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特表2024-536954V型結晶澱粉の製造方法、及びV型結晶澱粉の調味料としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】V型結晶澱粉の製造方法、及びV型結晶澱粉の調味料としての使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/212 20160101AFI20241003BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L29/212
A23L5/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547373
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2022132259
(87)【国際公開番号】W WO2024065981
(87)【国際公開日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】202211218035.3
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】麻栄栄
(72)【発明者】
【氏名】田耀旗
(72)【発明者】
【氏名】▲せん▼錦玲
(72)【発明者】
【氏名】梁玉▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】王凡
(72)【発明者】
【氏名】邱立忠
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
【Fターム(参考)】
4B025LD02
4B025LG21
4B025LG22
4B025LG28
4B025LK03
4B025LP01
4B025LP10
4B025LP15
4B025LP20
4B035LC01
4B035LC16
4B035LG04
4B035LG05
4B035LG21
4B035LK02
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP59
(57)【要約】
本願発明は、V型結晶澱粉の製造方法に関し、食品および化学工業の分野に属する。前記方法では、澱粉を原料として、従来の熱糊化の代わりに乾熱非晶質化技術を使用して、澱粉を十分にデクラスタリングして、高濃度澱粉を得ることで、分級効率を向上させ、次に、アルコール沈殿・分級により各種の重合度の分級澱粉を得る。次に、鎖長及び官能基の異なる風味分子を対象物質として選択する。プラズマ活性水による酸性溶媒環境中では、高含有量、高流動性、及び高溶解度を有するアミロースがより多くの単一螺旋キャビティを有し、対象物質を捕捉するための部位をより多く提供し、周波数可変超音波と組み合わせることで、澱粉乳への風味分子の分散度や接触機会を増加させ、澱粉結晶化領域の再結合を促進し、これによって、結晶化度がより高く、微結晶サイズがより大きく、単一螺旋がより密に規則的に配列されたV型結晶澱粉が得られる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風味分子を複合化したV型結晶澱粉の製造方法であって、
高アミロースに対して130~135℃で乾熱非晶質化処理を10~12min行い、非晶質化澱粉を得る、非晶質化処理のステップ(1)と、
非晶質化澱粉と水を30質量%~40質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比がそれぞれ80%~85%、70%~75%、55%~60%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、40~60℃で30~40min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度範囲の異なるGSV6、GSV7、GSV8分級澱粉を得る、アルコール沈殿・分級のステップ(2)と、
プラズマ活性水を用いて、GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉をそれぞれ5質量%~7質量%の澱粉乳に調製し、次に、1-デカノール、4,5-オクタンジオン、及びδ-デカラクトンの水溶液をそれぞれ、調製したGSV6澱粉乳と混合し、2-アセチルピリジンの水溶液を調製したGSV7澱粉乳と混合し、α-ピネンの水溶液を調製したGSV8澱粉乳と混合し、混合乳を得た後、混合乳をシールし、周波数可変超音波処理をかけて、周波数可変超音波処理後の複合乳を得る、複合化のステップ(3)と、
周波数可変超音波処理後の複合乳を5~10℃/minの平均冷却速度で3~5℃に迅速に冷却し、この温度で20~40min結晶化させ、次に、20~30℃の環境に移して2~4h結晶化させ、その後、遠心分離し、洗浄して乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV型結晶澱粉を得る、冷却・結晶化のステップ(4)と、を含む、製造方法。
【請求項2】
ステップ(2)の前記GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉の重合度が、それぞれ10~20、25~35、40~60である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(3)の前記1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトンの水溶液、2-アセチルピリジンの水溶液、α-ピネンの水溶液中の1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトン、2-アセチルピリジン、α-ピネンと水との質量比は、5~10mg:1mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(3)の前記1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトンの水溶液と調製したGSV6澱粉乳との体積比は0.08~0.10:1であり、2-アセチルピリジンの水溶液と調製したGSV7澱粉乳との体積比は0.08~0.12:1であり、α-ピネンの水溶液と調製したGSV8澱粉乳との体積比は0.10~0.12:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)の前記周波数可変超音波処理は、20~40、40~60、及び60~80kHzの周波数の超音波を用いてそれぞれ20~30、10~20、及び0~10min処理することであり、オンオフの間隔を10~30sとする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(2)で無水アルコールと澱粉乳の異なる体積比を使用して異なる重合度範囲の分級澱粉を得ることができるため、そのうちの1つの体積比を選択すればよく、
ステップ(3)で異なる風味分子水溶液を使用して異なる複合乳を得ることができるため、1種類の複合乳を選択して冷却及び結晶を行えばよく、1-デカノール、4,5-オクタンジオン又はδ-デカラクトンの水溶液が使用される場合、GSV6澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V6I-、V6II-、V6III-型結晶澱粉がそれぞれ得られ、2-アセチルピリジンの水溶液が使用される場合、GSV7澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V-型結晶澱粉が得られ、α-ピネンの水溶液が使用される場合、GSV8澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V-型結晶澱粉が得られ、
前記1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトン、2-アセチルピリジン、α-ピネンの水溶液とは、各種の風味物質の分散液であり、すなわち、風味物質を水に加えて均一に混合した分散液である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって製造された風味分子を複合化した、V型結晶澱粉。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって製造された風味分子を複合化した、V型結晶澱粉を含有する調味料。
