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特表2024-537065ニッケル水素バッテリーパックのバッテリー状態を示すステータス信号を発する方法、監視ユニットおよびクオリティコントロールシステム
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  • 特表-ニッケル水素バッテリーパックのバッテリー状態を示すステータス信号を発する方法、監視ユニットおよびクオリティコントロールシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ニッケル水素バッテリーパックのバッテリー状態を示すステータス信号を発する方法、監視ユニットおよびクオリティコントロールシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/378 20190101AFI20241003BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241003BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20241003BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20241003BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01R31/378
H01M10/48 Z
H01M10/48 P
G01R31/367
G01R31/392
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519539
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 SE2022050868
(87)【国際公開番号】W WO2023055278
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】2151205-8
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504013258
【氏名又は名称】ナイラー インターナショナル アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】アクセーン、ジェニー
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA21
2G216BB01
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB04
5G503CB11
5H030AA01
5H030AS20
5H030FF31
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
本発明は、複数のニッケル水素セル(C1、C2、C3)を含むニッケル水素バッテリーパックのバッテリー状態を示すステータス信号(SS)を監視ユニット(100)を使用して発する方法(200)に関する。監視ユニット(100)は、ニッケル水素バッテリーパック(101)内の内部圧力(Pi)、ニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリー電圧(Vb)、ニッケル水素バッテリーパック(101)へ、そしてニッケル水素バッテリーパック(101)から流れるバッテリー電流(Ib)、ニッケル水素バッテリーパック(101)の表面温度(Text)の群からの測定値に関する情報を含むデータ信号(DS)を発するために動作可能な測定ユニット(102)を含む。監視ユニットは、測定ユニット(102)からデータ信号(DS)を受信するために動作可能であり、ステータス信号(SS)を発生させるために動作可能な制御ユニット(103)をさらに含み、制御ユニット(103)は、さらに物理的バッテリーモデル(300)によるニッケル水素バッテリーパック(101)の内部圧力を推定するために動作可能である。本発明の方法(200)は、内部圧力を測定することと(S1)、バッテリー電圧(Vb)を測定することと(S2)、バッテリー電流(IB)を測定することと(S3)、ニッケル水素バッテリーパックの表面温度(Text)を測定することと(S4)、物理的バッテリーモデル(300)および前記測定値を使用してニッケル水素バッテリーパック(101)の内部気体圧力を推定することと(S5)、推定された内部圧力と測定された内部圧力の間の差圧に基づいてニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリー状態を示すステータス信号を発することと(S6)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視ユニット(100)を使用して複数のニッケル水素セル(C1、C2、C3)を含むニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリーの状態を示すステータス信号(SS)を発する方法(200)であって、監視ユニット(100)は、
ニッケル水素バッテリーパック(101)内の内部圧力(Pi)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリー電圧(Vb)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)へ、そしてニッケル水素バッテリーパック(101)から流れるバッテリー電流(Ib)および
ニッケル水素バッテリーパック(101)の表面温度(Text)からなる群からの測定値に関する情報を含むデータ信号(DS)を発するために動作可能な測定ユニット(102)と、
測定ユニット(102)からデータ信号(DS)を受信するために動作可能であり、ステータス信号(SS)を発生させるために動作可能な制御ユニット(103)と、を含み、制御ユニット(103)は、さらに物理的バッテリーモデル(300)によるニッケル水素バッテリーパック(101)の内部圧力を推定するために動作可能であり、
該方法(200)は、
内部圧力を測定することと(S1)、
バッテリー電圧(Vb)を測定することと(S2)、
バッテリー電流(Ib)を測定することと(S3)、
ニッケル水素バッテリーパックの表面温度(Text)を測定することと(S4)、
物理的バッテリーモデル(300)および前記測定値を使用してニッケル水素バッテリーパック(101)の内部気体圧力を推定することと(S5)、
推定された内部圧力と測定された内部圧力の間の差圧に基づいてニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリー状態を示すステータス信号を発することと(S6)を含む方法。
【請求項2】
ステータス信号を発する工程S6は、差圧が第1の閾値未満になった際にニッケル水素バッテリーパック(101)の気体の漏れに関する情報を発する工程(S61)を含むことを特徴とする請求項1記載の方法(200)。
【請求項3】
