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特表2024-537032モータサイクルアセンブリ、モータサイクル、および関連アセンブリの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】モータサイクルアセンブリ、モータサイクル、および関連アセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62K 19/16 20060101AFI20241003BHJP
   B62K 19/22 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 70/12 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B62K19/16
B62K19/22
B29C70/12
B29C70/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518728
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2022058915
(87)【国際公開番号】W WO2023052911
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021000025118
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】アグッジャーロ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA39
4F205AB25
4F205AD16
4F205AH17
4F205HA08
4F205HA25
4F205HA33
4F205HA36
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK03
(57)【要約】
自動モータサイクル(20)用のアセンブリ(1)は、ポリマ樹脂によって連結された1つまたは複数の炭素繊維の織物からなる第1の複合材料からなる第1の要素(2)と、高分子樹脂によって互いに連結された、細かく切られてランダムに配列された炭素繊維からなる第2の複合材料からなる第2の要素(3、4、5)とを備え、第1の要素(2)は、構造用接着剤(8)によって第2の要素(3、4、5)に接着され、第1の要素(2)はスイングアーム(2’)であり、第2の要素(3、4、5)はスイングアーム(2’)に拘束され、スライダ(3)、モータサイクル(20)のサスペンション(21)の支持部(4)、ブッシュ(5)のうちの1つまたは複数から構成される。本発明はさらに、上記のようなアセンブリ(1)を含むモータサイクル(20)、および前記アセンブリ(1)の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータサイクル(20)用のアセンブリ(1)であって、
高分子樹脂によって互いに連結された1つまたは複数の炭素繊維の織物からなる第1の複合材料からなる第1の要素(2)と、
高分子樹脂によって互いに連結された、細かく切られてランダムに配置された炭素繊維からなる第2の複合材料からなる第2の要素(3、4、5)を備え、
前記第1の要素(2)は、構造用接着剤(8)によって前記第2の要素(3、4、5)に接着され、
前記第1の要素(2)はスイングアーム(2’)であり、
前記第2の要素(3、4、5)はスイングアーム(2’)に拘束され、スライダ(3)、モータサイクル(20)のサスペンション(21)の支持部(4)、ブッシュ(5)のうちの1つ以上から構成される、アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記第1の要素(2)は、第1の複合材料からなるシェル(11)を含む中空体であり、
好ましくは、前記シェル(11)は、前記炭素繊維からなる複数の層を含む、請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記第2の要素(3、4、5)は、全体が第2の複合材料からなる中実体である、請求項1または2に記載のアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記第2の複合材料の前記細かく切られた炭素繊維が、5mmから50mmの間、好ましくは15mmから30mmの間の長さを有する、請求項1-3のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記第1の複合材料の高分子樹脂および/または前記第2の複合材料の高分子樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1-4のいずれか1項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記構造用接着剤(8)が、エポキシ、アクリルまたはウレタンを含む接着剤である、請求項1-5のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記細かく切られた炭素繊維が、炭素繊維の織物のオフカットからなる、請求項1-6のいずれか1項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項8】
