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特表2024-537022サブミクロンの表面改質金属酸化物粒子
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  • 特表-サブミクロンの表面改質金属酸化物粒子 図1a
  • 特表-サブミクロンの表面改質金属酸化物粒子 図1b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】サブミクロンの表面改質金属酸化物粒子
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/28 20060101AFI20241003BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20241003BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20241003BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20241003BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09C1/28
C09C3/08
C01B33/18 C
G03G9/08 381
G03G9/097 371
G03G9/097 375
G03G9/097 374
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518443
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022075924
(87)【国際公開番号】W WO2023046624
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21198745.8
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】513083004
【氏名又は名称】エボニック コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Evonik Corporation
【住所又は居所原語表記】2 Turner Place, Piscataway, NJ 08854, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】タンティリゲ プルニマ エー ルベル
(72)【発明者】
【氏名】メガ シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】マック ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】アブル バシャール モハマド ジアスディン
【テーマコード(参考)】
2H500
4G072
4J037
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AA11
2H500BA27
2H500CA34
2H500CB12
2H500EA42D
2H500EA44D
2H500EA52D
2H500EA58D
4G072AA25
4G072BB05
4G072DD05
4G072HH30
4G072JJ21
4G072JJ39
4G072QQ07
4J037AA18
4J037CB23
4J037EE03
4J037EE16
4J037EE43
4J037FF15
(57)【要約】
本発明は、トナー組成物で使用するための表面改質粒子、本発明による表面改質粒子を調製する方法、本発明による少なくとも1種の粒子で基材の表面を処理する方法、本発明による少なくとも1種の粒子で処理された表面を有する基材、様々な配合物中の添加剤としての本発明による少なくとも1種の表面改質粒子の使用、および特に本発明による表面改質粒子を含むトナー組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー組成物に使用するための表面改質粒子であって、
a)ケイ素酸化物、金属酸化物、および前述したもののうちの1種以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物系材料を含むコア、ならびに
b)少なくとも1つの層であって、
b.i)
式(A):
【化1】
[式中、
は有機ラジカルであり、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択され、
各Xは、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から独立して選択され、
mは、0、1、および2から選択される]
による少なくとも1つのビルディングブロック、および
式(B):
【化2】
[式中、
は有機ラジカルであり、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択され、
各Yは、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から独立して選択され、
nは、0、1、および2から選択される]
による少なくとも1つのビルディングブロック
を含む少なくとも1種のケイ素化合物と、
b.ii)
式(S):
【化3】
[式中、
各Rは、少なくとも1つのRが、クロリド、カルボン酸基、ヒドロキシ基、およびアルコキシ基からなる群から選択されることを条件として、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、アルコキシ基、アルキル基、およびアリール基からなる群から独立して選択され、
は、アルキル基およびアルケニル基からなる群から選択される]
による少なくとも1種のシランと
から得られる層
を含む、表面改質粒子。
【請求項2】
前記表面改質粒子のサイズが2~1000nmの範囲であることを特徴とする、請求項1記載の表面改質粒子。
【請求項3】
前記表面改質粒子のサイズが5~500nmの範囲であることを特徴とする、請求項2記載の表面改質粒子。
【請求項4】
改質粒子の表面高さのサイズが70~200nmの範囲であることを特徴とする、請求項3記載の表面改質粒子。
【請求項5】
前記少なくとも1種のケイ素化合物が、1つのケイ素原子あたり少なくとも1つの反応性部位を含み、前記反応性部位が、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の表面改質粒子。
【請求項6】
が、無置換のC1~C18アルキル基、好ましくは無置換のC2~C8アルキル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の表面改質粒子。
【請求項7】
が無置換のC2~C4アルキル基であることを特徴とする、請求項6記載の表面改質粒子。
【請求項8】
がn-プロピル基であることを特徴とする、請求項7記載の表面改質粒子。
【請求項9】
前記層中の前記少なくとも1種のケイ素化合物に対する式(S)による前記少なくとも1種のシランの重量比が、0.1~50、好ましくは0.2~20、より好ましくは1~10の範囲であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の表面改質粒子。
【請求項10】
