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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】雑草種子発芽阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/00 20090101AFI20241001BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20241001BHJP
   A01N 65/34 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/36 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/16 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/12 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/10 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/38 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 63/30 20200101ALI20241001BHJP
   A01N 65/20 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/22 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/08 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/42 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/44 20090101ALI20241001BHJP
   A01N 65/48 20090101ALI20241001BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A01N65/00 H
A01P13/00
A01N65/34
A01N65/36
A01N65/16
A01N65/12
A01N65/10
A01N65/38
A01N63/30
A01N65/20
A01N65/22
A01N65/08
A01N65/42
A01N65/44
A01N65/48
A01M21/04 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519598
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022077115
(87)【国際公開番号】W WO2023049938
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/248,774
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524118948
【氏名又は名称】ベータ バイオフュエル ソリューションズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】BETA BIOFUEL SOLUTIONS,LLC
【住所又は居所原語表記】P.O.Box 400 Ringoes, New Jersey 08551 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワード,ポーラ エム.
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CC05
2B121EA25
4H011AB01
4H011BB21
4H011BB22
4H011DA02
4H011DA10
4H011DA14
4H011DA15
4H011DD04
4H011DG06
(57)【要約】
(a)植物毒性ポリフェノールを含む植物毒性有機物成分;(b)有機物、及びポリフェノール分解酵素を産生するポリフェノール分解性真菌種または他の種の胞子を含むプロバイオティック成分、ここで、該植物毒性有機物成分は、該植物毒性有機物成分および該プロバイオティック成分の総重量の約65%~約99.99%の範囲であり、該プロバイオティック成分は、該植物毒性有機物成分および該プロバイオティック成分の総重量の約0.01%~約35%の範囲である;および(c)微粒子状希釈剤材料を含む、雑草種子の発芽を阻害するための組成物。該雑草種子の発芽を阻害するための組成物の使用方法もまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、雑草種子の発芽を阻害するための組成物:
(a)植物毒性ポリフェノールを含む植物毒性有機物成分;
(b)有機物、及びポリフェノール分解酵素を産生するポリフェノール分解性真菌種または他の種の胞子を含むプロバイオティック成分;
ここで、該植物毒性有機物成分は、該植物毒性有機物成分および該プロバイオティック成分の総重量の約65%~約99.99%の範囲であり、該プロバイオティック成分は、該植物毒性有機物成分および該プロバイオティック成分の総重量の約0.01%~約35%の範囲である;および
