(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料噴射を制御するための方法、制御デバイス、内燃機関及びコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
F02D 41/40 20060101AFI20241001BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F02D41/40
F02M51/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518508
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022037304
(87)【国際公開番号】W WO2023063191
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】102021211658.2
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3G066
3G301
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066AD12
3G066BA08
3G066CC26
3G066CC30
3G066CC34
3G066CC48
3G066DA01
3G066DA04
3G301HA01
3G301HA04
3G301JA18
3G301KA01
3G301LB04
3G301MA11
3G301MA27
3G301NA09
3G301ND45
3G301PE01Z
3G301PE03Z
(57)【要約】
【課題】本主題は、特に低温機関状態における内燃機関の未燃炭化水素及び粒子排出を低減するための方法及び制御デバイスに関する。解決すべき課題は、内燃機関の様々な動作点における様々な燃焼モードの要件を考慮した噴射プロファイルの自動生成を提供することである。
【解決手段】噴射プロファイルの自動生成は、複数の燃料噴射を含む噴射プロファイルによって燃料噴射を制御することによって達成される。プロファイルは、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値以下である噴射サイクルの所定の時点において噴射信号を正の値に設定し、以前に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて計算された燃料量が所定の燃料量を超えるまで、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値を超える噴射サイクルの所定の時点において噴射信号をゼロにリセットすることによって生成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射を制御するための方法であって、前記内燃機関は、
シリンダ壁と、シリンダヒートと、ピストンの頂部とによって燃焼チャンバが形成された少なくとも1つのシリンダであって、前記ピストンは、クランクシャフトによって駆動されて前記シリンダ内を往復運動する、少なくとも1つのシリンダと、
前記燃焼チャンバに燃料を噴射する少なくとも1つの燃料インジェクタと、
前記燃料噴射を制御する少なくとも1つの制御デバイスと、を備え、
前記燃料噴射は、
噴射サイクルの所定の時点において、前記燃焼チャンバ内に噴射される燃料の計算された噴霧浸透長を噴霧浸透長閾値と比較することであって、第1の所定の時点は、前記噴射サイクルの終了である、ことと、
前記計算された噴霧浸透長が前記噴霧浸透長閾値以下である前記噴射サイクルの前記所定の時点において噴射信号を正の値に設定し、前記計算された噴霧浸透長が前記噴霧浸透長閾値を超える前記噴射サイクルの前記所定の時点において、以前に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて計算された燃料量が所定の燃料量を超えるまで前記噴射信号をゼロにリセットすることによって、複数の燃料噴射を含む燃料噴射プロファイルを生成することと、
前記噴射を実行するために、前記生成された燃料噴射プロファイルを前記インジェクタに送信することと、
によって制御される、方法。
【請求項2】
前記噴霧浸透長閾値は、前記ピストンの位置及び所定の燃焼モードに応じて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
噴射される燃料の前記噴霧浸透長は、燃料圧、燃料温度及び前記燃焼チャンバの状態を考慮した物理モデルを使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記計算された噴霧浸透長が前記噴霧浸透長閾値を超えた時点で、逆算により噴射開始を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記噴射信号をゼロにリセットすることによる立ち下がりエッジと、前記噴射信号を前記正の値に設定することによる後続の立ち上がりエッジとの間の前記燃料噴射プロファイルの期間は、所定の時間閾値よりも長い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記噴射サイクルの前記終了は、前記内燃機関の点火タイミングに関連して前記所定の燃焼モードに応じて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記燃料噴射プロファイルは、前記噴射サイクルの前記終了において開始する逆算によって生成され、最初として決定された立ち上がりエッジは、最後の噴射の終了を特徴付け、前記最後として決定された立ち下がりエッジは、最初の噴射の開始を特徴付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記以前に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて計算された燃料量は、前記噴射信号がリセットされるたびに、前記燃料噴射プロファイルの最後の立ち下がりエッジと以前の立ち上がりエッジとの間の期間に対応する噴射の燃料量を物理油圧モデルを使用して計算し、前記以前に計算された燃料量の和が前記所定の燃料量を超えるまで、前記計算された燃料量を前記以前に計算された燃料量の和に加算することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の噴射の前記開始は、前記以前に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて計算された前記燃料量と前記所定の燃料量との間の差に基づいて決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記燃料噴射プロファイルが決定される前記噴射サイクルの前記所定の時点は、前記内燃機関のクランクシャフト角に対して等距離の間隔で配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
