(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】積層グレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20241003BHJP
C03C 17/245 20060101ALI20241003BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20241003BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20241003BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 F
C03C27/12 D
C03C17/245 A
C03C17/36
C03C17/34 Z
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517172
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022076625
(87)【国際公開番号】W WO2023052284
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】オウ, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ボードゥアン, アンネ-クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヘヴェシ, カドサ
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
4G061
【Fターム(参考)】
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4G061DA14
4G061DA23
4G061DA29
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4G061DA38
(57)【要約】
本発明は、積層グレージングに関し、特に、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層を含む積層グレージングに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインと、前記第1のペインの前記内面を前記第2のペインの前記内面に接合する熱可塑性中間層とを含む積層グレージングであって、
a.前記熱可塑性中間層が、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成され、
b.前記第1のペインの前記内面、又は前記第2のペインの前記内面の少なくとも一方に、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが設けられる、
積層グレージング。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱可塑性フィルム層が、少なくとも20%の再利用材料、又は少なくとも60%の再利用材料、又は100%の再利用材料を含む、請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項3】
前記熱可塑性中間層が、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層である、請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記少なくとも1つの熱可塑性フィルム層が、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリビニルクロリド、ポリ(ビニルクロリド-コ-メタクリレート)、ポリエチレン、ポリオレフィン、エチレンアクリレートエステルコポリマー、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸ブチル)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、及び酸コポリマーから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記少なくとも1つの熱可塑性フィルム層が、前記機能性コーティングのケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとする前記トップコート層に接触している、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記機能性コーティングが、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項7】
前記トップコート層が0.5~22nmの全幾何学的厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記トップコートが、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン及びジルコニウムの混合酸化物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛及びスズの混合酸化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積される、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項9】
ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとする前記トップコート層が、3.2の最小Si/Zr原子比を有することができる、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項10】
ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとする前記トップコート層が、12.0の最大Si/Zr原子比を有することができる、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項11】
積層グレージングの提供方法であって:
a.内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインとを提供するステップと;
b.前記第1のペインの前記内面、又は前記第2のペインの前記内面の一方の上に、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコートを含む機能性コーティングを提供するステップと;
c.少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成された熱可塑性中間層を提供するステップと;
d.前記熱可塑性中間層によって前記第1のペインの前記内面を前記第2のペインの前記内面に積層して、前記積層グレージングを形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む前記機能性コーティングが真空蒸着方法によって設けられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
積層グレージング中の少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に確実に接着させるための、機能性コーティング上のケイ素及びジルコニウムの混合窒化物を含むトップコート層の使用。
【請求項14】
前記機能性コーティングが、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記トップコートが、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン及びジルコニウムの混合酸化物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛及びスズの混合酸化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積される、請求項13又は14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層グレージングに関し、特に、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層を含む積層グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、積層グレージングには、熱可塑性中間層によって互いに接着された少なくとも2つのペインが設けられる。このようなガラスの利点は、破壊によって粉々になって破片が失われることはなく、損傷した場合に熱可塑性中間層に結合したままになることである。積層グレージングは、典型的には、ガラスの破壊が回避されるべき場合、及び/又は音響減衰のために、輸送用途又は建築用途に使用することができる。
【0003】
ある程度の遮音特性を有する場合があるポリビニルブチラール(PVB)又はエチレン-酢酸ビニル(EVA)などのさまざまな種類の熱可塑性中間層を用いることができる。幾つかの場合では、特定の性質を得るために、異なる種類の熱可塑性中間層材料の組み合わせを用いることができる。
【0004】
再利用される熱可塑性材料は、使用済み材料、及び/又は例えば切断及びサイズ調整の後に得られる新しい熱可塑性材料の残りの部分の再処理によって得ることができる。積層グレージングの個別の構成要素の分解及び回収は、1990年代初期から知られている。複合材料の再利用は、これまではあまり考慮されなかったが、工業用途に関連する環境問題に対する関心の高まりを考慮すると、現在では状況が変化している。
【0005】
したがって、廃棄物の再利用における継続的な改善は、積層グレージングの分野において使用される再利用熱可塑性材料の開発につながっている。
【0006】
例えば、独国実用新案第202020102125U1号明細書には、2つのガラスシートが結合するように非再利用PVBシートと再利用PVBシートとが並べて配置される積層グレージングが開示されている。しかしながら、ガラスシート上のコーティングへの言及はない。
【0007】
熱可塑性材料の再利用の分野における技術的努力にもかわらず、一部の再利用材料は、「バージン」材料又は「新しい」材料とも呼ばれる元の材料と厳密に同じ性質を示すことができない。例えば、再利用PVBは、「バージン」PVBよりも大きな収縮を示すことがあり、その黄色度がより顕著になる場合がある。
【0008】
