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特表2024-537062電気化学素子用電極内における導電材の分散度測定方法
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  • 特表-電気化学素子用電極内における導電材の分散度測定方法 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電気化学素子用電極内における導電材の分散度測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241003BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241003BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/04 A
H01M4/04
H01G13/00 361Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519400
(86)(22)【出願日】2023-04-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2023005397
(87)【国際公開番号】W WO2023204639
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2022-0049197
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン-ジン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キ-ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】キュン-イル・ラ
(72)【発明者】
【氏名】ドン-オ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン-ヒ・チェ
【テーマコード(参考)】
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
5E082MM35
5E082MM40
5H050AA19
5H050BA06
5H050BA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA10
5H050GA10
5H050GA28
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA17
(57)【要約】
本発明による導電材の分散度の評価方法は、電極中の導電材の分散性を定量的な数値で確認することができる。具体的に、電極活物質層の任意の断面に対して二次元スケールの視覚的画像処理を行って得られた結果(2D mapping image)から導電材領域を定義し、前記導電材領域として定義された部分の周長と面積を算出することで、導電材の分散度を定量的に表すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質及び導電材を含む電極活物質層を含む電気化学素子用電極において、前記電極活物質層の内部の1つ以上の任意の断面で導電材領域として定義された部分の周長(Boundarymeasured)及び面積(A)を変数として定義された数式に基づいて導電材の分散度を評価する方法。
【請求項2】
上記数式は、下記[式1]による導電材の分散度指数1(Index 1)、又は下記[式2]による導電材の分散度指数2である、請求項1に記載の導電材の分散度を評価する方法。
[式1]
Index 1(μm-1)=Boundarymeasured/A
[式2]
Index 2=Boundarymeasured/Lcircle
上記[式1]において、Boundarymeasuredは、電極活物質層の所定の断面で測定され、導電材領域として定義された部分の周長を意味し、Aは、電極活物質層の所定の断面で測定され、導電材領域として定義された部分の面積を意味し、上記[式2]において、Boundarymeasuredは上記式1と同様であり、Lcircleは、上記で定義された導電材領域の面積と同一の面積を有する円の円周
【数1】
である。
【請求項3】
(Step 1)電極活物質層の内部の任意の断面が露出した断面試料を得るステップと、
(Step 2)試料断面の抵抗分布に対する2Dスケールのマップ(map)を得るステップと、
(Step 3)導電材領域をマスキングするステップと、
(Step 4)マスキングされた領域の周長と面積を算出し、上記式1及び/又は式2に代入して電極活物質層の導電材の分散度を確認するステップと、
を含む、請求項1に記載の導電材の分散度を評価する方法。
【請求項4】
前記電極活物質層は、電極集電体のいずれかの側面に形成されたものであり、前記断面(または複数の断面)は、電極活物質層の集電体の対面部との平行面又は垂直面である、請求項1から3のいずれか一項に記載の導電材の分散度を評価する方法。
【請求項5】
前記断面試料は、イオンミリングにより電極表面を所定の深さまでエッチングして準備する、請求項3に記載の導電材の分散度を評価する方法。
【請求項6】
前記試料断面の抵抗分布に対する2Dスケールのマップ(map)を得るステップは、AFM(Atomic force microscopy)装置を用いて前記断面試料の表面をスキャンする走査型拡散抵抗顕微鏡法(Scanning Spreading Resistance Microscopy)によって行われる、請求項3に記載の導電材の分散度を評価する方法。
【請求項7】
前記導電材領域をマスキングするステップは、
前記(Step 2)で得た抵抗値データをログスケール(Log Scale)に加工及び変更してログスケール画像(log(抵抗)画像)を得る第1ステップと、
前記ログスケール画像で電極断面の試料を構成する物質が区分して表示される[log抵抗分布ヒストグラム]を抽出する第2ステップと、
前記[log抵抗分布ヒストグラム]で導電材ピークと電極活物質ピークとの間の最小値に該当するlog(R/Ω)値を閾値(threshold)とし、その値よりも小さな値を有する領域を導電材領域としてマスキングする第3ステップと、
を含む、請求項3に記載の導電材の分散度を評価する方法。
【請求項8】
前記最小値に対して0.1から0.5の値を加算して閾値を補正するステップをさらに含む、請求項7に記載の導電材の分散度を評価する方法。
【請求項9】
前記電気化学素子用電極は、集電体、及び前記集電体の少なくとも一側の表面に形成された電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、電極活物質、導電材及びバインダーを含む、請求項1に記載の導電材の分散度を評価する方法。
【請求項10】
