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特表2024-536837PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体、及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241001BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20241001BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/54 ZNA
C07K14/705
C12N15/24
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/17
A61K38/20
A61P35/00
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518576
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2022014297
(87)【国際公開番号】W WO2023048516
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126052
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524110425
【氏名又は名称】バイオンシステムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジョン-グン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA12
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB031
4C084ZB032
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA02
4H045DA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質、及びその使用に関する。一実施形態において、PD-1と、IL-21と、長期血清持続性Fcとを含む融合タンパク質はNK細胞等の免疫細胞を活性化し、in vivo半減期を効果的に延長することができる。したがって、融合タンパク質を有効成分として含む医薬組成物は体内の免疫活性を増強するため、再発患者及び免疫チェックポイント阻害剤処置に奏効しない患者に対する抗癌剤として使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記PD-1タンパク質と前記IL-21タンパク質とは、リンカーを介して連結されている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記PD-1タンパク質は、配列番号2、配列番号21、配列番号34、又は配列番号103のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記IL-21タンパク質は、配列番号6又は配列番号22のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記リンカーは、免疫グロブリンのFcドメインである、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記Fcドメインは、野生型Fcドメイン又はその変異体である、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記野生型Fcドメインは、配列番号14のアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記Fcドメインの変異体は、配列番号14のアミノ酸配列におけるQ81R、M198L、L79G、T136W、Q81R/M198L、L79G/M198L、又はQ81R/T136W/M198Lの置換を有する、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記Fcドメインの変異体は、配列番号4、配列番号10、配列番号50、配列番号87、配列番号95、配列番号99、配列番号104、配列番号108、配列番号112、又は配列番号116のアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記Fcドメインの変異体は、前記野生型Fcドメインと比較して延長した半減期を有する、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記融合タンパク質は、以下の構造式I又は構造式II:
N’-A-[L]n-Fcドメイン-[L]m-B-C’ I
N’-B-[L]n-Fcドメイン-[L]m-A-C’ II
(前記構造式I及び前記構造式IIにおいて、
N’は、前記融合タンパク質のN末端であり、
C’は、前記融合タンパク質のC末端であり、
Aは、前記PD-1タンパク質又はその断片であり、
Bは、前記IL-21タンパク質又はその変異体であり、
及びLは、ペプチドリンカーであり、かつ、
n及びmは、それぞれ独立して0又は1である)からなる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
は、配列番号3又は配列番号38のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーである、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
は、配列番号5、配列番号39、又は配列番号57のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーである、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記融合タンパク質は、前記構造式Iからなる、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記融合タンパク質は、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号24、配列番号27、配列番号32、配列番号36、配列番号41、配列番号44、配列番号52、配列番号55、配列番号76、配列番号79、配列番号82、配列番号89、配列番号92、配列番号97、配列番号101、配列番号106、配列番号110、配列番号114、又は配列番号118のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体。
【請求項17】
前記融合タンパク質二量体は、ホモ二量体である、請求項16に記載の融合タンパク質二量体。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号37、配列番号42、配列番号45、配列番号53、配列番号56、配列番号77、配列番号80、配列番号83、配列番号90、配列番号93、配列番号98、配列番号102、配列番号107、配列番号111、配列番号115、又は配列番号119のヌクレオチド配列に対して85%以上の配列同一性を有する、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項18に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項22】
請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項16若しくは17に記載の融合タンパク質二量体を有効成分として含む、癌を未然防止又は処置する医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記癌は、結腸直腸癌、黒色腫、胃癌、肝臓癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、胆嚢癌、甲状腺癌、喉頭癌、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌、及びリンパ腫からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
癌を未然防止又は処置する医薬の製造のための、請求項16又は17に記載の融合タンパク質二量体の使用。
【請求項26】
癌を未然防止又は処置するための、請求項16又は17に記載の融合タンパク質二量体の使用。
【請求項27】
請求項16又は17に記載の融合タンパク質二量体を被験体に投与することを含む、癌を未然防止又は処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質、及びその使用に関する。具体的には、本発明は、血中半減期が延長し、かつ免疫増強効力を有する、PD-1と、IL-21と、長期血清持続性Fcとを含む新規の融合タンパク質二量体、及び癌処置のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PD-1(プログラム死受容体-1)は、近年注目されている免疫チェックポイントである。PD-1は主にT細胞の活性化の制御に関与しており、免疫応答の強度及び持続時間を調節し得る。通常の状況下では、PD-1は身体組織の自己免疫寛容を媒介及び維持し、炎症応答中に免疫系が過剰活性化して自己組織に損傷を与えるのを防ぎ、それによって自己免疫疾患の発症を防ぐことで、有益な効果をもたらす。しかしながら、病理学的状況では、PD-1は、腫瘍免疫のプロセス並びに様々な自己免疫疾患の発生及び発症に関与していることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
PD-1は主に活性化されたT細胞の表面上で発現されるが、B細胞、NK細胞、単核細胞、及び樹状細胞(DC)上でも発現される。PD-1のリガンドであるPD-L1及びPD-L2は、腫瘍細胞、活性化されたB細胞及びT細胞、樹状細胞、並びにマクロファージ上で発現される。PD-1はこれらのリガンドに結合してT細胞のアポトーシスを誘導し、それによって細胞の免疫応答を減弱させる。したがって、PD-1/PD-L1又はPD-L2経路の遮断は、多くの種類の癌に関する研究で調査されている有望な治療的アプローチである(非特許文献2)。
【0004】
一方、IL-21(インターロイキン-21)は、活性化されたCD4T細胞によって分泌されるサイトカインであり、骨髄からのNK細胞前駆体の成熟を誘導し、特にサイトカイン産生能力及びアポトーシス能力等のNK細胞のエフェクター機能を高めることが報告されている。さらに、CD8T細胞のエフェクター機能を高めることにより、免疫系の抗癌応答を促進することが知られている。
【0005】
IL-21とその受容体のIL-21Rとの相互作用を通じて、Jak/STATシグナル伝達経路が活性化され、それによってT細胞分化に重要であるSTAT3の強力かつ継続的な活性化が誘導される(非特許文献3)。
【0006】
一方、免疫グロブリンのFcのCH2-CH3部分は、抗体の半減期を延長するFcRn(保護受容体)結合部位を有する(特許文献1)。FcRnは血管内皮細胞において発現されるMHCクラスI関連タンパク質であり、IgG及びアルブミンに結合する。Fcを有しない、すなわちFcRn結合部位を有しない抗体フラグメントは人体内で約2時間~3時間の半減期を有するが、FcRn結合部位を有するIgG1、IgG2、及びIgG4は人体内で平均3週間の半減期を有し、これは他のタンパク質の半減期よりも長い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許第10-1957431号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sara Pilotto et al., Anti-cancer Agents Med Chem., 15(3):307-313, 2015
【非特許文献2】Miguel F. Sanmamed et al., Cancer J., 20(4):256-261, 2014
【非特許文献3】Wenjun Ouyang et al., Immunity, 28(4):454-467, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明者は、in vivo半減期が延長され、かつ優れた免疫増強効力を有する抗癌治療剤の開発を研究した。結果として、本発明者らは、PD-1と、IL-21と、長期血清残留性Fcとを含む新規の融合タンパク質が、抗癌活性に影響を与えることなく免疫細胞を活性化し、半減期を延長し得ることを発見し、それにより本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するのに、本発明の一態様において、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質が提供される。
【0011】
本発明の別の態様において、上記融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体が提供される。
【0012】
本発明の更に別の態様において、上記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0013】
本発明のまた更に別の態様において、上記ポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0014】
本発明のまた更に別の態様において、上記ベクターで形質転換された宿主細胞が提供される。
【0015】
本発明のまた更に別の態様において、上記融合タンパク質又は上記融合タンパク質二量体を有効成分として含む、癌を未然防止又は処置する医薬組成物が提供される。
【0016】
本発明のまた更に別の態様において、癌の処置のための上記融合タンパク質の使用が提供される。
【発明の効果】
【0017】
PD-1と、IL-21と、長期血清残留性Fcとを含む融合タンパク質は、PD-1及びIL-21によって免疫細胞を活性化することができるだけでなく、長期血清残留性Fcによってin vivo半減期を最長化することもできる。したがって、この融合タンパク質は癌細胞を効果的に攻撃することができるため、癌の処置において有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】得られた融合タンパク質(BNS001;PD-1 D-Fc(29)-IL-21、PD-1 D-Fc(41)-IL-21、及びPD-1 D-Fc(wt)-IL-21)をSDS-PAGEにより確認することによって得られた結果を示す図である。
図2】得られた融合タンパク質(BNS001)の純度をSEC-HPLC分析により分析することによって得られた結果を示す図である。
図3】得られた融合タンパク質(BNS001)の濃度を紫外分光光度計により確認することによって得られた結果を示す図である。
図4】得られた融合タンパク質(BNS001)の熱力学的安定性を蛍光検出器及びSLS(静的光散乱)検出器により確認することによって得られた結果を示す図である。
図5】得られた融合タンパク質(BNS001)の構造安定性をFT-IR(フーリエ変換赤外分光分析)分光光度計により確認することによって得られた結果を示す図である。
図6】得られた融合タンパク質(BNS001)の分子量をMALDI-TOF質量分析法により確認することによって得られた結果を示す図である。
図7】得られた融合タンパク質(BNS001)とhPD-L1(ヒトプログラム細胞死リガンド-1)との間の結合親和性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図8】hPD-1タンパク質(ヒトプログラム細胞死タンパク質-1)とhPD-L1との間の結合親和性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図9】得られた融合タンパク質(BNS001)とhPD-L2(ヒトプログラム細胞死リガンド-2)との間の結合親和性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図10】hPD-1タンパク質とhPD-L2との間の結合親和性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図11】得られた融合タンパク質(BNS001)とhIL-21受容体(ヒトインターロイキン-21受容体)との間の結合親和性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図12】hIL-21タンパク質とhIL-21受容体との間の結合親和性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図13】得られた融合タンパク質(BNS001)とhFcRn受容体(ヒト新生児Fc受容体)との間の結合親和性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図14】得られた融合タンパク質(BNS001)とPD-L1との間の結合親和性をELISA分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図15】得られた融合タンパク質(BNS001)とPD-L2との間の結合親和性をELISA分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図16】得られた融合タンパク質(BNS001)とIL-21受容体との間の結合親和性をELISA分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図17】得られた融合タンパク質(BNS001)とFcRn受容体との間の結合親和性をLUMIT(商標)FcRn結合イムノアッセイ分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図18】得られた融合タンパク質(BNS001)とIL-21受容体との間の結合親和性をPATHHUNTER(商標)eXpress二量体化アッセイ分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図19】末梢血単核細胞(PBMC)を、得られた融合タンパク質(BNS001)及びIL-21のそれぞれによる処理に供し、インキュベートを行った場合に、免疫細胞を含むPBMCから分泌されたIFN-γの量をELISA分析により測定することによって得られた結果を示す図である。
図20】得られた融合タンパク質(BNS001)及びIL-21タンパク質のCD8T細胞の増殖に対する効果をFACS分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図21】得られた融合タンパク質(BNS001)及びIL-21タンパク質のCD4T細胞の増殖に対する効果をFACS分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図22a】得られた融合タンパク質(BNS001)及びIL-21タンパク質のNK細胞の増殖に対する効果をFACS分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図22b】得られた融合タンパク質(BNS001)及びIL-21タンパク質のNK細胞の増殖に対する効果をFACS分析により確認することによって得られた結果を示すグラフである。
図23】得られた融合タンパク質(BNS001)のエフェクターT細胞に対する効果をPD-L1/PD-1遮断アッセイにより確認することによって得られた結果を示す図である。
図24】得られた融合タンパク質(BNS001)のエフェクターT細胞に対する効果をPD-L2/PD-1遮断アッセイにより確認することによって得られた結果を示す図である。
図25】ホタルルシフェラーゼ及びGFP(緑色蛍光タンパク質)を発現する細胞系統を構築するのに使用されるレンチウイルスベクターマップの概略図である。ここで、CMVはサイトメガロウイルス由来のプロモーターであり、RSVは呼吸器合胞体ウイルス由来のプロモーターである。
図26】本発明において樹立されたホタルルシフェラーゼ及びGFPを発現するヒト黒色腫細胞系統(A375-Luc-GFP)の発光シグナル(左)及び蛍光シグナル(右)を測定することによって得られた結果を示す図である。
図27】本発明の一実施形態によるヒト黒色腫細胞系統(A375-Luc-GFP)において特異的に発現されるPD-L1遺伝子及びPD-L2遺伝子の発現パターン(左)、並びに逆転写PCRにより免疫細胞を含むPBMCにおいて特異的に発現されるPD-1遺伝子の発現パターン(右)を確認することによって得られた結果を示す図である。
図28】ヒト黒色腫細胞系統(A375-Luc-GFP)と末梢血単核細胞(PBMC)とを共培養したものを、それぞれの濃度での得られた融合タンパク質(BNS001)及びIL-21のそれぞれによる処理に供し、インキュベートを行った場合に、細胞から分泌されたIFN-γの量をELISA分析により測定することによって得られた結果を示す図である。
図29】ヒト黒色腫細胞系統(A375-Luc-GFP)と末梢血単核細胞(PBMC)とを共培養したものを、得られた融合タンパク質(BNS001)での処理に供した場合の、処理時間による癌細胞殺傷効果をルシフェラーゼ活性の測定により分析することによって得られた結果を示す図である。
図30】ヒト黒色腫細胞系統(A375-Luc-GFP)と末梢血単核細胞(PBMC)とを共培養したものを、得られた融合タンパク質(BNS001)による処理に48時間供した場合の、癌細胞殺傷効果をルシフェラーゼ活性の測定により確認することによって得られた結果を示す図である。
図31】ヒト黒色腫細胞系統(A375-Luc-GFP)と末梢血単核細胞(PBMC)とを共培養したものを、それぞれの濃度での得られた融合タンパク質(BNS001)による処理に供した場合の、各処理濃度についての癌細胞殺傷効果をルシフェラーゼ活性の測定により分析することによって得られた結果を示す図である。
図32】癌細胞系統(A375-Luc-GFP)に特異的な得られた融合タンパク質(BNS001)の抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図33】得られた融合タンパク質(BNS001)の血中濃度をELISA分析により測定することによって得られた結果を示す図である。
図34】正常なBALB/cマウス動物モデルにおける融合タンパク質(BNS001)の血中半減期を確認することによって得られた結果を示す図である。
図35】ヒトFcRn TGマウス動物モデルにおける融合タンパク質(BNS001)の血中半減期を確認することによって得られた結果を示す図である。
図36】マウス由来結腸直腸癌細胞を移植したマウスにおける融合タンパク質(BNS001)の抗癌効果を確認する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図37】マウス由来結腸直腸癌細胞を移植したマウスにおける融合タンパク質(BNS001)による腫瘍抑制効果を確認することによって得られた結果を示す図である。
図38】マウス由来結腸直腸癌細胞を移植したマウスにおける融合タンパク質(BNS001)による腫瘍抑制効果の統計的有意性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図39】得られた融合タンパク質(BNS001)による癌組織における免疫細胞活性のレベルを確認することによって得られた結果を示す図である。具体的には、これは、マウス由来結腸直腸癌細胞を移植したマウスを融合タンパク質(BNS001)により処理した後の35日目に摘出された癌組織におけるマクロファージ、樹状細胞(DC)、CD4細胞、CD8細胞、及びNK細胞の活性のレベルをFACSにより分析することによって得られた結果を示すグラフである。
