(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】フッ化カルシウム光学部品用の原子層堆積由来の保護コーティング
(51)【国際特許分類】
C23C 16/30 20060101AFI20241003BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C23C16/30
C23C16/455
H01L21/31 B
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518649
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 US2022044790
(87)【国際公開番号】W WO2023069226
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】アレン,ドナルド アーウィン
(72)【発明者】
【氏名】コックス,ジェラルド フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ドナヒュー,キース ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ミン-ホアン
(72)【発明者】
【氏名】キム,フン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジュエ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA11
4K030AA14
4K030BA01
4K030BA02
4K030BA24
4K030BA29
4K030BA42
4K030BA43
4K030BA44
4K030HA01
4K030JA10
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB32
5F058BC02
5F058BC03
5F058BF07
5F058BF27
5F058BF29
(57)【要約】
被覆光学部品は、光学部品およびコンフォーマルコーティングを備える。光学部品は結晶質フッ化カルシウムであり、コンフォーマルコーティングは、光学部品の表面と接触した原子層堆積(ALD)コーティングである。ALDコーティングは、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物ALDコーティングを含む。ALDコーティングは、他の金属酸化物または半金属酸化物ALDコーティング層を含み得る。被覆光学部品を製造する方法は、光学部品の表面に原子層堆積(ALD)コーティングを堆積させる工程を含み、ここで、ALDコーティングは、半金属酸化物、金属酸化物、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物、またはこれらの組合せであり得る。六フッ化硫黄がALDプロセスにおいてフッ素源として使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆光学部品において、
結晶質フッ化カルシウムを含む光学部品、および
前記光学部品の表面と接触した原子層堆積(ALD)コーティングであって、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物を含むALDコーティング、
を備えた被覆光学部品。
【請求項2】
前記ALDコーティングがフッ化マグネシウム(MgF
2)を含み、前記ALDコーティングの厚さが10ナノメートル(nm)以下である、請求項1記載の被覆光学部品。
【請求項3】
前記ALDコーティングが、
前記光学部品の表面と直接接触した第1のALDコーティング層であって、前記金属フッ化物を含む第1のALDコーティング層、および
前記第1のALDコーティング層と直接接触した第2のALDコーティング層であって、該第1のALDコーティング層と異なる材料から作られた第2のALDコーティング層、
を含む、請求項1記載の被覆光学部品。
【請求項4】
前記第1のALDコーティング層がフッ化マグネシウムであり、前記第2のALDコーティング層がシリカ(SiO
2)またはアルミナ(Al
2O
3)であり、該第1のALDコーティング層が10ナノメートル(nm)未満の厚さを有し、該第2のALDコーティング層が10nm未満の厚さを有する、請求項3記載の被覆光学部品。
【請求項5】
前記ALDコーティングが、該ALDコーティングの総質量に基づいて、ゼロppmより大きい硫黄含有量、1000ppm以下の炭素含有量、またはその両方を有する、請求項4記載の被覆光学部品。
【請求項6】
前記ALDコーティングが、該ALDコーティングの平均厚さから5%以下しか変動しない厚さを有するコンフォーマルコーティングであり、該ALDコーティングの平均厚さは、該ALDコーティングと接触した前記表面に亘り平均化された該ALDコーティングの厚さである、請求項1から5いずれか1項記載の被覆光学部品。
【請求項7】
光学部品を被覆する方法であって、該光学部品の表面に原子層堆積(ALD)コーティングを堆積させる工程を含み、
前記光学部品は結晶質フッ化カルシウム(CaF
2)を含み、
前記ALDコーティングは、半金属酸化物、金属酸化物、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物、またはこれらの組合せを含む、方法。
【請求項8】
前記ALDコーティングが前記金属フッ化物を含み、前記ALDコーティングを堆積させる工程が、前記光学部品の表面を金属前駆体と六フッ化硫黄(SF
6)を含むフッ素源の交互パルスに曝す工程を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記光学部品の表面を金属前駆体とフッ素源の交互パルスに曝す工程が、
前記光学部品の表面を、前記金属前駆体を含有するパルスに曝す工程であって、前記金属前駆体は、該光学部品の表面で前記フッ化カルシウムと反応して、該光学部品の表面に配位された金属の単分子層を堆積させる工程、
前記金属前駆体を含有するパルスを停止させる工程、
前記光学部品の表面を、前記フッ素源を含有するパルスに曝す工程であって、該フッ素源は、前記配位された金属の単分子層と反応して、金属フッ化物を形成する、工程、および
前記フッ素源を含有するパルスを停止させる工程、
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記金属前駆体を含有するパルスを停止させた後であって、前記光学部品の表面を、フッ素源を含有するパルスに曝す前に、該表面を、酸素源を含有するパルスに曝す工程であって、該酸素源は、水、水プラズマ、酸素、酸素プラズマ、オゾン、オゾンプラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、酸素含有液体、酸素含有気体、またはこれらの組合せを含み、該酸素源は、前記配位された金属を酸化させて、金属酸化物を形成する、工程、および
前記酸素源を含有するパルスを停止させる工程、
をさらに含み、
前記フッ素源は、前記金属酸化物を還元して、前記金属フッ化物を形成し、
前記酸素源を含有するパルスが、前記配位された金属の単分子層から炭素を除去する、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2021年10月19日に出願された米国仮特許出願第63/257486号の米国法典第35編第119条の下で優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、光学部品に関し、より詳しくは、深紫外線(DUV)光学素子のための被覆フッ化カルシウム構造を有する光学部品に関する。
【背景技術】
【0003】
紫外線を利用する光技術が、半導体製造に広く使用されている。極紫外線(EUV)系先端リソグラフィーが進歩してきているが、深紫外線(DUV)系光技術が、まだ半導体製造で主要な役割を果たしている。ほとんどのDUV系光リソグラフィー技術では、高出力光源を可能にするレーザ光学素子および高分解能検査とパターン形成を可能にする精密光学素子のためのレーザ耐久性フッ化カルシウム(CaF2)光学素子が求められる。表面品質および表面傷軽減技術が、CaF2光学部品の性能を改善するのに役立つ。PVDコーティングなどの光学面および被覆技術の発展により、CaF2光学部品の表面欠陥の軽減および表面劣化の低減が可能になり、CaF2光学部品の有用耐用年数が延びている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の第1の態様によれば、被覆光学部品は、結晶質フッ化カルシウムを含む光学部品およびその光学部品の表面と接触した原子層堆積(ALD)コーティングを備え、このALDコーティングは、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物を含む。
【0005】
本開示の第2の態様は、ALDコーティングがフッ化マグネシウム(MgF2)を含むことがある、第1の態様を含むことがある。
【0006】
本開示の第3の態様は、ALDコーティングの金属フッ化物が光学部品の表面でフッ化カルシウムと接触するように、ALDコーティングの金属フッ化物が光学部品のフッ化カルシウムと直接結合されることがある、第1または第2の態様のいずれか一方を含むことがある。
【0007】
本開示の第4の態様は、ALDコーティングの厚さが10ナノメートル(nm)以下であることがある、第1から第3の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0008】
本開示の第5の態様は、ALDコーティングが、光学部品の表面と直接接触した第1のALDコーティング層を含むことがあり、その第1のALDコーティング層が金属フッ化物を含む、第1から第4の態様のいずれか1つを含むことがある。ALDコーティングは、第1のALDコーティング層と直接接触した第2のALDコーティング層をさらに含むことがあり、その第2のALDコーティング層は、第1のALDコーティング層と異なる材料から作られる。
【0009】
本開示の第6の態様は、第1のALDコーティング層がフッ化マグネシウムであることがあり、第2のALDコーティング層がシリカ(SiO2)またはアルミナ(Al2O3)であることがある、第5の態様を含むことがある。
【0010】
本開示の第7の態様は、第1のALDコーティング層が10ナノメートル(nm)未満の厚さを有することがあり、第2のALDコーティング層が10nm未満の厚さを有することがある、第5または第6の態様のいずれか一方を含むことがある。
【0011】
本開示の第8の態様は、ALDコーティングが反射防止コーティングを含むことがあり、その反射防止コーティングが、190nmから266nmの波長範囲に亘り1%未満の反射率を有することがあり、この反射率は、反射防止コーティングで反射し、そこから戻る入射ビーム出力の割合を称する、第1から第7の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0012】
本開示の第9の態様は、ALDコーティングが硫黄を含むことがある、第1から第8の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0013】
本開示の第10の態様は、ALDコーティングが、ゼロppm超から300ppmなど、ゼロより大きい硫黄含有量を有することがある、第9の態様を含むことがある。
【0014】
本開示の第11の態様は、ALDコーティングが、覆われていない光学部品の光学面の少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%と接触していることがある、第1から第10の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0015】
本開示の第12の態様は、ALDコーティングがコンフォーマルコーティングであることがある、第1から第11の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0016】
本開示の第13の態様は、ALDコーティングが、ALDコーティングの平均厚さから5%以下しか変動しない厚さを有し、ALDコーティングの平均厚さは、ALDコーティングと接触した表面に亘り平均化されたALDコーティングの厚さである、第1から第12の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0017】
本開示の第14の態様は、ALDコーティングが、ALDコーティングの総質量に基づいて1000ppm以下の炭素を含むことがある、第1から第13の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0018】
本開示の第15の態様は、ALDコーティングが、光学部品の表面の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%と接触していることがある、第1から第14の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0019】
本開示の第16の態様は、光学部品が、プリズム、レンズ、ビームスプリッタ、または窓であることがある、第1から第15の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0020】
本開示の第17の態様は、光学部品が、0.5から0.85の峻度比(steepness ratio)Rc/#を有するレンズであることがあり、峻度比Rc/#は、光学部品の開口の直径(#)で除算された急峻面(steep surface)の曲率半径(Rc)と等しい、第1から第16の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0021】
本開示の第18の態様は、光学部品を被覆する方法を含むことがある。この方法は、光学部品の表面に原子層堆積(ALD)コーティングを堆積させる工程を含むことがある。この光学部品は結晶質フッ化カルシウム(CaF2)を含むことがあり、ALDコーティングは、半金属酸化物、金属酸化物、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物、またはこれらの組合せを含むことがある。
【0022】
本開示の第19の態様は、ALDコーティングが金属フッ化物を含むことがあり、ALDコーティングを堆積させる工程が、光学部品の表面を金属前駆体とフッ素源の交互パルスに曝す工程を含むことがある、第18の態様を含むことがある。
【0023】
本開示の第20の態様は、フッ素源が、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)、トリフルオロヨードメタン(CF3I)、フッ化水素(HF)、およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある、第19の態様を含むことがある。
【0024】
本開示の第21の態様は、フッ素源が六フッ化硫黄(SF6)を含むことがある、第19または第20の態様のいずれか一方を含むことがある。
【0025】
本開示の第22の態様は、フッ素源が、六フッ化硫黄から形成されたプラズマを含むことがある、第19から第21の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0026】
本開示の第23の態様は、金属前駆体が、マグネシウムを含む金属配位子錯体を含むことがある、第19から第22の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0027】
本開示の第24の態様は、金属前駆体が、ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)マグネシウム、ビス(N,N’-ジ-sec-ブチルアセトアミジナート)マグネシウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある、第19から第23の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0028】
本開示の第25の態様は、光学部品の表面を金属前駆体とフッ素源の交互パルスに曝す工程が、光学部品の表面を、金属前駆体を含有するパルスに曝す工程を含むことがある、第19から第24の態様のいずれか1つを含むことがある。その金属前駆体は、光学部品の表面でフッ化カルシウムと反応して、光学部品の表面に配位された金属(ligated metal)の単分子層を堆積させることがある。この方法は、金属前駆体を含有するパルスを停止させる工程、および光学部品の表面を、フッ素源を含有するパルスに曝す工程をさらに含むことがある。そのフッ素源は、配位された金属の単分子層と反応して、金属フッ化物を形成することがある。この方法は、フッ素源を含有するパルスを停止させる工程をさらに含むことがある。
【0029】
本開示の第26の態様は、表面を金属前駆体とフッ素源の交互パルスに繰り返し曝して、ALDコーティングの厚さを増加させる工程をさらに含む、第25の態様を含むことがある。
【0030】
本開示の第27の態様は、金属前駆体を含有するパルスを停止させた後であって、光学部品の表面を、フッ素源を含有するパルスに曝す前に、表面を、酸素源を含有するパルスに曝す工程をさらに含む、第25または第26の態様のいずれか一方を含むことがある。その酸素源は、水、水プラズマ、酸素、酸素プラズマ、オゾン、オゾンプラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、酸素含有液体、酸素含有気体、またはこれらの組合せを含むことがある。その酸素源は、配位された金属を酸化させて、金属酸化物を形成することがある。この方法は、酸素源を含有するパルスを停止させる工程をさらに含むことがある。酸素源を含有するパルスの後、フッ素源は、金属酸化物を還元して、金属フッ化物を形成することがある。
