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特表2024-536893疾患の再発を予測するためのウイルスDNAの配列決定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】疾患の再発を予測するためのウイルスDNAの配列決定
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20241001BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241001BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241001BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALN20241001BHJP
   C12N 7/00 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12M1/34 B
C12Q1/6888 Z
C12N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520577
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2022122509
(87)【国際公開番号】W WO2023056884
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/251,985
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SWIFT
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】512037244
【氏名又は名称】ザ チャイニーズ ユニバーシティ オブ ホンコン
(71)【出願人】
【識別番号】522380594
【氏名又は名称】グレイル,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロー, ユク-ミン デニス
(72)【発明者】
【氏名】チャン, クワン チー
(72)【発明者】
【氏名】ラム, ワイ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, チウ トゥン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B029BB20
4B029FA15
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065CA60
(57)【要約】
様々な実施形態は、ウイルス等の病原体からの核酸を含む無細胞核酸、例えば、血漿DNA及び血清DNAの個数及びサイズの分析の応用(例えば、生体サンプルの分類)に関する。一応用の実施形態では、以前に病態の治療を受けた対象が将来の時点で再発するか否かを予測することができる。標的配列決定(例えば、特別に設計された捕捉プローブ、増幅プライマー)は、ウイルスゲノム全体にわたってDNAを同定するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以前に病態の治療を受けており現在その病態の症状がない対象からの生体サンプルを分析する方法であって、
前記生体サンプルの核酸分子の混合物からの第1の複数の無細胞核酸分子を配列決定して第1配列リードを得るステップであって、前記生体サンプルが前記対象からの核酸分子とウイルスからの核酸分子との混合物を含むステップと、
前記第1配列リードを、前記ウイルスに対応する参照ゲノムにアライメントするように試みるステップと、
前記参照ゲノムにアライメントする前記第1配列リードの量を特定するステップと、
前記量を第1カットオフと比較するステップと、
前記量と前記第1カットオフとの比較に基づいて前記病態の再発の分類を特定するステップと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記対象の前記生体サンプルの核酸分子の混合物からの第2の複数の無細胞核酸分子のそれぞれについて、
前記無細胞核酸分子のサイズを測定し、そして
前記無細胞核酸分子が前記参照ゲノムからのものであるか否かを判定するステップと、
前記参照ゲノムからのものである前記第2の複数の無細胞核酸分子の測定されたサイズから導き出された統計値を特定するステップと、
前記統計値を第2カットオフと比較するステップであって、前記病態の再発の分類が、更に前記量と前記第1カットオフとの比較及び前記統計値と前記第2カットオフとの比較に基づいて特定されるステップと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無細胞核酸分子のサイズを測定するステップは、前記生体サンプルの核酸分子の混合物からの前記第2の複数の無細胞核酸分子を配列決定して第2配列リードを得るステップを含み、前記無細胞核酸分子のサイズが前記第2配列リードを使用して測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の複数の無細胞核酸分子は前記第2の複数の無細胞核酸分子である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記統計値は、
前記ウイルスの前記参照ゲノムからのものである、所与の範囲内のサイズを有する前記第2の複数の無細胞核酸分子の第1割合と、
ヒト参照ゲノムからのものである、前記所与の範囲内のサイズを有する前記第2の複数の無細胞核酸分子の第2割合と、の比を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2カットオフは6~11の値である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記所与の範囲は、80~110塩基対、50~75塩基対、60~90塩基対、90~120塩基対、120~150塩基対、又は150~180塩基対である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記統計値は前記比の逆数である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第2カットオフは、0.9~0.16の値である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1カットオフ及び前記第2カットオフは、再発の分類が既知の訓練サンプルから特定される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1カットオフ及び前記第2カットオフのそれぞれは、前記訓練サンプルの分類を正確に特定するための特異性及び感度を使用して選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記病態は癌である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記癌は、上咽頭癌、頭頸部扁平上皮癌、子宮頸癌、及び肝細胞癌からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルスからの核酸分子について前記生体サンプルを濃縮するステップを更に含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルスからの核酸分子について前記生体サンプルを濃縮する前記ステップは、前記ウイルスのゲノムの一部又は全体に結合する捕捉プローブを使用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ヒトゲノムの一部からの核酸分子について前記生体サンプルを濃縮するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルスは、EBV DNA、HPV DNA、HBV DNA、HCV核酸、又はそれらの断片を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象は妊婦である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記病態は上咽頭癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記分類の特定に応じて、前記病態の再発を予防するように前記対象に別の治療を開始するステップを更に含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記分類は、寛解、再発、局所領域不全、又は遠隔転移を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
以前に病態の治療を受けており現在前記病態の症状がない対象からの生体サンプルを分析する方法であって、
第1アッセイを行うステップであって、前記第1アッセイが、前記対象の前記生体サンプルの核酸分子の混合物からの第1の複数の無細胞核酸分子を分析することを含み、前記生体サンプルが前記対象からの核酸分子とウイルスからの核酸分子との混合物を含むステップと、
第2アッセイを行うステップであって、前記第2アッセイが、
前記対象の前記生体サンプルの核酸分子の混合物からの第2の複数の無細胞核酸分子のそれぞれについて、
前記無細胞核酸分子のサイズを測定し、そして
前記無細胞核酸分子が前記ウイルスに対応する参照ゲノムからのものであるか否かを判定することを含む、ステップと、
前記参照ゲノムにアライメントする前記第1の複数の無細胞核酸分子の量を特定するステップと、
前記参照ゲノムからのものである前記第2の複数の無細胞核酸分子の測定されたサイズから導き出された統計値を特定するステップと、
前記量を第1カットオフと比較するステップと
前記統計値を第2カットオフと比較するステップと
前記量と前記第1カットオフとの比較及び前記統計値と前記第2カットオフとの比較に基づいて前記病態の再発の分類を特定するステップと、を含む、前記方法。
【請求項23】
前記無細胞核酸分子のサイズを測定するステップは、前記生体サンプルの核酸分子の混合物からの前記第2の複数の無細胞核酸分子を配列決定して配列リードを得るステップを含み、前記無細胞核酸分子のサイズが、前記配列リードを使用して測定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1アッセイは、リアルタイムPCR、デジタルPCR、又は配列決定を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の複数の無細胞核酸分子は前記第2の複数の無細胞核酸分子である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記統計値は、
前記ウイルスの前記参照ゲノムからのものである、所与の範囲内のサイズを有する前記第2の複数の無細胞核酸分子の第1割合と、
ヒト参照ゲノムからのものである、前記所与の範囲内のサイズを有する前記第2の複数の無細胞核酸分子の第2割合と、の比を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記第2カットオフは6~11の値である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記所与の範囲は、80~110塩基対、50~75塩基対、60~90塩基対、90~120塩基対、120~150塩基対、又は150~180塩基対である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記統計値は前記比の逆数である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記第2カットオフは、0.9~0.16の値である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1カットオフ及び前記第2カットオフは、再発の分類が既知の訓練サンプルから特定される、請求項22~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1カットオフ及び前記第2カットオフのそれぞれは、前記訓練サンプルの分類を正確に特定するための特異性及び感度を使用して選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記病態は癌である、請求項22~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記癌は、上咽頭癌、頭頸部扁平上皮癌、子宮頸癌、及び肝細胞癌からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルスからの核酸分子について前記生体サンプルを濃縮するステップを更に含む、請求項22~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルスからの核酸分子について前記生体サンプルを濃縮する前記ステップは、前記ウイルスのゲノムの一部又は全体に結合する捕捉プローブを使用するステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ヒトゲノムの一部からの核酸分子について前記生体サンプルを濃縮するステップを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記ウイルスは、EBV DNA、HPV DNA、HBV DNA、HCV核酸、又はそれらの断片を含む、請求項22~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象は妊婦である、請求項22~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記病態は上咽頭癌である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記分類の特定に応じて、前記病態の再発を予防するように前記対象に別の治療を開始するステップを更に含む、請求項22~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記分類は、寛解、再発、局所領域不全、又は遠隔転移を含む、請求項22~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
実行されるとコンピュータシステムに先行する請求項のいずれか1項に記載の方法を行わせる複数の命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を含む、コンピュータ製品。
【請求項44】
請求項43に記載のコンピュータ製品と、
前記コンピュータ可読媒体に記憶された命令を実行するための1つ又は複数のプロセッサと、を含む、システム。
【請求項45】
上記の方法のいずれかを行うための手段を含む、システム。
【請求項46】
上記の方法のいずれかを行うように構成された1つ又は複数のプロセッサを含む、システム。
【請求項47】
それぞれ上記の方法のいずれかのステップを行うモジュールを含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
腫瘍細胞が腫瘍由来のDNAを血流に放出するという発見により、無細胞サンプル(例えば、血漿)を使用して対象における腫瘍の存在、位置及び/又はタイプを特定可能な非侵襲的方法の開発が立ち上がってきた。循環無細胞DNA分析は、癌治療応答の非侵襲的モニタリング及び癌再発の検出に有用であることが示されている。しかし、従来の技術は、以前に特定の治療を完了した対象における疾患の再発を検出するための感度及び/又は特異性を欠いている可能性がある。例えば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、無細胞サンプル中のウイルスDNAの検出に使用されており、検出されたウイルスDNAからの統計値が癌患者のスクリーニングに使用された。しかし、これらの従来技術は、治療後サンプルから疾患の再発を予測する感度が低いという難題に臨んでいる。したがって、治療後サンプルにおける疾患の再発を予測する際に、全体的により高い正確度を有する方法が臨床的に求められている。
【発明の概要】
【0002】
様々な実施形態は、ウイルス等の病原体からの核酸を含む無細胞核酸、例えば、血漿DNA及び血清DNAの個数及び/又はサイズの分析の応用(例えば、生体サンプルの分類)に関する。一応用の実施形態では、以前に病態の治療を受けた対象が将来の時点で再発するか否かを予測することができる。いくつかの実施において、標的配列決定(例えば、捕捉プローブ又は増幅プライマーを使用)は、対象のゲノム(例えば、ヒトゲノム)に関して、ウイルスゲノムの(例えば、ウイルスゲノムの全ての遺伝子座又は特定の遺伝子座にわたって)DNAを濃縮するために使用することができる。標的配列決定は、例えば、ヒトゲノムの一部のみが分析されるように、対象のゲノムに対して実行することができ、その結果、対象の分析されるDNAの量が、遥かに多いのではなく、対象の分析されたDNAの量と同等になる。かかる標的配列決定により、正確度が向上する。
【0003】
1つの実施形態によれば、無細胞核酸分子の混合物の配列決定から得られた配列リードは、ウイルスに対応するウイルス参照ゲノムにアライメントしている前記配列リードの量を特定するために使用することができる。1つの実施例において、前記配列リードの量は、配列リードの総数に対する前記ウイルス参照ゲノムにアライメントされた配列リードの割合で表すことができる。前記ウイルス参照ゲノムにアライメントしている前記配列リードの量は、第1カットオフ値と比較して治療後サンプルにおける再発を予測することができる。
【0004】
別の実施形態によれば、個数ベースの分析は、再発を予測するためにウイルス核酸分子(例えば、ウイルスに対応するウイルス参照ゲノムにアライメントしているもの)のサイズと組み合わせることができる。統計値は、(1)所与の範囲内のサイズを有する、前記ウイルス参照ゲノムにアライメントする核酸分子の配列リードの第1割合と、(2)前記所与の範囲内のサイズを有する、ヒト参照ゲノムにアライメントする核酸分子の配列リードの第2割合とのサイズ比を表すことができる。前記対象の疾患の再発(例えば、遠隔転移)は、前記配列リードの量を前記第1カットオフ値と比較し、前記統計値を第2カットオフ値と比較することで特定できる。場合によっては、異なる第1及び第2カットオフ値は、疾患の再発を予測する感度及び/又は特異性を増加させるために選択される。場合によっては、前記統計値は、前記ウイルス参照ゲノムからの前記複数の核酸分子のサイズ分布に対応する。
【0005】
他の実施形態は、本明細書に記載の方法に関連するシステム、ポータブル消費者デバイス、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【0006】
本開示の更なる態様及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。ここで本開示の例示的な実施形態のみが示され説明される。認識されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、全て本開示から逸脱することなく、様々な明白な点において修正することができる。したがって、図面及び説明は、限定的なものではなく、本質的に例示的なものと考えられる。
【0007】
本特許又は出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を含む本特許又は特許出願公報の複写物は、依頼に応じて、及び必要な料金の支払いを受けて特許庁により提供される。
【0008】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の特徴及び利点は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態及び添付の図面(本明細書で「図(Figure及びFIG.)」とも記載される)を説明する以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解される。図面の説明を次に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】対象の血流に沈着している上咽頭癌(NPC)細胞からのエプスタイン・バーウイルス(EBV)DNA断片を示す概略図を示す。
【0010】
図2】NPCを有する対象及び対照対象における血漿EBV DNA(コピー/mL血漿)の濃度を示す。
【0011】
図3A】異なる対象群についてリアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度を示す。
図3B】異なる対象群についてリアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度を示す。
