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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】迷走神経刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20241001BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547391
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 KR2021017969
(87)【国際公開番号】W WO2023068442
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138039
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524146837
【氏名又は名称】ニューリーヴ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジェ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、グク ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、キ ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヒョク
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB23
4C053JJ11
4C053JJ21
4C053JJ40
(57)【要約】
本発明は、迷走神経刺激装置に関し、左耳と右耳のうちの少なくとも1つに着用され、外耳の迷走神経に電気刺激を発生させる電極を2つ以上含む装置であって、耳の一側に位置するボディ部と、着用者の外耳道に挿入されて接触する第1電極と、着用者の耳甲介舟(Cymba concha)に接触する第2電極と、前記ボディ部から突出形成され、端部に第1電極が位置する第1電極固定部と、前記ボディ部から突出形成され、端部に第2電極が位置する第2電極固定部とを含み、前記第1電極固定部の突出方向を3次元座標系のx軸に一致させたとき、前記第2電極固定部の突出方向と前記第1電極固定部の突出方向との間の角度がxz平面上で10~20°の範囲であり、xy平面上で35~45°の範囲であることを特徴とする。本発明は、耳の外耳道に挿入される電極を基準に耳甲介舟に接触し易い形態で2番目の電極の形成位置を特定することによって、人の耳甲介舟に接触する特性が向上した形態の迷走神経刺激装置を提供できるという優れた効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左耳と右耳のうちの少なくとも1つに着用され、外耳の迷走神経に電気刺激を発生させる電極を2つ以上含む装置であって、
耳の一側に位置するボディ部と、
着用者の外耳道に挿入されて接触する第1電極と、
着用者の耳甲介舟(Cymba concha)に接触する第2電極と、
前記ボディ部から突出形成され、端部に第1電極が位置する第1電極固定部と、
前記ボディ部から突出形成され、端部に第2電極が位置する第2電極固定部と、を含み、
前記第1電極固定部の突出方向を3次元座標系のx軸に一致させたとき、前記第2電極固定部の突出方向と前記第1電極固定部の突出方向との間の角度がxz平面上で10~20°の範囲であり、xy平面上で35~45°の範囲であることを特徴とする迷走神経刺激装置。
【請求項2】
前記第2電極固定部の突出方向と前記第1電極固定部の突出方向との間の角度がxz平面上で14.8±2°であり、xy平面上で39.7±2°であることを特徴とする請求項1に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項3】
前記ボディ部において前記第1電極固定部が突出した位置から前記第2電極固定部が突出した位置までの間隔が14.5±2mmであることを特徴とする請求項1に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項4】
前記ボディ部から前記第1電極固定部が突出した長さが6mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項5】
前記ボディ部から前記第2電極固定部が突出した長さが5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項6】
前記第1電極は、柔軟性材質の伝導性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項7】
前記第2電極は、柔軟性材質の伝導性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項8】
前記ボディ部は、前記第1電極固定部と前記第2電極固定部が突出した形成面を含み、
