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特表2024-536833高出力ホルミウム添加ファイバー光学レーザ用のポンピングシステム
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  • 特表-高出力ホルミウム添加ファイバー光学レーザ用のポンピングシステム 図1
  • 特表-高出力ホルミウム添加ファイバー光学レーザ用のポンピングシステム 図2
  • 特表-高出力ホルミウム添加ファイバー光学レーザ用のポンピングシステム 図3
  • 特表-高出力ホルミウム添加ファイバー光学レーザ用のポンピングシステム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】高出力ホルミウム添加ファイバー光学レーザ用のポンピングシステム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20241001BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/0941
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518519
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 ES2021070687
(87)【国際公開番号】W WO2023047000
(87)【国際公開日】2023-03-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513283589
【氏名又は名称】ウニベルシタット デ バレンシア
(71)【出願人】
【識別番号】524109360
【氏名又は名称】セントロ、デ、インベスティガシオネス、エン、オプティカ、ア.セ.
【氏名又は名称原語表記】Centro de Investigaciones en Optica A.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】ユーリー、バルメンコフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、キリヤノフ
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル、ビセンテ、アンドレス、ボウ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、ルイス、クルス、ムニョス
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、ディエス、クレマデス
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ、シルベストレモラ
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AF01
5F172AF06
5F172AM08
5F172DD01
5F172EE12
5F172EE15
5F172NQ34
(57)【要約】
コアレスファイバー及び光吸収体と、イッテルビウムファイバーレーザ共振器を形成する、1.135ミクロンの高反射ブラッググレーティング及び低反射ブラッググレーティングと、イッテルビウムファイバーをポンピングする、複数の高出力915nm半導体レーザダイオードと、2.07ミクロンの高反射ブラッググレーティング(HR-FBG)と、2.07ミクロンの高反射ブラッググレーティングを用いたホルミウム添加ファイバー共振器を形成するホルミウム添加ファイバー(HDF)によって形成された2ミクロンレーザと、で構成される1.13ミクロンのポンピング手段を備え、複数の915nm半導体レーザダイオードの915nmの各光子は、1.13ミクロンの光子に変換され、熱の形で追加のエネルギーを放出する、高出力ホルミウム添加ファイバーレーザ用のポンプシステムが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムであって、
同軸ダブルクラッディングイッテルビウムファイバー(DC-YDF)レーザの波長での光の反射を除去するように構成された、コアレスファイバー及び光吸収体と、
イッテルビウムファイバーレーザ共振器を形成する、1.135ミクロンの高反射(100%、HR-FBG)ブラッググレーティング及び低反射(20%~40%、LR-FBG)ブラッググレーティングと、ポンプカップラを介して同軸ダブルクラッディングイッテルビウムファイバー(DC-YDF)をポンピングする、複数の高出力915nm半導体レーザダイオードと、2.07ミクロンの高反射ブラッググレーティング(HR-FBG)と、
ホルミウム添加光ファイバー(HDF)で形成された2ミクロンレーザであって、前記ホルミウム添加光ファイバー及び前記2.07ミクロンの高反射ブラッググレーティングが、最終的な2ミクロン発振段を形成するホルミウム添加ファイバーレーザ共振器を形成する、2ミクロンレーザと、
