(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20241001BHJP
C07D 237/32 20060101ALI20241001BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20241001BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20241001BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20241001BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241001BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20241001BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
C07D 219/04 20060101ALI20241001BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241001BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20241001BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K47/54
C07D237/32
A61P35/00
A61K31/502
A61K31/473
A61K31/197
A61K45/06
A61K41/00
A61P25/00
A61P43/00 121
C07D219/04
A61K45/00
A61K31/496
A61K31/357
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541285
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 GB2022052366
(87)【国際公開番号】W WO2023041938
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513227446
【氏名又は名称】オスロ ウニヴェルスィテーツスィーケフース ハーエフ
【氏名又は名称原語表記】OSLO UNIVERSITETSSYKEHUS HF
【住所又は居所原語表記】Postboks 450,Nydalen N-0424 Oslo,Norway
(71)【出願人】
【識別番号】524104930
【氏名又は名称】ヴギウカラキス ゲオルギオス シー
(71)【出願人】
【識別番号】524104941
【氏名又は名称】ロータス ゲオルギオス
(71)【出願人】
【識別番号】520503245
【氏名又は名称】ナショナル アンド カポディストリアン ユニヴァーシティー オヴ アテンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴギウカラキス ゲオルギオス シー
(72)【発明者】
【氏名】ロータス ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】テオドッシュウ テオドッシス
(72)【発明者】
【氏名】ベルグ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アロンソ ミゲル アンヘル ミランダ
(72)【発明者】
【氏名】グリガラヴィシウス マンタス
(72)【発明者】
【氏名】エザットパナー ソマイエ
(72)【発明者】
【氏名】ラーベ ティーネ テレーゼ ヘンリクセン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD55
4C076DD60
4C076EE59
4C084AA11
4C084AA17
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4C084AA20
4C084MA05
4C084MA55
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA011
4C084ZB261
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA16
4C086BC28
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4C086BC50
4C086GA07
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4C086MA66
4C086NA13
4C086ZA01
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4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA47
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA75
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA13
4C206ZA01
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、小胞体標的化化学発光薬剤及び光線力学療法(PDT)の方法におけるそれらの使用を提供する。特に、本発明は、一般式(I)の化合物及び薬学的に許容される塩を提供し、式中、Aは化学発光部分を表し、各Lは、同じであっても異なってもよく、直接結合又はリンカーのいずれかであり、各Bは、同じであっても異なってもよく、小胞体標的化部分を表し、nは、1~3の整数、好ましくは1であり、xは、1~3の整数、好ましくは1である。このような化合物は、光増感剤又は光増感剤前駆体と組み合わせて使用される場合、深部腫瘍、例えば、多形神経膠芽腫(GBM)の治療における特定の使用が見出されている。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線力学療法の方法における使用のための小胞体標的化化学発光薬剤。
【請求項2】
前記薬剤は、少なくとも1つの小胞体標的化部分に結合した又は別様に関連した少なくとも1つの化学発光部分を含むコンジュゲートである、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項3】
前記コンジュゲートは、一般式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化1】
であって、
式中、Aは、化学発光部分を表し、
各Lは、同じであっても異なってもよく、直接結合又はリンカー(例えば、有機リンカー)のいずれかであり、
各Bは、同じであっても異なってもよく、小胞体標的化部分を表し、
nは、1~3の整数、好ましくは1であり、
xは、1~3の整数、好ましくは1である、請求項2に記載の使用のための薬剤。
【請求項4】
前記コンジュゲートは、式(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化2】
であって、
式中、A、L、及びBは、請求項3に記載されるとおりである、請求項3に記載の使用のための薬剤。
【請求項5】
前記化学発光薬剤又は前記化学発光部分は、ルミノール、イソルミノール、ルシゲニン、アクリジニウムエステル、シュウ酸エステル、及びそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項6】
前記化学発光薬剤又は前記化学発光部分は、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、又はそれらの誘導体である、請求項5に記載の使用のための薬剤。
【請求項7】
前記小胞体標的化部分は、スルホンアミド又はスルホンアミド誘導体である、請求項2~6のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項8】
前記小胞体標的化部分は、以下の構造:
【化3】
のうちの1つを有する基であって、
式中、
R
14は、C
1~6アルキル又は任意選択的に置換されたアリール基であり、
R
15は、水素又はC
1~6アルキルであり、
【化4】
は、任意選択的に置換された含窒素複素環を表す、請求項7に記載の使用のための薬剤。
【請求項9】
前記小胞体標的化部分は、以下の構造:
【化5】
を有する基であって、
式中、
R
14は、請求項8で記載されるとおりである、請求項8に記載の使用のための薬剤。
【請求項10】
前記小胞体標的化部分は、以下の構造:
【化6】
のうちの1つを有する基であり、
式中、
R
15は、請求項8で記載されるとおりであり、
各R
16は、独立して、C
1~3アルキル(例えば、メチル)、C
1~3アルコキシ(例えば、メトキシ)又はハロゲン原子(例えば、Cl若しくはBr)を表し、
uは、0~5の整数、好ましくは1~3、例えば、1である、請求項8に記載の使用のための薬剤。
【請求項11】
前記リンカーLは、C
1~3アルキル、-O(C
1~3)アルキル、-OH、シクロアルキル基及びアリール基から選択される1つ以上の基によって任意選択的に置換されたアルキレン鎖(好ましくはC
1~15アルキレン、例えば、C
2~11アルキレン)を含み、前記アルキレン鎖の1つ以上の-CH
2-基は、-O-、-CO-、-NR-(式中、Rは、H又はC
1~6アルキル、好ましくはC
1~3アルキル、例えば、メチルである)、シクロアルキル基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基から独立して選択される基によって置き換えられてもよい、請求項3~10のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項12】
前記リンカーLは、-C
3H
6-、-C
4H
8-、-C
6H
12-、-C
8H
16-、-C
10H
20-、-C
11H
22-、-CO-、-CO-CH
2-、-CO-C
3H
6、-CO-C
5H
10-、-CO-C
6H
12-、-CO-C
10H
20-、及び1~4個のエチレンオキシド単位を含むポリエチレングリコール基からなる群から選択される、請求項11に記載の使用のための薬剤。
【請求項13】
式(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化7】
(式中、L
1は、直接結合又はリンカー、例えば、請求項11又は12に記載されるリンカーであり、
B
1は、小胞体標的化部分、例えば、請求項7~10のいずれか一項に記載される小胞体標的化部分であり、
R
3は、水素、又はC
1~3アルキル(例えば、メチル)などのアルキル基であり、
各R
4は、C
1~6アルキル、及び-NR
5R
6から独立して選択され、
R
5及びR
6は、H及びC
1~6アルキルから、好ましくはH及びC
1~3アルキル(例えば、-CH
3)から独立して選択され、
pは、0~3の整数、好ましくは0、1又は2、例えば、0又は1である)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項14】
式(IIIa)又は(IIIb):
【化8】
の化合物であって、
式中、L
1、B
1、R
3、R
4、及びpは、請求項13に記載されるとおりである、請求項13に記載の使用のための薬剤。
【請求項15】
L
1は、
【化9】
からなる群から選択され、
式中、aは、1~10の整数、好ましくは3~10であり、
bは、1~4の整数、例えば、2である、請求項13又は請求項14に記載の使用のための薬剤。
【請求項16】
式(IV)の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化10】
(式中、L
2は、リンカー、例えば、請求項11又は12に記載されるリンカーであり、
B
2は、小胞体標的化部分、例えば、請求項7~10のいずれか一項に記載される小胞体標的化部分であり、
各R
6は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、及びC
1~6アルキル(例えば、tert-Bu)から独立して選択され、
qは、0~4の整数、好ましくは0又は2であり、
Zは、一価のアニオン、例えば、Cl、Br、I、又はCF
3OSO
2アニオンである)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項17】
L
2は、以下の基:
【化11】
のうちの1つを表し、
式中、aは、1~10の整数、好ましくは3、4、又は5である、請求項16に記載の使用のための薬剤。
【請求項18】
