特表 2024-536997 スクロール圧縮機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2024-10-10

(54)【発明の名称】スクロール圧縮機

(51)【国際特許分類】

   F04C 18/02 20060101AFI20241003BHJP

   F04C 29/12 20060101ALI20241003BHJP

   F04C 29/04 20060101ALI20241003BHJP

【ＦＩ】

F04C18/02 311P

F04C29/12 F

F04C29/04 L

【審査請求】有

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2024515541

(86)(22)【出願日】2023-04-13

(85)【翻訳文提出日】2024-03-08

(86)【国際出願番号】 KR2023004993

(87)【国際公開番号】W WO2024071547

(87)【国際公開日】2024-04-04

(31)【優先権主張番号】10-2022-0123776

(32)【優先日】2022-09-28

(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR

(31)【優先権主張番号】10-2023-0023468

(32)【優先日】2023-02-22

(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】516011246

【氏名又は名称】ハンオン システムズ

(74)【代理人】

【識別番号】110000051

【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】ジョン，ジョン ヒョン

(72)【発明者】

【氏名】キム，クァン ジン

(72)【発明者】

【氏名】イ，キョン ジェ

(72)【発明者】

【氏名】ジョン，ス チョル

【テーマコード（参考）】

3H039

3H129

【Ｆターム（参考）】

3H039AA02

3H039AA05

3H039AA12

3H039BB08

3H039CC28

3H039CC30

3H039CC31

3H039CC32

3H039CC33

3H039CC48

3H129AA02

3H129AA15

3H129AA16

3H129AB03

3H129BB32

3H129CC07

3H129CC09

3H129CC14

3H129CC19

3H129CC24

(57)【要約】

【課題】スクロール圧縮機の圧縮室に吸入圧の冷媒だけではなく、中間圧の冷媒を導入して圧縮室から吐出される冷媒吐出量を増加させて、圧縮機の性能及び効率を向上させ、注入バルブ組立体の形状を単純化してポートの位置を自由に変更しながら注入バルブ組立体をコンパクト化できるスクロール圧縮機を提供する。
【解決手段】ハウジングと、モーターと、回転軸と、旋回スクロールと、固定スクロールと、を含み、リアハウジングは、吐出室と導入室を区画する隔壁を含み、固定スクロールとリアハウジングの隔壁の間には導入室を覆蓋して導入室の冷媒を圧縮室に案内する注入バルブ組立体が備えられ、隔壁は注入バルブ組立体の側面一部を囲むように第１面と第２面を有し、注入バルブ組立体をリアハウジングに締結する締結部材は第２面の半径方向内側に配置される。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

ハウジングと、
前記ハウジング内に備えられるモーターと、
前記モーターにより回転される回転軸と、
前記回転軸に連動されて旋回運動される旋回スクロールと、
前記旋回スクロールと共に圧縮室を形成する固定スクロールと、を含み、
前記ハウジングは、前記圧縮室から吐出される冷媒を収容する吐出室を形成するリアハウジングを含み、
前記リアハウジングは、前記吐出室と前記ハウジングの外部から冷媒が流入する導入室を区画する隔壁を含み、
前記固定スクロールと前記リアハウジングの隔壁の間には前記導入室を覆蓋して前記導入室の冷媒を前記圧縮室に案内する注入バルブ組立体が備えられ、
前記隔壁は前記注入バルブ組立体の側面一部を囲むように第１面と、前記第１面より高さが高い第２面を有し、
前記注入バルブ組立体を前記リアハウジングに締結する締結部材は前記第２面の半径方向内側に配置されることを特徴とするスクロール圧縮機。

【請求項2】

前記注入バルブ組立体には前記注入バルブ組立体と前記締結部材のヘッドの間を密封するための密封部が備えられることを特徴とする請求項１に記載のスクロール圧縮機。

【請求項3】

前記注入バルブ組立体は、
前記隔壁上に配置されて前記導入室の冷媒が流入する流入口を有するカバープレートと、
前記隔壁に結合されるガスケットリテーナーと、
前記カバープレートと前記ガスケットリテーナーの間に介在されて前記流入口を開閉する注入バルブと、
前記ガスケットリテーナーに結合されて、前記流入口を通じて流入する冷媒が流出する流出口を有するバルブプレートと、を含むことを特徴とする請求項１に記載のスクロール圧縮機。

【請求項4】

前記締結部材のヘッドが装着する前記バルブプレートの一面には前記注入バルブ組立体と前記締結部材のヘッドの間を密封するための密封部が備えられ、前記密封部は前記締結部材が貫通するための前記バルブプレートの締結ホールを囲むように突出形成されることを特徴とする請求項３に記載のスクロール圧縮機。

【請求項5】

前記締結部材のヘッドと前記バルブプレートの一面の間には前記注入バルブ組立体と前記締結部材のヘッドの間を密封するための密封部が挿入されて前記締結部材を引き締める時に圧迫されることを特徴とする請求項３に記載のスクロール圧縮機。

【請求項6】

前記ガスケットリテーナーは、周りに沿って延長されて前記バルブプレートに向かって突出するビード部、及び前記締結部材が貫通するための締結ホールを含み、
前記ビード部は前記締結ホールを囲むことを特徴とする請求項３に記載のスクロール圧縮機。

【請求項7】

前記ビード部は、半径方向外側の外側傾斜ビード部、半径方向内側の内側傾斜ビード部及び前記外側傾斜ビード部と前記内側傾斜ビード部を連結する突出ビード部を含み、
前記締結ホールは前記外側傾斜ビード部より半径方向内側に形成されることを特徴とする請求項６に記載のスクロール圧縮機。

【請求項8】

前記外側傾斜ビード部は前記第２面と前記バルブプレートの間で組み立てられる時に圧迫されて、前記内側傾斜ビード部は前記第１面と前記バルブプレートの間で組み立てられる時に圧迫されることを特徴とする請求項７に記載のスクロール圧縮機。

【請求項9】

前記ガスケットリテーナーは、
前記締結部材が貫通するための締結ホールと、
前記締結ホールの半径方向外側周りに沿って延長されて前記カバープレートに向かって突出する第１ビード部と、
前記締結ホールの半径方向内側周りに沿って延長されて前記カバープレートに向かって突出する第２ビード部と、を含むことを特徴とする請求項３に記載のスクロール圧縮機。

【請求項10】

前記ガスケットリテーナーは、
前記注入バルブが開かれる方向に傾斜加工されるリテーナー部、及び
前記バルブプレートに向かって突出するバルブビード部をさらに含むことを特徴とする請求項９に記載のスクロール圧縮機。

【請求項11】

前記バルブビード部は前記リテーナー部の傾斜が始まる地点に備えられることを特徴とする請求項１０に記載のスクロール圧縮機。

【請求項12】

前記第１ビード部の突出する高さは前記第２ビード部と前記バルブビード部の突出する高さより大きいことを特徴とする請求項１０に記載のスクロール圧縮機。

【請求項13】

前記バルブビード部は前記リテーナー部の幅を横切る方向に備えられることを特徴とする請求項１０に記載のスクロール圧縮機。

【請求項14】

前記注入バルブは、
前記流入口を開閉するようにバンディングされるバルブ部を含み、
前記バルブ部には長さ方向に沿って延長されるホールが備えられることを特徴とする請求項３に記載のスクロール圧縮機。

