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特表2024-536986光透過性、高柔軟性、及び高耐湿性を有する電気変色素子用組成物及び電気変色部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光透過性、高柔軟性、及び高耐湿性を有する電気変色素子用組成物及び電気変色部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1516 20190101AFI20241003BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02F1/1516
C08L101/00
C08K5/3432
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514129
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2021018512
(87)【国際公開番号】W WO2023063490
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0136307
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0136308
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517279964
【氏名又は名称】コリア・ユニバーシティ・オブ・テクノロジー・アンド・エデュケーション・インダストリー-ユニバーシティ・コーポレーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ジン ウ
(72)【発明者】
【氏名】オ,スン ジュ
【テーマコード(参考)】
2K101
4J002
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB06
2K101DB23
2K101DB27
2K101DC04
2K101DC13
2K101DC33
2K101DC43
2K101DD06
2K101EJ02
2K101EK05
4J002AA011
4J002BD031
4J002BD151
4J002BE021
4J002BG061
4J002BJ001
4J002CF061
4J002CH021
4J002CK021
4J002CM041
4J002CP031
4J002EH096
4J002EU047
4J002EU118
4J002FD026
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は光透過性及び伸縮性が改善された電気変色素子用組成物及び電気変色部材の製造方法に関する。
本発明の実施例による電気変色素子用組成物は、光透過性高分子樹脂と、可塑剤と、電気変色物質とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性高分子樹脂と、
可塑剤と、
電気変色物質と、を含む、電気変色素子用組成物。
【請求項2】
前記電気変色物質はジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートであり、前記電気変色物質の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して5乃至20重量部である、請求項1に記載の電気変色素子用組成物。
【請求項3】
前記電気変色物質は下記化学式1で表されるものである、
【化1】
請求項1に記載の電気変色素子用組成物。
【請求項4】
前記電気変色物質はエチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであり、前記電気変色物質の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して5乃至14重量部である、請求項1に記載の電気変色素子用組成物。
【請求項5】
前記電気変色物質は下記化学式2で表されるものである、
【化2】
請求項1に記載の電気変色素子用組成物。
【請求項6】
前記高分子樹脂100重量部に対して100乃至200重量部の含量を有するイオン性液体更に含む、請求項1に記載の電気変色素子用組成物。
【請求項7】
前記高分子樹脂100重量部に対して1乃至7重量部の含量を有するアノードレドックス化合物を更に含む、請求項1に記載の電気変色素子用組成物。
【請求項8】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極及び第2電極による電圧によって変色する電気変色素子層と、を含むが、前記電気変色素子層は請求項1に記載の電気変色素子用組成物を含む、電気変色素子。
【請求項9】
高分子樹脂、可塑剤、イオン性液体、及び電気変色物質を溶媒に溶解して混合溶液を製造するステップと、
前記混合溶液の溶媒を除去するステップと、を含む、電気変色部材の製造方法。
【請求項10】
前記電気変色物質はジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートであり、前記電気変色物質は下記製造方法で製造されるものである;
1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミドを溶媒に溶解した溶液を製造するステップ、及び
前記溶液にNHPFを加えるステップと、を含む、請求項9に記載の電気変色部材の製造方法。
【請求項11】
