胞培養培地を加えた。次いで、単球を静置させ、5日間マクロファージに分化させた。6日目に、訓練された免疫の誘導を評価した。この目的のために、細胞を典型的にはさらに24時間LPSで再刺激してサイトカイン産生を誘発した。上清を回収し、さらなる分析まで、例えばIL6およびTNFについてELISAを用いて-20°Cで保存した。
【0295】
他のほとんどの訓練された免疫読み出し方法では、細胞を以下のように採取した:最初に、細胞を細胞培養インキュベータ内でVersene細胞解離試薬(Life technologies)中で30分間インキュベートした。次いで、セルスクレーパーを使用して、培養プレートから細胞を除去した。収率を最大にするために、氷冷PBSを添加した後、培養プレートを2回目に掻き取った。マクロファージを300×g、4°Cで10分間遠心分離し、下流への適用を続ける前に計数した。
【0296】
インビトロ炎症阻害:単球を平底細胞培養プレートに1時間接着させ、温PBSで洗浄して、任意の非接着細胞および細胞残屑を除去した。
【0297】
次いで、それらをIL4およびLPSと共に24時間インキュベートした。最初の24時間の刺激後、上清を回収し、IL6およびTNFについてELISAでさらに分析するまで-20°Cで保存した。
【0298】
初代単球由来樹状細胞(moDC)の生成:実験のために、moDCをマクロファージ(非訓練対照またはIL4訓練)と比較し、moDCを以下のように分化させた。まず、陰性に選択された単球を上記のようにして得た。1時間の接着およびPBS洗浄後、これらを、IL4(25ng/ml)およびGM-CSF(1000 IU/ml;プレミアムグレード、Miltenyi Biotec)をさらに補充した10% HPSを含むRPMI+++中で培養した。細胞を6日目まで分化させ、3日目に1回の中程度のリフレッシュを行った。6日目に、(上記のように)接着細胞に加えて非接着細胞を採取した。次いで、以下に記載されるように、moDCおよびマクロファージをフローサイトメトリーによる分析に供した。
【0299】
インビボ実験ヒトエンドトキシン血症モデルおよびエクスビボ分析:8人の健康な(病歴、身体検査、および日常的な検査によって確認されるように)男性ボランティアが、Radboud大学医療センターの集中治療室の研究ユニットで行われる実験的エンドトキシン血症実験に参加するための書面によるインフォームドコンセントを提供した。すべての試験手順は、現地の倫理委員会(CMO Arnhem-Nijmegen、登録番号NL71293.091.19および2019-5730)によって承認され、ヘルシンキ宣言の最新版に従って実施された。
【0300】
他の箇所に詳細に記載されているように、連続エンドトキシン注入レジメンを使用した(van Lier,D.,Geven,C.,Leijte,G.P.&Pickkers,P.Experimental human endotoxemia as a model of systemic inflammation.Biochimie 159,99-106,doi:10.1016/j.biochi.2018.06.014(2019))。手短に言えば、対象を研究ユニットに入れ、前肘静脈および橈骨動脈にカニューレを挿入して、流体およびエンドトキシンの投与、ならびに採血および血行動態モニタリングをそれぞれ可能にした。3リードECGを実験全体を通して連続的に記録した。等張水前処置(1.5L NaCl 0.45%/グルコース2.5%を、エンドトキシン注入開始前の時間に静脈内投与)後、ボランティアに1ng/kg体重のエンドトキシン(大腸菌リポ多糖[LPS]型O113、ロット番号94332B1;List Biological laboratories)の負荷用量で静脈内曝露し、続いて直接0.5ng/kg/時間で3時間連続注入した。参加者は、エンドトキシン負荷用量後8時間監視され、その後、参加者は研究ユニットから退院した。
【0301】
このプロジェクトでは、負荷用量の投与の1時間前および4時間後の2つの時点で血液試料を得た。陰性に選択した単球を上記のように取得した。細胞を接着させ、組換えヒトIL4、円盤状IL4-aNP、LPS(初期免疫寛容を評価するため)、または培地のみ(対照として)で24時間刺激した。PBS洗浄後、細胞を培養培地中に48時間静置し、LPSでさらに24時間再刺激した。上清を回収し、-20°Cで保存した。
【0302】
サイトカインおよび乳酸の測定:TNF、IL6およびIL1Raを、デュオセットELISAキット(R&Dシステム)を製造者の説明書に従って使用して細胞培養上清中で測定した。乳酸塩測定のために、蛍光アッセイを使用した。30μlの試料、培地対照、または既知の標準を黒色96ウェルプレートに添加した。次いで、30μlの反応混合物(PBS、pH7.4、西洋ワサビペルオキシダーゼ(0.2U/ml)、乳酸オキシダーゼ(2U/ml)、Amplex red(100μM;Fisher scientific))を添加し、反応物を暗所、室温で20分間インキュベートした。直後に、蛍光を530/25nmおよび590/35nmで測定した。Gen5ソフトウェア(v3.03、BioTek)をMicrosoft Excelと併せて使用して、元の試料中のサイトカインおよび乳酸塩濃度を計算した。
【0303】
マクロファージ表面マーカーフローサイトメトリー:マクロファージを上記のように採取し、染色のためにv底96ウェルプレートに移した。細胞を1500rpm、5分間、4°Cで遠心分離した。上清を除去し、200μlのPBA(PBS、pH7.4、1%のw/vのBSA(Sigma))で細胞を一回洗浄した。
【0304】
10%ヒトプール血清を補充したPBS中で4°Cで15分間インキュベートすることによって、Fc受容体をブロックした。もう一度洗浄した後、表面マーカーおよび生存率を、表3に記載の抗体および生存率色素を使用して、4°Cで30分間、50μlの体積で染色した。
表3.初代ヒト単球/マクロファージを用いた実験(およびMLR実験)のためのフローサイトメトリー抗体。
【表3】
【0305】
2回洗浄した後、細胞を150μlのPBAに再懸濁し、Cytoflexフローサイトメーター(Beckman Coulter)またはBD FACSVerseシステム(BD Biosciences)で測定した。単一抗体染色のためにVersaComp補償ビーズ(Beckman Coulter)を使用して補償を行った。生存細胞と熱殺菌細胞との混合物を(製造業者の推奨に従って)生存色素の単一染色に使用した。Flowjo(v10.7.1、BD Biosciences)でデータ分析を行った。我々のゲーティング戦略は以下の通りであった:最初に、必要に応じて時間ゲートを使用した。次いで、後続のFSC-A/SSC-AゲートおよびFSC-A/FSC-Hゲートを使用して単一細胞事象を選択した。死細胞を、生存性色素陰性集団を選択することによって分析から除去した。幾何平均蛍光強度を表面マーカー発現の尺度として計算した。
【0306】
T細胞分極読み出し:MLR実験のために、採取したマクロファージをその後のT細胞分極アッセイに使用した。同種異系ナイーブT細胞に、マクロファージごとに10のT細胞の比率でマクロファージを播種した。細胞を、平底96ウェルプレートにおいて標準的な細胞培養培地で7日間培養した。このモデルでは、HLAミスマッチはT細胞受容体の非特異的活性化を引き起こす。最終日に、細胞をPMA(25ng/mL)+イオノマイシン(0.5μg/mL)で、100ng/mLのブレフェルジンA(golgi-plug)の存在下で4時間刺激した。細胞を採取し、2つのフローサイトメトリー抗体パネル(CD4 T細胞について1つおよびCD8について1つ;表3も参照されたい)に分けた。細胞を、細胞内サイトカイン染色を可能にするためのT細胞の透過化のための追加の工程を用いて、上記と同様の様式で染色した。これは、製造業者の指示に従って、Fix/Perm緩衝液セット(eBioscience)を使用して実施した。ゲーティング戦略は上記のものと同様であり、CD3陽性事象に対する選択を追加した。T細胞分極の顕著なサイトカインについて陽性の細胞の割合を計算して、T細胞サブセットの割合を推定した。
【0307】
フローサイトメトリーによるホスホ-STAT6測定:単球をRPMI、IL4、または異なる濃度のIL4-aNP(図に示す)で37°Cで20分間刺激した。細胞をv底96ウェルプレートに移し、染色手順の間氷上に保った。生存率およびCD14(上記の様式)について染色した後、細胞を、暗所において4°Cで45分間、fix/perm緩衝液セット(eBioscience)を用いて固定し、透過処理した。細胞をperm緩衝液で2回洗浄し、-20°Cで一晩、冷凍庫で冷却した無水メタノール中でインキュベートした。perm緩衝液でさらに2回洗浄した後、細胞を、表3に記載の抗体を使用して、4°C、暗所で45分間、ホスホ-STAT6について染色した。細胞をperm緩衝液でさらに2回洗浄し、最後にCytoflexサイトメーターで取得するためにPBAに再懸濁した。ゲーティング戦略は、CD14陽性事象に対する選択を加えたマクロファージ表面マーカーに対するものとほぼ同様であった。
【0308】
