(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-09
(54)【発明の名称】シリルベンゾピナコールラジカル開始剤
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20241002BHJP
C08F 4/32 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C07F7/18 Y
C08F4/32
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024520695
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2021077402
(87)【国際公開番号】W WO2023057049
(87)【国際公開日】2023-04-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デラーマン,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】フェーン,アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルドマン,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】バルヒ,ラモナ
【テーマコード(参考)】
4H049
4J015
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP10
4H049VQ02
4H049VQ20
4H049VQ79
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS02
4H049VS12
4H049VU17
4H049VV02
4H049VW02
4J015BA14
(57)【要約】
本発明は、シリルベンゾピナコールラジカル開始剤の調製方法であって、ベンゾフェノンを、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される還元剤及び一般式(I)R1R2SiCl2(式中、R1はC3~C32アルキルであり、R2はC1~C32アルキル又はClである)のシランと反応させる方法及び該方法により得られるシリルベンゾピナコールラジカル開始剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリルベンゾピナコールフリーラジカル開始剤を調製する方法であって、
ベンゾフェノンを、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される還元剤、並びに一般式(I)のシランと反応させる方法。
R
1R
2SiCl
2 (I)、
[式中、
R
1は、C3~C32アルキル基であり、
R
2は、C1~C32アルキル基又はClである。]
【請求項2】
R
1が3~18個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
2がClである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1が3~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
2が1~20個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤がマグネシウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
非プロトン性溶媒の存在下で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応をヨウ素で活性化する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
まずベンゾフェノン及び還元剤及び任意選択でヨウ素を合わせ、次いで一般式(I)のシランを添加する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水を添加し、弱塩基で中和し、水相を除去することによって反応を処理する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるシリルベンゾピナコールフリーラジカル開始剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾフェノン、還元剤及びクロロアルキルシランからシリルベンゾピナコールフリーラジカル開始剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリルベンゾピナコールは、不飽和樹脂の制御された架橋に使用される熱フリーラジカル開始剤である。それらは、例としてDE2632294A号に記載されるように、ベンゾフェノンとマグネシウムとの反応及びその後のC1若しくはC2アルキル基を有するアルキルジクロロシラン若しくはアルキルトリクロロシラン又は混合物の添加によって調製される。典型的には、メチルトリクロロシラン又はジメチルジクロロシランが使用され、これは加水分解及びワークアップ(work-up)後に複雑な活性生成物の混合物をもたらす。
【0003】
既知の文献の方法(比較例1参照)によって得ることができる生成物は、濁った不均質な懸濁液である。それらは、不飽和フリーラジカル重合性物質に対するフリーラジカル開始剤としての所望の反応性を示す。しかし、それらの不均質性により、不飽和フリーラジカル重合性物質の硬化速度を正確に、特に工業規模で設定することは困難となり、フリーラジカル開始剤の投入は、一定の硬化速度を有する熱重合性混合物を得るために、さらに修正される必要があることが多い。
【0004】
さらに、懸濁液中の微細に分散された固体の沈降は、貯蔵中に沈降物の形成をもたらす。これらの分離された懸濁液は、さらなる処理ステップを通して労力を要して再均質化される必要があり、これは、当業者にとって当然のことだが工業規模での問題をもたらすことが多い。
【0005】