前記電気変色物質はエチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであり、前記電気変色物質は下記製造方法で製造されるものである;
エチルビオロゲンジブロミドを溶媒に溶解した溶液を製造するステップ、及び
前記溶液にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを加えるステップと、を含む、請求項9に記載の電気変色部材の製造方法。
【請求項12】
前記混合溶液を製造するステップにおいて、
前記可塑剤の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して700乃至1200重量部であり、
前記イオン性液体の含量は100乃至200重量部であり、
前記電気変色物質の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して5乃至20重量部である、請求項9に記載の電気変色部材の製造方法。
【請求項13】
前記混合溶液を製造するステップにおいて、
前記高分子樹脂100重量部に対して1乃至7重量部の含量を有するアノードレドックス化合物を更に加える、請求項9に記載の電気変色部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光透過性、高柔軟性、及び高耐湿性を有する電気変色素子用組成物及び電気変色部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気変色素子は電気変色物質(electrochromic material)を含んでおり、外部から印加される電圧によって色相が変わる素子である。前記電気変色物質には高分子化合物、金属酸化物など多様な物質が適用されており、前記電極に印加される電圧によって色相が可逆的に変化するようになる。
【0003】
最近はこのような変色素子を外部の視線及び太陽光を遮断するスマートウィンドウシステムや地図、文字などの情報を表示する自動車用ガラスに使用されるなど、適用分野が拡大されている。
【0004】
従来の電気変色素子は液体状の電気変色物質を利用するため電解液の漏液が発生するという問題があり、柔軟性を有するディスプレイとして使用されるのに制限がある。
【0005】
最近固体化した水基盤の電解液が開発されたが、水が容易に気化を防止するための保護層を追加に設置するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-2078481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は光透過性及び伸縮性が改善された電気変色素子用組成物及び電気変色部材の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、寿命が長く耐久性に優れる。
【0009】
また、柔軟性及び伸縮性を有することで多様な分野に適用可能である。
【0010】
また、製造方法が簡単で生産効率の増大及び製造コストの減少が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施例による電気変色素子用組成物は、光透過性高分子樹脂と、可塑剤と、電気変色物質とを含む。
【0012】
前記電気変色物質はジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートであり、前記電気変色物質の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して5乃至20重量部であり得る。
【0013】
前記電気変色物質は下記化学式1で表され得る。
【0014】
【化1】
【0015】
前記高分子樹脂100重量部に対して100乃至200重量部の含量を有するイオン性液体更に含み得る。
【0016】
前記電気変色物質はエチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであり、前記電気変色物質の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して5乃至14重量部であり得る。
【0017】
前記エチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは下記化学式2で表され得る。
【0018】
【化2】
【0019】
本発明の実施例による電気変色素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び第2電極による電圧によって変色する電気変色素子層とを含むが、前記電気変色素子層は上述した電気変色素子用組成物を含む。
【0020】
本発明の実施例による電気変色部材の製造方法は、高分子樹脂、可塑剤、イオン性液体、及び電気変色物質を溶媒に溶解して混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液の溶媒を除去するステップとを含む。
【0021】
前記電気変色物質はジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートであり、前記変色物質の製造方法は、1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミドを溶媒に溶解した溶液を製造するステップと、前記溶液にNHPFを加えるステップとを含み得る。
【0022】