【0031】
本開示の第28の態様は、酸素源を含有するパルスが、配位された金属の単分子層から炭素を除去することがある、第27の態様を含むことがある。
【0032】
本開示の第29の態様は、ALDコーティングが金属酸化物を含むことがあり、光学部品の表面にALDコーティングを堆積させる工程が、表面を金属前駆体と酸素源の交互パルスに曝す工程を含むことがある、第18の態様を含むことがある。
【0033】
本開示の第30の態様は、酸素源が、水、水プラズマ、オゾン、オゾンプラズマ、酸素、酸素プラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、酸素含有気体、酸素含有液体、およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある、第29の態様を含むことがある。
【0034】
本開示の第31の態様は、金属前駆体が、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルミニウム前駆体を含むことがある、第29から第30の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0035】
本開示の第32の態様は、ALDコーティング半金属酸化物を含むことがあり、光学部品の表面にALDコーティングを堆積させる工程が、光学部品の表面を半金属前駆体と酸素源の交互パルスに曝す工程を含むことがある、第18の態様を含むことがある。
【0036】
本開示の第33の態様は、酸素源が、水、水プラズマ、オゾン、オゾンプラズマ、酸素、酸素プラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、酸素含有気体、酸素含有液体、およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある、第32の態様を含むことがある。
【0037】
本開示の第34の態様は、半金属酸化物がシリカであることがあり、半金属前駆体が、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン;ジ(sec-ブチルアミノ)シラン;ジイソプロピルアミノトリシリルアミン;RおよびR’の各々が、独立して、メチル基、エチル基、またはその両方である、式SiH2(NRR’)2を有する化合物;およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある、第32または第33の態様のいずれか一方を含むことがある。
【0038】
本開示の第35の態様は、120℃から250℃の工程温度で光学部品の表面にALDコーティングを堆積させる工程を含む、第18から第34の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0039】
本開示の第36の態様は、ALDコーティングを堆積させる工程が、光学部品の表面に第1のALDコーティング層を施す工程、および第1のALDコーティング層上に第2のALDコーティング層を施す工程を含むことがあり、第2のALDコーティング層は、第1のALDコーティング層と異なる材料から作られる、第18から第35の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0040】
本開示の第37の態様は、第1のALDコーティング層が金属フッ化物を含むことがあり、第2のALDコーティング層がシリカまたはアルミナを含むことがある、第36の態様を含むことがある。
【0041】
本開示の第38の態様は、ALDコーティングを堆積させる工程が、光学部品を回転させずに行われることがある、第18から第37の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0042】
本開示の第39の態様は、その方法が、光学部品を固定具内に保持する工程を含まない、第18から第38の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0043】
本開示の第40の態様は、光学部品が複数の表面を備え、原子層堆積(ALD)コーティングを堆積させる工程が、複数の表面の少なくとも2つで同時に行われる、第18から第39の態様のいずれか1つを含むことがある。
【0044】
ここに記載された光学部品、ALDコーティング、および光学部品をALDコーティングで被覆する方法の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって、認識されるであろう。
【0045】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があるのを理解すべきである。添付図面は、様々な実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を示しており、説明と共に、請求項の主題の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、プリズムの斜視図
【
図1B】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、基準線1B-1Bに沿って撮られた
図1Aのプリズムの一部の断面図
【
図1C】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、
図1Aのプリズムの上面図
【
図1D】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、
図1Aのプリズムの表面を示す概略図
【
図2A】従来技術による、物理的気相成長(PVD)被覆中に光学部品を保持し、回転させるための固定具を示す概略図
【
図2B】従来技術による、物理的気相成長(PVD)被覆中に光学部品を保持し、回転させるための固定具を示す概略図
【
図2C】従来技術による、物理的気相成長(PVD)被覆中に光学部品を保持し、回転させるための固定具を示す概略図
【
図2D】従来技術による、物理的気相成長(PVD)被覆中に光学部品を保持し、回転させるための固定具を示す概略図
【
図3A】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、別のプリズムの斜視図
【
図3B】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、
図3Aのプリズムの第1の全内部反射(TIR)面の正面図
【
図3C】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、
図3Aのプリズムの第2のTIR面の正面図
【
図4】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、直角プリズムの側面図
【
図5】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、開口数の大きい対物レンズを有する光学検査システムの側面図
【
図6】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、金属フッ化物ALDコーティングを含む第1のALDコーティング層、および第1のALDコーティング層の上に堆積された酸化物ALDコーティングを含む第2のALDコーティング層を有する被覆光学部品の一部の断面図
【
図7】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例1の被覆光学部品に関する第1のALDコーティング層および第2のALDコーティング層の各々の厚さを示すグラフ
【
図8】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例1の被覆光学部品と同じ形状を有する比較の未被覆光学部品に関する入射角(x軸)の関数としての透過率の百分率(y軸)を示すグラフ
【
図9】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例1の被覆光学部品に関する入射角(x軸)の関数としての透過率の百分率(y軸)を示すグラフ
【
図10】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例1の被覆光学部品と同じ形状を有する比較の未被覆光学部品に関する入射角(x軸)の関数としての内部反射率の百分率(y軸)を示すグラフ
【
図11】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例1の被覆光学部品に関する入射角(x軸)の関数としての内部反射率の百分率(y軸)を示すグラフ
【
図12】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、同じ形状を有する、実施例2の被覆光学部品および比較の未被覆光学部品に関する入射角(x軸)の関数としての透過率の百分率(y軸)を示すグラフ
【
図13】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、同じ形状を有する、実施例2の被覆光学部品および比較の未被覆光学部品に関する入射角(x軸)の関数としての内部反射率の百分率(y軸)を示すグラフ
【
図14】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、同じ形状を有する、実施例3の被覆光学部品および比較の未被覆光学部品に関する入射角(x軸)の関数としての内部反射率の百分率(y軸)を示すグラフ
【
図15】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、同じ形状を有する、実施例3の被覆光学部品および比較の未被覆光学部品に関する入射光の波長(x軸)の関数としての入射表面の表面反射率の百分率(y軸)を示すグラフ
【
図16】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例4および5のMgF
2 ALDコーティングに関するX線光電子分光法で決定したフッ素1s結合エネルギー(x軸)の関数としての正規化強度(y軸)を示すグラフ
【
図17】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例4および5のMgF
2 ALDコーティングに関するX線光電子分光法で決定した炭素1s結合エネルギー(x軸)の関数としての正規化強度(y軸)を示すグラフ
【
図18】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例4および5のMgF
2 ALDコーティングに関するX線光電子分光法で決定したマグネシウム2p結合エネルギー(x軸)の関数としての正規化強度(y軸)を示すグラフ
【
図19】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、様々なALDプロセスおよびPVDプロセスにより調製された被覆光学部品に関する波長(x軸)の関数としての屈折率(y軸)を示すグラフ
【
図20】比較例7のPVDコーティングの様々な原子成分に関するコーティング中の深さ(x軸)の関数としての正規化強度(y軸)を示すグラフ
【
図21】ここに示され、記載された1つ以上の実施の形態による、実施例8の試料9CのALD被覆光学部品のALDコーティングの様々な原子成分に関するコーティング中の深さ(x軸)の関数としての正規化強度(y軸)を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0047】
ここで、その例が添付図面に概略示されている、本開示の光学部品およびALDコーティングの様々な実施の形態を詳しく参照する。できるときはいつでも、同じまたは同様の部分を称するために、図面に亘り、同じ参照番号が使用される。ここで
図1Aおよび1Bを参照すると、本開示による被覆光学部品100の1つの実施の形態が、概略示されている。
図1Bを参照すると、被覆光学部品100は、結晶質フッ化カルシウムを含む光学部品101および光学部品100の表面と接触したコンフォーマルコーティングを備える。このコンフォーマルコーティングは、光学部品100の表面と接触したALDコーティング120である。ALDコーティング120は、金属酸化物、半金属酸化物、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物、またはこれらの組合せであることがある。実施の形態において、ALDコーティング120は、フッ化マグネシウムALDコーティングであることがある。
【0048】
被覆光学部品100は、光学部品101の表面に原子層堆積(ALD)コーティング120を堆積させる工程を含むことがある方法によって調製されることがある。光学部品101は結晶質フッ化カルシウム(CaF2)を含むことがあり、ALDコーティング120は、半金属酸化物、金属酸化物、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物、またはこれらの組合せを含むことがある。実施の形態において、ALDコーティング120は金属フッ化物ALDコーティングを含むことがあり、前記方法は、光学部品101の表面を金属前駆体とフッ素源の交互パルスに曝す工程を含むことがある。実施の形態において、フッ素源はSF6系フッ素源であることがあり、ALDプロセスは、金属前駆体を金属酸化物に変換するための追加の酸素源を含むことがあり、この金属酸化物は、次いで、それに続くフッ素源により金属フッ化物に変換されることがある。ALDコーティング120は、金属酸化物ALDコーティング、半金属酸化物ALDコーティング、またはその両方も含むことがある。
【0049】
その上にALDコーティング120が形成された被覆光学部品100および光学部品をALDコーティング120で被覆して、被覆光学部品100を製造する方法の様々な実施の形態が、添付図面を具体的に参照して、ここに記載される。
【0050】
ここに用いられているように、ある成分を「実質的に含まない」という用語は、0.01質量またはモルパーセント未満しかその成分を含まない、組成物、ファイバ、または雰囲気を称することがある。例えば、炭素を実質的に含まないALDコーティングは、0.01質量またはモルパーセント未満しか炭素を含まないことがある。
【0051】
「マイクロメートル」および「μm」という用語は、ここでは交換可能に使用される。「ナノメートル」および「nm」という用語は、ここでは交換可能に使用される。
【0052】
ここに用いられているように、「プラズマ」という用語は、陽イオンと電子を含み、熱と電流の印加により出発材料から生じるイオンの気体を称する。
【0053】
ここに用いられているように、「ppm」という用語は、モル基準の百万分率を意味し、原子濃度を表す。例えば、1ppmの炭素を含むMgF2の層は、百万モルのMgF2当たり1モルの炭素を含む。
【0054】
ここに用いられているように、「コンフォーマルコーティング(conformal coating)」という用語は、物品の表面の輪郭にしたがい、コーティングと接触した表面の全てに亘り概して均一な厚さを有するコーティングを称する。
【0055】
レーザ耐久性フッ化カルシウム(CaF2)光学素子は、半導体製造のために高出力光源の使用を可能にし、高分解能検査とパターン形成を可能にする精密光学素子を提供する。表面品質および表面傷軽減技術により、CaF2光学部品の性能を改善することができる。これらの表面処理技術の発展により、CaF2光学部品の表面欠陥の軽減および表面劣化の低減が可能になり、CaF2光学部品の有用耐用年数が延びている。そのような表面傷軽減技術には、表面下損傷(SSD)検出およびSSDのない表面仕上げプロセス;以下に限られないが、メガソニック洗浄、紫外オゾン(UVO)洗浄および反応性プラズマ洗浄などの表面洗浄技術;およびCaF2部品用の物理的気相成長(PVD)系保護コーティング(PCCF)がある。
【0056】
詳しくは、保護PVD系コーティングは、CaF2光学部品の寿命を延ばすために、CaF2プリズムの全内部反射(TIR)面およびブルースター角面(入力/出力面)並びにレンズ、窓などの他のCaF2光学部品の表面に施されている。現在、保護コーティングの全てが、PVD被覆プロセスに基づいている。これらのPVD系コーティングの例としては、以下に限られないが、シリカPVDコーティング、またはフッ化マグネシウム(MgF2)PVDコーティングのMgF2 PVDコーティングの上に施されたシリカPVDコーティングとの組合せが挙げられる。これらのPVDコーティングの全厚は、概して50ナノメートル(nm)超、またさらには60nm超である。PVDコーティングのこれらの厚さ範囲は、表面が被覆区域内でPVDコーティングで密封され、PVDコーティングに間隙やピンホールが存在しないことを確実にするために必要である。
【0057】
これらの発展した技術、特にPVDコーティングは、多くのレーザ光学素子および精密光学素子用途にうまく利用されてきたが、これらのPVDコーティングは、CaF2プリズムや、急峻な曲面を有する光学部品に適切な施すのは難題であり得る。これらのタイプの光学部品(プリズムや急峻な曲面を有する部品)は、ある窓やレンズと比べて困難な問題を提示する特徴を有する。詳しくは、プリズムには、コーティングを必要とする面が複数あり得る。それに加え、プリズムは、サイズが小さく、プリズムのブルースター角およびTIR面の位置づけにより必要となる、複雑な形状を有することがある。
【0058】
CaF
2プリズムのこれらの特徴や特性により、PVD系被覆プロセスでレーザ耐久性光学素子を製造するのにさらなる難題がもたらされる。例えば、CaF
2プリズム上に保護コーティングを完成させるために、複数回のPVD被覆作業が一般に必要である。それに加え、PVDプロセスにおいて高温で、プリズムを保持し、プリズムを高速回転させるために固定具を使用すると、機械的安定性の問題や表面清浄度の問題が生じ得る。これらの機械的安定性の問題や表面清浄度の問題は、PVD被覆プロセス中に光学部品に機械的損傷と熱的損傷をもたらす恐れを増加させ得る。ここで