モータサイクル(20)であって、
高分子樹脂によって連結された炭素繊維の織物からなる第1の複合材料で形成された後輪(22)のスイングアーム(2’)と、
一対のスイングアームスライダ(3)と、および/または
前記モータサイクル(20)のサスペンション(21)の支持体(4)、および/または
高分子樹脂によって連結された炭素繊維であって、細かく切られた炭素繊維およびランダムに配置された炭素繊維からなる第2の複合材料で形成されたブッシュ(5)を備え、
前記一対のスイングアームスライダ(3)および/または前記支持体(4)および/または前記ブッシュ(5)は、構造用接着剤(8)によって前記スイングアーム(2’)に固定されている、モータサイクル(20)。
【請求項9】
金型(30)内に、高分子樹脂によって連結された、細かく切られてランダムに配置された炭素繊維からなる第2の複合材料で作られた予備含浸ブランク(31)を供給する工程と、
前記予備含浸ブランク(31)を金型(30)内で鍛造して鍛造品(32)を得る工程と、
前記鍛造品(32)に機械的加工を施して第2の要素(3、4、5)を得る工程であって、前記第2の要素(3、4、5)は、スライダ(3)、またはモータサイクル(20)のサスペンション(21)の支持部(4)、またはブッシュ(5)である、工程と、
前記第2の要素(3、4、5)を、高分子樹脂によって連結された炭素繊維の織物からなる第1の要素(2)に接着する工程であって、第1の要素(2)がスイングアーム(2’)である、工程と、を含む、モータサイクル(20)のアセンブリ(1)を製造するための製造方法。
【請求項10】
前記第1の要素(2)を実現するために、炭素繊維の織物を高分子樹脂で硬化させる予備工程をさらに含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1の要素(2)および前記第2の要素(3、4、5)からなるアセンブリ(1)を機械的に加工する後続段階を含む、請求項9または10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料、好ましくは炭素繊維からなるモータサイクル部品に関する。本発明はさらに、炭素短繊維の材料からなるモータサイクル部品の製造方法に関する。本特許出願は、イタリア特許出願第102021000025228号の優先権を主張するものであり、この特許出願は参照によりここに完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
モータサイクル部品を製造するために、複合材料、特に炭素繊維材料を使用することが従来技術から知られている。
【0003】
特に、モータサイクルの構成部品、特にリアスイングアームにおいて複合材料を使用することによる軽量性および柔軟性の面での利点が知られている。高い応力、変形、およびスイングアームの慣性および重量を低減する必要性を考慮すると、特にレースにおいて一般的に利用される技術は、オートクレーブで形成された「プリプレグ」と呼ばれる繊維強化複合材料を使用することである。
【0004】
このプロセスの柔軟性により、より優れた機械的特性を保証する長い炭素繊維など、各用途に最も適した繊維を使用することができる。プリプレグのオートクレーブプロセスは、薄い部品で最高の機械的性能を得ることができるが、工作機械で機械加工する必要があるソリッドインサートや部品の製造には適していない。
【0005】
長尺炭素繊維材料のこの限界を改善するために、自動モータサイクル用スイングアームは、炭素繊維製のシェルを有する本体からなり、この本体に、例えばアルミニウム合金製、鋼製、またはチタン製の金属製インサートが接着または共ラミネートされ、これらは予めビレットからフライス加工または旋盤加工される。
【0006】
金属は炭素繊維複合材料よりも2倍、3倍、あるいはそれ以上に高い密度を有するため、この解決策の欠点の1つは重量である。
【0007】
この問題は、後輪用のスイングアームスライダの製造において特に感じられる。なぜなら、後方に大きく位置することにより、車両の慣性モーメント、特にヨーおよびピッチが大きく偏るからである。
【発明の概要】
【0008】