前記断面は、前記電極活物質層の集電体の対面部と平行又は垂直な方向である、請求項1に記載の導電材の分散度を評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年4月20日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0049197号に基づく優先権を主張する。本発明は、電気化学素子用の導電材の分散度を定量的に表すことができる定量化した分散度指数に関する。また、本発明は、前記分散度指数を算出する方法を含む分散度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵技術への関心が高まるにつれ、携帯電話、タブレット(tablet)、ラップトップ(laptop)及びビデオカメラ、さらには電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)のエネルギーまで適用分野が拡大し、電気化学素子に関する研究及び開発が徐々に増えている。電気化学素子は、このような点で最も注目されている分野であり、そのなかでも充放電が可能なリチウムイオン二次電池の開発は関心の焦点となっており、最近では、このような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新しい電極及び電池の設計に関する研究開発が実施されている。
【0003】
このような二次電池の電極を製造する際に、エネルギー密度の向上のために電極中の活物質の含有量を増やすことが検討されており、この場合、相対的に導電材の含有量が少なくなるため、電気伝導性の低下を防止するためには導電材を電極内に均一に分布させることが重要である。電極中の導電材の分布は、電極の製造工程と大きく関連しているため、電極製造時に導電材の分散性を向上させることができる乾式電極の製造方法に関する研究が求められている。また、導電材の分散性を向上させる製造工程を確立するには、電極中の導電材の分散性を正確に確認できる評価ツールの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電気化学素子用の導電材の分散度を定量的に表すことができる定量化した分散度指数を提供することを目的とする。また、他の目的としては、前記分散度指数を算出する方法を含む分散度測定方法を提供することを目的とする。本発明のまた他の目的及び利点は、特許請求の範囲に記載された手段又は方法、及びそれらの組み合わせによって実現可能なことを容易に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様は、導電材の分散度を評価する方法に関し、上記方法は、電極活物質及び導電材を含む電極活物質層を含む電気化学素子用電極において、前記電極活物質層の内部の1つ以上の任意の断面で導電材領域として定義された部分の周長(Boundarymeasured)及び面積(A)を変数として定義された数式に基づく。
【0006】
本発明の第2態様は、前記第1態様において、上記数式は、下記[式1]による導電材の分散度指数1(Index 1)、又は下記[式2]による導電材の分散度指数2(Index 1)である。
[式1]
Index 1(μm-1)=Boundarymeasured/A
[式2]
Index 2=Boundarymeasured/Lcircle
上記[式1]において、Boundarymeasuredは、電極活物質層の所定の断面で測定され、導電材領域として定義された部分の周長を意味し、Aは、電極活物質層の所定の断面で測定され、導電材領域として定義された部分の面積を意味し、上記[式2]において、Lcircleは、上記で定義された導電材領域の面積と同一の面積を有する円の円周である。
【0007】
本発明の第3態様は、前記第1又は第2態様において、(Step 1)電極活物質層の内部の任意の断面が露出した断面試料を得るステップと、(Step 2)試料断面の抵抗分布に対する2Dスケールのマップ(map)を得るステップと、(Step 3)導電材領域をマスキングするステップと、(Step 4)マスキングされた領域の周長と面積を算出し、上記式1及び/又は式2に代入することによって、電極活物質層の導電材の分散度を確認するステップと、を含む。
【0008】
本発明の第4態様は、上記第1から第3態様のいずれかにおいて、前記電極活物質層は、電極集電体のいずれかの側面に形成されたものであり、前記断面(または複数の断面)は、電極活物質層の集電体の対面部との平行面又は垂直面である。
【0009】
本発明の第5態様は、前記第3態様において、前記断面試料は、イオンミリングにより電極表面を所定の深さまでエッチングして準備する、導電材の分散度を評価する方法である。
【0010】
本発明の第6態様は、上記第3から第5態様のいずれかにおいて、前記試料断面の抵抗分布に対する2Dスケールのマップ(map)を得るステップは、AFM(Atomic force microscopy)装置を用いて前記断面試料の表面をスキャンする走査型拡散抵抗顕微鏡法(Scanning Spreading Resistance Microscopy)によって行われる。
【0011】
本発明の第7態様は、前記第3から第6態様のいずれかにおいて、前記導電材領域をマスキングするステップは、前記(Step 2)で得た抵抗値データをログスケール(Log Scale)に加工及び変更してログスケール画像(log(抵抗)画像)を得る第1ステップと、前記ログスケール画像で電極断面の試料を構成する物質が区分して表示される[log抵抗分布ヒストグラム(Histogram)]を抽出する第2ステップと、前記ヒストグラムで導電材ピークと電極活物質ピークとの間の最小値に該当するlog(R/Ω)値を閾値(threshold)とし、その値よりも小さな値を有する領域を導電材領域としてマスキングする第3ステップと、を含む。
【0012】
本発明の第8態様は、前記第7態様において、前記最小値に対して0.1から0.5の値を加算して閾値を補正するステップをさらに含む。
【0013】
本発明の第9態様は、前記第1から第8態様のいずれかにおいて、前記電気化学素子用電極は、集電体、及び前記集電体の少なくとも一側の表面に形成された電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、電極活物質、導電材及びバインダーを含む。
【0014】
本発明の第10態様は、上記第1から第9態様のいずれかにおいて、前記断面は、前記電極活物質層の集電体の対面部と平行又は垂直な方向である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による導電材の分散度の評価方法は、電極中の導電材の分散性を定量的な数値で確認することができる。具体的に、電極活物質層の任意の断面に対して二次元スケールの視覚的画像処理を行って得られた結果(2D mapping image)から導電材領域を定義し、前記導電材領域として定義された部分の周長と面積を算出することで、導電材の分散度を定量的に表すことができる。
【0016】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割を有するものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺又は比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】走査型拡散抵抗顕微鏡法により得られた実施例4の電極のSSRM画像を示す図である。
図1B図1Aの導電材領域をマスキングして確認された画像である。
図2】実施例4のlog(抵抗分布)ヒストグラムのグラフである。