前記コアの表面上の前記層の重量が、前記表面改質粒子の前記コアの重量を基準として、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは0.5~15重量%、さらにより好ましくは3~8重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の表面改質粒子。
【請求項11】
前記層が、未改質粒子を最初に前記少なくとも1種のケイ素化合物で処理し、その後に式(S)による前記少なくとも1種のシランで処理することによって得られることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の表面改質粒子。
【請求項12】
前記表面改質粒子のアスペクト比が、1:1~5:1、好ましくは1:1~3:1、より好ましくは1:1~2:1の範囲であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の表面改質粒子。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の表面改質粒子を調製する方法であって、
I)少なくとも1種の未改質粒子を提供する方法工程、ならびに
II)前記未改質粒子を、
II.I)
式(A):
【化4】
[式中、
は有機ラジカルであり、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択され、
各Xは、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から独立して選択され、
mは、0、1、および2から選択される]
による少なくとも1つのビルディングブロック、および
式(B):
【化5】
[式中、
は有機ラジカルであり、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択され、
各Yは、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から独立して選択され、
nは、0、1、および2から選択される]
による少なくとも1つのビルディングブロック
を含む少なくとも1種のケイ素化合物と、
II.ii)
式(S):
【化6】
[式中、
各Rは、少なくとも1つのRが、クロリド、カルボン酸基、ヒドロキシ基、およびアルコキシ基からなる群から選択されることを条件として、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、アルコキシ基、アルキル基、およびアリール基からなる群から独立して選択され、
は、アルキル基およびアルケニル基からなる群から選択される]
による少なくとも1種のシランと
で処理する方法工程
を含む、方法。
【請求項14】
前記未改質粒子が、最初に前記少なくとも1種のケイ素化合物で処理され、その後に式(S)による前記少なくとも1種のシランで処理されることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
式(S)による前記少なくとも1種のシランが、未改質粒子1kgあたり毎分0.01~50gの範囲の添加速度で、前記少なくとも1種の未改質粒子に添加されることを特徴とする、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
請求項13から15までのいずれか1項記載の方法により得られる表面改質粒子。
【請求項17】
トナー組成物、接着剤、もしくは研磨スラリーにおける添加剤としての、または電子材料、(特殊)コーティング、もしくは膜における充填剤としての、請求項1から12までのいずれか1項または請求項16記載の少なくとも1種の表面改質粒子の使用。
【請求項18】
請求項1から12までのいずれか1項または請求項16記載の少なくとも1種の表面改質粒子を含むトナー組成物。
【請求項19】
基材の表面を処理する方法であって、
B1)前記表面を有する前記基材を提供する方法工程、および
B2)請求項1から12までのいずれか1項または請求項16記載の少なくとも1種の表面改質粒子で前記基材の前記表面を処理する方法工程
を含む、方法。
【請求項20】
請求項1から12までのいずれか1項または請求項16記載の少なくとも1種の表面改質粒子を含む少なくとも1つの層を含む基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー組成物で使用するための表面改質粒子、本発明による表面改質粒子を調製する方法、本発明による少なくとも1種の粒子で基材の表面を処理する方法、本発明による少なくとも1種の粒子で処理された表面を有する基材、様々な配合物中の添加剤としての本発明による少なくとも1種の表面改質粒子の使用、および特に本発明による表面改質粒子を含むトナー組成物に関する。
【0002】
発明の背景
金属酸化物から製造されたサブミクロンの粒子は当該技術分野において周知であり、その製造のための多くの方法が公開されている。そのような粒子の有用性は主にその表面に左右されるため、その表面を改質することによってそのような粒子の特性を変える多くの試みが行われてきた。典型的には、様々な官能基によるコロイダルシリカの表面官能化は、多様な用途に有益である。シリカ表面は、シリコーンオイル(特開昭49-042354号公報)、ヒドロシロキサン(米国特許第8,895,145号明細書)、トリアルコキシシラン(米国特許出願公開第2008/0069753号明細書、米国特許出願公開第2008/0070143号明細書、国際公開第2010/005492号、米国特許第10,222,717号明細書)、およびシラザン(米国特許第7,083,888号明細書、米国特許出願公開第2008/0070143号明細書、特開2019-043829号公報、欧州特許第3,178,887号明細書、米国特許第10,222,717号明細書、米国特許第5,013,585号明細書)を使用して疎水性にすることができる。米国特許第7,083,888号明細書に開示されているヘキサメチルジシラザンなどのシラザンを使用する表面処理は、その小さいサイズと、水性媒体中で反応して優れた疎水性を付与する能力のため、特に注目されている。同明細書には、トナー添加剤用のモノマー状のアルコキシシラン、例えばメチルトリメトキシシラン(MTMS)と、シラザン、例えばヘキサメチルジシリザン(HMDS)とを使用するシリカ表面官能化のためのアプローチが記載されている。このプロセスでは、MTMSおよびHMDSが、中間蒸留および溶媒交換の工程を伴って、液相のシリカ懸濁液に逐次添加される。シラザンを使用するアプローチの大きな欠点は、この化合物の毒性と、この化合物を取り扱う際、特に大量に使用する際に実施しなければならない徹底的な安全対策である。
【0003】
米国特許第8,895,145号明細書に記載されているヒドロシロキサンは、水素を遊離する際に粒子に結合する。このことも、潜在的な発火や爆発の危険を回避するため、不活性条件下で作業する必要があるなど、厳格な安全対策を実施する必要がある。ヒドロシロキサンと粒子との反応にはさらに高温が必要であり、その結果、エネルギー消費が大きくなる。
【0004】
