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特表2024-536974電力伝送アセンブリ及び電気手術器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電力伝送アセンブリ及び電気手術器具
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20241003BHJP
   A61B 18/00 20060101ALI20241003BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F38/14
A61B17/94
A61B18/00
H02J50/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024507117
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022076155
(87)【国際公開番号】W WO2023052209
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】2113836.7
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK00
(57)【要約】
種々の実施形態は、電力伝送アセンブリを提供する。アセンブリは送信器を含み、送信器は、誘電体材料によって分離された内部導体及び外部導体を有する同軸ケーブルを含む。同軸ケーブルは、同軸ケーブルによって第一電磁(EM)信号が伝達されるとき、外部導体の外側に磁場を発生させるように構成される。またアセンブリは、磁場を使用して誘導結合により送信器から電力を受信するための受信器を含む。いくつかの他の実施形態は、組織治療のための生体組織に電磁(EM)エネルギーを送達するための電気手術器具を提供する。器具は、供給構造体、アプリケータ、及び電力伝送アセンブリを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料によって分離された内部導体及び外部導体を有する同軸ケーブルを含む送信器であって、前記同軸ケーブルによって第一電磁(EM)信号が伝達されるとき、前記同軸ケーブルは前記外部導体の外側に磁場を発生させるように構成される、前記送信器と、
前記磁場を使用して誘導結合により前記送信器から電力を受信するための受信器と、
を含む、電力伝送アセンブリ。
【請求項2】
前記外部導体は、第一螺旋巻き導体を含む、請求項1に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項3】
前記第一螺旋巻き導体は、前記外部導体の外側に前記磁場を発生させるように構成された不具合を含む、請求項2に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項4】
前記不具合は、前記第一螺旋巻き導体の隣接する巻線間の抵抗を増大させることにより、前記第一EM信号が前記不具合にローカルな領域内で前記第一螺旋巻き導体に沿って螺旋経路を辿る、請求項3に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項5】
前記不具合は、前記第一螺旋巻き導体の隣接する巻線間のギャップを含む、請求項3または4に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項6】
前記外部導体は、第二螺旋巻き導体をさらに含み、前記第一螺旋巻き導体は第一導電率を有し、前記第二螺旋巻き導体は第二導電率を有し、前記第一導電率及び前記第二導電率は異なり、前記外部導体の外側に前記磁場を発生させる、請求項2から5のいずれか1項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項7】
前記送信器は、前記外部導体に結合された第一部分及び第二部分を有する補助導体を含み、前記補助導体は、前記第一部分と前記第二部分との間に中間部分をさらに有し、前記中間部分は前記外部導体から離隔されてボイドを画定し、前記補助導体及び前記外部導体は、前記第一EM信号を前記補助導体に通して流すように構成される、いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項8】
前記外部導体は、前記第一EM信号を前記補助導体に通して流すための厚さ及び/または材料を有する、請求項7に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項9】
前記外部導体は薄いセクションを含み、前記補助導体は前記薄いセクションに結合され、前記薄いセクションは、前記第一EM信号を前記補助導体に通して流すための厚さを有する、請求項7または8に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項10】
前記第一部分及び/または前記第二部分は、前記外部導体に物理的に結合される、請求項7から9のいずれか1項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項11】
前記第一部分及び/または前記第二部分は、前記外部導体から離隔されて、前記補助導体を前記外部導体に容量結合するための容量素子を形成する、請求項7から10のいずれか1項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項12】
前記受信器は前記ボイド内に位置している、請求項7から11のいずれか1項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項13】
前記受信器は磁化素子を含む、いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項14】
前記受信器は、前記磁化素子の周囲に巻回された受信導体をさらに含む、請求項13に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項15】
前記磁化素子はトロイドを含む、請求項13または14に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項16】
前記外部導体は、第二EM信号が前記同軸ケーブルによって伝達されるとき、前記外部導体の外側に磁場を発生させないように構成され、前記第二信号は前記第一信号よりも高い周波数を有する、いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項17】
前記第二EM信号はマイクロ波(MW)信号である、請求項16に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項18】
前記第一EM信号は、高周波(RF)信号である、いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項19】
組織治療用に生体組織に電磁(EM)エネルギーを送達するための電気手術器具であって、
供給構造体、及び前記供給構造体の遠位端部に位置したアプリケータであって、前記供給構造体はエネルギー源から前記アプリケータに前記EMエネルギーを伝達し、前記アプリケータは治療部位で生体組織内に前記EMエネルギーを送達する、前記アプリケータと、
いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリであって、前記供給構造体は前記送信器の前記同軸ケーブルを含み、前記EMエネルギーは前記第一EM信号を含む、前記電力伝送アセンブリと、
を備える、前記電気手術器具。
【請求項20】
前記電気手術器具は、手術用スコープ装置の器具チャネルを通して挿入されるサイズに作られる、請求項19に記載の電気手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルを含む電力伝送アセンブリに関する。特に、電力伝送アセンブリは、同軸ケーブルによって電磁信号が伝達されるとき、同軸ケーブルから受信器に電力を誘導結合するように構成される。他の実施形態は、電力伝送アセンブリを有する電気手術器具を含む。
【背景技術】
【0002】
二次回路に電力を供給するために、ケーブル、例えば同軸ケーブルからの信号を転送する必要があることが多い。これは通常、フィルタ、例えばダイプレクサまたはマルチプレクサを使用して行われる。
【0003】
しかしながら、ケーブルに大きい損失が生じる可能性がある。この損失は、ダイプレクサ及びマルチプレクサなどのフィルタによって増大する可能性があるため、信号を伝達するときにケーブルの効率が低下する可能性がある。その結果、ケーブルからの信号を転送して二次回路に電力を供給しようとするとき、フィルタを使用することが望ましくない場合がある。