図3】実施例1のSSRM画像である。
図4図3の導電材領域をマスキングして確認された画像である。
図5】実施例2のSSRM画像である。
図6図5の導電材領域をマスキングして確認された画像である。
図7】実施例3のSSRM画像でありる。
図8図7の導電材領域をマスキングして確認された画像である。
図9A】電極断面の試料を準備する方法を概略的に図式化して示す図である。
図9B】電極断面の試料を準備する方法を概略的に図式化して示す図である。
図10】実施例4の電極において、得られたヒストグラムで補正することなく図1の導電材領域をマスキングした結果を示す画像である。
図11】実施例4の電極において、補正後の図1の導電材領域をマスキングした結果を示す画像である。
図12】ヒストグラムでの導電材領域と活物質領域でのグラフが重なった部分を示す例示グラフである。
図13】実施例5の電極のSSRM画像及び補正後の導電材領域をマスキングした結果を示す画像である。
図14】実施例6の電極のSSRM画像及び補正後の導電材領域をマスキングした結果を示す画像である。
図15】Gwyddion soft wareを用いて計算した導電材領域の面積と周長を示すディスプレイ画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に対する理解のために、本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応じた意味及び概念で解釈されるものである。
【0020】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図したものではない。単数の表現は文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の表現を含む。
【0021】
また、明細書全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0022】
また、本明細書全体にわたって使用される用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質の許容誤差が提示されるとき、その数値又はその数値に近接する意味として使用され、本願の理解のために正確かつ絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0023】
本明細書全体にわたって、「A及び/又はB」の記載は「A又はB、或いはこれらの両方」を意味する。
【0024】
導電材の分散度
本発明は、電極活物質層の任意の断面に対して二次元スケールの視覚的画像処理を行って得られた結果(2D mapping image)から導電材領域を定義する方法、前記導電材領域として定義された部分の周長と面積を算出する方法、及びこれに基づいて導電材の分散度を定量的に表すことができる分散度指数(index)を提案する。
【0025】
本発明において、前記分散度指数は、電極活物質層の内部の1つ以上の任意の断面に対する下記[式1]による導電材の分散度指数1(Index 1)で表すことができる。一方、前記分散度指数は、前記指数1とともに又は独立して下記[式2]による導電材の分散度指数2(Index 2)で表すことができる。前記導電材の分散度指数1及び分散度指数2は、前記断面で測定され、導電材領域として定義された部分の周長(Boundarymeasured)と面積(A)を変数として算出される値である。
【0026】
[式1]
Index 1(a-1)=Boundarymeasured/A
上記[式1]において、Boundarymeasuredは、電極活物質層の所定の断面で測定され、導電材領域として定義された部分の周長を意味し、Aは、電極活物質層の所定の断面で測定され、導電材領域として定義された部分の面積を意味する。上記式1において、aは使用された単位である。周長の単位をμmとした場合、前記指数1の単位はμm-1であり得る。
【0027】
[式2]
Index 2=Boundarymeasured/Lcircle
上記[式2]において、Boundarymeasuredは式1の定義と同様であり、Lcircleは、上記で定義された導電材領域の面積と同一の面積を有する円の円周である。任意の閉曲線において、周長の最も小さな場合は、閉曲線の形状が円(circle)の場合である。そこで、導電材領域の全体面積(A)と同一の面積を有する仮想の円を想定し、前記円の円周長を算出して、実際の導電材領域の周長を前記仮想の円の周長で除したIndex 2の値が大きいほど、分散度が高いものと解釈することができる。
【0028】
前記Lcircleは、下記数式1及び数式2により算出することができる。
【数1】
【数2】
【0029】
よって、上記式2は、下記式2Aのように表すことができる。
【数3】
【0030】
すなわち、円の面積は{(円の半径(r))×π}で計算されるので、これにより前記仮想の円の半径(r)が求められ、半径が求められると、前記仮想の円の周長(円周、2πr)を算出することができる。
【0031】
前記分散度指数1及び分散度指数2は、数値が高いほど、導電材が凝集して局所的に偏在しておらず、電極活物質層内に均一に分散していることを意味する。
【0032】
本発明において、前記断面(または複数の断面)は、電極活物質層の集電体の対面部と平行に形成することができる。或いは、前記断面(または複数の断面)は、集電体の対面部と平行な方向に形成するか、垂直な方向に形成するか、集電体の対面部と所定の角度を有するように形成することもできる。本発明は、電極活物質層の内部で導電材の分散度を確認するためのものであるので、前記指数1及び指数2の確認が可能な程度に内部を露出させたものであれば、露出面と集電体の対面部との間の角度は特定の範囲に限定されない。
【0033】
前記Index 1及びIndex 2は、電極活物質層の任意の断面に対して電極材料、特に導電材の分布を視覚化し、これによって、導電材が分布された部分(導電材領域)の周長と面積を算出して、計算した値を上記式に代入することで確認することができる。前記電極活物質層に含まれた電極材料の分布の確認は、マイクロスケール以下の微視的次元に対して行われる。これによって、前記導電材分布の視覚化は、後述するように、原子間力顕微鏡法及び走査型拡散抵抗顕微鏡法のような電子的視覚化装置により確認することができる。
【0034】
次いで、前記指数1(Index 1)及び指数2(Index 2)を算出する方法について詳しく説明する。
【0035】
上記方法は、電気化学素子用電極内部の任意の断面を露出させて電極断面の試料を得るステップ(Step 1)と、
走査型拡散抵抗顕微鏡を用いて前記電極断面の試料の電極活物質及び導電材の抵抗値データを取得するステップ(Step 2)と、
前記抵抗値データに対するログスケール画像及びヒストグラムを得るステップ(Step 3)と、
指数1及び/又は指数2を計算するステップ(Step 4)と、を含む。これを各ステップについてさらに詳しく説明すると以下の通りである。
【0036】
(Step 1)