このことは、特に、積層被覆ガラスの場合、特にマグネトロンスパッタリングされたコーティングを有する場合に、問題となることが分かり、品質低下によって接着特性及び耐破損性が損なわれることが分かった。再利用材料の品質のわずかな低下は容認されうるが、安全性のわずかな低下は許容されない場合がある。
【0009】
被覆ガラス基材は、積層グレージングの分野においてよく知られている。それらのコーティングによって、太陽光制御、熱制御、又はその他の機能を付与することができる。このような被覆ガラス基材は、熱可塑性材料を用いて積層された形態で使用することができる。再利用熱可塑性材料が増加すると、実際には、これらの材料の一部は、被覆ガラス基材との接着において一貫した品質を示すことができないように思われる。したがって、すべてのコーティングが、再利用材料を含む熱可塑性中間層に直接接触して使用できるとは限らないことが確認された。このことによって、構成要素の変化によって最終的に最終製品の破壊が生じうるので、自動化生産ラインにおいて問題となりうる。この問題は、現在までに開発された標準的なコーティングを有する「バージン」PVBを用いる場合には生じなかった。この製造における危険性は容認することができない。
【0010】
したがって、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対する適合性を有する被覆基材を提供する必要性が見出されている。
【0011】
驚くべきことに、本出願人は、マグネトロンスパッタリングされた機能性コーティングの上部保護層として、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を使用することで、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対する適合性及び接着を大幅に改善することができ、同時に、高温熱処理に対する良好な抵抗性、並びに良好な耐薬品性及び機械的抵抗性を維持できることを発見した。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインと、第1のペインの内面を第2のペインの内面に接合する熱可塑性中間層とを含む積層グレージングであって、
a.熱可塑性中間層が、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成され、
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の少なくとも一方に、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが設けられる、
積層グレージングを提供する。
【0013】
本発明の目的のため、「内面」という用語は、接合される熱可塑性中間層に面するガラスペインの表面を示し、「外面」という用語は、「内面」とは反対側のガラスペインの表面を示す。
【0014】
本発明は、積層グレージングの提供方法であって:
a.内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインとを提供するステップと;
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の一方の上に、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコートを含む機能性コーティングを設けるステップと;
c.少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成された熱可塑性中間層を提供するステップと;
d.熱可塑性中間層によって第1のペインの内面を第2のペインの内面に取り付けて、積層グレージングを形成するステップと、
を含む、方法も提供する。
【0015】
最後に、本発明は、積層グレージング中の少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に確実に接着させるための、機能性コーティング上での、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物を含むトップコート層の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の積層グレージングは、内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインと、第1のペインの内面を第2のペインの内面に接合する熱可塑性中間層とを含み、
a.熱可塑性中間層は、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成され、
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の少なくとも一方に、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが設けられる。
【0017】
第1及び第2のペインは、ガラスシート、又はプラスチックシートであって、ポリ(メチルメタ)アクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、若しくはそれらの混合物を含む若しくはからなるプラスチックシートであってよい。基材の透明性は、光透過率(T)が10%を超える、或いは20%を超える、或いは30%を超える場合に考慮される。
【0018】
ほとんどの場合では、第1及び第2のペインの少なくとも1つがガラス基材である。しかしながら、第1及び第2のペインの両方がガラス基材であることが好ましい。
【0019】
ガラスは、従来のフロートガラス又は板ガラスなどのあらゆる種類のものであってよく、あらゆる光学的性質、例えば、10%を超える可視透過率、紫外透過率、赤外透過率、及び/又は全太陽エネルギー透過率のあらゆる値を有するあらゆる組成であってよい。
【0020】
ガラスは、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、又はアルミノシリケートガラスであってよい。ガラスは、通常の透明、着色、又は超透明(すなわち、より低いFe含有量及びより高い透過率)のガラス基材であってよい。ガラス基材のさらなる例としては、透明、緑色、ブロンズ色、又は青緑色のガラス基材が挙げられる。
【0021】
ガラスは、アニールガラス、強化ガラス、又は熱強化ガラスであってよい。
【0022】
第1及び第2のペインは、独立して、0.5mm~約15mm、或いは0.5mm~約10mm、或いは0.5mm~約8mm、或いは0.5mm~約6mmの範囲の厚さを有することができる。
【0023】
本積層グレージング中の第1及び第2のペインは、0.5~3mmの範囲の厚さを有することができる。
【0024】
両方のペインは、同じ厚さを有することができ、例えば0.5mm、又は0.8mm、又は1.2mm、又は1.6mm、又は2.1mm、又は3mmの厚さを有することができる。ガラスの厚さのこのような対称構造によって、プロセスが容易になり、積層プロセスの従来のサイズ調整が可能となる。
【0025】
両方のペインが異なる厚さを有し、非対称の積層グレージングが得られてもよく、例えばペイン1=0.5mm及びペイン2=2.1mm、又はペイン1=0.8mm及びペイン2=2.1mm、又はペイン1=0.5mm及びペイン2=1.6mm、ペイン1=0.8mm及びペイン2=1.6mm、又はペイン1=1.6mm及びペイン2=2.1mmであってよい。ガラス厚さのこのような非対称構造によって、湾曲及び/又は重量管理の自由度、及び/又は光/太陽光変調の自由度を得ることができる。
【0026】
本発明の範囲内では、熱可塑性中間層は、少なくとも10%の再利用材料、或いは少なくとも20%の再利用材料、或いは少なくとも60%の再利用材料、或いは100%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成される。典型的には、熱可塑性中間層の残りは、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層と同じ種類又は異なるものであってよいバージン材料から形成されてよい。
【0027】
本発明の範囲内では、少なくとも1つの熱可塑性フィルム層の再利用材料は、積層プロセスの残りの部分、廃棄ロール、又は余剰材料から回収された材料を含むことができる。すなわち、積層ステップ中に処理されており、最終の積層体から切り離される熱可塑性フィルム層を回収して集めて、混合し再処理して、再利用材料を得ることができる。このような再利用材料は、典型的には、種々の供給源の初期材料の混合物から得られ、そのため、「新しい」又は「バージン」熱可塑性フィルム層の場合よりも化学組成が大きく変動する。実際、「新しい」又は「バージン」熱可塑性材料は、典型的には再現可能で調整された組成を有し、特定の化学組成の結果として経時により変化せず一定であり、したがって特定のイオンの存在は、それらの起源及び供給業者によって規定される。熱可塑性材料は、典型的にはガラスと「新しい」熱可塑性フィルムとの間で十分な接着性を維持し、それによって材料のガラスペインへの接着を確実にするための接着力調整剤として使用される金属塩、又は好ましくはアルカリ金属塩、又はさらにより好ましくはアルカリ土類金属塩を典型的には含む。
【0028】
例えば、あるPVBシート製造会社からの「新しい」熱可塑性材料(PVB)は、Mg及びNaのイオンの存在、又はMg及びKのイオンの存在を特徴とする場合があり、一方、別のPVBシート製造会社からの「新しい」熱可塑性材料(PVB)は、Mg及びNaのイオンに加えてK及びSのイオンの存在を特徴とする場合がある。
【0029】
他方、再利用材料は、典型的には、異なる商業的供給源からの種々の初期の新しい熱可塑性材料の廃棄物を含み、したがって異なる組成を含み、そのため再利用後のそれらの燃焼によって、バッチごとに組成が変動し、異なる供給源の混合物から得られるので、元の新しい熱可塑性材料よりも多様なイオンを含む。
【0030】
本発明において有用な再利用材料は、典型的には、少なくともMg、Na、K、S、P、Li、Rb、Cs、Ca、Sr、及びBaのイオンを含む、幅広く変動する種類のイオンを含む組成を特徴とすることができる。したがって、これらのイオンは、再利用手順後の元の「新しい」又は「バージン」熱可塑性フィルム層から得られる金属塩の混合物の残留物である。
【0031】
理論によって束縛しようと望むものではないが、本発明者らは、SiZrNを含むトップコートは、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層中の上記変動するイオン混合物の存在と、上記イオンのそれぞれの量との影響を受けにくいことを見出した。
【0032】
幾つかの場合では、熱可塑性中間層は、同じ又は異なる組成を有することができる少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層のみから形成される。