【請求項9】
前記調味料に含有されるV型結晶澱粉は、V6I-、V6II-、V6III-、V-又はV-型結晶澱粉のうちのいずれか1種又は複数種を含む、請求項8に記載の調味料。
【請求項10】
前記V型結晶澱粉は、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって製造された風味分子を複合化したV型結晶澱粉、又は請求項7に記載の風味分子を複合化したV型結晶澱粉である、食品分野におけるV型結晶澱粉の使用。
【請求項11】
前記V型結晶澱粉は調味料として使用され、前記食品は、米・小麦粉製品、焼き菓子、菓子などを含むが、これらに限定されない、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
澱粉系食品中の風味分子の包埋率及び風味徐放効果を向上させる方法であって、
高アミロースに対して130~135℃で乾熱非晶質化処理を10~12min行い、非晶質化澱粉を得る、非晶質化処理のステップ(1)と、
非晶質化澱粉と水を30質量%~40質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比がそれぞれ80%~85%、70%~75%、55%~60%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、40~60℃で30~40min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度範囲の異なるGSV6、GSV7、GSV8分級澱粉を得る、アルコール沈殿・分級のステップ(2)と、
プラズマ活性水を用いて、GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉をそれぞれ5質量%~7質量%の澱粉乳に調製し、次に、1-デカノール、4,5-オクタンジオン、及びδ-デカラクトンの水溶液をそれぞれ、調製したGSV6澱粉乳と混合し、2-アセチルピリジンの水溶液を調製したGSV7澱粉乳と混合し、α-ピネンの水溶液を調製したGSV8澱粉乳と混合し、混合乳を得た後、混合乳をシールし、周波数可変超音波処理をかけて、周波数可変超音波処理後の複合乳を得る、複合化のステップ(3)と、
周波数可変超音波処理後の複合乳を5~10℃/minの平均冷却速度で3~5℃に迅速に冷却し、この温度で20~40min結晶化させ、次に、20~30℃の環境に移して2~4h結晶化させ、その後、遠心分離し、洗浄して乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV型結晶澱粉を得る、冷却・結晶化のステップ(4)と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、V型結晶澱粉の製造方法、及びV型結晶澱粉の調味料としての使用に関し、食品及び化学工業の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
風味は食品の良し悪しを評価する重要な品質であり、消費者の許容度に影響を与える重要な要素の1つである。現代の食品産業では、風味分子の保持と制御放出が広く注目され、研究されている。澱粉系食品が一般的に食べられるようになり、実用性に優れ、安価であることから、近年、澱粉と風味分子との複合化に大きな関心が寄せられている。その研究が進むに伴い、澱粉の風味分子への複合化技術は成熟しており、澱粉の風味分子への包埋率は約38%に達し、96h(時間)以内に徐放効果があることが報告された。しかし、澱粉の風味分子への複合化と徐放効果はさらに向上させる必要がある。
【0003】
現在、澱粉系食品の風味品質の改善に関する研究は、主に原料の選択や技術の最適化に集中しており、例えば、優れた原料の選択、適温貯蔵、酸化防止剤の事前添加、高緻密性包装材料の採用や外因性風味分子の添加などの方法があるが、このような方法は、効果がほとんどなく、本質的に製品の品質を向上させることは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の澱粉-風味物質複合物は、包埋率が低く、貯蔵や後加工中の風味徐放を実現しにくい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明は、様々な重合度の澱粉と様々な風味分子とを組み合わせて、各種のV型結晶澱粉を得るとともに、結晶性を制御することによって、澱粉系食品の貯蔵や後加工中の風味の徐放を実現する。本発明のV型結晶澱粉は、風味分子を複合化しているので、澱粉系調味料として各種の食品に使用され得る。
【0006】
本発明は、澱粉を原料として、従来の熱糊化の代わりに乾熱非晶質化技術を使用して、澱粉を十分にデクラスタリングして、高濃度澱粉を得ることで、分級効率を向上させ、次に、アルコール沈殿・分級により異なる重合度の分級澱粉を得る。次に、鎖長及び官能基の異なる風味分子を対象物質として選択する。プラズマ活性水による酸性溶媒環境中では、高含有量、高流動性、及び高溶解度を有するアミロースがより多くの単一螺旋キャビティを有し、対象物質を捕捉するための部位をより多く提供し、周波数可変超音波と組み合わせることで、澱粉乳への風味分子の分散度や接触機会を増加させ、澱粉結晶化領域の再結合を促進し、これによって、結晶化度がより高く、微結晶サイズがより大きく、単一螺旋がより密に規則的に配列されたV型結晶澱粉が得られる。
【0007】
本発明の方法は、V-(V6I-、V6II-、V6III-)、V-及びV-型結晶澱粉の結晶形構造及び結晶化度を効果的に改善することができ、各種の風味分子の包埋率や徐放効果に関しても、従来技術よりも明らかに向上させ、製品の実際の使用価値を顕著に高め、澱粉系食品の風味を保持するための新しい技術を提供し、従来の風味分子の包埋や徐放の技術の発展形である。
【0008】
本発明の第1目的は、
高アミロースに対して130~135℃で乾熱非晶質化処理を10~12min(分)行い、非晶質化澱粉を得る、非晶質化処理のステップ(1)と、
非晶質化澱粉と水を30質量%~40質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比がそれぞれ80%~85%、70%~75%、55%~60%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、40~60℃で30~40min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度範囲の異なるGSV6、GSV7、GSV8分級澱粉を得る、アルコール沈殿・分級のステップ(2)と、
プラズマ活性水を用いて、GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉をそれぞれ5質量%~7質量%の澱粉乳に調製し、次に、1-デカノール、4,5-オクタンジオン、及びδ-デカラクトンの水溶液をそれぞれ、調製したGSV6澱粉乳と混合し、2-アセチルピリジンの水溶液を調製したGSV7澱粉乳と混合し、α-ピネンの水溶液を調製したGSV8澱粉乳と混合し、混合乳を得た後、混合乳をシールし、周波数可変超音波処理をかけて、周波数可変超音波処理後の複合乳を得る、複合化のステップ(3)と、
周波数可変超音波処理後の複合乳を5~10℃/minの平均冷却速度で3~5℃に迅速に冷却し、この温度で20~40min結晶化させ、次に、20~30℃の環境に移して2~4h結晶化させ、その後、遠心分離し、洗浄して乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV型結晶澱粉を得る、冷却・結晶化のステップ(4)と、を含む、風味分子を複合化したV型結晶澱粉の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の一実施形態では、ステップ(1)の前記高アミロースは、ハイアミロースコーンスターチ、ハイアミロースライススターチを含むが、これらに限定されず、高アミロース中のアミロースの含有量は50%以上である。
【0010】
本発明の一実施形態では、ステップ(1)の前記乾熱非晶質化処理が、高温乾熱技術によって澱粉結晶を破壊し、澱粉糊化度を90%以上にすることである。
【0011】
本発明において、前記ステップ(2)では、無水エタノールと澱粉乳の体積比が異なると、重合度範囲の異なる分級澱粉が得られ、3つの並列スキームが得られる。
