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特表2024-536941心電図に基づいて甲状腺機能障害を診断する方法、プログラム及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-09
(54)【発明の名称】心電図に基づいて甲状腺機能障害を診断する方法、プログラム及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20241002BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20241002BHJP
   A61B 5/355 20210101ALI20241002BHJP
   A61B 5/363 20210101ALI20241002BHJP
   A61B 5/36 20210101ALI20241002BHJP
【FI】
A61B10/00 J
A61B5/352
A61B5/355
A61B5/363
A61B5/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516538
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 KR2022014258
(87)【国際公開番号】W WO2023048502
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126785
(32)【優先日】2021-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0118440
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523010225
【氏名又は名称】メディカル・エーアイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Medical AI Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】163, Yangjaecheon-ro Gangnam-gu Seoul 06302 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】クォン・ジュン・ミョン
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG01
4C127GG02
4C127GG13
4C127GG16
(57)【要約】
本開示の一実施例によって、コンピューティング装置によって実行される、少なくとも一つのプロセッサを含むコンピューティング装置によって実行される、心電図に基づいて甲状腺機能障害(dysfunction)を診断する方法であって、心電図データを獲得する段階と、事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階と、を含み、前記神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものである方法を提供することができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを含むコンピューティング装置によって実行される、心電図に基づいて甲状腺機能障害(dysfunction)を診断する方法であって、
心電図データを獲得する段階と、
事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階と、を含み、
前記神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものである、方法。
【請求項2】
前記神経回路網モデルは、12個の多重リード(lead)で測定される心電図データに基づいて学習された第1サブ神経回路網モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記神経回路網モデルは、6個の肢(Limb)リード、又は6個の前胸部リードのうちの少なくとも一つに基づいて学習された第2サブ神経回路網モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記神経回路網モデルは、単一リードで測定される心電図データに基づいて学習された第3サブ神経回路網モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記神経回路網モデルは、複数のレジデュアルブロック(Residual blocks)で構成される神経回路網を含み、
前記レジデュアルブロックで構成される神経回路網は、前記心電図データを受けて顕性甲状腺機能亢進症の発病確率を出力する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記顕性甲状腺機能亢進症は、遊離チロキシン数値が事前に決定された基準範囲よりも高いか、又は甲状腺刺激ホルモン数値が基準範囲よりも低い場合である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記神経回路網モデルは、心電図データの複数のリードそれぞれに対応する神経回路網を含み、