前記形成面の基準平面を基準として第2電極固定部は、80~90°の角度で配置されることを特徴とする請求項1に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項9】
両耳のそれぞれに対応する一対のボディ部を含み、一対のボディ部は、着用者の頭を基準に鏡対称な形態で前記第2電極固定部と前記第1電極固定部が突出形成されたことを特徴とする請求項1に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項10】
前記一対のボディ部を連結する連結部を更に含み、
前記連結部は、前記ボディ部が着用者の頭に密着する方向に力を加えることを特徴とする請求項9に記載の迷走神経刺激装置。
【請求項11】
前記ボディ部は、前記第1電極固定部と前記第2電極固定部が突出した形成面を含み、
前記形成面の基準平面を基準として第2電極固定部は、80~90°の角度で配置されることを特徴とする請求項10に記載の迷走神経刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は迷走神経を刺激する装置に関し、より詳細には、耳に位置する迷走神経に電気刺激を加えるための電極が所望の位置に密着し易いように開発された迷走神経刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
迷走神経は脳神経の一つであって、10番目の脳神経に当たる。迷走神経は脳から出て顔、胸部、腹部に亘って分布し、副交感神経線維を含む混合神経であって、心臓、肺、消化管などに作用する副交感神経の調節に関与する。12対の脳神経のうち最も長く、複雑な構造を有しており、感覚神経繊維と運動神経繊維の両方を含む。
【0003】
てんかんの治療とうつ病の治療のための迷走神経刺激装置が米国食品医薬品局(FDA)の認証を受けたことが知られており、これらは首に位置する頸部の枝を刺激対象としている。ただ、このような迷走神経の頸部枝への電気刺激療法は、皮膚に直接切開を加え、迷走神経の頸部枝を露出して、その外部に電気小体のコイルを巻いてマイクロチップを装着する施術を行うため、一般人による自己治療の領域では使用できない。
【0004】
一方、人の耳は迷走神経が通る主な経路であり、迷走神経が皮膚に近く位置するため、外部から電気刺激を与えて迷走神経に対する電気刺激を加えられる身体部位と考えられる。東洋医学では耳に対する鍼術により病気を治療する方式が適用されており、耳は迷走神経の耳介枝が分布するところであって、迷走神経に対する刺激を治療に利用するものと見られる。但し、鍼を利用することは一般人が適用できないという問題がある。
【0005】
そこで、耳に電極を接触して電気刺激を加えようとする技術が開発されたが、電極を耳に接触させるために着用し難いか、又は密着度が低い形状に製作されているという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、耳に位置する迷走神経を刺激し易いように電極が配置された迷走神経刺激装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明に係る迷走神経刺激装置は、左耳と右耳のうちの少なくとも1つに着用され、外耳の迷走神経に電気刺激を発生させる電極を2つ以上含む装置であって、耳の一側に位置するボディ部と、着用者の外耳道に挿入されて接触する第1電極と、着用者の耳甲介舟(Cymba concha)に接触する第2電極と、前記ボディ部から突出形成され、端部に第1電極が位置する第1電極固定部と、前記ボディ部から突出形成され、端部に第2電極が位置する第2電極固定部とを含み、前記第1電極固定部の突出方向を3次元座標系のx軸に一致させたとき、前記第2電極固定部の突出方向と前記第1電極固定部の突出方向との間の角度がxz平面上で10~20°の範囲であり、xy平面上で35~45°の範囲であることを特徴とする。
【0008】
このとき、前記第2電極固定部の突出方向と前記第1電極固定部の突出方向との間の角度がxz平面上で14.8±2°であり、xy平面上で39.7±2°であることが更に好ましい。
【0009】
前記ボディ部において前記第1電極固定部が突出した位置からz軸方向に前記第2電極固定部が突出した位置までの間隔が14.5±2mmであることが好ましい。
【0010】
前記ボディ部から前記第1電極固定部が突出した長さが6mm以上であることが好ましい。
【0011】
前記ボディ部から前記第2電極固定部が突出した長さが5mm以上であることが好ましい。
【0012】
前記第1電極は、柔軟性材質の伝導性ポリマーであることが好ましい。
【0013】
前記第2電極は、柔軟性材質の伝導性ポリマーであることが好ましい。
【0014】
前記ボディ部は、前記第1電極固定部と前記第2電極固定部が突出した形成面を含み、前記形成面の基準平面を基準として第2電極固定部は、80~90°の角度で配置されることが好ましい。
【0015】
また、両耳のそれぞれに対応する一対のボディ部を含み、一対のボディ部は、着用者の頭を基準に鏡対称な形態で前記第2電極固定部と前記第1電極固定部が突出形成されたものであり得る。
