(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】垂直方向に延びる流路の撓みを測定する装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20241003BHJP
G01C 7/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01B11/16 G
G01C7/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513080
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 RU2021000551
(87)【国際公開番号】W WO2023055252
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518312460
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー“ロスエネルゴアトム”
(71)【出願人】
【識別番号】524051885
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー “エヌ. エー. ドレジャーリ リサーチ アンド デベロップメント インスティテュート オブ パワー エンジニアリング”
(71)【出願人】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(71)【出願人】
【識別番号】524052099
【氏名又は名称】オブチェストヴォ エス オグラニチェンノイ オトヴェットヴェンノスチュ “プロローグ”
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェドロフ, アルチョム・ニコラエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ポドシンニコフ, アレクサンドル・アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ステパノフ, マクシム・アレクセーヴィッチ
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065BB08
2F065DD02
2F065FF52
2F065GG04
2F065GG25
2F065LL02
2F065MM06
2F065PP01
2F065PP26
2F065UU03
(57)【要約】
本発明は、測定技術、すなわち黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(LWGR)の原子炉燃料チャンネルを含む、垂直方向に延びる流路の撓みを測定する装置に関する。
この技術的成果は、原子炉燃料チャネルを含む流路の撓みの測定精度を維持しつつ、垂直方向に延びる流路の撓みの測定装置の製造を簡素化することである。
この装置は、少なくとも1つの光ファイバーセンサーを備えた可撓性の中空支持ロッドを含み、前記光ファイバーセンサーは、密閉された管状ケーシングにより閉じられたコアを備え、前記コアの上部は、中央に円筒形の空洞を有する取付スリーブの形式であり、前記コアの下部は、中央ロッドの形式であり、前記中央ロッドに、長手方向のセクター状の切り込みが設けられ、当該切り込みに、長手方向の貫通孔を備えたフェルールが固定されており、前記中央ロッドの下端には、重力振り子が配置されており、光ファイバー回線が前記フェルールの長手方向の貫通孔を通って敷設され、前記光ファイバーセンサーを、コンピューターに接続された波長可変レーザーと光検出器に接続し、前記光ファイバーセンサーの前記密閉された管状ケーシング内の空洞が不活性ガスで満たされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に延びる流路の撓みを測定する装置であって、
少なくとも1つの光ファイバーセンサーを備えた可撓性の中空支持ロッドを含み、
前記光ファイバーセンサーは、密閉された管状ケーシングにより閉じられたコアを備え、
前記コアの上部は、前記可撓性の中空支持ロッドの下端にしっかりと固定された、中央に円筒形の空洞を有する取付スリーブの形式であり、
前記コアの下部は、前記取付スリーブと同軸の中央ロッドの形式であり、
前記取付スリーブの円筒形の空洞の下部には、光ファイバー回線を設置するための貫通穴が前記中央ロッドの外径の周囲に形成され、
前記中央ロッドに、長手方向のセクター状の切り込みが設けられ、当該切り込みに適合する、長手方向の貫通孔を備えたフェルールが固定されており、
前記中央ロッドの下端には、可撓性の支持部により、前記コアの長手方向軸に対して傾くことができる重力振り子が、互いに対向する前記フェルールの下面と当該重力振り子の上端との間に隙間が形成されるように配置されており、
光ファイバー回線は、前記フェルールの長手方向の貫通孔、前記取付スリーブの空洞の下部に形成された貫通穴、前記取付スリーブの空洞および前記可撓性の中空支持ロッド内の空洞を通って敷設され、前記光ファイバーセンサーを、コンピューターに接続された波長可変レーザーと光検出器に接続し、
さらに、前記光ファイバー回線の下端が前記フェルールの下面と同一平面上に設定されており、
前記光ファイバーセンサーの前記密閉された管状ケーシング内の空洞が不活性ガスで満たされている
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
一次情報処理部を備え、その入力が前記光検出器に電気的に接続され、その出力がコンピューターに接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記密閉された管状ケーシングは、その下部自由端に密閉されたカバーを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記重力振り子を前記中央ロッドに連結する前記可撓性の支持部は、前記コアの横断面を細くすることによるコアネックの形態で形成され、前記重力振り子が前記コアの長手方向軸からずれることを可能にする
