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特表2024-536823皮膚放射線障害の予防及び治療のための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】皮膚放射線障害の予防及び治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241001BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241001BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/00
A61P43/00 111
A61P1/00
A61P1/02
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/20
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/36
A61K31/135
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518454
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 US2022044382
(87)【国際公開番号】W WO2023049262
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/051583
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/247,234
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/322,181
(32)【優先日】2022-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.Emprove
3.KOLLIWAX
4.Miglyol
(71)【出願人】
【識別番号】523104616
【氏名又は名称】ライセラ セラピューティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RYTHERA THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】6135 NW 167th Street Suite E-15 Miami Lakes, Florida 33015, US
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハーディ,レジナルド,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ブリゲル,ミッチェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA36
4C076BB01
4C076BB22
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD38
4C076EE09
4C076EE30
4C084AA17
4C084MA17
4C084MA28
4C084MA35
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA60
4C084MA63
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC201
4C084ZC202
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA07
4C206FA29
4C206KA06
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA55
4C206MA72
4C206MA77
4C206MA80
4C206MA83
4C206NA10
4C206NA14
4C206ZA89
(57)【要約】
酸性スフィンゴミエリナーゼの1種以上の機能的阻害剤(FIASMA)を利用して、放射線皮膚炎、放射線直腸症又は口腔粘膜炎を含む皮膚放射線障害(CRI)を治療するための組成物及び方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚放射線障害(CRI)を治療する方法であって、それを必要とする患者の皮膚の標的部分に、放射線治療前、その間又はその後、1日あたり少なくとも1回、有効量の、酸性スフィンゴミエリナーゼの1種以上の機能的阻害剤(FIASMA)を含む、0.5~10mlの組成物を投与することを含む方法。
【請求項2】
CRIを治療することは、CRIを予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CRIは、癌の医療用放射線治療から生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CRIは、放射線皮膚炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記CRIは、口腔粘膜炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CRIは、放射線直腸症である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物は、外用クリーム剤、ゲル剤又は軟膏剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は、固体経口剤形である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記固体経口剤形は、粘膜付着性錠剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物は、経口液剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記経口液剤は、1~100mg/mlのSSRIを含むリンスである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記FIASMAは、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、三環系抗うつ剤(TCA)、抗ヒスタミン剤、抗不整脈剤、アドレナリン受容体遮断剤(ARB)及びベータ遮断剤の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
有効量の、酸性スフィンゴミエリナーゼの少なくとも1種の機能的阻害剤(FIASMA)を含む、皮膚放射線障害(CRI)を治療するための医薬組成物。
【請求項14】
CRIを治療することは、CRIを予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させることを含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記CRIは、放射線皮膚炎である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記CRIは、口腔粘膜炎である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記CRIは、放射線直腸症である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記FIASMAは、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、三環系抗うつ剤(TCA)、抗ヒスタミン剤、抗不整脈剤、アドレナリン受容体遮断剤(ARB)及びベータ遮断剤の群から選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項19】
1~100mg/mlのSSRIを含む経口剤形である、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
前記経口剤形は、粘膜付着性錠剤である、請求項19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、放射線被曝によって引き起こされた皮膚の病態又は障害を治療するための化合物、組成物及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
皮膚放射線障害(CRI)は、工業的又は軍事関連源、例えば原子力発電所又は核兵器に使用される放射性物質からの放射線への曝露によって引き起こされるか又はそれから生じる、哺乳動物及びヒトを含む動物の皮膚又は下層組織への損傷である。軽度な皮膚損傷、例えば日光への過剰な曝露による日焼けは、一般的に、CRIの定義内に含まれると考えられない。しかし、用語CRIは、放射線皮膚炎などの皮膚の病態又は放射線直腸症、口腔粘膜炎若しくは重症口腔粘膜炎などの他の病態を含み得、そのそれぞれは、放射線を使用して治療可能な癌又は他の病態を治療するために体の部分に投与された医療用放射線療法後に観察され得る。
【0003】
医療分野の放射線療法は、局所又は局部進行癌の治療に問題なく使用されており、単一治療として又は化学療法若しくは手術に加えて利用することができる。しかし、そのような治療における放射線被曝は、皮膚及び周囲組織の重症熱傷並びに色素形成の永続的変化を起こし得る。癌の放射線療法によって治療された患者の95%もが皮膚反応を経験する。乳癌患者に投与された放射線治療による特定の皮膚反応は、例えば、「放射線皮膚炎」と称される。
【0004】
頭頸部癌患者は、頭頸部癌を治療するための放射線治療後、口を覆う上皮細胞に起こされた損傷によって口内に炎症反応を患い、口腔粘膜炎などの病態を起こし得る。放射線治療のために口内に潰瘍性病変が形成する場合又は患者が固形食品を飲み込むことが不可能になる場合、病態は、「重症口腔粘膜炎」又は「SOM」と考えられる。
【0005】
骨盤領域に投与された放射線療法は、直腸組織に損傷を起こし得る。骨盤領域を標的とした放射線療法から生じた種々の障害は、肛門直腸領域を冒し得、炎症性、虚血性、感染性、外傷性又は新生物性病状の1つ以上を含み得る。肛門直腸疾患の症状としては、肛門又は直腸疼痛、便意逼迫、便失禁、下痢、直腸出血及び直腸の排泄の困難がある。これらの病態は、「放射線性直腸炎」と称され、ごく最近ではより正確に「放射線直腸症」と称される。
【0006】
放射線療法を受けている癌患者におけるこれらの病態の有病率に鑑みて、放射線皮膚炎に罹患している患者に数種の戦略及び治療が提案されているが、大きい成功を示していない。アロエベラ及び外用ビタミンCが試みられたが、照射された乳房組織の結果の改善はなかった。
【0007】
他の報告は、外用コルチコステロイド又はデクスパンテノール含有軟化剤の予防的及び継続的使用が放射線皮膚炎を改善できるが、予防できないことを示している。他の報告は、3%尿素ローションによる湿潤皮膚ケアが、頭頸部腫瘍を有する経皮照射された患者での急性皮膚反応の発生を遅らせ、そのグレードを減少させることを示した。コルチコステロイドの負の副作用は、詳細に記録されており、それらの使用は、好ましくは、回避される。外用コルチコステロイドは、色素沈着変化に対してほとんど又は全く効果がない。
【0008】
ビアフィン及びリピダームが放射線防護効果を全く有さないことが示された一方、アミフォスチンの使用から著しい皮膚細胞保護効果がレトロスペクティブ分析で示された。
【0009】
プロスタグランジンE(1)類似体であるミソプロストールは、子宮内で放射線に曝露されたシリアンハムスター胚の発癌性形質転換を予防する動物試験で有効な放射線防護剤であることが見出された。しかし、ヒトでは良好な結果が得られなかった。
【0010】
放射線直腸症又は直腸炎を予防又は治療する試みもほとんどが不成功であった。肛門直腸又は下部消化管病態のために使用される多くの外用治療は、効果がないようである。例えば、炎症性腸疾患(IBD)の治療に以前に使用された抗炎症剤5-アミノサリチル酸(5-ASA)の使用は、ヒドロコルチゾンなどのステロイドの有無にかかわらず、放射線直腸症又は直腸炎の治療で不成功であった。スクラルファートも放射線直腸症に推奨されてきたが、効果がないことが証明された。
【0011】
ニトログリセリン及びカルシウムチャネル遮断剤などの外用療法も放射線直腸症の治療に効果がないことが見出された。短鎖脂肪酸浣腸も放射線直腸症の治療に使用されたが、容易に利用可能ではなく、投与が困難である。
【0012】
最近、坐剤に製剤されたビタミンA、ビタミンC及びビタミンEなどの抗酸化剤が放射線直腸症又は直腸炎を治療するために記載されている。坐剤は、特定の全身性病態の治療のために肛門又は膣内に配置するための医薬を含む固体剤形であるが、肛門直腸及び婦人科障害の局所治療のために使用できる。例えば、直腸坐剤の通常の使用は、便秘の治療のためである。
【0013】
直腸坐剤は、口により医薬を受け取ることができない患者における薬物送達の代替形態としても使用でき、それにより、医薬品は、粘膜によって吸収され、全身に分布される。これらの種類の直腸坐剤の例としては、悪心及び疼痛の治療がある。
【0014】
放射線療法からの健康な組織への損傷は、酸性スフィンゴミエリナーゼ/セラミド経路による細胞膜からのシグナリングと関連する内皮応答を含み得ることが提唱された(Corre, I., et al., Intl. J. Mol. Sci. (2013) 14, 22678-22696)。例えば、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)活性を阻害することによる内皮損傷に対する保護は、正常組織における放射線毒性を限定する手段として示唆されている。Corre、前掲、22685。ASMaseの阻害剤は、公知であるが、外用投与のために開発されたものはなく、全般的にCRI又は具体的に放射線皮膚炎、放射線直腸症若しくは口腔粘膜炎の予防又は治療に有効であると実証されたものもない。
【0015】
