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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 33/12 20060101AFI20241001BHJP
   A01N 55/10 20060101ALI20241001BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20241001BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 31/695 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241001BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01N55/10 100
A01N25/30
A01N47/44
A61K31/695
A61K31/14
A61K47/18
A61K31/155
A61K9/08
A61P31/04
A61P17/00 101
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521905
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 GB2022052578
(87)【国際公開番号】W WO2023062360
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2114628.7
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TRITON
3.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】524135554
【氏名又は名称】ハイブリサン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】モルティマー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ブリッジマン,リー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC31
4C076DD02
4C076DD07
4C076DD12
4C076DD49
4C076DD64
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA44
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA07
4C086ZA89
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA41
4C206FA42
4C206HA31
4C206MA05
4C206MA26
4C206MA37
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA07
4C206ZA89
4C206ZB35
4C206ZC75
4H011AA01
4H011AA02
4H011AA03
4H011BA05
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB11
4H011BB16
4H011BC06
4H011DA13
(57)【要約】
本発明は、以下の:(i)約0.01%~約0.4%w/vの濃度の1つ以上の水溶性有機シラン;(ii)約0.01%~0.5%w/vの濃度の1つ以上の第四級アンモニウム化合物;及び(iii)約0.05%~約1%w/vの濃度の1つ以上の非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤を含む、抗菌組成物を提供する。さらに、当該組成物を作製する方法、並びに組成物を用いて皮膚及び/又は創傷感染を治療及び/又は予防する方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i)約0.01%~約0.4%w/vの濃度の1つ以上の水溶性有機シラン;
(ii)約0.01%~0.5%w/vの濃度の1つ以上の第四級アンモニウム化合物;及び
(iii)約0.05%~約1%w/vの濃度の1つ以上の非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤を含む、抗菌組成物。
【請求項2】
水溶性有機シランが第四級アンモニウムシランである、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項3】
第四級アンモニウムシランが、塩化ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム及び3-(トリヒドロキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドの1つ以上である、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項4】
第四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)、塩化ベンゼトニウム、臭化テトラドニウム、臭化セトリモニウム、臭化ラウルトリモニウム、塩化セタルコニウム及び塩化セトリモニウムの1つ以上から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項5】
非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤が、ココミドプロピルベタイン、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポロキサマー(Poloxamer)188、ポリソルベート80、PEG-7グリセリルココエート、PEG-7オレアミド、2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール、ポリソルベート20、ポロキサマー407、ココミドプロピルアミンオキシド及びラウラミドプロピルベタインの1つ以上から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項6】
さらに、キレート剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項7】
キレート剤の濃度が約0.01%~約0.2%w/vである、請求項6に記載の抗菌組成物。
【請求項8】
キレート剤が、EDTA二ナトリウム、EDTA三ナトリウム、及びEDTA四ナトリウムのうちの1つ以上から選択される、請求項6又は7に記載の抗菌組成物。
【請求項9】
さらに、高分子ビグアニドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項10】
高分子ビグアニドが、クロルヘキシジン及びポリヘキサメチレンビグアニドの1つ以上から選択される、請求項9に記載の抗菌組成物。
【請求項11】
pHが約4.5~約8.5である、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項12】
さらに、1つ以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項13】
局所投与用に製剤化された、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項14】