【0004】
さらに、マイクロ波などのより高い周波数の信号は、同軸ケーブルによって伝達されるときに大量の損失を生じることが知られている。これは、より高い周波数の信号からのエネルギーが同軸ケーブル内の誘電体を加熱するために失われるからである。マイクロ波のようなより高い周波数の信号を伝達する際の損失がより大きくなるため、既に大量の損失を増大させないために、ケーブルから信号を転送するためのフィルタなどの装置の使用を避けることがさらにより重要になり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
最も一般的には、本発明は、同軸ケーブルを用いて誘導結合により電力を無線で伝送するための電力伝送アセンブリを開示する。電力伝送が誘導結合により無線であるため、電力が無線で、または有線接続無しで送信器から受信器に伝送される。例えば、電力は、無線で空中に伝送されてもよい。これは、電力が導体によって伝送される有線伝送とは異なる。受信器は、誘導結合によって電力を無線で受信した後、電力を必要とする二次回路または電気素子に給電するために使用され得る。
【0006】
電力伝送アセンブリは、無線電力伝送を可能にするため、フィルタなどの有線構造体を用いて、ケーブルを通過する信号を転送することにより、同軸ケーブルの損失を増大させない。その代わりに電力伝送アセンブリにより、誘導結合を用いて電力を無線伝送することが可能になる。
【0007】
誘導結合により、電源を一次コイルに配線して、振動電流信号が一次コイルを通して送信され、一次コイルの周囲に振動磁場を誘起するため、無線伝送が可能になる。振動磁場は、一次コイルの近くに配置された二次コイルに振動電圧信号を誘導する。このようにして、2つのコイルが導電接続されることなく、電磁誘導によって電気エネルギーを一次コイルから二次コイルへ伝送することができる。本発明によれば、一次コイルは、同軸ケーブルまたはその一部によって設けられる。
【0008】
無線電力伝送のために同軸ケーブルを使用することは、広範な用途に及んでいる。例えば、同軸ケーブルに沿って伝達される信号を物理接続によって異なる回路にルーティングした結果、システムの損失を増加させることなく、同軸ケーブルによって伝達されるエネルギーにアクセスすることが望ましい場合がある。その代わりに、本発明によれば、誘導結合により可能となる無線接続を介して、同軸ケーブルに沿って伝達されるエネルギーにアクセスすることができる。従って、本発明は、電気通信、安全性、計量、医療、電気手術、及び同軸ケーブルを使用する無線電力伝送が望まれるあらゆるその他の用途に適用される。
【0009】
本発明の第一態様によれば、電力伝送アセンブリであって、誘電体材料によって分離された内部導体及び外部導体を有する同軸ケーブルを含む送信器であって、同軸ケーブルによって第一電磁(EM)信号が伝達されるとき、同軸ケーブルは外部導体の外側に磁場を発生させるように構成される、送信器と、磁場を使用して誘導結合することによって送信器から電力を受信するための受信器とを含む、電力伝送アセンブリが提供される。
【0010】
同軸ケーブルは、互いに同軸であり、誘電体材料により分離される内部導体及び外部導体を含む。同軸ケーブルの場合、ケーブルの外側の磁場は通常、ゼロまたはほぼゼロである。これは、同軸ケーブルの内部導体によって伝達される信号が内部導体を通って長手方向に(例えば、ケーブルの対向する端部間のケーブルにほぼ沿って)伝わり、同軸ケーブルの外部導体を通って長手方向に戻るからである。従って、不具合のない対称同軸ケーブルでは、同軸の内部導体が伝達した信号に起因する磁場は、外部導体が伝達した信号によってキャンセルされる(またはほぼキャンセルされる)。これは、同軸ケーブルの外部導体の外側には、ゼロまたはほぼゼロ(例えば、無視できる程度)の磁場が存在することを意味する。例えば、外部導体の外側に存在する任意の磁場は、誘導結合によって有用な電力量を受信するための受信器が使用することができないほど最小である可能性がある。例えば、有用な電力量は、電気回路、例えば、マイクロコントローラ(MCU)を含む電気回路を動作させるのに必要な電力量であり得る。例えば、有用な電力量は、少なくとも1マイクロワットであり得る。
【0011】
その結果、同軸ケーブルの内部導体及び外部導体を伝わる信号によって発生する磁場は、内部導体及び外部導体を分離させる誘電体と、導体自体とに制限される。
【0012】
しかしながら、同軸ケーブルが外部導体の外側に磁場を発生させるように構成されるとき、外部導体が伝達する信号によって発生した磁場は、内部導体が伝達する信号によって発生した磁場をキャンセルしなくなる(またはほぼキャンセルしなくなる)。これは、磁場(例えば、無視できない磁場)は、同軸ケーブルの外部導体の外面の外側に存在することを意味する。例えば、外部導体の外側に存在する無視できない磁場は、誘導結合によって有用な電力量を受信するための受信器によって使用され得るほど十分に大きい場合がある。例えば、有用な電力量は、電気回路、例えば、マイクロコントローラ(MCU)を含む電気回路を動作させるために必要な電力量であり得る。例えば、有用な電力量は、少なくとも1マイクロワットであり得る。
【0013】
外部導体の外面の外側に発生した磁場(例えば、無視できない磁場)は、受信器によって誘導結合に使用されることができる。受信器は、送信器から二次回路または電気素子に電力を伝送するために二次回路または電気素子に接続可能であってよい。
【0014】
同軸ケーブルは、特定の周波数または周波数レンジの信号がケーブルを下り伝達されるとき、ケーブルの外側に磁場(例えば、無視できない磁場)を発生させるように構成されてもよい。例えば、同軸ケーブルは、より低い周波数の信号(例えば、高周波(RF)信号)が同軸ケーブルによって伝達されるとき、外部導体の外側に磁場(例えば、無視できない磁場)を発生させるように構成されてもよい。しかしながら、同軸ケーブルは、より高い周波数の信号(例えば、マイクロ波信号)が同軸ケーブルによって伝達されるとき、外部導体の外側に著しい磁場を発生させないように構成されてもよい(例えば、無視できる磁場を発生させるように構成されてもよい)。
【0015】
外部導体は、第一螺旋巻き導体を含み得る。螺旋巻き外部導体は、同軸ケーブルの外部導体の外側に磁場(例えば、無視できない磁場)を発生させるために漏洩する可能性がある。例えば、螺旋巻き同軸ケーブル上での漏洩は、ケーブルによって伝達される信号の約1/1,000から1/10,000であることができる。螺旋巻き外部導体は同軸ケーブルの他の外部導体タイプと比較して漏れやすいため、螺旋巻き外部導体を用いて受信器と誘導結合し、受信器内に電力を発生させることができる。さらに、同軸ケーブルの外側に無視できない磁場を発生させるために、螺旋巻き外部導体を使用すると有利であることができる。これは、螺旋巻き外部導体が漏れやすいため、外部導体の外側に磁場(例えば、無視できない磁場)を発生させるために、同軸ケーブルを物理的に変更する必要がなくなるからである。螺旋巻き導体の漏れやすい性質について考えられる理由は、隣接する巻線間の重なり量が同軸ケーブルの長さに沿って、例えば製造公差のために、変動する可能性があるということである。さらにまたは代替に、ここでも製造公差のために、隣接する巻線間に1つ以上のギャップが存在する場合がある。
【0016】
第一螺旋巻き導体は、外部導体の外側に磁場を発生させるように構成された不具合を含み得る。螺旋巻き導体は、同軸ケーブルの無視できない磁場の漏れを引き起こす不具合を含むことができる。この不具合は、信号が外部導体によって伝達されても、その信号によって内部導体上に発生した磁場をキャンセルさせない(またはほぼキャンセルさせない)ため、同軸ケーブルが無視できない磁場を漏洩させるという、すなわち、外部導体の外側に存在する無視できない磁場を存在させるという、螺旋巻き同軸ケーブル内の任意の特徴であり得る。不具合は、外部導体の一部(例えば、1つの離散的な連続領域)または部分(例えば、1つより多い離散的な連続領域)のみに存在し得る。不具合は、外部導体の半分以下、大部分、または全体に存在し得る。
【0017】
不具合は、第一螺旋巻き導体の隣接する巻線間の抵抗を増大させることにより、第一EM信号が不具合にローカルな領域内で第一螺旋巻き導体に沿って螺旋経路を辿ることができる。螺旋巻き外部導体を有する同軸ケーブルによって信号が伝達されるとき、信号は通常、内部導体を通る長手方向経路、及び外部導体を通る長手方向経路を辿る。ある領域、例えば不具合にローカルな領域内に抵抗の増大を引き起こす不具合が存在する場合、信号は、通常の長手方向経路を下らず、この領域を通る螺旋経路、例えば第一螺旋巻き外部導体に沿った螺旋経路を取ることができる。これは、不具合により螺旋経路が、不具合のローカル領域内の外部導体を下る長手方向経路に比べて、不具合のローカル領域内の抵抗の低い経路であり得るからである。例えば、螺旋巻き外部導体の隣接する巻線間の重なりは、導体の周囲の螺旋経路よりも大きい抵抗を有し得るので、第一EM信号は、隣接する巻線上の長手方向ではなく、不具合にローカルな領域内で第一螺旋巻き導体に沿った螺旋経路を取ることができる。第一EM信号は、不具合にローカルな領域の外側の長手方向経路を再開することができる。