式(V)の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化12】
(式中、L
3は、直接結合又はリンカー、例えば、請求項11又は12に記載されるリンカーのいずれかであり、
B
3は、小胞体標的化部分、例えば、請求項7~10のいずれか一項に記載される小胞体標的化部分であり、
各R
7は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、-CO
2R
8(式中、R
8は、水素又はC
1~6アルキルである)、シアノ、及びC
1~6アルキル(例えば、tert-Bu)から独立して選択され、
rは、0~5の整数、好ましくは0又は3であり、
Zは、一価のアニオン、例えば、Cl、Br、I、又はCF
3OSO
2アニオンである)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項19】
L
3は、C
1~10アルキレン基、例えば、C
1~6アルキレンである、請求項18に記載の使用のための薬剤。
【請求項20】
式(VIa)、(VIb)の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化13】
であって、
式中、L
4は、直接結合又はリンカー、例えば、請求項11又は12に記載されるリンカーのいずれかであり、
A
1は、化学発光部分、例えば、請求項5又は6に記載される化学発光部分である)、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項21】
L
4は、
【化14】
からなる群から選択され、
式中、aは、1~10の整数、好ましくは3~10である、請求項20に記載の使用のための薬剤。
【請求項22】
A
1は、以下:
【化15】
(式中、R
3は、水素、又はC
1~3アルキル(例えば、メチル)などのアルキル基であり、
各R
4は、C
1~6アルキル、及び-NR
5R
6から独立して選択され、
R
5及びR
6は、H及びC
1~6アルキルから、好ましくはH及びC
1~3アルキル(例えば、-CH
3)から独立して選択され、
pは、0~3の整数、好ましくは0、1又は2、例えば、0又は1であり、
Zは、一価のアニオン、例えば、Cl、Br、I、又はCF
3OSO
2アニオンであり、
各R
9は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、及びC
1~6アルキル(例えば、tBu)から独立して選択され、
sは、0~4の整数、好ましくは0、2、又は3である)のいずれかから選択される、請求項20又は請求項21に記載の使用のための薬剤。
【請求項23】
式(VII)の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化16】
(式中、L
5は、直接結合又はリンカー、例えば、請求項11又は12に記載されるリンカーのいずれかであり、
B
4は、小胞体標的化部分、例えば、請求項7~10のいずれか一項に記載される小胞体標的化部分であり、
各R
10は、C
1~6アルキル(例えば、メチル)、及び-NR
11R
12から独立して選択され、
R
11及びR
12は、H及びC
1~6アルキルから、好ましくはH及びC
1~3アルキル(例えば、-CH
3)から独立して選択され、
tは、0~3の整数、好ましくは1又は2である)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項24】
式(VIIa):
【化17】
(式中、L
5、B
4、R
11及びR
12は、請求項23に記載されるとおりであり、R
13は、H又はC
1~3アルキルである)の化合物である、請求項23に記載の使用のための薬剤。
【請求項25】
L
5は、C
1~11アルキレン、好ましくはC
2~8アルキレン、例えば、プロピレンである、請求項23又は請求項24に記載の使用のための薬剤。
【請求項26】
以下の化合物:
【化18】
から選択される請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項27】
前記光線力学療法は、光増感剤又はその前駆体の同時又は連続した使用を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のための薬剤。
【請求項28】
前記光増感剤又は前記前駆体は、5-アミノレブリン酸(5-ALA)及び5-ALAの誘導体、プロトポルフィリン(例えば、プロトポルフィリンIX)、任意選択的にスルホン化され得る金属化フタロシアニン(すなわち、AlPcS)、例えば、AlPcS
2若しくはAlPcS
2aなどのジスルホン化アルミニウムフタロシアニン、又はアルミニウムフタロシアニンテトラスルホネート(A1PcS
4)などのフタロシアニン類、スルホン化テトラフェニルポルフィリン類(例えば、TPPS
2a、TPPS
4、TPPS
1及びTPPS
2o)、テトラ(m-ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)(例えば、商品名Foscanで市販されているテモポルフィン)などのクロリン、バクテリオクロリン及びケトクロリンを含むクロリン誘導体、モノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)又はクロリンe6、ヘマトポルフィリン及びベンゾポルフィリンを含む天然ポルフィリン及び合成ポルフィリン、アントラキノン及びその誘導体(例えば、ヒペリシン、ヒポクレリン[A、B]、セルコスポリン、カルホスチン、エルシノクロム[A、B、C])から選択される、請求項27に記載の使用のための薬剤。
【請求項29】
前記光増感剤又は前記前駆体は、以下:セルコスポリン、5-ALA、5-ALAの誘導体又はその薬学的に許容される塩から選択される、請求項28に記載の使用のための薬剤。
【請求項30】
前記光増感剤は、セルコスポリンである、請求項28に記載の使用のための薬剤。
【請求項31】
光線力学的療法に応答する動物の体(例えば、ヒト)の細胞又は組織の任意の障害又は異常の光線力学的治療に使用するための、請求項1~30のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項32】
癌の治療において、好ましくは内部癌、例えば、深部癌の治療における、請求項31に記載の使用のための薬剤。
【請求項33】
前記癌は、神経膠腫及び他の脳癌、肝癌及び膵臓癌、乳癌、肺癌及び前立腺癌、胆管癌、胃癌及び結腸癌、膀胱癌、子宮頸部癌、頭頸部癌からなる群から選択される、請求項32に記載の使用のための薬剤。
【請求項34】
前記癌は、GBMである、請求項33に記載の使用のための薬剤。
【請求項35】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤と一緒に、請求項1~26のいずれか一項に記載の薬剤を含む、医薬組成物。
【請求項36】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤と一緒に、請求項1~26のいずれか一項に記載の薬剤と、請求項27~30のいずれか一項に記載の光増感剤又は光増感剤前駆体と、を含む、医薬組成物。
【請求項37】
光線力学療法に使用するための、好ましくは内部癌、例えば、深部癌の治療に使用するための、請求項35又は請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
光線力学療法の方法において同時に、別個に、又は連続して使用するための、請求項1~26のいずれか一項に記載の薬剤と、請求項27~30のいずれか一項に記載の光増感剤又は光増感剤前駆体と、を含む、製品。
【請求項39】
キットであって、(i)請求項1~26のいずれか一項に記載される薬剤と、別個に(ii)請求項27~30のいずれか一項に記載の光増感剤又は光増感剤前駆体と、任意選択的に(iii)光線力学療法の方法における(i)及び(ii)の使用のための指示書と、を含む、キット。
【請求項40】
例えば、光線力学療法の方法に使用するための、請求項27~30のいずれか一項に記載の光増感剤又は光増感剤前駆体との併用療法に使用するための薬物の製造における、請求項1~26のいずれか一項に記載の薬剤の使用。
【請求項41】
例えば、光線力学療法の方法に使用するための、請求項1~26のいずれか一項に記載の薬剤との併用療法に使用するための薬物の製造における、請求項27~30のいずれか一項に記載の光増感剤又は光増感剤前駆体の使用。
【請求項42】
光線力学療法の方法に使用するための薬物の製造における、請求項27~30のいずれか一項に記載される光増感剤又は光増感剤前駆体と一緒の、請求項1~26のいずれか一項に記載される薬剤の使用。
【請求項43】
患者(例えば、ヒト患者)の細胞又は組織の光線力学療法の方法であって、前記方法は、前記細胞又は前記組織に、
(a)請求項1~26のいずれか一項に記載される有効量の薬剤と、それと同時に、別個に、若しくは連続して、請求項27~30のいずれか一項に記載される有効量の光増感剤若しくは光増感剤前駆体、又は
(b)請求項36に記載される有効量の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項44】
請求項1~26のいずれか一項に記載されるコンジュゲート、又はその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線力学療法(photodynamic therapy、PDT)の方法における改善及びそのような方法に関連する改善に関し、特に、外部光源を必要とせずに、過剰増殖細胞及び/又は異常な細胞を特徴とする疾患及び状態の標的治療のためのそのような方法に関する。より具体的には、本発明は、腫瘍、特に、既存のPDT方法を使用した場合に到達できない腫瘍を治療するためのそのような方法に関する。
【0002】
本発明は更に、新規な小胞体標的化化学発光薬剤、それらの調製方法、及び光増感剤又は光増感剤前駆体を使用するPDTの方法における細胞内光源としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
内部腫瘍の従来の治療は、典型的には、侵襲的手術、放射線療法、非治癒的化学療法、又はこれらの組み合わせを含む。多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme、GBM)などの頭蓋内腫瘍は、その位置及び悪性度が高い特徴のために治療するのが非常に困難な深部腫瘍の一例である。EU及び米国では、毎年約28,000件のGBMなどの悪性神経膠腫の新しい症例が診断されており、世界的には毎年240,000人の患者が診断されている。現在の標準的な治療法は、腫瘍の約99%を除去する高侵襲性(開頭)手術からなっているが、約10億個の細胞が残されるため、再発につながる。放射線療法は、手術の補助として(60~65Gyで)用いられてもよく、手術と併せると、残された癌細胞を数百万個に減少させることができるが、放射線耐性癌細胞を内部に有するいくつかの場所にも転移する傾向があるGBMなどの癌には大きな効果は発揮しない。更に、放射線療法は、正常組織に対する癌性組織の破壊に特異的ではない。放射線療法に加えて、テモゾロミドによる化学療法も使用することができる。しかしながら、これらの療法は、患者の全生存期間を制限し、治癒転帰をもたらさず、細胞が最終的に(治療の約1年以内に)耐性を発達させ、治療がもはや有効ではなくなるため、これらの療法は、主に細胞増殖抑制性である。手術と放射線療法の組み合わせにより、生存期間の中央値が4.5ヶ月(未治療)から12.1ヶ月に増加する。テモゾロミドによる追加の化学療法は、生存期間を14.6ヶ月に延長する。GBMと診断された成人の相対生存率は、診断から1年以内には30%未満であり、最初の診断から5年以上生存する患者はわずか3%である。
【0004】
そのため、GBMなどの深部に位置する到達困難な腫瘍は、治療することが依然として非常に困難であり、既存の治療法が提供する生存率の増加はごくわずかである。したがって、改善された有効性を有する、より標的を定めた、低侵襲性の治療手法の開発が緊急に必要とされている。
【0005】
腫瘍の治療に使用されることが知られている他の方法は、PDTを含む。PDTは、局所的に又は全身的にのいずれかで光増感剤を投与した後、周囲の酸素と相互作用して細胞毒性中間体を生成する光活性化光に患部を曝露することを含む。これは、細胞の破壊及び腫瘍血管系のシャットダウンをもたらす。
【0006】