抗菌性である、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項15】
抗バイオフィルムである、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の抗菌組成物を作製する方法であって、以下の:
(a)以下の:
(i)約0.01%~約0.4%w/vの濃度の水溶性有機シラン;
(ii)約0.01%~0.5%w/vの濃度の1つ以上の第四級アンモニウム化合物;
(iii)約0.05%~約1%w/vの濃度の非イオン性又は両性の界面活性剤;及び
(iv)水
を混合して溶液を形成すること;並びに
(b)前記溶液のpHを約4.5~約8.5に調製すること、
を含む、方法。
【請求項17】
治療で用いるための、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項18】
皮膚及び/又は創傷感染の治療及び/又は予防に用いるための、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項19】
感染が細菌感染である、請求項18に記載の抗菌組成物。
【請求項20】
細菌感染がバイオフィルムを含む、請求項19に記載の抗菌組成物。
【請求項21】
創傷が開放創である、請求項18~20のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項22】
創傷が急性又は慢性である、請求項18~21のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項23】
患者の皮膚及び/又は創傷感染を治療及び/又は予防するための方法であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗菌組成物を皮膚及び/又は創傷に投与することを含む方法。
【請求項24】
感染が細菌感染である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
細菌感染がバイオフィルムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
創傷が開放創である、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
創傷が急性又は慢性である、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌組成物、その使用、並びに皮膚及び/又は創傷感染を治療又は予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌耐性の世界的な問題には、いくつかの生物(例えば、肺炎桿菌、大腸菌及び黄色ブドウ球菌)が複数の異なる抗生物質に対する耐性を獲得してしまったことがあげられる。疾病管理予防センター(CDC)によれば、2013年には、抗生物質耐性微生物による感染が200万を超え、その後、これらの感染による死亡が2万3000を超えた。
抗生物質に対する抗菌薬耐性が増加し続けているため、抗生物質の使用は、局所感染や全身感染の拡大など、有効な代替手段がない場合に留める必要がある。開放創の治療では、創傷清拭を続け、かつ、局所抗菌剤(消毒剤)を用いるのが、抗生物質よりも有効であることが示されている。消毒剤は、抗生物質とは異なり、多くの作用機序を通して有効であるため、消毒剤に対する耐性獲得が起こりにくい。
【0003】
しかしながら、消毒剤を用いても、感染は、開放創、特に慢性開放創の治癒における遅延治癒の最も可能性の高い唯一の原因である。放置すると、汚染からコロニー形成及び局所感染、全身感染、敗血症及び多臓器不全症候群へと進行し、生命を脅かす場合もある。慢性創傷の感染は、バイオフィルムがあるとさらに複雑になる場合がある。
バイオフィルムは、細胞どうしが互いに、またしばしば表面にも付着する、微生物のあらゆる合成栄養コンソーシアムから形成される。これらの接着細胞は、細胞外高分子物質(EPS)から構成される粘液性の細胞外マトリクス内に包埋される。バイオフィルム内の細胞は、EPS成分を産生するが、これは、通常、細胞外多糖類、タンパク質、脂質及びDNAの高分子集合体である。
【0004】
バイオフィルムの存在に対する診断はまだないが、過剰な炎症並びに免疫複合体及び補体の活性化を起こし、治癒の遅延につながる。したがって、バイオフィルムの制御は、慢性創傷管理の重要な部分であるが、現在、創傷のバイオフィルムを効果的に治療できる消毒剤は比較的少ない。さらに、患者自身の細胞及び組織に害を及ぼさないように、殺菌剤には細胞毒性がほとんど又は全くないことが求められるため、この問題は複雑である。これは、薬物の安全性と効能の比率である治療指数を用いて定量化することができる。効能は高レベルの細胞毒性を伴う場合があるため、細菌及びバイオフィルムに対する治療を選択する場合、このバランスを正しくとることが重要である。
【0005】
バイオフィルムは、多くの抗菌剤及び抗生物質に対して耐性を高めることが示されている(非特許文献1)。したがって、浮遊性細菌に有効な抗菌剤がバイオフィルムにも有効であるとは考えられない。このため、バイオフィルムに対する特別に製剤化された抗菌剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Salisbury AM,Woo K,Sarkar S,Schultz G,Malone M,Mayer DO,Percival SL.Tolerance of Biofilms to Antimicrobials and Significance to Antibiotic Resistance in Wounds.Surg Technol Int.2018 Nov 11;33:59-66.PMID:30326137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、多種多様な微生物、特に、抗生物質耐性細菌及びバイオフィルムを含む細菌に対して有効であり、かつ、細胞毒性も低い新規な抗菌組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の:(i)約0.01%~約0.4%w/v又は約0.5%w/vの濃度の1つ以上の水溶性有機シラン;(ii)約0.01%~0.5%w/vの濃度の1つ以上の第四級アンモニウム化合物;及び(iii)約0.05%~約1%w/vの濃度の1つ以上の非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤を含む、抗菌組成物を提供する。本発明の組成物は、抗菌活性が極めて有効であり、確立されたバイオフィルムを阻害及び破壊することができ、かつ、細胞毒性も低いことが実証されている。
【0009】
当該抗菌組成物は、創傷洗浄溶液に添加し、これを用いて、全ての種類の創傷を洗浄することができる。慢性皮膚創傷は、脱落組織、壊死組織及び/又は微生物バイオフィルムで被覆されることが多い。当該コーティングは除去するのが困難であり、創傷治癒の遅延をもたらす。本発明の組成物は、その抗菌及び洗浄活性を介して創傷治癒に関するこれらの障壁を除去することができる。慢性創傷は、治癒を遅延させ得る微生物及び汚染物質に感染することが多く、この複雑なプロセスが長期化する。本発明の組成物の成分は、併用してバイオフィルム形成を除去し、かつ、防止に寄与するように機能する抗菌物質、第四級アンモニウム化合物、及び界面活性剤を含む調製されたテーラーメードの製剤を提供する。当該組成物の抗菌特性は広範囲であり、グラム陰性及び陽性の創傷微生物並びに多種バイオフィルムに対して試験されており、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)等の真菌に対しても有効である。
