IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キンデーバ ドラッグ デリバリー リミティド パートナーシップの特許一覧

<>
  • 特表-定量吸入器及び懸濁組成物 図1
  • 特表-定量吸入器及び懸濁組成物 図2
  • 特表-定量吸入器及び懸濁組成物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】定量吸入器及び懸濁組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20241003BHJP
   A61M 15/00 20060101ALN20241003BHJP
   A61M 11/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
A61K31/58
A61K9/12
A61K31/137
A61K31/56
A61M15/00 Z
A61M11/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515158
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 US2022042958
(87)【国際公開番号】W WO2023039103
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,677
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/315,337
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/328,120
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520448463
【氏名又は名称】キンデーバ ドラッグ デリバリー リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ コックス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー スローイー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン マイアット
(72)【発明者】
【氏名】サラ リグルスワース
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ リスター
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076DD35
4C076DD37
4C076FF68
4C086DA08
4C086DA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA23
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA59
4C086ZC75
4C206FA08
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA43
4C206MA75
4C206NA05
4C206NA10
4C206ZA59
4C206ZC75
(57)【要約】
計量バルブ;キャニスタ;及びアクチュエータノズルを含むアクチュエータ;を含む定量吸入器であって、キャニスタは製剤を含み、製剤は、70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E);エタノール;及び製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分を含む、定量吸入器。計量バルブ;キャニスタ;及びアクチュエータノズルを含むアクチュエータ;を含む定量吸入器であって、キャニスタは製剤を含み、製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤;エタノール;フルチカゾン、サルブタモール若しくはモメタゾン又は医薬的に許容されるそれらの塩若しくはエステルを含み、前記成分は製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E);
エタノール;及び
前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分
を含む、定量吸入器。
【請求項2】
前記医薬品有効成分は、β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記コルチコステロイドは、ベクロメタゾン、ブデソニド、モメタゾン、シクレソニド、フルニソリド、及びフルチカゾンから選択される、請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記抗コリン剤は、イプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、及びグリコピロニウムから選択される、請求項2に記載の吸入器。
【請求項5】
前記β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)が、サルブタモール、レブアルブテロール、サルメテロール、ホルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、及びアベジテロールから選択される、請求項2に記載の吸入器。
【請求項6】
前記製剤は、少なくとも2種の医薬品有効成分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項7】
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
HFO-1234ze(E)を含む推進剤;
エタノール;及び
フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分
を含み、前記フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器。
【請求項8】
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
HFO-1234ze(E)を含む推進剤;
エタノール;及び
サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分
を含み、前記サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器。
【請求項9】
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
HFO-1234ze(E)を含む推進剤;
エタノール;及び
モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分
を含み、前記モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器。
【請求項10】
前記製剤全体に対する前記エタノールの量は、0.2重量%から15重量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項11】
前記製剤全体に対する前記エタノールの量は、2重量%から5重量%である、請求項10に記載の吸入器。
【請求項12】
前記製剤は、0.001mg/作動超を送達する量の前記医薬品有効成分を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項13】
前記製剤は、0.5mg/作動未満を送達する量の前記医薬品有効成分を含む、請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
HFO-1234ze(E)が、唯一の推進剤である、請求項1~13のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項15】
前記推進剤は、HFO-1234ze(E)及び他のハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項16】
前記製剤は、前記製剤の10重量%から20重量%の量でハイドロフルオロアルカンを含む、請求項15に記載の吸入器。
【請求項17】
前記製剤は、界面活性剤を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項18】
前記界面活性剤は、オレイン酸、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ソーヤレシチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項17に記載の吸入器。
【請求項19】
前記計量バルブは、25マイクロリットルから200マイクロリットルのサイズを有する計量チャンバを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項20】
前記製剤中の前記推進剤全体に対する前記HFO-1234ze(E)の量は、95重量%超である、請求項1~19のいずれか一項に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる、2021年9月8日に出願された米国特許仮出願第63/241,677号、2022年3月1日に出願された米国特許仮出願第63/315,337号、及び2022年4月6日に出願された米国特許仮出願第63/328,120号に対する優先権を主張する。
【0002】
呼吸器疾患及び他の疾患の治療のためのエアロゾル化された薬剤の気道への送達には、例として、加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)、ドライパウダー式吸入器(DPI)、又はネブライザー型を使用することができる。喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を罹患している多くの患者にとってpMDIは馴染みがある。pMDI装置は、計量バルブで密閉されている、薬剤製剤を包含するアルミニウム製のキャニスタを含むことがある。一般に、典型的な現行の薬剤製剤は、液化したハイドロフルオロアルカン(HFA)推進剤中に存在する1種又は複数種の薬効のある化合物を含む。
【0003】
歴史的に、ほとんどのpMDI中の推進剤はクロロフルオロカーボン(CFCs)であった。しかしながら、1990年代の環境的関心は、pMDI中で最も一般的に使用される推進剤として、CFCsからハイドロフルオロアルカン(HFAs)への置き換えを導いた。HFAはオゾン破壊を引き起こさないが、高い所定の地球温暖化係数(GWP)を有する。GWPは、ある物質の排出による将来の放射効果を、同量の二酸化炭素(CO)の排出による将来の放射効果と比較する測定である。pMDI中に最も一般的に使用される2つのHFA推進剤は、HFA-134a(CFCHF)及びHFA-227(CFCHFCHF)であり、それぞれ1300から1430及び3220から3350の100年間の所定のGWP値を有する。
【0004】
年来、様々な他の推進剤が提案されてきた。それらの中で、ハイドロフルオロオレフィン(HFOs)及び二酸化炭素(CO)はpMDIのための推進剤の見込みがあるとして言及されてきたが、推進剤としていずれかを用いたpMDI製品で開発又は商業化に成功したものはない。
【発明の概要】
【0005】
HFO-1234ze(E)には他のpMDI推進剤とは異なる点があるにも拘わらず、実用的なpMDIをHFO-1234ze(E)を使用して作製できることが今般見出された。このようなpMDIの有利な点の1つは、HFO-1234ze(E)の所定のGWPが1未満なことである。
【0006】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含むpMDI(本明細書ではMDI又は定量吸入器とも呼ばれる)が提供され、キャニスタは製剤(すなわち組成物)を含み、製剤は70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)、エタノール、及び製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分(API)を含む。特定の実施形態において、製剤は更にエタノールを含む。特定の実施形態において、APIはβ刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0007】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器が提供され、キャニスタは製剤を含み、製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、エタノール、及びフルチカゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル(例えば、フルチカゾンプロピオン酸エステル)を含む医薬品有効成分を含み、フルチカゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルは、製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する。
【0008】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器が提供され、キャニスタは製剤を含み、製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、エタノール、及びサルブタモール(すなわち、アルブテロール)又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル(すなわち、サルブタモール硫酸塩)を含む医薬品有効成分を含み、サルブタモール又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルは、製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する。
