(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】二酸化炭素を用いてデンプンを製造する方法、組換え微生物、及び組換え微生物を構築する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/04 20060101AFI20241001BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241001BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241001BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20241001BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20241001BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20241001BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C12P19/04 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12P19/04 C
C12N15/52 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/11 Z
C12N15/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518460
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 CN2022120499
(87)【国際公開番号】W WO2023046007
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111116011.2
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211137776.9
(32)【優先日】2022-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517265912
【氏名又は名称】中国科学院天津工業生物技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】馬 延和
(72)【発明者】
【氏名】蔡 韜
(72)【発明者】
【氏名】孫 紅兵
(72)【発明者】
【氏名】王 欽宏
(72)【発明者】
【氏名】王 国坤
(72)【発明者】
【氏名】徐 趙玉
(72)【発明者】
【氏名】朱 之光
(72)【発明者】
【氏名】馬 春玲
(72)【発明者】
【氏名】鄭 平
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲うぃ▼
(72)【発明者】
【氏名】喬 ▲じん▼
(72)【発明者】
【氏名】董 紅軍
(72)【発明者】
【氏名】郭 蔚
(72)【発明者】
【氏名】周 弘芸
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF11
4B064CA02
4B064CA06
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA10
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA41
(57)【要約】
二酸化炭素を用いてデンプンを製造する方法及び組換え微生物、並びに組換え微生物を構築する方法及び試薬を提供する。二酸化炭素を用いてデンプンを製造する方法は、二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、微生物細胞にエネルギー及び炭素源を供給するステップ(1)と、前記微生物細胞内でアップレギュレーションされたグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ及びデンプンシンターゼのうちの少なくとも一方に基づいて、前記微生物細胞内でデンプンを生成するステップ(2)と、を含む。それによって、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用することにより、二酸化炭素を効果的に固定化して、微生物細胞内でデンプンを製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を用いてデンプンを製造する方法であって、
二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、微生物細胞にエネルギー及び炭素源を供給するステップ(1)と、
前記微生物細胞内でアップレギュレーションされたグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ及びデンプンシンターゼのうちの少なくとも一方に基づいて、前記微生物細胞内でデンプンを生成するステップ(2)と、を含み、
任意選択で、前記細胞外非光エネルギーは、水素エネルギー及び電気エネルギーの少なくとも一方を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記微生物において、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用がブロックされる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)は、
前記微生物細胞に炭素源として二酸化炭素を取り込ませ、前記細胞外非光エネルギーを吸収させるステップ、及び/又は
前記細胞外非光エネルギーの還元能力を利用して、前記二酸化炭素に基づいて低炭素化合物を得、前記微生物に炭素源として前記低炭素化合物を取り込ませるステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物は、前記炭素源を利用するのに適するように改変された酵母及び細菌の少なくとも一方である、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記低炭素化合物は、1~3個の炭素原子を含有し、
任意選択で、前記低炭素化合物は、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロパノール、プロパン、プロピオンアルデヒド、アセトン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、及びグリセリンから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物は、1~3個の炭素原子を含有する前記低炭素化合物を変換可能であり、
任意選択で、前記微生物は、ジオバクターGeobacter、スポロムーサSporomusa、メタン生成菌Methanogens、酢酸生成菌Acetobacterium、ラルストニアRalstonia、クロストリジウムClostridium、ピキア酵母Pichia pastoris、ピキア・パストリス、水素細菌、クプリアビドゥス・ネカトールCupriavidus necator、カンジダ・ボイディニCandida boidinii、ハンセヌラ・ポリモルファHansenula polymorpha、メチロバクターMethylobacter、Methylococcus、ヤロウウィア・リポリティカYarrowia lipolytica、及びサッカロマイセス・セレヴィシエSaccharomyces cerevisiaeから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物は、前記二酸化炭素又は前記低炭素化合物を主な炭素源として用いる、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方は、外因性遺伝子の形で前記微生物細胞のゲノムに組み込まれており、又は
前記微生物細胞において、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方は、遊離発現ベクターに含まれており、
任意選択で、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ独立して、構成型プロモータ又は誘導型プロモータに作動可能に連結されており、
任意選択で、前記誘導型プロモータは、前記炭素源による誘導下で転写レベルを向上させるのに適している、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、いずれも誘導型プロモータによって制御される、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記構成型プロモータは、ZWF1グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、TPI1トリオースリン酸イソメラーゼプロモータ、GSH1グルタチオンシンターゼプロモータ、POR1ミトコンドリアポリンプロモータ、TKL1トランスケトラーゼプロモータ、PGD16-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、PGM1ホスホグリセリン酸ムターゼプロモータ、PKピルビン酸キナーゼプロモータ、及びGAPグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータから選択される少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記誘導型プロモータは、CAT1カタラーゼプロモータ、TAL1トランスアルドラーゼ1プロモータ、TAL2プロモータ、ALD4アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ4プロモータ、DAK1ジヒドロキシアセトンキナーゼプロモータ、FDH1ギ酸デヒドロゲナーゼプロモータ、ALDアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータ、DAS1ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ1、DAS2ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ2、AOX1アルコールオキシダーゼ1プロモータ、及びAOX2アルコールオキシダーゼ2プロモータから選択される少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用のブロックは、1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方をコードする遺伝子を突然変異させることにより行われる、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
以下から選択されるSgRNAを用いて、前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼをコードする遺伝子を突然変異させる、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
SgRNA7:gagtcgataacgatctcctt
SgRNA10:gttgttgatgtagccgtcta
SgRNA32:ggacgtgatcagggaacatg
【請求項14】
以下から選択されるSgRNAを用いて、前記グリコーゲンホスホリラーゼをコードする遺伝子を突然変異させる、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
SgRNA1-509:ggccacctccgactcaatca
SgRNA6-509:gttaataagagcgttgtcca
SgRNA10-1018:gagaagtcaaactcggtggt
【請求項15】
二酸化炭素を用いてデンプンを製造する組換え微生物であって、前記組換え微生物は、
(1)二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、エネルギー及び炭素源を取得する酵素系と、
(2)前記微生物の野生型と比べてアップレギュレーションされたデンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方と、を有し、
任意選択で、前記細胞外非光エネルギーは、水素エネルギー及び電気エネルギーの少なくとも一方を含む、ことを特徴とする組換え微生物。
【請求項16】
前記微生物の野生型と比べて、前記組換え微生物は、ダウンレギュレーションされたグルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方を有する、ことを特徴とする請求項15に記載の組換え微生物。
【請求項17】
前記微生物細胞は、炭素源として前記二酸化炭素を取り込み、前記細胞外非光エネルギーを吸収するのに適しており、及び/又は
前記微生物は、炭素源として低炭素化合物を取り込むのに適しており、前記低炭素化合物は、前記細胞外非光エネルギーの還元能力を利用して前記二酸化炭素に基づいて得られ得るものである、ことを特徴とする請求項15又は16に記載の組換え微生物。
【請求項18】
前記微生物は、前記炭素源を利用するのに適するように改変された酵母及び細菌の少なくとも一方である、ことを特徴とする請求項17に記載の組換え微生物。
【請求項19】
前記低炭素化合物は、1~3個の炭素原子を含有し、
任意選択で、前記低炭素化合物は、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロパノール、プロパン、プロピオンアルデヒド、アセトン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、及びグリセリンから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項17に記載の組換え微生物。
【請求項20】
前記組換え微生物は、1~3個の炭素原子を含有する前記低炭素化合物を変換可能であり、任意選択で、前記組換え微生物の出発菌株は、
ジオバクターGeobacter、スポロムーサSporomusa、メタン生成菌Methanogens、酢酸生成菌Acetobacterium、ラルストニアRalstonia、クロストリジウムClostridium、ピキア酵母Pichia pastoris、ピキア・パストリス、水素細菌、クプリアビドゥス・ネカトールCupriavidus necator、カンジダ・ボイディニCandida boidinii、ハンセヌラ・ポリモルファHansenula polymorpha、メチロバクターMethylobacter、Methylococcus、ヤロウウィア・リポリティカYarrowia lipolytica、及びサッカロマイセス・セレヴィシエSaccharomyces cerevisiaeから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項17に記載の組換え微生物。
【請求項21】
前記組換え微生物は、前記二酸化炭素又は前記低炭素化合物を主な炭素源として用いるのに適している、ことを特徴とする請求項17に記載の組換え微生物。
【請求項22】
前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方は、外因性遺伝子の形で前記微生物細胞のゲノムに組み込まれており、又は