図40】ヒト由来肺癌細胞(H460)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)の抗癌効果を確認する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図41】ヒト由来肺癌細胞(H460)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)の投与による腫瘍抑制効果を確認することによって得られた結果を示す図である。
図42】ヒト由来肺癌細胞(H460)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)の投与による腫瘍抑制効果の統計的有意性を確認することによって得られた結果を示す図である。
図43】マウス由来結腸直腸癌細胞(MC38)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の抗癌効果を確認する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図44】マウス由来結腸直腸癌細胞(MC38)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の投与による濃度依存性腫瘍抑制効果を確認することによって得られた結果を示す図である。
図45】腫瘍成長抑制率(%)として計算される、マウス由来結腸直腸癌細胞(MC38)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の投与による濃度依存性腫瘍抑制効果を示す図である。
図46】マウス由来結腸直腸癌細胞(CT-26)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の腫瘍成長抑制有効性を評価する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図47】マウス由来結腸直腸癌細胞(CT-26)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の腫瘍成長抑制有効性を評価することによって得られた、各群(G1~G8)及び各被験体(被験体番号によって示される)についてのプロットの形態での結果を示す図である。
図48】マウス由来結腸直腸癌細胞(CT-26)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の投与による腫瘍成長抑制有効性を評価することによって得られた結果を示す図であり、これは、各群(G1~G8)についての腫瘍体積を測定することによって得られた結果を示す。
図49】マウス由来結腸直腸癌細胞(CT-26)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の投与による腫瘍成長抑制有効性を評価することによって得られた結果を示す図であり、これは、BNS001(mPD1-Fc-IL-21)と、市販の抗体の抗PD1抗体(Keytruda、MSD)及び抗PD-L1抗体(Tecentriq、Roche)との間の統計的有意性を示す。ここで、は、p≦0.05であり、かつ***は、p≦0.001である。
図50】マウス由来結腸直腸癌細胞(CT-26)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の投与による腫瘍成長抑制有効性を評価することによって得られた結果を示す図であり、これは、BNS001(mPD1-Fc-IL-21)と、コントロール(PD1-Fc、Fc-IL21、PD1-Fc+Fc-IL21)との間の統計的有意性を示す。ここで、は、p≦0.05であり、かつ***は、p≦0.001である。
図51】マウス由来乳癌細胞(EMT-6)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の腫瘍成長抑制有効性を評価する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図52】マウス由来乳癌細胞(EMT-6)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の腫瘍成長抑制有効性を評価することによって得られた、各群(G1~G9)及び各被験体(被験体番号によって示される)についてのプロットの形態での結果を示す図である。
図53】マウス由来乳癌細胞(EMT-6)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001)の投与による腫瘍成長抑制有効性を評価することによって得られた結果を示す図であり、これは、各群(G1~G9)についての腫瘍体積を測定することによって得られた結果を示す。
図54】マウス由来乳癌細胞(EMT-6)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001;mPD1-Fc-mIL-21)並びに市販の抗体の抗PD1抗体(Keytruda、MSD)及び抗PD-L1抗体(Tecentriq、Roche)の投与による腫瘍成長抑制有効性を評価することによって得られた結果を示す図である。
図55】マウス由来乳癌細胞(EMT-6)を同種移植したマウスにおける融合タンパク質(mBNS001;mPD1-Fc-mIL-21)及びコントロール(PD1-Fc、Fc-IL21、PD1-Fc+Fc-IL21)試料の投与による腫瘍成長抑制有効性を評価することによって得られた結果を示す図である。
図56】健康なドナー(ドナー1)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、BNS001処理により誘導されるIFN-γ分泌のレベルをELISA分析により測定することによって得られた結果を示す図である。
図57】健康なドナー(ドナー1)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、BNS001処理により誘導されるIFN-γ分泌のレベルを各濃度についてELISA分析により測定することによって得られた結果を示す図である。
図58】健康なドナー(ドナー2)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、BNS001処理により誘導されるIFN-γ分泌のレベルを各濃度についてELISA分析により測定することによって得られた結果を示す図である。
図59】健康なドナー(ドナー3)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、BNS001処理により誘導されるIFN-γ分泌のレベルを各濃度についてELISA分析により測定することによって得られた結果を示す図である。
図60】健康なドナー(ドナー1)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、免疫活性化マーカーのCD69、CD38、及び4-1BBの発現レベルについてのFACS分析を介したBNS001処理により誘導されるNK細胞の活性化のレベルを示す図である。
図61】健康なドナー(ドナー1)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、免疫活性化マーカーのCD69及び2B4の発現レベルについてのFACS分析を介したBNS001処理により誘導されるCD8T細胞の活性化のレベルを示す図である。
図62】健康なドナー(ドナー1)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、免疫活性化マーカーのCD69の発現レベルについてのFACS分析を介したBNS001処理により誘導されるCD4T細胞の活性化のレベルを示す図である。
図63】健康なドナー(ドナー1)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、免疫活性化マーカーのCD69の発現レベルについてのFACS分析を介したBNS001処理により誘導されるB細胞の活性化のレベルを示す図である。
図64】健康なドナー(ドナー1)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、免疫活性化マーカーのCD69及びCD38の発現レベルについてのFACS分析を介した各濃度についてのBNS001処理により誘導されるNK細胞、CD8T細胞、及びCD4T細胞のそれぞれの活性化のレベルを示す図である。
図65図65a及び図65bは、健康なドナー(ドナー2)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、免疫活性化マーカーのCD69、2B4、及びOX40の発現レベルについてのFACS分析を介した各濃度についてのBNS001処理により誘導されるNK細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、及びB細胞のそれぞれの活性化のレベルを示す図である。
図66】健康なドナー(ドナー3)から取得されたヒトPBMCをPHAでの処理により刺激した場合の、免疫活性化マーカーのCD69の発現レベルについてのFACS分析を介した各濃度についてのBNS001処理により誘導されるNK細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、及びB細胞のそれぞれの活性化のレベルを示す図である。
図67】PBMCにおけるBNS001融合タンパク質処理によるCD8T細胞の増殖のレベルをFACS分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図68】PBMCにおけるBNS001融合タンパク質処理による各濃度についてのCD8T細胞の増殖のレベルをFACS分析により確認することによって得られた結果を示す図である。
図69】ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)の抗癌効果を確認する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図70】ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)の投与による濃度依存性腫瘍抑制効果を確認することによって得られた結果を示す図である。
図71】ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)を移植したヒト化マウスにおける各濃度についての融合タンパク質(BNS001)の投与に応じた体重変化度を確認することによって得られた結果を示す図である。
図72】ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)とコントロール薬物との間の抗癌効果を確認する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図73】ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001;PD-1 D-Fc-IL-21)の投与による腫瘍抑制効果と、比較用コントロールであるBNS001D(PD-1 D-Fc)融合タンパク質及びBNS001I(Fc-IL-21)融合タンパク質の単独又は組合せにおける投与による腫瘍抑制効果とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図74】ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001;PD-1 D-Fc-IL-21)の投与による体重変化度と、比較用コントロールであるBNS001D(PD-1 D-Fc)融合タンパク質及びBNS001I(Fc-IL-21)融合タンパク質の単独又は組合せでの投与による体重変化度とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図75】ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による腫瘍抑制効果と、ポジティブコントロールであるアテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、及びアベルマブの投与による腫瘍抑制効果とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図76】ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による体重変化度と、ポジティブコントロールであるアテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、及びアベルマブの投与による体重変化度とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図77】ヒト由来肺癌細胞(A549)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)とコントロール薬物との間の抗癌効果を確認する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図78】ヒト由来肺癌細胞(A549)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による腫瘍抑制効果と、ポジティブコントロールであるアテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、及びアベルマブの投与による腫瘍抑制効果とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図79】ヒト由来肺癌細胞(A549)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による体重変化度と、ポジティブコントロールであるアテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、及びアベルマブの投与による体重変化度とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図80】ヒト由来乳癌細胞(MDA-MB-231)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)とコントロール薬物との間の抗癌効果を確認する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図81】ヒト由来乳癌細胞(MDA-MB-231)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による腫瘍抑制効果と、ポジティブコントロールであるアテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、及びアベルマブの投与による腫瘍抑制効果とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図82】ヒト由来乳癌細胞(MDA-MB-231)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による体重変化度と、ポジティブコントロールであるアテゾリズマブ、ペムブロリズマブ、及びアベルマブの投与による体重変化度とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図83】ヒト由来肺癌細胞(NCI-H1975)を移植したヒト化マウスにおける融合タンパク質(BNS001)とコントロール薬物との間の抗癌効果を確認する投与及び実験スケジュールの概略図である。
図84】ヒト由来肺癌細胞(NCI-H1975)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による腫瘍抑制効果と、ポジティブコントロールであるベバシズマブ及びラムシルマブの投与による腫瘍抑制効果とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図85】ヒト由来肺癌細胞(NCI-H1975)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による体重変化度と、ポジティブコントロールであるベバシズマブ及びラムシルマブの投与による体重変化度とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図86】ヒト由来肺癌細胞(NCI-H1975)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による腫瘍抑制効果と、ポジティブコントロールであるセツキシマブ及びアミバンタマブの投与による腫瘍抑制効果とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図87】ヒト由来肺癌細胞(NCI-H1975)を移植したヒト化マウスにおける、融合タンパク質(BNS001)の投与による体重変化度と、ポジティブコントロールであるセツキシマブ及びアミバンタマブの投与による体重変化度とを比較することによって得られた結果を示す図である。
図88】融合タンパク質(BNS001)二量体の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質
本発明の一態様において、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質が提供される。
【0020】
本明細書において使用される場合、「PD-1(プログラム細胞死タンパク質1又はプログラム死受容体-1)」という用語は、B7-CD28ファミリーに属する相互抑制受容体の一種であり、CD279としても知られる免疫チェックポイントタンパク質である。PD-1は、活性化されたT細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、及びマクロファージの表面上で広く発現されている。PD-1は、そのリガンドであるPD-L1(プログラム細胞死リガンド-1)又はPD-L2(プログラム細胞死リガンド-2)に結合すると、CD3媒介性T細胞活性化及びCD28媒介性T細胞活性化を阻害する細胞内シグナル伝達を誘導する。T細胞活性化の下方制御はT細胞増殖、IFN-γ分泌、IL-2分泌等の減少をもたらす。PD-1と、そのリガンドである、様々な種類の癌細胞(例えば、黒色腫、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、乳癌、リンパ腫、神経膠腫等)上で発現されることが知られるPD-L1又はPD-L2との間の相互作用はT細胞を不活性化し、癌細胞が免疫系による攻撃を回避する機序として機能する。したがって、PD-1とPD-L1又はPD-L2との間の相互作用を遮断すると、腫瘍微小環境内のT細胞が活性化されて腫瘍細胞が排除される。
【0021】
本明細書において使用される場合、「PD-1」、「プログラム細胞死受容体-1」、又は「プログラム細胞死タンパク質-1」という用語は、特段の指定がない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(ヒト等)及び齧歯類(マウス及びラット等)を含むあらゆる脊椎動物起源から得られるあらゆる野生型PD-1を指す。PD-1を動物細胞から得ることができ、これにはPD-1を産生することができる組換え細胞から取得されたものも含まれる。さらに、PD-1は野生型PD-1又はその断片であり得る。
【0022】
PD-1は288個のアミノ酸からなるI型膜タンパク質であり、その構造は細胞外IgV様ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞質ドメインとからなる。PD-1のアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NP_005009.2又はUniProtkB番号Q15116において記載される配列であり得る(マウスPD-1のアミノ酸配列については、Genbankアクセッション番号NP_032824.1を参照のこと)。さらに、PD-1をコードする配列としてのPDCD1(プログラム細胞死1)遺伝子は、GenBankアクセッション番号NM_005018.3に記載される配列のうちCDS(コーディング配列)に対応するヌクレオチド配列であり得る(マウス配列については、GenBankアクセッション番号NM_008798.3を参照のこと)。
【0023】
本明細書において使用される場合、「PD-1タンパク質」という用語は、全長PD-1又はPD-1断片を指す。本明細書において、PD-1又はその断片を総称して「PD-1タンパク質」という用語によって表現する場合がある。PD-1、PD-1タンパク質、及びPD-1断片は、例えば、PD-1のリガンドであるPD-L1又はPD-L2に特異的に結合する。この特異的結合を当業者に知られる方法によって確認することができる。
【0024】
PD-1のリガンドであるPD-L1及びPD-L2は、癌細胞の表面上に発現されるタンパク質である。PD-L1はB7-H1又はCD274としても知られており、PD-L2はB7-DC又はCD273としても知られている。PD-L1又はPD-L2がT細胞において存在するPD-1に結合すると、これにより免疫チェックポイント機能が変化してT細胞機能が抑制される。言い換えると、PD-1とPD-L1又はPD-L2との間の相互作用によってT細胞機能が抑制され、最終的に癌細胞は免疫細胞による攻撃を回避する。
【0025】
本明細書において使用される場合、「PD-1断片」という用語は、PD-1の切断形態を指す。さらに、PD-1断片はPD-1の細胞外ドメインであり得る。PD-1断片の一実施形態は、PD-1のシグナル配列であるN末端から1番目から24番目のアミノ酸が除外されたものであり得る。具体的には、PD-1断片の一実施形態は、配列番号18の25番目~288番目のアミノ酸からなるタンパク質であり得る。さらに、PD-1断片の一実施形態は、配列番号18の25番目~170番目のアミノ酸からなるタンパク質であり得る。さらに、PD-1断片の一実施形態は、配列番号18の25番目~150番目のアミノ酸からなるタンパク質であり得る。さらに、PD-1断片の一実施形態は、配列番号18の25番目~144番目のアミノ酸からなるタンパク質であり得る。上記の例において、PD-1断片は配列番号2又は配列番号34のアミノ酸配列を有し得る。
【0026】
さらに、PD-1断片の一実施形態は、配列番号29の25番目~169番目のアミノ酸からなるタンパク質であり得る。上記の例において、PD-1断片は配列番号21のアミノ酸配列を有し得る。
【0027】
本明細書において使用される場合、「IL-21」又は「インターロイキン-21」という用語は、主に活性化されたCD4T細胞及びNK T細胞によって産生されるサイトカインである。IL-21は一般的なγ鎖サイトカインファミリーに属し、リンパ球の活性化、増殖、分化、及び生存に関与している。さらに、IL-21は、その特異的な受容体であるIL-21R(インターロイキン-21受容体)及び一般的なγ鎖受容体からなるヘテロ二量体受容体との相互作用を通じて、Jak/STATシグナル伝達経路を活性化する。IL-21とその受容体のIL-21Rとの間の相互作用によって誘導されるシグナル伝達は、免疫炎症応答を誘導する。IL-21は、骨髄由来のNK細胞前駆体の成熟を誘導し、特にサイトカイン産生能力及びアポトーシス能力等のNK細胞のエフェクター機能を高める。さらに、IL-21は、脱顆粒及び炎症性サイトカインの分泌を高めることによって細胞傷害活性を誘導するだけでなく、抗原特異的CD8T細胞の数の拡大及びエフェクター機能も促進し、結果として腫瘍退縮をもたらす。
【0028】
本明細書において使用される場合、「IL-21」又は「インターロイキン-21」という用語は、特段の指定がない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(ヒト等)及び齧歯類(マウス及びラット等)を含むあらゆる脊椎動物起源から得られるあらゆる野生型IL-21を指す。IL-21を動物細胞から得ることができ、これにはIL-21を産生することができる組換え細胞から取得されたものも含まれる。さらに、IL-21は野生型IL-21又はその変異体であり得る。
【0029】
