(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】精密ガラス素子の成形装置及び成形方法
(51)【国際特許分類】
C03B 11/12 20060101AFI20241001BHJP
C03B 11/08 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C03B11/12
C03B11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519090
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 US2022045042
(87)【国際公開番号】W WO2023055802
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524001927
【氏名又は名称】ムーア ナノテクノロジー システムズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーガン、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネソン、マーク・エス
(72)【発明者】
【氏名】ブローシュ、マイケル・アール
(57)【要約】
一実施形態では、本開示の成形装置は、1以上のガラス材料を加熱し、そのガラス材料を上側モールドと下側モールドとの間でプレスすることによって1以上のガラス素子を成形するために使用される。本開示の成形装置は、複数の放射加熱素子を含む放射加熱モジュールと、独立して制御される第1の複数の抵抗加熱素子を含む上側抵抗加熱モジュールと、独立して制御される第2の複数の抵抗加熱素子を含む下側抵抗加熱モジュールとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のガラス材料を加熱し、そのガラス材料を上側モールドと下側モールドとの間でプレスすることによって1以上のガラス素子を成形する成形装置であって、
複数の放射加熱素子を含む放射加熱モジュールと、
独立して制御される第1の複数の抵抗加熱素子を含む上側抵抗加熱モジュールと、
独立して制御される第2の複数の抵抗加熱素子を含む下側抵抗加熱モジュールと、を備える、成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成形装置であって、
上側モールドと、
下側モールドと、をさらに備え、
前記上側モールド及び前記下側モールドはそれぞれ、単一のモノリシック材料片である、成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の成形装置であって、
上側モールドと、
下側モールドと、をさらに備え、
前記上側モールド及び前記下側モールドはそれぞれ、モールドプレートと、該プレートに設けられた複数のモールドピンとを含む、成形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の成形装置であって、
前記上側抵抗加熱モジュール及び前記下側抵抗加熱モジュールはそれぞれ、不活性ガス流のための1以上の流路を有するプレートと接触している、成形装置。
【請求項5】
請求項1に記載の成形装置であって、
上側モールドと、
下側モールドと、
前記上側モールドを前記下側モールドに対して変位させるラムと、をさらに備え、
前記ラムは、ねじジャッキ、モータ、及び軸受機構を含む、成形装置。
【請求項6】
請求項1に記載の成形装置であって、
前記1以上のガラス素子を成形するための密閉された処理チャンバをさらに備える、成形装置。
【請求項7】
請求項1に記載の成形装置であって、
前記1以上のガラス材料は、1以上の球状ガラス材料を含む、成形装置。
【請求項8】
請求項1に記載の成形装置であって、
前記1以上のガラス材料は、単一の円柱状ガラス材料を含む、成形装置。
【請求項9】
請求項1に記載の成形装置であって、
前記複数の放射加熱素子は、独立して制御される複数の放射加熱素子を含む、成形装置。
【請求項10】
ガラス材料を加熱し、そのガラス材料を単一または複数のモールドを含む上側モールドと単一または複数のモールドを含む下側モールドとの間でプレスすることによってガラス素子を成形する成形装置であって、
前記上側モールド及び前記下側モールドは、ガイドピンによって互いに対して位置合わせされ、
前記ガイドピンは、該ガイドピンの端面が前記モールドの表面に対して整列するように位置決め装置に接続されており、その後、前記上側モールドに設けられた孔を前記下側モールドに設けられた孔に対して整列させるのに使用できるように前記モールドから延出させられる、成形装置。
【請求項11】
