(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】医療用注入装置及びこの注入装置を組み立てる方法
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20241001BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61M39/10 120
G06K19/077 220
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519828
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2022077287
(87)【国際公開番号】W WO2023052585
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ウーヴラード
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド ライプブラント
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066JJ03
4C066KK19
(57)【要約】
この注入装置(1)は、長手方向軸(A)に沿って延びていて医療用製品を含有するためのリザーバを画定する管状バレル(21)を設けた医療用容器(20)を備え、前記管状バレル(21)は、末端肩部(22)と基端端部(23)とを有する。末端先端(10)は、前記管状バレル(21)の末端肩部(22)から長手方向に突出し、末端先端(10)は、リザーバと流体連通する軸方向通路(11)を画定して、医療用製品が前記末端先端(10)を通って排出されるようになっている。アダプタ(30)は末端先端(10)に固定され、アダプタ(30)は末端先端(10)へのコネクタの接続を可能にするように構成される。支持リング(40)は、注入装置(1)の個体識別を可能にするように構成された無線周波数識別RFIDタグ(60)を含む。RFIDタグ(60)は、RFIDチップ(61)及びRFIDアンテナ(62)を含み、前記支持リング(40)は、支持リング(40)を末端先端(10)の周りへの載置を可能にする開口部(41)を有して、RFIDタグ(60)がアダプタ(30)の基端端部(34)とバレル(21)の末端肩部(22)との間に配置されるようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用容器(20)を備える注入装置(1)であって、
長手方向軸(A)に沿って延びていて医療用製品を含有するためのリザーバを画定する管状バレル(21)であって、前記管状バレル(21)が末端肩部(22)及び基端端部(23)を有する、管状バレル(21)、
前記管状バレル(21)の前記末端肩部(22)から長手方向に突出する末端先端(10)であって、前記末端先端(10)が前記リザーバと流体連通する軸方向通路(11)を画定して、前記医療用製品が前記末端先端(10)を通って排出されるようになっている、末端先端(10)、
前記末端先端(10)に固定されたアダプタ(30)であって、前記アダプタ(30)は、前記末端先端(10)へのコネクタの接続を可能にするように構成されている、アダプタ(30)、及び
前記注入装置(1)の個体識別を可能にするように構成された無線周波数識別RFIDタグ(60)を含む支持リング(40)であって、前記RFIDタグ(60)が、RFIDチップ(61)及びRFIDアンテナ(62)を含み、前記支持リング(40)が、前記末端先端(10)の周りへの前記支持リング(40)の載置を可能にする開口部(41)を有して、前記RFIDタグ(60)が前記アダプタ(30)の基端端部(34)と前記バレル(21)の前記末端肩部(22)との間に配置されている、支持リング(40)、
を設けた、注入装置(1)。
【請求項2】
前記支持リング開口部(41)が、前記末端先端(10)の外径よりも小さい内径(d)を有する、請求項1に記載の注入装置(1)。
【請求項3】
前記支持リング(40)が、前記アダプタ(30)の外径と等しいまたはそれより小さい外径(D)を有する、請求項1又は2に記載の注入装置(1)。
【請求項4】
前記支持リング(40)が、前記アダプタ(30)の前記基端端部(34)に対して当接するように構成された末端当接面(45)を画定している、請求項1~3のいずれかに記載の注入装置(1)。
【請求項5】