食作用アッセイ:マクロファージを上記のように採取し、37℃で1時間FITC標識カンジダ・アルビカンス(医師Martin Jaeger、Radboudumcにより善意で提供)で1:5のMOIでインキュベートした。細胞を氷冷PBAで2回洗浄し、氷上で維持して食作用を停止させた。細胞を4°Cの暗所で30分間CD45(表3)について染色した。2回洗浄した後、トリパンブルーを0.01%の最終濃度まで添加して、細胞外FITC-カンジダをクエンチした。次いで、細胞をCytoflexフローサイトメーターで取得した。
【0309】
データ分析中、カンジダのみの事象を除去するためにCD45+事象を最初に選択した。次いで、単一細胞を上記のようにゲーティングし、各試料中のカンジダ-FITC陽性マクロファージの割合を計算した。
【0310】
Seahorse代謝分析:マクロファージを上記のように採取した。細胞をRPMI+++に再懸濁し、一晩較正したカートリッジにウェルあたり105細胞で播種した。1時間接着した後、培地をアッセイ培地(Agilent;下記参照)に交換し、細胞を周囲CO2レベルで37°Cで1時間インキュベートした。Seahorse XF Glycolysis Stress TestキットまたはSeahorse XF Cell Mito Stress Testキット(両方のAgilent;製造者の指示に従って測定実施)を用いて、解糖およびミトコンドリア代謝の代用として酸素消費速度(OCR)および細胞外酸性化速度(ECAR)を測定した。
【0311】
RNAの単離、配列決定および分析:単球またはマクロファージをRLT緩衝液(Qiagen)に溶解し、-80°Cで保存した。RNA抽出を、オンカラムDNAse I処理(RNase不含有;Qiagen)を伴うRNeasyミニカラム(Qiagen)を使用して行った。予備的品質管理および濃度の測定を、Nanodrop装置を使用して行った。DNBseqプラットフォームを使用したRNA配列決定のために、試料をBeijing Genome Institute(BGI Denmark)に送った。
【0312】
遺伝子発現レベルを推測するために、RNA-seqリードを、Bowtieを使用してhg 19ヒトトランスクリプトームにアラインメントした。MMSEQを使用して、RPKMとしての遺伝子発現レベルの定量化を行った。リード/転写物を、DEseq2を使用して正規化し、ペアワイズ比較を行った。示差的に発現した遺伝子を、2を超える倍数変化およびp値<0.05、平均RPKM>1で、DEseq2を使用して同定した。IL4訓練によって上方制御または弱毒化された遺伝子を同定するために、RPMI-d6およびIL4-d6マクロファージを、RPMI-d6+LPSおよびIL4-d6+LPS試料とそれぞれ比較した。遺伝子リストを統合し、IL4-d6+LPS/RPMI-d6+LPSに基づいてランク付けした。遺伝子オントロジーおよびTFモチーフ分析を、HOMER findMotifsツールを使用して遺伝子プロモーターに対して行った。
【0313】
クロマチン免疫沈降:マクロファージを上記のように採取し、RPMI+++に再懸濁した。細胞を1%メタノールを含まないホルムアルデヒド中で10分間固定した。次いで、125mMグリシンを添加することによって、反応を3分間クエンチした。固定した細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、溶解緩衝液(20mM HEPES、pH7.6、1%のSDS、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC;Roche))中約15×106細胞/mlで溶解し、超音波処理し(Bioruptor Pico、Diagenode)、遠心分離した(10分、13000rpm、室温)。
【0314】
クロマチンのアリコートを、65°Cで1時間、0.5×TBE緩衝液(0.5mg/mlプロテイナーゼK(Qiagen)を補足)中で脱架橋し、1%アガロースゲル上で泳動させて、200~800bpの標的断片サイズを確認した。
【0315】
残りのクロマチンをChIPおよび投入試料に分割した。ChIP試料を希釈緩衝液(MiliQ中16.7mM Tris、pH8.0、1.0%のTriton、1.2mM EDTA、167mM NaCl、1×PIC)で10倍希釈し、1μgのChIPグレード抗体(Diagenode)を添加した。試料を4°Cで一晩回転させた。
【0316】
磁性プロテインA/Gビーズ(Dynabeads)を、0.15%のSDSおよび0.1%のBSAを補充した希釈緩衝液で2回洗浄した。洗浄したビーズをChIP試料に添加し、4°Cで1時間回転させた。続いて、ビーズ結合クロマチンを以下のように洗浄した(5分間回転、4°C):低塩洗浄緩衝液(MilliQ中20mM Tris、pH8.0、1.0% Triton、0.1% SDS、2mM EDTA、150mM NaCl)で1回洗浄した。高塩洗浄緩衝液(低塩洗浄緩衝液と同じであるが500mM NaClを含む)で2回;無塩洗浄緩衝液(MilliQ中20mM Tris、pH8.0、1mM EDTA)で2回。クロマチンを溶出緩衝液(MilliQ中0.1M NaHCO3、1% SDS)中でビーズから20分間、室温で溶出した。投入試料を溶出緩衝液で12倍希釈した。NaCl(0.2M)およびプロテイナーゼK(0.1mg/ml)の添加後、全ての試料を振盪ヒートブロック(65°C、1000rpm)で少なくとも4時間脱架橋した。Minelute PCR精製カラム(Qiagen)を使用してDNA断片を精製した。DNA断片をqPCRによる下流分析まで4°Cで保存した。
【0317】
qPCRおよび分析:ChIP試料およびインプットについてのqPCR分析を以下のように行った。SYBRグリーン法を使用して、表4に詳述したプライマーを用いてqPCRを行った。比較Ct法を使用して、ChIPを入力試料と比較し、陰性対照領域に対する相対存在量を計算した。GAPDHおよびZNFの非翻訳領域を、H3K9me3の陰性対照および陽性対照としてそれぞれ使用した。前述のようにAUC分析のために6つのプライマー対を使用してTNFを調べた(Bekkering,S.et al.Treatment with Statins Does Not Revert Trained Immunity in Patients with Familial Hypercholesterolemia.Cell Metabolism 30,1-2,doi:10.1016/j.cmet.2019.05.014(2019))。
表4.ChIP-qPCR分析のためのプライマー
【表4】
【0318】
細菌発現およびタンパク質精製:ClearColi BL21(DE3)(Lucigen)をpET20b(+)ApoA1-IL4発現ベクターで形質転換した。形質転換された細菌を、100μg/Lのアンピシリンを補充した40mLの溶原性ブロス(LB)(Sigma-Aldrich)に接種し、37°Cで一晩増殖させた。その後、一晩培養物を、100μg/Lのアンピシリンを補充した2YT培地(16g/Lのペプトン、10g/Lの酵母エキスおよび10g/LのNaCl)に接種し、37°Cで増殖させた。600nmでの吸光度が1.5超に達した時点で、1.0mMのイソプロピルβ-d-チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えてpET20b(+)ApoA1-IL4発現を誘導し、細胞を20°Cで一晩インキュベートした。溶解物の調製および精製の前に、遠心分離によって細胞を採取した。
【0319】
細菌溶解およびタンパク質精製:ClearColi細胞を発現するApoA1-IL4融合タンパク質を、8000rpmおよび4°Cで10分間の遠心分離によって採取した。収集した細胞をPBSに再懸濁し、4000rpmおよび4°Cで15分間遠心分離した。細胞を、室温で30分間、シェーカー上で培養物1リットル当たり20mLのBugBuster(登録商標)Protein Extraction Reagent(Merck)および20μLのBenzonase(登録商標)Nuclease(Merck)を用いて溶解した。細胞溶解物を18000rpmおよび4°Cで30分間遠心分離した。不溶性ペレットを1リットルにつき10mLのBugBusterで洗浄し、18000rpmおよび4°Cで20分間遠心分離した。封入体を含むペレットを抽出緩衝液(6Mの塩酸グアニジン、50mMのリン酸カリウムおよび1mMの還元グルタチオン)に再懸濁し、室温で15分間シェーカー上でインキュベートした。懸濁液を18000rpmおよび4°Cで30分間遠心分離して不溶性画分を除去した。濾過した可溶性画分をニッケルカラムに負荷し、15カラム容量のIMAC洗浄緩衝液で洗浄した。ApoA1-IL4を、60mLの直線勾配アンフォールディング(7mの尿素、1mMの還元型グルタチオン、0.1mMの酸化型グルタチオン、50mMのリン酸カリウム、および100mM NaCl、pH6.8)を使用して、ニッケルカラムで、2.5mL/分で、リフォールディング60mL(1mMの還元型グルタチオン、0.1mMの酸化型グルタチオン、50mMのリン酸カリウム、および100mM NaCl、pH6.8)にリフォールディングした。リフォールディングされたapoA1-IL4を、0.5Mのイミダゾール、20mM Tris、0.5MのNaCl、pH7.9を用いてカラムから溶出した。溶出液を回収し、濃縮し、さらに精製し、PBS保存緩衝液で平衡化したサイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad 16/600 Superdex 75 Increase;GE Healthcare)によって緩衝液交換した。画分をSDS-PAGEによって分析し、プールし、濃縮し、液体窒素中で急速凍結した後、-80°Cで保存した。ApoA1-IL4の質量を、MS用のMagTran V1.03を使用して、Q-ToF LC-MS(WatersMassLynx v4.1)によって確認した。