処理チャンバ内でガラス材料を加熱し、そのガラス材料を単一または複数のモールドを含む上側モールドと単一または複数のモールドを含む下側モールドとの間でプレスすることによって精密ガラス素子を成形する成形装置であって、
前記ガラス材料の加熱は、前記処理チャンバに設けられた、複数の放射加熱素子を含む放射加熱モジュールによって行われ、
前記放射加熱モジュールは、該モジュールに前記複数の放射加熱素子を保持したままの状態で前記処理チャンバに対して着脱可能に構成されている、成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月28日に出願された「精密ガラス素子の成形装置及び成形方法」と題する米国仮特許出願第63/249、298号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、ガラス成形に関し、より詳細には、精密ガラス素子の成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、精密ガラス素子の成形は、ガラス材料を軟化点以上に加熱し、そのガラス材料を上側モールドと下側モールドとの間でプレスすることにより行われている。このような成形装置及び成形方法の代表例としては、特許文献1~4に開示されているものが挙げられる。これらの特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。しかしながら、これらの代表的な成形装置及び成形方法には、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3832986B2号公報
【特許文献2】米国特許第4、734、118号明細書
【特許文献3】特許第6540684B2号公報
【特許文献4】米国特許第6、184、498号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本開示の成形装置は、1以上のガラス材料を加熱し、そのガラス材料を上側モールドと下側モールドとの間でプレスすることによって1以上のガラス素子を成形するために使用することができる。本開示の成形装置は、複数の放射加熱素子を含む放射加熱モジュールと、独立して制御される第1の複数の抵抗加熱素子を含む上側抵抗加熱モジュールと、独立して制御される第2の複数の抵抗加熱素子を含む下側抵抗加熱モジュールとを備える。
【0006】
別の実施形態では、本開示による、1以上のガラス素子を成形するための成形方法は、複数の放射加熱素子を含む放射加熱モジュールと、独立して制御される第1の複数の抵抗加熱素子を含む上側抵抗加熱モジュールと、独立して制御される第2の複数の抵抗加熱素子を含む下側抵抗加熱モジュールとの各々を使用して、1以上のガラス材料を加熱するステップを含む。本開示の成形方法は、1以上のガラス材料を上側モールドと下側モールドとの間でプレスするステップをさらに含む。
【0007】
また、さらなる実施形態では、本発明の成形装置及び成形方法は、ガラス材料を加熱し、そのガラス材料を単一または複数のモールドを含む上側モールドと、単一または複数のモールドを含む下側モールドとの間でプレスすることによって精密ガラス素子を成形するために使用することができる。本開示の成形装置及び成形方法では、ガラス材料の加熱は、複数の放射加熱素子を含む放射加熱モジュールと、独立して制御される第1の複数の抵抗加熱素子を含む上側抵抗加熱モジュールと、独立して制御される第2の複数の抵抗加熱素子を含む下側抵抗加熱モジュールとによって達成される。いくつかの実施形態では、このように互いに異なる種類の加熱要素を組み合わせることによって、ガラス材料の加熱速度を高めることができる。いくつかの実施形態では、抵抗加熱素子及び放射加熱素子は、ガラス材料の所望の温度勾配を得るために、互いに独立して制御される。
【0008】
別の実施形態では、本開示の成形装置及び成形方法は、ガラス材料を加熱し、そのガラス材料を単一または複数のモールドを含む上側モールドと、単一または複数のモールドを含む下側モールドとの間でプレスすることによって精密ガラス素子を成形するために使用することができる。本開示の成形装置及び成形方法では、ガラス材料(または他の光学材料)の冷却は、不活性ガス流、複数の抵抗加熱素子を含む上側抵抗加熱モジュール、及び複数の抵抗加熱素子を含む下側抵抗加熱モジュールによって達成される。いくつかの実施形態では、不活性ガス流と抵抗加熱素子との組み合わせによって、ガラス素子の冷却速度を制御することができる。
【0009】