前記神経回路網の出力は、甲状腺機能障害の発病確率を導出するために、一つに連結(concatenation)される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係は、頻脈の頻度、QT間隔(interval)の長さ、P波、R波及びT波の偏位方向、又はQRS持続時間のうちの少なくとも一つを含む心電図特性に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記甲状腺機能障害の発病確率は、前記頻脈の頻度が多いほど高くなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記甲状腺機能障害の発病確率は、前記QT間隔の長さが長いほど高くなる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記甲状腺機能障害の発病確率は、前記P波、R波及びT波の偏位方向が右側に向かうほど高くなる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記甲状腺機能障害の発病確率は、前記QRS持続時間が短いほど高くなる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階は、
前記神経回路網モデルに前記心電図データとともに年齢及び性別のうちの少なくとも一つを含む生物学的データを入力して、前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータ可読の保存媒体に保存されたコンピュータプログラム(program)であって、
前記コンピュータプログラムは、一つ以上のプロセッサ(processor)によって実行される場合、心電図に基づいて行う甲状腺機能障害診断のための動作を実行させ、
前記動作は、
心電図データを獲得する動作と、
事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する動作と、を含み、
前記神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものである、コンピュータプログラム。
【請求項15】
心電図に基づいて行う甲状腺機能障害診断のためのコンピューティング装置であって、
少なくとも一つのコア(core)を含むプロセッサ(processor)と、
前記プロセッサで実行可能なプログラムコード(code)を含むメモリ(memory)と、
を含み、
前記プロセッサは、前記プログラムコードの実行によって、心電図データを獲得し、事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定し、
前記神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものである、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の内容は甲状腺機能障害の診断方法に関し、具体的には心電図に基づいて、神経回路網モデルを用いて甲状腺機能障害を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図(ECG:electrocardiogram)は、心臓で発生する電気的信号を測定し、心臓から電極までの伝導系の異常有無を確認して疾患有無を判別することができる信号である。
【0003】
心電図の発生原因である心臓拍動は、右心房(right atrium)に位置する洞結節(sinus node)から始まったインパルスがまず右心房及び左心房(left atrium)を脱分極(deploarization)させながら房室結節(atrioventricular node)でしばらく遅滞した後、心室を活性化させる。
【0004】
中隔(septum)が最も早く壁が薄い右心室は、壁が厚い左心室よりも先に活性化する。プルキンエ線維(purkinje fiber)まで伝達された脱分極波は心筋で波面(wavefront)のように、心内膜から心外膜に伝播されながら心室収縮を引き起こす。正常に電気的刺激が心臓を介して伝導されるので、心臓は分当たり約60~100回収縮する。各収縮は1回心拍数で示す。
【0005】
このような心電図は、両部位の間の電位差を記録する双極誘導(bipolar lead)、及び電極を付着させた部位の電位を記録する単極誘導(unipolar lead)によって検出することができる。心電図を測定する方法としては、双極誘導である標準肢誘導(standard limb lead)、単極誘導である単極肢誘導(unipolar limb lead)、単極誘導である前胸部誘導(precordial lead)などがある。
【0006】
心臓の電気的活性段階は、大別して、心房脱分極、心室脱分極、及び心室再分極の時期に区分され、このような各段階は、図1に示すように、P、Q、R、S、T波といういくつかの波形として反映される。
【0007】
このような波は、標準形態を有するとき、心臓の電気的活性が正常であると見なすことができる。標準形態であるかを把握するためには、各波が維持される時間、各波同士の間隔(interval)、各波の振幅、尖度などの特徴が正常範囲にあるかを検査しなければならない。
【0008】
このような心電図は高価の測定装備で測定され、患者の健康状態を測定するための補助道具として使用される。一般的に、心電図測定装備は測定結果のみを表示するだけで、診断は完全に医師の役割であった。
【0009】
現在、医師に対する依存度を低めるために、心電図に基づいて人工知能を用いて迅速で正確に疾患を診断する研究が継続的に行われている。また、ウェアラブル、ライフスタイル心電図測定機器の発達に伴って、心電図に基づいて心臓疾患だけではなく他の様々な疾患を診断及びモニタリングすることができる可能性が高くなっている。
【0010】
特に、甲状腺機能関連の疾患の場合、日常的に検診が行われておらず、症状も明らかではなくて早期発見が難しいが、心電図の微細変化を感知して甲状腺機能障害を早期に診断する可能性が高くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は前述した背景技術に対応して案出されたものであり、本開示の一実施例による甲状腺機能障害診断方法は、神経回路網モデルを使用して、心電図データに基づいて心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する方法を提供することを目的とする。
【0012】