【0009】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器が提供され、キャニスタは製剤を含み、製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、エタノール、及びモメタゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル(例えば、モメタゾンフランカルボン酸エステル)を含む医薬品有効成分を含み、モメタゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルは、製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する。
【0010】
本明細書にて、「含む」という用語及びその変形は、本明細書及び特許請求の範囲にこれらの用語が現れる場合、限定的な意味を有しない。このような用語は、所定のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素のグループの包含を示唆するが、いずれかの他のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素のグループを除外することを示唆しないと理解される。「からなる」という語句は、含むことを意味し、「からなる」という語句の後に続くものに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在してはならないことを示す。「から本質的になる」という語句は、その語句の後に列挙されたいずれかの要素を含むことを意味し、列挙された要素について本開示にて明示された活性若しくは作用を妨害しない又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて、存在してもよく、存在してはならないことを示す。本明細書においてオープンエンドの文言(例えば、含む及びその派生形)で記載されているいずれかの要素又は要素の組み合わせは、クローズドエンドの文言(例えば、からなる及びその派生形)並びに部分的にクローズドエンドの文言(例えば、から本質的になる及びその派生形)で付加的に記載されているとみなされる。
【0011】
語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、ある特定の利益をもたらす本開示の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下において好ましくてもよい。更に、1つ又は複数の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲から排除することは意図されていない。
【0012】
本開示全体にわたり、「a」、「an」、及び「the」のような単数形は、便益のために使用されることが多い。単数形は、明示的に単数形のみが指定されている、又は文脈により明確に示されている場合を除き、複数形を含むことを意味する。
【0013】
「又は」という用語は、本明細書で使用される場合、特に内容が明確に規定しない限り、「及び/又は」を含む通常の意味で一般に使用される。
【0014】
「及び/又は」という用語は、列挙された要素の1つ若しくは全て、又は列挙された要素のいずれか2つ以上の組み合わせを意味する。
【0015】
「周囲条件」という語句は、本明細書で使用される場合、室温(約20℃から25℃)及び相対湿度30から60%の環境を指す。
【0016】
また本明細書にて、全ての数値は、「約」という用語により修飾され、特定の実施形態では、好ましくは、「正確に」という用語により修飾されるものとする。「約」という用語は、測定量に関連して本明細書で使用される場合、測定を行い、測定の目的及び使用する測定装置の精度に見合った注意レベルを働かせる当業者によって予想される測定量の変動を指す。本明細書にて、「まで」の数(例えば、50まで)は、その数(例えば、50)を含む。本明細書にて、「少なくとも」の数(例えば、少なくとも50)は、その数(例えば、50)を含む。本明細書にて、「以下」の数(例えば、50以下)は、その数(例えば、50)を含む。
【0017】
数値範囲、例えば「xからy」又は「xからyまで」は、x及びyの端点の値を含む。また本明細書にて、端点による数値範囲の記載は、端点だけでなく、その範囲に包摂される全ての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0018】
本出願で使用される幾つかの用語は、本明細書で定義される特別な意味を有する。他の全ての用語は、当業者には公知であり、発明時の当業者が与えたであろう意味をもたらす。
【0019】
本明細書にて、「一般的な」、「一般的に使用される」、「慣用的な」、「典型的な」、「典型的に」及びそのように称される要素は、本開示の組成物、吸入器及びpMDIのような物品、並びに方法の文脈において、一般的であると理解されるべきである。この術語は、これらの特徴が先行技術に存在すること、ましてや一般的であることを意味するために使用されない。特に指定されない限り、本出願の背景技術の部分のみが先行技術に関する。
【0020】
本明細書全体にわたり、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、又は「幾つかの実施形態」等への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構成、組成物、又は特性を、本開示の少なくとも1つの実施形態が含むことを意味する。したがって、本明細書全体にわたり様々な箇所でこのような語句が現れることは、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構成、組成物、又は特性は、1つ又は複数の実施形態においていずれかの適当な方法で組み合わせてもよい。
【0021】
本開示は、実施形態に関して及び特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれに限定されない。記載される図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは誇張されることがあり、実例となる目的のために縮尺通りに描かれていない。
【0022】
本開示の上記の概要は、開示された各実施形態又は本開示の全ての実施を記載することを意図するものではない。以下の説明は、より詳細な実例となる実施形態を例示する。本開示の全体にわたり数箇所で、実施例のリストを通じて指針が提供され、これらの実施例は様々な組み合わせで使用してもよい。各例において、記載されたリストは、代表的なグループとしてのみ役割を果たし、排他的又は網羅的なリストとして解釈されるべきではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載された特定の実例となる構造に限定されるべきではなく、むしろ少なくとも特許請求の範囲の文言によって記載された構造、及びそれらの構造の等価物に及ぶ。代替案として本明細書に積極的に記載されているいずれかの要素は、所望によりいずれかの組み合わせで、特許請求の範囲に明示的に含めても、特許請求の範囲から除外してもよい。本明細書では、様々な理論や可能な機構について議論してきたけれども、このような議論は、いかなる場合も請求可能な主題を限定する役割を果たすべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本開示は、実施形態の実施及び特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれに限定されない。記載された図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは誇張されることがあり、実例となる目的のために縮尺通りに描かれていない。
図1図1は本開示によるバルブを包含するキャニスタを含む吸入器の断面側面図である。
図2図2図1の吸入器の詳細な断面側面図である。
図3図3は吸入器用の計量バルブの断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の製剤は懸濁液(すなわち、懸濁製剤又は懸濁組成物)である。すなわち、製剤は、製剤中に分散された(すなわち、推進剤中、及びしばしば懸濁補助剤中に懸濁された)1種又は複数種のAPIを含み、懸濁液を形成する。本明細書では、「懸濁液」において、APIは微粒子固体形態(典型的には微粒子化しているが、多数の他の粒径減少技術により、サイズ減少させることもできる)であり、推進剤中でしばしば、粒子の懸濁挙動を補助するために他の可溶性又は非可溶性の賦形剤とともに分散される。本明細書では、懸濁液は、組成物中に少量の可溶性粒子状材料も存在してもよいが、補助されていない人間の目に見える粒子状材料(例えば、API)の粒子の分散液である。懸濁製剤について、APIの可溶化は一般的に望ましくない。実施形態において、APIの可溶化を最小限にすることが望ましいことがある。
【0025】
溶液製剤及び懸濁製剤は基本的に異なるpMDI製剤アプローチである。それらの製剤アプローチのいずれかを使用して製品開発に取りかかる場合、異なる要因を考慮する必要がある。したがって、溶液製剤への同じ知識及び理解を懸濁製剤に適用することは不可能である。例えば懸濁液は、懸濁された粒子の沈降又はクリーミングによる物理的混合物の著しい分離を避けるために、ある程度の物理的安定性を達成する必要がある。これは用量間の再現性の低さにつながり得る。したがって、懸濁液では、凝集を制御するための懸濁補助剤の使用はしばしば行われる。また懸濁液では、結果として生じるエアロゾルの粒径は微粒子APIの幾何学的粒径に主に影響され、この粒径はAPI粒子が推進剤/製剤中に部分的に可溶性であると変化し得て、このことは粒子成長を通じて経時で物理的な不安定さにつながり得る。懸濁液はまた、懸濁されたAPI粒子のキャニスタ及びバルブの内部表面上での沈殿という潜在的な問題も有し、これもまた経時で製品性能の変化を引き起こし得る。これらの問題は懸濁液に特有であり、溶液に特有の教示は必ずしもこれらを克服するものではない。
【0026】
本明細書に記載される製剤の様々な実施形態はいずれかの適当な吸入器に利用できる。例えば、図1は、定量計量バルブ10(その休止位置で示す)を装着したエアロゾルキャニスタ1を含む、定量吸入器100の一実施形態を示す。計量バルブ10は、一般にバルブ組み立て品の一部として提供されるキャップ又はフェルール11(典型的に、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製される)を介して、典型的にキャニスタに取り付けられる、すなわち、圧着される。キャニスタ及びフェルールの間に、1つ又は複数のシールがあってもよい。図1及び図2に示す実施形態では、キャニスタ1及びフェルール11の間に、例えばOリングシール及びガスケットシールを含む2つのシールがある。
【0027】
図1に示すように、キャニスタ/バルブディスペンサーは、典型的には、マウスピースのような適切な患者ポート6を含むアクチュエータ5を備える。鼻腔への投与のために、患者ポートは一般に鼻を通して送達するのに適切な形態(例えば、より小さい直径の管、しばしば上方に傾斜する)で提供される。アクチュエータは一般にプラスチック材料、例えばポリプロピレン又はポリエチレンから作製される。図1から分かるように、キャニスタの内壁2及びキャニスタ内に位置する計量バルブ10の部分の外壁101は、エアロゾル製剤4を包含する製剤チャンバ3を画定する。
【0028】
図1及び図2に示すバルブ10は、内側バルブ本体13により部分的に画定された計量チャンバ12を含み、その中をバルブステム14が通る。圧縮ばね15により外側に付勢されるバルブステム14は、内側タンクシール16及び外側ダイヤフラムシール17とスライド密封係合する。また、バルブ10はボトル空けの形態で第2のバルブ本体20を含む。内側バルブ本体13(「一次」バルブ本体とも呼ばれる)は、計量チャンバ12の一部を画定する。第2のバルブ本体20(「二次」バルブ本体とも呼ばれる)は、ボトル空けとして役割を果たすほかに、部分的にプレ計量領域又はチャンバ22を画定する。
【0029】
図2を参照すると、エアロゾル製剤4は、製剤チャンバ3から、二次バルブ本体20のフランジ23及び一次バルブ本体13の間の環状空間21を通って、二次バルブ本体20及び一次バルブ本体13の間に設けられたプレ計量チャンバ22へ通過することができる。バルブステム14を、図1及び図2に示す休止位置からキャニスタ1に対して内側に押し込むことによりバルブ10を作動(発射)させ、製剤が計量チャンバ12からバルブステムの側孔19を通り、ステム出口24を通ってアクチュエータノズル7に至り、次に患者に至る。バルブステム14が解放されると、製剤はバルブ10内、特に環状空間21を通ってプレ計量チャンバ22に入り、そこからプレ計量チャンバからバルブステムの溝18を通ってタンクシール16を通り、計量チャンバ12に入る。
【0030】
図3は、図1及び図2に示す実施形態とは異なる、休止位置にある定量エアロゾル計量バルブ102の別の実施形態を示す。バルブ102は、バネ115により外側に付勢されているステム114が通る計量タンク113によって部分的に画定された計量チャンバ112を有する。ステム114は2つの部品から作製され、バルブ102に組み込む前に一緒に押込嵌めされている。ステム114はその周りに配置された内側シール116及び外側シール117を有し、計量タンク113との密封接触を形成する。フェルール111に圧着されたバルブ本体120は、前述の構成要素をバルブ内に保持する。使用時、製剤はオリフィス121及びオリフィス118を介して計量チャンバに入る。用量が分注される場合、製剤が計量チャンバ112から外部へ向かう経路はオリフィス119を介する。
【0031】