【0012】
図4】早期NPCを有する対象及び進行期NPCを有する対象における血漿EBV DNA(コピー/mL血漿)の濃度を示す。
【0013】
図5】(左)血漿EBV DNAが持続的に陽性であるが観察可能な病態がない対象、及び(右)検証分析の一環としてスクリーニングによって同定された早期NPC患者の、リアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度を示す。
【0014】
図6】血漿EBV DNAが一時的に陽性又は持続的に陽性(それぞれ左又は中央)であるが観察可能な病態がない対象、及びNPCを有すると同定された対象における、リアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度(コピー/ミリリットル)を示す。
【0015】
図7】血漿EBV DNAが一時的に陽性又は持続的に陽性(それぞれ左又は中央)であるが観察可能な病態がない対象、及びNPCを有すると同定された対象における、リアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度(コピー/ミリリットル)を示す。
【0016】
図8A】異なる対象群のEBVゲノムにマッピングされた、配列決定された血漿DNA断片の割合を示す。
図8B】異なる対象群のEBVゲノムにマッピングされた、配列決定された血漿DNA断片の割合を示す。
【0017】
図9】(左)血漿EBV DNAが持続的に陽性であるが観察可能な病態がない対象、及び(右)スクリーニングによって同定された早期NPC患者の、血漿中のEBVゲノムにマッピングされたリードの割合を示す。
【0018】
図10】様々な病期のNPCを有する対象の全生存率を経時的に示す。
【0019】
図11】リアルタイムPCRを使用して治療後サンプルから検出された血漿EBV DNA濃度を示す。
【0020】
図12】リアルタイムPCRによって特定された血漿EBV DNA状態に基づいて群化されたNPC患者の全生存率を同定するグラフを示す。
【0021】
図13】標的捕捉配列決定を使用して治療後サンプルから検出された配列リードの割合を同定するグラフを示す。
【0022】
図14】本発明の実施形態に係る、対象の無細胞混合物中のウイルス核酸断片の配列リードを使用して疾患の再発を予測する個数ベースの方法を図示するフローチャートである。
【0023】
図15】標的捕捉配列決定を使用して治療後サンプルから検出されたEBV DNAの割合及びサイズ比を同定するグラフを示す。
【0024】
図16】本発明の実施形態に係る、疾患の再発を予測するためにウイルス核酸断片の個数ベースの分析とサイズベースの分析を組み合わせた方法のフローチャートである。
【0025】
図17】NPC患者の治癒を目的とした治療完了後6週間で採取された血漿サンプルの分析に基づいて疾患の再発を予測する受信者動作特性(ROC)曲線を示す。
【0026】
図18】標的捕捉配列決定を使用して組み合わせ分析に基づいて群化されたNPC患者の全生存率を同定するグラフを示す。
【0027】
図19】推定の配列決定ベースのEBVレベルに基づいて群化されたNPC患者の全生存率を同定するグラフを示す。
【0028】
図20】血漿中のEBV DNA割合が0.01%を下回ったNPC患者の全生存率を同定するグラフを示す。
【0029】
図21】NPC患者及びNPCが同定されなかった妊婦にわたるリアルタイムPCRによる血漿EBV DNA濃度を示す。
【0030】
図22】NPC患者及びNPCが同定されなかった妊婦にわたる個数ベースの分析を使用した血漿EBV DNA濃度を示す。
【0031】
図23】NPC患者及びNPCが同定されなかった妊婦にわたる血漿EBV DNAの個数及びサイズベースの分析を示す。
【0032】
図24】本開示の実施形態に係る、対象の標的化捕捉配列決定用の捕捉プローブの設計例を示す。
【0033】
図25】様々な標的捕捉オプションを通じたNPCサンプルの配列決定による血漿EBV DNA分画濃度を同定する1組の棒プロットを示す。
【0034】
図26】本発明の実施形態に係るシステムを図示する。
【0035】
図27】本発明の実施形態に係るシステム及び方法と共に使用可能なコンピュータシステムの例のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
用語
「組織」は、機能単位として共に群化する細胞の群に対応する。1タイプより多くの細胞が、単一の組織内に見出され得る。異なるタイプの組織は、異なるタイプの細胞(例えば、肝細胞、肺胞細胞、又は血球細胞)からなり得るが、異なる生物(宿主対ウイルス)からの組織又は健康細胞対腫瘍細胞にも対応し得る。「組織」という用語は一般に、ヒト体内に見られる任意の細胞群(例えば、心臓組織、肺組織、腎臓組織、鼻咽頭組織、口腔咽頭組織)を指し得る。いくつかの態様において、「組織」又は「組織型」という用語は、無細胞核酸が由来する組織を指すために使用され得る。一例では、ウイルス核酸断片は、例えば、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の血液組織に由来し得る。別の例では、ウイルス核酸断片は、腫瘍組織、例えば、EBV又はヒトパピローマウイルス感染(HPV)に由来し得る。
【0037】
「サンプル」、「生体サンプル」、又は「患者サンプル」という用語は、生きている対象又は死んだ対象に由来する任意の組織又は物質を含むことを意味する。生体サンプルは、無細胞サンプルであり得、それは、対象からの核酸分子と、場合によっては病原体、例えばウイルスからの核酸分子との混合物を含み得る。生体サンプルは一般に、核酸(例えば、DNA又はRNA)又はその断片を含む。「核酸」という用語は一般に、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はそれらの任意のハイブリッド又は断片を指し得る。サンプル中の核酸は無細胞核酸であり得る。サンプルは、液体サンプル又は固体サンプル(例えば、細胞又は組織サンプル)であり得る。生体サンプルは、血液、血漿、血清、尿、膣液、(例えば精巣の)水腫からの液、膣洗浄流体、胸水、腹水、脳脊髄液、唾液、汗、涙、痰、気管支肺胞洗浄液、乳首からの排出液、体の異なる部分(例えば、甲状腺、乳房)からの吸引流体等の体液であり得る。便サンプルもまた、使用することができる。様々な実施形態において、無細胞DNAについて濃縮された生体サンプル(例えば、遠心分離プロトコルを通じて得られた血漿サンプル)中のDNAの大部分は、無細胞であり得る(例えば、DNAの50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、又は99%超は、無細胞であり得る)。いくつかの実施形態において、少なくとも1,000個の無細胞DNA分子が分析される。他の実施形態において、少なくとも10,000又は50,000又は100,000又は500,000又は1,000,000又は5,000,000個の無細胞DNA分子、又はそれ以上の無細胞DNA分子が、分析され得る。少なくとも同じ数の配列リードが分析され得る。生体サンプルは、組織又は細胞の構造を物理的に破壊するように(例えば、遠心分離及び/又は細胞溶解)処理され得るため、細胞内成分を、分析用のサンプルを調製するための酵素、緩衝液、塩、界面活性剤等を更に含有し得る溶液中に放出し得る。
【0038】
「対照」、「対照サンプル」、「参照」、「参照サンプル」、「正常」、及び「正常サンプル」という用語は、特定の症状を持たないサンプル、又はそうでなければ健康なサンプルを一般的に説明するために交換可能に使用され得る。一例では、本明細書に開示される方法は、腫瘍を有する対象に対して実施することができ、ここで参照サンプルは、対象の健康な組織から採取されたサンプルである。別の例では、参照サンプルは、疾患、例えば、癌又は特定の病期の癌を有する対象から得られたサンプルである。参照サンプルは、対象又はデータベースから取得され得る。参照は一般に、対象からのサンプルを配列決定することから得られた配列リードをマッピングするために使用される参照ゲノムを指す。
【0039】
「参照ゲノム」という用語は一般に、生体サンプル及び生得的サンプルからの配列リードがアライメント及び比較され得る、1倍体又は2倍体ゲノムを指す。1倍体ゲノムについては、各遺伝子座において1つのヌクレオチドのみが存在する。2倍体ゲノムについては、ヘテロ接合遺伝子座を同定することができ、このような遺伝子座は2つの対立遺伝子を有し、いずれかの対立遺伝子が、遺伝子座へのアライメントの一致を可能にし得る。参照ゲノムは、例えば、1つ又は複数のウイルスゲノムを含めることにより、ウイルスに対応し得る。
【0040】
本明細書で使用されるように、「健康」という語句は一般に、良好な健康状態を有する対象を指す。このような対象は、悪性疾患が存在しないこと又は非悪性疾患であることを示す。「健康個体」は、通常「健康」とは見なされないアッセイされる症状とは無関係の、他の疾患又は症状を有し得る。
【0041】
「癌」又は「腫瘍」という用語は交換可能に使用され、一般に、組織の異常な塊を指し、その塊の成長は正常組織の成長を上回り、それと協調されない。癌又は腫瘍は、形態及び機能性を含む細胞分化の程度、成長速度、局所侵襲、及び転移といった特徴に応じて「良性」又は「悪性」と定義され得る。「良性」腫瘍は一般に十分に分化しており、悪性腫瘍よりも特徴的に成長が遅く、原発巣に局在したままである。加えて、良性腫瘍には、離れた部位に浸潤、侵襲、又は転移する能力を有さない。「悪性」腫瘍は一般に低分化(退形成)であり、周囲組織の進行性浸潤、侵襲、及び破壊を伴う特徴的な急速成長を示す。更に、悪性腫瘍は離れた部位に転移する能力を有する。「病期」は、悪性腫瘍の進行状況を説明するために使用できる。早期の癌又は悪性腫瘍は、後期の悪性腫瘍よりも体内の腫瘍負荷が少なく、一般的に症状が少なく、予後が良好で、治療成績が良好であることに関連している。後期又は進行期の癌又は悪性腫瘍は、多くの場合、遠隔転移及び/又はリンパ行性浸潤に関連している。
【0042】
「病態のレベル」は、生物に関連する病態の量、程度、又は重篤度を指し得、そのレベルは、癌について上記で記述した通りであり得る。病態の別の例は、移植された臓器の拒絶反応である。他の病態の例としては、自己免疫発作(例えば、腎臓を損傷するループス腎炎又は中枢神経系を損傷する多発性硬化症)、炎症性疾患(例えば、肝炎)、線維化プロセス(例えば、肝硬変)、脂肪浸潤(例えば、脂肪性肝疾患)、変性プロセス(例えば、アルツハイマー病)、及び虚血性組織損傷(例えば、心筋梗塞又は脳卒中)を含み得る。対象の健康な状態は、病態のない分類と見なし得る。病態は癌であり得る。
【0043】
「癌のレベル」という用語は、癌が存在するか否か(即ち、存在又は不在)、癌の病期、腫瘍のサイズ、転移があるか否か、体の総腫瘍負荷、治療に対する癌の応答、及び/又は癌の重篤度の他の尺度(例えば、癌の再発)を指し得る。癌のレベルは、数字、又は、記号、アルファベット文字、及び色等の他のしるしであり得る。レベルは、ゼロであり得る。癌のレベルは、前悪性症状又は前癌性症状(状態)も含み得る。癌のレベルは、様々な方法で使用され得る。例えば、スクリーニングによって、癌を有することを今まで知らなかった者において癌が存在するか否かをチェックすることができる。評価は、癌と診断されている者を検査して、癌の進行を経時的に監視し、療法の有効性を研究し、又は予後を判定し得る。1つの実施形態において、予後は、患者が癌で死亡する確率、又は特定の持続時間若しくは特定の時間後、癌が進行する確率、又は癌が転移する確率若しくは程度として表し得る。検出は、「スクリーニング」を意味し得るか、又は癌の示唆的な特徴(例えば、症状又は他の陽性検査結果)を有する者が癌を有するか否かをチェックすることを意味し得る。
【0044】
本明細書で使用されるように、「断片」(例えば、DNA断片)という用語は、少なくとも3つの連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の一部を指し得る。核酸断片は、親ポリペプチドの生物学的活性及び/又はいくつかの特性を保持することができる。核酸断片は、二本鎖又は一本鎖、メチル化又は非メチル化、インタクト又はニック、他の高分子、例えば脂質粒子、タンパク質と複合又は非複合であり得る。一例では、鼻咽頭癌細胞は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)DNA断片を対象、例えば患者の血流に放出し得る。これらの断片は、血漿中の腫瘍由来DNAのレベルを検出するために使用できる、1つ又は複数のBamHI-W配列断片を含み得る。BamHI-W配列断片は、Bam-HI制限酵素を使用して認識及び/又は消化することができる配列に対応する。BamHI-W配列は、配列5´-GGATCC-3´を指し得る。
【0045】
腫瘍由来の核酸は、腫瘍細胞内の病原体からの病原体核酸を含む、腫瘍細胞から放出された任意の核酸を指し得る。例えば、エプスタイン・バーウイルス(EBV)DNAである。
【0046】
「アッセイ」という用語は一般に、核酸の特性を特定するための技術を指す。アッセイ(例えば、第1アッセイ又は第2アッセイ)は一般に、サンプル中の核酸の量、サンプル中の核酸のゲノム同一性、サンプル中の核酸のコピー数変動、サンプル中の核酸のメチル化状態、サンプル中の核酸の断片サイズ分布、サンプル中の核酸の変異状態、又はサンプル中の核酸の断片化パターンを特定する技術を指す。当業者に既知の任意のアッセイを使用して、本明細書で言及した核酸の特性のいずれかを検出することができる。核酸の特性は、配列、量、ゲノム同一性、コピー数、1つ又は複数のヌクレオチド位置でのメチル化状態、核酸のサイズ、1つ又は複数のヌクレオチド位置での核酸の突然変異、及び核酸の断片化のパターン(例えば、核酸が断片化するヌクレオチド位置(複数可))を含む。用語「アッセイ」は、用語「方法」と交換可能に使用され得る。アッセイ又は方法は特定の感度及び/又は特異性を有し、その診断ツールとしての相対的な有用性はROC-AUC統計を使用して測定することができる。
【0047】
本明細書で使用されるように、「ランダム配列決定」という用語は一般に、配列決定される核酸断片が、配列決定手順の前に、具体的に同定又は予め決定されていない配列決定を指す。特定の遺伝子座を標的とする配列特異的プライマーは、必要とされない。いくつかの実施形態において、断片の端部にアダプターが付加され、配列決定用のプライマーがアダプターに付着した。よって、いかなる断片も、同じユニバーサルアダプターに付着する同じプライマーで配列決定することができ、よって、配列決定はランダムであり得る。ランダム配列決定を使用して、超並列配列決定を実施してもよい。
【0048】
本明細書で使用されるように、「配列リード」(又は配列決定リード)は一般に、核酸分子の任意の部分又は全部から配列決定されたヌクレオチドの鎖を指す。例えば、配列リードは、核酸断片から配列決定されたヌクレオチドの短鎖(例えば、約20~150)、核酸断片の片端若しくは両端のヌクレオチドの短鎖、又は生体サンプル中に存在する核酸断片全体の配列であり得る。配列リードは、例えば、配列決定技術を使用する若しくはプローブを使用する様々な方法で、例えば、ハイブリダイゼーションアレイ若しくは捕捉プローブで、又は単一プライマー若しくは等温増幅を使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)若しくは線形増幅等の増幅技術で、得られ得る。
【0049】
本明細書で使用されるように、「配列決定深度」という用語は、一般に、遺伝子座が、その遺伝子座にアライメントされた配列リードによってカバーされる回数を指す。遺伝子座は、ヌクレオチドの小ささ、又は染色体腕の大きさ、又はゲノム全体の大きさであり得る。配列決定深度は、50x、100x等と表され得、ここで「x」は、遺伝子座が配列リードでカバーされる回数を指す。配列決定深度は、複数の遺伝子座又はゲノム全体に適用することもでき、この場合、xはそれぞれ、遺伝子座若しくはハプロイドゲノム又はゲノム全体が配列決定される平均回数を指し得る。平均深度が引用される場合、データセットに含まれた異なる遺伝子座のための実際の深度は値が一定範囲にある。ウルトラディープ配列決定は、少なくとも100xの配列決定深度を指し得る。
【0050】
「サイズプロファイル」及び「サイズ分布」という用語は一般に、生体サンプル中のDNA断片のサイズに関する。サイズプロファイルは、様々なサイズの、ある量のDNA断片の分布を提供するヒストグラムであり得る。様々な統計パラメーター(サイズパラメーター又は単にパラメーターとも呼ばれる)は、1つのサイズプロファイルを別のサイズプロファイルと区別することができる。1つのパラメーターは、全てのDNA断片に対する、又は他のサイズ若しくは範囲のDNA断片に対する、特定のサイズ若しくはサイズ範囲のDNA断片の百分率である。
【0051】
「相対存在量」とは一般に、特定の特徴(例えば、指定された長さ、ゲノムの特定の領域にアライメントすること、特定の参照ゲノムにアライメントすること)を有する第2量の核酸断片に対する、特定の特徴(例えば、指定された長さ、1つ又は複数の指定された座標/終了位置で終了すること、又はゲノムの特定の領域にアライメントすること、特定の参照ゲノムにアライメントすること)を有する第1量の核酸断片の比を指し得る。一例では、相対存在量は、(1)所与の範囲内(例えば、80~110塩基対)のサイズを有するウイルス参照ゲノムからのDNA断片の数と、(2)該所与の範囲内(例えば、80~110塩基対)のサイズを有するヒト参照ゲノムからのDNA断片の数との比を指し得る。いくつかの態様において、「相対存在量」は、ゲノム位置の1つのウィンドウ内で終了するある量(1つの値)の無細胞DNA分子を、ゲノム位置の別のウィンドウ内で終了するある量(他の値)の無細胞DNA分子と関連付ける分離値の1種に対応し得る。2つのウィンドウは重複し得るが、サイズが異なり得る。他の実施形態において、2つのウィンドウは重複し得ない。更に、ウィンドウの幅は、1ヌクレオチドであり得るため、1ゲノム位置に相当し得る。
【0052】
「分類」という用語は、サンプルの特定の特性に関連付けられた任意の数(複数可)又は他の文字(複数可)を指し得る。例えば、「+」記号(又は「陽性」という語)は、サンプルが欠失又は増幅を有すると分類されることを表し得る。別の例では、用語「分類」は、対象及び/又はサンプルにおける腫瘍組織の量、対象及び/又はサンプルにおける腫瘍のサイズ、対象における腫瘍の病期、対象及び/又はサンプルにおける腫瘍量、対象における腫瘍転移の存在、対象における疾患(例えば、癌)の再発、及び/又は一定期間の改善後における疾患症状の任意の他の再発を指し得る。例えば、分類は、疾患の寛解、再発、局所領域不全、又は遠隔転移を含み得る。分類は、二項分類(例えば、陽性又は陰性)であり得るか、又はより多くの分類レベル(例えば、1~10又は0~1のスケール)を有し得る。
【0053】
「カットオフ」及び「閾値」という用語は、ある操作において使用される所定の数を指す。例えば、カットオフサイズは、それを上回ると断片が除外されるサイズを指し得る。閾値は、特定の分類が適用されるのを上回る又は下回る値であり得る。これらの用語のいずれかは、これらの文脈のいずれかにおいて使用され得る。カットオフ又は閾値は、「参照値」であり得るか、又は特定の分類を表すか若しくは2つ以上の分類間を区別する参照値から導き出され得る。かかる参照値は、当業者によって理解されるように、様々な方法で決定され得る。例えば、メトリックは、異なる既知の分類を有する対象の2つの異なるコホートについて決定され得、参照値は、1つの分類(例えば、平均)の代表として、又はメトリックの2つのクラスター間の値(例えば、所望の感度及び特異性を取得するために選択された)として選択され得る。別の例として、参照値は、サンプルの統計シミュレーションに基づいて決定され得る。カットオフ、閾値、参照等の特定の値は、所望の正確度(例えば、感度及び特異性)に基づいて決定することができる。
【0054】
「真陽性」(TP)という用語は、症状を有する対象を指し得る。真陽性は一般に、腫瘍、癌、前癌性症状(例えば、前癌性病変)、限局性若しくは転移性癌、又は非悪性疾患を有する対象を指す。真陽性は一般に、症状を有し、且つ本開示のアッセイ又は方法によって該症状を有すると同定された対象を指す。
【0055】
「真陰性」(TN)という用語は、症状を有さない又は検出可能な症状を有さない対象を指し得る。真陰性は一般に、疾患を有さない又は検出可能な疾患、例えば腫瘍、癌、前癌性症状(例えば、前癌性病変)、限局性若しくは転移性癌、非悪性疾患を有さない対象、又はそうでなければ健康な対象を指す。真陰性は一般に、症状を有さない又は検出可能な症状を有さない対象、又は本開示のアッセイ若しくは方法によって症状を有さないと同定された対象を指す。
【0056】
「偽陽性」(FP)という用語は、症状を有さない対象を指し得る。偽陽性は一般に、腫瘍、癌、前癌性症状(例えば、前癌性病変)、限局性若しくは転移性癌、非悪性疾患を有さない対象、又はそうでなければ健康な対象を指す。偽陽性という用語は一般に、症状を有さないが、本開示のアッセイ若しくは方法によって症状を有すると同定される対象を指す。