三環系抗うつ剤として知られる1クラスのASMase阻害剤が放射線直腸症又は直腸炎などの肛門直腸障害の治療に使用されることが以前に知られたことはない。アミトリプチリンなどの三環系抗うつ剤を含む剤形が、肛門若しくは直腸投与又は放射線直腸症若しくは直腸炎のインサイチュ(又は非全身性)治療のために製剤されたことはない。アミトリプチリンは、坐剤剤形で製剤されてきた。しかし、アミトリプチリン坐剤は、全身送達のため、うつ病-アミトリプチリンの公知の適応症を治療するためのみに調製された。全身送達のためのアミトリプチリン坐剤の別の適応症は、不眠であり、アミトリプチリンに観察される睡眠誘発副作用を利用している。アミトリプチリン坐剤が、骨盤放射線療法を受けているか若しくは受けた患者に、又は放射線直腸症若しくは直腸炎を治療するか若しくは下部消化管内のあらゆる他のインサイチュ治療のために投与されることは、以前には知られていない。
【0016】
より具体的には、アミトリプチリンは、坐剤又は放射線直腸症若しくは直腸炎の局所治療のための他の肛門直腸送達装置などの剤形に以前に製剤されたことはない。アミトリプチリンなどの三環系抗うつ剤が、放射線直腸症又は直腸炎を治療するための薬物のインサイチュ送達のために、薬物放出が主に腸、好ましくは下部腸内で起こるように、胃内などの低pH環境(7未満の酸性pH)内での放出を回避するための制御放出製剤として製剤されたこともない。
【0017】
別のクラスのASMase阻害剤、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)は、坐剤形態で利用可能であることが知られていない。SSRIが放射線直腸症又は直腸炎の治療に以前に使用されたことも知られていない。
【0018】
アミトリプチリンなどのTCA又はセルトラリンなどのSSRIの局所投与から利益を得ることがある肛門直腸疾患が多くある。これらの病態としては、(非限定的に)潰瘍性直腸炎及びクローン病を含む炎症性腸疾患(IBD)、裂肛、内痔核、放射線直腸症、肛門及び直腸新生物、肛門疣贅、肛門異形成、孤立性直腸潰瘍症候群、肛門掻痒並びに肛門直腸虚血がある。これらの病態は、限定された治療選択肢が現在利用可能である種々の著しい臨床的な問題を提示している。
【0019】
TCA、例えばアミトリプチリン又はSSRI、例えばセルトラリンなどのASMase阻害剤が放射線皮膚炎又は口腔粘膜炎などのCRI病態に使用されたことは、知られていない。さらに、TCA又はSSRIを含む経口液剤、懸濁剤又は乳剤(別々に又は集合的に「口腔リンス」又は簡単に「リンス」と本明細書で称される)などの液体経口剤形が口腔粘膜炎を治療するために製剤されたことは、知られていない。唾液腺への放射線障害による唾液の産生減少を有し、経口剤形又は口腔溶解迅速崩壊固体経口剤形を嚥下するのが困難な患者は、口及び口腔内の損傷組織に有効成分を送達するためのリンス又はマウスウォッシュとして使用できる経口液剤、懸濁剤又は乳剤から利益を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
癌の治療における放射線療法の継続的な及び増加した使用並びに放射線皮膚炎又は放射線直腸症を含むCRIのための利用可能な予防的又は治療的医薬の欠如は、数百万人の患者に影響する、長年にわたる満たされていない患者ニーズである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の簡単な説明
本発明は、工業用若しくは軍事用放射線源の放射線への環境曝露から生じる皮膚放射線障害(CRI)又は癌治療における治療用放射線処置から生じる放射線皮膚炎、放射線直腸症若しくは口腔粘膜炎(重症口腔粘膜炎又はSOMを含む)を改善するか若しくはその重症度を減少させるか、予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか又は逆転させる方法に関する。用語CRIは、一般的に、皮膚の外層又は真皮への放射線障害を含むが、皮下層などのより深い皮膚層又は脂肪層への損傷を含み得る。放射線皮膚炎、放射線直腸症及び口腔粘膜炎は、CRIの定義に含まれるが、一般的に真皮の損傷に関連する病態であると考えられる。
【0022】
本発明による方法は、放射線皮膚炎、放射線直腸症又は口腔粘膜炎を含むCRIに罹患している患者の皮膚表面又は粘膜に、少なくとも1種の酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)阻害剤を含む組成物を外用投与又は塗布することを含む。頭字語、FIASMAにより当技術分野で公知である酸性スフィンゴミエリナーゼの機能的阻害剤は、特定の選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、三環系抗うつ剤(TCA)、抗ヒスタミン剤、抗不整脈剤、アドレナリン受容体遮断剤(ARB)、ベータ遮断剤などを含む。
【0023】
本発明の方法で有用なSSRIは、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン又はセルトラリンの1種以上を含む。好ましいSSRIは、セルトラリンである。好ましい実施形態によると、本発明の剤形は、SSRIなどのASMase阻害剤を、0.1mg~1000mgの用量;より好ましくは約1mg~500mgの投与量、最も好ましくは約5mg~100mgの用量で含む。好ましい投与量は、0.5~10%(w/w)組成物に製剤された約10~100mgのSSRIであることが企図される。投与量は、様々であり得、薬物をより迅速に部位に送達する剤形ではより低く、薬物をゆっくりと放出する剤形ではより高い。
【0024】
本発明の方法又は組成物で有用な三環系抗うつ剤(TCA)は、アミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン(単独でなく組合せで)、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、マプロチリン、ノルクロミプラミン、ノルチアデン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、チアネプチン又はトリミプラミンの1種以上を含む。好ましいTCAは、アミトリプチリンである。好ましい実施形態によると、本発明の剤形は、アミトリプチリンを、0.1~1000mgの用量;より好ましくは約1mg~100mgの投与量、最も好ましくは約5mg~50mgの投与量で含む。好ましい投与量は、1~5%(w/w)組成物に製剤された約10~50mgのTCAである。投与量は、様々であり得、薬物をより迅速に部位に送達する剤形ではより低く、薬物をゆっくりと放出する剤形ではより高い。
【0025】
より具体的には、本発明の方法は、
- 有効成分として薬学的に有効な量の少なくとも1種のFIASMA又は2種以上のFIASMA薬物の組合せを含む外用組成物を提供する工程、
- 有効量の組成物を、それを必要とする患者に放射線療法前若しくは放射線療法後又は両方で外用投与又は塗布する工程
を含む。
【0026】
放射線直腸症を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させる方法において、方法は、
- 骨盤領域の放射線治療を受けている患者又は放射線直腸症若しくは直腸炎に罹患している患者など、それを必要とする患者に、薬学的に有効な量の1種以上の有効成分を含む剤形を肛門直腸内投与する工程であって、少なくとも1種の有効成分がFIASMAである、工程
を含み得る。
【0027】
口腔粘膜炎又は重症口腔粘膜炎を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させる方法において、方法は、
- 有効成分としてFIASMAを含む固体経口剤形を提供する工程と、
- 頭頸部癌の放射線治療を受けている患者など、それを必要とする患者に、薬学的に有効な量の1種以上の有効成分を含む固体経口剤形を投与する工程であって、少なくとも1種の有効成分がFIASMAである、工程と
を含み得る。一実施形態では、固体経口剤形は、有効成分としてFIASMAを含む舌下投与のための放出調節剤形である。
【0028】
口腔粘膜炎又は重症口腔粘膜炎を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させる別の方法において、方法は、
■有効成分として1種以上のFIASMAを含む、液体、懸濁液又は乳液としての液体経口剤形又は「リンス」を提供する工程と、
■頭頸部癌の放射線治療を受けている患者など、それを必要とする患者に、液体剤形中に有効成分として薬学的に有効な量の1種以上のFIASMAを含む液体経口剤形を投与する工程と
を含み得る。
【0029】
舌下投与のための制御放出剤形は、当技術分野で公知であり、薬物の放出が長時間延長されるか、存在を維持するか又は口腔内の活性薬剤の滞留時間を増加させているように剤形の溶解を緩徐にすることできる。そのような制御放出剤形は、医薬分野の当業者によって認識される通り、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、香錠、口内錠又は薄膜ストリップなどであり得る。舌下投与のための制御放出剤形は、口腔内で迅速に溶解又は崩壊して、剤形からの有効成分の即時の投与を与えることも知られている。したがって「制御放出」は、溶解の緩徐化に限定されず、口中で迅速に崩壊して、「即時放出」固体剤形の標準的な溶解速度より速く溶解するように「制御され」得る、「即時放出」は、一般的に、剤形の嚥下前の活性物質の著しい送達がない胃内の放出を指す。
【0030】
放射線療法前に組成物を塗布又は投与することは、放射線療法セッション中のその位置での組成物の保持を含み得ることが理解されるであろう。方法は、各放射線療法セッション中に反復でき、1週あたり少なくとも1回、1週あたり数回、毎日又は1日あたり複数回、放射線療法セッション前、その後又はその間に組成物を投与又は塗布することを含み得る。本方法は、放射線治療が完了した後、例えば放射線治療後1~5日間、放射線治療後1~3週間又は放射線治療後1か月以上継続できる。典型的には、方法は、放射線療法セッションが中止された後、約1週~約1か月組成物を投与することを含む。
【0031】
代わりに、本方法は、有効量の少なくとも1種のFIASMAを含む組成物を経口投与することを含み得る。そのような経口組成物は、即時放出又は制御放出固体剤形であり得る。口腔粘膜炎又は重症口腔粘膜炎などの口腔を冒す病態では、口腔内で溶解し、全体として飲み込まれない経口剤形が好ましくなり得る。
【0032】
唾液腺への損傷を患い、口腔内の固体剤形を溶解するのに十分な唾液を産生することができない特定の患者では、有効成分としてFIASMAを含む液体経口剤形が好ましい剤形であり得る。そのような液体経口剤形は、「リンス」、「口腔リンス」、「ウォッシュ」、「洗口液」として知られるか又は「スプレー」として使用できる。液体経口剤形のために本開示に使用される好ましい用語は、「リンス」である。これらの液体経口剤形は、液体溶液、乳液又は懸濁液の形態であると理解されるであろうが、溶液、乳液又は懸濁液の粘度を増加させるための増粘剤又はゲル化剤を含み得る。
【0033】
骨盤領域における放射線療法を受けている患者、放射線直腸症では、好ましい方法は、FIASMAを含む組成物を含む固体坐剤又は直腸プラグ剤形を提供することと、有効成分の部位への送達に要する期間、剤形を直腸腔内に配置することとを含み得る。
【0034】
本発明は、放射線皮膚炎又は放射線直腸症を含む皮膚放射線障害(CRI)を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させるのに有用である、酸性スフィンゴミエリナーゼの少なくとも1種の機能的阻害剤(FIASMA)を活性薬物又は活性物質として含む外用医薬組成物にも関する。
【0035】
本発明は、放射線直腸症を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させることに使用するための坐剤剤形も含み得る。坐剤剤形は、可溶性の基剤及びTCA、例えばアミトリプチリン、セルトラリンなどのSSRI又は1種以上のTCA若しくはSSRIの組合せを含み得、坐剤剤形に従来利用されている他の薬学的に許容できる賦形剤をさらに含み得る。
【0036】
FIASMAの肛門直腸腔への送達及び薬物のインサイチュ投与のために坐剤又は直腸プラグ送達装置を利用する方法では、剤形は、剤形に組み込まれた活性薬物の放出を妨げることができるか又は剤形若しくは有効成分を含む剤形内の粒子、顆粒若しくはビーズの外表面上に被覆された1種以上の賦形剤を有する制御放出製剤としての直腸プラグ送達装置を備えるか又はそれに組み込まれ得る。制御放出剤形は、経口剤形が、胃内の酸性環境を避けてpHが7.0より高い腸管内で有効成分を放出する遅延放出剤形として製剤される経口投与のためにも提供できる。そのような制御放出剤形は、錠剤上の腸溶性コーティングを使用して製剤され得るか、遅延放出カプセル若しくはカプレット内に提供され得るか、緩徐放出マトリックス組成物に製剤され得るか又は上記の組合せであり得る。
【0037】
剤形が直腸プラグ送達装置である場合、装置は、TCA若しくはSSRI又はそれらの種々の組合せもあり得るFIASMAを含む組成物を内部に収容するための内部チャンバーを有するハウジングを形成する不溶性プラグであり得る。例えば、直腸プラグのチャンバーは、TCAを含む粘性のある組成物で満たされ得るか、又はTCA有効成分を含む坐剤剤形を収容し得る。
【0038】
本発明の方法を実施するのに有用な直腸プラグ送達装置の代替実施形態は、TCA、例えばアミトリプチリン、SSRI、例えばセルトラリン又はそれらの組合せを含む組成物に浸されたか又はそれにより被覆された多孔性圧縮性フォーム材料を含む。本発明の方法に関して記載される装置は、約0.1mg~約1000mg以上の有効投与量のFIASMA又はFIASMA組合せを含有し得る。
【0039】
本発明による組成物は、2種以上の異なるTCA、2種以上の異なるSSRI又は1種以上のTCAと組み合わせた1種以上のSSRIなどを含む組成物など、単一の用量固定組成物に共に製剤又は混合された2種以上の医薬品有効成分も含み得る。
【0040】