ただし、本開示で解決しようとする課題は以上で言及した課題に限定されず、言及しなかった他の課題は下の記載から明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述したような課題を実現するための本開示の一実施例によって、少なくとも一つのプロセッサを含むコンピューティング装置によって実行される、心電図に基づいて甲状腺機能障害(dysfunction)を診断する方法であって、心電図データを獲得する段階と、事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階と、を含み、前記神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものである方法を提供することができる。
【0014】
代案として、前記神経回路網モデルは、12個の多重リード(lead)で測定される心電図データに基づいて学習された第1サブ神経回路網モデルを含む方法を提供することができる。
【0015】
代案として、前記神経回路網モデルは、6個の肢(Limb)リード、又は6個の前胸部リードのうちの少なくとも一つに基づいて学習された第2サブ神経回路網モデルを含む方法を提供することができる。
【0016】
代案として、前記神経回路網モデルは、単一リードで測定される心電図データに基づいて学習された第3サブ神経回路網モデルを含む方法を提供することができる。
【0017】
代案として、前記神経回路網モデルは、複数のレジデュアルブロック(Residual blocks)で構成される神経回路網を含み、前記レジデュアルブロックで構成される神経回路網は、前記心電図データを受けて顕性甲状腺機能亢進症の発病確率を出力する方法を提供することができる。
【0018】
代案として、前記顕性甲状腺機能亢進症は、遊離チロキシン数値が事前に決定された基準範囲よりも高いか、又は甲状腺刺激ホルモン数値が基準範囲よりも低い場合である方法を提供することができる。
【0019】
代案として、前記神経回路網モデルは、心電図データの複数のリードそれぞれに対応する神経回路網を含み、前記神経回路網の出力は、甲状腺機能障害の発病確率を導出するために、一つに連結(concatenation)される方法を提供することができる。
【0020】
代案として、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係は、頻脈の頻度、QT間隔(interval)の長さ、P波、R波及びT波の偏位方向、又はQRS持続時間のうちの少なくとも一つを含む心電図特性に基づく方法を提供することができる。
【0021】
代案として、前記甲状腺機能障害の発病確率は、前記頻脈の頻度が多いほど高くなる方法を提供することができる。
【0022】
代案として、前記甲状腺機能障害の発病確率は、前記QT間隔の長さが長いほど高くなる方法を提供することができる。
【0023】
代案として、前記甲状腺機能障害の発病確率は、前記P波、R波及びT波の偏位方向が右側に向かうほど高くなる方法を提供することができる。
【0024】
代案として、前記甲状腺機能障害の発病確率は、前記QRS持続時間が短いほど高くなる方法を提供することができる。
【0025】
代案として、事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階は、前記神経回路網モデルに前記心電図データとともに年齢及び性別のうちの少なくとも一つを含む生物学的データを入力して、前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階、を含む方法を提供することができる。
【0026】
本開示の他の実施例による、コンピュータ可読の保存媒体に保存されたコンピュータプログラム(program)であって、前記コンピュータプログラムは、一つ以上のプロセッサ(processor)によって実行される場合、心電図に基づいて行う甲状腺機能障害診断のための動作を実行させ、前記動作は、心電図データを獲得する動作と、事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する動作と、を含み、前記神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものである、コンピュータプログラムを提供することができる。
【0027】
本開示のさらに他の実施例による、心電図に基づいて行う甲状腺機能障害診断のためのコンピューティング装置であって、少なくとも一つのコア(core)を含むプロセッサ(processor)と、前記プロセッサで実行可能なプログラムコード(code)を含むメモリ(memory)と、を含み、前記プロセッサは、前記プログラムコードの実行によって、心電図データを獲得し、事前に学習された神経回路網モデルを使用して、前記心電図データに基づいて前記心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定し、前記神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものである装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示の一実施例による甲状腺機能障害診断方法は、神経回路網モデルを使用して、心電図データに基づいて心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示による心電図信号を示す図である。
【0030】
図2】本開示の一実施例によるコンピューティング装置のブロック図である。
【0031】
図3】本開示の一実施例によって心電図に基づいて甲状腺機能障害を診断する方法を示すフローチャートである。
【0032】
図4】本開示の一実施例による神経回路網モデルの構造を示す図である。
【0033】
図5】本開示の一実施例による神経回路網モデルの検証研究過程を示す図である。
【0034】
図6】本開示の一実施例による神経回路網モデルの性能テスト結果を示す図である。
【0035】