ステータス信号を発する工程は、差圧が第2の閾値を超えて上昇した際にニッケル水素バッテリーパックの充電中にニッケル水素バッテリーパックの経年劣化に関する情報を発することを含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステータス信号を発する工程は、5%より少ない充電状態にニッケル水素バッテリーパックを放電する間に差圧が第3の閾値を超えて上昇した際にニッケル水素バッテリーパック内のクリティカルエラーに関する情報を発することを含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステータス信号を発する工程は、前記測定ユニットからの過去の測定に基づいていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
内部圧力を測定する工程は、ニッケル水素バッテリーパックのニッケル水素バッテリーセルの共通の体積で実行されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
内部気体圧力を推定する工程(S5)は、
水素および酸素で表す物質収支モジュールを使用してニッケル水素バッテリーからそしてニッケル水素バッテリーへ流れる測定された電流(Ibat)に基づいて2つの電極の位相分布を決定することと(S51)、
電圧収支モジュールを使用して負極電圧、測定されたセル電圧およびセル抵抗に基づいて正極電圧を決定することと(S52)、
ニッケル水素バッテリーのモデル内部温度(Tin)を決定し、測定された温度(Text)を使用し、ニッケル水素バッテリーからニッケル水素バッテリースタックの周囲への熱移動をエネルギー収支モジュールを使用して決定することと(S53)、
窒素、水蒸気、水素および酸素で表す気体圧力モジュールを使用して内部気体圧力(P)を決定することと(S55)を含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
内部気体圧力を推定する工程(S5)は、ニッケル水素バッテリーパック(101)の体積変化、電極容量および経年劣化を決定する工程(S54)をさらに含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
ニッケル水素バッテリーパック (101)を監視するための監視ユニット(100)であって、ニッケル水素バッテリーパック(101)内の内部圧力(Pi)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリー電圧(Vb)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)へそしてニッケル水素バッテリーパック(101)から流れるバッテリー電流(Ib)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)の表面温度(Text)からなる群からの測定値に関する情報を含むデータ信号DSを発するために動作可能な測定ユニット(102)と、
測定ユニット(102)からのデータ信号を受信するために動作可能であり、ステータス信号を発するために動作可能な制御ユニット(103)と、を含み、制御ユニット(103)は、さらに物理的バッテリーモデル(300)によるニッケル水素バッテリーパック(101)の内部圧力を推定するために動作可能であり、
制御ユニット(103)は、さらに請求項1乃至8いずれか1項記載の方法を実行するように構成されている監視ユニット。
【請求項10】
請求項9記載の監視ユニット(100)を含むニッケル水素バッテリーパック(101)用クオリティコントロールシステム(400)。
【請求項11】
請求項9記載の監視ユニット(100)と、
監視ユニット(100)からステータス信号を受信し、ステータス信号をリモートサーバー(603)へ送信する、または監視ユニット(100)の測定ユニット(102)からリモートサーバー(603)へデータ信号を送信するために動作可能な通信ユニット(601)と、を含むニッケル水素バッテリーパック(101)用監視システム(600)。
【請求項12】
プロセッサ(520)によって実行される際にプロセッサ(520)が請求項1乃至8いずれか1項記載の方法を行うようにするコンピュータプログラムインストラクションを記憶したコンピュータ可読媒体(550)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にニッケル水素バッテリーを監視する分野、より具体的には物理的バッテリーモデルを有する監視ユニットを使用してニッケル水素バッテリーパックを監視する方法に関する。
【0002】
また本開示は、ニッケル水素バッテリーパック用監視ユニット、クオリティコントロールシステムおよび監視システムに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの用途において長い寿命を有するニッケル水素バッテリーが注目されている。安全かつ最適な性能を提供するためにバッテリーパックの状態を密に監視することも重要である。従来、ニッケル水素バッテリーパックは、温度、電圧および電流測定を用いて監視されていた。例えば、充電中に温度が上昇した場合、充電器から送られる電力は、バッテリー内の充電にそれ以上変換されず、代わりにバッテリーを発熱させるので充電が終わったことを示していた。
【0004】
ニッケル水素バッテリーを監視するためにバッテリー内の物理的および化学的プロセスを深く理解する必要がある。
【0005】
科学コミュニティではニッケル水素バッテリーを完全に理解し、モデル化するためのいくつかの試みがなされてきた。例えば、LEDOVSKIKH.A等により充電可能なニッケル水素バッテリーのモデル化。合金および化合物のジャーナル、356-357 (2003) 742-745。この出版物は、バッテリー電圧、内部気体圧力および温度のモデル化を開示している。しかしながら、この出版物のモデルは、ニッケル水素バッテリーのすべての起こり得る状態の有効なモデルを提供していない。特に放電プロセスおよび休止時のバッテリーは、この出版物ではモデル化されていない。したがって、このモデルを使用するためにバッテリーを0%の充電状態に放電しなければならない。そうでなければパラメータの初期化が面倒になる。
【0006】
ニッケル水素バッテリーのバッテリーの状態を密に監視するためにニッケル水素バッテリーのすべての状態に有効なバッテリーモデルおよびバッテリー内のプロセスの深い理解が必要であり、特に0%以外の充電状態から充電した際に有効なモデルが必要である。
【0007】
したがって、良好なモデルおよびニッケル水素バッテリーの状態の監視への新たな手段がバッテリー業界で大きく注目されている。
【0008】
ニッケル水素バッテリーのバッテリーの状態を示すステータス信号を得ることは有利になるはずである。そのような信号は、バッテリー業界内で多くの使用事例を見いだすことになる。
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、従来の上述の欠陥の1つ以上および不利な点を単独または組み合わせたものを軽減、緩和または除去することを意図したバッテリーの状態を示すステータス信号を発する方法および改良された方法を提供することである。