(c)任意に、微粒子状希釈剤材料。
【請求項2】
上記植物毒性有機物成分が1種又はそれ以上の植物源から誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記ポリフェノールが根、樹皮、葉、種子、果実、枝及び茎から成る群から選ばれる1種又はそれ以上の植物源から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
上記植物毒性有機物成分が、ナッツ類、果実類、ベリー類、ローズマリー、ナス、チコリ、アーティチョーク、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、米、オート麦、コーヒー、オリーブ、赤キャベツ、タマネギ、カーリーケール、リーキ(セイヨウネギ)、チェリートマト、ブロッコリー、豆類、トマト、紅茶、緑茶、パセリ、セロリ、トウガラシ、大豆、ココア、ウコンおよびモリンガからなる群から選択される1種以上の植物源に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
上記果実類の植物源が、柑橘類、チェリー、プラム、リンゴ、ナシ、ブドウ、アプリコットおよびモモからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
上記ベリー類の植物源が、ブラックベリー、ラズベリー、ブラックカラント(カシス)、ストロベリー、ブルーベリーおよびキウイからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
上記植物毒性有機物成分が、1種以上の使用済みまたは廃棄物の植物源に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
上記植物毒性有機物成分が、上記組成物中に約75重量%から約98重量%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
上記プロバイオティック成分中の上記ポリフェノール分解性真菌種がラッカーゼ酵素を産生する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
上記真菌種が白色腐朽菌種である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
上記プロバイオティック成分が、リグノセルロース系基質上に完全に一体化された胞子から本質的になり、その両方が、該胞子が非増殖状態にあるように乾燥され、上記組成物が約5wt%未満の含水率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
上記プロバイオティック成分が、上記組成物中に約0.01重量%から約25重量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
上記プロバイオティック成分中のポリフェノール分解性真菌種がリグニンペルオキシダーゼをも産生し、そして植物毒性成分がリグノセルロースを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
上記組成物が、粉末、顆粒、懸濁液、分散液、繊維状物、それらの混合物および組み合わせからなる群から選択される形態にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を、雑草種子の発芽を阻害するのに有効な量で土壌に適用することを含む、土壌の処理方法。
【請求項16】
土壌1エーカー当たり約0.5~約10.0トンを適用する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
土壌に意図的に播種する2ヶ月より前に上記組成物を適用する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を根付き植物の植え付け土壌として使用することを含む土壌の処理方法。
【請求項19】
根付き植物の植え付けの前に、請求項1の組成物を土壌に適用することを含む、土壌の処理方法。
【請求項20】
有機物およびポリフェノール分解性真菌種または他のポリフェノール分解性菌種の胞子を含むプロバイオティクス成分、およびそれを、植物毒性ポリフェノールを含む有機物と混合するための指示書を含むキット。
【請求項21】
請求項20に記載のキットであって、微粒子状の希釈材をさらに含み、前記指示書は、前記希釈材を前記胞子および前記有機物と混合するための指示を提供する、キット。
【請求項22】
請求項21に記載のキットであって、前記プロバイオティック成分および前記微粒子状の希釈材が混合物として提供される、キット。
【請求項23】
請求項21に記載のキットであって、前記プロバイオティック成分および前記微粒子状希釈材が別個の成分として提供される、キット。
【請求項24】
請求項20に記載のキットであって、前記ポリフェノール分解性真菌種がラッカーゼ酵素を産生する、キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月27日出願の米国仮特許出願番号63/248,774に対する35 U.S.C. §119(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