前記微生物細胞において、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方は、遊離発現ベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項15に記載の組換え微生物。
【請求項23】
前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ独立して、構成型プロモータ又は誘導型プロモータに作動可能に連結されている、ことを特徴とする請求項22に記載の組換え微生物。
【請求項24】
前記誘導型プロモータは、前記炭素源による誘導下で転写レベルを向上させるのに適している、ことを特徴とする請求項23に記載の組換え微生物。
【請求項25】
前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、いずれも誘導型プロモータによって制御される、ことを特徴とする請求項23に記載の組換え微生物。
【請求項26】
前記構成型プロモータは、ZWF1グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、TPI1トリオースリン酸イソメラーゼプロモータ、GSH1グルタチオンシンターゼプロモータ、POR1ミトコンドリアポリンプロモータ、TKL1トランスケトラーゼプロモータ、PGD16-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、PGM1ホスホグリセリン酸ムターゼプロモータ、PKピルビン酸キナーゼプロモータ、及びGAPグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータから選択される少なくとも1つを含み、
前記誘導型プロモータは、CAT1カタラーゼプロモータ、TAL1トランスアルドラーゼ1プロモータ、TAL2プロモータ、ALD4アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ4プロモータ、DAK1ジヒドロキシアセトンキナーゼプロモータ、FDH1ギ酸デヒドロゲナーゼプロモータ、ALDアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータ、DAS1ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ1、DAS2ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ2、AOX1アルコールオキシダーゼ1プロモータ、及びAOX2アルコールオキシダーゼ2プロモータから選択される少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項23に記載の組換え微生物。
【請求項27】
前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用をブロックするために、前記1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼをコードするものの少なくとも一方は突然変異を持つ、ことを特徴とする請求項15に記載の組換え微生物。
【請求項28】
前記突然変異は、以下から選択されるSgRNAを用いて、前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼをコードする遺伝子に対して行われる、ことを特徴とする請求項27に記載の組換え微生物。
SgRNA7:gagtcgataacgatctcctt
SgRNA10:gttgttgatgtagccgtcta
SgRNA32:ggacgtgatcagggaacatg
【請求項29】
前記突然変異は、以下から選択されるSgRNAを用いて、前記グリコーゲンホスホリラーゼをコードする遺伝子に対して行われる、ことを特徴とする請求項27に記載の組換え微生物。
SgRNA1-509:ggccacctccgactcaatca
SgRNA6-509:gttaataagagcgttgtcca
SgRNA10-1018:gagaagtcaaactcggtggt
【請求項30】
請求項15~29に記載の微生物を構築する方法であって、
デンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方をアップレギュレーションする動作を出発微生物に行うステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項31】
グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方をダウンレギュレーションするステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、エネルギー及び炭素源を取得する酵素系を有するように前記出発微生物の代謝系を改変するステップを含み、
任意選択で、前記細胞外非光エネルギーは、水素エネルギー及び電気エネルギーの少なくとも一方を含む、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項33】
前記微生物細胞は、炭素源として前記二酸化炭素を取り込み、前記細胞外非光エネルギーを吸収するのに適しており、及び/又は
前記微生物は、炭素源として低炭素化合物を取り込むのに適しており、前記低炭素化合物は、前記細胞外非光エネルギーの還元能力を利用して前記二酸化炭素に基づいて得られ得るものであるように、前記出発微生物を改変する、ことを特徴とする請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記出発微生物は、前記炭素源を利用するのに適するように改変された酵母及び細菌の少なくとも一方である、ことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記低炭素化合物は、1~3個の炭素原子を含有し、
任意選択で、前記低炭素化合物は、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロパノール、プロパン、プロピオンアルデヒド、アセトン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、及びグリセリンから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記組換え微生物は、1~3個の炭素原子を含有する前記低炭素化合物を変換可能であり、任意選択で、前記出発微生物は、
ジオバクターGeobacter、スポロムーサSporomusa、メタン生成菌Methanogens、酢酸生成菌Acetobacterium、ラルストニアRalstonia、クロストリジウムClostridium、ピキア酵母Pichia pastoris、ピキア・パストリス、水素細菌、クプリアビドゥス・ネカトールCupriavidus necator、カンジダ・ボイディニCandida boidinii、ハンセヌラ・ポリモルファHansenula polymorpha、メチロバクターMethylobacter、Methylococcus、ヤロウウィア・リポリティカYarrowia lipolytica、及びサッカロマイセス・セレヴィシエSaccharomyces cerevisiaeから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項37】
前記組換え微生物は、前記二酸化炭素又は前記低炭素化合物を主な炭素源として用いるのに適している、ことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方は、外因性遺伝子の形で前記微生物細胞のゲノムに組み込まれており、又は
前記微生物細胞において、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方は、遊離発現ベクターに含まれている、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ独立して、構成型プロモータ又は誘導型プロモータに作動可能に連結されている、ことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記誘導型プロモータは、前記炭素源による誘導下で転写レベルを向上させるのに適している、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、いずれも誘導型プロモータによって制御される、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記構成型プロモータは、ZWF1グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、TPI1トリオースリン酸イソメラーゼプロモータ、GSH1グルタチオンシンターゼプロモータ、POR1ミトコンドリアポリンプロモータ、TKL1トランスケトラーゼプロモータ、PGD16-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、PGM1ホスホグリセリン酸ムターゼプロモータ、PKピルビン酸キナーゼプロモータ、及びGAPグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータから選択される少なくとも1つを含み、
前記誘導型プロモータは、CAT1カタラーゼプロモータ、TAL1トランスアルドラーゼ1プロモータ、TAL2プロモータ、ALD4アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ4プロモータ、DAK1ジヒドロキシアセトンキナーゼプロモータ、FDH1ギ酸デヒドロゲナーゼプロモータ、ALDアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータ、DAS1ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ1、DAS2ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ2、AOX1アルコールオキシダーゼ1プロモータ、及びAOX2アルコールオキシダーゼ2プロモータから選択される少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
ダウンレギュレーショングルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方は、前記1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼをコードするものの少なくとも一方が突然変異を有することによって、前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用をブロックする、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項44】
前記突然変異は、以下から選択されるSgRNAを用いて前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼをコードする遺伝子に対して行われる、ことを特徴とする請求項43に記載の方法。
SgRNA7:gagtcgataacgatctcctt
SgRNA10:gttgttgatgtagccgtcta
SgRNA32:ggacgtgatcagggaacatg
【請求項45】
前記突然変異は、以下から選択されるSgRNAを用いて、前記グリコーゲンホスホリラーゼをコードする遺伝子に対して行われる、ことを特徴とする請求項43に記載の方法。
SgRNA1-509:ggccacctccgactcaatca
SgRNA6-509:gttaataagagcgttgtcca
SgRNA10-1018:gagaagtcaaactcggtggt
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物技術分野に属し、具体的には、二酸化炭素を用いてデンプンを製造する方法及び組換え微生物、組換え微生物を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプンは、食品中の最も重要な栄養素であり、世界のカロリーの80%以上を供給しており、世界で毎年生産される約20億トンの穀物食料のうち、12億~14億トンがデンプンである。現在でもデンプンを生産するには農作物栽培が唯一の方法である。世界の食料生産は、土地の38%と淡水資源の70%を消費し、毎年約2億トンの化学肥料と300万トンの農薬を消費する。世界人口の増加に伴い、世界の食料需要は2050年までに70%以上増加すると予測されており、現在の農作物栽培方法では増大する食料需要に応えるのは困難であり、農作物栽培に代わるデンプン生産方法の開発は非常に重要である。
【0003】
二酸化炭素の過剰な排出は、地球温暖化や海水の酸性化を引き起こし、環境に取り返しのつかないダメージを与える。産業革命以来、大気中の二酸化炭素濃度は277ppmから400ppmまで増加し、これは1兆トンの純増加に相当し、年間3ppmの割合で増加している。植物などの光合成生物は、光エネルギーを利用して年間約1,000億トンの二酸化炭素を変換・固定化しているため、地球自体の炭素循環システムではそれほど多くの二酸化炭素を消化することができない。二酸化炭素の迅速な生物学的変換を達成するには、天然光合成の限界を突破し、より効率的な人工光合成システムを構築し、生物学的炭素隔離効率を大幅に向上させることが必要とされる。
【0004】
したがって、カーボンニュートラル戦略を支えるために二酸化炭素をいかに科学的に利用するか、また一方ではデンプンの生物学的工業合成をいかに実現して「農業産業化」を実現するかは、早急に解決すべき課題となっている。
【0005】
光合成生物の中でも微細藻類やシアノバクテリアは、光エネルギーによって固定化された二酸化炭素を直接利用して成長することができ、その成長速度が速く、エネルギー利用効率が高いという利点から、細胞による炭素隔離を行うための優れたシャーシセルとなっている。デンプンを生産するための藻類の使用に関する報告(Improving carbohydrate and starch accumulation in Chlorella sp. AE10 by a noveltwo-stage process with cell dilution;JP07059557A, NEW MICROALGAE)があるが、藻類自体の成長特性により、太陽エネルギーを得るには依然として広い栽培面積が必要である。また、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Recreating the synthesis of starch granules in yeast)や大腸菌などでのデンプン合成の研究を報告した論文もあるが、原料が農産デンプン又はその加水分解グルコースであるため、本願の目的には適合しない。
【0006】
したがって、現在のデンプン製造手段には改良の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は、関連技術における技術的課題の少なくとも1つをある程度解決することを目的とする。それによって、本願は、非光エネルギーを利用して二酸化炭素を固定化することによってデンプンを製造する手段を提案した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1態様では、本願は、二酸化炭素を用いてデンプンを製造する方法を提案する。本願のいくつかの実施例によれば、該方法は、(1)二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、微生物細胞にエネルギー及び炭素源を供給するステップと、(2)前記微生物細胞内でアップレギュレーションされたグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ及びデンプンシンターゼのうちの少なくとも一方に基づいて、前記微生物細胞内でデンプンを生成するステップと、を含む。よって、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用することにより、二酸化炭素を効果的に固定化して、微生物細胞内でデンプンを製造することができ、それによって、二酸化炭素を科学的に利用してカーボンニュートラル戦略を推進することを実現し、デンプンの生物学的工業合成に利用して「農業産業化」を実現することができる。