本発明の方法に使用するための組成物は、約0.1~1000ミリグラム(mg)の1種以上のFIASMAを含み得る。本発明の方法により有用な外用組成物は、外用液剤として提供され得るが、好ましくは外用クリーム剤、ゲル剤、ローション剤又は軟膏剤として提供される。本発明の組成物及び方法における有効成分として有用な好ましいFIASMAは、SSRI、セルトラリンである。本発明の組成物及び方法における有効成分として有用な別のFIASMAは、TCA、アミトリプチリンである。他のFIASMA化合物は、本発明の組成物又は方法において置換され得るか又は組み合わせて提供され得る。
【0041】
外用剤形は、1種以上の有効成分として使用される1種以上のFIASMAと薬学的に適合性がある従来の市販の医薬品基剤組成物を含み得、外用又は経口剤形で従来利用されている他の薬学的に許容できる賦形剤をさらに含み得る。これらの市販の医薬品基剤は、活性原薬のためのビヒクル又は媒体として作用でき、軟化剤、浸透促進剤、溶媒、ゲル化剤、増粘剤若しくは粘度増大剤、保存剤又は外用調製物に通常使用される他の好適な賦形剤の1種以上を含み得る。
【0042】
好ましくは、外用投与のためのFIASMAは、標的化された投薬及び組成物の塗布又は投与と同時の組成物から皮膚への薬物の即時の送達を可能にする即時放出外用製剤中に提供される。投与又は塗布の部位でのFIASMA成分の保持が好ましくなり得る。したがって、本発明の組成物は、活性物質が全身に吸収され得る皮膚への又は皮膚の下への活性物質の浸透を可能にするか又は促進する浸透促進剤を含む組成物に対して、より長い期間皮膚の表面に組成物及び活性物質を維持するために、浸透促進剤を除外し得る。代わりに、特定の場合、浸透促進剤が好ましく、組成物内に使用され得る。
【0043】
組成物の経口剤形は、即時放出であり得るか、又はポリマー、ゲル、ゴム、蝋などの賦形剤と共に製剤され得るか、又はマトリックスに組み込まれるか若しくはコーティングを含んで経口投与後に組成物からの有効成分の放出を緩徐化するか、遅延させるか、維持するか若しくは延長させ得る。例えば、口腔粘膜炎を治療する際のFIASMAの舌下投与のための固体剤形は、口腔内の溶解のために製剤でき、剤形からの薬物の放出を制御するか、遅延させるか、緩徐化するか、維持するか又は延長させる賦形剤を含み得る。代わりに、固体経口剤形は、例えば、口腔粘膜炎を治療する場合、口腔内で迅速に溶解又は崩壊するように製剤できる。口腔粘膜炎を治療するための好ましい一剤形は、FIASMAを含む液体経口液剤、乳剤又は懸濁剤であり、好ましくはセルトラリンなどのSSRIを含むリンスとして製剤される。
【0044】
本発明のさらなる態様によると、剤形は、TCA若しくはSSRI成分などの第2の活性物質を含み得るか、又はTCAでもSSRIでもなく、例えば薬物の異なるクラスの有効成分である第2の活性物質を含む得る。好ましい実施形態では、組成物は、TCAである第1の有効成分及び異なるTCAであるか又はSSRI若しくはTCAではない他のクラスの化合物である第2の有効成分を含む。例えば、第2の有効成分は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD又はビタミンEなどの抗酸化剤であり得る。好ましくは、組成物中の第2の活性物質は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症剤でも、局所麻酔剤、例えばリドカインなどの麻酔剤でもない。
【0045】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、SSRIである第1の有効成分及び異なるSSRIであるか又はTCA若しくはSSRIではない他のクラスの化合物である第2の有効成分を含む。例えば、第2の有効成分は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD又はビタミンEなどの抗酸化剤であり得る。好ましくは、組成物中の第2の活性物質は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症剤でも、局所麻酔剤、例えばリドカインなどの麻酔剤でもない。
【0046】
好ましくは、方法は、放射線療法又は治療中に直接又は副次的に放射線に曝露される皮膚の標的部分に有効投与量を送達できる外用組成物に製剤されたFIASMAを使用して実施される。例えば、有効成分は液体組成物として製剤されて、液滴として皮膚の標的部分に投与され得る。代わりに、FIASMAは、患者の標的皮膚部分へのFIASMAの外用送達のためのローション剤、クリーム剤、軟膏剤又はゲル剤として、増粘剤又は粘度増大剤を含む組成物に製剤できる。外用製剤は、放射線療法前又は後に皮膚の標的部分の上に塗るか又は標的部分に擦り込むことができる。
【0047】
固体経口剤形を利用する方法では、有効成分は、粒子、顆粒又はビーズとして提供され得、当技術分野で容易に理解される通り、錠剤、カプセル剤、カプレット剤などの形態で製造され得る。経口剤形は、例えば、有効成分が腸溶コート錠剤、遅延放出カプセル剤若しくはカプレット剤などの遅延放出剤形で製剤される制御放出剤形として提供され得るか、又は緩徐放出マトリックス組成物で製剤され得る。
【0048】
液体経口剤形を利用する方法では、有効成分は、適合性があり薬学的に許容できる担体内に溶解、乳化又は懸濁され得る。賦形剤又は他の不活性成分は、コンプライアンスを促進するために、患者に色、風味、粘度及び心地よい口当たりを与えるために含まれ得る。これらの剤形の組合せも利用され得る。FIASMAではない第2の有効成分も含まれ得る。例えば、治療中又はその後に疼痛を減少させるのに有用である局所麻酔剤が含まれ得、防腐剤、他の抗炎症剤又は抗微生物剤も含まれ得る。
【0049】
そのため、本発明によると、皮膚放射線障害(CRI)を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させる方法は、それを必要とする患者の皮膚の標的部分に、放射線治療前、その間及びその後、1日あたり少なくとも1回、治療される部分の大きさに応じて0.5~50ml以上、有効量、例えば約0.1%~約10%w/wのTCA(例えばアミトリプチリン)又はSSRI(例えばセルトラリン)などのFIASMAを含む組成物を外用投与することを含む。
【0050】
放射線皮膚炎を予防、治療又は改善する方法も、それを必要とする患者の皮膚の標的部分に、放射線治療前、その間及びその後、1日あたり少なくとも1回、治療される部分の大きさに応じて0.5~50ml以上、有効量、例えば約0.5%~約10%w/wのTCA(例えばアミトリプチリン)又はSSRI(例えばセルトラリン)などのFIASMAを含む組成物を外用投与することを含む。
【0051】
方法は、それを必要とする患者の標的部分に、放射線治療前、その間及びその後、1日あたり少なくとも1回、治療される部分の大きさに応じて0.5~50ml以上、有効量、例えば約0.5%~約5%w/wのTCA(例えばアミトリプチリン)又はSSRI(例えばセルトラリン)などのFIASMAを含む組成物を外用投与又は送達することにより、放射線直腸症を予防、治療又は改善することも含む。
【0052】
口腔粘膜炎を予防、治療又は改善する方法は、それを必要とする患者の皮膚又は口腔内の粘膜の標的部分に、放射線治療前、その間及びその後、1日あたり少なくとも1回、治療される部分の大きさに応じて0.5~50ml以上、有効量、例えば約0.5%~約10%w/wのTCA(例えばアミトリプチリン)又はSSRI(例えばセルトラリン)などのFIASMAを含む組成物を経口投与することを含み得る。用語「口腔粘膜炎」は、「重症口腔粘膜炎」を含むことが理解されるであろう。口腔粘膜炎の好ましい治療は、粘膜付着性錠剤、オーラルマウスリンス又はオーラルシンウエハー若しくはフィルムなどの緩徐溶解付着性錠剤を含む剤形を利用でき、剤形は、口内、例えば舌下又は頬側に配置され、剤形は、重症口腔粘膜炎(SOM)を含む口腔粘膜炎に対して保護するための活性物質の放出及び送達のために約15分~最大1時間の期間にわたり、活性なASMase阻害剤、好ましくは約1~50mgのセルトラリンを放出するように製剤される。
【0053】
方法に利用される外用組成物は、組成物の1mlあたり5~100mgのアミトリプチリンを含み得るか、又は組成物の1mlあたり1~100mgのセルトラリンを含み得るか、又は組成物の1mlあたり10~90mgのアミトリプチリン及び組成物の1mlあたり1~50mgのセルトラリンを含み得る。アミトリプチリンは、組成物の1mlあたり40mg未満で、より好ましくは組成物の1mlあたり約20~30mgで使用されることが好ましい。
【0054】
上記外用組成物は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEなどの抗酸化剤も含み得る。
【0055】
好ましくは、本発明の方法に使用される組成物は、有効投与量の有効成分をインサイチュで患者の標的部分に送達する外用剤形として製剤される。これは、患者の皮膚の標的部分への有効成分の外用送達のためのローション剤、クリーム剤、軟膏剤又はゲル剤を形成するために薬学的に許容できる基剤と共に製剤された組成物を使用して実施できる。口腔粘膜炎を治療するために、組成物は、本明細書で「リンス」と称される経口液剤、乳剤又は懸濁剤として製剤できる。
【0056】
代わりに、組成物は、アミトリプチリン及びアミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン(単独ではなく組み合わせて)、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、マプロチリン、ノルクロミプラミン、ノルチアデン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、チアネプチン又はトリミプラミンなど、アミトリプチリンではない第2の三環系抗うつ剤を含み得る。
【0057】
セルトラリンを含む組成物は、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン又はパロキセチンなど、セルトラリンではない第2の選択的セロトニン再取込み阻害剤を含み得る。
【0058】
本発明の医薬組成物は、外用医薬組成物として提供され得るか、又は1種以上の有効成分の患者への送達のための、アミトリプチリン、セルトラリン若しくはこれらの組合せなどの有効量の1種以上の有効成分を含む経口剤形 - 固体又は液体のいずれか - であり得る。好ましい実施形態では、本発明の外用組成物は、抗炎症剤及び麻酔剤がないか、それを含まないか又は除外する。
【0059】
好ましい外用医薬組成物は、組成物の1mlあたり10~20mgのアミトリプチリン、又は組成物の1mlあたり1~100mgのセルトラリン、又は組成物の1mlあたり15~20mgのアミトリプチリン及び組成物の1mlあたり1~10mgのセルトラリンを含む。上記のいずれも、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD又はビタミンEなど、有効量の抗酸化剤をさらに含み得る。
【0060】
本発明の経口剤形は、制御放出経口剤形として製剤でき、それは、速溶性経口剤形又は持続若しくは遅延放出剤形のいずれかである。
【0061】
本発明の方法及び組成物及び剤形は、アトピー性皮膚炎、熱傷、日焼け、皮膚筋線維腫、曝露誘発性の皺などの他の皮膚の病態を予防、治療又は改善するのに有用であり得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図面の簡単な説明
図1】突起部材及びフランジ部材を有する直腸プラグ装置の斜視図を示し、突起部材は、細孔を有し、TCA、SSRI又はこれらの組合せなどの少なくとも1種の有効成分を含む可溶性剤形を収容するチャンバーと境界を接するように描写されるハウジングを含む。
図2】チャンバー内に配置された剤形を表す、図1の直腸プラグの断面を示す。
図3】TCA又はSSRI又は組合せを含む組成物に浸されるか又は被覆された多孔性圧縮性フォーム材料を含む、本発明の直腸プラグの代替実施形態の斜視図を示し、投与後のその拡張した形状で描写される。
図4】投与前のその圧縮された形状の図3の多孔性圧縮性フォーム直腸プラグの斜視図を示す。
図5】30Gy焦点照射後の皮膚創傷の調査時の結果を示す。図5のパネルAは、30Gy後の4週までの個々のマウスの皮膚創傷スコアの要約である。パネルBは、経時的な放射線皮膚創傷スコアの観察される変化のグラフ表示である。データは、平均±SEMで提示される。1処置群あたりN=5マウス。
図6】30Gy焦点照射後の皮膚創傷の調査の結果を示す。図6のパネルAは、4%セルトラリンで照射前に3回、4%セルトラリンで照射後に2回又はプラセボで照射の前後に5回処置されたマウスの皮膚創傷スコアの要約である。皮膚創傷スコアは、照射後最長6週間毎週調査された。図6のパネルB~Dは、異なる処置を受けたマウスのコホート間の経時的な皮膚創傷スコアの比較を表す。データは、平均±SEMとして提示される。1処置群あたりN=5マウス。ボンフェローニ事後検定を伴う二元配置ANOVAによりP<0.05。
図7】放射線治療中及び後にRAD-100又は同一ビヒクルのいずれかによって処置された、2以上のRTOGスコアを得た患者のパーセンテージを示す。
図8】マウスでの放射線誘発性口腔粘膜炎に対する1%セルトラリンの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒトを含む哺乳動物における皮膚病態を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させる革新的な方法を提供し、新規組成物又は剤形の使用を利用して治療の方法を実施することができる。本発明の方法及び組成物は、皮膚放射線障害又はCRIを治療するのに有用である。
【0064】
