(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】板形状のワークピースのレーザー溶接のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/03 20060101AFI20241003BHJP
B23K 26/244 20140101ALI20241003BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20241003BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20241003BHJP
B23K 37/00 20060101ALI20241003BHJP
H01M 8/0202 20160101ALI20241003BHJP
B65G 17/12 20060101ALI20241003BHJP
B65G 35/08 20060101ALI20241003BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B23K26/03
B23K26/244
B23K26/08 D
B23K26/38 A
B23K37/00 F
H01M8/0202
B65G17/12 Z
B65G35/08 A
B65G54/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024518635
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2022071354
(87)【国際公開番号】W WO2023046342
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519178191
【氏名又は名称】アンドリッツ・スーテック・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー・ハンスペーター
(72)【発明者】
【氏名】クレール・ジャン-フレデリク
【テーマコード(参考)】
3F021
3F034
4E168
5H126
【Fターム(参考)】
3F021BA02
3F021CA01
3F034FA05
3F034FC01
3F034FC05
4E168BA02
4E168BA06
4E168BA12
4E168CA13
4E168CB07
4E168GA01
4E168GA02
5H126AA12
5H126DD05
5H126HH00
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、溶接された、板形状のワークピース14、15の製造のための、特にバイポーラプレートまたは熱交換器プレートの製造のための装置1および方法に関する。前記ワークピース14は、その際、垂直に起立して、水平面XY内において、エンドレスに循環する製品輸送システム2によって輸送され、且つ、溶接される。前記ワークピース14は、一定の速度でもって、前記加工領域を通り抜け輸送され、且つ、そこで、同時に作動する少なくとも2つの溶接レーザー22a、22bによって溶接され、その際、前記ワークピース14の位置が算出され、且つ、従って、少なくとも2つの前記溶接レーザー22a、22bが制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接された、板形状のワークピース(14、15)の製造のための、特にバイポーラプレートまたは熱交換器プレートの製造のための装置であって、
この装置が、水平面(XY)内においてエンドレスに循環する製品輸送システム(2)を有しており、
板形状の前記ワークピースが基本的に垂直に起立して加工領域(23a、23b)を通って輸送されるように、前記製品輸送システムが、板形状の前記ワークピース(14)の固定のための、複数の輸送要素(3)から成っており、
この加工領域内において、板形状の前記ワークピース(14)が、溶接レーザー(22、22a、22b)によって溶接され、
前記加工領域(23a、23b)を通っての、前記輸送要素(3)の前記輸送のための駆動手段(12)が設けられている上記装置において、
前記加工領域(23a、23b)内において、前記輸送要素(3)が、一定の速度でもって、通り抜け輸送可能であること、および、
前記ワークピース(14)が、前記加工領域(23a、23b)内において、同時に作動する少なくとも2つの溶接レーザー(22、22a、22b)によって溶接可能であり、
少なくとも2つの前記溶接レーザー(22、22a、22b)の制御のために、前記ワークピース(14)の位置算出のための位置測定装置(9)が設けられていること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも両方の前記溶接レーザー(22、22a、22b)は、それぞれに、光学系を備えており、前記光学系によって、レーザー光線(26、26a、26b)が、水平および垂直の方向に方向転換可能であり、
従って、このことによって、前記ワークピース(14)の表面上のあらゆる点が、到達可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動手段(12)は、螺旋体(7)を有するスクリュー駆動装置(12)として、または、リニアモーターとして構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
2つよりも多くの、例えば3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または、8つの、溶接レーザー(22、22a、22b)が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
前記輸送要素(3)は、チェーンリンクとして、または、車両として構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
少なくとも2つの前記溶接レーザー(22、22a、22b)は、固定状態で配置されており、前記レーザー光線(26、26a、26b)が、ミラーシステムによって、位置決め替え可能であり、
従って、このことによって、前記レーザー光線(26、26a、26b)が、1つのワークピース(14)から、後続の前記輸送要素(3)における次のワークピース(14)へと位置決め替え可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
前記ワークピース(14)は、輸送平面(XY)に対して垂直に、折畳みレバー(20a、20c)によって、前記輸送要素(3)の上で固定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
溶接された、板形状のワークピース(14、15)の製造のための、特にバイポーラプレートまたは熱交換器プレートの製造のための方法であって、
前記ワークピース(14)が、基本的に垂直に起立して、輸送要素(3)の上で、エンドレスに循環する製品輸送システム(2)によって、水平面(XY)内において輸送され、
板形状の前記ワークピース(14)が、加工領域(23a、23b)内において溶接される、前記方法において、