【0016】
前記一対のボディ部を連結する連結部を更に含み、前記連結部は、前記ボディ部が着用者の頭に密着する方向に力を加えることが好ましい。
【0017】
前記ボディ部は、前記第1電極固定部と前記第2電極固定部が突出した形成面を含み、前記形成面の基準平面を基準として第2電極固定部は、80~90°の角度で配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上述したように構成された本発明は、耳の外耳道に挿入される電極を基準に耳甲介舟に接触し易い形態で2番目の電極の形成位置を特定することによって、人の耳甲介舟に接触する、特性が向上した形態の迷走神経刺激装置を提供できるという優れた効果がある。
【0019】
また、電極が形成されるボディ部と電極の角度を調節して、ボディ部を耳に密着させると、電極が耳甲介舟に接触するように構成することによって、ボディ部を耳に固定するための構成が電極を耳甲介舟に密着させるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】迷走神経刺激装置において電極が接触すべき位置を説明する耳に対する模式図である。
図2】本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置の構成を説明する斜視図である。
図3】本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置の構成を説明する一部拡大図である。
図4】本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置における電極間の角度関係を説明する模式図である。
図5】本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置における電極間の角度関係を説明する模式図である。
図6】本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置における第2電極とボディ部との間の角度関係を説明する図である。
図7】本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置における第2電極とボディ部との間の角度関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して、本発明に係る実施例を詳細に説明する。
【0022】
しかし、本発明の実施形態は様々な異なる形態に変形でき、本発明の範囲が以下で説明する実施形態のみに限定されるものではない。図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張されることができ、図面上の同一の符号で表される要素は同一の要素である。
【0023】
そして明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとするとき、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その間に他の素子を挟んで「電気的に接続」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」又は「具備」するとするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素を更に含むか、備えることができることを意味する。
【0024】
また、「第1」、「第2」などの用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためのものであって、これらの用語によって権利範囲が限定されてはならない。例えば、第1構成要素は第2構成要素と名付けられることができ、同様に第2構成要素も第1構成要素と名付けられることができる。
【0025】
図1は、迷走神経刺激装置において電極が接触すべき位置を説明する耳に対する模式図である。
【0026】
本発明の発明者は、脳機能の活性化のための神経調節(neuromodulation)技術を開発するにあたって、経頭蓋磁気刺激療法や経頭蓋電気刺激療法とは異なり、迷走神経を用いた神経調節技術を開発し、特に外耳迷走神経を非侵襲的に刺激して求心性感覚神経を刺激することによって、多数の中枢神経核を経て辺縁系(Limbic system)及び大脳皮質(ceberbal cortex)を活性化する技術を開発した。
【0027】
経頭蓋磁気刺激療法や経頭蓋電気刺激療法の場合、大脳皮質を外部から刺激する特性を有しているが、本発明に係る迷走神経刺激の場合、10番目の脳神経である迷走神経を経て脳の深部を刺激することで、脳幹及び大脳深部を効果的に刺激できる技術である。
【0028】
人の耳において迷走神経が通る位置は、外耳道と耳甲介舟(Cymba concha)である。このとき、耳介(耳殻)から繋がる軟骨構成である耳輪脚(helicis crus)が横に位置し、外耳道の入口である耳甲介腔が形成された部分である耳甲介腔部(cavum concha)と耳甲介舟とを分離している。
【0029】
