(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ペロブスカイト太陽電池(PSC)を調製するための方法及び得られたPSC
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20241001BHJP
C01G 19/02 20060101ALI20241001BHJP
C01G 19/00 20060101ALI20241001BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20241001BHJP
H10K 30/85 20230101ALI20241001BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20241001BHJP
【FI】
H10K30/50
C01G19/02 B
C01G19/02 C
C01G19/00 A
H10K30/86
H10K30/85
H10K30/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541920
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 US2022076697
(87)【国際公開番号】W WO2023059982
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520446997
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ルイスビル・リサーチ・ファウンデーション・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LOUISVILLE RESEARCH FOUNDATION, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】524107230
【氏名又は名称】アライアンス・フォー・サステナブル・エナジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ALLIANCE FOR SUSTAINABLE ENERGY, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルッフェル,サッド
(72)【発明者】
【氏名】グラッパーハウス,クレイグ エイ
(72)【発明者】
【氏名】チャパガイン,サシル
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング,ピーター ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ブレイク
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヘスト,マリヌス フランシスクス アントニウス マリア
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251CB24
5F251CB25
5F251CB27
5F251CB29
5F251FA04
5F251FA06
(57)【要約】
本発明のいくつかの実施形態は、ペロブスカイト太陽電池(PSC)を調製するための独創的な方法を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、官能化材料(例えば、1つ以上の官能化用化合物で官能化されている材料)を溶媒中に溶解させることと、堆積組成物をペロブスカイト層上に堆積させることであって、堆積組成物が溶解した官能化材料を含む、堆積させること、堆積組成物を加熱することと、任意選択的に、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を堆積組成物から除去することと、を含む。本発明の追加の実施形態もまた、本明細書に開示される。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト太陽電池(PSC)を調製するための方法であって、前記方法が、
-官能化材料を溶媒中に溶解させることであって、前記官能化材料が、1つ以上の官能化用化合物で官能化されている材料である、溶解させることと、
-堆積組成物をペロブスカイト層上に堆積させることであって、前記堆積組成物が、溶解した官能化材料を含む、堆積させることと、
-前記堆積組成物を加熱することと、
-任意選択的に、前記1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を前記堆積組成物から除去することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記官能化材料の前記材料が、有機材料、金属酸化物、TiO
2、SnO
2、NiO
x、CuO、ZnO、Zn
2SO
4、WO
3、In
2O
3、SrTiO
3、Nb
2O
5、BaSnO
3、C
60、C
70、PC
61BM、PC
71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料が、ドーピング物質のうちの1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料が、1つ以上のドーピング物質を含み、前記1つ以上のドーピング物質が、Zr、Sb、Li、Mg、Y、Nb、Cu、又はMoを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記官能化材料の前記材料が、有機材料、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO
2、SnO
2、NiO
x、CuO、ZnO、Zn
2SO
4、WO
3、In
2O
3、SrTiO
3、Nb
2O
5、BaSnO
3、Y:SnO
2、Cu:NiO
x、C
60、C
70、PC
61BM、PC
71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記官能化材料の前記材料が、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO
2、SnO
2、NiO
x、CuO、ZnO、Zn
2SO
4、WO
3、In
2O
3、SrTiO
3、Nb
2O
5、BaSnO
3、Y:SnO
2、Cu:NiO
x、C
60、C
70、PC
61BM、PC
71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記官能化材料の前記材料が、TiO
2、SnO
2、NiO
x、CuO、ZnO、Zn
2SO
4、WO
3、In
2O
3、SrTiO
3、Nb
2O
5、BaSnO
3、Y:SnO
2、又はCu:NiO
xのうちの1つ以上を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記官能化材料の前記材料が、SnO
2、NiO
x、Y:SnO
2、又はCu:NiO
xのうちの1つ以上を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の官能化用化合物が、
(1)R
1a-CO-OH(I)、
又はその塩であって、式中、R
1aは、置換又は非置換アルキルである、(I)又はその塩、
(2)R
2a-O-CS
2
-M
+
2a(II)であって、
式中、R
2aは、置換又は非置換アルキルであり、M
+
2aは、カチオンである、(II)、
【化1】
であって、
式中、X
3は、アニオンであり、R
3a、R
3c、R
3d、及びR
3eは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり、R
3bは、H、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートである、(IIIa)又は(IIIb)、
【化2】
であって、
式中、X
4は、アニオンであり、R
4a、R
4c、R
4d、R
4e、R
4f、及びR
4gは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり、R
4bは、H、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートである、(IVa)又は(IVb)、
【化3】
であって、
式中、R
5a、R
5b、及びR
5cは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換アリールである、(V)、
【化4】
であって、
式中、R
6b、R
6c、及びR
6dは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり、R
6aは、H、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アリールであり、
R
6a置換アルキルは、任意選択的に、1つ以上の置換若しくは非置換ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートで置換されており、
R
6a置換アリールは、任意選択的に、1つ以上の置換若しくは非置換ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートで置換されている、(VI)、あるいは
(7)R
7a-NH-CS
2
-M
+
7a(VII)であって、
式中、R
7aは、置換又は非置換アルキルであり、M
+
2aは、カチオンである、(VII)のうちの1つ以上である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
R
1aが、置換又は非置換C
1-C
8アルキル、メチル、エチル、プロピル、又はブチルである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
R
2aが、置換若しくは非置換アルキルC
1-C
36アルキル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、若しくはオクタデシルであるか、M
+
2aが、Na
+、K
+、若しくはLi
+であるか、又はそれらの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
X
3が、Cl
-、Br
-、I
-、BF
4
-、PF
6
-、又はCF
3SO
3
-であるか、R
3a、R
3c、R
3d、及びR
3eが、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換C
1-C
8アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルであるか、R
3bが、H、置換若しくは非置換C
1-C
8アルキル、置換若しくは非置換フェニル、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR
3f、-CH
2OR
3f、-CH
2NHR
3f、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートであるか、R
3fが、H、置換又は非置換C
1-C
8アルキルであるか、あるいはそれらの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
X
4が、Cl
-、Br
-、I
-、BF
4
-、PF
6
-、又はCF
3SO
3
-であるか、R
4a、R
4c、R
4d、R
4e、R
4f、及びR
4gが、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換C
1-C
8アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルであるか、R
4bが、H、置換若しくは非置換C
1-C
8アルキル、置換若しくは非置換フェニル、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR
4h、-CH
2OR
4h、-CH
2NHR
4h、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートであるか、R
4hが、H、置換又は非置換C
1-C
8アルキルであるか、あるいはそれらの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
R
5a、R
5b、及びR
5cが、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換C
1-C
8アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
R
6b、R
6c、及びR
6dが、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換C
1-C
8アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルであるか、R
6aが、H、置換若しくは非置換C
1-C
8アルキル、置換若しくは非置換フェニルであり、前記R
6a置換アルキルが、任意選択的に、1つ以上の-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR
6e、-CH
2OR
6e、-CH
2NHR
6e、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートで置換されており、前記R
6a置換アリールが、任意選択的に、1つ以上の-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR
6e、-CH
2OR
6e、-CH
2NHR
6e、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートで置換されており、R
6eが、H、置換又は非置換C
1-C
8アルキルであるか、あるいはそれらの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
R
7aが、置換若しくは非置換アルキルC
1-C
36アルキル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、若しくはオクタデシルであるか、M
+
7aが、Na
+、K
+、若しくはLi
+であるか、又はそれらの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
式(IIIb)が、
【化5】
である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
式(V)が、トリアリールアミン(TAA)、置換TAA、トリフェニルアミン、置換トリフェニルアミン、トリエチルアミン及び置換トリエチルアミンから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記官能化材料が、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO
2、SnO
2、NiO
x、CuO、ZnO、Zn
2SO
4、WO
3、In
2O
3、SrTiO
3、Nb
2O
5、BaSnO
3、Y:SnO
2、Cu:NiO
x、C
60、C
70、PC
61BM、PC
71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含み、
各々が、独立して、(i)式中、R
1aは、C
1-C
4アルキルである、式(I)若しくはその塩のうちの1つ以上、(ii)式中、R
2aは、C
1-C
27アルキルであり、M
+
2aは、Na
+、K
+、若しくはLi
+である、式(II)のうちの1つ以上、(iii)トリエチルアミン、又は(iv)それらの組み合わせで官能化されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記官能化材料が、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO
2、SnO
2、NiO
x、CuO、ZnO、Zn
2SO
4、WO
3、In
2O
3、SrTiO
3、Nb
2O
5、BaSnO
3、C
60、C
70、PC
61BM、PC
71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、式(I)又はその塩のうちの1つ以上で官能化され、式中、R
1aは、C
1-C
4アルキ(alky)である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記官能化材料が、TiO
2、ZnO、Y:SnO
2、Cu:NiO
x、NiO
x、又はSnO
2のうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、アセタート、プロピオナート、トリエチルアミン、Na C
18アルキルキサンタート、Na C
12アルキルキサンタート、又はそれらの組み合わせで官能化されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記官能化材料が、TiO
2、ZnO、NiO
x、又はSnO
2のうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、アセタート又はプロピオナートの一方又は両方で官能化されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、プロトン性溶媒、無水プロトン性溶媒、無水メタノール、無水エタノール、無水イソプロパノール、無水C
1-10アルコール、THF、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、無水エーテル、エーテル、クロロベンゼン(CB)、又はそれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記堆積させるステップが、ブレードコーティング、スピンコーティング、スロットダイ、グラビア、フレキソ、スプレー、又はインクジェットのうちの1つ以上によって実行される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記堆積させるステップが、ブレードコーティングによって実行される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記加熱するステップが、アニーリング又は高強度パルス光(IPL)を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記加熱するステップが、約80℃~約120℃で約5~約20分間加熱することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記加熱するステップが、前記1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を除去する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記除去するステップが生じる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記除去するステップが、熱によるか、又は高強度パルス光(IPL)によって生じる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
(i)前記加熱するステップが、前記1つ以上の官能化用化合物の一部を除去し、(ii)前記除去するステップが、生じ、前記1つ以上の官能化用化合物の残りの一部又は全部を更に除去する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ペロブスカイト層が、CH
3NH
3PbX
3、CH
3NH
3PbI
3、H
2NCHNH
2PbX
3、CH
3NH
3SnX
3、又はCs
a(CH
5NH
3)
b(CH
3NH
3)
cPbI
3(1-y)Br
