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特表2024-536915チザニジンの経皮投与用の経皮治療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】チザニジンの経皮投与用の経皮治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/433 20060101AFI20241001BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241001BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241001BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K31/433
A61K9/70 401
A61K47/12
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/14
A61P21/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522236
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022078678
(87)【国際公開番号】W WO2023062201
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202959.9
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ヴェルナー・ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・エムゲンブロイフ
(72)【発明者】
【氏名】ニコ・ロイム
(72)【発明者】
【氏名】ベアトーリクス・プラット
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・シュリューター
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ベーム
(72)【発明者】
【氏名】ツァラ・ビュシャー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA74
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD61
4C076EE04
4C076EE10
4C076EE16
4C076EE27
4C076FF34
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC85
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA10
4C086NA11
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA29
4C086ZA94
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、チザニジンの経皮投与用の経皮治療システム(TTS)に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チザニジン含有層構造を含むチザニジンの経皮投与用の経皮治療システムであって、前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.少なくとも1つの極性ポリマー、
3.少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.少なくとも1つの脂肪酸
を含むチザニジン含有層と
を含む、前記経皮治療システム。
【請求項2】
前記チザニジン含有層中のチザニジンの含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約0.5~約15重量%、好ましくは約1~約12重量%の範囲であり、及び/または前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの極性ポリマー及び前記少なくとも1つの非極性ポリマーの合わせた質量に対するチザニジンの質量の質量比は、約5.0×10-3~約1、好ましくは約1×10-2~約8×10-2または約9.0×10-2~約0.3の範囲である、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの極性ポリマーは、アクリルポリマー及びポリビニルピロリドンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
前記極性ポリマーは、アクリルポリマーであり、前記アクリルポリマーは、酢酸ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び任意にグリシジル-メタクリレートをベースとするコポリマーである、請求項3に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
前記極性ポリマーは、クロスポビドンなどのポリビニルピロリドンである、請求項3に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
前記チザニジン含有層中の前記極性ポリマーの含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約10~約50重量%、好ましくは約10~約25重量%または約30~約45重量%の範囲であり、及び/または前記チザニジン含有層中の前記非極性ポリマーの質量に対する前記極性ポリマーの質量の質量比は、約0.5~約2.0、または約1×10-2~約4×10-1の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの非極性ポリマーは、シリコーンポリマー、もしくはポリイソブチレンであるか、または前記少なくとも1つの非極性ポリマーは、ポリイソブチレン混合物を含み、好ましくは、前記チザニジン含有層中のチザニジンの含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約0.5~約15重量%、より好ましくは約1~約12重量%または約5~約15重量%の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
前記非極性ポリマーは、シラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンとシリケート樹脂との重縮合によって得られるシリコーンポリマーであり、前記シリケート樹脂の質量に対するシラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンの質量の質量比は、70:30~50:50の範囲であり、前記シリコーンポリマーの残りのシラノール官能基は、トリメチルシロキシ基で封止される、請求項7に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
前記少なくとも非極性ポリマーは、99:1~50:50の範囲の高分子量ポリイソブチレンの質量に対する低分子量ポリイソブチレンの質量の質量比の、前記低分子量ポリイソブチレン及び前記高分子量ポリイソブチレンの組み合わせであるポリイソブチレン混合物を含み、好ましくは、前記低分子量ポリイソブチレンは、38,000~42,000g/molの粘度平均分子量及び/または34,000~40,000g/molの重量平均分子量を有し、前記高分子量ポリイソブチレンは、1,100,000~1,120,000g/molの粘度平均分子量及び/または1,540,000~1,560,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項7に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの非極性ポリマーの含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約20~約80重量%、好ましくは約30~約45重量%または約70~約80重量%の範囲である、請求項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの脂肪酸は、6~22個の炭素原子を含む、好ましくは8~20個の炭素原子を含む、より好ましくは17~19個の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分岐カルボン酸であるか、または前記少なくとも1つの脂肪酸は、好ましくは、ラウリン酸、カプリル酸、オレイン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの脂肪酸の含有量は、好ましくは、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて5~25重量%、より好ましくは5~20重量%の範囲であるか、または前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの極性ポリマー及び前記少なくとも1つの非極性ポリマーの合わせた質量に対する前記少なくとも1つの脂肪酸の質量の質量比は、約1×10-2~約4×10-1の範囲である、請求項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
B)前記チザニジン含有層は、
5.添加剤
をさらに含み、
前記添加剤は、乳酸ラウリル、ラウリン酸メチル、ジヒドロレボグルコセノン、ジメチルプロピレン尿素及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記添加剤は、好ましくは乳酸ラウリルであり、前記チザニジン含有層中の前記添加剤の含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて1~20重量%、より好ましくは5~15重量%の範囲であり、及び/または前記チザニジン含有層中の前記添加剤の質量に対するチザニジンの質量の質量比は、約0.25~約4、または約0.3~約3の範囲である、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
前記チザニジン含有層は、チザニジン含有マトリックス層であり、及び/または前記チザニジン含有層の面積重量は、70~220g/m、好ましくは80~120g/mの範囲である、請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、86μg/cm~150μg/cm、好ましくは100μg/cm~120μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する、
採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、148μg/cm~200μg/cm、好ましくは151μg/cm~160μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する、または
採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、295μg/cm~750μg/cm、好ましくは500μg/cm~650μg/cmまたは500~600μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する、請求項1~14のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項16】
ヒト患者を処置する方法に使用するための、請求項1~15のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チザニジンの経皮投与用の経皮治療システム(TTS)、その製造プロセス及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(例えば、[5-クロロ-4-(2-イミダゾリン-2-イルアミノ)-2,1,3-ベンゾチアジアゾール]またはCAS番号51322-75-9としても知られている)活性成分チザニジンは、中枢性骨格筋弛緩薬である。これは、主に脊髄及び脊髄上位レベルで作用して、興奮性介在ニューロンを阻害する、α-アドレナリン作動薬である。遊離塩基の形態のチザニジンは、以下の化学式を有する。