金属酸化物のサブミクロン粒子の表面官能化をより穏やかに行う方法では、モノマー状シランが使用される。アミン官能化は、親水性の向上、分子吸着、ポリマーとの相溶性などが要求され得る用途向けには、トリアルコキシシラン(米国特許第9,212,193号明細書、Hartono et al., Langmuir, 2009, 25, 6413; An et al., JCIS, 2007, 507)を使用して行うことができる。エポキシ(米国特許出願公開第2004/0102529号明細書)、ポリエーテル(米国特許出願公開第2019/0375643号明細書)、アクリレート、チオール、およびサルフェートなどの他の官能基も、アルコキシシランを使用して導入することができる。ただし、これらの手順では、表面被覆が不均一になることが多い。さらに、提案されている手順では、高い温度と溶媒交換工程とが必要になる場合がある。また、生態学的な観点から望ましくない大量の揮発性有機化合物(VOC)が放出されてしまう。
【0005】
中国特許第110272641号明細書には、ケイ素に基づく様々な化合物でコーティングすることができる真珠光沢顔料が報告されている。
【0006】
米国特許出願公開第2018/112077号明細書には、シリケートバインダーと、充填剤と、架橋剤と、膜形成潤滑剤とを含むコーティング組成物が開示されている。任意選択的には、シラン系接着促進剤が組成物に添加される。
【0007】
加えて、環境的に持続可能な表面改質プロセスを提供することが所望されている。このことは、典型的には、例えば低い温度の使用、非毒性表面官能化剤の使用、より少ない量の溶媒の使用、ならびに揮発性有機化合物(VOC)および有毒な副生成物の放出の最小化により、プロセス中のエネルギー消費を低減して達成することができる。
【0008】
発明の課題
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することである。本発明のさらなる課題は、分散性が向上した表面改質粒子を提供することである。
【0009】
発明の概要
これらの課題は、トナー組成物に使用するための(少なくとも1種の)表面改質粒子であって、
a)ケイ素酸化物、金属酸化物、および前述したもののうちの1種以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物系材料を含むコア;ならびに
b)少なくとも1つの層であって、
b.i)
式(A):
【化1】
[式中、
は有機ラジカルであり、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択され;
各Xは、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から独立して選択され;
mは、0、1、および2から選択される]
による少なくとも1つのビルディングブロック、および
式(B):
【化2】
[式中、
は有機ラジカルであり、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択され;
各Yは、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から独立して選択され;
nは、0、1、および2から選択される]
による少なくとも1つのビルディングブロック
を含む少なくとも1種のケイ素化合物と;
b.ii)
式(S):
【化3】
[式中、
各Rは、少なくとも1つのRが、クロリド、カルボン酸基、ヒドロキシ基、およびアルコキシ基からなる群から選択されることを条件として、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、アルコキシ基、アルキル基、およびアリール基からなる群から独立して選択され;
は、アルキル基およびアルケニル基からなる群から選択される]
による少なくとも1種のシランと
から得られる層
を含む、表面改質粒子によって解決される。
【0010】
本発明による表面改質粒子は、従来技術の粒子と比較して、未改質粒子の結合部位の被覆率を向上させることを可能にする。本発明に関連して、被覆率の向上とは、従来技術のプロセス(例えばモノマー状または長い炭素鎖のシランまたはポリマー)によって製造された粒子と比較して、より高い割合の結合部位(コアの表面上のヒドロキシ基および/またはシラノール基など)が、少なくとも1種のケイ素化合物で前記コアを処理することから得られるコア表面上の層を結合させるために使用されることを意味する。この向上した被覆率は、通常、存在する官能基のより均一な統計的分布を伴う。結合部位の被覆率の向上により、多くの有利な効果、すなわち、
・表面改質粒子とポリマーおよび樹脂との架橋の増加、
・面積あたりの配位部位の数の増加、
・濡れ性の増加、
・疎水性の増加、または
・吸湿性の低下
を得ることができる(式(A)および(B)によるビルディングブロックの選択にも左右される)。
【0011】
本発明による表面改質粒子は、従来技術で公知の粒子などの他の粒子と比較して、向上した分散特性を有する。本発明による表面改質粒子の製造は、製造中に放出されるVOCまたは有毒/爆発物(例えばアンモニアや水素)が少ないかまたは全くなく、この目的のために有毒物質を使用する必要がないため、環境に優しい。加えて、副生成物としてアンモニアが存在しないため、プロセスがより安全になる。
【0012】
表面改質粒子は、疎水性などの様々な技術的要件を満たすように調整することができる。したがって、非常に汎用性が高く、多くの技術的用途に有用である。
【0013】
上記課題を特にうまく解決する好ましい実施形態は、以下の説明および従属請求項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1a】本発明による表面改質粒子を含む懸濁液の固体29Si NMRスペクトルを示す図である。
図1b】未改質粒子を含む懸濁液の固体29Si NMRスペクトルを示す図である。
【0015】
発明の詳細な説明
本明細書全体にわたるパーセント割合は、別段の記載がない限り、重量パーセント割合(wt%または重量%)である。本明細書で示される濃度は、別段の記載がない限り、組成物、溶液、または分散液全体の体積を指す。
【0016】
本発明による用語「有機ラジカル」は、特に、アルキル基、アリール基、およびそれらの組み合わせを含む。前記基は置換されていても無置換であってもよい。
【0017】
本発明による用語「アルキル」とは、環状および/または非環状の構造要素を含む分岐または非分岐アルキル基を含み、アルキル基の環状構造要素は必然的に少なくとも3個の炭素原子を必要とする。本明細書および特許請求の範囲におけるC1~CXアルキルは、1~X個の炭素原子(Xは整数である)を有するアルキル基を指す。例えば、C1~C8アルキルとしては、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル、およびn-オクチルが挙げられる。置換アルキル基は、理論的には、少なくとも1つの水素を官能基で置換することによって得ることができる。別段の記載がない限り、アルキル基は好ましくは置換または無置換のC1~C8アルキルから選択され、より好ましくは置換または無置換のC1~C4アルキルから選択される。
【0018】
「アルケニル基」は、少なくとも1つのオレフィン(C=C二重)結合を含むアルキル基の不飽和誘導体である。アルキル基についての上記優先事項はアルケニル基にも準用される。本発明に関連して、好ましいアルケニル基は、以降で異なる記載がない限り、ビニル基およびアリル基である。
【0019】
本発明による用語「アリール」は、環状芳香族炭化水素残基、例えば個々の環炭素原子が任意選択的にN、O、および/またはSで置き換えられているフェニルまたはナフチル、例えばベンゾチアゾリルを指す。好ましくは、炭素原子は置換されていない。さらに、アリール基は、それぞれの場合において水素原子を官能基で置換することによって任意選択的に置換されている。C5~CXアリールという用語は、環状芳香族基中に5~X個(Xは当然整数である)の炭素原子(任意選択的にN、O、および/またはSで置き換えられている)を有するアリール基を指す。別段の記載がない限り、C5~C6アリールが好ましい。