まず、電気化学素子用電極内部の任意の断面を露出させて電極断面の試料を準備する。前記電極は、集電体の少なくとも一側の表面に形成された電極活物質層を含むことができ、前記電極活物質層は、電極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む。次いで、イオンミリングのイオンビームを用いて電極活物質層の表面を所定の厚さまで除去して電極活物質層の内部の断面を露出させる。前記イオンミリングは、不活性気体のイオンを広いビームイオンソースから真空状態の試料表面まで加速させて物質をエッチングする方法を意味する。前記イオンミリングは、不活性気体(Argon)のイオン又は原子を適切なサイズの電圧で加速させることで試料表面の原子を剥離させるスパッタリング(Sputtering)現象に基づいている。これによって、物理的損傷のないきれいな断面を有する電極断面の試料を製造することができ、前記電極で導電材領域をより明確に確認することができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記不活性気体はアルゴンであり得る。このようにアルゴンイオンビームを前記二次電池用電極に照射することで、より安定して前記電極断面の試料を製造することができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記イオンミリング装置のイオンビーム電流は、100μA以上250μA以下であり得る。具体的に、前記イオンミリング装置のイオンビーム電流は、110μA以上150μA以下、又は200μA以上230μA以下であり得る。前記イオンミリング装置のイオンビーム電流を上記の範囲で調節することで、前記電極断面の試料の製造時間を短縮することができ、試料の断面に電極物質が再堆積(redeposition)される現象を防止し、よりきれいな断面を有する電極断面の試料を製造することができる。
【0039】
このようなイオンミリングを用いて非常に優れた粗度の電極表面情報を得ることができ、電子顕微鏡を通じて観察するか、視覚化データなど所望の情報を得ることができる。
【0040】
図9A及び図9Bは、電極断面の試料を準備する方法を概略的に図式化して示す図である。これを参照すると、前記断面試料は、電極活物質層の厚さ方向(高さ)を基準に、表面から所定の深さまでの部分11sをイオンミリングでエッチング及び除去することで、電極活物質層の内部の所定平面を露出させたもの(図9B)である。
【0041】
一方、本発明の一実施態様において、前記電極断面の試料を製造するステップは、前記イオンミリングを適用する前に、前記電極をエポキシ基を含有する高分子で含浸させることにより、前記二次電池用電極の内部気孔に前記エポキシ基を含有する高分子を充填するステップをさらに含むことができる。前記電極をエポキシ基を含有する高分子で含浸させる方法は、当該技術分野における通常の方法により行うことができる。例えば、前記エポキシ基を含有する高分子を前記電極上に塗布するか、又は前記エポキシ基を含有する高分子溶液に前記電極を浸漬して電極を前記溶液で含浸させる方式などを適用することができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記電池用電極の分析方法は、前記電極断面の試料の気孔に充填された前記エポキシ基を含有する高分子の抵抗値を測定するステップをさらに含むことができる。前記二次電池用電極の内部気孔をエポキシ基を含有する高分子で充填することで、走査型拡散抵抗顕微鏡を用いて電極断面試料内の気孔の抵抗値を取得することができる。具体的に、前記気孔を充填しているいる高分子物質の抵抗値を測定して抵抗値データを取得することができる。これによって、気孔が位置する領域を確認でき、併合画像からより正確に電極断面の試料の前記電極活物質領域、前記導電材領域、及び前記気孔領域を区別することができる。(図12を参照)
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記エポキシ基を含有する高分子は、分子構造内に環状構造を含むエポキシ樹脂高分子を用いることができ、詳しくは、芳香族基(例えば、フェニル基)を含むエポキシ樹脂高分子を用いることができる。前記芳香族基を含むエポキシ基含有高分子の具体的な例として、ビフェニル型エポキシ基含有高分子、ジシクロペンタジエン型エポキシ基含有高分子、ナフタレン型エポキシ基含有高分子、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ基含有高分子、クレゾール系エポキシ基含有高分子、ビスフェノール系エポキシ基含有高分子、キシロック系エポキシ基含有高分子、多官能エポキシ基含有高分子、フェノールノボラックエポキシ基含有高分子、トリフェノールメタン型エポキシ基含有高分子、及びアルキル変性トリフェノールメタンエポキシ基含有高分子などの1種又は2種以上の混合であり得るが、これらに限定されるものではない。具体的な例として、エポキシエタン(エチレンオキサイド)、1,3-エポキシプロパン(トリメチレンオキサイド)及びビスフェノール-A-エピクロロヒドリン(Bisphenol-A-epichlorohydrin)のいずれか1つを含むことができるが、これらに限定されない。
【0044】
(Step 2)
次いで、上記Step 1で電極断面の試料が準備されると、導電ネットワーク分析法(走査型拡散抵抗顕微鏡法、Scanning Spreading Resistance Microscopy)を用いて前記試料断面の抵抗分布に対する2Dスケールのマップ(map)を得る。図1Aは、上記方法によって得られた実施例4の2Dスケールのマップ画像を例示的に示す図である。
【0045】
具体的に、AFM(Atomic force microscopy)装置を用いて前記断面試料の表面をスキャンして2Dスケールに変換された画像を得ることができる。上記測定によって電気抵抗値の高低が色の濃淡で示されたマップが得られ、色調(濃淡)の差によって表面抵抗の分布を視覚的に確認することができる。
【0046】
まず、AFM(Atomic force microscopy)装置により測定するための試料を準備する。前記過程で製作した断面試料を、断面を上方に向けてAFM用金属ディスクに付着し、ミリング(milling)された断面以外の部分とAFM用金属ディスクに導電経路が形成され得るように銀ペースト(silver paste)などを塗布する。このように準備したAFM測定用試料を装置にロードし、レーザアライン(レーザーアライメント)した後、光学顕微鏡で断面を測定部分として選択する。その後、電極断面に原子顕微鏡プローブを接触させ、原子顕微鏡プローブと接触電極との間のサンプルを介して流れる電流を測定し、測定された電流から拡散抵抗を得る。
【0047】
本発明の一実施形態によると、前記電極断面の試料を分析するための走査型拡散抵抗顕微鏡の駆動条件は、例えば以下の通りである。
【0048】
前記AFM装置としては、本走査型拡散抵抗顕微鏡方法による抵抗分布を視覚的に画像化できるものであれば特に限定されない。例えば、cypher ES(Oxford Instrument社)を用いることができる。本発明の具体的な例によると、カンチレバーホルダとしては、Dual-gain ORCAを用いることができ、駆動ソフトウェアとしては、AR(Oxford Instruments社)を用いることができる。
【0049】