本開示による組成物(すなわち、製剤)の主要な推進剤は、トランス-1,1,1,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又はトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンとしても知られるHFO-1234ze(E)である。HFO-1234zeのトランス異性体及びシス異性体の化学構造は非常に異なっている。その結果、これら異性体は非常に異なる物理的及び熱力学的特性を有する。周囲条件において、シス(Z)異性体に対してトランス(E)異性体の沸点は著しく低く、蒸気圧は高いため、トランス異性体は効率的なpMDIの霧化を達成するための熱力学的にはるかに適した推進剤になる。
【0032】
幾つかの実施形態において、組成物中の重量比によるHFO-1234ze(E)の量は70%超、少なくとも80%、80%超、少なくとも85%、85%超、少なくとも90%、又は90%超である。幾つかの実施形態において、重量比によるHFO-1234ze(E)の量は、80%から99%、80%から98%、80%から95%、又は85%から90%である。幾つかの実施形態において、HFO-1234ze(E)は本質的に、組成物中で唯一の推進剤である。すなわち、放出用量及び放出粒度分布のような医薬製品の性能パラメーターは、HFO-1234ze(E)が組成物中で唯一の推進剤である場合と著しく異ならない。幾つかの実施形態において、組成物中の全推進剤の重量比によるHFO-1234ze(E)の量は、95%超、98%超、99%超、99.5%超、及び99.8%超である。
【0033】
推進剤HFO-1234ze(E)は代替の低GWP推進剤HFA-152aとは非常に異なる。これら2つの推進剤は、異なる沸点、蒸気圧、水溶性、液体密度、表面張力などのような物理的、化学的、熱力学的特性を有する。これらの特性の違いにより、pMDI製品の性能を著しく妥協又は変化させることなく、一方の推進剤から別の推進剤へ置き換えることは困難である。例えば、推進剤の沸点及び蒸気圧の熱力学的な違いは、pMDIのエアロゾル化効率に著しく影響することがあり、一次及び二次の霧化機構にて違いを生じさせることがある。推進剤及び懸濁された薬物粒子との間の液体密度の違いは、沈降速度のような懸濁挙動に影響を与え得る。推進剤間の吸湿性の違いは水分の取り込みに影響することがあり、特に水分の取り込みによる物理的安定性又は水分が関与する化学的分解の可能性があれば、懸濁製剤にとって問題となり得る。異なる推進剤と薬物及び賦形剤の化学的相互作用もまた著しく異なり得て、これは意図された貯蔵寿命にわたる製品の長期化学的安定性に影響を及ぼすことがある。2つの推進剤は、バルブのプラスチック及びエラストマー成分と化学的及び物理的に相互作用し、抽出物及び溶出物の種類及び量に違いが生じることがあり、機械的バルブ機能にも影響を与えることがある。推進剤の熱力学的特性は、異なる蒸発速度による液滴の粒径に違いを生じさせ、噴霧力、温度、及び噴霧時間のような噴霧特性の違いをきたすこともある。歴史的に、CFC推進剤からHFA推進剤への移行は、適切なpMDI製品の性能を達成するために、再構築する新しいアプローチを開発し、有能なハードウェアを開発するための著しい努力を必要としてきた。すなわち、単純にある推進剤を別の推進剤に直に取り換えることは不可能であった。pMDI中の推進剤HFA-152aからHFO-1234ze(E)への変更は、上記の多くの要因により同様に難題である。
【0034】
幾つかの実施形態において、HFA-134a、HFA-227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)、又はHFA-152aを含むハイドロフルオロアルカンのような他の推進剤が、微量成分として含まれてもよい。微量成分として含まれてもよい更に他の推進剤は、HFO-1234yf及びHFO-1234ze(Z)(すなわち、シス-HFO-1234ze)を含む他のハイドロフルオロオレフィンを含む。そのような二次推進剤の量は、組成物(すなわち、製剤)の、0.1重量%から20重量%、0.1重量%から10重量%、0.1重量%から5重量%、0.1重量%から0.5重量%、5重量%から20重量%、又は10重量%から20重量%を含むことができる。したがって、幾つかの実施形態において、本明細書で議論されるHFA-152a及びHFO-1234ze(E)の間の違いは、少量のHFA-152aを使用することにより有利に利用されることができる。例えば、幾つかの実施形態において、少量のHFA-152aは、製剤が保管されるキャニスタからノズル出口まで通過することにより、製剤が接触する定量吸入器の表面上にAPI粒子が堆積することを抑制するために使用されてもよい。
【0035】
組成物の総量は、あらかじめ決められた回数の薬効のある用量が送達された後に、キャニスタ内の推進剤の少なくとも一部が液体として存在するように選択されることが望ましい。用量のあらかじめ決められた回数は、5から200回、30から200回、60から200回、60から120回、60回、120回、200回、又は用量の他の任意の回数であってよい。キャニスタ内の組成物の総量は、1.0グラム(g)から30.0g、2.0gから20.0g、又は5.0から10.0gであってよい。組成物の総量は、典型的には、用量のあらかじめ決められた回数と計量バルブの計量体積の積よりも大きくなるように選択される。幾つかの実施形態において、組成物の総量は、用量のあらかじめ決められた回数と計量バルブの計量体積の積の1.1倍より大きい、1.2倍より大きい、1.3倍より大きい、1.4倍より大きい、又は1.5倍より大きい。これにより、典型的には、吸入器の耐用期間における各用量の量は比較的一定のままに保たれる。
【0036】
医薬品有効成分(API)は、薬物、ワクチン、DNAフラグメント、ホルモン、他の治療剤、又はいずれかの2つ以上のAPIの組み合わせでもよい。特定の実施形態において、製剤は懸濁液中で少なくとも2つ(特定の実施形態において2つ又は3つ、特定の実施形態において2つ)のAPIを含んでもよい。
【0037】
懸濁製剤の調製について、APIは好ましくは微粒子化した粉末として提供される。しかしながら、本開示に一貫した懸濁製剤の調製には、他の形態のAPIが適当であってもよいことが当業者には明らかである。
【0038】
例示的なAPIは、呼吸器疾患の治療のためのもの、例えば、短時間作用型又は長時間作用型のβ刺激薬のような気管支拡張剤、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)、抗アレルギー剤、抗喘息剤、抗ヒスタミン剤、TYK阻害剤、又は抗コリン剤を含むことができる。例示的なAPIは、サルブタモール(すなわち、アルブテロール)、レブアルブテロール、テルブタリン、イプラトロピウム、オキシトロピウム、チオトロピウム、ベクロメタゾン、フルニソリド、ブテソニド、モメタゾン、シクレソニド、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、ケトチフェン、アゼラスチン、エルゴタミン、シクロスポリン、アクリジニウム、ウメクリジニウム、グリコピロニウム(すなわち、グリコピロレート)、サルメテロール、フルチカゾン、ホルモテロール、プロカテロール、インダカテロール、カルモテロール、ミルベテロール、オロダテロール、ビランテロール、アベジテロール、オマリズマブ、ジロイトン、インスリン、ペンタミジン、カルシトニン、リュープロリド、α1-アンチトリプシン、インターフェロン、トリアムシノロン、ニンテダニブ、列挙された薬物の医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、又は列挙されたいずれかの薬物、それらの医薬的に許容される塩若しくはそれらの医薬的に許容されるエステルの混合物を含むことができる。フルチカゾンの場合、例示的なエステルはプロピオネート又はフランカルボン酸エステル、ベクロメタゾンの場合、例示的なエステルはプロピオネート、及びモメタゾンの場合、例示的なエステルはフランカルボン酸エステルである。
【0039】
全ての実施形態において、APIは製剤中に(すなわち懸濁液として)、分散され、又は懸濁される。2つ以上のAPIの組み合わせが使用される場合、全てのAPIは懸濁される。APIが粒子状で存在する、すなわち懸濁される場合、それは一般に、1マイクロメートル(μm)から10μm、好ましくは1μmから5μmの範囲で質量平均空力学的直径を有する。
【0040】
一実施形態において、製剤は、唯一のAPIとしてサルブタモール(すなわち、アルブテロール)又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、より詳細にはサルブタモール硫酸塩(すなわち、アルブテロール硫酸塩)を有する。
【0041】
一実施形態において、製剤は、唯一のAPIとしてブデソニド又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルを有する。
【0042】
一実施形態において、製剤は、唯一のAPIとしてモメタゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、より詳細にはモメタゾンフランカルボン酸エステルを有する。
【0043】
一実施形態において、製剤は、唯一のAPIとしてフルチカゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、より詳細にはフルチカゾンプロピオン酸エステルを有する。
【0044】
APIの量は、作動毎に必要な用量及びpMDI計量バルブのサイズ、すなわち計量チャンバのサイズによって決定されてもよく、5マイクロリットル(μL又はmcL)から200マイクロリットル、25マイクロリットルから200マイクロリットル、25マイクロリットルから150マイクロリットル、25マイクロリットルから100マイクロリットル、又は25マイクロリットルから65マイクロリットルでもよい。各APIの濃度は、典型的には0.0008重量%から3.4重量%、又は0.01重量%から1.0重量%、時には0.05重量%から0.5重量%であり、そのようなものとして、薬剤は組成物全体の比較的小さな割合を構成する。
【0045】
特定の実施形態において、本開示の典型的な製剤は、少なくとも作動毎に0.001ミリグラム(mg/作動)(1マイクログラム(μg,mcg)/作動)、又は少なくとも0.01mg/作動(10μg/作動)の量のAPIを含む。特定の実施形態において、本開示の典型的な製剤は、0.5mg/作動(500μg/作動)未満の量のAPIを含む。
【0046】
実施形態において、本開示の典型的な製剤は、少なくとも1μg/作動、少なくとも10μg/作動、少なくとも50μg/作動、少なくとも100μg/作動、少なくとも150μg/作動、少なくとも200μg/作動、少なくとも300μg/作動、又は少なくとも400μg/作動の量のAPIを含む。実施形態において、本開示の典型的な製剤は、500μg/作動未満、多くとも400μg/作動、多くとも300μg/作動又は多くとも200μg/作動の量のAPIを含む。幾つかの好ましい実施形態において、本開示の製剤は、80μg/作動から120μg/作動の量のAPIを含む。
【0047】
幾つかの実施形態において、推進剤及びAPIの後に追加の成分(例えば、賦形剤)を製剤に添加することができる。これらの成分は、懸濁液の形成を促進すること、懸濁液を安定化すること、及び/又はAPI若しくは他の成分の化学的安定化を助成することを含むが、これらに限定されない様々な用途及び機能を有してもよい。
【0048】
幾つかの実施形態において、共溶媒が含まれる。特に有用な共溶媒の1つはエタノールである。一態様において、エタノールは懸濁液の安定化を直接的、又は間接的に助成してもよいが、エタノールが存在しない懸濁液は安定しなくてもよい。特定の実施形態において、懸濁製剤中に使用する場合、エタノールは製剤全体の重量%基準量で少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、又は少なくとも3%であってもよい。特定の実施形態において、懸濁製剤中に使用する場合、エタノールは製剤全体の重量%基準量で、20%まで、15%、12%まで、10%まで、8%まで、5%まで、又は2%までであってもよい。
【0049】
特定の実施形態において、懸濁製剤中に使用する場合、エタノールは製剤全体の重量%基準量で、0.1%から20%、0.1%から15%、0.2%から15%、0.2%から10%、0.2%から5%、0.4%から10%、0.4%から5%、0.5%から20%、0.5%から15%、0.5%から10%、0.5%から5%、0.5%から2%、1%から12%、1%から10%、2%から10%、2%から5%、又は3%から8%であってもよい。
【0050】
本開示のHFO-1234ze(E)懸濁製剤の実施形態において、エタノールの使用は、有利には、内部キャニスタ及び/又はバルブ表面への懸濁されたAPI粒子の沈殿を減少させてもよく、次に、予想された送達用量に対する送達用量の減少におけるそのような沈殿の影響を最小にすることができ、及び/又は総体的なユニット耐用期間の投薬の一貫性を改善することができる。
【0051】
しかしながら、幾つかの実施形態において、エタノールの濃度を増加することは、不利なことに、懸濁されたAPI粒子の溶解度を増加し、望まない粒子成長を促進するおそれがある。所与のHFO-1234ze(E)懸濁製剤中に含まれるエタノールの量は、沈殿を最小にしながら、総体的な送達用量効率及び/又はユニット耐用期間の送達用量の一貫性を増進するために、関心のAPIについて滴定されてもよい。
【0052】
本開示の幾つかの実施形態において、APIの沈殿を効果的に減少させ、効果的な総体の用量送達を達成するために、効果的な最小限の濃度を超えてHFO-1234ze(E)懸濁液にエタノールを含有させることは、空気力学的粒径を増大させ、細粒分(FPF)及び微粒子質量(FPM)を減少させるなど、他の重要な懸濁製剤の性能特性に悪影響を及ぼす。
【0053】