以降では、皮膚放射線障害若しくは「CRI」又は1種のCRIであると考えられる特定の病態に関連した用語「治療する」、「治療すること」又は「の治療」は、CRIを「予防すること」、「その発生率を減少させること」、「その再発を減少させること」、「阻害すること」、「改善すること」、「その重症度を減少させること」、「逆転させること」又は「治療すること」のいずれか1つを意味するか若しくは指し得るか、又はそれにより置換され得る。CRIを「予防すること」、「その発生率を減少させること」、「その再発を減少させること」、「阻害すること」、「改善すること」、「その重症度を減少させること」又は「逆転させること」という具体的な用語は、その治療のみを指示すると意図される場合に使用されるか、又は用語は、その用語を意味しないように意図される場合「治療」から明白に除外され得る。例えば、「その発生率を減少させる」方法は、CRIを「阻害すること」ではなく、CRIの発生率を減少させることのみを意味するように使用され得る。代わりに、「CRIの発生を減少させることを除く、CRIを治療する方法」は、CRIを予防するか、その発生率を減少させるか、阻害するか、改善するか、その重症度を減少させるか又は逆転させる方法を意味し得る。
【0065】
用語「皮膚放射線障害」又は「CRI」は、工業的又は軍事関連源、例えば、原子力発電所若しくは核兵器又は医療用放射線療法に使用される放射性物質からの放射線への曝露によって引き起こされるか又はそれから生じた、哺乳動物及びヒトを含む動物における皮膚又はその下の組織への損傷と定義されることが医療分野で認められている。したがって、用語CRIは、医療用放射線療法後に観察される放射線皮膚炎又は放射線直腸症などの皮膚病態を含み得る。軽度な皮膚損傷、例えば、日光への過剰な曝露による日焼けは、一般的に、CRIの定義内であると考えられない。
【0066】
「放射線皮膚炎」は、体の部分の放射線療法から生じた皮膚の障害を指す。例えば、放射線療法は、女性及び男性の癌性乳房組織の公知で認められた治療である。標的とされた癌組織を覆い、放射線に曝露された皮膚の炎症は、皮膚への損傷をもたらし得る。これらの徴候及び症状は放射線皮膚炎として知られている。その用語は、皮膚科医及びそのような障害を治療する他の医師により臨床的に理解される通り本明細書で使用される。
【0067】
「放射線直腸症」又はその別名「放射線性直腸炎」は、骨盤領域の放射線療法から生じた直腸の内側の炎症を含む、直腸機能の変化を起こす直腸の障害を指す。骨盤領域の放射線療法は、尿生殖器組織の癌のための、例えば、男性の前立腺癌の治療又は女性の子宮頸癌治療の公知で認められた治療処置である。その用語は、そのような障害を治療する医師により臨床的に理解される通り本明細書で使用される。
【0068】
「口腔粘膜炎」は、頭頸部癌を治療するのに使用される放射線療法から生じた病態を指す。適切に「重症口腔粘膜炎」又は「SOM」と称されるより重症な病態は、口内の又は患者が食物も飲み物も飲み込めない場合の潰瘍組織と多くの場合に関連し得る。口腔粘膜炎は、癌治療、特に放射線のよく見られる衰弱性の合併症である。それは、疼痛、飲食ができないことの結果としての栄養問題及び口腔粘膜中のただれによる感染のリスク増加を含むいくつかの問題につながり得る。本明細書での用語「口腔粘膜炎」の使用は「重症口腔粘膜炎」を含み、これらの用語は互換的に使用できる。
【0069】
「乳剤」は、マクロ乳剤、マイクロ乳剤又はナノ乳剤を含む全般的な用語である。マクロ乳剤は、非混和性液体の動力学的に安定な分散液である。マイクロ乳剤は、マイクロメートルサイズ範囲の液滴サイズを有する非混和性液体の動力学的に安定並びに熱力学的に安定な分散液である。ナノ乳剤は、約20nm~約200nmの範囲の液滴サイズを有する非混和性液体の動力学的に安定で熱力学的に安定な分散液である。
【0070】
本発明の一実施形態は、有効量又は投与量の酸性スフィンゴミエリナーゼの機能的阻害剤(FIASMA)を投与することにより、皮膚放射線障害(CRI)を治療する方法に関する。FIASMAの例としては、特定の選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、三環系抗うつ剤(TCA)、抗ヒスタミン剤、抗不整脈剤、抗精神病剤、止瀉剤、アドレナリン受容体遮断剤(ARB)、ベータ遮断剤、エストロゲン受容体調節因子などがある。
【0071】
本発明に従って有用なSSRIの例は、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン及びセルトラリンである。本発明に従って有用な好ましいSSRIとしては、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン及びセルトラリンがある。
【0072】
本発明に従って有用なTCAの例は、アミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン(単独ではなく組み合わせて)、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、マプロチリン、ノルクロミプラミン、ノルチアデン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、チアネプチン及びトリミプラミンである。本発明に従って有用な好ましいTCAは、アミトリプチリン、デシプラミン及びイミプラミンである。
【0073】
本発明はTCA又は/及びSSRIなどの少なくとも1種のFIASMAの使用を含み、同じクラスの薬物からの少なくとも2種の異なるFIASMA又は異なるクラスの薬物からの少なくとも2種の異なるFIASMAの使用を含み得る。例えば、本発明は、少なくとも2種のTCA、少なくとも1種のTCA及び少なくとも1種のSSRI又は少なくとも1種のTCA又はSSRI及びTCAでもSSRIでもない少なくとも1種の追加の有効成分を使用するCRIの治療を含み得る。
【0074】
本発明に従って使用するための好ましいTCAはアミトリプチリンである。アミトリプチリンは、商標名ELAVIL(登録商標)(AstraZeneca PLC, Cambridge England)により米国内で販売されており、主に大うつ病性障害、不安障害を含むいくつかの精神的疾患及び頻度は低いが注意欠陥多動性障害(ADHD)及び双極性障害を治療するために使用される。他の使用としては、偏頭痛の予防、線維筋痛症及び帯状疱疹後神経痛などの神経因性疼痛の治療並びに頻度は低いが不眠がある。
【0075】
本発明に従って使用するための好ましいSSRIはセルトラリンである。セルトラリンは、商標名Zoloft(登録商標)(Pfizer, New York, NY USA)により米国内で販売されており、主にうつ病、パニック発作、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、社会不安障害(社交恐怖)及び重度な形態の月経前症候群(月経前不機嫌性障害)を治療するために使用されている。
【0076】
アミトリプチリン及びセルトラリンが、放射線皮膚炎の予防又は治療に有用であると以前に知られたことはない。
【0077】
好ましい実施形態では、少なくとも1種のFIASMAは、放射線皮膚炎などの皮膚の病態又は障害の予防、改善又は治療のために、皮膚の表面又は粘膜への配置又は塗布による投与のための外用医薬組成物に組み込むことができる。この組成物は、1日1回又は患者の医師若しくは医療提供者により処方される通り高頻度若しくは低頻度で投与できる。
【0078】
剤形としての外用組成物又は調製物は、当技術分野で周知であり、従来医療で使用されている。本発明に従う好ましい実施形態は、FIASMAを薬学的に適合性がある基剤組成物に組み込んで、少なくとも1種のFIASMAを医薬品有効成分(API)又は薬剤として含む外用ローション剤、クリーム剤、ゲル剤又は軟膏剤を製造することである。本発明の別の実施形態は、少なくとも2種の異なるFIASMA、例えば、少なくとも1種のTCAと少なくとも1種のSSRIの組合せを活性薬剤として薬学的に適合性がある基剤組成物に組み込んで、外用ローション剤、クリーム剤、ゲル剤又は軟膏剤を製造することを含む。好ましい実施形態は、薬学的に許容できる基剤に完全に混合されて均質混合物を与える1種以上の有効成分を含む。基剤への可溶化が不完全な有効成分では、懸濁剤が形成され得るが、懸濁剤は、基剤全体に活性物質を均一に分散させるために完全に混合される有効成分を含む。本発明の組成物は、外用剤形に従来使用されている他の薬学的に許容できる賦形剤を含み得る。
【0079】
本発明の別の実施形態では、1種以上のTCA又はSSRIなどの有効成分は経口投与のために製剤され得る。一実施形態では、経口投与量は即時放出剤形として提供される固体経口剤形である。一実施形態では、固体経口剤形は制御放出剤形として提供される。さらに別の経口剤形は、SSRI、セルトラリンなどの有効量のFIASMを含む液体経口剤形である。これらの液体経口剤形は、「リンス」、「ウォッシュ」、「洗口液」又は「スプレー」として知られている。液体経口剤形に関して本開示に使用される好ましい用語は「リンス」である。これらの液体経口剤形は、液体溶液、乳液又は懸濁液の形態であると理解されるであろうが、溶液、乳液又は懸濁液の粘度を増加させるために増粘剤又はゲル化剤を含み得る。
【0080】
一実施形態では、本発明の舌下又は頬側投与のために提供される固体経口剤形は、少なくとも1種のFIASMAを含む単位剤形(例えば、ロゼンジ剤、丸剤、錠剤、フィルム剤又はストリップ剤)の医薬組成物を含み、好ましい実施形態で制御放出製剤として調製される。単位剤形、例えばロゼンジ剤の大きさに関して、単純さ及び製造コスト並びに消費者の好みも考慮に入れられる。舌下又は頬側剤形の大きさは、およそ5mm~20mm、又はおよそ5mm~18mm、又はおよそ7mm~18mm、又はおよそ10mm~15mmで様々であり得る。舌下又は頬側剤形が円形又はほぼ円形の形状を有する場合、大きさの範囲は、好適な直径値である。ほとんどの場合、ロゼンジ剤の厚さは、1mm~10mm、より一般的に3mm~5mmであろう。
【0081】
舌下又は頬側剤形は、単層、二重層又は多層の形態であり得る。可溶性粘膜付着性を有する舌下又は頬側剤形は、粘膜付着性ハイドロコロイドを含む粉末を圧縮することにより製造できる。例としては、付着性香錠は、付着性のためのアラビアゴムを含むドライパウダーと、有効成分としての少なくとも1種のFIASMAを混合することにより製造できる。舌下又は頬側剤形の口腔内の滞留時間は、製品の溶解速度及び溶解の合計時間に従って最適化できる。例えば、舌下又は頬側制御放出ロゼンジ剤、粘膜付着性錠剤又はフィルム剤は、投与後少なくとも1分、好ましくは1~30分、より好ましくは5~15分の口腔内の滞留時間を有するように調製できる。
【0082】
本発明の一態様では、舌下又は頬側剤形は粘膜付着性錠剤である。舌下又は頬側投与のための粘膜付着性錠剤は、粘膜付着性を付与するための少なくとも1種の粘膜付着性ポリマー及び有効成分としての少なくとも1種のFIASMAを圧縮することにより製造できる。粘膜付着性ポリマーは、セルロース系ポリマー、ゴムタイプポリマー、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、それらの誘導体、それらの混合物などからなる群から選択される1種以上であり得る。セルロース系ポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、それらの混合物などであり得る。ゴムタイプポリマーは、キサンタンゴム、カラギーナンゴム、カラヤンゴムなどであり得る。非イオン性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレンオキシドなどであり得る。アニオン性ポリマーは、ポリアクリル酸、Carbopol(登録商標)ポリマー及びその中和されたポリマー、他のポリアルキルビニルエーテル-マレイン酸コポリマー(商品名、Gantrez)、ポリアルギン酸及びその塩、キトサン、ヒアルロン酸及びそれらの誘導体などであり得る。
【0083】
粘膜付着性錠剤は、唾液の浸透速度を低下させることにより口腔内の製剤の消失速度を遅延させるバッキング層を有し得る。バッキング層は、少なくとも1種の水不溶性ポリマー、少なくとも1種の蝋又はそれらの組合せから構成され得る。水不溶性ポリマーとしては、ポリ酢酸ビニル;エチルセルロース;プロピルセルロース;ポリメチルメタクリレート;メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレートコポリマー、メタクリルコポリマー(メタクリル酸コポリマー;Eudragit L 100、Eudragit L 12,5、Eudragit L 100-55、Eudragit L 30D-55)、アミノアルキルメタクリレートコポリマーなどのメタクリル酸コポリマー;Eudragit E 100、Eudragit E 12,5、Eudragit RL 100、Eudragit RL 30D)、酢酸フタル酸セルロース及びこれらの混合物がある。蝋は、カルナバ蝋、黄蝋、白蝋などを含み得る。さらに、pH6~8の口内状態で溶融しないあらゆるポリマーもバッキング層として有用であり得る。
【0084】
別の態様では、本発明は、舌下又は頬側投与などの経口投与のために製剤された単位剤形の医薬組成物を特徴とするが、単位剤形は5~100mgのFIASMAを含む(例えば、剤形は、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg又はそれを超えるセルトラリンを含む。代わりに、経口剤形は、約1%~約10%(w/w)のFIASMA、例えばセルトラリンなどのSSRIを、薬学的に許容でき、適合性がある担体中に含む経口液剤、乳剤又は懸濁剤などの液体剤形であり得る。好ましい経口液剤は10%セルトラリンを含む。制御放出経口剤形としては、胃の酸性環境中で不溶性であり、小腸の中性環境中で可溶性であるポリマー性フィルムで固体剤形を被覆することにより製造される遅延放出製剤がある。
【0085】
本発明の組成物は、可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、流動促進剤などの従来の添加剤又は他の賦形剤を含み得る。
【0086】
一実施形態では、FIASMAは、投与されるとすぐに剤形からの薬物の全ての送達を与える即時放出製剤と比べて、長時間にわたる薬物の送達を可能にする制御放出製剤としての経口剤形で提供される。当技術分野で公知である制御放出製剤は、活性薬剤及び好適なビヒクルと共に製剤された腸溶性コート錠、ビーズ若しくはペレットなどのコーティング、イオン交換樹脂、蝋、アルギナート、セルロースハイドロゲルなどのゲル化剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はHPMC)又はポリマー性アクリルアミド(例えば、CARBOPOL(登録商標))などの使用を含む。