【0009】
本願の第2態様では、本願は、二酸化炭素を用いてデンプンを製造する組換え微生物を提案する。本願の実施例によれば、前記組換え微生物は、(1)二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、エネルギー及び炭素源を取得する酵素系と、(2)前記微生物の野生型と比べてアップレギュレーションされたデンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方と、を有する。よって、該組換え微生物は、第1態様で提案したデンプンを製造する方法を効果的に実施することができ、それによって、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用することにより、二酸化炭素を効果的に固定化して、微生物細胞内でデンプンを製造することができ、それによって、二酸化炭素を科学的に利用してカーボンニュートラル戦略を推進することを実現し、デンプンの生物学的工業合成に利用して「農業産業化」を実現することができる。
【0010】
当業者が理解できるように、第1態様においてデンプンを製造する方法について記載される特徴及び利点は、この組換え微生物も同様であるので、ここでは詳しく説明しない。
【0011】
本願の第3態様では、本願は、デンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方をアップレギュレーションする動作を出発微生物に行うステップを含む、第2態様に記載の微生物を構築する方法を提案する。よって、前記第2態様に記載の組換え微生物を効果的に製造することができ、これにより、該組換え微生物は、第1態様で提案したデンプンを製造する方法を効果的に実施することができ、それによって、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用することにより、二酸化炭素を効果的に固定化して、微生物細胞内でデンプンを製造することができ、それによって、二酸化炭素を科学的に利用してカーボンニュートラル戦略を推進することを実現し、デンプンの生物学的工業合成に利用して「農業産業化」を実現することができる。
【0012】
当業者が理解できるように、他の態様においてデンプンを製造する方法及び組換え微生物について記載される特徴及び利点は、この組換え微生物を構築する方法も同様であるので、ここでは詳しく説明しない。
【0013】
本願の追加の態様及び利点は、以下の説明において部分的に示され、部分的には以下の説明から明らかになるか、又は本願の実践を通して理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本願の上記の及び/又は追加の態様及び利点は、以下の添付図面を参照して実施例を説明することにより明らかになる。
【
図1】本発明の一実施例による、様々なSgRNAを用いた場合のGA遺伝子への破壊効率を示す。
【
図2】本発明の一実施例による、様々なSgRNAを用いた場合のGP遺伝子への破壊効率を示す。
【
図3】本発明の一実施例による、様々なプロモータ組み合わせを含有するGlgA及び/又はGlgC組換え菌株のデンプン産生量を示す。
【
図4】本発明の一実施例による、pHis-EcGlgA-EcGlgC組換え菌株を基にしてGAを破壊したときのデンプン産生効果を示す。
【
図5】本発明の一実施例による、pHis-EcGlgA-EcGlgC及びGAの破壊に加えてGPを破壊したときのデンプン産生効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面において例示的に示される本願の実施例について詳細に説明する。図面を参照して以下に説明する実施例は、本願を説明するために意図された例示的なものであり、本願を限定するものとは理解されない。
【0016】
定義
特に説明がない限り、本明細書で使用される用語又は表現は、以下の意味を有する。
【0017】
本明細書で使用される用語「組換え微生物」とは、内因性核酸の配列若しくは発現が変化するように遺伝的に修飾又は遺伝的に改変された、又は外因性核酸を発現する微生物(外因性核酸は、ベクターに含まれていてもよく、微生物のゲノムに組み込まれていてもよい。)のような微生物を指す。ここで、いわゆる「改変」とは、遺伝子の発現、又は1つ又は複数のポリペプチド又はポリペプチドサブユニットをコードするRNA分子レベル又は同等のRNA分子レベル、又は1つ又は複数のポリペプチド又はポリペプチドサブユニットの活性が、変化がない場合に観察されるよりも発現、レベル又は活性が大きく又は小さくなるようにアップレギュレーション又はダウンレギュレーションすることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語「出発菌株(又は出発微生物)」とは、組換え微生物を得るために遺伝的に修飾又は遺伝的に改変され得る菌株を指す。例えば、出発菌株又は微生物は、野生型菌株であってもよいし、1つ又は複数の遺伝的修飾又は遺伝的改変が事前に行われており、野生型菌株と比較して核酸改変が行われている菌株であってもよい。
【0019】
本明細書で使用される用語「外因性」とは、出発菌株中に本来存在しない物質、又は出発菌株中に存在しない核酸、又は出発菌株中の対応する遺伝子配列と比較して突然変異が存在する核酸など、出発菌株中の対応する物質と区別される物質を意味する。本願の実施例によれば、「外因性核酸」とは、出発菌株と同じ種からの核酸を含み、異種核酸(すなわち、出発菌株とは異なる種からの核酸)も含む。
【0020】
本明細書で使用される用語「核酸」は、本明細書では用語「ポリヌクレオチド」と交換して使用することができ、任意の長さの一本鎖又は二本鎖、センス又はアンチセンスのデオキシリボ核酸(DNA)を含むがこれらに限定されない、2種以上のモノマー(ヌクレオチド、ヌクレオシド又はそれらの類似体を含む)からなる有機ポリマーを意味し、センス又はアンチセンスのリボ核酸(RNA)は、siRNAを含む。用語「ヌクレオチド」とは、プリン塩基又はピリミジン塩基に結合し、リン酸基に結合したリボース又はデオキシリボースからなる複数種の化合物のいずれかを意味し、これらは核酸の基本構造単位である。用語「ヌクレオシド」は、デオキシリボース又はリボースと組み合わされたプリン塩基又はピリミジン塩基(グアノシン又はアデノシンなど)からなる化合物であり、核酸中に存在する。
【0021】
本明細書に記載された「核酸」の意味には「遺伝子」が含まれ、本明細書に記載された核酸は「ベクター」又は「プラスミド」も含むことが理解されるべきである。
【0022】
本明細書で使用される用語「遺伝子」は、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを意味し、1つ又は複数のタンパク質又は酵素の全部又は一部を含み、例えば、どのような条件下で遺伝子が発現するかを決定するプロモータ配列のような調節性(非転写性)DNA配列を含んでもよい。遺伝子の転写領域は、非翻訳領域(イントロン、非翻訳領域(5’UTR及び3’UTR)を含む。)及びコード配列を含んでもよい。
【0023】
本明細書で使用される用語「アップレギュレーション」とは、特定の機能性タンパク質の活性が出発菌株の対応する活性と比較して上昇することを意味し、それは、この特定の機能性タンパク質の微生物細胞内での発現量を増加させることによって(例えば、この機能性タンパク質をコードする外因性核酸を追加的に導入することによって、又は、この機能性タンパク質のコード核酸を調節する調節要素、プロモータなどによって)、又は、この機能性タンパク質のアミノ酸配列を改変することによって、その生物学的活性を向上させることができる。
【0024】
本明細書で使用される用語「ダウンレギュレーション」とは、特定の機能性タンパク質の活性が、出発菌株の対応する活性と比較して低下することを意味し、それは、この特定の機能性タンパク質の微生物細胞内での発現量を低下させることによって(例えば、この機能性タンパク質をコードする核酸をノックアウトすることによって、又は、この機能性タンパク質のコード核酸を調節する調節要素、例えばプロモータなどによって)、又は、この機能性タンパク質のアミノ酸配列を改変することによって、その生物活性を低下させることができる。
【0025】
本明細書で記載される「アップレギュレーション」又は「ダウンレギュレーション」とは、例えば、安定な永続的トランスジェニック発現、コード核酸又は核酸の対応する内在性遺伝子の安定な突然変異、又はポリペプチドを付与するか又はポリペプチドの発現のために使用される遺伝子の発現又は挙動の制御などのために、構成型のものであってもよく、例えば、瞬間形質点火又は調節物質(例えば、アゴニスト又はアンタゴニスト)の一時的な添加などのめに、瞬間的なものであってもよく、核酸分子、または誘導性プロモータの制御下で核酸分子を担持する誘導性構築物が形質転換され、誘導物質が添加されるなど、誘導可能型であってもよい。
【0026】
本明細書で使用される用語「発現」は、コード遺伝子断片又は遺伝子の転写及び/又は翻訳を意味する。通常、得られる産物はmRNA又はタンパク質である。しかしながら、発現産物は、アンチセンス鎖核酸、tRNA、snRNA、rRNA、RNAi、siRNA、リボザイムなどの機能性RNAを含むこともできる。表現は、全体的、局所的、又は瞬間的であってもよい。
【0027】
本明細書では、他の外因性核酸の追加導入について、外因性核酸を微生物ゲノムに組み込み、機能させることができるようにすることができ、例えば、外因性核酸(遺伝子)を組み込みベクターに挿入することにより、組み込みベクターと微生物ゲノムとが相同的に組み換えられるようにして、外因性核酸(遺伝子)を微生物ゲノムに組み込む。また、外因性核酸を微生物のゲノム外に遊離させ、例えば発現ベクターに挿入することも可能であり、これによって、外因性核酸をゲノム上に組み込むことなく発現することができ、微生物の増幅中にプラスミド等の発現ベクターが失われないように維持することを容易にするために、薬剤耐性遺伝子等のスクリーニング遺伝子を発現ベクター上に配置することができ、これにより、微生物の培地にペニシリンやカナマイシン等の対応する薬剤を添加することにより、微生物が増幅中に対応する発現ベクターが失われないようにすることができる。
【0028】
本明細書で使用される用語「ブロック」とは、元の遺伝子が修飾や改変された後、元の機能を発揮しなくなった、あるいは元の機能がダウンレギュレーションされたことを指す。
【0029】
本明細書で使用される用語「プロモータ」とは、RNAポリメラーゼが認識し、結合し、転写を開始するDNA配列のセグメントを指し、RNAポリメラーゼの特異的な結合及び転写開始に必要な保存配列を含み、その多くは構造遺伝子の転写開始点の上流に位置し、通常プロモータ自体は転写されない。プロモータは、遺伝子の発現を制御する調節配列のうち、遺伝子の転写開始部位の上流(DNAのセンス鎖の5′方向に向かう)に位置し、長さは約100~1000塩基対である。通常微生物遺伝子工学に用いられるプロモータは、その作用方式と機能によって、構成型プロモータ(多数又は全ての組織において持続的な活性を保持する)、特異型プロモータ(組織特異性又は発育時期の特異性)、及び誘導型プロモータ(外界の化学又は物理信号によって調節される)の3種類に分けられる。
【0030】
本明細書で使用される用語「プロモータに作動的に連結される」とは、プロモータに連結された核酸分子がプロモータによって制御され得ることを意味する。
【0031】
本明細書で使用される用語「約」は、数値が5%の範囲内で上下に変動することを意味する。例えば、数値が約100であるということは、その数値が100であっても上下に5変動することを意味する。
【0032】
二酸化炭素を用いてデンプンを製造する方法
本願の第1態様では、本願は、二酸化炭素を用いてデンプンを製造する方法を提案する。本願のいくつかの実施例によれば、該方法は、二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、微生物細胞にエネルギー及び炭素源を供給するステップ(1)と、前記微生物細胞内でアップレギュレーションされたグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ及びデンプンシンターゼのうちの少なくとも一方に基づいて、前記微生物細胞内でデンプンを生成するステップと、を含む。よって、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用することにより、二酸化炭素を効果的に固定化して、微生物細胞内でデンプンを製造することができ、それによって、二酸化炭素を科学的に利用してカーボンニュートラル戦略を推進することを実現し、デンプンの生物学的工業合成に利用して「農業産業化」を実現することができる。
【0033】
以下、本願の実施例によって、上記のデンプンの方法について詳細に説明する。
【0034】
なお、本明細書で使用される「細胞外非光エネルギー」とは、熱エネルギー、電気エネルギー、化学エネルギー(特に水素エネルギー)、位置エネルギー、磁気エネルギーなど、光エネルギーとは異なり細胞外に存在し微生物細胞が利用できるエネルギー形態を指す。本発明のいくつかの実施例によれば、採用され得る非光エネルギーは、水素エネルギー及び電気エネルギーの少なくとも一方を含むが、これらに限定されない。これにより、天然光合成の限界を突破し、より効率的な人工光合成システムを構築し、生物学的炭素隔離効率を大幅に向上させ、二酸化炭素の迅速な生物転化を実現することができる。本発明の実施例によれば、水素エネルギーが水素の形態で供給され、電気エネルギーが電流の形態で供給されるなど、水素エネルギー及び電気エネルギーの供給方法は特に限定されない。
【0035】
なお、水素エネルギーや電気エネルギー等の細胞外非光エネルギーのエネルギーを利用して二酸化炭素を固定化する方法は、特に限定されるものではなく、微生物の培養環境に水素ガスを導入する等の水素エネルギーを微生物に直接摂取させたり、微生物の培養環境に電流を導入する等の電気エネルギーを微生物に直接摂取させたりすることが可能である。また、細胞外非光エネルギー、例えば水素エネルギー及び電気エネルギーの少なくとも一方を、細胞外で二酸化炭素と化学反応させ、さらに、微生物に化学反応の反応生成物を取り込ませるようにしてもよい。本願のいくつかの実施例によれば、ステップ(1)は、前記微生物細胞に炭素源として前記二酸化炭素を取り込ませ、前記細胞外非光エネルギーを吸収させるステップ、及び/又は、前記細胞外非光エネルギーの還元能力を利用して、前記二酸化炭素に基づいて低炭素化合物を得、前記微生物に炭素源として前記低炭素化合物を取り込ませるステップをさらに含んでもよい。
【0036】