図7】本開示の一実施例による性別及び年齢によって分類された下位グループ心電図分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、添付図面を参照して本開示の技術分野で通常の知識を有する者(以下、当業者という)が容易に実施することができるように本開示の実施例を詳細に説明する。本開示で提示する実施例は当業者が本開示の内容を用いるか又は実施することができるように提供する。よって、本開示の実施例に対する多様な変形は当業者に明らかであろう。すなわち、本開示は様々な相異なる形態に具現可能であり、以下の実施例に限定されない。
【0037】
本開示の明細書全般にわたって同一又は類似の図面符号は同一又は類似の構成要素を指す。また、本開示を明確に説明するために、本開示についての説明に関係ない部分の図面符号は図面から省略することができる。
【0038】
本開示で使用する「又は」という用語は排他的「又は」ではなく、内包的「又は」を意味しようとする。すなわち、本開示で、他に特定しないか又は文脈上でその意味が明確ではない場合、「xはa又はbを用いる」は自然的な内包的置換のうちの一つを意味するものと理解しなければならない。例えば、本開示で、他に特定しないか又は文脈上でその意味が明確ではない場合、「xはa又はbを用いる」はxがaを用いるか、xがbを用いるか、又はxがa及びbの両者を用いる場合のうちのいずれか一つと解釈することができる。
【0039】
本開示で使用する「及び/又は」という用語は、列挙する関連の概念のうちの一つ以上の概念の可能なすべての組合せを示しながら含むものと理解しなければならない。
【0040】
本開示で使用する「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、特定の特徴及び/又は構成要素が存在することを意味するものと理解しなければならない。ただし、「含む」及び/又は「含む」という用語は、一つ以上の他の特徴、他の構成要素及び/又はこれらの組合せの存在又は追加を排除しないものと理解しなければならない。
【0041】
本開示で、他に特定しないか又は単数の形態を示すものとして、文脈上明確ではない場合、単数は一般的に「一つ又はそれ以上」を含むことができるものと解釈しなければならない。
【0042】
本開示で使用する「第n(nは自然数)」という用語は、本開示の構成要素を機能的観点、構造的観点、又は説明の便宜性などの所定の基準によって互いに区別するために使用する表現と理解することができる。例えば、本開示で、互いに異なる機能的役割を行う構成要素は第1構成要素又は第2構成要素に区別することができる。ただし、本開示の技術的思想内で実質的に同一であるが、説明の便宜のために区分しなければならない構成要素も第1構成要素又は第2構成要素に区別することもできる。
【0043】
本開示で使用する「獲得」という用語は、外部装置又はシステムに対して有無線通信ネットワークを介してデータを受信することだけでなく、オンデバイス(on-device)形態としてデータを生成することを意味するものと理解することができる。
【0044】
一方、本開示で使用する用語「モジュール(module)」、又は「部(unit)」は、コンピュータ関連エンティティー(entity)、ファームウエア(firmware)、ソフトウェア(software)又はその一部、ハードウェア(hardware)又はその一部、ソフトウェア及びハードウェアの組合せなどのようにコンピューティング資源を処理する独立的な機能単位を示す用語と理解することができる。ここで、「モジュール」、又は「部」は単一の要素で構成された単位であることもあり、複数の要素の組合せ又は集合と表現される単位であることもある。例えば、協議の概念として「モジュール」、又は「部」はコンピューティング装置のハードウェア要素又はその集合、ソフトウェアの特定の機能を果たす応用プログラム、ソフトウェアの実行によって具現される処理過程(procedure)、又はプログラムの実行のための命令語の集合などを示すことができる。また、広義の概念として「モジュール」、又は「部」はシステムを構成するコンピューティング装置自体、又はコンピューティング装置で実行されるアプリケーションなどを示すことがある。ただし、上述した概念は一例示に過ぎないので、「モジュール」、又は「部」の概念は本開示の内容に基づいて当業者が理解可能な範疇内で多様に定義可能である。
【0045】
本開示で使用する「モデル(model)」という用語は、特定の問題を解決するために、数学的概念及び言語を使用して具現するシステム、特定の問題を解決するためのソフトウェア単位の集合、又は特定の問題を解決するための処理過程に対する抽象画模型と理解することができる。例えば、神経回路網(neural network)「モデル」は学習によって問題解決能力を有する神経回路網として具現されるシステム全般を示すことができる。ここで、神経回路網は、ノード(node)又はニューロン(neuron)を連結するパラメーター(parameter)を学習によって最適化して問題解決能力を有することができる。神経回路網「モデル」は単一の神経回路網を含むこともでき、複数の神経回路網が組み合わせられた神経回路網集合を含むこともできる。
【0046】
本開示で使用する「データ」は「映像」、信号などを含むことができる。本開示で使用する「映像」という用語は、離散的イメージ要素で構成された多次元データを示し得る。言い換えれば、「映像」はヒトの目で見られる対象のデジタル表現物を示す用語と理解することができる。例えば、「映像」は2次元イメージにおいてピクセルに相当する要素で構成された多次元データを示し得る。「映像」は3次元イメージにおいてボクセルに相当する要素で構成された多次元データを示し得る。
【0047】
本開示で使用する「ブロック(block)」という用語は、種類、機能などのような多様な基準によって区分された構成の集合と理解することができる。よって、一つの「ブロック」に分類される構成は基準によって多様に変更可能である。例えば、神経回路網「ブロック」は少なくとも一つの神経回路網を含む神経回路網集合と理解することができる。ここで、神経回路網「ブロック」に含まれた神経回路網は特定の演算を同等に実行するものと仮定することができる。
