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特表2024-536907ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩及びその製造方法並びにその使用
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  • 特表-ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩及びその製造方法並びにその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩及びその製造方法並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20241001BHJP
   C07F 9/30 20060101ALN20241001BHJP
   C07F 5/06 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C07F19/00 CSP
C07F9/30
C07F5/06 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521762
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2022087756
(87)【国際公開番号】W WO2023201541
(87)【国際公開日】2023-10-26
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】510173476
【氏名又は名称】中国科学院▲寧▼波材料技▲術▼▲与▼工程研究所
【氏名又は名称原語表記】NINGBO INSTITUTE OF MATERIALS TECHNOLOGY & ENGINEERING,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.519 Zhuangshi Avenue,Zhenhai District,Ningbo,Zhejiang,315201 CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】524132922
【氏名又は名称】浙江万盛股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】姚 強
(72)【発明者】
【氏名】趙 月英
(72)【発明者】
【氏名】曹 微虹
(72)【発明者】
【氏名】唐 天波
【テーマコード(参考)】
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB80
4H048AC40
4H048BB31
4H048BC10
4H048BC11
4H048BC19
4H048BE63
4H048VA80
4H048VB10
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB80
4H050AC70
4H050BA93
4H050BB31
4H050BC10
4H050BC11
4H050BC19
4H050BC34
4H050BC37
4H050WA12
4H050WA26
(57)【要約】
本願は、ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩及びその製造方法並びにその使用を開示し、前記ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩は、式(I)に示す化学式を有する化合物から選択される少なくとも1つである。本願による式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩は、添加量が少なく、各種高分子材料への難燃化効率が高く、熱安定性に優れ、それは、高分子材料への難燃化効率が低いというジエチルホスフィン酸塩の欠点を克服するだけでなく、熱安定性が低く、粉塵が多いというジプロピルホスフィン酸塩の欠点を克服し、高温加工を必要とする高分子材料の難燃化に広範に応用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に示す化学式を有する化合物から選択される少なくとも1つであり、
【化1】
ただし、Mは、中心原子であり、R、R、Rは、いずれも独立して、n-プロピル、イソプロピルから選択されるいずれかであり、ジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンは、いずれも配位子であり、且つジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンのうちの少なくとも2つの酸塩イオンは、同じ金属原子と対になり、且つそのうちの1つの配位子は、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンでなければならず、
Mは、金属元素から選択され、前記金属元素は、第IIA、IIIA、IVA、VA族金属元素、遷移金属元素、ランタン系金属元素から選択される少なくとも1つであり、
nは、金属Mの価数であり、nは、2、3又は4から選択され、
0≦x≦0.80であり、0.05≦y≦0.7であり、0≦z≦0.95であり、且つx+y+z=1である、ことを特徴とするジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【請求項2】
前記第IIA族金属元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1つであり、
前記第IIIA族金属元素は、Alであり、
前記第IVA族金属元素は、Snであり、
前記第VA族金属元素は、Sbであり、
前記遷移金属元素は、Fe、Zn、Cu、Ti、Zr、Mnから選択される少なくとも1つであり、
前記ランタン系金属元素は、Ceである、ことを特徴とする請求項1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【請求項3】
0≦x≦0.80であり、0.05≦y≦0.70であり、0.005≦z≦0.92であり、
好ましくは、0≦x≦0.66であり、0.30≦y≦0.70であり、0.01≦z≦0.60であり、
好ましくは、0≦x≦0.30であり、0.35≦y<0.70であり、0.05≦z≦0.60である、ことを特徴とする請求項1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【請求項4】
M=Alであり、n=3である、ことを特徴とする請求項1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【請求項5】
混合物Aと金属元素源Mとを含有する材料を水相中で反応Iを発生させて、前記ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩を得るステップを含み、
前記混合物Aは、ジエチルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチルプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ジプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩とを含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩の製造方法。
【請求項6】
前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレン及びプロピレンを導入し、反応IIを行って、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記水溶液中の前記水の質量は、前記水溶液の総質量の10-99%であり、
好ましくは、前記反応IIの条件は、温度0-250℃、時間0.01-50h、圧力0-3MPaであり、
好ましくは、前記ラジカル開始剤と前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の総量とのモル比は、0.001-0.1:1であり、
好ましくは、前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチレンと、プロピレンとのモル比は、1:0.05-1.8:0.2-1.95であり、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレンを導入して反応させ、導入するプロピレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレン及びエチレンの一部を導入して反応させ、エチレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(2x+y)/1よりも小さく、導入するプロピレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレンの一部を導入し、前記エチレンの一部とホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比を式(I)の(2x+y)/1以下にし、前記エチレンの一部が完全に反応した後、プロピレンの導入を継続して反応させ、導入するプロピレンと開始ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記金属元素源Mは、金属元素M塩から選択される少なくとも1つであり、
好ましくは、前記金属元素M塩は、金属元素Mの硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩、酸化物から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩、及び請求項5又は6のいずれか1項に記載の方法で製造されるジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする難燃剤。
【請求項8】
難燃剤P及び熱可塑性高分子材料を含み、
前記難燃剤Pは、請求項7に記載の難燃剤から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする難燃化材料。
【請求項9】
前記難燃剤Pの前記難燃化材料中の含有量は、1-35質量%である、ことを特徴とする請求項8に記載の難燃化材料。
【請求項10】
前記難燃化材料は、機能添加剤をさらに含み、
前記機能添加剤は、強化剤、ドリップ防止剤、安定剤、顔料、染料、炭素化触媒、分散剤、核形成剤、無機充填剤、酸化防止剤から選択される少なくとも1つであり、
好ましくは、前記機能添加剤の前記難燃化材料中の含有量は、5-40質量%である、ことを特徴とする請求項8に記載の難燃化材料。
【請求項11】
前記難燃化材料は、難燃剤Qをさらに含み、
前記難燃剤Qは、窒素系難燃剤とホウ素系難燃剤から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項10に記載の難燃化材料。
【請求項12】
前記難燃剤Qの前記難燃化材料中の含有量は、0.5-20質量%である、ことを特徴とする請求項11に記載の難燃化材料。
【請求項13】
前記熱可塑性高分子材料は、ポリアミドとポリエステルから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項8に記載の難燃化材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩及びその製造方法並びにその使用に関し、難燃化高分子材料の製造分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ジアルキルホスフィン酸塩、特にジエチルホスフィン酸アルミニウムは、高分子材料のハロゲンフリー難燃剤として広く使用されており、ジアルキルホスフィン酸塩系難燃製品は、密度が低く、難燃剤の使用量が少なく、機械的特性が良いが、既存のジアルキルホスフィン酸塩は、難燃剤としての難燃化効率が限られており、例えば、ジアルキルホスフィン酸塩は、ガラス繊維強化ナイロンのない難燃剤として使用することができるが、難燃化効率が低く、使用時に難燃化高分子材料の物理的特性に大きな悪影響を与えることがある。ナイロン6の難燃化にジプロピルホスフィン酸アルミニウムを使用した報告もあるが、ジプロピルホスフィン酸アルミニウムは、難燃化効率が高いが、熱安定性が低く、300℃で大量に分解揮発し始めるため、高温加工を必要とするエンジニアリングプラスチック、例えばナイロン66に不利である。
【0003】
また、ジアルキルホスフィン酸塩は、難燃剤として使用する場合、難燃特性に加えて、製造及び使用の時には、難燃剤の粒径や密度を大きくして、ろ過時間の短縮や粉塵の低減を図り、高分子材料と混合した場合に密度差が大きくなりすぎることで投入槽内での両方の自由流速が一致せず、難燃剤の難燃材での分布の均一性が悪くなることを回避することが望ましい。
【0004】
