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特表2024-537067多方向眼科画像処理による屈折率決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】多方向眼科画像処理による屈折率決定
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519551
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2022058736
(87)【国際公開番号】W WO2023067413
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,268
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ツィーガー
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン ビーラント
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グリューンディヒ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA24
4C316AB02
4C316AB09
4C316FA04
4C316FA06
4C316FB21
4C316FC12
4C316FZ01
(57)【要約】
本開示は、患者の眼の正確なモデルを生成するために、患者の眼の真の1組の屈折率を決定する非侵襲的技法を提供する。特定の態様は、患者の眼の3次元再構成モデルを生成するためのシステムを提供する。本システムは、患者の眼の視線に対して第1の角度及び第2の角度での患者の眼の第1の測定値及び第2の測定値を生成するように構成された撮像デバイスを備える。本システムは、第1の測定値及び第2の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、患者の眼の第1の複数のモデル及び第2の複数のモデルを生成し、第2の複数のモデルからの第2のモデルと一致する第1の複数のモデルからの第1のモデルを特定し、第1のモデル及び第2のモデルに関連する1組の屈折率を決定するように構成された画像プロセッサを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼の3次元再構成モデルを生成するためのシステムであって、前記システムが、
撮像デバイスであって、
前記患者の眼の視線に対して第1の角度での患者の眼の第1の測定値を生成し、
前記患者の眼の前記視線に対して第2の角度での前記患者の眼の第2の測定値を生成する
ように構成された撮像デバイスと、
画像プロセッサであって、
前記第1の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、前記患者の眼の第1の複数のモデルを生成し、
前記第2の測定値に前記複数組の屈折率を適用することに基づいて、前記患者の眼の第2の複数のモデルを生成し、
前記第2の複数のモデルからの第2のモデルと一致する前記第1の複数のモデルからの第1のモデルを特定し、
前記複数組の屈折率から、前記第1のモデル及び前記第2のモデルに関連する1組の屈折率を決定する
ように構成された画像プロセッサと
を備える、システム。
【請求項2】
前記撮像デバイスが、前記第1の測定値及び前記第2の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、それぞれ前記患者の眼の第1の複数のモデル及び第2の複数のモデルを生成するように構成されることが、前記撮像デバイスが、
前記複数組の屈折率から第1の1組の屈折率を選択し、
前記第1の1組の屈折率に基づいて第1のモデルを生成し、
前記第1の1組の屈折率に基づいて第2のモデルを生成し、
前記第1のモデルの特徴と前記第2のモデルの特徴との間の距離の差分を特定し、
前記差分に基づいて、前記第1のモデルと前記第2のモデルとが一致するように、前記第1の1組の屈折率を最適化する
ように構成されることを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記撮像デバイスが、
前記患者の眼の前記視線に対して前記第1の角度で前記患者の眼に第1の信号を投影することと、
前記患者の眼の光学構成要素からの前記第1の信号の反射を捕捉することと
に基づいて前記第1の測定値を生成するように構成され、
前記撮像デバイスが、
前記患者の眼の前記視線に対して前記第2の角度で前記患者の眼に第2の信号を投影することと、
前記患者の眼の前記光学構成要素からの前記第2の信号の反射を捕捉することと
に基づいて前記第2の測定値を生成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数組の屈折率の各組の屈折率が、前記患者の眼の前記光学構成要素のうちの少なくとも1つに関する屈折率を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記患者の眼の前記視線に対する前記第1の角度と前記患者の眼の前記視線に対する前記第2の角度との間の差分が、前記患者の眼に対して前記撮像デバイスを移動することに基づいて取得される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記患者の眼の前記視線に対する前記第1の角度と前記患者の眼の前記視線に対する前記第2の角度との間の差分が、前記撮像デバイスに対して前記患者の眼の前記視線を変化させることに基づいて取得される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記撮像デバイスに対して前記患者の眼の前記視線を変化させることが、前記患者の眼の前記視線に対する前記第1の角度と前記患者の眼の前記視線に対する前記第2の角度との間で動的固視標の位置を変化させることによるものである、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記患者の眼の網膜の閾値範囲を維持しながら、前記第1の角度と前記第2の角度との間の変化を特定し、