【0010】
この目的は、ニッケル水素バッテリーパックのバッテリー状態を示すステータス信号を発する方法によって達成される。ニッケル水素バッテリーパックは、複数のニッケル水素セルを含む。本発明の方法は、監視ユニットを使用し、この監視ユニットは、ニッケル水素バッテリーパックの内部圧力、ニッケル水素バッテリーパックのバッテリー電圧、ニッケル水素バッテリーパックへまたはニッケル水素バッテリーから流れるバッテリー電流、ニッケル水素バッテリーパックの表面温度からなる群の測定値に関する情報を含むデータ信号を発するために動作可能な測定ユニットを含む。監視ユニットは、測定ユニットからのデータ信号を受信するために動作可能であり、ステータス信号を発するために動作可能な制御ユニットをさらに含む。制御ユニットは、さらに物理的バッテリーモデルでニッケル水素バッテリーパックの内部圧力を推定するために動作可能である。本発明の方法は、内部圧力を測定することと、バッテリー電圧を測定することと、バッテリー電流を測定することと、ニッケル水素バッテリーパックの表面温度を測定することと、物理的バッテリーモデルおよび前記測定値を使用してニッケル水素バッテリーパックの内部気体圧力を推定することとを含む。本発明の方法は、推定された内部圧力と測定された内部圧力の差圧に基づいてニッケル水素バッテリーパックのバッテリーの状態を示すステータス信号を発することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上記のことは添付図面に示すような例示的な実施態様の以下のより詳細な説明から明らかになり、図中の同じ参照符号は、図面が変わっても同じ部品を示す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、例示的な実施態様を示す際に代わりに強調されている場合がある。
図1】本発明の一実施態様による監視ユニットの略図である。
図2】本発明の一実施態様によるステータス信号を発する方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施態様による物理的バッテリーモデルの一実施態様を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施態様によるクオリティコントロールシステムを示すブロック図である。
図5】本発明の一実施態様によるプロセッサおよびコンピュータ記憶媒体を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施態様による監視システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の態様は、添付図面を参照した本明細書でより具体的に説明される。本明細書に開示されている装置および方法は、しかしながら、多くの異なる形体で実施可能であり、本明細書に記載の態様に限定されると理解されるべきではない。図中の同じ番号は、すべて同じ部材を指している。
【0013】
本明細書で使用されている用語は、本開示の特定の態様を説明する目的だけのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書で使用されている単数形は、特に明確に示さない限り、同様に複数形を包含することを意図したものである。
【0014】
本開示において「ニッケル水素バッテリーパック」なる用語は、互いに電気的に接続された複数のニッケル水素バッテリーセルの集合体として理解されるべきである。
【0015】
本明細書に示す例示的実施態様のいくつかは、ニッケル水素バッテリーパックのバッテリーの状態を示すステータス信号を発する方法に関する。本明細書に示す例示的実施態様の発展の一部として、最初に問題点を特定し、考察する。
【0016】
ニッケル水素バッテリーは、ニッケル水素バッテリーの正しい状態を評価するために正確に説明される必要がある多数の同時的物理的および化学的プロセスを伴う複雑な装置である。例えば、ニッケル水素バッテリーの内部圧力は、いくつかの根本原因を有する場合がある。例えば、内部圧力は周囲温度の上昇または過充電によって上昇する場合がある。したがって、内部圧力は、独立して使用してニッケル水素バッテリーの状態を判断することはできない。
【0017】
本発明者は、これらの問題は、ニッケル水素バッテリーの内部圧力を推定するためにニッケル水素バッテリー用の操作の全ての領域に有効な物理的バッテリーモデルを使用して最小限にする、または取り除けるということを認識した。この推定された内部圧力は、その後、差圧を形成するために測定された内部圧力と共に使用される。推定された内部圧力は、正常なバッテリーの全ての作動領域において測定された内部圧力を模しているので、推定された内部圧力からの突然の逸脱は、増加または減少する差圧を生じさせ、これはモデルがモデル化できない何らかのエラーがニッケル水素バッテリー内に起こっていることを強く示すものである。
【0018】
本発明者は、推定された内部圧力と測定された内部圧力の間の差圧に基づいてバッテリーの状態を示すステータス信号を発する方法を考案した。
【0019】
ここで図1および図2を参照して監視ユニット100使用して複数のニッケル水素セルC1、C2、C3を含むニッケル水素バッテリーパック101のバッテリー状態を示すステータス信号SSを発生させる方法200の1つの実施態様を開示する。
【0020】
図1に開示されている監視ユニット100は、測定に関する情報を含むデータ信号DSを発するために動作可能な測定ユニット102を含む。測定は、ニッケル水素バッテリーパック101の内部圧力Pi、ニッケル水素バッテリーパック101のバッテリー電圧Vb、ニッケル水素バッテリーパック101へ、またはニッケル水素バッテリーパック101から流れるバッテリー電流Ib、ニッケル水素バッテリーパック101の表面温度Textからなる群から得られる。
【0021】
図1は、次のものからなる群からの測定値関する情報を含むデータ信号DSを発するために動作可能な測定ユニット102を含むニッケル水素バッテリーパック101を監視するための監視ユニット100の実施態様を開示している、
ニッケル水素バッテリーパック101の内部圧力Pi、
ニッケル水素バッテリーパック101のバッテリー電圧Vb、
ニッケル水素バッテリーパック101へまたはニッケル水素バッテリーパック101から流れるバッテリー電流Ib、
ニッケル水素バッテリーパック101の表面温度Text。
【0022】
監視ユニットは、測定ユニット102からデータ信号を受信するために動作可能であり、ニッケル水素バッテリーパックのバッテリーの状態を示すステータス信号を発するために動作可能な制御ユニット103をさらに含む。制御ユニット103は、さらに物理的バッテリーモデル300によるニッケル水素バッテリーパック101の内部圧力を推定するために動作可能である。制御ユニット103は、さらに本明細書の下記に開示する実施態様による方法200を実行するように構成されている。
【0023】
ここで方法200の実施態様がフローチャートの形体で開示されている図2を参照する。
【0024】