3yのうちの1つ以上を含み、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲンであり、aは、約0~約0.5であり、bは、約0~約0.8であり、cは、約0~約0.8であり、yは、約0~約1である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記PSCが、p-i-n型デバイスである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記PSCが、n-i-p型デバイスである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ペロブスカイト層が、アノード、正孔輸送層(HTL)、又はカソードのうちの1つ以上を更に含む構造の一部である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ペロブスカイト層が、アノード、電子輸送層(ETL)、又はカソードのうちの1つ以上を更に含む構造の一部である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、カソードを追加することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、カソードを追加することを更に含み、前記カソードを追加するための前記方法が、スクリーン印刷、熱蒸着、スパッタリング、又は原子層堆積である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、カソードを追加することを更に含み、前記カソードを追加するための前記方法が、熱蒸着である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記方法が、カソードを追加することを更に含み、前記カソードが、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記方法が、カソードを追加することを更に含み、前記カソードが、Ag、Al、又はCuである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記PSCが、約0.7V~約1.3Vの開路電圧(Voc)を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記PSCが、約35%~約80%のフィルファクタ(FF)を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記PSCが、約10mA/cm
2~約25mA/cm
2の電流密度(J
sc)を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記PSCが、約4%~約20%の電力変換効率(PCE)を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記PSCが、可撓性PSCである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
先行請求項のいずれか一項に従って作製された、PSC。
【請求項48】
アノード、正孔輸送層(HTL)、請求項1~46のいずれか一項に従って調製された、電子輸送層(ETL)及びペロブスカイト層、並びにカソードを含む、請求項47に記載のPSC。
【請求項49】
前記アノードが、ITO/ガラス又はFTL/ガラスである、請求項48に記載のPSC。
【請求項50】
前記HTLが、NiO
x、PTAA又はPTAA/PFNである、請求項48又は49に記載のPSC。
【請求項51】
前記ペロブスカイト層が、CH
3NH
3PbX
3、CH
3NH
3PbI
3、H
2NCHNH
2PbX
3、又はCH
3NH
3SnX
3のうちの1つ以上であり、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲンである、請求項48~50のいずれか一項に記載のPSC。
【請求項52】
前記カソードが、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuである、請求項48~51のいずれか一項に記載のPSC。
【請求項53】
前記カソードが、Ag、Al、又はCuである、請求項48~52のいずれか一項に記載のPSC。
【請求項54】
アノード、ETL、請求項1~46のいずれか一項に従って調製された、HTL及びペロブスカイト層、並びにカソードを含む、請求項47に記載のPSC。
【請求項55】
前記アノードが、ITO/ガラスである、請求項54に記載のPSC。
【請求項56】
前記ETLが、SnO
2、TiO
2、又はZnOである、請求項54又は55に記載のPSC。
【請求項57】
前記ペロブスカイト層が、CH
3NH
3PbX
3、CH
3NH
3PbI
3、H
2NCHNH
2PbX
3、又はCH
3NH
3SnX
3のうちの1つ以上であり、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲンである、請求項54~56のいずれか一項に記載のPSC。
【請求項58】
前記カソードが、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuである、請求項54~57のいずれか一項に記載のPSC。
【請求項59】
前記カソードが、Ag、Al、又はCuである、請求項54~58のいずれか一項に記載のPSC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年9月21日出願の「Solar cells,methods for making,and methods for using」と題された米国仮特許出願第63/261,441号の利益を主張する。
【0002】
政府の権利
本発明は、米国エネルギー省によって授与されたDE-EE0008752号の下、政府支援を受けてなされたものである。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
いくつかのペロブスカイト太陽電池(PSC)が知られている。しかしながら、PSCの作製方法は、溶媒不適合性、加工温度などであるが、これらに限定されない、制限を有し、これにより、ペロブスカイト層への損傷をもたらす場合があり得る。
【0004】
本発明の特定の実施形態は、上述の欠陥のうちの1つ以上に対処する。本発明のいくつかの実施形態は、ペロブスカイト太陽電池(PSC)を調製するための独創的な方法を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、官能化材料(例えば、1つ以上の官能化用化合物で官能化されている材料)を溶媒中に溶解させることと、堆積組成物をペロブスカイト層上に堆積させることであって、堆積組成物が溶解した官能化材料を含む、堆積させることと、堆積組成物を加熱することと、任意選択的に、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を堆積組成物から除去することと、を含む。本発明の追加の実施形態もまた、本明細書に開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態は、ペロブスカイト太陽電池(PSC)を調製するための方法を含み、本方法は、官能化材料を溶媒中に溶解させることであって、官能化材料が、1つ以上の官能化用化合物で官能化されている材料である、溶解させることと、ペロブスカイト層上に堆積組成物を堆積させることであって、堆積組成物が、溶解した官能化材料を含む、堆積させることと、堆積組成物を加熱することと、任意選択的に、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を堆積組成物から除去することと、を含む。
【0006】
他の実施形態では、官能化材料の材料は、有機材料、金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含む。
【0007】
ある特定の実施形態では、材料は、1つ以上のドーピング物質を含む。他の実施形態では、1つ以上のドーピング物質は、Zr、Sb、Li、Mg、Y、Nb、Cu、又はMoを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、官能化材料の材料は、有機材料、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、Y:SnO2、Cu:NiOx、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含む。更に他の実施形態では、官能化材料の材料は、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、Y:SnO2、Cu:NiOx、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含む。更なる他の実施形態では、官能化材料の材料は、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、Y:SnO2、又はCu:NiOxのうちの1つ以上を含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、官能化材料の材料は、SnO2、NiOx、Y:SnO2、又はCu:NiOxのうちの1つ以上を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、1つ以上の官能化用化合物は、
(1)R
1a-CO-OH(I)、
又はその塩であって、式中、R
1aは、置換又は非置換アルキルである、(I)又はその塩、
(2)R
2a-O-CS
2
-M
+
2a(II)であって、
式中、R
2aは、置換又は非置換アルキルであり、M
+
2aは、カチオンである、(II)、
【化1】
であって、
式中、X
3は、アニオンであり、R
3a、R
3c、R
3d、及びR
3eは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり、R
3bは、H、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートである、(IIIa)又は(IIIb)、
【化2】
であって、
式中、X
4は、アニオンであり、R
4a、R
4c、R
4d、R
4e、R
4f、及びR
4gは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり、R
4bは、H、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートである、(IVa)又は(IVb)、
【化3】
であって、
式中、R
5a、R
5b、及びR
5cは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換アリールである、(V)、
【化4】
であって、
式中、R
6b、R
6c、及びR
6dは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換アルキル、又は置換若しくは非置換アリールであり、R
6aは、H、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アリールであり、R
6a置換アルキルは、任意選択的に、1つ以上の置換若しくは非置換ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートで置換されており、R
6a置換アリールは、任意選択的に、1つ以上の置換若しくは非置換ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートで置換されている、(VI)、あるいは
(7)R
7a-NH-CS
2
-M
+
7a(VII)であって、
式中、R
7aは、置換又は非置換アルキルであり、M
+
2aは、カチオンである、(VII)のうちの1つ以上である。
【0011】
ある特定の実施形態では、R1aは、置換又は非置換C1-C8アルキル、メチル、エチル、プロピル、又はブチルである。他の実施形態では、R2aは、置換若しくは非置換アルキルC1-C36アルキル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、若しくはオクタデシルであるか、M+
2aは、Na+、K+、若しくはLi+であるか、又はそれらの組み合わせである。更に他の実施形態では、X3は、Cl-、Br-、I-、BF4
-、PF6
-、又はCF3SO3
-であるか、R3a、R3c、R3d、及びR3eは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルであるか、R3bは、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル、置換若しくは非置換フェニル、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR3f、-CH2OR3f、-CH2NHR3f、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートであるか、R3fは、H、置換又は非置換C1-C8アルキルであるか、あるいはそれらの組み合わせである。更なる他の実施形態では、X4は、Cl-、Br-、I-、BF4
-、PF6
-、又はCF3SO3
-であるか、R4a、R4c、R4d、R4e、R4f、及びR4gは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルであるか、R4bは、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル、置換若しくは非置換フェニル、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR4h、-CH2OR4h、-CH2NHR4h、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートであるか、R4hは、H、置換又は非置換C1-C8アルキルであるか、あるいはそれらの組み合わせである。ある特定の実施形態では、R5a、R5b、及びR5cは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルである。他の実施形態では、R6b、R6c、及びR6dは、同じであるか又は異なり、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル、又は置換若しくは非置換フェニルであるか、R6aは、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル、置換若しくは非置換フェニルであり、R6a置換アルキルは、任意選択的に、1つ以上の-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR6e、-CH2OR6e、-CH2NHR6e、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートで置換されており、R6a置換アリールは、任意選択的に、1つ以上の-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR6e、-CH2OR6e、-CH2NHR6e、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、又はチオレートで置換されており、R6eは、H、置換又は非置換C1-C8アルキルであるか、あるいはそれらの組み合わせである。他の実施形態では、R7aは、置換若しくは非置換アルキルC1-C36アルキル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、若しくはオクタデシルであるか、M+
7aは、Na+、K+、若しくはLi+であるか、又はそれらの組み合わせである。
【0012】
いくつかの実施形態では、式(IIIb)は、
【化5】
である。
【0013】
ある特定の実施形態では、式(V)は、トリアリールアミン(TAA)、置換TAA、トリフェニルアミン、置換トリフェニルアミン、トリエチルアミン及び置換トリエチルアミンから選択される。
【0014】
他の実施形態では、官能化材料は、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、Y:SnO2、Cu:NiOx、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、(i)式中、R1aは、C1-C4アルキルである、式(I)のうちの1つ以上、若しくはその塩、(ii)式中、R2aは、C1-C27アルキルであり、M+
2aは、Na+、K+、若しくはLi+である、式(II)のうちの1つ以上、(iii)トリエチルアミン、又は(iv)それらの組み合わせで官能化されている。更なる他の実施形態では、官能化材料が、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、式(I)又はその塩のうちの1つ以上で官能化され、式中、R1aは、C1-C4アルキ(alky)である。更に他の実施形態では、官能化材料は、TiO2、ZnO、Y:SnO2、Cu:NiOx、NiOx、又はSnO2のうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、アセタート、プロピオナート、トリエチルアミン、Na C18アルキルキサンタート、Na C12アルキルキサンタート、又はそれらの組み合わせで官能化されている。ある特定の実施形態では、官能化材料は、TiO2、ZnO、NiOx、又はSnO2のうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、アセタート又はプロピオナートの一方又は両方で官能化されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、溶媒は、プロトン性溶媒、無水プロトン性溶媒、無水メタノール、無水エタノール、無水イソプロパノール、無水C1-10アルコール、THF、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、無水エーテル、エーテル、クロロベンゼン(CB)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、堆積させるステップは、ブレードコーティング、スピンコーティング、スロットダイ、グラビア、フレキソ、スプレー、又はインクジェットのうちの1つ以上によって実行される。更なる他の実施形態では、堆積させるステップは、ブレードコーティングによって実行される。
【0017】
いくつかの実施形態では、加熱するステップは、アニーリング又は高強度パルス光(IPL)を含む。他の実施形態では、加熱するステップは、約80℃~約120℃で約5~約20分間加熱することを含む。更なる他の実施形態では、加熱するステップは、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を除去する。
【0018】
いくつかの実施形態では、除去するステップが生じる。他の実施形態では、除去するステップは、熱によるか、又は高強度パルス光(IPL)によって生じる。
【0019】
他の実施形態では、(i)加熱するステップは、1つ以上の官能化用化合物の一部を除去し、(ii)除去するステップが、生じ、1つ以上の官能化用化合物の残りの一部又は全部を更に除去する。
【0020】
いくつかの実施形態では、ペロブスカイト層は、CH3NH3PbX3、CH3NH3PbI3、H2NCHNH2PbX3、CH3NH3SnX3、又はCsa(CH5NH3)b(CH3NH3)cPbI3(1-y)Br3yのうちの1つ以上を含み、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲンであり、aは、約0~約0.5であり、bは、約0~約0.8であり、cは、約0~約0.8であり、yは、約0~約1である。
【0021】
ある特定の実施形態では、PSCは、p-i-n型デバイスである。他の実施形態では、PSCは、n-i-p型デバイスである。
【0022】
いくつかの実施形態では、ペロブスカイト層は、アノード、正孔輸送層(HTL)、又はカソードのうちの1つ以上を更に含む構造の一部である。他の実施形態では、ペロブスカイト層は、アノード、電子輸送層(ETL)、又はカソードのうちの1つ以上を更に含む構造の一部である。
【0023】
ある特定の実施形態では、本方法は、カソードを追加することを更に含む。他の実施形態では、本方法は、カソードを追加することを更に含み、カソードを追加するための方法は、スクリーン印刷、熱蒸着、スパッタリング、又は原子層堆積である。更に他の実施形態では、本方法は、カソードを追加することを更に含み、カソードを追加するための方法は、熱蒸着である。いくつかの実施形態では、本方法は、カソードを追加することを更に含み、カソードは、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuである。ある特定の実施形態では、方法は、カソードを追加することを更に含み、カソードは、Ag、Al、又はCuである。
【0024】
