(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】発光電気化学セル、セキュリティ要素、セキュリティシステム、動作方法および製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/135 20230101AFI20241001BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20241001BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20241001BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20241001BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20241001BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20241001BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20241001BHJP
H10K 50/805 20230101ALI20241001BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20241001BHJP
B42D 25/24 20140101ALI20241001BHJP
B42D 25/29 20140101ALI20241001BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20241001BHJP
H10K 102/10 20230101ALN20241001BHJP
【FI】
H10K50/135
H10K50/115
H10K85/50
H10K50/12
H10K71/20
H10K50/84
H10K77/10
H10K50/805
G01N21/64 Z
B42D25/24
B42D25/29
H05B33/14 Z
H10K102:10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541593
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 SE2022050818
(87)【国際公開番号】W WO2023043361
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524107333
【氏名又は名称】ラーセン、クリスチャン
(71)【出願人】
【識別番号】524107344
【氏名又は名称】サンドストローム、アンドレアス
(71)【出願人】
【識別番号】524107355
【氏名又は名称】タン、シ
(71)【出願人】
【識別番号】524107366
【氏名又は名称】スタフシェデ、パトリック
(71)【出願人】
【識別番号】524107377
【氏名又は名称】エドマン、ルディヴィグ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】サンドストローム、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】タン、シ
(72)【発明者】
【氏名】スタフシェデ、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】エドマン、ルディヴィグ
【テーマコード(参考)】
2C005
2G043
3K107
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA03
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB10
2C005HB20
2C005JB40
2C005LB60
2G043AA04
2G043EA01
2G043EA02
2G043FA06
2G043JA03
2G043LA03
3K107AA01
3K107AA05
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3K107DD57
3K107DD59
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3K107DD70
3K107DD89
3K107DD95
3K107DD96
3K107EE57
3K107FF15
(57)【要約】
発光電気化学セル(1、1’、1’’、1’’’)は、基板(10)と、第1の電極(11)と、第1の電極(11)と接し、発光層が視覚的に区別可能であることによって作られる第1の2Dパターンを提供する発光層(13)と、第2の電極(14)とを備える。発光層(13)は、フォトルミネッセンスに対して不活性である第1の部分(131a、131b;132a、132b)と、フォトルミネッセンスに対して活性である発光層の第2の部分(133)とで構成される第2の2Dパターンを提供し、第3の2Dパターンは、第1および第2の電極(11、14)が発光層(13)の第2の部分(133)と重なり電気的に接触する、エレクトロルミネッセンスに対して活性である領域によって提供される。また、セキュリティ要素、セキュリティシステム、および発光電気化学セル(1、1’、1’’、1’’’)を動作させる方法および製造する方法も開示される。
【選択図】
図10a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)と、
第1の電極(11)と、
前記第1の電極(11)と接し、第1の2Dパターンを提供する発光層(13)であって、前記第1の2Dパターンは、前記発光層が視覚的に区別可能であることによって作られる、発光層(13)と、
第2の電極(14)と
を備える発光電気化学セル(1、1’、1’’、1’’’)であって、
前記発光層(13)は、フォトルミネッセンスに対して不活性である第1の部分(131a、131b;132a、132b)と、フォトルミネッセンスに対して活性である前記発光層の第2の部分(133)とで構成される第2の2Dパターンを提供し、
第3の2Dパターンは、前記第1および第2の電極(11、14)が前記発光層(13)の前記第2の部分(133)と重なり電気的に接触する、エレクトロルミネッセンスに対して活性である領域によって提供される、発光電気化学セル。
【請求項2】
前記発光電気化学セルは、少なくとも前記第2の部分(133)が光学的に励起されてフォトルミネッセンスになった場合に前記第2の2Dパターンが視覚的に区別可能であるように構成される、請求項1に記載の発光電気化学セル。
【請求項3】
前記発光電気化学セルは、前記電極(11、14)間に電位が印加された場合に前記第3の2Dパターンが視覚的に区別可能であるように構成され、
前記電極(11、14)間への前記電位の印加により、前記領域の前記フォトルミネッセンスは少なくとも部分的に消光され、
前記電位が除去され、前記第2の2Dパターンの少なくとも前記第2の部分(133)が励起されてフォトルミネッセンスになった後、第4の2Dパターンが視覚的に区別可能である、請求項1または2に記載の発光電気化学セル。
【請求項4】
前記発光電気化学セルは、前記第2の2Dパターンの少なくとも第2の部分のフォトルミネッセンスへの励起によって、前記電気的動作後の前記第4の2Dパターンから前記第2の2Dパターンへの時間的遷移が検出可能であるように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光電気化学セル。
【請求項5】
前記発光層(13)と前記電極(11、14)の1つとの間に選択的に提供される絶縁層(12a、12b)をさらに備え、前記第3の2Dパターンが前記絶縁層(12a、12b)によって少なくとも部分的に決定されるようにする、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光電気化学セル。
【請求項6】
前記絶縁層(12a、12b)は、ポリマ(たとえばエポキシ、アクリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、セラミック、およびガラス(たとえばSiO
2、Al
2O
3など)から成るグループから選択された材料で形成される、請求項5に記載の発光電気化学セル。
【請求項7】
前記発光層(13)は、1または複数の有機および/または無機半導体と1または複数の可動イオン源との混合物を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の発光電気化学セル。
【請求項8】
前記有機半導体は、非イオン性およびイオン性遷移金属錯体、共役ポリマ、共役小分子、有機、炭素、およびペロブスカイト量子ドット、および熱活性化遅延蛍光を特徴とする様々な種類の特殊エミッタから成るグループから選択され、または前記無機半導体は、無機量子ドットおよびペロブスカイトから成るグループから選択され、前記可動イオンは、イオン溶解化合物に溶解した塩およびイオン液体から成るグループから選択される、請求項7に記載の発光電気化学セル。