前記電気変色物質はエチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであり、前記電気変色物質の製造方法は、エチルビオロゲンジブロミドを溶媒に溶解した溶液を製造するステップと、前記溶液にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを加えるステップとを含み得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施例による電気変色素子用組成物及び電気変色部材の製造方法によると、改善された光透過性及び伸縮性を有し得る。
【0024】
また、寿命が長く耐久性に優れる。
【0025】
また、柔軟性及び伸縮性を有することで多様な分野に適用可能である。
【0026】
また、製造方法が簡単で生産効率の増大及び製造コストの減少が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】電気変色物質がDHV[PF、DBV[PF、DEV[PFである場合のサイクリックボルタンメトリーによる測定結果を示す図である。
図2】電気変色物質がDHV[PF、DBV[PF、DEV[PFである場合の光吸収率の測定結果を示す図である。
図3】電気変色物質がDHV[PF、DBV[PF、DEV[PFである場合の電位による色発現程度を撮影した写真である。
図4】電気変色物質がDHV[PF、DBV[PF、DEV[PFである場合の光透過率の実験結果を示す図である。
図5】電気変色物質がDHV[PF、DBV[PF、DEV[PFである場合の光学密度対電荷密度の分析結果を示す図である。
図6】電気変色物質がDHV[PF、DBV[PF、DEV[PFである場合の着色/脱色の繰り返しサイクル実験結果を示す図である。
図7】電気変色物質がEV[TFSI]である場合のインピーダンス実験結果を示すナイキスト線図である。
図8】電気変色物質がEV[TFSI]である引張強度-歪みの測定結果を示す図である。
図9】電気変色物質がEV[TFSI]である圧縮荷重試験の結果を示す図である。
図10】電気変色物質がEV[TFSI]である蒸発試験の結果を示す図である。
図11】電気変色物質がEV[TFSI]であるサイクリックボルタンメトリーによる測定結果を示す図である。
図12】電気変色物質がEV[TFSI]である光吸収率の測定結果を示す図である。
図13】電気変色物質がEV[TFSI]である光透過率の実験結果を示す図である。
図14】電気変色物質がEV[TFSI]である光学密度対電荷密度の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を以下のように説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限らない。また、本発明の実施形態は、該当技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。よって、図面の要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張され得て、図面上の同じ符号で表示される要素は同じ要素である。また、類似した機能及び作用をする部分に対しては図面全体にわたって同じ符号を使用する。加えて、明細書全体において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素を更に含み得ることを意味する。
【0029】
電気変色素子用組成物
本発明の実施例による電気変色素子用組成物は、光透過性高分子樹脂と、可塑剤と、電気変色物質とを含む。
【0030】
前記高分子樹脂は電気変色素子用組成物から基本本体を形成する。前記高分子樹脂は可塑剤によって硬化する際に光透過性、柔軟性、及び伸縮性を有するものであり得る。そのために、前記高分子樹脂はポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリイミド(PI)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)のうち少なくともいずれか一つであり得る。特に、ポリ塩化ビニル(PVC)を使用することで高い光透過性、柔軟性、及び伸縮性を有し得る。
【0031】
可塑剤は高分子樹脂を可塑化する物質である。前記可塑剤は特に限らないが、DBA(アジピン酸ジブチル)であり得る。前記DBAは下記化学式3で表され得る。
【0032】
【化3】
【0033】
前記可塑剤の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して700乃至1200重量部、好ましくは800乃至1000重量部であり得る。可塑剤の含量が低すぎれば製造された変色素子部材に結晶が生成されやすく、可塑剤の含量が高すぎれば機械的物性が減少し得る。
【0034】
電気変色物質は外部から印加される電圧によって吸収する波長が変化し、色相が変わる物質である。本発明の実施例では、前記電気変色物質は、好ましくはジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートまたはエチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであり得る。
【0035】
前記ジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートはDHV[PFで表され、下記化学式4で表される。前記ジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートは、電圧が印加されたら青色またはシアン(Cyan)系の色相を具現し得る。このように電気変色物質を限定することで、電気変色素子層の光透過性を高く維持しながらも、電圧によって光透過率を制御し色相を正確に具現し得る。