この特許明細書は、安全かつ効果的な雑草種子の発芽阻害剤の分野に関し、特に、雑草の成長を制御すると同時に持続的な栄養を提供することができる天然の植物毒性で且つ体に良いバクテリア(プロバイオティック)材料を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
雑草の蔓延はしばしば、農業における作物収量の低下、低い土地の効率的利用、および作物品質の低下をもたらす。農作物において、雑草植物によって引き起こされる特定の問題は、米国だけで数十億ドルの年間収量損失を構成している。その一例として、ゴルフコース、公園及び運動場などの私的および商業的な造園事業を含む緑化産業は、過去10年間に著しい拡大を経験している。芝草の設定では、従来の雑草の定義は、美観、安定能力、または芝草の全体的な有用性に対する破壊的影響のため、しばしば好ましくないあらゆる植物に拡大される。均一性は芝草の品質の重要な要素の一つである。葉の幅及び/又は形、生え方、又は色などが異なれば、芝生の均一性は実質的に破壊するであろう。美観や均一性を損なうことに加えて、雑草は望ましい芝草種と光、土壌水分、栄養分及び二酸化炭素について競合する。
【0004】
雑草の管理は、一般に、珠芽分散の防止を含む方法と、機械的および化学的制御を含むまん延の制限を含む方法に限定される。まん延防止につながる衛生的実施としては、雑草を含まない芝生、土及び砂の使用、珠芽を除去するための器具の洗浄、及び雑草の種子の飛散を防止するための雑草に侵された隣接圃場の草刈りなどがある。適切な管理方法を用いれば、雑草の侵入は最小限に抑えられる。芝草の環境では、適切な芝種の使用、刈り高さと頻度、土壌の肥沃度とpHレベル、灌漑の頻度と強度、病害、昆虫及び線虫の制御、及び圧縮された場所の通気は、密で丈夫な芝土を生じることができる。
【0005】
手または鋤による雑草の除去を含む機械的雑草防除は、比較的小さな面積の広葉雑草に効果的に使用できるが、労力のかかる防除方法である。酢酸又はクローブ油をベースとした製品などの有機製品は、作物に大きな障害をもたらす。コーングルテンミールは、初期の発芽前雑草を抑制するが、多くの研究で一貫性のない制御であることが示されている。
【0006】
雑草を効果的に抑制し、植物の取り込みに利用しやすい栄養をもたらし、殺虫剤、除草剤およびその他の化学物質の散布を低減しそして排除さえもして、土壌媒介剤として全体的に土壌状態の良好な再特性付けを促進する、生物学的雑草種子発芽抑制剤に対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
種々の実施形態は、土壌を処理するための多面的な利点を有する組成物を提供する。潜在的な利点としては、効果的な雑草防除、低コストのリサイクルまたは廃棄物材料からの植物摂取用の濃縮栄養、植物生産の増加、および化学的および生物学的汚染および害虫負担の減少が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本特許明細書の一態様は、雑草種子の発芽を阻害するための組成物を開示する。この組成物は以下を含む:
(a)植物毒性ポリフェノールを含む植物毒性有機物成分;
(b)ポリフェノール分解酵素を産生するポリフェノール分解性真菌種または他の種の胞子(spawn)を含むプロバイオティック成分;
ここで、該植物毒性有機物成分は、該植物毒性有機物成分および該プロバイオティック成分の総重量の約65%~約99.99%の範囲であり、該プロバイオティック成分は、該植物毒性有機物成分および該プロバイオティック成分の総重量の約0.01%~約35%の範囲である;および
(c)任意に、微粒子状希釈剤材料。
【0009】
上記組成物の上記成分は、いずれも生態系に適合し、共に作用して植物毒性ポリフェノールを放出および分解して、次に雑草種子の発芽を阻害し、そして典型的な土壌環境においてポリフェノール含有有機物が自然に分解してポリフェノールを放出および分解する場合よりも速い速度でそのようにする。上記植物毒性有機物成分は、植物または人間の食品に由来するもので、クリアベッド(clear beds)に先駆ける。それは一年生雑草を有機的に減少させ、ほとんどのC3およびC4一年生雑草の種子の発芽を抑制する。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記植物毒性有機物ポリフェノール成分は、1つ以上の植物源に由来する。該植物毒性ポリフェノール成分は、根、樹皮、葉、茎、種子、果実及び枝などの植物の様々な部分に存在し得る。ポリフェノール源の非限定的な例としては、ブドウ類、茶、ココア、オリーブ類、ナッツ類、リンゴ類、柑橘類(シトロン、レモン、ライム、オレンジ、ベルガモット、およびグレープフルーツ)、ローズマリー、ベリー類、および大豆が挙げられる。これらの材料の活性ポリフェノール含有量は種類によって異なり得、該含有量は、例えば、クローブでは100g当たり15000mgから、ロゼワインでは100ml当たり10mgまで様々である。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記植物毒性有機物成分は、1つ以上の使用済み、廃棄されたまたはリサイクルされた植物源に由来する。
