IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイナ アナリティクス ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-536994NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部
<>
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図1
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図2
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図3
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図4
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図5
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図6A
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図6B
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図6C
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図6D
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図7
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図8
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図9
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図10
  • 特表-NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】NIR又はラマン分光光度法による、ポリマー容器内の無菌液体の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20241003BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20241003BHJP
   G01N 21/3577 20140101ALI20241003BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20241003BHJP
   G01J 3/44 20060101ALI20241003BHJP
   G01J 3/42 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01N21/359
G01N21/3577
G01N21/65
G01J3/44
G01J3/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515389
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2021069213
(87)【国際公開番号】W WO2023280427
(87)【国際公開日】2023-01-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524078815
【氏名又は名称】アイナ アナリティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ガルシア、ローラ
(72)【発明者】
【氏名】マインカ、デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
2G020
2G043
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020BA02
2G020BA14
2G020BA16
2G020CA02
2G020CA04
2G020CC01
2G043AA01
2G043CA04
2G043CA06
2G043EA03
2G043EA13
2G043FA06
2G043HA02
2G043KA01
2G057AA01
2G057AA02
2G057AB02
2G057AC01
2G057BA01
2G057BB06
2G057BB07
2G057BD08
2G057DA03
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB09
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE03
2G059EE12
2G059HH01
2G059JJ01
2G059JJ13
(57)【要約】
NIR分光光度計(1)又はラマン分光光度計(1)による、ポリマー容器(3)内の液体(2)の分光光度的特性評価のための液体(2)測定チャンバ拡張部(10)であって、前記測定チャンバ拡張部(10)がアダプタ開口(11')を有するアダプタプレート(11);容器ホルダ(7);及びミラー及び導波路から選択される光学素子(5);を備え、前記アダプタ(11)は、前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の測定チャンバ(20)を遮光式に覆うように構成されており、前記アダプタ開口(11')は、前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の測定窓を取り囲んで、前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の測定チャンバ(20)から前記測定窓を通して放出される測定光ビームに対する前記液体(2)の露出を提供するように配置されており;前記容器ホルダ(7)は、前記液体(2)を収容する前記ポリマー容器(3)に隣接して前記光学素子(5)を近くに置いて、前記光学素子(5)から前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の検出器まで、前記測定光ビームの損失のない透過又は透過反射を提供することが可能であるように構成されており、前記容器ホルダ(7)は、再現可能な測定条件を可能にするように、前記ポリマー容器(3)の管状セクション(3a)を保持するように構成されたクランプ(13)を備える、測定チャンバ拡張部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NIR分光光度計(1)又はラマン分光光度計(1)による、ポリマー容器(3)内の液体(2)の分光光度的特性評価のための測定チャンバ拡張部(10)であって、前記測定チャンバ拡張部(10)が
アダプタ開口(11')を有するアダプタ(11);
容器ホルダ(7);及び