前記支持リング(40)が、平坦な末端面(45)と平坦な反対側の基端面(46)とを有し、前記長手方向軸(A)に直交する平面内に延びている、請求項1~4のいずれかに記載の注入装置(1)。
【請求項6】
前記支持リング(40)が、前記末端先端(10)の最も基端の部分(15)に固定されている、請求項1~5のいずれかに記載の注入装置(1)。
【請求項7】
前記支持リング(40)が、その基端面(46)上に、前記開口部(41)の周りに延びるベベル(49)を有する、請求項1~6のいずれかに記載の注入装置(1)。
【請求項8】
前記支持リング(40)が、前記開口部(41)を画定して前記支持リング(40)を前記末端先端(10)に固定するように構成された内向き半径方向脚部(47)を有する、請求項1~7のいずれかに記載の注入装置(1)。
【請求項9】
前記RFIDアンテナ(62)及び前記RFIDチップ(61)が、前記支持リング(40)に埋め込まれ、好ましくはオーバーモールドされている、請求項1~8のいずれかに記載の注入装置(1)。
【請求項10】
前記支持リング(40)が、プリント基板PCB、であり、前記RFIDアンテナ(62)が、前記PCB上に、好ましくはその末端面(45)上に直接印刷され、前記RFIDチップ(61)が、前記RFIDアンテナ(62)に溶接されている、請求項1~8のいずれかに記載の注入装置(1)。
【請求項11】
前記RFIDタグ(60)が、低周波無線識別LF-RFIDタグ、高周波無線識別HF-RFIDタグ、又は好ましくは超高周波無線識別UHF-RFIDタグである、請求項1~10のいずれかに記載の注入装置(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の注入装置(1)を組み立てるための方法であって、前記方法は、前記アダプタ(30)を前記末端先端(10)上に載置する前に、前記支持リング(40)を前記末端先端(10)上に載置して、前記RFIDタグ(60)を含む前記支持リング(40)が前記アダプタ(30)の基端端部(34)と前記バレル(21)の末端端部(22)との間に配置されるようになっているステップを含む、方法。
【請求項13】
前記方法が、
(i)前記支持リング(40)の前記開口部(41)を前記末端先端(10)上に挿入するステップ、
(ii)前記支持リング(40)の内径(d)が前記末端先端(10)の外径と干渉するまで、前記支持リング(40)を前記末端先端(10)に対して基端方向に移動させるステップ、
(iii)前記支持リング(40)を前記末端先端(10)の溝(12)内に移動させるために、前記支持リング(40)を基端方向に押すステップ、
(iv)前記アダプタ(30)を前記末端先端(10)に固定するステップ、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(ii)における前記末端先端(10)に対する前記支持リング(40)の前記基端移動が、重力によって達成される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(iii)が、前記アダプタ(30)が前記末端先端(10)に対してその最終位置に達するまで、前記アダプタ(30)の前記基端端部(34)が前記支持リング(40)に対して当接することによって前記支持リング(40)が基端方向に更に押されることを含む、請求項13~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用注入装置、及びこの注入装置を組み立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この出願において、部品の又は装置の末端端部は、使用者の手から最も遠い端部を意味し、基端端部は、使用者の手に最も近い端部を意味すると理解される。同様に、この出願において、「末端方向」は、本発明の医療用容器に関して、注入の方向を意味すると理解され、「基端方向」は、前記注入の方向とは反対の方向、すなわち注入操作のために容器を保持する使用者の手に向かう方向を意味すると理解される。
【0003】