【0033】
別の場合では、熱可塑性中間層は、少なくとも10%の再利用材料、或いは少なくとも20%の再利用材料、或いは少なくとも60%の再利用材料、或いは100%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層である。ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層は、100%再利用材料でできた熱可塑性フィルム層への確実な接着において、そのような材料への優れた適合性によって、特に有効となる。
【0034】
本明細書において使用される場合、「ポリマー中間層シート」、「中間層」という用語は、一般に、単層シート又は多層中間層を示すことができる。「単層シート」は、名称が示すように、1つの層として押し出された1つの又はモノリスの熱可塑性層であり、次にこれは2つのペインの積層に使用される。他方、多層中間層は、別々に押し出された層、同時押出された層、又は熱可塑性材料の別々の層と同時押出された層とのあらゆる組み合わせを含む複数の層を含むことができる。したがって、多層中間層は、例えば:一緒に組み合わされた2つ以上の単層シート(「複数層シート」);一緒に同時押出された2つ以上の層(「同時押出シート」);一緒に組み合わされた2つ以上の同時押出シート;少なくとも1つの単層シートと少なくとも1つの同時押出シートとの組み合わせ;少なくとも1つの複数層シートと少なくとも1つの同時押出シートとの組み合わせ、又は希望通りのシートのあらゆる別の組み合わせを含むことができる。
【0035】
熱可塑性フィルム層の典型的な材料としては、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリビニルクロリド、ポリ(ビニルクロリド-コ-メタクリレート)、ポリエチレン、ポリオレフィン、エチレンアクリレートエステルコポリマー、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸ブチル)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、及び酸コポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
好ましくは、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層は、エチレン酢酸ビニル及び/又はポリビニルブチラール及び/又はポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される材料を含む。ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層は、例えば「新しい」形態及び/又は再利用される形態で利用可能な材料に適合する。
【0037】
幾つかの実施形態では、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、ポリビニルブチラールフィルム層である。
【0038】
熱可塑性フィルム層は、透明又は半透明のポリマー中間層であってよい。しかしながら、装飾用途の場合、熱可塑性フィルム層は、着色されたり、パターンが形成されたりしてよい。幾つかの場合では、熱可塑性フィルム層は、フォトフォア、断熱粒子、赤外線吸収粒子、ポリマー分散液晶、又は懸濁粒子(SPD)を含むことができる。
【0039】
熱可塑性中間層は、例えば2つ以上の熱可塑性フィルム層を含むことができ、少なくとも1つは少なくとも10%の再利用材料を含む。すなわち、PVB(ポリビニルブチラール)、又はEVA(エチレン-酢酸ビニル)、又はPET(ポリエチレンテレフタレート)の熱可塑性フィルム層を一緒に使用することができ、但し少なくとも1つは少なくとも10%の再利用材料を含む。このことは、PETフィルムに赤外反射コーティングが設けられ、それを熱可塑性中間層内に挿入する必要がある場合に有用となり得る。
【0040】
少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、当技術分野において周知の方法によって得ることができ、それらの方法は本発明の主題ではない。熱可塑性材料の再利用方法では、典型的には細断、粉砕、並びに溶媒及び/又は水を用いた洗浄が、ガラス及び熱可塑性材料の分離のために行われ、次に存在する別の化学物質(安定剤、可塑剤、染料など)の上記材料からの分離、続いて抽出及び/又は濾過が行われる。次に、得られた熱可塑性材料は、例えばアルコールプロセスを用いて再び用いることができる。標準の(新しい/バージン)材料と類似又は同等の化学的及び物理的性質を有する材料が得られる種々の方法が存在する。使用することで、異なる特性が現れ、薄層の典型的なスタックに対する適合性が変化する。熱可塑性廃棄物の異なる色合いのため、再利用材料の色合いを中和するために、脱色ステップを含むことができ、又は顔料若しくは染料を再利用材料に加えることができる。
【0041】
少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、標準/新しい材料と同様の性質を有するように意図されるが、経験によると、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、前述の議論のようにバッチごとにイオン濃度が変動する場合がある。理論によって束縛しようと望むものではないが、このように変動する化学組成は、特にペインが機能性コーティングで被覆される場合に、ペイン、例えばガラスに対する接着性能が変動することの根本的原因となりうると考えられる。接着性能が低いと、耐穿孔性が低いことによって示される(大型球(big ball)落下試験)ように、最終的には耐衝撃性が低くなる。
【0042】
このような問題は、新しい種類の再利用熱可塑性材料の使用が増加することで生じた。
【0043】
少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、典型的には、小角レーザー光散乱を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって測定して50,000ダルトンを超え、又は500,000ダルトン未満、又は約50,000~約500,000ダルトン、又は約70,000~約500,000ダルトン、又はより好ましくは約100,000~約425,000ダルトンの分子量を有する。本明細書において使用される場合、「分子量」という用語は、重量平均分子量を意味する。
【0044】
少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、典型的には0℃~45℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0045】
少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、典型的には<5.0%の黄色度を有する。
【0046】
少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、典型的には<5.0%の収縮を有する。
【0047】
少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層の厚さは、0.25mm~2.54mm、0.25mm~2.29mm、38mm~1.52mm、0.51~1.27mm、又は0.38~0.89mmの範囲内であってよい。
【0048】
少なくとも10%の再利用材料を含むポリビニルブチラールの熱可塑性フィルム層の例としては、Kuraray Corp.のTrosifol(登録商標)、DupontのButacite(登録商標)G、EastmanのButvar若しくはSaflex(登録商標)、又はSekisui Corp.の製品が挙げられる。
【0049】
ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層によって、標準の熱可塑性フィルム層、又は少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層のいずれか使用が可能となる。一部の典型的なトップコートは、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対する適合性が不十分であり、より多くの破壊及び凝集破壊が生じることが分かった。
【0050】
本発明の範囲内では、少なくとも1つの少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層は、機能性コーティングのケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層に接触している。
【0051】
本発明の範囲内で、「機能性コーティング」という用語は、基材の1つ以上の物理的性質、例えば、光学的、熱的、化学的、又は機械的性質を変化させるコーティングを意味する。このような機能性コーティングは、後の処理中に基材から取り外すことは意図されていない。機能性コーティングは、典型的には永続的又は「取り外しできない」コーティングである。
【0052】
機能性コーティングは、ソーラーコントロールコーティング、伝導性コーティング、反射防止コーティング、反射コーティング、装飾コーティング及び/又は低放射率コーティングであってよい。
【0053】
機能性コーティングは、単層、又は薄層のスタック、すなわち多層コーティングであってよく、層は1つ以上の金属、非金属、半金属、半導体、若しくは合金、化合物、複合材料、それらの組み合わせ、又はブレンドを含むことができる。
【0054】
本発明における機能性コーティングを議論する場合、典型的には、基材表面から開始する順序で層に番号が付けられることが理解される。すなわち、第1の層は、基材上に取り付けられる第1のものであることが理解され、第2のものは、第1の層の上で基材に取り付けられる第2の層である。位置の連続する順序は、基材を基準として最上層まで向かうものと考えられる。
【0055】
本発明の範囲内で、「下方」、「下」、「下部」という用語は、基材から始まる層の順序内で次の層と向かい合う層の相対位置を示している。本発明の範囲内で、「上」、「上部」という用語は、基材から始まる層の順序内で次の層と向かい合う層の相対位置を示している。
【0056】
本発明の範囲内で、スタック中の層の相対位置は、必ずしも層間の直接接触を示すものではない。すなわち、第1及び第2の層の間に、ある中間層を設けることができる。例えば、本発明の目的が脅かされるのでなければ、基材の「上に堆積された」第1の層は、第1の層の膜と基材との間に位置する同じ又は異なる組成の1つ以上の別のコーティング層の存在を排除するものではない。