いくつかの実施形態では、PSCは、約0.7V~約1.3Vの開路電圧(Voc)を有する。ある特定の実施形態では、PSCは、約35%~約80%のフィルファクタ(fill factor)(FF)を有する。他の実施形態では、PSCは、約10mA/cm2~約25mA/cm2の電流密度(Jsc)を有する。更なる他の実施形態では、PSCは、約4%~約20%の電力変換効率(PCE)を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、PSCは、可撓性PSCである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に開示される任意の方法に従って作製されたPSCを含む。ある特定の実施形態では、PSCは、アノード、正孔輸送層(HTL)、本明細書(例えば、元の請求項1)に開示される任意の方法に従って調製された、電子輸送層(ETL)及びペロブスカイト層、並びにカソードを含む。ある特定の実施形態では、アノードは、ITO/ガラス又はFTL/ガラスである。他の実施形態では、HTLは、NiOx、PTAA又はPTAA/PFNである。いくつかの実施形態では、ペロブスカイト層は、CH3NH3PbX3、CH3NH3PbI3、H2NCHNH2PbX3、又はCH3NH3SnX3のうちの1つ以上であり、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲンである。更に他の実施形態では、カソードは、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuである。更なる他の実施形態では、カソードは、Ag、Al、又はCuである。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に開示される任意の方法に従って作製されたPSCを含む。ある特定の実施形態では、PSCは、アノード、ETL、本明細書(例えば、元の請求項1)に開示される任意の方法に従って調製された、HTL及びペロブスカイト層、並びにカソードを含む。いくつかの実施形態では、アノードは、ITO/ガラス又はFTL/ガラスである。他の実施形態では、ETLは、SnO2、TiO2、又はZnOである。更に他の実施形態では、ペロブスカイト層は、CH3NH3PbX3、CH3NH3PbI3、H2NCHNH2PbX3、又はCH3NH3SnX3のうちの1つ以上であり、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲンである。ある特定の実施形態では、カソードは、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuである。更なる他の実施形態では、カソードは、Ag、Al、又はCuである。
【0028】
本発明の他の実施形態もまた、本明細書で考察される。
【0029】
本特許又は出願書類には、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラーの図面(複数可)を含む本特許又は特許出願公開の複写は、請求及び必要な料金の支払いに応じて、庁によって提供されるであろう。
【0030】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様を更に実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することにより、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】含水SnO
2の合成(a)、SnO
2-Aを生じるための、含水SnO
2の酢酸での官能化(b)、無水エタノール中での安定コロイド分散体の調製(c)、XRD回折パターン(d)、並びに含水SnO
2及びSnO
2-AのFTIRスペクトル(e)の概略図。
【
図2】XRDパターン(a)、光発光スペクトル(b)、及びSnO
2-Aの堆積前後のCH
3NH
3PbI
3ペロブスカイトフィルムの時間分解光発光データ(c)。
【
図3】ペロブスカイト上のSnO
2-Aのブレードコーティングの概略図(a)及びフルデバイスの断面SEM画像(b)。
【
図4】ペロブスカイトフィルムの表面にSnO
2-Aを有するp-i-n PSCのデバイス構造(a)、チャンピオンデバイスのJ-V曲線(b)、及び対応する太陽光発電パラメータ(c)。
【
図5】カプセル化されていないp-i-nデバイスの、窒素フローボックス内で40日間保管する前(1)及び保管した後(2)の安定性試験J-V特性。
【
図7】NiO
x粒子のSEM画像。(a)粒子凝集を示す、調製されたNiO
x粉末。(b)小粒子の均一分散を示す0Xインクを使用して調製されたNiO
xフィルム。スケールバーは、1μmである。
【
図8】(a)インク中のNiO
xへの12Xの配位を示す、1mm石英セル中の同じ溶媒系における12X配位子、12Xインク、及び0XインクのUV-Vis。(b)インク中のNiO
xへの12Xの配位を示す、粉末としての12X配位子及びフィルムとしての12XインクのFT-IR。
【
図9】(a)300℃を超える温度におけるキサンタートの分解を裏付ける、固体としての12X配位子及び厚膜としての12XインクのTGA。(b~d)キサンタート配位子の存在下でのフィルム均一性の変化を示す、ブレードコーティングによって調製された0X、12X、及び18XフィルムのSEM画像。スケールバーは5μmである。
【
図10】(a~d)0X~18Xインクで調製された0.25cm
2セルの太陽光発電パラメータの統計比較。(e)想定されたエネルギーアライメント(eV)を有するp-i-nデバイススタックの概略図。
【
図11】0X及び18Xインクで調製された1cm
2デバイスのJ-V曲線。
【
図12】(a)n-i-pデバイスの概略図。(b)0Xコーティングされたペロブスカイトの光学画像。(c)NiO
xコーティング前のペロブスカイトフィルムの光学画像。(d)調製されたペロブスカイトフィルム(赤色)、及び9.5°において新たなピークの形成を示す、0Xインクの堆積後のペロブスカイトフィルム(灰色)のPXRD。
【
図13】CuドープされたNiO
xナノ粒子及びドープされていないNiO
xナノ粒子のPXRD。29における余分なピークは、硝酸ナトリウムであり、更なる洗浄によって、完全に除去されている。
【
図14】1週間にわたるそのままの劣化による粒子平均サイズの変化。
【
図15】最も高い予備成形NiO
x及びCuドープされたフィルムのJV曲線。値は、表C1に要約する。
【
図16】(a)Y:SnO
2のエネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトル。(b)元のSnO
2及びY:SnO
2のXRDパターン。Y:SnO
2ナノ粒子中に存在する、(c)スズ、(d)酸素、及び(e)イットリウムの元素マッピング。
【
図17】SnO
2及びY:SnO
2フィルムのXPSスペクトル(a)XPS実測スペクトル、(b)Sn 3dの高分解能XPSスペクトル(曲線は、フィッティングされていないSn 3d曲線(実線)、フィッティング後の曲線(中破線)、Sn 3d
5/2に対してフィッティングされた曲線(長破線)、及びSn 3d
3/2に対してフィッティングされた曲線(短破線)を表す)、及び(c)XPSスペクトルY 3d。
【
図18】(a)無水エタノール中でのY:SnO
2の官能化及び官能化Y:SnO
2の希釈、(b)ブレードコーティングの概略図、(c)Y:SnO
2堆積前のペロブスカイトフィルムのSEM画像、及び(d)Y:SnO
2堆積後のペロブスカイトフィルムのSEM画像。
【
図19】SnO
2-Aの堆積前後の(a)XRD回折パターン及び(b)ペロブスカイトフィルムのUV-Visスペクトル。
【
図20】PET/ペロブスカイト、PET/ペロブスカイト/SnO
2-A及びPET/ペロブスカイト/Y:SnO
2-A試料の定常状態PLスペクトル。
【
図21】イットリウムのドーピング濃度に対するデバイス性能統計。太陽光発電パラメータ(a)V
OC、(b)J
SC、(c)FF、及び(d)PCE。
【
図22】(a)f-PSCのデジタル画像、(b)チャンピオン0.1cm
2デバイスのJ-V曲線、及び(c)Y:SnO
2-AデバイスのJ-Vヒステリシス。
【
図23】YドープされたSnO
2を調製するための例示的なスキーム。
【
図24】YドープされたSnO
2のJ-V特性の分析-平均電流密度(J
sc)及びフィルファクタ(FF)パーセント。
【
図25】YドープされたSnO
2のJ-V特性の分析-電位(V
OC)及び電力変換効率(PCE)パーセント。
【
図26】(a)堆積され、NiO
xトップフィルムを有するMAPIのPXRD。(b)MAPI、MAPI/NiO
x、及びMAPI/NiO
x/PAの光発光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一般的な発明概念を包含する実施形態は多様な形態をとり得るが、本開示は単に例示的であるとみなされるべきであり、一般的な発明概念は、開示された実施形態に限定されることを意図するものではないことを理解して、様々な実施形態が本明細書に記載される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態は、ペロブスカイト太陽電池(PSC)を調製するための独創的な方法を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、官能化材料(例えば、1つ以上の官能化用化合物で官能化されている材料)を溶媒中に溶解させることと、堆積組成物をペロブスカイト層上に堆積させることであって、堆積組成物が溶解した官能化材料を含む、堆積させることと、堆積組成物を加熱することと、任意選択的に、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を堆積組成物から除去することと、を含む。本発明の追加の実施形態もまた、本明細書に開示される。
【0034】
本明細書で使用される場合(別段の指定がない限り)、「アルキル」という用語は、一価、直鎖又は分岐した炭化水素鎖を意味する。例えば、「C1-C7アルキル」又は「C1-C4アルキル」という用語は、それぞれ、1~7(例えば、1、2、3、4、5、6、又は7)、又は1~4(例えば、1、2、3、又は4)個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。C1-C7アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、n-ヘキシル、及びn-セプチルが挙げられるが、これらに限定されない。C1-C4アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、及びt-ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される場合(別段の指定がない限り)、「アルコキシ」という用語は、酸素原子によって分子の残りに結合されている上記のアルキル基(アルキル-O-)のいずれかを意味する。アルコキシ基の例としては、メトキシ(MeO-として示される場合もある)、エトキシ、イソプロポキシ、プロポキシ、及びブチルオキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される場合(別段の指定がない限り)、「アリール」という用語は、非置換の場合、一価、単環式又は二環式の、5、6、7、8、9、10、11、又は12員芳香族炭化水素基を意味する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、トリル、及びキシリルが挙げられるが、これらに限定されない。置換として表す二環式のアリールの場合、一方又は両方の環が置換され得る。
【0037】
本明細書で使用される場合(別段の指定がない限り)、「ハロゲン」という用語は、一価のCl、F、Br、又はIを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合(別段の指定がない限り)、「ヘテロ原子」という用語は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選択された原子を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合(別段の指定がない限り)、「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」という用語は、一価の-OH基の存在を示す。
【0040】
本明細書で使用される場合(別段の指定がない限り)、「ルイス塩基」という用語は、結合に関与しないが、別の化学物質(例えば、電子対を受け入れることができる空軌道を有する化学物質)との配位結合(すなわち、2つの電子が同じ原子に由来する2中心2電子共有結合)を形成し得る電子対を含有する充填軌道を有する任意の化学種を意味する。いくつかのルイス塩基は、従来のアミン(例えば、アンモニア及びアルキルアミン)又はピリジン及びその誘導体であり得る。ルイス塩基のいくつかのクラスは、(a)アミン(例えば、Rが、独立に、H、アルキル、若しくはアリールである、NR3)、(b)ホスフィン(例えば、Rが、独立に、アルキル若しくはアリールである、PR3)、又は(c)酸化状態-2のO、S、Se、及びTeの化合物(例えば、水、エーテル、又はケトン)である。ルイス塩基の他の例としては、(a)H-及びF-などの単純なアニオン、(b)H2O、NH3、HO-及びCH3
-などの孤立電子対含有種、(c)サルフェートなどの複合アニオン、並びに(d)エチン、エテン、及びベンゼンなどの電子豊富なπ系が挙げられる。ルイス塩基の他の例としては、Et3N、キヌクリジン、ピリジン、アセトニトリル、Et2O、THF、アセトン、EtOAc、DMA、DMSO、テトラヒドロチオフェン、及びトリメチルホスフィンが挙げられる。ルイス塩基は、一価部分であり得る。ルイス塩基は、置換又は非置換であり得る。
【0041】
本明細書で使用される場合(別段の指定がない限り)、(例えば、置換アルキル(substituted alkyl)におけるような)「置換された(substituted)」という用語は、(1つ以上の水素原子を有する)化学基の1つ以上の水素原子が、指定された選択肢から選択された1つ以上の非水素置換基によって置換され得ることを意味する。置換は、1つ以上の位置で生じ得る。「任意選択的に置換された(optionally substituted)」という用語は、(1つ以上の水素原子を有する)化学基の1つ以上の水素原子が置換され得るが、置換される必要はないことを意味する。非水素置換基としては、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)、ヒドロキシ(-OH)、メタノイル(-COH)、-COCH3、カルボキシ(-CO2H)、エチニル(-CCH)、シアノ(-CN)、スルホ(-SO3H)、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、ペルフルオロエチル、アミン、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、アミド、ルイス塩基、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、チオレート、アルデヒド、C(O)OH、C(O)NHR、-CH2OR、又は-CH2NHRが挙げられるが、これらに限定されず、式中、Rは、H、非置換アルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、若しくはC8アルキル)又は(例えば、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、又はI)、ヒドロキシ(-OH)、メタノイル(-COH)、-COCH3、カルボキシ(-CO2H)、エチニル(-CCH)、シアノ(-CN)、スルホ(-SO3H)、メチル、エチル、ペルフルオロメチル、ペルフルオロエチル、アミン、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、アミド、若しくはアルデヒドのうちの1つ以上と)置換されたアルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、若しくはC8アルキル)であり得る。
【0042】
ペロブスカイト太陽電池(PSC)を調製するための方法
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されるような、ペロブスカイト太陽電池(PSC)を調製するための方法を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、(a)官能化材料を溶媒中に溶解させることであって、官能化材料が、1つ以上の官能化用化合物で官能化されている材料である、溶解させることと、(b)堆積組成物(例えば、インク)をペロブスカイト層上に堆積させる(例えば、層にする)ことであって、堆積組成物が、溶解した官能化材料を含む、堆積させることと、(c)ペロブスカイト層上の堆積組成物を加熱することと、(d)任意選択的に、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を除去することと、を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、官能化材料の材料は、任意の好適な材料であり得る。ある特定の実施形態では、官能化材料の材料は、有機材料、金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上であり得る。NiOxは、NiO(Ni2+)、Ni2O3(Ni3+)及び/又はNiOとNi2O3の混合物を指す。いくつかの実施形態では、官能化材料の材料は、有機材料、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、Y:SnO2、Cu:NiOx、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上であり得る。他の実施形態では、材料は、任意の好適なドーピング物質(例えば、Zr、Sb、Li、Mg、Y、Nb、Cu、又はMo)のうちの1つ以上を使用してドープされ得る。ドープされている材料は、Cu:NiOx又はY:SnO2であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、材料は、SnO2、NiOx、Cu:NiOx、又はY:SnO2であり得る。いくつかの実施形態では、材料(例えば、ドープされている材料)は、1つ以上の官能化用化合物(例えば、1つ以上の好適な官能化用化合物)で官能化され得る(例えば、材料は、共有結合及び/又はイオン結合を使用して、1つ以上の官能化用化合物に結合される)。他の実施形態では、材料(例えば、ドープされている材料)は、以下の官能化用化合物(例えば、式(I)、(II)、(IIIa)、(IIIb)、(IVa)、(IVb)、(V)、(VI)、又は(VI)から選択された1つ以上)のうちの1つ以上で官能化され得る(例えば、材料は、共有結合、イオン結合、又はその両方を使用して、1つ以上の官能化用化合物に結合される)。
【0044】
(1)R
1a-CO-OH(I)であって、
又はその塩(例えば、カチオンが、例えば、Na
+、K
+、Li
+、Mg
2+、Ca
2+、又は任意の好適なカチオンであり得る場合)であり、式中、R
1aは、置換又は非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、若しくはC
8アルキル、又はメチル、エチル、プロピル、又はブチル)であり得る、(I)、
(2)R
2a-O-CS
2
-M
+
2a(II)であって、
式中、R
2aは、置換又は非置換アルキル(例えば、C
1-C
18アルキル、C
1-C
27アルキル、C
1-C
36アルキル、又はC
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9、C
10、C
11、C
12、C
13、C
14、C
15、C
16、C
17、C
18、C
19、C
20、C
21、C
22、C
23、C
24、C
25、C
26、C
27、C
28、C
29、C
30、C
31、C
32、C
33、C
34、C
35、若しくはC
36アルキル又は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、又はオクタデシル)であり得、M
+
2aは、任意の好適なカチオン(例えば、Na
+、K
+、又はLi
+)であり得る、(II)、
【化6】
(例えば、イミダゾール及びそのイミダゾリウム塩)であって、式中、X
3は、Cl
-、Br
-、I
-、BF
4
-、PF
6
-、CF
3SO
3
-、又は任意の好適なアニオンであり得る、(IIIa)又は(IIIb)。R
3a、R
3c、R
3d、及びR
3eは、同じであり得るか又は異なり得、H、置換若しくは非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)、又は置換若しくは非置換アリール(例えば、フェニル)であり得る。R