【請求項9】
前記発光層(13)に界面活性剤が含まれる、請求項7または8に記載の発光電気化学セル。
【請求項10】
前記基板(10)は、ガラス(たとえばフロートガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、SiO
2、Al
2O
3など)、ポリマ(たとえばPET、ポリカーボネート、PENなど)、パルプ系材料(たとえば紙、ボール紙など)、金属材料および金属メッシュ(たとえばAl、Ag、Cu、Niなど)、および、防湿および酸素バリア材料から成るグループから選択された1または複数の材料で形成される、請求項1~9のいずれか1項に記載の発光電気化学セル。
【請求項11】
前記電極(11、14)の少なくとも1つは、フィルム、焼結(ナノ)粒子、(ナノ)ワイヤ、薄片、またはワイヤメッシュの形態の、たとえばAl、Ag、Cu、およびNiなどの金属、たとえばZnO、TiO
2、ITO、およびFTOなどのドープ無機半導体および原始無機半導体、たとえばPEDOT:PSSなどのドープ有機半導体および原始有機半導体、および、たとえばポリエチレンイミン、ポリスチレン、PMMA、およびエポキシなどのポリマから成るグループから選択された1または複数の組み合わせの材料で形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の発光電気化学セル。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の発光電気化学セルと、前記発光電気化学セル(1、1’、1’’、1’’’)を選択的に活性化させるために前記第1および第2の電極(11、14)に動作可能に結合された電源(115)とを備えるセキュリティ要素(110)。
【請求項13】
前記電源(115)は、たとえばキャパシタまたはバッテリなどの蓄電器、たとえば誘導アンテナ、太陽電池などの発電機、および任意選択的に整流器を備えるグループから選択される、請求項12に記載のセキュリティ要素(110)。
【請求項14】
請求項12または13に記載のセキュリティ要素(110)と、
前記発光層(13)にフォトルミネッセンスをもたらすための波長範囲の光を供給するように構成された励起光源(5)と
を備えるセキュリティシステム(100)。
【請求項15】
少なくとも1つの画像捕捉デバイス(6)と、
前記セキュリティ要素の発光層領域の少なくとも一部を表す画像である、前記画像捕捉デバイス(6)からのデータを受信し、
前記セキュリティ要素(110)の真正性を決定するために前記データを処理する
ように構成された少なくとも1つの処理デバイス(4)と
をさらに備える、請求項14に記載のセキュリティシステム。
【請求項16】
前記発光電気化学セルの少なくとも一部の発光スペクトルおよび/または反射スペクトルを捕捉するために構成された分光計をさらに備える、請求項15に記載のセキュリティシステム。
【請求項17】
基板(10)と、
第1の電極(11)と、
前記第1の電極(11)と接し、第1の2Dパターンを提供する発光層(13)であって、前記第1の2Dパターンは、前記発光層が視覚的に区別可能であることによって作られる、発光層(13)と、
第2の電極(14)と
を備え、
前記発光層(13)は、フォトルミネッセンスに対して不活性である第1の部分(131a、131b;132a、132b)と、フォトルミネッセンスに対して活性である前記発光層の第2の部分(133)とで構成される第2の2Dパターンを提供し、
第3の2Dパターンは、前記第1および第2の電極(11、14)が前記発光層の前記第2の部分と重なり電気的に接触する、エレクトロルミネッセンスに対して活性である領域によって提供される発光電気化学セルを動作させる方法であって、
前記第1の2Dパターンのみが視覚的に区別可能である前記発光電気化学セルを提供することと、
前記発光電気化学セル(1’)を第1の励起光に露光させることにより、前記第2の2Dパターンが視覚的に区別可能になるように前記発光層の前記第2の部分(133)にフォトルミネッセンスを供給させることと、
前記第3の2Dパターンが視覚的に区別可能になるように、前記電極(11、14)間に電位を印加することによって前記発光層(13)にエレクトロルミネッセンスが生じるように前記発光電気化学セルを電気的に動作させることと
を備える方法。
【請求項18】
前記発光電気化学セル(1’’)の前記電気的動作を停止することと、
前記電気的動作に続き、前記第2の2Dパターンおよび前記第3の2Dパターンの反転に対応する第4の2Dパターンが視覚的に区別可能になるように、前記発光電気化学セル(1’’’)を第2の励起光に露光させることと
をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記発光電気化学セルの前記第2の励起光への前記露光中、前記発光電気化学セル(1’’’)を表す第4の画像を捕捉することをさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記発光電気化学セルの前記第2の励起光への前記露光中、前記発光電気化学セル(1’’’)の少なくとも一部からフォトルミネッセンスを表す第4のスペクトルデータを捕捉することをさらに備える、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記電気的動作は、前記領域の前記PL容量を可逆的に消すことを備える、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記電気的動作は、前記領域の前記PL容量を永続的に消すことを備える、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記発光電気化学セルが少なくとも非励起光に露光されている間かつ前記発光電気化学セルの前記第1の励起光への前記露光前、前記発光電気化学セルを表す第1の画像を捕捉することと、前記発光電気化学セルの前記第1の励起光への前記露光中、前記発光電気化学セルを表す第2の画像を捕捉することをさらに備える、請求項17~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1および/または第2の画像を捕捉することは、前記発光電気化学セルの前記第1の励起光への前記露光中、前記発光電気化学セルの少なくとも一部からの発光を表す第1のスペクトルデータおよび/または第2のスペクトルデータを捕捉することを備える、請求項17~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記発光電気化学セルの前記第1の励起光への前記露光の直後、少なくとも1つの発光強度過渡信号を捕捉することにより、高速で減衰する蛍光と比較的緩慢に減衰する燐光との区別を可能にすることをさらに備える、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記エレクトロルミネッセンス中に前記発光電気化学セルを表す第3の画像を捕捉することをさらに備える、請求項17~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記エレクトロルミネッセンス中に前記発光電気化学セルの少なくとも一部からの発光を表す第3のスペクトルデータを捕捉することをさらに備える、請求項17~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記電気的動作は、前記発光電気化学セルの前記第1の励起光への前記露光の後に行われる、請求項17~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記電気的動作は、前記発光電気化学セルの前記第1の励起光への前記露光の前に行われる、請求項17~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記発光電気化学セルの前記第2の励起光への前記露光中、異なる時点において、前記発光電気化学セルからの前記フォトルミネッセンスを表す少なくとも2つの画像を捕捉することをさらに備える、請求項17~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記時点は、前記電気化学的ドーピングの消光からフォトルミネッセンスが回復する回復段階中に生じる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
スペクトルデータは、前記フォトルミネッセンスが回復する回復段階中の異なる時点における前記発光電気化学セルを表す画像の少なくともいくつかに関して捕捉される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
発光電気化学セルを製造する方法であって、
基板(10)を提供することと、
前記基板(10)上に第1の電極(11)を堆積させることと、
発光層が視覚的に区別可能であることによって構成される第1の2Dパターンを提供するために、前記第1の電極(11)と接触し、少なくとも部分的に重なる発光層(13)を堆積させることと、