ミラー及び導波路から選択される光学素子(5);を備え、
前記アダプタ(11)は、前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の測定チャンバ(20)を遮光式に覆うように構成されており、前記アダプタ開口(11')は、前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の測定窓を取り囲んで、前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の前記測定チャンバ(20)から前記測定窓を通して放出される測定光ビームに対する前記液体(2)の露出を提供するように配置されており;
前記容器ホルダ(7)は、前記液体(2)を収容する前記ポリマー容器(3)に隣接して前記光学素子(5)を近くに置いて、前記光学素子(5)から前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の検出器まで、前記測定光ビームの損失のない透過又は透過反射を提供することが可能であるように構成されており、
前記容器ホルダ(7)は、再現可能な測定条件を可能にするように、前記ポリマー容器(3)の管状セクション(3a)を保持するように構成されたクランプ(13)を有する、測定チャンバ拡張部。
【請求項2】
前記容器ホルダ(7)は、チャネル(6)を含む光学素子支持構造体を有し、前記チャネル(6)の幅は、前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の前記測定窓の幅に合うように適合されている、請求項1に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項3】
前記光学素子(5)は、金層を含むミラー、又は少なくとも1つの光ファイバー又は導波路を有する、請求項2に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項4】
前記光学素子(5)はミラー(5)を有し、前記容器ホルダ(7)は、前記ミラー(5)とともに前記チャネル(6)によって形成されたレセプタクル(13)を有する、請求項3に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項5】
前記チャネル(6)の表面(66)は、金層で覆われている、請求項4に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項6】
前記容器ホルダ(7)は、任意選択で蓋(8)を含む遮光ボックス(9)に入れられ、前記蓋(8)は、前記遮光ボックス(9)を遮光式に閉じるように適合されている、請求項4又は5に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項7】
前記光学素子(5)は前記蓋(8)に固定されている、請求項6に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項8】
前記チャネル(6)の前記表面(66)上の前記金層は、前記ミラー(5)の前記金層と融合し、前記ミラー(5)は、前記チャネル(6)と一体化されている、請求項5に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項9】
前記ミラー(5)は拡散ミラー(5)である、請求項5から8のいずれか一項に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項10】
前記金層は、複数のミラー(55)を取り囲み、それぞれのミラー(55)は、平坦な多角面を含み、前記ミラー(55)は、前記ミラー(5)の波形表面として配置されている、請求項9に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項11】
前記ミラー(5)の表面は、粗い又は滑らかな表面を含む、請求項10に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項12】
前記ミラー(5)の前記波形表面は、20μm~1000μmの範囲の粗度を有する、請求項10又は11に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項13】
前記光学素子(5)は導波路である、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項14】
前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の前記測定窓上で、第1の導波路は、前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の光源からの測定光を、前記ポリマー容器(3)内の前記液体(2)へ、及び前記光学素子(5)、すなわち第2の導波路へとガイドするように位置決めされ、前記第2の導波路(5)は、前記ポリマー容器(3)内の前記液体(2)の層を通過した後の前記測定光を、前記ポリマー容器(3)から前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)の光検出器へとガイドするように構成されている、請求項13に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項15】
前記ポリマー容器は使い捨てシリンジ(3)である、請求項1から14のいずれか一項に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項16】
光ガイド(6)は、チャネル(6)を含み、前記チャネル(6)の端部は、舌状部(66)になるよう形作られ、前記舌状部(66)は、前記シリンジ(3)の管状セクション(3a)を前記チャネル(6)の中心軸に対して直交する配向で嵌合及び保持するためのレセプタクル(13)を形成し、実質的に前記チャネル(6)に向かって配向された前記舌状部(66)の表面は、前記ミラー(5)を含む波形表面(55)を含み、前記シリンジ(3)の前記管状セクション(3a)は、サンプルビームの光路内で前記レセプタクルに配置可能である、請求項15に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項17】
前記シリンジ(3)は無菌パッケージ(4)に包囲されている、請求項15又は16のいずれか一項に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項18】
前記アダプタ開口(11')は、輸液バッグ(3)の角(3b)を収めるように適合されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項19】
バッグ配向部材(40)をさらに備え、前記バッグ配向部材(40)が少なくとも部分的に前記アダプタ開口(11')に挿入された場合に、前記バッグ配向部材(40)の外側輪郭(41)は、外側輪郭長さの大部分にわたって、前記アダプタ開口(11')の内側輪郭に合うように構成されている、請求項18に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項20】
