(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】重力着底構造(GBS)上の一体式生産複合体
(51)【国際特許分類】
B63B 35/44 20060101AFI20241003BHJP
F17C 13/08 20060101ALI20241003BHJP
B65D 88/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B63B35/44 C
F17C13/08 302Z
B65D88/12 U
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517541
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 RU2022000287
(87)【国際公開番号】W WO2023063848
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519333859
【氏名又は名称】ブリクノエ アクツィオネルノエ オブシェストボ ”ノバテック”
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミケルソン、レオニード ヴィクトロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】レティヴォフ、ヴァレリー ニコラエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ソロビエフ、セルゲイ ゲンナジーヴィッチ
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA11
3E170AB29
3E170DA01
3E170DA03
3E170QA04
3E170QA20
3E170RA02
3E170VA20
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB20
3E172BA06
3E172BC06
3E172BC10
3E172BD10
3E172DA90
3E172KA03
(57)【要約】
発明は、生産設備に関し、重力着底構造GBS上での、炭化水素の加工、加工済み製品の貯蔵及び荷降ろしが意図された生産複合体、天然ガス液化プラント、アンモニアプラント、メタノールプラント、水素プラントの形成に使用することができる。一体式の生産複合体は、加工設備を備えた上側モジュール10を収容する重力着底構造GBSを備える。GBSは、矩形の頂部スラブ2、矩形の底部スラブ4、中間の水平スラブ13、内側の垂直壁5、炭化水素及び/又はそれぞれの加工済み製品を貯蔵するためのタンク12を備えた少なくとも1つの区画6、並びにバラスト区画7を有する。GBS頂部スラブ2は、支持体9を有し、その上に上側モジュール10が設置される。GBSは、前記頂部スラブ2を備える矩形プリズムである中央部分1と、その外周の周り全体に中央部分1の両側に沿って伸び、外側の垂直壁5を有する突出部分3とを有する。突出部分3及び中央部分1は、底部スラブ4を共有し、突出部分3は、中央部分1より高さが低い。中央部分1は、区画6及び7を形成する長手方向及び横方向の壁5を有し、区画の一部が、タンク12を収容しており、その他は、バラスト区画である。突出部分3は、その外壁に直交し、区画8及び15を形成する内壁5を有し、区画の一部は、バラスト区画である。提案される解決策は、北極における氷のある状態の水中で稼働するように適合された炭化水素加工のための効率的な生産複合体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力着底構造(GBS)と、その上に配置された加工設備を有する上側モジュールとを備えた、炭化水素加工のための生産複合体であって、前記GBSは、矩形の頂部スラブと、矩形の底部スラブと、中間の水平スラブと、垂直壁と、炭化水素及び/又は加工済み製品を貯蔵するためのタンクを備えた少なくとも1つの区画と、少なくとも1つのバラスト区画とを有し、前記GBS頂部スラブは、支持体を有し、前記支持体の上に前記上側モジュールが据え付けられている、生産複合体において、前記GBSは、中央部分と突出部分とを有し、前記中央部分は、前記頂部スラブを備えた矩形プリズムの形態を有し、前記突出部分は、その周辺部の周り全体に前記中央部分の両側に沿って伸び、外側の垂直壁を有しており、前記GBS突出部分及び前記GBS中央部分は、前記底部スラブを共有し、前記突出部分は、前記中央部分より高さが低く、前記GBS中央部分は、区画を形成する長手方向及び横方向の壁を有し、前記区画の少なくとも1つは、前記タンクを収容し、前記区画の一部は、バラスト区画であり、前記突出部分は、その外側の壁に直交し、区画を形成する内壁を有し、前記区画の一部は、バラスト区画であることを特徴とする、生産複合体。