【0020】
本発明におけるカルボン酸基は、式中のRが有機ラジカルである
【化4】
の基を指す。Rは、以降で異なる記載がない限り、好ましくは無置換または置換のアルキル基、より好ましくは無置換または置換のC1~C4アルキル基である。これに関連して、官能基は好ましくはヒドロキシル基である。最も好ましくは、カルボン酸基は乳酸基(
【化5】
)である。
【0021】
別段の記載がない限り、上記の基は置換されているか、または無置換である。以降で異なる記載がない限り、置換基としての官能基は、好ましくは、ヒドロキシル基(-OH)、アミノ基(-NR、各Rは独立してH、アルキル基(任意選択的に置換されている)、またはアリール基である)、エーテル基(-OR、Rはアルキル基またはアリール基または乳酸基である)、およびカルボキシル基(-COH)、またはこれらの塩からなる群から選択される。好ましくは、上記基は無置換である。
【0022】
1つより多い残基が所定の基から選択される場合、それぞれの残基は、以降で別段の記載がない限り互いに独立して選択される。これは、それらが前記基の同じ要素または異なる要素であるように選択され得ることを意味する。本明細書に記載の方法は、指定された方法工程を含む。指定された方法工程は、別段の記載がない限り、典型的には示されている順序で行われる。方法は、任意選択的には、前記方法工程の前、後、および/またはそれらの合間に行われる追加の方法工程を含む。本発明の一態様について記載された優先事項および詳細は、別段の記載がない限り、または技術的に実施不可能でない限り、その他の態様にも準用される。少なくとも1つは、1つ以上を意味する。
【0023】
本発明は、少なくとも1種の表面改質粒子(またはその複数)に関する。本発明による表面改質粒子は、
a)コア;および
b)式(A)による少なくとも1つのビルディングブロックおよび式(B)による少なくとも1つのビルディングブロックを含む少なくとも1種のケイ素化合物と、式(S)による少なくとも1種のシランとで前記コアを処理することによって得られる(または得ることが可能な)少なくとも1つの層
を含むか、または好ましくはこれらからなる。以降で、前記ケイ素化合物を「ケイ素化合物」という。
【0024】
表面改質粒子は、任意選択的には、a)とb)との間、かつ/またはb)上に、1つ以上の追加の層を含む。好ましくは、表面改質粒子は追加の層を含まず、特に好ましくは、本発明による表面改質粒子はa)とb)とからなる。好ましくは、本発明は、本発明による複数の表面改質粒子に関する。
【0025】
コアは、ケイ素酸化物、金属酸化物、および前述したものの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物系材料を含む。少なくとも1種の酸化物系材料は、好ましくは、ケイ素酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、および前述したものの混合物からなる群から選択される。酸化物系材料は、最も好ましくはケイ素酸化物である。
【0026】
任意選択的には、コアは、少なくとも1種の酸化物系材料と、少なくとも1種の酸化物系材料以外の少なくとも1種の材料とを含む。少なくとも1種の酸化物系材料以外の少なくとも1種の材料は、好ましくは酸化物系材料ではない。好ましくは、少なくとも1種の酸化物系材料以外の少なくとも1種の材料は、ガラス、マイカ、カオリン、およびセラミックではない。少なくとも1種の酸化物系材料以外の少なくとも1種の材料は、少なくとも1種のポリマー系材料(したがって有機モノマーから得られる)であることが好ましい。少なくとも1種のポリマー系材料は、好ましくは、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、および前述したものの混合物からなる群から選択される。少なくとも1種のポリマー系材料は、より好ましくはポリスチレンである。少なくとも1種の酸化物系材料以外の少なくとも1種の材料がコアの内側部分を形成し、酸化物系材料が前記内側部分を、理想的にはその全体を被覆することが好ましい。したがって、コアの表面は、好ましくは少なくとも1種の酸化物系材料である(少なくとも1種の酸化物系材料製から製造されている)。より好ましくは、本発明による表面改質粒子のコアは、少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%の酸化物系材料を含む。最も好ましくは、コアは少なくとも1種の酸化物系材料からなる。
【0027】
表面改質粒子は、少なくとも1種のケイ素化合物と式(S)による少なくとも1種のシランとでコアを処理することによって得られる少なくとも1つの層を含む。ケイ素化合物は、式(A)および(B)による少なくとも1つのビルディングブロックを含む。式(A)および(B)による少なくとも1つのビルディングブロックは、好ましくは、ケイ素化合物の総重量を基準として(合計で)少なくとも50重量%、より好ましくは75重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%を占める。理想的には、ケイ素化合物は、式(A)および(B)によるビルディングブロックからなる。少なくとも1種のケイ素化合物は、好ましくはトリアルキルシリル基(例えばMeSi-)および/またはジアルキルシリル(例えば-Si(Me)-)基を含まない。
【0028】
は有機ラジカルである。Rは、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基(好ましくはビニルおよびアリルから選択される)、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択される。より好ましくは、Rは置換または無置換のアルキル基である。さらにより好ましくは、Rは無置換アルキル基である。前記アルキル基は、好ましくはC1~C18アルキル基、より好ましくはC2~C8アルキル基、さらにより好ましくはC2~C4アルキル基、特にプロピル基である。Rが無置換のC2~C4アルキル基であることが特に好ましく、無置換のプロピル基が最も好ましい。置換基としての官能基は、好ましくは、アミノ基(一級または二級)、メタクリレート基、アクリレート基、エポキシ基、無水物基、ビニル基、アルキル基、ポリエーテル基、およびフッ素化アルキルからなる群から選択される。
【0029】
Xは、好ましくはヒドロキシ基およびC1~C4アルコキシ基からなる群から選択され、より好ましくはヒドロキシ基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選択される。この選択により、結合部位の被覆率が向上し、HClなどの潜在的に腐食性のハロゲン化物またはハロゲン化水素を回避することができる。
【0030】
は有機ラジカルである。Rは、好ましくは、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択される。Rは、より好ましくは、置換アルキル基および置換または無置換のアルケニル基からなる群から選択される。官能基は、任意選択的には、Rについて定義したものと同じ基から選択される。最も好ましくは、Rは無置換ビニル基である。
【0031】
