(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】工具及び工具を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20241001BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25B21/00 B
B25B21/00 510C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518423
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022077119
(87)【国際公開番号】W WO2023052505
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】マティアス フォン モンキーヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ハーグ
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム ルーフ
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト ノイス
(72)【発明者】
【氏名】ラン プラシュケス
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シトゥルツェル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴェットシュタイン
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA01
3C064AB02
3C064AC02
3C064CA04
3C064CA08
3C064CA29
3C064CA37
3C064CA40
3C064CA53
3C064CA75
3C064CA78
3C064CB05
3C064CB16
3C064DA02
3C064DA11
3C064DA14
3C064DA33
3C064DA73
3C064DA78
(57)【要約】
穴を開け、又はねじを固定するための工具及びその工具を動作させるための方法であって、工具は、シャフトと、1つ以上の磁気コイルとを有するモータを備え、方法は、シャフトを回転駆動するために1つ以上の磁気コイルに電流を供給することと、シャフトの回転速度を規定するために整流周波数で電流を切り替えることと、を含む。シャフトに加えられる工具に向かう力が増加し、及び/又はシャフトに加えられるトルクが増加したときに信号が生成され、信号を受信したときにモータの回転速度が第1の回転速度まで増加され得る。回転速度は、少なくとも6,800RPM、多くとも8,500RPMである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定軸に沿ってねじをワークピース内に固定する工具を動作させるための方法であって、前記工具は、シャフトと、1つ以上の磁気コイルとを有するモータを備え、前記方法は、
前記シャフトを回転駆動するために前記1つ以上の磁気コイルに電流を供給すること、および
前記シャフトの第1の回転速度を規定するために整流周波数で前記電流を切り替えること、
を含み、
前記第1の回転速度は、少なくとも6,800RPM、多くとも8,500RPMである、
方法。
【請求項2】
前記モータをアイドル速度で動作させること、
前記モータによって前記シャフトに加えられるトルクを連続的に決定すること、および
前記トルクが第1の閾値を超えたときに、前記モータの回転速度を前記アイドル速度から前記第1の回転速度まで増加させること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モータによって前記シャフトに加えられる前記トルクを決定することは、前記モータに供給される前記電流のアンペア数を決定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モータの回転速度を、前記モータを開始した直後に前記第1の回転速度まで増加させること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
乾式壁要素をフレーム構造体に留め付けるための方法であって、
シャフトと、1つ以上の磁気コイルとを有するモータを備える工具を提供することであって、前記工具は前記シャフトによって駆動されるねじ回しビットを更に備える、こと、
前記ねじ回しビットによって駆動され、先端部及びねじ山を有するねじを提供することであって、前記ねじ山がねじピッチを規定する、こと、および