【0087】
本発明は、FIASMAの投与により、CRIを予防、改善又は治療する方法を提供する。方法は、約0.001~100グラムの有効成分を含む組成物を提供し、薬物を、それを必要とする患者に、クリーム剤又はローション剤又は軟膏剤などの外用組成物として皮膚に直接か、経口剤形で製剤されるかのいずれかで送達する工程を含む。
【0088】
好ましい実施形態によると、外用剤形に含有されるFIASMAは、1~1000mgの用量;より好ましくは約5mg~150mgの投与量、最も好ましくは約10~100mgの投与量で提供されたアミトリプチリンであり、約0.5%~約10%w/w外用組成物として投与される。例えば、1%~10%有効成分を含む組成物(組成物の1mlあたり10~100mgの有効成分)は、治療される部分の大きさに応じて、1回の外用塗布あたり約0.5ml~約5ml又はそれを超える量で投与できる。好ましくは、組成物は、約1ml~約2mlの量で外用投与され、CRIを予防又は治療するために10~100mgの有効成分を皮膚に送達する。
【0089】
別の好ましい実施形態では、外用剤形に含有されるFIASMAは、1~1000mgの用量;より好ましくは約5mg~150mgの投与量、最も好ましくは約10~100mgの投与量で提供されたセルトラリンであり、約0.1%~約10%w/w外用組成物として投与される。例えば、0.1%~1%有効成分を含む組成物(組成物の1mlあたり1~10mgの有効成分)は、治療される部分の大きさに応じて、1回の外用塗布あたり約0.5ml~約5ml又はそれを超える量で投与できる。好ましくは、組成物は、約1ml~約2mlの量で外用投与され、CRIを予防又は治療するために1~10mgの有効成分を皮膚に送達する。
【0090】
好ましい一投与量は、1%のFIASMAを本発明による有効成分として含む少なくとも1mlの組成物を投与することである。別の好ましい投与量は、本発明によるFIASMA有効成分を含む少なくとも1mlの2%w/w組成物を投与することである。さらに別の好ましい投与量は、本発明によるFIASMA有効成分を含む少なくとも1mlの3%w/w組成物を投与することである。さらに別の好ましい投与量は、本発明によるFIASMA有効成分を含む少なくとも1mlの4%w/w組成物を投与することである。さらなる好ましい投与量は、本発明によるFIASMA有効成分を含む少なくとも1mlの5%w/w組成物を投与することである。好ましい投与量は、本発明によるFIASMA有効成分を含む少なくとも1mlの6%、7%、8%、9%、10%又は10%w/w超の組成物の投与を含み得る。
【0091】
薬物の濃度が、約0.1%の漸増的増加で提供され得ることが理解されるであろう。非限定的な説明として、FIASMAは、所望の通り1.1%、1.2%、1.3%など、最高10%の濃度で提供されて、意図される効果が負の副作用なしに得られ得る。
【0092】
剤形内に含まれる投与量は、様々であり得、薬物をより迅速に部位に送達する剤形ではより低く、薬物を部位にゆっくりと放出する剤形ではより高い。投与量の変動は、組成物内に含有される有効成分又は複数の有効成分にも依存し得る。例えば、2種以上のFIASMAを含む組成物は、最終組成物が組成物中に約1%~10%未満の総有効成分を含むように、0.1%~9.9%、好ましくは約0.5%~約5%の各活性物質など、各活性物質を10%未満で含み得る。これは、好都合には、患者に投与される各有効成分の投与量を低下させると同時に、等しいか又は実質的に等しい予防的又は治療的効果を与えることができる。少なくとも1種のTCA及び少なくとも1種のSSRIを含む用量固定配合剤が相乗効果を与えることができ、効能が、単独で使用されるそれぞれの有効成分から期待される相加効果より高いことも企図される。
【0093】
好ましくは、外用投与のためのFIASMAは、標的化された投薬及び組成物の塗布又は投与と同時の組成物から皮膚への薬物の即時の送達を可能にする即時放出外用製剤で提供される。投与又は塗布の部位でのFIASMA成分の保持が好ましくなり得る。したがって、本発明の組成物は、活性物質が全身に吸収され得る皮膚への又は皮膚の下への活性物質の浸透を可能にするか又は促進する浸透促進剤を含む組成物に対して、より長い期間皮膚の表面に組成物及び活性物質を維持するために、浸透促進剤を除外し得る。代わりに、特定の場合、浸透促進剤が好ましく、組成物内に使用され得る。
【0094】
本発明のさらなる態様では、剤形は、TCA又はSSRI成分などの第2の活性物質を含み得るか、又はTCAでもSSRIでもない第2の活性物質を含み得、例えば、第2の活性物質は、薬物の異なるクラスにある有効成分である。好ましい実施形態では、組成物はTCAである第1の有効成分及び異なるTCAであるか又はSSRI若しくはTCAではない他のクラスの化合物である第2の有効成分を含む。例えば、第2の有効成分は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD又はビタミンEなどの抗酸化剤であり得る。好ましくは、組成物中の第2の活性物質は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症剤でも、局所麻酔剤、例えば、リドカインなどの麻酔剤でもない。
【0095】
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、SSRIである第1の有効成分及び異なるSSRIであるか、又はTCA若しくはSSRIではない他のクラスの化合物である第2の有効成分を含む。例えば、第2の有効成分は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD又はビタミンEなどの抗酸化剤であり得る。好ましくは、組成物中の第2の活性物質は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症剤でも、局所麻酔剤、例えば、リドカインなどの麻酔剤でもない。
【0096】
外用剤形は、1種以上の有効成分として使用される1種以上のFIASMAと薬学的に適合性がある従来の市販の医薬品基剤組成物を含み得、外用又は経口剤形に従来利用されている他の薬学的に許容できる賦形剤をさらに含み得る。これらの市販の医薬品基剤は、活性原薬のためのビヒクル又は媒体として作用し得、軟化剤、浸透促進剤、溶媒、ゲル化剤、増粘剤若しくは粘度増大剤、保存剤又は外用調製物に通常使用される他の好適な賦形剤の1種以上を含み得る。一実施形態では、市販の医薬品基剤は、Humco(商標)から利用可能な水中油型バニシング型基剤であるPENCreamである。
【0097】
本発明に従って有用なFIASMAを含む外用組成物は、医薬分野で従来公知である通りに製剤され得、少なくとも1種の保存剤、少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種の硬化剤、少なくとも1種の乳化剤、少なくとも1種の粘着防止剤、これらの混合物などの1種以上の追加の成分又は賦形剤を含み得る。
【0098】
外用組成物のための保存剤は、フェノキシ-2エタノール、ベンジルアルコールEmproveなどを含み得る。外用組成物のための溶媒は、グリセリン、プロパンジオール-1,2などを含み得る。外用組成物のための増粘剤は、Carpool ETD 2020、キサンタンゴムなどを含み得る。外用組成物のための界面活性剤は、Brij S721、SP- Brij S2-MBALなどを含み得る。外用組成物などの硬化剤は、Kolliwax HCOなどの水添油などを含み得る。外用組成物などの乳化剤は、Miglyol 812 Nなどを含み得る。外用組成物のための粘着防止剤は、Q7-9120 Silicone Fluidなどを含み得る。
【0099】
本発明は、TCA、例えばアミトリプチリン、SSRI、例えばセルトラリン又はこれらの組合せなどの本発明の医薬品有効成分のインサイチュ投与により肛門直腸障害を治療する方法を提供する。方法は、約0.001~100グラムの有効成分を含む組成物を提供し、薬物を、直接肛門直腸部分に、クリーム剤又は軟膏剤などの外用組成物としてか、坐剤又は直腸プラグ剤形に製剤されてかのいずれかで送達する工程を含む。好ましい実施形態によると、坐剤又は直腸プラグ剤形内に含有されるTCAは、1~1000ミリグラム(mg)の用量;より好ましくは約5mg~150mgの投与量、最も好ましくは約10~100mgの投与量のアミトリプチリンであり、ここで好ましい一用量は、約50mgを含む坐剤又は他の剤形である。別の好ましい実施形態では、坐剤又は直腸プラグ剤形内に含有されるSSRIは、1~1000ミリグラム(mg)の用量;より好ましくは約5mg~150mgの投与量、最も好ましくは約10~100mgの投与量のセルトラリンであり、ここで好ましい一用量は、約100mgを含む坐剤又は他の剤形である。坐剤又は直腸プラグ内に含有される投与量は、様々であり得、薬物をより迅速に部位に送達する剤形ではより低く、薬物をゆっくりと部位に放出する剤形ではより高い。さらに、2種以上の医薬品有効成分が用量固定坐剤配合剤中に提供される場合、有効成分のそれぞれの投与量は剤形中で低減されて、それにより好都合には副作用のリスク又は発生率が低下され得る。
【0100】
好ましくは、方法は、TCA又はSSRIを有効成分として有する組成物を含む固体坐剤又は直腸プラグ剤形を提供すること及び部位への有効成分の送達に要する期間、剤形を直腸腔内に配置することを含む。直腸プラグ送達装置内に提供される組成物は坐剤であり得る。
【0101】
代わりに、薬物は、FIASMA又は2種以上のFIASMAの組合せなどの有効投与量の有効成分を含有する直腸プラグなどの直腸送達装置を使用して送達され得る。本発明による直腸プラグ装置の一実施形態では、プラグ装置は、有効成分を収容するためのチャンバーを形成する不溶性多孔性ハウジングを含む。有効成分は、多孔性直腸プラグハウジング内に形成されたチャンバー部分内に配置された可溶性坐剤として提供され得る。坐剤は、投与されると体液に曝露されて、坐剤からの有効成分の溶解及びインサイチュ送達を起こす。好ましい実施形態では、坐剤は制御放出製剤として製剤される。代わりに、有効成分は、直腸プラグハウジング内のチャンバーを満たすための粘性のある制御放出ゲル剤、軟膏剤又はクリーム剤として製剤され得る。
【0102】
他の種類の直腸プラグは公知であり、本発明に従って使用するために適合され得る。例えば、ポリウレタンフォームなどの多孔性スポンジ様ポリマー性材料で形成された直腸プラグは便失禁における使用のために知られている。そのような直腸プラグは、名称PERISTEEN(商標)Anal Plug(Coloplast Corp., North Minneapolis, MN, USA)で販売されている。ポリウレタンフォームは、直腸腔に挿入されたときの送達のために、材料に吸着され得る有効量のFIASMAを含む溶液に浸され得る。これらの市販の直腸プラグは、一般的に、挿入を容易にするために圧縮された形状で提供され、挿入後溶解する水溶性フィルムに包まれており、拡張した形状に膨らむことができる。そのような圧縮及び拡張は、本発明による薬物のインサイチュ送達に要求されない。
【0103】
図1及び2は、本発明により使用するための直腸プラグ送達装置の一例を表す。図1は、有効成分の送達中、直腸腔内に挿入され直腸腔内に滞留する装置の近位端部を形成する長尺部材101を含む直腸プラグ送達装置100を示す。直腸プラグ送達装置は、直腸プラグ送達装置の全体が直腸腔に取り込まれることを防ぎ、それにより、有効成分の投与中に直腸プラグ装置を正しい位置に保つ遠位フランジ102を含み得る。TCA又はSSRIなどの有効成分は、長尺部材内に形成された空洞(図示せず)内に収納される医薬組成物として提供され得る。長尺部材101の近位端部は、体液が長尺部材内に形成された空洞に入ることを可能にし、長尺部材内に収容された組成物からの有効成分の脱出を可能にする細孔103を含む。直腸プラグ送達装置は、タンポンの除去と同様に機能する、直腸プラグ送達装置の除去を容易にするストラップ又は紐など、遠位フランジに接続された延長部品を有し得る。
【0104】
図2は、医薬品有効成分を含む組成物104を収容できる、長尺部材101の近位端部内に形成された空洞を表す、図1の直腸プラグ送達装置100の断面図を示す。示される通り、組成物は、直腸腔内に投与されると溶解又は溶融する坐剤として形成できる。代わりに、組成物は、ゲル剤、クリーム剤又は軟膏剤を含む非晶質又は定形のない組成物であり得る。好ましくは、組成物は、組成物から有効成分を徐々に放出する制御放出組成物、好ましくは延長放出組成物として提供される。
【0105】
別の実施形態では、剤形は柔らかく、圧縮性の多孔性材料(例えば、フォームラバー又はポリマー性スポンジ様材料)を含む肛門プラグを含むが、有効成分は、多孔性圧縮性プラグ材料内に浸透若しくは浸されるか又はその上に被覆されている。この実施形態は図3及び4に表される。
【0106】
図3は、拡張した形状の、柔らかく圧縮性の多孔性材料を含む直腸プラグ送達装置200を示す。直腸プラグ送達装置200は、直腸腔内に挿入されると拡張し、直腸腔の形状に沿う薬物送達要素201をその近位端部で含む。ストラップ又は紐などの延長部品202が薬物送達要素に接続されて、タンポンの除去と同様に機能して、直腸プラグ送達装置の除去を容易にする。
【0107】
本発明による有効成分を含む組成物は、液体又はゲル、クリーム又は軟膏として、送達要素201を形成する多孔性材料中に浸されるか又は浸透され得る。有効成分を含む組成物は、有効成分を徐々に放出する制御放出組成物、好ましくは延長放出組成物として提供され得る。
【0108】
図4は、薬物送達要素201が直腸腔への挿入の容易さのために圧縮された形態で提供される、図3の直腸プラグ送達装置200を示す。圧縮された薬物送達要素201は、薬物送達要素201を取り囲む水溶性ラッパーを含み得る。直腸プラグ送達装置実施形態200の直腸腔中への挿入後、体液がラッパーを溶解し、図3に示されるように薬物送達要素201をその拡張した形状に拡張させる。図4は、直腸プラグ送達装置の除去を容易にする、ストラップ又は紐であり得る延長部品202をさらに示す。