を備え、
前記複数のレーザダイオードの915nmの複数の光子は、1.13ミクロンの光子に変換され、熱の形で追加のエネルギーを放出し、
前記追加のエネルギーは、前記ダブルクラッディングイッテルビウム添加ファイバー(DC-YDF)のコア内に直接放出され、前記ファイバーの加熱を前記ファイバー自体のコア内で行い、高出力にて前記ダブルクラッディングイッテルビウムファイバー(DC-YDF)の加熱を低減するか、又は中低出力について前記ダブルクラッディングイッテルビウムファイバー(DC-YDF)の加熱を不要とする、
ことを特徴とするポンピングシステム。
【請求項2】
前記ファイバーに対する前記システムの他の部分の断熱及び冷却の必要性を単純化することを更に特徴とする、請求項1に記載の光ファイバーレーザ用のポンピングシステム。
【請求項3】
高出力にて40℃未満の追加の加熱を用いることができ、前記追加の加熱は、電子的観点からはより単純で、2ミクロンレーザの電子システム及び光学システムの他の部分との両立もより容易であることを更に特徴とする、請求項1に記載の光ファイバーレーザ用のポンピングシステム。
【請求項4】
複数の915nmレーザダイオードが他の変更を加えずに用いられる場合、わずか35℃で50Wレベルに達し、38℃で58Wを超えることができることを更に特徴とする、請求項1に記載の光ファイバーレーザ用のポンピングシステム。
【請求項5】
前記複数の半導体ダイオードの必要電力が30W未満である場合、複数の915nmダイオードを用いることで室温での動作が可能となることを更に特徴とする、請求項1に記載の光ファイバーレーザ用のポンピングシステム。
【請求項6】
可視光領域における透明プラスチック材料の加工、生物医学、レーザメス、アクティブビジョンシステム、防衛、LIDAR及び汚染監視における用途のための、請求項1から5のいずれか一項に記載のポンピングシステムの使用。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のポンピングシステムを備えることを特徴とする、ホルミウム添加高出力光ファイバーレーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域における透明プラスチック材料の加工、生物医学、アクティブビジョンシステム、防衛及び汚染監視の技術分野に関する。特に、本発明は、レーザがポンピングされるファイバーの加熱が簡略化されるか不要となり、装置の他の部分の断熱及び/又は冷却の必要性が低減又は排除される高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ(high power holmium-doped fiber optic laser)用のポンピングシステム(pumping system)に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野でよく知られているように、光ファイバー技術で構築された2ミクロンレーザでは、ツリウム添加ファイバー又はホルミウム添加ファイバーのいずれかが使用されている。ホルミウム添加ファイバーを使用する場合、このファイバーはイッテルビウムで構築された1.13ミクロンの補助レーザでポンピングすることができ、ツリウム添加ファイバーを使用する場合よりも有効である。この1.13ミクロンのイッテルビウムレーザはポンプを構成し、数十ワットの出力で正しく動作させるには、所望の1.13ミクロン以外の短波長での寄生レーザ発振を回避するためにファイバーを加熱する必要がある。イッテルビウムレーザは、通常、975nmのポンピングダイオードで供給される。イッテルビウムファイバーを最高温度80℃まで加熱することは、技術的に厄介な問題である。この意味で、イッテルビウムファイバーの加熱には、イッテルビウムファイバーが巻かれた金属支持体(直径20cmのアルミニウムシリンダであり得る)を80℃の温度まで加熱するためのパワーエレクトロニクスを装置に組み込むことが含まれる。レーザ装置内部のこの熱源は、システムの電子機器及び光学機器の他の部品に悪影響を与え、高温のコイルに対して装置の他の部分の断熱及び/又は冷却の必要性が高まる。一般に、最新技術では、この問題は加熱によって解決され、また、ポンプの数を増やして各ポンプが寄生レーザ発振の閾値以下で動作するようにすることによっても解決できる可能性があるが、それだけでは不十分である。
【0003】
しかし、最新技術で知られているように、光ファイバー技術において2ミクロンレーザを実現するためには、ツリウム添加ファイバーを使用するのが最も一般的な解決策である。このファイバーのポンピングは常に複雑であり、一般的な解決策は、カスケードレーザ方式、即ち、975nm半導体レーザダイオード、1.6ミクロンエルビウム添加ファイバーレーザを使用することである。しかし、ホルミウム添加ファイバーを使用すると、ツリウム添加ファイバーよりも長い2ミクロンを超える波長を実現することができ、ポンピング方式は、ポンピングダイオードと、エルビウムレーザよりも有利なイッテルビウムレーザに変えることで簡略化される。
