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特表2024-536932IL-23シグナル伝達を阻害する組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】IL-23シグナル伝達を阻害する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20241001BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241001BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241001BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K16/24
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P35/02
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546043
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022046287
(87)【国際公開番号】W WO2023064278
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/254,387
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524137318
【氏名又は名称】ワイ-トラップ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベディ, リシ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA14
4C085AA25
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、IL-23軸をモジュレートするための組換え分子、組成物、および方法を提供する。特定の実施形態では、これらの組換え分子を、IL-23軸およびシグナル伝達に関連するがん、自己免疫疾患、および炎症性障害の処置および/または予防的処置の方法で使用する。1つの態様では、組換え分子であって、(a)インターロイキン-23(IL-23)阻害ポリペプチド(IIP)であって、IIPが、IL-23結合ポリペプチドまたはIL-23R結合ポリペプチドを含む、IIP;および(b)1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質または免疫刺激性受容体に結合する標的結合ポリペプチド部分を含む、組換え分子を本明細書中に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え分子であって、
a)インターロイキン-23(IL-23)阻害ポリペプチド(IIP)であって、前記IIPが、IL-23結合ポリペプチドまたはIL-23R結合ポリペプチドを含む、IIP;および
b)1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質または免疫刺激性受容体に結合する標的結合ポリペプチド部分
を含む、組換え分子。
【請求項2】
前記標的結合ポリペプチドが、アンタゴニストまたはアゴニストとして免疫チェックポイントタンパク質に結合する、請求項1に記載の組換え分子。
【請求項3】
前記免疫チェックポイントタンパク質が、T細胞共阻害受容体もしくはリガンドまたは自然阻害受容体もしくはリガンドである、請求項1または2に記載の組換え分子。
【請求項4】
前記免疫チェックポイントタンパク質が、プログラム死-1(PD1;CD279)、プログラム死リガンド1(PDL1)、プログラム死リガンド2(PDL2)、細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA4;CD152)、Bリンパ球およびTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)、T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3;CD223)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(Tim-3;HAVCR2)、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、CD47、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)、主要組織適合性遺伝子複合体クラスI,G(HLA-G)、Ig様転写物2(ILT2;LILRB1)、またはIg様転写物4(ILT4、LILRB2)から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項5】
前記免疫刺激性受容体が、4-1BB(CD137)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS;CD278)、OX-40(CD134)、糖質コルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR;CD357)、CD40、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD28、またはCD27から選択される、請求項1に記載の組換え分子。
【請求項6】
前記IIPが、IL-23に結合して阻害する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項7】
前記IIPが、IL-23p19サブユニットに結合して阻害する、請求項6に記載の組換え分子。
【請求項8】
前記IIPが、IL-23Rに結合して阻害する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項9】
前記IIPが、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項10】
前記IIPが抗体またはその抗原結合断片であり、ここで、前記その抗原結合断片が、結晶化可能断片(Fc)領域、抗原結合断片(Fab)領域、単鎖可変断片(scFv)、軽鎖もしくはその機能的部分、前記軽鎖の可変領域(VL)、前記軽鎖の定常領域(CL)、重鎖もしくはその機能的部分、前記重鎖の可変領域(VH)、前記重鎖の定常領域(CH),少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)もしくはその一部、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項9に記載の組換え分子。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトIL-23p19サブユニットを標的にするモノクローナル抗体を含む、請求項10に記載の組換え分子。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合断片が、リサンキズマブ、グセルクマブ、チルドラキズマブ、ブラジクマブ、およびミリキズマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項11に記載の組換え分子。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合断片がグセルクマブである、請求項12に記載の組換え分子。
【請求項14】
前記標的結合ポリペプチドが、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項1に記載の組換え分子。
【請求項15】
前記標的結合ポリペプチドが抗体またはその抗原結合断片であり、前記その抗原結合断片が、結晶化可能断片(Fc)領域、抗原結合断片(Fab)領域、単鎖可変断片(scFv)、軽鎖もしくはその機能的部分、前記軽鎖の可変領域(VL)、前記軽鎖の定常領域(CL)、重鎖もしくはその機能的部分、前記重鎖の可変領域(VH)、前記重鎖の定常領域(CH)、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)もしくはその一部、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項14に記載の組換え分子。
【請求項16】
前記標的結合ポリペプチドが、アンタゴニストとして免疫チェックポイントタンパク質に結合し、前記標的結合ポリペプチドが、免疫チェックポイントタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)のリガンド結合配列を含む、請求項2に記載の組換え分子。
【請求項17】
前記免疫チェックポイントタンパク質のECDが、腫瘍細胞または免疫細胞上に発現または提示されるその同族リガンドのうちの1つまたは複数に特異的に結合することができる、請求項16に記載の組換え分子。
【請求項18】
前記免疫細胞が、抗原提示細胞(APC)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、CD4T細胞、またはT17細胞である、請求項17に記載の組換え分子。
【請求項19】
前記ECDが、プログラム死-1リガンド1(PDL1;CD274;B7-H1)および/またはプログラム死-1リガンド2(PDL2)に特異的に結合することができる、請求項16~18のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項20】
前記標的結合ポリペプチドが、前記PD1(CD279)細胞外ドメイン(PD1-ECD)またはそのリガンド結合断片を含む、請求項19に記載の組換え分子。
【請求項21】
前記標的結合ポリペプチドが、配列番号56のアミノ酸配列、または配列番号56に対して少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのリガンド結合断片を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項22】
前記標的結合ポリペプチドが、配列番号56のアミノ酸配列またはそのリガンド結合断片の1またはそれを超える改変を含み、ここで、前記標的結合ポリペプチドが、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または逆位を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項23】
前記1またはそれを超える改変が、野生型PD1-ECDのそのリガンドに対する親和性と比較して、前記標的結合ポリペプチドのPDL1もしくはPDL2またはその両方に対する親和性を増加させる、請求項22に記載の組換え分子。
【請求項24】
前記1またはそれを超える改変が、A132I、S87G、P89L、N116S、G124S、S127V、A140Vから選択される、請求項22または23に記載の組換え分子。
【請求項25】
前記改変がA132Iである、請求項24に記載の組換え分子。
【請求項26】
前記標的結合ポリペプチドが、配列番号57のアミノ酸配列を有する、請求項25に記載の組換え分子。
【請求項27】
前記IIPがリンカーを介して前記標的結合ポリペプチド部分に連結している、請求項1~26のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項28】
前記標的結合ポリペプチド部分が、前記IIPのC末端に連結している、請求項27に記載の組換え分子。
【請求項29】
前記リンカーが、非切断性リンカー、ペプチドリンカー、可動性リンカー、リジッドリンカー、らせん状リンカー、および非らせん状リンカーから選択される、請求項27または28に記載の組換え分子。
【請求項30】
前記リンカーが、(GGGGS)n(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、または8である)を含むアミノ酸配列を有するペプチドリンカーである、請求項27~29のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項31】
前記リンカーが、配列番号55のアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の組換え分子。
【請求項32】
前記組換え分子が、配列番号53のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチドおよび配列番号54のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドを含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の組換え分子。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え分子を含む宿主。
【請求項34】
請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え分子をコードするポリヌクレオチド配列。
【請求項35】
請求項36に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項36】
請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え分子を含むポリペプチド。
【請求項37】
請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え分子または請求項35に記載のベクターを含む医薬組成物。
【請求項38】
薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
被験体における新生物疾患、がん、または免疫障害を処置する方法であって、有効量の、請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え分子、または請求項35に記載のベクターを含む医薬組成物を前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項40】
前記被験体ががんを有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記組換え分子が、配列番号53のアミノ酸配列有する第1のポリペプチドおよび配列番号54のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、前立腺がん、膵臓がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、精巣がん、乳がん、卵巣がん、脳がん、皮膚がん、膀胱がん、および頭頸部がん、黒色腫、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、および/またはリンパ腫から選択される、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記方法が、腫瘍成長を少なくとも10、15、または20日間抑制する、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、腫瘍成長を少なくとも5%、10%、15%、または20%低下させる、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
抗CTLA4-TGFβRII分子を含む治療剤を前記被験体に投与することをさらに含む、請求項39~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
1またはそれを超える抗がん剤を投与することをさらに含む、請求項39~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記1またはそれを超える抗がん剤が、免疫治療剤、化学療法分子、抗体、抗体-薬物コンジュゲート、小分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、抗血管新生剤、細胞治療、CAR-T細胞治療、CAR-NK細胞治療、放射性核種治療、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーション、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)、または高周波アブレーションを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激性受容体アゴニスト、免疫刺激性サイトカイン/サイトカイン受容体アゴニスト、免疫阻害性サイトカイン/サイトカイン受容体アンタゴニスト、腫瘍ワクチン、免疫調節性イミド薬、CAR-T細胞、CAR-NK細胞、または腫瘍溶解性ウイルスから選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記1またはそれを超える抗がん剤の前記投与が、前記1またはそれを超える抗がん剤のみの投与と比較して、重度の免疫関連有害事象または毒性をより有効に低下または予防する、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記1またはそれを超える抗がん剤の前記投与が、前記1またはそれを超える抗がん剤のみの投与と比較して、より有効に腫瘍成長の低下を増強するまたは腫瘍成長を抑制する、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記被験体が哺乳動物である、請求項39~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記被験体がヒトである、請求項39~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
被験体における新生物疾患またはがんを処置する方法であって、1またはそれを超える治療剤を前記被験体に投与することを含み、ここで、前記1またはそれを超える治療剤が、
a.IL-23シグナル伝達の阻害剤を含む第1の治療剤;および
b.以下のうちのいずれか1つまたは複数を含む第2の治療剤:
(i)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質のアンタゴニストである、1またはそれを超える調節剤;
(ii)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超える免疫刺激性受容体のアゴニストである、1またはそれを超える調節剤;
(iii)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超えるサイトカインのシグナル伝達のアンタゴニストである、1またはそれを超える調節剤;
(iv)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超えるサイトカイン受容体のアゴニストである、1またはそれを超える調節剤;
(v)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、腫瘍細胞または免疫細胞の細胞表面上に発現または提示される1またはそれを超える細胞表面分子をモジュレートする、1またはそれを超える調節剤;
(vi)CAR-T細胞、CAR-NK細胞、または造血幹細胞を含む1またはそれを超える免疫細胞;
(vii)1またはそれを超える免疫原性化学療法剤;および/あるいは
(viii)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超える免疫阻害性酵素のアンタゴニストである、1またはそれを超える調節剤
を含む、方法。
【請求項54】
前記IL-23シグナル伝達の阻害剤が、IL-23に結合する組換えタンパク質であるIL-23結合部分を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記IL-23シグナル伝達の阻害剤が、IL-23Rに結合する組換えタンパク質であるIL-23R結合部分を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記IL-23シグナル伝達の阻害剤が、請求項1~32のいずれか1項に記載の組換え分子を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記IL-23シグナル伝達の阻害剤が、抗体またはその抗原結合断片であり、前記その抗原結合断片が、結晶化可能断片(Fc)領域、抗原結合断片(Fab)領域、単鎖可変断片(scFv)、軽鎖もしくはその機能的部分、前記軽鎖の可変領域(VL)、前記軽鎖の定常領域(CL)、重鎖もしくはその機能的部分、前記重鎖の可変領域(VH)、前記重鎖の定常領域(CH)、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)もしくはその抗原結合部分、またはこれらの組み合わせを含む、請求項54または55に記載の方法。
【請求項58】
前記抗体またはその抗原結合断片が、IL-23サブユニットを標的にするモノクローナル抗体を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記モノクローナル抗体が、前記IL-23p19サブユニットを標的にする、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体またはその抗原結合断片が、リサンキズマブ、グセルクマブ、チルドラキズマブ、ブラジクマブ、およびミリキズマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記IL-23R結合部分が、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
前記抗体またはその抗原結合断片が、AS2762900-00の6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項61に記載の分子。
【請求項63】
前記第2の治療剤が、1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質のアンタゴニストである調節剤を含む、請求項53~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記免疫チェックポイントタンパク質が、プログラム死-1(PD1;CD279)、プログラム死リガンド1(PDL1)、プログラム死リガンド2(PDL2)、細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA4;CD152)、Bリンパ球およびTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)、T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3;CD223)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(Tim-3;HAVCR2)、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、CD47、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)、主要組織適合性遺伝子複合体クラスI,G(HLA-G)、Ig様転写物2(ILT2;LILRB1)、またはIg様転写物4(ILT4、LILRB2)から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記第2の治療剤が、PD1シグナル伝達のアンタゴニストである調節剤を含む、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記PD1シグナル伝達のアンタゴニストが、PD1を標的にするポリペプチドである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記調節剤が、PD1(CD279)を標的にするモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む阻害剤である、請求項65または66に記載の方法。
【請求項68】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ドスタルリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、ササンリマブ、チセリズマブ、またはトリパリマブから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記調節剤が、プログラム死-1リガンド1(PDL1;CD274;B7-H1)、プログラム死-1リガンド2(PDL2)、またはこれらの両方から選択される前記チェックポイントタンパク質の阻害剤である、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
前記調節剤が、PDL1、PDL2、またはこれらの両方を標的にするポリペプチドである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ポリペプチドが、PDL1、PDL2、またはこれらの両方を標的にする抗体またはその抗原結合断片である、請求項69または70に記載の方法。
【請求項72】
前記抗体またはその抗原結合断片が、デュルバルマブ、アベルマブ、またはアテゾリズマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記調節剤が、前記チェックポイントタンパク質CTLA-4のポリペプチド阻害剤である、請求項63に記載の方法。
【請求項74】
前記ポリペプチドが、CTLA-4を標的にする抗体またはその抗原結合断片である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記抗体またはその抗原結合断片が、イピリムマブまたはトレメリムマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記調節剤が、前記チェックポイントタンパク質LAG-3のポリペプチド阻害剤である、請求項63に記載の方法。
【請求項77】
前記ポリペプチドが、LAG-3を標的にする抗体またはその抗原結合断片である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記抗体またはその抗原結合断片が、レラトリマブ、フィアンリマブ、Sym022、GSK2831781、TSR-033、イエルミリマブ、ファベゼリマブ、テボテリマブ、FS118、またはパブナリマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項76または77に記載の方法。
【請求項79】
前記調節剤が、前記チェックポイントタンパク質TIGITのポリペプチド阻害剤である、請求項63に記載の方法。
【請求項80】
前記ポリペプチドが、TIGITを標的にする抗体またはその抗原結合断片である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記抗体またはその抗原結合断片が、チラゴルマブ、ビボストリマブ、BMS-986207、オシペルリマブ、エチギリマブ、ドムバナリマブ、EOS-448、SEA-TGT、ASP8374、COM902、またはIBI939のうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項79または80に記載の方法。
【請求項82】
前記第2の治療剤が、1またはそれを超える免疫刺激性受容体のアゴニストである調節剤を含む、請求項53~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記免疫刺激性受容体が、4-1BB(CD137)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS;CD278)、OX-40(CD134)、糖質コルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR;CD357)、CD40、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD28、またはCD27から選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記第2の治療剤が、CD40LまたはそのCD40結合断片を含むポリペプチドである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記第2の治療剤が、CD80もしくはCD86;またはそのCD28結合断片を含むポリペプチドである、請求項83または84に記載の方法。
【請求項86】
前記第2の治療剤が、腫瘍細胞または腫瘍関連間質細胞上に発現または提示される細胞表面分子の調節剤を含む、請求項53~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記細胞表面分子が、成長因子受容体、トランスフォーミング成長因子-ベータ受容体(TGFβR)、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体、Igスーパーファミリー受容体、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、上皮成長因子受容体(EGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、腫瘍細胞表面分子、サイトカイン受容体、またはケモカイン受容体から選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記第2の治療剤が、免疫細胞上に発現または提示される細胞表面分子の調節剤を含む、請求項53~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記免疫細胞が、T細胞、NK細胞、または骨髄性細胞である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記細胞表面分子が、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体、Igスーパーファミリー受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、T細胞共刺激分子受容体、T細胞共阻害分子受容体、またはナチュラルキラー(NK)細胞受容体である、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞表面分子が、骨髄性細胞阻害受容体、または骨髄性細胞刺激受容体である、請求項88~90のいずれか1項に記載の分子。
