(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】多嚢胞性腎疾患の治療のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241003BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241003BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241003BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241003BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/55
A61K31/7088
A61K48/00
A61P13/12
A61P37/06
A61P43/00 121
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519270
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022077766
(87)【国際公開番号】W WO2023060237
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513267855
【氏名又は名称】レグルス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドライジン デニス
(72)【発明者】
【氏名】キンバーガー ガース エー.
(72)【発明者】
【氏名】リー エドマンド チュン ユー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC32
4C086EA17
4C086EA18
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB08
4C086ZB21
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
miR-17を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを使用した、常染色体優性多嚢胞性腎疾患を含む多嚢胞性腎疾患の治療のための方法が本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾オリゴヌクレオチドであって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、5’から3’の方向に、
(N”)
p-(N)
r-(N’)
q
の構造を有し、式中、各N”が、独立して、修飾または非修飾ヌクレオシドであり、
pが、0~14であり、pが0でない場合、(N”)
pの核酸塩基配列が、miR-17の核酸塩基配列の等長部分に相補的であり、
(N)
rの各Nが、独立して、修飾または非修飾ヌクレオチドであり、(N)
rの核酸塩基配列が、5’-AGCACUUU-3’であり、
N’が、修飾糖部分を含むヌクレオシドであり、
qが、0または1であり、qが1である場合、N’の核酸塩基が、ウラシル核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有さず、
各シトシンが、独立して、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから選択される、前記修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩を含む、化合物。
【請求項2】
(N)
rの構造が、
A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
S
であり、式中、下付き文字「M」が続くヌクレオシドが、2’-O-メチルヌクレオシドであり、
下付き文字「F」が続くヌクレオシドが、2’-フルオロヌクレオシドであり、
下付き文字「S」が続くヌクレオシドが、S-cEtヌクレオシドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
少なくとも1つのヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
各ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
qが1である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
qが0である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
pが0である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
pが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記(N”)
pの核酸塩基配列が、前記miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)に対して1つ以下のミスマッチを有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記(N”)
pの核酸塩基配列が、前記miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)に対してミスマッチを有しない、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
前記(N”)
pの核酸塩基配列が、CUACCUGCACUGUA(配列番号7)、CUACCUGCACUGU(配列番号8)、CUACCUGCACUG(配列番号9)、CUACCUGCACU(配列番号10)、CUACCUGCAC(配列番号11)、CUACCUGCA、CUACCUGC、CUACCUG、CUACCU、CUACC、CUAC、CUA、CU及びCから選択される、請求項8、9、または10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
前記N’の核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有しないプリン核酸塩基である、請求項1~5または7~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
前記N’の核酸塩基が、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
N’の前記糖部分が、2’-O-メチル糖ではない、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
N’の前記糖部分が、2’-O-メトキシエチル糖またはS-cEt糖である、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
前記修飾オリゴヌクレオチドの構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SA
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項17】
前記修飾オリゴヌクレオチドの構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SU
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項18】
前記修飾オリゴヌクレオチドの構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SC
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項19】
前記修飾オリゴヌクレオチドの構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物が、前記修飾オリゴヌクレオチドからなる、請求項1~19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
構造:
【化1】
を有する修飾オリゴヌクレオチドであって、式中、Bが、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有しない、前記修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
Bが、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される、請求項22に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項24】
前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、請求項22または23に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項25】
構造:
【化2】
を有する修飾オリゴヌクレオチドであって、式中、Bが、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有しない、前記修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項26】
Bが、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される、請求項25に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項27】
構造:
【化3】
を有する修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項28】
前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、請求項27に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項29】
構造:
【化4】
を有する修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項30】
請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物、または請求項22~29のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される希釈剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
前記薬学的に許容される希釈剤が、水溶液である、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記水溶液が、生理食塩水である、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
凍結乾燥組成物である、請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物または請求項22~29のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチドを含む、薬学的組成物。
【請求項34】
生理食塩水中の、請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物または請求項22~29のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチドから本質的になる、薬学的組成物。
【請求項35】
細胞内のmiR-17ファミリーの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための方法であって、前記細胞を、請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物、または請求項22~29のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチドと接触させることを含む、前記方法。
【請求項36】
対象におけるmiR-17ファミリーの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための方法であって、請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物、請求項22~29のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチド、または請求項30~34のいずれか1項に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項37】
前記対象が、miR-17に関連する疾患を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
多嚢胞性腎疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、修飾オリゴヌクレオチドであって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、5’から3’の方向に、
(N”)
p-(N)
r-(N’)
q
の構造を有し、式中、各N”が、独立して、修飾または非修飾ヌクレオシドであり、
pが0~14であり、pが0でない場合、(N”)
pの核酸塩基配列が、miR-17の核酸塩基配列の等長部分に相補的であり、
(N)
rの各Nが、独立して、修飾または非修飾ヌクレオチドであり、(N)
rの核酸塩基配列が、5’-AGCACUUU-3’であり、
N’が、修飾糖部分を含むヌクレオシドであり、
qが0または1であり、qが1である場合、N’の核酸塩基が、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位にH結合アクセプターを有さず、
各シトシンが、独立して、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから選択される、前記修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩を含む、化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項39】
(N)
rの構造が、
A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
S
であり、式中、下付き文字「M」が続くヌクレオシドが、2’-O-メチルヌクレオシドであり、
下付き文字「F」が続くヌクレオシドが、2’-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」が続くヌクレオシドが、S-cEtヌクレオシドである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つのヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
各ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
qが1である、請求項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
qが0である、請求項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
pが0である、請求項38~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
pが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14から選択される、請求項38~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記(N”)
pの核酸塩基配列が、前記miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)に対して1つ以下のミスマッチを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記(N”)
pの核酸塩基配列が、前記miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)とミスマッチを有しない、請求項45に記載の化合物。
【請求項48】
前記(N”)
pの核酸塩基配列が、CUACCUGCACUGUA(配列番号7)、CUACCUGCACUGU(配列番号8)、CUACCUGCACUG(配列番号9)、CUACCUGCACU(配列番号10)、CUACCUGCAC(配列番号11)、CUACCUGCA、CUACCUGC、CUACCUG、CUACCU、CUACC、CUAC、CUA、CU及びCから選択される、請求項47に記載の化合物。
【請求項49】
前記N’の核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有しないプリン核酸塩基である、請求項38~42または44~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記N’の核酸塩基が、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
N’の前記糖部分が、2’-O-メチル糖ではない、請求項38~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
N’の前記糖部分が、2’-O-メトキシエチル糖またはS-cEt糖である、請求項38~51のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項53】
前記修飾オリゴヌクレオチドの前記構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SA
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項39に記載の方法。
【請求項54】
前記修飾オリゴヌクレオチドの前記構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SU
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項39に記載の方法。
【請求項55】
前記修飾オリゴヌクレオチドの前記構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SC
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項39に記載の方法。
【請求項56】
前記修飾オリゴヌクレオチドの前記構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項39に記載の方法。
【請求項57】
前記化合物が、前記修飾オリゴヌクレオチドからなる、請求項38~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、請求項38~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
多嚢胞性腎疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、構造:
【化5】
を有する修飾オリゴヌクレオチドまたは、その薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項60】
薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記修飾オリゴヌクレオチドが、薬学的に許容される希釈剤を含む薬学的組成物中に存在する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記薬学的に許容される希釈剤が、滅菌水溶液である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記滅菌水溶液が、生理食塩水である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
多嚢胞性腎疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、構造:
【化6】
を有する修飾オリゴヌクレオチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
前記修飾オリゴヌクレオチドが、薬学的に許容される希釈剤を含む薬学的組成物中に存在する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記薬学的に許容される希釈剤が、滅菌水溶液である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記滅菌水溶液が、生理食塩水である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記対象が、多嚢胞性腎疾患を有する、請求項38~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記対象が、多嚢胞性腎疾患を有することが疑われる、請求項38~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、臨床的、組織病理学的、及び/または遺伝的基準を使用して、多嚢胞性腎疾患を有すると診断されている、請求項38~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記対象が、前記化合物、前記修飾オリゴヌクレオチド、または前記薬学的組成物の投与前に、前記対象の腎臓、尿または血液中のポリシスチン-1(PC1)及び/またはポリシスチン-2(PC2)のレベルの低下を有することが決定される、請求項38~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記多嚢胞性腎疾患が、常染色体劣性多嚢胞性腎疾患である、請求項38~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記多嚢胞性腎疾患が、常染色体優性多嚢胞性腎疾患である、請求項38~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記対象が、PKD1遺伝子の変異またはPKD2遺伝子の変異から選択される変異を有する、請求項38~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記対象が、総腎体積の増加を有する、請求項38~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記対象が、高血圧を有する、請求項38~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記対象が、腎機能障害を有する、請求項38~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記投与することが、前記対象における総腎体積を減少させる、請求項38~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記投与することが、前記対象における総腎体積の増加速度を遅くする、請求項38~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記総腎体積が、身長調整された総腎体積である、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記投与することが、前記対象における糸球体濾過速度の低下速度を遅くする、請求項38~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記投与することが、前記対象における糸球体濾過速度を増加させる、請求項38~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記糸球体濾過速度が、推定糸球体濾過速度である、請求項81または82に記載の方法。
【請求項84】
前記投与することが、前記対象の腎臓及び/または肝臓における嚢胞の増殖の増加を遅らせる、請求項38~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記投与することが、
a)前記対象における腎機能を改善する、
b)前記対象における腎機能の悪化を遅らせる、
c)前記対象における腎臓痛を軽減する、
d)前記対象における腎臓痛の増加を遅らせる、
e)前記対象における腎臓痛の発症を遅延させる、
f)前記対象における高血圧を軽減する、
g)前記対象における高血圧の悪化を遅らせる、
h)前記対象における高血圧の発症を遅延させる、
i)前記対象における前記腎臓における線維症を低減する、
j)前記対象における前記腎臓の線維症の悪化を遅らせる、
k)前記対象における末期腎疾患の発症を遅延させる、
l)前記対象に対する透析までの時間を遅らせる、
m)前記対象に対する腎移植までの時間を遅延させる、及び/または
n)前記対象における平均余命を改善する、請求項38~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記投与することが、
a)前記対象におけるアルブミン尿を減少させる、
b)前記対象におけるアルブミン尿の悪化を遅らせる、
c)前記対象におけるアルブミン尿の発症を遅延させる、