【0057】
幾つかの場合では、1つの層は、実際には数個の複数の個別の層で構成されてよい。
【0058】
機能性コーティングは、10~1000nmの範囲の厚さを有することができる。
【0059】
特に記載がなければ、本明細書におけるすべての層の厚さは、幾何学的な層の厚さである。
【0060】
本発明のある実施形態では、機能性コーティングは、太陽光制御コーティングであってよく、ここで太陽光制御コーティングは、可視、赤外、及び/又は紫外のエネルギーを反射又は吸収するコーティングを含み、建造物又は乗り物の過熱を回避するために使用される。
【0061】
本発明のある実施形態では、機能性コーティングは、導電性加熱窓コーティング、又はアンテナとして機能できる単層フィルム若しくは多層フィルムコーティングなどの導電性コーティングであってよい。
【0062】
機能性コーティングは、典型的には建築用グレージングの断熱特性の改善が意図される、典型的には可視波長、例えば約400nm~約780nmはコーティングを透過できるが、一部のより短波長の太陽赤外線エネルギー及びほとんどのより長波長の熱赤外線エネルギーは恐らくは反射されうる低放射率コーティングであってよい。「低放射率」とは、約0.3未満、或いは約0.2未満の放射率を意味する。
【0063】
機能性コーティングは、単層金属酸化物コーティング、多層金属酸化物コーティング、非金属酸化物コーティング、又は多層コーティングであってよい。
【0064】
本発明のある実施形態では、単層金属酸化物コーティングとしては、アルミニウム、ガリウム、又はハフニウムでドープされた酸化亜鉛;亜鉛及びスズの混合酸化物;フッ素又はアンチモンで場合によりドープされた酸化スズ;場合によりスズでドープされた酸化インジウムなどを含むコーティングが挙げられる。
【0065】
複数層コーティングの例としては、誘電体材料の複数層を含む誘電体コーティングが挙げられる。誘電体材料としては、金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、酸炭化物、酸炭窒化物などが挙げられる。誘電体コーティングとしては、交番する屈折率を有する誘電体材料の複数層を含むコーティング、すなわち高屈折率材料の少なくとも1つの層と低屈折率材料の少なくとも1つの層とを含むコーティングを挙げることができる。このようなコーティングは、典型的には、低屈折率又は高屈折率を有する材料の第1の層と、高屈折率又は低屈折率を有する材料の第2の層と、低屈折率又は高屈折率を有する材料の第3の層と、高屈折率又は低屈折率を有する材料の第4の層と、任意選択の保護層と含むコーティングで表される。低屈折率は、典型的には屈折率<1.8、又は典型的には<1.7であり、一方、高屈折率は、典型的には屈折率>1.8、又は典型的には≧1.9若しくは≧2.0である。幾つかの層は、1.7から<1.9までで構成される中間の屈折率を有することができる。屈折率は、典型的には550nmの波長において考慮される。このようなコーティングは、導入されたフレネル反射の利用に基づいて、反射防止目的又は反射目的で設計することができるが、その理由は、誘電体高反射コーティングは、フレネル反射を最大化するために強め合う干渉に基づいて光を反射し、一方、反射防止コーティングは、フレネル反射を最小化するために弱め合う干渉を利用するからである。
【0066】
幾つかの場合では、本積層グレージングは、機能性コーティングであって、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1である機能性コーティングを含むことができる。
【0067】
すなわち、積層グレージングは、内面及び外面を有する第1のペイン、内面及び外面を有する第2のペインと、第1のペインの内面を第2のペインの内面に接合する熱可塑性中間層とを含むことができ、
a.熱可塑性中間層は、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成され、
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の少なくとも一方に、機能性コーティングであって、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1であり、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが設けられる。
【0068】
トップコート層は、典型的には、基材表面から最も離れた層スタック中の最上層として理解される。すなわち、本積層グレージング中に使用される場合、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層は、熱可塑性中間層の少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層に接触している。
【0069】
ただ1つのIR機能層が存在する場合(n=1の場合)、第1の誘電体層は、第1又は下部の誘電体層と呼ぶことができ、それが上に堆積されるペインの表面に接触しており、第2の誘電体層は、最終又は上部の誘電体層と呼ぶことができ、空気と接触している。
【0070】
2つのIR機能層が存在する場合(n=2の場合)、第2の誘電体層は、2つのIR機能層の間に挟まれるので、「内部誘電体層」と呼ぶことができる。
【0071】
3つ以上のIR機能層が存在する場合(n=3以上の場合)、第2及び第3(及びさらなる)誘電体層は、それぞれが2つのIR機能層の間に挟まれるので、「内部誘電体層」と呼ぶことができる。次に最終誘電体層は、最終IR機能層の上の層である。
【0072】
IR層は、銀、金、パラジウム、白金、又はそれらの合金でできていてよい。IR層又は機能層は、2~30nm、或いは5~20nm、或いは7~18nmの厚さを有することができる。これらの厚さの範囲によって、所望の低放射率及び/又はソーラーコントロール機能及び/又は伝導率を実現しながら、良好な光透過率を維持することができる。
【0073】
誘電体層は、典型的には、Zn、Sn、Ti、Zr、Si、In、Al、Bi、Ta、Hf、Mg、Nb、Y、Ga、Sb、Mg、Cu、Ni、Cr、Fe、V、B、又はそれらの混合物の酸化物、窒化物、酸窒化物、又は酸炭化物を含むことができる。
【0074】
本発明のある実施形態では、誘電体層は、Zn、Sn、Ti、Zr、Si、In、Al、Nb、Sb、Ni、Cr、V、Mb、Mg又はそれらの混合物の酸化物、窒化物、酸窒化物、又は酸炭化物を含むことができる。或いは、誘電体層は、Zn、Sn、Ti、Zr、Si、In、Al、Nb、Sb、Ni、Cr、又はそれらの混合物の酸化物、窒化物、酸窒化物を含むことができる。
【0075】
これらの材料は、任意選択的にドープすることができ、ドーパントの例としては、アルミニウム、ジルコニウム、又はそれらの混合物が挙げられる。ドーパント又はドーパント混合物は、最大15重量%の量で存在することができる。
【0076】
誘電体材料の典型的な例としては、限定するものではないが、ケイ素をベースとする酸化物、ケイ素をベースとする窒化物、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、亜鉛をベースとする酸化物、酸化スズ、混合亜鉛-スズ酸化物、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、窒化アルミニウム、酸化ビスマス、混合ケイ素-ジルコニウム窒化物、及びそれらの少なくとも2つの混合物、例えばチタン-ジルコニウム酸化物、チタン-ニオブ酸化物、亜鉛-チタン酸化物、亜鉛-ガリウム酸化物、亜鉛-インジウム-ガリウム酸化物(IGZO)、亜鉛-チタン-アルミニウム酸化物(ZTAO)、亜鉛-スズ-チタン酸化物、亜鉛-アルミニウム-バナジウム酸化物、亜鉛-アルミニウム-モリブデン酸化物、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム酸化物、亜鉛-アルミニウム-クロム酸化物、亜鉛-アルミニウム-銅酸化物、亜鉛-チタン-ジルコニウム酸化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
誘電体層は、上記材料を含む本質的にからなる複数の個別の層からなることができる。
【0078】
誘電体層はそれぞれ0.1~200nm、或いは0.1~150nm、或いは1~120nm、或いは1~80nmの範囲の厚さを有することができる。異なる誘電体層は異なる厚さを有することができる。すなわち、第1の誘電体層は、第2又は第3又はあらゆる別の誘電体層の厚さと同じ又は異なる、より大きい又はより小さい厚さを有することができる。
【0079】
機能性コーティングは、少なくとも1つのIR層の下にシード層を含むことができ、及び/又はコーティングは、少なくとも1つのIR層の上にバリア層を含むことができる。シード層は、典型的には、IR材料の良好な品質の膜の形成を促進するために設けられ、すなわち、IR材料の均一で安定な層を得るために設けられる。バリア層は、典型的には、その上のあらゆる層の形成によって誘発される劣化からのIR材料の保護を促進するため、例えば、IR層の品質を低下させることがある酸素又は酸素含有種から保護し、熱処理による劣化からも保護するために設けられる。
【0080】
所与のIR層には、シード層若しくはバリア層のいずれか、又はその両方を設けることができる。第1のIR層には、シード層及びバリア層のいずれか一方又は両方を設けることができ、第2のIR層には、シード層及びバリア層のいずれか一方又は両方を設けることができ、そのようにさらに続けることができる。このような構成は互いに排他的なものではない。シード層及び/又はバリア層は、0.1~35nm、或いは0.5~25nm、或いは0.5~15nm、或いは0.5~10nmの厚さを有することができる。
【0081】
機能性コーティングは、少なくとも1つの機能層の上に接触して設けられる、<15nm、或いは<9nm、或いは<5nmの厚さを有する犠牲材料の薄層を含むこともでき、上記厚さは少なくとも0.2nmである。犠牲材料の例としては、チタン、亜鉛、ニッケル、クロム、ニオブ、タンタル、Niの酸化物、Ni合金の酸化物、Crの酸化物、Cr合金の酸化物、NiCrOx、NiCrOxNy、酸化亜鉛、酸化スズ、若しくは別の適切な材料、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0082】
被覆物品の透過率を選択的に変化させるために調節された吸収層を誘電体層に設けることができる。ある例では、色に悪影響を与えることなく被覆物品の透過率が大幅に調節されるように、上記吸収層の厚さを調節することができる。吸収層の例としては、Ni、Cr、NiCr、NiCrNx、NiCrW、CrN、ZrN、TiN、Ti、Zr、NiOxなどが挙げられる。少なくとも1つのIR層が吸収層の上に位置するように、このような吸収層を配置することができ、場合により、このような吸収層は、窒化ケイ素を含む第1及び第2の層の間に挟まれそれらに接触することができる。吸収層は0.5~10nmの範囲の厚さを有することができる。