【請求項92】
前記細胞表面受容体が、SIRPaまたはCD47である、請求項86または88に記載の方法。
【請求項93】
前記第2の治療剤が、SIRPaのCD47への結合を阻害する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記第2の治療剤が、CD47に結合するポリペプチドである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記ポリペプチドが、CD47を標的にする抗体またはその抗原結合断片である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記抗体またはその抗原結合断片が、マグロリマブ、ZL-1201、TJ011133、STI-6643、SRF231、SHR-1603、IMC-002、IBI188、CC-90002、AO-176またはAK117から選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記ポリペプチドが、前記SIRPa細胞外ドメインまたはそのCD47結合断片を含む、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記ポリペプチドが、エボルパセプト、TTI-621、またはTTI-622から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記第2の治療剤が、SIRPaに結合するポリペプチドである、請求項93に記載の方法。
【請求項100】
前記第2の治療剤が、1またはそれを超えるサイトカインのシグナル伝達のアンタゴニストである、請求項53~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記サイトカインがトランスフォーミング成長因子-ベータ(TGFb)である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記調節剤が、小分子キナーゼ阻害剤、TGFbRII ECDもしくはそのTGFb結合断片を含むポリペプチド、または抗TGFβ抗体、抗TGFβR抗体、抗GARP抗体、もしくは抗LAP抗体から選択される抗体もしくはその抗原結合断片から選択されるTGFbシグナル伝達の阻害剤である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記小分子キナーゼ阻害剤が、ガルニセルチブを含むTGFβR小分子キナーゼ阻害剤である、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記抗TGFβ抗体またはその抗原結合断片が、フレソリムマブの6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記TGFbRII ECDまたはそのTGFb結合断片を含む前記ポリペプチドが、AVID200、ビントラフスプアルファ(M7824)、抗CTLA4-TGFbRII、SIRPa ECD-TGFbRII、抗CEA-TGFbRII、抗PSMA-TGFbRII、抗IL6R-TGFbRII、抗PD1-TGFbRII、抗EGFR-TGFbRII、または抗HER2-TGFbRIIから選択される、請求項102に記載の方法。
【請求項106】
前記サイトカインが、以下:IL-4、IL-13、IL-10、IL-6、IL-1b、IL-17、IL-22、またはVEGFのうちの1つまたは複数から選択される、請求項100~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記サイトカインが、IL-4またはIL-13である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記調節剤が、IL4受容体アルファ(IL4Ra)を標的にするポリペプチドである、請求項106または107に記載の方法。
【請求項109】
前記ポリペプチドが、デュピルマブの6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む抗体または抗原結合断片である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記サイトカインがIL1bである、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
前記第2の治療剤がアナキンラを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記第2の治療剤が、カナキヌマブの6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
前記サイトカインがIL10である、請求項106に記載の方法。
【請求項114】
前記第2の治療剤が、IL10Rの細胞外ドメインのIL10結合配列、またはIL10もしくはIL10Rを標的にする抗体もしくはその抗原結合断片を含む、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記第2の治療剤が、1またはそれを超えるサイトカイン受容体のアゴニストである、請求項53~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記サイトカイン受容体が、IL12R、IL15R、およびIL18Rから選択される、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記第2の治療剤が、IL-12を含むポリペプチドである、請求項115または116に記載の方法。
【請求項118】
前記細胞表面分子が、CA125、CA19-9、CD30、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、CEACAM5もしくは表面抗原分類、66e(CD66e)、CEACAM6、DLL3、DLL4、DPEP3、EGFR EGFRvIII、GD2、HER2、HER3、HGF、IGF1R、IL13Ra2、LIV-1、LRRC15、MUC1、PRLR、PSCA、PSMA、PTK7、SEZ6、SLAMF7、TF、cMet,クローディン、メソテリン、ネクチン4、uPAR、GPNMB、CD79b、CD22、NaPi2b、SLTRK6、STEAP1、MUC16、CD37、GCC、AGC-16、5T4、CD70、TROP2、CD74、CD27L、Fra、CD138、CA6、CD38、SLAMF7、BCMA、CD20、CD19、CD33またはCD30から選択される腫瘍細胞表面分子である、請求項88に記載の方法。
【請求項119】
前記調節剤が、前記腫瘍細胞表面分子を標的にするモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む阻害剤である、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記抗体またはその抗原断片が、ラベツズマブ、セルグツズマブ、セツキシマブ、ネシツムマブ、パニツムマブ、デパツキシズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、エンフォルツマブ、またはサシツズマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記免疫細胞が、抗原提示細胞(APC)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、またはマクロファージを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項122】
前記免疫細胞が、T17細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、Treg細胞、ガンマデルタT細胞、NK細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、またはガンマデルタT17細胞を含む、請求項88または121に記載の方法。
【請求項123】
前記第1および第2の薬剤の組み合わせを用いた処置により、前記第2の薬剤のみでの処置よりも有効に、腫瘍成長が低下するか抑制され、重度の免疫関連有害事象が予防されるか低下し、全生存または無増悪生存が増加し、有害事象が軽減するか予防されるか毒性が低下し、あるいは骨への転移または骨格関連有害事象が軽減または予防される、請求項53~122のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前記がんが、前立腺がん、膵臓がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、精巣がん、乳がん、卵巣がん、脳がん、皮膚がん、膀胱がん、および頭頸部がん、黒色腫、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、および/またはリンパ腫から選択される、請求項53~123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
抗CTLA4-TGFβRII分子を含む治療剤を前記被験体に投与することをさらに含む、請求項53~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
1またはそれを超える抗がん治療を投与することをさらに含む、請求項53~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
前記1またはそれを超える抗がん治療が、免疫治療剤、化学療法分子、抗体、抗体-薬物コンジュゲート、小分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、抗血管新生剤、細胞治療、CAR-T細胞治療、CAR-NK細胞治療、放射性核種治療、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーション、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)、または高周波アブレーションを含む、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記免疫治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激性受容体アゴニスト、免疫刺激性サイトカイン/サイトカイン受容体アゴニスト、免疫阻害性サイトカイン/サイトカイン受容体アンタゴニスト、腫瘍ワクチン、免疫調節性イミド薬、CAR-T細胞、CAR-NK細胞、または腫瘍溶解性ウイルスから選択される、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記被験体が哺乳動物である、請求項53~128のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
前記被験体がヒトである、請求項53~128のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月11日出願の米国特許仮出願第63/254,387号(その全体が参考として援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、配列表を含んでおり、この配列表は、Patent Centerを介して提出され、その全体が本明細書中で参考として援用される。2022年XXX XXに作成された前述のXMLコピーの名称は50048WO_sequencelisting.xmlであり、サイズはXX,XXXバイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
インターロイキン23(IL-23)は、乾癬、炎症性腸疾患、多発性硬化症、または関節リウマチなどの慢性炎症性疾患の発症における肝要な炎症促進性サイトカインであることが知られている。過剰なIL-23シグナル伝達は、病理学的結果として、標的集団、主にTh17細胞およびIL-17分泌TCRγδ細胞(Tγδ17)による炎症メディエーター(IL-17、IL-22、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、または腫瘍壊死因子(TNFα)など)の産生を促進し得ることと関連している。また、IL-23は、腫瘍促進性の炎症促進性シグナル伝達および抗腫瘍適応免疫不全の重要な決定要因である。
【0004】
したがって、IL-23シグナル伝達をモジュレートすることができる分子が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
1つの態様では、組換え分子であって、(a)インターロイキン-23(IL-23)阻害ポリペプチド(IIP)であって、IIPが、IL-23結合ポリペプチドまたはIL-23R結合ポリペプチドを含む、IIP;および(b)1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質または免疫刺激性受容体に結合する標的結合ポリペプチド部分を含む、組換え分子を本明細書中に提供する。
【0006】
種々の実施形態では、標的結合ポリペプチドは、アンタゴニストまたはアゴニストとして免疫チェックポイントタンパク質に結合する。種々の実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞共阻害受容体もしくはリガンドまたは自然阻害受容体もしくはリガンドである。
【0007】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質は、プログラム死-1(PD1;CD279)、プログラム死リガンド1(PDL1)、プログラム死リガンド2(PDL2)、細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA4;CD152)、Bリンパ球およびTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)、T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3;CD223)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(Tim-3;HAVCR2)、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、CD47、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)、主要組織適合性遺伝子複合体クラスI,G(HLA-G)、Ig様転写物2(ILT2;LILRB1)、またはIg様転写物4(ILT4、LILRB2)から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、免疫刺激性受容体は、4-1BB(CD137)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS;CD278)、OX-40(CD134)、糖質コルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR;CD357)、CD40、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD28、またはCD27から選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、IIPは、IL-23に結合してそれを阻害する。いくつかの実施形態では、IIPは、IL-23p19サブユニットに結合してそれを阻害する。いくつかの実施形態では、IIPは、IL-23Rに結合してそれを阻害する。
【0010】
種々の実施形態では、IIPは、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、IIPは抗体またはその抗原結合断片であり、ここで、その抗原結合断片は、結晶化可能断片(Fc)領域、抗原結合断片(Fab)領域、単鎖可変断片(scFv)、軽鎖もしくはその機能的部分、軽鎖の可変領域(VL)、軽鎖の定常領域(CL)、重鎖もしくはその機能的部分、重鎖の可変領域(VH)、重鎖の定常領域(CH),少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)もしくはその一部、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトIL-23p19サブユニットを標的にするモノクローナル抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、リサンキズマブ(VH:配列番号79;VL:配列番号80)、グセルクマブ(VH:配列番号81;VL:配列番号82)、チルドラキズマブ(VH:配列番号83;VL:配列番号84)、ブラジクマブ(VH:配列番号85;VL:配列番号86)、およびミリキズマブ(VH:配列番号87;VL:配列番号88)のうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はグセルクマブである。
【0012】
いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは抗体またはその抗原結合断片であり、その抗原結合断片は、結晶化可能断片(Fc)領域、抗原結合断片(Fab)領域、単鎖可変断片(scFv)、軽鎖もしくはその機能的部分、軽鎖の可変領域(VL)、軽鎖の定常領域(CL)、重鎖もしくはその機能的部分、重鎖の可変領域(VH)、重鎖の定常領域(CH)、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)もしくはその一部、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、アンタゴニストとして免疫チェックポイントタンパク質に結合し、標的結合ポリペプチドは、免疫チェックポイントタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)のリガンド結合配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質のECDは、腫瘍細胞または免疫細胞上に発現または提示されるその同族リガンドのうちの1つまたは複数に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、抗原提示細胞(APC)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、CD4T細胞、またはT17細胞である。
【0014】
いくつかの実施形態では、ECDは、プログラム死-1リガンド1(PDL1;CD274;B7-H1)および/またはプログラム死-1リガンド2(PDL2)に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、PD1(CD279)細胞外ドメイン(PD1-ECD)またはそのリガンド結合断片を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、配列番号56のアミノ酸配列、または配列番号56に対して少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのリガンド結合断片を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、配列番号56のアミノ酸配列またはそのリガンド結合断片の1またはそれを超える改変を含み、ここで、標的結合ポリペプチドが、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または逆位を含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える改変は、野生型PD1-ECDのそのリガンドに対する親和性と比較して、標的結合ポリペプチドのPDL1もしくはPDL2またはその両方に対する親和性を増加させる。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える改変は、A132I、S87G、P89L、N116S、G124S、S127V、A140Vから選択される。いくつかの実施形態では、改変はA132Iである。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、配列番号57のアミノ酸配列を有する。
【0017】
種々の実施形態では、IIPはリンカーを介して標的結合ポリペプチド部分に連結している。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチド部分は、IIPのC末端に連結している。いくつかの実施形態では、リンカーは、非切断性リンカー、ペプチドリンカー、可動性リンカー、リジッドリンカー、らせん状リンカー、および非らせん状リンカーから選択される。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGGGS)n(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、または8である)を含むアミノ酸配列を有するペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号55のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え分子は、配列番号53のアミノ酸配列を有する第1のポリペプチドおよび配列番号54のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドを含む。
【0018】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組換え分子を含む宿主を本明細書中に提供する。
【0019】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組換え分子をコードするポリヌクレオチド配列を本明細書中に提供する。いくつかの態様では、そのポリヌクレオチドを含むベクターを本明細書中に提供する。
【0020】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組換え分子を含むポリペプチドを本明細書中に提供する。
【0021】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組換え分子または本明細書に記載の組換え分子をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む医薬組成物を本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む。
【0022】
いくつかの態様では、被験体における新生物疾患、がん、または免疫障害を処置する方法であって、有効量の、本明細書に記載の組換え分子、または本明細書に記載の組換え分子をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む医薬組成物を被験体に投与することを含む、方法を本明細書中に提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、被験体はがんを有する。いくつかの実施形態では、組換え分子は、配列番号53のアミノ酸配列有する第1のポリペプチドおよび配列番号54のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、がんは、前立腺がん、膵臓がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、精巣がん、乳がん、卵巣がん、脳がん、皮膚がん、膀胱がん、および頭頸部がん、黒色腫、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、および/またはリンパ腫から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍成長を少なくとも10、15、または20日間抑制する。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍成長を少なくとも5%、10%、15%、または20%低下させる。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法は、抗CTLA4-TGFβRII分子を含む治療剤を被験体に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、1またはそれを超える抗がん剤を投与することをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える抗がん剤は、免疫治療剤、化学療法分子、抗体、抗体-薬物コンジュゲート、小分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、抗血管新生剤、細胞治療、CAR-T細胞治療、CAR-NK細胞治療、放射性核種治療、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーション、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)、または高周波アブレーションを含む。いくつかの実施形態では、免疫治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激性受容体アゴニスト、免疫刺激性サイトカイン/サイトカイン受容体アゴニスト、免疫阻害性サイトカイン/サイトカイン受容体アンタゴニスト、腫瘍ワクチン、免疫調節性イミド薬、CAR-T細胞、CAR-NK細胞、または腫瘍溶解性ウイルスから選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える抗がん剤と組み合わせた抗IL-23剤の投与は、1またはそれを超える抗がん剤のみの投与と比較して、重度の免疫関連有害事象または毒性をより有効に低下または予防する。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える抗がん剤と組み合わせた抗IL-23剤の投与は、1またはそれを超える抗がん剤のみの投与と比較して、より有効に腫瘍成長の低下を増強するまたは腫瘍成長を抑制する。
【0029】
いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。
【0030】
1つの態様では、被験体における新生物疾患またはがんを処置する方法であって、1またはそれを超える治療剤を被験体に投与することを含み、ここで、1またはそれを超える治療剤が、(a)IL-23シグナル伝達の阻害剤を含む第1の治療剤;および(b)以下を含む第2の治療剤:(i)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質のアンタゴニストである、1またはそれを超える調節剤;(ii)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超える免疫刺激性受容体のアゴニストである、1またはそれを超える調節剤;(iii)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超えるサイトカインのシグナル伝達のアンタゴニストである、1またはそれを超える調節剤;(iv)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、1またはそれを超えるサイトカイン受容体のアゴニストである、1またはそれを超える調節剤;(v)1またはそれを超える調節剤であって、各々が、腫瘍細胞または免疫細胞の細胞表面上に発現または提示される1またはそれを超える細胞表面分子をモジュレートする、1またはそれを超える調節剤;(vi)CAR-T細胞、CAR-NK細胞、または造血幹細胞を含む1またはそれを超える免疫細胞;(vii)1またはそれを超える免疫原性化学療法剤;および/あるいは(viii)1またはそれを超える調節剤(one or modulators)であって、各々が、1またはそれを超える免疫阻害性酵素のアンタゴニストである、1またはそれを超える調節剤を含む、方法を本明細書中に提供する。
【0031】
いくつかの実施形態では、IL-23シグナル伝達の阻害剤は、IL-23に結合する組換えタンパク質であるIL-23結合部分を含む。いくつかの実施形態では、IL-23シグナル伝達の阻害剤は、IL-23Rに結合する組換えタンパク質であるIL-23R結合部分を含む。いくつかの実施形態では、IL-23シグナル伝達の阻害剤は、本明細書に記載の組換え分子を含む。
【0032】
種々の実施形態では、IL-23シグナル伝達の阻害剤は、抗体またはその抗原結合断片であり、その抗原結合断片が、結晶化可能断片(Fc)領域、抗原結合断片(Fab)領域、単鎖可変断片(scFv)、軽鎖もしくはその機能的部分、軽鎖の可変領域(VL)、軽鎖の定常領域(CL)、重鎖もしくはその機能的部分、重鎖の可変領域(VH)、重鎖の定常領域(CH)、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)もしくはその抗原結合部分、またはこれらの組み合わせを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IL-23サブユニットを標的にするモノクローナル抗体を含む。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、IL-23p19サブユニットを標的にする。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、リサンキズマブ、グセルクマブ、チルドラキズマブ、ブラジクマブ、およびミリキズマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、IL-23R結合部分は、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、AS2762900-00の6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0035】
