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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】全固体電池用固体電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20241003BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20241003BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20241003BHJP
   C01G 29/00 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01B1/06 A
H01B1/08
C01G29/00
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512061
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2022016299
(87)【国際公開番号】W WO2024058303
(87)【国際公開日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0117429
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524063958
【氏名又は名称】ベイス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】パク,テ ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,キル ホ
(72)【発明者】
【氏名】アムパドゥ,イムマヌエル クァミ
(72)【発明者】
【氏名】キム,デ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ワルヨ,ヌルハディ スクマ
【テーマコード(参考)】
4G048
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5G301CA02
5G301CA13
5G301CA16
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE02
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AM12
5H029BJ12
5H029DJ17
5H029HJ02
5H029HJ14
(57)【要約】
本発明は全固体電池用固体電解質に関する。本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質はLi、KおよびBiを含む酸化物からなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池用固体電解質であって、
Li、KおよびBiを含む酸化物からなる、
全固体電池用固体電解質。
【請求項2】
各成分のモル比を基準として、0.2≦(Li+K)/Bi<1を満足する、請求項1に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項3】
各成分のモル比を基準として、0.2≦(Li+K)/Bi≦0.6を満足する、請求項2に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項4】
モル比を基準として、0.1≦Li<0.5を満足する、請求項2又は3に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項5】
モル比を基準として、0.10≦K≦0.15を満足する、請求項2~4のいずれか一項に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項6】
ビズマス酸化物結晶構造を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項7】
軟化点が540℃~600℃である、請求項1~6のいずれか一項に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項8】
Half-ball温度が550℃~660℃である、請求項1~7のいずれか一項に記載の全固体電池用固体電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全固体電池用固体電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話などのIT機器から電気自動車、エネルギー貯蔵装置に至るまで多様な分野で二次電池の利用が大きく増加している。
【0003】
二次電池としては、液体電解質を使うリチウムイオン電池が最も広く使われている。しかし、液体電解質は電池に外部衝撃が加えられる場合に涙液の危険があり、これに伴い、安全性を確保するための追加的な部品、装置が必要となる。
【0004】
最近、二次電池の安全性を向上させるために、電解質として固体電解質を使う全固体電池に対する開発が活発に進行されている。全固体電池の固体電解質としては、高分子系電解質、酸化物系電解質、硫化物系電解質などがある。このうち硫化物系固体電解質はイオン伝導度が最も高いが、水分と反応して硫化水素ガスが発生する問題がある。高分子系電解質は相対的に工程が簡単であり既存のリチウムイオン電池工程を使用できるという長所があるが、イオン伝導度が顕著に低いという短所がある。
【0005】
酸化物系電解質は硫化物系電解質より安全性が優秀であるという長所があるが相対的にイオン伝導度が低い方である。また、酸化物系電解質は一般的に1,000℃以上の高い焼結温度が要求され、これに伴い、製造費用が大きく増加し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前述した従来技術の問題を解決するためのもので、低温焼結できながらも優秀なイオン伝導度を有する全固体電池用固体電解質を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質はLi、KおよびBiを含む酸化物からなる。
【0008】