別の実施形態では、本開示の成形装置及び成形方法は、ガラス材料を加熱し、そのガラス材料を単一または複数のモールドを含む上側モールドと、単一または複数のモールドを含む下側モールドとの間でプレスすることによって精密ガラス素子を成形するために使用することができる。本開示の成形装置及び成形方法では、ガラス材料の温度は、赤外線カメラを含む温度監視装置によって測定される。いくつかの実施形態では、赤外線カメラは、ガラス材料の軟化点を決定するのに役立つ。
【0010】
別の実施形態では、本開示の成形装置及び成形方法は、ガラス材料を加熱し、そのガラス材料を単一または複数のモールドを含む上側モールドと、単一または複数のモールドを含む下側モールドとの間でプレスすることによって精密ガラス素子を成形するために使用することができる。本開示の成形装置及び成形方法において、上側モールド及び下側モールドはガイドピンによって互いに対して位置合わせされ、ガイドピンは、加熱時には、ガイドピンの端面がモールドの表面と同一平面になるように位置決め装置に接続されており、プレス時には、モガイドピンを使用して上側モールドに設けられた孔を下側モールドに設けられた孔に対して整列させるのに使用できるようにモールドから延出(伸張)させられる。
【0011】
別の実施形態では、処理チャンバ内でガラス材料を加熱し、そのガラス材料を単一または複数のモールドを含む上側モールドと、単一または複数のモールドを含む下側モールドとの間でプレスすることによって精密ガラス素子を成形するために使用することができる。本発明の成形装置及び成形方法では、ガラス材料の加熱は、処理チャンバに設けられた、複数の放射加熱素子を含む放射加熱モジュールによって行われ、放射加熱モジュールは、該モジュールに複数の放射加熱素子を保持したままの状態で処理チャンバに対して脱着可能に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示並びにその特徴及び利点は、以下の説明及び添付された図面を参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【0013】
【
図1】
図1は、ガラス素子の成形サイクルを、(1)加熱、(2)プレス、(3)徐冷、(4)急冷の4つのステップに分けてプロットしたものである。
【
図2】
図2は、放射加熱モジュールと、上側抵抗加熱モジュールと、下側抵抗加熱モジュールとの組み合わせによる加熱によって精密ガラス素子を成形する本開示の成形装置の一実施形態を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した成形装置の放射加熱モジュールの一実施形態を示しており、放射加熱モジュールは処理チャンバから単品として取り外すことができる。
【
図4】
図4は、
図2に示した成形装置の抵抗加熱モジュールの一実施形態を示しており、抵抗加熱モジュールは、互いに独立して制御可能な3つの抵抗加熱素子を含む。
【
図5】
図5は、
図2に示した成形装置で使用されるモールド、放射加熱素子、抵抗加熱素子、赤外線カメラ装置、及び他の構成要素の一例を示しており、上側モールド及び下側モールドはそれぞれ、モールドプレートに設けられた複数のモールドピンを含み、ガラス材料は複数の球体である。
【
図6】
図6は、
図2に示した成形装置で使用されるモールド、放射加熱素子、抵抗加熱素子、及び他の構成要素の別の例を示しており、上側モールド及び下側モールドはそれぞれ単一のモノリシック材料片であり、ガラス材料は複数の球体である。
【
図7】
図7は、
図2に示した成形装置で使用されるモールド、放射加熱素子、抵抗加熱素子、及び他の構成要素のさらなる例を示しており、上側モールド及び下側モールドはそれぞれ単一のモノリシック材料片であり、ガラス材料は単一のディスクまたはウェハである。
【
図8A】
図8Aは、
図2に示した成形装置で使用されるモールド、ガラス素子、及びガイドピンの一例を示しており、ガイドピンは加熱のために後退位置に位置している。
【
図8B】
図8Bは、
図2に示した成形装置で使用されるモールド、ガラス素子、及びガイドピンの一例を示しており、ガイドピンは上側モールド及び下側モールドを互いに対して位置合わせするためにモールドから延出(伸張)している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態は、添付図面の
図1~
図8を参照することによって最もよく理解される。同様の符号は、様々な図面における同様の部分及び対応する部分を示すのに用いられる。
【0015】
精密ガラス素子の成形は、通常、
図1にプロットしたステップによって達成される。
図1に示すように、ガラス材料を、まず処理チャンバ内に入れられ、軟化点以上の温度に加熱する。続いて、そのガラス材料を上側モールドと下側モールドとの間でプレスすることによって、ガラスレンズなどのガラス素子を成形する。次に、ガラス素子を軟化点以下の温度まで徐々に冷却するか、またはアニール処理する。最後に、ガラス素子を処理チャンバから取り出すために、ガラス素子を低温まで急速に冷却する。