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって前記工具を動作させて、前記乾式壁要素を貫通して前記フレーム構造内に前記ねじを駆動すること、
を含む、方法。
【請求項6】
前記ねじピッチが、少なくとも1.25mmである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ねじピッチが、多くとも3mmである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記ねじが、尖った先端部を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ねじが、1つ以上の穴開け刃を含むドリル先端部を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
設定軸に沿ってねじをワークピース内に固定するための工具であって、
シャフトと、1つ以上の磁気コイルを有するモータと、
スイッチと、
前記シャフトを回転駆動するために前記1つ以上の磁気コイルに電流を供給し、前記シャフトの第1の回転速度を規定するために整流周波数で前記電流を切り替えるために設けられたコントローラと、
を備え、
前記第1の回転速度が、少なくとも6,800RPM、多くとも8,500RPMである、
工具。
【請求項11】
前記コントローラは、更に
前記モータをアイドル速度で回転させること、
前記モータによって前記シャフトに加えられるトルクを連続的に決定することと、
前記モータに供給される前記電流のアンペア数を決定すること、
前記トルクが第1の閾値を超えたときに、前記モータの回転速度を前記アイドル速度から前記第1の回転速度まで増加させること、
前記モータを開始すること、および
前記モータの前記回転速度を、前記モータを開始した直後に前記第1の回転速度まで増加させること、
のうちの1つ以上を行うために設けられる、請求項10に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ねじを固定するための工具及びその工具を動作させるための方法について説明する。また、ねじを固定する動作を可能にするための手持ち動力工具について説明する。そのような手持ち工具は、典型的には、建設産業において広く使用されている。本発明の範囲に包含されるべきことが意図される典型的な手持ち工具には、ねじ留め付け具をワークピース内にねじ込み、それによって乾式壁板及び/又は金属フレームなどのワークピースにねじ留め付け具を貫通させるための自動ねじ回し機が含まれるが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
ねじの固定動作を可能にする手持ち動力工具が知られている。この工具は、回転シャフトに回転動作を提供するモータを含む工具ハウジングを備える。回転シャフトは次いで、最終的に、例えばねじ留め付け具などのワークピース貫通要素に、特定の回転速度で特定のトルクを伝達することになる。工具はまた、モータを制御し、工具の使用時に回転シャフトの伝達トルク及び回転速度を連続的に決定するための、コントローラを備え得る。
【0003】
可能な適用分野の1つは、セルフタッピングねじによる乾式壁要素のフレーム構造体への留め付けである。このような作業は、通常、高い繰り返し率で作業するために、大きな力でねじを乾式壁要素に対して押し付けるように使用する、専門職の建設作業員によって行われる。そのような大きな力により、ねじは乾式壁要素を貫通して迅速に押し付けられるため、乾式壁要素内にはねじ山が形成され得ない場合があり、その結果、乾式壁要素の材料を弱くし、固定品質を損なう可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、設定軸に沿ってねじをワークピース内に固定する工具を動作させるための方法であって、工具は、シャフトと、1つ以上の磁気コイルとを有するモータを備え、方法は、シャフトを回転駆動するために1つ以上の磁気コイルに電流を供給することと、シャフトの第1の回転速度を規定するために整流周波数で電流を切り替えることと、を含み、第1の回転速度は、少なくとも6,800RPM、特に少なくとも7,200RPM、多くとも9,000RPM、特に多くとも8,500RPMである。一態様によれば、工具は、マガジンを備え、方法は、複数のねじ、例えば、並べられたねじを、モータのシャフトによって駆動される駆動ビットの前で、次々に搬送すること、およびそのねじを、同様に次々に、ワークピース内に固定すること、を含む。
【0005】