【0018】
螺旋経路は、外部導体の周囲で螺旋状に伝わる経路であり得る。例えば、螺旋巻き導体の螺旋を辿ることによるものである。あるいは、外部導体の周囲の螺旋経路を取ることによるものであり、この螺旋経路の螺旋は螺旋巻き導体の螺旋とは異なる。対照的に、長手方向経路は、同軸ケーブルの長手方向軸に一直線に長手方向に伝わる経路であり得る。例えば、螺旋巻き導体の隣接する巻線の上で長手方向に伝わる経路である。
【0019】
不具合によって、第一EM信号が外部導体を下る通常の長手方向経路ではなく、異なる経路、例えば螺旋経路を取り得るため、外部導体の螺旋経路と内部導体の長手方向経路との間に経路の相違がある。従って、外部導体が伝達する信号によって発生した磁場は、内部導体が伝達する信号によって発生した磁場をキャンセルする(またはほぼキャンセルする)ように作用しなくなることにより、磁場(例えば、無視できない磁場)が同軸ケーブルの外側に現れる。これにより、外部導体が不具合にローカルな領域内でソレノイドとして機能し得、同軸ケーブルの外部導体の内側及び外側に磁場が放射され得る。この磁場に受信器が誘導結合することができる。
【0020】
不具合は、不具合にローカルな領域内で抵抗の増大を引き起こすという、螺旋巻き外部導体の任意の特徴であり得る。例えば、不具合は螺旋巻き導体の隣接する巻線間の接触不良セクションであり得、この接触不良により、抵抗が増大し、第一EM信号が不具合にローカルな領域内で第一螺旋巻き導体に沿った螺旋経路を取り得る。これは、不具合が存在しなかった場合に第一EM信号が取る長手方向経路ではない。信号が長手方向経路ではなく螺旋経路を取った結果、外部導体が伝達した信号によって発生した磁場が、信号によって内部導体上に発生した磁場をキャンセルしなくなる(またはほぼキャンセルしなくなる)。従って、同軸ケーブルは、同軸ケーブルの外部導体の外側に磁場(例えば、無視できない磁場)を発生させる。
【0021】
不具合は、第一螺旋巻き導体の隣接する巻線間にギャップを含み得る。螺旋巻き導体の隣接する巻線は、通常、重なり、連続した導電面を設ける。しかしながら、ある領域では、例えば不完全な製造工程に起因して、隣接する巻線間にギャップが存在する場合がある。ギャップにより抵抗が増大し、その結果、信号は、螺旋巻き外部導体を下り長手方向に伝わるのではなく、螺旋経路を取る。ギャップは、1/10ミクロン~10ミクロンの間であることができる。ただし、ギャップは、第一EM信号が螺旋経路を取る結果となる任意のサイズであることができる。
【0022】
外部導体は、第二螺旋巻き導体をさらに含み得、第一螺旋巻き導体は第一導電率を有し、第二螺旋巻き導体は第二導電率を有し、第一導電率及び第二導電率は異なり、外部導体の外側に磁場を発生させる。第一導電率及び第二導電率における差異を有することにより、領域では、不具合にローカルな領域内で第一螺旋巻き導体に沿って螺旋経路を取る第一EM信号の抵抗よりも、外部導体に沿った長手方向経路沿いに伝わる第一EM信号の抵抗が高くなることができる。
【0023】
例えば、螺旋巻き導体の隣接する巻線間の重なりでは、第一螺旋巻き導体が第二螺旋巻き外部導体よりも高い抵抗を有する場合、重なりは、より低い抵抗を有する第二螺旋巻き導体の周囲の経路に比べて、より高い抵抗を有し得る。これにより、信号は、外部導体を下り長手方向に伝わるのではなく、増大した抵抗により、領域を通るより容易な螺旋経路を取ることができる。
【0024】
第一導電率と第二導電率との間の差異は、異なる螺旋巻き導体に異なる材料を使用することによって生じてもよい。例えば、第一螺旋巻き導体に第一材料を使用し得、第二螺旋巻き導体に異なる第二材料を使用し得る。一般的な導体材料は、銀、銅、金及びアルミニウムであり得る。しかし、他の導電材料を使用してもよい。第一及び第二螺旋巻き導体に異なる材料を使用することにより、異なる螺旋巻き外部導体間に導電率における差異を生じることができる。
【0025】
ただし、第一螺旋巻き導体と第二螺旋巻き導体との間の導電率における差異は、第一導電率と第二導電率との間の差異を生じさせるための導体の他の特徴、例えば長さまたは厚さを変動させることによって生じる可能性もある。
【0026】
また第二螺旋巻き導体は、外部導体の外側に磁場(例えば、無視できない磁場)を発生させるように構成された不具合を含み得る。この不具合は、第二螺旋巻き導体の隣接する巻線間の抵抗を増大させることにより、第一EM信号が不具合にローカルな領域内で第二螺旋巻き導体に沿って螺旋経路を辿ることができる。一実施形態では、第一螺旋巻き導体の不具合の上述の特徴は、第二螺旋巻き導体の不具合にも等しく適用可能であることにより、この不具合に関して繰り返される。
【0027】
螺旋巻き外部導体に関して上述の原理は、編組外部導体、または任意の他のタイプの外部導体にも適用することができ、外部導体は不均一性を有し、その結果、外部導体が伝達する信号によって発生した磁場が、内部導体が伝達する信号によって発生した磁場をキャンセルしなくなることにより、無視できない(または有用な)磁場は外部導体の外側に残る。例えば、編組外部導体、または他の外部導体タイプ、例えば、ホイルは、同軸ケーブルの外部導体の外側に無視できない、または有用な磁場を発生させる不具合または不均一性を有し得る。
【0028】
送信器は、外部導体に結合された第一部分及び第二部分を有する補助導体を含み得、補助導体は、第一部分と第二部分との間に中間部分をさらに有し得、中間部分は外部導体から離隔されてボイドを画定し、補助導体及び外部導体は、第一EM信号の一部を補助導体に通して流すように構成され得る。
【0029】
第一EM信号が同軸ケーブルの外部導体によって伝達されると、第一EM信号の一部は外部導体の外面近くで流れる。補助導体は、外部導体を下り伝わるのではなく、外部導体の外面近くで流れるEM信号の代替経路を提示する。例えば、EM信号の一部が外部導体の外面近くで流れる場合、この一部(またはその一部分)は、外部導体ではなく補助導体を通り流れることができる。
【0030】
補助導体は、第一部分及び第二部分で外部導体に結合される。第一部分及び第二部分は、それぞれ第一端部及び第二端部であってもよい。しかしながら、第一部分及び第二部分は、外部導体に結合される補助導体の任意の部分であってよい。
【0031】
中間部分は、外部導体から離隔され、補助導体と外部導体との間にボイドを画定する。外部導体に対する中間部分の分離は、第一EM信号の波長と比較して小さくてよく、例えば400kHz信号の場合、750mの波長と比較して小さくてよい。中間部分を第一部分または第二部分に結合すること、または接続することができると、補助導体は信号を伝達することが可能になる。
【0032】
補助導体は第一EM信号を伝達するため、第一EM信号の少なくとも一部は、同軸ケーブルの外部導体ではなく、補助導体によって伝達される。従って、第一EM信号全体は、外部導体によって伝達されず(例えば、一部は補助導体によって伝達され、残りの部分は外部導体によって伝達され)、その結果、外部導体が伝達する信号によって発生した磁場は、内部導体上の信号による磁場をキャンセルしなくなる(またはほぼキャンセルしなくなる)。これは、内部導体を通り流れる信号の一部が補助導体を通り流れることから、内部導体を通り流れる信号が外部導体を通り完全に流下するとは限らないためである。従って、外部導体によって伝達される信号は、同軸ケーブルの外側の磁場をキャンセルするように作用しなくなる(またはほぼキャンセルしなくなる)。従って、外部導体の外側では、磁場(例えば、無視できない磁場)が発生する。同軸ケーブルの外部導体の外側に発生した磁場は、ボイド内にあってもよく、すなわち、外部導体の外面の外側であるが補助導体の中間部分の内面の内側にあってもよい。
【0033】
EM信号は、一部の周波数では補助導体のみを通り流れる。信号周波数が高くなるにつれて、信号の表皮深さが減少するため、無視できる電流は外部導体の外面近くに流れており、これは、補助導体が信号を伝達しないことを意味する。
【0034】
補助導体は、EM信号を伝達する任意の導体であってもよい。例えば、補助導体は導電性ブリッジであってよい。補助導体は、外部導体の周囲に(すなわち、その全周縁部の周囲に)同軸に位置していてよく、例えば、外部導体を封入してよい。あるいは、補助導体は外部導体の1つ以上の周縁部の周囲にのみ位置していてよく、例えば、補助導体は1つ以上の長手方向ストリップであってよい。