そのため、難燃性に優れ、熱安定性が高く、加工性に優れた難燃剤を得ることは、業界の大きな課題となっている。現在、驚くべきことに、特定の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩は、上記要求をよく満たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本願は、添加量が少なく、各種高分子材料への難燃化効率が高く、熱安定性に優れ、高温を必要とするというエンジニアリングプラスチックの加工要求を満たすことができ、粒子が大きく、粉塵が少ない、式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩及びその製造方法並びにその使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1態様によれば、式(I)に示す化学式を有する化合物から選択される少なくとも1つであるジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩を提供し、
【化1】
ただし、Mは、中心原子であり、R、R、Rは、いずれも独立して、n-プロピル、イソプロピルから選択されるいずれかであり、ジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンは、いずれも配位子であり、且つジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンのうちの少なくとも2つの酸塩イオンは、同じ金属原子と対になり、且つそのうちの1つの配位子は、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンでなければならず、
Mは、金属元素から選択され、前記金属元素は、第IIA、IIIA、IVA、VA族金属元素、遷移金属元素、ランタン系金属元素から選択される少なくとも1つであり、
nは、金属Mの価数であり、nは、2、3又は4から選択され、
0≦x≦0.80であり、0.05≦y≦0.7であり、0≦z≦0.95であり、且つx+y+z=1である。
【0007】
具体的には、前記エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオン中のプロピルは、n-プロピル又はイソプロピルである。
【0008】
本願の実施例では、式(I)において、xが0.80よりも大きい場合、難燃性は良好ではない。zが0.95よりも大きい場合、製造時に粒子が小さく、ろ過が遅く、使用時に粉塵が多く、また、熱安定性が低下し、難燃化高分子材料の製造や物理的特性に不利である。yが0.7よりも大きい場合、製造コストが高く、経済性が悪く、難燃化高分子材料の製造及び物理的特性に不利である。
【0009】
選択的に、xの下限は、独立して、0、0.03、0.05、0.10、0.15から選択され、上限は、独立して、0.80、0.75、0.70、0.65、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30から選択される。
【0010】
選択的に、yの下限は、独立して、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40から選択され、上限は、独立して、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45から選択される。
【0011】
選択的に、zの下限は、独立して、0、0.001、0.005、0.01、0.02、0.05、0.08から選択され、上限は、独立して、0.95、0.9、0.85、0.80、0.75、0.7、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.10から選択される。
【0012】
選択的に、前記第IIA族金属元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1つであり、
前記第IIIA族金属元素は、Alであり、
前記第IVA族金属元素は、Snであり、
前記第VA族金属元素は、Sbであり、
前記遷移金属元素は、Fe、Zn、Cu、Ti、Zr、Mnから選択される少なくとも1つであり、
前記ランタン系金属元素は、Ceである。
【0013】
選択的に、前記金属元素は、Al、Zn、Ca、Feから選択される少なくとも1つである。
【0014】
選択的に、前記金属元素は、Alであり、n=3である。
【0015】
選択的に、0≦x≦0.80であり、0.05≦y≦0.70であり、0.005≦z≦0.92である。
【0016】
選択的に、0≦x≦0.66であり、0.30≦y≦0.70であり、0.01≦z≦0.60である。
【0017】
選択的に、0≦x≦0.30であり、0.35≦y<0.70であり、0.05≦z≦0.60である。
【0018】
本願の実施例では、z値が大きいほど、ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩の熱重量減少は、早くなる。
【0019】
本願におけるジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩は、異なるジアルキルホスフィン酸塩の単純な物理的混合物ではなく、例えば、ジエチルホスフィン酸アルミニウムとエチルプロピルホスフィン酸アルミニウムとを単純に混合した混合物ではなく、同一のアルミニウム原子と対になるジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンのうち少なくとも2種類のイオンを含んでもよく、当該ハイブリッド塩の配位子の1つがエチルプロピルホスフィン酸塩イオンである。これらのハイブリッド塩のX-線回折スペクトル(XRD)は、ジアルキルホスフィン酸塩の単純な物理的混合塩のXRDスペクトルとは非常に異なっている。式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩は、XRDスペクトルにおいて、最も強い吸収ピーク領域に単一ピークを示す。また、最大ピークが示す結晶面間隔も、ジエチルホスフィン酸アルミニウムとジプロピルホスフィン酸アルミニウムとは異なっている。ジエチルホスフィン酸アルミニウムの最大ピークは、結晶面間隔d=9.663、ジプロピルホスフィン酸アルミニウムの最大ピークは、結晶面間隔d=11.079を示し、一方、式(I)を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩の結晶面間隔dの値は、上記両者の間に実質的に存在する。しかし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムとジプロピルホスフィン酸アルミニウムを単純に混合した物理的混合塩は、XRDスペクトルにおいて、2つの完全に独立したピークを示し、しかも、それらのdの値は、それぞれジエチルホスフィン酸アルミニウムとジプロピルホスフィン酸アルミニウムのdの値に近い。
【0020】
本願の実施例では、式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩と、ジエチルホスフィン酸アルミニウム又はジプロピルホスフィン酸アルミニウムとを単純に物理的に混合すると、それらのXRDスペクトルにおいて、最も強い吸収ピーク領域にも2つの独立したピークが現れる。これらの結果は、本発明により得られた式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩が、ジエチルホスフィン酸アルミニウムと、エチルプロピルホスフィン酸アルミニウムと、ジプロピルホスフィン酸アルミニウムとの単純な混合物ではなく、ジエチルホスフィン酸塩、エチルプロピルホスフィン酸塩及びジプロピルホスフィン酸塩の少なくとも2つの酸塩イオンが同一のアルミニウム原子と対になる構造を含むものであることを強く示している。
【0021】
本願の実施例では、同一の使用量では、純粋なジプロピルホスフィン酸アルミニウムは、難燃性に優れているが、熱安定性が低く、高温加工を必要とする高分子材料の要求を満たすことが困難である。また、純粋なジプロピルホスフィン酸アルミニウムは、粉塵が多く、操作が困難である。また、純粋なジプロピルホスフィン酸アルミニウムは、粒子が細かいため、高分子材料と混合した場合、局所的なデラミネーションが起こりやすく、混合の均一性が悪い。一方、式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩は、熱安定性が高く、粒子が大きく、粉塵がなく、しかも投入槽内を流れる速度が高分子粒子に近く、混合の均一性に優れている。
【0022】
本願の実施例では、同一の使用量では、純粋なジエチルホスフィン酸塩は、難燃化効果が低く、式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩をはるかに下回っていた。
【0023】
本願の第2態様によれば、上記ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩の製造方法を提供し、前記製造方法は、
混合物Aと金属元素源Mとを含有する材料を水相中で反応Iを発生させて、前記ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩を得るステップを含み、
前記混合物Aは、ジエチルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチルプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ジプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩とを含む。
【0024】
選択的に、前記金属元素は、Al、前記反応IのpHは、0-4、好ましくは、1-3.5、より好ましくは、2.3-3.3である。
【0025】
具体的には、上記反応Iでは、pHが低すぎると、沈殿しない。pHが高すぎると、金属イオンの水酸化物が生成され、不純物が導入される。
【0026】
選択的に、前記ジエチルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチルプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ジプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、金属元素源Mとのモル比は、x:y:z:qに近く、前記プロピルは、n-プロピルとイソプロピルから選択され、ただし、q=1/nである。
【0027】
Mの違いにより、ハイブリッド塩の水への溶解度は異なる。溶解度が高いハイブリッド塩の場合には、溶液中のジエチルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩、エチルプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩、ジプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩のx、y及びzの値とハイブリッド塩中のx、y及びzの値とには差があるため、M源とのモル比も変化する。また、より多くのM含有沈殿物を得るために、反応物のx、y及びzとMとのモル比が理論計算値を超えることもある。
【0028】
実際の操作中に、リン核磁気によりx、y、z、及びqの実際値を判断することができる。
【0029】
選択的に、前記混合物A中のジエチルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチルプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ジプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩とのモル比は、式(I)のxと、yと、zとの比と同一又は実質的に同一である。
【0030】
選択的に、前記反応Iの条件は、温度0-250℃、圧力0.1MPa-10MPa、時間0.1-20hである。
【0031】
選択的に、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレン及びプロピレンを導入し、反応IIを行って、前記混合物Aを得るステップを含む。
【0032】
選択的に、前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチレンと、プロピレンとのモル比は、1:0.05-1.8:0.2-1.95である。
【0033】
実際の反応では、エチレン及び/又はプロピレンを重合して得られる長鎖ジアルキルホスフィン酸塩のような副反応があるため、オレフィンの消費量は理論比より高くなる。
【0034】
選択的に、前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチレンと、プロピレンとのモル比は、式(I)におけるxと、yと、zとの比に同一又は近接している。ホスフィン酸又はそのアルカリ金属塩とエチレン又はプロピレンとの反応中に、yの値に1より小さい極大値があり、この極大値に達した後にx又はzが増加するため、yが1に達しない。y=1にする必要がある場合、反応中間体生成物を分離精製して、ジエチルホスフィン酸及び/又はジプロピルホスフィン酸又はそれらの塩を除去する必要があり、これは、経済的に不利である。
【0035】
具体的に反応IIでは、エチレンとプロピレンは、添加順序を入れ替えてもよいし、同時に添加してもよいし、部分的に先に添加してもよい。
【0036】
