(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】抗LAG3抗体、医薬組成物、及び使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241001BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241001BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241001BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241001BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241001BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241001BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241001BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241001BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20241001BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241001BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20241001BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12N15/63 Z
C07K1/14
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K39/395 L
A61P35/00
A61P7/06
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519329
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2022122185
(87)【国際公開番号】W WO2023051621
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111149114.9
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519063026
【氏名又は名称】中山康方生物医▲藥▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AKESO BIOPHARMA,INC.
【住所又は居所原語表記】6 Shennong Road,Torch Development Zone Zhongshan,Guangdong 528437 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100231902
【氏名又は名称】吉田 李花
(72)【発明者】
【氏名】ユイ シア
(72)【発明者】
【氏名】チョンミン ワン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ポン
(72)【発明者】
【氏名】パイヨン リー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
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4B065AC14
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4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は生物医学の分野に属し、抗LAG3抗体、それを含む医薬組成物、及びその使用に関する。具体的には、本発明は、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片であって、前記抗体が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が、配列番号9~11に示されるアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号12~14に示されるアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片に関する。本発明の抗LAG3抗体は優れた親和性と特異性を有し、応用性に優れている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片であって、
前記重鎖可変領域が、配列番号9~11に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号12~14に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;
前記重鎖可変領域が、配列番号9~11に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;又は、
前記重鎖可変領域が、配列番号9~11に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号17、配列番号15、及び配列番号14に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片であって、
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する;
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する;又は、
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有する、抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、単鎖可変領域断片、ヒト化抗体、又はキメラ抗体から選択される、請求項1~2のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記抗体が、ヒトLAG3-mFcに対して、0.2nM未満、例えば、0.15nM未満、0.1nM未満、0.08nM未満、0.06nM未満、もしくは0.05nM未満、又はそれ以下のEC
50値で結合し、好ましくは前記EC
50値が間接ELISAによって測定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記抗体が、マウス以外の種に由来する、例えば、ヒト抗体に由来する非CDR領域を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
前記抗体がヒト抗体に由来する定常領域を含み;
好ましくは、前記抗体の前記定常領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の定常領域から選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
前記抗LAG3抗体の重鎖定常領域が、Igガンマ-1鎖C領域(例えば、配列番号18に記載されている)又はIgガンマ-4鎖C領域(例えば、配列番号20に記載されている)であり、前記抗LAG3抗体の軽鎖定常領域が、Igカッパ鎖C領域(例えば、配列番号19に記載されている)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
抗体又はその抗原結合性断片、及び小分子薬を含む、抗体薬物複合体であって、前記抗体又はその抗原結合性断片が、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片であり;好ましくは前記小分子薬が小分子細胞毒性薬であり;より好ましくは前記小分子薬が抗腫瘍化学療法薬である、抗体薬物複合体。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合性断片が、リンカーを介して前記小分子薬に連結しており、例えば、前記リンカーがヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はペプチド結合である、請求項8に記載の抗体薬物複合体。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合性断片の前記小分子薬に対するモル比が、1:(2~4)である、請求項8又は9に記載の抗体薬物複合体。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG3抗体をコードする、単離核酸分子。
【請求項12】
請求項11に記載の単離核酸分子を含む、組換えベクター。
【請求項13】
請求項11に記載の単離核酸分子又は請求項12に記載の組換えベクターを含む、宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を適した条件下で培養すること、及び細胞培養物から前記抗体又はその抗原結合性断片を単離することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片を調製する方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は請求項8~10のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が任意に、薬理学的に許容される副原料をさらに含む、医薬組成物。
【請求項16】