【0004】
ホルミウム添加ファイバーを使用すると、2ミクロンを超える波長でレーザ発振を得ることができるという特性を有する。正確には、この2ミクロンを超える波長帯域が関心の対象であり、これは、ホルミウムファイバーをツリウムレーザでポンピングするという最近の提案の動機となっており、ツリウムレーザが非常に複雑なことからこのポンピングは非常に複雑であるが、ホルミウムが提供する2ミクロンを超える長波長での発振を有することができる方法である。
【0005】
選択肢として、ツリウムポンピングを1.15ミクロンポンピングに置き換える可能性が試みられているが、1.15ミクロンポンピングは、1.15ミクロンで発振するラマンレーザを供給する1090nmの比較的従来のイッテルビウムレーザを使用するため、比較的複雑である。
【0006】
ホルミウム添加ファイバーをポンピングするために単純なイッテルビウムレーザを使用することを提案する背景は、2つの研究グループに由来する。一方、これらの研究では、比較的低出力の2ミクロンレーザ装置用のイッテルビウム添加ファイバーが975nm半導体レーザダイオードで励起される。910nm半導体ダイオードを用いたものもある。しかし、これらの文献では、これらの半導体ダイオードの選択は、利用可能なダイオードであるという以上に正当化されておらず、保護を目的とする本発明の理由であるファイバーの加熱に関する正当化や関連性もない。同様に、これらの文献では、使用されているファイバーはGTWaveタイプ(ツイン)であり、非商業的な化学組成及び製造工程を有し、この研究グループ固有のファイバーであり、商用又は従来のダブルクラッディングファイバー(double cladding fiber)とは異なる。
【0007】
他方、975nm半導体ダイオードによるイッテルビウムのポンピングを提案する文献もあり、そこでは、イッテルビウム添加ファイバーを使用する代替案として、1.15ミクロン半導体ダイオードを低出力で使用する方法や、790nmホルミウムツリウム共添加ファイバーの変わったポンピングを使用する方法が提案されている。
【0008】
本発明では、1.13ミクロンのポンピングが提案されており、この波長の半導体ダイオードを使用するか、又は915nm半導体ダイオードでポンピングされるイッテルビウムレーザを使用する。
【0009】
1.15ミクロンのイッテルビウムレーザは、ホルミウム添加ファイバーのポンプとして使用するためだけでなく、周波数二倍化によって黄色レーザ光源として使用できる可能性があるため、長年にわたって開発されてきた。これに関して、1.1ミクロンを超える波長(例えば、本発明者らの場合の1.13ミクロン)のイッテルビウムレーザの開発に焦点を当てた文献はあるが、ホルミウム添加ファイバーのポンピングについては言及していない。この一連の作業では、ツインタイプのファイバーが使用され、ファイバーを温度100℃程度まで加熱することによって達成可能な改善点及びコドーパントとしてAlを使用することが研究されている。参考文献[Jacquemet 2009]は、本発明者が使用するものと同様のダブルクラッディングファイバーを使用し、ある特定のポンピング閾値からの寄生レーザ発振の問題点及びイッテルビウム添加ファイバーの製造においてコドーパントとしてAlを使用することはもちろんファイバーを加熱すること(これは80℃までの場合)によって得られる改善点を明確に特定している。
【0010】
最後に、エネルギーを消費し、最終的な効率を低下させるだけでなく、レーザシステムのファイバー及び光ファイバー構成要素に引き起こす可能性のある致命的な損傷についても、寄生レーザ発振が大きな問題点として特定されている文献を指摘しなければならない。寄生レーザ発振の起源は、誘導ブリルアン散乱(SBS:Stimulated Brillouin Scattering)の出現に関連しており、本発明者らが詳細に調査した主題である。
【0011】
一方、ツインタイプのイッテルビウム添加ファイバーを使用する参考文献[黄色周波数ダブル自己加熱Ybファイバーレーザ(Yellow Frequency-Doubled Self-Heated Yb Fiber Laser)]もあるが、これは1160nmのYbレーザの周波数二倍化による黄色レーザの開発を指し、2ミクロンレーザを実現するためにホルミウムファイバーをポンピングする本発明とは異なり、前記文献では、ファイバーを発泡ゴムで断熱することによって最大限の熱を保持し、その温度を上昇させ、したがって寄生発振の影響を低減させることで問題点を特定し解決している。この技術は、効果が限定的であり、本発明のように最適に課題を解決するものではない。
【0012】
1147nm、又は1160nm又は1180nmのYbレーザの周波数二倍化による黄色レーザの開発を指す1150~1200nmの範囲で動作するクラッドポンプ型YDFL(Clad-Pumped YDFLs Operating in the 1150-1200 nm Range)は、ホルミウムファイバーをポンピングして2ミクロンのレーザを実現する本発明とは異なるが、同様に、前記文献において、ファイバーを発泡ゴムで断熱することによって、最大限の熱を保持し、その温度を上昇させ、寄生発振の影響を低減することで、問題点を特定し解決している。積極的なファイバー加熱が実施され得ることも言及されている。これらの技術は、その効果が限定的であり、本発明のように最適に問題を解決するものではない。