フォトルミネッセンスに対して不活性である第1の部分(131a、131b;132a、132b)と、フォトルミネッセンスに対して活性である前記発光層(13)の第2の部分(133)とで構成される第2の2Dパターンを提供することと、
エレクトロルミネッセンスに対して活性である領域を形成するために、前記発光層と接触し、少なくとも部分的に重なり、前記第1の電極と少なくとも部分的に重なる第2の電極(14)を堆積させることと
を備える方法。
【請求項34】
前記第2の2Dパターンを提供することは、前記堆積された発光層(13)の一部(131a、131b)を選択的に不活性化することによって前記発光層の不活性化部分を提供することを備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の2Dパターンを提供することは、フォトルミネッセンスに対する不活性材料を選択的に堆積させることによって不活性化部分(132a、132b)を提供することを備える、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記電極(11、14)は、第3の2Dパターンに従って、前記発光層(13)のフォトルミネッセンスが活性である部分との重なりおよび電気的接触を有するように選択的に堆積される、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記活性材料層(13)と前記電極(11、14)の1つとの間に少なくとも1つの絶縁層(12a、12b)を選択的に堆積させることをさらに備え、前記絶縁層(12a、12b)は、好適には第3の2Dパターンに従って選択的に堆積される、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光電気化学セル、そのような発光電気化学セルを備えるセキュリティ要素、そのようなセキュリティ要素を備えるセキュリティシステム、発光電気化学セルを動作させる方法、および発光電気化学セルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
US9592701には、1または複数の発光素子が活性化されると光を放射するように配置されており、そのような素子の各々が自発光性で電気作動型の表示素子で形成されている、多層可撓性フィルム体を備えるセキュリティ要素が開示されている。
【0003】
そのようなセキュリティ要素は、真正性を示すために、銀行券、たとえばパスポートなどの身分証明書、製品ラベル、製品パッケージなどを含む様々な種類の文書に貼り付けられ得る。
【0004】
US9592701において、発光素子、たとえば発光電気化学セルが形成され得ることが開示されている。
【0005】
発光電気化学セル(以下、「LEC」と称する)およびそれらの製造および動作方法は、たとえばWO2010085180A1、WO2011053236A1、WO2015144204A1、WO2014064298A1、WO2017088901A1、およびWO2018133930A1によって知られている。
【0006】
このように、LECは、エレクトロルミネッセンスを通して光を発することにより、様々な印刷技術によって非常に低コストで製造することができ、比較的低い電圧で活性化することができるデバイスにおいて、発光の電気活性化2Dパターンを提供することを可能にする。本文脈において、2Dパターンとは、3次元でパターンを提供する3Dパターンとは異なり、2次元を有するパターンである。
【0007】
改善されたセキュリティ要素への要望が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、異なる条件下で異なるパターンを生成することが可能である点で、複製が困難な改善されたデバイスを提供することである。特定の目的は、改善されたセキュリティ要素、特に、動作が堅牢かつユーザに使い易いものでありながら比較的低コストで製造することが可能な、高いレベルの安全性を有するセキュリティ要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、添付の独立請求項によって定義され、実施形態は、従属請求項、以下の説明、および図面に記載される。
【0010】
第1の態様によると、基板と、第1の電極と、第1の電極と接し、発光層が視覚的に区別可能であることによって作られる第1の2Dパターンを提供する発光層と、第2の電極とを備える発光電気化学セルが提供される。発光層は、フォトルミネッセンス(「PL」)に対して不活性である第1の部分と、フォトルミネッセンスに対して活性である発光層の第2の部分とで構成される第2の2Dパターンを提供する。第3の2Dパターンは、第1および第2の電極が発光層の第2の部分と重なり電気的に接触する、エレクトロルミネッセンスに対して活性である領域によって提供される。
【0011】
「視覚的に区別可能」という用語は、発光電気化学セルが貼り付けられる基板および/または構成要素または物品のその他の部分から視覚的に区別できることを意味する。第1の2Dパターンは、主に、特に全体的に、入射照明光の反射によって区別可能であってよい。
【0012】
発光層は、通常の光条件下で、および/または特定の波長を有する光を受けた場合、人間の目および/または画像センサに対して視覚的に区別可能であってよい。
【0013】
第1および第2の電極は、発光層を少なくとも部分的に間に挟んでよい。
【0014】
あるいは、電極および発光層は、平面基板上に横並び配置で配置され得る。
【0015】
電極の少なくとも1つは、透明であってよい。
【0016】
フォトルミネッセンスに対して不活性である第1の部分は、発光層自体を現場で選択的に不活性化することによって形成され得る。あるいは、または補足として、第1の部分は、フォトルミネッセンスを示す能力を有さない材料、または発光層と同じ材料であるが堆積前に不活性化されている材料の選択的な堆積によって形成され得る。
【0017】
さらに留意点として、第1の部分は、フォトルミネッセンスに対して様々な程度で不活性化されてよい。すなわち、不活性化部分は、第2の部分より少ない程度のフォトルミネッセンスを示してよい。また、パターンが、完全なフォトルミネッセンスと、部分的なフォトルミネッセンスと、フォトルミネッセンスなしとの間で段階的な遷移を備え得るように、異なる程度に不活性化される第1の部分を提供することが可能である。
【0018】
発光層は、たとえば反射色、フォトルミネッセンス(蛍光または燐光)、またはエレクトロルミネッセンス(「EL」)の点で互いを区別可能にする異なる特性を有し得る複数の部分を備えてよい。したがって、発光層は、いくつかのステップで堆積されてよく、各ステップは、異なる特性を有する部分の堆積を含んでよい。あるいは、それらの部分は、カラーインクジェットプリンタで可能であるように、同時に堆積されてもよい。
【0019】
発光層がPLに対して選択的に不活性化されるということは、光による励起の後、発光する能力を部分的または完全に失うように改変されることを意味する。
【0020】
よって、発光層は、PL活性部分とPL不活性化部分とで構成され得る。
【0021】
そのようなLECにおいて、第1の2Dパターンは、任意の通常照明環境で検出され得るが、第2の2Dパターンは、たとえばUV光への露光など、発光層の光誘発励起によって検出され得る。
【0022】
したがって、今までのところ、このLECは2つの異なるパターンを提供することができる。
【0023】
第3の2Dパターンは、さらに、電極の重なりおよび発光層のPL活性部分との電気的接触によって画定される、発光層のEL活性部分を提供する。電気的動作中、第3のパターンのPL容量は、電気化学的ドーピングによって少なくとも部分的に消される。この結果、LECの電気的動作後の改変されたPLパターンは、電気的動作前とは異なっている。
【0024】
したがって、第3の2Dパターンは、発光層の一部にELが生じるようなデバイスの電気的動作時に可視であり、第4の2Dパターンは、LECが電気的に動作した直後、LECが再び励起光を受けた場合、第2の2Dパターンと実質的に第3の2Dパターンの反転との組み合わせによって形成される。
【0025】
LECが、電気的動作の直後に定期的な時間間隔で励起光を受けると、電気化学的ドーピングが緩和し、同時に第3の2Dパターンによって画定された発光層のPL損失が回復するのに伴い、第4の2Dパターンは回復段階中に第2の2Dパターンに段階的に戻ることが観察される。
【0026】
あるいは、PL容量が永続的に破壊され、不可逆的であるように、LECを電気的に動作させることが可能である。そのような場合も、1回の動作サイクル中に4つの異なるパターンを区別することが可能である。
【0027】
発光電気化学セルは、少なくとも第2の部分が光学的に励起されてフォトルミネッセンスになった場合に第2の2Dパターンが視覚的に区別可能であるように構成され得る。
【0028】
発光電気化学セルは、電極間に電位が印加された場合に第3の2Dパターンが視覚的に区別可能であるように構成されてよく、電位が除去されて第2の2Dパターンの少なくとも第2の部分が励起されてフォトルミネッセンスになった後、第4の2Dパターンが視覚的に区別可能であるように、電極間への電位の印加により、上記領域のフォトルミネッセンスは少なくとも部分的に消光される。