腫瘍又は貧血を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は請求項8~10のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体の使用であって、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、抗体もしくはその抗原結合性断片又は抗体薬物複合体の使用。
【請求項17】
腫瘍又は貧血の治療及び/又は予防において使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は請求項8~10のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体であって、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、抗体もしくはその抗原結合性断片又は抗体薬物複合体。
【請求項18】
腫瘍又は貧血を治療及び/又は予防する方法であって、前記方法が、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は請求項8~10のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の分野に属し、抗LAG3抗体、抗LAG3抗体を含む医薬組成物、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍、特に悪性腫瘍は、今日では、健康を脅かす世界的に深刻な疾患であり、各種疾患の中でも死因の第2位となっている。近年、これら疾患の罹患率が著しく増加している。悪性腫瘍は、治療反応性が悪く、後期の転移率が高く、また、予後が不良であることが特徴である。現在臨床的に採用されている従来の治療方法(例えば、放射線療法、化学療法、及び外科治療など)は、疼痛を大幅に緩和し、生存時間を延長するものであるが、それらの方法には大きな制約があり、それらの有効性をさらに向上させるのは困難である。
【0003】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、すなわちCD223は、498アミノ酸から構成されるI型膜貫通タンパク質であり、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーである。LAG3は主に、活性化CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞で発現している。また、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、調節性T細胞(Tregs)、及び形質細胞様樹状細胞(pDCs)などの細胞においてもLAG3が発現している(Ruffo Elisa, Wu Richard C, Bruno Tullia C et al., Lymphocyte-activation gene 3 (LAG3): The next immune checkpoint receptor. [J].Semin Immunol, 2019, 42: 101305.)。
【0004】
LAG3分子遺伝子はヒト第12染色体(20p13.3)上でCD4分子遺伝子に隣接して位置し、両者とも同じエクソンとイントロンを有する。LAG3分子とCD4分子は構造的に類似性が高いが、両者間のアミノ酸配列相同性は20%程度しかない。主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHC II)分子、肝類洞内皮細胞レクチン(LSECtin)分子、及びガレクチン-3分子はLAG3分子に対する関連リガンドである。MHCクラスII分子はLAG3に対する主要リガンドである。MHCクラスII分子に対するLAG3分子の親和性(Kd:60nmol・L-1)はCD4分子のものと比較して100倍であり、このことは、LAG3分子が、MHCクラスII分子への結合に関してCD4分子と効果的に競合し、T細胞活性化を阻害しうるということを示している。
【0005】
腫瘍微小環境内においては、T細胞活性化の24時間後に免疫抑制分子LAG3の発現を検出することができ、これがひいてはT細胞の機能不全又はアポトーシスをもたらす。LAG3分子は、そのD1ドメイン(プロリンに富む1個のループ構造を有する)を介して二量体を形成し、CD4+ T細胞活性化の第1シグナル伝達軸(first signaling axis)である「CD3-TCR-MHCII」においてMHCクラスII分子に特異的に結合する。それにより、一方ではT細胞活性化のためのシグナル伝達経路がブロックされ、他方ではLAG3分子の細胞内セグメント(KIEELEモチーフ)が免疫抑制シグナルを生成して、CD4+ T細胞の活性を下方制御する。LAG3分子はTreg細胞の分化を促進し、シグナル伝達兼転写活性化因子5の下流シグナル伝達に関与し、それによってTreg細胞の阻害効果を増強することができる。これは、腫瘍が免疫系による殺傷を回避するメカニズムの1つである(Andrews Lawrence P, Marciscano Ariel E, Drake Charles G, et al., LAG3 (CD223) as a cancer immunotherapy target. [J]. Immunol Rev, 2017, 276: 80-96.)。
【0006】
各種悪性腫瘍の腫瘍浸潤CD8+ T細胞においてLAG3が過剰発現していることが、複数の研究によって示されている。例えば、卵巣がんにおいては、ニューヨーク食道扁平上皮がん1(NY-ESO-1)抗原特異的腫瘍浸潤CD8+ T細胞が、PD-1及びLAG3を高度に発現し、IFN-γ及びTNF-αを産生する能力が減少しており、そのためリンパ球が不活性化されている。ガレクチン-3及びLSECtinは、主にLAG3と相互作用し、CD8+ T細胞の活性化と機能を調節する。また、転移性メラノーマの患者から単離されたメラノーマ抗原特異的T細胞は、LAG3並びに他の免疫チェックポイント分子CTLA-4及びTIM-3の発現の有意な上方制御を示す(Liu Hao, Li Xinying, Luo Longlong, et al., Research advances in biological function of lymphocyte activation gene-3 (LAG-3) molecule and clinical application of antibody drugs targeting LAG-3 [J]. Chinese Journal of Pharmacology and Toxicology, 2019, 33(01): 70-78.)。
【0007】
現在、複数のLAG3抗体薬が臨床研究段階に入っており、それらのうち、Bristol Myers Squibb社のレラトリマブは10件の臨床研究が進行中であり、最も進展が見られる。これらの研究の大部分は、血液悪性腫瘍、メラノーマ、神経膠芽腫、腎細胞がん、非小細胞肺がん、及び同種のものなどの腫瘍の治療に用いられる、レラトリマブとニボルマブの併用療法を伴う。
【0008】
現在、新規抗LAG3抗体薬の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本願発明者らは鋭意研究を重ね、創造的な努力を行うことによって、抗LAG3抗体を得た。本願発明者らは驚くべきことに、本発明の抗LAG3抗体(以下、前記抗体又は本発明の抗体と略す場合がある)が優れた親和性及び/又は特異性を有し、陽性対照抗体(例えば、レラトリマブ)と比べても1つ以上の点においてさらに優れたものであることを見出した。本発明を以下に詳細に説明する。
【0010】
本発明の一態様は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片(an antigen-binding fragment)であって、
前記重鎖可変領域が、配列番号9~11に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号12~14に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;
前記重鎖可変領域が、配列番号9~11に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む;又は、
前記重鎖可変領域が、配列番号9~11に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するHCDR1~HCDR3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号17、配列番号15、及び配列番号14に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有するLCDR1~LCDR3を含む、抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片に関する。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する;
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する;又は、
前記抗体の前記重鎖可変領域が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記抗体の前記軽鎖可変領域が、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有する、
前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、単鎖可変領域断片(a single chain fragment variable)、ヒト化抗体、又はキメラ抗体から選択される、前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗体が、ヒトLAG3-mFcに対して、0.2nM未満、例えば、0.15nM未満、0.1nM未満、0.08nM未満、0.06nM未満、もしくは0.05nM未満、又はそれ以下のEC50値で結合し、好ましくは前記EC50値が間接ELISAによって測定される、前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗体が、マウス以外の種に由来する、例えば、ヒト抗体に由来する非CDR領域を含む、前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、