Yは、好ましくはヒドロキシ基およびC1~C4アルコキシ基からなる群から選択され、より好ましくはヒドロキシ基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選択される。この選択により、結合部位の被覆率が向上し、HClなどの潜在的に腐食性のハロゲン化物またはハロゲン化水素を回避することができる。
【0032】
mおよびnは整数である。好ましくは、mは1および2から選択され、それにより、ケイ素化合物の二次元または三次元構造のため結合部位の被覆率が向上する。少なくとも1種のケイ素化合物は、好ましくは、VOCの放出を少なくするトリアルコキシシリル基を含まない。好ましくは、整数mについて説明した理由のため、nは1および2から選択される。
【0033】
好ましくは、少なくとも1種のケイ素化合物は、1つのケイ素原子あたり少なくとも1つの反応性部位を含み、反応性部位は、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から選択される。これは、ケイ素化合物が平均で1つのケイ素原子あたり少なくとも1つの反応性部位を含むことであると理解されるべきである。より好ましくは、少なくとも1つの反応性部位はケイ素化合物の全てのケイ素原子に結合している。反応性部位は、XおよびYについて説明した理由のため、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、およびヒドロキシ基からなる群から選択される。これにより、従来技術の溶液と比較して、結合部位の被覆率を向上させることができる。
【0034】
通常、ケイ素化合物は、式(A)による1~100個のビルディングブロックを含む。少なくとも1種のケイ素化合物は、好ましくは2~50個、より好ましくは3~30個、さらにより好ましくは4~20個の式(A)によるビルディングブロックを含む。
【0035】
通常、ケイ素化合物は、式(B)による1~100個のビルディングブロックを含む。少なくとも1種のケイ素化合物は、好ましくは2~50個、より好ましくは3~30個、さらにより好ましくは4~20個の式(B)によるビルディングブロックを含む。
【0036】
少なくとも1種のケイ素化合物は、好ましくは合計2~100個、より好ましくは4~50個、さらにより好ましくは5~30個の式(A)および(B)によるビルディングブロックを含む。
【0037】
表面改質粒子のコアの処理時に水素が遊離することを回避するために、好ましくは、ケイ素化合物は、ケイ素原子に直接結合した水素原子を含まない。
【0038】
ケイ素化合物は、式(A)による少なくとも1つのビルディングブロックと、式(B)による少なくとも1つのビルディングブロックとを含む。前記ビルディングブロックは、好ましくは、個々のビルディングブロックの2つのケイ素原子間に存在するジョイント酸素原子によって互いに結合される。ケイ素化合物が、式(A)による1つより多いビルディングブロックおよび/または式(B)による1つより多いビルディングブロックを含む場合、本明細書で前述した少なくとも1つの結合が、典型的にはケイ素化合物によって含まれる。式(A)によるビルディングブロックと式(B)によるビルディングブロックとを含むケイ素化合物は、典型的には以下:
【化6】
のように表すことができる。
【0039】
ケイ素化合物は、広く市販されており、あるいは標準的な方法によって得ることができる。例えば、2種以上の適切なシランを、(目的とする)加水分解および縮合反応において互いに反応させることができる。これらの反応は、適切な溶媒(例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、およびプロパノール、または水と、アルコールもしくはケトン、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)との混合物)の中で行うことができる。この種の反応に有用な触媒は当該技術分野で公知であり、無機酸および有機酸(例えば塩酸、酢酸)、塩基(例えばアンモニアまたは水酸化カリウム)、および金属キレート(例えばチタン酸塩またはジルコン酸塩)を包含する。必要に応じて、縮合中に遊離したアルコールは、蒸留などの標準的な手段によって除去することができる。有用な方法は欧州特許第0675128号明細書に記載されている(第2ページ第50行目から第5ページ第41行目、特に実施例IIを参照)。
【0040】
式(S)による少なくとも1種のシランは、RおよびRを含む。好ましくは、Rは、好ましくはヒドロキシ基およびC1~C4アルコキシ基からなる群から選択され、より好ましくは、ヒドロキシ基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選択される。この選択により、結合部位の被覆率が向上し、HClなどの潜在的に腐食性のハロゲン化物またはハロゲン化水素を回避することができる。
【0041】
は、アルキル基およびアルケニル基からなる群から選択される。前記アルキル基および前記アルケニル基は無置換である。Rは、好ましくは無置換のC1~C18アルキル基、より好ましくは無置換のC2~C8アルキル基、さらにより好ましくは無置換のC2~C4アルキル基、特にn-プロピル基である。
【0042】
少なくとも1つのRは、クロリド、カルボン酸基、ヒドロキシ基、およびアルコキシ基からなる群から選択される(上記優先事項が適用される)。
【0043】
層中の少なくとも1種のケイ素化合物(または上記から誘導された化合物)に対する式(S)による少なくとも1種のシランの重量比は、0.1~50、好ましくは0.2~20、より好ましくは1~10の範囲である。
【0044】
コアの表面上の層の重量は、好ましくは、表面改質粒子のコアの重量を基準として0.1~25重量%、より好ましくは0.5~15重量%、さらにより好ましくは3~8重量%の範囲である。
【0045】
処理の手段は以降で記載される。少なくとも1種のケイ素化合物と式(S)による少なくとも1種のシランとでコアを処理することにより得られる層は、有利には、本発明による表面改質粒子を含む粒子または組成物の色を変化させない。また、この表面処理により表面のヒドロキシル基が除去されるため、水素結合の形成も防止される。そのような水素結合は、粒子の乾燥プロセス中に永久的な凝集体を形成する傾向があるため、望ましくない。
【0046】
表面改質粒子のサイズは、好ましくは2~1000nm、より好ましくは5~500nm、さらにより好ましくは70~200nmの範囲である。表面改質粒子のサイズは、任意の適切な技術、好ましくはX線レーザー回折技術を使用して測定することができる。適切なサイズ測定装置とその使用については、本明細書の実験項で説明される。上で定義したサイズ範囲が、表面改質粒子の全ての寸法に適用されることが特に注目される。
【0047】
表面改質粒子の形状は特に限定されない。これは不規則な形状であってよい。これは好ましくは円形であり、より好ましくは球形である。
【0048】
表面改質粒子のアスペクト比は、好ましくは1:1~5:1、より好ましくは1:1~3:1、さらにより好ましくは1:1~2:1の範囲である。アスペクト比x:yにおいて、xは表面改質粒子の最大寸法を表し、yは最小寸法を表す。表面改質粒子の寸法は、TEMによって得られる二次元写真で測定することができる。通常、少なくとも100個の表面改質粒子を測定する必要がある。表面改質粒子の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは99%が前述したアスペクト比を有することが好ましい。前述した範囲のアスペクト比を有する表面改質粒子は、向上した分散性を有し、トナー組成物における使用に特に適している。本発明者らは、この効果は、表面改質粒子の表面上に存在する少なくとも1種のケイ素化合物と式(S)による少なくとも1種のシランとから得られる官能基を非常に多く与える有利な体積対表面比によるものであろうと考えている。さらに、前述したアスペクト比は、トナー組成物に対する表面改質粒子の有用性に有利な影響を与える。