プレフィラブル又はプレフィルド注射器などの医療用注入装置は、通常、医療用製品の容器を形成する中空の本体又はバレルを備える。この管状の本体は、バレルの内側に配置されたストッパを押すためのプランジャロッドを設けた開口された基端端部、使用者が彼又は彼女の指を置くことを可能にするための前記開口された基端端部の周りのフランジ、及び医療用製品が容器から排出される軸方向通路を画定する長手方向先端の形態の末端端部を備える。しかし、この長手方向先端は、それ自体で非経口投与を可能にせず、ステイクド針(staked needle)か、注射器の針ハブ又は静脈内(IV)ラインなどのコネクタへの接続を可能にするアダプタのいずれかを備えなければならない。基本的に、アダプタは、接着、ねじ込み、スナップ嵌め又は摩擦力によって、注射器の長手方向先端の周りに固定されることがある。コネクタはその後、例えばねじ込みによってアダプタに載置される。
【0004】
製造工程から最終的なラベリング、最終的な使用又は当該注入装置の廃棄まで、注入装置の個々のトレーサビリティに対する必要性が高まっている。
【0005】
例えば、国際公開第2017/157784号明細書から、印刷された機械読み取り可能な固有の識別コードのシーケンスによって囲まれたシリンダ状の横方向表面を有するレセプタクルが知られている。これらの印刷された固有の識別コードは、サプライチェーンに沿った各レセプタクルの追跡及びトレースを可能にする。しかし、これらの固有の識別子コードはレセプタクルの外側に印刷されていて、例えばレセプタクルの取り扱い中又は使用中に取り除かれ又は損傷されることがあるようになっている。更に、固有の識別コードがレセプタクルの一部を覆って、それらが顧客の目視検査プロセスに影響を与えることがあるようになっている。
【0006】
米国特許国際公開第2021/0236736号明細書は、注射器用のRFIDを有する改ざん防止アセンブリを開示している。国際公開第2020/260298号明細書は、医療用容器のアダプタと、当該アダプタに少なくとも部分的に埋め込まれたRFIDタグを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この文脈において、本発明の目的は、目視検査に与える影響が低い又は全くなく、取り外され又は損傷されるリスクが殆どない又は全くなく、及び製造工程への限定的な影響を有する、医療用注入装置の個別識別を可能にすることにより、上述の欠点を緩和する医療用注入装置を提供することである。
【0008】
本発明の一態様は、医療用容器を備えた注入装置であって、
長手方向軸Aに沿って延びていて医療用製品を含有するためのリザーバを画定する管状バレルであって、前記管状バレルが末端肩部及び基端端部を有する、管状バレル、
前記管状バレルの末端肩部から長手方向に突出する末端先端であって、末端先端がリザーバと流体連通する軸方向通路を画定して医療用製品が前記末端先端を通って排出されるようになっている、末端先端、
末端先端に固定されたアダプタであって、アダプタが末端先端へのコネクタの接続を可能にするように構成されている、アダプタ、及び
注入装置の個体識別を可能にするように構成された無線周波数識別、RFID、タグを含む支持リングであって、RFIDタグはRFIDチップ及びRFIDアンテナを含み、前記支持リングは、末端先端の周りへの支持リングの取り付けを可能にする開口部を有して、RFIDタグがアダプタの基端端部とバレルの末端肩部との間に配置されるようになっている、支持リング、
を備える、注入装置である。
【0009】
本発明の医療用注入装置は従って、RFIDタグが管状バレル及びその中に含有された医療用製品の検査を妨げないため、目視検査に影響を与えることなく、医療用容器の識別及び追跡を可能にする。
【0010】
RFIDタグはアダプタと管状バレルの間でブロックされるため、RFIDタグの除去や損傷のリスクは除去又は制限される。タグが医療用装置の取り外し可能な部分に埋め込まれている解決策、RFIDタグが注射器の先端キャップなど使用者が把持する部分に配置されている解決策、又はRFIDタグが接着剤を介して医療装置に取り付けられている解決策とは異なり、本発明の注入装置のRFIDタグは、薬剤が投与されている間及び投与された後も装置に取り付けられたままである。
【0011】
有利には、支持リングの開口部は、当該支持リングの中心に配置された貫通開口部である。
【0012】
RFIDタグを含む支持リングは支持リングの中央開口部を通った末端先端の挿入により末端先端に容易に載置されてもよいため、製造工程への影響も限定的である。RFIDタグをプラスチック部品にオーバーモールドする解決策と比較して、本発明による医療用注入装置は、金型を変更する必要なく、既存の製造方法(すなわちPRTCアセンブリ)の利用を可能にする。
【0013】
支持リングは好ましくはディスク形状のリングであり、開口部は好ましくは円形の貫通開口部である。