前記第1の角度と前記第2の角度との間における前記変化の指標を前記撮像デバイスのオペレータに提供する
ように構成されたフィードバックシステムを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記画像プロセッサが、前記第1のモデル及び前記第2のモデルに関連する前記1組の屈折率を決定するように構成されることが、前記画像プロセッサが、
第1の信号が前記患者の眼のそれぞれの光学構成要素のそれぞれを通って移動するのに費やした時間を特定し、
第2の信号が前記患者の眼の前記それぞれの光学構成要素の前記それぞれを通って移動するのに費やした時間を特定し、
前記第1の信号に由来する前記時間及び前記第2の信号に由来する前記時間に基づいて、前記患者の眼の前記それぞれの光学構成要素に関する前記1組の屈折率を計算する
ように構成されることを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記画像プロセッサが前記1組の屈折率を計算するように構成されることが、6自由度内の前記患者の眼の動きを考慮することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
患者の眼の3次元再構成モデルを生成するための方法であって、前記方法が、
前記患者の眼の視線に対して第1の角度での患者の眼の第1の測定値を生成することと、
前記患者の眼の前記視線に対して第2の角度での前記患者の眼の第2の測定値を生成することと、
前記第1の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、前記患者の眼の第1の複数のモデルを生成することと、
前記第2の測定値に前記複数組の屈折率を適用することに基づいて、前記患者の眼の第2の複数のモデルを生成することと、
前記第2の複数のモデルからの第2のモデルと一致する前記第1の複数のモデルからの第1のモデルを特定することと、
前記複数組の屈折率から、前記第1のモデル及び前記第2のモデルに関連する1組の屈折率を決定することと
を含む、方法。
【請求項12】
前記第1の測定値及び前記第2の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、それぞれ前記患者の眼の前記第1の複数のモデル及び前記第2の複数のモデルを生成することが、
前記複数組の屈折率から第1の1組の屈折率を選択することと、
前記第1の1組の屈折率に基づいて第1のモデルを生成することと、
前記第1の1組の屈折率に基づいて第2のモデルを生成することと、
前記第1のモデルの特徴と前記第2のモデルの特徴との間の距離の差分を特定することと、
前記差分に基づいて、前記第1のモデルと前記第2のモデルとが一致するように、前記第1の1組の屈折率を最適化することと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の測定値を生成することが、
前記患者の眼の前記視線に対して前記第1の角度で前記患者の眼に第1の信号を投影することと、
前記患者の眼の光学構成要素からの前記第1の信号の反射を捕捉することと
を含み、
前記第2の測定値を生成することが、
前記患者の眼の前記視線に対して前記第2の角度で前記患者の眼に第2の信号を投影することと、
前記患者の眼の前記光学構成要素からの前記第2の信号の反射を捕捉することと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複数組の屈折率の各組の屈折率が、前記患者の眼の前記光学構成要素のうちの少なくとも1つに関する屈折率を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の眼の前記視線に対する前記第1の角度と前記患者の眼の前記視線に対する前記第2の角度との間の差分が、前記患者の眼に対して撮像デバイスを移動することに基づいて取得される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光干渉断層撮影(OCT)、共焦点走査型レーザ検眼鏡、及び走査型レーザ旋光分析などの眼科撮像技法は、眼の光学構成要素の物理的形状をモデル化しようとするものである。眼の光学構成要素は、角膜、房水、水晶体、硝子体液、及び網膜を含む。眼の光学構成要素の幾何学的モデルを再構成するためには、眼の内部の光学構成要素の屈折率が必要である。
【0002】
解剖学的に、眼は、前眼部及び後眼部の2つの別個の領域に分割される。前眼部は、水晶体を含み、角膜の前面とも呼ばれる角膜の最外層(角膜内皮)から水晶体まで延びる。房水は、水晶体と角膜との間の空間を満たし、眼圧の維持を助ける。後眼部は、眼の水晶体の裏側にある部分を含む。後眼部は、眼の体積の約3分の2を占める無色透明なゲル状の物質である硝子体液を含む。硝子体液は、水晶体と網膜との間の空間を満たす。
【0003】