図2A~2Dを参照すると、PVD被覆中に光学部品10を保持し、回転させるための従来技術の工具固定具20の様々な構成が、概略示されている。工具固定具20は、概して、PVD被覆プロセス中に光学部品を回転させながら光学部品10を固定するために光学部品10と接触する回転台22および1つ以上の支持特徴24を備える。PVD被覆に使用される工具固定具20は、高回転速度での工具固定具20との接触のために光学部品10の精密研磨された光学面に引っ掻き傷をつける恐れが高い。PVD被覆プロセスには、多数の表面被覆、ポンプ・トゥ・ベンティングの複数事象、および表面の洗浄と再洗浄のために、粒子汚染の恐れが大きくなり、プリズムの再加工率が高くなることもある。PVD系保護コーティングは、不均一なコーティング厚も有し得、これにより、PVD系保護コーティングの所望の平均厚さおよび密封能力を達成するのに必要な最小厚さが限定され得る。
【0059】
プリズムに加え、急峻な曲面を有する光学部品も、幅広い角度範囲および/または広いスペクトル帯域に亘り、保護コーティング、高性能反射防止(AR)コーティングなどのPVDコーティングにとって難題を提示し得る。本開示の全体に亘り使用されるように、「反射防止コーティング」は、「反射率」が、所定の面で反射され、そこから戻る入射ビーム出力の割合を称する、1%未満の反射率を有するコーティングを称することがある。表面の反射率(Rx)は、Rx=Pr/P0と表すことができ、式中、P0は入射ビーム出力であり、Prは、表面から戻ったビームの出力である。
【0060】
現行のPVDプロセスでは、PVD被覆プロセスの蒸気流と、急峻な曲面上の地点との間での見通し線の変化のために、急峻な曲面上での厚さ均一性が不十分である。それゆえ、PVD被覆プロセスは、光学部品の全ての被覆面で均一なコンフォーマルコーティングを提供することができない。この問題に対処するために、厚さがより一貫したコーティングを施すのに、標的表面の複雑な運動とスクリーニングがしばしば使用される。しかしながら、複雑な運動とスクリーニングのために、急峻な曲面をPVD被覆する処理時間と費用が大幅に増加してしまう。
【0061】
本開示の被覆光学部品および方法は、被覆光学部品を製造するために原子層堆積プロセスを使用して、プリズムや急峻な曲面を有する光学部品などの光学部品の表面にコンフォーマルコーティングを施すことによって、これらの問題を克服する。本開示の被覆光学部品は、フッ化カルシウムを含む、からなる、またはから実質的になる光学部品を備えることがある。そのフッ化カルシウムは、結晶質フッ化カルシウムであり得る。被覆光学部品は、光学部品の1つ以上の表面と接触したALDコーティングを含むコンフォーマルコーティングをさらに備える。このALDコーティングは、金属酸化物、半金属酸化物、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物、またはこれらの組合せを含むことがある。実施の形態において、ALDコーティングは、フッ化マグネシウム(MgF2)(例えば、MgF2 ALDコーティング)を含み得る。それに加え、またはそれに代えて、実施の形態において、ALDコーティングは、シリカALDコーティング、アルミナALDコーティング、またはこれらの組合せを含むことがある。被覆光学部品を製造するために物品にALDコーティングを施す方法も、ここに開示されている。
【0062】
ALD被覆プロセスは、光学部品の表面の全てを1回の堆積作業により原子層精度で被覆することができる。言い換えると、ALD被覆プロセスは、光学部品の全表面のコンフォーマル被覆を同時に可能する。ALD被覆プロセスは、数ナノメートルまでの厚さなどの非常に小さい厚さでさえ、原子的に緻密でピンホールのない膜を生成することができる。それゆえ、ALD被覆プロセスは、以下に限られないが、保護コーティングや反射防止(AF)コーティングなどのコーティングの厚さをPVD系コーティングの厚さの1/5未満まで減少させることができる。ALD被覆は、10nm以下など、数ナノメートルまでのコーティング厚の制御を可能にすることができる。ALD被覆プロセスは、コーティングの応力を減少させ、被覆光学部品の寿命を増加させることができる。詳しくは、ALDコーティングは、フッ化カルシウムを密封して、フッ化カルシウムの表面からのフッ化物イオンの消耗を減少させる。ALD被覆プロセスは、数ある特徴の中でも、製品収量を改善し、再加工率を減少させもするであろう。
【0063】
再び
図1Aおよび1Bを参照すると、被覆光学部品100が概略示されている。
図1Bを参照すると、被覆光学部品100は、光学部品101および光学部品101の表面(例えば、第一面102、TIR面104および106、上面108など)に施されたALDコーティング120を備える。光学部品101は、プリズム、レンズ、対物レンズ、窓、または他のタイプの光学部品であることがある。光学部品101は、フッ化カルシウム(CaF
2)から製造された構造物であり得る。実施の形態において、光学部品101は、結晶質CaF
2を含む、からなる、またはから実質的になることがある。光学部品101は、10mmほど小さい最大寸法を有するなど、サイズが小さいことがあり得、複雑な形状を有し得る。複雑な形状を有する光学部品101は、プリズム、ビームスプリッタ、窓などの、多数のファセット側面を有する光学部品、または以下に限られないが、高開口数の対物レンズまたは他のレンズなど、急峻な曲面を有する光学部品を含むことがある。
【0064】
実施の形態において、光学部品101は、複数の側面を有するプリズムであり得る。
図1A~1Dを参照すると、光学部品101としてプリズムを含む被覆光学部品100の1つの実施の形態が、概略示されている。
図1Aにおける被覆光学部品100は、フッ化アルゴンレーザビーム反転器(reverser)として作られたフッ化カルシウム(CaF
2)プリズムである。
図1A~1Dの被覆光学部品100は、レーザビーム110がブルースター角でプリズムに出入りできるように作られたブルースター角面である、第一面102を有する。被覆光学部品100は、プリズムを通って、プリズムに戻るようにレーザビーム110を反射するように作られた第1のTIR面104と第2のTIR面106を有することがある。第1のTIR面104と第2のTIR面106は、レーザビーム110を第1のTIR面104から第2のTIR面106に、次いで、第2のTIR面106から第一面102を通って戻るように反射するように角度が付けられ、位置付けられることがある。レーザビーム110の入射角(AOI)、フッ化カルシウムのブルースター角、および第1のTIR面104と第2のTIR面106の角度は、レーザビーム110がプリズムを通る特定の経路に従うように設計されており、被覆光学部品100に、被覆光学部品100の他の側面に対して特定の非法線角度を側面が有する複雑な形状を持たせることがある。
【0065】
ここで
図3A~3Cを参照すると、プリズムを構成する被覆光学部品200の別の実施の形態が、概略示されている。
図3A~3Cの被覆光学部品200は、213nmのレーザ波長で作動するように作られた小型の複雑な形状のCaF
2コーナープリズムを構成する。
図3Aを参照すると、被覆光学部品200は4つの光学面を有し、その光学面には、ブルースター角での入射面202と出射面204、56.1°の入射角での第1のTIR面206、および45°の入射角での第2のTIR面208がある。ブルースター角および2つのTIR面206、208の入射角により、複雑な多面形状を有する被覆光学部品200がもたらされる。
図3Bおよび3Cは、
図3Aの被覆光学部品200の二面を概略示し、被覆光学部品200の複雑な形状を表している。
【0066】
ここで
図4を参照すると、直角プリズムを構成する被覆光学部品400の別の実施の形態が、概略示されている。
図4の被覆光学部品400は、以下に限られないが、266nmの波長を有するレーザビームなどの光のビーム410を、検査用対物レンズなどの検査装置420に反射させるように作られることがある。
図4の被覆光学部品400は、入射面402、出射面404、および少なくとも1つのTIR面406を備えることがある。TIR面406は、経路からの光のビーム410の少なくとも一部を、出射面404を通して検査装置420に反射することがある。直角プリズムを構成する
図4の被覆光学部品400は、複雑な形状を有することもできる。
【0067】
ここで
図5を参照すると、DUVまたは広域帯スペクトル波長を使用した光学検査のための光学検査システム500が、概略示されている。光学検査システム500は、小さいサイズと複雑な形状を有することのある、レンズ、窓、プリズム、ビームスプリッタ、波長フィルタ、鏡などの多くの異なる素子を含み得る。詳しくは、その光学検査システムは、非常に急な曲率を有する1つ以上の表面504を有することのある、高開口数(NA)の対物レンズ502を備えることがある。表面504の曲率の峻度は、光学部品の開口の直径(#)で除算された急な表面の曲率半径(R
c)の峻度比R
c/#により特徴付けることができる。急な曲率を有する表面504は、0.75から0.85の峻度比R
c/#を有することがある。非常に急な曲率を有する表面504は、0.5から0.75など、0.75未満の峻度比R
c/#を有することがある。光学検査システムの他の特徴も、急な曲面を有することがある。先に述べたように、これらの急な曲面により、PVDプロセスを使用して反射防止コーティングや他のコーティングを施す上での難題が生じ得る。詳しくは、急な曲面により、PVD被覆プロセス中に見通し線の問題が生じ、これにより、急な曲面にPVDコーティングが施されるときに素子を再配置することなど、複雑な工程変更が必要となり得る、および/またはコーティングの均一性が不十分になり得る。特に、曲面の峻度比R
c/#が1未満である場合、PVD被覆プロセスにより、曲面に亘り厚さの減少(falloff)が5%を超えるPVDコーティングが生成されることがある。減少によるこの厚さの不一致は、曲面の曲率の峻度の増加と共に、増加する。それゆえ、PVDプロセスは、急な曲面または不整面にコンフォーマルコーティングを施すことができない。
【0068】
ここで、ALDコーティング120およびコーティングを製造するためのALDプロセスを、
図1A~1Dの被覆光学部品を参照して、説明する。しかしながら、ここに開示されたALDコーティング120およびALDプロセスは、
図3A~3C、4、および5の光学部品のいずれにも、並びにどの他の光学部品にも、同じようにうまく適用できることが理解されよう。ここに開示されたALDコーティング120および/またはALD被覆プロセスは、光学部品以外のタイプのCaF
2部品にも適用してよい。
【0069】
ここで
図1Bを参照すると、被覆光学部品100は、ALDコーティング120が光学部品101の表面の1つ以上と接触するように、光学部品101の表面上に堆積された1つ以上のALDコーティング120を備えている。実施の形態において、ALDコーティング120は、光学部品101の表面からCaF
2が腐食するのを低下させるか、または防ぐように機能するバリアを光学部品101の表面上に提供する保護コーティングであることがある。実施の形態において、ALDコーティング120は反射防止コーティングであることがある。ALDコーティング120は、金属酸化物、半金属酸化物、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物、またはこれらの組合せを含むことがある。実施の形態において、ALDコーティング120は、フッ化マグネシウム(MgF
2)ALDコーティングまたはコーティング層であり得る。実施の形態において、ALDコーティング120は、以下に限られないが、フッ化ランタン(LaF
3)ALDコーティングまたはフッ化ガドリニウム(GdF
3)ALDコーティングなどの、他の高屈折率フッ化物を含むことがある。それに加え、またはそれに代えて、実施の形態において、ALDコーティングは、シリカコーティング、アルミナコーティング、またはこれらの組合せを含むことがある。
【0070】
実施の形態において、被覆光学部品100は、フッ化マグネシウム(MgF
2)を含むALDコーティング120を備えることがある。MgF
2 ALDコーティングは、低屈折率、高透過率、および以下に限られないが、193から266nmの波長などの深紫外線範囲のレーザ波長でのMgF
2 ALDコーティングの化学的および機械的安定性のために、深紫外線(DUV)光学用途の被覆光学部品100によく適している。MgF
2 ALDコーティングは、266nmより長い波長範囲に使用するのにも適していることがある。ALDコーティング120が、以下に限られないが、MgF
2 ALDコーティングなどの金属酸化物ALDコーティングである場合、ALDコーティング120の金属フッ化物化合物は、ALDコーティング120の金属フッ化物が光学部品101の表面でCaF
2と接触するように、光学部品101のCaF
2に直接結合されることがある。ここに用いられているように、「に直接結合され」という用語は、ALDコーティング120が、ALDコーティング120と光学部品101の表面との間にどのような介在コーティングまたは層も配置されずに、光学部品101の表面と接触し、それと結合していることを意味する。実施の形態において、被覆光学部品100は、以下に限られないが、MgF
2 ALDコーティングなどの金属酸化物ALDコーティングを含むことがあり、光学部品101のCaF
2とALDコーティング120の金属フッ化物との間にアルミナコーティングが配置されない。実施の形態において、ALDコーティング120は、シリカALDコーティング、アルミナALDコーティング、またはその両方を含むことがある。ここで
図6を参照すると、被覆光学部品100は、光学部品101の表面に施された複数のALDコーティング層(例えば、第1のALDコーティング層130、第2のALDコーティング層140など)を備えることがある。
【0071】
再び
図1Bを参照すると、ALDコーティング120は、原子層堆積(ALD)プロセスにより光学部品101の表面に施されることがある。ALDプロセス中、光学部品101は、1種類以上の前駆体化合物の交互パルスに曝され、前駆体化合物の交互パルスへの曝露により、光学部品101の表面上にALDコーティング120が層毎に堆積され、各層は、ALDコーティング材料の単一分子(例えば、表面の単分子層被覆)のサイズに匹敵する厚さを有する。ALDプロセスは、光学部品101の全表面を1回の堆積作業により原子層精度で被覆することができる。第1の前駆体は、金属前駆体または半金属前駆体であることがあり、第2の前駆体は、還元化合物(例えば、フッ素源)、酸化化合物(例えば、酸素源)、またはその組合せであることがある。実施の形態において、ALDプロセスは、金属前駆体または半金属前駆体を含む第1の前駆体の第1のパルス、酸素源を含む第2の前駆体の第2のパルス、およびフッ素源を含む第3の前駆体の第3のパルスを含むことがある。
【0072】
実施の形態において、ALDプロセスは、直接還元ALDプロセスであることがあり、その最中に、金属前駆体または半金属前駆体が、光学部品101の表面に堆積し、次いで、フッ素源などの還元剤を使用して、直接還元されて、ALDコーティングを生成する。ALDコーティング120が金属フッ化物ALDコーティングである場合、ALDコーティング120を施すためのALDプロセスは、光学部品101の表面を金属前駆体とフッ素源の交互パルスに曝す工程を含むことがある。表面を金属前駆体とフッ素源の交互パルスに曝す工程は、ALDチャンバ内で行われることがあり、このチャンバは密封チャンバであることがある。金属前駆体のパルスは、金属前駆体を含むことがある。いくつかの実施の形態において、金属前駆体のパルスは、金属前駆体と1種類以上の不活性ガスを含むことがある。不活性ガスは、以下に限られないが、希ガス(例えば、Ar、He、Neなど)などの非反応性ガスを含むことがある。不活性ガスは、前駆体をALDチャンバに移送するためのキャリアの機能を果たすことがある。金属前駆体およびフッ素源の各々のパルスは、金属前駆体およびフッ素源が、それぞれのパルス中に、光学部品101の表面または先に施された金属前駆体またはコーティング層の外面で、反応部位の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%と反応できるように十分な期間のものであることがある。金属前駆体とフッ素源の各パルスの噴射の間に、ALDチャンバは、次のパルスの前に、どのような残留する金属前駆体および/またはフッ素源も除去するために、不活性ガス(例えば、Ar、He、Neなど)でパージされることがある。
【0073】
実施の形態において、ALDコーティング120は金属フッ化物コーティングであることがあり、ALDプロセスは、光学部品101の表面を、金属前駆体を含有するパルスに曝す工程、金属前駆体パルスの後にチャンバをパージする工程、および次いで、光学部品101をフッ素源のその後のパルスに曝す工程を含むことがある。金属前駆体のパルス中、蒸気、プラズマ、または噴霧液体の形態にある金属前駆体は、光学部品101を収容するALDチャンバ中に噴射されることがある。ALDプロセスは、マグネシウム前駆体などの金属前駆体を、その金属前駆体をALDチャンバ内の光学部品に導入する前に、95℃以上の温度に加熱する工程をさらに含むことがある。光学部品の表面を、金属前駆体を含有するパルスに曝すと、金属前駆体が光学部品101の表面でフッ化カルシウムと反応して、配位された金属の単層を光学部品101の表面上に結合させることがある。
【0074】
