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特表2024-536995EMM-68アルミノシリケートゼオライトと、その合成とその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】EMM-68アルミノシリケートゼオライトと、その合成とその用途
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C01B39/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515501
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 US2022075487
(87)【国際公開番号】W WO2023059961
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/252,674
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ファム,トロン ディー
(72)【発明者】
【氏名】バートン,アレン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ソールド,スチュアート エル
(72)【発明者】
【氏名】ブローマン,ヒルダ ビー
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BB03
4G073BB14
4G073BB44
4G073BB47
4G073BB48
4G073BB58
4G073BB66
4G073BD21
4G073CZ06
4G073CZ41
4G073FB24
4G073FB30
4G073FB42
4G073FC19
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA05
4G073GA12
4G073GA14
4G073GA19
4G073GB02
4G073UA01
(57)【要約】
独自の粉末XRDパターンまたは独自の連結性を特徴とする、EMM-68と称されるアルミノシリケートゼオライト、その製造方法、およびその使用。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成されたままの形態で、表1から選択される少なくとも5個のピークを含むX線回折パターンを有する、アルミノシリケートゼオライト。
【表1】
【請求項2】
焼成されたままの形態で、表1から選択される少なくとも6個のピーク、好ましくは全てのピークを含むX線回折パターンを有する、請求項1に記載のアルミノシリケートゼオライト。
【請求項3】
式I:
(m)Al:SiO (式I)、
の分子式を有し、
式中、0.0125<m≦0.1である、請求項1または2に記載のアルミノシリケートゼオライト。
【請求項4】
合成されたままの形態で、表2から選択される少なくとも10個のピークを含むX線回折パターンを有する、アルミノシリケートゼオライト。
【表2】
【請求項5】
合成されたままの形態で、表2から選択される少なくとも12個のピーク、好ましくは少なくとも13個のピーク、より好ましくは全てのピークを含むX線回折パターンを有する、請求項4に記載のアルミノシリケートゼオライト。
【請求項6】
式II:
(n)Q:(m)Al:SiO (式II)、
の分子式を有し、
式中、0≦n≦0.7、0.0125≦m≦0.1であり、Qは、式IIIaの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-3-イウムカチオン、式IIIbの1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ[1,2-a]ピリダジン-4-イウムカチオン、および式IIIcの5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-4-イウムカチオン:
【化1】
からなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含む、請求項4または5に記載のアルミノシリケートゼオライト。
【請求項7】
単位セルにおける四面体(T)原子に関する表3の以下の連結度によって規定される骨格を有し、四面体(T)原子が架橋原子によって連結されている、請求項1~6のいずれか一項のアルミノシリケートゼオライト。
【表3】
【請求項8】
(a)a=12.4±0.30Å、b=18.8±0.30Å、c=9.2±0.30Å、およびβ=96.2°の単位セル寸法を有するC中心単斜晶空間群C2/m、および
(b)8.0±0.50Å×9.4±0.50Å×7.7±0.50Åの大きなキャビティサイズを有する10x8x8チャネルシステム
を有する構造を有し、
c軸に沿う10環細孔は6.1±0.20Å×3.8±0.20Åの寸法を有し、b軸に沿う8環細孔は3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有し、x-y平面内の別の8環細孔は3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のアルミノシリケートゼオライト。
【請求項9】
5~40、好ましくは6~30、より好ましくは7~20のSi/Alモル比を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のアルミノシリケートゼオライト。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のアルミノシリケートゼオライトの製造方法であって:
(a)水、シリカ源、アルミナ源、構造指向剤(Q)、フッ化物源(F)、水酸化物イオン源(OH)、および必要に応じてアルカリ金属のカチオンまたはアルカリ土類金属のカチオン源(M)を含む合成混合物を調製するステップ;
(b)前記アルミノシリケートゼオライトの結晶を形成するのに十分な時間、100℃~200℃の温度を含む結晶化条件下で前記合成混合物を加熱するステップ;
(c)ステップ(b)からのアルミノシリケートゼオライトの少なくとも一部を回収するステップ;ならびに
(d)必要に応じて、ステップ(c)で回収されるアルミノシリケートゼオライトを処理し、構造指向剤(Q)の少なくとも一部を回収するステップ
を含み、
構造指向剤(Q)は、式IIIaの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロベンズイミダゾリウムカチオン、式IIIbの1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ[1,2-a]ピリダジン-4-イウムカチオン、および式IIIcの5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-4-イウムカチオン:
【化2】
からなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含む、方法。
【請求項11】
構造指向剤(Q)がその水酸化物の形態にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
合成混合物が、モル比に関して以下の組成を有する、請求項10または11に記載の方法。
【表4】
【請求項13】
有機化合物と、請求項1~9のいずれか一項に記載のアルミノシリケートゼオライトとを接触させることを含む、有機化合物を変換生成物に変換するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2021年10月6日に出願された米国仮出願第63/252674号の優先権およびその利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、アルミノシリケートゼオライト、その製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
モレキュラーシーブ材料は、天然および合成のいずれであっても、吸着剤として用いることができ、炭化水素変換反応の触媒特性を有する。ゼオライト、AIPOs、およびメソポーラス材料などの特定のモレキュラーシーブは、X線回折(XRD)によって決定されるような明確な結晶構造を有する規則正しい多孔性結晶材料である。特定のモレキュラーシーブは規則正しく配列しており、具体的な同定可能なXRDパターンを生成する。特定のモレキュラーシーブ材料内には多数のキャビティが存在し、当該キャビティは多数のチャネルまたは細孔によって相互接続され得る。これらのキャビティおよび細孔の大きさは、特定のモレキュラーシーブ材料内で均一である。これらの細孔の寸法は、特定の寸法の分子の吸着を受け入れる一方で、より大きな寸法の分子を拒絶するようになっている。そのため、これらの材料は「モレキュラーシーブ」として知られており、例えば、分解、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、および異性化などの様々な工業プロセスに利用される。
【0004】