前記抗体がヒト抗体に由来する定常領域を含み、
好ましくは、前記抗体の定常領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4の定常領域から選択される、
前記抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗LAG3抗体の重鎖定常領域が、Igガンマ-1鎖C領域(例えば、配列番号18に記載されている)又はIgガンマ-4鎖C領域(例えば、配列番号20に記載されている)であり、前記抗LAG3抗体の軽鎖定常領域が、Igカッパ鎖C領域(例えば、配列番号19に記載されている)である、抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗LAG3抗体はモノクローナル抗体である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗LAG3抗体は免疫グロブリン形態である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗LAG3抗体は単鎖可変領域断片である。
【0020】
本発明の他の態様は、抗体又はその抗原結合性断片、及び小分子薬を含む、抗体薬物複合体(ADC)であって、前記抗体又はその抗原結合性断片が、本発明のいずれかの実施形態の抗LAG3抗体又はその抗原結合性断片であり;好ましくは前記小分子薬が小分子細胞毒性薬であり;より好ましくは前記小分子薬が抗腫瘍化学療法薬である、抗体薬物複合体に関する。
【0021】
前記化学療法薬は、従来の抗腫瘍化学療法薬、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、植物系抗がん剤、ホルモン、及び免疫剤などであってよい。
【0022】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、前記抗体薬物複合体が提供され、前記抗体又はその抗原結合性断片は、リンカーを介して小分子薬に連結されており、前記リンカーは当業者に公知のもの、例えば、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はペプチド結合であってよい。
【0023】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片の前記小分子薬に対するモル比が、1:(2~4)、例えば、1:2、1:3、又は1:4である、前記抗体薬物複合体が提供される。
【0024】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明のいずれかの実施形態の抗LAG3抗体をコードする、単離核酸分子に関する。
【0025】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明の単離核酸分子を含む組換えベクターに関する。
【0026】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明の単離核酸分子又は本発明の組換えベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0027】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明のいずれかの実施形態の抗体又はその抗原結合性断片を調製する方法であって、本発明の宿主細胞を適した条件下で培養すること、及び細胞培養物から前記抗体又はその抗原結合性断片を単離することを含む、方法に関する。
【0028】
本発明のさらなる他の一態様は、本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は本発明のいずれかの実施形態の抗体薬物複合体、を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が任意に、薬理学的に許容される副原料をさらに含む、医薬組成物に関する。
【0029】
本発明のさらなる他の一態様は、腫瘍又は貧血を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における、本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は本発明のいずれかの実施形態の抗体薬物複合体の使用であって、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、抗体もしくはその抗原結合性断片又は抗体薬物複合体の使用に関する。
【0030】
前記の本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は本発明のいずれかの実施形態の抗体薬物複合体は、腫瘍又は貧血の治療及び/又は予防において使用するためのものであって、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんは非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍は白血病であり;
好ましくは、前記食道がんは食道扁平上皮がんである。
【0031】
本発明のさらなる他の一態様は、腫瘍又は貧血を治療及び/又は予防する方法であって、本発明のいずれかの実施形態の抗体もしくはその抗原結合性断片、又は本発明のいずれかの実施形態の抗体薬物複合体の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、
好ましくは前記腫瘍が、卵巣がん、食道がん、メラノーマ、血液悪性腫瘍、膠芽腫、腎細胞がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部がん、及び腎臓がんの1つ又は複数から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記血液悪性腫瘍が白血病であり;
好ましくは、前記食道がんが食道扁平上皮がんである、方法に関する。
【0032】
本発明において、他に定義されない限り、本明細書内で使用される科学及び技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有する。また、本明細書で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、及び免疫学の実験室操作は、対応する分野で広く使用されるルーチン手順である。一方、本発明の理解を促すために、関連のある語の定義及び説明を以下に提供する。
【0033】
本明細書で使用されるEC50という語は、最大効果の50%に対する濃度、すなわち、最大効果の50%を引き起こしうる濃度のことを指す。
【0034】
本明細書で使用される「抗体」という語は、一般に2対のポリペプチド鎖からなる(それぞれの対が1本の「軽」(L)鎖と1本の「重」(H)鎖を有する)免疫グロブリン分子のことを指す。抗体軽鎖はκ及びλ軽鎖へと分類される。重鎖はμ、δ、γ、α、又はεへと分類される。抗体のアイソタイプはIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして定義される。軽鎖及び重鎖において、可変領域と定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結しており、重鎖はさらに、約3以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLからなる。抗体の定常領域は、免疫系の各種細胞(例えば、エフェクター細胞)の古典的な補体系の第1成分(C1q)への結合を含む、免疫グロブリンの宿主組織又は因子への結合を媒介することができる。VH及びVL領域は、超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに細かく分けることができ、超可変領域間にはフレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存的な領域が分布している。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシル末端に向けて次の順番で並んだ、3つのCDRと4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。各重鎖/軽鎖ペアの可変領域(VH及びVL)は、抗体結合部位を形成する。領域又はドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Bethesda M.d., Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, (1987及び1991))もしくはChothia & Lesk J. Mol. Biol., 1987; 196:901-917;Chothia et al., Nature, 1989; 342:878-883、又はIMGT番号付けシステムの定義(Ehrenmann F, Kaas Q, Lefranc M P., IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF[J]., Nucleic acids research, 2009; 38(suppl_1):D301-D307における定義を参照)に基づいて行われる。
【0035】
「抗体」という語は、抗体を製造するためのいかなる特定の方法によっても限定されない。例えば、抗体には、組換え抗体、モノクローナル抗体、及びポリクローナル抗体が含まれる。抗体は、IgG(例えば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、又はIgMなどの、各種アイソタイプの抗体であってよい。