【0014】
一実施形態では、支持リングは、末端先端の外径よりも小さい内径を有する。
【0015】
支持リングの内径は、支持リングの開口部の最大径を指してもよい。
【0016】
従って、RFIDタグは干渉嵌めによって末端先端に固定される。
【0017】
一実施形態では、支持リングは、アダプタ、及び/又は注入装置が末端先端の軸方向通路をシールするためにアダプタに接続された先端キャップを含む場合には先端キャップ、の外径と等しいかそれよりも小さい外径を有する。
【0018】
これは、注入装置の半径方向の寸法を制限することを可能にして、パッケージの変更が要求されないようになっている。これはまた、RFIDタグがアダプタから放射方向に突出しないため、RFIDタグが損傷するリスクを制限する。
【0019】
一実施形態では、支持リングは、アダプタの基端端部に当接するように構成された末端当接面を画定する。
【0020】
好ましくは、末端当接面は平坦である。
【0021】
これは、アダプタの基端端部が支持リングに対して当接することにより、RFIDタグを基端方向に押す際の荷重分散を許容する。従って、RFIDタグが変形して損傷するリスクは限定的である。
【0022】
一実施形態では、注入装置に取り付けられたとき、支持リングは、平坦な末端面及び平坦な反対側の基端面を有し、長手方向軸Aに直交する平面内に延びる。
【0023】
一実施形態では、支持リングは、末端先端の最も基端の部分に固定される。
【0024】
末端先端の最も基端の部分は、末端先端をバレルの末端肩部に接続する。この最も基端の部分は、基端に拡がる直径を有してもよい。最も基端の部分の外表面は凹形状を有する。
【0025】
一実施形態では、支持リングは、その基端面に、開口部の周りに延びるベベルを有する。
【0026】
これは、RFIDタグをバレルの末端肩部にできるだけ近くに位置付けることを許容して、支持リングをその上に載置するために末端先端の長さを長くする必要がないようになっている。
【0027】
支持リングのベベルと末端先端の最も基端の部分は、相補的な形状を有していてもよい。
【0028】
一実施形態では、支持リングは、開口部を画定して支持リングを末端先端に固定するように構成された内向きの放射方向脚部を有する。
【0029】
脚部は、注入装置の組み立て中にRFIDタグが変形して損傷するリスクを限定した状態で、末端先端の周りにRFIDタグを載置することを可能にする。脚部はRFIDタグの内部応力を制限する。脚部がないと、支持リングのより多くの材料が変形しなければならず、これは組み立て中に前記支持リングにかかるより多くの軸方向の力につながり、その結果、RFIDタグのより大きな内部応力となり、こうしてタグが損傷する危険性がある。
【0030】
好ましくは、末端先端は、アダプタの内リングを受容するように構成された溝を備え、前記溝の長さは、1mm~2mmで構成され、好ましくは約1.5mmである。好ましくは、注入装置に載置されたとき、RFIDタグを備える支持リングも末端先端の溝内に受容される。この溝は、支持リングを安定させるようにシリンダ状であってもよい。すなわち、支持リングを片側又は他方に移動させる傾向のある斜面がない。更に、末端先端の溝に支持リングを有することは、支持リングが適切に位置付けられていることを明確に示すことを提供する。組み立て中、この表示は、支持リングを下向きに(基端方向に)押す軸方向の力の低下及び場合によっては「カチッ」といった音となってもよい。
【0031】
一実施形態では、RFIDアンテナとRFIDチップは、支持リングに埋め込まれ、好ましくはオーバーモールドされている。
【0032】
RFIDアンテナとチップはしたがって外側の環境から保護される。
【0033】
一実施形態では、支持リングは印刷回路基板、PCBであり、RFIDアンテナは前記PCBに、好ましくはその末端面に直接印刷され、RFIDチップはRFIDアンテナに溶接される。
【0034】
これは、支持リングの軸方向寸法を制限し、従って末端先端の長さを制限し、それによりこの末端先端の破損のリスクを制限する。
【0035】
好ましくは、アンテナは単一ループ、折り返しループ又はカットループの形態である。
【0036】