d)前記対象における血尿を低減する、
e)前記対象における血尿の悪化を遅らせる、
f)前記対象における血尿の発症を遅延させる、
g)前記対象における血中尿素窒素レベルを低下させる、
h)前記対象における血清クレアチニンレベルを低下させる、
i)前記対象におけるクレアチニンクリアランスを改善する、
j)前記対象におけるアルブミン:クレアチニン比を低下させる、
k)前記対象における前記尿中のポリシスチン-1(PC1)を増加させる、
l)前記対象における前記尿中のポリシスチン-2(PC2)を増加させる、
m)前記対象における前記尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質を低下させる、及び/または
n)前記対象における前記尿中の腎損傷分子-1(KIM-1)タンパク質を低減させる、請求項38~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
a)前記対象における総腎体積を測定すること、
b)前記対象における高血圧を測定すること、
c)前記対象における腎臓痛を測定すること、
d)前記対象における前記尿中のポリシスチン-1(PC1)を測定すること、
e)前記対象における前記尿中のポリシスチン-2(PC2)を測定すること、
f)前記対象における前記腎臓の線維症を測定すること、
g)前記対象における血中尿素窒素レベルを測定すること、
h)前記対象における血清クレアチニンレベルを測定すること、
i)前記対象におけるクレアチニンクリアランスを測定すること、
j)前記対象におけるアルブミン尿を測定すること、
k)前記対象におけるアルブミン:クレアチニン比を測定すること、
l)前記対象における糸球体濾過速度を測定すること、
m)前記対象における前記尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質を測定すること、及び/または
n)前記対象における前記尿中の腎臓傷害分子-1(KIM-1)タンパク質を測定すること、を含む、請求項38~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
少なくとも1つの追加の療法を施すことであって、前記少なくとも1つの追加の療法が抗高血圧剤である、前記施すこと、を含む、請求項38~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
アンジオテンシンII変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)、利尿剤、カルシウムチャネル遮断剤、キナーゼ阻害剤、アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト、血管拡張剤、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、アルドステロン受容体アンタゴニスト、エンドセリン受容体遮断剤、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤、ホルモンアナログ、バソプレシン受容体2アンタゴニスト、アルドステロン受容体アンタゴニスト、グルコシルセラミドシンターゼ阻害剤、抗高血糖薬、透析、及び腎臓移植から選択される少なくとも1つの追加の療法を施すことを含む、請求項38~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記アンジオテンシンII変換酵素(ACE)阻害剤が、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、キナプリル、フォシノプリル、及びラミプリルから選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)が、カンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、及びエプロサルタンから選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記バソプレシン受容体2アンタゴニストが、トルバプタンである、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記アルドステロン受容体アンタゴニストが、スピロノラクトンである、請求項89に記載の方法。
【請求項94】
前記キナーゼ阻害剤が、ボスチニブ及びKD019から選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項95】
前記mTOR阻害剤が、エベロリムス、ラパマイシン、及びシロリムスから選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項96】
前記ホルモンアナログが、ソマトスタチン及び副腎皮質刺激ホルモンから選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項97】
前記グルコシルセラミドシンターゼ阻害剤が、ベングルスタットである、請求項89に記載の方法。
【請求項98】
前記抗高血糖薬が、メトホルミンである、請求項89に記載の方法。
【請求項99】
治療有効量の前記化合物を投与することを含む、請求項38~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記対象が、ヒト対象である、請求項38~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
療法に使用するための、修飾オリゴヌクレオチドであって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、5’から3’の方向に、
(N”)
p-(N)
r-(N’)
q
の構造を有し、式中、各N”が、独立して、修飾または非修飾ヌクレオシドであり、
pが、0~14であり、pが0でない場合、(N”)
pの核酸塩基配列が、miR-17の核酸塩基配列の等長部分に相補的であり、
(N)
rの各Nが、独立して、修飾または非修飾ヌクレオチドであり、(N)
rの核酸塩基配列が、5’-AGCACUUU-3’であり、
N’が、修飾糖部分を含むヌクレオシドであり、
qが0または1であり、qが1である場合、N’の核酸塩基が、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位にH結合アクセプターを有さず、
各シトシンが、独立して、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから選択される、前記修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩を含む、化合物。
【請求項102】
前記療法が、多嚢胞性腎疾患の治療である、請求項101に記載の化合物。
【請求項103】
前記多嚢胞性腎疾患が、常染色体優性多嚢胞性腎疾患(ADPKD)である、請求項102に記載の化合物。
【請求項104】
前記多嚢胞性腎疾患が、常染色体劣性多嚢胞性腎疾患(ARPKD)である、請求項102に記載の化合物。
【請求項105】
療法に使用するための、請求項1~22のいずれか1項に記載の化合物、請求項23~29のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチド、または請求項30~33のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月8日に出願された米国仮出願第63/253,933号の優先権の利益を主張するものであり、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
多嚢胞性腎疾患の治療のための組成物及び方法が本明細書に提供される。
【背景技術】
【0003】
多嚢胞性腎疾患は、腎臓における液体で満たされた多数の嚢胞の蓄積を特徴とする。これらの嚢胞は、嚢胞上皮と呼ばれる上皮細胞の単層で覆われている。時間が経つにつれて、嚢胞は、細胞増殖の増加及び嚢胞上皮による液体の活性分泌によってサイズが増加する。拡大した嚢胞は、周囲の正常組織を圧迫し、腎機能の低下をもたらす。この疾患は最終的に末期腎疾患に進行し、透析または腎移植を必要とする。この段階では、嚢胞は、萎縮性尿細管を含む線維症の領域に囲まれ得る。多嚢胞性腎疾患はまた、肝臓及び体内の他の場所で嚢胞を発症させる可能性がある。
【0004】
いくつかの遺伝的障害は、多嚢胞性腎疾患(PKD)をもたらす可能性がある。PKDの様々な形態は、遺伝の様式、例えば、常染色体優性または常染色体劣性遺伝、臓器の関与及び腎臓外の表現型の提示、末期腎疾患の発症年齢(例えば、出生時、小児期または成人期等)、ならびに疾患に関連する基礎となる遺伝子変異によって区別される。Kurschat et al.,2014,Nature Reviews Nephrology,10:687-699を参照されたい。
【発明の概要】
【0005】
実施形態1.修飾オリゴヌクレオチドであって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、5’から3’の方向に、
(N”)
p-(N)
r-(N’)
q
の構造を有し、式中、各N”が、独立して、修飾または非修飾ヌクレオシドであり、
pが、0~14であり、pが0でない場合、(N”)
pの核酸塩基配列が、miR-17の核酸塩基配列の等長部分に相補的であり、
(N)
rの各Nが、独立して、修飾または非修飾ヌクレオチドであり、(N)
rの核酸塩基配列が、5’-AGCACUUU-3’であり、
N’が、修飾糖部分を含むヌクレオシドであり、
qが、0または1であり、qが1である場合、N’の核酸塩基が、ウラシル核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有さず、
各シトシンが、独立して、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから選択される、前記修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩を含む、化合物。
実施形態2.(N)
rの構造が、
A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
S
であり、式中、下付き文字「M」が続くヌクレオシドが、2’-O-メチルヌクレオシドであり、
下付き文字「F」が続くヌクレオシドが、2’-フルオロヌクレオシドであり、
下付き文字「S」が続くヌクレオシドが、S-cEtヌクレオシドである、実施形態1に記載の化合物。
実施形態3.少なくとも1つのヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、実施形態1または2に記載の化合物。
実施形態4.各ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態5.qが1である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態6.qが0である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態7.pが0である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態8.pが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14から選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態9.前記(N”)
pの核酸塩基配列が、前記miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)に対して1つ以下のミスマッチを有する、実施形態8に記載の化合物。
実施形態10.前記(N”)
pの核酸塩基配列が、前記miR-17(配列番号1)の核酸塩基配列に対してミスマッチを有しない、実施形態8に記載の化合物。
実施形態11.前記(N”)
pの核酸塩基配列が、CUACCUGCACUGUA(配列番号7)、CUACCUGCACUGU(配列番号8)、CUACCUGCACUG(配列番号9)、CUACCUGCACU(配列番号10)、CUACCUGCAC(配列番号11)、CUACCUGCA、CUACCUGC、CUACCUG、CUACCU、CUACC、CUAC、CUA、CU及びCから選択される、実施形態8、9、または10のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態12.前記N’の核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有しないプリン核酸塩基である、実施形態1~5または7~11のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態13.前記N’の核酸塩基が、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される、実施形態12に記載の化合物。
実施形態14.N’の前記糖部分が、2’-O-メチル糖ではない、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態15.N’の前記糖部分が、2’-O-メトキシエチル糖またはS-cEt糖である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態16.前記修飾オリゴヌクレオチドの構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SA
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、実施形態2に記載の化合物。
実施形態17.前記修飾オリゴヌクレオチドの構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SU
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、実施形態2に記載の化合物。
実施形態18.前記修飾オリゴヌクレオチドの構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SC
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、実施形態2に記載の化合物。
実施形態19.前記修飾オリゴヌクレオチドの構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、実施形態2に記載の化合物。
実施形態20.前記化合物が、前記修飾オリゴヌクレオチドからなる、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態21.前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態22.構造:
【化1】
を有する修飾オリゴヌクレオチドであって、式中、Bが、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有しない、前記修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩。
実施形態23.Bが、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される、実施形態22に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
実施形態24.前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、実施形態22または23に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
実施形態25.構造:
【化2】
を有する修飾オリゴヌクレオチドであって、式中、Bが、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有しない、前記修飾オリゴヌクレオチド。
実施形態26.Bが、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される、実施形態25に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
実施形態27.構造:
【化3】
を有する修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩。
実施形態28.前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、実施形態27に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
実施形態29.構造:
【化4】
を有する、修飾オリゴヌクレオチド。
実施形態30.実施形態1~21のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態22~29のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される希釈剤と、を含む、薬学的組成物。
実施形態31.前記薬学的に許容される希釈剤が、水溶液である、実施形態30に記載の薬学的組成物。
実施形態32.前記水溶液が、生理食塩水である、実施形態31に記載の薬学的組成物。
実施形態33.凍結乾燥組成物である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態22~29のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチドを含む、薬学的組成物。
実施形態34.生理食塩水中の、実施形態1~21のいずれか1つに記載の化合物、または実施形態22~29のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチドから本質的になる、薬学的組成物。
実施形態35.細胞内のmiR-17ファミリーの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための方法であって、前記細胞を、実施形態1~21のいずれか1つに記載の化合物または実施形態22~29のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチドと接触させることを含む、前記方法。
実施形態36.対象におけるmiR-17ファミリーの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための方法であって、実施形態1~21のいずれか1つに記載の化合物、実施形態22~29のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチド、または実施形態30~34のいずれか1つに記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
実施形態37.前記対象が、miR-17に関連する疾患を有する、実施形態36に記載の方法。
実施形態38.多嚢胞性腎疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、修飾オリゴヌクレオチドであって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、5’から3’の方向に、
(N”)
p-(N)
r-(N’)
q
の構造を有し、式中、各N”が、独立して、修飾または非修飾ヌクレオシドであり、
pが、0~14であり、pが0でない場合、(N”)
pの核酸塩基配列が、miR-17の核酸塩基配列の等長部分に相補的であり、
(N)
rの各Nが、独立して、修飾または非修飾ヌクレオチドであり、(N)
rの核酸塩基配列が、5’-AGCACUUU-3’であり、
N’が、修飾糖部分を含むヌクレオシドであり、
qが0または1であり、qが1である場合、N’の核酸塩基が、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位にH結合アクセプターを有さず、
各シトシンが、独立して、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから選択される、前記修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩を含む、化合物を投与することを含む、前記方法。
実施形態39.(N)
rの構造が、
A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
S
であり、式中、下付き文字「M」が続くヌクレオシドが、2’-O-メチルヌクレオシドであり、
下付き文字「F」が続くヌクレオシドが、2’-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」が続くヌクレオシドが、S-cEtヌクレオシドである、実施形態38に記載の方法。
実施形態40.少なくとも1つのヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、実施形態38または39に記載の方法。
実施形態41.各ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、実施形態38~40のいずれか1つに記載の方法。
実施形態42.qが1である、実施形態38~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態43.qが0である、実施形態38~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態44.pが0である、実施形態38~43のいずれか1つに記載の方法。
実施形態45.pが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14から選択される、実施形態38~43のいずれか1つに記載の方法。
実施形態46.前記(N”)
pの核酸塩基配列が、前記miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)に対して1つ以下のミスマッチを有する、実施形態45に記載の方法。
実施形態47.前記(N”)
pの核酸塩基配列が、前記miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)に対してミスマッチを有しない、実施形態45に記載の化合物。
実施形態48.前記(N”)
pの核酸塩基配列が、CUACCUGCACUGUA(配列番号7)、CUACCUGCACUGU(配列番号8)、CUACCUGCACUG(配列番号9)、CUACCUGCACU(配列番号10)、CUACCUGCAC(配列番号11)、CUACCUGCA、CUACCUGC、CUACCUG、CUACCU、CUACC、CUAC、CUA、CU及びCから選択される、実施形態47に記載の化合物。
実施形態49.前記N’の核酸塩基が、6位に水素結合アクセプターを有しないプリン核酸塩基である、実施形態38~42または44~48のいずれか1つに記載の方法。
実施形態50.前記N’の核酸塩基が、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される、実施形態49に記載の方法。
実施形態51.N’の前記糖部分が、2’-O-メチル糖ではない、実施形態38~50のいずれか1つに記載の方法。
実施形態52.N’の前記糖部分が、2’-O-メトキシエチル糖またはS-cEt糖である、実施形態38~51のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態53.前記修飾オリゴヌクレオチドの前記構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SA
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、実施形態39に記載の方法。
実施形態54.前記修飾オリゴヌクレオチドの前記構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SU
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、実施形態39に記載の方法。
実施形態55.前記修飾オリゴヌクレオチドの前記構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
SC
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、実施形態39に記載の方法。
実施形態56.前記修飾オリゴヌクレオチドの前記構造が、5’-A
SG
SC
MA
FC
FU
FU
MU
S-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、実施形態39に記載の方法。
実施形態57.前記化合物が、前記修飾オリゴヌクレオチドからなる、実施形態38~56のいずれか1項に記載の方法。
実施形態58.前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、実施形態38~57のいずれか1項に記載の方法。
実施形態59.多嚢胞性腎疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、構造:
【化5】
を有する修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