【0036】
本明細書で使用される「mAb」及び「モノクローナル抗体」という語は、高度に相同な抗体のグループに由来する、すなわち、自然に生じうる天然の変異を例外として同一の抗体分子のグループに由来する、抗体又は抗体の断片のことを指す。モノクローナル抗体は、ある抗原上の単一のエピトープに対して高度に特異的である。モノクローナル抗体と異なり、ポリクローナル抗体は、通常、ある抗原上の異なるエピトープを一般に認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を含む。モノクローナル抗体は一般に、Kohler et al.(Kohler G, Milstein C. Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity [J]. Nature, 1975; 256(5517): 495)によって最初に報告されたハイブリドーマ技術を用いて取得することができるが、組換えDNA技術を用いても取得することができる(米国特許第4816567号明細書などを参照)。
【0037】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という語は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)のCDRの全体又は部分を非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDRで置き換えた場合に得られる抗体又は抗体断片のことを指し、ドナー抗体は、期待される特異性、親和性、又は反応性を有する非ヒト(例えば、マウス、ラット、もしくはウサギ)抗体であってよい。さらに、レセプター抗体のフレームワーク領域(FR)におけるいくつかのアミノ酸残基も、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基又は他の抗体のアミノ酸残基に置換し、抗体の性能をさらに改善又は最適化することができる。ヒト化抗体のさらなる詳細については、例えば、Jones et al., Nature, 1986; 321:522-525、Reichmann et al., Nature, 1988; 332:323-329、Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992; 2:593-596;及びClark, Immunol. Today, 2000; 21:397-402を参照のこと。
【0038】
本明細書で使用される「単離される」という語は、天然状態から人為手段によって取得されることを指す。特定の「単離される」物質又は成分が天然に存在する場合に、その天然環境において変化が生ずることであってもよく、天然環境から単離されることであってもよく、その両者であってもよい。例えば、単離されていない特定のポリヌクレオチド又はポリペプチドが特定の動物生体中に天然に存在し、このような天然状態から高純度の同一のポリヌクレオチド又はポリペプチドが単離された場合、それを単離ポリヌクレオチド又はポリペプチドと呼ぶ。「単離される」という語は、前記物質の活性に影響を及ぼさない、人工もしくは合成物質、又は他の不純物の存在を除外するものではない。
【0039】
本明細書で使用される「ベクター」という語は、ポリヌクレオチドを挿入することができる核酸ビヒクルのことを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、そのベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、ベクターによって運ばれる遺伝物質エレメントが宿主細胞で発現できるように、形質転換、形質導入、又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入することができる。ベクターは当業者に周知であり、例として、プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来人工染色体(PAC)など;ファージ、例えば、ラムダファージ又はM13ファージなど;及び動物ウイルス、が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターとして使用しうる動物ウイルスとしては、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポバウイルス(例えば、SV40)が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、発現を調節するための各種エレメントを含んでいてよく、それらの例として、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ベクターは、複製開始部位を含んでいてもよい。
【0040】
本明細書で使用される「宿主細胞」という語は、そこにベクターを導入できる細胞のことを指し、例として、原核細胞、例えば、E. coliもしくはBacillus subtilisなど;真菌細胞、例えば、酵母細胞もしくはAspergillusなど;昆虫細胞、例えば、S2 Drosophila細胞もしくはSf9など;又は動物細胞、例えば、線維芽細胞、CHO細胞、GS細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、もしくはヒト細胞など、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される「特異的結合」という語は、2つの分子間の非無作為的な結合反応、例えば、抗体とその標的となる抗原との間の反応などのことを指す。いくつかの実施形態において、ある抗原に特異的に結合する抗体(又は、ある抗原に対して特異的な抗体)とは、抗体が約10-5M未満、例えば、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、もしくは10-10M未満、又はそれ以下の親和性(KD)で抗原に結合することを意味する。
【0042】
本明細書で使用される「KD」という語は、特異的抗体-抗原相互作用の解離平衡定数のことを指し、抗体と抗原との間の結合親和性を説明するために使用される。解離平衡定数が小さいことは、抗体-抗原結合が強く、抗体と抗原との間の親和性が高いことを表す。一般に、抗体は、約10-5M未満、例えば、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、もしくは10-10M未満、又はそれ以下の解離平衡定数(KD)で抗原(PD-1タンパク質など)に結合する。KDは、当業者に公知の方法、例えば、Fortebio分子相互作用機器の使用を用いて決定することができる。
【0043】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という語と「mAb」という語は同一の意味を有し、互換的に用いることができる。「ポリクローナル抗体」という語と「pAb」という語は同一の意味を有し、互換的に用いることができる。また、本明細書において、アミノ酸は通常、当該分野で公知の1文字及び3文字略号を使用して表される。例えば、アラニンはA又はAlaで表すことができる。
【0044】
本明細書で使用される「薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤」という語は、対象及び活性成分に薬理学的及び/又は生理学的に適合した担体及び/又は賦形剤のことを指す。このような担体及び/又は賦形剤は当該分野で周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, edited by Gennaro AR, 19th Ed., Pennsylvania, Mack Publishing Company, 1995を参照)、例として、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、及びイオン強度増強剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、pH調整剤の限定されない例として、リン酸緩衝液が挙げられ、界面活性剤の限定されない例として、陽イオン、陰イオン、又は非イオン界面活性剤、例えば、Tween-80などが挙げられ、イオン強度増強剤の限定されない例として、塩化ナトリウムが挙げられる。
【0045】
本明細書で使用される「有効量」という語は、所望の効果を得るのに、又は少なくとも部分的に得るのに、充分な量のことを指す。例えば、疾患(腫瘍など)に対する予防的有効量とは、その疾患(腫瘍など)の発症を予防、抑止、又は遅延するのに充分な量のことを指し、治療有効量とは、その疾患に罹患している患者において、疾患又はその合併症を治癒又は少なくとも部分的に抑止するのに充分な量のことを指す。そのような有効量を決定することは、疑いもなく当業者の能力の範囲内である。例えば、治療目的における有効量は、治療しようとする疾患の重症度;患者自身の免疫系の全体的な状態;年齢、体重、及び性別などの患者の一般的な条件;投与経路;並びに同時に行われる他の治療;などによって決まる。
【0046】
本明細書において、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)のアミノ酸配列といった場合、それは全長LAG3タンパク質、もしくはLAG3の細胞外断片であるLAG3 ECD、もしくはLAG3 ECDを含む断片のことも含んでおり、また、全長LAG3タンパク質の融合タンパク質もしくはLAG3 ECDの融合タンパク質、例えば、マウスもしくはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcもしくはhFc)などと融合した断片のことも包含する。しかし、LAG3タンパク質のアミノ酸配列において、(置換、欠失、及び/又は付加を含むがそれらに限定されない)突然変異又は変異が、その生物学的機能に影響を与えることなく天然に生じうること、又は人工的に導入されうることを当業者は理解するであろう。したがって、本発明において、「LAG3タンパク質」という語は、それらの天然又は人工的なバリアントを含むすべての配列を含むものとする。また、LAG3タンパク質の配列断片について記述する場合は、それらの天然又は人工的なバリアント内の対応する配列断片のことも含んでいる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の有益な効果