内燃機関のための制御デバイスであって、前記内燃機関は、
シリンダ壁とピストンの頂部とによって燃焼チャンバが形成される少なくとも1つのシリンダであって、前記ピストンは、クランクシャフトによって駆動される前記シリンダ内で往復運動する、少なくとも1つのシリンダと、前記燃焼チャンバに燃料を噴射するように構成された少なくとも1つの燃料インジェクタと、を備え、
前記制御デバイスは、請求項1に記載の方法を実行するように構成される、制御デバイス。
【請求項12】
内燃機関であって、
シリンダ壁とピストンの頂部とによって燃焼チャンバが形成される少なくとも1つのシリンダであって、前記ピストンは、クランクシャフトによって駆動される前記シリンダ内で往復運動する、少なくとも1つのシリンダと、
前記燃焼チャンバに燃料を噴射するように構成された少なくとも1つの燃料インジェクタと、
請求項11に記載の制御デバイスと、を備える、内燃機関。
【請求項13】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項1に記載の方法を実行させる命令を含む、メモリに記憶可能なコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、噴射される燃料の計算された噴霧浸透長に応じて生成される複数の燃料噴射を含む噴射プロファイルによって、内燃機関、好ましくは火花点火式内燃機関の燃料噴射を制御するための方法、制御デバイス、内燃機関及びコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
将来の厳しい法的要件では、特にコールドスタート段階において、内燃機関からの排出物の更なる低減が必要とされている。これには、未処理排出物の減少と触媒の早期の運転準備との両方が必要となる。触媒を急速に加熱するには、点火タイミングを遅らせ、点火直前に少量の燃料を噴射する必要がある。未処理排出物、特に炭化水素及び微粒子の排出物を減少させるために、同時に、燃焼チャンバにおける壁の濡れを避けることが必須である。これは、コールドスタート段階において必要とされるだけでなく、燃料噴射のための一般的な要件でもある。上記課題を解決するための重要な手段として、複数の燃料噴射(Multiple fuel injection)が知られている。しかしながら、異なる環境状況において最適な噴射プロファイルを規定することは、高い較正努力を必要とする。したがって、機関マップ全体で使用される異なる燃焼モードに関連して、複数の噴射の噴射タイミングを自動的に決定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、複数回の噴射を使用し、各連続噴射事象が他の連続事象から独立することを可能にする連続噴射事象間の滞留時間を提供して、全噴射事象の全体的な噴霧浸透が単一流体噴射事象の噴霧浸透に対して低減されるようにする、噴霧浸透を低減する方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の教示は、噴射プロファイルの自動生成を提供するものではなく、また、噴射タイミングが点火タイミングと一致することを必要とする異なる燃焼モードを考慮するものでもない。
説明される主題の目的は、内燃機関の様々な動作点における異なる燃焼モードの要件を考慮する噴射プロファイルのモデルベースの生成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、独立請求項に記載の主題によって解決される。更なる好ましい発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明は、内燃機関(以下、略して「機関」ともいう)の燃料噴射を制御するための方法を含む。好ましくは、機関は火花点火機関であってもよい。最も好ましくは、機関は、直接燃料噴射を有する火花点火機関であり得る。
【0008】
内燃機関は、少なくとも1つのシリンダを有しており、このシリンダ内には、シリンダ壁と、シリンダヘッドと、ピストンヘッドとによって燃焼チャンバが形成されている。ピストンは、クランクシャフトによって駆動されるシリンダ内で往復運動する。ピストンは、コネクティングロッドを介してクランクシャフトに接続されてもよい。好ましくは、ピストンは、下死点(BTC)から上死点(TDC)までピストンストロークsだけ移動することができる。クランク角に依存するピストンストロークsは、以下の式(1)によって決定することができる。ここで、jはクランク角を表し、rはクランクシャフトのストローク長を表し、lsはロッド比を表す。
【0009】
【0010】
機関は、燃焼チャンバに燃料を噴射するように構成された少なくとも1つの燃料インジェクタを更に備える。好ましくは、少なくとも1つの燃料インジェクタは、燃焼チャンバに直接燃料を噴射するように構成された高圧インジェクタであってもよい。高圧インジェクタは、電磁弁又は圧電素子によって駆動されてもよい。
【0011】
更に、機関は、燃料噴射を制御するように構成された少なくとも1つの制御デバイスを備える。好ましくは、制御デバイスは、機関制御ユニット(ECU)であってもよい。制御デバイスは、内燃機関に組み込まれていてもよいし、択一的に、内燃機関から離れた車両内の位置に配置されていてもよく、制御デバイスと内燃機関とは、1つ以上の信号線路を介して接続されていてもよい。制御デバイスは、機関制御デバイス(ECU)又は1つ以上の別個の制御デバイスであってもよい。
特許請求される主題によれば、燃料噴射は、
噴射サイクルの所定の時点において、燃焼チャンバ内に噴射される燃料の計算された噴霧浸透長を噴霧浸透長閾値と比較することによって制御される。
【0012】
燃焼チャンバにおける壁及びピストンの濡れを回避するために、噴射される燃料の噴霧浸透長は、噴霧孔とシリンダ壁との間の距離及び噴霧孔とピストンとの間の距離よりも短くなければならない。シリンダ壁からの噴霧ジェットの距離は、燃焼チャンバにおける噴霧ジェットの位置を示すいわゆる噴霧標的化を実行することによって特定の機関のためのインジェクタを選択するときに考慮される。これによって、噴霧ジェットの浸透長さのために必要な限界値を、以下に説明するように、噴霧開口とピストンヘッドとの間の間隔にまで減じることができる。
【0013】
噴射される燃料の噴霧浸透長は、複数のパラメータに依存し得る。最も重要なパラメータは、燃焼チャンバの燃料圧及び温度であり得る。これらのパラメータは、以下に説明する噴霧浸透長を計算するための物理モデルにおいて考慮することができる。
【0014】