実施形態60.薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩である、実施形態59に記載の方法。
実施形態61.前記修飾オリゴヌクレオチドが、薬学的に許容される希釈剤を含む薬学的組成物中に存在する、実施形態60に記載の方法。
実施形態62.前記薬学的に許容される希釈剤が、滅菌水溶液である、実施形態61に記載の方法。
実施形態63.前記滅菌水溶液が、生理食塩水である、実施形態62に記載の方法。
実施形態64.多嚢胞性腎疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、構造:
【化6】
を有する修飾オリゴヌクレオチドを投与することを含む、前記方法。
実施形態65.前記修飾オリゴヌクレオチドが、薬学的に許容される希釈剤を含む薬学的組成物中に存在する、実施形態64に記載の方法。
実施形態66.前記薬学的に許容される希釈剤が、滅菌水溶液である、実施形態65に記載の方法。
実施形態67.前記滅菌水溶液が、生理食塩水である、実施形態66に記載の方法。
実施形態68.前記対象が、多嚢胞性腎疾患を有する、実施形態38~67のいずれか1つに記載の方法。
実施形態69.前記対象が、多嚢胞性腎疾患を有することが疑われる、実施形態38~67のいずれか1つに記載の方法。
実施形態70.前記対象が、臨床的、組織病理学的、及び/または遺伝的基準を使用して、多嚢胞性腎疾患を有すると診断されている、実施形態38~68のいずれか1つに記載の方法。
実施形態71.前記対象が、前記化合物、前記修飾オリゴヌクレオチド、または前記薬学的組成物の投与前に、前記対象の腎臓、尿、または血液中のポリシスチン-1(PC1)及び/またはポリシスチン-2(PC2)のレベルの低下を有することが決定される、実施形態38~70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72.前記多嚢胞性腎疾患が、常染色体劣性多嚢胞性腎疾患である、実施形態38~71のいずれか1つに記載の方法。
実施形態73.前記多嚢胞性腎疾患が、常染色体優性多嚢胞性腎疾患である、実施形態38~71のいずれか1つに記載の方法。
実施形態74.前記対象が、PKD1遺伝子の変異またはPKD2遺伝子の変異から選択される変異を有する、実施形態38~73のいずれか1つに記載の方法。
実施形態75.前記対象が、総腎体積の増加を有する、実施形態38~74のいずれか1つに記載の方法。
実施形態76.前記対象が、高血圧を有する、実施形態38~75のいずれか1つに記載の方法。
実施形態77.前記対象が、腎機能障害を有する、実施形態38~76のいずれか1項に記載の方法。
実施形態78.前記投与することが、前記対象における総腎体積を減少させる、実施形態38~77のいずれか1つに記載の方法。
実施形態79.前記投与することが、前記対象における総腎体積の増加速度を遅くする、実施形態38~78のいずれか1つに記載の方法。
実施形態80.前記総腎体積が、身長調整された総腎体積である、実施形態78または79に記載の方法。
実施形態81.前記投与することが、前記対象における糸球体濾過速度の低下速度を遅くする、実施形態38~80のいずれか1つに記載の方法。
実施形態82.前記投与することが、前記対象における糸球体濾過速度を増加させる、実施形態38~81のいずれか1つに記載の方法。
実施形態83.前記糸球体濾過速度が、推定糸球体濾過速度である、実施形態81または82に記載の方法。
実施形態84.前記投与することが、前記対象の腎臓及び/または肝臓における嚢胞の増殖を遅くする、実施形態38~83のいずれか1つに記載の方法。
実施形態85.前記投与することが、
a)前記対象における腎機能を改善し、
b)前記対象における腎機能の悪化を遅らせ、
c)前記対象における腎臓痛を軽減し、
d)前記対象における腎臓痛の増加を遅らせ、
e)前記対象における腎臓痛の発症を遅延させ、
f)前記対象における高血圧を軽減し、
g)前記対象における高血圧の悪化を遅らせ、
h)前記対象における高血圧の発症を遅延させ、
i)前記対象における前記腎臓の線維症を低減させ、
j)前記対象における前記腎臓の線維症の悪化を遅らせ、
k)前記対象における末期腎疾患の発症を遅延させ、
l)前記対象における透析までの時間を遅らせ、
m)前記対象における腎移植までの時間を遅延させ、及び/または
n)前記対象の平均余命を改善させる、実施形態38~84のいずれか1つに記載の方法。
実施形態86.前記投与することが、
a)前記対象におけるアルブミン尿を減少させ、
b)前記対象におけるアルブミン尿の悪化を遅らせ、
c)前記対象におけるアルブミン尿の発症を遅延させ、
d)前記対象における血尿を低減させ、
e)前記対象における血尿の悪化を遅らせ、
f)前記対象における血尿の発症を遅延させ、
g)前記対象における血中尿素窒素レベルを低下させ、
h)前記対象における血清クレアチニンレベルを低下させ、
i)前記対象におけるクレアチニンクリアランスを改善させ、
j)前記対象におけるアルブミン:クレアチニン比を低下させ、
k)前記対象における前記尿中のポリシスチン-1(PC1)を増加させ、
l)前記対象における前記尿中のポリシスチン-2(PC2)を増加させ、
m)前記対象における前記尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質を低下させ、及び/または
n)前記対象における前記尿中の腎損傷分子-1(KIM-1)タンパク質を低減させる、実施形態38~85のいずれか1つに記載の方法。
実施形態87.
a)前記対象における総腎体積を測定すること、
b)前記対象における高血圧を測定すること、
c)前記対象における腎臓痛を測定すること、
d)前記対象における前記尿中のポリシスチン-1(PC1)を測定すること、
e)前記対象における前記尿中のポリシスチン-2(PC2)を測定すること、
f)前記対象における前記腎臓における線維症を測定すること、
g)前記対象における血中尿素窒素レベルを測定すること、
h)前記対象における血清クレアチニンレベルを測定すること、
i)前記対象におけるクレアチニンクリアランスを測定すること、
j)前記対象におけるアルブミン尿を測定すること、
k)前記対象におけるアルブミン:クレアチニン比を測定すること、
l)前記対象における糸球体濾過速度を測定すること、
m)前記対象における前記尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質を測定すること、及び/または
n)前記対象における前記尿中の腎臓傷害分子-1(KIM-1)タンパク質を測定すること、を含む、実施形態38~86のいずれか1つに記載の方法。
実施形態88.少なくとも1つの追加の療法を施すことであって、前記少なくとも1つの追加の療法が抗高血圧剤である、前記施すことと、を含む、実施形態38~87のいずれか1つに記載の方法。
実施形態89.アンジオテンシンII変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、利尿剤、カルシウムチャネル遮断剤、キナーゼ阻害剤、アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト、血管拡張剤、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、アルドステロン受容体アンタゴニスト、エンドセリン受容体遮断剤、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤、ホルモンアナログ、バソプレシン受容体2アンタゴニスト、アルドステロン受容体アンタゴニスト、グルコシルセラミドシンターゼ阻害剤、抗高血糖薬、透析、及び腎臓移植から選択される少なくとも1つの追加の療法を施すことを含む、実施形態38~87のいずれか1つに記載の方法。
実施形態90.前記アンジオテンシンII変換酵素(ACE)阻害剤が、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、キナプリル、フォシノプリル、及びラミプリルから選択される、実施形態89に記載の方法。
実施形態91.前記アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が、カンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、及びエプロサルタンから選択される、実施形態89に記載の方法。
実施形態92.前記バソプレシン受容体2アンタゴニストが、トルバプタンである、実施形態89に記載の方法。
実施形態93.前記アルドステロン受容体アンタゴニストが、スピロノラクトンである、実施形態89に記載の方法。
実施形態94.前記キナーゼ阻害剤が、ボスチニブ及びKD019から選択される、実施形態89に記載の方法。
実施形態95.前記mTOR阻害剤が、エベロリムス、ラパマイシン、及びシロリムスから選択される、実施形態89に記載の方法。
実施形態96.前記ホルモンアナログが、ソマトスタチン及び副腎皮質刺激ホルモンから選択される、実施形態89に記載の方法。
実施形態97.前記グルコシルセラミドシンターゼ阻害剤が、ベングルスタットである、実施形態89に記載の方法。
実施形態98.前記抗高血糖薬が、メトホルミンである、実施形態89に記載の方法。
実施形態99.治療有効量の前記化合物を投与することを含む、実施形態38~96のいずれか1つに記載の方法。
実施形態100.前記対象が、ヒト対象である、実施形態38~99のいずれか1つに記載の方法。
実施形態101.治療に使用するための、修飾オリゴヌクレオチドであって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、5’から3’の方向に、
(N”)
p-(N)
r-(N’)
q
の構造を有し、式中、各N”が、独立して、修飾または非修飾ヌクレオシドであり、
pが、0~14であり、pが0でない場合、(N”)
pの核酸塩基配列が、miR-17の核酸塩基配列の等長部分に相補的であり、
(N)
rの各Nが、独立して、修飾または非修飾ヌクレオチドであり、(N)
rの核酸塩基配列が、5’-AGCACUUU-3’であり、
N’が、修飾糖部分を含むヌクレオシドであり、
qが、0または1であり、qが1である場合、N’の核酸塩基が、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、前記プリン核酸塩基が、6位にH結合アクセプターを有さず、
各シトシンが、独立して、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから選択される、前記修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩を含む、化合物。
実施形態102.前記療法が、多嚢胞性腎疾患の療法である、実施形態101に記載の化合物。
実施形態103.前記多嚢胞性腎疾患が、常染色体優性多嚢胞性腎疾患(ADPKD)である、実施形態102に記載の化合物。
実施形態104.前記多嚢胞性腎疾患が、常染色体劣性多嚢胞性腎疾患(ARPKD)である、実施形態102に記載の化合物。
実施形態105.療法に使用するための、実施形態1~22のいずれか1つに記載の化合物、実施形態23~29のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチド、または実施形態30~33のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】Aは、PKDのPkd1-F/RCモデルにおけるRG-NG-1015の効力。腎臓対体重比に対する治療の影響。Bは、PKDのPkd1-F/RCモデルにおけるRG-NG-1015の効力。血中尿素窒素(BUN)レベルに対する治療の影響。Cは、PKDのPkd1-F/RCモデルにおけるRG-NG-1015の効力。血中クレアチニンレベルに対する治療の影響。
【
図3】RG-NG-1001、RGLS4326、及びRG-NG-1017の最大耐用量(MTD)試験及び比較用量評価。6~7週齢の雄C57BL/6Jマウスに、様々な用量レベルの、RG-NG-1001及びRGLS4326(AMPA-Rを阻害する抗miR-17オリゴ)及びRG-NG-1017(AMPA-Rを阻害しない抗miR-17オリゴ、RG-NG-1017)の単回脳室内(ICV)注射を4μL体積で投与し、7日間監視した。マウスの死亡率は、異なる投与量での3つの異なる化合物について示される。
【
図4A-4F】インビトロでのHeLa細胞におけるmiR-17(4A)、miR-20a(4B)、miR-93(4C)、及びmiR106(a)(4D)ルシフェラーゼセンサー活性に対する、RG-NG-1015及びRGLS4326の活性の評価を記載する。miR-17直接標的遺伝子PKD1(4E)及びPKD2(4F)の完全長3’非翻訳領域(UTR)を含有するルシフェラーゼセンサーに対する、RG-NG-1015及びRGLS4326の活性の評価を記載する。
【
図5A-5D】C57BL6マウスにおける単回の皮下投与後のRGLS4326及びRG-NG-1015の薬物動態及び標的結合(miPSAによって測定した)を測定した。血漿濃度(5A)、組織濃度(5B)、腎臓標的結合(5C)、及び肝臓標的結合(5D)を示す。
【
図6A-6E】様々な投与量及びレジメンでの、ならびにトルバプタンとの組み合わせでの、PKDのPcy/DBAマウスモデルに対するRG-NG-1015の効果を測定した。投薬スケジュールを
図6Aに示し、
図6C~6Eのグラフのキーを
図6Bに示す。腎臓重量/体重(6C)、嚢胞領域(%)(6D)、及び尿Ngal/Cr(6E)を示す。エラーバー(error bar)は、標準偏差を表す。Pcyビヒクル処理群と比較して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.001、(ns)p>0.05;一元配置分散分析Bonferroniの多重比較試験。トルバプタン単独で処理した群と比較して、#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001、####p<0.001、(ns)p>0.05;一元配置分散分析Sadikの多重比較試験。用量整合RG-NG-1015単独で処理した群と比較して、$p<0.05、$$p<0.01、$$$p<0.001、$$$$p<0.001、(ns)p>0.05;一元配置分散分析Sadikの多重比較試験。
【発明を実施するための形態】
【0007】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。特別な定義が提供されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医化学及び製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにそれらの手順及び技法は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである。本明細書の用語に複数の定義がある場合は、本項の定義が優先される。標準的な技法が、化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化及び送達、ならびに患者の治療のために使用され得る。特定のそのような技法及び手順は、例えば、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」Edited by Sanghvi and Cook,American Chemical Society,Washington D.C.,1994、及び「Remington’s Pharmaceutical Sciences」Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,18th edition,1990に見ることができ、これは、任意の目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。許容される場合、本明細書の開示全体を通して参照されるすべての特許、特許出願、公開出願及び刊行物、GENBANKシーケンス、ウェブサイト、ならびに他の公開された資料は、特に明記しない限り、それらの全体が参照により組み込まれる。URLまたは他のそのような識別子またはアドレスを参照する場合、そのような識別子は変わる可能性があり、インターネット上の特定の情報は変わる可能性があることが理解されるが、同等の情報は、インターネットを検索することによって見つけることができる。それらへの参照は、そのような情報の入手可能性と一般への普及を証明するものである。
【0008】
本発明の組成物及び方法を開示及び記載する前に、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのものにすぎず、限定的であることを意図するものではないことを理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、別途明確に指示されない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されなければならない。
【0009】
定義
「多嚢胞性腎疾患」または「PKD」は、腎臓内における多数の液体で満たされた嚢胞の蓄積を特徴とする嚢胞性腎疾患である。複数の嚢胞が少なくとも1つの腎臓に形成され、しばしば罹患した腎臓(複数可)の拡大及び腎機能の進行性喪失につながる。
【0010】
「多嚢胞性腎疾患のマーカー」とは、多嚢胞性腎疾患の重症度、腎機能、及び/または治療に対する多嚢胞性腎疾患を有する対象の応答を評価するために使用される医療パラメータを意味する。多嚢胞性腎疾患のマーカーの非限定的な例としては、総腎体積、高血圧、糸球体濾過速度、及び腎臓痛が挙げられる。
【0011】
「腎機能のマーカー」とは、対象における腎機能を評価するために使用される医学的パラメータを意味する。腎機能のマーカーの非限定的な例としては、糸球体濾過速度、血中尿素窒素レベル、及び血清クレアチニンレベルが挙げられる。
【0012】
「常染色体優性多嚢胞性腎疾患」または「ADPKD」は、PKD1及び/またはPKD2遺伝子における1つ以上の遺伝子変異によって引き起こされる多嚢胞性腎疾患である。ADPKDの85%は、16番染色体に位置するPKD1の変異によって引き起こされ、残りのADPKD症例の大部分は、4番染色体に位置するPKD2の変異によって引き起こされる。
【0013】
「常染色体劣性多嚢胞性腎疾患」または「ARPKD」は、6番染色体に位置するPKHD1遺伝子における1つ以上の遺伝子変異によって引き起こされる多嚢胞性腎疾患である。ARPKDを有する新生児の最大50%が子宮内腎疾患の合併症で死亡し、生存者の約3分の1が10年以内に末期腎疾患(ESRD)を発症する。
【0014】
「ネフロン癆」または「NPHP」とは、皮質髄質嚢胞、管状基底膜破壊、及び尿細管間質性腎症を特徴とする常染色体劣性嚢胞性腎疾患を意味する。
【0015】
「総腎体積」または「TKV」は、総腎体積の測定値である。総腎体積は、磁気共鳴イメージング(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、または超音波(US)イメージングによって決定されてもよく、体積は、楕円体容積方程式(超音波用)などの標準的な方法論によって計算されてもよく、または定量的ステレオロジーまたは境界トレーシング(CT/MRI用)によって決定されてもよい。
【0016】
「身長調整された総腎体積」または「HtTKV」は、単位身長当たりの総腎体積の尺度である。HtTKV値が600ml/m以上の患者は、8年以内にステージ3の慢性腎疾患を発症すると予測される。
【0017】
「腎臓痛」とは、医療外出、薬理学的処置(麻薬性または最後の手段の鎮痛剤)、または侵襲的介入を必要とする、臨床的に有意な腎臓痛を意味する。
【0018】
「高血圧の悪化」とは、高血圧治療の開始または増加を必要とする血圧の変化を意味する。
【0019】
「線維症」とは、臓器または組織における過剰な線維性結合組織の形成または発達を意味する。特定の実施形態では、線維症は、修復または反応プロセスとして生じる。特定の実施形態では、線維症は、損傷または傷害に応答して生じる。「線維症」という用語は、臓器または組織の正常成分としての線維組織の形成とは対照的に、修復または反応プロセスとしての臓器または組織における過剰な線維性結合組織の形成または発達として理解されるべきである。
【0020】
「血尿」は、尿中の赤血球の存在を意味する。
【0021】
「アルブミン尿」とは、尿中の過剰なアルブミンの存在を意味し、正常アルブミン尿、高正常アルブミン尿、微量アルブミン尿及び顕性アルブミン尿を含むがこれらに限定されない。通常、足細胞、糸球体基底膜及び内皮細胞からなる糸球体濾過透過性バリアは、血清タンパク質が尿中に漏出するのを防ぐ。アルブミン尿は、糸球体濾過透過性バリアの損傷を反映し得る。アルブミン尿は、24時間の尿試料、一晩の尿試料、またはスポット尿試料から計算され得る。
【0022】
「高正常アルブミン尿」とは、(i)24時間当たり15~<30mgのアルブミンの尿中への排泄及び/または(ii)男性で1.25~2.5mg/mmol(または10~<20mg/g)、もしくは女性で1.75~<3.5mg/mmol(もしくは15~<30mg/g)のアルブミン/クレアチニン比率を特徴とする、アルブミン尿の上昇を意味する。
【0023】
「微量アルブミン尿」とは、(i)24時間当たり30~300mgのアルブミンの尿中への排泄及び/または(ii)男性で2.5~25mg/mmol(もしくは20~200mg/g)、もしくは女性で3.5~<35mg/mmol(もしくは30~300mg/g)のアルブミン/クレアチニン比率を特徴とする、アルブミン尿の上昇を意味する。
【0024】
「顕性アルブミン尿」とは、24時間当たりに300mgを超えるアルブミンが尿中に排泄されることを特徴とする、及び/または(ii)男性では>25mg/mmol(もしくは>200mg/g)、女性では>35mg/mmol(もしくは>300mg/g)のアルブミン/クレアチニン比率を特徴とする、アルブミン尿の上昇を意味する。
【0025】
「アルブミン/クレアチニン比」とは、尿クレアチニン当たりの尿アルブミン(mg/dL)の比(g/dL)を意味し、mg/gで表される。特定の実施形態では、アルブミン/クレアチニン比は、スポット尿試料から計算されてもよく、24時間にわたるアルブミン排泄の推定値として使用されてもよい。
【0026】
「糸球体濾過速度」または「GFR」とは、腎臓を通る濾過された流体の流速を意味し、対象における腎機能の指標として使用される。特定の実施形態では、対象のGFRは、推定糸球体濾過速度を計算することによって決定される。特定の実施形態では、対象のGFRは、イヌリン法を使用して、対象において直接測定される。
【0027】
「推定糸球体濾過速度」または「eGFR」とは、腎臓がクレアチニンをどの程度良好に濾過しているかの測定値を意味し、糸球体濾過速度を概算するために使用される。GFRの直接測定は複雑であるため、eGFRは臨床現場で頻繁に使用される。正常な結果は、90~120mL/分/1.73m2の範囲であり得る。3ヶ月以上にわたる60mL/分/1.73m2未満のレベルは、慢性腎疾患の指標であり得る。15mL/分/1.73m2未満のレベルは、腎不全の指標であり得る。
【0028】
「タンパク尿」とは、尿中に過剰な血清タンパク質が存在することを意味する。タンパク質尿は、24時間当たりの尿中への250mgを超えるタンパク質の排泄、及び/または0.20mg/mg以上の尿タンパク質対クレアチニン比によって特徴付けられ得る。タンパク質尿と関連して上昇する血清タンパク質としては、これらに限定されないが、アルブミンが挙げられる。
【0029】
「血液尿素窒素レベル」または「BUNレベル」とは、尿素の形態での血液中の窒素の量の尺度を意味する。肝臓は、タンパク質の消化の廃棄物として尿素サイクルで尿素を生成し、尿素は腎臓によって血液から除去される。正常なヒト成人の血液には、100ml(7~21mg/dL)の血液当たり7~21mgの尿素窒素が含まれる。血中尿素窒素レベルの測定は、腎臓の健康の指標として使用される。腎臓が血液から尿素を正常に除去できない場合、対象のBUNレベルは上昇する。
【0030】
「上昇」とは、臨床的に関連性があると考えられる医学的パラメータの増加を意味する。医療従事者は、増加が臨床的に有意であるかどうかを判断することができる。
【0031】
「末期腎疾患(ESRD)」とは、腎機能の完全なまたはほぼ完全な不全を意味する。
【0032】
「生活の質」とは、対象の身体的、心理的、及び社会的機能が疾患及び/または疾患の治療によって損なわれる程度を意味する。多嚢胞性腎疾患を有する対象において、生活の質が低下し得る。
【0033】
「腎機能障害」とは、正常な腎機能と比較した、腎機能の低下を意味する。
【0034】
「の悪化を遅延させる」「悪化を遅延させる」とは、医学的状態が進行状態に向かって移行する速度を低減することを意味する。
【0035】
「透析までの遅延時間」とは、透析治療の必要性が遅延するように、十分な腎機能を維持することを意味する。
【0036】
「腎移植までの遅延時間」とは、腎移植の必要性が遅延するように、十分な腎機能を維持することを意味する。
【0037】
「平均余命を改善する」とは、対象における疾患の1つ以上の症状を治療することによって対象の寿命を延長することを意味する。
【0038】
「対象」とは、処置または療法のために選択されたヒトまたは非ヒトの動物を意味する。
【0039】
「それを必要としている対象」とは、療法または治療を必要としていると特定された対象を意味する。
【0040】
「有することが疑われる対象」とは、疾患の1つ以上の臨床的指標を呈する対象を意味する。
【0041】