【0083】
低放射率コーティングとして機能する機能性コーティングの第1の例は、少なくとも1つの銀層を含み、基材/MeO/ZnO:AlSi/Ag/AlSi-MeOの順序を含み、ここで、MeOは、SnO2、TiO2、In2O3、Bi2O3、ZrO2、Ta2O5、SiO2、若しくはAl2O3、又はそれらの混合物などの金属酸化物である。
【0084】
低放射率コーティングとして機能する機能性コーティングの第2の例は、窒化ケイ素を含む第1の誘電体層と;第1のNi又はNiCrを含む層と;銀を含む赤外(IR)反射層と;第2のNi又はNiCrを含む層と;窒化ケイ素を含む第2の誘電体層とを含む。
【0085】
機能性コーティングの第3の例は、
第1及び第2の層に接触しそれらの間に挟まれた赤外(IR)反射層を含み、上記第2の層はNiCrOxを含み;
少なくとも、NiCrOxを含む上記第2の層は、上記赤外(IR)反射層に近い上記第2の層の第1の部分が上記赤外(IR)反射層から離れている上記第2の層の第2の部分よりも酸化されないように、段階的に酸化されている。
【0086】
機能性コーティングの第4の例は:誘電体層と;誘電体層の上に位置する酸化亜鉛を含む第1の層と;酸化亜鉛を含む第1の層の上に接触して位置する銀を含む赤外(IR)反射層と;IR反射層の上に接触して位置するNiCrの酸化物を含む層と;NiCrの酸化物を含む層の上に接触して位置する酸化亜鉛を含む第2の層と;酸化亜鉛を含む第2の層の上に位置する別の誘電体層とを含む。
【0087】
機能性コーティングの第5の例は:第1の誘電体層と;少なくとも第1の誘電体層の上に位置する銀を含む第1の赤外(IR)反射層と;少なくとも第1のIR反射層及び第1の誘電体層の上に位置する酸化亜鉛を含む第1の層と;酸化亜鉛を含む第1の層の上に接触して位置する銀を含む第2のIR反射層と;第2のIR反射層の上に接触して位置するNiCrの酸化物を含む層と;NiCrの酸化物を含む層の上に接触して位置する酸化亜鉛を含む第2の層と;少なくとも、酸化亜鉛を含む第2の層の上に位置する別の誘電体層とを含む。
【0088】
機能性コーティングの第6の例は:第1の誘電体層と;誘電体層の上に位置する酸化亜鉛を含む第1の層と;酸化亜鉛を含む第1の層の上に接触して位置する銀を含む赤外(IR)反射層と;IR層の上に位置する酸化亜鉛を含む第2の層と;酸化亜鉛を含む第2の層の上に位置する第2の誘電体層とを含む。第1及び第2の誘電体層は、幾つかの層を含むことができ、特に、酸化亜鉛中の種々の組成の層、すなわち、酸化亜鉛、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛の層、又は重量基準で0.5~2の範囲の比Sn/Zn、若しくは重量基準で0.02~0.5の範囲の比Sn/Znを有する亜鉛及びスズの混合酸化物の層;窒化ケイ素の層;酸化チタンの層を含むことができる。酸化亜鉛を含む第1及び第2の層も、酸化亜鉛中で種々の組成を有することができ、すなわち特に、酸化亜鉛;アルミニウムでドープされた酸化亜鉛;亜鉛及びスズの混合酸化物;亜鉛、チタン、及びアルミニウムの混合酸化物の層を有することができる。
【0089】
機能性コーティングの第7の例は、順番に:第1の誘電体層;銀を含む第1のIR層;第2の誘電体層;第2のIR層;第3の誘電体層を含む。第1、第2、及び第3の誘電体層は、幾つかの層を含むことができ、特に、酸化亜鉛中の種々の組成の層、すなわち、酸化亜鉛、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛の層、又は重量基準で0.5~2の範囲の比Sn/Zn、若しくは重量基準で0.02~0.5の範囲の比Sn/Znを有する亜鉛及びスズの混合酸化物の層;亜鉛、チタン、及びアルミニウムの混合酸化物の層;窒化ケイ素の層;酸化チタンの層を含むことができる。幾つかの場合では、IR層には、独立して、Ti、Ni、NiCrなどの金属バリア層を設けることができる。
【0090】
機能性コーティングの第8の例は、順番に:第1の誘電体層;銀を含む第1のIR層;第2の誘電体層;第2のIR層;第3の誘電体層;第3のIR層;第4の誘電体層を含む。第1、第2、第3、及び第4の誘電体層は、幾つかの層を含むことができ、特に、酸化亜鉛中の種々の組成の層、すなわち、酸化亜鉛、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛の層、又は重量基準で0.5~2の範囲の比Sn/Zn、若しくは重量基準で0.02~0.5の範囲の比Sn/Znを有する亜鉛及びスズの混合酸化物の層;亜鉛、チタン、及びアルミニウムの混合酸化物の層;窒化ケイ素の層;酸化チタンの層を含むことができる。幾つかの場合では、IR層には、独立してTi、Ni、NiCrなどの金属バリア層を設けることができる。
【0091】
多種多様の機能性コーティングに、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を設けることができ、それによって、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対する適合性が得られるというトップコートの利点が得られる。
【0092】
ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物は、機能性コーティングの分野において知られている。しかしながら、驚くべきことに、この材料によって、特に、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対して改善された適合性が得られることが分かった。
【0093】
前述の議論のように、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層と被覆ガラスとの利用の増加によって、「バージン」熱可塑性材料では発生していない幾つかの適合性の問題が示されている。本トップコート層は、独立して、再利用物質を含む熱可塑性材料、又は再利用物質を含まない熱可塑性材料とともに使用することができる。
【0094】
トップコートは、第1又は第2のペインの少なくとも1つの内面上に設けられた機能性コーティングに対して上部の位置にあるものと理解される。すなわち、本トップコートは、ペインの第1の堆積面に対して最も離れて位置し、典型的には空気に接触している。
【0095】
ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層は、0.5~22nm、或いは1~20nm、或いは2~19nmの範囲の厚さを有することができる。トップコートの厚さの好ましい範囲は5~18nmであってよい。トップコートのこのような厚さにおいて、未積層のコーティング又はグレージングの耐久性と、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対するその適合性との間の最適な妥協点が得られる。
【0096】
トップコートは、機能性コーティングの上の最上層であり、上記機能性コーティングの最終層に直接接触する。幾つかの場合では、機能性コーティングの最終層によって、機械的及び/又は化学的耐久性は特に得られない。このような場合、本トップコートによって、機能性コーティングの機械的及び化学的耐久性が、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対する改善された適合性とともに得られる。
【0097】
幾つかの場合では、トップコートは、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン及びジルコニウムの混合酸化物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛及びスズの混合酸化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積することができる。
【0098】
例えば、機能性コーティングは、酸化チタン、酸化ジルコニウム、45~65重量%のTiを有するチタン及びジルコニウムの混合酸化物;又は酸化ケイ素、酸化アルミニウム;又はジルコニウム及びアルミニウムの層などのある程度の機械的及び/又は化学的耐久性が得られる最終層を最初に含むことができる。このような場合、本トップコートによって、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対する改善された適合性が得られ、場合により、特に摩耗の観点から、機能性コーティングのさらに優れた機械的及び化学的耐久性が得られる。
【0099】
機能性コーティングの最終層は、窒化ケイ素若しくは窒化アルミニウム、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層を含むこともできる。このような層は、2~50nm、或いは2~40nm、或いは2~35nmの範囲の厚さを有することができる。これによって、スタックの凝集(又は凝集力)を改善しながら、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対する改善された適合性が保証される特定の効果を有する。理論によって束縛しようと望むものではないが、本トップコートに接触して下にある窒化ケイ素若しくは窒化アルミニウム、又はそれらの混合物の層は、機能性コーティングとトップコートとの間の接着性が改善されるように組成の勾配が得られると考えられる。
【0100】
ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層は、3.2、又は4.0、又は4.5、又は5.5の最小Si/Zr原子比を有することができる。ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層は、12.0、又は10.0、又は9.0、又は8.0、又は6.5の最大Si/Zr原子比を有することができる。
【0101】
トップコート層は、1.7~2.6、或いは1.9~2.5の範囲の屈折率を特徴とすることができる。
【0102】
特定の状況では、5.5~12のSi/Zr原子比の範囲によって、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性材料に対する改善された適合性と、積層前のペインの機械的抵抗性及び耐薬品性との両方が得られることが分かった。典型的には、混合窒化物中に原子パーセントでZrよりもSiが多く存在する場合に、ジルコニウムケイ素窒化物の層中にSiよりもZrが多い従来技術のトップコートよりも良好な適合性が得られる。