別の態様によれば、方法は、モータをアイドル速度で回転させることと、モータによってシャフトに加えられるトルクを連続的に決定することと、トルクが第1の閾値を超えたときにモータの回転速度をアイドル速度から第1の回転速度まで増加させることと、を含む。モータによってシャフトに加えられるトルクを決定することは、モータに供給される電流のアンペア数を決定することを含み得る。本明細書を通じて、「連続的に決定すること」は、適切なサンプリングレートで半連続的にサンプリングされた測定値を含むことを意味し、そのサンプリングレートは、当業者であれば用途に応じて適宜選択することとなる。
【0006】
別の態様によれば、方法は、モータの回転速度を、モータを開始した直後に第1の回転速度まで増加させることを含む。
【0007】
別の態様によれば、乾式壁要素をフレーム構造体に留め付けるための方法は、シャフトと、1つ以上の磁気コイルと、シャフトによって駆動されるねじ回しビットとを含むモータを備える工具を提供することと、ねじ回しビットによって駆動され、先端部及びねじ山を有するねじを提供することであって、ねじ山がねじピッチを規定する、ことと、乾式壁要素を貫通してフレーム構造体内にねじを駆動するように工具を動作させることであって、シャフトを回転駆動するために1つ以上の磁気コイルに電流を供給することを含む、ことと、シャフトの第1の回転速度を規定するために整流周波数で電流を切り替えることと、を含み、第1の回転速度は、少なくとも6,800RPM、特に少なくとも7,200RPM、多くとも9,000RPM、特に多くとも8,500RPMである。
【0008】
一態様によれば、ねじピッチは、少なくとも1.25mmである。別の態様によれば、ねじピッチは、多くとも3mmである。
【0009】
別の態様によれば、ねじは、尖った先端部を含む。
【0010】
別の態様によれば、ねじは、1つ以上の穴開け刃を含むドリル先端部を含む。
【0011】
別の態様によれば、設定軸に沿ってねじをワークピース内に固定するための工具は、シャフトと、1つ以上の磁気コイルを有するモータと、スイッチと、シャフトを回転駆動するために1つ以上の磁気コイルに電流を供給し、シャフトの第1の回転速度を規定するために整流周波数で電流を切り替えるために設けられたコントローラと、を備え、第1の回転速度は、少なくとも6,800RPM、特に少なくとも7,200RPM、多くとも9,000RPM、特に多くとも8,500RPMである。一態様によれば、工具は、複数のねじ、例えば並べられたねじを、モータのシャフトによって駆動される駆動ビットの前で、次々に搬送するように構成されたマガジンを備える。
【0012】
一態様によれば、コントローラは、モータをアイドル速度で回転させることと、モータによってシャフトに加えられるトルクを連続的に決定することと、モータに供給される電流のアンペア数を決定することと、トルクが第1の閾値を超えたときにモータの回転速度をアイドル速度から第1の回転速度まで増加させることと、モータを開始することと、モータの回転速度を、モータを開始した直後に第1の回転速度まで増加させることと、のうちの1つ以上を行うために設けられている。
【0013】
別の態様によれば、穴を開け、及び/又は設定軸に沿ってねじをワークピース内に固定する工具を動作させるための方法では、工具は、シャフトを有するモータを備え、方法は、設定軸に沿って工具に向かう力がシャフトに加えられるか若しくは増加され、及び/又は設定軸の周りのトルクがシャフトに加えられるか若しくは増加されたときに、第1の信号を生成することと、第1の信号を受信したときにモータの回転速度を第1の回転速度に変更することと、を含む。
【0014】
一態様によれば、方法は、モータに電流を供給してシャフトをアイドル速度で回転駆動することと、第1の信号を受信したときにモータの回転速度をアイドル速度から第1の回転速度に変更することと、を含む。方法は、モータによってシャフトに加えられるトルクを連続的に決定することと、トルクが第1の閾値を超えたときに第1の信号を生成することと、を更に含み得る。モータによってシャフトに加えられるトルクを決定することは、モータに供給される電流のアンペア数を決定することを含み得る。
【0015】
別の態様によれば、回転速度を第1の回転速度に変更することは、回転速度を増加させることを含む。
【0016】
別の態様によれば、モータの回転速度を変更することは、モータを開始することを含む。
【0017】
別の態様によれば、方法は、モータが第1の回転速度で動作しているときに第2の信号を生成することと、第2の信号を受信したときにモータの回転速度を第2の回転速度に変更することと、を含む。方法は、シャフトに加えられる設定軸の周りのトルクが変化したとき、又は増加したとき、又は減少したときに、第2の信号を生成することを更に含み得る。方法は、モータによってシャフトに加えられるトルクを連続的に決定することと、トルクが第2の閾値を超えたか又は下回ったときに第2の信号を生成することと、を更に含み得る。モータによってシャフトに加えられるトルクを決定することは、モータに供給される電流のアンペア数を決定することを含み得る。