【0036】
【化4】
【0037】
前記エチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドはEV[TFSI]で表され、下記化学式5で表される。前記エチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、電圧が印加されたら青色またはシアン系の色相を具現し得る。このように電気変色物質を限定することで、電気変色素子層の光透過性を高く維持しながらも、電圧によって光透過率を制御し色相を正確に具現し得る。
【0038】
【化5】
【0039】
前記電気変色物質の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して5乃至20重量部であり得る。前記電気変色物質がジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートであれば、前記電気変色物質の含量は好ましくは14乃至17重量部であり得る。
【0040】
前記電気変色物質がエチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであれば、前記電気変色物質の含量は、好ましくは8乃至13.5重量部、より好ましくは11乃至13.5重量部であり得る。前記電気変色物質の含量が低すぎれば光透過率を制御することが難しく、色相が正確に具現されない可能性があり、含量が高すぎれば電気変色層内に結晶が生成されて変色が不均一になるという問題がある。
【0041】
一実施例において、電気変色素子用組成物はイオン性液体(ionic liquid)を更に含み得る。イオン性液体は一般に100℃以下で非揮発性液体状態に維持されながらイオン及び電子の移動を向上し得る物質である。前記イオン性液体は多様なものが使用され得るが、好ましくは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMIM-TFSI)を使用し得る。このようにイオン性液体を限定することで、電気変色素子層の光透過性を高く維持し得る。前記EMIM-TFSIは下記化学式6で表され得る。
【0042】
【化6】
【0043】
前記イオン性液体の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して100乃至200重量部、好ましくは150乃至170重量部であり得る。前記イオン性液体の含量が高すぎれば光透過率が減少し得る。
【0044】
一実施例において、電気変色素子用組成物はアノードレドックス化合物を更に含み得る。前記アノードレドックス化合物はフェロセン及びジメチルフェロセンのうちいずれか一つであり得るが、好ましくはジメチルフェロセンであり得る。前記ジメチルフェロセンは下記化学式7で表され得る。
【0045】
【化7】
【0046】
前記アノードレドックス化合物の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して1乃至5重量部、好ましくは1乃至7重量部であり得る。
【0047】
電気変色素子
本発明の実施例による電気変色素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極及び第2電極による電圧によって変色する電気変色素子層とを含むが、前記電気変色素子層は上述した電気変色素子用組成物を含む。
【0048】
前記第1電極及び第2電極は電気装置で一般に使用されるものであって、特に限らない。但し、光透過性、柔軟性、伸縮性を有するためにITO glassまたはITO-PENなどからなるものであってもよい。
【0049】
前記電気変色素子層は上述した電気変色素子用組成物を含むものであって、前記電気変色素子用組成物を以下に説明する製造方法によって適当なサイズ及び厚さで製造したものであり得る。
【0050】
電気変色部材の製造方法
本発明の実施例による電気変色部材の製造方法は、高分子樹脂、可塑剤、イオン性液体、及び電気変色物質を溶媒に溶解して混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液の溶媒を除去するステップとを含む。
【0051】
前記混合溶液を製造するステップで混合される高分子樹脂剤、可塑剤、及びイオン性液体は上述した通りである。
【0052】
本ステップにおいて、前記電気変色物質はジヘプチルビオロゲンジヘキサフルオロホスフェートであれば、前記変色物質の製造方法は、1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミドを溶媒に溶解した溶液を製造するステップと、前記溶液にNHPFを加えるステップとを含み得る。前記1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミドはDHV(Br)で表され得る。
【0053】
前記溶媒は1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミドを溶解し得る液体であって、好ましくは水であり得る。本ステップにおいて、1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミドを水に入れて撹拌して完全に溶解し得る。
【0054】
前記溶液にNHPFを加えるステップは、前記1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミド溶液の上にNHPFを徐々に滴下することで行われ得る。