前記輸送要素(3)が、前記加工領域(23a、23b)内において、一定の速度でもって、通り抜け移動され、
前記ワークピース(14)が、前記加工領域(23a、23b)内において、同時に作動する少なくとも2つの溶接レーザー(22、22a、22b)によって溶接され、
前記ワークピース(14)の位置が算出され、且つ、このことによって、少なくとも2つの前記溶接レーザー(22、22a、22b)が制御されることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記ワークピース(14)は、前記加工領域(23a、23b)内において、水平の、直線的なライン上で案内されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ワークピース(14)は、前記加工領域(23a、23b)内において、円軌道(29)上で案内されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの溶接レーザー(22、22a、22b)の配置によって、溶接領域のオーバーラップ部(24)が達成されることを特徴とする請求項8から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
燃料電池のためのバイポーラプレート、または、熱的なエネルギーの伝達のための熱交換器プレートの製造のための、請求項8から11のいずれか一つに記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスに循環する輸送システム内における金属構造部材、特に、例えば商用車両構造内における、燃料電池のためのバイポーラプレート、または、熱交換器プレートの、レーザー溶接のための装置および方法に関する。本発明は、同様にこの方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工業において、トレンドは、有限な石油備蓄、および、進行的な気候温暖化の結果として、益々、CO2の低減、および、代替的な駆動装置の使用の方向に向けての状態にある。
燃焼エンジンの代わりに、乗用車およびトラックにおいて、益々、蓄積媒体としての性能の良いバッテリーを有する電気モーターが使用される。将来において、しかしながら、同様に燃料電池のような他の技術も、特にトラック領域のために構築されるであろう。
バイポーラプレート(BPP)は、燃料電池の主構成要素であり、且つ、これに伴って、決定的に、燃料電池システムの製造コストと効率とを規定する。安定性、少ない薄板厚さ、および、多様な被膜可能性のような、製造可能性と材料特性とに関しての、種々の利点に基づいて、バイポーラプレートの金属的な構成は、研究および開発の中心点へと移動し、且つ、現在、燃料電池の将来の大規模使用のための有利に扱われるバリエーションとして見なされている。
燃料電池システムは、セルの間でそれぞれに1つのBPPを有する、多数の個別セルから成っており、その際、自動車に関する使用のために、典型的にシステム毎に300~400枚のバイポーラプレート(BPP)が必要である。個別システム毎の多数のBPPに基づいて、自体で控え目なシナリオにおいて、将来、必要な個数が、迅速的に極めて高い次元を占めるであろうことが前提とされる。
この挑戦は、同様にBPPの下請け企業のためのチャンスとして見なされる。このための前提条件は、しかしながら、経済的な且つ性能の高い生産技術である。
特に、1つのBPPへの両方のバイポーラプレート半分体の溶接は、多数の溶接継ぎ目と、これと関連する長い溶接時間と、および、薄い材料に基づいての同時に極めて困難なプロセス条件におけるこれら溶接継ぎ目とに対する高い要求に基づいて、中心的な課題であり、且つ、現在、未だに、コストにおいて効率の良い製造のための決定的な障害である。
【0003】
BPPそれ自体は、従来技術から公知である。これらBPPは、通常は、2つのバイポーラプレート半分体から成り、これらバイポーラプレート半分体が組み合わされる。これらバイポーラプレート半分体は、通常は、型押しされたフィルム、もしくは、変形された金属薄板として形成されている。
これらバイポーラプレート半分体は積み重なっており、且つ、通常は、オーバーラップ当接部において、レーザーを用いて密閉溶接される。その際、レーザーは、数メートルの溶接継ぎ目を生成し、且つ、場合によっては付加的な溶接点を生成する。
選択的に、同様に抵抗溶接による方法も公知である。この目的のために、溶接装置が使用され、これら溶接装置内において、密閉輪郭および全溶接点が形成され得るために、バイポーラプレート半分体は、しばしば、何度も緊締替えされる必要がある。
全ての密閉輪郭および点を溶接可能とするために、その際、溶接されるべきバイポーラプレートは、緊締装置から解離され、且つ、溶接されるべきBPPの全ての領域が溶接レーザーのためにアクセス可能であるために、他の締付けマスクプレートまたは溶接マスクプレートによって、新たに緊締めされる必要がある。
製造の際に、特に、周囲に延在する密閉輪郭は、問題を与える。そのような密閉輪郭が、レーザーによって、1つの溶接工程内において製造される場合、従って、バイポーラプレート半分体を周囲に延在する密閉輪郭の内側において固定する付加的な緊締要素を、密閉輪郭の内側において配置することが困難であることは判明した。
これらプレートの緊締替え(Umspannen)の際に、位置決めが、もはや一致せず、且つ、溶接点が、誤った位置において配置されること、および、
バイポーラプレートが、この緊締替えの際に、解放された内部応力によって歪むことの危険が存在する。付加的に、バイポーラプレートの全ての製造プロセスは、半製品のバイポーラプレートの緊締替えによって、強度に遅延される可能性がある。
【0004】
特許文献1は、バイポーラプレートの製造のための装置および方法を記載しており、この方法において、構造部材の歪みが比較的に少しである。溶接エネルギーの導入は、上方および下方から、BPPに対して行われる。このことが行われる空間内における姿勢(Lage)は、説明されていない。
【0005】
特許文献2内において、締付けレバーを有する緊締装置が示されている。図およびテキストから、BPPの整向状態が水平であり、即ち、表面が基礎面の上で水平に位置していることが推定され得る。
【0006】
特許文献3は、電磁式の締付け装置を有する、バイポーラプレートの溶接のための装置を記載しており、その際、これらプレートが、水平に位置して、溶接レーザーによって溶接される。
【0007】
特許文献4は、レーザー溶接のための設備を記載しており、この設備内において、垂直に起立するワークピースが、回転するプラットホームの上で固定されており、且つ、レーザーを用いて溶接される。
【0008】
特許文献5は、レーザー加工機械内における、ノズルの組み付けおよび取り外しのための、ノズル交換機を記載している。
【0009】
グレーベナー機械技術(GRAEBENER Maschinentechnik)は、ホームページで、BPPのための完全な製造ラインで示している。非特許文献1(URL: https://www.graebener.com/en/cutting-and-welding)のもとで、同様に2つの溶接設備が、より精確に示されている。BPPは、停止状態において、水平に位置して溶接される。