【0049】
少なくとも1種のケイ素化合物と式(S)による少なくとも1種のシランとで前記コアを処理することによって得られるコアの表面上の層は、特性評価することが困難であることが判明した。おそらく、これは、前記ケイ素化合物および式(S)によるシランと、ヒドロキシル基などのコア表面に存在する1つ以上の結合部位とが反応することによって形成される化合物の混合物を含む。
【0050】
通常、本発明に関連する層は広く解釈されるべきである。層は、コアの表面全体を被覆することも、コアの1つ以上の部分を被覆することも可能である。例えば、これは、コアの表面上の均一な層であっても、その表面上に存在する島状の構造であってもよく、あるいはコアの単なる表面官能化であってもよく、当然ながら、最初に述べたものが好ましい。少なくとも1種のケイ素化合物と式(S)による少なくとも1種のシランとで前記コアを処理することによって得られるコアの表面上の層は、好ましくはコアの表面上に直接位置する。この層は、好ましくは、例えば、コアの表面に存在するヒドロキシ基などの結合部位と、ケイ素化合物または式(S)によるシランのシラノール基などとの反応によって、コアの表面に化学的に結合している。
【0051】
本発明による表面改質粒子は、それで処理された表面に疎水性(すなわち90°以上の接触角)、さらには超疎水性(すなわち150°以上の接触角)の特性を付与するために使用することができる。この文脈では、任意の表面を使用することができる。好ましい表面は、セラミック、繊維、金属、顔料、および膜からなる群から選択される。
【0052】
本発明は、さらに、トナー組成物、接着剤、もしくは研磨スラリーにおける添加剤としての、または電子材料、(特殊)コーティング、もしくは膜における充填剤としての、本発明による(少なくとも1種の)表面改質粒子の使用に関する。したがって、本発明は、本発明による少なくとも1種の表面改質粒子を含む組成物に関する。通常、そのような組成物は複数の前記表面改質粒子を含む。その量は、様々な要因および組成物の望まれる用途に左右される。
【0053】
本発明は、さらに、本発明による表面改質粒子を調製する方法であって、
I)少なくとも1種の未改質粒子を提供する方法工程;ならびに
II)未改質粒子を、
II.I)
式(A):
【化7】
[式中、
は有機ラジカルであり、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択され;
各Xは、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から独立して選択され;
mは、0、1、および2から選択される]
による少なくとも1つのビルディングブロック、および
式(B):
【化8】
[式中、
は有機ラジカルであり、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、および置換または無置換のアリール基からなる群から選択され;
各Yは、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、およびアルコキシ基からなる群から独立して選択され;
nは、0、1、および2から選択される]
による少なくとも1つのビルディングブロック
を含む少なくとも1種のケイ素化合物と;
II.ii)
式(S):
【化9】
[式中、
各Rは、少なくとも1つのRが、クロリド、カルボン酸基、ヒドロキシ基、およびアルコキシ基からなる群から選択されることを条件として、ヒドロキシ基、カルボン酸基、クロリド、アルコキシ基、アルキル基、およびアリール基からなる群から独立して選択され;
は、アルキル基およびアルケニル基からなる群から選択される]
による少なくとも1種のシランと
で処理する方法工程
を含む、方法に関する。
【0054】
方法工程IおよびIIを行うことにより、本発明による表面改質粒子が得られる。
【0055】
方法工程Iでは、少なくとも1種の酸化物系材料を含む未改質粒子が提供される。未改質粒子は、本発明による表面改質粒子のコアに対応する。その目的のために、未改質粒子は公知の手段によって調製することができ、あるいは市販の未改質粒子を使用することができる。未改質粒子を製造する有用な方法は、いわゆるStoeberプロセスである(Werner Stoeber, Arthur Fink, Ernst Bohn, Controlled growth of monodisperse silica spheres in the micron size range, Journal of Colloid and Interface Science, Vol.26, pp. 62-69 (1968))。未改質粒子は、好ましくは、方法工程II中の望ましくない副反応を避けるために、前記未改質粒子をシランまたはシロキサンにより処理することによって得られる層などの層をその表面上に含まない。任意選択的には、未改質粒子は、酸化物系材料以外の別の材料を含む(上記参照)。本発明による表面改質粒子のコアについて記載した詳細および優先事項は、未改質粒子にも準用される。
【0056】
方法工程IIにおいて、未改質粒子は、少なくとも1種のケイ素化合物と少なくとも1種のシランとで処理される。ケイ素化合物および式(S)によるシランに関する優先事項は、上に記載されている。これにより、未改質粒子の表面に層が形成される。処理の手段は特に限定されない。この目的のために、未改質粒子の表面は、少なくとも1種のケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシランと接触する必要がある。本発明に関連して、未改質粒子および/または少なくとも1種のケイ素化合物および/または式(S)によるシランを含む溶液または分散液を使用することが可能である。
【0057】
例えば、未改質粒子は、少なくとも1種のケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシラン、または前記ケイ素化合物と式(S)による少なくとも1種のシランとを含む組成物に浸漬される。代替的には、未改質粒子が(例えば粉末として(好ましくは付着した水をそこから除去するために方法工程IIの前に乾燥させられる)、または分散液として)提供され、例えばそれに噴霧するかまたはそれの中に浸漬することによって、少なくとも1種のケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシランがそこに添加される。未改質粒子を使用し、それを、適切な混合装置を使用して少なくとも1種のケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシランと直接混合することも可能である。さらに、好ましくは、未改質粒子を含む組成物(分散液など)を提供し、続いて、少なくとも1種のケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシランをそこに添加し、前述したものを混合することが可能である。
【0058】