本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質は各成分のモル比を基準として、0.2≦(Li+K)/Bi<1を満足することができる。また、本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質は各成分のモル比を基準として、0.2≦(Li+K)/Bi≦0.6を満足することができる。
【0009】
本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質はモル比を基準として、0.1≦Li<0.5を満足することができる。また、本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質はモル比を基準として、0.10≦K≦0.15を満足することができる。
【0010】
本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質はビズマス酸化物結晶構造を有することができる。
【0011】
本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質は軟化点が540℃~600℃であり得る。
【0012】
本発明の一実施例に係る全固体電池用固体電解質はHalf-ball温度が550℃~660℃であり得る。
【0013】
この他にも、本発明に係る全固体電池用固体電解質は本発明の技術的思想を害しない範囲で他の付加的な構成をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施例によると、全固体電池用固体電解質がLi、KおよびBiを含むことによって、低温焼結が可能でありながらも優秀なイオン伝導度を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】全固体電池の断面を概略的に示す図面である。
図2】本発明の実施例および比較例に係る固体電解質の組成範囲を図示した三角図表を示す。
図3】本発明の一実施例に係る固体電解質のXRDグラフを示す。
図4】本発明の比較例に係る固体電解質のXRDグラフを示す。
図5】本発明の比較例に係る固体電解質のXRDグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例について、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる程度に詳細に説明する。
【0017】
本発明を明確に説明するために本発明にかかわらない部分の説明は省略し、明細書全体を通じて同じ構成要素に対しては同じ参照符号を付することにする。明細書に記載されている特定形状、構造および特性は本発明の思想および範囲を逸脱することなく一実施例から他の実施例に変更されて具現され得、個別構成要素の位置または配置も本発明の思想および範囲を逸脱することなく変更され得るものと理解されるべきである。
【0018】
したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として行われるものではなく、本発明の範囲は請求の範囲の請求項が請求する範囲およびそれと均等なすべての範囲を包括するものと理解されるべきである。
【0019】
図1は、全固体電池の断面を概略的に示す図面である。
【0020】
図1を参照すると、全固体電池10は正極11、負極12および固体電解質層13を含む。固体電解質層13は正極11と負極12の間に配置され、正極11および負極12とそれぞれ接触することができる。正極11と負極12はそれぞれ正極活物質層と負極活物質層を具備することができ、正極活物質層と負極活物質層がそれぞれ固体電解質層13と接触することができる。
【0021】
正極11と負極12はそれぞれ焼結によって固体電解質層13と接合され得る。すなわち、正極11、負極12および固体電解質層13は一体に焼結され得る。
【0022】
図1には全固体電池10が正極11、負極12および固体電解質層13を各一層含む形態で図示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、正極、負極および固体電解質層がそれぞれ複数の層からなる形態で全固体電池を構成してもよい。または正極、負極および固体電解質層が交互に複数積層された形態の、いわゆる積層型全固体電池で構成されてもよい。
【0023】
本発明の一実施例に係る固体電解質層13は固体電解質として酸化物系電解質を含む。
【0024】
酸化物系固体電解質としてはLAGPのようなナシコン(Nasicon)タイプ、LLZOのようなガーネット(Garnet)タイプの固体電解質が知られており、持続的な研究開発を通じてこのような酸化物系固体電解質のイオン伝導度が10-4S/cm水準まで向上したと知られている。
【0025】
しかし、前記ナシコンタイプおよびガーネットタイプの酸化物系固体電解質でイオン伝導度をさらに向上させることは限界がある。それだけでなく、これら酸化物系固体電解質は1,000℃以上の高温で焼結されるところ、前述した通り、ある程度優秀なイオン伝導度を得ることはできるものの高温焼結にともなう製造費用の増加は避けられない。
【0026】
本発明の一実施例ではこのような従来酸化物系固体電解質の限界を克服した新しい酸化物系固体電解質を通じて、焼結温度を低くしながらも非常に優秀なイオン伝導度を確保している。
【0027】
本発明の一実施例によると、全固体電池用固体電解質はLi、KおよびBiを含む酸化物からなり得る。一実施例で、全固体電池用固体電解質はビズマス酸化物結晶構造を有することができる。
【0028】
固体電解質をなす組成でBiは結晶構造をなし、低温化成分であって焼結温度を低くする役割をする。
【0029】
固体電解質をなす組成でLiおよびKは網目修飾剤として機能することができ、ビズマス酸化物結晶構造の格子定数を増加させることができる。これに伴い、前記結晶構造でLiイオンの移動経路をさらに広く確保することができるため、イオン伝導度を向上させることができる。
【0030】
このように、本発明の一実施例に係る固体電解質はLi、KおよびBiを含む酸化物からなることによって、Biが結晶構造のメイン組成として機能し、LiおよびKがLiイオンの流動経路を広げて焼結温度を低くする役割をすることができる。
【0031】
本発明の一実施例によると、固体電解質をなす成分は特定の組成範囲を有することができる。
【0032】
本発明の一実施例に係る固体電解質は、各成分のモル比を基準として次の関係式を満足することができる。
【0033】
2≦(Li+K)/Bi<1