種々の実施形態では、第2の治療剤は、1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質のアンタゴニストである調節剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質は、プログラム死-1(PD1;CD279)、プログラム死リガンド1(PDL1)、プログラム死リガンド2(PDL2)、細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA4;CD152)、Bリンパ球およびTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)、T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3;CD223)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(Tim-3;HAVCR2)、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、CD47、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)、主要組織適合性遺伝子複合体クラスI,G(HLA-G)、Ig様転写物2(ILT2;LILRB1)、またはIg様転写物4(ILT4、LILRB2)から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、PD1シグナル伝達のアンタゴニストである調節剤を含む。いくつかの実施形態では、PD1シグナル伝達のアンタゴニストは、PD1を標的にするポリペプチドである。いくつかの実施形態では、調節剤は、PD1(CD279)を標的にするモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む阻害剤である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ドスタルリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、ササンリマブ、チセリズマブ、またはトリパリマブから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、調節剤は、プログラム死-1リガンド1(PDL1;CD274;B7-H1)、プログラム死-1リガンド2(PDL2)、またはこれらの両方から選択されるチェックポイントタンパク質の阻害剤である。いくつかの実施形態では、調節剤は、PDL1、PDL2、またはこれらの両方を標的にするポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、PDL1、PDL2、またはこれらの両方を標的にする抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、デュルバルマブ、アベルマブ、またはアテゾリズマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、調節剤は、チェックポイントタンパク質CTLA-4のポリペプチド阻害剤である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、CTLA-4を標的にする抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、イピリムマブまたはトレメリムマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、調節剤は、チェックポイントタンパク質LAG-3のポリペプチド阻害剤である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、LAG-3を標的にする抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、レラトリマブ、フィアンリマブ、Sym022、GSK2831781、TSR-033、イエルミリマブ、ファベゼリマブ、テボテリマブ、FS118、またはパブナリマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、調節剤は、チェックポイントタンパク質TIGITのポリペプチド阻害剤である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、TIGITを標的にする抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、チラゴルマブ、ビボストリマブ、BMS-986207、オシペルリマブ、エチギリマブ、ドムバナリマブ、EOS-448、SEA-TGT、ASP8374、COM902、またはIBI939のうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0041】
種々の実施形態では、第2の治療剤は、1またはそれを超える免疫刺激性受容体のアゴニストである調節剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激性受容体は、4-1BB(CD137)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS;CD278)、OX-40(CD134)、糖質コルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR;CD357)、CD40、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD28、またはCD27から選択される。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、CD40LまたはそのCD40結合断片を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、CD80もしくはCD86;またはそのCD28結合断片を含むポリペプチドである。
【0042】
種々の実施形態では、第2の治療剤は、腫瘍細胞または腫瘍関連間質細胞上に発現または提示される細胞表面分子の調節剤を含む。種々の実施形態では、細胞表面分子は、成長因子受容体、トランスフォーミング成長因子-ベータ受容体(TGFβR)、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体、Igスーパーファミリー受容体、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、上皮成長因子受容体(EGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、腫瘍細胞表面分子、サイトカイン受容体、またはケモカイン受容体から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、免疫細胞上に発現または提示される細胞表面分子の調節剤を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、NK細胞、または骨髄性細胞である。
【0044】
いくつかの実施形態では、細胞表面分子は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体、Igスーパーファミリー受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、T細胞共刺激分子受容体、T細胞共阻害分子受容体、またはナチュラルキラー(NK)細胞受容体である。いくつかの実施形態では、細胞表面分子は、骨髄性細胞阻害受容体、または骨髄性細胞刺激受容体である。
【0045】
種々の実施形態では、細胞表面受容体は、SIRPaまたはCD47である。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、SIRPaのCD47への結合を阻害するいくつかの実施形態では、第2の治療剤は、CD47に結合するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、CD47を標的にする抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、マグロリマブ、ZL-1201、TJ011133、STI-6643、SRF231、SHR-1603、IMC-002、IBI188、CC-90002、AO-176またはAK117から選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SIRPa細胞外ドメインまたはそのCD47結合断片を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、エボルパセプト、TTI-621、またはTTI-622から選択される。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、SIRPaに結合するポリペプチドである。
【0046】
種々の実施形態では、第2の治療剤は、1またはそれを超えるサイトカインのシグナル伝達のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、サイトカインはトランスフォーミング成長因子-ベータ(TGFb)である。いくつかの実施形態では、調節剤は、小分子キナーゼ阻害剤、TGFbRII ECDもしくはそのTGFb結合断片を含むポリペプチド、または抗TGFβ抗体、抗TGFβR抗体、抗GARP抗体、もしくは抗LAP抗体から選択される抗体もしくはその抗原結合断片から選択されるTGFbシグナル伝達の阻害剤である。
【0047】
いくつかの実施形態では、小分子キナーゼ阻害剤は、ガルニセルチブを含むTGFβR小分子キナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、抗TGFβ抗体またはその抗原結合断片は、フレソリムマブの6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、TGFbRII ECDまたはそのTGFb結合断片を含むポリペプチドは、AVID200、ビントラフスプアルファ(M7824)、抗CTLA4-TGFbRII、SIRPa ECD-TGFbRII、抗CEA-TGFbRII、抗PSMA-TGFbRII、抗IL6R-TGFbRII、抗PD1-TGFbRII、抗EGFR-TGFbRII、または抗HER2-TGFbRIIから選択される。
【0048】
種々の実施形態では、サイトカインは、以下:IL-4、IL-13、IL-10、IL-6、IL-1b、IL-17、IL-22、またはVEGFのうちの1つまたは複数から選択される。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-4またはIL-13である。
【0049】
いくつかの実施形態では、調節剤は、IL4受容体アルファ(IL4Ra)を標的にするポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、デュピルマブの6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む抗体または抗原結合断片である。
【0050】
いくつかの実施形態では、サイトカインはIL1bである。いくつかの実施形態では、第2の治療剤はアナキンラを含む。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、カナキヌマブの6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、サイトカインはIL10である。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、IL10Rの細胞外ドメインのIL10結合配列、またはIL10もしくはIL10Rを標的にする抗体もしくはその抗原結合断片を含む。
【0052】
種々の実施形態では、第2の治療剤は、1またはそれを超えるサイトカイン受容体のアゴニストである。いくつかの実施形態では、サイトカイン受容体は、IL12R、IL15R、およびIL18Rから選択される。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、IL-12を含むポリペプチドである。
【0053】
種々の実施形態では、細胞表面分子は、CA125、CA19-9、CD30、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、CEACAM5もしくは表面抗原分類、66e(CD66e)、CEACAM6、DLL3、DLL4、DPEP3、EGFR EGFRvIII、GD2、HER2、HER3、HGF、IGF1R、IL13Ra2、LIV-1、LRRC15、MUC1、PRLR、PSCA、PSMA、PTK7、SEZ6、SLAMF7、TF、cMet,クローディン、メソテリン、ネクチン4、uPAR、GPNMB、CD79b、CD22、NaPi2b、SLTRK6、STEAP1、MUC16、CD37、GCC、AGC-16、5T4、CD70、TROP2、CD74、CD27L、Fra、CD138、CA6、CD38、SLAMF7、BCMA、CD20、CD19、CD33またはCD30から選択される腫瘍細胞表面分子である。
【0054】
いくつかの実施形態では、調節剤は、腫瘍細胞表面分子を標的にするモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を含む阻害剤である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原断片は、ラベツズマブ、セルグツズマブ、セツキシマブ、ネシツムマブ、パニツムマブ、デパツキシズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、エンフォルツマブ、またはサシツズマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。
【0055】
種々の実施形態では、免疫細胞は、抗原提示細胞(APC)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、またはマクロファージを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T17細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、Treg細胞、ガンマデルタT細胞、NK細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、またはガンマデルタT17細胞を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、第1および第2の薬剤の組み合わせを用いた処置により、第2の薬剤のみでの処置よりも有効に、腫瘍成長が低下するか抑制され、重度の免疫関連有害事象が予防されるか低下し、全生存または無増悪生存が増加し、有害事象または毒性が軽減または予防され、あるいは骨への転移または骨格関連有害事象が軽減または予防される。
【0057】
いくつかの実施形態では、がんは、前立腺がん、膵臓がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、精巣がん、乳がん、卵巣がん、脳がん、皮膚がん、膀胱がん、および頭頸部がん、黒色腫、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、および/またはリンパ腫から選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法は、抗CTLA4-TGFβRII分子を含む治療剤を被験体に投与することをさらに含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、方法は、1またはそれを超える抗がん治療を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える抗がん治療は、免疫治療剤、化学療法分子、抗体、抗体-薬物コンジュゲート、小分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、抗血管新生剤、細胞治療、CAR-T細胞治療、CAR-NK細胞治療、放射性核種治療、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーション、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)、または高周波アブレーションを含む。いくつかの実施形態では、免疫治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激性受容体アゴニスト、免疫刺激性サイトカイン/サイトカイン受容体アゴニスト、免疫阻害性サイトカイン/サイトカイン受容体アンタゴニスト、腫瘍ワクチン、免疫調節性イミド薬、CAR-T細胞、CAR-NK細胞、または腫瘍溶解性ウイルスから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明のこれらおよび他の特徴、側面、および利点は、以下の説明および添付の図面を参照すると理解がより深まるようになる。
【0062】
図1A-D】図1A~1Dは、本明細書中に記載の多重特異性ポリペプチドの複数の例示的なデザインに対応している略図を示し、図中、IIPは抗体または抗体断片を含み、2Pは標的結合ポリペプチドを示す。
【0063】
図2A-C】図2A~2Gは、本明細書中に記載の多重特異性ポリペプチドの複数の例示的なデザインに対応している略図を示し、図中、IIPは、IL-23R ECDのリガンド結合断片を含む。D1、D2およびD3は、IL-23R結合ドメイン1、2、および3をそれぞれ示す。これらの図では、暗灰色はIIPに対応し、薄灰色は多重特異性ポリペプチドの2Pに対応する。2Pは標的結合ポリペプチドを示す。
図2D-G】図2A~2Gは、本明細書中に記載の多重特異性ポリペプチドの複数の例示的なデザインに対応している略図を示し、図中、IIPは、IL-23R ECDのリガンド結合断片を含む。D1、D2およびD3は、IL-23R結合ドメイン1、2、および3をそれぞれ示す。これらの図では、暗灰色はIIPに対応し、薄灰色は多重特異性ポリペプチドの2Pに対応する。2Pは標的結合ポリペプチドを示す。
【0064】
図3A図3Aは、PD1細胞外ドメイン中に少なくとも1つのアミノ酸改変を有する多重特異性ポリペプチドの例示的デザインに対応する略図を示す(PD1 ECD A123IまたはGV-2)。野生型PD1と比較した場合、図3B~3Cは、PD1 ECD A123IまたはPD1 ECD GV-2がPD1に対する優れた結合親和性を示し、図3D~3Eは、PDL2に対する優れた結合親和性を示すことを示す。
図3B-C】図3Aは、PD1細胞外ドメイン中に少なくとも1つのアミノ酸改変を有する多重特異性ポリペプチドの例示的デザインに対応する略図を示す(PD1 ECD A123IまたはGV-2)。野生型PD1と比較した場合、図3B~3Cは、PD1 ECD A123IまたはPD1 ECD GV-2がPD1に対する優れた結合親和性を示し、図3D~3Eは、PDL2に対する優れた結合親和性を示すことを示す。
図3D-E】図3Aは、PD1細胞外ドメイン中に少なくとも1つのアミノ酸改変を有する多重特異性ポリペプチドの例示的デザインに対応する略図を示す(PD1 ECD A123IまたはGV-2)。野生型PD1と比較した場合、図3B~3Cは、PD1 ECD A123IまたはPD1 ECD GV-2がPD1に対する優れた結合親和性を示し、図3D~3Eは、PDL2に対する優れた結合親和性を示すことを示す。
【0065】
図4A図4A~4Cは、IL-23抗体がPDL1/PD1遮断によって誘導された抗腫瘍免疫応答を増強することを実証している。抗IL-23(抗IL-23p19)抗体および抗PD-L1抗体の併用処置((a-IL-23/PDL1遮断)により、抗PDL1のみ(a-PDL1)または抗IL-23抗体のみ(a-IL-23)で処置したマウスと比較して、生存率が優れており、腫瘍が縮小した。図4Aは、併用処置(a-IL-23/PDL1遮断)は優れた生存率を示したことを示す。***ペアワイズログランク検定によってp<0.005。Y軸:生存確率。X軸:生存日数。図4Bは、B16F10腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍接種後の腫瘍体積(tumor volulmn)(Y軸)の測定値を示す。併用処置(右のパネル)は、抗PD-L1抗体のみでの処置(左のパネル)と比較した場合、腫瘍体積(tumor volumn)を低下させる。図4Cは、抗PD-L1抗体のみで処置したマウスと比較した場合の併用処置で処置したマウスにおける肺腫瘍転移の低下を示す。白色の斑点は腫瘍転移を示す。
図4B図4A~4Cは、IL-23抗体がPDL1/PD1遮断によって誘導された抗腫瘍免疫応答を増強することを実証している。抗IL-23(抗IL-23p19)抗体および抗PD-L1抗体の併用処置((a-IL-23/PDL1遮断)により、抗PDL1のみ(a-PDL1)または抗IL-23抗体のみ(a-IL-23)で処置したマウスと比較して、生存率が優れており、腫瘍が縮小した。図4Aは、併用処置(a-IL-23/PDL1遮断)は優れた生存率を示したことを示す。***ペアワイズログランク検定によってp<0.005。Y軸:生存確率。X軸:生存日数。図4Bは、B16F10腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍接種後の腫瘍体積(tumor volulmn)(Y軸)の測定値を示す。併用処置(右のパネル)は、抗PD-L1抗体のみでの処置(左のパネル)と比較した場合、腫瘍体積(tumor volumn)を低下させる。図4Cは、抗PD-L1抗体のみで処置したマウスと比較した場合の併用処置で処置したマウスにおける肺腫瘍転移の低下を示す。白色の斑点は腫瘍転移を示す。
図4C図4A~4Cは、IL-23抗体がPDL1/PD1遮断によって誘導された抗腫瘍免疫応答を増強することを実証している。抗IL-23(抗IL-23p19)抗体および抗PD-L1抗体の併用処置((a-IL-23/PDL1遮断)により、抗PDL1のみ(a-PDL1)または抗IL-23抗体のみ(a-IL-23)で処置したマウスと比較して、生存率が優れており、腫瘍が縮小した。図4Aは、併用処置(a-IL-23/PDL1遮断)は優れた生存率を示したことを示す。***ペアワイズログランク検定によってp<0.005。Y軸:生存確率。X軸:生存日数。図4Bは、B16F10腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍接種後の腫瘍体積(tumor volulmn)(Y軸)の測定値を示す。併用処置(右のパネル)は、抗PD-L1抗体のみでの処置(左のパネル)と比較した場合、腫瘍体積(tumor volumn)を低下させる。図4Cは、抗PD-L1抗体のみで処置したマウスと比較した場合の併用処置で処置したマウスにおける肺腫瘍転移の低下を示す。白色の斑点は腫瘍転移を示す。
【0066】
図5図5は、ヒト化マウスモデルにおいて本明細書中に記載の例示的な多重特異性ポリペプチドが腫瘍成長を低下させ、毒性を制限することを実証している。抗IL-23-PD1ECDでの処置により、hu-PBMCを有するNSGマウスにおいて腫瘍体積が低下する。片側t検定によってp=0.05。対照:ビヒクルのみ;a-IL-23:抗IL-23抗体;a-PDL1:抗PDL1抗体;a-IL-23-PD1:抗IL-23-PD1ECD。
【0067】
図6図6は、本明細書中に記載の例示的な多重特異性ポリペプチドが、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD1抗体(a-PD1)(p=0.03)またはチェックポイント阻害剤である抗PD1抗体と抗CTLA4抗体の組み合わせ(a-PDL1+a-CTLA4)での処置と比較して、腫瘍成長阻害により有効であることを実証している。抗IL-23-PD1ECDおよび抗PD1抗体および抗CTLA4抗体(a-IL-23-PD1+a-CTLA4-TGFbRII)ポリペプチドでの併用処置は、抗PD1抗体と抗CTLA4抗体の併用処置(a-PD1+a-CTLA4)と比較した場合、腫瘍成長を阻害し、統計的に相乗的な抗腫瘍効率(p<0.001)を示す。
【0068】
図7A図7A~7Bは、腫瘍細胞および抗原提示細胞(APC)上のPDL1およびPDL2を遮断し、IL-23を隔離することによってTh17/MDSC軸を抑える、本明細書中に記載の例示的な多重特異性ポリペプチド(抗IL-23-PD1ECD)を例証している。MDSC:骨髄由来サプレッサー細胞。
図7B図7A~7Bは、腫瘍細胞および抗原提示細胞(APC)上のPDL1およびPDL2を遮断し、IL-23を隔離することによってTh17/MDSC軸を抑える、本明細書中に記載の例示的な多重特異性ポリペプチド(抗IL-23-PD1ECD)を例証している。MDSC:骨髄由来サプレッサー細胞。
【発明を実施するための形態】
【0069】
詳細な説明
IL-23軸に関連するがん、自己免疫疾患、および炎症性障害を処置するための新規のポリペプチドおよび方法を本明細書中に提供する。
【0070】
がんの場合、免疫治療剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)または他の抗がん治療(例えば、従来の抗がん治療)による免疫系の活性化は、Th17、ガンマデルタT17、およびILC3細胞のようなIL-23依存性免疫細胞の逆の結果を生む活性化および増大(expansion)をもたらす可能性がある。これらの細胞型は、その表現型を維持するIL-23シグナル伝達の存在下で、抗腫瘍免疫の抑制および/または腫瘍促進炎症に寄与する。さらに、これらの細胞型は、免疫関連有害事象および処置関連毒性に寄与する。そのようなものとして、本明細書中に記載の多重特異性ポリペプチドおよび処置の方法は、IL-23シグナル伝達を遮断すると同時に、抗腫瘍免疫応答を活性化するようにデザインされている。このストラテジーは、免疫応答の活性化のみに注目したアプローチよりも優れた抗腫瘍効率およびより低い毒性の両方(すなわち、より広い免疫活性化の治療域)を可能にし得る。
【0071】
いくつかの場合、本明細書中に記載の多重特異性ポリペプチドおよび併用処置レジメンは、IL-23シグナル伝達を妨害する1つの部分および免疫細胞活性化を促進するさらなる部分を含む。他の場合では、さらなる部分は、免疫細胞の表現型を抗腫瘍状態に偏向させるのにさらに役立つ。腫瘍誘導性免疫寛容をそれ自体で破壊するとIL-23依存性免疫細胞の逆の結果を生む活性化をもたらし得るが、本発明者らは、IL-23シグナル伝達が阻害される状況で腫瘍誘導性免疫寛容を破壊へ向かわせるポリペプチドおよび方法を開示する。
【0072】
がん処置の状況においてTh17細胞を増大させる逆の結果を生む効果は明らかではない。実際には、いくつかの研究において、TMEにおけるTh17細胞の浸潤がより良好な臨床予後に関連することが示唆されている;あるいは、逆に、がんにおけるTh17細胞の役割が特徴づけられている。この分野におけるかかる所見を考慮して、本明細書中に記載の多重特異性ポリペプチドおよび種々の組み合わせは、有効性の増加および望ましくない免疫関連有害事象の軽減の両方についての免疫活性化(例えば、免疫チェックポイント阻害剤の使用)と併せたIL-23遮断の予想外の有益な効果を実証している。
【0073】
1つの態様では、組換え分子であって、(a)インターロイキン-23(IL-23)阻害ポリペプチド(IIP)であって、前述のIIPが、IL-23結合ポリペプチドまたはIL-23R結合ポリペプチドを含むIIP;および(b)1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質または免疫刺激性受容体に結合する標的結合ポリペプチド部分を含む、組換え分子を本明細書中に提供する。IIPは、IL-23阻害剤またはIL-23R阻害剤であり得る。標的結合ポリペプチドは、1またはそれを超える細胞表面分子またはそのリガンド(免疫チェックポイントタンパク質受容体(例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4)など)の阻害剤に特異的に結合することができる。したがって、本明細書中に記載の組換え分子は、腫瘍微小環境(TME)におけるIL-23/チェックポイントタンパク質(例えば、PD-1)シグナル伝達の特異的阻害および免疫応答の増強ならびに腫瘍成長の低下および/または抑制が可能である。
【0074】
定義
別段の定義がない限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般的に理解されている意味を有する。
【0075】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」および「被験体」は、交換可能に使用され、本発明の化合物で処置され得る任意の生きている生物を意味すると捉えることができる。そのようなものとして、用語「患者」および「被験体」としては、任意の非ヒト哺乳動物、霊長類、およびヒトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書中に列挙した病状のうちのいずれかに関する限りにおいて本開示の文脈では、用語「処置する」および「処置」などは、かかる状態に関連する少なくとも1つの症状を軽減または緩和するか、かかる状態の進行を遅延または逆転することを意味する。本開示の意味の範囲内で、用語「処置する」は、疾患の発現(すなわち、疾患の臨床的発現の前の期間)を停止、遅延させ、そして/または疾患の発症または悪化のリスクを低下させることも示す。また、状態(state)、障害、または状態(condition)に関する用語「処置する」および「処置」などは、(1)状態、障害、または状態に罹患し得るかその素因があり得るが、依然として状態、障害、または状態の臨床または準臨床症状を経験も示しもしていない被験体において発症する状態、障害、または状態の少なくとも1つの臨床または準臨床症状の出現の予防または遅延;または(2)状態、障害、または状態の阻害(すなわち、疾患もしくはその再発(維持処置の場合)または少なくとも1つのその臨床もしくは準臨床症状の発症の停止、低下、または遅滞);または(3)疾患の軽減(すなわち、状態、障害、もしくは状態またはその臨床もしくは準臨床症状のうちの少なくとも1つを後退させること)を含み得る。
【0077】
本明細書中で使用される場合、疾患の「予防」は、疾患の完全な発症の阻害を指す。
【0078】
用語「生物試料」は、生物(例えば、ヒト被験体)に由来する任意の組織、細胞、流体、または他の材料を指す。ある特定の実施形態では、生物試料は、血清または血液である。
【0079】