PDTは、必須であるが個々には非化学毒性の3つの構成要素、(i)光活性化薬物である光増感剤(photosensitizer、PS)と、(ii)PSを活性化するために適切な波長の光と、(iii)毒性種の最終発生剤である酸素の存在と、の相乗効果を通して癌治療を提供する。PDTの抗腫瘍効果は、主に3つの相互に関連する効果に分類することができる。(i)主にI型又はII型機構のいずれかを介してもたらされる直接的な細胞毒性作用(前者は、活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)を生成し、最終的にヒドロキシルラジカルを生成するが、PSの大部分において顕著であるII型機構は、有害な一重項酸素[O2(1Δg)又は1O2]を生成する)、(ii)腫瘍血管系への損傷、及び(iii)PDT誘導性酸化ストレスの結果として、全身性免疫の発生をもたらし得る炎症反応の誘導。
【0007】
光線力学療法及び診断の方法における使用が現在承認されている光増感剤には、その生合成非光感受性前駆体である5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid、5-ALA)から生成されるプロトポルフィリンIX(protoporphyrin IX、PpIX)が挙げられる。5-ALAの外部投与に続いて、ヘムの生合成サイクルが、細胞ミトコンドリアにおける活性光増感剤PpIXへの変換を促進する。5-ALAで処理された癌細胞は、主にPpIX合成促進酵素の量が多いために、かつ/又はフェロキラターゼの量が大幅に少ないために、大量のPpIXを蓄積する(この酵素は、ミトコンドリアマトリックス内のPpIXによる鉄のキレート化を触媒してヘムを生成し、次いでヘムはミトコンドリア外に輸送される)。その後の光への曝露により、PpIXは、その基底一重項状態からその励起一重項状態に励起される。次いで、項間交差を経て、より長寿命の励起された三重項状態になる。三重項状態のPpIXが酸素分子(基底三重項状態にある)と相互作用すると、PpIXから酸素へのエネルギー移動が起こる。これにより、2つの分子が互いにスピン反転する結果となり、PpIXが緩和してその基底一重項状態に戻る一方で、細胞毒性のある励起一重項状態の酸素分子が形成される。
【0008】
光増感剤はまた、癌性細胞及び組織の光線力学的診断の方法における使用が知られており、腫瘍塊の外科的切除を誘導するためにも使用することができる。例えば、PDTは膀胱癌の治療における手術の補助として使用される。5-ALAによって誘発されるPpIX蛍光は、現在、GBMの治療における蛍光誘導切除のために術中にも使用されている(Stummer et al.,Lancet Oncol.,2006,7(5):392-401を参照)。しかしながら、従来のPDT手順の制限(例えば、光の到達性及び組織への光浸透性)に起因して、現在、外科的介入を必要とせずにこの侵襲性状態を治療において顕著ないかなる利益も提供することはできない。
【0009】
抗癌治療としてのPDTの既存の方法の主な制限は、臨床医による治療領域の判断が不十分であること、治療される腫瘍体積の定義が不十分であること、及び光活性化光が組織に浸透する深さ(約1.5cm)が制限されていることである。これは、効果のない治療及び生存癌細胞の残存につながる。例えば、5-ALAに基づくPDTは、日光角化症及び基底細胞癌の治療に非常に高い治癒率を伴って特異的かつ効率的であるが、それは2mmより薄い病変の場合のみである。より厚い病変又は非表在性癌の場合、5-ALA PDTは、患者の治癒を保証することはできず、大きな腫瘍の場合は対症療法的であるに過ぎない。これは、PpIXの活性化波長(635nm)での光の組織浸透性が制限されているためである。
【0010】
場合によっては、PDTを用いて、固形臓器又は食道などの中空臓器のより深くに位置する腫瘍を治療することができるが、これは通常、光増感剤の光活性化のために、カテーテル又は内視鏡を誘導する光ファイバーなどのデバイスの使用を伴う。これは複雑な手技であるだけでなく、体の特定の領域への到達を妨げ、治療にある程度の侵襲性をもたらす。またこれは、癌細胞全体を根絶することはできず、多病巣性疾患(例えば、神経膠腫)又は多病巣性転移には適用することができない。したがって、表在性腫瘍の治療には適しているが、深部腫瘍細胞及び解剖学的に到達しにくい病変の治療における既存のPDT法の使用は非常に制限されている。
【0011】
PDTの主な制約は、特に癌性病変が脳、肝臓、又は膵臓などの深部臓器にある場合の、病変への光の到達であるため、光増感剤の投与後の光線力学的な細胞自殺に必要な光を提供する細胞内光源として生物発光又は化学発光を利用するためにいくつかの努力がなされてきた。2013年に最初に開発された1つのそのような治療(Theodossou et al.,Cancer Research,2013,63:1818-21)は、BLADe(BioLuminescence Activated Destruction、生物発光活性化破壊)である。BLADeは、ホタルルシフェラーゼ酵素による細胞内トランスフェクションと、それに続く光増感剤、及びルシフェラーゼの天然基質であるルシフェリンの投与に依存する。この方法の主な欠点は、ルシフェラーゼを産生するために細胞を遺伝子改変する必要があること、及び上記3つの因子とATPとの共局在を必要とすることである。また、この共局在は、脆弱な細胞内一重項酸素標的に非常に近接していなければならない。
【0012】
それ以来、所望のPDT効果を達成するために発光を利用するいくつかの試みがなされてきた(例えば、Hsu et al.,Biomaterials,2013,34(4):1204-12;及びBaacirova et al.,Luminescence,2011,26(6):410-5を参照)。Laptev et al.(Br.J.Cancer,2006,95(2):189-96)は、細胞内発光によって細胞を死滅させるために、ルミノール(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン)をトランスフェリン-ヘマトポルフィリンコンジュゲートと共に使用することを以前に提案している。それらは十分な概念実証(95%細胞毒性)を提供したが、以下の欠点がこれらの方法に関連しており、それらを臨床において実行不可能にしている。(i)非特異的細胞内標的化、(ii)Laptev et al.による研究において、鉄源としてのトランスフェリンの必要性、及び(iii)細胞内ROSへの近接のための設計の欠如。
【0013】
直近では、国際公開第2019/243757号において、本発明者らは、GBMなどの腫瘍を治療するためのPDTの方法におけるミトコンドリア標的化化学発光薬剤の使用を提案した。この初期の研究は、ルミノールを細胞ミトコンドリアに標的化し、ミトコンドリア膜を横断して効率的に輸送する基を結合させるためのルミノールの化学修飾を含む。ミトコンドリア呼吸は、ルミノール発光に必要な活性酸素種(ROS)及び遷移金属触媒を提供する。更に、PpIXは、ミトコンドリアで生合成されるため、効率的な活性化及び有害な一重項酸素生成のためにルミノールに近接している。このようにして、細胞の生存に直接の脅威をもたらさないミトコンドリアROSは、細胞内から致命的な細胞損傷を与える細胞毒性の高いROSに「アップグレード」される。標的部位で高レベルのPpIXが産生されるため、この作用は癌性病変に特異的である。したがって、化学的に修飾されたルミノール(「ミトコンドリア指向性ルミノール」)は、自己持続性の細胞内光源として使用され、標的細胞ミトコンドリアは、「光をスイッチオンする」ための電源として使用される。その結果、これは腫瘍細胞内の光増感剤(例えば、PpIX)の細胞毒性活性を活性化する。
【0014】
本発明者らは、以前の研究の発展において、標的腫瘍細胞の小胞体(endoplasmic reticulum、ER)に蓄積することができるルミノールなどの化学修飾化学発光薬剤の使用を含む、PDTの代替的な非侵襲的方法をここで提案する。
【0015】
腫瘍細胞殺傷において効率的であるが、国際公開第2019/243757号におけるミトコンドリア標的化化合物は、それらが毒性濃度に達する前に限定された治療濃度域を有し得る。これは、ミトコンドリアマトリックスにおける化合物のカチオン電荷の蓄積の結果としてのミトコンドリア膜電位の消失に起因する。しかしながら、ER標的化の場合、そのような効果がないので、耐性ははるかに高い。同時に、小胞体は、脆弱な細胞内PDT標的の1つであり、ミトコンドリアとのその多数の接触部位に起因して、ミトコンドリア産生ROSへの近接性を提供する(Vance,Biochim.Biophys.Acta,2014,1841:595-609)。更に、PDTにおける使用のために現在提案されている薬剤はまた、ER産生ROS[doi:10.1089/ars.2014.5851]、特に、癌の進行及び生存にとって極めて重要な小胞体ストレス応答(unfolded protein response、UPR)由来のROS[doi:10.1111/boc.201800050])を利用してもよい。したがって、これらの薬剤は、腫瘍細胞をより効率的に死滅させることができ、したがって、国際公開第2019/243757号に記載されている治療を上回って改善された治療を提供することができると予想される。
【0016】
従来のPDT技術を使用してアクセスすることができない内部腫瘍塊の治療に特に好適であるが、本明細書に記載されるPDTの方法は、全ての腫瘍型及び細胞の過剰増殖を含む任意の状態の治療において使用される。
【発明の概要】
【0017】
本発明者は、光増感剤、又は光増感剤の前駆体(例えば、5-ALA)と、小胞体(「ER」)を標的化することができる化学発光薬剤との併用を含むPDTの方法に関する。小胞体に対する親和性は、「修飾」化学発光薬剤、具体的には、少なくとも1つの化学発光部分が少なくとも1つの小胞体標的化部分(本明細書では「ER標的化部分」とも称する)に結合している化学発光薬剤「コンジュゲート」の使用によって達成される。
【0018】
化学発光薬剤「コンジュゲート」の例は、化学的に修飾されたルミノール及びアクリジニウムエステルである。それらの化学修飾は、それらを小胞体に標的化する1つ以上の化学基の結合を含む。
【0019】
したがって、広義に言えば、本発明は、特に過剰増殖細胞及び/又は異常な細胞、例えば、癌細胞に対してPDTを行うために化学発光薬剤がER標的化されるように、既知の化学発光薬剤の修飾を含む。この修飾の結果として、セルコスポリン、ヒペリシン及びPpIX(ミトコンドリアからのその移行後)などの、標的部位に蓄積する光増感剤を活性化するために必要とされる発光は、「自動的」であり、多くの場合、より高いミトコンドリアROS及びER ROSの形成を示す癌細胞において更により強い。
【0020】
例えば、5-ALA由来PpIXの形成は、癌性GBM病変に非常に特異的である。この高い特異性は、侵襲的手法を必要としないGBM治療の可能性をもたらすが、ER標的化ルミノールなどのER標的化化学発光薬剤と5-ALAとの全身投与だけで、脳の全GMB病変を根絶するのに十分である。GBMは、最初に発生した後、脳内で高度に移動し、様々な脳の場所で再表面化するため、これは特に重要である。GBMを治療するために使用される場合、本発明はまた、血液脳関門のGBM誘発性破壊を利用するため、修飾された化学発光薬剤(例えば、ルミノール又はアクリジニウムエステル)と光増感剤又はその前駆体(例えば、セルコスポリン又は5-ALA)との両方が、脳のGMB病変に効率的に到達する。
【0021】
本発明では、PDTにおいて従来的に使用されるランプ又はレーザーなどの外部光源を必要とせずに、PDTが個々の腫瘍細胞に効果的に適用される(すなわち、PDT効果は、集団病変ではなく、単一細胞レベルである)。PDTに対するこの治療アプローチにおいて、組織への光透過の深さは、もはや制限ではない。これは、光化学的であるにもかかわらず、2つの個々の非化学療法薬の投与を伴う、癌の代替的治療の基礎を確立する。したがって、その治療は、有害な副作用のリスクなしに複数回繰り返すことができる。これは、転移のリスクを最小にし、治療の治癒可能性を最大にする。
【0022】
本発明は更に、侵襲的手術、電離放射線又は非治癒的化学療法を必要とすることなく、位置及び侵襲性が高い性質のために現在は実質的に不治であるGBMなどの内部癌の効果的な治療の必要性に対応する。そのような治療は、一次治療として、及び/又は繰り返される非侵襲的治療を通じて生涯にわたって疾患の進行を効果的に制御することができる光化学療法剤としてのいずれかであり得る。到達することができない癌の治療に対するこの手法は、過剰増殖細胞及び/又は異常な細胞を特徴とする他の疾患及び状態の治療、特に、浅い又は表面的なものを含む他の癌の治療にまで及ぶ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書で使用される場合、「化学発光薬剤」という用語は、細胞の小胞体(ER)内で起こる化学反応の結果として発光することができる様々な薬剤のいずれか、すなわち、ERに局在すると「活性化」され得る任意の薬剤を包含することを意図している。より具体的には、化学発光薬剤は、細胞の小胞体に存在するか、又はそれに近接して(例えば、隣接細胞ミトコンドリア又は他の細胞内供給源において)生成される、反応性酸素種又は反応性窒素種などの物質との反応後に光を放出する薬剤である。そのような酸素種は、例えば、酸素ラジカル、酸素スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルなどの任意の活性酸素種(ROS)、及び過酸化水素を含む。窒素種は、例えば、一酸化窒素、ペルオキシ亜硝酸、窒素酸化物などを含む。理解されるように、本発明で使用するための任意の化学発光薬剤は、生理学的に許容されるであろう。