【0035】
送信器は、外部導体が螺旋状に巻回されるとき、EM信号を伝達するための補助導体を含むことができる。あるいは、トランスミッタは、電力伝送アセンブリが螺旋状に巻回されない外部導体を含むとき、補助導体を含んでよい。
【0036】
外部導体は、第一EM信号を補助導体に通して流すための厚さ及び/または材料を有し得る。外部導体の厚さ及び/または材料は、同軸ケーブルによって伝達される信号の表皮深さに応じて設定されてもよい。すなわち、厚さ及び/または材料は、第一EM信号の表皮深さが与えられると、第一EM信号の一部が外部導体の外面の近くで流れるように設定されることができる。厚さ及び/または材料は、外部導体全体を指してもよく、または外部導体の一部、例えば、受信器に対向する、もしくはその近くの部分のみを指してもよい。
【0037】
交流電流が導体を通過すると、表皮効果として知られている現象が起こる。ここでは、導体の断面全体にわたる等しい分布から、導体の表面のみに存在する分布へ導電状態が移行し始める。信号の周波数が高まるにつれて、信号が流れる領域の断面が減少する。信号の表皮深さは、電流が表面での値に比べて1/eまで低下した導体内の距離である。またこれは、1-1/eの電流、または約63%の電流が流れる層の厚さでもある。
【0038】
交流電流が同軸ケーブルを通過するとき、信号は内部導体の外面付近、及び外部導体の内面付近で流れる。従って、同軸ケーブルでは、信号の周波数が高まるにつれて、外部導体を流れる電流は、外部導体の外面から遠ざかる。従って、外部導体の厚さ及び/または材料は、一部の周波数(例えば、RF周波数)では、信号のかなりの割合が外部導体の外面付近で流れるように設定されることができる。例えば、厚さ及び/または材料は、厚さが第一EM信号の1~5の間の表皮深さであるように設定されてもよく、その結果、かなりの割合の第一EM信号が外部導体の外面付近で流れるようになり得る。同時に、外部導体の厚さ及び/または材料は、一部の他の周波数(例えば、特定のより高い周波数、例えば、マイクロ波周波数)では、外部導体の外面付近で流れる信号が無視できる、またはその信号の割合がないように設定されてもよい。
【0039】
同軸ケーブルの外部導体の厚さは、その厚さによって第一EM信号の大部分が外部導体の表面近くで流れるように選択されることができる。例えば、0.1mmは適度に厚い外部導体であると考えられることができるが、一部のより低い周波数、例えば、400kHzなどのRF周波数では、これは表皮深さ1未満の厚さであるため、外部導体の外面付近で流れる電流は、外部導体の内面で流れる電流の37%にも低下しない。従って、外部導体によって伝達される信号の大部分は、外部導体の外面付近で流れる。一実施形態では、外部導体は、0.25mm未満の厚さであり得る。
【0040】
外部導体の外側で磁場(例えば、無視できないまたは有用な磁場)を発生させるように構成されていない同軸ケーブル上では、同軸ケーブルの外側の磁場は、ゼロまたはほぼゼロである(例えば、無視できる、有用でない)。同軸ケーブルの外側の磁場がゼロまたはほぼゼロであるため、外部導体の外面では電流も、ゼロまたはほぼゼロのはずである。この結果、外部導体における電流分布は、導体に流れる信号の表皮深さよりも著しく厚い厚さを有する導体に発生する電流分布よりも密になる。電流分布が密になり、従って電流の流れに対する抵抗が大きくなるため、補助導体を外部導体に結合するとき、外部導体を通り流れる第一EM信号の少なくとも一部(例えば、無視できない部分または有用な部分)は、補助導体のより容易な経路を通り流れる。これは、補助導体が導入されるまで、電流または信号の値が表面ではゼロ(またはほぼゼロ)であるためである。補助導体を導入することにより、信号が補助導体を通り流れる場合、表面での電流または信号の値はゼロではなくなる。補助導体が接続されているときの非ゼロ値は、信号が補助導体を通り流れることを可能にする。
【0041】
従って、補助導体が外部導体に結合されているとき、信号の少なくとも一部は補助導体を通り流れる。例えば、外部導体の厚さは、第一EM信号の1の表皮深さと相関する表皮深さを有するように設定されてよい。これは、第一EM信号が外部導体の内面上を流れる1/eの電流までしか低下しなかったことを意味する。ただし、外部導体の厚さは、EM信号の表皮深さに対する外部導体の厚さの任意の比率に設定されてもよく、その場合、信号は、外部導体の外面近くで十分に高い電流密度を有するため、EM信号の一部は、外部導体ではなく補助導体を通り流れる。
【0042】
信号の表皮深さは材料によって異なる。従って、外部導体の材料は、外部導体の外面付近で信号が十分に高い電流密度を有するように選択されることができるため、EM信号は補助導体を通り流れる。
【0043】
表1は、一般的に使用されている導電材料の5.8GHZ及び400kHzのスポット周波数での表皮深さの値を提供する。この表は、異なる材料及び周波数に表皮深さの異なる値を示す。
【表1】
【0044】
外部導体は薄いセクションを含み得、補助導体は薄いセクションに結合され得、薄いセクションは、第一EM信号を補助導体に通して流すための厚さを有し得る。外部導体の1つのセクションを薄くして、薄いセクションを作製してもよく、例えば、外部導体の薄いセクションを、外部導体の一部または全ての他のセクションよりも薄くすることができる。薄いセクションは、外部導体によって伝達されるEM信号の大部分が外部導体の外面付近で流れるように薄くされてもよく、そのため、補助導体が薄いセクションに結合されるとき、EM信号は補助導体を通り流れる。外部導体の他のセクションは、薄いセクションと比較して増大した厚さを有することができる。これらのセクションでは表皮深さが非常に深くなり得るため、これらの他のセクションでは第一EM信号は外部導体の外面近くで流れない。従って、薄いセクションは、外部導体の結合セクションのように機能して、第一EM信号が補助導体を通り流れることを可能にするためにより薄い厚さを有してもよい。
【0045】
ただし、外部導体がその長さに沿って均一な厚さを有し、その厚さが、その全長に沿って外面近くで第一EM信号が流れる結果になるのに十分に薄い実施形態でも、磁場(または有用な、無視できない磁場)は、外部導体の外側で磁場を発生させるように構成される外部導体のセクション、例えば、補助導体または磁場発生の不具合を有するセクション内でのみ、外部導体の外側に発生する。
【0046】
これにより、同軸ケーブルは、外部導体全体の厚さを選択するのではなく、1つのセクションのみを薄くすることによって、外部導体の外側に無視できない磁場を発生させるように構成されることが可能になる。その結果、外部導体のセクションを薄くすることによって、外部導体の外側に無視できない磁場を発生させるように、既存の同軸ケーブルを変更することが可能になってもよい。
【0047】
薄いセクションは、より高い周波数の表皮深さが薄いセクションの厚さよりも何倍も小さい場合、より高い周波数の信号に影響しない。これは、表皮深さの効果のため、より高い周波数の信号からの無視できる電流が薄いセクションの外面近くで流れているからである。
【0048】
第一部分及び/または第二部分は、外部導体に物理的に結合されてよい。例えば、第一部分及び/または第二部分は、外部導体に直接接続されてもよい。あるいは、その間に配置された1つ以上の介在素子(例えば、他の導体)が存在してもよく、すなわち、接続は間接的であってもよい。物理的結合により、EM信号が伝達されると、EM信号は補助導体を通り流れる。物理的結合は、はんだ付け、またはタッチ/接触接続であってよい。
【0049】
第一部分及び/または第二部分は、外部導体から離隔されて、補助導体を外部導体に容量結合するための容量素子を形成してもよい。例えば、第一部分及び/または第二部分は、外部導体から離隔されてよく、第一EM信号は補助導体を通り流れる容量によって伝達されてよい。容量素子は、コンデンサ、または補助導体を外部導体に容量結合する任意の容量素子であってよい。第一部分は外部導体に容量結合されてよく、第二部分は外部導体に物理的に結合されてよい。あるいは、第二部分は容量結合されてよく、第一部分は物理的に結合されてよい。両方の部分は容量結合されてよい。容量性接続により、物理的な接続、例えば、はんだ付けまたは接触接続ができない、または望ましくないとき、EM信号は補助導体によって伝達されることが可能になってもよい。
【0050】
電力伝送アセンブリの受信器は、ボイド内に位置していてもよい。外部導体と補助導体との間のボイド(例えば、中間部分)内に磁場(例えば、無視できない磁場)が発生してもよい。受信器は、このボイド内に位置しており、ボイド内の磁場と相互作用してもよい。磁場は、有利にはボイド内で最も強くてもよく、外部導体の最適な厚さ及び/または材料(例えば、導電性)と、補助導体の最適な厚さ及び/または材料とを選択することによって、誘導結合に最適化されることができる。最適な厚さ及び/または材料は、ボイド内に強い磁場を発生させる厚さ及び/または材料を指す。