【請求項2】
前記中央部分の長手方向及び横方向の壁によって形成される前記区画の一部は、補助装備を収容することを特徴とする、請求項1に記載の生産複合体。
【請求項3】
前記中間の水平スラブと前記底部スラブとの間に追加のバラスト区画を形成する長手方向及び横方向の壁が存在することを特徴とする、請求項1に記載の生産複合体。
【請求項4】
前記上側モジュールのための前記支持体が、前記中央部分の長手方向及び横方向の壁の交点より上に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の生産複合体。
【請求項5】
配管及びケーブルが、前記頂部スラブと前記上側モジュールの下部との間の空間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の生産複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備に関し、重力着底構造(GBS:gravity-based structure)上での、炭化水素の加工、貯蔵及び加工済み製品の荷降ろしが意図される生産複合体、天然ガス液化プラント、アンモニアプラント、メタノールプラント、水素プラントの形成に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
沿岸及び沖合の炭化水素加工プラントには2つのタイプがあり、例えば、天然ガス液化プラント(LNGプラント)がある。
【0003】
最も一般的なタイプは、くい打ち基礎の上にあるLNGプラントであり、くい打ち基礎の上にプラントの装備及び構造物が設置される。永久凍土土壌の場合の区域では、土壌熱安定剤のシステムが設置されて、くい打ち基礎上に加えてプラント構造を支持する。LNGプラントは典型的には、海岸付近に配置されることで、海上での製品の船積みが可能になる。とりわけ、プラントは、LNG貯蔵タンクと、くい打ち基礎上に同様に収容されたLNGを荷降ろしするための桟橋とを備え、LNGプラント及びLNGタンクは、岸に配置され、必要なプロセス装備によりLNGを荷降ろしするための桟橋は、沿岸に近い水中に設置される。LNGプラント、タンク及び荷降ろし桟橋は、専用のタンカーガス運搬船に荷降ろしするためのLNG輸送のためにくい打ち基礎上に直立したパイプラック上に据え付けられたパイプラインによって相互に接続される。
【0004】
LNGプラントをくい打ち基礎の上で組み立て、スタッフ、建設材料及び供給物を届けるための必要なインフラを建設し、建設作業員を収容し、材料を貯蔵し、一時的な道路を含めた建設装備を稼働させるために、全ての必要なエンジニアリングシステム及びインフラ施設が典型的には建設場所に開発される。LNGプラントが、とりわけ極限環境条件を伴う遠方の現場で組み立てられる場合、建設作業のためのインフラの準備は、時間を消費し、コストがかかる。
【0005】
くい打ち基礎上のLNGプラントは、以下の欠点を特色としており、
・建設作業の前の長期間のインフラ開発、
・土壌熱安定剤はコストがかかる(永久凍土土壌の場合の区域に配置されたプラントの場合)、
・建設スタッフ、装備及び機械を動員したり解散させたりするためのコスト、
・大きな建設チームが、極限環境条件を伴う遠方の未開発の領域に位置することが多い建設場所に滞在し、作業することができることを確実にする必要性、
・建設材料、LNGプラント装備及び供給物を、輸送によって接近できることが制限されることが特色であることが多い建設場所に定期的に届けることができることを確実にするためのコスト、
・建設インフラを取り壊し、建設完了後に、荒らされた土地を修正するためのコスト、
・LNGプラント場所における大規模な準備及び建設作業に起因する環境に対する悪影響である。
【0006】