人間の眼は屈折率勾配を有し、屈折率は、通常、眼の縁部から中央に向かって大きくなる。角膜、房水、水晶体、及び硝子体液は、それぞれ異なる屈折率を有する。一般に、眼科撮像技法を使用する際、屈折率は分かっていない。その代わりに、光学構成要素の屈折率に関する患者に依存しない平均値が想定される。しかしながら、光学構成要素の真の再構成のためには、実際の患者固有の1組の屈折率が必要である。現在、眼の光学構成要素のすべての屈折率を決定する直接的で非侵襲的な測定技法はない。現状の方法は、侵襲的であったり破壊を伴ったりする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様は、患者の眼の3次元再構成モデルを生成するためのシステムを提供する。本システムは、一般に、撮像デバイスを備える。撮像デバイスは、患者の眼の視線に対して第1の角度での患者の眼の第1の測定値を生成するように構成される。撮像デバイスは、患者の眼の視線に対して第2の角度での患者の眼の第2の測定値を生成するように構成される。本システムは、一般に、画像プロセッサを備える。画像プロセッサは、一般に、第1の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、患者の眼の第1の複数のモデルを生成するように構成される。画像プロセッサは、一般に、第2の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、患者の眼の第2の複数のモデルを生成するように構成される。画像プロセッサは、一般に、第2の複数のモデルからの第2のモデルと一致する第1の複数のモデルからの第1のモデルを特定するように構成される。画像プロセッサは、一般に、複数組の屈折率から、第1のモデル及び第2のモデルに関連する1組の屈折率を決定するように構成される。
【0005】
本開示の態様はまた、患者の眼の3次元再構成モデルを生成するための方法を提供する。本方法は、一般に、患者の眼の視線に対して第1の角度での患者の眼の第1の測定値を生成することを含む。本方法は、一般に、患者の眼の視線に対して第2の角度での患者の眼の第2の測定値を生成することを含む。本方法は、一般に、第1の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、患者の眼の第1の複数のモデルを生成することを含む。本方法は、一般に、第2の測定値に複数組の屈折率を適用することに基づいて、患者の眼の第2の複数のモデルを生成することを含む。本方法は、一般に、第2の複数のモデルからの第2のモデルと一致する第1の複数のモデルからの第1のモデルを特定することを含む。本方法は、一般に、複数組の屈折率から、第1のモデル及び第2のモデルに関連する1組の屈折率を決定することを含む。
【0006】
上記の本開示の特徴を詳細に理解することができるように、上記の簡潔に要約した本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによって得ることができ、そのいくつかを添付の図面に示す。しかしながら、添付の図面は、本開示のいくつかの態様のみを示すものであり、本開示は他の均等に効果的な実施形態を認め得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】特定の態様による、モデル患者の眼の概略図である。
図2】特定の態様による、図1の患者の眼に関する真の1組の屈折率を決定するための例示的な動作を示す決定木図である。
図3】特定の態様による、図1の患者の眼を通過する光線の概略図である。
図4】特定の態様による、図1の患者の眼を通過する、入射ビーム方向の異なる複数の光線の概略図である。
図5】特定の態様による、図1の患者の眼のモデルの不一致の例を示す概略図である。
図6】特定の態様による、図1の患者の眼のモデルの一致の例を示す概略図である。
図7】特定の態様による、患者の眼の光学構成要素の真の1組の屈折率を決定するための例示的な眼科撮像システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解しやすくするために、可能な場合、図面間で共通する同じ要素を指すために同じ参照番号が使用されている。1つの実施形態の要素及び特徴は、更に記述することなく他の実施形態に有益に組み込まれ得ることが企図される。
【0009】
本開示は、患者の眼の正確なモデルを生成するために、患者の眼の真の1組の屈折率を決定する非侵襲的技法を提供する。患者の眼のモデルは予測を行うために使用され得る。
【0010】
例えば、白内障手術の分野では、モデルは、患者の眼の内部に配置するための正しいレンズを選択するために、患者の視力を正確に予測するために使用され得る。白内障手術は、患者の眼の白内障の水晶体を取り除くことと、その水晶体を人工の眼内レンズ(IOL)に置き換えることとを含む。白内障手術の計画作成は、通常、術後に所望の屈折アウトカム又は目標を達成することができるIOL度数を有するIOLを選択することを含む。特定の術後屈折アウトカムを達成するのに必要なIOL度数の決定は、患者の眼の解剖学的パラメータ(例えば、眼軸長、角膜曲率、前房深度、角膜径、水晶体厚、有効レンズ位置などのうちの1つ以上)の測定値に依存する。例えば、患者の測定値を使用して、特定の既存のシステムが、例えば市販の所与の1組のIOL度数のそれぞれについて、術後の自覚等価球面度数(MRSE)を推定する。次に、術後MRSEを使用して、外科医が、屈折目標に最も近い(すなわち、最も小さい推定術後屈折誤差を有する)推定術後MRSEをもたらすIOL度数を選択し得る。しかしながら、MRSEの真の値については、正確な患者固有の値が必要とされる。
【0011】
真の屈折率を用いた患者の眼のモデルはまた、他の診断及び治療目的のために(例えば、網膜疾患などに関して)、患者の眼の中の実際の状態を決定する際に使用され得る。
【0012】