【0024】
本明細書で使用される場合、「化学発光部分」という用語は、任意の化学発光薬剤、又は化学発光薬剤に由来する任意の部分、すなわちその誘導体を包含する。いずれの誘導体も、上記のように、親分子の発光特性を保持するべきである。これは同様に、インビボでの生理学的忍容性の要件を満たす必要がある。誘導体の例として、1つ以上の追加の官能基又は非官能基(例えば、置換基)を担持する化学発光薬剤が挙げられる。「誘導体」という用語は、化学発光薬剤の断片又は残基にも及ぶ。
【0025】
「小胞体標的化部分」及び「ER標的化部分」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、小胞体を標的化することができる、したがって小胞体に蓄積することができる任意の生理学的に受容可能な薬剤又は部分を包含することが意図される。それはまた、親分子の小胞体標的化特性を保持するそのような薬剤の誘導体も包含する。「誘導体」という用語は、小胞体標的化薬剤の断片又は残基にまで及ぶ。
【0026】
本明細書で使用される場合、「光増感剤前駆体」という用語は、代謝的に光増感剤に変換され、したがって本質的にそれと同等である任意の化合物を包含することが意図される。
【0027】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載の化合物のいずれかの任意の薬学的に許容される有機塩又は無機塩を指す。薬学的に許容される塩は、対イオンなどの1つ以上の追加の分子を含んでもよい。対イオンは、親化合物の電荷を安定させる任意の有機基又は無機基であり得る。化合物が塩基である場合、遊離塩基を有機酸又は無機酸と反応させることにより、好適な薬学的に許容される塩を調製することができる。化合物が酸である場合、遊離酸を有機塩基又は無機塩基と反応させることにより、好適な薬学的に許容される塩を調製することができる。
【0028】
「薬学的に許容される」という用語は、化合物又は組成物が、製剤の他の成分又は治療される患者(例えば、ヒト)と化学的及び/又は毒物学的に適合性があることを意味する。
【0029】
「医薬組成物」とは、医療目的で使用するのに好適な任意の形態の組成物を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、非ヒト哺乳動物)に利益をもたらすことができる任意の治療的適応を含む。ヒト及び動物の両方の治療が本発明の範囲内であるが、主に、本発明はヒトの治療を目的としている。「治療」又は「治療法」という用語は、治癒的及び予防的な治療又は治療法を包含する。
【0031】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、一価の飽和、直鎖状又は分枝状の炭素鎖を指す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、好ましくは、1~6個の炭素原子、例えば、1~4個の炭素原子を含む。
【0032】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、-O-アルキル基を指し、アルキルは、本明細書に定義されるとおりである。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、芳香環系を指す。そのような環系は、単環式又は二環式であり得、少なくとも1つの不飽和芳香族環を含有し得る。これらが二環式環を含有する場合、これらは縮合され得る。好ましくは、そのような系は、6~20個の炭素原子、例えば、6又は10個の炭素原子のいずれかを含有する。そのような基の例としては、フェニル、1-ナフチル、及び2-ナフチルが挙げられる。好ましいアリール基は、フェニルである。特に明記しない限り、任意のアリール基は、ヒドロキシ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、アミノ、シアノ、及びニトロ基、又はハロゲン原子(例えば、F、Cl若しくはBr)から選択される1つ以上の置換基で置換されてもよい。2個以上の置換基が存在する場合、これらは同じであっても異なってもよい。
【0034】
「ハロゲン原子」という用語は、F、Cl、Br又はIを指す。
【0035】
本明細書で使用される「ハロアルキル」という用語は、アルキル基の水素原子のうちの少なくとも1つがハロゲン原子、好ましくはF、Cl、又はBrによって置き換えられる、本明細書に定義されるアルキル基を指す。そのような基の例としては、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CCl3、-CHCl2、-CH2CF3などが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される「複素環」という用語は、飽和又は部分的に不飽和の4~6員(好ましくは5又は6員)の炭素環系を指し、少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、炭素である。複素環構造は、炭素原子又は窒素原子を介して分子の残りの部分に連結され得る。特に明記しない限り、本明細書に記載の任意の複素環は、同一であっても異なってもよい1つ以上の基、例えば、ヒドロキシ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、アミノ、シアノ、若しくはニトロ基、又はハロゲン原子(F、Cl若しくはBr)によって任意選択的に置換されてもよい。
【0037】
特に明記しない限り、全ての置換基は互いに独立している。
【0038】
下付き文字が整数0(すなわち、ゼロ)である場合、下付き文字が指す基が存在しないことが意図される。
【0039】
一態様では、本発明は、光線力学療法の方法における使用のための小胞体標的化化学発光薬剤を提供する。
【0040】
一実施形態では、本発明で使用するための小胞体標的化化学発光薬剤は、小胞体を選択的に標的とする少なくとも1つの小胞体標的化部分(「ER標的化部分」)に結合した又は別様に関連した少なくとも1つの化学発光部分を含む化学発光薬剤「コンジュゲート」である。このコンジュゲートが2つ以上の化学発光部分を含む場合、これらは同じであっても異なってもよい。しかしながら、これらは概して同一である。化学発光部分が2つ以上のER標的化部分に結合している場合、ER標的化部分は、同じであっても異なってもよいが、好ましくは同じである。一実施形態では、コンジュゲートは、単一のER標的化部分に結合した又は別様に関連した単一の化学発光部分を含む。
【0041】
化学発光部分(又は複数の部分)は、共有結合手段又は非共有結合手段を介してER標的化部分(又は複数の部分)に結合してもよい。それは、例えば、静電相互作用、ファンデルワールス力、及び/又は水素結合を介して結合してもよい。典型的には、化学発光部分(又は複数の部分)及びER標的化部分(又は複数の部分)は、例えば、1つ以上の共有結合を介して、互いに共有結合する。場合によっては、化学発光部分(又は複数の部分)は、連結基(又は「スペーサー」)を介してER標的化部分(又はそのそれぞれ)に共有結合してもよい。
【0042】
本発明で使用するための化学発光薬剤「コンジュゲート」は、以下の一般式(I)を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩であってもよく、
【0043】
【化1】
式中、Aは、化学発光部分を表し、
各Lは、同じであっても異なってもよく、直接結合又はリンカーのいずれかであり、
各Bは、同じであっても異なってもよく、小胞体標的化部分を表し、
nは、1~3の整数、好ましくは1であり、
xは、1~3の整数、好ましくは1である。
【0044】
式(I)の一実施形態では、n及びxの両方は、1である。したがって、本発明で使用するための化学発光薬剤「コンジュゲート」は、式(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩であってもよく、
【0045】
【化2】
式中、A、L、及びBは、本明細書に定義されるとおりである。
【0046】
本発明における使用に好適な化学発光薬剤は、当技術分野で既知であり、例えば、ルミノール、イソルミノール、ルシゲニン、アクリジニウムエステル、シュウ酸塩エステル、並びにそれらの既知の類似体及び誘導体が挙げられる。任意の既知の化学発光薬剤又はその誘導体も使用してもよい。本発明で使用するための化学発光部分は、これらの薬剤のいずれかに「由来」し得る。好適な誘導体は、1つ以上の追加の官能基若しくは非官能基(例えば、置換基)を含んでもよいか、又はこれらは、化学発光活性を保持するそのような薬剤の断片若しくは残基を含んでもよい。
【0047】
本発明における使用に好ましいのは、ルミノール、イソルミノール、及びアクリジニウムエステルに由来する化学発光部分である。そのような化合物は、1つ以上の追加の置換基、例えば、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、アミノ、シアノ、ニトロ及びアリール(例えば、フェニル)基、又はハロゲン原子によって置換されてもよい。例えば、ルミノール又はイソルミノールのフェニル環は、ハロゲン原子、C1~6アルキル及びフェニル基から選択される1つ以上(例えば、1つ又は2つ)の基によって置換されてもよい。
【0048】
理解されるように、共有結合又はリンカーを介してER標的化部分(又は複数の部分)に結合するために、化学発光部分は、典型的には、親化学発光薬剤の「誘導体」である。例えば、これは、リンカーへの又は直接ER標的化薬剤へのいずれかの共有結合の形成に続いて1つ以上の末端原子又は基を欠いている可能性があり、したがって、元の分子の「残基」と見なされ得る。例えば、ルミノールの場合、第一級アミン基は、リンカー又はER標的化部分のいずれかに対する結合点を形成してもよいため、単一の水素原子の損失(すなわち-NH2から-NH-へ)によって「誘導体化」される。反応してER標的化部分(又は複数の部分)と共有結合を形成してもよい官能基の導入を含む、他の形態の誘導体化を想定してもよい。任意の所与の化学発光薬剤に必要な「誘導体化」の特定の形態は、その構造に依存し、任意の熟練化学者によって容易に決定され得る。
【0049】
式(I)又は(II)において、化学発光部分は、以下の構造(式中、*は、リンカーLへの、又は直接ER標的化部分への結合点(又は複数の点)を示す)から選択されてもよく、
【0050】
【化3】
式中、
R
1は、水素又はC
1~6アルキル、好ましくはC
1~3アルキル(例えば、メチル)などのアルキル基であり、
各R
2は、
- C
1~6アルキル、
- C
1~6アルコキシ、
- -NR
5R
6(式中、R
5R
6は、H及びC
1~6アルキルから、好ましくはH及びC
1~3アルキル(例えば、-CH
3)から独立して選択される)、
-任意選択的に置換されたアリール(例えば、任意選択的に置換されたフェニル)から独立して選択され、
nは、0~3の整数、好ましくは0、1又は2、例えば、0又は1であり、
mは、0~2の整数、例えば、0又は1であり、
Rは、水素又はC
1~6アルキル、好ましくはC
1~3アルキル(例えば、メチル)であり、
Xは、一価のアニオン、例えば、Cl、Br、I、OTos、ClO
4、NO
3、PF
6、又はBF
4アニオンであり、
Yは、任意選択的に置換されたアリール(又はアリーレン)基、例えば、任意選択的に置換されたフェニル(又はフェニレン)である。
【0051】
一実施形態では、R1は、水素又はメチルである。好ましくは、R1は、水素である。
【0052】
一実施形態では、各R2は、C1~6アルキル及び非置換フェニルから独立して選択される。例えば、各R2は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル及びフェニルから独立して選択されてもよい。
【0053】
Yが置換アリール又はアリーレン基である場合、好適な置換基の例としては、1つ以上のハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、C1~6アルキル(例えば、tert.ブチル、プロピル、エチル又はメチル)、-COOC1~6アルキル(例えば、-COOCH3)、ニトロ又はシアノ基が挙げられる。
【0054】