【請求項15】

前記ホールは前記バルブ部の幅方向上、中間に備えられ、前記バルブ部のバンディングが始まる地点から長さ方向に延長されることを特徴とする請求項１４に記載のスクロール圧縮機。

【請求項16】

前記ガスケットリテーナーは、
円形の本体部と、
前記本体部の一側から前記流入口に向かって前記バルブプレートに近づくように傾斜するように延長されるリテーナー部と、
前記リテーナー部を支持するために前記リテーナー部と前記本体部の他側を連結して傾斜するように形成される支持部と、を含むことを特徴とする請求項３に記載のスクロール圧縮機。

【請求項17】

前記本体部から前記注入バルブが開放される方向に最も遠く離隔される前記リテーナー部の端部に前記支持部が連結されて、前記支持部には流動ホールが形成されることを特徴とする請求項１６に記載のスクロール圧縮機。

【請求項18】

前記流動ホールの開口される面は前記支持部から前記本体部の一部まで延長されて、前記本体部と水平する面と前記支持部の傾斜する面を含むことを特徴とする請求項１７に記載のスクロール圧縮機。

【請求項19】

前記バルブプレートは前記リテーナー部が装着される傾斜空間を含み、
前記流出口は前記傾斜空間と連通して前記流動ホールと対応される位置に配置されることを特徴とする請求項１７に記載のスクロール圧縮機。

【請求項20】

前記締結部材が貫通するための前記バルブプレートの締結ホールは前記傾斜空間の半径方向外側に配置されることを特徴とする請求項１９に記載のスクロール圧縮機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明はスクロール圧縮機に係り、さらに詳細には、スクロール圧縮機の圧縮室に吸入圧の冷媒だけではなく中間圧の冷媒を導入して圧縮室から吐出される冷媒吐出量を増加させることによって圧縮機の性能及び効率を向上させることができ、注入バルブ組立体の形状を単純化して締結部材を導入室側に配置してポートの位置を自由に変更でき、注入バルブ組立体をコンパクト化できるスクロール圧縮機に関する。

【背景技術】

【0002】

一般的に、自動車には室内の冷暖房のための空調装置（Ａｉｒ Ｃｏｎｄｉｔｉｏｎｉｎｇ；Ａ／Ｃ）が設置される。このような空調装置は冷房システムの構成で、蒸発器から引き込まれた低温低圧の気相冷媒を高温高圧の気相冷媒に圧縮させて凝縮機に送る圧縮機を含む。

【0003】

圧縮機にはピストンの往復運動によって冷媒を圧縮する往復式と、回転運動をしながら圧縮を行う回転式がある。往復式には駆動源の伝達方式によってクランクを使用して複数個のピストンに伝達するクランク式、斜板が設置されるシャフトに伝達する斜板式などがあり、回転式には回転するロータリー軸とベインを使用するベインロータリー式、旋回スクロールと固定スクロールを使用するスクロール式がある。

【0004】

スクロール圧縮機は他の種類の圧縮機に比べて相対的に高い圧縮比を得ることができ、冷媒の吸入、圧縮、吐出行程がスムーズにつながり安定したトルクを得ることができる長所があるので、空調装置などで冷媒圧縮用に広く使われている。

【0005】

先行文献１（大韓民国公開特許公報第２０１８－００９４４８３号）に開示される従来のスクロール圧縮機は吸入圧の冷媒だけが圧縮室に吸入されて圧縮された後、外部に吐出される一連の過程を経る。しかし、このような従来のスクロール圧縮機においては、圧縮室から吐出される冷媒吐出量が決まっており、圧縮機の性能及び効率向上に限界があるという問題点がある。

【0006】

これを解決するために、先行文献２（大韓民国公開特許公報第２０２１－０１１８７４３号）には図１及び２に図示されるように、圧縮機の外部から流入する中間圧の冷媒を圧縮室（Ｃ）に案内する注入流路を開閉するための注入バルブ及び漏洩防止手段を含む注入バルブ組立体（７００）が備えられるスクロール圧縮機が開示される。

【0007】

具体的に、注入バルブ組立体（７００）はカバープレート（７１０）、注入バルブ（７２０）、バルブプレート（７３０）及び漏洩防止手段としてガスケットリテーナー（７９０）を含む。締結ボルト（７７０）がバルブプレートの第１締結ホール（７３９ａ）とガスケットリテーナーの第３締結ホール（７９６）及びカバープレートの第２締結ホール（７１４）を貫通してリアハウジングの締結溝に締結されることによって、注入バルブ組立体（７００）がリアハウジング（１３０）に締結されることができる。それによって、ガスケットリテーナー（７９０）はカバープレート（７１０）とバルブプレート（７３０）の間で圧迫されてその間を密封し、注入バルブ（７２０）がカバープレート（７１０）とガスケットリテーナー（７９０）の間で共に圧迫されて固定される。

【0008】

しかし、注入バルブ組立体（７００）は形状が複雑で回転が困難であるため、車両別導入ポート（１３３）と吐出ポート（１３１）の位置による設計変更が難しいという問題がある。すなわち、設計自由度が高くない。また、締結ボルト（７７０）が導入室（Ｉ）を形成する隔壁（１３８）の外側に配置されてパッケージが大きくなるという短所がある。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

本発明はスクロール圧縮機の圧縮室に吸入圧の冷媒だけではなく中間圧の冷媒を導入して圧縮室から吐出される冷媒吐出量を増加させることによって圧縮機の性能及び効率を向上させることができ、注入バルブ組立体の形状を単純化して締結部材を導入室側に配置してポートの位置を自由に変更でき、注入バルブ組立体をコンパクト化できるスクロール圧縮機を提供することをその目的とする。

【0010】

本発明が実現しようとする技術的課題は前述した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は下記から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に分かるだろう。

【課題を解決するための手段】

【0011】

前記課題を解決するための本発明の一実施例は、ハウジングと、前記ハウジング内に備えられるモーターと、前記モーターにより回転される回転軸と、前記回転軸に連動されて旋回運動される旋回スクロールと、前記旋回スクロールと共に圧縮室を形成する固定スクロールと、を含み、前記ハウジングは、前記圧縮室から吐出される冷媒を収容する吐出室を形成するリアハウジングを含み、前記リアハウジングは、前記吐出室と前記ハウジングの外部から冷媒が流入する導入室を区画する隔壁を含み、前記固定スクロールと前記リアハウジングの隔壁の間には前記導入室を覆蓋して前記導入室の冷媒を前記圧縮室に案内する注入バルブ組立体が備えられ、前記隔壁は前記注入バルブ組立体の側面一部を囲むように第１面と、前記第１面より高さが高い第２面を有し、前記注入バルブ組立体を前記リアハウジングに締結する締結部材は前記第２面の半径方向内側に配置されることを特徴とする、スクロール圧縮機を提供する。