【0029】
発光電気化学セルは、第2の2Dパターンの少なくとも第2の部分のフォトルミネッセンスへの励起によって、電気的動作後の第4の2Dパターンから第2の2Dパターンへの時間的遷移が検出可能であるように構成され得る。
【0030】
発光電気化学セルは、第3の2Dパターンが絶縁層によって少なくとも部分的に決定されるように、発光層と電極の1つとの間に選択的に提供される絶縁層をさらに備えてよい。
【0031】
したがって、電極を選択的にパターン化することへの代替または追加として、発光層から電極の1つを分離する絶縁材料の層を選択的にパターン化することにより、第3の2Dパターンを提供し、その結果、第4の2Dパターンを提供することが可能である。
【0032】
絶縁層は、ポリマ(たとえばエポキシ、アクリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、セラミック、およびガラス(たとえばSiO2、Al2O3など)から成るグループから選択された材料で形成され得る。
【0033】
発光層は、1または複数の有機および/または無機半導体と1または複数の可動イオン源との混合物を備えてよい。有機半導体は、非イオン性およびイオン性遷移金属錯体、共役ポリマ、共役小分子、有機、炭素、およびペロブスカイト量子ドット、および熱活性化遅延蛍光を特徴とする様々な種類の特殊エミッタから成るグループから選択されてよく、無機半導体は、無機量子ドットおよびペロブスカイトから成るグループから選択されてよく、可動イオンは、イオン溶解化合物に溶解した塩およびイオン液体から成るグループから選択され得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、発光層に界面活性剤が含まれ得る。
【0035】
基板は、ガラス(たとえばフロートガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、SiO2、Al2O3など)、ポリマ(たとえばPET、ポリカーボネート、PENなど)、パルプ系材料(たとえば紙、ボール紙など)、金属材料および金属メッシュ(たとえばAl、Ag、Cu、Niなど)、および、防湿および酸素バリア材料から成るグループから選択された1または複数の材料で形成され得る。
【0036】
電極の少なくとも1つは、フィルム、焼結(ナノ)粒子、(ナノ)ワイヤ、薄片、またはワイヤメッシュの形態の、たとえばAl、Ag、Cu、およびNiなどの金属、たとえばZnO、TiO2、ITO、およびFTOなどのドープ無機半導体および原始無機半導体、たとえばPEDOT:PSSなどのドープ有機半導体および原始有機半導体、および、たとえばポリエチレンイミン、ポリスチレン、PMMA、およびエポキシなどのポリマから成るグループから選択された1または複数の組み合わせの材料で形成され得る。
【0037】
第2の態様によると、上述したような発光電気化学セルと、発光電気化学セルを選択的に活性化させるために第1および第2の電極に動作可能に結合された電源とを備えるセキュリティ要素が提供される。
【0038】
電源は、LECに給電するためにバッテリまたはキャパシタが使用される場合、セキュリティ要素と一体化されてよく、あるいは、外部電源に一時的に接続するための電力インタフェースの形態で提供されてもよい。したがって、電源は、LECが外部電力を受け取り得るように、電源端子および/または誘導アンテナを備えてよい。
【0039】
セキュリティ要素は、文書、ラベル、たとえばパスポート、運転免許証などの身分証明デバイス、パッケージ、または製品などであるがこれらに限定されない、認証すべき物品に貼り付けられ得る。
【0040】
セキュリティ要素において、電源は、たとえばキャパシタまたはバッテリなどの蓄電器、たとえば誘導アンテナまたは太陽電池などの発電機、および任意選択的に整流器を備えるグループから選択され得る。
【0041】
第3の態様によると、上述したセキュリティ要素と、発光層にフォトルミネッセンスをもたらすための波長範囲の光を供給するように構成された励起光源とを備えるセキュリティシステムが提供される。
【0042】
セキュリティシステムは、少なくとも1つの画像捕捉デバイスと、少なくとも1つの処理デバイスとをさらに備えてよい。処理デバイスは、セキュリティ要素の発光層領域の少なくとも一部を表す画像である、画像捕捉デバイスからのデータを受信し、セキュリティ要素の真正性を決定するためにデータを処理するように構成され得る。
【0043】
画像捕捉デバイスは、パターン画像を捕捉するため、および/またはハイパースペクトル画像を捕捉するために構成されたカメラであってよい。画像捕捉デバイスは、分光計を備えてよく、または分光計の機能を行ってよい。
【0044】
セキュリティシステムは、発光電気化学セルの少なくとも一部の発光スペクトルおよび/または反射スペクトルを捕捉するために構成された分光計をさらに備えてよい。
【0045】
第4の態様によると、発光電気化学セルを動作させる方法が提供され、発光電気化学セルは、基板と、第1の電極と、第1の電極と接し、発光層が視覚的に区別可能であることによって作られる第1の2Dパターンを提供する発光層と、第2の電極とを備え、発光層は、フォトルミネッセンスに対して不活性である第1の部分と、フォトルミネッセンスに対して活性である発光層の第2の部分とで構成される第2の2Dパターンを提供し、第3の2Dパターンは、第1および第2の電極が発光層の第2の部分と重なり電気的に接触する、エレクトロルミネッセンスに対して活性である領域によって提供される。この方法は、第1の2Dパターンのみが視覚的に区別可能である発光電気化学セルを提供することと、発光電気化学セルを第1の励起光に露光させることにより、第2の2Dパターンが視覚的に区別可能になるように発光層の第2の部分にフォトルミネッセンスを供給させることと、第3の2Dパターンが視覚的に区別可能になるように、電極間に電位を印加することによって上記発光層にエレクトロルミネッセンスが生じるように発光電気化学セルを電気的に動作させることとを備える。
【0046】
この方法は、発光電気化学セルの電気的動作を停止することと、上記電気的動作に続き、第2の2Dパターンおよび第3の2Dパターンの反転に対応する第4の2Dパターンが視覚的に区別可能になるように、発光電気化学セルを第2の励起光に露光させることとをさらに備えてよい。
【0047】
この方法は、発光電気化学セルの上記第2の励起光への上記露光中、発光電気化学セルを表す第4の画像を捕捉することをさらに備えてよい。
【0048】
第4の画像は、処理デバイスによって格納され、送信され、または瞬時に受信されてよく、たとえば参照マスク、参照画像、または参照特徴などの1または複数の所定の基準との比較を含み得る認証処理を受けてよい。
【0049】
この方法は、発光電気化学セルの上記第2の励起光への上記露光中、発光電気化学セルの少なくとも一部からフォトルミネッセンスを表す第4のスペクトルデータを捕捉することをさらに備えてよい。
【0050】
第4のスペクトルデータは、処理デバイスによって格納され、送信され、または瞬時に受信されてよく、たとえば参照マスク、参照画像、または参照特徴などの1または複数の所定の基準との比較を含み得る認証処理を受けてよい。
【0051】
LECは、第4の2Dパターンから第2の2DパターンへのPL回復遷移を視覚化するために、電気的動作の後、励起光を受けてよい。励起光は、発光層のPLの回復が強度画像および/またはスペクトルデータとして記録され得るように、パルスとして提供され得る。したがって、回復段階中のPL挙動が追跡され得る。
【0052】
この方法において、電気的動作は、領域のPL容量を可逆的に消すことを備えてよい。
【0053】
あるいは、電気的動作は、領域のPL容量を永続的に消すことを備えてよい。
【0054】
この方法は、発光電気化学セルが少なくとも非励起光に露光されている間かつ発光電気化学セルの第1の励起光への上記露光前、発光電気化学セルを表す第1の画像を捕捉することと、発光電気化学セルの第1の励起光への上記露光中、発光電気化学セルを表す第2の画像を捕捉することをさらに備えてよい。
【0055】
非励起光は、第1のパターンの区別を可能にするようなものであるべきで、基本的に第2のパターンを呼び出すような励起をもたらすべきではない。
【0056】
第1および第2の画像は、処理デバイスによって格納され、送信され、または瞬時に受信されてよく、たとえば参照マスク、参照画像、または参照特徴などの1または複数の所定の基準との比較を含み得る認証処理を受けてよい。
【0057】
この方法において、上記第1および/または第2の画像を捕捉することは、発光電気化学セルの第1の励起光への上記露光中、発光電気化学セルの少なくとも一部からの発光を表す第1のスペクトルデータおよび/または第2のスペクトルデータを捕捉することを備えてよい。
【0058】
スペクトルデータは、処理デバイスによって格納され、送信され、または瞬時に受信されてよく、たとえば参照マスク、参照画像、または参照特徴などの1または複数の所定の基準との比較を含み得る認証処理を受けてよい。