真の1組の屈折率は、患者の眼の測定値に基づいて決定され得る。患者の眼の測定は眼科撮像システムを用いて行うことができ、眼科撮像システムは、光干渉断層撮影(OCT)、収差測定、又は反射に基づく眼科撮像技法、若しくは眼科撮像技法の組み合わせを使用し得る。測定は、患者の眼に入射する光線の角度を(例えば、撮像デバイスの回転及び/又は位置を変更することによって)変化させたり、測定中に患者の眼に入射する光線に対して患者の視線を(例えば、患者の眼を回転させたり、位置を変えたりするよう患者に指示することによって)変化させたりすることなどによって、複数の入射ビーム方向で行われる。
【0013】
入射ビーム方向と異なる入射ビーム方向での測定値とに基づいて、眼内の詳細な幾何学的状態を決定することができる。異なる入射角のそれぞれの入射角について、個々の光学構成要素に関する異なる組の屈折率を使用して、光学構成要素の3次元(3D)再構成が生成され得る。真の1組の屈折率を使用した場合、入射ビーム方向ごとに生成された3D再構成は一致する。したがって、異なる入射ビーム方向での測定値から生成された3D再構成を比較することによって、複数の入射ビーム方向にわたって患者の眼の共通の3D再構成(例えば、許容可能な誤差量内のもの)を生成する1組の屈折率を見つけることによって、1組の真の屈折率を決定することができる。
【0014】
図1は、特定の態様による、モデル患者の眼100の概略図である。図示のように、モデル患者の眼100は、角膜102と、網膜104と、水晶体106と、房水108と、硝子体液110とを含む。モデル眼100は、全軸長ALX(すなわち、角膜102の前面102Aと網膜104との間の距離)を有する。角膜102は、屈折率ncorneaを有する。角膜102は、曲率半径Rを有する前面102Aと、曲率半径Rを有する後面102Pとを有する。角膜102は、厚さT(すなわち、後面102Pと前面102Aとの間の距離)を有する。角膜102の厚さは一定ではなく、角膜102の各所の局所的な厚さから構成されている。房水108は、角膜102と水晶体106との間の空間を満たす。房水108は、屈折率naqueousを有する。房水108は、深度T(すなわち、角膜202の後面102Pから前面106A水晶体106までの距離)を有する。水晶体106は、屈折率nlens及び厚さT(すなわち、水晶体106の前面106Aと後面106Pとの間の距離)を有する。硝子体液110は、深度T(すなわち、水晶体106と網膜104との間の距離)及び屈折率nvitreousを有する。
【0015】
図2は、特定の態様による、図1のモデル患者の眼100の光学構成要素に関する真の1組の屈折率ncornea、naqueous、nlens、及びnvitreousを決定するための例示的な動作200を示す決定木図である。動作200は、眼科撮像システムによって行われ得る。図2の動作200は、図3図6の説明に関連して理解され、説明され得る。
【0016】
動作200は、205において、第1の入射ビーム方向での患者の眼(例えば、モデル患者の眼100)の第1の測定値を取得することによって開始し得る。
【0017】
測定値は、様々なデバイス又は技法によって取得され得る。反射に基づく眼科技法は、眼内の光学構成要素から反射されて戻った光を測定することを含む。OCTは、低コヒーレンス光を使用して、光散乱媒質(例えば、眼内の生体組織)内から2D画像及び3D画像を取り込む低コヒーレンス光干渉に基づく撮像技法である。OCTに関して、比較的長い波長の光を使用することにより、光を散乱媒質内に進入させることができる。
【0018】
眼の収差測定は、正常な眼から反射された光の波長に対する、患者の眼から反射された光の歪んだ波長の差分を分析する波面収差計を使用して、眼の収差を検出するために使用され得る。光(例えば、瞳孔を通って患者の眼に入力された単色光線)が眼を通過するとき、光波の前面は平坦な形状を示し、反射されて戻った光線の波面形状の不規則性は、光が移動する経路の歪みを表す。
【0019】
特定の実施形態では、上述の眼科撮像技法又はデバイスのうちの1つ以上が、光信号(例えば、レーザ)を使用し得る。図3に示すように、患者の眼100内に光線301伝播させる。図3は、特定の態様による、図1の患者の眼100を通過する、患者の眼100の眼科画像を生成するための光線301の概略図である。いくつかの実施形態では、眼科撮像デバイスは、光線301が患者の眼100内に移動し、患者の眼100内の様々な光学構成要素から反射されて戻る際の時間遅延を直接又は間接的に測定する。時間遅延は、当業者に知られるライトトレーシング(レイトレーシングとも呼ばれる)技法を使用して測定され得る。
【0020】
光線301が取る経路(例えば、後述の局所距離d1、d2、d3、d4)は、患者の眼100の光学構成要素間の各移行部における眼100の構成要素の屈折率に起因する屈折によって画定される。光線301が角膜102の前面102Aに入る角度を入射角度θincと呼ぶ。角膜102の屈折率ncornea(n1)に基づいて、光線301は、屈折し、角膜102の前面102Aと後面102Pとの間の局所距離d1を移動する。角膜102を通過した後、光線201は、房水108の屈折率naqueous(n2)に基づいて屈折し、角膜102の後面102Pと水晶体106の前面106Aとの間の局所距離d2を移動する。水晶体106において、光線301は、水晶体106の屈折率nlens(n3)に基づいて屈折し、水晶体106の前面106Aと後面106Pとの間の局所距離d3を移動する。水晶体106を通過した後、光線301は、硝子体液110の屈折率nvitreous(n4)に基づいて屈折し、水晶体106の後面106Pと網膜104との間の局所距離d4を移動する。いくつかの実施形態では、205における第1の測定値は、同じ入射角度θincの複数の光線(例えば、3D光線又は光線の束)について取得され得る。
【0021】