ルミノール又はイソルミノールの芳香環上の異なる置換パターンは、当業者によって選択されてもよく、一実施形態では、置換パターンは、化学発光を増強するように選択されてもよい。一実施形態では、本発明における使用のための化学発光部分は、ルミノール又はその置換誘導体であり、例えば、それは、以下の構造(式中、*は、リンカーLへの、又は直接ER標的化部分への結合点を示す)を有する部分であってもよく、
【0055】
【化4】
式中、
R
17は、水素、C
1~6アルキル(好ましくはC
1~4アルキル、より好ましくはC
1~3アルキル、例えば、メチル)、又は任意選択的に置換されたアリール(例えば、任意選択的に置換されたフェニル)であり、
R
18は、水素又はC
1~6アルキル(好ましくはC
1~4アルキル、より好ましくはC
1~3アルキル、例えば、メチル)であり、
R
19は、水素又はC
1~6アルキル(好ましくはC
1~4アルキル、より好ましくはC
1~3アルキル、例えば、メチル)である。
【0056】
一実施形態では、R17及びR18は、両方とも水素であり、R19は、水素以外であり、例えば、R19は、C1~3アルキル、例えば、メチルである。
【0057】
別の実施形態では、R18は、水素であり、R17及びR19のそれぞれは、水素以外であり、例えば、R17は、任意選択的に置換されたフェニルであり、R19は、C1~6アルキル(例えば、メチル)である。
【0058】
本発明における使用のための化学発光部分の非限定的な例は、以下(式中、*は、リンカーLへの、又は直接ER標的化部分への結合点を示す)を含む。
【0059】
【0060】
小胞体を選択的に標的化することができることが知られている任意の薬剤を使用して、本明細書に記載のコンジュゲート中の「ER標的化部分」を提供してもよい。そのような薬剤は、典型的には、それらをER膜環境への分配に適合させるために本質的に疎水性である。本発明での使用に特に好適なのは、小胞体に局在化する能力に起因して、スルホンアミド剤である。このような薬剤は、1つ以上のスルホンアミド基を有する。典型的には、これらは1個のスルホンアミド基を含む。
【0061】
理解されるように、共有結合又はリンカーを介して化学発光部分(又は複数の化学発光部分)に結合するために、ER標的化部分は、場合によっては、親薬剤の「誘導体」であってもよい。例えば、これは、リンカーへの又は直接化学発光薬剤(又は複数の薬剤)へのいずれかの共有結合の形成に続いて1つ以上の末端原子又は基を欠いている可能性があり、したがって元の分子の「残基」と見なされ得る。任意の所与のER標的化部分に必要な「誘導体化」の特定の形態は、その構造に依存し、任意の熟練化学者によって容易に決定され得る。
【0062】
本発明における使用のためのスルホンアミドER標的化部分は、以下(式中、*は、リンカーLへの、又は直接化学発光部分への結合点を示す)を含み、
【0063】
【化6】
式中、
R
14は、C
1~6アルキル又は任意選択的に置換されたアリール基であり、
R
15は、水素又はC
1~6アルキルであり、
【0064】
【化7】
は、任意選択的に置換された含窒素複素環を表す。
【0065】
一実施形態では、R14は、C1~6アルキル、好ましくはC1~3アルキル、例えば、-CH3である。
【0066】
一実施形態では、R14は、任意選択的に置換されたアリール基である。例えば、R14は、任意選択的に置換されたフェニル又はナフチルであってもよい。
【0067】
R14が置換される場合、C1~3アルキル(例えば、メチル)、C1~3アルコキシ(例えば、メトキシ)、C1~3ハロアルキル(例えば、-CF3)、-OC1~3ハロアルキル(例えば、-OCF3)、シアノ、ニトロ、-NR’2(式中、各R’は、独立して、H又はC1~3アルキルである)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、-COR”(式中、R”は、H又はC1~3アルキルである)、及び-COOR”(式中、R”は、H又はC1~3アルキルである)からなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されてもよい。好ましい置換基は、C1~3アルキル(例えば、メチル)である。典型的には、1個又は2個の置換基、例えば、単一の置換基が存在してもよい。単一の置換基がフェニル環上に存在する場合、その置換基は、オルト、メタ又はパラ位にあってもよい。一実施形態では、置換基は、パラ位に存在する。例えば、メチル基は、フェニル環のパラ位に存在してもよい。
【0068】
一実施形態では、R14は、非置換アリール基、例えば、非置換フェニル又はナフチルである。
【0069】
一実施形態では、R15は、水素又は-CH3、例えば、水素である。
【0070】
一実施形態では、
【0071】
【化8】
は、ピペラジニル環を表す。これは、リンカーLに、又は環炭素を介して若しくは更なる環窒素原子を介して直接化学発光部分に連結されてもよいが、好ましくは、更なる環窒素原子を介して連結される。好ましい実施形態では、ER標的化部分は、以下のように表すことができ、
【0072】
【化9】
式中、
R
14は、本明細書で定義されるとおりであり、
*は、リンカーLへの、又は直接化学発光部分への結合点を示す。
【0073】
一実施形態では、ER標的化剤は、以下の構造のうちの1つを有する基であり、
【0074】
【化10】
式中、
R
15は、本明細書で定義されるとおりであり、
各R
16は、独立して、C
1~3アルキル(例えば、メチル)、C
1~3アルコキシ(例えば、メトキシ)又はハロゲン原子(例えば、Cl若しくはBr)を表し、
uは、0~5の整数、好ましくは1~3、例えば、1であり、
*は、リンカーLへの、又は直接化学発光部分への結合点を示す。
【0075】
本発明における使用のためのER標的化部分の非限定的な例は、以下(式中、*は、リンカーLへの、又は直接化学発光部分への結合点を示す)を含む。
【0076】
【0077】
上記の一般式(I)及び(II)において、リンカーLの正確な性質は、これが化学発光部分をER標的化部分(又は複数の部分)に連結するという目的の機能を果たし、したがって、化学発光部分の小胞体への標的化された送達を可能にする限り、本発明の性能にとって重要ではないと考えられる。リンカーは、剛性又は可撓性であり得、所望の標的部位においてインビボで切断可能であり得る(例えば、光切断可能であり得る)。一般的に、それは有機基を含む。
【0078】
連結基Lは、本質的に親水性又は疎水性であり得る。それは分岐(樹状を含む)鎖又は直鎖のいずれかであってもよいが、好ましくは直鎖である。連結基が分岐している場合、連結基は、例えば、2つ以上のER標的化部分を担持してもよい。連結基は、脂肪族及び/又は芳香族であってもよく、1つ以上のシクロアルキル環、複素環、アリール環、又はヘテロアリール環を含んでもよい。したがって、連結基は、本質的に脂肪族、(多)環式及び/又は(多環)芳香族であってもよい。
【0079】
リンカーの鎖長は異なってもよいが、一般に、これは、1~20個の原子(例えば、1~20個の炭素原子)、好ましくは2~15個、例えば、2~12個の原子を含む骨格を含み得る。場合によっては、リンカーの長さは、ER標的化部分に対するコンジュゲートの化学発光部分の正確な位置決めを調整するために変化させてもよい。
【0080】
リンカーLは、例えば、C1~3アルキル、-O(C1~3)アルキル、-OH、シクロアルキル基及びアリール基から選択される1つ以上の基によって任意選択的に置換されたアルキレン鎖(好ましくはC1~15アルキレン、例えば、C2~11アルキレン)を含んでもよく、アルキレン鎖の1つ以上の-CH2-基は、-O-、-CO-、-NR-(式中、Rは、H又はC1~6アルキル、好ましくはC1~3アルキル、例えば、メチルである)、シクロアルキル基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基から独立して選択される基によって置き換えられてもよい。一実施形態では、アルキレン鎖の-CH2-基は、このような基で置き換えられてもよい。例えば、リンカーLは、基-CO-であってもよい。
【0081】
好適なリンカー基は、当技術分野の当業者によって容易に決定され得る。好適なリンカーの例としては、任意選択的に置換されたアルキレン基、好ましくは非置換の直鎖アルキレン基、例えば、-C3H6-、-C4H8-、-C6H12-、-C8H16-、-C10H20-、及び-C11H22-が挙げられる。一実施形態では、-C3H6-及び-C4H8-などの短鎖アルキレン基が好ましい。
【0082】
アルキレン鎖の1つ以上の-CH2-基がある基によって置換されている場合、これらは、-O-若しくは-CO-基、又は複素環(例えば、ピペラジニレン基などの飽和複素環)、又はアリール環(例えば、フェニレン)のいずれかによって置き換えられてもよい。1つ以上の-CO-が存在するそのようなリンカーの例としては、-CO-、-CO-CH2-、-CO-C3H6、-CO-C5H10-、-CO-C6H12-、及び-CO-C10H20-が挙げられる。2つ以上の-O-基が存在する好適なリンカーの他の例は、オリゴ又はポリエチレングリコール基、好ましくは1~4個のエチレンオキシド単位、例えば、2又は4個のエチレンオキシド単位を含むポリエチレングリコール基を含む。
【0083】
特定の実施形態では、本発明で使用するための化学発光薬剤コンジュゲートは、式(III)の化合物、又はその薬学的に許容される塩であり、
【0084】
【化12】
式中、L
1は、直接結合又は本明細書に記載の任意のリンカーのいずれかであり、
B
1は、本明細書に記載の任意の小胞体標的化部分であり、
R
3は、水素、又はC
1~3アルキル(例えば、メチル)などのアルキル基であり、
各R
4は、C
1~6アルキル、及び-NR
5R
6から独立して選択され、
R
5及びR
6は、H及びC
1~6アルキルから、好ましくはH及びC
1~3アルキル(例えば、-CH
3)から独立して選択され、
pは、0~3の整数、好ましくは0、1又は2、例えば、0又は1である。
【0085】
式(III)の好ましい化合物は、式(IIIa)及び(IIIb)の以下の化合物を含み、
【0086】
【化13】
式中、L
1、B
1、R
3、R
4、及びpは、本明細書に定義されるとおりである。
【0087】
式(III)、(IIIa)及び(IIIb)において、L1は、好ましくは以下のうちの1つから選択され、
【0088】
【化14】
式中、aは、1~10の整数、好ましくは3~10であり、
bは、1~4の整数、例えば、2である。
【0089】
式(III)、(IIIa)及び(IIIb)の一実施形態では、L1は、基
【0090】
【0091】
式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の一実施形態では、B1は、以下の基のうちの1つであってもよく、
【0092】
【0093】
【化17】
は、本明細書で定義されているとおりである。
【0094】
特定の実施形態では、本発明で使用するための化学発光薬剤コンジュゲートは、式(IV)の化合物、又はその薬学的に許容される塩であり、
【0095】
【化18】
式中、L
2は、直接結合又は本明細書に記載の任意のリンカーのいずれかであり、
B
2は、本明細書に記載の任意の小胞体標的化部分であり、
各R
6は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、及びC
1~6アルキル(例えば、tert-ブチル)から独立して選択され、
qは、0~4の整数、好ましくは0又は2であり、
Zは、一価のアニオン、例えば、Cl、Br、I、又はCF
3OSO
2アニオンである。
【0096】
式(IV)の一実施形態では、L2は、以下の基のうちの1つを表し、
【0097】
【化19】
式中、aは、1~10の整数、好ましくは3、4又は5である。
【0098】
式(IV)の一実施形態では、L2は、基
【0099】
【0100】
式(IV)の一実施形態では、B2は、以下の基のうちの1つであってもよく、
【0101】
【0102】
【化22】
は、本明細書で定義されているとおりである。
【0103】
特定の実施形態では、本発明で使用するための化学発光薬剤コンジュゲートは、式(V)の化合物、又はその薬学的に許容される塩であり、
【0104】
【化23】
式中、L
3は、直接結合又は本明細書に記載の任意のリンカーのいずれかであり、
B
3は、本明細書に記載の任意の小胞体標的化部分であり、
各R
7は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、-CO
2R
8(式中、R
8は、水素又はC
1~6アルキルである)、シアノ、及びC
1~6アルキル(例えば、tert-Bu)から独立して選択され、
rは、0~5の整数、好ましくは0又は3であり、
Zは、一価のアニオン、例えば、Cl、Br、I、又はCF
3OSO