本発明は、図面を参照して、例示のみを目的として、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1-(A)1分及び5分の接触時間でハイブリサン(Hybrisan)テクノロジー又はプロントザン(Prontosan)(登録商標)のいずれかで処理した場合の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC 15442のMBEC(24時間)及び(B)1分及び5分の接触時間でハイブリサンテクノロジー又はプロントザン(登録商標)のいずれかで処理した場合の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 6538のMBEC(24時間)を示すグラフである。エラーバーは標準偏差を表し、*は、対照と比較して、又は時点間で(N=3)有意なlog(対数)減少(p<0.05)を表す。
図2】1分及び5分の接触時間でハイブリサンテクノロジー又はプロントザン(登録商標)のいずれかで処理したときの緑膿菌ATCC 15442の確立された静的(24時間)バイオフィルムに関するグラフである。エラーバーは標準偏差を表し、*は、対照と比較して、又は時点間で(N=3)有意なlog減少(p<0.05)を表す。
図3】ハイブリサンテクノロジー又はプロントザン(登録商標)のいずれかで処理した場合の、緑膿菌ATCC 15442の静的(24時間)バイオフィルムの再増殖に対する、処理(5分)後のハイブリサンテクノロジー又はプロントザン(登録商標)のいずれかの影響(N=3)に関するグラフである。
図4】ハイブリサンテクノロジー又はプロントザン(登録商標)で処理した場合の24時間バイオフィルム(A)CDCバイオリアクタモデル(ASTM E2871-13)で1、5及び10分の接触時間で増殖させた緑膿菌ATCC 15442;(B)CDCバイオリアクタモデル(ASTM E2871-13)で1、5及び10分の接触時間で増殖させた黄色ブドウ球菌ATCC 29213;(C)CDCバイオリアクタモデル(ASTM E2871-13)で1、5及び10分の接触時間で増殖させたカンジダ・アルビカンスATCC 10231及び(D)ドリップフローリアクタ(ASTM E2647-13)で5分の接触時間で増殖させた緑膿菌ATCC 15442(E)ドリップフローリアクタ(ASTM E2647-13)で5分の接触時間で増殖させた黄色ブドウ球菌ATCC 29213に関するグラフである。
図5】ISO 10993:5-2009に従って試験した場合の、ハイブリサンテクノロジー及びプロントザン(登録商標)で5分間、10分間及び24時間処理したときのマウス線維芽細胞L929の生存率(%)を示すグラフである。
図6】(A)1分及び5分の接触時間でv9又はプロントザン(登録商標)のいずれかで処理した場合の緑膿菌ATCC 15442のMBEC(24時間)及び(B)1分及び5分の接触時間でv9又はプロントザン(登録商標)のいずれかで処理した場合の黄色ブドウ球菌ATCC 6538のMBEC(24時間)に関するグラフである。エラーバーは標準偏差を表し、*は、対照と比較して、又は時点間で(N=3)有意なlog減少(p<0.05)を表す。
図7】1分及び5分の接触時間でv9又はプロントザン(登録商標)のいずれかで処理した場合の緑膿菌ATCC 15442の確立された静的(24時間)バイオフィルムに関するグラフである。エラーバーは標準偏差を表し、*は、対照と比較して、又は時点間で(N=3)有意なlog減少(p<0.05)を表す。
図8】ハイブリサンテクノロジー又はプロントザン(登録商標)のいずれかで処理した場合の、緑膿菌ATCC 15442の静的(24時間)バイオフィルムの再成長に対する、処理(5分)後のv9又はプロントザン(登録商標)のいずれかの影響に関するグラフである(N=3)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下の:(i)約0.01%~約0.4%w/v又は約0.5%w/vの濃度の1つ以上の水溶性有機シラン;(ii)約0.01%~0.5%w/vの濃度の1つ以上の第四級アンモニウム化合物;及び(iii)約0.05%~約1%w/vの濃度の1つ以上の非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤を含む、抗菌組成物を提供する。
【0012】
理論に束縛されるものではないが、各成分の抗菌作用の様式は、いくつかのメカニズムを介して併用作用すると考えられる。有機シラン及び第四級アンモニウム生成物が細胞膜に結合すると、その結果、細胞内成分の漏出をもたらすことが知られている。特に、有機シランは、物理的な死滅メカニズムによってのみ作用することが知られており、薬剤耐性微生物の発生を促進しない。第四級アンモニウム化合物は、その物理的メカニズムに加えて、エネルギー生成酵素を不活性化し、必須細胞タンパク質を変性させ、自己溶解酵素活性を誘導し、RNA物質を分解することが知られている。高分子ビグアニドは、微生物細胞膜を破壊することも知られているが、かつ、細胞代謝を破壊し、細胞機能を妨害し、DNAに結合して染色体凝縮を起こすこともできる。これらのメカニズムは、組み合わさると相補的になり、第四級アンモニウム化合物及び高分子ビグアニド殺菌濃度は、微生物細胞への侵入を高める細胞膜との干渉の結果として減少し、他の議論されたメカニズムは、微生物死を導くと考えられる。
【0013】
有機シランは、吸湿性である(すなわち、水分を吸収する)ことが知られており、水と接触すると急速に反応し、これにより、有機シランの効能が低下し、透明な組成物を曇らせる。これにより、組成物のバイオフィルムの効能が著しく低下する。本発明者らは、非イオン性及び/又は陽イオン性の界面活性剤が、組成物を長期間にわたって透明に維持しながら、有機シランを安定化できることを見出した。しかしながら、効能試験において、本発明者らは、当該界面活性剤を添加すると、場合によっては抗菌効能を完全に阻害する、著しい悪影響を及ぼし得ることを見出した。したがって、本発明者らは、バイオフィルムの効能を維持しながら、組成物の安定性を維持する界面活性剤の範囲の最小濃度を決定した。この研究に基づいて、本発明者らは、多くの有効かつ安定な組成物についての濃度範囲を同定することができた。
【0014】
界面活性剤及びキレート剤の存在により、表面張力が低下し、及びEPSをともに保持する金属イオンの結合を介して、バイオフィルムに対する効能を高める。これらは併用することで、EPSを破壊し、抗菌成分をバイオフィルムに浸透させて、微生物細胞を死滅させることができる。当該活性により、高濃度の抗菌成分が必要なく、したがって、細胞毒性の問題を回避するのにも役立つ。上記のように、界面活性剤はまた、抗菌剤の効能に影響を及ぼさずに組成物を安定化するのに役立つ。
【0015】
加水分解された有機シランを他の成分と併用すると、縮合反応を経て、水に不溶性の生成物を形成することが知られており、これにより、それらの抗菌活性が低下し、透明な溶液が濁った状態になる。これは、第四級アンモニウム化合物を含む界面活性剤を注意深く選択して、広いpH範囲で有機シランを安定化させることによって克服することができる。さらに、キレート剤、特にEDTAの包含はpH依存性であり、界面活性剤と相互作用して沈殿を生じ得ることも知られている。EDTA塩及び成分の組み合わせを注意深く選択することにより、これが克服できるようになった。
【0016】
本発明の抗菌組成物は、細菌、真菌、藻類、原生動物、ウイルス及びサブウイルス剤を含む微生物を死滅させ、及び/又はその増殖を阻害することができる。組成物は、殺菌性又は静菌性であってよく、殺菌剤又は消毒剤であってもよい。本発明の抗菌組成物は、抗菌性、抗真菌性又は抗寄生虫性であってよい。本発明の抗菌組成物は、好ましくは抗バイオフィルムである。