特許請求される方法によれば、比較を実行するための第1の所定の時点は、噴射サイクルの終了である。「噴射サイクル」という用語は、トルクを発生させ、所定の燃焼モードの要件を満たすために噴射が行われるべき機関作動サイクルの領域(複数可)として理解されるものとする。燃焼モードとは無関係であり得る完全な噴射サイクルは、排気弁の閉鎖の直後に開始し、点火タイミングの直前に終了することができる。しかしながら、燃焼モードに応じて、噴射サイクルは変化してもよく、例えば、均質燃焼モードでは、噴射サイクルは、均質なシリンダ充填を達成するために、吸気行程の終了前に終了してもよい。これは、均質燃焼モードにおいて、噴射サイクルの終了が、例えば、下死点の前であり得ることを意味する。対照的に、層状モードでは、最後の噴射事象は、例えば点火タイミングの前に終了することができる。噴射サイクルの終了において計算を開始することは、異なる燃焼モードの状態を考慮し、これは、最新の噴射を点火と位置合わせすることを必要とする。
【0015】
計算された噴霧浸透長と噴霧浸透長閾値との比較に基づいて、複数の燃料噴射を含む燃料噴射プロファイルが生成される。これは、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値以下である噴射サイクルの所定の時点で噴射信号を正の値に設定し、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値を超える噴射サイクルの所定の時点で噴射信号をゼロにリセットすることによって行われる。換言すれば、複数の噴射の噴射タイミング及び持続時間は、噴霧浸透長が最大許容噴霧浸透長を表す噴霧浸透長閾値以下である場合にのみ噴射を可能にすることによって生成することができる。噴射信号を任意の正の値、例えば、噴霧浸透長が許容可能である場合には1に設定し、噴霧浸透長が許容可能でない場合には噴射信号をゼロにリセットすることによって、燃料噴射プロファイルを表す、制御デバイスによってインジェクタに出力される信号を生成することができる。噴射信号の設定とリセットとの間の時間がインジェクタの最小作動時間よりも小さい場合、噴射信号はこの範囲でゼロに設定される。
【0016】
燃料噴射プロファイルの生成は、先に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて計算される燃料量が所定の燃料量を超えるまで実行される。所定の燃料量は、トルク及び/又はラムダ制御要件を満たすのに必要な燃料の総量とすることができる。燃料噴射プロファイルの生成が終了した後、燃料噴射プロファイルは、噴射を実行するためにインジェクタに送られる。
【0017】
特許請求の範囲に記載された方法は、完全な噴射プロファイル、すなわち、噴射の回数と、後続の噴射サイクルのための各噴射の開始及び終了時間とを自動的に計算する。計算は、噴射サイクルの終了から開始し、噴射事象の始めに計算を終了する逆方向の方法で実行される。これにより、複数の噴射を異なる燃焼モードに適合させることが可能になり、その結果、排出及び燃料消費量を同時に最適化することができる。
【0018】
一態様によれば、噴霧浸透長閾値は、ピストンの位置及び所定の燃焼モードに応じて決定されてもよい。
上で説明したように、本発明による方法は、燃焼チャンバに適合されたインジェクタを前提としているので、噴霧孔とピストンヘッドとの間の間隔だけを、噴霧浸透長閾値の決定時に考慮すればよい。噴霧ジェットの浸透長さに対する幾何学的な閾値は、以下の式(2)を用いて決定することができる。
【0019】
【0020】
式(2)において、αは、噴霧ジェットの中心軸とシリンダの中心軸との間の角度を示し、インジェクタの噴霧孔とピストンの頂部との間の距離を示し、これは、式(1)によるピストンストロークsに依存し、したがって、クランク角jに依存する。
【0021】
しかしながら、機関マップにおいて所定の異なる燃焼モードの要件を追加的に考慮するために、噴霧浸透長閾値が適合されなければならない。
所定の燃焼モードは、例えば、層状シリンダ給気を用いた希薄燃焼、均質シリンダ給気と層状シリンダ給気との混合を用いた希薄燃焼、及び化学量論的シリンダ給気を用いた均質燃焼であってもよい。
【0022】
層状給気動作の原理は、燃焼のために十分に濃い混合気を点火プラグの近傍に供給し、シリンダの残りの部分には非常に薄い混合気を供給することである。層状給気動作は、ポンピング損失の低減及び全体的な希薄燃焼に起因して、より低い負荷で動作するときに燃料消費量の低減を可能にする。点火プラグ付近の混合気の安定した点火を達成するために、圧縮行程中に数回の噴射が行われ、最後の噴射は点火の直前に行われる。これは、燃焼モードの要件を燃料噴射プロファイルの生成に含めるために、例えば吸気行程中及び圧縮行程の前半中に噴霧浸透長閾値をゼロに設定することができることを意味する。
【0023】
中間負荷であっても希薄燃焼を利用するために、機関マップのこの領域では、均質なシリンダ給気と層状のシリンダ給気との混合気による希薄燃焼が使用される。均質な給気を達成するために、吸気行程中に1回以上の噴射が行われる。次いで、層状混合気は、点火直前までの圧縮行程の後半の間に1回以上の更なる噴射によって生成される。したがって、噴霧浸透長閾値は、例えば、圧縮行程の前半の間、ゼロに設定されてもよい。
均質燃焼の場合、圧縮行程中の噴射は不要であるため、例えば圧縮行程中に、噴霧浸透長閾値をゼロに設定することができる。
【0024】
一態様によれば、噴射される燃料の噴霧浸透長は、燃料圧並びに燃焼チャンバ内の気圧及び温度などの全ての関連する影響を考慮する物理モデルを使用して計算することができる。このモデルは、次式(3)で表され、ここで、kは、燃焼チャンバ内の燃料圧pcyl、温度Tcyl及びガス濃度xcylに依存する較正パラメータを示し、Dpは燃料圧力とシリンダ圧力の差を示し、tは噴射開始からの時間を示し、a、bは圧力差Dpと時間tの重み付け係数を示す。
【0025】
【0026】
噴霧浸透長を決定するために物理モデルを使用することは、マップベースの較正と比較して、計算のロバスト性及び外挿挙動を改善する。
【0027】
一態様によれば、噴射の開始は、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値を超えるときに、逆算によって決定されてもよい。噴射の開始と、噴霧が噴霧浸透長閾値を達成した時間との間の期間/距離は、マップを使用することによって識別されてもよく、マップは、インジェクタ噴霧実験からの試験データを介して事前に較正されてもよい。
【0028】
一態様によれば、噴射信号をゼロにリセットすることによる立ち下がりエッジと、噴射信号を正の値に設定することによる後続の立ち上がりエッジとの間の燃料噴射プロファイルの期間は、所定の時間閾値よりも長くてもよい。換言すれば、1つの噴射の終了と次の噴射の開始との間の距離は、所定の時間閾値よりも長くてもよい。所定の時間閾値は、インジェクタの滞留時間であってもよく、又は必要に応じて、2つの噴射事象間の距離を更に増加又は減少させるために、追加のオフセットが滞留時間に加えられてもよい。
【0029】
一態様によれば、噴射サイクルの終了は、内燃機関の点火タイミングに関連する所定の燃焼モードに応じて決定されてもよい。上記で説明したように、特許請求される主題の意味の範囲内の噴射サイクルの持続時間は、燃焼モードに依存し得る。最適な点火性及び燃焼安定性を確保するために、噴射サイクルの終了は、点火タイミングに関連して更に決定されてもよい。これは、点火タイミングがシフトする場合、最後の噴射の終了と点火との間の一定の距離を維持するために、完全な噴射プロファイルも自動的にシフトされることを意味する。