外耳道の場合、イヤホンなどで外耳道挿入型の構造が開発され、外耳道に接触する形態の電極を構成することが容易である。しかし、耳輪脚の上側の凹んだ部分に位置する耳甲介舟の位置的特性と形態的特性によって、耳甲介舟に接触する電極を構成することは容易ではない。
【0030】
特に、外耳道に接触する電極と耳甲介舟に接触する電極を同時に備える場合、耳甲介舟に接触すべき電極が皮膚に密着できず、電気刺激を正確に伝達できないという短所がある。このような問題を解決するために、本発明の発明者らは、外耳道に接触する電極と耳甲介舟に接触する電極が同時に耳に密着できるように、耳甲介舟に接触する電極の位置や高さなどを調節できるようにする形態の迷走神経刺激装置を研究して出願を行った。しかし、電極の位置を調節する構成を含む過程で装置の構造が複雑になり、製造コストが増加し、使用過程で頻繁な故障が発生する問題も共に発生した。
【0031】
本発明は、このような問題を解決するために、外耳道に接触する第1電極と耳甲介舟に接触する第2電極の位置関係を特定することによって、第1電極と第2電極が同時に耳に密着できる迷走神経刺激装置を提供することを目的とする。
【0032】
図2は、本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置の構成を説明する斜視図である。
【0033】
本実施例の迷走神経刺激装置は、ボディ部100、第1電極200、第2電極300及び連結部400を含む。
【0034】
ボディ部100は、着用者の耳の横に位置しながら迷走神経に電気刺激を伝達するための第1電極200と第2電極300を形成するための本体に該当する。このとき、ボディ部100は、1つのみを備えて片耳に着用するように構成されることもでき、2つを備えて両耳に着用するように構成されることができる。本実施例では、2つのボディ部100を備え、ボディ部100のそれぞれに第1電極200と第2電極300が形成された形態である。
【0035】
第1電極200は、着用者の耳甲介腔を介して外耳道に挿入されて外耳道に接触する電極である。耳から内側に位置する外耳道に挿入されて接触するため、第1電極200は、ボディ部100から突出するように形成される。
【0036】
このとき、外耳道に接触する第1電極200は、柔軟性と弾性復元力を有する伝導性ポリマーで構成すると、電気を通しながらも人によって差がある外耳道の大きさに合わせて適切に変形でき、外耳道への密着力が向上する。また、外耳道から取り出した後は、電極が本来の形と大きさに復元でき、繰り返して使用する過程で変形による問題が発生しない。伝導性ポリマーを適用した第1電極200の構造と形態は、イヤホンなどでポリマーを用いて密閉及び内部密着を図る構成を適用できる。また、伝導性ポリマーを適用した第1電極200は、脱着可能な形態に製作することによって、電極のみを交換するように構成でき、多様な大きさに製作してユーザによって交換して使用でき、電極に破損が発生した場合に電極のみを交換して使用できる。
【0037】
一方、外耳道に挿入される第1電極200を通じては音又は音波を伝達でき、治療過程の安静のための音楽や音響及び治療のための音波などを伝達できる。このために、ボディ部100には、音の発生のための音響ユニットを備え、ボディ部100から第1電極200に繋がる空間及び第1電極200には、音が移動できる通路を形成する。音響ユニットで発生した音刺激を通じて大脳皮質の活性を調節でき、このような効果は、大脳可塑性(neural plasticity)に基づいて退行性脳疾患に関連する神経シナプスに影響を及ぼして変化を促進できる。本発明の非侵襲的な迷走神経刺激は、孤束核(Nucleus tractus solitarius)と青斑核(Locus Coeruleus)、基底核(Nucleus basalis)を経て大脳皮質を刺激して大脳の神経可塑性(Neural plasticity)を向上させることができ、新たなシナプスの形成を促進して学習能力を向上させることができる。音刺激による大脳シナプスの変化は、本発明の非侵襲的な迷走神経刺激による大脳可塑性の向上とシナジーを誘発して治療効果を向上させることができる。
【0038】
第2電極300は、着用者の耳甲介舟(Cymba concha)に接触する電極である。本発明の迷走神経刺激装置は、外耳道と耳甲介舟に接触して電気刺激を伝達する電極をそれぞれ備える点に特徴があり、第2電極300は、耳甲介舟に接触して電気刺激を伝達する。このとき、人の耳甲介舟は、耳輪脚の上側で凹状に配置されるため、第2電極300は、ボディ部100から突出するように形成される。
【0039】
このとき、耳甲介舟に接触する第2電極300は、柔軟性と弾性復元力を有する伝導性ポリマーで構成すると、電気を通しながらも人によって差がある耳甲介舟の構造と大きさに合わせて適切に変形でき、耳甲介舟に対する密着力が向上する。また、前述した第1電極200を伝導性ポリマーで構成した場合に得られた効果がほぼ同一に得られるので、具体的な説明は省略する。
【0040】