3bは、H、置換若しくは非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、若しくはC
8アルキル)、置換若しくは非置換アリール(例えば、フェニル)、(例えば、-C(O)H、C(O)OH、-C(O)NHR
3f、-CH
2OR
3f、若しくは-CH
2NHR
3fなどの、アミン、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、アミド、若しくはアルデヒドで)置換若しくは非置換ルイス塩基、又は荷電官能基(例えば、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、若しくはチオレート)であり得る。R
3fは、H、置換又は非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)であり得る。式(IIIb)のいくつかの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【化7】
式中、R
3cは、H又は非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)であり、R
3fは、H又は非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)であり、X
3は、Cl
-、Br
-、I
-、BF
4
-、PF
6
-、又はCF
3SO
3
-であり、
【化8】
(例えば、ベンズイミダゾール及びそのベンズイミダゾリウム塩)。X
4は、Cl
-、Br
-、I
-、BF
4
-、PF
6
-、CF
3SO
3
-、又は任意の好適なアニオンであり得る。R
4a、R
4c、R
4d、R
4e、R
4f、及びR
4gは、同じであり得るか又は異なり得、H、置換若しくは非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)、又は置換若しくは非置換アリール(例えば、フェニル)であり得る。R
4bは、H、置換若しくは非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、若しくはC
8アルキル)、置換若しくは非置換アリール(例えば、フェニル)、(例えば、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR
4h、-CH
2OR
4h、若しくは-CH
2NHR
4hなどの、アミン、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、アミド、若しくはアルデヒドで)置換ルイス塩基、又は荷電官能基(例えば、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、若しくはチオレート)であり得る。R
4hは、H、置換又は非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)であり得、
【化9】
R
5a、R
5b、及びR
5cは、同じであり得るか又は異なり得、H、置換若しくは非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)、又は置換若しくは非置換アリール(例えば、フェニル)であり得る。式(V)の例としては、トリアリールアミン(TAA)、置換TAA、トリフェニルアミン、置換トリフェニルアミン、トリエチルアミン及び置換トリエチルアミンが挙げられ、
【化10】
(例えば、2-ピロリジノン)、R
6b、R
6c、及びR
6dは、同じであり得るか又は異なり得、H、置換若しくは非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、若しくはC
8アルキル)、又は置換若しくは非置換アリール(例えば、フェニル)であり得る。R
6aは、H、置換又は非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)、置換又は非置換アリール(例えば、フェニル)であり得る。R
6a置換アルキルは、任意選択的に、(例えば、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR
6e、-CH
2OR
6e、若しくは-CH
2NHR
6eなどの、アミン、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、アミド、若しくはアルデヒドを有する)ルイス塩基又は荷電官能基(例えば、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、若しくはチオレート)で1つ以上で置換され得る。R
6a置換アリールは、任意選択的に、(例えば、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NHR
6e、-CH
2OR
6e、若しくは-CH
2NHR
6eなどの、アミン、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、アミド、若しくはアルデヒドを有する)ルイス塩基又は荷電官能基(例えば、四級窒素塩、カルボキシラート、キサンタート、アルコキシド、若しくはチオレート)で1つ以上で置換され得る。R
6eは、H、置換若しくは非置換アルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、又はC
8アルキル)であり得るか、又は、
(7)R
7a-NH-CS
2
-M
+
7a(VII)、
式中、R
7aは、置換又は非置換アルキル(例えば、C
1-C
18アルキル、C
1-C
27アルキル、C
1-C
36アルキル、又はC
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9、C
10、C
11、C
12、C
13、C
14、C
15、C
16、C
17、C
18、C
19、C
20、C
21、C
22、C
23、C
24、C
25、C
26、C
27、C
28、C
29、C
30、C
31、C
32、C
33、C
34、C
35、若しくはC
36アルキル又は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、又はオクタデシル)であり得、M
+
7aは、任意の好適なカチオン(例えば、Na
+、K
+、又はLi
+)であり得る。
【0045】
ある特定の実施形態では、官能化材料は、有機材料、金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、R-CO-OHのうちの1つ以上で官能化され得、式中、Rは、C1-C4アルキ又はその塩であり得る。更なる他の実施形態では、官能化材料は、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、Y:SnO2、Cu:NiOx、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、(i)式(I)のうちの1つ以上、若しくはその塩であり、式中、R1aは、C1-C4アルキルである、化合物(i)、(ii)式(II)のうちの1つ以上であり、式中、R2aは、C1-C27アルキルであり、M+
2aは、Na+、K+、若しくはLi+である、化合物(ii)、(iii)トリエチルアミン、又は(iv)それらの組み合わせで官能化されている。更に他の実施形態では、官能化材料が、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、TiO2、SnO2、NiOx、CuO、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、式(I)又はその塩のうちの1つ以上で官能化され、式中、R1aは、C1-C4アルキである。ある特定の実施形態では、官能化材料は、TiO2、ZnO、Y:SnO2、Cu:NiOx、NiOx、又はSnO2のうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、アセタート、プロピオナート、トリエチルアミン、Na C18アルキルキサンタート、Na C12アルキルキサンタート、Na C4キサンタート、Naキサンタート、又はそれらの組み合わせで官能化されている。ある特定の実施形態では、官能化材料は、TiO2、ZnO、Y:SnO2、Cu:NiOx、NiOx、又はSnO2のうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、アセタート、プロピオナート、トリエチルアミン、Na C18アルキルキサンタート、Na C12アルキルキサンタート、又はそれらの組み合わせで官能化されている。他の実施形態では、官能化材料は、TiO2、ZnO、NiOx、又はSnO2のうちの1つ以上を含み、各々が、独立して、アセタート又はプロピオナートの一方又は両方で官能化されている。いくつかの実施形態では、官能化材料は、C18アセタートで官能化されたNiOxを含まない。
【0046】
他の実施形態では、溶媒は、任意の好適なプロトン性溶媒、任意の好適な無水プロトン性溶媒、無水メタノール、無水エタノール、無水イソプロパノール、無水C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、又はC10アルコール、THF、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、任意の好適な無水エーテル、任意の好適なエーテル、クロロベンゼン(CB)、又はこれらの組み合わせなどであるが、これらに限定されない、任意の好適な溶媒を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、無水エタノール、無水イソプロパノール、クロロベンゼン(CB)、又はそれらの組み合わせを含む。他の実施形態では、溶媒は、ペロブスカイト層を分解させない(例えば、著しく及び/又は有害に分解させない)。いくつかの実施形態では、溶媒は、CBを含まない。いくつかの実施形態では、溶媒は、イソプロパノールを含まない。
【0047】
ある特定の実施形態では、堆積組成物は、溶解した官能化材料を含み、溶解した(例えば、完全に溶解した、又は部分的に溶解した)官能化材料は、官能化材料及び溶媒を含む。いくつかの実施形態では、官能化材料は、溶媒に完全に溶解することができる。更なる他の実施形態では、官能化材料は、溶媒に部分的に溶解することができる(例えば、総官能化材料の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、若しくは少なくとも99重量%溶解するか、又は総官能化材料の99.9重量%、99重量%、98重量%、95重量%、90重量%、重量85%、若しくは重量80%溶解する)。ある特定の実施形態では、堆積組成物中の官能化材料の濃度は、任意の好適な濃度(例えば、0.01~90.0、0.01~50.0、0.01~10.0、0.1~5.0、0.5~3.0%(m/v)、又は0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、80.0、又は90.0%(m/v)(又はg/100mL))であり得る。他の実施形態では、堆積組成物中の官能化材料の濃度は、任意の好適な濃度(例えば、堆積組成物の総重量に基づいて、0.01~99.9、0.01~50.0、0.01~10.0、0.1~5.0、0.5~3.0wt/wt%、又は0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、80.0、90.0、95.0、99.0、又は99.9wt/wt%)であり得る。更に他の実施形態では、堆積組成物(例えば、インク)は、任意の好適なドーピング物質(例えば、Zr、Sb、Li、Mg、Y、Nb、Cu又はMo)のうちの1つ以上を更に含む。本明細書に記載されるように、堆積組成物は、官能化材料を含み得、官能化材料は、1つ以上の官能化用化合物で官能化されている材料であり得る。他の実施形態では、材料は、任意の好適なドーピング物質(例えば、Zr、Sb、Li、Mg、Y、Nb、Cu、又はMo)のうちの1つ以上を使用してドープされている材料を包含し得る。ドープされている材料は、Cu:NiOx又はY:SnO2であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、材料(例えば、ドープされた材料)は、1つ以上の好適な官能化用化合物で官能化され得る(例えば、材料は、共有結合及び/又はイオン結合を使用して、1つ以上の官能化用化合物に結合される)。いくつかの実施形態では、堆積組成物は、CBに溶解されたC18アセタートで官能化されたNiOxを含まない。
【0048】
他の実施形態では、堆積させることは、任意の好適な堆積方法の1つ以上によって実行され得る。更に他の実施形態では、堆積させることは、ブレードコーティング、スピンコーティング、パルスレーザー堆積、電子ビーム蒸着、噴霧熱分解、同時スパッタリング、原子層堆積、スロットダイ、グラビア、フレキソ、スプレー、又はインクジェットのうちの1つ以上によって実行され得る。他の実施形態では、堆積させることは、ブレードコーティング、スピンコーティング、スロットダイ、グラビア、フレキソ、スプレー、又はインクジェットのうちの1つ以上によって実行され得る。更なる他の実施形態では、堆積させることは、ブレードコーティングによって実行され得る。ある特定の実施形態では、堆積組成物は、ペロブスカイト層上に積層される。いくつかの実施形態では、堆積組成物は、ペロブスカイト層が、堆積組成物によって少なくとも部分的に覆われるか、又は堆積組成物によって完全に覆われるように、ペロブスカイト層上に積層される。他の実施形態では、溶媒は、堆積させる間、ペロブスカイト層を分解させない(例えば、著しく及び/又は有害に分解させない)。ある特定の実施形態では、堆積させることは、原子層堆積、スパッタリング、又は蒸着などであるが、これらに限定されない、真空技術を使用しない。
【0049】
いくつかの実施形態では、加熱することは、ホットプレート、オーブン(例えば、対流オーブン)、又は高強度パルス光(IPL)(IPLの詳細及び方法の例は、2021年3月16日に登録された米国特許第10,950,794号に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)などであるが、これらに限定されない、任意の好適な加熱方法を使用して、達成され得る。更なる他の実施形態では、加熱することは、アニーリング(例えば、IPLによる)を含む。更なる他の実施形態では、加熱することは、高強度パルス光(IPL)によって加熱することを含む。更に他の実施形態では、加熱することは、(例えば、ホットプレート、オーブン(例えば、対流オーブン)、又はIPLを使用して)約80℃~約120℃(例えば、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、又は約120℃)で約5~約20分間(例えば、約5、約8、約10、約12、約15、又は約20分間)加熱することを含む。更に他の実施形態では、加熱することは、PSC(又は、作製中のPSC)の他の層を加熱し得る。更なる他の実施形態では、加熱することは、PSC(又は、作製中のPSC)の他の層を著しく加熱しない。ある特定の実施形態では、加熱することは、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を除去し得る。他の実施形態では、1つ以上の官能化用化合物の一部を除去することは、加熱するステップ中に生じ、1つ以上の官能化用化合物のより多くを除去すること(例えば、1つ以上の官能化用化合物の残りを除去すること、加熱するステップの残りを除去すること)は、(例えば、以下に説明するように)除去するステップ中に生じる。いくつかの例では、加熱することは、1つ以上の官能化用化合物のいずれも除去しない。他の実施形態では、溶媒は、加熱する間、ペロブスカイト層を分解させない(例えば、著しく及び/又は有害に分解させない)。
【0050】
いくつかの実施形態では、除去するステップは生じ、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を除去するための任意の好適な方法であり得、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を除去する(例えば、アセタート又はプロピオナートを除去する)。ある特定の実施形態では、1つ以上の官能化用化合物の一部又は全部を除去することは、高強度パルス光(IPL)によって、更に加熱すること(例えば、ホットプレート、オーブン(例えば、対流オーブン)、又はIPLを使用して)(例えば、加熱することは、約80℃~約120℃(例えば、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、又は約120℃)で約5~約20分間(例えば、約5、約8、約10、約12、約15、又は約20分間)加熱することを含む)によって、又はその両方によって生じる。他の実施形態では、溶媒は、除去する間、ペロブスカイト層を分解させない(例えば、著しく及び/又は有害に分解させない)。
【0051】
ある特定の実施形態では、ペロブスカイト層は、任意の好適なペロブスカイト層(例えば、ペロブスカイトフィルム)であり得る。他の実施形態では、ペロブスカイト層は、CH3NH3PbX3、CH3NH3PbI3、H2NCHNH2PbX3、CH3NH3SnX3、又はCsa(CH5NH3)b(CH3NH3)cPbI3(1-y)Br3yのうちの1つ以上を含み得、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲン(例えば、ヨウ化物、臭化物又は塩化物)であり、aは、約0~約0.5であり得、bは、約0~約0.8であり得、cは、約0~約0.8であり得、yは、約0~約1であり得る。他の好適なペロブスカイト層(例えば、ペロブスカイトフィルム)には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年3月16日に発行された米国特許第10,950,794号に開示されているものが含まれる。
【0052】
いくつかの実施形態では、PSCは、p-i-n型デバイスである。他の実施形態では、PSCは、n-i-p型デバイスである。これらのデバイスにおける、HTL又はETLなどの様々な層(及び、それらを作製する方法)の例は、例えば、(a)Pitchaiya et al.(2020)“A review on the classification of organic/inorganic/carbonaceous hole transporting materials for perovskite solar cell application”Arab.J.Chem.,Vol.13,pp.2526-2557(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)及び(b)Foo et al.(2022)“Recent review on electron transport layers in perovskite solar cells”International Journal of Energy Research,2022,pp.1-11(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0053】
他の実施形態では、PSCは、可撓性PSCである。可撓性PSC及びそれらを作製するための方法の例は、例えば、(a)Tang et al.(2021)“Recent progress of flexible perovskite solar cells”Nano Today,Vol.39,Article101155(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)及び(b)Di Giacomo(2016)“Progress,challenges and perspectives in flexible perovskite solar cells”Energy and Environmental Science,2016,Vol.9,pp.3007-3035(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0054】
ある特定の実施形態では、ペロブスカイト層は、アノード(例えば、ITO/ガラス又はFTL/ガラスなどの任意の好適なアノード)、正孔輸送層(HTL)(例えば、PTAA又はNiOxなどの任意の好適なHTL)、又はカソード(例えば、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuなどの任意の好適なカソード)のうちの1つ以上を更に含む構造の一部であり得る。
【0055】