【0012】
上記植物毒性有機物ポリフェノール成分を上記プロバイオティック成分と組み合わせることにより、該プロバイオティック成分中の生物の活性は、該ポリフェノール源中の化学結合を切断し、合理的に予測可能なパターンで所望の植物毒を放出することができる。一実施形態によれば、該プロバイオティック成分は、リグニンおよびポリフェノールをそれぞれ分解する別々の酵素を産生する。該植物毒性ポリフェノール成分中のリグニンに富む物質をその場で分解することにより、植物の取り込みに利用可能な栄養価の高い化合物が提供される。いくつかの実施形態において、該プロバイオティック成分は、ポリフェノールを分解する酵素ラッカーゼを産生する真菌種の胞子を含む。いくつかの実施形態において、上記プロバイオティック成分中のラッカーゼ産生真菌種は、リグニンペルオキシダーゼなどのリグニン分解酵素をも産生する。
【0013】
いくつかの実施形態において、ラッカーゼ産生真菌種の胞子を含む市販の製品を上記プロバイオティック成分として使用することができ、例えば、ニュージャージー州、イーストアムウェルのハイグラウンド(High Ground)社から調達することができるPROTERRA(登録商標)が使用できる。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記胞子は白色腐朽真菌種を含む。
【0015】
別の実施形態では、上記プロバイオティック成分、微粒子状希釈剤材料および両者を植物毒性ポリフェノールを含む有機物と混合するための指示書を含むキットが提供される。この実施形態は、本質的に、ブドウ園、果樹園、オリーブ園などの適用現場で廃棄物として利用可能な植物毒性ポリフェノールを含有するリグニンに富む有機物の源に添加するために処方された、真菌の胞子(またはポリフェノールリグニン分解酵素を産生する他の種)の濃縮マスターバッチである。いくつかの実施形態において、上記プロバイオティック成分は、ラッカーゼ産生真菌種の胞子を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明による胞子を含有するプロバイオティック成分は、約5wt%未満の含水量を有する製品を提供するために乾燥され、その際、該胞子は非植物状態である。しかしながら、いくつかの実施形態では、該胞子は植物状態である。少なくとも1つの実施形態において、有効量の本発明組成物を土壌に適用することによる土壌の処理方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本特許明細書の組成物の種々の実施形態は、ポリフェノール分解性真菌種の胞子を含むプロバイオティック組成物と、雑草種子の発芽を阻害するための植物毒性ポリフェノールを含む有機物とを組み合わせる。ポリフェノール分解性真菌種による植物毒性ポリフェノール含有有機物の消化は、そのような物質が自然の腐敗プロセスによって通常放出及び分解されるよりも速い速度および大きな濃度で植物毒性ポリフェノールを放出及び分解し、それによって雑草種子の発芽を阻害する。
【0018】
以下の文章は、特定の微生物および植物毒性ポリフェノール含有物質を参照または例示する場合があるが、本発明の範囲をそのような特定の参照または例示に限定することを意図するものではない。例えば、他のポリフェノール分解酵素産生種を真菌の胞子に代えてもよい。微生物および真菌類の胞子の全部または一部を、単離されたラッカーゼ酵素に置き換えてもよい。得られた生成物は、植物毒性ポリフェノールを含む有機物を消化して植物毒性ポリフェノールを放出及び分解し、そして雑草種子の発芽を阻害することにより、同じ目的を達成するであろう。
【0019】
微生物の供給源や植物毒性ポリフェノール含有有機物の特性など、実用的および経済的な観点から、当業者によって種々の改変がなされ得る。特許請求の範囲の主題をより明確かつ簡潔に記載するために、以下の定義は、本明細書で使用される用語の意味についての指針を提供することを意図する。
【0020】
定義
本明細書で使用される冠詞「a」および「an」は、特に断らない限り、「1つ以上」または「少なくとも1つ」を意味する。すなわち、不定冠詞「a」または「an」による本発明の任意の要素への言及は、その要素が1つより多く存在する可能性を排除するものではない。
【0021】
「約」とは、参照した数値表示のプラス又はマイナス10%を意味する。
【0022】
本明細書で使用される「分解」又は「分解する」は、白色腐朽真菌類及び他の微生物種のような微生物の助けによるリグノセルロース含有材料の破壊を意味する。
【0023】
本明細書で使用する「プロバイオティック添加剤」とは、単一種の真菌の胞子または種の組み合わせをいう。該プロバイオティック添加剤は、白色真菌種を含み得る。
【0024】
「廃棄」植物源は、そうでなければ堆肥化されるか、埋立地に送られるか、または他の廃棄物処分手段に送られる有機物またはバイオマスとして定義される。
【0025】
特に明記しない限り、全てのパーセントは重量パーセントである。
【0026】
本明細書で使用する「ポリフェノール」または「ポリフェノール類」は、すべての高等植物の組織に存在する天然物として存在する、複数のフェノール構造単位を有する天然化合物を云う。フェノール構造の数および特性は、このクラスの特定のメンバーのユニークな物理的、化学的、および生物学的(例えば、代謝、毒性、および治療)特性を強調する。本発明の組成物は、植物毒性ポリフェノールを含む有機物を使用する。植物毒性ポリフェノールを含む植物の非限定的な例としては、オリーブ、ブドウ、ココアなどが挙げられる。