幾つかの実施形態において、粒子の懸濁を促進するために製剤中に界面活性剤を使用することもできる。しかしながら、界面活性剤を有さない製剤は、幾つかの目的には有利であることができ、界面活性剤は、特に指定されない限り、必要ではない。
【0054】
医薬的に許容される界面活性剤を使用することができる。例示的な界面活性剤は、オレイン酸、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ソーヤレシチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせを含む。ポリビニルピロリドンを採用する場合、ポリビニルピロリドンは任意の適当な分子量を有することができる。適当な重量平均分子量の例は、10キロダルトンから100キロダルトン、10キロダルトンから50キロダルトン、10キロダルトンから40キロダルトン、10キロダルトンから30キロダルトン、又は10キロダルトンから20キロダルトンである。ポリエチレングリコールを採用する場合、ポリエチレングリコールは任意の適当な分子量を有することができる。適当な重量平均分子量の例は、300ダルトンから1000ダルトンである。幾つかの実施形態において、PEG1000及びPEG300が採用される。使用される場合、製剤全体の重量%基準での界面活性剤の量は、0.0001%から1%、0.001%から0.1%、又は0.01%から0.1%である。
【0055】
特定の実施形態において、少量の水が懸濁製剤中にあってもよい。しかしながら、好ましくは、添加された水は、本開示の懸濁製剤の作製において使用されない。
【0056】
特定の実施形態において、本開示の組成物は、好ましくは、必要な保存条件下で少なくとも24か月、多くの場合24か月から36か月、許容可能な濃度の分解生成物が最終製品中に存在するような化学的安定性を示す。
【0057】
図1に戻り、使用時、患者はキャニスタ1を下方に押すことにより吸入器100を作動させる。これにより、キャニスタ1がアクチュエータ5の本体内に移動し、バルブステム14がアクチュエータステムソケット8にぶつかり、結果的に、キャニスタ計量バルブ10が開き、解放された計量された用量の組成物がアクチュエータノズル7を通過し、マウスピース6から患者の口へ排出される。呼吸作動のような他の作動様式も使用することができ、キャニスタを押し下げる力が、患者による吸入のような引き金となる事象に応答して、装置によって、例えばバネ又はモーター駆動スクリューによって、提供されることを除いて、記載されたように動作しうることが理解されるべきである。
【0058】
本開示の薬剤組成物と共に使用してもよい装置は、米国特許第6,032,836号明細書(Hiscocksら)、同第9,010,329号明細書(Hansen)、及び英国特許第2544128号明細書(Friel)に記載されるものを含む。
【0059】
定量吸入器は、用量数を数えるための用量カウンタを含むことができる。適当な用量カウンタは、本技術分野において公知であり、例えば、米国特許第8,740,014号(Purkinsら)明細書;同第8,479,732号明細書(Stuartら);及び同第8,814,035号明細書(Stuart)、並びに米国特許出願公開第2012/0234317号(Stuart)で記載されており、これらは全て、用量カウンタの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる
【0060】
1つの例示的な用量カウンタは、米国特許第8,740,014号(Purkinsら、その用量カウンタの開示の全体が参照により明細書に組み込まれる)に詳細が記載されており、吸入器内の作動要素及び用量カウンタの間の交互移動と連動して交互移動をするように構築及び配置される固定ラチェット要素及びトリガ要素を有する。交互移動は、往行程(吸入器に対して外向き)、及び復行程を含むことがある。復行程は、トリガ要素を往行程の前の位置に戻す。カウンタ要素もまた、この種類の用量カウンタに含まれる。カウンタ要素は、用量が分注される度に、あらかじめ決められたカウント動作を行うように構築及び配置されている。カウンタ要素は、固定ラチェット及びトリガ要素の方に付勢されており、トリガ要素の交互移動の方向に実質的に直交する方向の動きを数えることができる。
【0061】
上述の用量カウンタにおけるカウンタ要素は、トリガ部材と相互作用する第1領域を含む。第1領域は、トリガ部材の往行程の間にトリガ部材に係合される、少なくとも1つの傾斜面を含む。往行程の間のこの係合により、カウンタ要素はカウンタ動作を行う。カウンタ要素はまた、ラチェット部材と相互作用する第2領域を含む。第2の領域は、カウンタ要素のさらなるカウント動作の実行を引き起こす、トリガ要素の復行程の間にラチェット要素と係合される、少なくとも1つの傾斜面を含み、それによってカウント動作が終了する。カウンタ要素は、普通、カウンタリングの形状であり、トリガ要素の往行程で部分的に及びトリガ要素の復行程で部分的に前進する。トリガの往行程が、バルブの発射(及び定量吸入器の場合には、内容物の計量)を引き起こすバルブステムの押下と連動することができ、復行程はバルブステムの休止位置への戻りと連動することができるため、用量カウンタは正確な用量を数えることができる。
【0062】
米国特許第8,479,732号明細書(Stuartら、その用量カウンタの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる)に詳細が記載される、別の適当な用量カウンタは、特に定量吸入器と共に使用するのに適合されている。この用量カウンタは、第1表示体支持面を有する、第1カウント表示器を含む。第1カウント表示器は、第1軸線周りに回転可能である。用量カウンタはまた、第2表示体支持面を有する、第2カウント表示器を含む。第2カウント表示器は、第2軸線周りに回転可能である。第1及び第2軸線は、それらが鈍角を成すように配置される。上記の鈍角は、任意の鈍角であってよいが、有利には、125度から145度である。鈍角により、第1及び第2の表示体支持面は、薬剤投与量カウントの少なくとも一部分を集合的に表すために、共通視認領域において整列することができる。第1及び第2表示体支持面の1つ又は両方は、視認領域を通して一緒に見た場合、数字が服用数を提供するように、数字で示すことができる。例えば、2つの表示体支持面を一緒に読んだ場合、服用数を表す000から999の間の数字が提供されるように、第1及び第2表示体支持面の一方が「100」及び「10」の位を有し、他方が「1」の位を有してもよい。
【0063】
さらに別の好適な用量カウンタは、米国特許出願公開第2012/0234317号明細書(Stuart、その用量カウンタの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる)に詳細が記載される。このような用量カウンタは、用量が分注される度に、あらかじめ決められたカウント動作を行うカウンタ要素を含む。カウント動作は、垂直、又は本質的には垂直とすることができる。カウント表示要素もまた含まれる。用量が分注される度にあらかじめ決められたカウント表示動作を行うカウント表示要素は、カウンタ要素と相互作用する第1領域を含む。
【0064】
カウンタ要素は、カウント表示要素と相互作用する領域を有する。特に、カウント要素は、カウント表示要素と相互作用する第1領域を含む。第1領域は、前述のカウント表示要素の第1領域の少なくとも1つの表面に係合する、少なくとも1つの表面を含む。カウンタ要素の第1領域、及びカウント表示要素の第1表面は、カウンタ表示部材が、カウンタ要素のカウント動作と連動するカウント表示動作を完了するように配置され、カウンタ要素の動作中にその動作により誘発されて、カウント誘発要素が回転運動又は本質的な回転運動を行うように配置される。実際には、カウンタ要素又はカウンタ表示要素の第1領域は、例えば、1つ又は複数のチャンネルを含むことができる。他の要素の第1領域は、前記1つ又は複数のチャンネルと係合するように適合された、1つ又は複数の突起を含むことできる。
【0065】
さらに別の用量カウンタが、米国特許第8,814,035号明細書(Stuart、その用量カウンタの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる)で記載されている。このような用量カウンタは、第1軸線に沿って操作する相互アクチュエータを伴う吸入器における使用に、特に適合される。用量カウンタは、第2軸線の周りを回転可能な表示要素を含む。表示要素は、1つ又は複数の用量が分注された場合、あらかじめ決められた1つ又は複数のカウント表示動作を行うように適合される。第2軸線は、第1軸線に対して鈍角に位置する。用量カウンタはまた、ウォーム軸線の周りを回転可能なウォームを含む。ウォームは、表示要素を駆動させるために適合される。ウォームは、例えば、表示要素の領域と相互作用し巻き込む領域を備えることによってこのことを行ってもよい。ウォーム軸線及び第2軸線は、交差せず、かつ、垂直に配列されない。ウォーム軸線はまた、ほとんどの場合、第1軸線と同軸の列に配置されない。しかしながら、第1及び第2軸線は交差してもよい。
【0066】
キャニスタ、バルブ、ガスケット、シール、又はOリングの1つ又は複数のような、本明細書で記載した定量吸入器のような吸入器の様々な内部構成要素の少なくとも1つは、1つ又は複数のコーティングで被覆されてもよい。これらのコーティングの幾つかは、低い表面エネルギーを提供する。このようなコーティングは、全ての吸入器の正常な操作に常に必要ではないため、常に必要ではない。したがって、幾つかの定量吸入器は、被覆された内部構成要素を含まない。
【0067】
使用可能な幾つかのコーティングは、米国特許第8,414,956号明細書(Jinksら)、米国特許第8,815,325号明細書(Davidら)、及び米国特許出願公開第2012/0097159号明細書(Iyerら)に記載され、これらは全て、吸入器及び吸入器構成要素のためのコーティングの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。フッ素化エチレンプロピレン樹脂、又はFEPのような他のコーティングもまた、適切である。FEPはキャニスタのコーティングでの使用に特に適切である。
【0068】
第1の許容されるコーティングは、以下の方法により提供することができる:
a)定量吸入器のような吸入器の1つ又は複数の構成要素を提供すること、
b)有機連結基により分離される2つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランを含むプライマー組成物を提供すること、
c)少なくとも部分的にフッ素化された化合物を含むコーティング組成物を提供すること、
d)構成要素の表面の少なくとも一部分にプライマー組成物を適用すること、
e)プライマー組成物の適用後に、構成要素の表面の前記部分にコーティング組成物を適用すること。
【0069】
少なくとも部分的にフッ素化された化合物は、通常、1つ又は複数の反応性官能基を含み、少なくとも1つの反応性官能基は、通常、反応性シラン基、例えば加水分解性シラン基又はヒドロキシシラン基である。このような反応性シラン基は、部分的にフッ素化された化合物とプライマーの1つ又は複数の反応性シラン基との反応を可能にする。このような反応はしばしば縮合反応である。
【0070】
使用可能な例示的なシランの1つは、以下の式を有し
3-m(RSi-Q-Si(R3-k
ここで、R及びRは独立して選択された1価の基であり、Xは加水分解性基又はヒドロキシ基であり、m及びkは独立して0、1又は2であり、Qは2価の有機連結基である。
【0071】
このようなシランの有用な例は、1,2-ビス(トリアルコキシシリル)エタン、1,6-ビス(トリアルコキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリアルコキシシリル)オクタン、1,4-ビス(トリアルコキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリアルコキシシリル)イタコネート、及び4,4’-ビス(トリアルコキシシリル)-1、1’-ジフェニルの1つ又は2つ若しくはそれ以上の混合物を含み、いずれかのトリアルコキシ基は、独立して、トリメトキシ又はトリエトキシであってもよい。
【0072】
コーティング溶媒は、通常、アルコール又はハイドロフルオロエーテルを含む。
【0073】
コーティング溶媒がアルコールの場合、好ましいアルコールは、CからCアルコールであり、特に、エタノール、n-プロパノール若しくはイソプロパノールから選択されるアルコール、又はそれらのアルコールの2つ若しくはそれ以上の混合物である。
【0074】
コーティング溶媒がハイドロフルオロエーテルの場合、コーティング溶媒がCからC10ハイドロフルオロエーテルを含むことが好ましい。一般にハイドロフルオロエーテルは次の式であり、
2g+1OC2h+1
ここで、gは2、3、4、5又は6であり、hは1、2、3又は4である。適切なハイドロフルオロエーテルの例は、メチルヘプタフルオロプロピルエーテル、エチルヘプタフルオロプロピルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択されるものを含む。
【0075】
ポリフルオロポリエーテルシランは、次の式であってもよく、
v[Q -[C(R-Si(X)3-x(R
ここで:
は、ポリフルオロポリエーテル部位であり;
は、3価の連結基であり;
各Qは、独立して選択される2価又は3価の有機連結基であり;
各Rは、独立して水素又はC1-4アルキル基であり;
各Xは、独立して加水分解性基又は水酸基であり;
はC1-8のアルキル又はフェニル基であり;
v及びwは、独立して0又は1であり、xは0、1又は2であり;yは1又は2であり、zは2、3、又は4である。
【0076】