【0010】
SITEC社(非特許文献2(URL: HTTPS://WWW.SITEC-TECHNOLOGY.DE/))は、自動化可能なレーザー溶接設備を製造しており、その際、溶接が、同様にここでも、停止状態において、および、水平面内において行われる。
【0011】
特許文献6は、溶接された金属薄板部材-特に自動車工業のためのテイラードブランク材-の工業的な生産において、サイクル時間を増大すること、および、これに伴って、生産コストを減少することのための方法を記載している。
この方法は、片持ち式の光学系と、溶接の間じゅうの、ワークピースの水平の整向方向とを有する、輸送システムを基礎としており、および、高温の溶接継ぎ目の如何なる手間暇がかかる冷却も必要ではなく、且つ、輸送ベルトの上での、大きな力でもってのワークピースの片側での固持のための如何なる手段も必要ではない。
これに伴って、機械のサイクル時間に対する、基板間隔の不利な影響は、強力に低減され得る。総じて、この方法でもって、溶接-副次的時間は、低減され得る。
【0012】
垂直の移動面を有するそのような公知のシステムにおいて、機械下側面からアクセスが行われることを除き、輸送システムの逆戻りする道程は、但し、操作のために使用されない。
記載された方法が、静的なレーザー光線だけを意図しているので、レーザー加工のために、輸送方向に対して横向きに移動され得ない。それに加えて、レーザー光学系全体が移動される必要があり、このことは、大きな質量の結果として、動力学的な動態と、精確性と、および、出力需要とに関しての不利な結果を必然的に伴う。
それに加えて、チェーン方向転換半径に対する、チェーンリンク長さの比率は、しばしば、極めて大きいので、チェーン歯車を用いてのチェーン駆動の際に、公知のポリゴン効果によって、チェーンに対する著しい位置誤差が誘起される。この所望されない効果を、少なくとも(前進走行における)一方のチェーン車間部分で、チェーン駆動装置の、例えば電子式のカムディスクによって補償することは、慣用の実施方法であるが、このことは、しかしながら、与えられた非連続的な運動学的状況と質量とに基づいて、条件付けられた精確性だけを達成する。
2つの方向転換部を有する1つのチェーンにおいて、その際、しかしながら、(逆戻り走行における)相手方チェーン車間部分は、事情によっては、過剰補償(移動の間じゅうの両方向への加速)され、且つ、このチェーン車間部分と機能を同期化することは、極めて理想が高すぎる。
ポリゴン効果は、しかしながら、動力学的な動態に対して影響力を有するだけでなく、チェーン長さ自体に対しての影響力を有する。このチェーン長さ変化は、それ故に、少なくとも1つの動力学的なチェーン緊張機構、または、補償-方向転換曲線部によって補償される必要があり、これに伴って、ほぼ一定のチェーン張力が維持され得る。
予緊張されていないチェーンは、無秩序な振動を発生させる可能性があり、且つ、これに伴って、付加的な不精確さを生起する。
【0013】
先に言及されたこれら解決策における欠点は、構造部材のプロセス信頼性を有する緊締のための高い技術的な手間暇と、高い投資コストを有する大きな機械寸法と、並びに、総じて少ない、全設備の生産性とである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許発明第102016200387号明細書
【特許文献2】国際公開第2018149959号
【特許文献3】中国特許出願公開第108637476 A号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第107350623 A号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3112074 A1号明細書
【特許文献6】欧州特許第3038789号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】グレーベナー機械技術(GRAEBENER Maschinentechnik)URL: https://www.graebener.com/en/cutting-and-welding
【非特許文献2】SITEC社 URL: HTTPS://WWW.SITEC-TECHNOLOGY.DE/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の根底をなす課題は、前述された欠点を有していない装置および方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、本発明に従い、請求項1に従う特徴を有する装置によって解決される。有利な実施形態の変形例は、従属請求項内において提示されている。
本発明に従う方法は、請求項8の特徴を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従う装置において、通常は、それぞれに積み重ねられた2つの金属板から成るワークピースは、循環して、水平面内において輸送され、且つ、溶接される。これら板形状のワークピースは、その際、基本的に、垂直、即ち鉛直に起立している。これに反して、従来の設備において、ワークピースは、水平に位置して溶接される。
本発明の利点は、これに伴って、溶接プロセスが、垂直面内において、即ち垂線方向において、および、輸送方向に対してほぼ垂直に行われることにある。これに伴って、溶接飛沫は、加工されるべきワークピースの上に残存せず、このことによって、ワークピースおよび装置のより少ない汚染が結果として生じる。
【0019】
本発明に従い、ワークピースは、これらワークピースが溶接される加工領域内において、一定の速度でもって輸送され、且つ、そこで、同時に作動する少なくとも2つの溶接レーザーによって溶接される。それに加えて、前記ワークピースの位置算出のための位置測定装置が設けられている。位置測定装置は、少なくとも2つの前記溶接レーザーの制御のために使用される。
【0020】
ワークピースが、一定の速度でもって加工領域を通って輸送され得るために、ポリゴン効果は補償される必要がある。このことは、例えば、螺旋体によって行われ得る。
その際、全ての、現在、加工領域内において位置するチェーンリンクは、加工相の間じゅう、この領域内において位置するねじ(螺旋体)との係合状態にある。このことによって、チェーンリンクのより精確な互いに対する正しい位置合わせが達成され、且つ、これに伴って、品質の向上が達成される。
重畳された加速無しに移動される相手方チェーン車間部分は、ワークピースのチェーンリンクへの積み込み/積み降ろしが、手間暇がかかる位置補償無しに実施され得、且つ、これに伴って所要スペースの最適な利用を可能にすることを生起する。更に、複数の溶接レーザーの使用は、生産増大を可能にする。これらレーザー光線は、その際、1つのワークピースを同時に加工可能であり、且つ、その後、即座に次のワークピースが更に前進(weiterspringen)可能である。
可能な限り狭小に相並んで配置された溶接レーザーは、同様に、サイクル時間を低減し、且つ、付加的な構造空間を提供する。レーザー光学系が製品輸送システムに対して相対的に移動すること無しに、特別のレーザー光学系のこの使用は、それに加えて、大きな加工面積の加工を可能にする。