選択的に、反応IIでは、ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩をプロピレンと反応させて対応するy、zの値を得た後、エチレンと実質的に完全に又は完全に反応させる。「実質的に完全に」とは、反応混合液中のエチルホスフィン酸塩、プロピルホスフィン酸塩、ホスフィン酸塩に含まれる合計リンが、反応液中の合計リンの5%モル未満であることを意味する。
【0037】
選択的に、前記水溶液中の前記水の質量は、前記水溶液の総質量の10-99%である。
【0038】
具体的には、前記水溶液中の水が少なすぎると、塩析効果によりオレフィンの水への溶解度が低くなり、反応速度が遅くなり、水が多すぎると、反応釜の利用率が低下する。
【0039】
選択的に、前記水溶液中の水の質量は、前記水溶液の全質量の20-95%である。
【0040】
選択的に、前記水溶液中の水の質量は、前記水溶液の全質量の45-92%である。
【0041】
選択的に、前記水溶液中の水の質量は、前記水溶液の全質量の50-90%である。
【0042】
選択的に、前記水溶液中の水の質量は、前記水溶液の全質量の55-90%である。
【0043】
選択的に、前記反応IIの条件は、温度0-250℃、時間0.01-50h、圧力0-3MPaである。
【0044】
具体的には、前記反応IIの温度が低すぎると、反応速度が遅く、温度が高すぎると、ホスフィン酸塩が分解しやすい。
【0045】
選択的に、前記反応IIの温度は、10-200℃である。
【0046】
具体的には、前記反応IIの圧力は、3MPaよりも高く、反応装置に要求される圧力が高く、操作が困難である。
【0047】
選択的に、前記反応IIの圧力は、0.2-1.5MPaである。
【0048】
選択的に、前記ラジカル開始剤と前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩とのモル比は、0.001-0.1:1である。
【0049】
選択的に、前記ラジカル開始剤は、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、光開始剤から選択される少なくとも1つである。その中、ラジカル開始剤の添加量は、実用上の必要に応じて決定することができる。
【0050】
選択的に、前記アゾ系開始剤は、カチオン性及び/又は非カチオン性のアゾ系開始剤から選択され、アゾジイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジクロリド、2,2’-アゾジプロピルアミジノ二塩酸塩の1つ又は複数を含む。
【0051】
選択的に、前記過酸化物系開始剤は、好ましくは、無機過酸化物及び有機過酸化物ラジカル開始剤であり、特に好ましくは、過酸化水素、過硫酸アンモニア、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過酸化ベンゾイル、過酸化ジtert-ブチル、過安息香酸tert-ブチル、及び過酢酸のうちの1つ又は複数である。
【0052】
好ましくは、前記ラジカル開始剤は過酸化物系である。特に好ましくは、ラジカル開始剤は、過硫酸アンモニア、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムから選択される1つである。
【0053】
選択的に、前記ラジカル開始剤と前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩とのモル比は、0.003-0.05:1である。
【0054】
選択的に、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレンを導入して反応させ、導入するプロピレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含む。
【0055】
選択的に、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレンを導入し、前記プロピレン反応が完全又はほぼ完全に反応した後、エチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含む。
【0056】
選択的に、ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩とプロピレンとを反応させて、yの値に等しいか又はほぼ近いモノプロピルホスフィン酸又はそのアルカリ金属塩を得、zを0.95以下に制御した後、プロピレンの添加を停止し、代わりにエチレンを添加し、開始剤の存在下で反応を継続し、次いで必要とされる金属塩と反応させて、式(I)を有する難燃剤を得るステップを含む。
【0057】
選択的に、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレン及びエチレンの一部を導入して反応させ、エチレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(2x+y)/1よりも小さく、導入するプロピレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含む。
【0058】
選択的に、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレン及びエチレンの一部を導入して、前記プロピレン及びエチレンの一部が完全又はほぼ完全に反応した後、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
前記エチレンの総量と前記プロピレンとのモル比は、0.026-9:1である。
【0059】
選択的に、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレンの一部を導入し、前記エチレンの一部とホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比を式(I)の(2x+y)/1以下にし、前記エチレンの一部が完全に反応した後、プロピレンの導入を継続して反応させ、導入するプロピレンと開始ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含む。
【0060】
選択的に、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレンの一部を導入し、前記エチレンの一部が完全又はほぼ完全に反応した後、プロピレンの導入を継続して反応させ、前記プロピレン反応が完全又はほぼ完全に反応した後、残りのエチレンを導入して反応を継続し、前記混合物Aを得るステップを含み、
前記エチレンの総量と前記プロピレンとのモル比は、0.026-9:1である。
【0061】
選択的に、前記金属元素源Mは、金属元素M塩から選択される少なくとも1つである。
【0062】
選択的に、前記金属元素M塩は、金属元素Mの硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩、酸化物から選択される少なくとも1つである。
【0063】
選択的に、ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を、ラジカル開始剤の存在下、プロピレン及びエチレンの一部と同時に反応させ、プロピレン及びエチレンの量を制御し、反応系中のプロピルホスフィン酸又はそのアルカリ金属塩のモル%がyの値に近く、ジプロピルホスフィン酸又はそのアルカリ金属塩のモル%がzの値に近く、かつ、zが0.95以下となった後、プロピレンの添加を停止し、残りのエチレンを添加し、開始剤の存在下で終了まで反応を継続し、次いで必要とされる金属塩と反応させ、式(I)を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩を得る。
【0064】
選択的に、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレンを導入し、エチレンの量を制御し、導入するエチレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2x)/1となった後、エチレンの導入を停止させ、さらにプロピレンの添加を継続し、開始剤の存在下で終了まで反応を継続し、前記混合物Aを得るステップを含む。
【0065】
具体的には、反応IIの終了後、ジエチルホスフィン酸、エチルプロピルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸又はそれらのアルカリ金属の混合物を分離することなく、そのまま次の反応を行えばよい。
【0066】
本願の第3態様によれば、上記ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩のうちの少なくとも1つを含む難燃剤をさらに提供する。
【0067】
選択的に、前記難燃剤は、リン酸塩イオン、亜リン酸塩イオン、アルキルホスホン酸塩イオン、アルキルホスフィン酸塩イオンから選択される少なくとも1つをさらに含有し、これらのリン含有酸塩イオンの前記難燃剤中のモル含有量は10%以下であり、前記難燃剤のモル数は、それに含まれるリン元素のモル数で換算する。
【0068】
本願の第4態様によれば、難燃剤P及び熱可塑性高分子材料を含む難燃化材料を提供し、
前記難燃剤Pは、上記ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩と上記難燃剤から選択される少なくとも1つである。
【0069】
選択的に、前記難燃剤Pの前記難燃化材料中の含有量は、1-35質量%である。
【0070】
選択的に、前記難燃化材料は、1-35wt%の難燃剤P及び65-99wt%の熱可塑性高分子材料を含む。
【0071】
本願における熱可塑性高分子材料とは、加熱軟化・冷却硬化特性を有するプラスチックをいう。
【0072】
具体的には、前記難燃剤Pの使用量は熱可塑性高分子材料に依存する。
【0073】
選択的に、前記難燃剤Pの前記難燃化材料中の含有量は、3-20%質量である。
【0074】
選択的に、前記難燃化材料は、機能添加剤をさらに含み、
前記機能添加剤は、強化剤、ドリップ防止剤、安定剤、顔料、染料、炭素化触媒、分散剤、核形成剤、無機充填剤、酸化防止剤から選択される少なくとも1つである。
【0075】
選択的に、前記強化剤は、ガラス繊維から選択される。
【0076】
選択的に、前記ドリップ防止剤は、Teflonから選択される。
【0077】
選択的に、前記無機充填剤は、マイカ石、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、珪石から選択される少なくとも1つである。
【0078】
選択的に、前記機能添加剤の前記難燃化材料中の含有量は、5-40質量%である。
【0079】
選択的に、前記難燃化材料は、難燃剤Qをさらに含み、
前記難燃剤Qは、窒素系難燃剤とホウ素系難燃剤から選択される少なくとも1つである。
【0080】
選択的に、前記窒素系難燃剤は、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスファート、及びポリリン酸アンモニウムから選択される少なくとも1つである。
前記ホウ素系難燃剤は、ホウ酸亜鉛から選択される。
【0081】
選択的に、前記難燃剤Qの前記難燃化材料中の含有量は、0.5-20質量%である。
【0082】
選択的に、前記熱可塑性高分子材料は、ポリアミドとポリエステルから選択される少なくとも1つである。
【0083】
選択的に、前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、及び、半芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドとの共重合体から選択される少なくとも1つである。
【0084】
当該分野の公知の常識によれば、ポリアミドは、ポリアミド繊維又はナイロンとも呼ばれ、その構造単位に-NH-C(O)-アミドを有する高分子の総称であり、1つ又は複数のジカルボン酸と1つ又は複数のジアミン、及び/又は1つ又は複数のアミノ酸、及び/又は1つ又は複数のラクタムの縮合又は開環反応によって合成される。ポリアミドは、主鎖の成分により、一般に脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、及び半芳香族ポリアミドに分類される。半芳香族ポリアミドは、その合成単量体中の少なくとも1つの単量体構造に芳香族基を有するものを指す。
【0085】
選択的に、前記脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体、ポリアミド6、及び、ポリアミド66から選択される任意の1つ又は複数の混合物である。
【0086】
選択的に、前記半芳香族ポリアミドは、任意の1つ又は複数の芳香族ジカルボン酸と任意の1つ又は複数の脂肪族ジアミンとから、又は任意の1つ又は複数の芳香族ジアミンと任意の1つ又は複数の脂肪族ジカルボン酸とから製造することができる。さらに、ジカルボン酸、ジアミン、ラクタム及びアミノ酸から選択される1つ又は任意の複数を系に添加して、対応する特性のポリアミド共重合体を製造することができる。添加されるジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸である。添加されるジアミンは、芳香族ジアミン及び/又は脂肪族ジアミンである。添加されるラクタムは、脂肪族ラクタム又は芳香族ラクタムであってもよい。添加されるアミノ酸は、芳香族アミノ酸又は脂肪族アミノ酸であってもよい。
【0087】