【0030】
一態様によれば、燃料噴射プロファイルは、噴射サイクルの終了時に開始する逆算によって生成される。最初として決定された立ち上がりエッジは、最後の噴射の終了を特徴付けることができ、最後として決定された立ち下がりエッジは、第1の噴射の開始を特徴付けることができる。換言すれば、噴射サイクルの終了時に開始する逆算により、噴射信号の第1の設定(第1の立ち上がりエッジ)は、最後の噴射の終了を表すことができ、噴射信号の最後の立ち下がりエッジは、第1の噴射の開始を表すことができる。噴射信号の最後の立ち下がりエッジは、以下に説明するように、所定の燃料量に応じて決定されてもよい。
【0031】
一態様によれば、以前に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて計算された燃料量/燃料の総量は、噴射信号がリセットされるたびに決定される。第1に、燃料噴射プロファイルの最後の立ち下がりエッジと前の立ち上がりエッジとの間の期間に対応する噴射の燃料量/燃料の数量が、物理的油圧モデルを使用して計算され得る。換言すれば、噴射期間が最後の立ち下がりエッジと前の立ち上がりエッジとの間の時間によって定義される最後の噴射の燃料量を計算することができる。次いで、計算された燃料量は、以前に計算された燃料量の合計が所定の燃料量を超えるまで、以前に計算された燃料量の合計に加算され得る。
【0032】
物理学に基づくモデルを使用して、各噴射事象の質量流量(MFR)を計算する。モデルは、以下の式(4)によって表すことができる。
【0033】
【0034】
式(4)において、Cdはインジェクタの流量係数を示し、Aはインジェクタの開口面積を示し、rfは燃料濃度を示し、Dpは燃料圧と筒内圧との差を示す。前に決定された噴射期間にわたって質量流量(MFR)を積分することによって、各噴射の燃料量を計算することができる。
【0035】
一態様によれば、第1の噴射の開始は、以前に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて計算された燃料量と所定の燃料量との間の差に基づいて決定することができる。
【0036】
上述したように、特許請求される方法は、燃料の総量(全ての単一噴射事象の合計)が、例えばラムダ又はトルク制御から要求される所定の燃料量を満たすことを確実にする。したがって、この方法は、各計算ステップの後に燃料の総量をチェックし、所定の燃料量が達成された場合に計算を停止する。このようにして、最も早い噴射事象のみが、所定の燃料量の調整/制御に使用される。これは、最も早い噴射事象が点火事象から最大の距離を有し、したがって点火挙動に対する妨害を引き起こさないので、有益である。
【0037】
一態様によれば、燃料噴射プロファイルが決定される噴射サイクルの所定の時点は、内燃機関のクランクシャフト角に対して等距離間隔で配置される。
等距離の間隔は、計算リソース及び要求される計算精度に応じて、例えば、1°CA、0.5°CA、0.1°CAであってもよい。換言すれば、本方法は、クランク角分解計算に基づいて実行され、これは、本方法が機関速度から独立していることを意味する。
【0038】
特許請求される主題は更に、上述の方法又はその態様を実行するように構成された、内燃機関のための制御デバイス、及び制御デバイスを備える内燃機関を含む。これに関連して、「制御デバイスを備える」は、制御デバイスが内燃機関に組み込まれていてもよいし、択一的に、内燃機関から離れた車両内の位置に配置されていてもよく、制御デバイスと内燃機関とは、1つ以上の信号線路を介して接続されていてもよいことを意味する。
【0039】
更に、特許請求される主題は、コンピュータ又はコンピューティングユニットによって実行されると、コンピュータに上述の方法又はその態様を実行させる命令を含むメモリに記憶可能なコンピュータプログラム製品、並びにコンピュータによって実行されると、コンピュータに当該方法又はその態様を実行させる命令を含むコンピュータ可読[記憶]媒体を含む。
【0040】
要約すると、特許請求される主題は、モデルベースの自動的に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて複数の噴射を実行することによって、内燃機関の排出を低減し、同時に、その較正労力を低減することを可能にする。更に、燃料噴射プロファイルを生成する際に、多重噴射のための異なる燃焼モードの要件が考慮される。
【0041】
以下では、添付の例示的かつ概略的な図面を参照して、少なくとも1つの好ましい例に基づいて、主題を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】単シリンダの火花点火式内燃機関の一例を概略的に示す図である。
【
図2】特許請求される方法による噴射プロファイルの生成を概略的に示す。
【
図3】特許請求される方法の例示的な方法ステップを説明するフローチャートを示す。
【
図5】特許請求される方法による、それぞれの燃焼モードに応じた例示的な異なる噴霧長浸透閾値を示す。
【
図6】特許請求される方法による異なる噴射プロファイルを使用して達成された排出削減の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1には、特許請求される主題の背景を説明するために、火花点火式単シリンダ燃焼機関の一例が概略的に示されている。特許請求される主題は、単シリンダ機関に限定されず、任意の数のシリンダを有する機関に適用され得ることが、当業者には明らかである。
【0044】
図示された単シリンダ機関は、シリンダ壁1aによって形成された燃焼チャンバ1と、ピストン2の頂部と、吸気弁3、排気弁4、燃料インジェクタ5及び点火プラグ6が配置されたシリンダヘッド(図示せず)とを備える。ピストン2は、下死点BTCから上死点TDCまでピストンストロークsだけシリンダ内を移動することができる。
【0045】
燃料インジェクタ5及び点火プラグ6は、制御デバイス7に電気的に接続されている。制御デバイス7は、特許請求される方法に従って燃料噴射プロファイルを決定し、それをインジェクタ5に送信することができる。また、制御デバイス7は、点火プラグ6の点火タイミングを制御してもよい。制御デバイス7は、内燃機関に組み込まれていてもよいし、択一的に、内燃機関から離れた車両内の位置に配置されていてもよく、制御デバイス7と内燃機関とは、1つ以上の信号線路を介して接続されていてもよい。制御デバイス7は、機関制御デバイス(ECU)であってもよいし、1つ以上の別個の制御デバイスであってもよい。
【0046】
図1において、ピストンはBDCに位置している。しかしながら、
図1から、噴射が点火タイミングの近くで行われる場合である、ピストンがTDCの近くに位置する場合には、ピストンの濡れを回避するために、短い燃料浸透長しか許容されないことが導き出され得る。