【0109】
好ましくは、有効成分は、投与されると同時に剤形からの全ての薬物の送達を提供する即時放出製剤と比べて、ある期間にわたる薬物の送達を可能にする制御放出製剤で提供される。当技術分野で公知である制御放出製剤は、活性薬剤及び直腸液中で溶融又は溶解する好適なビヒクルと共に製剤された腸溶性コート錠、ビーズ若しくはペレットなどのコーティング、イオン交換樹脂、蝋、アルギナート、セルロースのハイドロゲル(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はHPMC)などのゲル化剤又はポリマー性アクリルアミド(例えば、CARBOPOL(登録商標))の使用を含む。そのような製剤及び組成物並びに坐剤又は他の制御放出組成物を製造する方法は、当技術分野で周知である。
【0110】
本発明による方法では、放射線皮膚炎などのCRIを治療することは、TCA、例えばアミトリプチリンなどの少なくとも1種のFIASMA及び/又はSSRI、例えばセルトラリンなどの少なくとも1種の第2のFIASMAを含む組成物を利用する。本発明の方法で利用される組成物は外用剤形で提供され得る。さらに、本発明は、アミトリプチリンなどの少なくとも1種のTCA及び/又はセルトラリンなどの少なくとも1種のSSRIを含む経口剤形を使用して、放射線皮膚炎などの皮膚障害又は病態を治療、改善又は予防する方法を含む。
【0111】
好ましくは、方法は、少なくとも1種のFIASMAを有効成分として組成物中に有する組成物を含む外用剤形を提供することと、有効量の組成物を、治療される皮膚の標的部分上に、部位への有効成分の送達に要する期間配置することとを含む。好ましい一実施形態では、有効成分又は複数の有効成分は、皮膚への投与のために粘性のある制御放出ゲル剤、軟膏剤又はクリーム剤として製剤され得る。本発明の外用組成物は、好ましくは、約0.1%濃度(1mg/組成物のml)から最高約10%濃度(100mg/組成物のml)の提供される各有効成分を含む;例えば、0.1%刻みで、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%及び1.1%、1.2%、1.3%など、約10.0%まで。典型的な投与量は約0.5ml~約2ml、好ましくは約1mlであるが、あまり限定はされず、5ml以上の投与量を塗布できるように、治療が必要な皮膚の部分にのみ限定されている。外用製剤は、放射線療法前又は後に皮膚の標的部分の上に塗るか又は標的部分に擦り込むことができる。
【0112】
好ましくは、外用投与のためのFIASMAは、標的化された投薬及び組成物の塗布又は投与と同時の組成物からの薬物の皮膚への即時の送達を可能にする即時放出外用製剤で提供される。投与又は塗布の部位でのFIASMA成分の保持が好ましくあり得る。したがって、本発明の組成物は、活性物質が全身に吸収され得る皮膚への又は皮膚の下への活性物質の浸透を可能にするか又は促進する浸透促進剤を含む組成物に対して、より長い期間組成物及び活性物質を皮膚の表面に維持するために、浸透促進剤を除外し得る。
【0113】
代わりに、特定の場合、浸透促進剤が好ましく、組成物内に利用され得る。
【0114】
放射線療法前に組成物を塗布又は投与することが、放射線療法セッション中のその位置での組成物の保持を含み得ることが理解されるであろう。方法は各放射線療法セッション中に繰り返され得、放射線療法セッション前、その後又はその間に1週あたり少なくとも1回、1週あたり数回、毎日又は1日あたり複数回、組成物を投与又は塗布することを含み得る。本方法は、放射線療法セッションが中止された後、最長1か月又は最長1週間継続できる。代替実施形態では、本方法は、放射線療法セッションが中止された後、1週間継続できる。
【0115】
本発明の一実施形態によると、本発明の方法は、有効投与量の1種以上の有効成分、すなわちFIASMAである薬物を、環境放射線への曝露後にCRIに罹患している患者又は医療用放射線療法を受ける予定若しくは受けており、放射線皮膚炎若しくは放射線直腸症に罹患している患者など、それを必要とする患者の皮膚に外用投与する工程を含む。
【0116】
口腔粘膜炎又は重症口腔粘膜炎を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させる方法において、方法は、
- FIASMAを有効成分として含む固体経口剤形を提供する工程と、
- 頭頸部癌の放射線治療を受けている患者など、それを必要とする患者に、薬学的に有効な量の1種以上の有効成分を含む制御放出舌下剤形を投与する工程であって、少なくとも1種の有効成分がFIASMAである、工程と
を含み得る。一実施形態では、固体経口剤形は、有効成分としてFIASMAを含む舌下投与のための放出調節剤形である。
【0117】
口腔粘膜炎又は重症口腔粘膜炎を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させる別の方法において、方法は、
- FIASMAを有効成分として含む固体経口剤形を提供する工程と、
- 頭頸部癌の放射線治療を受けている患者など、それを必要とする患者に、薬学的に有効な量の1種以上の有効成分を含む制御放出頬側剤形を投与する工程であって、少なくとも1種の有効成分がFIASMAである、工程と
を含み得る。一実施形態では、固体経口剤形は、有効成分としてFIASMAを含む頬側投与のための放出調節剤形である。
【0118】
口腔粘膜炎又は重症口腔粘膜炎を予防するか、その発生率若しくは再発を減少させるか、阻害するか、治療するか、改善するか若しくはその重症度を減少させるか又は逆転させるさらに別の方法において、方法は、
- FIASMAを有効成分として含む液体経口剤形又は「リンス」を提供する工程と、
- 頭頸部癌の放射線治療を受けている患者など、それを必要とする患者に、薬学的に有効な量の1種以上の有効成分を含む口腔リンス剤形を投与する工程であって、少なくとも1種の有効成分がFIASMAである、工程と
を含み得る。
【0119】
放射線直腸症を治療する方法において、本発明の方法は、有効投与量の有効成分としての1種以上のFIASMA薬物、好ましくはTCA、SSRI又はそれらの組合せから選択されるクラスの薬物を、医療用放射線治療から生じた放射線直腸症又は直腸炎に罹患している患者など、それを必要とする患者の直腸腔又は直腸組織に、肛門直腸内投与する工程を含む。
【0120】
放射線直腸症を治療する好ましい方法は、TCA、アミトリプチリン又はSSRI、セルトラリンなどの有効成分としての有効投与量のFIASMAを肛門直腸内投与することを含む。2種以上の異なるFIASMA又は1種以上のFIASMAとFIASMAではない有効成分の用量固定組合せを含む組成物も使用できる。好ましい一例では、方法は、組成物として提供され、有効投与量をインサイチュで患者の直腸腔に送達することが可能である剤形で提供されるアミトリプチリンを使用して実施される。例えばアミトリプチリンは液剤として製剤されて、浣腸剤として投与され得るか、又は増粘剤若しくは粘度増大剤と共に製剤されて、患者の肛門直腸部分及び直腸腔へのアミトリプチリンの外用送達のためのローション剤、クリーム剤、軟膏剤又はゲル剤を提供し得る。
【0121】
代わりに、方法は、肛門直腸腔への医薬品有効成分の送達及び薬物のインサイチュ投与のための坐剤又は直腸プラグ送達装置などの半固体又は固体剤形を利用できる。好ましくは、直腸プラグ送達装置を備えたか又はその中に組み込まれた剤形は、剤形に組み込まれたか又は剤形の外表面に被覆された活性薬物の放出を遅延又は妨げることができる賦形剤を有する制御放出製剤である。
【0122】
剤形が直腸プラグ送達装置である場合、装置は、本発明による医薬品有効成分を含む組成物を中に収容するための内部チャンバーを有するハウジングを形成する不溶性プラグであり得る。例えば、直腸プラグのチャンバーは、FIASMA有効成分を含む粘性のある組成物により満たされ得るか、又はFIASMAを有効成分として含む坐剤剤形を収容し得る。
【0123】
本発明の方法を実施するのに有用な直腸プラグ送達装置の代替実施形態は、本発明による医薬品有効成分を含む組成物に浸されたか又はそれにより被覆された多孔性圧縮性フォーム材料を含む。本発明の方法に関して記載される装置は、約0.1mg~約1000mg又はそれを超える量で提供される有効投与量のFIASMAを収容できる。
【0124】
本発明の方法は、それを必要とする患者への、少なくとも1種の有効成分及びFIASMAではない追加又は第2の有効成分の投与をさらに含み得る。好ましくは、追加の活性物質は、用量固定薬物配合剤中で少なくとも1種のTCA、少なくとも1種のSSRI又はTCAとSSRIの組合せと共に製剤される。
【0125】
第1の及び第2の活性物質を有する組成物の好ましい一実施形態は、TCA又はSSRI及び抗炎症剤、麻酔剤又は抗酸化剤を含む。抗炎症剤は、ステロイド又は非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)であり得る。代わりに、組成物中の第2の活性物質は抗炎症剤ではなく、組成物はステロイド化合物を除外するか、又は組成物は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を除外する。麻酔剤は、通常外用投与に使用されるリドカインなどの局所麻酔剤であり得る。抗酸化剤は、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEであり得る。
【0126】
本発明は、直腸腔への有効成分のインサイチュ送達のために制御放出製剤として製剤された有効量のFIASMAを提供することを含む、放射線直腸症を治療するための組成物を含む。好ましい一実施形態では、組成物は、少なくとも1種のTCA若しくは少なくとも1種のSSRI又は少なくとも1種のTCA及び1種のSSRIを、有効成分又は複数の有効成分として含有する制御放出坐剤として製剤され得る。組成物は、本明細書に記載されるFIASMAではない追加の薬物を含み得る。
【0127】
坐剤又は直腸送達装置に含有される医薬品有効成分は、骨盤の放射線療法前、その間又はその後に投与され得る。好ましい投与は、坐剤又は直腸送達装置を直腸腔内に挿入すること及び投与量全体の送達が完了するまで坐剤又は直腸送達装置を直腸腔内にとどまらせることを含む。本発明による好ましい坐剤は、ゆっくりと溶解して、最長約24時間、すなわち1日の使用にわたってとどまることができる。直腸プラグ送達装置は、直腸腔内に最長約48時間の期間保持され得るが、有効成分又は複数の有効成分の投与量を約24時間以内に送達する薬物製剤を含むことが好ましい。これは便通後の毎日の使用を提供する。代わりに、直腸プラグは、便通のために一時的に除去され、再び挿入され得る。
【0128】
医薬品有効成分を含有する坐剤は、溶解に要する期間直腸腔内に滞留するように配置される。坐剤が完全に溶ける場合、坐剤からの有効成分の放出は直腸中の坐剤の滞留後に達成される。放出された有効成分は、送達の部位に高濃度で存在し、そのため、肛門直腸障害のためのこの療法の有効性を増大させる。
【0129】
放射線療法前に組成物を塗布又は投与することは、放射線療法セッション中のその位置での組成物の保持を含み得ることが理解されるであろう。方法は各放射線療法セッション中に繰り返され得、放射線療法セッション前、その後又はその間に1週あたり少なくとも1回、1週あたり数回、毎日又は1日あたり複数回組成物を投与又は塗布することを含み得る。本方法は、放射線療法セッションが中止された後、最長1か月又は最長1週間継続され得る。代替実施形態では、本方法は、放射線療法セッションが中止された後、1週間継続され得る。
【0130】
代替実施形態によると、坐剤は、ビタミンE及びビタミンC並びに魚油、緑茶、クランベリーなどの天然の抗酸化剤を含む抗酸化剤など、他の薬物又はサプリメントを含み得るか又はそれらからなり得る。これらは、異なる坐剤調製物としても、本発明の坐剤の追加の成分としても使用され得る。
【0131】
これらの使用及び本発明の実施形態のいずれかでは、これらの薬剤の坐剤形態は、肛門及び直腸の慢性疾患のための臨床治療として使用される。
【0132】
肛門直腸疾患の治療のために坐剤形態中に配置される本発明により企図されるあらゆる形態の有効成分は本発明の範囲内にある。さらに、他の有効成分又は不活性成分と組み合わせた本明細書に記載される医薬品有効成分の、肛門直腸疾患を治療するための坐剤への組込みは、本発明内で具体化される。さらに、肛門直腸障害を治療するための手段としての任意のFIASMAの坐剤内の組込みは本発明中に具体化される。最後に、抗炎症剤、麻酔剤、薬草又は他のビタミンなどの他の薬剤は坐剤に含まれて、有効成分又は複数の有効成分の効能が増大され得る。坐剤を製造するために利用される物質としては、任意の脂肪性(又は油性)基剤及び/又は水溶性(又は混和性)基剤がある。
【0133】
特に好ましい実施形態では、坐剤中に含有される医薬はアミトリプチリンである。好ましい実施形態では、坐剤は脂肪性(又は油性)基剤及び/又は水溶性(又は混和性)基剤から構成される。しかし、他の基剤が本発明に利用されて、医薬の直腸への移動を可能にし得る。より一般的に、あらゆる形態の坐剤基剤が、装置を構築するために使用され得る。さらに、種々のTCAが坐剤に組み込まれて、これらの物質の直腸及び肛門への直接塗布を可能にし得る。他の上述の物質も坐剤に含まれて、肛門直腸障害の治療におけるそれらの効能を増大させ得る。坐剤の内容物は、治療の目標に応じて、単独又はアミトリプチリンと組み合わせた種々のTCAからもなり得る。
【0134】
治療されている病態に応じて、様々な投与量のアミトリプチリンが利用され得る。例えば、放射線直腸症の治療に使用されるアミトリプチリンの直腸投与量は1日あたり25~100mgである。これらより低い投与量及び高い投与量の両方が装置の構築で最初に利用される。これらの病態を治療するための最適な用量は、臨床試験に基づいて決定される。
【0135】