選択的に、前記半芳香族ポリアミドは、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸から選択される任意の1つ又は複数の芳香族ジカルボン酸と、ブチレンジアミン、ヘキサジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、及び2-メチルペンタンジアミンから選択される1つ又は複数の脂肪族ジアミンとから製造される。
【0088】
選択的に、前記半芳香族ポリアミドは、脂肪族ジアミン、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から製造される。
【0089】
選択的に、前記半芳香族ポリアミドは、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから製造され、選択可能に、脂肪族ジカルボン酸を添加してもよく、脂肪族ジカルボン酸のモル百分率がジカルボン酸全体の0-45%、すなわち脂肪族ジカルボン酸のモル数/(脂肪族ジカルボン酸のモル数+芳香族ジカルボン酸のモル数)=0-45%である。
【0090】
選択的に、前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸から選択される任意の1つ又は複数であり、前記脂肪族ジアミンは、ブチレンジアミン、ヘキサジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、及び2-メチルペンタンジアミンから選択される任意の1つ又は複数であり、前記脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、オクタン酸から選択される1つ又は複数である。
【0091】
選択的に、前記ポリアミドは、ポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)(略してPA6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(略してPA6I)、テレフタル酸/ヘキサジアミン/カプロラクタム共重合体(略してPA6T/6)、テレフタル酸/ヘキサジアミン/アジピン酸共重合体(略してPA6T/66)、テレフタル酸/ヘキサジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体(略してPA6T/6I/66)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(略してPA9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(略してPA10T)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(略してPA12T)、テレフタル酸/ヘキサジアミン/ラウロラクタム共重合体(略してPA6T/12)、ポリメタキシリレンアジパミド(略してMXD6)、テレフタル酸/ヘキサジアミン/2-メチルペンタンジアミン共重合体(略してPA6T/2-MPMDT)、テレフタル酸/2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン/2,4,4-トリメチルヘキサンジアミン共重合体から選択される任意の1つ又は複数である。
【0092】
選択的に、前記脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、及び、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体から選択される少なくとも1つである。
【0093】
選択的に、前記半芳香族ポリアミドは、ポリフタルアミド(PPA)から選択される。
【0094】
選択的に、前記ポリエステルは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から選択される。
【0095】
本願の実施例では、式(I)におけるx、y及びzの値は、他のリン含有不純物の量を考慮せず、x+y+z=1であり、x+z>0である。式(I)の組成を有する難燃剤は、他のリン含有イオンを微量含有していてもよい。原材料に不純物が含まれているか、あるいは合成工程で不純物が生成する原因により、いくつかの微量のリン酸塩イオン、亜リン酸塩イオン、アルキルホスホン酸塩イオン、アルキルホスフィン酸塩イオンが難燃剤中に存在する可能性がある。エチレンやプロピレンを重合したオリゴマー生成物、例えばエチルn-ブチルホスフィン酸塩イオン、エチルヘキシルホスフィン酸塩イオン、ブチルブチルホスフィン酸塩イオン、ブチルヘキシルホスフィン酸塩イオン、プロピルヘキシルホスフィン酸塩イオンも、式(I)の組成を有する難燃剤中に不純物として存在する。ただし、これらの他のリン含有酸塩イオンの総量が合計リンの5%モルを超えない限り、式(I)の組成を有する難燃剤の正常な動作には影響しない。
【0096】
本願の実施例では、式(I)におけるxとyとzとの比率は、難燃剤をアルカリ分解又は酸分解した後、31P-NMR(核磁気)で判定することができる。ジエチルホスフィン酸塩、エチルn-プロピルホスフィン酸塩、エチルイソプロピルホスフィン酸塩、ジ-n-プロピルホスフィン酸塩、n-プロピルイソプロピルホスフィン酸塩が異なる31Pの化学シフトを有し、31P-NMRスペクトルには独立した5つのピークを示し、この5つのピークのピーク面積は、それぞれ5つのジアルキルホスフィン酸塩イオンのモル濃度に対応している。場合によっては、長鎖ジアルキルホスフィン酸塩イオンが存在し、その量は少なく、化学シフトは対応するジアルキルホスフィン酸塩イオンに近いので、積分すると対応するジアルキルホスフィン酸塩イオンに取り込まれる。このように、ピーク面積の比率から、x、y及びzの値を容易に算出することができ、例えば、ジエチルホスフィン酸塩モル濃度をx、エチルn-プロピルホスフィン酸塩とエチルイソプロピルホスフィン酸塩のモル濃度の和(エチルプロピルホスフィン酸塩モル濃度と略す)をy、ジ-n-プロピルホスフィン酸塩とn-プロピルイソプロピルホスフィン酸塩とのモル濃度の和(ジプロピルホスフィン酸塩のモル濃度と略す)をzとし、この三者の比率がx、y及びzの値となる。
【発明の効果】
【0097】
本願が奏しうる有益な効果は次のとおりである。
【0098】
(1)本発明による式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩は、添加量が少なく、大粒径物のろ過が容易であり、粉塵が少なく、熱安定性が高く、高分子材料への難燃化効率が高く、経済性に優れている。高分子材料への難燃化効率が低いというジエチルホスフィン酸塩の欠点を克服するだけでなく、熱安定性が低く、粉塵が多いというジプロピルホスフィン酸塩の欠点を克服し、高温加工を必要とする高分子材料の難燃化に広範に応用することができる。
【0099】
(2)本発明によるジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩の製造方法では、異なるジアルキルホスフィン酸をそれぞれ独立して製造する必要があるという欠点を回避し、反応溶媒として水を使用するため、環境保護に優れる。原料が入手しやすく、経済性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】異なるx、y及びzの値を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、及びジプロピルホスフィン酸アルミニウムの熱重量減少の曲線図である。
図2a】異なるx、y及びzの値を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、及びジプロピルホスフィン酸アルミニウムのXRD曲線である。
図2b】異なるx、y及びzの値を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、及びジプロピルホスフィン酸アルミニウムのXRD曲線であり、図2aの最も強い吸収ピークの部分拡大図である。
図3】実施例7のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩をアルカリ分解した後の31P-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下、実施例を合わせて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
別段の説明がない限り、本願の実施例における原料は、すべて商業的に入手される。
【0103】
実施例で使用される原料は以下のとおりである。
【0104】
PA66(ポリアミド66又はナイロン66とも呼ばれる):アメリカデュポン社のZytel 70G35 HSL NC010、ガラス繊維含有量が35質量%である。
【0105】
PA6(ポリアミド6又はナイロン6とも呼ばれる):アメリカデュポン社のZytel 73G30L NC010、ガラス繊維含有量が30質量%である。
【0106】
ADP:ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ドイツクラリアント社のExolit OP1230。
【0107】
酸化防止剤1010:ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、上海MACKLIN社。
【0108】
酸化防止剤168:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、アメリカStrem社。
【0109】
複合酸化防止剤:酸化防止剤1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])と酸化防止剤168(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)を1:1の質量比率で混合したもの。
【0110】
燃焼テスト規格:GB/T 2408-2008規格。
【0111】
核磁気共鳴(NMR)テスト:使用した機器の型番AVANCE III 400MHz、ドイツBruker社。
【0112】
核磁気共鳴リンスペクトル(31P-NMR)テスト方法:プレディレイがD1=10秒であり、32回スキャンし、ピーク面積の比をジエチルホスフィン酸塩イオンと、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンと、ジプロピルホスフィン酸ホスフィン酸塩イオンとのモル比とする。
【0113】
X線回折(XRD)テスト:使用した機器の型番:D8 ADVANCED AVINCI、ドイツBruker社。
【0114】
TGA熱重量減少処理:使用した機器の型番 Q500、アメリカTA社、窒素雰囲気、昇温速度10℃/min。
【0115】
粒径D50:ドイツのSympatek社のレーザー粒度分析装置Heloise-oasis HELOS(H3938)、乾式テスト。
【0116】
本願では、R、R、Rは、いずれも、n-プロピル、イソプロピルから選択される任意の1つであり、2つの異なるプロピルは、y又はzで示される同じ単位構造内にあってもよい。すなわち、yで示される同じ単位構造には、Rはn-プロピルとイソプロピルの両方が存在するが、具体的な実施例では、Rの値は、一意な値ではないため、具体的な値を詳細に定義することができない。y又はzで示される単位構造ごとにn-プロピルとイソプロピルの含有量をそれぞれどの程度必要とするかを定義する必要はなく、総量が基準を満たしていればよい。出願者は表1において具体的な説明を例示的に示しており、例えば、ビス混合物構造式の下付き文字はyに対応しており、ビス混合物1(R=イソプロピル)とビス混合物2(R=n-プロピル)を含んでいる。
【0117】
[実施例1 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0、y=0.086、z=0.914、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.75MPaを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。9時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始した。16時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0118】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表1に示した。
【0119】
【表1】
注:ビス付加生成物:ホスフィン酸塩上の2つのP-H結合がオレフィン二重結合に付加した生成物;モノ付加生成物:ホスフィン酸塩上の1つのP-H結合がオレフィン二重結合に付加した生成物;ビス混合物1:エチルイソプロピルホスフィン酸塩イオン(R=イソプロピル);ビス混合物2:エチルn-プロピルホスフィン酸塩イオン(R=n-プロピル);ジエチル:ジエチルホスフィン酸塩イオン;ジプロプル:n-プロピルイソプロピルホスフィン酸塩イオン(R≠R2、それぞれn-プロピルとイソプロピル)とジ-n-プロピルホスフィン酸塩イオン(R=R=n-プロピル)の合計;モノエチル:モノエチルホスフィン酸塩イオン;モノプロピル1:モノイソプロピルホスフィン酸塩イオン;モノプロピル2:モノn-プロピルホスフィン酸塩イオン;モノオキサイド:エチルホスフィン酸塩イオンとプロピルホスフィン酸塩イオンの合計。以下同じ。