【0012】

実施例によって、前記注入バルブ組立体には前記注入バルブ組立体と前記締結部材のヘッドの間を密封するための密封部が備えられることができる。

【0013】

実施例によって、前記注入バルブ組立体は、前記隔壁上に配置されて前記導入室の冷媒が流入する流入口を有するカバープレートと、前記隔壁に結合されるガスケットリテーナーと、前記カバープレートと前記ガスケットリテーナーの間に介在されて前記流入口を開閉する注入バルブと、前記ガスケットリテーナーに結合されて、前記流入口を通じて流入する冷媒が流出する流出口を有するバルブプレートと、を含むことができる。

【0014】

実施例によって、前記締結部材のヘッドが装着される前記バルブプレートの一面には前記注入バルブ組立体と前記締結部材のヘッドの間を密封するための密封部が備えられ、前記密封部は前記締結部材が貫通するための前記バルブプレートの締結ホールを囲むように突出形成されることができる。

【0015】

実施例によって、前記締結部材のヘッドと前記バルブプレートの一面の間には前記注入バルブ組立体と前記締結部材のヘッドの間を密封するための密封部が挿入されて前記締結部材を引き締める時に圧迫されることができる。

【0016】

実施例によって、前記ガスケットリテーナーは、周りに沿って延長されて前記バルブプレートに向かって突出するビード部、及び前記締結部材が貫通するための締結ホールを含み、前記ビード部は前記締結ホールを囲むことができる。

【0017】

実施例によって、前記ビード部は、半径方向外側の外側傾斜ビード部、半径方向内側の内側傾斜ビード部及び前記外側傾斜ビード部と前記内側傾斜ビード部を連結する突出ビード部を含み、前記締結ホールは前記外側傾斜ビード部より半径方向内側に形成されることができる。

【0018】

実施例によって、前記外側傾斜ビード部は前記第２面と前記バルブプレートの間で組み立てられる時に圧迫されて、前記内側傾斜ビード部は前記第１面と前記バルブプレートの間で組み立てられる時に圧迫されることができる。

【0019】

実施例によって、前記ガスケットリテーナーは、前記締結部材が貫通するための締結ホールと、前記締結ホールの半径方向外側周りに沿って延長されて前記カバープレートに向かって突出する第１ビード部と、前記締結ホールの半径方向内側周りに沿って延長されて前記カバープレートに向かって突出する第２ビード部と、を含むことができる。

【0020】

実施例によって、前記ガスケットリテーナーは、前記注入バルブが開かれる方向に傾斜加工されるリテーナー部、及び前記バルブプレートに向かって突出するバルブビード部をさらに含むことができる。

【0021】

実施例によって、前記バルブビード部は前記リテーナー部の傾斜が始まる地点に備えられることができる。

【0022】

実施例によって、前記第１ビード部の突出する高さは前記第２ビード部と前記バルブビード部の突出する高さより大きいことができる。

【0023】

実施例によって、前記バルブビード部は前記リテーナー部の幅を横切る方向に備えられることができる。

【0024】

実施例によって、前記注入バルブは、前記流入口を開閉するようにバンディングされるバルブ部を含み、前記バルブ部には長さ方向に沿って延長されるホールが備えられることができる。

【0025】

実施例によって、前記ホールは前記バルブ部の幅方向上中間に備えられ、前記バルブ部のバンディングが始まる地点から長さ方向に延長されることができる。

【0026】

実施例によって、前記ガスケットリテーナーは、円形の本体部と、前記本体部の一側から前記流入口に向かって前記バルブプレートに近づくように傾斜するように延長されるリテーナー部と、前記リテーナー部を支持するために前記リテーナー部と前記本体部の他側を連結して傾斜するように形成された支持部と、を含むことができる。

【0027】

実施例によって、前記本体部から前記注入バルブが開放される方向に最も遠く離隔される前記リテーナー部の端部に前記支持部が連結されて、前記支持部には流動ホールが形成されることができる。

【0028】

実施例によって、前記流動ホールの開口される面は前記支持部から前記本体部の一部まで延長されて、前記本体部と水平する面と前記支持部の傾斜する面を含むことができる。

【0029】

実施例によって、前記バルブプレートは前記リテーナー部が装着される傾斜空間を含み、前記流出口は前記傾斜空間と連通して前記流動ホールと対応される位置に配置されることができる。

【0030】

実施例によって、前記締結部材が貫通するための前記バルブプレートの締結ホールは前記傾斜空間の半径方向外側に配置されることができる。

【発明の効果】

【0031】

本発明によれば、スクロール圧縮機の圧縮室に吸入圧の冷媒だけではなく中間圧の冷媒が導入されることによって圧縮室から吐出される冷媒吐出量を増加させることができ、圧縮機の性能及び効率を向上させることができる。

【0032】

また、実施例によって注入バルブ組立体の形状が円形に形成されれば導入室に対して回転が可能であり、車両別ポートの位置によって自由に設計変更が可能であり、締結部材の畜力及びガスケットリテーナーのビード部により生成される面圧が周りに沿って全体的に均等に伝達されることができる。

【0033】

また、実施例によって締結部材が導入室側に、すなわち導入室を形成する隔壁の第１面に配置されれば注入バルブ組立体がコンパクト化でき、締結部材のヘッドが装着されるバルブプレートの一面に密封部が備えられれば冷媒漏洩が防止できる。

【0034】

また、実施例によって注入バルブがリテーナー部上で開かれれば流入口を通じて流入する冷媒が流出口に流動できるようにリテーナー部の前方には流動ホールが形成されれば、ガスケットリテーナーを経る冷媒の流動が干渉を受けず圧力損失が発生しない。

【0035】

また、実施例によってガスケットリテーナーで締結ホールの半径方向外側周りと内側周りの何れにもビード部が備えられるだけではなく、リテーナー部の傾斜が始まる地点にもビード部が備えられれば、注入バルブのバンディングポイントを正確に決めることができる。

【0036】

また、実施例によって注入バルブのバルブ部にホールが形成されれば、注入バルブの開閉動作時に歪みを防止しながらも動力を低減できる。
本発明の効果は前述した効果に限定されず、本発明の詳細な説明または特許請求範囲に記載される発明の構成から推論可能な全ての効果を含むと理解すべてきである。