【0013】
1150~1200nmのスペクトル領域で動作するYDFL(YDFL Operating in 1150 1200-nm Spectral Domain)は、Ho添加ファイバーのポンピングへの応用の可能性について言及している。この文献は、1134nmの本発明で提案された波長よりも長い1150~1200nmの範囲のYbレーザを研究している。前の文献のように、ファイバーが最大限の熱を保持し、その温度を上昇させ、寄生発振の影響を低減させるように、発泡ゴムでファイバーを断熱することによって問題点が特定され解決されるが、これでは限定的な効果しか得られず、本発明のような問題解決には至っていない。この文献は、本発明が提案することとは全く逆であるが975nmの使用は915nmの使用に対して有利であることを、しかも、根本的な改善は、ファイバーを積極的に加熱するか、又は発泡ゴムを使用してファイバーを断熱することによって達成されることを示している。これら文献はまた、重要なことは添加済みのファイバーコアの直径を大きくし、それをファイバー加熱と組み合わせることである、とも主張している。
【0014】
したがって、レーザをポンピングするファイバーの加熱が簡略化されるか不要となり、装置の他の部分の断熱及び/又は冷却の必要性が低減又は排除され、寄生レーザ発振の閾値及び使用されるポンピングレベルを超える「誘導ブリルアン散乱」の出現を維持する高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザポンピングシステムは、現在のところ存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Jacquemet 2009
【非特許文献2】Yellow Frequency-Doubled Self-Heated Yb Fiber Laser
【非特許文献3】Clad-Pumped YDFLs Operating in the 1150-1200 nm Range
【非特許文献4】YDFL Operating in 1150 1200-nm Spectral Domain
【発明の概要】
【0016】
したがって、本発明の目的は、レーザがポンピングされるファイバーの加熱が簡略化されるか不要となる、又は実質的に低減される高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、レーザの出力と制御に関するエレクトロニクスを簡略化した高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムを提供することである。
【0018】
本発明の更なる目的は、加熱を必要とするファイバーからシステムの他の部分の断熱と冷却の必要性が単純化された高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムを提供することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は、製造における部品の数を減らし、その結果として経済的な改善をもたらす、高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムを提供することである。
【0020】
本発明の更なる目的は、2ミクロンレーザにおいて915nm半導体レーザダイオードで供給される1.13ミクロンのポンピングを提供する高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムを提供することである。
【0021】
一般に、上記の全ての目的に対して、本ポンピングシステムは高出力レーザ用であるが、中出力及び低出力にも機能し、したがって中出力及び低出力用にも使用することができる。
【0022】
これら及び他の目的は、ダブルクラッディングイッテルビウムファイバーレーザ(DC-YDF)の波長での光の反射を除去するように構成された、コアレスファイバー及び光吸収体と、イッテルビウムファイバーレーザ共振器(ytterbium fiber laser cavity)を形成する1.135ミクロンの高反射(100%、HR-FBG)ブラッググレーティング(Bragg grating)及び低反射(20%~40%、LR-FBG)ブラッググレーティングと、ポンプカップラ(pump coupler)を介してイッテルビウムファイバーをポンピングする複数の高出力915nm半導体レーザダイオードと、2.07ミクロンの高反射ブラッググレーティング(HR-FBG)と、ホルミウム添加光ファイバー(HDF)で形成された2ミクロンレーザであって、ホルミウム添加光ファイバー及び2.07ミクロンの高反射ブラッググレーティングが、最終的な2ミクロン発振段(final