【0120】
上記溶液の一部551.94グラム(リン0.6モル含有)を、66.64グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、93グラムの白色固体を得た。サンプルを水酸化ナトリウムの水溶液に溶解し、リン核磁気分析を行った結果、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計は8.6mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計は91.0mol%、プロピルホスホン酸塩イオンは0.4%であった。正規化するとx=0、y=0.086、z=0.914であった。
【0121】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=53.71μmであった。
【0122】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、11.109Å(100%)であった。
【0123】
[実施例2 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0、y=0.192、z=0.808、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.75MPaを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。8.5時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始した。15.5時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0124】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表2に示した。
【0125】
【表2】
【0126】
上記溶液の一部559.8グラム(リン0.6モル含有)を、66.64グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、90グラムの白色固体を得、収率98.4%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が80.8mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が19.2mol%であった。従ってx=0、y=0.192、z=0.808であった。
【0127】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=24.66μmであった。
【0128】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、11.024Å(100%)であった。
【0129】
[実施例3 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0、y=0.412、z=0.588、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.70MPaほどを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。6時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaに維持した。17.5時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0130】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表3に示した。
【0131】
【表3】
【0132】
上記溶液の一部559.94グラム(リン0.6モル含有)を、66.64グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、87.3グラムの白色固体を得、収率が98%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が58.3mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が40.9mol%であり、残りの0.8mol%が他のリン含有不純物であり、リン含有不純物がモノプロピルホスフィン酸塩イオン、プロピルホスホン酸塩イオンなどを含んだ。正規化するとx=0、y=0.412、z=0.588であった。
【0133】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=27.69μmであった。
【0134】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、10.841Å(100%)であった。
【0135】
[実施例4 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.033、y=0.610、z=0.357、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.70MPaほどを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。5.5時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaに維持した。16時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0136】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表4に示した。
【0137】
【表4】
【0138】
上記溶液の一部536.33グラム(リン0.6モル含有)を、66.64グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、86.1グラムの白色固体を得、収率が98%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが3.3mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が35.7mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が61.0mol%であり、x=0.033、y=0.610、z=0.357であった。
【0139】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=29.98μmであった。
【0140】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、10.750Å(100%)であった。
【0141】
[実施例5 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.082、y=0.694、z=0.224、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.70MPaほどを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。5時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaに維持した。15時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0142】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表5に示した。
【0143】
【表5】
【0144】
上記溶液の一部548.44グラム(リン0.6モル含有)を、66.64グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、84グラムの白色固体を得、収率が99%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが8.1mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が22.2mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が68.5mol%であり、他のリン含有不純物例えばモノプロピルホスフィン酸塩イオンとプロピルホスホン酸塩イオンの合計が1.3mol%であった。正規化するとx=0.082、y=0.694、z=0.224であった。
【0145】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=49.26μmであった。
【0146】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、10.603Å(100%)であった。
【0147】
[実施例6 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.251、y=0.647、z=0.102、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.70MPaほどを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。4.5時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaに維持した。15.5時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0148】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表6に示した。
【0149】
【表6】
【0150】
上記溶液の一部544.38グラム(リン0.6モル含有)を、66.64グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、80.4グラムの白色固体を得、収率が96%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが25.1mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が10.2mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が64.7mol%であり、x=0.251、y=0.647、z=0.102であった。
【0151】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=49.85μmであった。
【0152】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、10.449Å(100%)であった。
【0153】
[実施例7 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.257、y=0.652、z=0.091、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.70MPaほどを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。5時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaに維持した。15.5時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0154】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表7に示した。
【0155】
【表7】
【0156】
上記溶液の一部471.95グラム(リン0.54モル含有)を59.98グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、72グラムの白色固体を得、収率が96%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが25.7mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が9.1mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンと長鎖アルカンジイルホスフィン酸塩イオンの合計が65.2mol%であり、x=0.257、y=0.652、z=0.091であった。
【0157】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=62.31μmであった。
【0158】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、10.350Å(100%)であった。
【0159】
本実施例で得られたハイブリッド塩をアルカリ分解した後に核磁気測定を行い、31P-NMR(核磁気)スペクトルは、図3に示し、この6つのピークのピーク面積は、それぞれ6つのホスフィン酸塩のモル濃度に対応するため、ピーク面積の比により、x、y及びzの値を容易に算出することができ、計算時に長鎖ジアルキルホスフィン酸塩イオンのピーク面積とエチルプロピルホスフィン酸塩イオンのピーク面積を合わせた。
【0160】