しかし、この治療の適切な臨床評価後、より多い又はより少ない投与量のアミトリプチリンが、放射線直腸症並びに他の肛門直腸障害を治療するために最終的に使用され得る。坐剤中のアミトリプチリン及び他のTCAの投薬が、肛門直腸疾患の治療のための経口投与量よりも低くなることが見込まれるが、その理由は、これらの薬剤が罹患部分に直接塗布されるからである。しかし、坐剤又は直腸装置による送達は消化される必要がなく、剤形の大きさをより大きくできるため、経口剤形に典型的に使用されるよりも高い投与量も、さらなる臨床経験又は試験に基づいて安全で効率的であると決定される場合に利用され得る。
【0136】
好ましくは、CRIを治療する方法は、FIASMA、例えばアミトリプチリンなどのTCA又はセルトラリンなどのSSRIを使用して実施され、TCA又はSSRI又は両方は組成物として調製され、患者の皮膚に有効投与量をインサイチュで送達することが可能である剤形で提供される。例えばアミトリプチリンは、液剤として製剤されて、液体形態で皮膚の標的部分に投与され得るか、又は増粘剤若しくは粘度増大剤と共に製剤されて、放射線療法を受ける予定があるか若しくは放射線皮膚炎に罹患している患者など、それを必要とする患者の皮膚の標的部分へのアミトリプチリンの外用送達のために、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤若しくはゲル剤を提供し得る。
【0137】
代わりに、方法は、固体経口剤形の投与を利用し得る。
【0138】
本発明の方法は、それを必要とする患者への、少なくとも1種のFIASMA及びFIASMAではない追加の有効成分の投与をさらに含み得る。好ましくは、追加の活性物質は、皮膚への外用投与のための用量固定薬物配合剤中で少なくとも1種のFIASMAと共に製剤される。
【0139】
第1及び第2の活性物質を有する本発明の組成物の好ましい一実施形態は、SSRIを第1の有効成分として、及びTCA又は抗酸化剤を第2の有効成分として含む。抗酸化剤は、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEであり得る。本発明の組成物のさらなる実施形態は、TCA、SSRI及び抗酸化剤を含み得る。有効成分の例は、TCAとしてのアミトリプチリン、SSRIとしてのセルトラリン及び抗酸化剤としてのビタミンDである。
【0140】
治療されている病態に応じて、様々な投与量の本明細書に記載される1種以上の有効成分が利用され得る。例えば、放射線皮膚炎の予防又は治療に使用されるアミトリプチリンの外用投与量は1日あたり1mg~100mgである。
【0141】
これらの病態を予防又は治療するために最適な用量及び処置される部分は、臨床試験に基づいて決定される。しかし、この治療の適切な臨床評価後、より高い又はより低い投与量のアミトリプチリン又はセルトラリンが、放射線皮膚炎並びに他の皮膚科の炎症性疾患を予防又は治療するために最終的に使用され得る。
【実施例
【0142】
実施例
実施例1 - TCAを含む組成物の使用
25mm乳房腫瘍の治療のための放射線療法を受けているか又は受ける予定がある患者に、薬学的に許容できる基剤中に1%~2%アミトリプチリンを含む軟膏である組成物を与える。放射線療法処置中に放射線に曝露されるか又は曝露されるであろう腫瘍の上の皮膚の部分が特定され、マーキングできる。
【0143】
医療従事者又は患者は、およそ1mlの組成物を、放射線に曝露されるか又は放射線により影響を受けると予測される皮膚の部分に1日あたり少なくとも1回塗布することにより組成物を投与する。組成物の投与は、少なくとも毎日又は1日あたり5回まで、放射線治療レジメン中に少なくとも1週間の期間繰り返される。例えば、放射線療法レジメンを週に5回(月曜日から金曜日)受ける患者は、各日に放射線療法の90分前に、次いで7日間就寝前に、治療される部分にクリームを塗布する。そのため、月曜日から金曜日の放射線治療前及び後、次いで放射線を受けない週末に1日2回。これが5又は6週間繰り返される。
【0144】
予測される結果:放射線皮膚炎は、組成物の投与により予防されるか、又は改善するか、又は逆転される。
【0145】
実施例2 - 単一の活性物質対複数の活性物質の効能を決定する
25mm乳房腫瘍の治療のために放射線療法を受けるか又は受ける予定がある5人の患者群に、下記のいずれかを含む軟膏である組成物を与える:
■薬学的に許容できる基剤中の1%アミトリプチリン;
■薬学的に許容できる基剤中の1%セルトラリン;
■薬学的に許容できる基剤中の1%アミトリプチリン及び1%セルトラリン;
■薬学的に許容できる基剤中の0.5%アミトリプチリン及び0.5%セルトラリン;並びに
■薬学的に許容できる基剤、単独(プラセボ)。
【0146】
放射線療法処置中に放射線に曝露されるか又は曝露されることが予測される腫瘍の上の皮膚の部分が特定され、マーキングできる。医療従事者又は患者は、およそ1mlの組成物を、放射線に曝露されるか又は放射線に曝露される予定の皮膚の部分に対して、放射線治療前に1日あたり少なくとも1回塗布することによって組成物を投与する。組成物の投与は、放射線治療後に少なくとも1週間の期間、少なくとも毎日又は1日あたり5回まで繰り返される。
【0147】
予測される結果:有効成分を含む各組成物の効能は、患者の各群に存在する放射線皮膚炎のレベルをスコア付けすることにより決定される。アミトリプチリンとセルトラリンを組み合わせて使用することの効能が相加的又は相乗効果を示すかどうかの決定は、1%アミトリプチリン及び1%セルトラリンを含む組成物の放射線皮膚炎スコアが、1%アミトリプチリン組成物単独及び1%セルトラリン組成物単独の効果より低いか、等しいか又は高いかを比較することにより決定できる。薬学的に許容できる基剤中に0.5%アミトリプチリン及び0.5%セルトラリンを含む用量固定組合せ組成物の放射線皮膚炎スコアは、組成物中の各活性物質の単独のより高い投与量と比べた、組み合わせた各活性物質のより低い投与量の効能に関する情報を提供できる。
【0148】
実施例3 - 放射線を受けたマウスでの放射線皮膚炎の処置
目的:放射線誘発性皮膚創傷の保護剤としてのセルトラリンの外用再製剤の効果を決定すること。
【0149】
材料及び方法:放射線誘発性皮膚炎実験を、10週齢の雌性C57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory)で実施した。マウスの背部皮膚のおよそ3×3cmの部分を薬物処置前に剃毛した。マウスを、4%セルトラリン又はビヒクル(1コホートあたりn=5マウス)の外用処置を受けるように無作為に割り付け、調査員全員を外用処置に関して盲検化した。
【0150】
試験は、活性薬物含有組成物をプラセボ(ビヒクル)と比較した。活性薬物含有組成物及びプラセボは、いずれも第三者によって調製され、試験に使用するために発明者らに提供された。組成物の調製を下記の通りまとめる。
【0151】
4%セルトラリンクリーム-ヘキシレングリコール、精製水、パルミチン酸イソプロピル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、プロピレングリコール、セテアレス20、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG100、ジメチコン、オクチルドデカノール、レシチン、エチルヘキシルグリセリン及びフェノキシエタノールを含む水中油型バニシング型クリーム基剤中の4%(w/w)セルトラリン(塩酸塩として)。
【0152】
プラセボクリーム-精製水、パルミチン酸イソプロピル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、プロピレングリコール、セテアレス20、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸PEG100、ジメチコン、オクチルドデカノール、レシチン、エチルヘキシルグリセリン及びフェノキシエタノールを含む水中油型バニシング型クリーム基剤。
【0153】
両生成物を、ポリ塩化ビニル円板ライナーを有する白色ポリプロピレン閉じ具を有する、外用のみと記した白色ポリプロピレンジャーに包装し、制御された室温(20℃~25℃)で冷凍禁止の指示をつけて保存した。
【0154】
製剤を以下の組成表Aにさらに説明する。
【0155】
【表1】
【0156】
組成表Aに述べた通り、4%セルトラリン組成物を遊離塩基として調製する。製剤に加えたセルトラリンHClの量を調整して、HCl塩に関して補償する。
【0157】
PENCreamは、Humcoから購入した市販の水中油型バニシング型基剤である(https://www.humco.com/pharmaceuticals/pencream/)。クリームのNDCコードは0395-6010-56である。
【0158】
マウスは、照射の2日前から12日間外用処置を1日1回受けた。画像誘導小動物照射X-Rad 225 Cxを使用して、剃毛した皮膚の1×1cm部分に単回照射の30Gy X線を送達することにより、皮膚炎を誘発させた。
【0159】
放射線誘発性皮膚炎の発生を、照射前及び照射後4週間毎週、処置群に対して盲検化された1人の観察者により調査した。放射線に対する皮膚反応を、前臨床試験で以前に確立された半定量的スコアシステムに従って評価した - スコア付けは、紅斑、落屑(乾燥及び湿潤)、壊死及び真皮の喪失(表1)に基づいて、1.0~5.5(0.5刻み)の範囲である。
【0160】
【表2】
【0161】
結果:30Gy照射後最初の2週間中、4%セルトラリンクリームによる処置を受けたマウスは全て4.5の皮膚創傷スコアを有したが、ビヒクル処置を受けたマウスは、3.0~3.5の重症度の低いスコアを有した(図1、パネルA及びB)。引掻き行動及び後遺症が4%セルトラリンコホートに認められた。
【0162】
照射後21日に、両処置コホートは、3.0~3.5の皮膚創傷スコアを有した。照射後28日の実験の最後に、4%セルトラリンの処置を受けたマウスは、平均スコア1.7の1.5~2.0の範囲の重症度の低い皮膚創傷スコアを有した。
【0163】
対照的に、ビヒクル処置マウスは、平均スコア3.0の1.5~3.5の範囲のより高い皮膚創傷スコアを保った(図5、パネルA及びB)。
【0164】
議論:発明者らの予備的な結果は、4%セルトラリンを受けたマウスの皮膚創傷が30Gy後4週間で大幅に改善したが、ビヒクル処置マウスの皮膚創傷が重症のままであったことを示す。照射後最初の2週間中の4%セルトラリンにより処置されたマウスのより高い創傷スコアの原因は研究中であるが、文献調査により、マウスでは、外用セルトラリンが、以前に発表された動物試験に示される通りマウスの著しい掻痒誘発性の引掻きを引き起こすことを確認した(Neuron 87, 124-138, July 1 2015)。30分後にクリームを除去してこの実験を繰り返すと、引掻き行動及び初期皮膚創傷スコアが大幅に減少したが、それでも上記に示されるデータと同様に2週間後に類似の利益を示す。したがって、第1週に認められた早期の毒性はセルトラリン誘発性の引掻きによる自傷に関連したと考えられる。
【0165】
結論:結果は、驚くべきことに、4%FIASMA組成物、例えば、4%セルトラリン外用組成物が放射線誘発性皮膚創傷に対して効能を有することを示唆する。
【0166】
より低濃度の活性薬物、例えば、1%未満セルトラリン、好ましくは約0.5%を含む組成物は、1種以上の浸透促進剤、可溶化剤、軟化剤などと共に製剤され、上記組成表Aに記載される組成物と実質的に同じ量の薬物を標的部位に送達できる。1%以下の活性薬物を含むこれらの製剤は、患者への用量に関して好都合になり、したがって好ましくなり得る。
【0167】
治療上有効な量を患者の皮膚の標的部位に送達するための外用ゲル組成物は、例えば、0.5~1.0%活性薬剤を、1種以上の保存剤、1種以上の保水剤/溶媒、1種以上のレオロジー調整剤/増粘剤、1種以上の粘着防止剤/流動促進剤などとの混合物中に含み得る。外用ゲルの製剤の一例を以下のゲル組成表Bに与える。
【0168】
【表3】
【0169】
治療上有効な量を患者の皮膚の標的部位に送達するための外用クリーム製剤は、例えば、0.5~1.0%活性薬剤を、1種以上の保存剤、1種以上の保水剤/溶媒、1種以上のレオロジー調整剤/増粘剤、1種以上の粘着防止剤/流動促進剤などとの混合物中に含み得る。外用ゲルの製剤の一例を以下のクリーム組成表Cに与える。
【0170】
【表4】
【0171】
実施例4 - 照射前処置と照射後処置の比較
実施例3に提示された実験をマウスで繰り返して、照射前処置及び照射後処置を投与された4%セルトラリンを比較した。4%アミトリプチリンも試験した。
【0172】
実施例3に示された同じスコア付けチャートを使用して、マウスの照射部位を評価した。
【0173】
方法:放射線誘発性皮膚炎実験を10週齢の雌性C57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory)を使用して実施した。マウスの背部皮膚のおよそ3×3cm部分を薬物処置前に剃毛した。単回照射の30Gy X線を、画像誘導小動物照射器X-Rad 225 Cxを使用して、皮膚の1×1cm部分に送達して、皮膚炎を誘発させた。照射前に3日間1日1回4%セルトラリンクリーム、照射後24時間から2日間1日1回4%セルトラリンクリーム又はプラセボ1日1回5日間(照射前及び後)の外用処置を受けるように、マウスをケージごとに無作為割付した。
【0174】
放射線誘発性皮膚炎の発生を、照射後6週間毎週、処置コホートに対して盲検化された2人の観察者(S.H.及びS.S)により調査した。放射線に対する皮膚反応を、前臨床試験で以前に確立された半定量的スコアシステムに従って評価した - スコア付けは、紅斑、落屑(乾燥及び湿潤)、壊死及び真皮の喪失に基づいて1.0~5.5(0.5刻み)の範囲である。
【0175】
照射処置(IR)後1週、2週、3週及び4週でのスコア結果を以下の表2に示す。
【0176】
【表5】
【0177】
結果。照射処置後4週で、10匹のセルトラリン処置マウスのうち9匹が、ビヒクルのみにより処置されたマウスより低いスコア(よりよい改善)を示した。一般的に、4%セルトラリンクリームは、照射処置後に投与された場合、照射処置前よりも性能が良好であって。しかし、照射処置前は、いくらかの予防的効果を示した。照射処置後24時間及び48時間で投与された4%セルトラリンクリームは早期の反応も示し、照射処置の1週間以内のより低いスコアを示し、改善されたスコアを照射処置後の第4週まで示し続ける。