IL-21は162個のアミノ酸からなり、具体的にはアミノ酸残基1(Met)~アミノ酸残基29(Ser)の分泌シグナル配列と、アミノ酸残基30(Gln)~アミノ酸残基162(Ser)の成熟ポリペプチドとからなる。IL-21のアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NP_068575.1又はUniProtkB番号Q9HBE4において記載される配列であり得る(マウスIL-21のアミノ酸配列については、Genbankアクセッション番号NP_068554.1を参照のこと)。さらに、IL-21をコードする配列としてのIL-21遺伝子は、GenBankアクセッション番号NM_021803.4に記載される配列のうちCDS(コーディング配列)に対応するヌクレオチド配列であり得る(マウス配列については、GenBankアクセッション番号NM_021782.3を参照のこと)。
【0030】
本明細書において使用される場合、「IL-21タンパク質」という用語は、全長IL-21、IL-21断片、又はIL-21変異体を指す。本明細書において、IL-21、IL-21断片、又はそれらの変異体は、総称して「IL-21タンパク質」又は「IL-21ポリペプチド」という用語によって表現され得る。IL-21、IL-21タンパク質、IL-21ポリペプチド、及びIL-21変異体は、例えばIL-21受容体(IL-21R)に特異的に結合する。この特異的結合を当業者に知られる方法によって確認することができる。
【0031】
IL-21についての受容体であるIL-21Rは、クラスIサイトカイン受容体ファミリーに属する膜貫通IL-21結合タンパク質である。IL-21RとIL-21との相互作用によって誘導されるシグナル伝達はNK細胞及びT細胞の増殖及び活性化を誘導し、INF-γの分泌を促進し、最終的には抗癌効果を誘導する。
【0032】
本明細書において使用されるIL-21という用語の一実施形態は、配列番号19又は配列番号30のアミノ酸配列を有し得る。ここで、IL-21は成熟形態でもあり得る。具体的には、成熟IL-21はシグナル配列を含まない場合があり、配列番号6又は配列番号22のアミノ酸配列を有し得る。ここで、IL-21は、野生型IL-21のN末端又はC末端の一部が切断された野生型IL-21の断片を包含する概念として使用され得る。
【0033】
さらに、IL-21断片は、配列番号19又は配列番号30のアミノ酸配列を有するタンパク質のN末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、又は24個の連続したアミノ酸が切断された形態であり得る。さらに、IL-21断片は、配列番号19又は配列番号30のアミノ酸配列を有するタンパク質のC末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、又は24個の連続したアミノ酸が切断された形態であり得る。
【0034】
本明細書において使用される場合、「IL-21変異体」という用語は、全長IL-21又は上記のIL-21断片におけるアミノ酸の一部が置換された形態を指す。すなわち、IL-21変異体は、野生型IL-21又はその断片とは異なるアミノ酸配列を有し得る。しかしながら、IL-21変異体は、野生型IL-21と同等又は類似の活性を有し得る。ここで、「IL-21活性」は、例えば、IL-21受容体への特異的結合を指し得て、その特異的結合を当業者に知られる方法によって測定することができる。
【0035】
具体的には、IL-21変異体を、野生型IL-21のアミノ酸の一部の欠失及び/又は置換によって得ることができる。アミノ酸の欠失及び/又は置換により得られるIL-21変異体の一実施形態を、米国特許第8,034,326号に開示されるように、配列番号19のアミノ酸配列における1(Met)~29(Ser)の分泌シグナル配列の欠失、及び133個のアミノ酸の成熟ペプチドの66(Ile)~98(Ser)の領域におけるアミノ酸の欠失及び/又は置換によって得ることができる。IL-2変異体は、野生型IL-21と比較して維持又は改善されたIL-21活性を特徴とし得る。
【0036】
さらに、リンカー又は担体を介して、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを互いに結びつけることができる。具体的には、リンカー又は担体を介して、PD-1又はその断片とIL-21又はその変異体とを互いに結びつけることができる。本明細書において、リンカー及び担体は区別なく使用され得る。
【0037】
リンカーは2つのタンパク質を連結する。リンカーの一実施形態としては、1個~50個のアミノ酸、アルブミン又はその断片、免疫グロブリンのFcドメイン等を挙げることができる。ここで、免疫グロブリンのFcドメインは、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含み、かつ免疫グロブリンの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域並びに軽鎖定常領域1(CH1)を含まないタンパク質を指す。免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgE、IgD、又はIgMであり得て、好ましくはIgG1であり得る。ここで、野生型免疫グロブリンG1のFcドメインは配列番号14のアミノ酸配列を有し得る。
【0038】
さらに、免疫グロブリンのFcドメインは、Fcドメイン変異体だけでなく野生型Fcドメインであってもよい。さらに、本明細書において使用される場合、「Fcドメイン変異体」という用語は、グリコシル化パターンの点で野生型Fcドメインとは異なるか、野生型Fcドメインと比較して高いグリコシル化を有するか、若しくは野生型Fcドメインと比較して低いグリコシル化を有する形態、又は脱グリコシル化された形態を指し得る。さらに、非グリコシル化Fcドメインもそこに含まれる。Fcドメイン又はその変異体を、培養条件又は宿主の遺伝子操作により、調整された数のシアル酸、フコシル化、又はグリコシル化を有するように適合させることができる。
【0039】
さらに、化学的方法、酵素的方法、及び微生物を使用した遺伝子工学的方法等の慣例的な方法によって、免疫グロブリンのFcドメインのグリコシル化を改変することができる。さらに、Fcドメイン変異体は、免疫グロブリンのIgG、IgA、IgE、IgD、又はIgMのそれぞれのFc領域の混合形態であり得る。さらに、Fcドメイン変異体は、Fcドメインの一部のアミノ酸が他のアミノ酸で置換された形態であり得る。Fcドメイン変異体の一実施形態を、配列番号14のアミノ酸配列におけるQ81R、M198L、L79G、T136W、Q81R/M198L、L79G/M198L、又はQ81R/T136W/M198Lの置換によって得ることができる。さらに、Fcドメインを更に改変してIdeSプロテアーゼによる切断を防ぐことができる。例えば、これを配列番号14のアミノ酸配列におけるE3P、L4V、若しくはL5Aの置換、又はG6のアミノ酸の欠失によって得ることができる。
【0040】
具体的には、Fcドメイン変異体の一実施形態は、配列番号4、配列番号10、配列番号50、配列番号87、配列番号95、配列番号99、配列番号104、配列番号108、配列番号112、又は配列番号116のアミノ酸配列を有し得る。
【0041】
アミノ酸置換によるFcドメイン変異体の一実施形態は、特許文献1に開示されるように、FcRn(新生児Fc受容体)への会合及び解離を調節するアミノ酸置換を含むFcドメイン変異体であり得る。これには、特に、低pHではFcRnに対する結合親和性の増加を示し、かつ高pHでは結合親和性の実質的な変化を示さないFc変異体、又はその機能的変異体が含まれ得る。
【0042】
Fcドメイン変異体は、pH5.6~6.2(好ましくはpH5.8~6.0)での、野生型Fcドメインと比較して10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、若しくは100%以上増加したFcRnに対する結合親和性を有し得るか、又はpH5.6~6.2(好ましくはpH5.8~6.0)での、野生型Fcドメインの2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、若しくは100倍以上増加したFcRnに対する結合親和性を有し得る。
【0043】
pH7.0~7.8(好ましくはpH7.2~7.6)でのFcドメイン変異体のFcRn(新生児Fc受容体)からの解離の程度は、野生型Fcドメインと比較して同じであっても、又は実質的に変化していなくてもよい。
【0044】
さらに、Fcドメイン変異体は、野生型と比較して半減期の延長を特徴とし得る。具体的には、Fcドメイン変異体は、野生型Fcドメインと比較して10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、若しくは100%以上延長した半減期を有し得るか、又は野生型Fcドメインと比較して2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、若しくは10倍以上延長した半減期を有し得る。
【0045】
本明細書において使用される場合、「FcRn(新生児Fc受容体)」又は「新生児Fc受容体」という用語は、血管内皮細胞において発現されるMHCクラスI関連タンパク質であり、IgG及びアルブミンに結合する。IgGとFcRnとの間の結合はpHが弱酸性である場合に強く、中性のpHでは結合力が見られないことが特長である。したがって、ピノサイトーシス又はエンドサイトーシスを通じて細胞に侵入するIgGは、pH6.0の条件下でエンドソーム内にてFcガンマ受容体(FcγR)の一種であるFcRnに強く結合することにより、分解性リソソーム経路を回避することができる。IgGは、循環して細胞膜に戻ると、血流中でpH7.4にてFcRnから急速に解離する。FcRnは、この受容体媒介性のリサイクル機構を通じてリソソームにおけるIgGの分解を効果的に妨げ、IgGの半減期を延ばすことが知られている。
【0046】
本明細書において使用される場合、「Fcガンマ受容体(FcγR)」という用語は、IgGについてのFc受容体を指し、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)の3つの主要な型が存在する。Fc受容体は、免疫グロブリンに結合して、結合した抗体が抗原との結合部位とは独立して様々な生物学的機能を発揮することを可能にする分子であり、様々な細胞及び組織の表面上に分布している。Fc受容体は、細胞傷害性、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、サイトカイン等のメディエーターの分泌、食作用、酸化の開始、及び抗体産生の制御に関与している。
【0047】
融合タンパク質は、Fcドメインをリンカー(又は担体)として使用して、PD-1及びIL-21タンパク質又はIL-21及びPD-1がそれぞれリンカー又は担体のN末端及びC末端に連結された構造を有し得る。FcドメインのN末端又はC末端とPD-1又はIL-21との間の連結は、任意にリンカーペプチドによって達成され得る。
【0048】
具体的には、融合タンパク質は、以下の構造式I又は構造式II:
N’-A-[L]n-Fcドメイン-[L]m-B-C’ I
N’-B-[L]n-Fcドメイン-[L]m-A-C’ II
(構造式I及び構造式IIにおいて、
N’は、融合タンパク質のN末端であり、
C’は、融合タンパク質のC末端であり、
Aは、PD-1タンパク質又はその断片であり、
Bは、IL-21タンパク質又はその変異体であり、
及びLは、ペプチドリンカーであり、かつ、
n及びmは、それぞれ独立して0又は1である)からなっていてよい。
【0049】
好ましくは、融合タンパク質は構造式Iからなっていてよい。PD-1タンパク質及びIL-21タンパク質はそれぞれ上記の通りである。一実施形態によれば、PD-1タンパク質は、野生型PD-1のN末端又はC末端から約24個の連続したアミノ酸残基までが切断された断片であり得る。IL-21タンパク質は、野生型IL-21のN末端又はC末端から約24個の連続したアミノ酸残基までが切断された断片であり得る。代替的に、IL-21タンパク質は、IL-21断片のアミノ酸の一部の欠失及び/又は置換によって得られるIL-21変異体であり得る。
【0050】
具体的には、融合タンパク質は、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号24、配列番号27、配列番号32、配列番号36、配列番号41、配列番号44、配列番号52、配列番号55、配列番号76、配列番号79、配列番号82、配列番号89、配列番号92、配列番号97、配列番号101、配列番号106、配列番号110、配列番号114、又は配列番号118のアミノ酸配列を有し得る。別の実施形態によれば、融合タンパク質としては、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号24、配列番号27、配列番号32、配列番号36、配列番号41、配列番号44、配列番号52、配列番号55、配列番号76、配列番号79、配列番号82、配列番号89、配列番号92、配列番号97、配列番号101、配列番号106、配列番号110、配列番号114、又は配列番号118のアミノ酸配列に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリペプチドが挙げられる。ここで、同一性は、例えば相同性パーセントであり、米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBlastNソフトウェア等の相同性比較ソフトウェアにより決定することができる。
【0051】
PD-1タンパク質とFcドメインとの間に、ペプチドリンカーLが含まれていてよい。ペプチドリンカーLは、5個~80個の連続したアミノ酸、20個~60個の連続したアミノ酸、25個~50個の連続したアミノ酸、又は30個~40個の連続したアミノ酸からなり得る。一実施形態において、ペプチドリンカーLは、30個のアミノ酸からなり得る。さらに、ペプチドリンカーLは、少なくとも1個のシステインを含み得る。具体的には、ペプチドリンカーLは、1個、2個、又は3個のシステインを含み得る。さらに、ペプチドリンカーLは、免疫グロブリンのヒンジに由来し得る。一実施形態において、ペプチドリンカーLは、配列番号3又は配列番号38のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであり得る。
【0052】
ペプチドリンカーLは、1個~50個の連続したアミノ酸、3個~30個の連続したアミノ酸、又は5個~15個の連続したアミノ酸からなり得る。一実施形態において、ペプチドリンカーLは、(GS)n(式中、nは1~10の整数である)であり得る。ここで、(GS)nにおいて、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり得る。一実施形態において、ペプチドリンカーLは、配列番号5、配列番号39、又は配列番号57のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであり得る。
【0053】
本発明の別の態様において、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体が提供される。PD-1又はその断片とIL-21又はその変異体とを含む融合タンパク質は上記の通りである。
【0054】
ここで、二量体を構成する融合タンパク質間の結合は、限定されるものではないが、リンカー中に存在するシステインによって形成されるジスルフィド結合によって達成され得る。二量体を構成する融合タンパク質は、互いに同じ又は異なる融合タンパク質であり得る。好ましくは、二量体はホモ二量体であり得る。二量体を構成する融合タンパク質の一実施形態は、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号24、配列番号27、配列番号32、配列番号36、配列番号41、配列番号44、配列番号52、配列番号55、配列番号76、配列番号79、配列番号82、配列番号89、配列番号92、配列番号97、配列番号101、配列番号106、配列番号110、配列番号114、又は配列番号118のアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。
【0055】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明の別の態様において、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。具体的には、このポリヌクレオチドは、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号37、配列番号42、配列番号45、配列番号53、配列番号56、配列番号77、配列番号80、配列番号83、配列番号90、配列番号93、配列番号98、配列番号102、配列番号107、配列番号111、配列番号115、又は配列番号119のヌクレオチド配列を含み得る。PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質は上記の通りである。ポリヌクレオチドにおいて、1つ以上のヌクレオチドが、置換、欠失、挿入、又はそれらの組合せによって突然変異されていてよい。ヌクレオチド配列が化学合成によって調製される場合、Engels and Uhlmann(Angew Chem IntEd Engl., 37:73-127, 1988)に記載されるもの等の当該技術分野においてよく知られる合成方法を使用することができる。このような方法としては、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホロアミダイト法、及びH-ホスフェート法、PCR及び他のオートプライマー法、固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成等を挙げることができる。
【0056】
一実施形態によれば、上記ポリヌクレオチドは、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号37、配列番号42、配列番号45、配列番号53、配列番号56、配列番号77、配列番号80、配列番号83、配列番号90、配列番号93、配列番号98、配列番号102、配列番号107、配列番号111、配列番号115、又は配列番号119に対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約100%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0057】
上記ポリヌクレオチドは、シグナル配列又はリーダー配列をコードする核酸を更に含み得る。本明細書において使用される場合、「シグナル配列」という用語は、標的タンパク質の分泌を誘導するシグナルペプチドを指す。シグナルペプチドは翻訳された後に、宿主細胞内で切断される。具体的には、シグナル配列は、小胞体(ER)膜を越えるタンパク質の移行を開始するアミノ酸配列である。一実施形態において、シグナル配列は配列番号1、配列番号20、又は配列番号94のアミノ酸配列を有し得る。
【0058】
シグナル配列は、それらの特質について当該技術分野においてよく知られている。このようなシグナル配列は、典型的には16個~30個のアミノ酸残基を含み、このようなアミノ酸残基よりも多い又は少ないアミノ酸残基を含んでいてよい。典型的なシグナルペプチドは、3つの領域、すなわち塩基性N末端領域と、中央の疎水性領域と、より極性の高いC末端領域とから構成される。中央の疎水性領域は、膜脂質二重層を通る未成熟ポリペプチドの移行中にシグナル配列を固定化させる4個~12個の疎水性残基を含む。
【0059】
開始後、シグナル配列は、一般にシグナルペプチダーゼとして知られる細胞酵素によってERの内腔において切断される。ここで、シグナル配列は、tPa(組織プラスミノーゲン活性化因子)の分泌シグナル配列、HSV gD(単純ヘルペスウイルス糖タンパク質Dのシグナル配列)、又は成長ホルモンであり得る。好ましくは、哺乳動物等を含む高等真核細胞において使用される分泌シグナル配列を使用することができる。さらに、野生型PD-1及び/又はIL-21に含まれるシグナル配列を使用しても、又は宿主細胞において高い発現頻度を有するコドンに置き換えられたシグナル配列を使用してもよい。
【0060】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するベクター
本発明の別の態様において、上記ポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0061】
宿主細胞にベクターを導入して、宿主細胞のゲノムと組換えし、宿主細胞のゲノムに挿入することができる。一方で、ベクターは、エピソームとして自律的に複製可能なポリヌクレオチド配列を含む核酸手段として理解される。ベクターとしては、線状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター、及びそれらの類縁体が挙げられる。ウイルスベクターの例としては、限定されるものではないが、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスが挙げられる。
【0062】
具体的には、ベクターとしては、プラスミドDNA、ファージDNA等、及び商業的に開発されたプラスミド(pUC18、pBAD、pIDTSAMRT-AMP等)、E.コリ(E. coli)由来のプラスミド(pYG601BR322、pBR325、pUC118、pUC119等)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(pUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(YEp13、YEp24、YCp50等)、ファージDNA(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)、動物ウイルスベクター(レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス等)、昆虫ウイルスベクター(バキュロウイルス等)を挙げることができる。ベクターは宿主細胞に応じてタンパク質の様々な発現レベル及び修飾を示すため、目的に応じて最適な宿主細胞を選択し使用することが好ましい。
【0063】
本明細書において使用される場合、「遺伝子発現」又は標的タンパク質の「発現」という用語は、DNA配列の転写、mRNA転写物の翻訳、及び融合タンパク質産物又はそれらの断片の分泌を意味すると理解される。有用な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen、カールスバッド)又はその変異体であり得る。発現ベクターは、哺乳動物細胞における標的遺伝子の連続的な転写を促進するヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターと、転写後のRNAの安定性レベルを高めるウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列とを含み得る。
【0064】
融合タンパク質を発現する形質転換された細胞
本発明の別の態様において、上記ベクターが導入された形質転換された宿主細胞が提供される。
【0065】
形質転換された細胞についての宿主細胞としては、限定されるものではないが、原核細胞、真核細胞、及び哺乳動物、植物、昆虫、真菌、又は細胞を起源とする細胞を挙げることができる。原核細胞の一例として、E.コリを使用することができる。さらに、真核細胞の一例として、酵母を使用することができる。さらに、哺乳動物細胞については、CHO細胞、F2N細胞、CSO細胞、BHK細胞、Bowes黒色腫細胞、HeLa細胞、911細胞、AT1080細胞、A549細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞等を使用することができる。しかしながら、哺乳動物細胞はこれらに限定されず、哺乳動物宿主細胞として使用可能であることが当業者に知られているあらゆる細胞を使用することができる。