ポリフルオロポリエーテル部位Rは、-(C2nO)-、-(CF(Z)O-)-、-(CF(Z)C2nO)-、-(C2nCF(Z)O)-、-(CFCF(Z)O)-、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ繰り返し単位を含んでもよく;ここで、nは1から6までの整数であり、Zは、ペルフルオロアルキル基、酸素含有ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又は酸素置換ペルフルオロアルコキシ基であり、これらはそれぞれ、直鎖状、分岐状、又は環状であってよく、酸素含有又は酸素置換の場合、1つから5つの炭素原子、及び最大4つまでの酸素原子を有し、ここでZを含む繰り返し単位の場合、連続する炭素原子の数は、最大6つである。特に、nは1から4までの整数であってよく、より詳細には、1から3までの整数であってよい。Zを含む繰り返し単位の場合、連続する炭素原子の数は、最大4つであってよく、より詳細には、最大3つであってよい。通常、nは1又は2であり、Zは-CF基であり、さらにここでzは2であり、Rは、-CFO(CFO)(CO)CF-、-CF(CF)O(CF(CF)CFO)CF(CF)-、-CFO(CO)CF-、-(CFO(CO)(CF-、-CF(CF)-(OCFCF(CF))O-C2t-O(CF(CF)CFO)CF(CF)-からなる群から選択され、ここでtは2、3又は4であり、ここでmは1から50であり、pは3から40である
【0077】
架橋剤を含んでもよい。例示的な架橋剤は、テトラメトキシシラン;テトラエトキシシラン;テトラプロポキシシラン;テトラブトキシシラン;メチルトリエトキシシラン;ジメチルジエトキシシラン;オクタデシルトリエトキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン;3-アミノプロピルトリメトキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン;ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン;3-アミノプロピルトリ(メトキシエトキシエトキシ)シラン;N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン;ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン;3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート;3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート;ビス(トリメトキシシリル)イタコネート;アリルトリエトキシシラン;アリルトリメトキシシラン;3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニルトリエトキシシラン;及びそれらの混合物が含まれる。
【0078】
被覆される構成要素に、コーティングの前に洗浄のような前処理を行ってもよい。洗浄は、ハイドロフルオロエーテルのような、例えば、HFE-72DE、又は約70%w/w(すなわち、重量パーセント)のトランスジクロロエチレン;30%w/wのメチル及びエチルノナフルオロブチル及びノナフルオロイソブチルエーテルの混合物の共沸混合物の溶媒により行うことができる。
【0079】
上述した第1の許容されるコーティングは、バルブステム、ボトル空け、スプリング、及びタンクの1つ又は複数を含むバルブ構成要素をコーティングするために特に有用である。このコーティングシステムは、本明細書に記載されるあらゆる種類の吸入器及びあらゆる製剤と共に使用することができる。
【0080】
幾つかの実施形態において、アクチュエータノズルは、キャニスタ内に送達される製剤の細粒分(FPF)及び/又は呼吸用の用量を最適化するためにそのサイズが決定される。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズルの断面形状は、本質的には円形又は円形であり、あらかじめ決められた直径を有する。アクチュエータノズルの断面形状が非円形、例えば楕円形である幾つかの実施形態において、有効径は、開口部にまたがる距離の平均(例えば、楕円の長軸と短軸の平均)を取ることにより決定してもよい。
【0081】
幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.08mm以上、0.10mm以上、0.12mm以上、0.15mm以上、0.175mm以上、0.225mm以上、0.3mm以上、又は0.4mm以上であってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.225mm以下、0.175mm以下、又は0.15mm以下であってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.12mmから0.5mm、0.12mmから0.4mm、0.12mmから0.3mm、0.12mmから0.225mm、0.12mmから0.175mm、又は0.12mmから0.15mmであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.15mmから0.5mm、0.15mmから0.4mm、0.15mmから0.3mm、0.15mmから0.225mm、又は0.15mmから0.175mであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.175mmから0.5mm、0.175mmから0.4mm、0.175mmから0.3mm、又は0.175mmから0.225mmであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.225mmから0.5mm、0.225mmから0.4mm、又は0.225mmから0.3mmであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.3mmから0.5mm、又は0.3mmから0.4mmであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.4mmから0.5mmであってもよい。APIが懸濁液として存在する製剤と組み合わせて、上記に記載されたより小さいアクチュエータノズルサイズ(例えば、直径0.12mm(120μm)から0.225mm(225μm)、又は0.175mm(175μm)から0.225mm(225μm))を使用することが特に有利であり得る。これにより、放出用量の細粒分を増加させることを補助できる。
【0082】
所与のアクチュエータノズル出口オリフィスがいずれかの製剤の送達のために適当であるとは限らず、所与の製剤に適当なアクチュエータノズル出口オリフィスの選択にはかなりの労力を伴うことが、当業者には理解されるはずである。
【0083】
幾つかの実施形態において、MDIは圧送注入により製造される。圧送注入では、任意で1種又は複数種の賦形剤(例えば、共溶媒)と組み合わせた粉末の薬剤を、注入前に、推進剤の蒸気圧に耐えることができ、計量バルブを装着した適当なエアロゾル容器(すなわち、キャニスタ)に入れる。次に、推進剤は液体としてバルブを通って容器に押し込まれる。圧送注入の代替プロセスにおいて、粒子状薬物はプロセス槽内で推進剤及び任意で1種又は複数種の賦形剤(例えば、共溶媒)と組み合わされ、得られた薬物懸濁液は適当なMDI容器に装着された計量バルブを通して移送される。
【0084】
幾つかの実施形態において、MDIはコールド注入により製造される。コールド注入では、粉末の薬剤、沸点未満に冷却された推進剤、及び任意で1種又は複数種の賦形剤(例えば、共溶媒)がMDI容器に添加される。その上、注入後の容器に計量バルブが装着される。
【0085】
圧送注入及びコールド注入プロセスの両方で、混合、超音波処理、及び均質化のような追加のステップを任意で採用してもよい。
【0086】
本発明の実施形態
[実施形態1]
実施形態1は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)、エタノール、及び前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分を含む、定量吸入器である。
[実施形態2]
実施形態2は、前記医薬品有効成分が、β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態3]
実施形態3は、前記医薬品有効成分がコルチコステロイドを含む、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態4]
実施形態4は、前記コルチコステロイドがベクロメタゾン、ブデソニド、モメタゾン、シクレソニド、フルニソリド、及びフルチカゾンから選択される、実施形態2又は3に記載の吸入器である。
[実施形態5]
実施形態5は、前記医薬品有効成分が抗コリン剤を含む、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態6]
実施形態6は、前記抗コリン剤が、イプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、及びグリコピロニウムから選択される、実施形態2又は5に記載の吸入器である。
[実施形態7]
実施形態7は、前記医薬品有効成分がβ刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)を含む、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態8]
実施形態8は、前記β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)が、サルブタモール、レブアルブテロール、サルメテロール、ホルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、及びアベジテロールから選択される、実施形態2又は7に記載の吸入器である。
[実施形態9]
実施形態9は、前記製剤が、少なくとも2種(幾つかの実施形態において、2種又は3種、幾つかの実施形態において、2種)の医薬品有効成分を含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態10]
実施形態10は、1種の医薬品有効成分が短時間又は長時間作用のβ刺激薬であり、1種の医薬品有効成分がコルチコステロイドである、実施形態9に記載の吸入器である。
[実施形態11]
実施形態11は、前記製剤が、抗コリン剤を更に含む、実施形態10に記載の吸入器である。
[実施形態12]
実施形態12は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、エタノール、及びフルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態13]
実施形態13は、前記フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが唯一の医薬品有効成分である、実施形態12に記載の吸入器である。
[実施形態14]
実施形態14は、前記フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、フルチカゾンプロピオン酸エステルである、実施形態12又は13に記載の吸入器である。
[実施形態15]
実施形態15は、前記製剤が、ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを更に含む、実施形態12又は14に記載の吸入器である。
[実施形態16]
実施形態16は、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、ホルモテロールフマル酸塩である、実施形態15に記載の吸入器である。
[実施形態17]
実施形態17は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、エタノール、及びサルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態18]
実施形態18は、前記サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが唯一の医薬品有効成分である、実施形態17に記載の吸入器である。
[実施形態19]
実施形態19は、前記サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、サルブタモール硫酸塩である、実施形態17又は18に記載の吸入器である。
[実施形態20]
実施形態20は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、エタノール、及びモメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態21]
実施形態21は、前記モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、唯一の医薬品有効成分である実施形態20に記載の吸入器である。
[実施形態22]
実施形態22は、前記モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、モメタゾンフランカルボン酸エステルである、実施形態20又は21に記載の吸入器である。
[実施形態23]
実施形態23は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、エタノール、及びブデソニド又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記ブデソニド又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態24]
実施形態24は、前記ブデソニド又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、唯一の医薬品有効成分である、実施形態23に記載の吸入器である。
[実施形態25]
実施形態25は、製剤全体に対する前記エタノールの量が0.2重量%から15重量%である、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態26]