「miR-17に関連する疾患」とは、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーの活性によって調節される疾患または状態を意味する。
【0042】
「投与すること」とは、対象に医薬品または組成物を提供することを意味し、限定されないが、医療専門家による投与及び自己投与を含む。
【0043】
「非経口投与」とは、注入または注射を介する投与を意味する。
非経口投与としては、限定されないが、皮下投与、静脈内投与、及び筋肉内投与が挙げられる。
【0044】
「皮下投与」とは、皮膚の直下への投与を意味する。
【0045】
「静脈内投与」とは、静脈内への投与を意味する。
【0046】
「同時に投与される」とは、両方の薬理学的効果が同時に患者に現れる、任意の方法での2つ以上の薬剤の共投与を指す。同時投与は、両方の薬剤が、単一の薬学的組成物で、同じ剤形で、または同じ投与経路によって投与されることを必要としない。両方の薬剤の効果は、同時にそれらが現れる必要はない。効果は、ある期間重なることのみを必要とし、同一の広がりを有する必要はない。
【0047】
「期間」とは、活性または事象が継続している期間を意味する。特定の実施形態では、治療期間とは、ある用量の医薬品または薬学的組成物が投与される期間である。
【0048】
「療法」とは、疾患の治療方法を意味する。特定の実施形態では、療法としては、疾患を有する対象に1つ以上の医薬品を投与することが含まれるが、これに限定されない。
【0049】
「治療する」とは、疾患の少なくとも1つの指標の緩和のために使用される1つ以上の特定の手順を適用することを意味する。特定の実施形態では、特定の手順は、1つ以上の医薬品を投与することである。特定の実施形態では、PKDの治療としては、これらに限定されないが、総腎体積の減少、腎機能の改善、高血圧の減少、及び/または腎臓痛の減少が含まれる。
【0050】
「改善する」とは、状態または疾患の少なくとも1つの指標の重症度が低下することを意味する。特定の実施形態では、改善は、状態または疾患の1つ以上の指標の進行を遅延させることまたは減速させることを含む。指標の重症度は、当業者に既知である主観的尺度または客観的尺度によって決定され得る。
【0051】
「発症のリスクがある」とは、対象が状態または疾患を発症する素因がある状態を意味する。特定の実施形態では、状態または疾患を発症するリスクのある対象は、状態または疾患の1つ以上の症状を呈するが、状態または疾患と診断されるのに十分な数の症状を呈さない。特定の実施形態では、状態または疾患を発症するリスクのある対象は、状態または疾患の1つ以上の症状を呈するが、状態または疾患と診断される必要がある程度は低い。
【0052】
「発生を予防する」とは、疾患または状態を発症するリスクのある対象において、状態または疾患の発症を予防することを意味する。特定の実施形態では、疾患または状態を発症するリスクのある対象は、疾患または状態をすでに有する対象が受ける治療と同様の治療を受ける。
【0053】
「発生を遅延させる」とは、疾患または状態を発症するリスクがある対象において、状態または疾患の発症を遅延させることを意味する。特定の実施形態では、疾患または状態を発症するリスクのある対象は、疾患または状態をすでに有する対象が受ける治療と同様の治療を受ける。
【0054】
「用量」とは、単回投与で提供される医薬品の特定の量を意味する。特定の実施形態では、用量は、2回以上のボーラス、錠剤、または注射で投与され得る。例えば、皮下投与が所望される特定の実施形態では、所望の用量は、単回注射では容易に対応できない体積を必要とする。そのような実施形態では、2回以上の注射を使用して、所望の用量を達成し得る。特定の実施形態では、用量は、個体における注射部位反応を最小化するために、2回以上の注射で投与され得る。特定の実施形態では、用量は、緩徐な注入として投与される。
【0055】
「投薬単位」とは、医薬品が提供される形態を意味する。特定の実施形態では、投薬単位は、凍結乾燥されたオリゴヌクレオチドを含有するバイアルである。特定の実施形態では、投薬単位は、再構成されたオリゴヌクレオチドを含有するバイアルである。
【0056】
「治療有効量」とは、動物に治療的利益をもたらす医薬品の量を指す。
【0057】
「薬学的組成物」とは、個体への投与に好適な物質の混合物を意味し、医薬品を含む。例えば、薬学的組成物は、滅菌水溶液を含み得る。
【0058】
「医薬品」とは、対象に投与される場合に治療的効果をもたらす物質を意味する。
【0059】
「有効医薬成分」とは、所望の効果をもたらす薬学的組成物中の物質を意味する。
【0060】
「薬学的に許容される塩」とは、本明細書に提供される化合物の生理学的及び薬学的に許容される塩、すなわち、化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ対象に投与される場合に望ましくない毒物学的効果を有しない塩を意味する。本明細書に提供される化合物の非限定的な例示的な薬学的に許容される塩としては、ナトリウム及びカリウムの塩形態が含まれる。本明細書で使用される場合、「化合物」、「オリゴヌクレオチド」、及び「修飾オリゴヌクレオチド」という用語は、特に明記しない限り、その薬学的に許容される塩を含む。
【0061】
「生理食塩水」とは、塩化ナトリウムの水溶液を意味する。
【0062】
「臓器機能の改善」とは、正常範囲に向けた臓器機能の変化を意味する。特定の実施形態では、臓器機能は、対象の血液または尿中に見出される分子を測定することによって評価される。特定の実施形態では、腎機能の改善は、血中尿素窒素の減少、タンパク尿の減少、アルブミン尿の減少などによって測定される。
【0063】
「許容可能な安全性プロファイル」とは、臨床的に許容可能な範囲内にある副作用のパターンを意味する。
【0064】
「副作用」とは、所望の効果以外の、治療に起因する生理学的応答を意味する。特定の実施形態では、副作用には、これらに限定されないが、注射部位反応、肝機能検査異常、腎機能異常、肝毒性、腎毒性、中枢神経系異常、及びミオパチーが含まれる。そのような副作用は、直接的または間接的に検出され得る。例えば、血清中のアミノトランスフェラーゼレベルの上昇は、肝毒性または肝機能異常を示し得る。例えば、ビリルビンの増加は、肝毒性または肝機能異常を示し得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「血液」という用語は、血清及び血漿等の全血及び血液画分を包含する。
【0066】
「抗miR」とは、マイクロRNAに相補的な核酸塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを意味する。特定の実施形態では、抗miRは、修飾オリゴヌクレオチドである。
【0067】
「抗miR-17」とは、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーに相補的な核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを意味する。特定の実施形態では、抗miR-17は、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーと完全に相補的(すなわち、100%相補的)である。特定の実施形態では、抗miR-17は、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%相補的である。
【0068】
「miR-17」とは、核酸塩基配列5’-CAAAGUGCUUACAGUGCAGGUAG-3’(配列番号1)を有する成熟miRNAを意味する。
【0069】
「miR-20a」とは、核酸塩基配列5’-UAAAGUGCUUAUAGUGCAGGUAG-3’(配列番号2)を有する成熟miRNAを意味する。
【0070】
「miR-20b」とは、核酸塩基配列5’-CAAAGUGCUCAUAGUGCAGGUAG-3’(配列番号3)を有する成熟miRNAを意味する。
【0071】
「miR-93」とは、核酸塩基配列5’-CAAAGUGCUGUUCGUGCAGGUAG-3’(配列番号4)を有する成熟miRNAを意味する。
【0072】
「miR-106a」とは、核酸塩基配列5’-AAAAGUGCUUACAGUGCAGGUAG-3’(配列番号5)を有する成熟miRNAを意味する。
【0073】
「miR-106b」とは、核酸塩基配列5’-UAAAGUGCUGACAGUGCAGAU-3’(配列番号6)を有する成熟miRNAを意味する。
【0074】
「miR-17シード配列」とは、miR-17ファミリーメンバーのそれぞれに存在する核酸塩基配列5’-AAAGUG-3を意味する。
【0075】
「miR-17ファミリーメンバー」とは、miR-17シード配列を含む核酸塩基配列を有し、かつmiR-17、miR-20a、miR-20b、miR-93、miR-106a、及びmiR-106bから選択される、成熟miRNAを意味する。
【0076】
「miR-17ファミリー」とは、各々がmiR-17シード配列を含む核酸塩基配列を有する以下のmiRNAの群:miR-17、miR-20a、miR-20b、miR-93、miR-106a、及びmiR-106bを意味する。
【0077】
「標的核酸」とは、オリゴマー化合物がハイブリダイズするように設計される核酸を意味する。
【0078】
「標的化」とは、標的核酸にハイブリダイズする核酸塩基配列の設計及び選択のプロセスを意味する。
【0079】
「を標的とする」とは、標的核酸へのハイブリダイゼーションが可能になる核酸塩基配列を有することを意味する。
【0080】
「変調」とは、機能、量、または活性の変動を意味する。特定の実施形態では、変調とは、機能、量、または活性の増加を意味する。特定の実施形態では、変調とは、機能、量、または活性の低下を意味する。
【0081】
「発現」とは、遺伝子のコード化された情報が、細胞内に存在し、かつ細胞内で作動する構造に変換される任意の機能及びステップを意味する。
【0082】
「核酸塩基配列」とは、オリゴマー化合物または核酸における隣接する核酸塩基の順序を意味し、典型的には、任意の糖、連結、及び/または核酸塩基の修飾とは関係なく、5’から3’の方向で列挙される。
【0083】
「隣接する核酸塩基」とは、核酸内で互いに直接隣接する核酸塩基を意味する。
【0084】
「核酸塩基相補性」とは、2つの核酸塩基が水素結合を介して非共有結合的に対合する能力を意味する。
【0085】
「相補的」とは、1つの核酸が別の核酸またはオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができることを意味する。特定の実施形態では、相補的とは、標的核酸にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを指す。
【0086】
「完全に相補的」とは、オリゴヌクレオチドの各核酸塩基が、標的核酸中の対応する各位置において、核酸塩基と対合できることを意味する。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、マイクロRNAに対して完全に相補的である(100%相補的とも呼ばれる)。すなわち、オリゴヌクレオチドの各核酸塩基は、マイクロRNA内の対応する位置において、核酸塩基に対して相補的である。修飾オリゴヌクレオチドは、マイクロRNAに完全に相補的であり、かつマイクロRNAの長さよりも短い複数の連結ヌクレオシドを有し得る。例えば、オリゴヌクレオチドの各核酸塩基がマイクロRNA中の対応する位置において核酸塩基に相補的である、16個の連結ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドは、マイクロRNAに完全に相補的である。特定の実施形態では、各核酸塩基がマイクロRNAステムループ配列の領域内の核酸塩基に相補性を有するオリゴヌクレオチドは、マイクロRNAステムループ配列に完全に相補的である。
【0087】
「パーセント相補性」とは、標的核酸の等長部分に相補的であるオリゴヌクレオチドの核酸塩基の割合を意味する。パーセント相補性は、標的核酸中の対応する位置において核酸塩基に相補的であるオリゴヌクレオチドの核酸塩基の数を、オリゴヌクレオチド中の核酸塩基の総数で割ることによって計算される。
【0088】
「パーセント同一性」とは、第2の核酸中の対応する位置において核酸塩基と同一である第1の核酸中の核酸塩基の数を、第1の核酸中の核酸塩基の総数で割ったものを意味する。特定の実施形態では、第1の核酸は、マイクロRNAであり、第2の核酸は、マイクロRNAである。特定の実施形態では、第1の核酸は、オリゴヌクレオチドであり、第2の核酸は、オリゴヌクレオチドである。
【0089】
「ハイブリダイズする」とは、核酸塩基の相補性によって起こる相補的な核酸のアニーリングを意味する。
【0090】
「ミスマッチ」とは、第2の核酸の対応する位置において、核酸塩基とワトソンクリック対合することができない第1の核酸の核酸塩基を意味する。
【0091】
核酸塩基配列の文脈における「同一」とは、糖、連結、及び/または核酸塩基修飾とは関係なく、かつ存在する任意のピリミジンのメチル化状態とは関係なく、同じ核酸塩基配列を有することを意味する。
【0092】
「マイクロRNA」とは、長さが18~25核酸塩基である内因性非コードRNAを意味し、酵素ダイサーによるプレマイクロRNAの切断の産物である。成熟マイクロRNAの例は、miRBaseとして既知であるマイクロRNAデータベースに見られる(microrna.sanger.ac.uk/)。特定の実施形態では、マイクロRNAは、「miR」と略される。
【0093】
「マイクロRNA調節転写物」とは、マイクロRNAによって調節される転写物を意味する。
【0094】
「シードマッチ配列」とは、シード配列に相補的であり、シード配列と同じ長さである核酸塩基配列を意味する。
【0095】
「オリゴマー化合物」とは、複数の連結モノマーサブユニットを含む化合物を意味する。オリゴマー化合物としては、オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0096】
「オリゴヌクレオチド」とは、各々が互いに独立して、修飾または非修飾であり得る、複数の連結ヌクレオシドを含む化合物を意味する。
【0097】
「天然に存在するヌクレオシド間連結」とは、ヌクレオシド間の3’から5’へのホスホジエステル連結を意味する。
【0098】
「天然糖」とは、DNA(2’-H)またはRNA(2’-OH)に見られる糖を意味する。
【0099】
「ヌクレオシド間連結」とは、隣接しているヌクレオシド間の共有結合を意味する。
【0100】
「連結ヌクレオシド」とは、共有結合によって結合されたヌクレオシドを意味する。
【0101】
「核酸塩基」とは、別の核酸塩基と非共有結合的に対合することができる複素環部分を意味する。
【0102】
「ヌクレオシド」とは、糖部分に連結された核酸塩基を意味する。
【0103】
「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合しているホスフェート基を有するヌクレオシドを意味する。
【0104】
複数の連結ヌクレオシド「からなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物」とは、特定の数の連結ヌクレオシドを有する修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を意味する。したがって、化合物は、追加の置換基またはコンジュゲートを含み得る。特に明記しない限り、修飾オリゴヌクレオチドは、相補鎖にハイブリダイズされず、化合物は、修飾オリゴヌクレオチドのものを超える任意の追加のヌクレオシドを含まない。
【0105】
「修飾オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在する末端、糖、核酸塩基、及び/またはヌクレオシド間連結と比較して1つ以上の修飾を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。修飾オリゴヌクレオチドは、非修飾ヌクレオシドを含み得る。
【0106】
「修飾ヌクレオシド」とは、天然に存在するヌクレオシドからの任意の変化を有するヌクレオシドを意味する。修飾ヌクレオシドは、修飾糖及び非修飾核酸塩基を有し得る。修飾ヌクレオシドは、修飾糖及び修飾核酸塩基を有し得る。修飾ヌクレオシドは、天然糖及び修飾核酸塩基を有し得る。特定の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、二環式ヌクレオシドである。特定の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、非二環式ヌクレオシドである。
【0107】
「修飾ヌクレオシド間連結」とは、天然に存在するヌクレオシド間連結からの任意の変化を意味する。
【0108】
「ホスホロチオエートヌクレオシド間連結」とは、非架橋原子のうちの1つが硫黄原子であるヌクレオシド間の連結を意味する。
【0109】
「修飾糖部分」とは、天然糖からの置換及び/または任意の変化を意味する。
【0110】
「非修飾核酸塩基」とは、RNAまたはDNAの天然に存在する複素環式塩基を意味し、プリンは、アデニン(A)及びグアニン(G)をベースとし、ピリミジンは、チミン(T)、シトシン(C)(5-メチルシトシンなど)、及びウラシル(U)をベースとする。
【0111】
「5-メチルシトシン」とは、5位に付着しているメチル基を含むシトシンを意味する。
【0112】
「非メチル化シトシン」とは、5位に付着しているメチル基を有しないシトシンを意味する。
【0113】
「修飾核酸塩基」とは、非修飾核酸塩基ではない任意の核酸塩基を意味する。
【0114】
「糖部分」とは、天然に存在するフラノシルまたは修飾糖部分を意味する。
【0115】
「修飾糖部分」とは、置換糖部分または糖代理物を意味する。
【0116】
「2’-O-メチル糖」または「2’-OMe糖」とは、2’位にO-メチル修飾を有する糖を意味する。
【0117】
「2’-O-メトキシエチル糖」または「2’-MOE糖」とは、2’位にO-メトキシエチル修飾を有する糖を意味する。
【0118】
「2’-フルオロ」または「2’-F」とは、2’位のフルオロ修飾を有する糖を意味する。
【0119】
「二環式糖部分」とは、4~7員環の2個の原子を結合して第2の環を形成し、二環式構造をもたらす架橋を含む、4~7員環(限定されないが、フラノシルなど)を含む修飾糖部分を意味する。特定の実施形態では、4~7員環は、糖環である。特定の実施形態では、4~7員環は、フラノシルである。特定のそのような実施形態では、架橋は、フラノシルの2’-炭素と4’-炭素を結合する。非限定的な例示的な二環式糖部分としては、LNA、ENA、cEt、S-cEt、及びR-cEtが挙げられる。
【0120】
「ロックド核酸(LNA)糖部分」とは、4’と2’フラノース環原子との間に(CH2)-O架橋を含む置換糖部分を意味する。
【0121】
「ENA糖部分」とは、4’と2’フラノース環原子との間に(CH2)2-O架橋を含む置換糖部分を意味する。
【0122】
「拘束エチル(cEt)糖部分」とは、4’と2’フラノース環原子との間にCH(CH3)-O架橋を含む置換糖部分を意味する。特定の実施形態では、CH(CH3)-O架橋は、S方向に拘束されている。特定の実施形態では、CH(CH3)-Oは、R方向に拘束されている。
【0123】
「S-cEt糖部分」とは、4’と2’フラノース環原子との間にS拘束CH(CH3)-O架橋を含む置換糖部分を意味する。
【0124】
「R-cEt糖部分」とは、4’と2’フラノース環原子との間にR拘束CH(CH3)-O架橋を含む置換糖部分を意味する。
【0125】
「2’-O-メチルヌクレオシド」とは、2’-O-メチル糖修飾を有する2’-修飾ヌクレオシドを意味する。
【0126】
「2’-O-メトキシエチルヌクレオシド」とは、2’-O-メトキシエチル糖修飾を有する2’-修飾ヌクレオシドを意味する。2’-O-メトキシエチルヌクレオシドは、修飾または非修飾核酸塩基を含み得る。
【0127】
「2’-フルオロヌクレオシド」とは、2’-フルオロ糖修飾を有する2’-修飾ヌクレオシドを意味する。2’-フルオロヌクレオシドは、修飾または非修飾核酸塩基を含み得る。
【0128】
「二環式ヌクレオシド」とは、二環式糖部分を有する2’-修飾ヌクレオシドを意味する。二環式ヌクレオシドは、修飾または非修飾核酸塩基を有し得る。
【0129】
「cEtヌクレオシド」とは、cEt糖部分を含むヌクレオシドを意味する。cEtヌクレオシドは、修飾または非修飾核酸塩基を含み得る。
【0130】
「S-cEtヌクレオシド」とは、S-cEt糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0131】
「R-cEtヌクレオシド」とは、R-cEt糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0132】
「β-D-デオキシリボヌクレオシド」とは、天然に存在するDNAヌクレオシドを意味する。
【0133】
「β-D-リボヌクレオシド」とは、天然に存在するRNAヌクレオシドを意味する。
【0134】
「LNAヌクレオシド」とは、LNA糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0135】
「ENAヌクレオシド」とは、ENA糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0136】
「水素結合アクセプター」とは、共有された水素原子を供給しない水素結合の成分を意味する。
【0137】
「水素結合ドナー」とは、水素結合の水素原子を供給する結合または分子を意味する。
【0138】
概要
多嚢胞性腎疾患(PKD)は、腎臓において液体で満たされた嚢胞が発生し、腎不全、及びしばしば末期腎疾患をもたらす、腎疾患の遺伝的形態である。ある特定のPKDもまた、腎腫大を特徴とする。嚢胞の過剰な増殖は、PKDの特徴的な病理学的特徴である。PKDの管理では、治療の主な目的は、高血圧や感染症などの症状を管理し、腎機能を維持し、末期腎疾患(ESRD)の発症を予防することであり、これによりPKDを有する対象の平均余命が改善される。
【0139】
miR-17は、PKDの治療の標的として同定されている。抗miR-17化合物であるRGLS4326は、最適な薬学的特性について、抗miR-17オリゴヌクレオチドの化学的に多様で合理的に設計されたライブラリをスクリーニングすることによって発見された。RGLS4326は、腎臓及び収集管由来嚢胞に優先的に分布し、miR-17を翻訳活性ポリソームから置換し、Pkd1及びPkd2を含む複数のmiR-17 mRNA標的を抑制解除する。重要なことに、RGLS4326は、皮下投与後のヒトインビトロADPKDモデル及び複数のPKDマウスモデルにおける嚢胞成長を減弱する。常染色体優性多嚢胞性腎疾患(ADPKD)を有する患者の治療のためのRGLS4326の第1b相臨床試験を、2020年10月に開始した。
【0140】
第1b相臨床試験の開始に続いて、非臨床毒性試験は、マウスにおける高用量のRGLS4326での異常な歩行、運動活動の低下、及び/または衰弱を含む、CNS関連の所見を明らかにした。RGLS4326は、高速興奮性神経伝達を媒介する中枢神経系(CNS)の興奮性シナプス上のグルタミン酸受容体及びイオンチャネルであるAMPA受容体(AMPA-R)の拮抗剤であることが見出され、したがって、すべてのニューロンネットワークの重要な構成要素である。AMPA受容体の拮抗作用は、非臨床毒性モデルにおいて、高用量のRGLS4326で観察されたCNS媒介所見を説明することができる。そのようなCNS関連の所見は、ヒト対象において観察されなかったが、それにもかかわらず、AMPA受容体の拮抗作用を回避することが好ましい。したがって、より好ましい安全性プロファイルを有するRGLS4326に匹敵する物理化学的及び薬理学的特性を有する化合物を同定するために、抗miR-17化合物のライブラリをスクリーニングした。そのような化合物の1つである、RG-NG-1015を同定し、ADPKDの治療のための候補治療剤として選択した。
【0141】
化合物
修飾オリゴヌクレオチドであって、修飾オリゴヌクレオチドが、5’から3’の方向に、
(N”)p-(N)r-(N’)q
の構造を有し、式中、各N”は、独立して、修飾または非修飾ヌクレオシドであり、pは、0~14であり、pが0でない場合、(N”)pの核酸塩基配列は、miR-17の核酸塩基配列の等長部分に相補的であり、(N)rの各Nは、独立して、修飾または非修飾ヌクレオチドであり、(N)rの核酸塩基配列は、5’-AGCACUUU-3’であり、N’は、修飾糖部分を含むヌクレオシドであり、qは、0または1であり、qが1である場合、N’の核酸塩基は、ウラシル核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、プリン核酸塩基は、6位に水素結合アクセプターを有さず、各シトシンは、独立して、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから選択される、修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩を含む、化合物が、本明細書に提供される。
【0142】
プリン核酸塩基の原子は、以下:
【化7】
の構造に示されるように、核酸塩基の標準的な番号付け規則に従って、1から9まで番号付けされる。
【0143】
核酸塩基環原子に結合した原子または基は、それらが結合している環原子と同じ数を有する。
【0144】
特定の核酸塩基、例えば、グアノシン及びイノシンは、6位に水素結合アクセプターを含有する。グアノシンの6位の水素結合アクセプターは、6位の炭素に結合した酸素である。イノシンの6位の水素結合アクセプターは、6位の炭素に結合した酸素である。