【0066】
さらに、宿主細胞への発現ベクターの導入には、CaCl沈殿、CaCl沈殿においてジメチルスルホキシド(DMSO)等の還元剤を使用することによって効率を高めたハナハン法、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、プロトプラスト融合、炭化ケイ素繊維を使用した撹拌、アグロバクテリウム媒介形質転換、PEGを使用した形質転換、デキストラン硫酸媒介形質転換、リポフェクタミン媒介形質転換、及び乾燥/阻害媒介(dry/inhibition-mediated)形質転換等を使用することができる。
【0067】
上記のように、治療剤としての融合タンパク質の特性を最適化するのに、又はあらゆる他の目的のために、融合タンパク質のグリコシル化パターン(例えば、シアル酸、フコシル化、グリコシル化)を、当業者に知られる方法により、宿主細胞が保有するグリコシル化関連遺伝子を操作することによって調整することができる。
【0068】
融合タンパク質を作製する方法
本発明の別の態様において、形質転換された細胞を培養することを含む、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質を作製する方法が提供される。具体的には、この作製方法は、i)形質転換された細胞を培養して培養産物を得ることと、ii)培養産物から融合タンパク質を回収することとを含み得る。
【0069】
形質転換された細胞の培養を、当該技術分野においてよく知られる方法を使用して実施することができる。具体的には、培養を回分プロセスにおいて行うことも、又は流加プロセス若しくは反復流加プロセスにおいて連続的に行うこともできる。
【0070】
融合タンパク質又はその二量体の使用
本発明の別の態様において、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質又は融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体を有効成分として含む、癌を未然防止若しくは処置する、及び/又は治療効果(効力)を高める医薬組成物が提供される。
【0071】
PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質又は融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体は上記の通りである。
【0072】
癌は、結腸直腸癌、黒色腫、胃癌、肝臓癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、胆嚢癌、甲状腺癌、喉頭癌、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽腫、網膜芽細胞腫、頭頸部癌、唾液腺癌、及びリンパ腫からなる群から選択され得る。
【0073】
医薬組成物の好ましい投薬量は、患者の状態及び体重、疾患の重症度、薬物の形態、投与の経路及び期間に応じて変動し、当業者によって適宜選択され得る。本発明の癌を処置又は未然防止する医薬組成物において、有効成分が抗癌活性を示すことができる限り、有効成分は、用法、剤形、配合目的等に応じてあらゆる量(有効量)で含まれ得る。その慣例的な有効量は、組成物の総重量に対して0.001重量%~20.0重量%の範囲内で決定されることになる。ここで、「有効量」という用語は、抗癌効果を誘導することができる有効成分の量を指す。このような有効量は当業者の通常の知識の範囲内で実験的に決定され得る。
【0074】
本明細書において使用される場合、「処置」という用語は、治療的処置及び予防的処置の両方を表すのに使用され得る。ここで、予防は、被験体の病理学的病態又は疾患が軽減又は緩和されることを表すのに使用され得る。一実施形態において、「処置」という用語は、ヒトを含む哺乳動物における疾患を処置するための適用又はあらゆる投与形態の両方を含む。さらに、この用語には、疾患又は疾患の進行を抑えるか又は遅らせることが含まれ、疾患が部分的若しくは完全に軽減されるように機能障害若しくは機能喪失を回復若しくは修復し、非効率なプロセスを刺激し、又は重篤な疾患を軽減するという意味が含まれる。
【0075】
本明細書において使用される場合、「効力」という用語は、1つ以上のパラメーター、例えば、1年、5年、又は10年等の或る特定の期間にわたる生存率又は無病生存率によって決定され得る能力を指す。さらに、パラメーターとしては、被験体における少なくとも1つの腫瘍のサイズの抑制を挙げることができる。
【0076】
バイオアベイラビリティ等の薬物動態パラメーター及びクリアランス速度等の根底にあるパラメーターが効力に影響を与える可能性もある。したがって、「効力の増強」(例えば、効力の向上)は、薬物動態パラメーターの増強及び効力の増強によるものである可能性があり、これらは、試験動物若しくはヒト被験体におけるクリアランス速度及び腫瘍成長を比較することによって、又は生存率、再発率、若しくは無病生存率等のパラメーターを比較することによって測定され得る。
【0077】
本明細書において使用される場合、「治療的有効量」又は「薬学的有効量」という用語は、対象となる疾患を未然防止又は処置するのに有効な化合物又は組成物の量であって、医療処置に適用可能な妥当な便益/リスク比で疾患を処置するのに十分であり、かつ有害作用を引き起こさない量を指す。有効量のレベルは、患者の健康状態、疾患の種類及び重症度、薬物の活性、薬物に対する患者の感受性、投与様式、投与時間、投与経路及び排泄速度、処置期間、併用又は同時使用される薬物、並びに医療分野においてよく知られる他の要因を含む要因に応じて決定され得る。一実施形態において、治療的有効量は、癌を処置するのに有効な薬物の量を意味する。
【0078】
ここで、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含んでいてよい。薬学的に許容可能な担体は、担体が患者への送達に適した非毒性物質である限り、いかなる担体であってもよい。担体として、蒸留水、アルコール、脂肪、ワックス、及び不活性固体が含まれていてよい。医薬組成物において、薬学的に許容可能なアジュバント(緩衝剤、分散剤)が含まれていてもよい。
【0079】
具体的には、有効成分に加えて薬学的に許容可能な担体を含めることにより、医薬組成物を、当該技術分野において知られる従来の方法を使用して、その投与経路に応じて非経口製剤に調製することができる。ここで、「薬学的に許容可能な」という用語は、担体が、適用(処方)される被験体が適応可能であるよりも大きな毒性を有しないと同時に、有効成分の活性を阻害しないことを意味する。
【0080】
医薬組成物を非経口製剤へと調製する場合、当該技術分野において知られる方法に従って、適切な担体を用いて注射剤、経皮パッチ剤、経鼻吸入剤、又は坐剤の形態の調剤にすることができる。注射剤にする場合には、適切な担体として、滅菌水、エタノール、グリセロール若しくはプロピレングリコール等のポリオール、又はこれらの混合物を使用することができ、好ましくは、リンガー液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又は注射用トリエタノールアミン及び5%デキストロースを含む滅菌水等の等張液を使用することができる。医薬組成物の製剤化は当該技術分野において知られており、具体的には、Remington's Pharmaceutical Sciences(第19版、1995年)等を参照することができる。この文献は本明細書の一部とみなされる。
【0081】
医薬組成物の好ましい投薬量は、患者の状態、体重、性別、年齢、重症度、及び投与経路に応じて、1日当たり0.01μg/kg~10g/kg、又は0.01mg/kg~1g/kgの範囲であり得る。投薬量を1日1回で投与しても、又は1日数回に分けてもよい。このような投薬量は、いかなる側面においても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0082】
医薬組成物が適用(処方)され得る被験体は哺乳動物及びヒトであり、ここで、ヒトが特に好ましい。有効成分に加えて、本発明の医薬組成物は、抗癌活性を増強又は強化するのに、安全性が既に検証されていて、かつ抗癌活性に関する治療効果を有することが知られているあらゆる化合物又は天然抽出物を更に含んでいてよい。
【0083】
本発明の別の態様において、癌の処置のための、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質の使用が提供される。
【0084】
本発明の別の態様において、癌に対する治療効果を増強するための、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質の使用が提供される。
【0085】
本発明の別の態様において、癌を処置する医薬の製造のための、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質の使用が提供される。
【0086】
本発明の別の態様において、癌を処置する方法、及び/又は癌に対する治療効果を増強する方法であって、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質又は融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体を被験体に投与することを含む、方法が提供される。
【0087】
被験体は、癌に罹患している個体であり得る。さらに、被験体は哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質又は融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体は上記の通りである。
【0088】
融合タンパク質又は融合タンパク質二量体の投与経路、投薬量、及び投与回数は、患者の状態及び副作用の有無に応じて変動し得るため、融合タンパク質又は融合タンパク質二量体は、様々な様式及び量において被験体に投与され得る。最適な投与方法、投薬量、及び投与回数は、当業者によって適切な範囲において選択され得る。さらに、融合タンパク質又は融合タンパク質二量体を、治療対象の疾患に関して治療効果が知られている他の薬物若しくは生理学的活性物質と組み合わせて投与することも、又は他の薬物との組合せ調剤の形態で製剤化することもできる。
【0089】
融合タンパク質又はその二量体を含む細胞培養培地
本発明の別の態様において、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質又は融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体を含む細胞培養培地が提供される。
【0090】
ここで、細胞はT細胞又はナチュラルキラー細胞であり得る。細胞培養培地は、PD-1タンパク質とIL-21タンパク質とを含む融合タンパク質又は融合タンパク質が2つ互いに結びついた融合タンパク質二量体が補充された細胞培養培地であり得る。細胞培養培地は、アミノ酸、糖、無機塩、及びビタミンからなる群から選択されるいずれか1つを含んでいてよい。好ましくは、細胞培養培地は、アミノ酸、糖、無機塩、及びビタミンを全て含み得る。
【0091】
本明細書において使用される場合、「細胞培養培地」という用語は、細胞を培養するのに使用される培地を指し、具体的には、免疫細胞、より具体的にはCD4T細胞若しくはCD8T細胞、又はNK細胞を培養する培地を指す。培地は、細胞がin vitroでの細胞の成長及び生存に必要とする成分を含むか、又は細胞の成長及び生存を助ける成分を含む。具体的には、これらの成分はビタミン、必須アミノ酸又は非必須アミノ酸、及び微量元素であり得る。培地は、細胞、好ましくは真核細胞、より好ましくはT細胞又はNK細胞を培養するのに使用される培地であり得る。
【0092】
発明を実施するための形態
以下で、以下の実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、本発明を例示するものであるにすぎず、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0093】
I.融合タンパク質:BNS001の調製
調製例1.hPD-1 D-Fc(29)-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(29)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29)ドメイン(配列番号4)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号7)をコードするヌクレオチド配列(配列番号9)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0094】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号8)を「hPD-1 D-Fc(29)-hIL-21」又は「BNS001(29)」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。
【0095】
収集した培養液中の融合タンパク質を、プロテインA樹脂(KANEKA)を含むアフィニティークロマトグラフィーを使用して1回目の精製に供した。結合した融合タンパク質及び樹脂をDPBSバッファーで洗浄した後、結合した融合タンパク質のみを0.1Mのグリシンバッファー(pH3.3)で溶出した。溶出された融合タンパク質をDPBSバッファーに対して1日間透析してバッファーを交換した後、HILOAD(商標)16/600 SUPERDEX(商標)200pgカラム(Cytiva)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーを行うことにより2回目の精製に供した。単離及び精製された融合タンパク質を、NanoDropを使用して定量し、その純度をSDS-PAGE及びSEC-HPLC分析によって分析した(図1及び図2)。
【0096】
調製例2.hPD-1 D-Fc(41)-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(41)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(41)ドメイン(配列番号10)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号11)をコードするヌクレオチド配列(配列番号13)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0097】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号12)を「hPD-1 D-Fc(41)-hIL-21」又は「BNS001(41)」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。
【0098】
融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。単離及び精製された融合タンパク質を、NanoDropを使用して定量し、その純度をSDS-PAGE及びSEC-HPLC分析によって分析した(図1及び図2)。
【0099】
調製例3.hPD-1 D-Fc(wt)-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(wt)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(wt)ドメイン(配列番号14)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号15)をコードするヌクレオチド配列(配列番号17)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0100】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号16)を「hPD-1 D-Fc(wt)-hIL-21」又は「BNS001(wt)」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。
【0101】
融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。単離及び精製された融合タンパク質を、NanoDropを使用して定量し、その純度をSDS-PAGE及びSEC-HPLC分析によって分析した(図1及び図2)。
【0102】
調製例4.mPD-1 D-Fc(29)-mIL-21の調製
マウスPD-1断片と、持続性Fc(29)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号20)と、PD-1断片(配列番号21)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29)ドメイン(配列番号4)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号22)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号23)をコードするヌクレオチド配列(配列番号25)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0103】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号24)を「mPD-1 D-Fc(29)-mIL-21」又は「mBNS001(29)」と命名し、それに伴い、mPD-1とmIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0104】
調製例5.mPD-1 D-Fc(wt)-mIL-21の調製
マウスPD-1断片と、持続性Fc(wt)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号20)と、PD-1断片(配列番号21)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(wt)ドメイン(配列番号14)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号22)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号26)をコードするヌクレオチド配列(配列番号28)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0105】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号27)を「mPD-1 D-Fc(wt)-mIL-21」又は「mBNS001(wt)」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0106】
調製例6.hPD-1 D-Fc(29)-mIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(29)ドメインと、マウスIL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29)ドメイン(配列番号4)と、リンカー(配列番号5)と、マウスIL-21(配列番号22)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号31)をコードするヌクレオチド配列(配列番号33)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0107】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号32)を「hPD-1 D-Fc(29)-mIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0108】
調製例7.hPD-1 ECD-Fc(29)-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(29)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号34)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29)ドメイン(配列番号4)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号35)をコードするヌクレオチド配列(配列番号37)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0109】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号36)を「hPD-1 ECD-Fc(29)-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0110】
調製例8.hIL-21-Fc(29)-hPD-1 Dの調製
ヒトIL-21断片と、持続性Fc(29)ドメインと、PD-1断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号20)と、IL-21(配列番号6)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号38)と、Fc(29)ドメイン(配列番号4)と、リンカー(配列番号39)と、PD-1断片(配列番号2)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号40)をコードするヌクレオチド配列(配列番号42)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0111】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号41)を「hIL-21-Fc(29)-hPD-1 D」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0112】
調製例9.hIL-21-Fc(29)-hPD-1 ECDの調製
ヒトIL-21断片と、持続性Fc(29)ドメインと、PD-1断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号20)と、IL-21(配列番号6)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号38)と、Fc(29)ドメイン(配列番号4)と、リンカー(配列番号39)と、PD-1断片(配列番号34)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号43)をコードするヌクレオチド配列(配列番号45)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0113】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号44)を「hIL-21-Fc(29)-hPD-1 ECD」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0114】
調製例10.hPD-1 D-Fc(29,K)-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(29,K)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29,K)ドメイン(配列番号50)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号51)をコードするヌクレオチド配列(配列番号53)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0115】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号52)を「hPD-1 D-Fc(29,K)-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0116】