設計の他のタイプは、浮体ベースのLNGプラントである。このケースでは、LNGプラントは、プラントは、天然ガスを生産し、処理し、液化する、並びにLNGを貯蔵し荷降ろしする、浮体式設備の一部である。LNG(FLNG)の生産、貯蔵及び荷降ろしのための浮体式設備は、沖合のガス田開発に使用され、錨泊及び/又は係留システムを用いて沖合の現場に直接設置される。そのような浮体式設備は、弁を水中のパイプに接続するのに必要なその信頼できる位置決めが、漂流する氷に起因して不可能であるため、氷が厚い状況では沖合の場所で使用されることはない。
【0007】
LNGプラントの1つの浮体ベース用途での使用は、氷のない海での沖合現場の開発に制限される。
【0008】
GBS上でのLNGプラントの1つの選択肢もある。設計の解決策が実在しており(WO2015/039169A1、公開日2015年3月26日)、そこでは、LNGプラント又は再ガス化設備、又はガスだき発電所は、天然の水の深さが、タンカーガス運搬船が航海するのに十分である、岸から5から200+km離れた海底に設置されるように、重力着底構造(GBS)上に据え付けられる。このケースでは、GBSはまた、タンカーのための停泊位置としても使用され、内部に1つ又は複数のLNG貯蔵タンクを有する。GBSを岸に接続するために、パイプラインが海底を、又はパイプラック上を走っている。加工装備を含む上側構造は、GBSデッキの上に収容される。GBSデッキは、生産拡張の場合に追加の装備の設置のための予備空間を有する。
【0009】
この設計は、以下の欠点を特色とする。
【0010】
GBSデッキ上の予備空間は、より大きなサイズの構造を必要とし、その表面積は、追加の装置が設置されるまで一部しか使われない。さらに、GBSは、氷の衝撃又は緊急の船の衝撃などの外部の影響から保護されない。
【0011】
固体バラスト積み作業の助けを借りて、岸の近くの海底に早期に準備された下層基礎上に設置された鋼GBSと、ひとたび海底に設置された後、GBS上に設置されるLNG加工設備とを備える、LNG生産、貯蔵及び荷降ろし設備が沖合に実在している(KR20180051852A、公開日2018年5月17日)。GBSは、その下方面が岸の近くの海底に準備された基礎の上に着座した状態のボックス形態の外側の鋼ケーソンと、最小の可能な隙間を有して外側の鋼ケーソンの内部に設置された、LNG貯蔵空間を有するボックス形態の内側の鋼ケーソンと、外側鋼ケーソン上に据え付けられた頂部デッキと、天然ガスを断熱するために、内側鋼ケーソンの内面及び頂部デッキの内面に据え付けられた防水断熱プレートから作成された壁と、頂部デッキ上に配置された液化設備及び荷降ろし設備と、重力を確実にし、安定した後に固定させ動かなくさせるために外側ケーソンと内側ケーソンとの間に空間を満たす固体バラストとを備える。
【0012】
この設計は以下の欠点を特色とする。
1.GBS鋼本体は、より腐食を受けやすく、このことは、耐久性を低くする。
2.GBS鋼本体は、氷の衝撃に耐えるためにかなり厚みがある必要があり、このことは、構造のより大きな金属消費を意味する。
3.固体バラストは、GBSのバラスト積み作業/バラスト降ろし作業をより難しくする。
4.GBSは、氷の衝撃又は緊急の船の衝撃などの外部の影響から保護されない。
5.矩形のプリズム形状のGBSは、設置場所まで輸送されるとき、大きな喫水を有し、これは、水深の浅い領域を通る輸送を不可能にする。
【0013】
生産複合体の設計(WO2021/106151A1、公開日2021年6月3日)は、提案されるものに最も近く、重力着底構造(GBS)上の沖合の天然ガス処理施設を特色としており、底部スラブ及び頂部スラブと、内部の垂直壁及びその上に1つ又は複数のLNGタンクが1つの区画の中に設置される中間スラブと、また、GBS全体に沿って伸びているバラスト区画と、頂部スラブ上に据え付けられ、その上で支持する上側モジュールとを有する矩形のプリズム形状のGBSを備える。GBS頂部スラブは、頂部スラブ内のモジュール間、又は凹部間での交換、修理又はメンテナンスのためにLNGポンプがタンクから取り外されるための空間を有する。
【0014】
沖合設備は、以下の欠点を特色としており、
- 矩形のプリズム形状のGBSは、設置場所まで輸送されるときに大きな喫水を有し、これは、水深の浅い領域を通る輸送を不可能にすること、
- 長いバラスト積み作業区画が、いなかる横方向の仕切りもなしにGBS全体に沿って伸びているため、GBSバラスト積み作業が難しくなること、
- 同じ区画内にLNGタンクが一列に配列された状態で、最も低い金属消費を特色とするメンブレンタンクを使用することは不可能であること、