表面に結合した配位された金属の単層は、配位された金属の単一分子のサイズとほぼ等しい厚さを有することがある。最初のコーティング層に続く金属前駆体のパルスについて、その金属前駆体は、先に堆積した金属フッ化物と反応して、配位された金属の続く単層を先に堆積したALDコーティング120の外面に結合させることがある。配位された金属の単層を光学部品101の外面に堆積させ、結合させた後、ALD被覆プロセスは、光学部品101の金属前駆体への曝露を停止する工程をさらに含むことがある。光学部品101の金属前駆体への曝露を停止する工程は、ALDチャンバ中への金属前駆体の流れを止める工程を含むことがある。金属前駆体のパルスは、金属前駆体を光学部品の表面で反応性フッ化カルシウム部位の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%と反応させるのに十分なパルス持続時間を有することがある。実施の形態において、金属前駆体のパルスは、10ミリ秒(ms)から10秒(s)、または約1秒のパルス持続時間を有することがある。パルス持続時間に影響する要因としては、前駆体の蒸気圧、前駆体の流量、前駆体の表面との反応性、ALDチャンバの容積、および光学部品の寸法が挙げられる。前駆体またはその反応生成物による表面の面積の少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.9%の被覆率、好ましくはコンフォーマル被覆率を達成するようにパルス持続時間を設定することが好ましい。次に、ALDプロセスを継続する前に、ALDチャンバからどのような残留する金属前駆体も除去するために、ALDチャンバを不活性ガスでパージしてもよい。
【0075】
チャンバをパージした後、光学部品101は、フッ素源を含むパルスに曝されることがある。フッ素源のパルス中に、フッ素源は、光学部品101を収容するチャンバに噴射されることがある。フッ素源のパルスは、フッ素源、またはここに述べられた不活性ガスのいずれかなどの不活性ガスと組み合わされたフッ素源を含むことがある。光学部品101の表面を、フッ素源を含有するそれに続くパルスに曝すことにより、フッ素源が、表面に結合した配位された金属と反応し、配位された金属を還元して、金属フッ化物を形成する(例えば、フッ素源と配位された金属との間の化学的還元反応を経て、配位子をフッ素と置換して、ALDコーティングの金属フッ化物を生成する)ことがある。フッ素源の噴射は、光学部品101の表面で配位された金属の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%がフッ素源と反応して、金属フッ化物を形成したときに、パルスの終わりに停止されることがある。実施の形態において、フッ素源パルスは、10msから30s、例えば、10msから20s、10msから10s、1sから30s、1sから20s、1sから10s、3sから30s、3sから20s、または3sから10sのパルス持続時間を有することがある。フッ素源パルスは、ALDチャンバ中へのフッ素源の流れを止めることによって、停止されることがある。ALDプロセスは、金属前駆体とフッ素源の一連の交互パルスにより複数回、繰り返して、金属フッ化物のさらなる層を加えて、ALDコーティング120の厚さを増加させることがある。
【0076】
実施の形態において、ALDコーティング120はMgF2 ALDコーティングであることがある。MgF2 ALDコーティングの場合、金属前駆体は、金属としてマグネシウムを含む金属配位子錯体であることがある。実施の形態において、金属前駆体は、ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(II)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)マグネシウム、ビス(N,N’-ジ-sec-ブチルアセトアミジナート)マグネシウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある。他のマグネシウム含有化合物も、MgF2 ALDコーティングを形成するための金属前駆体として適していることがある。金属前駆体は、蒸気、プラズマ、液体、または噴霧液体の形態にあることがある。
【0077】
実施の形態において、ALDコーティングは、マグネシウム以外の金属を有する金属フッ化物であることがある。これらの場合、金属がマグネシウムと異なる、類似の金属配位子錯体が使用されることがある。例えば、実施の形態において、金属前駆体の金属は、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、アルミニウム(Al)、またはこれらの組合せであることがある。実施の形態において、ALDコーティングは、CaF2 ALDコーティングであることがある。ALDコーティングがCaF2 ALDコーティングである場合、金属前駆体は、Ca(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)2、ビス(N,N’-ジイソプロピルホルムアミジナート)カルシウム(II)、ビス(N,N’-ジイソプロピルアセトアミジナート)カルシウム(II)、[Ca3(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)6]、Ca(1,2,4-トリイソプロピルシクロペンタジエニル)2、およびその組合せからなる群より選択されることがある。実施の形態において、ALDコーティングは、LiF ALDコーティングであることがある。ALDコーティングがLiF ALDコーティングである場合、金属前駆体は、リチウムtert-ブトキシド、リチウム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート、およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある。実施の形態において、ALDコーティングはAlF3 ALDコーティングであることがある。AlF3 ALDコーティングは、多結晶の代わりに、非晶質であることがある。ALDコーティング120がAlF3 ALDコーティングである場合、金属前駆体は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある。他のアルミニウム化合物も、金属前駆体として使用するのに適していることがある。金属前駆体パルスは、金属前駆体、または金属前駆体と不活性ガスとの混合物を含むことがあり、その不活性ガスは、本明細書に先に述べられた不活性ガスのいずれであってもよい。
【0078】
実施の形態において、ALDコーティング120は、複数の異なる金属を含む合金であることがある。実施の形態において、ALDコーティング120は、一般式AXMYFZを有することがあり、式中、Aは、Mg、Ca、Li、およびAlからなる群より選択される第1の金属であり、Mは、第1の金属Aと異なる第2の金属であり、Mg、Ca、Li、およびAlからなる群より選択され、Xは、第1の金属Aのモル数であり、Yは、第2の金属のモル数であり、Zは、フッ素(F)のモル数である。実施の形態において、ALDコーティング120は、LiXAlYFZまたはCaXAlYFZであることがあり、式中、Xは、それぞれ、LiまたはCaのモル数であり、Yは、Alのモル数であり、Zは、Fのモル数である。異なる金属の混合物を含む他の金属フッ化物が考えられる。複数の異なる金属を含む金属フッ化物ALDコーティングは、光学部品を、各々が異なる金属を有する、複数の異なる金属前駆体を有する金属前駆体パルスに曝すことによって、作られることがある。
【0079】
フッ素源は、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化窒素(NF3)、トリフルオロヨードメタン(CF3I)、フッ化水素(HF)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるフッ素含有前駆体に由来することがある。実施の形態において、ALDプロセスは、フッ素源が、フッ素含有前駆体またはフッ素含有前駆体とアルゴン(Ar)プラズマに由来するプラズマフッ素源であることがある。実施の形態において、フッ素源は、SF6、SF6とAr(SF6/Ar)、またはNF6とAr(NF6/Ar)を含むプラズマであることがある。実施の形態において、フッ素源は、以下に限られないが、ヘキサフルオロアセチルアセトンまたは他のフッ素含有有機化合物などの、1種類以上の有機フッ素源に由来することがある。しかしながら、有機フッ素源ために、有機フッ素源を一因とするALDコーティングから炭素化合物を除去するのに、長いオゾンパルスなどの追加のパルス工程がALDプロセスに必要となるであろう。
【0080】
HFは、ALD被覆作業にフッ素源として一般に使用される。しかしながら、HFは、特に水と接触したときに、取扱いが危険で、高腐食性である。したがって、HFより安全な代替物が望ましい。SF6フッ素前駆体は、HFと比べて、使用するのが著しく安全であり、金属フッ化物ALDコーティングを形成するために、四工程プロセスと長いオゾンパルスが必要な、有機フッ素源よりも、生産性が高い。実施の形態において、フッ素源は、SF6またはSF6由来のプラズマ(すなわち、SF6系プラズマ)を含むことがある。実施の形態において、フッ素源は、SF6またはSF6系プラズマなど、SF6系フッ素源を含む、からなる、またはから実質的になることがある。実施の形態において、フッ素源は、SF6とAr(すなわち、SF6/Arプラズマ)またはSF6と他の不活性ガス由来のプラズマを含む、からなる、またはから実質的になることがある。フッ素源がSF6/Arプラズマを含む場合、Ar対SF6の流量比は、0.1:1から10:1、0.1:1から5:1、0.1:1から2:1、0.5:1から10:1、0.5:1から5:1、0.5:1から2:1、1:1から10:1、1:1から5:1、1:1から2:1、2:1から10:1、2:1から5:1、または約2:1であることがあり、ここで、流量は、sccm(標準立方センチメートル毎分)の単位で表された体積流量である。
【0081】
先に述べたように、ALDプロセスは、配位された金属または配位した半金属を光学部品の表面に結合させ、次いで、配位された金属または配位した半金属をフッ素源で直接還元して、金属(または半金属)フッ化物ALDコーティングを生成することによって、ALDコーティングの堆積が行われる、直接還元プロセスであり得る。しかしながら、SF6、SF6プラズマ、またはSF6/Arプラズマがフッ素源として使用される場合、結果として得られるALDコーティングは、配位された金属の配位子を起源とする炭素不純物を高濃度で有し得る。どの特定の理論で束縛する意図もないが、SF6からの硫黄が配位子と反応して、金属フッ化物を生成するための配位された金属のフッ素源との反応中に、配位子を損傷させまたは分裂させ、よって、配位子の炭素または炭素含有断片をALDコーティング内に残すと考えられる。
【0082】
金属フッ化物ALDコーティング中の炭素堆積物の濃度は、金属前駆体パルスとフッ素源パルスとの間に酸化物形成工程を行うことによって、減少させる、またはなくすことができる。酸化物形成工程は、その表面に堆積した配位された金属の層を有する光学部品を、配位された金属を金属酸化物に酸化するまたは変換するのに十分なパルス持続時間に亘り酸素源に曝す工程を含むことがある。配位された金属を、酸素源を含有するパルスに曝すことにより、配位された金属の配位子が酸素源の酸素と反応して、配位子を酸素と置換し、これが、金属または半金属に結合することになる(例えば、配位された金属が酸化反応を経て、配位された金属層を金属酸化物層に変換する)。酸化物が形成された後、ALDチャンバから残留する酸素源をパージすることがあり、次いで、表面に金属酸化物の層を有する光学部品を、フッ素源を含有するパルスに曝すことがある。金属酸化物をフッ素源に曝すと、金属酸化物が金属フッ化物ALDコーティングに変換されることがある。酸素源は、水(H2O)、H2Oプラズマ、オゾン(O3)、O3プラズマ、酸素(O2)、O2プラズマ、過酸化水素、他の酸素含有気体、他の酸素含有液体、またはこれらの組合せであることがある。酸素源は、液体状態、気体状態、またはプラズマ状態にあることがある。実施の形態において、酸素源パルスは、酸素源、または本明細書に先に述べられた不活性ガスのいずれであってもよい、1種類以上の不活性ガスと組み合わされた酸素源を含むことがある。
【0083】
SF6系フッ素源が使用される場合、最初に金属配位子を酸素源パルスで金属酸化物に変換し、次いで、金属酸化物をフッ素源パルスで金属フッ化物に変換することによって調製された金属フッ化物ALDコーティングは、フッ素源による金属配位子の直接還元と比べて、より低い濃度の炭素を有する金属フッ化物ALDコーティングを生じることがある。どの特定の理論で束縛されるものでもないが、配位された金属の配位子の酸化により、配位子を分解せずに、金属から配位子をすっかり除去し、それによって、金属に結合したままの、またはそうでなければALDコーティング中に存在したままの有機(炭素含有)成分の断片をなくすか、または大幅に減少させることがあると考えられる。金属配位子の酸素源パルスによる酸化と、その後、金属酸化物のフッ素源パルスによる還元により調製された金属フッ化物ALDコーティングの酸素含有量は、金属配位子をフッ素源パルスで直接還元することによって生成された金属フッ化物ALDコーティングよりも大きいであろう。しかしながら、酸化物中間体の形成により調製された金属フッ化物ALDコーティング中の酸素の濃度は、既存のPVD金属フッ化物コーティング中の酸素濃度に匹敵することが分かった。
【0084】
実施の形態において、ALDコーティング120は金属フッ化物コーティングであることがあり、ALDプロセスは、光学部品101の表面を、金属前駆体を含有するパルスに曝し、その後、酸素源を含有するパルスに曝し、次いで、フッ素源を含有するパルスに曝す工程を含むことがある。ALDプロセスは、最初に、光学部品を金属前駆体に曝す工程を含むことがある。金属前駆体のパルス中、蒸気、プラズマ、または噴霧液体の形態にある、金属前駆体は、噴射などにより、光学部品101を収容しているALDチャンバに導入されることがある。光学部品の表面を、金属前駆体を含有するパルスに曝すと、金属前駆体が光学部品101の表面でCaF2と反応して、配位された金属の単層(単分子層)を光学部品101の表面に結合させることがある。金属前駆体は、本明細書に先に記載された金属前駆体のいずれであってもよい。金属前駆体パルスは、金属前駆体が光学部品の表面で反応性フッ化カルシウム部位の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%と反応するのに十分な持続時間を有することがある。金属前駆体パルスは、10msから10s、または約1秒のパルス持続時間を有することがある。表面に結合した配位された金属の単層は、金属配位子の単一分子のサイズと等しい厚さを有することがある。最初のコーティング層に続く金属前駆体のパルスについて、金属前駆体は先に堆積された金属フッ化物ALDコーティングと反応して、配位された金属のその後の単層を金属フッ化物ALDコーティングの外面に結合させることがある。配位された金属の単層を光学部品101の外面に堆積させ、結合した後、ALD被覆プロセスは、光学部品101の金属前駆体への曝露を停止させる工程をさらに含むことがある。光学部品101の金属前駆体への曝露を停止することは、ALDチャンバ中への金属前駆体の流れを止める工程を含むことがある。次に、ALDプロセスを継続する前に、チャンバからどのような残留する金属前駆体も除去するために、ALDチャンバを不活性ガスでパージしてもよい。
【0085】
光学部品を金属前駆体に曝し、ALDチャンバをパージした後、ALDプロセスは、配位された金属の層がそこに結合した光学部品を酸素源に曝す工程を含むことがある。酸素源は、水、水プラズマ、酸素、酸素プラズマ、オゾン、オゾンプラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、酸素含有液体、酸素含有気体、またはこれらの組合せを含むことがある。酸素源は、液体状態、気体状態、またはプラズマ状態にあることがある。光学部品を酸素源に曝す工程は、光学部品を収容しているALDチャンバに酸素源を含有するパルスを導入する工程を含むことがある。実施の形態において、酸素源パルスは、酸素源、または本明細書に先に記載された不活性ガスのいずれであってもよい、1種類以上の不活性ガスと組み合わされた酸素源を含むことがある。光学部品を酸素含有パルスに曝すことにより、配位された金属が酸化されて、光学部品の表面に金属酸化物が形成されることがある。酸素源パルスは、酸素源が、光学部品の表面(またはその後のコーティング層の施用のためのALDコーティングの表面)に結合した配位された金属の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%と反応するのに十分なパルス持続時間を有することがある。酸素源パルスは、0.1秒から1秒、または約0.3秒のパルス持続時間を有することがある。ALDプロセスは、酸素源パルスの終わりに、ALDチャンバへの酸素源の流れを止めることなどによって、光学部品の酸素源パルスへの曝露を停止する工程をさらに含むことがある。実施の形態において、ALDチャンバは、次に、酸素源パルス後に不活性ガスでパージされることがあり、これにより、ALDチャンバからどのような残留する酸素および有機化合物も除去されるであろう。
【0086】