【0034】
好ましくは、本発明の一実施例に係る固体電解質は、各成分のモル比を基準として次の関係式を満足することができる。
【0035】
(2)0.2≦(Li+K)/Bi≦0.6
【0036】
固体電解質のアルカリ成分(LiおよびK)のモル比とBiのモル比が前記関係式を満足する場合、イオン伝導度が顕著に向上し得る。
【0037】
本発明の一実施例に係る固体電解質は、モル比を基準として次の関係式をさらに満足することができる。
【0038】
(3)0.10≦Li<0.5
【0039】
(4)0.10≦K≦0.15
【0040】
固体電解質のアルカリ成分(LiおよびK)のモル比が前記範囲を満足する場合、イオン伝導度が向上し得る。
【0041】
本発明の一実施例に係る固体電解質の焼結温度は約500℃~約600℃である。本発明の一実施例に係る固体電解質は、前記温度で焼結された場合、常温で約2.4×10-4~約5.8×10-4S/cmのイオン伝導度を示す。
【0042】
実施例
【0043】
(実施例1)
【0044】
LiO 10mol%、KO 12.5mol%およびBi 77.5mol%を混合して固体電解質の製造のための前駆体パウダーを準備した。前駆体パウダーを混合した後、溶融炉に入れて約1,000℃の温度で約30分間溶融させた。以後、均質化された溶融物をクエンチングローラ(quenching roller)に注いで常温まで冷却させ、これを粉砕した後篩分けして10μm以下の大きさの微粒子を得た。最後に、このように得た微粒子を約500℃で約6時間焼結して固体電解質を製造した。
【0045】
(追加的な実施例および比較例)
【0046】
LiOおよびBiの組成比を異ならせて前駆体パウダーを準備し、組成比により800℃~1,200℃の温度で約30分間溶融したし、以後実施例1と同一の過程を通じて微粒子を得、それぞれ約500℃で約6時間焼結して固体電解質を製造した。
【0047】
以上で説明した各実施例および比較例に係る固体電解質組成比は表1に記載された通りである。
【0048】
【表1】
【0049】
図2は、本発明の実施例および比較例に係る固体電解質の組成範囲を図示した三角図表を示す。図2での1~4は実施例1~4に該当し、5~9は比較例1~5に該当する。
【0050】
図2を参照すると、実施例1~4と、比較例2と、比較例3~5はそれぞれ異なる結晶構造を有する。具体的には、実施例1~4はビズマス酸化物結晶(bismuth oxide crystal)構造を有し、比較例2はリチウム酸化物-ビズマス酸化物結晶(lithium-bismuth oxide crystal)構造を有し、比較例3~5はガラス-セラミック(glass-ceramic)構造を有する。そして比較例1はビズマス酸化物結晶構造とリチウム酸化物-ビズマス酸化物結晶構造の境界に位置する。
【0051】
図3は本発明の一実施例(実施例3)に係る固体電解質のXRDグラフを示し、図4および図5は本発明の比較例(比較例2および4)に係る固体電解質のXRDグラフを示す。
【0052】
図3を参照すると、本発明の実施例に係る固体電解質は単一相のビズマス酸化物結晶構造を有することを確認することができる。反面、比較例に係る固体電解質はリチウム酸化物-ビズマス酸化物結晶構造を有するか(図4参照)、ガラス-セラミック構造を有すること(図5参照)を確認することができる。
【0053】
各実施例および比較例に係る固体電解質の結晶構造と、軟化点、half-ball温度およびイオン伝導度を測定した結果は表2に記載された通りである。
【0054】
【表2】
【0055】
表2を参照すると、本発明の実施例1~4に係る固体電解質は600℃以下の軟化点を有し、half-ball温度は660℃以下を示す。このように、本発明の実施例に係る固体電解質は従来酸化物系固体電解質対比優秀な低温特性を有するため、低温焼結が可能となる。
【0056】
また、本発明の実施例1~4に係る固体電解質は2.4×10-4~5.8×10-4S/cmの非常に優秀なイオン伝導度を有する。これに比べ、比較例に係る固体電解質聞いた実施例と類似する低温特性を示すがイオン伝導度は0.97×10-6~1.7×10-5S/cmであり、本発明の実施例と大きな差を見せる。
【0057】
このように、本発明の実施例1~4に係る固体電解質は低温焼結が可能でありながらも優秀なイオン伝導度を有することを確認することができる。
【0058】
以上、本発明を具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例によって説明したが、前記実施例は本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であればこのような記載から多様な修正および変形を図ることができる。
【0059】
したがって、本発明の思想は前述された実施例に限定されて定められてはならず、後述する請求の範囲だけでなくこの請求の範囲と均等にまたは等価的に変形された全てのものは本発明の思想の範疇に属すると言える。

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池用固体電解質であって、
Li、KおよびBiを含む酸化物からなる、
全固体電池用固体電解質。
【請求項2】
各成分のモル比を基準として、0.2≦(Li+K)/Bi<1を満足する、請求項1に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項3】
各成分のモル比を基準として、0.2≦(Li+K)/Bi≦0.6を満足する、請求項2に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項4】
モル比を基準として、0.1≦Li<0.5を満足する、請求項2に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項5】
モル比を基準として、0.10≦K≦0.15を満足する、請求項2に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項6】
ビズマス酸化物結晶構造を有する、請求項1に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項7】
軟化点が540℃~600℃である、請求項1に記載の全固体電池用固体電解質。
【請求項8】
Half-ball温度が550℃~660℃である、請求項1~7のいずれか一項に記載の全固体電池用固体電解質。
【国際調査報告】