【0145】
6位に水素結合アクセプターを有しないプリン核酸塩基としては、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、イソグアノシン、及びアデノシンが含まれるが、これらに限定されない。2,6-ジアミノプリン、イソグアノシン、及びアデノシンのそれぞれの6位に存在するNH2は、水素結合ドナーとして機能する。2-アミノプリンの6位は、置換基を有さず、したがって、水素結合アクセプターまたはドナーを欠いている。
【0146】
特定の実施形態では、(N)rの構造は、ASGSCMAFCFUFUMUSであり、下付き文字「M」が続くヌクレオシドは、2’-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」が続くヌクレオシドは、2’-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」が続くヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドである。
【0147】
特定の実施形態では、少なくとも1つのヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。特定の実施形態では、各ヌクレオシド間連結はホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0148】
特定の実施形態では、qは、1である。特定の実施形態では、qは、0である。特定の実施形態では、pは、0である。特定の実施形態では、pは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14から選択される。
【0149】
特定の実施形態では、(N”)pの核酸塩基配列は、miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)に対して1つ以下のミスマッチを有する。特定の実施形態では、(N”)pの核酸塩基配列は、miR-17の核酸塩基配列(配列番号1)に対してミスマッチを有しない。特定の実施形態では、(N”)pの核酸塩基配列は、CUACCUGCACUGUA(配列番号7)、CUACCUGCACUGU(配列番号8)、CUACCUGCACUG(配列番号9)、CUACCUGCACU(配列番号10)、CUACCUGCAC(配列番号11)、CUACCUGCA、CUACCUGC、CUACCUG、CUACCU、CUACC、CUAC、CUA、CU及びCから選択される。
【0150】
特定の実施形態では、N’の核酸塩基は、6位に水素結合アクセプターを有しないプリン核酸塩基である。特定の実施形態では、N’の核酸塩基は、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される。
【0151】
特定の実施形態では、N’の糖部分は、2’-O-メチル糖ではない。特定の実施形態では、N’の糖部分は、2’-O-メトキシエチル糖またはS-cEt糖である。
【0152】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの構造は、5’-ASGSCMAFCFUFUMUSAS-3’であり、各シトシンは、非メチル化シトシンである。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの構造は、5’-ASGSCMAFCFUFUMUSUS-3’であり、各シトシンは、非メチル化シトシンである。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの構造は、5’-ASGSCMAFCFUFUMUSCS-3’であり、各シトシンは、非メチル化シトシンである。修飾オリゴヌクレオチドの構造は、5’-ASGSCMAFCFUFUMUS-3’であり、各シトシンが、非メチル化シトシンである、請求項2に記載の化合物。
【0153】
特定の実施形態では、化合物は、修飾オリゴヌクレオチドからなる。
【0154】
特定の実施形態では、薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩である。
【0155】
構造:
【化8】
を有する修飾オリゴヌクレオチドであって、式中、Bは、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、プリン核酸塩基は、6位に水素結合アクセプターを有しない、修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩が、本明細書に提供される。特定の実施形態では、Bは、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される。
【0156】
構造:
【化9】
を有する修飾オリゴヌクレオチドであって、式中、Bは、ウリジン核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、プリン核酸塩基は、6位に水素結合アクセプターを有しない、修飾オリゴヌクレオチが、本明細書に提供される。特定の実施形態では、Bは、アデノシン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、及びイソグアノシンから選択される。
【0157】
修飾オリゴヌクレオチドの構造が、以下:
【化10】
である、RG-NG-1015という名称の修飾オリゴヌクレオチが、本明細書に提供される。
【0158】
修飾オリゴヌクレオチドRG-NG-1015の薬学的に許容される塩もまた本明細書に提供される。したがって、いくつかの実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、以下の構造:
【化11】
を有する修飾オリゴヌクレオチド、またはその薬学的に許容される塩である。RG-NG-1015の非限定的な例示的な薬学的に許容される塩は、構造:
【化12】
を有する。
【0159】
いくつかの実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの薬学的に許容される塩は、分子当たりのホスホロチオエート及び/またはホスホジエステル連結よりも少ないカチオン性対イオン(Na+など)を含む(すなわち、いくつかのホスホロチオエート及び/またはホスホジエステル連結は、プロトン化される)。いくつかの実施形態では、RG-NG-1015の薬学的に許容される塩は、RG-NG-1015の1分子当たり8個未満のカチオン性対イオン(Na+など)を含む。すなわち、いくつかの実施形態では、RG-NG-1015の薬学的に許容される塩は、平均して、RG-NG-1015の1分子当たり1、2、3、4、5、6、または7のカチオン性対イオンを含み得、残りのホスホロチオエート基はプロトン化されている。
【0160】
特定の使用
細胞を、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物と接触させることを含む、細胞内の1つ以上のmiR-17ファミリーのメンバーの活性を阻害するための方法が本明細書に提供される。
【0161】
本明細書に提供される薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象における1つ以上のmiR-17ファミリーのメンバーの活性を阻害するための方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、対象は、miR-17ファミリーの1つ以上のメンバーに関連する疾患を有する。
【0162】
miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、多嚢胞性腎疾患(PKD)を治療するための方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、対象は、多嚢胞性腎疾患を有する。特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患は、常染色体優性多嚢胞性腎疾患(ADPKD)、常染色体劣性多嚢胞性腎疾患(ARPKD)、及びネフロン癆(NPHP)から選択される。特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患は、常染色体優性多嚢胞性腎疾患(ADPKD)及び常染色体劣性多嚢胞性腎疾患(ARPKD)から選択される。
【0163】
特定の実施形態では、対象は、複数の非腎臓指標、及び多嚢胞性腎疾患も特徴とする障害を有する。そのような障害としては、例えば、ジュベール症候群及び関連障害(JSRD)、メッケル症候群(MKS)、またはバルデー・ビードル症候群(BBS)が挙げられる。したがって、対象に、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物を投与することを含む、多嚢胞性腎疾患(PKD)を治療するための方法が本明細書に提供され、対象は、ジョベール症候群及び関連障害(JSRD)、メッケル症候群(MKS)、またはバルデー・ビードル症候群(BBS)を有する。miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物を投与することを含む、多嚢胞性腎疾患(PKD)を治療するための方法が本明細書に提供され、対象は、ジョベール症候群及び関連障害(JSRD)、メッケル症候群(MKS)、またはバルデー・ビードル症候群(BBS)を有することが疑われる。
【0164】
特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患は、常染色体優性多嚢胞性腎疾患(ADPKD)である。ADPKDは、PKD1またはPKD2遺伝子の変異によって引き起こされる。ADPKDは、60歳までに患者の50%で嚢胞形成及び腎腫大が腎不全を引き起こし、最終的には末期腎疾患を引き起こす進行性疾患である。ADPKD患者は、生涯の透析及び/または腎移植を必要とし得る。ADPKDは、腎不全の最も頻繁な遺伝的原因である。嚢胞の過剰な増殖は、ADPKDの特徴的な病理学的特徴である。PKDの管理では、治療の主な目的は、腎機能を維持し、末期腎疾患(ESRD)の発症を予防することであり、これによりPKDを有する対象の平均余命が改善される。総腎体積は、一般にADPKD患者で着実に増加し、増加は腎機能の低下と相関する。ADPKDを有する、または有することが疑われる対象に、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物を投与することを含む、ADPKDを治療するための方法が、本明細書に提供される。
【0165】
特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患は、常染色体劣性多嚢胞性腎疾患(ARPKD)である。ARPKDは、PKHD1遺伝子の変異によって引き起こされ、小児の慢性腎疾患の原因である。ARPKDの典型的な腎表現型は、腎臓の拡大であるが、ARPKDは、他の臓器、特に肝臓に顕著な効果を有する。ARPKDを有する患者は、末期腎疾患に進行し、15歳という若さで腎臓移植を必要とする。ARPKDを有する、または有することが疑われる対象に、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物を投与することを含む、ARPKDを治療するための方法が、本明細書に提供される。
【0166】
特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患は、ネフロン癆(NPHP)である。ネフロン癆は、小児におけるESRDの頻繁な原因である常染色体劣性嚢胞性腎疾患である。NPHPは、正常または低減したサイズの腎臓、皮質髄質接合部に濃縮された嚢胞、及び尿細管間質性線維症を特徴とする。いくつかのNPHP遺伝子の1つ、例えば、NPHP1における変異は、NPHPを有する患者において同定されている。NPHPを有する、または有することが疑われる対象に、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物を投与することを含む、NPHPを治療するための方法が、本明細書に提供される。
【0167】
特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患を有する対象は、ジョベール症候群及び関連障害(JSRD)を有する。JSRDには、脳、網膜、及び骨格の異常を含む、幅広い特徴的な特徴が含まれる。JSRDを有する特定の対象は、JSRDの特徴に加えて、多嚢胞性腎疾患を有する。したがって、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物をJSRDを有する対象に投与することを含む、JSRDを有する対象の多嚢胞性腎疾患を治療するための方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、対象は、JSRDを有することが疑われる。
【0168】
特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患を有する対象は、メッケル症候群(MKS)を有する。MKSは、中枢神経系、骨格系、肝臓、腎臓、及び心臓を含む身体の多くの部分で重篤な徴候及び症状を有する障害である。MKSの共通の特徴は、腎臓に多数の液体で満たされた嚢胞が存在し、腎臓が拡大することである。したがって、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物をMKSを有する対象に投与することを含む、MKSを治療するための方法が、本明細書に提供される。特定の実施形態では、対象は、MKSを有する疑いがある。
【0169】
特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患を有する対象は、バルデー・ビードル症候群(BBS)を有する。BBSは、目、心臓、腎臓、肝臓、消化器系など、身体の多くの部分に影響を与える障害である。BBSの特徴は、腎嚢胞の存在である。したがって、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書に提供される化合物をBBSを有する対象に投与することを含む、BBSを有する対象の多嚢胞性腎疾患を治療するための方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、対象は、BBSを有することが疑われる。
【0170】
特定の実施形態では、対象は、修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物の投与前に、PKDを有すると診断されている。PKDの診断は、これらに限定されないが、対象の家族歴、臨床的特徴(これらに限定されないが、高血圧、アルブミン尿、血尿、及びGFR障害を含む)、腎臓イメージング研究(MRI、超音波、及びCTスキャンを含むが、これらに限定されない)、及び/または組織学的解析を含むパラメータの評価によって達成され得る。
【0171】
特定の実施形態では、PKDの診断は、PKD1またはPKD2遺伝子のうちの1つ以上における変異のスクリーニングを含む。特定の実施形態では、ARPKDの診断は、PKHP1遺伝子の変異のスクリーニングを含む。特定の実施形態では、NPHPの診断は、NPHP1、NPHP2、NPHP3、NPHP4、NPHP5、NPHP6、NPHP7、NPHP8、またはNPHP9遺伝子のうちの1つ以上における1つ以上の変異についてスクリーニングすることを含む。特定の実施形態では、JSRDの診断は、NPHP1、NPHP6、AHI1、MKS3、またはRPGRIP1L遺伝子における変異のスクリーニングを含む。特定の実施形態では、MKSの診断は、NPHP6、MKS3、RPGRIP1L、NPHP3、CC2D2A、BBS2、BBS4、BBS6、またはMKS1遺伝子における変異のスクリーニングを含む。特定の実施形態では、BBSの診断は、BBS2、BBS4、BBS6、MKS1、BBS1、BBS3、BBS5、BBS7、BBS7、BBS8、BBS9、BBS10、BBS11、またはBBS12遺伝子の変異のスクリーニングを含む。
【0172】
特定の実施形態では、対象は、総腎体積の増加を有する。特定の実施形態では、総腎体積は、身長調整された総腎体積(HtTKV)である。特定の実施形態では、対象は、高血圧を有する。特定の実施形態では、対象は、腎機能障害を有する。特定の実施形態では、対象は、改善された腎機能を必要とする。特定の実施形態では、対象は、腎機能障害を有すると特定される。
【0173】
特定の実施形態では、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーのレベルは、PKDを有する対象の腎臓において増加する。特定の実施形態では、投与前に、対象は、腎臓における1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーのレベルの増加を有すると決定される。miR-17ファミリーメンバーのレベルは、腎生検材料から測定し得る。特定の実施形態では、投与前に、対象は、対象の尿または血中の1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーのレベルが増加していると決定される。特定の実施形態では、投与前に、対象は、対象の尿中のポリシスチン-1(PC1)またはポリシスチン-2(PC2)のレベルが低下していると決定される。特定の実施形態では、投与前に、対象は、対象の尿中のポリシスチン-1(PC1)またはポリシスチン-2(PC2)のレベルが低下していると決定される。特定の実施形態では、投与前に、対象は、対象の尿中のポリシスチン-1(PC1)及び/またはポリシスチン-2(PC2)のレベルの低下を有すると決定される。
【0174】
本明細書に提供される実施形態のいずれかでは、対象は、対象の多嚢胞性腎疾患を診断するために、例えば、多嚢胞性腎疾患の原因を決定するたに、対象の多嚢胞性腎疾患の程度を評価するために、及び/または治療に対する対象の応答を決定するために、特定の試験を受け得る。そのような試験は、多嚢胞性腎疾患のマーカーを評価し得る。糸球体濾過速度や血中尿素窒素レベルなどの特定の検査は、腎機能の指標でもある。多嚢胞性疾患のマーカーとしては、限定されないが、対象における総腎体積の測定、対象における高血圧の測定、対象における腎臓痛の評価、対象における線維症の測定、対象の尿中のポリシスチン-1(PC1)の測定、対象の尿中のポリシスチン-2(PC2)の測定、対象における血中尿素窒素レベルの測定、対象における血清クレアチニンレベルの測定、対象におけるクレアチニンクリアランスの測定、対象におけるアルブミン尿の測定、対象におけるアルブミン:クレアチニン比の測定、対象における糸球体濾過速度の測定、対象における血尿の測定、対象の尿中のNGALタンパク質の測定、及び/または対象の尿中のKIM-1タンパク質の測定が挙げられる。本明細書に別段の指示がない限り、血中尿素窒素レベル、血清クレアチニンレベル、クレアチニンクリアランス、アルブミン尿、アルブミン:クレアチニン比、糸球体濾過速度、及び血尿は、対象の血液(全血または血清など)の測定値を指す。
【0175】
多嚢胞性腎疾患のマーカーは、検査室における試験によって決定される。個々のマーカーの基準範囲は、検査室によって異なる場合がある。変動は、例えば、使用される特定のアッセイの違いに起因し得る。したがって、集団内のマーカーの正規分布の上限及び下限(それぞれ、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)としても知られている)は、検査室によって異なる場合がある。任意の特定のマーカーについて、医療専門家は、正規分布外のどのレベルが臨床的に関連し、及び/または疾患を示すかを判定し得る。例えば、医療専門家は、多嚢胞性腎疾患の対象における腎機能の速度の低下を示し得る糸球体濾過速度を決定し得る。
【0176】
特定の実施形態では、本明細書に提供される化合物の投与は、1つ以上の臨床的に有益な転帰をもたらす。特定の実施形態では、投与は、対象の腎機能を改善する。特定の実施形態では、投与は、対象における腎機能の低下速度を遅くする。特定の実施形態では、投与は、対象の総腎体積を減少させる。特定の実施形態では、投与は、対象における総腎体積の増加速度を遅くする。特定の実施形態では、投与は、身長調整された総腎体積(HtTKV)を減少させる。特定の実施形態では、投与は、HtTKVの増加速度を遅くする。
【0177】
特定の実施形態では、投与は、対象の尿中のポリシスチン-1(PC1)を増加させる。特定の実施形態では、投与は、対象の尿中のポリシスチン-2(PC2)を増加させる。特定の実施形態では、投与は、対象の尿中のポリシスチン-1(PC1)及びポリシスチン-2(PC2)を増加させる。
【0178】
特定の実施形態では、投与は、対象における嚢胞の増殖を阻害する。特定の実施形態では、投与は、対象における嚢胞の増殖の増加速度を遅くする。いくつかの実施形態では、嚢胞は、対象の腎臓に存在する。いくつかの実施形態では、嚢胞は、腎臓以外の臓器、例えば、肝臓に存在する。
【0179】
特定の実施形態では、投与は、対象の腎臓痛を軽減する。特定の実施形態では、投与は、対象における腎臓痛の増加を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象における腎臓痛の発症を遅らせる。
【0180】
特定の実施形態では、投与は、対象の高血圧を軽減する。特定の実施形態では、投与は、対象における高血圧の悪化を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象における高血圧の発症を遅らせる。
【0181】
特定の実施形態では、投与は、対象の腎臓における線維症を低減する。特定の実施形態では、投与は、対象の腎臓における線維症の悪化を遅らせる。
【0182】
特定の実施形態では、投与は、対象における末期腎疾患の発症を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象の透析までの時間を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象の腎移植までの時間を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象の平均余命を改善する。
【0183】
特定の実施形態では、投与は、対象におけるアルブミン尿を減少させる。特定の実施形態では、投与は、対象におけるアルブミン尿の悪化を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象におけるアルブミン尿の発症を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象における血尿を低減する。特定の実施形態では、投与は、対象における血尿の悪化を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象における血尿の発症を遅らせる。特定の実施形態では、投与は、対象における血中尿素窒素レベルを低下させる。特定の実施形態では、投与は、対象における血清クレアチニンレベルを低下させる。特定の実施形態では、投与は、対象におけるクレアチニンクリアランスを改善する。特定の実施形態では、投与は、対象におけるアルブミン:クレアチニン比を低下させる。
【0184】
特定の実施形態では、投与は、対象における糸球体濾過速度を改善する。特定の実施形態では、投与は、対象における糸球体濾過速度の低下速度を遅くする。特定の実施形態では、糸球体濾過速度は、推定糸球体濾過速度(eGFR)である。特定の実施形態では、糸球体濾過速度は、測定された糸球体濾過速度(mGFR)である。
【0185】
特定の実施形態では、投与は、対象の尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質を低減する。特定の実施形態では、投与は、対象の尿中の腎傷害分子-1(KIM-1)タンパク質を低減する。
【0186】
本明細書に提供される実施形態のいずれにおいても、対象は、対象における疾患の程度を評価するための特定の試験に供され得る。そのような試験には、対象における総腎体積の測定、対象における高血圧の測定、対象における腎臓痛の測定、対象の腎臓における線維症の測定、対象における血中尿素窒素レベルの測定、対象における血清クレアチニンレベルの測定、対象の血中クレアチニンクリアランスの測定、対象におけるアルブミン尿の測定、対象におけるアルブミン:クレアチニン比の測定、対象における糸球体濾過速度の測定(糸球体濾過速度は、推定または測定される)、対象の尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質の測定、及び/または対象の尿中の腎損傷分子-1(KIM-1)タンパク質の測定が含まれるが、これらに限定されない。
【0187】
特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患を有する対象は、生活の質の低下を経験する。例えば、多嚢胞性腎疾患を有する対象は、腎臓痛を経験し得、これは、対象の生活の質を低下させ得る。特定の実施形態では、投与は、対象の生活の質を改善する。
【0188】
本明細書に提供される実施形態のいずれにおいても、対象は、ヒト対象である。特定の実施形態では、ヒト対象は、成人である。特定の実施形態では、成人は、少なくとも21歳である。特定の実施形態では、ヒト対象は、小児対象であり、すなわち、対象は、21歳未満である。小児集団は、規制当局によって定義され得る。特定の実施形態では、ヒト対象は、青年である。特定の実施形態では、青年は、少なくとも12歳であり、21歳未満である。特定の実施形態では、ヒト対象は、小児である。特定の実施形態では、小児は、少なくとも2歳であり、12歳未満である。特定の実施形態では、ヒト対象は、乳児である。特定の実施形態では、乳児は、少なくとも1ヶ月齢であり、2歳未満である。特定の実施形態では、対象は、新生児である。特定の実施形態では、新生児は、生後1ヶ月未満である。