【0051】
受信器は磁化素子を含み得る。磁化素子は、無視できない磁場によって励起されることができる任意の素子である。例えば、磁化素子は、磁気特性を有する素子であり得る。磁化素子は、高い透磁率を有する素子であってもよい。磁化素子は、有利には、送信器及び受信器を連結する磁場を増大させて、集束させる。磁化素子は、二価鉄であってもよく、またはフェライト素子を含んでもよい。例えば、磁化素子は、フェライトまたは鉄のコアを含んでもよい。
【0052】
受信器は、磁化素子の周囲に巻回された受信導体をさらに含んでもよい。受信導体は送信器に誘導結合されるため、同軸ケーブルによって外部導体の外側で発生した磁場(例えば、無視できない磁場)は、受信導体内に電流を誘導し、送信器から受信器への電力の無線伝送を可能にする。受信導体は、磁化素子の周囲に巻回されてよい。受信導体は、螺旋またはコイル内に巻回されてよい。例えば、受信導体はソレノイドを含むことができる。磁化素子の周囲に巻回された受信導体は、有利には、送信器と受信器との間の結合強度を高める。受信導体は、二次回路または電気素子に接続されてよく、これに給電してもよい。
【0053】
磁化素子はトロイドを含み得る。トロイドは、中央に穴のある回転面である。トロイドは、リング形状またはドーナツ形状であってもよい。トロイド形状の磁化素子は、優れた電気性能及び効率を有する。トロイド形状の磁化素子は、トロイド形状の磁心であってよい。
【0054】
外部導体は、第二EM信号が同軸ケーブルによって伝達されるとき、外部導体の外側に磁場を発生させないように構成されてよく、第二信号は第一信号よりも高い周波数を有してもよい。
【0055】
第二EM信号は、第一EM信号のように、同軸ケーブルの内部導体及び外部導体を通り伝わるが、第二EM信号が同軸ケーブルによって伝達されるとき、同軸ケーブルは、外部導体の外側に磁場(または有用な、すなわち無視できない磁場)を発生させない。従って、より低周波の第一EM信号への結合は、すべての実用的な目的のために、より高周波の第二EM信号を完全に遮蔽する外部導体を使用して行われることができる。
【0056】
信号の表皮深さは、信号の周波数によって変動する。従って、より高い周波数の信号は、より低い周波数の信号よりもはるかに小さい表皮深さを有する。例えば、5.8GHzの信号は、銀導体によって伝達されるとき、1.49μmの表皮深さを有する。外部導体が100μmまたは0.1mmの厚さを有する場合、外部導体の外面は、ほぼ67の表皮深さの厚さである。従って、外部導体の外面での電流レベルは、例えば、外部導体の内面では(1/e)^67または7.985e-30のレベルである。これは、高周波では、無視できる電流が外部導体の外面近くに流れることを意味する。
【0057】
従って、外部導体の外面付近に無視できる電流が流れるため、第二EM信号は、外部導体に結合された補助導体によって伝達されない。これは、外部導体が伝達する第二EM信号によって発生した磁場が、内部導体が伝達する第二EM信号によって発生した磁場をキャンセルする(またはほぼキャンセルする)ことを意味する。従って、同軸ケーブルが、第二EM信号を伝達するとき、有用なまたは無視できない磁場を同軸ケーブルの外側に発生させるように構成されていないため、第二EM信号の場合、ゼロまたはほぼゼロの磁場が同軸ケーブルの外部導体の外側に生じる。
【0058】
螺旋巻き導体上の漏れは、より高い周波数の信号を伝達するときに著しく少なくなる。これは、より高い周波数の信号が伝達されるとき、容量性サセプタンスが高くなり、より高い周波数の信号の表皮深さが低くなるためである。例えば、400kHzの信号が不具合を横切り伝達されるとき、不具合の容量性サセプタンスは、5.8GHzの信号を伝達する場合の不具合の容量性サセプタンスよりも約10,000分の1小さくなる。従って、螺旋巻き導体上のいかなる不具合にも関わらず、第二EM信号は実質的に長手方向経路を介して外部導体を下り伝わる。これは第一EM信号とは異なり、螺旋巻き導体の不具合により、第一EM信号は長手方向経路ではなく螺旋経路を取る。不具合によって第二EM信号が螺旋経路を取るわけではないため、外部導体に流入する第二EM信号によって発生した磁場は、内部導体に流入する第二EM信号によって発生した磁場をキャンセルする(例えば、実質的にまたは完全に)。従って、同軸ケーブルが第二EM信号を伝達するときに同軸ケーブルの外側に磁場を発生させるように構成されていないため、螺旋巻き外部導体が第二EM信号を伝達するとき、外部導体の外側に磁場(例えば、無視できないまたは有用な磁場)は発生しない。
【0059】
外部導体は、より高い周波数の第二EM信号が同軸ケーブルによって伝達されるときに外部導体の外側に磁場を発生させないように構成されることにより、有利には、受信器は、第二EM信号ではなく、第一EM信号に結合することが可能になる。より高い周波数のEM信号は、同軸ケーブルに伝達されるときに著しい損失を有することがある。従って、受信器と誘導結合するためにより低い周波数の第一EM信号のみを使用することにより、より高い周波数の第二EM信号はそのまま残される。その結果、電力伝送アセンブリは、より高い周波数の第二EM信号に対し、ほとんどまたはまったく損失を生じない。結合には第一EM信号だけを使用する。これにより、同軸ケーブルの外部導体は、ほぼ「フィルタ」として機能することが可能になるが、実際のフィルタを使用した場合に生じる同軸ケーブル内の損失は増大しない。
【0060】
第二EM信号は、マイクロ波(MW)信号であり得る。本明細書では、「マイクロ波」または「MW」は、400MHz~100GHzの周波数レンジを指示するために広く使用され得る。具体的に検討されている周波数は5.8GHzである。
【0061】
第一EM信号は、高周波(RF)信号であってもよい。本明細書では、「RF」の「高周波」は、最大300MHz、好ましくは10kHz~1MHzの周波数レンジを指示するように広く使用され得る。具体的に検討されている周波数は400kHzである。
【0062】
外部導体は、8ミクロン超の厚さを有することができる。しかしながら、螺旋巻き導体の隣接する巻線間にギャップが存在する上述の実施形態では、ギャップ内の外部導体の厚さはゼロである。この厚さにより、第二EM信号からの無視できる電流は、外部導体の外面近くに流れていることが可能になってもよい。この厚さにより、第一EM信号からの電流の大部分は外部導体の外面近くで流れていることが可能になってもよい。従って、8ミクロン超の厚さを有する外部導体が第一EM信号を伝達するとき、外部導体の外側に磁場(例えば、有用なまたは無視できない磁場)を発生させることができる。
【0063】
本発明の第二態様によれば、組織治療用に生体組織に電磁(EM)エネルギーを送達するための電気手術器具であって、供給構造体、及び供給構造体の遠位端部に位置したアプリケータであって、供給構造体はエネルギー源からアプリケータにEMエネルギーを伝達し、アプリケータは治療部位で生体組織内にEMエネルギーを送達する、アプリケータと、第一態様による電力伝送アセンブリとを含み、供給構造体は送信器の同軸ケーブルを含み、EMエネルギーは第一EM信号を含む、電気手術器具が提供される。第二EM信号を含む実施形態では、EMエネルギーは、第二EM信号も含むことができる。
【0064】
電気手術器具は、電気手術用の任意の器具であってよい。例えば、任意の器具は、電流またはEMエネルギーを利用して、組織を切断する、アブレーションする、凝固させる、治療する、または焼灼させる。供給構造体は、エネルギー源からのエネルギーをアプリケータに伝達する。供給構造体は同軸ケーブルであってよく、または他のタイプの導体と共に同軸ケーブルを含んでよい。
【0065】
エネルギー源は、EM信号を発生させるのに適した任意のエネルギー源であってよい。例えば、エネルギー源は、RF信号であり得る第一EM信号を発生させてもよい。またエネルギー源は、MW信号であり得る第二EM信号を発生させてもよい。エネルギー源は、発生器であってよい。エネルギー源は、適切なコネクタ、例えばQMAコネクタによって、供給構造体の近位端部に接続されてもよい。
【0066】
アプリケータは、組織治療のために生体組織にEMエネルギーを送達するために適切な任意の構造体であってよい。例えば、アプリケータは、EMエネルギーを送達するためのアンテナを備えてよい。アプリケータは、EMエネルギーを送達するために第一電極及び第二電極を含んでもよく、第一電極は同軸ケーブルの内部導体に接続され、第二電極は同軸ケーブルの外部導体に接続される。アプリケータは、組織を切断しても、アブレーションしても、凝固させても、治療しても、または焼灼させてもよい。