単一ループにより、アンテナがチップに接続されるその両端を有し、閉じたループを形成することが意味される。折り返しループにより、アンテナが2つの対称的な枝部を含み、それぞれがチップに接続された一端と、各枝部がこれら2つの端の間に少なくとも1つの折り返しを形成するように配置された自由端を有することが意味される。カットループは、アンテナが、チップに接続された一端と自由端とを有する2つの対称的な枝部を有し、これらの2つの端の間に折り返しを形成しないことが意味される。折り返しループとカットループの構成では、アンテナの2つの枝部は、長手方向軸Aを含む長手平面に関して支持リングの異なる半分に延びてもよい。
【0037】
一実施形態では、RFIDタグは、低周波無線識別、LF-RFID、タグ、高周波無線識別、HF-RFID、タグ、又は好ましくは超高周波無線識別、UHF-RFID、タグである。
【0038】
UHF-RFIDタグは、読み取り範囲を拡大し、したがって注入装置の識別を容易にすることを可能にする。
【0039】
本発明の別の態様は、上記の注入装置を組み立てる方法であって、前記方法は、アダプタを前記末端先端上に載置する前に、支持リングを末端先端に載置するステップを含み、RFIDタグを含む支持リングが、アダプタの基端端部とバレルの末端端部との間に配置されるようになっている。
【0040】
一実施形態では、方法は、
(i)支持リングの開口部を末端先端上に挿入するステップ、
(ii)支持リングの内径が末端先端の外径と干渉するまで、支持リングを末端先端に対して基端方向に移動させるステップ、
(iii)支持リングを末端先端の溝内に移動させるために支持リングを基端方向に押すステップ、
(iv)アダプタを末端先端に固定するステップ、
を含む。
【0041】
一実施形態では、ステップ(ii)における末端先端に対する支持リングの基端移動は、重力によって達成される。
【0042】
すなわち、末端先端は垂直位置にあり、RFIDタグを支持する支持リングは重力ゆえに下向きに移動する。
【0043】
一実施形態では、ステップ(iii)は、アダプタが末端先端に対するその最終位置に達するまで、アダプタの基端端部が支持リングに当接することによって支持リングが基端方向に更に押されることを含む。
【0044】
最終位置は、アダプタの内リングが末端先端の溝内に固定されたときに到達される。
【0045】
本発明とそこから生じる利点は、以下の添付図面を参照しながら行う詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による医療用注入装置の斜視図である、
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態による医療用注入装置の断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施形態による医療用注入装置の断面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施形態による医療用注入装置のRFIDタグの斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の実施形態による医療用注入装置のRFIDタグの基端面の底面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による医療用注入装置のRFIDタグの斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施形態による医療用注入装置の円板状リングの斜視図及び部分切断図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の実施形態による医療用注入装置の円板状リングの斜視図及び部分切断図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の実施形態による医療用注入装置の円板状リングの斜視図及び部分切断図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態による医療用注入装置を組み立てるための異なるステップを示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態による医療用注入装置を組み立てるための異なるステップを示す断面図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の実施形態による医療用注入装置を組み立てるための異なるステップを示す断面図である。
【
図6D】
図6Dは、本発明の実施形態による医療用注入装置を組み立てるための異なるステップを示す断面図である。
【