用語「免疫グロブリン」は、一般に2対のポリペプチド鎖:1対の軽(L)鎖および1対の重(H)鎖を含む構造関連タンパク質のクラスを指す。「インタクトな免疫グロブリン」では、これらの鎖のうちの4つ全てがジスルフィド結合によって相互接続されている。免疫グロブリンの構造は十分に特徴づけられている。例えば、Paul,Fundamental Immunology 7th ed.,Ch.5(2013)Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PAを参照のこと。簡潔に述べれば、各々の重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)を含む。重鎖定常領域は、典型的には、CH1、CH2、およびCH3と略される3つのドメインを含む。各々の軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、典型的には、CLと略される1つのドメインを含む。
【0080】
用語「抗体」は、本明細書中でその最も広い意味で使用され、抗原またはエピトープに特異的に結合する1またはそれを超える抗原結合ドメインを含むある特定のタイプの免疫グロブリン分子が挙げられる。抗体は、具体的には、インタクトな抗体(例えば、インタクトな免疫グロブリン)、抗体断片、および多重特異性抗体が挙げられる。抗原結合ドメインの一例は、VH-VL二量体によって形成された抗原結合ドメインである。本明細書中で使用される「抗体」は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を包含し、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)、もしくはIgMクラスの免疫グロブリン分子、またはその断片もしくは誘導体(Fab、F(ab’)2、Fd、単鎖抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、二機能性抗体、ヒト化抗体、およびその種々の誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)を指す。
【0081】
用語「抗原結合断片」は、インタクトな抗体の一部を指し、そして/またはインタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。全長抗体の断片によって抗体の抗原結合機能を発揮することできることが公知である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、線状抗体、単鎖抗体、ダイアボディ、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
用語「Fc領域」は、天然に存在する抗体においてFc受容体および補体系のある特定のタンパク質と相互作用する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。種々の免疫グロブリンのFc領域、およびこの領域中に含まれるグリコシル化部位の構造は、当該分野で公知である。Schroeder and Cavacini,J.Allergy Clin.Immunol.,2010,125:S41-52(その全体が参考として援用される)を参照のこと。Fc領域は、天然に存在するFc領域であり得るか、本開示の他所に記載のように改変されたFc領域であり得る。
【0083】
VH領域およびVL領域を、より保存された領域が散在する超可変性の領域(「超可変領域」(HVR);「相補性決定領域」(CDR)とも呼ばれる)にさらに細分することができる。より保存された領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。各々のVHおよびVLは、一般に、以下の順序で(N末端からC末端)配置された3つのCDRおよび4つのFRを含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。CDRは、抗原結合に関与し、抗体の抗原特異性および結合親和性に影響を及ぼす。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest 5th ed.(1991)Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(その全体が参考として援用される)を参照のこと。
【0084】
任意の脊椎動物種由来の軽鎖を、その定常ドメイン配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0085】
任意の脊椎動物種由来の重鎖を、以下の5つの異なるクラス(またはアイソタイプ)のうちの1つに割り当てることができる:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM。また、これらのクラスは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと命名されている。IgGクラスおよびIgAクラスは、配列および機能の相違に基づいてサブクラスにさらに分類される。ヒトは、以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。
【0086】
当業者は、いくつかの公知のナンバリングスキーム(Kabat et al.,前出(「Kabat」ナンバリングスキーム);Al-Lazikani et al.,1997,J.Mol.Biol.,273:927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム);MacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.262:732-745(「Contact」ナンバリングスキーム);Lefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.,2003,27:55-77(「IMGT」ナンバリングスキーム);およびHonegge and Plueckthun,J.Mol.Biol.,2001,309:657-70(「AHo」ナンバリングスキーム)(これらの各々は、その全体が参考として援用される)に記載のものが挙げられる)のうちのいずれかを使用してCDRのアミノ酸配列境界を決定することができる。
【0087】
表1は、KabatおよびChothiaのスキームによって同定されるCDR1-L(VLのCDR1)、CDR2-L(VLのCDR2)、CDR3-L(VLのCDR3)、CDR1-H(VHのCDR1)、CDR2-H(VHのCDR2)、およびCDR3-H(VHのCDR3)の位置を提供する。CDR1-Hの場合、KabatおよびChothiaのナンバリングスキームの両方を使用して残基ナンバリングを提供する。
【0088】
CDRを、例えば、抗体ナンバリングソフトウェア(www.bioinf.org.uk/abs/abnum/で利用可能であり、Abhinandan and Martin,Immunology,2008,45:3832-3839(その全体が参考として援用される)に記載のAbnumなど)を使用して割り当てることができる。
【表1】
【0089】
「Fv」断片は、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの非共有結合性に連結した二量体を含む。
【0090】
「Fab」断片は、重鎖および軽鎖の可変ドメインに加えて、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab断片は、例えば、組換え法または全長抗体のパパイン消化によって生成され得る。
【0091】
「F(ab’)2」断片は、ジスルフィド結合によってヒンジ領域付近で連結した2つのFab’断片を含む。F(ab’)2断片は、例えば組換え法またはインタクトな抗体のペプシン消化によって生成され得る。例えば、β-メルカプトエタノールでの処理によってF(ab’)断片に分離することができる。
【0092】
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体断片は、単一のポリペプチド鎖中にVHドメインおよびVLドメインを含む。VHおよびVLは、一般に、ペプチドリンカーによって連結されている。Plueckthun A.(1994)を参照のこと。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGGGS)n(配列番号55)である。いくつかの実施形態では、n=1、2、3、4、5、または6。Antibodies from Escherichia coli.In Rosenberg M.&Moore G.P.(Eds.),The Pharmacology of Monoclonal Antibodies vol.113(pp.269-315).Springer-Verlag,New York(その全体が参考として援用される)を参照のこと。
【0093】
「scFv-Fc」断片は、Fcドメインに結合したscFvを含む。例えば、Fcドメインは、scFvのC末端に結合し得る。Fcドメインは、scFv中の可変ドメインの配向(すなわち、VH-VLまたはVL-VH)に応じてVHまたはVLに続き得る。当該分野で公知であるか、本明細書中に記載の任意の好適なFcドメインが使用され得る。いくつかの場合、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインを含む。
【0094】
非ヒト抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する配列を最小限に含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、一般に、1またはそれを超えるCDR由来の残基が非ヒト抗体(ドナー抗体)の1またはそれを超えるCDR由来の残基によって置き換えられたヒト抗体(レシピエント抗体)である。ドナー抗体は、任意の好適な非ヒト抗体(所望の特異性、親和性、または生物学的効果を有するマウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、または非ヒト霊長類の抗体など)であり得る。いくつかの例では、レシピエント抗体の選択されたフレームワーク領域残基は、ドナー抗体由来の対応するフレームワーク領域残基によって置き換えられている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体やドナー抗体のいずれにおいても見出されない残基を含み得る。かかる改変は、抗体機能をさらに改善するために行われ得る。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature,1986,321:522-525;Riechmann et al.,Nature,1988,332:323-329;およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,1992,2:593-596(各々の全体が参考として援用される)を参照のこと。
【0095】
「ヒト抗体」は、ヒトまたはヒト細胞によって産生されたか、ヒト抗体レパートリーまたはヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する(例えば、ヒト供給源から入手したかde novoでデザインした)抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体である。ヒト抗体は、具体的には、ヒト化抗体を除外する。いくつかの実施形態では、げっ歯類を、そのげっ歯類抗体配列をヒト抗体配列で置き換えるように遺伝子操作する。
【0096】
用語「腫瘍」は、悪性や良性と無関係の全ての新生物細胞の成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を指す。本明細書中で使用される場合、「がん」は、異常細胞の無制御の分裂によって引き起こされる疾患を指す。用語「がん」、「新生物疾患」、および「腫瘍」は、本明細書中で言及されるように、相互に排他的でない。用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害はがんである。がんの非限定的な例としては、前立腺がん、膵臓がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、精巣がん、乳がん、卵巣がん、脳がん、皮膚がん、膀胱がん、および頭頸部がん、黒色腫、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、および/またはリンパ腫が挙げられる。
【0097】
用語「免疫応答」は、抗原(例えば、ウイルス抗原)などの刺激に対する免疫系細胞(例えば、B細胞、T細胞、マクロファージ、または多形核球)の応答を指す。能動免疫応答は、抗体の合成もしくは細胞媒介反応性の発達またはこれらの両方に至る免疫担当細胞の分化および増殖に関与し得る。(例えば、感染またはワクチン接種による)抗原への曝露後に宿主が能動免疫応答を開始することができる。能動免疫応答を、能動免疫された宿主から非免疫宿主への、例えば、抗体、伝達因子、胸腺移植片、および/またはサイトカインなどの物質の移動によって獲得することができる受動免疫と対比することができる。
【0098】
「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指すことができる。相同性は、比較するためにアラインメントすることができる各配列内の位置の比較によって決定することができる。比較される配列内の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有され得る場合、分子は、その位置において相同であり得る。配列間の相同性の程度は、前述の配列が共有する、一致するまたは相同である位置の数の関数であり得る。「無関係の」または「非相同性の」配列は、本開示の配列の1つと40%未満の同一性、あるいは25%未満の同一性を共有する。配列相同性は、参照配列に対するある配列の%同一性を指すことができる。実際には、任意の特定の配列が本明細書中に記載の任意の配列(本明細書中に記載の特定の核酸配列に対応することができる)に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であり得るかどうかについて、かかる特定のポリペプチド配列を、Bestfitプログラム(Wisconsin配列解析パッケージ,Unix(登録商標)用バージョン8,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,Wis.53711)などの公知のコンピュータプログラムを使用することで慣習的に決定することができる。特定の配列が、例えば参照配列と95%同一であるかどうかを決定するためのBestfitまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用した場合、同一率を参照配列の全長にわたって計算することができ、かつ配列相同性におけるギャップを全参照配列の5%まで許容することができるようなパラメーターを設定することができる。2またはそれを超える核酸またはポリペプチド配列の文脈における用語「同一」率または「相同」率は、下記の配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTPおよびBLASTNまたは当業者が利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを使用して測定するか、目視によって最大限一致するように比較およびアラインメントした場合に同一である指定の百分率のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有する2つまたはそれを超える配列またはサブシーケンスを指す。適用に応じて、「同一」率は、比較される配列領域にわたって(例えば、機能的ドメインにわたって)存在することができるか、あるいは、比較される2つの配列の全長にわたって存在することができる。配列比較のために、典型的には1つの配列は、試験配列が比較される参照配列としての役目を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列の座標を指定し、かつ配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定したプログラムのパラメーターに基づいて参照配列と比較して、試験配列(複数可)についての配列同一率を計算する。本明細書中の目的のために、同一率および配列類似性を、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載のBLASTアルゴリズムを使用して決定する。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(以下のワールド・ワイド・ウェブ上:ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に入手可能である。
【0099】
いくつかの場合、参照配列(問い合わせ配列、例えば、本開示の配列)と対象配列との間の同一性(グローバル配列アラインメントとも称される)を、FASTDBコンピュータプログラムを使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、FASTDBアミノ酸アラインメントで使用された同一性を局所的に解釈することができる特定の実施形態についてのパラメーターは、以下を含むことができる:スコアリングスキーム=PAM(許容変異率)0、k-タプル=2、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ=20、無作為化群長=0、カットオフスコア=1、ウィンドウサイズ=配列長、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウィンドウサイズ=500または対象配列長(どれもより短くてよい)。この実施形態によれば、対象配列が内部欠失のためではなくN末端またはC末端の欠失のために問い合わせ配列より短い可能性がある場合、グローバル同一率を計算するときにFASTDBプログラムが対象配列のN末端およびC末端の短縮を考慮しないという事実を考慮して結果を手作業で補正することができる。問い合わせ配列と比較してN末端またはC末端が短縮した対象配列の場合、対象配列のN末端およびC末端の側方に位置し得る問い合わせ配列の残基(対応する対象配列と一致/アラインメントできない)の数を問い合わせ配列の総塩基に対する百分率として計算することによって同一率を補正することができる。残基が一致/アラインメントすることができるかどうかを、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定することができる。次いで、この百分率を、指定のパラメーターを使用したFASTDBプログラムによって計算された同一率から差し引いて、最終同一率スコアに到達することができる。この最終同一率スコアを、この実施形態の目的のために使用することができる。いくつかの場合、問い合わせ配列と一致/アラインメントすることができない対象配列のN末端およびC末端に対する残基のみを、同一率スコアを手作業で調整するために考慮することができる。すなわち、対象配列の最も遠くのN末端およびC末端の残基の外側の問い合わせ残基の位置のみを、この手作業での補正のために考慮することができる。例えば、90残基の対象配列を、100残基の問い合わせ配列とアラインメントして、同一率を決定することができる。対象配列のN末端で欠失が起こると、その結果として、FASTDBアラインメントは、N末端の最初の10残基の一致/アラインメントを示さない。10個の不対合残基は10%の配列を示すので(適合しなかったN末端およびC末端の残基数/問い合わせ配列中の残基の総数)、FASTDBプログラムによって計算された同一率スコアから10%を差し引くことができる。残りの90残基が完全に適合した場合、最終同一率は90%であり得る。別の例では、90残基の対象配列を、100残基の問い合わせ配列と比較することができる。この時、欠失は内部欠失であり得るので、問い合わせと一致/アラインメントすることができない対象配列のN末端またはC末端に残基は存在し得ない。この場合、FASTDBによって計算された同一率を、手作業で補正することができない。再度、問い合わせ配列と一致/アラインメントすることができないFASTDBアラインメントに表示された対象配列のN末端およびC末端の外側の残基の位置のみを手作業で補正することができる。
【0100】
句「薬学的に許容され得る」は、本明細書中に記載の組成物に関して使用される場合、生理学的に許容することができ、かつ典型的には被験体(例えば、ヒト)に投与したときに有害反応を生じないかかる組成物の分子実体および他の成分を指す。好ましくは、用語「薬学的に許容され得る」は、哺乳動物、より具体的にはヒトでの使用について連邦政府または州政府の規制当局より承認を受けたか、米国薬局方または他の一般に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。
【0101】
本明細書中で使用される「担体」は、使用した投薬量および濃度に曝露された細胞または哺乳動物に無毒である薬学的に許容され得る担体、賦形剤、または安定剤を含む。しばしば、生理学的に許容され得る担体は、pH緩衝化水溶液である。生理学的に許容され得る担体の例としては、バッファー(リン酸バッファー、クエン酸バッファー、および他の有機酸のバッファーなど);抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンが挙げられる);防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(メチルまたはプロピルパラベンなど);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなど);モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが挙げられる);キレート剤(EDTAなど);糖(スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤(TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)など)が挙げられる。
【0102】
本明細書中で使用される「希釈剤」は、薬学的に許容され得(ヒトへの投与に関して安全かつ無毒である)、かつ液体製剤(凍結乾燥後に再構成された製剤など)の調製に有用な希釈剤である。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液が挙げられる。別の実施形態では、希釈剤としては、塩の水溶液および/または緩衝液を挙げることができる。
【0103】
「防腐剤」は、細菌活性を低下させるために本明細書中の製剤に添加することができる化合物である。防腐剤の添加により、例えば、反復使用(反復投与)製剤の生産を容易にすることができる。潜在的な防腐剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチル塩化アンモニウムの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。他のタイプの防腐剤としては、芳香族アルコール(フェノール、ブチルおよびベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルまたはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾールなど)が挙げられる。本明細書中で最も好ましい防腐剤は、ベンジルアルコールである。
【0104】
用語「医薬製剤」は、有効成分の生物学的活性を有効にするような形態であり、製剤を投与されると考えられる被験体に対して受け入れ難い毒性を示すさらなる成分を含まない調製物を指す。かかる製剤は滅菌されている。「滅菌」製剤は、無菌であるか、全ての生存している微生物およびその胞子を含まない。
【0105】
「安定な」製剤は、製剤中のタンパク質が保存の際にその物理的および化学的な安定性ならびに完全性を本質的に保持している製剤である。タンパク質安定性を測定するための種々の分析技術は、当該分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説されている。安定性を、選択された温度で選択された期間測定することができる。迅速なスクリーニングのために、製剤を40℃で2週間~1ヶ月保持してよく、その期間に安定性を測定する。製剤を2~8℃で保存しようとする場合、一般に、製剤は、30℃または40℃で少なくとも1ヶ月および/または2~8℃で少なくとも2年間安定でなければならない。製剤を30℃で保存しようとする場合、一般に、製剤は、30℃で少なくとも2年間および/または40℃で少なくとも6ヶ月安定でなければならない。例えば、保存中の凝集度をタンパク質安定性の指標として使用することができる。したがって、「安定な」製剤は、約10%未満、好ましくは約5%未満のタンパク質が製剤中の凝集物として存在する製剤であり得る。他の実施形態では、製剤保存中の凝集物形成の任意の増加を決定することができる。
【0106】
「再構成された」製剤は、凍結乾燥されたタンパク質または抗体の製剤を、タンパク質が製剤全体に分散されるように希釈剤に溶解することによって調製されている製剤である。再構成された製剤は、目的のタンパク質で処置すべき患者への投与(例えば、皮下投与)に好適であり、ある特定の実施形態では、非経口投与または静脈内投与に好適な製剤であり得る。
【0107】
「等張性」製剤は、ヒトの血液と本質的に同一の浸透圧を有する製剤である。等張性製剤は、一般に、約250~350mOsmの浸透圧を有する。用語「低張性」は、ヒト血液未満の浸透圧を有する製剤を記載する。それに応じて、用語「高張性」を、ヒト血液を超える浸透圧を有する製剤を記載するために使用する。等張性を、例えば、蒸気圧または氷凍結型浸透圧計を用いて測定することができる。本出願の製剤は、塩および/または緩衝液の添加の結果として高張性であり得る。
【0108】
本明細書中で使用される場合、「免疫細胞」、「免疫エフェクター細胞」、または「免疫応答細胞」としては、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、抗原提示細胞(APC)が挙げられる。
【0109】
用語「エフェクターT細胞」または「T細胞」としては、Tヘルパー(すなわち、CD4+)細胞および細胞傷害性(すなわち、CD8+)T細胞が挙げられる。CD4+エフェクターT細胞は、いくつかの免疫学的過程(B細胞の形質細胞および記憶B細胞への成熟、ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化が挙げられる)の発生に寄与する。CD8+エフェクターT細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊する。エフェクターT細胞に関するさらなる情報については、Seder and Ahmed,Nature Immunol.,2003,4:835-842(その全体が参考として援用される)を参照のこと。
【0110】
用語「制御性T細胞」としては、例えば、エフェクターT細胞の抑制によって免疫学的寛容を調節する細胞が挙げられる。いくつかの態様では、制御性T細胞は、CD4+CD25+Foxp3+表現型を有する。いくつかの態様では、制御性T細胞は、CD8+CD25+表現型を有する。制御性T細胞に関するさらなる情報については、Nocentini et al.,Br.J.Pharmacol.,2012,165:2089-2099(その全体が参考として援用される)を参照のこと。
【0111】
用語「Th17細胞」としては、シグネチャー転写因子RORガンマおよびサイトカイン(インターロイキン-17(IL-17)など)の発現を特徴とするCD4+T細胞のサブセットが挙げられる。用語「ガンマデルタT17細胞」としては、同様にIL-17の発現を特徴とするガンマデルタT細胞のサブセットが挙げられる。用語「ILC3細胞」としては、自然免疫細胞のサブセットが挙げられる。
【0112】
用語「樹状細胞」は、ナイーブT細胞を活性化し、B細胞の成長および分化を刺激することができるプロフェッショナル抗原提示細胞を指す。
【0113】
用語「処置(treating)」(および「処置する(treat)」または「処置(treatment)」などのそのバリエーション)は、処置を必要とする被験体における疾患または状態の自然経過を変化させようと試みる臨床的介入を指す。処置を、予防のためおよび臨床的な病的状態の経過中の両方において行うことができる。望ましい処置の効果としては、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接または間接的な病理学的帰結の減少、転移の予防、疾患進行速度の低下、病状の改善または一時的軽減、および寛解または予後の改善が挙げられる。
【0114】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」または「有効量」は、被験体に投与したときに疾患または障害を処置するのに有効な、本明細書中に提供された組換え分子、ポリペプチド、または医薬組成物のうちのいずれかの量を指す。
【0115】