【0057】
「偽陰性」(FN)という用語は、症状を有する対象を指し得る。偽陰性は一般に、腫瘍、癌、前癌性症状(例えば、前癌性病変)、限局性若しくは転移性癌、又は非悪性疾患を有する対象を指す。偽陰性という用語は一般に、症状を有するが、本開示のアッセイ若しくは方法によって症状を有さないと同定された対象を指す。
【0058】
「感度」又は「真陽性率」(TPR)という用語は、真陽性の数を真陽性と偽陰性の数の合計で割ったものを指し得る。感度は、真に症状を有する集団の割合を正確に同定するアッセイ又は方法の能力を特徴付けることができる。例えば、感度は、癌を有する集団内の対象の数を正確に同定する方法の能力を特徴付けることができる。別の例では、感度は、癌を示す1つ又は複数のマーカーを正確に同定する方法の能力を特徴付けることができる。
【0059】
「特異性」又は「真陰性率」(TNR)という用語は、真陰性の数を真陰性と偽陽性の数の合計で割ったものを指し得る。特異性は、真に症状を有さない集団の割合を正確に同定するアッセイ又は方法の能力を特徴付けることができる。例えば、特異性は、癌を有さない集団内の対象の数を正確に同定する方法の能力を特徴付けることができる。別の例では、特異性は、癌を示す1つ又は複数のマーカーを正確に同定する方法の能力を特徴付けることができる。
【0060】
「ROC」又は「ROC曲線」という用語は、受信者動作特性曲線を指し得る。ROC曲線は、二項分類システムの性能をグラフィカルに表現することができる。任意の所与の方法について、様々な閾値設定で感度を特異性に対してプロットすることにより、ROC曲線を生成することができる。対象における腫瘍の存在を検出する方法の感度及び特異性は、対象の血漿サンプル中の腫瘍由来核酸の様々な濃度で決定され得る。更に、得られた3つのパラメーター(例えば、感度、特異性、及び閾値設定)のうちの少なくとも1つ、及びROC曲線によって、任意の不明なパラメーターの値又は期待値を特定し得る。不明なパラメーターは、ROC曲線にフィッティングされた曲線を使用して特定され得る。「AUC」又は「ROC-AUC」という用語は一般に、受信者動作特性曲線下の面積を指す。このメトリックは、方法の感度と特異性の両方を考慮して、方法の診断的有用性の尺度を提供し得る。一般的に、ROC-AUCの範囲は0.5~1.0であり、そのうち、0.5に近い値は方法の診断的有用性が限られていること(例えば、低感度及び/又は低特異性)を示し、1.0に近い値は方法の診断的有用性が高いこと(例えば、高感度及び/又は高特異性)を示す。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Pepe et al, “Limitations of the Odds Ratio in Gauging the Performance of a Diagnostic, Prognostic, or Screening Marker,” Am. J. Epidemiol 2004, 159 (9): 882-890を参照されたい。尤度関数、オッズ比、情報理論、的中率、キャリブレーション(適合度を含む)、及び再分類測定を使用して診断的有用性を特徴付ける追加のアプローチは、参照により全体として本明細書に組み込まれる、Cook, “Use and Misuse of the Receiver Operating Characteristic Curve in Risk Prediction,” Circulation 2007, 115: 928-935に要約されている。
【0061】
「陰性的中率」又は「NPV」は、TN/(TN+FN)又は全ての陰性検査結果の真陰性画分によって計算され得る。陰性的中率は、固有に、集団における症状の有病率及び検査すべき集団の検査前確率の影響を受ける。「陽性的中率」又は「PPV」は、TP/(TP+FP)又は全ての陽性検査結果の真陽性画分によって計算され得る。これは、固有に、検査すべき集団の疾患の有病率及び検査前確率の影響を受ける。例えば、参照によって全体として本明細書に組み込まれるO’Marcaigh A S, Jacobson R M, “Estimating The Predictive Value Of A Diagnostic Test, How To Prevent Misleading Or Confusing Results,” Clin. Ped. 1993, 32(8): 485-491を参照のこと。
【0062】
略語「bp」は塩基対を指す。場合によっては、一本鎖であり塩基対を含まないDNA断片でも、「bp」はその長さを示すために使用できる。一本鎖DNAの文脈において、「bp」はヌクレオチドとしての長さを提供すると解してもよい。
【0063】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内を意味し得、これは値の測定若しくは決定方法、即ち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、当分野の慣例により、1つ以内又は1つより多くの標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、最大10%、最大5%、又は最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システム又はプロセスに関して、「約」又は「およそ」という用語は、値の1桁以内、5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。本出願及び特許請求の範囲に特定の値が記載されている場合、特に明示しない限り、「約」という用語は特定の値の許容誤差範囲内を意味すると想定すべきである。「約」という用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有し得る。「約」という用語は±10%を指し得る。「約」という用語は、±5%を指し得る。
【0064】
本明細書で使用される用語は、単に特定のケースを説明する目的のものであり、限定することを意図したものではない。本明細書で使用されるように、単数形「一(a)」、「一つ(an)」、及び「該(the)」は、文脈上明らかに別途指示されない限り、複数形も含むことを意図している。更に、「含む(including、includes)」、「有する(having、has)」、「と共に(with)」という用語、又はその変形は、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかで使用される限りでは、かかる用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の方式で包括的であることを意図している。
【0065】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、当然変動し得ることが理解される。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲にのみ限定されることから、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のものであり、限定を意図するものではないことも理解される。
【0066】
値の範囲が提供される場合、文脈が別段明確に示さない限り、その範囲の上限と下限との間の各介在する値も、下限の10分の1まで具体的に開示されていることが理解される。示された範囲における任意の示された値又は介在する値と、その示された範囲における任意の他の示された又は介在する値との間の各より小さな範囲が本発明内に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して範囲に含まれるか除外されてもよく、どちらか一方、両方の限界がより小さな範囲に含まれるか、又はどちらも含まれない各範囲も、示された範囲内で特に除外される任意の限界を条件として、本発明内に包含される。示された範囲が一方又は両方の限界を含む場合、それらの限界のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0067】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語と科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味である。本明細書に記載の場合と類似又は相当する任意の方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用できるが、ここでいくつかの可能な例示的方法及び材料を説明する。本明細書で言及した任意の及び全ての刊行物は、該刊行物がそれとの関連で引用される方法及び/又は材料を開示及び説明するように、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0068】
本明細書に記載の特定の実施例は、当業者に本発明の製造方法及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために記載されるものであり、発明者らがそれらの発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、以下の実験が実施される全て又は唯一の実験であると示すことを意図するものでもない。使用される数値(例えば、量、温度等)の正確性を確保するために取り込んでいたが、いくつかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に明記しない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0069】
標準略語は使用され得、例えば、bpは塩基対、kbはキロ塩基、piはピコリットル、s又はsecは秒間、minは分間、h又はhrは時間、aaはアミノ酸、ntはヌクレオチド、等である。
【0070】
ウイルス感染は、様々なタイプの癌の病因となり得る。例えば、エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、上咽頭癌(NPC)、特定のタイプのリンパ腫、及び胃癌を引き起こすと知られている。そこで、リアルタイムPCRによる血漿EBV DN分析は、NPCの検出に有用であることが示されている(Lo et al. Cancer Res. 1999;59:1188-91)。更に、治癒を目的とした治療後のリアルタイムPCRによるNPC患者の血漿中のEBV DNAの検出は、疾患再発と強く関連していることが示されている(Chan et al. J Natl Cancer Inst. 2002;94:1614-9)。この的中率を考慮して、無作為化対照試験は、治癒を目的とした療法後に検出可能なEBV DNAを有するNPC患者の転帰を改善するためにアジュバント化学療法が有用であるか否かを調査するために、実施されていた(Chan et al. J Clin Oncol. 2018;36: 3091-3100)。具体的には、治癒を目的とした治療後に検出可能な血漿EBV DNAを有するNPC患者が、アジュバント化学療法又は臨床観察(即ち、標準治療)のいずれかを受けるように無作為化され、ここで血漿EBV DNAはリアルタイムEBV DNAを使用して検出された。
【0071】
しかし、結果は、これら2群は無再発生存期間に有意な差がないことを示した。これらの結果は、検出可能な血漿EBV DNAを有するNPC患者の同定におけるリアルタイムPCRの低感度によるものである可能性がある。例えば、リアルタイムPCRによる治療後血漿EBV DNA分析では、後続で再発する症例の48%しか同定されなかった。局所領域不全及び遠隔転移を予測する感度は、それぞれ42%及び53%であった。したがって、血漿中の検出可能なEBV DNAが疾患の再発に関連していることが示されているが、リアルタイムPCRは、再発の予測において治療後サンプル中のEBV DNAの検出に有効な方法ではないことが判明された。
【0072】
少なくとも上記の欠点を克服するために、本技術は、癌等の疾患の再発を検出するために、配列決定を使用して治療後サンプル中のウイルスDNAを正確に検出することができる。特に、本技術は、他の技術を通じて検出不能であった低い量のウイルスDNAを検出することで疾患の再発を予測する改良された方法に関する。例えば、リアルタイムPCRは、検出されたウイルスDNAレベルがゼロに近いと予想される結果を出し得るが、本技術は、このような情報を使用して癌の再発を正確に予測することができる。更に、本技術は、ウイルスゲノムの特定の領域にアライメントする配列リードに注目するのではなく、ウイルスゲノム全体に対応する配列リードを分析して再発を予測する。対照の疾患の再発を正確に予測することで、本技術は、早期介入及び適切な治療の選択を促進して対象の疾患転帰及び全生存率を改善することができる。例えば、対象の対応するサンプルが疾患の再発を予測可能な事象において、対象に強化化学療法を選択することができる。
【0073】
以下において、最初のセクションでは、病原体DNAの検出を通じて対象を診断する、即ち、再発の予後を判定するのではなく、対象が現在病態を有しているか否かを判定するために使用できる技術を説明する。後のセクションでは、対象の再発の分類を特定するための技術及び改良された技術を説明する。
I.無細胞サンプル中のウイルスDNA
【0074】
病原体は細胞を侵襲し得る。例えば、EBV等のウイルスは細胞内に存在し得る。これらの病原体は、それらの核酸(例えば、DNA又はRNA)を放出し得る。核酸は、病原体が何らかの病態、例えば、癌を引き起こしている細胞から放出されることが多い。
【0075】
図1は、EBVを含むNPC細胞を示す。NPC細胞は、ウイルスの多数の、例えば、50個のコピーを含み得る。図1は、(例えば、細胞が死亡する時に)血流中に放出されたEBVゲノムの核酸断片110を示す。核酸断片110は円形で示されている(例えば、EBVゲノムが円形であるように)が、該断片はEBVゲノムの一部に過ぎない。よって、NPC細胞は、対象の血流中にEBV DNAの断片を沈着させることができる。この腫瘍マーカーは、NPCのモニタリング(Lo et al. Cancer Res 1999; 59: 5452-5455)及び予後診断(Lo et al. Cancer Res 2000; 60: 6878-6881)に有用であり得る。
A.特定のウイルスと様々な癌の関係
【0076】
ウイルス感染は、多くの病理学的症状に関係している。例えば、EBV感染は、NPC及びナチュラルキラー(NK)T-細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、胃癌、及び伝染性単核球症と密接に関連している。B型肝炎ウイルス(HBV)感染及びC型肝炎ウイルス(HCV)感染は、肝細胞癌(HCC)の発症リスクの増加と関連している。ヒトパピローマウイルス感染(HPV)は、子宮頸癌(CC)及び頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の発症リスクの増加と関連している。
【0077】
しかし、このような感染症にかかっている全ての対象が関連癌になるわけではない。血漿EBV DNAの供給源は、NPCを有さない者において必ず異なっている。NPC細胞から循環へのEBV DNAの持続的な放出とは異なり、EBV DNAの供給源は、NPCを有さない者では一時的にこのようなDNAを提供するだけである。
B.無細胞サンプル中のウイルスDNAを検出
【0078】
例として、サンプル(例えば、血漿又は血清)中で見出される病原体の核酸は、(1)腫瘍組織から放出され得、(2)非癌細胞、例えば、EBVを担持する残りのB細胞から放出され得、(3)ビリオン内に含有され得る。
【0079】
NPCの病因は、EBV感染と密接に関連している。NPCの流行地域、例えば、中国南部では、ほぼ全てのNPC腫瘍組織にEBVゲノムが存在する。この点に関して、血漿EBV DNAは、NPCのバイオマーカーとして確立されている(Lo et al. Cancer Res 1999; 59:1188-91)。血漿EBV DNAは、治癒を目的とした治療後のNPC対象における残存病変の検出に有用であることが示されている(Lo et al. Cancer Res 1999; 59:5452-5及びChan et al. J Natl Cancer Inst 2002;94:1614-9)。NPC対象における血漿EBV DNAは、200bp未満の短いDNA断片であるため、インタクトなビリオン粒子に由来する可能性が低いことが示されている(Chan et al. Cancer Res 2003, 63:2028-32)。
1.後期のqPCRアッセイ
【0080】
リアルタイム定量PCRアッセイ(qPCR)は、EBVゲノムの特定の領域、特に、BamHI-W及びEBNA-1領域といったEBVゲノムの2つの領域を使用して後期NPCを検出することができる。各EBVゲノムにおいてBamHI-W断片の反復が約6~12個存在し得、各NPC腫瘍細胞においておよそ50個のEBVゲノムが存在し得る(Longnecker et al. Fields Virology, 5th Edition, Chapter 61 “Epstein-Barr virus”。Tierney et al. J Virol. 2011; 85: 12362-12375)。言い換えれば、各NPC腫瘍細胞においてPCR標的のコピーが約300~600(例えば、約500)個存在し得る。
【0081】
図2は、NPC対象及び対照対象における血漿無細胞EBV DNAの比較を示す。カテゴリー(NPC及び対照対象)は、X軸上にプロットされる。Y軸は、BamHI-W領域PCRシステムによって検出された無細胞EBV DNAの濃度(EBV DNAコピー/ml血漿)を示す。BamHI-W領域PCRデータとの強い相関を示したEBNA-1 PCRを使用して、同様な結果が得られた(Spearman rank order correlation, correlation coefficient 5 0.918; P , 0.0005)。
【0082】
図2に示すように、無細胞EBV DNAは、96%(57人中55人)の上咽頭癌(NPC)患者(濃度中央値、21058コピー/ml)及び7%(43人中3人)の対照(濃度中央値、0コピー/ml)の血漿において検出可能であった。
【0083】
更なる分析において、表1は、分析された異なるタイプのサンプルの数を示す。初期分析(コホート1)において、首のしこり、難聴及び鼻出血を含むNPCに一致する症状を呈する6人の対象が耳鼻咽喉科(ENT)クリニックから募集された。コホート1におけるNPC対象は、症状を示さなかった他のコホートで検査された対象より進行した疾患(後期)を有する。Hong Kong Cancer Registryからの履歴データによると、症状を呈し、後にNPCと確定された個体の80%は、医療機関で受診した時点で進行期NPCを有した。
【表1】
【0084】
図3A及び3Bは、異なる対象群についてリアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度を示す。図3Aに示すように、血漿EBV DNA濃度は、検出可能な血漿EBV DNAを有するが、いかなる観察可能な病態もなかった対象と比較して、NPC、リンパ腫、及び伝染性単核球症を有する対象の方がより高かった。図3Bに示すように、登録時に検出可能な血漿EBV DNAを有したがいかなる観察可能な病態もなかった対象について、登録時に測定された血漿EBV DNA濃度は、フォローアップ検査で陰性となった(即ち、血漿EBV DNAが一時的に検出可能であった)対象と比較して、持続的に陽性結果を示した対象の方が高かった(p=0.002、マン・ホイットニー検定)。
2.早期のqPCR結果
【0085】
図4は、早期NPC及び進行期NPCを有する対象における血漿EBV DNAの濃度(コピー/mL血漿)を示す。図4に示すように、進行性NPC症例におけるこの試験血漿無細胞EBV DNAレベル(中央値、47,047コピー/ml。四分位範囲、17,314~133,766コピー/ml)は、早期NPC症例(中央値、5,918コピー/ml。四分位範囲、279~20,452コピー/ml。マン・ホイットニー順位和検定、P<0.001)より有意に高かった。
【0086】
本明細書で言及した通り、後期NPCの検出は、早期検出ほど有用ではない。BamHI-W断片についてリアルタイムPCRを使用した血漿EBV DNA分析の有用性は、無症候性対象の早期NPCを検出するために調査された(Chan et al. Cancer 2013;119:1838-1844)。1,318人の参加者による集団試験において、血漿EBV DNAレベルはEBV DNAコピー数がNPC監視に有用であり得るか否かを調査するために測定された。69人の参加者(5.2%)が、検出可能なレベルの血漿EBV DNAを有し、3人の参加者が、経鼻内視鏡検査及び磁気共鳴イメージングを使用して、最終的にNPCを有すると臨床診断された。よって、この試験における単一血漿EBV DNA検査の陽性的中率(PPV)は、実際にNPCを有する患者の数(n=3)を、実際にNPCを有する患者の数と誤ってNPCを有すると同定された患者の数(n=66)の合計で割って計算すると、約4%である。