【化1】
【0003】
遊離塩基の形態のチザニジンまたは塩酸塩の形態のチザニジンが、多発性硬化症または脊髄損傷に関連する痙攣の症状緩和のために、及び有痛性筋痙攣の対症的処置に使用される。
【0004】
チザニジンは、経口経路により、または経皮経路により投与可能である。しかしながら、現在、チザニジンの経皮投与用の市販のTTSは存在しない。
【0005】
チザニジンの経皮投与用のTTSを開発する際の課題の1つは、塩酸塩の形態のチザニジンが皮膚を透過しないことであるが、一方で遊離塩基の形態のチザニジンはわずかに皮膚を透過する。この課題は、例えば、US2018/0236082A1において、塩酸塩の形態のチザニジンが遊離塩基の形態のチザニジンに変換される複合TTSを開発することによって対処された。そのようなTTSにより皮膚透過性が実現された。しかしながら、このTTSの製剤は、16個以上の成分を含むため、やや複雑である。さらに、このTTSのチザニジン含有層の接着性は十分ではなく、大規模生成に必要な一定の品質でそのような複合TTSを生成することは不可能である。さらに、そのようなTTSの保存安定性は十分ではない。
【0006】
当該技術分野において上記の問題がないチザニジンの経皮投与用のTTSが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の特定の実施形態の目的は、遊離塩基の形態のチザニジンの経皮投与用のTTSを提供することである。
【0008】
本発明の特定の実施形態のさらなる目的は、例えば、前術の経皮送達用に15個未満、10個未満または6個未満の成分を含むなど、構造がそれ程複雑ではない、遊離塩基の形態のチザニジンの経皮送達用のTTSを提供することである。
【0009】
本発明の特定の実施形態のさらなる目的は、一定の品質で生成することができる、遊離塩基の形態のチザニジンの経皮送達用のTTSを提供することである。
【0010】
本発明の特定の実施形態のさらなる目的は、投与期間、例えば、少なくとも72時間にわたり治療有効用量を達成するのに十分な透過率をもたらす、遊離塩基の形態のチザニジンの経皮投与用のTTSを提供することである。
【0011】
本発明の特定の実施形態のさらなる目的は、投与期間、例えば、少なくとも20時間にわたり向上した透過率をもたらす、遊離塩基の形態のチザニジンの経皮投与用のTTSを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、高い活性剤利用率を有する、遊離塩基の形態のチザニジンの経皮投与用のTTS、すなわち、投与期間中に十分な放出性能をもたらすために高過剰量の活性剤を必要としないTTSを提供することである。
【0013】
本発明の特定の実施形態のさらなる目的は、ヒト患者を処置する方法に使用するのに適した、遊離塩基の形態のチザニジンの経皮投与用のTTSを提供することである。
【0014】
本発明の特定の実施形態の目的は、製造するのが容易な、遊離塩基の形態のチザニジンの経皮投与用のTTSを提供することである。
【0015】
これら及びその他の目的は、第1の態様による、チザニジン含有層構造を含むチザニジンの経皮投与用の経皮治療システムに関する本発明によって達成され、前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.少なくとも1つの極性ポリマー、
3.少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.少なくとも1つの脂肪酸
を含む、チザニジン含有層と
を含む。
【0016】
特定の実施形態によると、B)チザニジン含有層は、
5.添加剤をさらに含み、
前記添加剤は、乳酸ラウリル、ラウリン酸メチル、ジヒドロレボグルコセノン、ジメチルプロピレン尿素及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記添加剤は、好ましくは乳酸ラウリルであり、チザニジン含有層中の添加剤の含有量は、チザニジン含有層の総重量に基づいて1~20重量%、より好ましくは5~15重量%の範囲であり、及び/またはチザニジン含有層中の添加剤の質量に対するチザニジンの質量の質量比は、約0.25~約4、または約0.3~約3の範囲である。
【0017】
第2の態様によると、本発明は、ヒト患者を処置する方法に使用するための、第1の態様による経皮治療システムに関する。
【0018】
定義
本発明の意味の範囲内で、「経皮治療システム」(TTS)という用語は、経皮送達を介して活性剤(例えば、チザニジン)を体循環に投与するシステムを指し、かつ任意に存在する剥離ライナーを除去した後に、患者の皮膚に適用され、活性剤含有層構造中に治療有効量の活性剤及び任意に活性剤含有層構造の上に追加の接着剤オーバーレイを含む、個々の投与単位全体を指す。活性剤含有層構造は剥離ライナー(取り外し可能な保護層)上に配置されてもよく、よって、TTSは剥離ライナーをさらに含んでもよい。本発明の意味の範囲内で、「TTS」という用語は特に、例えば、イオントフォレシスまたはマイクロポレーションを介した活性物質送達を除く経皮送達を提供するシステムを指す。経皮治療システムは、経皮薬物送達システム(TDDS)または経皮送達システム(TDS)と呼ばれてもよい。
【0019】
本発明の意味の範囲内で、「チザニジン含有層構造」という用語は、治療有効量のチザニジンを含む層構造を指し、裏地層及び少なくとも1つの活性剤含有層を含む。好ましくは、チザニジン含有層構造は、チザニジン含有自己接着性層構造である。
【0020】
本発明の意味の範囲内で、「治療有効量」という用語は、TTSによって患者に投与された場合に、例えば、多発性硬化症または脊髄損傷に関連する痙攣の対症的処置を提供するのに十分で、かつ有痛性筋痙攣の対症的処置を提供するのにも十分なTTS中の活性剤の量を指す。さらに、TTSは、治療有効量を含み、患者に投与された場合に、例えば、慢性頸部痛、疼痛に筋筋膜要素を伴う腰仙部神経痛、限局性骨筋痛症候群、偏頭痛、及び不眠を患っている患者の処置を十分に提供する。治療有効量は、TTSが抗痙攣薬として使用され得るか、または鎮痛薬の離脱を助けるために鎮痛薬反跳性頭痛を示す患者における解毒療法レジメンの一部として利用され得る場合にさらに十分であってもよい。TTSは、通常、システムに実際に皮膚及び体循環に提供されるよりも多くの活性物質を含む。この過剰量の活性剤は、通常、TTSから体循環への送達に十分な駆動力を提供するために必要である。
【0021】
本発明の意味の範囲内で、「活性物質」及び「活性剤」などの用語、ならびに「チザニジン」という用語は、任意の薬学的に許容される化学的及び形態学的形態ならびに物理的状態のチザニジンを指す。これらの形態としては、以下に限定されないが、遊離塩基/遊離酸形態のチザニジン、プロトン化または部分的にプロトン化されたチザニジン、チザニジン塩、及び特に無機または有機酸/塩基の添加によって形成される酸/塩基付加塩、例えば、チザニジン塩酸塩またはチザニジンマレイン酸塩、溶媒和物、水和物、クラスレート、錯体など、ならびにミクロン化、結晶性、及び/または非晶質であってもよい粒子の形態のチザニジン、ならびに前述の形態の任意の混合物が挙げられる。チザニジンは、溶媒などの媒体中に含有される場合、溶解もしくは分散していてもよく、または部分的に溶解及び部分的に分散していてもよい。
【0022】
本発明の意味の範囲内で、「遊離塩基の形態のチザニジン」という用語は、任意の薬学的に許容される化学的及び形態学的形態ならびに物理的状態のチザニジンを指す。好ましくは、この用語は、チザニジン塩の形態のチザニジンを含まない。特に、この用語は、プロトン化形態またはチザニジン塩の形態のチザニジンを含まない。
【0023】
別途指示されない限り、特に層構造中のチザニジンの量は、TTSの製造中にTTSに含まれるチザニジンの量に関連し、遊離塩基の形態のチザニジンに基づいて計算される。例えば、0.1mmol(25.4mgと等しい)のチザニジン塩基が製造中にTTSに含まれる場合、層構造中のチザニジンの量は、本発明の意味の範囲内で、0.1mmolまたは25.4mgである。
【0024】
TTSの製造中にTTSに含まれるチザニジン出発材料は、粒子の形態であり得る。チザニジンは、例えば、粒子の形態で活性剤含有層構造中に存在してもよく、及び/または溶解していてもよい。
【0025】
本発明の意味の範囲内で、「粒子」という用語は、個々の粒子を含む固体の粒子状材料であり、その寸法がその材料と比較してごくわずかであるものを指す。特に、粒子は、非晶質及び結晶質材料を含む、プラスチック/変形可能な固体を含む固体である。
【0026】
本発明の意味の範囲内で、「分散させる」という用語は、出発材料(例えば、チザニジン)が完全に溶解していないステップまたはステップの組み合わせを指す。本発明の意味での分散は、出発材料の溶解度(例えば、コーティング組成物中のチザニジンの溶解度)に応じて、出発材料(例えば、チザニジン粒子)の一部の溶解を含む。
【0027】
活性剤送達のためのTTSには2つの主要なタイプ、すなわち、マトリックス型TTS及びリザーバ型TTSがある。マトリックス型TTSにおける活性剤の放出は、主に、活性剤自体を含むマトリックスによって制御される。これに対して、リザーバ型TTSは典型的には、活性剤の放出を制御する速度制御膜を必要とする。原理的には、マトリックス型TTSも速度制御膜を含有してもよい。しかしながら、マトリックス型TTSは、リザーバ型TTSと比較して、通常、速度決定膜が不要であり、膜の破断による用量ダンピングが起こり得ない点で有利である。要約すると、マトリックス型経皮治療システム(TTS)は、製造の複雑さが少なく、患者による使用が容易で便利である。
【0028】
本発明の意味の範囲内で、「マトリックス型TTS」とは、活性物質がポリマー担体、すなわち、活性剤及び任意に残りの成分とともにマトリックス層を形成するマトリックス内に均質に溶解及び/または分散しているシステムまたは構造を指す。そのようなシステムでは、マトリックス層は、TTSからの活性剤の放出を制御する。好ましくは、マトリックス層は、他の層間の封止が必要とされないように、自己支持性となるのに十分な凝集性を有する。したがって、活性剤含有層は、本発明の一実施形態では、活性剤がポリマーマトリックス内に均質に分布した活性剤含有マトリックス層であってもよい。ある特定の実施形態では、活性剤含有マトリックス層は、一緒に積層されてもよい2つの活性剤含有マトリックス層を含んでもよい。マトリックス型TTSは特に、活性物質が感圧接着剤マトリックス内に均質に溶解及び/または分散したシステムを指す「接着剤中薬物」型TTSの形態であってもよい。これに関連して、活性剤含有マトリックス層はまた、活性剤含有感圧接着剤層または活性剤含有感圧接着剤マトリックス層と称されてもよい。ポリマーゲル、例えば、ヒドロゲル内に溶解及び/または分散した活性剤を含むTTSもまた、本発明に従ってマトリックス型のものであるとみなされる。
【0029】
本発明の意味の範囲内で、「チザニジン含有層」という用語は、チザニジンを含有するとともに放出領域を提供する層を指す。本用語は、チザニジン含有マトリックス層及びチザニジン含有リザーバ層を包含する。チザニジン含有層がチザニジン含有マトリックス層である場合、前記層は、マトリックス型TTS内に存在する。ポリマーが感圧接着剤である場合、マトリックス層が、TTSの接着剤層でもある場合もあり、その結果、追加の皮膚接触層は存在しない。代替的に、追加の皮膚接触層が接着剤層として存在し得、及び/または接着剤オーバーレイが提供される。追加の皮膚接触層は、通常は、チザニジンを含まないように製造される。しかしながら、濃度勾配のため、チザニジンは、平衡に達するまで、時間の経過とともにマトリックス層から追加の皮膚接触層へと移動する。追加の皮膚接触層は、チザニジン含有マトリックス層上に存在していてもよく、または膜、好ましくは速度制御膜によってチザニジン含有マトリックス層から分離されていてもよい。好ましくは、チザニジン含有マトリックス層は、十分な接着特性を有し、その結果、追加の皮膚接触層が存在しない。チザニジン含有層がチザニジン含有リザーバ層である場合、前記層は、リザーバ型TTS内に存在し、この層は、液体リザーバ中にチザニジンを含む。さらに、接着特性を提供するために、追加の皮膚接触層が存在することが好ましい。好ましくは、速度制御膜が、リザーバ層を追加の皮膚接触層から分離する。追加の皮膚接触層は、チザニジンを含まないようにまたはチザニジンを含有するように製造され得る。追加の皮膚接触層が活性剤を含まない場合、活性剤は、濃度勾配のため、平衡に達するまで、時間の経過とともにリザーバ層から皮膚接触層へ移動する。加えて、接着剤オーバーレイが提供されてもよい。