永久磁石の対応するペアが、前記アダプタ開口(11')及び前記バッグ配向部材(40)の嵌合する縁部に、又はその近くに配置されている、請求項19に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項21】
前記輸液バッグ(3)内の前記液体(2)の層の厚さは、0.2mm~5.1mmの間で調整可能であり、好ましくは0.5~2.1mmの間で調整可能である、請求項18から20のいずれか一項に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項22】
前記ミラー(5)は、ミラー固定部材(15)によって固定可能である、請求項18から21のいずれか一項に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項23】
前記ミラー固定部材(15)及びバッグ配向部材(40)は、前記ミラーをチャネル(6)内で安定化するための永久磁石のペアのうちの少なくとも1つの磁石を含み、前記チャネル(6)は、前記ミラー(5)を取り囲むように寸法設定されている、請求項22に記載の測定チャンバ拡張部(10)。
【請求項24】
輸液バッグ(3)、シリンジ(3)、又は無菌パッケージ(4)に包囲されたシリンジ(3)から選択されるポリマー容器(3)内の液体(2)を、NIR分光光度計(1)又はラマン分光光度計(1)により、請求項1から23のいずれか一項に記載の測定チャンバ拡張部(10)を使用することによって分析するための方法であって、前記方法が:
前記ポリマー容器(3)の円形部分(3a)をレセプタクル(13)によって保持する段階;
前記測定チャンバ拡張部(10)の前記光学素子(5)を前記ポリマー容器(3)の表面に隣接して配置する段階;
前記光学素子(5)に向けて測定光ビームを方向付け、透過又は透過反射した光を、NIR分光光度計(1)及びラマン分光光度計(1)から選択される分光光度計(1)で分析する段階;
前記透過又は透過反射した光によって生成された信号を、類似の又は同一のサンプルのNIRスペクトル又はラマンスペクトルを含むデータベースに記憶されたデータセットと比較する段階;
前記液体(2)に溶解した溶質又は分散した粒子/液体の同一性を判定し、及び/又は前記液体(2)の混和物又は汚染物質を検出する段階;又は
前記液体(2)に溶解した溶質又は分散した粒子/体積の量を判定し、及び/又は前記液体(2)の混和物又は汚染物質を検出する段階;及び/又は
前記液体(2)に溶解した溶質又は液体(2)の分散した粒子/体積の物理的特性(例えば粒子サイズ、凝集)を判定し、及び/又は前記液体(2)の混和物又は汚染物質を検出する段階
を備える方法。
【請求項25】
前記測定光ビームは、4,000cm-1~12,500cm-1の波数範囲内の光を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
連続的な測定において、異なる波長のサンプルビームが、前記光学素子(5)に向かって方向付けられ、及び/又は測定光ビームは、前記光学素子(5)に向かって異なる角度下で方向付けられる、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記データベースは、ポリマー容器及び/又はシリンジ(3)の無菌パッケージ(4)における典型的な材料の製品範囲を含む異なるサンプルタイプに属するデータセットを含む、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記NIR分光光度計(1)又は前記ラマン分光光度計(1)のソフトウェア、又はそれらの制御ユニットのソフトウェアが、測定されたNIR又はラマンスペクトルから、前記ポリマー容器(3)又は前記シリンジ(3)の前記無菌パッケージ(4)を含む前記材料に属する対応するスペクトルを抽出するように適合される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効薬剤成分(API)、賦形剤、及び可能な混和物、及び/又はその汚染物質の同定及び/又は定量化、並びに無菌パッケージ内の、特に輸液バッグ内又は無菌パッケージ内のシリンジ内の液体状態のそのような医薬品の物理的特性(凝集、粒子サイズなど)の定量化/検出/検証に関する。
【0002】
医薬品の間違った生産又は間違った保管は、意図した効果の喪失をもたらすことがあり、又は医薬品が適用される生物に害を与えることさえあり得る。
【0003】
したがって、医薬品を適用する直前のそれらの品質及び/又は同一性のコントロールが、最も重要である。そのような品質及び/又は同一性のコントロールは、無菌パッケージの内側に保持されたポリマー容器、例えば輸液バッグ又は使い捨てシリンジ内の無菌溶液として存在することが多い医薬品の、例えば分光測定値を評価することによって行われることが可能である。
【0004】
典型的には、医薬品のバッチのサンプルが採取及び分析され、結果的にそのサンプル/バッチの破壊につながる。個別に生産された輸液バッグ、ポンプ、又はシリンジに関するバッチ数はn=1であることが多いので、バッチのリリース前に調剤の品質を見極めることは可能ではない。さらにこれらの手法は、分析結果、例えばスペクトル又はクロマトグラムを評価するために、分析実験室、並びに熟練した高度に専門的な人員を必要とすることが多い。
【発明の概要】
【0005】
本来の溶液及びその容器の完全性ひいては無菌性を損なわないために、請求項1に記載の測定チャンバ拡張部及び請求項21に記載の方法が提案される。
【0006】
特に、輸液バッグ内にあるか又は無菌パッケージ内のシリンジ内にあるかを問わず、溶解した状態の又は懸濁液又は乳濁液としての薬剤有効物質を含むポリマー容器を通るように方向付けられた、NIR分光光度計又はラマン分光光度計の測定光ビーム(サンプルビーム)の透過又は透過反射を測定することにより、及び任意選択で逆向きの、透過反射における測定により、集めた情報を使用して、液体内の化学成分を同定又はさらに定量化することができる。
【0007】
そうして、使用される測定原理は、透過反射(transflection)(パッケージを通って逆向きに戻る光路)又は透過(パッケージ(液体)を一度だけ通過するサンプルビーム)に基づくことが可能である。
【0008】
容器(一次及び/又は二次)の個々の形状及び大きさ、及びこれらの容器及び製品自体の関係(材料、透明性、印刷に関するその特性、及び特に可撓性の容器壁を有するポンプ又は輸液バッグに関して、当然ながら個々の空間的挙動を含む)に基づき、測定のための最善のエリアが規定される。このエリアの最適なパラメータは、以下の通りである。
1、光が容器を通過することができ、個々のホルダ(例えば、拡散ミラー又は導波路を備えるホルダ)により光強度の損失を最小限に抑える。
2、異なる容器及び製品の間の距離が最小限に抑えられ、それにより光の可能な限り最短の道が使用される(例えば二次パッケージングのプラスチックバッグ/トレイ)。