【0103】
ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層は、0~10原子%、又は0.5~10原子%、又は0.5~5原子%の量の酸素を含むことができる。トップコートの機能が損なわれないのであれば、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対する適合性に関しては、酸素の存在は許容されうる。
【0104】
前述の別の実施形態と両立できる一実施形態では、本発明は、内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインと、第1のペインの内面を第2のペインの内面に接合する熱可塑性中間層とを含む積層グレージングであって、
- 熱可塑性中間層が、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成され、
- 第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の少なくとも一方に、5.5~12のSi/Zr比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが設けられる、
積層グレージングも提供する。
【0105】
すなわち、本発明は、内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインと、第1のペインの内面を第2のペインの内面に接合する熱可塑性中間層とを含む積層グレージングであって、
a.熱可塑性中間層が、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成され、
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の少なくとも一方に、機能性コーティングであって、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1であり、5.5~12のSi/Zr比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが設けられる、
積層グレージングも提供する。
【0106】
積層グレージングの提供方法であって:
a.内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインとを提供するステップと;
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の一方の上に、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコートを含む機能性コーティングを設けるステップと;
c.少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成された熱可塑性中間層を提供するステップと;
d.熱可塑性中間層によって第1のペインの内面を第2のペインの内面に積層して、積層グレージングを形成するステップと、
を含む、方法も本明細書に提供される。
【0107】
外側及び内側のペインは、前述の議論のあらゆる基材であってよい。これらは、それらを用いて構成される積層グレージングの意図される使用により、同じ場合も異なる場合もある。これらは、前述の議論のように同じ厚さ又は異なる厚さを有することができる。
【0108】
機能性コーティングは、種々の真空蒸着方法、例えばマグネトロンスパッタリング、LPCVD(低圧化学蒸着)、プラズマ強化化学蒸着PECVDによって設けることができる。同じスタックの個別の層は、異なる堆積方法によって設けることができる。
【0109】
しかしながら、機能性コーティング及びトップコートの両方の場合で、好ましい方法としてはマグネトロンスパッタリングが挙げられる。
【0110】
パラメーターとしては、kWの単位の出力(P)、アンペアの単位の電流(I)、及びmbarの単位の圧力(Press.)が挙げられる。アルゴン、酸素、窒素、又はそれらの混合物などのガスを用いて、設けられる層にガス流を適応させることができる。
【0111】
トップコートは、好ましくは、前述の議論のSi/Zrの原子比を得るために、窒素を含む雰囲気中、又は窒素/アルゴン雰囲気中、場合により前述の議論の酸素量に到達するためなどの限定された酸素流を用いて、50~80重量%のSi及び20~50重量%のZrを含むSi及びZrをベースとする金属ターゲットから得ることができる。
【0112】
例えば、Si及びZrをベースとする金属ターゲットは、50重量%のSi、或いは60重量%のSi、或いは65重量%のSi、或いは75重量%のSi、或いは80重量%のSiを含むことができる。
【0113】
例えば、Si及びZrをベースとする金属ターゲットは、20重量%のZr、或いは25重量%のZr、或いは35重量%のZr、或いは40重量%のZr、或いは50重量%のZrを含むことができる。
【0114】
機能性コーティング及びトップコートを堆積する前又は後に、第1及び/又は第2のペインの熱処理を行うことができる。
【0115】
第1又は第2のペインの内面の少なくとも一方には、機能性コーティング及びトップコートが設けられるが、実際にはあらゆる別の表面に、異なる又は同じ機能性コーティングを設けることもでき、本トップコートは設けられる場合も設けられない場合もある。すなわち、積層グレージングには、同じ場合も異なる場合もある少なくとも2つの機能性コーティングを設けることができ、そのそれぞれにケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコートを設けることができる。
【0116】
熱処理プロセスは、コーティングが設けられたペインの、大気中、約560℃を超える温度、例えば560℃~700℃の間の温度への加熱又は曝露を伴うことができる。別の熱処理プロセスは、セラミック又はエナメル材料の焼結、二重グレージングユニットの真空封止、及び湿式コーティングされた低反射コーティング若しくはアンチグレアコーティングの焼成であってよい。
【0117】
熱処理プロセスは、特にこれが曲げ及び/又は熱強化及び/又は熱硬化作業である場合には、少なくとも600℃の温度で少なくとも10分間、12分間、若しくは15分間、少なくとも620℃の温度で少なくとも10分間、12分間、若しくは15分間、又は少なくとも640℃の温度で少なくとも10分間、12分間、若しくは15分間行うことができる。
【0118】
積層ステップは、カレンダー(ニップロール)又は真空バッグ/リングのいずれかを使用する典型的なガラス積層プロセスによって行うことができる。第1のプロセスは:(1)2つのペイン及び中間層を組み立てるステップと;(2)上記組立体をIR放射源又は対流手段によって短時間加熱するステップと;(3)第1の脱気のため上記組立体を加圧ニップロールに通すステップと;(4)約60℃~約120℃への上記組立体の2回目の加熱を行って、中間層の端部を封止するのに十分な組立体の一時的接着力を得るステップと;(5)上記組立体を第2の加圧ニップロールに通して、中間層の端部をさらに封止し、さらなる取り扱いを可能にするステップと;(6)110℃~150℃の間の温度、及び10~15Barの範囲の圧力で10~120分の時間の上記組立体のオートクレーブ処理を行うステップとを含む。真空バッグ/リングプロスは、(1)2つのペイン及び中間層を組み立てることと;(2)1~500mbarの間の真空を5~30分間使用することと、(3)真空を維持しながら、上記組立体をIR放射源又は対流手段によって短時間加熱することと、(4)冷却し、真空を開放することと、(5)110℃~150℃の間の温度、及び10~15Barの範囲の圧力で10~120分の時間の上記組立体のオートクレーブ処理を行うこととを含む。
【0119】
本明細書において得られる積層グレージングは、輸送用途又は建築用途に有用であり、又は積層グレージングの用途を見出すことができるあらゆることに有用である。これは、着色又はテクスチャー加工が行われる場合は、審美性のため;安全性のため;音響快適性のために設計することができる。輸送用途としては、ウインドシールド、ルーフ、操縦室、横窓、バックライトが特に挙げられる。建築用途としては、カーテンウォール、窓、ドア、店舗のディスプレイ、冷蔵庫のドアなどが挙げられる。
【0120】
本発明による積層ガラスは、乗り物分野の高い安全性要求を満たす。これらの要求は、典型的には、当業者に周知のECE R43球落下試験などの規格化された破壊、衝撃、及びすりきずの試験によって確認される。
【0121】
本発明による積層ガラスは、トップコート層によって機能性コーティングに付与される接着力及び強度によって、これも当業者に周知のパメル(pummel)試験における機械的抵抗性の要求をさらに満たす。
【0122】
したがって、積層グレージングの少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に接触する本トップコート層によって、2つのガラスペインと熱可塑性中間層との間で高レベルの接着力が得られ、それによって積層グレージングは高い耐衝撃性を有する(大型球落下試験)。
【0123】
積層された層に対する積層グレージングのシートの接着は、典型的には、0(接着なし)から10(試験において完全な接着)の間のパメル値が得られるパメル試験によって評価される。3~7の間のパメル値が、自動車用途の積層ウインドスクリーンの外側ペインに通常要求される。少なくとも1つのペインに関して、弱い区画は3以下、好ましくは2以下のパメル値を有することができる。
【0124】
本積層グレージングは、トップコート層によって機能性コーティングに付与される接着力及び凝集力によって、パメル試験において機械的抵抗性を示し、そのため積層グレージング中で接着破壊は起こらない。実際、機能性コーティング上にケイ素及びジルコニウムの混合窒化物を含むトップコート層が存在することによって、接着が確実になることが分かった。
【0125】
最後に、本発明は、積層グレージング中の少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に確実に接着させるための、機能性コーティング上のケイ素及びジルコニウムの混合窒化物を含むトップコート層の使用に関する。
【0126】
好ましい使用では、機能性コーティングは、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含むことができ、n≧1である。
【0127】
最も好ましい使用では、トップコートは、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン及びジルコニウムの混合酸化物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛及びスズの混合酸化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積することができる。