DE2615039A1号は、フリーラジカル開始剤として使用するためのモノマーのベンゾピナコールシリルエーテルを記載しており、これは、ベンゾフェノンとトリアルキルモノクロロシランとの還元反応によって調製することができる。生成物は、置換基に応じて、固体又は液体として存在し得、長鎖アルキル置換基の場合、液体の均質な生成物を得ることが可能である。しかし、これらは、ジアルキルジクロロシラン又はアルキルトリクロロシランから得ることができるそれらのオリゴマー代表物と比較して、はるかに低い活性を示す。これにより、それらは工業的使用にあまり適さないものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第2632294号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2615039号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、均質な溶液として存在し、同時に高い反応性を示すフリーラジカル開始剤が必要とされている。フリーラジカル開始剤の反応性の向上とともに、フリーラジカル開始剤の量を減らすことができ、これはコストの理由から好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はシリルベンゾピナコールフリーラジカル開始剤を調製する方法を提供し、該方法ではベンゾフェノンを、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される還元剤及び一般式(I)のシランと反応させる。
R1R2SiCl2 (I)、
[式中、
R1は、C3~C32アルキル基であり、
R2は、C1~C32アルキル基又はClである。]
【0009】
本発明はまた、この方法によって得ることができるシリルベンゾピナコールフリーラジカル開始剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシリルベンゾピナコールフリーラジカル開始剤は、透明で均質な生成物の混合物であり、これは用途におけるそれらの使用をかなり容易にする。開始剤混合物は、ケイ素原子上の長鎖アルキル置換基のために液体であり、濁りを示さない。結果的に、それらは、そうでなければ活性の変動を引き起こす沈降を引き起こさないので、より容易に加工可能である。これらはフリーラジカル開始剤として高い反応性を示す。
【0011】
還元剤は、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウムから選択され、特にマグネシウムである。
【0012】
一般式(I)のシラン又は一般式(I)の異なるシランの混合物を使用することができる。
【0013】
アルキル基R1は、直鎖状、分枝状又は環状であり得る。アルキル基R1の例は、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びtert-ペンチル基、ヘキシル基、例えばn-ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn-ヘプチル基、オクチル基、例えばn-オクチル基、及び2,4,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基、ノニル基、例えばn-ノニル基、デシル基、例えばn-デシル基、ドデシル基、例えばn-ドデシル基、ヘキサデシル基、例えばn-ヘキサデシル基、オクタデシル基、例えばn-オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基である。
【0014】
好ましい実施形態では、R1は、3~20個の炭素原子、特に3~10個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0015】
アルキル基R1は、直鎖状、分枝状又は環状であり得る。アルキル基R2の例は、メチル及びエチル基であり、R1について列挙されたアルキル基でもある。好ましい実施形態では、R2は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基、特にメチル基である。
【0016】
好ましい実施形態では、R1は3~18個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2はClである。
【0017】
驚くべきことに、ジアルキルジクロロシランからのシリルベンゾピナコールは、向上した反応性を有する。
【0018】
この向上した反応性は、ジメチルジクロロシランで既に観察されたが、対応するシリルベンゾピナコールは固体であり、したがって、加工性が乏しいか又は全くない。
【0019】
メチルトリクロロシランとの混合物においても反応性の向上が観察され得るが、生成物は混濁しているか又は固体でもある。
【0020】
特に、ジアルキルジクロロシランからの生成物は、驚くべきことに、それらのアルキルトリクロロシラン類似体と比較して大幅に向上した反応性を示す。
【0021】
したがって、好ましい実施形態では、R1は3~32個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2は1~32個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくはR1は3~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2は1~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、より好ましくはR1は6~12個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2は1~3個の炭素原子を有するアルキル基、特に、R1は6~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2はメチル基である。
【0022】