[実施例8 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.544、y=0.436、z=0.020、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.70MPaほどを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。5時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaに維持した。14.5時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0161】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表8に示した。
【0162】
【表8】
【0163】
上記溶液の一部458.58グラム(リン0.54モル含有)を、59.98グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、56.3グラムの白色固体を得、収率が93%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが54.4mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が2.0mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が43.6mol%であり、x=0.544、y=0.436、z=0.020であった。
【0164】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=70.79μmであった。
【0165】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、10.100Å(100%)であった。
【0166】
[実施例9 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.631、y=0.351、z=0.018、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.70MPaほどを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。3時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaに維持した。12時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0167】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表9に示した。
【0168】
【表9】
【0169】
上記溶液の一部376.79グラム(リン0.45モル含有)を、49.98グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、56.3グラムの白色固体を得、収率が94%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが62.7mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が1.7mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が34.9mol%、プロピルホスホン酸塩イオンが0.4%、他のリン含有化合物が0.3%であった。正規化するとx=0.631、y=351、z=0.018であった。
【0170】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=79.96μmであった。
【0171】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、9.9988Å(100%)であった。
【0172】
[実施例10 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.764、y=0.231、z=0.005、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.50MPaほどを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。3時間後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaに維持した。13.5時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0173】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表10に示した。
【0174】
【表10】
【0175】
上記溶液の一部449.42グラム(リン0.54モル含有)を、59.98グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、68.1グラムの白色固体を得、収率が96%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが76.4mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が0.5mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が23.1mol%であり、x=0.764、y=0.231、z=0.005であった。
【0176】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=69.99μmであった。
【0177】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、9.8537Å(100%)であった。
【0178】
[実施例11(比較例) 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.902、y=0.096、z=0.002、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が0.8MPaになるまでエチレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にエチレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。4.5時間後、エチレンの導入を停止させ、プロピレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaほどに維持した。10.5時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0179】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表11に示した。
【0180】
【表11】
【0181】
上記溶液の一部759.4グラム(リン0.93モル含有)を、103.29グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、116.6グラムの白色固体を得、収率が97%であった。サンプルを水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが90.2mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が0.2mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が9.6mol%であり、x=0.902、y=0.096、z=0.002であった。
【0182】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=80.56μmであった。
【0183】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、9.7317Å(100%)であった。
【0184】
[実施例12(比較例) 式(I)の組成を有するハイブリッド塩の製造であって、x=0.969、y=0.031、z=0、M=Al、n=3の製造]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が0.8MPaになるまでエチレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にエチレンを連続的に導入し、ガス流量計によりオレフィンの導入量を計測した。6.5時間後、エチレンの導入を停止させ、プロピレンの導入を開始し、圧力を0.8MPaほどに維持した。9.5時間後、反応釜圧力が下がらなくなったので、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して無色透明な反応液を得た。
【0185】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表12に示した。
【0186】
【表12】
【0187】
上記溶液の一部751.4グラム(リン0.93モル含有)を、103.29グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、115.2グラムの白色固体を得、収率が97%であった。白色固体の少量を水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、核磁気分析を行い、リンスペクトルから分かるように、ジエチルホスフィン酸塩イオンが96.3mol%、ジプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が0mol%、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンの合計が3.1mol%、プロピルホスホン酸塩イオン0.6mol%であった。正規化するとx=0.969、y=0.031、z=0であった。
【0188】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=76.33μmであった。
【0189】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、9.6702Å(100%)であった。
【0190】
実施例1-12で得られたジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩、ジプロピルホスフィン酸アルミニウム及びADPに対してTGAテストを行った結果は、図1に示し、図1は、異なるx、y、zの値を有するハイブリッド塩、ADP及びジプロピルホスフィン酸アルミニウムの熱重量減少曲線図(TGA)であった。図から分かるように、z値が大きいほど、ハイブリッド塩の熱安定性が低くなり、xが大きいほど、熱安定性が高くなった。
【0191】
図2aは、実施例1-12で得られたジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩、ジプロピルホスフィン酸アルミニウム、ADP、及び、ジプロピルホスフィン酸アルミニウムとADPとの物理的混合塩のXRD図であった。図2bから分かるように、単純な物理的混合塩は、XRDスペクトル図において、最も強い吸収ピーク領域に、2つの独立したピークがあり、且つそれらのdの値は、それぞれジエチルホスフィン酸アルミニウム及びジプロピルホスフィン酸アルミニウムのdの値に近いが、式(I)の組成を有するハイブリッド塩は、1つのピーク又は重なるピークしかなく、且つdの値は、ジエチルホスフィン酸アルミニウムのdの値とジプロピルホスフィン酸アルミニウムのdの値との間に実質的に存在した。これによれば、本発明に記載の式(I)の組成を有するジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩は、ジエチルホスフィン酸アルミニウムと、エチルプロピルホスフィン酸アルミニウムと、ジプロピルホスフィン酸アルミニウムとを単純に混合した混合物ではなく、ジエチルホスフィン酸塩、エチルプロピルホスフィン酸塩及びジプロピルホスフィン酸塩のうちの少なくとも2つの酸塩イオンが同じアルミニウム原子と対になる構造を含むハイブリッド塩であることを示した。
【0192】
[実施例13]
ポリアミドPA66と実施例1で製造されたハイブリッド塩と複合酸化防止剤とを79.6:20:0.4の質量比率にて、設定された温度280℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、280℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94V-1であった。
【0193】
[実施例14]
ポリアミドPA6と実施例1で製造されたハイブリッド塩と複合酸化防止剤とを79.6:20:0.4の質量比率にて、設定された温度260℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、260℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94 V-1であった。
【0194】
[実施例15-51]