触媒および吸着に適用されるモレキュラーシーブには、天然に存在する結晶性モレキュラーシーブまたは合成の結晶性モレキュラーシーブのいずれかが含まれる。これらのモレキュラーシーブの例には、大細孔ゼオライト、中間細孔径ゼオライト、および小細孔ゼオライトが含まれる。これらのゼオライトおよびそのアイソタイプは、IUPACゼオライト命名法委員会(IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature)の規則に従い、国際ゼオライト協会の構造委員会(the Structure Commission of the International Zeolite Association)によって分類される。この分類によれば、構造が確立されている骨格タイプのゼオライトおよびその他の結晶性マイクロポーラスモレキュラーシーブには、3文字のコードが割り当てられ、これはBaelocher,L.ら(2007)の「Atlas of Zeolite Framework Types」、eds.Elsevier、第6版に記載され、これは参照によって本明細書に組み込まれる。これらのゼオライトおよびそのアイソタイプは、「Database of Zeolite Structures of the IZA Structure Commission」にも記載されている。大細孔ゼオライトは、一般に、少なくとも約7Åの細孔径を有し、LTL、VFI(「特大」18R)、MAZ、FAU、OFF、*BEA、およびMORの骨格タイプのゼオライトを含む。大細孔ゼオライトの例には、マザイト、オフレタイト、ゼオライトL、VPI-5(「特大」18R)、ゼオライトY、ゼオライトX、オメガ、およびベータが含まれる。中間細孔径ゼオライトは、一般に、約5Åから少なくとも約7Å未満の細孔径を有し、例えば、MFI、MEL、EUO、MTT、MFS、AEL、AFO、HEU、FER、MWW、およびTONの骨格タイプのゼオライトを含む。中間細孔径ゼオライトの例には、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、MCM-22、シリカライト-1、およびシリカライト-2が含まれる。小細孔径ゼオライトは、約3Åから約5.0Å未満の細孔径を有し、例えば、CHA、RTH、ERI、KFI、LEV、およびLTAの骨格タイプのゼオライトを含む。小細孔ゼオライトの例には、ZK-4、SAPO-34、SAPO-35、ZK-14、SAPO-42、ZK-21、ZK-22、ZK-5、ZK-20、ゼオライトA、チャバザイト、およびALPO-17が含まれる。
【0005】
ゼオライトの理想化された無機骨格構造はシリケートの骨格であり、全ての四面体原子は、酸素原子によって次に近い4つの四面体原子と連結されている。本明細書で用いられる「シリケート(またはケイ酸塩、silicate)」という用語は、互いに交互に結合するケイ素原子と酸素原子とを少なくとも含み(すなわち、-O-Si-O-Si-)、任意に、ホウ素、アルミニウム、または他の金属(例えば、チタン、バナジウム、または亜鉛などの遷移金属)などの原子を含む無機骨格構造内の他の原子を含む物質を指す。骨格シリケート中のケイ素および酸素以外の原子は、「全シリカ」骨格シリケート中のケイ素原子によって占有される格子サイトの一部を占める。したがって、本明細書で用いられる「骨格シリケート」という用語は、シリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、フェリシリケート、アルミノシリケート、チタノシリケート、ジンコシリケート、バナドシリケートなどのいずれかを含む原子格子を指す。
【0006】
所与のゼオライト内の骨格シリケートの構造は、その中に存在する細孔またはチャネルのサイズを決定する。細孔またはチャネルのサイズは、所与のゼオライトが適用可能であるプロセスの種類を決定し得る。現在、200超の独自の(または固有の、もしくは特異な、unique)ゼオライト骨格シリケート構造が知られており、国際ゼオライト協会の構造委員会によって認められている。それにより、様々な細孔の形状および配向が定義されている。
【0007】
ゼオライトの骨格シリケートは、一般に、その環サイズで特徴づけられる。環サイズとは、ゼオライトの内部に細孔またはチャネルを画定するため、ループ内の酸素原子と四面体配位するケイ素原子(または上記に列挙したような代替原子)の数を指す。例えば、「8環」のゼオライトとは、8個の交互に配置された四面体原子とループ内の8個の酸素原子によって画定される細孔またはチャネルを有するゼオライトを指す。所与のゼオライト内に画定される細孔またはチャネルは、特定の骨格シリケート内に存在する様々な構造的制約に応じて、対照的または非対称的であり得る。
【0008】
モレキュラーシーブ材料の合成には、通常、シリカ源のみではなく、アルミナなどのゼオライトに存在する全ての元素の供給源を含む合成混合物からの水熱結晶化を伴う。多くの場合、構造指向剤(SDA)も存在する。構造指向剤は、モレキュラーシーブの形成を促進すると考えられている化合物であり、周囲に特定のモレキュラーシーブ構造を形成できるテンプレートとして作用し、それによって所望のモレキュラーシーブの形成を促進すると考えられる化合物である。様々な種類の第四級アンモニウムカチオンを含む様々な化合物が構造指向剤として用いられてきた。通常、ゼオライト結晶は、構造指向剤の周囲に形成され、結晶化が完了すると、構造指向剤がゼオライトの細孔を占有する。したがって、「合成されたままの」ゼオライトは、その細孔内に構造指向剤を含むことになる。そのため、結晶化後、「合成されたままの」ゼオライトは、通常、構造指向剤を除去するため、焼成ステップなどの処理ステップに供される。
【0009】
多くの異なるゼオライトが発見されているものの、ガス分離および乾燥、有機変換反応、および他の用途のために、所望の特性を有する新たなゼオライトが引き続き必要とされている。新たなゼオライトは、新規の内部細孔構造を含むことができ、これらのプロセスにおいて選択性を向上させることができる。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、アルミノシリケートゼオライト、その製造方法、およびその使用に関する。
【0011】
第1実施形態において、本開示は、その焼成されたままの形態(例えば、SDAの少なくとも一部が除去された形態)において、表1から選択される度2シータ(degree 2-theta)のピークの少なくとも5個、または6個、または好ましくは全てを含むX線回折パターンを有するアルミノシリケートゼオライトに関する:
【0012】
【表1】
【0013】
第2実施形態において、本開示は、合成されたままの形態(例えば、SDAが除去されていない形態)において、表2から選択される度2シータのピークの少なくとも10個、または12個、または13個、または好ましくは全てを含むX線回折パターンを有するアルミノシリケートゼオライトに関する:
【0014】
【表2】
【0015】
第3の実施形態において、本開示は(合成されたままの形態、処理されたままの形態(例えば、酸もしくは酸と蒸気とで処理されたままの形態)および/または焼成されたままの形態のいずれであっても)、(a)a=12.4±0.30Å、b=18.8±0.30Å、c=9.2±0.30Å、およびβ=96.309°の単位セル寸法を有するC中心単斜晶空間群C2/m、および(b)8.0±0.50Å×9.4±0.50Å×7.7±0.50Åの大きなキャビティサイズを有する10×8×8のチャネルシステムを有する構造を有するアルミノシリケートゼオライトであって、c軸に沿った10環の細孔が6.1±0.20Å×3.8±0.20Åの寸法を有し、b軸に沿った8環の細孔が3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有し、およびx-y平面内の別の8環の細孔が3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有する、アルミノシリケートゼオライトに関する。
【0016】
第4実施形態において、本開示は(合成されたままの形態、処理されたまま形態(例えば、酸もしくは酸と蒸気とで処理されたままの形態)および/または焼成されたままの形態のいずれであっても)、単位セル内における四面体(T)原子の表3の連結度(connectivities)によって定義される骨格を有するアルミノシリケートゼオライトに関し、四面体(T)原子は、架橋原子によって連結される。
【0017】
【表3】
【0018】
第5実施形態において、本開示は、アルミノシリケートゼオライトの製造方法に関する。方法には、以下のステップが含まれる:(a)水、シリカ源、アルミナ源、構造指向剤(Q)、フッ化物源(F)、水酸化物イオン源(OH)、および、任意にアルカリ金属カチオン源またはアルカリ土類金属カチオン源(M)を含む合成混合物を調製するステップであって、構造指向剤(Q)が、式IIIaの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロベンズイミダゾリウムカチオン、式IIIbの1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ[1,2-a]ピリダジン-4-イウムカチオン、および式IIIcの5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-4-イウムカチオン:
【化1】
からなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含む、調製するステップ;
(b)前記アルミノシリケートゼオライトの結晶を形成するのに十分な時間、100℃~200℃の温度を含む結晶化条件下で前記合成混合物を加熱するステップ;(c)ステップ(b)からのアルミノシリケートゼオライトの少なくとも一部を回収するステップ;ならびに、(d)任意に、ステップ(c)で回収したアルミノシリケートゼオライトを処理し、構造指向剤(Q)の少なくとも一部を除去するステップ。
【0019】
第6実施形態において、本開示は、有機化合物を変換生成物に変換するプロセスに関する。プロセスは、有機化合物を、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、もしくは第4実施形態によるアルミノシリケートゼオライト、または第5実施形態のプロセスに従って調製されるアルミノシリケートゼオライトと接触させることを含む。
【0020】
本開示のこれらおよび他の特徴および属性、ならびにそれらの有利な用途および/または使用は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。もちろん、本発明の一態様に関連して記載される特徴は、本発明の他の態様に組み込まれ得ることが理解されるであろう。特に、本概要部分を含む本明細書に記載された2つ以上のいずれかの特徴を組み合わせて、本明細書に具体的に記載されていない特徴の組合せを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例2の合成されたままの生成物の粉末XRDパターンを示す。
図2図2は、実施例2の合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
図3図3は、実施例3の焼成されたままの生成物の粉末XRDパターンを示す。
図4図4は、実施例3の合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
図5a図5aは、FOCUS法で解いたEMM-68材料の構造を示し、大きな球はO原子、小さな球はSi原子を表す。
図5b図5bは、明確にするためにO原子を省略した他は図5aと同様である。