本発明は、以下の効果のいずれか1つ以上を達成する:
(1)本発明の抗LAG3抗体が、優れた親和性と特異性を有すること;そして、
(2)本発明の抗LAG3抗体が、LAG3とMHC-IIの間の相互作用を効果的にブロックし、生物におけるLAG3の免疫抑制を特異的に緩和できること。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、H7L8(hG1WT)の抗原LAG3-mFcに対する結合活性を、間接ELISAによって分析した結果を示す。
【0049】
【
図2】
図2は、H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の抗原ヒトLAG3-mFcに対する結合活性を、ELISAによって分析した結果を示す。
【0050】
【
図3】
図3は、H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の、293T-LAG3細胞表面上の抗原LAG3に対する結合活性を、FACSによって分析した結果を示す。
【0051】
【
図4】
図4は、293T-LAG3細胞膜表面上の抗原MHC IIへの結合に関してLAG3-mFcと競合する、H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の活性を、競合フローサイトメトリーによって分析した結果を示す。
【0052】
【
図5】
図5は、IFN-γ分泌の促進における抗LAG3抗体の生物学的活性を、混合リンパ球反応(MLR)によって分析した結果を示す。
【0053】
【
図6】
図6は、IL-2分泌の促進における抗LAG3抗体の生物学的活性を、混合リンパ球反応(MLR)によって分析した結果を示す。
【0054】
【
図7】
図7は、LAG-3とMHC-IIの間の相互作用のブロックにおける、抗LAG抗体の生物学的活性を分析した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
詳細な説明
本発明の実施形態を、実施例を参照しながら以下に詳細に説明する。当業者は、以下の実施例が本発明の単なる例証のためのものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないと理解するであろう。具体的な技術又は条件が記載されていない実施例は、当該分野の文献に記載された技術又は条件(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, authored by J. Sambrook et al., and translated by Huang Peitang et al., third edition, Science Pressを参照)に従い、又は添付の使用説明書に従い、行われる。使用する試薬又は機器の製造者が記載されていない場合、それらは市販の従来の製品である。
【0056】
陽性対照抗体であるレラトリマブは、米国特許出願公開第20160326248(A1)号明細書に示される配列を有し、そのうち重鎖アミノ酸配列はこの特許文献の配列番号1に示されており、軽鎖アミノ酸配列はこの特許文献の配列番号2に示されている。レラトリマブは抗LAG-3抗体である。
【0057】
レラトリマブの重鎖アミノ酸配列:
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSFSDYYWNWIRQPPGKGLEWIGEINHRGSTNSNPSLKSRVTLSLDTSKNQFSLKLRSVTAADTAVYYCAFGYSDYEYNWFDPWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号23)
【0058】
レラトリマブの軽鎖アミノ酸配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGQGTNLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号24)
【0059】
対照抗体14C12H1L1(hG1TM)は、Akeso Biopharma社によって構築された、ロット番号B105Y2080601の抗PD-1抗体であった。
【0060】
14C12H1L1(hG1TM)の重鎖アミノ酸配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGAPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号21)
【0061】
14C12H1L1(hG1TM)の軽鎖アミノ酸配列:
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号22)
【0062】
細胞株293T-LAG3は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株293T-LAG3は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、HEK293T細胞のウイルス感染によって調製された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-huLAG3FL-BSD(LAG3、Genebank ID:NM_002277.4;ベクターplenti6.3/V5-BSD、Invitrogen社より購入、カタログ番号K5315-20)であった。
【0063】
細胞株Raji-PDL1は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株Raji-PDL1は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、Raji細胞のウイルス感染によって製造された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、plenti6.3/V5-PDL1(PDL1、Genebank ID:NP_054862.1;ベクターplenti6.3/V5、Invitrogen社より購入、カタログ番号K5315-20)であった。
【0064】
細胞株Jurkat-NFAT-PD1-LAG3は、Akeso Biopharma社によって構築された。細胞株Jurkat-NFAT-PD1-LAG3は、第3世代レンチウイルス系(例えば、A Third Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. Dull T, Zufferey R, Kelly M, Mandel RJ, Nguyen M, Trono D, and Naldini L., J Virol., 1998. 72(11): 8463-8471を参照)を用いて、PD-1エフェクター細胞(CPM、製造者:Promega社、カタログ番号J112A)のウイルス感染によって製造された。ここで使用されたレンチウイルス発現ベクターは、pCDH-huLAG3FL-RFP-NEO(LAG3、Genebank ID:NM_002277.4;ベクターpCDH-CMV-MCS-EF1-RFP+Neo、Youbio社より購入、カタログ番号VT9005)であった。
【実施例】
【0065】
調製例1:抗LAG3抗体の設計及び調製
1.抗体の設計
本願発明者らは、創意により、公知のLAG3タンパク質配列(NCBI参照配列:NP_002277.4)及びその三次元結晶構造などに基づき、一連の抗体配列を設計した。広範なスクリーニングと試験により、LAG3に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体を最終的に取得し、それぞれH7L8、H7L9、及びH7L10と命名した。モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列、及びそれらのコード配列は、次の通りである。
【0066】
H7L8の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列(360bp):
CAGGTGCAGCTGCAGCAGTGGGGAGCTGGACTGCTGAAACCTAGCGAGACACTGAGCCTGACCTGTGCTGTGTACGGCGGATCTATCAGCGATTACTACTGGAACTGGATCAGGCAGCCCCCTGGAAAGGGACTGGAATGGATCGGAGAGATCAACCACAGGGGCACCACCAACTCCAATCCCTCTCTGAAGAGCAGGGTGACACTGAGCCTCGACACAAGCAAGAATCAGTTCAGCCTGAAGCTGAGGTCCGTGACCGCTGCTGATACAGCTGTGTACTACTGTGCCTTCGGCTACAGCGATTACGAGTACGATTGGTTCGACCCTTGGGGCCAGGGAACACTGGTTACAGTGAGCTCC(配列番号1)
【0067】
H7L8の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列(120aa):
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSISDYYWNWIRQPPGKGLEWIGEINHRGTTNSNPSLKSRVTLSLDTSKNQFSLKLRSVTAADTAVYYCAFGYSDYEYDWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号2)