emitting stage of 2 microns)を形成するホルミウム添加ファイバーレーザの共振器を形成する、2ミクロンレーザとで構成され、前記複数の915nm半導体レーザダイオードの915nmの複数の光子は、高エネルギーであり、その結果、1.13ミクロンの光子となる915nmの各光子が熱の形で追加のエネルギーを放出し、前記追加のエネルギーは、ダブルクラッディングイッテルビウム添加ファイバー(DC-YDF)のコア内に直接放出され、ファイバーの加熱をファイバー自体のコア内で行い、高出力にてダブルクラッディングイッテルビウムファイバー(DC-YDF)の加熱を簡略化するか、又は中低出力についてダブルクラッディングイッテルビウムファイバー(DC-YDF)の加熱を不要とする、1.13ミクロンのポンピング手段で構成された高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムによって達成される。
【0023】
見て分かるように、加熱手段がイッテルビウム添加光ファイバーの外部にある従来技術のシステムとは異なり、本発明によって提案されたポンピングシステムでは、特徴的な方法で、前記加熱手段を、イッテルビウム添加光ファイバーが誘導放射光の放出によって光を増幅するようにイッテルビウム添加光ファイバーを励起するのに十分なエネルギーを有するポンピング光を放出し、また、イッテルビウム添加光ファイバーのコアを前記寄生レーザ放出を回避するのに必要な温度の少なくとも50%まで内部加熱するように構成及び配置された補助ポンピング装置で置き換える。
【0024】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられるその好ましい実施形態の詳細な説明によってより明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムの概略図である。
図2】本発明以前の従来技術のポンピングシステムの概略図である。
図3】975nm及び915nmレーザダイオードを使用した場合の寄生発振の閾値を温度の関数として表したグラフを示し、後者の場合、LR-FBGの反射率を2つの値で表している。
図4】完全なレーザシステムの出力において2ミクロンで放出されるパワーを、976nm及び915nmレーザダイオードによって供給される光パワーの関数として表したグラフを示し、後者の場合、LR-FBGの反射率を2つの値で表している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、ホルミウム添加ファイバーを使用する光ファイバー技術で構築された2ミクロンレーザに関し、ポンピングはイッテルビウムで構築された1.13ミクロン補助レーザで行われ、これはツリウム添加ファイバーを使用するよりも勝る利点である。この1.13ミクロンのイッテルビウムレーザは、高出力では、所望の1.13ミクロン以外のより短い波長での寄生レーザ発振を回避するためにファイバーを加熱する必要がある。したがって、この目的のために、本発明は、イッテルビウムレーザに915nmダイオードを供給することで、イッテルビウムファイバーの加熱の必要性を低減したり、又は不要としたりさえする。この改善されたポンピングにより、添加済みのファイバーを比較的高温に保つための加熱要素を組み込む必要がなく、加熱要素を低温加熱システムに置き換えたり、又は加熱要素を完全に除去できたりさえするため、レーザの工業化の観点から有効な簡略化がもたらされる。技術的問題に対する解決策は、975nmの光子よりもエネルギーが高く、各1.13ミクロンの光子が生成される毎により多くの熱を放出する915nmの光子によって提供されるイッテルビウム添加ファイバー自体のコアにおける内部加熱に存在する。
【0027】
イッテルビウム添加ファイバーに供給するために915nmダイオードを使用すると、従来の975nmのポンプを使用する場合に対して、添加済みファイバーのコアに直接に追加の熱が蓄積され、添加済みファイバーが内側から加熱されるため、中低出力用に説明した加熱システムは不要となる。高出力の場合、40℃未満のわずかな加熱が依然として必要とされる可能性があり、この加熱は、電子的観点からははるかに容易で、2ミクロンレーザの電子システム及び光学システムの他の部分との両立もしやすい。
【0028】
したがって、本発明の目的は、ホルミウム添加ファイバーを使用した高出力2ミクロンレーザを有することであり、この場合、ツリウム添加ファイバーを使用した場合と比べて、比較的簡単なポンピングシステムを考案することが可能である。主な問題点は、このイッテルビウムレーザは、もともと短波長で発振する傾向があるため、1.13ミクロンの波長用にレーザ共振器を構成しても、イッテルビウム添加ファイバーの励起パワーが増加するにつれて、1.13ミクロン未満の波長で寄生発振の閾値に達するときが来て、前記寄生発振はエネルギーを消費し、1.13ミクロンの発振を不安定にし、1.13ミクロンで放出されるパワーを減少させ、最終目標である2ミクロンで放出されるパワーを制限することである。更に、寄生発振は、ファイバー及び光ファイバー構成要素に致命的なダメージを与える可能性があることを指摘しなければならない。