【0067】
電気手術器具は、第一態様による電力伝送アセンブリを含む。電力伝送アセンブリは、本明細書に開示された任意の電力伝送アセンブリであり得る。電力伝送アセンブリは、誘電体材料によって分離された内部導体及び外部導体を有する同軸ケーブルを含む送信器であって、同軸ケーブルによって第一電磁(EM)信号が伝達されるとき、同軸ケーブルは外部導体の外側に磁場を発生させるように構成される、送信器と、磁場を使用して誘導結合することによって送信器から電力を受信するための受信器とを含む。電力伝送アセンブリは、電気手術器具の供給構造体から受信器に電力を無線で伝送するために使用されてもよい。電力伝送アセンブリは、供給構造体に沿った任意の地点に位置していることができる。電力伝送アセンブリは、供給構造体の周囲に位置した構造体内に位置していてもよい。
【0068】
電気手術器具の供給構造体は、送信器の同軸ケーブルを含む。例えば、供給構造体の1つのセクションは、送信器の同軸ケーブルであってもよい。あるいは、供給構造体全体は、同軸ケーブルであってもよく、その一部は送信セクションである。供給構造体は、エネルギー源からのエネルギーをアプリケータに伝達するための他の導電素子を備えてもよい。
【0069】
電力アセンブリの受信器は、送信器の近位に位置していることができると、磁場を使用して誘導結合するために、送信器から電力を受信することができる。受信器は、供給構造体に統合されてよい。あるいは受信器は、送信器への誘導結合を可能にするために、供給構造体の近位の別の構造体内に位置していてもよい。受信器は、供給構造体の周囲に位置した構造体内に位置していてもよい。電力伝送アセンブリの受信器は、二次回路に電力を供給するために使用され得る。二次回路は、電気手術またはその他の用途で使用するための電気素子に電力を供給するために使用されることができる。
【0070】
電気手術器具は、手術用スコープ装置の器具チャネルを通して挿入されるサイズに作られてもよい。例えば、電気手術器具は、手術用スコープ装置内に嵌合する寸法に作られてよい。手術用スコープ装置は、例えば、腹腔鏡または内視鏡であり得る。電気手術器具が手術用スコープ装置のためのものであることにより、電気手術器具は、有利には、到達することが困難な患者の体内の部位内での、例えば、肺、膵臓、肝臓、腎臓または消化管内での低侵襲性の組織治療のために使用されることが可能になる。
【0071】
本発明は、本記載の態様及び好ましい特徴の組み合わせを含むが、かかる組み合わせが、明らかに容認できない場合または明らかに回避される場合を除く。
【0072】
本発明の原理を示す実施形態を、ここで添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】第一実施形態による、補助導体を備えた電力伝送アセンブリの概略図である。
図2図1の電力伝送アセンブリの概略的な切欠き図である。
図3図1の電力伝送アセンブリの第一断面図である。
図4図1の電力伝送アセンブリの第二断面図である。
図5】第二実施形態による、螺旋巻き導体を備えた電力伝送アセンブリの概略図である。
図6】第三実施形態による、補助導体及び螺旋巻き外部導体を備えた電力伝送アセンブリの概略図である。
図7】第四実施形態による、電力伝送アセンブリを含む電気手術システムである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明の態様及び実施形態を、添付の図面を参照してここで説明する。さらなる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本文において言及される全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。以下に説明される実施形態の特徴が均等物である場合、同じ参照番号が使用され、その詳細な説明は繰り返されない。
【0075】
図1は、第一実施形態による、補助導体102を備えた電力伝送アセンブリ100の概略図を示す。電力伝送アセンブリ100は、同軸ケーブル104を有する送信器105を含む。同軸ケーブル104は、内部導体106及び外部導体108を含む。内部導体106及び外部導体108は誘電体107によって分離される。同軸ケーブル104は保護ジャケット110を含み得、この保護ジャケットは、同軸ケーブル104を保護し、場合によっては外部導体108を合わせて保持するように、外部導体108の周囲に位置していてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、同軸ケーブル104は、保護ジャケット110を有しなくてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、同軸ケーブル104は、保護ジャケット110を有しなくてもよい。この実施形態では、送信器105は、外部導体108に結合された補助導体102をさらに含む。この実施形態では、補助導体102は導電性ブリッジである。補助導体102は、第一部分114で、また別個に第二部分118で、外部導体108に結合される。中間部分116は、第一部分114と第二部分118との間にある。この実施形態では、補助導体102は、物理的な電気接点112を使用して外部導体108に結合される。保護ジャケット110を備えた実施形態では、電気接点112はジャケットを貫通して、外部導体と電気接触する。保護ジャケット110を備えていない実施形態では、電気接点112は存在してもよく、または代替に、補助導体102は、電気接点112が不要となるように、外部導体に直接接続されてもよい(例えば、はんだ付けされてもよい)。しかしながら、他のいくつかの実施形態では、接続は容量性であってもよい。
【0076】
同軸ケーブル104が補助導体102に接続される場合、同軸ケーブル104は、第一EM信号を伝達するときに外部導体108の外側に磁場(例えば、無視できない磁場)を発生させるように構成される。第一EM信号はRF信号であってよい。この実施形態では、同軸ケーブル104は、外部導体108に結合された補助導体102を有する。従って、第一EM信号が外部導体108を伝わるとき、第一EM信号の少なくとも一部は、補助導体102を通り伝わる。これは、第一EM信号の一部が外部導体108の外面付近で流れることで、補助導体102を通り流れるように選択された厚さ及び/または材料を補助導体102が有し得るからである。より高周波の第二EM信号が同軸ケーブル104を通り流れるとき、第二EM信号がより高い周波数を有するため、第二EM信号は補助導体102によって伝達されない。具体的には、表皮深さの効果により、第二EM信号の場合、ゼロまたは無視できる電流が外部導体108の外面付近で流れる。従って、同軸ケーブル104が第二EM信号を伝達するとき、同軸ケーブル104の外側にゼロ(またはほぼゼロ)の磁場が発生する。第二EM信号はMW信号であってもよい。
【0077】
図2は、図1の電力伝送アセンブリ100の概略的な切欠き図を示す。図2には、補助導体102の内側が露出している切欠き図が示される。中間部分116は、外部導体108から離隔され、ボイド128を画定する。ボイド128の内側には受信器120が存在する。受信器120は、磁化素子122及び受信導体124を含む。この実施形態では、磁化素子122はフェライトコアであり、受信導体124は二次巻線である。受信導体124は、端部126で別の電気素子または二次回路に接続可能である。
【0078】
同軸ケーブル104によって伝達される第一EM信号が外部導体108を通り伝わるとき、第一EM信号の少なくとも一部は、補助導体102を通り伝わる。これは、外部導体108の外側で、かつボイド128内に磁場を生じさせる。受信器120は、ボイド128内に位置しているため、送信器105によって発生した磁場から、誘導結合を介して電力を受信する。これは、受信導体124内に電流を発生させ、これを使用して、端部126に接続されている電気素子または二次回路に電力を供給することができる。
【0079】
図3は、図1の電力伝送アセンブリ100の第一断面図を示す。保護ジャケット110は、見やすくするために、この断面図には示されていない。第一断面図は、補助導体102を通る線に沿って、同軸ケーブルの長手方向軸に対して垂直に取られている。図2及び図3に示されるように、受信器120は、同軸ケーブル104の外部導体108と補助導体102との間(例えば、中間部分116)のボイド128内に位置している。受信導体124の端部126は、電力伝送アセンブリ100の外側で電気素子に接続可能である。この実施形態では、受信器120及び補助導体102は、同軸ケーブル104を取り囲むように示されている。
【0080】