【0320】
apoA1-IL4mの哺乳動物発現および精製:HEK293T細胞を、トランスファーベクターpHR-apoA1-IL4mを含むfuGENE(Promega)で同時トランスフェクトし、pCMVR8.74をパッケージングし、pMD2.GをOpti-MEM(GIBCO)中に37°Cで24時間エンベロープした。細胞をDMEM+2%熱不活性化FBSで洗浄し、48時間インキュベートした。pHR-apoA1-IL4mを含有するレンチウイルスを得るために、上清を1000rpmで遠心分離して、0.45μmのPESシリンジフィルターで濾過した細胞残差を除去し、50,000gで4°Cで2時間遠心分離した。pHR-apoA1-IL4mのレンチウイルスを含有するペレットを培地に再懸濁し、液体窒素中で急速凍結し、-80°Cで選別した。HEK293F細胞に、pHR-apoA1-IL4m含有レンチウイルスをトランスフェクション培地(DMEM、10%のHI FBS、1xポリブレン(Sigma-Aldrich))に24時間形質導入した。その後、細胞を、Glutamax、1% Pen-Strepおよび1μg/mLのドキシサイクリン(Merck)を添加した発現培地(HEK293細胞用50% EX-CELL(登録商標)293 Serum-Free Medium(Merck)および50% FreeStyle(商標)293 Expression Medium(Thermo Fisher Scientific)中、150rpmのシェーカーで37°Cにて3日間培養した。apoA1-IL4mを含む培養上清を4000rpm、4°Cで15分間遠心分離し、0.22μmのPESシリンジフィルターを通して濾過して細胞残屑を除去した。濾過した可溶性画分をStrepTactin XT 4flow 5mLカラム(Cytiva)に装填し、5カラム容量のW-buffer(150mM NaCl、100mM Tris、1mM EDTA、pH8)で流速1~2mL/分で洗浄した。ApoA1-IL4mを、50mMのビオチンが補充されるW緩衝液を用いてカラムから溶出した。溶出液を回収し、濃縮し、液体窒素中で急速凍結した後、-80°Cで保存した。ApoA1-IL4mの質量を、MS用のMagTran V1.03を使用してQ-ToF LC-MS(WatersMassLynx v4.1)によって確認した。
【0321】
SDS-PAGEおよびウエスタンブロット:apoA1とIL4との融合を確認するために、100ngのIL4(BioLegend)、apoA1およびapoA1-IL4を4~20%ポリアクリルアミドゲル(Bio-Rad)に装填した。ゲル電気泳動後、試料をブロットバッファー(10×TG緩衝液、20%メタノール)を含むニトロセルロース膜に移した。その後、膜をブロッキング緩衝液(PBS中5%乳、0.1%のTween(PBST))と共に4°Cで一晩インキュベートした。ブロットを一次モノクローナル抗体モノクローナル抗IL4(HIL41、1:200;sc-12723、Santa Cruz Biotechnology)および抗apoA1(B10、1:100;sc-376818、Santa Cruz Biotechnology)と共に4°Cで1時間インキュベートした。一次抗体でのインキュベーション後、膜を洗浄し、ウサギ抗マウスIgG(H+L)-HRPコンジュゲート(1:5000、31457、Pierce)でインキュベートした。HRPコンジュゲート化二次抗体をTMB(Thermo Fisher Scientific)で検出し、Image Quantゲルイメージャ(GE Healthcare)を用いて可視化した。
【0322】
表面プラズモン共鳴:Biacore X100 SPRシステム(GE Healthcare)を使用してSPR測定を行った。ヒトIL4受容体アルファ-FCキメラ(Biolegend)をプロテインGセンサーチップ(GE Healthcare)に固定化した。200nM~6.25nMの範囲のapoA1-IL4および20nM~0.65nMの範囲のヒトIL4のlog2希釈濃度系列。全ての試料をHPS-EP緩衝液(10mMのHEPES、150mM NaCl、3mMのEDTA、0.005%(v/v)P 20、pH7.4)中で調製した。会合を180秒間、解離を180秒間、流速30μL/分でモニターした。センサーチップをグリシン1.5(10mMのグリシン-HCl、pH1.5、GE Healthcare)で再生した。1:1結合についての相互作用SPRデータを適合させることによって、動態を決定した。
【0323】
ヒト胎児腎臓293 IL4レポーター細胞アッセイ:HEK-Blue(商標)IL4/IL13細胞をInvivoGenから購入した。この細胞株は、完全に活性なSTAT6経路を有し、STAT6誘導性SEAPレポーター遺伝子を保有している。HEK-Blue(商標)IL4/IL13細胞は、IL4およびIL13に応答してSEAPを産生する。分泌されたSEAPのレベルは、QUANTI-Blue(商標)(Invivogen)を用いて決定することができる。5×104個の細胞を含有する10% FBSおよび1% Pen-Strepを含む180μLのDMEMを96ウェルプレートにウェルあたり添加した。その後、20μLの刺激またはビヒクルを加え、細胞を37°Cで20~24時間インキュベートした。続いて、ウェルあたり180μLのQUANTI-Blueを別の96ウェルプレート(平底)に添加し、20μLの細胞上清を添加した。プレートを37°Cで1~3時間インキュベートし、Tecan Sparkプレートリーダーで640nMの吸光度を測定してSEAPレベルを決定した。
【0324】
配合ナノ粒子:すべてのリン脂質をAvanti Polar Lipids Inc.から購入した。4つの異なるapoA1ベースのナノ粒子(aNP)を配合した。クロロホルム中のストック溶液(10mg/mL)からの円盤状aNPの場合、DMPC(133.5μL)、コレステロール(Sigma-Aldrich)(7.5μL)ならびに球状aNPの場合、POPC(66.5μL)、PHPC(17.5μL)、コレステロール(4.5μL)およびトリカプリリン(Sigma-Aldrich)(0.956g/mLストックからの2.79μL)をガラスバイアル中で合わせ、真空下で乾燥させた。得られたフィルムをアセトニトリル/メタノール混合物(95:5%、総体積800μL)に再溶解した。apoA1に基づく製剤には、コレステロール(15μL)を使用した。別途、PBS中のapoA1タンパク質(6mL、0.1mg/mL)、PBS中のapoA1-IL4タンパク質(6mL、0.17mg/mL)またはPBS中のapoA1-IL4m(6mL、0.18mg/mL)の溶液を調製した。
両方の溶液を、マイクロ流体ポンプ融合物100(Chemyx Inc)を使用して、脂質溶液については0.75mL/分の流速およびapoA1溶液については6mL/分の流速でZeonorヘリンボーンミキサー(Microfluidic Chipshop、製品コード:10000076)に同時に注入した。得られた溶液を、円盤状用の10kDaのMWCOおよび球状aNPのVivaspin用の100kDaのMWCOのいずれかを用いて4000rpmで遠心濾過によって濃縮し、1mLの体積を得た。PBS(5mL)を添加し、溶液を5mLに濃縮した。これを2回繰り返した。洗浄した溶液を約1.5mLに濃縮し、0.22μmのPESシリンジフィルターで濾過して、完成したaNPを得た。aNP試料中のタンパク質濃度をPierce(商標)BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて定量した。配合された蛍光aNPに、0.5mgのDiOC18(3)色素(DiO)(Thermo Fisher Scientific)を、脂質膜を調製するために使用したクロロホルム溶液に溶解した。
【0325】
DLSによるaNPサイズおよび分散性の決定:PBS中の得られたaNP製剤を0.22μmのPESシリンジフィルターを通して濾過し、Malvern Zetasizer Nano ZS分析装置での動的光散乱によって分析した。値を平均数平均サイズ分布として報告する。
【0326】
放射性標識aNP:IL4、apoA1-IL4およびIL4-aNPを2モル過剰のDFO-p-NCS(DMSO中5mg/mL)で2時間インキュベートし、10kDaのMWCO Vivaspin管を用いて3回洗浄していずれの非反応のDFO-p-NCSをも除去した。放射性標識のために、DFO結合タンパク質およびaNPを、サーモミキサーを使用して600rpmで1時間、89Zrで37°Cでインキュベートし、10kDaのMWCO Vivaspinチューブを使用して3回洗浄して、いずれかの非反応の89Zrを除去した。