【0029】
したがって、1.13ミクロンのイッテルビウムレーザは、915nm半導体レーザダイオードによって供給されるように設計され、既に述べたように、この半導体レーザダイオードはイッテルビウムファイバーの同じコア内で追加の熱を発生させ、外部加熱を使用する必要性が排除又は大幅に低減される。
【0030】
図1及び図2を参照すると、本発明の高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザシステムが示されており、全体的に数字1000で番号付けされている。前記レーザシステム1000は、高出力光ファイバーレーザ用のポンピングシステム1100と、ホルミウム添加光ファイバー(HDF)によって形成される2ミクロンレーザ1200とで構成される。このようなポンピングシステム1100は、コアレスファイバー1120及び光吸収体1110と、1.13ミクロンの高反射(100%、HR-FBG)1130ブラッググレーティング及び低反射(20%又は40%、LR-FBG)1140ブラッググレーティングと、イッテルビウム添加同軸(coaxial)ダブルクラッディングファイバー(DC-YDF)1150と、複数の高出力915nm半導体レーザダイオード1160と、ポンプカップラ1170と、で構成される1.13ミクロンのポンピング手段を備える。
【0031】
本発明の高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ1000用のポンピングシステムの動作は、以下の通りである。
【0032】
図1は、2ミクロンの最終発振段1200を形成するホルミウムドープファイバー1210に供給する1.13ミクロンポンプの重要な要素であるイッテルビウム添加ダブルクラッディングファイバー(DC-YDF)1150を示す。前記ファイバー1150は、ポンプコンバイナ1170によって915nm半導体ダイオードでポンピングされる。1.135ミクロンの高反射(HR-FBG)1130ブラッググレーティング及び低反射(LR-FBG)1140ブラッググレーティングはイッテルビウムファイバーレーザ共振器を形成し、一方、2.07ミクロンの高反射(HR-FBG)ブラッググレーティング1220及びホルミウム添加ファイバー(HDF)1210の90°カットは、ホルミウム添加ファイバーレーザ共振器を形成する。HR-FBGグレーティング1130の左側に位置するコアレスファイバー1120、及び光吸収体は、イッテルビウムファイバーレーザの波長における光の反射を除去する役割を果たす。915nm半導体ダイオードは、従来使用されてきた975nmの光子よりもエネルギーの高い915nmの光子を放出するので、1.13ミクロンの光子に変換される915nmの各光子は、975nmの光子と比較して熱の形で追加のエネルギーを放出し、前記915nmの光子によって供給されるこの追加のエネルギーは、イッテルビウム添加ファイバーのコアに直接放出され、ファイバーが電子制御加熱システムで外部から加熱される場合よりもはるかに効率的な方法でファイバーのコア内でファイバーの加熱を行う。
【0033】
この意味で、915nmのポンピングは、915nmの光子が1.13ミクロンの光子として再放出されるときに提供される内部加熱のために選択される。
【0034】
図2は、本発明の改良を伴わない2ミクロンレーザの概略図であり、2つの975nm半導体レーザダイオード(LD)がダブルクラッディングイッテルビウムファイバー(DC-YDF)に供給し、それぞれが30Wである。DC-YDFファイバーは、アルミニウムシリンダに巻かれており、加熱システムによってファイバーの温度を調整するために加熱することができる。
【0035】
対照的に、本発明では、915nmレーザダイオードを使用するポンピングシステムを組み込むことにより、加熱システムの必要性が排除又は大幅に低減される。同様に、他の変更を行わずに915nmレーザダイオードを使用すると、わずか35℃で50Wレベルに達し、38℃では寄生発振が発生する前に58Wを超え得る。この場合、更に、半導体ダイオードの必要電力が30W未満であれば、915nmダイオードを用いることで、室温での動作が可能となる。
【0036】
同様に、1.13ミクロンレーザ共振器を最適化することで、ファイバーの加熱を増し、寄生レーザ発振の閾値を更に上げることができる。これを行うために、LR-FBGブラッググレーティング1140の反射率を、最初は20%であったが、最大40%まで高めた。LR-FBGグレーティング1140は、1.13ミクロンのイッテルビウムレーザの出力ミラーとして機能し、その従来の設計は、レーザの出力パワーを最大化することに重点を置いていたため、低反射率(本発明では20%)の採用に繋がっている。
【0037】