本明細書中で使用される場合、「標的結合部分」または「標的結合ポリペプチド」は、特異的な分子または細胞の成分に局在化して結合する能力を有する分子を指す。ターゲティング結合部分またはポリペプチドは、抗体、抗体断片、scFv、Fc含有ポリペプチド、融合抗体、ポリペプチド、ペプチド、アプタマー、リガンド、核酸、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。非限定的な例として、ターゲティング部分またはポリペプチドは、細胞または組織中に存在する分子、罹患した細胞または組織(例えば、がん細胞または腫瘍)中の分子、正常な細胞または組織(例えば、免疫細胞)、免疫応答をモジュレートする細胞分子または細胞外分子(例えば、サイトカイン(IL-23など)、または免疫チェックポイントタンパク質(PD-1、CTLA4など))、成長因子受容体(例えば、TGFbRII、VEGFR、TNFR、EGFR)、成長因子、サイトカイン受容体、サイトカイン、または細胞表面分子に結合することができる。別の例として、ターゲティング部分またはポリペプチドは、腫瘍細胞の成分または腫瘍細胞付近(例えば、腫瘍脈管構造または腫瘍微小環境)、腫瘍微小環境、腫瘍脈管構造、腫瘍関連リンパ球、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、腫瘍細胞表面分子、腫瘍抗原決定基、腫瘍抗原含有融合タンパク質、腫瘍関連細胞、腫瘍関連免疫細胞、または腫瘍ワクチンに結合することができる腫瘍ターゲティング部分である。ターゲティング部分またはポリペプチドが特異的に結合することができる非限定的な例は、以下が挙げられる分子または成分である:上皮成長因子受容体(EGFR、EGFR1、ErbB-1、HER1)、ErbB-2(HER2/neu)、ErbB-3/HER3、ErbB-4/HER4、EGFRリガンドファミリー;インスリン様成長因子受容体(IGFR)ファミリー、IGF結合タンパク質(IGFBP)、IGFRリガンドファミリー(IGF-1R);血小板由来成長因子受容体(PDGFR)ファミリー、PDGFRリガンドファミリー;線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)ファミリー、FGFRリガンドファミリー、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)ファミリー、VEGFファミリー;HGF受容体ファミリー:TRK受容体ファミリー;エフリン(EPH)受容体ファミリー:AXL受容体ファミリー;白血球チロシンキナーゼ(LTK)受容体ファミリー;TIE受容体ファミリー、アンギオポエチン1、2;受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体(ROR)受容体ファミリー;ジスコイジンドメイン受容体(DDR)ファミリー;RET受容体ファミリー;KLG受容体ファミリー;RYK受容体ファミリー;MuSK受容体ファミリー;トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-α)、TGF-α受容体;トランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-β)、TGF-β受容体;インターロイキンβ受容体アルファ2鎖(IL13Rアルファ2)、インターロイキン-6(IL-6)、1L-6受容体、インターロイキン-4、IL-4受容体、サイトカイン受容体、クラスI(ヘマトポイエチンファミリー)およびクラスII(インターフェロン/IL-10ファミリー)受容体、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリー、TNF-α、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNFRSF)、デスレセプターファミリー、TRAIL-受容体;がん精巣(CT)抗原、系統特異的抗原、分化抗原、アルファ-アクチニン-4、ARTC1、フィブロネクチン(FN)、GPNMB、HLA-A2、MLA-A11、MART2、黒色腫遍在性変異1、2、3(MUM-1、2、3)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、neo-PAP、ミオシンクラス1、NFYC、OGT、OS-9、pml-RARアルファ融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、IRT2、SNRPD1、SYT-SSX1または-SSX2融合タンパク質、BAGE、BAGE-1-5、GAGE-1-8、MGAT5、LAGE、LAGE-1、黒色腫上のCTL認識抗原(CAMEL)、黒色腫関連抗原(MAGE)ファミリーのメンバー、ムチン1(MUC1)、MART-1/Melan-A(MLANA)、gp100、gp100/Pme117(S1LV)、チロシナーゼ(TYR)、TRP-1、HAGE、NA-88、NY-ESO-1、NY-ESO-1/LAGE-2、SAGE、Sp17、SSX-1-4、癌胎児性抗原(CEA)、カリクフェイン4、マンマグロビン-A、OA1、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原、TRP-2、アディポフィリン、黒色腫(nielanorna)に存在しないインターフェロン誘導性タンパク質2(AIM-2)、BING-4、CPSF、サイクリンD1、上皮細胞接着分子(Ep-CAM)、EpbA3、線維芽細胞成長因子-5(FGF-5)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、M-CSF、MUCI、PBF、FRAME、RAGE-1、RNF43、RU2AS、SOX10、STEAP1、XAGE、ADAM2、PAGE-5、LIP1、CTAGE-1、CSAGE、MMA1、CAGE、BORIS、HOM-TES-85、AF15q14、HCA66I、LDHC、MORC、SGY-1、SPO11、TPX1、NY-SAR-35、FTHLI7、、TDRD1、TEX 15、FATE、TPTE、エストロゲン受容体(ER)、アンドロゲン受容体(AR)、CD40、CD30、CD20、CD19、CD33、CD4、CD25、CD3、がん抗原72-4(CA72-4)、がん抗原15-3(CA15-3)、がん抗原27-29(CA27-29)、がん抗原125(CA125)、がん抗原19-9(CA19-9)、ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、1-2ミクログロブリン、扁平上皮癌抗原、GM2、707アラニンプロリン(707-AP)、T細胞によって認識される腺癌抗原4(ART-4)、癌胎児形成抗原ペプチド-1(CAP-1)、カルシウム活性化塩素チャネル-2(CLCA2)、シクロフィリンB(Cyp-B)、ヒト環状体腫瘍-2(HST-2)。本発明の組成物は、ペプチド/ポリペプチドとしての上記および/またはこれらをコードするものをさらに含むことができる。
【0116】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、哺乳動物被験体を意味する。例示的な被験体としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、ヤギ、ウサギ、およびヒツジが挙げられる。ある特定の実施形態では、被験体はヒトである。いくつかの実施形態では、被験体は、本明細書中に提供された多重特異性ポリペプチドで処置することができる疾患または状態を有する。いくつかの態様では、疾患または状態はがんである。いくつかの態様では、疾患または状態は免疫障害である。
【0117】
用語「免疫刺激性受容体」は、免疫細胞の細胞表面上に発現される、前述の細胞を活性化、変異、増殖、または刺激するポリペプチドを指す。いくつかの態様では、免疫刺激性受容体は、1またはそれを超える細胞内の免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)または免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフ(ITSM)を介してシグナル伝達し得る。T細胞上で発現される免疫刺激性受容体のサブセットは、「T細胞共刺激受容体」と称され得る。いくつかの態様では、T細胞共刺激受容体がその同族リガンドによって連結されると、T細胞を活性化する細胞内シグナル伝達が生じる。いくつかの態様では、この「シグナル2」は、TCR連結に起因する「シグナル1」と協力して作用して、T細胞を完全に活性化する。T細胞共刺激受容体の非限定的な例としては、4-1BB(CD137)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS;CD278)、OX-40(CD134)、糖質コルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR;CD357)、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD28、またはCD27が挙げられる。自然免疫細胞上に発現された免疫刺激性受容体のサブセットは、「自然免疫刺激性受容体」と称され得る。NK細胞上に発現される自然免疫刺激性受容体の非限定的な例としては、TRAIL、CD16、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、NKG2C、NKG2D、2B4(CD244)、DNAM-1(CD226)、CD137、OX40、およびCD27が挙げられる。骨髄性細胞上に発現される自然免疫刺激性受容体の非限定的な例としては、DAP12およびFc受容体ガンマ、ならびにDAP12およびFc受容体ガンマのようなITAM含有アダプターに結合した受容体(TREM-2など)が挙げられる。
【0118】
用語「免疫チェックポイントタンパク質」は、免疫細胞の活性化を減弱させるポリペプチドを指す。いくつかの態様では、免疫チェックポイントタンパク質としては、免疫細胞中の阻害シグナルを伝達する受容体(例えば、PD-1)およびかかる受容体を活性化するリガンド(例えば、PD-L1、PD-L2)が挙げられる。他の態様では、免疫チェックポイントタンパク質としては、免疫刺激性受容体のリガンドを隔離する受容体が挙げられる(例えば、CTLA-4は、免疫刺激性リガンドCD80を隔離し、それにより、CD86は免疫刺激性受容体CD28とのその相互作用が妨害される)。いくつかの態様では、免疫チェックポイントタンパク質は、1またはそれを超える細胞内の免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)または免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフ(ITSM)を介してシグナル伝達し得る。T細胞上に発現される免疫チェックポイント受容体のサブセットは、「T細胞共阻害受容体」と称され得、その同族リガンドは「T細胞共阻害リガンド」と称され得る。自然免疫細胞上に発現される免疫チェックポイント受容体のサブセットは、「自然阻害受容体」と称され得、その同族リガンドは「自然阻害リガンド」と称され得る。
【0119】
用語「免疫原性化学療法剤」は、がん細胞を免疫原性細胞死に至らせる化学療法剤を指す。免疫原性細胞死は、細胞死が抗原特異的免疫応答を駆動することができる任意の機序を指す。化学療法、照射、および標的療法が挙げられる多数の抗がん治療は、免疫原性細胞死を誘導することができる。いくつかの態様では、免疫原性化学療法剤は、遺伝毒性を示す。免疫原性細胞死を引き起こすことができる化学療法剤クラスの非限定的な例としては、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、ドキソルビシン)、白金誘導体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン)、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、またはアントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)が挙げられる。いくつかの態様では、免疫原性化学療法剤またはその誘導体は、抗体-薬物コンジュゲートとして送達用の抗体または他のポリペプチドにコンジュゲートされ得る。
【0120】
用語「免疫阻害性酵素」は、代謝活性が免疫抑制効果を有する酵素を指す。いくつかの実施形態では、免疫阻害性酵素は、エクトヌクレオチダーゼ(例えば、CD39、CD73)またはインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼである。好適な免疫阻害性酵素の非限定的な例としては、キエシンスルフヒドリルオキシダーゼ1(QSOX1)、炭酸脱水酵素12(CA12)、および炭酸脱水酵素IX(CAIX)が挙げられる。
【0121】
本明細書中で使用される場合、特定の標的の「調節剤」は、制限されないが、ある特定の実施形態では、前述の標的に結合し、前述の標的の活性を阻害し得る(すなわち、アンタゴニストとして作用し得る)薬剤を指すか、あるいは、別の実施形態では、調節剤は、前述の標的の活性を促進し得る(すなわち、アゴニストとして作用し得る)。調節剤は、(例えば、その同族結合パートナー、そのシグナル伝達の上流の分子、またはそのシグナル伝達の下流の分子への結合によって)所与の標的の活性を直接または間接的に阻害または促進し得る。
【0122】
用語「腫瘍間質細胞」は、腫瘍微小環境中の非悪性細胞を指す。1つの態様では、腫瘍間質細胞は、腫瘍中の構造組織または結合組織の成分である。別の態様では、腫瘍間質細胞は、血管を形成するか血管の形成に関与する。腫瘍間質細胞の非限定的な例としては、線維芽細胞、がん関連線維芽細胞(CAF)、血管内皮細胞、周皮細胞、脂肪細胞(adippocyte)、間葉間質細胞、および筋線維芽細胞が挙げられる。
【0123】
用語「免疫関連有害事象」(irAE)は、免疫活性化によって引き起こされる任意の望ましくない副作用を指す。irAEとしては、胃腸毒性、内分泌毒性、心毒性、肺毒性、肝臓毒性、リウマチ性(rheumatalogical)毒性、腎臓毒性、神経学的または皮膚科学的/皮膚毒性が挙げられ得る。irAEは、免疫チェックポイント阻害剤、または免疫細胞の活性化に原因するか関連する他の抗がん治療を用いた処置に原因し得るか、関連し得る。irAEは、Martins et al.,‘‘Adverse effects of immune-checkpoint inhibitors:epidemiology,management and surveillance.’’Nat Rev Clin Oncol 2019;16:563(その全体が本明細書中で援用される)にさらに定義され、概説されている。
【0124】
配列表中の記号「+」は、表示のポリペプチド配列の融合を意味する。例えば、「A+B」は、表示の順序でのAのBへの融合を意味する(すなわち、N末端-A-B-C末端)。
【0125】
IL-23/IL-23Rを遮断する多重特異性ポリペプチド
IL-23は、悪性細胞の発生、進行、および転移に関与する腫瘍微小環境(TME)の1つの成分である。IL-23は、宿主免疫応答を操作し、TME中の細胞をモジュレートし、種々の前悪性腫瘍および悪性腫瘍に直接影響を及ぼし得る。
【0126】
免疫細胞活性化を促進する薬剤でのがんの処置により、抗腫瘍免疫を阻害し、そして/または腫瘍形成性炎症性シグナル伝達に寄与するT細胞サブセットの活性化をもたらし得る。例えば、Th17細胞は、シグネチャー転写因子RORgの発現ならびにIL-17、IL-21、IL-22、IL-1、およびTNFaのような炎症性サイトカインの発現を特徴とするCD4T細胞のサブセットである。いかなる理論にも拘束されないが、Th17細胞は、線維症に至る線維芽細胞の活性化、上皮細胞の生存/増殖に寄与するサイトカインの産生、ならびに内皮細胞活性化およびECMリモデリングを介した血管形成の促進によって腫瘍進行を直接および間接的に促進し得る。Th17細胞は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)などの抗腫瘍免疫を阻害する独立した免疫抑制性プログラムを発揮する骨髄性細胞を動員および活性化し得る。したがって、免疫細胞活性化を促進する薬剤でのがんの処置により、抗腫瘍免疫を阻害し、そして/または腫瘍形成性炎症性シグナル伝達に寄与するTh17細胞、ガンマデルタT17細胞、およびILC3細胞のような炎症性T細胞が逆の結果を生む活性化/増大をもたらし得る。さらに、Th17細胞およびガンマデルタT17細胞などのIL17+T細胞は、免疫療法に応答した免疫関連有害事象(irAE)の誘導および毒性に関連する。これにより、免疫治療剤、より一般的には任意の免疫原性抗がん剤の治療範囲が制限され得る。IL-23は、これらの炎症細胞表現型(Th17細胞、ガンマデルタT17細胞、およびILC3細胞など)の分化および維持で極めて重要な役割を果たすSTAT3活性化サイトカインである。さらに、IL-23シグナル伝達およびその結果としてのSTAT3シグナル伝達は、IL-12シグナル伝達およびその結果としてのSTAT4シグナル伝達を阻害するために複数の機序を使用し、それにより抗腫瘍Th1 T細胞表現型の分化および維持を制限する。したがって、IL-23遮断は、免疫細胞の活性化、増殖、および/または機能の増強を目的とする治療ストラテジーの有効性および安全性を高め得る。かかる治療ストラテジーの非限定的な例としては、免疫チェックポイントタンパク質(T細胞共阻害受容体および自然阻害受容体が挙げられる)のアンタゴニズム、免疫刺激性受容体(T細胞共刺激受容体および自然刺激受容体が挙げられる)のアゴニズム、特定のサイトカイン/サイトカイン受容体のアンタゴニズム、特定のサイトカイン受容体のアゴニズム、免疫原性化学療法、免疫阻害性酵素のアンタゴニズム、およびCAR-T、CAR-NK、または造血幹細胞を含む細胞治療の実施が挙げられる。がん処置のためのかかる治療ストラテジーは、時折、「寛容を破壊する」またはそれを試みると説明される。そのようなものとして、いくつかの態様では、本発明の分子および方法は、寛容を破壊する一方で、IL-23(免疫細胞表現型を腫瘍促進状態に偏向させる主要な決定要因)を抑えるためのストラテジーを提供する。これは、寛容を破壊する一方で、確実に腫瘍微小環境中の免疫細胞の表現型がかかる逆の結果を生む状態に偏向させず、従って、寛容を破壊することを目的にする治療の安全性および有効性の両方を向上させることができる。
【0127】
IL-23/IL-23受容体(IL-23/IL-23R)シグナル伝達を特異的に遮断することができる多重特異性ポリペプチドを本明細書中に提供する。多重特異性ポリペプチドは、以下の少なくとも2つの部分を含む:(a)IL-23阻害ポリペプチド(IIP)、および(b)二次ポリペプチド(2P)(標的結合ポリペプチドなど)。好ましい実施形態では、本明細書中に開示の多重特異性ポリペプチドは、免疫チェックポイント阻害剤のみでの処置と比較して、有効に腫瘍成長を阻害し、そして/または腫瘍体積を低下させる。別の好ましい実施形態では、本明細書中に開示の多重特異性ポリペプチドは、移植片対宿主病などの免疫障害を予防または軽減する。
【0128】
いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、IL-23リガンドとIL-23受容体の相互作用を遮断または妨害することによってIL-23/IL-23Rシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、IL-23リガンドに特異的に結合し、細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、樹状細胞(dentritic cell)、マクロファージ(macrphaage)、腫瘍細胞)の表面上に存在するIL-23受容体へのIL-23の結合を枯渇させることができる。いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、細胞表面上に存在するIL-23受容体に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、抗IL-23抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、抗IL-23R抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、IL-23受容体の細胞外ドメイン(IL-23 ECD)を含み、IL-23リガンドに結合することができ、それにより、IL-23が内因性IL-23Rに結合し、そしてIL-23シグナル伝達を阻害するのを防止することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、二次ポリペプチド(2P)は、免疫細胞(immue cell)(例えば、抗原提示細胞、CD4+T細胞、Th17細胞)または腫瘍細胞の細胞表面上に発現されるか存在する1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質に結合し、それにより、免疫チェックポイントタンパク質の相互作用を遮断または妨害する標的結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、プログラム死-1(PD1;CD279)、プログラム死リガンド1(PDL1;CD274;B7-H1)、プログラム死リガンド2(PDL2)、細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA4;CD152)、Bリンパ球およびTリンパ球のアテニュエーター(BTLA)、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(VISTA)、T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3;CD223)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(Tim-3;HAVCR2)、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、CD47、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)、主要組織適合性遺伝子複合体クラスI,G(HLA-G)、Ig様転写物2(ILT2;LILRB1)、Ig様転写物4(ILT4、LILRB2)、またはこれらの組み合わせから選択される免疫チェックポイントタンパク質、その受容体もしくはリガンド結合断片、またはリガンドもしくはその受容体結合断片に結合する。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、PD1(CD279)に結合する。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、抗PD1抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、PDL1(CD274;B7-H1)に結合する。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、抗PDL1抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、PDL2に結合する。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、抗PDL2抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、標的結合ポリペプチドは、例えばPDL1、PDL2のリガンドまたは受容体結合断片に結合することができるPD1の細胞外ドメイン(PD1 ECD)を含む。いくつかの実施形態では、PD1 ECDは、野生型ヒトPD1 ECD(配列番号56)と比較して、PDL1および/またはPDL2に対するその結合親和性を増加させるための1またはそれを超える変異を有する。PD1 ECDは、残基A132(UniProt Q15116の場合のように完全なヒトPD1配列によって定義される残基ナンバリング)に変異を含み得る。PD1 ECDは、残基A132に保存的置換を含み得る。好ましい実施形態では、PD1 ECDは、変異A132I(配列番号57)を含む。いくつかの実施形態では、PD1 ECDバリアントは、100nM、10nM、1nM、または0.1nMを超える親和性でPDL1に結合する。いくつかの実施形態では、PD1 ECDバリアントは、100nM、10nM、1nM、または0.1nMを超える親和性でPDL2に結合する。
【0130】
腫瘍細胞および骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)は、PDL1および/またはPDL2を発現し得る。また、腫瘍細胞およびMDSCは、IL-23を発現し得る。そのようなものとして、PDL1および/またはPDL2;ならびにIL-23に結合する多重特異性ポリペプチドは、IL-23の遮断を、IL-23も発現するPDL1+および/またはPDL2+細胞(例えば、IL-23、およびPDL1もしくはPDL2、またはその両方が存在するか発現する細胞)の細胞表面に局在させ得る。
【0131】
IL-23阻害ポリペプチド
したがって、いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチド(IIP)は、以下の方法のうちの1つにおいてIL-23/IL-23Rシグナル伝達を阻害する:(a)IL-23への結合によるIL-23とIL-23Rの相互作用の阻害(IIPは、「IL-23バインダー」である)、または(b)IL-23Rへの結合によるIL-23とIL-23Rの相互作用の阻害(IIPは、「IL-23Rバインダー」である)。
【0132】
IL-23バインダー
いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、IL-23に結合する。いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、抗IL-23抗体である。いくつかの実施形態では、抗IL-23抗体は、IL-23サブユニット(例えば、IL-23p19、IL-23p40)に特異的に結合することができるヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態(emebodiment)では、IL-23抗体またはその抗原結合断片は、IL-23p19サブユニットに特異的に結合することができる。非限定的な例として、IL-23抗体またはその抗原結合断片は、リサンキズマブ(VH:配列番号79;VL:配列番号80)、グセルクマブ(VH:配列番号81;VL:配列番号82)、チルドラキズマブ(VH:配列番号83;VL:配列番号84)、ブラジクマブ(VH:配列番号85;VL:配列番号86)、およびミリキズマブ(VH:配列番号87;VL:配列番号88)のうちのいずれか1つから選択される6つの相補性決定領域(CDR)のうちの1つまたは複数を含む。
【0133】
IL-23Rバインダー
いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、IL-23Rに結合する。いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、抗IL-23R抗体である。いくつかの実施形態では、抗IL-23R抗体は、IL-23リガンドまたはその受容体結合断片に特異的に結合することができるヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。非限定的な例として、IL-23R抗体またはその抗原結合断片は、AS2762900-00の6つのCDRのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、IL-23R抗体またはその抗原結合断片は、米国特許第9,371,391号(その全体が本明細書中で援用される)に開示の抗体から選択される。
【0134】
IL-23R ECD
いくつかの実施形態では、IL-23阻害ポリペプチドは、内因性のIL-23リガンドに特異的に結合することができるIL-23受容体、そのリガンド結合ドメインもしくは断片、またはその細胞外ドメイン(IL-23R-ECD)を含む。例えば、IL-23R-ECDは、IL-23RのD1サブユニット、IL-23RのD1およびD2サブユニット、またはIL-23RのD1、D2、およびD3サブユニットであり得る。ヒトIL-23Rおよびその細胞外ドメインの配列は報告されている。本明細書中で使用される場合、ECD配列は、配列番号1のアミノ酸配列(UniProtアクセッションQ5VWK5)を有する。
【0135】
IL-23リガンドは、p19サブユニットおよびp40サブユニットを含むヘテロ二量体サイトカインである。IL-12リガンドは、p35サブユニットおよびp40サブユニットを含むヘテロ二量体サイトカインである。1つの態様では、本発明の融合タンパク質のIL-23R-ECDは、IL-12よりもIL-23に対して高い親和性を示す。1つの実施形態では、IL-23R-ECDは、p35サブユニットと比較してp19サブユニットに優先的に結合する。いくつかの実施形態では、IL-23R-ECDは、IL-23のp19サブユニットおよびp40サブユニットの両方と相互作用する残基を含む。他の実施形態では、IL-23R-ECDは、p19サブユニットのみと相互作用する残基を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、IL-23R-ECDドメインは、D1の上流のGITNINヘキサペプチドを含む。他の実施形態では、IL-23R-ECDドメインは、D1の先頭のアミノ酸配列(CSGHI)で始まる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書中で使用されるIL-23R-ECDを、ネイティブヒトIL-23-R細胞外ドメイン(例えば、野生型IL-23R-ECD)配列(配列番号1)を参照して、以下の方法のうちの1つまたは複数で改変し得る。IL-23R-ECDは、IL-23へのその特異性、IL-23R-ECDの1またはそれを超える不連続ドメインの融合、またはIL-23R-ECDの異なるイソ型由来のドメインの融合を維持または増加させながら、リガンド結合に必要ではない残基の1またはそれを超える置換または欠失、N結合グリコシル化部位を除去するための残基の1またはそれを超える置換、IL-23に対する親和性を増加させるための残基の1またはそれを超える置換、付加、または欠失、融合タンパク質の発現を改善するための残基の1またはそれを超える置換、付加、または欠失、薬物コンジュゲートの部位特異的コンジュゲーションを可能にするための残基の1またはそれを超える置換、付加、または欠失、IL-12へのリガンド捕捉の特異性を減少させるための残基の1またはそれを超える置換、付加、または欠失を有し得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、IL-23R-ECDは、野生型ヒトIL-23R-ECD(配列番号1)のリガンド結合配列に対して少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはそれを超える配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0139】
二次ポリペプチド(2P)
いくつかの実施形態では、二次ポリペプチドは、以下の機能(a)特異的な組織、細胞型、または腫瘍細胞への多重特異性ポリペプチドの局在化;(b)阻害性免疫チェックポイントシグナル伝達のアンタゴニズム;(c)免疫刺激性シグナル伝達のアゴニズム;(d)別のサイトカインまたはサイトカイン受容体のアンタゴニズム、(e)サイトカイン受容体のアゴニズム、および/または(f)ケモカインまたはケモカイン受容体のアンタゴニズムなどのうちの1つまたは複数の役目を果たす標的結合ポリペプチドである。
【0140】
種々の実施形態では、二次ポリペプチド(2P)は、免疫グロブリン、抗体、二重特異性抗体もしくは多重特異性抗体、ナノボディ、抗体断片、単鎖可変断片(scFv)、二価もしくは多価のscFv、Affimer、受容体の細胞外ドメイン(ECD)由来のリガンド結合配列、リガンドのECD由来の受容体結合配列、またはFc含有ポリペプチドの抗原結合ドメインである標的結合ポリペプチドである。
【0141】
いくつかの実施形態では、2Pは、結晶化可能断片(Fc)領域、抗原結合断片(Fab)領域、単鎖可変断片(scFv)、軽鎖もしくはその機能的部分、軽鎖の可変領域(VL)、軽鎖の定常領域(CL)、重鎖もしくはその機能的部分、重鎖の可変領域(VH)、重鎖の定常領域(CH)、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)もしくはその抗原結合部分、またはこれらの組み合わせなどの抗体またはその抗原結合断片である標的結合ポリペプチドである。