【0021】
提案された構成において、ワークピースは、ただ一度だけ挟み込まれ、且つ、引き続いて加工され、従って、ワークピースの加工の間じゅうの、精確な調整の周知の問題を有する複数回の挟み込みが省略され、且つ、総じて、積み込み、加工、および、積み降ろしの際の高い精確性が達成される。
【0022】
本発明の目的は、同時の部材コスト低減において、単位時間毎の部材生産能力を著しく増大することである。レーザー光学系の使用は、このレーザー光学系が製品輸送方向に対して相対的に移動される必要無しに、大きな加工面積を可能にし、このことは、品質の向上を生起する。
レーザー光線のオーバーラップと、複数のピッチ位置での同時の加工とは、レーザーの最適な利用と、コンパクトな構造様式と、および、極めて短い時間内における極めて長い溶接継ぎ目とを可能にし、且つ、これに伴って、加工コストを低減する。
【0023】
ここで提示された発明は、即ち、総じて、能率的な、且つ、品質的に高位の製造を可能にする。本発明を、以下で、実施例に基づいて、図との関連のもとで、更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】概略図における、第1のレーザー加工兼製品輸送システムの平面図である。
【
図2】概略図における、選択的な、第2のレーザー加工兼製品輸送システムの平面図である。
【
図3】概略図における、選択的な、第3のレーザー加工兼製品輸送システムの平面図である。
【
図4】これまた同様に概略図における、第1のレーザー加工兼製品輸送システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、平面図において、エンドレスに循環する製品輸送システム2と少なくとも1つの製品輸送システムガイド8とを有する、第1のレーザー加工兼製品輸送システム1を示している。
製品輸送システム2は、ロータリーエンコーダ13aを有するスクリュー駆動装置12を用いて、時計方向に、輸送平面(水平面)XY内において移動され、且つ、その際、直線的な領域5a、5bと、補償-方向転換曲線部11内における曲線領域6a、6bとを通過する。製品輸送システム2、例えばチェーン駆動されるシステムは、複数の輸送要素3、例えばチェーンリンクから成っており、これら輸送要素が、それぞれに1つの旋回可能な折畳みレバー20と、それぞれに少なくとも1つのカムローラー10とを備えており、これらカムローラーが、螺旋体7内に係合する。
ワークピース14の、循環する製品輸送システム2の溶接装置への積み込み17は、直線的な領域5a内において、積み込み/積み降ろしゾーン16内で展開され且つ水平に位置する折畳みレバー20の際に、行われる。曲線領域6a内において、ワークピース14は、折畳みレバー20の上方への傾倒によって、垂直の位置へと移動され、且つ、溶接装置内において、例えば磁力によって固定される。
次のステップにおいて、折畳みレバー20は、再び開放され、且つ、ほぼ水平の位置へと移動される。ワークピースは、その際、垂直の位置において残留する。
直線的な領域5b内において、レーザー加工ゾーン21内で、ワークピース14の溶接は、固定式の溶接レーザー22a、22bを用いて行われる。ワークピース14は、レーザー加工ゾーン21内において、製品輸送システム2によって、溶接レーザー22a、22bの傍らを通って移動される。
積み込み/積み降ろしゾーン16内において、加工された(溶接された)ワークピース15は、溶接装置の積み降ろし18によって、循環する製品輸送システム2から除去される。
【0026】
図2は、平面図において、エンドレスに循環する製品輸送システム2を有する、選択的な第2のレーザー加工兼製品輸送システム1を示しており、この製品輸送システム2が、駆動手段を備えており、且つ、均等な回転移動において、時計方向に、輸送平面(水平面)XY内における円軌道29の上で移動する。
製品輸送システム2は、複数の輸送要素3から成っており、これら輸送要素が、それぞれに1つの旋回可能な折畳みレバー20を備えている。加工されるべきワークピース14の、循環する製品輸送システム2の溶接装置への積み込み17は、積み込み/積み降ろしゾーン16内において、展開され且つ水平に位置する折畳みレバー20の際に、行われる。
折畳みレバー20の戻し傾倒によって、ワークピース14は、垂直の位置へと移動され、且つ、溶接装置内において固定される。
次のステップにおいて、折畳みレバー20は再び開放され、且つ、再び、ほぼ水平の位置へと移動される。レーザー加工ゾーン21内において、連続的な位置測定9と、少なくとも2つの溶接レーザー22のレーザー光線26によるワークピース14の溶接とが行われ、これら溶接レーザーが、可能な限り狭小に相並んで配置されている。
ここで、5つの溶接レーザー22が図示されているが、しかしながら、同様に他の数の溶接レーザー22も可能である。ワークピース14は、溶接平面内において、製品輸送システム2によって、溶接レーザー20、22a、22bの傍らを通って移動される。
積み込み/積み降ろしゾーン16内において、加工されたワークピース15は、溶接装置の積み降ろし18によって、循環する製品輸送システム2から除去される。
【0027】
図3は、平面図において、製品輸送システム2と少なくとも1つの製品輸送システムガイド8とを有する、選択的な第3のレーザー加工兼製品輸送システム1を示している。
輸送要素3は、駆動手段、例えばモーター駆動される車両を備えており、且つ、輸送平面XY内における輸送方向TRにおいて、不動のピッチを有する固定の経路27、および、自由なピッチを有する自由な経路28の上で移動する。駆動手段が、例えばリニアモーターであることは可能である。加工されるべきワークピース14の、循環する輸送要素3の溶接装置への積み込み17は、固定の経路27の上の積み込み/積み降ろしゾーン16内において行われる。
同様に固定の経路27の上で位置しているレーザー加工ゾーン21内において、連続的で直線的な位置測定9と、並びに、少なくとも2つの溶接レーザー22a、22bの少なくとも2つのレーザー光線26a、26bによるワークピース14の溶接とが行われる。ワークピース14は、溶接平面内において、製品輸送システム2によって、溶接レーザー20、22a、22bの傍らを通って移動される。
積み込み/積み降ろしゾーン16内において、加工されたワークピース15は、溶接装置の積み降ろし18によって、循環する製品輸送システム2から除去される。
【0028】
図4は、側面図において、循環する製品輸送システム2を有する、レーザー加工兼製品輸送システム1のレーザー加工ゾーン21を示しており、循環する前記製品輸送システム2の輸送要素3が、連続的に、輸送平面(水平面)XY内において、輸送方向TRに移動する。
加工されるべきワークピース14は、輸送要素3の上で固定されており、且つ、溶接平面XZ内において加工される。少なくとも2つの溶接レーザーが、現在のピッチ位置3aの上で、加工領域23a、23bを覆い、その際、これら加工領域23a、23bのオーバーラップ24が結果として生じる。
折畳みレバー20は、旋回軸19を中心として旋回可能であり、輸送要素3の上での、加工されるべきワークピース14と加工されたワークピース15との位置決めおよび固定のために利用される。これら折畳みレバー20は、「下方への傾倒」ダウン、もしくは、「上方への傾倒」アップのステータスにおける、「半開20c」の位置において示されている。