【0016】
いくつかの実施形態では、スループットを向上させるために、成形プロセスの時間を最小限に抑えることが望ましい。このことを達成するための一般的な例は、ガラス材料を加熱するのに必要な時間を短縮するために、加熱力を高めることである。しかしながら、加熱時間が短いと、ガラス材料に温度勾配が生じる可能性がある。その場合、局所的な溶融やクラッキングが発生し、ガラス素子に欠陥が生じる可能性がある。成形プロセスの時間を最小限に抑えるためのもう1つの一般的な例は、ガラス材料の徐冷時間を最小限に抑えることである。しかしながら、徐冷時間が短いと、ガラス素子に残留応力が生じる可能性があり、このことは、レンズなどの用途では望ましくない。
【0017】
また、一般的な成形装置では、放射発熱素子のみを使用するため、加熱力が制限され、光の反射に基づいて温度勾配を制御することは困難である。或る例では、放射加熱素子及び抵抗加熱素子が使用されるが、加熱は、放射加熱モジュール、1つの上側抵抗加熱素子、及び1つの下側抵抗加熱素子によって達成される。したがって、ガラス材料の温度勾配を制御することはできない。
【0018】
これに対して、本開示の成形装置及び成形方法は、上記の問題点の1以上を解決することができる。例えば、本開示の成形装置及び成形方法は、徐々に冷却(及び/または加熱)する速度を正確に制御することができる。このことにより、ガラス素子に生じる残留応力を最小限に抑えることができ、ガラス素子をさらにアニールする必要がなくなり、ガラス素子の精密さを向上させることができる。
【0019】
一実施形態では、本開示による、精密ガラス素子の成形装置は、放射加熱モジュールと、上側モールドに接触して配置された上側抵抗加熱モジュールと、下側モールドに接触して配置された下側抵抗加熱モジュールとを備え、各加熱モジュールは、加熱力を独立して制御するための複数の加熱素子を含む。いくつかの実施形態では、上側抵抗加熱モジュールと下側抵抗加熱モジュールとの両方を使用することにより成形装置の加熱力を高めるとともに、各抵抗加熱モジュールの各抵抗加熱素子を独立して制御することによりガラス材料の温度勾配を減少させることができる。また、抵抗加熱素子を使用することにより、徐冷中のガラス材料の温度勾配を制御することができる。このことは、(1)不活性ガス流による冷却と、(2)抵抗加熱素子による加熱との組み合わせによって達成される。このことにより、いくつかの実施形態では、加熱時間を短縮するとともに、徐冷速度を正確に制御することができる。
【0020】
図2は、本開示による、精密ガラス素子の成形に使用される成形装置1の一実施形態を示す。
図2に示す実施形態では、本開示の成形装置1は、装置全体を取り囲む全体フレーム10を備える。上側モールド15及び下側モールド16は、サーボモータ21、軸受機構22、ねじジャッキ23、及び位置フィードバック装置(これらすべてをラム20と称する)によって互いに対して変位させられる。また、ねじジャッキ23は、ガラス材料40(例えば、40a、40b)を強い力でプレス(押圧)するのに十分な能力を有する。アンビル30が、ラム20からガラス材料40に加えられる力を監視する荷重検出装置32に取り付けられている。処理チャンバ34は、成形中に真空または不活性ガス環境を可能にする方法で密閉されている。可撓性ベローズ50を用いて動作時の密閉を実現しているが、他の任意の密閉方法を用いてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スライド式のメカニカルシールを用いてもよい。
【0021】
処理チャンバ34は、ガラス材料40、並びに、上側モールド15及び下側モールド16を加熱するための1以上の放射加熱素子60を備えている。
図2の実施形態では、4つの放射加熱素子60(例えば、60a~60b)が図示されているが、他の任意の数の放射加熱素子60を使用してもよい。放射加熱素子60は、いくつかの実施形態では、赤外線加熱ランプであり得るが、他の任意のタイプの放射加熱素子60を使用してもよい。図示の実施形態では、放射加熱素子60は、処理チャンバ34の密閉容積の外側に配置されており、透明石英管65によって密閉容積から分離されている。他の実施形態では、処理チャンバ34は、透明石英管65を備えていなくてもよい。放射加熱素子60は、赤外線加熱ランプに使用されるフィラメントの劣化により、時間の経過とともに消耗する。フィラメントは、いくつかの実施形態では、タングステン製である。いくつかの実施形態では、複数の放射加熱素子60を交換するのに必要な時間を最小限に抑えるために、複数の放射加熱素子60は単一ユニットとして着脱可能に構成される。このような単一ユニットの一例は、放射加熱モジュール61の一例を示す