【0142】
いくつかの実施形態では、2Pは、受容体の細胞外ドメインのリガンド結合配列を有する標的結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、2Pは、リガンドの細胞外ドメインの受容体結合配列を有する標的結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ECDは、野生型ECDを参照して以下の改変のうちの1つまたは複数を有する。種々の実施形態では、ECDは、融合タンパク質の発現を改良するための残基の1またはそれを超える置換、付加、または欠失、リガンド結合に必要ではない残基の1またはそれを超える置換または欠失、N結合グリコシル化部位を除去するための残基の1またはそれを超える置換、あるいはECDの天然の結合パートナーに対する親和性を増加させるための残基の1またはそれを超える置換、付加、または欠失を有する。
【0143】
がんまたは免疫障害を処置するための2P部分の例
種々の実施形態では、二次ポリペプチド(2P)は、1またはそれを超えるサイトカインもしくはサイトカイン受容体、または1またはそれを超える細胞表面分子に特異的に結合することができる標的結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、2Pは、血液脳関門を通じて融合タンパク質を交換可能な標的結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、2Pは、免疫グロブリンのFcドメイン、CDR、または抗原結合断片を含む標的結合ポリペプチドである。
【0144】
いくつかの実施形態では、2Pは、T17細胞の分化、成熟、または機能を促進するサイトカインまたはサイトカイン受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-17またはIL-17Rに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-17またはIL-17Rに結合して無能にする抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、2P抗体またはその抗原結合断片は、アファセビクマブ、ビメキズマブ、イキセキズマブ、ネタキマブ、ペラキズマブ、セクキヌマブ、ブナキズマブ、またはブロダルマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-17Rの細胞外ドメインまたはその断片のリガンド結合配列である。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-1a、IL-1b、またはIL-1Rに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-1a、IL-1b、および/またはIL-1Rに結合して無能にする抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-1Rの細胞外ドメイン、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)(配列番号77)、またはその断片のリガンド結合配列である。いくつかの実施形態では、2Pは、アナキンラのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-6またはIL-6Rに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-6またはIL-6Rに結合して無能にする抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、2P抗体またはその抗原結合断片は、クラザキズマブ、オロキズマブ、シルツキシマブ、シルクマブ、ジルチベキマブ、レビリマブ、サペリズマブ、サリルマブ、サトラリズマブ、またはトシリズマブのうちのいずれか1つから選択される6つのCDRまたはその抗原結合部分のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、2Pは、RANKのRANKLとの相互作用を防止する。いくつかの実施形態では、2Pは、RANKの細胞外ドメイン(配列番号76)のRANKL結合配列である。
【0145】
いくつかの実施形態では、2Pは、TNFRスーパーファミリー受容体またはTNFRスーパーファミリー受容体に結合するリガンドに結合する。他の実施形態では、2Pは、I型サイトカイン受容体またはI型サイトカイン受容体に結合するサイトカインに結合する。他の実施形態では、2Pは、II型サイトカイン受容体またはII型サイトカイン受容体に結合するサイトカインに結合する。他の実施形態では、2Pは、Igスーパーファミリー受容体またはIgスーパーファミリー受容体に結合するサイトカインに結合する。他の実施形態では、2Pは、ケモカイン受容体またはケモカイン受容体に結合するケモカインに結合する。
【0146】
いくつかの実施形態では、2Pは、IL-23の産生を担う細胞の細胞表面分子に結合し、それにより、IL-23が発現するときにそれを隔離する。他の実施形態では、2Pは、IL-23Rを発現し、かつ通常はIL-23に応答する細胞の細胞表面分子に結合し、それにより、本来ならばIL-23Rシグナル伝達を開始するであろう細胞上のIL-23を隔離する。
【0147】
いくつかの実施形態では、2Pは、T細胞表面分子に結合する。融合タンパク質は、T17細胞によって媒介される炎症を抑えるようにデザインされ得る。そのようなものとして、いくつかの実施形態では、2Pは、T17細胞によって優先的に発現されるT細胞表面分子に結合する。他の実施形態では、2Pは、CD4T細胞によって発現されるT細胞表面分子に結合する。
【0148】
いくつかの実施形態では、2Pは、トランスフェリン受容体(TfR)に結合する。いかなる理論にも拘束されないが、2PがTfRに結合すると、血液脳関門を通じた融合タンパク質の交換が可能である。いくつかの実施形態では、2Pは、TfRに結合する抗体またはその抗原結合断片である。他の実施形態では、2Pは、TfRに結合するように変異した操作されたFc領域を有する抗体またはその抗原結合断片である。他の実施形態では、2Pは、TfRに結合するように操作された合成ペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、操作されたFc領域は、配列番号116を含む。いくつかの実施形態では、操作されたFc領域は、Kariolis et al,‘‘Brain delivery of therapeutic proteins using an Fc fragment blood-brain barrier transport vehicle in mice and monkeys’’Sci Trans Med 2020,12:545(その全体が本明細書中で参考として援用される)に開示の1またはそれを超える変異を含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、2Pは、免疫グロブリンのFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、野生型IgGである。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、種々のFc受容体へのその結合を増強するか破棄するようにデザインされた1またはそれを超える変異を保有する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、L234Aおよび/またはL235A(「LALA」)変異を含むIgG1 Fcである。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、S228P変異を含むIgG4 Fcである。
【0150】
がんを処置するための2P部分の例
種々の実施形態では、2Pは、がん処置のための1またはそれを超える標的分子に結合することができる標的結合ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態では、2Pは、腫瘍細胞表面分子に結合する。いかなる理論にも拘束されないが、2Pは、腫瘍細胞の微小環境中の任意のIL-23を隔離するためのIL-23バインダーで「飾られて」おり、腫瘍細胞表面に融合タンパク質を局在化するのに役立ち得る。2Pのその標的への結合は、さらに、免疫寛容または腫瘍促進性の炎症を悪化させる受容体/リガンド相互作用を中和するか、成長因子、成長因子受容体、または腫瘍細胞の生存、成長、もしくは転移を促進する他の分子を中和するのに役立ち得る。種々の実施形態では、腫瘍細胞表面分子は、T細胞共阻害リガンド、腫瘍成長因子受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、または腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、2Pは、特異的腫瘍細胞表面分子に結合する抗体またはその抗原結合断片である。非限定的な例として、2Pは、以下のリストから選択される腫瘍細胞表面分子(CA125、CA19-9、CD30、癌胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)またはCD66e(例えば、ラベツズマブ、セルグツズマブ)、CEACAM1、CEACAM6、DLL3、DLL4、DPEP3、EGFR(例えば、セツキシマブ、ネシツムマブ、パニツムマブ)、EGFRvIII(例えば、デパツキシズマブ)、GD2、HER2(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ)、HER3、HGF、IGF1R、IL13Ra2、LIV-1、LRRC15、MUC1、PRLR、PSCA、PSMA、PTK7、SEZ6、SLAMF7、TF、cMet、クローディン、メソテリン、ネクチン4(例えば、エンフォルツマブ)、uPAR、GPNMB、CD79b、CD22、NaPi2b、SLTRK6、STEAP1、MUC16、CD37、GCC、AGC-16、5T4、CD70、TROP2(例えば、サシツズマブ)、CD74、CD27L、Fra、CD138、およびCA6が挙げられる)に結合する。種々の実施形態では、2Pは、腫瘍間質細胞の細胞表面分子に結合する。
【0151】
いくつかの実施形態では、2Pは、CEA(CEACAM5)に結合する。いくつかの実施形態では、2Pはラベツズマブである。別の実施形態では、2Pは、セルグツズマブまたはCH1A1A-2F1である。1つの実施形態では、2Pは、可溶性CEAよりも優先的に膜結合CEAに結合する。いくつかの実施形態では、この結合は、CEA細胞外ドメインのC末端のGPI係留部位付近のCEAエピトープに結合することによる。いくつかの実施形態では、この結合は、CEAのB3ドメインと重複するCEAエピトープに結合することによる。
【0152】
いくつかの実施形態では、2Pは、血液悪性疾患によって過剰発現された抗原に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、多発性骨髄腫によって過剰発現された抗原に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、CD38、SLAMF7、またはBCMAに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、以下のリストから選択される抗体である:MEDI2228;CC-99712;ベランタマブ;ゲムツズマブ(抗CD33 mAb)。いくつかの実施形態では、抗体はCD20に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、リツキシマブ(キメラマウス/ヒト抗CD20 mAb);オビヌツズマブ(抗CD20 mAb);オファツムマブ(抗CD20 mAb)に結合する。いくつかの実施形態では、2PはCD19に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、CD30、またはCD22に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、白血病によって過剰発現された抗原に結合する。いくつかの実施形態では、2PはCD33に結合する。
【0153】
いくつかの実施形態では、2Pは、免疫チェックポイントタンパク質のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、2Pは、自然免疫チェックポイントタンパク質のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、2Pは、アンタゴニストとしてT細胞共阻害分子に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、T細胞共阻害受容体の細胞外ドメインのリガンド結合配列を有する。かかる2Pは、T細胞共阻害リガンドを隔離し、T細胞表面に発現されるネイティブT細胞共阻害受容体のリガンド誘導性シグナル伝達を減少させる効果を有する。
【0154】
いくつかの実施形態では、2Pは、PD1 ECDのリガンド結合配列を有する。PD1 ECDは、野生型ヒトPD1 ECDと比較して、PDL1および/またはPDL2に対するその結合親和性を増加させるための1またはそれを超える変異を含み得る。いくつかの実施形態では、PD1 ECDは、残基A132(UniProt Q15116の場合のように全長ヒトPD1配列によって定義される残基ナンバリング)に変異を有する。A132残基は、I(A132I)、V(A132V)、またはL(A132L)が変異(例えば、置換、欠失、挿入、または逆位)し得る。好ましい実施形態では、PD1 ECDは、A132Iに変異を有する。いくつかの実施形態では、PD1 ECDは、PDL1および/またはPDL2に対するその結合親和性を増加させるための複数のアミノ酸変異(S87G、P89L、N116S、G124S、S127V、A140V、A125I、A125V、L122V、K78T、N74G、M70E、Y68H、N66V、N66I、L65I、L65V、V64H、またはMiao et al.,‘‘Neutralization of PD-L2 is Essential for Overcoming Immune Checkpoint Blockade Resistance in Ovarian Cancer.’’Clin Cancer Res.2021.27(15):4435-4448,Maute et al.,‘‘Engineering high-affinity PD-1 variants for optimized immunotherapy and immuno-PET imaging.’’Proceedings of the National Academy of Sciences.2015.112(47),E6506-E6514(これらの各々の全体が本明細書中で援用される)に記載のさらなるアミノ酸変異が挙げられるが、これらに限定されない)を有する。
【0155】
他の実施形態では、2Pは、TIM3 ECD(配列番号63)のリガンド結合配列を含む。他の実施形態では、2Pは、CD80 ECD(配列番号66)またはCD86 ECD(配列番号67)のCTLA4結合配列を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとして免疫刺激性受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとしてT細胞共刺激分子に結合する。いくつかの実施形態では、免疫刺激性受容体は、4-1BB(CD137)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS;CD278)、OX-40(CD134)、糖質コルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR;CD357)、CD40、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CD28、またはCD27から選択され得る。いくつかの実施形態では、2Pは、T細胞共刺激リガンドの受容体結合配列、またはその受容体結合断片を含む。いくつかの実施形態では、2Pは、CD40L(配列番号74)のCD40結合配列を含む。いくつかの実施形態では、2Pは複数のCD40L部分を含み、それらが集合して三量体または六量体構成となる。いくつかの実施形態では、2Pは、ICOS-L(配列番号73)、4-1BBL(配列番号70)、OX40L(配列番号71)、またはGITRL(配列番号72)の受容体結合配列を含む。いくつかの実施形態では、2Pは、BTLA ECD(配列番号62)またはLIGHT ECD(配列番号65)のHVEM結合配列を含む。いくつかの実施形態では、2Pは、CD80 ECDまたはCD86 ECDのCD28結合配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとして自然免疫刺激性受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとしてNK細胞上に発現される自然免疫刺激性受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとしてNKG2Dに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、NKG2Dリガンド(NKG2DL)のNKG2D結合配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、2Pは、成長因子または成長因子受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、TGFbシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態では、2PはTGFbに結合し、TGFb がTGFbRIIに結合するのを防止する。いくつかの実施形態では、2Pは、TGFbRII ECD(配列番号58)のリガンド結合配列を含む。いくつかの実施形態では、2Pは、抗TGFb抗体またはその抗原結合断片(例えば、フレソリムマブ、SRK-181、SAR439459、NIS793)である。他の実施形態では、2PはTGFbRIIに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、抗TGFbRII抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、多重特異性ポリペプチドは、配列番号90および配列番号54のアミノ酸配列を含む抗IL-23-TGFbRIIである。
【0159】
いくつかの実施形態では、2Pは、VEGFとVEGFRの相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、2PはVEGFに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、VEGFR1(配列番号59)またはVEGFR2(配列番号60)の細胞外ドメインのリガンド結合配列;またはVEGFR1およびVEGFR2由来のドメインを含むキメラECDである。いくつかの実施形態では、キメラECDは、VEGFR1ドメイン2およびVEGFR2ドメイン3(配列番号61)を含む。いくつかの実施形態では、2Pはアフリベルセプトである。いくつかの実施形態では、2Pは、VEGFに結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、ベバシズマブ)である。いくつかの実施形態では、2PはVEGFRに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、VEGFに結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、ラムシルマブ)である。いくつかの実施形態では、多重特異性ポリペプチドは、配列番号91および54のアミノ酸配列を含む抗IL-23-VEGFRである。
【0160】
いくつかの実施形態では、2Pは、樹状細胞またはマクロファージの細胞表面上に発現される分子に結合して中和する。いくつかの実施形態では、2Pは、SIRPaである樹状細胞またはマクロファージの細胞表面上に発現される分子に結合して中和する。他の実施形態では、2Pは、樹状細胞またはマクロファージ上の阻害受容体に結合するリガンドに結合して中和する。いくつかの実施形態では、2Pは、CD47である樹状細胞またはマクロファージ上の阻害受容体に結合するリガンドに結合して中和する。いくつかの実施形態では、2Pは、SIRPa ECD(配列番号68)のCD47結合配列である。いくつかの実施形態では、多重特異性ポリペプチドは、配列番号68および54のアミノ酸配列を含む抗IL-23-SIRPa ECDである。他の実施形態では、2Pは、樹状細胞またはマクロファージの成熟または機能を阻害するリガンドに結合して中和する。1つの実施形態では、2Pは、SIGLEC10の細胞外ドメインのリガンド結合配列である。
【0161】
いくつかの実施形態では、2Pは、サイトカイン/サイトカイン受容体のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、2Pは、免疫阻害性サイトカイン/サイトカイン受容体シグナル伝達のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-8シグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態では、2PはIL-8に結合する。
【0162】
いくつかの実施形態では、2Pは、NK細胞の活性化、成熟、または機能を阻害するリガンドまたはサイトカインに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、T細胞の活性化、成熟、または機能を阻害するリガンドまたはサイトカインに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、かかるリガンドまたはサイトカインに結合する受容体の細胞外ドメインのリガンド結合ドメインである。1つの実施形態では、2Pは、IL-10Rの細胞外ドメインのリガンド結合ドメインである。
【0163】
いくつかの実施形態では、2Pは、NK細胞の活性化、成熟、または機能を促進するサイトカイン受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、NK細胞の活性化、成熟、または機能を促進するサイトカインまたはその受容体結合断片である。いくつかの実施形態では、2Pは、T細胞の活性化、成熟、または機能を促進するサイトカイン受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、T細胞の活性化、成熟、または機能を促進するサイトカインまたはその受容体結合断片である。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-15、IL-12、IL-18、またはその受容体結合断片である。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-15の受容体結合断片とIL-15R sushiドメインのリガンド結合断片の融合物を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとしてT細胞の活性化、成熟、または機能を促進するサイトカイン受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2PはIL-2を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、2Pは、NK細胞表面分子に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、CD56dimCD16NK細胞によって優先的に発現されるNK細胞表面分子に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとしてNK細胞表面活性化受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、NKG2DL細胞外ドメインのNKG2D結合断片である。NKG2DLは、MICA、MICB、またはULBP1-6から選択され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、2Pは、FGF-2またはFGFRに結合する。他の実施形態では、2Pは、PDGFまたはPDGFRに結合する。他の実施形態では、2Pは、アンギオポエチン(1、2、3、または4)またはアンギオポエチン受容体(TIE-1またはTIE-2)に結合する。
【0167】
いくつかの実施形態では、2Pは、TH2細胞の活性化、分化、成熟、または機能を阻害する。いくつかの実施形態では、2Pは、IL-4、IL-13、IL4RA、またはIL13Rに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、IL4RAに結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、デュピルマブ)である。
【0168】
自己免疫状態のための2P部分の例
自己免疫状態などの免疫障害の処置を意図する本発明の多重特異性ポリペプチドは、「寛容を破壊する」ことを試みない。その代わりに、自己免疫障害の有効な処置は、IL-23の遮断に加えて、寛容を誘導することまたは1またはそれを超える炎症機序を抑えることに関与し得る。そのようなものとして、いくつかの実施形態では、本発明の多重特異性ポリペプチドは、下記の2Pを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、2Pは、融合タンパク質を特定の組織に局在化させる。一般に、自己免疫状態のNK/マクロファージ媒介性の悪化を軽減するために、2Pは、ヒト免疫グロブリンのFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、活性化FcRへのその結合を軽減または排除するための1またはそれを超える変異を有する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、阻害性FcRへのその結合を増加させるための1またはそれを超える変異を有する。
【0170】
いくつかの実施形態では、2Pは、炎症促進性サイトカインに結合して中和する。ある特定の自己免疫障害の処置のために、融合タンパク質がIL-23に加えてさらなる炎症促進性サイトカインを中和することがさらに有利な場合がある。炎症促進性サイトカインは、IFNg、TNFa、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-17、IL-12、IL-18、RANKL、およびGM-CSFから選択され得る。例示的なかかる2Pとしては、TNFR2-ECD(配列番号75)(例えば、エタネルセプト)、抗IL17 mAb(例えば、セクキヌマブ)、RANK-ECD(配列番号76)、または抗GMCSF mAb(例えば、レンジルマブ)が挙げられる。
【0171】
いくつかの実施形態では、2Pは、炎症促進性サイトカイン受容体に結合して中和する。炎症促進性サイトカイン受容体は、以下から選択され得る:IFNgR、TNFR、IL-1R、IL-6R、IL-17R、IL-12R、IL-18R、RANK、およびGM-CSFR。
【0172】
いくつかの実施形態では、2Pは、T細胞共刺激リガンドに結合してその効果を無効にする。いくつかの実施形態では、2Pは、以下の共刺激リガンドのうちの1つに結合する:CD40L、41BBL、OX40L、ICOSL、またはGITRL。いくつかの実施形態では、2Pは、以下の共刺激受容体のうちの1つの細胞外ドメインのリガンド結合配列を含む:CD40-ECD、41BB-ECD、OX40-ECD、ICOS-ECD、GITR-ECD。他の実施形態では、2Pは、アンタゴニスト(antaagonist)としてT細胞共刺激受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、アンタゴニストとしてCD40、41BB、OX40、ICOS、またはGITRに結合する。
【0173】
いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとしてT細胞共阻害受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、以下の共阻害受容体のうちの1つに結合する:PD1、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3。いくつかの実施形態では、2Pは、以下の共阻害リガンドのうちの1つの細胞外ドメインの受容体結合配列を含む:PDL1、PDL2、HVEM。
【0174】
いくつかの実施形態では、2Pは、CTLA-4(配列番号115)の細胞外ドメインの配列(例えば、CTLA4-Fc;アバタセプト)を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとしてマクロファージおよび/または樹状細胞上の阻害受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとしてSIRPaに結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、CD47の細胞外ドメインの受容体結合配列を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、2Pは、アゴニストとして抗炎症性サイトカインの受容体に結合する。いくつかの実施形態では、2Pは、抗炎症性サイトカイン自体、またはその受容体結合断片であり得る。他の実施形態では、2Pは、炎症を阻害するためにサイトカイン受容体に結合するアゴニスト抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗炎症性サイトカイン受容体は、IL-4R、IL-10R、およびTGFbRから選択される。いくつかの実施形態では、抗炎症性サイトカインは、IL-4、IL-10、およびTGF-b、またはこれらの受容体結合断片から選択される。
【0177】
多重特異性ポリペプチドのデザイン