【0012】
本発明の一実施形態では、ステップ(2)の前記アルコール沈殿・分級は、重合度範囲の異なるGSV6、GSV7、GSV8分級澱粉を得るためのものであり、単一螺旋キャビティのサイズの異なるV型結晶の形成に有利であり、前記GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉の重合度は、それぞれ10~20、25~35、40~60である。
【0013】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)の前記プラズマ活性水の製造方法において、蒸留水を直径2.7cm、高さ12cmの円筒管に入れて、プラズマジェットプローブと水面との間のガスの距離が25mmである条件下で、大気圧プラズマジェット装置により30~60s(秒)活性化させ、pH 5~6のプラズマ活性水を得る。
【0014】
本発明において、前記ステップ(3)では、異なる風味分子水溶液(1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトン、2-アセチルピリジン、α-ピネン)が使用されると、異なる複合乳が得られ、5つの並列スキームが得られる。その中で、1-デカノール、4,5-オクタンジオン又はδ-デカラクトンの水溶液が使用される場合、GSV6澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V6I-、V6II-、V6III-型結晶澱粉がそれぞれ得られ、2-アセチルピリジンの水溶液が使用される場合、GSV7澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V-型結晶澱粉が得られ、α-ピネンの水溶液が使用される場合、GSV8澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V-型結晶澱粉が得られる。
【0015】
本発明では、係る1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトン、2-アセチルピリジン、α-ピネンの水溶液とは、それらの物質の分散液を指し、つまり、それらの物質を水に加えて均一に混合した分散液であり、ボルテックス混合、高速撹拌混合、超音波混合などのいずれかの方式としてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)の前記1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトンの水溶液、2-アセチルピリジンの水溶液、α-ピネンの水溶液中、1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトン、2-アセチルピリジン、α-ピネンと水の質量比は5~10mg:1mLであり、具体的な製造方法は、1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトン、2-アセチルピリジン、α-ピネンをそれぞれ水に70~90℃で10~15minかけて均一に分散させることである。
【0017】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)の前記1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトンの水溶液と、調製したGSV6澱粉乳との体積比は、0.08~0.10:1であり、2-アセチルピリジンの水溶液と、調製したGSV7澱粉乳との体積比は、0.08~0.12:1であり、α-ピネンの水溶液と、調製したGSV8澱粉乳との体積比は、0.10~0.12:1である。
【0018】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)の前記シールとは、PAPE真空包装袋(ナイロン-ポリエチレン複合袋)に入れてシールすることである。
【0019】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)の前記周波数可変超音波処理は、20~40、40~60、及び60~80kHzの周波数超音波で20~30、10~20、及び0~10minそれぞれ処理することであり、オンオフの間隔を10~30sとする。
【0020】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)の前記周波数可変超音波処理に使用される装置は、出力が600W、温度が70~90℃である。
【0021】
本発明の一実施形態では、ステップ(4)の前記遠心分離とは、5000×gで15min遠心分離し、沈殿を収集することである。
【0022】
本発明の一実施形態では、ステップ(4)の前記洗浄とは、エタノールを用いた洗浄である。
【0023】
本発明の一実施形態では、ステップ(4)の前記乾燥とは、45~50℃で10~12h乾燥させることである。
【0024】
本発明の第2目的は、本発明の前記方法によって風味分子を複合化したV型結晶澱粉を製造することである。
【0025】
本発明の一実施形態では、前記V型結晶澱粉は、V6I-、V6II-、V6III-、V-、及びV-型結晶澱粉を含む。
【0026】
本発明の第3目的は、食品分野における、本発明の前記風味分子を複合化したV型結晶澱粉の使用である。
【0027】
本発明の第4目的は、
高アミロースに対して130~135℃で乾熱非晶質化処理を10~12min行い、非晶質化澱粉を得る、非晶質化処理のステップ(1)と、
非晶質化澱粉と水を30質量%~40質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比がそれぞれ80%~85%、70%~75%、55%~60%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、40~60℃で30~40min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度範囲の異なるGSV6、GSV7、GSV8分級澱粉を得る、アルコール沈殿・分級のステップ(2)と、
プラズマ活性水を用いて、GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉をそれぞれ5質量%~7質量%の澱粉乳に調製し、次に、1-デカノール、4,5-オクタンジオン、及びδ-デカラクトンの水溶液をそれぞれ、調製したGSV6澱粉乳と混合し、2-アセチルピリジンの水溶液を調製したGSV7澱粉乳と混合し、α-ピネンの水溶液を調製したGSV8澱粉乳と混合し、混合乳を得た後、混合乳をシールし、周波数可変超音波処理をかけて、周波数可変超音波処理後の複合乳を得る、複合化のステップ(3)と、
周波数可変超音波処理後の複合乳を5~10℃/minの平均冷却速度で3~5℃に迅速に冷却し、この温度で20~40min結晶化させ、次に、20~30℃の環境に移して2~4h結晶化させ、その後、遠心分離し、洗浄して乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV型結晶澱粉を得る、冷却・結晶化のステップ(4)と、を含む、澱粉系食品中風味分子の包埋率及び風味徐放効果を向上させる方法を提供することである。
【0028】
本発明の第5目的は、V6I-、V6II-、V6III-、V-又はV-型結晶澱粉のうちのいずれか1種又は複数種を含む本発明のV型結晶澱粉を含有する、調味料を提供することである。
【0029】
前記調味料は、現地法で認められる範囲内の添加量で食品に添加してもよく、前記添加量とは、換算されたV型結晶澱粉の風味分子量である。
【0030】
一実施形態では、前記V型結晶澱粉は、1-デカノールを複合化したV6I-型結晶澱粉で、米・小麦粉製品、焼き菓子、菓子などの食品に使用され得る。前記V型結晶澱粉は、4,5-オクタンジオンを複合化したV6II-型結晶澱粉であり、米・小麦粉製品、焼き菓子、菓子などの食品に使用され得る。前記V型結晶澱粉は、δ-デカラクトンを複合化したV6III-型結晶澱粉で、乳製品、ソフトドリンク、冷飲料、菓子、焼き菓子などの食品に使用され得る。前記V型結晶澱粉は、2-アセチルピリジンを複合化したV-型結晶澱粉で、米・小麦粉製品、ナッツ、菓子、焼き菓子などの食品に使用され得る。前記V型結晶澱粉は、α-ピネンを複合化したV8-型結晶澱粉で、ソフトドリンク、冷飲料、焼き菓子などの食品に使用され得る。