図6図6は、二重の5環(D5R,double 5-rings)の配置を示す。
図7図7aおよび図7bは、[010]方向に沿った8員環(8MR,8-membered ring)および[001]方向に沿った10員環(10MR)を示す。
図8図8は、大きな14員環(14MR)のキャビティを示す。
図9図9は、実施例4の合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
図10図10は、実施例5の合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
図11図11は、実施例6の合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
図12図12は、実施例7の合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
図13図13は、実施例10の合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、アルミノシリケートゼオライト、その製造方法、およびその使用に関する。前記アルミノシリケートゼオライトは、EMM-68ゼオライトまたはEMM-68材料として指定され得る。
【0023】
本開示の「合成されたままの」(または「製造されたままの」)アルミノシリケートゼオライト(すなわち、細孔からSDAを除去するための熱処理または他の処理の前のもの)は、典型的には、その細孔内に、合成混合物の成分の1つであるSDAを含む。構造指向剤(SDA)の一部または全てが除去された(例えば、細孔からSDAを除去するための熱処理または他の処理を介して)本開示のアルミノシリケートゼオライトは、少なくとも部分的に焼成された、または「焼成されたまま」の材料である。
【0024】
第1実施形態において、本開示は、焼成されたままの形態(例えば、SDAの少なくとも一部が除去された形態)において、表1から選択される少なくとも5個、または6個、または好ましくは全ての度2シータのピークを含むX線回折パターンを有するアルミノシリケートゼオライトに関する:
【0025】
【表4】
【0026】
さらなる実施形態において、前記アルミノシリケートゼオライトは、その焼成されたままの形態において、表1Aから選択される度2シータおよびd間隔の値のピークのうち、少なくとも5個、または6個、または好ましくは全てを含むX線回折パターンを有してよい。d間隔の値は、ブラッグの法則を用いてd間隔の対応する値に変換した際に、対応する偏差±0.20の度2シータに基づいて決定される偏差を有する:
【0027】
【表5】
【0028】
本明細書に記載されるXRDピークを有するXRDパターンは、Cu(Κα)放射線を用いている。
【0029】
1つ以上のさらなる実施形態において、前記アルミノシリケートゼオライトは、その焼成されたままの形態において、0.10~0.40cc/g、または0.20~0.30cc/g、例えば0.29cc/gの微細孔体積を有し得る。
【0030】
1つ以上のさらなる実施形態において、前記アルミノシリケートゼオライトは、その焼成されたままの形態において、500~900m/g、または600~900m/g、例えば700~850m/g、例えば774m/gのBET表面積を有し得る。
【0031】
1つ以上のさらなる実施形態において、前記アルミノシリケートゼオライトは、その焼成されたままの形態において、任意に、式Iの分子式で表され得る:
(m)Al:SiO (式I)
式中、0.0125≦m≦0.1である。式Iにおける酸素原子は、製造されたままのアルミノシリケートゼオライトを調製するために用いられる成分の供給源に由来し得る炭素原子(例えば、CHの形態)で置換されてもよい。また、式Iにおける酸素原子は、例えば、SDAが除去された後に窒素原子で置換され得る。式Iは、本開示で定義されるような典型的なアルミノシリケートゼオライトの骨格を、その焼成されたままの形態で表すことができる。式Iは、前記アルミノシリケートゼオライトの唯一の表現を意味するものではない。前記アルミノシリケートゼオライトは、その焼成されたままの形態で、SDAおよび不純物を除去するための適切な処理の後にSDAならびに/または不純物を含み得るものの、これらは式Iにおいて考慮されていない。さらに、式Iは、前記焼成されたままのアルミノシリケートゼオライト中に存在し得るプロトンおよび電化補償イオンを含んでいない。
【0032】
変数mは、式IにおけるAlとSiOのモル比関係を表す。例えば、mが0.05である場合、SiOのAlに対するモル比は20であり、SiのAlに対するモル比は10である。mは、0.0125~0.1、例えば、少なくとも0.016、または少なくとも0.02から多くとも0.083、例えば、少なくとも0.025から多くとも0.071で変動し得る。Alに対するSiのモル比は、5~40、例えば、少なくとも6、または少なくとも7、および最大30、または最大25、または最大20、例えば6~30もしくは25、または7~20であってよい。
【0033】
第2実施形態において、本開示は、アルミノシリケートゼオライト、特に、第1実施形態で定義されるアルミノシリケートゼオライトであって、その合成されたままの形態(例えば、SDAが除去されていない形態)で、表2から選択される度2シータのピークのうち少なくとも10個、または12個、または13個、または好ましくは全てを含むX線回折パターンを有するアルミノシリケートゼオライトに関する:
【0034】
【表6】
【0035】
さらなる実施形態では、前記アルミノシリケートゼオライトは、合成されたままの形態で、表2Aから選択される度2シータおよびd間隔の値を有するピークの少なくとも10個、または12個、または13個、または好ましくは全てを含むX線回折パターンを有し得る。d間隔の値は、ブラッグの法則を用いて対応するd間隔の値に変換した場合、対応する偏差±0.20の度2シータに基づいて決定される偏差を有する。
【0036】
【表7】
【0037】
本明細書に記載されるXRDピークを有するXRDパターンは、Cu(Κα)放射線を用いている。
【0038】
1つ以上のさらなる実施形態において、前記アルミノシリケートゼオライトは、その合成されたままの形態において、任意に、式IIの分子式で表され得る:
(n)Q:(m)Al:SiO (式II)
式中、0≦n≦0.7、0.0125≦m≦0.1であり、Qは、式IIIaの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-3-イウムカチオン、式IIIbの1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ[1,2-a]ピリダジン-4-イウムカチオン、および式IIIcの5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-4-イウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含む:
【化2】
【0039】
式IIは、本開示において定義されるような典型的なアルミノシリケートゼオライトの骨格を、合成されたままの形態で、すなわち構造指示剤(Q)を含む形態で表し得る。式IIは、そのような材料の唯一の表現であることを意味するものではない。前記アルミノシリケートゼオライトは、合成されたままの形態で、式IIでは説明されない不純物を含んでよい。さらに、式IIは、前記合成されたままのアルミノシリケートゼオライト中に存在し得るプロトンおよび電荷補償イオンを含んでいない。
【0040】
変数mは、式IIにおけるAl対SiOのモル比関係を表す。式IIにおける変数mの値は、式Iについて本明細書に記載したものと同様である。
【0041】
変数nは、式IIにおけるSiOに対するQのモル関係を表す。例えば、nが0.1である場合、SiOに対するQのモル比は0.1である。SiOに対するQのモル比は、0~0.7、例えば、0.1、または0.2、または0.3から0.7で変動し得る。
【0042】
第3実施形態において、本開示は、(合成されたままの形態、処理されたままの形態(例えば、酸もしくは酸と蒸気とを用いた処理)および/または焼成されたままの形態のいずれであっても)、(a)a=12.4±0.30Å、b=18.8±0.30Å、c=9.2±0.30Å、およびβ=96.2°の単位セル寸法を有するC中心単斜晶空間群C2/m、ならびに(b)8.0±0.50Å×9.4±0.50Å×7.7±0.50Åの大きなキャビティサイズを有する10×8×8のチャネル系を有する構造を有するアルミノシリケートゼオライトに関する。c軸に沿った10環の細孔は6.1±0.20Å×3.8±0.20Åの寸法を有し、b軸に沿った8環の細孔は3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有し、x-y平面内の別の8環の細孔は3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有する。
【0043】
第4実施形態において、本開示は、アルミノシリケートゼオライトであって、特に、第1実施形態、第2実施形態および/または第3実施形態で定義されるようなアルミノシリケートゼオライトに関する。アルミノシリケートゼオライトは(合成されたままの形態、処理されたままの形態(例えば、酸または酸と蒸気とで処理された形態)および/または焼成されたままの形態のいずれであっても)、単位セル内の四面体(T)原子の表3における連結度によって定義される骨格を有する。四面体(T)原子は、架橋原子によって連結される。
【0044】
【表8】
【0045】
連結度は、例えば、“Database of Zeolite Structures of the IZA Structure Commission”で入手可能な、M.M.J.Treacyらによるパブリックドメイン・ソフトウェアTOTOPOLを用いて決定できる(例えば、M.M.J.Treacyら(2004)、Microporous and Mesoporous Materials、74巻、121-132を参照)。四面体原子は、B、Al、Fe、Ga、Si、Ge、Sn、Ti、およびZrから選択される1つ以上の元素、またはそれらの混合物を含んでよい。例えば、四面体原子は、B、Al、もしくはSi、またはそれらの混合物から選択され得る。例えば、四面体原子は、SiもしくはAlを含むか、またはSiもしくはAlであってよい。架橋原子は、O、N、およびC、またはそれらの混合物から選択され得る。架橋原子は、酸素原子を含むか、または酸素原子であってよい(例えば、架橋原子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が酸素であってよい)。架橋原子Cは、ゼオライトを製造するために用いられる様々な成分、例えばシリカ源から組み込まれ得る。架橋原子Nは、SDAを除去した後にゼオライトに組み込まれ得る。