従来技術の前述の欠点は、構造用接着剤によって一緒に接着された第1の要素と第2の要素からなるモータサイクルアセンブリからなる本発明の第1の目的によって、現在解決されている。第1の要素は、高分子樹脂によって連結された1つ以上の炭素繊維の織物からなる第1の複合材料からなる。第2の要素は、高分子樹脂によって結合された、細かく切られてランダムに配置された炭素繊維からなる第2の複合材料からなる。このタイプのアセンブリは、複数の要素で構成されているように見えるが、結果としてモノリシックなボディになる。実際、各要素は相互に適合し、構造用接着剤とも適合する。その結果、軽量で最適な機械的特性を持つ第1の要素と、同じ体積と形状を持つ金属体よりも軽量で機械加工が容易な第2の要素を結合させた、不溶性のアセンブリが得られる。さらに、第2の要素の材料は、第1の要素の材料よりも等方性であるため、後者との組み合わせにおいてより汎用性が高い。
【0009】
有利には、第1の要素は、前記第1の複合材料からなるシェルを含む中空体であることができる。好ましくは、前記シェルは、前記炭素繊維織物からなる複数の層から構成することができる。このようにして形成された第1の要素は、非常に軽量で機械的強度が高い。
【0010】
特に、第2要素は、全体が前記第2複合材料からなる固形体とすることができる。第2の要素は中実体であり、その組成及び内部構造により、フライスカッターなどの工作機械で機械加工可能である。第2の要素は、細かく切られてランダムに配置された炭素繊維のため、第1の要素よりも機械加工がはるかに容易である。
【0011】
有利なことに、第1の要素はモータサイクルのスイングアームである。炭素繊維織物からモータサイクルのスイングアームを作ると、モータサイクルがより軽量になり、性能が向上する。
【0012】
特に、第2の要素はスイングアームに拘束され、スイングアームに拘束されたスイングアームスライダ、スイングアームに拘束されたモータサイクル用サスペンションサポート、またはスイングアームに拘束されたブッシュのうちの1つ以上から構成される。これら3種類の要素は、アンダーカット部分、穴を有し、機械的な機械加工を必要とする部品であるという共通の特徴を有する。
【0013】
好ましくは、第2の複合材料の細かく切られた炭素繊維は、5mmから50mmの間、または15mmから30mmの間の長さとすることができる。細かく切られた炭素繊維のこの長さにより、第2の要素は機械的観点から高い強度を有し、また工作機械でより容易に機械加工することができる。
【0014】
有利には、前記第1及び/又は第2の複合材料の高分子樹脂はエポキシ樹脂とすることができ、前記構造用接着剤はエポキシ、アクリル又はウレタン接着剤とすることができる。それにより、前記第1の要素、前記第2の要素、及び前記構造用接着剤の適合性が最大化される。
【0015】
好ましくは、前記細かく切られた炭素繊維は、炭素繊維織物の端材から構成することができる。これにより、炭素繊維織物を利用する他の工程からの加工屑を再利用することが可能となり、環境汚染の面でも利点がある。「オフカット」という用語は、炭素繊維織物の断片または切れ端を意味する。
【0016】
本発明の第2の目的は、高分子樹脂によって連結された炭素繊維の織物からなる第1の複合材料で作られた後輪のスイングアームと、高分子樹脂によって連結された細かく切られてランダムに配置された炭素繊維からなる第2の複合材料で作られた一対のスイングアームスライダおよび/またはモータサイクルのサスペンションの支持体および/またはブッシュとからなり、スライダおよび/または支持体および/またはブッシュが構造用接着剤によってスイングアームに固定されているモータサイクルによって表される。このように設計されたモータサイクルは、アルミニウム合金製または炭素繊維製であるが金属製のスイングアームスライダを有するスイングアームからなるモータサイクルよりも軽量である。
【0017】
本発明の第3の目的は、以下の工程を含むモータサイクルアセンブリを製造するための製造方法を提供することである。
高分子樹脂によって互いに連結された、細かく切られてランダムに配置された炭素繊維からなる第2の複合材料で作られた予備含浸ブランクを金型内に提供する工程。
前記ブランクを金型内で鍛造して鍛造品を得る工程。
前記鍛造品に機械加工を施して第2の要素を得る工程であって、前記第2の要素は、スライダ、モータサイクルのサスペンションの支持部、またはブッシュである、工程。
前記第2の要素を、高分子樹脂によって連結された炭素繊維の織物からなる第1の要素に接着する工程であって、前記第1の要素がスイングアームである、工程。
この方法によれば、プリプレグで得られる構成要素よりも大きな厚さを有する要素を得ることができる。さらに、このようにして得られる要素は、従来の金属部品と同様に加工が容易であるが、かなり軽量であるという利点がある。
【0018】
好ましくは、前記方法は、前記第1の要素を得るために炭素繊維織物を高分子樹脂で硬化させる予備工程、及び/又は、前記第1及び第2の要素からなるアセンブリを機械加工する後続工程を含むことができる。これにより、最適化された幾何公差を有するより強固なアセンブリを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