実施形態26は、製剤全体に対する前記エタノールの量が0.2重量%から10重量%である、実施形態25に記載の吸入器である。
[実施形態27]
実施形態27は、製剤全体に対する前記エタノールの量が0.2重量%から5重量%である、実施形態26に記載の吸入器である。
[実施形態28]
実施形態28は、製剤全体に対する前記エタノールの量が0.4重量%から5重量%である、実施形態27に記載の吸入器である。
[実施形態29]
実施形態29は、製剤全体に対する前記エタノールの量が2重量%から5重量%である、実施形態27に記載の吸入器である。
[実施形態30]
実施形態30は、前記製剤が、1μg/作動超の量の医薬品有効成分を含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態31]
実施形態31は、前記製剤が、0.5mg/作動までの量の医薬品有効成分を含む、実施形態30に記載の吸入器である。
[実施形態32]
実施形態32は、前記HFO-1234ze(E)が、唯一の推進剤である、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態33]
実施形態33は、前記推進剤が、HFO-1234ze(E)及び他のハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンを含む、実施形態1から31のいずれかに記載の吸入器である。
[実施形態34]
実施形態34は、前記製剤が、製剤の0.1重量%から20重量%(0.1重量%から10重量%、0.1重量%から5重量%、0.1重量%から0.5重量%、5重量%から20重量%、又は10重量%から20重量%)の量の前記他のハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンを含む、実施形態33に記載の吸入器である。
[実施形態35]
実施形態35は、前記製剤が、製剤の5重量%から20重量%の量でハイドロフルオロアルカンを含む、実施形態33又は34に記載の吸入器である。
[実施形態36]
実施形態36は、前記製剤が、製剤の10重量%から20重量%の量でハイドロフルオロアルカンを含む、実施形態35に記載の吸入器である。
[実施形態37]
実施形態37は、前記推進剤がHFO-1234ze(E)及びHFA-152aを含む、実施形態33から36のいずれかに記載の吸入器である。
[実施形態38]
実施形態38は、前記製剤が、界面活性剤を更に含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態39]
実施形態39は、前記界面活性剤が、オレイン酸、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ソーヤレシチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせから選択される、実施形態38に記載の吸入器である。
[実施形態40]
実施形態40は、前記製剤が、製剤全体の重量%基準で0.0001%から1%の界面活性剤を含む、実施形態38又は39に記載の吸入器である。
[実施形態41]
実施形態41は、前記製剤が、製剤全体の重量%基準で0.001%から0.1%の界面活性剤を含む、実施形態40に記載の吸入器である。
[実施形態42]
実施形態42は、前記製剤が、製剤全体の重量%基準で0.01%から0.1%の界面活性剤を含む、実施形態41に記載の吸入器である。
[実施形態43]
実施形態43は、前記計量バルブが、25マイクロリットルから200マイクロリットルのサイズを有する計量チャンバを含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態44]
実施形態44は、前記計量バルブの前記計量チャンバが、25マイクロリットルから100マイクロリットルのサイズを有する、実施形態43に記載の吸入器である。
[実施形態45]
実施形態45は、前記製剤が、70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)を含む、実施形態12から44のいずれかに記載の吸入器である。
[実施形態46]
実施形態46は、前記製剤が、80重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)を含む、実施形態1から45のいずれかに記載の吸入器である。
[実施形態47]
実施形態47は、前記製剤が、85重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)を含む、実施形態46に記載の吸入器である。
[実施形態48]
実施形態48は、前記製剤が、90重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)を含む、実施形態47に記載の吸入器である。
[実施形態49]
実施形態49は、前記製剤中の推進剤全体に対する前記HFO-1234ze(E)の量が95重量%超である、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態50]
実施形態50は、前記製剤中の推進剤全体に対する前記HFO-1234ze(E)の量が99重量%超である、実施形態49に記載の吸入器である。
[実施形態51]
実施形態51は、前記アクチュエータ出口オリフィス径が0.12mmから0.5mmである、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態52]
実施形態52は、前記アクチュエータ出口オリフィス径が0.15mmから0.4mmである、実施形態51に記載の吸入器である。
[実施形態53]
実施形態53は、前記アクチュエータ出口オリフィス径が0.175mmから0.4mmである、実施形態52吸入器である。
[実施形態54]
実施形態54は、前記キャニスタ内の製剤量が1mLから30mLである、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態55]
実施形態55は、前記キャニスタは、30から200までのあらかじめ決められた用量数を備える、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
【実施例
【0087】
比較実施例1:添加されたエタノールを有する、及び有しない、HFA-134a、HFA-152a、又はHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液の送達用量
【0088】
この実験では、HFA-152a(1,1-ジフルオロエタン)又はHFO-1234ze(E)(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)中のいずれかに微粒子化したサルブタモール硫酸塩懸濁液を調製した。各懸濁液には、100μg/作動の名目用量を提供する量のサルブタモール硫酸塩(1.91mg/mL)が含まれていた。懸濁液は、各推進剤及び0重量%又は5重量%エタノールを用いて、合計4種の懸濁液を調製した。各懸濁液をFEP被覆キャニスタに注入し、0.4mmの出口オリフィス径を持つKINDEVAアクチュエータを用いて試験した。0%エタノールを有するHFA-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)中のサルブタモール硫酸塩の市販の懸濁液を比較用として試験した。送達用量の均一性(UoDD)は各懸濁液について測定された。この試験のデータを以下の表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
エタノールを有しないHFA-134a中のサルブタモール硫酸塩懸濁液は、一貫した耐用期間におけるUoDDを示し、予想された用量を送達することが観察された。エタノールを有しないHFA-152a中のサルブタモール硫酸塩懸濁液は、一貫した耐用期間におけるUoDDを示し、予想された用量を送達することが観察された。エタノールを有するHFA-152a中のサルブタモール硫酸塩懸濁液もまた、一貫した耐用期間におけるUoDDを示し、予想された用量を送達することが観察された。したがって、HFA-152aサルブタモール硫酸塩懸濁液中へのエタノールの添加は、耐用期間におけるUoDD及び予想された用量の総体的な送達に明らかな影響はなかった。
【0091】
これに対して、エタノールを有しないHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液では、予想された送達用量よりも低く、一貫しない耐用期間におけるUoDDを示すことが観察された。しかしながら、5重量%エタノールを有するHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩硫酸塩懸濁液は、一貫した耐用期間におけるUoDD、及び予想された用量の総体的な送達を示した。
【0092】
この実施例から、サルブタモール硫酸塩のHFO-1234ze(E)懸濁液に5%エタノールを添加することで、予想された送達用量及び耐用期間におけるUoDDの一貫性が改善することがわかった。また、エタノールを有しないHFA-152a又はHFA-134aのサルブタモール硫酸塩懸濁液は、予想された送達用量及び一貫した耐用期間におけるUoDDを示した。
【0093】
実施例2:エタノールを有する、及び有しないHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液の送達用量測定並びに寿命末期のキャニスタ及びバルブの沈殿。
【0094】
微粒子化したサルブタモール硫酸塩の懸濁液をHFO-1234ze(E)中に調製した。各懸濁液には、100μg/作動(1.91mg/mL)の名目用量を提供する量のサルブタモール硫酸塩が含まれていた。第1懸濁液にはエタノールが含まれていなかった。第2懸濁液には0.5重量%エタノールが含まれていた。第3懸濁液には1.0重量%エタノールが含まれていた。第4懸濁液には2.0重量%エタノールが含まれていた。第5懸濁液には5.0重量%エタノールが含まれていた。
【0095】
FEP被覆されたキャニスタにサルブタモール硫酸塩を秤量し、必要とされる適切な量のエタノールを添加することにより、デバイスは調製された。63μLのバルブを缶に圧着し、HFO-1234ze(E)をキャニスタへ圧送注入した。サルブタモール硫酸塩を分散させるために、ユニットは10分間超音波処理された。
【0096】
各懸濁液について、3つのユニットが調製され、それぞれが0.4mmの出口オリフィス径を有するKINDEVAアクチュエータに連結された。各懸濁液について、耐用期間における送達用量の均一性が測定され、平均値が導き出された。ユニット寿命試験終了後、キャニスタ及びバルブへの薬物全体の沈殿を測定した。この試験の結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
エタノールを有しないHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液は、予想された平均送達用量よりも低く、キャニスタ及びバルブ内にて高レベルのサルブタモール硫酸塩の沈殿を示すことが観察された。組成物中のエタノールを増加することは、平均送達用量が対応して増加することにつながり、キャニスタ及びバルブ内にてサルブタモール硫酸塩の沈殿が減少する。
【0099】
この実施例から、HFO1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液にエタノールを含有させ、その量を増加することは、平均送達用量が増加し、キャニスタ及びバルブ内にてサルブタモール硫酸塩の沈殿が対応して減少することにつながることがわかった。また、サルブタモール硫酸塩のHFO-1234ze(E)懸濁液中に2重量%から5重量%エタノールを含有させることは、平均送達用量が最も顕著に改善し、キャニスタ及びバルブ内にてサルブタモール硫酸塩の沈殿が対応して減少することを引き起こすことがわかった。
【0100】
実施例3:エタノールを有しない、及びエタノール濃度の増加を伴うHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液についての送達用量及び粒径の測定。
【0101】
微粒化したサルブタモール硫酸塩の懸濁液をHFO-1234ze(E)中に調製した。第1懸濁液にはエタノールが含まれていなかった。第2懸濁液には2重量%エタノールが含まれていた。第3懸濁液には5重量%エタノールが含まれていた。第4懸濁液には10重量%エタノールが含まれていた。第5懸濁液には15重量%エタノールが含まれていた。各懸濁液には、100μg/作動の名目用量を提供する量のサルブタモール硫酸塩(1.91mg/mL)が含まれていた。各懸濁液はFEP被覆されたキャニスタに注入され、63μLのバルブで圧着され、試験用の0.4mmの出口オリフィス径を有するKINDEVAアクチュエータを用いて試験された。
【0102】
各懸濁液について、微粒子質量(FPM)、質量空気力学的直径の中央値(MMAD)、細粒分(FPF)、計量用量(バルブ出口)、及び送達用量(アクチュエータ出口)を測定した。結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
エタノール濃度が増加することを含むHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液は、FPF及びFPMが対応して減少することが観察された。
【0105】
この実施例から、HFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液にエタノールを含有させ、その量を増加することは、FPF及びFPMが減少することにつながることがわかった。
【0106】