【0327】
IL4-aNPsoの低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM):最初に、200メッシュレーシー炭素支持銅グリッド(Electron Microscopy Sciences)の表面を、Cressington 208カーボンコーターを使用して40秒間プラズマ処理した。続いて、3mLのIL4-aNP試料(約1mgタンパク質/ml)をグリッド上に適用し、自動化ロボット(FEI Vitrobot Mark IV)を使用して液体エタン中でプランジガラス化することによって薄膜にガラス化した。Cryo-TEM画像化を、電界放出銃(FEG)、ポストカラムGatan画像化フィルタ(モデル2002)およびポストGIF 2k×2k Gatan CCDカメラ(モデル794)を備えたcryoTITAN(Thermo Fisher Scientific)で行った。画像は、6,500倍(1.64電子/A2・sの線量率)または24,000倍(11.8電子/A2・sの線量率)のいずれかのゼロ損失エネルギーフィルタリングを用いた明視野TEMモードで300kVの加速電圧、および1秒の取得時間で取得した。
【0328】
ヒト単球におけるIL4-aNPとIL4受容体との相互作用の超解像蛍光顕微鏡法:上記のように健常ドナーの末梢血からヒト単球を単離した。細胞培養処理したチャンバー付きカバースリップ(μスライド8ウェル、IBID)上に、ウェルあたり100,000個の単球を播種した。37°Cで2時間インキュベートした後(細胞付着)、細胞を、裸のapoA1またはapoA1-IL4、円盤状のaNPまたはIL4-aNP、球状のaNPまたはIL4-aNPのいずれかのCy5標識変異体と共に37°Cで2時間インキュベートした。その後、細胞をPBSで洗浄し、4%のPFAで20分間固定した。IL4受容体を、ポリクローナルウサギIgG1抗ヒトIL4R(Thermo Fisher Scientific;1:100希釈)一次抗体で4°Cにて24時間染色し、続いてヤギ抗ウサギAlexa Fluor 488コンジュゲート二次抗体(Thermo Fischer Scientific;希釈率1:500)で室温にて1時間染色した。染色した細胞をPBS中4°Cで保存した。直接確率的光学再構成顕微鏡法(dSTORM)のために、画像化の前および間に、細胞をGLOXY画像化緩衝液(PBS中40μg/mlカタラーゼ、0.5mg/mlのグルコースオキシダーゼ、5%のグルコースおよび0.01Mのシステアミン、pH8.0)に数分間浸漬した。取得は、ONI Nanoimager(ONI、オックスフォード、英国)を使用して全内部反射蛍光(TIRF)モードで行った。これには、100×/1.4NAの油浸対物レンズ、sCMOSカメラが装備されており、この研究では、488nm(200mW)および640nm(1000mW)のレーザを使用した。50×80μmの視野で10msの露光時間で10,000フレームを取得した。生データを、ThunderSTORMソフトウェアを使用して処理し、10nMの空間分解能で画像を得た。
【0329】
動物モデル:雌のC57BL/6マウスをThe Jackson Laboratoryから購入した。非ヒト霊長類研究のために、2匹の雄のカニクイザル(Macaca fascicularis)を使用した。すべての動物を、12時間の明暗サイクルを有する気候制御された条件に共収容し、水を自由に与えた。マウスには標準固形飼料食を与え、非ヒト霊長類にはTeklad Global 20% Protein Primate Dietを与えた。動物のケアおよび実験手順は、マウント・シナイのIcahn School of Medicineから承認された施設内プロトコルに基づいた。すべてのマウスを実験群に無作為に割り当てた。
【0330】
マウスおよび非ヒト霊長類における薬物動態および生体内分布:C57BL/6マウスに、それぞれ89Zr標識IL4変異体、IL4(53.6±6.6μCi)、apoA1-IL4(30.1±0.9μCi)、円盤状IL4-aNP(146.1±46.5μCi)および球状IL4-aNP(108.6±16.9μCi)を静脈内注射した。2匹の非ヒト霊長類に円盤状89Zr標識IL4-aNP(1079μCiおよび682μCi)を注射した。所定の時点で、注射後、マウスでは1、2、5、10、30分、および1、2、4、8、24時間、非ヒト霊長類では5、30、90分、48時間で採血し、秤量し、Wizard2 2480自動ガンマカウンター(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて放射能を測定した。データを放射性崩壊について補正し、血液1グラム当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g)を計算した。GraphPad Prismにおける非線形二相減衰回帰を使用してデータを当てはめ、式(%速×t1/2速+%遅t1/2)/100を介して加重血液半減期を計算した。注射24時間後にマウスにおける生体内分布を測定した。PBS灌流後、目的の組織を採取し、秤量し、Wizard2 2480自動ガンマカウンター(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して放射能を測定した。データを放射性崩壊について補正し、組織1グラム当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g)を計算した。
【0331】
マウスにおけるaNP生体内分布のPET/CT画像化:C57BL/6マウスに、それぞれ89Zr標識IL4変異体、IL4(53.6±6.6μCi)、apoA1-IL4(30.1±0.9μCi)、円盤状IL4-aNP(146.1±46.5μCi)および球状IL4-aNP(108.6±16.9μCi)を静脈内注射した。24時間後、マウスを、約1.0リットル/分の流速でO2中の1.0%イソフルランを使用して麻酔した。PET/CTスキャンは、Mediso nanoScan PET/CT(Mediso、ブダペスト、ハンガリー)を使用して取得した。全身CTスキャンを実行し(エネルギー、50kVp;電流、180μAs;等方性ボクセルサイズ、0.25mm)、続いて20分間のPETスキャンを実行した。再構成は、Mediso NuclineソフトウェアからのTeraTomo 3D再構成アルゴリズムを使用して弱毒化補正を用いて行った。この一致は、400keVと600keVとの間のエネルギーウインドウによって除外された。ボクセルサイズは0.4mm幅で等方性であり、再構成は4回の完全な反復、反復ごとに6つのサブセットに適用された。
【0332】
オートラジオグラフィー:放射能分布を決定するために、-20°Cでホスホイメージングプレート(BASMS-2325、富士フイルム)に対してフィルムカセットに組織を入れた。Typhoon 7000IPプレートリーダー(GE Healthcare)を用いて、25mmのピクセル解像度でプレートを読み取った。
【0333】
細胞特異性フローサイトメトリー:細胞特異性のために、マウスにDiO標識IL4-aNPを静脈内注射し、これを24時間循環させた。その後、マウスを屠殺し、前述のように血液、脾臓および骨髄から単一細胞懸濁液を作製した。細胞懸濁液を、抗CD115、抗CD11b、抗Ly6C、抗Ly6G、抗CD19、抗CD45、抗CD11c、抗CD3、抗F4/80でインキュベートした。生存性染色剤として生/死Aquaを使用した。その後、細胞を洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。全てのデータは、Aurora 5Lフローサイトメーター(Cytek Biosciences)で取得した。FITCチャネル中にジオール-IL4-aNPが検出された。
【0334】
PET/MRI非ヒト霊長類生体内分布:一晩の絶食後、ケタミン(5mg/kg)およびデクスメデトミジン(0.0075~0.015mg/kg)を使用して非ヒト霊長類を麻酔した。非ヒト霊長類に、約0.1mg/kgの用量で1.114mCiおよび0.682mCiの円盤状89Zr標識IL4-aNPを注射した。注入後60分間行われるような動的PETイメージング、および追加の静的PET/MRIスキャンを注入後1時間および48時間に行った。さらに、注射の5、30、および120分後、イメージングの最中に採血した。PETおよびMRI画像は、3T PE/MRIシステム(Biograph mMR、Siemens Healthineer)を使用して取得した。aNPの注入と同時に開始して、胸部および腹部を覆う1つの寝台位置を使用して動的PETイメージングを実施した。MRイメージングパラメータは以下の通りであった:取得平面、冠状面;繰り返し時間、1,000ms;エコー時間、79ms;スライス数、144;平均数、4;0.5×0.5×1.0mm3の空間分解能および取得持続時間、42分および42秒。動的PET画像取得後、それぞれ15分の4つの連続した寝台位置を使用して、頭蓋から骨盤まで静的全身PET画像を取得した。寝台につき同時に、1.4個の信号平均、スライスの数160、および空間分解能0.6×0.6×1.0mm3(取得持続時間、寝台あたり14分56秒)のみを使用することを除いて、MR画像を上記のように取得した。全身PETおよびMRイメージングも、それぞれ30分の4つのPETの寝台位置を使用して、以下のMRパラメータ:取得平面、冠状面;繰り返し時間、1,000ms;エコー時間、79ms;スライス数、224;平均数、2;空間分解能0.6×0.6×1.0mm3;取得持続時間、29分および56秒を用いて、注入後48時間で実施した。各寝台からの全身MR画像をスキャナによって共に自動的に照合した。取得後、各寝台からのPET生データを再構成し、3回の反復および24個のサブセットについての点広がり関数(PSF)補正を伴う順序サブセット期待値最大化(OSEM)アルゴリズムを有するSiemens独自のe7ツールを使用してオフラインで一緒に照合した。また、画像には4mmのガウシアンフィルタを適用した。弱毒化には3区画(軟組織、肺および空気)の弱毒化マップを使用した。