205において患者の眼の測定値を取得した後、動作200は、第1の測定値と、患者の眼100の光学構成要素に関する第1の1組の推測屈折率(例えば、nstart)とを使用して、患者の眼100の第1のモデルを生成することに進み得る。いくつかの実施形態では、レイトレーシングが、各表面における屈折/反射の角度を計算することによって、患者の眼100を通る光線301をトレースするために使用される。患者の眼100の光学構成要素からの光線301の反射が撮像デバイスで受け取られる測定された時間遅延を使用して、患者の眼100において光線301が移動する局所距離は、次式を用いて計算され得る。
t=n*c*d、すなわち、d=t/(n*c)
上式で、tは2つの光学構成要素からの光線301の反射の間で測定された時間遅延であり、nは屈折率であり、cは光速(すなわち、約3*10m/sの既知の定数)であり、dは光が2つの光学構成要素間を移動した局所距離である。
【0022】
例えば、眼科撮像デバイスは、患者の眼100の光学構成要素、すなわち、角膜102、水晶体106の前面106A、水晶体106の後面106P、及び網膜104のそれぞれからの光線301の部分反射を観測し得る。部分反射が観測されたときから計って、時間遅延は、光線401が、空中から角膜102の前面102Aに移行するとき、角膜102の後面102Pから房水108に移行するとき、房水108から水晶体106に移行するとき、水晶体106から硝子体液110に移行するとき、及び硝子体液110から網膜104に移行するときから決定され得る。これらの時間遅延は、選択された「推測」屈折率を用いて、光線301が移動した局所距離を計算するために使用され得る。初期推測屈折率は、一般に使用される屈折率又は平均屈折率など(例えば、研究、教科書などからのもの)の患者に依存しない値であってもよいし、カスタマイズされた値であってもよい(例えば、患者に対する以前の処置からの追加情報、類似した患者のデモグラフィックなどに基づいて推測されたもの)。
【0023】
光線301が角膜102を通って移動する局所距離であるd1を得るために、時間遅延tcorneaが、角膜102の前面102Aからの光線301の第1の部分反射が撮像デバイスで受け取られる時間tと、角膜102の後面102Pからの光線301の第2の部分反射が撮像デバイスで受け取られる時間tとの間の差分に基づいて計算され得る。ncorneaには、初期「推測」値n1が選択される。そうすると、光線301が前面102Aと後面102Pとの間を移動する局所距離d1は、d1=[tcornea/(c*n1)]として計算され得る。光線301が他の光学構成要素の間を移動する局所距離d2、d3、及びd4の値は、測定値と、naqueous、nlens、及びnvitreousに関する初期推測値とを使用して、同様に計算され得る。水晶体の屈折率は勾配を有するものであり得る。したがって、いくつかの実施形態では、水晶体の屈折率は、複数の屈折率として、又は関数で表される屈折率の分布として決定され得る。
【0024】
患者の眼100の3Dモデルが、局所距離d1、d2、d3、及びd4について計算された値、並びに光学構成要素のそれぞれにおける屈折/反射の角度に基づいて生成され得る。屈折/反射の角度はトレーシングを使用して決定され得る。距離は、(例えば、撮像デバイスに対する患者の眼301の回転Rstart及び位置Xstartによって定義される)第1の入射角度θで取得された光線301の測定値と、1組の初期屈折率nstartとから計算され得る。上述のように、いくつかの実施形態では、測定値は、同じ入射角度の複数の光線について(例えば、3D光線又は光線の束を使用して)取得され得る。
【0025】
次いで、動作205及び210が繰り返され得る。ただし、第2の入射角度θで患者の眼に伝播させる光線(又は複数の光線)を用いて繰り返され得る。215において、眼科撮像デバイスは、第2の入射ビーム方向での患者の眼の第2の測定値を取得する。220において、患者の眼の第2のモデルが、第2の測定値と、患者の眼の光学構成要素に関する第1の1組の推測屈折率とを使用して生成される。
【0026】
異なるアライメントから患者の眼の測定値を取得するために、測定デバイスが患者の眼に対して移動され得る、又は患者の眼がデバイスに対して動かされ得る(例えば、患者の位置に対して異なるアライメントに配置された静的若しくは動的ターゲットを見るように患者に眼を動かすように依頼すること、又は異なるアライメントを形成するためにデバイスに対して患者を物理的に移動させることによって動かされ得る)。異なる入射ビーム方向は、最大角度を有する角度の範囲内から選択される。最大角度は、最小量の入射光が瞳孔を通って患者の眼100に入り、患者の眼100内のそれぞれの光学構成要素を通過するような角度であり得る。0度の角度では、最大量の入射光が瞳孔を通って患者の眼100に入ることになり得る。いくつかの実施形態では、第1の入射ビーム方向と第2の入射ビーム方向との間の差分が、指定された閾値未満であり得る。いくつかの実施形態では、網膜104の閾値範囲を提供する入射ビーム方向が使用され得る。入射ビーム方向が変化すると、入射ビーム方向の変化を示す指標が、システムのオペレータに提供され得る。
【0027】
図4は、特定の態様による、異なる入射ビーム方向で図1の患者の眼100を通過する、患者の眼100の眼科撮像を行うための複数の光線301及び401の概略図である。図4に示すように、第2の入射角度θで入力された別の光線401(例えば、3D光線又は光線の束)の測定値が取得されて、1組の屈折率の同じ初期値を使用して、患者の眼100の光学構成要素を通って光線401が移動した局所距離d1’、d2’、d3’、及びd4’を取得し得る。
【0028】