ALDプロセスは、酸素源パルスの後に、その表面に金属酸化物の層が堆積した光学部品をフッ素源に曝す工程をさらに含むことがある。光学部品をフッ素源に曝す工程は、光学部品を収容しているALDチャンバにフッ素源を含有するパルスを導入する工程を含むことがある。フッ素源は、フッ素源について本明細書に先に記載された組成物のいずれであってもよい。実施の形態において、フッ素源は、以下に限られないが、SF6、SF6プラズマ、SF6/Arプラズマ、またはこれらの組合せなど、SF6系フッ素源である。フッ素源からのフッ素は、金属酸化物を還元して、光学部品の表面上に金属フッ化物ALDコーティングを形成することがある。フッ素源パルスは、フッ素が、光学部品の表面(またはその後のコーティング層の施用のためのALDコーティングの表面)で金属酸化物の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%と反応するのに十分なパルス持続時間を有することがある。フッ素源パルスは、10msから30s、例えば、10msから20s、10msから10s、1sから30s、1sから20s、1sから10s、3sから30s、3sから20s、または3sから10sのパルス持続時間を有することがある。このプロセスは、フッ素源パルスの終わりにALDチャンバ中へのフッ素源の流れを止めることなどによって、光学部品のフッ素源への曝露を停止する工程をさらに含むことがある。先に述べたように、金属前駆体に曝した後であって、フッ素源に曝す前に、光学部品を酸素源に曝すと、酸素源を含有するパルスのない、金属前駆体とフッ素源の交互パルスの場合と比べて、光学部品に施されたALDコーティング中に炭素の濃度が低下するであろう。
【0087】
光学部品は、金属前駆体、フッ素源、酸素源、またはこれらの組合せが光学部品の表面で化学反応を経るのに十分な作動条件で、金属前駆体とフッ素源、または金属前駆体、酸素源、およびフッ素源と接触させられる/それらに曝されることがある。ALDプロセスは、金属前駆体、酸素源、フッ素源、またはこれらの組合せが光学部品の表面で反応を経るのに十分な工程温度で、行われることがある。実施の形態において、ALDプロセスは、金属前駆体パルス、酸素源パルス、フッ素源パルス、またはこれらの組合せの1つ以上にプラズマ材料が利用される、プラズマ支援ALDプロセスであり得、このALDプロセスは、パルス中にプラズマ状態の材料を生成し、維持するのに十分な工程温度で行われ得る。実施の形態において、ALDプロセスは、120℃から250℃の工程温度で光学部品の表面にALDコーティングを堆積させる工程を含むことがある。光学部品は、120℃から250℃の工程温度で金属前駆体、酸素源、フッ素源、またはこれらの組合せに曝される/それらと接触させられることがある。
【0088】
実施の形態において、ALDプロセスは、金属前駆体パルス、酸素源パルス、フッ素源パルス、またはこれらの組合せの1つ以上にプラズマ材料が利用される、プラズマ支援ALDプロセスであり得る。金属前駆体、酸素源、フッ素源、またはこれらの組合せが、その材料を加熱し、その材料を電流または強電磁場に曝すことによって、プラズマに変換されることがある。材料(例えば、金属前駆体、酸素源、フッ素源、またはこれらの組合せ)は、ALD工程温度に加熱され、その材料をプラズマに変換するのに十分な電流に曝されることがある。実施の形態において、材料(例えば、金属前駆体、酸素源、フッ素源、またはこれらの組合せ)をプラズマに変換する工程は、材料を120℃から250℃の温度に加熱し、100ワット(W)から300W、または約200Wの出力を有する電流を印加する工程を含むことがある。
【0089】
ALDプロセスは、ALDコーティングの厚さを増加させるために複数回繰り返されることがある。ALDプロセスの各反復により、ALDコーティングにALDコーティング材料の別の分子層を加えることがある。ALDコーティングの厚さは、ALDプロセスの反復の数を制御する、すなわち、ALDコーティング中のALDコーティング材料の分子層の数を制御することによって、制御されることがある。
【0090】
実施の形態において、ALDコーティング120は、異なる層の積層体を構成する金属フッ化物ALDコーティングであることがあり、ここで、異なる層の各々は、積層体の隣接する層における金属フッ化物と異なる金属を有する金属フッ化物を含む。実施の形態において、ALDコーティング120は、以下に限られないが、CaF2、MgF2、またはLiF2 ALDコーティングなど、多結晶金属フッ化物ALDコーティングの層の間に配置された非晶質AlF3 ALDコーティングを含む金属フッ化物の積層体を構成することがある。積層体に形成される異なる金属フッ化物層の他の組合せも考えられる。
【0091】
光学部品上にALDコーティングを形成するためのALDプロセスは、上にALDコーティングを形成する前に、光学部品の表面を洗浄する工程をさらに含むことがある。実施の形態において、ALDプロセスは、被覆プロセス中に光学部品を回転させる工程を必要としない、または含まない。実施の形態において、ALDプロセスは、光学部品を固定具(固定具は、その光学部品の表面の少なくとも一部をマスキングしてしまう)に保持する工程を必要としない、または含まない。実施の形態において、光学部品の1つ以上、または2つ以上、または3つ以上の表面、または全表面までが、ALDプロセスにおいて、ALDコーティングで同時に被覆される。
【0092】
再び
図1Bを参照すると、ALDコーティング120は、光学部品101の表面でCaF
2に結合されるなど、光学部品101の表面(例えば、
図1A~1Dの被覆光学部品100の光学面102、104、および106)に結合されることがある。ALDコーティング120は、以下に限られないが、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物を含むことがある。実施の形態において、ALDコーティングは、それぞれ、ALDコーティングまたは金属フッ化物ALDコーティング層の総質量に基づいて、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または99.9%以上の金属フッ化物を含む金属フッ化物ALDコーティングまたは金属フッ化物ALDコーティング層を含むことがある。
【0093】
実施の形態において、ALDコーティングまたはALDコーティング層は、金属フッ化物ALDコーティングであることがあり、金属フッ化物に加えて、硫黄を含むことがある。実施の形態において、ALDコーティングまたはALDコーティング層は、金属フッ化物ALDコーティングを含むことがあり、ゼロ百万分率(ppm)超、例えば、ゼロppm超から300ppm、または1ppm超から250ppm、または5ppm超から200ppm、または10ppm超から150ppm、または25ppm超から125ppmの、金属フッ化物ALDコーティング中の硫黄含有量を有することがある。
【0094】
実施の形態において、ALDコーティングまたはALDコーティング層は、金属フッ化物ALDコーティングを含むことがあり、その金属フッ化物ALDコーティングは炭素を実質的に含まないことがある。実施の形態において、金属フッ化物ALDコーティングは、金属フッ化物ALDコーティング中に10,000ppm以下、または5,000ppm以下、または1,000ppm以下、または500ppm未満の濃度の炭素を有することがある。
【0095】
ALDコーティング120は、被覆区域内で光学部品の表面を大気に実質的に曝さずに、光学部品101の表面を覆うのに十分な厚さを有することがある。実施の形態において、ALDコーティングは、10ナノメートル(nm)以下、例えば、8nm以下、またさらには5nm以下の厚さを有する金属フッ化物ALDコーティングまたは金属フッ化物ALDコーティング層を含むことがある。実施の形態において、ALDコーティングは、0.25nm以上、0.50nm以上、またさらには1.0nm以上の厚さを有する金属フッ化物ALDコーティングまたは金属フッ化物ALDコーティング層を含むことがある。実施の形態において、ALDコーティングは、0.25nmから10nm、0.25nmから8nm、0.25nmから5nm、0.35nmから10nm、0.35nmから8nm、0.35nmから5nm、0.5nmから10nm、0.5nmから8nm、0.5nmから5nm、1nmから10nm、1nmから8nm、1nmから5nm、0.25nmから1nm、または5nmから10nmの厚さを有する金属フッ化物ALDコーティングまたは金属フッ化物ALDコーティング層を含むことがある。実施の形態において、ALDコーティングは多数のALDコーティング層を含むことがあり、その場合、多数のALDコーティング層の各々は異なるコーティング材料から作られる。これらの実施の形態において、多数のALDコーティング層の各々は、0.25nmから10nm、0.25nmから8nm、0.25nmから5nm、0.35nmから10nm、0.35nmから8nm、0.35nmから5nm、0.5nmから10nm、0.5nmから8nm、0.5nmから5nm、1nmから10nm、1nmから8nm、1nmから5nm、0.25nmから1nm、または5nmから10nmの厚さを有することがある。ALDコーティングの全厚は、個々のALDコーティング層の厚さの合計であることがある。
【0096】
ALDコーティング120は、全被覆表面に亘り均一な厚さを有するコンフォーマルコーティングであることがある。実施の形態において、ALDコーティング120は、ALDコーティング120の平均厚さから5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、またさらには0.5%以下しか変動しない厚さを有することがある。ALDコーティングの平均厚さは、ALDコーティング120と接触した表面の表面積の全てで平均化したALDコーティングの厚さである。
【0097】
先に述べたように、ALD被覆プロセスは、光学部品を固定具内に保持する工程、および被覆プロセス中に光学部品を回転させる工程を必要としない。したがって、ALD被覆プロセスは、光学部品の表面の内の1つ、複数、または全てで均一にALDコーティングを堆積させることがある。実施の形態において、被覆光学部品は、被覆されることが意図された光学部品101の光学面(例えば、
図1A~1Dの被覆光学部品100の表面102、104、および106;
図3A~3Cの被覆光学部品200の表面202、204、206、および208;
図4の被覆光学部品400の表面402、404、および406;
図5の高NA対物レンズ502の表面504;または他の光学面)の少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.5%上に堆積されたおよび/または接触したALDコーティングを含むことがある。被覆されることが意図された光学部品101の表面は、ALDコーティングを防ぐために意図的にマスキングされることのない表面である。ALDコーティングは、レーザビームまたは光線が入射することが予測されていない表面など、光学部品の他の非光学面に堆積されることもある、および/または他の非光学面と接触していることもある。実施の形態において、被覆光学部品100は、光学面の表面積の10%超、5%超、またさらには1%超が被覆されていない光学面を含まない。
【0098】
実施の形態において、被覆光学部品(例えば、被覆光学部品100、200、400;高NA対物レンズ500、または他の光学部品)は、金属酸化物ALDコーティングおよび/または半金属酸化物ALDコーティングを含むALDコーティングまたはALDコーティング層を有することがある。実施の形態において、ALDコーティング120は、以下に限られないが、アルミナ(Al2O3)ALDコーティング、酸化ハフニウム(HfO2)ALDコーティング、酸化ランタン(La2O3)ALDコーティング、または酸化ガドリニウム(Gd2O3)ALDコーティングなど、金属酸化物コーティングであることがある。ALDコーティングが金属酸化物ALDコーティングである場合、金属酸化物ALDコーティングを光学部品の表面に堆積させるためのALDプロセスは、光学部品の表面を金属前駆体と酸素源の交互パルスに曝す工程を含むことがある。金属前駆体は、1つ以上の有機基に結合した金属であることがある。実施の形態において、金属酸化物ALDコーティングは、アルミナALDコーティングであることがある。アルミナALDコーティングについて、金属前駆体パルスの金属前駆体は、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルミニウム前駆体であることがある。他のアルミニウム化合物も、金属前駆体として使用するのに適していることがある。金属前駆体は、蒸気、プラズマ、液体、または噴霧液体の形態にあることがある。実施の形態において、金属前駆体パルスは、本明細書に先に記載された不活性ガスのいずれであってもよい、1種類以上の不活性ガスと組み合わされた金属前駆体を含むことがある。
【0099】
金属酸化物ALDコーティングを調製するための酸素源は、SF6系フッ素源を使用して金属フッ化物コーティングを調製する文脈で、本明細書に先に記載された酸素源と同じであることがある。具体的に、酸素源は、水(H2O)、H2Oプラズマ、オゾン(O3)、O3プラズマ、酸素(O2)、O2プラズマ、過酸化水素(H2O2)、過酸化水素プラズマ、他の酸素含有気体、他の酸素含有液体、またはこれらの組合せであることがある。酸素源は、水(H2O)、H2Oプラズマ、オゾン(O3)、O3プラズマ、酸素(O2)、O2プラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、他の酸素含有気体、他の酸素含有液体、およびこれらの組合せからなる群より選択されることがある。酸素源は、液体状態、気体状態、またはプラズマ状態にあることがある。実施の形態において、酸素源パルスは、酸素源、または本明細書に先に記載された不活性ガスのいずれであってもよい、1種類以上の不活性ガスと組み合わされた酸素源を含むことがある。光学部品の表面に結合した金属前駆体を、酸素源を含有するパルスに曝すことにより、金属前駆体が酸素源の酸素と反応して、金属前駆体の有機成分を酸素と置換することがあり、この酸素は、金属または半金属と結合する(例えば、配位された金属は、酸化反応を経て、金属前駆体を金属酸化物層に酸化または変換する)。
【0100】
金属酸化物ALDコーティングまたはコーティング層を調製するためのALDプロセスは、最初に、光学部品を金属前駆体に曝す工程を含むことがある。金属前駆体のパルス中、蒸気、プラズマ、または噴霧液体の形態にある金属前駆体が、噴射などによって、光学部品101を収容しているALDチャンバに導入されることがある。光学部品の表面を、金属前駆体を含有するパルスに曝すことにより、金属前駆体が光学部品101の表面の成分と反応して、金属前駆体の単層(またはその反応生成物)が光学部品101の表面に結合することがある。光学部品101の表面の成分は、フッ化カルシウム、光学部品101上に先に堆積した金属酸化物、光学部品上に先に堆積した金属フッ化物、または光学部品の表面上に先に堆積した半金属酸化物を含むことがある。金属前駆体は、本明細書に先に記載された金属前駆体のいずれであってもよい。金属前駆体パルスは、金属前駆体が、光学部品の表面の反応部位の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%と反応できるように十分な持続時間を有することがある。金属前駆体パルスは、10msから10s、または約1秒のパルス持続時間を有することがある。表面に結合した金属前駆体の単層は、金属前駆体の一分子のサイズとほぼ等しい厚さを有することがある。最初のコーティング層に続く金属前駆体のパルスについて、金属前駆体は、先に堆積した金属酸化物ALDコーティングと反応して、金属前駆体の後続の単層を金属酸化物ALDコーティングの外面に結合させることがある。金属前駆体の単層を光学部品101の外面に堆積させ、結合させた後、ALD被覆プロセスは、光学部品101の金属前駆体への曝露を停止する工程をさらに含むことがある。光学部品101の金属前駆体への曝露を停止させる工程は、ALDチャンバへの金属前駆体の流れを止める工程を含むことがある。次に、ALDプロセスを継続する前に、チャンバからどのような残留する金属前駆体も除去するために、ALDチャンバを不活性ガスでパージしてもよい。
【0101】
光学部品の金属前駆体への曝露を停止させ、ALDチャンバをパージした後、金属酸化物ALDコーティングを調製するためのALDプロセスは、そこに金属前駆体の層が結合した光学部品を酸素源に曝す工程を含むことがある。光学部品を酸素源に曝す工程は、酸素源を含有するパルスを、光学部品を収容しているALDチャンバに導入する工程を含むことがある。光学部品を酸素含有パルスに曝すことにより、金属前駆体が酸化して、光学部品の表面に金属酸化物が形成されることがある。酸素源パルスは、酸素源が、光学部品の表面(またはその後のコーティング層の施用のためのALDコーティングの表面)に結合した金属前駆体の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%と反応するのに十分なパルス持続時間を有することがある。酸素源パルスは、0.1秒から1秒、または約0.3秒のパルス持続時間を有することがある。ALDプロセスは、パルスの終わりにALDチャンバへの酸素源の流れを止めることによるものなど、光学部品の酸素源パルスへの曝露を停止させる工程をさらに含むことがある。実施の形態において、次に、ALDチャンバは、酸素源パルス後に不活性ガスでパージされることがあり、これにより、ALDチャンバから、どのような残留酸素および有機化合物または画分も除去されるであろう。光学部品上に金属酸化物ALDコーティングを堆積させるためのALDプロセスは、金属フッ化物ALDコーティングを堆積させる文脈で先に記載された同じ作動条件で行われることがある。金属酸化物ALDコーティングを堆積させるためのALDプロセスは、金属酸化物ALDコーティングの厚さを増加させるために、複数回繰り返されることがある。
【0102】
実施の形態において、ALDコーティングは、以下に限られないが、アルミナなどの金属酸化物を主に含むことがある。実施の形態において、ALDコーティングは、それぞれ、金属酸化物ALDコーティングまたは金属酸化物ALDコーティング層の総質量に基づいて、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、または99.9質量%以上の金属酸化物を含む金属酸化物ALDコーティングまたは金属酸化物ALDコーティング層を含むことがある。
【0103】