【0031】
本発明では、風味分子は以下のとおりである。
(1)1-デカノール:ろうの香り、甘い香り、花の香り、フルーティーな香りがあり、GB 2760-2014規定により、香料として製造上必要な適量で添加することが認められており、米・小麦粉製品、焼き菓子、菓子、飲料などの食品に使用され得る。
(2)4,5-オクタンジオン:クリームのような香りがあり、GB 2760-2014規定により、香料として製造上必要な適量で添加することが認められており、米・小麦粉製品、焼き菓子、菓子などの食品に使用され得る。
(3)δ-デカラクトン:ココナッツと桃のようなフルーティーな香りがあり、低濃度の場合はクリームの香りをしており、GB 2760-2014規定により、香料として製造上必要な適量で添加することが認められており、乳製品、ソフトドリンク、冷飲料、菓子、焼き菓子などの食品に使用され得る。
(4)2-アセチルピリジン:ポップコーンやナッツのような香りがあり、GB 2760-2014規定により、香料として米・小麦粉製品、菓子、ナッツ、焼き菓子などに使用され得る。
(5)α-ピネン:さわやかな松の木のような香りがあり、GB 2760-2014規定により、香料として製造上必要な適量で添加することが認められており、ソフトドリンク、冷飲料、焼き菓子などの食品に使用され得る。
【発明の効果】
【0032】
(1)本発明では、乾熱非晶質化によって澱粉を十分にデクラスタリングし、澱粉の糊化度を90%以上にし、澱粉の濃度を効果的に向上させ、分級澱粉の製造効率を顕著に高める。
(2)本発明では、アルコール沈殿・分級処理により、重合度範囲の異なる分級澱粉を取得し、単一螺旋キャビティのサイズの異なるV型結晶を形成するのに適した澱粉原料が得られる。
(3)本発明では、プラズマ活性水を利用して酸性溶媒環境を提供することによって、澱粉鎖の流動性を高め、澱粉の溶解度を向上させ、より多くの単一螺旋キャビティにより対象分子を捕捉するための部位をより多く提供し、また、周波数可変超音波支援複合化方法と組み合わせることで、風味分子に対して高包埋率や徐放効果があるV6I-、V6II-、V6III-、V-、及びV-型結晶澱粉を得ることができる。プラズマ活性水と周波数可変超音波とを組み合わせて複合化したV型結晶澱粉は、短距離秩序や結晶化度が顕著に改善され、このような秩序結晶構造は、包埋される風味分子を安定化させ、環境の変化に対する抵抗性を高めることに有利である。
(4)本発明では、高速冷却及び結晶化方法により結晶核が大量で形成され、適切な温度で保温することにより結晶の成長が促進され、これは、風味分子を複合化したV型結晶澱粉の更なる結晶化や微結晶の更なる大型化に有利であり、結晶構造が完備される傾向があり、これにより、複合物中の風味分子の放出時間を延ばし、複合物の安定性を向上させるのに有利である。
(5)本発明では、風味分子を複合化したV型結晶澱粉中の風味分子の包埋や徐放効果についてさらに試験した。試験の結果、通常の水熱処理を受けた澱粉乳で風味分子を吸着して包埋する場合、吸着率は最高で8.2%である一方、本発明で製造された、風味分子を複合化したV型結晶澱粉では、風味分子の包埋率が最高で68.2%に達する。各種のV型結晶澱粉と複合化した風味分子は、包埋率や徐放効果のいずれも顕著に向上し、V型結晶のいずれの種類も、各種の風味分子の包埋や制御放出に適している。
(6)本発明は、様々な風味分子を用いて、様々な結晶澱粉を形成し、次に、結晶特性を制御することによって貯蔵や後加工中の風味徐放を実現するものであり、得られた風味分子を複合化したV型結晶澱粉では、風味分子の包埋率や徐放効果が従来技術よりも顕著に向上し、澱粉系食品の風味を保持するための新しい技術を提供することが可能となり、従来の風味分子の包埋および徐放技術の発展形であり、そのV型結晶澱粉は、配合材料として澱粉系食品に添加されて食品の風味をよくすることもでき、産業上の付加価値が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施例1~5で選択された各種の風味分子が澱粉結晶形に与える影響である。
図2】各種の処理方式がV6I-型結晶構造に与える影響である。A:乾熱非晶質化処理(比較例2のスキーム6)単独、B:乾熱非晶質化+アルコール沈殿・分級(比較例2のスキーム3)、C:乾熱非晶質化+アルコール沈殿・分級+プラズマ活性水+周波数可変超音波(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、実施例は本発明をよりよく説明するためのものであり、本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。
【0035】
試験方法
1.風味分子の包埋率についての試験方法
(1)検量線の測定:適量の風味分子を無水エタノールに加え、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、及び0.6μL/mLの風味分子無水エタノール溶液とする。ガスクロマトグラフィー法による分析により、対応するピーク面積を得て、風味分子の体積濃度を横座標、測定した風味分子のピーク面積を縦座標として、対応する回帰方程式を得る。
(2)複合物中の風味分子の含有量の測定:風味分子を複合化したV型結晶澱粉20mgを正確に量り、無水エタノール5mLを加え、密閉して均一に混合し、60℃の条件で30min超音波処理し、風味分子をV型結晶のキャビティから無水エタノールに移し、ガスクロマトグラフィー分析により対応するピーク面積を得て、回帰方程式を用いて、複合物中の風味分子の含有量を算出する。
包埋率の計算式は以下の式(1)に示される。
包埋率%=複合物中の風味分子のモル数(mol)/初期に添加された風味分子のモル数(mol)×100 (1)
ガスクロマトグラフィーの条件:DB-WAXクロマトグラフカラム(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm);注入口温度:200℃;検出器温度:250℃;キャリアガス:窒素、流速3.0mL/min。ガスクロマトグラフィーの測定手順:初期温度を35℃として、5min保温し、次に、5℃/min速度で180℃昇温し、10℃/minの速度で180℃から250℃に昇温し、5min保温する。
2.風味成分の徐放効果についての試験
複合物を20℃、相対湿度12%の環境に置いて、96h、240h、及び720hに、同量の複合物(5.0g)をそれぞれ採取し、20mLヘッドスペースバイアルに素早く移し、ガスクロマトグラフィーにより各風味分子のヘッドスペース濃度を測定する。
ガスクロマトグラフィーの条件:DB-WAXクロマトグラフカラム(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25 μm);注入口温度:200℃;検出器温度:250℃;キャリアガス:窒素、流速3.0mL/min。ガスクロマトグラフィーの測定手順:初期温度を35℃として、5min保温し、次に、5℃/minの速度で180℃に昇温し、10℃/minの速度で180℃から250℃に昇温し、5min保温する。
【0036】
実施例1
風味分子を複合化したV6I-型結晶澱粉の製造方法であって、下記のステップを含む。
(1)非晶質化処理
ハイアミロースコーンスターチ(アミロースの含有量は80%)に対して135℃で乾熱非晶質化処理を12min行い、非晶質化澱粉を得た。
(2)アルコール沈殿・分級
非晶質化澱粉と水を35質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比が80%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、50℃で30min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度が10~20のGSV6澱粉を得た。
(3)複合化
蒸留水を直径2.7cm、高さ12cmの円筒管に入れて、プラズマジェットプローブと水面との間のガスの距離が25mmである条件で、大気圧プラズマジェット装置により30s活性化させ、pH 6のプラズマ活性水を得た。;
プラズマ活性水を用いてGSV6澱粉を6質量%の澱粉乳に調製し、次に、濃度10mg/mLの1-デカノール水溶液(即ち、1-デカノールの分散液で、1-デカノールを水に加えてボルテックス混合により均一に混合したものであってもよい)10mLを、調製したGSV6澱粉乳100mLと混合し、混合乳を得た。その後、混合乳をPAPE真空包装袋(ナイロン-ポリエチレン複合袋)に入れてシールした。次いで、シールして包装した混合乳に20、40、及び60 kHzの周波数の超音波を30、20及び10min作用させ、オンオフの間隔を30sとし、周波数可変超音波処理に使用される装置の出力を600W、温度を80℃とし、周波数可変超音波処理後の複合乳を得た。