【0055】
次に、常温で反応させてDHV[PFを生成し得る。次に、溶媒を除去し洗浄及び乾燥して、最終的にてDHV[PFを製造し得る。
【0056】
本ステップにおいて、前記電気変色物質がエチルビオロゲンジビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであれば、前記電気変色物質の製造方法は、エチルビオロゲンジブロミドを溶媒に溶解した溶液を製造するステップ、及び前記溶液にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを加えるステップによって製造され得る。前記エチルビオロゲンジブロミドはEV(Br)で表され、下記化学式8で表される。
【0057】
【化8】
【0058】
前記溶媒はエチルビオロゲンジブロミドを溶解し得る液体であって、好ましくは水であり得る。本ステップにおいて、エチルビオロゲンジブロミドを水に入れて撹拌して完全に溶解し得る。
【0059】
前記リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを加えるステップは、前記エチルビオロゲンジブロミド溶液の上にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを徐々に滴下することで行われ得る。前記リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドはLiTFSIで表され、下記化学式9で表される。
【0060】
【化9】
【0061】
次に、常温で反応させてEV[TFSI]を生成し得る。次に、溶媒を除去し洗浄及び乾燥して、最終的にEV[TFSI]を製造し得る。
【0062】
混合溶液を製造するステップにおいて、使用する溶媒は極性有機溶媒であり得る。これは、PVCなど高分子樹脂を容易に溶解するためである。前記極性有機溶媒は、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及び1-メチル-2-ピロリドン(NMP)のうちいずれか一つであり得る。
【0063】
本ステップで加えられる前記可塑剤の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して700乃至1200重量部であり、前記イオン性液体の含量は100乃至200重量部であり、前記電気変色物質の含量は前記高分子樹脂100重量部に対して5乃至20重量部、好ましくは5乃至14重量部であり得る。また、前記高分子樹脂100重量部に対して1乃至7重量部、好ましくは1乃至5重量部の含量を有するアノードレドックス化合物を更に加えられ得る。
【0064】
本ステップの後、溶媒を除去するステップを行う。本ステップは先に多様な物質が混合された溶液を常温に長期間放置して行い得るが、必要によって乾燥器などを使用してもよい。また、所望の形状及び厚さに製造するためにフィルムまたはモールドの上で本ステップを行い得る。
【0065】
製造例:電気変色物質DHV[PF 、DBV[PF 、DEV[PF の製造
電気変色物質であるDHV[PFを製造するために、TCI社製のDHV(Br) 0.2gを水40mlに溶解した後、ここにNHPF 0.19gを他の水40mlに溶解した。次に、DHV(Br)を溶解した水溶液にNHPFを溶解した水溶液を一滴ずつ滴下して加えた。次に、混合溶液を25℃で24時間放置してDHV[PFが生成されるようにした。前記混合溶液を減圧フィルタリングし蒸留水で洗浄した後、真空オーブンを利用して80℃で24時間乾燥した。
【0066】
電気変色物質であるDBV[PFを製造するために、Alfa aeser社製のDBV(Br)(ベンジルビオロゲンジクロリド)0.2gを水40mlに溶解した後、ここにNHPF 0.2389gを一滴ずつ滴下して加えて、DBV(Br)及びNHPFのモル比が1:3になるようにした。次に、混合溶液を25℃で24時間放置してDBV[PFが生成されるようにした。前記混合溶液を減圧フィルタリングし蒸留水で洗浄した後、真空オーブンを利用して80℃で24時間乾燥した。
【0067】
電気変色物質であるDEV[PFを製造するために、DEV(Br)(1,1’-ジエチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミド)0.2gを40mlに溶解した後、ここにNHPF 0.34gを一滴ずつ滴下して加えた。次に、混合溶液を25℃で24時間放置してDEV[PFが生成されるようにした。前記混合溶液を減圧フィルタリングし蒸留水で洗浄した後、真空オーブンを利用して80℃で24時間乾燥した。
【0068】
製造例:電気変色物質EV[TFSI] の製造
EV(Br) 0.2gを水40mlに溶解し、LiTFSI 0.34gを他の水40mlに溶解した後、EV(Br)を溶解した溶液にLiTFSIを溶解した溶液を一滴ずつ滴下してEV(Br)及びLiTFSIのモル比が1:3になるように加えた。次に、混合溶液を25℃で24時間放置してEV[TFSI]が生成されるようにした。前記混合溶液を減圧フィルタリングし蒸留水で洗浄した後、真空オーブンを利用して80℃で24時間乾燥した。
【0069】
製造例:DHV[PF 、DBV[PF 、DEV[PF を使用した電気変色部材の製造
実施例1