また、エタノール濃度が2重量%未満では、対応するFPM及びFPFの値は高いけれども、アクチュエータ出口からの送達用量は予想より低いことがわかった。2重量%以上のエタノール濃度では、アクチュエータ出口からの送達用量は適切であり、予想された結果となったことは、注目に値した。しかしながら、5重量%を超えるエタノール濃度に増加することは、アクチュエータ出口からの平均送達用量に、更なる利益をもたらさない一方で、FPM及びFPFは著しく、望まない減少をする結果となった。したがって、送達用量及びFPM/FPFの両方に最大限の効果を提供する組成物中の最も有益なエタノール濃度は、サルブタモール硫酸塩のHFO-1234ze(E)懸濁液中では、2重量%から5重量%エタノールであることがわかった。
【0107】
実施例4:5.0%又は15%エタノールを有するHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩の送達用量。
【0108】
HFO-1234ze(E)中に微粒子化したサルブタモール硫酸塩の懸濁液を調製した。HFO-1234ze(E)中にサルブタモール硫酸塩及び5.0重量%エタノールの第1懸濁液を調製した。HFO-1234ze(E)中にサルブタモール硫酸塩及び15.0重量%エタノールの第2懸濁液を調製した。各製剤中のサルブタモール硫酸塩濃度は1.91mg/mLであった。各懸濁液はFEP被覆されたキャニスタに注入され、バルブで圧着され、試験のために63μLのAPTARアクチュエータに連結された。
【0109】
各懸濁液について微粒子質量と送達用量を測定した。これらの試験の結果を、3通りの測定の平均値として表4に示す。
【0110】
【表4】
【0111】
15%エタノールを有するHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液は、わずかに高い送達用量、及び低い微粒子質量を示すことが観察された。各懸濁液は同様の送達用量を有することが観察された。この実施例から、HFO-1234ze(E)及び5%エタノール中のサルブタモール硫酸塩懸濁液は、15%エタノールを有する同等の懸濁液よりも高い微粒子質量を有することがわかった。
【0112】
実施例5:40℃及び相対湿度75%並びに25℃及び相対湿度60%において、26週間にわたる5%エタノールを有するHFO-1234ze(E)懸濁液中のサルブタモール硫酸塩の物理的及び化学的安定性。
【0113】
5重量%エタノールを有するHFO-1234ze(E)中の微粒子化したサルブタモール硫酸塩の懸濁液を調製した。各懸濁液には、100μg/作動の名目用量を提供する量のサルブタモール硫酸塩(1.91mg/mL)が含まれていた。各懸濁液はFEP被覆されたキャニスタに注入され、63μLのAPTAR又はKINDEVA計量バルブのいずれかで圧着され、0.4mmの出口オリフィス径を有するKINDEVAアクチュエータを用いて試験された。
【0114】
各キャニスタ/バルブの組み合わせを有する懸濁液の第1群は、40℃及び相対湿度75%において、バルブを下向きにして保管された。各キャニスタ/バルブの組み合わせについて、調製後初期、6週後、13週後、及び26週後のFPF、耐用期間におけるUoDD、サルブタモール硫酸塩含有量、及び不純物が測定された。
【0115】
各キャニスタ/バルブの組み合わせについて、FPM、送達用量の均一性、及びサルブタモール硫酸塩含有量は、26週の安定な保管の期間にわたり、一貫したままであったことが観察された。また、各キャニスタ/バルブの組み合わせについて、26週の安定な保管期間にわたり、検出される不純物は最小であることが観察された。
【0116】
各キャニスタ/バルブの組み合わせを有する懸濁液の第2群は、25℃及び相対湿度60%において、バルブを下向きにして保管された。各キャニスタ/バルブの組み合わせについて、調製後初期及び26週後のFPM、耐用期間における送達用量の均一性、サルブタモール硫酸塩含有量及び不純物含有量が測定された。
【0117】
各キャニスタ/バルブの組み合わせについて、FPM、耐用期間における送達用量の均一性、サルブタモール硫酸塩含有量は一貫したままであり、調製後26週の安定な保管の期間にわたり、観測された不純物は最小であることが観察された。
【0118】
この実施例から、5重量%エタノールを有するHFO-1234ze(E)中のサルブタモール硫酸塩懸濁液は、40℃及び相対湿度75%並びに25℃及び相対湿度60%のいずれかで保管された場合、26週の期間にわたり、一貫したFPM、耐用期間における送達用量、サルブタモール硫酸塩含有量及び最小の不純物により示されるように、物理的及び化学的に安定であることがわかった。上記の知見を示す平均結果を表5に提示する。
【0119】
【表5】
【0120】
比較実施例6:エタノールを有しないHFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁液の送達。
【0121】
この実施例は、エタノール又は他の賦形剤を有しない微粒子化したフルチカゾンプロピオン酸エステルの懸濁液を記載したデータを提示する。これらのデータは、本開示の製剤中にエタノールを含有することの動機付けをする比較実施例として提示される。
【0122】
微粒子化したフルチカゾンプロピオン酸エステルの懸濁液を、エタノールを含む追加の賦形剤を有しないHFO-1234ze(E)中に調製した。各懸濁液には、100μg/作動の名目用量を提供する量のフルチカゾンプロピオン酸エステル(2mg/mL)が含まれていた。各懸濁液はFEP被覆されたキャニスタに注入され、計量バルブで圧着され、KINDEVAアクチュエータを用いて試験された。
【0123】
0.5mm出口オリフィス径のアクチュエータを用いて、耐用期間における平均送達用量、及び空気力学的粒度分布(APSD)が試験された。
【0124】
予想された平均送達用量よりも低い71μg/作動が達成されたことが観察された。
【0125】
高速スクリーニングインパクタ(FSI)を使用しながら、0.3mm、0.22mm、及び0.18mmの出口オリフィス径を有するKINDEVAアクチュエータを用いて試験したとき、達成された対応するFPFは35%、43%及び50%であることが観察された。
【0126】
これらの実施例から、0.5mm出口オリフィス径アクチュエータを使用して送達された、賦形剤を含まないHFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁液は、所望の用量よりも低く送達されることがわかった。また、アクチュエータ出口オリフィス径を0.3mm、0.22mm、及び0.18mmと減少することで、賦形剤を含まないHFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁液の細粒分が徐々に改善されることもわかった。
【0127】
実施例7:添加されたエタノールを有する、及び有しないHFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁液の送達用量測定並びに寿命末期のキャニスタ及びバルブの沈殿。
【0128】
微粒子化したフルチカゾンプロピオン酸エステルの懸濁液をHFO-1234ze(E)中に調製した。各懸濁液中のフルチカゾンプロピオン酸エステルの名目濃度は2mg/mLであった。第1懸濁液にはエタノールが0%含まれていた。第2懸濁液には0.5重量%エタノールが含まれていた。第3懸濁液には1.0重量%エタノールが含まれていた。第4懸濁液には2.0重量%エタノールが含まれていた。
【0129】
各懸濁液をFEP被覆されたキャニスタに注入し、50μLバルブで圧着した。懸濁液はフルチカゾンプロピオン酸エステルを分散するために、10分間超音波処理された。懸濁液を0.5mm出口オリフィス径を有するKINDEVAアクチュエータを用いて試験した。
【0130】
各懸濁液について、耐用期間におけるUoDDが測定され、平均値が導き出された。ユニット寿命試験の終了後、キャニスタ及びバルブへの薬物全体の沈殿が測定された。この試験結果を表6に示す。
【0131】
エタノールを有しないHFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁液は、予想された平均送達用量よりも著しく低く、キャニスタ及びバルブ内にてフルチカゾンプロピオン酸エステルの沈殿が高レベルであることを示すことが観察された。懸濁製剤中のエタノールを増加すると、平均送達用量は対応して増加し、キャニスタ及びバルブ内にてフルチカゾンプロピオン酸エステルの沈殿は減少した。
【0132】
この実施例から、HFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁液にエタノールを含有させ、その量を増加することは、平均送達用量が増加し、キャニスタ及びバルブ内にてフルチカゾンプロピオン酸エステルの沈殿が対応して減少することにつながることがわかった。また、フルチカゾンプロピオン酸エステルのHFO-1234ze(E)懸濁液中に1重量%から2重量%エタノールを含有させることは、平均送達用量が最も顕著に改善し、キャニスタ及びバルブ内にてフルチカゾンプロピオン酸エステルの沈殿が対応して減少することを引き起こすことがわかった。したがって、送達用量並びにキャニスタ及びバルブへの沈殿の両方に最大の利益を提供する最も有益な組成物中のエタノール濃度は、フルチカゾンプロピオン酸エステルのHFO-1234ze(E)懸濁液中に1重量%から2重量%エタノールであることがわかった。
【0133】
【表6】
【0134】
実施例8:添加されたエタノールを有する、及び有しないHFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁液の空気力学的粒径測定。
【0135】
微粒子化したフルチカゾンプロピオン酸エステルの懸濁液をHFO-1234ze(E)中に調製した。各懸濁液中のフルチカゾンプロピオン酸エステルの名目濃度は2mg/mLであった。第1懸濁液には0%エタノールが含まれていた。第2懸濁液には2重量%エタノールが含まれていた。第3懸濁液には5重量%エタノールが含まれていた。第4懸濁液には10重量%エタノールが含まれていた。
【0136】
各懸濁液をFEP被覆されたキャニスタに注入し、50μLバルブを取り付けた。懸濁液は、フルチカゾンプロピオン酸エステルを分散させるために、10分間超音波処理された。懸濁液は、0.5mm出口オリフィス径を有するKINDEVAアクチュエータを使用して試験された。
【0137】
各懸濁液について、FPM、質量空気力学的直径の中央値(MMAD)、FPF、計量用量(バルブ出口)、及び送達用量(アクチュエータ出口)を測定した。この試験の平均結果を表7に示す。
【0138】
【表7】
【0139】
この実施例において、エタノールを有しないHFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁液は、予想よりも著しく低いアクチュエータ出口用量及びFPMを示すことが観察された。さらに、懸濁製剤中のエタノールを2重量%から10重量%に増加することは、アクチュエータ出口用量が対応して増加し、FPM、FPF及びMMADが減少することにつながる。
【0140】
エタノールを有しない場合、対応するFPF値は高いけれども、アクチュエータ出口送達用量は予想よりも著しく低いことがわかった。2重量%以上のエタノール濃度では、アクチュエータ出口送達用量は適切であり、予想された結果となったことは、注目に値した。しかしながら、5重量%を超えるエタノール濃度に増加することは、アクチュエータ出口送達用量の平均に、更なる利益をもたらさなかった一方で、FPM及びFPFは著しく、望まない減少をする結果となった。したがって、送達用量及びFPM/FPFの両方に最大の効果を提供する最も有益な組成物中のエタノール濃度は、フルチカゾンプロピオン酸エステルのHFO-1234ze(E)懸濁液中で、2重量%から5重量%エタノールであることがわかった。
【0141】
実施例9:HFO-1234ze(E)中のフルチカゾンプロピオン酸エステルを含む懸濁粒子の溶解度。
【0142】
HFO-1234ze(E)中に懸濁し、0重量%から10重量%の範囲のエタノールを有し、及び賦形剤を添加しない場合の微粒子化したフルチカゾンプロピオン酸エステルの飽和溶解度を測定した。各懸濁液中のフルチカゾンプロピオン酸エステルの溶解度は、過剰の非溶解性薬物の濾過後の含有量分析により測定した。この試験のデータを表8に示す。
【0143】
エタノールを含まない懸濁液において、フルチカゾンプロピオン酸エステルはHFO-1234ze(E)への溶解度が極めて低いことが観察された。懸濁製剤中の溶解度は、エタノール含有量が増加するにつれて増加することが発見された。本明細書に記載されるように、5%以上のエタノールにおける溶解度の濃度上昇は、懸濁製剤内で経時的に望ましくないフルチカゾンプロピオン酸エステル粒子の成長を起こし得る。
【0144】
【表8】
【0145】
この実施例から、HFO-1234ze(E)懸濁製剤中のフルチカゾンプロピオン酸エステルの溶解度は、エタノール濃度が増加するにつれて増加することがわかった。このフルチカゾンプロピオン酸エステルの溶解度は、5重量%又は10重量%エタノールを含有するHFO-1234ze(E)フルチカゾンプロピオン酸エステル懸濁製剤においてより明白であった。
【0146】
実施例10:添加されたエタノールを有する、及び有しないHFO-1234ze(E)中のモメタゾンフランカルボン酸エステル懸濁液の送達用量測定並びに寿命末期のキャニスタ及びバルブの沈殿。
【0147】
微粒子化したモメタゾンフランカルボン酸エステルの懸濁液をHFO-1234ze(E)中に調製した。各懸濁液中のモメタゾンフランカルボン酸エステルの名目濃度は2mg/mLであった。第1懸濁液には0%エタノールが含まれていた。第2懸濁液には0.5重量%エタノールが含まれていた。第3懸濁液には1.0重量%エタノールが含まれていた。第4懸濁液には2.0重量%エタノールが含まれていた。
【0148】
各懸濁液をFEP被覆されたキャニスタに注入し、50μLバルブで取り付けた。懸濁液はモメタゾンフランカルボン酸エステルを分散させるために、10分間超音波処理された。懸濁液は0.5mm出口オリフィス径を有するKINDEVAアクチュエータを使用して試験された。