【0087】
20,174人の40~62歳の無症候性中国男性のより規模が大きい試験を行った。募集された20,174人のうち、ベースラインPCR検査で検出可能な血漿EBV DNAを有する対象が1,112人(5.5%)であった。そのうち、34人の対象が後にNPCを有すると確認された。残りの1,078人の非癌対象のうち、803人の対象が「一時的に陽性」の血漿EBV DNA結果を示し(即ち、ベースラインでは陽性であったがフォローアップでは陰性であった)、275人が「持続的に陽性」の血漿EBV DNA結果を示した(即ち、ベースライン及びフォローアップの両方でも陽性であった)。検証分析を最初にデータのサブセットを用いて行った。
【0088】
図5は、(左)血漿EBV DNAが持続的に陽性であるが観察可能な病態がない対象、及び(右)検証分析の一環としてスクリーニングによって同定された早期NPC患者の、リアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度を示す。20,174人の無症候性対象のスクリーニングを通って同定されたNPC対象の34人中5人がこの検証分析に含まれた。これら5人の対象は試験に参加する時に無症候性であった。コホート2におけるこれら5人の対象の血漿サンプルは、EBV DNAが持続的に陽性であり、後続で、内視鏡検査及びMRIによってNPCが確認された。これら5人の無症候性NPC病例は、症状を訴えてクリニックで受診し進行期NPCと診断されたコホート1における6人のNPC対象とは異なり、早期であった。
【0089】
図6は、血漿EBV DNAが一時的に陽性(n=803)又は持続的に陽性(n=275)である(それぞれ左又は中央)が観察可能な病態がない対象、及びNPCを有すると同定された対象(n=34)の血漿からのEBV DNA断片の濃度(コピー/ミリリットル)の箱ひげ図を示す。図6は、ベースラインPCR検査で検出可能な血漿EBV DNAを有する1,112人の対象全員についての結果を示す。EBV DNA断片の濃度(コピー/ミリリットル)はリアルタイムPCR分析によって測定された。
【0090】
血漿EBV DNA結果は、「陽性」又は「陰性」と表した。群間の血漿EBV DNA濃度の定量レベルは、リアルタイムPCRによって測定される(図6)。NPC群の平均血漿EBV DNA濃度(942コピー/mL。四分位範囲(IQR)、18~68コピー/mL)は、「一時的に陽性」群(16コピー/mL。IQR、7~18コピー/mL)及び「持続的に陽性」群(30コピー/mL。IQR、9~26コピー/mL)より有意に高かった(P<0.0001、クラスカル・ワリス検定)。しかし、3群間の血漿EBV DNA濃度には多くの重複がある(図6)。
【0091】
図7は、血漿EBV DNAが一時的に陽性又は持続的に陽性である(それぞれ左又は中央)が観察可能な病態がない対象、及びNPCを有すると同定された対象における、リアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度(コピー/ミリリットル)を示す。この72対象のコホートでは、リアルタイムPCRによって測定された血漿EBV DNA濃度に、異なる対象群間で統計的に有意な差はなかった(p値=0.19。クラスカル・ワリス検定)。
3.早期の2つのアッセイ分析
【0092】
この予測スクリーニング試験で使用されたリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイは、小さな腫瘍からの血漿EBV DNAでも、その検出に非常に高い感度を示した。しかし、検査の特異性は低下する。香港におけるNPCの年齢別発生率のピークは、100,000人当たり40人であるが、健康集団のおよそ5%は血漿中に検出可能なレベルのEBV DNAを有する。リアルタイムPCRアッセイによる血漿EBV DNA評価が参加者ごとに1回実施した場合、スクリーニング試験の陽性的中率(PPV)が3.1%であった。
【0093】
リアルタイムPCRアッセイのPPVが低いことを考慮して、2回の2アッセイの有用性を調査した。例えば、上記の以前の試験は、EBV DNAがNPC対象の血漿において持続的に検出可能である傾向があるが、非癌対象の血漿において一時的に現れることを示した。
【0094】
試験では、血漿EBV DNA分析を使用してNPCの症状を有さない20,174人の対象をスクリーニングした。検出可能な血漿EBV DNAを有する対象は、フォローアップ血漿EBV DNA分析を用いておよそ4週間後に再検査された。2つの連続分析で持続的に陽性結果を示した対象は、鼻内視鏡検査及び鼻咽頭の磁気共鳴イメージング(MRI)を用いて更に調査された。募集された20,174人の対象のうち、1,112人は登録時に血漿EBV DNAが陽性であった。そのうち、309人はフォローアップ検査で持続的に陽性であった。血漿中のEBV DNAが持続的に陽性である対象のコホート内で、34人は、鼻内視鏡検査及びMRIで調査された後、NPCを有すると確認された。
【0095】
2時点検査アプローチは、偽陽性率を5.4%から1.4%に減少させ、結果のPPVが11.0%であった。これらの結果によると、初期の陽性血漿EBV DNA結果を示した対象の再検査では、NPC対象を一時的に陽性の結果を示した対象と区別し、より侵襲的で費用のかかる調査、即ち内視鏡検査及びMRIを必要とする対象の割合を大幅に低下させることができた。しかし、血漿EBV DNAの連続検査は、初期の陽性結果を示した対象から追加の血液サンプルを採取する必要があり、これはロジスティックな課題を提起し得る。
C.ウイルスDNAを使用した早期及び後期癌の分析
【0096】
いくつかのケースでは、初期アッセイ(例えば、qPCRアッセイ)後に又はqPCRの代わりとして症状(例えば、腫瘍、例えば、NPC)をスクリーニングするアッセイは、ウイルス参照ゲノムにマッピングしたサンプル(例えば、EBV)からの配列リードの割合を評価するために超並列配列決定を使用することを含み得る。
【0097】
血漿中の無細胞ウイルスDNAを分析するために、標的配列決定(例えば、特別に設計された捕捉プローブ、増幅プライマー)を使用できる。これらの捕捉プローブは、全EBVゲノム、全HBVゲノム、全HPVゲノム及びヒトゲノム内の複数のゲノム領域(chr1、chr2、chr3、chr5、chr8、chr15及びchr22上の領域を含む)をカバーした。分析された血漿サンプルごとに、DNAは4mLの血漿からQIAamp DSP DNA血液ミニキットを使用して抽出された。各ケースについて、全ての抽出されたDNAは、KAPAライブラリー調製キットを使用した配列決定ライブラリーの調製に使用された。12サイクルのPCR増幅は、KAPA PCR増幅キットを使用して配列決定ライブラリーに実行された。増幅産物は、上記で記載されたウイルス及びヒトゲノム領域をカバーするカスタム設計のプローブを使用したSEQCAP-EZキット(Nimblegen)を使用して捕捉した。標的捕捉後、14サイクルのPCR増幅が実行され、産物がIllumina NextSeqプラットフォームを使用して配列決定された。各回の配列決定について、ユニークなサンプルバーコードを有する4~6個のサンプルがペアエンドモードを使用して配列決定された。各DNA断片は、2つの末端の各々から75ヌクレオチド配列決定された。配列決定後、配列決定されたリードは、全ヒトゲノム(hg19)、全EBVゲノム、全HBVゲノム及び全HPVゲノムを含む人工的に組み合わせた参照配列にマッピングされた。組み合わせられたゲノム配列におけるユニークな位置にマッピングされた配列決定されたリードは、下流分析に使用された。ユニークにマッピングされたリード数の中央値は、5,300万(範囲:1,500万~1億4,100万)である。
1.後期
【0098】
図8A及び8Bは、異なる対象群の血漿中EBVゲノムにマッピングされた配列決定された血漿DNA断片の割合を示す。対象は、図3A及び3Bと同様に、コホート1に対応する。
【0099】
図8Aに示すように、標的捕捉後に超並列配列決定を使用したことで、EBVゲノムにユニークにマッピングされたリードの割合は、登録時に検出可能な血漿EBV DNAを有するがいかなる観察可能な病態もない対象と比較して、NPC、リンパ腫及び伝染性単核球症を有する対象の方がより高くなった。パネルBに示すように、登録時に検出可能な血漿EBV DNAを有するがいかなる観察可能な病態もない対象について、登録時に測定された、EBVゲノムにマッピングされたリードの割合は、フォローアップ検査で陰性になる(即ち、一時的に検出可能な血漿EBV DNAを有する)対象と比較して、持続的に陽性結果を示した対象の方がより高かった(p=0.002、マン・ホイットニー検定)。リアルタイムPCRを使用して測定された血漿EBV DNAの濃度と比較して、EBVゲノムにユニークにマッピングされたリードの割合の測定を使用する場合、一時的に陽性結果を示した対象と持続的に陽性結果を示した対象との間の差はより大きかった(19.3倍対1.7倍)。
【0100】
血漿EBV DNAの上昇はNPCと関連している。以前の試験では、NPC症例と血漿EBV DNAが殆ど陰性である健康対照とを比較した。図3A、3B、8A、及び8Bは、NPC症例と血漿EBV DNAが偽陽性である非NPC症例との定量比較を提供する。以下に記載の技術は、病態を有する対象と有さない対象を区別する正確度の向上を可能にすることで、偽陽性を低減する。EBV DNAの文脈において、用語「偽陽性」は、対象が検出可能な血漿EBV DNAを有するがNPC(病原体と関連する病態の例)を有さないことを意味し得る。血漿EBV DNAの存在は真であるが、関連病態(例えば、NPC)の同定は偽である可能性がある。
2.早期
【0101】
図9は、(左)血漿EBV DNAが持続的に陽性であるが観察可能な病態がない対象、及び(右)早期NPC対象における、血漿中EBVゲノムにマッピングされたリードの割合を示す。対象は、図5と同様に、コホート2に対応する。
【0102】
血漿サンプルは、上述した通り、標的濃縮後に配列決定された。コホート2における5人のNPC対象について、それらの血漿サンプルはEBV DNAが持続的に陽性であったが、EBV DNA濃度は、リアルタイムPCR分析に基づく偽陽性血漿EBV DNA結果を示した9人対象と比較して、有意差を示さなかった(P=0.7、マン・ホイットニー検定)。血漿EBV DNA濃度は、NPCの病期と相関することが知られている。よって、早期NPC対象がより低いレベルの血漿EBV DNAを有することは予想外ではない。
【0103】
EBVゲノムにマッピングされた配列決定された血漿DNAリードの割合は、偽陽性症例とコホート2のNPC症例との間で有意差を示さなかった。
【0104】
これらの初期データは、図5及び9に示すアプローチは再発を同定するために偽陽性と早期NPCを区別するのに効果的でない可能性があることを示唆する。
D.早期診断の利点
【0105】
図10は、それぞれ、香港における、様々な病期の癌を有するNPC患者の全生存率、及びNPCの病期分布を示す。対象をより鋭敏にモニタリングして(例えば、内視鏡検査、MRI、PET-CTスキャン)実際に再発がいつ起こったかを特定し、それによって治療をいつ実施すべきかを特定することができることから、早期診断のこのような利点は再発の検出にも適用できる。再発の可能性が高いならば、対象はより頻繁に検査を受けてもよい。したがって、いくつかの実施形態は、癌のより後期の病期に達する患者の数を減少させて、それらの全生存確率を高めるのに有用であり得る。
II.疾患の再発を予測するためのリアルタイムPCR
A.リアルタイムPCRの再発予測感度
【0106】
上述した通り、リアルタイムPCRは、循環ウイルスDNAのレベルを分析することで、ウイルス感染と関連する様々な症状を検出及び区別するために使用できる。例えば、リアルタイムPCR技術は、対象の病態(例えば、癌)の再発を予測するために、治療後サンプルで試みられている。これらの試みは、治療が完了した後に対象においてウイルスDNAが同定されたとすれば、一部の対象は数年内に疾患が再発するという事実に基づいて行われた。
【0107】
しかし、リアルタイムPCRは、治療後サンプル中の残留ウイルスDNAの存在を所望の感度レベルで予測することはしない。例えば、リアルタイムPCRは、治療完了後に実際に再発した対象の約40~50%を検出可能であった。リアルタイムPCRの性能は、治療後サンプルにおける再発の特定の分類を検出する場合に更に低下する。例えば、リアルタイムPCRは、治療後サンプルにおける遠隔再発の検出と比較して、局所再発の予測に使用される場合、感度レベルがより低い(33.3%)。
【0108】
リアルタイムPCRの感度レベルが低い原因の1つは、対象における低い量の循環ウイルスDNAを検出できないことと考えられ得る。対象が癌を有するならば、ウイルスDNAは、該対象の循環中に放出される。特定の治療を完了したが依然として再発が予想される対象について、治療の結果として残存腫瘍が小さくなる可能性があるため、初期にウイルスDNAの濃度が非常に低いと予想される。この特徴にも関わらず、リアルタイムPCRは、ウイルスゲノムの特定の領域又は少しの特定の領域(例えば、約70~100塩基対)のみを検出するように設計されている。残存腫瘍が小さくウイルスDNA濃度が非常に低い場合、リアルタイムPCRが標的とするウイルスゲノムの特定の領域(複数可)がサンプル中に存在しないか又はアッセイの検出限界以下の濃度で存在することから、リアルタイムPCRは偽陰性の結果を出す可能性がある。
【0109】
治療後再発の予測について、ウイルスゲノム全体の捕捉は低い量の残留ウイルスDNAの検出に寄与し得る。本開示の実施形態では、プローブの使用によりサンプル中のウイルス配列の全て(例えば、約170キロ塩基)の捕捉が可能になることに認識する。ウイルスゲノム全体が捕捉されると、配列決定を行って核酸分子の様々な特徴を同定してより高い感度レベルで上咽頭癌(NPC)、特定のタイプのリンパ腫及び胃癌の再発を検出することができる。
B.実施例
【実施例
【0110】
上咽頭癌の治療を受けた737人の患者から治療後サンプルを採取した(Chan et al. J Clin Oncol. 2018;36: 3091-3100)。治療後サンプルの各々は初期に、国際がん対策連合(UICC。第6版)によるステージIIB、III、IVA、又はIVBの局所領域進行性NPCと組織学的に診断されたが、一次放射線療法又は化学放射線療法の完了後に持続性局所領域疾患又は遠隔転移の臨床的証拠がなかった。加えて、治療後の静脈サンプルを治療完了後の6~8週間で採取した。フォローアップ間隔の中央値は6.6年であった。737人の患者のうち、643人の患者(87%)は、治療後の最初の1年間、継続的な臨床的寛解を示したが、94人の患者(13%)は疾患の再発を報告した。該94人の再発患者のうち、24人の患者(26%)は局所領域不全、70人の患者(74%)は遠隔転移を発現した。
【0111】
EBV Bam-HI W断片を標的とするリアルタイムPCRを、治療後サンプルごとにウイルスDNA濃度(コピー/ミリリットル)を同定するために行った。その後、各治療後サンプルのウイルスDNA濃度を、対応する再発分類に従ってプロットした。分類は、継続的な臨床的寛解を示した患者に対応する第1分類、及び治療完了後の1年内に再発した患者に対応する第2分類を含んだ。再発分類の下で、患者を更に、(1)局所再発に対応する局所再発(LR)分類、及び(2)他の臓器に転移した癌を示す遠隔転移(DM)分類に分けた。
【0112】
図11は、リアルタイムPCRを使用して治療後サンプルから検出された血漿EBV DNA濃度を示す。x軸は、治療後サンプルと関連付けられた分類を表し、y軸は、対応する治療後サンプルのウイルスDNA濃度を表す。寛解分類下の患者に対応する643個の治療後サンプルにおいて、血漿EBV DNAは、サンプルの137個(21%)で検出された。再発分類下の94個の治療後サンプルにおいて、66個(70%)は検出可能な血漿EBV DNAを有した。その後、94個の再発サンプルを、LR及びDM分類に更に分けた。DM分類下の70個の治療後サンプルについて、58個(83%)は検出可能な血漿EBV DNAを有した。LR分類下の24個の治療後サンプルについて、検出可能な血漿EBV DNAを有するのは8個(33%)のみであった。
【0113】
よって、リアルタイムPCRは、疾患の再発を発現した患者の70%においてしかウイルスDNAを検出できなかった。よって、このような低い感度は、リアルタイムPCRは治療後サンプル中のウイルスDNAを検出するための最も有効な技術でない可能性があることを示す。
【0114】
図12は、リアルタイムPCRによって特定された血漿EBV DNA状態に応じて群化されたNPC患者の全生存率を同定するグラフ1200を示す。カプラン・マイヤー生存分析を使用して、異なる患者群の生存率を分析した。血漿中に所定の閾値より下のEBV DNAを有する患者は「検出不能」と示された一方、血漿EBV DNAが所定の閾値より上の患者は「検出可能」と同定された。この実施例において、所定の閾値は20コピー/mLに設定した。検出不能な血漿EBV DNAを有する患者の全生存率は破線1205で表され、検出可能な血漿EBVを有する患者の全生存率は実線1210で表される。リアルタイムPCRによる検出可能な血漿EBV DNAを有する患者の全生存率は、検出可能な血漿EBV DNAを有さない患者より有意に低かった(p<0.0001、ログランク検定)(図a)。qPCRによる検出不能な及び検出可能な血漿EBV DNAを有する患者の5年生存率は、それぞれ87.6%及び60.4%であった。2群間のハザード比は3.24であった(95%CI、2.40~4.39)。
【0115】
グラフ1200は、以前に特定の疾患の治療を受けた対象を含めて、対象の全生存率の特定に、検出可能な血漿EBV DNAの影響が大きいことを示す。したがって、血漿EBV DNAが所与の生体サンプル(例えば、治療後サンプル)から正確に検出できれば、全生存率特定の正確度は向上する。リアルタイムPCRでは「検出不能」群の生存率が「検出可能」群より高いが、偽陰性の発生率が比較的高い。よって、より正確な分類が望ましい。例えば、残存癌細胞から放出された血漿EBV DNAのより高感度な検出により、破線1205を100%近くに上昇させることが容易になる。よって、「検出不能」のカテゴリー下の患者は、疾患再発の確率がより低く、追加治療を避けることができる。
III.治療後サンプル中のウイルスDNAを検出するための配列決定
【0116】
配列決定技術は、癌スクリーニング用のリアルタイムPCRの代替技術として使用されている。例えば、20,000人超の対象が参加した臨床試験では、リアルタイムPCRによる血漿EBV DNA分析がNPCの症状を有さない対象におけるNPCのスクリーニングに有用であることが示されている(Chan et al. N Engl J Med. 2017;377:513-522)。試験において、初期に血漿EBV DNA検査で陽性結果を示した対象は、4週間後に再検査された。2回持続的に陽性の結果を示した対象は、鼻内視鏡検査及びMRI検査で更に調査された。この取り決めの下で、34人のNPC患者が同定された。このNPCスクリーニングプロトコルの感度及び特異性は、それぞれ97.1%及び98.6%であった。スクリーニングによって同定された患者は、スクリーニングを受けなかった歴史的コホートと比較して、遥かに早期の病期分布を有した。その結果、スクリーニングされた対象は、0.1のハザード比で優れた無増悪生存期間を有した。
【0117】
血漿EBV DNA分子のサイズに対応する分析も、NPC患者とリアルタイムPCRによる検出可能な血漿EBV DNAを有する非NPC対象を区別できる次世代配列決定(NGS)によって実施された(Lam et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018;115:E5115-E5124)。実際、NGSを使用したサイズ及び個数の組み合わせ分析の特異性は、元のスクリーニングプロトコルの98.6%から99.3%に向上したが、感度は97.1%のままであった。特異性の向上により、陽性的中率は11%から19.6%に向上した。
【0118】
PCRベースの技術は典型的に、特異性が最適化される。これは、殆どの対象が癌を患っていない癌スクリーニングに有効であり得る。しかし、かかる技術は、治療後サンプルにおける再発の予測にあまり有効ではない。これは、かかる予測は通常、癌と診断され治癒を目的とした療法を受けた対象に対して行われるためである。この患者群において、適時の治療を実現するために、任意の残存癌の高感度な検出が望ましい。よって、高感度を達成すれば、再発の予測に有利であり得る。高い特異性で機能できるにも関わらず、PCRベースの技術は、高感度で真陽性を同定するのにあまり性能が高くない。本開示は、配列決定でより高い感度をもたらすことができるか否かを調査する。そこで、配列決定技術は、治療後サンプルにおける再発予測により高い正確度を提供することが示される。