調製例11.hPD-1 D-Fc(29,K)-mIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(29,K)ドメインと、マウスIL-21断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29,K)ドメイン(配列番号50)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号22)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号54)をコードするヌクレオチド配列(配列番号56)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0117】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号55)を「hPD-1 D-Fc(29,K)-mIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0118】
調製例12.hPD-1 ECD-Fc(wt)-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(wt)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号34)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(wt)ドメイン(配列番号14)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号75)をコードするヌクレオチド配列(配列番号77)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0119】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号76)を「hPD-1 ECD-Fc(wt)-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0120】
調製例13.hIL-21-Fc(wt)-hPD-1 Dの調製
ヒトIL-21断片と、持続性Fc(wt)ドメインと、PD-1断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号20)と、IL-21(配列番号6)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号38)と、Fc(wt)ドメイン(配列番号14)と、リンカー(配列番号39)と、PD-1断片(配列番号2)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号78)をコードするヌクレオチド配列(配列番号80)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0121】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号79)を「hIL-21-Fc(wt)-hPD-1 D」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0122】
調製例14.hIL-21-Fc(wt)-hPD-1 ECDの調製
ヒトIL-21断片と、持続性Fc(wt)ドメインと、PD-1断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号20)と、IL-21(配列番号6)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号38)と、Fc(wt)ドメイン(配列番号14)と、リンカー(配列番号39)と、PD-1断片(配列番号34)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号81)をコードするヌクレオチド配列(配列番号83)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0123】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号82)を「hIL-21-Fc(wt)-hPD-1 ECD」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0124】
調製例15.hPD-1 D-Fc(wt,K)-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(wt,K)ドメインと、IL-21とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(wt,K)ドメイン(配列番号87)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号88)をコードするヌクレオチド配列(配列番号90)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0125】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号89)を「hPD-1 D-Fc(wt,K)-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0126】
調製例16.hPD-1 D-Fc(wt,K)-mIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(wt,K)ドメインと、マウスIL-21断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、GenScriptの遺伝子合成サービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号1)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(wt,K)ドメイン(配列番号87)と、リンカー(配列番号5)と、マウスIL-21断片(配列番号22)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号91)をコードするヌクレオチド配列(配列番号93)を含む。このポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher Scientific)へと導入した。
【0127】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して11日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号92)を「hPD-1 D-Fc(wt,K)-mIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例1と同様に行った。
【0128】
調製例17.hPD-1 D-Fc(29)R-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(29)Rドメインと、ヒトIL-21断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、Cosmogenetech Co, Ltdの遺伝子クローニングサービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号94)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29)Rドメイン(配列番号95)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21断片(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号96)をコードするヌクレオチド配列(配列番号98)を含む。このポリヌクレオチドをUCOE-GSベクター(Merck KGaA)へと導入した。
【0129】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して7日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号97)を「hPD-1 D-Fc(29)R-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001R」と命名した。
【0130】
収集した培養液中の融合タンパク質を、プロテインA樹脂(Cytiva)を含むアフィニティークロマトグラフィーを使用して1回目の精製に供した。結合した融合タンパク質及び樹脂をDPBSバッファーで洗浄した後、結合した融合タンパク質のみを0.1Mのグリシンバッファー(pH3.3)で溶出した。溶出した融合タンパク質をDPBSバッファーに対して1日間透析してバッファーを交換した後、NanoDropを使用して定量し、SDS-PAGE分析を行った。
【0131】
調製例18.hPD-1 D-Fc(29)RE-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(29)REドメインと、ヒトIL-21断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、Cosmogenetech Co, Ltdの遺伝子クローニングサービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号94)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29)REドメイン(配列番号99)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21断片(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号100)をコードするヌクレオチド配列(配列番号102)を含む。このポリヌクレオチドをUCOE-GSベクター(Merck KGaA)へと導入した。
【0132】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して7日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号101)を「hPD-1 D-Fc(29)RE-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001RE」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例17と同様に行った。
【0133】
調製例19.hPD-1v D-Fc(29)REA-hIL-21の調製
ヒトPD-1変異体断片と、持続性Fc(29)REAドメインと、ヒトIL-21断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、Cosmogenetech Co, Ltdの遺伝子クローニングサービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号94)と、PD-1v断片(配列番号103)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(29)REAドメイン(配列番号104)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21断片(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号105)をコードするヌクレオチド配列(配列番号107)を含む。このポリヌクレオチドをUCOE-GSベクター(Merck KGaA)へと導入した。
【0134】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して7日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号106)を「hPD-1v D-Fc(29)REA-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001REA」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例17と同様に行った。
【0135】
調製例20.hPD-1 D-Fc(wt)R-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(wt)Rドメインと、ヒトIL-21断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、Cosmogenetech Co, Ltdの遺伝子クローニングサービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号94)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(wt)Rドメイン(配列番号108)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21断片(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号109)をコードするヌクレオチド配列(配列番号111)を含む。このポリヌクレオチドをUCOE-GSベクター(Merck KGaA)へと導入した。
【0136】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して7日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号110)を「hPD-1 D-Fc(wt)R-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001wR」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例17と同様に行った。
【0137】
調製例21.hPD-1 D-Fc(wt)RE-hIL-21の調製
ヒトPD-1断片と、持続性Fc(wt)REドメインと、ヒトIL-21断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、Cosmogenetech Co, Ltdの遺伝子クローニングサービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号94)と、PD-1断片(配列番号2)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(wt)REドメイン(配列番号112)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21断片(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号113)をコードするヌクレオチド配列(配列番号115)を含む。このポリヌクレオチドをUCOE-GSベクター(Merck KGaA)へと導入した。
【0138】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して7日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号114)を「hPD-1 D-Fc(wt)RE-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001wRE」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例17と同様に行った。
【0139】
調製例22.hPD-1v D-Fc(wt)REA-hIL-21の調製
ヒトPD-1変異体断片と、持続性Fc(wt)REAドメインと、ヒトIL-21断片とを含む融合タンパク質を作製するのに、Cosmogenetech Co, Ltdの遺伝子クローニングサービスを通じてポリヌクレオチドを合成した。具体的には、このポリヌクレオチドは、シグナルペプチド(配列番号94)と、PD-1v断片(配列番号103)と、リンカーが結合されるIgヒンジ(配列番号3)と、Fc(wt)REAドメイン(配列番号116)と、リンカー(配列番号5)と、IL-21断片(配列番号6)とをN末端からこの順序で含む融合タンパク質(配列番号117)をコードするヌクレオチド配列(配列番号119)を含む。このポリヌクレオチドをUCOE-GSベクター(Merck KGaA)へと導入した。
【0140】
発現ベクターをCHO細胞(EXPICHO-S(商標)、Thermo Fisher Scientific)へと導入して、融合タンパク質を発現させた。CHO細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、製造業者のMax Protocolを使用して7日間培養した後、培養液を収集し、そこから融合タンパク質を精製した。精製された融合タンパク質(配列番号118)を「hPD-1v D-Fc(wt)REA-hIL-21」と命名し、それに伴い、PD-1とIL-21とを含む融合タンパク質二量体を総称して「BNS001wREA」と命名した。融合タンパク質の精製及び収集を上記調製例17と同様に行った。
【0141】
II.BNS001融合タンパク質の純度分析
実験例1.SEC-HPLC分析
単離及び精製された融合タンパク質の純度を確認するのに、SEC-HPLC実験を行った。UV検出器を備えたWatersのAlliance HPLCシステムにおいてサイズ排除HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を実施した。カラム(TSK G3000 SWXL、5μmのSECカラム)をTosoh Bioscienceから購入した。100mMのNaPi、150mMのNaCl(pH7.0)を移動相として使用した。100%のアイソクラティックな移動条件下で0.5mL/分の流量にて280nmの波長での吸光度を経時的に測定することによって、融合タンパク質の純度を分析した(図2)。
【0142】
単離及び精製されたBNS001融合タンパク質は、98%以上の純度を有することが確認された(図2)。
【0143】
III.BNS001融合タンパク質の濃度分析
実験例2.濃度分析
融合タンパク質を0.2mg/mL、0.4mg/mL、0.6mg/mL、0.8mg/mL、及び1.0mg/mLの濃度に希釈した。UV吸光度を、紫外分光光度計(Little lunatic、Unchained Labs)を使用して230nm~400nmの波長範囲で測定した。各濃度の融合タンパク質を0.2mg/mLの濃度に希釈した後、酸加水分解を行った。加水分解されたアミノ酸を誘導体化し、WatersのACQUITY UPLCシステムを使用してUPLC(超高速液体クロマトグラフィー)を実施した。使用したカラムはAccQ-Tag Ultra RPカラム(2.1mm×100mm、1.7μm、130Å)であった。使用した移動相Aは5%のAccQ-tag A溶媒であり、使用した移動相BはAccQ-tag B溶媒であり、勾配系を7.5分間にわたって99.9:0.1から始まり40.4:59.6で終わるA:B比を使用して行った。試料注入容量は1μlであり、流量は0.7mL/分であり、カラム温度は55℃であった。データシステムにはEnpower 3ソフトウェアが使用され、試料の前処理工程において加えた標準溶液(I.S.)にデータをフィッティングさせた。
【0144】
単離及び精製されたBNS001融合タンパク質の吸光度に応じて含有量を調べることにより吸光係数を決定した。吸光係数を使用して融合タンパク質の濃度を確認したところ、2.08mg/mL~2.22mg/mLの濃度で融合タンパク質が含まれることが確認された(図3)。
【0145】
IV.BNS001融合タンパク質の物性分析
実験例3.熱力学的安定性分析
単離及び精製された融合タンパク質の熱力学的安定性を確認するのに、蛍光検出器、静的光散乱(SLS)検出器、及び動的光散乱(DLS)検出器を備えたUNCHAINED LABSのUNcle分光光度計システムを使用して、T、Tagg、及びTonsetの分析を行った。融合タンパク質用のバッファーを、超純水を使用して交換し、タンパク質濃度がUNCHAINED LABSのLittle Lunatic機器を使用した分析に必要とされるタンパク質濃度の1.25倍となるように試料を調製した。超純水を使用して、調製した試料を1.25倍に希釈し、製剤化バッファーを5倍に希釈した。調製した試料をUni(UNCHAINED LABS)にロードし、15℃~95℃の温度にて266nmの波長で蛍光検出器及びSLS検出器を用いてT、Tagg、及びTonsetを測定した。UNCHAINED LABSのソフトウェアUncle Analysis V4.01を使用してデータを分析した。
【0146】
単離及び精製されたBNS001融合タンパク質の熱力学的安定性は図4に示されるように測定された。
【0147】
実験例4.構造安定性分析
単離及び精製された融合タンパク質の構造安定性を確認するのに、FT-IR分光光度計(ThermoのNicolet IS50、一回反射型ATRダイヤモンドクリスタル付属)を使用して、二次構造分析を行った。融合タンパク質濃度が10mg/mLとなるように試料を調製した。FT-IR機器の分析条件を4cm-1の位相分解能及び1cm-1のデータ間隔に設定し、測定を500cm-1~4000cm-1の範囲において128回繰り返した。融合タンパク質の二次構造含量を分析するのに、1700cm-1~1600cm-1の範囲におけるゼロ次FT-IRスペクトルデータを使用した。このとき、ATRサンプリングアクセサリーを使用して分析を行ったため、最初に取得されたFT-IRスペクトルデータに対してATR補正を行い、補正後に得られた減算スペクトルから2300cm-1での水蒸気バンドを除去した。さらに、最終的なゼロ次FT-IRスペクトルを、ベースライン補正及び11点のSavitzky-Golay関数によるフィッティングによって取得した。FT-IR分析を通じて得られたゼロ次FT-IRスペクトルのうち、1700cm-1~1600cm-1の範囲におけるデータを、線形フィット関数を使用して計算して二次微分スペクトルを得た。二次微分スペクトルからピークを抽出し、抽出したピークをガウス関数とフィッティングした。ピークのサイズ及び位置を3%の許容誤差で調整して、最終的に抽出されたスペクトルを取得した。二次構造を波数に応じて二次微分スペクトルから抽出されたピークに割り当て、割り当てられたピークについてピーク面積を計算して各試料中の二次構造含量を計算した。
【0148】
単離及び精製されたBNS001融合タンパク質の二次構造分析は図5に示されるように測定された。
【0149】
実験例5.分子量分析
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析によって融合タンパク質の分子量を確認した。DPBS(pH7.15)をバッファーとして使用し、融合タンパク質の濃度を1mg/mLに希釈し、MALDI-TOF/TOF(商標)5800システム(AB SCIEX)を使用して測定した。モードとしてはポジティブイオンリニアモードを使用し、標準材料としてIgG1(電荷+2、平均74249)及びIgG1(電荷+1、平均148500)の混合物を使用した。使用したマトリックスは、10mg/mLの濃度のシナピン酸(0.1%のTFA/30%のACN)であり、zip-tipで前処理した後、融合タンパク質試料をマトリックスと1:5の比率で混合し、6つのスポットをプレートに注入した。Data explorerバージョン4.11(AB SCIEX)を使用してデータを分析し、プログラムにおいて6回蓄積することによってデータを導き出した。20kDaから200kDaまでの分子量範囲(m/z)を測定した。