実施の形態において、ALDコーティング120は、以下に限られないが、シリカ(SiO2)ALDコーティングなどの半金属酸化物コーティングであることがある。ALDコーティングが半金属酸化物コーティングである場合、光学部品の表面に半金属酸化物ALDコーティングを堆積させるためのALDプロセスは、光学部品の表面を半金属前駆体と酸素源の交互パルスに曝す工程を含むことがある。半金属前駆体は、1つ以上の有機基に結合した半金属、例えば、以下に限られないが、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)などであることがある。実施の形態において、半金属酸化物ALDコーティングは、シリカALDコーティングであることがある。シリカALDコーティングについて、半金属前駆体は、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン(すなわち、SiH2(NHtBu)2、BTBAS);ジ(sec-ブチルアミノ)シラン(すなわち、SiH3(NsecBu2)、DSBAS);ジイソプロピルアミノトリシリルアミン;RおよびR’の各々が独立して、メチル基、エチル基、またはその両方である、化学式SiH2(NRR’)2を有する化合物、およびこれらの組合せからなる群より選択されるシリカ前駆体であることがある。他のシリカ化合物も、半金属前駆体として使用するのに適していることがある。半金属前駆体は、蒸気、プラズマ、液体、または噴霧液体の形態にあることがある。実施の形態において、半金属前駆体のパルスは、本明細書に先に記載された不活性ガスのいずれであってもよい、1種類以上の不活性ガスと組み合わされた半金属前駆体を含むことがある。
【0104】
半金属酸化物ALDコーティングを調製するための酸素源は、本明細書に先に記載された酸素源と同じであることがある。詳しくは、酸素源は、水(H2O)、H2Oプラズマ、オゾン(O3)、O3プラズマ、酸素(O2)、O2プラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、他の酸素含有気体、他の酸素含有液体、およびこれらの組合せであることがある。酸素源は、液体状態、気体状態、またはプラズマ状態にあることがある。実施の形態において、酸素源パルスは、酸素源、または本明細書に先に記載された不活性ガスのいずれであってもよい、1種類以上の不活性ガスと組み合わされた酸素源を含むことがある。光学部品の表面に結合した半金属前駆体を、酸素源を含有するパルスに曝すことにより、半金属前駆体が酸素源の酸素と反応して、半金属前駆体の有機成分を酸素と置換することがあり、この酸素は、半金属に結合する(例えば、半金属前駆体は酸化反応を経て、半金属前駆体を半金属酸化物層に変換する)。
【0105】
半金属酸化物ALDコーティングまたはコーティング層を調製するためのALDプロセスは、最初に、光学部品を半金属前駆体に曝す工程を含むことがある。半金属前駆体のパルス中、蒸気、プラズマ、または噴霧液体の形態にある半金属前駆体は、噴射などによって、光学部品101を収容しているALDチャンバに導入されることがある。光学部品の表面を、半金属前駆体を含有するパルスに曝すことにより、半金属前駆体が光学部品101の表面の成分と反応して、半金属前駆体の単層を光学部品101の表面に結合させることがある。光学部品101の表面の成分は、フッ化カルシウム、光学部品101上に先に堆積した金属酸化物、光学部品上に先に堆積した金属フッ化物、または光学部品の表面上に先に堆積した半金属酸化物を含むことがある。半金属前駆体は、本明細書に先に記載された半金属前駆体のいずれであってもよい。半金属前駆体パルスは、半金属前駆体が、光学部品の表面の反応部位の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%と反応できるように十分な持続時間を有することがある。半金属前駆体パルスは、10msから10s、または約1秒のパルス持続時間を有することがある。表面に結合した半金属前駆体の単層は、半金属前駆体の一分子のサイズとほぼ等しい厚さを有することがある。最初のコーティング層に続く半金属前駆体のパルスについて、半金属前駆体は、先に堆積した半金属酸化物ALDコーティングと反応して、半金属前駆体の後続の単層を半金属酸化物ALDコーティングの外面に結合させることがある。半金属前駆体の単層を光学部品101の外面に堆積させ、結合させた後、ALD被覆プロセスは、光学部品101の半金属前駆体への曝露を停止する工程をさらに含むことがある。光学部品101の半金属前駆体への曝露を停止させる工程は、ALDチャンバへの半金属前駆体の流れを止める工程を含むことがある。次に、ALDプロセスを継続する前に、チャンバからどのような残留する半金属前駆体も除去するために、ALDチャンバを不活性ガスでパージしてもよい。
【0106】
光学部品の半金属前駆体への曝露を停止させ、ALDチャンバをパージした後、半金属酸化物ALDコーティングを調製するためのALDプロセスは、そこに半金属前駆体の層が結合した光学部品を酸素源に曝す工程を含むことがある。光学部品を酸素源に曝す工程は、酸素源を含有するパルスを、光学部品を収容しているALDチャンバに導入する工程を含むことがある。光学部品を酸素含有パルスに曝すことにより、半金属前駆体が酸化して、光学部品の表面にシリカなどの半金属酸化物が形成されることがある。酸素源パルスは、酸素源が、光学部品の表面(またはその後のコーティング層の施用のためのALDコーティングの表面)に結合した半金属前駆体の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.9%と反応するのに十分なパルス持続時間を有することがある。酸素源パルスは、0.1秒から1秒、または約0.3秒のパルス持続時間を有することがある。ALDプロセスは、パルスの終わりにALDチャンバへの酸素源の流れを止めることによるものなど、光学部品の酸素源パルスへの曝露を停止させる工程をさらに含むことがある。実施の形態において、次に、ALDチャンバは、酸素源パルス後に不活性ガスでパージされることがあり、これにより、ALDチャンバから、どのような残留酸素および有機化合物も除去されるであろう。光学部品上に半金属酸化物ALDコーティングを堆積させるためのALDプロセスは、金属フッ化物ALDコーティングを堆積させる文脈で先に記載された同じ作動条件で行われることがある。半金属酸化物ALDコーティングを堆積させるためのALDプロセスは、半金属酸化物ALDコーティングの厚さを増加させるために、複数回繰り返されることがある。
【0107】
実施の形態において、ALDコーティングは、以下に限られないが、シリカALDコーティングなどの半金属酸化物を主に含むことがある。実施の形態において、ALDコーティングは、それぞれ、半金属酸化物ALDコーティングまたは半金属酸化物ALDコーティング層の総質量に基づいて、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、または99.9質量%以上の半金属酸化物を含む半金属酸化物ALDコーティングまたは半金属酸化物ALDコーティング層を含むことがある。
【0108】
金属酸化物ALDコーティングおよび半金属酸化物ALDコーティングは、金属フッ化物ALDコーティングについて先に述べた性質と類似の性質を有することがある。具体的に、ALDコーティング(例えば、金属酸化物および/または半金属酸化物)は、光学部品の表面でCaF2に結合されているなど、光学部品101の表面(例えば、表面102および他の表面)に結合されることがある。実施の形態において、金属酸化物および/または半金属酸化物を含むALDコーティングまたはALDコーティング層は、炭素を実質的に含まないことがある。実施の形態において、金属酸化物ALDコーティングおよび/または半金属酸化物ALDコーティングは、それぞれ、金属酸化物ALDコーティングおよび/または半金属酸化物ALDコーティング中に10,000ppm未満、または5,000ppm未満、または1,000ppm以下、または500ppm未満の濃度の炭素を有することがある。
【0109】
金属酸化物および/または半金属酸化物を含むALDコーティングまたはALDコーティング層は、0.25nmから10nm、0.25nmから8nm、0.25nmから5nm、0.5nmから10nm、0.5nmから8nm、0.5nmから5nm、1nmから10nm、1nmから8nm、1nmから5nm、0.25nmから1nm、または5nmから10nmの厚さを有することがある。実施の形態において、ALDコーティングは多数のALDコーティング層を含むことがあり、その場合、多数のALDコーティング層の各々は、異なる材料から作られる。これらの実施の形態において、多数のALDコーティング層の各々は、0.25nmから10nm、0.25nmから8nm、0.25nmから5nm、0.5nmから10nm、0.5nmから8nm、0.5nmから5nm、1nmから10nm、1nmから8nm、1nmから5nm、0.25nmから1nm、または5nmから10nmの厚さを有することがある。ALDコーティングの全厚は、個々のALDコーティング層の厚さの合計であることがある。
【0110】
実施の形態において、被覆光学部品は、被覆されることが意図された光学部品101の光学面(例えば、その非限定例が、
図1A~1Dの被覆光学部品100の表面102、104、および106;
図3A~3Cの被覆光学部品200の表面202、204、206、および208;
図4の被覆光学部品400の表面402、404、および406;
図5の高NA対物レンズ502の表面504;または他の光学面の1つ以上を含むことがある、意図的にマスキングされていない表面)の少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またさらには少なくとも99.5%上に堆積されたおよび/または接触した金属酸化物および/または半金属酸化物を含むALDコーティングおよび/またはALDコーティング層を含むことがある。ALDコーティングは、レーザビームまたは光線が入射することが予測されていない表面など、光学部品の他の非光学面にも堆積されることがある。
【0111】
先に述べたように、再び
図6を参照すると、被覆光学部品100は、光学部品101の表面に施された複数のALDコーティング層(例えば、第1のALDコーティング層130、第2のALDコーティング層140など)を含むALDコーティング120を有することがある。実施の形態において、被覆光学部品100は、光学部品101の表面(例えば、
図1A~1Dの被覆光学部品100の表面102、104、および106;
図3A~3Cの被覆光学部品200の表面202、204、206、および208;
図4の被覆光学部品400の表面402、404、および406;
図5の高NA対物レンズ502の表面504;または他の光学面)の1つ以上と直接接触した第1のALDコーティング層130およびその第1のALDコーティング層130の上に施された少なくとも1つの第2のALDコーティング層140を有することがある。第1のALDコーティング層130は、光学部品101の表面(例えば、第一面102など)でCaF
2に直接結合した内面132および光学部品101の表面から離れて外を向いた外面134を有することがある。第2のALDコーティング層140は、第1のALDコーティング層130と異なる材料であることがある。第2のALDコーティング層140は、第1のALDコーティング層130の外面134と直接結合した内面142を有することがある。第2のALDコーティング層140は、第1のALDコーティング層130から離れる方向に向いた外面144を有することがある。第2のALDコーティング層140は、第2のALDコーティング層140の内面142が、第1のALDコーティング層130と第2のALDコーティング層140との間にどのような介在層またはコーティングも配置されずに、第1のALDコーティング層130の外面134と接触し、結合するように、第1のALDコーティング層130に直接結合されることがある。第2のALDコーティング層140の上に1つ以上の追加のALDコーティング層が施されて、ALDコーティング層の積層体を提供することがある。第1のALDコーティング層130、第2のALDコーティング層140、それに続くALDコーティング層、またはこれらの組合せは、先に述べたように、0.25nmから10nmなど、10nm未満の厚さを有することがある。
【0112】
積層体の具体例
複数のALDコーティング層を含むALDコーティング120を有する被覆光学部品100は、光学部品の表面(例えば、
図1A~1Dの被覆光学部品100の表面102、104、および106;
図3A~3Cの被覆光学部品200の表面202、204、206、および208;
図4の被覆光学部品400の表面402、404、および406;
図5の高NA対物レンズ502の表面504;または他の光学面)に第1のALDコーティング層130を施し、光学部品101と第2のALDコーティング層140との間に第1のALDコーティング層130が配置されるように、第1のALDコーティング層130上に第2のALDコーティング層140を施すことによって、調製されることがある。第1のALDコーティング層130と第2のALDコーティング層140は、本明細書に先に記載されたALDプロセスのいずれにしたがって、光学部品101の1つ以上の表面上に堆積されてもよい。
【0113】
再び
図6を参照すると、実施の形態において、第1のALDコーティング層130は、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物ALDコーティングであることがあり、第2のALDコーティング層140は、金属酸化物または半金属酸化物コーティングであることがある。実施の形態において、第1のALDコーティング層130は、MgF
2 ALDコーティングであることがあり、第2のALDコーティング層140は、シリカALDコーティング、アルミナALDコーティング、またはその両方であることがある。実施の形態において、金属フッ化物ALDコーティングから構成された第1のALDコーティング層130は、緩衝層であることがあり、シリカALDコーティング、アルミナALDコーティング、またはその両方から構成された第2のALDコーティング層140は、キャッピング層であることがある。MgF
2 ALDコーティングは、0.25nmから10nm、または0.25nmから5nmの厚さを有することがあり、キャッピング層は、1nmから10nmの厚さを有することがある。MgF
2 ALDコーティングから構成された緩衝層は、光学部品101と、シリカALDコーティング、アルミナALDコーティング、またはその両方から構成されたキャッピング層との間に配置されることがある。実施の形態において、第1のALDコーティング層130は、0.25nmから5nmの厚さを有することがあるMgF
2 ALDコーティングから構成されることがあり、第2のALDコーティング層140は、キャッピング層であり、1nmから10nmの厚さを有するシリカALDコーティングであることがある。MgF
2 ALDコーティングから構成された緩衝層は、光学部品101と、シリカALDコーティングから構成された緩衝層との間に配置されることがある。実施の形態において、第2のALDコーティング層140は、キャッピング層であり、0.35nmから10nmの厚さを有することがあるアルミナALDコーティングであることがある。
【0114】
実施の形態において、被覆光学部品100は、光学部品101および光学部品101の表面の1つ以上の上に堆積された、および/またはそれと接触したALDコーティング120を含む、からなる、またはから実質的になることがある。実施の形態において、ALDコーティング120は、第1のALDコーティング層130および第2のALDコーティング層140を含む、からなる、またはから実質的になることがある。第1のALDコーティング層130は、金属フッ化物ALDコーティングからなる、またはから実質的になることがあり、光学部品の表面(例えば、
図1A~1Dの被覆光学部品100の表面102、104、および106;
図3A~3Cの被覆光学部品200の表面202、204、206、および208;
図4の被覆光学部品400の表面402、404、および406;
図5の高NA対物レンズ502の表面504;または他の光学面)と直接結合している。第2のALDコーティング層140は、金属酸化物ALDコーティング、半金属酸化物ALDコーティング、またはその両方からなる、またはから実質的になることがあり、第1のALDコーティング層130が光学部品101の表面と第2のALDコーティング層140との間に配置されるように、第1のALDコーティング層130の外面134に直接結合されることがある。実施の形態において、第1のALDコーティング層130は、フッ化マグネシウムからなる、またはから実質的になることがある。実施の形態において、第2のALDコーティング層140は、シリカ、アルミナ、またはその両方からなる、またはから実質的になることがある。
【0115】
ALDコーティング120がその上に堆積された本開示の被覆光学部品100、300、400、500は、DUVリソグラフィーまたはDUV検査システムなど、様々なDUV用途における光学部品として使用されることがある。被覆光学部品は、以下に限られないが、190nmから266nmの波長を有するビームなど、DUV範囲の波長を有するレーザに使用されることがある。実施の形態において、本開示の被覆光学部品は、266nmより長い波長を有するビームに使用されることがある。
【実施例】
【0116】
ここに記載された被覆光学部品およびその被覆光学部品を製造するためのALDプロセスの実施の形態が、以下の実施例によりさらに明白となるであろう。
【0117】
実施例1
実施例1において、光学部品を第1のALDコーティング層およびこの第1のALDコーティング層の上にある第2のALDコーティング層で被覆して、被覆光学部品を調製した。実施例1に使用した光学部品は、
図1A~1Dに示されたCaF