いくつかの実施形態では、本発明の多重特異性ポリペプチドを、融合タンパク質として構築する。いくつかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成部分は、可動性リンカーを介して融合されている。いくつかの実施形態では、可動性リンカーは、ポリペプチド配列(GGGGS)n(式中、nは1と10との間である)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーを使用して、2PをIIPのC末端に連結する。いくつかの実施形態では、リンカーは、非切断性リンカー、ペプチドリンカー、可動性リンカー、リジッドリンカー、らせん状リンカー、および/または非らせん状リンカーから選択される。可能なリンカーの非限定的な例は、当該分野において、例えば、Chen et al.”Fusion Protein Linkers:Property,Design,and Functionality” Adv Drug Deliv Rev.2014,65(10):1357(その全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。いくつかの実施形態では、本発明の融合タンパク質の構成部分は、その間をリンカーなしで融合されている。
【0178】
本明細書中で使用される多重特異性ポリペプチドの例示的なデザインを、例えば、図1A~1D、2A~2Gに示す。
【0179】
以下の例示では、Nはタンパク質のN末端を表し、Cはタンパク質のC末端を表す。いくつかの実施形態では、IIPは、抗体またはその抗原結合断片である。そのような場合、融合タンパク質(例えば、組換え分子)は、以下のうちの1つの構造を有する場合があり、ここで、HCは抗体の重鎖を指し、LCは抗体の軽鎖を指す:
・N-HC-リンカー-2P-C;N-LC-C(例えば、図1A
・N-2P-リンカー-HC-C;N-LC-C
・N-HC-C;N-LC-リンカー-2P-C(例えば、図1B
・N-HC-C;N-2P-リンカー-LC-C
【0180】
いくつかの実施形態では、分子は二重特異性抗体であり、ここで、二重特異性抗体の一方のFabはIIPであり、二重特異性抗体の他方のFabは2Pである(例えば、図1C)。他の実施形態では、分子は2つのscFv抗体断片の融合物であり、ここで、一方のscFvはIIPであり、他方のscFvは2Pである(例えば、図1D)。
【0181】
他の実施形態では、2Pは抗体である。そのような場合、融合タンパク質は、以下のうちの1つの構造を有する場合があり、ここで、HCは抗体の重鎖を指し、LCは抗体の軽鎖を指す:
・N-HC-リンカー-IIP-Fc;N-LC-C(例えば、図2A~C)
・N-IIP-リンカー-HC-Fc;N-LC-C
・N-HC-C;N-LC-リンカー-IIP-C
・N-HC-C;N-IIP-リンカー-LC-C
【0182】
いくつかの実施形態では、IIP部分および2P部分は、以下の方法のうちの1つで融合されている:
・N-IIP-Fc-2P-C(例えば、図2D
・N-IIP-2P-C(例えば、図2F
・N-IIP-Fc-リンカー-2P-C
・N-IIP-リンカー-2P-C
・N-2P-Fc-IIP-C(例えば、図2E
・N-2P-IIP-C(例えば、図2G
・N-2P-Fc-リンカー-IIP-C
・N-2P-リンカー-IIP-C
【0183】
いくつかの実施形態では、本発明の多重特異性ポリペプチドは、二重特異性抗体(bsAb)である。いくつかの実施形態では、bSabは、絶対または非絶対bsAbである。
【0184】
いくつかの実施形態では、bsAbは、1+1形式(すなわち、各々の標的について1つの結合部位)の二価である。さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、タンデムVHHナノボディ融合物、タンデムscFvs(例えば、BiTE)、DART、ダイアボディ、F(ab)2、またはscFv-Fab融合物であり得る。別の実施形態では、二重特異性抗体は、2つまたはそれを超える以下の非対称鎖を含み得る:例えば、強制・ノブ・アンド・ホール(forced knob-and-hole)HL対合を有するヘテロ重鎖、CrossMab VH/VLスワップドメインを有するヘテロ重鎖、CrossMAB CH1/CLスワップドメインを有するヘテロ重鎖、DART-Fc、LP-DART、または半減期延長BiTE。
【0185】
他の実施形態では、bsAbは、1+2形式(すなわち、一方の標的について1つの結合部位および他方の標的について2つの結合部位)の三価である。さらなる実施形態では、bsAbは、3つのF(ab)領域を有するCrossMabである。
【0186】
他の実施形態では、bsAbは、2+2形式(すなわち、各々の標的について2つの結合部位)の四価である。さらなる実施形態では、bsAbは、2つのscFvドメインを有する通常のIgGの融合物、Bs4Ab、DVD-Ig、四価のDART-Fc、Fcに融合した4つのscFvドメイン、CODV-Ig、Fcに融合したタンデムVHHナノボディの対、または4つのF(ab)領域を有するCrossMabである。
【0187】
いくつかの実施形態では、bsAbは、リサンキズマブ、グセルクマブ、チルドラキズマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブのうちのいずれか1つのVHおよびVLを含む。いくつかの実施形態では、bsAbは、別の抗体またはその抗原結合断片のVHおよびVLをさらに含む。
いくつかの実施形態では、bsAbは、リサンキズマブ、グセルクマブ、チルドラキズマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブのうちのいずれか1つの6つの相補性決定領域(CDR)のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、bsAbは、別の抗体またはその抗原結合断片のさらなるCDRをさらに含む。
【0188】
例示的な多重特異性ポリペプチド
図1Aおよび3Aに図式的に示すように、抗IL-23-PD1ecdは、可動性リンカー(GGGGS)3を介してその重鎖のC末端にPD1 ECD(2P)のリガンド結合配列が融合または連結された抗IL-23抗体(IIP)を有する例示的な分子である。PD1 ECDは、A132I変異を含む。この例示的な分子の配列を、配列番号53および配列番号54に示す。
【0189】
ある特定の実施形態では、本明細書中に記載の組換え分子は、配列番号1~116に記載の配列のうちのいずれかの「保存的配列改変」(すなわち、ヌクレオチド配列によってコードされるかアミノ酸配列を含むVH配列およびVL配列の、抗原への結合を抑止しないヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の改変)を含むことができる。かかる保存的配列改変としては、保存的なヌクレオチドおよびアミノ酸の置換、ならびにヌクレオチドおよびアミノ酸の付加および欠失が挙げられる。例えば、当該分野で公知の標準的な技術(部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発など)によって配列番号1~116を改変することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換を含む。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、本明細書中に記載の部分のうちのいずれかにおける予想される非必須アミノ酸残基を、同一の側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置き換えることができる。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を同定する方法は、当該分野で周知である(例えば、Brummell et al.,Biochem.32:1180-1187(1993);Kobayashi et al.Protein Eng.12(10):879-884(1999);およびBurks et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:412-417(1997)を参照のこと)。
【0190】
ある特定の実施形態では、保存的なアミノ酸配列改変は、本明細書中に記載のCDR配列に対する最大で1、2、3、4、または5つの保存的アミノ酸置換を指す。例えば、各々のかかるCDRは、5つまでの保存的アミノ酸置換、例えば、4つまで(すなわち、以下)の保存的アミノ酸置換、例えば、3つまで(すなわち、以下)の保存的アミノ酸置換、例えば、2つまで(すなわち、以下)の保存的アミノ酸置換、またはわずか1つの保存的アミノ酸置換を含み得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、本発明の多重特異性ポリペプチドは、抗体であるIIPおよびIIP抗体の重鎖のC末端に融合したポリペプチドである2Pを含む。例示的な融合タンパク質(IIPとして抗IL-23抗体グセルクマブを使用)を、以下のように提供する:配列番号53または97~109のうちのいずれか1つに対応する重鎖;および配列番号54に対応する軽鎖。
【0192】
いくつかの実施形態では、IIPは、以下のVH/VL対のうちの1つを含む抗体である:配列番号79+80、配列番号81+82、配列番号83+84、配列番号85+86、または配列番号87+88。IIP抗体は、配列番号111~112から選択され得るVHのC末端に融合したIgG1定常領域をさらに含み得る。IIP抗体は、VLのC末端に融合した軽鎖定常領域をさらに含み得る。IIP抗体は、配列番号55であり得るリンカーが有りまたは無しのいずれかで2P部分に融合され得る。2Pは、配列番号56~78または89から選択され得る。
【0193】
組換えIL-23R-ECDのデザイン
種々の実施形態では、IL-23R-ECDの例示的なデザインは、以下の通りである:IL-23RD1D2D3(配列番号6)、IL-23RD1D2(配列番号5)、またはIL-23RD1(配列番号2)。
【0194】
いくつかの実施形態では、本発明の多重特異性ポリペプチドのIIPは、ヒトIL-23Rの細胞外ドメインのリガンド結合ドメイン、およびヒトIL-12Rbの細胞外ドメインのリガンド結合ドメインを含み得る(IL-23R/IL12R-ECD)。
【0195】
シグナル伝達するために、細胞表面上に発現されるネイティブIL-23Rは、IL-23ヘテロ二量体(p19、p40)に結合する。このヘテロ三量体は、一般に、IL-23Rシグナル伝達を活性化するためにIL-12Rbに結合する。同様に、細胞表面上に発現されるネイティブIL12Raは、IL-12ヘテロ二量体(p35、p40)に結合する。次いで、このヘテロ三量体は、IL12Rシグナル伝達を活性化するために同一のIL-12Rbに結合する。
【0196】
いかなる理論にも拘束されないが、融合タンパク質のIL-23R-ECDは完全なIL-23ヘテロ二量体(p19、p40)に結合し、IL-23R/p19/p40のこのヘテロ三量体はネイティブIL-12Rbに結合することができる可能性がある。これにより、IL12Rシグナル伝達のために利用可能なIL12Rbサブユニット数が減少し、そのようなものとして、IL12Rシグナル伝達の減少に至り得る。がん処置の場合、これは望ましくない場合がある。したがって、この望ましくないネイティブIL12Rbの隔離の結果を予防するためのキメラIL-23R-ECD-IL12Rb-ECD融合物(IL-23R/IL12R-ECD)のデザインを本明細書中に記載する。
【0197】
IL-23R/IL12R-ECDは、p19に結合するIL-23Rのリガンド結合配列およびp40に結合するIL-12Rbのリガンド結合配列を含む。
【0198】
IL-23Rは、1つのN末端Ig様ドメイン(D1)、2つのフィブロネクチンIII型ドメイン(D2およびD3)から構成され、その後にストーク領域、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインが続く。IL12Rbは、2つのN末端フィブロネクチンIII型ドメイン(D1、D2)から始まり、その後に3つのフィブロネクチンIII型様ドメイン(D3、D4、D5)が続き、その後に膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインが続く。
【0199】
いくつかの実施形態では、IL-23R/IL12R-ECDは、1またはそれを超える、D1、D2、D3から選択されるIL-23Rのドメインを含む。いくつかの実施形態では、IL-23R/IL12R-ECDは、1またはそれを超える、D1、D2から選択されるIL12Rbのドメインを含む。いくつかの実施形態では、IL-23R/IL12R-ECDは、IL-23RD1、IL-23RD1D2、またはIL-23RD1D2D3を含み得る。いくつかの実施形態では、IL-23R/IL12R-ECDは、IL12RbD1、IL12RbD2、またはIL12RbD1D2を含み得る。
【0200】
いくつかの実施形態では、IL12RbドメインおよびIL-23Rドメインは、可動性リンカーを介して融合または連結されている。いくつかの実施形態では、IL-23R/IL12R-ECDは、N-IL-23Rドメイン(複数可)-リンカー-IL12Rドメイン(複数可)-Cという形態を有する。他の実施形態では、IL-23R/IL12R-ECDは、N-IL12Rドメイン(複数可)-リンカー-IL-23Rドメイン(複数可)-Cという形態を有する。さらなる態様では、可動性リンカーは、ポリペプチド配列(GGGGS)n(式中、nは1と10との間である)を含む。
【0201】
IL-23R/IL12R-ECDの例示的な実施形態は、以下の通りである:IL12RbD1-リンカー-IL-23RD1(配列番号29)、IL12RbD1-リンカー-IL-23RD1D2(配列番号30)、IL12RbD1-リンカー-IL-23RD1D2D3(配列番号31)、IL12RbD1D2-リンカー-IL-23RD1(配列番号32)、IL12RbD1D2-リンカー-IL-23RD1D2(配列番号33)、IL-23RD1-リンカー-IL12RbD1(配列番号34)、IL-23RD1D2-リンカー-IL12RbD1(配列番号35)、IL-23RD1D2D3-リンカー-IL12RbD1(配列番号36)、IL-23RD1-リンカー-IL12RbD1D2(配列番号37)、またはIL-23RD1D2-リンカー-IL12RbD1D2(配列番号38)。
【0202】
融合タンパク質の例示的な実施形態としては、以下が挙げられる:HCのC末端に融合したIL-23RD1を有する抗CEA抗体(配列番号12、13)、LCのC末端に融合したIL-23RD1を有する抗CEA抗体(配列番号11、14)、HCのC末端に融合したIL-23RD1D2を有する抗CEA抗体(配列番号12、15)、LCのC末端に融合したIL-23RD1D2を有する抗CEA抗体(配列番号11、16)、HCのC末端に融合したIL-23RD1D2D3を有する抗CEA抗体(配列番号12、17)、LCのC末端に融合したIL-23RD1D2D3を有する抗CEA抗体(配列番号11、18)、LCのC末端に融合したIL-23RD1およびHCのC末端に融合したTGFbRII-ECDを有する抗CEA抗体(配列番号14、19)、TNFR-ECD-Fc-IL-23RD1(配列番号20)、TNFR-ECD-Fc-IL-23RD2(配列番号21)、TNFR-ECD-Fc-IL-23RD1D2D3(配列番号22)、Fc-IL-23RD1(配列番号23)、Fc-IL-23RD1D2(配列番号24)、Fc-IL-23RD1D2D3(配列番号25)、IL-23RD1-Fc(配列番号26)、IL-23RD1D2-Fc(配列番号27)、IL-23RD1D2D3-Fc(配列番号28)、HCのC末端に融合したIL12RbD1-リンカー-IL-23RD1を有する抗CEA抗体(配列番号39)、LCのC末端に融合したIL12RbD1-リンカー-IL-23RD1を有する抗CEA抗体(配列番号40)、VEGFR-Fc-IL-23RD1(配列番号41)、IL-23RD1-Fc-VEGFR(配列番号42)、TGFbRII-Fc-IL-23RD1(配列番号43)、IL-23RD1-Fc-TGFbRII(配列番号44)、FcおよびIL-23RD1に融合したPSMA結合ペプチド(配列番号45)、HCのC末端に融合したIL-23RD1を有する抗PSMA抗体(配列番号48、47)、LCのC末端に融合したIL-23RD1を有する抗PSMA抗体(配列番号46、49)、LCのC末端に融合したIL-23RD1およびHCのC末端に融合したTGFbRII-ECDを有する抗PSMA抗体(配列番号50、49)、またはHCのC末端に融合したTGFbRII-ECDおよびLCのC末端に融合したPSMA結合ペプチドを有する抗IL-23抗体(配列番号51、52)。
【0203】
がんの処置のための併用療法
被験体における新生物疾患またはがんを処置する方法であって、有効量の、1またはそれを超える治療剤を含む医薬組成物(複数可)を前述の被験体に投与することを含み、ここで、前述の1またはそれを超える治療剤が、少なくとも、IL-23/IL-23Rシグナル伝達の阻害剤を含む第1の治療剤(「a-IL-23剤」);および第2の治療剤(「併用剤」)を含む、方法も本明細書中に提供する。第2の治療剤は、1またはそれを超える免疫チェックポイントタンパク質のアンタゴニスト;1またはそれを超える免疫刺激性受容体のアゴニスト;1またはそれを超えるサイトカインのシグナル伝達のアンタゴニスト;1またはそれを超えるサイトカイン受容体のアゴニスト;腫瘍細胞または免疫細胞の細胞表面に発現または提示される1またはそれを超える細胞表面分子の調節剤;CAR-T細胞、CAR-NK細胞、または造血幹細胞を含む免疫細胞;免疫原性化学療法剤;および/または1またはそれを超える免疫阻害性酵素のアンタゴニストを含み得る。
【0204】
いくつかの実施形態では、a-IL-23剤は、IL-23p19に結合する抗体(例えば、リサンキズマブ、グセルクマブ、チルドラキズマブ、ブラジクマブ、ミリキズマブ)を含む。他の実施形態では、a-IL-23剤は、IL-23Rに結合する抗体(例えば、AS2762900-00)である。他の実施形態では、a-IL-23剤は、IL-23p19またはIL-23Rに結合する抗体を含む融合タンパク質を含む。他の実施形態では、a-IL-23剤は、本発明の多重特異性ポリペプチド/融合タンパク質である。いくつかの態様では、a-IL-23剤は、IL-23R-ECDを含む抗体-リガンドトラップ融合タンパク質である。
【0205】
いくつかの実施形態では、併用剤は、TGFb/TGFbRを阻害する。いくつかの実施形態では、TGFb/TGFbR阻害剤は、以下から選択される:a-TGFb抗体(例えば、フレソリムマブ);a-TGFbR抗体;TGFbRII ECD含有融合タンパク質(例えば、TGFbRIIecd-Fc、AVID200);TGFbR TKI(例えば、ガルニセルチブ);抗GARP抗体;抗LAP抗体;抗体およびTGFbRII ECDを含む融合タンパク質(例えば、a-PDL1-TGFbRIIecd;ビントラフスプアルファ、SIRPa ECD-TGFbRII、抗CEA-TGFbRII、抗PSMA-TGFbRII、抗IL6R-TGFbRII、抗PD1-TGFbRII、抗EGFR-TGFbRII、または抗HER2-TGFbRII)。具体的な実施形態では、併用剤は抗EGFR-TGFbRIIである。具体的な実施形態では、併用剤はBCA101である。
【0206】
いくつかの実施形態では、併用剤は、VEGF/VEGFRを阻害する。いくつかの実施形態では、VEGF/VEGFR阻害剤は、以下から選択され得る:抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、抗VEGFR抗体(例えば、ラムシルマブ)、VEGFRキナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、バンデタニブ、レンバテニブ)、VEGFR ECD-Fc融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト)、または抗体およびVEGFR ECDを含む融合タンパク質。
【0207】
いくつかの実施形態では、併用剤は、CD47とSIRPaの相互作用を阻害する。いくつかの態様では、CD47/SIRPa阻害剤は、以下から選択され得る:a-CD47 mAb(例えば、マグロリマブ、ZL-1201、TJ011133、STI-6643、SRF231、SHR-1603、IMC-002、IBI188、CC-90002、AO-176、またはAK117、レタプリマブ、ウラブレリマブ)、a-SIRPa mAb、SIRPa-ECD含有融合タンパク質(例えば、SIRPa-Fc、エボルパセプト、TTI-621、TTI-622)。
【0208】
いくつかの実施形態では、併用剤は、SIGLEC10とCD24の相互作用を阻害する。
【0209】
いくつかの実施形態では、併用剤は免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態では、併用剤は、自然免疫チェックポイント受容体またはリガンドのアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、併用剤は、T細胞共阻害分子のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、併用剤は、PD-1とPD-L1またはPD-L2の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、併用剤は、PD-1に結合する抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、ドスタルリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、ササンリマブ、チセリズマブ、またはトリパリマブ)またはPDL1に結合する抗体(例えば、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ)である。他の実施形態では、併用剤は、BTLAとHVEMの相互作用を阻害する。他の実施形態では、併用剤は、TIGITとPVRの相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、TIGITを阻害する併用剤は、チラゴルマブ、ビボストリマブ、BMS-986207、オシペルリマブ、エチギリマブ、ドムバナリマブ、EOS-448、SEA-TGT、ASP8374、COM902、またはIBI939から選択される。他の実施形態では、併用剤は、TIM-3とCEACAMの相互作用を阻害する。いくつかの実施形態(emebodiment)では、併用剤は、LAG-3を阻害する。いくつかの実施形態では、LAG-3を阻害する併用剤は、レラトリマブ、フィアンリマブ、Sym022、GSK2831781、TSR-033、イエルミリマブ、ファベゼリマブ、テボテリマブ、FS118、またはパブナリマブから選択される。
【0210】
いくつかの実施形態では、併用剤は、免疫刺激性受容体のアゴニストである。いくつかの実施形態では、併用剤は、T細胞共刺激分子のアゴニストである。いくつかの実施形態では、併用剤は、対応する共刺激リガンドまたはその受容体結合断片を含むポリペプチドである。他の実施形態では、併用剤は、T細胞共刺激受容体に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、併用剤は、4-1BB(CD137)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、OX-40(CD134)、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、糖質コルチコイド誘導TNFR関連タンパク質(GITR)、CD40、CD30、DNAM、またはCD27に結合する。いくつかの実施形態では、併用剤は、CD30L、4-1BBL、BTLA、LIGHT、OX-40L、ICOS-L、GITRL、CD80、CD86、またはCD40Lの細胞外ドメインの受容体結合配列を含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、併用剤はFPT-155である。いくつかの実施形態では、併用剤は、アゴニストとして4-1BBに結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、ウレルマブ、ウトミルマブ)を含む。いくつかの実施形態では、併用剤は、アゴニストとしてOX40に結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、タボリマブ、PF-04518600、BMS-986178、MOXR-0916、GSK-3174998、INCAGN01949)を含む。いくつかの実施形態では、併用剤は、アゴニストとしてICOSに結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、GSK-3359609、JTX-2011)を含む。いくつかの実施形態では、併用剤(combination aTgent)は、アゴニストとしてGITRに結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、TRX-518、MK-4166、MK-1248、GWN-323、INCAGN01876、BMS-986156、AMG-228)を含む。いくつかの実施形態では、併用剤は、アゴニストとしてCD40に結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、CDX-1140、SEA-CD40、RO7009789、JNJ-64457107、APX-005M、Chi Lob 7/4)を含む。いくつかの実施形態では、併用剤は、アゴニストとしてCD27に結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、バルリルマブ)を含む。いくつかの実施形態では、併用剤は、アゴニストとしてTNFRスーパーファミリーメンバー受容体に結合する。
【0211】
いくつかの実施形態では、併用剤は、自然免疫細胞上に発現される免疫刺激性受容体のアゴニストである。いくつかの実施形態では、併用剤は、NK細胞上に発現される免疫刺激性受容体のアゴニストである。いくつかの実施形態では、NK細胞の免疫刺激性受容体はNKG2Dである。いくつかの実施形態では、併用剤は、NKG2Dリガンド(NKG2DL)のNKG2D結合断片を含むポリペプチドである。
【0212】
いくつかの実施形態では、併用剤は腫瘍標的化抗体である。いくつかの実施形態では、併用剤は、腫瘍細胞表面分子、腫瘍抗原、または腫瘍関連抗原に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍標的化抗体は、NK細胞および/またはマクロファージ上の活性化受容体に結合するFcドメイン(例えば、FcgRI、FcgRIII)を有する。いくつかの実施形態では、腫瘍標的化抗体のFcドメインは、1またはそれを超えるFc受容体へのその結合を増加させるようにデザインされた変異を有する。
【0213】
いくつかの実施形態では、併用剤は、NK細胞を活性化するサイトカイン、またはNK細胞を活性化するサイトカインを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、このサイトカインは、IL-15、IL-12、またはIL-18であり得る。いくつかの実施形態では、併用剤は、ST-067、ノガペンデキンアルファ、SHR1501、BJ-001、SO-C101、またはNHS-IL12であり得る。いくつかの実施形態では、併用剤は、サイトカインをコードするウイルスまたはプラスミドである。
【0214】
いくつかの実施形態では、併用剤は、ホルモン処置剤である。いくつかの実施形態では、ホルモン剤は、アンドロゲン合成を阻害するか、アンドロゲン受容体シグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態では、ホルモン剤は、LHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、ヒストレリン、ロイプロリド、またはトリプトレリン);LHRHアンタゴニスト(例えば、デガレリクス)、第1世代抗アンドロゲン(例えば、ニルタミド、フルタミド、またはビカルタミド)、第2世代抗アンドロゲン(例えば、アパルタミド、エンザルタミド、またはダロルタミド)、またはアンドロゲン合成阻害剤(例えば、アビラテロンアセタート)である。
【0215】
いくつかの実施形態では、併用剤は、細胞毒性剤である。いくつかの実施形態では、併用剤は、化学療法剤、放射線、または腫瘍標的化抗体である。
【0216】
いくつかの実施形態では、併用剤は、抗体-薬物コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、併用剤は、以下のリストから選択される:ゲムツズマブオゾガマイシン、ブレンツキシマブベドチン、トラスツズマブエムタンシン、イノツズマブオゾガマイシン、ポラツズマブベドチン、エンフォルツマブベドチン、トラスツズマブデルクステカン、ベランタマブマフォドチン、またはサシツズマブゴビテカン。
【0217】
いくつかの実施形態では、併用剤は、小分子キナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、併用剤は、PARP阻害剤である。いくつかの実施形態では、併用剤は、腫瘍ワクチンまたはウイルス溶解剤である。いくつかの実施形態では、併用剤は、TH17の分化、維持、または機能の阻害剤である。いくつかの実施形態では、併用剤は、IL-17/IL-17R、IL-6/IL-6R、またはIL-1/IL-1Rを阻害する。いくつかの実施形態では、併用剤は、抗IL6抗体または抗IL6R抗体である。
【0218】
いくつかの実施形態では、併用剤は、1またはそれを超えるサイトカインのシグナル伝達のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、免疫阻害性サイトカインである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、以下から選択される:IL-4、IL-13、IL-10、IL-6、IL-1b、IL-17、IL-22。いくつかの実施形態では、併用剤は、サイトカインに結合するポリペプチドである。他の実施形態では、併用剤は、サイトカインの同族サイトカイン受容体に結合するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、併用剤は、IL1bまたはIL1Rに結合して阻害する。いくつかの実施形態では、併用剤は、アナキンラまたはカナキヌマブから選択される。いくつかの実施形態では、併用剤は、IL-10またはIL-10Rに結合して阻害する。いくつかの実施形態では、併用剤は、IL-10またはIL-10Rに結合する抗体またはその抗原結合断片;またはIL-10RのIL10結合断片を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態では、併用剤は、IL-17またはIL-17Rに結合する抗体である。いくつかの実施形態では、併用剤は、アファセビクマブ、ビメキズマブ、イキセキズマブ、ネタキマブ、ペラキズマブ、セクキヌマブ、ブナキズマブ、またはブロダルマブから選択される。いくつかの実施形態では、併用剤は、IL-6またはIL-6Rに結合する抗体である。いくつかの実施形態では、併用剤は、クラザキズマブ、オロキズマブ、シルツキシマブ、シルクマブ、ジルチベキマブ、レビリマブ、サペリズマブ、サリルマブ、サトラリズマブ、またはトシリズマブから選択される。いくつかの実施形態では、併用剤は、IL-4、IL-13、IL4RA、またはIL13Rに結合する抗体である。いくつかの実施形態では、併用剤はデュピルマブである。