【0048】
前述した用語の説明は本開示の理解を手伝うためのものである。したがって、前述した用語を本開示の内容を限定する事項として明示的に記載しない場合、本開示の内容を技術的思想を限定する意味として使用するものではではないことに気を付けなければならない。
【0049】
図2は本開示の一実施例によるコンピューティング装置のブロック構成図である。
【0050】
本開示の一実施例によるコンピューティング装置100はデータの総合的な処理及び演算を行うハードウェア装置又はハードウェア装置の一部でもあり、通信ネットワークを介して連結されるソフトウェアに基づくコンピューティング環境でもあり得る。例えば、コンピューティング装置100は集約的データ処理の機能を行い、資源を共有する主体であるサーバーでもあり、サーバーとの相互作用によって資源を共有するクライアント(client)でもあり得る。また、コンピューティング装置100は、複数のサーバー及びクライアントが互いに作用してデータを総合的に処理するクラウドシステム(cloud system)でもあり得る。上述した記載はコンピューティング装置100の種類に関連した一例示に過ぎないので、コンピューティング装置100の種類は本開示の内容に基づいて当業者が理解可能な範疇内で多様に構成可能である。
【0051】
図2を参照すると、本開示の一実施例によるコンピューティング装置100はプロセッサ(processor)110と、メモリ(memory)120と、ネットワーク部(network unit)130と、を含むことができる。ただし、図2は一例示に過ぎないので、コンピューティング装置100は、コンピュータ環境を具現するための他の構成を含むことができる。また、前記開示した構成のうちの一部のみをコンピューティング装置100に含むこともできる。
【0052】
本開示の一実施例によるプロセッサ110はコンピューティング演算を実行するためのハードウェア及び/又はソフトウェアを含む構成単位と理解することができる。例えば、プロセッサ110は、コンピュータプログラムを読み取って機械学習のためのデータ処理を実行することができる。プロセッサ110は、機械学習のための入力データの処理、機械学習のための特徴抽出、逆伝搬(backpropagation)に基づく誤差計算などのような演算過程を処理することができる。このようなデータ処理を実行するためのプロセッサ110は、中央処理装置(CPU:central processing unit)、汎用グラフィック処理装置(GPGPU:general purpose graphics processing unit)、テンソル処理装置(TPU:tensor processing unit)、特定用途向け集積回路(ASICc:application specific integrated circuit)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)などを含むことができる。上述したプロセッサ110の種類は一例示に過ぎないので、プロセッサ110の種類は本開示の内容に基づいて当業者が理解可能な範疇内で多様に構成可能である。
【0053】
プロセッサ110は、医療データに基づいて甲状腺機能障害を診断する神経回路網モデルを学習させることができる。例えば、プロセッサ110は、心電図データとともに、性別、年齢などの情報を含む生物学的データに基づいて甲状腺機能亢進症の発病有無、進行程度などを推定するように神経回路網モデルを学習させることができる。具体的には、プロセッサ110は、心電図データ及び各種の生物学的データを神経回路網モデルに入力して、神経回路網モデルが甲状腺機能亢進症の発病による心電図の変化を感知するように、神経回路網モデルを学習させることができる。ここで、神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図変化との相関関係に基づいて学習を行うことができる。甲状腺機能と心電図変化との相関関係は、甲状腺機能の変化と心電図信号の形態変化との間の関連性についての情報と理解することができる。プロセッサ110は、神経回路網モデルの学習過程で神経回路網モデルに含まれた少なくとも一つの神経回路網ブロックを表現する演算を実行することができる。
【0054】
プロセッサ110は、上述した学習過程によって生成された神経回路網モデルを用いて、医療データに基づいて甲状腺機能障害の発病有無を推定することができる。プロセッサ110は、上述した過程によって学習された神経回路網モデルに心電図データ、及び年齢、性別の情報を含む生物学的データを入力することにより、ヒトの甲状腺機能障害の発病確率を推定した結果を示す推論データを生成することができる。例えば、プロセッサ110は、学習の完了した神経回路網モデルに心電図データを入力して、甲状腺機能亢進症の発病有無、進行程度などを予測することができる。プロセッサ110は、このような甲状腺機能障害を診断する神経回路網モデルを介して、ヒトが解釈しにくい微妙な心電図変化を効果的に把握して甲状腺機能障害の発病を正確に予測することができる。
【0055】
上述した例示の他にも、医療データの種類及び神経回路網モデルの出力は本開示の内容に基づいて当業者の理解可能な範疇内で多様に構成可能である。
【0056】
本開示の一実施例によるメモリ120はコンピューティング装置100で処理されるデータを保存して管理するためのハードウェア及び/又はソフトウェアを含む構成単位と理解することができる。すなわち、メモリ120は、プロセッサ110が生成するか又は決定した任意の形態のデータ及びネットワーク部130が受信した任意の形態のデータを保存することができる。例えば、メモリ120は、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、カードタイプのメモリ、RAM(random access memory)、SRAM(static random access memory)、ROM(read-only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)、PROM(programmable read-only memory)、磁気メモリ、磁気ディスク、及び光ディスクのうちの少なくとも一つのタイプの保存媒体を含むことができる。また、メモリ120は、データを所定の体制で統制して管理するデータベース(database)システムを含むこともできる。上述したメモリ120の種類は一例示に過ぎないので、メモリ120の種類は本開示の内容に基づいて当業者が理解可能な範疇内で多様に構成可能である。