【0047】
壁及びピストンの濡れの現象は、結果として生じる噴霧浸透長閾値SPL
thres,0に関連して
図2(a)に概略的に示されている。ピストンがBDCの近くに位置している限り、ピストンの濡れは生じないが、壁の濡れが生じる可能性があり、これは、上で説明したように、インジェクタの最適化された噴霧標的化によって防止することができる。ピストンが上死点に近づくにつれて、噴霧は最初にピストンの外側に衝突することができ、ピストンが上死点に近づき続けるにつれて、衝突点はピストン中心に向かって移動することができる。ピストン表面への燃料の上述の衝突は、式(2)によって表される幾何学的噴霧浸透長閾値SPL
thres,0を規定する。式(2)のパラメータは
図2(b)に示されており、
図2(b)は、ピストン2、点火プラグ6、及びインジェクタ5を有する燃焼チャンバ1の例を概略的に示している。
図2(b)に見られるように、最大許容噴霧浸透長SPL
thres,0は、噴霧ジェット7の中心軸線とシリンダの中心軸線との間の角度αと、インジェクタの噴霧孔とピストンの頂部との間の距離dとに依存し、距離dはピストンストロークsに依存する。
【0048】
図2(c)は、段階的に計算された噴霧浸透長SPLと、複数の噴射の噴霧浸透長をもたらす幾何学的噴霧計算長閾値SPL
thres,0との間の比較の例を示す。図示された例は、点火タイミングが点火上死点TDC
Fの後に行われる、触媒加熱を伴う燃焼モードに関する。噴霧浸透長SPLの計算は、触媒加熱を加速するために必要とされる後期複数回噴射の燃料噴射プロファイルを決定するために点火タイミングで開始する。
【0049】
図2(d)は、式(3)によるモデルによる噴霧浸透長SPLcalculatedが実験結果と非常に良好に一致することを示し、実線はモデルデータを示し、破線は実験データを示す。更に、
図2(d)に基づいて、逆算を介して噴射の開始をどのように決定するかについて示すことができる。最初に、油圧噴射の開始φ
start,kと、噴霧が特定の噴霧長SPL
kを達成した現在位置φ
actとの間の差Δφが識別される。位置φ
actは、
図2(d)では、SPL曲線が値SPL
kに達した位置でx軸線と交差する垂直破線によって示されている。油圧噴射φ
start,kの開始もまた、SPL曲線が上昇し始める位置でx軸線と交差する垂直破線によって示されている。2つの位置の間の差は、距離Δφである。例えば、当該距離Δφは、インジェクタ噴霧実験からの試験データを介して以前に較正されたマップ、例えば、Δφ=map(SPL
k、RPなど)を使用することによって識別されてもよい。次いで、現在位置φ
actual及び距離Δφの知識に基づいて、例えば、現在位置φ
actualから距離Δφを減算することによって、噴射の開始を計算することができ、すなわち、φ
start、k=φ
actual-Δφである。
【0050】
図2(e)は、
図2(c)に示した許容噴霧浸透長を計算した結果得られる後期多段噴射のタイミング及び噴射量を概略的に示している。触媒加熱を改善するために、TDC付近の領域に6回の噴射を含む燃料噴射プロファイルが示されている。燃料噴射プロファイルは、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値以下である噴射サイクルの所定の時点で噴射信号S
injを正の値に設定し、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値を超える噴射サイクルの所定の時点で噴射信号をゼロにリセットすることによって生成されてもよい。
図2(f)から、式(4)によるマス燃料率MFRcalculatedも実験結果と非常によく一致することが導き出され得る。
【0051】
図3は、例として特許請求される方法のプロセスステップを説明するフローチャートを示す。第1のステップS100において、式(2)に従って噴霧浸透閾値SPL
thresを決定することができる。加えて、
図5と組み合わせて以下に記載されるように、燃焼モードが考慮されてもよい。ステップS101では、噴射カウンタkがゼロに設定され、それにより、計算を開始することができるクランク角jが、最新の可能なクランク角j
latest、すなわち噴射サイクルの終了であるクランク角に設定される(S102)。噴射カウンタk>0の場合、次の噴射を決定するためのクランク角は、現在のクランク角j
actからの距離がインジェクタの滞留時間に相当するクランク角jに設定されてもよい。これにより、2つの噴射の間の構成要素に関連する距離が維持されることが保証される。2つの連続する噴射の間のクランク角を増加又は減少させることも可能である。ステップS104では、計算ステップ間等距離間隔カウンタをi=1に設定し、ステップS105では、等距離間隔を1°CAとしたときのクランク角度j-1、すなわち、現在のクランク角度よりも前のクランク角度における噴霧浸透長を計算する。
【0052】
計算された噴霧浸透長SPLkが噴霧浸透長閾値SPLthresより小さい場合、噴射信号Sinjは1に設定され(S106)、方法は、噴霧浸透長をそこで計算するために、ステップS106を介して次のクランクに進む。
【0053】
計算した噴霧浸透長SPL
kが噴霧浸透長閾値SPL
thres以上である場合には、現在の噴射についての噴霧浸透長計算を終了し、噴射信号S
injを0に設定する(S108)。続いて、現在の噴射事象の開始が、計算された噴霧浸透長SPL
kに基づいて決定される。現在の噴射事象の開始を計算するために、モデルを使用して、油圧噴射φ
start,kの開始と、好ましくは所定の値などである特定の噴霧長SPL
kを噴霧が達成した現在位置φ
actとの間の距離Δφを返し、使用されるモデルは、噴射器噴霧実験からの試験データを介して較正されるマップベースの構造とすることができる。次に、油圧噴射開始SOI
kは、
図2(d)に関連して説明した式、φ
start,k=φ
actual-Δφ(S109)によって決定することができる。全油圧噴霧期間は既知であるので、燃料量Q
model,kは、先に説明したように、噴射期間に基づいて式(4)に従って計算することができる(S110)。計算された燃料量Q
model,kがインジェクタの最小燃料量Q
minより小さい場合、噴射は生成されず、方法は、ステップS106を介して次のクランク角に進む。
【0054】
計算された燃料量Qmodel,kがインジェクタの最小燃料量Qminよりも大きい場合、計算された燃料量Qmodel,kは、以前に計算された燃料量に加算され、計算された燃料量の合計が所定の燃料量Qtotal以上であるかどうかがチェックされる。
【0055】
計算された燃料量の合計が所定の燃料量Qtotalよりも少ない場合、方法は、次の噴射を計算するためにステップS111に進む。そうでなければ、燃料噴射プロファイルの生成は終了する。
【0056】