(4)冷却及び結晶
周波数可変超音波処理後の複合乳を8℃/minの平均冷却速度で4℃に迅速に冷却し、この温度で30min結晶化させ、次に、25℃の環境に移して3h結晶化させた。冷却及び結晶後、5000×gで15min遠心分離し、沈殿を収集して、無水エタノールで3回洗浄し、乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV6I-型結晶澱粉を得た。
【0037】
実施例2
風味分子を複合化したV6II-型結晶澱粉の製造方法であって、下記のステップを含む。
(1)非晶質化処理
ハイアミロースコーンスターチ(アミロースの含有量は80%)に対して135℃で乾熱非晶質化処理を12min行い、非晶質化澱粉を得た。
(2)アルコール沈殿・分級
非晶質化澱粉と水を35質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比が80%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、50℃で30min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度が10~20のGSV6澱粉を得た。
(3)複合化
蒸留水を直径2.7cm、高さ12cmの円筒管に入れて、プラズマジェットプローブと水面との間のガスの距離が25mmである条件で、大気圧プラズマジェット装置により30s活性化させ、pH 6のプラズマ活性水を得た。
プラズマ活性水を用いてGSV6澱粉を6質量%の澱粉乳に調製し、次に、濃度10mg/mLの4,5-オクタンジオン水溶液(即ち、4,5-オクタンジオンの分散液で、4,5-オクタンジオンを水に加えてボルテックス混合により均一に混合したものであってもよい)10mLを調製したGSV6澱粉乳100mLと混合し、混合乳を得た。その後、混合乳をPAPE真空包装袋(ナイロン-ポリエチレン複合袋)に入れてシールした。次いで、シールして包装した混合乳に20、40、及び60 kHzの周波数の超音波を30、20及び10min作用させ、オンオフの間隔を30sとし、周波数可変超音波処理に使用される装置の出力を600W、温度を80℃とし、周波数可変超音波処理後の複合乳を得た。
(4)冷却及び結晶
周波数可変超音波処理後の複合乳を8℃/minの平均冷却速度で4℃に迅速に冷却し、この温度で30min結晶化させ、次に、25℃の環境に移して3h結晶化させた。冷却及び結晶後、5000×gで15min遠心分離し、沈殿を収集して、無水エタノールで3回洗浄し、乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV6II-型結晶澱粉を得た。
【0038】
実施例3
風味分子を複合化したV6III-型結晶澱粉の製造方法であって、下記のステップを含む。
(1)非晶質化処理
ハイアミロースコーンスターチ(アミロースの含有量は80%)に対して135℃で乾熱非晶質化処理を12min行い、非晶質化澱粉を得た。
(2)アルコール沈殿・分級
非晶質化澱粉と水を35質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比が80%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、50℃で30min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度が10~20のGSV6澱粉を得た。
(3)複合化
蒸留水を直径2.7cm、高さ12cmの円筒管に入れて、プラズマジェットプローブと水面との間のガスの距離が25mmである条件で、大気圧プラズマジェット装置により30s活性化させ、pH 6のプラズマ活性水を得た。
プラズマ活性水を用いてGSV6澱粉を6質量%の澱粉乳に調製し、次に、濃度10mg/mLのδ-デカラクトン水溶液10mLを調製したGSV6澱粉乳100mLと混合し、混合乳を得た。その後、混合乳をPAPE真空包装袋(ナイロン-ポリエチレン複合袋)に入れてシールした。次いで、シールして包装した混合乳に20、40、及び60 kHzの周波数の超音波を30、20及び10min作用させ、オンオフの間隔を30sとし、周波数可変超音波処理に使用される装置の出力を600W、温度を80℃とし、周波数可変超音波処理後の複合乳を得た。
(4)冷却及び結晶
周波数可変超音波処理後の複合乳を8℃/minの平均冷却速度で4℃に迅速に冷却し、この温度で30min結晶化させ、次に、25℃の環境に移して3h結晶化させた。冷却及び結晶後、5000×gで15min遠心分離し、沈殿を収集して、無水エタノールで3回洗浄し、乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV6III-型結晶澱粉を得た。
【0039】
実施例4
風味分子を複合化したV-型結晶澱粉の製造方法であって、下記のステップを含む。
(1)非晶質化処理
ハイアミロースコーンスターチ(アミロースの含有量は80%)に対して135℃で乾熱非晶質化処理を12min行い、非晶質化澱粉を得た。
(2)アルコール沈殿・分級
非晶質化澱粉と水を35質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比が75%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、50℃で40min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度が25~35のGSV7澱粉を得た。
(3)複合化
蒸留水を直径2.7cm、高さ12cmの円筒管に入れて、プラズマジェットプローブと水面との間のガスの距離が25mmである条件で、大気圧プラズマジェット装置により30s活性化させ、pH 6のプラズマ活性水を得た。
プラズマ活性水を用いてGSV7澱粉を6質量%の澱粉乳に調製し、次に、濃度10mg/mLの2-アセチルピリジン水溶液10mLを調製したGSV7澱粉乳100mLと混合し、混合乳を得た。その後、混合乳をPAPE真空包装袋(ナイロン-ポリエチレン複合袋)に入れてシールした。次いで、シールして包装した混合乳に20、40、及び60 kHzの周波数の超音波を30、20及び10min作用させ、オンオフの間隔を30sとし、周波数可変超音波処理に使用される装置の出力を600W、温度を80℃とし、周波数可変超音波処理後の複合乳を得た。
(4)冷却及び結晶
周波数可変超音波処理後の複合乳を8℃/minの平均冷却速度で4℃に迅速に冷却し、この温度で30min結晶化させ、次に、25℃の環境に移して3h結晶化させた。冷却及び結晶後、5000×gで15min遠心分離し、沈殿を収集して、無水エタノールで3回洗浄し、乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
【0040】
実施例5
風味分子を複合化したV-型結晶澱粉の製造方法であって、下記のステップを含む。
(1)非晶質化処理
ハイアミロースコーンスターチ(アミロースの含有量は80%)に対して135℃で乾熱非晶質化処理を12min行い、非晶質化澱粉を得た。
(2)アルコール沈殿・分級
非晶質化澱粉と水を35質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比が60%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、60℃で40min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度が40~60のGSV8澱粉を得た。
(3)複合化
蒸留水を直径2.7cm、高さ12cmの円筒管に入れて、プラズマジェットプローブと水面との間のガスの距離が25mmである条件で、大気圧プラズマジェット装置により30s活性化させ、pH 6のプラズマ活性水を得た。