具体的な駆動条件として、コンタクトモード(Contact Mode)を設定し、取得する画像ピクセルを512×512から1024×1024に設定することができ、スキャン速度(Scan rate)は0.2Hz以上、1.0Hz以下に設定することができ、バイアス(Bias)は2.0V以下に設定することができ、セットポイント(Set point)は1.0V以下に設定することができる。例えば、画像ピクセルは512×512、スキャン速度(Scan rate)は0.5Hz、バイアス(Bias)は2.0V以下に設定することができ、セットポイント(Set point)は0.2Vであり得る。AFMプローブ(Probe)としては、ホウ素でドープされた単結晶ダイヤモンド(B-doped Single crystal diamond)製のSolid diamond AFM probes(AD-40-As、Adama社)を用いることができる。
【0050】
一方、本発明の一実施態様において、前記得られた断面試料は、グローブボックス(glove box)など大気に暴露しない条件下でAFM測定することが望ましい。このとき、断面試料を密閉型のセルボディ(cell body)にロードして大気に暴露しない状態を維持することができる。
【0051】
(Step 3)
上記Step 2によって2Dスケールのマップが得られると、導電材領域を定義する。上記の用語「定義」は、視覚的に表示する方法が適用されるため、或いは「マスキング(masking)」とも言い換えることができる。例えば、図10及び図11は、実施例4の電極に対してヒストグラムから確認された導電材領域を黒色でマスキングして示す図である。前記導電材領域を定義する方法は、詳しくは下記のように説明することができる。
【0052】
まず、走査型拡散抵抗顕微鏡を用いて得た抵抗値データをログスケール(Log Scale)に加工及び変更し、ログスケール画像(log(抵抗)画像)を得ることができる。このようなログスケール画像が得られると、そこから電極断面の試料を構成する材料を区分して表示する[log抵抗分布ヒストグラム(Histogram)]を抽出する。
【0053】
前記ヒストグラム上で各ピクセル(pixel)の該当する領域が電極活物質領域、気孔又はバインダー領域、導電材領域のいずれかであるかを決定することができ、該当の領域が決定された各ピクセルの情報を用いて、前記2Dマッピング画像における導電材領域分布を定量化することができる。
【0054】
具体的には、前記ヒストグラムで導電材ピークと電極活物質ピークとの間の最小値に該当するlog(R/Ω)値を閾値(threshold)とし、その値よりも小さな値を有する領域を導電材領域としてマスキングする。このとき、導電材領域に対するさらに正確なデータを確保するために前記最小値に対して0.1から0.5を加減して数値を補正することができる。
【0055】
一実施態様において、上記補正は、前記最小値に該当するlog(R/Ω)値に対して0.1から0.5の値を加算することであり得る。これは、ヒストグラムで活物質領域と導電材領域とが重なってしまい、導電材領域として表示されていない部分を補正するためである。上記補正値は、例えば、ヒストグラムの導電材領域のピークを中心に左側と右側を区分し、前記ピークから左側の低点までの水平距離と同一の値を有するように右側領域の低点を補正することができる。
【0056】
上記のようにして補正することで、電極活物質領域と重なって導電材領域として表示されていない部分まで導電材領域として表示できるため、さらに正確な分散度データを確保することができる。
【0057】
図2は、実施例4の電極に対して前記ログスケール画像(log(抵抗)画像)に基づいて抽出された[log抵抗分布ヒストグラム(Histogram)]を示す図である。これを参照すると、導電材ピークと電極活物質ピークが確認され、それらの間の最小値を特定することができる。ただし、上述のように、前記最小値以降の区間でも活物質領域と重なって表示されていない導電材区間があるため、上記のようにして数値を補正する。図12は、活物質領域と導電材領域との重なった形状を予想した例示図である。
【0058】
一方、図10は、補正前の値に基づいてSSRM画像で導電材領域をマスキングして示す図である。導電材領域のマスキングは、元の画像にはない色でマスキングしており、本願の実施形態では黒色でマスキングして示す。上記図10に点線で示した円部分を確認すると、導電材ではあるがマスキングされておらず残存している部分が確認される。マスキングされていない部分は、色が確認される場合、青色で維持された部分が確認される。一方、図11は、補正後の値に基づいて導電材領域をマスキングしたものであり、図10でマスキングされていない部分(青色で維持された部分)が図11で黒色でマスキングされたことが確認される。
【0059】
一方、導電材でマスキングされた領域のうち活物質内に位置する領域は、誤差を除去するために削除する。これは、断面試料の製作工程で露出した活物質断面部分に導電材が付くなど、試料の製造過程で発生した誤差又は画像処理時に発生した誤差であり、実際に電極中の活物質内部に導電材が分布されていないことが明らかであるため、除去することが望ましい。
【0060】
一方、前記導電材領域がマスキングされた後、図1B図4図6図8図13の下段及び図14の下段に示すように、導電材領域のみ表示された画像を抽出(コントラストマスキング)し、Step 4の計算に供する。
【0061】
本発明の一実施態様において、前記導電材領域のマスキングは、AFMなどスキャンプローブ顕微鏡検査などで得られたデータを視覚化処理するプログラムを用いて行うことができる。本発明の一実施態様において、前記マスキングは、Gwyddion soft wareを用いることができる。一方、前記画像のうちピクセルのサイズが小さすぎる画像が多いと、導電材領域の周長や面積を正確に確認しにくく、分散度算出時にノイズとして作用して誤差が発生することがある。したがって、前記マスキング時に小さすぎるピクセル画像は除去することができる。例えば、Gwyddionプログラムを使用する場合、grain-filtering機能を用いて、3ピクセル未満の微細な領域は、導電材領域でマスキングされないように削除することができる。3ピクセル未満の微細な領域が含まれる場合には、導電材領域の周長が過度に高い数値で算出される可能性があるため除去して測定する。一方、図2は、上記方法で得られたヒストグラムを示す図であり、活物質領域と導電材領域とが分けられることが確認される。
【0062】
(Step 4)
前記(Step 3)により導電材領域のマスキングが完了すると(すなわち、導電材領域の確定)、前記マスキングされた領域の周長と面積を確認し、これによって上記[式1]によるIndex 1を計算することができる。上記[式1]において、マスキング領域の周長数値がBoundarymeasuredに適用され、マスキング領域の面積の数値がAに適用される。
【0063】
また、マスキング領域の面積と同一の面積を有する円の半径を計算し、これにより前記円の円周を算出することができる。前記円の円周をLcircleに代入する方法によって、[式2]によるIndex 2を計算することができる。
【0064】
一方、本発明において、前記マスキングされた導電材領域の面積と周長は、Gwyddion soft wareのような画像処理プログラムを用いることができる。図15は、前記プログラムをにより計算された面積と周長を示すディスプレイ画面を示す図である。
【0065】
電気化学素子用電極