図3に例示的に記載された特許請求される方法は、後続の噴射サイクルにおいて噴射され得る完全な燃料噴射プロファイルの自動生成を可能にする。この方法は、逆算を実行し、様々な燃焼モードの要件と、インジェクタによって課される制約とを考慮に入れる。
【0057】
図4には、機関マップ全体にわたる異なる燃焼モードの分布が示されている。低負荷及び低速度では、燃料消費量を低減するために、全体の空燃比がl>1である層状燃焼モードC3を実行することができる。中間の負荷及び速度では、いわゆる均質層状燃焼モードC2を実行して、希薄混合気の利点をより高い負荷及び速度に拡張することができる。しかしながら、高負荷及び高速では、要求される機関出力を達成するために、均質燃焼モードC1が必要とされ得る。
【0058】
図5は、各燃焼モードC1~C3に対応する要求燃料噴射プロファイルと、その結果得られる噴霧浸透長閾値SPLの一例を示している。各燃料噴射プロファイルは、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値以下である噴射サイクルの時点で噴射信号S
injを正の値、例えば1に設定し、計算された噴霧浸透長が噴霧浸透長閾値を超える噴射サイクルの時点で噴射信号をゼロにリセットすることによって生成することができる。燃焼モードC1~C3のいずれかに加えて、機関のコールドスタート後に触媒を加熱するモードC4が実行されてもよく、これは、燃料噴射プロファイルを生成するときに追加的に考慮されなければならない。
【0059】
図示の例では、機関を均質モードで動作させるときに、吸気行程中に3回の噴射が行われる。最後の噴射はBDCで終了するので、噴霧浸透長閾値SPLthres,C1はBDC後にゼロに設定することができる。これに対して、図示の例では、均質層状燃焼モードC2では、吸気行程中に2回の噴射が行われ、圧縮行程中に3回の噴射が行われる。最新の噴射は、点火タイミングの直前、例えば点火タイミングの直前に終了し、これは、噴霧浸透長閾値SPLthres,C2が圧縮行程の前半においてのみゼロに設定され得ることを意味する。層状燃焼モードC3に関しては、圧縮行程中に4回の噴射が行われ、その結果、吸気行程中及び圧縮行程の開始時にゼロに設定することができる噴霧浸透長閾値SPLthres,C3が得られる。触媒加熱モードに関しては、1回以上の噴射が、TDCの後、遅い点火タイミングの直前、例えば点火タイミングの直前に実行される。これは、選択された燃焼モードに応じて他の燃料噴射モードの1つと組み合わせることができる触媒加熱のための別個の燃料噴射プロファイルを生成することができることを意味する。
【0060】
異なる燃焼モードに関して幾何学的噴霧浸透長閾値SPLthres,0を修正することによって、各燃焼モードの要件を具体的に考慮することが可能である。更に、計算された噴霧浸透長SKLを噴霧浸透長閾値SKLthresと比較することによって、潜在的な噴射が予想される機関作動サイクルの領域においてのみ、計算労力を大幅に低減することができる。
【0061】
図6(a)、
図6(b)は、特許請求される方法による異なる噴射プロファイルを使用して達成される排出低減の例を示す。
図6(a)では、3回及び5回の噴射を含む複数回噴射についての比有効燃料消費量be、窒素酸化物NOx、炭化水素HC、及び微粒子数が、1回噴射を使用したときに測定された値と比較して示されている。
図6(b)は、噴射電流によって表される、種々の噴射のタイミング及び持続時間を示す。シングル噴射は吸気行程中に行われ、3回のマルチ噴射も吸気行程中に行われる。一方、5回の非常に短い多重噴射は、吸気行程と圧縮行程との間に分配され、吸気行程中に3回の噴射が行われ、圧縮行程中に2回の噴射が行われる。5回の噴射のうち最後の噴射は、点火タイミングの少し前に行われる。
【0062】
図6(a)から、特許請求される方法に従って燃料噴射プロファイルを生成することは、燃料消費量に影響を及ぼすことなく排出を低減するのに役立つことを導き出すことができる。特に、炭化水素HC及び粒子数は、特許請求の範囲に記載された主題に従って複数回の噴射を実施するときに著しく低減することができる。窒素酸化物NOxは、3回の噴射と5回の噴射とでほぼ同じであるが、
図6(b)に示す噴射プロファイルによれば、5回の噴射で炭化水素HC及び粒子数PNを更に低減することができる。
【0063】
再び要約すると、特許請求される主題は、モデルベースの自動的に生成された燃料噴射プロファイルに基づいて複数の噴射を実行することによって、内燃機関の排出を低減し、同時に、その較正労力を低減することを可能にする。更に、燃料噴射プロファイルを生成する際に、多重噴射のための現在の燃焼プロセスの要件が考慮され、これは、計算労力を大幅に低減するのに役立つ。
【0064】
当業者によって理解されるように、本明細書で上述された本開示及び添付の図面は、方法、装置(デバイス、機械、システム、コンピュータプログラム製品、及び/又は任意の他の装置を含む)、又は前述のものの組合せとして具現化され得る。
【0065】
したがって、本開示の実施形態は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又は本明細書で一般に「システム」と呼ばれ得るソフトウェア態様とハードウェア態様とを組み合わせた実施形態の形態をとることができる。更に、本開示の実施形態は、媒体内に具現化されたコンピュータ実行可能プログラムコードを有するコンピュータ可読媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。
【0066】
矢印は、2つ以上のエンティティを含む通信、転送、又は他のアクティビティを表すために図面において使用され得ることに留意されたい。両端矢印は、一般に、アクティビティが両方向に発生し得ることを示す(例えば、コマンド/要求が一方向にあり、対応する返答が他の方向にある、又はピアツーピア通信がいずれかのエンティティによって開始される)が、いくつかの状況では、アクティビティは必ずしも両方向に発生しないことがある。
【0067】
シングルエンドの矢印は、一般に、排他的に又は主に一方向の活動を示し得るが、いくつかの状況では、そのような方向性の活動は、実際には、両方向の活動(例えば、送信者から受信者へのメッセージ及び受信者から送信者への肯定応答、又は転送前の接続の確立及び転送後の接続の終了)を伴い得ることに留意されたい。したがって、特定の活動を表すために特定の図面で使用される矢印のタイプは、例示的なものであり、限定するものと見なされるべきではない。
【0068】
方法及び装置のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して、並びに方法及び/又は装置によって生成されたグラフィカルユーザーインターフェースのいくつかのサンプルビューを参照して、態様について上記で説明した。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック、及び/又はフローチャート図及び/又はブロック図内のブロックの組合せ、並びにグラフィカルユーザーインターフェースは、コンピュータ実行可能プログラムコードによって実装され得ることが理解されるであろう。