【0046】
第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態および/または第4実施形態で定義されるアルミノシリケートゼオライトは、5~40、例えば6~30、例えば7~20のSi/Alモル比を有してよい。
【0047】
第5実施形態において、本開示は、アルミノシリケートゼオライト、特に第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態および/または第4実施形態で定義されるアルミノシリケートゼオライトを製造する方法に関する。方法は、以下のステップ:
(a)水、シリカ源、アルミナ源、構造指示剤(Q)、フッ化物イオン源(F)、水酸化物イオン源(OH)、および、任意にアルカリ金属またはアルカリ土類金属のカチオン源(M)を含む合成混合物を調製するステップ;
(b)前記アルミノシリケートゼオライトの結晶を形成するのに十分な時間、100℃~200℃の温度を含む結晶化条件下で、前記合成混合物を加熱するステップ;
(c)ステップ(b)からのアルミノシリケートゼオライトの少なくとも一部を回収するステップ;ならびに
(d)任意に、ステップ(c)で回収されたアルミノシリケートゼオライトを処理して、構造指示剤(Q)の少なくとも一部を除去するステップ
を含み、
構造指示剤(Q)は、式IIIaの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロベンズイミダゾリウムカチオン、式IIIbの1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ[1,2-a]ピリダジン-4-イウムカチオン、および式IIIcの5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-4-イウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含む。
【化3】
【0048】
構造指示剤(Q)は、いずれの適切な形態で存在してよく、例えば、ヨウ化物もしくは臭化物のようなハロゲン化物として、または水酸化物、例えばその水酸化物の形態で存在してよい。構造指示剤(Q)は、0.05~1.0、例えば少なくとも0.1、または少なくとも0.15、または少なくとも0.2、最大0.8、または最大0.7、または最大0.6、例えば0.15~0.6、例えば0.5のQ/Siモル比で合成混合物中に存在してよい。
【0049】
合成混合物は、少なくとも1つのシリカ源を含む。好適なシリカ源(例えば、酸化ケイ素源)としては、シリケート、例えば、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)およびテトラエチルオルトシリケート(TEOS)のようなテトラアルキルオルトシリケート、Aerosil(登録商標)(Evonikから入手可能)、Cabosperse(登録商標)(Cabotから入手可能)およびCabosil(登録商標)(DMSから入手可能)のようなフュームドシリカ、Ultrasil(登録商標)およびSipernat(登録商標)340(Evonikから入手可能)などの沈殿シリカ、ケイ酸カリウムやケイ酸ナトリウムなどのアルカリ金属シリケート、シリカの水性コロイド懸濁液、例えば、E.I. du Pont de NemoursによってLudox(登録商標)の商品名で販売されているもの、またはEvonikによってAerodisp(登録商標)の商品名で販売されているものが含まれる;好ましくは、シリケート、フュームドシリカ、沈殿シリカ、アルカリ金属シリケート、コロイド状シリカが含まれ、特に、シリケート、例えば、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)およびテトラエチルオルトシリケート(TEOS)などのテトラアルキルオルトシリケートが含まれる。
【0050】
合成混合物は、少なくとも1つのアルミナ源を含む。アルミナの好適な供給源(例えば、酸化アルミニウム供給源)としては、アルミニウム塩、特に、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムなどのアルカリ金属アルミン酸塩などの水溶性塩、ならびにアルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシド、ならびにベーマイト、ギブサイトおよび擬ベーマイトなどの水和アルミニウム酸化物、ならびにそれらの混合物が含まれる。他のアルミニウム源としては、限定されないものの、他の水溶性アルミニウム塩、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシド、またはチップの形態のアルミニウムなどのアルミニウム金属が含まれる。特に好適なアルミナ源は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシド、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カリウムなどのアルカリ金属アルミン酸塩などの水溶性塩である。
【0051】
代替的に、または前述したSiおよびAlの供給源に加えて、Si元素およびAl元素の両方を含む供給源を使用することもできる。Si元素およびAl元素の両方を含む好適な供給源の例としては、非晶質シリカアルミナゲルまたは乾燥シリカアルミナ粉末、シリカアルミナ、カオリン、メタカオリンなどの粘土(clays)、ならびにゼオライト、特に、合成フォージャサイトおよび超安定性フォージャサイト、例えばUltrastable Y(USY)、βまたは他の大~中細孔ゼオライトなどのアルミノシリケートが含まれる。
【0052】
合成混合物は、1~50未満、例えば5~40または7~25、例えば5~20のSi/Alモル比を有してよい。
【0053】
また、合成混合物は、少なくとも1つのフッ化物イオン源(F)を含む。フッ化物イオン源(F)は、モレキュラーシーブ合成混合物中でフッ化物イオンを放出できるいずれの化合物であってもよい。フッ化物イオン源(F)の非限定的な例としては、フッ化水素(HF);金属フッ化物であって、好ましくは金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムまたはバリウムである金属フッ化物などの1つまたはいくつかのフッ化物イオンを含む塩;フッ化アンモニウム(NHF);および二フッ化アンモニウム(NHHF)が含まれる。フッ化物イオンの特に有用な供給源は、HF、NHFおよびNHHFであり、特にHFである。フッ化物イオン(F)は、0.05~1.0、例えば0.2~0.8、または0.3~0.7、例えば0.5のF/Siモル比で存在してよい。
【0054】
合成混合物は、任意に、塩化物、臭化物またはヨウ化物からなる群から選択され得る、フッ化物イオンとは異なる少なくとも1つのハロゲン化物イオン源(W)をさらに含んでよい。ハロゲン化物イオン源(W)は、モレキュラーシーブ合成混合物中でハロゲン化物イオンを放出可能ないずれの化合物であってもよい。例えば、ハロゲン化物イオンは、構造指示剤(Q)の対イオンとして存在し得る。ハロゲン化物イオンの供給源の非限定的な例としては、塩化水素、塩化アンモニウム、臭化水素、臭化アンモニウム、ヨウ化水素、およびヨウ化アンモニウム;金属ハロゲン化物であって、好ましくは金属がナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、もしくはバリウムである金属ハロゲン化物など、1つもしくはいくつかのハロゲン化物イオンを含む塩;ハロゲン化アンモニウム;またはテトラメチルアンモニウムハライドもしくはテトラエチルアンモニウムハライドなどのテトラアルキルアンモニウムハライドが含まれる。ハロゲン化物イオン(W)は、0~0.2、例えば0~0.1、例えば0.1未満または0のW/Siモル比で存在してよい。
【0055】
合成混合物は、少なくとも1つの水酸化物イオン(OH)源を含む。例えば、水酸化物イオンは、構造指示剤(Q)の対イオンとして、またはAl源としての水酸化アルミニウムの使用によって存在し得る。また、水酸化物イオンの適切な供給源は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群;例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物;より多くの場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物;最も多くの場合、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムからなる群からも選択され得る。合成混合物は、0.1~1.5、例えば0.15~1.02、または0.3~0.78、例えば0.5のOH/Siモル比で水酸化物イオン源を含んでよい。
【0056】
合成混合物は、任意に、アルカリまたはアルカリ土類金属のカチオン(M)の1つ以上の供給源を含んでよい。存在する場合、Mは、好ましくはナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、カルシウム、マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはナトリウムおよび/またはカリウム、より好ましくはナトリウムであってよい。ナトリウム源は、存在する場合、水酸化ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、またはNaCl、NaBr、または硝酸ナトリウムなどのナトリウム塩であってよい。カリウム源は、存在する場合、水酸化カリウム、アルミン酸カリウム、ケイ酸カリウム、KClもしくはKBrなどのカリウム塩、または硝酸カリウムであってよい。リチウム源は、存在する場合、水酸化リチウム、またはLiCl、LiBr、LiI、硝酸リチウム、もしくは硫酸リチウムなどのリチウム塩であってよい。ルビジウム源は、存在する場合、水酸化ルビジウム、またはRbCl、RbBr、RbI、もしくは硝酸ルビジウムなどのルビジウム塩であってよい。カルシウム源は、存在する場合、例えば水酸化カルシウムであってよい。マグネシウム源は、存在する場合、例えば、水酸化マグネシウムであってよい。また、アルカリまたはアルカリ土類金属のカチオンMは、アルミン酸ナトリウムもしくはアルミン酸カリウムなどのアルミナの1つ以上の供給源、ならびに/またはケイ酸ナトリウムおよび/もしくはケイ酸カリウムなどのシリカの1つ以上の供給源中に存在してもよい。合成混合物は、0~0.5、例えば0~0.1、または0~0.05、例えば0または0.05のM/Siモル比でアルカリまたはアルカリ土類金属のカチオン源(M)を含んでよい。代替的には、合成混合物は、アルカリまたはアルカリ土類金属のカチオン(M)を含まないものであってよい。