方法200は、以下の工程を含む。
【0025】
工程S1、内部圧力を測定する。一部の実施態様では内部圧力は、共通の体積で測定してもよい。一部の実施態様では圧力は複数の圧力センサで測定してもよい。
【0026】
工程S2、バッテリー電圧Vbを測定する。この測定された電圧は、ニッケル水素バッテリーパックの正極104と負極107の間で測定された電圧である。
【0027】
工程S3、バッテリー電流Ibを測定する。この電流は、1つの実施態様では追加でニッケル水素バッテリーパックの実際の充電状態を決定するための充電推定器の状態と共に使用してもよい。
【0028】
工程S4、ニッケル水素バッテリーパックの表面温度Textを測定する。ニッケル水素バッテリーパックの表面温度は、ニッケル水素バッテリーパック101のニッケル水素バッテリーセルと熱接触する位置で測定される。例えばハウジングが熱伝導性の良い金属材料からなる場合、ハウジング上のある位置が表面温度の測定に最適になる。表面温度は、ニッケル水素バッテリーパックの周辺環境への熱流束を決定するためのモデルに使用される。
【0029】
工程S5、物理的バッテリーモデル300および前記測定値を使用してニッケル水素バッテリーパック101の内部気体圧力を推定する。
【0030】
工程S6、推定された内部圧力と測定された内部圧力の間の差圧に基づいてニッケル水素バッテリーパック101のバッテリー状態を示すステータス信号を発する。
【0031】
ステータス信号を発する工程S6は、差圧が第1の閾値未満になったときにニッケル水素バッテリーパック101の気体の漏れに関する情報を発する工程S61を任意に含む。
【0032】
ステータス信号を発する工程S6は、差圧が第2の閾値を超えて上昇した際にニッケル水素バッテリーパックの充電中にニッケル水素バッテリーパックの経年劣化に関する情報を発する工程S62を任意に含む。
【0033】
ステータス信号を発する工程S6は、ニッケル水素バッテリーパックを5%未満の充電状態への放電時に差圧が第3の閾値を超えて上昇した際にニッケル水素バッテリーパックのクリティカルエラーに関する情報を発する工程S63を任意に含む。
【0034】
任意にステータス信号を発する工程S6は、前記測定ユニットからの過去の測定に基づいている。
【0035】
内部圧力を測定する工程S1は、ニッケル水素バッテリーパックのニッケル水素バッテリーセルの共通の体積で任意に実行される。1つの実施態様では複数のニッケル水素バッテリーセルの内部圧力を測定し、これらの測定値を使用することも可能である。
【0036】
物理的バッテリーモデルで内部圧力を推定する工程S5は、次の工程を含む。
【0037】
工程S51、水素および酸素で表す物質収支モジュールを使用してニッケル水素バッテリーからそしてニッケル水素バッテリーへ流れる測定された電流Ibatに基づいて2つの電極の位相分布を決定すること、
工程S52、電圧収支モジュールを使用して負極電圧、測定されたセル電圧およびセル抵抗に基づいて正極電圧を決定すること、
工程S53、ニッケル水素バッテリーのモデル化された内部温度Tinを決定し、測定された温度(Text)を使用し、ニッケル水素バッテリーからニッケル水素バッテリースタックの周囲への熱移動をエネルギー収支モジュールを使用して決定すること、
工程S55、窒素、水蒸気、水素および酸素で表す気体圧力モジュールを使用して内部気体圧力Pを決定すること。
【0038】
内部気体圧力を推定する工程S5は、ニッケル水素バッテリーパック101の体積変化、電極容量および経年劣化を決定する工程S54を任意にさらに含む。
【0039】
図4のブロック図にニッケル水素バッテリーパック101用のクオリティコントロールシステムを開示する。クオリティコントロールシステム400は、本明細書に開示されている実施態様による監視ユニット100を含む。監視ユニット100は、本明細書に開示されている実施態様によるニッケル水素バッテリーパック101の漏れを検出するために動作可能である。測定された内部圧力と推定された内部圧力との差圧を監視することによって漏れているバッテリーセルがクオリティコントロールシステムに接続されると強い信号が得られる。一部のバッテリークオリティコントロールシステムではバッテリーがソース・モニタリングユニット(SMU)または定電流発生器と定電圧発生器を組み合わせたものに接続されるが、本明細書に開示している方法は、このようなシステムにも適用可能である。
【0040】
図5はプログラム可能な信号処理ハードウェア内のコントロールユニット100の実装例を示している。図5に示す信号処理装置500は、測定ユニットからのデータ信号を受信し、ステータス信号SSを送信するためのインプット/アウトプット(I/O)セクション510を含む。信号処理装置500は、プロセッサ520と、ワーキングメモリ530と、コンピュータ可読インストラクションを記憶するインストラクションストア540とをさらに含み、このインストラクションは、プロセッサ520によって実行された際にプロセッサ520がニッケル水素バッテリーパックのバッテリーの状態を示すステータス信号を発するために上述の処理作業を行うようにする。インストラクションストア540は、コンピュータ可読インストラクションがプリロードされたROMを含んでもよい。これとは別にインストラクションストア540は、RAMまたは類似の種類のメモリを含んでもよく、コンピュータ可読インストラクションをこれらのメモリにCD-ROM等のコンピュータ可読媒体550などのコンピュータプログラム製品またはコンピュータ可読インストラクションを支持するコンピュータ可読信号からインプットすることができる。
【0041】
本実施態様ではプロセッサ520と、ワーキングメモリ530と、インストラクションストア540とを含む図5に示すハードウェア部品は、図1を参照して詳しく説明されている上述のコントロールユニットの機能を実施するように構成されている。
【0042】
また図5は、コンピュータプログラムインストラクションを記憶したコンピュータ可読媒体550を示し、これはプロセッサ520によって実行される際にプロセッサ520が本明細書に開示されている実施態様による方法を行うようにする。
【0043】
図6は、上記実施態様による監視ユニット100を含むニッケル水素バッテリーパック101用監視システム600を開示している。監視システムは、監視ユニット100からのステータス信号を受信し、リモートサーバー603にステータス信号SSを送信するために動作可能な通信ユニット601をさらに含む。リモートサーバーはクラウド604のバーチャルマシンであってもよい。このサーバーは、データをリモートワークステーション602から容易にアクセスできるようにデータベースのステータス信号を記憶している。このことはマシンラーニングおよびAIの可能性を開いている。さらにニッケル水素バッテリーパックのエラーは、ニッケル水素バッテリーパックのエラーが起こる前にリモートで検知されてもよい。一つの実施態様では通信ユニット601は、測定ユニットからのデータ信号を受信し、データ信号をリモートサーバーに送信するために動作可能である。これは通信ユニットがリモートサーバーで実装されてもよく、物理的バッテリーモデルがリモートサーバー内で作動可能であってもよいことを意味する。これは監視ユニットがシンプルになり、処理能力の要求が少なくなるという利点を有する。