【0335】
非ヒト霊長類におけるIL4-aNP生体内分布のイメージングベースの分析:画像分析を、Osirix MD、バージョン11.0を使用して行った。全身MR画像をPET画像と融合し、冠状面で分析した。関心領域(ROI)を、脾臓、肝臓、腎臓、肺、心臓、小脳、および大脳を含む関心組織上に採取し、それらの全体を追跡し、腰椎の3つの椎骨を使用して骨髄取り込みを決定した。各ROIについて、平均標準化取り込み値(SUV)を計算した。器官あたりの円盤状89Zr標識IL4-aNP取り込みを、器官あたりのすべての平均SUV値の平均として表した。
【0336】
インビボ寛容性モデル:インビボ寛容性モデルのために、11週齢の雌のC57BL/6マウスを0.1mg/kg体重のLPSで腹腔内寛容化した。24時間および48時間で、マウスを200μgのIL4m-aNPまたはPBSのいずれかで静脈内処置した。その後、マウスに72時間で腹腔内0.1mg/kgのLPS注射で再曝露した。90分後、マウスを屠殺し、ELISAのために血液を採取し、血液、脾臓および骨髄から単一細胞懸濁液を作製した。染色プロトコル。ELISAのための血液試料を室温で30分間凝固させた。4°Cで10分間、1000×gで遠心分離した後、血清を採取した。マウスTNFおよびIL6 ELISA(Biolegend)を製造業者のプロトコルに従って実施した。動物のケアおよび実験手順は、Nijmegen Animal Experiments Committeeから承認された施設内プロトコルに基づいた。
【0337】
統計分析:特に明記しない限り、データを平均+/-SDとして示す。グラフ中の個々のデータ点は生物学的反復であり、技術的反復ではない。データ点の数が図から明確に識別できない場合、nが図の凡例に示される。特に明記しない限り、統計分析はGraphpad Prism(V9、Graphpadソフトウェア)で行った。初代ヒト単球を用いた訓練された免疫および急性刺激実験のために、(ペア、ノンパラメトリック)ウィルコクソンの符号順位検定を使用した。RNA配列決定分析のための統計的方法は上記に記載されている。0.05未満の両側P値を統計学的に有意とみなした。図中の統計的有意性は以下のように示される:*=P<0.05、**=P<0.01、***=P<0.001、NS=P≧0.05。
【0338】
データおよびコードの可用性:データは、Lead Contactへの要求に応じて入手可能である。生のRNA配列決定データは、受託番号GSE185433としてNCBI Gene Expression Omnibusに寄託されている。
【0339】
結果
IL4は急性炎症を阻害するが、訓練された免疫を誘導する
骨髄系細胞免疫学との関連において、IL4は主にその抗炎症特性で公知である。したがって、本発明者らは、最初に、初代ヒト単球における炎症に対するIL4のいくつかの公知の阻害効果を検証した(
図17A)。本発明者らは、IL4(25ng/mL)の存在下または非存在下で、Percoll富化単球をLPSで24時間刺激した。予想されるように、IL4は、炎症促進性サイトカイン腫瘍壊死因子(TNF)およびIL6の分泌を強力に阻害した(
図17B)。興味深いことに、IL4処理細胞は、対照と比較して有意に多くのIL-1Raを分泌した(
図17B)。活性化骨髄系細胞において解糖が上方制御されるので、本発明者らは、IL4または培地対照で処理した、別様には刺激していない単球における乳酸産生を測定した。本発明者らは、IL4がわずかではあるが有意に低いベースライン乳酸産生を見出し(データは示さず)、その急性抗炎症特性を確認した。
【0340】
これらの抗炎症特性に基づいて、本発明者らは、IL4が訓練された免疫の誘導も阻害し得ると仮定した(
図17C)。この仮説を試験するために、単球を、プロトタイプの訓練された免疫刺激であるβ-グルカンで24時間訓練し、続いて刺激を洗浄し、培養培地中で5日間の休止期間を設けた。6日目に、本発明者らは、細胞をLPSでさらに24時間再刺激し、TNFおよびIL6を測定した(
図17D)。β-グルカンは予想通りに訓練された免疫を誘導したが、最初の24時間のIL4の添加は訓練効果を阻害しなかった(
図17D)。本発明者らの初期の仮説に反して、単球をIL4単独に24時間曝露すると、6日目に訓練された免疫表現型が誘導された(
図17E)。炎症促進性サイトカインの産生の増強に加えて、IL4で訓練された細胞は、ベースラインでより多くの乳酸を産生した(データは示さず)。IL4で訓練された細胞は、非訓練対照と比較して、加熱殺菌したカンジダ・アルビカンスを貪食する効果がわずかに低かった(データは示さず)。まとめると、本発明者らのデータは、IL4が、代謝免疫学的レベルおよび機能的免疫学的レベルの両方で、炎症を阻害し、訓練された免疫を誘導することを実証している。
【0341】
これらの観察によって勇気づけられて、本発明者らは、IL4誘導性の訓練された免疫後の代謝変化を包括的に研究した。この目的のために、本発明者らは、IL4で訓練された細胞および非刺激対照の解糖および酸化代謝を調べるためにSeahorse代謝フラックス分析を使用した。0日目のIL4訓練は、6日目に測定された代謝パラメータに顕著な影響を及ぼし(
図17F)、より高い基礎解糖に向かう傾向があり、オリゴマイシン誘発最大解糖能の有意な増加があった(
図17F左パネル)。さらに、ベースラインおよびFCCPによって引き起こされた最大呼吸数の両方が、IL4訓練によって有意に増加した(
図17F右パネル)。
【0342】
次いで、本発明者らは、フローサイトメトリーを使用して、単球/マクロファージのIL4活性化に一般的に関連するいくつかのパラメータを測定した(データは示さず)。IL4訓練は、6日目にCD14発現の強い下方制御を引き起こした。対照的に、CD200Rおよび特にCD206は、0日目のIL4活性化に続いて6日目に有意に増強された。CD80はIL4の訓練によってわずかに増加したが、これらの他のナイーブマクロファージでは全体的な発現は依然として低かった。単球由来樹状細胞(IL4+GM-CSFを用いて分化させたmoDC)もCD14を下方制御し、一方でCD1cを強く上方制御することが公知である。IL4で訓練された細胞は、訓練されていない細胞よりもわずかに多いCD1cを発現したが、moDCよりもはるかに少なかった(データは示さず)。これらの結果は、IL4が、古典的なIL4免疫学的機能から公知である特徴を組み込んだ訓練された免疫のプログラムを誘導することを示している。
【0343】
IL4誘導性の訓練された免疫を媒介する免疫およびエピジェネティック機構
IL4のシグナル伝達機構:IRS-2/PI3K/mTOR軸およびSTAT6シグナル伝達経路が十分に記載されている(
図18A)。本発明者らは、IL4による急性炎症の阻害および訓練された免疫誘導の両方についてこれらの経路の役割を調べるために薬理学的阻害実験を行った。PI3KまたはmTOR(それぞれウォルトマンニンまたはトリン-1を使用)の阻害は、急性炎症に対するIL4の効果を無効にしなかったが、訓練された免疫応答を減少させた(
図18B、
図18C、データは示されていない)。TNF産生およびIL6産生の増加によって測定されるIL4訓練は、トリン-1の存在下で有意に鈍った(
図18C、データは示さず)。対照的に、STAT6阻害剤AS1517499は、急性炎症応答におけるサイトカイン産生を部分的に回復させたが、IL4による訓練された免疫誘導には影響を及ぼさなかった(
図18Bおよび
図18C)。したがって、IL4とその受容体との結合の下流で誘導される各シグナル伝達経路は、異なる機能を有する:IL4は、STAT6を介してその既知の急性抗炎症機能を発揮するが、同時に、PI3K/mTOR(これまで知られていない炎症促進効果)を介して訓練された免疫を誘導する。
【0344】
IL4訓練によって誘導される分子プログラムについての洞察を得るために、本発明者らは、6日目のLPS再刺激の前後の両方で、ナイーブおよびIL4訓練マクロファージについてトランスクリプトミクス分析を行った。全体として、140個の遺伝子がIL4で訓練されたマクロファージにおいてより強く誘導された(「上方制御された」)のに対して、249個の遺伝子は弱毒化された(