【0017】
水溶性有機シランには、アルコキシシラン等のケイ素結合加水分解性基があり、これにより、有機シランは、ヒドロキシル又は他のケイ素反応性基を含有する基材に共有結合することができる。従って、有機シランは、例えば、ファイバーグラスを製造する際に、樹脂への充填剤の結合を改善するためのカップリング剤としてしばしば用いられる。有機シランはまた、表面及び織物のための抗菌添加剤として使用されてよく、そして抗菌コーティング中に広範に処方される。
有機シランの濃度がより低い場合、必要な非イオン性又は両性の界面活性剤の濃度が低減し、また細胞毒性が低減されるため、望ましい。非イオン性及び両性の界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物の抗菌効果を「遮蔽する」ことが知られているため、最小限の濃度で、低濃度でも高い効能が確実になる。
水溶性有機シランは、以下の一般式:
3-xSiD[化学式1]
(式中、
Aは-OH又は加水分解可能な基、例えば-Cl、-Br及びIのようなハロゲン化物、アルコキシ又はアルコキシエーテル、例えば式-OR及びOR2AOR(式中、Rは各々R又は水素であり、Rは炭素数1~4のアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル又は-CHCHCH(CH)であり、メチルが好ましく、R2Aは炭素原子が1~4個である二価の飽和炭化水素基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチル又は-CHCHCH(CH)であり、エチレン及びプロピレンが好ましい);アミノ、例えば-N(R、例えば-NHCH、-N(CH及びNCCHCH、ここで、2つの有機シランが-NH-単位によって結合されているオルガノシラザンも含む;アセトキシ、即ち-OOCCH;アセトアミド、即ち-HNOCCH;及びヒドリド、即ち-Hである;
Bは、炭素原子が1~4個であるアルキル基であり、メチルが好ましい。
xは、0、1又は2であり;
Dは、炭素原子が1~4個である炭化水素基、フェニル、又は少なくとも1個の酸素若しくは窒素基を含有する非イオン性若しくはカチオン性の置換炭化水素基、又はこのような置換炭化水素基の塩である)であってよい。
好ましくは、水溶性有機シランは第四級アンモニウムシランである。第四級アンモニウムシランは、細胞毒性が低く、かつ、広域スペクトルの抗菌活性を有することが知られている。第四級アンモニウムシランは、その表面に官能性末端-OH基があり、これは、(酸の使用によって)表面修飾されて、-OH基を活性化することができる。第四級アンモニウムシランの抗菌活性は、細菌の細胞壁及び膜に浸透及び/又は結合して、「接触死滅」として知られるメカニズムである自己分解を引き起こす-C1837親油性アルキル鎖に由来する。これらの化合物は、織物、医療機器、及び歯科材料を含む広範囲の用途において細菌増殖を低減するという効能を示す。
第四級アンモニウムシランは、塩化ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム及び3-(トリヒドロキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドの1つ以上であってもよい。好ましくは、第四級アンモニウムシランは、塩化ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムである。
【0018】
抗菌組成物は、濃度が約0.01%~約0.4%w/v又は約0.5%w/v、好ましくは約0.05%~約0.3%w/v又は約0.4%w/vの1つ以上の水溶性有機シランを含む。組成物は、濃度が約0.1%w/vである1つ以上の水溶性有機シランを含んでよい。
抗菌組成物は、さらに、1つ以上の第四級アンモニウム化合物を含む。当該化合物は、好ましくは水溶性及び/又は有機性である。好ましくは、第四級アンモニウム化合物は、ケイ素原子を含まず、少なくとも炭素原子が8個である少なくとも1つの窒素結合炭化水素基があってよい。適当な第四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)、塩化ベンゼトニウム、臭化テトラドニウム、臭化セトリモニウム、臭化ラウルトリモニウム、塩化セタルコニウム及び塩化セトリモニウムの1つ以上から選択されてよい。
抗菌組成物は、濃度が約0.01%~0.5%w/v、好ましくは約0.05%~約0.4%w/vである1つ以上の第四級アンモニウム化合物を含む。組成物は、濃度が約0.2%w/vである1つ以上の第四級アンモニウム化合物を含んでよい。
【0019】
抗菌組成物は、さらに、1つ以上の非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤を含む。
非イオン性界面活性剤の例としては、C~C18アルコールエトキシレート;ソルビタンのラウリン酸エステル、オレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル、無水ソルビタン等のソルビタン又はポリエトキシル化ソルビタンのC~C18脂肪族エステル;PEG-5ココエート、PEG-15ココエート、PEG-4ジラウリン酸、PEG-32ジラウリン酸、PEG-3コカミド、PEG-6コカミド、PEG-11コカミド、PEG-20ジオレイン酸、PEG-6イソパルミチン酸、PEG-12イソステアリン酸、PEG-3ラウラミド、PEG-8ラウリン酸、PEG-32ラウリン酸、PEG-4オクタン酸、PEG-7オレイン酸、PEG-2オレイン酸、PEG-14オレイン酸、PEG-20パルミチン酸、PEG-14ステアリン酸、PEG-5タロウアミド等のC~C18脂肪酸エステル及びアミド;カプリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアミド、及びステアリルアミド等のC~C18脂肪族エステル;カプリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、及びステアリルアミド等のC~C18脂肪族アルコール;テトラメチルデシンジオール、ジメチルオクチンジオール等のC~C18ジオール;ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックコポリマー;カプリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル等のグリセリンのC~C18脂肪酸エステル;エトキシル化及びプロポキシル化ラウリルアルコール等のエトキシル化及びプロポキシル化C~C18脂肪アルコール;アソドデシルアミンオキシド、コカミンオキシド、コカミドプロピルアミンオキシド、ミリスタミンオキシド、ミリスタミドプロピルアミンオキシド、パルミタアミンオキシド及びステアラミンオキシド等のC~C18脂肪アミン及びアミドアミンオキシド;コカミド、コカミドDEA、コカミドMEA、ステアラミド、ステアラミドDEA、ステアラミドMEA及びステアラミドMIPA等のC~C18脂肪アミド及びアルカノールアミド並びにC~C18脂肪アルコールエトキシレート、テトラメチルデシンジオール、エトキシル化及びプロポキシル化ラウリルアルコールがあげられる。
【0020】