【0057】
メモリ120は、プロセッサ110が演算を実行するのに必要なデータ、データの組合せ、及びプロセッサ110で実行可能なプログラムコード(code)などを構造化及び組職化して管理することができる。例えば、メモリ120は、後述するネットワーク部130を介して受信した医療データを保存することができる。メモリ120は、神経回路網モデルが医療データを受けて学習を実行するように動作させるプログラムコード、神経回路網モデルが医療データを受け、コンピューティング装置100の使用目的に応じて推論を行うように動作させるプログラムコード、及びプログラムコードが実行されることによって生成された加工データなどを保存することができる。
【0058】
本開示の一実施例によるネットワーク部130は任意の形態の公知の有無線通信システムを介してデータを送受信する構成単位と理解することができる。例えば、ネットワーク部130は、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)、広帯域符号分割多重接続(WCDMA(登録商標):wideband code division multiple access)、LTE(long term evolution)、ワイブロ(WiBro:wireless broadband internet)、5世代移動通信(5G)、超広帯域無線通信(ultrawide-band)、シグビー(ZigBee(登録商標))、無線周波数(RF:radio frequency)通信、無線LAN(wireless LAN)、ワイファイ(wireless fidelity)、近距離無線通信(NFC:near field communication)、又はブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))などのような有無線通信システムを使用してデータ送受信を行うことができる。上述した通信システムは一例示に過ぎないので、ネットワーク部130のデータ送受信のための有無線通信システムは上述した例示の他に多様に適用可能である。
【0059】
ネットワーク部130は、任意のシステム又は任意のクライアントなどとの有無線通信を介して、プロセッサ110が演算を実行するのに必要なデータを受信することができる。また、ネットワーク部130は、任意のシステム又は任意のクライアントなどとの有無線通信を介して、プロセッサ110の演算によって生成されたデータを送信することができる。例えば、ネットワーク部130は、病院環境内のデータベース、医療データの標準化などの作業を行うクラウドサーバー、又はコンピューティング装置などとの通信を介して医療データを受信することができる。ネットワーク部130は、前述したデータベース、サーバー、又はコンピューティング装置などとの通信を介して、神経回路網モデルの出力データ、及びプロセッサ110の演算過程で導出される中間データ、加工データなどを送信することができる。
【0060】
図3は本開示の一実施例によって、心電図に基づいて甲状腺機能障害を診断する方法を示すフローチャートである。
【0061】
図3を参照すると、少なくとも一つのプロセッサ110を含むコンピューティング装置100によって実行される、心電図に基づいて甲状腺機能障害を診断する方法であって、まず心電図データを獲得する段階(S100)を実行することができる。
【0062】
心電図データは、心電図測定機器によって測定されたものを直接的に獲得するか、又は心電図測定機器からネットワーク通信を介して獲得することができる。
【0063】
その後、事前に学習された神経回路網モデルを使用して、心電図データに基づいて心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階(S110)を実行することができる。
【0064】
また、前記推定段階(S110)は、神経回路網モデルに心電図データとともに年齢及び性別のうちの少なくとも一つを含む生物学的データを入力して、心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定する段階を含むことができる。
【0065】
ここで、神経回路網モデルは、甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものであり得る。また、神経回路網モデルは、甲状腺機能と、心電図、性別及び年齢などの特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものであり得る。具体的には、神経回路網モデルは甲状腺機能亢進症の発病有無及び進捗度と心電図及びその他の特性の変化との間の相関関係に基づいて学習されたものであり得る。神経回路網モデルは、甲状腺機能亢進症だけでなく甲状腺機能低下症などの多様な甲状腺機能障害を診断することに活用可能である。
【0066】
神経回路網モデルは、人体に連結された心電図測定機器の電極から獲得される12リードで測定された心電図に基づいて学習されたものであり得る。一例として、心電図は、10秒間の12リードで測定され、1秒当たり500個のポイントに保存され得る。追加として、神経回路網モデルは、12リード心電図のうちで6個の肢リード(limb lead)心電図及び単一リード(lead I)心電図のみを抽出した部分情報に基づいて学習され得る。
【0067】
図4を参照すると、本開示の一実施例による神経回路網モデルの構造を示す図である。