なお、本明細書で使用される用語「炭素源」は、炭素元素を含み、微生物の成長・増殖に利用され得る物質を意味し、当業者に公知のように、異なる微生物が異なる炭素源を利用することができ、微生物の成長・代謝に対する炭素源の役割は、主に細胞の炭素骨格、細胞の生命活動に必要なエネルギー、合成産物の炭素骨格を提供することであり、炭素源は、微生物培地又は細胞培地の作製に重要な役割を果たし、微生物又は細胞の正常な成長及び分裂のための物質的基盤を提供する。したがって、後述する「炭素源」とは、二酸化炭素を指してもよいし、二酸化炭素を利用して電気エネルギー及び/又は水素エネルギーで合成した低炭素化合物を指してもよい。本願のいくつかの実施例によれば、前記低炭素化合物は、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロパノール、プロパン、プロピオンアルデヒド、アセトン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、及びグリセリンから選択される少なくとも1つである。これにより、これらの低炭素化合物を炭素源、特に唯一の炭素源として採用することができる微生物を用いてデンプンの合成を実現することができる。デンプンの製造効率をさらに向上させることができる。なお、ここで使用される用語「唯一の炭素源」は、広義に理解されるべきであり、例えば誘導型プロモータを活性化するために適切な炭素含有成分を添加することができ、例えば、AOX1プロモータを活性化するために少量のメタノールを添加することができるなど、微生物の関連活性を活性化するために、培養中に他の炭素含有材料を添加することができる。もちろん、当業者であれば、微生物の成長速度等を速めるために、窒素源等の他の従来の栄養物質を微生物に供給することもできることを理解することができる。ここではこれ以上言及しない。
【0037】
また、本願のいくつかの実施例によれば、前記微生物は、これらの炭素源を利用して新陳代謝を行うことができるように改変された酵母及び細菌の少なくとも一方である。例えば、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用して二酸化炭素を固定化できるように、大腸菌又は酵母を改変してもよい。例えば、電気エネルギーを利用できない微生物、例えば大腸菌に対しては、電気エネルギーを利用できる他の微生物の関連酵素系を大腸菌に形質導入して発現させることで、大腸菌が関連する炭素源やエネルギーを利用できるようにすることができる。したがって、本願の実施例によれば、大腸菌を二酸化炭素から全てのバイオマス炭素を生成するように形質転換することができ、工業用酵母であるピキア酵母を従属栄養生物から二酸化炭素に依存して成長する独立栄養生物に形質転換することができ、例えば、大腸菌をメタノールのみで成長する合成メチル栄養菌に形質転換することができる。具体的には、炭素隔離のためのカルビン回路に関連する酵素系を大腸菌又はピキア酵母などの酵母菌種に形質導入してもよく、ピキア酵母のXuMP経路に関連する酵素系を大腸菌に形質導入してもよい。
【0038】
当業者は、公知のいずれかの方法により、二酸化炭素に基づいて水素又は電流を用いて、1~3個の炭素原子を含むがこれらに限定されない低炭素化合物を合成することができ、例えば、前記低炭素化合物は、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロパノール、プロパン、プロピオンアルデヒド、アセトン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、及びグリセリンから選択される少なくとも1つであってもよい。例えば、水素ガスは、強い還元能力を持ち、適切な反応条件下で二酸化炭素を還元することで一酸化炭素や炭化水素比が制御され得る炭化水素を得ることができる。本発明の実施例によれば、水素ガスは、太陽エネルギーによる水の分解によって得られ、また、非限定的な例として、バイメタル固溶体酸化物(ZnO-ZrO2)を触媒として二酸化炭素と水素ガスを用いることにより、二酸化炭素を高選択的で高安定に水素化してメタノールを合成することができる。
【0039】
理解を容易にするために、以下、本願に利用され得るいくつかの微生物のタイプを示す。本願のいくつかの実施例によれば、電気エネルギーの吸収に適する微生物としては、ジオバクターGeobacter、スポロムーサSporomusa、メタン生成菌Methanogens、酢酸生成菌Acetobacteriumなどの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、酢酸を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ヤロウウィア・リポリティカを含むが、これらに限定されず、水素エネルギーを吸収するのに適する微生物としては、水素細菌、ラルストニアRalstonia、及びクロストリジウムClostridiumの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、一酸化炭素を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、クロストリジウムClostridium類を含むが、これらに限定されず、ギ酸を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ラルストニアRalstoniaを含むが、これらに限定されず、メタノールを炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ピキア酵母Pichia pastoris、カンジダ・ボイディニCandida boidinii、ハンセヌラ・ポリモルファHansenula polymorphaの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、メタンを炭素源として取り込むのに適する微生物としては、メチロバクターMethylobacter、Methylococcusを含むが、これらに限定されず、又はエタノールを炭素源としてとして取り込むのに適する微生物としては、サッカロマイセス・セレヴィシエSaccharomyces cerevisiaeを含むが、これらに限定されない。それにより、デンプンの製造効率をさらに向上させることができる。
【0040】
さらに、微生物は、二酸化炭素や二酸化炭素を炭素源として得られる低炭素化合物を取り込み、その細胞内の代謝経路を通じて、微生物の成長に必要な糖類、タンパク質、繊維、グルコース、酵素などの物質を合成することができる。ここで述べた代謝経路は、野生型微生物自体が持つこともあれば、遺伝的改変により外因性遺伝子を微生物の細胞に導入することによって発現させることもある。本発明のいくつかの実施例によれば、二酸化炭素は、複数の経路を通じてその後のデンプン合成のための1-リン酸-グルコースなどの中間体に変換することができ、カルビン回路、3-ヒドロキシプロピオン酸二重サイクル、Wood-Ljungdahl経路、還元的(逆)TCAサイクル、ジカルボン酸/4-ヒドロキシ酪酸サイクル、3-ヒドロキシプロピオン酸/4-ヒドロキシ酪酸サイクル、及び2つの人工経路CETCHと還元型グリシン経路の6つの炭素隔離経路が自然界に発見され、これらによりC2又はC3の中間体が得られる。
【0041】
本願のいくつかの実施例によれば、前記微生物は、前記二酸化炭素又は前記低炭素化合物を主な炭素源として用いる。
【0042】
本願のいくつかの実施例によれば、二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、微生物細胞にエネルギー及び炭素源を供給した後、アップレギュレーションされたグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼGlgC及びデンプンシンターゼGlgAを用いて微生物細胞内で1-リン酸-グルコース(G-1-P)を触媒することができ、最終生成物としてデンプンを得ることができる。同一の微生物細胞ではデンプンを製造することができるため、生産効率を向上させ、生産コストを削減させる。
【0043】
本願の発明者らは、研究を行った結果、野生型微生物又は出発菌種にデンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼが存在しない場合、外因性遺伝子を導入することによって組換え微生物に関連する酵素を発現させることができることを見出した。出発菌種又は野生型微生物においてデンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼが発現されていた場合にも、外因性デンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼのコード遺伝子を導入するか、又はそのプロモータや他の調節要素を変えることによって発現効率を高めることもできる。言い換えれば、本願のいくつかの実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方は、前記微生物の野生型と比べて発現がアップレギュレーションされている。よって、出発菌株よりも、デンプンの製造効率をさらに向上させることができる。本願のいくつかの実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ、外因性遺伝子配列で発現されている。それによって、出発菌株よりも、デンプンの製造効率をさらに向上させることができる。
【0044】
本願の実施例によれば、使用されるデンプンシンターゼは、以下のアミノ酸配列を有する。
【0045】
MQVLHVCSEMFPLLKTGGLADVIGALPAAQIADGVDARVLLPAFPDIRRGVTDAQVVSRRDTFAGHITLLFGHYNGVGIYLIDAPHLYDRPGSPYHDTNLFAYTDNVLRFALLGWVGAEMASGLDPFWRPDVVHAHDWHAGLAPAYLAARGRPAKSVFTVHNLAYQGMFYAHHMNDIQLPWSFFNIHGLEFNGQISFLKAGLYYADHITAVSPTYAREITEPQFAYGMEGLLQQRHREGRLSGVLNGVDEKIWSPETDLLLASRYTRDTLEDKAENKRQLQIAMGLKVDDKVPLFAVVSRLTSQKGLDLVLEALPGLLEQGGQLALLGAGDPVLQEGFLAAAAEYPGQVGVQIGYHEAFSHRIMGGADVILVPSRFEPCGLTQLYGLKYGTLPLVRRTGGLADTVSDCSLENLADGVASGFVFEDSNAWSLLRAIRRAFVLWSRPSLWRFVQRQAMAMDFSWQVAAKSYRELYYRLK(SEQ ID NO:1)
本願の実施例によれば、デンプンシンターゼの遺伝子配列は、酵母、特にピキア酵母における発現効率が他の塩基配列よりも明らかに高い、以下の塩基配列であってもよい。
【0046】
ATGCAAGTTTTGCATGTTTGTTCTGAAATGTTTCCATTGTTGAAAACGGGTGGTTTGGCGGACGTCATTGGTGCTTTGCCTGCTGCTCAAATTGCTGATGGGGTGGATGCTAGAGTTTTGTTGCCTGCTTTTCCTGATATTAGAAGAGGTGTTACTGATGCTCAAGTTGTATCGAGAAGGGATACTTTTGCTGGTCATATTACTTTGTTGTTTGGTCATTATAATGGTGTTGGTATTTATTTGATTGATGCTCCACATTTGTATGATAGACCTGGTTCTCCATATCATGATACTAATTTGTTTGCTTATACTGATAATGTTTTGAGATTTGCTTTGCTCGGATGGGTTGGTGCTGAAATGGCTTCTGGTTTGGATCCATTTTGGAGACCTGATGTTGTTCATGCTCATGATTGGCATGCTGGTTTGGCTCCTGCTTATTTGGCTGCTAGAGGTAGACCTGCTAAATCTGTTTTTACTGTTCATAATTTGGCTTATCAAGGTATGTTTTATGCTCATCACATGAACGATATCCAATTGCCATGGTCTTTCTTTAACATTCACGGTTTGGAATTTAACGGTCAGATTTCTTTTTTGAAAGCTGGTTTGTATTATGCTGATCATATTACTGCTGTTTCTCCAACTTATGCTAGAGAAATTACTGAACCACAATTTGCTTATGGTATGGAAGGTTTGTTGCAACAAAGACATAGAGAAGGTAGATTGTCTGGCGTTTTGAATGGTGTTGATGAGAAAATTTGGTCTCCTGAAACTGATTTGTTGTTGGCTTCTAGATATACTAGAGATACTTTGGAAGATAAAGCTGAAAATAAAAGACAATTGCAAATTGCTATGGGTTTGAAAGTTGATGATAAAGTTCCATTGTTTGCTGTCGTCTCTAGGTTAACTTCTCAAAAAGGTTTGGATTTGGTTTTGGAAGCTTTGCCTGGTTTGTTGGAACAAGGTGGTCAATTGGCTTTGTTGGGGGCTGGTGATCCTGTTTTGCAAGAAGGTTTTTTGGCTGCTGCTGCTGAATATCCTGGTCAAGTTGGTGTTCAAATTGGTTATCATGAAGCTTTTTCTCATAGAATTATGGGTGGTGCAGACGTTATTTTGGTGCCATCTAGATTTGAACCATGTGGTTTGACTCAATTGTATGGTTTGAAATATGGTACTTTGCCATTGGTTAGAAGAACTGGTGGTTTGGCTGACACTGTTTCTGATTGTTCTTTGGAAAATTTGGCTGATGGCGTTGCGTCTGGTTTTGTTTTTGAAGATTCTAATGCTTGGTCTTTGTTGAGAGCTATTAGAAGAGCTTTTGTTTTGTGGTCTAGGCCGTCTTTGTGGAGATTTGTTCAAAGACAAGCTATGGCTATGGATTTTTCTTGGCAAGTTGCTGCTAAATCTTATAGAGAATTGTATTATAGATTGAAATAA(SEQ ID NO:2)
本願の実施例によれば、グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は以下の通りである。
【0047】
MVSLEKNDHLMLARQLPLKSVALILAGGRGTRLKDLTNKRAKPAVHFGGKFRIIDFALSNCINSGIRRMGVITQYQSHTLVQHIQRGWSFFNEEMNEFVDLLPAQQRMKGENWYRGTADAVTQNLDIIRRYKAEYVVILAGDHIYKQDYSRMLIDHVEKGARCTVACMPVPIEEASAFGVMAVDENDKIIEFVEKPANPPSMPNDPSKSLASMGIYVFDADYLYELLEEDDRDENSSHDFGKDLIPKITEAGLAYAHPFPLSCVQSDPDAEPYWRDVGTLEAYWKANLDLASVVPELDMYDRNWPIRTYNESLPPAKFVQDRSGSHGMTLNSLVSGGCVISGSVVVQSVLFSRVRVNSFCNIDSAVLLPEVWVGRSCRLRRCVIDRACVIPEGMVIGENAEEDARRFYRSEEGIVLVTREMLRKLGHKQER(SEQ ID NO:3)
グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの遺伝子配列は、酵母、特にピキア酵母における発現効率が他の塩基配列よりも明らかに高い、以下の塩基配列であってもよい。
【0048】