【0059】
この方法は、発光電気化学セルの第1の励起光への上記露光の直後、少なくとも1つの発光強度過渡信号を捕捉することにより、高速で減衰する蛍光と比較的緩慢に減衰する燐光との区別を可能にすることをさらに備えてよい。
【0060】
過渡データは、処理デバイスによって格納され、送信され、または瞬時に受信されてよく、たとえば参照マスク、参照画像、または参照特徴などの1または複数の所定の基準との比較を含み得る認証処理を受けてよい。
【0061】
この方法は、上記エレクトロルミネッセンス中に発光電気化学セルを表す第3の画像を捕捉することをさらに備えてよい。
【0062】
第3の画像は、処理デバイスによって格納され、送信され、または瞬時に受信されてよく、たとえば参照マスク、参照画像、または参照特徴などの1または複数の所定の基準との比較を含み得る認証処理を受けてよい。
【0063】
この方法は、上記エレクトロルミネッセンス中に発光電気化学セルの少なくとも一部からの発光を表す第3のスペクトルデータを捕捉することをさらに備えてよい。
【0064】
第3のスペクトルデータは、処理デバイスによって格納され、送信され、または瞬時に受信されてよく、たとえば参照マスク、参照画像、または参照特徴などの1または複数の所定の基準との比較を含み得る認証処理を受けてよい。
【0065】
この方法において、電気的動作は、発光電気化学セルの第1の励起光への上記露光の後に行われ得る。
【0066】
あるいは、電気的動作は、発光電気化学セルの第1の励起光への上記露光の前に行われ得る。
【0067】
この方法は、発光電気化学セルの第2の励起光への上記露光中、異なる時点において、発光電気化学セルからのフォトルミネッセンスを表す少なくとも2つの画像を捕捉することをさらに備えてよい。
【0068】
回復段階中に撮像された画像は、処理デバイスによって格納され、送信され、または瞬時に受信されてよく、たとえば参照マスク、参照画像、または参照特徴などの1または複数の所定の基準との比較を含み得る認証処理を受けてよい。また、画像シーケンスに基づく時間的分析が行われよく、これに基づいて、回復/緩和挙動が決定され、参照回復/緩和挙動と比較され得る。
【0069】
この方法において、上記時点は、電気化学的ドーピングの消光からフォトルミネッセンスが回復する回復段階中に生じ得る。
【0070】
この方法において、スペクトルデータは、上記フォトルミネッセンスが回復する回復段階中の異なる時点における発光電気化学セルを表す画像の少なくともいくつかに関して捕捉され得る。
【0071】
第5の態様によると、発光電気化学セルを製造する方法が提供され、この方法は、基板を提供することと、基板上に第1の電極を堆積させることと、基板から発光層が視覚的に区別可能であることによって構成される第1の2Dパターンを提供するために、第1の電極と接触し、少なくとも部分的に重なる発光層を堆積させることと、フォトルミネッセンスに対して不活性である第1の部分と、フォトルミネッセンスに対して活性である発光層の第2の部分とで構成される第2の2Dパターンを提供することと、エレクトロルミネッセンスに対して活性である領域を形成するために、発光層と接触し、少なくとも部分的に重なり、第1の電極と少なくとも部分的に重なる第2の電極を堆積させることとを備える。
【0072】
この方法において、上記発光層の不活性化部分を提供することは、堆積された発光層の一部を選択的に不活性化することを備えてよい。
【0073】
選択的な不活性化は、発光層を特定の大気および特定の露光に晒すことによって行われ得る。
【0074】
露光は、マスクによって、および/または制御可能な光ビームの使用によって選択的に適用され得る。
【0075】
この方法において、上記発光層の不活性化部分を提供することは、不活性材料を選択的に堆積させることを備える。
【0076】
この方法において、電極は、第3の2Dパターンに従って、発光層のフォトルミネッセンスが活性である部分との重なりおよび電気的接触を有するように選択的に堆積され得る。
【0077】
代替または補足として、この方法は、発光層と電極の1つとの間に少なくとも1つの絶縁層を選択的に堆積させることをさらに備えてよく、絶縁層は、好適には第3の2Dパターンに従って選択的に堆積される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1a】LECを製造する方法における第1のステップを概略的に示す。
【
図1b】LECを製造する方法における第1のステップを概略的に示す。
【
図2a】LECを製造する方法における第2のステップを概略的に示す。
【
図2b】LECを製造する方法における第2のステップを概略的に示す。
【
図3a】LECを製造する方法における第3のステップを概略的に示す。
【
図3b】LECを製造する方法における第3のステップを概略的に示す。
【
図4a】LECを製造する方法における第4のステップを概略的に示す。
【
図4b】LECを製造する方法における第4のステップを概略的に示す。
【
図5a】LECを製造する方法における第3および第4のステップの代替ルートを概略的に示す。
【
図5b】LECを製造する方法における第3および第4のステップの代替ルートを概略的に示す。
【
図6a】LECを製造する方法における第5のステップを概略的に示す。
【
図6b】LECを製造する方法における第5のステップを概略的に示す。
【
図7a】LECを動作させる方法における第1のステップを概略的に示す。
【
図7b】LECを動作させる方法における第1のステップを概略的に示す。
【
図8a】LECを動作させる方法における第2のステップを概略的に示す。
【
図8b】LECを動作させる方法における第2のステップを概略的に示す。
【
図9a】LECを動作させる方法における第3のステップを概略的に示す。
【
図9b】LECを動作させる方法における第3のステップを概略的に示す。
【
図10a】LECを動作させる方法における第4のステップを概略的に示す。
【
図10b】LECを動作させる方法における第4のステップを概略的に示す。
【
図11】LECが使用され得るセキュリティシステムを概略的に示す。
【
図12a】概念実証LECデバイスを示す写真である。
【
図12b】概念実証LECデバイスを示す写真である。
【
図12c】概念実証LECデバイスを示す写真である。
【
図12d】概念実証LECデバイスを示す写真である。
【
図12e】概念実証LECデバイスを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1a、
図1bを参照すると、LEC1を製造する方法における第1のステップは、基板10を提供することを備え、基板10は、たとえばガラス(フロートガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、SiO
2、Al
2O
3など)、セラミック、ポリマ(PET、PC、PENなど)、パルプ系材料(紙、ボール紙など)、防湿および酸素バリア材料などの電気絶縁材料のグループからの1または複数の材料、および、たとえば金属材料およびワイヤメッシュ(たとえばAl、Ag、Cu、Ni)などの導電性材料で形成され得る。
【0080】
基板は、平面、単一曲面、二重曲面、凸面、凹面などを含む、後続する材料層の堆積を可能にする任意の形状を有してよい。
【0081】
基板は、可撓性または剛性であってよい。
【0082】
特定の実施形態において、基板は、薄いポリマまたはバリアフィルム、または紙シートであってよい。
【0083】
導電性基板が使用される実施形態において、導電性基板を第1の電極として使用することが望ましい場合がある。導電性基板が使用される他の実施形態において、発光層を設ける前にパターン化絶縁基層を設けることが望ましい場合がある。導電性基板が使用される他の実施形態において、第1の電極を設ける前に絶縁基層を設けることが望ましい場合がある。導電性基板が使用される他の実施形態において、基板を用いてLEC1に電力を結合することが望ましい場合がある。
【0084】
第1の電極11は、基板10上に堆積され得る。
【0085】
適切な堆積技術は、インクジェット、グラビア印刷、オフセットおよびスクリーン印刷、スプレー、バーおよびスロットダイコーティング、熱および電子ビーム蒸着、化学蒸着、およびスパッタリングを含む。
【0086】
第1の電極11は、たとえば金属(Al、Ag、Cu、Niなど)、ドープまたは原始無機および有機半導体(ZnO、TiO2、ITO、FTO、PEDOT:PSSなど)、およびポリマ(PEI、ポリスチレン、PMMA、エポキシなど)など、1または複数の導電性材料と1または複数の非導電性材料との組み合わせとして提供されてよく、薄膜、焼結(ナノ)粒子、(ナノ)ワイヤ、薄片、またはワイヤメッシュとして堆積され得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、第1の電極11は、基板10の全てまたは一部を覆う層として堆積され得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、第1の電極11は、2Dパターンとして堆積され得る。そのような2Dパターンの別々の部分は、電気的に相互接続される必要があり得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、第1の電極11は、複数の発光パターンを可能にするために複数の電気的に分離された2Dパターン電極として堆積され得る。