他の実施形態では、ペロブスカイト層は、アノード(例えば、ITO/ガラス又はFTL/ガラスなどの任意の好適なアノード)、電子輸送層(ETL)(例えば、SnO2、Tio2、又はZnOなどの任意の好適なETL)、又はカソード(例えば、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuなどの任意の好適なカソード)のうちの1つ以上を更に含む構造の一部であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本方法は、カソードを追加することを更に含む。スクリーン印刷、熱蒸着、スパッタリング、又は原子層堆積を含むが、これらに限定されない、カソードを追加する任意の好適な方法を使用することができる。ある特定の実施形態では、カソードを追加する方法は、熱蒸着を含む。追加されるカソードは、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuを含むが、これらに限定されない、任意の好適なカソードであり得る。他の実施形態では、カソードは、Ag、Al、又はCuである。
【0057】
ある特定の実施形態では、PSCは、約0.7V~約1.3V又は約0.8V~約1.1V(例えば、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、又は約1.3V)の開路電圧(Voc)を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、PSCは、約35~約80%又は約39~約77%(例えば、約35、約40、約45、約50、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約70、約75、又は約80%)のフィルファクタ(FF)を有する。
【0059】
ある特定の実施形態では、PSCは、約10~約25mA/cm2、又は約12~約24mA/cm2(例えば、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、又は約25mA/cm2)の電流密度(Jsc)を有する。
【0060】
他の実施形態では、PSCは、約4~約20%又は約4~約15%(例えば、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、又は約20%)の電力変換効率(PCE)を有する。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されるように(例えば、上記で開示されるように、元の請求項1に開示されるように、又は実施例に開示されるように)作製されたPSCを含む。他の実施形態では、PSCは、可撓性PSCである。
【0062】
本発明の他の実施形態は、(例えば、材料が電子輸送層にある場合)有機材料、金属酸化物、TiO2、SnO2、ZnO、NiOx、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、C60、C70、PC61BM、PC71BM、又はフラーレンのうちの1つ以上から選択された材料を含む、(例えば、本明細書に開示されるような)PSCを含む。ある特定の実施形態では、材料は、本明細書に開示される(例えば、上記で開示されるように、元の請求項1に開示されるように、又は実施例に開示されるように)任意の様式に従って、官能化され得る。いくつかの実施形態では、材料は、SnO2、(例えば、アセタートで官能化された)官能化SnO2、又はその両方を含む。他の実施形態では、PSCは、可撓性PSCである。
【0063】
本発明の他の実施形態は、(a)アノード(例えば、ITO/ガラス又はFTL/ガラスなどの任意の好適なアノード)、(b)正孔輸送層(HTL)(例えば、NiOx、PTAA又はPTAA/PFNなどの任意の好適なHTL)、(c)ペロブスカイト層(例えば、CH3NH3PbX3、CH3NH3PbI3、H2NCHNH2PbX3、又はCH3NH3SnX3のうちの1つ以上などの任意の好適なペロブスカイトであり、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲン(例えば、ヨウ化物、臭化物又は塩化物))、(d)電子輸送層(ETL)(例えば、有機材料、金属酸化物、TiO2、SnO2、ZnO、Zn2SO4、WO3、In2O3、SrTiO3、Nb2O5、BaSnO3、C60、C70、PC61BM、PC71BM、若しくはフラーレンから選択された材料、又はそれらの官能化材料、又はSnO2若しくは(例えば、アセタートで官能化された)官能化SnO2)及び(e)カソード(例えば、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuなどの任意の好適なカソード)を含む、(例えば、本明細書に開示されるような)PSCを含む。他の実施形態では、PSCは、可撓性PSCである。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態は、(a)アノード(例えば、ITO/ガラス又はFTL/ガラスなどの任意の好適なアノード)、(b)電子輸送層(ETL)(例えば、SnO2、TiO2、又はZnOなどの任意の好適なETL)、(c)ペロブスカイト層(例えば、CH3NH3PbX3、CH3NH3PbI3、H2NCHNH2PbX3、又はCH3NH3SnX3のうちの1つ以上などの任意の好適なペロブスカイトであり、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲン(例えば、ヨウ化物、臭化物又は塩化物))、(d)正孔輸送層(HTL)(例えば、有機材料、金属酸化物、NiOx、若しくはCuOから選択された材料、又はそれらの機能化材料、又はNiOx若しくは(例えば、アセタートで官能化された)官能化NiOx)、及び(e)カソード(例えば、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuなどの任意の好適なカソード)を含む、(例えば、本明細書に開示されるような)PSCを含む。他の実施形態では、PSCは、可撓性PSCである。
【0065】
本発明の他の実施形態は、(a)アノード(例えば、ITO/ガラス又はFTL/ガラスなどの任意の好適なアノード)、(b)正孔輸送層(HTL)(例えば、NiOx、PTAA又はPTAA/PFNなどの任意の好適なHTL)、(c)ペロブスカイト層(例えば、CH3NH3PbX3、CH3NH3PbI3、H2NCHNH2PbX3、又はCH3NH3SnX3のうちの1つ以上などの任意の好適なペロブスカイトであり、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲン(例えば、ヨウ化物、臭化物又は塩化物))、(d)(例えば、元の請求項1に又は本明細書に開示される方法のいずれかなどの、本明細書に開示されるように調製された)電子輸送層(ETL)、及び(e)カソード(例えば、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuなどの任意の好適なカソード)を含む、(例えば、本明細書に開示されるような)PSCを含む。他の実施形態では、PSCは、可撓性PSCである。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態は、(a)アノード(例えば、ITO/ガラス又はFTL/ガラスなどの任意の好適なアノード)、(b)電子輸送層(ETL)(例えば、SnO2、TiO2、又はZnOなどの任意の好適なETL)、(c)ペロブスカイト層(例えば、CH3NH3PbX3、CH3NH3PbI3、H2NCHNH2PbX3、又はCH3NH3SnX3のうちの1つ以上などの任意の好適なペロブスカイトであって、式中、Xは、各式間又は各式内で同じであり得るか又は異なり得るハロゲン(例えば、ヨウ化物、臭化物又は塩化物))、(d)(例えば、元の請求項1に又は本明細書に開示される方法のいずれかなどの、本明細書に開示されるように調製された)正孔輸送層(HTL)、及び(e)カソード(例えば、Fe、C、Ni、Pt、Ag、Al、又はCuなどの任意の好適なカソード)を含む、(例えば、本明細書に開示されるような)PSCを含む。他の実施形態では、PSCは、可撓性PSCである。
【0067】
本開示の主題は、以下の具体的であるが非限定的な実施例によって更に例解される。以下の実施例は、本発明に関連する開発及び実験の過程中、様々な時点で収集されたデータを表す、データの編集物を含み得る。
【実施例】
【0068】
実施例セットA-ペロブスカイト太陽電池のスケーラブルな製作のためのペロブスカイト上のブレードコーティングによる非水SnO2分散体の直接堆積
ペロブスカイト太陽電池(PSC)のデバイスアーキテクチャは、平面n-i-p又は倒置p-i-n構造のいずれかにおけるn型半導体とp型半導体との間に挟まれたペロブスカイト吸収体を含む場合がある。n型半導体は、活性ペロブスカイト材料からの光生成電子の抽出、電極への電子輸送、及び光の電気への変換中の正孔輸送の遮断において、電子輸送層(ETL)としての役割を果たす。したがって、ETL材料が、高い電子移動度及び導電率とともに、好適なバンドギャップ及びペロブスカイトとの適切なエネルギーアライメントを有することが望ましい場合がある。
【0069】
完全に溶液処理されたSnO2がp-i-n構造のペロブスカイト吸収層に直接堆積することは、まだ報告されていない。p-i-n構造における溶液処理されたSnO2 ETLの不在は、部分的には、SnO2とペロブスカイトとの間の溶媒不適合性に起因し得る。ペロブスカイト親和性溶媒のライブラリは限られており、典型的には、SnO2分散体を調製するために使用される高極性溶媒を除外する。このことは、蒸発動力学が、ペロブスカイトの溶媒への長期曝露をもたらす、ブレードコーティングなどのスケールアップコーティング技術を使用する場合、更に複雑になる。したがって、ペロブスカイト上へのブレードコーティングにより適している金属酸化物の分散体は、非極性又は極性の低い有機溶媒を使用して調製されるべきである。
【0070】
この実施例では、本発明者らは、周囲条件下でのブレードコーティングによる、p-i-nデバイス構造におけるペロブスカイト上のETLとしてのSnO2薄膜の直接堆積を報告する。ペロブスカイト上のSnO2の直接堆積を可能にするために、ゾルゲル法を使用して合成されたSnO2ナノ粒子を酢酸で官能化して、酸化スズアセタート(SnO2-A)の粒子を得た。アセタートでのSnO2の官能化は、無水エタノール中のSnO2-Aの安定コロイド分散体の形成を可能にし、これを、ペロブスカイトフィルム上に直接堆積した。SnO2ベースのデバイスは、平均PCE12.27%、チャンピオンPCE14.1%を呈した。デバイスは、40日後、平均初期PCE95.8%を維持した。
【0071】
結果及び考察
ペロブスカイト親和性SnO
2インクを、SnO
2ナノ粒子の官能化によって調製し、非水溶媒中の分散性を向上させた(
図1a~
図1c)。以下の確立された文献の手順に従って、塩化スズ及び水酸化ナトリウムから水性SnO
2を調製した(Fuller et al.,The catalytic oxidation of carbon monoxide on tin(IV)oxide.J.Catal.1973,29,441-450;McManus et al.,Highly soluble ligand stabilized tin oxide nanocrystals:gel formation and thin film production.Cryst.Growth Des.2014,14,4819-4826)。次いで、含水SnO
2ナノ粒子の粒子を酢酸と反応させて、配位子交換を通してアセタートで官能化されたSnO
2(SnO
2-A)を生じさせた。含水SnO
2及びSnO
2-AのX線回折(XRD)パターン(
図1d)は両方とも、SnO
2のルチル結晶構造の(110)、(101)、(211)、及び(112)面に割り当てられた26°、34°、52°、65°のピークを示す。XRDパターンの類似性は、配位子交換反応が単なる含水SnO
2の表面改質であり、結晶構造の観察可能な変化はないことを示す。金属酸化物表面へのアセタート配位子の配位は、フーリエ変換赤外(FT-IR)分光によって確認された。カルボキシラート配位子の可能性のある結合モードには、単座、二座、又は架橋が含まれる(Deacon et al.,Relationships between the carbon-oxygen stretching frequencies of carboxylato complexes and the type of carboxylate coordination.Coord.Chem.Rev.1980,33,227-250)。含水SnO
2及びSnO
2-AのFT-IRスペクトル(
図1e)は、Sn-O伸縮に関連付けられた650cm
-1における共通の特徴を示す。含水SnO
2のスペクトルは、含水SnO
2の表面における吸着水のOH伸縮に関連付けられた3300cm
-1における広帯域及び1640cm
-1におけるシャープな帯域を示す。OH伸縮バンドは、SnO
2-A中で還元され、これは、含水SnO
2の表面上のヒドロキシル基が置換されていることを示す。SnO
2-A中のアセタート配位は、アセタート配位子のC=O伸縮及びアセタートはさみ振動に関連付けられた1715cm
-1及び1380cm
-1におけるバンドの存在によって裏付けられる。
【0072】
含水SnO2とは対照的に、SnO2-Aナノ粒子は、エタノール及びイソプロパノールなどのプロトン性有機溶媒中に容易に分散される。理論に束縛されるものではないが、プロトン性有機溶媒中のSnO2-A粒子の分散性の向上は、表面結合アセタートと、過剰な酢酸と、エタノールとの間の水素結合ネットワークの形成に起因し得る。いくつかの例では、長鎖カルボキシラートは、SnO2ナノ粒子の凝集をより効果的に防止し得、ペロブスカイト親和性非極性有機溶媒中のSnO2の安定コロイド分散体の形成を可能にし得、他の例では、ETL中の残留長鎖配位子は、電荷移動プロセスを妨げ、PSCの全体的な効率を低下させる可能性がある。
【0073】
本発明者らは、インク配合用の溶媒の選択を無水エタノールに制限しているにもかかわらず、SnO
2を短鎖カルボン酸で官能化することを選択した。分散媒体とのペロブスカイトの親和性を研究するために、無水エタノール中のSnO
2-Aの分散体を、ブレードコーティングを介して、CH
3NH
3PbI
3(MA=メチルアンモニウム)のペロブスカイト層の上に直接堆積させた。ペロブスカイト上へのSnO
2の堆積前後のペロブスカイトのXRDパターンを
図2aに示す。堆積前のペロブスカイトのXRDパターンは、CH
3NH
3PbI
3について想定されるように、14.1°において単一の顕著なピークを示す。XRDパターンは、SnO
2の堆積後も変化せず、ペロブスカイト層が無傷のままであることを示す。水分が介在する分解が生じた場合、PbI
2の形成により、12.7°において追加のピークが観察される。XRDパターンは、無水エタノール中のSnO
2-A分散体がペロブスカイト上に直接分配され得、ペロブスカイト表面の検出可能な分解なしに堆積され得ることを裏付ける。
【0074】
ペロブスカイト上の溶液相の堆積SnO
2層の電荷キャリア活性の動力学は、光発光(PL)及び時間分解PL(TRPL)分光法を用いて研究された。ガラス基板上のペロブスカイト及びペロブスカイト/SnO
2の定常状態PLスペクトルを
図2bに示す。ペロブスカイトの光発光は、SnO
2-Aの存在下で強く消光され、電荷キャリア密度の著しい低下を示し、これは、ペロブスカイト層からETLへの効率的な電荷移動と合致している。ペロブスカイト上へのSnO
2-Aの堆積前後のペロブスカイトのTRPL測定値は、PL分析の結果を支持する。
図2cでは、ガラス/ペロブスカイト及びガラス/ペロブスカイト/SnO
2-A試料のガラス側から得られたTRPLスペクトルは、SnO
2-Aの堆積後の光発光寿命の著しい低下を示す。このような光発光寿命の低下は、ペロブスカイト吸収層からのETLによる効果的な電荷取出しを裏付ける。
【0075】
有望なXRD、PL、及びTRPLの結果に基づいて、本発明者らは、SnO
2-AをETLとして用いるp-i-nアーキテクチャを有するPSCを製作した。一連の平面PSCを、ポリトリアリールアミン(PTAA)正孔輸送層(HTL)及びポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-オルト-2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)](PFN)界面層を有する酸化インジウムスズ(ITO)被覆ガラス上で製作した。全体的なデバイスアーキテクチャは、ITO/PTAA/PFN/CH
3NH
3PbI
3/SnO
2-A/Agである。デバイスアーキテクチャの概略図を
図3aに示し、これは、ペロブスカイトの上のETLとしてのSnO
2-Aの溶液相ブレードコーティングを強調している。PTAA、PFN、及びCH
3NH
3PbI
3層もまた、周囲条件においてブレードコーティングを使用して堆積させた。SnO
2-A層を100℃で10分間アニールして溶媒を除去し、最後に、銀を最上接触層として熱蒸着させた。アニーリングプロセスは、100℃及び10分で最適であった。
【0076】
完全に変換されたペロブスカイト上でのSnO
2-Aの堆積は、反射面を有する均一層を生じさせる。
図3bは、提案されたp-i-nデバイス構造の断面走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。個々の層の各々は、明確に識別され得る。特に、SnO
2-Aインクが直接ペロブスカイト上に堆積することにより、ペロブスカイト層の目に見える物理的変形はない。加えて、SnO
2-A層は、コンパクトで、均一で、ピンホールがない。SnO
2ETLの最適化された厚さは、36.7±3.4nmと測定された。
【0077】
製作されたセルのJ-V特性を、1つの太陽条件(AM1.5G、100mW/cm
2)下で測定し、電力変換効率(PCE)、フィルファクタ(FF)、短絡電流密度(J
sc)、及び開路電圧(V
oc)を含む、それらの対応する太陽光発電パラメータを記録した。チャンピオンデバイスは、J
scが22.61mA/cm
2、V
ocが1.023V、及びFFが61%である、PCE14.1%を呈した(
図4)。比較として、デバイスアーキテクチャがITO/PTAA/PFN/CH
3NH
3PbI
3/C
60/BCP/Ag(BCP=バソクプロイン)である標準デバイスを製作し、同じ条件下で評価した。標準デバイスは、J
scが18.88mA/cm
2、V
ocが1.024、及びFFが76.76%である、PCE15.11%を生じた(データは図示せず)。両方のデバイスは、非常に似ているV
oc値を示し、このことは、SnO
2-Aが電荷収集に有効であることを示すことになる。しかしながら、SnO
2-Aデバイスは、対照デバイスと比較してより低いFFを有し、このことは、界面又はより大きいETL厚さにおける電荷再結合を示唆し得る。興味深いことに、J
sc値は、SnO
2-Aデバイスの方が高く、このことは、ペロブスカイト層厚のアーチファクトであり得る。
【0078】
製作されたデバイスの安定性を理解するために、最初のJ-V測定値が記録された後、サンプルデバイスを窒素フローボックスに保管した。デバイスをカプセル化せずに保管し、40日後、J-V特性を再評価した。
図5は、安定性試験のデバイス性能統計を示す。40日後、平均初期効率の95.8%が保持された。効率損失は、主に、平均で15.59%減少したJ
scの減少によるものである。興味深いことに、平均V
oc及びFF値は、保管後、それぞれ、4.85%及び8.42%増加した。
【0079】
結論
要約すると、ブレードコーティング技術によるCH3NH3PbI3ペロブスカイト上へのSnO2ナノ粒子の非水分散体の溶液相堆積は、p-i-nデバイスアーキテクチャで実証された。アセタート官能化ナノ粒子、SnO2-Aは、無水エタノール中の安定分散体の配合を可能にする水性反応経路を使用して、合成された。CH3NH3PbI3にインクを堆積させた後、XRDスペクトルにPbI2ピークは観察されず、ペロブスカイト薄膜に観察可能な損傷がないことを示した。光発光の結果は、電子がペロブスカイト層から輸送されていることを実証し、断面SEMは、CH3NH3PbI3膜とSnO2膜との間の平滑界面を示す。チャンピオンPSCは、活性領域が0.25cm2である、PCE14.1%を呈し、40日後、これの95.8%を維持した。
【0080】
実験セクション
含水SnO2の合成