これら及び他の利点は、添付の図面を参照しながら、例示的な非限定的な例によって与えられるその実施形態の以下の説明からより明らかになる。
図1図1は、本発明によるモータサイクルアセンブリの斜視軸線図である。
図2A図2Aは、本発明によるモータサイクルアセンブリの端部の詳細図であり、第1の要素、第2の要素、および構造用接着剤がより良く見える。
図2B図2Bは、本発明によるモータサイクルアセンブリの端部の詳細図であり、第1の要素、第2の要素、および構造用接着剤がより良く見える。
図3A図3Aは、本発明によるモータサイクルアセンブリの側面図である。
図3B図3Bは、図3Aのモータサイクルアセンブリの平面A-Aに沿って取った断面図である。
図3C図3Cは、図3Bのモータサイクルアセンブリの平面B-Bに沿って取った断面図である。
図4図4は、本発明によるモータサイクルの斜視図である。
図5A図5Aは、本発明による方法の斜視図である。
図5B図5Bは、本発明による方法の斜視図である。
図5C図5Cは、本発明による方法の斜視図である。
【発明の実施の形態】
【0020】
本発明の1つまたは複数の実施形態に関する以下の説明は、添付の図面に関連する。図面中の同じ符号は、等しいまたは類似の要素を示す。本発明の目的は、添付の特許請求の範囲によって定義される。以下に説明する解決策の技術的詳細、構造、または特徴は、任意の方法で互いに組み合わせることができる。
【0021】
図1は、符号1のモータサイクルアセンブリの一実施形態を示している。具体的には、アセンブリ1は、第1の要素2を表すスイングアーム2’と、濃い色で強調表示されたいくつかの第2の要素3、4、5とから構成されている。
【0022】
特に、符号3で識別される第2の要素は、後輪保持スイングアームスライダであり、符号4で識別される第2の要素は、リアサスペンション支持部であり、符号5で識別される第2の要素は、モータサイクル20のヒンジ軸を収容するためにスイングアーム2’の穴9に挿入されるベアリングホルダーブッシュである。図1の例では2つのスライダ3と2つのブッシュ5が設けられているが、代替実施形態では、アセンブリは1つのスライダ3と1つのブッシュ5のみを有することができる。
【0023】
スイングアーム2’は、図3A、3B、3Cに良く示されているように、中空タイプの第1の要素、すなわち外殻11からなり、その中には材料が存在しない。逆に、第2の要素3、4、5は完全体である。
【0024】
スイングアーム2’は、硬化した高分子樹脂マトリックスに予備含浸(プリプレグ)された炭素繊維織物で作られている。特に、スイングアーム2’は、予備含浸された炭素繊維織物の複数の層(別称スキンと呼ばれる)を互いの上に配置することによって作られる。これらの層をオートクレーブ内で硬化させてシェル11を形成する。シェル11の厚さは、通常1~5mmの範囲である。こうして得られたスイングアーム2’は、非常に軽量でありながら最適な機械的特性を備えている。織物中の炭素繊維は長い連続繊維であり、特に繊維自体の延長に沿って、短い繊維よりも優れた機械的特性を保証する。
【0025】
1つまたは複数の前記第2の要素3、4、5は、このように説明されたスイングアーム2’に永久的かつ不可分に接続される。
【0026】
第2の要素3、4、5を接続する前に、それらを形成し、任意に仕上げも行う。特に、図5Aに示すように、簡単のために予備含浸されたブランク31と呼ばれる、高分子樹脂によって連結された、細かく切られてランダムに配置された炭素繊維からなる第2の複合材料のブロックが、金型30の構成要素に挿入される。好ましくは、ブランク31はSMC(シート成形コンパウンド)と呼ばれるタイプであるが、BMC(バルク成形コンパウンド)タイプであってもよい。
【0027】
図5Aに示すように、金型30の第2の部分は、金型30の第1の部分と協働して密閉室を形成する。こうして形成されたチャンバは、金型30の2つの部分を接近させることによって加圧される。したがって、ブランク31は、まずチャンバ内に存在する高圧によって加圧され、次に金型30の上部によって押圧され、金型30内でブランク31が鍛造される。このようにして鍛造された図5Bに示す部品32は、後続の機械加工工程に備えることができる。
【0028】
鍛造部品32は、図5Cに示すように、完成部品、すなわち第2の要素3、4、5を得るために、切屑除去タイプの工作機械33、例えばフライス加工によって機械加工される。
【0029】
鍛造は、10バールから150バールの間の圧力および50℃から200℃の間の温度で行われる。
【0030】
このようにして得られた第2元素3、4、5は、アルミニウム合金に匹敵する破断特性を有するが、密度は約半分である。
【0031】