【0090】
図2a、
図2bを参照すると、LEC1を製造する方法における第2のステップは、電気絶縁層12a、12bを基板10の一部および第1の電極11の一部に堆積させることを備えてよい。
【0091】
したがって、絶縁層12a、12bは、2Dパターンを提供してよい。
【0092】
絶縁材料12a、12bは、ポリマ(エポキシ、アクリル、PMMA、PSなど)、セラミック、またはガラス(SiO2、Al2O3など)であってよい。
【0093】
適切な堆積技術は、インクジェット、グラビア印刷、オフセットおよびスクリーン印刷、スプレー、バーおよびスロットダイコーティング、熱および電子ビーム蒸着、化学蒸着、およびスパッタリングを含む。
【0094】
図3a、
図3bを参照すると、LECを製造する方法における第3のステップは、発光層13を第1の電極11の一部および絶縁層12a、12bの一部、任意選択的に基板10の一部に堆積させることを備える。
【0095】
発光層13は、1または複数の有機半導体(たとえば非イオン性およびイオン性遷移金属錯体、共役ポリマ、共役小分子、有機、炭素、およびペロブスカイト量子ドット、および熱活性化遅延蛍光を特徴とする様々な種類の特殊エミッタ)および/または無機半導体(たとえば無機量子ドットおよびペロブスカイト)、および1または複数の可動イオン源(たとえばイオン溶解化合物またはイオン液体に溶解した塩)の混合物を備えてよい。
【0096】
有機半導体の非限定的な例は、ポリ(1,4-フェニレンビニレン)、Super Yellow、MEH-PPV、ポリ(フルオレン)、ポリ(9-ビニカルバゾール)、1,3-ビス[2-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]ベンゼン、トリス[2-(5-substituent-フェニル)-ピリジナト]イリジウム(III)、および2,4,5,6-テトラ(9H-カルバゾール-9-イル)イソフタロニトリルである。
【0097】
無機半導体の非限定的な例は、CdSe/ZnS、CdTe、CdSeTe/ZnS、PbS量子ドットおよびペロブスカイト量子ドット、フィルム、および構造体である。
【0098】
可動イオンの非限定的な例は、イオン溶解材料であるポリ(エチレンオキシド)およびトリメチロールプロパンエトキシレートおよびその誘導体の1または複数に溶解した塩KCF3SO3およびLiCF3SO3の1または複数、またはイオン液体であるテトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレートおよびテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩の1または複数である。
【0099】
発光層13は、たとえばスプレーコーティング、ブレードコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、熱蒸着、または電子ビーム蒸着などの技術によって堆積され得る。
【0100】
発光層13は、基板10および/またはLEC1が支持される構造と区別可能な2Dパターンで設けられ得る。
【0101】
発光層13は、反射特性、フォトルミネッセンス特性、およびエレクトロルミネッセンス特性の特異的なセットを示す単一の材料系および層の形態で、または異なるそのような特性を示す2つ以上の異なる材料系および層の形態で堆積され得る。
【0102】
絶縁層12a、12bが堆積される場合、その2Dパターンに従って、第1の電極11と発光層との間に電気絶縁が提供される。
【0103】
いくつかの実施形態において、発光層13は、通常の光条件下で人間の目によって基板10および/またはデバイス構造の他の部分から視覚的に区別可能であり得る。
【0104】
他の実施形態において、発光層13は、通常の光条件下では人間の目によって基板10および/またはデバイス構造の他の部分から視覚的に区別できず、発光層13および基板10および/またはデバイス構造の他の部分が特定の波長の光に晒される条件下でのみ、視覚的に区別可能であってよい。
【0105】
また他の実施形態において、発光層13は、光学フィルタを通して見た場合および/または特定の波長に構成されたカメラによって見た場合のみ視覚的に区別可能であってよい。そのような実施形態は、通常の光条件下で、または発光層が特定の波長の光に晒された場合のみ、可視的な区別をもたらし得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、複数の発光層13は、同一のまたは異なる反射特性、フォトルミネッセンス特性、および/またはエレクトロルミネッセンス特性を示す別個のまたは重なり合う2Dパターンで堆積されてよく、各パターンは、区別可能であるために1または複数の特定の波長の光を必要とし、および/または撮像されるために特定の波長に構成されたカメラを必要とし得る。
【0107】
図4a、
図4bを参照すると、LECを製造する方法における第4のステップは、2Dパターンに従って発光層13のフォトルミネッセンスを選択的かつ永続的に不活性化することを備えてよい。
【0108】
不活性化は、1または複数の光または粒子開始化学反応によって実現され、一方の有機または無機半導体(複数も可)またはイオン溶解材料(複数も可)または可動イオン(複数も可)と、他方の1または複数の反応分子(O2、H2Oなど)との間で起こり得る。
【0109】
たとえば、不活性化は、たとえばO2などの反応分子を含む大気中でUV光源3からのUV光に発光層13の一部を選択的に露光させることによって実現され得る。
【0110】
2Dパターンを提供するために、UV光を効果的に透過させる開口部21a、21bを有するマスク2が使用され得る。開口部21a、21bに対応する発光層13の部分131a、131bにおいて、発光層13のフォトルミネッセンスが不活性化される。
【0111】
あるいは、たとえばデジタル光処理「DLP」、または空間光変調「SLM」によって実現された所望の2Dパターンに従って、発光層13を選択的に露光させるために、制御された光ビームが使用され得る。
【0112】
発光層の空間的に段階的な不活性化は、発光層の異なる部分が受け取る線量を空間的に変化させることによって得られ得る。これは、光強度、露光時間、または反応ガス濃度を空間的に変化させることによって実現され得る。
【0113】
図5a、
図5bを参照すると、LECを製造する方法における第3および第4のステップの代替ルートでは、第3のステップで説明する発光層13が、領域131a、131bに対応する空隙132a、132bを有して堆積され、所望の2Dパターンを形成するために、異なるフォトルミネッセンス能力を有する材料またはフォトルミネッセンス能力のない材料がこれらの空隙132a、132bに別々に堆積される。この直接堆積ルートの場合、第4のステップで説明する不活性化手順は任意であり、必須ではない。
【0114】
この代替ルートにおける堆積技術は、第3のステップで説明する発光層堆積と同じであってよい。
【0115】
任意選択的に、発光層13の外側の領域または発光層13と部分的に重なる領域で、着色顔料および/またはフォトルミネッセンス顔料の堆積によって、追加の反射およびフォトルミネッセンス2Dパターンが生成され得る。
【0116】
図6a、
図6bを参照すると、LECを製造する方法における第5のステップにおいて、第2の電極14が堆積され得る。
【0117】
第2の電極14は、コーティング層、印刷層、蒸着層、またはスパッタ層の形態で設けられ得る。
【0118】
適切な堆積技術は、どの電極材料が使用されるかに依存して、インクジェット、グラビア印刷、オフセットおよびスクリーン印刷、スプレー、バーおよびスロットダイコーティング熱および電子ビーム蒸着、化学蒸着、およびスパッタリングを含む。
【0119】
第2の電極14は、たとえば金属(Al、Ag、Cu、Niなど)、ドープまたは原始無機および有機半導体(ZnO、TiO2、ITO、FTO、PEDOT:PSSなど)、およびポリマ(エポキシ、アクリル、PEI、ポリ(スチレン)、PMMAなど)など、1または複数の導電性材料と1または複数の非導電性材料との組み合わせとして提供されてよく、薄型または小型フィルム、焼結(ナノ)粒子、(ナノ)ワイヤ、薄片、またはワイヤメッシュとして堆積される。
【0120】
いくつかの実施形態において、第2の電極14は、発光層13、絶縁層12a、12b、第1の電極11、および基板10の全てまたはいくつかに重なる層として堆積され得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、第2の電極14は、2Dパターンとして堆積され得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、第2の電極14は、複数の独自の発光パターンを可能にするために、複数の電気的に分離された電極として堆積され得る。