【0119】
配列決定技術は、リアルタイムPCRより大幅に高い感度で治療後サンプルにおける再発を予測することができた。よって、本技術は、治癒を目的とした癌治療を受けたNPC患者における血漿EBV DNAの分析用に配列決定を適用することを含むことができる。これは、治療後サンプルに癌を患っている又は患った対象が含まれるという事実に帰すると考えられる。このように、再発予測の正確度は感度を最大化することで向上する。
【0120】
上記で言及した及び以下により詳細に説明するように、ヒトゲノムの標的配列決定及び病原体ゲノム(例えば、ウイルスゲノム)の濃縮を使用して、分析されるヒト及び病原体DNAの所望の割合を提供することができ、これにより、より高い正確度を提供することができる。捕捉プローブでカバーされるヒトゲノムの割合は、該捕捉プローブでカバーされるEBVゲノムの割合より小さくてもよい。場合によっては、捕捉プローブでカバーされるヒトゲノムの割合は、癌の再発を予測する場合に特異性及び/又は感度を増加するために調整される。標的捕捉配列決定の代替として、治療後サンプルに対して全ゲノム配列決定又はランダム配列決定を行って治療後サンプル中の無細胞核酸分子の個数及びサイズデータを導き出すことができる。
IV.疾患の再発を予測するための個数ベースの分析
【0121】
標的配列決定から生成された配列リードは、病態の再発を予測するために、アライメントされ、そして分析されてもよい。例えば、個数ベースの分析を行ってウイルス参照ゲノムにアライメントする配列リードの量を特定することができる。ウイルス参照ゲノムにアライメントしている配列リードの量は、配列リードの総数に対する、ウイルス参照ゲノムにアライメントされた配列リードの割合を含み得る。場合によっては、ヒトDNAに対するウイルス核酸の相対量(存在量)の任意の関数又は導関数を使用することができ、ここで相対量の例としては、ウイルス核酸及びヒトDNAの量の間の比(例えば、割合)又は差を含む。アライメントされたリードの特定された量は、特定のカットオフ値と比較できる。該量が該カットオフ値を超える場合、所与の対象の疾患の再発を予測できる。
【0122】
図9に示すように、標的配列決定は、早期NPCから偽陽性を区別するのにあまり性能が高くない傾向がある。したがって、最初は、標的配列決定は、疾患を有すると既に診断された患者における疾患の再発を予測するのに適しない予想であった。しかし、治療後サンプル中の低いレベルのEBV DNAを検出することで、標的配列決定は、驚いたことに、かかるデータを使用して継続的な臨床的寛解を示した患者と疾患が再発した患者(例えば、局所再発、及び遠隔転移)を区別するのに有用であった。当初は懐疑的であったにも関わらず、標的配列決定は、疾患の再発の予測において予想外の正確度増加を示した。更に、血漿中のEBV DNAの定量化におけるより高い感度及びより良好な精度により、異なる臨床シナリオでの管理を指導するために様々な閾値を採用することができる。例えば、血漿EBV DNAの2つの閾値(高及び低)を使用できる。高閾値より高い血漿EBV DNA濃度を有する患者について、化学療法薬による先制治療を施して隠れた癌細胞を除去することができる。高閾値と低閾値の間の血漿EBV DNA濃度を有する患者について、高頻度のフォローアップを手配して臨床進捗をモニタリングすることができる。下限閾値以下の血漿EBV DNAを有する患者について、フォローアップの頻度をより低くすることができる。
A.配列リードの割合
【0123】
治療後サンプル中の無細胞ウイルスDNAを分析するために、標的配列決定(例えば、特別に設計された捕捉プローブによる捕捉濃縮を使用)を使用して配列リードを生成することができる。様々な実施において、これらの捕捉プローブは、全EBVゲノム及びヒトゲノムにおける複数のゲノム領域(例えば、領域chr1、chr2、chr3、chr5、chr8、chr15及びchr22を含むが、これらに限定されない)をカバーすることができる。様々なタイプの標的配列決定(例えば、特別に設計された捕捉プローブ、増幅プライマー)を使用して対象のゲノム(例えば、ヒトゲノム)に対して(例えば、ウイルスゲノムの全ての遺伝子座又は特定の遺伝子座にわたって)ウイルスゲノムのDNAを濃縮することができ、かかる標的配列決定は配列リードを生成するために行うことができる。配列決定後、配列決定されたリードは、全ヒトゲノム(hg19)及び全EBVゲノムを含む人工的に組み合わせた参照配列にマッピングすることができる。組み合わせゲノム配列におけるユニークな位置にマッピングされた配列決定されたリードは、下流分析に使用することができる。マッピングされたリード数の中央値は、1,220万(範囲:180万~9,760万)である。
【0124】
その後、治療後サンプルごとに、ウイルスに対応するウイルス参照ゲノムにアライメントしている配列リードの量を特定するために、マッピングされたリードを分析した。配列リードの量は、治療後サンプル中のウイルスDNA量を表すために使用できる。配列リードの量を使用することで、治療後サンプルの各々中のウイルスDNA量を表すための様々なタイプのメトリックは得られる。例えば、メトリックは、血漿中の全DNAに対するウイルスDNAの百分率を含み得る。別の例では、メトリックは、血漿中の全DNAの濃度とウイルス参照ゲノムにアライメントされたDNA分子の分率との積を表すことができる。メトリックの他の例としては、(i)ウイルスDNA断片の数と非ウイルスDNA断片の数との比、及び(ii)任意の配列決定されたサンプル中の異なるウイルスDNA断片の総数を含み得る。
【0125】
治療後サンプルごとに測定された配列リードの量を、サンプルの対応する再発分類に従ってプロットした。分類は、継続的な臨床的寛解を示した患者に対応する第1分類、及び再発した患者に対応する第2分類を含んだ。再発分類の下で、患者を、(1)局所再発に対応する局所再発(LR)分類、及び(2)他の臓器に転移した癌を示す遠隔転移(DM)分類に更に分けた。
B.実施例
【0126】
上咽頭癌の治療を受けた737人の患者から治療後サンプルを採取した(Chan et al. J Clin Oncol. 2018;36: 3091-3100)。治療後サンプルの各々は初期に、国際がん対策連合(UICC。第6版)によるステージIIB、III、IVA、又はIVBの局所領域進行性NPCと組織学的に診断されたが、一次放射線療法又は化学放射線療法の完了後に持続性局所領域疾患又は遠隔転移の臨床的証拠がなかった。加えて、治療後の静脈サンプルを治療完了後の6~8週間で採取した。フォローアップ間隔の中央値は6.6年であった。737人の患者のうち、643人の患者(87%)は、フォローアップ期間の最初の1年間、継続的な臨床的寛解を示したが、94人の患者(13%)は疾患の再発を報告した。該94人の再発患者のうち、24人の患者(26%)は局所領域不全、70人の患者(74%)は遠隔転移を発現した。標的捕捉配列決定を使用して治療後サンプルごとに配列リードの割合を同定した。
【0127】
図13は、標的捕捉配列決定を使用して治療後サンプルから検出された配列リードの割合を同定するグラフを示す。x軸は、治療後サンプルと関連付けられた分類を表し、y軸は、対応する治療後サンプルの血漿EBV DNAリードの割合を表す。図13に示すように、配列決定されたリードの総数に対するEBV DNAリードの百分率は、継続的な寛解を示した患者と比較して、後続で疾患が再発したNPC患者の方が有意に高かった(p<0.01、マン・ホイットニー順位和検定)。後続で疾患が再発した患者のうち、遠隔転移を発現した患者は、局所再発を発現した患者と比較して、EBV百分率が有意に高かった(p<0.01、マン・ホイットニー順位和検定)。
【0128】
低いレベルのEBV DNAは、継続的な臨床的寛解を示した患者の治療後サンプルから検出され、これはリアルタイムPCRに比べて大幅な向上を示した。同様に、局所再発及び遠隔転移分類下の全ての治療後サンプルは、検出可能なレベルのウイルスDNAを含んだ。また、治療後の再発サンプルと寛解サンプルの区別を同定できる。このような所見は、1つ又は複数のカットオフ値(例えば、0.01%、0.1%、0.45%、0.5%、1%)を同定するために使用できる。
C.方法
【0129】
図14は、本発明の実施形態に係る、対象の無細胞混合物中のウイルス核酸断片の配列リードを使用して疾患の再発を予測する個数ベースの方法1400を図示するフローチャートである。方法1400の態様は、本明細書に記載のように、例えば、コンピュータシステムによって実行できる。
【0130】
方法1400は、以前に病態の治療を受けており現在該病態の症状がない対象の疾患の再発を予測するために使用できる。疾患の再発は、対象の生体サンプルから予測でき、ここで該生体サンプルは、正常組織(即ち、病態に影響されない細胞)に由来する無細胞DNA断片と病態に影響される又は影響されている疾患組織(例えば、病態が対象に存在する場合)に由来する無細胞DNA断片(例えば、EBV DNA)との混合物を含む。疾患組織に由来する無細胞DNA断片は、臨床上関連するDNAと考えられ、正常組織は他のDNAと考えられる。場合によっては、病態は、ウイルス(例えば、EBV、HBV、又はHPV)によって引き起こされる癌に対応する。癌は、上咽頭癌、頭頸部扁平上皮癌、子宮頸癌、及び肝細胞癌のうちの1つであり得る。
【0131】
ブロック1410で、生体サンプルを対象から取得する。例として、生体サンプルは、血液、血漿、血清、尿、唾液、汗、涙、及び痰、並びに本明細書で提供される他の例であり得る。いくつかの実施形態において(例えば、血液の場合)、生体サンプルは、例えば、血液を遠心分離して血漿を得るように、無細胞核酸分子の混合物に精製してもよい。
【0132】
ブロック1420で、無細胞核酸分子の混合物を配列決定して複数の配列リードを得る。配列決定は、例えば、超並列配列決定又は次世代配列決定を使用し、単一分子配列決定を使用し、及び/又は二本鎖又は一本鎖DNA配列決定ライブラリー調製プロトコルを使用するように、様々な方式で行い得る。当業者であれば、使用され得る様々な配列決定技術を理解するであろう。配列決定の一環として、一部の配列リードは細胞核酸に対応してもよい。
【0133】
配列決定は、本明細書に記載の標的捕捉配列決定としてもよい。例えば、生体サンプルは、ウイルスからの核酸分子について濃縮することができる。生体サンプルの、ウイルスからの核酸分子についての濃縮は、ウイルスのゲノムの一部又は全部に結合する捕捉プローブを使用することを含み得る。生体サンプルは、ヒトゲノムの一部、例えば、常染色体の領域からの核酸分子について濃縮してもよい。他の実施形態において、配列決定はランダム配列決定を含む。
【0134】
統計的に有意な数の無細胞DNA分子は、分画濃度を正確に特定するように、分析してもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1,000個の無細胞DNA分子は、分析される。他の実施形態において、少なくとも10,000又は50,000又は100,000又は500,000又は1,000,000又は5,000,000個の無細胞DNA分子、又はそれ以上の無細胞DNA分子は分析され得る。
【0135】
ブロック1430で、無細胞核酸分子の混合物の配列決定から得られた複数の配列リードを受信する。配列リードは、例えば、有線若しくは無線通信又は取り外し可能な記憶装置を介して、配列決定を実行した配列決定装置に通信可能に結合され得るコンピュータシステムによって受け取られてもよい。
【0136】
ブロック1440で、ウイルスに対応するウイルス参照ゲノムにアライメントしている複数の配列リードの量を特定する。配列リードをウイルスゲノムにアライメントする例は本明細書で提供する。量は、ウイルス参照ゲノムにアライメントする配列リードの数に基づいて様々な方式で特定できる。例えば、ウイルス参照ゲノムにアライメントされた配列リードの数は正規化してもよい。様々な実施形態において、正規化は、生体サンプル(又は精製された混合物)の体積、又はヒト参照ゲノムにアライメントされた配列リードの数に対するものであり得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、ウイルス参照ゲノムにアライメントしている配列リードの量は、配列リードの総数に対する、ウイルス参照ゲノムにアライメントされた配列リードの割合を含む。配列リードの総数は、ウイルス参照ゲノムにアライメントされた配列リードとヒトゲノムにアライメントされた配列リードとの合計であってもよい。様々な実施において、ヒトDNAに対するウイルス核酸の相対量(存在量)の任意の関数又は導関数を使用することができ、ここで相対量の例としては、ウイルス核酸とヒトDNAとの比(例えば、割合)又は差を含む。
【0138】
ブロック1450で、ウイルス参照ゲノムにアライメントしている配列リードの量をカットオフ値と比較して対象の病態の再発を予測する。例えば、カットオフ値は、以下に示すように、血漿EBV DNAリードの割合で0.45%であってもよく、図15の水平破線1510で表すことができる。再発の予測は、病態の再発の分類を特定することを含み得る。分類は、寛解、再発、局所領域不全、又は遠隔転移を含み得る。
【0139】
カットオフ値は、再発の分類が既知の1組の訓練サンプルから決定してもよい。例として、カットオフ値は、(1)病態を有すると分類された訓練サンプルのウイルス参照ゲノムにアライメントしている配列リードの最低量を下回る値、(2)病態を有すると分類された訓練サンプルのウイルス参照ゲノムにアライメントしている配列リードの平均量からの指定された数の標準偏差、又は(3)訓練サンプルの分類を正確に特定するための特異性及び感度を使用して選択することができる。
【0140】
場合によっては、カットオフ値は、特異性の低下を補償しながら感度を増加するように、又はその逆で、調整される。例えば、EBV DNAの割合のカットオフ値は、感度を向上させるために、0.45%から0.1%に下げてもよい。実際に、個数ベースの分析では、以前に治療を完了した対象の再発を予測するための最適な感度及び特異性を同定することができる。
D.カットオフ値の決定
【0141】
異なるカットオフ値を選択して、疾患の再発を予測するための感度及び特異性を最適化することができる。いくつかの実施形態において、カットオフ値は、癌の再発の分類を特定する感度が少なくとも80%であり、癌の再発の分類を特定する特異性が少なくとも70%であるように、選択してもよい。追加的に又は代替的に、カットオフ値は、局所再発及び遠隔転移を含む特定のタイプの再発を予測するための感度及び特異性を増加するように選択してもよい。例えば、カットオフ値は、局所再発の分類を特定する感度が少なくとも50%であり、癌の再発の分類を特定する特異性が少なくとも70%であるように、選択してもよい。別の例では、カットオフ値は、遠隔転移の分類を特定する感度が少なくとも80%であり、及び/又は癌の再発の分類を特定する特異性が少なくとも70%であるように、選択してもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、ウイルス参照ゲノムにアライメントしている配列リードの量のカットオフ値は、対象が寛解状態にあるか又は再発しているかを特定するために使用され得る。例えば、再発した対象は、寛解状態にある又は非癌細胞から検出可能な血漿EBV DNAを有する対象より、EBV DNAの割合が高い。いくつかの実施形態において、EBV DNAの割合のカットオフ値は、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.15%、約0.2%、約0.25%、約0.3%、約0.35%、約0.4%、約0.45%、約0.5%、約0.55%、約0.6%、約0.65%、約0.75%、約0.8%、約0.85%、約0.9%、約0.95%、約1%、又は約1%より大きくてもよい。例えば、カットオフ値は、血漿EBV DNAの0.046%~0.385%の範囲から選択してもよい。いくつかの実施形態において、カットオフ値以下のEBV DNAの割合は、再発を示すことができる。いくつかの実施形態において、カットオフ値以上のEBV DNAの割合は、再発を示すことができる。
【0143】
1つの実施形態において、配列リードの量のカットオフ値は、分析中の癌患者の最低割合を下回る任意の値として決定してもよい。他の実施形態において、カットオフ値は、例えば、癌患者の平均サイズ指数-1標準偏差(SD)、平均-2SD、及び平均-3SDに決定してもよいが、それらに限定されない。更に他の実施形態において、カットオフは、ウイルスゲノムにマッピングされた血漿DNA断片の割合の対数変換後に、例えば、癌患者の値の対数変換の平均-1SD、平均-2SD、平均-3SDに決定してもよいが、それらに限定されない。更に他の実施形態において、カットオフは、受信者動作特性(ROC)曲線を使用することで、又はノンパラメトリック方法によって決定してもよく、例えば再発した患者の100%、95%、90%、85%、80%を含むが、それらに限定されない。
V.個数及びサイズに基づく組み合わせ技術
【0144】
EBV DNA断片の量に加えて、各血漿サンプルの配列決定結果に基づいてEBV DNA断片のサイズも分析した。この試験では、サイズベースの分析(例えば、サイズ分布、サイズ比)が治癒を目的とした治療を受けたNPC患者の疾患の再発を予測する性能を強化できるか否かも探索した。例えば、以前に病態の治療を受けており該病態に無症候となっている癌患者の生体サンプルからの血漿ウイルスDNAリード(例えば、EBV、HBV、及びHPV)のサイズ分布における差異を調べた。癌対象の血漿ウイルス断片のサイズ分布は、同じ対象の血漿ヒトDNA断片より、統計的に有意に短かった。サイズ分布の変動は、配列決定された血漿DNAのサイズプロファイルパターンにおける個体間の変動を同定するために使用できる。
【0145】
いくつかの実施形態において、配列決定は、各サンプル中の無細胞ウイルス核酸のサイズを測定するために使用される。例えば、各配列決定された血漿DNA分子のサイズは、配列の開始及び終了座標から導き出すことができ、ここで該座標は、配列リードをウイルスゲノムにマッピング(アライメント)することで特定できる。様々な実施形態において、DNA分子の開始及び終了座標は、単一分子配列決定で達成され得るように、2つのペアエンドリード又は両端をカバーする単一リードから特定できる。追加的に又は代替的に、無細胞ウイルス核酸のサイズは、コンピュータで、又は電気泳動等の物理的プロセスを使用して、測定できる。
【0146】
場合によっては、サイズ分布は、横軸上に核酸断片のサイズによるヒストグラムとして表示できる。各サイズ(例えば、1bp分解能)での核酸断片の数は、例えば、生の数値又は頻度百分率として、決定して縦軸上にプロットすることができる。サイズの分解能は、1bp超(例えば、2、3、4、又は5bp分解能)であってもよい。サイズ分布(サイズプロファイルとも呼ばれる)は、NPC対象からの無細胞混合物中のウイルスDNA断片が、観察可能な病態のない対象より統計的に長いことを判定するために使用できる。
A.サイズ比
【0147】
個体間で特定のサイズ範囲(例えば、80~110塩基対)内にある血漿ウイルスDNAリード(例えば、EBVリード)の割合を比較するために、血漿ウイルスDNA断片の量は、同じサイズ範囲内の常染色体DNA断片の量に正規化してもよい。このメトリックは、サイズ比とする。サイズ比は、対応するサイズ範囲内の常染色体(例えば、常染色体DNA断片)の割合で割った特定のサイズ範囲内の血漿ウイルスDNA断の割合によって定義できる。例えば、80~110塩基対のEBV DNA断片のサイズ比は下記式となる。
【数1】
サイズ比は、各サンプル中の短いDNA断片の相対割合を示すことができる。EBV DNAのサイズ比が低いほど、サイズが80~110bpのEBV DNA分子の割合が低くなる。
【0148】
他の実施形態において、EBV DNA又はヒトDNAの異なるサイズ範囲は、サイズ比の計算に使用できる。サイズ範囲の下限の例としては、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、110bp、120bpを含むが、それらに限定されない。サイズ範囲の上限の例としては、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、110bp、120bp、130bp、140bp、又は150bpを含むが、それらに限定されない。更に他の実施形態において、EBV DNA及び/又はヒトDNAに1つより多くのサイズ範囲が使用できる。いくつかの実施形態において、EBV DNA及びヒトDNAのサイズ範囲は異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、サイズ分布を測定するために、例えば、1つ又は複数の選択されたサイズ範囲に収まるEBV DNA断片の数、EBV DNA断片と非EBV DNA断片のサイズの平均値又は中央値、EBV DNA断片のサイズの平均値、中央値若しくは最頻値の間の比を含むがそれらに限定されない、他のメトリックを使用してもよい。
【0149】