図6E】
図6Eは、本発明の実施形態による医療用注入装置を組み立てるための異なるステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1、2A及び2Bを参照すると、本発明の実施形態による注入装置1が示されている。医療用注入装置1は、プレフィラブルシリンジ又はプレフィルドシリンジなどの医療用容器20、医療用容器20を針ハブ(図示せず)又はIVライン(図示せず)などのコネクタに接続するためのアダプタ30、及び無線周波数識別(RFID)タグ60を含むディスク形状のリング40などの支持リングを備える。使用前、例えば保管中又は輸送中、注入装置1は、先端キャップアセンブリ50を含んでもよい。
【0048】
医療用容器20は、医療用製品を含有するためのリザーバを画定する管状バレル21を備える。管状バレル21は、プラスチック又はガラス材料で作られていてもよい。
図2A及び2Bを参照すると、バレル21は、長手方向軸Aに沿って長手方向に延びる末端先端10を設けた末端端部又は肩部22、及びフィンガーフランジ24を設けてもよい反対側の開口された基端端部23を有する。開口された基端端部23は、管状バレル21内に収容された医療用製品を排出するために、管状バレル21の内側に配置されたストッパ(図示せず)を押すためのプランジャロッド(図示せず)を受容してもよい。
【0049】
末端先端10は、管状バレル21の末端端部22から末端に突出している。末端先端10は、リザーバと流体連通する軸方向通路11を有していて、医療用製品が通路11を通って排出されるようになっている。末端先端10には針がなく、それゆえ末端先端10と医療用製品を患者に送達するためのコネクタとの接続を可能にするアダプタ30を受容する必要がある。上述したように、コネクタは、針ハブ又はIVラインであってもよい。末端先端10は、アダプタ30を受容するように構成された基端部分を有し、この基端部分は、スナップ嵌め、干渉嵌め又は接着によってアダプタ30をその上に固定するための溝12及び/又はリブ13、14を含んでもよい。典型的には、末端先端10は、2つのリブ13、14を備えていてその間に溝12が配置される。末端先端10はまた、基端に向かって増加する直径を有する最も基端の端部15を含み、当該最も基端の端部15は、末端先端10をバレル21の末端肩部22に接続している。
【0050】
アダプタ30は、医療用容器20の末端先端10へのコネクタの接続を可能にし、当該コネクタを末端先端10に固定するように構成されている。そのために、アダプタ30は、末端端部33、基端端部34、及びコネクタを受容するための内キャビティ32を画定する管状本体31を含み、この内キャビティ32は、針ハブの外ねじ部又は外翼などの、コネクタの対応する接続特徴部に係合するように構成された、内ねじ部36などの接続要素を備える。使用前、この内ねじ部36は、
図2Bに示すように、先端キャップアセンブリ50の外ねじ部51に係合してもよい。
【0051】
アダプタ30は更に、管状本体31の内壁から内向きに突出した内リング35を含む。内リング35は、末端先端10の基端部分に係合するように構成されており、例えば接着、スナップ嵌め又は摩擦力によってアダプタ30を末端先端10に固定するようになっている。例えば、内リング35は、末端先端10の溝12に係合する弾力性のある脚部を有してもよい。
【0052】
RFIDタグ60は、注入装置1の個別識別と追跡を可能にするように構成されている。そのために、
図5A-5Cに示すように、RFIDタグ60は、固有の装置識別子(UDI)を含有する記憶ユニットを有するRFIDチップ61と、RFIDアンテナ62とを含む。RFIDチップ61とアンテナ62は支持体によって支持されており、当該支持体はディスク形状のリングなどの支持リング40の形態をしている。
【0053】
支持リング40は、末端先端10の周りに、末端先端10の基端部分に又は好ましくは最も基端の端部15に載置され、アダプタ30の基端端部34と管状バレル21の末端肩部22との間に配置されて、支持リング40の取り外しが、注入装置1の輸送、保管又は使用中に防止されるようになっている。
【0054】
図3Aに見られるように、ディスク形状の支持リング40は、末端先端10の挿入を可能にする中央貫通開口部41を画定している。ディスク形状の支持リング40は、完全に閉鎖されたリング(
図5A、5C)又は分割されたリング(