【0123】
任意選択的に、発光層13と第2の電極14との間の電気絶縁をもたらすために、第2のステップで説明するような電気絶縁層が第2の電極14の前に堆積され得る。したがって、発光層13と第2の電極14との間の絶縁層は、2Dパターンを提供してよい。
【0124】
いくつかの実施形態において、第1の電極11、発光層13、および第2の電極14は、垂直な幾何学的形状(「サンドイッチ構成」)ではなく横並びの水平な幾何学的形状(別称「面構成」)で堆積され得る。
【0125】
図7a、
図7bは、LEC1を動作させる方法における第1のステップを概略的に示す。
【0126】
第1のステップにおいて、LEC1は、適切な波長範囲の光で見ることができ、発光層13と基板10および/またはデバイス構造の他の部分との間の光学コントラストによってもたらされる第1の2DパターンP1が可視である。いくつかの実施形態において、このステップで使用される光は、PLに顕著な励起をもたらす必要はない。
【0127】
いくつかの実施形態において、LEC1を1または複数の適切な光波長または適切な広帯域発光スペクトルに露光させるためにランプ5が作動され得る。
【0128】
このステップにおいて、LEC1上のP1を区別する識別する第1の画像は、画像およびスペクトル情報を受信および格納するように構成されたコントローラ4によって制御され得る画像捕捉デバイス6を用いて取得され得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、光に関するスペクトル情報も捕捉してよい。分光計機能は、画像捕捉デバイス6と統合され、LEC1に関連する任意の画像捕捉ステップにおいて使用され得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、ランプ5からの異なる波長照明条件下で複数の画像およびスペクトルを捕捉してよい。
【0131】
コントローラ4はさらに、たとえば認証基準と比較することによって、第1の画像(複数も可)およびスペクトル/複数のスペクトルを処理するように構成され得る。
【0132】
図8a、
図8bは、LEC1’を動作させる方法における第2のステップを概略的に示す。
【0133】
このステップにおいて、ランプ5は、発光層13の不活性化されていない部分133と、場合によって不活性化部分131a、131bまたは不活性部分132a、132bとの間のPL効率およびスペクトルのコントラストによってもたらされる第2の2DパターンP2に従って発光層13がPLを通して光を発するように、LEC1’を露光させるために作動してよい。
【0134】
ランプ5は、発光層において所望のPLを励起することが可能な1または複数の適切な光波長または適切な広域波長スペクトルにLEC1’を露光させるように作動してよい。
【0135】
ランプ5は、コントローラ4によって制御されてよく、またこのステップでは、LEC1’からP2を区別する第2の画像を取得するために画像捕捉デバイス6が使用され得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、PL光のスペクトル情報も捕捉してよい。
【0137】
いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、ランプ5からの異なる波長照明条件下で複数のPL画像およびスペクトルを捕捉してよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、PLの蛍光または燐光源を区別するために、ランプ5からの励起光に露光した直後の過渡段階中のPLの一時的強度および/または空間情報も捕捉してよい。
【0139】
またこのステップに関連して、コントローラ4は、第2の画像(複数も可)およびスペクトル/複数のスペクトルおよび過渡信号を格納し、および/または、たとえば認証基準と比較することによって、第2の画像(複数も可)およびスペクトル/複数のスペクトルおよび過渡信号を処理するように構成され得る。
【0140】
図9a、
図9bは、LEC1’’を動作させる方法における第3のステップを概略的に示す。
【0141】
このステップにおいて、LEC1’’は、電極11および14が発光層13のPL活性部分との電気的接触を示す部分を通してもたらされる第3の2DパターンP3に従って発光層がエレクトロルミネッセンス(EL)を通して光を発するように、電極11と14との間への電圧の印加によって電気的に動作する。
【0142】
いくつかの実施形態において、LEC1’’が電気的に動作する場合、P3からの発光は弱いか、または存在しない。
【0143】
LEC1’’の電気的動作は、コントローラ4によって制御されてよく、またこのステップでは、画像捕捉デバイス6は、LEC1’’からP3を区別する第3の画像を取得するために使用され得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、発光に関するスペクトル情報も捕捉してよい。
【0145】
いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、複数の画像およびスペクトルを捕捉してよい。
【0146】
またこのステップに関連して、コントローラは、第3の画像(複数も可)およびスペクトル/複数のスペクトルを格納し、および/または、たとえば認証基準と比較することによって、第3の画像(複数も可)およびスペクトル/複数のスペクトルを処理するように構成され得る。
【0147】
図10a、
図10bは、LEC1’’’を動作させる方法における第4のステップを概略的に示す。
【0148】
このステップにおいて、ランプ5は、第2の2DパターンP2と第3の2DパターンP3との差によってもたらされる第4の2DパターンP4に従って発光層13がPLを通して光を発するように、電気的動作の直後、LEC1’’’を露光させるように作動してよい。この2Dパターンの改変は、パターンP3に対応する領域内のPL容量の可逆的かつ部分的または完全な損失によって生じる。したがって、LECの電気的動作は、第4の2Dパターンを観察するために必要である。
【0149】
ランプ5は、コントローラ4によって制御されてよく、またこのステップにおいて、画像捕捉デバイス6は、LEC1’’’からP4を区別する第4の画像を取得するために使用され得る。
【0150】
ここでもまた、いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、PL光に関するスペクトル情報も捕捉してよい。
【0151】
ここでもまた、いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、ランプ5からの異なる波長照明条件下で複数の画像およびスペクトルを捕捉してよい。
【0152】
またこのステップに関連して、コントローラ4は、第4の画像(複数も可)およびスペクトル/複数のスペクトルを格納し、および/または、たとえば認証基準と比較することによって、第4の画像(複数も可)およびスペクトル/複数のスペクトルを処理するように構成され得る。
【0153】
第5のステップにおいて、ランプ5は、発光層13のPL活性部分がPLを通して光を発し、パターンP3に対応する領域内の一時的に低減したPL容量が回復した場合に第4の2DパターンP4から第2の2DパターンP2への段階的な時間的シフトの観察を可能にするように、電気的動作後、LEC1’’’を露光させるために連続的または(パルスで)一時的に作動してよい。
【0154】
ここでもまた、ランプ5は、コントローラ4によって制御されてよく、またこのステップにおいて、画像捕捉デバイス6は、LEC1’’’から、P4からP2に戻る時間的変換を追跡するための第5の画像セットを取得するために使用され得る。
【0155】
ここでもまた、いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、PL光に関するスペクトル情報も捕捉してよい。
【0156】
いくつかの実施形態において、画像捕捉デバイス6は、ランプ5からの異なる波長照明条件下で画像およびスペクトルを捕捉してよい。
【0157】
またこのステップに関連して、コントローラ4は、画像およびスペクトルを格納し、および/または、たとえば認証基準と比較することによって、第5の画像およびスペクトルのセットを処理するように構成され得る。
【0158】
図11を参照すると、本概念の応用例が、質問デバイス120とともに使用するための製品110を備えるシステム100の形態で示される。
【0159】
製品110は、たとえばパスポート、運転免許証などの身分証明書および認証書、証明書、契約書、有価文書、ラベルなどの識別または認証デバイスである。
【0160】
製品110は、たとえば紙、ボール紙、プラスティック、ポリマ系材料、金属箔、または可撓性または非可撓性ガラスシートなどのシート基板から形成され得る。製品は、可撓性または基本的に非可撓性であってよい。単一曲面、二重曲面、凸面、または凹面を含む他の表面構成が使用されてもよい。
【0161】