- GBSは、氷の衝撃又は緊急の船の衝撃などの外部の影響から保護されていないこと、- GBS頂部スラブが、LNGポンプを取り外すために凹部を有する場合、LNGタンクは、より低い容量を有し、頂部スラブの設計は、より複雑になるであろうことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO2015/039169A1
【特許文献2】KR20180051852A
【特許文献3】WO2021/106151A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明により解決される技術的問題は、以下の通りである。北極で生産される炭化水素の割合が増大していることを考慮すると、北極における氷のある状態の水中で稼働するように適合された炭化水素加工のための新たな効率的な生産複合体を開発する切迫した要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の問題に対して提案される解決策は、重力着底構造(GBS)上の一体式の生産複合体であり、これは、重力着底構造(GBS)と、その上に配置された加工装置を備えた上側モジュールとを備え、GBSは、矩形の頂部スラブと、矩形の底部スラブと、中間の水平スラブと、内部垂直壁と、炭化水素及び/又はそれぞれの加工済み製品のためのタンクを備えた少なくとも1つの区画と、少なくとも1つのバラスト区画とを有し、GBS頂部スラブは、その上に支持体を有し、支持体の上に上側モジュールが据え付けられており、発明によると、GBSは、中央部分と突出部分とを有し、中央部分は、前記頂部スラブを備えた矩形プリズムであり、GBS突出部分は、その周辺部の周り全体に中央部分の両側に沿って伸び、外側の垂直壁を有しており、GBS突出部分及びGBS中央部分は、上記に挙げた底部スラブを共有し、突出部分は、中央部分より高さが低く、GBS中央部分は、区画を形成する長手方向及び横方向の壁を有し、区画の少なくとも1つは、前記タンクを収容し、区画の一部は、バラスト区画であり、GBS突出部分は、その外側の壁に直交し区画を形成する内壁を有し、区画の一部はバラスト区画である。
【0018】
さらに、GBS中央部分の長手方向及び横方向の壁によって形成される区画の一部は、補助装備を収容することができる。
【0019】
好ましい設計は、中間の水平スラブと底部スラブとの間に追加のバラスト区画を形成する長手方向及び横方向の壁を特色とする。
【0020】
上側モジュールのための前記支持体は、GBS中央部分の長手方向及び横方向の壁の交点に配置されるように勧めることも可能である。
【0021】
パイプライン及びケーブル通信が、頂部スラブと上側モジュールの底部との間の空間に設置されることも好ましい。
【発明の効果】
【0022】
提案される技術的解決策によって達成される技術的結果は、以下の通りである。
【0023】
GBS突出部分は、GBS及び構造全体の浮力を追加するとともに、設置場所までの輸送中のその喫水を低減する。
【0024】
突出部分の内部のGBSの周辺部における追加のバラスト区画は、GBSの均衡をとりやすくする、すなわちGBSを横揺れ及び喫水調整なしに等喫水に落ち着かせる。
【0025】
GBS底部の増大した幅は、その輸送中に構造全体の安定性を追加し、より大きな高さ及びより大きな重量の上側構造をGBS上に設置することを可能にする。
【0026】
GBS突出部分はまた、漂流する氷及び緊急の船の衝撃から中央部分を保護する。
【0027】
突出部分はまた、桟橋のための基礎としても機能し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】GBS上の一体式の生産複合体の配置を示す上面図である。
【
図6】
図2に関する断面D-Dにおける垂直壁配列の図である。
【
図7】
図2に関する断面E-Eにおける垂直壁配列の図である。
【
図8】GBS頂部スラブ上の上側モジュールの支持体の配置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
重力着底構造上の一体式の生産複合体は、1セットのプロセスを備える、すなわち生産のためのエンジニアリング及び補助装備、液体炭化水素又はアンモニアの貯蔵及び荷降ろし、発電、並びに補助物質及び補助材料の貯蔵を備える完全な技術的な準備が整った技術的製品である。そのような複合体の一例は、液化天然ガス(LNG)プラントである。
【0030】