【0027】
雑草種子の発芽を阻害するための組成物
本特許明細書の一側面は、雑草種子の発芽を阻害するための組成物を提供する。該組成物は、(a)植物毒性ポリフェノールを含有する有機物;(b)ポリフェノール分解酵素を産生するポリフェノール分解真菌種または他の種の胞子を含有するプロバイオティック成分を含み、ここで、該植物毒性有機物成分は、該植物毒性有機物成分および該プロバイオティック成分の総重量中に約65%~約99.99%、約75%~約99%、約80%~約98%の範囲であり、そして該プロバイオティック成分は、該植物毒性有機物成分および該プロバイオティック成分の総重量中に約0.01%~約35%の範囲であり;そして任意に、(c)微粒子状希釈剤材料を含む。該組成物は、雑草種子の発芽を効果的に阻害する。
【0028】
上記植物毒性有機物成分は、種子発芽阻害のためにポリフェノールの供給源を提供し、一方、上記プロバイオティック成分の量は、阻害効果の速度および持続時間を制御する。いくつかの実施形態では、該プロバイオティック成分の量は、上記組成物中の該植物毒性有機物成分と該プロバイオティック成分の合計重量中に重量で、約0.01%~約35%、約0.01%~約25%、約0.01%~約20%、約0.01%~約15%、約0.05%~約10%、約0.1%~約10%、約0.01%~約5%、約0.1%~約3%、約0.1%~約2.5%、約0.1%~約2%、約0.1%~約1%、約0.2%~約1%、約0.2%~約0.8%、約0.3%~約0.7%、または約0.4%~約0.6%である。
【0029】
上記組成物中の3成分の量は、対象とする土壌の場所、個々の成分の供給源、所望の有効期間、および各成分中の有効成分の濃度などの関連要因に応じて調整することができる。上記植物毒性有機物成分の濃度を99%まで高くすると、土壌施用効果の持続期間を延ばすのに役立つ。該植物毒性成分に対する該プロバイオティック成分の量は、ポリフェノール成分がどの程度急速に枯渇するかを決定し、その後、土壌に慎重に播種することができる。
【0030】
上記植物毒性成分および上記プロバイオティック成分の重量パーセントが決定されると、上記微粒子状希釈剤の残りのパーセントを容易に計算することができる。ポリフェノール含有有機物と上記プロバイオティクスとの組み合わせは、活性生成物の均一な分散を促進するために、バイオマス希釈剤とさらに組み合わされる。
【0031】
1つまたは複数の成分または組成物全体は、貯蔵寿命が延長された乾燥形態とすることができ、この場合、上記胞子はリグノセルロース系基質上に完全に一体化され、両者は乾燥されて、該胞子が非成長(non-vegetative)状態になり、該組成物は約5wt%未満の含水率を有する。あるいは、成長(vegetative)状態の胞子を使用することもできる。成長状態のプロバイオティック生物は、乾燥重量計算により添加される。
【0032】
上記微粒子状希釈剤材料はバイオマスであり、これは有機材料、または土壌材料、または土壌様材料であり得る。該土壌様材料は、地面から直接供給されるのではなく、別々の成分から混合されるものとして定義される。いくつかの実施形態において、該土壌または該土壌様材料の粒径は、No.10スクリーンから1/4インチの範囲であり得る。 いくつかの実施形態において、該希釈剤は、チップまたはペレット化された紙またはハンマーで粉砕された紙を含む。1つまたは複数の植物ベースの材料も該希釈剤に含めることができる。
【0033】
上記植物毒性有機物成分を含む組成物は、床基材または化学物質を含まないマルチング材に配合して、時間放出型雑草防止システムとすることができる。該植物毒性成分は天然素材または天然製品に由来するため、望ましい植物体の生育を促進する。鉢植えや根付きの植物体には影響がなく、除草剤の使用を大幅に削減または排除することができる。
【0034】
上記植物毒性有機物成分はポリフェノールを含み、植物源に由来する。植物源の非限定的な例としては、藻類、ココア、オリーブ、ナッツ、緑茶、紅茶、コーヒー、および他の果物および野菜を含む。ポリフェノール含有果物及び野菜の例としては、ブラックベリー、ラズベリー、クロスグリ、ストロベリー、ブルーベリー、キウイ、チェリー、プラム、ナスビ、ナシ、チコリ、アーティチョーク、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、米、オート麦、シードル、プラム、レッドキャベツ、タマネギ、カーリーケール、セイヨウネギ、チェリートマト、ブロッコリー、アプリコット、豆、トマト、パセリ、セロリ、トウガラシ、オレンジ、レモン、桃、モリンガ、プラムが含まれる。上記のポリフェノール源の2種類以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記ポリフェノールは、根、樹皮、葉、または果実に存在し得る。植物源は、適切な量のポリフェノールを含む限り、どのような形態であってもよい。いくつかの実施形態では、植物源は、茶またはコーヒーの残渣およびオリーブ油の搾りかすなどの廃棄物または使用済み食品である。ポリフェノールは、様々な構造または形態で使用することができる。また、例えば、カルボン酸、アルキル、ハロゲン、エステル、アミド、およびそれらの任意の組み合わせを含む置換基を有していてもよい。ポリフェノールの非限定的な例としては、没食子酸、カテキン、エピカテキン、p-クマル酸、フェルラ酸、フロリジン、アルブチン、クロロゲン酸及びルチンが挙げられる。