【0018】
別の態様によれば、方法は、第1の信号を受信した後、所定の時間間隔が経過したときに第2の信号を生成することを含む。
【0019】
別の態様によれば、回転速度を第2の回転速度に変更することは、回転速度を減少させることを含む。第2の回転速度は、アイドル速度に実質的に等しくてもよい。
【0020】
別の態様によれば、穴を開け、及び/又は設定軸に沿ってねじをワークピース内に固定するための工具は、シャフトを有するモータと、スイッチと、設定軸に沿って工具に向かう力がシャフトに加えられ、及び/又は設定軸の周りのトルクがシャフトに加えられたときに、第1の信号を生成するために設けられ、且つ第1の信号を受信したときにモータの回転速度を第1の回転速度に変更するコントローラと、を備える。
【0021】
一態様によれば、コントローラは、モータに電流を供給してシャフトをアイドル速度で回転駆動することと、第1の信号を受信したときにモータの回転速度をアイドル速度から第1の回転速度に変更する、又は増加させることと、モータによってシャフトに加えられるトルクを連続的に決定することと、モータに供給される電流のアンペア数を決定することと、トルクが第1の閾値を超えたときに第1の信号を生成することと、モータを開始することと、モータが第1の回転速度で動作しているときに第2の信号を生成することと、第2の信号を受信したときにモータの回転速度を第2の回転速度に変更する、又は減少させることと、シャフトに加えられる設定軸の周りのトルクが変化したときに第2の信号を生成することと、トルクが第2の閾値を超えたときに第2の信号を生成することと、第1の信号を受信した後、所定の時間間隔が経過したときに第2の信号を生成することと、のうちの1つ以上を行うために更に設けられている。
【0022】
一態様によれば、工具は、設定軸に沿って工具に向かう力がシャフトに加えられたときにプレスオン信号を生成するために設けられたプレスオンスイッチを備える。コントローラは、プレスオン信号を受信し、且つプレスオン信号の受信時にモータを開始するために設けられ得る。
【0023】
工具の更なる態様及び利点、関連部品、並びにその使用方法が、単に例示として、及び添付の図面を参照して与えられる以下の説明から、明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】乾式壁に対して開始位置にあるねじを示す図である。
【
図3】第1の中間位置にある
図2のねじを示す図である。
【
図4】第2の中間位置にある
図2のねじを示す図である。
【
図6】ねじによる移動距離の経時的な特性を示す例示的な図である。
【
図7】ねじによる移動距離の別の経時的な特性を示す図である。
【
図8】モータの回転速度の経時的な特性を示す例示的な図である。
【
図9】モータの回転速度の別の経時的な特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、穴を開け、及び/又はねじを固定するための工具100を示している。示される実施例では、工具100は、自動ねじ回し機などの手持ち作業工具として構成されている。工具100は、ハウジング105と、ハウジング105によって囲まれている、シャフト120を有するモータ110と、トリガスイッチとして形成されたスイッチ130と、マイクロコンピュータとして形成され、且つコンピュータメモリとして形成されたデータストレージ145を有するコントローラ140と、バッテリ150と、無線送信機として形成された通信ユニット155と、を備える。コントローラ140は、バッテリ150からモータ110に電流を供給して、シャフト120を回転駆動する。工具100は、ギア160と、六角駆動部などのねじ駆動部175を有し、且つギア160を介してシャフト120によって駆動されるスピンドル170と、を更に備える。
【0026】
更に、工具100は、モータ110の回転速度を検出するための回転速度センサ180と、モータ110に供給される電流のアンペア数及び/又は電圧を検出するためのアンペア数/電圧センサ190と、を備える。更に、工具100は、モータ110に電流を伝達し、且つ/又はスイッチ130及び/若しくはセンサ180、190から電気信号を収集するために、コントローラ140を、モータ110、スイッチ130、及びセンサ180、190と接続するライン195を備える。追加的に、又は代替的に、モータ110の回転速度、アンペア数、又は電圧に関するデータを取得するために、コントローラ140は、モータ110の回転動作を制御することから既に存在している情報、例えば、回転速度に対する経時的な電気整流の数を使用してもよい。ハウジング105は、スイッチ130が使用者の人差し指によって押され得るように、使用者が工具100を手動で把持するためのグリップ部106を備える。スイッチ130は、ライン195を介してコントローラ140にそのスイッチ位置を通知することができる。