【0057】
合成は、核形成シード(または核形成種、nucleating seeds)を添加して、または添加せずに実施してよい。核形成シードが合成混合物に添加される場合、シードは、本開示のアルミノシリケートゼオライトと同一、もしくは異なる構造のもの、または前の合成からのEMM-68材料であってよい。好適には、シードは、合成混合物を基準にして、約0.01重量ppm~約10,000重量ppmの量、例えば、合成混合物の重量に対して約100重量ppm~約5,000重量ppmの量で存在してよい。
【0058】
典型的には、合成混合物は、1~100、例えば1~75、または2~50、例えば、1、2、3、もしくは4から、最大で50、もしくは25、もしくは10、例えば4のHO/Siのモル比の水を含む。ベース混合物中の成分の性質に応じて、ベース混合物の溶媒(例えば、水酸化物溶液からの水、および任意にシリカ源の加水分解からのメタノールおよびエタノール)の量は、合成混合物に対して所望の溶媒対Siのモル比が達成されるように、ベース混合物から除去されてよい。溶媒含有量を減ずるための適切な方法には、周囲空気、乾燥窒素、乾燥空気などの静的もしくは流動的雰囲気下での蒸発、または噴霧乾燥もしくは凍結乾燥による蒸発が含まれてよい。溶媒除去プロセスで水が過度に除去された場合には、得られた混合物に水を添加して、所望のHO/Siのモル比を達成してよい。いくつかの例において、調製物が十分なHO/Siモル比を有する場合、水の除去は必要ない。
【0059】
CHの形態の炭素は、本開示のアルミノシリケートゼオライトを調製するために用いられる成分の様々な供給源、例えば、シリカ源またはアルミナ源に存在し、架橋原子としてアルミノシリケートゼオライトの骨格に組み込まれてよい。窒素原子は、SDAが除去された後に、架橋原子としてアルミノシリケートゼオライトの骨格に組み込まれてよい。
【0060】
1つ以上の態様において、溶媒調整後の(例えば、水対シリカの所望の比が達成される)合成混合物は、例えば、1000rpm~3000rpm(例えば、2000rpm)の混合速度を有する二重非対称遠心混合(例えば、FlackTek speedmixer)を用いて、撹拌または高剪断ブレンドなどの機械的プロセスによって混合して、ベース混合物の好適な均質化を保証してよい。
【0061】
次いで、合成混合物を、アルミノシリケートゼオライトの形成に適した結晶化条件に供する。アルミノシリケートゼオライトの結晶化は、例えば適切な温度に維持された対流オーブン内に配置された、Teflon(登録商標)ライニング(もしくは裏張り、lined)またはステンレス鋼のオートクレーブなどの適切な反応容器において、静的または撹拌条件下で実施してよい。
【0062】
本方法のステップ(b)における結晶化は、典型的には、100℃~200℃、例えば120℃~170℃の温度で、使用される温度で結晶化が起こるのに十分な時間実施される。例えば、より高い温度では、結晶化時間が短縮され得る。例えば、本方法のステップ(b)における結晶化条件は、1日~100日、例えば1日~50日、例えば1日~30日、例えば少なくとも1日または少なくとも5日から、20日または15日までの期間の加熱を含んでよい。結晶化時間は、様々な時間で合成混合物をサンプリングし、析出した固体の収率およびX線結晶化度を決定することなど、当技術分野で公知の方法によって確立できる。本明細書で特に示されない限り、測定される温度は、加熱される材料の周囲環境の温度、例えば材料が加熱される雰囲気の温度である。
【0063】
典型的には、アルミノシリケートゼオライトは溶液中で形成され、遠心分離または濾過などの標準的な手段によって回収され得る。また、分離されたアルミノシリケートゼオライトは、洗浄され、遠心分離または濾過によって回収され、乾燥もされ得る。
【0064】
本開示のアルミノシリケートゼオライトは、吸着剤としてまたは有機化合物変換プロセスにおける触媒として採用される場合、少なくとも部分的に脱水(例えば、乾燥)されてよい。これは、空気、窒素などの雰囲気中、大気圧、亜大気圧、または超大気圧で、80℃~500℃の範囲の温度、例えば90℃~370℃の範囲の温度に、30分~48時間加熱することによって行うことができる。また、単にモレキュラーシーブを真空中に配置することによって室温で脱水を行ってもよいものの、十分な脱水量を得るためにはより長い時間を必要とする。
【0065】
結晶化プロセスの結果として、回収された生成物は、その細孔内に、合成に用いられた構造指示剤の少なくとも一部を含む。従って、ステップ(c)から回収された合成されたままのアルミノシリケートゼオライトは、合成中にその細孔内に取り込まれたSDAの一部または全てを除去するために、熱処理または他の処理に供され得る。合成されたままのアルミノシリケートゼオライトの熱処理(例えば、焼成)は、典型的には、炉内で、空気、窒素、オゾンまたはそれらの混合物から選択される雰囲気中で、SDAの一部または全てを除去するのに十分な高温に材料をさらす。熱処理には亜大気圧を採用することができるものの、便宜上大気圧が望ましい。熱処理は、最大925℃の温度、例えば300℃~700℃または400℃~600℃で行うことができる。測定される温度は、試料の周囲環境の温度である。熱処理(例えば、焼成)は、空気から水分を除去する乾燥剤を含む乾燥管にさらされた乾燥空気中で、箱型炉にて実施できる。通常、加熱は、少なくとも1分間、一般的には1日または最大数日間焼成する。加熱は、まず窒素雰囲気下で行い、次いで雰囲気を空気および/またはオゾンに切り替えてよい。
【0066】
また、アルミノシリケートゼオライトは、例えば、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および酢酸アンモニウムなどの水性アンモニウム塩を用いたイオン交換処理に供することもできる。これは、残存するアルカリ金属カチオンおよび/またはアルカリ土類金属カチオンを除去し、それらをプロトンと置換することにより、モレキュラーシーブの酸形態を生成するためである。アルカリ金属カチオンなどの合成されたままの材料の元のカチオンは、他のカチオンとのイオン交換によって置換され得る。好ましい置換カチオンとしては、水素イオン、水素前駆体、例えばアンモニウムイオンおよびそれらの混合物が含まれ得る。イオン交換ステップは、製造されたままのモレキュラーシーブが乾燥された後に行われてよい。イオン交換ステップは、焼成ステップの前または後に行われてよい。
【0067】
また、アルミノシリケートゼオライトは、蒸気処理および/または溶媒を用いる洗浄などの他の処理に供してもよい。このような処理は当業者に公知であり、モレキュラーシーブの特性を所望のように変更するために実施される。
【0068】
SDAの一部または全てが除去された本開示のアルミノシリケートゼオライトは、吸着剤として、または多種多様な炭化水素変換、例えば、有機化合物の変換生成物への変換における触媒もしくは触媒用担体として用いてよい。したがって、第6実施形態において、本開示は、炭化水素変換における吸着剤として、または触媒もしくは触媒用担体としての、本明細書に記載されるアルミノシリケートゼオライトの使用に関する。また、本開示は、本明細書に記載のアルミノシリケートゼオライトと有機化合物とを接触させることを含む、有機化合物を変換生成物に変換するプロセスにも関する。
【0069】
本開示の(SDAの一部または全部が除去されている)アルミノシリケートゼオライトは、吸着剤として、例えば、材料に対して示差吸着特性(または微分吸着特性、differential sorption characteristics)を有する気相または液相中の成分の混合物から少なくとも1つの成分を分離するために用いられてよい。従って、混合物を前記アルミノシリケートゼオライトと接触させて少なくとも一成分を選択的に吸着させることにより、アルミノシリケートゼオライトに対して示差収着特性を有する成分の混合物から当該少なくとも一成分を部分的または実質的に完全に分離できる。例えば、供給原料の1つ以上の所望の成分を供給原料の残りの成分から選択的に分離するためのプロセスにおいて、供給原料は、有効な収着条件で、本開示のアルミノシリケートゼオライトを含む収着剤と接触させてよい。これにより、収着生成物および流出生成物が形成され得る。所望の成分の1つ以上は、収着生成物または流出生成物のいずれかから回収される。
【0070】
また、本開示の(SDAの一部または全部が除去されている)アルミノシリケートゼオライトは、多種多様な有機化合物変換プロセスを触媒するための触媒としても用いられてよい。本明細書に記載のアルミノシリケートゼオライトによって、単独でまたは他の結晶性触媒を含む1つ以上の他の触媒活性物質と組み合わせて効果的に触媒される化学変換プロセスの例には、酸活性を有する触媒を必要とするものが含まれる。本明細書に記載のアルミノシリケートゼオライトによって触媒され得る有機変換プロセスの例としては、分解、水素化分解、異性化、重合、改質、水素化、脱水素化、脱ロウ、水素化脱ロウ、吸着、アルキル化、トランスアルキル化、脱アルキル化、水素化脱シリル化、不均化、オリゴマー化、脱水環化、メタノールのオレフィンへの変換、脱NOx用途、およびこれらの組み合わせが含まれる。炭化水素供給物の変換は、例えば、流動床、移動床、固定床の反応器など、所望のプロセスの種類に応じて、いずれの便利な様式でも実施できる。
【0071】
本開示のアルミノシリケートゼオライトは、最終製品にさらなる硬度を提供するバインダーおよび/またはマトリックス材料などの他の材料と組み合わせて、製品組成物に配合されてよい。これらの他の材料は、不活性材料または触媒活性材料であり得る。
【0072】