【0069】
コンピュータ実行可能プログラムコードは、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行されるプログラムコードが、流れ図、ブロック図の1つ以上のブロック、図、及び/又は書かれた説明において指定された機能/行為/出力を実装するための手段を作成するように、特定の機械を製造するために、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供され得る。
【0070】
これらのコンピュータ実行可能プログラムコードはまた、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置に特定の方法で機能するように指示することができるコンピュータ可読メモリに記憶されてもよく、その結果、コンピュータ可読メモリに記憶されたプログラムコードは、フローチャート、ブロック図のブロック(複数可)、図、及び/又は書かれた説明において指定された機能/動作/出力を実装する命令手段を含む製品を生成する。
【0071】
コンピュータ実行可能プログラムコードはまた、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置にロードされて、一連の動作ステップをコンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行させて、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行されるプログラムコードが、フローチャート、ブロック図のブロック(複数可)、図、及び/又は書かれた説明において指定された機能/動作/出力を実装するためのステップを提供するように、コンピュータ実装プロセスを生成してもよい。あるいは、一実施形態を実行するために、コンピュータプログラムによって実装されるステップ又は行為を、オペレータ又は人間によって実装されるステップ又は行為と組み合わせることができる。
【0072】
「サーバ」及び「プロセッサ」などの用語は、本明細書では、いくつかの実施形態で使用され得るデバイスを説明するために使用され得、コンテキストが別段に要求しない限り、任意の特定のデバイスタイプに限定するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、デバイスは、限定はしないが、ブリッジ、ルータ、ブリッジルータ(ブルータ)、スイッチ、ノード、サーバ、コンピュータ、アプライアンス、又は他のタイプのデバイスを含み得る。そのようなデバイスは、典型的には、通信ネットワークを経由して通信するための1つ以上のネットワークインターフェースと、それに応じてデバイス機能を果たすように構成される、プロセッサ(例えば、メモリ及び他の周辺機器及び/又は特定用途向けハードウェアを伴うマイクロプロセッサ)とを含む。
【0073】
通信ネットワークは、概して、パブリック及び/又はプライベートネットワークを含み得、ローカルエリア、ワイドエリア、メトロポリタンエリア、ストレージ、及び/又は他のタイプのネットワークを含み得、アナログ技術、デジタル技術、光学技術、ワイヤレス技術(例えば、Bluetooth)、ネットワーキング技術、及びインターネットワーキング技術を含むが、決してそれらに限定されない通信技術を採用し得る。
【0074】
デバイスは、通信プロトコル及びメッセージ(例えば、デバイスによって作成、送信、受信、記憶、及び/又は処理されたメッセージ)を使用し得、そのようなメッセージは、通信ネットワーク又は媒体によって搬送され得ることにも留意されたい。
【0075】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本開示は、任意の特定の通信メッセージタイプ、通信メッセージフォーマット、又は通信プロトコルに限定されるものと解釈されるべきではない。したがって、通信メッセージは、一般に、限定はしないが、フレーム、パケット、データグラム、ユーザーデータグラム、セル、又は他のタイプの通信メッセージを含み得る。
【0076】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、特定の通信プロトコルへの言及は例示的なものであり、代替実施形態は、必要に応じて、そのような通信プロトコルの変形(例えば、時々行われ得るプロトコルの修正又は拡張)、あるいは知られているか又は将来開発されるかのいずれかの他のプロトコルを採用し得ることを理解されたい。
【0077】
論理フローは、様々な態様を実証するために本明細書で説明され得、本開示を任意の特定の論理フロー又は論理実装形態に限定するものと解釈されるべきではないことにも留意されたい。記載された論理は、全体的な結果を変更することなく、異なる論理ブロック(例えば、プログラム、モジュール、機能、又はサブルーチン)に分割されてもよい。
【0078】
多くの場合、論理要素は、全体的な結果を変更することなく、追加され、修正され、省略され、異なる順序で実行され、又は異なる論理構成(例えば、論理ゲート、ループプリミティブ、条件付き論理、及び他の論理構成)を使用して実装され得る。
【0079】
本開示は、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ、又は汎用コンピュータ)と共に使用するためのコンピュータプログラムロジック、プログラマブルロジックデバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は他のPLD)と共に使用するためのプログラマブルロジック、ディスクリート部品、集積回路(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC))、又はそれらの任意の組合せを含む任意の他の手段を含むがこれらに限定されない多くの異なる形態で具現化されてもよい。記載される機能の一部又は全てを実装するコンピュータプログラムロジックは、典型的には、コンピュータ実行可能形式に変換され、コンピュータ可読媒体などに記憶され、オペレーティングシステムの制御下でマイクロプロセッサにより実行されるコンピュータプログラム命令のセットとして実装される。説明される機能性の一部又は全部を実装するハードウェアベースの論理は、1つ以上の適切に構成されたFPGAを使用して実装されてもよい。
【0080】
本明細書で前述した機能の全て又は一部を実装するコンピュータプログラムロジックは、ソースコード形式、コンピュータ実行可能形式、及び様々な中間形式(例えば、アセンブラ、コンパイラ、リンカ、又はロケータによって生成される形式)を含むがこれらに限定されない様々な形式で具現化されてもよい。
【0081】