【0068】
図4を参照すると、本開示の一実施例による神経回路網モデルは、複数のレジデュアルブロック(residual blocks)で構成される神経回路網を含むことができる。レジデュアルブロックで構成される神経回路網は、心電図データを受けて顕性甲状腺機能亢進症の発病確率を出力するためのものであり得る。
【0069】
ここで、顕性甲状腺機能亢進症は、遊離チロキシン数値が事前に決定された基準範囲よりも高いか、又は甲状腺刺激ホルモン数値が基準範囲よりも低い場合に発病したものと診断することができる。
【0070】
具体的には、神経回路網モデルは、6個のレジデュアルブロックを使用したレスネット(ResNet)神経回路網の構造を有することができる。それぞれのレジデュアルブロックは、畳込み神経回路網(CNN)、バッチ正規化(batch normalization)、正規化線形ユニット(以下、ReLUという)関数、及びドロップアウトレイヤーで構成され得る。畳込み神経回路網は1次元に、フィルターのサイズは21に設定され得る。総6個のレジデュアルブロックのうちで3個のレジデュアルブロックを通過する都度、入力長さが半分に減ることができる。心電図の各リードごとに相異なる神経回路網を適用することができる。レジデュアルブロックの終端でチャネル単位で平均プーリングを適用することができる。神経回路網の出力は、甲状腺機能障害の発病確率を導出するために、一つに連結(concatenation)され得る。
【0071】
神経回路網モデルは、心電図データの複数のリードのそれぞれに対応する神経回路網を含むことができる。すなわち、神経回路網モデルは、個別リードで測定された心電図がそれぞれ入力される個別神経回路網を含むことができる。
【0072】
例えば、神経回路網モデルは、12個の多重リード(lead)で測定される心電図データに基づいて学習された第1サブ神経回路網モデルを含むことができる。また、神経回路網モデルは、6個の肢(limb)リード又は6個の前胸部リードのうちの少なくとも一つに基づいて学習された第2サブ神経回路網モデルをさらに含むことができる。また、神経回路網モデルは、単一リードで測定される心電図データに基づいて学習された第3サブ神経回路網モデルをさらに含むことができる。神経回路網モデルは、リードの個数によって、第1サブ神経回路網モデル、第2サブ神経回路網モデル又は第3サブ神経回路網モデルのうちの少なくとも一つを選択的に使用することができる。よって、神経回路網モデルは、リードの個数に関係なく甲状腺機能障害の発病を効果的に予測することができる。また、12リードの心電図データが入力される場合、神経回路網モデルとしては、第1サブ神経回路網モデル、第2サブ神経回路網モデル及び第3サブ神経回路網モデルをすべて使用し、それぞれのサブモデルの出力を組み合わせて甲状腺機能障害の発病確率を出力することもできる。神経回路網モデルは、このような組合せによって甲状腺機能障害の発病予測正確度を高めることができる。
【0073】
以下では、上述した構造の神経回路網モデルの検証のために実行した統計分析方法について説明する。基本特性を確認するために、連続型変数(continuous variables)は平均値及び標準偏差として提示した。検証結果は、不対標本t-検定(the unpaired student's t-test)又はマンホイットニーu検定(mann-whitneyu-test)で比較した。カテゴリー変数(categorical variables)は百分率で表現し、カイ二乗検定(χ2 test)を使用した。
【0074】
神経回路網モデルの性能は、モデルが計算した確率及び内/外部検証データセット内の甲状腺機能亢進症有無と比較して検証した。受信者動作特性曲線下面積(area under the receiver operating characteristic curve、以下、AUCという)を参照して検証を実行した。学習データセットで、ユデンJ統計(youden j statistic)を使用してカットオフ地点を確認した。カットオフ地点を適用して、内/外部検証データセットで感度、特異度、正の予測値、負の予測値を計算した。AUCの95%信頼区間はデロング(de-long)方法のsun&su's最適化を用いて算出した。
【0075】
以下では、本開示の一実施例による神経回路網モデルの検証研究について説明する。
【0076】
神経回路網モデルのロバスト性を証明するために、年齢、性別による下位グループを作って感度分析を実行した。性別は男性及び女性に分類し、年齢は40才未満、40才以上50才未満、50才以上60才未満、60才以上70才未満、及び70歳以上に分類した。
【0077】
甲状腺機能亢進症以前の時期の心電図に微妙な変化が生ずることがあり、神経回路網モデルはこの小さな変化を感知して発病を予測することができるという仮説を立てた。これを確認するために、下位グループ分析を実施した。外部検証データセットは、最初の甲状腺機能検査(TFT:thyroid function test)で正常の診断を受け、後続の甲状腺機能検査を受けた患者を対象として抽出したものである。最初の甲状腺機能検査と後続の甲状腺機能検査との間の時間間隔は4週以上である。神経回路網モデルが推定した甲状腺機能亢進症の発病確率に基づいて、研究対象を高危険群及び低危険群に分類した。カットオフ地点は、学習データセットでユデンJ統計を使用して決定した。36ヶ月間の結果を分析するために、カプラン・マイヤー法(kaplan-meier method)を使用した。
【0078】
図5は本開示の一実施例による神経回路網モデルの検証研究過程を示す図である。
【0079】
図5を参照すると、本開示の一実施例による神経回路網モデルの検証研究の対象は、病院Aの患者113,215人及び病院Bの患者33,485人である。臨床情報又は心電図データが漏れた病院Aの患者21人及び病院Bの患者7人は除いた。総2,164人の甲状腺機能亢進症患者が含まれた。神経回路網学習には、病院Aの90,554人の患者で測定した139,521個の心電図データを使用した。内部検証は、病院Aの518人の患者で測定した34,810個の心電図データを使用した。外部検証は、病院Bの33,478人の患者で測定した48,684個の心電図データを使用した。神経回路網モデル学習コホート(病院a、n=113,175)及び外部検証コホート(病院b、n=33,478)の基本特性は下記の表1の通りである。