図5B)であってもよい。分割されたリングの場合、RFIDチップ61は、好ましくは、スロット42と正反対に配置される。したがって、RFIDアンテナ62は、性能を最大にするために、長手方向軸Aを含む長手方向平面に関して対称であってもよい。
【0055】
支持リング40は、円形の外及び内縁43、44を有していてもよい。例えば
図3Bを参照すると、内縁44は、末端先端10の外径よりも小さくてもよい内径dを規定して、RFIDタグ60が好ましくは干渉嵌めによって末端先端10に固定されるようになっている。ディスク形状のリング40が末端先端10の溝12内にある場合、内径dは、末端先端10の外径よりも0.05mm~0.4mm小さくてもよい。ディスク形状のリング40が干渉が最大となる溝12の上方にある場合、内径dは、末端先端10の外径よりも0.1mm~0.5mm小さくてもよい。
【0056】
支持リング40の内縁44は基端側に配置されたベベル49を含んでもよく、このベベル49は末端先端10上への支持リング40の載置を容易にする。ベベル49はまた、支持リング40をできるだけ基端方向に、すなわちバレル21にできるだけ近接して位置付けることを可能にして、支持リング40が末端先端10の軸方向寸法を取り過ぎないようになっている。末端先端10に沿って支持リング40にとられる軸方向寸法を更に小さくするために、ディスク形状のリング40は平坦であり、すなわち末端面45及び反対側の基端面46を含み、これらは好ましくは長手方向軸Aに対して直交する。支持リング40の軸方向寸法wは、0.5mm~1.5mmで構成されてもよい。
【0057】
ディスク形状の支持部の末端面45は、注入装置1の組み立て中に支持リング40がアダプタ30によって基端方向に押されるために、アダプタ30の基端端部34に対して当接するように構成された当接表面としても機能することが企図されている。平坦な末端面45を有することはまた、ディスク形状のリング40にかかる荷重を分散させて、それにより組み立て中にRDIFタグ60が損傷されるリスクを低減することを可能にする。
【0058】
図4に示されているように、中央開口部41を通る末端先端10の挿入を容易にするために、ディスク形状のリング40は、注入装置1の組み立て中にRFIDタグ60が末端先端10に対してスライドする間に、わずかに変形するように構成された内向きに延びる脚部47を有してもよい。脚部47は、周方向に規則的に分配され、半径方向のキャビティ48によって分離されてもよい。また、これらの脚部47はまた、組み立て中のRFIDチップ61とアンテナ62の変形を制限する。したがって、損傷のリスクが制限される。
【0059】
図3Bを参照すると、ディスク形状のリング40は、先端キャップアセンブリ50の(もしあれば)、又はバレル21の、又は好ましくはアダプタ30の、より具体的には
図2Bに見えるようなアダプタ30の基端端部34の、外径と等しいかそれより小さい外径Dを有する。好ましくは、支持リング40の外径Dは、アダプタ30の外径に可能な限り近い。
【0060】
RFIDタグ60は、低周波(約30~300kHz、好ましくは125~135kHz、より具体的には124kHz、125kHz、又は134kHz)RFID(LF-RFID)タグ、好ましくは高周波(約3~30MHz)RFID(HF-RFID)タグ、又はより好ましくは超高周波(約400~1000MHz)RFID(UHF-RFID)タグであってもよい。RFIDリーダーは、例えば、約10cmまでの距離でLF-RFIDタグを、約1mの距離でHF-RFIDタグを、約12メートルの距離でUHF-RFIDタグを読み取ることができる。一実施形態では、RFIDタグ60は、高周波近距離無線通信(HF-NFC)タグであってもよい。周波数は、通常約13.56MHzである。この実施形態では、NFCリーダーは、例えば数センチメートルまでの距離でHF-NFCタグを読み取ることができる。HF-NFCは、それがNFCスマートフォンで読み取れられ得る点で、HF-RFIDとは異なる。RFIDタグ60は、Bluetoothタグであってもよい。
【0061】
図5Aから5Cを参照すると、アンテナ62は、単一ループ(
図5A)、折り返しループ(
図5B)、又はカットループ(