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定技術、すなわち黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(LWGR)の原子炉燃料チャンネルを含む、垂直方向に延びる流路の撓みを測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の本質的特徴に最も近いものは、光ファイバーセンサーを備えた支持体を含む、LWGR燃料チャネルの撓みを測定するための装置である(ロシア特許第2626301号、公開日2017年7月25日、IPC G01B 5/20)。
【0003】
原子炉燃料チャネルの撓みを測定するための既知の装置では、耐放射線性石英系光ファイバーの構造内に複数レベルで埋め込まれたファイバ・ブラッグ・グレーティングである光ファイバー歪センサーが使用される。支持体は、可撓性の中空ロッドの形式であり、その内面の周囲に沿って光ファイバー歪センサーが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LWGRの燃料チャネルの撓みを測定する既知の装置の欠点は、耐放射線性石英系光ファイバーの内部に屈折率を変化させた微細な部分を技術的に複雑に実装してブラッググレーティングを形成することに伴う、複雑で労力のかかる光ファイバー歪みセンサーの製造技術にある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、運転中の黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(LWGR)を含む燃料チャネルの幾何学的パラメータの変化に関する信頼性の高い情報を得る可能性を維持しつつ、ブラッググレーティングを形成する、屈折率を変化させた微細な部分を得るために、複雑で労力を要する技術的な操作が含まれる耐放射線性石英系光ファイバーの使用を排除することを可能にする、原子炉燃料チャネルの撓みを測定する装置を創出することである。
【0007】
本発明の技術的成果は、原子炉燃料チャネルを含む流路の撓みの測定精度を維持しつつ、垂直方向に延びる流路の撓みの測定装置の製造を簡素化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的成果は、以下の装置により達成される。すなわち、垂直方向に延びる流路の撓みを測定する装置であって、少なくとも1つの光ファイバーセンサーを備えた可撓性の中空支持ロッドを含み、前記光ファイバーセンサーは、密閉された管状ケーシングにより閉じられたコアを備え、前記コアの上部は、前記可撓性の中空支持ロッドの下端にしっかりと固定された、中央に円筒形の空洞を有する取付スリーブの形式であり、前記コアの下部は、前記取付スリーブと同軸の中央ロッドの形式であり、前記取付スリーブの円筒形の空洞の下部には、光ファイバー回線を設置するための貫通穴が前記中央ロッドの外径の周囲に形成され、前記中央ロッドに、長手方向のセクター状の切り込みが設けられ、当該切り込みに適合する、長手方向の貫通孔を備えたフェルールが固定されており、前記中央ロッドの下端には、可撓性の支持部により、前記コアの長手方向軸に対して傾くことができる重力振り子が、互いに対向する前記フェルールの下面と当該重力振り子の上端との間に隙間が形成されるように配置されており、光ファイバー回線は、前記フェルールの長手方向の貫通孔、前記取付スリーブの空洞の下部に形成された貫通穴、前記取付スリーブの空洞および前記可撓性の中空支持ロッド内の空洞を通って敷設され、前記光ファイバーセンサーを、コンピューターに接続された波長可変レーザーと光検出器に接続し、さらに、前記光ファイバー回線の下端が前記フェルールの下面と同一平面上に設定されており、前記光ファイバーセンサーの前記密閉された管状ケーシング内の空洞が不活性ガスで満たされていることを特徴とする。
【0009】
有利には、一次情報処理部を備え、その入力が前記光検出器に電気的に接続され、その出力がコンピューターに接続されているとしても良い。
【0010】
また、前記密閉された管状ケーシングは、その下部自由端に密閉されたカバーを備えているとしても良い。
【0011】
さらに、前記重力振り子を前記中央ロッドに連結する前記可撓性の支持部は、前記コアの横断面を細くすることによるコアネックの形態で形成することができ、コアネックの材料による弾性変形の範囲内で、重力振り子がコアの長手方向軸から重力によりずれることを可能にするとしても良い。
【0012】
提案された技術的解決策、すなわち垂直方向に延びる流路の撓みを測定する装置について、以下に説明する具体的な実施形態の例によって説明する。
【0013】
示された例は唯一の可能なものではないが、この一連の本質的特徴によって記載された技術的結果を達成する可能性を明確に示している。図面によって説明される本発明の本質は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】延長された垂直方向の流路の撓みを測定する装置の一般的な概略図である。
【
図3】原子炉燃料アセンブリの真っすぐな中心管内における光ファイバーセンサーの位置を示す図である。
【
図4】原子炉燃料アセンブリの撓んだ中心管内における光ファイバーセンサーの位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
垂直方向に延びる流路の撓みを測定する装置は、可撓性の中空支持ロッド1と、可撓性の中空支持ロッド1の下端に取り付けられ、光ファイバー回線によって波長可変レーザー3と光検出器4に接続されている少なくとも1つの光ファイバーセンサー2とを含む。波長可変レーザー3と光検出器4は、一次情報処理部5を介してコンピューター6に接続されている。光ファイバーセンサー2は、密閉された管状ケーシング7で閉じられたコアを含む。