一体式のGBS生産複合体は、専用の作業場で組み立てられ、設置の場所まで水面に浮かべて引っ張って行かれる。GBSは、水体の専用の下層基礎の上に設置され、水体は、海、湖、川又は貯水池であり得る。GBSの下及び水体の底の基礎の研磨作用を阻止するために、蛇籠又は他の同様の装置などの底の固定具がGBSの周りの底に配置されてよい。GBSは、専用の岸壁付近に設置され、ラック及び橋で岸に接続され、水中パイプライン及び/又は長い水上ラックを使用することなしに、岸への連絡路を敷設することを可能にし、生産複合体に容易に接近し、スタッフを素早く立ち退かせることが可能である。岸に到達するラック及び橋は、一体式の生産複合体が稼働場所に設置された後に設置される。岸辺ラインの近くに配置されることで、GBSは、生産複合体のための供給材料の供給源である炭化水素フィールドを含む、陸上の施設と一体式になる。GBSが設置される前、岸壁は、例えば、炭化水素フィールド開発及び陸上施設の建設などのために船荷を届けるために使用されてよい。
【0031】
GBS生産複合体の建設は、建設のために準備され高層プラントを組み立てるための長く、コストがかかる作業によって生じる難題、並びに浮遊構造上にあるそのようなプラントを使用して、氷のある状態を伴う水域での現場の開発することが不可能であるという事実によって生じる難題を解決するであろう。
【0032】
提案される一体式のGBS生産複合体の選択肢の1つは、天然ガス消費から熱エネルギーを利用する発電ユニットであり得る。そのような複合体は、特化されたタンカーガス運搬船から液化天然ガス(LNG)を受け取り、それを貯蔵し、再ガス化し、それを動力に変換することができる。
【0033】
生産ラインの主要素は、重力着底構造(GBS)及び上側のモジュール化されたプロセス装備(
図1~
図4)である。
【0034】
GBSは、生産され加工された原材料のため、並びに補助物質及び補助材料のための貯蔵所として機能する堅固な強化コンクリート構造である。GBSは、生産複合体の上側のための基部であり、その独自の重量の下で水体の底部に設置されるように設計される。GBSの中央部分1は、矩形プリズムとして成形され、頂部スラブ2を有する。
【0035】
全周辺部に沿った中央部分1の両側に、垂直の外壁を備えたGBS突出部分3が配置される。GBS中央部分1及び突出部分3は、共通の底部スラブ4を有し、突出部分3の高さは、GBS中央部分1の高さより低い。
【0036】
GBS中央部分1は、垂直の長手方向及び横方向の壁5で区画に分離される(
図5~
図7)。一部の区画、例えば、区画6は、生産され加工された供給原料を貯蔵するのに使用され、他の区画、例えば区画7は、バラスト水を貯蔵するのに使用される。GBS突出部分3は、その外壁に直交する垂直壁5で区画に分離される。GBSの長い方の側に沿って配置される区画8もまた、バラストシステムに含まれる。
【0037】
GBS頂部スラブ2は、その上に上側モジュール10が設置される強化コンクリート支持体9を有する。
【0038】
GBSは、一体式の生産複合体の設置の場所までの水上輸送中に水上に浮かんだまま留まることができ、氷のある状態における氷の衝撃に耐えることができる。基礎11上の設置の場所において浮いている状態から静止状態へのGBSの状態の変更は、水で一杯になっているバラスト区画7、8によって確実にされる。
【0039】
GBS外側寸法は、例えばLNGプラント用など、生産複合体の目的に応じて変動する場合があり、GBS寸法(突出部分3を含めた)は、以下の通り、長さ324m、幅154m、高さ30.2mであってよい。このケースでは、GBS中央部分1の長さは、300mであり、幅は108mであり、高さは、30.2mである。GBSの両側の突出部分3は22mの幅を有し、GBSの短い端部壁では12mである。突出部分3の高さは、13.75mである。
【0040】
GBS構造の主な空間計画解決策は、科学技術パラメータ並びに、GBS構造に影響を及ぼす内部荷重及び外部荷重によって定義され、その最大の可能な負の組み合わせを考慮に入れている。
【0041】
GBS中央部分1は、矩形のプリズム形状であり、主支承構造、すなわち垂直の長手方向及び横方向の壁5と、水平スラブ、すなわち頂部スラブ2と、底部スラブ4と、炭化水素及び/又はそれぞれの加工済み製品の貯蔵のためのメインタンク12の下の中間支持スラブ13とを含む。支承構造は、一体式の生産複合体の輸送中、及びそれが設置されるまで浮いている間を含め、GBSのケージの必要な空間的剛性を確実にする。強化コンクリート壁もまた、その機能的目的に従ってGBSを区画に分割することを実現する。横方向の壁5の一部は、堅固である代わりに、その中央部分に矩形の開口を有してもよい。このケースでは、それらは剛性リブの目的を基本的に果たす。