【0068】
H7L8の軽鎖可変領域L8vのヌクレオチド配列(321bp):
GAGATCGTTCTGACCCAGAGCCCAGCTACACTGAGCCTGTCTCCTGGAGAGAGGGCTACACTGTCCTGCAGAGCTAGCCAGACCATCAGCAGCTACCTGGCTTGGTACCAGCAGAAGCCTGGCCAAGCTCCAAGGCTGCTGATCTACGACGCCTCTAATAGGGCCACCGGCATCCCTGCTAGATTCTCTGGAAGCGGCAGCGGAACCGACTTTACACTGACAATCAGCTCCCTGGAGCCCGAGGATTTCGCTGTTTACTACTGTCAGCAGCGCAGCAACTGGCCCATCACATTCGGACAGGGCACAAATCTGGAGATCAAG(配列番号3)
【0069】
H7L8の軽鎖可変領域L8vのアミノ酸配列(107aa):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQTISSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTNLEIK(配列番号4)
【0070】
H7L9の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列は、配列番号1に記載のH7L8の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列と同一である。
【0071】
H7L9の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列は、配列番号2に記載のH7L8の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列と同一である。
【0072】
H7L9の軽鎖可変領域L9vのヌクレオチド配列(321bp):
GAGATCGTTCTGACCCAGAGCCCAGCTACACTGAGCCTGTCTCCTGGAGAGAGGGCTACACTGTCCTGCAGAGCTAGCCAGACCATCAGCAGCTACCTGGCTTGGTACCAGCAGAAGCCTGGCCAAGCTCCAAGGCTGCTGATCTACGACGGCTCTAATAGGGCCACCGGCATCCCTGCTAGATTCTCTGGAAGCGGCAGCGGAACCGACTTTACACTGACAATCAGCTCCCTGGAGCCCGAGGATTTCGCTGTTTACTACTGTCAGCAGCGCAGCAACTGGCCCCTCACATTCGGACAGGGCACAAATCTGGAGATCAAG(配列番号5)
【0073】
H7L9の軽鎖可変領域L9vのアミノ酸配列(107bp):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQTISSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDGSNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGQGTNLEIK(配列番号6)
【0074】
H7L10の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列は、配列番号1に記載のH7L8の重鎖可変領域H7vのヌクレオチド配列と同一である。
【0075】
H7L10の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列は、配列番号2に記載のH7L8の重鎖可変領域H7vのアミノ酸配列と同一である。
【0076】
H7L10の軽鎖可変領域L10vのヌクレオチド配列(321bp):
GAGATCGTTCTGACCCAGAGCCCAGCTACACTGAGCCTGTCTCCTGGAGAGAGGGCTACACTGTCCTGCAGAGCTAGCCAGTCCATCAGCAGCTACCTGGCTTGGTACCAGCAGAAGCCTGGCCAAGCTCCAAGGCTGCTGATCTACGACGGCTCTAATAGGGCCACCGGCATCCCTGCTAGATTCTCTGGAAGCGGCAGCGGAACCGACTTTACACTGACAATCAGCTCCCTGGAGCCCGAGGATTTCGCTGTTTACTACTGTCAGCAGCGCAGCAACTGGCCCATCACATTCGGACAGGGCACAAATCTGGAGATCAAG(配列番号7)
【0077】
H7L10の軽鎖可変領域L10vのアミノ酸配列(107bp):
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDGSNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTNLEIK(配列番号8)
【0078】
抗体H7L8のCDRのアミノ酸配列は次の通りである(IMGT番号付けシステムによる):
HCDR1: GGSISDYY(配列番号9);
HCDR2: INHRGTT(配列番号10);
HCDR3: AFGYSDYEYDWFDP(配列番号11);
LCDR1: QTISSY(配列番号12);
LCDR2: DAS(配列番号13);及び
LCDR3: QQRSNWPIT(配列番号14)。
【0079】
抗体H7L9のCDRのアミノ酸配列は次の通りである(IMGT番号付けシステムによる):
HCDR1: GGSISDYY(配列番号9);
HCDR2: INHRGTT(配列番号10);
HCDR3: AFGYSDYEYDWFDP(配列番号11);
LCDR1: QTISSY(配列番号12);
LCDR2: DGS(配列番号15);及び
LCDR3: QQRSNWPLT(配列番号16)。
【0080】
抗体H7L10のCDRのアミノ酸配列は次の通りである(IMGT番号付けシステムによる):
HCDR1: GGSISDYY(配列番号9);
HCDR2: INHRGTT(配列番号10);
HCDR3: AFGYSDYEYDWFDP(配列番号11);
LCDR1: QSISSY(配列番号17);
LCDR2: DGS(配列番号15);及び
LCDR3: QQRSNWPIT(配列番号14)。
【0081】
2.ヒト化抗体H7L8(hG1WT)の発現及び精製
H7L8(hG1WT)の重鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号1に示した;定常領域はIgガンマ-1鎖C領域であった)及び軽鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号3に示した;定常領域はヒトIgカッパ鎖C領域であった)を別々にpUC57simpleベクター(GenScript社製)にクローニングし、プラスミドpUC57simple-H7及びpUC57simple-L8をそれぞれ得た。プラスミドpUC57simple-H7及びpUC57simple-L8をそれぞれ消化した(HindIII及びEcoRI)。重鎖及び軽鎖を電気泳動で単離し、別々にpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出して293F細胞にコトランスフェクトした。細胞培養7日後に培地を高速遠心分離で分離し、上清を濃縮して、HiTrap MabSelect SuReカラム上にロードした。タンパク質を、溶出緩衝液を用いてワンステップで溶出した。標的試料を単離し、緩衝液をPBSへと交換した。
【0082】
H7L8(hG1WT)の重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号18)
【0083】
H7L8(hG1WT)の軽鎖定常領域のアミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号19)
【0084】
3.ヒト化抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の発現及び精製
H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の重鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号1に示した;定常領域はIgガンマ-4鎖C領域であった)、H7L8(hG4WT)の軽鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号3に示した;定常領域はヒトIgカッパ鎖C領域であった)、H7L9(hG4WT)の軽鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号5に示した;定常領域はヒトIgカッパ鎖C領域であった)、並びにH7L10(hG4WT)の軽鎖cDNA配列(可変領域のコード配列を配列番号7に示した;定常領域はヒトIgカッパ鎖C領域であった)を別々にpUC57simpleベクター(GenScript社製)にクローニングし、プラスミドpUC57simple-H7、pUC57simple-L8、pUC57simple-L9、及びpUC57simple-L10をそれぞれ得た。プラスミドpUC57simple-H7、pUC57simple-L8、pUC57simple-L9、及びpUC57simple-L10をそれぞれ消化した(HindIII及びEcoRI)。重鎖及び軽鎖を電気泳動で単離し、別々にpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出して293F細胞にコトランスフェクトした。細胞培養7日後に培地を高速遠心分離で分離し、上清を濃縮して、HiTrap MabSelect SuReカラム上にロードした。タンパク質を、溶出緩衝液を用いてワンステップで溶出した。標的試料を単離し、緩衝液をPBSへと交換した。
【0085】