図4は、図1の電力伝送アセンブリの第二断面図を示す。保護ジャケット110は、見やすくするために、この第二断面図には示されていない。第二断面図は、補助導体102を通る線に沿って、かつ同軸ケーブルの長手方向軸に沿って取られている。補助導体102は、電気接点112を使用して、同軸ケーブル104の外部導体108に接続されるように示されている。例えば、左側の接点112は、第一部分114を外部導体108に接続することができ、右側の接点112は、第二部分118を外部導体108に接続することができる。図4には、各側の上に1つの電気接点112のみが示されるが、各側の上に複数の接点が存在してよい。
【0081】
図5は、第二実施形態による、螺旋巻き導体130を備えた電力伝送アセンブリ100の概略図を示す。この実施形態は、補助導体102を有しない。従って、この実施形態では、送信器105は、螺旋巻き外部導体130を有する同軸ケーブル104を含む。
【0082】
同軸ケーブル104が螺旋巻き外部導体130を有するため、同軸ケーブル104は、第一EM信号が同軸ケーブル104によって伝達されるときに、同軸ケーブル104の外側に磁場(例えば、無視できない磁場)を発生させるように構成される。第一EM信号はRF信号であってもよい。この螺旋巻き外部導体130は、第一螺旋巻き導体と第二螺旋巻き導体との間のコンダクタンスの不具合または差異を有し得、第一EM信号が同軸ケーブル104によって伝達されるとき、同軸ケーブル104の外側に磁場(すなわち、無視できない磁場)を発生させ得る。これは、螺旋巻き外部導体130の外側に磁場を生じさせ、この磁場を使用して、電力を送信器105から誘導して受信器120に伝送することができる。
【0083】
受信器120は、磁化素子122、及び電流を発生させる受信導体124を含む。この実施形態では、磁化素子122はフェライトコアであり、受信導体124は二次巻線である。受信器120は、同軸ケーブル104によって発生した磁場に誘導結合するため、端部126は電気素子または二次回路に接続されることができる。
【0084】
同軸ケーブル104は、より高い周波数を有する第二EM信号が同軸ケーブル104によって伝達されるとき、螺旋巻き外部導体130の外側に無視できないまたは有用な磁場を発生させない。第二EM信号はMW信号であることができる。第二EM信号がより高い周波数を有するため、表皮深さがより低くなり、第二EM信号は、第一EM信号と比較して第二EM信号が受ける容量性サセプタンスがより高くなるため、螺旋巻き導体内で(例えば、長手方向経路に沿って)不具合を横断して伝達される(例えば、MW信号に対する不具合の容量性サセプタンスはRF信号に対する不具合の容量性サセプタンスと比較して10,000倍大きくなり得る)。このように、螺旋巻き外部導体130は、第二EM信号を伝達するとき、顕著な、例えば、無視できないまたは有用な磁場を漏らさない。従って、第二EM信号が同軸ケーブル104によって伝達される場合、受信器120は送信器105に結合されない。
【0085】
図6は、第三実施形態による、補助導体102及び螺旋巻き外部導体130を備えた電力伝送アセンブリ100の概略図を示す。この実施形態では、送信器105は、螺旋巻き外部導体130と補助導体102との両方を含む。螺旋巻き外部導体130と外部導体102との両方を有することにより、受信器120が結合するためにより強い磁場が発生する。
【0086】
補助導体102は、電気接点112では螺旋巻き外部導体130に結合される。しかしながら、他の実施形態では、この接続は容量性であってもよい。補助導体102の中間部分116を螺旋巻き外部導体130から離隔して、ボイド128を画定する。受信器120は、このボイド内に位置しており、受信器120の受信導体124は、端部126で二次電源回路または電気素子に接続可能である。
【0087】
螺旋巻き外部導体130は、補助導体102によって結合される領域を通り延在する。螺旋巻き外部導体130が第一EM信号、例えば、RF信号を伝達するとき、螺旋巻き外部導体130は漏れるため、同軸ケーブル104の外側に磁場を発生させる。
【0088】
さらに、第一EM信号が螺旋巻き外部導体130によって伝達されるとき、第一EM信号の一部は、螺旋巻き外部導体130の外面付近に流れている。例えば、螺旋巻き外部導体130の厚さ及び/または材料は、電流の一部を螺旋巻き外部導体130の外面付近に流すように、第一EM信号の表皮深さに基づいて選択される。従って、第一EM信号の少なくとも一部は、補助導体102を通り流れる。
【0089】
そのため、同軸ケーブル104が螺旋巻き外部導体130によって漏洩するため、螺旋巻き外部導体130を流下する信号は、内部導体106を流下する信号によって発生した磁場をキャンセルしない。これは、同軸ケーブル104の外側に磁場(例えば、有用なまたは無視できない磁場)を発生させる。さらに、螺旋巻き外部導体130の外面付近に流れる第一EM信号の一部は、補助導体102を流下し、さらに、内部導体106及び螺旋巻き外部導体130を流下する信号間の差異を増幅させる。これは、螺旋巻き外部導体130の外面の外側に、さらに大きい磁場を発生させる。この磁場は、受信器120によって結合される。
【0090】
第二EM信号、例えば、MW信号が同軸ケーブル104によって伝達されるとき、同軸ケーブル104は、同軸ケーブル104の外側に磁場(すなわち、有用なまたは無視できない磁場)を生じるように構成されていない。これは、第二EM信号の周波数が高くなることにより、第二EM信号の無視できる部分が螺旋巻き外部導体130の外面付近に流れるからである。さらに、容量性サセプタンスが増大して表皮深さが低下することにより、螺旋巻き外部導体130は、第二EM信号を伝達するときに著しく漏洩しない。
【0091】
図7は、第四実施形態による、電力伝送アセンブリ100を含む電気手術システム200を示す。電気手術システム200は、組織治療のために生体組織にEMエネルギーを送達する。
【0092】
電気手術システム200は、EM信号を発生させるエネルギー源202を含む。例えば、エネルギー源202は、RF信号及びMW信号を発生させる発生器であってよい。電気手術システム200はさらに供給構造体204を含み、供給構造体は、エネルギー源202からのEMエネルギーを、供給構造体204の遠位端部に位置したアプリケータ212に伝達する。供給構造体204及びアプリケータ212は、電気手術器具の少なくとも一部を形成する。
【0093】
電気手術器具は手術用スコープ装置206のためのものであってよい。例えば、電気手術器具は、手術用スコープ装置206内に嵌合する寸法に作られてよい。この実施形態では、手術用スコープ装置206は、本体208及び器具コード210を含む。器具コード210は、患者の身体に挿入可能であるように構成されることができる。供給構造体204は、組織内へのEMエネルギーの送達のために、器具コード210を通り延在し、アプリケータ212が供給構造体204及び器具コード210の遠位端部に位置している。器具は、器具チャネル内に、または器具コード210内のルーメン内に運搬され得る。
【0094】
電気手術システム200は、電力伝送アセンブリ100を含む。電力伝送アセンブリ100の実施形態は図1図6に示される。供給構造体204は、送信器105の同軸ケーブル104を含む。例えば、供給構造体204は、同軸ケーブルであってよく、供給構造体の同軸ケーブルのセクションは、送信器105の同軸ケーブル104であってよい。送信器の同軸ケーブル104は、供給構造体204に沿った任意の地点に位置していてもよい。この実施形態では、電力伝送アセンブリ100は、供給構造体204の近位端部領域に、例えば、エネルギー源202に接合する位置の付近に位置している。
【0095】
第一EM信号が供給構造体204に沿って伝達されるとき、及び第一EM信号が電力伝送アセンブリ100に到達するとき、磁場は供給構造体204の外側に発生する。次いでこれは、電力伝送アセンブリ100の受信器120によって結合され、供給構造体204から受信器120への誘導結合によってエネルギーを伝送することができる。この実施形態では、受信器120は、供給構造体204の周囲に位置している。しかしながら、他の実施形態では、受信器は、供給構造体204の周囲の別個の構造体内に位置していてもよい。第二EM信号が供給構造体204に沿って伝達されるとき、上述のように、ゼロまたはほぼゼロの磁場が供給構造体204の外側に発生する。
【0096】
上述の説明、もしくは以下の特許請求の範囲、もしくは添付の図面で開示し、その具体的な形態でもしくは開示した機能を行うための手段の形で表した特徴、または開示した結果を得るための方法もしくはプロセスを、必要に応じて、別個に、またはこのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用してもよい。