いくつかの実施形態において、配列決定されたリードのサイズ比は、EBV DNA断片が癌細胞からか又は非癌細胞からかを特定するために使用される。よって、このような情報は、検出されたEBV DNA断片が再発を示すか否かを判定するために有用であり得る。様々なカットオフは、EBV DNA断片とヒトDNA断片、及び/又は癌性EBV DNA断片と非癌性EBV DNA断片を区別するために使用できる。カットオフ値を下回るEBV DNA断片の量は、対応する対象が継続的な臨床的寛解状態にあるか又は再発しているか(例えば、局所再発、遠隔転移)を分類するように測定してもよい。
【0150】
他の実施形態では、EBVゲノムにアライメントする無細胞サンプル中の配列リードのサイズ分布(例えば、平均値、中央値、最頻値、別のサイズ範囲での量に対する1つのサイズ範囲でのリードの量の比)の他の統計値を使用して疾患の再発を予測することができる。
B.実施例
【0151】
上咽頭癌の治療を受けた737人の患者から治療後サンプルを採取した(Chan et al. J Clin Oncol. 2018;36: 3091-3100)。治療後サンプルの各々は初期に、国際がん対策連合(UICC。第6版)によるステージIIB、III、IVA、又はIVBの局所領域進行性NPCと組織学的に診断されたが、一次放射線療法又は化学放射線療法の完了後に持続性局所領域疾患又は遠隔転移の臨床的証拠がなかった。加えて、治療後の静脈サンプルを治療完了後の6~8週間で採取した。フォローアップ間隔の中央値は6.6年であった。737人の患者のうち、643人の患者(87%)は、フォローアップ期間の最初の1年間、継続的な臨床的寛解を示したが、94人の患者(13%)は疾患の再発を報告した。該94人の再発患者のうち、24人の患者(26%)は局所領域不全、70人の患者(74%)は遠隔転移を発現した。標的捕捉配列決定を使用して各治療後サンプル中の無細胞ウイルス核酸のサイズを評価した。
【0152】
図15は、標的捕捉配列決定を使用して治療後サンプルから検出されたEBV DNAの割合及びサイズ比を同定するグラフを示す。x軸は、治療後サンプルの80~110bpのサイズ範囲内のEBV DNAサイズ比を表し、y軸は、対応する治療後サンプルの血漿EBV DNAリードの割合を表す。治療後サンプルの各々を、円形で表される寛解、角形で表される遠隔転移(DM)、又は三角形で表される局所領域不全(LR)にあると同定した。カットオフを再発予測に使用する例示的な例として、図15は、サイズ比のカットオフ値9を表す垂直破線1505、及び血漿EBV DNAリードの割合のカットオフ値0.45%を表す水平破線1510を示す。カットオフ値9を下回るサイズ比及びカットオフ値0.45%を上回るEBV DNAの割合を有する配列リードを使用して、対応する対象が再発することを予測した。
【0153】
図15に示すように、上記のカットオフ基準下の円形及び角形は、患者94人中63人(67%)が後続で疾患が再発することを示す。後続で遠隔転移を発症する70人の対象について、56人(80%)が同定された。後続で局所再発を発症する24人の対象について、7人(29%)が同定された。継続的な寛解にある643人の患者について、583人(91%)がEBV DNAの量カットオフ値(例えば、水平破線1510で表される0.45%のEBV DNA割合)及びサイズカットオフ値(例えば、垂直破線1505で表される9のサイズ比)の範囲外であった。
【0154】
よって、標的捕捉配列決定を使用した組み合わせ分析は、治療完了後の最初の1年内に再発する治療後サンプルを予測するために、リアルタイムPCR(それぞれ70%及び79%)よりも高い感度及び特異性(それぞれ67%及び91%)の組み合わせを有した。これは、組み合わせ分析が治療後サンプルにおける再発の予測にリアルタイムPCRより大幅に有効であることを示す。
C.方法
【0155】
図16は、本発明の実施形態に係る、ウイルス核酸断片の個数ベースの分析とサイズベースの分析を組み合わせて疾患の再発を予測した方法のフローチャートである。該方法の少なくとも一部はコンピュータシステムによって実行され得る。
【0156】
方法1600は、生体サンプルを分析して、以前に病態の治療を受けており、現在該病態の症状がない対象からの生体サンプルの再発を予測することができる。疾患の再発は、対象の生体サンプルから予測でき、ここで該生体サンプルは、正常組織(即ち、病態に影響されない細胞)に由来する無細胞DNA断片と病態に影響される又はされている疾患組織(例えば、病態が対象に存在する場合)に由来する無細胞DNA断片(例えば、EBV DNA)との混合物を含む。疾患組織に由来する無細胞DNA断片は、臨床上関連するDNAと考えられ、正常組織は、他のDNAと考えられる。場合によっては、病態は、ウイルス(例えば、EBV、HBV、又はHPV)によって引き起こされる癌に対応する。癌は、上咽頭癌、頭頸部扁平上皮癌、子宮頸癌、及び肝細胞癌のうちの1つであり得る。
【0157】
ブロック1610で、第1アッセイを実行する。第1アッセイは、対象の第1生体サンプルからの複数の無細胞核酸分子を分析して、ウイルスに対応するウイルス参照ゲノムにアライメントしている該複数の無細胞核酸分子の第1量を特定することができる。例として、第1アッセイは、例えば、方法1400で実行されるように、配列決定を含み得る。他の例はリアルタイムPCR又はデジタルPCRである。
【0158】
ブロック1620で、サイズベースの分析を使用して第2アッセイを実行する。ブロック1622及び1624は、第2アッセイの実行の一環として実行できる。第2アッセイは、第1生体サンプルと同じ又は異なり得る第2生体サンプルに対して実行することができる。第1生体サンプル及び第2生体サンプルは、同じ血液サンプル(例えば、異なる血漿/血清部分)からのものであってもよい。いくつかの実施形態において、第2アッセイは、第1量が第1カットオフを上回る場合にのみ実行される。
【0159】
ブロック1622で、第2生体サンプル中の複数の核酸分子の各々のサイズを測定する。サイズは、任意の好適な方法、例えば、上記の方法を通じて測定され得る。例として、測定されたサイズは、長さ、分子量、又は長さに比例する測定パラメーターであり得る。
【0160】
いくつかの実施形態において、核酸分子の両末端を配列決定しゲノムにアライメントして、核酸分子の開始及び終了座標を特定し、それによって、サイズの例である塩基単位の長さを得ることができる。かかる配列決定は、例えば、本明細書に記載の捕捉プローブを含む標的捕捉配列決定であり得る。サイズを特定するための他の例示的な技術は、電気泳動、光学的方法、蛍光ベースの方法、プローブベースの方法、デジタルPCR、ローリングサークル増幅、質量分析、融解分析(又は融解曲線分析)、分子ふるい等を含む。質量分析の例として、分子が長いほど質量が大きくなる(サイズ値の例)。
【0161】
ブロック1624で、ウイルス参照ゲノムからの複数の核酸分子のサイズに対応する統計値を特定する。いくつかの実施形態において、統計値は、(1)所与の範囲内のサイズを有するウイルス参照ゲノムにアライメントする核酸分子の配列リードの第1割合と、(2)該所与の範囲内のサイズを有するヒト参照ゲノムにアライメントする核酸分子の配列リードの第2割合とのサイズ比を含み得る。様々な実施形態において、所与の範囲は、約80~約110塩基対、約50~約75塩基対、約60~約90塩基対、約90~約120塩基対、約120~約150塩基対、又は約150~約180塩基対であり得る。他の実施形態において、統計値は、サイズ比の逆数であり得るため、サイズ指数を使用する。
【0162】
統計値は、ウイルス参照ゲノムからの複数の核酸分子のサイズ分布に対応してもよい。サイズ閾値より小さい断片の累積頻度は、統計値の例である。統計値は、全体サイズ分布の尺度、例えば、大きな断片の量に対する小さな断片の量を提供できる。別の例として、統計値は、(1)ウイルス参照ゲノムからの生体サンプル中の、第1サイズ範囲内の複数の核酸分子の第1量と、(2)ウイルス参照ゲノムからの生体サンプル中の、該第1サイズ範囲と異なる第2サイズ範囲内の複数の核酸分子の第2量との比を含み得る。例えば、第1範囲は、第1サイズ閾値を下回る断片であり得、第2サイズ範囲は、第2サイズ閾値を上回る断片であり得る。2つの範囲は、例えば、第2サイズ範囲が全てのサイズである場合、重複してもよい。
【0163】
様々な実施形態において、統計値は、平均値、最頻値、中央値、又はサイズ分布の平均値であり得る。他の実施形態において、統計値は、ウイルス参照ゲノムからの生体サンプル中の、サイズ閾値(例えば、150bp)を下回る複数の核酸分子の百分率であり得る。かかる統計値について、対象は、統計値がカットオフ値を下回る場合、病態が陽性であると特定できる。
【0164】
いくつかの実施形態において、統計値は、異なる範囲内のサイズを有し且つウイルス参照ゲノムにアライメントしている無細胞核酸分子の量を使用して正規化できる。別の例として、統計値は、所与の範囲内のサイズを有し且つ及び常染色体ゲノムにアライメントしている無細胞核酸分子の量を使用して正規化できる。
【0165】
ブロック1630で、第1量を第1カットオフと比較する。第1量が第1カットオフを超える(例えば、上回る)か否かを判定してもよい。例えば、第1カットオフは、血漿EBV DNAリードの割合について0.45%であり得、図15の水平破線1510で表すことができる。例えば、疾患の再発の最終判定の情報を提供するように、第1量が第1カットオフを超える程度を特定してもよい。
【0166】
ブロック1640で、統計値を第2カットオフと比較する。統計値が第2カットオフを超える(例えば、第2量の定義方式に応じて、上回る又は下回る)か否かを判定してもよい。例えば、第2カットオフは、EBV DNAとヒトDNAの間の9のサイズ比であり得、図15の垂直破線1505で表すことができる。第2量が第2カットオフを超える程度は、例えば、疾患の再発の最終判定の情報を提供するように、特定してもよい。
【0167】
ブロック1650で、第1量と第1カットオフ、及び統計値と第2カットオフの比較に基づいて病態の再発の分類を特定する。いくつかの実施形態において、対象は、第1量が第1カットオフを超え(例えば、図15の水平破線1510で表される0.45%のEBV DNA割合)且つ第2量が第2カットオフを超える(例えば、図15の垂直破線1505で表される9のサイズ比)場合にのみ、再発していると判定される。
【0168】
異なる第1及び第2カットオフ値を選択して、疾患の再発を予測するための感度及び/又は特異性を増加することができる。いくつかの実施形態において、第1及び第2カットオフ値の各々は、癌再発の分類を特定する感度が少なくとも80%であり、癌再発の分類を特定する特異性が少なくとも70%であるように、選択してもよい。追加的に又は代替的に、第1及び/又は第2カットオフ値を選択して、局所再発及び遠隔転移を含む特定のタイプの再発を予測するための感度及び特異性を増加することができる。例えば、第1及び第2カットオフ値の各々は、局所再発の分類を特定する感度が少なくとも50%であり、癌再発の分類を特定する特異性が少なくとも70%であるように、選択してもよい。別の例では、第1及び第2カットオフ値の各々は、遠隔転移の分類を特定する感度が少なくとも80%であり、及び/又は癌再発の分類を特定する特異性が少なくとも70%であるように、選択してもよい。
【0169】
場合によっては、第1及び第2カットオフ値の各々は、感度の僅かな低下を補償しながら特異性を増加するように、又はその逆で、調整してもよい。実際に、組み合わせ分析は、治療を完了した対象の疾患の再発を予測するための最適な感度及び特異性を同定できる。
D.サイズのカットオフ値の決定
【0170】
いくつかの実施形態において、サイズのカットオフ値(例えば、サイズ比、サイズ分布)は、対象が寛解状態にあるか又は再発しているかを判定するために使用され得る。例えば、再発した対象は、寛解状態にある又は非癌細胞からの検出可能な血漿EBV DNAを有する対象よりも低い80~110bpのサイズ範囲内のサイズ比を有する。いくつかの実施形態において、サイズ比のカットオフ値は、約0.1、約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約25、約50、約100、又は約100より大きくてもよい。例えば、カットオフ値は、6~11のサイズ比から選択してもよい。いくつかの実施形態において、カットオフ値以下のサイズ比は再発を示すことができる。いくつかの実施形態において、カットオフ値以上のサイズ比は再発を示すことができる。
【0171】
いくつかの実施形態において、サイズ指数のカットオフ値は、約又は少なくとも10、約又は少なくとも2、約又は少なくとも1、約又は少なくとも0.5、約又は少なくとも0.333、約又は少なくとも0.25、約又は少なくとも0.2、約又は少なくとも0.167、約又は少なくとも0.143、約又は少なくとも0.125、約又は少なくとも0.111、約又は少なくとも0.1、約又は少なくとも0.091、約又は少なくとも0.083、約又は少なくとも0.077、約又は少なくとも0.071、約又は少なくとも0.067、約又は少なくとも0.063、約又は少なくとも0.059、約又は少なくとも0.056、約又は少なくとも0.053、約又は少なくとも0.05、約又は少なくとも0.04、約又は少なくとも0.02、約又は少なくとも0.001、又は約0.001より小さくてもよい。いくつかの実施形態において、カットオフ値以下のサイズ指数は再発を示すことができる。いくつかの実施形態において、カットオフ値以上のサイズ指数は再発を示すことができる。
【0172】
1つの実施形態において、サイズ比又はサイズ指数のカットオフ値は、分析中の癌患者の最低割合を下回る任意の値と決定できる。他の実施形態において、カットオフ値は、例えば、癌患者の平均サイズ指数-1標準偏差(SD)、平均-2SD、及び平均-3SDに決定してもよいが、それらに限定されない。更に他の実施形態において、カットオフは、ウイルスゲノムにマッピングされた血漿DNA断片の割合の対数変換後、例えば、癌患者の値の対数変換後の平均-1SD、平均-2SD、平均-3SDに決定してもよいが、それらに限定されない。更に他の実施形態において、カットオフは、受信者動作特性(ROC)曲線を使用することで、又はノンパラメトリック方法によって決定してもよく、例えば再発した患者の100%、95%、90%、85%、80%を含むが、それらに限定されない。
VI.疾患の再発の予測におけるリアルタイムPCRと配列決定の比較
【0173】
受信者動作特性(ROC)曲線分析を使用することで、対象における治療後の1年内に発生した疾患の再発の予測での、個数ベースの分析、個数及びサイズベースの組み合わせ分析、及びリアルタイムPCRの診断性能を比較した。加えて、個数ベースの分析及びリアルタイムPCRの性能も、患者の全生存率に関して比較し、ここで生存率はウイルスDNAの検出された量に基づいて予測された。
A.疾患の再発の予測
【0174】
図17は、NPC患者の治癒を目的とした治療の完了後の6週間で採取された血漿サンプルの分析に基づいて疾患の再発を予測するための受信者動作特性(ROC)曲線を示す。ROC曲線は、リアルタイムPCRを表す点線1705、個数ベースの分析を表す破線1710、及び個数及びサイズベースの組み合わせ分析を表す実線1715を含む。EBVゲノム全体を捕捉するように設計されたプローブによる標的捕捉配列決定を使用して組み合わせ分析を実行した。リアルタイムPCRの性能は、再発対象と寛解対象を区別するためのリアルタイムPCRアッセイによって特定された定量血漿EBV DNA値に基づく。
【0175】
曲線下面積(AUC)値は、リアルタイムPCR及び個数ベースの分析において、それぞれ0.78及び0.84であった。AUC値は、サイズベースの分析を個数ベースの分析と組み合わせた場合、更に向上した。サイズ比の組み合わせによって、AUCは0.86となり、リアルタイムPCRのAUCより有意に大きかった(p<0.01、ブートストラップ検定)。
【0176】
別の例では、更なる評価のために、様々な技術にわたる特異性及び感度を特定した。この例において、異なるEBV DNA量カットオフによる個数ベースの分析、様々なEBV DNA量カットオフ(例えば、0.1%、0.45%)及びサイズ比カットオフ(例えば、9)による個数及びサイズベースの組み合わせ分析、及びリアルタイムPCRの診断性能を評価した。結果は下記表2に示す。
【表2】
【0177】
表2に示すように、個数ベースの分析及び組み合わせ分析は、それぞれ、治療後の最初の1年内に発生した疾患の再発の予測において、リアルタイムPCRより高い感度及び特異性の組み合わせと関連している。再発の予測が、低いレベルのウイルスDNAを有する治療後サンプルに関わるため、再発の真陽性(TP)を同定することは有利である。よって、個数ベースの分析及び組み合わせ分析は、リアルタイムPCRより適切な技術である。
B.個数及びサイズベースの分析に基づく生存率
【0178】
上記のカットオフを使用して、患者を異なる予後群に分類することができる。図18は、標的捕捉配列決定を使用した組み合わせ分析に応じて群化されたNPC患者の全生存率を同定するグラフを示す。図15で使用されるカットオフと同様に、EBV DNAの割合に0.45%、サイズ比に9を使用した。両方のカットオフを満たした対象は、「配列決定陽性」と定義され、破線1805で表され、カットオフの一方のみを満たした又はいずれも満たさなかった対象は、「配列決定陰性」と定義され、実線1810で表された。図18に示すように、配列決定陽性と分類された患者は、配列決定陰性と分類された患者と比較して、優れた全生存率と関連していた(p<0.0001、ログランク検定)。特に、配列決定陽性及び配列決定陰性である患者の5年生存期間は、それぞれ、88.0%及び40.1%であった。2群間のハザード比は6.44(95%CI、4.74~8.74)であった。リアルタイムPCRを使用した図12に示す全生存率と比較して、図18に示す生存率は、配列決定-陽性対象と配列決定-陰性対象の間のより大きな分離を示した。これは、標的捕捉配列決定はより低い生存率に対応する疾患の再発が実際に発生する対象を検出する可能性がより高いことを示すかもしれない。
【0179】
Cox比例ハザードモデルを使用して、組み合わせ分析を含む様々な変数の予後性能を評価した。リアルタイムPCRについて、検出不能な血漿EBV DNAを有する患者のハザードを、検出可能な血漿EBV DNAを有する患者のハザードと比較した。個数及びサイズ分析について、EBV DNAの割合がカットオフ0.45%を満たし且つサイズ比がカットオフ9を満たす患者のハザードを、カットオフの一方のみを満たす又はいずれも満たさない患者のハザードと比較した。比較上、癌レベル分類(例えば、UICC全体病期)、治療方式、腫瘍のサイズ(例えば、T病期)、付近のリンパ節への癌の浸潤(例えば、N病期)、年齢、及び性別も、モデルに含まれる他の変数であった。全生存率の単変量分析は、組み合わせ分析が最も重要な独立予後因子(p<0.0001)であり、それに続くのがリアルタイムPCR(p<0.0001)、UICC全体病期(p<0.0001)、治療方式(p<0.0001)、T病期(p=0.0001)、N病期(p=0.0004)、年齢(p=0.013)であることを示唆した。性別は僅かに重要な因子であった(p=0.051)。多変量Cox比例ハザードモデルにおいて、組み合わせ分析は依然として全生存率にとって最も有力な独立予後因子であり(p<0.0001)、それに続くのはT病期(p=0.02)、性別(p=0.02)であったが、UICC全体病期(p=0.05)、リアルタイムPCR(p=0.58)、治療方式(p=0.96)、N病期(p=0.45)、及び年齢(p=0.07)はそうでなかった。
【0180】
ウイルスDNAの組み合わせ分析を使用して、治療後サンプルを含む様々な生体サンプル中のウイルスDNAの割合を推定することができる。そして、ウイルスDNAの割合を使用して、対象の全生存率の予測を容易にすることができる。例えば、全生存率がEBV DNAの量と相関するか否かを判定するために、患者は、DNAの割合の10倍増加ごとに異なる予後群に層別化された。
【0181】
図19は、推定された配列決定ベースのEBV DNAレベルに応じて群化されたNPC患者の全生存率を同定するグラフ1900を示す。それぞれ、0.01%を下回るEBV DNAの割合を有する第1群の患者(線1905で表される)、0.01%~0.1%内のEBV DNAの割合を有する第2群の患者(線1910で表される)、0.1%~1%内のEBV DNAの割合を有する第3群の患者(線1915で表される)、及び1%より高いEBV DNAの割合を有する第4群の患者(線1920で表される)を含む、4つの予後群に分類した。図19に示すように、血漿中のEBV DNAの割合の増加に伴い、全生存率の悪化が観察された。0.01%を下回るEBV DNAの割合を有する患者と比較すると、0.01%~0.01、0.1%~1%、又は>1%のEBV DNAの割合を有する他の患者群は、それぞれ、ハザード比(HR)値が2.12、3.74、13.56であった(表3を参照)。
【表3】
【0182】