【0027】
図2~
図5は、支持面201を有する、レール又はコンソールなどの支持体200と、部品面211を有し、且つ支持体200に留め付けられるように意図された、乾式壁要素などの部品210と、部品210を支持体200に留め付けるための、ねじなどの留め付け要素220とを示している。示される実施例では、留め付け要素は、シャフト221と、先端部222と、頭部223とを有し、ねじピッチを有するねじ山224が、シャフト221上に形成されている。先端部222は、支持体200をチップレスで貫通するための尖った先端部として形成されている。
【0028】
図2は、留め付け要素220の先端部222が部品面211に接触し、且つ部品210を貫通し始める、支持体200に対して開始位置にある留め付け要素220を示している。
【0029】
図3は、留め付け要素220が部品210を貫通して穴を開けた、支持体200に対して第1の中間位置にある留め付け要素220を示している。留め付け要素220の先端部222は、支持面201に接触し、且つ支持体200を貫通し始めている。
【0030】
図4は、留め付け要素220の先端部222が支持体200を穿孔した、支持体200に対して第2の中間位置にある留め付け要素220を示している。
【0031】
図5は、留め付け要素220が支持体200を貫通して穴を開け、且つねじ山224が支持体200内に逆ねじをタッピングした、支持体200に対して終了位置にある留め付け要素220を示している。頭部223は部品210内に押し込まれており、部品面211からの突出を回避するために、部品面211と同一平面に、又は部品面221よりわずかに下方で終了している。終了位置では、留め付け要素220が部品210を支持体200に対して押し付けて、部品210を所定の位置に保持している。
【0032】
図6は、留め付けプロセス中の経時的な、
図2~
図5に示される留め付け要素220などの留め付け要素による移動距離の特性300を示している。留め付け要素は、
図2に示される留め付け要素220の位置に対応する開始位置310から、
図3及び
図4に示される留め付け要素220の第1の中間位置及び第2の中間位置にそれぞれ対応する第1の中間位置320及び第2の中間位置330を介して、
図5に示される留め付け要素220の終了位置に対応する終了位置340まで移動する。
【0033】
留め付け要素は、
図1に示される工具のような、ねじを固定するための工具によって、所望の回転速度で駆動される。特性300は、5,000RPM(回転/分)の第1の回転速度で駆動された留め付け要素に対する第1のグラフ350、及び7,500RPMの第2の回転速度で駆動された同じ留め付け要素に対する第2のグラフ360を含む。更に、工具を使用する遅い作業者の最大移動速度に対応する第1の参照グラフ370、及び工具を使用する速い作業者の最大移動速度に対応する第2の参照グラフ380が、各々、点線として示されている。調査によると、訓練された作業者は、特にマガジン及び並べられたねじを用いて作業する際に、自身の経験に基づいて、作業労力を最小限にするように作業速度を調整する傾向がある。経験豊富な作業者は、特定の期間にわたって工具に対して自身の作業スタイルを調整して、その労力及び最終的にはあらゆる疲労の影響を最小限にするため、適切なトルクで、少なくとも7,200RPM、又は更には7,500RPMという比較的大きな回転速度と共にもたらされる、より大きなモータの重量を過剰に補うことさえある。
【0034】
図6に見られ得るように、部品210を貫通して穴を開けること(開始位置310と第1の中間位置320との間の段階)、及び支持体を貫通して留め付け要素をねじ込むこと(第2の中間位置330と終了位置340との間の段階)では、第1のグラフ350(5,000RPM)の場合よりも、第2のグラフ360(7,500RPM)の場合の方が、かかる時間が大幅に短い。支持体を貫通して穴を開けている間(第1の中間位置320と第2の中間位置330との間の段階)の時間短縮もまた存在しているが、それほど顕著ではない。留め付け要素を少なくとも7,500RPMの回転速度で駆動することが有利である。
【0035】
図7は、留め付けプロセス中の経時的な、
図2~
図5に示される留め付け要素220と比較した、ドリル先端部(図示せず)を有する留め付け要素による移動距離の特性400を示している。特性400は、5,000RPMの第1の回転速度で駆動された留め付け要素に対する第1のグラフ450、及び7,500RPMの第2の回転速度で駆動された同じ留め付け要素に対する第2のグラフ460を含む。更に、工具を使用する遅い作業者の最大移動速度に対応する第1の参照グラフ470、及び工具を使用する速い作業者の最大移動速度に対応する第2の参照グラフ480が、各々、点線として示されている。