酸化スズナノ粒子は、水酸化ナトリウムで塩化スズ水溶液を中和することによって、ゾルゲル法を使用して調製された(McManus et al.,Highly soluble ligand stabilized tin oxide nanocrystals:gel formation and thin film production.Cryst.Growth Des.2014,14,4819-4826)。一般に、SnCl4の0.5M水溶液を、無水SnCl4を脱イオン(DI)水に滴下することによって調製した。SnCl4の激しく撹拌した水溶液に、pHがpH6.5に達するまで、DI水中で新たに調製した5MのNaOH溶液を滴下した。得られた含水SnO2の白色沈殿物を12時間熟成させ、遠心分離機によって収集し、水層が塩化物を含まなくなるまで、DI水/遠心分離機中に分散させて繰り返し洗浄した。洗浄された含水SnO2酸化スズ粒子を、室温で24時間乾燥させた。XRD分析により、SnO2の形成を確認した。含水SnO2に存在するSnO2の実際の質量は、TGA分析から70%であると計算された。
【0081】
SnO2-A及びインク配合物の合成
アセタート官能化ナノ粒子、SnO2-Aは、文献の手順に基づいて調製された(McManus et al.,Highly soluble ligand stabilized tin oxide nanocrystals:gel formation and thin film production.Cryst.Growth Des.2014,14,4819-4826)。一般に、含水SnO2及び氷酢酸を、1:1の質量:体積比で混合した。典型的な調製では、含水SnO24グラムの氷酢酸4mLと混合した。次いで、混合物を、密閉容器内で1時間、還流で加熱した。混合物は、最初に、SnO2-Aの形成時に無色透明になった乳白色のコロイド分散体を形成した。反応混合物が完全に無色透明にならない場合、未溶解の含水SnO2は、遠心分離機を介して除去され得る。溶液中のSnO2の割合を、TGA分析から判定した。SnO2-A溶液の一定分量を無水エタノール中に分散させ、ブレードコーティングによってペロブスカイト上に直接堆積するのに好適な2%(m/v)のSnO2を含有するインクを作製した。XRD及びFT-IR分析のために、最初のSnO2-A溶液を蒸発皿に移し、溶媒を一晩蒸発させた。分析前に、固体生成物を、真空オーブン内で100℃で2時間乾燥させた。
【0082】
デバイスの製作
ITOプレコートガラス基板を1インチ×2インチの大きさに切り、それらを、Liquinox洗剤溶液、アセトン、イソプロパノール、及び窒素フラッシュを使用して洗浄した。洗浄したガラス基板をUV-オゾンで15分間処置した後、PTAA、PFN、CH3NH3PbI3、及びSnO2-Aを周囲環境でのブレードコーティングによって逐次堆積させた。PTAA溶液は、PTAA8mgをトルエン1mlに溶解させることによって調製された。PTAA溶液の一定分量12μLを、コーティング速度10mm/秒でブレードギャップが100μmであるブレードコーティングに使用し、続いて、100℃で10分間加熱し、次いで、室温まで冷却した。次に、メタノール中の0.4mg/mLのPFN溶液のうちの12μLを、コーティング速度7.5mm/秒、ブレードギャップ100μmで、PTAA層上にブレードコーティングした。ペロブスカイト前駆体溶液を、体積比が0.91:0.07:0.02であるDMF:DMSO:NMPの混合物中にメチルアンモニウムヨウ化物及びPbI2を溶解させることによって調製し、1.2M溶液を得た(Ouyang et al.,Toward scalable perovskite solar modules using blade coating and rapid thermal processing.ACS Appl.Energy Mater.2020,3,3714-3720)。ペロブスカイト前駆体溶液の一定分量20μLを、ブレードギャップが150μmであるブレードコーティングによって、コーティング速度7.5mm/秒で堆積させた。ペロブスカイト前駆体溶液の堆積直後に、N2エアナイフを使用して湿潤フィルムを予備乾燥させ、続いて、140℃で2分間ホットプレートアニールした。最後に、無水エタノール中のSnO2-A分散体20μLを、ブレードギャップ高さ100μm及びコーティング速度7.5mm/秒でペロブスカイト上に堆積させ、続いて、100℃で10分間アニールした。ガラス-ITO/PTAA/PFN/CH3NH3PbI3/SnO2-A/Agのデバイスアーキテクチャを有するPSCの製作は、熱蒸着を用いてSnO2-AのETL上に100nmの銀を堆積させることによって完了した。銀の堆積後、デバイスを、活性領域0.25cm2に機械的にスクライブした。
【0083】
物理的方法
粉末X線回折(PXRD)パターンを、Bruker D8 DiscoverX線回折計を使用して測定した。Smart iTRを備えたThermo Nicolet Avatar 360 FT-IRを使用して、赤外線スペクトルを収集した。断面SEM画像を、JEOL7000電界放射型走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して記録した。PL分析は、CCD検出器及び632nm He-Neレーザー光源を備えたVia Raman顕微鏡において、Renishawを使用して実施された。デバイスの電流密度-電圧(J-V)特性は、1つの太陽条件(AM1.5G、100mW/cm2)のキセノンアークランプを有するクラスAAAソーラーシミュレータを使用して、測定した。デバイス測定の前に、ソーラーシミュレータは、NREL認定Si基準セルを使用して、較正された。デバイスを、走査速度100mV/s、ステップサイズ10mVで、1.2~0Vで試験した。
【0084】
実施例セットB-ペロブスカイト太陽電池(PSC)における正孔輸送層の堆積のためのNiOxの溶媒化
15%エタノールを含有するペロブスカイト逆溶媒クロロベンゼン(CB)中の一連の酸化ニッケル(NiOx)インクを、ブレードコーティングによるp-i-nペロブスカイト太陽電池の製作のために調製した。インクには、NiOx粒子凝集体を分散させ、懸濁液を安定化させるための配位子として、トリエチルアミン(Et3N)及びアルキルキサンタート塩が含まれていた。以下の合計4つのインクを評価した:0X(アルキルキサンタートを含まないEt3N)、4X(Et3N+カリウムn-ブチルキサンタート)、12X(Et3N+カリウムn-ドデシルキサンタート)、及び18X(Et3N+カリウムn-オクタデシルキサンタート)。インクは、紫外線可視光分光法及びFT-IR分光法によって特徴付けられており、得られたフィルムは、熱重量分析及び走査電子顕微鏡によって分析された。0Xインクを使用して調製されたデバイスは、ピーク電力変換効率(PCE)14.47%(0.25cm2)及び9.96%(1cm2)をもたらした。0Xデバイスは、100日後、窒素フローボックス内でPCEの著しい損失を示さなかった。アルキルキサンタート配位子を含有するインクで調製されたデバイスは、鎖の長さが短くなる(18X>12X>4X)につれて減少する、より低いPCEを有した。
【0085】
この実施例では、本発明者らは、スケーラブルなPSCで用いる無機HTLの溶液相堆積のための可溶性NiOx粒子の開発を報告する。いくつかのPSCデバイスは、金属(Ag又はAu)上部電極を有する酸化インジウムスズ(ITO)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)基板上の電子輸送層(ETL)と正孔輸送層(HTL)との間のペロブスカイト活性層を含む。デバイスのアーキテクチャは、ETL(n)、ペロブスカイト(i)、及びHTL(p)の相対的順序に応じて、n-i-p又はp-i-nであり得る。HTL及びETL層は、電荷キャリア再結合及び電荷取出し能力の変調を通して、PSCの太陽光発電性能を改善する役割を有することができる。
【0086】
この実施例のいくつかの態様では、残留有機配位子の存在が低減したNiO
Xフィルムを得るために、可変アルキル鎖長を有する配位子を使用して、クロロベンゼン(CB)親和性NiO
xナノ粒子の開発を探求する。鎖長が様々なアルキルキサンタート(ROCS
2
-)及びトリエチルアミン(Et
3N)を有する一連のインクが調製されている(
図6)。キサンタートは、依然としてカルボキシラートと構造的に同等であり、低コストの材料からの調製が容易である一方で、それらの例外的な高度の不安定性のために、カルボキシラートの代替として選択された。Et
3N添加剤は、分散体の安定性を向上させることが見出されたため、含まれた。この実施例の1つの目的は、ブレードコーティングによる機能PSCの製作のためのCB安定インキを得るために、可能性のあるアルキル鎖長を特定することであった。
【0087】
実験セクション
材料及び方法
NiOx粒子は、既知のソルボサーマル法(Beach et al,Chem.Phys.2009,115,371-377)によって合成された。簡潔に述べると、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(acac)2)をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、0.1M溶液を形成した。得られた溶液をN2ガスで30分間スパージし、次いで、テフロンライニングのParr反応器に密封した。反応器を、225℃で16~18時間加熱した。反応器を室温まで冷却し、得られた生成物を、15分間遠心分離することによって、溶液から単離した。粗NiOx生成物を、MEK及びイソプロパノール(IPA)で繰り返し懸濁/単離することによって洗浄した。カリウムキサンタート塩は、報告された方法を使用して、水酸化カリウム、二硫化炭素、及び適切なアルコールから調製した。4-及び12-炭素鎖を有するキサンタートを、Carta(Carta et al.,J.Med.Chem.2013,56,4691-4700)によって説明するように、黄色固体として単離した。18-炭素鎖キサンタートを、白色固体として、Sawantによって報告されるように調製した(Sawant et al.,Langmuir 2001,17,2913-2917)。ナトリウムカーボネート塩は、Ichiroによって報告された方法に従って、フレーク状の白色固体として、ナトリウムフェノキシド、二酸化炭素、及び適切なアルコールから調製した(Ichiro et al.,B.Chem.Soc.Jpn.1976,49,2775-2779)。
【0088】
物理的方法
NiOx粉末の粉末X線回折(PXRD)パターンを、Cu Kα放射(1.54Å、40KV、ステップ速度0.7秒/ステップ、25°~85°)を有するBruker Discovery D8高分解能X線回折計を使用して測定した。フィルムは、エアナイフを装備したZehntner ZAA2300自動フィルムアプリケータ及びZUA2000ユニバーサルアプリケータを使用して堆積させた。NiOx粉末及びフィルムの表面形態を、上面走査型電子顕微鏡(SEM、Thermo-Fisher Scientific Apreo C LoVac FESEM)を使用して特徴付けた。フィルムの厚さ及び粗さは、Veeco Dektak8M表面形状測定装置を使用して測定した。吸収スペクトルNiOxを、紫外線可視光分光光度計(Agilent8453)を使用して測定した。NiOxインクの安定性及び粒子サイズを、ゼータ電位測定(Brookhaven Instrument Corporation 90Plus粒子サイズ分析器)を実行することによって特徴付けた。Smart iTRを備えたThermo Nicolet Avatar360 FT-IRを使用して、有機物及びインクの赤外線スペクトルを収集した。キサンタート及び関連付けられたインクの熱分解を、熱重量分析(TGA、示差走査熱量計Q20 30℃~800℃、20℃/分)によって特定した。デバイスの電流密度-電圧(J-V)特性は、1つの太陽条件(AM1.5G、100mW/cm2)のキセノンアークランプを有するクラスAAAソーラーシミュレータを使用して、測定した。デバイス測定の前に、ソーラーシミュレータは、NREL認定Si基準セルを使用して、較正された。デバイスを、走査速度100mV/s、ステップサイズ10mVで、1.2~0Vで試験した。
【0089】
デバイスの製作
以下のp-i-nアーキテクチャを有するデバイスを製作した:ガラス/ITO/NiO
x/PFN/MAPbI
3/C
60/BCP/Ag、式中、PFN及びBCPは、それぞれ、ポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-オルト-2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)]及びバソクプロインである。ITO被覆ガラスを1インチ×2インチの基板に切り、N
2フラッシュによって洗浄し、続いて、UV-O
3処理を15分間行い、第2のN
2フラッシュを行った。ITO基板を洗浄するための更なるステップは行わなかった。洗浄したITO基板を、ブレードコーティングによるNiO
x、PFN、及びMAPbI
3の逐次堆積にすぐに使用した。NiO
xインクを、3:1(v/v)Et
3N/EtOH混合物200μL中でNiO
x粒子(20mg)を、65℃で60分間、密閉バイアル内で超音波処理することにより調製した。得られた懸濁液を、CB700μL及びEtOH100μLで希釈して、NiO
x溶液20mg/mLを作製した。キサンタート配位子を含有するNiO
xインクの場合、配位子0.125当量を、希釈ステップにおいてCBに添加した。希釈後、懸濁液を65℃で加熱して超音波処理した。このステップ中に、キサンタート配位子を含有するインクは、
図6に示すように、色の変化を受けた。ブレードコーティングの前に、高温インク懸濁液を0.2μmのPTFEを通して濾過した。NiO
xインク40μLインチ
-2を、速度5mm秒
-1で、最適化されたブレードギャップ225μmを使用したブレードコーティングによって堆積させ、続いて、300℃で20分間ホットプレート上でアニールした。次に、速度7.5mm秒
-1で、ブレードギャップが100μmであるブレードコーティングによって堆積されたPFNの層(メタノール中で4mg/mL)。ペロブスカイトインクは、ジメチルスルホキシド(DMSO、7%)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、2%)、及びジメチルホルムアミド(DMF、91%)中にPbI
2及びMAIを溶解させて、穏やかに撹拌することにより1.2M溶液を作製することによって、調製した。ペロブスカイトを、ブレードギャップが100μmであるブレードコーティングにより、室温において速度7.5mm秒
-1で堆積させた。ペロブスカイト堆積後、圧力40psiでN
2ナイフを用いてフィルムを乾燥させた後、140℃で2分間アニールした。デバイスは、C
60、BCP、及びAgを熱蒸着させ、続いて、0.25及び1cm
2のセルの活性領域に機械的にスクライブすることによって完成した。
【0090】
ガラス/ITO/SnO2/MAPbI3/NiOx/Agアーキテクチャを有する初期n-i-pデバイスを、3%(重量%)の市販のSnO2ナノ粒子20μLインチ-2をETLとして使用して構築した。最適化されたSnO2フィルムを、100℃加熱段階で5mm秒-1で、ブレードギャップが100μmであるブレードコーティングを使用して堆積させ、続いて、150℃で1時間アニールした。他の全ての層を、上述と同じ様式で堆積させた。
【0091】
結果及び考察
インク配合及び特性評価
ペロブスカイト太陽光発電での正孔輸送層の調製のためのインクとしてクロロベンゼン(CB)中に懸濁され得る一連のNiO
xナノ粒子が調製されている。NiO
x粒子を、アルキルキサンタート(ROCS
2
-)配位子を添加したルイス塩基トリエチルアミン(Et
3N)と最初に結合した(
図6)。キサンタート上のアルキ(alky)置換基を変えて、インク特性及びデバイス性能に与える炭素鎖長の影響を評価した。様々なNiO
x粒子は、以下のようにアルキル鎖の長さに基づいて識別される:0X(キサンタートなし)、4X(n-ブチルキサンタート)、12X(n-ドデシルキサンタート)、18X(n-オクタデシルキサンタート)。
【0092】
最初のNiO
x粒子は、Beach(Beach et al.,Mater.Chem.Phys.2009,115,371-377)によって説明するように、ソルボサーマル合成により調製された。合成されたナノ粒子の同一性及び純度は、36.8°(111)、42.8°(200)、62.3°(220)、74.7°(311)、78.8°(222)で予想ピークを示した、粉末X線回折(PXRD)試験によって確認された。PXRDから、結晶サイズは、Scherrerの式に基づいて、約8nmであると推定された。これらの小粒子は、
図7aのSEM画像に示すように、固相中で凝集し、大きい凝集体を形成する傾向がある。最初に調製したNiO
xナノ粒子を、3:1(v/v)Et
3N/EtOH溶液中に分散させ、65℃で1時間超音波処理を行った。ドナー数が高く、エントロピーアルキル基を有するルイス塩基であるEt
3Nを弱配位性配位子として添加し、粒子表面のエネルギー及び立体力を変化させることにより、凝集体を細分化し、再凝集を防止するのに役立った。超音波処理後、使用する場合、キサンタートを添加した7:1(v/v)CB/EtOH溶液で分散体を希釈した。次いで、得られたインク懸濁液を、0.2μmのPTFEフィルタを通して濾過し、透明な懸濁液をもたらした(
図6)。0Xインクを使用して調製されたフィルムのSEM画像は、Et
3NによるNiO
x凝集体のより小さいナノ粒子への分解を裏付ける、均一なフィルムの形成を示した(
図7b)。超音波処理された0Xインク上の動的光散乱は、粒子サイズが8.3±2.1nmであることを見出し、これは、PXRDのサイズ推定と合致している。
【0093】
NiOx粒子の分散安定性に与えるEt3Nの効果を定量化するために、0X溶液についてζ電位を測定した。ζ電位は、一般に、分散粒子と、±30mVの値を有する懸濁液が安定している媒体との間の電位差を測定する。ζ電位は、粒子の組成及びそれらの化学環境に依存し得る。Et3Nを添加する前に、最初に調製されたNiOx粒子のζ電位は、6.19±3.0mVであり、それらの観察された凝集と合致した。0X粒子を生じさせるための15%のEt3Nの添加は、ζ電位を27.29±3.9mVに増加させた。結果は、Et3Nが、追加のアルキルキサンタート配位子がない場合でさえ、CB中のNiOxの懸濁液を安定化させるのに十分であることを示す。
【0094】
アルキルキサンタートを0Xインクに添加すると、紫外線可視光分光法によって観察されるように、キサンタートのNiO
x粒子への配位を伴う配位子交換プロセスがもたらされる。0Xインクは、300nmに中心がある一次励起子ピークを有し、インクは、視覚的には、CB中で淡褐色である。アルキルキサンタートをNiO
x粒子に添加すると、加熱及び濾過後に、暗褐色の懸濁液を生じさせる(
図6)。アルキルキサンタートとそれらの対応するインクの紫外線可視光スペクトルの比較は、色の変化が、アルキルキサンタートのNiO
x粒子への配位に関連付けられていることを裏付ける。CB中の12Xアルキルキサンタート塩の紫外線可視光スペクトルは、NiO
xの添加時に420nmにシフトする380nmの配位子間バンドを示す(
図8a)。加えて、キサンタートからニッケルへの配位子/金属電荷移動に関連付けられたインクには、480nmにおいて新しいバンドがある。分子ニッケルキサンタート錯体中の476nm及び414nmにおいて、同様のバンドが観察される。4X及び18Xキサンタート塩及びそれらのインクの紫外線可視光スペクトルは、同様の特徴を示す(データは図示せず)。
【0095】
NiO
x粒子へのアルキルキサンタート配位子の配位は、FT-IR分光法によって更に確認された。12Xアルキルキサンタートのスペクトルは、NiO
xの添加時に、インク中で1030cm
-1にシフトする1070cm
-1におけるC=S伸縮と、1120cm
-1~1230cm
-1におけるC-O-C伸縮と、を示し(
図8bを参照されたい)、加えて配位を示す。関連するアルキルカーボネート(ROCO
2
-)に基づいて一連のインクを調製する試みは、0X NiO
x懸濁液(データは図示せず)への添加時のアルキルカーボネートの分解が原因で、失敗した。
【0096】
熱重量分析(TGA)を、アルキルキサンタート配位子及びそれらの対応するインクで実行して、アニーリング条件下でのそれらの安定性を判定した。NiO
x層中の残留長鎖化合物は、PSCのPCEを低下させることが示されているため、アニーリング中に分解する配位子は、利点を提供し得る。追加の配位子なしで合成されたNiO
x粒子に関する以前のTGA研究は、アニーリング温度300℃をもたらした(Beach et al.,Mater.Chem.Phys.2009,115,371-377)。12X塩のTGAは、粉末として、脱水に起因する初期のわずかな質量損失、続いて、210~315℃におけるキサンタート分解に関連付けられた急激で実質的な質量損失を示す(
図9a)。12Xインクから調製されたフィルムのTGAは、135~350℃で同様の分解特徴を示す(
図9a)。4X及び18X配位子及びインクの結果は、210~320℃で生じるキサンタート分解と同様である(データは図示せず)。特に、全てのキサンタートは、NiO
x粒子アニーリング温度300℃以下で分解し、現在の条件下で、キサンタートがNiO
xフィルムから完全に除去されていることを示す。