【符号の説明】
【0029】
1 レーザー加工兼製品輸送システム
2 製品輸送システム
3 輸送要素
3a 現在のピッチ位置
5a 直線的な領域
5b 直線的な領域
6a 曲線領域
6b 曲線領域
7 螺旋体
8 製品輸送システムガイド
9 位置測定
10 カムローラー
11 補償-方向転換曲線部
12 スクリュー駆動装置
13a ロータリーエンコーダ
14 板形状のワークピース
15 加工されたワークピース
16 積み込み/積み降ろしゾーン
17 積み込み
18 積み降ろし
19 旋回軸
20 折畳みレバー
20a 開放状態の折畳みレバー
20b 閉鎖状態の折畳みレバー
20c 半開状態の折畳みレバー
21 レーザー加工ゾーン
22 溶接レーザー
22a 溶接レーザー
22b 溶接レーザー
23a 加工領域
23b 加工領域
24 オーバーラップ
26 レーザー光線
26a レーザー光線
26b レーザー光線
27 固定の経路
28 自由な経路
29 円軌道
TR 輸送方向
XY 輸送平面(水平面)
XZ 溶接平面
【手続補正書】
【提出日】2023-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスに循環する輸送システム内における金属構造部材、特に、例えば商用車両構造内における、燃料電池のためのバイポーラプレート、または、熱交換器プレートの、レーザー溶接のための装置および方法に関する。本発明は、同様にこの方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工業において、トレンドは、有限な石油備蓄、および、進行的な気候温暖化の結果として、益々、CO2の低減、および、代替的な駆動装置の使用の方向に向けての状態にある。
燃焼エンジンの代わりに、乗用車およびトラックにおいて、益々、蓄積媒体としての性能の良いバッテリーを有する電気モーターが使用される。将来において、しかしながら、同様に燃料電池のような他の技術も、特にトラック領域のために構築されるであろう。
バイポーラプレート(BPP)は、燃料電池の主構成要素であり、且つ、これに伴って、決定的に、燃料電池システムの製造コストと効率とを規定する。安定性、少ない薄板厚さ、および、多様な被膜可能性のような、製造可能性と材料特性とに関しての、種々の利点に基づいて、バイポーラプレートの金属的な構成は、研究および開発の中心点へと移動し、且つ、現在、燃料電池の将来の大規模使用のための有利に扱われるバリエーションとして見なされている。
燃料電池システムは、セルの間でそれぞれに1つのBPPを有する、多数の個別セルから成っており、その際、自動車に関する使用のために、典型的にシステム毎に300~400枚のバイポーラプレート(BPP)が必要である。個別システム毎の多数のBPPに基づいて、自体で控え目なシナリオにおいて、将来、必要な個数が、迅速的に極めて高い次元を占めるであろうことが前提とされる。
この挑戦は、同様にBPPの下請け企業のためのチャンスとして見なされる。このための前提条件は、しかしながら、経済的な且つ性能の高い生産技術である。
特に、1つのBPPへの両方のバイポーラプレート半分体の溶接は、多数の溶接継ぎ目と、これと関連する長い溶接時間と、および、薄い材料に基づいての同時に極めて困難なプロセス条件におけるこれら溶接継ぎ目とに対する高い要求に基づいて、中心的な課題であり、且つ、現在、未だに、コストにおいて効率の良い製造のための決定的な障害である。
【0003】
BPPそれ自体は、従来技術から公知である。これらBPPは、通常は、2つのバイポーラプレート半分体から成り、これらバイポーラプレート半分体が組み合わされる。これらバイポーラプレート半分体は、通常は、型押しされたフィルム、もしくは、変形された金属薄板として形成されている。
これらバイポーラプレート半分体は積み重なっており、且つ、通常は、オーバーラップ当接部において、レーザーを用いて密閉溶接される。その際、レーザーは、数メートルの溶接継ぎ目を生成し、且つ、場合によっては付加的な溶接点を生成する。
選択的に、同様に抵抗溶接による方法も公知である。この目的のために、溶接装置が使用され、これら溶接装置内において、密閉輪郭および全溶接点が形成され得るために、バイポーラプレート半分体は、しばしば、何度も緊締替えされる必要がある。
全ての密閉輪郭および点を溶接可能とするために、その際、溶接されるべきバイポーラプレートは、緊締装置から解離され、且つ、溶接されるべきBPPの全ての領域が溶接レーザーのためにアクセス可能であるために、他の締付けマスクプレートまたは溶接マスクプレートによって、新たに緊締めされる必要がある。
製造の際に、特に、周囲に延在する密閉輪郭は、問題を与える。そのような密閉輪郭が、レーザーによって、1つの溶接工程内において製造される場合、従って、バイポーラプレート半分体を周囲に延在する密閉輪郭の内側において固定する付加的な緊締要素を、密閉輪郭の内側において配置することが困難であることは判明した。
これらプレートの緊締替え(Umspannen)の際に、位置決めが、もはや一致せず、且つ、溶接点が、誤った位置において配置されること、および、
バイポーラプレートが、この緊締替えの際に、解放された内部応力によって歪むことの危険が存在する。付加的に、バイポーラプレートの全ての製造プロセスは、半製品のバイポーラプレートの緊締替えによって、強度に遅延される可能性がある。
【0004】
特許文献1は、バイポーラプレートの製造のための装置および方法を記載しており、この方法において、構造部材の歪みが比較的に少しである。溶接エネルギーの導入は、上方および下方から、BPPに対して行われる。このことが行われる空間内における姿勢(Lage)は、説明されていない。
【0005】
特許文献2内において、締付けレバーを有する緊締装置が示されている。図およびテキストから、BPPの整向状態が水平であり、即ち、表面が基礎面の上で水平に位置していることが推定され得る。
【0006】
特許文献3は、電磁式の締付け装置を有する、バイポーラプレートの溶接のための装置を記載しており、その際、これらプレートが、水平に位置して、溶接レーザーによって溶接される。
【0007】
特許文献4は、レーザー溶接のための設備を記載しており、この設備内において、垂直に起立するワークピースが、回転するプラットホームの上で固定されており、且つ、レーザーを用いて溶接される。
【0008】
特許文献5は、レーザー加工機械内における、ノズルの組み付けおよび取り外しのための、ノズル交換機を記載している。
特許文献6は、1つの溶接装置を記載しており、この溶接装置において、板金が、垂直の平面内において、互いに溶接され、従って、この溶接装置のための所要スペースが、可能な限り小さい。
特許文献7は、TLS(熱レーザービーム分離(Thermisches Laserstrahl Separieren))方法による、平らなワークピースの分離のための方法を記載している。
【0009】