【0036】
図7に見られ得るように、支持体を貫通して穴を開けること(第1の中間位置320と第2の中間位置330との間の段階)では、第1のグラフ350(5,000RPM)の場合よりも、第2のグラフ360(7,500RPM)の場合の方が、かかる時間が大幅に短い。部品210を貫通して穴を開けている間(開始位置310と第1の中間位置320との間の段階)、及び支持体を貫通して留め付け要素をねじ込む間(第2の中間位置330と終了位置340との間の段階)の時間短縮もまた存在するが、それほど顕著ではない。留め付け要素を少なくとも7,500RPMの回転速度で駆動することが有利である。
【0037】
図8は、経時的な、
図2~
図5に示される留め付けプロセスなどの留め付けプロセス中の、
図1に示されるモータ110などのモータの回転速度の特性500を示している。留め付け要素は、
図2に示される留め付け要素220の位置に対応する開始位置510から、
図3及び
図4に示される留め付け要素220の第1の中間位置及び第2の中間位置にそれぞれ対応する第1の中間位置520及び第2の中間位置530を介して、
図5に示される留め付け要素220の終了位置に対応する終了位置540まで移動する。
【0038】
示される実施例では、工具が開始位置510にあるとき、モータは、アイドル速度550で動作する。設定軸に沿って工具に向かう力がシャフトに加えられ、及び/又は設定軸の周りのトルクがシャフトに加えられたときにコントローラが第1の信号560を受信すると、コントローラは、モータの回転速度を第1の回転速度570まで増加させる。この目的のために、工具は、設定軸に沿って工具に向かう力及び/又は設定軸の周りのトルクの検出時に第1の信号を生成するために設けられた、センサなどの信号発生器を備え得る。追加的に、又は代替的に、コントローラは、設定軸に沿って工具に向かう力及び/又は設定軸の周りのトルクの認識時に第1の信号を生成するために設けられ得る。
【0039】
第1の信号560を受信した後、所定の時間間隔が経過すると、第2の信号580が生成される。コントローラが第2の信号580を受信したときに、コントローラは、モータの回転速度をアイドル速度550まで減少させる。このようにして、全体的な固定プロセスに消費される時間が短縮される一方で、回転速度は、固定プロセスの各段階に対して最適化される。工具の使用者にとって、固定プロセスが、あまり消耗的でなくなり得る。しかしながら、9,000RPM超の回転速度では、留め付け要素は、作業者が工具を動作させるよりも更に速く移動するため、工具又は工具の駆動ビットから離脱する場合がある。そのような離脱は、不完全な留め付けプロセス又は固定の失敗につながり得る。状況によっては、例えば経験の少ない作業者にとって、留め付け要素を多くとも8,500RPMの回転速度で駆動することが有利である。
【0040】
図9は、経時的な、
図2~
図5に示される留め付けプロセスなどの留め付けプロセス中の、
図1に示されるモータ110などのモータの回転速度の特性600を示している。
図8とは異なり、工具が開始位置510にあるとき、モータは動作していない。設定軸に沿って工具に向かう力がシャフトに加えられたときにコントローラが第1の信号560を受信すると、コントローラは、第1の回転速度670までモータを開始する。第1の信号660を受信した後、所定の時間間隔が経過すると、第2の信号680が生成される。コントローラが第2の信号680を受信すると、コントローラは、モータの回転速度を第2の回転速度650まで減少させる。留め付けプロセスが終了したときに、コントローラは、モータを停止する。
【0041】
本出願を通じて、「モータに供給される電流」は、手持ち動力工具がバッテリ作動工具である場合、バッテリなどの電源内で測定される電流を含むことを意味する。
【0042】
本発明の実施例の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。この説明は、網羅的であるように、又は本発明を開示される実施例に正確に限定するように意図されたものではなく、修正及び変更は、上記の教示に照らして可能であるか、又は本発明の実践から得ることができる。記載されている機能性は、本明細書に記載のものとは機能性の数及び分布が異なるモジュール間に分散させてもよい。加えて、機能を実行する順序は、実施例に応じて変更してもよい。実施例は、本発明の原理を説明するために、及び当業者が、本発明を様々な形態で、また、企図される特定の使用に適するように様々な修正を加えて利用できるようにするために、本発明の実用的応用として選択され、記述された。本発明の技術的範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲及びそれらの均等物に基づき定められる。
【国際調査報告】