【0150】
単離及び精製されたBNS001融合タンパク質のMALDI-TOF分析は図6に示されるように測定された。
【0151】
V.BNS001融合タンパク質とリガンド又は受容体との間の速度論的結合親和性の確認
BNS001融合タンパク質とリガンドとの速度論的結合親和性を確認するのに、Biacore T200(GE Healthcare)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)分析によって結合親和性を測定した。
【0152】
実験例6.hPD-L1リガンドとBNS001融合タンパク質との間の結合親和性の確認
PD-L1リガンドをCNaO(pH4.0、pH5.5)中で3μg/mL~4μg/mLに希釈し、HBS-EP(pH7.4)で事前に活性化したCM5センサーチップ(GE Healthcare)上でアミンカップリングを使用して約1000RUまで固定化した。HBS-EP(pH7.4)を用いて0.78nMから200nMまでの様々な濃度範囲で調製されたBNS001融合タンパク質の希釈溶液を流すことによって、センサーグラムを記録した。BNS001融合タンパク質とPD-L1リガンドとの間の結合を、30μl/分の流量にて5分間の会合期間及び10分間の解離期間で測定した。各実行の間に10mMのNaOHを注入することによってセンサーチップ表面を再生した。データ分析ソフトウェア(Ver3.2)を使用して結合動態を分析し、1:1結合モデルを使用してデータをフィッティングした。
【0153】
結果として、hPD-L1リガンドとBNS001融合タンパク質との間の結合親和性は図7に示されるように測定された。
【0154】
実験例7.hPD-L1リガンドとhPD-1タンパク質との間の結合親和性の確認
BNS001融合タンパク質とhPD-L1リガンドとの間の結合親和性の強さを確認するのに、hPD-1タンパク質とhPD-L1リガンドとの間の結合親和性を比較した。PD-L1リガンドをCNaO(pH4.0、pH5.5)中で3μg/mL~4μg/mLに希釈し、HBS-EP(pH7.4)で事前に活性化したCM5センサーチップ(GE Healthcare)上でアミンカップリングを使用して約1000RUまで固定化した。HBS-EP(pH7.4)を用いて0.78nMから200nMまでの様々な濃度範囲で調製されたhPD-1タンパク質の希釈溶液を流すことによって、センサーグラムを記録した。hPD-L1リガンドとhPD-1タンパク質との間の結合を、30μl/分の流量にて5分間の会合期間及び10分間の解離期間で測定した。各実行の間に10mMのNaOHを注入することによってセンサーチップ表面を再生した。データ分析ソフトウェア(Ver3.2)を使用して結合動態を分析し、1:1結合モデルを使用してデータをフィッティングした。
【0155】
結果として、hPD-L1リガンドとhPD-1タンパク質との間の結合親和性は図8に示されるように測定された。BNS001融合タンパク質とhPD-L1リガンドとの間の結合親和性は、hPD-1タンパク質とhPD-L1リガンドとの間の結合親和性よりもおよそ10倍高いことが確認された。
【0156】
実験例8.hPD-L2リガンドとBNS001融合タンパク質との間の結合親和性の確認
PD-L2リガンドをCNaO(pH4.0、pH5.5)中で3μg/mL~4μg/mLに希釈し、HBS-EP(pH7.4)で事前に活性化したCM5センサーチップ(GE Healthcare)上でアミンカップリングを使用して約1000RUまで固定化した。HBS-EP(pH7.4)を用いて0.78nMから200nMまでの様々な濃度範囲で調製されたBNS001融合タンパク質の希釈溶液を流すことによって、センサーグラムを記録した。BNS001融合タンパク質とPD-L2リガンドとの間の結合を、30μl/分の流量にて5分間の会合期間及び10分間の解離期間で測定した。各実行の間に10mMのNaOHを注入することによってセンサーチップ表面を再生した。データ分析ソフトウェア(Ver3.2)を使用して結合動態を分析し、1:1結合モデルを使用してデータをフィッティングした。
【0157】
結果として、hPD-L2リガンドとBNS001融合タンパク質との間の結合親和性は図9に示されるように測定された。
【0158】
実験例9.hPD-L2リガンドとhPD-1タンパク質との間の結合親和性の確認
BNS001融合タンパク質とhPD-L2リガンドとの間の結合親和性の強さを確認するのに、hPD-1タンパク質とhPD-L2リガンドとの間の結合親和性を比較した。PD-L2リガンドをCNaO(pH4.0、pH5.5)中で3μg/mL~4μg/mLに希釈し、HBS-EP(pH7.4)で事前に活性化したCM5センサーチップ(GE Healthcare)上でアミンカップリングを使用して約1000RUまで固定化した。HBS-EP(pH7.4)を用いて0.78nMから200nMまでの様々な濃度範囲で調製されたhPD-1タンパク質の希釈溶液を流すことによって、センサーグラムを記録した。hPD-L2リガンドとhPD-1タンパク質との間の結合を、30μl/分の流量にて5分間の会合期間及び10分間の解離期間で測定した。各実行の間に10mMのNaOHを注入することによってセンサーチップ表面を再生した。データ分析ソフトウェア(Ver3.2)を使用して結合動態を分析し、1:1結合モデルを使用してデータをフィッティングした。
【0159】
結果として、hPD-L2リガンドとhPD-1タンパク質との間の結合親和性は図10に示されるように測定された。BNS001融合タンパク質とhPD-L2リガンドとの間の結合親和性は、hPD-1タンパク質とhPD-L2リガンドとの間の結合親和性よりもおよそ10倍高いことが確認された。
【0160】
実験例10.hIL-21受容体とBNS001融合タンパク質との間の結合親和性の確認
hIL-21受容体をCNaO(pH4.0、pH5.5)中で3μg/mL~4μg/mLに希釈し、HBS-EP(pH7.4)で事前に活性化したCM5センサーチップ(GE Healthcare)上でアミンカップリングを使用して約1000RUまで固定化した。HBS-EP(pH7.4)を用いて0.78nMから200nMまでの様々な濃度範囲で調製されたBNS001融合タンパク質の希釈溶液を流すことによって、センサーグラムを記録した。BNS001融合タンパク質とhIL-21受容体との間の結合を、30μl/分の流量にて5分間の会合期間及び10分間の解離期間で測定した。各実行の間に10mMのNaOHを注入することによってセンサーチップ表面を再生した。データ分析ソフトウェア(Ver3.2)を使用して結合動態を分析し、1:1結合モデルを使用してデータをフィッティングした。
【0161】
結果として、hIL-21受容体とBNS001融合タンパク質との間の結合親和性は図11に示されるように測定された。
【0162】
実験例11.hIL-21受容体とhIL-21タンパク質との間の結合親和性の確認
BNS001融合タンパク質とhIL-21受容体との間の結合親和性の強さを確認するのに、hIL-21タンパク質とhIL-21受容体との間の結合親和性を比較した。hIL-21受容体をCNaO(pH4.0、pH5.5)中で3μg/mL~4μg/mLに希釈し、HBS-EP(pH7.4)で事前に活性化したCM5センサーチップ(GE Healthcare)上でアミンカップリングを使用して約1000RUまで固定化した。HBS-EP(pH7.4)を用いて0.04nMから5nMまでの様々な濃度範囲で調製されたhIL-21タンパク質の希釈溶液を流すことによって、センサーグラムを記録した。hIL-21受容体とhIL-21タンパク質との間の結合を、30μl/分の流量にて5分間の会合期間及び10分間の解離期間で測定した。各実行の間に10mMのNaOHを注入することによってセンサーチップ表面を再生した。データ分析ソフトウェア(Ver3.2)を使用して結合動態を分析し、1:1結合モデルを使用してデータをフィッティングした。
【0163】
結果として、hIL-21受容体とhIL-21タンパク質との間の結合親和性は図12に示されるように測定された。BNS001融合タンパク質とhIL-21受容体との間の結合親和性は、hIL-21タンパク質とhIL-21受容体との間の結合親和性よりもおよそ100倍低いことが確認された。
【0164】
実験例12.hFcRn受容体とBNS001融合タンパク質との間の結合親和性の確認
hFcRn受容体をCNaO(pH5.0)中で5μg/mLに希釈し、20mMのリン酸塩、150mMのNaCl(pH6.0及びpH7.4)で事前に活性化したCM5センサーチップ(GE Healthcare)上でアミンカップリングを使用して約1000RUまで固定化した。20mMのリン酸塩、150mMのNaCl、0.05%のTween20(pH6.0)を用いて0.78nMから100nMまでの様々な濃度範囲で調製された融合タンパク質の希釈溶液を流すことによって、センサーグラムを記録した。融合タンパク質との結合を、30μl/分の流量にて4分間の会合期間及び10分間の解離期間で測定した。各実行の間に50mMのNaOHを注入することによってセンサーチップ表面を再生した。データ分析ソフトウェア(Ver3.2)を使用して結合動態を分析し、1:1結合モデルを使用してデータをフィッティングした。
【0165】
結果として、hFcRn受容体とBNS001融合タンパク質との間の結合親和性は図13に示されるように測定された。BNS001融合タンパク質のうち、PD-1 D-Fc(29)-IL-21タンパク質及びPD-1 D-Fc(41)-IL-21タンパク質は、PD-1 D-Fc(wt)-IL-21及びPD-1 D-Fcタンパク質よりも強いhFcRn受容体に対する結合親和性を有することが確認された。
【0166】
VI.BNS001融合タンパク質とリガンド又は受容体との間の免疫学的結合親和性の確認
BNS001融合タンパク質とリガンドとの間の結合親和性を確認するのに、免疫学的分析によって結合親和性を測定した。
【0167】
実験例13.ELISA分析によるBNS001融合タンパク質とPD-L1リガンドとの間の結合親和性の確認
100ng/mLの濃度の0.1mLのPD-L1-Fcリガンドを96ウェルプレート(高結合型プレート、Corning、番号CT9018)上に4℃で16時間固定化した後、250μlのブロッキングバッファーで室温にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、300μlの洗浄バッファーを用いて洗浄プロセスを4回行った。次に、段階希釈したBNS001融合タンパク質を50μlのアリコートに分けた後、50μlの試料希釈物を加えた。25ng/mLに希釈した検出抗体(ビオチン化ヤギ抗ヒトIL-21抗体)を1ウェル当たり50μl加え、室温で2時間反応させた。反応が完了した後、プレートを400μlの洗浄バッファーで4回洗浄し、残りの溶液を完全に除去した。ストレプトアビジン-HRPを1×アッセイバッファーを使用して1:200の比で希釈したものをウェルに100μl加え、室温で1時間反応させた。反応が完了した後、プレートを400μlの洗浄バッファーで4回洗浄し、残りの溶液を完全に除去した。各ウェルを100μlのTMB溶液で処理した後、遮光しながら反応を室温で30分間行った。反応後、各ウェルに100μlの停止溶液を加え、プレートリーダー(波長:450nm)を使用して吸光度を測定した。このとき、各実験を2連で実施した。
【0168】
ELISA分析の結果として、BNS001融合タンパク質とPD-L1リガンドとの間の結合親和性は図14に示されるように測定された。
【0169】
実験例14.ELISA分析によるBNS001融合タンパク質とPD-L2リガンドとの間の結合親和性の確認
100ng/mLの濃度の0.1mLのPD-L2-Fcリガンドを96ウェルプレート(高結合型プレート、Corning、番号CT9018)上に4℃で16時間固定化した後、250μlのブロッキングバッファーで室温にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、300μlの洗浄バッファーを用いて洗浄プロセスを4回行った。次に、段階希釈したBNS001融合タンパク質を50μlのアリコートに分けた後、50μlの試料希釈物を加えた。25ng/mLに希釈した検出抗体(ビオチン化ヤギ抗ヒトIL-21抗体)を1ウェル当たり50μl加え、室温で2時間反応させた。反応が完了した後、プレートを400μlの洗浄バッファーで4回洗浄し、残りの溶液を完全に除去した。ストレプトアビジン-HRPを1×アッセイバッファーを使用して1:200の比で希釈したものをウェルに100μl加え、室温で1時間反応させた。反応が完了した後、プレートを400μlの洗浄バッファーで4回洗浄し、残りの溶液を完全に除去した。各ウェルを100μlのTMB溶液で処理した後、遮光しながら反応を室温で30分間行った。反応後、各ウェルに100μlの停止溶液を加え、プレートリーダー(波長:450nm)を使用して吸光度を測定した。このとき、各実験を2連で実施した。
【0170】
ELISA分析の結果として、BNS001融合タンパク質とPD-L2リガンドとの間の結合親和性は図15に示されるように測定された。
【0171】
実験例15.ELISA分析によるBNS001融合タンパク質とIL-21受容体との間の結合親和性の確認
100ng/mLの濃度の0.1mLのIL-21受容体を96ウェルプレート(高結合型プレート、Corning、番号CT9018)上に4℃で16時間固定化した後、250μlのブロッキングバッファーで室温にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、300μlの洗浄バッファーを用いて洗浄プロセスを4回行った。次に、段階希釈したBNS001融合タンパク質を50μlのアリコートに分けた後、50μlの試料希釈物を加えた。25ng/mLに希釈した検出抗体(ビオチン化ヤギ抗ヒトPD-1抗体)を1ウェル当たり50μl加え、室温で2時間反応させた。反応が完了した後、プレートを400μlの洗浄バッファーで4回洗浄し、残りの溶液を完全に除去した。ストレプトアビジン-HRPを1×アッセイバッファーを使用して1:200の比で希釈したものをウェルに100μl加え、室温で1時間反応させた。反応が完了した後、プレートを400μlの洗浄バッファーで4回洗浄し、残りの溶液を完全に除去した。各ウェルを100μlのTMB溶液で処理した後、遮光しながら反応を室温で30分間行った。反応後、各ウェルに100μlの停止溶液を加え、プレートリーダー(波長:450nm)を使用して吸光度を測定した。このとき、各実験を2連で実施した。
【0172】
ELISA分析の結果として、BNS001融合タンパク質とIL-21受容体との間の結合親和性は図16に示されるように測定された。
【0173】
実験例16.FcRn結合イムノアッセイによるBNS001融合タンパク質とFcRn受容体との間の結合親和性の確認
FcRn(新生児Fc受容体)に対するエフェクター機能を示し得るBNS001融合タンパク質のFcRn(新生児Fc受容体)に対する結合力を測定するのに、PromegaのLUMIT(商標)FcRn結合イムノアッセイキットを使用して分析を行った。FcRnはpH依存的な結合力を有することが知られているため、BNS001融合タンパク質を、pH調整バッファーを使用してpH6.0に調整し、FcRnアッセイバッファーを用いてそれぞれの濃度で希釈することによって調製した。キット中のTracer-LgBit溶液を各ウェルに25μlを分注し、それぞれの濃度で希釈されたBNS001融合タンパク質を各ウェルに25μlを分注した。その後、キット中のhFcRn-SmBiT溶液を各ウェルに50μlを分注し、室温で1時間反応させ、LUMIT(商標)FcRn検出試薬を各ウェルに25μl加え、5分間反応させた。反応後、これをSynergy Neo2(BioTek)を使用して分析した。
【0174】
LUMIT(商標)FcRn結合イムノアッセイ分析の結果として、BNS001融合タンパク質とFcRn受容体との間の結合親和性は図17に示されるように測定された。
【0175】
VII.細胞ベースのアッセイによるBNS001融合タンパク質とIL-21受容体との間の結合親和性の確認
実験例17.BNS001融合タンパク質とIL-21受容体との間の細胞ベースの結合親和性の確認
IL-21受容体に対するBNS001融合タンパク質の結合親和性を、PATHHUNTER(商標)eXpress二量体化アッセイキット(Dimerization Assay Kit)(Eurofins)を使用して測定し、液体窒素中で貯蔵されたPATHHUNTER(商標)eXpress二量体化細胞(Dimerization Cells)を、温めた細胞プレーティング試薬を使用して解凍した。解凍した細胞を96ウェルプレート(SPL)へと100μlずつ分注し、それぞれの濃度のBNS001融合タンパク質で処理した後、各ウェルを110μlのPATHHUNTER(商標)フラッシュ検出試薬(Flash Detection reagent)で処理した。処理後、室温及び暗所の条件で1時間反応を行った。反応後、化学発光をSynergy Neo2(BioTek)を使用して測定した。測定された値に基づいて、融合タンパク質についてのEC50(半最大有効濃度、薬物が投与に際して有し得る最大効果の約半分を示す薬物の濃度)値を確認した。
【0176】
PATHHUNTER(商標)eXpress二量体化アッセイ測定の結果として、BNS001融合タンパク質とIL-21受容体との間の結合親和性は図18に示されるように測定された。
【0177】
VIII.BNS001融合タンパク質の免疫活性の確認
実験例18.BNS001融合タンパク質によるIFN-γ産生の確認
実験例18.1.PBMCの培養
ヒトから分離された末梢血単核細胞(PBMC)を活性培養するのに、PBMCを解凍する前日に、T75フラスコを、培養培地(10%のFBS、200μlのペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培地)中の抗CD3抗体(OKT3、1μg/ml、Invitrogen)及び抗CD28抗体(CD28.2、1μg/ml、Invitrogen)で一緒に処理し、4℃で一晩コーティングした。翌日、PBMCを37℃でゆっくり解凍し、1500rpmで4℃にて5分間遠心分離し、RPMI1640培養培地(10%のFBS、200μlのペニシリン/ストレプトマイシン、抗CD3抗体/抗CD28抗体(各1μg/ml))中で再懸濁し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。このとき、抗CD3抗体/抗CD28抗体(各1μg/ml)を用いた又は用いない処理の条件下で、細胞をBNS001融合タンパク質及びIL-21で処理し、インキュベーター内で3日間培養した。
【0178】
実験例18.2.ELISA分析によるヒトIFN-γ分泌量の確認
上記実験例18.1において各試料で処理されて培養された細胞の培養上清中に分泌されたヒトIFN-γの量を、ヒトIFN-γ ELISAキット(Biolegend、カタログ番号430103)を使用して測定した。抗ヒトIFN-γ抗体をELISAプレートに加え、4℃で一晩反応させることによりコーティングした。その後、1%のBSAを含むPBS溶液で室温にて1時間ブロッキングを行った。洗浄バッファー(PBS中0.05%のTween-20)で洗浄した後、標準溶液及び各試料を2倍に希釈して加え、次いで室温で2時間反応させた。反応が完了した後、プレートを洗浄し、二次検出抗体を加え、室温で1時間反応させた。洗浄バッファーで洗浄した後、アビジン-HRP溶液を加え、室温で30分間反応させ、基質溶液を加えて室温及び暗所の条件で15分間呈色反応を誘導した。最後に、HSOを加えて呈色反応を止め、Synergy Neo2(BioTek)を使用して450nmで吸光度を測定して、濃度を計算した。
【0179】
結果として、BNS001融合タンパク質で処理された細胞において、IL-21タンパク質で処理された細胞と比較して、IFN-γ分泌量が統計的に有意に増加することが確認された(図19)。
【0180】
実験例19.CD8T細胞の増殖に対するBNS001融合タンパク質の効果の確認
ヒトから分離されたPBMCを37℃で解凍し、1500rpmで4℃にて5分間遠心分離した。遠心分離後、懸濁液を除去し、RPMI1640培養培地(10%のFBS、200μlのペニシリン/ストレプトマイシン、BNS001融合タンパク質、IL-21タンパク質(各10μg/ml))中で再懸濁し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。培養後、PBMCを冷PBS(Sigma、pH7.4)で2回洗浄し、遠心分離した後、1.5mlのマイクロチューブにおいて100μl当たり10個の細胞(10個の細胞/100μl)に到達するようにPBS(1%のFBSを含む)で再懸濁した。その後、細胞を抗CD8-PE-テキサスレッド(1:100、Invitrogen、カタログ番号MHCD0817)で室温にて30分間染色した。V字底96ウェルプレートへと1ウェル当たり30μlを分注した後、フローサイトメトリーを使用してCD8T細胞中の未標識細胞のパーセンテージを測定することによって、これらの細胞の増殖レベルを確認した。
【0181】
結果として、BNS001融合タンパク質は、IL-21タンパク質と同程度でCD8T細胞の増殖を活性化することが確認された(図20)。
【0182】
実験例20.CD4T細胞の増殖に対するBNS001融合タンパク質の効果の確認
ヒトから分離されたPBMCを37℃で解凍し、1500rpmで4℃にて5分間遠心分離した。遠心分離後、懸濁液を除去し、RPMI1640培養培地(10%のFBS、200μlのペニシリン/ストレプトマイシン、BNS001融合タンパク質、IL-21タンパク質(各10μg/ml))中で再懸濁し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。培養後、PBMCを冷PBS(Sigma、pH7.4)で2回洗浄し、遠心分離した後、1.5mlのマイクロチューブにおいて100μl当たり10個の細胞(10個の細胞/100μl)に到達するようにPBS(1%のFBSを含む)で再懸濁した。その後、細胞を抗CD4-PE-パシフィックブルー(10個の細胞当たり2μg、BioLegend、カタログ番号344620)で室温にて30分間染色した。V字底96ウェルプレートへと1ウェル当たり30μlを分注した後、フローサイトメトリーを使用してCD4T細胞中の未標識細胞のパーセンテージを測定することによって、これらの細胞の増殖レベルを確認した。
【0183】
結果として、BNS001融合タンパク質は、IL-21タンパク質と同程度でCD4T細胞の増殖を活性化し、CD4/FoxP3Treg細胞の増殖を増加させないことが確認された(図21)。
【0184】
実験例21.NK細胞の増殖に対するBNS001融合タンパク質の効果の確認
ヒトから分離されたPBMCを37℃でゆっくり解凍し、1500rpmで4℃にて5分間遠心分離した。遠心分離後、懸濁液を除去し、RPMI1640培養培地(10%のFBS、200μlのペニシリン/ストレプトマイシン、BNS001融合タンパク質、IL-21タンパク質(各10μg/ml))中で再懸濁し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。培養後、PBMCを冷PBS(Sigma、pH7.4)で2回洗浄し、遠心分離した後、1.5mlのマイクロチューブにおいて100μl当たり10個の細胞(10個の細胞/100μl)に到達するようにPBS(1%のFBSを含む)で再懸濁した。その後、細胞を抗CD56-PE(10個の細胞当たり0.4μg、BioLegend、カタログ番号362508)及び抗CD16-APC(10個の細胞当たり5μl、BioLegend、カタログ番号302012)で室温にて30分間染色した。V字底96ウェルプレートへと1ウェル当たり30μlを分注した後、フローサイトメトリーを使用してCD56/CD16NK細胞中の未標識細胞のパーセンテージを測定することによって、これらの細胞の増殖レベルを確認した。
【0185】
結果として、BNS001融合タンパク質は、IL-21タンパク質と同程度でNK細胞の増殖を活性化することが確認された(図22a及び図22b)。