グレーベナー機械技術(GRAEBENER Maschinentechnik)は、ホームページで、BPPのための完全な製造ラインで示している。非特許文献1(URL: https://www.graebener.com/en/cutting-and-welding)のもとで、同様に2つの溶接設備が、より精確に示されている。BPPは、停止状態において、水平に位置して溶接される。
【0010】
SITEC社(非特許文献2(URL: HTTPS://WWW.SITEC-TECHNOLOGY.DE/))は、自動化可能なレーザー溶接設備を製造しており、その際、溶接が、同様にここでも、停止状態において、および、水平面内において行われる。
【0011】
特許文献8は、溶接された金属薄板部材-特に自動車工業のためのテイラードブランク材-の工業的な生産において、サイクル時間を増大すること、および、これに伴って、生産コストを減少することのための方法を記載している。
この方法は、片持ち式の光学系と、溶接の間じゅうの、ワークピースの水平の整向方向とを有する、輸送システムを基礎としており、および、高温の溶接継ぎ目の如何なる手間暇がかかる冷却も必要ではなく、且つ、輸送ベルトの上での、大きな力でもってのワークピースの片側での固持のための如何なる手段も必要ではない。
これに伴って、機械のサイクル時間に対する、基板間隔の不利な影響は、強力に低減され得る。総じて、この方法でもって、溶接-副次的時間は、低減され得る。
【0012】
垂直の移動面を有するそのような公知のシステムにおいて、機械下側面からアクセスが行われることを除き、輸送システムの逆戻りする道程は、但し、操作のために使用されない。
記載された方法が、静的なレーザー光線だけを意図しているので、レーザー加工のために、輸送方向に対して横向きに移動され得ない。それに加えて、レーザー光学系全体が移動される必要があり、このことは、大きな質量の結果として、動力学的な動態と、精確性と、および、出力需要とに関しての不利な結果を必然的に伴う。
それに加えて、チェーン方向転換半径に対する、チェーンリンク長さの比率は、しばしば、極めて大きいので、チェーン歯車を用いてのチェーン駆動の際に、公知のポリゴン効果によって、チェーンに対する著しい位置誤差が誘起される。この所望されない効果を、少なくとも(前進走行における)一方のチェーン車間部分で、チェーン駆動装置の、例えば電子式のカムディスクによって補償することは、慣用の実施方法であるが、このことは、しかしながら、与えられた非連続的な運動学的状況と質量とに基づいて、条件付けられた精確性だけを達成する。
2つの方向転換部を有する1つのチェーンにおいて、その際、しかしながら、(逆戻り走行における)相手方チェーン車間部分は、事情によっては、過剰補償(移動の間じゅうの両方向への加速)され、且つ、このチェーン車間部分と機能を同期化することは、極めて理想が高すぎる。
ポリゴン効果は、しかしながら、動力学的な動態に対して影響力を有するだけでなく、チェーン長さ自体に対しての影響力を有する。このチェーン長さ変化は、それ故に、少なくとも1つの動力学的なチェーン緊張機構、または、補償-方向転換曲線部によって補償される必要があり、これに伴って、ほぼ一定のチェーン張力が維持され得る。
予緊張されていないチェーンは、無秩序な振動を発生させる可能性があり、且つ、これに伴って、付加的な不精確さを生起する。
【0013】
先に言及されたこれら解決策における欠点は、構造部材のプロセス信頼性を有する緊締のための高い技術的な手間暇と、高い投資コストを有する大きな機械寸法と、並びに、総じて少ない、全設備の生産性とである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許発明第102016200387号明細書
【特許文献2】国際公開第2018149959号
【特許文献3】中国特許出願公開第108637476 A号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第107350623 A号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3112074 A1号明細書
【特許文献6】米国特許第6,639,176 B1明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10 2017 202 426 A号明細書
【特許文献8】欧州特許第3038789号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】グレーベナー機械技術(GRAEBENER Maschinentechnik)URL: https://www.graebener.com/en/cutting-and-welding
【非特許文献2】SITEC社 URL: HTTPS://WWW.SITEC-TECHNOLOGY.DE/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の根底をなす課題は、前述された欠点を有していない装置および方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、本発明に従い、請求項1に従う特徴を有する装置によって解決される。有利な実施形態の変形例は、従属請求項内において提示されている。
本発明に従う方法は、請求項8の特徴を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従う装置において、通常は、それぞれに積み重ねられた2つの金属板から成るワークピースは、循環して、水平面内において輸送され、且つ、溶接される。これら板形状のワークピースは、その際、基本的に、垂直、即ち鉛直に起立している。これに反して、従来の設備において、ワークピースは、水平に位置して溶接される。
本発明の利点は、これに伴って、溶接プロセスが、垂直面内において、即ち垂線方向において、および、輸送方向に対してほぼ垂直に行われることにある。これに伴って、溶接飛沫は、加工されるべきワークピースの上に残存せず、このことによって、ワークピースおよび装置のより少ない汚染が結果として生じる。
【0019】
本発明に従い、ワークピースは、これらワークピースが溶接される加工領域内において、一定の速度でもって輸送され、且つ、そこで、同時に作動する少なくとも2つの溶接レーザーによって溶接される。それに加えて、前記ワークピースの位置算出のための位置測定器が設けられている。位置測定器は、少なくとも2つの前記溶接レーザーの制御のために使用される。
【0020】
ワークピースが、一定の速度でもって加工領域を通って輸送され得るために、ポリゴン効果は補償される必要がある。このことは、例えば、螺旋体によって行われ得る。
その際、全ての、現在、加工領域内において位置するチェーンリンクは、加工相の間じゅう、この領域内において位置するねじ(螺旋体)との係合状態にある。このことによって、チェーンリンクのより精確な互いに対する正しい位置合わせが達成され、且つ、これに伴って、品質の向上が達成される。
重畳された加速無しに移動される相手方チェーン車間部分は、ワークピースのチェーンリンクへの積み込み/積み降ろしが、手間暇がかかる位置補償無しに実施され得、且つ、これに伴って所要スペースの最適な利用を可能にすることを生起する。更に、複数の溶接レーザーの使用は、生産増大を可能にする。これらレーザー光線は、その際、1つのワークピースを同時に加工可能であり、且つ、その後、即座に次のワークピースが更に前進(weiterspringen)可能である。