【0030】
本明細書で使用される場合、チザニジン含有層は、好ましくは、チザニジン含有マトリックス層であり、これは最終固化層と称される。好ましくは、チザニジン含有マトリックス層は、本明細書に記載されているような溶媒含有コーティング組成物をコーティングし、乾燥させた後に得られる。あるいは、チザニジン含有マトリックス層は、溶融コーティング及び冷却の後に得られる。チザニジン含有マトリックス層はまた、所望の面積重量を提供するために、同じ組成物の2つ以上のそのような固化層(例えば、乾燥または冷却層)を積層することによって製造されてもよい。マトリックス層は、自己接着性(感圧接着剤マトリックス層の形態)であり得るか、またはTTSは、十分な粘着性を提供するために感圧接着剤の追加の皮膚接触層を含んでもよい。好ましくは、マトリックス層は、感圧接着剤マトリックス層である。任意選択で、接着剤オーバーレイが存在してもよい。
【0031】
本発明の意味の範囲内で、「感圧接着剤」(「PSA」とも略される)という用語は、特に指圧で接着し、永久的に粘着性であり、強い保持力を発揮し、残留物を残すことなく滑らかな表面から除去可能であるべき材料を指す。感圧接着剤層は、皮膚と接触する場合、「自己接着性」であり、すなわち、典型的には皮膚への固定のためのさらなる補助が必要とされないように皮膚への接着性を提供する。「自己接着性」層構造は、感圧接着剤マトリックス層の形態または追加の層の形態で提供され得る皮膚接触用の感圧接着剤層、すなわち、感圧接着剤皮膚接触層を含む。接着剤オーバーレイが、接着性を高めるために依然として採用されてもよい。感圧接着剤の感圧接着特性は、使用されるポリマーまたはポリマー組成物(例えば、シリコーン及びアクリルポリマーの混合物、またはポリイソブチレン混合物及びポリビニルピロリドンの組み合わせ)に依存する。特に、本発明による感圧接着剤は、少なくとも1つの極性ポリマー及び少なくとも1つの非極性ポリマーを含んでもよい。
【0032】
本発明の意味の範囲内で、「ポリマー」という用語は、1つ以上のモノマーを重合することによって得られるいわゆる繰り返し単位からなる任意の物質を指し、1つのモノマーからなるホモポリマー及び2つ以上のモノマーからなるコポリマーを含む。ポリマーは、線状ポリマー、星形ポリマー、櫛形ポリマー、ブラシ形ポリマーなどの任意の構造のもの、コポリマーの場合には任意のモノマー配列のもの、例えば、交互、統計的、ブロックコポリマー、またはグラフトポリマーであり得る。最小分子量は、ポリマーの種類に応じて変化するものであり、当業者に知られている。ポリマーは、例えば、2000ダルトンを超え、好ましくは5000ダルトンを超え、より好ましくは10,000ダルトンを超える分子量を有しえる。これに対応して、2000ダルトン未満、好ましくは5000ダルトン未満、またはより好ましくは10,000ダルトン未満の分子量を有する化合物は通常、オリゴマーと称される。
【0033】
本発明の意味の範囲内で、「極性ポリマー」という用語は、好ましくは、水に溶解するか、または水によって膨潤するポリマーに対して使用される。極性ポリマーは、好ましくは、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、四級アンモニウム基、スルフヒドリル基、ホスフェート基、スルファート基及び特定のカルボン酸エステルなどの極性の極性官能基を含む、モノマー単位から本質的に構成される。極性ポリマーという用語は、極性アクリルポリマー及びポリビニルピロリドンを含む。
【0034】
本発明の意味の範囲内で、「非極性ポリマー」という用語は、好ましくは、水に溶解せず、水によって膨潤しないポリマーに対して使用される。非極性ポリマーは、非極性のモノマーから本質的に構成される。非極性ポリマーは、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオレチレン、またはポリシロキサンなどの材料を含む。
【0035】
本発明の意味の範囲内で、「皮膚接触層」という用語は、投与中に患者の皮膚と直接接触する活性剤含有層構造に含まれる層を指す。これは活性剤含有層であり得る。TTSが追加の皮膚接触層を含む場合、活性剤含有層構造の他の層は、皮膚に接触せず、必ずしも自己接着特性を有するものではない。上記で概説したように、活性剤含有層に付着した追加の皮膚接触層は、時間の経過とともに活性剤の一部を吸収する可能性がある。追加の皮膚接触層を使用して、接着を強化してもよい。追加の皮膚接触層及び活性剤含有層のサイズは、通常、同一の広がりを持ち、放出領域に対応する。しかしながら、追加の皮膚接触層の領域はまた、活性剤含有層の領域よりも大きい場合がある。そのような場合、放出領域は、依然として、活性剤含有層の領域を指す。
【0036】
本発明の意味の範囲内で、「面積重量」という用語は、g/mで提供される、特定の層、例えば、マトリックス層の乾燥重量を指す。製造上のばらつきのために、面積重量値には±10%、好ましくは±7.5%の許容誤差は免れない。
【0037】
別段示されない場合、「%」は重量%を指す。
【0038】
本発明の意味の範囲内で、「架橋剤」という用語は、ポリマー内に含有されている官能基を架橋することができる物質を指す。
【0039】
本発明の意味の範囲内で、「接着剤オーバーレイ」という用語は、活性剤を含まず、活性剤含有構造よりも面積が大きく、かつ皮膚に接着する追加の面積を提供するが、活性剤の放出面積を提供しない自己接着性層構造を指す。それにより、TTSの全体的な接着特性が向上する。接着剤オーバーレイは、閉鎖性または非閉鎖性の特性を提供し得る裏地層、及び接着剤層を含む。好ましくは、接着剤オーバーレイの裏地層は、非閉鎖特性を提供する。
【0040】
本発明の意味の範囲内で、「裏地層」という用語は、活性剤含有層を支持するか、または接着剤オーバーレイの裏地を形成する層を指す。TTS中の少なくとも1つの裏地層、及び通常は活性剤含有層の裏地層は、保存及び投与の期間中、層に含有されている活性剤に対して実質的に不透過性であり、よって、規制要件に従って活性損失または交差汚染を防止する。好ましくは、裏地層はまた、水及び水蒸気に対して実質的に不透過性であることを意味する閉鎖性である。裏地層のための好適な材料には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル-コポリマー(EVA)、ポリウレタン、及びそれらの混合物が含まれる。よって、好適な裏地層は、例えば、PET積層体、EVA-PET積層体及びPE-PET積層体である。織布または不織布の裏地層も好適である。
【0041】
本発明によるTTSは、インビトロ皮膚透過試験で測定されるある特定のパラメータによって特徴付けられ得る。
【0042】
インビトロ透過試験は、500μmの厚さ及び無傷の表皮を有する採皮された分層ヒト皮膚を用いて、受容体媒体としてリン酸緩衝液pH5.5(0.1%アジ化生理食塩水を有する32℃)を用いてフランツ拡散セルにおいて実施される。
【0043】
受容培地に透過した活性物質の量は、試料体積を取り込むことによってUV光度検出器を用いた有効なHPLC法を使用して規則的間隔で決定される。受容体媒体は、サンプル体積を採取する際に新鮮な媒体で完全にまたは部分的に置き換えられ、透過した活性物質の測定量は、最後の2つのサンプル採取時点の間に透過した量に関連し、それまでに透過した総量には関連しない。
【0044】
また、透過量は、ある特定の時点で透過した活性物質の累積量に相当する「累積透過量」として示される。例えば、受容媒体に透過した活性物質の量が、例えば、0、3、6、8、24及び32時間時点で測定された上記のとおりのインビトロ透過試験では、32時間時点での活性物質の「累積透過量」は、0時間時点~3時間時点、3時間時点~6時間時点、6時間時点~8時間時点、8時間時点~24時間時点及び24時間時点~32時間時点の透過量の合計に相当する。
【0045】
本発明の意味の範囲内で、「累積透過量」という上記パラメータは、少なくとも3回のインビトロ浸透試験実験から計算された平均値を指す。別段の表示がない限り、これらの平均値の標準偏差(SD)は、式:
【数1】
(式中、nは、サンプルサイズであり、
【数2】
は、観察された値であり、
【数3】
は、観察された値の平均値である)を使用して計算される、補正されたサンプル標準偏差を指す。
【0046】
本発明の意味の範囲内で、「室温」という用語は、実験が行われる実験室内で見られる修正されていない温度を指し、通常、15~35℃、好ましくは約18~25℃の範囲内である。
【0047】
本発明の意味の範囲内で、「溶解する」という用語は、肉眼で確認できる透明でいかなる粒子も含有しない溶液を得るプロセスを指す。
【0048】
本発明の意味の範囲内で、「溶媒」という用語は、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン、ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、及びそれらの混合物などの揮発性有機液体である任意の液体物質を指す。
【0049】
本発明の意味の範囲内で、「脂肪酸」という用語は、飽和または不飽和のいずれかの長い脂肪族鎖を有する任意のカルボン酸を指す。特に、脂肪酸は、約4~約28の範囲の偶数の炭素原子の非分岐鎖を有する。
【0050】
本発明の意味の範囲内で、「添加剤」という用語は、遊離塩基の形態のチザニジン、少なくとも1つの極性ポリマー、少なくとも1つの非極性ポリマー及び脂肪酸に加えて、本発明によるTTS内のチザニジン含有層の任意の成分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】32時間の期間にわたる実施例1(Ex.1)、及び比較実施例1A(Comp.1A)に従って調製されたTTSのチザニジンの累積透過量を示す。
図2】32時間の期間にわたる実施例4(Ex.4)、及び比較実施例1A(Comp.1A)に従って調製されたTTSのチザニジンの累積透過量を示す。
図3】32時間の期間にわたる実施例2(Ex.2)、及び実施例3(Ex.3)ならびに比較実施例1A(Comp.1A)に従って調製されたTTSのチザニジンの皮膚透過率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
TTS構造
本発明は、チザニジン含有層構造を含むチザニジンの経皮投与用の経皮治療システムに関する。
【0053】
本発明によるチザニジン含有層構造は、A)裏地層と、B)治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、少なくとも1つの極性ポリマー、少なくとも1つの非極性ポリマー及び少なくとも1つの脂肪酸を含むチザニジン含有層とを含む。チザニジン含有層構造は、好ましくはチザニジン含有自己接着性層構造である。
【0054】
裏地層は、実質的にチザニジン不透過性であるのが好ましい。さらに、裏地層は、上で概説したように閉鎖性であることが好ましい。
【0055】
チザニジン含有層は、裏地層に直接付着させられてもよく、その結果、裏地層とチザニジン含有層との間にさらなる層が存在しない。
【0056】
本発明によるTTSは、マトリックス型TTSまたはリザーバ型TTSであってもよく、好ましくはマトリックス型TTSである。
【0057】
本発明によるチザニジン含有層構造は通常、取り外し可能な保護層(剥離ライナー)上に配置され、それは患者の皮膚の表面への適用の直前に除去される。よって、TTSは、剥離ライナーをさらに含んでもよい。このように保護されたTTSは、通常、ブリスターパックまたはシーム封止パウチ内に保存される。この包装は、小児にとって安全であり得る、及び/または高齢者にとって使いやすいものであり得る。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、チザニジン含有層は、チザニジン含有感圧接着剤層であり、皮膚接触層に相当する。すなわち、チザニジン含有層構造は、チザニジン含有層に付着した追加の皮膚接触層を含まない。これに関連して、チザニジン含有層は、好ましくは、自己接着性のチザニジン含有マトリックス層である。チザニジン含有層構造の自己接着特性は、少なくとも1つの極性ポリマー及び/または少なくとも非極性ポリマーによって提供されるのが好ましい。よって、本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの極性ポリマー及び/または少なくとも1つの非極性ポリマーは、感圧接着剤である。本発明によるチザニジン含有層及び少なくとも1つのポリマーに関するさらなる詳細を以下にさらに提供する。