両性界面活性剤の例としては、ココ-スルタイン及びコカミドプロピルヒドロキシスルタイン等のC~C18スルタイン;ココアンホカルボキシグリシネート及びlauram-phoglycinate等のアミノ酸のC~C18脂肪誘導体、並びにデシルベタイン、ココベタイン、ラウリルベタイン、ミリスチルベタイン及びステアリルベタイン等のより好ましいC~C18アルキルベタイン;並びにココアミドエチルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン及びオレアミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン等のC~C18アミドアルキルベタインがあげられる。
【0021】
サルコシン陰イオン性界面活性剤の例としては、C~C18アルキルサルコシン、及びそれらのアルカリ金属又はアンモニウム塩、例えば、ココイルサルコシン、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシンリチウム、ラウロイルサルコシンアンモニウム、ココイルサルコシンナトリウム、及びココイルサルコシンカリウムを含む、C~C18アルキルサルコシンナトリウム、カリウム、リチウム、又はアンモニウムがあげられる。C~C18アルキルサルコシンを用いる場合、好ましくは、酸性カルボキシル基の少なくとも一部を、例えば水酸化ナトリウムで中和して、界面活性剤を水分散性にする。
特に好ましい非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤としては、ココミドプロピルベタイン、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(例えば、Brij 35)、ポロキサマー(Poloxamer)188、ポリソルベート80、PEG-7グリセリルココエート、PEG-7オレアミド、2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール(例えば、Triton X-100)、ポリソルベート20、ポロキサマー407、ココミドプロピルアミンオキシド及びラウラミドプロピルベタインの1つ以上があげられる。
【0022】
抗菌組成物は、濃度が約0.05%~約2%w/v、好ましくは約0.1%~約1%w/vの1つ以上の非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤を含む。組成物は、濃度が約0.4%w/vの1つ以上の非イオン性又は両性又はサルコシン陰イオン性の界面活性剤を含んでよい。
【0023】
場合によっては、抗菌組成物は、さらに、濃度が約0.01%~約0.2%w/v、好ましくは約0.01%~約0.1%w/vで存在してよいキレート剤を含む。組成物は、約0.05%w/vのキレート剤を含んでよい。
キレート剤は、EDTA二ナトリウム、EDTA三ナトリウム、及びEDTA四ナトリウムのうちの1つ以上から選択されてよい。
【0024】
場合によっては、抗菌組成物は、さらに、高分子ビグアニドを含む。適当な高分子ビグアニドとしては、クロルヘキシジン及びポリヘキサメチレンビグアニドの1つ以上があげられる。
【0025】
好ましくは、当該抗菌組成物は、pHが、約4.5~約8.5、又は約5~約7、又は約5.5~約6.5のpHである。当該抗菌組成物は、pHが、約5.5又は約6.5のpHであってよい。組成物のpHは、クエン酸、酢酸、塩酸、リン酸、ソルビン酸等の適当な有機若しくは無機酸、又は水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の有機若しくは無機塩基を用いて、約4.5~約8.5の範囲に調製することができる。
好ましくは、抗菌組成物は脂質を含まない。より好ましくは、製剤化された抗微生物組成物はリン脂質を含まない。
【0026】
本発明の抗菌組成物の例としては、以下があげられる:
約0.01%~約0.4%又は約0.5%w/vの濃度の、塩化ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム等の第四級アンモニウムシラン;
約0.01%~約0.4%又は約0.5%w/vの濃度の塩化ベンザルコニウム及び/又は塩化ジデシルジメチルアンモニウム等の1つ以上の第四級アンモニウム化合物;
場合によってはビグアニド、例えばクロルヘキシジン又はポリヘキサニド;
約0.01%~0.2%w/vの濃度のEDTA二ナトリウム又はEDTA四ナトリウム等のキレート剤;及び
約0.05%~約1%w/vの濃度のココミドプロピルベタイン、Brij 35、プルロニック(登録商標)F68、Tween 80等の非イオン性又は両性の界面活性剤;
であって、pHが約4.5~約8.5である、抗菌組成物。
【0027】
約0.1%w/v 塩化ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム;
約0.1%w/v 塩化ベンザルコニウム;
約0.1%w/v 塩化ジデシルジメチルアンモニウム;
約0.1%w/v ジグルコン酸クロロヘキシダン;
約0.18%又は約0.36%又は約0.72%又は約1.08%w/vのココミドプロピルベタイン;及び
約0.05%EDTA四ナトリウム;
であって、pHが約5~約7である、抗菌組成物。
【0028】
約0.1%w/v 塩化ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム;
約0.1%w/v 塩化ベンザルコニウム;
約0.1%w/v 塩化ジデシルジメチルアンモニウム;及び
約0.4%w/v ココミドプロピルベタイン
を含む、抗菌組成物。
【0029】
約0.1%w/v 塩化ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム;
約0.1%w/v 塩化ベンザルコニウム;
約0.1%w/v 塩化ジデシルジメチルアンモニウム;
約0.05%w/v EDTA二ナトリウム;及び
約0.4%w/v ココミドプロピルベタイン
を含む、抗菌組成物。
【0030】
抗菌組成物は、投与様式及び剤形の性質に応じて、希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビヒクル、充填剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、芳香剤、緩衝剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤、滑沢剤及び分散剤等のさらに、1つ以上の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含んでよい。
抗菌組成物は、好ましくは、ゲル、ローション、スプレー又は/及び溶液等の液体調製物の形態である。好ましくは、組成物は溶液の形態である。組成物は、好ましくは、創傷洗浄溶液の形態等の局所投与用に製剤化される。
抗菌組成物は、皮膚及び/又は創傷感染を治療及び/又は予防するための治療で用いられてよい。感染症は、バイオフィルムを含んでよい細菌感染症であってよい。
抗菌組成物は、抗微生物組成物、抗真菌組成物、抗寄生虫組成物又は抗バイオフィルム組成物であってよい。当該組成物は、グラム陰性若しくはグラム陽性細菌感染、真菌感染、寄生虫感染、又はバイオフィルム等の細菌感染を治療又は予防するために適宜用いられてよい。
【0031】
グラム陽性菌としては、例えば、緑色レンサ球菌(S.viridans)等のレンサ球菌、黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌、並びに枯草菌(B.subtilis)、炭疽菌(B.anthracis)及びセレウス菌(B.cereus)等のバシラス属があげられる。
【0032】
グラム陰性細菌としては、例えば、大腸菌、緑膿菌(P.aeruginosa)等のシュードモナス属、並びに肺炎桿菌(K.pneumonia)、クレブシエラ・アエロゲネス(K.aerogenes)及びクレブシエラ・オキシトカ(K.oxytoca)等のクレブシエラ属があげられる。