実施例1-10で製造されたハイブリッド塩に対して、それぞれポリアミドPA66、PA6において実施例13、14の方法に従ってサンプル製造及びテストを行った結果は、表14、表15及び表16に示した。
【0195】
[比較例1 ジプロピルホスフィン酸アルミニウム]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、圧力が上がらなくなるまでプロピレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、この時、圧力計は、0.8MPaを示し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にプロピレンを連続的に導入し、ガス流量計によりプロピレンの導入量を計測した。15.5時間後、系の圧力が下がらなくなったので、反応を停止させ、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して透明反応液を得た。
【0196】
反応中にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果は、表13に示した。
【0197】
【表13】
【0198】
上記溶液の一部525グラム(リン0.6モル含有)を、66.64グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過が遅く、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、92.8グラムの白色固体を得、収率が98%であった。
【0199】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=5.21μmであった。
【0200】
サンプルに対してXRDテストを行った結果、XRDで測定された相対強度が最も高い特徴ピークの対応する層間隔は、11.079Å(100%)であった。
【0201】
[比較例2 ジエチルホスフィン酸アルミニウム]
100グラムのホスフィン酸ナトリウム一水和物を500グラムの水に溶解し、1Lのステンレス鋼製圧力釜に投入し、反応釜を窒素ガスで2回置換し、真空吸引した後、0.8MPaになるまでエチレンを充填した。反応液を90℃ほどに加熱し、次に濃度4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液を10ml/hの等速で注入し、反応釜にエチレンを連続的に導入し、ガス流量計によりエチレンの導入量を計測した。8時間後、系の圧力が下がらなくなったので、反応を停止させ、降温して圧力を逃がし、Nでパージし、排出して透明反応液を得た。反応終了後にサンプリングし、核磁気分析を行い、31P-NMR結果によれば、
上記溶液の一部190グラム(リン0.24モル含有)を、26.66グラムの硫酸アルミニウム十八水和物を含む濃度10質量%の水溶液とゆっくりと混合し、反応温度を70℃に制御し、pH値を3.0以下に調節し、大量の沈殿を得た。投入混合終了後、0.5時間保温した。熱いうちにろ過し、ろ過が遅く、ろ過ケーキをきれいな水でpH>4.5になるまで洗浄した。その後、ろ過ケーキを120℃で乾燥させ、29.8グラムの白色固体を得、収率が95.4%であった。
【0202】
サンプルに対して粒径テストを行った結果、D50=29.5μmであった。
【0203】
[比較例3]
ポリアミドPA66と比較例1で製造されたジプロピルホスフィン酸アルミニウムと複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度280℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、280℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94V-0であった。
【0204】
[比較例4]
ポリアミドPA66と比較例1で製造されたジプロピルホスフィン酸アルミニウムと複合酸化防止剤とを87.1:12.5:0.4の質量比率にて、設定された温度280℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、280℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94 V-0であった。
【0205】
[比較例5]
ポリアミドPA66と比較例1で製造されたジプロピルホスフィン酸アルミニウムと複合酸化防止剤とを89.6:10:0.4の質量比率にて、設定された温度280℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、280℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94 V-1であった。
【0206】
[比較例6]
ポリアミドPA6と比較例1で製造されたジプロピルホスフィン酸アルミニウムと複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度260℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、260℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL-94 V-1であった。
【0207】
[比較例7]
ポリアミドPA66と比較例2で製造されたジエチルホスフィン酸アルミニウムと複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度280℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、280℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94等級なしであった。
【0208】
[比較例8]
ポリアミドPA6と比較例2で製造されたジエチルホスフィン酸アルミニウムと複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度260℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、260℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL-94等級なしであった。
【0209】
[比較例9]
ポリアミドPA66とADPと複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度280℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、280℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94 等級なしであった。
【0210】
[比較例10]
ポリアミドPA6とADPと複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度260℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、260℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL-94 等級なしであった。
【0211】
[比較例11]
ポリアミドPA66と実施例11で製造されたハイブリッド塩と複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度280℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、280℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94 等級なしであった。
【0212】
[比較例12]
ポリアミドPA6と実施例11で製造されたハイブリッド塩と複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度260℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、260℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL-94 等級なしであった。
【0213】
[比較例13]
ポリアミドPA66と実施例12で製造されたハイブリッド塩と複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度280℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、280℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL94等級なしであった。
【0214】
[比較例14]
ポリアミドPA6と実施例12で製造されたハイブリッド塩と複合酸化防止剤とを84.6:15:0.4の質量比率にて、設定された温度260℃で回転数50回転数/分のインターナルミキサーにおいて混合し、5分後に取り出して冷却し、乾燥させた。次に金型に充填し、260℃のプレス加硫機で10分予熱し、10MPaを5分維持した後、コールドプレスした。冷却後、サンプルを切り取ってテストした。1.6mmサンプルの難燃性等級は、UL-94等級なしであった。
【0215】
比較例3-14テスト結果は、表17に示した。
【0216】
【表14】
【0217】
【表15】
【0218】
【表16】
【0219】
【表17】

*:NG 等級なし
【0220】
実施例15-51は、本発明に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩を含有する難燃剤がポリアミドに対して優れた難燃化効率を有することを示した。難燃化ポリアミドを製造する時、操作に明らかな粉塵はなかった。製造された難燃化PA66サンプルは、靭性に優れ、明らかな分解がなかった。比較例は、同じ条件において、得られたジプロピルホスフィン酸アルミニウム及びジエチルホスフィン酸アルミニウムの粒径がハイブリッド塩に比べて小さく、ハイブリッド塩の大粒径が予想外であることを示した。比較例3-6は、ジプロピルホスフィン酸塩が一定の難燃性を有するが、ポリアミドへの難燃化効率が本発明に記載の式(I)の構造を有するハイブリッド塩に及ばないことを示し、実施例17、21、22、27、30、31、34、35、40、44及び47を参照する。難燃化ポリアミドを製造する時、ジプロピルホスフィン酸塩の粉塵が大きく、操作環境が悪いことが観察された。また図1から分かるように、その熱安定性が低すぎて、製造された難燃化PA66の脆性が大きく、分解が深刻であることを示した。比較例7-10は、純粋なジエチルホスフィン酸アルミニウムのポリアミドへの難燃化効率が低いことを示した。比較例11-14は、式(I)の構造を有するハイブリッド塩に、ジエチルホスフィン酸塩の占める比率が高すぎ、すなわちx>0.8である場合には、前記ハイブリッド塩のポリアミドへの難燃化効率が低減することを示した。
【0221】
上記は、本発明のいくつかの実施形態にすぎず、本発明をいかなる形でも限定することを意図したものではなく、好ましい実施形態で本発明を上記のように開示しているが、それらは本発明を限定することを意図したものではない。当業者であれば、本願の技術案の範囲から逸脱することなく、上記で開示された技術的内容を使用してわずかな変更または修正を行うことは、同等の実装例と等価であり、技術案の範囲内に含まれる。
【0222】
(付記)
(付記1)
式(I)に示す化学式を有する化合物から選択される少なくとも1つであり、
【化2】
ただし、Mは、中心原子であり、R、R、Rは、いずれも独立して、n-プロピル、イソプロピルから選択されるいずれかであり、ジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンは、いずれも配位子であり、且つジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンのうちの少なくとも2つの酸塩イオンは、同じ金属原子と対になり、且つそのうちの1つの配位子は、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンでなければならず、
Mは、金属元素から選択され、前記金属元素は、第IIA、IIIA、IVA、VA族金属元素、遷移金属元素、ランタン系金属元素から選択される少なくとも1つであり、
nは、金属Mの価数であり、nは、2、3又は4から選択され、
0≦x≦0.80であり、0.05≦y≦0.7であり、0≦z≦0.95であり、且つx+y+z=1である、ことを特徴とするジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【0223】
(付記2)
前記第IIA族金属元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1つであり、
前記第IIIA族金属元素は、Alであり、
前記第IVA族金属元素は、Snであり、
前記第VA族金属元素は、Sbであり、
前記遷移金属元素は、Fe、Zn、Cu、Ti、Zr、Mnから選択される少なくとも1つであり、
前記ランタン系金属元素は、Ceである、ことを特徴とする付記1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【0224】
(付記3)