ATGGTTTCTTTGGAAAAAAATGATCATTTGATGTTGGCTAGACAATTGCCATTGAAATCTGTTGCTTTGATCTTGGCTGGTGGTAGAGGTACTAGATTGAAAGATTTGACTAATAAAAGAGCTAAACCTGCTGTACATTTTGGTGGTAAATTTAGAATAATAGATTTTGCTCTGTCTAACTGCATTAATTCTGGTATTAGAAGAATGGGTGTTATTACTCAATATCAATCTCATACTTTGGTGCAACATATTCAAAGAGGATGGTCATTCTTTAATGAAGAAATGAATGAATTTGTTGATTTGTTGCCTGCTCAACAAAGAATGAAAGGTGAAAATTGGTATAGAGGTACTGCTGATGCTGTTACTCAAAATTTGGATATTATTAGAAGATATAAAGCTGAGTATGTTGTTATATTGGCTGGGGATCATATTTACAAACAAGATTATTCTAGAATGTTGATTGATCATGTTGAAAAAGGTGCTAGATGTACTGTTGCTTGTATGCCTGTTCCAATTGAAGAAGCTTCTGCTTTTGGTGTTATGGCTGTTGATGAAAATGATAAAATTATTGAATTTGTTGAAAAACCTGCTAATCCACCATCTATGCCAAATGATCCATCTAAATCTTTGGCTTCTATGGGTATTTATGTTTTTGATGCTGATTATTTGTATGAATTGTTGGAGGAGGATGATAGAGATGAAAACTCATCTCATGATTTTGGTAAAGATTTGATTCCAAAAATTACTGAAGCTGGTTTGGCTTATGCTCATCCATTTCCATTGTCTTGTGTTCAATCTGATCCTGATGCTGAACCATATTGGAGAGATGTTGGTACTTTGGAAGCTTATTGGAAAGCTAATTTGGATTTGGCTTCTGTTGTTGATGAATTGGATATGTATGATAGAAATTGGCCAATTAGAACTTATAATGAATCTTTGCCACCTGCTAAATTTGTTCAAGATAGATCTGGTTCTCATGGTATGACTTTAAATTCTTTGGTTTCTGATGGTTGTGTTATTTCTGGTTCTGTGGTTGTGCAAAGTGTTTTGTTTTCTAGAGTTAGAGTTAATTCTTTTTGTAATATTGATTCTGCTGTTTTGTTGCCTGAAGTTTGGGTTGGTAGATCTTGTAGATTGAGAAGATGTGTTATTGATAGAGCTTGTGTTATTCCTGAAGGTATGGTTATTGGTGAAAATGCTGAAGAAGATGCTAGAAGATTTTATAGATCTGAAGAAGGTATTGTTTTGGTTACTAGAGAAATGTTGAGAAAATTGGGTCATAAACAAGAAAGATAA(SEQ ID NO:4)
本願のいくつかの実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ独立して、構成型プロモータ又は誘導型プロモータに作動可能に連結されている。それによって、デンプンの製造効率をさらに向上させ、デンプンの製造を制御可能にすることができる。
【0049】
本願のいくつかの実施例によれば、前記誘導型プロモータは、前記炭素源による誘導下で転写レベルを向上させるのに適している。本願のいくつかの実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、いずれも誘導型プロモータによって制御される。それによって、デンプンの製造効率をさらに向上させることができる。
【0050】
本願のいくつかの実施例によれば、前記構成型プロモータは、ZWF1、glucose-6-phosphate 1-dehydrogenase、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、TPI1、triose phosphate isomerase、トリオースリン酸イソメラーゼプロモータ、GSH1、glutathione synthetase、グルタチオンシンターゼプロモータ、POR1、mitochondrial porin、ミトコンドリアポリンプロモータ、TKL1、transketolase、トランスケトラーゼプロモータ、PGD1、6-phosphogluconate dehydrogenase、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、PGM1、phosphoglycerate mutase、ホスホグリセリン酸ムターゼプロモータ、PK、pyruvate kinase、ピルビン酸キナーゼプロモータ、及びGAP glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータから選択される少なくとも1つを含む。
【0051】
本願のいくつかの実施例によれば、前記誘導型プロモータは、CAT1:catalase、カタラーゼプロモータ、TAL1:transaldolase、トランスアルドラーゼ1プロモータ、TAL2:transaldolase、トランスアルドラーゼ2プロモータ、ALD4:mitochondrial aldehyde dehydrogenase、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ4プロモータ、DAK1:dihydroxyacetone kinase、ジヒドロキシアセトンキナーゼプロモータ、FDH1:formate dehydrogenase、ギ酸デヒドロゲナーゼプロモータ、ALD:mitochondrial aldehyde dehydrogenase、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータ、DAS1:dihydroxyacetone synthase 1、ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ1、DAS2:dihydroxyacetone synthase 2、ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ2、AOX1:alcohol oxidase 1、アルコールオキシダーゼ1プロモータ、及びAOX2:alcohol oxidase 2、アルコールオキシダーゼ2プロモータから選択される少なくとも1つを含む。メタノール誘導型プロモータ、例えばAOX1が好ましい。
【0052】
本願のいくつかの実施例によれば、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用がブロックされる。具体的には、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用のブロックは、1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方をコードする遺伝子を突然変異させることにより行われる。これによって、生成するデンプンの蓄積量をさらに増加させることができる。本願の実施例によれば、遺伝子編集を使用して、1~3塩基の挿入又は欠失など、特定の遺伝子を突然変異させることができる。本明細書で使用される用語「遺伝子編集」は、生物のゲノム内の特定の目標遺伝子(「標的遺伝子」又は「標的」とも呼ばれる)を修飾(挿入、欠失、又は置換を含むが、これらに限定されない)することを指し、本発明の実施例によれば、SgRNA(目標遺伝子を認識する)の指導の下で、「分子ハサミ」としてのヌクレアーゼCas9を用いて、ゲノム中の特定の位置で部位特異的な二本鎖切断(DSB)を発生させ、さらに、生体が非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え(HR)(「HDR」(Homology directed repair、相同性媒介二本鎖DNA修復)とも呼ばれる。)を通じてDSBを修復することを誘導し、それによって、特定の修飾を実現する。ここで、相同組換えにより媒介される二本鎖DNA修復(HDR)の効率を高めるために、標的遺伝子配列に基づいて設計された一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN:single-stranded oligodeoxyribonucleotide)を相同組換え修復テンプレートとして追加する。
【0053】
本願のいくつかの実施例によれば、以下から選択されるSgRNAを用いて前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼをコードする遺伝子を突然変異させる。
【0054】
7:gagtcgataacgatctcctt、
10:gttgttgatgtagccgtcta、又は
32:ggacgtgatcagggaacatg。
そのうち、32:ggacgtgatcagggaacatgが好ましい。
【0055】
本願のいくつかの実施例によれば、以下から選択されるSgRNAを用いて前記グリコーゲンホスホリラーゼをコードする遺伝子を突然変異させる。
【0056】
1-509:ggccacctccgactcaatca、
6-509:gttaataagagcgttgtcca、
又は10-1018:gagaagtcaaactcggtggt。
それによって、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼを破壊する効率を向上させ、デンプンの蓄積量をさらに増加させ、デンプンの製造効率をさらに向上させ、デンプンの製造コストを削減させることができる。
【0057】
当業者が理解できるように、微生物細胞がデンプンを合成した後、微生物細胞を溶解してデンプンを収集してもよく、微生物細胞を遺伝的に改変してデンプンを細胞外に分泌させてもよく、微生物細胞をそのまま可食用製品としてもよい。好ましくは、本願のいくつかの実施例によれば、前記微生物細胞を溶解した後、前記デンプンを収集するステップをさらに含む。これによって、デンプンを精製することができ、後続で得られたデンプンを広く使用することに有利である。
【0058】
組換え微生物
本願の第2態様では、本願は、二酸化炭素を用いてデンプンを製造する組換え微生物を提案する。本願の実施例によれば、前記組換え微生物は、(1)二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、エネルギー及び炭素源を取得する酵素系と、(2)前記微生物の野生型と比べてアップレギュレーションされたデンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方と、を有する。これによって、該組換え微生物は、第1態様で提案したデンプンを製造する方法を効果的に実施することができ、それによって、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用することにより、二酸化炭素を効果的に固定化して、微生物細胞内でデンプンを製造することができ、それによって、二酸化炭素を科学的に利用してカーボンニュートラル戦略を推進することを実現し、デンプンの生物学的工業合成に利用して「農業産業化」を実現することができる。
【0059】
本願の実施例によれば、前記細胞外非光エネルギーは、水素エネルギー及び電気エネルギーの少なくとも一方を含む。
【0060】
本願の実施例によれば、前記微生物細胞は、炭素源として前記二酸化炭素を取り込み、前記細胞外非光エネルギーを吸収するのに適しており、及び/又は
前記微生物は、炭素源として低炭素化合物を取り込むのに適しており、前記低炭素化合物は、前記細胞外非光エネルギーの還元能力を利用して前記二酸化炭素に基づいて得られ得るものである。
【0061】
本願の実施例によれば、前記微生物の野生型と比べて、前記組換え微生物は、ダウンレギュレーションされたグルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方を有する。
【0062】
本願の実施例によれば、前記微生物は、前記炭素源を利用するのに適するように改変された酵母及び細菌の少なくとも一方である。
【0063】
本願の実施例によれば、前記低炭素化合物は、1~3個の炭素原子を含有し、任意選択で、前記低炭素化合物は、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロパノール、プロパン、プロピオンアルデヒド、アセトン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、及びグリセリンから選択される少なくとも1つである。
【0064】
理解を容易にするために、以下、本願に用いられ得るいくつかの微生物のタイプを示す。本願のいくつかの実施例によれば、電気エネルギーを吸収するのに適する微生物としては、ジオバクターGeobacter、スポロムーサSporomusa、メタン生成菌Methanogens、酢酸生成菌Acetobacteriumなどの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、酢酸を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ヤロウウィア・リポリティカを含むが、これらに限定されず、水素エネルギーを吸収するのに適する微生物としては、水素細菌、ラルストニアRalstonia、及びクロストリジウムClostridiumの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、一酸化炭素を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、クロストリジウムClostridium類を含むが、これらに限定されず、ギ酸を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ラルストニアRalstoniaを含むが、これらに限定されず、メタノールを炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ピキア酵母Pichia pastoris、カンジダ・ボイディニCandida boidinii、ハンセヌラ・ポリモルファHansenula polymorphaの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、メタンを炭素源として取り込むのに適する微生物としては、メチロバクターMethylobacter、Methylococcusを含むが、これらに限定されず、又はエタノールを炭素源として取り込むのに適する微生物としては、サッカロマイセス・セレヴィシエSaccharomyces cerevisiaeを含むが、これらに限定されない。これによって、デンプンを製造する効率をさらに向上させることができる。
【0065】
本願の実施例によれば、前記微生物は、前記二酸化炭素又は前記低炭素化合物を主な炭素源として用いるのに適している。
【0066】
本願の実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ外因性遺伝子配列で発現される。
【0067】
本願の実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ独立して、構成型プロモータ又は誘導型プロモータに作動可能に連結されている。
【0068】
本願の実施例によれば、前記誘導型プロモータは、前記炭素源による誘導下で転写レベルを向上させるのに適している。
【0069】
本願の実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、いずれも誘導型プロモータによって制御される。
【0070】