例えば、本開示のアルミノシリケートゼオライトを、使用中に採用される温度および他の条件に耐性を有する別の材料と組み入れることが望ましい場合がある。そのような材料としては、合成または天然に存在するゼオライト、ならびに粘土、シリカおよび/またはアルミナなどの金属酸化物などの無機材料、ならびにそれらの混合物が含まれる。金属酸化物は、天然に存在するもの、またはシリカおよび金属酸化物の混合物を含むゲル状の沈殿物もしくはゲルの形態であってもよい。本開示のアルミノシリケートゼオライトと併せて、すなわち、それと組み合わせての耐性材料の使用、または結晶が活性である製造されたままのアルミノシリケートゼオライトの合成中に存在する耐性材料の使用は、特定の有機変換プロセスにおける触媒の変換および/または選択性を変化させる傾向がある。不活性耐性材料は、反応速度を制御するための他の手段を採用することなく、経済的かつ整然とした(または秩序のある、orderly)方法で生成物を得られるように、所定のプロセスにおける変換量を制御するための希釈剤として好適に機能する。これらの材料は、天然に存在する粘土、例えばベントナイトおよびカオリンに組み込んで、商業的な操作条件下で製品の破砕強度を改善し得る。前記不活性耐性材料、すなわち粘土、酸化物などは、触媒のバインダーとして機能する。商業的な使用においては、触媒が粉状の材料に分解するのを防止することが望ましいため、良好な粉砕強度を有する触媒は有益であり得る。
【0073】
用いられ得る天然に存在する粘土としては、モンモリロナイトおよびカオリン族が含まれる。族には、亜ベントナイト、ならびに、主鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、またはアノーサイトである、一般にDixie、McNamee、Georgia、およびFloridaクレーなどとして知られるカオリンが含まれる。このような粘土は、採掘されたままの生の状態、または焼成、酸処理、もしくは化学修飾を施した後でも用いられ得る。また、本開示のアルミノシリケートゼオライトと複合化するのに有用なバインダーには、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、イットリア、酸化ガリウム、酸化亜鉛およびそれらの混合物から選択される無機酸化物も含まれる。
【0074】
前述の材料に加えて、本開示のアルミノシリケートゼオライトは、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、ならびにシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシアおよびシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの三元組成物などの多孔性マトリックス材料と複合化されてよい。
【0075】
これらのバインダー材料は、種々の炭化水素分離プロセスで生じる温度および他の条件、例えば機械的消耗に対して耐性がある。従って、本開示のアルミノシリケートゼオライトは、バインダーを有する押出物の形態で使用されてよい。典型的には、これらは、錠剤、球体、または押出物を形成することによって結合される。通常、押出成形物は、任意にバインダーの存在下でモレキュラーシーブを押出成形し、得られた押出成形物を乾燥および焼成することによって形成される。必要に応じて、蒸気処理および/またはイオン交換などのさらなる処理を実施してもよい。必要に応じて、少なくとも100m/g、例えば少なくとも200m/g、必要に応じて、少なくとも300m/gの表面積を有するバインダーとモレキュラーシーブとを結合させてよい。
【0076】
アルミノシリケートゼオライトと無機酸化物マトリックスとの相対的な割合は、大きく変動してもよく、アルミノシリケートゼオライトの含有量は約1~約100重量%の範囲であり、より通常には、特に複合体が押出成形物の形態で調製される場合には、複合体の約2~約95重量%の範囲であり、任意には約20~約90重量%の範囲である。
【0077】
また、水素化-脱水素化機能が実行される場合、本開示のアルミノシリケートゼオライトは、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、または白金もしくはパラジウムなどの貴金属などの水素化成分と密に組み合わせて使用できる。このような水素化成分は、以下の1つ以上のプロセスによって組成物中に組み込んでよい:共結晶化;IIIA族元素、例えばアルミニウムが構造中に存在する範囲で組成物中に交換すること;またはそれと密接に物理的に混和すること。また、このような成分は、例えば、モレキュラーシーブを水素化金属含有イオンで処理することによって、アルミノシリケートゼオライト中またはアルミノシリケートゼオライト上に含浸させることもできる。例えば、白金の場合、この目的に適した白金化合物には、クロロ白金酸、塩化白金酸、および白金アミン錯体を含む種々の化合物が含まれる。また、金属の組合せおよびその導入方法も用いられ得る。
【0078】
本開示のアルミノシリケートゼオライトは、非晶質材料、異なるトポロジーを有する単位セル(例えば、石英または異なる骨格タイプのモレキュラーシーブであって、得られる触媒の性能に影響を及ぼす、または及ぼさないもの)、および/または他の不純物(例えば、重金属および/または有機炭化水素)などの不純物を含有し得ることが、当業者には理解されよう。本開示のアルミノシリケートゼオライトと共存する異なる骨格タイプのモレキュラーシーブまたはゼオライトの代表的な例は、例えば、HEU骨格タイプのモレキュラーシーブおよび/またはPREFER(FERゼオライトのレイヤ相(または層フェーズ、layer phase)、ならびに潜在的に未知の骨格タイプのレイヤ相ゼオライトである。本開示のアルミノシリケートゼオライトは、好ましくは、実質的に不純物を含まない。本明細書で使用される「実質的に不純物を含まない」(または代替的な「実質的に純粋な」)という用語は、アルミノシリケートゼオライトが、わずかな割合(50wt%未満)で、好ましくは20wt%未満で、より好ましくは10wt%未満で、さらに好ましくは5wt%未満で、最も好ましくは1wt%未満(例えば、0.5wt%未満または0.1wt%未満)でこれらの不純物を含むことを意味する。重量パーセント(wt%)の値は、不純物および純粋なアルミノシリケートゼオライトの合計重量に基づく。不純物の量は、粉末XRD、回転電子回折、および/またはSEM/TEM(例えば、異なる結晶形態)によって適切に決定され得る。
【0079】
本明細書に記載のアルミノシリケートゼオライトは、実質的に結晶性である。本明細書で用いる場合、「結晶性」という用語は、材料の結晶性固体形態を指す。特に限定されないものの、例えば、溶媒和物、水和物、および共結晶を含む、単一成分または複数成分の結晶形態を含む。結晶性とは、分子の規則的な繰り返しおよび/または規則的な配列を有し、識別可能な結晶格子を有することを意味し得る。例えば、アルミノシリケートゼオライトは、異なる水分または溶媒含有量を有し得る。異なる結晶格子は、XRD(例えば、粉末XRD)などによる固体特性評価法によって同定され得る。関連技術分野における通常の当業者に公知である他の特性評価方法は、安定性および溶媒/水の含有量を決定するのに役立つだけでなく、結晶形態を同定するのにさらに役立ち得る。本明細書で使用される場合、「実質的に結晶性」という用語は、記載される材料の試料の重量の大部分(50wt%超)が結晶性であり、試料の残りが非結晶性形態であることを意味する。1つ以上の態様において、実質的に結晶性の試料は、少なくとも95%の結晶化度(例えば、非結晶形態が5%)、少なくとも96%の結晶化度(例えば、非結晶形態が4%)、少なくとも97%の結晶化度(例えば、非結晶形態が3%)、少なくとも98%の結晶化度(例えば、非結晶形態が約2%)、少なくとも99%の結晶化度(例えば、非結晶形態が1%)、および100%の結晶化度(例えば、非結晶形態が0%)を有する。
【0080】
本開示の態様を、具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例示を目的として提供されるものであり、いかなる方法においても本開示を限定することを意図するものではない。関連技術分野の当業者であれば、様々なパラメータを変更または修正して、本質的に同じ結果が得られることを容易に認識するであろう。
【実施例
【0081】
本発明は、その範囲を限定することなく、以下にさらに例示される。
【0082】
これらの実施例において、合成されたままの材料および焼成されたままの材料のX線回折(XRD)パターンは、X線粉末回折装置(Bruker DaVinci D8 Discovery装置)において、CuKα放射線を使用し、Vantec 500検出器を備えたBragg-Bentanoジオメトリで、4~60度の2θ範囲で、連続モードにて記録した。面間隔、d間隔はオングストローム単位で計算され、線の相対強度I/Iはピーク強度とバックグラウンド以上の最も強い線の強度の比である。強度は、ローレンツ効果および偏光効果を補正していない。2θにおける回折ピークの位置、および線の相対ピーク面積強度I/I(o)は、MDI Jadeピーク探索アルゴリズムを用いて決定した。なお、Ioはバックグラウンド以上の最も強い線の強度である。単一の線として記載された回折データは、結晶学的変化の違いなど特定の条件下では、分解または部分的に分解された線として現れ得る複数の重なり合った線から構成され得ることを理解されたい。典型的に、結晶学的変化には、骨格の連結性に変化がなくても、単位セルパラメータのわずかな変化および/または結晶対称性の変化が含まれ得る。また、相対強度の変化を含むこれらの軽微な影響は、カチオン含有量、骨格組成、細孔充填の性質と程度、結晶サイズと形状、好ましい配向、および熱ならびに/または水熱履歴における違いの結果として生じることもあり得る。
【0083】
合成されたままの材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、日立4800走査型電子顕微鏡で得た。SEM画像は、生成物の純度の評価に役立てた。SEM画像中における明らかに異なる結晶形態の存在は、他の結晶性材料の形態における不純物の存在を示し得る。このような近似分析は、製品のXRDパターンでは識別できないような比較的少量の結晶性不純物の形成の存在を識別するのに特に役立ち得る。
【0084】
焼成した試料について、以下の測定を行った。
【0085】