【0036】
上記植物毒性成分中のポリフェノールの量は、特定の植物源によって異なり得る。いくつかの実施形態において、該ポリフェノールは、植物毒性ポリフェノールを含む有機物の総重量の約0.5%~約50%、約0.5%~約30%、約0.5%~約20%、約0.5%~約10%、約0.5%~約5%、約1%~約20%、約1%~約10%、または約2%~約5%の範囲である。「植物毒性有機物成分」とは、ポリフェノールを含む植物材料と定義される。したがって、ポリフェノールの重量による量は植物毒性物質の量よりも少なく、その差は植物毒性有機物中のポリフェノール濃度に依存するであろう。
【0037】
ある実施形態において、上記プロバイオティック成分のポリフェノール分解真菌種は、バシディオなどのラッカーゼ産生担子菌である。真菌種がリグニン分解ペルオキシダーゼも産生するプロバイオティック成分も提供される。単離されたラッカーゼは、真菌の胞子や他の種を補足したり、その代わりとなることができ、"プロバイオティック成分"の定義に含まれると考えられる。単離されたペルオキシダーゼもまた、本発明の組成物に使用することができる。
【0038】
上記組成物は、種々の形態で提供することができる。 非限定的な例としては、粉末、顆粒、懸濁液、分散液、繊維状物、水性希釈液、混合物およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
一実施形態によれば、上記プロバイオティック成分、上記微粒子状希釈剤材料、および両者を、植物毒性ポリフェノールを含む有機物と混合する指示書を含むキットが提供される。この実施形態は、本質的に、植物毒性ポリフェノールを含有する有機物源、好ましくは、ブドウ園、果樹園、オリーブ園などの適用部位で廃棄物として入手可能な有機物源、に添加するために処方された、真菌の胞子または他のラッカーゼ産生種の濃縮マスターバッチである。本発明によるキットは、プロバイオティック成分1kgに対して微粒子状希釈剤9~99kgを提供する。
【0040】
土壌の処理方法
別の実施態様において、上記の組成物を使用して雑草種子の発芽を阻害する方法が提供される。本発明による方法は、典型的には、本発明組成物を土壌に1エーカー当たり約0.5トンから約10トンの間で適用する。一実施形態では、土壌に1エーカー当たり約0.5トンから約5トンの本発明組成物が適用される。一実施形態では、土壌に1エーカー当たり約1トンの本発明組成物が土壌に適用される。別の実施形態では、土壌に1エーカー当たり約1トンから約3トンの本発明組成物が適用される。さらに別の実施形態では、土壌に1エーカー当たり約2トンから約3トンの本発明組成物が適用される。本発明組成物は、土壌の上部1/2インチから6インチによくブレンドさせるか、または土壌の約2インチから4インチに追肥して、環境的に堆積した種子物質が確実に適度に被覆されるようにし、その後、土壌に深く散水して、効果を現場に拡大する。
【0041】
別の実施形態において、上記組成物は、根付き植物用のマルチまたは植え付け土壌として担体に完全に組み込むことができる。この実施形態の1つの態様において、組成物は、植物プラグ、根付き植物または鉢植え植物のための植え付け土壌として、さらなる土壌混和物なしに使用することができ、これは、例えば、造園または畑作農業において使用することができる。あるいは、植物プラグ、根付き植物または鉢植え植物を植える直前または直後に土壌に適用することもできる。
【0042】
タイミング及び頻度は、上記組成物の特定の成分、すなわち植物毒性成分の濃度、及び適用対象分野に応じて調整することができる。いくつかの実施形態において、該組成物は、土壌に播種する約1ヶ月より前、約2ヶ月より前、約3ヶ月より前に適用される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、その場所に意図的に播種する行為の1ヶ月前または2ヶ月前に、1エーカー当たり約1、1.5または2トンの割合で適用される。本発明の組成物の適用と意図的な播種との間の時間量は、意図的に植えられた種子の発芽が阻害されないように選択されるべきである。
【0043】
土壌に適用する上記組成物の手段及び量は、土壌の前提条件を含む要因に依存し、当業者であれば過度の実験を行うことなく決定することができる。「該組成物を適用する」ことを例示するための非限定的な実施形態において、該組成物は、土壌に接触させる前に、表面整備(dress)として散布又は噴霧するか、土壌と混合するか、又は他の物質と組み合わすことができる。
【0044】
上記は、単に本開示の原理を例示するものであり、限定することを意図するものではなく、単に添付の特許請求の範囲のための多くの可能な実施形態のいくつかを示すものである。当業者であれば、本明細書に記載された実施形態に従うことなく、以下の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく行われ得る様々な修正および変更を容易に認識するであろう。

【国際調査報告】