本願のいくつかの実施例によれば、前記構成型プロモータは、ZWF1、glucose-6-phosphate 1-dehydrogenase、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、TPI1、triose phosphate isomerase、トリオースリン酸イソメラーゼプロモータ、GSH1、glutathione synthetase、グルタチオンシンターゼプロモータ、POR1、mitochondrial porin、ミトコンドリアポリンプロモータ、TKL1、transketolase、トランスケトラーゼプロモータ、PGD1、6-phosphogluconate dehydrogenase、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、PGM1、phosphoglycerate mutase、ホスホグリセリン酸ムターゼプロモータ、PK、pyruvate kinase、ピルビン酸キナーゼプロモータ、及びGAP glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータから選択される少なくとも1つを含む。
【0071】
本願のいくつかの実施例によれば、前記誘導型プロモータは、CAT1:catalase、カタラーゼプロモータ、TAL1:transaldolase、トランスアルドラーゼ1プロモータ、TAL2:transaldolase、トランスアルドラーゼ2プロモータ、ALD4:mitochondrial aldehyde dehydrogenase、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ4プロモータ、DAK1:dihydroxyacetone kinase、ジヒドロキシアセトンキナーゼプロモータ、FDH1:formate dehydrogenase、ギ酸デヒドロゲナーゼプロモータ、ALD:mitochondrial aldehyde dehydrogenase、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータ、DAS1:dihydroxyacetone synthase 1、ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ1、DAS2:dihydroxyacetone synthase 2、ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ2、AOX1:alcohol oxidase 1、アルコールオキシダーゼ1プロモータ、及びAOX2:alcohol oxidase 2、アルコールオキシダーゼ2プロモータから選択される少なくとも1つを含む。そのうち、メタノール誘導型プロモータ、例えばAOX1が好ましい。本願の実施例によれば、前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用をブロックするために、前記1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼをコードするものの少なくとも一方は突然変異を持つ。
【0072】
本願のいくつかの実施例によれば、以下から選択されるSgRNAを用いて前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼをコードする遺伝子を突然変異させる。
【0073】
SgRNA 7:gagtcgataacgatctcctt(SEQ ID NO:5)
SgRNA 10:gttgttgatgtagccgtcta(SEQ ID NO:6)
SgRNA 32:ggacgtgatcagggaacatg(SEQ ID NO:7)
そのうち、SgRNA 32:ggacgtgatcagggaacatg(SEQ ID NO:7)が好ましい。
【0074】
本願のいくつかの実施例によれば、以下から選択されるSgRNAを用いて前記グリコーゲンホスホリラーゼをコードする遺伝子を突然変異させる。
【0075】
SgRNA 1-509:ggccacctccgactcaatca(SEQ ID NO:8)、
SgRNA 6-509:gttaataagagcgttgtcca(SEQ ID NO:9)、
SgRNA 10-1018:gagaagtcaaactcggtggt(SEQ ID NO:10)。これによって、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼを破壊する効率を向上させ、デンプンの蓄積量をさらに増加させ、デンプンの製造効率をさらに向上させ、デンプンの製造コストを削減させることができる。
【0076】
当業者が理解できるように、第1態様においてデンプンを製造する方法について説明される特徴及び利点は、該組換え微生物も同様であるため、ここでは詳しく説明しない。
【0077】
微生物を構築する方法
本願の第3態様では、本願は、第2態様に記載の微生物を構築する方法であって、デンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方をアップレギュレーションする動作を出発微生物に行うステップを含む、ことを特徴とする方法を提案する。これによって、前記の第2態様に記載の組換え微生物を効果的に製造することができ、これによって、該組換え微生物は、第1態様で提案したデンプンを製造する方法を効果的に実施することができ、それによって、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用することにより、二酸化炭素を効果的に固定化して、微生物細胞内でデンプンを製造することができ、それによって、二酸化炭素を科学的に利用してカーボンニュートラル戦略を推進することを実現し、デンプンの生物学的工業合成に利用して「農業産業化」を実現することができる。
【0078】
本願の実施例によれば、上記の組換え微生物を構築する方法は、以下の追加の技術的特徴をさらに有してもよい。
【0079】
本願の実施例によれば、二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、エネルギー及び炭素源を取得する酵素系を有するように、前記出発微生物の代謝系を改変するステップを含む。
【0080】
本願の実施例によれば、前記細胞外非光エネルギーは、水素エネルギー及び電気エネルギーの少なくとも一方を含む。
【0081】
本願の実施例によれば、
前記微生物細胞は、炭素源として前記二酸化炭素を取り込み、前記細胞外非光エネルギーを吸収するのに適しており、及び/又は
前記微生物は、炭素源として低炭素化合物を取り込むのに適しており、前記低炭素化合物は、前記細胞外非光エネルギーの還元能力を利用して前記二酸化炭素に基づいて得られ得るものであるように、前記出発微生物の代謝系を改変する。
【0082】
本願の実施例によれば、前記出発微生物は、前記炭素源を利用するのに適するように改変された酵母及び細菌の少なくとも一方である。
【0083】
本願の実施例によれば、前記低炭素化合物は、1~3個の炭素原子を含有し、任意選択で、前記低炭素化合物は、一酸化炭素、ギ酸、メタノール、メタン、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、プロパノール、プロパン、プロピオンアルデヒド、アセトン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、及びグリセリンから選択される少なくとも1つである。
【0084】
理解を容易にするために、以下、本願に使用され得るいくつかのタイプの微生物を示す。本願のいくつかの実施例によれば、電気エネルギーを吸収するのに適する微生物としては、ジオバクターGeobacter、スポロムーサSporomusa、メタン生成菌Methanogens、酢酸生成菌Acetobacteriumなどの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、酢酸を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ヤロウウィア・リポリティカを含むが、これらに限定されず、水素エネルギーを吸収するのに適する微生物としては、水素細菌、ラルストニアRalstonia、及びクロストリジウムClostridiumの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、一酸化炭素を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、クロストリジウムClostridium類を含むが、これらに限定されず、ギ酸を炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ラルストニアRalstoniaを含むが、これらに限定されず、メタノールを炭素源として取り込むのに適する微生物としては、ピキア酵母Pichia pastoris、カンジダ・ボイディニCandida boidinii、ハンセヌラ・ポリモルファHansenula polymorphaの少なくとも1つを含むが、これらに限定されず、メタンを炭素源として取り込むのに適する微生物としては、メチロバクターMethylobacter、Methylococcusを含むが、これらに限定されず、又はエタノールを炭素源として取り込むのに適する微生物としては、サッカロマイセス・セレヴィシエSaccharomyces cerevisiaeを含むが、これらに限定されない。これによって、デンプンを製造する効率をさらに向上させることができる。
【0085】
本願の実施例によれば、前記微生物は、前記二酸化炭素又は前記低炭素化合物を主な炭素源として用いるのに適している。
【0086】
本願の実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、プンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方をアップレギュレーションデンさせるために、それぞれ外因性遺伝子配列で発現される。
【0087】
本願の実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ独立して、構成型プロモータ又は誘導型プロモータに作動可能に連結されている。
【0088】
本願の実施例によれば、前記誘導型プロモータは、前記炭素源による誘導下で転写レベルを向上させるのに適している。
【0089】
本願の実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、いずれも誘導型プロモータによって制御される。
【0090】
本願のいくつかの実施例によれば、前記構成型プロモータは、ZWF1、glucose-6-phosphate 1-dehydrogenase、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、TPI1、triose phosphate isomerase、トリオースリン酸イソメラーゼプロモータ、GSH1、glutathione synthetase、グルタチオンシンターゼプロモータ、POR1、mitochondrial porin、ミトコンドリアポリンプロモータ、TKL1、transketolase、トランスケトラーゼプロモータ、PGD1、6-phosphogluconate dehydrogenase、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、PGM1、phosphoglycerate mutase、ホスホグリセリン酸ムターゼプロモータ、PK、pyruvate kinase、ピルビン酸キナーゼプロモータ、及びGAP、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータから選択される少なくとも1つを含む。
【0091】
本願のいくつかの実施例によれば、前記誘導型プロモータは、CAT1:catalase、カタラーゼプロモータ、TAL1:transaldolase、トランスアルドラーゼ1プロモータ、TAL2:transaldolase、トランスアルドラーゼ2プロモータ、ALD4:mitochondrial aldehyde dehydrogenase、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ4プロモータ、DAK1:dihydroxyacetone kinase、ジヒドロキシアセトンキナーゼプロモータ、FDH1:formate dehydrogenase、ギ酸デヒドロゲナーゼプロモータ、ALD:mitochondrial aldehyde dehydrogenase、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータ、DAS1:dihydroxyacetone synthase 1、ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ1、DAS2:dihydroxyacetone synthase 2、ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ2、AOX1:alcohol oxidase 1、アルコールオキシダーゼ1プロモータ、及びAOX2:alcohol oxidase 2、アルコールオキシダーゼ2プロモータから選択される少なくとも1つを含む。このうち、メタノール誘導型プロモータ、例えばAOX1が好ましい。本願の実施例によれば、前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用をブロックするために、前記1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼをコードするものの少なくとも一方は突然変異を持つ。
【0092】
本願のいくつかの実施例によれば、以下から選択されるSgRNAを用いて前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼをコードする遺伝子を突然変異させる。
【0093】
SgRNA 7:gagtcgataacgatctcctt(SEQ ID NO:5)、
SgRNA 10:gttgttgatgtagccgtcta(SEQ ID NO:6)、
SgRNA 32:ggacgtgatcagggaacatg(SEQ ID NO:7)、
そのうち、SgRNA 32:ggacgtgatcagggaacatg(SEQ ID NO:7)が好ましい。
【0094】
本願のいくつかの実施例によれば、以下から選択されるSgRNAを用いて前記グリコーゲンホスホリラーゼをコードする遺伝子を突然変異させる。
【0095】
SgRNA 1-509:ggccacctccgactcaatca(SEQ ID NO:8)、
SgRNA 6-509:gttaataagagcgttgtcca(SEQ ID NO:9)、
SgRNA 10-1018:gagaagtcaaactcggtggt(SEQ ID NO:10)。これによって、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼを破壊する効率を向上させ、デンプンの蓄積量をさらに増加させ、デンプンの製造効率をさらに向上させ、デンプンの製造コストを削減させることができる。
【0096】
当業者が理解できるように、他の態様においてデンプンを製造する方法及び組換え微生物について説明される特徴及び利点は、該組換え微生物を構築する方法も同様であるので、ここでは詳しく説明しない。
【0097】