【図面の簡単な説明】

【0037】

【図1】本発明の一実施例によるスクロール圧縮機を図示する断面図である。

【図2】図１からリアハウジングを分離して図示する斜視図である。

【図3】図１からリアハウジングとリアハウジングに収容される注入バルブ組立体を分解して図示する分解斜視図である。

【図4】図３の注入バルブ組立体がリアハウジングに組み立てられた状態を図示する正面図である。

【図5】図４の一部断面図である。

【図6】図３のカバープレートの背面図である。

【図7】図３の注入バルブの背面図である。

【図8】図３のガスケットリテーナーを他の側面から見た斜視図である。

【図9】図３のバルブプレートの背面図である。

【図10】本発明の他の実施例によるガスケットリテーナーを図示する正面図である。

【図11】図１０の斜視図である。

【図12】本発明の他の実施例による注入バルブを図示する正面図である。

【図13】図１０のガスケットリテーナー及び図１２の注入バルブを含む注入バルブ組立体がリアハウジングに組み立てられた状態を図示する断面図である。

【発明の実施のための形態】

【0038】

以下、本発明のスクロール圧縮機に対する好ましい実施例を添付図面を参照して説明する。
また、後述される用語は本発明での機能を考慮して定義された用語で、これは使用者、運用者の意図または慣例によって変わることができ、下の実施例は本発明の権利範囲を限定するのではなく、本発明の請求範囲に提示される構成要素の例示的な事項に過ぎない。
本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通して同一または類似の構成要素に対しては同じ参照符号を付ける。明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは特別に反対の記載がない限り他の構成要素を除外するのではなく他の構成要素をさらに備えることができるということを意味する。

【0039】

本発明の一実施例によるスクロール圧縮機は、ハウジング（１００）、ハウジング（１００）内に備えられるモーター（２００）、モーター（２００）により回転される回転軸（３００）、回転軸（３００）に連動されて旋回運動される旋回スクロール（４００）、旋回スクロール（４００）と共に圧縮室（Ｃ）を形成する固定スクロール（５００）及び固定スクロール（５００）の一面上に配置されて圧縮室（Ｃ）で圧縮された冷媒が吐出される固定スクロールの吐出口（５１２）を開閉する吐出バルブ（６００）を含む。ここで、先行文献２のスクロール圧縮機の構成と同じ構成に対しては同じ図面符号を使用し、同じ構成に対しては詳細な説明を省略する。

【0040】

そして、本実施例によるスクロール圧縮機はハウジング（１００）の外部（スクロール圧縮機、凝縮機、膨脹バルブ及び蒸発器を含む蒸気圧縮式冷凍サイクルで、例えば凝縮機の下流）から中間圧の冷媒を圧縮室（Ｃ）に案内する注入流路を形成して注入流路を開閉するための注入バルブ組立体（２７００）をさらに含む。

【0041】

ハウジング（１００）は、回転軸（３００）が貫通するセンターハウジング（１１０）、モーター（２００）が収容されるモーター収容空間を形成するフロントハウジング（１２０）及び圧縮室（Ｃ）から吐出される冷媒を収容する吐出室（Ｄ）を形成するリアハウジング（１３０）を含み、注入バルブ組立体（２７００）は固定スクロール（５００）とリアハウジング（１３０）の間に介在されることができる。注入バルブ組立体（２７００）はリアハウジング（１３０）内にハウジングの外部から冷媒が流入する導入室（Ｉ）を覆蓋して、導入室（Ｉ）の冷媒を圧縮室（Ｃ）に案内する。

【0042】

図２に図示されるように、リアハウジング（１３０）は、リア鏡板から突出して円周方向上、最外郭側に位置する第１環形壁（１３４）、リア鏡板から突出して第１環形壁（１３４）に収容される第２環形壁（１３６）及びリア鏡板から突出して第２環形壁（１３６）に収容される隔壁（１３８）を含む。この時、第１環形壁（１３４）、第２環形壁（１３６）及び隔壁（１３８）は互いに相違する高さを有するように形成される。

【0043】

第１環形壁（１３４）はセンターハウジング（１１０）に締結されてスクロール収容空間を形成して、第２環形壁（１３６）は固定スクロール（５００）に接触されて吐出室（Ｄ）を形成する。ここで、第２環形壁（１３６）が固定スクロール（５００）に接触されることによって、リアハウジング（１３０）がセンターハウジング（１１０）に締結される時、固定スクロール（５００）をセンターハウジング（１１０）側に加圧して固定スクロール（５００）とセンターハウジング（１１０）の間の締結力を向上させて漏洩を防止できる。隔壁（１３８）は固定スクロール（５００）と離隔されるように第２環形壁（１３６）より短い突出長さを有し、後述するように注入バルブ組立体（２７００）のカバープレート（２７１０）により覆蓋されて導入室（Ｉ）を区画する。

【0044】

この時、図２及び５に図示されるように、隔壁（１３８）は注入バルブ組立体（２７００）の側面一部を囲むように第１面（１３８ａ）と、第１面（１３８ａ）より高さが高い第２面（１３８ｂ）を有する。具体的に、第１面（１３８ａ）と第２面（１３８ｂ）は平行するように延長されるが、第２面（１３８ｂ）は第１面（１３８ａ）よりリア鏡板からより突出して第１面（１３８ａ）より高い。第１面（１３８ａ）は第２面（１３８ｂ）より隔壁の半径方向内側に形成されて第１面（１３８ａ）と第２面（１３８ｂ）によりなる段差が隔壁の内側周りに窪むように形成されることができる。第１面（１３８ａ）と第２面（１３８ｂ）は注入バルブ組立体（２７００）の側面一部と向き合う第３面（１３８ｃ）により連結される。第３面（１３８ｃ）は第１面（１３８ａ）から垂直に延長されて第２面（１３８ｂ）まで連結されることができる。

【0045】

リアハウジング（１３０）のリア鏡板には吐出室（Ｄ）の冷媒をハウジング（１００）の外部に案内する吐出ポート（１３１）が形成されて、図４に図示される吐出ポート入口（１３１ａ）を通じて吐出室（Ｄ）の冷媒が吐出ポート（１３１）に案内される。また、リアハウジング（１３０）のリア鏡板にはハウジング（１００）の外部から中間圧の冷媒が導入される導入ポート（１３３）も形成されて、図２に図示される導入ポート出口（１３３ａ）を通じて導入ポート（１３３）から導入室（Ｉ）に中間圧の冷媒が案内されることができる。

【0046】

ここで、吐出ポート（１３１）と導入ポート（１３３）は車両によってその位置が変わることができる。このように車両別ポートの位置によって注入バルブ組立体を自由に設計変更するために、本発明において注入バルブ組立体（２７００）は円形に形成されることができる。すなわち、注入バルブ組立体（２７００）が円形に形成されることによって導入室（Ｉ）に対して回転が可能であり車両別ポートの位置によって自由に設計変更が可能である。また、口述する締結ボルト（７７０）の締結力及びガスケットリテーナー（２７９０）のビード部により生成される面圧が注入バルブ組立体（２７００）の周りに沿って全体的に均等に伝達されることができる。

【0047】

また、本発明において注入バルブ組立体（２７００）をリアハウジング（１３０）に締結する締結部材は吐出室（Ｄ）側ではない導入室（Ｉ）側に、具体的に隔壁の第１面（１３８ａ）に配置される。以下で締結部材は締結ボルト（７７０）であると説明する。それにより、注入バルブ組立体（２７００）がコンパクト化でき、設計変更がさらに容易になる。そのために、図２に図示されるようにリアハウジング（１３０）には隔壁の第１面（１３８ａ）に締結ボルト（７７０）が挿入される第１締結溝（１３９）が形成される。