【0189】
本明細書に記載される任意の化合物は、療法に使用するためのものであり得る。本明細書に提供される任意の化合物は、多嚢胞性腎疾患の治療に使用するためのものであり得る。特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患は、常染色体優性多嚢胞性腎疾患である。特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患は、常染色体劣性多嚢胞性腎疾患である。特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患は、ネフロン癆である。特定の実施形態では、対象は、ジュベール症候群及び関連障害(JSRD)、メッケル症候群(MKS)、またはバルデー・ビードル症候群(BBS)を有する。
【0190】
本明細書に記載される修飾オリゴヌクレオチドのいずれかは、療法に使用するためのものであり得る。本明細書に提供される修飾オリゴヌクレオチのいずれかは、多嚢胞性腎疾患の治療に使用するためのものであり得る。
【0191】
本明細書に提供される化合物のいずれかは、薬剤の調製に使用するためのものであり得る。本明細書に提供される化合物のいずれかは、多嚢胞性腎疾患の治療のための薬剤の調製に使用するためのものであり得る。
【0192】
本明細書に提供される修飾オリゴヌクレオチドのいずれかは、薬剤の調製に使用するためのものであり得る。本明細書に提供される修飾オリゴヌクレオチドのいずれかは、多嚢胞性腎疾患の治療のための薬剤の調製に使用するためのものであり得る。
【0193】
本明細書に提供される薬学的組成物のいずれかは、多嚢胞性腎疾患の治療に使用するためのものであり得る。
【0194】
特定の追加の療法
多嚢胞性腎疾患または本明細書に列挙される状態のいずれかに対する治療は、2つ以上の療法を含み得る。したがって、特定の実施形態では、多嚢胞性腎疾患を有するまたは有することが疑われる対象を治療するための方法が本明細書に提供され、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む本明細書に提供される化合物を投与することに加えて、少なくとも1つの療法を施すことを含む。
【0195】
特定の実施形態では、少なくとも1つの追加の療法は、医薬品を含む。特定の実施形態では、医薬品は、抗高血圧剤である。抗高血圧薬は、対象の血圧を制御するために使用される。
【0196】
特定の実施形態では、医薬品は、バソプレシン受容体2アンタゴニストである。特定の実施形態では、バソプレシン受容体2アンタゴニストは、トルバプタンである。
【0197】
特定の実施形態では、医薬品は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を含む。特定の実施形態では、アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、カンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、またはエプロサルタンである。
【0198】
特定の実施形態では、医薬品は、アンジオテンシンII変換酵素(ACE)阻害剤を含む。特定の実施形態では、ACE阻害剤は、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、キナプリル、フォシノプリル、またはラミプリルである。
【0199】
特定の実施形態では、医薬品は、利尿剤である。特定の実施形態では、医薬品は、カルシウムチャネル遮断薬である。
【0200】
特定の実施形態では、医薬品は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤である。特定の実施形態では、グルコシルセラミドシンターゼ阻害剤は、ベングルスタットである。
【0201】
特定の実施形態では、医薬品は、抗高血糖薬である。特定の実施形態では、抗高血糖薬は、ビグアナイドである。特定の実施形態では、ビグアナイドは、メトホルミンである。
【0202】
特定の実施形態では、医薬品は、キナーゼ阻害剤である。特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ボスチニブまたはKD019である。
【0203】
特定の実施形態では、医薬品は、アドレナリン受容体拮抗薬である。
【0204】
特定の実施形態では、医薬品は、アルドステロン受容体拮抗剤である。特定の実施形態では、アルドステロン受容体拮抗剤は、スピロノラクトンである。特定の実施形態では、スピロノラクトンは、毎日10~35mgの範囲の用量で投与される。特定の実施形態では、スピロノラクトンは、毎日25mgの用量で投与される。
【0205】
特定の実施形態では、医薬品は、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤である。特定の実施形態では、mTOR阻害剤は、エベロリムス、ラパマイシン、またはシロリムスである。
【0206】
特定の実施形態では、医薬品は、ホルモンアナログである。特定の実施形態では、ホルモンアナログは、ソマトスタチンまたは副腎皮質刺激ホルモンである。
【0207】
特定の実施形態では、医薬品は、抗線維化剤である。特定の実施形態では、抗線維化剤は、miR-21に相補的な修飾オリゴヌクレオチドである。
【0208】
特定の実施形態では、追加の療法は、透析である。特定の実施形態では、追加の療法は、腎臓移植である。
【0209】
特定の実施形態では、医薬品は、抗炎症剤を含む。特定の実施形態では、抗炎症剤は、ステロイド性抗炎症剤である。特定の実施形態では、ステロイド抗炎症剤は、コルチコステロイドである。特定の実施形態では、コルチコステロイドは、プレドニゾンである。特定の実施形態では、抗炎症剤は、非ステロイド性抗炎症薬である。特定の実施形態では、非ステロイド性抗炎症剤は、イブプロフェン、COX-I阻害剤、またはCOX-2阻害剤である。
【0210】
特定の実施形態では、医薬品は、線維原性シグナルに対する1つ以上の応答をブロックする医薬品である。
【0211】
特定の実施形態では、追加の療法は、低用量シクロホスファミド、チモスチムリン、ビタミン、及び栄養補助食品(例えば、ビタミンA、C、E、β-カロテン、亜鉛、セレン、グルタチオン、コエンザイムQ-10、及びエキナセアを含む抗酸化剤)、ならびにワクチン、例えば、抗原の多量体提示及びアジュバントを組み合わせたワクチン製剤を含む免疫刺激複合体(ISCOM)を含む、体の免疫系を増強する医薬品であり得る。
【0212】
特定の実施形態では、追加の療法は、本明細書に提供される1つ以上の薬学的組成物の副作用を治療または緩和するために選択される。そのような副作用としては、これらに限定されないが、注射部位反応、肝機能異常、腎機能異常、肝毒性、腎毒性、中枢神経系異常、及びミオパチーが含まれる。例えば、血清中のアミノトランスフェラーゼレベルの上昇は、肝毒性または肝機能異常を示し得る。例えば、ビリルビンの増加は、肝毒性または肝機能異常を示し得る。
【0213】
特定のマイクロRNA核酸塩基配列
miR-17ファミリーには、miR-17、miR-20a、miR-20b、miR-93、miR-106a、及びmiR-106bが含まれる。miR-17ファミリーの各メンバーは、核酸塩基配列5’-AAAGUG-3’、または配列番号1の2~7位の核酸塩基配列であるmiR-17シード配列を含む核酸塩基配列を有する。さらに、miR-17ファミリーの各メンバーは、シード領域の外側でいくらかの核酸塩基配列同一性を共有する。したがって、miR-17シード配列に相補的な核酸塩基配列を含む修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17に加えて、miR-17ファミリーの他のマイクロRNAを標的とし得る。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの2つ以上のマイクロRNAを標的とする。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの3つ以上のマイクロRNAを標的とする。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの4つ以上のマイクロRNAを標的とする。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの5つ以上のマイクロRNAを標的とする。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの6つのマイクロRNAを標的とする。例えば、核酸塩基配列5’-AGCACUUU-3’を有する修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーのすべてのメンバーを標的とする。
【0214】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACUUU-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCACUUU-3’を含む。
【0215】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACUUUX-3’を含み、式中、Xは、ウラシル核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、プリン核酸塩基は、6位に水素結合アクセプターを有しない。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-GCACUUUX-3’を含み、式中、Xは、ウラシル核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、プリン核酸塩基は、6位に水素結合アクセプターを有しない。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCACUUUX-3’を含み、式中、Xは、ウラシル核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、プリン核酸塩基は、6位に水素結合アクセプターを有しない。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCACUUUX-3’であり、Xは、ウラシル核酸塩基、シトシン核酸塩基、またはプリン核酸塩基であるが、但し、プリン核酸塩基は、6位に水素結合アクセプターを有しない。
【0216】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCACUUUA-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCACUUU-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCACUU-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCACU-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCAC-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AGCA-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-GCACUUUA-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACUUUA-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-ACUUUA-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CUUUA-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-AAGCACUUUA-3’を含む。
【0217】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACTTT-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACUTT-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACUUT-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACTUT-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACUTT-3’を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5’-CACTTU-3’を含む。
【0218】
特定の実施形態では、各シトシンは、独立して、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから選択される。特定の実施形態では、少なくとも1つのシトシンは、非メチル化シトシンである。特定の実施形態では、各シトシンは、非メチル化シトシンである。特定の実施形態では、少なくとも1つのシトシンは、5-メチルシトシンである。特定の実施形態では、各シトシンは、5-メチルシトシンである。
【0219】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの連結ヌクレオシド数は、標的マイクロRNAの長さよりも短い。修飾オリゴヌクレオチドは、標的マイクロRNAの長さよりも短い連結ヌクレオシドの数を有し、修飾オリゴヌクレオチドの各核酸塩基は、標的マイクロRNAの対応する位置で核酸塩基に相補的であり、標的マイクロRNA配列の領域に対して完全に相補的(100%相補的とも呼ばれる)な核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドであると考えられる。例えば、修飾オリゴヌクレオチドは、9個の連結ヌクレオシドからなり、各核酸塩基はmiR-17の対応する位置に相補的であり、miR-17に完全に相補的である。
【0220】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、標的マイクロRNAの核酸塩基配列に関して1つのミスマッチを有する核酸塩基配列を有する。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、標的マイクロRNAの核酸塩基配列に関して2つのミスマッチを有する核酸塩基配列を有する。特定のそのような実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、標的マイクロRNAの核酸塩基配列に関して2つ以下のミスマッチを有する核酸塩基配列を有する。特定のそのような実施形態では、ミスマッチ核酸塩基は、連続的である。特定のそのような実施形態では、ミスマッチ核酸塩基は、連続的でない。
【0221】
本出願に添付される配列表は、必要に応じて、各核酸塩基配列を「RNA」または「DNA」のいずれかとして特定するが、実際には、それらの配列は、本明細書に指定される化学修飾の組み合わせによって修飾され得る。当業者は、配列表において、修飾オリゴヌクレオチドを説明するための「RNA」または「DNA」などの指定がいくらか恣意的であることを容易に理解するであろう。例えば、2’-O-メトキシエチル糖部分及びチミン塩基を含むヌクレオシドを含む修飾オリゴヌクレオチドは、ヌクレオシドが修飾されており、天然DNAヌクレオシドではない場合でも、配列表のDNA残基として記載され得る。
【0222】
したがって、配列表に提供される核酸配列は、修飾核酸塩基を有するそのような核酸を含むがこれらに限定されない、天然または修飾RNA及び/またはDNAの任意の組み合わせを含有する核酸を包含することを意図する。さらなる例として、限定されないが、配列表の核酸塩基配列「ATCGATCG」を有する修飾オリゴヌクレオチドは、修飾または非修飾にかかわらず、これらに限定されないが、配列「AUCGAUCG」を有するものなどのRNA塩基、ならびに「AUCGATCG」などのいくつかのDNA塩基及びいくつかのRNA塩基を有するもの、ならびにmeCが5-メチルシトシンを示す、「ATmeCGAUCG」などの他の修飾塩基を有するオリゴヌクレオチドを含むそのような化合物を含む任意のオリゴヌクレオチドを包含する。
【0223】
特定の修飾
特定の実施形態では、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドは、核酸塩基、糖、及び/またはヌクレオシド間連結に対する1つ以上の修飾を含み得、したがって、修飾オリゴヌクレオチドであり得る。例えば、細胞取り込みの増強、他のオリゴヌクレオチドまたは核酸標的に対する親和性の増強、及びヌクレアーゼの存在下での安定性の増大などの望ましい特性のために、非修飾形態よりも修飾核酸塩基、糖、及び/またはヌクレオシド間連結のほうが選択され得る。
【0224】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0225】
特定の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、糖修飾ヌクレオシドである。特定のそのような実施形態では、糖修飾ヌクレオシドは、天然もしくは修飾複素環式塩基部分をさらに含み得、及び/または天然もしくは修飾ヌクレオシド間連結を介して別のヌクレオシドに結合され得、及び/または糖修飾とは独立したさらなる修飾を含み得る。特定の実施形態では、糖修飾ヌクレオシドは、2’-修飾ヌクレオシドであり、糖環は、天然リボースまたは2’-デオキシ-リボース由来の2’炭素で修飾される。
【0226】
特定の実施形態では、2’-修飾ヌクレオシドは、二環式糖部分を有する。特定のそのような実施形態では、二環式糖部分は、アルファ配置のD糖である。特定のそのような実施形態では、二環式糖部分は、ベータ配置のD糖である。特定のそのような実施形態では、二環式糖部分は、アルファ配置のL糖である。特定のそのような実施形態では、二環式糖部分は、ベータ配置のL糖である。
【0227】
そのような二環式糖部分を含むヌクレオシドは、二環式ヌクレオシドまたはBNAと称される。特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドには、以下に示すように、(A)α-L-メチレンオキシ(4’-CH
2-O-2’)BNA、(B)β-D-メチレンオキシ(4’-CH
2-O-2’)BNA、(C)エチレンオキシ(4’-(CH
2)
2-O-2’)BNA、(D)アミノオキシ(4’-CH
2-O-N(R)-2’)BNA、(E)オキシアミノ(4’-CH
2-N(R)-O-2’)BNA、(F)メチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH
3)-O-2’)BNA(拘束エチルまたはcEtとも称される)、(G)メチレン-チオ(4’-CH
2-S-2’)BNA、(H)メチレン-アミノ(4’-CH2-N(R)-2’)BNA、(I)メチル炭素環式(4’-CH
2-CH(CH
3)-2’)BNA、(J)c-MOE(4’-CH(CH
2-OMe)-O-2’)BNA、及び(K)プロピレン炭素環式(4’-(CH
2)
3-2’)BNAが含まれるが、これらに限定されない。
【化13】
式中、Bxは、核酸塩基部分であり、Rは独立して、H、保護基、またはC
1-C
12アルキルである。
【0228】
特定の実施形態では、2’-修飾ヌクレオシドは、F、OCF3、O-CH3(「2’-OMe」とも称される)、OCH2CH2OCH3(「2’-O-メトキシエチル」または「2’-MOE」とも称される)、2’-O(CH2)2SCH3、O-(CH2)2-O-N(CH3)2、-O(CH2)2O(CH2)2N(CH3)2、及びO-CH2-C(=O)-N(H)CH3から選択される2’-置換基を含む。
【0229】
特定の実施形態では、2’-修飾ヌクレオシドは、F、O-CH3、及びOCH2CH2OCH3から選択される2’-置換基を含む。
【0230】
特定の実施形態では、糖修飾ヌクレオシドは、4’-チオ修飾ヌクレオシドである。特定の実施形態では、糖修飾ヌクレオシドは、4’-チオ-2’-修飾ヌクレオシドである。4’-チオ修飾ヌクレオシドは、4’-Oが4’-Sで置換されたβ-Dリボヌクレオシドを有する。4’-チオ-2’-修飾ヌクレオシドは、2’置換基で置換された2’-OHを有する4’チオ修飾ヌクレオシドである。好適な2’-置換基としては、2’-OCH3、2’-OCH2CH2OCH3、及び2’-Fが含まれる。
【0231】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオシド間修飾を含む。特定のそのような実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結は、修飾ヌクレオシド間連結である。特定の実施形態では、修飾ヌクレオシド間連結は、リン原子を含む。
【0232】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0233】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾核酸塩基を含む。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は、5-ヒドロキシメチルシトシン、7-デアザグアニン、及び7-デアザアデニンから選択される。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、及び2-ピリドンから選択される。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、及び5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6、及びO-6置換プリンから選択される。
【0234】
特定の実施形態では、修飾核酸塩基は、多環式複素環である。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は、三環式複素環である。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は、フェノキサジン誘導体である。特定の実施形態では、フェノキサジンは、Gクランプとして当技術分野で既知の核酸塩基を形成するようにさらに修飾され得る。
【0235】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、得られるアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを増強する1つ以上の部分に複合される。特定のそのような実施形態では、部分は、コレステロール部分である。特定の実施形態では、部分は、脂質部分である。複合のための追加の部分としては、炭水化物、ペプチド、抗体または抗体断片、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が含まれる。特定の実施形態では、炭水化物部分は、N-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNac)である。特定の実施形態では、複合基は、オリゴヌクレオチドに直接結合される。特定の実施形態では、複合基は、アミノ、アジド、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、不飽和(例えば、二重または三重結合)、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(ADO)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、6-アミノヘキサン酸(AHEXまたはAHA)、置換C1-C10アルキル、置換または非置換C2-C10アルケニル、及び置換または非置換C2-C10アルキニルから選択される連結部分によって、修飾オリゴヌクレオチドに付着する。特定のそのような実施形態では、置換基は、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、アジド、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ、チオール、チオアルコキシ、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル、及びアルキニルから選択される。
【0236】
特定のそのような実施形態では、化合物は、例えば、ヌクレアーゼ安定性などの特性を増強するために、修飾オリゴヌクレオチドの一方または両方の末端に付着している1つ以上の安定化基を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む。安定化基には、キャップ構造が含まれる。これらの末端修飾は、修飾オリゴヌクレオチドをエキソヌクレアーゼ分解から保護し、細胞内の送達及び/または局在化を助けることができる。キャップは、5’末端(5’キャップ)に存在し得るか、または3’末端(3’キャップ)に存在し得るか、または両方の末端に存在し得る。キャップ構造としては、例えば、逆デオキシ脱塩基性キャップが含まれる。
【0237】
特定の薬学的組成物