【0186】
実験例22.T細胞機能に対するBNS001融合タンパク質の効果の確認
実験例22.1.PD-L1/PD-1遮断アッセイ
PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイキット(Promegaのカタログ番号J1252)を使用して実験を行った。
【0187】
液体窒素中で貯蔵されたPD-L1 aAPC/CHO-K1細胞(標的細胞)を、37℃の水浴中で1分間解凍し、これらを予め温めた培養培地(ハムF12:10%のFBS)中に懸濁することにより調製した。96ウェルの白色プレート(SPL、カタログ番号30196)へと1ウェル当たり100μlを分注し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。翌日、プレートを取り出し、95μlの培養培地を除去し、2倍で段階希釈されたBNS001融合タンパク質、アテゾリズマブ、及びPD-1-Fcを各ウェルに40μl加え、Jurkat NFAT-Luc/PD-1細胞(エフェクター細胞)についての調製時間中に、プレートをカバーで覆い、室温で貯蔵した。液体窒素中で貯蔵されたエフェクター細胞を37℃の水浴中で1分間解凍し、予め温めた培養培地(ハムF12:10%のFBS)中に懸濁することにより調製した後、標的細胞及び試料を含むプレートの各ウェルに40μlを分注し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて6時間培養した。
【0188】
反応が完了した後、プレートを取り出し、気泡が発生しないように注意しながらBio-Glo試薬を加えた。また、Bio-Glo試薬を3つの端のウェルに加え、バックグラウンドシグナルを補正するブランクとして使用した。室温で30分間反応させた後、発光をSynergy Neo2(BioTek)を使用して測定した。
【0189】
結果として、BNS001融合タンパク質は、エフェクターT細胞上に発現されたPD-1に結合し、T細胞の機能を阻害せず、むしろ活性化することが確認された(図23)。
【0190】
実験例22.2.PD-L2/PD-1遮断アッセイ
PD-1/PD-L2遮断バイオアッセイキット(Promegaのカタログ番号CS187131-1)を使用して実験を行った。
【0191】
液体窒素中で貯蔵されたPD-L2 aAPC/CHO-K1細胞(標的細胞)を、37℃の水浴中で1分間解凍し、予め温めた培養培地(ハムF12:10%のFBS)中に懸濁することにより調製した。96ウェルの白色プレート(SPL、カタログ番号30196)へと1ウェル当たり100μlを分注し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。翌日、プレートを取り出し、95μlの培養培地を除去し、2倍で段階希釈されたBNS001融合タンパク質、アテゾリズマブ、及びPD-L2-Fcを各ウェルに40μl加え、Jurkat NFAT-Luc/PD-1細胞(エフェクター細胞)についての調製時間中に、プレートをカバーで覆い、室温で貯蔵した。液体窒素中で貯蔵されたエフェクター細胞を37℃の水浴中で1分間解凍し、予め温めた培養培地(ハムF12:10%のFBS)中に懸濁することにより調製した後、標的細胞及び試料を含むプレートの各ウェルに40μlを分注し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて6時間培養した。
【0192】
反応が完了した後、プレートを取り出し、気泡が発生しないように注意しながらBio-Glo試薬を加えた。また、Bio-Glo試薬を3つの端のウェルに加え、バックグラウンドシグナルを補正するブランクとして使用した。室温で30分間反応させた後、発光をSynergy Neo2(BioTek)を使用して測定した。
【0193】
結果として、BNS001融合タンパク質は、エフェクターT細胞上に発現されたPD-1に結合し、T細胞の機能を阻害せず、むしろ活性化することが確認された(図24)。
【0194】
IX.BNS001融合タンパク質の抗癌効果の確認
実験例23.BNS001融合タンパク質の抗癌効果を確認する癌細胞系統の樹立
ヒト黒色腫細胞系統A375(ATCC、CRL-1619)の1×10個の細胞を6ウェルプレートへと分注し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。翌日、培養培地を除去した後、ホタルルシフェラーゼ(fLuc)遺伝子及びGFP遺伝子がトランスフェクションされた25MOI(感染多重度、25μl)のレンチウイルス(Gentarget、カタログ番号LVP914-G)(図25)を加え、4時間培養した。4時間の培養後、0.05%のトリプシン-EDTA(Gibco)溶液を用いて細胞を回収した後、150mmの培養皿(TPP)に移して培養した。培養中に、蛍光顕微鏡で観察しながらGFP発現細胞のみを選択して培養し、ホタルルシフェラーゼを発現するヒト黒色腫細胞系統であるA375-Luc-GFP細胞系統を樹立した。
【0195】
A375-Luc-GFP細胞系統を、100μlの細胞培養液とともに5×10個の細胞(n=3)で96ウェルの白色プレート又は黒色プレートに分注した後、半分を100μlの細胞培養液で段階希釈した(8点)。1ウェル当たり100μlのBio-Glo溶液を加えた後、Neo2機器を使用して発光(ルシフェラーゼ)画像又は蛍光(GFP)画像を1秒間取得した。A375-Luc-GFP細胞系統における細胞数が増加するにつれて、発光シグナル又は蛍光シグナルの強度も増加した(図26)。
【0196】
実験例24.PD-L1及びPD-L2を発現する癌細胞に対するBNS001融合タンパク質の効果の確認
実験例24.1 癌細胞とPBMCとの共培養
ヒトから分離されたPBMCを、1.25μMの濃度のmembrane-dye(赤色)(Sigma、カタログ番号PKH26)色素と室温で1分間反応させることによって染色した後、同容量のFBSを加えることによって染色反応を止めた。細胞に結合しなかった色素を400×gで10分間遠心分離して懸濁液を除去し洗浄した後、RPMI1640培養培地(10%のFBS、200μlのペニシリン/ストレプトマイシン)中に再懸濁した。このとき、洗浄プロセスを計3回行った。RPMI1640培養培地(10%のFBS、200μlのペニシリン/ストレプトマイシン)中に再懸濁した後、蛍光を観察した。蛍光染色したPBMCと樹立した癌細胞系統(A375-fLuc-GFP)とを共培養するのに、A375-fLuc-GFP細胞(1×10個)を分注し、蛍光染色されたPBMC(1×10個)を6ウェルプレートに分注し、共培養を行った。このとき、抗CD3抗体(OKT3、1μg/ml、Invitrogen)及び抗CD28抗体(CD28.2、1μg/ml、Invitrogen)を一緒に用いた又は用いない処理の条件下で、細胞をBNS001融合タンパク質(10μg/ml)で処理し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて3日間培養した。
【0197】
実験例24.2.癌細胞とPBMCとを共培養したものにおけるPD-L1、PD-L2、及びPD-1の遺伝子発現の確認
悪性黒色腫細胞A375(ATCC、番号CRL-1619)及びPBMC(ATCC、番号PCS-800-011)におけるPD-L1遺伝子、PD-L2遺伝子、及びPD1遺伝子の転写及び翻訳を確認するのに、逆転写PCRを行った。PBMCを抗CD3抗体(1μg/ml、Invitrogen)及び抗CD28抗体(1μg/ml、Invitrogen)で共刺激し、活性培養に使用した。各細胞系統から全RNAを抽出し、cDNAを合成し(TAKARA、RR036A)、プライマーセット(表1)を使用してPCRを実施して、A375及びPBMCにおけるPD-L1/L2及びPD-1に特異的な複製産物(120bp、173bp、289bp)を確認した。
【0198】
【0199】
結果として、悪性黒色腫細胞(A375)におけるPD-L1遺伝子及びPD-L2遺伝子に特異的な複製産物、並びに免疫細胞が存在するPBMCにおけるPD-1に特異的な複製産物(120bp、173bp、及び289bp)が確認された(図27)。
【0200】
実験例24.3.ELISA分析によるヒトIFN-γ分泌量の確認
上記実験例24.1において各試料で処理されて培養された細胞の培養上清中に分泌されたヒトIFN-γの量を、ヒトIFN-γ ELISAキット(Biolegend、カタログ番号430103)を使用して測定した。抗ヒトIFN-γ抗体をELISAプレートに加え、4℃で一晩反応させることによりコーティングした。その後、1%のBSAを含むPBS溶液で室温にて1時間ブロッキングを行った。洗浄バッファー(PBS中0.05%のTween-20)で洗浄した後、標準溶液及び各試料を0.4nM、1.5nM、及び7.5nMの濃度に希釈して加え、次いで室温で2時間反応させた。反応が完了した後、プレートを洗浄し、二次検出抗体を加え、室温で1時間反応させた。洗浄バッファーで洗浄した後、アビジン-HRP溶液を加え、室温で30分間反応させた。基質溶液を加えて室温及び暗所の条件で20分間呈色反応を誘導した。最後に、HSOを加えて呈色反応を止め、Synergy Neo2(BioTek)を使用して450nmで吸光度を測定して、濃度を計算した。
【0201】
結果として、BNS001融合タンパク質で処理された細胞において、IL-21タンパク質で処理された細胞と比較して、IFN-γ分泌量が統計的に有意に増加することが確認された(図28)。
【0202】
実験例24.4.癌細胞殺傷効果の確認
免疫細胞活性及び腫瘍細胞殺傷効果を確認するのに、5μg/mLの抗CD3抗体(OKT3、1μg/ml、Invitrogen)及び抗CD28抗体(CD28.2、1μg/ml、Invitrogen)を用いた又は用いない処理の条件下で、細胞を共培養したものを10μg/mlの濃度のBNS001融合タンパク質で処理し、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて72時間培養した。癌細胞殺傷の程度を定量するのに、24時間、48時間、及び72時間の共培養後、ウェルをPBSで2回洗浄し、Bio-Glo試薬を加え、室温で10分間反応させた。反応後、ルシフェラーゼ活性をSynergy Neo2(BioTek)を使用して測定した。
【0203】
BNS融合タンパク質による処理後の1日目(24時間)、2日目(48時間)、及び3日目(72時間)に測定された癌細胞殺傷の程度は図29に示されるように測定された。
【0204】
さらに、癌細胞殺傷効果の統計分析のために、BNS融合タンパク質による処理後の2日目に測定された癌細胞殺傷の程度を比較した。結果として、BNS001融合タンパク質で処理された細胞において、未処理の細胞と比較して、癌細胞殺傷効果が統計的に有意に増加することが確認された(図30)。
【0205】
さらに、癌細胞殺傷効果のEC50分析のために、様々な濃度のBNS融合タンパク質による処理後の2日目に測定された癌細胞殺傷の程度を比較した。結果として、BNS001融合タンパク質で処理された細胞において、未処理の細胞と比較して、癌細胞殺傷効果が増加することが確認された(図31)。
【0206】
実験例25.BNS001融合タンパク質の癌細胞系統特異的な抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性の確認
A375細胞系統を培養培地(RPMI1640:10%のFBS、抗生物質-抗真菌薬1%)中に懸濁し、96ウェルの白色プレートに100μl当たり1×10個の細胞の濃度で分注した後、インキュベーター内で一晩培養した。翌日、A375細胞が分注されたプレートから95μlの培養培地を除去した後、予め調製されたADCCアッセイバッファー(RPMI1640培養培地、低IgG血清0.25%)を25μlずつ加え、エフェクター細胞(NFAT-luc/FcγRIIIa)を調製中に室温で培養した。630μlのADCCバイオアッセイエフェクター細胞(Jurkat/NFAT-luc/FcγRIIIa)を3.6mLの予め温めたADCCアッセイバッファー中に懸濁した後、各ウェルに25μlを分注した。2.5倍で段階希釈した25μlのBNS001融合タンパク質試料で各ウェルを処理した。ウェルプレートの蓋を閉め、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて6時間培養した。インキュベートした後、これを室温で約15分間保存し、次いで各ウェルを75μlのBIO-GLO(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬で処理した。30分後、ルシフェラーゼ活性をSynergy Neo2(BioTek)を使用して測定した。
【0207】
ADCCアッセイのルシフェラーゼ活性は、表面抗原(PD-L1/L2)を有する標的細胞(A375)、特異的抗体(BNS001融合タンパク質)、及びFcγRIIIaを発現するエフェクター細胞が存在する場合にのみ結果を得ることができる試験法であり、BNS001融合タンパク質のADCC活性は図32に示されるように測定された。
【0208】
実験例26.マウスモデルにおけるBNS001融合タンパク質の血中半減期の確認
実験例26.1.ELISA分析を使用したBNS001融合タンパク質濃度の定量的測定
血中のBNS001融合タンパク質の濃度を定量的に分析するのに、ヒトPD-1 ELISAキット(Invitrogen、カタログ番号BMS2214)を使用してELISA分析を行った。BNS001融合タンパク質をそれぞれ0.0625ng/mL、0.125ng/mL、0.25ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、2ng/mL、及び4ng/mLの濃度に希釈し、抗PD-1抗体を固定化したプレート(Invitrogen)の各ウェルに50μlを分注した。キットに含まれる試料希釈液及びビオチン化抗IL-21検出抗体(R&D)を各ウェルに50μlずつ加えた後、室温で2時間反応させた。反応が完了した後、プレートを400μlの洗浄バッファー(Invitrogen)で4回洗浄した後、各ウェルに100μlのストレプトアビジン-HRP(Invitrogen)を分注した。その後、反応を室温で1時間行い、400μlの洗浄バッファー(Invitrogen)を用いて洗浄プロセスを4回行った。100μlのTMB基質溶液(Invitrogen)を各ウェルに加えて発色させた。その後、100μlの停止溶液(Invitrogen)を加えることによって反応を停止させ、Synergy Neo2(BioTek)を使用して分析した。
【0209】
ELISA測定の結果として、BNS001融合タンパク質についての各濃度の場合の線形性及び相関係数は図33に示されるように測定された。
【0210】
実験例26.2.正常なBALB/cマウスにおけるBNS001融合タンパク質の血中半減期の確認
正常なBALB/cマウス動物モデルにおいて調製されたBNS001融合タンパク質を、計3匹のマウスに1匹のマウス当たり5mg/kgで尾静脈経由にて投与した。尾静脈経由で注射されたマウスの場合、0分、30分、1時間、6時間、24時間、3日、7日、14日、21日、28日、35日、42日、及び50日で血液を経時的に収集した。実験例26.1に記載されるELISA分析を使用して、血漿中でBNS001融合タンパク質の濃度分析を実施した。PKSolverを用いてノンコンパートメント解析(NCA)を行うことによってBNS001融合タンパク質の血中半減期を確認した。
【0211】
BALB/cマウスにおけるBNS001融合タンパク質についての血中半減期分析の結果は、図34に示されるように測定された。持続性Fc変異体であるPD-1 D-Fc(29)-IL-21融合タンパク質及びPD-1 D-Fc(41)-IL-21融合タンパク質の血中半減期は、野生型Fcを有するPD-1 D-Fc(wt)-IL-21融合タンパク質と比較して延長することが判明した。
【0212】
実験例26.3.hFcRn TGマウスにおけるBNS001融合タンパク質の血中半減期の確認
正常なhFcRn TGマウス動物モデルにおいて調製されたBNS001融合タンパク質を、計3匹のマウスに1匹のマウス当たり5mg/kgで尾静脈経由にて投与した。尾静脈経由で注射されたマウスの場合、0分、30分、1時間、6時間、24時間、3日、7日、14日、21日、28日、35日、42日、及び50日で血液を経時的に収集した。実験例26.1に記載されるELISA分析を使用して、血漿中でBNS001融合タンパク質の濃度分析を実施した。PKSolverを用いてノンコンパートメント解析(NCA)を行うことによってBNS001融合タンパク質の血中半減期を確認した。
【0213】
hFcRn TGマウスにおけるBNS001融合タンパク質についての血中半減期分析の結果は、図35に示されるように測定された。持続性Fc変異体であるPD-1 D-Fc(29)-IL-21融合タンパク質及びPD-1 D-Fc(41)-IL-21融合タンパク質の血中半減期は、野生型Fcを有するPD-1 D-Fc(wt)-IL-21融合タンパク質と比較して延長することが判明した。
【0214】
実験例27.マウス由来結腸直腸癌細胞を同種移植したマウスにおけるBNS001融合タンパク質の抗癌効果の確認
実験例27.1.腫瘍抑制効果の確認
凍結されたマウス腫瘍細胞系統、具体的には結腸直腸癌細胞系統のCT-26細胞系統の1つのバイアルを、熱失活させた10%のFBS(Gibco、10082-147)を含むRPMI1640培地を使用して解凍し、細胞培養フラスコに入れて、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、2.5%のトリプシン-EDTA(Gibco、15090)で10倍に希釈し、次いでそれを加えて細胞を分離した。細胞の分離後、遠心分離(1000rpm、5分間)により上清を除去し、次いで新しい培地を用いて細胞懸濁液を得た。顕微鏡を使用して生存率を調べた後、細胞系統を培地中で1mL当たり5.0×10個の細胞の濃度に希釈することによって調製した。使用したマウスは5週齢の雄のBALB/cマウス(KOATECH)であった。細胞系統を移植する際、これらを1頭当たり5.0×10個の細胞/0.1mLの投薬容量で皮下投与した。癌細胞を移植した後の或る特定の期間後に腫瘍体積を測定した。腫瘍体積がおよそ60mm~90mmに達した被験体を分離した後、BNS001融合タンパク質を5mg/kgの用量で静脈内投与した。初回投与以降、3日ごとに1回の計4回投与を行った。このとき、ネガティブコントロールとしてPBSを投与し、ポジティブコントロールとして抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブを5mg/kg投与した。抗癌効果を確認するのに、腫瘍サイズを週に2回測定した(図36)。
【0215】
結果として、BNS001融合タンパク質で処理されたCT-26癌細胞系統を移植したマウスの腫瘍サイズは、ネガティブコントロール及びポジティブコントロールと比較して有意に減少することが確認された(図37)。
【0216】
BNS001融合タンパク質が投与された群及びネガティブコントロールが投与された群における腫瘍抑制の統計的有意性を確認した結果として、一部の測定時点で統計的に有意な抑制が観察された(図38)。
【0217】
実験例27.2.癌組織における免疫細胞の分析
上記実験例27.1におけるマウスのうち、1群当たり3匹のマウスのみから摘出された腫瘍を10%のFBSを含むRPMI培地中に入れ、FACS分析に使用した。癌組織における免疫細胞を分析するのに、癌組織を単一細胞レベルで分離した後、以下の表2に列記される抗体を使用してT細胞、NK細胞、樹状細胞(DC)、及びマクロファージについて分析を行った。
【0218】
【0219】
結果として、BNS001融合タンパク質が投与された実験群においては、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールと比較して、マクロファージ、樹状細胞、CD4T細胞、及びCD8T細胞が増加した(図39)。さらに、BNS001融合タンパク質が投与された実験群においては、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールと比較して、NK細胞が有意に増加した(図39)。
【0220】
実験例28.ヒト由来肺癌細胞(H460)及びヒト末梢血単核細胞を移植したヒト化マウスにおけるBNS001融合タンパク質の抗癌効果の確認
凍結されたヒト腫瘍細胞系統、具体的には肺癌細胞系統のH460細胞系統の1つのバイアルを、熱失活させた10%のFBS(Gibco、10082-147)を含むRPMI1640培地を使用して解凍し、細胞培養フラスコに入れ、インキュベーター内で37℃及び5%のCOにて培養した。インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、2.5%のトリプシン-EDTA(Gibco、15090)で10倍に希釈し、次いでそれを加えて細胞を分離した。細胞の分離後、1000rpmで5分間の遠心分離により上清を除去し、次いで新しい培地を用いて細胞懸濁液を得た。顕微鏡を使用して生存率を調べた後、細胞系統を培地中で1mL当たり5.0×10個の細胞の濃度に希釈することによって調製した。さらに、実験例18.1と同様に、ヒトから分離された末梢血単核細胞(PBMC)を1週間活性培養した。顕微鏡を使用して生存率を調べた後、細胞系統を培地中で1mL当たり2.5×10個の細胞の濃度に希釈することによって調製した。使用したマウスは6週齢の雄のNXGマウス(Janvier-labs)であった。1週間の馴化プロセスの後、体重を測定し、各群の平均体重が一致するように再び群分けを行った。細胞系統を移植する際、これらを1頭当たり5.0×10個の細胞(H460)/0.1mL及び2.5×10個の細胞(hPBMC)/0.1mLの投薬容量で皮下投与した。癌細胞を移植した翌日、マウスを吸入麻酔薬(2%のイソフルラン、Hana Pharm Co., Ltd.)で麻酔し、次いでBNS001融合タンパク質を10mg/kgの用量で尾静脈に投与した。初回投与以降、3日~4日ごとに1回の計6回投与を行った。このとき、ネガティブコントロールとして生理食塩水(JW Pharmaceutical)を投与し、ポジティブコントロールとしてアテゾリズマブ(Evidentic)、抗PD-L1抗体、又はPD-1 D-Fcを10mg/kg投与した。抗癌効果を確認するのに、腫瘍サイズを週に2回測定した(図40)。
【0221】
結果として、BNS001融合タンパク質で処理されたH460癌細胞系統を移植したマウスの腫瘍サイズは、ネガティブコントロール及びポジティブコントロールと比較して減少することが確認され(図41)、この減少は統計的に有意であった(図42)。
【0222】
X.同種移植されたマウス腫瘍モデルにおけるmBNS001融合タンパク質の抗癌効力の評価
実験例29.マウス由来結腸直腸癌細胞(MC38)を同種移植したマウスにおけるmBNS001融合タンパク質の抗癌効果の確認
実験例29.1.mBNS001融合タンパク質の用量を定めるための試験スケジュールの確立
マウス(ハツカネズミ(Mus musculus))結腸癌の一種であるC57BL/6マウス由来結腸直腸癌細胞系統であるMC38細胞を移植した雌のC57BL/6マウスに、試験物質のmBNS001を様々な用量で単独投与した。その後、実験を行って有効な効果が達成される用量を定めた(図43)。
【0223】
実験例29.2.細胞系統の調製
試験に使用する細胞として、MC38細胞を解凍し、細胞培養フラスコに入れ、インキュベーター(MCO-170M、パナソニック株式会社、日本)内で37℃及び5%のCOにて培養した。トリプシン-EDTA(カタログ番号25200-072、Thermofisher Scientific、米国)を使用して細胞を懸濁した。遠心分離機を使用して遠心分離(125×g、5分間)することにより細胞浮遊液を回収し、新しい培地及び新しいフラスコに移して継代培養した。細胞系統の移植当日、培養された細胞を遠心分離チューブに入れ、次いで収集した。その後、遠心分離(125×g、5分間)を行い、上清を捨て、PBS(カタログ番号ML008-01、Welgene、韓国)を用いて細胞懸濁液(0.05mL当たり5×10個の細胞)を作製し、接種まで氷上で貯蔵した。