また、当業者が理解できるように、本願はまた、第2態様に記載の微生物を構築するキットを提案し、本願の実施例によれば、該キットは、出発微生物にデンプンシンターゼ及びグルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼの少なくとも一方を発現させるための外因性遺伝子発現ベクターと、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方の機能をブロックするための任意のタンパク質機能ブロック試薬と、を含む。これによって、該キットによれば、前記の組換え微生物を効果的に構築することができ、これによって、該組換え微生物は、第1態様で提案したデンプンを製造する方法を効果的に実施することができ、それによって、電気エネルギー又は水素エネルギーなどの非光エネルギーを利用することにより、二酸化炭素を効果的に固定化して、微生物細胞内でデンプンを製造することができ、それによって、二酸化炭素を科学的に利用してカーボンニュートラル戦略を推進することを実現し、デンプンの生物学的工業合成に利用して「農業産業化」を実現することができる。
【0098】
本願の実施例によれば、二酸化炭素及び細胞外非光エネルギーによって、エネルギー及び炭素源を取得する酵素系を有するように前記出発微生物の代謝系を改変するための炭素源代謝改変ベクターをさらに含む。
【0099】
本願の実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、それぞれ独立して、構成型プロモータ又は誘導型プロモータに作動可能に連結されている。
【0100】
本願の実施例によれば、前記誘導型プロモータは、前記炭素源による誘導下で転写レベルを向上させるのに適している。
【0101】
本願の実施例によれば、前記デンプンシンターゼ及び前記グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼは、いずれも誘導型プロモータによって制御される。
【0102】
本願のいくつかの実施例によれば、前記構成型プロモータは、ZWF1、glucose-6-phosphate 1-dehydrogenase、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、TPI1、triose phosphate isomerase、トリオースリン酸イソメラーゼプロモータ、GSH1、glutathione synthetase、グルタチオンシンターゼプロモータ、POR1、mitochondrial porin、ミトコンドリアポリンプロモータ、TKL1、transketolase、トランスケトラーゼプロモータ、PGD1、6-phosphogluconate dehydrogenase、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼプロモータ、PGM1、phosphoglycerate mutase、ホスホグリセリン酸ムターゼプロモータ、PK、pyruvate kinase、ピルビン酸キナーゼプロモータ、及びGAP glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモータから選択される少なくとも1つを含む。
【0103】
本願のいくつかの実施例によれば、前記誘導型プロモータは、CAT1:catalase、カタラーゼプロモータ、TAL1:transaldolase、トランスアルドラーゼ1プロモータ、TAL2:transaldolase、トランスアルドラーゼ2プロモータ、ALD4:mitochondrial aldehyde dehydrogenase、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ4プロモータ、DAK1:dihydroxyacetone kinase、ジヒドロキシアセトンキナーゼプロモータ、FDH1:formate dehydrogenase、ギ酸デヒドロゲナーゼプロモータ、ALD:mitochondrial aldehyde dehydrogenase、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータ、DAS1:dihydroxyacetone synthase 1、ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ1、DAS2:dihydroxyacetone synthase 2、ジヒドロキシアセトンシンターゼプロモータ2、AOX1:alcohol oxidase 1、アルコールオキシダーゼ1プロモータ、及びAOX2:alcohol oxidase 2、アルコールオキシダーゼ2プロモータから選択される少なくとも1つを含む。このうち、メタノール誘導型プロモータ、例えばAOX1が好ましい。本願の実施例によれば、前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用をブロックするために、前記1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼをコードするものの少なくとも一方は突然変異を持つ。
【0104】
これによって、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼを破壊する効率を向上させ、デンプンの蓄積量をさらに増加させ、デンプンの製造効率をさらに向上させ、デンプンの製造コストを削減させることができる。
【0105】
本願の実施例によれば、前記構成型プロモータは、GAPから選択される少なくとも1つを含む。
【0106】
前記誘導型プロモータは、メタノール誘導型プロモータ、好ましくはAOX1から選択される少なくとも1つを含む。
【0107】
本願の実施例によれば、前記タンパク質機能ブロック試薬は、前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼの少なくとも一方のデンプンに対する代謝作用をブロックする、前記1,4-α-グルコシダーゼ及びグリコーゲンホスホリラーゼをコードするものの少なくとも一方が突然変異を持継ようにすることに適している。
【0108】
本願の実施例によれば、前記タンパク質機能ブロック試薬は、以下のSgRNAを含み、それによって、以下から選択されるSgRNAを用いて前記グルカン1,4-α-グルコシダーゼをコードする遺伝子を突然変異させる。
【0109】
SgRNA 7:gagtcgataacgatctcctt(SEQ ID NO:5)、
SgRNA 10:gttgttgatgtagccgtcta(SEQ ID NO:6)、
SgRNA 32:ggacgtgatcagggaacatg(SEQ ID NO:7)、
そのうち、SgRNA 32:ggacgtgatcagggaacatg(SEQ ID NO:7)が好ましい。
【0110】
本願のいくつかの実施例によれば、前記タンパク質機能ブロック試薬は、以下のSgRNAを含み、それによって、前記グリコーゲンホスホリラーゼをコードする遺伝子を突然変異させる。
【0111】
SgRNA 1-509:ggccacctccgactcaatca(SEQ ID NO:8)
SgRNA 6-509:gttaataagagcgttgtcca(SEQ ID NO:9)
SgRNA 10-1018:gagaagtcaaactcggtggt(SEQ ID NO:10)
当業者が理解できるように、他の態様においてデンプンを製造する方法、並びに組換え微生物及びその構築方法について説明される特徴及び利点は、該組換え微生物を構築するキットも同様であるので、ここでは詳しく説明しない。
【0112】
本願の追加の態様および利点は、以下の説明において部分的に示され、部分的には以下の説明から明らかになるか、または本願の実践を通して理解される。
【0113】
実施例1:ピキア酵母を用いたデンプンの製造
GlgA、GlgC遺伝子の合成
GenBank中の大腸菌由来のGlgA(デンプンシンターゼ、EC 2.4.1.21)アミノ酸配列情報SEQ ID NO:1(AAC76454.1)、GlgC(グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ、EC 2.7.7.27)配列情報SEQ ID NO:3(AAC76455.1)に基づき、本発明者はピキア・パストリスに対して、2つの好ましい遺伝子配列SEQ ID NO:2と4をスクリーニングして最適化した。
【0114】
GlgA及び/又はGlgC発現ベクターの構築
それぞれ強力な構成型プロモータpGapと強力な誘導型プロモータpAOX1を用いて以下の5種類の発現ベクターを構築し、この5つの発現ベクターはすべて同じバックボーンプラスミドpHisを用いて構築した。
【0115】
GA遺伝子の破壊(CRISPR-Cas9)
CRISPR-Cas9技術を用いて、ピキア・パストリスのゲノム上のGA(glucan 1,4-alpha-glucosidase、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ、EC 3.2.1.3)遺伝子を破壊した。GAの遺伝子配列により、3組の異なるSgRNA:7、10、32(配列は前述)をスクリーニングしたが、
図1より、GAの破壊効率は、異なるSgRNA間で64%から92%の差があり、1bpの挿入/欠失が主な突然変異であることが分かった。
【0116】
GP遺伝子の破壊(CRISPR-Cas9)
GAを破壊した上で、引き続きCRISPR-Cas9技術を用いてピキア・パストリスのゲノム上のGP(グリコーゲンホスホリラーゼ、EC 2.4.1.1)遺伝子を破壊し、GPの遺伝子配列により、3組の異なるSgRNA:1-509、6-509、10-1018(配列は前述)をスクリーニングした。
図2より、GPに対して、すべて100%の破壊効率が得られ、SgRNAの差異性がなく、突然変異の多様性が均衡していることが分かった。
【0117】
ピキア・パストリスのコンピテント細胞の製造
ピキア酵母菌株GS115をYPD培地500mLに接種し、30℃、200r/minでOD600=1.3~1.5まで培養した。4℃、4500r/minで5min遠心分離して菌体を採取し、それぞれ500mL、250mLの予冷殺菌水と20mLの1mol/L予冷ソルビトールで1回ずつ洗浄した。毎回洗浄した後、4℃、4500r/minで5min遠心分離して菌体を収集し、最後に1mol/L予冷ソルビトール1mLで懸濁させ、80μL/本でチューブに分包することによって、使用時に製造し、感電気ショックコンピテント細胞を得た。
【0118】
組換えピキア・パストリスの取得
正確に構築された、5種類の異なるプロモータの組み合わせを含むGlgA及び/又はGlgC発現ベクターのそれぞれ約10μgを、BspEI酵素で線状化し、エタノール沈殿により線状DNAを回収し、無菌水10μLに溶解した。上記の線状化DNAをGS115コンピテント細胞80μLと混合し、予冷した0.2cmのエレクトロポレーションカップに移した。米国BIO-RAD社のエレクトロポレーション装置を用いて、使用したエレクトロポレーション装置に予め設定されたピキア酵母のパラメーターに基づいて電気ショックを行い、電気ショック終了直後、1mol/L予冷ソルビトール1mLを電気ショックカップに入れ、電気ショックカップ中の溶液をすべて無菌遠心管に移し、菌液200~300μLを直接MDプレート(13.4g/L YNB、4×10-4g/Lビオチン、20g/Lグルコース、15g/Lアガロース))に塗布した。CRISPR-Cas9関連発現ベクターの形質転換は、いずれも、1μgのDNA量で行い、他のステップは前述の通りである。形質転換後に、G418(500μg/mL)を含有するYPD耐性プレートに塗布した。30℃でコロニーが出現するまで2~4日間倒置培養し、PCR検証後、組換え菌株を得た。
【0119】
二酸化炭素を用いたメタノールの合成
バイメタル固溶体酸化物(酸化亜鉛-二酸化ジルコニウム、ZnO-ZrO2)を触媒として、二酸化炭素と水素ガスを用い、二酸化炭素を高選択性、高安定性で水素化することによりメタノールを合成し、生成したメタノールを、熱伝導率検出器(TCD)及び火炎イオン化検出器(FID)を備え、2m×3.175mm(Agilent)規格のカラムを用いたガスクロマトグラフ(Agilent 7890B)により測定した。
【0120】
組換えピキア・パストリスの培養
各組換え菌株をBSM液体培地25mL(5g/L硫酸アンモニウム、3g/Lリン酸二水素カリウム、0.5g/L硫酸マグネシウム七水和物、4mL/L微量元素母液(硫酸銅五水和物6g/L、ヨウ化カリウム0.08g/L、硫酸マンガン2.68g/L、ホウ酸0.02g/L、モリブデン酸ナトリウム二水和物0.2g/L、硫酸亜鉛七水和物20g/L、硫酸第一鉄七水和物65g/L、塩化コバルト六水和物0.916g/L、硫酸5mL/L、ビオチン0.2g/L)、pH=6.0に調整)に接種し、30℃、200r/minで48h振とう培養し、種子液を得た。種子液を新鮮なBSMに接種し、開始OD600=1に調整し、30℃、200r/minで振とう培養し、毎日メタノールを最終濃度1%(V/V)に補充した。
【0121】
人造デンプン産生量の測定
30℃で2d培養した菌体を取り、濃度を10OD/mLに調整し、遠心分離した後、溶解液(20 mM Tris-Cl、500 mM NaCl、pH7.5)に再懸濁させて超音波破砕を行い、破砕手順は、超音波処理5s、休止5s、総時間10minであった。粉砕した液体50μLを取り、100℃で5min煮沸した後、30 U/mLのα-アミラーゼと30 U/mLのグルコアミラーゼとともに一定時間インキュベートし、デンプンが完全に加水分解されてグルコースになると、グルコース測定キット(北京普利莱社)でグルコース含有量を測定した。デンプン産生量は、グルコース含有量で表される。
【0122】
図3は、異なるプロモータの組み合わせを含むGlgA及び/又はGlgC組換え菌株のデンプン産生量を示す。
図4は、pHis-EcGlgA-EcGlgC組換え菌株のもとでGAを破壊した場合のデンプン産生効果を示す。
図5は、pHis-EcGlgA-EcGlgC及びGA破壊に加えてGPを破壊した場合のデンプン産生効果を示す。その結果、各人造デンプン細胞工場のデンプン生産量は最高450mg/L(60mg/g DCW)に達し、GS115/pHis-EcGlgA-EcGlgC(A+Cと略記)の生産量が最高であった。その上で、デンプン利用の鍵となる酵素遺伝子GPをさらにノックアウトし、組換え菌株GS115/pHis-EcGlgA-EcGlgC-GP-1-509(A+C-GPと略記)を得、初期菌株A+Cと同時に誘導発酵テストを行い、そしてGS115を対照とした結果、そのデンプン生産量は、A+Cよりも150%向上し、750mg/L(100mg/g DCW)に達することを示した。
【0123】
実施例2:水素細菌であるクプリアビドゥス・ネカトールを用いたデンプンの製造
組換え水素細菌株の構築
GenBank中の大腸菌由来のGlgA(デンプンシンターゼ、EC 2.4.1.21)配列情報(AAC76454.1)、GlgC(グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ、EC 2.7.7.27)配列情報(AAC76455.1)に基づき、水素細菌であるクプリアビドゥス・ネカトールに対して、SEQ ID NO:11と12に示す、コドンが最適化された2つの遺伝子配列を得、Simple Cloning(You C, Zhang X-Z, Zhang Y-HP. 2012. Simple cloning via direct transformation of PCR product (DNA multimer) to Escherichia coli and Bacillus subtilis. Appl. Environ. Microbiol. 78(5):1593-1595.)に記載の方法によって、GlgA及びGlgC遺伝子をそれぞれpBBRI及びpCMベクターにクローニングして、対応する組換えプラスミドpBBRI-GlgA、pCM-GlgCを得、さらに上記の組換えプラスミドを大腸菌S17に形質転換し、最後にコンジュゲート方式を利用して組換えプラスミドpBBRI-GlgA及びpCM-GlgCを水素細菌であるクプリアビドゥス・ネカトール(Cupriavidus necator)に組み込んだ。