【0044】
次に新しい物理的気体モデルを図3を参照して示す。
【0045】
ニッケル水素バッテリーを説明するためにバッテリー内で起こる物理的そして電気化学的プロセスに基づいた0Dモデルを構築する。このモデルには4つの異なる従属変数、即ちT、

およびXposがある。
【0046】
圧力モデルが実験データの周囲にビルドされる。その理由は、ニッケル水素バッテリーがかなりのヒステリシス効果を正極の開回路電圧、OCVに与えるからである。電圧を推定する動的使用のためのあらゆる種類のモデルではこのヒステリシス効果について説明する必要がある。代わりに実験的セル電圧を使用することによって正極電圧を模し、ヒステリシスの問題を避ける必要が共に回避することができる。実験的セル電圧からモデル化された負極電圧を引くと、正極電圧が得られ、これはEOCV+ηactを表す。次にこれは電位依存である酸素発生を算出するために使用できる。3セットのデータを使用してバッテリー気相の組成を推定する基準を供給する。即ち、バッテリー電流、Iセル;モジュール表面温度、Texp;およびセル電圧、Eセルである。電流は、バッテリー内の相転換および副反応を推定するために使用される。モジュール表面温度(Text)は、モデルのコアから表面への熱移動をモデル化するためのインプットとして使用される。最後に実験的セル電圧は、正極電圧を求めるために使用される。
【0047】
モデル300を設定した後、実験的圧力は、Nelder-Mead最適化解法を使用したパラメータに合うモデル発生させた圧力に対する比較として使用される。
【0048】
[物質収支モジュール301]
バッテリー内の気体の組成は、電極の相の組成だけでなく、バッテリー内の全体的な化学種の組成にも依存する。従って、このモデルは一連の物質収支に基づいている。
【0049】
電気化学的な化学種の消費と生成を追跡するために、電極電流の組成をモデル化する。電極電流は電極で起こる反応に接続され、反応電流の総和が電池の電流に等しくなる。負極では2つの反応がある。 充電反応と酸素の再結合により、電流収支は以下のようになる:
【数1】
【0050】
セルの全電流と酸素再結合電流から充電電流が得られる。再結合電流は、適合する速度定数KO2と活性化エネルギーを用いるアレニウスの式で与えられる:
【数2】
【0051】
標準的なアレニウスの式を用いて平衡定数を温度依存性にするには、基準温度が必要である。基準温度は初期温度に等しいと仮定する:
【0052】
正極の電流分布は、3つの競合反応、すなわち充放電反応、酸素発生反応、水素酸化反応により決定される。従って、電流収支は次のようになる:
【数3】
【0053】
酸素生成電流を見積もるには、まず過電位対平衡電圧が必要である。この過電位は、電解液のpHにおける酸素発生の平衡電位E0 O2 を、次式に従って正極電圧と比較することで求められる。
【0054】
これについては次節に説明する。これは、NiMH系の酸素発生の反応速度論を研究した Ayebらの実験データ[16]とともに使用される。彼らは反応機構と反応速度を研究し、2つの異なる反応速度に関係があると結論づけた。1つは部分的に充電されたNi(OH)電極に対するもので、もう1つは過充電領域に対するものである。このモデルを動的条件で機能させるため、これら2つの経験的な関係を組み合わせ、低電位では部分充電の関係を使用し、高電位に達したときに過充電の関係を使用するようにした。このモデルでは、2つの関係が組み合わされている。交換電流密度は、過電位と温度の両方に依存する。次いで酸素発生電流を、KOERが適合パラメータである以下の関係を用いて求める:
【0055】
正極表面に到達することができた水素は高電位による動力学的限界がないという仮定によって水素電流が与えられる。したがって、水素電流は気体バルクから電極表面への物質輸送によって制限される。このため、気体バルクの水素圧を駆動力とし、反応係数と物質移動係数を組み合わせた適合パラメータ
を用いたアレニウス式が用いられる。
はAlbertusから引用される。上記アレニウス方程式の場合と同様に
である。
【0056】
電極電流は、モル平衡を確立することで、バッテリー内に存在する水素と酸素のモル量を追跡するために使用することができる。バッテリー内に存在する酸素量は、微分式を用いてモデル化される:
【数4】
ただし、
である。
【0057】
ここでは、酸素の挿入は行われず、バッテリーが飢餓状態にあり電解液に気体はほとんど溶解しないので、酸素はすべて気相にあると仮定する。酸素は負極で速やかに再結合し、実験開始時はバッテリーが静止しているため、初期の酸素圧力は
でゼロに近いと仮定する。
【0058】
水素に関しては、バッテリー内に存在する水素も微分式を用いてモデル化される:
【数5】
ただし、
である。
【0059】
バッテリー中で水素は気相と負極の両方に存在するので、その分布は酸素の場合よりも少し複雑になる。しかし、このバッテリーの場合、
であるため、全モル平衡の水素がすべて電極に挿入されるように式を単純化することができる:
【数6】
【0060】
全物質収支が確立されると、2つの電極の相分布式を定式化することができる。負極については、計算された水素のモル量を用いて挿入の程度を計算する:
【数7】
ここで
は完全充電を、
は完全放電を示す。
【0061】
正極では、すべての充電電流が挿入につながり、以下の式が得られる:
【数8】
【0062】
ここで、
は完全充電を、
は完全放電を示す。正極分率は最も予測可能な変数の一つであるので、モデルを妥当な解に結びつけるために、所定の試験時間における2つの正極分率、 すなわち、
放電開始
放電終了
が使用される。
【0063】
正極における挿入度は単純であるが、相分布はより複雑である。放電電極はβ-Ni(OH)で構成されていると仮定され、Bodeらの古典的な論文によると、電極が帯電するとβ-NiOOHに変化する。帯電すると、β-Ni(OH)は水素を失い、類似の単セルを持つTP2 NiOOH相が生成する。動力学的に有利なTP2 NiOOH相は、その後、より小さい単セルを持つ、より熱力学的に有利なβ-NiOOH相に崩壊することができる。β-NiOOH相に存在する電極の割合は、TP2 NiOOH相と平衡状態にあり、電極電圧に依存すると仮定される。そのため、2つの適合定数Aβ とBβ、正電極電位、および電極の充電分率を用いた指数関数でモデル化される。
【数9】
【0064】
正極電圧は、正極の電圧挙動が材料の位相に関係するという仮定に基づいて使用される。
【0065】
[電圧収支モジュール302]
正極電圧を、負極電圧、電池電圧、電池抵抗を用いて、以下の式により推定することができる:
【数10】
ここで、RΩは正極の充電状態に依存する実験的に決定された抵抗である。
【0066】
負極電圧は、材料の圧力組成等温(PCT)曲線を用いて計算した。この曲線は、水素含有量の関数として金属水素化物の平衡圧力をプロットしたものである。電極中の水素含有量を追跡することで、対応する平衡圧力を水素圧力依存モデル式に使用することができる。PCTは特定の温度で与えられるので、Van't Hoffの関係を用いてPCT曲線の温度を調整する。