図5C)の形態であってもよい。単一ループアンテナ62は、チップ61に接続された、例えば溶接された2つの端部63を有し、従って閉ループを形成する。折り返しループアンテナ62は、2つの対称的な枝部62a、62bを含む。これらの枝部62a、62bの各々は、チップ61に接続され例えば溶接される一端63a、63bと、枝部62a、62bがこれらの2つの端部間に少なくとも1つの折り返し65を形成するように配置された自由端64a、64bとを有する。カットループアンテナ62は、2つの対称的な枝部62a、62bを有し、これらの枝部62a、62bの各々は、チップ61に接続され例えば溶接された一端63a、63bと、自由端64a、64bとを有する。枝部62a、62bは、これらの2つの端部間に折り返し65を形成しない。折り返しループアンテナ62及びカットループアンテナ62において、2つの枝部62a、62bは、長手方向軸Aを含む長手方向平面に関して、ディスク形状のリング40の異なる半分に延在する。折り返しループアンテナ62及びカットループアンテナ62において、支持リング40は、分割リングであってもよく、チップ61及びリング40を分割するスロット42は、好ましくは、直径方向に対向する。
【0062】
一実施形態では、ディスク形状のリング40によって形成される支持部は、RFIDチップ61及びアンテナ62を外部環境から保護するようにそれらを封入する。例えば、RFIDチップ61とアンテナ62は、ディスク形状の支持部でオーバーモールドされる。別の実施形態では、ディスク形状のリング40によって形成される支持部はプリント回路基板(PCB)であり、RFIDアンテナ62はこのPCB上に、好ましくはその末端面に直接印刷され、RFIDチップ61はアンテナ62に溶接される。
【0063】
RFIDタグ60は、ディスク形状のリング40に貼付された湿式インレイ、乾式インレイ、又は感圧ラベルを含んでもよい。
【0064】
ディスク形状のリング40は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)又はポリカーボネート(PC)などの剛性材料で作られることが好ましく、それにより、支持リング40が末端先端10上に載置されたときにRFIDチップ61及びアンテナ62が損傷するリスクを制限することに留意されたい。セラミック、ナイロン、テフロン(Teflon(登録商標))のようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの耐熱材料が、高温による損傷を防ぐために使用され得る。
【0065】
図2Bを参照すると、先端キャップアセンブリ50は、内キャップ53を受容するためのキャビティを画定する外キャップ52を含んでもよい。外キャップ52は硬い材料で作られており、内キャップ53は外キャップ52よりも弾力性のある柔らかい材料で作られている。内キャップ53は、医療用容器末端先端10の通路11をシールすることを意図したものである。外キャップ52は、アダプタ30の内ねじ部36に係合する外ねじ部51を有して、先端キャップアセンブリ50をアダプタ30及び医療用容器20に固定するようになっている。
【0066】
本発明の注入装置1を組み立てる方法が、
図6A~6Eを参照して以下に説明される。
【0067】
支持リング40は、最初にディスク形状のリング40の開口部41に末端先端10を挿入することにより、注入装置1の末端先端10上に載置される(
図6A)。ディスク形状のリング40は、その内縁44が末端先端10の外表面に干渉するまで、好ましくは重力により、基端方向に、下向きに移動する(
図6B)。この段階で、ディスク形状のリング40は、溝12の末端端部にある末端リブ13によってブロックされてもよい。先端キャップアセンブリ50とアダプタ30は、それらのねじ部の係合により既に互いに接続されているが、次にアダプタ30の内リング35(
図6C)を通して末端先端10を挿入することにより、末端先端10上に載置される。アダプタ30の基端端部34は、ディスク形状のリング40(
図6D)の末端面45に対して当接した状態となり、アダプタ30がディスク形状のリング40を基端方向に更に押すようになっている。ディスク形状のリング40はわずかに変形して末端リブ13を越えてもよく、次に溝12に沿ってスライドし、アダプタ30が末端先端10に固定されるその最終位置に達するまで、すなわちアダプタ30の内リング35が末端先端10の溝12内に適切に嵌まるまで、バレル21に向けて移動し続ける(
図6E)。RFIDタグ60を含むディスク形状のリング40は、今やアダプタ30とバレル21の間でブロックされ、末端先端10の最も基端の部分15に係合する。また、ディスク形状のリング40は、干渉嵌めのため、末端先端10の周りを回転することができず、したがって末端先端10に対して固定されたままである。
【国際調査報告】