少なくとも1種のケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシランによる未改質粒子の処理の順序は、特に限定されない。好ましくは、未改質粒子は、最初にケイ素化合物で処理され、その後、式(S)によるシランで処理される。これに関連して、2種以上のケイ素化合物が使用される場合、式(S)による最初のシランの前に全てのケイ素化合物が使用される。式(S)による2種以上のシランが使用される場合には、全てのケイ素化合物が使用された後に、全ての前記シランが使用される。これにより、結合部位の被覆率をさらに向上させることができる。代替的には、未改質粒子が最初にシランで処理され、その後にケイ素化合物で処理されるか、または未改質粒子が、式(S)によるシランとケイ素化合物とで同時に処理される。
【0059】
式(S)による少なくとも1種のシランは、好ましくは、未改質粒子1kgあたり毎分0.01~50gの範囲の添加速度で、少なくとも1種の未改質粒子に添加される。これにより、形成される表面改質粒子の結合部位の被覆率がさらに向上する。好ましくは、添加速度は、未改質粒子1kgあたり毎分0.1~30g、最も好ましくは毎分1~10gの範囲である。
【0060】
少なくとも1種のケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシランの量は、好ましくは、上述した層の重量範囲を満たすように選択される。典型的には、方法工程IIで使用される少なくとも1種のケイ素化合物の量は、少なくとも1種の未改質粒子の質量全体を基準として0.1~10重量%、好ましくは0.25~8重量%、より好ましくは0.5~4重量%の範囲である。
【0061】
方法工程IIにおける式(S)による少なくとも1種のシラン対少なくとも1種のケイ素化合物の重量比は、0.1~50、好ましくは0.2~20、より好ましくは1~10の範囲であることが好ましい。
【0062】
方法工程II中の温度は、好ましくは5~130℃、好ましくは20~90℃、より好ましくは50~80℃の範囲である。方法工程IIの継続時間は、好ましくは1~24時間、好ましくは2~18時間、より好ましくは6~13時間の範囲である。
【0063】
方法工程IIの処理手段に応じて、追加の任意選択的な方法工程が本発明による方法に任意選択的に追加される。例えば、本発明に従って得られた表面改質粒子を分散させること、または分散液を希釈すること、または例えば蒸留などの標準的な手段を使用して余分な溶媒を除去するなどによってその濃度を高めることが可能である。任意選択的には、表面改質粒子は、方法工程IIの前および/または後に乾燥させられる。これは、オーブンを使用するなどの標準的な手段によって行うことができる。
【0064】
任意選択的には、本発明による表面改質粒子を調製する方法は、追加の方法工程III:
III)表面改質粒子を粉砕する方法工程
を含む。
【0065】
この工程は、有利には二次粒子(いわゆる凝集体)の数を減少させ、その結果、より小さい粒子が得られる。この目的のために使用される好ましいツールは、ボールミルまたはジェットミルである。表面改質粒子は、方法工程IIIの前に乾燥させられることが好ましい。
【0066】
本発明の方法により、本発明による表面改質粒子の容易な製造プロセスが可能になる。本発明の方法は、シランを使用する標準的な方法と比較して、VOCおよび有毒化合物、例えばメタノールの遊離をさらに低減する。少なくとも1種のケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシランを使用すると、表面改質粒子のコアの表面上に得られる層が均一に分布する結果にもなる。ケイ素化合物および式(S)による少なくとも1種のシランの使用は、他の方法、例えばシランまたはヒドロシロキサンまたはケイ素化合物のみを使用する場合と比較して、未改質粒子の表面に存在する結合部位(ヒドロキシ基など)の被覆率を向上させることにもなる。後者により、従来技術の解決手段と比較して、必要な材料が少なくなり、生態学的および経済的な優位性が得られる。さらに、粒子の凝集も低減される。
【0067】
本発明は、さらに、本発明による少なくとも1種の表面改質粒子を含むトナー組成物に関する。一般に、トナー組成物およびそれに使用される成分は、当該技術分野で公知である。本発明によるトナー組成物は、着色粒子と少なくとも1種の表面改質粒子とを、好ましくは粉末として、ヘンシェルミキサーなどの撹拌機を用いて混合することによって得ることができる。本発明によるトナーは、より高い耐湿性、より鮮やかな印刷、および増加した印刷効率を有する。
【0068】
着色粒子は、典型的には、少なくとも1種のバインダー樹脂と少なくとも1種の着色剤とを含む。これの製造方法は特に限定されないが、典型的には、例えば粉砕プロセス(バインダー樹脂成分としての熱可塑性樹脂中に着色剤を溶融し、均一に分散させるために混合して組成物を形成し、その後、これを粉砕および分級して着色粒子を得るプロセス)、または重合プロセス(バインダー樹脂の原料としての重合性モノマーに着色剤を溶融または分散させ、次いで、重合開始剤を添加した後に分散安定剤を含む水系分散媒に懸濁させ、懸濁液を所定の温度まで加熱して重合を開始させ、重合完了後に濾過、すすぎ、脱水、および乾燥を行うことにより着色粒子を得るプロセス)で製造される。
【0069】
少なくとも1種のバインダー樹脂としては、これまでトナーに広く使用されてきた樹脂が挙げられる。少なくとも1種のバインダー樹脂は、好ましくは、スチレンおよびその置換生成物のポリマー、例えばポリスチレン、ポリ-p-クロロスチレン、およびポリビニルトルエン、スチレンコポリマー、例えばスチレン-p-クロロスチレン、スチレン-プロピレン、スチレン-ビニルトルエン、スチレン-ビニルナフタレン、スチレン-メチルアクリレート、スチレン-エチルアクリレート、スチレン-ブチルアクリレート、スチレン-オクチルアクリレート、スチレン-メチルメタクリレート、スチレン-エチルメタクリレート、スチレン-ブチルメタクリレート、スチレン-α-クロロメタクリレート、スチレン-アクリロニトリル、スチレン-ビニルメチルエーテル、スチレン-ビニルエチルエーテル、スチレン-ビニルメチルケトン、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、スチレン-アクリロニトリル-インデン、スチレン-マレイン酸、およびスチレン-マレエート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族樹脂または脂環式炭化水素樹脂、および芳香族石油樹脂、ならびに前述したものの混合物からなる群から選択される。前記少なくとも1種のバインダー樹脂には、公知の離型剤や帯電防止剤などが任意選択的に添加される。
【0070】
着色粒子に含まれる着色剤としては、カーボンブラックやチタンホワイトなどのあらゆる顔料および/または染料を使用することができる。着色されたものは、任意選択的には少なくとも1種の磁性材料を含む。前記少なくとも1種の磁性材料は、好ましくは、マグネタイト、γ-酸化鉄、フェライト、および鉄過剰フェライトなどの酸化鉄、鉄、コバルト、およびニッケルなどの金属、または前記金属と、アルミニウム、銅、マグネシウム、スズ、亜鉛、カルシウム、チタン、タングステン、およびバナジウムなどの金属との合金およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0071】
本発明によるいずれのトナー組成物も、そのまま、すなわち一成分トナーとして使用することができる。これは、いわゆる二成分トナーとして使用するためにキャリアと混合することもできる。
【0072】