【0059】
本発明の別の実施形態では、チザニジン含有層構造は、追加の皮膚接触層をさらに含む。皮膚接触層は、好ましくは自己接着性であり、接着特性を提供する。よって、本発明の一実施形態では、チザニジン含有層構造は、チザニジン含有層上にC)皮膚接触層をさらに含む。これに関連して、追加の皮膚接触層はまた、少なくとも1つの極性ポリマー及び/または少なくとも1つの非極性ポリマーも含んでもよい。例えば、追加の皮膚接触層がポリシロキサン及びアクリルポリマーをベースとする感圧接着剤を含む場合、チザニジン含有層は、ポリシロキサン及びアクリルポリマーをベースとする同じ感圧接着剤、またはポリシロキサン及びアクリルポリマーもしくは異なるポリマーをベースとする異なる感圧接着剤を含んでもよい。追加の皮膚接触層は、好ましくは、接着剤コーティング組成物をコーティングし、乾燥することによって得ることができる。
【0060】
チザニジン含有層構造が追加の皮膚接触層を含む本発明の特定の実施形態では、追加の皮膚接触層は、約10~約160g/m、約10~約100g/m、または約10~約60g/mの面積重量を有する。皮膚接触層に含まれるポリマーの総量は、皮膚接触層に基づいて約40重量%~約100重量%、好ましくは約50重量%~約100重量%、より好ましくは約60重量%~約100重量%の範囲であってもよい。皮膚接触層は、活性剤を含んでもよい。活性剤は同様に、チザニジンであり得る。皮膚接触層中の活性剤はまた、チザニジンと一緒に投与するのに妥当な追加の活性剤であってもよい。好ましい実施形態では、皮膚接触層は、活性剤を含まない、すなわち、活性剤を添加することなく調製される。
【0061】
本発明のある特定の実施形態によれば、TTSは、接着剤オーバーレイをさらに含んでもよい。この接着剤オーバーレイは、特に、チザニジン含有構造よりも面積が大きく、経皮治療システム全体の接着特性を向上させるためにそれに付着される。前記接着剤オーバーレイは、裏地層及び接着剤層を含む。接着剤オーバーレイは、皮膚に接着する追加の面積を提供するが、チザニジンの放出面積への追加はない。接着剤オーバーレイは、シリコーンアクリルハイブリッドポリマー、アクリルポリマー、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される自己接着性ポリマーまたは自己接着性ポリマー混合物を含み、これらは、チザニジン含有層構造に含まれる任意のポリマーまたはポリマー混合物と同一であっても、または異なってもよい。一実施形態では、TTSは、チザニジン含有層構造の上に接着剤オーバーレイを含まない。
【0062】
投与量により、TTSの放出面積は、約1cm~約150cm、好ましくは約5cm~約130cm、より好ましくは約10cm~120cm未満の範囲である。
【0063】
本発明によるTTSは、1つ以上の抗酸化剤をさらに含み得る。抗酸化剤は、チザニジン含有層に含まれても、もしくは追加の皮膚接触層に含まれても、またはチザニジン含有層及び追加の皮膚接触層の両方に含まれてもよい。好適な抗酸化剤は、メタ亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール及びそのエステル、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールまたはプロピルガレート、好ましくはブチルヒドロキシトルエン、パルミチン酸アスコルビル及びトコフェロールである。抗酸化剤は、好ましくは、チザニジン含有層の約0.001~約1.0%の量で、より好ましくは、チザニジン含有層の約0.02~約0.5%の量でチザニジン含有層に都合よく存在してもよい。
【0064】
本発明によるTTSは、上記の成分に加えて、例えば、架橋剤、可溶化剤、増量剤、粘着付与剤、フィルム形成剤、可塑剤、安定化剤、軟化剤、スキンケア用物質、透過促進剤、pH調整剤、及び防腐剤の群からの少なくとも1つの賦形剤またはさらなる成分をさらに含み得る。一般に、本発明によれば、追加の賦形剤または添加剤は必要とされないことが好ましい。よって、TTSは、低い複雑さの組成を有する。特定の実施形態では、さらなる添加剤(例えば、経皮透過促進剤)が、TTS中に存在しない。
【0065】
チザニジン含有層
上記でより詳細に概説したように、本発明によるTTSは、チザニジン含有層を含むチザニジン含有層構造を含む。本発明によるチザニジン含有層は、治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、少なくとも1つの極性ポリマー、少なくとも1つの非極性ポリマー及び少なくとも1つの脂肪酸を含む。チザニジン含有層は、既知のTTSと比較して少量の成分のみを含むため、チザニジン含有層のそのような組成はあまり複雑でない構造を有するTTSに寄与し、同時に、「放出特性」の節及び下記実施例の節に示されるとおり、当該技術分野において既知の組成物と少なくとも同様の十分な放出特性を提供する。
【0066】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層中のチザニジンの含有量は、チザニジン含有層の総重量に基づいて約0.5~約15重量%、好ましくは約1~約12重量%または約5~約15重量%の範囲である。チザニジンの前記含有量は、約1~約4重量%の範囲であることが好ましい。あるいは、チザニジンの前記含有量は、約3~約6重量%の範囲であることが好ましい。さらなる代案では、チザニジンの前記含有量は、約9~約12重量%の範囲であることが好ましい。
【0067】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層は、
添加剤をさらに含み、前記添加剤は、乳酸ラウリル、ラウリン酸メチル、ジヒドロレボグルコセノン、ジメチルプロピレン尿素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。前記添加剤は、乳酸ラウリルであることが好ましい。驚くべきことに、そのようなさらなる添加剤の使用は、例えば、浸透増強効果を提供することによって放出特性を高めることができると同時に、当該技術分野において既知のTTSと比較して少ない成分しかチザニジン含有層に使用する必要がないことがわかった。
【0068】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層中の添加剤の含有量は、チザニジン含有層の総重量に基づいて約1~約20重量%、より好ましくは約5~約15重量%の範囲である。あるいはまたはさらに、チザニジン含有層中の添加剤の質量に対するチザニジンの質量の質量比は、約0.25~約4、好ましくは約0.5~約1.0、または約0.3~約3、好ましくは約0.75~約1.5の範囲である。
【0069】
チザニジン含有層は、チザニジン含有マトリックス層またはチザニジン含有リザーバ層であり得る。チザニジン含有層は、ポリマーマトリックス中に均一に分散または溶解したチザニジンを含む、チザニジン含有マトリックス層であることが好ましい。別の好ましい実施形態では、チザニジン含有層は、治療有効量のチザニジンを含む内相と、少なくとも1つの極性ポリマー及び少なくとも1つの非極性ポリマー及び少なくとも1つの脂肪酸を含む外相とを含む、チザニジン含有二相性マトリックス層であり、内相は、外相中に分散沈積物を形成する。二相性マトリックス層中の内相の含有量は、二相性マトリックス層の体積に基づいて、約5体積%~40体積%であり得る。
【0070】
特定の好ましい実施形態によると、チザニジン含有層は、自己接着性チザニジン含有マトリックス層である。
【0071】
特定の実施形態では、チザニジン含有層は、遊離塩基の形態のチザニジンを含む、チザニジン含有コーティング組成物をコーティングし、乾燥することによって、好ましくは、少なくとも1つの極性ポリマー、少なくとも1つの非極性ポリマー、少なくとも1つの脂肪酸及び治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジンを含む、チザニジン含有コーティング組成物をコーティングし、乾燥することによって得ることができる。
【0072】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層の面積重量は、50~220g/m、好ましくは80~120g/mの範囲である。別の好ましい実施形態では、チザニジン含有層は、約50~約200g/m、好ましくは約60~約180g/m、より好ましくは約80~約160g/m、約100g/m、または約150g/mの面積重量を有する。
【0073】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層中の少なくとも1つの極性ポリマーの含有量は、チザニジン含有層の総重量に基づいて約10~約50重量%、好ましくは約10~約25重量%もしくは約10~約17重量%または約30~約45重量%もしくは約40~約45重量%の範囲である。好ましくは、少なくとも1つの極性ポリマーは、アクリルポリマー及びポリビニルピロリドンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明による少なくとも1つの極性ポリマーに関するさらなる詳細を以下でさらに提供する。
【0074】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層中の少なくとも1つの非極性ポリマーの含有量は、チザニジン含有層の総重量に基づいて約20~約80重量%、好ましくは約30~約45重量%または約70~約80重量%の範囲である。好ましくは、少なくとも1つの非極性ポリマーは、シリコーンポリマーもしくはポリイソブチレンであるか、または少なくとも1つの非極性ポリマーは、ポリイソブチレン混合物を含む。本発明による少なくとも1つの非極性ポリマーに関するさらなる詳細を以下でさらに提供する。
【0075】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層中の少なくとも1つの極性ポリマー及び少なくとも1つの非極性ポリマーの合わせた質量に対するチザニジンの質量の質量比は、約5×10-3~約1、好ましくは約1×10-2~約8×10-2または約9.0×10-2~約0.3の範囲である。これに関連して、それぞれのポリマーの乾燥質量、すなわち、溶媒を含まない質量が考慮されることが理解されるべきである。
【0076】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層中の非極性ポリマーの質量に対する極性ポリマーの質量の質量比は、約0.5~約2.0、好ましくは約0.8~1.2、または約1×10-2~約4×10-1、好ましくは約1.5×10-1~約3.5×10-1の範囲である。これに関連して、それぞれのポリマーの乾燥質量、すなわち、溶媒を含まない質量が考慮されることが理解されるべきである。
【0077】
特定の実施形態によると、チザニジン含有層中の少なくとも1つの極性ポリマー及び少なくとも1つの非極性ポリマーの合わせた質量に対する少なくとも1つの脂肪酸の質量の質量比は、約1×10-2~約4×10-1の範囲である。これに関連して、それぞれのポリマーの乾燥質量、すなわち、溶媒を含まない質量が考慮されることが理解されるべきである。2つ以上の脂肪酸がチザニジン含有層中に存在する場合、比率は、少なくとも1つの極性ポリマー及び少なくとも1つの非極性ポリマーの合わせた質量に対する少なくとも2つの脂肪酸の合わせた質量を指すことがさらに理解されるべきである。
【0078】
追加の皮膚接触層を使用する場合、チザニジンならびに任意の追加の活性剤、任意の補助ポリマー、任意の抗酸化剤、及び任意の追加の賦形剤または添加剤などのチザニジン含有層の成分が、時間の経過とともに追加の皮膚接触層に移行する場合もある。しかしながら、これは、皮膚接触層の成分及び材料に依存する。
【0079】