患者の眼100の別の3Dモデルが、距離d1’、d2’、d3’、及びd4’について計算された値、並びに(例えば、撮像デバイスに対する患者の眼401の回転Rsecond及び位置Xsecondによって定義される)第1の入射角度で取得された光線401の測定値に対してレイトレーシングから取得され得る光学構成要素のそれぞれにおける屈折/反射の角度に基づいて、且つ同じ1組の初期屈折率nstartを使用して生成され得る。上述のように、いくつかの実施形態では、測定値は、同じ入射角度の複数の光線について(例えば、3D光線又は光線の束を使用して)取得され得る。
【0029】
1組の初期推測屈折率nstartは、3Dモデルを比較することによって検証され得る。nstartが真の1組の屈折率に対応する場合、異なる入射ビーム方向での測定値から生成されたモデルは互いに一致するはずである。したがって、225において、図5図6に関して詳しく後述するように、患者の眼の第1のモデルと患者の眼の第2のモデルとが比較されて、それらが一致する(例えば、指定された誤差許容範囲内で一致する)か否かを決定する。この例では、2つの異なる入射ビーム方向での測定値から生成された3Dモデルが比較されるが、3つ以上の異なる入射ビーム方向からの3Dモデルが生成され、比較されて、1組の屈折率を検証することもできる。
【0030】
モデルが一致しない場合、モデルを生成するのに使用された「推測」屈折率は、真の1組の屈折率ではないと決定される。235において、異なる第2の1組の屈折率nsecondが選択され、第2の1組の屈折率を使用して動作205~225が繰り返される。真の1組の屈折率が見つかり、異なる入射ビーム方向での測定値に基づいて生成されたモデルが一致するまで、動作200が繰り返され得る。
【0031】
図5は、特定の態様による、図1の患者の眼100のモデルの不一致の例を示す概略図である。図5に示すように、第1の入射角度θで取得された光線301の測定値に基づいて、且つ1組の初期屈折率nstartを使用して、患者の眼100の第1の3Dモデル505が生成される。更に、第2の入射角度θで取得された光線401の測定値に基づいて、且つ同じ1組の初期屈折率nstartを使用して、患者の眼100の第2の3Dモデル510が生成される。次いで、モデル505とモデル510とが比較されて、それらが一致するか否かを決定する。図5に示すように、モデル505とモデル510とは一致しない(例えば、モデル510はモデル505よりも幅狭の楕円の形状を有する)。したがって、新しい1組の屈折率が選択される。
【0032】
モデルが一致した場合、230において、1組の屈折率nstartは、真の1組の屈折率ntrueであると決定され、1組の屈折率を決定するプロセスは終了する。図6は、特定の態様による、モデルの一致の例を示している。図6に示すように、第3の入射角度θ(例えば、第3の入射角度θは、以前の測定値に使用された角度と同じ角度であっても異なる角度であってもよい)で取得された光線401の測定値に基づいて、且つ第2の1組の屈折率nsecondを使用して、患者の眼100の第3の3Dモデル615が生成される。更に、第4の入射角度θ(第4の入射角度θは第3の角度とは異なる)で取得された光線401の測定値に基づいて、且つ同じ第2の1組の屈折率nsecondを使用して、患者の眼100の第4の3Dモデル620が生成される。次いで、モデル615とモデル620とが比較されて、それらが一致するか否かを決定する。図6に示すように、モデル615とモデル620とは一致している(例えば、モデル515はモデル620と同じ形状を有する)。したがって、第2の1組の屈折率は、真の1組の屈折率ntrueであると決定される。
【0033】
いくつかの実施形態では、モデルを比較することは、まず、モデルのアライメントを含む。図5及び図6に示すように、モデルはアライメントされていない。例えば、モデル505は、第1の回転Rstart及び第1の位置Xstartを有する患者の眼100に基づいて生成され、モデル510は、第2の回転Rsecond及び第2の位置Xsecondを有する患者の眼100に基づいて生成される。モデル505とモデル510とは、第1のモデル及び/又は第2のモデルの回転を、回転Raligned、及び/又は位置Xalignedに調整することによって、互いにアライメントされ得る(図示せず)。同様に、モデル615とモデル620とがアライメントされ得る。いくつかの実施形態では、モデル505とモデル510とは、角膜102の前面102Aの平面に対してアライメントされ得る。アライメントは最適化関数を使用して行われ得る。アライメントは、既知の座標系に対する共通の点(例えば、前面102A、又は患者の眼100の別の点)からモデルに適用される変換(例えば、位置X及び/又は回転Rにおける変換)によって行われる。
【0034】
説明のための例では、患者は、患者の眼の3D位置が実質的に横方向又は垂直方向に移動しないように座る。測定デバイスは、患者の右目の中心に対して真横に配置され、アライメントされる。患者には、第1のターゲットと、異なる場所にある第2のターゲットとを見るように伝える。第1のターゲットは、異なるターゲットを見るために水平方向の変位又は移動が必要ないように、第2のターゲットの垂直上方に配置される。第1のターゲットは水平軸の30度上方に配置され、第2のターゲットは水平軸の15度下方に配置され、水平軸は、測定デバイスを見たときに、患者の眼(前角膜)の中心を通る。患者が第1のターゲットを見ているときに測定値Aが取り込まれ、患者が測定デバイスを動かさずに第2のターゲットを見ているときに測定値Bが取り込まれる。上記の例では、測定値Aの回転行列は、第1のターゲットを見るために30度の回転を定義し得、測定値Bの回転行列は第2のターゲットを見るために-15度の回転を定義し得る。同様に、眼(例えば、患者の頭部)の位置が測定値Aと測定値Bとの間で変化した場合、3Dモデルが同じ座標系に変換されるように、並進ベクトルが適用され得る。