製品には、上述したようにLEC1が貼り付けられる。いくつかの実施形態において、LEC基板10は、たとえば接着などによって製品110に貼り付けられ得る。他の実施形態において、上述したように、LECが製造される基板として製品110自体が使用されてもよい。
【0162】
図11において、LEC1の一部は、製品を理解し易くするために省略されている。ただし、電極11、14および発光層13は示されている。
【0163】
電源115は、製品内または製品上に設けられ得る。いくつかの実施形態において、電源115は、図示のように、任意選択的に整流のための1または複数のダイオードを有する誘導アンテナを備える。他の実施形態において、電源は、外部電源に接続するための端子を備えてよい。またさらなる実施形態において、電源は、たとえばキャパシタやバッテリなどの蓄電器、および/またはたとえば太陽電池などの発電機を備えてよい。
【0164】
質問デバイス120は、データを受信、処理、格納、および通信するために必要な構成要素を含み得る処理デバイス4を備えてよい。
【0165】
質問デバイス120は、たとえばデジタルカメラおよび/または分光計などの画像捕捉デバイス6をさらに備えてよい。画像捕捉デバイス6は、上述したように、捕捉された画像およびスペクトルが処理デバイス4によって受信および処理され得るように、処理デバイス4に接続され得る。
【0166】
質問デバイス120は、たとえばUVランプまたは広帯域白色光源などであるがこれらに限定されない、発光層の光励起に適した光源5をさらに備えてよく、これは、発光層13にPLをもたらすため、および/または第1の2DパターンP1を出現させるために必要な波長の光を供給するように選択または調整され得る。光源5は、たとえば画像捕捉デバイス6によって捕捉されたデータに関連して、所望の波長領域または選択された時間ベースで光を発するために、処理デバイス4によって制御可能であってよい。
【0167】
質問デバイス120は、電源115との相互作用によってLEC1に給電するための電力インタフェース7をさらに備えてよい。したがって、電力インタフェース7は、誘導デバイス、製品(複数も可)上の端子に接続するための端子、および/または太陽電池に照射するための光源を備えてよい。
【0168】
以下、LECデバイスの製造が詳しく説明される。LECデバイスの動作は、次に、
図12a~
図12eを参照して説明される。
【0169】
厚さ145nmのITO層(第1の電極11、シート抵抗=20Ohm sq
-1)でプレコーティングされたガラス基板(基板10、面積=50×50mm
2、厚さ=0.7mm、Thin Film Devices)が洗浄および乾燥された。絶縁層12a、12bは、ネガティブフォトレジストSU-8のパターン化フィルムであった。希釈されたSU-8:酢酸エチル(体積比1:15)インクが、エアブラシを用いて20psiで噴霧され、65℃のホットプレート上で分未満の短時間乾燥された。この結果、ITO表面に均一でピンホールのないSU-8フィルムが形成された。SU-8フィルムの上にフォトマスクが載置され、その後、UV光(UV露光ボックス2、Gie-Tec GmbH)に3分間露光された。露光フィルムは、酢酸エチル中で現像され、その後、IPAで洗浄され、圧縮空気で乾燥された。フォトマスクによって画定された12個の星形パターンにより、
図12cの効果(iii)も定義された。
【0170】
発光層インクのマスタ溶液は、8gl
-1のSuper Yellow(SY、M
w(平均反復単位)=338g mol
-1、バッチ番号4.80822.9999、PDY-132、Merck)および10gl
-1のテトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート(THABF
4、Sigma-Aldrich)を、70℃のホットプレート上での24時間以下の攪拌の下、アニソール中に溶解することによって調製された。マスタ溶液は、SY:THABF
4の重量比が1:0.1で混合された。この混合物は、発光層インクを形成するために、1:4.5の体積比(インク:THF)で、THFでさらに希釈された。発光層インクは、特注スプレーボックス(LunaLEC)を用いて、4ml min
-1のインク供給速度、60psiのN
2駆動ガス圧力で、可動スプレーノズルが基板上を4往復することにより、(
図12aのパターン(i)を画定する)シャドウマスクを通して、パターン化SU-8フィルムが上にあるITOコーティング基板にスプレー焼結された。基板は、発光層13の堆積中、常に60℃に維持された。
【0171】
発光層131a、131bの選択部分のPL容量は、周囲条件下のUVボックス内でフォトマスクを通してUV光に40分間露光させることにより永続的に不活性化された。フォトマスクのパターンにより、
図12bの効果(ii)におけるPLパターンが画定された。
【0172】
第2の電極14に関して、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS、Clevios S V3、Heraeus)インクは、最初に、エタノールを用いて体積比1:5で希釈され、次に、均質化されたスプレー可能なインクを形成するために超音波処理された。第2の電極インクは、特注スプレーボックス(LunaLEC)を用いて、4ml min-1のインク供給速度、60psiのN2駆動ガス圧力で、基板上を4往復することによってスプレーされた。スプレー堆積中、基板は常に60℃に維持され、堆積したフィルムは、さらに120℃で4分間乾燥された。LECデバイスは、大気中での動作を可能にするために、UV硬化エポキシ(Ossila)を用いて取り付けられたガラスカバースライドで密封された。電流分布を補助するために、PEDOT:PSS上部電極と接触する基板の縁部にはAg塗料(ELFA)が堆積された。
【0173】
図12a~
図12eは、LEC概念実証デバイスからの様々なパターンの写真を示し、以下で構成される。
【0174】
(i)発光層パターンとデバイスのその他の部分との間の(周囲光活性化)反射色コントラスト(
図12a;
図7a、
図7bの概略パターンP1);
(ii)電気的動作前の(UV活性化)初期PLパターン(
図12b;
図8a、
図8bの概略パターンP2);
(iii)電気的動作中のELパターン(
図12c、
図9a、
図9bの概略パターンP3);
(iv)電気的動作後の(UV活性化)第2のPLパターン(
図12d;
図10a、
図10bの概略パターンP4);
(v)PLパターン(iv)からPLパターン(ii)への(UV活性化)時間的遷移のスナップショット(
図12e;
図10a、
図10bの概略パターンP4から
図8a、
図8bの概略パターンP2への時間的遷移)。
【0175】
したがって、単一のLECデバイスから少なくとも5つの視覚パターンを得ることが可能である。
【0176】
これらの様々なパターンの実現の簡単な説明を以下に記載する。
【0177】
(i)第1の2Dパターンは、発光層インクの堆積によって実現され得る。上記例では、シャドウマスクを通したスプレー焼結によって実現され得る。あるいは、上記の発光層の説明において詳述した様々な印刷、コーティング、および堆積技術のいずれかによって製造することもできる。
【0178】
(ii)第2の2Dパターン(初期PL)は、大気を含む反応分子(たとえばO2および/またはH2O)中での発光層の選択的な露光によってもたらされ得る。この光誘発化学反応は、発光層の露光領域のPL容量を永続的に減少させる。あるいは、このパターンは、異なるPL特性を特徴とする異なる領域の選択的な印刷によってもたらすこともできる。
【0179】
(iii)第3の2D(EL)パターンは、発光層と電極の1つとの間にパターン化絶縁層を含むことによってもたらされ得るので、EL生成電流は、この絶縁層がない領域のみを流れ得る。あるいは、ELパターンは、電極の一方(または両方)をパターン化することによって実現することもできる。パターン化ELは、デバイスが、たとえばバッテリを用いて、またはたとえばNFCフィールドや太陽電池を用いて無線で電気的に動作する場合にのみ出現する。
【0180】
(iv)第4の2D(第2のPL)パターンは、LECデバイスの電気的動作中に起こるLEC特有の電気化学的ドーピングによって可能になり得る。このドーピングは、第3の2Dパターンに従ってEL光を発する領域内のPLの大半を消光する。この結果、初期PLパターン(ii)は、(iii)におけるLECデバイスの電気的動作後、新たなPLパターン(iv)に改変される。
【0181】
(v)電気化学的ドーピングおよびそれに伴うPLの消光は、時間とともに消失し、その結果、PLパターンは時間とともに段階的にシフトしてパターン(iv)からパターン(ii)へ戻る。このパターン(ii)と(iii)から(iv)との間の往復サイクルは、何回も反復され得る。
【0182】
追加の特徴として、デバイス全体は、2つの透明電極および透明発光層を用いることによって透明であることができ、その結果、(LECを照明するために適切な照明/励起波長が使用され、適切な撮像デバイスが使用された場合)上記パターンは全て、どこからともなく出現するように見える。
【国際調査報告】