【0048】

以下、図３ないし９を参照して注入バルブ組立体（２７００）を詳細に説明する。注入バルブ組立体（２７００）は導入室（Ｉ）と固定スクロール（５００）の注入口の間を連通及び遮蔽させるように隔壁（１３８）の先端面に備えられる。

【0049】

具体的に、注入バルブ組立体（２７００）は、隔壁（１３８）上に配置されて導入室（Ｉ）の冷媒が流入する流入口（２７１２）を有するカバープレート（２７１０）と、隔壁（１３８）に結合されるガスケットリテーナー（２７９０）と、カバープレート（２７１０）とガスケットリテーナー（２７９０）の間に介在されて流入口（２７１２）を開閉する注入バルブ（２７２０）及びガスケットリテーナー（２７９０）に結合されて、流入口（２７１２）を通じて流入する冷媒が流出する流出口（２７３６）を有するバルブプレート（２７３０）を含むことができる。

【0050】

図３及び６に図示されるようにカバープレート（２７１０）は円形のプレートに形成されて、導入室（Ｉ）の冷媒が流入する一対の流入口（２７１２ａ、２７１２ｂ）を含む。すなわち、導入室（Ｉ）の一側と連通される第１流入口（２７１２ａ）及び第１流入口（２７１２ａ）と独立的に形成されて導入室（Ｉ）の他側と連通される第２流入口（２７１２ｂ）を含む。この時、第１流入口（２７１２ａ）と第２流入口（２７１２ｂ）はバルブリフティングフォース（ｖａｌｖｅ ｌｉｆｔｉｎｇ ｆｏｒｃｅ）及び冷媒流入流量最大化のためにそれぞれ長孔に形成されることが好ましい。

【0051】

特に、本実施例でカバープレート（２７１０）は隔壁の第１面（１３８ａ）に面接するように第１面（１３８ａ）と第３面（１３８ｃ）からなる窪んだ部分に装着される。それにより、カバープレート（２７１０）自体が吐出室（Ｄ）と導入室（Ｉ）の間の内部漏洩を防止するシーリング役割を果たすことができる。それによって、カバープレート（２７１０）とリアハウジングの隔壁（１３８）の間に別途のオーリング（Ｏ－ｒｉｎｇ）とオーリングのためのグルーブ加工を要しないので、部品数と加工時間及び費用が削減することができ、オーリングがグループから離脱する問題が発生しない。

【0052】

さらに、後述するように注入バルブ組立体（２７００）が段差を囲むように隔壁の第２面（１３８ｂ）に結合されるガスケットリテーナー（２７９０）を含むことによって、単一のシーリング部材（ガスケットリテーナー）により吐出室（Ｄ）と導入室（Ｉ）の間の内部漏洩を防止できる。

【0053】

この時隔壁（１３８）は円形に形成される注入バルブ組立体（２７００）と同じように円形に形成されることが好ましい。これによって、カバープレート（２７１０）が段差の窪んだ部分に装着して隔壁（１３８）の内部で導入室（Ｉ）を覆蓋できる。

【0054】

図５に図示されるようにカバープレート（２７１０）が注入バルブ（２７２０）が固定されるように支持しながらシーリングも満たすために、第１面（１３８ａ）と第２面（１３８ｂ）の高さの差（ｈ）はカバープレート（２７１０）の厚さ（ｔ１）と注入バルブ（２７２０）の厚さ（ｔ２）を合計したものより小さいのが好ましい。このような寸法を満たすことによって注入バルブ（２７２０）はカバープレート（２７１０）とガスケットリテーナー（２７９０）の間で圧迫されることによって固定されることができる。すなわち、注入バルブ（２７２０）は何れの場合でもガスケットリテーナー（２７９０）に接触されて固定されることができ、注入バルブ（２７２０）とガスケットリテーナー（２７９０）の間に適切な面圧が形成されるので、冷媒が注入バルブ（２７２０）を通じて流動する時に発生する振動による注入バルブ（２７２０）の破損が防止できる。

【0055】

カバープレート（２７１０）は位置決定ピンが貫通する第１位置決定ホール（２７１６）をさらに含む。また、締結ボルト（７７０）が隔壁（１３８）の内側に配置されるので、カバープレート（２７１０）の周りには締結ボルト（７７０）が通過するために半径方向内側に窪むように形成される第２締結溝（２７１４）が形成される。

【0056】

図３及び７に図示されるように、注入バルブ（２７２０）は円形の本体部（２７２６）及び本体部（２７２６）から一対の流入口（２７１２ａ、２７１２ｂ）に向かってそれぞれ延長される一対のバルブ部（２７２１ａ、２７２１ｂ）を含む。すなわち、第１流入口（２７１２ａ）を開閉するために本体部（２７２６）の一側から第１流入口（２７１２ａ）に向かって延長される第１バルブ部（２７２１ａ）及び第２流入口（２７１２ｂ）を開閉するために本体部（２７２６）の他側から第２流入口（２７１２ｂ）に向かって延長される第２バルブ部（２７２１ｂ）を含む。本実施例で第１バルブ部（２７２１ａ）と第２バルブ部（２７２１ｂ）は本体部（２７２６）の反対側で互いに並んで延長されている。本体部（２７２６）及び一対のバルブ部（２７２１ａ、２７２１ｂ）は部品数、大きさ、原価及び重量減少のために一体に形成されることが好ましい。

【0057】

この時、第１バルブ部（２７２１ａ）は第１流入口（２７１２ａ）上に配置される第１頭部（２７２２ａ）、そして第１頭部（２７２２ａ）と本体部（２７２６）を連結する第１脚部（２７２４ａ）からなることができる。同様に、第２バルブ部（２７２１ｂ）は第２流入口（２７１２ｂ）上に配置される第２頭部（２７２２ｂ）、そして第２頭部（２７２２ｂ）と本体部（２７２６）を連結する第２脚部（２７２４ｂ）からなることができる。

【0058】

本体部（２７２６）は第１位置決定ホール（２７１６）に連通されて位置決定ピンが貫通する第２位置決定ホール（２７２７）をさらに含む。また、注入バルブ（２７２０）の周りには、正確には本体部（２７２６）の周りには締結ボルト（７７０）が通過するために半径方向内側に窪むように形成される第３締結溝（２７２８）が形成される。

【0059】

図３及び８に図示されるようにガスケットリテーナー（２７９０）は、円形の本体部（２７９１）と、本体部（２７９１）から一対の流入口（２７１２ａ、２７１２ｂ）に向かってバルブプレート（２７３０）に近づくように傾斜するように延長される一対のリテーナー部（２７９４ａ、２７９４ｂ）及びリテーナー部を支持するために本体部（２７９１）と一対のリテーナー部（２７９４ａ、２７９４ｂ）をそれぞれ連結して傾斜するように形成される一対の支持部（２７９５ａ、２７９５ｂ）を含む。ガスケットリテーナーの本体部（２７９１）周り形状及び寸法は隔壁（１３８）の外側周り形状及び寸法と同じであることが好ましい。