【0219】
いくつかの実施形態では、併用剤は、RANK/RANKLシグナル伝達のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、併用剤は、RANKLまたはRANKに結合する抗体である。いくつかの実施形態では、併用剤は、デノスマブである。他の実施形態では、併用剤は、RANK ECDのRANKL結合断片を含むポリペプチドである。
【0220】
いくつかの実施形態では、併用剤は、以下から選択される1またはそれを超える薬剤を含む:免疫治療剤、化学療法分子、抗体、抗体-薬物コンジュゲート、小分子キナーゼ阻害剤、ホルモン剤、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、抗血管新生剤、細胞治療、CAR-T細胞治療、CAR-NK細胞治療、放射性核種治療、電離放射線、紫外放射線、冷凍アブレーション、熱アブレーション、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)、または高周波アブレーション。いくつかの実施形態では、免疫治療剤は、以下から選択される:免疫チェックポイント阻害剤、免疫刺激性受容体アゴニスト、免疫刺激性サイトカイン/サイトカイン受容体アゴニスト、免疫阻害性サイトカイン/サイトカイン受容体アンタゴニスト、腫瘍ワクチン、免疫調節性イミド薬、CAR-T細胞、CAR-NK細胞、腫瘍溶解性ウイルス。
【0221】
いくつかの実施形態では、併用剤は、免疫原性化学療法剤である。免疫原性化学療法の作用機序は、免疫活性化に関与している可能性があり、そのため、IL-23依存性炎症細胞の増大/活性化によって妨げられる可能性がある。いくつかの実施形態では、免疫原性化学療法剤は、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、白金誘導体、タキサン、またはアントラサイクリンである。
【0222】
いくつかの実施形態では、併用剤は、免疫阻害性酵素のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫阻害性酵素は、エクトヌクレオチダーゼ(例えば、CD39、CD73)またはインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼである。
【0223】
IL-23が豊富な腫瘍免疫微小環境では、患者に養子移入された操作されたT細胞またはNK細胞(それぞれ、CAR-T、CAR-NK細胞)は、望ましくない腫瘍促進性の表現型を取り込み得る。いくつかの実施形態では、併用剤は、CAR-T細胞またはCAR-NK細胞を含む組成物である。
【0224】
いくつかの実施形態では、がんは、急性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄球性(または顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無症候性および高悪性度の形態)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、毛様細胞白血病、および脊髄形成異常、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される血液系または血行性のがんである。
【0225】
いくつかの実施形態では、がんは、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、クロム親和性細胞腫 脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーム、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、黒色腫、およびCNS腫瘍(例えば、神経膠腫(脳幹部神経膠腫および混合型神経膠腫など)、膠芽細胞腫(多形性膠芽細胞腫としても公知)星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫(menangioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ならびに脳転移からなる群から選択される固形腫瘍である。
【0226】
いくつかの実施形態では、処置の方法は、TfRに結合し、それにより、血液脳関門を横切るポリペプチド配列を含む2Pを含む本発明の多重特異性ポリペプチドの投与を含む。いくつかのかかる実施形態では、がんは、CNS腫瘍(例えば、神経膠腫(脳幹部神経膠腫および混合型神経膠腫など)、膠芽細胞腫(多形性膠芽細胞腫としても公知)星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫 頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫(menangioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、および脳転移である。
【0227】
いくつかの実施形態では、方法は、併用剤と併せてまたは逐次、a-IL-23剤での処置を含む。例えば、a-IL-23剤での処置を、併用剤の投与と同時に(例えば、同一の医薬組成物中で、または約0.1時間~約24時間の間の時間枠内で)施し得る;a-IL-23剤での処置を、併用剤投与の1~28日後に施し得る;あるいは、a-IL-23剤での処置を、併用剤投与の1~28日前に施し得る。
【0228】
いくつかの実施形態では、単剤または併用剤のいずれかでの処置を、患者の疾患が改善するか安定する/非進行性となる限り、維持処置として毎月1回から2ヶ月毎に1回まで、3ヶ月毎に1回まで、4ヶ月毎に1回まで、5ヶ月毎に1回まで、6ヶ月毎に1回まで、または7ヶ月毎に1回、または8ヶ月毎に1回、または9ヶ月毎に1回、または10ヶ月毎に1回、または11ヶ月毎に1回、または毎年1回の時間枠で周期的に繰り返す。
【0229】
いくつかの実施形態では、抗IL-23剤と他の抗がん剤(複数可)の組み合わせでの処置の方法により、他の抗がん剤(複数可)のみでの処置と比較して、免疫関連有害事象(irAE)の発生率および/または重症度が低下する。いくつかの実施形態では、毒性に起因して治療を中断する患者の割合の低下は、少なくとも10%、30%、50%、70%、または90%である。いくつかの実施形態では、グレード3、グレード4、グレード3+4、または全グレードのirAEの発生率の低下は、少なくとも10%、30%、50%、70%、または90%である。いくつかの実施形態では、irAEの特定のクラスのグレード3、グレード4、グレード3+4、または全グレードの低下は、少なくとも10%、30%、50%、70%、または90%である;ここで、クラスは、制限されないが、胃腸毒性、内分泌毒性、心毒性、肺毒性、肝臓毒性、リウマチ性毒性、腎臓毒性、神経学的または皮膚科学的/皮膚毒性から選択され得る。いくつかの実施形態では、特定のirAEのグレード3、グレード4、グレード3+4、または全グレードの低下は、少なくとも10%、30%、50%、70%、または90%であり;ここで、特定のirAEは、制限されないが、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、結膜炎、眼瞼炎、上強膜炎、強膜炎、網膜炎、肺臓炎、胸膜炎、サルコイド様肉芽腫症(granulamatosis)、肝炎、膵炎、自己免疫性糖尿病、皮疹、掻痒症、白斑、DRESS、乾癬、スティーブンス・ジョンソン症候群、関節痛、関節炎、筋炎、皮膚筋炎、脳炎、髄膜炎、多発性ニューロパシー、疲労、ギラン・バレー症候群、下垂体炎、甲状腺炎、副腎炎、心筋炎、心膜炎、間質性腎炎、糸球体腎炎、大腸炎、腸炎、胃炎、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血栓性微小血管障害、後天性血友病、脈管炎、または任意の有害事象共通用語規準(CTCAE)有害事象から選択され得る。
【0230】
いくつかの実施形態では、抗IL-23剤と他の抗がん剤(複数可)の組み合わせでの処置の方法は、他の抗がん剤(複数可)のみでの処置より有効に全生存または無増悪生存を延長する。いくつかの実施形態では、抗IL-23剤と他の抗がん剤(複数可)の組み合わせでの処置の方法は、当該分野、例えば、Eisenhauer et al.,‘‘New response evaluation criteria in solid tumours:Revised RECIST guideline(version 1.1)’’European Journal of Cancer 2009;45:228(その全体が本明細書中で援用される)に十分に説明されている任意のRECIST v1.1規準において統計的に有意に改善する。
【0231】
いくつかの実施形態では、抗IL-23剤と他の抗がん剤(複数可)の組み合わせでの処置の方法は、他の抗がん剤(複数可)のみでの処置よりも有効に骨への転移または骨格関連事象を軽減または予防する。いくつかの実施形態では、骨への転移の軽減は、RECIST v1.1規準に従う。いくつかの実施形態では、骨格関連事象の軽減は、少なくとも10%、30%、50%、70%、または90%である。
【0232】
いくつかの実施形態では、抗IL-23剤と他の抗がん剤(複数可)の組み合わせでの処置の方法により、他の抗がん剤(複数可)のみでの処置と比較して、上記の有効および毒性の両方が改善される。
【0233】
いくつかの実施形態では、処置を、患者の疾患が改善するか安定する/非進行性となる限り、維持処置として2週間毎に1回から3週間毎に1回まで、毎月1回まで、2ヶ月毎に1回まで、3ヶ月毎に1回まで、4ヶ月毎に1回まで、5ヶ月毎に1回まで、6ヶ月毎に1回まで、または7ヶ月毎に1回、または8ヶ月毎に1回、または9ヶ月毎に1回、または10ヶ月毎に1回、または11ヶ月毎に1回、または毎年1回の時間枠で周期的に繰り返す。
【0234】
いくつかの実施形態では、処置は、転移を予防し、腫瘍成長を阻害し、そして/または腫瘍成長を低減する。
【0235】
免疫障害または自己免疫状態を処置するための治療
被験体における免疫障害を処置する方法であって、有効量の、1またはそれを超える治療剤を含む医薬組成物を前述の被験体に投与することを含み、ここで、前述の1またはそれを超える治療剤が、本発明の抗IL-23剤、または多重特異性ポリペプチドを含む、方法を本明細書中に提供する。
【0236】
いくつかの実施形態では、方法は、第2の薬剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、この第2の薬剤は、IL10シグナル伝達のアゴニストである。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、アゴニストIL10R抗体またはIL10のIL10R結合配列を含む。
【0237】
いくつかの実施形態では、処置の方法は、TfRに結合し、それにより、血液脳関門を横切るポリペプチド配列を含む2Pを含む本発明の多重特異性ポリペプチドの投与を含む。いくつかのかかる実施形態では、免疫障害は、多発性硬化症であるか、神経炎症を引き起こす。
【0238】
いくつかの実施形態では、免疫障害は、自己免疫障害である。本明細書中で言及されるように、免疫障害の非限定的な例としては、アジソン病、セリアック病、皮膚筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、反応性関節炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群、強皮症、全身性硬化症、全身性エリテマトーデス、またはI型糖尿病、慢性炎症性疾患、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、および炎症性腸疾患が挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫障害は、移植片対宿主病(GVHD)である。
【0239】
1つの実施形態では、本発明は、本発明の抗IL-23剤または多重特異性ポリペプチドを含む急性または慢性の移植片対宿主病の処置または予防の方法を開示する。
【0240】
キットおよび製品
本明細書中に記載の組換え分子のうちのいずれかを含むキット、単位投与量、および製品をさらに提供する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の医薬組成物のうちのいずれか1つを含むキットを提供し、キットは、好ましくは、使用のための指示を提供する。
【0241】
本出願のキットは、好適に包装されている。好適な包装としは、バイアル、ボトル、ジャー、およびフレキシブル包装(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられるが、これらに限定されない。キットは、必要に応じて、バッファーおよび説明のための情報(interpretative information)などのさらなる構成成分を提供し得る。したがって、本出願は、バイアル(密封バイアルなど)、ボトル、ジャー、およびフレキシブル包装などが挙げられる製品も提供する。
【0242】
製品は、容器および容器上または容器に添付したラベルもしくは添付文書を含むことができる。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。一般に、容器は、本明細書中に記載の疾患または障害の処置に有効な組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針で突き刺すことができるストッパーを有する静脈注射用液剤のバッグまたはバイアルであり得る)。ラベルまたは添付文書は、組成物を個体における特定の状態を処置するために使用することを示す。ラベルまたは添付文書は、個体への組成物の投与についての指示をさらに含む。ラベルは、再構成および/または使用のための指示を示し得る。医薬組成物を保持している容器は、再構成された製剤の反復投与(例えば、2~6回の投与)が可能な複数回使用バイアルであり得る。添付文書は、かかる治療製品の使用に関する適応症、用法、用量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含む治療製品の市販のパッケージ中に慣習的に含まれる指示を指す。さらに、製品は、薬学的に許容され得る緩衝液(静菌性の注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液など)を含む第2の容器をさらに含み得る。製品は、商業的観点およびユーザー側の観点から望ましい他の材料(他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジが挙げられる)をさらに含み得る。
【0243】
キットまたは製品は、複数回単位用量の医薬組成物および使用のための指示を含み、薬局(例えば、病院の薬局および調剤薬局)での保存および使用に十分な量で包装され得る。
【実施例
【0244】
実施例1:多機能構築物のデザイン
多機能融合タンパク質は、抗体またはその抗原結合断片であるIIPを含み得る。かかる構築物の例を、図1A~1Dに示す。
【0245】
図1A~1Dは、本明細書中に記載の多重特異性ポリペプチドの複数の例示的なデザインに対応している略図を示し、図中、IIP(暗灰色)は抗体または抗体断片を含み、2P(薄灰色)は標的結合ポリペプチドを示す。図1Aは、重鎖のC末端に融合した2Pを有する抗体IIPを示す。図1Bは、軽鎖のC末端に融合した2Pを有する抗体IIPを示す。図1Cは、二重特異性抗体を示し、ここで、一方のFabがIIPであり、他方のFabが2Pである。図1Dは、2つのscFvの融合物であり、ここで、一方のscFvはIIPであり、他方のscFvは2Pである。
【0246】
図2A~2Gは、本明細書中に記載の多重特異性ポリペプチドの複数の例示的なデザインに対応している略図を示し、図中、IIPは、IL-23R ECDのリガンド結合断片を含む。D1、D2およびD3は、IL-23R結合ドメイン1、2、および3をそれぞれ示す。これらの図では、暗灰色は、IIPおよび薄灰色に対応する。多機能性融合タンパク質は、IL-23 ECDのリガンド結合断片を含むIIPを含み得る。
【0247】
本発明の例示的な融合タンパク質のアミノ酸配列を、GeneOptimizer(登録商標)を用いてコドン最適化した。抗体重鎖のcDNAおよび抗体軽鎖のcDNAを合成し、その後に哺乳動物のプロモーターおよびポリアデニル化シグナルの制御下で別個のプラスミド(pEvi3;evitria AG,Switzerland)にクローン化した。プラスミドDNAを、大腸菌中で増幅させ、低内毒素プラスミドDNA調製用の陰イオン交換キットを用いてDNAを精製した。DNA濃度を、波長260nmの吸収の測定によって決定した。配列の正確さを、Sanger配列決定(cDNAのサイズに応じてプラスミドあたり最大2回の配列決定反応で)で検証した。重鎖および軽鎖のプラスミドDNAを、その後に浮遊培養のためのCHO K1細胞(最初にATCCから入手し、evitriaにおいて懸濁培養中の無血清成長に対応させた)に共トランスフェクトした。シードを、eviGrow培地(既知組成で動物成分を含まない無血清培地)中で成長させた。細胞を、eviFect(evitria AG,Switzerland)でトランスフェクトし、CHO細胞をeviMake2(evitria AG,Switzerland)(無血清で動物成分を含まない培地)中で培養した。生存率が75%に到達した時点(トランスフェクションの8日後)で産生を停止させた。上清を、遠心分離およびその後の濾過(0.2umのフィルター)によって採取した。抗体を、MabSelect(商標)Sure(商標)(Bio-Rad BioLogic FuoFlow FPLC機械装置でのプロテインAアフィニティクロマトグラフィー、その後のポリッシングおよびリバッファリングステップとしてのゲル濾過)を使用して精製した。いくつかの場合、抗体を、SEC精製を用いてさらに精製した。
【0248】
また、本発明の融合タンパク質を、融合タンパク質の鎖をコードするプラスミドDNAでの哺乳動物細胞株(例えば、CHO K1細胞)の安定なトランスフェクション、融合タンパク質を発現する安定にトランスフェクトされた細胞クローンまたは細胞プールの選択、融合タンパク質の産生のためのマスターセルバンクの開発、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーおよび/またはSECによる融合タンパク質の精製、ならびに当該分野で十分に記載されている方法を使用した製剤化によって産生することができる。
【0249】
実施例2:PD1ecd中に単一のアミノ酸変異を有する抗IL-23-PD1ecd構築物は、PDL1に対して優れた結合親和性を示す。
図3A~3Dに示すように、データは、PD1ecd中に単一のアミノ酸変異を有する抗IL-23-PD1ecd構築物が、野生型PD1と比較して、PDL1(図3B~3C)およびPDL2(図3D~3E)に対して優れた結合親和性を示すことを実証している。さらに、この単一の変異が、文献で報告されたより広範囲に操作されたPD1バリアントと比較して、本質的に等価な結合特性を保有することが実証された。これは、試験構築物である抗IL-23-PD1ecdが、たった1つのアミノ酸変異しか必要でなかったので、免疫原性リスクがより低い好ましい結合特性を獲得していることを意味する。(図3A~3Dを参照のこと)。
【0250】
固定濃度の各々の構築物を、プレートにコーティングし(1μg/mL)、その後に種々の濃度のビオチン化hu-PDL1をコーティングした(ストレプトアビジン-HRPによって検出)。試験構築物(a-IL-23-PD1(A123I))の結合EC50は57nMであり、これは471nMの野生型EC50より優れているが、文献で報告されたより広範囲に変異させたa-IL-23-PD1(G-V2)と本質的に等価である。A123I PD1ecd変異を有する対照構築物(しかし、異なる標的化抗体)は、抗IL-23-PD1(A123I)と同一の結合特性を示し、これにより、Fabが観察された異なる結合活性(differential binding activity)に寄与しないことが確認される。(図3Aを参照のこと)
【0251】
種々の濃度の各々の構築物をプレートにコーティングし、その後に固定濃度のビオチン化hu-PDL1(100ng/mL)をコーティングした。a-IL-23-PD1(A123I))の結合EC50は1μMであり、これは3.3μMの野生型EC50より優れている。a-IL-23-PD1(G-V2)は、わずかにより良好である(0.6μM)。(図3Bを参照のこと)。
【0252】
固定濃度の各々の構築物をプレートにコーティングし(1μg/mL)、その後に種々の濃度のビオチン化hu-PDL2をコーティングした(ストレプトアビジン-HRPによって検出)。a-IL-23-PD1(A123I))の結合EC50は54nMであり、これは131nMの野生型EC50より優れており;抗IL-23-PD1(G-V2)(62nM)と本質的に等価である。(図3Cを参照のこと)。
【0253】
種々の濃度の各々の構築物をプレートにコーティングし、その後に固定濃度のビオチン化hu-PDL2(500ng/mL)をコーティングした。a-IL-23-PD1(A123I))の結合EC50は0.78μMであり、これは6μMの野生型EC50より優れており;抗IL-23-PD1(G-V2)(0.6μM)と本質的に等価である。(図3Dを参照のこと)。
【0254】
実施例3:IL-23p19抗体は、PDL1/PD1遮断によって誘導される抗腫瘍免疫応答を増強する
図4A~4Cに示すように、IL-23p19抗体は、PDL1/PD1遮断によって誘導される抗腫瘍免疫応答を増強する。抗PDL1/PD1治療に対する抵抗がTH17b細胞によって媒介され得るという仮説、およびかかる抵抗がPD1/PDL1およびIL-23の同時遮断によって抑えられ得るという仮説を評価するために以下の試験を行った。B16腫瘍細胞(4×10e5細胞、sc)を、C57/BL6マウスに移植した。腫瘍サイズが約50mmに到達した時点で、マウスをランダム化し、抗PDL1抗体(5mg/kgをi.pで毎週×4)および/または抗IL-23p19 Ab(抗マウスp19 Ab=G23-8)(5mg/kgをi.p.で毎週2回×4)のいずれかで処置した。(図4A~4Cを参照のこと)。a-PD-L1 Abとa-IL-23p19の組み合わせで処置したマウスは、a-PDL1のみで処置したマウスと比較して、生存率が優れており、腫瘍が小さかった(p<0.005)。(図4A~4Bを参照のこと)。
【0255】
a-PDL1 Abのみで処置したマウスと比較したa-PD-L1 Abとa-IL-23p19の組み合わせで処置したマウスにおける生存率の改善は、肺腫瘍転移の有意な阻害を反映していた。(図4Cを参照のこと)。
【0256】
実施例4:抗IL-23-PD1ポリペプチドは、ヒト化マウスモデルにおいて腫瘍成長を低下させ、かつ毒性を制限する
ヒト腫瘍異種移植片を、NSGマウス(ヒトPBMCでヒト化)において樹立した。腫瘍担持マウスをランダム化し、以下の単一の薬剤または組み合わせで処置した:(i)ビヒクルのみ(対照)、(ii)抗IL-23抗体、(iii)抗PDL1抗体、(iv)抗IL-23-PD1ecd。(図5を参照のこと)
【0257】
a-PDL1を投与した処置群では、4/5のマウスが処置中に有意なGVHDを経験した。他の処置群のマウスでは認められなかった。抗IL-23-PD1は、抗IL-23のみと比較して腫瘍成長を有意に低下させた。これは、抗IL-23-PD1が抗PDL1処置に関連する望ましくない免疫関連毒性を緩和したその一方で、同時に腫瘍成長を制限したことを意味する。
【0258】
実施例5:抗IL-23-PD1ポリペプチドは、免疫チェックポイント阻害剤での処置と比較して、腫瘍成長の阻害に有効である
ヒト腫瘍異種移植片を、NSGマウス(ヒトPBMCでヒト化)において樹立した。腫瘍担持マウスをランダム化し、以下の単一の薬剤または組み合わせで処置した:(i)ビヒクルのみ(対照);(ii)抗PD1抗体(ペムブロリズマブ);(iii)抗PD1抗体(ペムブロリズマブ)+抗CTLA4抗体(イピリムマブ);(iv)抗IL-23-PD1;(v)抗CTLA4-TGFbRII;(vi)抗IL-23-PD1+CTLA4-TGFbRII(図6を参照のこと)。米国特許第8,993,524号;Ravi et al.,‘‘Bifunctional immune checkpoint-targeted antibody-ligand traps that simultaneously disable TGFb enhance the efficacy of cancer immunotherapy.’’Nat.Commun.2018;9:741(これらの各々の全体が本明細書中で援用される)に記載のように、抗CTLA4-TGFbRIIは、CTLA-4抗体(イピリムマブ)のみと比較して腫瘍浸潤Tregの減少および腫瘍進行の阻害により有効であることが報告されている。
【0259】
腫瘍担持マウスは、抗PD1(ペムブロリズマブ)のみまたはさらには抗PD1と抗CTLA4の組み合わせ(ペムブロリズマブ+イピリムマブ)での処置のいずれに対しても応答できなかった。対照的に、a-IL-23-PD1ecdのみでの処置は、抗PD1抗体と比較して、腫瘍成長の阻害で有意により有効であった(p<0.03)。さらに、抗IL-23-PD1とCTLA4-TGFbRIIの組み合わせでの処置は、腫瘍成長を完全に停止させることができ、この組み合わせの相乗的な抗腫瘍効率は、現在のICIでの併用処置(抗PD1+抗CTLA4)より際立って優れていた(p<0.001)。データは、大多数のがんが免疫チェックポイント(細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA-4)またはプログラム死-1(PD-1)/PD-1リガンド(PD-L1)など)を標的にする抗体での免疫療法に応答できないことを示す文献の報告と一致する。Ravi et al.,‘‘Bifunctional immune checkpoint-targeted antibody-ligand traps that simultaneously disable TGFb enhnce the efficacy of cancer immunotherapy.’’Nat.Commun.2018;9:741;米国特許第8,993,524号(これらの各々の全体が本明細書中で援用される)。IL-23遮断のTGFb遮断との相乗作用は、IL-23遮断の免疫阻害性サイトカイン遮断との組み合わせの有効性を実証している。
【0260】
これらの結果は、現在のICI(抗PD1のみまたは抗PD1と抗CTLA4の組み合わせのいずれか)に対する腫瘍の抵抗を、腫瘍微小環境(TME)におけるIL-23/TGFbシグナル伝達を同時に無能にする二機能性融合タンパク質(抗IL-23-PD1およびCTLA4-TGFbRII)での処置によって有効に抑えることができることを実証している。
【0261】
実施例6:抗IL-23-PD1の作用機序
いかなる理論にも拘束されないが、抗IL-23-PD1についての可能性のある作用機序を、図7A~7Bに示す。最初に、無処置の腫瘍微小環境(TME)を図7Aに示す。この状況では、腫瘍細胞および骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)上に発現されるPDL1およびPDL2は、T細胞上のPD1への結合によってT細胞活性化を阻害する。(腫瘍細胞およびMDSCによって発現される)IL-23の状況では、このTMEにおけるCD4T細胞は、Th17表現型に偏っている。PD1またはPDL1/PDL2の遮断により、Th17細胞の活性化および増殖がもたらされる。Th17細胞由来の因子(例えば、IL-8、G-CSF、IL-17)は、MDSC上にフィードバックし、その表現型を維持する。したがって、この状況では、PD1シグナル伝達のみの遮断は、IL-23の存在下では逆の結果を生む可能性がある。図7Bは、抗IL-23-PD1での処置の結果を示す:PD1 ECDは、PDL1および/またはPDL2に結合して、PD1シグナル伝達を中和する。同時に、PDL1+および/またはPDL2+細胞は、抗IL-23抗体で飾られており、それにより、IL-23を隔離し、Th17表現型を抑える。これにより、抗腫瘍Th1表現型をIL-12媒介性に誘導すると同時に、これらのTh1細胞を活性化することが可能である。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【0262】
均等物および参照による援用
本明細書中の全ての参考文献は、各々の個別の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリー)、特許出願、または特許が、全ての目的のためにその全体が参考として援用されると具体的かつ個別に示されるのと同じ程度まで、参考として援用される。出願人の、この参照による援用の陳述は、米国特許法施行規則§1.57(b)(1)に準拠し、ありとあらゆる個々の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリー)、特許出願、または特許に関連し、たとえ、そのような引用が、参照による援用という専用の陳述にすぐ隣接していない場合であっても、その各々は米国特許法施行規則§1.57(b)(2)に準拠し、明らかに同一であることを意図している。参照による援用の陳述が明細書中に特別に含まれている場合であっても、この一般的な参照による援用の陳述を何ら弱めるものではない。本明細書中の参考文献の引用は、参照が関連する先行技術であることを承認するものとして意図せず、また、これらの刊行物または文書の内容または日付に関していかなる承認を構成するものでもない。
【0263】
好ましい実施形態および種々の代替の実施形態を参照して本発明を詳細に示し、説明してきたが、関連分野の当業者は、本発明の意図および範囲を逸脱することなく形態および詳細を様々に変更することができることを理解している。
図1A-D】
図2A-C】
図2D-G】
図3A
図3B-C】
図3D-E】
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
【国際調査報告】