【0033】
本発明の組成物は、真菌感染の治療又は予防に用いられてよい。真菌感染としては、カンジダ(Candida)感染、例えば、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)、カンジダ・パラプシローシス(C.parapsilosis)又はカンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)又はそれらの組み合わせがあげられる。
【0034】
創傷は、開放創であってよく、急性又は慢性であってよい。本明細書に記載される抗菌組成物は、急性創傷、慢性創傷、熱創傷、化学薬品、放射線誘発性創傷、及び表在性熱傷の洗浄、保湿、及び除染に用いることができる。当該組成物はまた、手術中の創傷洗浄及び灌注のために用いられてよい。
【0035】
本発明はまた、患者の皮膚及び/又は創傷感染を治療又は予防するための方法を提供し、当該方法には、本明細書中に記載されるような抗菌組成物を皮膚及び/又は創傷に投与することが含まれる。
抗菌組成物を皮膚及び/又は創傷に投与することは、通常、皮膚及び/又は創傷を抗菌組成物と接触させることをいう。抗菌組成物は、約1分間、又は約5分間、又は約10分間、皮膚及び/又は創傷と接触させるように配置されてよい。
【0036】
ある特定の実施形態では、患者は、ヒト、霊長類、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、トリ、げっ歯類(マウス又はラットなど)、ネコ、又はイヌである。好ましくは、患者はヒトである。患者はまた、ウシ、雄牛、シカ、ヤギ、ヒツジ及びブタ等の生産動物、イヌ、ウマ及びポニー等の家畜及びスポーツ動物、イヌ及びネコ等のペット動物、並びにウサギ、ラット、マウス、ハムスター、スナネズミ又はモルモット等の実験動物であってよい。
【0037】
本発明は、さらに、本明細書に記載されるような抗菌組成物を作製する方法を提供し、以下の:(a)以下の:(i)約0.01%~約0.4%w/v又は約0.5%w/vの濃度の水溶性有機シラン;(ii)約0.01%~0.5%w/vの濃度の1つ以上の第四級アンモニウム化合物;(iii)約0.05%~約1%w/vの濃度の非イオン性又は両性の界面活性剤;及び(iv)水、を混合して溶液を形成すること;並びに(b)前記溶液のpHを約4.5~約8.5に調製すること、を含む。
【実施例1】
【0038】
本明細書における「ハイブリサンテクノロジー」という本発明の例示的な製剤は、以下の表1に見出すことができる。
【0039】
【表1】
生体適合性試験
細胞毒性試験
細胞毒性試験は、細胞死を起こすか、又は細胞増殖を阻害する試験物質の機能を評価するためのインビトロアッセイをいう。インビトロ細胞傷害性に関する試験は、直接接触によって液体を試験するための手順を特定し、かつ、ハイブリサンテクノロジーは、細胞形態変化について定性的及び定量的の両方で評価される。ハイブリサンテクノロジーは、ISO標準、医療機器の生物学的評価-パート5:インビトロ細胞傷害性試験(ISO 10993-5:2009)に従って細胞培養培地に曝露することによって試験し、非処理対照、PBS、及び市販の創傷洗浄溶液であるプロントザン(Prontosan)(登録商標)の陽性対照と比較した。これに加えて、ハイブリサンテクノロジーの臨床適用により近い、2つのより短い時点(5分及び10分)も試験した。試験は、5D Health Protection Group Ltdの独立した研究室で行った。
【0040】
細胞毒性試験-定性評価
マウス線維芽細胞L929を用いて、ハイブリサンテクノロジー、プロントザン(登録商標)、又はPBSで処理した後の生存率及び増殖を、非処理対照と比較して評価し、顕微鏡で分析した。全ての処理後、細胞形態についてサイズの減少が見られた。プロントザン(登録商標)で処理した場合、細胞溶解、空胞化及び浮遊細胞が増加した。PBSは細胞形態に影響を与えなかったが、24時間後にはより多くの細胞剥離が見られた。全体的に、定性的評価により、ハイブリサンテクノロジーがプロントザン(登録商標)よりも細胞形態に影響を及ぼさないと結論付けた。
【0041】
細胞毒性試験-定量的評価
定量的細胞毒性試験は、CyQUANT(登録商標)生存性色素を用いて、ニート濃度で創傷洗浄溶液を試験した。生存率を表2及び図5に示す(比率が高ければ、より多くの細胞が生存可能であることを示す)。予想されるように、ハイブリサンテクノロジーはL929細胞に対して細胞毒性である。ハイブリサンテクノロジーは、全ての時点でプロントザン(登録商標)よりも細胞毒性が低かった。
表2-無処理の対照(N=5)と比較した場合の、ハイブリサンテクノロジー、プロントザン(登録商標)及びPBSの生存率
【0042】
【表2】
抗菌試験
ハイブリサンテクノロジーを、社内及び独自に体系的に試験した。試験の目的は、慢性創傷感染の病原体である緑膿菌、黄色ブドウ球菌及びカンジダ・アルビカンスに対するハイブリサンテクノロジーの抗菌及び抗バイオフィルム効能を評価することであった。
社内試験により、ハイブリサンテクノロジーが有効な抗菌剤であることが明らかになった。これは、ISO 20776-1:2019に従った抗菌剤感受性試験及びASTM E2799に従った抗バイオフィルム効能試験によって確認された。
【0043】
感受性試験
ハイブリサンテクノロジーの最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を、臨床検査標準協会(CLSI)、欧州抗菌薬感受性試験委員会(EUCAST;www.Eucast.org)及びISO 20776-1:2019で推奨される方法を用いて、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌について決定した。ハイブリサンテクノロジーによる、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌のMICは23.4及び0.72、かつ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌のMBCは46.89及び4.39であった。
表3-EUCAST試験方法を使用したハイブリサンテクノロジーのMIC及びMBCの結果
【0044】
【表3】
最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)(ASTM E2799)
さらなる社内試験により、ハイブリサンテクノロジーが、創傷微生物を用いたMBEC ASTM E2799プロトコルを用いて、有効な抗バイオフィルム製品であることが確認された。緑膿菌ATCC 15442バイオフィルムを24時間増殖させてからハイブリサンテクノロジーで処理した場合の減少は6.6及び7.2 logであったが、プロントザン(登録商標)は、1及び5分での減少は各々3.2及び5.6 logであった(図1A)。これらは、ともにバイオフィルムバイオマスの有意な減少であった。黄色ブドウ球菌ATCC 6538バイオフィルムを24時間増殖させてからハイブリサンテクノロジーで処理した場合の減少は1.1及び6.3 logであったが、プロントザンは、1及び5分での減少は各々1.1及び1.9 logであった(図1B)。両製品では、接触時間に応じて効能が改善され、バイオフィルムバイオマスの有意な減少が見られた。しかしながら、ハイブリサンテクノロジーは一貫してプロントザン(登録商標)よりも機能が優れていた。
【0045】
静的バイオフィルムに対するハイブリサンテクノロジーの影響;確立(24時間)、及び再増殖