【数11】
ここで、TrefはPCT曲線を記録する際に使用した温度であり、
はPCT水素圧である。
と仮定したネルンスト方程式は、EMHについて以下の式を与える:[14]
【数12】
ここでは、Kleperisら[21]が提唱した
を使用した。
【0067】
負極の過電位式を追加してもモデルへの寄与は限定的であり、その結果、負極の式を以下のように簡略化した:
【数13】
正極電位から、酸素発生過電位が計算される。これは酸素発生反応速度を見積もるのに必要である。酸素発生過電位は以下の式で与えられる:
【数14】
ここで、
は酸素発生の平衡電位である。
【0068】
[エネルギー収支モジュール303]
モデル温度を求めるために、エネルギー収支式を導入する。このモデルでは、モデル化された内部温度Tを使用し、これは以下のODEを用いて計算される:
【数15】
実験開始時、バッテリーは均等な温度であると仮定できるので、初期モデル温度は初期実験温度と等しく、
である。
【0069】
反応による熱をモデル化するために、熱中性電圧を使用する。熱中性電圧は実験的に決定されていないため、熱中性セル電圧と負の充放電反応のための補正係数の両方を適合させる。
【数16】
【0070】
負極の充放電反応の熱中性電圧が得られたら、充放電電流と電極電圧と熱中性電圧の電圧差を用いて熱量を計算する:
【数17】
正極の発熱には、負極と同様に熱中性電圧を用いる。正極の場合、充放電反応に必要な熱中性電圧の計算には以下の式を使用する:
【数18】
次いで、充放電電流および、充放電反応における正極電圧と熱中性電圧の差を用いて発熱量を算出する:
【数19】
正極と負極での主な電荷反応とは別に、他の過程、すなわち副反応、相変化、赤外線加熱、伝導などからの熱の寄与もある。
【0071】
上述の通り、気相の水素は正極に移動して酸化される。この過程による熱の寄与は、酸化電流に正極電圧と熱中性水素酸化電圧EMHの電圧差を乗じた以下の式で計算される:
【数20】
【0072】
同様に、酸素も副反応に重要な役割を果たす。酸素はまず、電圧が上昇する充電終了時に正電極で生成され、次に負電極で再結合する。これら2つの反応はそれぞれ、水素の酸化と同じ方法で、酸素の生成と再結合熱の項に寄与する:
【数21】
【0073】
また、系内の相変化によっても熱が発生する。水も水素も相変化を起こすため、これには2種類の式がある。相変化熱は以下の反応で与えられる:
【数22】
【数23】
【0074】
IR加熱源の項については、バッテリーのオーム抵抗により発生する熱である。熱の寄与を計算するにはジュールの第一法則が使われる:
【数24】
【0075】
最終過程は伝導性熱伝達であり、これはバッテリー表面温度とバッテリー内部温度の温度差によって駆動される。伝導性熱伝達の駆動力を求めるため、実験温度をバッテリーの表面温度とする。
【数25】
【0076】
実験によるバッテリー表面温度を使用することで、周囲温度の知識が不要になり、システム内のオンラインモデル化が容易になる。モデル温度は、バッテリー表面への伝導による熱損失を決定する熱伝達定数KT の適合によって調整される。バッテリーの熱容量VCp も適合される。以下のエネルギー収支は、バッテリーの内部から外部への熱伝達を推定するために使用される。
【数26】
【0077】
[支援数式]
物質収支、電圧収支、エネルギー収支とは別に、最適なモデルには他の式が必要になる場合がある。これらの式は初期値と経時変化の両方を含む体積変化式や電極容量式などである。
【0078】
自由気体の体積は、窒素と酸素の圧力を支配するため、このモデルにとって重要である。したがって、電極の体積を記録しておく必要がある。これは、電極が特異相で構成されている場合の電極体積を計算するために、単セルのパラメータを使用して行われる。これは、電極の充電相と放電相に対して行われる:
【数27】
【数28】
【数29】
【数30】
単セルの体積は、単セルの寸法を用いて計算される。すべての相が正平行四辺形を底辺とし、角度が60°の六角形であることを考慮し、以下の幾何学的関係を用いた:
【数31】
ここで、正極材料の単セルの寸法はOliva ら、負極の単セルの寸法はWillems らから引用した。次に、セルあたりの充電量を用いて、充電されたAhあたりの体積を計算した。
【0079】
全単相電極体積の式とこれらの相のモル分率を組み合わせると、電極体積の式が得られる。
【数32】
【数33】
ここで、
かつ
である。
気体の体積は次の関係から計算できる:
【数34】
この式から、
も導かれる。Vtotは、利用可能な総体積を実験的に正確に決定することは難しいが、セルの寸法パラメータから判断して妥当な範囲内にあるため、このデータに当てはめたものである。このVtotは、気体の体積と活物質の体積のみを含み、電解液の体積、セパレーターの体積、キャリア材料の体積は含まない。
【0080】
このバッテリーは、正極よりも負極の容量が著しく大きい正極制限容量で設計されている。これは、各電極が独自の容量と挿入の関係式を持つことを意味する。モデルを初期化する際、モデルがバッテリーと同じ電極充電レベルにあることが重要であり、モデルでは電極挿入率で表される。最も予測しやすい状態は、バッテリーが完全に放電された状態であり、この研究の実験データはここから始まっている。そのため、xpos =1とすることができるが、負極の初期挿入状態はより複雑である。
【0081】
負極の挿入は正極の反対であるため、電極が完全に放電されるとXneg=0となり、電極が完全に充電されるとXneg=1となる。しかし、完全放電時にはこれらの電極が一致しないため、Xneg=0でモデルを開始することはできない。これは、バッテリーの製造工程で形成と呼ばれる部分によるもので、バッテリーが化学的に成熟して機能する状態になるように設計された一連の工程を経る。ニッケル水素バッテリーの場合、この過程で水素が発生し、負極に挿入される。これは一般に過放電予備容量(qOD)と呼ばれ、正極材料の組成から計算できる水素緩衝を形成する。過放電容量は、以下の関係を用いて挿入率に変換される:
【数35】
【0082】
モデルを初期化する際、負極の挿入分子は以下の関係から求めることができる:
【数36】
【0083】
バッテリーが老朽化すると、負極の初期分率と容量を決定するために、これらの初期関係式に追加する必要がある。ニッケル水素バッテリーの主な経年劣化メカニズムは負極の酸化のため、経年劣化が生じると電極収支が変化する。その結果、電池内の水素圧が変化する。経年劣化は2つの方法で負極の容量に影響する: 腐食した材料は水素を挿入できなくなるため、全容量が低下する。腐食の過程で水素が発生し、それが負極に挿入されるため、過放電予備量が増加する。Leblancらは、この余分なMH占有率を腐食部位ごとに1.15と見積もっている。このため、モデルに定数kcorrを導入し、適合を行った。この定数は、バッテリーの経年変化を考慮した、より高精度の記述につながる。
【数37】
【数38】
【0084】
[気体圧力モジュール304]