【0035】
アライメントされると、3Dモデルが比較されて、3Dモデル同士の誤差が決定される。いくつかの実施形態では、3Dモデルは、視覚的に(例えば、ピクセルごとに)比較され得る。いくつかの実施形態では、3Dモデルを比較するために、機械学習が使用され得る。いくつかの実施形態では、3Dモデルは、数学的に誤差尺度(error metric)を用いて比較され得る。いくつかの実施形態では、3Dモデルは、モデル間の最小2乗又は2乗平均平方根(RMS)誤差(RMSE)を使用して比較される。RMSEは、残差の標準偏差(すなわち、データ点が回帰直線からどの程度外れているかの尺度)である。RMSEは、残差がどの程度ばらついているかを測定する。残差は、実際の値y^
と予測値yとの間の差分である。残差を2乗し、2乗したものを平均し、平方根をとるとRMSEが得られる。
【数1】
【0036】
患者の眼の3Dモデルでは、RMSEは、次式のように計算され得る。
【数2】
上式で、nは、測定ごと(例えば、角度ごと、又は入射ビーム方向ごと)の光線の数であり、dAは、第1の入射ビーム方向での測定値Aにおける角膜内で移動した局所距離(d1)であり、dBは、第2の入射ビーム方向での測定値Bにおける角膜内で移動した局所距離(d1’)であり、dAacは、第1の入射ビーム方向での測定値Aにおける房水内で移動した局所距離(d2)であり、dBacは、第2の入射ビーム方向での測定値Bにおける房水内で移動した局所距離(d2’)であり、dAleは、第1の入射ビーム方向での測定値Aにおける水晶体内で移動した局所距離(d3)であり、dBleは、第2の入射ビーム方向での測定値Bにおける水晶体内で移動した局所距離(d3’)であり、dAvitは、第1の入射ビーム方向での測定値Aにおける硝子体液内で移動した局所距離(d4)であり、dBvitは、第2の入射ビーム方向での測定値Bにおける水溶液内で移動した局所距離(d4’)である。
【0037】
RMSEは、0~1の値を与える。RMSE値が閾値以上である場合、モデルは一致していないと決定される。RMSE値が閾値未満である場合、モデルは一致していると決定される。
【0038】
いくつかの実施形態では、離散サンプリング(例えば、有限のステップサイズによるもの)を考慮するために、測定値の間のパターンを一致させるために再サンプリング(例えば、回帰分析によるもの)が行われ得る。
【0039】
図5を再び参照すると、モデルについて計算されたRMSEが指定された閾値を上回る場合、モデル505とモデル510とは一致していないと決定され得る。この場合、新しい1組の屈折率が選択される。いくつかの実施形態では、屈折率の値を再選択するために勾配降下法が使用される。目標は、モデル間の誤差を最小化することである。RMSEに基づいて、屈折率を最適化することができ、つまり、RMSEの式からの誤差が最小になるまで、又は閾値未満になるまで、屈折率が置き換えられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、光学構成要素に関する1組の屈折率は、順次(すなわち、角膜から、房水、水晶体、硝子体液へと)最適化される。したがって、モデルが一致しない場合、角膜に関する新しい推測屈折率が選択され得るが、房水、水晶体、及び硝子体液に関して同じ推測屈折率が使用され得る。角膜に関する最適化された屈折率が特定されると、プロセスが繰り返されて、房水、次いで水晶体、そして硝子体液に関する屈折率が最適化され得る。これは、角膜に関する屈折率が、その後の計算に影響を与え得るためである。
【0041】
図7は、特定の態様による、患者の眼の光学構成要素の真の1組の屈折率を決定するための例示的なシステム700を示している。図示のように、システム700は、限定されるものではないが、患者の眼100と、診断デバイス715と、第1の患者視野ターゲット705と、第2の患者視野ターゲット710とを含む。
【0042】
診断デバイス715は、OCTシステム、収差計、又は他の眼科診断若しくは撮像デバイスであり得る。デバイス715は、少なくとも測定コンポーネント720と、レイトレーシングコンポーネント725と、3Dモデリングコンポーネント730と、比較コンポーネント735とを備え得る。
【0043】
測定コンポーネント720は、患者の眼の測定値を取得するように構成される。例えば、測定コンポーネント720は、光線が患者の眼100内の光学構成要素から反射して戻る際の時間遅延を測定するように構成された撮像デバイスを備え得る。測定コンポーネント720は、複数の異なる入射ビーム方向から測定値を取得する。よって、いくつかの実施形態では、測定コンポーネント720が第1の1組の測定値を取得する際に、患者は、第1の患者視野ターゲット705を見るように指示され得る。患者が第1の患者視野ターゲット705を見ている間、患者の眼100は入射ビームに対して第1の角度を画定する第1の回転Rstartを有する。測定コンポーネント720が第2の1組の測定値を取得する際に、患者は、第2の患者視野ターゲット710を見るように指示され得る。患者が第2の患者視野ターゲット710を見ている間、患者の眼100は入射ビームに対して第2を画定する第2の回転Rsecondを有する。いくつかの実施形態では、入射ビームは3Dビーム又はビームの束である。いくつかの実施形態では、第1の患者視野ターゲット705及び第2の患者視野ターゲット710は、場所を変える単一の動的固視標である。
【0044】