本明細書に提供される化合物または修飾オリゴヌクレオチド、及び薬学的に許容される希釈剤を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。特定の実施形態では、薬学的に許容される希釈剤は、水溶液である。特定の実施形態では、水溶液は、生理食塩水である。本明細書で使用される場合、薬学的に許容される希釈剤は、無菌の希釈剤であると理解されている。好適な投与経路としては、これらに限定されないが、静脈内及び皮下投与が挙げられる。特定の実施形態では、投与は、静脈内投与である。特定の実施形態では、投与は、皮下投与である。特定の実施形態では、投与は、経口投与である。
【0238】
特定の実施形態では、薬学的組成物は、投薬単位の形態で投与される。例えば、特定の実施形態では、投薬単位は、錠剤、カプセル、またはボーラス注射の形態である。
【0239】
特定の実施形態では、医薬品は、好適な希釈剤で調製され、調製中に酸または塩基でpH7.0~9.0に調整され、次いで滅菌条件下で凍結乾燥されている、修飾オリゴヌクレオチドである。その後、凍結乾燥された修飾オリゴヌクレオチドは、好適な希釈剤、例えば、水などの水溶液、または生理食塩水、ハンクス液、もしくはリンゲル液などの生理学的に適合性のある緩衝液で再構成される。再構成された生成物は、皮下注射または静脈内注入として投与される。凍結乾燥製剤は、2mLのI型の透明なガラスバイアル(硫酸アンモニウム処理)にパッケージされ、ブロモブチルゴムクロージャーで栓をされ、アルミニウムのオーバーシールで密封され得る。
【0240】
特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、それらの当該技術分野で確立された使用レベルで、薬学的組成物に従来見られる他の補助成分をさらに含有し得る。したがって、例えば、組成物は、例えば、鎮痒剤、収斂剤、局所麻酔薬または抗炎症剤などの、追加の適合性のある薬学的に活性な材料を含み得る。
【0241】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、色素、香味剤、防腐剤、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤、及び安定剤などの、本明細書に提供される組成物の様々な剤形を物理的に製剤化するのに有用な追加の材料を含有し得、そのような追加の材料には、これらに限定されないが、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミラーゼ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンなどの賦形剤も含まれる。様々な実施形態では、そのような材料は、追加される場合に、本明細書に提供される組成物の成分の生物学的活性を不当に妨害してはならない。製剤は、滅菌され、必要に応じて、製剤のオリゴヌクレオチド(複数可)と有害に相互作用しない補助剤、例えば、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝液、着色剤、香料及び/または芳香族物質などと混合することができる。注入用のある特定の薬学的組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンであり、懸濁化剤、安定化剤、及び/または分散剤等の製剤化剤を含有し得る。注入用の薬学的組成物における使用に好適なある特定の溶媒には、親油性溶媒及び脂肪油、例えば、ゴマ油、合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド、及びリポソームが含まれるが、これらに限定されない。水性注入懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン等の懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意に、そのような懸濁液は、好適な安定剤または高度に濃縮された溶液の調製を可能にする医薬品の溶解度を増加させる薬剤も含有し得る。
【0242】
脂質部分は、様々な方法で核酸療法において用いられている。1つの方法では、核酸は、陽イオン性脂質及び中性脂質の混合物から作製された予め形成されたリポソームまたはリポプレックスに導入される。別の方法では、単陽イオン性脂質または多陽イオン性脂質とのDNA複合体は、中性脂質の存在なしに形成される。特定の実施形態では、脂質部分は、特定の細胞または組織への医薬品の分布を増加させるように選択される。特定の実施形態では、脂質部分は、脂肪組織への医薬品の分布を増加させるように選択される。特定の実施形態では、脂質部分は、筋肉組織への医薬品の分布を増加させるように選択される。
【0243】
特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、核酸と複合体化されたポリアミン化合物または脂質部分を含む。特定の実施形態では、そのような調製物は、式(Z)によって定義される構造またはその薬学的に許容される塩をそれぞれ個別に有する1つ以上の化合物を含み、
【化14】
式中、各X
a及びX
bは、各出現に関して独立して、C
1~6アルキレンであり、nは、0、1、2、3、4、または5であり、各Rは独立して、Hであり、調製物中の式(Z)の化合物の分子の少なくとも約80%のR部分の少なくともn+2個は、Hではなく、mは、1、2、3、または4であり、Yは、O、NR
2、またはSであり、R
1は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、これらの各々は任意選択により、1つ以上の置換基で置換され、R
2は、H、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、これらの各々は任意選択により、1つ以上の置換基で置換されるが、但し、nが0の場合、少なくともn+3個のR部分は、Hではない。このような調製物は、PCT公開WO/2008/042973に記述されており、脂質調製物の開示のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の追加の調製物は、Akinc et al.,Nature Biotechnology 26,561-569(2008年5月01日)に記載されており、脂質調製物の開示のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0244】
特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、限定されないが、混合、溶解、造粒、糖衣形成、研和、乳化、封入、捕捉、または錠剤化プロセスを含む、既知の技術を使用して調製される。
【0245】
特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、固体(例えば、粉末、錠剤、及び/またはカプセル)である。特定のそのような実施形態では、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む固体薬学的組成物は、これらに限定されないが、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤を含む当該技術分野で既知の成分を使用して調製される。
【0246】
特定の実施形態では、本明細書で提供される薬学的組成物は、デポ調製物として製剤化される。特定のそのようなデポ調製物は、典型的には、非デポ調製物よりも長時間作用する。特定の実施形態では、そのような調製物は、移植(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注入によって投与される。特定の実施形態では、デポ調製物は、好適なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳濁液)もしくはイオン交換樹脂を使用して、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として調製される。
【0247】
特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、送達系を含む。送達系の例として、リポソーム及びエマルジョンが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の送達系は、疎水性化合物を含む薬学的組成物を含むある特定の薬学的組成物の調製に有用である。特定の実施形態では、ジメチルスルホキシド等のある特定の有機溶媒が用いられる。
【0248】
特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、本明細書に提供される1つ以上の医薬品を特定の組織または細胞型に送達するように設計された1つ以上の組織特異的送達分子を含む。例えば、特定の実施形態では、薬学的組成物は、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームを含む。
【0249】
特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、持続放出系を含む。かかる持続放出系の非限定的な例は、固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスである。特定の実施形態では、持続放出系は、その化学的性質に応じて、数時間、数日、数週間、または数ヶ月にわたって医薬品を放出し得る。
【0250】
注入用のある特定の薬学的組成物は、単位剤形で、例えば、アンプル単位で提供されるか、または多用量容器内に提供される。
【0251】
特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物は、治療有効量の修飾オリゴヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、治療有効量は、疾患の症状を防止するか、疾患の症状を軽減するか、もしくは疾患の症状を改善するか、または治療される対象の生存期間を延長させるのに十分な量である。
【0252】
特定の実施形態では、本明細書に提供される1つ以上の修飾オリゴヌクレオチドは、プロドラッグとして製剤化される。特定の実施形態では、インビボ投与時、プロドラッグは、オリゴヌクレオチドの生物学的、薬学的、または治療的により活性な形態に化学的に変換される。特定の実施形態では、プロドラッグは、対応する活性形態よりも投与しやすいため、有用である。例えば、ある特定の事例において、プロドラッグは、対応する活性形態よりも生物学的に利用可能である(例えば、経口投与によって)。ある特定の事例において、プロドラッグは、対応する活性形態と比較して、改善された溶解度を有し得る。特定の実施形態では、プロドラッグは、対応する活性形態よりも水溶性が低い。ある特定の事例において、そのようなプロドラッグは、水溶解度が移動性に害を及ぼす細胞膜にわたって優れた透過性を有する。特定の実施形態では、プロドラッグは、エステルである。ある特定のそのような実施形態では、エステルは、投与時にカルボン酸に代謝的に加水分解される。ある特定の事例において、カルボン酸含有化合物は、対応する活性形態である。特定の実施形態では、プロドラッグは、酸基に結合される短ペプチド(ポリアミノ酸)を含む。ある特定のそのような実施形態では、ペプチドは、投与時に切断されて、対応する活性形態を形成する。
【0253】
特定の実施形態では、プロドラッグは、活性化合物がインビボ投与時に再生されるように、薬学的に活性な化合物を修飾することによって産生される。プロドラッグは、薬物の代謝安定性または輸送特性を変更し、副作用または毒性を遮蔽し、薬物の風味を改善し、または薬物の他の特徴または特性を変更するように設計することができる。インビボでの薬物力学的プロセス及び薬物代謝の知識により、当業者は、薬学的に活性な化合物を認知すると、化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady(1985)Medicinal Chemistry A Biochemical Approach,Oxford University Press,New York,388~392ページを参照されたい)。
【0254】
追加の投与経路としては、これらに限定されないが、経口、直腸、経粘膜、腸、経腸、局所、坐薬、吸入、髄腔内、心臓内、脳室内、腹腔内、鼻腔内、眼内、腫瘍内、筋肉内、及び髄内投与が含まれる。特定の実施形態では、薬学的髄腔内薬が投与されて、全身曝露ではなく局所曝露を達成する。例えば、薬学的組成物は、効果の所望される領域(例えば、肝臓に)直接注入され得る。
【0255】
特定のキット
キットも提供される。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に開示される修飾オリゴヌクレオチドを含む1つ以上の化合物を含む。いくつかの実施形態では、キットは、化合物を対象に投与するために使用され得る。
【0256】
特定の実施形態では、キットは、投与の準備ができた薬学的組成物を含む。特定の実施形態では、薬学的組成物は、バイアル内に存在する。10個など複数のバイアルは、例えば、分配パック内に存在し得る。いくつかの実施形態では、バイアルは、注射器で利用できるように製造されている。キットは、化合物を使用するための説明書も含むことができる。
【0257】
いくつかの実施形態では、キットは、バイアル内ではなく、事前に充填されたシリンジ(例えば、ニードルガードを有する27ゲージ、1/2インチのニードルを有する単回投与シリンジなど)内に存在する薬学的組成物を含む。10個など複数の事前に充填されたシリンジは、例えば、分配パック内に存在し得る。キットは、本明細書に開示される修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与するための説明書も含むことができる。
【0258】
いくつかの実施形態では、キットは、凍結乾燥製剤として本明細書に提供される修飾オリゴヌクレオチド、及び薬学的に許容される希釈剤を含む。対象への投与の調整において、凍結乾燥製剤が、薬学的に許容される希釈剤中で再構成される。
【0259】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物に加えて、キットは、シリンジ、アルコールスワブ、綿球、及び/またはガーゼパッドのうちの1つ以上をさらに含むことができる。
【0260】
特定の実験モデル
特定の実施形態では、実験モデルにおいて本明細書に提供される修飾オリゴヌクレオチドを使用及び/または試験する方法が提供される。当業者は、そのような実験モデルのプロトコルを選択及び改変して、本明細書に提供される医薬品を評価することができる。
【0261】
一般に、修飾オリゴヌクレオチドは、最初に培養細胞で試験される。好適な細胞型としては、修飾オリゴヌクレオチドのインビボ送達が所望される細胞型に関連するものが含まれる。例えば、本明細書に記載の方法の研究に好適な細胞型には、初代または培養細胞が含まれる。
【0262】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドが1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーの活性を干渉する程度は、培養細胞で評価される。特定の実施形態では、マイクロRNA活性の阻害は、予測または検証されたマイクロRNA制御転写産物のうちの1つ以上のレベルを測定することによって評価され得る。マイクロRNA活性の阻害は、miR-17ファミリーメンバー制御転写産物、及び/またはmiR-17ファミリーメンバー制御転写産物によってコードされるタンパク質(すなわち、miR-17ファミリーメンバー制御転写産物は、抑制解除される)の増加をもたらし得る。さらに、特定の実施形態では、特定の表現型転帰が測定され得る。
【0263】
ヒトの疾患のモデルにおける1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーの研究のために、いくつかの動物モデルが当業者に利用可能である。多嚢胞性腎疾患のモデルとしては、これらに限定されないが、Pkd1及び/またはPkd2に変異及び/または欠失を有するモデル、ならびに他の遺伝子の変異を含むモデルが含まれる。Pkd1及び/またはPkd2における変異及び/または欠失を含むPKDの非限定的な例示的なモデルには、低形質モデル、例えば、Pkd1におけるミスセンス変異を含むモデル、及びPkd2の発現が低減または不安定なモデル、誘導性条件付きノックアウトモデル、及び条件付きノックアウトモデルが含まれる。Pkd1及びPkd2以外の遺伝子の変異を含む非限定的な例示的PKDモデルとしては、Pkhd1、Nek8、Kif3a、及び/またはNphp3に変異を有するモデルが挙げられる。PKDモデルは、例えば、Shibazaki et al.,Human Mol.Genet.,2008;17(11):1505-1516;Happe and Peters,Nat Rev Nephrol.,2014;10(10):587-601;及びPatel et al.,PNAS,2013;110(26):10765-10770に概説されている。
【0264】
特定の定量アッセイ
特定の実施形態では、マイクロRNAレベルは、インビトロまたはインビボで細胞または組織中で定量化される。特定の実施形態では、マイクロRNAレベルの変化は、マイクロアレイ分析によって測定される。特定の実施形態では、マイクロRNAレベルの変化は、TaqMan(登録商標)MicroRNA Assay(Applied Biosystems)などのいくつかの市販のPCRアッセイのうちの1つによって測定される。
【0265】
抗miRまたはマイクロRNA模倣物によるマイクロRNA活性の調節は、mRNAのマイクロアレイプロファイリングによって評価され得る。抗miRまたはマイクロRNA模倣物によって調節される(増加または減少のいずれか)mRNAの配列は、マイクロRNAの標的であるmRNAの調節をマイクロRNAの標的ではないmRNAの調節と比較するためにマイクロRNAシード配列を検索する。このようにして、抗miRとその標的マイクロRNA、またはマイクロRNA模倣物とその標的との相互作用を評価することができる。抗miRの場合、発現レベルが増加するmRNAは、抗miRが相補的であるマイクロRNAとのシードマッチを含むmRNA配列についてスクリーニングされる。
【0266】
抗miR化合物によるマイクロRNA活性の調節は、マイクロRNAのメッセンジャーRNA標的のレベルを測定することによって、メッセンジャーRNA自体のレベル、またはそこから転写されるタンパク質のいずれかを測定することによって評価され得る。マイクロRNAのアンチセンス阻害は、概して、マイクロRNAのメッセンジャーRNA及び/またはメッセンジャーRNA標的のタンパク質のレベルの増加、すなわち、抗miR治療は、1つ以上の標的メッセンジャーRNAの抑制解除をもたらす。
【実施例】
【0267】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより完全に例示するために提示されている。しかしながら、それらは、決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0268】
当業者は、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な化合物を設計するために、この発見の基礎となる原理を容易に採用するであろう。
【0269】
実施例1:PKDにおけるmiR-17の役割
マイクロRNAにおけるmiR-17~92クラスターのmiR-17ファミリーメンバーは、PKDのマウスモデルにおいて上方制御される。PKDのマウスモデルにおけるmiR-17~92クラスターの遺伝子欠失は、腎嚢胞の成長を減少させ、腎機能を改善し、生存を延長する(Patel et al.,PNAS,2013;110(26): 10765-10770)。miR-17~92クラスターは、それぞれが異なる配列:miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-19-b-1及びmiR-92a-1を有する6つの異なるマイクロRNAを含む。
【0270】
miR-17~92クラスターは、マイクロRNAのmiR-17ファミリーのメンバーである2つのマイクロRNAである、miR-17及びmiR-20aを含む。このファミリーの各メンバーは、シード配列同一性、及びシード領域外の様々な程度の配列同一性を共有する。miR-17ファミリーの他のメンバーは、miR-20b、miR-93、miR-106a、及びmiR-106bである。miR-20b及びmiR-106aは、ヒトX染色体上のmiR-106a~363クラスター内に存在し、miR-93及びmiR-106bは、ヒト7番染色体上のmiR-106b~25クラスター内に存在する。miR-17ファミリーメンバーの配列を表1に示す。
【表1】
【0271】
抗miR-17化合物RGLS4326は、最適な薬学的特性のために抗miR-17オリゴヌクレオチドの化学的に多様で合理的に設計されたライブラリをスクリーニングすることによって発見された。RGLS4326は、腎臓及び収集管由来嚢胞に優先的に分布し、miR-17を翻訳活性ポリソームから置換し、Pkd1及びPkd2を含む複数のmiR-17 mRNA標的を抑制解除する。重要なことに、RGLS4326は、皮下投与後のヒトインビトロ ADPKDモデル及び複数のPKDマウスモデルにおける嚢胞成長を減弱する。健康なボランティアにおけるRGLS4326の第1相単回上昇用量(SAD)臨床試験が2017年12月に開始され、続いて2018年5月に健康なボランティアにおける第1相多重上昇用量(MAD)臨床試験が開始された。常染色体優性多嚢胞性腎疾患(ADPKD)を有する患者の治療のためのRGLS4326の第1b相臨床試験を、2020年10月に開始した。
【0272】
第1相MAD臨床試験の開始に続く非臨床毒性試験は、高用量のRGLS4326で、異常な歩行、運動活動の低下、及び/または衰弱を含む、中枢神経系(CNS)関連の所見を明らかにした。オフターゲット薬理学の潜在的な候補を同定するために、Gタンパク質結合受容体、トランスポーター、イオンチャネル、核受容体、及びサイトカイン受容体を含む174個の標的のパネルを、インビトロで、RGLS4326との可能な相互作用について評価した。RGLS4326は、リガンド結合に基づいて4.6μM(14.2μg/mL)の50%阻害濃度(IC50)、及びパッチクランプ活性に基づいて300~600nM(0.9~1.8μg/mL)の機能的IC50を有する、AMPAグルタミン酸受容体のアンタゴニストであることが見出された。AMPA受容体は、CNSの興奮性シナプス上のイオンチャネルであり、速い興奮性神経伝達を媒介し、したがって、すべてのニューロンネットワークの重要な構成要素である。AMPA受容体とのそのような相互作用は、非臨床毒性モデルにおいて、高用量のRGLS4326で観察されたCNS媒介性所見を説明することができる。
【0273】
実施例2:低減されたAMPA受容体結合を有する抗miR-17化合物のスクリーニング
RGLS4326は、以下の配列及び化学修飾パターン:ASGSCMAFCFUFUMUSGS(式中、下付き文字「M」が続くヌクレオシドが2’-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」が続くヌクレオシドが2’-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」が続くヌクレオシドがS-cEtヌクレオシドであり、各シトシンが非メチル化シトシンであり、すべての連結がホスホロチオエート連結である)を有する。RGLS4326の化学修飾及び長さバリアントを、RGLS4326の効力及び薬物動態学的プロファイルを保持し、かつAMPA受容体(AMPA-R)への結合の低減を示す化合物を特定するように設計及びスクリーニングした。
【0274】
RGLS4326に対して、化合物のライブラリを、様々な化学修飾、核酸塩基配列、及び長さで設計した。
【表2】
【0275】
抗miR-17化合物の活性を、増大する濃度の抗miR-17化合物の存在下で、ラット脳シナプス膜上に存在するAMPA-Rへの[3H]AMPAリガンドの結合を測定する放射性リガンド結合アッセイで評価した。AMPA-Rに対する親和性を有する抗miR-17化合物は、[3H]AMPAリガンドに結合し、[3H]AMPAリガンドの結合と競合する。
【0276】
アッセイは、以前に公開された方法に従って実施した(Honore et al.,J Neurochem.,1982,38(1):173-178;Olsen et al.,Brain Res.,1987,402(2):243-254)。5.0nMのリガンド[
3H]AMPA、1.0mMの非特異的リガンドL-グルタミン酸、及びuM濃度の抗miR化合物を、Wistarラット大脳皮質から調製したシナプス膜で90分間インキュベートした。表2に示される化合物を3つの実験で試験した。miR-17以外のマイクロRNAを標的とする抗miRを対照化合物として使用した(miR-33aを標的とするRG5124;let-7aを標的とするRG5365;miR-214を標的とするRG8093)。RGLS4326及びRG-NG-1001もまた、AMPA-Rに結合し、その活性を阻害することが実証されたので、各実験で試験した。[
3H]AMPAリガンドの量を、放射性リガンド結合によって定量し、表3、4、及び5に示す。データによって示されるように、化合物は、放射性標識リガンドのAMPA-Rへの結合を阻害する能力が異なる。
【表3】
【表4】
【表5】
【0277】