図18D)。とりわけ、上方制御された遺伝子は、訓練された免疫に関与することが公知であるIL6およびIL12Bなどの炎症促進性サイトカインであった。顕著な弱毒化遺伝子の中には、それぞれリンパ球輸送およびサイトカインシグナル伝達の抑制に重要なCCL19およびSOCS2があった。
【0345】
本発明者らは次に、トランスクリプトームプロファイルへのさらなる洞察を得るために、転写因子(TF)モチーフ濃縮分析(
図18E)および遺伝子オントロジー/経路濃縮分析(
図18F)を行った。IL4で訓練されたマクロファージにおいて上方制御された遺伝子のプロモーターは、ATF2/ATF7、PPARαおよびSTAT5などのTFによって認識されるモチーフについて高度に濃縮されたが、インターフェロン調節因子(IRF)モチーフは特に枯渇していた。このパターンは、TATA-box、NFκB-p65、NFκB-p65-RelおよびFRA2を除いて、非罹患遺伝子および弱毒化遺伝子についてはほとんど逆であった:これらのモチーフは、弱毒化遺伝子プロモーターにおいて高度に濃縮されたが、非罹患遺伝子および上方制御された遺伝子の両方において減少した(
図18E)。遺伝子オントロジー(生物学的プロセス;BPおよび分子機能;MF)およびKEGG経路濃縮は、免疫学的活性が上方制御(例えば、BP「生物に対する応答」、KEGG「TNFシグナル伝達」)および弱毒化(例えば、BP「免疫応答」、MF「サイトカイン活性」)遺伝子セットの両方に存在することを示した(
図18F)。本発明者らは、IL4、LPS、またはIL4とLPSとを組み合わせた単離直後に刺激した単球に対して同様のトランスクリプトーム分析を行い、IL4に対する急性抗炎症性トランスクリプトーム応答を確認した(データは示さず)。まとめると、これらのデータは、急性抗炎症効果およびIL4によって引き起こされる長期訓練された免疫応答の両方における特異的な転写プログラムを明らかにする。
【0346】
本発明者らはその後、エピジェネティックリプログラミング、特にヒストン1修飾の重要性および存在を調査した。抗アレルギー薬シプロヘプタジン、SET7(SET9としても公知である)ヒストン2メチルトランスフェラーゼ阻害剤の添加は、IL4による訓練された免疫の誘導を無効にした(
図18G)。SET7は、訓練された免疫の重要なエピジェネティックメディエーターとして以前に記載されている。さらに、本発明者らは、IL4誘導性の訓練された免疫において、クロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR分析を使用して、TNFのH3K9me3媒介抑制を評価した。プライマー対の曲線下面積(AUC)分析を使用すると、IL4誘導性の訓練された免疫においてH3K9me3の6の減少が示されたが、これは統計学的有意性に達しなかった(
図18H、データは示さず)。まとめると、これらのデータは、エピジェネティックなリプログラミングがIL4誘導性の訓練された免疫にとって重要であり、その特徴であることを示している。
【0347】
脂質ナノ粒子に組み込まれるapoA1-IL4融合タンパク質の開発
訓練された免疫を同時に誘導しながら急性炎症を阻害するその独特の能力にもかかわらず、組換えIL4の臨床的翻訳は、その不利な薬物動態学的特性によって妨げられる。この制限を克服するために、本発明者らは、脂質ナノ粒子に容易に組み込まれてIL4含有ナノ粒子(IL4-aNP)を生じるapoA1ベースの融合タンパク質を開発した。ApoA1ベースのナノ粒子(aNP)は、造血器官に本質的に蓄積し、骨髄系細胞およびそれらの前駆細胞を効率的に標的化する(Schrijver,D.P.et al.in Advanced Therapeutics Vol.4 2100083-2100083(John Wiley&Sons,Ltd,2021;van Leent,M.M.T.et al.Regulating trained immunity with nanomedicine.Nature Reviews Materials 7,46 465-481,doi:10.1038/s41578-021-00413-w(2022))(
図19A)。具体的には、本発明者らは、可撓性リンカーを介して接続され、N末端に位置する6hisタグおよびC末端にあるstrepタグの2つの精製タグに隣接するヒトapoA1およびヒトIL4(apoA1-IL4)からなる融合タンパク質を設計した(
図19B)。本発明者らは、apoA1-IL4の性質および純度を確認するために分子特性評価技術を使用した。各精製タンパク質試料に対してドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行うことにより、本発明者らは、25kDa(apoA1)、18kDa(IL4)および37kDa(apoA1-IL4)の分子量を有するタンパク質の存在を確認し(
図19C)、一方、ウエスタンブロットは、apoA1およびIL4の存在を示した(
図19D)。その両親媒性特性のために、apoA1からなるタンパク質は、予想よりもゲル上での泳動が低い。これらの観察結果は、apoA1の47582.57Daの予想分子量に対応する47576.03Daの単一の質量ピークを示す四重極飛行時間型(Q-TOF)質量分析によって裏付けられた(
図19E)。
【0348】
apoA1-IL4を脂質ナノ粒子に組み込む前に、表面プラズモン共鳴(SPR)およびHEK-Blue(商標)IL4/IL13(HEK-IL4)レポーター細胞を使用する生物物理学的な細胞分析を実施して、精製およびリフォールディングプロセス後の生物学的活性の保存を決定した。本発明者らは、SPRを使用したヒトIL4受容体アルファ(IL4Rα)に対するapoA1-IL4の平衡解離定数Kdが4.5nM±1.1nMであると決定した(
図19F)。HEK-IL4細胞は、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)をコードするIL4Rα/STAT6誘導性レポーター遺伝子を保有しており、これは、その培養ウェルへのapoA1-IL4の導入時に顕著に産生された。これは、apoA1-IL4の生物学的活性を示している(
図19G)。apoA1との融合はIL4の生物物理学的特性を有意に変化させ、脂質ナノ粒子への組み込みを可能にしたが、その受容体への結合は0.28±0.1nMのkdで保存された(データは示さず)。要約すると、本発明者らは、抽出、精製、およびリフォールディング後にIL4の生物学的活性を保存し、apoA1を介した脂質ナノ粒子への統合のための望ましい物理化学的特徴を含むapoA1-IL4融合タンパク質を開発した。
【0349】
脂質ナノ粒子へのapoA1-IL4の組み込み
IL4の薬物動態特性および骨髄系細胞へのバイオアベイラビリティを改善するために、本発明者らは、脂質ナノ粒子にapoA1-IL4融合タンパク質を組み込んでIL4-aNPを得た。ナノ材料の組成を変えることにより、異なるサイズおよび形態のナノ粒子を得た(
図20A)。円盤状および球状ナノ粒子の成功裏の製剤化は、低温透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM)によって確認された(
図20B)。本発明者らはさらに、動的光散乱(DLS)を用いて14日間PBS中でナノ粒子サイズおよび安定性を分析した(
図20Cおよび
図20D)。IL4-aNPは14日間安定したままであり、本発明者らの従来のaNPと比較して同様のサイズおよび安定性を有する(データは示さず)。従来のaNPは、Schrijver,D.P.et al.in Advanced Therapeutics Vol.4 2100083-2100083)に記載されているようなアポリポタンパク質を含む。
【0350】
次に、本発明者らは、IL4-aNPと初代ヒト単球との相互作用を調べた。直接確率的光学再構成顕微鏡法(dSTORM)分析により、膜上のIL4Rαの発現が明らかになった。さらに、裸のapoA1、裸のapoA1-IL4、およびIL4-aNPの結合は、細胞表面を覆う縁によって確認された。膜の拡大断面に注目すると、本発明者らは、裸のapoA1-IL4およびIL4-aNPがIL4Rαと会合し、細胞表面に濃縮された共クラスターを形成することを見出したが、本発明者らは裸のapoA1および従来のaNPについては観察しなかった(
図20E)。まとめると、本発明者らのDLSサイズ安定性アッセイ、cryoTEMおよびdSTORM分析は、脂質ナノ粒子にapoA1-IL4融合タンパク質を組み込むことにより、生物学的に機能的なIL4-aNPが得られることを明らかにした。
【0351】
マウスにおけるIL4、apoA1-IL4およびIL4-aNP製剤の研究
C57BL/6マウスにおける薬物動態および生体内分布を調べるために、本発明者らは、4つの異なるIL4治療薬、すなわち組換えIL4;裸のapoA1-IL4融合タンパク質;ならびにジルコニウム-89(
89Zr)を含む円盤状および球状のIL4-aNPのタンパク質成分を放射性標識した。これらの実験は、マウスにおいて生物学的活性を示さないIL4のヒト変異体を用いて行ったことに留意されたい。静脈内投与の24時間後のコンピュータ断層撮影(PET/CT)イメージングを用いた陽電子放射断層撮影法は、
89Zr-IL4および