3、容器自体(例えば、異なる材料、層、透明性、層厚さ)によるスペクトルへの最小限の影響が確保される。
4、光ビームは、液体に、すなわちパッケージ(容器)内のシリンジのシリンダ内に焦点が合わされる。
5、液体製品は、典型的には、シリンジのシリンダの直径に対応する再現可能な層厚さで提示され、それによりロバストで繰り返し可能な測定が可能になる。
6、液体製品は、典型的には、(反射率モードが使用される場合)測定窓及びミラー及びミラー固定部材の間の距離、又は(透過モードが使用される場合)測定窓及びバッグ配向部材及び外側輪郭によって形成された液体層の間の距離に対応した再現可能な層厚さで提示される。
【0009】
NIR又はラマン機器、(任意選択の)サンプルの無菌パッケージ、並びに光学素子は、上述した条件のうちの1つ又は複数を確保するように位置決めされる。
【0010】
例えば、測定すべきシリンジ又は輸液バッグの位置決めのために、異なるタイプのホルダ又はこれらの組み合わせを使用することができる。例えば、それぞれの部分の同一性認識、及びソフトウェアソリューションを介して部分の正しい位置決めの自動確保のための電子的デバイスを収容した、プラスチック及び/又は金属のホルダなどである。これらのホルダは、シリンジの特定のタイプ、ひいては対応するパッケージホルダの必要とされる最適な位置に応じて、個別に製造される。輸液バッグは、典型的には、標準化されているので、各製造者の各製品ラインごとの輸液バッグのホルダは、典型的には設計しやすく、それゆえにかなり普遍的である。
【0011】
異なる製造業者の製品ラインに関して、所与の製造業者は、異なる薬剤化合物(API)に対してでさえ、典型的には同一又はほぼ同一の組成物のポリマー材料を使用していることが観察された。したがって、ポリマーパッケージ(輸液バッグの壁、シリンジのシリンダ、カートリッジのシリンダ)によって生成される信号は常に同じであるので、ポリマーパッケージのスペクトルデータを知らなくても、異なる製品(品質を監視する必要がある対象のAPIをそれぞれ含む液体、懸濁液、又は半固体を収容した輸液バッグ)の測定データ(例えば、スペクトル又はそれらの派生物)を単純に比較することにより、製品の同一性又はその可能な汚染物質を、高い信頼性で判定することができる。そうして、驚くべきことに、誤ったミスファイリング、並びに汚染、又は薬剤溶液を充填済みポリマーパッケージ内の混和物で不正に置き換えることを監視するための、簡単で信頼性の高い方法が提供される。提案される方法は、有利には、測定される充填済みシリンジ、ポンプ、カートリッジなどの無菌性を損なわない。
【0012】
そうして、本発明は、パッケージ材料(プラスチックバッグ又はシリンジ及びシリンジパッケージング)、溶媒及び薬剤有効成分、並びに不要な溶質(混和物及び/又は汚染物質)のNIRスペクトル及びラマンスペクトルの特徴を使用する同定、定量化、及び区別について説明する。
【0013】
有利には、誤ったミスファイリング、並びに汚染、又は混和物による薬剤溶液の不正な置き換えを特定することができる。バッグ又はシリンジ内の所与の物質の一層正しい濃度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】市販のNIR分光光度計1又はラマン分光光度計1に接続された、提案される測定チャンバ拡張部10の一実施形態を示す。
【0015】
図2】提案される測定チャンバ拡張部10の、NIR分光光度計1又はラマン分光光度計1に対するその関係における分解図を概略的に示す。
【0016】
図3】適切な分光光度計に嵌められた測定チャンバ拡張部10の鉛直方向断面(図4のB-B')を示す。
【0017】
図4】無菌パッケージ4内のシリンジ3のレベルにおける水平方向断面(図3のA-A')を示す。
【0018】
図5】提案される測定チャンバ拡張部の、すなわち外側嵌合表面8の底部の図である。分光光度計から見た測定チャンバ拡張部を示す。
【0019】
図6】遮光ボックス9の外側嵌合表面8の開口に挿入される導光チャネルを備える容器ホルダ7の異なる図を示す。
【0020】
図7】容器ホルダ7の異なる図を示す。
【0021】
図8】容器ホルダ7の断面図(ハッシュエリア)を示す。図中、水平方向の線は断面を示す。
【0022】
図9】輸液バッグにおける測定のために構成された測定チャンバ拡張部の一実施形態を示す。
【0023】
図10】両方とも同じポリオレフィンを備える同じ製造業者(Fresenius Kabi, Freeflex+)の輸液バッグにおいて、直接測定された水性API溶液のNIRスペクトルを示す。
【0024】
図11】注射の準備が整った、使い捨てプラスチックシリンジ内のモノクローナル抗体ラニビズマブ2.3mgを備えるルセンティス(登録商標)の本来のNIRスペクトルを示す。
【0025】
最良の形態を含む、本発明の完全かつ当業者にとって実施可能な程度の開示が、添付図面への参照を含む明細書の別の部分でより具体的に説明されている。
【0026】
以下の詳細な説明においては添付図面を参照するが、これらの図面は本発明の一部を形成し、これらの図面では、本発明の特定の実施形態及び特徴が例として示してある。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてよく、構造的又は論理的変更が行われてよいことが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定の意味で解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
特許請求の範囲及び/又は明細書において「を備え」という用語と併せて使用されるとき、「a」又は「an」という単語の使用は、「1つ」を意味してよいが、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つより多く」という意味とも矛盾しない。
【0028】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すと明示的に示されていない限り、又は代替物が相互排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0029】
本明細書(上記及び下記)及び特許請求の範囲において使用されるとき、単語「備え」(及び「備える(comprise)」及び「備える(comprises)」など、備えるの任意の形態)、「有し」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」など、有しの任意の形態)、「含み」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」など、含みの任意の形態)、又は「収容し」(及び「収容する(contains)」及び「収容する(contain)」など、収容しの任意の形態は、包括的であるか、又はオープンエンドであり、追加の、言及していない要素又は方法ステップを排除しない。
【0030】
本明細書で使用するとき「半固体」という用語は、(通常の生理的な(水性)溶液、したがってほとんどの場合二相系、固体/液体、又は液体/液体と比較してより高粘度の)ゲル、ペースト、又はローションを備える。用語は、薬剤技術及び/又は食品技術における当業者によるその一般的な理解に対応して使用される。