2アニオンである。
【0105】
式(V)において、L3は、好ましくはC1~10アルキレン、例えば、C1~6アルキレンである。
【0106】
式(V)の一実施形態では、B3は、以下の基のうちの1つであってもよく、
【0107】
【0108】
【化25】
は、本明細書で定義されているとおりである。
【0109】
特定の実施形態では、本発明で使用するための化学発光薬剤コンジュゲートは、式(VIa)、(VIb)の化合物、又はその薬学的に許容される塩であり、
【0110】
【化26】
式中、L
4は、直接結合又は本明細書に記載の任意のリンカーのいずれかであり、
A
1は、本明細書に記載の任意の化学発光部分である。
【0111】
式(VI)、(VIa)又は(VIb)において、L4は、以下から選択されてもよく、
【0112】
【化27】
式中、aは、1~10の整数、好ましくは3~10である。
【0113】
式(VI)、(VIa)又は(VIb)の一実施形態では、L4は、基
【0114】
【0115】
式(VI)、(VIa)又は(VIb)の一実施形態では、A1は、以下のいずれかから選択され、
【0116】
【化29】
式中、R
3は、水素、又はC
1~3アルキル(例えば、メチル)などのアルキル基であり、
各R
4は、C
1~6アルキル、及び-NR
5R
6から独立して選択され、
R
5及びR
6は、H及びC
1~6アルキルから、好ましくはH及びC
1~3アルキル(例えば、-CH
3)から独立して選択され、
pは、0~3の整数、好ましくは0、1又は2、例えば、0又は1であり、
Zは、一価のアニオン、例えば、Cl、Br、I、又はCF
3OSO
2アニオンであり、
各R
9は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、及びC
1~6アルキル(例えば、tert-Bu)から独立して選択され、
sは、0~4の整数、好ましくは0、2、又は3である。
【0117】
特定の実施形態では、本発明で使用するための化学発光薬剤コンジュゲートは、式(VII)の化合物、又はその薬学的に許容される塩であり、
【0118】
【化30】
式中、L
5は、直接結合又は本明細書に記載の任意のリンカーのいずれかであり、
B
4は、本明細書に記載の任意の小胞体標的化部分であり、
各R
10は、C
1~6アルキル(例えば、メチル)、及び-NR
11R
12から独立して選択され、
R
11及びR
12は、H及びC
1~6アルキルから、好ましくはH及びC
1~3アルキル(例えば、-CH
3)から独立して選択され、
tは、0~3の整数、好ましくは1又は2である。
【0119】
式(VII)の好ましい化合物は、以下の式(VIIa)の化合物を含み、
【0120】
【化31】
式中、L
5、B
4、R
11及びR
12は、本明細書に定義されるとおりであり、R
13は、H又はC
1~3アルキルである。
【0121】
式(VII)及び(VIIa)において、L5は、好ましくはC1~11アルキレン、より好ましくはC2~8アルキレン、例えば、プロピレンである。
【0122】
本明細書に記載の化学発光薬剤コンジュゲートは、当技術分野で既知の方法及び手順を使用して調製することができる。好適な方法は、国際公開第2019/243757号に記載された方法を含み、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明における使用のためのルミノール誘導体の調製のための方法は、Mikroulis et al.によってJ.Org.Chem.(https://doi.org/10.1021.acs.joc.1c00890を参照)に記載された方法を含み、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
化学発光薬剤を小胞体標的化部分に共有結合させるために使用され得る方法は、既知のカップリング技術を含む。使用される正確な方法は、化学発光薬剤、小胞体標的化部分、及びリンカー(存在する場合)の正確な性質、特に結合の形成に関与するペンダント官能基の性質に依存する。ペンダント官能基が結合パートナー上に既に存在する場合、これらは様々な部分を連結する際に使用され得る。必要に応じて、例えば、成分を結合するために使用され得る反応性官能基を含めるように、コンジュゲートの1つ以上の成分(すなわち、化学発光部分、リンカー、及びER標的化部分)を官能化してもよい。好適な反応性基としては、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、カルボニル、酸ハロゲン化物、第一級及び第二級アミン、ハロゲン化アリール及び擬ハロゲン化アリール、ハロゲン化アルキル及び擬ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル及び擬ハロゲン化アルケニル、末端アルキン、クリック可能な部分などが挙げられる。そのような官能基を導入するための方法は、当技術分野で周知である。
【0124】
化学発光薬剤を1つ以上のER標的化部分に共有結合させるために使用され得る方法の例は以下を含むが、これらに限定されない:アミド結合形成、エーテル結合形成、エステル結合形成、チオエステル結合形成、クロスカップリング反応、オレフィンメタセシス反応、芳香族求電子置換、クリック化学、求核置換反応など。
【0125】
本明細書に記載のコンジュゲートの調製において出発物質として使用するための化合物は、文献から既知であるか、又は市販され得る。代替的に、これらは、文献から既知の方法によって容易に得ることができる。本発明に従って使用するための化合物を調製する方法のより詳細な説明は、実施例に見出される。
【0126】
本明細書に記載の化学発光薬剤コンジュゲートは、それ自体が新規であり、本発明の更なる態様を形成する。例えば、本明細書に記載の技術のいずれかを使用して、1つ以上の化学発光薬剤を1つ以上のER標的化部分に連結する工程を含む化学発光薬剤コンジュゲートの調製方法は、本発明の更なる態様を形成する。
【0127】
PDTで使用するために、本明細書に記載のER標的化化学発光薬剤は、光増感剤又は光増感剤の前駆体と組み合わせて使用される。本発明の鍵は、化学発光薬剤が光増感剤を「活性化」できるようにするために、これらが細胞ER内で互いに近接しているべきであるということである。これらの薬剤は、PDTの方法において、患者に別々に、同時に、又は連続して投与するために個別に提供され得る。あるいは、これらは、ER標的化化学発光薬剤及び光増感剤(又は前駆体)の両方が存在する単一の製剤として提供され得る。そのような製剤は、本発明の一部を形成する。
【0128】
本発明で使用するために、任意の光増感剤(又は光増感剤前駆体)は、そのインビボ投与後に標的細胞の小胞体に蓄積して(又はERに移行して)、これが化学発光化合物に近接することを確実にすることができなければならない。例えば、これはERに局在する光増感剤又はその前駆体であり得る。
【0129】
小胞体を標的とすることができる光増感剤及び前駆体の例として、5-ALA及びその誘導体(ミトコンドリアからの移行後)、mTHPC、テモポルフィン、クロリンe6、フタロシアニン、アントラキノン及びその誘導体(例えば、ヒペリシン、ヒポクレリン[A、B]、セルコスポリン、カルホスチン、エルシノクロム[A、B、C])、及びそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。他のERに蓄積する光増感剤は、当技術分野で既知であり、これらもまた本発明で使用してもよい。
【0130】
他の既知の光増感剤及び前駆体は、所望の標的化特性を付与するための適切な修飾を条件として、本発明において使用され得る。例えば、これらは、ER標的化能力を有する好適なナノ担体内にカプセル化されてもよい。これらの実施形態では、より広い範囲の光増感剤を使用してもよく、PDTにおける使用に好適な任意の既知の光増感剤(又は前駆体)が使用され得ると想定される。好適な薬剤の範囲は、当技術分野で既知であり、例えば、5-アミノレブリン酸(5-ALA)及び5-ALAの誘導体(プロトポルフィリンIXの産生をもたらす)、ポルフィリン、任意選択的にスルホン化され得る金属化フタロシアニン(例えば、AlPcS)などのフタロシアニン、例えば、AlPcS2若しくはAlPcS2aなどのジ-スルホン化アルミニウムフタロシアニン、又はアルミニウムフタロシアニンテトラ-スルホネート(A1PcS4)、スルホン化テトラフェニルポルフィリン(例えば、TPPS2a、TPPS4、TPPS1及びTPPS2o)、テトラ(m-ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)(例えば、商品名Foscanで市販されているテモポルフィン)などのクロリン、バクテリオクロリン及びケトクロリンを含むクロリン誘導体、モノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)又はクロリンe6、ヘマトポルフィリン及びベンゾポルフィリンを含む天然ポルフィリン及び合成ポルフィリン、アントラキノン及びその誘導体(例えば、ヒペリシン、ヒポクレリン[A、B]、セルコスポリン、カルホスチン、エルシノクロム[A、B、C])が挙げられる。
【0131】
これらの光増感剤(又は前駆体)のいずれかの薬学的に許容される塩も使用してもよい。そのような塩は、薬学的に許容される有機又は無機の酸又は塩基との塩を含む。
【0132】
本発明で使用されてもよい5-ALAの誘導体は、インビボでPpIXを形成することができる5-ALAの任意の誘導体を含む。典型的には、そのような誘導体は、ヘムの生合成経路におけるPpIXの前駆体であり、したがって、投与後に標的部位でPpIXを産生することができる。PpIXの好適な前駆体には、5-ALAエステルなどの5-ALAプロドラッグが挙げられる。
【0133】
以下は、本発明で使用するためのとりわけ好ましい光増感剤及び前駆体である:5-ALA、mTHPC、テモポルフィン、クロリンe6、スルホン化アルミニウムフタロシアニン、アントラキノン及びそれらの誘導体(例えば、ヒペリシン、ヒポクレリン[A、B]、セルコスポリン、カルホスチン、エルシノクロム[A、B、C])、及びそれらの薬学的に許容される塩。本発明における使用に特に好ましいのは、セルコスポリン、5-ALA及びその薬学的に許容される誘導体(例えば、薬学的に許容される塩、又はメチルエステル若しくはヘキシルエステル)である。
【0134】
化学発光部分の特定の選択は、治療される腫瘍の性質を含む様々な要因に依存するが、当技術分野の当業者は容易に選択することができる。理解されるように、化学発光薬剤の選択はまた、それが放出する光の波長が、直接光吸収又はエネルギー移動機構のいずれかによる光増感剤の光活性化に好適であるべきであるため、PDT治療で使用される光増感剤にも依存する。
【0135】
好適な化学発光薬剤と光増感剤の「ペア」の例は、当業者によって容易に決定され得る。以下は、好適な非限定的な例として提供される。光増感剤が(例えば、5-ALAの投与後にインビボで生成される)PpIXである場合、ルミノール又はイソルミノールを化学発光薬剤として使用してもよい。光増感剤ヒペリシンが、化学発光薬剤ルシゲニンとの使用に特に好適であるのは、これらの部分が、特に金属キレート剤DTPA又はEDTAなどの結合剤の存在下で、非常に効率的な分子内エネルギー移動のためのπスタックを形成できるためである。ルミノールとmTHPCは、非常に効率的なエネルギー移動ペアである。他の効率的なエネルギー移動ペアとしては、ルミノール-エリスロシンB、ルミノール-ヒポクレリン、ルミノール-セルコスポリン、ルミノール-カルホスチン、ルミノール-エルシノクロムアクリジンエステル-ヒポクレリン、ルシゲニン-ヒポクレリン、アクリジンエステル-セルコスポリン、ルシゲニン-セルコスポリン、アクリジンエステル-ヒペリシン、及びルシゲニン-ヒペリシンが挙げられる。ヘマトポルフィリン誘導体(haematoporphyrin derivative、HPD)又はスルホン化アルミニウムフタロシアニンは、ルミノール又はルシゲニンのいずれかとともに使用してもよい。しかしながら、これらは潜在的な機能的ペアの単なる示唆的な例であり、他のものが当業者によって容易に決定され得る。
【0136】
本明細書に記載のER標的化化学発光薬剤は、光線力学療法の方法における使用を意図しており、光線力学療法に応答する体内の細胞又は組織の障害又は異常の治療に使用するのに好適である。そのような方法は、本明細書に記載の光増感剤又は光増感剤の前駆体の同時の、別々の、又は連続した使用を伴う。
【0137】
一般に、代謝的に活性な細胞は光線力学的治療に応答する。代謝的に活性な細胞の例は、細胞数の増加/細胞増殖の増加、細胞の異常な成熟及び分化、又は細胞の異常な増殖などの異常な成長を経験する細胞である。そのような成長パターンを特徴とする任意の状態は、本明細書に記載のPDT法に従って治療することができる。
【0138】