【0124】
二酸化炭素を用いた組換え菌株のデンプン産生
水素細菌であるクプリアビドゥス・ネカトール(Cupriavidus necator)は、二酸化炭素を唯一の炭素源として成長させることができる。組換え菌株を培地40mL(9.0 g/L Na2HPO4・12H2O、1.5 g/L KH2PO4、1.0 g/L (NH4)2SO4、80 mg/L MgSO4・7H2O、1 mg/L CaSO4・2H2O、0.56 mg/L NiSO4・7H2O、0.4 mg/L Ferric citrate、200 mg/L NaHCO3、50 mg/L FeSO4・7H2O、pHを6.5に調整)に接種して培養し、上記培地に1mL/L微量元素(100 mg/L ZnSO4・7H2O、30 mg/L MnCl2・4H2O、300 mg/L H3BO3、200 mg/L NiCl2・6H2O、30 mg/L NaMoO4・2H2O)を加え、初期ODを約0.2、換気割合H2:O2:CO2を7:1:1、換気流速を約20mL/minに制御して、30℃で培養した。24h毎にサンプリングし、ODを測定し、デンプン産生量を検出した。
【0125】
培養した菌株を取り、濃度を10OD/mLに調整し、遠心分離した後、溶解液(20 mM Tris-Cl、500 mM NaCl、pH7.5)に再懸濁させ、超音波破砕を行い、破砕手順は、超音波処理5s、休止5s、総時間10minであった。粉砕した液体50μLを取り、100℃で5min煮沸した後、30 U/mLのα-アミラーゼと30 U/mLのグルコアミラーゼとともに一定時間インキュベートし、デンプンが完全に加水分解されてグルコースになると、グルコース測定キット(北京普利莱社)でグルコース含有量を測定した。デンプン産生量はグルコース含有量で表される。
【0126】
その結果、本実施例を用いて構築された菌株は、二酸化炭素を効果的に利用してデンプンを生産することができる。
【0127】
実施例3:コリネバクテリウム・グルタミカムを用いたデンプンの製造
コリネバクテリウム・グルタミカムシャシー細胞の構築
GenBank中の大腸菌由来のGlgA(デンプンシンターゼ、EC 2.4.1.21)配列情報(AAC76454.1)、GlgC(グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ、EC 2.7.7.27)配列情報(AAC76455.1)に基づき、コリネバクテリウム・グルタミカムに対して、コドンが最適化された2つの遺伝子を得、pECを骨格ベクターとして、組換え発現ベクターpEC-XK99E-GlgA-GglCを得、ここで、GlgA及びGlgCの発現はすべて同じプロモータpTrcを採用した。
【0128】
その上で、相同組換え方法を用いて、ゲノム上のRpiB遺伝子を破壊し、菌体自体のペントースリン酸経路をブロックした。さらに、リブロース一リン酸メタノール利用経路に必要なMDH、PHI及びPHI遺伝子を導入し、メタノール依存性の菌株の成長を実現した。
【0129】
コリネバクテリウム・グルタミカムコンピテント細胞の製造
(1)活性化:-80℃で凍結保存したコリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC 13032)をLB+0.5%グルコース固体プレートにストリークし、30℃で培養して単コロニーを形成した。
【0130】
(2)種子培養:単一のコロニーを選んでLB+0.5%グルコース液体培地10mLに接種し、30℃、200r/mで約12h培養した。
【0131】
(3)3%グリシンと0.1%Tween 80を含む液体LB培地50mLに移し、初期細胞OD600が0.3に達するようにした。
【0132】
(4)30℃、200r/mでOD600が0.9まで細胞を培養した。細胞培養終了後、まず、菌液を15min氷浴処理し、その後4℃、5000r/mの条件下で菌体を収集した。
【0133】
(5)上清を捨て、10%予冷グリセリン30mLで菌体を4回洗浄した。
【0134】
(6)上清を捨て、最後に10%予冷グリセリン0.2mLで細胞を再懸濁させ、1.5mL遠心分離管に細胞を80μLずつ分包し、-80℃冷蔵庫で使用時まで保存した。
コリネバクテリウム・グルタミカムの組換え菌株の取得
【0135】
-80℃で凍結保存されたエレクトロポレーションされたコンピテント細胞を1管分取り、氷上で融解させた。正確に構築された組換え発現ベクター5μLを加え、管壁を軽く弾いてコンピテント細胞を均一に混合した。事前に予冷した1mmエレクトロポレーションカップに入れ、1.8kVの電圧で電気ショックを与えた。電気ショック終了直後、BHI液体培地(18.5g/Lブレインハートインフュージョン培地、91g/Lソルビトール)915μLを加え、46℃で6min温浴処理後、30℃で2h蘇生培養した後、適量の菌液を25μg/mLカナマイシンを含むLBHIS(5g/Lペプトン、5g/L塩化ナトリウム、2.5g/L酵母エキス、18.5g/Lブレインハートインフュージョン培地、91g/Lソルビトール)固体プレートに塗布し、30℃で倒置培養し、コロニーが成長するのを待った。PCR検証後、対応する組換え菌株を得た。
【0136】
二酸化炭素を用いたコリネバクテリウム・グルタミカムのデンプン産生
バイメタル固溶体酸化物(酸化亜鉛-二酸化ジルコニウム、ZnO-ZrO2)を触媒として、二酸化炭素と水素ガスを用いて、二酸化炭素を高選択性、高安定性で水素化することによりメタノールを合成し、生成したメタノールを、熱伝導率検出器(TCD)及び火炎イオン化検出器(FID)を備え、2m×3.175mm(Agilent)規格のカラムを用いたガスクロマトグラフ(Agilent 7890B)により測定した。
【0137】
組換え菌株をCGX11(20g/L硫酸アンモニウム、5g/L尿素、1g/Lリン酸二水素カリウム、1.3g/Lリン酸二水素カリウム三水和物、42g/L MOPS、0.01g/L塩化カルシウム、0.25g/L硫酸マグネシウム七水和物、0.01g/L硫酸第一鉄七水和物、0.01g/L硫酸マンガン一水和物、0.001g/L硫酸亜鉛七水和物、0.2mg/L硫酸銅、0.02mg/L塩化ニッケル六水和物、0.2mg/Lビオチン、0.03g/Lプロトカテク酸、0.1mg/LビタミンB1、5g/Lキシロース、5g/Lメタノール、pHを7.0に調整)に接種し、30℃、200r/mで培養した。
【0138】
培養後の菌株を取り、濃度を10OD/mLに調整し、遠心分離した後、溶解液(20 mM Tris-Cl、500 mM NaCl、pH7.5)に再懸濁させ、超音波破砕を行い、破砕手順は、超音波処理5s、休止5s、総時間10minであった。粉砕した液体50μLを取り、100℃で5min煮沸した後、30 U/mLのα-アミラーゼと30 U/mLのグルコアミラーゼとともに一定時間インキュベートし、デンプンが完全に加水分解されてグルコースになると、グルコース測定キット(北京普利莱社)でグルコース含有量を測定した。デンプン産生量はグルコース含有量で表され、結果は表1に示される。
【0139】
【0140】
その結果、本実施例を用いて構築されたコリネバクテリウム・グルタミカムは、メタノールからデンプンを効率的に生産することができる。
【0141】
実施例4:大腸菌を用いたデンプンの製造
組換え大腸菌株の構築
GenBank中の大腸菌由来のGlgA(デンプンシンターゼ、EC 2.4.1.21)配列情報(AAC76454.1)、GlgC(グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ、EC 2.7.7.27)配列情報(AAC76455.1)に基づき、それぞれプライマーを設計し、酵素ライゲーション法によってGlgA及びGlgC遺伝子をそれぞれpET21bベクターにクローニングして、対応する組換えプラスミドpET21b-GlgA、pET21b-GlgCを得た。この2つのプラスミドを化学的形質転換法によりそれぞれBL21(DE3)に形質転換し、対応する組換え菌株を得た。
【0142】
様々な炭素源を用いた組換え大腸菌株のデンプン産生
単コロニーを採取し、LB(0.5%YE、1%塩化ナトリウム、1%酵母パウダー)にて、37℃、220r/mで一晩培養した後、1%接種量で異なる炭素源を含む培地(基本培地はM9、炭素源はそれぞれグルコース、グリセリン、DHA、LBを対照とする)に移して培養し、OD600=0.8になると、0.5mM IPTGを加え、16℃で誘導発酵を行った。
【0143】
培養後の菌株を取り、濃度を10OD/mLに調整し、遠心分離した後、溶解液(20 mM Tris-Cl、500 mM NaCl、pH7.5)に再懸濁させ、超音波破砕を行い、破砕手順は、超音波処理5s、休止5s、総時間10minであった。粉砕した液体50μLを取り、100℃で5min煮沸した後、30 U/mLのα-アミラーゼと30 U/mLのグルコアミラーゼと一定時間インキュベートし、デンプンが完全に加水分解されてグルコースになると、グルコース測定キット(北京普利莱社)でグルコース含有量を測定した。デンプン産生量はグルコース含有量で表され、結果は表2に示される。
【0144】
【0145】
実施例5:ヤロウウィア・リポリティカを用いたデンプンの製造
組換えヤロウウィア・リポリティカの構築
9対の外因性グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.27)及びデンプンシンターゼ(EC 2.4.1.21)のアミノ酸配列(表3)に基づき、ヤロウウィア・リポリティカを宿主として、遺伝子配列のコドン最適化を行い、そして遺伝子断片をそれぞれ統合型発現プラスミドに合成し、2遺伝子をそれぞれプロモータPrTefとターミネーターTlip2との間及びプロモータPrGPDとターミネーターTcycとの間に位置させ、9個の二重発現カセットプラスミドを形成した。上記プラスミドを二重酵素で切断して、統合型DNA断片を得た。化学的形質転換法により、上記の統合型DNA断片をヤロウウィア・リポリティカの染色体に組み込み、組換えヤロウウィア・リポリティカ菌株を得た。
【0146】
【0147】
酢酸を用いた組換え菌株のデンプン産生
酢酸を唯一の炭素源とする鉱物塩培養液(2.73 g/L酢酸ナトリウム、6.75 g/L (NH4)2SO4、13 g/L KH2PO4、0.45 g/L MgSO4・7H2O、4mL/L微量元素母液(3.0 g/L FeSO4・7H2O、4.5 g/L ZnSO4・7H2O、4.5 g/L CaCl2・2H2O、1 g/L MnCl2・4H2O、300 mg/L CoCl2・6H2O、300 mg/L CuSO4・5H2O、400 mg/L Na2MoO4・2H2O、1 g/L H3BO3、100 mg/L KI、19 g/L Na2EDTA・2H2O)、1mL/Lビタミン母液(50 mg /L D-Biotin、1.0 g/L D-Pantothenic acid hemicalcium salt、1.0 g/L Thiamin-HCl、1.0 g/L Pyridoxin-HCl、1.0 g/L Nicotinic acid、0.2 g/L 4-aminobenzoic acid、25 g/L m-Inositol))に接種し、30℃、220r/mで菌体をOD600が約1.5になるまで培養し、13000r/mで2min遠心分離して菌体を採取し、蒸留水を用いて菌体を2回洗浄した。
【0148】
培養後の菌株を取り、濃度を10OD/mLに調整し、遠心分離した後、溶解液(20 mM Tris-Cl、500 mM NaCl、pH7.5)に再懸濁させ、超音波破砕を行い、破砕手順は、超音波処理5s、休止5s、総時間10minであった。粉砕した液体50μLを取り、100℃で5min煮沸した後、30 U/mLのα-アミラーゼと30 U/mLのグルコアミラーゼとともに一定時間インキュベートし、デンプンが完全に加水分解されてグルコースになると、グルコース測定キット(北京普利莱社)でグルコース含有量を測定した。デンプン産生量はグルコース含有量で表され、結果は表4に示された。
【0149】
【0150】
このように、本実施例で構築された組換えヤロウウィア・リポリティカは、酢酸を利用してデンプンを効率的に生産することができ、グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ及びデンプンシンターゼの由来又は具体的な配列を選択することにより、デンプンの生成効率を向上させることができる。
【0151】
実施例6:メチロバクテリウムを用いたデンプンの製造
組換えメチロバクテリウムの構築
GenBank中の大腸菌由来のGlgA(デンプンシンターゼ、EC 2.4.1.21)配列情報(AAC76454.1)、GlgC(グルコース-1-リン酸アデニリルトランスフェラーゼ、EC 2.7.7.27)配列情報(AAC76455.1)に基づき、それぞれプライマーを設計し、Gibson組立方法によりGlgA及びGlgC遺伝子をpCMベクターにクローニングし、ここで、GlgA及びGlgC遺伝子のいずれも単独のpMxaプロモータを用いて発現し、組換えプラスミドpCM-GlgA-GlgCを得、化学的形質転換法によりこのプラスミドをメチロバクテリウムに形質転換し、組換えメチロバクテリウムを得た。
【0152】
メタノールを用いた組換え菌株のデンプン産生
上記組換えメチロバクテリウムを、メタノールを炭素源とする培地(32 g/Lメタノール、1 g/L KNO3、0.717 g/L KH2PO4、0.272 g/L Na2HPO4、1 g/LMgSO4、0.2 g/L CaCl2、1 mL/L微量元素溶液(0.5 g/L EDTA、0.2 g/L FeSO4、0.01 g/L ZnSO4、0.003 g/L MnCL2、0.02 g/L CoCl2、0.1 g/L CuSO4、0.003 g/L Na2MoO4))に接種し、30℃、220r/mの条件で培養した。
【0153】
培養後の菌株を取り、濃度を10OD/mLに調整し、遠心分離した後、溶解液(20 mM Tris-Cl、500 mM NaCl、pH7.5)に再懸濁させ、超音波破砕を行い、破砕手順は、超音波処理5s、休止5s、総時間10minであった。粉砕した液体50μLを取り、100℃で5min煮沸した後、30 U/mLのα-アミラーゼと30 U/mLのグルコアミラーゼとともに一定時間インキュベートし、デンプンが完全に加水分解されてグルコースになると、グルコース測定キット(北京普利莱社)でグルコース含有量を測定した。デンプン産生量はグルコース含有量で表され、結果は表5に示される。
【0154】
【0155】
本明細書の説明において、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などを参照した説明は、当該実施例又は例を参照して説明される特定の特徴、構造、材料、又は特性が本願の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書では、上記の用語の概略的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例を対象とするものではない。さらに、説明された特定の特徴、構造、材料、又は特性は、任意の1つ又は複数の実施例又は例において、適切な方法で組み合わされてもよい。さらに、当業者は、互いに矛盾することなく、本明細書に記載された異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴を結合したり組み合わせたりすることができる。
【0156】
本願の実施例が上記で示され、説明されているが、上記の実施例は、例示的なものであり、本願を限定するものとは理解されず、当業者であれば、本願の範囲内で上記の実施例を変更、修正、置換、及び変形することができることが理解される。
【配列表】
【国際調査報告】