AMPA-Rに対する抗miR-17オリゴヌクレオチドの機能的拮抗を評価するために、特定のオリゴヌクレオチドを、AMPA-R活性の測定値として、膜電流を記録する手動全細胞パッチクランプ技術を使用して試験した。
【0278】
手動全細胞パッチクランプ試験は、Metrion Biosciences (Cambridge,UK)によって実施した。全セル電圧クランプ実験を、Patchmasterソフトウェア(HEKA Elektronik)を使用してEPC10パッチクランプ増幅器を使用して、室温(18~21℃)で行った。ホウケイ酸ガラス毛細管(Harvard Apparatus)から、1.4~2.5MΩの抵抗にガラスパッチピペットを作製した。膜電流は、全細胞パッチクランプ技術を使用して記録した。ChanTest(登録商標)GluA1/GluA4 EZCellを-80mVの保持電位でクランプし、VC38灌流システム(ALA Scientific Instruments)を使用して10μM(S)-AMPAによって送達された膜電流を引き出した。最小電流振幅値は、10μM(S)-AMPAの各適用で測定した。化合物の各濃度によって生成される電流振幅の分数変化を、対照電流(事前化合物)と比較して計算し、各細胞のパーセンテージ変化(%阻害)として表した。試験した化合物を表6に示す。RGLS4326を、表6の他のすべての化合物とは別の試験で試験した。
【0279】
表6に示すように、RGLS4326と比較して、化合物RG-NG-1015、RG-NG-1016、及びRG-NG-1017は、ヒトChanTest(登録商標)GluA1/GluA4 EZ-Cellにおける手動全細胞パッチクランプ研究に基づいて、AMPA-Rに対する機能的拮抗の減少を示した。
【表6】
【0280】
実施例3:核酸塩基特性とAMPA-R結合との関係
AMPA-R結合及び全細胞パッチクランプ研究によって示されるように、miR-17の第1のヌクレオチドに相補的な位置にある、抗miR-17オリゴヌクレオチドの3’末端におけるグアノシンの存在は、AMPA-Rの機能的拮抗に影響を与える。グアノシンと同様に、アデノシンは、プリンであるが、アデノシンは、AMPA-Rを阻害しなかった。グアノシン及びアデノシンは、水素結合を除いていくつかの特性に関して類似しているため、プリン塩基の1、2、及び6位における水素結合の違いを評価した。試験したプリン核酸塩基を
図1及び表7に示す。表7の「プリン位置」列において、「A」は、水素アクセプターであるプリンの位置を示し、「D」は、水素ドナーであるプリンの位置を示す。表7の「プリン位置」列において、「N」は、水素アクセプターまたはドナーのどちらでもない自然な位置を示す。また、プリン核酸塩基上の様々な2’-糖部分を試験して、プリン核酸塩基が糖AMPA-Rを阻害する能力に対する2’-糖部分化学の影響を評価した。
【表7】
【0281】
化合物を、本明細書に記載の放射性リガンド結合アッセイで試験して、抗miR-17化合物の、[
3H]AMPAリガンドの結合に対する能力及びそれと競合する能力を決定した。表8に示すように、+AMPA-Rへのリガンド結合の阻害と、オリゴヌクレオチドの3’末端の核酸塩基のプリンの6位に水素結合アクセプターの存在との間に相関が観察された。例えば、3’末端にグアノシンまたはイノシンを有する化合物は、AMPA-Rへのリガンド結合の阻害をもたらした。プリンの6位に水素結合アクセプターを有する3’末端核酸塩基を有する化合物、例えば、RG-NG-1037及びRG-NG-1039は、AMPA-Rへのリガンド結合を阻害する可能性が低かった。
【表8】
【0282】
実施例4:AMPA-Rの結合及び阻害が低減した抗miR-17化合物は、高用量試験においてCNS毒性を示さなかった。
RG-NG-1015、RG-NG-1016、及びRG-NG-1017を、高用量マウス毒性試験で試験した。各化合物を、2000mg/kgの単回投与、及び漸増投与(100、450、及び2000mg/kg)で試験した。表9に示すように、RG-NG-1001及びRGLS4326の漸増投与は、運動失調、昏睡をもたらし、RGLS4326の場合、最高用量での意識不明をもたらし、RG-NG-1015、RG-NG-1016、またはRG-NG-1017について、CNS毒性は観察されなかった。
【表9】
【0283】
実施例5:最大許容用量(MTD)試験及び異なる化合物の比較用量評価
以下の研究からのデータは、AMPA-R拮抗が、RGLS4326の以前の毒性研究で観察されたCNS毒性及び死亡率の原因であることをさらに支持する。
【0284】
研究1:RG-NG-1017、RGLS4326及びRG-NG-1001の最大耐用量(MTD)試験及び比較用量評価
化合物(RG-NG-1017、RGLS4326、RG-NG-1001)を、パイロット最大耐用量(MTD)試験(以下で説明する)で評価した。RG-NG-1017、RGLS4326及びRG-NG-1001は、最初にそれぞれ4用量レベルで評価した。RG-NG-1017は、AMPA-Rに結合するRGLS4326及びRG-NG-1001と比較して、非AMPA-R結合化合物として評価のために含まれた。6~7週齢のC57Bl/6J雄マウス(Jackson Laboratorics)をこの研究で使用した。マウスを治療群に無作為に割り当て、研究を盲検化した。動物を5日間以上順応させ、12時間の明/暗サイクル(午前7時に点灯)で飼育した。換気されたケージラックシステム内の各ケージには、4匹以下のマウスを収容した。食事は、標準的なげっ歯類飼料と自由な水で構成された。
【0285】
MTDパイロット試験
以下のパラメータをこの研究に使用した:
1.投与経路(複数可):RG-NG-1017、RG-NG-1001、RGLS4326の脳室内(ICV)投薬
2.用量体積(複数可):4 μL
3.製剤(複数可):ビヒクル、Ca2+及びMg2+不含dPBS
4.用量頻度:1回
5.試験期間:8日
6.群数:3
7.群当たりの動物の数:(各群2~4)
8.動物の総数:54
【0286】
ICV投与のために、マウスを麻酔し、注射のために配置した。頭蓋骨上の皮膚を切開し、マイクロドリルを使用して標的の上の頭蓋骨に小さな穴を開けた。定位座標は、頭蓋骨の前項から左右両方の側脳室に注射するため、前後(AP)-0.4mm、内外方向(ML)+/-1.0-1.5mm、背腹側(DV)-3.0mmであった(Hironaka et al,2015)。動物に、4μlを右側脳室に一方的に注入した。化合物を1~2分間にわたって注射し、ニードルを所定の位置に0.5~1分間放置してから、抜去した。切開部は、縫合糸、創傷クリップ、またはVetBondで閉じた。
【0287】
ICV処置(0日目)後、動物を7日間モニタリングし、毎日の健康チェック、体重、及び死亡率を記録した。7日目に、脳及び腎臓を収集し、固定し(10%ホルマリン)、保留中の組織型を保存した。
【0288】
MTD研究の結果を表10及び
図3に示す。すべての動物の死亡は、ICV注入後の最初の5~8時間以内に生じることが報告された。2.5μgのRG4326を注射したマウスは、呼吸困難のいくつかの即時の徴候を示すことが報告され、加熱パッドが提供された。RG-NG-1017(非AMPA-R結合化合物)は、高用量で十分に忍容性があり、この化合物について確立されたMTDはなかった(600μg、100μg、または50μgでは0の死亡;300μgでは1の死亡)。RG4326及びRG-NG-1001(例えば、600、300、100μg)については、高用量で100%の死亡率が観察され、加えて、両方のAMPA-R結合化合物については、50μg及び25μgで100%の死亡率が観察された。RG-NG-1001 MTDは本研究では達成されず、2.5μg未満であると予測された。RG4326のMTDは、ICVによって約2.5<5.0μgと予測された。すべての動物は、観察の2日目に完全に回復することが報告された。
【表10】
【0289】
RGLS4326の最大許容用量(MTD)試験
ICVによるRGL4326の第2のMTD試験を実施して、疾患モデルにおける化合物を評価するための用量選択を評価した(表11)。この研究では、異なるマウス株を評価した(Swiss:Rjorl雄マウス、5週齢、Janvierから調達)。マウスをイソフルラン麻酔下(誘導の場合は5%、維持の場合は2%、100%O
2未満)に置き、5mg/kgのs.c.カルプロフェン(Rimadyl(登録商標))を与えた。次いで、それらを定位フレームに配置した。頭皮に正中矢状切開を行い、左側脳室の上に頭蓋骨に穴を開けた。ステンレススチール製カニューレ(外径0.51mm)を、左側脳室に、以下:頭頂の後方に+0.5、L±0.7mm、V=-2.7mm、の座標に、定位的に配置した。脳組織がカニューレ上をスライドすることを可能にする2分間の遅延後、0.625mg/mLのRG4326を含む4μLの溶液を2分間にわたってゆっくりと注入した。注入後、溶液がカニューレトラックに沿って逆流するのを防ぐために、カニューレをさらに5分間所定の位置に残した。マウスに、手術後24時間及び48時間に、5mg/kgのs.c.カルプロフェン(Rimadyl(登録商標))を投与した。手術後3~7日間(ICV投与後24時間に開始)マウスをモニターし、体重を毎日測定して健康状態を確認した。7日間にわたってモニタリングされたマウスについて、健康状態を確認するために、手術後1日目及び7日目に体重を測定した。
【表11】
【0290】
研究1では、6匹のマウスに0.625mg/mLの4μLの溶液を注射した(ICV当たり合計2.5μg;表10)。麻酔の終了時に、マウスは片側に横になったままであった。静かであり、手術後の最初の数時間はひっかきがあった。投与された6匹のマウスにおいて、24、48、または72時間に毒性効果は観察されなかった。研究2では、4匹のマウスに4つの異なる用量のRGLS4326(0.75、1.0、1.25及び1.875mg/mL、体積4μL)を注射した。最高用量(1.875mg/mL、すなわち、7.5μg/マウス)を受けた1匹のマウスは、ICV注射の約24時間後に死亡した。他のすべてのマウスは、パイロット試験の終了(投与後7日)まで、良好な健康状態であった。
【0291】
試験1及び2を組み合わせた結果は、RG4326が試験対象において概して忍容性が良好であったが、RG-NG-1017よりもかなり低い用量のみであったことを実証した(
図3を参照されたい)。
【0292】
表12は、研究1及び2のマウスモデルのRGLS4326のMTDデータを要約する。研究2からのこれらの結果に基づいて、RGLS4326について、Swiss:Rjorlマウス株における約4μgのMTDを予測した。
【表12】
【0293】
要約すると、化合物RG-NG-1017、RGLS4326及びRG-NG-1001は、2つのMTD試験にわたって評価され、非AMPA-R結合化合物(RG-NG-1017)とAMPA-R結合化合物(RGLS4326、RG-NG-1001)との間の忍容性における有意差を例証した(
図3を参照されたい)。300μgのICV用量での1匹の死亡にもかかわらず、600μgのより高い試験用量では死亡は発生しなかったため、RG-NG-1017のMTDは確立されなかった。さらに、RG-NG-1017については、100及び50μgの用量で死亡率への影響は観察されなかった。比較すると、死亡率に対する明らかな影響は、AMPA-R結合化合物RGLS4326及びRG-NG-1001について明らかであり、25μg~600μgの試験投与範囲にわたって生存している動物はいなかった。生存率の向上傾向は、低用量のRGLS4326(10μg)で見られ、5μgでのRGLS4326治療動物において50%の生存率、及び2.5μgでの100%の生存率であった。同様に、RG-NG-1001の場合(RGLS4326と比較して強いAMPA-R結合を示す)、5μgのより低い用量で100%の死亡率が明らかであり、2.5μgで生存率が改善する傾向があった。研究1からのRGLS43426の結果は、異なるマウス株を利用した第2のMTD研究(研究2)でさらに確認された。この研究では、株間のRGLS4326の忍容性にわずかな差異が存在し得ることが見出され、生存は、C57/Bl/6Jを使用した研究1において、7.5μgの最高用量でのマウス対5μgでのマウスのみに影響を及ぼすことが観察された。しかしながら、これらの結果は、AMPA-R結合RGLS4326についてのMTDが、約2.5μg及び5~7.5μg(株に応じて)の間で生じることを、非AMPA-R結合RG-NG-1017についての有意に高いMTD(少なくとも>40倍、またはそれ以上)と比較して、依然として支持する(
図3)。
【0294】
実施例6:抗miR-17化合物のインビトロ及びインビボでの効力
特定の化合物のインビトロ効力を、miR-17のためのルシフェラーゼレポーターベクターを使用するmiR-17ルシフェラーゼセンサーアッセイを使用して、ルシフェラーゼ遺伝子の3’-UTR内の2つの完全に相補的なmiR-17結合部位をタンデムで評価した。HeLa細胞を、ルシフェラーゼレポーターベクター及びルシフェラーゼシグナルを抑制するように作用する外因性miR-17発現ベクターと共トランスフェクトした。次いで、HeLa細胞を、0.045、0.137.0.412、1.23、3.70、11.1、33.3、100、及び300nMの濃度の抗miR-17オリゴヌクレオチドで個別に処理した。18~24時間のトランスフェクション期間の終了時に、ルシフェラーゼ活性を測定した。RG5124を、対照化合物として含めた。表13に示すように、これらの化合物は、インビトロのRGLS4326と比較して、同様のEC
50値でmiR-17機能を阻害し、miR-17ルシフェラーゼレポーター活性を抑制解除した。
【表13】
【0295】
図4に示すように、RG-NG-1015は、HeLa細胞におけるルシフェラーゼアッセイにおいて、miR-17、ならびにmiR-20a、miR-106a、及びmiR-93を阻害し、インビトロでのRGLS4326と比較して同様のEC
50値を有した。
【0296】
RG-NG-1015はまた、インビトロでのRGLS4326と比較して同様のEC50値を有するmiR-17直接標的遺伝子PKD1及びPKD2の完全長3’非翻訳領域(UTR)を含有する、ルシフェラーゼセンサーも抑制解除した。
【0297】
特定の化合物の活性を、6つの参照ハウスキーピング遺伝子によって正規化された18の独自のmiR-17標的遺伝子の発現からなるマウスmiR-17薬力学的シグネチャ(miR-17 PD-Sig)を使用して評価し、miR-17活性の偏りのない包括的な評価を提供した。マウスmiR-17 PD-Sigスコアは、モックトランスフェクションと比較した18個の遺伝子の個々のlog2倍変化(6個のハウスキーピング遺伝子によって正規化される)の計算平均であった(Lee et al.,Nat.Commun.,2019,10,4148)。
【0298】
表13に示すように、試験したオリゴヌクレオチドは、インビトロでのRGLS4326と比較して、同様のEC
50値を有する正常及びPKD腎臓細胞株(マウス及びヒトの両方)において、miR-17機能を阻害し、複数の直接miR-17標的遺伝子の発現を抑制解除した(miR-17 PDシグネチャによって測定した)。mIMCD3細胞におけるRGLS4326のPD-Sig(77.2、「*」で示される)は、この実験では生成されなかった。表14の値は、Lee et al.,Nat.Commun.,2019,10,4148によって報告されたものである。表中の空白セルは、化合物が特定の細胞株で試験されなかったことを示す。
【表14】
【0299】
インビボの効力を、マイクロRNAポリソームシフトアッセイ(miPSA)を使用して評価した。このアッセイを使用して、化合物が、正常なマウス及びPKDマウスの腎臓においてmiR-17標的に直接結合する程度を決定した。miPSAは、活性miRNAが並進的に活性な高分子量(HMW)ポリソームにおいてそれらのmRNA標的に結合するのに対し、阻害されたmiRNAは低MW(LMW)ポリソームに存在するという原理に依存する。抗miRを用いた処置により、マイクロRNAのHMWポリソームからLMWポリソームへのシフトをもたらす。したがって、miPSAは、相補的な抗miRによるマイクロRNA標的の関与の直接測定を提供する(Androsavich et al.,Nucleic Acids Research,2015,44: e13)。
【0300】
野生型マウスに、0.3mg/kg、3mg/kg、または30mg/kgの単回用量を投与した。腎臓組織を、7日後に収集し、miPSAに供した。各処置の平均変位スコアを表15に示す(PBS、n=17;RGLS4326 30mg/kg、n=10;他のすべての処置、n=4~5)。試験したオリゴヌクレオチドは、正常マウス腎臓における翻訳活性ポリソーム(miPSAで測定)からmiR-17を変位させた。
【表15】
【0301】
さらに、表16及び
図5A~5Dに示すように、RGLS4326及びRG-NG-1015は、C57BL6マウスにおける単回の皮下投与後に、同様の薬物動態及び標的エンゲージメント(miPSAによって測定される)プロファイルを有する。
【表16】
【0302】
実施例7:ADPKDの実験モデルにおけるRG-NG-1015の有効性
RG-NG-1015の有効性を、KspCre/Pkd1F/RC(Pkd1-F/RC)マウスモデルで評価した。Pkd1-F/RCは、生殖細胞系低形態性Pkd1変異(一方の対立遺伝子上のヒトPKD1-R3277C(RC変異)と、他方の対立遺伝子上のPkd1エクソン2及び4に隣接するloxP部位とのマウス相当物)と、を含むオーソロガスADPKDモデルである。KspCre媒介性組換えを使用して、フロックスされたPkd1エクソンを欠失させ、一方の対立遺伝子に腎小管特異的な体細胞ヌル変異を有し、他方に生殖細胞系低形質変異を有する、化合物変異マウスを作製した。これは、ADPKDの積極的であるが長寿命のモデルである(Hajarnis et al.,Nat.Commun.,2017,8,14395)。
【0303】
8日齢、10日齢、12日齢、及び15日齢の各日に、性別が一致したPkd1-F/RCマウスに、20mg/kgの用量(n=8、治療群ごとに4匹の雄及び4匹の雌)のRGLS4326、20mg/kgの用量(n=8)のRG5124、または20mg/kgの用量(n=8)のRG-NG-1015、またはPBS(n=8)の皮下注射を投与した。18日齢でマウスを屠殺し、腎臓重量、体重、嚢胞指数、血清クレアチニンレベル、及び血中尿素窒素(BUN)レベルを測定した。BUNレベルは、腎機能のマーカーである。より高いBUNレベルは、腎機能の低下と相関するため、BUNレベルの低下は、腎損傷及び損傷の低下ならびに機能の改善の指標である。統計的有意性は、ダネットの多重補正を用いた一元配置分散分析によって計算した。
【0304】
結果を、表17及び
図2に示す(****=p<0.0001、***=p<0.001、**=p<0.01、ns=有意でない)。RG-NG-1015の有効性は、RGLS4326の有効性と類似していた。RGLS4326及びRG-NG-1015で処置したPkd1-F/RCマウスでは、それぞれ、PBSを投与したPkd1-F/RCマウスの平均KW/BW比よりも、腎臓重量対体重の平均比(KW/BW比)が有意に低かった(
図2A)。平均BUNレベルは、PBSで処置したマウスと比較して、それぞれ、RGLS4326及びRG-NG-1015で処置したPkd1-F/RCマウスにおいて有意に低下した(
図2B)。PBSで処置したマウスと比較して、Pkd1-F/RCマウスにおける平均血清クレアチニンレベルは、RGLS4326及びRG-NG-1015で処置したマウスにおいてそれぞれ減少したが、減少は統計的に有意ではなかった(
図2C)。対照オリゴヌクレオチドRG5124による処置は、腎臓重量対体重比、血清クレアチニン、または血清BUNを減少させず、RGLS4329及びRG-NG-1015で観察された結果がmiR-17の阻害に特異的であったことを例証した。
【表17】
【0305】
RG-NG-1015の有効性は、PKD単独及びトルバプタンと組み合わせたPcy/DBAマウスモデルでも評価した。Pcy/DBAマウスは、ヒトにおける青年期ネフロン癆に関与するNphp3遺伝子のミスセンス変異によって引き起こされる、ゆっくりと進行するPKDを示す(Takahashi et al.,J Am Soc Nephrol 1991,1:980-989;Olbrich et al.,Nat Genet 2003,34:455-459)。Pcyマウスでは、嚢胞は遠位管に由来し、全ネフロンセグメントは、多くの場合、ESRDの発生とともに、30週齢までに疾患進行を伴う嚢胞によって散在的に占有される(Nagao et al.,Exp Anim2012,61:477-488)。特に、雄Pcy/DBAマウスは、第1世代の抗miR-17であるトルバプタン及びRGLS4326を含む、ADPKD治療のための多くの研究製品の薬理学的プロファイルを特徴付けるために使用されている(Aihara et al.,J Pharmacol Exp Ther 2014 May;349(2):258-67 and Lee et al.,Nat.Commun.,2019,10,4148)。これらのマウスにおける研究は、典型的には、約5週齢での治療の開始を含み、15~30週齢まで継続する。
【0306】
図6A及び6Bに概説されるように、雄Pcy/DBAマウスの5つの群(処置群当たりn=13)を、25、5、1、または0.2mg/kgのPBSまたはRG-NG-1015で、2週間に1回(Q2W)皮下で治療した。雄性Pcy/DBAマウスの2つの群(群当たりn=13)もまた、50mg/kgで4週間に1回(Q4W)、または12.5mg/kgで週に1回(QW)のRG-NG-1015で治療した。別の4群の雄性Pcy/DBAマウス(群当たりn=13)を、PBSまたは25、5、または1mg/kgのQ2WのRG-NG-1015で、適宜0.3%(w/w飼料)のトルバプタンと組み合わせて、皮下で治療した。PBS Q2Wの皮下注射を受けた雄WT-BDA/2Jマウスの群を、正常範囲基準として試験に含めた。マウスを5週齢で治療群に無作為化し、治療を17週間、6週齢で開始し、最終治療の7日後に屠殺した。腎臓重量、体重、腎嚢胞指数、尿Ngal対クレアチニン比(Ngal/Cr)を測定した。尿Ngal/Crは、腎臓損傷のマーカーである。
【0307】
図6C~6E及び表18~20に見られるように、RG-NG-1015は、様々な投与量及びレジメンでPKDのPcy/DBAマウスモデルに有効であり、また、トルバプタンと組み合わせて使用する場合、相加的または相乗的効果を提供する。特に、RG-NG-1015治療は、Pcy/DBAマウスにおける平均KW/BW、尿Ngal/Cr、及び腎嚢胞指数を用量依存的に有意に低下させた(表18及び
図6C-6E)。加えて、同様の総投与量(試験期間中、マウス1匹当たり合計212.5~250mg)であるが、異なる投薬レジメン(QW、Q2W、及びQ4Wを含む)によるRG-NG-1015治療は、Pcy/DBAマウスにおいて、平均KW/BW、尿Ngal/Cr、及び腎嚢胞指数を同様のレベルで低下させた(表19;
図6C~6E)。トルバプタン単独での治療は、Pcy/DBAマウスにおける平均KW/BW、尿Ngal/Cr及び腎嚢胞指数を低下させ、RG-NG-1015+トルバプタンの組み合わせは、平均KW/BW、尿Ngal/Cr及び腎嚢胞指数をさらに低下させた(表20;
図6C-6E)。KW/BW、尿Ngal/Cr、及び腎嚢胞指数に対する薬物併用の観察された効果は、それぞれ相乗的であり、主に相加的であり、相加的よりも少ないことが、Bliss相加性分析によって示された(表20)。
【表18】
【表19】
【表20】
【0308】
実施例8:RG-NG-1015の代謝物
RG-NG-1015の代謝を調査するために、インビトロ及びインビボ研究を実施した。インビトロ及びインビボ試料の両方について、組織試料を氷上の溶解緩衝液中でホモジナイズし、RG-NG-1015及び/または代謝物を、液-液抽出及び固相抽出ステップを介して、血漿、組織ホモジネート、または尿から単離した。既知量のRG-NG-1015を含有する較正試料を、試験組織ホモジネート、血漿、または尿試料と並行して抽出した。RG-NG-1015及び潜在的な代謝物の分子量(MW)をMSシグナルから計算し、理論値と比較した。
【0309】
RG-NG-1015のインビトロ代謝安定性を、マウス、サル、及びヒト組織(すなわち、腎臓及び肝臓溶解物)ならびに血清において評価した。RG-NG-1015を、これらのマトリックス中で、5μMの濃度で、腎臓及び肝臓ホモジネート(307μg/gの組織に対応)または血清試料(15.3μg/mLに対応)とともに37℃で24時間インキュベートした。次いで、RG-NG-1015及び代謝物を抽出し、HPLC-TOFによって分析した。
【0310】
CD-1マウスへのRG-NG-1015の単回用量後の肝臓及び腎臓、ならびにサルへの単回及び/または反復投与後の血漿、組織、及び尿において、インビボ代謝を評価した。CD-1マウスは、2000mg/kgの単回SC用量のRG-NG-1015を受け、サルは、15、75、または150mg/kgの最大5週間SC用量のRG-NG-1015を受けた。次いで、RG-NG-1015及び代謝物を抽出し、HPLC-TOFによって分析した。
【0311】
RG-NG-1015は、3’及び5’末端の両方から連続的に加水分解を行い、鎖短縮代謝物を生成する(表21を参照されたい)。9つの潜在的な代謝物が同定された:以下の表21に示される、5’N-1、5’N-2、5’N-3、5’N-4、3’N-1、3’N-2、3’N-3、3’N-4、及び3’N-5。すべての代謝物は、末端ヌクレオチドの連続的な除去によってRG-NG-1015とは異なり、3’及び5’末端のヒドロキシル基で終端される。5’末端ショートマー(N-5~N-8)及び3’末端ショートマー(N-6~N-8)は観察されなかった。
【表21】
【配列表】
【国際調査報告】