【0060】

具体的に、ガスケットリテーナー（２７９０）は、第１バルブ部（２７２１ａ）に対応されるように本体部（２７９１）の一側から第１流入口（２７１２ａ）に向かって傾斜するように延長される第１リテーナー部（２７９４ａ）及び第２バルブ部（２７２１ｂ）に対応されるように本体部（２７９１）の他側から第２流入口（２７１２ｂ）に向かって延長される第２リテーナー部（２７９４ｂ）を含む。また、第１支持部（２７９５ａ）は本体部（２７９１）の他側と第１リテーナー部（２７９４ａ）を連結して、第２支持部（２７９５ｂ）は本体部（２７９１）の一側と第２リテーナー部（２７９４ｂ）を連結する。

【0061】

第１リテーナー部（２７９４ａ）と第２リテーナー部（２７９４ｂ）は本体部（２７９１）から延長されるほどバルブプレート（２７３０）に近づくように傾斜加工されるので、注入バルブ（２７２０）が開かれながら一対の流入口（２７１２）を開放する時にそれぞれ第１バルブ部（２７２１ａ）と第２バルブ部（２７２１ｂ）を支持しながら最大で開かれる位置を制限できる。本実施例で第１リテーナー部（２７９４ａ）と第２リテーナー部（２７９４ｂ）は第１バルブ部（２７２１ａ）と第２バルブ部（２７２１ｂ）に対応して本体部（２７９１）の反対側で互いに並んで延長されている。

【0062】

この時、注入バルブ（２７２０）がリテーナー部（２７９４）上で開かれれば流入口（２７１２）を通じて流入する冷媒が圧力損失なく後述する流出口（２７３６）に流動できるように、リテーナー部（２７９４）の前方には流動ホール（２７９６）が形成されることができる。本実施例で支持部（２７９５）は本体部（２７９１）から注入バルブ（２７２０）が開放される方向に最も遠く離隔されるリテーナー部（２７９４）の前方端部に連結されるので、流動ホール（２７９６）は支持部（２７９５）に形成されることができる。すなわち、第１支持部（２７９５ａ）に第１流動ホール（２７９６ａ）が備えられて第１流入口（２７１２ａ）を通じて流入する冷媒が第１流動ホール（２７９６ａ）を通じて後述する第１流出口（２７３６ａ）に直ぐに流れることができ、第２支持部（２７９５ｂ）に第２流動ホール（２７９６ｂ）が備えられて第２流入口（２７１２ｂ）を通じて流入する冷媒が第２流動ホール（２７９６ｂ）を通じて後述する第２流出口（２７３６ｂ）に直ぐに流れることができる。特に、リテーナー部（２７９４）と支持部（２７９５）は一列に配置されている。それによって、流入口（２７１２）を通じて流入する冷媒がリテーナー部（２７９４）の両側に流れず流動ホール（２７９６）を通じて流出口（２７３６）に直ぐに流れることができるので、ガスケットリテーナー（２７９０）を過ぎる冷媒の流動が干渉を受けず圧力損失が発生しない。

【0063】

また、流動ホール（２７９６）の開口される面は支持部（２７９５）から本体部（２７９１）の一部まで延長されて、本体部（２７９１）と水平する面と支持部（２７９５）の傾斜する面を含むことができ、冷媒の流動干渉がさらに最小化できる。

【0064】

ガスケットリテーナー（２７９０）は周りに、正確には本体部（２７９１）の周りにバルブプレート（２７３０）に向かって突出するビード部（２７９２）をさらに含む。図５に図示されるように、注入バルブ組立体（２７００）が組み立てられる時にビード部（２７９２）は注入バルブ（２７２０）の半径方向外側に配置される。これと共にガスケットリテーナー（２７９０）が段差を囲むように隔壁の第２面（１３８ｂ）に結合されてビード部（２７９２）が周りに形成されるので、締結ボルト（７７０）の締結力により隔壁（１３８）とバルブプレート（２７３０）間でビード部（２７９２）が押さえられながらその間をシーリングできる。

【0065】

具体的に、ビード部（２７９２）は半径方向外側の外側傾斜ビード部（２７９２ａ）、半径方向内側の内側傾斜ビード部（２７９２ｂ）及び外側傾斜ビード部（２７９２ａ）と内側傾斜ビード部（２７９２ｂ）を連結する突出ビード部（２７９２ｃ）を含む。本実施例で外側傾斜ビード部（２７９２ａ）と内側傾斜ビード部（２７９２ｂ）は同じ高さまで延長されて突出ビード部（２７９２ｃ）が平面に形成される。それによって、外側傾斜ビード部（２７９２ａ）は隔壁の第２面（１３８ｂ）とバルブプレート（２７３０）の間で組み立てられる時に圧迫されて、内側傾斜ビード部（２７９２ｂ）は隔壁の第１面（１３８ａ）とバルブプレート（２７３０）の間で組み立てられる時に圧迫されることができる。

【0066】

ガスケットリテーナー（２７９０）はまた締結ボルト（７７０）が貫通するための第４締結ホール（２７９７）と、第２位置決定ホール（２７２７）に連通されて位置決定ピンが貫通する第３位置決定ホール（２７９８）をさらに含む。この時、ビード部（２７９２）は締結ボルト（７７０）による締結力を支持して均等に伝達できるように第４締結ホール（２７９７）まで囲む。具体的に、第４締結ホール（２７９７）は外側傾斜ビード部（２７９２ａ）より半径方向内側に形成されて、内側傾斜ビード部（２７９２ｂ）とは重畳される位置に形成される。ただし、内側傾斜ビード部（２７９２ｂ）が第４締結ホール（２７９７）を過ぎる時には半径方向内側に迂回して第４締結ホール（２７９７）を囲むように配置される。

【0067】

次に、図３及び９に図示されるようにバルブプレート（２７３０）は円形のプレートに形成されて、一対のリテーナー部（２７９４ａ、２７９４ｂ）が装着されて一対の流入口（２７１２ａ、２７１２ｂ）を通じて流入する冷媒が収容される一対の傾斜空間（２７３４ａ、２７３４ｂ）と、一対の傾斜空間と連通されて冷媒が流出する一対の流出口（２７３６ａ、２７３６ｂ）を含む。すなわち、第１傾斜空間（２７３４ａ）には第１リテーナー部（２７９４ａ）が装着されて第１流入口（２７１２ａ）を通じて流入する冷媒が収容された後、第１流出口（２７３６ａ）を通じて流出して、第２傾斜空間（２７３４ｂ）には第２リテーナー部（２７９４ｂ）が装着されて第２流入口（２７１２ｂ）を通じて流入する冷媒が収容された後、第２流出口（２７３６ｂ）を通じて流出する。第１傾斜空間（２７３４ａ）と第２傾斜空間（２７３４ｂ）は第１リテーナー部（２７９４ａ）と第２リテーナー部（２７９４ｂ）に対応して傾斜を有するように窪むように形成されて、互いに並んで形成される。