【0080】
【表1】
【0081】
表1で、†が表示されたpに対する対立仮説(alternative hypothesis)は、甲状腺機能亢進症と顕性甲状腺機能亢進症(overt hyperthyroidism)との間に差があるということである。‡が表示されたp値に対する対立仮説は、各変数に対して病院A(モデル開発及び内部検証データグループ)と病院B(外部検証グループ)との間に差があるということである。甲状腺機能亢進症の性別、年齢、及び発病率は統計的に病院ごとに差を示した。甲状腺機能亢進症患者は、頻脈が相対的に多く、QT間隔が長かった。甲状腺機能亢進症患者は、P波、R波、T波の軸の右側に傾いた偏向を示し、QRS持続時間が短かった。
【0082】
まとめると、上述した甲状腺機能と心電図特性の変化との間の相関関係は、頻脈の頻度、QT間隔(interval)の長さ、P波、R波及びT波の偏位方向、又はQRS持続時間のうちの少なくとも一つを含む心電図特性に基づき得る。
【0083】
神経回路網モデルが推定した甲状腺機能障害の発病確率は、頻脈の頻度が多いほど高くなり得る。甲状腺機能障害の発病確率は、QT間隔が長いほど高くなり得る。
【0084】
神経回路網モデルが推定した甲状腺機能障害の発病確率は、P波、R波及びT波の偏位方向が右側に向かうほど高くなり得る。
【0085】
神経回路網モデルが推定した甲状腺機能障害の発病確率は、QRS持続時間が短いほど高くなり得る。
【0086】
図6は本開示の一実施例による神経回路網モデルの性能テスト結果を示す図である。
【0087】
図6を参照すると、内部検証及び外部検証で、AUCは神経回路網モデルの受信者操作特性曲線下面積を、DLMは神経回路網モデルを、ECGは心電図を、NPVは陰性予測度を、PPVは陽性予測度を、SENは感度を、SPEは特異度を意味する。
【0088】
内部及び外部検証で、12リード心電図を使用した神経回路網モデルのAUCはそれぞれ0.918(0.909-0.927)及び0.897(0.879-0.916)であった。感度分析によって、神経回路網モデルの性別及び年齢によるロバスト性(robustness)を確認した。神経回路網モデルが高危険患者と識別されたヒトは低危険患者と識別されたヒトよりも甲状腺機能亢進症の発病に相当な変化を示した(p<0.01)。6リード心電図及び単一リード心電図を使用した神経回路網モデルの性能も確認することができる。表2を参照すると、性別及び年齢に対する感度分析で、すべてのモデルの性能はAUC値が0.830以上であった。
【0089】
【表2】
【0090】
図7は本開示の一実施例による性別及び年齢によって分類された下位グループ心電図分析結果を示す図である。図7を参照すると、下位グループ分析は、甲状腺機能検査で正常と判別された患者6,762人の後続甲状腺機能検査結果を使用して分析した。これらのうちで甲状腺機能亢進症が発病した患者は24人であった。下位グループ分析対象を、神経回路網モデルが出力する甲状腺亢進症の発病確率によって、高危険群4,749人及び低危険群2,013人に区分した。高危険群は低危険群よりも甲状腺機能亢進症の発病危険が有意に高いことを確認することができた(0.48%対0.05%、p<0.01)。
【0091】
一方、甲状腺機能は心血管と密接に関連しており、心臓機能、血管抵抗(vascular resistance)、心血管自律制御機能に影響を及ぼすことはもちろんのこと、心臓血管系(cardiovascular system)にも影響を与えることがある。特に、甲状腺ホルモン媒介変化によって弛緩機能が強化した心室収縮(inotropy)及び心拍数(chronotropy)によって心臓機能の向上に影響を与えることがある。甲状腺機能障害で現れる徴候及び症状は、甲状腺ホルモンが心臓及び心血関係に影響を与えた結果であると判断することができる。甲状腺機能障害は心血管疾患発病率及び死亡率の増加に関連し得る。さらに、甲状腺機能亢進症を治療しなかった場合、その病を治療した場合よりも心血管疾患の危険が高かった。甲状腺機能亢進症を治療したケース及び治療しなかったケースの両方で、甲状腺刺激ホルモン数値が減少した期間によって心血管発病率が増加した。
【0092】
したがって、このような危険性がある甲状腺機能障害の早期発見及び予測のために、本開示の一実施例による甲状腺機能障害診断方法は、神経回路網モデルを使用して、心電図データに基づいて心電図データの測定対象に対する甲状腺機能障害の発病確率を推定することができるようにした。
【0093】
さらに、本開示の一実施例による甲状腺機能障害診断方法は、心電図、性別、年齢などの情報に基づいて、神経回路網モデルを用いて甲状腺機能亢進症を診断することができる効果がある。
【0094】
前述した本開示の多様な実施例は追加の実施例と結合することができ、上述した詳細な説明から当業者が理解することができる範疇内で変更可能である。本開示の実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明したそれぞれの構成要素は分散して実施することもでき、同様に分散されたものとして説明した構成要素も結合した形態として実施することができる。よって、本開示の特許請求の範囲の意味、範囲及びその均等概念から導出されるすべての変更又は変形の形態を本開示の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
【符号の説明】
【0095】
100 :コンピューティング装置
110 :プロセッサ
120 :メモリ
130 :ネットワーク部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】