本発明の一実施形態では、チザニジン含有層は、治療有効量の遊離塩基のチザニジン、極性ポリマー、2つの非極性ポリマーの混合物及び少なくとも1つの脂肪酸からなる。あるいは、チザニジン含有層は、治療有効量の遊離塩基のチザニジン、極性ポリマー、非極性ポリマー、少なくとも1つの脂肪酸及び本明細書に記載の添加剤からなる。
【0080】
極性ポリマー
本発明によるチザニジン含有層は、少なくとも1つの極性ポリマーを含む。極性ポリマーは、アクリルポリマー及びポリビニルピロリドンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0081】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの極性ポリマーは、ポリマーベースの感圧接着剤である。
【0082】
本発明の一実施形態によると、少なくとも1つの極性ポリマーは、アクリレートをベースとするポリマー、すなわち、アクリルポリマー、好ましくは、アクリレートをベースとする感圧接着剤である。アクリレートをベースとする感圧接着剤はまた、アクリレートベースの感圧接着剤、またはアクリレート感圧接着剤と称され得る。アクリレートをベースとする感圧接着剤は、好ましくは30%~60%の間の固形分含有量を有してもよい。そのようなアクリレートベースの感圧接着剤は、ヒドロキシ基、カルボン酸基、中和カルボン酸基、及びそれらの混合物などの官能基を含む場合も含まない場合もある。よって、「官能基」という用語は特に、ヒドロキシ及びカルボン酸基、脱プロトン化カルボン酸基を指す。
【0083】
対応する市販製品は、例えば、HenkelからDuro Tak(登録商標)の商品名で入手可能である。そのようなアクリレートベースの感圧接着剤は、アクリル酸、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、
2-ヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-オクチルアクリルアミド及び酢酸ビニルのうちの1つ以上から選択されるモノマーをベースとし、酢酸エチル、ヘプタン、n-ヘプタン、ヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2,4-ペンタンジオン、トルエンもしくはキシレンまたはそれらの混合物中で提供される。好適なアクリレートベースの感圧接着剤は、アクリル酸、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-オクチルアクリルアミド及び酢酸ビニルのうちの2つ以上から選択されるモノマーをベースとする。
【0084】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの極性ポリマーは、アクリルポリマーであり、前記アクリルポリマーは、酢酸ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び任意にグリシジル-メタクリレートをベースとするコポリマーであり得る。
【0085】
以下のとおりの特定のアクリレートベースの感圧接着剤が利用可能である。
- Duro-Tak(商標)387-2510またはDuro-Tak(商標)87-2510(酢酸エチル及びヘキサン中の溶液として提供される、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及びメチルアクリレートをベースとするコポリマー)、
- Duro-Tak(商標)87-4287(ヒドロキシル基を含むアクリルコポリマー、コポリマーは、架橋剤を含まない酢酸エチル中の溶液として提供される、酢酸ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチルアクリレートをベースとする)、
- Duro-Tak(商標)387-2287またはDuro-Tak(商標)87-2287(架橋剤を用いずに酢酸エチル中の溶液として提供される酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートをベースとするコポリマー)、
- Duro-Tak(商標)387-2516またはDuro-Tak(商標)87-2516(チタン架橋剤を用いて酢酸エチル、エタノール、n-ヘプタン、及びメタノール中の溶液として提供される酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート及びグリシジル-メタクリレートをベースとするコポリマー)、
- Duro-Tak(商標)387-2051またはDuro-Tak(商標)87-2051(酢酸エチル及びヘプタン中の溶液として提供される、アクリル酸、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及び酢酸ビニルをベースとするコポリマー)、
- Duro-Tak(商標)387-2353またはDuro-Tak(商標)87-2353(カルボン酸基を含むアクリルコポリマー、コポリマーは、酢酸エチル及びヘキサン中の溶液として提供される、アクリル酸、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びメチルアクリレートをベースとする)、
- Duro-Tak(商標)87-4098(官能基を含まないアクリルコポリマー、コポリマーは、酢酸エチル中の溶液として提供される、2-エチルヘキシルアクリレート及び酢酸ビニルをベースとする)。
【0086】
別の実施形態では、少なくとも1つの極性ポリマーは、クロスポビドンなどのポリビニルピロリドンであってもよい。好ましくは、ポリビニルピロリドンは、可溶性ポリビニルピロリドンであってもよいが、あるいはクロスポビドンとしても知られている不溶性/架橋ポリビニルピロリドン、例えば、Kollidon(登録商標)CL、Kollidon(登録商標)CL-M及びKollidon(登録商標)CL-SF、ならびにコポビドンとしても知られているポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマー、例えば、Kollidon(登録商標)VA64であってもよい。さらに適したポリビニルピロリドンは、Plasdone(商標)K-12(約3,700~4,300g/molの重量平均分子量を有する)、Plasdone(商標)K-17(約9,500~10,500g/molの重量平均分子量を有する)、Plasdone(商標)K-25(約33,500~34,500g/molの重量平均分子量を有する)、Plasdone(商標)K-29/32(約57,500~58,500g/molの重量平均分子量を有する)、Plasdone(商標)K-90(約1,299,500~1,300,500g/molの重量平均分子量を有する)、Plasdone(商標)C-12(約3,700~4,300g/molの重量平均分子量を有する)、Plasdone(商標)C-17(約9,500~10,500g/molの重量平均分子量を有する)、及びPlasdone(商標)C-30(約57,500~58,500g/molの重量平均分子量を有する)からなる群から選択されてもよい。これに関連して、平均分子量は、好ましくはSEC-MALSにより求められる。
【0087】
非極性ポリマー
本発明によるチザニジン含有層は、少なくとも1つの非極性ポリマーを含む。これは、前記チザニジン含有層が、非極性ポリマーの混合物も含んでもよいことも意味する。好ましくは、少なくとも1つの非極性ポリマーは、シリコーンポリマーもしくはポリイソブチレンであるか、または少なくとも1つの非極性ポリマーは、ポリイソブチレン混合物を含む。
【0088】
一実施形態において、前記非極性ポリマーは、シリコーンポリマーとしてである。シリコーンポリマーは、ポリシロキサンをベースとするポリマーである。ポリシロキサンをベースとするこれらのポリマーは、好ましくは、ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤である。ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤はまた、シリコーンベースの感圧接着剤、またはシリコーン感圧接着剤とも称され得る。
ポリシロキサンをベースとするこれらの感圧接着剤は、湿った皮膚を含む様々な皮膚のタイプに適した粘着性及び迅速な結合、好適な接着及び粘着品質、皮膚に対して長期間持続する接着、高い柔軟度、水分に対する透過性、ならびに多くの活性物質及びフィルム基材への適合性を提供する。それらに十分なアミン耐性を与え、それによりアミンの存在下での安定性を高めることが可能である。このような感圧接着剤は、樹脂インポリマーの概念に基づいており、シラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンとシリカ樹脂(シリケート樹脂とも呼ばれる)との縮合反応により、アミンの安定性のために残留シラノール官能基が追加的にトリメチルシロキシ基で封止された、ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤が調製される。シラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサン含有量は、粘弾性挙動の粘性要素に寄与し、接着剤の湿潤性及び展延性に影響を与える。その樹脂は、粘着剤及び強化剤として作用し、弾性要素に関与する。シラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンと樹脂との間の適正なバランスは、適正な接着特性を提供する。
上記を考慮すると、シリコーンベースのポリマー、特にシリコーンベースの感圧接着剤は、概して、シラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンのシリケート樹脂との重縮合によって得ることができる。アミン適合性シリコーンベースポリマー、特にアミン適合性シリコーンベース感圧接着剤は、ポリマーのシラノール含有量を減らすために、シリコーンベースポリマー、特にシリコーンベース感圧接着剤をトリメチルシリル(例えばヘキサメチルジシラザン)と反応させることによって得ることができる。その結果、残留シラノール官能基は少なくとも部分的に、好ましくは大部分または完全に、トリメチルシロキシ基で封止される。
上記で示したように、シリコーンベースポリマーの粘着性を、樹脂対ポリマー比、すなわちシラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンのシリケート樹脂に対する比によって変更してもよく、好ましくは、この比は70:30~50:50、好ましくは65:35~55:45の範囲にある。粘着性は、樹脂に対してポリジメチルシロキサンの量が増加するにつれて増加する。高粘着シリコーンベースポリマーは、好ましくは55:45の樹脂対ポリマー比を有し、中粘着シリコーンベースポリマーは、好ましくは60:40の樹脂対ポリマー比を有し、低粘着シリコーンベースポリマーは、好ましくは65:35の樹脂対ポリマー比を有する。高粘着シリコーンベースポリマーは、0.01rad/s及び30℃で約5×10ポアズの複素粘度を有することが好ましく、中粘着シリコーンベースポリマーは、0.01rad/s及び30℃で約5×10ポアズの複素粘度を有することが好ましく、低粘着シリコーンベースポリマーは、0.01rad/s及び30℃で約5×10ポアズの複素粘度を有することが好ましい。高粘着アミン適合シリコーンベースポリマーは、0.01rad/s及び30℃で約5×10ポアズの複素粘度を有することが好ましく、中粘着アミン適合シリコーンベースポリマーは、0.01rad/s及び30℃で約5×10ポアズの複素粘度を有することが好ましく、低粘着アミン適合シリコーンベースポリマーは、0.01rad/s及び30℃で約5×10ポアズの複素粘度を有することが好ましい。
市販されているシリコーンベースPSA組成物の例には、Dow Corningによって製造され、通常はn-ヘプタンまたは酢酸エチル中で供給される標準的なBIO-PSAシリーズ(7-4400、7-4500及び7-4600シリーズ)、アミン適合性(末端封止された)BIO-PSAシリーズ(7-4100、7-4200及び7-4300シリーズ)及びSoft Skin Adhesivesシリーズ(7-9800)が含まれる。例えば、BIO-PSA7-4201は、25℃及びヘプタン中の固形分含有量約60%での450mPa・sの溶液粘度、ならびに30℃において0.01rad/sで1×10ポアズの複素粘度を特徴とする。BIO-PSA7-4301は、25℃及びヘプタン中約60%の固形分含有量で500mPasの溶液粘度ならびに30℃において0.01rad/sで5×10ポアズの複素粘度を有する。
ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤は、n-ヘプタン、酢酸エチル、またはその他の揮発性シリコーン流体などの溶媒中で供給され、使用される。溶媒中のポリシロキサンをベースとする感圧接着剤の固形分含有量は、通常60~85%、好ましくは70~80%または60~75%である。当業者は、固形分含有量が、好適な量の溶媒を添加することによって変更され得ることを認識している。
例えば、Dow Corningから入手可能な、ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤は、以下のスキームに従って得ることができる。
【化2】
そのようなポリシロキサンをベースとする感圧接着剤は、例えば、n-ヘプタン溶媒(記号「01」で示される)中で提供されるBIO-PSA 7-4401、BIO-PSA-7-4501もしくはBIO-PSA 7-4601という商品名で、または酢酸エチル溶媒(記号「02」で示される)中で提供されるBIO-PSA 7-4402、BIO-PSA 7-4502及びBIO 7-4602という商品名でDow Corningから入手可能である。溶媒中の典型的な固形分含有量は、60~75%の範囲である。記号「44」は、樹脂対ポリマー比が65:35であることを示し、その結果、粘着性は低くなり、記号「45」は、樹脂対ポリマー比が60:40であることを示し、その結果、粘着性は中程度になり、記号「46」は、樹脂対ポリマー比が55:45であることを示し、その結果、粘着性は高くなる。
例えば、Dow Corningから入手可能な、ポリシロキサンをベースとするアミン適合性感圧接着剤は、以下のスキームに従って得ることができる。
【化3】
ポリシロキサンをベースとするそのようなアミン適合性感圧接着剤は、例えば、n-ヘプタン溶媒(記号「01」で示される)中で提供されるBIO-PSA 7-4101、BIO-PSA-7-4201もしくはBIO-PSA 7-4301という商品名で、または酢酸エチル溶媒(記号「02」で示される)中で提供されるBIO-PSA 7-4102、BIO-PSA 7-4202及びBIO 7-4302という商品名で、Dow Corningから入手可能である。溶媒中の典型的な固形分含有量は、60~75%の範囲である。記号「41」は、樹脂対ポリマー比が65:35であることを示し、その結果、粘着性は低くなり、記号「42」は、樹脂対ポリマー比が60:40であることを示し、その結果、粘着性は中程度になり、記号「43」は、樹脂対ポリマー比が55:45であることを示し、その結果、粘着性は高くなる。
本発明によるポリシロキサンをベースとする好ましい感圧接着剤は、25℃及びn-ヘプタン中の固形分含有量60%で、好ましくは、スピンドル5番を備えたBrookfield RVT粘度計を50rpmで使用して測定された、約150mPa・sを超える、または約200mPa・sから約700mPa・sの溶液粘度を特徴とする。これらはまた、30℃において0.01rad/sで約1×10ポアズ未満、または約1×10~約9×10ポアズの複素粘度を特徴としてもよい。
【0089】
好ましい実施形態では、非極性ポリマーは、シラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンとシリケート樹脂との重縮合によって得られるシリコーンポリマーであり、シリケート樹脂の質量に対するシラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンの質量の質量比は、70:30~50:50の範囲であり、シリコーンポリマーの残りのシラノール官能基は、トリメチルシロキシ基で封止される。
【0090】
別の実施形態によると、少なくとも1つの非極性ポリマーは、ポリイソブチレンであるか、または少なくとも1つの非極性ポリマーは、ポリイソブチレン混合物を含む。好ましくは、少なくとも非極性ポリマーは、99:1~50:50の範囲の高分子量ポリイソブチレンの質量に対する低分子量ポリイソブチレンの質量の質量比の、低分子量ポリイソブチレン及び高分子量ポリイソブチレンの組み合わせであるポリイソブチレン混合物を含み、好ましくは、低分子量ポリイソブチレンは、38,000~42,000g/molの粘度平均分子量及び/または34,000~40,000g/molの重量平均分子量を有し、高分子量ポリイソブチレンは、1,100,000~1,120,000g/molの粘度平均分子量及び/または1,540,000~1,560,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0091】
本発明による好適なポリイソブチレンは、Oppanol(登録商標)の商品名で入手可能である。高分子量ポリイソブチレン(N100/N80)及び低分子量ポリイソブチレン(B10、B11、B12、B13)の組み合わせが使用され得る。低分子量ポリイソブチレン及び高分子量ポリイソブチレンの好適な比は、100:1~1:100、好ましくは95:5~40:60、より好ましくは90:10~80:20の範囲である。ポリイソブチレンの組み合わせの好ましい例は、85/15の比のB10/N100である。Oppanol(登録商標)N100は、1,110,000の粘度平均分子量M、及び1,550,000の重量平均分子量M、ならびに2.9の平均分子量分布M/Mを有する。Oppanol(登録商標)B10は、40,000の粘度平均分子量M、及び53,000の重量平均分子量M、ならびに3.2の平均分子量分布M/Mを有する。特定の実施形態では、ポリブテンをポリイソブチレンに添加することができる。溶媒中のポリイソブチレンの固形分含有量は、通常30~50%の間、好ましくは35~40%の間である。当業者は、固形分含有量が、好適な量の溶媒を添加することによって変更され得ることを認識している。
【0092】
脂肪酸
本発明によるチザニジン含有層は、少なくとも1つの脂肪酸を含む。好ましくは、少なくとも1つの脂肪酸は、6~22個の炭素原子を含む、好ましくは8~20個の炭素原子を含む、より好ましくは17~19個の炭素原子を含む、飽和または不飽和、直鎖または分岐カルボン酸である。好ましくは、少なくとも1つの脂肪酸は、二重結合を含まないか、または1、2、もしくは3個の二重結合(複数可)を含む。本発明の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つの脂肪酸は、ラウリン酸、カプリル酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、レブリン酸、リノレン酸、イソステアリン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、ラウリン酸、カプリル酸、オレイン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0093】
特定の実施形態では、本発明によるチザニジン含有層は、少なくとも2つの脂肪酸を含む。
【0094】
特定の実施形態では、本発明によるチザニジン含有層は、オレイン酸及び任意に少なくとも1つのさらなる脂肪酸を含む。これに関連して、本発明によるチザニジン含有層は、チザニジン含有層の総重量に基づいて約5~約20重量%、好ましくは約7~約15重量%、特に約7~約13重量%の量でオレイン酸を含むことが好ましい。
【0095】
特定の実施形態では、チザニジン含有層中の少なくとも1つの脂肪酸の含有量は、チザニジン含有層の総重量に基づいて5~25重量%、好ましくは5~20重量%、特に10~20重量%の範囲である。別の実施形態では、チザニジン含有層中の少なくとも1つの極性ポリマー及び少なくとも1つの非極性ポリマーの合わせた質量に対する少なくとも1つの脂肪酸の質量の質量比は、約1×10-2~約4×10-1の範囲である。
【0096】
放出特性
本発明によるTTSは、チザニジンを所定の長期間(例えば、約32時間)、体循環に経皮投与するために設計されている。
特定の実施形態では、本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、86μg/cm~150μg/cm、好ましくは100μg/cm~120μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する。
【0097】
特定の実施形態によると、本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、148μg/cm~200μg/cm、好ましくは151μg/cm~160μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する。
【0098】
特定の実施形態によると、本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、295μg/cm~750μg/cm、好ましくは500μg/cm~650μg/cmまたは500~600μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する。
【0099】
別の特定の実施形態では、本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、55μg/cm~100μg/cm、好ましくは65μg/cm~85μg/cmのチザニジンの累積透過量を24時間の期間にわたって提供する。
【0100】
特定の実施形態によると、本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、80μg/cm~140μg/cm、好ましくは100μg/cm~130μg/cmのチザニジンの累積透過量を24時間の期間にわたって提供する。
【0101】
特定の実施形態によると、本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、200μg/cm~700μg/cm、好ましくは300μg/cm~650μg/cmまたは400~600μg/cmのチザニジンの累積透過量を24時間の期間にわたって提供する。
【0102】
別の特定の実施形態では、本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される場合、2mg~48mg、好ましくは4mg~mgの量で24時間の期間にわたってチザニジンを提供する。
【0103】
医学的使用/処置の方法
本発明の第2の態様によると、本発明によるTTSは、ヒト患者を処置する方法に使用するためのものである。ヒト患者を処置するそのような方法は、患者の皮膚にTTSを投与することを含んでもよい。本発明によるTTSは、ヒト患者における多発性硬化症に関連する痙攣または脊髄損傷に関連する痙攣の処置の方法に使用するためのものであることが好ましい。特に、そのような処置は、ヒト患者の皮膚にTTSを投与するステップを含む。本発明によるTTSは、慢性頸部痛、疼痛に筋筋膜要素を伴う腰仙部神経痛、領域性骨筋痛症候群、偏頭痛、及び不眠を患っている患者の処置の方法に使用するためのものであることがさらに好ましい。本発明によるTTSは、抗痙攣薬としてさらに使用されてもよく、または鎮痛薬の離脱を助けるために鎮痛薬反跳性頭痛を示す患者における解毒療法レジメンの一部として利用されてもよい。
【0104】
一態様によれば、本発明は、ヒト患者を処置するための薬剤の製造のための本発明によるTTSの使用に関する。
【0105】
別の態様によれば、本発明は、ヒト患者を処置する方法に関する。
【0106】
製造方法
特定の実施形態では、チザニジン含有層の製造方法は、以下のステップを含む:
1)溶媒中で少なくとも成分チザニジン、少なくとも1つの脂肪酸、及びポリマーを混合して、コーティング組成物を得るステップ、
2)コーティング組成物を裏地層もしくは剥離ライナーまたは任意の中間ライナーにコーティングするステップ、ならびに
3)コーティングされたコーティング組成物を乾燥して、チザニジン含有層を形成するステップ。
【0107】
この製造方法では、好ましくは、ステップ1)では、チザニジンを溶解させて、コーティング組成物を得る。