【0068】

バルブプレート（２７３０）はまた固定スクロール（５００）の注入口側に突出する第１突出部（２７３２ａ）及び第２突出部（２７３２ｂ）をさらに含み、第１流出口（２７３６ａ）は第１傾斜空間（２７３４ａ）から第１突出部（２７３２ａ）を貫通して、第２流出口（２７３６ｂ）は第２傾斜空間（２７３４ｂ）から第２突出部（２７３２ｂ）を貫通する。それによって流出口（２７３６）に流出する冷媒が固定スクロール（５００）の注入口を通じて圧縮室（Ｃ）に供給されることができる。

【0069】

この時、流動ホール（２７９６）を通じて流動される冷媒が圧力損失なく直ぐに流出口（２７３６）に流出できるように、第１流出口（２７３６ａ）は第１流動ホール（２７９６ａ）と対応される位置に配置されて、第２流出口（２７３６ｂ）は第２流動ホール（２７９６ｂ）と対応される位置に配置されることが好ましい。

【0070】

バルブプレート（２７３０）はまた締結ボルト（７７０）が貫通するための第５締結ホール（２７３７）と、第３位置決定ホール（２７９８）に連通されて位置決定ピンが挿入される第４位置決定溝（２７３９）をさらに含む。バルブプレートの第５締結ホール（２７３７）は傾斜空間（２７３４）の半径方向外側に配置されている。

【0071】

それにより、位置決定ピンが第１位置決定ホール（２７１６）、第２位置決定ホール（２７２７）及び第３位置決定ホール（２７９８）を貫通して第４位置決定溝（２７３９）に挿入されることによって、カバープレート（２７１０）、注入バルブ（２７２０）、ガスケットリテーナー（２７９０）及びバルブプレート（２７３０）が整列されることができる。

【0072】

また、締結ボルト（７７０）が第５締結ホール（２７３７）及び第４締結ホール（２７９７）を貫通して第３締結溝（２７２８）及び第２締結溝（２７１４）を過ぎて第１締結溝（１３８ａ）に締結されることによって、注入バルブ組立体（２７００）がリアハウジング（１３０）に締結されることができる。

【0073】

この時、締結ボルト（７７０）が導入室（Ｉ）側に、具体的に隔壁の第１面（１３８ａ）に配置されているので冷媒が締結ボルト（７７０）が過ぎる空間を通じて漏洩する恐れがある。そのために、注入バルブ組立体には注入バルブ組立体（２７００）と締結ボルト（７７０）のヘッドの間を密封するための密封部が備えられることができる。

【0074】

本実施例で密封部（２７３８）は図３及び５に図示されるように締結ボルト（７７０）のヘッドが装着されるバルブプレート（２７３０）の一面に備えられ、バルブプレートの第５締結ホール（２７３７）を囲むように突出形成される。それにより、締結ボルト（７７０）が締結されて密封部（２７３８）と強く噛み合って、締結ボルト（７７０）のヘッドとバルブプレート（２７３０）の一面の間が密封できるので冷媒漏洩が防止される。

【0075】

しかし、これに限定されるのではなく、密封部が別途のオーリングなどで形成されて、締結ボルト（７７０）のヘッドとバルブプレート（２７３０）の一面の間に挿入されて締結ボルトを引き締める時に圧迫されることができるのはもちろんである。

【0076】

次に、図１０及び１１を参照して本発明の他の実施例によるガスケットリテーナー（３７９０）を説明する。
ガスケットリテーナー（３７９０）は前述したように締結ボルト（７７０）が貫通するための第４締結ホール（３７９７）と、注入バルブが開かれる方向に、すなわちバルブプレートに向かう方向に傾斜加工される一対のリテーナー部（３７９４ａ、３７９４ｂ）を含む。

【0077】

ただし、本実施例で一対のリテーナー部（３７９４ａ、３７９４ｂ）はガスケットリテーナー（３７９０）上で切開部により傾斜加工されている。具体的に、ガスケットリテーナー（３７９０）の本体部（３７９１）でＵ字状の切開部により切開された内側部分がリテーナー部（３７９４）に傾斜加工される。この時、各リテーナー部（３７９４）の両側にはリテーナー部の傾斜角度を維持するために、リテーナー部（３７９４）の両側とこれと向き合う本体部（３７９１）を連結する一対の翼部（３７９５）が備えられる。それにより、一対の翼部（３７９５）の一側にはＵ字状のメイン流動ホール（３７９６ｃ）が形成されることができ、他側には一字状の一対の補助流動ホール（３７９６ｄ）が形成されることができる。それにより、注入バルブが開かれればメイン流動ホール（３７９６ｃ）と一対の補助流動ホール（３７９６ｄ）を通じて、カバープレートの流入口に流入する冷媒がバルブプレートの傾斜空間に流動できる。

【0078】

ここで、ガスケットリテーナー（３７９０）は、第４締結ホール（３７９７）の半径方向外側周りに沿って延長されてカバープレートに向かって突出する第１ビード部（３７９２ｄ）、第４締結ホール（３７９７）の半径方向内側周りに沿って延長されてカバープレートに向かって突出する第２ビード部（３７９２ｅ）及び各リテーナー部（３７９４）に備えられてバルブプレートに向かって突出するバルブビード部（３７９２ｆ）を含むことができる。すなわち、第１ビード部（３７９２ｄ）と第２ビード部（３７９２ｅ）は同じ方向に突出する一方、バルブビード部（３７９２ｆ）は第１ビード部（３７９２ｄ）及び第２ビード部（３７９２ｅ）と反対方向に突出する。

【0079】

この時、漏洩の重要度によってビード部の高さと幅などを異に設定できる。第１ビード部（３７９２ｄ）は吐出室（Ｄ）での高圧の吐出圧力の漏洩を防ぐためのもので最も重要なビードである。また、第２ビード部（３７９２ｅ）はスクロールの回転によって圧縮室（Ｃ）内の圧力が導入室（Ｉ）内の圧力より高くなる時に冷媒が逆流するのを防ぐためものである。したがって、第１ビード部（３７９２ｄ）の突出する高さは第２ビード部（３７９２ｅ）の突出する高さより大きく形成されることができる。（図１３を参照）さらに、第１ビード部（３７９２ｄ）の幅も第２ビード部（３７９２ｅ）の幅より大きく形成されることができる。それにより、締結ボルト（７７０）の畜力が第１ビード部（３７９２ｄ）により多く入って確実なシーリングが可能になる。

【0080】

バルブビード部（３７９２ｆ）は第１ビード部（３７９２ｄ）及び第２ビード部（３７９２ｅ）と違ってシーリングが目的ではなく、注入バルブのバンディングポイント（ｂｅｎｄｉｎｇ ｐｏｉｎｔ）を正確に決めるためのものである。そのために、バルブビード部（３７９２ｆ）はリテーナー部（３７９４）に備えられてリテーナー部（３７９４）の傾斜が始まる地点に備えられることが好ましい。それにより、バルブビード部（３７９２ｆ）が注入バルブのバルブ部のバンディングが始まる地点、すなわちバンディング時に基準点になる部分を押すことができる。本実施例でバルブビード部（３７９２ｆ）はリテーナー部（３７９４）の幅を横切る方向に一対の補助流動ホール（３７９６ｄ）間に備えられている。