0≦x≦0.80であり、0.05≦y≦0.70であり、0.005≦z≦0.92であり、
好ましくは、0≦x≦0.66であり、0.30≦y≦0.70であり、0.01≦z≦0.60であり、
好ましくは、0≦x≦0.30であり、0.35≦y<0.70であり、0.05≦z≦0.60である、ことを特徴とする付記1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【0225】
(付記4)
M=Alであり、n=3である、ことを特徴とする付記1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【0226】
(付記5)
混合物Aと金属元素源Mとを含有する材料を水相中で反応Iを発生させて、前記ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩を得るステップを含み、
前記混合物Aは、ジエチルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチルプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ジプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩とを含む、ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩の製造方法。
【0227】
(付記6)
前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレン及びプロピレンを導入し、反応IIを行って、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記水溶液中の前記水の質量は、前記水溶液の総質量の10-99%であり、
好ましくは、前記反応IIの条件は、温度0-250℃、時間0.01-50h、圧力0-3MPaであり、
好ましくは、前記ラジカル開始剤と前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の総量とのモル比は、0.001-0.1:1であり、
好ましくは、前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチレンと、プロピレンとのモル比は、1:0.05-1.8:0.2-1.95であり、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレンを導入して反応させ、導入するプロピレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレン及びエチレンの一部を導入して反応させ、エチレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(2x+y)/1よりも小さく、導入するプロピレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレンの一部を導入し、前記エチレンの一部とホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比を式(I)の(2x+y)/1以下にし、前記エチレンの一部が完全に反応した後、プロピレンの導入を継続して反応させ、導入するプロピレンと開始ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記金属元素源Mは、金属元素M塩から選択される少なくとも1つであり、
好ましくは、前記金属元素M塩は、金属元素Mの硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩、酸化物から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする付記5に記載の製造方法。
【0228】
(付記7)
付記1~4のいずれか1つに記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩、及び付記5又は6のいずれか1つに記載の方法で製造されるジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする難燃剤。
【0229】
(付記8)
難燃剤P及び熱可塑性高分子材料を含み、
前記難燃剤Pは、付記7に記載の難燃剤から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする難燃化材料。
【0230】
(付記9)
前記難燃剤Pの前記難燃化材料中の含有量は、1-35質量%である、ことを特徴とする付記8に記載の難燃化材料。
【0231】
(付記10)
前記難燃化材料は、機能添加剤をさらに含み、
前記機能添加剤は、強化剤、ドリップ防止剤、安定剤、顔料、染料、炭素化触媒、分散剤、核形成剤、無機充填剤、酸化防止剤から選択される少なくとも1つであり、
好ましくは、前記機能添加剤の前記難燃化材料中の含有量は、5-40質量%である、ことを特徴とする付記8に記載の難燃化材料。
【0232】
(付記11)
前記難燃化材料は、難燃剤Qをさらに含み、
前記難燃剤Qは、窒素系難燃剤とホウ素系難燃剤から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする付記10に記載の難燃化材料。
【0233】
(付記12)
前記難燃剤Qの前記難燃化材料中の含有量は、0.5-20質量%である、ことを特徴とする付記11に記載の難燃化材料。
【0234】
(付記13)
前記熱可塑性高分子材料は、ポリアミドとポリエステルから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする付記8に記載の難燃化材料。


図1
図2a
図2b
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に示す化学式を有する化合物から選択される少なくとも1つであり、
【化1】

ただし、Mは、中心原子であり、R、R、Rは、いずれも独立して、n-プロピル、イソプロピルから選択されるいずれかであり、ジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンは、いずれも配位子であり、且つジエチルホスフィン酸塩イオン、エチルプロピルホスフィン酸塩イオン、ジプロピルホスフィン酸塩イオンのうちの少なくとも2つの酸塩イオンは、同じ金属原子と対になり、且つそのうちの1つの配位子は、エチルプロピルホスフィン酸塩イオンでなければならず、
Mは、金属元素から選択され、前記金属元素は、第IIA、IIIA、IVA、VA族金属元素、遷移金属元素、ランタン系金属元素から選択される少なくとも1つであり、
nは、金属Mの価数であり、nは、2、3又は4から選択され、
0≦x≦0.80であり、0.05≦y≦0.7であり、0≦z≦0.95であり、且つx+y+z=1である、ことを特徴とするジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【請求項2】
前記第IIA族金属元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1つであり、
前記第IIIA族金属元素は、Alであり、
前記第IVA族金属元素は、Snであり、
前記第VA族金属元素は、Sbであり、
前記遷移金属元素は、Fe、Zn、Cu、Ti、Zr、Mnから選択される少なくとも1つであり、
前記ランタン系金属元素は、Ceである、ことを特徴とする請求項1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【請求項3】
0≦x≦0.80であり、0.05≦y≦0.70であり、0.005≦z≦0.92であり、
好ましくは、0≦x≦0.66であり、0.30≦y≦0.70であり、0.01≦z≦0.60であり、
好ましくは、0≦x≦0.30であり、0.35≦y<0.70であり、0.05≦z≦0.60である、ことを特徴とする請求項1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【請求項4】
M=Alであり、n=3である、ことを特徴とする請求項1に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩。
【請求項5】
混合物Aと金属元素源Mとを含有する材料を水相中で反応Iを発生させて、前記ジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩を得るステップを含み、
前記混合物Aは、ジエチルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチルプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ジプロピルホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩とを含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩の製造方法。
【請求項6】
前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレン及びプロピレンを導入し、反応IIを行って、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記水溶液中の前記水の質量は、前記水溶液の総質量の10-99%であり、
好ましくは、前記反応IIの条件は、温度0-250℃、時間0.01-50h、圧力0-3MPaであり、
好ましくは、前記ラジカル開始剤と前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の総量とのモル比は、0.001-0.1:1であり、
好ましくは、前記ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、エチレンと、プロピレンとのモル比は、1:0.05-1.8:0.2-1.95であり、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレンを導入して反応させ、導入するプロピレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、エチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にプロピレン及びエチレンの一部を導入して反応させ、エチレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(2x+y)/1よりも小さく、導入するプロピレンとホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記混合物Aの取得は、
ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩と、ラジカル開始剤とを含有する水溶液にエチレンの一部を導入し、前記エチレンの一部とホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比を式(I)の(2x+y)/1以下にし、前記エチレンの一部が完全に反応した後、プロピレンの導入を継続して反応させ、導入するプロピレンと開始ホスフィン酸及び/又はそのアルカリ金属塩の合計リンとのモル比が式(I)の(y+2z)/1となった後、プロピレンの導入を停止させ、残りのエチレンの導入を継続して反応させ、前記混合物Aを得るステップを含み、
好ましくは、前記金属元素源Mは、金属元素M塩から選択される少なくとも1つであり、
好ましくは、前記金属元素M塩は、金属元素Mの硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩、酸化物から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のジアルキルホスフィン酸ハイブリッド塩を含む、ことを特徴とする難燃剤。
【請求項8】
難燃剤P及び熱可塑性高分子材料を含み、
前記難燃剤Pは、請求項7に記載の難燃剤から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする難燃化材料。
【請求項9】
前記難燃剤Pの前記難燃化材料中の含有量は、1-35質量%である、ことを特徴とする請求項8に記載の難燃化材料。
【請求項10】
前記難燃化材料は、機能添加剤をさらに含み、
前記機能添加剤は、強化剤、ドリップ防止剤、安定剤、顔料、染料、炭素化触媒、分散剤、核形成剤、無機充填剤、酸化防止剤から選択される少なくとも1つであり、
好ましくは、前記機能添加剤の前記難燃化材料中の含有量は、5-40質量%である、ことを特徴とする請求項8に記載の難燃化材料。
【請求項11】
前記難燃化材料は、難燃剤Qをさらに含み、
前記難燃剤Qは、窒素系難燃剤とホウ素系難燃剤から選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項10に記載の難燃化材料。
【請求項12】
前記難燃剤Qの前記難燃化材料中の含有量は、0.5-20質量%である、ことを特徴とする請求項11に記載の難燃化材料。
【請求項13】
前記熱可塑性高分子材料は、ポリアミドとポリエステルから選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項8に記載の難燃化材料。
【国際調査報告】