2プリズムであり、このプリズムは、第一面102(例えば、ビーム入射および出射面)、第1のTIR面104、および第2のTIR面106を有していた。第一面102は、30mmの長さおよび20mmの高さを有した。第1のTIR面104は、20mmの長さおよび20mmの高さを有した。第2のTIR面106は、25mmの幅および20mmの高さを有した。
【0118】
第1のALDコーティング層は、4nmの厚さを有するMgF2 ALDコーティングであった。このMgF2 ALDコーティングは、第一面102、第1のTIR面104、および第2のTIR面106に施された。MgF2 ALDコーティングは、150℃の反応器温度に維持されたALDチャンバを使用して、ここに開示されたALDプロセスにしたがって調製した。マグネシウム前駆体は、(EtCp)2Mg(すなわち、ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム)であった。バブラー温度を92℃に設定し、ICPプラズマ出力は200Wであった。(EtCp)2Mgを含む金属前駆体パルスは、0.5秒のパルス持続時間を有し、その後、9秒間に亘り不活性ガスでパージを行った。金属前駆体パルスとパージの後、40ミリ秒の持続時間を有する水パルスを行い、その後、8秒間に亘り不活性ガスでパージした。水パルスとパージの後、光学部品に、SF6とアルゴンの混合物を含むフッ素源パルスを施した。SF6/アルゴン流の比は30/15であり、フッ素源パルスは7秒の持続時間を有した。フッ素源パルスの後に、パージパルスが続いた。MgF2 ALDコーティングの厚さが4nmになるまで、一連の金属前駆体パルス/水パルス/フッ素源パルスを繰り返した。
【0119】
第2のALDコーティング層は、MgF
2 ALDコーティング層の外側被覆面に施されたシリカ(SiO
2)ALDコーティングであった。第2のALDコーティング層は、6nmの厚さを有した。SiO
2 ALDコーティング層は、150℃の反応器温度に維持されたALDチャンバ内でここに開示されたALDプロセスにしたがって調製した。シリカ前駆体は、アルキルアミノシリルアミン(Air Liquideから入手できるORTHRUS(商標)アルキルアミノシリルアミン)であった。バブラー温度を60℃に設定し、ICPプラズマ出力は300Wであった。光学部品を最初に、0.4秒のパルス持続時間を有する、シリカ前駆体を含むシリカ前駆体パルスに曝した。シリカ前駆体パルスの後に、不活性ガスの8秒間のパージを行った。実施例の最中にずっと、ALDチャンバをパージするための不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を使用した。シリカ前駆体パルスとパージの後、光学部品に、O
2プラズマとアルゴンを含むO
2プラズマパルスを施した。O
2プラズマパルスは、35/15のAr/O
2流の比を有した。O
2プラズマパルスは、9秒の持続時間を有し、その後に、不活性ガスの8秒間のパージが続いた。SiO
2 ALDコーティング層の厚さが6nmになるまで、一連のシリカ前駆体パルスとその後のO
2パルスを繰り返した。
図7を参照すると、第1のALDコーティング層と第2のALDコーティング層の各々の物理的厚さが、グラフで示されている。
図1A~1Dに示されたのと同じ形状および同じ寸法を有する比較用の未被覆光学部品を、比較例として使用した。
【0120】
実施例1のCaF2プリズムを使用して、193nmの波長のレーザビームのレーザビーム方向を変える。次に、実施例1の被覆光学部品の第一面(例えば、ビーム入射/出射面である表面102)の透過率を、同じ形状を有する未被覆のCaF2光学部品の第一面の透過率と比較した。この光学部品の第一面は、レーザビームがプリズムに入り、プリズムから出る表面である。未被覆のCaF2光学部品は、比較例を提供する。未被覆の光学部品および実施例1の被覆光学部品の各々に、193.4nmの波長を有するArFレーザビームを照射し、入射角(AOI)の関数としてのP偏光の透過率を決定した。表面の透過率は、第一面102を通過する第一面102に入射するレーザビームのビーム出力の割合として定義され、百分率で表される。透過率百分率は、公知の方法にしたがって、分光光度計または光透過率計を使用して決定することができる。平面について、入射角(AOI)は、ArFレーザビーム路と、ArFレーザビームが入射する表面の平面に垂直な線との間の鋭角を称する。
【0121】
ここで
図8を参照すると、比較用の未被覆光学部品に関するAOI(x軸)の関数としての透過率百分率(y軸)は、フッ化カルシウムプリズムの55.6°のブルースター角でのP偏光レーザビームについて100%の透過率を示す。ここで
図9を参照すると、実施例1の被覆光学部品に関するAOI(x軸)の関数としての透過率百分率(y軸)も、55.6°のブルースター角でのP偏光レーザビームについて100%の透過率を示す。このことは、MgF
2の第1のALDコーティング層およびシリカの第2のALDコーティング層を含む実施例1のALDコーティングでは、同じ形状を有する比較用の未被覆光学部品と比べて、第一面(例えば、ビーム入射/出射面)を通るビームの透過率が変わらないことを示す。
【0122】
実施例1の被覆光学部品および比較用の未被覆光学部品について、TIR面(例えば、
図1Aにおける第1のTIR面104および第2のTIR面106)について、TIR入射角(AOI)の関数としての193.4nmの波長のArFレーザビームのP偏光の内部反射率を決定した。表面の内部反射率は、TIR面で反射したTIR面に入射するレーザビームのビーム出力の割合として定義され、百分率で表される。内部反射率は、公知の方法にしたがって分光光度計または光透過率計を使用して決定することができる。
図10は、比較用の未被覆光学部品についてAOI(x軸)の関数としての内部反射率の百分率(y軸)をグラフで示しており、
図11は、実施例1の被覆光学部品についてTIR AOI(x軸)の関数としての内部反射率の百分率(y軸)をグラフで示している。
図10および11において、TIR AOIは、光学部品を通るArFレーザビーム路とTIR面の平面に垂直な線との間の鋭角を称する。TIR AOIは、TIR面に対するものであり、レーザビームが光学部品に最初に入射する第一面ではない。CaF
2側からのTIR AOIが、CaF
2について41.7度である、臨界角より大きい場合、TIR面で全内部反射が生じる。
図10と11の比較により、MgF
2の第1のALDコーティング層およびシリカの第2のALDコーティング層を含む実施例1のALDコーティングでは、同じ形状を有する比較用の未被覆光学部品と比べて、被覆光学部品のTIR面の内部反射率が変わらないことが示される。
【0123】
実施例2
実施例2において、光学部品を第1のALDコーティング層およびこの第1のALDコーティング層の上にある第2のALDコーティング層で被覆して、被覆光学部品を調製した。実施例2に使用した光学部品は、
図3A~3Cに示されたプリズム200の形状を有するCaF
2プリズムであり、このプリズムは、ブルースター角での入射面202と出射面204、56.1°の入射角での第1のTIR面206、および45°の入射角での第2のTIR面208を有していた。実施例2のCaF
2プリズムの最長寸法は20mm未満であった。第1のALDコーティング層は、4nmの厚さを有するMgF
2 ALDコーティングであった。このMgF
2 ALDコーティングは、実施例1に記載された方法と条件にしたがって形成した。
【0124】
第2のALDコーティング層は、第1のALDコーティング層の外側被覆面に施されたアルミナ(Al
2O
3)ALDコーティングであった。第2のALDコーティング層は、6nmの厚さを有していた。アルミナALDコーティングを構成する第2のALDコーティング層は、150℃の反応器温度に維持されたALDチャンバ内で施された。アルミナ前駆体はトリメチルアルミニウム(TMA)であった。バブラー温度は室温に設定した。光学部品を最初に、40ミリ秒の持続時間を有する、アルミナ前駆体を含むアルミナ前駆体パルスに曝した。アルミナ前駆体パルス後に、10秒間の不活性ガスのパージを行った。アルミナ前駆体パルスとパージの後、光学部品に水を含む水パルスを施した。水パルスは、40ミリ秒の持続時間を有し、その後、7秒間の不活性ガスのパージを行った。アルミナALDコーティング層の厚さが6nmになるまで、一連のアルミナ前駆体パルスと水パルスを繰り返した。
図3Aに示されたのと同じ形状および同じ寸法を有する比較用の未被覆光学部品を比較例として使用した。
【0125】
実施例2のCaF
2プリズムを用いて、213nmの波長を有するレーザビームの向きを変えた。比較用の未被覆光学部品および実施例2の被覆光学部品の各々に、213nmの波長を有するArFレーザビームを照射し、ここに開示された方法にしたがって、入射角(AOI)の関数としてArFレーザビームのP偏光の透過率と内部反射率を測定した。
図12を参照すると、比較用の未被覆光学部品の透過率百分率が実線で示され、実施例2の被覆光学部品の透過率百分率が破線で示されている。
図12に示されるように、実施例2の被覆光学部品の透過率百分率は、比較用の未被覆光学部品の透過率百分率に密接に対応する。このことは、MgF
2の第1のALDコーティング層およびアルミナの第2のALDコーティング層を含む実施例2のALDコーティングは、同じ形状を有する比較用の未被覆光学部品と比べて第一面(例えば、ビーム入射/出射面)を通る213nmのビームの透過率を実質的に変えないことを実証している。
【0126】
ここで
図13を参照すると、比較用の未被覆光学部品のTIR面206に関する213nmのビームの内部反射率の百分率が実線で示され、実施例2の被覆光学部品のTIR面206に関する213nmのビームの内部反射率の百分率が破線で示されている。
図13に示されるように、実施例2の被覆光学部品の内部反射率の百分率は、比較用の未被覆光学部品の内部反射率の百分率と密接に対応する。このことは、MgF
2の第1のALDコーティング層およびアルミナの第2のALDコーティング層を含む実施例2のALDコーティングは、同じ形状を有する比較用の未被覆光学部品のTIR面と比べて被覆光学部品のTIR面(例えば、ビーム入射/出射面)により213nmのビームの内部反射率を実質的に変えないことを実証している。
【0127】
実施例3
実施例3において、光学部品を第1のALDコーティング層およびこの第1のALDコーティング層の上にある第2のALDコーティング層で被覆して、被覆光学部品を調製した。実施例3に使用した光学部品は、
図4に示された直角プリズム400の形状を有するCaF
2プリズムであり、このプリズムは、入射面402、出射面404、および1つのTIR面406(斜辺側)を有していた。実施例3の直角プリズムの高さは10mm未満であった。ALD系保護反射防止(AR)コーティングを表面402、404、および406の3つ全てに施した。このALDコーティングは、CaF
2プリズムに直接堆積された厚さ4nmのMgF
2 ALDコーティングと、その後の4つの追加のコーティング層を備えていた。その4つの追加のコーティング層は、厚さ19nmのAl
2O
3 ALDコーティング層、厚さ52nmのSiO
2 ALDコーティング層、厚さ41nmのAl
2O
3 ALDコーティング層、および厚さ45nmのSiO
2 ALDコーティング層であった。MgF
2 ALDコーティング層とSiO
2 ALDコーティング層は、実施例1に記載された方法と条件にしたがって施した。Al
2O
3 ALDコーティング層は、実施例2の方法にしたがって施した。このプリズムを使用して、266nmの波長を有するレーザビームを検査システムの対物レンズに入射させる。
図4に示されたのと同じ形状および同じ寸法を有する比較用の未被覆光学部品を比較例として使用した。
【0128】
比較用の未被覆光学部品および実施例3の被覆光学部品の各々に、266nmの波長を有するArFレーザビームを照射し、ここに開示された方法にしたがって、TIR面406での入射角(AOI)の関数としてArFレーザビームのP偏光の内部反射率を測定した。ここで
図14を参照すると、比較用の未被覆光学部品の内部反射率の百分率が実線で示され、実施例3の被覆光学部品の内部反射率の百分率が破線で示されている。
図14に示されるように、実施例3の被覆光学部品の内部反射率の百分率は、
図14の破線と実線の重複で示されるように、比較用の未被覆光学部品の内部反射率の百分率と密接に対応する。このことは、MgF
2の第1のALDコーティング層および第2の酸化物ALDコーティング層(交互のアルミナとシリカ)を含む実施例3のALDコーティングは、TIR面により266nmのビームの内部反射率を実質的に変えないことを実証している。
【0129】
実施例3のALDコーティングは、同じ寸法を有する比較用の未被覆光学部品と比べて、入射面402と出射面404での反射損失を減少させないことが示された。ここで
図15を参照すると、入射面402に入射する光の波長の関数としての入射面402の反射率%がグラフで示されている。
図15において、参照番号1502は、比較用の未被覆光学部品の反射率を指し、参照番号1504は、実施例3のALD被覆光学部品の反射率を指す。
図15に示されるように、入射面402に関して、実施例3のALD保護ARコーティング(参照番号1504)は、比較用の未被覆光学部品(参照番号1502)に関する3.5%の表面反射率と比べて、表面反射率を0.2%未満まで減少させている。
【0130】
実施例4-フッ素源としてSF
6
/Arプラズマを使用して施されたMgF
2
ALDコーティング
実施例4において、CaF
2光学部品を、フッ素源としてSF
6/Arプラズマを使用してMgF
2 ALDコーティングで被覆した。実施例4の光学部品は、10mmから30mmの寸法を有する
図4の直角プリズムと類似の直角プリズムであった。実施例4のALDプロセスは、CaF
2光学部品を、マグネシウム前駆体とSF
6/Arプラズマの交互パルスに曝す工程を含む。実施例4において、光学部品には、マグネシウム前駆体パルスとフッ素源パルスとの間に、酸素源パルスを施さなかった。このALDプロセスは、ALDチャンバを150℃の温度に維持しながら行った。マグネシウム前駆体は、(EtCp)
2Mg(すなわち、ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム)であった。このマグネシウム前駆体を95℃に加熱し、光学部品を、マグネシウム前駆体の各パルス中に、1秒間に亘りマグネシウム前駆体に曝して、表面を飽和させた。マグネシウム前駆体パルス後に、ALDチャンバを不活性ガス(Ar、N
2)でパージして、どのような残留するマグネシウム前駆体も除去した。次に、光学部品をSF
6/Arプラズマフッ素パルスに曝した。SF
6/Arプラズマを生成するのに使用した電流の出力は200Wであり、Ar対SF
6の流量比は2:1であった。ここで、流量は、sccmの単位で表される体積流量であった。SF
6/Arプラズマフッ素パルスの持続時間は7秒であった。
【0131】
実施例5-H
2
Oパルスを含み、フッ素源としてSF
6
/Arプラズマを使用して施されたMgF
2
ALDコーティング
実施例5について、CaF2光学部品を、フッ素源としてSF6/Arプラズマを使用し、マグネシウム前駆体パルスとフッ素源パルスとの間に酸素源パルスを施してMgF2 ALDコーティングで被覆した。実施例5のCaF2光学部品は、実施例4に記載されたCaF2光学部品と同じであった。実施例5のALDプロセスは、CaF2光学部品を、マグネシウム前駆体を含有するパルス、酸素源を含む第2のパルス、およびSF6/Arプラズマを含む第3のパルスに曝す工程を含んだ。それゆえ、実施例5において、マグネシウム前駆体は、最初に酸素源で酸化マグネシウムに変換され、次いで、その酸化マグネシウムはSF6/Arプラズマ(フッ素源)によりMgF2に変換される。マグネシウム前駆体パルスとフッ素源パルスは、実施例4に先に記載されたものと同じであった。酸素源パルスについて、酸素源として水(H2O)を使用した。マグネシウム前駆体に曝した後、光学部品を、0.3秒の持続時間を有する酸素源パルスに曝した。次に、光学部品を、酸素源の後に、フッ素源に曝した。ALDチャンバは、ALDプロセス中ずっと150℃の温度に維持し、各パルス間に不活性ガスでパージした。
【0132】
実施例6-実施例4および5のMgF
2
ALDコーティングのXPS分析
実施例6において、実施例4および5のMgF
2 ALDコーティングをX線光電子分光法(XPS)で分析して、MgF
2 ALDコーティングの表面にある異なる化学元素の相対濃度を解明した。X線光電子分光法(XPS)を使用してMgF
2 ALDコーティング中の様々な元素の表面濃度を正確に定量化するために、標準基準材料から算出した相対感度因子を利用した。ALDコーティングのXPS測定に関する分析体積は、分析面積(ALDコーティングの表面でのXPSスポットサイズまたは開口サイズ)と調査したALDコーティングの深さの積である。光電子は、ALDコーティングのX線侵入深さ(典型的に数マイクロメートル)内で生成されるが、ALDコーティングの表面(光電子脱出深さの約3倍)から脱出するのに十分な運動エネルギーを有する光電子のみが検出される。光電子脱出深さは、15~35Å程度であり、これは、約50~100Åの分析深さをもたらす。典型的に、信号の95%がこの深さ内から生じる。ALDコーティングの表面から放出される光電子の運動エネルギーを収集し、測定するために、電子エネルギー分析器と検出器を使用した。各放出光電子の比運動エネルギーは、元素と、元素の特定の結合配置で起源とする内殻電子準位に独特の特徴である。放出光電子の数を計数し(信号強度)、運動エネルギーの関数としてプロットして、光電子スペクトルを作る。スペクトルにおけるピークは、個々の元素の内殻電子準位に特有である。ALDコーティングの分析体積中の各元素の原子割合を定量化するために、各ピークの下の面積を積分し、次いで、適切な相対感度因子(標準基準材料から算出した)で除算する。ALDコーティングからXPSでデータを分析する場合、元素の各特定の結合配置において各内殻電子準位に1つと、各元素に関連するXPS線が多数ある。MgF