89Zr-apoA1-IL4が主に腎臓および肝臓に蓄積したことを示した。対照的に、肝臓および腎臓に蓄積することに加えて、
89Zr-IL4-aNPは、脾臓および骨髄を含む免疫細胞に富む器官において比較的多量に蓄積した(
図27A)。本発明者らは、エクスビボのガンマカウンティングを行って、それらのナノ材料の血中半減期および主要器官における取り込みを決定し(
図27Bおよび
図27C)、本発明者らはオートラジオグラフィーによって裏付けた(データは示さず)。標的器官(骨髄+脾臓)/クリアランス器官(腎臓+肝臓)による取り込み比の比較は、非製剤化融合タンパク質および裸のIL4と比較して、IL4-aNP製剤の取り込み比の有意な増加を示した(データは示さず)。次に、本発明者らは、フローサイトメトリーを使用して、標的器官における細胞型特異的生体内分布を測定した。Dio標識円盤状IL4-aNPは、脾臓および骨髄の両方において骨髄系細胞、最も顕著には単球および好中球に蓄積するが、リンパ球とは相互作用しない(またはわずかにしか相互作用しない)(
図27D)。造血器官におけるその好ましい(および骨髄特異的な)取り込みに基づいて、本発明者らは、非ヒト霊長類におけるさらなる研究ならびに炎症および敗血症の翻訳モデルのために円盤状IL4-aNP製剤を選択した。
【0352】
IL4-aNP免疫療法は、非ヒト霊長類において好ましい取り込みプロファイルを示す
IL4-aNP免疫療法の臨床翻訳能を評価するために、本発明者らは、非ヒト霊長類におけるそれらの生体内分布および安全性を決定した。2匹の非ヒト霊長類に
89Zr-IL4-aNPを静脈内注射した。それらのインビボ挙動を、磁気共鳴画像法(PET/MRI)と組み合わせた完全に統合された三次元PETを使用してインビボで研究した。注射後、動的PET/MRI(データは示さず)は、肝臓、腎臓(データは示さず)、脾臓および骨髄におけるIL4-aNPの急速な蓄積を実証した(
図27E~
図27H)。本発明者らのマウスデータによれば、脳および心臓を含む非標的器官において、IL4-aNPの望ましくない取り込みは観察されなかった(データは示さず)。まとめると、IL4-aNPの好ましい生体内分布および安全性プロファイルを実証するこれらの結果は、種全体に保持され、この免疫療法の翻訳の可能性を裏付けている。
【0353】
IL4-aNP療法はインビトロおよびインビボで免疫学的障害を解消する
天然のIL4が同時に急性炎症応答を弱め、訓練された免疫のプログラムを誘導することを確立した後、本発明者らは、インビトロで単球に対するIL4-aNPの効果を評価した(
図21A)。本発明者らは、インビトロの実験のための用量を、裸のIL4と比較した、初代ヒト単球におけるホスホ-STAT6誘導の効率に基づいた(データは示さず)。実際、IL4-aNP(200ng/mLの裸のIL4のモル当量)は、LPS刺激単球のTNFおよびIL6産生を有意に減少させ(
図21B)、一方、6日目の単球の長期応答性を増強した(
図21C)。これらのデータは、IL4-aNPが、IL4と同様に、急性炎症を抑制し、インビトロで訓練された免疫を誘導することを示している。本発明者らのインビボ体内分布データは、IL4-aNPが骨髄系細胞を特異的に標的化することを示しているが(
図27D)、IL4誘導性の訓練された免疫は、抗原提示細胞であるマクロファージの表面マーカー発現を変化させる(データは示さず)。これは、やがてT細胞活性化中の分極信号に影響を及ぼし得る。T細胞に対するIL4-aNPのこれらの潜在的な間接的効果を調べるために、同種異系ナイーブT細胞をIL4で訓練されたマクロファージの存在下で培養した。このモデルでは、HLAミスマッチは抗原非特異的T細胞の活性化および分極を引き起こす。訓練されたマクロファージと対照との間で、T細胞サブタイプ、Th1(CD4+IFNγHigh+)、Th2(CD4+IL4+)、Treg(CD4+IL10+)、Th17(CD4+IL17+)および細胞傷害性T細胞(CD8+グランザイムB+パーフォリン+)の存在量に有意差は観察されなかった(データは示さず)。まとめると、これらの知見は、IL4訓練がT細胞応答を間接的にゆがめる能力を示さないことを示しており、主に骨髄特異的な効果を示唆している。
【0354】
敗血症患者は、過剰炎症応答と免疫麻痺の両方を経験し、治療上のパラドックスを作り出す可能性がある。訓練された免疫の誘導は、免疫寛容を逆転させるために理論的に使用することができるが、これはインビボモデルには解釈されていない。1つの理由は、ヒトIL4がマウスにおいて生物学的活性を示さないことである。したがって、本発明者らは、IL4m-aNPを得るための脂質との製剤化のためのヒトapoA1およびマウスIL4からなるキメラ融合タンパク質を設計および産生した。ここで、本発明者らは、IL4m-aNPがマウスにおいてLPS誘導性寛容を逆転させることができるかどうかを調べた。その目的のために、本発明者らは、C57B/6マウスにLPS(0.1mg/kg)を腹腔内注射して、免疫麻痺またはPBS(対照として)を誘導した。本発明者らは、LPS処置の24時間後および48時間後にIL4m-aNP(200μg/用量)を静脈内投与した。本発明者らは、最初の曝露の72時間後にLPS(0.1mg/kg)の別の腹腔内注射でマウスに再曝露した(
図21D)。実際、IL4m-aNPによる処置は、寛容化マウスのLPS再曝露後の血清IL6濃度の有意な(p=0.0079)増加によって示されるように、先天性免疫応答を改善した(
図21E)。一部のマウスのTNFレベルは明らかに上昇していたが、治療応答の不均一性のために統計的有意性は達成されなかった(p=0.1508)(
図21E)。まとめると、本発明者らのインビトロおよびインビボデータは、IL4-aNPが寛容性を低下させ得ることを実証している。
【0355】
ヒト内毒素血症モデル
本発明者らがそのマウスモデルにおいて寛容逆転を観察した後、本発明者らは、ヒト臨床免疫透析をより厳密に模倣するモデルを用いてこれらの結果を実証した。本発明者らは、敗血症の過剰炎症表現型および免疫麻痺表現型の両方の特徴を捉える全身性炎症の標準化された制御モデルである実験的ヒト内毒素血症を受けている健常個体から血液を得た(
図21F)。この制御されたヒトモデルでは、LPSが健常志願者に静脈内投与され、全身性炎症反応がもたらされ、その後、循環単球の寛容化がもたらされ、この現象はまた敗血症誘導性免疫麻痺において観察される。LPS投与開始前および4時間後に採血した。LPS投与後に単離された単球は、LPSへの即時の再曝露時に不十分なサイトカイン産生を示し、寛容化を示した(データは示さず)。LPS曝露されたボランティアからの耐性単球を、エクスビボでIL4またはIL4-aNPのいずれかに24時間曝露した場合、3日目にLPSで再刺激すると、TNF産生の有意な改善を示したが、IL6の産生は示さなかった(
図21G(濃度)、21H(倍数変化)、データは示されていない)。対照的に、非処理単球は完全に耐性のままであった。まとめると、これらのデータは、IL4およびIL4-aNPがエクスビボでLPS耐性を少なくとも部分的に逆転させる能力を強調している。
【0356】
考察
IL4は一般に抗炎症性サイトカインであると考えられているが、単球/マクロファージ機能に対するその長期効果は不明である。本発明者らは当初、IL37およびIL38と同様に、IL4が訓練された免疫を阻害すると予想した。驚くべきことに、本発明者らは、急性炎症に対するその既知の阻害効果に加えて、サイトカイン産生応答性の増加によって評価されるように、IL4が訓練された免疫を誘導することを観察した。IL4による訓練された免疫の誘導は予想外であったが、本発明者らの観察は、訓練された免疫における中心的な機構であるIL4のmTOR5シグナル伝達カスケードの活性化と一致している。本発明者らはその後、IL4曝露前の長期効果、ならびに実験的内毒素血症によって誘導される免疫寛容を逆転させるIL4の能力を調査した。これに関連して、結果は、抗炎症性STAT6依存性細胞プログラムが細胞のIL4への急性曝露中に優勢であるが、これが長期訓練された免疫のmTOR駆動プログラムに経時的に移行することを実証している。IL4訓練は、サイトカイン産生の増強、エピジェネティック再配線、代謝活性の増加、および再刺激時のトランスクリプトーム応答の変化を含む、訓練された免疫を説明するために典型的に使用されるすべてのパラメータに適合する。これらの所見は、Sanderらによって2017年に提案されたものなど、単球分化の動的およびタイミング依存性モデルについての証拠の増加と一致している。(Sander,J.et al.Cellular Differentiation of Human Monocytes Is Regulated by Time-Dependent 7 Interleukin-4 Signaling and the Transcriptional Regulator NCOR2.Immunity 47,1051-1066 e1012,8 doi:10.1016/j.immuni.2017.11.024(2017))
【0357】