【0042】
強化コンクリート壁はまた、上側から支持スラブ13及び基礎11まで荷重を移動させる支承構造としても機能し、そのため、上側支持体9は、GBSの垂直の長手方向及び横方向の壁5の交点より上に配置される。
【0043】
GBSの頂部スラブ2は、大気降水及びプロセスの流出の排水のために中心長手方向ラインから縁部まで傾斜している。頂部スラブ2の構造は、緊急状況の場合に爆発の荷重に耐えるように設計される。極低温液体が科学技術プロセスに含まれる場合、頂部スラブ2を極低温媒体の流出から保護するために、強化された低温耐性特徴を備えた鋼が強化材として使用される。
【0044】
水平支持スラブ13が、頂部スラブ2と底部スラブ4の間に設けられて、液体炭化水素及び/又はそれぞれの加工済み製品の貯蔵タンク12からの荷重を分散させる。前記スラブ13の下の長手方向及び横方向の壁14は、底部スラブ4に荷重を移動させ、構造の空間的剛性を確実にする。
【0045】
張力をかけた強化材で改良された通常密度のコンクリートを基にした強化コンクリートが、GBS中央部分1の主材料である。
【0046】
GBS突出部分3は、GBS中央部分1の周辺部に沿って配置され、それと共に単一の構造を形成している。突出部分3の長辺は、バラスト区画8(
図5)をほとんど収容し、短い端部側は、補助及びエンジニアリング区画15をおおかた収容する。GBS突出部分3は、以下の主要な目的を果たしており、
- 必要な標的GBS浮力パラメータを達成すること、
- GBSの均衡をとることが概ね意図されたバラスト区画8を収容し、横揺れ及び喫水調整なしに、GBSが等喫水で浮いていることを確実にすること、
- 設計の緊急衝突/船の衝撃の場合に天然の保護バリアを形成し、突出部分3が、衝突のエネルギーの大半を吸収し消散させ、GBSケージの主要な部分への損傷を阻止し、メインタンク12及び上側基礎の支承構造の完全性及び維持を確実にすること、
- LNGタンカーが係留し、液体炭化水素の荷降ろしするのを確実にする補助加工及び船舶用の装備を収容することである。
【0047】
液体炭化水素及び/又はそれぞれの加工済み製品のための貯蔵タンクは、GBS区画に収容され、一体式の生産複合体の製品の貯蔵が意図される。その意図される利用に応じて、生産複合体はまた、供給原料、半加工製品及び消耗品のための貯蔵タンクを有してもよい。GBS中央部分1は、貯蔵されるべき物質の特性に応じて異なる設計を有する可能性があるいくつかのタンク12(
図5)を有する。大気に近い圧力下でのLNG及び極低温液体の貯蔵の場合、メンブレンタンクが使用される。このケースでは、タンク12は、コンクリート区画6の内部に設置された熱絶縁層によってコンクリート構造から分離されたステンレス鋼又はインバール(Fe-Ni合金)で作成された鋼メンブレンから成る。熱絶縁層は、頂部スラブ2、中間スラブ13及びGBSの壁の上に直接配置され、タンク12からの荷重及びその液体内容物を上記に挙げた境界構造まで移動させる。GBSスラブ及び壁はよって、メンブレンタンクのための支持構造として機能し、それと共に、それらは単一の構造ユニットに統合される。いかなる漏れも阻止するために、メンブレンタンク12の底面及び側面は、追加のメンブレンが熱絶縁層の内側に設置された二次バリアを有する。
【0048】
LNGプラントのケースでは、液化ガスは、各々が、135×40×24mの個々の区画6内に設置された2つの115,000cbmタンク12に貯蔵される。タンク12を備えた区画6は、タンク境界構造の外側面の検査を可能にする乾燥した区画16によって囲繞される。
【0049】
低温を必要としない凝縮物及び他の液体炭化水素の貯蔵の場合、GBSコンクリート区画17が使用されてもよく、その境界構造は、保護バリアとして機能する。区画7の一部は、バラスト水、並びに低温を必要としない凝縮物及び他の液体炭化水素の貯蔵の両方に使用することができる。LNGプラントのケースでは、安定した凝縮物の貯蔵のために75,000cbmで135×30×30mの区画7が存在し、区画17の1つは、5,000cbmの容量及び30×8×30mのサイズを有し、標準以下の凝縮物貯蔵のためのものである。
【0050】