治療され得る障害又は異常としては、癌性増殖又は腫瘍、及びそれらの転移などの悪性癌状態及び前悪性癌状態、肉腫及び癌腫などの腫瘍、特に固形腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、腫瘍、特に皮膚の表面下に位置する腫瘍、すなわち内部癌又は深部癌の治療に特に好適である。
【0139】
本発明によるPDTは、2つの方法で適用してもよい。(i)従来のPDTにおけるような外部光源を必要としない、悪性状態又は前悪性状態(例えば、神経膠腫)のための処置として、又は(ii)再発又は疾患播種性のいずれかをもたらし得る、後に残された任意の活性新生物病巣を抑制するための反復可能で補助的な、術後の光化学治療として。治療は、反復治療セッションを通して生涯にわたって状態(例えば、脳癌)を管理及び抑制するために効果的に使用してもよい。原発性疾患の潜在性転移の治療も、事前の診断を必要とせずに実施され得る。
【0140】
本発明を使用して治療され得る腫瘍の例は、骨原性肉腫及び軟部組織肉腫を含む肉腫、癌腫、例えば、乳房、肺、大脳、膀胱、甲状腺、前立腺、結腸、直腸、膵臓、胃、肝臓、子宮、肝臓、腎臓、前立腺、子宮頸部及び卵巣の癌腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、神経芽細胞腫、黒色腫、骨髄腫、ウィルムス腫瘍、急性リンパ芽球性白血病及び急性骨髄芽球性白血病を含む白血病、星状細胞腫、神経膠腫及び網膜芽細胞腫、中皮腫である。しかしながら、本発明は、非侵襲的に到達することが困難である深部にある癌性病変の治療において特定の価値を見出す。神経膠腫(例えば、GMB)の治療は、本発明の好ましい態様を形成する。
【0141】
代謝的に活性な細胞の他の例は、炎症を起こした細胞である。したがって、関節リウマチなどの炎症性疾患もまた、本発明によるPDT法を使用して治療することができる。
【0142】
本明細書に記載のPDT法のいずれかで使用するために、ER標的化化学発光薬剤は、一般に、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物として提供される。そのような組成物は、本発明の更なる態様を形成する。これらはまた、選択された光増感剤(又は前駆体)を含み得るが、ほとんどの場合、光増感剤(又はその前駆体)は、患者への別個の投与のために異なる製剤として提供されることが想定される。
【0143】
本明細書に記載の医薬組成物は、当技術分野で周知の技術を使用して製剤化することができる。投与経路は、目的とする用途、特に治療される細胞又は組織の位置に依存する。典型的には、これらは全身投与され、したがって、例えば、皮内、皮下、腹腔内、静脈内若しくは腫瘍内注射によって、又は点滴による注入によって、非経口投与に適合した形態で提供され得る。好適な剤形には、コンジュゲート及び/又は光増感剤(又はその前駆体)を1つ以上の不活性担体又は賦形剤とともに含む懸濁液及び溶液が挙げられる。好適な担体には、生理食塩水、滅菌水、リン酸緩衝生理食塩水及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、組成物は、水又は生理食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水中の、水性懸濁液又は水溶液の形態で使用される。
【0144】
組成物は、乳化剤、懸濁剤、分散剤、粘度調整剤、可溶化剤、安定剤、緩衝剤、保存剤などの他の薬剤を更に含んでもよい。組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌され得る。
【0145】
一実施形態では、ER標的化化学発光薬剤は、静脈内又は腫瘍内注射に好適な水又は生理食塩水(又は任意の他の薬学的に関連する生体適合性ビヒクル)中の溶液の形態で提供される。これは、単回投与又は反復投与のいずれかで投与することができる。
【0146】
一実施形態では、化学発光薬剤コンジュゲートは、徐放性製剤の形態で投与することができる。好適な遅延放出型製剤は、当技術分野で既知であり、インビボで薬剤を連続的に徐放することができる任意の製剤を含む。好適な遅延放出型製剤の一例は、インビボでの持続放出を提供する注射可能なインプラントである。そのようなインプラントは、活性化合物のナノ粒子を含む生体適合性ポリマー及び生分解性ポリマーに基づくインサイチュ形成インプラントであり得る。これらは、化学発光薬剤の持続的な送達を提供して長期の発光を保証し、それにより、治療の最適化された治療効果を達成する。
【0147】
別の態様では、化学発光コンジュゲートは、生理学的温度で(すなわち、いったん体に送達されると)サーモゲルになる熱応答性製剤の形態で提供され得る。これらは、最大15時間、例えば、10~15時間の期間にわたってそれらの負荷を最適に放出するように製剤化することができる。温度応答性ポリマーの使用により、皮下注射に好適な、体温に応答してインサイチュ相転移を起こしてゲル化する、低粘度溶液の製剤化が可能になる。ゲルネットワークの熱硬化特性を最適化するために、様々なポリマー及びそのコポリマーを使用することができる。そのようなポリマー材料は、当技術分野で既知であり、かつ使用されており、例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、アルギン酸塩/ヒアルロン酸、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、及びポロキサマーが挙げられる。
【0148】
化学発光コンジュゲートを含有するナノ粒子及び/又はマイクロ粒子も、長期間、例えば、10~15時間にわたって活性物質の制御された連続的な放出をもたらすために提供され得る。そのような担体の例として、(i)ミセル担体、(ii)リポソーム、(iii)デンドリマー又はポリマーナノ担体、及び(iv)固体脂質ナノ粒子が挙げられる。任意のそのような粒子は、インサイチュで生成されるゲルネットワークにおいて活性物質を放出するためのリザーバを形成するように、本明細書に記載の熱応答性製剤に含まれ得る。
【0149】
本明細書に記載の組成物は、全身的に(例えば、経口的又は非経口的に)投与することができるか、あるいは、これらは、患部又はその近くで局所的に(例えば、局部的に)適用することができる。投与経路は、治療される疾患の重症度、性質、及び場所、並びに使用される光増感剤(又は前駆体)に依存する。全身投与することができる組成物には、プレーンな又はコーティングされた錠剤、カプセル、懸濁液及び溶液が挙げられる。局所的に(例えば、局部的に)投与することができる組成物には、ゲル、クリーム、軟膏、スプレー、ローション、及び当技術分野の他の従来の剤形のいずれかが挙げられる。クリーム、軟膏及びゲルは、好適な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加した水性又は油性基剤とともに製剤化することができる。
【0150】
典型的には、本明細書に記載の方法は、例えば、静脈内注射による、光増感剤を含む有効量の組成物の投与という最初の工程を含み得る。次に、光増感剤(又は前駆体)は、体の所望の標的領域に分布され、例えば、注射及び/又は点滴のいずれかによって静脈内に、ER標的化化学発光薬剤を投与する前に、活性光増感剤、例えば、PpIXのインサイチュ生成を可能にする。5-ALA投与後の細胞におけるPpIX生成の時間プロファイルは、数時間であり得(典型的には、これは投与後2~10時間の間にピークに達する場合がある)、したがってER標的化化学発光薬剤の送達を遅延させることが望ましい。これは、その投与を遅延させることによって、又は本明細書に記載される遅延放出製剤によって達成することができる。光増感剤の投与は、典型的には、ER標的化化学発光薬剤の投与の前に行われることが想定されるが、それにもかかわらず、これらの送達は、例えば、ER標的化化学発光薬剤が遅延放出製剤の形態(例えば、本明細書に記載のナノ粒子及び/又はマイクロ粒子担体系のいずれかの形態)で提供される場合、同時であり得る。
【0151】
例えば、患者は、最初に5-ALA注射を受けることができ、次に適切な時間枠で適切な治療域内で、ER標的化化学発光薬剤の2回目の注射を受けるか、又はこの薬剤を含有する点滴を必要な限り行う。この設定では、任意の治療後のモニタリングの対象となる必要性が最小限に抑えられる。
【0152】
本明細書に記載の組成物の有効用量、用量の数、及び投与の正確なタイミングは、ER標的化化学発光薬剤の性質、光増感剤(又は前駆体)、それらの投与様式(複数可)、治療される状態、患者などを含む様々な要因に依存し、それに応じて調節することができる。
【0153】
本発明の更なる態様は、患者の細胞又は組織の光線力学療法の方法に関し、当該方法は、当該細胞又は当該組織に、
(a)本明細書に記載の有効量の小胞体標的化化学発光薬剤と、それと同時に、別々に、若しくは連続して、有効量の光増感剤若しくは光増感剤前駆体と、を投与する工程を含むか、又は
(b)本明細書に記載の小胞体標的化化学発光薬剤と、光増感剤若しくは光増感剤前駆体を含む有効量の医薬組成物と、を投与する工程を含む。
【0154】
更なる態様において、本発明は、例えば、本明細書に記載のPDT法のいずれかにおける、光線力学療法の方法における同時の、別々の、又は連続した使用のために、本明細書に記載の小胞体標的化化学発光薬剤、及び光増感剤又は前駆体を含む製品を提供する。
【0155】
更に更なる態様では、本発明は、以下を含むキットを提供する:(i)本明細書に記載の小胞体標的化化学発光薬剤、別個に(ii)光増感剤又は光増感剤前駆体、並びに任意選択的に(iii)光線力学療法の方法における(i)及び(ii)の使用のための指示書。使用される場合、キットの活性成分(すなわち、(i)及び(ii))は、同時に、別々に、又は連続して投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0156】
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例及び添付の図面を参照して更に説明する。
【
図1】化合物DZ325+セルコスポリンに対するLN18細胞の細胞生存率のグラフである。
【
図2】化合物DZ325+セルコスポリンに対するM059K細胞の細胞生存率のグラフである。
【
図3】化合物EK297+セルコスポリン又は5-ALAに対するU87、T98G、LN18及びM059K細胞の細胞生存率のグラフである。
【実施例】
【0157】
実施例1-N-(3-((1,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロフタラジン-5-イル)アミノ)プロピル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド(DZ325)の調製
【0158】
【0159】
実験手順:
N-(3-ブロモプロピル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド2の合成:
トリエチルアミン(437mg、4.32mmol)を、乾燥ジクロロメタン(10mL)中の4-トルエンスルホニルクロリド(342mg、1.79mmol)及び3-ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩(453mg、2.07mmol)の冷却(0℃)撹拌懸濁液に滴下して添加した。得られた混合物をその温度で15分間撹拌し、次いでジクロロメタン(50mL)を添加し、2N HCl(2×40mL)及びブライン(40mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を蒸発させて2(471mg、90%)を得た。
【0160】
1H NMR(200MHz,CDCl3)δ:7.76(d,J=8.3Hz,1H,ArH-oS),7.31(d,J=8.5Hz,1H,ArH-oMe),5.01(bs,2H,NH),3.41(t,J=6.3Hz,1H,CH2Br),3.09(t,J=6.0Hz,1H,CH2N),2.43(s,3H,CH3),2.01(qui,J=6.4Hz,2H,CH2)。
【0161】
N-(3-((1,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロフタラジン-5-イル)アミノ)プロピル)-4-メチルベンゼンスルホンアミドDZ325の合成:
N-メチルピロリドン(2mL)中のルミノール(313mg、1.77mmol)及び臭化物2(514mg、1.76mmol)の溶液を120℃で2日間撹拌した。冷却後、混合物を撹拌した氷水(60mL)に注ぎ、15分間撹拌した。形成された沈殿物を濾過し、水(3×5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させた。残渣を5%THF/ジクロロメタンに溶解し、カラムクロマトグラフィ(5~10%THF/ジクロロメタン)により精製した。得られた粗製DZ325をジエチルエーテル及びヘキサンで粉砕して、DZ325を淡黄色粉末として得た(200mg、29%)。