図3に示されている。放射加熱モジュール61は、複数の放射加熱素子60を含む、処理チャンバ34に対して着脱可能な単一ユニットであり得る。放射加熱モジュール61は、該モジュールに放射加熱素子60を保持したままの状態で、処理チャンバ34に取り付けたり、処理チャンバ34から取り外したりすることができる。
【0022】
図2に示す実施形態では、ガラス材料40は、2つの球状ガラス材料40a及び40bを含む。なお、成形装置1を使用して、他の任意の数のガラス材料40を成形してもよい。さらに、ガラス素子を成形するのに使用されるガラス材料40は、任意のサイズ及び/または形状を有し得る。ガラス材料40のサイズ及び/または形状は、ガラス素子のサイズ及び形状に影響を与える(その逆もまた同様である)。ガラス材料40は、任意の成形可能なガラス材料、例えば、n-BK7であり得る。
図2に示す実施形態では、ガラス材料40は、下側モールド16上に配置され、上側モールド15はラム20に取り付けられている。上側モールド15とラム20との間には、抵抗加熱モジュール70aと、不活性ガス流路を有する冷却プレート72とが設けられている。下側モールド16とアンビル30との間には、抵抗加熱モジュール70bと、不活性ガス流路を有する冷却プレート72とが設けられている。冷却プレート72は、1以上の不活性ガス流路を有する。例えば、冷却プレート72は、複数の不活性ガス流路を有する。いくつかの実施形態では、冷却プレート72の各不活性ガス流路における不活性ガス流量は、個別に制御される。温度監視装置65を使用して、上側モールド15及び下側モールド16、及び/または、ガラス材料40の温度を監視することができる。いくつかの実施形態では、温度監視装置65は、熱電対などの任意の温度監視装置であり得る。サーボモータ21、位置フィードバック装置、荷重検出装置32、加熱素子、不活性ガス流、及び温度監視装置65は、所望の温度及び力のプロファイル(
図1参照)を達成するために制御装置90に接続されている。
【0023】
抵抗加熱モジュール70(例えば、抵抗加熱モジュール70a及び/または抵抗加熱モジュール70b)は、ガラス材料40の温度勾配を制御するための1以上の抵抗加熱素子80を含む。
図4に示す実施形態では、抵抗加熱モジュール70は、3つの抵抗加熱素子80(例えば、80a、80b及び80c)を含むが、独立した制御を達成するために、抵抗加熱素子80の数は、2以上の任意の数を取り得る。図示の実施形態では、3つの抵抗加熱素子80は、抵抗加熱素子80aによって形成される外側加熱ゾーン、抵抗加熱素子80bによって形成される中間加熱ゾーン、及び、抵抗加熱素子80cによって形成される内側加熱ゾーンの3つの加熱ゾーンを形成する。各抵抗加熱素子80(したがって、各加熱ゾーン)は、独立的に制御され、各加熱ゾーンを互いに異なる温度に加熱することができる。このことにより、本開示の成形装置1は、加熱及び/または冷却中のガラス材料40の温度勾配を制御することができる(場合によっては温度勾配を除去することもできる)。いくつかの実施形態では、抵抗加熱素子80は、加熱及び冷却を含む成形プロセスの任意のステップで使用することができる。抵抗加熱モジュール70(例えば、抵抗加熱モジュール70a及び/または抵抗加熱モジュール70b)は、いくつかの実施形態では、窒化アルミニウムセラミックに埋め込まれたタングステンフィラメントを含み得る。
【0024】
上側モールド15及び下側モールド16はそれぞれ、ガラス素子を成形するための単一または複数のキャビティ55を有する。
図5は、2つのガラス素子を成形するための2つのキャビティ55を有する上側モールド15及び下側モールド16の例を示す。上側モールド15及び下側モールド16はそれぞれ任意の材料から製造することができるが、一般的には、炭化タングステンや炭化ケイ素などの高温適合性材料から製造される。
図5には、上側モールド15と下側モールド16との位置合わせに使用される2つのガイドピン75(例えば、75a及び75b)が示されている(その実施形態は、
図8A及び
図8Bを参照して後述する)。
図5に示す実施形態では、ガラス材料40は球形であり、各キャビティ55の位置で下側モールド16上に配置される。ガラス材料40の温度勾配を監視するために、温度監視装置65が、上側モールド15及び下側モールド16に接触して配置されている。
図5に示す実施形態では、2つの温度監視装置65a、65bが上側モールド15に接触して配置されており、2つの温度監視装置65c、65dが下側モールド16に接触して配置されている。いくつかの実施形態では、複数の抵抗加熱素子80により、加熱(及び/または冷却)中にガラス材料40全体の温度勾配を制御することが可能となる。
【0025】