高分子樹脂としてPVC(Scientific Polymer Products社製)0.3424g、可塑剤としてDBA(TCI社製)3.0816g、イオン性液体としてEMIMTFSI(io-li-tec社製)0.5478g、電気変色物質としてDHV[PF(先に製造したもの)0.0333g、アノードレドックス化合物としてジメチルフェロセン(TCI社製)0.0111gを溶媒であるTHFに投入し混合した。次に、前記混合溶液をガラス皿に注ぎ、常温で3日間溶媒を蒸発させて乾燥した。
【0070】
実施例2
DHV[PFを0.0416g、ジメチルフェロセンを0.0138g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0071】
実施例3
DHV[PFを0.0499g、ジメチルフェロセンを0.0166g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0072】
実施例4
DHV[PFを0.0583g、ジメチルフェロセンを0.0194g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0073】
比較例1
実施例1でDHV[PFの代わりにDBV[PF(先に製造したもの)を0.0325g、ジメチルフェロセンを0.0111g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0074】
比較例2
実施例2でDHV[PFの代わりにDBV[PF(先に製造したもの)を0.0406g、ジメチルフェロセンを0.0138g使用したことを除いては実施例2と同様に行って製造した。
【0075】
比較例3
実施例3でDHV[PFの代わりにDBV[PF(先に製造したもの)を0.0487g、ジメチルフェロセンを0.0166g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0076】
比較例4
実施例1でDHV[PFの代わりにDEV[PF(先に製造したもの)を0.0130g、ジメチルフェロセンを0.0055g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0077】
比較例5
比較例4でDEV[PFを0.0196g、ジメチルフェロセンを0.008g使用したことを除いては比較例4と同様に行って製造した。
【0078】
比較例6
比較例4でDEV[PFを0.0261g、ジメチルフェロセンを0.0111g使用したことを除いては比較例4と同様に行って製造した。
【0079】
製造例:EV[TFSI] を使用した電気変色素子の製造
実施例5
高分子樹脂としてPVC(Scientific Polymer Products社製)0.3424g、可塑剤としてDBA(TCI社製)3.0816g、イオン性液体としてEMIMTFSI(io-li-tec社製)0.5478g、電気変色物質としてEV[TFSI](先に製造したもの)0.02g、アノードレドックス化合物としてジメチルフェロセン(TCI社製)0.0055gを溶媒であるTHF 25mlに投入し混合した。次に、前記混合溶液をガラス皿に注ぎ、常温で3日間溶媒を蒸発させて乾燥した。
【0080】
実施例6
EV[TFSI]を0.03g、ジメチルフェロセンを0.0083g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0081】
実施例7
EV[TFSI]を0.04g、ジメチルフェロセンを0.0111g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0082】
実施例8
EV[TFSI]を0.045g、ジメチルフェロセンを0.01244g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0083】
比較例7
EV[TFSI]を0.050g、ジメチルフェロセンを0.01383g使用したことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0084】
比較例8
EV[TFSI]を加えていないことを除いては実施例1と同様に行って製造した。
【0085】
製造例:電気変色素子の製造
先に製造した電気変色部材をITO glassの上に配置し、前記電気変色部材の縁に厚さ100μmのスペーサを配置した後、他のITO glassで上部を覆った。このように製造された電気変色素子は、電気変色部材である実施例1乃至4に対応してそれぞれ実施例D1乃至D4、実施例5乃至8に対応してそれぞれ実施例E5乃至E8と定義し、比較例1乃至6に対応してそれぞれ比較例D1乃至D6と、比較例7及び8に対応してそれぞれ比較例E7及びE8と定義した。
【0086】
実験例:肉眼検査
実施例1乃至8、及び比較例1乃至8を肉眼を検査し、異常がないのか確認した。比較例3、6、及び7の場合は内部に結晶が生成されたことを確認した。
【0087】
実験例:サイクリックボルタンメトリーの測定(1)
電位器(biologics、SP240)を利用して20mVs-1の条件で実施例D1乃至D4、及び比較例D1乃至D6に対するサイクリックボルタンメトリーによる電流/電位曲線を得た。図1は本実験結果を示す図である。図1を参照すると、実施例D1乃至D4が比較例に比べ電流の変化が明確に示されており、特に実施例D3及びD4がより明確であることが分かる。
【0088】
実験例:光吸収率の測定
実施例D4、比較例D2、及び比較例D5に対して紫外・可視光分光器(UV-Vis Spectrometer、Perkin elmer、Lambda 465)を利用し、400乃至800nmの範囲で測定した。図2(a)は実施例D4、図2(b)は比較例D2、図2(c)は比較例D5の実験結果を示す図である。図2を参照すると、実施例D4の場合は606nmの波長に対する吸収率が最も高く、印加される電圧によって光吸収率が調節されることが分かる。比較例の場合は606nm付近で光吸収率が他の波長に比べ高いが、実施例に比べ吸収量が差が大きくなかった。