【0031】
さらに、本明細書において使用される「溶液」という用語は、水溶液に限定されず、他の溶媒、例えば油にも関係することに留意されたい。それゆえに、提案される測定チャンバ拡張部を使用して測定されることが可能な液体組成物は、例えば多成分/多相系からなる溶液及び分散物を備えてよい。
【0032】
一実施形態によれば、NIR分光光度計又はラマン分光光度計のための測定チャンバ拡張部が提案される。それは、ポリマー容器、例えば無菌パッケージにくるまれた輸液バッグ又は使い捨てシリンジ内の無菌液体の、対応する分光光度的特性評価に適合される。測定チャンバ拡張部は:
-アダプタ開口を有するアダプタ;
-容器ホルダ;及び
-ミラー及び導波路から選択される光学素子を備え、
前記アダプタは、前記NIR分光光度計又は前記ラマン分光光度計の前記測定チャンバを遮光式に覆うように構成されており、前記アダプタ開口は、選択された分光光度計の測定窓を取り囲んで、前記分光光度計の測定チャンバから前記測定窓を通して放出される測定光ビームに対する前記液体の露出を提供するように配置されており;
前記容器ホルダは、前記液体を収容する前記ポリマー容器に隣接して前記光学素子を置いて、前記光学素子から、任意選択で測定窓を通して逆向きに、選択された分光光度計の検出器まで、前記測定光ビームの損失のない透過又は透過反射を提供することが可能であるように構成されており、
前記容器ホルダは、再現可能な測定条件を可能にするように、前記ポリマー容器の管状セクションを保持するように構成されたクランプを有する。
【0033】
有利には、収集された新しいNIRスペクトルを、同じサンプルタイプ(パッケージング、賦形剤、API)の、既知の代替的に分析されたNIRスペクトルと比較することにより、容器の内側の液体に溶解又は懸濁したサンプルの化学物質及び/又は物理的特性を、定性的及び少なくとも半定量的に検出することが可能になる。そうして、液体の誤った組成又は基準未満の品質、又は不要な物質によるその汚染を、同定することができる。
【0034】
一実施形態によれば、容器ホルダは、光学素子用の支持構造体を備え、この支持構造体はチャネルを備え、このチャネルの幅は、対応する分光光度計(NIR又はラマン分光光度計)の測定窓の幅に合うように適合される。
【0035】
有利には、それにより、サンプルビームが、(特に透過反射に関して)強度損失なく、パッケージ、シリンジ、及び例えば透過反射した光のNIRスペクトルを記録するためのパッケージを横切って通過できるようになる。
【0036】
一実施形態によれば、光学素子は、金層を備えるミラー、又は少なくとも光ファイバー又は導波路を備える。
【0037】
有利には、金は、700nmを上回る波長の入射放射線の95パーセント超を反射する。したがって、チャネル及びミラーは、金層又は別の反射コーティングでコーティングされることが可能である。したがって、測定される光は、透過反射した光である。上記金層は、両方ともガルバニック及び無電解である真空蒸着又はめっきにより、並びに他の適切な付加製造技術により、堆積させることが可能である。有利には、光導波路又はファイバーは、本明細書において関連する、ポリマーパッケージから光検出器までの又は対応する分光光度計(NIR又はラマン分光光度計)の測定チャンバ内へのカップリングのための少なくとも短い距離(典型的には10又は数十センチメートル)にわたって、損失のないガイドを提供するように選択されてよい。
【0038】
一実施形態によれば、容器ホルダは、ミラーとともにチャネルによって形成されたレセプタクルを備える。
【0039】
有利には、そのようなホルダは、容器を再現可能に保持するように適合される。
【0040】
一実施形態によれば、チャネルの表面も金層で覆われている。
【0041】
有利には、信号/雑音比を改善することができる。ミラーは、例えば金、スペクトラロン(PTFE)、又はアルミニウムから作られることが可能であり、これらは(NIR及びラマン分光光度法の両方に対する)関連する波長範囲の光に対して、高反射性の表面を提供し得る。
【0042】
一実施形態によれば、容器ホルダは、遮光ボックスに入れられ、この遮光ボックスは、遮光ボックスを遮光式に閉じるように適合された蓋を備える。
【0043】
この場合も、信号/雑音比が改善され、ひいては測定の正確度が高まる。より一層コンパクトな設計が実現される。光ガイドは、中空のチャネル、又は導波路、又は導波路の束を備えてよい。例えば、光ガイドは横方向凹部を備えてよく、ミラーは、サンプルビームの入り口に対して(すなわち、光ガイドがボックスに嵌め込まれる開口に対して)光ガイドの遠い側に置かれてよい。開口は、ボックスの蓋にさえ配置されてよい。
【0044】
一実施形態によれば、光学素子が蓋に固定されている。一実施形態によれば、光学素子は、チャネル開口に近いポリマー容器の円形部分を保持するように、蓋に配置されてよい。
【0045】
例えば、光学素子は、弾性要素、例えばばね又はスポンジ状材料によって、蓋に接続されてよい。有利には、蓋を閉じることにより、光学素子は、ポリマー容器、例えばパッケージ内のシリンジに押し当てられる。これは、測定チャンバ拡張部の設計を単純化し、測定プロセスを最適化するために使用されてよい。
【0046】
一実施形態によれば、チャネルの表面の金層は、ミラーの金層と融合し、ミラーはチャネルと一体化される。
【0047】
ミラーは光ガイドとともに、こうしてレセプタクル、すなわちパッケージホルダを形成してよい。有利には、光ガイドに対する光学素子、例えばミラーの配向は、全ての測定の間中一定のままであり、このことは、標準化された及び再現可能な測定条件の確立を可能にする。
【0048】
一実施形態によれば、光学素子は、ミラー、特に拡散ミラーである。
【0049】
有利には、それにより、シリンジ内の液体を通って透過反射した光を備える代表的な信号を、光ガイドで収集し、NIR分光光度計又はラマン分光光度計で分析することが可能になる。
【0050】
一実施形態によれば、拡散ミラーの金層は、複数のミラーを取り囲み、それぞれのミラーは、平坦な多角面を備え、複数のミラーは、ミラーの波形表面として配置されている。
【0051】
有利には、金は、700nmを上回る波長の入射放射線の95パーセント超を反射する。波形構造は、容器内で屈折した迷光さえも完全に収集することを可能にする。有利には、微細に分散(懸濁)した粒子さえも測定され得る。
【0052】
一実施形態によれば、粗い又は滑らかなミラー表面の複数のミラーは、最適化されたミラー、又は単に単一の滑らかな又は粗いミラーを備えるように配置されることが可能である。これらの表面は、少なくとも部分的に金層で覆われる。
【0053】
有利には、示してある形状、すなわち粗い表面の3次元構造は、入射光、すなわちパッケージ、シリンジ壁、及び液体を通過した後のサンプルビームの、ほぼ完全な拡散反射を可能にする。
【0054】
一実施形態によれば、粗いミラー表面は、20μm~1000μmの範囲の粗度を備える。
【0055】