プラズマ活性水を用いてGSV8澱粉を6質量%の澱粉乳に調製し、次に、濃度10mg/mLのα-ピネン水溶液10mLを調製したGSV8澱粉乳100mLと混合し、混合乳を得た。その後、混合乳をPAPE真空包装袋(ナイロン-ポリエチレン複合袋)に入れてシールした。次いで、シールして包装した混合乳に20、40、及び60 kHzの周波数の超音波を30、20及び10min作用させ、オンオフの間隔を30sとし、周波数可変超音波処理に使用される装置の出力を600W、温度を80℃とし、周波数可変超音波処理後の複合乳を得た。
(4)冷却及び結晶
周波数可変超音波処理後の複合乳を8℃/minの平均冷却速度で4℃に迅速に冷却し、この温度で30min結晶化させ、次に、25℃の環境に移して3h結晶化させた。冷却及び結晶後、5000×gで15min遠心分離し、沈殿を収集して、無水エタノールで3回洗浄し、乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
実施例1~5で得られたV型結晶澱粉について性能試験を行い、試験結果を以下に示す。
表1から分かるように、5種類のV型結晶澱粉の中では、風味分子の包埋率は最高で68.2%に達し、最低で65.4%であった。20℃、相対湿度12%の環境では、いずれの複合物も、720hの検出時点にも風味分子の放出が確認された。
[表1]
図1は、実施例1~5で選択された各種の風味分子が澱粉の結晶形に与える影響である。図1から分かるように、風味分子が異なると、澱粉には、異なるV型結晶構造が形成される。
【0041】
実施例6
実施例1~3のステップ(2)における非晶質化澱粉と水を、40質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比を85%にした。ステップ(3)では、プラズマ活性水のpHは5であり、澱粉乳の濃度は5%であり、超音波作用時間は20、10及び0minであった。それ以外、残りは、実施例1~3と同様にして、風味分子を複合化したV6I-型、V6II-型、及びV6III-型結晶澱粉を得た。
実施例4のステップ(2)における非晶質化澱粉と水を、40質量%の高濃度澱粉乳を調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比を70%にした。ステップ(3)では、プラズマ活性水のpHは5であり、澱粉乳の濃度は5%であり、超音波作用時間は20、10、及び0minであった。それ以外、残りは、実施例4と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
実施例5のステップ(2)における無水エタノール及び澱粉乳を40℃で40min保温した。ステップ(3)では、プラズマ活性水のpHは5であり、澱粉乳の濃度は5%であり、超音波作用時間は20、10、及び0minであった。それ以外、残りは、実施例5と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
V型結晶澱粉について性能試験を行い、試験結果を以下に示す。
表2から分かるように、5種類のV型結晶澱粉の中では、風味分子の包埋率は最高で65.1%に達し、最低で62.7%であった。20℃、相対湿度12%の環境では、いずれの複合物も、720hの検出時点にも風味分子の放出が確認された。
[表2]
【0042】
実施例7
実施例1~3のステップ(1)における非晶質化処理の温度を130℃にした。ステップ(3)では、澱粉乳の濃度は7%であり、周波数可変超音波処理における温度は90℃であった。ステップ(4)では、冷却及び結晶においては、5℃/minの平均冷却速度で3℃に迅速に冷却し、この温度で20min結晶化させ、次に、20℃の環境に移して2h結晶化させた。それ以外、残りは、実施例1~3と同様にして、風味分子を複合化したV6I-型、V6II-型、及びV6III-型結晶澱粉を得た。
実施例4のステップ(1)では、非晶質化処理温度を130℃にした。ステップ(2)では、非晶質化澱粉及び水を30質量%の高濃度澱粉乳に調製した。ステップ(3)では、澱粉乳の濃度は7質量%であり、周波数可変超音波処理における温度は90℃であった。ステップ(4)では、冷却及び結晶においては、5℃/minの平均冷却速度で3℃に迅速に冷却し、この温度で20min結晶化し、次に、20℃の環境に移して2h結晶化させた。それ以外、残りは、実施例4と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
実施例5のステップ(1)では、非晶質化処理温度を130℃にした。ステップ(2)では、非晶質化澱粉及び水を30質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比を55%にした。ステップ(3)では、澱粉乳の濃度は7質量%であり、周波数可変超音波処理は、40、60、及び80kHzの周波数超音波を用いた。ステップ(4)では、冷却及び結晶においては、5℃/minの平均冷却速度で3℃に迅速に冷却し、この温度で20min結晶化させ、次に、20℃の環境に移して、2h結晶化させた。それ以外、残りは、実施例5と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
V型結晶澱粉について性能試験を行い、試験結果を以下に示す。
表3から分かるように、5種類のV型結晶澱粉の中で、風味分子の包埋率は最高で66.9%に達し、最低で64.2%であった。20℃、相対湿度12%の環境では、いずれの複合物も、720hの検出時点にも風味分子の放出が確認された。
[表3]
【0043】
比較例1
風味分子を複合化したV型結晶澱粉の製造方法であって、下記のステップを含む。
(1)脱イオン水を用いて、ハイアミロースコーンスターチ(アミロースの含有量は80%)を、澱粉の乾燥基準質量が6%の澱粉乳に調製し、次に、沸騰水浴に入れて、加熱しながら90min持続して撹拌し、糊化澱粉乳を得た。
(2)糊化澱粉乳100mLを80℃に迅速に冷却すると、風味化合物の水溶液(濃度10mg/mLの1-デカノール水溶液、濃度10mg/mLの4,5-オクタンジオン水溶液、濃度10mg/mLのδ-デカラクトン水溶液、濃度10mg/mLの2-アセチルピリジン水溶液、及び濃度10mg/mLのα-ピネン水溶液)10mLと混合し、混合乳を得て、シールして、80℃で撹拌し続けて20min反応させた。その後、複合乳を冷却して、室温で24h貯蔵し、5000×gで15min遠心分離し、沈殿を収集して、無水エタノールで3回洗浄し、ベークし、各種の構造のV型結晶澱粉を得た。
得られたV型結晶澱粉について性能試験を行い、試験結果を以下に示す。
表4から分かるように、5種類のV型結晶澱粉の中で、風味分子の包埋率は最高で8.2%しかなかった。20℃、相対湿度12%の環境では、いずれの複合物も、96hの時点に風味分子が検出されなかった。
[表4]
実施例1~5と比較例1を比較した結果、乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、及びプラズマ活性水と周波数可変超音波との組み合わせを利用せずに製造されたサンプルでは、風味分子の包埋率が低く、常温・乾燥の貯蔵条件で複合中の風味分子の放出速度が速く、食品産業への応用に不利である。比較例1と比べて、実施例1~5の方法では、風味分子の吸着率及び常温・乾燥の貯蔵条件での放出時間が大幅に改善された。乾熱非晶質化により澱粉を十分にデクラスタリングしてから、アルコール沈殿・分級を行うことにより、様々な適切なV型結晶で形成された分級澱粉を得た。プラズマ活性水による良好な溶媒環境では、アミロースは粒子から分離して拡散しやすく、これにより、澱粉の溶解度が高まり、プラズマで活性化された水中の酸性物質の水解により澱粉の流動が促進され、対象分子を捕捉するための部位が多く提供され、また、周波数可変超音波による補助作用と組み合わせることで、風味分子が、非晶質粒状澱粉の内部のキャビティ間の界面と相互作用して、このキャビティに入ることがより容易になり、これによって、より多くの風味分子が包埋され、結晶化度や微結晶のサイズがより大きなV型結晶澱粉が得られた。処理後のV型結晶は、短距離秩序や結晶化度が改善され、結晶構造が完備される傾向がある。このような秩序結晶構造は、包埋される風味分子を安定化させ、環境の変化に対する抵抗性を高めることに有利であり、複合物中の風味分子の放出時間を延ばし、複合物の安定性を高める。このようにして、効果的な包埋や澱粉系製品中の風味分子の徐放化の目的が達成される。
【0044】
比較例2
スキーム1:実施例1のステップ(1)を省略して、ハイアミロースコーンスターチと水を直接加熱して糊化した以外、残りは、実施例1と同様にして、風味分子を複合化したV6I-型結晶澱粉を得た。