最後に、前述の関係式すべてをこのシステムに対して設定すると、セル圧の式を設定するのに必要なものはすべて揃う。セル内の圧力は4種の異なる気体、すなわち窒素、水蒸気、水素、および酸素によって与えられる。第1の気体である窒素は、バッテリーの製造方法によって存在する。バッテリーが電解液で満たされると、残りの空の容積に空気が充満する。セル内の窒素の量はサイクルを通じて一定だが、圧力は温度と自由気体の体積によって変化する。我々は理想気体の法則を用いて、初期窒素圧から始まる充放電サイクルの窒素圧を追跡する道を選択した。
【数39】
【数40】
【0085】
第2に、セル内に水が存在する。これは、気相中に水が存在することを意味する。水圧(バール)は、水酸化物濃度を調整した蒸気圧式を用いて計算される。圧力はバールで、温度はKで与えられる。
【数41】
ここで、
である。
【0086】
水素圧力はすでに定義されており、次式で与えられる。
ここで
である。
【0087】
最後に、バッテリーの充電が終わりに近づくにつれて発生する酸素圧がある。酸素圧は、理想気体の法則と単セル内に存在する酸素のモル量の関数で表現される。
【数42】
つまり、セル内の全圧は次式で表現される:
【数43】
【0088】
本開示は、監視ユニットを使用して複数のニッケル水素セルを含むニッケル水素バッテリーパックのバッテリーの状態を示すステータス信号を発する方法に関する。監視ユニットは、ニッケル水素バッテリーパックの内部圧力、ニッケル水素バッテリーパックのバッテリー電圧、ニッケル水素バッテリーパックへまたはニッケル水素バッテリーから流れるバッテリー電流、ニッケル水素バッテリーパックの表面温度からなる群からの測定値に関する情報を含むデータ信号を発するために動作可能な測定ユニットを含む。測定ユニットは、測定ユニットからデータ信号を受信し、ステータス信号を発するために動作可能である制御ユニットをさらに含み、制御ユニットは、さらに物理的バッテリーモデルを有するニッケル水素バッテリーパックの内部圧力を推定するために動作可能である。本発明の方法は、内部圧力を測定することと、バッテリー電圧を測定することと、バッテリー電流を測定することと、ニッケル水素バッテリーパックの表面温度を測定することと、物理的バッテリーモデルおよび前記測定値を使用してニッケル水素バッテリーパックの内部気体圧力を推定することとを含む。本発明の方法は、推定された内部圧力と測定された内部圧力の差圧に基づいてニッケル水素バッテリーパックのバッテリーの状態を示すステータス信号を発することをさらに含む。
【0089】
一部の実施態様によればステータス信号を発する工程は、差圧が第1の閾値より低いときにニッケル水素バッテリーパックの気体漏れに関する情報を発することを含む。
【0090】
一部の実施態様によればステータス信号を発する工程は、差圧が第2の閾値を超えて上昇した際にニッケル水素バッテリーパックの充電中にニッケル水素バッテリーパックの経年劣化に関する情報を発することを含む。
【0091】
一部の実施態様によればステータス信号を発する工程は、5%より少ない充電状態にニッケル水素バッテリーパックを放電する間に差圧が第3の閾値を超えて上昇した場合にニッケル水素バッテリーパック内のクリティカルエラーに関する情報を発することを含む。
【0092】
一部の実施態様によればステータス信号を発する工程は、前記測定ユニットからの過去の測定に基づいている。
【0093】
一部の実施態様によれば内部圧力を測定する工程は、ニッケル水素バッテリーパックのニッケル水素バッテリーセルに関して共通体積で実行される。
【0094】
一部の実施態様によれば内部気体圧力を推定する工程は、水素および酸素で表す物質収支モジュールを使用してニッケル水素バッテリーからそしてニッケル水素バッテリーへ流れる測定された電流に基づいて2つの電極の相分布を決定することと、電圧収支モジュールを使用して負極電圧、測定されたセル電圧およびセル抵抗に基づいて正極電圧を決定することと、ニッケル水素バッテリーのモデル化された内部温度を決定することとを含む。測定された温度は、ニッケル水素バッテリーからニッケル水素バッテリースタックの周囲への熱移動を決定するために使用され、内部気体圧力を決定することは、窒素、水蒸気、水素および酸素で表す気体圧力モジュールを使用する。
【0095】
一部の実施態様によれば内部気体圧力を推定する工程は、ニッケル水素バッテリーの電圧の変化、電極容量および劣化を決定することをさらに含む。
【0096】
また本開示は、ニッケル水素バッテリーパックの内部圧力、ニッケル水素バッテリーパックのバッテリー電圧、ニッケル水素バッテリーパックへまたはニッケル水素バッテリーから流れるバッテリー電流、ニッケル水素バッテリーパックの表面温度からなる群からの測定値に関する情報を含むデータ信号DSを発するために動作可能な測定ユニットと、測定ユニットからデータ信号を受信するために動作可能であり、ステータス信号を発するために動作可能な制御ユニットとを含むニッケル水素バッテリーパックを監視するための監視ユニットに関する。制御ユニットは、さらに物理的バッテリーモデルでニッケル水素バッテリーパックの内部圧力を推定するために動作可能である。制御ユニットは、本明細書に開示されている実施態様による本発明の方法を実行するように構成されている。
【0097】
また本開示は、本明細書に開示されている実施態様による監視ユニットを含むニッケル水素バッテリーパック用クオリティコントロールシステムに関する。
【0098】
また本開示は、プロセッサによって実行した際にプロセッサが本明細書に開示した方法を実行するようにするコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0099】
また本開示は、本明細書に示した実施態様による監視ユニットと、監視ユニットからステータス信号を受信し、ステータス信号をリモートサーバーへ送信するまたは監視ユニットの測定ユニットからリモートサーバーへデータ信号を送信するために動作可能な通信ユニットとを含むニッケル水素バッテリーパック用監視システムに関する。
【0100】
図面および明細書に例示的実施態様を開示してきた。しかしながら多くの変形および変更がこれらの実施態様に可能である。したがって、特定の用語が採用されているが、それらは包括的かつ説明的観点で使用されており、限定を目的とするものではなく、これら実施態様の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【0101】
本明細書に記載した例示実施態様の説明は、あくまで例示を目的として示されたものである。本明細書の説明は、開示された正確な形体に例示的実施態様を網羅または限定することを意図したものではなく、変形および変更が上記教示に照らして可能であり、記載された実施態様に対する種々の代替例を実行することから得られる。本明細書で考察した例は、当業者が予想される特定の用途に適するように種々の方法で種々の変更例によって例示実施態様を利用できるように種々の例示的実施態様の原理および特徴ならびに実践的用途を説明するために選択および記載されている。本明細書で説明した実施態様の特徴は、方法、装置、モジュールおよびコンピュータプログラム製品の全ての可能な組み合わせに組み合わせてもよい。
【0102】