【0097】
本発明を、上記の例示的な実施形態と併せて説明してきたが、本開示が与えられた場合、多くの均等の修正及び変形が当業者には明らかであろう。従って、上記の本発明の例示的な実施形態は、例示的であり限定的でないと判断される。記載される実施形態への様々な変更を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに行ってもよい。
【0098】
誤解を避けるために、本明細書に提供する理論的な説明は、読者の理解を深めることを目的として提供されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望むものではない。
【0099】
本明細書で使用される任意のセクションの見出しは構成の目的のみのためであり、記載される対象物の限定として解釈されるべきではない。
【0100】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書を通して、文脈が特別に要求しない限り、「含む(comprise)」及び「含む(include)」という単語、ならびに変形、例えば、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」及び「含むこと(including)」は、明示された構成要素もしくはステップ、または構成要素もしくはステップの群を包含するが、他の構成要素もしくはステップ、または構成要素もしくはステップの群を除外しないことを示唆すると理解される。
【0101】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確にそうでないと示されない限り、複数の指示物を包含することに留意されたい。範囲は、「約」ある特定の値から及び/または「約」別の特定の値までとして、本明細書において表現され得る。かかる範囲が表現されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表現される場合に、先行詞「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関連する用語「約」は、任意であり、例えば、±10%を意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料によって分離された内部導体及び外部導体を有する同軸ケーブルを含む送信器であって、前記同軸ケーブルによって第一電磁(EM)信号が伝達されるとき、前記同軸ケーブルは前記外部導体の外側で半径方向に磁場を放射するように構成される、前記送信器と、
前記磁場を使用して誘導結合により前記送信器から電力を受信するための受信器と、
を含む、電力伝送アセンブリ。
【請求項2】
前記外部導体は、第一螺旋巻き導体を含む、請求項1に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項3】
前記第一螺旋巻き導体は、前記外部導体が伝達する前記信号によって発生した第一磁場に、前記内部導体が伝達する前記信号によって発生した第二磁場をキャンセルさせないことにより、前記外部導体の外側で半径方向に前記磁場を前記同軸ケーブルに放射させるように構成された不具合を含む、請求項2に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項4】
前記不具合は、前記第一螺旋巻き導体の隣接する巻線間の抵抗を増大させることにより、前記第一EM信号が前記不具合にローカルな領域内で前記第一螺旋巻き導体に沿って螺旋経路を辿る、請求項3に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項5】
前記不具合は、前記第一螺旋巻き導体の隣接する巻線間のギャップを含む、請求項3または4に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項6】
前記外部導体は、第二螺旋巻き導体をさらに含み、前記第一螺旋巻き導体は第一導電率を有し、前記第二螺旋巻き導体は第二導電率を有し、前記第一導電率及び前記第二導電率は異なり、前記外部導体の外側で半径方向に前記磁場を放射する、請求項2から5のいずれか1項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項7】
前記送信器は、第一部分及び第二部分を有する補助導体を含み、各部分は前記外部導体に電気結合され、前記補助導体は、前記第一部分と前記第二部分との間に中間部分をさらに有し、前記中間部分は前記外部導体から半径方向に離隔されてボイドを画定し、前記補助導体及び前記外部導体は、前記第一EM信号を前記補助導体に通して流すように構成される、いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項8】
前記外部導体は、前記第一EM信号を前記補助導体に通して流すように前記同軸ケーブルによって伝達される前記第一EM信号の表皮深さに応じて設定される厚さ及び/または材料を有する、請求項7に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項9】
前記外部導体は薄いセクションを含み、前記薄いセクションは前記外部導体の他のセクションよりも薄く、前記補助導体は前記薄いセクションに結合され、前記薄いセクションは、前記第一EM信号を前記補助導体に通して流すための厚さを有する、請求項7または8に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項10】
前記第一部分及び/または前記第二部分は、前記外部導体に物理的に直接接続される、請求項7から9のいずれか1項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項11】
前記第一部分及び/または前記第二部分は、前記外部導体から離隔されて、前記補助導体を前記外部導体に容量結合するための容量素子を形成する、請求項7から10のいずれか1項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項12】
前記受信器は前記ボイド内に位置している、請求項7から11のいずれか1項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項13】
前記受信器は磁化素子を含む、いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項14】
前記受信器の受信導体は、前記磁化素子の周囲に巻回される、請求項13に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項15】
前記磁化素子はトロイドを含む、請求項13または14に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項16】
前記外部導体は、第二EM信号が前記同軸ケーブルによって伝達されるとき、前記外部導体の外側で半径方向に磁場を放射しないように構成され、前記第二信号は前記第一信号よりも高い周波数を有する、いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項17】
前記第二EM信号はマイクロ波(MW)信号である、請求項16に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項18】
前記第一EM信号は、高周波(RF)信号である、いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリ。
【請求項19】
組織治療用に生体組織に電磁(EM)エネルギーを送達するための電気手術器具であって、
供給構造体、及び前記供給構造体の遠位端部に位置したアプリケータであって、前記供給構造体はエネルギー源から前記アプリケータに前記EMエネルギーを伝達し、前記アプリケータは治療部位で生体組織内に前記EMエネルギーを送達する、前記アプリケータと、
いずれかの先行請求項に記載の電力伝送アセンブリであって、前記供給構造体は前記送信器の前記同軸ケーブルを含み、前記EMエネルギーは前記第一EM信号を含む、前記電力伝送アセンブリと、
を備える、前記電気手術器具。
【請求項20】
前記電気手術器具は、手術用スコープ装置の器具チャネルを通して挿入されるサイズに作られる、請求項19に記載の電気手術器具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
ただし、第一螺旋巻き導体と第二螺旋巻き導体との間の導電率における差異は、第一導電率と第二導電率との間の差異を生じさせるための導体の他の特徴を変動させることによって生じる可能性もある。
【国際調査報告】