【0149】
各懸濁液について、耐用期間における送達用量の均一性が測定され、平均値が導き出された。0重量%及び1重量%エタノールを含有する懸濁液について、ユニット寿命試験の終了後、キャニスタ及びバルブへの薬物全体の沈殿が測定された。この試験結果を表9に示す。
【0150】
【表9】
【0151】
エタノールを有しないHFO-1234ze(E)中のモメタゾンフランカルボン酸エステル懸濁液は、予想された平均送達用量よりも低く、キャニスタ及びバルブ内にてモメタゾンフランカルボン酸エステルの沈殿が高レベルであることを示すことが観察された。懸濁製剤中のエタノールを0.5重量%より増加することは、平均送達用量が対応して増加することにつながった。また、エタノールを有しないHFO-1234ze(E)中のモメタゾンフランカルボン酸エステル懸濁液と比較した場合、懸濁製剤中の1重量%エタノールは、キャニスタ及びバルブ内にてモメタゾンフランカルボン酸エステルの沈殿の減少につながることが観察された。
【0152】
この実施例から、HFO-1234ze(E)中のモメタゾンフランカルボン酸エステル懸濁液に1重量%及び2重量%エタノールを含有させることは、送達用量が増加し、予想される平均値に近づくことがわかった。また、HFO-1234ze(E)中のモメタゾンフランカルボン酸エステル懸濁液に1重量%エタノールを含有させると、エタノールを含有しないHFO-1234ze(E)中のモメタゾンフランカルボン酸エステル懸濁液と比較して、キャニスタ及びバルブ内にてモメタゾンフランカルボン酸エステルの沈殿が減少することがわかった。したがって、送達用量並びにキャニスタ及びバルブへの沈殿の両方に最大の利益を提供する最も有益な組成物中のエタノール濃度は、モメタゾンフランカルボン酸エステルのHFO-1234ze(E)懸濁液中に1重量%から2重量%エタノールであることがわかった。1重量%エタノールでは、エタノールを含まない場合と比較して、モメタゾンの溶解度がわずかに増加した。
【0153】
実施例11:HFO-1234ze(E)中のモメタゾンフランカルボン酸エステル懸濁液。
【0154】
微粒子化したモメタゾンフランカルボン酸エステルの懸濁液をHFO-1234ze(E)中に調製した。モメタゾンフランカルボン酸エステルの名目濃度は2mg/mLであった。第1懸濁液には0%エタノールが含まれた。第2懸濁液には0.5重量%エタノールが含まれていた。第3懸濁液には1重量%エタノールが含まれていた。第4懸濁液には2重量%エタノールが含まれていた。
【0155】
50μLバルブ、Mk6sアクチュエータ、及び用量カウンタが取り付けられた、FEP被覆されたキャニスタにモメタゾンフランカルボン酸エステルを秤量することで、デバイスは調製された。バルブは圧着され、推進剤はバルブを通して圧送注入された。ユニットはモメタゾンフランカルボン酸エステルを完全に分散させるために、10分間超音波処理された。0.5mm出口オリフィス及び0.8mm噴射長を有するMk6sアクチュエータを用いて、各懸濁液の3つのユニットについて、耐用期間における投与を試験した。また、各懸濁液について飽和溶解度も測定された。結果を実施例10中に示す。
【0156】
【表10】
【0157】
HFO-1234ze(E)中のモメタゾンフランカルボン酸エステル懸濁製剤にエタノールを含有させることは、エタノールを含有しない製剤と比較して、平均送達用量が向上し、バルブ及びキャニスタ内にてモメタゾンの沈殿の減少をもたらすことが確認された。
【0158】
実施例12:エタノールを有する、及び有しないHFO-1234ze(E)中のブデソニド懸濁液の送達用量測定。
【0159】
2.2μmの平均幾何学的d50粒径を有する微粒子化したブデソニドの懸濁液をHFO-1234ze(E)中に調製した。全ての懸濁液について、ブデソニドの濃度(2mg/mL)は、50μLバルブから100μg/作動の名目用量を送達するために選択された。第1懸濁液には0%エタノールが含まれていた。第2懸濁液には1.0重量%エタノールが含まれていた。第3懸濁液には2.0重量%エタノールが含まれていた。各懸濁液を、懸濁されたブデソニドを分散させるために15分間高剪断混合し、その後FEP被覆されたキャニスタに注入し、50μLバルブに連結した。
【0160】
0.4mm出口オリフィス径を有するKINDEVAアクチュエータを使用して、各懸濁製剤の調製について、耐用期間における送達用量(TUL)の均一性を3通りで測定した。結果を表11に表す。
【0161】
【表11】
【0162】
1.0重量%又は2.0重量%エタノールを含有させることは、耐用期間における平均送達用量の標準偏差が減少することが示すように、ユニット耐用期間における送達用量の一貫性を改善することが観察された。2.0重量%エタノールを含むブデソニド懸濁液は、エタノールを有しない懸濁液より、耐用期間における送達用量のばらつきが小さいことが示された。この実施例から、HFO-1234ze(E)中のブデソニド懸濁液は、1.0重量%及び2.0重量%エタノールを含有させることにより、エタノールを有しない懸濁液と比較して、ユニット耐用期間における送達用量のばらつきが減少するような利益を得ることがわかった。
【0163】
上記に記載され、図に示された実施形態は、例として表したに過ぎず、本開示の概念及び原理に対して限定を意図するものではない。そのため、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、要素並びにそれらの構成及び配置の様々な変更が可能であることが、当業者により理解されるであろう。本明細書において引用される全ての参考文献及び刊行物は、参照によりその全体が本開示に明示的に組み込まれる。本開示の様々な特徴及び態様は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0163
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0163】
上記に記載され、図に示された実施形態は、例として表したに過ぎず、本開示の概念及び原理に対して限定を意図するものではない。そのため、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、要素並びにそれらの構成及び配置の様々な変更が可能であることが、当業者により理解されるであろう。本明細書において引用される全ての参考文献及び刊行物は、参照によりその全体が本開示に明示的に組み込まれる。本開示の様々な特徴及び態様は、以下の特許請求の範囲に記載されている。以下の項目[態様1]~[態様20]に本発明の実施形態の例を列記する。
[態様1]
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E);
エタノール;及び
前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分
を含む、定量吸入器。
[態様2]
前記医薬品有効成分は、β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される、態様1に記載の吸入器。
[態様3]
前記コルチコステロイドは、ベクロメタゾン、ブデソニド、モメタゾン、シクレソニド、フルニソリド、及びフルチカゾンから選択される、態様2に記載の吸入器。
[態様4]
前記抗コリン剤は、イプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、及びグリコピロニウムから選択される、態様2に記載の吸入器。
[態様5]
前記β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)が、サルブタモール、レブアルブテロール、サルメテロール、ホルモテロール、インダカテロ―ル、オロダテロール、ビランテロール、及びアベジテロールから選択される、態様2に記載の吸入器。
[態様6]
前記製剤は、少なくとも2種の医薬品有効成分を含む、態様1~5のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様7]
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
HFO-1234ze(E)を含む推進剤;
エタノール;及び
フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分
を含み、前記フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器。
[態様8]
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
HFO-1234ze(E)を含む推進剤;
エタノール;及び
サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分
を含み、前記サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器。
[態様9]
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
HFO-1234ze(E)を含む推進剤;
エタノール;及び
モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分
を含み、前記モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、定量吸入器。
[態様10]
前記製剤全体に対する前記エタノールの量は、0.2重量%から15重量%である、態様1~9のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様11]
前記製剤全体に対する前記エタノールの量は、2重量%から5重量%である、態様10に記載の吸入器。
[態様12]
前記製剤は、0.001mg/作動超を送達する量の前記医薬品有効成分を含む、態様1~11のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様13]
前記製剤は、0.5mg/作動未満を送達する量の前記医薬品有効成分を含む、態様12に記載の吸入器。
[態様14]
HFO-1234ze(E)が、唯一の推進剤である、態様1~13のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様15]
前記推進剤は、HFO-1234ze(E)及び他のハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンを含む、態様1~13のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様16]
前記製剤は、前記製剤の10重量%から20重量%の量でハイドロフルオロアルカンを含む、態様15に記載の吸入器。
[態様17]
前記製剤は、界面活性剤を更に含む、態様1~16のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様18]
前記界面活性剤は、オレイン酸、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ソーヤレシチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、又はそれらの組み合わせから選択される、態様17に記載の吸入器。
[態様19]
前記計量バルブは、25マイクロリットルから200マイクロリットルのサイズを有する計量チャンバを含む、態様1~18のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様20]
前記製剤中の前記推進剤全体に対する前記HFO-1234ze(E)の量は、95重量%超である、態様1~19のいずれか一態様に記載の吸入器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E);
エタノール;及び
前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分
を含み、前記製剤全体に対する前記エタノールの量は、0.2重量%から15重量%である、定量吸入器。
【請求項2】
前記医薬品有効成分は、β刺激薬、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
計量バルブ;
キャニスタ;及び
アクチュエータノズルを含むアクチュエータ
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は、
HFO-1234ze(E)を含む推進剤;
エタノール;及び
医薬品有効成分を含み、前記医薬品有効成分は、
フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含み、前記フルチカゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成し;あるいは
サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含み、前記サルブタモール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成し;あるいは
モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含み、前記モメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に懸濁されて懸濁液を形成する、
定量吸入器。
【請求項4】
前記製剤は、0.001mg/作動超、0.5mg/作動未満を送達する量の前記医薬品有効成分を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項5】
前記計量バルブは、25マイクロリットルから200マイクロリットルのサイズを有する計量チャンバを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の吸入器。
【国際調査報告】