図3は、温度の関数としての寄生レーザ発振の閾値パワーの増加を示す。本発明者らのプロトタイプの具体的なケースでは、975nmレーザダイオードを使用した場合、閾値を50Wより上に上げるためにはファイバーを80℃まで加熱する必要がある。しかし、915nmレーザダイオードを使用した場合(他の変更を行わずに)、わずか35℃で50Wのレベルに達し、38℃では58Wを超えることができる。この場合、半導体ダイオードの必要電力が30W未満であれば、915nmダイオードを用いることで、室温での動作が可能となる。
【0038】
915nmダイオードの使用に基づく解決策が特定及び検証されると、1.135ミクロンのレーザ共振器を最適化してファイバーの加熱を高め、寄生レーザ発振の閾値を更に上げることができる。このため、LR-FBGブラッググレーティングの反射率を最初の20%から最大40%まで高めた。LR-FBGグレーティングは、1.135ミクロンのイッテルビウムレーザの出力ミラーとして機能し、その従来の設計は、レーザの出力パワーを最大化することに重点を置いていたため、低反射率(本発明の場合は20%)の採用に繋がっている。この設計規則は一般的であり、固定ダイオードポンピングの場合、最大発光を達成する最適な反射率は通常20%未満である[Valle-Hernandez 2011]。しかし、本発明者らの場合、最も望ましいと思われるものとは逆のことをすると、即ち、LR-FBGグレーティングの反射率を高めると、ファイバーの内部加熱が増えるが、これは、レーザ共振器内の光子密度が増加し、それに伴って誘導放出による915nmの光子が1.135ミクロンの光子に変換されるからである。反射率を高めると、イッテルビウムレーザの効率が低下するのは事実だが、寄生レーザ発振の問題を解決するのに役立つ。本発明者らが設定した2ミクロンのパワーに達するだけの十分なパワーがポンピングダイオードにあれば、反射率を高めることで得られる向上は、ある程度の効率の損失を補う。図3は、915nm及び40%のLR-FBGグレーティングを使用する場合を含む。この場合、寄生レーザ発振の閾値は、ファイバー温度27℃で50Wを超えるが、20%のLR-FBGを使用した場合には35℃、975nmを使用した場合には80℃に加熱する必要があることが分かる。別の例として、動作温度を25℃に設定した場合、915nm-40%の場合の寄生レーザ発振の閾値は47W、915nm-20%の場合はわずか35W、975nm-20%の場合は約22Wである。
【0039】
図4は、975nm及び915nmの場合について、レーザ出力で放出された2ミクロン出力を半導体レーザダイオードの出力の関数として示したもので、後者の場合のLR-FBGの反射率の値は20%及び40%である。915nmのポンピングは、975nmのポンピングよりも幾分効率が低いことが観察されたが、これは、イッテルビウムファイバーが915nmの波長で示す吸収が幾分低いことと一致している。例えば、2ミクロンで10Wの発光を達成することを目標に設定した場合、20%の反射率を使用すると975nmポンピングで40W、915nmポンピングで45Wが必要であり、40%の反射率を使用すると48Wが必要である。しかし、本発明者らは、イッテルビウムファイバーの加熱の必要性を排除又は大幅に低減することに成功し、しかも、このわずかな効率低下はポンピング出力を上げることで特に問題なく補うことができるため、915nmのポンピングの技術的利点の方が大きい。図3で2ミクロンの10W発振に対応する点を見ると、975nm-20%の場合は65.9℃に加熱する必要があり、915nm-20%の場合は30℃のわずかな加熱が必要であり、915nm-40%の場合は25.2℃で動作することができ、これは実質的に室温であり、加熱の必要はない。
【0040】
したがって、本発明により、2ミクロンレーザを形成するホルミウムファイバーのポンピングに発光が使用されるイッテルビウムファイバーを加熱する必要性が排除又は大幅に低減されることは明らかである。これは、レーザの出力と制御に関するエレクトロニクスを簡略化し、加熱を必要とするファイバーに対して、システムの他の部分の断熱と冷却の必要性が単純化されることから、非常に重要な技術的利点である。これにより、レーザパッケージングの設計が簡略化され、よりコンパクトかつ軽量になる。これは全て、製造における構成要素の削減と、その結果としての経済的改善も伴う。
【0041】
上記によれば、本発明は、可視光領域における透明プラスチック材料の加工用途、生物医学、レーザメス、アクティブビジョンシステム、防衛、LIDAR及び汚染監視で実施されるように構成される。
【0042】
上述したように、本発明の高出力ホルミウム添加光ファイバーレーザ用のポンピングシステムの実施形態及び上述したそのそれぞれの構成要素は、当業者であれば、本発明の原理に従って設計されている限り、多数の変形を行うことができるため、例示のみを目的として提示されていることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲に従って、本明細書に含まれる概念から当業者が提案することができる全ての実施形態を含む。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】