【0128】
最後の利点は、トップコートによって、積層ステップが行われうる前に良好な耐薬品性及び機械的抵抗性も得られることであり、これによって被覆されたペインは保管、処理、又は輸送中に損傷が生じない。
【0129】
したがって、上記に適合する特定の場合では、本発明は、5.5~12のSi/Zr比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層をさらに含む機能性コーティングで被覆された透明基材を含むグレージングを提供することができる。
【0130】
実際、上記グレージングが積層グレージング内に設けられず、ペインがガラスシートにある場合、特に5.5~12のSi/Zr原子比を有する場合の本トップコートは、特に摩耗の観点から、機能性コーティングの改善された機械的及び化学的耐久性が得られるが、二重グレージング又は三重グレージング又は真空断熱ガラスユニットなどの断熱ガラスユニットの製造に使用される接着剤及びシーラントに対する適合性も有することが分かった。実際、幾つかの状況では、断熱ガラスの接着を保証するシーラントは、被覆ペインに対して接着性の不足を示す場合があり、そのため、断熱ガラスユニットの気密性が保証されない場合がある。本トップコートこのようなシーラントに対して改善された適合性を有することができ、そのため端部の除去は不要である。
【0131】
グレージング上に存在するトップコート層は、0.5~22nmの全幾何学的厚さを有することができる。
【0132】
これは特に、機能性コーティングが、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1である場合である。
【0133】
このようなグレージングでは、トップコートは、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン及びジルコニウムの混合酸化物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛及びスズの混合酸化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積することができる。
【0134】
本発明は、以下の番号の付いた条項でさらに記載される。
【0135】
条項1:内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインと、第1のペインの内面を第2のペインの内面に接合する熱可塑性中間層とを含む積層グレージングであって、
a.熱可塑性中間層が、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成され、
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の少なくとも一方に、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが設けられる、
積層グレージング。
【0136】
条項2:少なくとも1つの熱可塑性フィルム層が、少なくとも20%の再利用材料、又は少なくとも60%の再利用材料、又は100%の再利用材料を含む、条項1による積層グレージング。
【0137】
条項3:熱可塑性中間層が、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層である、条項1による積層グレージング。
【0138】
条項4:熱可塑性中間層が、少なくとも20%の再利用材料、又は少なくとも60%の再利用材料、又は100%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層である、条項1又は3による積層グレージング。
【0139】
条項5:少なくとも1つの熱可塑性フィルム層が、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリビニルクロリド、ポリ(ビニルクロリド-コ-メタクリレート)、ポリエチレン、ポリオレフィン、エチレンアクリレートエステルコポリマー、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸ブチル)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、及び酸コポリマーから選択される、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0140】
条項6:少なくとも1つの熱可塑性フィルム層が、エチレン酢酸ビニル及び/又はポリビニルブチラール、及び/又はポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0141】
条項7:第1及び第2のペインが、独立して0.5mm~約15mmの範囲の厚さを有する、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0142】
条項8:積層体はガラス厚さが対称である、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0143】
条項9:積層体はガラス厚さが非対称である、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0144】
条項10:少なくとも1つの熱可塑性フィルム層が、機能性コーティングのケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層に接触している、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0145】
条項11:機能性コーティングが、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1である、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0146】
条項12:トップコート層が0.5~22nmの全幾何学的厚さを有する、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0147】
条項13:トップコートが、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン及びジルコニウムの混合酸化物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛及びスズの混合酸化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積される、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0148】
条項14:ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層が3.2の最小Si/Zr原子比を有することができる、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0149】
条項15:ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層が5.5の最小Si/Zr原子比を有することができる、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0150】
条項16:ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層が、12.0の最大Si/Zr原子比を有することができる、先行する条項のいずれか1つによる積層グレージング。
【0151】
条項17:積層グレージングの提供方法であって:
a.内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインとを提供するステップと;
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の一方の上に、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコートを含む機能性コーティングを設けるステップと;
c.少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成された熱可塑性中間層を提供するステップと;
d.熱可塑性中間層によって第1のペインの内面を第2のペインの内面に積層して、積層グレージングを形成するステップと、
を含む、方法。
【0152】
条項18:ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが、真空蒸着方法によって設けられる、条項17による方法。
【0153】
条項19:ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層が、真空蒸着方法によって設けられる、条項17又は条項18による方法。
【0154】
条項20:積層グレージング中の少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に確実に接着させるための、機能性コーティング上のケイ素及びジルコニウムの混合窒化物を含むトップコート層の使用。
【0155】
条項21:機能性コーティングが、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1である、条項20による使用。
【0156】
条項22:トップコートが、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン及びジルコニウムの混合酸化物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛及びスズの混合酸化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積される、条項20又は21による使用。
【0157】
条項23:機能性コーティングで被覆された透明基材を含むグレージングであって、機能性コーティングが、5.5~12のSi/Zr比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含むことを特徴とするグレージング。
【0158】
条項24:トップコート層が、0.5~22nmの全幾何学的厚さを有する、条項23によるグレージング。
【0159】
条項25:機能性コーティングが、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1である、条項23又は24によるグレージング。