【0089】
実験例:色発現実験
実施例D4、比較例D2、比較例D5に電圧を0Vから-1.4Vまで印加し、色相が変わることを観察した。図3は本実験の結果を示す図である。図3を参照すると、実施例D4の場合は加えられる電圧によって色相の制御が最も明確であり、比較例に比べ濃い青色を帯びた。
【0090】
実験例:光透過率実験(1)
実施例D1乃至D4、及び比較例D1乃至D6に対して606nmの波長の光が透過する程度を測定した。この際、電圧を印加及び遮断して着色及び脱色させる間の光透過率の変化を観察した。図4は本実験結果を示す図である。図4を参照すると、実施例が比較例に比べ光透過率の変化程度が大きく、実施例のうちでも実施例D3及びD4が他の実施例に比べ光透過率の変化程度が大きかった。
【0091】
実験例:光学密度対電荷密度の分析(1)
606nm及び-1.0Vの条件で実施例D1乃至D4、及び比較例D1乃至D6に対して光学密度対電荷密度の関係を分析し、着色効率(η)を求めた。図8は本実験結果を示す図である。図5を参照すると、実施例が比較例に比べ着色効率(η)が大きく、特に実施例6乃至8で着色効率(η)の上昇が大きいが、実施例のうちでも実施例D3乃至D4がより大きいことが分かる。
【0092】
実験例:着色・脱色の繰り返しサイクルによる光透過率実験
実施例D4、比較例D2及びD5に対して繰り返し電圧を印加して着色及び脱色を繰り返して、40,000秒間606nmの波長の光が透過する程度を測定した。この際、電圧を印加及び遮断して着色及び脱色させる間の光透過率の変化を観察した。図6は本実験結果を示す図であり、(a)は実施例D4、(b)は比較例D2、(c)は比較例D5の結果である。図6を参照すると、実施例D4はサイクル周期の間に光透過率が一定に維持されたが、比較例D2及びD5は光透過率が減少したことが分かる。
【0093】
実験例:インピーダンス特性の測定
実施例5乃至8、及び比較例8で製造した電気変色部材を白金電極の間に配置し、インピーダンス分光器を利用してインピーダンススペクトルを測定した。図7は本実験結果を示すナイキスト線図である。図7を参照すると、実施例5は比較例8と特性上大きな差はなく、実施例8の場合は比較例8に比べ特性が改善されたことが分かる。
【0094】
実験例:引張強度-歪みの測定
実施例5乃至8、及び比較例8を対象に、万能試験機(UTM、Tinius Olsen、H5KT)を利用して測定しており、ASTM D638 type Vに従って行った。図8は本実験結果を示す図である。図8を参照すると、実施例が比較例8に比べ著しく高い引張強度を有することが分かり、特に実施例6乃至8が更に優れることが分かる。
【0095】
実験例:圧縮荷重試験
実施例5乃至8、及び比較例8をそれぞれ厚さ3mm、横及び縦10mmになるように切り、圧縮荷重テスタで10mm/minの速度で押圧しながら行った。図9は本実験結果を示す図である。図9を参照すると、実施例が比較例8に比べ圧縮特性に優れることが分かる。
【0096】
実験例:蒸発試験
実施例5乃至8、及び比較例8を一定サイズで切り、それを常温で30日間、20乃至27℃及び19乃至40%のRH条件を維持しながら該当試料の重量を測定した。図10は本実験結果を示す図である。図10を参照すると、電気変色物質の含量が増加しても重量には変化がないことが分かった。
【0097】
実験例:サイクリックボルタンメトリーの測定(2)
電位器(biologics、SP240)を利用して20mVs-1の条件で実施例E5乃至E8に対するサイクリックボルタンメトリーによる電流/電位曲線を得た。図11は本実験結果を示す図である。図11を参照すると、電気変色物質の含量が高いほど電流の変化が明確であることが分かる。
【0098】
実験例:光吸収率の測定
実施例E8に対して紫外・可視光分光器(UV-Vis Spectrometer、Perkin elmer、Lambda 465)を利用し、400乃至800nmの範囲で測定した。図12は本実験結果を示す図である。図12を参照すると、606nmの波長に対する吸収率が最も高く、印加される電圧によって光吸収率が調節されることが分かる。
【0099】
実験例:光透過率実験(2)
実施例E5乃至E8に対し、606nmの波長の光が透過する程度を測定した。この際、電圧を印加及び遮断して着色及び脱色させる間の光透過率の変化を観察した。図13は本実験結果を示す図である。図13を参照すると、電気変色物質の含量が高いほど光透過率の変化程度が大きく、特に実施例E7及びE8の光透過率の変化程度が非常に優れることが分かる。
【0100】
実験例:光学密度対電荷密度の分析(2)
606nm及び-1.0Vの条件で実施例E5乃至E8に対して光学密度対電荷密度の関係を分析し、着色効率(η)を求めた。図14は本実験結果を示す図である。図14を参照すると、電気変色物質の含量が高いほど着色効率(η)が大きく、特に実施例E6乃至E8で着色効率(η)の上昇が目立つことが分かる。
【0101】
本発明は上述した実施形態及び添付した図面によって限定されず、添付した特許請求の範囲によって限定しようとする。よって、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、それも本発明の範囲に属するといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】