可能な限り狭小に相並んで配置された溶接レーザーは、同様に、サイクル時間を低減し、且つ、付加的な構造空間を提供する。レーザー光学系が製品輸送システムに対して相対的に移動すること無しに、特別のレーザー光学系のこの使用は、それに加えて、大きな加工面積の加工を可能にする。
【0021】
提案された構成において、ワークピースは、ただ一度だけ挟み込まれ、且つ、引き続いて加工され、従って、ワークピースの加工の間じゅうの、精確な調整の周知の問題を有する複数回の挟み込みが省略され、且つ、総じて、積み込み、加工、および、積み降ろしの際の高い精確性が達成される。
【0022】
本発明の目的は、同時の部材コスト低減において、単位時間毎の部材生産能力を著しく増大することである。レーザー光学系の使用は、このレーザー光学系が製品輸送方向に対して相対的に移動される必要無しに、大きな加工面積を可能にし、このことは、品質の向上を生起する。
レーザー光線のオーバーラップと、複数のピッチ位置での同時の加工とは、レーザーの最適な利用と、コンパクトな構造様式と、および、極めて短い時間内における極めて長い溶接継ぎ目とを可能にし、且つ、これに伴って、加工コストを低減する。
【0023】
ここで提示された発明は、即ち、総じて、能率的な、且つ、品質的に高位の製造を可能にする。本発明を、以下で、実施例に基づいて、図との関連のもとで、更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】概略図における、第1のレーザー加工兼製品輸送システムの平面図である。
【
図2】概略図における、選択的な、第2のレーザー加工兼製品輸送システムの平面図である。
【
図3】概略図における、選択的な、第3のレーザー加工兼製品輸送システムの平面図である。
【
図4】これまた同様に概略図における、第1のレーザー加工兼製品輸送システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、平面図において、エンドレスに循環する製品輸送システム2と少なくとも1つの製品輸送システムガイド8とを有する、第1のレーザー加工兼製品輸送システム1を示している。
製品輸送システム2は、ロータリーエンコーダ13aを有するスクリュー駆動装置12を用いて、時計方向に、輸送平面(水平面)XY内において移動され、且つ、その際、直線的な領域5a、5bと、補償-方向転換曲線部11内における曲線領域6a、6bとを通過する。製品輸送システム2、例えばチェーン駆動されるシステムは、複数の輸送要素3、例えばチェーンリンクから成っており、これら輸送要素が、それぞれに1つの旋回可能な折畳みレバー20と、それぞれに少なくとも1つのカムローラー10とを備えており、これらカムローラーが、螺旋体7内に係合する。
ワークピース14の、循環する製品輸送システム2の溶接装置への積み込み17は、直線的な領域5a内において、積み込み/積み降ろしゾーン16内で展開され且つ水平に位置する折畳みレバー20の際に、行われる。曲線領域6a内において、ワークピース14は、折畳みレバー20の上方への傾倒によって、垂直の位置へと移動され、且つ、溶接装置内において、例えば磁力によって固定される。
次のステップにおいて、折畳みレバー20は、再び開放され、且つ、ほぼ水平の位置へと移動される。ワークピースは、その際、垂直の位置において残留する。
直線的な領域5b内において、レーザー加工ゾーン21内で、ワークピース14の溶接は、固定式の溶接レーザー22a、22bを用いて行われる。ワークピース14は、レーザー加工ゾーン21内において、製品輸送システム2によって、溶接レーザー22a、22bの傍らを通って移動される。
積み込み/積み降ろしゾーン16内において、加工された(溶接された)ワークピース15は、溶接装置の積み降ろし18によって、循環する製品輸送システム2から除去される。
【0026】
図2は、平面図において、エンドレスに循環する製品輸送システム2を有する、選択的な第2のレーザー加工兼製品輸送システム1を示しており、この製品輸送システム2が、駆動手段を備えており、且つ、均等な回転移動において、時計方向に、輸送平面(水平面)XY内における円軌道29の上で移動する。
製品輸送システム2は、複数の輸送要素3から成っており、これら輸送要素が、それぞれに1つの旋回可能な折畳みレバー20を備えている。加工されるべきワークピース14の、循環する製品輸送システム2の溶接装置への積み込み17は、積み込み/積み降ろしゾーン16内において、展開され且つ水平に位置する折畳みレバー20の際に、行われる。
折畳みレバー20の戻し傾倒によって、ワークピース14は、垂直の位置へと移動され、且つ、溶接装置内において固定される。
次のステップにおいて、折畳みレバー20は再び開放され、且つ、再び、ほぼ水平の位置へと移動される。レーザー加工ゾーン21内において、連続的な位置測定9と、少なくとも2つの溶接レーザー22のレーザー光線26によるワークピース14の溶接とが行われ、これら溶接レーザーが、可能な限り狭小に相並んで配置されている。
ここで、5つの溶接レーザー22が図示されているが、しかしながら、同様に他の数の溶接レーザー22も可能である。ワークピース14は、溶接平面内において、製品輸送システム2によって、溶接レーザー20、22a、22bの傍らを通って移動される。
積み込み/積み降ろしゾーン16内において、加工されたワークピース15は、溶接装置の積み降ろし18によって、循環する製品輸送システム2から除去される。
【0027】
図3は、平面図において、製品輸送システム2と少なくとも1つの製品輸送システムガイド8とを有する、選択的な第3のレーザー加工兼製品輸送システム1を示している。
輸送要素3は、駆動手段、例えばモーター駆動される車両を備えており、且つ、輸送平面XY内における輸送方向TRにおいて、不動のピッチを有する固定の経路27、および、自由なピッチを有する自由な経路28の上で移動する。駆動手段が、例えばリニアモーターであることは可能である。加工されるべきワークピース14の、循環する輸送要素3の溶接装置への積み込み17は、固定の経路27の上の積み込み/積み降ろしゾーン16内において行われる。
同様に固定の経路27の上で位置しているレーザー加工ゾーン21内において、連続的で直線的な位置測定9と、並びに、少なくとも2つの溶接レーザー22a、22bの少なくとも2つのレーザー光線26a、26bによるワークピース14の溶接とが行われる。ワークピース14は、溶接平面内において、製品輸送システム2によって、溶接レーザー20、22a、22bの傍らを通って移動される。
積み込み/積み降ろしゾーン16内において、加工されたワークピース15は、溶接装置の積み降ろし18によって、循環する製品輸送システム2から除去される。
【0028】
図4は、側面図において、循環する製品輸送システム2を有する、レーザー加工兼製品輸送システム1のレーザー加工ゾーン21を示しており、循環する前記製品輸送システム2の輸送要素3が、連続的に、輸送平面(水平面)XY内において、輸送方向TRに移動する。