緑膿菌ATCC 15442の確立されたバイオフィルムを24時間増殖させてからハイブリサンテクノロジー又はプロントザン(登録商標)で1分間又は5分間処理し、非処理対照と比較した。ハイブリサンテクノロジー及びプロントザン(登録商標)ではともに有意な減少が見られた。1分及び5分では各々、プロントザン(登録商標)(59及び57%)よりもハイブリサンテクノロジー(94及び96%)の減少が大きかった(図2)。
【0046】
さらなる研究を、バイオフィルム(24時間)を増殖させ、ハイブリサンテクノロジー又はプロントザン(登録商標)のいずれかで5分間処理した後、増殖培地の存在中でさらに24時間インキュベートして行った。これは、いずれかの治療における潜在的な効能を評価するために行われた。ハイブリサンテクノロジー及びプロントザン(登録商標)で増殖は有意に低下したが、ハイブリサンテクノロジーでは、非処理対照と比較して、より再増殖が低下した。非処理対照の増殖は、24時間の静的バイオフィルムにおいて通常見られるものの50%であった。ハイブリサンテクノロジーによる処理後の再増殖は最小であった(図3)。
【0047】
独立試験抗菌試験
5D健康保護グループ(5D Health Protection Group)では、ハイブリサンテクノロジーが、同様の市販の製品、例えばプロントザン(登録商標)に対して試験した場合よりも優れた抗バイオフィルム効能を発揮することが証明された。
CDCバイオリアクタモデル-緑膿菌、黄色ブドウ球菌及びカンジダ・アルビカンス
ASTM E2871-13に従って疾病管理センター(CDC)バイオフィルムリアクターを用いて、頑強で臨床的に類似したバイオフィルムを生成するためにインビトロ法を用いた。この方法を十分に遵守したところ、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、及びカンジダ・アルビカンスについて試験した全ての株について、臨床的に有意な期間(1分、5分、10分)にわたり、ハイブリサンテクノロジーがプロントザン(登録商標)よりも迅速に機能し、より多くの微生物バイオフィルムを除去することが示された(図5A、5B、及び5C)。
ハイブリサンテクノロジー5分後に緑膿菌を完全に除去したが、プロントザン(登録商標)の減少はわずか2 logであった(図5A)。再度、黄色ブドウ球菌は5分後に完全に除去されたが、プロントザン(登録商標)の減少はわずか2.3 logであった(図5B)。予想通り、ハイブリサンテクノロジー及びプロントザン(登録商標)は、10分後にカンジダ・アルビカンスバイオフィルムを完全に除去することはできなかったが(図5C)、ハイブリサンテクノロジーは、一貫してプロントザン(登録商標)よりも優れた機能を発揮し、より高い抗バイオフィルム効能を示した。
【0048】
ドリップフローバイオフィルムリアクタモデル-緑膿菌及び黄色ブドウ球菌
ASTM E2647-13(低せん断かつ連続流ドリップフローバイオフィルムリアクタを用いて増殖させた緑膿菌バイオフィルムの定量化のための標準試験方法)に従ってドリップフローバイオフィルムリアクタを用いる。この検証されたモデルは、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌の両方の試験株について、ハイブリサンテクノロジーがより迅速に機能し、臨床的に有意な期間(5分)にわたり、再度、ハイブリサンテクノロジーがプロントザン(登録商標)よりも迅速に機能し、より多くの微生物バイオフィルムを除去することが示された(図5D及び5E)。
ハイブリサンテクノロジーでは、5分の接触時間後に緑膿菌が4.26 log減少したが、プロントザン(登録商標)での減少はわずか3.62 logであった(図5D)。黄色ブドウ球菌は5分後に完全に除去されたが、プロントザン(登録商標)での減少はわずか3.8 logであった(図5E)。
表4-CDCバイオフィルム数及びlog(対数)減少(Woundsan=ハイブリサンテクノロジー)
【0049】
【表4】
表5-ドリップフローカウント及びlog減少-5分(Woundsan=ハイブリサンテクノロジー)
【0050】
【表5】
これらのデータにより、ハイブリサンテクノロジーが、市場優勢品よりも良好に機能する有効な抗菌及び抗バイオフィルム製品であることが明白に示された。本発明者らの専門の独立した試験施設により、ハイブリサンテクノロジーを病院で用いて、慢性創傷等で形成されたバイオフィルムを治療することができることが示唆された。
【実施例2】
【0051】
方法
製剤を表6~13に従って調製し、安定性及び最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)について試験した。
MBEC:
MBECモデルは、ASTM E2799から適合させた。簡潔には、緑膿菌又は黄色ブドウ球菌の一晩培養物をミュラー・ヒントン(Mueller Hinton)培地(MHB)中で調製し、約1×10 CFU/mlに希釈した。96穴プレート(Nunc、Thermo Fisher、UK)のウェルに、100μlの試験接種材料を接種した。96-ペグリッド(Nunc、Thermo Fisher、UK)をプレートに加え、110 rpmで振盪しながら加湿容器中で37℃24時間インキュベートしてバイオフィルムを形成させた。インキュベーション後、バイオフィルムを脱イオン水中の滅菌0.85%塩化ナトリウム(Thermo Fisher、UK)溶液中で洗浄した。リンス後、蓋を150μlの試験溶液を含む新しい96穴プレートに移した。プロントザン(登録商標)(B.Braun、ドイツ)を陽性対照として用いて、脱イオン水中の0.85%塩化ナトリウム溶液を陰性対照として用いた。ペグを5分間処理した。処理後、ペグを取り出し、適当な中和媒体を含むウェルに入れて超音波浴に30分間、最大出力で入れた。各ウェルを連続希釈し、総生存数(TVC)を決定した。対数減少は、以下の式を用いて計算した。
【0052】
対数減少=log10(A/B)
(式中、Aは処理前の生存生物の数であり、Bは処理後の生存生物の数である)
安定性:
初期安定性試験のために、組成物の100ml試料を調製し、10mlを3本の15mlチューブ各々に移した。これらのチューブを4℃、20℃及び37℃に置いた。次いで、これらの試料を安定性についてモニターし、4週間の期間にわたって毎週等級付けした。1=透明、2=濁り、3=沈殿、4=濁り及び沈殿。
選択した試料に対して加速エージング(Accelerated Ageing)を実施して、それらの長期安定性を確実にした。このために、ASTM F1980に基づいてプロトコルを確立した。簡潔には、必要な試験期間はアレニウスの式を用いて決定した。
【0053】
【数1】
(TAA:試験温度(℃)
TRT:周囲貯蔵温度(℃)
Q10:反応速度因子
リアルタイム等価(日))
100mlのサンプルを調製し、50mlチューブに移した。試験期間にわたって管の質量を報告し、生成物が確実に有意に蒸発しないようにした。次いで、このチューブを、規定の試験温度でインキュベーターに入れ、最初の4週間、変化を毎日最初にチェックした。4週間後、試験の終了まで毎週チューブをチェックした。試験終了時にチューブを室温に戻し、秤量して有意な蒸発が確実に生じていないことを確認し、試験期間にわたって試験して、効能が確実に維持されていることを確認した。
【0054】
【表6】
表6は、コカミドプロピルベタイン及びpHが安定性及び最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)に及ぼす影響を示す。(量は%w/vである;-はMBECを試験しなかったことを示す)。v11.3.1及びv11.4.1は、良好な抗菌効能を示したが、バイオフィルムに対しては有意に効能が低かった。
【0055】