【0108】
上記の方法では、好ましくは、溶媒は、アルコール溶媒、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びそれらの混合物、ならびに非アルコール溶媒、具体的には、酢酸エチル、ヘキサン、n-ヘプタン、石油エーテル、トルエン、及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、メタノール、n-ヘプタン及び酢酸エチルから選択される。
【0109】
特定の実施形態では、上記の方法におけるポリマーは、本明細書でさらに記載されている極性ポリマー、非極性ポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択され、これは、固形分含有量が30~65重量%の溶液として、好ましくは酢酸エチル、n-ヘプタン、メタノールまたはエタノール中の溶液として提供される。
【0110】
ステップ3)では、乾燥は、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃の温度で実施される。
【実施例
【0111】
これより、添付の実施例を参照して本発明をより完全に説明する。しかしながら、以下の説明は単に例示的なものであり、決して本発明の制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0112】
実施例1
コーティング組成物
チザニジン塩基含有コーティング組成物の製剤についての概要を下に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
コーティング組成物の調製
ビーカーにチザニジン、メタノール及びオレイン酸を入れた。ラウリン酸、アクリル感圧接着剤Duro Tak(商標)87-4287、ポリシロキサン接着剤Bio-PSA 7-4202及び溶媒(酢酸エチル)を添加した後、混合物を、均質な混合物が得られるまで最大600rpmで撹拌した。
【0115】
コーティング組成物のコーティング
得られたチザニジン含有コーティング組成物を、ポリエステルフィルム(フルオロポリマーコーティングされた、厚さ75μm、剥離ライナーとして機能し得る)上にコーティングし、室温で約10分間及び80℃で10分間乾燥させた。コーティング厚さは、100g/mのマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレート裏地層(厚さ23μm)を積層して、チザニジン含有自己接着性層構造を得た。
【0116】
TTSの調製(すべての実施例)
次いで、個々のシステム(TTS)をチザニジン含有自己接着性層構造から打ち抜いた。
【0117】
特定の実施形態では、上述されるTTSは、活性成分を含まない感圧接着剤マトリックス層及び好ましくは皮膚色の裏地層を含む、好ましくは丸みを帯びた角部を有する、より大きな表面積の接着剤オーバーレイ、すなわち、さらなる自己接着性層構造を備え得る。次いでTTSを打ち抜き、一次包装材のパウチに封入する。
【0118】
実施例2
コーティング組成物
チザニジン塩基含有コーティング組成物の製剤についての概要を下に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
コーティング組成物の調製
ビーカーにチザニジンならびにオレイン酸、カプリル酸及びメタノールを入れた。混合物を、チザニジンが溶解するまで撹拌した。アクリル感圧接着剤Duro Tak(商標)87-4287及びポリシロキサン接着剤Bio-PSA 7-4202を添加した。次いで、混合物を、均質な混合物が得られるまで最大600rpmで撹拌した。
【0121】
コーティング組成物のコーティング
実施例1を参照のこと。
【0122】
TTSの調製(すべての実施例)
実施例1を参照のこと。
【0123】
実施例3
コーティング組成物
チザニジン塩基含有コーティング組成物の製剤についての概要を下に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
コーティング組成物の調製
ビーカーにオレイン酸、乳酸ラウリル及びメタノールを入れた。チザニジンを最大600rpmの撹拌下で添加した。アクリル感圧接着剤Duro Tak(商標)87-4287及びポリシロキサン接着剤Bio-PSA 7-4202を添加した。次いで、混合物を、均質な混合物が得られるまで最大600rpmで撹拌した。
【0126】
コーティング組成物のコーティング
実施例1を参照のこと。
【0127】
TTSの調製(すべての実施例)
実施例1を参照のこと。
【0128】
実施例4
コーティング組成物
チザニジン塩基含有コーティング組成物の製剤についての概要を下に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
コーティング組成物の調製
ビーカーにオレイン酸及び溶媒プロピレングリコールを入れた。およそ600rpmで撹拌しながらチザニジンを添加し、溶解するまで撹拌した。クロスポビドン(ポリビニルピロリドン)を、約17~19μmの粒度d90まで微粉化した。微粉化したクロスポビドン、ポリイソブチレン感圧接着剤及びn-ヘプタンを添加した。次いで、混合物をおよそ600rpmから均質の混合物が得られるまで撹拌した。
【0131】
コーティング組成物のコーティング
実施例1を参照のこと。
【0132】
TTSの調製(すべての実施例)
実施例1を参照のこと。
【0133】
比較実施例1A
コーティング組成物
チザニジン塩基含有コーティング参照組成物の製剤は、US2018/0236082A1の実施例5-5から5-7(表4)に従って調製することができる。
【0134】
そのようなコーティング組成物の調製、組成物のコーティングならびにTTSの調製は、US2018/0236082A1に記載されているとおりに行うことができる。
【0135】
実施例5
皮膚透過の測定
実施例1~4及び比較実施例1Aに従って調製したTTSのチザニジンの透過量及び対応する皮膚透過率を、7.0mlのフランツ拡散セルを用いて行ったOECDガイドライン(2004年4月13日採択)に従ってインビトロ実験によって決定した。美容外科手術からの分層ヒト皮膚(女性腹部、1957、1973、1987年生まれ)を使用した。採皮刀を使用して、すべてのTTSのために無傷の表皮を有する皮膚を500μmの厚さに用意した。1.16cmの面積を有するダイカットをTTSから打ち抜いた。32±1℃の温度でフランツ拡散セルの受容培地(抗菌剤として0.1%生理食塩水アジドを有するリン酸緩衝液pH5.5)中のチザニジンの透過量を測定し、対応する累積透過量及び皮膚透過率を計算した。
【0136】
結果を下記表5及び図1~3に示す。
【0137】
【表5】
【0138】
本発明は、特に以下のさらなる条項に関する。
1.チザニジン含有層構造を含むチザニジンの経皮投与用の経皮治療システムであって、前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.少なくとも1つの極性ポリマー、
3.少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.少なくとも1つの脂肪酸
を含むチザニジン含有層と
を含む、前記経皮治療システム。
【0139】
2.前記チザニジン含有層中のチザニジンの含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約0.5~約15重量%、好ましくは約1~約12重量%の範囲であり、及び/または前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの極性ポリマー及び前記少なくとも1つの非極性ポリマーの合わせた質量に対するチザニジンの質量の質量比は、約5×10-3~約1、好ましくは約1×10-2~約8×10-2または約9.0×10-2~約0.3の範囲である、条項1に記載の経皮治療システム。
【0140】
3.前記少なくとも1つの極性ポリマーは、アクリルポリマー及びポリビニルピロリドンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項1または2に記載の経皮治療システム。
【0141】
4.前記極性ポリマーは、アクリルポリマーであり、前記アクリルポリマーは、酢酸ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び任意にグリシジル-メタクリレートをベースとするコポリマーである、条項3に記載の経皮治療システム。
【0142】
5.前記極性ポリマーは、クロスポビドンなどのポリビニルピロリドンである、条項3に記載の経皮治療システム。
【0143】
6.前記チザニジン含有層中の前記極性ポリマーの含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約10~約50重量%、好ましくは約10~約25重量%または約30~約45重量%の範囲であり、及び/または前記チザニジン含有層中の前記非極性ポリマーの質量に対する前記極性ポリマーの質量の質量比は、約0.5~約2.0、または約1×10-2~約4×10-1の範囲である、条項1~5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0144】
7.前記少なくとも1つの非極性ポリマーは、シリコーンポリマーもしくはポリイソブチレンであるか、または前記少なくとも1つの非極性ポリマーは、ポリイソブチレン混合物を含む、条項1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0145】
8.前記非極性ポリマーは、シラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンとシリケート樹脂との重縮合によって得られるシリコーンポリマーであり、前記シリケート樹脂の質量に対するシラノール末端ブロック化ポリジメチルシロキサンの質量の質量比は、70:30~50:50の範囲であり、前記シリコーンポリマーの残りのシラノール官能基は、トリメチルシロキシ基で封止される、条項7に記載の経皮治療システム。
【0146】
9.前記少なくとも非極性ポリマーは、99:1~50:50の範囲の高分子量ポリイソブチレンの質量に対する低分子量ポリイソブチレンの質量の質量比の、前記低分子量ポリイソブチレン及び前記高分子量ポリイソブチレンの組み合わせであるポリイソブチレン混合物を含み、好ましくは、前記低分子量ポリイソブチレンは、38,000~42,000g/molの粘度平均分子量及び/または34,000~40,000g/molの重量平均分子量を有し、前記高分子量ポリイソブチレンは、1,100,000~1,120,000g/molの粘度平均分子量及び/または1,540,000~1,560,000g/molの重量平均分子量を有する、条項7に記載の経皮治療システム。
【0147】
10.前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの非極性ポリマーの含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約20~約80重量%、好ましくは約30~約45重量%または約70~約80重量%の範囲である、条項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0148】
11.前記少なくとも1つの脂肪酸は、6~22個の炭素原子を含む、好ましくは8~20個の炭素原子を含む、より好ましくは17~19個の炭素原子を含む、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分岐カルボン酸であるか、または前記少なくとも1つの脂肪酸は、好ましくは、ラウリン酸、カプリル酸、オレイン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される、条項1~10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0149】