よって、個数ベースの分析を実施して、EBV DNAの割合の10倍増分に対応する全生存率をモデリングすることができる。様々な評価において、組み合わせ分析からの結果は、最も重要な独立予後因子として浮上した。単変量分析について、組み合わせ分析は、全生存率にとって最も重要な予後因子であり(p<0.0001)、それに続くのはリアルタイムPCR(p<0.0001)、UICC全体病期(p<0.0001)、治療方式(p<0.0001)、T病期(p=0.0001)、N病期(p=0.0004)、及び年齢(p=0.013)であった。対照的に、単変量分析において性別は僅かに重要であった(p=0.051)。多変量分析について、組み合わせ分析は依然として全生存率にとって最も有力な独立予後因子であり(p<0.0001)、それに続くのはT病期(p=0.02)、性別(p=0.03)、UICC全体病期(p=0.04)であった。対照的に、リアルタイムPCR(p=0.41)、治療方式(p=0.77)、N病期(p=0.33)、及び年齢(p=0.07)は多変量分析に有効な予後因子とは考えられなかった。
C.高い生存率を有する患者の予測
【0183】
加えて、個数ベースの分析は、高い全生存率に関連する患者群を予測することができた。予測は、非常に低い量のウイルスDNAが検出された1つ又は複数の患者に基づいて行ってもよい。図20は、血漿中のEBV DNAの割合が0.01%を下回ったNPC患者の全生存率を同定するグラフ2000を示す。グラフ2000において、線2005は個数ベースの分析を使用して検出された0.01%未満のEBV DNAを有するNPC患者の生存率を表し、線2010はリアルタイムPCRを使用していかなるEBV DNAも検出されなかったNPC患者の生存率を表した。個数ベースの分析による0.01%を下回るEBV DNAの割合を有する患者について、5年生存率は93.2%であった。対照的に、qPCRによる検出不能な血漿EBV DNAを有する患者の5年生存率は87.6%に止まった。実際に、図2000に示すように、個数ベースの分析によるEBV DNAの割合を有する患者の全生存率は、qPCRによる検出不能な血漿EBV DNAを有する患者より有意に良好であった(p=0.01、ログランク検定)。したがって、個数ベースの分析は、予後が良好な患者を同定する優位性を示し、治療後サンプルにおける疾患の再発の予測にも有効であり得る。
VII.妊娠に関連する異常を同定するためのウイルスDNA配列決定
【0184】
NPC等のウイルス関連疾患は、最も多くは40~60歳の年齢で流行するが、かかる疾患は、より若い年齢層の生殖可能年齢でも発生し得る。妊娠中のNPCの発生は、妊婦に身体的及び心理的の両方で重大な悪影響を及ぼす可能性がある。これに関して、ウイルスDNA(例えば、EBV、HPV)の個数ベースの分析及び組み合わせ分析が妊婦におけるNPC及び他の妊娠関連異常の同定においてリアルタイムPCRより正確であるか否かを探索した。26人のNPC患者及びNPCを有さない26人の妊婦からのサンプルを分析した。上記の通り、血漿EBV DNAの定量分析用のリアルタイムPCR及び血漿EBV DNAの標的捕捉配列決定を実行した。
【0185】
図21は、NPC患者及びNPCが同定されなかった妊婦にわたるリアルタイムPCRによる血漿EBV DNA濃度を示す。x軸は、対象(例えば、NPC、妊婦)に対応する分類を表し、y軸は、対象に対応する生体サンプルのウイルスDNA濃度を表す。図21に示すように、血漿EBV DNAは、26人のNPC患者全員で検出可能であった。しかし、26人の妊婦のうち2人(8%)は、検出可能な血漿EBV DNA濃度が100~1000コピー/mLの範囲であった。よって、検出可能な血漿EBV DNAを妊婦におけるNPCのスクリーニング検査として使用すれば、検査の感度及び特異性はそれぞれ100%及び92%であった。2例の妊娠においてかなりのウイルスDNAが検出されたので、EBV DNAの存在以外に、NPCと妊婦の間におけるEBV DNAの他のタイプの区分は利用可能ではないようである。
【0186】
図22は、NPC患者及びNPCが同定されなかった妊婦にわたる個数ベースの分析による血漿EBV DNA濃度を示す。x軸は、対象(例えば、NPC、妊婦)に対応する分類を表し、y軸は、対象に対応する生体サンプルのウイルスDNA濃度を表す。妊娠対象群は、qPCR陽性及びqPCR陰性の2つのサブグループに更に分けられた。標的捕捉配列決定を使用して血漿EBV DNA濃度を特定した。
【0187】
EBV DNA割合に>0.1%のカットオフを使用したところ、26人のNPC患者全員は、正確に陽性と同定され、26人の妊婦は、リアルタイムPCRによるEBV DNA状態にも関わらず、陰性と同定された。このため、個数ベースの分析は、100%感度及び100%特異性で、リアルタイムPCR分析よりも正確に機能した。更に、リアルタイムPCRとは対照的に、標的捕捉配列決定を使用した個数ベースの分析における検出されたEBV DNAがより明確に区分され、これにより、ウイルス関連病態のレベルを正確に同定できるカットオフ値をより容易に選択することができる。
【0188】
図23は、NPC患者及びNPCが同定されなかった妊婦にわたる血漿EBV DNAの個数及びサイズベースの分析を示す。x軸は、対象(例えば、NPC、妊婦)に対応する分類を表し、y軸は、対象に対応する生体サンプルのウイルスDNA濃度を表す。妊娠対象群は、qPCR陽性及びqPCR陰性の2つのサブグループに更に分けられた。標的捕捉配列決定を使用して血漿EBV DNA濃度を特定した。
【0189】
図23において、EBV DNA割合について0.1%の第1カットオフ、サイズ比について9.0の第2カットオフが使用された。図23における例と同様に、26人のNPC患者全員は陽性と分類され、26人の妊婦全員は陰性と分類された。したがって、個数及びサイズベースの分析を使用して妊婦におけるNPCをスクリーニングする感度及び特異性は、100%感度及び100%特異性である。個数ベースの分析と同様に、標的捕捉配列決定を使用した個数及びサイズベースの分析における検出されたEBV DNAがより明確に区分され、これにより、レベル ofウイルス関連病態のレベルを正確に同定できるカットオフ値をより容易に選択することができる。
VIII.配列決定技術の例
【0190】
以下に、様々な実施形態において実施され得る様々な技術例を説明する。
A.サンプル採取
【0191】
治療完了後の6~8週間でNPC患者の血液サンプルを採取した。NPC患者は、香港の6つの腫瘍センターから、インフォームドコンセントを得た上で募集された。適格な患者は、年齢が18歳以上で、国際がん対策連合(UICC。第6版)によるステップIIB、III、IVA、又はIVBの局所領域進行性NPCと組織学的に診断された患者であった。適格な患者は、一次放射線療法又は化学放射線療法の完了後に持続性の局所領域疾患又は遠隔転移の臨床的証拠を示さなかった。場合によっては、DNAは、分析された治療後血漿サンプルごとに、QIAamp Circulating Nucleic Acidキット使用して抽出された。
【0192】
DNAライブラリー構築に関して、製造業者のプロトコルに従ってTruSeq Nano ライブラリー調製キットを使用してインデックス化血漿DNAライブラリーを構築することができる。アダプターが連結されたDNAは、TruSeq Nano PCR増幅キット(Illumina)を使用して8サイクルのPCRで増幅された。増幅産物は、上記で示されたウイルス及びヒトゲノム領域をカバーするカスタム設計のプローブを使用したmyBaits Custom Capture Panel(Arbor Biosciences)を使用して捕捉された。標的捕捉後、14サイクルのPCR増幅が実行され、産物がIllumina NextSeqプラットフォームを使用して配列決定された。各回の配列決定について、ユニークなサンプルバーコードを有する24個のサンプルは、ペアエンドモードを使用して配列決定された。
【0193】
DNAライブラリーの配列決定に関して、NextSeq500(Illumina)を使用して、多重化DNAライブラリーを配列決定することもできる。ペアエンド配列決定プロトコルを使用し、各端末から75ヌクレオチド配列決定した。
【0194】
配列決定データのアライメントに関して、前記ペアエンド配列決定データをペアエンドモードでのSOAP2によって分析することができる。ペアエンドリードを、参照ヒトゲノム(hg19)及びEBVゲノム(AJ507799.2)を含む参照ゲノムにアライメントした。各末端のアライメントでは、最大2ヌクレオチドのミスマッチが許容された。下流分析には、両末端とも正しい向きで同じ染色体にユニークにアライメントされた、挿入サイズが600bp以内であるペアエンドリードのみ使用された。
【0195】
いくつかの実施形態において、配列決定データ分析を、Perl及びR言語で書かれたバイオインフォマティクスプログラムによって実行した。クラスカル・ワリス検定を使用して、全スクリーニングコホート及び探索と検証データセットにおける、NPC患者、一時的に陽性のEBV DNAを有する非癌対象及び持続的に陽性のEBV DNAを有する非癌対象の間で、血漿EBV DNA濃度を比較した。クラスカル・ワリス検定を使用して、探索と検証データセットにおける3つの群のEBV DNAリードの割合も比較した。<0.05のP値は統計的に有意と考えられた。
B.捕捉プローブ
【0196】
腫瘍由来核酸を検出する特異性及び/又は感度は、サンプル中の腫瘍由来核酸の濃度に比例し得る。したがって、標的特異的濃縮を使用して、サンプル中の腫瘍由来核酸の濃度を増加することができる。例えば、EBV DNAにおけるBamHI-W配列に相補的で結合可能な配列を有するDNAプローブを使用して、サンプル中のEBV DNA断片の標的化濃縮を行うことができる。DNAプローブも高親和性タグ(例えば、ビオチン)で標識されるため、標的結合プローブを回収することが可能である。標的結合プローブの回収後、EBV DNAはプローブから解離・分離される。続いて、濃縮されたサンプルを本明細書に記載の方法に従って分析することができる。
【0197】
後続の配列決定分析用に血漿DNAサンプルからウイルスDNA分子を濃縮するために、EBV捕捉プローブを用いて標的濃縮を行った。EBVゲノム全体をカバーするEBV捕捉プローブは、Arbor Biosciences(myBaits Custom Capture Panel、Arbor Biosciences)に注文した。24個のサンプルからのDNAライブラリーを1つの捕捉反応で多重化した。サンプルごとに等量のDNAライブラリーを使用した。参照用に、ヒト常染色体領域をカバーするプローブも含めた。EBV DNAが血漿DNAプールで少数であるため、常染色体DNAプローブに対して約100x過剰のEBVプローブを各捕捉反応に使用した。捕捉反応後、捕捉されたDNAライブラリーを14サイクルのPCRで再増幅した。
【0198】
いくつかの実施形態において、EBVゲノムの任意の部分に結合するように設計された捕捉プローブを使用して標的化捕捉を行うことができる。いくつかの実施形態において、捕捉プローブはビオチン化してもよく、及び磁気ビーズ(例えば、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズ)は、ライブラリー調製後に核酸標的(例えば、EBVゲノム断片)にハイブリダイズした捕捉プローブをプルダウン又は濃縮するために使用される。いくつかの実施形態において、使用された捕捉プローブのパネルは、ヒトゲノムを標的とすることもできる。例えば、捕捉プローブは、1つ又は複数の染色体(例えば、染色体1、8、及び/又は13のいずれかのコピー)の少なくとも一部にハイブリダイズするように設定されてもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも約1mb、少なくとも5mb、少なくとも10mb、少なくとも20mb、少なくとも30mb、少なくとも40mb、少なくとも50mb、少なくとも60mb、少なくとも70mb、少なくとも80mb、少なくとも90mb、又は少なくとも100mbのヒトゲノムは、パネル内の捕捉プローブを使用して標的にされる。
【0199】
血漿中の無細胞ヒトパピローマウイルス(HPV)DNAを分析するために、標的配列決定(例えば、特別に設計された捕捉プローブ、増幅プライマー)を使用することができる。例えば、捕捉プローブは、全HPVゲノム、全B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノム、全EBVゲノム及びヒトゲノムにおける複数のゲノム領域(例えば、chr1、chr2、chr3、chr5、chr8、chr15、chr22上の領域を含むが、それらに限定されない)をカバーすることができる。分析された血漿サンプルごとに、QIAamp Circulating Nucleic Acidキットを使用して1~4mLの血漿からDNAを抽出した。各ケースについて、全ての抽出されたDNAをTruSeq Nanoライブラリー調製キットを使用した配列決定ライブラリーの調製に使用した。Illumina TruSeq Nano PCR増幅キットを使用して配列決定ライブラリーに8サイクルのPCR増幅を行った。上記で示されるウイルス及びヒトゲノム領域をカバーするカスタム設計のプローブを使用したmyBaits Custom Capture Panel(Arbor Biosciences)を使用して、増幅産物を捕捉した。標的捕捉後、14サイクルのPCR増幅を行い、Illumina NextSeqプラットフォームを使用して産物を配列決定した。各回の配列決定について、ペアエンドモードを使用して、ユニークなサンプルバーコードを有する24個のサンプルを配列決定した。各DNA断片は、両末端の各々から75ヌクレオチド配列決定される。配列決定後、配列決定されたリードは、全ヒトゲノム(hg19)、全HPVゲノム、全HBVゲノム及び全EBVゲノムからなる人工的に組み合わせられた参照配列にマッピングされた。組み合わせゲノム配列におけるユニークな位置にマッピングされた配列決定されたリードは、下流分析に使用された。
【0200】
例えば、捕捉プローブは、全EBVゲノム、全B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノム、全ヒトパピローマウイルス(HPV)ゲノム及び/又はヒトゲノムにおける複数のゲノム領域(例えば、chr1、chr2、chr3、chr5、chr8、chr15及びchr22上の領域を含むが、それらに限定されない)をカバーするように、設定されてもよい。血漿からウイルスDNA断片を効率的に捕捉するために、目的のヒト常染色体領域より多くの、ウイルスゲノムにハイブリダイズするプローブを使用してもよい。1つの実施形態において、全ウイルスゲノムについて、サイズが約200bpの各領域をカバーする平均100個のハイブリダイゼーションプローブ(例えば、100Xタイリング捕捉プローブ)を設計した。ヒトゲノムの目的領域について、サイズが約200bpの各領域をカバーする平均2個のハイブリダイゼーションプローブ(例えば、2Xタイリング捕捉プローブ)を設計した。
【0201】
図24は、本開示の実施形態に係る、対象の標的化捕捉配列決定用の捕捉プローブの設計の例を示す。図24は、捕捉プローブに関する情報、例えば、捕捉領域のサイズ及びプローブによってカバーされるタイリングの量を提供する。捕捉プローブは、様々な長さであり得、互いに重複し得る。かかる捕捉プローブは、myBaits Custom Capture Panel(Arbor Biosciences)を使用することができる。他の実施形態ではかかる捕捉プローブを使用しなくてもよい。
【0202】
図24を参照し、血漿EBV DNAの標的捕捉配列決定は、捕捉プローブの設計を変更して実施された(Lam et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018;115:E5115-E5124)。捕捉プローブは、捕捉プローブによってカバーされる領域の総サイズが171キロ塩基である全EBVゲノム(AJ507799.2)をカバーした。加えて、467キロ塩基のヒトゲノム(hg19)も対照として捕捉した。
【0203】
列2401では、配列のタイプ、即ち、ヒト又はウイルス標的の常染色体を同定する。列2402では、特定の(例えば、染色体の又は特定のウイルスゲノムの)配列を同定する。列2403では、捕捉プローブがカバーする塩基対(bp)での総長さを提供する。捕捉プローブは、(例えば、常染色体について示すように)配列全体をカバーしなくてもよいが、例えば、ウイルスゲノムについて配列全体をカバーしてもよい。常染色体について、捕捉プローブは、平均5xのタイリングを提供する。ウイルス標的について、捕捉プローブは、平均200xのタイリングを提供する。よって、ウイルスについてのプローブの数は、常染色体より高い単位長当たりの百分率/割合である。ウイルス標的についての捕捉プローブのこのようなより高いレベルの濃度は、ウイルスDNAを捕捉する確率を最大化するのに寄与する。
C.様々な標的捕捉オプションを使用した結果の例
【0204】
生体サンプルをウイルスDNAについて濃縮する場合、様々な標的捕捉オプションを考慮できる。例えば、ウイルスゲノムと標的常染色体領域との間の比を設計して、生体サンプルからのウイルスDNAの検出を最大化することができる。捕捉プローブが、標的EBVゲノムと標的常染色体領域との間のより高い比を含むゲノム領域を標的とするように設計される場合、標的濃縮技術を通じて生体サンプルから血漿EBV DNAの増加量を検出できる。よって、異なる標的捕捉オプションを使用して濃縮技術を最適化すると、治療後サンプルにおける疾患の再発のより正確な診断が容易になる。
【0205】
血漿サンプルからのDNAは、次世代配列決定(例えば、Illumina NextSeqプラットフォーム)を使用した分子分析に供される。異なるアプローチは、分析の目的DNA分子、例えば、EBV DNA分子の標的濃縮に使用できる。上述した通り、捕捉プローブは、サンプル中のDNA分子の標的濃縮に使用できる。追加的に又は代替的に、アンプリコン配列決定(Xu et al. BMC Genomics 2017;18:5. doi: 10.1186/s12864-016-3425-4)及びCRISPR-Cas9濃縮(Hafford-Tear et al. Genetics in Medicine 2019;21:2092-2102)を使用して、ウイルスゲノムと標的常染色体領域との間の比を設計することができる。
【0206】
標的捕捉配列決定において、捕捉プローブは、ウイルスゲノム(例えば、EBVゲノム)全体をカバーするように設計される。ヒトゲノムにおける所定のゲノム領域を標的にするために捕捉プローブを含めることもできる。標的EBVゲノムと標的常染色体領域のサイズの比は、EBV DNA分子の濃縮の程度を左右するように設計してもよい。例示的な例として、標的捕捉配列決定からの血漿EBV DNAの割合は、異なる捕捉プローブ設計(標的常染色体領域に対するEBVの高い比及び低い比)を使用して特定された。加えて、これらの設計は、いかなる標的捕捉も使用することなく特定された血漿EBV DNAの割合と比較された。3タイプの分析にわたって、定量PCRによって測定されたEBV DNAと同等の濃度を有する血漿サンプルが使用された。
【0207】
以下に、様々な捕捉プローブ設計間の比較分析の例示的な例を示す。「高い」ウイルス対ヒト領域サイズ比を有する捕捉プローブに関しては、EBV対標的常染色体領域比が0.37(172kb:467kb)の捕捉プローブ設計(即ち、表1に記載の設計)による標的捕捉配列決定を使用して、4つのNPC血漿サンプルからのEBV DNAの割合を特定した。「低い」ウイルス高いヒト領域サイズ比を有する捕捉プローブに関しては、EBV対標的常染色体領域比が0.0002(172kb:70Mb)の捕捉プローブ設計による標的捕捉配列決定を使用して、別の1組の4NPCサンプルからのEBV DNAの割合を特定した。上記の分析のためのNPCサンプルは定量PCRによって測定されたものと同等の血漿EBV DNA濃度を有した。比較データについて、サンプルからのEBV DNAの割合も、捕捉無しの配列決定を使用して特定された。
【0208】
図25は、標的捕捉無しの配列決定2505、EBV対標的常染色体領域比が低いプローブ設計を使用した標的捕捉配列決定2510、及びEBV対標的常染色体領域比が高い設計を使用した標的捕捉配列決定2515、によって分析されたNPCサンプルの配列決定による血漿EBV DNA分画濃度を同定する1組の棒プロット2500を示す。
【0209】
棒プロット2510及び2515に示すように、配列決定されたリードの総数に対する血漿EBV DNAリードの割合は、標的捕捉配列決定を使用する場合に大幅に高くなった(事後ダン検定、p=0.005)。よって、標的捕捉配列決定によるEBV DNA分子の濃縮は、(例えば)治療後サンプルからウイルスDNAを検出するために効果的に使用できる。対照的に、棒プロット2505に示すように、標的捕捉無しの配列決定では、得られる血漿EBV DNAリードの数が少ない可能性があり、後続の下流分析(例えば、疾患の再発の予測)を妨げる可能性がある。例えば、サンプルTBR2892において、標的捕捉無しの配列決定は、後続の下流分析(例えば、セクションVに記載の組み合わせ分析)にとって正確度が低いかもしれない。これは、標的捕捉無しの配列決定を使用すると、80~110bpのサイズ範囲内で(合計56個のEBV DNAリードのうち)いかなるEBV DNAリードも検出できないためである。