加工されるべきワークピース14は、輸送要素3の上で固定されており、且つ、溶接平面XZ内において加工される。少なくとも2つの溶接レーザーが、現在のピッチ位置3aの上で、加工領域23a、23bを覆い、その際、これら加工領域23a、23bのオーバーラップ24が結果として生じる。
折畳みレバー20は、旋回軸19を中心として旋回可能であり、輸送要素3の上での、加工されるべきワークピース14と加工されたワークピース15との位置決めおよび固定のために利用される。これら折畳みレバー20は、「下方への傾倒」ダウン、もしくは、「上方への傾倒」アップのステータスにおける、「半開20c」の位置において示されている。
【符号の説明】
【0029】
1 レーザー加工兼製品輸送システム
2 製品輸送システム
3 輸送要素
3a 現在のピッチ位置
5a 直線的な領域
5b 直線的な領域
6a 曲線領域
6b 曲線領域
7 螺旋体
8 製品輸送システムガイド
9 位置測定
10 カムローラー
11 補償-方向転換曲線部
12 スクリュー駆動装置
13a ロータリーエンコーダ
14 板形状のワークピース
15 加工されたワークピース
16 積み込み/積み降ろしゾーン
17 積み込み
18 積み降ろし
19 旋回軸
20 折畳みレバー
20a 開放状態の折畳みレバー
20b 閉鎖状態の折畳みレバー
20c 半開状態の折畳みレバー
21 レーザー加工ゾーン
22 溶接レーザー
22a 溶接レーザー
22b 溶接レーザー
23a 加工領域
23b 加工領域
24 オーバーラップ
26 レーザー光線
26a レーザー光線
26b レーザー光線
27 固定の経路
28 自由な経路
29 円軌道
TR 輸送方向
XY 輸送平面(水平面)
XZ 溶接平面
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接された、板形状のワークピース(14、15)の製造のための、特にバイポーラプレートまたは熱交換器プレートの製造のための装置であって、
前記板形状のワークピース(14)が、垂直に起立して、加工領域(23a、23b)内において、溶接レーザー(22、22a、22b)によって溶接される、上記装置において、
この装置が、水平面(XY)内においてエンドレスに循環する製品輸送システム(2)を有しており、
板形状の前記ワークピースが基本的に垂直に起立して
前記加工領域(23a、23b)を通って輸送されるように、前記製品輸送システムが、板形状の前記ワークピース(14)の固定のための、複数の輸送要素(3)から成っており
、
前記加工領域(23a、23b)を通っての、前記輸送要素(3)の前記輸送のための駆動手段(12)が設けられて
おり、
前記輸送要素(3)が、前記駆動手段(12)によって、
前記加工領域(23a、23b)内において
、一定の速度でもって、通り抜け輸送可能で
あり、
前記装置が、少なくとも2つの溶接レーザー(22、22a、22b)を有しており、
従って、前記ワークピース(14)が、前記加工領域(23a、23b)内において、同時に作動
する2つの前記溶接レーザー(22、22a、22b)によって溶接可能であり、
少なくとも2つの前記溶接レーザー(22、22a、22b)の制御のために、
前記装置が、前記ワークピース(14)の位置算出のための位置測定装置(9)
を有している、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも両方の前記溶接レーザー(22、22a、22b)は、それぞれに、光学系を備えており、前記光学系によって、レーザー光線(26、26a、26b)が、水平および垂直の方向に方向転換可能であり、
従って、このことによって、前記ワークピース(14)の表面上のあらゆる点が、到達可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動手段(12)は、螺旋体(7)を有するスクリュー駆動装置(12)として、または、リニアモーターとして構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
2つよりも多くの、例えば3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または、8つの、溶接レーザー(22、22a、22b)が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
前記輸送要素(3)は、チェーンリンクとして、または、車両として構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
少なくとも2つの前記溶接レーザー(22、22a、22b)は、固定状態で配置されており、前記レーザー光線(26、26a、26b)が、ミラーシステムによって、位置決め替え可能であり、
従って、このことによって、前記レーザー光線(26、26a、26b)が、1つのワークピース(14)から、後続の前記輸送要素(3)における次のワークピース(14)へと位置決め替え可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
前記ワークピース(14)は、輸送平面(XY)に対して垂直に、折畳みレバー(20a、20c)によって、前記輸送要素(3)の上で固定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
溶接された、板形状のワークピース(14、15)の製造のための、特にバイポーラプレートまたは熱交換器プレートの製造のための方法であって
、
板形状の前記ワークピース(14)が、加工領域(23a、23b)内において溶接される、前記方法において、
前記ワークピース(14)が、基本的に垂直に起立して、輸送要素(3)の上で、エンドレスに循環する製品輸送システム(2)によって、水平面(XY)内において輸送され
、
前記輸送要素(3)が、前記加工領域(23a、23b)内において、一定の速度でもって、通り抜け移動され、
前記ワークピース(14)が、前記加工領域(23a、23b)内において、同時に作動する少なくとも2つの溶接レーザー(22、22a、22b)によって溶接され、
前記ワークピース(14)の位置が算出され、且つ、このことによって、少なくとも2つの前記溶接レーザー(22、22a、22b)が制御されることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記ワークピース(14)は、前記加工領域(23a、23b)内において、水平の、直線的なライン上で案内されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ワークピース(14)は、前記加工領域(23a、23b)内において、円軌道(29)上で案内されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの溶接レーザー(22、22a、22b)の配置によって、溶接領域のオーバーラップ部(24)が達成されることを特徴とする請求項8から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
燃料電池のためのバイポーラプレート、または、熱的なエネルギーの伝達のための熱交換器プレートの製造のための、請求項8から11のいずれか一つに記載の方法の使用。
【国際調査報告】