このプロセスは、非プロトン性溶媒の存在下又は非存在下で実行され得る。非プロトン性かつ極性溶媒が好ましい。非プロトン性溶媒を使用する場合、0.1MPaで250℃までの沸点又は沸点範囲を有する溶媒又は溶媒混合物が好ましい。そのような溶媒の例は、エーテル、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテル、塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及びトリクロロエチレン、炭化水素、例えばペンタン、n-ヘキサン、ヘキサン異性体混合物、ヘプタン、オクタン、石油スピリット、石油エーテル、ベンゼン、トルエン及びキシレン、シロキサン、特にトリメチルシリル末端基を有し、好ましくは0~6個のジメチルシロキサン単位を有する直鎖状ジメチルポリシロキサン、若しくは好ましくは4~7個のジメチルシロキサン単位を有する環状ジメチルポリシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサン、N,N-二置換アミド、例えばジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びリン酸トリス(ジメチルアミド)、アルキルホスフェート、例えばトリアルキルホスフェート及び特にトリエチルホスフェート、又はこれらの溶媒の混合物である。
【0023】
エーテル、炭化水素、トリアルキルホスフェート、及びこれらの混合物が好ましい。
【0024】
「溶媒」という用語は、全ての反応成分が必ずその中に溶解することを意味するものではない。反応はまた、1種以上の反応物質の懸濁液又はエマルジョン中で実施されてもよい。反応はまた、混和性ギャップを有する溶媒混合物中で行われてもよく、反応物質の少なくとも1つは、混合物の各相に可溶性である。
【0025】
好ましい実施形態では、反応物をヨウ素で活性化する。好ましくは、還元剤1モル当たり0.001~0.1モルのヨウ素を添加する。
【0026】
好ましくは、第1のベンゾフェノン及び還元剤及び任意選択でヨウ素を合わせ、次いで一般式(I)のシランを添加する。
【0027】
好ましくは、還元剤に対するベンゾフェノンのモル比は、還元剤としてのリチウム、ナトリウム若しくはカリウムについては0.8~1.5の間、特に0.9~1.1の間、又は還元剤としてのマグネシウム若しくはカルシウムについては0.3~0.75、特に0.4~0.6である。
【0028】
好ましくは、一般式(I)のシランに対するベンゾフェノンのモル比は、Clを基準として0.6~1.8の間、特に0.8~1.2の間である。
【0029】
この方法は、好ましくは0℃~80℃の間、より好ましくは10℃~60℃の間、特に20℃~50℃の間の温度で実施される。
【0030】
好ましくは、一般式(I)のシランを添加した後の反応時間は、30分~1日、より好ましくは1~8時間の間、特に2~6時間である。
【0031】
反応は、好ましくは、水を添加し、炭酸水素ナトリウムなどの弱塩基で中和し、水相を除去することによって処理する。
【0032】
この方法が非プロトン性溶媒の存在下で実施される場合、該溶媒は好ましくは蒸留によって除去される。
【0033】
本発明のシリルベンゾピナコールフリーラジカル開始剤は、不飽和ポリエステル樹脂及びスチレンなどの不飽和ビニル化合物のための熱フリーラジカル開始剤としての用途を見出す。
【0034】
<本発明全体の分析>
【0035】
<反応性を決定するためのゲル時間の測定>
測定は、Rosentreter製のゲル化測定装置を用い、BUEFA製の市販の不飽和ポリエステル樹脂(Palatal P04-1)を用いて行う。測定のために、樹脂を1%の生成物の混合物と混合し、試験管(160×16mm)に移し、ゲル化装置に取り付ける。試料を90℃まで加熱し、プランジャー及びゲル化タイマーのストロークサイクルを開始する。ゲル化時間は、装置の圧力センサを動作させるとすぐに停止させる。
【0036】
以下の実施例において、いずれの場合も別段の記載がない限り、全ての量及びパーセンテージは重量に基づき、全ての圧力は0.10MPa(絶対)であり、全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0037】
[例1(非発明)]
ベンゾフェノン50gをキシレンに30℃で溶解し、次いでマグネシウム3.4g、THF15ml、トリエチルホスフェート34ml及びヨウ素0.06gを添加する。11mlのメチルトリクロロシランを180分間かけて計量投入し、反応物を40℃でさらに60分間撹拌する。反応の終わりに、40mlの水を10分間にわたって添加し、その後、相を分離させる。有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、相分離が繰り返された後、短経路エバポレーターでの蒸留によって揮発性物質を除去する。これにより、貯蔵時に混濁する粘性の黄色の液体を得る。ゲル化時間は9.7分である。
【0038】
[例2(非発明)]
ベンゾフェノン50gをキシレンに30℃で溶解し、次いでマグネシウム3.4g、THF15ml、トリエチルホスフェート34ml及びヨウ素0.06gを添加する。20mlのジメチルジクロロシランを計量投入し、反応物を40℃で4時間撹拌する。反応の終わりに、40mlの水を10分間にわたって添加し、その後、相を分離させる。有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、相分離が繰り返された後、揮発性物質を蒸留によって除去する。これにより、白色の難溶性固体を得る。ゲル化時間は6.5分である。重合樹脂は不均質である。
【0039】
[例3(非発明)]
ベンゾフェノン50gをキシレンに30℃で溶解し、次いでマグネシウム3.4g、THF15ml、トリエチルホスフェート34ml及びヨウ素0.06gを添加する。35mlのトリメチルクロロシランを計量投入し、反応物を40℃で4時間撹拌する。反応中に既に固体形成を観察することができる。反応の終わりに、40mlの水を10分間にわたって添加し、その後、水相を除去する。有機相及び形成された固体を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、水相を再び除去した後、揮発性物質を蒸留によって除去する。これにより、白色の難溶性固体を得る。ゲル化時間は25分である。重合樹脂は不均質である。
【0040】
[例4(非発明)]