【0016】
コアの上部は、可撓性の中空支持ロッド1の下端にしっかりと固定された取付スリーブ8の形で作られている。取付スリーブ8は、中央に円筒形の空洞を有する。コアの下部は、取付スリーブ8と同軸の中央ロッド9の形で作られている。
【0017】
コアの取付けスリーブ8の中央空洞の下部には、コアの中央ロッド9の外径の周囲に、光ファイバー回線10を設置するための貫通孔が設けられている。
【0018】
コアの中央ロッド9には、長手方向のセクター状の切り込みが設けられており、この切り込みに適合する、長手方向の貫通孔を備えたフェルール11が固定されている。
【0019】
コアの中央ロッド9の下端には、コアの長手方向軸に対して傾くことができる重力振り子12が配置されている。
【0020】
重力振り子12は、可撓性の支持部13によりコアの中央ロッド9に接続されており、可撓性の支持部13を挟んで互いに対向する、重力振り子12の上端とフェルール11の下面との間に隙間14が形成されるように設置されている。
【0021】
各光ファイバーセンサー2と、コンピューター6に接続された波長可変レーザー3および光検出器4とを接続する各光ファイバー回線10は、フェルール11の長手方向の各貫通孔、コアの取り付けスリーブ8および可撓性の中空支持ロッド1の中央空洞および貫通孔を通って敷設されている。
【0022】
光ファイバーセンサーの動作を確実にするために、光ファイバー回線10の下端は、フェルール11の下面と同一平面に設定されている。
【0023】
光ファイバーセンサー2の密閉された管状ケーシング7の空洞には、不活性ガスが充填されており、そのセンサーの、測定の精度に影響を与える環境影響からの保護と保全が行われる。密閉された管状ケーシング7は、一つの実施形態では、その下部自由端に密閉固定されたカバー15を備えることができる。
【0024】
一つの実施形態によれば、重力振り子12を、例えばポリアミド製の可撓性を有するサスペンション13によって、中央ロッド9の下端に取り付けることができる。
【0025】
別の実施形態によれば、コアと振り子12が単一の部材で作られてもよい。その単一の部材は、中央ロッド9の下部に、その横断面を細くすることによるネックが設けられ、そのネックが可撓性のサスペンション13を形成する。
【0026】
フェルール11の下面と重力振り子12の上端との間に形成される隙間14の大きさは、0.5mm以下であり、これにより重力振り子12の偏向角度が制限されている。この場合、可撓性の支持部13の一実施形態であるコアのネックは、重力振り子12がコアの幾何学的軸に対して傾いたときに弾性変形域内で動作することになる。これによって、装置の操作性が保証される。
【0027】
本装置の動作を、原子炉燃料チャネルの撓みを測定する例で説明する。
【0028】
支持要素である支持ロッド1が初期位置に配置される。初期位置とは、可撓性の中空支持ロッド1が燃料アセンブリの中心管16内に完全に降下された位置である。
【0029】
撓みの測定は、光ファイバーセンサー2が下端に固定された可撓性の中空支持ロッド1を燃料アセンブリの中心管16内において引き上げることによって行われる。この際、波長可変レーザー3からの光信号が光ファイバー回線10を通じて光ファイバーセンサー2に伝送され、光ファイバーセンサー2の重力振り子12によって反射された信号が光ファイバー回線10を通じて光検出器4で受信される。
【0030】
原子炉燃料チャネルに撓みがあり、それに伴って燃料アセンブリの中心管16に撓みが生じている場合、可撓性の中空支持ロッド1は、燃料アセンブリのその撓んだ中心管16に沿って移動する。この際、光ファイバーセンサー2とそのコアとの幾何学的軸が垂直方向から逸脱すると、光ファイバーセンサー2の重力振り子12は、重力の影響を受けて、可撓性の支持部13により、光ファイバーセンサー2の幾何学的軸の、重力ベクトルからの偏向角に比例する角度だけ傾く。
【0031】
可撓性の中空支持ロッド1が引き上げられる際に、光ファイバーセンサー2の幾何学軸が重力ベクトルから逸脱すると、その結果、光ファイバーセンサー2が傾いたときに垂直姿勢をとる傾向がある重力振り子12(
図4に記載の角度α)に対してフェルール11の下面がずれることが生じる。
【0032】
重力振り子12に対するフェルール11のずれの結果、隙間14の幾何学パラメータが変化する。すなわち、重力振り子12の反射面と、フェルール11の長手方向の貫通孔内に配置された光ファイバー回線10の下端との間の距離に変化が生じる(
図4参照:隙間の寸法X
1
1≠X
1
2)。
【0033】
これにより、反射光信号(ビーム)の干渉パターンに変化が生じ、その変化が生じた反射光信号が光検出器4で記録され、コンピューター6にインストールされている専用ソフトウェアで解析される。
【0034】
測定の結果、それぞれの光ファイバー回線10ごとに、隙間14のプロフィログラムが記録される。得られた隙間14のプロフィログラムに基づいて、燃料アセンブリの中心管16の、垂直軸からの撓みの大きさと方向のプロフィログラムが計算される。そして、原子炉燃料チャネルの撓みの大きさと方向が計算される。
【0035】
装置の動作テストを実施した結果、提案された装置を使用した測定精度の高さが示された。
【0036】
提案された装置は、様々な産業分野において、長い垂直方向の流路や配管の撓み(曲率)の有無とその量を管理するために使用することができ、黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(LWGR)を含む原子炉燃料チャネルの撓みを測定するためにも使用できる。
【0037】
提案された装置を使用することにより、燃料アセンブリの中心管の撓みを必要な精度で検出、測定することが可能になり、それに基づいて原子炉燃料チャネルの撓みを判定することができる。
【国際調査報告】