一方、外耳道に挿入されて接触するための第1電極200と耳輪脚の上側の凹んだ部位である耳甲介舟に接触するための第2電極300は、何れもボディ部100から突出した形態であり、このとき、第1電極200と第2電極300の突出構造及び方向が適切でなければ相互密着するのを妨害するという問題がある。これにより、本発明は、第1電極200と第2電極300の突出構造及び方向を特定しており、これは項目を変えて更に詳細に説明する。
【0041】
連結部400は、2つのボディ部100を連結する構成要素である。連結部400は、2つのボディ部100を連結するだけでなく、弾性力を通じてボディ部100が人の耳に密着できるように力を加えるように構成することが好ましい。
【0042】
このような連結部400によってボディ部100を耳に密着させる力は、本実施例の迷走神経刺激装置自体が着用者に固定されるようにするだけでなく、ボディ部100に形成された第1電極200と第2電極300が着用者の皮膚に密着するように力を加えることによって、電気刺激が電極を通じて耳の迷走神経まで伝達され易いようにする。
【0043】
図3は、本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置の構成を説明する一部拡大図である。
【0044】
図3は、2つのボディ部100のうち、左耳に着用されるボディ部を拡大した図である。前述したように、第1電極200は、外耳道に挿入されなければならず、第2電極300は、耳甲介舟に接触しなければならないので、第1電極200と第2電極300は何れもボディ部100から着用者の頭を向かう方向に位置する形成面110から突出形成されなければならず、本発明は、ボディ部100から突出形成された第1電極固定部210の端部に伝導性ポリマー材質の第1電極を付着し、更にボディ部100から突出形成された第2電極固定部310の端部に伝導性ポリマー材質の第2電極300を付着する構造を適用する。このとき、外耳道と耳甲介舟の位置関係によって第1電極固定部210と第2電極固定部310が突出する方向は差があり、これらの突出方向が正確に定義されなければ、第1電極200と第2電極300がそれぞれ外耳道と耳甲介舟に密着できる。
【0045】
人の外耳道が前面に向かって斜めの角度で配置されることが広く知られているため、外耳道に挿入されて接触する第1電極200の場合は、前方に向かう突出方向を有することが好ましい。このとき、外耳道に挿入されるための第1電極固定部210の突出方向と角度は、イヤホンなどの技術分野で研究されたことを適用できる。
【0046】
これに対し、耳甲介舟に接触すべき第2電極300の場合は、一般に適用される構成ではなく、第1電極200を基準として上側に向かって斜めに配置されなければならないため、設計が誤っていると、耳甲介舟に密着できないという問題がある。一方、従来のイヤホン関連技術でイヤホンを耳に固定する役割として、耳甲介舟に構造物が跨る形態が適用されたりもしたが、電気刺激を伝達しなければならない第2電極300及び第2電極固定部310には適用できない技術である。
【0047】
このような問題を解決するために、本発明の発明者らは、既存の技術を適用できる第1電極固定部210の突出方向を基準として第2電極固定部310の突出方向を最適化した迷走神経刺激装置を開発した。
【0048】
図4及び図5は、本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置における電極間の角度関係を説明する模式図である。
【0049】
まず、図4に示すように、3次元の座標系で第1電極固定部210の突出方向をx軸と一致させ、第2電極固定部310の開始点がz軸に位置するように配置した。そして、第1電極固定部210の突出方向に対するベクトルAと第2電極固定部310の突出方向に対するベクトルBとの間の角度をxy平面とxz平面に対して特定した。
【0050】
まず、xz平面に対する第1電極固定部210の突出方向に対するベクトルAと第2電極固定部310の突出方向に対するベクトルBとの間の角度(a)は、10~20°の範囲である。これは第1電極固定部210の突出方向を水平に置いた時にやや上側に向かう角度であり、このような角度範囲で耳輪脚に妨げられず、第2電極300が耳輪脚の上部に位置する耳甲介舟に密着できる。より好ましくは、xz平面に対する第1電極固定部210の突出方向に対するベクトルAと第2電極固定部310の突出方向に対するベクトルBとの間の角度(a)が14.8±2°であることが好ましい。
【0051】
そして、xy平面に対する第1電極固定部210の突出方向に対するベクトルAと第2電極固定部310の突出方向に対するベクトルBとの間の角度(b)は、35~45°の範囲である。前述したように、人の外耳道は、顔の前方に向かって斜めに配置されるため、第2電極固定部310の突出方向は、第1電極固定部210の突出方向よりも顔の後方に向かうように配置されなければならない。このような角度範囲で第1電極200が外耳道に挿入されるように密着する方向と第2電極300が耳甲介舟に接触するように密着する方向が互いに妨害しない。より好ましくは、xy平面に対する第1電極固定部210の突出方向に対するベクトルAと第2電極固定部310の突出方向に対するベクトルBとの間の角度(b)が39.7±2°であることが好ましい。