12.前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの脂肪酸の含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて5~25重量%、好ましくは5~20重量%の範囲であるか、または前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの極性ポリマー及び前記少なくとも1つの非極性ポリマーの合わせた質量に対する前記少なくとも1つの脂肪酸の質量の質量比は、約1×10-2~約4×10-1の範囲である、条項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0150】
13.B)前記チザニジン含有層は、
5.添加剤をさらに含み、
前記添加剤は、乳酸ラウリル、ラウリン酸メチル、ジヒドロレボグルコセノン、ジメチルプロピレン尿素及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記添加剤は、乳酸ラウリルであり、前記チザニジン含有層中の前記添加剤の含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて1~20重量%、より好ましくは5~15重量%の範囲であり、及び/または前記チザニジン含有層中の前記添加剤の質量に対するチザニジンの質量の質量比は、約0.25~約4、または約0.3~約3の範囲である、条項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0151】
14.前記チザニジン含有層は、チザニジン含有マトリックス層であり、及び/または前記チザニジン含有層の面積重量は、70~220g/m、好ましくは80~120g/mの範囲である、条項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0152】
15.採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、86μg/cm~150μg/cm、好ましくは100μg/cm~120μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する、
採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、148μg/cm~200μg/cm、好ましくは151μg/cm~160μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する、または
採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、295μg/cm~750μg/cm、好ましくは500μg/cm~650μg/cmまたは500~600μg/cmのチザニジンの累積透過量を32時間の期間にわたって提供する、条項1~14のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0153】
16.前記チザニジン含有層中のチザニジンの含有量は、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約0.5~約15重量%、好ましくは約1~約12重量%または約5~約15重量%の範囲であり、前記少なくとも1つの非極性ポリマーは、シリコーンポリマーもしくはポリイソブチレンであるか、または前記少なくとも1つの非極性ポリマーは、ポリイソブチレン混合物を含む、先行条項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0154】
17.チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)チザニジン含有層と
を含み、前記チザニジン含有層は、
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジンであって、前記チザニジン含有層中のチザニジンの含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約0.5~約15重量%の範囲である、前記チザニジン、
2.少なくとも1つの極性ポリマーであって、前記チザニジン含有層中の前記極性ポリマーの含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約10~約50%の範囲である、前記少なくとも1つの極性ポリマー、
3.少なくとも1つの非極性ポリマーであって、前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの非極性ポリマーの含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約20~約80重量%の範囲である、前記少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.少なくとも1つの脂肪酸であって、前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの脂肪酸の含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて5~25重量%の範囲である、前記少なくとも1つの脂肪酸を含む、先行条項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0155】
18.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)チザニジン含有層と
を含み、前記チザニジン含有層は、
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジンであって、前記チザニジン含有層中のチザニジンの含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約0.5~約15重量%の範囲である、前記チザニジン、
2.少なくとも1つの極性ポリマーであって、前記チザニジン含有層中の前記極性ポリマーの含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約10~約50%の範囲である、前記少なくとも1つの極性ポリマー、
3.少なくとも1つの非極性ポリマーであって、前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの非極性ポリマーの含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約20~約80重量%の範囲である、前記少なくとも1つの非極性ポリマー、
4.少なくとも1つの脂肪酸であって、前記チザニジン含有層中の前記少なくとも1つの脂肪酸の含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて5~25重量%の範囲である、前記少なくとも1つの脂肪酸、及び
5.添加剤であって、前記チザニジン含有層中の前記添加剤の含有量が、前記チザニジン含有層の総重量に基づいて約1~約20重量%の範囲である、前記添加剤を含む、先行条項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0156】
19.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.ポリビニルピロリドンである少なくとも1つの極性ポリマー、
3.ポリイソブチレン混合物を含む少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.オレイン酸である少なくとも1つの脂肪酸
を含む、チザニジン含有層と
を含む、先行条項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0157】
20.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.ポリビニルピロリドン、
3.ポリイソブチレン混合物、及び
4.オレイン酸である少なくとも1つの脂肪酸
からなるチザニジン含有層と
を含む、条項19に記載の経皮治療システム。
【0158】
21.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.アクリルポリマーである少なくとも1つの極性ポリマー、
3.シリコーンポリマーである少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.オレイン酸及びラウリン酸の混合物である少なくとも1つの脂肪酸
を含む、チザニジン含有層と
を含む、条項1~18のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0159】
22.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.アクリルポリマーである少なくとも1つの極性ポリマー、
3.シリコーンポリマーである少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.オレイン酸及びラウリン酸の混合物である少なくとも1つの脂肪酸
からなる、チザニジン含有層と
を含む、条項21に記載の経皮治療システム。
【0160】
23.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.アクリルポリマーである少なくとも1つの極性ポリマー、
3.シリコーンポリマーである少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.オレイン酸及びカプリル酸の混合物である少なくとも1つの脂肪酸
を含むチザニジン含有層と
を含む、条項1~18のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0161】
24.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.アクリルポリマーである少なくとも1つの極性ポリマー、
3.シリコーンポリマーである少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.オレイン酸及びカプリル酸の混合物である少なくとも1つの脂肪酸
からなるチザニジン含有層と
を含む、いずれかの条項に記載の経皮治療システム。
【0162】
25.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.アクリルポリマーである少なくとも1つの極性ポリマー、
3.シリコーンポリマーである少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.オレイン酸である少なくとも1つの脂肪酸、及び
5.乳酸ラウリルである添加剤を含む
チザニジン含有層と
を含む、条項1~18のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0163】
26.前記チザニジン含有層構造は、
A)裏地層と、
B)
1.治療有効量の遊離塩基の形態のチザニジン、
2.アクリルポリマーである少なくとも1つの極性ポリマー、
3.シリコーンポリマーである少なくとも1つの非極性ポリマー、及び
4.オレイン酸である少なくとも1つの脂肪酸、及び
5.乳酸ラウリルである添加剤
からなるチザニジン含有層と
を含む、いずれかの条項に記載の経皮治療システム。
【0164】
27.前記チザニジン含有層は、自己接着性層である、先行条項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0165】
28.前記チザニジン含有層は、チザニジン含有マトリックス層である、先行条項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0166】
29.前記チザニジン含有層は、チザニジン含有リザーバ層である、先行条項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0167】
30.ヒト患者を処置する方法に使用するための、先行条項のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0168】
31.ヒト患者における多発性硬化症に関連する痙攣または脊髄損傷に関連する痙攣の処置の方法に使用するための、条項1~30のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
図1
図2
図3
【国際調査報告】