【表7】
表7は、安定性及び最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)に対する、有機シラン(v12.2~v12.3)、BACなし(v13.1)、DACなし(v13.2)、並びにBAC及びDACなし(v13.3)の濃度増加の効果を示す。(量は%w/vである;-はMBECを試験しなかったことを示す)。
【0056】
【表8】
表8は、ジグルコン酸クロロヘキシダンを含まない組成物(v13.4及びv13.4.1)、EDTAを含まない組成物(v13.5)、ジグルコン酸クロロヘキシダン及びEDTAを含まない組成物(v13.6.1)、並びにココジグルコン酸及びEDTAを含まず、還元されたクロロヘキシダンベタインを含む組成物(v13.7.1)の効果を示す。(量は%w/vである;-はMBECを試験しなかったことを示す)。
【0057】
【表9】
表9は、安定性に対するF-68濃度(0.1%;v8.8)(0.5%;v8.9)(1%;v8.2)の増加の効果を示す。(量は%w/vである;-はMBECを試験しなかったことを示す)。
【0058】
【表10】
表10は、安定性に対するグリセロールの濃度増加の効果を示す。(量は%w/vである;-はMBECを試験しなかったことを示す)。
【0059】
【表11】
表11は、安定性及び最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)に対するBrij35濃度(0.1%;v7.3)(1%;v7.1)(2%;v7.2)の効果を示す。(量は%w/vである;-はMBECを試験しなかったことを示す)。
【0060】
【表12】
表12は、安定性に対するジプロピレングリコール濃度(10%;v15.1)(20%;v15.2)(40%;v15.3)(50%;v15.4)(60%;v15.5)の効果を示す。(量は%w/vである;-はMBECを試験しなかったことを示す)。
【0061】
【表13】
表13は、ジプロピレングリコール(0.1%;v15.6)、(1%;v15.7)(5%;v15.8)、並びにグリセロール(0.1%;v14.6)、(1%;v14.7)、及び(5%;v14.8)の濃度を増加させた場合の効果を示す。(量は%w/vである;-はMBECを試験しなかったことを示す)。
【0062】
結果
バイオフィルムに対して十分な効能がある安定な製剤は、v11.1.1、v11.1.3、v11.2.1、v11.2.3、v11.3.3、v13.4、v13.4.1、v13.5、v14.1、v7.1、v7.2、v14.8であった。これらの製剤は、MBECアッセイを用いて試験した場合、試験期間中、バイオフィルムを完全に除去し、かつ、安定であった。
バイオフィルムに対する効能が不十分であるが安定な製剤は、v11.3.1、v11.4.1であった。これらの製剤は試験期間中安定であったが、MBECアッセイを用いて試験した場合、バイオフィルムは完全に除去されなかった。
効能は十分であるが不安定な溶液は、v12.3、v15.1、v15.8であった。これらの製剤は、バイオフィルムを完全に除去したが、試験期間中安定ではなかった。
効能は不十分かつ不安定な溶液は、v13.1、v13.2、v13.3であった。これらの溶液は、試験期間にわたって安定ではなく、MBECアッセイを用いて試験した場合、バイオフィルムは完全に除去されなかった。
【実施例3】
【0063】
本明細書における本発明のさらなる製剤v9は、以下の表14に見出すことができる。
【0064】
【表14】
抗菌試験
v9を組織内で体系的に試験した。試験の目的は、慢性創傷感染の病原体である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対するv9の抗菌及び抗バイオフィルム効能を評価することであった。
社内試験により、v9が有効な抗菌剤であることが明らかになった。これは、ISO 20776-1:2019に従った抗菌剤感受性試験及びASTM E2799に従った抗バイオフィルム効能試験によって確認された。
【0065】
感受性試験
v9の最小阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を、臨床検査標準協会(CLSI)、欧州抗菌薬感受性試験委員会(EUCAST;www.Eucast.org)及びISO 20776-1:2019で推奨される方法を用いて、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌について決定した。v9による、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌のMICは15.6及び0.79、かつ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌のMBCは45.1及び1.44であった。
表15-EUCAST試験方法を用いたv9のMIC及びMBCの結果
【0066】
【表15】
最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)(ASTM E2799)
さらなる社内試験により、v9が創傷微生物を用いたMBEC ASTM E2799プロトコルを用いて、有効な抗バイオフィルム製品であることが確認された。緑膿菌ATCC 15442バイオフィルムを24時間増殖させてからv9で処理した場合の減少は5.2及び6.8 logであったが、プロントザン(登録商標)は、1及び5分での減少は各々3.2及び5.3 logであった(図6A)。これらは、ともにバイオフィルムバイオマスの有意な減少であった。黄色ブドウ球菌ATCC 6538バイオフィルムを24時間増殖させてからv9で処理した場合の減少は1.5及び6.15 logであったが、プロントザン(登録商標)は、1及び5分での減少は各々1.1及び2.3 logであった(図6B)。両製品では、接触時間に応じて効能が改善され、バイオフィルムバイオマスの有意な減少が見られた。しかしながら、v9は一貫してプロントザン(登録商標)よりも優れていた。
【0067】
静的バイオフィルムに対するv9の影響;確立(24時間)、及び再増殖(D)
緑膿菌ATCC 15442の確立されたバイオフィルムを24時間増殖させてからv9又はプロントザン(登録商標)で1分間及び5分間処理し、非処理対照と比較した。v91分及び5分では各々、プロントザン(登録商標)(54及び57%)よりもv9(77及び88%)の減少が大きかった(図7)。
【0068】
さらなる研究を、バイオフィルム(24時間)を増殖させ、v9又はプロントザン(登録商標)のいずれかで5分間処理した後、増殖培地の存在中でさらに24時間インキュベートして行った。これは、いずれかの治療における潜在的な効能を評価するために行われた。v9及びプロントザン(登録商標)で増殖は有意に低下したが、v9では、非処理対照と比較して、より再増殖が低下した。非処理対照と比較したv9及びプロントザン(登録商標)による処理後の再増殖は、各々10%及び13%であった(図8)。
参考文献
Salisbury AM,Woo K,Sarkar S,Schultz G,Malone M,Mayer DO,Percival SL.Tolerance of Biofilms to Antimicrobials and Significance to Antibiotic Resistance in Wounds.Surg Technol Int.2018 Nov 11;33:59-66.PMID:30326137
図1
図2
図3
図4
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図7
図8
【国際調査報告】