【0178】
これらの結果を図6、パネルA~Dに図示する。全体として、4%セルトラリンを照射後に2回受け取ったマウスは、照射後第1週から急性放射線皮膚炎からの加速された回復を示した(図6、A及び2)。照射後2回群の皮膚創傷スコアは、30Gy後3~6週でプラセボ群より有意に低かった(図6、パネルB)。他方で、照射前3回群の皮膚創傷スコアは、30Gy後の5週でのみプラセボ群より有意に低かった(図6、パネルC)。注目すべきことに、照射前に3回4%セルトラリンを受けたマウスは、照射後に2回4%セルトラリンを受けたマウスと比べて、急性放射線皮膚炎からの有意に緩徐な回復を示した(図6、パネルD)。
【0179】
注目すべきことに、4%アミトリプチリンクリーム及び4%フルオキセチンクリームの投与はマウスに対して有害な効果を有し、このアームの実験を停止させた。これは、三環系抗うつ剤(TCA)を含む4%クリーム製剤が過剰な投与量であり、それらの効能を決定するにはより低い投与量が必要とされることを示唆する。
【0180】
実施例5 - 頭頸部放射線療法と関連する口腔粘膜炎を治療するためのSSRIを含む経口液剤又はリンス
目的:この計画された試験の目標は、頭頸部放射線療法と関連する口腔粘膜炎及び口腔乾燥症を治療するためのSSRI(セルトラリン)を含む経口液剤又はリンスの有効性を評価することである。
【0181】
A.マウスモデルにおける口腔粘膜炎を誘発するために最適な放射線量
8週齢雌性C57BL/6Jマウスにおける放射線誘発性の口腔粘膜炎及び口腔乾燥症を試験するための照射の最適な線量を決定するために、パイロット実験が実施される。マウスの頭頸部領域が、Small Animal Radiation Research Platform(SARRP)を使用して、単回照射の0、16、18、20及び22Gy X線により処置される(放射線量あたりn=10)。
【0182】
2つの測定が実施されて、口腔粘膜炎の持続期間及び重症度が決定される:
(a)マウスの体重は、照射後7日から16日まで毎日及びその後照射後21日まで週に3回測定され、及び
(b)舌の病理形態学的変化は、照射後9日、12日及び16日に耳鏡を使用して評価される。
【0183】
必要に応じて、疼痛制御医薬及び支持療法が提供され得る。
【0184】
口腔乾燥症の重症度を評価するために、1マウスあたりの唾液の産生量は、以前に記載された方法に従って、照射後30日及び60日で測定される。Ashcraft et al. (2015) “Novel Manganese-Porphyrin Superoxide Dismutase-Mimetic Widens the Therapeutic Margin in a Preclinical Head and Neck Cancer Model.” International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics 93 (4): 892-900; Saiki et al. (2018) “Aldehyde Dehydrogenase 3A1 Activation Prevents Radiation-Induced Xerostomia by Protecting Salivary Stem Cells from Toxic Aldehydes.” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 115 (24): 6279-84を参照されたい。
【0185】
B.放射線誘発性口腔粘膜炎及び口腔乾燥症の発生に対する、セルトラリン経口液剤の効果の決定。
上記Aで決定された最適な放射線量を使用して、8週齢雌性C57BL/6Jマウスは、
頭頸部放射線療法、プラスビヒクルのみ(対照)、
頭頸部放射線療法+ビヒクル中2%セルトラリン、
頭頸部放射線療法+ビヒクル中4%セルトラリン、及び
頭頸部放射線療法+ビヒクル中6%セルトラリン
(n=20マウス/処置コホート)
を受けるように無作為に割り付けられる。
【0186】
マウスは、セルトラリン経口液剤により1日1回連続で5日間(照射前に2日、照射と同じ日の照射直前及び照射後の2日間)処置される。
【0187】
2つの測定が、口腔粘膜炎の持続期間及び重症度を評価するために実施される:
(a)マウスの体重は、照射後7日から16日まで毎日及びその後照射後21日まで1週あたり3回測定される。
(b)舌の病理形態学的変化は、耳鏡を使用して、照射後9、12及び16日に評価される。必要に応じて、疼痛制御医薬及び支持療法が提供され得る。口腔乾燥症の重症度を評価するために、1マウスあたりの唾液の産生量が、照射後30日及び60日に測定される(Ashcraft et al. 2015;Saiki et al. 2018)。唾液腺の線維形成は、照射後60日に、組織診断により評価される(Ashcraft et al. 2015)。
【0188】
セルトラリンによる経口処置が、急性炎症を減少させることにより、放射線誘発性口腔粘膜炎及び口腔乾燥症の重症度及び/又は持続期間を減少させることが仮定される。結果が用量依存性であり、セルトラリン経口液剤が口腔粘膜炎及び/又は口腔乾燥症の治療で有効であることが期待される。
【0189】
実施例6 - 放射線療法を受けており、それから回復している患者の放射線皮膚炎の処置
目的:標準コースの放射線療法を受けている手術後の乳癌患者における放射線誘発性皮膚炎の予防又は減少におけるRAD-100の効果を決定すること。
【0190】
材料及び方法:ランダム化された二重盲検試験を、乳癌手術 - 乳房温存(ラムペクトミー)又は乳腺切除のいずれか - を最近受け、1週あたり連続で5日の毎日の治療として投与される5~6週の期間にわたる25~30セッション中、1セッションあたり1.8~2.0GYの標準コースの放射線療法を受けることが計画されていた18歳以上の対象を使用して実施した。
【0191】
以下の除外基準のいずれか1つを満たす場合、対象を試験から除外した:
・放射線療法の開始時に潰瘍化乳房組織又は乳房開放創。
・放射線の開始前の放射線を受ける予定の部分の皮膚病変。
・クリームの成分のいずれか又はセルトラリンに対する既知のアレルギー、過敏症又は反応。
・治療にあたる医師の意見により、対象が試験に参加することが不可能であるとみなすあらゆる神経学的又は精神的病態。
・治験担当医師の意見により、試験の結果に影響し得るあらゆる他の著しい併存疾患(例えば、コントロール不良な糖尿病、腎不全、肝臓機能不全、心血管疾患など)。
・BMI>35.0
・過去30日以内に治験薬試験に関与している対象。
・モノアミン酸化酵素阻害剤を服用している対象。
・化学療法薬物による併用療法を受けている対象。
・妊娠中又は授乳中。
【0192】
組入れ基準の全てを満たし、除外基準のいずれにも該当しない対象を試験に登録し、インフォームドコンセントを読み、理解し、署名するように求め、医療問診票を完成するように求め、完全な身体診察を受けるように求め、化学及び血液学のための絶食時血液試料並びに尿検査のための尿試料を提供するように求めた。
【0193】
試験は、RAD-100(セルトラリン外用クリーム4.00%w/w)又はビヒクルクリームを1日2回(BID)受けるように2:1に無作為割付された14人の対象のコホートからなっていた。対象に、クリームを1日2回、午前中に1回及び晩に1回塗布すること及びレジメンを放射線治療中に毎日及び最後の放射線治療後14日間続けることを求めた。
【0194】
放射線療法の第1週の前の金曜日に、対象にクリームを分配し、彼らの第1の放射線治療前の日曜日の晩にクリームの塗布を始めるように指示した。標準コースの放射線療法を開始する1日前に、対象全員に、放射線が投与される予定の定義された部分にクリームの塗布を始めるように求めた。これは、乳房温存対象では乳房全体を、乳腺切除対象では定義された部分を含んでいた。
【0195】
対象に、1日2回、午前中に1回及び晩に1回クリームを塗布することと、このレジメンを放射線治療中に毎日及び最後の放射線治療後14日間続けることとを求めた。対象全員が、対象と治験担当医師/評価者のいずれにも知られていない活性物質2対ビヒクル対照1の比で所定の無作為化コードに従って盲検化されコード化された医薬品を受けた。対象全員に、彼らがクリームを塗布した時間を記録し、あらゆる併用薬及び有害事象を記録するための日記を与えた。塗布部位の写真を、週に2回火曜日及び金曜日に放射線治療前並びに放射線治療後の7日目及び14日目に撮影した。
【0196】
最初の1日導入期間後、対象全員が毎日週に5日間、放射線部門に行き、照射線量を受けた。毎火曜日及び金曜日の放射線療法治療の直前に、治験責任医師(PI)又はPIの指定されたアシスタントは、改訂されたRadiation Therapy Oncology Group(RTOG)スコアリングシステムを使用して放射線の部位の皮膚を評価して、スコアを記録した。対象に、放射線部位に関して毎週質問し、疼痛レベル並びにあらゆる有害又は普通でない事象を報告するように求めた。対象に、放射線を受けない1週あたり2日中にクリームの塗布を続けること及び放射線治療部位のあらゆる変化を日記に書き留めることを忘れないように注意した。試験の放射線段階の完了時に、対象全員に、処置レジメンを次の14日間毎日続けるように求めた。対象は、評価のために7日目及び14日目に戻った。この放射線後14日間期間の最後に、放射線部位のその後のあらゆる変化を自発的に報告することを要請して、対象を試験から解放した。
【0197】
結果:皮膚炎は、2,3人の対象を除いて26日目より前には発生しなかった。結果は、治療期間全体及び放射線後期間に処置群に有利なP-値を示した。RTOGスコアで記録された放射線誘発性皮膚炎は、プラセボ群で放射線後7日の期間中に悪化したが、平均スコアは、処置群で安定した。表3は、26日目以降の平均RTOGスコアデータを示す。
【0198】
【表6】
【0199】
異なる時間での各群内のRTOGスコアの分布も評価した。皮膚炎は、処置群と比べてプラセボ群でより早く悪化し、P-値は、全て処置群に有利であった。放射線後段階では、処置群は、より速く治癒したようであった。表4は、分類ごとのRTOGスコアの分布を示す。
【0200】
【表7】
【0201】
RTOGは2より高いスコアを含むが、放射線治療は2のスコアを超えないように設計されている。データは、各群における2以上のスコアの患者のパーセンテージとして提示されるが、実際には2のスコアを超えたスコアはなかった。
【0202】
表5(以下)のデータは、この試験の分類されたデータを示す。放射線治療段階中、プラセボ群は、33日及び36日に2.0スコアのより高いパーセンテージを有し、33日目で統計的有意性に近かった。プラセボ群は、乏しい回復も示した。
【0203】
【表8】
【0204】
表5の結果を図7に図示する。
【0205】
結論:この試験の結果は、RAD100を使用する処置が、放射線治療段階及び回復段階の両方中に皮膚炎の経過を改善し、いくらかの有意に近いP-値を達成することを示した。より大勢の対象は必然的にこの試験の統計データを改善するが、現在の値は、より大きい試験が高い統計的有意性を達成することを予測する。全体として、遅延した皮膚炎の発生並びに処置群の速い治癒の速度は、実施例3及び4においてマウスで生成したデータを支持している。マウスデータは、ヒトデータのように、RAD100処置群で改善された治癒の速度を示す。
【0206】
実施例7 - 頭頸部放射線療法と関連する組織毒性の処置
目的:マウスでの放射線誘発性口腔粘膜炎の発生に対するセルトラリン経口液剤の影響を調査することによる、マウスでの放射線誘発性口腔粘膜炎の発生に対するセルトラリンの影響を決定すること。
【0207】
実験手順:10週齢の雌性C57BL/6マウスを、16Gy口腔内照射+プラセボ又は16Gy口腔内照射+1%セルトラリン液剤を受けるようにケージごとに無作為割付けした。プラセボ又はセルトラリン液剤を、マウスの口腔に、1日1回連続5日間(照射前に2日間、照射と同じ日に照射の30分~1時間前及び照射後2日間)塗布した。放射線誘発性重症口腔粘膜炎の発生を、照射後21日間追跡した。
【0208】
結果:結果は、プラセボ群では、16Gy口腔内照射がマウスの66%(6匹のうち4匹)に口腔粘膜の急性放射線毒性による死亡を起こしたが、1%セルトラリン群でマウスの33%(6匹のうち2匹)のみが死亡したことを示した(図8)。これらの知見は、放射線誘発性重症口腔粘膜炎を改善する新規手法として経口セルトラリン治療の開発を支持する。
【0209】
本発明の上記の記載は、説明のためのものに過ぎず、本発明の範囲を、述べられた正確な用語に限定しないものとする。さらに、本発明が特定の説明的実施形態を参照して詳細に記載されてきたが、変形形態及び変更形態が、以下の特許請求の範囲に記載及び定義される本発明の範囲及び趣旨内に存在する。
【0210】
上記の本開示及び実施例は、本発明を全般的に説明し、説明の目的で提供され、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素又は複数の要素、限定又は複数の限定が存在しない状態で実施され得る。そのため、例えば、本明細書の各場合において、用語「を含む」、「から基本的になる」及び「からなる」のいずれも他の2つの用語のいずれかに置き換えることができる。用語及び表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、示され記載される特徴のあらゆる均等物又はその一部を排除するそのような用語及び表現の使用に意図はないが、特許請求される本発明の範囲内で種々の変更形態が可能であることが認められる。そのため、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴により具体的に開示されてきたが、本明細書に開示される概念の変更形態及び変形形態が当業者によって使用され得、そのような変更形態及び変形形態は、請求項によって定義される本発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
図1
図2
図3-4】
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
【国際調査報告】