宿主防御を改善することが報告されている訓練された免疫プログラムを誘導しながら同時に急性炎症を抑制するIL4の独特の能力は、重度の感染症を治療するために潜在的に使用することができる。例えば、敗血症とCOVID-19の両方は調節不全の免疫応答を特徴とし、(日和見)二次感染に対する過剰炎症応答の管理と宿主防御応答の改善の両方を必要とする治療上のパラドックスを作り出す。IL4の固有の特徴を利用するために、本発明者らは、ナノ粒子タンパク質工学戦略を開発し、それにより、このサイトカインの好ましくないインビボ薬物動態特性を克服した。本発明者らは、訓練された免疫のモデルにおいて以前に観察されたように、本発明者らのaNP戦略がIL4の血中半減期および生体内分布プロファイルを有利に変化させ、骨髄および脾臓などの骨髄系細胞に富む器官における好中球および単球特異的蓄積の上昇をもたらすことを実証した。ヒトIL4-aNPを用いて生体内分布を研究したが、本発明者らは、インビボ有効性を評価するためにマウス変異体IL4m-aNPをさらに開発した。実際に、本発明者らは、LPS誘導性サイトカインストームマウスモデルにおいてIL4ナノ粒子の免疫隔離復帰効果を実証した。データは、IL4m-aNPで処置したマウスの血清中のIL6レベルの有意な増加およびTNF濃度の増加に向かう明確な傾向を伴って先天性免疫応答が回復したことを実証しているが、同時の過剰炎症および免疫麻痺を特徴とする様々な免疫媒介疾患におけるIL4ナノ粒子療法の可能性を拡大するためには、本格的な用量範囲調査研究が必要である。有望なことに、ヒト融合タンパク質を使用して、本発明者らは、IL4-aNPが、臨床免疫麻痺を模倣するヒトモデルから得られた細胞の免疫寛容を逆転させることができることを示した。
【0358】
本発明者らは、それらのサイトカインナノ粒子プラットフォームが、敗血症誘導性過剰炎症後の免疫麻痺、ならびに他の骨髄指向性用途において使用され得ると予想している。癌はまた、局所的な腫瘍促進性炎症および抗腫瘍応答(しばしば骨髄系細胞によって媒介される)の同時抑制を特徴とするので、免疫腫瘍学的適用が考慮され得る。心筋梗塞および脳卒中はまた、無菌炎症とそれに続く免疫麻痺によって特徴付けられ、重篤な外傷患者は同様の免疫麻痺状態に罹患する。これらのすべての状況において、炎症の軽減および免疫麻痺の克服は、患者の回復および二次感染の予防に有益であり得る。本発明者らのIL4-aNPプラットフォームは、これらすべての状態を治療するための極めて重要な治療様式に発展する可能性を秘めている。
【0359】
実施例3.リルーティング分子に融合したアポリポタンパク質の融合タンパク質およびその脂質ナノ粒子への組み込み
材料および方法
VHHCD8-apoA1融合タンパク質の発現および精製:pET20b-VHHCD8-apoA1プラスミドおよびpDisconTuneプラスミドで形質転換したClearColi細胞の小型培養を、100μg/mLのアンピシリンを含むLB培地で開始した。翌日、40mLの小型培養物を1リットルの2YT培地で希釈して大型培養を開始し、ラムノースを50μMの最終濃度で添加して、pDisconTuneプラスミド上でT7リゾチームを誘導した。培養物を、0.6~0.8のOD600まで37℃および150rpmで増殖させ、次いで、イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を0.1mMの最終濃度で添加して発現を誘導した。誘導した培養物を18℃および150rpmで一晩インキュベートした。誘導された細菌培養物をペレット化し、細胞を溶解緩衝液(20mM Tris、500mM NaCl、pH7.9)に再懸濁した。ベンゾナーゼヌクレアーゼ(Merck Millipore)および50mL細胞懸濁液あたり1つのcOmplete(商標)EDTA非含有Protease Inhibitor Cocktail錠剤(Roche)を添加し、細胞懸濁液を撹拌しながら4°Cでインキュベートした。続いて、懸濁液を、Avestin Emulsiflex C3を使用して15000~20000psiで3回均質化した。細胞溶解物を常に氷上に保った。溶解後、細胞溶解物を遠心分離して不溶性細胞残屑をペレット化し、上清を固定化ニッケルイオンを含有するImmobilized Metal Chelate Affinity Chromatography(IMAC)カラムに流した。カラムを8カラム体積の緩衝液A(20mM Tris、500mM NaCl、10mMのイミダゾール、pH7.9)で洗浄し、次いで8カラム体積の緩衝液A50(20mM Tris、500mM NaCl、50mMのイミダゾール、pH7.9)で洗浄した。VHHCD8-apoA1を溶出するために、8カラム体積の緩衝液A500(20mM Tris、500mM NaCl、500mMのイミダゾール、pH7.9)をカラムに添加した。精製工程の全ての画分を回収し、SDS-PAGEで分析した。精製したVHHCD8-ApoA1を含有する画分の緩衝液を、Amicon Ultracentrifugal Filters(Amicon)を使用してPBSに変更した。VHHCD8-apoA1を保存するために、アリコートを液体窒素中で急速凍結し、-70℃で保存した。
【0360】
VHHCD8-apoA1融合タンパク質は、配列番号54によって定義される配列を有するか、またはシステインを含むapoA1とVHHCD8との間のリンカーを含む配列番号55によって定義される配列によってコードされる。
【0361】
SDS-page:実施例2で説明したように実行される。
【0362】
aNP製剤:実施例2の「ナノ粒子の製剤化」の項に記載されるように実施した。
【0363】
DLS:実施例2に記載のように実施した。
【0364】
Cryo-TEM:実施例2に記載のように実施した。
【0365】
マウス脾細胞におけるVHHCD8-apoA1のインビトロ結合:脾臓をマウスから得て、小片に切断し、70μmストレーナー(Corning)で複数回引っ張らせて脾細胞懸濁液を得た。細胞を1500rpmで10分間スピンダウンし、上清を除去し、細胞を2mLの1×赤血球溶解緩衝液(Thermofisher)に溶解した。懸濁液を室温で5分間インキュベートし、10mLのRoswell Park Memorial Institute(RPMI)培地(Thermofisher)を添加し、細胞を再び1500rpmで10分間スピンダウンした。次いで、細胞をRPMI培地に再溶解し、96ウェルプレートに150,000細胞/ウェルで播種した。
【0366】
ジメチルスルホキシド(DMSO)中のスルホ-シアニン5-マレイミド(Lumiprobe)を5倍モル過剰で添加することによってタンパク質を標識した。混合物を室温で2時間撹拌した。過剰な色素を、PDミニトラップG-25脱塩カラム(Cytiva)を使用して除去した。蛍光標識されたaNPを、円盤状配合物については6.4μgのDiIを、球状配合物については21μgのDiIを加えることによって配合した(実施例2の「ナノ粒子の製剤化」の節を参照のこと)。蛍光標識された融合タンパク質またはaNPおよび対照をウェルに加え、4°C(タンパク質の場合)または37°C(aNPの場合)で30分間インキュベートし、その後、細胞を採取し、洗浄し、CD3およびCD4について染色し、Cytoflex(Beckman Coulter Inc)で測定した。FlowJoソフトウェア(BD)を使用して、フローサイトメトリーデータを分析した。
結果
【0367】
VHHCD8-apoA1融合タンパク質は、Clearcoli細胞での発現に成功した。IMAC精製後に軽微なタンパク質夾雑物が存在した[レーンE1](
図23)。最も顕著なバンドは、43.3kDaの分子量を有する融合タンパク質に対応する(
図23)。正しい質量は、後で質量分析によって確認された(データは示さず)。
VHHCD8-apoA1を組み込んで円盤状アポリポタンパク質ナノ粒子を製剤化した。動的光散乱(DLS)を使用して、粒子のサイズおよび多分散性指数(PDI)を決定した。粒子のサイズは7日間安定したままであった(
図24(左パネル))。14日目に、サイズはわずかに増加した(
図24(左パネル))。PDIは14日間安定したままであった(
図24(左パネル))。ナノ粒子のCryo-TEM画像は、予想される円盤形状を示した(
図24(右パネル))
【0368】
VHHCD8-apoA1およびapoA1を蛍光標識し、続いてマウス脾細胞に添加した。VHHCD8-apoA1融合タンパク質については、平均蛍光強度(MFI)の用量依存的増加が観察され、CD8受容体への融合タンパク質の結合を示した(
図25;下パネル)。apoA1条件はこの用量依存的挙動を示さず、対照試料と同様のMFIを有した。
【0369】
円盤状および球状のaNPを、VHHCD8-apoA1およびapoA1を用いて配合した。蛍光色素を粒子の脂質構造に組み込んだ。マウス脾細胞をナノ粒子でインキュベートした。両方のVHHCD8-apoA1粒子は、MFIの用量依存的増加を示し、CD8受容体へのナノ粒子の結合を示した(
図26)。円盤状ナノ粒子は、球状ナノ粒子よりも大きな増加を示した。apoA1ナノ粒子条件では、MFIの増加は観察されなかった。
【0370】
配列表
本特許出願は、対応する配列表と共に出願され、その全体が参照により組み込まれる。以下は、配列の概要およびそれらの簡単な説明である。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【配列表】
【国際調査報告】