レイトレーシングコンポーネント725は、測定コンポーネント720からの測定値を使用して、患者の眼内で入射ビームが辿る経路を決定し得る。レイトレーシングコンポーネント725は、眼の光学構成要素に関する第1の1組の推測屈折率nstartを使用し得る。レイトレーシングコンポーネント725は、患者の眼100内の光学構成要素の間の各移行部における屈折の角度と、光線が第1の入射角度で患者の眼内を移動する局所距離d1、d2、d3、d4とを決定し得る。レイトレーシングコンポーネント725はまた、屈折の角度と、光線が第2の入射角度で患者の眼内を移動する局所距離d1’、d2’、d3’、及びd4’とを決定し得る。
【0045】
レイトレーシングに基づいて、3Dモデリングコンポーネント730は、第1の入射角度における患者の眼100の第1の3Dモデルを生成し、第2の入射角度における患者の眼100の第2の3Dモデルを生成し得る。レイトレーシングコンポーネント725及びモデリングコンポーネント730は、画像プロセッサを備え得る。
【0046】
比較コンポーネント735は3Dモデルを比較して、モデルが一致しているか否かを決定する。比較コンポーネント735は、モデル間のRMSEを決定して、RMSEが指定された閾値内にあるか否かを調べることができる。モデルのRMSEが閾値以内にない場合、診断デバイス715は、追加の測定、レイトレーシング、及び3Dモデリングを行って、本明細書で論じた技法にしたがって1組の屈折率を最適化する。比較コンポーネント735が1組の一致するモデルを見つけると、真の1組の屈折率が見つかり、モデルは患者の眼の正確なモデルとみなされる。比較コンポーネント735は、画像プロセッサの一部であってもよいし、別個のモデル処理コンポーネントであってもよい。
【0047】
図示していないが、診断デバイス715は、光信号(例えば、光線の束)を発生させ、光信号を患者の眼に伝播させるように構成された光源を更に備え得る。OCTの場合、光信号は近赤外スペクトル領域の光線を使用し得る。診断デバイス715は、オペレータからの入力のための様々なI/Oデバイス(例えば、キーボード、ディスプレイ、マウスデバイス、ペン入力など)の接続を可能にし得る、1つ以上のI/Oデバイスインターフェースを備え得る。
【0048】
図示していないが、診断デバイス715はまた、1つ以上の中央処理装置(CPU)と、メモリと、ストレージとを備え得る。CPUは、メモリ内に記憶されたプログラミング命令を読み出して実行し得る。インターコネクトは、CPU、I/Oデバイスインターフェース、ディスプレイ、メモリ、及びストレージ間でデータを送信し得る。CPUは、1つの処理コア又は複数の処理コアを有する。メモリは、ランダムアクセスメモリであり得る。ストレージは、固定ディスクドライブ、着脱式メモリカード若しくは光学ストレージ、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、又はストレージエリアネットワーク(SAN)などの、固定又は着脱式記憶装置の組み合わせであってもよい。
【0049】
本明細書で説明される態様は、患者の眼の光学構成要素の患者固有の屈折率の決定を提供する。患者固有の1組の屈折率を決定することにより、患者の眼のより正確なモデルを生成することができる。患者の眼の正確なモデルにより、眼の実際の状態を決定することができ、眼の実際の状態を用いて、患者の視力をより良く評価し、屈折異常をより正確に計算し、患者のIOLを選択することができ、また患者の眼疾患の診断を改善することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「決定する(determining)」という用語は、多種多様な作用を包含する。例えば、「決定する」は、算出する、計算する、処理する、導出する、調査する、検索する(例えば、テーブル、データベース、又は別のデータ構造で検索する)、確認する、及びその他を含み得る。また、「決定する」は、受信する(例えば、情報を受信する)、アクセスする(例えば、メモリ内のデータにアクセスする)などを含み得る。また、「決定する」は、解明する、選択する、選ぶ、定めるなどを含み得る。
【0051】
「又は(or)」という用語は、排他的「論理和(or)」ではなく、包含的「論理和(or)」を意味することが意図されている。つまり、別段の指定のない限り、又は文脈から明らかでない限り、「XがA又はBを採用する(X employs A or B)」という語句は、自然な包含的置換のいずれかを意味することが意図されている。つまり、「XがA又はBを採用する」という語句は、以下の例、すなわち、XがAを採用する(X employs A)、XがBを採用する(X employs B)、又はXがA及びBの両方を採用する(X employs both A and B)のいずれかによって満たされる。加えて、本出願及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、別段の指定のない限り、又は文脈から単数形を指すことが明らかでない限り、一般に、「1つ以上(one or more)」を意味するように解釈される。項目リスト「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という語句は、そこに属する1つの要素及び複製要素を含め、これらの項目のあらゆる組み合わせを指す。例として、「a、b、又はcのうちの少なくとも1つ」は、例えば、a、b、c、a-b、a-c、b-c、a-b-c、aa、a-bb、a-b-ccなどを包含することが意図される。
【0052】
上記は、本開示の実施形態に関するが、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態も本願の基本的範囲から逸脱せずに考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲に記載の請求項によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】