上側モールド15及び下側モールド16はそれぞれ、モールドプレート18と、該プレートに設けられた複数のモールドピン17とを含む。
図5は、モールドプレート18aに配置された2つのモールドピン17a、17bを含む上側モールド15と、モールドプレート18bに配置された2つのモールドピン17c、17dを含む下側モールド16の例を示す。ガラス材料40は球形であり、
図5の実施形態では、ガラス材料40は、各モールドピン17c及び17dの位置で下側モールド16上に配置される。ガラス材料40の温度は、ガラス材料40の赤外線放射を温度に変換する赤外線カメラ82によって監視することができる。いくつかの実施形態では、赤外線カメラ82は、処理チャンバ内の温度を制御するために制御装置90によって使用される。いくつかの実施形態では、赤外線カメラは、Flir社製のLeptonカメラであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、上側モールド15及び下側モールド16はそれぞれ、単一のモノリシック材料片であり得る。
図6及び
図7は、上側モールド15及び下側モールド16がそれぞれ単一のモノリシック材料片である例を示す。
図6に示す実施形態では、各ガラス材料40は単一のガラス材料片であり、上側モールド15及び下側モールド16はそれぞれ、複数のガラス素子を成形するための複数のキャビティ55を有する単一のモノリシック材料片である。
図7に示す実施形態では、ガラス材料40は、単一の円柱状ガラス材料であり、上側モールド15及び下側モールド16はそれぞれ、ガラス材料40である単一の円柱状ガラス材料における互いに異なる部分を成形するための複数のキャビティ55を有する単数のモノリシック材料片である。
図6及び
図7の両方において、いくつかの実施形態では、複数の抵抗加熱素子80により、加熱(及び/または冷却)中にガラス材料40全体の温度勾配を制御することが可能となる。
【0027】
上述したように、本開示の成形装置1は、上側モールド15と下側モールド16とを位置合わせするためのガイドピン75(例えば、75a及び75b)を備える。ガイドピン75は、まず、ガイドピン75の端面が上側モールド15の表面と整列するように位置決めされる。その後、ガイドピン75は、位置決め装置77(例えば、77a及び77b)によって作動され、上側モールド15に設けられた孔を下側モールド16に設けられた孔に対して整列させるのに使用できるように上側モールド15から延出(伸張)させられる。
図8A及び
図8Bは、この目的のために使用されるモールド(上側モールド及び下側モールド)、ガラス素子、及び位置合わせピン(ガイドピン)の実施形態を示す。
図8Aは、ガイドピン75がランプからの放射光を遮って影を作らないように、加熱時位置に引っ込めた状態のガイドピン75を示す。いくつかの実施形態では、ランプからの放射光を遮って影ができると、ガラス材料に温度勾配が生じる可能性がある。加熱時は、ガイドピン75は、上側モールド15内に位置している。下側モールド16は、加熱時に下側モールド16の孔を塞ぐ役割を果たすフォロワーピン79(例えば、79a及び79b)を有する。フォロワーピン79は、ばね78(例えば、78a及び78b)によって下側モールド16に対して付勢されている。
図8Bは、上側モールド15と下側モールド16とを位置合わせするために、ガイドピン75が伸長した状態を示す。位置決め装置77は、制御装置90により加熱時にガイドピン75の後退位置(
図8Aに見られる)が設定され、プレス時にガイドピン75の伸長位置(
図8Bに見られる)が設定されるように、成形プロセス中に作動させることができる。フォロワーピン79は、プレス時は、ガイドピン75に押されて変位する。
【0028】
本開示の範囲から逸脱することなく、成形装置1に対する変更、追加、または省略を行うことができる。また、成形装置1、成形装置1の構成要素、及び/または、成形装置1に含まれる装置の機能は、任意の適切な論理回路で実行(及び/または制御)することができる。さらに、成形装置1の1以上の構成要素を分離、結合、及び/または除去することもできる。
【0029】
本明細書では、様々な非限定的かつ非網羅的な実施形態に関して説明している。しかしながら、本開示の実施形態のいずれか(またはその一部)の様々な置換、変更、または組み合わせを本明細書の範囲内で行ってもよいことは、当業者であれば理解できるであろう。したがって、本明細書は、本明細書に明示的に規定されていない追加の実施形態をサポートすることが意図され、理解される。そのような実施形態は、例えば、本明細書に記載された様々な非限定的かつ非網羅的な実施形態の開示されたステップ、構成要素、要素、特徴、態様、特性、制限などの組み合わせ、変更、または再編成によって得ることができる。
【国際調査報告】