スキーム2:実施例1のステップ(2)を省略して、ハイアミロースコーンスターチとプラズマ活性水を直接混合し、澱粉乳を製造した以外、残りは、実施例1と同様にして、風味分子を複合化したV6I-型結晶澱粉を得た。
スキーム3:実施例1のステップ(3)のプラズマ活性水を脱イオン水に変更し、また、超音波処理を行わなかった以外、残りは、実施例1と同様にして、風味分子を複合化したV6I-型結晶澱粉を得た。
スキーム4:実施例1のステップ(1)及び(2)を省略し、ハイアミロースコーンスターチとプラズマ活性水を澱粉乳に直接製造した以外、残りは、実施例1と同様にして、風味分子を複合化したV6I-型結晶澱粉を得た。
スキーム5:実施例1のステップ(1)及び(3)を省略して、ハイアミロースコーンスターチと水を直接加熱して糊化し、重合度が10~20のGSV6澱粉を得て、次に、水と混合して澱粉乳を製造し、次に、シール、冷却及び結晶、遠心分離、洗浄と乾燥をした以外、残りは、実施例1と同様にして、風味分子を複合化したV6I-型結晶澱粉を得た。
スキーム6:実施例1のステップ(2)及び(3)を省略して、ステップ(1)で得られた非晶質化澱粉と水を混合して澱粉乳を製造し、次に、シール、冷却及び結晶、遠心分離、洗浄と乾燥をした以外、残りは、実施例1と同様にして、風味分子を複合化したV6I-型結晶澱粉を得た。
スキーム1~6の条件は以下に示される。
[表5] 操作条件
注:「+」は、当該操作を行うこと、「-」は、当該操作を行わないことを示す。残りの操作条件は、すべて本発明の実施範囲と同様。
得られたV型結晶澱粉について性能試験を行った。その試験結果を以下に示す。
表6から分かるように、乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波のいずれか単独、又は乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波のうちの2つずつの組み合わせのいずれによっても、風味分子の包埋率化及び徐放効果が得られず、3つを組み合わせた場合にのみ、風味分子の高包埋率と徐放効果のある澱粉が得られた。また、乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波の3つには、相乗的効果がある。
[表6]
注:「√」は、風味分子が確認されたこと、「×」は、風味分子が確認できなかったことを示す。
図2は、各種の処理方式がV6I-型結晶構造に与える影響である。A:乾熱非晶質化処理(比較例2のスキーム6)単独、B:乾熱非晶質化+アルコール沈殿・分級(比較例2のスキーム3)、C:乾熱非晶質化+アルコール沈殿・分級+プラズマ活性水+周波数可変超音波(実施例1)。図2から分かるように、3つの技術を組み合わせた場合にのみ、結晶構造が完備される傾向があり、高結晶化度がより高いV型結晶が得られ、風味分子の包埋や徐放に有利である。
【0045】
比較例3
スキーム1:実施例4のステップ(1)を省略して、ハイアミロースコーンスターチと水を直接加熱して糊化した以外、残りは、実施例4と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム2:実施例4のステップ(2)を省略して、ハイアミロースコーンスターチとプラズマ活性水を直接混合して澱粉乳を製造した以外、残りは、実施例4と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム3:実施例4のステップ(3)のプラズマ活性水を脱イオン水にし、また、超音波処理を行わなかった以外、残りは、実施例4と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム4:実施例4のステップ(1)及び(2)を省略して、ハイアミロースコーンスターチとプラズマ活性水を澱粉乳に直接製造した以外、残りは、実施例4と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム5:実施例4のステップ(1)及び(3)を省略して、ハイアミロースコーンスターチと水を直接加熱して糊化し、重合度が25~35のGSV7澱粉を得て、次に、水と混合して澱粉乳を製造し、次に、シール、冷却及び結晶、遠心分離、洗浄と乾燥をした以外、残りは、実施例4と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム6:実施例4のステップ(2)及び(3)を省略して、ステップ(1)で得られた非晶質化澱粉と水を混合して澱粉乳を製造し、次に、シール、冷却及び結晶、遠心分離、洗浄と乾燥をした以外、残りは、実施例4と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム1~6の条件は以下に示される。
[表7] 操作条件
注:「+」は、当該操作を行うこと、「-」は、当該操作を行わないことを示す。残りの操作条件は、いずれも本発明の実施範囲内である。
得られたV型結晶澱粉について性能試験を行い、試験結果を以下に示す。
表8から分かるように、乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波の何れか単独、又は乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波の2つずつの組み合わせのいずれによっても、風味分子の包埋率化及び徐放効果が得られず、3つを組み合わせた場合にのみ、風味分子の高包埋率と徐放効果のある澱粉が得られた。また、乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波の3つは、相乗的効果がある。
[表8]
注:「√」は、風味分子が確認されたこと、「×」は、風味分子が確認できなかったことを示す。
【0046】
比較例4
スキーム1:実施例5のステップ(1)を省略して、ハイアミロースコーンスターチと水を直接加熱して糊化した以外、残りは、実施例5と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム2:実施例5のステップ(2)を省略して、ハイアミロースコーンスターチとプラズマ活性水を直接混合して澱粉乳を製造した以外、残りは、実施例5と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム3:実施例5のステップ(3)のプラズマ活性水を脱イオン水にし、また、超音波処理を行わなかった以外、残りは、実施例5と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム4:実施例5のステップ(1)及び(2)を省略して、ハイアミロースコーンスターチとプラズマ活性水を澱粉乳に直接製造した以外、残りは、実施例5と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム5:実施例5のステップ(1)及び(3)を省略して、ハイアミロースコーンスターチと水を直接加熱して糊化し、重合度が40~60のGSV8澱粉を得て、次に、水と混合して澱粉乳を製造し、次に、シール、冷却及び結晶、遠心分離、洗浄と乾燥をした以外、残りは、実施例5と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム6:実施例5のステップ(2)及び(3)を省略して、ステップ(1)で得られた非晶質化澱粉と水を混合して澱粉乳を製造し、次に、シール、冷却及び結晶、遠心分離、洗浄と乾燥をした以外、残りは、実施例5と同様にして、風味分子を複合化したV-型結晶澱粉を得た。
スキーム1~6の条件は以下に示される。
[表9] 操作条件
注:「+」は、当該操作を行うこと、「-」は、当該操作を行わないことを示す。残りの操作条件は、いずれも本発明の実施範囲内である。
得られたV型結晶澱粉について性能試験を行った。その試験結果を以下に示す。
表10から分かるように、乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波の何れか単独、又は乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波の2つずつの組み合わせのいずれによっても、風味分子の包埋率化及び徐放効果が得られず、3つを組み合わせた場合にのみ、風味分子の高包埋率と徐放効果のある澱粉が得られた。また、乾熱非晶質化、アルコール沈殿・分級、プラズマ活性水+周波数可変超音波の3つは、相乗的効果がある。
[表10]