【0210】
加えて、図25に示すように、EBV対標的常染色体領域比が低い捕捉プローブ設計2510を使用して測定された配列決定されたリードの総数に対する血漿EBV DNAリードの割合は、EBV対標的常染色体領域比が高い捕捉プローブ設計2515を使用して測定されたものより大幅に低かった。
IX.疾患-再発予測に基づく治療
A.治療選択
【0211】
本開示の実施形態では、疾患の再発を正確に予測でき、それによって、対象の疾患転帰及び全生存率を改善するための早期介入及び適切な治療の選択が容易になる。例えば、対応するサンプルが疾患の再発を予測可能な事象において、対象に強化化学療法を選択することができる。別の例では、初期治療を完了した対象の生体サンプルを配列決定して、疾患の再発を予測可能なウイルスDNAを同定することができる。かかる例において、対象の癌が初期治療に抵抗性を示している可能性があるため、対象に代替治療レジメン(例えば、より高用量)及び/又は異なる治療を選択することができる。
【0212】
実施形態は、病態の再発の分類の特定に応じて対象を治療することをも含み得る。例えば、予測が局所領域不全に対応する場合、手術を可能な治療として選択できる。別の例では、予測が遠隔転移に対応する場合、化学療法を可能な治療として追加的に選択できる。いくつかの実施形態において、治療は、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、幹細胞移植、又は精密医療を含む。特定された再発の分類に基づき、対象への危害リスクを低減し全生存率を増加する治療計画を立てることができる。実施形態は、治療計画に従って対象を治療することを更に含み得る。
B.治療のタイプ
【0213】
実施形態は、対象について分類を特定した後に患者の病態を治療することを更に含み得る。治療は、病態の特定されたレベル、臨床上関連するDNAの分画濃度、又は起源の組織に応じて提供できる。例えば、同定された変異は、特定の薬物又は化学療法の標的となり得る。起源の組織は、手術又は任意の他の形式の治療をガイドするために使用できる。そして、病態のレベルは、あらゆる治療の攻撃性を決定するために使用でき、治療の攻撃性は病態の該レベルに基づいて決定してもよい。病態(例えば、癌)は、化学療法、薬物、食事、療法、及び/又は手術によって治療され得る。いくつかの実施形態において、パラメーター(例えば、量又はサイズ)の値が参照値を超えるほど、治療の攻撃性が高くなり得る。
【0214】
治療は切除を含み得る。膀胱癌について、治療は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を含み得る。この手順は、診断、病期分類及び治療に使用される。TURBT中、外科医は膀胱鏡を尿道から膀胱に挿入する。そして、腫瘍は、小さなワイヤーループ、レーザー、又は高エネルギー電気を備えるツールを使用して除去される。筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を有する患者について、TURBTは、該癌の治療又は除去に使用され得る。別の治療は、根治的膀胱切除術及びリンパ節郭清を含み得る。根治的膀胱切除術は、膀胱全体及び可能な周囲組織と臓器の切除である。治療は尿路変更術も含み得る。尿路変更術は、治療の一環として膀胱を切除する際に、医師が尿の体外に排出される新しい経路を作る場合のことである。
【0215】
治療は、通常、癌細胞の成長及び分裂を防ぐことで癌細胞を破壊する薬物の使用である化学療法を含み得る。薬物は、例えば、マイトマイシン-C(ジェネリック医薬品として入手可能)、ゲムシタビン(Gemzar)、及び膀胱内化学療法用のチオテパ(Tepadina)に関わり得るが、それらに限定されない。全身化学療法は、例えば、シスプラチンゲムシタビン、メトトレキサート(Rheumatrex、Trexall)、ビンブラスチン(Velban)、ドキソルビシン、及びシスプラチンに関わり得るが、それらに限定されない。
【0216】
いくつかの実施形態において、治療は、免疫療法を含み得る。免疫療法は、PD-1と呼ばれるタンパク質を遮断する免疫チェックポイント阻害剤を含み得る。阻害剤は、アテゾリズマブ(Tecentriq)、ニボルマブ(Opdivo)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(Imfinzi)、及びペムブロリズマブ(Keytruda)を含み得るが、それらに限定されない。
【0217】
治療の実施形態は、標的療法も含み得る。標的療法は、癌の成長及び生存に寄与する癌の特定の遺伝子及び/又はタンパク質を標的とする治療である。例えば、エルダフィチニブは、癌細胞が成長又は浸潤し続けているFGFR3又はFGFR2遺伝子変異を伴う局所進行性又は転移性尿路上皮癌を有する者の治療用に承認された経口投与薬物である。
【0218】
いくつかの治療は放射線療法を含み得る。放射線療法は、高エネルギーx線又は他の粒子を使用して癌細胞を破壊することである。各個別治療に加えて、本明細書に記載のこれらの治療の組み合わせが使用され得る。いくつかの実施形態において、パラメーターの値が閾値を超え、該閾値自体が参照値を超える場合、治療の組み合わせが使用され得る。参照文献における治療に関する情報は、参照によって本明細書に組み込まれる。
X.システムの例
【0219】
図26は、本開示の実施形態に係る測定システム2600を示す。図示のように、システムは、アッセイ装置2610内の無細胞DNA分子等のサンプル2605を含み、ここでアッセイ2608はサンプル2605に対して行うことができる。例えば、サンプル2605をアッセイ2608の試薬と接触させて、物理的特性2615の信号を提供することができる。アッセイ装置の例としては、アッセイのプローブ及び/若しくはプライマー又は液滴が(アッセイを含む液滴と共に)移動するチューブを含むフローセルであり得る。物理的特性2615(例えば、蛍光強度、電圧、又は電流)は、検出器2620によってサンプルから検出される。検出器2620は、一定の間隔(例えば、周期的な間隔)で測定を行って、データ信号を構成するデータ点を取得することができる。1つの実施形態において、アナログデジタル変換器は、検出器からのアナログ信号をデジタル形態へと複数回変換する。アッセイ装置2610及び検出器2620は、アッセイシステム、例えば、本明細書に記載の実施形態に従って配列決定を行う配列決定システムを形成することができる。データ信号2625は検出器2620から論理システム2630に送信される。例として、データ信号2625を使用して、DNA分子の参照ゲノムにおける配列及び/又は位置を特定することができる。データ信号2625は、同時に生成された様々な測定値、例えば、蛍光色素の異なる色又はサンプル2605の異なる分子への異なる電気信号を含み得るため、データ信号2625は、複数の信号に対応し得る。データ信号2625は、ローカルメモリ2635、外部メモリ2640、又は記憶装置2645に記憶され得る。
【0220】
論理システム2630は、コンピュータシステム、ASIC、マイクロプロセッサ、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)等であってもよいし、それらを含んでもよい。それはディスプレイ(例えば、モニタ、LEDディスプレイ等)及びユーザ入力装置(例えば、マウス、キーボード、ボタン等)を含んでもよいし、それらに結合されてもよい。論理システム2630及び他の部品は、スタンドアローン又はネットワーク接続されたコンピュータシステムの一部であってもよいし、検出器2620及び/又はアッセイ装置2610を含む装置(例えば、配列決定装置)に直接取り付けられても組み込まれてもよい。論理システム2630は、プロセッサ2650において実行されるソフトウェアも含み得る。論理システム2630は、本明細書に記載の方法のいずれかを実行するように測定システム2600を制御するための命令を記憶するコンピュータ可読媒体を含み得る。例えば、論理システム2630は、配列決定又は他の物理的操作が実行されるように、アッセイ装置2610を含むシステムにコマンドを提供することができる。かかる物理的操作は、例えば、試薬を特定の順序で添加及び除去するように、特定の順序で実行できる。かかる物理的操作は、サンプルを取得してアッセイを行うために使用され得るように、例えば、ロボットアームを含むロボットシステムによって実行され得る。
【0221】
システム2600は、対象に治療を提供できる治療装置2660も含み得る。治療装置2660は、治療を決定でき及び/又は治療を実施するために使用できる。かかる治療の例としては、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、及び幹細胞移植を含み得る。論理システム2630は、例えば、本明細書に記載の方法の結果を提供するために、治療装置2660に接続され得る。治療装置は、(例えば、ロボットシステムを制御するように、治療を制御するために)他の装置からの入力、例えばイメージング装置及びユーザ入力を受信し得る。
【0222】
本明細書で言及したコンピュータシステムのいずれも、任意の好適な数のサブシステムを利用し得る。かかるサブシステムの例は、図27においてコンピュータ装置10で示される。いくつかの実施形態において、コンピュータシステムは、単一のコンピュータ装置を含み、ここでサブシステムは該コンピュータ装置の部品であり得る。他の実施形態において、コンピュータシステムは、それぞれがサブシステムであり内部部品を備える、複数のコンピュータ装置を含み得る。コンピュータシステムは、デスクトップ及びラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話及び他のモバイル装置を含み得る。
【0223】
図27に示すサブシステムは、システムバス75を介して相互接続される。プリンター74、キーボード78、記憶装置(複数可)79、ディスプレイアダプター82に結合されるモニタ76等の追加のサブシステムが示される。I/Oコントローラー71に結合する周辺機器及び入力/出力(I/O)装置は、入力/出力(I/O)ポート77(例えば、USB、FireWire(登録商標))等の当分野で既知の任意の数の接続手段によって、コンピュータシステムに接続することができる。例えば、I/Oポート77又は外部インターフェース81(例えば、Ethernet(登録商標)、Wi-Fi等)を使用して、コンピュータシステム10をInternet等の広域ネットワーク、マウス入力装置、又はスキャナーに接続することができる。システムバス75を介した相互接続により、中央プロセッサ73が各サブシステムと通信し、システムメモリ72又は記憶装置(複数可)79(例えば、ハードドライブ等の固定ディスク、又は光ディスク)からの複数の命令の実行、及びサブシステム間の情報交換を制御することが可能になる。システムメモリ72及び/又は記憶装置(複数可)79は、コンピュータ可読媒体を具現化し得る。別のサブシステムは、カメラ、マイクロフォン、加速度計等のデータ収集装置85である。本明細書で言及したデータのいずれも、1つの部品から別の部品へ出力でき、ユーザへ出力できる。
【0224】
コンピュータシステムは、例えば、外部インターフェース81又は内部インターフェースによって一緒に接続された、複数の同じ部品又はサブシステムを含み得る。いくつかの実施形態において、コンピュータシステム、サブシステム、又は装置は、ネットワーク上で通信することができる。かかる例において、1つのコンピュータをクライアント、別のコンピュータをサーバと見なすことができ、ここで疎の各々は、同じコンピュータシステムの一部であり得る。クライアント及びサーバはそれぞれ複数のシステム、サブシステム、又は部品を含み得る。
【0225】
実施形態の態様は、ハードウェア(例えば、特定用途向け集積回路又はフィールドプログラマブルゲートアレイ)、及び/又はモジュラー様式又は統合様式で一般にプログラム可能なプロセッサと共にコンピュータソフトウェアを使用して、制御論理の形態で実施することができる。本明細書で使用されるように、プロセッサは、同じ集積チップ上のシングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、又は単一の回路基板上の若しくはネットワーク化の、複数の処理ユニットを含む。本明細書で提供される開示及び教示に基づき、当業者は、ハードウェア及びハードウェアとソフトウェアの組み合わせを使用して、本発明の実施形態を実施するための他の方式及び/又は方法を認識・理解するであろう。
【0226】
本出願に記載のソフトウェア部品又は機能のいずれも、例えば、従来の又はオブジェクト指向の技術を使用して、任意の好適な、例えば、Java(登録商標)、C、C++、C#、Objective-C、Swiftのようなコンピュータ言語、又はPerl又はPython等のスクリプト言語を使用するプロセッサによって実行されるソフトウェアコードとして、実装され得る。ソフトウェアコードは、記憶及び/又は送信のためのコンピュータ可読媒体上に一連の命令又はコマンドとして記憶され得る。好適な非一時的なコンピュータ可読媒体としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードドライブ若しくはフロッピー(登録商標)ディスク等の磁気媒体、又はコンパクトディスク(CD)若しくはDVD(デジタル多用途ディスク)等の光学媒体、及びフラッシュメモリ等を含み得る。コンピュータ可読媒体は、かかる記憶又は送信装置の任意の組み合わせであり得る。
【0227】
かかるプログラムは、符号化され、Internetを含む様々なプロトコルに従う有線ネットワーク、光ネットワーク、及び/又は無線ネットワークを介した送信に適合したキャリア信号を使用して送信されてもよい。したがって、コンピュータ可読媒体は、かかるプログラムで符号化されたデータ信号を使用して作製され得る。プログラムコードで符号化されたコンピュータ可読媒体は、互換性装置でパッケージ化されてもよいし、(例えば、Internetダウンロードを介して)他の装置とは別個に提供されてもよい。任意のかかるコンピュータ可読媒体は、単一のコンピュータ製品(例えば、ハードドライブ、CD、又はコンピュータシステム全体)上又はその内部に存在してもよく、システム又はネットワークにおける異なるコンピュータ製品上又はその内部に存在してもよい。コンピュータシステムは、本明細書で言及した結果のいずれかをユーザへ提供するためのモニタ、プリンター、又は他の好適なディスプレイを含み得る。
【0228】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成のみを目的とするものであり、記載された発明主題を限定するものと解釈すべきではない。
【0229】
本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、対象、及び配列決定技術に限定されるものではなく、当然変動し得ることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のものであり、本明細書に記載の方法及び組成物を限定することを意図するものではなく、それらは添付の特許請求の範囲のみに限定されることも理解される。本開示のいくつかの実施形態は本明細書で図示及び説明したが、かかる実施形態は単なる例として提供されることは当業者にとって自明であろう。当業者であれば、本開示から逸脱することなく、多数の変形、変化、及び置換は可能であろう。本明細書に記載の本開示の実施形態に対する様々な代替案は、本開示を実施する際に採用され得ることを理解すべきである。以下の請求項は、本開示の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物はそれによって包含されることが意図される。
【0230】
いくつかの態様は、図示のために応用例を参照しながら説明される。特に断らない限り、いかなる実施形態もいかなる他の実施形態と組み合わせることができる。多数の具体的な詳細、関係、及び方法は本明細書に記載の特徴の完全な理解を提供するために記載されることを理解すべきである。しかし、当業者であれば、本明細書に記載の特徴は、具体的な詳細の1つ又は複数無しで、又は他の方法を用いて、実施できることを容易に認識するであろう。本明細書に記載の特徴は、一部の行動が異なる順序で及び/又は他の行動若しくは事象と同時に発生する可能性があるため、図示された行動若しくは事象の順序によって限定されない。更に、本明細書に記載の特徴に応じて方法論を実施するためには、図示された行動若しくは事象の全てが必要なわけではない。
【0231】
本発明のいくつかの実施形態は本明細書で図示し説明したが、かかる実施形態は単なる例として提供されることは当業者にとって自明であろう。本発明は明細書内で提供される特定の実施例に限定されることは意図されない。本発明は前述の明細書を参照しながら説明したが、本明細書の実施形態の説明及び図示は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変化、及び置換は可能であろう。
【0232】
更に、本発明の全ての態様は、様々な条件及び変数に依存する本明細書に記載の特定の描写、構成又は相対割合に限定されないことを理解すべきである。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替案は、本発明を実施する際に採用され得ることを理解すべきである。したがって、本発明は、任意のかかる代替案、修飾、変形又は均等物も包含するものと考えられる。以下の請求項は本発明の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物はそれによって包含されることが意図される。
【0233】
本明細書に記載の方法のいずれも、ステップを実行するように構成され得る1つ又は複数のプロセッサを含むコンピュータシステムによって全部又は部分的に実行され得る。プロセッサで実行される任意の操作(例えば、アライメント、決定、比較、演算、計算)は、リアルタイムで実行され得る。「リアルタイム」という用語は、特定の時間制約内で完了される演算操作又はプロセスを指し得る。時間制約は、1分間、1時間、1日間、又は7日間であり得る。よって、実施形態は、本明細書に記載の方法のいずれかのステップを実行するように構成された、個別のステップ又は個別のステップの群を実行する異なる部品を備える可能性のあるコンピュータシステムに関し得る。番号付けのステップとして示されたが、本明細書の方法のステップは、同じ時間又は異なる時間又は異なる順序で実行することができる。加えて、これらのステップの一部は、他の方法からの他のステップの一部と共に使用され得る。また、ステップの全部又は一部は選択的である場合もある。加えて、方法のいずれかのステップのいずれも、これらのステップを実行するためのシステムのモジュール、ユニット、回路、又は他の手段を用いて実行できる。
【0234】
本明細書に1群の置換が開示される場合、それらの群の全ての個々のメンバー、及び該置換を使用して形成できる全てのサブグループ及びクラスは個別に開示されることが理解される。マルクーシュ群又は他の群化が本明細書で使用される場合、該群の全ての個々のメンバー、及び該群の可能な全ての組み合わせ及びサブコンビネーションは、本開示に個別に含まれることが意図される。本明細書で使用されるように、「及び/又は」は、「及び/又は」で区切られたリストにおける項目の1つ、全て、又は任意の組み合わせが該リストに含まれることを意味し、例えば、「1、2及び/又は3」は、「『1』、又は『2』、又は『3』、又は『1及び2』、又は『1及び3』、又は『2及び3』、又は『1、2及び3』」に相当する。
【0235】
例えば、温度範囲、時間範囲、又は組成範囲等、明細書で範囲が与えられる場合、全ての中間範囲及び部分範囲、並びに所与の範囲に含まれる全ての個々の値は本開示に含まれることが意図される。
【0236】
本明細書で使用されるように、「本質的に…からなる」は、請求項の基本的又は新規な特徴に実質的に影響しない材料又はステップを排除するものではない。
【0237】
特許請求の範囲は、あらゆる選択的な要素を排除するように作成される場合がある。したがって、この記述は、請求項の要素の記載に関連して「単独で」、「のみ」等の排他的な用語を使用したり、「否定的」な限定を使用したりするための先行根拠として機能することが意図される。
【0238】
本明細書で言及した全ての特許、特許出願、刊行物、及び説明は、あらゆる目的で参照によって全体として組み込まれる。いずれも先行技術とは認められない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
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図25
図26
図27
【国際調査報告】