有利には、20μm~1000μmの範囲の粗度は、信号損失のない完全な拡散反射を可能にし、ひいては高い信号/雑音比を可能にする。
【0056】
一実施形態によれば、光学素子はミラーではなく導波路である。
【0057】
有利には、導波路は典型的には、ポリマー容器内の液体層に対し及びその液体層から、損失のない光のガイドを可能にする。
【0058】
一実施形態によれば、分光光度計の測定窓上で、第1の導波路は、分光光度計の光源から、ポリマー容器内の液体へ、及び光学素子、すなわち第2の導波路へと、測定光をガイドするように位置決めされる。第2の導波路は、規定の厚さを有する、ポリマー容器内の液体の層を通過した後の測定光を、ポリマー容器から分光光度計の光検出器へとガイドするように構成される。
【0059】
有利には、測定チャンバ拡張部の設計を大幅に単純化することができる。有効薬剤成分(薬剤有効物質の溶液であるか、又はその懸濁液/乳濁液であるかを問わず)を有する液体を収容したポリマー容器は、遮光式に隔離、例えば遮光ボックスに入れられるだけでよく、第1の導波路及び第2の導波路(すなわち光学素子)の2つの端部表面は、ポリマー容器を囲むポリマー容器の2つのポリマー壁及び液体自体を備える液体の(規定の厚さを有する)層を、2つの端部間に形成された間隙に収めるように、互いに対して調整されればよい。
【0060】
一実施形態によれば、ポリマー容器は使い捨てシリンジである。
【0061】
現在、多くの薬剤は、充填済みの使い捨てシリンジで販売されており、それらの品質がコントロール可能である。典型的には、使い捨てシリンジは、(一次及び二次パッケージングが徹底的に規定され、資格のあるサプライヤーしか製薬業者によって使用され得ないことに起因して)一定の良好に特性評価されたポリマー材料から作られ、したがって、測定データの分析を単純化することができる。
【0062】
一実施形態によれば、光ガイドは、チャネル、例えば管フランジを備え、チャネル(管フランジ)の端部は、舌状部になるよう形作られ、この舌状部は、シリンジのシリンダを管フランジの中心軸に対して直交する配向で嵌合及び保持するためのレセプタクル、すなわち当接部を形成し、管フランジに向かって配向された舌状部の表面は、ミラーを備える波形表面を備え、シリンジのシリンダは、サンプルビームの光路内でレセプタクルに配置可能である。
【0063】
有利には、フランジパイプ(管フランジ)が導光チャネルを包囲し、導光チャネルは、反射層、例えば金層によってコーティングもされている。導光チャネルは、波形ミラー表面で終わり、こうしてサンプルビームがシリンジ、及びそれに収容された液体に向かって拡散ミラーに至るまで通過することを可能にし、その後、拡散して反射した(透過反射した)光を、拡散ミラーからNIR分光光度計又はラマン分光光度計の検出ユニットまで、又は第2の導光チャネルを通って透過検出器までガイドするように適合される。
【0064】
一実施形態によれば、使い捨てシリンジは、無菌パッケージによって包囲、すなわちそれにくるまれている。
【0065】
そのような無菌パッケージは、典型的にはポリマー箔からなる。それらの材料は、製造業者によって知られており指定される。したがって、対応する測定値は、適切に適合されたデータベースを使用して検証されることが可能である。
【0066】
一実施形態によれば、アダプタの開口は、輸液バッグの角を収めるように適合される。
【0067】
図9の要素40から明らかなように、アダプタは穴(チャネル)を備え、この穴も、ミラー表面によって覆われてよく、又は透過検出器までの導光チャネルにつながってよい。アダプタの形は三角形とすることができるが、対象となる輸液バッグ又はポンプの(他の形も備える)形状にいつでも個別に適合される。示してあるように、ミラー表面の材料は、例えばアルミニウム、スペクトラロン(焼結PTFE)、又は金を備えてよい。有利には、輸液バッグの角は、液体の薄い層だけが残るまで圧縮(締め付け)されることが可能である。さらに、バッグのポリマー材料のみのスペクトルを取得するために、液体がこの角から完全に締め出されることが可能である。そうして、純物質(及び溶媒、賦形剤など)に属する信号の同定又は定量化が容易になる。
【0068】
一実施形態によれば、前に述べた測定チャンバ拡張部は、輸液バッグ内の液体の測定のために構成された開口を有するアダプタを備え、測定チャンバ拡張部はさらに、バッグ配向部材を備え、バッグ配向部材が少なくとも部分的にアダプタ開口に挿入された場合に、バッグ配向部材の外側輪郭は、外側輪郭長さの大部分にわたって、アダプタ開口の内側輪郭に合うように構成されている。バッグ配向部材は、最適で再現可能な通路を確保するために、クランプを備えることができる。光をガイドするために液体容器の上及び下の2つの別々の部分か、又はこれら両方の部分を備えた1つのクランプかのいずれも可能である。
【0069】
有利には、角の最も外側のリムは、アダプタの開口及びバッグ配向部材によって形成された空間に嵌め込まれるので、周辺光から保護されることが可能である。外側輪郭のより短い部分は、ベースプレートの開口の内側輪郭に合うが、バッグの残りの部分が、測定経路から遠くに保持されることを可能にする。
【0070】
一実施形態によれば、永久磁石の対応するペアが、アダプタ開口及びバッグ配向部材の嵌合する縁部に、又はその近くに配置されている。
【0071】
有利には、バッグ配向部材とアダプタ開口との自己嵌合を可能にするために、例えば小さなニオブ磁石が、隣接するセクションに挿入されてよい。これらの磁石は、遮光嵌合を一層可能にするように、外側表面と同一平面に挿入されることが可能である。
【0072】
一実施形態によれば、ポリマー容器、例えばバッグ又はシリンジ内の液体の、又は(ナノ)粒子懸濁液の層の厚さは、0.2mm~5.1mmの間で調整可能であり、好ましくは、層厚さは、0.5mm~2.1mmの間で調整可能である。
【0073】
有利には、透過反射又は透過の測定のために最適で再現可能な層厚さを実現することができる。
【0074】
一実施形態によれば、光学素子の位置は、固定(又は保持)部材によって安定化させることが可能である。水平方向平面の安定化並びに鉛直方向の安定化、それゆえに規定の層厚さに、到達することができる。
【0075】
有利には、測定条件をこうして標準化することができる。
【0076】
一実施形態によれば、保持又は固定部材、及びバッグ配向部材はそれぞれ、光学素子をチャネルに又はチャネル内で安定化させるための永久磁石のペアのうちの少なくとも1つの磁石を備え、チャネルは、光学素子、例えば円形ミラーの外側寸法及び形状を取り囲むように、すなわちそれにぴったり嵌るように寸法設定されている。
【0077】
有利には、測定の再現可能性をさらに改善することができる。
【0078】
一実施形態によれば、NIR分光法による、ポリマー容器内の液体又は半固体の分析のための方法が提案される。ポリマー容器は、輸液バッグ及びシリンジから選択される。シリンジ又は輸液バッグ又はポンプは、任意選択で無菌パッケージに包囲されていてよい。そうして、液体に溶解した又は懸濁(分散)した薬剤学的又は別様の生物学的に有効な物質、又は賦形剤として使用される物質が、余計なサンプリングなしに、すなわち包装を解く又はポリマー容器を開くことなしに、すなわち本来の液体の無菌性を保ちながら、測定されることが可能である。この方法は、上に説明した測定チャンバ拡張部の使用に基づき、この方法は、