材料の全体的なBET表面積(SBET)は、参照により本明細書に組み込まれるS.Brunauerら(1938)、J.Am.Chem.Soc.、60巻、309頁に記載される、液体窒素温度での窒素吸着-脱着を用いるBET法により測定した。
【0086】
材料の微細孔体積(Vmicro)は、関連技術分野で公知の方法を用いて決定できる。例えば、材料の微細孔体積は、窒素物理吸着で測定することができ、データは、Lippens,B.C.ら(1965)の“Studies on pore system in catalysts:V. The t method”、J.Catal.、4巻、319頁に記載されているtプロット法で分析できる。これは、微細孔体積法について記載しており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0087】
アルファ値は、触媒の分解活性の尺度であり、米国特許第3,354,078号、およびJournal of Catalysis、4巻、527頁(1965);6巻、278頁(1966);および61巻、395頁(1980)に記載されている。その記載に関しては、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用する試験の実験条件には、Journal of Catalysis、61巻、395頁に詳細に記載されているように、538℃の一定温度と可変流量が含まれる。
【0088】
実施例1~11の合成に使用したモル比および条件、ならびに得られた生成物を以下に詳述し、表4に要約する。
【0089】
実施例1a:式IIIaの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-3-イウムカチオンの合成
2-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンズイミダゾール:40gの2-メチルベンズイミダゾールを320mlの氷酸に溶解した。15gのパラジウム(炭素上の10wt%)を加え、反応混合物を、120℃の温度で、80barの圧力下にて24時間水素で処理した。溶液をセライト上でろ過し、氷酸で洗浄した。溶媒を真空下で蒸発させ、次いで水酸化ナトリウム水溶液を加えて溶液のpHを9~10にした。沈殿物をろ過し、水で洗浄した後、クロロホルムに溶解し、飽和塩化ナトリウム水溶液で抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空下で濃縮した。
【0090】
1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-3-イウムヨウ化物:13.6gの2-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンズイミダゾール、70gのヨードメタンおよび27gの炭酸カリウムを、磁気攪拌棒を備える250mLの丸底フラスコ中で、150mlのアセトニトリル(CHCN)に添加した。懸濁液を18時間還流した後、室温まで冷却した。溶液をブフナー漏斗で濾過し、濾液をロトバップで濃縮した。濃縮液にジクロロメタンを加え、残ったカリウム塩を除去した。ジクロロメタン中の濾液をロトバップで濃縮し、真空下で乾燥して、1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-3-イウムヨウ化物を得た。
【0091】
1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-3-イウム水酸化物:ヨウ化物塩をイオン交換樹脂Amberlite(登録商標)IRN78 OH水酸化物形態(ヨウ化物:樹脂:水の比は1:3.5:5)で水酸化物形態にイオン交換した。交換は室温で一晩行った。
【0092】
実施例1b:式IIIbの1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ[1,2-a]ピリダジン-4-イウムカチオンの合成
45gのKCOを、アセトニトリル(300mL)中に18gの4,5,6-トリメチルピラゾールを含む溶液に添加した。周囲温度で30分間撹拌した後、70gの1,4-ジブロモブタンを加えた。反応混合物を周囲温度で4時間撹拌した後、温度を90℃まで36時間上昇させた。混合物を周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をジクロロメタンに取り込み、得られた懸濁液をろ過した。溶媒を真空中で除去し、固体生成物を得た。
【0093】
次いで、臭化物塩をAmberlite(登録商標)IRN78 OH水酸化物形態(臭化物:樹脂:水の比が1:3.5:5)のイオン交換樹脂で水酸化物形態にイオン交換した。交換は室温で一晩行った。
【0094】
実施例1c:式IIIcの5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-4-イウムカチオンの合成
22gのKCOを、アセトニトリル(160mL)中に9gの4,5,6-トリメチルピラゾールを含む溶液に添加した。周囲温度で30分間撹拌した後、49gの1,3-ジブロモプロパンを加えた。反応混合物を周囲温度で4時間撹拌した後、温度を90℃まで36時間上昇させた。混合物を周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をジクロロメタンに取り込み、得られた懸濁液をろ過した。溶媒を真空中で除去し、固体生成物を得た。
【0095】
次いで、臭化物塩をAmberlite(登録商標)IRN78 OH水酸化物形態(臭化物:樹脂:水の比率は1:3.5:5)のイオン交換樹脂で水酸化物形態にイオン交換した。交換は室温で一晩行った。
【0096】
実施例2:Si/Alのモル比が10である、水酸化アルミニウムを用いた式IIIaのカチオンを用いるEMM-68の合成
2.55gのテトラエチルオルトシリケート(TEOS、>99wt%)および0.116gのAl(OH)(Sigma、54wt%)を、5.31gの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロベンズイミダゾリウムヒドロキシド(21wt%溶液)中、室温で約2~3時間加水分解した。次いで、混合物を約50℃で加熱し、エタノールと水を除去した。0.26gのHF(48wt%溶液)を混合物に加え、モル比で以下の組成を有する合成混合物を製造した。
4HO:1SiO:0.05Al:0.5QOH:0.5HF
【0097】
得られた濃厚ペーストを、Teflon(登録商標)中にて手で均質化し、23mLのTeflon裏地付きステンレス鋼オートクレーブ(Parr製)に移した。オートクレーブを150℃で14日間、タンブリングオーブン(約40rpm)で加熱した。14日後、反応器を排出し、生成物を遠心分離で回収し、蒸留水(200mL)で3回洗浄した。生成物をベント付き乾燥オーブンにおいて90℃で乾燥させた。次いで、合成されたままの材料を、箱型炉内で、空気中にて、3℃/分の昇温速度で580℃まで焼成した。580℃の温度で8時間保持し、その後箱型炉を冷却した。
【0098】
合成されたままの材料のXRD分析によると、この材料は、いずれの既知のゼオライトとも一致しない独自の粉末XRDパターンを有しており、純粋な合成されたままのEMM-68生成物として指定された。図1は、合成されたままの製品の粉末XRDを示す。図2は、合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
【0099】
実施例3:Si/Alのモル比が12.5で、水酸化アルミニウムを用いた式IIIaのカチオンを用いたEMM-68の合成
この実施例は、合成混合物のSi/Alモル比が12.5であることを除いて、実施例2と同じ条件および同じモル比で実施した。150℃で14日間加熱した後、そのXRDパターンによって同定されるように、純粋なEMM-68生成物が得られた。
【0100】
以下の表5および表6は、実施例2の合成されたままのEMM-68生成物、および焼成されたままのEMM-68生成物のそれぞれのピークおよび強度のリストを示す。図3は、焼成されたままの生成物の粉末XRDを示す。図4は、合成されたままの生成物のSEM画像である。
【0101】
FOCUSフーリエリサイクル法を用いて粉末XRDデータからEMM-68の構造を決定した。EMM-68は、a=12.4±0.30Å、b=18.8±0.30Å、c=9.2±0.30Å、およびβ=96.2°の単位セル寸法を有するC中心単斜晶の空間群C2/mを示す。EMM-68材料は15T/1000Åの骨格密度を有し、1つの単位セルに32個のT原子を含む。EMM-68材料は、8.0±0.50Å×9.4±0.50Å×7.7±0.50Åの大きなキャビティサイズを有する10x8x8チャネルシステムを有する。c軸に沿った10環細孔の寸法は6.1±0.20Å×3.8±0.20Åであり、b軸に沿った8環細孔は3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有し、x-y平面内の別の8環細孔は3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有する。図5aおよび図5bは、FOCUS法によって解析されたEMM-68材料の構造を示す。図5aでは、酸素原子は大きな球で、Si原子は小さな球である。図5bでは、分かりやすくするために酸素原子を省略した。EMM-68は、図6に示すように、唯一の複合構築単位として二重5環(D5Rs,double 5-rings)を配置することによって構築される。図7aは、[010]方向に沿う8員環(8MR)を示す。図7bは、[001]方向に沿う10員環(10MR)を示す。図8は、大きな14員環(14MR)のキャビティを示す。
【0102】
空気中で室温から800℃まで加熱することにより、合成されたままのEMM-68生成物に対して熱重量分析(TGA)を実施した。230℃までで10wt%の累積質量損失がある。これは水に起因すると考えられ、230℃~800℃では23wt%の質量損失がある。これは、単位セルあたり約4個の構造指向剤(Q)の分子の除去に起因すると考えられる。
【0103】
実施例2に規定された手順に従って、合成されたままのEMM-68材料を焼成した。
【0104】