下にある水の層を含む「湿式」貯蔵は、水より小さい密度である炭化水素のために使用されてよい。このケースでは、1m前後の厚さの貯蔵された製品の底部層は、装填動作中の水と貯蔵された製品の保証された分離を確実にする混合領域とみなされる。区画7はまた、区画7を気密にするために区画7の上部において窒素ブランケットを利用して(大気圧レベルから)わずかに加圧され、炭化水素蒸気との可燃性で爆発性のガス混合物が形成するのを阻止する。
【0051】
区画7内の下にある水の層の高さは、固定されても、可変であってもよい。水の層の高さが固定されたケースでは、区画内に貯蔵された凝縮物又は他の液体炭化水素の品質に関わらず、下にある水の層の高さは固定される、例えば、2メートルに固定される。区画7内の凝縮物の分量の変化は、窒素ブランケットの分量の変更によって補償される。水の層の高さが可変であるケースでは、下にある水の層の高さは、区画7が液体で永久的に満たされるように変化する。区画7が凝縮物又は他の液体炭化水素で満たされたとき、水の一部は、能動的バラストシステムでそこから取り除かれる。貯蔵された炭化水素のレベルが低下するとき、追加の水が区画7に供給される。
【0052】
大容量の炭化水素の貯蔵のための区画6がGBS中央部分1の中に配置される。タンクなどのより小さい区画(例えば、ディーゼル燃料、高温油又はグリコール水のための)はまた、GBSの突出部分3内に配置される場合もある。
【0053】
小さい容量を貯蔵するために、自立タンクがまた、(中央部分1又は突出部分3において)GBS区画において使用される。LNGプラントのケースでは、自立タンクは、廃水、脱塩水、真水、洗浄水、吸収材、ブタン及びプロパンのために使用される。
【0054】
GBS中央部分1内の補助及びエンジニアリング区画16は、主要な炭化水素貯蔵区画6の両側に、それらの間の中心に配置される。前記区画16は、加工の必要性、装備の配置、加工流体のタンク、並びにスタッフのための接近及び退避ルートが意図されている。乾式区画16が炭化水素貯蔵のための主要な区画6の周辺部に沿っている状態で、炭化水素貯蔵のためのタンク12の境界壁の外側面を検査することができる。
【0055】
補助及びエンジニアリング区画15が、GBSの突出部分3内に配置される。前記区画15は、加工の必要性、装備の配置及び加工流体のタンクが意図されている。
【0056】
エンジニアリング装備は、加熱、通気及び空調(HVAC)システム、バラスト水加熱及び再循環システム、水供給及び廃棄システム、消火ポンプ及びパイプライン、発泡消防システムスキッド、電気化学保護システム、電気通信及び警告システム及びビデオ監視システムなどのサブステーションを含む電力供給システムを含む。エンジニアリング装備の大半は、頂部スラブ2及び/又はモジュール10上に配置され、残りは、エンジニアリング区画15内にある。補助区画15は、空のままである場合もあり、内部に侵入するためのはしご及びマンホールを備えている。
【0057】
GBS頂部スラブ2上の上側モジュールの支持体9は、支持の反作用が、上側モジュール10からGBSの主要な荷重支承構造に移動されるのを確実にする。構造的には、支持体は、埋め込まれた構成要素のためのヘッドを有する強化コンクリート塔である。GBS支持体9及び上側モジュール10接続点において、特殊なシーリング18が使用されて(
図9)自由回転及び所定の方向の移動を確実にすることで上側モジュール10の熱膨張を補償する。
【0058】
配置上の支持体9の場所は(
図8)、上側モジュール10からの荷重の分散を確実にするために、GBS荷重支承壁5の交差に基づいて規定される。
【0059】
支持体9の高さは、上部側とGBS区画内の装備との間に配管及びケーブル通信を配置し、人々及び機械がGBS頂部スラブ2上で移動することを可能にするために、GBS頂部スラブ2と上側モジュール10の下部との間に十分な空間19を提供するように選択される。
【0060】
GBSバラストシステムは、内側バラスト区画7、垂直壁14によって形成される、支持スラブ13の下の内側バラスト区画20、並びにGBS中央部分1及びGBS突出部分3内に配置された外側バラスト区画8を含む。バラスト区画内の水の凍結を阻止するためにバラスト再循環及び加熱システムが設けられる。バラスト区画内の水は、上側モジュール10上に設置されたガスタービンの排ガスからの廃熱を利用して加熱される。
【0061】
バラストシステムは、2つの主要な機能を果たし、すなわち、
- バラスト積み作業、すなわちGBSの重量を変更し、浮いているときに必要なGBS喫水及びGBSが下層基礎上に設置されたときの構造的安定性を確実にすること、及び