本発明において、導電材の分散度の評価対象となる電極は、電気化学素子用電極であれば特に限定されるものではない。前記電気化学素子は、電気化学反応を行うすべての素子を含むことができる。前記電気化学素子の具体的な例としては、あらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタ(capacitor)などがある。前記二次電池は、イオン伝導性塩としてリチウム塩が用いられるリチウムイオン二次電池であり得る。本発明の一実施態様において、前記電極は、集電体と前記集電体の少なくとも一側の表面に配置された電極活物質層を含むことができる。また、前記電極活物質層は、電極活物質、導電材及びバインダー材料を含むことができる。
【0066】
電極活物質
前記電極活物質層は、電池の極性に応じて正極活物質又は負極活物質を含むことができる。
【0067】
前記正極活物質の非限定的な例としては、リチウム遷移金属酸化物又はリチウム金属鉄リン酸化物、金属酸化物の形態であれば限定されず、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1つ又はそれ以上の遷移金属で置換された化合物と、化学式Li1+xMn2-x(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物と、リチウム銅酸化物(LiCuO)と、LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物と、化学式LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B又はGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物と、化学式LiMn2-x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn又はTaであり、x=0.01~0.1である)、又はLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、Cu又はZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物と、化学式のLiの一部がアルカリ土金属イオンで置換されたLiMnと、リチウム金属リン酸化物LiMPO(ここで、M=Fe、Co、Ni、又はMnである)、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物Li1+x(NiCoMn1-x(x=0~0.03、a=0.3~0.95、b=0.01~0.35、c=0.01~0.5、a+b+c=1)と、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物の一部がアルミニウムで置換された酸化物Li1+x(NiCoMnAl1-x(x=0~0.03、a=0.3~0.95、b=0.01~0.35、c=0.01~0.5、d=0.001~0.03、a+b+c+d=1)と、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物の一部が他の遷移金属で置換された酸化物Li1+x(NiCoMn1-x(x=0~0.03、a=0.3~0.95、b=0.01~0.35、c=0.01~0.5、d=0.001~0.03、a+b+c+d=1、Mは、Fe、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群より選択されたいずれか1つである)、ジスルフィド化合物と、Fe(MoOなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
前記負極活物質の非限定的な例としては、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素と、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)などの金属複合酸化物と、リチウム金属と、リチウム合金と、ケイ素系合金と、錫系合金と、SiO、SiO/C、SiOなどのシリコン系酸化物と、SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi及びBiなどの金属酸化物と、ポリアセチレンなどの導電性高分子と、Li-Co-Ni系の材料などを用いることができる。
【0069】
バインダー材料
本発明において、前記バインダー材料は、電極活物質など電極内に含まれる材料の結着、及び電極活物質層と対向する分離膜や集電体との結着を達成することができ、二次電池用バインダー材料として用いられるものであれば特定のものに限定されない。
【0070】
導電材
前記導電材は、前記電極用混合粉体に含まれて電極活物質層に導入することができる。前記導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こすことなく導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛と、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラックと、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維と、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉体などの金属粉体と、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカーと、酸化チタンなどの導電性金属酸化物と、ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用いることができるが、詳しくは、前記導電材の均一な混合と伝導性の向上のために、活性カーボン、黒鉛、カーボンブラック、及びカーボンナノチューブからなる群より選択される1種以上を含むことができ、さらに具体的には、活性カーボンを含むことができる。
【0071】
集電体
一方、本発明の一実施態様において、前記集電体は、電池に化学的変化を引き起こすことなく、高い導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅もしくはアルミニウム、又はステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。また集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を向上させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態が可能である。
【0072】
一方、本発明の一実施態様において、前記集電体は表面で抵抗を低下させ、接着力を向上させるための伝導性プライマーを全体的又は部分的にコーティングしたものを用いることができる。ここで、前記伝導性プライマーは、伝導性物質とバインダーを含むことができ、前記伝導性物質は、伝導性を有する物質であれば限定されないが、例えば、炭素系物質であり得る。前記バインダーは、溶剤に可溶なフッ素系(PVDF及びPVDF共重合体を含む)、アクリル系バインダー及び水系バインダーなどを含むことができる。
【0073】