本発明は、さらに、本発明による方法によって得られる表面改質粒子に関する。
【0073】
本発明は、基材の表面を処理する方法であって
B1)表面を有する基材を提供する方法工程;および
B2)本発明による少なくとも1種の表面改質粒子で基材の表面を処理する方法工程
を含む、方法を目的とする。
【0074】
方法工程B1およびB2を行うことにより、処理された表面を有する基材が得られる。本明細書で前述したように、本発明による少なくとも1種の表面改質粒子(通常は複数が使用される)による処理は、表面に特定の機能性、例えば疎水性を付与する。基材の選択は特に限定されず、当業者は満たそうとする技術的要件に従って適切な基材を選択することができる。好ましい基材は、ガラス、顔料、繊維、フレーク、セラミック、および特に紙やボール紙などのセルロース系材料からなる群から選択される。そのようにして処理された表面は、典型的には向上された耐湿性、強化された機械的または熱的安定性を有する。
【0075】
方法工程B2における処理は特に限定されない。本発明による少なくとも1種の表面改質粒子を含む組成物に基材を浸漬するなどの多くの方法を使用することができ、前記組成物を、基材の表面上に、噴霧、印刷、または塗装するなど行うことができる。当業者は、日常的な実験に基づいて、適切な温度および継続時間を選択することができる。
【0076】
さらに、本発明は、本発明による少なくとも1種の表面改質粒子を含む少なくとも1つの層を含む基材にも関する。
【0077】
以降で、以下の非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。
【0078】
実施例
実施例では、Dynasylan6598(n-プロピルトリエトキシシランとビニルトリエトキシシランとのコオリゴマー、Evonik Corp., USAから供給)をケイ素化合物として使用した。
【0079】
未改質粒子の調製
例1(本発明による)
a)200nmのシリカ粒子の合成(方法工程Iに対応):
1Lの反応器に、10.1gの水酸化カリウム(水中45重量%)、141.4gのエタノール、および518.9gの水を入れた。溶液を激しく混合し、78℃に加熱した。329.6gのTEOS(テトラエトキシシラン)を3時間かけて添加して、シリカナノ粒子を合成した。反応後、未改質粒子を含む懸濁液を室温(20℃)まで冷却した。
【0080】
b)官能化(方法工程IIに対応):
同じ反応器内で、3%(w/v)のDynasylan6598を室温でシリカ懸濁液にゆっくり添加した。ケイ素化合物を1時間かけて懸濁液に滴下した。添加後、温度を78℃まで上昇させた。官能化反応は4時間行った。次に、0.5%(w/v)のn-プロピルトリエトキシシラン(PTEO、Evonik Corp.から供給)を50℃の懸濁液にゆっくり添加した。反応を3時間継続させ、その後、表面改質粒子を含む懸濁液を室温まで冷却した。
【0081】
c)乾燥および粉砕(任意選択的な方法工程IIIに対応):
続いて、遠心分離し、エタノールで洗浄し、50℃で乾燥することにより、表面改質粒子を得た。表面改質粒子の乾燥粉末サンプルをボールミルにより300RPMで粉砕した(15~30分間)。
【0082】
例2(比較)
シリカ粒子を、例1に記載の通りに合成した。その後、例1に記載した手順を使用して、シリカ粒子を3%(w/v)のDynasylan6598のみで官能化した。
【0083】
例3(比較)
シリカ粒子を、例1に記載の通りに合成した。その後、例1に記載した手順を使用して、シリカ粒子を4%(w/v)のn-プロピルトリエトキシシランで官能化した。
【0084】
得られた生成物を以下の方法で特性評価した:
【0085】
分散性試験
例1~3の粉末サンプルを、様々な溶媒と重量比1:5で混合した(20℃)。これらの懸濁液を超音波破砕装置で30分間混合し、分散性の状態を目視で観察した。結果を下の表に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
例1(本発明による)では、試験した全ての有機溶媒で安定な分散液が得られたが、モノマー状シランまたはケイ素化合物のみで改質された粒子は完全には分散できなかった。上で示した結果から、本発明による表面改質粒子の有機溶媒中での分散性は、モノマー状シランで処理した粒子(例3)やケイ素化合物のみで処理した粒子(例2)のような従来技術から公知の粒子の分散性よりも優れていると結論付けることができる。
【0088】
レーザー回折粒度分布
エタノール中に例1の表面改質粒子を含む分散液および未改質粒子を含む分散液の粒度分布を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA950、Horiba)により測定した。測定前に、分散液を5分間超音波処理した。例1のピークは狭く、1μmを超える粒子のフラクションは未改質粒子と比較して非常に小さかった。これは、本発明による表面改質粒子の濡れ性および溶解性が向上したことを示している。また、これは、未改質粒子と比較して、本発明による表面改質粒子の乾燥中に形成される凝集体が少ないことも裏付けている。
【0089】
固体29Si NMR(図1
固体29Si NMRは、Bruker Avance III 300FT-NMR分光計で測定した。1重量%のポリジメチルシロキサン(PDMS)を、内部標準として例1および例2の粉末サンプルにそれぞれ添加した(米国特許出願公開第2010/0071272号明細書、特に図面および第70段落以降を参照)。スペクトル中のPDMSピークの面積およびシラノールピークの総面積を、PDMSピークの面積に基づいて正規化した。正規化されたPDMSのピーク面積とシラノールピークの総面積との比により、官能化実験後に残存するシラノール基についての推定値が得られる。シラノール基に対するPDMSのモル比が高いほど、オルガノシランによる表面コーティングが不完全であることを示す。結果を下の表に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
本発明による表面改質粒子の結合部位の数は、モノマー状シランまたはケイ素化合物のみを用いて製造された従来技術の粒子と比較して大幅に少ないことは明らかである。したがって、本発明の方法は、結合部位の向上した被覆率を可能にする。
【0092】
メタノール濡れ性試験
この試験の目的は、処理されたサンプルの疎水性を測定することであった。サンプルを完全に濡らすメタノールと水との混合物の重量%は、疎水性の程度と処理の均一性の尺度である。
【0093】
0.2gの表面改質粒子を15mLの透明なコニカル遠沈管(最初の1mLにマーク付き)それぞれに入れた。30重量%から70重量%まで変化させた濃度のメタノール-水混合物を調製した。各管に、特定の濃度のメタノール-水混合物8mLを添加した。内容物を激しく混合し、次いで2500RPMで5分間遠心分離した。その後、沈殿物のレベルを目視で分析した。結果を下の表に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
本発明の例1は、最も疎水性の表面改質粒子を示した。
【0096】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察または本明細書に開示された本発明の実施から当業者には明らかであろう。明細書および実施例は例示としてのみ考慮され、本発明の真の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ定義されることが意図されている。
図1a
図1b
【国際調査報告】