【0097】
フィルム堆積
0X~18Xインクを、ブレードギャップが225μmであるブレードコーティングにより、速度5mm秒
-1でITOガラス上に薄膜として堆積させた。フィルムを、300℃で20分間アニールした。これらのパラメータを使用して、Dektak表面形状測定装置で判定されるように、約40nmの厚膜を再現性よく得た。0Xフィルムの粗さは、Dektakによって、5.9nmであると測定される。0XフィルムのSEM撮像は、目に見えるピンホールを伴わない密集したフィルムを示す(
図9b)。フィルムの密集は、インク中の揮発性Et
3Nの存在に起因する。Et
3Nは、インク中のNiO
x粒子に配位して、懸濁液を安定させる。インクが堆積されると、Et
3Nの蒸発は、NiO
x粒子がフィルム内で密接に詰まることを可能にする。
【0098】
キサンタート配位子を含有するインクの場合、膜質は炭素鎖の長さに依存する。18XフィルムのSEM画像は、いくつかのピンホールの存在を伴う均一なカバレッジを示す(
図9d)。表面粗さは約6.5nmであることが見出される。12Xフィルムの撮像は、有意なピンホールを有するフィルム、及び凝集粒子の存在を示す(
図9c)。これらの欠陥は、12.9nmの粗さをもたらす。4Xインクは均一なフィルムを生じさせることができず、表面上に少量の凝集体のみが観察された(データは図示せず)。理論に束縛されるものではないが、長鎖キサンタート配位子(18X)の均一なカバレッジは、疎水性アルキル鎖のアライメントを誘導し、NiO
x粒子のより緊密な密集を可能にする、強い分散力に起因し得る。アニーリング中のキサンタート配位子の除去は、キサンタートが気体生成物に分解するにつれて、いくつかのピンホールの形成をもたらす。理論に束縛されるものではないが、短鎖キサンタート配位子(4X)は、膜形成を誘導することができず、表面上のNiO
x粒子のランダム分布をもたらし、アニーリング時に膜質が低下し、著しい凝集をもたらすことが想定される。中間長キサンタート(12X)で形成されたフィルムは、ピンホールとかなりの粒子凝集の両方を示すが、フィルムを依然として形成することができる。
【0099】
デバイス性能
キサンタート配位子のPSC性能に与える影響を評価するために、ガラス/ITO/NiO
x/PFN/MAPbI
3/C
60/BCP/Agのアーキテクチャを有する一連のデバイスを、NiO
x、PFN、及びMAPbI
3のブレードコーティング、並びにC
60、BCP、及びAgの熱蒸着によって構築した。セルを活性領域0.25cm
2に機械的にスクライブし、1つの太陽条件下で試験した。PFNは、既知のブレードコーティングパラメータを使用してペロブスカイト堆積の表面湿潤を改善するために、組み込まれた。
図10は、調査した異なる配位子条件の複数の試料にわたるデバイス性能パラメータの分布を示す。デバイス性能の結果は、0Xが、キサンタート被覆粒子よりも明らかに優れていることを示す。しかしながら、キサンタートを含有するデバイスの場合、性能は、キサンタート鎖長が短くなるにつれて、低下する。チャンピオンデバイスの明暗電流-電圧(J-V)曲線及びそれらの対応する太陽光発電パラメータを表B1に要約する。最も高い0Xデバイスは、PCE14.47%を呈し、電流密度(J
sc)19.23mA/cm
2、開路電圧(V
oc)1049.32mV、フィルファクタ(FF)71.72%であった。
表B1.チャンピオンデバイスの太陽光発電パラメータ
【表1】
【0100】
Jscの相対値は、SEM画像で観察されたNiOx膜質の違いと合致しており、これは、ペロブスカイト層の品質に影響を与える可能性がある。Jsc値は、0Xで最も高く、キサンタート配位子を含有するフィルムでは、鎖長が短くなるにつれて減少する。このことは、HTLのピンホールのサイズ及び密度の増加とともにJscの減少が生じ得ることを示す以前の研究と合致する。以前の研究でも指摘されているように、Vocは、少なくとも80%の表面被覆率があるときにほぼ一定値である全表面被覆率に依存し得る。本研究では、Vocは、このシリーズ内の表面被覆率の低下と合致して、0X~18Xへ12Xに低下し、続いて、膜質が低下したため、フォト抵抗器として実行された4Xでは大幅に低下する。全体としては、0Xデバイスの高Voc及びJscは、HTL及びその後のペロブスカイト堆積における高レベルの均一性を示す。Jscの変動は、ペロブスカイト自体のわずかな変動によるものであるが、観察された傾向には全体的な影響を及ぼさない。
【0101】
膜質の著しい影響を更に確認すると、FFは、0X~18Xデバイスまで、ほぼ20%の低下を示す。FFは、デバイスのシャント(Rsh)及び直列(Rs)抵抗に依存する。これらの2つのフィルムにおける直列抵抗は、18Xインク中に長鎖キサンタート配位子が含まれているにもかかわらず、類似している(0X:8.0Ωcm2に対して、18X:6.9Ωcm2)。これは、アニーリングステップ中のキサンタート配位子の除去に起因する。しかしながら、0Xフィルムのシャント抵抗は、18Xフィルムのものの2倍超であり(0X:728Ωcm2に対して、18X:316Ωcm2)、0Xデバイスにおいて改善されたFFをもたらす。18Xデバイスにおけるより低いシャント抵抗は、上記の存在感を増したピンホールと合致する。
【0102】
次に、0X及び18Xを、1cm
2デバイスとして評価し、大量生産に対するそれらの適用性を試験した。J-V曲線を
図11に示し、データを表B1に要約する。特に、1cm
2のデバイスでは、0X及び18Xは、同様のV
oc、FF、R
s、及びR
sh値を有する。しかしながら、18X試料と0X試料との間では、J
scにほぼ4mA/cm
2の差があり、0Xデバイスに対するより大きいPCEをもたらす。0Xデバイスのより高いJ
scは、0.25cm
2のデバイスでも観察され、18Xフィルム中の存在感を増したピンホールに起因し得る。0.25cm
2及び1cm
2セルにおける0Xパフォーマンスの比較は、より大きい領域にわたるより多くのピンホールの存在に起因するJ
sc及びR
shの減少に起因するPCEの4.9±0.3パーセントの減少を示している。
【0103】
0X及び18Xデバイスの長期安定性は、実験室の照明に曝露された窒素フローボックス内で100日間保管した後で評価した。デバイス性能を表B2に要約する。18Xデバイスは、J
sc、R
sh、及びFFの低下を伴う全般的な品質低下を示し、100日後にPCEの低下をもたらす。0Xデバイスは、より優れた安定性を示す。100日にわたってV
oc及びFFの減少があるが、J
sc及びR
shの予期せぬ増加もあり、PCEの統計的変化をもたらさない。理論に束縛されるものではないが、この増加は、デバイス界面からEt
3Nを更に除去することに起因する可能性があり、20℃で7.2kPaの蒸気圧を有するEt
3Nは、デバイスの劣化とともに更に蒸発する。理論に束縛されるものではないが、18Xデバイスと比較して0Xデバイスの安定性が高いことは、NiO
xの膜質、及び得られたペロブスカイトの品質が、フィルムの劣化につながるトラップ状態が少ないことに起因し得る。
表B2.窒素フローボックス内で100日間保管する前後の0.25cm
2のデバイスの太陽光発電パラメータ
【表2】
【0104】
0Xインクを使用するp-i-nデバイスの性能を考慮して、n-i-pデバイスの構築は、ガラス/ITO/SnO
2/MAPbI
3/NiO
x/Agアーキテクチャで行われた(
図12a)。ETL、HTL、及びペロブスカイト層を、実験セクションに記載のパラメータを使用したブレードコーティングによって堆積させた。ペロブスカイトの上にNiO
xを堆積させると、スタックの外観は、その反射特性を保持した黒鏡面仕上げからメタリックブルーに変化した(
図12b及び
図12c)。しかしながら、太陽光発電試験時に、機能デバイスは見出されなかった。PXRDによるMAPbI
3-NiO
x界面の評価は、ペロブスカイト上への0Xインクの堆積時に、9.5°におけるピークの出現(
図12d)を示す。インク溶媒混合物(CB、EtOH、Et
3N)をペロブスカイト上に堆積させると、同じピークが観察される(データは図示せず)。このことは、DMSOで観察されたものと同様のペロブスカイトを伴うEt
3N付加物ピークの形成を示唆する。特に、MAPbI
3がPbI
2に分解されないことを示すピークは、12.7において観察されない。
【0105】
結論
Et3N(0X)又はEt3N/アルキルキサンタート(4X、12X、18X)とともにEtOHを含有する混合物中のペロブスカイト逆溶媒CB中にNiOxナノ粒子を成功裏に懸濁させた、一連のインク配合物が開発されている。アルキルキサンタートの炭素鎖長は、インク性能に与えるその影響を調べるために、変化させた。疎水性キレート配位子は、PSCの製作のためにNiOx可溶性にするために以前使用されていたが、本発明者らは、Et3N単独で、NiOxナノ粒子を溶液中で安定化し、超音波処理時に凝集体を分散させるのに十分であることを見出した。実際には、0Xインクは、チャンピオンPCEが14.47%(0.25cm2)及び9.96%(1cm2)である最良の膜質及びデバイス性能をもたらした。0Xセルは、窒素フローボックス内で100日間安定であり、PCEに著しい変化はなかった。アルキルキサンタート配位子を含有するPSCについては、最良の膜質及びデバイス性能を18Xで得た。理論に束縛されるものではないが、このことは、長炭素鎖の分散相互作用、及び熱アニール中のアルキルキサンタートの分解による、表面上のNiOxの優先的な順序付けに起因し得る。しかしながら、18Xインクは、0Xインクよりも多くのピンホールにつながり、PCEの減少をもたらした。短鎖アルキルキサンタートは、4Xインクがフィルムを形成できなかったため、性能がより低かった。全体としては、結果は、揮発性で弱配位のEt3N配位子に基づいて、ペロブスカイト逆溶媒CB中のNiOxインクを調製するための新しい配合物を提供する。このことは、長炭素鎖を有する不揮発性荷電配位子よりもいくつかの利点を提供する。
【0106】
実施例セットC-NiOx及びCuドープされたNiOxナノ粒子
Ni(NO3)2・6H2Oの5M溶液を、Ni(NO3)2・6H2Oを脱イオン水25mLに溶解させることによって調製した。激しく撹拌しながら、pHが10に調整されるまで、NaOHの10M溶液を滴下することによって添加した。次いで、得られた沈殿Ni(OH)2を遠心分離機によって収集し、脱イオン水で繰り返し洗浄した。洗浄後、Ni(OH)2を80℃で完全に乾燥させた。次いで、乾燥したNi(OH)2を収集し、270℃で15分間アニールして、NiOxに変換した。元のNi(NO3)2・6H2O溶液中の5mol%のCu(NO3)2・3H2O置換で同じ様式で調製された、銅ドープされた粒子。
【0107】
粉末X線回折は、銅の添加時に、立方晶NiO
x構造の保持を裏付ける(
図13)。銅ドープされた粒子における低レベルの結晶性を示す、信号強度のわずかな損失が観察される。Scherrerの式から、銅ドープされた粒子中の結晶ドメインは、6.9nmであり、ドープされていない粒子中の結晶ドメインは11.2nmであることが見出される。29°におけるピークは、ナイトレートに関連付けられており、更に洗浄することで、成功裏に除去することができた。組成が、蛍光X線によって、Cu5.6±1.3%であることが確認された。
【0108】
短時間の超音波処理によって、2:1のH
2O:イソプロピルアルコール溶液中に懸濁し、次いで、遠心分離機によって2時間濾過し、続いて、0.2μmのナイロンフィルタを通して濾過する、ドープされたナノ粒子及びドープされていないナノ粒子。得られた懸濁液は、動的光散乱によって、最大3日間安定であることが見出された(
図14)。ロールツーロールコーティング及び高強度パルス光(IPL)アニーリングによって堆積された新たなインクフィルムを使用することにより、0.25cm
2のデバイスについて、8.85%のNiO及び11.15%のNi
0.94Cu
.06O
xのピークデバイスがもたらされた(表C1、
図15)。PET/ITO/NiO
x/MAPbI
3/C
60/BCP/Agのアーキテクチャを使用して構築された、完成デバイス。ペロブスカイトフィルムを、2-メトキシエタノール:ACNインクを使用するブレードコーティングによって堆積させ、IPLを使用してアニールした。
表C1.セル性能パラメータ及びIPL条件
【表3】
【0109】
実施例セットD-反転可撓性ペロブスカイト太陽電池(f-PSC)の効率的な遮断層としてのイットリウムドープされたSnO2
この実施例では、本発明者らは、高性能f-PSCのために、ペロブスカイトの上に電子輸送層としての酸化スズ(IV)の直接堆積を調査した。本発明者らは、ゾルゲル法を使用してSnO2ナノ粒子を合成し、それらを無水エタノール中に分散させることを可能にする配位子交換を通して、アセタートで官能化した。加えて、本発明者らは、ETLとしてのSnO2の性能を向上させるため、合成中のSnO2の現場イットリウムドーピングを調査した。元のSnO2及びイットリウムドープされたSnO2の非水分散体を、ブレードコーティングによって、続いて、エアナイフ処理によって、ペロブスカイト上に直接堆積させた。X線回折及び走査電子顕微鏡によって証明されるように、下地ペロブスカイト層に検出可能な損傷はなかった。光発光分光法及びデバイス性能統計は、元のSnO2と比較して、イットリウムドープされたSnO2によるより多くの電子抽出を裏付ける。イットリウムドーピング後、チャンピオン電力変換効率は、14.40%~18%を超えて増加し、これは、SnO2をETLとして用いる可撓性ITO-PET基板における反転デバイスにとって前例のないことである。この実施例は、ペロブスカイト上の完全に溶液処理された金属酸化物電荷移動層のスケーラブルな直接堆積が、高効率の大面積可撓性ペロブスカイト太陽電池を達成すべきであることを示している。
【0110】
ペロブスカイト太陽電池(PSC)デバイスアーキテクチャは、2つの電荷輸送層の間に挟まれたペロブスカイト薄層を含み得ることもあり、n-i-p又はp-i-nとして分類することができ、式中、nは、電子輸送層(ETL)を表し、pは、正孔輸送層(HTL)を表す。ETLは、光生成電子の抽出及び輸送、並びに正孔遮断層としての電子-正孔再結合の防止を含むPSCにおける役割を果たすことができる。したがって、ETL材料は、高い電子移動度及び導電率とともに、好適なバンドギャップ及びペロブスカイトとの適切なエネルギーアライメントを有する場合がある。
【0111】
この実施例では、本発明者らは、部分的には、低温処理されたSnO2の電子特性を改善するために、イットリウムドープされたSnO2ナノ粒子(Y:SnO2)をゾルゲル法で合成した。Y:SnO2ナノ粒子を酢酸で官能化し、アセタート官能化Y:SnO2(Y:SnO2-A)を得た。アセタートでのY:SnO2の官能化は、無水エタノール中でのY:SnO2-Aの安定コロイド分散体の形成を可能にし、これを、ブレードコーティングによってペロブスカイトフィルム上に直接堆積させた。Yドーピングは、ETLの電子特性を変更し、ペロブスカイト層の下からの電荷の効率的な抽出及び輸送につながる。可撓性PET基板上のY:SnO2デバイスのチャンピオン電力変換効率(PCE)は、元のSnO2と比較して、14.40%~18.2%増加した。この作業には、Yドーピング、薄膜、及びデバイス特性評価の分析が含まれる。この実施例は、高スループットプロセスによる安価な無機ETLを使用するPSCのスケールアップが可能であることを示す。
【0112】
結果及び考察
元の酸化スズ(IV)(SnO
2)及びイットリウムドープされた酸化スズ(IV)(Y:SnO
2)ナノ粒子を、前述のようなゾルゲルプロセスを使用して合成した(Chapagain et al.(2021)“Direct Deposition of Nonaqueous SnO
2 Dispersion by Blade Coating on Perovskites for the Scalable Fabrication of p-i-n Perovskite Solar Cells”ACS Appl.Energy Mater.,Vol.4,No.10,pp.10477-10483)、しかしながら、イットリウムドーピングは、合成プロセス中に、SnO
2の前駆体(すなわち、無水SnCl
4)に塩化イットリウムを添加することによって、現場で達成された。Y:SnO
2のエネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトルは、Sn及びOとともに、SnO
2中のYの存在を明らかにする(
図16a)。バルクY:SnO
2の元素マッピングは、Y:SnO
2のマトリックスにおけるイットリウムの均一分布を示す(
図16c、
図16d、及び
図16e)。粉末X線回折(PXRD)を用いて、SnO
2及びY:SnO
2ナノ粒子の結晶構造を分析した(
図16b)。
【0113】
26.4、33.75、51.86、及び64.37°において存在するXRDピークは、SnO2及びY:SnO2の正方ルチル結晶構造の(110)、(101)、(211)、及び(301)面に割り当てられる。Y:SnO2のXRD回折パターンは、イットリウムの量が、結晶構造を変化させるのに十分でないか、又は別個の相として存在することを意味する不純物の余分なピークを示さない。
【0114】
SnO
2及びY:SnO
2薄膜の元素組成を、X線光電子分光(XPS)によって評価した。Y:SnO
2の実測スペクトルは、他の関連付けられたピークとともに、C1、O1、及びSn 3dピークの存在を示す(
図17a)。Sn 3dの高分解能の内殻準位スペクトルは、Sn 3d
5/2及びSn 3d
3/2に対応する487.4eV及び495.8eVの二重項ピークを含有する(
図17b)。Sn 3d
5/2及びSn 3d
3/2の二重項分離は、SnO
2のSn
4+に対応する8.4eVである。ここで、
図17bの曲線は、フィッティングされていないSn 3d曲線(実線)、フィッティング後の曲線(中破線)、Sn 3d
5/2に対してフィッティングされた曲線(長破線)、及びSn 3d
3/2に対してフィッティングされた曲線(短破線)を表す。ITO基板上に堆積されたSnO
2及びY:SnO
2薄膜のSn 3d
5/2の線形に著しい差はない(データは図示せず)。
図17cは、B.E.158.8eVにおけるY:SnO
2でのイットリウム3dピークの存在を示すが、イットリウム3dピークは、SnO
2には存在しない。EDS及びXPSの結果は、イットリウムでのSnO
2の良好なドーピングを実証する。
【0115】
SnO2及びY:SnO2ナノ粒子のペロブスカイト薄膜上への直接堆積は、ペロブスカイト親和性有機溶媒へのナノ粒子の分散によって、達成され得る。上記の実施例Aでは、本発明者らは、無水エタノール中に分散可能な官能化SnO2(SnO2-A)を生成するために、アセタート配位子でSnO2を官能化した。ここで、本発明者らは、Y:SnO2-Aを生じさせるアセタートでのY:SnO2ナノ粒子の官能化のための同じ戦略を採用した。アセタートでのY:SnO2の官能化は、白色の非晶質酸化スズ粉末を、官能化酸化スズ(Y:SnO2-A)の無色透明の溶液に変換する。官能化前後のY:SnO2のX線回折(XRD)パターン(データは図示せず)は、Y:SnO2の正方ルチル結晶構造の(110)、(101)、(211)、及び(301)面に割り当てられている、26.4、33.75、51.86、及び64.37°において同様のピークを有する。XRD分析は、官能化後のY:SnO2の結晶構造に変化がないことを示す。官能化前のSnO2のFTIRスペクトルは、Y:SnO2の表面での吸着水のOH伸縮に関連付けられた、3300cm-1における広帯域及び1640cm-1におけるシャープな帯域を示す。OH伸縮バンドは、Y:SnO2-AのFTIRスペクトルで減少し、これは、Y:SnO2の表面上のヒドロキシル基がアセタート配位子によって置換されていることを示し、Y:SnO2-Aでのアセタートの配位は、アセタート配位子のCO伸縮及びはさみ振動に関連付けられた1715及び1380cm-1におけるバンドの存在によって裏付けられる。加えて、Y:SnO2及びY:SnO2-AのFT-IRスペクトルは、Sn-O伸縮に関連付けられた650cm1における共通の特徴を示す。したがって、SnO2及びY:SnO2の官能化プロセスは、XRD及びFT-IR分析によって明らかなように、単なる配位子交換プロセスである。
【0116】
Y:SnO
2ナノ粒子をアセタートで官能化して、無水エタノール中でY:SnO
2からY:SnO
2-A及びインク配合物を得るための全般的なスキームを、
図18aに示す。Y:SnO
2とは対照的に、Y:SnO
2-Aナノ粒子は、エタノール、イソプロパノール、及びブタノールなどのプロトン性有機溶媒中に容易に分散される。理論に束縛されるものではないが、プロトン性有機溶媒中のY:SnO
2-Aナノ粒子の分散性の向上は、表面結合アセタートと、過剰な酢酸と、アルコールとの間の水素結合ネットワークの形成に起因し得る。
【0117】
Y:SnO