-レセプタクルによってポリマー容器の円形部分を保持する段階;
-ポリマー容器の表面に隣接して光学素子を配置する段階;
-光学素子に向けて測定光ビームを方向付け、透過又は透過反射した光を、NIR分光光度計又はラマン分光光度計で分析する段階;
-透過又は透過反射した光によって生成された信号を、類似の又は同一のサンプルのNIRスペクトル又はラマンスペクトルを備えるデータベースに記憶されたデータセットと比較する段階;及び
-液体に溶解した溶質の同一性を判定し、及び/又は液体内の混和物又は汚染物質を検出し、及び/又は少なくとも半定量的に、薬剤有効物質の濃度、又はその汚染物質を検出し、及び/又は液体に溶解した溶質の、又は液体体積当たりに分散した粒子の物理的特性(例えば、粒子サイズ、粒子の凝集)を判定し、及び/又は液体中又は分散物中の混和物又は汚染物質をそれぞれ検出する段階を備える。
【0079】
有利には、上記方法は、ポリマー容器(輸液バッグ又は使い捨てシリンジ)内に収容された液体又は半固体、及び任意の関連汚染物質又は誤って収容された異物(例えば、混和物、意図した物質の分解生成物など)の物理的又は化学的パラメータを、定性的に、及び少なくとも半定量的に判定することを可能にする。さらに、液体が懸濁(ナノ)粒子の分散物を備える場合、分散物の均質性を評価することができる。さらに、有効薬剤成分の定量的判定、ポリマー容器内の製品の薬剤品質の検証を行うことができ、並びにその物理的特性(例えば粒子サイズ、凝集の存在など)を取得できる。
【0080】
一実施形態によれば、サンプルビームは、4,000cm-1~12,500cm-1の波数範囲内の光を備える。
【0081】
有利には、示した波長範囲内のスペクトル特性を使用して、様々な薬剤物質(API及び賦形剤)、関連汚染物質、及び物理的特性(例えば、粒子サイズ、凝集・・・)を区別することができる。
【0082】
一実施形態によれば、提案される方法は、異なる波長を有する異なるサンプルビームによる反復的な測定を備える。これらのサンプルビームは、反射ミラーに向かって同一の角度下で方向付けられるが、反射ミラーに向かって異なる角度下で方向付けられることも可能である。例えば、異なる入射角度が、同一の波長に対して選択されることが可能である。異なる波長は、有利には、異なる入射角度の下で、拡散ミラーによって方向付け(透過反射)されることが可能である。
【0083】
有利には、測定の精度を高めることができる。
【0084】
一実施形態によれば、取得したスペクトルを分析するために使用されるデータベースは、典型的な製品範囲を含む異なるサンプルタイプに属するデータセットを備える(欧州薬局方2.2.40も参照のこと)。典型的には、これらの材料は、例えばPE、PP、PVC、PMMAなどの有機ポリマーを備える。さらに、使用される分光光度計のソフトウェア、又は類似のソフトウェアが、現在測定されたNIRスペクトルから、対象とする情報(例えば、API含有量にリンクする一定の波長における例えば吸光度)を抽出するように適合される。
【0085】
有利には、それにより、液体に溶解又は懸濁した物質を疑いの余地なく同定又は定量化するため、又はシリンジに収容された組成物の物理的パラメータを定量化するために使用されることが可能な対象とする情報を、スペクトルデータから抽出することが可能になる。
【0086】
一実施形態によれば、NIR分光光度計又はラマン分光光度計に記憶されているか、又はそれぞれの分光光度計をそれぞれコントロールするために使用されるコンピュータ化されたシステムに記憶されているソフトウェアが、測定されたNIR又はラマンスペクトルから、ポリマー容器又はシリンジの無菌パッケージを備える材料に属する対応するスペクトルを抽出するように適合される。
【0087】
有利には、対象とするパラメータに属するスペクトルデータを抽出し、高い信頼性で評価することができる。
【0088】
上で説明された各実施形態は、別段の明確な指示が無い限り、任意の他の実施形態又は複数の実施形態と組み合わされてよい。
【0089】
説明に関して、図1の図面は、例えば少し例を挙げるとBruker又はJasco、PerkinElmer、Shimadzu、Metrohm又はVarianから提供されている例えば市販の分光光度計(例えば、NIR又はラマン分光光度計)とともに使用するように適合された1つの実施形態だけを表している。測定チャンバ拡張部10は、測定チャンバ20の開口に嵌まるアダプタ11を使用して、NIR分光光度計1又はラマン分光光度計1に接続される。
【0090】
図2は、測定チャンバ拡張部10が遮光ボックス9を備え、NIR分光光度計又はラマン分光光度計1の測定チャンバ20に測定チャンバ拡張部10を接続する前に、開いた蓋8が、シリンジ3'を収容した無菌パッケージ4を受け入れ、それを内側パッケージホルダ6に保持する準備ができていることを示す。NIR分光光度計1又はラマン分光光度計1の測定(サンプル)ビームが、パッケージホルダ7の導光チャネル6として示してある光ガイド6に(鉛直方向の線に沿って)入ることが可能であるように、遮光ボックス9が測定チャンバ20の真上に配置されることが示してある。
【0091】
図3では、シリンジを備える無菌パッケージ4が、(アダプタ11を介して)遮光式に接続されたNIR分光光度計1又はラマン分光光度計1(図示せず)のサンプルビーム(赤)のちょうど中央に、内部パッケージホルダ6によって保持される様子が示してある。
【0092】
図4でわかるように、測定チャンバ拡張部10をNIR分光光度計1又はラマン分光光度計1に遮光嵌合できるようにするために、図示した実施形態のボックス9は、蓋8によって閉じられなくてはならない。
【0093】
図5は、下から、すなわち分光光度計の側から見た測定チャンバ拡張部10の図である。光ガイド6を受けるための円形開口88を有するボックス9の壁が示してある。円形凹部86の4つのスリットは、遮光ボックス9の内側で光ガイド6の正しい位置、ひいては光ガイド6の正しい配向を確保する。有利には、光ガイド6の形及び大きさは、異なるシリンジ3の異なるエンクロージャ(パッケージ4))に適合されることが可能である。
【0094】
光ガイド6の異なる図のうち、光ガイドとおミラー5の組み合わせがあり、これらがともにパッケージホルダ7を備える。図6のAは、光ガイド6を備える上記パッケージホルダ7の外側を、光ガイド、ここではチャネル6が見える図で示す。図6のBは、ミラー5、ここでは拡散ミラー5を有する光ガイド6が見える図を示す。拡散ミラー5は、波形で粗いミラー表面を備える。光ガイド7の舌状部66は、無菌容器3、例えば無菌パッケージ4内のシリンジ3の管状部分3aを保持するように適合されている。示してあるように、光ガイド6の内側表面66は、金層で覆われており、これは、光ガイド6の内側の波形ミラー5の金層と融合している。図6のC及び図6のDに示す鉛直方向断面図にも示してあるように、組み合わされた光ガイド6/パッケージホルダ7は、舌状の当接部66を備える口形状のレセプタクル13又はホルダ13を備える。図示した実施形態において、分光光度計1に向かって方向付けられた当接部66の内側は、波形のミラー表面5を備える。有利には、ミラー表面5の波形構造は、拡散反射、及び無菌パッケージ4にくるまれたシリンジ3の確実な把持の両方を可能にする。