ベンゾフェノン50gをキシレンに30℃で溶解し、次いでマグネシウム3.4g、THF15ml、トリエチルホスフェート34ml及びヨウ素0.06gを添加する。64mlのジメチルオクチルクロロシランを計量投入し、反応物を40℃で4時間撹拌する。反応の終わりに、40mlの水を10分間にわたって添加し、その後相を分離させる。有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、相分離が繰り返された後、揮発性物質を蒸留によって除去する。これにより黄色の液体を得る。ゲル化時間は20分である。
【0041】
[実施例5]
ベンゾフェノン45gをキシレンに30℃で溶解し、次いでマグネシウム3.1g、THF15ml、トリエチルホスフェート30ml及びヨウ素0.06gを添加する。13mlのプロピルトリクロロシランを計量投入し、反応物を40℃で4時間撹拌する。反応の終わりに、80mlの水を10分間にわたって添加し、その後相を分離させる。有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、相分離が繰り返された後、短経路エバポレーターでの蒸留によって揮発性物質を除去する。これにより粘性の黄色の液体を得る。この生成物は保存しても透明なままである。ゲル化時間は11分である。
【0042】
[実施例6]
ベンゾフェノン45gをキシレンに30℃で溶解し、次いでマグネシウム3.1g、THF15ml、トリエチルホスフェート30ml及びヨウ素0.06gを添加する。20mlのヘキサデシルトリクロロシランを計量投入し、反応物を40℃で4時間撹拌する。反応の終わりに、80mlの水を10分間にわたって添加し、その後相を分離させる。有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、相分離が繰り返された後、短経路エバポレーターでの蒸留によって揮発性物質を除去する。これにより粘性の黄色の液体を得る。この生成物は保存しても透明なままである。ゲル化時間は8.9分である。
【0043】
[実施例7]
ベンゾフェノン50gをキシレンに30℃で溶解し、次いでマグネシウム3.4g、THF15ml、トリエチルホスフェート34ml及びヨウ素0.06gを添加する。35mlのメチル-n-オクチルジクロロシランを計量投入し、反応物を40℃で4時間撹拌する。反応の終わりに、40mlの水を10分間にわたって添加し、その後相を分離させる。有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、相分離が繰り返された後、短経路エバポレーターでの蒸留によって揮発性物質を除去する。これにより粘性の黄色の液体を得る。この生成物は保存しても透明なままである。ゲル化時間は6.2分である。
【0044】
[実施例8]
ベンゾフェノン40gを30℃でキシレンに溶解し、次いでマグネシウム2.8g、THF12ml、トリエチルホスフェート27ml及びヨウ素0.05gを添加する。47mlのメチル-n-オクチルジクロロシランを計量投入し、反応物を40℃で4時間撹拌する。反応の終わりに、40mlの水を10分間にわたって添加し、その後相を分離させる。有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、相分離が繰り返された後、短経路エバポレーター中での蒸留によって揮発性物質を除去する。これにより粘性の黄色の液体を得る。この生成物は保存しても透明なままである。ゲル化時間は5.9分である。
【0045】
[実施例9]
ベンゾフェノン25gをキシレンに30℃で溶解し、次いでマグネシウム1.7g、THF7.4ml、トリエチルホスフェート17ml及びヨウ素0.03gを添加する。25mlのジオクチルジクロロシランを計量投入し、反応物を40℃で4時間撹拌する。反応の終わりに、20mlの水を10分間にわたって添加し、その後相を分離させる。有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、相分離が繰り返された後、短経路エバポレーター中での蒸留によって揮発性物質を除去する。これにより粘性の黄色の液体を得る。この生成物は保存しても透明なままである。ゲル化時間は8.0分である。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリルベンゾピナコールフリーラジカル開始剤を調製する方法であって、
ベンゾフェノンを、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される還元剤、並びに一般式(I)のシランと反応させる方法。
R
1R
2SiCl
2 (I)、
[式中、
R
1は、C3~C32アルキル基であり、
R
2は、C1~C32アルキル基又はClである。]
【請求項2】
R
1が3~18個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
2がClである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1が3~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
2が1~20個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤がマグネシウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
非プロトン性溶媒の存在下で実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応をヨウ素で活性化する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
まずベンゾフェノン及び還元剤及び任意選択でヨウ素を合わせ、次いで一般式(I)のシランを添加する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水を添加し、弱塩基で中和し、水相を除去することによって反応を処理する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】