【0052】
このように、第1電極固定部210の突出方向に対するベクトルAと第2電極固定部310の突出方向に対するベクトルBとの間の角度を特定して電極を設計すると、第1電極200は、外耳道に挿入されて密着し、第2電極は、耳甲介舟に密着する効果が得られる。この範囲を外れる場合、第1電極や第2電極のうちの1つが耳に密着できないか、又は着用し難いという問題が生じる。
【0053】
このとき、前述したように、外耳道と耳甲介舟の構造的特徴によって、第1電極固定部210と第2電極固定部310は、ボディ部100から突出形成されなければならず、第1電極固定部210がボディ部100から突出する長さは6mm以上であり、第2電極固定部310がボディ部100から突出する長さは5mm以上でなければならない。突出した長さがこれより短いと、外耳道と耳甲介舟への密着が難しくなる。一方、第1電極固定部210の端部に付着される伝導性ポリマー材質の第1電極200によってボディ部100から第1電極200の端部までの距離は、第1電極固定部210の突出長さよりも大きくなり、最終設計過程では伝導性ポリマー材質の第1電極200の大きさを考慮しなければならない。同様に、第2電極固定部310の端部に付着される伝導性ポリマー材質の第2電極300によってボディ部100から第2電極300の端部までの距離は、第2電極固定部310の突出長さよりも大きくなり、最終設計過程では伝導性ポリマー材質の第2電極300の大きさを考慮しなければならない。前述した範囲を外れる場合、第1電極や第2電極のうちの1つが耳に密着できないか、又は着用し難いという問題が生じる。
【0054】
更に、ボディ部100から第1電極固定部210が突出した位置と第2電極固定部310が突出した位置は離間し、第1電極固定部210が突出した位置と第2電極固定部310が突出した位置との間の間隔が14.5±2mmであることが好ましい。これは、第1電極固定部210と第2電極固定部310との間で最も近い距離を測定したものであり、第1電極固定部210と第2電極固定部310の幅に応じて適切に調節できる。
【0055】
図6及び図7は、本発明の実施例に係る迷走神経刺激装置における第2電極とボディ部との間の角度関係を説明する図である。
【0056】
図6は、第1電極固定部210と第2電極固定部310から伝導性ポリマー材質の電極を除去した形態であり、それぞれにおいて電極に接触する部分を、伝導性材質を露出させた伝導部212、312で構成して、端部に設けられた電極に電気が通るように構成する。
【0057】
前述したように、本発明の迷走神経刺激装置は、ボディ部100の形成面110に第1電極200と第2電極300が突出形成され、連結部400の弾性力によって両側のボディ部100が着用者の顔(耳)方向に密着するように構成される。このとき、ボディ部100の形成面110が着用者の耳に密着する方向に力を加えることになり、第1電極固定部210と第2電極固定部310の突出方向を適切に構成すると、連結部400の弾性力による力が第1電極200と第2電極300が外耳道と耳甲介舟に密着する方向に力を伝達できる。
【0058】
このとき、ボディ部100の形成面110は、完全な平面ではないため、設計過程で形成面110と第1電極固定部210及び第2電極固定部310の間の角度を設定するための平面である基準平面110aを定義し、基準平面110aは、ボディ部100の形成面110に対応する平面である。一般に装置を設計するにあたって、連結部400の弾性力によって基準平面110aが着用者の顔の側面に並んでいる方向で顔(耳)に密着する方向に力が加えられることが好ましい。従って、第2電極固定部310の突出方向に対するベクトルBと基準平面110aとの間の角度が垂直に近いほど、第2電極固定部310の突出方向に力が加えられることができる。これを基準として、第2電極固定部310の突出方向に対するベクトルBと基準平面110aとの間の角度80~90°の範囲になるように設計すると、連結部400の弾性力による力が第2電極300が耳甲介舟に密着する方向に力を加えることになり、第2電極300が耳甲介舟に密着できるという優れた効果がある。
【0059】
以上、本発明を好適な実施例によって説明したが、上述した実施例は、本発明の技術的思想を例示的に説明したに過ぎず、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な変化が可能であることは、本分野における通常の知識を有する者であれば理解できる。従って、本発明の保護範囲は特定の実施例ではなく、特許請求の範囲に記載された事項によって解釈されなければならず、それと同等の範囲内にある全ての技術的思想も本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0060】
100:ボディ部
110:形成面
110a:基準平面
200:第1電極
210:第1電極固定部
212:伝導部
300:第2電極
310:第2電極固定部
312:伝導部
400:連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】