EMM-68材料の焼成バージョンのBET表面積(SBET)は774m/gであり、その微細孔体積(Vmicro)は0.29cc/gであり、そのアルファ値は66であった。イオン交換および焼成された材料上にて、n-ヘキサン、2,2-ジメチルブタン(2,2-DMB)、2,3-ジメチルブタン(2,3-DMB)、およびメシチレンの取り込み量を決定した。材料を窒素流下に配置して、次いでスパージャを通して炭化水素を導入して窒素流を飽和させ、炭化水素の取り込み量を決定した。各炭化水素は異なる温度で吸着した。n-ヘキサンは90℃で吸着し、2,2-DMBは120℃で吸着し、2,3-DMBは120℃で吸着し、メシチレンは100℃で吸着した。n-ヘキサンの取り込み量は103.4mg/gであり、2,2-DMBの取り込み量は91.9mg/gであり、2,3-DMBの取り込み量は61.8mg/gであり、メシチレンの取り込み量は26.1mg/gであった。
【0105】
実施例4~8:様々なSi/Alモル比のアルミニウムイソプロポキシドを用いて、式IIIaのカチオンを使用したEMM-68の合成
これらの実施例は、アルミニウムイソプロポキシド(98wt%、Sigma)Al源として使用したことを除いて、Si/Alモル比をそれぞれ10、12.5、15、20および50と変化させて、実施例2~3と同じ条件で実施した。150℃で14日間加熱した後、XRDパターンにより同定されるように、実施例4~7について純粋なEMM-68生成物が得られた。実施例8は、50のSi/Al比で実施され、レイヤ相をもたらした。図9~12は、それぞれ実施例4、5、6および7の合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
【0106】
実施例9:Si/Alモル比10で、USYゼオライトと共に式IIIaのカチオンを使用したEMM-68の合成
本実施例は、15のSi/Alモル比でUSYゼオライト(ZeolystからCBV720として入手可能)をSi源として使用し、Si/Alモル比が6のUSYゼオライト(ZeolystからCBV712として入手可能)をAl源として使用したこと以外は、実施例2と同じ条件で実施した。150℃で14日間加熱した後、XRDパターンで同定されたように、純粋なEMM-68生成物が得られた。
【0107】
実施例10:Si/Alモル比6で、USYゼオライトと共に式IIIaのカチオンを使用したEMM-68の合成
本実施例は、6のSi/Alモル比でUSYゼオライト(ZeolystからCBV712として入手可能)をSi源およびAl源として使用し、NaOH(4wt%溶液)をNaOH/Siモル比0.05でゲル混合物に添加したことを除いて、実施例9と同じ条件で実施した。150℃で14日間加熱した後、XRDパターンで同定されたように、純粋なEMM-68生成物が得られた。図13は、合成されたままの生成物のSEM画像を示す。
【0108】
実施例11:式IIIbのカチオンを使用したEMM-68の合成
本実施例は、構造指向剤(Q)として1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ[1,2-a]ピリダジン-4-イウム水酸化物を用いた以外は、実施例3と同じ条件で実施した。150℃で14日間加熱した後、微量不純物としてHEU相を含むEMM-68生成物が得られ、そのXRDパターンによって同定された。
【0109】
実施例12:式IIIcのカチオンを使用したEMM-68の合成
本実施例は、構造指向剤として5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-4-イウム水酸化物を用いた以外は、実施例3と同じ条件で実施した。160℃で14日間加熱した後、そのXRDパターンで同定されたように、純粋なEMM-68生成物が得られた。
【0110】
【表9】
【0111】
【表10】
【0112】
【表11】
【0113】
本発明を特定の実施形態を参照して説明および図示したが、本発明は、本明細書に具体的に図示されていない多くの異なる変更、修正および変形に適していることが、当業者には理解されるであろう。また、本明細書に数値的な下限値および数値的な上限値が記載される場合、任意の下限値から任意の上限値までの範囲が企図されることも当業者には明らかであろう。また、本明細書の詳細な説明内の全ての数値は、指示された値が「約」によって修飾されており、当業者によって予想される実験誤差および変動が考慮されている。
【0114】
前述の説明において、公知、自明または予測可能な等価物を有する整数または要素が言及されている場合、そのような等価物は、個々に記載されているものとして本明細書に組み込まれる。本発明の真の範囲を決定するために特許請求の範囲を参照すべきであるが、特許請求の範囲は、そのようないずれの均等物をも包含するように解釈されるべきである。また、好ましい、有利である、便利であるなどと記載されている本発明の整数または特徴は、任意であり、独立請求項の範囲を限定するものではないことも、読者には理解されよう。さらに、そのような任意的な整数または特徴は、本発明のいくつかの実施形態では有益である可能性がある一方で、他の実施形態では望ましくなく、したがって存在しない可能性があることを理解されたい。
【0115】
さらに、または代替的に、本発明は以下に関する:
【0116】
実施形態1:アルミノシリケートゼオライトであって、その焼成されたままの形態において、表1から選択される少なくとも5個のピークを含むX線回折パターンを有する、アルミノシリケートゼオライト。
【0117】
実施形態2:焼成されたままの形態で、表1から選択される少なくとも6個のピーク、好ましくは全てのピークを含むX線回折パターンを有する、実施形態1に記載のアルミノシリケートゼオライト。
【0118】
実施形態3:式Iの分子式を有する、実施形態1または2に記載のアルミノシリケートゼオライト。
(m)Al:SiO (式I)
[式中、0.0125<m≦0.1である。]
【0119】
実施形態4:合成されたままの形態で、表2から選択される少なくとも10個のピークを含むX線回折パターンを有する、アルミノシリケートゼオライト。
【0120】
実施形態5:合成されたままの形態で、表2から選択される少なくとも12個、好ましくは少なくとも13個、より好ましくは全てのピークを含むX線回折パターンを有する、実施形態4に記載のアルミノシリケートゼオライト。
【0121】
実施形態6:式IIの分子式を有する、実施形態4または5に記載のアルミノシリケートゼオライト。
(n)Q:(m)Al:SiO (式II)
[式中、0≦n≦0.7、0.0125≦m≦0.1であり、Qは、式IIIaの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-3-イウムカチオン、式IIIbの1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ「1,2-a]ピリダジン-4-イウムカチオン、および式IIIcの5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ「1,2-a]ピラゾール-4-イウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含む。]
【化4】
【0122】
実施形態7:単位セル内の四面体(T)原子について表3の以下の連結度によって定義される骨格を有し、四面体(T)原子が架橋原子によって連結されている、実施形態1から6のいずれか1つに記載のアルミノシリケートゼオライト。
【0123】
実施形態8:(a)a=12.4±0.30Å、b=18.8±0.30Å、c=9.2±0.30Å、およびβ=96.2°の単位セル寸法を有するC中心単斜晶空間群C2/mと、(b)8.0±0.50Å×9.4±0.50Å×7.7±0.50Åの大きなキャビティサイズを有する10×8×8チャネル系とを有する構造を有し、c軸に沿った10環細孔が6.1±0.20Å×3.8±0.20Åの寸法を有し、b軸に沿った8環細孔が3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有し、x-y平面内の別の8環細孔が3.9±0.20Å×3.3±0.20Åの寸法を有する、実施形態1から7のいずれか1つに記載のアルミノシリケートゼオライト。
【0124】
実施形態9:5~40、好ましくは6~30、より好ましくは7~20のSi/Alモル比を有する、実施形態1から8のいずれか1つに記載のアルミノシリケートゼオライト。
【0125】
実施形態10:実施形態1から9のいずれか1つのアルミノシリケートゼオライトを製造する方法であって、該方法は:
(a)水、シリカ源、アルミナ源、構造指示剤(Q)源、フッ化物(F)源、水酸化物イオン(OH)源、および任意選択でアルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオン(M)源を含む合成混合物を調製するステップ;
(b)前記アルミノシリケートゼオライトの結晶を形成するのに十分な時間、100℃から200℃の温度を含む結晶化条件下で、前記合成混合物を加熱するステップ;
(c)ステップ(b)からアルミノシリケートゼオライトの少なくとも一部を回収するステップ;および
(d)任意に、ステップ(c)で回収されたアルミノシリケートゼオライトを処理して、構造指示剤(Q)の少なくとも一部を除去するステップ
を含み、
構造指向剤(Q)は、式IIIaの1,2,3-トリメチル-4,5,6,7-テトラヒドロベンズイミダゾリウムカチオン、式IIIbの1,2,3-トリメチル-5,6,7,8-テトラヒドロピラゾロ[1,2-a]ピリダジン-4-イウムカチオン、および式IIIcの5,6,7-トリメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[1,2-a]ピラゾール-4-イウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1つのカチオンを含む。
【化5】
【0126】
実施形態11:構造指示剤(Q)がその水酸化物の形態である、実施形態10に記載の方法。
【0127】
実施形態12:合成混合物が、モル比で以下の組成を有する、実施形態10または11に記載の方法。
【0128】
【表12】
【0129】
実施形態13:有機化合物を変換生成物に変換するプロセスであって、実施形態1から9のいずれか1つのアルミノシリケートゼオライトと有機化合物とを接触させることを含む、プロセス。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】