- GBSの均衡をとること、すなわち、その幾何学的中心からの重力偏差の構造的な中心のためにバラスト水での補償を通して、浮いているときの横揺れや喫水調整なしに、GBSを等喫水にすることを果たす。
【0062】
加工装備が配置される上側は、モジュール10で構成される。モジュール10の数は、生産複合体エンジニアリング段階において決められる。GBS上のモジュールの場所は、浮いているときに構造の均衡をとるのに必要なバラスト水の量を削減するために、生産複合体の重力の中心がGBSの幾何学的中心に近くなることを確実にするために、その重量を考慮して推定される。
【0063】
上側モジュール10は、支柱を備えた三次元鋼フレームであり、これは、加工装備、電気装備、自動化システムなどを収容する。
【0064】
垂直柱21、垂直つなぎ材22及び床梁23が、モジュール10の支柱を備えたフレームの主要な要素である(
図9)。基礎レベルでは、上側モジュール10は、その設計及び配置の点で、油及びガスセクターで使用される上側モジュールと異なってはいない。
【0065】
装備構成は、一体式の生産複合体の目的に左右される。例えば、LNGプラントでは、モジュール10は、生ガス処理ユニット、ガス液化及びタンカーガス運搬船へのLNG荷降ろしのための装備、並びに補助装備及び公共施設ラインを含む。
【0066】
装備のメンテナンス及びスタッフの侵入を容易にするために、モジュール10は、いくつかのデッキを有する。各モジュール10の主要な列24が同じ高さにあることで、上側にわたる退避ルートと荷重搬送ルートを結合し、これにより、GBS頂部スラブ2上の荷重を削減することを可能にする。上側モジュール10上の他の列は、その機能及び装備に応じて高さが変動する。
【0067】
液体炭化水素荷降ろし桟橋25は、GBS及び上側と構造上一体式になる。液体炭化水素の荷降ろしを可能にする荷降ろしアーム並びに他の船舶及び加工装備を備えたフェンダー及び荷降ろしプラットフォームが、GBSの海に向かう側で突出部分3に設置される。タンカー停泊のための係留装備が、上側の海に向かう側に設置される。
【0068】
桟橋25はまた、タンカーから液体炭化水素を降ろすのに使用することもできる。重力着底構造上の生産複合体が発電設備である場合、桟橋の主な機能は、タンカー-ガス運搬船からLNGを受け取ることである。
【0069】
区画へのGBSの分離は、一体式の生産複合体の特殊化を含め、その機能的設計に左右される。一般に、GBSは、3つのタイプの区画、すなわち、バラスト区画、炭化水素貯蔵区画、補助及びエンジニアリング区画を有するように設計される。
【0070】
GBS LNGプラントのケースでは、GBS中央部分1は、6つの主要な区画を備える(
図5)。GBS中心線に沿った2つの区画6は、炭化水素の貯蔵が意図されており、4つの側部区画7は、バラスト区画と、炭化水素、例えば凝縮物の追加の貯蔵区画として両方で使用することができる。可変の水レベルでの炭化水素の「湿式」貯蔵のケースでは、区画7は、バラスト区画と、炭化水素及び/又はそれぞれの加工済み製品の貯蔵区画の両方である。補助及びエンジニアリング区画16並びに追加の炭化水素貯蔵区画17が、主要な区画6、7の間に配置される。
【0071】
追加のバラスト区画20(
図2、
図4)が、主要な炭化水素貯蔵タンク6、7のために底部スラブ4と支持スラブ13との間で主要な炭化水素貯蔵区画6の下に配置される。
【0072】
GBS突出部分3(
図5)は、バラスト区画8及び補助及びエンジニアリング区画15を収容する。GBS LNGプラントのケースでは、両側にある突出部分3は、おおかたバラスト区画8を備えるが、短い端部では、それは、おおかた補助及びエンジニアリング区画15を備える。海底29及び水体における水レベル30が
図2~
図4に示される。
【0073】
区画は、主要なLNG貯蔵区画6を除いて、横方向の仕切りによって分離されてよい。このケースでは、バラスト水が中を流れるように、開口がバラスト区画の内部に作成され、スタッフ及び通信の普及のための通路が、補助及びエンジニアリング区画に作成される。
【0074】
重力着底構造上の一体式の生産複合体は、配管及びケーブル布線が中に敷かれている2つのパイプラック26と、スタッフの移動及び退避のための3つの退避ブリッジ27とによって必要に応じて岸に接続される。パイプラック及び橋は、支持体上に据え付けられた鋼の橋構造として作成される。前記支持体は、一方でGBS頂部スラブ2上に配置され、他方で波止場側28に配置される。
【国際調査報告】