一方、本発明において、電極の製造方法は特に限定されない。例えば、前記電極は、電極活物質層形成用スラリーを集電体に塗布する湿式方法や、電極混合粒子を圧着して層状構造に成形する乾式方法などを適用して製造することができる。
【0074】
前記湿式方法による電極製造方法は、例えば、下記のように説明することができる。まず、電極活物質、導電材及びバインダーのような電極材料を適切な溶媒に投入することで電極活物質層形成用スラリーを製造する。前記スラリーには、上述の電極材料以外にも電気化学的性能やスラリーの分散性を向上させることができる添加剤をさらに投入することができる。その後、前記スラリーを電極集電体に塗布する。上記塗布方法は、スロットダイ、グラビアコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティングなどの公知の塗布方法を適用することができ、特定の方法に限定されない。その後、溶媒を除去して集電体表面に電極活物質層が配置された電極を得ることができる。前記スラリーの乾燥は、自然乾燥や送風乾燥などの方式を適用することができ、乾燥を促進する観点から加熱することができる。その後、適切な厚さや電極活物質のロード量を確保するために加圧工程をさらに行うことができる。
【0075】
上記乾式方法は、電極材料を含む乾式混合物や電極材料を含む混合粒子を準備した後、溶媒を介することなく粉末状の材料を圧着して層状構造を成形することであり得る。
【0076】
本発明の一実施態様による乾式製造方法は、下記のように説明することができる。まず、粉末状の電極材料を乾式で混合する。ここで、前記電極材料は、電極活物質、バインダー及び導電材をさらに含むことができる。また、前記混合粒子は、上述の電極材料外にも電気化学的性能や粒子形成を促進できる添加剤をさらに投入することができる。その後、上記で得られた混合物にせん断力を加えてバインダーを繊維化する。前記せん断力の印加は、前記電極材料を高速で混合するか、混練(kneading)する方法で行うことができる。ここで、混練は、印加されるせん断力が混合に比べて低いことがある。本発明の一実施態様において、前記混練は、高温、例えば80℃以上、100℃以上の温度で行うことができる。一方、前記温度は、200℃以下、好ましくは150℃以下に制御することができる。このような工程によりバインダー樹脂が繊維化し、電極材料が絡み合って所定のサイズの混合粒子が得られる。一方、前記混練工程により混合塊を得ることができ、所定のサイズの混合粒子を製造するために粉砕工程をさらに行うことができる。前記混合粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)やポリオレフィンのように、せん断力によって繊維化可能なバインダー樹脂を含むことができる。このように混合粒子が得られると、これを加圧して板状の電極フィルムを製造し、その後、前記電極フィルムと集電体を結合させて電極を得ることができる。或いは前記混合粒子を直接集電体に散布して加圧する方式を適用することができる。一方、前記混合粒子の製造方法において、前記電極材料を溶媒に投入してスラリーを製造した後、これを噴霧乾燥して混合粒子を製造することができる。このような場合には、SBRなどのバインダー樹脂を用いることができる。しかし、本発明において、導電材の分散度を測定するための電極は、特定の形状や製造方法に限定されるものではなく、前述の分散度測定方法を適用できるものであればいずれも適用可能であることは言うまでもない。
【0077】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に理解できるように、本発明による実施例、比較例、及び実験例に基づいて詳しく説明する。
【0078】
[実施例]
電極の製造
実施例1
リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物(Li(Ni、Co、Mn、Al)O)、カーボンブラック(比表面積1400m/g)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を96.0:1.5:2.5の比率でブレンダーに投入し、10,000rpmで1分間混合して混合物を製造した。次いで、前記混合物をジェットミル工程(フィーディング圧力50psi、グラインディング圧力45psi)で粉砕して電極用混合粉体を得た。前記電極用混合粉体を第1ラップカレンダー(ロール径:88mm、ロール温度:100℃、20rpm)に投入し、圧着して乾式電極フィルムを製造した。次いで、前記得られた乾式電極フィルムをアルミニウム薄膜(厚さ19μm)の両面に配置し、150℃に維持されるラミネート工程により接合して電極を得た。得られた電極の一面における電極活物質層の厚さは約80μmであった。一方、前記リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物は、バイモーダル分布を有し、直径約10μmの大粒子(二次粒子)及び直径約5μmの単粒子を含む。図3は、実施例1のSSRM画像であり、図4は、その導電材領域をマスキングして確認した画像を示す図である。
【0079】
実施例2から実施例4
リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物(Li(Ni、Co、Mn、Al)O)、カーボンブラック及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を96.0:1.5:2.5の比率でブレンダーに投入し、10,000rpmで1分間混合して混合物を製造した。次いで、ニーダーの温度を150℃に安定させ、前記混合物をニーダーに入れた後、圧力1.1atm下で混錬して混合物塊を得た。実施例2及び実施例4において、前記混錬速度は40rpmから70rpm、混錬時間は3分から7分内でそれぞれ異なるように制御した。前記混合物塊をブレンダーに投入し、10,000rpmの条件下で40秒間粉砕し、孔径1mmの篩で分級して電極用混合粉体を得た。次いで、前記電極用混合粉体を第1ラップカレンダー(ロール径:88mm、ロール温度:100℃、20rpm)に投入し、圧着して乾式電極フィルムを製造した。次いで、前記得られた乾式電極フィルムをアルミニウム薄膜(厚さ19μm)の両面に配置し、150℃に維持されるラミネート工程により接合して電極を得た。得られた電極の一面における電極活物質層の厚さは約80μmであった。一方、前記リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物は、バイモーダル分布を有しており、直径約10μmの大粒子(二次粒子)及び直径約5μmの単粒子を含む。また、実施例2及び実施例4で使用された導電材は互いに異なる種類であった。図1A及び図1Bは、実施例4の電極のSSRM画像、及び導電材領域をマスキングして確認された画像を示す図である。図5は、実施例2の電極のSSRM画像であり、図6は、その導電材領域をマスキングして確認された画像を示す図である。図7は、実施例3の電極のSSRM画像であり、図8は、その導電材領域をマスキングして確認された画像を示す図である。
【0080】
実施例5及び実施例6
リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物(Li(Ni、Co、Mn、Al)O)、カーボンブラック(比表面積1400m/g)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をブレンダーに投入し、10,000rpmで1分間混合して混合物を製造した。次いで、ニーダーの温度を150℃に安定させ、前記混合物をニーダーに入れた後、圧力1.1atm下で混錬して混合物塊を得た。実施例5及び実施例6において前記混錬速度は40rpmから70rpm、混錬時間は3分から7分内でそれぞれ異なるように制御された。前記混合物塊をブレンダーに投入し、10,000rpmの条件下で40秒間粉砕し、孔径1mmの篩で分級して電極用混合粉体を得た。次いで、前記電極用混合粉体を第1ラップカレンダー(ロール径:88mm、ロール温度:100℃、20rpm)に投入し、圧着して乾式電極フィルムを製造した。次いで、前記得られた乾式電極フィルムをアルミニウム薄膜(厚さ19μm)の両面に配置し、150℃に維持されるラミネート工程により接合して電極を得た。得られた電極の一面における電極活物質層の厚さは約80μmであった。一方、前記リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物は、モノモーダル分布を有しており、直径約5μmの単粒子を使用した。実施例4は、リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物(Li(Ni、Co、Mn、Al)O)、カーボンブラック(比表面積1400m/g)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の比率を96.0:1.8:2.2にし、実施例5は96.2:1.6:2.2にした。図13は、実施例5のSSRM画像及び導電材領域をマスキングして確認された画像を示す図である。図14は、実施例6のSSRM画像及び導電材領域をマスキングして確認された画像を示す図である。
【0081】
電極断面の試料の準備
エポキシ基を含有する高分子として、重量平均分子量が約700g/mol以下のエポキシ系高分子を含む溶液を準備した。
【0082】
上記実施例1から実施例6で準備された正極を、準備されたエポキシ系高分子溶液に含浸させることによって、気孔を前記高分子で充填した。その後、アルゴンイオンビームを照射するイオンミリング装置(IB19520CCP、Jeol社)を用いて前記二次電池用正極に集束アルゴン(Ar)イオンビームを照射して表面を削り取り、きれいな断面を有する断面試料を作製した。アルゴンイオンビームの照射において、イオンビーム電流は170μAに設定され、ガス流量(gas flow)は1.5cm/分に設定され、照射は3時間実施された。
【0083】
SSRMの分析条件
使用装置:cypher ES(Oxford Instrument)、Dual-gain ORCA cantilever holder
[Parameters]
Mode:contact
Sample/line:512×512、Scan rate:0.5Hz
Bias:~2V、Deflection Setpoint Volts:~0.2
Scan Angle:90゜
[AFM Mode]
Model:AD-40-As(製造社:Adama)
Tip:Highly doped(B)single crystal diamond、tip height 300nm
Cantilever&bulk tip:diamond coated silicon、Reflexcoating(Au)
F=180kHz、k=40N/m
Typical contact resistance:~10kΩ
【0084】
SSRMの分析方法
イオンミリングの後、大気に暴露しない条件下でグローブボックスに移動させた後、AFMパック(puck)にロードした。その後、銀(Ag)ペーストを製作された断面以外の電極部とAFMパックとの間に塗布して追加の導電路を形成した。次いで、前記追加の導電路が形成された試料を密閉型のセルボディにロードし、大気に暴露しない状態を維持してAFM装置に取り付けた。レーザーアライメントの後、光学顕微鏡でミリングされた部分を測定部分として選択しArフロー下で測定した。このような方式によりSSRM画像が得られた。図3図5図7及び図1Aは、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の電極のSSRM画像である。また、図13及び図14の上段の図面は、それぞれ実施例5及び実施例6の電極のSSRM画像である。観察された画像のサイズは30μm×30μmにした。
【0085】
導電材領域のマスキング
上記で得られたSSRM画像に対してGwyddionソフトウェアを用いて導電材領域をマスキングした。
【0086】
まず、log(抵抗)画像を得て、画像内のlog(抵抗)分布に対するヒストグラムを得た。これは、前記ソフトウェアで提供するCalculate 1D Statistical functionでHeight distribution機能を用いて得た。前記ヒストグラムで導電材に該当するピークと電極活物質に該当するピークとの間の最低点に該当するlog(R/Ω)値に0.2を加算する補正を行って閾値を決定した。図2は、電極3に対するヒストグラムを示す図であり、これによると、閾値としてlog(R/Ω)=7.2が設定された。これに基づいて導電材領域をマスキングした。このとき、Grain filtering機能を用いて3ピクセルよりも小さなピクセルに該当する領域を削除し、電極活物質内に位置する領域を削除した。図2より、ログスケール画像から得たヒストグラム上で電極活物質及び導電材に該当するピクセルが区分されることを確認した。すなわち、該当の領域が決定された各ピクセルの情報を用いて、導電材領域の分布を容易に定量化できることが分かった。
【0087】
また、図1Bは、実施例4の電極のSSRM画像に対して、図4は、実施例1の電極のSSRM画像(図3)に対して、図6は、実施例2の電極のSSRM画像(図5)に対して、図8は、実施例3の電極のSSRM画像(図7)に対して導電材領域をマスキングし、マスキングされた導電材領域のみを色の濃淡で表示した図である。また、図13及び図14の下段の図面は、それぞれ実施例5及び実施例6の電極でマスキングされた導電材領域のみを色の濃淡で表示した図である。
【0088】
その後、Grain-Summary機能を用いてマスキングされた領域に対する周長と面積を確認した。
【0089】
次いで、上記[式1]及び[式2]に各数値を代入して指数1及び指数2を算出し、その結果を下記[表1]に示す。[表1]より確認されるように、電極活物質層中の導電材の種類及び/又は含有量、電極製造工程により指数1及び指数2が異なるように算出されることを確認し、導電材の分散度を定量的に確認することができた。このように、本発明の導電材指数を活用して電極の導電材の分散度を定量的に確認することができる。また、電極製造時における導電材の含有量及び/又は種類の選択、電極製造方法の選択、電極製造工程条件の設定に、前記導電材の分散度指数を活用することができる。
【0090】
【表1】
【符号の説明】
【0091】
10 電極
11 電極活物質層
11s 表面から所定の深さまでの部分
11f 集電体の対面部から所定高さの部分
12 集電体
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】