【0224】
実験例29.3.細胞系統の移植
隔離及び馴化の期間終了後の翌日、体重を測定し、次いで調製されたMC38細胞懸濁液(0.025mL当たり5×10個の細胞)を使い捨てシリンジ(31G、カタログ番号328820、BD、米国)に充填し、動物の右背中に1頭当たり0.05mLの用量で皮下投与して移植した。細胞系統の移植後、生着及び成長の期間中に、全身症状を1日1回観察した。
【0225】
実験例29.4.投与方法及び投与回数
静脈内投与の場合、使い捨てシリンジ(31G、328820、BD、米国)を使用して、投与日に応じて計4回投与を行った(表3)。
【0226】
【0227】
実験例29.5.抗癌効力の評価のためのmBNS001融合タンパク質の用量の決定
上記実験例29.1及び実験例29.4の試験スケジュール及び投与方法に従ってmBNS001を投与した結果として、試験物質の投与により用量依存的に腫瘍成長が抑制される傾向が観察された。20mg/kgの用量でmBNS001が投与された群において、試験物質投与により腫瘍成長が効果的に抑制されることが確認された(図44及び図45)。
【0228】
結果として、BNS001融合タンパク質は、単独で投与した場合、20mg/kg以上の用量で癌の処置に有効であると推定され、それより低い用量であっても用量依存的な効果を有することが確認された。したがって、組合せ処置としてのBNS001融合タンパク質を開発する際に、組合せ処置と10mg/kgの用量でのBNS001融合タンパク質とが一緒に使用される場合、これは、それぞれの試験物質の投与の効果を分析するのに適切な用量であることが判明した。
【0229】
実験例30.マウス由来結腸直腸癌細胞(CT-26)を同種移植したマウスにおけるmBNS001融合タンパク質の抗癌効果の確認
実験例30.1.mBNS001融合タンパク質の有効性の評価のための試験スケジュールの確立
試験物質である抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、mPD1-Fc-mIL-21、mPD1-Fc、及びFc-mIL-21を単独で又は組み合わせて、マウス(ハツカネズミ)結腸癌の一種であるBALB/cマウス由来の結腸直腸癌細胞系統であるCT-26細胞を同種移植した雌のBALB/cマウスに投与した。その後、実験を行って試験物質の組合せ処置による腫瘍成長抑制効果を評価した(図46)。
【0230】
実験例30.2.細胞系統の調製
試験に使用される細胞としてCT-26細胞を使用した以外は実験例29.2と同様にして細胞系統を調製した。
【0231】
実験例30.3.細胞系統の移植
細胞懸濁液としてCT-26細胞懸濁液を使用した以外は実験例29.3と同様にして細胞系統の移植を行った。移植後、生着及び成長の期間中に、全身症状を1日1回観察した。
【0232】
実験例30.4.投与方法及び投与回数
静脈内投与の場合、使い捨てシリンジ(31G、328820、BD、米国)を使用して、投与日に応じて計4回投与を行った(表4)。
【0233】
【0234】
実験例30.5.mBNS001融合タンパク質の腫瘍成長抑制有効性の評価
上記実験例30.1及び実験例30.4の試験スケジュール及び投与方法に従ってmBNS001(mPD1-Fc-mIL-21)を投与し、腫瘍成長抑制有効性を評価した。有効性を確認する際、データの選択において、図47に示されるように箱ひげ図上の外れ値を除外し、N=5(被験体の数)であるように、Q1とQ3との間に位置するデータを選択するか、又はQ1値若しくはQ3値に近いデータを選択するか、又は最小値と最大値との間にあるデータを選択した。
【0235】
具体的には、各群ごとに選択されたN=5についての結腸直腸癌に対する抗癌有効性評価の結果(表4)は図48図50にまとめられている。
【0236】
実験例31.マウス由来乳癌細胞(EMT-6)を同種移植したマウスにおけるmBNS001融合タンパク質の抗癌効果の確認
実験例31.1.mBNS001融合タンパク質の有効性の評価のための試験スケジュールの確立
試験物質である抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、mPD1-Fc-mIL-21、mPD1-Fc、及びFc-mIL-21を単独で又は組み合わせて、マウス(ハツカネズミ)乳腺の悪性新生物の一種であるBALB/cマウス由来の乳癌細胞系統であるEMT-6細胞を同種移植した雌のBALB/cマウスに投与した。その後、実験を行って試験物質の組合せ処置による腫瘍成長抑制効果を評価した(図51)。
【0237】
実験例31.2.細胞系統の調製
試験に使用される細胞としてEMT-6細胞を使用した以外は実験例29.2と同様にして細胞系統を調製した。
【0238】
実験例31.3.細胞系統の移植
細胞懸濁液としてEMT-6細胞懸濁液を使用した以外は実験例29.3と同様にして細胞系統の移植を行った。移植後、生着及び成長の期間中に、全身症状を1日1回観察した。
【0239】
実験例31.4.投与方法及び投与回数
静脈内投与の場合、使い捨てシリンジ(31G、328820、BD、米国)を使用して、投与日に応じて計4回投与を行った(表5)。
【0240】
【0241】
実験例31.5.mBNS001融合タンパク質の腫瘍成長抑制有効性の評価
上記実験例31.1及び実験例31.4の試験スケジュール及び投与方法に従ってmBNS001(mPD1-Fc-mIL-21)を投与し、腫瘍成長抑制有効性を評価した。有効性を確認する際、データの選択において、図52に示されるように箱ひげ図上の外れ値を除外し、データを選択して評価した。
【0242】
具体的には、各群ごとの乳癌についての抗癌有効性評価の結果(表5)は図53図55にまとめられている。
【0243】
XI.BNS001融合タンパク質の作用機序の分析
実験例32.BNS001融合タンパク質によるIFN-γ産生の確認
3人の健康なドナー(ドナー1、ドナー2、及びドナー3)から取得されたヒトPBMCをPHA(フィトヘマグルチニン)での処理によって刺激した後、BNS001処理によって誘導されるサイトカインIFN-γ分泌のレベルをELISA分析によって確認した。このとき、hIgG、アテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))、IL-21、及びアテゾリズマブ+IL-21を比較用コントロールとして使用した。
【0244】
結果として、BNS001融合タンパク質で処理されたドナーから取得されたPBMCにおいて、アテゾリズマブ及びIL-21で単独又は組み合わせて処理された細胞と比較して、IFN-γ分泌量が統計的に有意に増加することが確認された(図56)。
【0245】
さらに、ドナー1、ドナー2、及びドナー3から取得され、かつPHAで刺激されたヒトPBMCを、BNS001、hIgG、アテゾリズマブ、及びIL-21で単独又は組み合わせて様々な濃度にて処理し、IFN-γ分泌のレベルを確認した。分析結果を図57図59に示す。
【0246】
具体的には、3人のドナーから取得されたPBMCにおいて、アテゾリズマブ(抗PD-L1)及びIL-21で単独又は組み合わせて様々な濃度にて処理した場合と比較して、BNS001で処理した場合、IFN-γ分泌量が統計的に有意に増加することが確認された。
【0247】
実験例33.BNS001融合タンパク質によるPBMCにおける免疫細胞集団の活性の変化の測定
3人の健康なドナーから取得されたヒトPBMCをPHAでの処理によって刺激した後、BNS001処理によって誘導されたCD4T細胞集団、CD8T細胞集団、NK細胞集団、及びB細胞集団の活性の変化を確認した。免疫細胞集団の活性の変化については、CD69、CD38、4-1BB、2B4、及びOX40等の免疫活性化マーカーの発現レベルをマルチカラーフローサイトメトリーによって確認した。このとき、hIgG、アテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))、IL-21、及びアテゾリズマブ+IL-21を比較用コントロールとして使用した。
【0248】
その結果、BNS001融合タンパク質で処理されたドナーから取得されたPBMCにおいて、NK細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、及びB細胞の活性化が誘導されることが確認された。特に、NK細胞の活性化が強く誘導されることが確認された(図60図63)。
【0249】
さらに、ドナー1、ドナー2、及びドナー3から取得され、かつPHAで刺激されたヒトPBMCを、BNS001、hIgG、アテゾリズマブ、及びIL-21で単独又は組み合わせて様々な濃度にて処理し、PBMCにおける免疫細胞集団の活性の変化を測定した。分析結果を図64図66に示す。
【0250】
具体的には、BNS001で処理した場合の3人のドナーから取得されたPBMCにおいて、アテゾリズマブ(抗PD-L1)及びIL-21で単独又は組み合わせて様々な濃度にて処理した場合と比較して、NK細胞、CD8T細胞、CD4T細胞、及びB細胞の活性化が誘導されることが確認された。特に、免疫細胞集団の中でもNK細胞の活性化が強く誘導されることが確認された。
【0251】
実験例34.BNS001融合タンパク質によるCD8T細胞の免疫反応性の測定
ヒトPBMC刺激アッセイを実施して、CD8T細胞の免疫反応性を測定した。CellTrace Violet(CTV)染色を使用して増殖を測定することによって、CD8T細胞の免疫反応性を確認した。このとき、hIgG、アテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))、IL-21、及びアテゾリズマブ+IL-21を比較用コントロールとして使用した。
【0252】
具体的には、ヒトPBMC凍結バイアルを解凍した後、インキュベーター内で37℃にて4時間静置した。静置したヒトPBMCをCellTrace Violet(CTV)で染色した。CTV染色されたPBMCを96ウェル丸底プレートにおいて1ウェル当たり1×10個で播種した。PHA-PをRPMI完全培地中で1.5μg/mlの最終濃度に希釈し、96ウェル丸底プレートに加えた。試薬を各条件ごとにRPMI完全培地中で段階希釈し、96ウェル丸底プレートに加えた。3日後、CD8T細胞の増殖をCTV染色に基づくFACSによって分析した。
【0253】
結果として、BNS001融合タンパク質で処理されたPBMCにおいて、アテゾリズマブ及びIL-21で単独又は組み合わせて処理された細胞と比較して、CD8T細胞の増殖が活性化されることが確認された(図67)。
【0254】
具体的には、BNS001で処理されたPBMCにおいて、アテゾリズマブ(抗PD-L1)及びIL-21で単独又は組み合わせて様々な濃度にて処理された細胞と比較して、CD8T細胞の増殖が活性化されることが確認された(図68)。
【0255】
XI.ヒト化マウス腫瘍モデルにおけるBNS001融合タンパク質の抗癌効力の評価
実験例35.ヒト由来結腸直腸癌細胞(HCT116)及びヒト末梢血単核細胞を移植したヒト化マウスにおけるBNS001融合タンパク質の抗癌効果の確認
実験例35.1.BNS001融合タンパク質の投薬量による抗癌効果の確認
凍結ヒト腫瘍細胞系統として結腸癌細胞系統であるHCT116細胞系統を使用した以外は実験例28と同様にして細胞系統を調製した。さらに、実験例18.1と同様に、ヒトから分離された末梢血単核細胞(PBMC)を1週間活性培養した。顕微鏡を使用して生存率を調べた後、細胞系統を培地中で1mL当たり2.5×10個の細胞の濃度に希釈することによって調製した。使用したマウスは6週齢の雄のNSGマウス(NOD.Cg-B2mtm1UncPrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ)(ORIENT BIO INC.)であり、ヒト化マウスを構築するのに、ヒト末梢血単核細胞を1頭当たり1×10個の細胞(hPBMC)/0.1mLの投薬容量で尾静脈へと皮下投与した。ヒト末梢血単核細胞の投与の14日後にFACS分析により血液中のhCD45の発現を測定することによってヒト化マウスを特定した。ヒト化マウスを特定した後、細胞系統HCT116を移植し、3×10個の細胞の投薬容量で皮下投与した。癌細胞を移植した2日後、マウスを吸入麻酔薬(2%のイソフルラン、Hana Pharm Co., Ltd.)で麻酔し、次いでBNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)を5mg/kg、10mg/kg、又は20mg/kgの用量で腹腔内投与した。初回投与以降、3日~4日ごとに1回の計4回投与を行った。このとき、ネガティブコントロールとして生理食塩水(JW Pharmaceutical)を投与した。抗癌効果を確認するのに、腫瘍サイズを週に2回測定した(図69)。
【0256】
結果として、BNS001融合タンパク質で処理されたHCT116癌細胞系統を移植したヒト化マウスの動物実験において、ネガティブコントロール(ビヒクル処理)と比較して、腫瘍サイズは、濃度依存的に統計的に有意に減少することが確認された。特に、抗癌効果は、10mg/kgの用量で投与した場合に最良であった(図70)。
【0257】
一方、BNS001融合タンパク質での処理による体重変化に対する効果は見られないことが確認された(図71)。
【0258】
実験例35.2.BNS001融合タンパク質とコントロール薬物との間の抗癌効果の確認
HCT116細胞系統及びPBMCを実験例35.1と同様に調製することによってヒト化マウスを作製した。HCT116癌細胞をヒト化マウスに移植した2日後、マウスを吸入麻酔薬(2%のイソフルラン、Hana Pharm Co., Ltd.)で麻酔した。その後、BNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)を10mg/kgの用量で腹腔内投与した。初回投与以降、3日~4日ごとに1回の計4回投与を行った。このとき、ネガティブコントロールとして生理食塩水(JW Pharmaceutical)を投与し、比較用コントロールとしてBNS001D(PD-1 D-Fc)融合タンパク質及びBNS001I(Fc-IL-21)融合タンパク質を単独又は組み合わせて投与した。さらに、ポジティブコントロールとして、市販の抗体のアテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))、アベルマブ(抗PD-L1(Bavencio、Merck))、及びペムブロリズマブ(抗PD-1(Keytruda、MSD))を投与した。投与した物質の抗癌効果を確認するのに、腫瘍サイズ及び体重を週に2回測定した(図72)。
【0259】
結果として、BNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)で処理されたHCT116癌細胞系統を移植したヒト化マウスの動物実験において、ネガティブコントロールと比較して、腫瘍サイズは統計的に有意に減少することが確認された(図73及び図75)。
【0260】
BNS001融合タンパク質を投与した群において、比較用コントロールとしてBNS001D(PD-1 D-Fc)及びBNS001I(Fc-IL-21)を投与した群と比較して、腫瘍サイズが減少することが確認された。さらに、BNS001融合タンパク質を投与した群において、BNS001D(PD-1 D-Fc)+BNS001I(Fc-IL-21)を組み合わせて投与した群と比較して、腫瘍サイズが減少することが確認された(図73)。
【0261】
さらに、BNS001融合タンパク質を投与した群において、ポジティブコントロールとして使用される市販の抗体のペムブロリズマブ(抗PD-1(Keytruda、MSD))及びアベルマブ(抗PD-L1(Bavencio、Merck))を投与した群と比較して、腫瘍サイズが統計的に有意に減少することが確認された。BNS001融合タンパク質を投与した群において、アテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))を投与した群と比較して、腫瘍サイズが同等のレベルで減少することが確認された(図75)。
【0262】
一方、BNS001融合タンパク質での処理による体重変化に対する効果は見られないことが確認された(図74及び図76)。
【0263】
実験例36.ヒト由来肺癌細胞(A549)及びヒト末梢血単核細胞を移植したヒト化マウスにおけるBNS001融合タンパク質とコントロール薬物との間の抗癌効果の確認
凍結ヒト腫瘍細胞系統として肺癌(NSCLC)細胞系統であるA549細胞系統を使用した以外は実験例35.1と同様にA549細胞系統及びPBMCを調製することによってヒト化マウスを作製した。A549癌細胞をヒト化マウスに移植した2日後、マウスを吸入麻酔薬(2%のイソフルラン、Hana Pharm Co., Ltd.)で麻酔した。その後、BNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)を10mg/kgの用量で腹腔内投与した。初回投与以降、3日~4日ごとに1回の計4回投与を行った。このとき、ネガティブコントロールとして生理食塩水(JW Pharmaceutical)を投与し、ポジティブコントロールとして、市販の抗体のアテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))、アベルマブ(抗PD-L1(Bavencio、Merck))、及びペムブロリズマブ(抗PD-1(Keytruda、MSD))を投与した。投与した物質の抗癌効果を確認するのに、腫瘍サイズ及び体重を週に2回測定した(図77)。
【0264】
結果として、BNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)で処理されたA549癌細胞系統を移植したヒト化マウスの動物実験において、ネガティブコントロールと比較して、腫瘍サイズは統計的に有意に減少することが確認された。さらに、BNS001融合タンパク質を投与した群において、ポジティブコントロールとして使用される市販の抗体のアテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))、ペムブロリズマブ(抗PD-1(Keytruda、MSD))、及びアベルマブ(抗PD-L1(Bavencio、Merck))を投与した群と比較して、腫瘍サイズが同等のレベルで減少することが確認された(図78)。
【0265】
一方、BNS001融合タンパク質での処理による体重変化に対する効果は見られないことが確認された(図79)。
【0266】
実験例37.ヒト由来乳癌細胞(MDA-MB-231)及びヒト末梢血単核細胞を移植したヒト化マウスにおけるBNS001融合タンパク質とコントロール薬物との間の抗癌効果の確認
凍結ヒト腫瘍細胞系統として乳癌(TNBC)細胞系統であるMDA-MB-231細胞系統を使用した以外は実験例35.1と同様にMDA-MB-231細胞系統及びPBMCを調製することによってヒト化マウスを作製した。MDA-MB-231癌細胞をヒト化マウスに移植した2日後、マウスを吸入麻酔薬(2%のイソフルラン、Hana Pharm Co., Ltd.)で麻酔した。その後、BNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)を10mg/kgの用量で腹腔内投与した。初回投与以降、3日~4日ごとに1回の計4回投与を行った。このとき、ネガティブコントロールとして生理食塩水(JW Pharmaceutical)を投与し、ポジティブコントロールとして、市販の抗体のアテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))、アベルマブ(抗PD-L1(Bavencio、Merck))、及びペムブロリズマブ(抗PD-1(Keytruda、MSD))を投与した。投与した物質の抗癌効果を確認するのに、腫瘍サイズ及び体重を週に2回測定した(図80)。
【0267】
結果として、BNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)で処理されたMDA-MB-231癌細胞系統を移植したヒト化マウスの動物実験において、ネガティブコントロールと比較して、腫瘍サイズは統計的に有意に減少することが確認された。さらに、BNS001融合タンパク質を投与した群において、ポジティブコントロールとして使用される市販の抗体のアテゾリズマブ(抗PD-L1(Tecentriq、Roche))、ペムブロリズマブ(抗PD-1(Keytruda、MSD))、及びアベルマブ(抗PD-L1(Bavencio、Merck))を投与した群と比較して、腫瘍サイズが減少することが確認された(図81)。
【0268】
一方、BNS001融合タンパク質での処理による体重変化に対する効果は見られないことが確認された(図82)。
【0269】
実験例38.ヒト由来肺癌細胞(NCI-H1975)及びヒト末梢血単核細胞を移植したヒト化マウスにおけるBNS001融合タンパク質とコントロール薬物との間の抗癌効果の確認
凍結ヒト腫瘍細胞系統として肺癌(NSCLC)細胞系統であるNCI-H1975(EGFR上のL858R/T790M二重突然変異)細胞系統を使用した以外は実験例35.1と同様にNCI-H1975細胞系統及びPBMCを調製することによってヒト化マウスを作製した。NCI-H1975癌細胞をヒト化マウスに移植した2日後、マウスを吸入麻酔薬(2%のイソフルラン、Hana Pharm Co., Ltd.)で麻酔した。その後、BNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)を10mg/kgの用量で腹腔内投与した。初回投与以降、3日~4日ごとに1回の計4回投与を行った。このとき、ネガティブコントロールとして生理食塩水(JW Pharmaceutical)を投与し、ポジティブコントロールとして、市販の抗体のベバシズマブ(抗VEGF(Avastin、Genentech))、ラムシルマブ(抗VEGFR2(Cyramza、Lilly))、セツキシマブ(抗EGFR(Erbitux、BMS))、及びアミバンタマブ(抗EGFR/抗MET(Rybrevant、Jassen))を投与した。投与した物質の抗癌効果を確認するのに、腫瘍サイズ及び体重を週に2回測定した(図83)。
【0270】
結果として、BNS001融合タンパク質(PD-1 D-Fc-IL-21)で処理されたNCI-H1975癌細胞系統を移植したヒト化マウスの動物実験において、ネガティブコントロールと比較して、腫瘍サイズは統計的に有意に減少することが確認された(図84及び図86)。
【0271】
さらに、BNS001融合タンパク質を投与した群において、ポジティブコントロールとして使用される市販の抗体のラムシルマブ(抗VEGFR2(Cyramza、Lilly))及びセツキシマブ(抗EGFR(Erbitux、BMS))を投与した群と比較して、腫瘍サイズが減少することが確認された。さらに、BNS001融合タンパク質を投与した群において、ベバシズマブ(抗VEGF(Avastin、Genentech))及びアミバンタマブ(抗EGFR/抗MET(Rybrevant、Jassen))を投与した群と比較して、腫瘍サイズが同等のレベルで減少することが確認された(図84及び図86)。
【0272】
一方、BNS001融合タンパク質での処理による体重変化に対する効果は見られないことが確認された(図85及び図87)。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図11
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図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
図64
図65a
図65b
図66
図67
図68
図69
図70
図71
図72
図73
図74
図75
図76
図77
図78
図79
図80
図81
図82
図83
図84
図85
図86
図87
図88
【配列表】
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【国際調査報告】