ソースコードは、様々なオペレーティングシステム又は動作環境と共に使用するための様々なプログラミング言語(例えば、オブジェクトコード、アセンブリ言語、又はFortran、C、C++、JAVA(登録商標)、若しくはHTMLなどの高水準言語)のいずれかで実装される一連のコンピュータプログラム命令を含むことができる。ソースコードは、様々なデータ構造及び通信メッセージを定義し、使用することができる。ソースコードは、(例えば、インタープリタを介して)コンピュータ実行可能形式であってもよく、又はソースコードは、(例えば、トランスレータ、アセンブラ、又はコンパイラを介して)コンピュータ実行可能形式に変換されてもよい。
【0082】
本開示の実施形態の動作を実行するためのコンピュータ実行可能プログラムコードは、ジャバ(オブジェクト指向)、パール(Perl)、スモールトーク(Smalltalk)、C++などのような、スクリプト又は非スクリプトプログラム言語で書かれてもよい。しかしながら、実施形態の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、「C」プログラム言語又は同様のプログラム言語などの従来の手続き型プログラム言語で書かれてもよい。
【0083】
本明細書で前に説明した機能の全部又は一部を実装するコンピュータプログラム論理は、シングルプロセッサ上で異なる時間に(例えば、同時に)実行され得るか、あるいは複数のプロセッサ上で同じ又は異なる時間に実行され得、単一のオペレーティングシステムプロセス/スレッドの下で、又は異なるオペレーティングシステムプロセス/スレッドの下で実行され得る。
【0084】
したがって、「コンピュータプロセス」という用語は、一般に、異なるコンピュータプロセスが同じ又は異なるプロセッサ上で実行されるかどうかにかかわらず、及び異なるコンピュータプロセスが同じオペレーティングシステムプロセス/スレッド又は異なるオペレーティングシステムプロセス/スレッドの下で実行されるかどうかにかかわらず、コンピュータプログラム命令のセットの実行を指すことができる。
【0085】
コンピュータプログラムは、半導体メモリデバイス(例えば、RAM、ROM、PROM、EEPROM、又はフラッシュプログラマブルRAM)、磁気メモリデバイス(例えば、ディスケット又は固定ディスク)、光メモリデバイス(例えば、CD-ROM)、パーソナルコンピュータカード(例えば、PCカード)、又は他のメモリデバイスのような有形の記憶媒体に永久的又は一時的に任意の形態(例えば、ソースコード形態、コンピュータ実行可能形態、又は中間形態)で固定することができる。
【0086】
コンピュータプログラムは、アナログ技術、デジタル技術、光学技術、無線技術(例えば、Bluetooth)、ネットワーキング技術、及びインターネットワーキング技術を含むが、決してそれらに限定されない、種々の通信技術のうちのいずれかを使用して、コンピュータに伝送可能な信号内に任意の形態で固定されてもよい。
【0087】
コンピュータプログラムは、印刷又は電子文書(例えば、シュリンクラップされたソフトウェア)を伴うリムーバブル記憶媒体として任意の形態で配布されてもよく、コンピュータシステム(例えば、システムROM又は固定ディスク)に事前にロードされてもよく、又は通信システム(例えば、インターネット又はワールドワイドウェブ)を介してサーバ又は電子掲示板から配布されてもよい。
【0088】
本明細書で上述した機能の全て又は一部を実装するハードウェアロジック(プログラマブルロジックデバイスと共に使用するためのプログラマブルロジックを含む)は、従来の手動の方法を使用して設計されてもよく、又はコンピュータ支援設計(CAD)、ハードウェア記述言語(例えば、VHDL又はAHDL)、又はPLDプログラム言語(例えば、PALASM、ABEL、又はCUPL)などの様々なツールを使用して電子的に設計、捕捉、シミュレート、又は文書化されてもよい。
【0089】
任意の適切なコンピュータ可読媒体を利用することができる。コンピュータ可読媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体のシステム、装置、デバイス、又は媒体とすることができるが、これらに限定されない。
【0090】
コンピュータ可読媒体のより具体的な例は、1つ以上のワイヤを有する電気接続、又はポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD-ROM)、又は他の光又は磁気記憶デバイスなどの他の有形記憶媒体を含むが、これらに限定されない。
【0091】
プログラマブルロジックは、半導体メモリデバイス(例えば、RAM、ROM、PROM、EEPROM、又はフラッシュプログラマブルRAM)、磁気メモリデバイス(例えば、ディスケット又は固定ディスク)、光メモリデバイス(例えば、CD-ROM)、又は他のメモリデバイスなどの有形の記憶媒体に永久的又は一時的に固定されてもよい。
【0092】
プログラマブル論理は、アナログ技術、デジタル技術、光学技術、無線技術(例えば、Bluetooth)、ネットワーキング技術、及びインターネットワーキング技術を含むが、決してそれらに限定されない、種々の通信技術のいずれかを使用して、コンピュータに伝送可能である信号内に固定されてもよい。
【0093】
プログラマブルロジックは、印刷又は電子文書(例えば、シュリンクラップされたソフトウェア)を伴うリムーバブル記憶媒体として配布されてもよく、コンピュータシステムに(例えば、システムROM又は固定ディスク上に)プリロードされてもよく、又は通信システム(例えば、インターネット又はワールドワイドウェブ)を介してサーバ又は電子掲示板から配布されてもよい。当然ながら、いくつかの態様は、ソフトウェア(例えば、コンピュータプログラム製品)とハードウェアの両方の組合せとして実装され得る。更に他の実施形態は、完全にハードウェアとして、又は完全にソフトウェアとして実装されてもよい。
【0094】
いくつかの例示的な態様について説明し、添付の図面に示したが、そのような態様は例示的なものであり、上記の段落に記載したものに加えて、様々な他の変更、組合せ、省略、修正及び置換が可能であるので、実施形態は、図示及び説明した特定の構成及び配置に限定されないことを理解されたい。
【0095】
当業者は、今説明した実施形態の様々な適応、修正、及び/又は組合せが構成され得ることを諒解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本開示は、本明細書に具体的に記載されたもの以外で実施され得ることが理解されるべきである。例えば、明示的に別段の定めをした場合を除き、本明細書で説明されるプロセスのステップは、本明細書で説明される順序とは異なる順序で実行されてもよく、1つ以上のステップは、組み合わされ、分割され、又は同時に実行されてもよい。
【0096】
当業者はまた、本開示を考慮して、本明細書に説明される異なる実施形態又は側面が、他の実施形態を形成するように組み合わせられ得ることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0097】
1 燃焼チャンバ、シリンダ
2 ピストン
3 吸気弁
4 排気弁
5 インジェクタ
6 点火プラグ
7 噴霧ジェット
【国際調査報告】