【0162】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:11.39(bs,1H,CONH),11.14(bs,1H,CONH),8.97(bs,1H,ArNH),7.66(app d,J=8.3Hz,2H,H-2’),7.59(t,J=5.8Hz,1H,SNH),7.55(t,J=8.1Hz,1H,H-7),7.35(app dd,J=8.5,0.6Hz,2H,H-3’),6.96(d,J=7.3Hz,1H,H-8),6.76(dd,J=8.3,0.5Hz,1H,H-6),3.16(q,J=6.5Hz,2H,ArNCH2),2.85(q,J=6.8Hz,2H,SNCH2),2.35(s,3H,CH3),1.67(qui,J=6.8Hz,2H,CH2)。
【0163】
13C NMR(50MHz,DMSO-d6)δ:161.61,151.38,149.90,142.57,137.53,134.51,129.62,126.60,126.53,111.12,110.89,108.72,28.28,20.98,20.96。
【0164】
ES-MS C18H19N4O4Sのm/z[M-H]-:計算値387.1、実測値387.1。
【0165】
実施例2-9-((2,6-ジブロモ-4-(4-トシルピペラジン-1-カルボニル)フェノキシ)カルボニル)-10-メチルアクリジン-10-イウム=トリフルオロメタンスルホネート(EK297)の調製。
【0166】
【0167】
実験手順:
4-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾイル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル7の合成:
HOBt(259mg、1.69mmol)及びEDC(787mg、5.07mmol)を、乾燥テトラヒドロフラン(40mL)中の3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ安息香酸(1g、3.38mmol)及び1-Boc-ピペラジン(1.89g、10.14mmol)の溶液に順次添加し、得られた混合物をアルゴン下で7.5時間撹拌した。混合物を氷/水中にデカントし、1N HClで酸性化し、沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、フェノール7を白色固体として得た(1.35g、86%)。
【0168】
1H NMR(200MHz,CDCl3)δ:7.53(s,2H,ArH),6.32(bs,1H,OH),3.65-3.40(m,8H,ピペラジン),1.47(s,9H,tBu)。13C NMR(50MHz,CDCl3)δ:167.90,154.51,151.52,131.10,129.10,111.04,80.64,47.67(br),43.61(br),28.36。
【0169】
ES-HRMS C16H20Br2N2NaO4のm/z[M+Na]+:計算値486.9667、実測値486.9661。
【0170】
アクリジン-9-カルボン酸2,6-ジブロモ-4-(4-(tert-ブトキシカルボニル)ピペラジン-1-カルボニル)フェニル8の合成:
チオニルクロリド(3mL)中の9-アクリジンカルボン酸水和物(289mg、1.29mmol)の懸濁液をアルゴン下で5時間還流撹拌した。冷却後、過剰のチオニルクロリドを高真空下で除去し、乾燥ジクロロメタン(7mL)をアルゴン下で添加した。得られた溶液に、フェノール7(600mg、1.29mmol)、トリエチルアミン(0.36mL、2.58mmol)及びピリジン(0.052mL、0.65mmol)を順次添加し、全体を18時間撹拌した。次いで、ジクロロメタン(30mL)を添加し、相を分離し、水相をジクロロメタン(2×30mL)で洗浄した。有機相を合わせ、1N HCl(2×20mL)、NaHCO3水溶液(20mL)、及びブライン(20mL)で順次洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を蒸発させた。残渣のカラムクロマトグラフィ(10%MeCN/ジクロロメタン)により、8を黄色固体として得た(715mg、83%)。
【0171】
1H NMR(200MHz,CDCl3)δ:8.74(d,J=8.8Hz,2H,H-4),8.34(d,J=8.8Hz,2H,H-1),7.87(ddd,J=8.8,6.6,1.4Hz,2H,H-3),7.76(s,2H,H-3’),7.69(ddd,J=8.8,6.7,1.3Hz,2H,H-2),3.80-3.40(m,8H,ピペラジン),1.49(s,9H,tBu)。
【0172】
13C NMR(50MHz,CDCl3)δ:166.53,163.69,154.43,148.68,147.62,136.32,133.22,131.61,130.36,130.14,127.69,125.71,122.92,118.29,80.58,47.69(br),43.59(br),43.31(br),42.45(br),28.37。
【0173】
ES-HRMS C30H28Br2N3O5のm/z[M+H]+:計算値667.0375、実測値670.0370。
【0174】
4-(4-((アクリジン-9-カルボニル)オキシ)-3,5-ジブロモベンゾイル)ピペラジン-1-イウム=2,2,2-トリフルオロアセテート9の合成:
アクリジン8(162mg、0.24mmol)をトリフルオロ酢酸(2mL)及びクロロホルム(2mL)の混合物に添加し、溶液を4時間撹拌した。混合物を蒸発させると、塩9が白色固体として残った(165mg、定量的)。
【0175】
1H NMR(200MHz,MeOD-d4)δ:8.84(d,J=8.9Hz,2H,H-4),8.36(d,J=8.9Hz,2H,H-1),8.12(ddd,J=8.8,6.7,1.2Hz,2H,H-3),8.02(s,2H,H-3’),7.89(ddd,J=8.5,6.7,1.1Hz,2H,H-2),4.03-3.83(m,4H,ピペラジン),3.46-3.33(m,4H,ピペラジン)。
【0176】
19F NMR(188MHz,MeOD-d4)δ:-77.99。ES-HRMS C25H20Br2N3O3のm/z[M]+:計算値569.9845、実測値569.9899。
【0177】
アクリジン-9-カルボン酸2,6-ジブロモ-4-(4-トシルピペラジン-1-カルボニル)フェニル10の合成:
トシルクロリド(95mg、0.5mmol)を、アルゴン下0℃で、DMF(8mL)中の9(310mg、0.45mmol)及びDIPEA(0.25mL、1.41mmol)の撹拌溶液に添加し、反応混合物を3時間撹拌したままにした。水(30mL)を添加し、沈殿物を濾過し、水で洗浄し、真空中で乾燥させると、所望の生成物10が黄色固体として残った(235mg、73%)。
【0178】
1H NMR(200MHz,CDCl3)δ:8.70(d,J=8.8Hz,2H,H-4),8.32(d,J=8.7Hz,2H,H-1),7.84(ddd,J=8.7,6.7,1.1Hz,2H,H-3),7.71-7.60(m,6H,H-2,3’,2TOS),7.35(app d,J=8.1Hz,2H,H-3TOS),3.74(bs,4H,ピペラジン),3.05(bs,4H,ピペラジン),2.44(s,3H,CH3)。
【0179】
13C NMR(50MHz,CDCl3)δ:166.47,163.76,148.79,147.90,144.42,135.81,133.25,132.26,131.71,130.47,130.26,130.09,127.85,127.82,125.76,123.02,118.42,46.05,21.70。
【0180】
ES-HRMS C32H26Br2N3O5Sのm/z[M+H]+:計算値723.9939、実測値723.9998。
【0181】
9-((2,6-ジブロモ-4-(4-トシルピペラジン-1-カルボニル)フェノキシ)カルボニル)-10-メチルアクリジン-10-イウム=トリフルオロメタンスルホネートEK297の合成:
メチルトリフラート(36mg、0.22mmol)を、乾燥ジクロロメタン(7mL)中のアクリジンエステル10(160mg、0.22mmol)の溶液に添加し、アルゴン下で24時間撹拌した。揮発性物質を蒸発させ、残渣を冷EtOAc(4×5mL)で洗浄し(超音波処理/遠心分離)、DCM/トルエンで沈殿させ、ヘキサン(×2)で洗浄すると、アクリジニウムエステルEK297が黄色粉末として残った(48mg、25%)。
【0182】
1H NMR(200MHz,CD3CN)δ:8.98(d,J=9.0Hz,2H,H-4),8.72(d,J=9.1Hz,2H,H-1),8.50(ddd,J=9.4,6.9,1.3Hz,2H,H-3),8.14(dd,J=8.7,6.7Hz,2H,H-2),7.78(s,2H,H-3’),7.64(app d,J=8.3Hz,2H,H-2TOS),7.43(d,J=8.2Hz,2H,H-3TOS),4.90(s,3H,NCH3),3.95-3.27(m,4H,ピペラジン),3.00(app bs,4H,ピペラジン),2.44(s,3H,CH3)。
【0183】
13C NMR(50MHz,CD3CN)δ:166.59,162.47,146.98,145.37,143.24,140.59,138.75,133.49,132.88,130.85,130.64,129.15,128.75,124.42,120.31,118.27,46.72,40.96,21.56。19F NMR(188MHz,CD3CN)δ:-78.65。
【0184】
ES-HRMS C33H28Br2N3O5Sのm/z[M]+:計算値738.0100、実測値738.0099。
【0185】
実施例3-GBM細胞株におけるセルコスポリン又は5-ALA+DZ325又はEK297
化学発光化合物DZ325及びEK297の有効性を、ヒト多形性膠芽腫細胞株(U87、T98G、M059K及びLN-18)の細胞培養物において試験した。
【0186】
細胞を96ウェルプレートに播種し、5%CO2、加湿雰囲気中、37℃で一晩付着させた。続いて、細胞を、(i)光増感剤(セルコスポリン)又は光増感剤前駆体(光増感剤PpIXの生成のための5-ALA)、及び(ii)適切な濃度の化合物でインキュベートした。5-ALAの場合、細胞培養への5-ALAの導入は、十分なPpIX産生を確実にするために、化学発光化合物の導入の1時間前に行った。セルコスポリンの場合、化学発光化合物と同時に投与した。
【0187】
化学発光化合物をDMSO(又は1-メチル-2-ピロリドン)中の50mMストック溶液として調製し、細胞培地中でそれらの最終濃度に希釈した。セルコスポリンをDMSO中の4mM溶液として調製し、細胞培地で適切に希釈した。5-ALAをOptimem中でその最終濃度にした。ルミノール系化合物(DZ325)の場合、いくつかの場合において、CuをCuSO4の形態で最終濃度100μMにて細胞培地に添加した。
【0188】
細胞への化学発光化合物の導入から24時間後、細胞培地を除去し、標準的なMTT生存率アッセイの実施のために、0.5mg/mLのチアゾリルブルー塩を含有する100μLの培地と交換した。MTT含有培地を1~3時間インキュベートし、次いで除去し、100μLのDMSOと交換した。終点吸光度測定は、561nmで行った。培地のみの対照を100%細胞生存率対照として使用した。併用処理(光増感剤+化学発光化合物)の実験的細胞生存率を、光増感剤+化学発光化合物の理論的相加処理(以下のように計算)と比較した。
【0189】
細胞生存率(光増感剤のみ)%×細胞生存率(化学発光部分のみ)%
100%(対照)
【0190】
理論的に計算された相加値よりも有意に高い併用処置(実験)の生存率は、化学発光化合物と光増感剤との間の相乗効果の証拠と考えられる。
【0191】
その結果を
図1及び
図3に提示する。それぞれの図において、相乗作用の一例が強調されている。例えば、
図3において、3μMのセルコスポリン単独は、細胞生存率を80%に低下させたが、400μMのEK297は、毒性を74.5%に低下させた。計算細胞生存率は、以下の式に従って決定される(式中、「PS」=光増感剤、「CL」=化学発光薬剤)。
【0192】
【0193】
3μMセルコスポリン+400μM EK297について計算細胞生存率は、59.5%であるが、対応する細胞生存率の実験値は、21.5%であることが見出された。これは、EK297とセルコスポリンとの間の細胞毒性相乗作用を示唆する。DZ325を使用した場合の
図1及び
図2に示される相乗作用の例は、同じ方法で計算される。
【国際調査報告】