【0095】
図7は、光ガイド及び(波形ミラー)が直接見える内側シリンジホルダの下から見た図(A)、光ガイド6の正面図(B)、側面図(C)、及び上から見た図を示す。一実施形態によれば、舌状部66、すなわちパッケージホルダの内側の波形表面を備える光ガイド6は、例えばポリスチレンで射出成形によって作製されることが可能である。ガラス、又は例えばアルミニウムから作製されることも可能である。その表面は、例えば無電解(バレル)めっき又は例えば蒸着により、金層でコーティングされることが可能である。
【0096】
図8のAは、舌状当接部66の真下の口形状レセプタクル7のレベルにおける、光ガイド6を通る水平方向断面、すなわち図8のB及び図8のCの断面の上側部分を示す。図8のBは、光ガイド6の正面図の配置における鉛直方向断面図であり、その一方で図8のCは、側面図の配置における断面図である。指示記号66は、光ガイド6の内側表面を示す。図8のDは、図8のB及び図8のCにおける断面の下側部分を示す。
【0097】
提示した実施形態の利点は、提案された測定チャンバ拡張部10は、一旦その外側輪郭が、分光光度計1の測定チャンバ20の外側輪郭に適切に適合されると、全ての市販のNIR分光光度計1と組み合わされることが可能なことである。本明細書において「適切に」とは、遮光の条件を保ち、無菌パッケージ4内のシリンジ3'内の液体2の透過又は透過反射測定のために、ボックス9の内側の光ガイド6内へとサンプルビームを方向付けることを確保するような適合を意味する。
【0098】
特に図9は、NIR分光光度計1及びラマン分光光度計1の両方と組み合わされることが可能な拡張部10の一実施形態を示す。輸液バッグ3が、少なくとも1つの管状セクション3aにおいて、容器ホルダ7のレセプタクル13によって保持される。バッグ3の縁部は、バッグ配向部材40によって、アダプタ11の対応する開口に合わせられる。アダプタ11は、対応する分光光度計1の測定チャンバ20に遮光式に接続される。測定光ビーム(例えばNIR)又は対応するレーザビーム(ラマン分光光度法)は、アダプタ11に入り、対応する固定部材15(又は安定化部材15)によって保持された光学素子5(ここではミラー)に到達する(方向付けられる)。上記安定化部材15は、光学部材と、角3bにおけるバッグ3(又はシリンジ3のパッケージ4)の外側壁との直接的な物理的接触を確保する。測定チャンバ20の光学窓に対する光学部材の前面の距離が、ポリマー材料の少なくとも2つの層の厚さとともに、対象とするAPIを含有する液体2における測定光路の長さ(層厚さ)を規定する。測定光ビームは、導光チャネル6によってガイドされる。そのチャネル壁は、反射性材料から作られるか、又はそのようなものでコーティングされる。少し例を挙げると、適切な材料は、例えばアルミニウム、金、スペクトラロンである。有利には、ミラー、すなわちその3次元形状、嵌合輪郭41、及び表面構造、すなわち粗度は、その製造中に、例えばCAD支援3D印刷(所与の分光光度計及びAPIの無菌溶液のパッケージング(例えば、シリンジ3、輸液ポンプ3又はそのようなもののカートリッジ、輸液バッグ3)に合わせて容易に且つ高速に適合させることが可能な付加製造技術)により、現在の測定状況に合わせて調整されることが可能である。
【0099】
図10のAは、水中の5%ブドウ糖溶液「Glucosteril500」(緑)と比較した生理食塩水、すなわち水中の0.9%NaCl(オレンジ線)に関する。Glucosteril500は、欧州薬局方による5%ブドウ糖一水和物溶液である。両方のスペクトルは、取得された通りに示してある(いかなるデータ処理/事前処置もない元のスペクトルデータ)。明らかなように、提案される測定チャンバ拡張部により直接輸液バッグから実現される品質は、良好である。取得したスペクトルを直接比較することにより、遍在的な水の帯域の影響(約7100、5250cm-1における値を参照)が大幅に低減され、他の波数、例えば典型的なC-H帯域の領域である6000~約5400cm-1において、内容物固有の信号を得ることが可能になる。水素結合、例えばC-H及び/又はN-Hを備える有機物質に典型的な、上記その他の帯域領域が、典型的なAPIを同定するために重要であり、それゆえに使用されることが可能である。図10のBは、図10のAからのNIRスペクトルの対応する第2の派生物を示す(NaCl-赤及び灰色の線;Glucosis-青線)。明らかに、約5800cm-1における非常に示差的な帯域(青のスペクトル、Glucosis5%溶液)を容易に認識することができる。それにより、非常に強力なAPI信号を確認できることから、グルコシスの定量化が可能である。
【0100】
図11は、ルセンティス2.3mg(濃度は10.0mg/ml)のすぐに使えるシリンジのスペクトルを示す。
【0101】
説明した実施形態は、生物学的に有効な物質の薬剤学的、医学的、獣医学的、又は生化学的な応用の分野において、薬剤物質、その可能な汚染物質、及び/又は混和物、又は例えば間違った保管条件の結果としてのそれらの分解産物の検出のための、多様な応用分野を有するが、食品、例えば食品添加物、濃縮物など、及び便宜品の分野においてもそうである。提案される実施形態の実行可能性を実証することを目的として、使用される装置及び方法を説明するいくつかの例が、以下に与えられる。
【0102】
本発明は、様々な例示的な実施形態及び例を参照して説明された。これらの実施形態及び例は、発明の範囲を制限する意図はなく、発明の範囲は請求項及びその同等物によって定義される。当業者にとって明らかであるように、本明細書において説明される実施形態は、発明されたものの範囲から逸脱することなく様々な方式で実装され得る。実施形態において説明した様々な特徴、態様、及び機能は、他の実施形態と組み合わされることが可能である。
[符号の説明]
1 分光光度計(NIR又はラマン分光光度計)
2 液体、例えば生物学的に有効な物質、薬剤、ワクチン、食品添加物
3 ポリマー容器(輸液バッグ、ポンプ、又は使い捨てプラスチックシリンジ、任意選択でパッケージングされている)
3a ポリマー容器の管状セクション
3b 特に輸液バッグのポリマー容器の角
4 無菌パッケージ(典型的にはポリマー箔から作られている)
5 光学素子、例えばミラー又は光ガイド
6 チャネル、例えば導光チャネル
66 当接部、ホルダ13の舌状部
7 容器ホルダ
8 蓋
87 リップ、チャネルフランジ
88 遮光ボックスの開口
9 遮光ボックス
10 測定チャンバ拡張部
11 アダプタ、アダプタ
11' アダプタ開口
13 レセプタクル、管状部分の保持部材
15 ミラー固定部材
20 測定チャンバ
40 バッグ配向部材
41 バッグ配向部材の外側輪郭
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】