2 ALDコーティング内の元素の原子百分率が、表1に与えられている。低濃度の元素について、最高の信号対雑音比を有するXPS線を使用すべきである。ALDコーティングの表面は、UV/オゾン、アルコール、または他の非水性手段で洗浄されることがある。実施例4および5のMgF
2コーティングに関する様々なエネルギー範囲における光電子スペクトルが、
図16、17、および18に与えられている。
図16、17、および18の光電子スペクトルは、結合エネルギーで報告されており、ここで、結合エネルギーはhv-KEと等しく、hvは光子エネルギーであり、項KEは、放出電子の測定運動エネルギーである。
【0133】
図16を参照すると、フッ素の1s内殻電子準位を表すエネルギー範囲における光電子スペクトルが、実施例4のMgF
2 ALDコーティング(参照番号1602)および実施例5のMgF
2 ALDコーティング(参照番号1604)について、グラフで示されている。
図16に示されるように、実施例4のMgF
2 ALDコーティング(参照番号1602)に関する光電子スペクトルは、688eV辺りで主要ピーク(参照番号1610)を、685eV辺りで微小ピーク(参照番号1611)を有する。主要ピーク1610は、配位子の炭素または断片など、フッ素と有機成分との間の重要な結合を表し、微小ピーク1611は、マグネシウムなどの無機種へのフッ素結合を表す。対照的に、実施例5のMgF
2 ALDコーティング(参照番号1604)に関する光電子スペクトルは、685eV辺りで単一ピーク(参照番号1612)を示し、これは、フッ素の実質的に全てが、マグネシウムなどの無機成分に結合し、フッ素-炭素結合が極わずかしか存在しないことを示す。
【0134】
ここで
図17を参照すると、炭素の1s内殻電子準位を表すエネルギー範囲における光電子スペクトルが、実施例4のMgF
2 ALDコーティング(参照番号1602)および実施例5のMgF
2 ALDコーティング(参照番号1604)について、グラフで示されている。
図17に示されるように、実施例4のMgF
2 ALDコーティング(参照番号1602)に関する光電子スペクトルは、291eV辺りで主要ピーク(参照番号1710)を、289eV辺りで微小ピーク(参照番号1711)を有する。主要ピーク1710は、2つのフッ素原子への炭素の重要な結合(CF
2)を表し、微小ピーク1711は、フッ素と水素に結合した炭素原子(CF
yH
z)を表す。対照的に、実施例5のMgF
2 ALDコーティング(参照番号1604)に関する光電子スペクトルは、285eV辺りで単一ピーク(参照番号1712)を示し、これは、炭素の実質的に全てが、炭素-炭素結合の形態にあり、炭素とフッ素の間には極わずかしか結合がないことを示す。それゆえ、
図16および17は、(1)マグネシウム前駆体パルスとフッ素源パルスとの間に酸素源パルスを含ませることによって調製された実施例5のMgF
2 ALDコーティングは、酸素源パルスを行わない実施例4のMgF
2 ALDコーティングと比べて、フッ素-炭素結合が少ないこと、(2)実施例5のMgF
2 ALDコーティング中のフッ素の実質的に全てが、Mgと結合していること、および(3)実施例5のMgF
2 ALDコーティングにおいて検出された炭素は、MgF
2 ALDコーティング内に組み込まれてはおらず、そうではなく、表面上に孤立領域を形成することを示す。
【0135】
ここで
図18を参照すると、マグネシウムの2p内殻電子準位を表すエネルギー範囲における光電子スペクトルが、実施例4のMgF
2 ALDコーティングおよび実施例5のMgF
2 ALDコーティングについて、グラフで示されている。
図18のピーク1802は、より大きい結合エネルギーを有するマグネシウム結合を表し、フッ素に対するマグネシウムの結合を示す。
図18のピーク1804は、より低い結合エネルギーを有するマグネシウム結合を表し、マグネシウム-酸素および/またはマグネシウム-炭素の結合に対応する。Mg2pデータは、2つの異なるMg種を強く示唆する非対称ピークを示す。非対称ピークを有する低い方の結合エネルギー(右にシフトしている)は、MgF
2を示し、酸素および炭素水素が膜に含まれている。
【0136】
光電子スペクトルを使用して、実施例4および5のMgF2 ALDコーティングの分析体積中のマグネシウム、フッ素、炭素、および酸素の各々の原子百分率を決定した。その原子百分率が表1に与えられている。表1に示されるように、実施例5のMgF2 ALDコーティングは、実施例4のMgF2 ALDコーティングと比べて、炭素の百分率が小さく、マグネシウムの百分率が大きかった。それゆえ、SF6系フッ素源を使用した場合、MgF2 ALDコーティング中の炭素の濃度は、マグネシウム前駆体パルスとフッ素源パルスとの間に酸素源パルスを組み入れることによって、実施例5におけるように減少させることができる。
【0137】
【0138】
比較例7-PVD MgF
2
コーティングを備えた光学部品
比較例7において、物理的気相成長法(PVD)を使用して、結晶質CaF2光学部品をMgF2コーティングで比較することによって、比較用の被覆光学部品を調製した。PVDプロセスにおいて、MgF2は、真空室内の抵抗源から熱的に蒸発させて、蒸発MgF2流束を提供した。次に、蒸発MgF2流束を見通し線の様式で光学部品に向けた。その結果、比較例7のPVDプロセスは、一度に多面光学部品の1つの面だけを被覆することができた。
【0139】
実施例8-異なるフッ素源で調製されたMgF
2
ALDコーティング
実施例8において、異なるフッ素源を使用して調製したMgF2 ALDコーティングを有する被覆光学部品を調製した。実施例8の光学部品は、比較例7に使用した光学部品と組成と形状が同じであった。試料8Aについて、MgF2 ALDコーティングは、フッ素源としてHFを使用して調製した。試料8AのMgF2 ALDコーティングは、フッ素源にSF6/Arプラズマの代わりにHFを使用したことを除いて、実施例4に記載されたマグネシウム前駆体およびALDプロセスを使用して施した。ALDチャンバの反応器温度は150℃であった。マグネシウム前駆体パルスは、実施例4に記載された方法および作動条件にしたがって行った。HFパルスは、1秒のパルス持続時間を有し、その後に、不活性ガスによりパージが行われた。
【0140】
試料8Bについて、フッ素源として有機フッ素化合物を使用して、MgF2 ALDコーティングを調製した。試料8BのMgF2 ALDコーティングは、フッ素源にSF6/Arプラズマの代わりに有機フッ素化合物を使用したことを除いて、実施例4に記載されたマグネシウム前駆体およびALDプロセスを使用して施した。試料8Bを調製するための有機フッ素化合物は、ヘキサフルオロアセチルアセトンであった。
【0141】
試料8Cについて、フッ素源としてSF6/Arプラズマを使用し、マグネシウム前駆体パルスとフッ素源パルスとの間に酸素源パルスを含ませて、MgF2 ALDコーティングを施した。試料8CのMgF2 ALDコーティングは、実施例5に記載された材料とALDプロセスを使用して施した。
【0142】
ここで
図19を参照すると、公知の方法にしたがって屈折計を使用して測定した、波長の関数としての実施例8および比較例7の被覆光学部品の各々の屈折率が、グラフで示されている。
図19において、参照番号1902は比較例7に対応し、参照番号1904は、HFを使用して調製した試料8Aの屈折率曲線に対応し、参照番号1906は、有機フッ素源を使用して調製した試料8Bの屈折率曲線に対応し、参照番号1908は、SF
6/Arプラズマを使用した試料8Cの屈折率曲線に対応する。
図19に示されるように、酸素源パルスを追加すると共に、SF
6/Arプラズマを使用して調製した試料8C(1908)の被覆光学部品は、試料8A(1904)および試料8B(1906)の被覆光学部品と比べて、低い屈折率値を示した。試料8Cの被覆光学部品の屈折率値は、比較例7の被覆光学部品の屈折率値に匹敵した。このことは、SF
6系フッ素源を使用し、中間の酸素源パルス工程を有するALDプロセスにより調製されたALDコーティングを有する被覆光学部品を調製すると、既存のPVD被覆光学部品に匹敵する屈折率を有する被覆光学部品を製造できることを示している。
【0143】
ここで
図20および21を参照すると、比較例7(
図20)および実施例8の試料8C(
図21)の被覆光学部品についての、コーティング中の深さの関数としての炭素、マグネシウム、酸素、およびフッ素の相対量が与えられている。
図20および21のデータは、二次イオン質量分析計を使用した二次イオン質量分析法(SIMS)により作成した。コーティングの表面に2kVの運動エネルギーを有するセシウムイオン(Cs
+)をスパッタリングし、30kVのBi
3+イオンによりポジティブモードで分析を行うことによって、SIMS分析を行った。
図20および21において、基準線2002は、基体とコーティングとの間の界面を表し、コーティングは、基準線2002の左側のデータで示されている。
図21に示されるように、試料8CのALD被覆光学部品は、比較例7(
図20)のPVD被覆光学部品に匹敵する類似の酸素濃度を示した。しかしながら、
図21は、試料8CのALD被覆光学部品は、比較例7のPVD被覆光学部品と比べて低い濃度の炭素不純物を有したことも示す。
【0144】
請求項の主題の精神と範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変と変更を行えることが、当業者には明白となるであろう。すなわち、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変と変更を、そのような改変と変更が付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るという条件で、包含することが意図されている。
【0145】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0146】
実施形態1
被覆光学部品において、
結晶質フッ化カルシウムを含む光学部品、および
前記光学部品の表面と接触した原子層堆積(ALD)コーティングであって、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物を含むALDコーティング、
を備えた被覆光学部品。
【0147】
実施形態2
前記ALDコーティングがフッ化マグネシウム(MgF2)を含む、実施形態1に記載の被覆光学部品。
【0148】
実施形態3
前記ALDコーティングの厚さが10ナノメートル(nm)以下である、実施形態1から2のいずれかに記載の被覆光学部品。
【0149】
実施形態4
前記ALDコーティングが、
前記光学部品の表面と直接接触した第1のALDコーティング層であって、前記金属フッ化物を含む第1のALDコーティング層、および
前記第1のALDコーティング層と直接接触した第2のALDコーティング層であって、該第1のALDコーティング層と異なる材料から作られた第2のALDコーティング層、
を含む、実施形態1から3のいずれかに記載の被覆光学部品。
【0150】
実施形態5
前記第1のALDコーティング層がフッ化マグネシウムであり、前記第2のALDコーティング層がシリカ(SiO2)またはアルミナ(Al2O3)であり、該第1のALDコーティング層が10ナノメートル(nm)未満の厚さを有し、該第2のALDコーティング層が10nm未満の厚さを有する、実施形態4に記載の被覆光学部品。
【0151】
実施形態6
前記ALDコーティングが、ゼロより大きい硫黄含有量を有する、実施形態5に記載の被覆光学部品。
【0152】
実施形態7
前記ALDコーティングがコンフォーマルコーティングである、実施形態1から6のいずれかに記載の被覆光学部品。
【0153】
実施形態8
前記ALDコーティングが、該ALDコーティングの平均厚さから5%以下しか変動しない厚さを有し、該ALDコーティングの平均厚さは、該ALDコーティングと接触した前記表面に亘り平均化された該ALDコーティングの厚さである、実施形態1から7のいずれかに記載の被覆光学部品。
【0154】
実施形態9
前記ALDコーティングが、該ALDコーティングの総質量に基づいて1000ppm以下の炭素を含む、実施形態1から8のいずれかに記載の被覆光学部品。
【0155】
実施形態10
前記光学部品が、プリズム、レンズ、ビームスプリッタ、または窓である、実施形態1から9のいずれかに記載の被覆光学部品。
【0156】
実施形態11
前記光学部品が、0.5から0.85の峻度比Rc/#を有するレンズであり、該峻度比Rc/#は、該光学部品の開口の直径(#)で除算された急峻面の曲率半径(Rc)と等しい、実施形態1から10のいずれかに記載の被覆光学部品。
【0157】
実施形態12
光学部品を被覆する方法であって、該光学部品の表面に原子層堆積(ALD)コーティングを堆積させる工程を含み、
前記光学部品は結晶質フッ化カルシウム(CaF2)を含み、
前記ALDコーティングは、半金属酸化物、金属酸化物、カルシウムと異なる金属を有する金属フッ化物、またはこれらの組合せを含む、方法。
【0158】
実施形態13
前記ALDコーティングが前記金属フッ化物を含み、前記ALDコーティングを堆積させる工程が、前記光学部品の表面を金属前駆体と六フッ化硫黄(SF6)を含むフッ素源の交互パルスに曝す工程を含む、実施形態12に記載の方法。
【0159】
実施形態14
前記フッ素源が、六フッ化硫黄から形成されたプラズマを含む、実施形態13に記載の方法。
【0160】
実施形態15
前記金属前駆体が、マグネシウムを含む金属配位子錯体を含む、実施形態13に記載の方法。
【0161】
実施形態16
前記光学部品の表面を金属前駆体とフッ素源の交互パルスに曝す工程が、
前記光学部品の表面を、前記金属前駆体を含有するパルスに曝す工程であって、前記金属前駆体は、該光学部品の表面で前記フッ化カルシウムと反応して、該光学部品の表面に配位された金属の単分子層を堆積させる工程、
前記金属前駆体を含有するパルスを停止させる工程、
前記光学部品の表面を、前記フッ素源を含有するパルスに曝す工程であって、該フッ素源は、前記配位された金属の単分子層と反応して、金属フッ化物を形成する、工程、および
前記フッ素源を含有するパルスを停止させる工程、
を含む、実施形態13に記載の方法。
【0162】
実施形態17
前記金属前駆体を含有するパルスを停止させた後であって、前記光学部品の表面を、フッ素源を含有するパルスに曝す前に、該表面を、酸素源を含有するパルスに曝す工程であって、該酸素源は、水、水プラズマ、酸素、酸素プラズマ、オゾン、オゾンプラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、酸素含有液体、酸素含有気体、またはこれらの組合せを含み、該酸素源は、前記配位された金属を酸化させて、金属酸化物を形成する、工程、および
前記酸素源を含有するパルスを停止させる工程、
をさらに含み、
前記フッ素源は、前記金属酸化物を還元して、前記金属フッ化物を形成し、
前記酸素源を含有するパルスが、前記配位された金属の単分子層から炭素を除去する、実施形態16に記載の方法。
【0163】
実施形態18
前記ALDコーティングが前記金属酸化物を含み、
前記光学部品の表面にALDコーティングを堆積させる工程が、該表面を金属前駆体と酸素源の交互パルスに曝す工程を含み、
前記酸素源が、水、水プラズマ、オゾン、オゾンプラズマ、酸素、酸素プラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、酸素含有気体、酸素含有液体、およびこれらの組合せからなる群より選択され、
前記金属前駆体が、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアルミニウム前駆体を含む、実施形態12から17のいずれかに記載の方法。
【0164】
実施形態19
前記ALDコーティングが前記半金属酸化物を含み、
前記光学部品の表面にALDコーティングを堆積させる工程が、該光学部品の表面を半金属前駆体と酸素源の交互パルスに曝す工程を含み、
前記酸素源が、水、水プラズマ、オゾン、オゾンプラズマ、酸素、酸素プラズマ、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、酸素含有気体、酸素含有液体、およびこれらの組合せからなる群より選択され、
前記半金属酸化物がシリカであり、該半金属前駆体が、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン;ジ(sec-ブチルアミノ)シラン;ジイソプロピルアミノトリシリルアミン;RおよびR’の各々が、独立して、メチル基、エチル基、またはその両方である、式SiH2(NRR’)2を有する化合物;およびこれらの組合せからなる群より選択される、実施形態12から17のいずれかに記載の方法。
【0165】
実施形態20
前記ALDコーティングを堆積させる工程が、
前記光学部品の表面に第1のALDコーティング層を施す工程、および
前記第1のALDコーティング層上に第2のALDコーティング層を施す工程であって、該第2のALDコーティング層は、該第1のALDコーティング層と異なる材料から作られる、工程、
を含む、実施形態12から19のいずれかに記載の方法。
【符号の説明】
【0166】
10、101 光学部品
20 工具固定具
22 回転台
24 支持特徴
100、200、400 被覆光学部品
102 第一面
104、106、406 TIR面
108 上面
110 レーザビーム
120 ALDコーティング
130 第1のALDコーティング層
132 第1のALDコーティング層の内面
134 第1のALDコーティング層の外面
140 第2のALDコーティング層
142 第2のALDコーティング層の内面
144 第2のALDコーティング層の外面
202、402 入射面
204、404 出射面
206 第1のTIR面
208 第2のTIR面
410 光のビーム
420 検査装置
500 光学検査システム
502 対物レンズ
504 急な曲率を有する表面
【国際調査報告】