【0160】
条項26:トップコートが、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン及びジルコニウムの混合酸化物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛及びスズの混合酸化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積される、先行する条項23~25のいずれか1つによるグレージング。
【0161】
条項27:トップコートが、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ素及びアルミニウムの混合窒化物、又はそれらの混合物の少なくとも1つを含む層の上に接触して堆積される、先行する条項23~26のいずれか1つによるグレージング。
【0162】
条項28:グレージングが、0.5mm~約15mm、或いは0.5mm~約10mm、或いは0.5mm~約8mm、或いは0.5mm~約6mmの範囲の厚さを有する、先行する条項23~27のいずれか1つによるグレージング。
【0163】
条項29:内面及び外面を有する第1のペインと、内面及び外面を有する第2のペインと、第1のペインの内面を第2のペインの内面に接合する熱可塑性中間層とを含む積層グレージングであって、
a.熱可塑性中間層が、少なくとも10%の再利用材料を含む少なくとも1つの熱可塑性フィルム層から形成され、
b.第1のペインの内面、又は第2のペインの内面の少なくとも一方に、機能性コーティングであって、n個の赤外反射(IR)層とn+1個の誘電体層とを、それぞれのIR層が2つの誘電体層で囲まれるように含み、n≧1であり、5.5~12のSi/Zr比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物をベースとするトップコート層を含む機能性コーティングが設けられる、積層グレージング。
【実施例】
【0164】
材料
【0165】
熱可塑性フィルム材料は、再利用ポリビニルブチラールのためにKuraray製のもの(GV100AR3???)を使用し、新しい/バージンポリビニルブチラールのバージンのためにEastman製のもの(RC41 ???)を使用した。
【0166】
以下の表中:
- Agは銀を表し、
- SiNは窒化ケイ素Si3N4の層を表し、
- TZOは、65重量%のTiO2及び35重量%のZrO2の比率(74原子%のTi及び26原子%のZrが得られる)を有するTiOx/ZrO2で構成されるTiZrOxのセラミックターゲットから得られるチタンジルコニウム混合酸化物の層であり、
- ZnOは、亜鉛金属ターゲットから得られるドーパントを有しない酸化亜鉛の層を表し、
- ZSO5は、52重量%のZn及び48重量%のSnを含む金属ターゲットから得られる混合された亜鉛-スズの層を表し、
- Tiは、金属ターゲットから得られるチタンの層を表す。
【0167】
試験方法
ECE R43に準拠した落下球試験を行った。
【0168】
第1の試験では、227gの重量の鋼球を外側ペイン2の上に8.5mの高さから落下させた。この試験は、積層ガラスの外側に対する石の衝突をシミュレートしている。球が積層ガラスによって停止し、これが貫通せず、衝突とは反対側の破片の量がある(厚さに依存する)量未満となる場合に、この試験に合格したと見なした。
【0169】
第2の試験では、2260gの重量の鋼球を内側ペイン1の上に4mの高さから落下させた。この試験は、乗り物の乗員の頭部の積層ガラス上への衝突をシミュレートしている。球が積層ガラスよって停止し、破壊から5秒以内に貫通しない場合に、この試験に合格したと見なした。
【0170】
パメル接着試験を使用することによって、熱可塑性中間層のガラスペインに対する接着を評価した(パメル接着値は単位を有しない)。この試験は、あらかじめ決定された時間の間-18℃で積層体をコンディショニングし、続いてガラスを粉砕するために0.45kg(1ポンド)のハンマーを用いて試料を連打する又は試料に衝突させることを含んだ。ガラスが中間層から落下することで得られる露出中間層材料の量によって接着を判断した。破壊され中間層シートに接着していないすべてのガラスは除去した。周知のパメルスケールの基準の組を用いて、中間層シートに接着して残留するガラスを視覚的に比較した。数字が大きいほど、シートに接着して残るガラスが多く、すなわち、パメル接着値0は中間層に接着して残存するガラスがないことを意味し、パメル値10は、100%のガラスが中間層に接着して残存したことを意味する。典型的なガラス/中間層/ガラス積層体の容認できる貫入抵抗(又は衝撃強度)を実現するためには、界面のガラス/中間層材料の接着レベルが約3~7パメル単位で維持されるべきである。容認できる貫入抵抗は、典型的なガラス/中間層/ガラス積層体の場合、3~7、好ましくは4~6のパメル接着値において実現される。2未満のパメル接着値では、衝撃中に典型的なガラス/中間層/ガラス中のシート及びガラスから失われるガラスが一般に多すぎ、積層完全性(すなわち、層間剥離)及び長期耐久性の問題も生じうる。7を超えるパメル接着値では、典型的なガラス/中間層/ガラスにおけるガラスのシートに対する接着が一般に強すぎ、エネルギー散逸が不十分で貫入抵抗が低い積層体が得られる場合がある。
【0171】
熱可塑性中間層のガラスペインに対する接着は、圧縮剪断試験(Compressive Shear Test)(CST)を使用することによって測定できる。この試験は、上部及び下部の金属製取付具で固定された積層グレージング試料からなる。(多くの場合、垂直力のみの伝達が保証される平坦面上の球(sphere-on-flat)の配置によって)圧縮荷重が加えられる上部取付具、上記荷重方向と、2つのガラスペインの間の積層された接着層(PVB、・・・)からなる平行平面試料とに対して垂直に並進することができる下部取付具。剪断応力及び圧縮応力の両方の組み合わせが生じるように、荷重方向に対して特定の角度に試料が向けられる。破壊するまで、力及び生じた変位を記録する。45°の荷重角度において、圧縮応力と剪断応力とは等しい。
【0172】
実施例1及び2並びに比較例1~3
2.1mmの厚さを有する透明フロートガラスの第1のガラスペイン上に、2つの誘電体層の間に挟まれた1つの赤外反射(IR)層を含む典型的な機能性コーティングを以下のように設けた:
ガラス/SiN(41nm)/NiCr(1nm)/Ag(10nm)/NiCr(1nm)/SiN(48nm)/トップコート(16nm)。
【0173】
0.76mmの熱可塑性フィルム層によって、第1のガラスペインを2.1mmの厚さの透明フロートガラスの第2のガラスペインに積層した。
【0174】
実施例1では、トップコートは、6.0のSi/Zr原子比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物の層であり、熱可塑性フィルム層は100%の再利用材料を含んだ。
【0175】
実施例2では、トップコートは、4.6のSi/Zr原子比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物の層であり、熱可塑性フィルム層は100%の再利用材料を含んだ。
【0176】
比較例1では、トップコートは、65重量%のTiO2及び35重量%のZrO2を含むチタン及びジルコニウムの混合酸化物の層であり、熱可塑性フィルム層は100%の再利用材料を含んだ。
【0177】
比較例2では、トップコートは、65重量%のTiO2及び35重量%のZrO2のチタン及びジルコニウムの混合酸化物の層であり、熱可塑性フィルム層は、100%のバージン材料を含み、したがって0%の再利用材料を含んだ。
【0178】
比較例3では、トップコートは、6.0のSi/Zr原子比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物の層であり、熱可塑性フィルム層は、100%のバージン材料を含み、したがって0%の再利用材料を含んだ。
【0179】
前述の説明のように行った大型球及び小型球の落下試験、並びにパメル試験から、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物のトップコート層によって、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対して、チタン及びジルコニウムの混合酸化物の層と比較して、適合性が改善され、それによって、熱可塑性フィルム層への接着が改善されることが、明らかに示された。したがって、積層ガラスは高い耐破損性を特徴とする。比較例1は、コーティング/熱可塑性フィルム層界面で接着破壊を示し、そのため大型球落下試験は不合格であった。実際、衝突のため、大型球は、積層グレージングを貫通し、これは自動車のEuropean Automotive R43規制を考慮すると容認できない。
【0180】
熱可塑性フィルム層が再利用材料を含まない場合、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物のトップコート層によって、65重量%のTiO
2及び35重量%のZrO
2を含むチタン及びジルコニウムの混合酸化物のトップコート層と同等の適合性が得られる。
【0181】
実施例3及び比較例4
2.1mmの厚さを有する透明フロートガラスの第1のガラスペイン上に、3つの誘電体層の間の挟まれた2つの赤外反射(IR)層を含む典型的な機能性コーティングを以下のように設けた:
【0182】
0.76mmの熱可塑性フィルム層によって、第1のガラスペインを2.1mmの厚さの透明フロートガラスの第2のガラスペインに積層した。
【0183】
実施例3では、トップコートは、6.0のSi/Zr原子比を有するケイ素及びジルコニウムの混合窒化物の層であり、熱可塑性フィルム層は100%の再利用材料を含んだ。
【0184】
比較例4では、トップコートは、65重量%のTiO2及び35重量%のZrO2を含むチタン及びジルコニウムの混合酸化物の層であり、熱可塑性フィルム層は100%の再利用材料を含んだ。
【0185】
前述の説明のように行った大型球及び小型球の落下試験、並びにパメル試験から、ケイ素及びジルコニウムの混合窒化物のトップコート層によって、少なくとも10%の再利用材料を含む熱可塑性フィルム層に対して、チタン及びジルコニウムの混合酸化物の層と比較して、適合性が改善され、それによって、熱可塑性フィルム層への接着が改善されることが、明らかに示された。
【0186】
比較例4は、コーティング/熱可塑性フィルム層界面で接着破壊を示し、そのため大型球落下試験は不合格であった。実際、比較例1の場合のように、衝突のため、大型球は、積層グレージングを貫通し、これは自動車のEuropean Automotive R43規制を考慮すると容認できない。
【国際調査報告】