注:「√」は、風味分子が確認されたこと、「×」は、風味分子が確認できなかったことを示す。
【0047】
実施例8:保存性に優れた黒米粥の加工におけるV型結晶澱粉の調味料としての使用
保存性に優れた黒米粥であって、その加工方法は、具体的には、以下のステップを含む。
S1:原料として玄米と黒米を洗って水を切った。
S2:V7-型結晶澱粉を用いて黒米粥調理システムについて調質を行い、すなわち、V7-型結晶澱粉、白砂糖、米、黒米を質量比1:1:10:10で混合し、その後、米と水の質量比が1:1.5となるように、水を加えて30min浸した。
S3:無菌個包装を行い、30min蒸して、無菌で真空シールした。
S4:冷めてから保管した。
【0048】
以上、本発明を好適な実施例によって開示したが、これらの実施例は本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、各種の変更や修正を行うことができ、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲により定められる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風味分子を複合化したV型結晶澱粉の製造方法であって、
高アミロースに対して130~135℃で乾熱非晶質化処理を10~12min行い、非晶質化澱粉を得る、非晶質化処理のステップ(1)と、
非晶質化澱粉と水を30質量%~40質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比がそれぞれ80%~85%、70%~75%、55%~60%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、40~60℃で30~40min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度範囲の異なるGSV6、GSV7、GSV8分級澱粉を得る、アルコール沈殿・分級のステップ(2)と、
プラズマ活性水を用いて、GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉をそれぞれ5質量%~7質量%の澱粉乳に調製し、次に、1-デカノール、4,5-オクタンジオン、及びδ-デカラクトンの水溶液をそれぞれ、調製したGSV6澱粉乳と混合し、2-アセチルピリジンの水溶液を調製したGSV7澱粉乳と混合し、α-ピネンの水溶液を調製したGSV8澱粉乳と混合し、混合乳を得た後、混合乳をシールし、周波数可変超音波処理をかけて、周波数可変超音波処理後の複合乳を得る、複合化のステップ(3)と、
周波数可変超音波処理後の複合乳を5~10℃/minの平均冷却速度で3~5℃に迅速に冷却し、この温度で20~40min結晶化させ、次に、20~30℃の環境に移して2~4h結晶化させ、その後、遠心分離し、洗浄して乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV型結晶澱粉を得る、冷却・結晶化のステップ(4)と、を含む、製造方法。
【請求項2】
ステップ(2)の前記GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉の重合度が、それぞれ10~20、25~35、40~60である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(3)の前記1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトンの水溶液、2-アセチルピリジンの水溶液、α-ピネンの水溶液中の1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトン、2-アセチルピリジン、α-ピネンと水との質量比は、5~10mg:1mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(3)の前記1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトンの水溶液と調製したGSV6澱粉乳との体積比は0.08~0.10:1であり、2-アセチルピリジンの水溶液と調製したGSV7澱粉乳との体積比は0.08~0.12:1であり、α-ピネンの水溶液と調製したGSV8澱粉乳との体積比は0.10~0.12:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)の前記周波数可変超音波処理は、20~40、40~60、及び60~80kHzの周波数の超音波を用いてそれぞれ20~30、10~20、及び0~10min処理することであり、オンオフの間隔を10~30sとする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(2)で無水アルコールと澱粉乳の異なる体積比を使用して異なる重合度範囲の分級澱粉を得ることができるため、そのうちの1つの体積比を選択すればよく、
ステップ(3)で異なる風味分子水溶液を使用して異なる複合乳を得ることができるため、1種類の複合乳を選択して冷却及び結晶を行えばよく、1-デカノール、4,5-オクタンジオン又はδ-デカラクトンの水溶液が使用される場合、GSV6澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V6I-、V6II-、V6III-型結晶澱粉がそれぞれ得られ、2-アセチルピリジンの水溶液が使用される場合、GSV7澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V-型結晶澱粉が得られ、α-ピネンの水溶液が使用される場合、GSV8澱粉複合乳が得られ、後で冷却されて結晶化されると、V-型結晶澱粉が得られ、
前記1-デカノール、4,5-オクタンジオン、δ-デカラクトン、2-アセチルピリジン、α-ピネンの水溶液とは、各種の風味物質の分散液であり、すなわち、風味物質を水に加えて均一に混合した分散液である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって製造された風味分子を複合化した、V型結晶澱粉。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって製造された風味分子を複合化した、V型結晶澱粉を含有する調味料。
【請求項9】
前記調味料に含有されるV型結晶澱粉は、V6I-、V6II-、V6III-、V-又はV-型結晶澱粉のうちのいずれか1種又は複数種を含む、請求項8に記載の調味料。
【請求項10】
品分野における、請求項7に記載のV型結晶澱粉の使用。
【請求項11】
前記V型結晶澱粉は調味料として使用され、前記食品は、米・小麦粉製品、焼き菓子、菓子などを含むが、これらに限定されない、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
澱粉系食品中の風味分子の包埋率及び風味徐放効果を向上させる方法であって、
高アミロースに対して130~135℃で乾熱非晶質化処理を10~12min行い、非晶質化澱粉を得る、非晶質化処理のステップ(1)と、
非晶質化澱粉と水を30質量%~40質量%の高濃度澱粉乳に調製し、無水エタノールと澱粉乳との体積比がそれぞれ80%~85%、70%~75%、55%~60%となるように、澱粉乳に無水エタノールを加え、40~60℃で30~40min保温し、アルコール沈殿生成物を分離し、重合度範囲の異なるGSV6、GSV7、GSV8分級澱粉を得る、アルコール沈殿・分級のステップ(2)と、
プラズマ活性水を用いて、GSV6、GSV7、GSV8分級澱粉をそれぞれ5質量%~7質量%の澱粉乳に調製し、次に、1-デカノール、4,5-オクタンジオン、及びδ-デカラクトンの水溶液をそれぞれ、調製したGSV6澱粉乳と混合し、2-アセチルピリジンの水溶液を調製したGSV7澱粉乳と混合し、α-ピネンの水溶液を調製したGSV8澱粉乳と混合し、混合乳を得た後、混合乳をシールし、周波数可変超音波処理をかけて、周波数可変超音波処理後の複合乳を得る、複合化のステップ(3)と、
周波数可変超音波処理後の複合乳を5~10℃/minの平均冷却速度で3~5℃に迅速に冷却し、この温度で20~40min結晶化させ、次に、20~30℃の環境に移して2~4h結晶化させ、その後、遠心分離し、洗浄して乾燥し、篩にかけて、風味分子を複合化したV型結晶澱粉を得る、冷却・結晶化のステップ(4)と、を含む、方法。
【国際調査報告】