H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、又はH7L10(hG4WT)の重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号20)
【0086】
H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、又はH7L10(hG4WT)の軽鎖定常領域のアミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号19)
【0087】
調製例2:ヒト抗鶏卵リゾチーム抗体の調製
ヒト抗鶏卵リゾチームIgG(抗HEL、又はヒトIgG;hIgGと略記する)抗体の配列を、“Affinity maturation increases the stability and plasticity of the Fv domain of anti-protein antibodies”と題したAcierno et al.による報告の研究(Acierno et al., J Mol Biol., 2007; 374(1): 130-46)における、Fab F10.6.6配列の可変領域配列から得た。調製法は次のとおりであった:
【0088】
Nanjing Genscript Biology社への委託により、ヒトIgG抗体の重鎖及び軽鎖(完全配列又は可変領域)遺伝子のアミノ酸のコドン最適化及び遺伝子合成を行った。“Guide to Molecular Cloning Experiments (Third Edition)”に紹介されている標準的な技術を参照することにより、また、標準的な分子クローニング技術、例えば、PCR、酵素消化、DNAゲル抽出、ライゲーション形質転換、コロニーPCR、又は酵素消化識別などを使用することにより、重鎖及び軽鎖遺伝子を、哺乳類発現系の抗体重鎖発現ベクター及び抗体軽鎖発現ベクターにそれぞれサブクローニングした。組換え発現ベクターの重鎖及び軽鎖遺伝子をさらにシーケンシングして分析を行った。配列が正確であることを確認した後、エンドトキシンフリーの発現プラスミドを大量又は中程度の量、調製した。組換え抗体を発現させるために、重鎖及び軽鎖発現プラスミドをHEK293細胞に対して一過性トランスフェクションした。7日間の培養後、細胞培養培地を回収し、rProtein Aカラム(GE)を用いて親和性精製行った。得られた抗体試料の品質を、SDS-PAGE及びSEC-HPLCの標準的な分析技術を用いて測定した。
【0089】
実験例1:抗LAG3抗体の抗原に対する結合活性のELISAによる分析
ELISAプレートを0.5μg/mLのヒトLAG3-mFc(Akeso Biopharma社による構築;ロット番号20200417)でコートし、4℃で一晩インキュベートした。その後、抗原でコートされたELISAプレートをPBSTで1回洗浄し、ブロッキング溶液として1% BSAを含むPBS溶液を用いて37℃にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、ELISAプレートをPBSTで3回洗浄した。PBST溶液で段階希釈した抗体(抗体の希釈勾配を表1に示す)を加えた。試験抗体を含むELISAプレートを37℃で30分間インキュベートし、その後、PBSTで3回洗浄した。洗浄後、1:5000の割合で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG FC(H+L)(Jackson社、カタログ番号109-035-098)二次抗体のワーキング溶液を加え、次いでプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで4回洗浄し、TMB(Neogen社、308177)を暗所で加えて5分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。ELISAプレートを直ちにELISAプレートリーダーに入れ、ELISAプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0090】
【0091】
図1から明らかなように、レラトリマブ及びH7L8(hG1WT)は、抗原ヒトLAG3-mFcに対して用量依存的に効果的に結合することができた。各用量に対する吸光度を表1に示す。結合した抗体の吸光度の定量分析に基づき、カーブフィッティング計算によって得られた抗体レラトリマブ(陽性対照)及びH7L8(hG1WT)の結合効率EC
50値は、それぞれ0.106nM及び0.045nMであった。
【0092】
上記実験結果は、同一の実験条件下で、H7L8(hG1WT)がヒトLAG3-mFcに効果的に結合する活性を有したこと、及びH7L8(hG1WT)のヒトLAG3-mFcへの結合活性が、陽性薬物レラトリマブの同じ標的に対する結合活性よりも強かったことを示す。
【0093】
実施例2:抗LAG3抗体の抗原に対する結合活性のELISAによる分析
ELISAプレートを2μg/mLのヒトLAG3-mFcでコートし、4℃で一晩インキュベートした。その後、抗原でコートされたELISAプレートをPBSTで1回洗浄し、ブロッキング溶液として1% BSAを含むPBS溶液を用いて37℃にて2時間ブロッキングした。ブロッキング後、ELISAプレートをPBSTで3回洗浄した。PBST溶液で段階希釈した抗体(抗体の希釈勾配を表1に示す)を加えた。試験抗体を含むELISAプレートを37℃で30分間インキュベートし、その後、PBSTで3回洗浄した。洗浄後、1:5000の割合で希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson社、カタログ番号109-035-088)二次抗体のワーキング溶液を加え、次いでプレートを37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートをPBSTで4回洗浄し、TMB(Neogen社、308177)を暗所で加えて5分間発色させた後、停止溶液を加えて発色反応を停止させた。ELISAプレートを直ちにELISAプレートリーダーに入れ、ELISAプレート中の各ウェルのOD値を450nmで読み取った。SoftMax Pro 6.2.1により、データの分析と加工を行った。
【0094】
【0095】
結果は、抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)が、抗原ヒトLAG3-mFcに対して用量依存的に効果的に結合できたこと、及びそれらが陽性対照抗体レラトリマブに匹敵する結合活性を有していたことを示す。
【0096】
実施例3:抗LAG3抗体の細胞表面上の抗原LAG3への結合活性の、フローサイトメトリーによる分析
1.抗原LAG3を発現する293T宿主細胞の構築
手順は以下の通りであった:
【0097】
抗原LAG3を発現する293T宿主細胞の構築:リポフェクタミントランスフェクションキット(Invitrogen社より購入)の使用説明書に従い、LAG3を含むベクターpLenti6.3/V5-huLAG3FL-BSD(ベクターpLenti6.3はInvitrogen社より購入)を293T細胞にトランスフェクトし、スクリーニングによってLAG3を安定に発現するクローングループ293T-LAG3を得た。
【0098】
2.293T-LAG3細胞表面上の抗原への抗体の結合
抗体標識及びフローサイトメーター検出:先の工程で得た、抗原LAG3を発現する293T-LAG3宿主細胞を、従来のパンクレアチンで消化し、各回収チューブ内の細胞数を3×105にした。LAG3抗体希釈物を、1% PBSA(1% BSAを含むPBS)を用いて、それぞれ0.0123nM、0.123nM、1.23nM、3.7nM、11.1nM、33.3nM、100nM、及び300nMの最終濃度で調製し、それぞれを、LAG3を発現する293T細胞とともに氷上で1時間インキュベートした。遠心分離を行い、1% PBSAを用いて数回の洗浄を行った後、各チューブに100μLのFITCヤギ抗ヒトIgG(Jackson社より購入;カタログ番号109-095-098)(1:500の割合で希釈)を加え、混合物を暗所にて氷上で40分間インキュベートした。1% PBSAで1回洗浄した後、200μLの1% PBSAを加えて細胞を再懸濁した。蛍光シグナルをフローサイトメーター上のFITCチャネルで検出した。
【0099】
ヒト化抗LAG3抗体の、293T-LAG3細胞への結合の結果を
図3に示す。抗LAG3抗体の、293T-LAG3細胞表面上の抗原への結合効率EC
50値を、表3に示す。
【表3】
【0100】
図3から明らかなように、抗LAG3抗体は、293T-LAG3宿主細胞表面上の標的LAG3タンパク質に効果的に結合し、抗LAG3抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の、293T-LAG3細胞表面上の抗原への結合活性は、陽性対照抗体レラトリマブの結合活性に匹敵するものであった。
【0101】
実施例4:細胞膜表面上の抗原MHC IIへの結合に関してLAG3-mFcと競合する抗LAG3抗体の競合結合活性の、競合フローサイトメトリーによる分析