【0081】

特に、バルブビード部（３７９２ｆ）が第１ビード部（３７９２ｄ）及び第２ビード部（３７９２ｅ）と違ってバルブプレートに向かって突出することによって、注入バルブのバルブ部が完全に開かれた時にガスケットリテーナーのリテーナー部（３７９４）に全体面積が等しく接することができ、安定的に支持できる。（図１３参照）仮りにバルブビード部（３７９２ｆ）が第１ビード部（３７９２ｄ）及び第２ビード部（３７９２ｅ）と同様にカバープレートに向かって突出すれば、バルブビード部がバルブ部のバンディングが始まる地点を押すことはできるが、バルブ部が開かれる時にリテーナー部（３７９４）の面に不安定に接するのでバルブ部に破損の恐れがある。

【0082】

この時、バルブビード部（３７９２ｆ）の突出する高さは第２ビード部（３７９２ｅ）の突出する高さのように形成されることができる。この場合、第１ビード部（３７９２ｄ）の突出する高さは第２ビード部（３７９２ｅ）とバルブビード部（３７９２ｆ）の突出する高さより大きく形成されることができる。（図１３を参照）

【0083】

次に、図１２を参照して本発明の他の実施例による注入バルブ（３７２０）を説明する。
注入バルブ（３７２０）は前述したように流入口を開閉するようにバンディングされる一対のバルブ部（３７２１ａ、３７２１ｂ）を含む。ただし、本実施例で一対のバルブ部（３７２１ａ、３７２１ｂ）は注入バルブ（３７２０）の本体部（３７２６）で切開部により切開された内側部分に該当し、本体部（３７２６）に対してバンディング可能である。

【0084】

注入バルブ組立体がコンパクト化すれば注入バルブのバルブ部（３７２１）の長さも短くなるが、バルブ部の長さが短くなればバルブ部を開く時に必要な動力がさらに大きくなる。また、消費動力を低減するためにバルブ部（３７２１）の幅を減らせばバルブ部の開閉時に挙動が不安定になり歪むことが発生する恐れがある。

【0085】

これを解決するために、本実施例で一対のバルブ部（３７２１ａ、３７２１ｂ）のそれぞれには長さ方向に沿って延長されるホール（３７２９）が備えられる。本実施例でホール（３７２９）はバルブ部（３７２１）の幅方向上中間に備えられ、バルブ部（３７２１）のバンディングが始まる地点から長さ方向に略中間まで延長されている。すなわち、全体的なバルブ部（３７２１）の幅は広く維持し、ホール（３７２９）がバルブ部（３７２１）の幅を２つに分けて本体部（３７２６）と連結される部分の幅は小さくなることによってバルブ部（３７２１）を持ち上げるための動力を低減できる。
それにより、コンパクトなパッケージ内でも注入バルブ（３７２０）の開閉動作時に歪みを防止しながらも動力を低減できる。

【0086】

図１３は図１０のガスケットリテーナー（３７９０）及び図１２の注入バルブ（３７２０）を含む注入バルブ組立体がリアハウジング（１３８）に組み立てられた状態を図示する断面図である。注入バルブ組立体のカバープレートとバルブプレートは前述した構造が同一に適用されることができる。

【0087】

図１３を参照すれば、バルブビード部（３７９２ｆ）が第１ビード部（３７９２ｄ）及び第２ビード部（３７９２ｅ）と反対方向に突出したことが分かる。また、第１ビード部（３７９２ｄ）の高さと幅が第２ビード部（３７９２ｅ）及びバルブビード部（３７９２ｆ）の高さと幅より大きく形成されることが分かる。

【0088】

本発明は前述した特定の実施例及び説明に限定されず、請求範囲で請求する本発明の要旨を逸することなく本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば誰でも多様な変形実施が可能であり、そのような変形は本発明の保護範囲内にある。

【産業上利用可能性】

【0089】

本発明はスクロール圧縮機に関し、さらに詳細では、スクロール圧縮機の圧縮室に吸入圧の冷媒だけではなく中間圧の冷媒を導入して圧縮室から吐出される冷媒吐出量を増加させることによって圧縮機の性能及び効率を向上させることができ、注入バルブ組立体の形状を単純化して締結部材を導入室側に配置してポートの位置を自由に変更でき、注入バルブ組立体をコンパクト化できるスクロール圧縮機に関する。

【符号の説明】

【0090】

１００ ハウジング
１１０ センターハウジング
１２０ フロントハウジング
１３０ リアハウジング
１３１ 吐出ポート
１３１ａ 吐出ポート入口
１３３ 導入ポート
１３３ａ 導入ポート出口
１３４ 第１環形壁
１３６ 第２環形壁
１３８ 隔壁
１３８ａ 第１面
１３８ｂ 第２面
１３８ｃ 第３面
１３９ 第１締結溝
２００ モーター
３００ 回転軸
４００ 旋回スクロール
５００ 固定スクロール
５１２ 固定スクロールの吐出口
６００ 吐出バルブ
７００ 注入バルブ組立体
７７０ 締結ボルト
２７００ 注入バルブ組立体
２７１０ カバープレート
２７１２ 流入口
２７１２ａ 第１流入口
２７１２ｂ 第２流入口
２７１４ 第２締結溝
２７１６ 第１位置決定ホール
２７２０、３７２０ 注入バルブ
２７２１ａ 第１バルブ部
２７２１ｂ 第２流入口
２７２２ａ 第１頭部
２７２２ｂ 第２頭部
２７２４ａ 第１脚部
２７２４ｂ 第２脚部
２７２６、２７９１、３７２６、３７９１ 本体部
２７２７ 第２位置決定ホール
２７２８ 第３締結溝
２７３０ バルブプレート
２７３２ａ 第１突出部
２７３２ｂ 第２突出部
２７３４ 傾斜空間
２７３４ａ 第１傾斜空間
２７３４ｂ 第２傾斜空間
２７３６ 流出口
２７３６ａ 第１流出口
２７３６ｂ 第２流出口
２７３７ 第５締結ホール
２７３８ 密封部
２７３９ 第４位置決定溝
２７９０、３７９０ ガスケットリテーナー
２７９２ ビード部
２７９２ａ 外側傾斜ビード部
２７９２ｂ 内側傾斜ビード部
２７９２ｃ 突出ビード部
２７９４、３７９４ リテーナー部
２７９４ａ 第１リテーナー部
２７９４ｂ 第２リテーナー部
２７９５ 支持部
２７９５ａ 第１支持部
２７９５ｂ 第２支持部
２７９６ 流動ホール
２７９６ａ 第１流動ホール
２７９６ｂ 第２流動ホール
２７９７、３７９７ 第４締結ホール
２７９８ 第３位置決定ホール
３７２０バルブ部
３７２９ ホール
３７９２ｄ 第１ビード部
３７９２ｅ 第２ビード部
３７９２ｆ バルブビード部
３７９５ 翼部
３７９６ｃ メイン流動ホール
３７９６ｄ 補助流動ホール

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【国際調査報告】