2-Aナノ粒子の分散は、ブレードコーティングを介して、ペロブスカイト層の上に直接堆積させることができる。堆積後、乾燥したエアナイフを使用して、過剰な溶媒を迅速に除去することができる。ここで、100℃で2~3分間アニールすると、溶媒が完全に除去されることが保証される。
図18bを参照されたい。
【0118】
図18c及び18dは、Y:SnO
2-A堆積の前後のペロブスカイトの上面SEM画像であり、SnO
2の連続的かつ均一な層を明らかにする。加えて、ヨウ化鉛のピークの形成は観察されず、ペロブスカイトが堆積中に損傷していないことを示す。
【0119】
ペロブスカイト上の無水エタノール中のY:SnO
2-A分散体の堆積前後のペロブスカイトのXRDパターン(
図19a)は、堆積がペロブスカイトに影響を与えないことを更に実証する。Y:SnO
2-Aの堆積前のペロブスカイトのXRDパターンは、CH
3NH
3PbI
3について想定されるように、14.1°において単一の顕著なピークを示す。XRDパターンは、Y:SnO
2-Aの堆積後も変化せず、ペロブスカイト層が無傷のままであることを示す。12.7°において追加のピークは観察されず、これは、PbI
2の形成をもたらす水分が介在する分解が生じなかったことを示す。
図19bは、Y:SnO
2-A堆積の前後のペロブスカイトのUV-Vis吸収スペクトルを示す。ペロブスカイト上にY:SnO
2-Aを堆積させる前後のペロブスカイトのUV-Vis吸収スペクトルは同等であり、ペロブスカイトフィルムの光吸収に著しい変化はない。加えて、吸収スペクトルのバンドエッジに変化はない。UV-Vis分析の結果は、Y:SnO
2-Aがペロブスカイトの結晶性及び粒度に影響を与えないことを示す。
【0120】
ペロブスカイト活性層とSnO
2-A及びY:SnO
2-Aとの間の電荷キャリア動力学を理解するために、定常状態光発光(PL)測定を実施した(
図20)。PET基板上のペロブスカイトフィルムは、最も高いPL強度を呈したが、一方で、SnO
2-A及びY:SnO
2-Aを有するペロブスカイトフィルムは、著しいPL消光を示す。Y:SnO
2-A ETLは、元のSnO
2-Aと比較して、より高いPL消光を示すことが観察されており、これは、ペロブスカイト/Y:SnO
2-A界面における電荷移動が、ペロブスカイト/SnO
2-A界面のものよりも効率的であることを示す。
【0121】
Y:SnO2-A中のイットリウム濃度がPSCの太陽光発電性能に与える影響を分析するために、一連の平面PSCを、希釈されたSnO2-A及びY:SnO2-AをETLとして用いて可撓性PET/ITOベースの基板(f-PSC)上に製作した。全体的なデバイス構造は、ITO/PTAA/PFN/CH3NH3PbI3/SnO2-A/BCP/Ag及びITO/PTAA/PFN/CH3NH3PbI3/Y:SnO2-A/BCP/Agであり、ポリトリアリールアミン(PTAA)は、正孔輸送層(HTL)として使用され、ポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-オルト-2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)](PFN)は、界面層として使用される。ここで、PTAA、PFN、ペロブスカイト、及びSnO2層は、ワンステップブレードコーティング法によって堆積され、一方で、BCP及び銀は、熱蒸着によって堆積された。これらの製作されたf-PSCを、AM1.5の模擬太陽光下で測定した。測定前に、ソーラーシミュレータは、KG5フィルタを使用するNREL認定シリコン基準光ダイオードを使用して較正された。
【0122】
イットリウムのドーピング濃度に対するf-PSCのデバイス性能統計を、
図21に示す。PCEは、イットリウム濃度の増加とともに増加し、Y:SnO
2中のイットリウム2モル%で最適な性能が達成される。PCEの増加は、開路電圧(V
oc)及びフィルファクタ(FF)の増加に起因する。V
ocの増加は、イットリウムドーピング後の導電率の向上を示す。SnO
2及びY:SnO
2 ETLを有するf-PSCの太陽光発電性能統計を表D1に要約する。
表D1.有効面積が0.1cm
2のSnO
2 ETL中の0、1、2、及び3mol%のイットリウムを有するf-PSCの平均太陽光発電性能統計の要約
【表4】
【0123】
ブレードコーティングされたf-PSCの画像を、
図22aに示す。注目すべきは、Y:SnO
2-Aが2%のチャンピオンf-PSCのPCEは、プリスティングSnO2-Aを有するチャンピオンf-PSCのPCEよりも約4%高い。Y:SnO
2-Aが2%のデバイスは、J
scが24.34mA/cm
2であり、V
ocが1.08Vであり、FFが68.77%である、チャンピオンPCE18.19%を呈した(
図22b)。
図22cは、2%のY:SnO
2をETLとして用いたf-PSCの順方向走査と逆方向走査との間の最小ヒステリシスを強調している。
【0124】
結論
本発明者らは、SnO2のゾルゲル合成への塩化イットリウムの現場での添加を介して、イットリウムドープされた酸化スズ(IV)(Y:SnO2)を合成した。元のSnO2及びY:SnO2ナノ粒子の両方をアセタートで官能化し、無水エタノールで希釈して、SnO2-A及びY:SnO2-Aの非水分散体を生じさせた。XRD及びUV-Visによって明らかなように、SnO2-A及びY:SnO2-Aの非水分散体は、ブレードコーティングによる堆積中にペロブスカイトに観察可能な損傷を誘発しなかった。PL分析は、Y:SnO2-Aが、元のSnO2-Aよりも優れた電荷キャリア運動状態を有することを示す。本発明者らは、スケーラブルなブレードコーティング法によりペロブスカイト上に完全に溶液処理されたSnO2-A及びY:SnO2-Aを直接堆積させることによって、PET基板上に反転f-PSCを首尾よく製作した。Y:SnO2-AをETLとして有するf-PSCSは、元のSnO2-Aと比較して、改善された性能を呈する。最適なイットリウム濃度は2mol%であり、平均性能が20%向上し、Voc及びFFの両方が増加することが見出された。低温合成Y:SnO2-Aは、有望なETL及び遮断層であり、完全に溶液処理される。この材料は、市販のペロブスカイト太陽光モジュールの競争力を向上させることができる従来の有機ETLと比べて、多様なコスト、スケーラビリティ、及び製造上の利点を有する。
【0125】
実験セクション
SnO2及びY:SnO2の合成
SnO2及びY:SnO2ナノ粒子の両方を、5M水酸化ナトリウム溶液で1M塩化スズ(IV)水溶液を中和することによって、ゾルゲル法により合成した。SnO2及びY:SnO2ナノ粒子を同様に合成したが、合成プロセス中に酸化スズの前駆体にイットリウム前駆体を添加することによって、イットリウムドーピングを現場で達成した。1M塩化スズ(IV)水溶液を、無水塩化スズ(IV)を脱イオン(DI)水に滴下することによって調製した。連続的に撹拌した塩化スズ(IV)水溶液に、pHが6.5に達するまで、5M水酸化ナトリウムの新たに調製した水溶液を滴下した。得られたSnO2の白色沈殿物を12時間熟成させ、遠心分離機によって収集し、水層が塩化物を含まなくなるまで、DI水中、及び1:1のDI水とエタノールの混合物中に遠心分離機により分散させて、繰り返し洗浄した。洗浄されたSnO2ナノ粒子を室温で乾燥させた。1、2、及び3mol.%イットリウムドープされたSnO2を調製するために、それぞれ、計算された量の塩化イットリウム(III)水和物を、1M塩化スズ(IV)水溶液に添加した。
【0126】
アセタートでのSnO2及びY:SnO2の官能化
SnO2及びY:SnO2の両方を、本明細書で考察される実施例に基づいて、アセタートで官能化した。ここで、SnO2又はY:SnO2を1:1質量体積比で氷酢酸と混合した。次いで、SnO2と氷酢酸、又はY:SnO2と酢酸の混合物を、凝縮器及び温度計を装着した密閉容器内で1時間、還流で加熱した。混合物は、最初に乳白色のコロイド分散体を形成し、これは、官能化が完了すると透明になる。未溶解のSnO2ナノ粒子の存在は、遠心分離を介して除去することができる乳白色の着色を残す。官能化SnO2の透明溶液中のSnO2の割合を、TGA分析から判定し、官能化SnO2ナノ粒子をXRD、FT-IR、及びUV-Vis法によって特徴付けた。XRD及びFTIR分析のために、官能化酸化スズ(IV)ナノ粒子に存在する任意の溶媒を蒸発させ、固体生成物を、分析前に、100℃で2時間、真空オーブン内で乾燥させた。官能化SnO2及びY:SnO2を無水エタノールで希釈し、ペロブスカイト上でのブレードコーティングに好適なSnO21.5%(m/v)を得た。
【0127】
デバイスの製作
ITO-PET基板を6×8インチの大きさに切り、エアガンで吹き付け、IPAで拭いた。これらの洗浄したPET基板をUV-オゾンで15分間処置した直後、PTAA、PFN、CH3NH3PbI3、及びSnO2又はY:SnO2分散体をドライボックス内部にブレードコーティングによって逐次堆積させた。PTAA溶液は、PTAA8mgをトルエン1mLに溶解させることによって調製された。PTAA溶液のうちの60μLを、コーティング速度10mm/sでブレードギャップが100μmであるブレードコーティングに使用し、続いて、100℃で10分間加熱し、次いで、室温まで冷却した。次に、メタノール中の0.4mg/mLのPFN溶液のうちの60μLを、コーティング速度10mm/s、ブレードギャップ100μmで、PTAA層上にブレードコーティングした。ペロブスカイト前駆体溶液を、体積比0.91:0.07:0.02のDMF/DMSO/NMPの混合物中にメチルアンモニウムヨウ化物及びヨウ化鉛を溶解させることによって調製し、1.2M溶液を得た。ペロブスカイト前駆体溶液のうちの70μLを、ブレードギャップが150μmであるブレードコーティングによって、コーティング速度10mm/sで堆積させた。ペロブスカイト前駆体溶液の堆積直後に、N2エアナイフを使用して湿潤フィルムを予備乾燥させ、続いて、140℃で2分間ホットプレートアニールした。最後に、無水エタノール中のSnO2-A又はY:SnO2-A分散体のうちの60μLをブレードギャップ高さ100μm、コーティング速度10mm/sでペロブスカイト上に堆積させ、続いて、100℃で2~3分間アニールした。PET-ITO/PTAA/PFN/CH3NH3PbI3/BCP/SnO2-A/Ag及びPET-ITO/PTAA/PFN/CH3NH3PbI3/BCP/Y:SnO2-A/Agのデバイスアーキテクチャ及び活性領域0.1cm2を有するPSCの製作を、熱蒸着を用いてBCP5nm及び銀100nmを堆積させることによって完了した。
【0128】
物理的方法
X線光電子分光(XPS):VG Scientific MultiLab 3000
【0129】
エネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトル:EDS検出器付きTESCAN Vega3 SEM
【0130】
粉末XRDパターンを、Bruker D8 DiscoverX線回折計を使用して得た。
【0131】
Smart iTRを備えたThermo Nicolet Avatar 360 FT-IR分光計を使用して、赤外線スペクトルを収集した。
【0132】
UV-Vis分析は、Agilent8453UV-Vis分光計で実施された。
【0133】
上部断面SEM画像は、JEOL7000電界放射型走査型電子顕微鏡を使用して得た。PL分析は、CCD検出器及び632nm He-Neレーザー光源を備えたVia Raman顕微鏡において、Renishawを使用して実施された。デバイスの電流密度-電圧(J-V)特性は、1つの太陽条件(AM1.5G、100mW/cm2)下のキセノンアークランプを有するクラスAAAソーラーシミュレータを使用して、測定した。デバイス測定の前に、ソーラーシミュレータは、NREL認定Si基準セルを使用して、較正された。デバイスを、走査速度100mV/s、ステップサイズ10mVで、1.2~0Vで試験した
【0134】
実施例E-SnO
2へのイットリウムドーピング
一連のイットリウムドープされた酸化スズ(IV)(Y:SnO
2)ナノ粒子(NP)を、元の酸化スズ(IV)(SnO
2)粒子の合成のために、本発明者らが最近報告したゾルゲルプロセスのわずかな変更を使用して合成した(Chapagain et al.(2021)“Direct Deposition of Nonaqueous SnO
2 Dispersion by Blade Coating on Perovskites for the Scalable Fabrication of p-i-n Perovskite Solar Cells”ACS Appl.Energy Mater.,Vol.4,No.10,pp.10477-10483)。合成Y:SnOナノ粒子について、塩化イットリウムを、合成プロセス中に、無水SnCl
4の水溶液に適切な比率で添加して、Y:SnO
21%、Y:SnO
22%、及びY:SnO
23%を得た(
図23)。
【0135】
ペロブスカイト親和性有機溶媒中の分散性を高めるために、Y:SnO
2NPをアセタートで官能化して、Y:SnO
2-Aを生じさせた。アセタート官能化は、Y:SnO
2の非晶質の白色粉末を、氷酢酸中の官能化酸化スズ(Y:SnO
2-A)の無色透明の溶液に変換する。ここで、
図23に示すように、Y:SnO
2を1:1.25質量体積比で氷酢酸と混合した。しかしながら、Y:SnO
2と酢酸の比率は、用途によって異なる。次いで、Y:SnO
2と氷酢酸の混合物を、凝縮器及び温度計を装着した密閉容器内で1時間、還流で加熱した。混合物は、最初に乳白色のコロイド分散体を形成し、これは、官能化が完了すると透明になる。未溶解のY:SnO
2ナノ粒子の存在は、遠心分離を介して除去することができる乳白色の着色を残す。官能化Y:SnO
2(Y:SnO
2)の透明溶液中のY:SnO
2の割合を、TGA分析から判定し、Y:SnO
2-Aナノ粒子をXRD、FT-IR、及びUV-Vis法によって特徴付けた。XRD及びFTIR分析のために、官能化酸化スズ(IV)ナノ粒子に存在する任意の溶媒を蒸発させ、固体生成物を、分析の前に、100℃で2時間、真空オーブン内で乾燥させた。Y:SnO
2-Aを無水エタノールで希釈し、ペロブスカイト上でのブレードコーティングに好適なSnO
21.5%(m/v)を得た。
【0136】
濃度Y:SnO
2に対するペロブスカイト太陽電池の太陽光発電性能を、順方向(F)及び逆方向(R)測定について、
図24及び
図25に示す。
【0137】
実施例セットF
ペロブスカイトインクは、ジメチルスルホキシド(DMSO、7%)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、2%)、及びジメチルホルムアミド(DMF、91%)中にPbI2及びMAIを溶解させて、穏やかに撹拌することにより1.2M溶液を作製することによって、調製した。ペロブスカイトを、ブレードギャップが100μmであるブレードコーティングにより、室温において速度10mm秒-1でPET上に堆積させた。ペロブスカイト堆積後、圧力40psiでN2ナイフを用いてフィルムを乾燥させた後、140℃で2分間アニールした。NiOxインクを、3:1(v/v)Et3N/EtOH混合物200μL中でNiOx粒子(20mg)を、65℃で60分間、密閉バイアル内で超音波処理することにより調製した。得られた懸濁液を、CB700μL及びEtOH100μLで希釈して、NiOx溶液20mg/mLを作製した。希釈後、懸濁液を65℃で加熱して超音波処理した。ブレードコーティングの前に、高温インク懸濁液を0.2μmのPTFEを通して濾過した。NiOxインク40μLインチ-2を、速度5mm秒-1で、最適化されたブレードギャップ225μmを使用したブレードコーティングによってペロブスカイト上に堆積させた。
【0138】
純NiO
x(添加PAなし)の結果は、ペロブスカイト上での良好な溶液相堆積を裏付ける。堆積前後のITO上のヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPI)のXRDパターン(
図26a)は、14.1における顕著なMAPIピークとほぼ同じであり、12.7において検出可能なPbI
2分解ピークはない。NiO
x及びイミダゾリウムPAを用いた光発光(PL)研究(
図26b)は、多機能不動態化剤を含むことの更なる利益を裏付ける。イミダゾリウムを、ブレードコーティングによってペロブスカイト表面に堆積させた。イミダゾリウムを、EtOH中に0.04mg/mL溶液の濃度で懸濁し、ブレード高さ100μm、10mm/秒でコーティングした。MAPI上のNiO
xの堆積は、電荷取出しに関連付けられたPL強度を低下させる。我々の多機能イミダゾリウムPAにNiO
xを追加することで、電荷取出しが改善される。機能性p-i-nデバイスは、14.47%(0.25cm
2)及び9.60%(1.0cm
2)の効率で、NiO
xナノ粒子の溶液相堆積を使用して調製されている。J-V曲線から、直列抵抗及びシャント抵抗がデバイスの性能に影響を与えていることが分かる。特に、同じ溶媒系を、MAPI上のNiO
x及びSnO
2の堆積に使用し、後者だけが今まで機能的デバイスを提供した。これらの2つの場合では、界面不動態化層を含めることによって媒介され得る表面の違いがあり得る。
【0139】
本開示で使用される見出しは、見出しに関係する全ての開示が、その見出しから始まるセクション内に見出されることを示唆することを意味するものではない。任意の主題の開示は、本明細書全体を通して見出すことができる。
【0140】
「好ましくは」、「一般的に」、及び「典型的に」などの用語は、本明細書では、特許請求される発明の範囲を限定するために、又はある特定の特徴が特許請求される発明の構造又は機能にとって重要、必須、又は重要であることを暗示するために使用されないことに留意すべきである。むしろ、これらの用語は、本発明の特定の実施形態で利用されてもされなくてもよい代替的又は追加的な特徴を強調することを意図しているだけである。
【0141】
本開示で使用される場合、「a」又は「an」は、別段の指定がない限り、1つ以上を意味する。特許請求の範囲で使用される場合、単語「含む(comprising)」とともに使用される場合、単語「a」又は「an」は、別段の指定がない限り、1つ又は1つ超を意味し得る。本開示又は特許請求の範囲で使用される場合、「別の」は、別段の指定がない限り、少なくとも第2の又はそれ以上を意味する。本開示で使用される場合、語句「などの(such as)」、「例えば(for example)」、及び「例えば(e.g.)」は、その用語(「などの(such as)」、「例えば(for example)」、又は「例えば(e.g.)」)に続くリストがいくつかの例を提供するが、リストが必ずしも完全に包括的なリストであるとは限らないという点で、「例えばであるが、これらに限定されない」を意味する。単語「含む(comprising)」は、単語「含む(comprising)」に続く項目が、追加の記載されていない要素又はステップを含み得ることを意味し、すなわち、「含む(comprising)」は、追加の記載されていないステップ又は要素を除外しない。
【0142】
別段示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される原料の量、反応条件などの特性を表す全ての数は、全ての例において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、別段逆の意味が示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示の主題によって求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0143】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、値又は質量、重量、時間、体積、濃度又は割合の量を指すとき、開示される方法を実行するのに適切であるため、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、及びいくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0144】
1つ以上の実施形態の詳細な説明が、本明細書に提供される。しかしながら、本発明は、様々な形態で具現化され得ることを理解されたい。したがって、本明細書に開示される特定の詳細(好ましい又は有利と指定されていても)は、限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、特許請求の範囲の例示的な基礎として、及び当業者に本発明を任意の適切な様式で用いるように教示するための代表的な基礎として使用されるべきである。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更は、前述の説明及び添付の図面から当業者には明らかになるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図されている。
【国際調査報告】