当然のことながら本明細書で示した例示的実施態様は、それらのあらゆる組み合わせにおいて実行してもよい。「含む(comprising)」なる語は、記載されたもの以外の他の要素または工程の存在を必ずしも排除するものではなく、要素を単数で表した場合、その要素が複数存在することを排除するものではないことに留意すべきである。あらゆる参照符号は特許請求の範囲を限定するものではなく、例示的実施態様は、ハードウェアおよびソフトウェアの両方の手段によって少なくとも部分的に実装され、いくつかの「手段」、「ユニット」または「装置」は、ハードウェアの同じ種によって表してもよいことをさらに留意すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視ユニット(100)を使用して複数のニッケル水素セル(C1、C2、C3)を含むニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリーの状態を示すステータス信号(SS)を発する方法(200)であって、監視ユニット(100)は、
ニッケル水素バッテリーパック(101)内の内部圧力(Pi)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリー電圧(Vb)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)へ、そしてニッケル水素バッテリーパック(101)から流れるバッテリー電流(Ib)および
ニッケル水素バッテリーパック(101)の表面温度(Text)からなる群からの測定値に関する情報を含むデータ信号(DS)を発するために動作可能な測定ユニット(102)と、
測定ユニット(102)からデータ信号(DS)を受信するために動作可能であり、ステータス信号(SS)を発生させるために動作可能な制御ユニット(103)と、を含み、制御ユニット(103)は、さらに物理的バッテリーモデル(300)によるニッケル水素バッテリーパック(101)の内部圧力を推定するために動作可能であり、
該方法(200)は、
内部圧力を測定することと(S1)、
バッテリー電圧(Vb)を測定することと(S2)、
バッテリー電流(Ib)を測定することと(S3)、
ニッケル水素バッテリーパックの表面温度(Text)を測定することと(S4)、
物理的バッテリーモデル(300)および前記測定値を使用してニッケル水素バッテリーパック(101)の内部気体圧力を推定することと(S5)、
推定された内部圧力と測定された内部圧力の間の差圧に基づいてニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリー状態を示すステータス信号を発することと(S6)を含む方法。
【請求項2】
ステータス信号を発する工程(S6)は、差圧が第1の閾値未満になった際にニッケル水素バッテリーパック(101)の気体の漏れに関する情報を発する工程(S61)を含むことを特徴とする請求項1記載の方法(200)。
【請求項3】
ステータス信号を発する工程は、差圧が第2の閾値を超えて上昇した際にニッケル水素バッテリーパックの充電中にニッケル水素バッテリーパックの経年劣化に関する情報を発することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
ステータス信号を発する工程は、5%より少ない充電状態にニッケル水素バッテリーパックを放電する間に差圧が第3の閾値を超えて上昇した際にニッケル水素バッテリーパック内のクリティカルエラーに関する情報を発することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
ステータス信号を発する工程は、前記測定ユニットからの過去の測定に基づいていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
内部圧力を測定する工程は、ニッケル水素バッテリーパックのニッケル水素バッテリーセルの共通の体積で実行されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
内部気体圧力を推定する工程(S5)は、
水素および酸素で表す物質収支モジュールを使用してニッケル水素バッテリーからそしてニッケル水素バッテリーへ流れる測定された電流(Ibat)に基づいて2つの電極の位相分布を決定することと(S51)、
電圧収支モジュールを使用して負極電圧、測定されたセル電圧およびセル抵抗に基づいて正極電圧を決定することと(S52)、
ニッケル水素バッテリーのモデル内部温度(Tin)を決定し、測定された温度(Text)を使用し、ニッケル水素バッテリーからニッケル水素バッテリースタックの周囲への熱移動をエネルギー収支モジュールを使用して決定することと(S53)、
窒素、水蒸気、水素および酸素で表す気体圧力モジュールを使用して内部気体圧力(P)を決定することと(S55)を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
内部気体圧力を推定する工程(S5)は、ニッケル水素バッテリーパック(101)の体積変化、電極容量および経年劣化を決定する工程(S54)をさらに含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
ニッケル水素バッテリーパック (101)を監視するための監視ユニット(100)であって、
ニッケル水素バッテリーパック(101)内の内部圧力(Pi)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)のバッテリー電圧(Vb)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)へ、そしてニッケル水素バッテリーパック(101)から流れるバッテリー電流(Ib)、
ニッケル水素バッテリーパック(101)の表面温度(Text)からなる群からの測定値に関する情報を含むデータ信号DSを発するために動作可能な測定ユニット(102)と、
測定ユニット(102)からのデータ信号を受信するために動作可能であり、ステータス信号を発するために動作可能な制御ユニット(103)と、を含み、制御ユニット(103)は、さらに物理的バッテリーモデル(300)によるニッケル水素バッテリーパック(101)の内部圧力を推定するために動作可能であり、
制御ユニット(103)は、さらに請求項1乃至8いずれか1項記載の方法を実行するように構成されている監視ユニット。
【請求項10】
請求項9記載の監視ユニット(100)を含むニッケル水素バッテリーパック(101)用クオリティコントロールシステム(400)。
【請求項11】
請求項9記載の監視ユニット(100)と、
監視ユニット(100)からステータス信号を受信し、ステータス信号をリモートサーバー(603)へ送信する、または監視ユニット(100)の測定ユニット(102)からリモートサーバー(603)へデータ信号を送信するために動作可能な通信ユニット(601)と、を含むニッケル水素バッテリーパック(101)用監視システム(600)。
【請求項12】
プロセッサ(520)によって実行される際にプロセッサ(520)が請求項1乃至8いずれか1項記載の方法を行うようにするコンピュータプログラムインストラクションを記憶したコンピュータ可読媒体(550)。
【国際調査報告】