Raji細胞(培地:1640+10% FBS)(Cell Resource Center, Shanghai Institutes for Biological Sciences, Chinese Academy of Sciences;カタログ番号TCHu 44)を、EPチューブに試料あたり300,000細胞で加えた。1000μLの1% PBSA(1% BSAを含むPBS)を加えた。混合物を600×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。実験設計に従い、最終濃度300nMのhIgG1(Akeso Biopharma社による構築;ロット番号20190410)を各チューブに100μL加え、混合物を氷上で1時間インキュベートした。200μLの1% PBSAをインキュベート後のRaji細胞に加え、混合物を600×gで5分間遠心分離し、その後、上清を除去した。一方、実験設計に従い、対応する希釈を行った抗体(それぞれ300nM、100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.23nM、0.123nM、及び0.0123nMの濃度)を別の新しいEPチューブに60μL/チューブで加え、また、ブランク群(PBSA+細胞)をデザインした。その後、60μLのLAG3-mFc(Akeso Biopharma社による構築;ロット番号20190508)(最終濃度3nM)を、対応する各抗体チューブに加えた。混合物をよく混ぜ、氷上で30分間プレインキュベートした。抗体とタンパク質のプレインキュベート済み混合物の100μLを、試料に加えた。混合物をよく混ぜ、暗所にて氷上で1時間インキュベートした。200μLの1% PBSAを加え、混合物を600×gで5分間遠心分離した後に上清を除去し、次いで2回洗浄を行った。100μLのAPC抗マウス抗体(Biolegend社より購入;カタログ番号405308)(1:400の割合で希釈)を加え、混合物をよく混ぜて、暗所にて氷上で40分間インキュベートした。200μLの1% PBSAを加え、混合物を600×gで5分間遠心分離した後に上清を除去した。200μLの洗浄緩衝液を各チューブに加えて細胞を再懸濁し、その後、懸濁物をフローサイトメーター上の試験用サンプルローディングチューブに移した。
【0102】
結果を
図4及び表4に示す。蛍光定量分析及びカーブフィッティングにより、抗体レラトリマブ、H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の競合結合EC
50値は、それぞれ、1.153nM、1.342nM、1.317nM、及び1.267nMと算出された。
【表4】
【0103】
結果は、抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)が、Raji宿主細胞の表面上のMHC IIへのLAG-3の結合を用量依存的に効果的にブロックできたこと、及びそれらが陽性対照抗体レラトリマブに匹敵する活性を有していたことを示す。
【0104】
実験例5:IFN-γ及びIL-2分泌の促進における抗LAG3抗体の生物学的活性の、混合リンパ球反応(MLR)による分析
1.Raji-PDL1混合リンパ球反応系での、IFN-γ分泌の促進における抗LAG3抗体の生物学的活性の分析
Raji-PDL1細胞を従来通り継代培養した。PBMCを融解して10mLの1640完全培地中で培養し、0.5μg/mLのSEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB)(Dianotech社;カタログ番号S010201)で2日間刺激した。前記Raji-PDL1細胞を25μg/mLのMMC(Stressmarq社;カタログ番号SIH-246-10MG)で処理し、5% CO2インキュベーター内で、37℃で1時間インキュベートした。SEBで2日間刺激したPBMC及びMMCで1時間処理したRaji-PDL1細胞を回収し、PBSで2回洗浄し、完全培地(すなわちRPMI1640+10% FBS)中に再懸濁して、計数した。前記PBMC及びRaji-PDL1細胞をU字型96ウェルプレート(Corning社;モデル番号3799)に10×104細胞/ウェルでそれぞれ加え、同時培養を行った。実験設計に基づき、抗体(単独又は組合せで使用の場合の各抗体の最終濃度は、300nM、30nM、及び3nMであった)を加えてインキュベーター中で3日間細胞を同時培養した。3日後、細胞を1200rpmで5分間遠心分離し、細胞培養上清を回収して、IFN-γをELISAにより分析した。
【0105】
図5に示すように、ヒトPBMCとRaji-PDL1細胞の混合培養により、PBMCにおけるIFN-γの分泌が促進され、混合培養系への抗体の添加により、IFN-γのさらなる分泌をPBMCにおいて有意に誘導することができた。IFN-γ分泌を促進する活性の程度については、抗LAG3抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)をそれぞれ14C12H1L1(hG1TM)と組合せた場合においても、陽性対照抗体レラトリマブを14C12H1L1(hG1TM)と組合せた場合においても、同程度の活性でIFN-γ分泌が促進することができた。
【0106】
2.Raji-PDL1混合リンパ球反応系での、IL-2分泌の促進における抗LAG抗体の生物学的活性の分析
Raji-PDL1細胞を従来通り継代培養した。PBMCを融解して10mLの1640完全培地中で培養し、0.5μg/mLのSEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB;Dianotech社より購入;カタログ番号S010201)で2日間刺激した。前記Raji-PDL1細胞を25μg/mLのMMC(Stressmarq社;カタログ番号SIH-246-10MG)で処理し、5% CO2インキュベーター内で、37℃で1時間インキュベートした。SEBで2日間刺激したPBMC及びMMCで1時間処理したRaji-PDL1細胞を回収し、PBSで2回洗浄し、完全培地(すなわちRPMI1640+10% FBS)中に再懸濁して、計数した。前記PBMC及びRaji-PDL1細胞をU字型96ウェルプレート(Corning社;モデル番号3799)に10×104細胞/ウェルでそれぞれ加え、同時培養を行った。実験設計に基づき、抗体(単独又は組合せで使用の場合の各抗体の最終濃度は、300nM、30nM、及び3nMであった)を加えて3日間細胞を同時培養した。3日後、細胞を1200rpmで5分間遠心分離し、細胞培養上清を回収して、IL-2をELISAにより分析した。
【0107】
図6に示すように、ヒトPBMC(健常ドナー由来)とRaji-PDL1細胞の混合培養により、PBMCにおけるIL-2の分泌がある程度促進された。また、混合培養系への抗体の添加により、IL-2のさらなる分泌をPBMCにおいて有意に誘導することができ、それは用量依存的な関係を示した。IL-2分泌を促進する活性の程度については、抗LAG3抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)をそれぞれ14C12H1L1(hG1TM)と組合せた場合においても、陽性対照抗体レラトリマブを14C12H1L1(hG1TM)と組合せた場合においても、同程度の活性でIL-2分泌が促進することができた。
【0108】
実験例6:LAG-3とMHC-IIの間の相互作用のブロックにおける、抗LAG抗体の生物学的活性の分析(レポーター遺伝子法)
Jurkat-NFAT-PD1-LAG3細胞及びRaji細胞を、レポーター遺伝子系として使用した。スーパー抗原SEEを加えた後、TCR-NFATシグナル伝達経路を活性化させて、ルシフェラーゼの発現を誘導した。Jurkat細胞上のLAG-3を、NFATシグナル伝達経路が阻害され、ルシフェラーゼの発現が下方制御されるように、Raji細胞上のMHC-IIに結合した。抗体は、LAG-3に特異的に結合することによってルシフェラーゼの発現の阻害を軽減し、上方制御をもたらした。
【0109】
Jurkat-NFAT-PD1-LAG3及びRaji細胞(Cell Resource Center, Shanghai Institutes for Biological Sciences, Chinese Academy of Sciencesより購入;カタログ番号TCHu 44)を回収し、110×gで5分間遠心分離し、次いで上清を除去した。その後、細胞を1640+10% FBS培地に再懸濁し、計数した。Jurkat-NFAT-PD1-LAG3細胞を黒底96ウェルプレート(Corning社;モデル番号3916)中に105細胞/ウェル(30μL/ウェル)で播種した。実験設計に従い、抗体(それぞれ0.3nM、3nM、及び300nMの最終濃度)を10μL/ウェル加え、混合物を5% CO2インキュベーター内で37℃で30分間プレインキュベートした。一方、SEE(ブドウ球菌エンテロトキシンE;Toxin Technology社より購入;カタログ番号ET404)(最終濃度0.05ng/mL)をRaji細胞に加え、混合物を5% CO2インキュベーター内で37℃で30分間インキュベートした。30分後、SEE処理済みRaji細胞を、上記Jurkat-NFAT-PD1-LAG3細胞を含む96ウェルプレートに2×104細胞/ウェル(40μL/ウェル)加え、各ウェルの最終容量を80μLとした。混合物をよく混ぜ、5% CO2インキュベーター内で37℃で6時間インキュベートした。インキュベート後、培養プレートを取り出し、室温に戻した。Bright-Glo(商標)Luciferase Assay System(Promega社より購入;カタログ番号E2650)を80μL/ウェル加え、混合物を暗所で2分間インキュベートした。その後、RLU値を読み取った。アイソタイプコントロールhIgG1DMが、Akeso Biopharma社によってロット番号20181107にて構築された。アイソタイプコントロールhG4WTが、Akeso Biopharma社によってロット番号20190910にて構築された。
【0110】
図7に示すように、抗LAG抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)、並びに陽性対照抗体レラトリマブは、LAG-3とMHC-IIの間の相互作用をブロックし、ルシフェラーゼの発現を上方制御することができた。また、抗LAG抗体H7L8(hG4WT)、H7L9(hG4WT)、及びH7L10(hG4WT)の活性は、いずれも対照抗体レラトリマブよりも優れたものであった。
【0111】
本発明の具体的な実施形態を詳細に記載したが、当業者は、開示されたあらゆる教示に従い、それらの詳細に対して各種改変及び置換を行いうること、そして、これらの変更が全て本発明の保護範囲内に含まれることを理解するであろう。本発明の完全な範囲が、添付の請求の範囲及びその任意の等価物によって提供される。
【配列表】
【国際調査報告】