図2Aおよび図2Bに示すように、こうして得られた第2の要素、ここではスイングアームスライダ3は、構造用接着剤8によってスイングアーム2’に強固に接続される。
【0032】
使用可能な構造用接着剤8は、第1および第2の要素のポリマ樹脂に依存する。
【0033】
図2Aおよび図2Bに示す例では、第1の要素2および第2の要素3の樹脂はエポキシ樹脂であり、したがって構造用接着剤8もエポキシ接着剤である。物質が相互に適合するので、第1の要素2と第2の要素3との結合はモノリシックになり、不溶性になる。
【0034】
あるいは、第2の要素3、4、5の樹脂は、ビニルエステル樹脂または他の熱硬化性樹脂とすることができる。
【0035】
あるいは、第1の要素2の樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、またはフェノール樹脂とすることができる。
【0036】
あるいは、構造用接着剤8は、アクリル系接着剤またはウレタン系接着剤とすることができる。
【0037】
図2Aおよび2Bに見られるように、第1の要素2、すなわちスイングアーム2’は、炭素繊維織物層が高分子樹脂を通して見えるままであるため、織物の典型的な質感を有する。逆に、第2の要素、すなわちスイングアームスライダ3の質感は、細かく切られた炭素繊維が第1の要素2の場合のような有機的パターンを作らないため、霜降り状、すなわち無秩序である。
【0038】
細かく切られた炭素繊維は、長さ5mmから50mm、好ましくは15mmから30mmの繊維であり、高分子樹脂マトリックスに埋め込まれている。前記細かく切られた炭素繊維は、ランダムな配置を有し、このため、マーブル模様の美的効果を生み出す。
【0039】
第2の要素3、4、5の炭素繊維の無秩序な配列と短い長さは、それをより容易に成形可能かつ機械加工可能にする。
【0040】
金型30から取り出されたときの第2の要素3、4、5の全体的な表面仕上げは、プリプレグから得られた第1の要素の全体的な表面仕上げよりも著しく良好である。 第2の要素の表面全体に最適化された表面仕上げを有することにより、第1の要素または他の部品との精密な機械的結合を作成することができる。したがって、第2の要素3、4、5の製造時間は、第1の要素2の製造時間よりも短くなる。
【0041】
さらに、図2Aおよび図2Bから分かるように、第2の要素3、4、5の中実部の厚さは、第1の要素2の中実部の厚さよりも大きく、少なくとも4~5倍大きい。これは、出発ブランク31が従来のプリプレグの厚さよりもかなり大きい厚さを有することから生じる。第2の要素3、4、5の固形部分の厚さは、25mmから50mmの間であり得る。
【0042】
大きな厚みと優れた機械加工性により、こうして考案された第2の要素3、4、5は、図2Aおよび図2Bのスイングアームスライダ3のような、いくつかのモータサイクル部品の製造に最適である。
【0043】
スイングアームスライダ3は、後輪ハブが収容される貫通スロット7を有する。スイングアームスライダ3はさらに、スイングアームスライダ3自体の空洞に接着されたねじ切りされた金属要素6を備えている。スイングアーム2’に対する車輪ハブの位置を調整するためのボルトが、このねじ要素6に接続されている。
【0044】
図3Bおよび図3Cに見られるように、スイングアームスライダ3はさらに、複数の軽量化部分10、すなわち部品の重量をさらに軽減する一連のくり抜き部分(空洞)から構成されている。
【0045】
図3Bおよび図3Cに見られるように、シェル11はスイングアームスライダ3を取り囲み、構造用接着剤8によって接触点でスイングアームスライダ3と接合している。
【0046】
支持体4は、好ましくはブラケット(図示せず)を支持し、このブラケットにモータサイクル20のスプリングサスペンション21が接続される。サスペンション21は、図3Bに示すスイングアーム2’の穴を通過することができる。支持体4は、好ましくは、サスペンション21の前記ブラケットを接続するために使用されるねじ要素(図示せず)が配置された突起12から構成される。支持体4は、構造用接着剤8によってスイングアーム2’に接続される。
【0047】
ブッシュ5は、フランジを備えた中空の円筒体であり、スイングアーム2’に挿入され、構造用接着剤8によって接続されている。
【0048】
図1に示すようなスイングアーム2’、スイングアームスライダ3、サポート4、およびブッシュ5のアセンブリは、図4に示すように、モータサイクル20に使用することができる。
【0049】
結論として、このようにして考案された本発明は、いくつかの変更または変形が可能であり、そのすべてが本発明の範囲内にあることが明らかである。さらに、すべての細部は技術的に同等な要素で置換可能である。実際には、技術的な必要性に応じて量を変えることができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】